大強度陽子加速器施設評価作業部会(第12期)(第1回) 議事録

1.日時

令和5年11月2日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省内17階局会議室及びオンラインのハイブリッド形式

3.議題

  1. 作業部会の設置趣旨・運営等について
  2. 中間評価にあたっての主な論点について
  3. J-PARC の概要および現状説明
  4. 作業部会の今後の進め方等について
  5. その他

4.出席者

委員

高原主査、飯沼委員、石切山委員、大竹委員、上村委員

文部科学省

稲田研究環境課課長、内野研究環境課課長補佐、田邉研究環境課専門職、村松素粒子・原子核研究推進室室長

オブザーバー

小林J-PARCセンター長、脇本J-PARC副センター長、大友J-PARCセンター物質・生命科学ディビジョン長、金正J-PARCセンター加速器ディビジョン長、小松原J-PARC素粒子原子核ディビジョン長

5.議事録

【稲田課長】  それでは、定刻となりましたので、ただいまから第1回大強度陽子加速器施設評価作業部会を開催いたします。
 本日は、お忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
 本作業部会の事務局を担当させていただきます文部科学省科学技術・学術政策局研究環境課長の稲田と申します。よろしくお願いします。
 本日は、オンラインとのハイブリッド形式で会議を開催いたしますので、まずはオンライン会議の留意点について御説明させていただきます。
 まず、通信を安定させるために、御発言されるとき以外は必ずマイクをミュートにしてください。ハウリングして聞き取りにくくなりますので、よろしくお願いいたします。御発言の際はミュートの解除を忘れないようにしてください。
 議事録の作成のため速記者を入れておりますので、お名前を言った後に御発言をお願いします。
 会議中、不具合などのトラブルが生じた場合は、事前にお知らせした事務局の電話番号にお電話いただけるとありがたいと思います。
 なお、本日は、会議公開の原則に基づき、報道機関や一般傍聴者によるYouTubeでの傍聴を認めておりますので、御了承ください。
 それでは、配付資料の確認をいたします。Zoom上に画面共有しますので御覧ください。
 なお、画面が見にくい方は、適宜、事前にお送りしています資料を御覧ください。資料番号に関しては、議事次第の中の配付資料というところで、資料1-1から参考資料3-2まで書いてございますが、これがそろっているか、乱丁、落丁等がないか御確認ください。
 なお、会議室に集まっていただいている方で乱丁、落丁ございました場合は、事務局で適切なものと取り替えますので、御指摘をお願いいたします。それから、欠落等ございましたら情報提供をお願いいたします。
 それでは、最初に、本作業部会の設置経緯及び趣旨について御説明させていただきます。参考資料1-1から1-8を御覧いただきたいのですが、非常に単純に申しますと、本作業部会においては、JAEA、KEKが一緒に設置していますJ-PARCの評価を行います。この評価に関しましては、文部科学省における研究及び開発に関する評価指針に基づきまして、5年に一度程度中間評価を行うことになっています。
 今回の評価に関しましては、幾つかの所掌にまたがるということから、3つの委員会および部会が合同でこの作業部会を設置し、評価することとしてございます。資料1-1から1-8をかいつまんで御説明させていただきました。その旨、御了承いただけるとありがたいと思います。
 委員については、資料1-1のとおりです。出席の委員の皆様においては名簿順に御紹介させていただきますので、簡単に御専門と御所属を御紹介いただければありがたいと思います。
 それでは、飯沼委員から御所属とお名前をお願いします。
【飯沼委員】  おはようございます。茨城大学の飯沼裕美と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私の専門は物理、素粒子実験に取り組んでいる実験物理学者です。主な物理実験テーマは、J-PARCでのMLFからのミュオンビームを用いた超精密実験に取り組んでおります。端的に言うと、新しい物理の探索をJ-PARCで取り組んでおります。その上で、私は、ビームを使うユーザーとして、ふだんJ-PARCを学生たちと一緒によく利用させていただいております。どうぞよろしくお願いします。
【稲田課長】  先に大竹委員からお願いいたします。
【大竹委員】  理化学研究所の大竹でございます。本日、現場のほうに参れませんで、失礼いたしております。理研からつなげさせていただいております。
 加速器ベースの小型中性子源RANSをこちらでは開発しておりますが、当然、J-PARC、JRR-3等の大型施設、また、国際的な連携もさせていただいております。また、今年度から中性子科学会長といたしましても、大型施設に対して、また、将来計画等に関しましても関わらせていただいております。よろしくお願いいたします。
【稲田課長】  それでは、上村委員、お願いいたします。
【上村委員】  CBI研究機構の上村と申します。私は、昨年の3月まで製薬会社で36年間、創薬をやっておりまして、それが終わってから今の職に就き、引き続き研究をしております。専門は、もともとがX線結晶学でございまして、今はストラクチュアルバイオロジーと構造に基づくドラッグディスカバリーで、計算科学のほうもやっております。ですから、そういう見地からJ-PARCの評価に関わらせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
【稲田課長】  石切山委員お願いします。
【石切山委員】  東レリサーチセンターの石切山でございます。専門は高分子の物性解析です。J-PARCと中性子産業利用推進協議会の立ち上げから10年間、運営委員を担当させていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。
【稲田課長】  最後に高原主査、よろしくお願いします。
【高原委員】  現在、九州大学名誉教授また九州大学のネガティブエミッションテクノロジー研究センターの特任教授をしております高原でございます。私自身は、専門は高分子科学で、J-PARC、それから、放射光を高分子の構造解析に応用しているのが私の研究の背景でございます。
 以上です。
【稲田課長】  ありがとうございます。ただいま御紹介した委員のほか、本日は御欠席でございますが、大阪大学の核物理研究センターのセンター長をされています中野委員にも就任いただいてございますので、御紹介させていただきます。
 また、J-PARCセンターからの出席者を御紹介します。
 まず、小林センター長です。
 それから、脇本副センター長です。
 大友物質・生命科学ディビジョン長でございます。
 金正加速器ディビジョン長でございます。
 小松原素粒子原子核ディビジョン長もいらしております。
 続きまして、文部科学省の出席者ですが、事務局の研究環境課に加えまして、分野担当課であります基礎・基盤研究課の素粒子・原子核研究推進室長の村松が出席しておりますので、御紹介します。
【村松室長】  村松です。よろしくお願いします。
【稲田課長】  本日は、上位委員会の運営規則に基づき、量子科学技術委員会の大森主査、原子力科学技術委員会の出光主査、研究環境基盤部会の観山部会長から、高原委員が主査として指名されております。
 以降の議事につきましては、高原主査に進行をお願いします。よろしくお願いいたします。
【高原主査】  高原でございます。主査に御指名いただきまして、これから2か月間で中間評価をまとめるということで、非常に身の引き締まる思いです。また委員の皆様には集中していただいて、とりまとめに御協力よろしくお願いいたします。
 2018年が前回の中間評価で、あっという間に5年が過ぎたという感じでございますけれども、いろいろな成果も出ているようですので、私どもは、いろいろな観点から、その辺りの進歩に関しまして伺うこと、それから、現地でサイトビジットすることを楽しみにしております。また、いろいろな点でコメントすることがありますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議事に入らせていただきます。
 まず、本作業部会の運営規則につきまして、事務局より説明お願いいたします。
【稲田課長】  資料1-2を御覧ください。本部会の運営規則に関して、案を作成しております。趣旨については、この作業部会の設立の根拠を示した上で、議事に関して、過半数の出席を基に開催が成立する。委員が欠席の場合は代理者を立てることができないというところがポイントとなります。
 また、会議の公開に関しては、特に問題がない場合については公開するという原則と、議事録を作成して後ほど公表しますので、この点がポイントとなろうかと思います。
 以上です。
【高原主査】  ありがとうございました。
 さっと目を通していただけると良いと思いますけれども、本案を大強度陽子加速器施設評価作業部会の運営規則等として決定してよろしいでしょうか。何かコメントがある場合はよろしくお願いいたします。よろしいですか。
 それでは、異議なしとして了承いたします。
 それでは、次の議題に入りたいと思います。今回の「中間評価にあたっての主な論点について」です。
 中間評価にあたっての主な論点に関する質疑や御意見につきましては、議題3のJ-PARCの概要説明と併せて時間を設けていますので、その際にお願いできればと思います。
 それでは、事務局より御説明をお願いいたします。
【稲田課長】  資料2を御覧ください。後ほど資料3で現状をJ-PARCから御説明いただきますが、その前に今までどんな指摘があったのか、今後、この作業部会で何を議論するのかというところの頭づくりをしていただいて、それを基にヒアリングした上で、先ほど主査がおっしゃったように、ディスカッションしていただく、そのための下地づくりでございます。
 論点に関しては、前回の中間評価に指摘事項が幾つかございまして、(1)、(2)とございますが、この観点について指摘事項があるので、ここに対してきちんと対応されているかどうかというところを御覧いただきたいというのがまずは1点目。その他の指摘事項として、ここに挙げられているような広報とか、研究の周辺分野に対する取組状況についてもきちんと対応されているかどうかというところが前回、指摘事項としてございますので、ここら辺がどうかというのを御議論いただきたいと思います。
 プラスして、新たに取り上げるべき論点。これは後ほど委員の皆様からの御意見を賜って、これに新たな論点を追記することを期待しているところでありますが、例えば既存設備の高度化についてどうするべきであるか。J-PARCは運転を開始してからそろそろ15年が経つのですが、そう考えると、老朽化というか、高経年化に対してどういう対応をするのか、あるいは一部の規格のもの、部材というのはもはや入手が難しくなっている面がございまして、必然的に高度化しなきゃいけないというところがあります。そういった老朽化対策と高度化対策をどういうふうにしていくのかという話。
 それから、経済安全保障の観点で、戦略分野等の推進をいかにしていくかというところ、プラスして、J-PARCに関しては、実利を考えるとともに、ある意味、学術に対して開かれた施設であるということも特徴かと思います。ここら辺のバランスをどういうふうに考えているのかを御議論をいただきたいというところであるとか、最後に、長らくデフレで物価は安定していたのですが、残念ながら、最近、物価高騰があります。原油も高いです。これに対して国の予算を増やしていけというだけでなく、どういう対策を取っていくのかについては議論があってしかるべきなのかなと事務局としては考えているところです。
 以上です。
【高原主査】  ありがとうございました。この資料につきましては、後ほどの議論でも細かい点につきましては触れますので、まずは議題3に進みたいと思います。これに時間を十分取ってございます。40分取っていますけれど、かなり資料はボリュームがありますので11時頃まで使っていただいてよろしいかと思います。大強度陽子加速器施設、J-PARCの概要及び現状について、J-PARCの小林センター長からお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【小林センター長】  それでは、J-PARCの概要と現状ということで、J-PARCセンター長の小林が御報告させていただきます。
 まず初めに、このたびJ-PARCの中間評価で評価をいただく場を設けていただき、お忙しい中、委員の皆様方には就任していただいて、J-PARCセンターからもお礼申し上げます。
 では、中身に入っていきたいと思います。
 一枚めくっていただいて、目次はこんな感じになっています。
 3ページ目、J-PARCの概要ですけれども、J-PARCは、JAEAとKEKが共同で建設し、運営してきている世界最高レベルの陽子加速器であり、様々な分野の最先端の研究を展開しております。その分野というのは、物質科学、生命科学、原子力工学、原子核・素粒子物理学などの研究になります。手段としては、陽子ビームを用い、中性子、ミュオン、ニュートリノなどの二次粒子、三次粒子を用いて行っております。さらには産業応用も進めております。
 次のページ、お願いします。この中間評価というのは5年程度の周期でやっていただいているということで、J-PARCの経緯、建設着手から書いてありますけれども、緑のところがここ5年に対応します。いろいろありましたけれども、大きな点で言いますと、最初のMLFについて、1メガワット、設計強度の1時間の連続試運転に成功しております。
 それから、コロナがこの期間のかなりの割合を占めているわけですけれども、コロナ禍が始まった直後は、感染拡大を抑えるための対策を取るなどで、しばらくの間、1か月程度はユーザーの受入れを止めざるを得なかったのですけれども、1か月程度の受入れ停止の後、それ以降は、基本的には定常的にユーザーを受け入れることができています。
 それから、MLFの利用運転で、陽子ビーム出力830キロワットで定常運転を進めております。2022年4月です。
 それから、これは後で出てきますけれども、今年の4月、MRでも念願の初期設計強度750キロワットの、これはシングルパルスの試運転ですけれども、成功しております。
 これも後で出てきますが、今年の4月、6月に、火災で利用運転の中断をせざるを得ないということがありました。
 次の5ページ目ですけれども、これはJ-PARCの全体の俯瞰、ビューですけれども、加速器が3台、連続的につながっていまして、一番初めが400MeVの線型加速器、2番目の丸いところが3GeVのRapid-Cycling Synchrotron、RCS。所期の設計出力は1メガワット。それから、下のオレンジの大きな丸が主リング、メインリングで、現在、エネルギーが30GeVで、所期の設計強度が750キロワットで、現在はさらに大強度化を目指しております。
 次のページへめくっていただいて、こちらは同じ絵ですけれども、J-PARCは、先ほどもありましたけれども、JAEAとKEKが共同で建設、共同で運営をしております。この水色の四角で囲った部分が、JAEAが責任を持って運営、運転している部分、赤い枠で囲った部分が、KEKが責任を持って運営、運転している部分になります。
 次のページ、お願いします。こちらはそのJAEA担当分ですけれども、MLF中性子源のビーム運転履歴となります。一番左は2008年なので、もう既に15年、運転してきているということですけれども、青い縦棒がビーム強度になります。先ほどの1メガワット試運転は、ところどころで針のように立っているところで、現在はMLFの平均パワーで830から840キロワットで、定常運転できています。この840キロワットというのは、主リングのほうにビームが取られていく部分もありますので、パルス当たりにするとほぼ1メガワット、設計強度を達成していると言えます。
 次のページ、お願いします。こちらは主リングのビーム強度の履歴ですけれども、こちらは横軸が2010年から2024年で、赤い棒がニュートリノ実験に使うためのモードのビーム強度で、青い棒がハドロン実験施設にビームを出すときのモードのビーム強度です。赤いほうのニュートリノのビーム強度は、2018年ぐらいから500キロワット程度の定常運転を実現しております。
 ハドロン、SX、青い棒のほうは、ここ数年、65キロワット程度の定常運転を実現しておりました。2022年の辺りに緑で高繰り返し化のための電源増強と書いてあります。この主リングのビーム強度を750キロワット達成、さらにはその先、1.3メガワットを目指しているのですけども、そのために加速器、MRの大規模アップグレード作業をするために、長期シャットダウンがありました。最も大きなものが電源の増強で、電源を増強して、2022年の後半から試運転を始め、今年初めて、一番右上に書いてありますけれども、20年来目指してきている当初の設計強度、750キロワットのシングルパルスの試運転に成功しております。
 次のページに行きます。J-PARCでは非常に幅広い分野の研究を進めておりまして、中性子・ミュオンで物質・生命科学、ニュートリノやハドロン実験施設で素粒子・原子核物理研究を進めており、さらには核変換技術の開発研究も進めております。
 次のページをお願いします。まずは素粒子・原子核物理の研究についてお話しします。
 第2回目以降に、この5年間で得られた成果等をもう少し詳しく御説明させていただけることになっていると思いますので、今日はかなりダイジェストでお話しさせていただきます。
 11ページ目、ニュートリノ研究です。これはJ-PARCでニュートリノという素粒子を、大強度ニュートリノビームを生成して、地球の中を300キロ飛ばして、スーパーカミオカンデで検出することで、ニュートリノの性質を調べ、さらには宇宙の物質の起源の謎に迫ろうという研究です。
 ポツが少し並んでいますけども、この実験は500人の国際コラボレーションとなっていまして、最初の大きな成果は2011年から2013年、新たな現象を発見し、これが3本ほど、一連の論文があるのですけども、2,700サイテーションということで幾つかの賞をいただいております。
 その発見以降は、ニュートリノにおけるCP対称性、ニュートリノと反ニュートリノの性質の違いを発見する、探索するという研究を続けておりまして、2020年に、CP対称性の破れを表す位相角の大きな領域を3シグマ以上で棄却したということで、『Nature』の10大発見に選出されております。ということで、現在は、ニュートリノCP対称性の破れの発見を目指して測定を進めているところです。
 次のページをお願いします。さらには将来計画として、ニュートリノビームの強度、ひいては加速器ビームの強度を500キロワットから1.3メガワットに増強し、さらには、カミオカンデサイドではスーパーカミオカンデの8倍程度の大きな検出器、ハイパーカミオカンデを建設し、さらに感度の高い研究を2027年から開始しようと、現在準備しているところです。
 次のページ、お願いします。次のページは、素粒子・原子核研究のハドロン実験施設になります。ハドロン実験施設の位置は右上の写真の赤丸のところにあるのですけれども、その中には金標的がありまして、金標的から出てくるセカンダリーパーティクルを利用する研究が行われておりまして、この実験施設の中では、素粒子実験、それから、原子核実験が共存しております。
 この5年のニュースとしては、まずは、真ん中辺り、赤い高運動量ビームラインというのがあるのですけども、これが2020年8月に完成し、ビーム運転の開始を発表しております。それからもう一つは、下にありますけども、ミュオンから電子に転換する現象を発見しようとする素粒子実験、COMETのためのビームラインが今年の3月に完成して、最初のビームが出ております。
 次のページをお願いします。ハドロン実験施設での主な成果ですけども、こちらも先ほども言いましたように、ビームラインが何本かありまして、そこで実験の規模としては、1か月とか数か月というレベルの実験なので、やはりこの5年間で幾つもの成果がありますので、全てを網羅することはできませんが、上2つと左下は原子核の研究ですけれども、例えば左上はグザイハイパー核という、グザイという重粒子が原子核の中にとらわれるという現象を、これは写真、エマルジョンで、そのハイパー核の、ハイパー核というのはグザイが原子核の中に埋め込まれたものを言うわけですけども、その質量測定に初めて成功とか、右下は素粒子研究ですけれども、中性K中間子、Kゼロロングというのがパイゼロとニュー・ニュー、ニュートリノと反ニュートリノに崩壊するという、これはまだ未発見ですけれども、これを発見しようという研究が進められていて、つい最近、最新の結果が発表されたところで、右の絵は、その現象が発見されなければ確率の上限が与えられているわけですけども、赤三角のようにだんだんアッパーリミットが下げられていっていると。
 次のページは、これは現在準備中の研究で、かつ、ハドロン実験ホールではなくてMLF、物質・生命科学実験施設の研究実験になります。これはミュオンの異常磁気能率、g-2、さらには電気双極子モーメント、EDMを極めて高い精度で測ろうという研究計画になります。
 これはここ数年、話題になっているのですけども、そういう意味では、20年前から、このg-2はスタンダードモデル、標準理論の予想から、主にアメリカで行われている研究の測定値が4シグマを超えてずれているということが報告されていて、これを決定的に否定または証明する必要があるということで、全く違う原理の研究装置、考え方で研究するという計画が進んでいまして、2027年から2028年にかけて実験の開始を目指しているところです。
 次は、ハドロン実験施設の将来計画です。これは2回目以降の各論のところでまた触れさせていただければと思いますけれども、左下の絵を見ていただいて、現在、赤線枠の外、左側が既存の実験ホールになります。T1と書いてあるところが現在の、既存の標的になります。これをざっくり2倍、下流方向に拡張して、様々な大強度、高機能なビームラインを設けて、質的に異なる研究を始められるというプロジェクトになっていまして、例えば右ですけれども、核物質中でのストレンジ核子、例えば先ほどのグザイもそうですけれども、核力、他の核子との相互作用を解明するためには、束縛エネルギーを非常に精密に測る必要があります。左に小さいグラフがありますが、そのグラフのところどころに見えるピークが束縛エネルギーになるわけですが、例えばこれが新しいハドロン拡張ホールになると、右のように、非常にクリアにピークが見えるようになるとか、例えば素粒子実験では右下のように、先ほどのK中間子の崩壊を発見するという研究も、さらに2桁、感度の高い実験ができるようになるというものです。
 以上で素粒子・原子核研究については終わりまして、次は、物質・生命科学実験施設における物質・生命科学の研究に移ります。
 まず実験施設ですけれども、これはMLFの実験施設の平面図ですが、21台、中性子のビームラインと装置、それから、ミュオンに関しては8台の実験装置が稼働中であります。この絵は、左から陽子ビームが来て、真ん中の丸いところの中心に、中性子生成のための水銀標的があります。それから左に、絵で言うと4センチぐらい上流に行ったところにミュオンのグラファイト標的があります。
 次のページ、まずは中性子生成のための標的に関して、さらなる高出力化のための取組を進めてきているということです。高出力化のための課題は、大きくは、圧力波、ビームがパルスで入ってきますので、それによって生じる圧力波が液体水銀の標的容器の内側にダメージを与える、ピッティングという現象があります。左下に、少し小さくて見にくいのですけども、これは毎回、標的を交換するたびに、標的の上流側のビームがまさに当たるところを切り取って、ピッティングの状況を測定しているのですけども、この年の例では0.86ミリのピッティング、孔食というか、削られたような形になっていると。高出力化のための取組として進めてきているものは、微小なヘリウムの気泡を注入する。それによって圧力波をガスの気泡に吸収させるというような方法を取っております。
 それからさらに、ヘリウムを入れる場所を最適化するなどの取組も進めてきておりまして、その成果というのは、右下の赤いグラフのように、平均ビーム強度は、ここ数年、上げてきて、運転しているわけですけれども、ピッティングに関係する圧力波の大きさを測る指標として、音圧というのを測っており、その音圧が青い棒グラフのように、ビーム強度は上がっているけれども、減っている、減らすことができているというふうに成果が挙がってきております。
 今年度下期からは、そのような性能を向上した、気泡数を従来の2倍以上高めることで、1メガワット、5,000時間、年間最大運転時間に耐えうる改良型の標的を使用開始予定です。
 次のページ、お願いします。中性子利用技術の開発も進めてきておりまして、これも全て網羅することはできないのですけれども、例えば左は、最近の計算機科学の成果を応用ということで、ディープラーニングを解析に利用することで、従来の測定時間を10分の1以下にした少ない統計でも同程度の精度の結果が得られるような解析手法を開発するということです。
 それから、右のほうですけれども、偏極技術の高度化と汎用化ということで、偏極ミラーの開発、それから、スピンフィルターの利用装置の拡大、大面積偏極ミラーの開発等を進めてきております。
 次のページに行きまして、物質・生命科学実験施設の主な成果ですけども、こちらも少し後で出てきますけども、こちらは御存じのとおり、年間、数人、数日というのが平均的な実験として、年間数百の実験が入ってきていますので、5年間で数千近い成果が上がっているので、全て網羅することはできませんけども、代表的な分野とそれぞれの中での代表的な成果をリストにさせていただいています。例えばエネルギー科学では、固体冷媒を用いた新しい冷却技術の開発、さらには、車載用、燃料電池のセル内の水の可視化、左下に絵がありますけども、これによりフューエル、燃料電池の最適化が可能になるといった研究。
 それから右上の材料工学・地球科学では、例えば最近の例ですけども、日本が開発した高強度マグネシウム合金というのがあって、これはなぜ強いのかということを、中性子を用いて内部の構造を調べることで解明できたというような研究。それから、固体物理では、超高密度な磁気渦を示す二元合金物質を発見し、次世代の磁気メモリへの応用に期待が広がると。それから、ソフトマター・バイオマターでは、例えば光合成のメカニズムの解明につながるような研究が進められております。
 次のページ、お願いします。ミュオン実験施設では、4つのビームライン、8個の装置が稼働中であります。それぞれ特徴を持ったビームライン施設、装置になります。ミュオンに関しても多くの成果が上がっているわけですけども、一枚にまとめております。次回にもう少し詳しく御説明させていただきます。
 例えば左上のほうは、次世代太陽電池材料で、高効率性を発揮するメカニズムを解明したと。それから、右上は、小惑星リュウグウから持ち帰ったサンプルの元素分析をしたと。これは『Science』に載っております。左下はユニークな研究で、最近の一つのトレンドですけれども、文理、文系と理系の科学の技術を応用した文理融合研究の例です。江戸時代の薬瓶の中の薬の成分をミュオンの特性X線で調べたというものになります。
 次のページ、お願いします。こちらは統計的なサマリー、MLFでの実験課題数等のまとめですけれども、まず左上のグラフの折れ線グラフが、実際に課題審査に合格して実施された実験の数になりまして、左の軸を見ていただくと、これは半期ごとになっているわけですけども、200から250。年間になると、これを足したものになるので500程度の実験が進められてきております。
 下のグラフは、これは2023B、今年度後期の申請と採択は351と207となっております。
 それから、将来計画です。まずはミュオン実験施設の将来計画の一つは、まだこれはこれからの建設ですけども、見にくいですが、真ん中の上にレイアウトがありますけども、薄い、濃いが見にくいですけど、こういう色がついているところは既存で、そこからHラインを真っすぐ、スライドの中では、ミュオンビームライン、高運動量ビームラインと書いてある辺りが薄くなっていると思うのですけども、そちらのほうに延長し、さらに、黒い縦棒のところより右は、現在のMLFの建屋を越えて、さらに施設を延長するという計画があります。
 Hラインの実験棟においてやろうとしているプロジェクトが下にありまして、一つは、左下にあります透過型ミュオン顕微鏡ということで、ミュオンを加速して、電子顕微鏡のような使い方をするわけですけれども、ミュオンと電子の違いで、サンプルの奥に入り込むことができると。さらに自由に測定深さをエネルギーによって変えることができるということで、電子顕微鏡では不可能だった内部の観察ができるようになるとか、それからもう一つは、右下にあるのは、先ほども申しました素粒子研究のg-2/EDM実験になります。
 さらに、将来、今現在、J-PARCとしてもコミュニティーの皆様と議論させていただきながら検討を進めているのが第2ターゲットステーションということになります。左上はポンチ絵ですけれども、現在の3GeVのビームを分岐させて、新たに実験施設を建設するというもので、ポイントは、新たなターゲットステーションでは、右にあります中性子源とミュオン源の標的を一体化する。さらには、陽子加速器の強度を、現在、1メガワットをほぼ達成しているわけですけども、それを1.5メガワットに増強し、第1ターゲットステーションには、現在のまま1メガワットを供給し、ターゲットステーション2に0.5メガワット、これはパルスで振り分けるわけですけども、送ると。左が、これもまたターゲット近辺のポンチ絵ですけれども、真ん中に回転タングステン標的がありまして、そこから中性子ミュオンを取り出すということで、今のエスティメートとしては、中性子のほうは、併せて20倍程度の輝度が期待できると。ミュオンも装置、標的の改良によって、50倍から100倍の強度が期待できるという施設を目指しているところです。
 次のページ、お願いします。次は核変換に移ります。27、28ページです。こちらのほうは、近年、中間評価以降の5年間にもいろいろ政府のほうでも議論が進んでいまして、真ん中のR3の10.22のところは閣議決定として、加速器を用いた核種変換などの技術等の開発を推進すると。
 それから、次は文科省のタスクフォースですけれども、ADSの工学的課題解決に加え、多様なニーズへの対応を検討すべしというような答申が出ております。それに基づいて、引き続きJ-PARCのほうでも、施設仕様の検討、それから、要素技術の開発を進めているところです。
 次のページを見ていただくと、現在、29ページの下の囲いの中にあるのですけども、先ほどの多様なニーズを取り込むというところを受けて、J-PARCとしても、まずユーザーコミュニティーを設立し、去年と今年、研究会を開きまして、ポテンシャルユーザーからどのような期待があるかということをサーベイ、お聞きして、それを施設の設計に反映するという作業を今やっておりまして、現在の施設の概要は、真ん中にある絵のようになっていまして、赤い、太いところに陽子ビームが来て、本来の核変換のための研究、R&D、材料研究をしつつも、さらに、黄色い四角い枠で書いてあるように、1、材料照射で様々な放射線損傷などの研究をすると。もちろんADSを置くわけですけれども、それから、核融合や核分裂炉のための研究、それから、半導体のソフトエラーといえば、最近は非常に重要になってきているので、そういう照射ができるような場、それから、右のほうにはRI製造、陽子ビーム利用なども念頭に、取り込めるような施設を現在、設計しているところです。
 次は、少し実際の実験とか施設から少し離れて、オーガニゼーションの話になりますけれども、まずは31ページ、これはデータをお示しするだけになりますけれども、ユーザーの来所者数。これは人日ということで、何度も訪れた方も、それは別に数えているわけですけども、このような経緯で、年間3万人日程度前後で推移してきているわけですけども、何かあったときには少し、何十%か減るという傾向が見えてきていまして、ここ3年はコロナの影響でこれだけ減ってしまっていますが、2022年度は回復の兆しが見えてきており、2023年度のデータは載せられていませんが、基本的にほぼ元どおりになってきていると思います。
 次のページ、お願いします。これは話がまたあちこちで申し訳ありませんけれども、利用体系に関するお話になります。32ページです。まずは、ユーザーの利用の利便性向上の一環の活動として、中性子利用プラットフォーム、J-JOINを設けて運用してきております。これは、J-JOINというものが動き始める前には、J-PARC JOINというのを作っていたわけですけども、右上にあるように、関連ステークホルダー、JAEA、KEK、CROSS、茨城県が協力して、産業利用推進を目指して、そういうフレームワークをつくっていたわけですが、JRR-3が再稼働することを受けて、J-PARCとJRR-3が合わさった形で窓口を一元化しようと。利用のための相談の窓口を一元化しようということで、新たにJRR-3が加わる形で、J-JOINとして再スタートしていまして、概念図が左上にもありますけれども、理念というか、目標は、ワンストップというか、相談窓口として、JRR-3、J-PARCも含めた形で、利用相談ができるということにしておりまして、目標は新しい連携、それから、情報の集約提供、それから支援ですね。機能もそちらに書いてあるとおりで、ポータルサイトも運営し、利用相談窓口を一元化、それから、中性子産業利用報告会の企画実施等もJ-JOINも一緒にやっております。
 次のページ、お願いします。さらには、ユーザーの利便性向上の活動として、中性子利用体系を利用者のニーズに応じてより分解能を高く、カテゴリーを新たに設けるというような検討を進めてきておりまして、当初、この絵の左のように、基本的には、成果公開は無償、成果非公開利用は有償という区分けだけだったわけですけども、さらにそれぞれに少し特徴を設けて、例えば成果公開でも緊急に実施できるとか、優先的に実施できるとか、さらに成果非公開でも、さらには有償、随時課題でタイムリーに研究ができるというような細分化の検討準備を進めてきております。これは基本的には令和6年度、来年度実施を目指して準備を進めてきているところですが、絵の中の一番右下の有償随時課題については、既に令和5年度より運用を開始しております。
 次のページ、お願いします。こちらもユーザーの利便性に大きく関わることですけれども、J-PARCに現在アクセスするためには、原科研の正門近辺に併せて3つ、出入口があるわけですけど、その辺りから入って、J-PARCに至るまで、長いと2キロぐらい歩くなり、車なりの移動が必要になってきて、特に移動の足のないユーザーには御不便をかけているということで、もう10年来、直接J-PARCにアクセスできる道路を作ってほしいという要望がJ-PARC利用をされている全てのコミュニティーから10年越しでいただいていたということで、この二、三年、検討を進めまして、さらには東海村とも協議して、村との合同事業として整備する計画をまとめることができまして、実際に、既に、これは内部措置ですけれども、令和4年度には詳細の実施設計をやりまして、現在、許認可手続等を順次開始して、さらには来年度から、実際、最初の工事になるのですけども、放射線のモニタリングポストの移設の開始を予定しているところです。
 次のページ、お願いします。これもユーザーだけではないのですけども、研究者の研究環境の向上ということで、こちらももうJ-PARC開闢以来、施設としても非常に重要なものとして位置づけて、検討を進めてきた、いわゆる、平たく言うとアッセンブリーホールですね。実験施設の試験、組立てとか、それをする場がJ-PARCの中になかったと。ほかの施設、原科研さんの施設等をお借りしてやっていて、ぜひこれが必要だということで長年準備してきたわけですけども、このたび、左の真ん中の青枠にありますように、文科省の「地域中核・特色ある研究大学の連携による産学官連携・共同研究の施設整備事業」に応募し、今年の4月、採択されました。提案大学は、メインの大学は総合研究大学院大学で、KEKは連携大学というところで入っております。右上の写真のようなMLFの隣に赤い四角で書いてありますけれども、面積としては1階が2,300平米と、大きな施設の建設に着手することができることになりまして、これが今年、来年ということになります。
 次のページ、お願いします。次は広報活動ですけれども、コロナの間、この5年はかなりコロナ禍にかぶっているわけですけども、その中でもオンラインを導入する等をして、様々な広報活動を続けてまいりました。右下の絵が広報活動の件数です。さすがに対面の活動ができなかったこともあり、少し減っている部分もあるのですけども、今年度はもう既にフルレンジというか、対面の事業を開催できています。中でも大きいのは、例えば施設公開をオンラインで1万ビューとか、それから、真ん中の辺りには、もう2年前になるのですけども、国立科学博物館で特別展示「加速器」というのをKEK等とも協力してやらせていただいて、来場者数8万というようなことになります。
 次のページは、今年度に入って――これは、すみません。2023年ですね。2022年にはもう解禁して、様々なイベントを開催してきております。
 そこは飛ばしまして、あと、J-PARCの活動の中で最も重要なことは安全になります。安全は、もう10年前になりますけども、ハドロン実験施設の放射線の漏えいの事故を受けて、J-PARC、個人の意識、それから、ハードウエアの対策、ソフトウエア、意識等を高めるということを進めてきておりまして、様々なイベント等をやってきております。例えば真ん中辺りにありますけども、毎年5月ぐらいにJ-PARC安全の日というのを設けて、講演会や議論などで安全意識を高めるという活動をしたりしております。
 こちらも以上にさせてもらいます。
 次は連携になります。これは一枚に様々な連携をまとめていますけれども、左が国内の大学との連携で、茨城大学には量子線科学専攻という大学院専攻がありまして、クロスアポイントメントなどで研究室を運営したりして、人材交流を促進。さらには大学、こちらに幾つか大学を挙げていますけれども、分室を設置していただいていると。それから、左下は、AMED-BINDS2という事業に関しては、京都大学、QSTさんとも連携を進めさせていただいています。
 右には、海外との連携、それから、産業界との連携も、現在、豊田中研さんとも連携を進めさせていただいて、右は、NEDOの燃料電池に関する事業ですけれども、2020年から2024年の採択。それから、FC-Cubic、これは後で出ますけれども、新しいビームラインの提案などがあります。
 次、お願いします。こちらは、先ほどと少し重なりますけども、学術/産業の交流で、産業界との交流という意味では、毎年、中性子産業利用報告会というものを開催させていただきまして、しばらくオンラインだったのですけども、去年からハイブリッドで、秋葉原でやらせていただいておりまして、このようなプレゼンテーション、ポスターなど、意見交換などをしています。
 それから、下にありますけども、先ほどありましたFC-Cubicというのは、産業界の燃料電池開発を支える共通基盤的な研究を目的とした組合ですが、そちらに訪問したりして、様々な連携の可能性を議論してきたり、先ほども言いましたけども、FC-Cubicは、そんな中、J-PARCで新しい中性子ビームラインの構想を描いているところです。
 時間が押してきたのですけども、前回、中間評価以降に起きた大きな事象というのは、実は今年度に偏っているのですけども、今年度4月、それから、6月、これはどちらもKEK所掌の施設で、火災が起きてしまいまして、運転時間に影響を与えてしまうということが起こりました。左が1件目で、これは加速器の電源の中のトランスが燃えたというもので、左が燃えたトランスを分解した様子ですけれども、焼損した部分が見えます。これは一言で言うと、大強度化のための電源の大がかりなアップグレードで新たに作った電源の初充電回路に使っているトランスが高周波ノイズに対応していないものであったということで、放電が生じて、最後、発火に至ったというもので、設計が完全でなかったと。
 右は、今度は真ん中の上の絵で言うと、J-PARCのハドロン電源棟というところの電源が燃えたのですけども、これは主リングから出てきた陽子ビームを転送するための定電流電源で、それのために、その電源には電流の向きをリモートコントロールで反転させることができる転極器というのがつけてありました。そこが燃えてしまったと。これは非常に簡潔にまとめているのですけども、原因としては、右の下にある転極器の、同型の転極器の写真ですけども、これの有機物絶縁体、ポリカーボネートですけども、これの強度が低下して、破損して、転極器の構造が保てなくなって、接触不良から発火に至ったという結論です。ということで、これは経年劣化ということが言えるかなと思います。この火災による影響は、どちらも下流側の施設だったということで、MLFにもやはり運転時間が減ってしまうという影響は15日程度出たわけですけども、下流のハドロンとニュートリノ、主リングに関しては、四十数日の減となってしまいました。
 それを受けて、より安全に運転するための直接的な対策、それから、今後の継続的対策を検討してきて、実施してきているところで、直接的には、加速器に関しては、例えば同型のトランスを使用しない方式に変更。それから、ハドロン火災に関しては先ほどのと同型の転極器は全廃するなど、それから、今後の継続的対応としては、新しいものを作るためにはやはりレビューを内外、内側だけでなくて、J-PARCにとどまらなくても、外からも専門家を招いて、確認検討会、レビューを開くと。それから、メーカー等によりちゃんと定期点検を徹底する。それから、ちょっと端折りますけども、一番下の老朽化機器の計画的更新もやっていかなければならないということです。
 すみません。あと少しだけやります。少し組織的な話に、組織、予算に関する状況を御紹介します。45ページ、これは論点の中にもあったと思うのですけども、一体的運営ということで、基本的には、この組織図、JAEAとKEKが共同でJ-PARCセンターを運営するという形。この絵としては、大きくは変わっていません。両機構の下、一体的運営を実施してきておりますが、幾つか課題があるとは思っております。例えばこういうふうに複数の機関で運営する、さらに、それぞれの機関でも予算の種別の違いがあって、それらを最適化して、混ぜることはできませんので、施設全体の効率的な運営を求めていくには今後、課題があるということになります。
 次のページ、お願いします。これは御説明というか、御紹介というか、CROSSという登録機関とJ-PARCの関係を御説明しているスライドになります。CROSSは、左下にあるJ-PARCセンターにある共用ビームラインの共用タイムに関して、右のように利用促進業務を担っていただいているという御説明です。
 次のページ、お願いします。幾つか課題を御紹介しますと、一つは人員に関する課題で、年齢構成が下に書いてあるのですけども、現在、J-PARCは、JAEA、KEK、CROSS併せて600名ぐらいで、維持、運転していますが、さらには、ここには含まれていないのですけども、運転維持に必要な人員の多くを外部業務委託で賄っていまして、これは150ぐらいになるのですけども、この部分に関しては、やはり技術継承に課題があるかと思っています。
 それから、プロパーの職員に関しても下のような年齢構成になっていまして、高年齢化が進み、こちらも技術継承が課題になってきておりまして、こちらは組織、機構のほうでそれぞれ計画的に対応していく必要があると。
 次のページに行きますと、48ページ目。こちらはまた別の課題ですけども、運転維持費と運転時間確保というのは非常に重要な課題だと思いますけれども、現状、まずは電気代の高騰に関する状況を御説明します。上のグラフは、J-PARCの運転開始前後から、電気代の従量料金の変動をグラフにしたもので、左にありますように運転開始当初、2010年ぐらいは、キロワット・アワー当たり8円だったものが、去年、最大暴騰したときには28円前後。今年は少し落ち着いてきてはいるのですけども、20円ということで、少し下がってきたので落ち着いたかと思いきや、実はこの十数年を見てみると、まだ2倍以上、高騰していると。近年の運転は、保守費、老朽化対策や保守を兼ねた高度化などを圧縮して運転時間を確保しようとしているところですけど、厳しい状況が続いていると。
 次のページは、運転維持費の経緯、履歴ですけれども、この水色のところを基本的には運転経費、保守費等も含む、電気代等も含む、これで運転しなさいよという部分が水色に対応。少しJAEAのほうは、右のグラフは上に少し載っています。というふうに見ていただいて、これを見ると、この十数年、基本的には運転維持費は変わっていないと。一言で言うとこうなるかと思うのですけども、長年運転してきて、先ほど言いましたけども、各施設の、特にビームにさらされる機器というのは極めて高度に放射化が進んできておりまして、これは保守費の増に直接効いてきておりますし、老朽化対策もだんだん必要になってきていると。さらには電気代が倍以上になっているにもかかわらず、運転維持費が増加していないという状況があります。
 次のページ、お願いします。その結果というか、一つの結果ですけども、これが十数年の運転サイクル数の経緯になっていまして、先ほど述べましたような事情により、特にKEKのほうが、これには高度化も含めてですけれども、運転時間がかなり厳しい状況が続いているという状況です。
 次のページ、お願いします。申し訳ありません。もう少し。もうすぐ終わりですね。関連する課題ですけれども、これは先ほどの火災にも関連するのですが、やはり老朽化対策ということがあります。右の上のグラフは、J-PARCの全ての施設の製造年をグラフにしたものです。縦軸が台数になります。パッと見ると、J-PARCは2000年から建設が始まったので、ほとんどのものは2000年以降に製作されたものになります。ただ、これは小さく見えているのですけども、実は80年代に製造されたものが結構ありまして、これのグラフをハドロンだけ抜き出して書くと下の絵のようになっていまして、KEK側の施設というのは建設コストの削減のためにつくばから持ってきたものがまだかなりの数、存在しております。今回の火災を受けてということもありますが、この下の70年代、39年以上前に製造されたものは全廃することは可能になりましたが、今後、ハドロンのほうでもまだすぐ控えておりますし、本体のほう、上のグラフでももう20年超えるものがどんどん出てくるので、これから計画的な老朽化対策、計画を立てて、計画的に対策していく必要があると考えております。
 以上、まとめですけど、時間が超過していますので、こちら、読むのは割愛させていただきます。
 以上になります。
【高原主査】  ありがとうございました。時間が結構かかるということを大体見込んでおりましたので。
【小林センター長】  すみません。
【高原主査】  非常に盛りだくさんの内容を簡単にまとめていただきましたけれども、資料2の中間評価にあたっての主な論点についてとただいま御説明いただきました資料3につきまして、御質問、御意見等ございましたらお願いします。これは全てを一緒にやってしまうと、かなりややこしいことになってしまいますので、目次に沿って進めたいと思います。成果に関しては、細かいところは次回でも良いので、今回は概要ということでしたので、どうしても聞いておきたいということだけ、今回、質問していただければいいかと思います。目次のところで、J-PARCの概要については特にないと思いますけれども、まずJ-PARCの経緯というところで、オンラインも含めて、何か御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。なかなか全体のことをお聞きする機会はないと思いますけれども。
 経緯というところが運転時間等も含めて、かなり詳細に説明いただきまして、コロナのときも特に運転を短くしているわけではないですよね。
【小林センター長】  最初のときは感染対策をするために、1か月程度、ユーザーの受入れを止めたのですけど、それ以降は、基本的には短くしていません。
【高原主査】  ビームを出す側も含めて、いろいろな形で、実験するのが難しい時期がしばらくあったということですね。
【小林センター長】  そうですね。様々な工夫を重ねたいと。
【高原主査】  オンラインのほうから何かよろしいですか。大竹先生。
【大竹委員】  よろしいでしょうか。全体の御説明、誠にありがとうございます。9ページのところで扱っていらっしゃるところ、課題として4つまとめていただいているかと思うのですけれども、これは全体としての、例えば計画時のバランスと、それから、現時点での成果であるとか、またはアウトプット、また今後発展していくという形で、全体を網羅した形でのセンターとしての展望であるとか実績というのは、大変難しいかと思いますけれども、4つ、踏まえた形でのバランス的なことは何か意識していらっしゃいますか。
【小林センター長】  そうですね。大きな予算がかかるものはそれぞれJAEA、KEKでのプランもあると思いまして、例えばKEKに関するプログラムという意味では、KEKはこの10年程度、山内機構長の下、6年を機に、プロジェクト・インプリメンテーション・プラン、要は、新たに概算要求して、実施したいプロジェクトのプライオリティーをつけるというのをやってきております。そのように、プライオリティーをつけて、一つずつ実現していくという戦略を考えています。
同様に、JAEAのほうでもやはりADS、中性子の将来計画、それから、中性子ビームラインの高度化等も計画的に進めていく方向でやっているわけですけども、そういう意味では、スライドでも入れたりすることもある、全体が一つの表になった将来計画みたいなものを今回つければよかったかなと思いますので、次回、何かの機会に、どれかのスライドに入れさせていただければと思います。
【大竹委員】  ありがとうございます。今、コメントいただきましたが、やはりKEK、JAEA両方一緒にタッグを組んで進めていただいているところと思いますし、本日の御説明でも、特にTS2、ターゲットステーション2の計画ですとか、核変換のほうですとか、将来に向けてというか、喫緊に具体化していくことを抱えながら、現状でどれだけ盛り上げていくかという形が非常に重要かと思いますので、その辺り、ちゃんと将来がきっちりとした形で見せられるようにという資料がありますと、全体のバランスを見据えながら議論がしやすいかなと思いますので、よろしくお願いいたします。
【小林センター長】  ありがとうございます。次回の論点に、成果プラス今後の将来の計画というのがあります。ぜひ入れさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
【高原主査】  では、よろしくお願いいたします。
 ほか、いかがでしょうか。
【飯沼委員】  茨城大学の飯沼ですけれども。
【高原主査】  どうぞお願いいたします。
【飯沼委員】  47ページで、人員に関する課題というのがあって、年齢構成、高年齢化があるというポイントを指摘しています。その一方で、私みたいな近所の大学からすると、学生をどれだけJ-PARCで実地訓練させるかというのは非常に重要な観点になっていて、39ページにあります学術・産業における連携関係というところでも連携させていただいております。
 これを紹介していただくのはいいのですけど、実際に今までJ-PARCに訪れた学生の数とか、J-PARCの実験で学位を取った人とか、その後どういうところに就職しているのかとか、そういう何か見える数字があったりすると、学術・産業の交流とかそういうのが具体的になるのではないかなと。それがひいては老朽化に対してどういう、人に対する年齢層、どれだけ若い人を取り込んでいけるのかという指標にもなるかと思うのですか、そういう資料というのはまたそのうち出てくるのでしょうか。
【小林センター長】  分かりました。ありがとうございます。確かにおっしゃるとおり、非常に大切な指標だと思います。まず、ドクターの数とか、それは毎年J-PARCのほうのInternational Advisory Committee、3月に開かれるのですけども、そこで毎年アップデートして発表していますので、次回以降、紹介させていただければと思います。
 それから、就職の追跡までは、すぐに網羅したデータが出てくるか分からないのですが、少しJ-PARCのほうで検討してみます。ありがとうございます。
【飯沼委員】  よろしくお願いいたします。
【高原主査】  ありがとうございます。人材育成も含めて、いろいろな課題があると思いますので、その辺りも含めて、また議論していきたいと思います。
【小林センター長】  はい。ありがとうございます。
【高原主査】  それでは、個別のところで、素粒子・原子核物理、物質・生命科学、核変換技術の研究開発というところで、これは次回以降、詳細な説明があるはずですが、ここでぜひ、今お聞きしたいということがあればお願いいたします。
 はい、どうぞ。上村先生。
【上村委員】  上村から。今、御存じのように、クライオEMがすごく、生物においてはもうゲームチェンジするぐらいで、PDBの登録数も、いわゆるX線をここ二、三年で超えるのではというぐらい、PDBに登録がすごくあるのですけど、私のことを考えますと、やはり透過型のミュオン顕微鏡は、P25にあります、これができると、いわゆる、今、トモグラフィーで生きた細胞、生きた分子とか見えるようになっていて、凍らせないで傾きしながら見ると、そういうふうになってきて、その次はやはり細胞、ティッシュというか、そのものを見ることになるので、これはできると非常に創薬にもインパクトがあると思うのです。
 このときに、結局、どのぐらいの時期にできるか。多分すごくみんな、なかなか今のところですと、時間がかかるのと、あと、結晶とかで見ていると、JRR-3でも結晶で見るとセルの、結晶格子のセルでも限界があるのですよね。そういうのを超えて、細胞でイメージングが見えるというのはものすごくインパクトがあるのですけど、これだけはどのぐらいのフィージビリティーがあるのかというのが、こういうのもできますよというのだと、ポッシビリティにしかならないのですね。だから、本当に実際にどうなのかというのをほかの事例も含めて、世界中でどんな動向になっていて、そこにおけるJ-PARCの存在意義みたいなところをちゃんと言っていただくと、生物のほうから見ると非常にインパクトがあるのですよね。だから、その辺も具体化して、これから作るところなので、予算の建築費に対する申請にも関わってくるところだと思いますので、いわゆるフィージビリティーがどのぐらいあるのかというのをもうちょっと具体的に、次回は多分その辺のことももうちょっと細かくあると思うので、それをお願いできたらと思います。
 あと、AIというか、機械学習を使って、10分の1に測定時間をしたというのは、これも非常に重要で、後の全体のところにも関わってくるのですけど、やはり機械学習プラス、今やっている生成系のAIというものもあると思うのですけど、そういうのも使って、人材育成に関しても、先ほどの茨城大の先生と同じようなことですけど、いわゆる所属者に対しての、熟練者の技の伝承というのももう少し積極的に、生成系AIも使って、ちゃんと、口伝えの伝承じゃなくて、もうちょっとシステマチックにできるのではないかと。私はいろいろな科学の分野でそう思っているのですね。ですから、その辺も実際、測定時間が短くなるというのはすごくよく分かるのですけど、もうちょっと技の伝承という意味でも、AIの使い方というのは広がってくると思うので、人材育成に関してもどうかという形で、カッティングエッジでお話ししていただくと非常に、将来に向けてよく考えているなというのが分かると思うので、その辺もぜひ次回以降に入れていただければと思います。
【小林センター長】  ありがとうございます。次回以降、その辺をしっかりカバーさせていただきたいと思います。一言コメントさせていただくと、まず顕微鏡のほうですけれども、日本の優位性というか、フィージビリティーという意味では、これはg-2という、右の素粒子実験と途中までは同じ技術で、とにかくミュオンを冷却して加速するというところがみそになっているのですね。そこは、もうここ一、二年でいろいろプレスリリースとかされていると思うのですけど、世界で初めてミュオン加速に成功というのがJ-PARCの、世界で初めて加速しているので。
【上村委員】  ええ。だから、魅力のところですよね。
【小林センター長】  そうですね。そこから先のフィージビリティー等、これから、次回以降に御説明させていただきます。
【上村委員】  だから、その辺をうまくアピールできると非常にいいですよね。
【小林センター長】  そうですね。
【上村委員】  お願いしたいと思います。
【小林センター長】  はい。それから、AIの人材育成という意味では、最近、そういう計算機科学系の若い方を雇用されたりしているところもありますね。
【脇本副センター長】  はい。
【小林センター長】  DX関係、その辺りもカバーして。
【上村委員】  そうですね。だから、インフォマティクスはすごく大事で、いわゆる同じデータが取れても、インフォマティクスが強いか、強くないかで、最終的なS/Nとか、デノイズとかが違ってくるのですよ。ですから、インフォマティクスとのコラボレーションはものすごく今後重要で、それが強いところがやはり世界で勝っていくのですよ。同じデータが取れても、ですよ。だから、そこのところを本当に補強していかないと、やはりこれからかなり難しいと思うので、今、人材を採っていらっしゃるというのは非常にいいと思うので。だから、実際にプログラムを書ける人も採る必要があって、アプリケーションの人だけじゃなくて、その辺も計画に入れていただけるといいかなと思います。
【高原主査】  今の日本の顕微鏡はソフトマターでもかなり使えると思いますので、本日の資料を拝見した感じですと、どのくらいのスペックで観察するのかというのが全然わからないので、どのような性能を目標にしているのかというのをぜひ御教示いただければと。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  また正確なところは次回に、ですね。さっき小林センター長が申し上げましたとおり、生物に関しても、どのようなセルで、最初、フィージビリティスタディをするかということも検討しているので、また次回、お願いします。ありがとうございます。
【高原主査】  お願いします。
 オンラインから、ほか、ございませんでしょうか。
 やはり機械学習とかインフォマティクスが分かって、かつ、散乱とか回析が分かるという人材をどうやってこれから育成していくかというのがやはり非常に重要になると思います。これは放射光のほうでも非常に重要な人材育成の問題になっておりますので、その辺りも、J-PARCだけの問題ではなくて、全体の問題として取り組んでいかなければならないと思いますので、またよろしくお願いいたします。
【小林センター長】  はい。ありがとうございます。
【大竹委員】  すみません。もう一点よろしいでしょうか。
【高原主査】  大竹先生ですよね。お願いいたします。
【大竹委員】  ユーザー、安全、利用、広報という、後半のほうのお話の全体で、予算についてとか電気代、様々な御説明いただきましたが、J-JOINですとか利用体系の見直しというところで、有償の形、また、随時課題の利用制度がR5年度より開始という御説明いただきました。有償なところ、特にJ-PARCで実際に受け入れている課題の有償に関しては、やはりユーザー側であったり、様々な産業界、また、今後、どんどん広がっていく可能性があるというふうに、今日の御説明でも非常に感じました。
 それは多分、中性子、ミュオン利用だけではなくて、基礎的なところからの発展にもよるのではないかという広がりもやはり加味いただければと思いますのと、この有償自身がJ-PARCにちゃんと反映されるような仕組みというのが、ぜひ次期というか、今後できるような形の御提案を入れていただくと、より中性子ユーザーであったり、また、J-PARC、ビームを使わせていただいている立場の人、また、一緒に作り上げている人たちにとっても、直接どこに役に立っているというのが分かることは非常に大きなモチベーションになるかと思いますので、その辺り、全体の体制であったり、予算枠であったりというところで、当然老朽化等の問題に対しても、そういった外からの声、コミュニティーとしても非常に強く要望したいとも思っておりますので、ぜひそういったところを加えていただけるとありがたいと思います。
【小林センター長】  ありがとうございます。少しだけ整理、3点ほど言われたかと思うので。最初は、中性子、ミュオンに加えて基礎的な、と言われた意味として。
【大竹委員】  というのは、もちろんハドロンであるとか、いろいろな形のところも、いわゆる中性子やミュオンでのユーザー実験でサンプルを持ってきますという違う視点であっても、やはり産業界であったりというのが視野に入るのではないのかなと思ってはおりますので、その辺り、いや、実はそんなことはないですよと言うのだったら、それで結構ですけれども、その辺りが少し見えるとありがたいなということです。
【小林センター長】  少し検討させていただきますけど、恐らく、例えばハドロン実験施設のビームを産業利用したいようなニーズが起こった場合という理解でいいですか。
【大竹委員】  ですとか、または、私ども小型をやっていて、実は検出器そのものの開発がほかの分野の技術にも発展するので、かなり広い意味での、先ほど核変換のところでソフトエラーというお話もございましたけど、実は放射線耐性の問題というのはいろいろなところで応用が利くことですので、そういった視野での意味です。ビーム利用というよりは装置に関連した形での産業との強いつながりという形です。
【小林センター長】  ありがとうございます。次回検討させていただいて、次回以降、盛り込められればいいと思います。あとは、そういう新たな有償利用の枠組みをつくった上で、それがJ-PARCにも還元されるようなという観点でおっしゃられたところが。
【大竹委員】  そうですね。そういうことがユーザーに見えますと、より、有償であることの意義がはっきりして、なおかつ、さらに利用が広がる、活性化になっていくのではないかなと。
【小林センター長】  分かりました。ありがとうございます。
 何かコメントありますか。
【脇本副センター長】  J-PARCの脇本です。コメントありがとうございます。今日の33ページの資料では確かに舌足らずなところございまして、私どもも利用体系の見直しという観点は、ユーザーの利便性の向上ということに加えて、やはり我々は今後、MLFの現場におけるユーザーの支援であったり、そういったところに投入していけるような資源を新たにこういったところからぜひ確保したいというところが思惑としてございますので、そういったところは、今おっしゃっていただいた観点は私どもも踏まえて、ぜひ文科省様とも協議させていただきたいと考えているところでございます。
【高原主査】  よろしいでしょうか。今ちょうど優先課題等の議論がありますけれども、これは今の計画ですと、どういう人たちが応募できるような、例えば大型の資金を取っている方が応募できるとか、その辺りはいかがでしょうか。
【脇本副センター長】  脇本です。33ページの内容を少し補足させていただきますと、こちらの中の成果公開の中で優先課題とありますのは、特に国プロと呼ばれるような大型の研究資金等をお持ちの方、ないしは科研費でも結構かなとは思うのですけれども、そういう一定程度、研究の中身に関して、別の場で既に有用性が議論されて、採択されているような課題に対して、優先的に有償で一部料金をいただくことで、優先的にマシンタイムを配布するという制度。
 あと、併せて御説明しますと、成果非公開型のところに産業利用促進課題というのも新たに導入しようということで、現在、検討を進めておりますけども、こちらは産業界がいきなり成果公開の無償から、成果非公開の完全専有型の高額な利用料に行く前に、一部減額した形で、産業利用を、産業界の方にまず使っていただけるような枠組みとして、今考えていますのは、中性子産業利用推進協議会さんですとか、茨城県さんがそういう産業界でコンソーシアムを組まれたり、勉強会を組まれたりされているわけですけど、そういった単位で、そういうコンソーシアムの中ではデータを共有するのだけど、外には公開しませんよとか、そういった利用のところに一部まずは使っていただいて、それが今度は、いわゆる各社、1社1社の個別の専有課題に橋渡ししていけるような、そういうふうな制度として導入したいということで、現在検討しているものでございます。
【高原主査】  ファンディングエージェンシー側から言いますと、これは、こういう制度がありますよということを早めに言っておかれると、来年の申請時に間に合うので、そのときに一定の枠を研究者が確保して、プロポーザルするということで、決定したら早めに宣伝するということが必要ではないかなと思います。
 もう後半部分に入っておりますけれども、ほかにございませんでしょうか。
 あと、中性子関係は今どのくらいのポートが空いているのですか。実際にビームラインを作れる場所というのは。
【小林センター長】  今、23本のポートのうち21本が使われていて、先ほどもチラチラ出てきましたけども、その残りの2つのうち、1つにビームラインを作ろうという動きがあるという状況です。
【高原主査】  そうすると、もう1個しか残っていないということで。将来的にはスクラップ・アンド・ビルドというのを考えていかなきゃいけなくなる。
【小林センター長】  そういうことが必要になってくるかと思います。
【高原主査】  それか、分岐させるというのも考えなきゃいけないので。
【小林センター長】  そうですね。そういう新たなターゲットステーション2も予算規模とかタイムスケジュールも考えつつ、現状の施設のアップグレードというのも、先ほど、大竹委員からも御指摘があったように、計画を立てていく必要があると思います。
【高原主査】  このグランドビジョンというのは昔のマスタープランですよね。
【小林センター長】  そうですね。昔のマスタープランより質が大分変わっているかもしれませんけど。
【高原主査】  だから、これが公表されたからといって、その後が大変ですよね。
【小林センター長】  全くそのとおりで、今回からは文科省のステートメントで、予算とは直接関わらないということは出てくるかと思います。
【高原主査】  その辺りは皆さんに頑張っていただかないと。
【小林センター長】  はい。
【高原主査】  なかなか厳しいと思いますけど。
 ほか、いかがでしょうか。後半部分の質問等に入っておりますけれども。
【上村委員】  もう一ついいですか。
【高原主査】  はい、どうぞ。
【上村委員】  国際連携を非常にやられているのですけど、一般ユーザーには、これはどのぐらいオープンになっていて、どのぐらい情報は出しているのでしょうかね。前から結構気になっている部分ですけど、いわゆる中性子をやっている人だけのフィールドでやっているというのではなくて、やはりこれだけ大きい施設ですから、一般国民向けの理解というのも大事なのですよ。国税を使っているわけですから。
【小林センター長】  はい。全くおっしゃるとおりだと思います。
【上村委員】  そうすると、やはり中性子だけの村の中でやっていても絶対駄目で、一般に対する、一般というのは本当に一般だけでは難しいかもしれないですけど、例えば構造をやっている人とか、何というのですかね。もうちょっと外側に向けての発信を、例えば国際連携は非常にいいと思うのです。だから、そういうのでオープンなシンポジウムを、聴講の機会をいろいろな、例えば結晶学会とか、放射光学会とかそういうところにも出すとか、それで聞きたい人はオンラインで聞けると。そういうのがあると多分、中性子線に対する、J-PARCに対する認識が変わってくると思うのです。
 これからはやはり融合していかないといけない時代なので、だから、それをもっと平たく言えば、もうちょっと一般向けのところも併せて、もうちょっとオープンにやっていくという姿勢は絶対必要なのですよね。
【小林センター長】  ありがとうございます。
【上村委員】  だから、その辺を、せっかくやられているのがどのぐらい周知されているのかなと思うと、いつも何か悶々としたものを感じるのですよね。
【小林センター長】  確かに。ありがとうございます。海外と連携というのは非常に重要だと思っていまして、それは中性子利用、それから、中性子源、それから、技術というのはやはりそれぞれのところが独立にいろいろな技術を開発していてもしようがないので、それは本当に国際協力で技術を、ギブ・アンド・テイクですけども、そういう協力をやっていくというのは非常に重要だと思っていまして、こういうことを進めてきているわけですけども、おっしゃるとおり、こういうプレゼン、このスライドセットというのは、大体J-PARCの中向けしかやっていなくて、あえて言うと、例えばこういう、ESSに行ってきましたというのをSNSで、旧ツイッターには流しているのですけども、確かにおっしゃるように。
【上村委員】  ええ。フォローしていないとなかなかそこは見ないですよね。
【小林センター長】  そうです。だから、例えばJ-PARCを使っていない人もいる学会に何かを仕掛けていくということは今までやってなかったので、ちょっとそういうところを考え出していくという。
【上村委員】  それはとてもこれから大事で、やはりどの技術もそうですけど、単独でやれる時代じゃないのですよね。融合していかないと駄目なので。ですから、その辺を、まずは、おっしゃるように押しかけていってというか、そこでシンポジウムを一緒にやるとか、計算のほうもそうですけど、その辺をトライしていくというのは今後とても求められるのじゃないかなと思っています。
【小林センター長】  大友さん、僕が知らないところで、そういう活動は何か。
【大友物質・生命科学ディビジョン長】  SPring-8とか「京」のグループとは、CROSSが中心になって、やってはいます。そういうこととか、さっきの産業利用報告会とかそういうところではやっているのですけども、戦略性はもう少し考えたほうがいいかなという気がしますね。
【上村委員】  そうですね。ぜひもうちょっとオープンな感じで。登録したら聞けるような感じにしたほうがいいかなと思います。
【小林センター長】  ありがとうございます。
【高原主査】  今のお話で、関連してですけど、中性子関係は、ESSとかなりいろいろなことを行っていたように記憶しています。新井先生もいらっしゃいますよね。
【小林センター長】  そうですね。
【高原主査】  やはりMIRAIとかの大学生が関わったプロジェクトもあったので。
【小林センター長】  もう一つ、J-PARCと、あれはESSですかね。さくらプログラムという、人を送ったり、こちらに来て滞在して、技術協力をするというプログラムがあって、コロナで、二、三年ちょっと止まっていたのが、ようやく今年度再開したところで、今まさにESSから何人か、何週間か滞在してとか、こっちからあちらに行ってというような協力も再開しているところではあります。
【高原主査】  ここの国際連携、やはりコロナがあったのがかなり影響していますね。
【小林センター長】  かなりボディーブローとして効いているところはあると思います。
【高原主査】  これから頑張って挽回していただければいいかと思います。
【小林センター長】  ありがとうございます。
【高原主査】  ほか、いかがでしょうか。オンラインのほうから何かあれば。
 さっきの電源の、ハドロンの報告で。これは熱膨張により繰り返し応力で、ポリカーボネートが破損したということですが、これは、設計時にきちんとしたシミュレーションができていなかったということなのですか。
【小林センター長】  40年前のもので、そこまではやっていなかったと思いますね。こういう熱応力、この右の絵で、細かくなってしまいましたが、右の絵で「ポリカーボネート」と書いてある部品が円筒の上のほうにあるのですが、そこが下の胴が膨張して、熱応力に変わっている。ポリカーボネートの性質を調べてみると、応力が繰り返しかかることによる、疲労による強度低下と、もう一つ、脆化もあるということなので、こうしたですね、というのも、私たち、今回これが起こって知ったというのもありまして。
【高原主査】  エイジングが起こると脆化してしまいますから。ただ、こういう高分子系というのは、40年はもたないと思っていただいたほうが。高分子材料の研究者はそういうふうに思っておりますので、その辺りはぜひ気をつけられて。
【小林センター長】  ありがとうございます。この型はもう全廃いたします。
【高原主査】  はい。ほか、オンラインからいかがでしょうか。
【飯沼委員】  茨城大学の飯沼です。前のほうのページに戻ってしまって恐縮ですけど、J-PARCの経緯、4ページで見せていただいて、何度か設計強度達成というキーワードを伺って、ああ、すばらしいことだなと思いながら聞いていたのですけど、設計強度達成と、さっきの火事とか、安全面でのバランスは取りつつ、今後、運転を継続していくと思うのですけど、私の認識だとJ-PARCというのは世界最大の大強度陽子ビームを使っているとか、高エネルギー、高いエネルギーのビームというよりもとにかく大強度ということで、世界に突き抜けている研究所という認識ですけど、今後、世界中では、大強度に向けて動いている、ほかの加速器もあるかと思うのですけど、J-PARCが目指す今後の大強度ぶりとか、例えば7ページとか、今までのところ、運転の歴史を見て、達成した、達成したというのがあるのですけど、その後、J-PARCはどこに向かって、加速器として進んでいくのかとか、そういうような観点でのメッセージというのはあるのでしょうか。
【小林センター長】  すみません。これも今回、あまりクリアに入れていなかったのですけども、おっしゃるとおり、これは非常に大切な問題で、実はRCS 1メガワット、それから、MR 750キロワットの目標というのはもう設計時、20年以上、目指してきたところで、実は、逆に言うと、もう達成が見えてきているということは、ちゃんと次を考えて研究開発していかないと、若い人も入ってこないという問題もあって、非常に重要なことだと捉えています。
 既にこの次が見えているという意味では、次回以降、また御紹介しますけれども、主リングのほう、メインリングのほうは1.3メガワットのハイパーカミオカンデのための大強度化、これも基本的にはプレスクリプションというか、処方というのが見えてきて、R&Dをやっている。中性子のほうは、第2ターゲットステーションを目指すという意味では、1.5メガワットというところを加速器としても、標的としても受けられるようにしていくと。これにしてもかなりどうなるか分からないという技術的な大きなハードルがあるわけではないと。ある程度の見通しは持てているというところにはあると思います。
 そういう意味では、実はさらにその先を今、ちゃんと若い人と一緒に議論して考えていかないといけない時期とは認識していまして、例えば来年の2024年10月に、大体これは5年置きぐらいでやってきているのですけども、J-PARCが関わる全分野が集まったJ-PARCシンポジウムという国際シンポジウムをやろうとしていて、次回のシンポジウムの大きなキャッチフレーズというか、目標としては、やはり今後の30年間、どういうことを目指していきましょうかというのを議論するような場にしたいとは思っています。
 ありがとうございます。
【飯沼委員】  分かりました。ありがとうございます。個人的な質問ですけど、超伝導技術を駆使したKEKさんは非常に超伝導技術が世界的にも優れているし、そういう特殊部隊も非常に強いチームがいるというのは存じ上げた上でお聞きするのですけど、超伝導を使った加速器とか、そちら方面というのは、何か計画はあるのですか。
【小林センター長】  ちょっと間違っていたらあれですけども、一つは、ADSの将来の加速器の開発のためにADSのアクティビティの一つとして、キャビティのモデルを作っているというアクティビティはあります。昔、たしか当初、最初のJ-PARC、記憶が正しくないかもしれないですけど、600MeVぐらいまで目指すときには、最後、超伝導だった時代がありますよね。
【小松原素粒子原子核ディビジョン長】  リニアック。
【小林センター長】  リニアックですね。金正さん、すみません。状況を。
【金正加速器ディビジョン長】  加速器の金正です。当初、J-PARCは、今、線型加速器、リニアックは400MeVですけども、600MeVまで加速して、それを核変換実験室に持っていくというのが当初の計画だったのですが、それを見直しまして、400から600までの超伝導はやめにして、400MeVのリニアックのビームはそのまま核変換に持っていくというような目標の変更がありましたので、そこで超伝導リニアックの開発が止まっているというところがあります。
 一方で、将来のお話が出ましたが、遠い将来になるかもしれませんが、我々は今、加速するのは陽子だけですけども、例えばもっと重い重粒子を加速できるような加速器の検討も、今、しておりまして、そのときにはリニアックを超伝導化して、より効率のいい加速を目指すということで、現在、検討を進め始めているところでございます。
【高原主査】  ありがとうございます。
【飯沼委員】  ありがとうございます。
【高原主査】  ほか、いかがでしょうか。
 石切山先生、何か御質問ございますでしょうか。御専門分野関連でも結構ですので。
 
【石切山委員】  先ほどの33ページで記載されています、中性子利用体系の柔軟な運用、産業利用促進課題の導入ということについては大変期待しております。産業界では、成果公開か、あるいは非公開のどちらで申請させていただくかというのは悩まれることが多いのではないかと思われます。費用の観点から現実の課題をシンプルな系に落とし込んで、成果公開枠で申請させていただくこともございますが、産業利用促進課題が導入されれば、もう少し実課題に近い実験系で申請させていただくことができるのかなと考えております。ぜひとも導入の方向で検討いただきたいと思います。
 以上です。
【高原主査】  よろしいでしょうか。ほかに何か御質問等ございますでしょうか。
 世界の中での位置づけとか、将来、どのくらい目指すのかとか、それも一枚ずつぐらい、資料に追加していただければ。これに関しては分野がかなり広いので、例えば中性子だけにするか。
【小林センター長】  ありがとうございます。検討させていただきます。
【高原主査】  結構難しい整理の仕方になりますが。
【小林センター長】  いろいろな指標というか、観点もあると思いますので、検討させていただきます。
【高原主査】  よろしいでしょうか。なければ、本日いただいた御意見を踏まえて、作業部会における評価の論点について検討を進めるということにいたします。
 それでは、次の議題に入りたいと思います。本作業部会の今後の進め方について、事務局より説明願います。お願いします。
【稲田課長】  資料4を御覧ください。次回、16日に現地を視察した上で、24日及び12月11日の2回にわたりまして、本日ご議論いただきました論点に沿った形で、中間評価の主な指摘事項に対する対応等について説明をJ-PARC側からいただき、それに対してのディスカッションを行う予定です。3回目においては、その聞き取りを行った上で、評価指標等をどうするかという議論をいただきまして、それを基に、4回目の12月25日において、評価(案)を提示するという形を考えています。年明け、これらの評価(案)が定まりましたものについては、3委員会・部会合同の部会として、この作業部会がありますので、上位委員会・部会におのおの相談、報告するということを考えてございます。
 したがいまして、そこまでに議論が定まらなかった場合については、もう1回、追加で開催、またはメール開催等をこのほかやることを考えてございます。
 以上です。
【高原主査】  ありがとうございます。何か御質問、御意見等ございましたら、オンラインの先生方も含めまして。
 近いうちにスケジュールを確定するということですので、ぜひ現地を見ていただいて、次の第2回、第3回の議論につなげていただければと思います。
 特にございませんか。J-PARC側からも特によろしいですか。
 それでは、本日の議題は以上です。事務局から連絡事項がありましたらよろしくお願いいたします。
【稲田課長】  先ほどお伝えしましたように、次、16日に現地視察を予定しております。現場を見るのは非常に重要でありますので、委員の方々においては奮って御参加をいただきたいとともに、受入れ側のJ-PARC側には十分準備をお願いいたします。また、本日の資料は、後日、文科省のウェブサイトに公開いたします。議事録については、後ほど確認のため、メールで確認依頼を差し上げますので、御対応よろしくお願いします。
 本日の資料に関して、いらっしゃっている皆さん、御希望がありましたら郵送いたしますので、御希望の方は、机のところに置いていただければ郵送いたしますので、その旨、対応いただけるとありがたいと思います。
 以上でございます。
【高原主査】  ありがとうございました。
 それでは、以上をもちまして、第1回大強度陽子加速器施設評価作業部会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。オンラインの先生方、ありがとうございました。
 
―― 了 ――
 
 

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