第10期地球観測推進部会(第3回) 議事録

1.日時

令和6年1月12日(金曜日)15時00分~17時30分

2.場所

オンライン開催

3.出席者

委員

村岡部会長、赤松委員、岩崎委員、岩谷委員、上田委員、浦嶋委員、河野委員、川辺委員、嶋田委員、神成委員、高薮委員、谷本委員、平林委員、堀委員、六川委員、若松委員
 

文部科学省

千原研究開発局長、林大臣官房審議官(研究開発局担当)、轟環境エネルギー課長、松原環境科学技術推進官、甲斐地球観測推進専門官

オブザーバー

文部科学省研究開発局宇宙開発利用課 竹上宇宙科学技術推進企画官、山地行政調査員
文部科学省研究開発局海洋地球課 伊藤課長補佐、髙木専門職
株式会社NTTデータソーシャルイノベーション事業部 筒井部長
 

4.議事録

【村岡部会長】  皆さま、こんにちは。ただいまより、科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 第10期地球観測推進部会の第3回会合を開催します。本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。
 本日はオンラインでの会議になります。進行に当たっての注意事項を事務局からご説明をよろしくお願いいたします。
 
【甲斐専門官】  それではオンラインでの会議ということで、注意事項を説明します。事務局から本日の部会の進め方について説明します。まず、オンライン会議システムを利用して出席されている委員は、音声が送受信できなくなった時刻から会議を退出したという扱いになりますので、よろしくお願いします。
 オンライン会議システムの安定のため、ご発言されていないときはマイクとビデオをオフにしていただくようにお願いします。また、ご発言がある場合には、挙手ボタンを押してお知らせいただければと思います。また、ご発言の際にはお名前を言ってからご発言いただくようお願いします。挙手ボタンが見つからない場合には、画面をオンにして、画面上で手を挙げていただくなどして、ご発言いただければと思います。
 次に資料の確認についてです。今回の配布資料としては、皆さまに資料1~6までの資料をお送りしています。また、参考1~5もお送りしています。不備等がございましたら、事務局までお申し付けください。
 出席確認ですが、本日は14名の方にご出席いただいています。全委員18名の過半数に達していますので、本部会は成立となります。本日、事前に欠席の連絡をいただいているのは原田部会長代理、中北委員のお二人です。また、河野委員から遅れて参加されるとのご連絡をいただいています。確認事項については以上です。
 
【村岡部会長】  ありがとうございました。では、早速議題に入ります。議題(1)宇宙分野の地球観測の取組についてです。本日の議題(1)~(3)については、次期「実施方針」に関する審議のためのヒアリングを予定しています。
 議題(4)今後の部会のスケジュールについてもご説明いただきますが、来年初旬の次期「今後10年の我が国の地球観測の実施方針」の策定に向けて、今後関係する機関や関連する分野の有識者の方々からヒアリングを行っていきたいと考えています。今回は文部科学省の宇宙開発利用課から「宇宙分野の地球観測の取組について」、また海洋地球課からは「海洋分野の地球観測の取組について」説明をいただきます。加えてNTTデータの筒井様から「企業での地球観測データの利活用について」ご説明いただく予定です。
 最初の議題(1)ですが、宇宙分野の地球観測の取組についてということです。文部科学省研究開発局宇宙開発利用課から資料に基づきまして説明をよろしくお願いします。
 
【竹上企画官】  宇宙開発利用課企画官の竹上です。本日はこのような機会を頂きましてありがとうございます。今日はヒアリングということで、お手元の資料1「宇宙分野の地球観測に係る取組について」ということで、文部科学省における衛星地球観測に関する取組を中心にご説明したいと思います。
 まず、文部科学省の宇宙政策についてです。宇宙政策全般は、今内閣府を中心に、文部科学省をはじめ各省が連携して宇宙の研究開発、あるいは利用の取組を推進している状況です。その基礎となるのが、ここにある宇宙基本計画ということで、これに基づいて、文部科学省では、例えば衛星の分野では、JAXAにおける研究開発等を中心に進めているところです。この基本計画が昨年の6月に閣議決定されました。委員の中にも、普段私たちと宇宙分野で意見交換をさせていただいている方々もたくさんおられますので、基本計画はご存知のことかと思います。真ん中あたりに米印でありますが、宇宙基本法に基づき策定する10年間の長期計画ということで定められております。ただ、社会や世界の動向変化がかなり激しいので、今回は3年ぶりの改定ということで、だいたい3年に1回ぐらいの頻度で改定されています。これに加えて、どういった時間軸で進めていくかという工程表を毎年度策定しており、この2本柱の全体政策に基づいて取組を進めているところです。
 宇宙基本計画のほうは、別紙参考1として配っております。今回の宇宙基本計画は、もともとは政府の安全保障関係の文書が一昨年末に出たことを受けて改定をしました。加えて、やはり宇宙も開発するだけではなく、利用をしっかりと進めていく、使われてこその宇宙、あるいは世界の市場が拡大していく中で、やはりそこを取っていく必要があるということで、2つ目のポツにあるように、宇宙空間というフロンティアにおける活動を通じてもたらされる経済・社会の変革(スペーストランスフォーメーション)をしっかりと全体として進めていくということを横串において、宇宙安全保障の確保、国土強靱化、地球規模課題への対応とイノベーションの実現、科学探査、そして輸送系も含めた基盤という4つの柱を立てて、目標と将来像を描き、各種の取組をしっかりと整理するというような計画になっています。
 地球観測については、主に(2)の国土強靱化、地球規模課題への対応とイノベーションの実現というところで整理されております。特に具体的なアプローチ(b)のリモートセンシングという項目がありますが、そこで政策としてしっかり体系化されているということです。
 本体の資料1のほうに戻りまして、文部科学省関係だとどんなことが書かれているかということですが、もちろん防災・減災、国土強靱化、地球規模課題へ対応するための衛星開発運用とデータの利活用促進などです。その中には具体的なプロジェクトとして、2024年度にGOSAT-GWを打ち上げるということであるとか、残念ながら、昨年のH3 1号機の打上げ失敗によって喪失したALOS-3の再開発の要否を含めて、速やかに検討して対応策を検討すること、あるいは降水レーダ衛星を新たに開発していく等の新しい方針が示されているところです。
 もう一つ、今回新たに宇宙技術戦略というものを政府全体として作ることになりました。輸送、探査、衛星という領域で、この技術戦略をしっかりと作っていこうということです。これまでは宇宙でそうしたものを作ってこなかったので、産学官がしっかりと共有できるような戦略を作るということで、現在内閣府を中心に進めています。後ほど簡単に説明します。
 さらに、先般JAXA法を改正しまして、JAXAに基金を設置できるようにしました。JAXAの戦略的かつ弾力的な資金供給機能の強化ということで、資源・資金のほうもしっかりと充実させて取り組んでいくことについては、昨年6月の新しい基本計画の内容としても示されています。
 ここから2ページ目です。現在JAXAで運用中の地球観測衛星をいくつかをご紹介したいと思います。一つ目はGOSATシリーズです。環境省と共同開発しておりますが、温室効果ガスを観測する衛星である「いぶき」(GOSAT)です。右下の「いぶき2号」(GOSAT-2)は、現在環境省と一緒に運用しているところです。真ん中上段はGCOMシリーズです。これはマイクロ波を観測する水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)あるいはその下にある「しきさい」(GCOM-C)もしっかりと活躍しているところです。右上は、NASAと共同で取組を進めている全球降水観測GPM計画の降水レーダで、これも現在活躍しているところです。左下は「だいち2号」です。これもご案内のとおり、防災中心に現在も活躍しているレーダ衛星ですが、今般の能登地震対応等においても様々なデータが活用されていると承知しております。
 また、現在開発中の衛星を簡単にご紹介します。左上のEarthCAREは、ESAと共同のミッションでやっておりますが、2024年度中の打ち上げを予定しております。右上の先進レーダ衛星ALOS-4は、ALOS-2の後継機であるレーダ衛星であり、2024年度にH3ロケットで打ち上げる予定です。今日は無事にH-ⅡAの48号機が打ち上がりましたが、H3の2号機が来月の2月15日に打ち上げを予定しています。その後、来年度にALOS-4をしっかりと打ち上げたいと考えています。左下はGOSAT-GWです。これは先ほどご説明したGCOM-WとGOSAT-2双方の後継センサを乗せた衛星です。これも開発の最終段階であり、H-ⅡAの最終号機に乗せて、来年度に打ち上げる予定です。この中の三つが来年度に打ち上がる予定です。また、降水レーダ衛星PMMということで、先ほどご説明したGPMの後継計画が昨年にプロジェクト化し、2028年度にNASAでの打上げを目指して開発を進めていくということです。今、運用中のもの、開発中のもの、この辺りと大型のプロジェクトがJAXAにおいて進められているところです。少しロケットの開発遅れがありまして、ALOS-4やGOSAT-GWの打上げが遅れているところですが、ここからは計画通り打ち上げていきたいと考えているところです。
 次のページはリストに入れられなかったALOS-3についてです。これは昨年3月のH3の試験機1号機の打ち上げ失敗に伴い喪失したもので、非常に残念でした。ただ、その直後から新しい光学衛星をどうしていくかという議論をさせていただきました。これを簡単にご紹介したいと思います。左上にあるように、CONSEOという衛星地球観測の在り方を産学官で議論するコンソーシアムを一昨年度に作り、その中で、もともとALOS-3の後継機をどうするかという議論をやっていただいておりました。今般のALOS-3喪失を受けて、その議論をかなり加速していただき、現場で検討チームを3チーム作っていただいて、提案を去年の夏頃にいただきました。もちろん基本計画にも検討の重要性が記載され、文部科学省としても、右上にあるように、国土交通省、農林水産省、防衛省などのユーザー省庁職員延べ150名以上に対し、防災面を中心にニーズを聞いていたというところです。
 これを踏まえて、昨年の7月に宇宙開発利用部会で、今後のミッションの方向性ということでご決定いただきました。まずはやるべきかやらないべきかという宿題をいただいていたので、次期光学ミッションは政府及びJAXAが公的投資も含め、一定関与していく、まずはやるんだという意思表示させていただきました。加えて、以下のミッションを軸に置くということで、まずは五つのコンセプトを掲げました。一つ目はアジャイル型のミッションであるということです。これまではかなりの年月をかけて衛星を作って、一度打ち上げたら相当期間使うということにしていましたが、それだと今の宇宙開発の時間軸に合わないということで、段階的に成果創出を進めるアジャイル型のミッションにしましょうということです。
 二つ目、利用の方面は、当然ビジネス、政府利用、学術利用をバランスよく達成したいということです。これから特に検討しなければならないのは、料金体系も含めた利用のルール作りで、これは非常に難しいところですが、こうしたミッションを進めていきましょうということです。
 さらに三つ目は、今までは基本的には2次元、イメージャ衛星だけだったのですが、JAXAが新しい開発をやっていくということであれば、今度は3次元を含む高さ方向のLiDAR技術を使って我が国独自の3次元地形情報生成技術にしっかりと取り組んでいこうという方針を示させていただきました。
 4ポツは、民間事業者を伸ばす機会にもしようということで、今、小型光学のコンステを作る業者さんもいくつか出てきていますが、そうしたところも視野に入れながら、民間事業者の競争力強化というところも視野に置くということです。
 最後の点、これまでは、JAXAが衛星を開発して、開発したものを利用してもらおうという考え方が基本的には中心でした。そうした中で、ALOS-3の場合は、パスコ社が地上系を自らの負担で開発して、かなり自ら投資をしたという、ある意味宇宙の中で最初の本格的な産学連携ミッションでしたが、まさにそうした形のさらに発展型として、どんなビジネスあるいはサービスがあるかということを、官民全体で構想をしてから衛星の設計開発に活かしていくという意思決定スタイルに変えることが大事だということで、内閣府とも議論をして、そういうスタイルに変えさせていただきました。これは今後の光学衛星だけでなく、あらゆるJAXA衛星に関する意思決定の際に、こうした形が基本になっていくと思います。当然国際協力ミッション等で該当しないものもありますが、こうしたものが今後主流になっていくと思っています。こうした五つの柱を掲げた上で、事業に向けての具体化を、この夏以降から現在に至るまで進めてきているところです。
 その後、JAXA分の概算要求などもさせていただきまして、来年度予算で6億円の新しいミッションの予算も獲得させていただきました。これをしっかりと官民と一緒にやり遂げていく方向で検討あるいは民間事業者を含めた議論をJAXAとともに進めているところです。
 先ほどもお話ししたように、文部科学省では、基本的には今まで、JAXAの衛星開発を応援するスタンスで政策をやっていましたが、文部科学省自身も開発のみならず利用のところまでしっかりと踏み出して政策をやらないといけないということで、宇宙開発利用加速化戦略プログラム(スターダストプログラム)という取組を実施しています。これは内閣府が、ユーザー省庁を中心とする各省と連携して、衛星を使って事業化、あるいはいろいろな利用を加速していくためのプログラムとして、補正予算も含めて年間100億円程度獲得しているものです。これの一部を文部科学省に移し替えて活用させていただいております。今までは、利用の取組については、経済産業省さんや内閣省さんが具体的なプログラムを担当していたのですが、文部科学省としても、今般新しく衛星利用に関係する二つのプログラムを開始させていただきました。
 一つ目が「スペーストランスフォーメーション実現に向けた高分解能光学衛星のデータ解析技術の研究と利用実証」です。背景として一番大きなものは、先ほどのALOS-3の喪失です。まさにALOS-3が打ち上げられたらそれを使って解析ビジネスをしようとしていた人材がたくさんいたわけですが、ALOS-3が無くなって、しっかりと頑張ってきてくれた事業者や技術を絶やすわけにはいかないということで、少なくともユーザー側の技術開発自体は止めてはならない、むしろ加速していかなければいけないという問題意識の下で、このプログラムを今年度からの5カ年事業として開始させていただきまして、初年度の現在は6億円、全体としては30億円弱の計画になっていますが、進めさせていただいております。テーマとしては、光学衛星を使って、どうやって行政のDXを進めていくかということで、いくつか利用分野を決めて実施、あるいはデジタルツインの生成技術の研究開発、あるいは光学とSARの融合で何ができるかということを追求していくなどの研究課題を抱えて、開始したばかりでございます。NTTデータがパスコやRESTECと組んで、経済産業省や国土交通省とも連携しながら進めているところです。
 次に6ページ目です。もう一つは、「カーボンニュートラルの実現に向けた森林バイオマス推定手法の確立と戦略的実装」です。我が国はL-band SAR、これはALOS-2の技術ですが、世界的にも非常に重要で強い技術です。こうした技術は持っている一方で、カーボンクレジット市場にしっかりと参入していこうという政府の指針があり、森林におけるバイオマスの推定手法あるいはバイオマスマップというものが非常に重要になってきています。ただ日本としてまだ衛星を活用したバイオマス情報はしっかりと整備・確立できていない、あるいは使うものがないということで、これをしっかりと作っていこうということです。これは、林野庁、環境省の問題意識も相まって、今回新しく開始をさせていただいているところです。今はESAのバイオマスマップなんかがありますが、もしこれを使っていくことになった場合、アジアの森林のバイオマス推定がかなり過少に推定されてしまい、カーボンクレジットの観点で不利になってしまう状況ということで、日本として高い精度のマップを作っていくということを目的に、今回開始させていただいています。こちらは3年間で10億円を予定していますが、初年度に4億円措置をしているところです。こちらはJAXAのほうで関係機関を取りまとめてやっていただいているところです。
 最後に紹介するのは、宇宙戦略基金の創設です。宇宙基本計画にはもともと、JAXAの戦略的かつ弾力的な資金供給機能の強化をしていくということが記載され、これを受けて今般の経済対策には、JAXAに10年間の宇宙戦略基金を設置するということと、総額1兆円規模の支援を行うことを目指すということが明記・閣議決定されました。今回は文部科学省だけではなく、総務省、経済産業省でも、予算を措置いただきました。当面の事業開始に必要な経費として、右上にあるように3000億円、文部科学省では1500億円の予算措置をいただいているところです。今年から、JAXAに基金執行のための体制を徐々に整備していっているところです。
 次のページは、宇宙戦略基金の概要ということで、現在、関係省庁で、輸送・衛星・探査の3分野で、宇宙技術戦略というものを作っているところです。既に基本的な考え方は出ていますが、今年3月までに、内閣府で、関係省庁と連携して決定をしていく予定です。どこに日本の強みがあるかということを示していく技術戦略ですが、これに基づいて基金の公募のテーマ設定をしていくことを予定しています。文部科学省あるいは経済産業省ではリモートセンシング関係のテーマを、初年度の公募テーマとして設定する方向で、議論や検討を進めております。具体的なことは、現段階ではなかなかお示しできませんが、引き続き議論を進めていきながら、我々も現場の方々と意見交換をさせていただきながら、技術戦略の策定、テーマ設定をどんどん進めていくことになるので、我々の課としても現場の方々とのコミュニケーションを増やしていきたいと考えておりますし、この基金も活用しながら、衛星地球観測の発展を進めていきたいと考えています。説明は以上です。
 
【村岡部会長】  ご説明いただきありがとうございました。ここから10分ほど時間を取り、質疑応答とご意見いただくようにしたいと思います。たくさんの質問もあると思いますので、まずは、委員の皆さん、お一人一件ずつでお願いいたします。もし時間が許せば、2つ目の質問に行こうと思います。ご質問やご意見のある委員の先生方は、挙手ボタンを使ってお知らせください。赤松委員お願いします。
 
【赤松委員】  赤松です。竹上様、いつもお世話になっております。またご説明いただきまして、大変ありがとうございました。4ページの光学後継ミッションのところで質問があります。7月以降で少し煮詰まったものは何かありますか。
 また、最後の宇宙戦略基金や宇宙技術戦略の部分に関して、スターダストプログラムのほうは利用のところを重視してやられているというイメージがあるのですが、基金や戦略のほうは若干ハード側に寄っているような感じがします。もう少し出口につながるデータ基盤やサービス基盤を重視していただきたいとも思っているのですが、そのあたりはいかがでしょうか。
 
 
【竹上企画官】  赤松委員、ありがとうございます。
 最初のご質問に関しては、昨年7月にこの方針を出して、我々もこれに基づいて概算要求をさせていただきまして、JAXA側でまずLiDAR部分の開発に早期着手する必要があるということで、そこの部分に必要な予算というものを今回措置させていただきました。
 全体コンセプトに関しては、JAXAが企画競争を昨年に出しました。コンセプトを作る事業者連合を採択しまして、今まさにどういうビジネスをしていくかという意見交換をやっているところですので、そこの会話を踏まえてどういうスペックでやっていくかということを、経済産業省や内閣府を含めて我々も会話をさせていただいているところです。宇宙開発利用部会でも年度末までに具体化した議論をしたいと思っているところです。
 基金に関してですが、今後スターダストプログラムとは両立していくので、スターダストプログラム自体は継続事業としてしっかりとやっていきます。基金は、正直言うと、具体的にどのテーマをやるかはまだ決まっておりません。技術戦略の議論でも、利用の観点は大事だと言われているので、関係省庁で議論して、必要なところにお金をしっかりと投資していくという形になります。具体的な事例として説明するときに分かりやすいので、関係府省が説明する際に、ハード寄りの説明をしがちなのかもしれませんが、利用の研究開発も含んだ基金ですので、しっかりとやるべきことに投資をしていきたいと思います。これは文部科学省だけではなく、経済産業省も含めて投資ができるようにしていきたいと思っています。これからですので、御指摘の点は参考にさせていただければと思います。アドバイスをありがとうございました。
 
【赤松委員】  ぜひ利用のほうも念頭に置きながら進めていただければと思います。どうもありがとうございます。
 
【竹上企画官】  平林委員から、光学ミッションのほうで何か補足はありますか。
 
【平林委員】  今、竹上企画官がおっしゃったように、事業者を選定しまして、文部科学省から示された5つのポイントについて議論を始めるとともに、ライダ衛星と光学イメージを組み合わせてどういうようなミッションを狙っていくのかといったような議論を始めたところです。3月末までにまとめるということで、現在議論を進めているところです。
 
【赤松委員】  わかりました。ありがとうございます。そのあたりの情報が決まりましたら、共有いただければと思います。
 
【村岡部会長】  他に委員の先生方から質問や意見はございませんか。岩崎委員、お願いします。
 
【岩崎委員】  岩崎です。ご説明ありがとうございました。宇宙戦略基金は大変期待しています。特に目標の中の「宇宙を利用した地球規模社会課題解決への貢献」という点です。我々も今、JAXAとも連携しながら、途上国の地球規模社会課題解決に対応しているのですが、日本の多くの衛星関係の民間の方々から途上国の課題を解決に貢献したいという声をいただいています。残念ながら、我々のODA資金というのも、なかなかタイムリーに使えるものがなくかつ十分とは言えず、民間の声に十分にお答えすることができないのが現状です。こうした宇宙戦略基金で、途上国の地球規模課題に解決したいとする民間からのご要望の声にお答えできると、日本のODAと宇宙開発のwin-winが進むことが期待できます。ぜひそういうこともできるような基金設計にしていただければと思います。どうかよろしくお願いいたします。
 
【竹上企画官】  アドバイスありがとうございます。まさにそうした現場の声を取り入れながら設計していきたいと思います。今回、初年度予算として3000億円、また、閣議決定の文書には10年間で1兆円を目指すと書いてあるので、この後の展開はそれ以上決定されているものはありませんが、現場からのいろいろな声を聞きながら、初年度テーマ設定のみならず、その後のテーマの検討もしていきたいと思います。皆さんからのご意見を、我々やJAXA、あるいは経済産業省等が伺った上でテーマ設定していくことになりますので、先生方からもいろいろと聞かせていただければありがたいなと思います。よろしくお願いします。
 
【岩崎委員】  ぜひ、よろしくお願いいたします。
 
【村岡部会長】  ありがとうございます。次に川辺委員お願いします。
 
【川辺委員】  東京海洋大学の川辺です。大変詳しい説明をいただきまして、どうもありがとうございます。宇宙はこんなに進んでいるのかとびっくりしながら伺っておりました。光学観測衛星で次期光学ミッションの方向性を決めるというお話がありました。方向性は大変素晴らしいと思いましたが、これだけいろいろな衛星で観測しようとされていて、それは宇宙だけでなくて地球観測のほうとも深く関わってくると思いますので、その連携をどう考えているのかをお話しいただければと思います。今お示しいただいているパワーポイントの右上のほうに、ユーザー省庁との意見交換というところがありますので、おそらくこのあたりが関わっているのではないかと思います。さらに申しますと、この後の地球観測のところで、全球海洋観測の話が出てきます。そことも深く関わってくるのではないかと思います。そのあたりの連携について、教えていただければと思います。
 
【竹上企画官】  ありがとうございます。ご質問の趣旨は、地上での観測との連携ということでしょうか。例えばユーザー省庁の中には、宇宙からの衛星観測を新しく使っていくことに関心がある省庁もおられます。今までは航空機や地上の観測データを使っておられたところ、衛星観測データも活用することで、行政コストが低減できないかという観点で検討していただいております。また、観測データ利用のためのいろいろな取組は、当然ながら宇宙の観測システムのみならず、地上を含めたいろいろなツールを使ってやることを想定されています。お答えになっているかわかりませんが、やはり利用サイドが一番使いやすく、今まで見えなかったものを見えるようにするために、今まで自分たちが使っていたツールを置き換えるのか、プラスアルファとして使うのかといった観点から、ユーザー省庁とは議論しておりますし、そこで新しいビジネスを目指すという方々にも議論に入ってきてもらっています。
 意図を持って地上観測の議論と連携できているかと言われれば、そこまでできているわけではないですが、我々が議論している先の関係者の方々は、当然そういうことを考えてやっておられるのではないかと思っています。
 
【川辺委員】  どうもありがとうございます。
 
【村岡部会長】  最後に私からもよろしいでしょうか。川辺委員のご質問ともつながる部分ですが、今回の第10期 地球観測推進部会でも、今後10年の実施方針を検討しています。実は第9期の議論の中でも、気候変動や生物多様性、防災・減災などに関する大きな地球観測という括りの中で衛星観測があり、そのデータ利活用の推進や観測精度の向上、データそのものに付加価値を付けていくことの中で、現場観測の主体とユーザーとの連携がさらに重要になってくるだろうという議論がありました。今回いただいた話題の中で、今後10年を考えていくにあたり、実施方針をこの部会で検討するにあたって、ご要望やお考えがあればお聞かせいただけますか。
 
【竹上企画官】  去年の6月に宇宙基本計画を改定し、まさに今、技術戦略を作っているところです。よって、皆様への要望というよりは、両部会の事務局同士で密に連携しながら、互いに欲しいものがあれば言っていくことが大事だと思っています。我々サイドとしては、それを宇宙基本計画や技術戦略にしっかりと入れ込み、宇宙技術戦略に入れば、宇宙戦略基金やJAXAの予算、さらには各省の予算に発展するかもしれません。
 我々もアカデミアの方々と意見交換をさせていただいていますが、意見を取り入れながら進めていけるといいと思っていますし、それを地球観測の全体戦略にも取り入れていただければと思います。
 
【村岡部会長】  ありがとうございます。宇宙開発利用課からご説明をいただき、ありがとうございました。
 
【竹上企画官】  ありがとうございました。
 
【村岡部会長】  少し準備の時間をいただきまして、議題(2)に移りたいと思います。
 海洋分野の地球観測の取組について、文部科学省研究開発局海洋地球課から説明をしていただきます。伊藤課長補佐、よろしくお願いいたします。
 
【伊藤課長補佐】  海洋地球課の伊藤と申します。本日はお時間を頂戴いたしまして、ありがとうございます。資料2を用いて、海洋分野の地球観測の取組について、ご説明させていただきます。
 次のページをご覧ください。海洋分野における最近の動向として、文部科学省で「国連海洋科学の10年」と「第6期科学技術・イノベーション基本計画」を踏まえ、令和4年8月に今後の海洋科学技術の在り方として、科学技術・学術審議会 海洋開発分科会でお取りまとめをいただいたところです。政府としては、海洋基本法に基づき、令和5年4月に第4期海洋基本計画を閣議決定し、令和4年8月にお取りまとめいただいた内容も、文部科学省から内閣府に伝え、閣議決定が取りまとまったところです。国際的にも、令和5年5月にはG7仙台科学技術大臣会合が開催され、全球海洋観測と海洋デジタルツインの構築、北極・南極の観測強化等が盛り込まれた共同声明が発表されています。
 我が国は世界有数の広大な排他的経済水域(EEZ)を有しており、その海域は多様性に富んでおり、様々な面で国民の社会経済活動に深く関わっています。そうしたことを踏まえると、海洋調査データやそれに基づく研究開発は、海洋における様々な活動を支えるだけでなく、気候変動問題の解決や我が国の安全安心な社会の構築、持続可能な海洋利用などの社会課題の解決に不可欠だと考えています。
 本日は四つのトピックに分けて説明したいと思います。最初に、気候変動問題の解決についてです。海は地球の熱や物質の循環に大きく寄与しており、その現況及び変化の把握は気候変動を理解する上で不可欠です。また、極域はG7やIPCCにおいても気候変動による影響が大きい地域として注目されています。現状の取組としては、船舶やブイ、孔内計測装置、潜水船、無人探査機、CTD、フロートなどを活用した海洋の観測や、南極の昭和基地における極域の観測もしております。特にアルゴフロートの国際的な展開やGO-SHIPの船舶を用いた国際連携観測で世界各国のデータを集めているところです。それらを踏まえて、地球シミュレータやDIASを用いることで、CO2の吸収量の変化や水循環の変化の予測、現況のデータを出しております。
 今後の主な課題として、北極海は観測網がほぼ皆無であることや、フロートの本数が減っていることがあります。今後の取組としては、北極、南極、深海を含む全球海洋観測の維持や強化、また2026年度の就航に向けて、JAMSTECで北極研究船を建造しておりますので、着実な建造と運用を掲げています。
 次のページはご参考ですが、昨年の5月に開催されたG7仙台科学技術大臣会合で、全球海洋観測の重要性や、そのデータを用いた海洋デジタルツインの構築の重要性、北極・南極研究船を含む国際プラットフォームを通じた観測の強化が掲げられました。これを踏まえてJAMSTECを中心に、様々な全球海洋観測とそれを用いたデジタルツインの構築をしています。
 次に2ポツの、安全・安心な社会の構築についてです。日本は四方を海で囲まれており、安全安心に海洋科学技術が果たす役割は非常に大きいです。防災・減災に向けた様々な自然現象の予測精度の向上に資する研究開発を着実に進めております。現状の取組としては、気象災害の予測・予防に向けた海洋調査観測ということで、アルゴフロートやブイを用いた気象シミュレーションにつなげております。また、地震・津波予測精度の向上に向けた海洋調査観測については、「ゆっくり滑り」観測システムということで、海底下深くに穴を掘り、そこに地震計を設置することで地下の微細な動きを感知しております。DONET等では海域地震・津波のリアルタイム監視を行っていますが、海底下の観測装置をDONET等につなげることで、リアルタイムで「ゆっくり滑り」を把握できます。こうした海底断層付近の地質調査や海底溝内での観測を踏まえ、地震動予測地図や緊急地震速報に活かされています。
 今後に向けた取組としては、地震・津波等の予測精度の向上に資するためには、海底地形の精密な把握が重要です。3.11の地震が起こった日本海溝は、非常に深い水深8,000m級となっており、現在JAMSTECが持っているAUVでは水深8,000mまで行けません。ですから、今、JAMSTECで水深8,000m級のAUVを開発しています。また、「ゆっくり滑り」のリアルタイム観測装置も、まだ南海トラフ全域をカバーできていないため、全域をカバーできるような装置の開発と設置をすること、さらに、新しい技術である分散型音響計測(DAS)という海底ケーブルによる新たな地震・津波観測システムの整備に取り組んでいきたいと考えています。
 次のページでは、安全・安心な社会の構築のうち、経済安全保障に係る海底鉱物資源の確保について説明します。海底資源の分布状況をご覧いただければと思いますが、日本の周りには海底熱水鉱床やコバルトリッチクラストなど、EEZの範囲内に海底資源があることが分かっています。現状、そういった探査技術の開発や海底資源の成因研究をすることで、どこを調べて採掘すればよいかを把握する技術の開発に取り組んでいます。右側はCSTIのSIPで取り組んでいるところですが「ちきゅう」を用いたレアアース泥の採鉱装置の開発をしております。今後に向けた取組として、成因研究の推進、探査技術の効率化・高精度化、レアアースの生産技術の開発などを進めていくことを考えています。
 次のページでは、持続可能な海洋利用に向けた海洋生態系について説明いたします。SDGsへの関心の高まりは、「国連海洋科学の10年」の開始を契機に、気候変動問題に加え、海洋生態系の情報に対する社会的な関心が高まっています。現状の取組として、データベースの構築や衛星データを用いた生物分布の推測がありますが、文部科学省でも、「海洋生物ビッグデータ活用技術高度化事業」で、データベースの構築や衛星データを用いた生物分布を効率的に把握する技術の開発を行っています。また、海ごみ(プラスチックごみ等)の状況把握や、大型の新種の深海生物の発見にも取り組んでいます。今後の取組についても、引き続き海洋生態系に関する体系的なデータ収集、ビッグデータ化、AIなどの活用によるデータ保管・分析技術の研究、深海にいる海洋生物は面白い遺伝子を持っていたりもしますので、その有効機能の探索・活用などを進めることを考えています。
 4ポツは少し毛色が違いますが、市民参加型で進める研究の新たな手法にも、今年度から取り組んでいます。海洋には様々なステークホルダーがいらっしゃいます。海洋研究者が海洋に関わる多様な市民との対話を通して、共に考えた研究を実施し、諸課題の解決につなげるとともに、それを横展開できるような手法の開発を目指し、「市民参加による海洋総合知創出手法構築プロジェクト」を立ち上げました。ちょうど中核推進機関とエリア研究実施チームが採択され、研究を進め始めています。
 最後に、海洋開発分科会で検討している取組をご紹介します。第4期海洋基本計画に向け、海洋開発分科会で海洋全体の取り組むべき方針を取りまとめていただきました。そのうち、深海をどう把握していくかということに注目しました。日本は深い海が多いため、それをきちんと把握できるように、昨年8月に深海探査システム委員会を設置し、AUVやROV、有人潜水調査船(HOV)の今後の在り方について検討をしていただいております。ご説明は以上です。
 
【村岡部会長】  どうもありがとうございました。委員の皆さまからの質問やご意見を受けたいと思います。ご質問がある方は挙手をお願いします。若松委員、お願いします。
 
【若松委員】  RESTECの若松と申します。本日はご説明ありがとうございました。4番目の市民参加型に非常に興味を持ちました。この話は海洋だけでなく、いろいろな分野で非常に重要になってくると思います。この方法を今年度から始められるということですが、計画するにあたり、参考にされた先進事例や成功事例があれば教えてください。
 
【伊藤課長補佐】  海洋分野では、東京大学の大気海洋研究所で、三陸の沿岸で3.11が起こった後に海洋生態系がどのように壊れ、どのように再生していくかというプロジェクトの過程の中で、地元の高校生と共同で研究を行い、高校生と一緒に科学論文を書くような取組がありました。これらを参考に、市民参加型の研究が海洋に活かされていくのではないかということを考え、このプロジェクトを立ち上げたところもあります。また、日本工学アカデミーの「海洋テロワール」提言で示されている、市民と協働してどのような研究開発ができるかという提言なども参考にして事業を立ち上げました。
 
【若松委員】  海洋分野では、これまでも比較的そういった取組がされてきたということですね。
 
【伊藤課長補佐】  各地の全ての沿岸地域等で実施されているということではないと思いますが、そういうキラリと光る取組が面白く意義深いのではないかと思い、立ち上げたところです。
 
【若松委員】  ぜひ成功事例にして、他の分野にも広めていただければと思います。ありがとうございました。
 
【伊藤課長補佐】  ありがとうございます。
 
【村岡部会長】  続けて浦嶋委員、お願いします。
【浦嶋委員】  MS&ADの浦嶋です。ご説明ありがとうございました。先ほどのJAXAさんからのリモートセンシングのデータのところでは、民間でのデータ利用について盛んに話題提供いただいていたと思います。気候変動だけでなく、自然関連の企業の事業活動におけるリスクと機会の分析が行われていましたが、自然の分野でも海洋生態系に依存し、インパクトを与えていることを企業が分析・評価していかなければならない時に、このような基礎的な海洋データが非常に重要になってくると思います。問題は、そのようなデータがある程度社会として有効活用して、データをもとに色々シミュレーション、例えば養殖業がこう使ったらどうなるかなど、ベースとなるデータをもとに様々なシミュレーションや分析を加えることで基礎的な調査が社会に有効活用され、SDGsに貢献することになると思う。海洋分野の基礎データを民間にどのように開放し、活用を促していくかについて情報があればご教授いただければと思います。
 
【伊藤課長補佐】  承知しました。JAMSTECのデータは公開できるものは公開されており、皆さまに利活用してもらえる状況になっています。ただ、データを公開しても活用方法が難しい場面もあると思っております。
 例えば、3ページ目にある海洋デジタルツインの構築について、JAMSTEC自身もフロートのデータ等を統合して、どのように地球が変動しているか、魚類の位置の推測などを行っています。それを自治体などと共同して使ってみて、どのような成果が出るかという取組をしているところです。また、6ページで紹介した「海洋生物ビッグデータ活用技術高度化」という事業は、海洋に数多あるビッグデータをどのようにしたら皆さまに使いやすい形で提供できるのかというものを10年かけて研究開発しましょうということで、データベースの構築や衛星データを用いた生物分布の推測等、実際に研究者が自治体と共に民間にデータを使っていただき、どのようなデータがあるかということを見せながら、民間の皆さまにも興味を持ってもらい、使う機会を増やす取組を行っています。
 
【浦嶋委員】  分かりました。ありがとうございます。ベースのデジタルツインに、さらに民間が持っている情報を足していって、さらにまた有益なデータ分析ができると非常に有益だと思いました。ご説明ありがとうございました。
 
【村岡部会長】  ありがとうございます。河野委員、補足がありましたらお願いいたします。
 
【河野委員】  ありがとうございます。伊藤補佐がおっしゃったことで網羅されていますが、少し補足すると、例えば今、環境エネルギー課で音頭を取っていらっしゃるDIASという事例では、多くの場合、研究者が自分たちのデータを使えると公開するだけではダメで、逆にユーザーからのリクエストを聞いて、それをベースにデータセットを作る、という試みを始めています。ただ、データを公開する際に、これがどういうデータセットであるか、どのようにすると何が分かるかというマニュアルを作って同時に公開する部分もしています。それから、琉球大学のほうで非常に良い植生のデータセットをデジタルツインで作っていらっしゃいます。これは何年間の変化を調べると分かるということで、多くの民間企業からの引き合いもあって企業として利用されたということです。つまり、デジタルツインで良いものを作れば、民間も利用しやすい状況が生まれるので、デジタルツインというアイデアの中には民間利用を促す思想も含まれていると思います。
 最後に民間からのデータも組み込んでいくという話がありましたが、最近JAMSTECでは、データを持っている方が苦労せずに、きちんとデータを公開するようなシステムを作れるといったシステムを開発しました。これを流通させることで、データを指導している方がいれば、それがオープンになるような試みにも着手をしています。以上です。
 
【村岡部会長】  河野委員ありがとうございました。続きまして、嶋田委員お願いします。
 
【嶋田委員】  埼玉県の嶋田です。ご説明ありがとうございました。市民科学は全ての分野で大事だと考えています。今回海洋分野で具体的なプロジェクトが動き出していることがよくわかりましたが、日本の生物多様性保全という意味では、陸域のほうが更に重要だと思います。陸域で市民科学を支援するようなプロジェクトは文部科学省の中で行われているのでしょうか。あるいは今後行われる予定があるかということをお聞きしたいです。よろしくお願いいたします。
 
【松原推進官】  生物多様性は非常に重要で、国際的にIPBES等でも活発な動きが見られており、文部科学省としてもしっかり対応していく必要があると考えています。ただ、具体的なプロジェクトはまだないため、今後、陸域も含めてどのように進めていくか検討していきたいと思っております。
 地球観測の実施方針の議論でも、生物多様性は重要な項目ですので、この部会でも議論いただきたいと思います。
 
【嶋田委員】  分かりました。ある意味で海洋分野は先行して進んでいると理解いたしました。ありがとうございます。
 
【村岡部会長】  ありがとうございます。今の嶋田委員の質問に関連する情報で一言だけ。いろいろなボトムアップ型のプロジェクトが全国各地で動いていて、例えば環境DNAに関する全国的な観測ネットワークが科研費のような競争的資金による課題や、市民参加型あるいはステークホルダーの連携によって、海洋生物の多様性観測をするようなプログラムがCOI-NEXTでもあったと思います。そういったものがいろいろな規模のグループで全国で動いていますが、今後は国土スケールで多様なステークホルダーが横断的に連携する形で動いていくような仕組みが必要ではないかと思っています。こういったことも含めて実施方針の検討の中で皆さんと議論を深めたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 最後に川辺委員から質問をお願いします。
 
【川辺委員】  ご説明いただきましてありがとうございます。私も最後の市民参加のところでお伺いしたいのですが、もちろん市民参加型で取ったものも大事だと思いますが、今まで質問やコメントでお話が出たように、市民参加だけでなく、他の実業で海洋観測に関わっている方たちが得たデータを公開していくことも大事だと思います。データを公開しやすいシステムをJAMSTECで開発されているということなので、ぜひこのようなシステムも含めて市民参加型を進めていただけるといいと思いました。
 もう一つは、その時にデータの質をどのように標準化していくのかが大きな問題だと思います。データの質の保証や公開のしやすさ、あるいは必要な情報の取り出しやすさなどを含めた全体のスキームを市民参加型につける形で開発していただけるといいと思います。以上です。
 
【伊藤課長補佐】  川辺先生、いつもありがとうございます。おっしゃっていただいたことはごもっともで、この事業を進めるにあたって、どうデータを標準化したり、きれいにしたり、またそれを公開したりすることは一つの課題だと思っております。今、先生からいただいたコメントを踏まえて、事業を推進していきたいと考えています。よろしくお願いいたします。
 
【川辺委員】  どうもありがとうございました。
 
【村岡部会長】  今の一連の質疑応答は、まさに部会が検討しようとしている実施方針の中でも非常に重要なポイントだと思います。ありがとうございます。ここまで海洋地球課からご説明いただきました。ありがとうございました。
 
【伊藤課長補佐】  ありがとうございます。失礼いたします。引き続きよろしくお願いいたします。
 
【村岡部会長】  続きまして、議題(3)に入ります。議題(3)は地球観測データの利活用の取組についてです。今回はNTTデータ筒井様にご参加いただいております。資料3に基づいて説明をよろしくお願いいたします。
 
【筒井部長】  NTTデータの筒井と申します。この場に参加させていただきありがとうございます。この場では、弊社の地球観測データの利活用の取組について紹介いたします。この中では、私たちがAW3Dという3D地図に関する地球観測データの利活用を行っています。このサービスをなぜ行っていて、どういった経緯があるか、またどういった発展を示しているかを簡単に紹介します。特に、地球観測データの利活用の中で、今までの工夫や特徴的なこと、また今後どういったところで取り組もうとしているかを共有させていただければと考えています。
 AW3Dという名前ですが、AはJAXAのALOSのAdvancedからいただき、WはWorldを意味します。先進的な3D地図を世界的に展開していくサービスです。完全独自の技術で、我が国でJAXAさんや民間企業の連携で作った技術をベースにサービス展開しています。この図のように、地球観測データがインプットされ、それを3D地図化またはデジタルツイン化し、そこからさらに情報抽出や分析の形で、例えば我々が日常的に使っている携帯電話網の設計や道路の地図、災害対策などの様々な分野で使われるように情報として基盤を提供しています。
 世界で広く使われていまして、現在130カ国以上の3500プロジェクト以上に使っていただいています。当初は、国や地方などの大きな単位で使われることが多かったのですが、最近は都市などの業務単位で使っていただけるような詳細なレベルになっております。ここでお話ししたいことは、業務に使えるレベルまで地球観測データを持ち込んでいることがポイントになります。業務で求められることは、ある程度の精度や信頼性を担保した上で使いやすい形またはサービスまで仕上げていることです。例えば土木分野で利用できるもの、またはシミュレーション、携帯電話網、空港管理など様々なサービス分野に使えるように仕上げていることが特徴です。
 ここからは、このサービスがどういう経緯で発展してきたかを少しご紹介します。もともと「だいち1号」のデータを使っています。この衛星は、2006年から運用が始まり、2011年に運用停止した衛星です。2013年に官民連携で3D地図を作成する企画がされ、当時は世界最高の解像度で話題になりましたが、企画の背景としてどういった分野での利用を目指し、どういったプロダクトを作成するかという設計思想に基づいていました。そういった意味では、利用のミッションや利用するシーンを設定した上で、このプロジェクトが企画されていったということが大きな特徴です。この2011年に運用停止された衛星からのデータですが、2019年にはさらにアップデートされ、今も多くの人に使っていただいています。非常にユニークな取組だと思います。2013年の始めたときは、3D地図はどちらかというと「見る3D」が一般的でしたが、私たちはそれを「使える3D」にするというコンセプトで、このプロジェクトを進めていきました。その取組が、だんだん使える範囲が都市の単位であったり、または業務のアセット単位であったりというところに広がっていくわけですが、最近では、商用衛星機関とも連携して、複数衛星を同時に使うことで解析できるようなサービスを行っています。現在は建物一棟一棟や樹木一本一本の単位で情報提供することを行っています。
 実際にどういうものかということをワンスライドで紹介します。これは東京駅の前の丸の内の周辺です。ビル一棟一棟から木の一本一本の管理ができるレベルになっているというのが今の地球観測データの状況です。このレベルになると、どのようなことができるかを少し紹介します。先ほどのような3D地図やデジタルツインの基盤となる情報が揃うと、最近、特に2010年代後半からのAIの発展によって情報抽出がとても行いやすくなっています。精度が高く整備された3D地図からは、道路の地図に必要な情報を自動的に取ってきたりすることができるようになっています。AI技術や情報処理技術の発展もあり、建物や植生など、基盤となる地図情報を随時更新することができるようになっており、現在、AW3Dではそういったサービスを行っています。
 そういったデータを作ったままではなく、パートナーやいろいろな分析技術を組み合わせることによって、さらに未来の予測や情報を評価したり、それをフィードバックすることができるようになっています。この例は、日立パワーソリューションズと連携して行った洪水の被害予測の事例です。現在では、無線の通信、防災、都市の管理、再生可能エネルギー、農業、林業など幅広い分野で展開できるビジネスを提供しているという状況です。
 ここから、このようなサービスにあたってどういったことを工夫したり、特徴的に取り組んできたかについてご説明いたします。まず一つがフリーミアムモデルです。今でいうと、オープンフリーという地球観測でも基盤となっている考えですが、始めた2013年はおそらくオープンデータ化がかなり初期の段階だったと思います。当時は官民連携でフリーとプレミアムを連動させることによって価値を高めようという、チャレンジングな試みでした。事業者側もフリーにすることで、事業機会の損失などが議論されました。この時に衛星の地形データを業務で使えるレベルまでに利用を拡大させて業界でデファクトを作っていくにはどうしたらいいかという観点で取組、オープンフリーとして低解像度(AW3D 30)の30mは無償版で、5mや2.5mの高解像度は商用版として展開しています。これは一つの例ですが、左側がフリーで提供されているもので右側が商用で提供されているものです。フリーのほうは1~2年前の時点で、3万ユーザー以上が使っているそうです。おそらく10倍以上のフリーの利用ユーザーの裾野があって、その上に事業者があるという形だと思います。
 もう一つの取組については、やや分かりづらいかもしれませんので、丁寧に説明したいと思います。ここに「利用の垂直統合」と書いているのは、私たちが長年取り組んできて、何度も難しい局面となってきた課題でもあります。従来の人工衛星を振り返ると、人工衛星から取られたデータがあって、それをどのように使うとビジネスができますかというお題が民間や利用者側にありました。つまり、あるものをどう料理するかという形でしたが、実際の社会の課題を解決しようとした時に、データを料理または加工するだけでは超えられない壁が出てきます。ここでは、ハードウェアとソフトウェア利用の分断の箇所を示させていただきました。私たちはこの問題が、宇宙の衛星利用のところで大きな課題と捉えており、この課題について、利用の分野や社会の課題から観測側までどのようにつなげるかということに一つずつ対応してきました。今も完全にできているわけではありませんが、私たちがやっている取組の一つは、ある一定の衛星の軌道を私たちが自由に使うことによって、私たちがやりたいような撮影方式などを実現しています。その意味では、AW3Dのミッションは、衛星側に共有されており、その衛星の他のミッション等とも共存する形で、衛星観測と利用のサイクルが回るようにしています。
 私たちはこれから、さらに大きな社会課題を解決し、事業を展開する上で、利用と衛星の観測部分を完全につなげることが、社会課題を解決していく上で必要だと考えています。そのためには、衛星観測システムそのもののミッション自体に、マーケットから来るミッションを統合させていかなければいけないと考えています。今、衛星においても衛星コンステレーションという技術が出てきており、小型の衛星を多数構築できるようになってきています。この技術により、官民の複数ミッションを同時に実現できるように近づいているため、図の1番(マーケットニーズからのミッション検討)と2番(ミッションを実現する衛星利用システムの構築)のサイクルが回るようなものが、この垂直統合ということで社会課題を解決する一つの道だと考えています。
 続きまして、それを考える上では、既存の地球観測の技術だけでは解決できないものがあることに気づきました。これは一つの事例ですが、私たちは2021年からJAXAの研究開発チームと新しい宇宙センサーに関する共同研究を実施しています。その技術を初めて知ったとき、このような技術があることに大変驚きました。自動運転車や航空機に積まれて標準的になってきた計測技術のライダ技術が、衛星搭載用の技術も研究されて宇宙から地上の高さを10cmという精度単位で計測できる技術が開発されつつあるということを聞き、2021年から共同研究を行っているところです。
 この図はイメージ事例ですが、例えば浸水というのは数十cm単位で人の生命に関わるわけですが、そのための高さ計測について、従来の技術では誤差が残っていたものが解消されていく可能性があります。これは実際の衛星で観測されている地図と、ライダを重ね合わせて精度を上げている共同研究の一つの成功事例ですが、今のAW3Dで1mという精度のものが20cm~30cmという精度に向上することも確認しています。新しいセンサー技術が利用と結びつくとイノベーションを起こす可能性があるということを認識しています。
 最後に、私たちがこれから取り組んでいきたいことをお話しいたします。情報産業には、これからの社会を引っ張る技術が三つあると言われています。一つが自動運転、二つ目が生成AI、三つ目がデジタルツインです。地球観測が関わるところでは、このデジタルツインがとても大きいです。例えば衛星コンステレーションと新しいセンサーを組み合わせると、地球を丸ごと今の状態のままシミュレーションができるような環境を作れる技術要素が揃ってきています。このようなデジタルツイン衛星が様々なプラットフォームや分析技術と連携することによって、今まで3D地図であったものが4Dとして時間も管理でき、社会に地球や都市のレプリカを実装できるようになる時代が来ると考えています。
 その背景としては、例えば国土交通省のPLATEAUや、私たちが今日紹介したAW3Dなどの技術が先行してできており、5年後の機械制御の進歩、脱炭素社会の中の再生可能エネルギーの拡大、安全保障の更なる必要性などを踏まえても、それらを連携させて自動化や予測を実際のアクションに結びつけるデジタルツインのプラットフォーム・基盤技術が求められており、地球観測と社会課題の解決がそのような技術で結びつく時代が来ると考えております。そのような衛星システムを官民連携して作っていきたいということで、いろいろな場で議論する取組を行っています。私の説明は以上です。
 
【村岡部会長】  筒井様、ご説明いただきましてありがとうございました。それでは、ご質問やご意見を受けたいと思います。委員の皆さんは挙手ボタンでお知らせください。岩谷委員、お願いします。
 
【岩谷委員】  オフィス気象キャスターの岩谷と申します。詳しい説明をありがとうございます。私は気象予報士で防災活動をよくやっています。この3Dのものを全然知らなかったので少し教えていただきたいのですが、浸水のシミュレーションや、先ほどの技術で、かなり高精度でできるということなのですが、ハザードマップや国土地理院の地理院地図等にも利用されているのかについて教えていただければと思います。
 
【筒井部長】  岩谷様、ありがとうございます。ハザードマップ等に利用されているかということに関しては、利用されています。ただし、どちらかというと新興国で利用されています。日本は、飛行機を飛ばしたり、精密な車を走らせた測量などの技術が進んでいるということや、比較的エリアもカバーできるものも多いということで、そういったものが使われている例が多いのですが、例えば東南アジアやアフリカなどを見渡すと、とてもそのようなことができない状況の中でこういった技術が使われています。もともとこのプロジェクトの発端は、そういった問題をどう防ぐかというモチベーションからスタートしたものです。
 地理院地図等で使われているかということに関してですが、ちょうど今、私たちが取り組んでおり、自治体から報道発表もされているのですが、ある市町村が都市の計画図(防災も含む都市の基盤地図)を作る業務で、日本で初めて衛星技術を使って、国土地理院にも認めていただいて、地図更新を行っている実績があります。
 
【岩谷委員】  国土地理院でも一部使われ始めているとところで、防災のところで言いますと、一般の人は、ハザードマップのような平面の地図はなかなか見られる人がいませんが、3Dで見るとすごくリアルで、一般の人でも分かりやすいものになっていると思います。しかし、リアルに見えるということは、浸水データが正確でないと誤差が目立ちますので、それがこれからの課題なのだと思います。
 
【筒井部長】  まさにその通りだと思います。私たちも防災の専門家の方々と議論をしながら、衛星で精度が上がってきたものと情報の確からしさをどのようにつなげていくかというところを、今後さらに考えなければいけないことだと認識しています。今は完全ではありませんが、そういった点も踏まえて進めていくということだと思います。
 
【岩谷委員】  ありがとうございました。
 
【村岡部会長】  続きまして高薮委員、お願いいたします。
 
【高薮委員】  詳しいご説明ありがとうございました。素晴らしい技術がどんどん進化しているのがよく分かりました。こういうことはユーザーのニーズを吸い上げて、衛星データ等とデジタル化していくことがデジタルツインであり、ずいぶん前からやっていることだと思っております。私たちはあちこちの場面で官民連携の重要性などを議論していますが、具体的に本当にどうやったらできるのかというところが非常に大事です。産業界の方々はまだ衛星データを利用されていないところも多く、どうやったらできるかという議論がよくありますが、今日お話しいただいたような垂直統合は、まさにNTTデータのようなデータ産業の方がマーケットのニーズを吸い上げてくださるような仕組みがいくつも出来上がっていくことを期待してよろしいのでしょうか。例えば、どのくらいの産業界の方々とニーズについてお話しされているかについて、規模的なものを教えていただければ嬉しいです。
 もう一つの質問として、日立パワーソリューションズとやっている洪水のデータなどもシミュレーションに入っていくようなことが示されていましたので、動的なものもどんどんと取り込んでいらっしゃると思います。地図データというと、基本的に災害等がなければ動かないものだと思いますが、動的なものをどれだけ取り込んでいくのか、雲や雨、日射、洪水などの需要もあると思いますが、そのあたりはどのくらいの時間スケールの衛星データを取り込まれていかれるのかについて、教えていただけますと嬉しいです。
 
【筒井部長】  どうもありがとうございます。市場規模の話はよく聞かれる質問です。おそらくご存じだと思いますが、もともと人工衛星の技術は安全保障の観点で進んできた技術です。最近、民生分野がようやく拡大し始めたところというのが私の認識です。その背景にあるのが、先ほどの衛星コンステレーションといって、民間のミッションを達成できる衛星の余力が出てきたということだと思います。代表的なのはスターリンクなどになりますが、既にサービスとしてあるものを衛星を使って実現するということが始まったところだと思っております。地図の分野の話にすると、伸びつつあるマーケットとして、例えば数千億の規模が3D地図に関連しているところです。実際に衛星でどこまでその中をカバーできるかというのは、技術進歩や既存のサービスとの競争ではあるのですが、そういった規模のところにどうやって衛星を使ったサービスを垂直統合して組み込んでいくかというところが焦点だと思っています。そのような分野は地図以外でもあります。これからは、官、科学、民のミッションが連携していく機会が多くなる時代になっていくのではないかと考えている次第です。
 更新周期に関しですが、突き詰めると毎日更新してほしいところですが、私たちは最低でも1年間に1回は全世界のデジタルツインを更新することが、世界規模の意思決定には必要なのではないかと考えています。その中でも、我々が暮らす都市に関しては、例えば四半期単位で見ていけるようになれば、いろいろな事象に対して的確に対応できるようになるのではないかと思っています。また、プロジェクトは個別ベースなのではないかと考えております。
 
【高薮委員】  ありがとうございました。
 
【村岡部会長】  ありがとうございました。次に六川委員、お願いします。
 
【六川委員】  筒井さん、どうもありがとうございました。二つ質問があります。一つは、光学衛星の場合は光学からDEMを作っていくことになりますよね。ですから、光学衛星はどうしても民間に移行していてコンステレーション中心になっていますが、現状の見通しも含めて、民間の多くのデータを集めて見てみると、とりわけZ方向の精度のところは非常に多いように思います。筒井さんの目から見て、民間の技術でNTTデータが今得られているようなことを実現しようとするのに、どのあたりが一番ネックになるとお考えでしょうか。
 
【筒井部長】  六川先生、どうもありがとうございます。本当に肝になるところでして、いろいろと詳しく説明しなければいけないところが多々ありますが、まさにご指摘の通りです。そこが技術の肝であり、逆に言えば、そこにビジネスチャンスがあると感じています。先ほどご説明させていただいたように、個々の衛星が比較的小型になっており、コストの良い衛星ができるようになってきていますが、従来の大型の1tと小型の100kgという重さの差は、計測精度にも関わってきます。そこで、私たちが数年前から研究している成果としてLiDAR(ライダ)という技術があります。測量技術ですから精度として安定しています。そのような技術を基準として精度を揃えていき、精度が不足している衛星について基準に合わせていく技術を開発することによって、精度の差を埋めたいと考えています。そこには技術要素は多々ありますし、技術として要素が揃いつつありますので、チャレンジする価値は十分にあると考えています。
 
【六川委員】  どうもありがとうございました。
 
【村岡部会長】  最後に岩崎委員、お願いします。
 
【岩崎委員】  JICAの岩崎です。非常に可能性があり、そして実績も積み重ねてきた技術のご説明をありがとうございました。大変勉強になりました。一つはリクエストで、130カ国で既に実績があるということを知って大変驚きましたが、どういう国でどういう実績があったか、実績の概略についてまとまっているものがありましたら、後ほどで構いませんのでご提供いただけないでしょうか。
 また、今回のプレゼンの中でも都市計画や防災において、既に優れた実績があることがよく分かりました。質問としては、自然環境保全において、このAW3Dが既に実装されているような事例があれば教えてください。プレゼンの中でJAXAと森林総研が共同開発しているものがあったと思います。我々も非常にこれに着目していますは、既存の技術の中で自然環境保全にNTTデータの技術が適用されて役に立っているというような実績があれば、ご教示をお願いいたします。
 
【筒井部長】  岩崎様、どうもありがとうございます。一点目の利用についてですが、利用事例プログラムといって、利用事例を共有していただいた方に優遇するなど、いろいろな形で利用事例を集めておりますので、ご説明も含めて情報を提供させていただければと思います。
 二点目の自然環境のところは、最近に要望の声をたくさんいただいて活動しているところです。特に森林の資源量や炭素の固定量を測りたいという要望が多く、省庁や自治体をはじめとして、取組をさせていただこうとしているところで、現在実証プログラムが複数走っている状況です。おそらく1~2年、または近い将来に本格的なサービスやいろいろな事例が出てくると思います。今は実証事例がいくつか出てきている段階で、主には森林の量を測る技術になります。
 
【岩崎委員】  分かりました、どうもありがとうございました。
 
【村岡部会長】  どうもありがとうございました。最後に一点、私からもよろしいでしょうか。
 将来の社会の中で、自然環境の保全、防災・減災、あるいは適切なインフラの配置を考えていくときに、時間軸の情報を入れた形でのデジタルツインがとても大きな可能性を持っていると理解しました。私がお尋ねしたいのは、この部会では「今後10年の我が国の地球観測の実施方針」を検討しています。観測に限定せずに、様々な形での利活用、社会課題の解決というところが議論になってくるわけですが、この実施方針を検討するにあたり、筒井様から何かご意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【筒井部長】  村岡先生、ありがとうございます。「我が国の地球観測の方針」についてコメントさせていただくと、10年前と違うことは、社会課題そのものの解決が民間にとっても事業領域になってきているということだと思います。すなわち、従来の科学の領域がビジネスに近い領域になってきているということだと思います。そういった意味では、科学と民間の接点が今まで以上に重なることが多いと思います。垂直統合というのは独占という意味ではなく、社会課題を解決する意味で、単にデータがあるだけではなく、それをどうつなげていくか、またはそれをどう本当の社会課題に結びつけるかが、成功事例のためにこれまで以上には必須であると考えています。そのための取組や仕組み、仕掛けがあると、いろいろな事例ができやすくなると思います。また、今後はいろいろな観測のデジタルツインが連携していく時代になると思います。そういった時に、リアルな実際の連携と併せて、デジタルツインがどのようにして統合して連携して、複合的な価値を出して社会課題を解決するかという仕掛けや取組が重要になっていくと思います。我々が今までに衛星で取り組んできて目の当たりにした課題よりも、もっと大きなスケールの壁が出てくると思いますが、それを一つ一つ乗り越えていくことができればと思っています。
 
【村岡部会長】  貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。本日はNTTデータの筒井様にご出席いただきました。どうもありがとうございました。
 
【筒井部長】  ありがとうございました。
 
【村岡部会長】  続きまして、議題(4)次期「今後10年の我が国の地球観測の実施方針」に関する論点等について、事務局より資料4-1及び資料4-2に基づいて説明をよろしくお願いいたします。
 
【松原推進官】  事務局から説明させていただきます。まず資料の4-1の次期「実施方針」に関する論点についてです。これまでの2回の議論も踏まえて、実施方針の策定に向けた、現時点での論点をまとめさせていただいたところです。このまとめ方は、現行の実施方針の項目に沿った形になっており、今後実際に報告書をまとめていく中での一つのひな型になっていると思っています。大きく6つの項目に分類しております。まずは実施方針の位置づけです。実施方針をどのように位置づけるか、あるいは時間スケールをどの程度にするのかについて、10年、あるいは10年先を見通した5年程度の方針にするのかというところが論点になっているのではないかと思います。
 2つ目の項目の、これまでの成果について、現行の実施方針の策定後の成果をどう考えていくのか、あるいは何が達成できていなかったのかということについても、今後のヒアリングを踏まえて判断をしていくと考えています。
 3つ目の項目の、地球観測を取り巻く近年の国際的な動向について、前回の部会でもご紹介させていただきましたが、地球観測が規模課題の解決に貢献するものとして、さまざまな国際枠組みの動向を反映していくべきだと考えています。次の議題で報告させていただきますが、例えばGEOにおいて、昨年11月に新戦略が採択されたところです。また、IPCCにおいても、第7次の評価報告書サイクルが昨年の7月から開始されたところです。さらに、TCFDやTNFDなど民間でも新しい動きが出ているというところで、そのような動きも踏まえて検討していく必要があると考えています。
 4つめの項目の、地球観測予測データの利活用の促進(データバリューチェーン)については、これまでの部会の議論やGEOの新しい戦略において地球観測データの利活用をさらに推進していこうとしていたことからも、とても重要であると考えています。データバリューチェーンを実現し、データ利活用を促進する上で、何が課題になっているのか、観測の現場とエンドユーザーをどう結びつけるか、あるいはユーザーのニーズをどのように反映していくのかなどが論点だと考えております。
 5つめの項目は、分野別の取組とさせていただきましたが、現行の実施方針では、まずは分野別の取組があり、その後に共通的・基盤的な取組が記載されており、どちらが先になるかは今後の議論を踏まえての判断になると思います。分野別の取組について、どの分野の取組を記載していくか、生物多様性などのトピックを独立項目とすべきかが論点となってくると考えています。
 最後の6つめの項目の共通的・基盤的な枠組みについては、(1)~(5)まで細分化しております。
 (1)は取り組むべき項目として、どのような項目が次の実施方針に立てられるかが論点だと考えております。
 (2)については、地球観測データの取扱いということで、データの共有を進めていく上でどのようにデータの信頼性や互換性を確保するか、安全保障に関わる事項をどのように考慮していくか、あるいはデータのオープン化やオープンサイエンスをどのように推進するかが論点だと考えています。
 (3)の人材については、ユーザーと地球観測の現場をつなぐ人材の育成が重要だと考えますし、市民科学も含めた多様な人材をどのように地球観測に関与させられるか、あるいは地球観測をどのように理解してもらうかというところも重要な論点だと思っています。
 (4)の地球観測インフラの整備については、宇宙、海洋、現場観測、新技術導入などが考えられます。特に、本日は宇宙と海洋についてヒアリングをしていただきました。
(5)の中にある国際的な人的ネットワークをどのように形成すべきかということは、人材の育成とも関わってくるところですが、これらが論点だと考えています。さらにご意見を踏まえて論点を明確化していきたいと考えております。
 次に資料4-2に移ります。このような論点を踏まえて、これから実施方針の取りまとめに向けてご議論いただくとため、今年は2か月に1回程度の頻度で部会を開催させていただきたいと考えています。本日は1月12日ですが、大体2か月に1回ということで、次の部会の開催は3月頃を想定しています。今年一杯で実施方針についてのご議論をしていただきたいと考えております。今年の前半は分野別の取組を中心にヒアリングをしていただく予定です。地球観測で重要な分野としては、気候変動や防災・減災、生物多様性などがあり、そういった分野について個別にヒアリングをしていただく機会を設けたいと考えています。もちろん、これに限らず重要な分野が出てくれば、トピックを追加することを考えています。今年の後半については、共通的な取組を中心にヒアリングをしていく予定です。あわせて、実施方針自体の方向性についてご議論いただきたいと考えています。共通的なトピック、新しいトピックとしては、例えば、TCFDやTNFDなどについて、あるいはデータの利活用とデータバリューチェーンに関わるような項目についてヒアリングすることを考えております。最終的には、来年の1月頃に、次期「実施方針」を取りまとめていただきたいと考えています。
 
【村岡部会長】  松原推進官、ありがとうございました。ただいまのご説明につきまして、質問や意見交換の時間を取りたいと思います。最初に河野委員、お願いします。
 
【河野委員】  ありがとうございます。些か細かいのですが、3ポツの地球観測を取り巻く近年の国際的な動向の中に、忘れられないようにという意味で、「国連海洋科学の10年」と「G7科学技術担当大臣会合」を議事的に含めていただきたいと思います。特に海洋科学の10年は、政府官海洋学委員会やIOCが深く関与しています。今のIOCの議長は日本人ですので、我が国としてはぜひここをハイライトすべき部分だと思います。G7の科学技術担当大臣会合のほうは、コミュニュケが出ております。これはG7の7カ国の合意事項ということですので、サポートになると思います。以上です。
 
【松原推進官】  入れさせていただきます。
 
【村岡部会長】  ありがとうございます。続きまして赤松委員、お願いします。
 
【赤松委員】  赤松です。ご説明ありがとうございました。私のほうからは全体の方向感ということで、4点お話を差し上げたいと思います。まず実施方針の位置づけで、10年にするか5年にするかということなのですが、現在中間取りまとめをやっていることもあって10年は長いという気がしています。ですので、5年で完全に変えるか、それとも見直しをしてバージョンアップをするかということについては検討の余地があると思いますが、中間で何らかの見直しが必要だと思います。私は測量関係に従事していますが、測量の長期基本計画にあたる期間10年の「基本測量に関する長期計画」も、これから5年で中間見直しをすることになってきそうですので、そういった動向を受けていったほうがいいと思います。
 二つ目はデータバリューチェーンの件です。これはぜひしっかりと書き込んでいきたいと思います。今日、筒井様からもお話がありましたが、デジタルツインという要素もしっかり加えて書き込む必要があると思います。どの主体が行うかということに関しては、先ほどの竹上企画官からの話の時も申し上げたように、利用推進の枠組みをどう作り上げていくかということを、政策としてしっかり組み上げていく必要があると思います。その中で産官学の役割を明確にして推進する仕組みを書き込む必要があると思います。
 その下の5番目の分野別の取組で、生物多様性に関しては、個別の分野として取り上げていただく必要があると思います。中間取りまとめの後に、この分野は大きくクローズアップされておりますし、今日もそのような話が多々出てきました。当該分野では現在様々な枠組みがさらに進んでいる状況にありますので、その中に地球観測をしっかりと位置づける上でも、これは独立させたほうが良いと思っています。
 最後に地球観測予測データの取扱いの安全保障に関する事項をどのように考慮すべきかというのは、私から申し上げた話ですが、扱いが難しいことは理解しています。直接の防衛にどこまで触れるかは別として、内閣府・外務省・海上保安庁等が関係しているインテリジェンス・経済・食料安全保障等を含んだ広義の安全保障に関しては検討しておく必要があると思います。また、前回話題にも上がった情報のセキュリティとオープンデータ化のバランスをどう取るかということも、この中で考慮する必要があると思います。以上4点のご提案についてお願いしたいと思います。
 
【松原推進官】  貴重な意見をありがとうございます。今後の審議を通じて決めていただきたいと思いますが、世の中の変化を踏まえると、一度定めてから10年間全く変わらずに実施方針が維持されることは難しいと思います。ただ、5年の計画にするか、それとも10年間の途中で見直しをするのか、どちらが適切かは論点であると考えています。
 2つ目のデータバリューチェーンにおいて、デジタルツインが重要であるということはおっしゃる通りです。第1回の部会でもデジタルツインが議論されたと思いますし、今回のヒアリングの中でも、全のプレゼンにおいてデジタルツインの話が出てきており、地球観測のアウトプット先としてデジタルツインは重要であると思います。ただ、それぞれの取組をどのように考えるべきかという一つの指針を与えていくことが、この部会の役割の一つではないかと考えます。
 3つ目の生物多様性もおっしゃる通りです。今後、生物多様性に関するヒアリングの機会を設けたいと考えています。
 4つ目のセキュリティの部分に関しては、広義には、様々な部分が関係すると思っています。データであればオープンサイエンスやオープンアクセス部分もありますが、一方でどのデータを出せるか、出せないかということも課題です。その中には必ずしも安全保障だけではなく、医療データなども含まれています。また、地球観測データは様々なデータを含みますので、どこまで今回の部会で議論できるかということも課題ですが、データセキュリティとハードなセキュリティについて何らかの形で議論していただく機会を作りたいと思います。
 
【赤松委員】  ありがとうございます。ぜひ、よろしくお願いいたします。
 
【村岡部会長】  ありがとうございます。続きまして嶋田委員、お願いします。
 
【嶋田委員】  嶋田です。私も分野別の取組について、一点だけ意見を申し上げたいと思います。生物多様性に関する項目は独立させるべきだと思っています。ネイチャーポジティブの流れや国の生物多様性戦略が改定されたことを受け、自治体でも生物多様性戦略の見直しを進めているところです。その中でキーワードになるのは30 by 30やOECMです。これらを進めるためには定量的なデータの取得が絶対に必要で、地球観測のデータの活用が求められています。そういう意味でも、ぜひ明示していただきたいと思います。ただ、その際には気候変動対策との両立も意識していただく必要があると考えています。以上です。
 
【松原推進官】  おっしゃる通り、定量化は難しいですが、最終的なアウトプットとして使える形にしていくことが重要であるため、生物多様性を独立の項目にする方向で考えていきたいと思います。また、気候変動対策と生物多様性は密接に関連し、その関連性は国際的にも重要だと認識されています。今後はそういうところにも目配せした形で議論を進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
【嶋田委員】  ぜひ、よろしくお願いいたします。
 
【村岡部会長】  ありがとうございます。続きまして谷本委員、お願いします。
 
【谷本委員】  谷本です。まず、赤松委員がおっしゃった5年か10年で見直しする案には賛成です。時代の動きが激しいですし、国際的な動向を考慮するべきだと思います。例を挙げますと、IPCCでは第6次評価サイクルが終了し、第7次評価サイクルの動きが始まっています。それに合わせて、タイムリーに打ち出していくことが相乗効果を生み、かつアピールにもなると思います。ぜひ、鍵となる国際的な年次の動きを見据えながら、改訂していくことが有効だと思います。IPCCの評価サイクルは5~6年に一度ですので、次は2030年よりも少し前くらいになると思いますが、そこで最近のトレンドとして、短寿命気候強制力因子(SLCF)という、温室効果を持つ大気汚染物質のインベントリの方法論の構築が新たに挙がってきております。観測データからSLCFの排出量を評価することが最近の新たな研究としてあるので、地球観測の意義も排出量の評価という意味で重要だと思いますし、日本としてのリーダーシップを発揮できる一つだと考えています。以上です。
 
【松原推進官】  現行の実施方針、あるいはその前の戦略は、GEOの戦略と結びついて10年の方針とされていましたが、近年では、国際動向がかなり活発に動いているので、何らかの形で、10年よりも短い形で方針の見直しを図っていくということは必要であると思っておりますので、そういう方向で検討していただきたいと思います。
 
【谷本委員】  もう一点追加で補足ですが、地球観測連携拠点があることも一つの鍵だと思いますけれども、その話はこの部会でやることになりますか。
 
【松原推進官】  検討させていただきたいと思います。
 
【谷本委員】  わかりました。ありがとうございます。
 
【村岡部会長】  連携拠点の話は、この部会でも以前に議論していたことがあったと思います。どうもありがとうございます。次に高薮部委員、お願いします。
 
【高薮委員】  ありがとうございます。皆さまのご意見に賛成ですので、あまり繰り返さないことにしますが、SDGs2030年を考えても、やはり5年に一度は見直す必要はあると思っております。それから、生物多様性についても、今は非常に危機的な状況ということですので、項目を立てる必要もあると思います。
 一つだけ補足としまして、6番の(4)地球観測インフラの整備のところですが、データアーカイブなどの技術をどのようにやっていくかというところを、インフラとしても書いていただいたほうがいいのではないかと思いました。よろしくお願いいたします。
 
【松原推進官】  おっしゃるとおりであり、4つめの項目は6つ目の項目の(2)でも、データは重要ですので、データアーカイブなどの技術についても、書き込むようにしたいと思います。
 
【高薮委員】  ありがとうございます。
 
【村岡部会長】  最後に神成委員、お願いします。
 
【神成委員】  神成です。よろしくお願いいたします。4番の地球観測のデータのバリューチェーンの話ですが、やはりデータの運用主体の責任分解、例えばデータのカストディアンとしての役割を担うかどうかも含めた議論がまだ不足しているように思います。実際にはデータの運用管理、保守、介在に対する責任を考えた上で利活用のモデルを作っていくべきだと考えています。そのあたりの具体的な議論がないまま進んでおりますので、今後具体的な利活用を考えたとき、現実とのギャップがあったときの責任は誰が取るのかという話も、基本的にはきちんとオープンクローズ戦略も踏まえて整理しておく必要があることが一点目です。
 二点目は自治体に関してです。SDGsの問題もあり、1700の自治体が様々なデータの利活用を進めておりますが、ここ数年急激に動いているに対して、こういったデータの利活用に関するギャップが広がっておりますので、最新の動向を踏まえて、今後の利活用を進めていくことが重要だと思います。以上です。
 
【松原推進官】  4つめの項目には、ギャップが生じている、あるいはこれから生じるだろうという課題は書いてないため、追加したいと思います。
 
【村岡部会長】  貴重な意見を多くいただき、ありがとうございました。おそらく今の議論を受けて新たにお気づきのこともあると思いますので、そういったことをぜひ事務局にお送りいただければと思います。
 今の皆さんの議論の中で、特に3番の国際的な動向と時間・スパンの問題というのは非常に重要で、動向のところでも、もしかしたら観測とアセスメント、意思決定を整理しながら議論していくということも今後必要になってくるのかもしれません。その中でデータバリューチェーンや様々な主体の連携のあり方が重要になってくるかという議論にもつながっていくのではないかと感じました。
 以上で議題(4)を閉じさせていただきたいと思います。私から委員の皆さまにお願いがございます。少し時間が押しているところですけれども、まだ重要な議題が続きますので、お忙しいところ恐縮ですが、10~15分の延長をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 続いて、議題(5)地球観測に関する政府間会合(GEO)閣僚級会合等の開催結果について、事務局の松原推進官よりご説明をよろしくお願いいたします。
 
【松原推進官】  資料5に基づいて、説明いたします。10月の第2回の部会でご審議いただいたGEO WEEKの結果報告になります。
 まず、2ページ目ですが、11月6日から10日までGEO WEEKが開催され、その中で、GEO閣僚級会合と第19回の本会合などが開催されました。
 主な成果としては、第19回GEO本会合において、GEOの次期戦略が採択され、GEOの閣僚級会合において、これを支持するケープタウン宣言が採択されました。GEOの次期戦略や閣僚級宣言において、前回ご審議いただいた資料と大きく変わっているところではございません。GEOの次期戦略についは、地球インテリジェンスがテーマとして維持されています。詳細については、参考資料をご覧ください。また、出席者としては、文科省とともに、村岡部会長にも出席いただきました。
 続いて3ページをご覧ください。本会合の結果の概要ですが、先ほど申し上げたとおり、GEOの次期戦略が採択されるとともに、日本からはデータバリューチェーンの実現に向けた議論を進めている、地球インテリジェンスは、日本からGEOに提唱した概念であるということを発言しました。また、グローバルエコシステムアトラについては、地球観測によって地球上の生態系の把握を目指すプロジェクトですが、各国から広く期待が表明されるとともに、英国からは18万米ドルを拠出することが表明されました。GEOが進める利活用のアプリケーションへの各国からの期待が高いことが示されたところでございます。
 4ページでは、GEOを通じた取組として、我が国からは、DIASを活用した「知の統合オンラインシステム」におけるフィリピンでの人材育成プロジェクトについて発表しました。また、地球観測に関する国内調整メカニズムという議題では、我が国から、GEOが設立さあれた当初から、国内戦略の策定と地球観測推進部会の設立を通じて国内調整メカニズムを確立していること、GEOのコミュニティに対してその知見と経験を提供したいということを述べたところです。
 5ページは、GEOの閣僚級会合についてです。我が国からは、文科省の長野サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官が出席しました。GEOの次期戦略に関する議論において、国際的なデータバリューチェーンの実現と地球インテリジェンスと持続的な創出の必要性を我が国から発言しました。
 6ページでは、全会一致でGEOの次期戦略を支持するケープタウン宣言が採択されたということを記載しています。この後、各国から発言がありましたが、我が国の貢献についても発言しました。
7ページについて、GEO WEEKでは、JAPAN GEOのブースを設置しました。この中でJAPAN GEOとともに、JAXAやJAMSTEC、国立環境研究所、MS&ADインターリスク総研から出展いただき、ご協力ありがとうございました。
 最後になりますが、今後の動きとしては、昨年11月に開催されたGEO WEEKが、今後は4月の開催となり、次回は2025年4月に開催される予定です。また、GEOの次期戦略を実現する実施計画の検討がこれから進められる予定であり、それについては我が国としてしっかりと対応していきたいと思います。
 
【村岡部会長】  松原推進官、ありがとうございました。ただいまのご説明につきまして、ご質問がありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。このケープタウンでの本会合・閣僚級会合を機に、GEOのウェブサイトも新しく構築されているようです。そちらでもGEOの活動に関する多くの情報が、今後公表されると思いますので、ぜひ皆さまにご覧になっていただければと思います。
 最後に私から一言だけよろしいでしょうか。ケープタウンでのGEOの本会合・閣僚会合の対応にあたって、文部科学省環境エネルギー課の皆さまには、多大なご尽力を頂戴いたしました。大変ありがとうございました。特に現地対応をいただいた松原推進官、高附課長補佐、小林行政調査員には本当にご苦労いただきましたし、コミュニティを支えていただきました。どうもありがとうございました。
 続きまして、議題(6)その他として、資料6が用意されております。高薮委員からご説明いただきますが、昨年9月に日本学術会議で取りまとめられた見解である「我が国の地球衛星観測に関する統合的戦略立案について」ご紹介いただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【高薮委員】  本日はお時間をいただき、ありがとうございます。昨年9月に日本学術会議が発出した見解「我が国の衛星地球観測に関する統合的戦略立案について」概要紹介をさせていただきます。
 2017年と2020年には、地球衛星観測の政策決定に関する省庁間の風通し、利用者と省庁のボトムアップ・トップダウンの情報伝達の改善、地球衛星観測のプログラム化の必要性を提言いたしました。その後も気候危機は深刻化し、さらに新型感染症や戦争の長期化で、地球環境問題は非常に複雑化してしまっております。一方で、先ほどもご議論がありましたように、衛星観測による大量データは社会的にも価値を増しています。
 これが見解の骨子となります。
 1は気候変動対策の科学的基盤と国際協力の要としての地球観測の必要性について。
 2は我が国の地球衛星観測の統合的戦略立案の必要性について。
 3はオープンサイエンスの推進と安定したデータアーカイブ体制の構築について。
 4として、これらを実現していく様々な視点での人材育成の推進です。
 本日は時間が短いですので、統合的戦略立案に焦点を当ててお話しします。これはWMOが定義した55個の必須気候変数です。赤枠で囲った44変数が、全体の80%が人工衛星から観測実証されています。このように地球衛星観測は科学的エビデンスの蓄積に必須であることがわかります。そして、日本の衛星観測計画は、このような内閣府の宇宙基本計画で規定されておりますし、先ほどもご説明があったように、昨年6月に行程表が改定されています。これは比較的頻繁に改定され、時代に沿った新しい要素が加えられております。例えば最近では、多くの省庁が連携して宇宙技術戦略の策定ローリングを行っていく方針などが示されています。現在の日本の地球衛星観測はALOS-3の喪失が大きな痛手ではありましたが、大変充実したものとなっており、国際的にも重要な役割を担っております。ただし、一つひとつの役割やミッションについての選評という形では、日本の地球衛星観測全体の発展・継続・活用状況や課題について、分野の垣根を超えた議論がなかなか難しいと考えられます。
 そこで選評を気候変動、生物多様性、大気、海、雪氷、陸のモニタリング、国土強靱化など、大きく目標別に分けて分かりやすく整理し、かつデータ活用サービス、長期にわたる発展的継続、人材育成、国際連携まで、大きく見渡した全体の議論に多くの人が参加できるような統合的長期戦略の立案体制というものを作っていこうというのが、見解の議論の中心です。
 それでは統合的長期戦略というのは、どのような変化を目指しているのかを一言で表すと、教室形式からラウンドテーブルへの変換です。現在の体制で、もちろん全体を見渡している人もいますし、目的感や省庁間などの相互の議論もされていますが、どちらかというと目的別・ミッション別に一人ひとりが世界一を目指して頑張るという教室形式に近いものがあります。これを参加者の多くが全体を見渡しやすいラウンドテーブル形式で議論する場を持つことで、相互理解の向上に加え、市民からの理解も得やすくなること、複合利用による複雑な地球環境問題への取組、広い視点での新たな付加価値の創造、地球観測衛星の効果的な運用と利用拡大のための連携強化、民間企業への利用拡大、人材育成、データ利用拡大活動の効率化、発展的継続による持続的国際貢献のしやすさなどが期待されます。
 活動の一環として9月12日に学術会議の講堂において、公開シンポジウムを開催しました。文科省にも講演いただき、おかげさまで現地参加161名の大盛況でした。8名の方からキーとなるご講演をいただいた後、多くの省庁や産業界、学術界から12名のパネリストにご登壇いただいて、統合的戦略立案の実現についてご討論をいただきました。今後もこのような分野間の垣根を超えた議論を続け、先ほど示しましたような、ラウンドテーブル化の実現を目指していきたいと思います。文部科学省や有識者の方々からは、ぜひ様々なご助言をいただきたく、どうぞよろしくお願い申し上げます。ご清聴ありがとうございました。
 
【村岡部会長】  高薮委員、ご説明いただきましてありがとうございました。時間が短くなってしまい、申し訳ありませんでした。ただいまのご説明について、部会の委員の皆さまからご質問やご意見等あればお受けいたします。よろしいですか。
 では、また後ほど資料をゆっくりご覧いただき、お気づきのことやご質問等があれば事務局または高薮委員にご連絡をいただければと思います。よろしくお願いいたします。高薮委員、どうもありがとうございました。
 
【高薮委員】  どうもありがとうございました。
 
【村岡部会長】  以上をもちまして、本日予定されていた議題は終了いたしました。その他に委員の皆さまからご意見やご質問があればお受けいたします。よろしいでしょうか。
 それでは事務局から連絡事項をよろしくお願いいたします。
 
【甲斐専門官】  事務局です。本日の部会の公開部分からの議事録につきましては、後日事務局よりメールで委員の皆さまにお送りいたします。各委員にご確認いただいた後、文部科学省のホームページにて公表いたします。
 次回の第4回会合につきましては、後日に日程調整等のご連絡をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。事務局からの連絡事項は以上となります。
 
【村岡部会長】  どうもありがとうございました。以上をもちまして、第10期地球観測推進部会の第3回会合を閉会いたします。本日は長時間の会合となりましたけれども、活発なご議論をいただきまして、どうもありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局環境エネルギー課

メールアドレス:kankyou@mext.go.jp

(研究開発局環境エネルギー課)