第12期 環境エネルギー科学技術委員会(第1回) 議事録

1.日時

令和6年1月30日(火曜日)14時00分~16時50分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 環境エネルギー科学技術分野の令和6年度政府予算案、令和5年度補正予算について
  2. 第12期環境エネルギー科学技術委員会の今後の進め方、革新的 GX 技術開発小委員会での審議状況について
  3. 研究開発課題の中間評価について(球環境データ統合・解析プラットフォーム事業、革新的パワーエレクトロニクス創出基盤技術研究開発事業)
  4. 「大学の力を結集した、地域の脱炭素化加速のための基盤研究開発」の実施状況について
  5. カーボンニュートラル実現に向けたシナリオ研究について

4.出席者

委員

原澤主査、関根主査代理、本郷主査代理、伊香賀委員、石川委員、大久保委員、堅達委員、佐々木委員、佐藤委員、竹ケ原委員、藤森委員、本藤委員

文部科学省

千原研究開発局長、轟環境エネルギー課長、松原環境科学技術推進官、田村課長補佐、後藤課長補佐、甲斐専門官

外部有識者

東京大学藤田教授、国立環境研究所社会システム領域 増井領域長


5.議事録

【田村(事務局)】  ただ今より、第12期環境エネルギー科学技術委員会の第1回会合を開催します。
冒頭進行を務めさせて頂きます研究開発局環境エネルギー課の田村です。本日はお忙しい中ご出席いただきましてありがとうございます。本日はオンラインでの会議になります。事前にお送りした「進行上のお願い」のとおり、オンラインで発言される際はビデオ、マイクをオンに、発言されていない際はオフにするよう、ご協力をお願いします。また、ご発言をいただく場合には、「手を挙げる」のボタンを押していただくか、チャットにてお知らせいただくようお願いいたします。指名を受けてご発言をされる際には、マイクとビデオをオンにし、お名前をおっしゃってからご発言をお願いいたします。
議事に入る前に、まず本日の資料を確認させていただきます。議事次第、資料、参考資料のファイルを事前にメールでお送りしておりますが、もし不備等ございましたら、事務局までお申し付けください。
第12期の環境エネルギー科学技術委員会には、参考資料2-1の委員に就任いただいています。なお、本日御欠席される委員は、田中委員、中北委員になります。また、伊香賀委員は遅れて出席されます。文部科学省の出席者ですが、研究開発局長の千原以下が出席しております。開会にあたり、研究開発局長の千原から御挨拶させていただければと思います。
【千原局長】  一言ご挨拶を申し上げます。ご案内の通り、昨年は気候変動に関する政府間パネルの第6次評価報告書が公表されまして、気候変動対策の緊急性が改めて示されました。一方わが国では2050年カーボンニュートラルの実現に向けまして、GX推進法が成立をしております。エネルギー安定供給と脱炭素分野で新たな需要、市場を創出して、日本の産業力競争力の強化と経済成長につなげていくため、関係省庁が取り組んでいくこととなりました。この一環といたしまして、文部科学省では革新的GX技術創出事業を開始しております。本委員会ではこうした環境分野全体の政策を踏まえつつ、環境エネルギー分野における科学技術の動向や課題、政策の方向性などについて幅広くご審議を行っていただきたいと考えております。特に第12期の本委員会では、環境エネルギー分野における研究開発の方向性の議論や個別事業の評価、また今後重点的に取り組むべきGX技術の調査、検討、さらにはカーボンニュートラル達成に貢献する大学等コアリアションが効果的に運営されるための方策などについて、昨年設置されました革新的GX技術開発小委員会と連携しつつ、ご議論をいただければと考えております。
本委員会は環境エネルギー分野の科学技術の発展と社会実装に向けた政策の策定において重要な役割を果たしていただいております。調査審議においていただいたご意見を踏まえまして、アカデミーを支える文部科学省としてさらなる取り組みを進めてまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申しあげます。ありがとうございました。
【田村(事務局)】  本委員会の主査ですけれども、原澤委員が選出されております。今後の議事の進行にあたりましては原澤主査にお願いいたします。
【原澤主査】  原澤ですけど、聞こえますでしょうか。
【田村(事務局)】  はい、聞こえております。
【原澤主査】  本委員会の主査を拝命いたしました原澤です。どうぞよろしくお願いいたします。第11期に続きまして、2050年にカーボンニュートラルを実現するためには基礎、基盤的な研究開発が効果的に実施されるように、事業の進捗確認や評価を行うことが本委員会の課題であると思っております。委員会の皆様のお力を借りながら有意義な委員会にしてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは早速議事に入ります。議題の1は、環境エネルギー科学技術分野の令和6年度政府予算案、令和5年度補正予算について、文部科学省からご説明をいただきます。事務局から説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
【轟(事務局)】  環境エネルギー課長の轟です。画面共有させていただきます。それでは環境エネルギー関係の令和6年度予算案、令和5年度補正予算について説明をさせていただきます。文部科学省における環境エネルギー分野の研究開発は4つの柱で推進をしているところです。すなわち、気候変動対策の基盤となる科学的知見の創出、利活用強化から、日米連携も見据えた次世代半導体創生に向けた取り組み加速。それから革新的GX技術の創出、人材育成への投資強化。最後が、大学等の力の結集、自治体、企業等との連携強化によるカーボンニュートラル達成への貢献というところでございます。それぞれの関連予算を政府予算案として計上しておりますので、順にご説明をいたします。
 まず気候変動予測先端研究プログラムです。こちらは令和6年度予算案として5.5億円というところで、前年同を計上しているところです。4つの領域で公募型の研究開発を進めておるところでございまして、領域1は全球気候モデル、領域2は物質循環モデル、領域3は日本域における気候変動予測、領域4はハザード統合予測モデルの開発というところでございます。特に本年度は領域1のところのイベントアトリビューション研究というところでいろいろ注目を集めておりまして、日本企業の中でも200社以上が参加するJCLPという、日本気候リーダーズパートナーシップという経済団体が文科省、あるいは官邸のほうにこのイベントアトリビューション研究をしっかり進めるように、といったような要望書を出すような動きがございまして、この予算の裏付けとなっておるところでございます。
 それから次のページ、次が地球環境データ統合解析プラットフォーム事業でございます。こちらは令和6年度予算案、3.8億円というところで前年同でございます。事業の目的のところですが、地球環境分野のデータプラットフォームであるデータ統合解析システム、DIASの長期安定運用を通じて、地球環境ビッグデータを活用した気候変動、防災等の地球規模課題の解決に貢献する研究開発や、地球環境分野のデータ利活用を進めていくというものでございます。特に令和5年度の補正予算として、保守期限等を超過していて障害発生リスクが高いといったところ、それから障害発生時にサービス継続が困難になるリスクが高いことから、DIASサーバーのうちの、特に重要性の高い基幹サービスを提供するサーバーを更新する予算として、追加で3億円を措置いただいたところでございます。本件DIASに関するところは、詳しくは議題3の中間評価でご説明いたしますので、その際にご意見をいただければと思います。
 続きまして2つ目の柱の半導体関係でございます。次世代X-nics半導体創生拠点形成事業というところで、こちらは本年度2年目となっているところです。令和6年度予算案として9億円を計上しておりまして、これも前年同となっております。3拠点ですね、東工大、東大、東北大を中心とした拠点で研究開発、それから人材育成を展開しているところです。こちらについては、特に今生成AIの登場によってAI処理に必要となる計算量が加速度的に増加しておりまして、AI計算に要する消費電力量が爆発的に増加すると。下のところにも表にございますけれども、現状2022年の日本の総発電電力量というのが785TWhぐらいということですけれども、2050年の予測を見ると、国内では3,000、世界ではさらに、というところでございまして、この増加に対して対応できる半導体の研究は不可欠になってくるというところでございまして、それらについて、用途に応じたAI半導体を迅速に設計できる自動設計技術の研究や、AI計算向けの高速性能を満たすスピントロニクス材料、超誘電体材料等の研究開発を行うために必要な装置をX-nicsの3拠点に導入したというところで、令和5年度の補正予算額として3億円を措置していただいたところでございます。
 もう1つの半導体の事業、こちらはパワー半導体の事業になりますけれども、革新的パワーエレクトロニクス創出基盤技術研究開発事業ということで、こちらは今年度が3年目ということでございまして、議題3の中間評価で詳しくご説明をさせていただきますので、その際にご意見いただければと思います。予算額としては令和6年度予算案として14億円、前年同を計上しているところです。
 今度は3つ目の柱のGXの関係でございますが、先端的カーボンニュートラル技術開発、ALCA-Nextということで、大学等における基礎研究の推進により様々な技術シーズを育成するという探索型の事業でございます。こちらは令和6年度は16億円を予算案として計上していると。で、今年度が1年目ということで、10億円を措置していただいており、それについては、下のほうですけれども、28課題分を昨年11月に公募採択をして研究開発を開始しているところです。追加の16億円を合わせて、また新規15課題分を来年度取っていくというところになっております。こちらの事業は、このあとご説明します革新的GX技術創出事業、GteXという、こちらはチーム型の事業ですけれども、こちらと一体的な事業運営を行っていくというところで、効果を最大化していこうということを考えております。
そのGteXのほうでございますけれども、こちらは令和4年度の第2次補正予算で496億円を確保して事業を進めているところでございます。こちら昨年10月3日に公募採択を公表しまして、それ以降オールジャパンのチーム型の研究開発を開始しているところです。産業蓄電池、水素、バイオものづくりというところで、ご覧いただいたようなところの大学、テーマを採択して、これから取り組んでいくというところになっております。
 続きまして最後の4本目の柱になりますけれども、大学の力を結集した地域の脱炭素化加速のための基盤研究開発ということでございます。こちらは令和6年度予算案として0.6億円というところで、昨年より微減というところでございますけれども、こちらの進捗状況については議題4で研究代表者の藤田先生からご説明をいただきますので、ご意見等をいただければと思っております。またこの予算の一部を活用して、カーボンニュートラル達成に貢献する大学等コアリションというものの運営を行っております。こちら大学等コアリションのほうですけれども、文科省、経産省、環境省が賛同する大学等と連携してカーボンニュートラル達成に貢献する大学等コアリションというのを立ち上げて、5つのワーキンググループを作って、それぞれ積極的な活動を展開しているというところでございます。こちらのコアリション、当初設置したときは188の大学等というところでございましたけれども、今3年目というところになってきていまして、今214大学等ということで拡大しておりまして、企業の参加も13というところで増えてきていて、ますます活動をしっかり展開していきたいと思っているところでございます。ご説明は以上になります。
【原澤主査】  ありがとうございました。ただいまのご説明についてご質問がありましたらご発言お願いします。意見のある方は挙手ボタンをお願いします。いかがでしょうか。
【藤森委員】  それではよろしいでしょうか。
【原澤主査】  どうぞ。
【藤森委員】  藤森です。
【原澤主査】  じゃあ藤森委員、どうぞ。
【藤森委員】  質問というか、最後のコアリション、非常に多くの大学参画されてすごいチーム編成なんですけども、これは自治体とも連携して進められてると思うので、ぜひ外に対しての情報発信というんですかね、それを積極的にやる。これについてはどのようにされてるんでしょうかね。それが非常に重要じゃないかなと思うので。
【轟(事務局)】  ご意見ありがとうございます。自治体との関係は、特に地域ゼロカーボンワーキングというところが中心になって活動しているというところでございまして、いろいろな自治体との連携例というのも、好事例を最初に全大学で共有したというところがありますので、各地域、大学の好事例というのはこの参画大学全てに共有をされていると。また対外的な発信に関しましても、年に1回ですけれども一番大きな総会というのと合わせてシンポジウムを開催しておりまして、そのシンポジウムの中で、例えば産学官の連携方策についての議論ですとか、地域脱炭素に向けた課題と展望について議論したり、成果を発表したりというところで、参画大学のみならず広く一般に成果を発信しているところでございます。
【藤森委員】  ご説明ありがとうございます。企業の数を見るとまだ少ない。そんなに私も含めて具体的な内容のことを存じ上げていないので、多分非常に有意義な活動をされていると思うので、ぜひそういうところをもう少し広く情報発信できる機会を設けていただければと思います。私も企業の立場から申しますと、大学とこういうこともやって、実際とも交えてやれるというのは、非常にスキームとしてそういうことをやりたいと思っているんですけども、具体的ないい事例とか、そういうのがあればどんどん出していただければ、多分いろんな企業も興味持つんじゃないかなと思います。以上です。
【原澤主査】  ありがとうございました。ほかにご意見、コメントございますでしょうか。いかがでしょうか。よろしいですか。それではご意見、ご質問ないようですので、時間の関係もございますので次に移りたいと思います。
 次は議題の2であります。第12期環境エネルギー科学技術委員会の今後の進め方、革新的GX技術開発小委員会での審議状況についてということで、文部科学省からご説明いただきます。では事務局より説明をお願いいたします。
【田村(事務局)】  資料2-1と資料2-2に基づいてご説明させていただきます。まず資料2-1をご覧ください。今投影している資料でございますけれども、今期での本委員会での審議事項について、昨年分科会のほうに報告した資料になります。こちらに基づいてご説明させていただきたいと思います。まず1つ目でございますけれども、今期の委員会におきまして、いつもながらですけれども環境エネルギー分野における研究開発の方向性の議論を行うとともに、事業の中間評価について、本日も議題になっておりますが、ご審議いただきたいというふうに考えてございます。
 あともう1つが、GX小委のほう、今期引き続き立ち上げておりますけれども、こちらのほうでGteXという先程ご説明した新しい事業の基本方針と研究開発方針をご検討いただきました。引き続き追加で重点的に研究開発に取り組むGX技術等について調査、検討を小委のほうで議論いただいております。こちらのほうの審議状況についても、本日も報告させていただきますが、継続的に本委員会に情報共有し、ご意見を賜りたいと考えてございます。あと(2)の自然科学の知と人文社会科学の知の融合である総合知の創出、活用に向けたものでございますけども、こちらは本日藤田先生、東京大学からご説明いただく事業でございます、大学の力を結集した地域脱炭素化加速のための基盤研究開発。こちらについて地域と連携してカーボンニュートラルに向けた定量的な数値をシミュレーションするツールを開発していただいてございます。また先程ご質問いただきましたカーボンニュートラル達成に貢献する大学等コアリション、こちらについても活動を進めておりますので、本委員会のほうに説明して、今後の進め方についてご意見賜りたいと考えてございます。
 あともう1つございまして、先程のGteXですけれども、事業を進めるにあたりましてLCAと、あと資源循環についてもしっかりとシナリオ研究等を行うということが基本方針のほうで定められておりまして、こちらのほうについて事業の中でしっかりと人文社会科学、自然科学以外の観点を踏まえながら事業が運営されているか、GteXのほうで運営されているかについて、GX小委のほうでご確認いただくことになっておりますが、本委員会にも逐次ご報告して、ご意見賜りたいと考えてございます。
 あともう1つ、この分科会で議論すべきことを期待する論点についてでございますけれども、環境エネルギー科学技術分野につきましては、引き続き2050年カーボンニュートラルの達成に向けた課題というのが引き続き重要かと思いますので、こちらについて本委員会でご議論いただきたいと考えてございます。資料2-2については後藤からご説明させていただきます。
【後藤(事務局)】  環境エネルギー課で課長補佐をしております後藤と申します。続きまして、革新的GX技術開発小委員会の状況につきましてご報告をさせていただきます。資料2-2に基づいてご説明させていただきます。まず本省小委員会の設置趣旨について、こちらご案内の方も多いかと思いますけれども、繰り返しになってしまいますが、2050年までのカーボンニュートラル実現に向けまして、わが国が強みを持つアカデミアのポテンシャル、これを最大限に活用して目標達成に貢献するための戦略的な支援が必要だという、そういった認識の下で2022年の6月、一昨年の6月に、本委員会におきましても、わが国はアカデミアの高い基礎研究力の蓄積とポテンシャルがある中で、重要技術領域、蓄電池や水素燃料電池、バイオものづくり等において大規模な公的投資を行う必要がある。そういった旨をご報告させていただいたところです。そうした認識の下で、本委員会の下に革新的GX技術推進の方向性ですとか、あるいは具体的な施策の在り方等を調査、検討するために革新的GX技術開発小委員会を設置したところでございます。
 2つ目、主な審議内容のところですけれども、内容といたしましては、1つ目は幅広く革新的GX技術推進に係る事項についてということと、2つ目は研究開発プロジェクトの実施方針や事業体制等ということとしております。ここにあります研究開発プロジェクトとしては、先程ご説明しておりますけれども、令和4年度の補正予算で措置をされました、革新的GX技術創出事業、GteXの基本方針、および各領域における研究開発方針についての議論ということで、第1回から第5回まで、令和4年の12月から令和5年の3月までの間には、主にこのGteXの運用にあたっての方針づくりというところにフォーカスをして、委員会で審議をしていただいたところでございます。
 そしてまた第6回につきましては、GteXのほうも公募が進んでいる中で、その後の検討といたしまして、GteX事業の推進の方向性をしっかりとフォローアップしていくとともに、GX実現に向けた様々な領域や施策の方向性等について議論を進めているところでございます。
 次のページに行っていただきまして、2ページ目には第1回から第5回までの議論の経過についてまとめさせていただきました。先程申し上げた通り、ここではGteXの基本方針および研究開発方針を議論するということで、まず政策動向、あるいは研究開発、技術産業動向の俯瞰に始まりまして、国際動向や技術評価などの視点からの話題提供、またそれぞれのGX関連領域の研究動向についての話題提供、そして産業界からのアカデミアへのニーズなどについての情報提供など、様々な議論を行いまして、第5回、令和5年の3月30日の回で案を示していただいたところでございます。
 4ページ目のほうに行っていただきまして、そちらが小委員会での議論を踏まえまして決定いたしましたGX基本方針の概要となっております。事業全体の主な方向性といたしましては、まずはチーム型で行う統合的な研究開発を支援するということですとか、またGXということで、温室効果ガス削減と経済波及効果、その両方に対して量的な貢献が期待できるということを念頭に、短期、中期、長期での研究開発課題を設定することですとか、社会への出口を想定して技術研究組合あるいは企業等の参画も可能とすること。またマネージメント対応としてPD、POを任命することや、ステージゲート評価を行うこと。オープンクローズ戦略の策定や知財の方針。またDXといった新しい手法に取り組む。そして同種国との戦略的な連携などの重要な論点を盛り込んでいただいたところでございます。そしてまた各領域におきましても、上記の観点に加えまして、科学的に優れたものであり革新性があるか、そしてアカデミアからの独自性のある貢献が期待できるか。そういった観点から主な研究開発テーマ例を示させていただいたところでございます。
 1つ戻っていただきまして、第6回以降の議論でございますが、こちらにつきましては先程申し上げました通り、幅広くGX実現に向けて様々な領域、そして施策の方向性について検討を進めているところでございます。第6回においてはキックオフというところで、GXに関する俯瞰的な話題提供といたしまして、主査である杉山先生のほうからシナリオ的な観点からの俯瞰的な話題提供。そしてJST、CRDSさんのほうから技術的な観点での俯瞰動向の話題提供などをいただきました。そして第7回では産業界等からの話題提供ということで、特許庁、NEDO、そしてCOCN様のほうから話題提供いただくとともに、10月に研究開発を開始いたしましたGteX、そしてALCA-Nextの採択結果等を報告させていただきまして、それらの推進方策についてもご議論いただいたところでございます。次回につきましては3月頃にまた開催を予定しておりまして、そこでまた学会からの話題提供とともに、第6回以降の議論を取りまとめたようなものについてまた議論を深めていきたいと考えてございます。ご報告は以上でございます。
【原澤主査】  ありがとうございます。それではただいまのご説明についてご質問やコメントがありましたらご発言をお願いします。小委員会のほうも本委員会の5名の委員が参画されていると思いますので、ご発言があればお願いします。ご発言のある方は挙手マークを押していただければと思います。それでは大久保委員、よろしくお願いします。
【大久保委員】  ご説明ありがとうございます。この事業自体はもちろんカーボンニュートラルに重点があるわけですけれども、資料2-1の2ページ目の最初のほうにありますように、ライフサイクルアセスメントや資源循環可能性といった観点から技術評価やシナリオ研究を行うという部分。この部分がそうした新たな技術開発にあたっては大変重要であると考えておりまして、ここに資源循環可能性のことは書いてあるんですけれども、それぞれの技術が開発、そして実用におきまして生物多様性に与える影響、生物あるいは資源循環あるいはその他の環境に与える影響といったものが、総合的にどのようにアセスメントの中で評価されていくのかという観点が少し記述の中で弱いように思いまして、この点実際にはいろいろな取り組みをされているのかもしれませんので、されているのであればそのご説明を、そしてまだあまりそういうことが具体的に考慮されていないのであればそのようなご検討が必要ではないかと思います。以上です。
【原澤主査】  ありがとうございます。それでは事務局のほうから回答をお願いいたします。
【後藤(事務局)】  ご指摘いただきましてありがとうございます。ご指摘いただいたライフサイクルアセスメントですとか、資源循環可能性、そうした観点から技術評価、シナリオ研究を行うこととされている、この部分の重要性につきましては小委員会のほうでも繰り返し議論いただいて、ご指摘いただいてございます。第6回以降の、今後のGXに課する話題提供の面でもこういったご指摘を非常にいただいておりまして、今後の施策の検討の中で考えていきたいと考えておりますし、またGteXにおいても、もちろんこうした観点については踏まえられてございます。今は研究開発始まったばかりというところではございますけれども、方針の中にも書いてございます通り、実際にこの事業によってどういった社会的な貢献ができるかというところを踏まえる上では、そうしたシナリオですとか分析というのは非常に重要なものと考えておりますので、この点は実施機関のJST、あるいはPD、POの皆様も含めて、委員会の皆様のご意見も賜りながら検討していきたいと思います。ご意見ありがとうございます。
【原澤主査】  ありがとうございます。それではほかにご意見ある方、いかがでしょうか。
【藤森委員】  それではよろしいでしょうか。藤森です。ご説明ありがとうございます。私も今のに関連して、シナリオとかこういうところをどう評価されているのか。もちろんやった上での話になるんでしょうけども、そういうところをお聞かせいただきたいのと、多分評価の1つとして、対外発表というものがあるんじゃないかと思います。こういういろんなシナリオで、例えば海外のシンクタンクとか大学、アカデミアから非常に多くのこと、提言とか発表なんかがあります。弊社も含めて、日本は結構技術開発というのは、いわゆるヨーロッパとか欧米、ヨーロッパなんかで例えば水素一辺倒のようなかたちでいっているところでちょっと違うスタンスでやっているところで、日本自体がやるというところなんですけど、彼らはそういうものに対していち早くシナリオとかいろんなことから分析して、アカデミア、いわゆる学術誌とかそういうところにも論文を出したり、逆にそれで日本が影響を受けるというのが多いので、ぜひ逆のパターンというか、そういうこともあるように期待したい。こういう活動は非常に重要だと思っていますので、ぜひインターナショナルに情報発信できるようなことを考えて、評価の対象にしていただければもっと進むんじゃないかなと思いました。以上です。
【原澤主査】  ありがとうございます。この点について事務局はいかがでしょうか。
【後藤(事務局)】  ありがとうございます。JSTのほうでシナリオという観点ですと、新たに大学等でも実施されているシナリオ研究に対しまして、公募によりましてカーボンニュートラルを目指したシナリオ研究を行う事業というのも実施をしてはございます。またTS、NEDOさんですとかそういったところでも、様々なシナリオ分析されているところというふうには認識をしておりまして、そうした知見をしっかりとわれわれのほうでも政策立案に生かしていく必要はあるかなと思っております。また事業の評価という観点ですと、GteXにつきましては、先程の繰り返しになってしまいますけれども、実際に今回課題が採択をされまして、具体的な研究要素と技術が決まってきたところでございますので、そうした技術につきまして、その技術開発における社会インパクトなどをしっかりと分析していくというのは非常に大事だと考えております。ただなかなかすぐにパッと出てくるようなものでもなく、しっかりと分析が必要かなとは考えておりますので、その内容などしっかりと今後検討させていただきます。ありがとうございます。
【原澤主査】  もう1つのご指摘で、国際的な情報発信の件はいかがでしょうか。特にございませんか。ではほかにご意見ある方いかがでしょうか。小委員会は本委員会の下に作られたということで、ただ今いただいたご意見については今日の資料、活動についてということのペーパーの修正ということではなくて、今後小委員会での議論の中で取り上げるというような方向で進めたいと思いますが、こういった取り上げ方でよろしいでしょうか。この件につきましてほかにご意見のある方いましたら挙手ボタンを押していただければと思います。よろしいですか。では引き続き活動についてのペーパーに従って今期の活動を進めるとともに、小委員会については逐次ご報告いただいて、議論を重ねていきたいと思います。どうもありがとうございました。
 続きまして、次の第3の議題になります、研究開発課題の中間評価であります。環境エネルギー科学技術分野の研究開発プランでは、今年度に地球環境データ統合解析プラットフォーム事業と、革新的パワーエレクトロニクス創出基盤技術研究開発事業の中間評価を行うことになっております。両事業の中間評価案について、文部科学省から聴取し、委員からご意見やご質問を受けたいと思います。なお地球環境データ統合解析プラットフォーム事業については、石川委員と本郷委員が利害関係者にあたるため、これらの事業に関する議論にはご参加いただけませんのでご了承ください。それでは事務局から2つの事業について、両方まとめてご説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
【甲斐(事務局)】  それでは環境エネルギー課の甲斐と申します。私のほうから地球環境データ統合解析プラットフォーム事業の中間評価案についてご説明をいたします。では早速3ページのほうから内容に入ってまいります。3ページ、本事業の概要となっております。文部科学省では地球環境ビッグデータを蓄積、統合解析するデータ統合解析システム、DIASを開発してまいりました。地球環境データ統合解析プラットフォーム事業では、このDIASについて、これまでの強みを生かし、さらに拡大、発展させ、気候変動対策等の地球環境全体の情報基盤として社会貢献を実現するデータプラットフォームとして長期的、安定的な運用の確立を目指すことを目的として、令和3年度から令和12年度までの10年間の事業として現在進めているところになります。
 で、事前評価については、必要性、有効性および効率性の観点から評価いただき、推進すべき事業であるとの評価をいただいているというところです。予算のところに入りまして、予算につきましては毎年約3.8億円措置いただいております。令和4年度には約2.1億円、令和5年度には約3億円の補正予算も措置いただいているというところになります。本課題の代表者は海洋研究開発機構の石川センター長です。また実施機関のところですけれども、事前評価の時点から大阪成蹊大学および九州大学が加わりまして、合計8機関という体制になっております。次のページのところで、なお科学技術学術審議会の下に設置されております地球観測推進部会においても、昨年10月にDIASの取り組みのヒアリングが行われますとともに、DIASの利用活用の拡大に向けた審議が今後行われる予定となっております。
次のページ、5ページをご覧ください。本事業で設定しましたプログラム全体に関するアウトプット指標というのがこのページの後半のほうにございまして、アウトプット指標は、共通基盤技術の件数については令和3年度が2件、令和4年度が1件。データセットの登録累積件数については、令和3年度が356件、令和4年度が365件となっております。またプログラム全体に関連するアウトカム指標としまして、DIASの利用者数につきましては、令和3年度が9,774名、令和4年度が1万1,615名となっており、着実に利用者が増えているという状況になっております。6ページ目に入りまして、課題の進捗状況についてですけれども、こちら大きく3つに分けて成果を取りまとめております。1つ目は、防災、減災に役立つアプリケーションに関する研究開発です。気候予測データアセット2022に関する取り組み、浸水予測システム等の研究開発の取り組みを着実に実施し、目標を順調に達成しております。2つ目、オープンプラットフォームの構築です。DIASのデータ利活用の促進のための取り組みを進めるとともに、DIAS解析環境の外部利用制度に関する取り組みとして、令和4年12月に共同研究課題の募集を開始し、令和5年4月に2課題採択しております。
 7ページ目に入りまして、3つ目、DIASの長期的、安定的な運用体制の確立です。ユーザーニーズの把握、利用環境の整備、システム維持管理に関する取り組みを通じ、長期的、安定的な運用体制の確立を目指しています。ユーザーアンケートの結果を反映したWEBサイトの改修、規約等の見直しなどを行い、システムの維持管理および運用を着実に実施しております。(2)各観点の再評価というところになりますが、ここでは必要性、有効性、効率性の各観点で設定した評価項目に対する取り組みの状況を細かく記載しております。説明しますと時間を要することから、詳細に関しましては皆様でご覧いただければと存じます。
 少し飛ばしまして12ページ目に入りまして、12ページ目の下の部分ですかね、科学技術イノベーション基本計画等の上位施策への貢献状況というところになりますが、第6期科学技術イノベーション基本計画の中で目標と設定しているところでいくつかございます。その目標に対して、DIASを活用するなどの取り組みによって目標の達成に貢献しているというところを記載しています。(4)の事前評価時の指摘事項とその他対応状況につきましては特になしというところになっておりまして、今後の研究開発の方向性というところで、13ページ目のところでこれらのDIASの再評価を踏まえて、今後の研究開発の方向性としましては継続ということにしております。理由としましては、本事業の進捗状況や必要性、有効性、効率性の観点から気候予測データセット2022の公開サイトの構築をはじめ、防災、減災に役立つアプリケーションの研究開発等により、国内外の気候変動対策等に資する成果が認められます。またDIASはGEOが構築しているGEOSSを構成し、IPCCの議論の基礎となる各国の研究機関の全球気候モデルの予測結果を相互比較するための取り組みである、結合モデル相互比較プロジェクトに日本の気候変動予測データを提供する役割を果たしているなど、地球規模課題の解決にも大きく貢献しております。このため、本事業は継続して実施すべきであると考えております。
なお本事業の改善に向けた指摘事項といたしましては、詳細のところは割愛いたしますけれども、サーバーやストレージの増強と維持管理、外部との連携推進、地球環境データを用いた新たな研究の推進、国際的な成果の発信と国際連携の推進というところを挙げております。
 最後14ページになりますが、その他のところで電気代高騰等による運用コストの増加などシステム維持管理の課題があること、またIPCCの第7次評価サイクルが開始されたことによるDIASのストレージやサーバーの強化の必要性、DIASのデータの利活用促進に向けた体制整備の必要性等を挙げているというところとなっております。DIASの中間評価案のご説明は以上となります。
【後藤(事務局)】  それでは続きまして、革新的パワーエレクトロニクス創出基盤技術研究開発事業についての中間評価案についてご説明をさせていただきます。3ページ目のほうをお願いできればと思います。3ページ目のほうでございます。まず課題の実施期間および評価時期についてでございます。当初予算といたしましては、5年間の事業ということで、令和3年から令和7年度分を予定しておりまして、それに先立ちまして令和2年度に補正予算をいただきまして、事業開始してございます。ですので期間として令和2年度から令和7年度というようなかたちにしておりまして、今年度中間評価、事後評価は令和8年度を予定してございます。
研究開発の目的と概要についてですけれども、こちらはあらゆる電気機器の省エネ、そして高性能化につながる革新的なパワーエレクトロニクス技術、こちらを創出するために、回路システム、そしてパワーデバイス、さらには受動素子等の一体的な基礎、基盤研究開発を推進するという、そういった事業になってございます。研究開発の必要性につきましては、この事業につきましてわが国の強みを生かして、地球温暖化対策、またエネルギーの安定確保という喫緊の課題解決に資するものであるということで、事前評価におきましても推進すべき事業であるという評価をいただいているところでありますし、また実施にあたって出口を見据えて産業界や関係省との緊密な連携対策の実行を進めることが重要であるというふうにされています。
 予算額の変遷といたしましては、申し上げました通り、令和2年度に補正予算として6.7億円を措置いただきまして、それ以降は毎年度13.5億円の予算で実施をしております。5年間の実施機関の予定でございます。課題の実施機関、体制につきましては、それぞれの領域に分かれておりまして、研究代表者がございます。パワーデバイスの領域につきましては、名古屋大学の、ノーベル賞を受賞された天野先生のところで、強みでありますGaN、ガリウムナイトライドを中心とした盾形GaNのパワーデバイスの開発を行っていただいております。また受動素子の領域におきましては、北海道大学の幅崎先生のところでコンデンサーの研究開発ですとか、NIMSの岡本先生、また信州大学の水野先生のところでは、磁性材料を用いた素子の開発をしていただいているところです。そして回路システムのところについては、東北大学の高橋先生と、それから東京都立大学の和田先生のところで研究開発を実施していただいております。
また次々世代といたしまして、今後のパワエレ技術、次々世代の技術として今後台頭してきそうな技術の要素技術というところをFS的にやっている領域がございまして、こちらでは8つのテーマで様々な研究課題を走らせているところでございます。
 その他のところでは、関係省との連携を記載させていただいてございますけれども、特に半導体に関しては経済産業省のほうで、昨今TSMC、ラピダスなど、非常に多くの取り組みがなされておりますけれども、半導体産業政策や研究開発戦略の策定実行を担う経済産業省のほうとは、日々担当レベルとは日常的な情報交換を行っておりますとともに、また両省の主催する会議においても相互に参画をして情報提供、議論をするなど、日頃から密に連携をして両者の取り組みを進めているところでございます。また事業で得られた成果を幅広く活用するために公開シンポジウムを令和4年度に実施いたしましたし、令和5年度につきましても2月28日に実施をする予定でございます。
 続きまして中間評価表本体のほうでございます。こちらにつきまして、まず政策評価体系上の内容としてプラン名ですとかプログラム名、上位施策などを記載させていただいております。アウトプット指標といたしましては、それぞれの領域に関係する研究開発テーマ数ということで、現在15の課題が走っておりますので、15の課題を記載させていただいております。またアウトカム指標といたしましては、論文、特許、それから分野横断の共同研究件数ということにしております。論文、特許につきましても着実に成果が創出されておりますとともに、この分野横断の共同研究数というのは、この事業の中でそれぞれのテーマの中で相互に連携をしながら研究を進めているところで、領域内でも、事業内でもしっかりとテーマ間の連携が進んできているというところでございます。
 続きまして評価結果のところ、詳細でございます。課題の進捗といたしまして、本事業はガリウムナイトライド、GaN等の次世代半導体の優れた材料特性を生かした高性能なパワーデバイス、これを回路システムですとかそれに対応した受動素子等、これを実現してトータルとして超省エネ、高性能なパワエレ技術、これを創出することを目的としております。そのため、回路システム領域、パワーデバイス領域、受動素子領域、次々世代領域という4つの領域を設けまして、進捗に応じて相互の連携を進めながら研究開発を推進しているところです。また関連分野の連携促進ですとか技術開発動向の調査、また進捗管理、評価等の支援を行うようなチームも置きまして、しっかりマネージメント体制も強化をして推進しているところでございます。
 全体といたしましては、各領域において以下に記載した通り、しっかりと研究開発を着実に実施して、目標を達成してきたと評価をしてございます。個々の技術レベル、各領域でしっかり高めてきてございまして、今後事業後半年度にあたって、これをさらに領域間の連携を進めまして、まさにパワエレトータルとしての性能向上に進んでいく。そういったような動きができるような状況を見据えられるような段階まで進んできたと認識をしております。
それぞれの領域の成果、進捗状況についてですけれども、まずパワエレの回路システム領域につきましては、これまでに小型化と高効率化を両立するような、これらは相反する性質ではあるんですけれども、両立するような回路制御手法の開発ですとか、EV用のパワーモジュールの小型化、そうした成果を創出してきておりまして、国際学会への基調講演ですとかトップ出願など、そうした成果が着実に出てきております。今後回路システム領域がある種中心となりまして、パワーデバイス領域で実施されておりますような縦型GaNデバイスの適用、そうした他領域との連携の加速を通じて、そうしたフィードバックを通じた領域内での好循環というのは期待されると考えております。
 またパワーデバイス領域につきましては、GaNの優れた材料特性を最大限に引き出すパワーデバイスの研究開発を実施してございます。縦型GaNパワーデバイスの実用化に向けては、その課題として、耐電圧ですとか省エネ、そして信頼性等のところがございましたが、その部分の性能向上ですとか、そして作成コスト、この部分の低減に資するような成果も創出されてきておりまして、IEDM、これは半導体分野での世界的な権威がある学会の1つですけれども、こちらに採択される、国際的にも評価されるような成果が創出されてきてございます。今後回路システム領域との連携によりまして、実際の回路における試作デバイスの動作検証や、さらなる性能向上などが期待されます。
 受動素子領域につきましては、発熱が少なくて、小型なコイルやコンデンサーを実現するような材料および設計技術の研究開発を実施してございます。これまでに高電圧や高周波、高温など次世代のパワーデバイス特有の動作条件、そうした中で適応可能な材料を開発してきておりまして、それらを用いて試作したコイルやコンデンサーの性能が既存の製品を上回る水準に達しているということを確認いたしております。これらについて、要素技術的に企業との連携も進んでおりまして、協働でのトップ出願など、実用化に向けた成果も着実に創出されてきてございます。この分野につきましても、パワーデバイス領域と同様、今後回路システム領域などと連携をして、回路内での性能検証を進めていくことが重要だと考えてございます。
 最後に次々世代領域でございますけれども、こちらは将来的にパワエレ機器の応用を目指す次々世代技術、そして有望と考えられる8つのテーマの研究開発を実施してまいりました。この領域については実施期間3年程度としておりまして、3年目にあたる今年度の事業推進委員会において、進捗の評価を行いました。その結果、いずれの課題につきましても当初の目標に対して十分な成果が得られていると評価を受けてございます。そしてまた、例えばダイヤモンド半導体ですとか、エキソセラミックコンデンサー、こうしたテーマに対する5つのテーマについては、今後研究開発をこの事業の中で継続することによりまして、他領域との連携も通じまして、革新的な成果の創出、また実用化が期待できるといった評価を受けましたことから、令和6年度以降も継続するということを決定してございます。
 (2)として、各観点の再評価のところでございます。それぞれまず必要性のところについては評価基準として、国費を投入する必要性があるかというところでございます。こちらにつきましては事業開始当初、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略など、当時からカーボンニュートラルに向けた対応という意味で、パワーデバイスは重要なキーデバイスになってございましたが、こうした環境は昨今より高まっていると認識しておりまして、カーボンニュートラルに向けた動きが非常に高まってきてございます。また半導体につきましては、カーボンニュートラルだけではなくて、経済安全保障ですとか、デジタル社会への対応という意味で非常に重要性が増してきております。半導体、デジタル産業戦略におきましても、今後取り組むべき課題としてGaNや酸化ガリウムパワー半導体実用化に向けた開発などが位置づけられておりまして、今後国際競争を勝ち抜くためにも、日本全体としてパワー半導体の競争力向上が求められていると認識しております。そのため、本事業は必要性が高いと評価をしてございます。
 あと有効性につきましては、実用化に向けた必要な取り組みが設定されているかというところでございますが、こちらにつきましてはまず研究開発体制のところでは、先程来申し上げております通り、パワエレ技術というのは複合技術でありますことから、単体のパワーデバイスや受動素子が特定の条件において優れた特性を示していても、パワエレ機器トータルとしてその特性を最大限発揮するための研究開発課題が多く存在するということがございます。そのために本事業では、構成要素それぞれの技術レベルを高める研究開発に加えて、機器として組み上げた際の課題を解決する統合的な研究開発を実施してございます。
 またマネージメント体制におきましても、研究開発をリードできる優れた知見やマネージメント力を兼ね備えた人材を、プログラムディレクターとプログラムオフィサーとして配置をしまして、年30回程度にわたる非常に密なサイトビジット、ヒアリングなどのフォローアップ等を通じながら、しっかりと事業の助言、評価を行ってございます。こうした取り組みの中で、実用化に向けてしっかりと取り組みが設定されていると評価をしてございます。
 最後効率性につきましては、有効性の観点と関係するところもございますけれども、目標達成に向けて適切な実施体制ですとか運営体制が含まれているかというところで、先程の有効性で記載しました研究開発体制、マネージメント体制、そして関係省との連携体制。それに加えまして、PD、POの下、関連分野の連携の促進ですとか、研究開発動向の調査、そしてまた出口戦略の検討など、そうした事務の支援を行う研究支援チームも設置いたしまして、しっかりと事業のマネージメント等に取り組んでいるところでございます。そうした取り組みを踏まえまして、本事業の効率性は高いと評価をしてございます。
 3番目は科学技術イノベーション基本計画等の上位施策への貢献状況ということで、しっかりと対応する記載に対して取り組んでいる事業であると認識してございます。これらまとめまして、今後の研究開発の方向性といたしまして、本課題は継続をするというふうに評価してございます。
この事業、GaN等の次世代パワー半導体の特徴を最大限活用したパワエレ機器等の実現に向けまして、回路システムや受動素子も含めたトータルシステムとしての統合的な研究開発に取り組んでおりまして、これまでにもそれぞれの領域において優れた成果を、進捗を見せていると認識しております。こうしたことを踏まえまして、事業の後半年度の実施にあたりましては、回路システム領域を軸とした領域感の連携をより一層強化しまして、各デバイスの性能向上と機器トータルとしての性能向上を両輪で進めて、産業界や関係省とも協力しながら、出口を見据えた研究開発が推進されることが重要であると認識してございます。ご説明は以上でございます。
【原澤主査】  説明どうもありがとうございました。それではまず地球環境データ統合解析プラットフォーム事業、DIASの事業の中間評価案について、ご質問やご意見がありましたらご発言お願いします。いかがでしょうか。それでは原澤から2つほどお聞きしたい点がございます。1つは、4ページの6で、地球観測推進部会のほうで、今後10年にわたる地球観測の実施方針を今検討中だというお話がございましたけれども、この実施方針はいつ頃成案となって公表されるのかという時期的な問題が1つと、その中でDIASは今後非常に重要な役割を果たしていくのではないかと思うんですけれども、DIASと実施方針との関係を教えていただきたいのが1点目です。
 あと2点目が、最後のほうに改善に向けた指摘事項4点挙げられてて、私これ非常に重要だと思うんですけども、特にハードの問題もさることながら、これだけ活用が進んで、データ量が増えて、海外まで視野に入れた活動となってきますと、体制として大丈夫なのかというのがちょっと気になるところではあるので、その辺について説明いただければと思います。以上2点です。よろしくお願いします。
【松原(事務局)】  ご質問いただきありがとうございます。環エネ課の松原と申します。まず1点目の質問について答えさせていただきます。今のご質問のあった地球観測推進部会で審議をされている次期今後の10年のわが国の地球観測の実施方針でございますけれども、現行の方針というのは平成27年に策定をされたものでございまして、来年で10年経過するということで、来年の初旬、1月か2月頃の改定を目指して審議を進めているところでございます。現行の実施法人においても、DIASというのは地球観測データをしっかりと溜めておくという部分で重要な役割を果たしているというところでございますけれども、DIASは地球観測データに加えまして、気候変動予測データというのも蓄積していると。今後IPCCの第7次評価サイクルが本格化するというところで、さらに役割が重要になってくると。昨今気候変動予測データにつきましては、公共団体、あるいは国だけはなくて民間での活用が進んでいるというところでございまして、こういう動きを踏まえましてDIASの役割というのはより重要になってくるということがございまして、そういう事情を踏まえて、地球観測推進部会におきまして、DIASも含めて審議をしていくというところでございます。【甲斐(事務局)】  続きまして、もう1点指摘いただきました体制のところの話になります。われわれとしましても今後、今松原推進官のほうからご指摘をいただきましたように、今後DIASで地球観測データや、地球気候予測データを蓄積し、提供していくという中では、さらに体制の充実が必要になっている状況であると考えておりますので、そういったところに対応していきたいと考えているというところになります。ご質問に対してお答えなっておりますでしょうか。
【原澤主査】  ありがとうございます。結構です。ではほかにご質問、コメントございますでしょうか。大久保委員、お願いします。
【大久保委員】  ありがとうございます。今のご質問と関連するんですけれども、今後に向けたところでは、様々なデータがどんどん増えてくると。例えば生物多様性でありますとか、そしてユーザーもグローバルなレベル、ナショナルなレベル、ローカルなレベルというふうに増えてくるという観点では、体制の充実という、今あったご質問との関係では、やはり全体のシステムの持続可能性を含めまして、どこまで膨らんでいって、どういうデザインでやるのかというところを考えるチームとか体制というのがどのように確保されているのか。そして、当初よりも課題が広がっていて、それは大変重要なことで、やるべきだと思いますし、この中間評価の結果にも私自身全く異存ありませんが、そこをより発展させていくためにはより大きなサポートが必要になると思うんですが、そこをどう確保されるのかという体制の問題が1点。
 また似た話なんですが、国の機関はともかくといたしまして、自治体になりますと現在限定ユーザーに、例えば浸水の予測データを提供するというかたちで自治体との連携が進んでいるという記述がありますが、中小河川も含めてということになりますと、都道府県レベルのほかに現在もいくつかの市町村との連携をされているわけですが、その活用してもらう自治体側の人材も含めまして、使いやすさでありますとか、あるいは使えるような人材をどう確保、育てていくのかといった観点は、特に自治体レベルでは必要ないのかどうか。また市民参加型のデータ収集ということも掲げていらっしゃって、これも現在の世界的な動向にフィットする重要な観点だと思いますけれども、ここもどのように、編集も含めた人材育成をされていく予定があるのか。あるいはそこまではとても手が回らないので、それは各場所でやってくださいということになるのか、その辺りをお聞かせいただければと思います。
【原澤主査】  ありがとうございます。それでは事務局、よろしくお願いします。
【甲斐(事務局)】  人材育成といったところに関しまして、海外での事例というところになるんですけれども、DIASの上でe-ラーニングシステムを構築しまして、そこで洪水の予測システムといったところの運用を担うような人材の育成をするためのOSSRというシステムがございまして、そちらのほうはDIASの上で構築されて、海外で連携して使われているというところがございます。これが国内で使えるかどうかみたいなところはまた別の話にはなるのかなというところですけれども、例えばそのような海外での事例というところを参考にした取り組みはあるのかもしれません。ただご指摘いただいたように、システムを運用して、人材育成を実施していくための人材と体制というところに関しては課題があるというところになりますので、そういったところに関しては対応が必要だとわれわれとしては認識しております。
【松原(事務局)】  補足させていただきます。まずDIASを支える人材ということにつきましては、今後利活用拡大をしていくということを踏まえると、体制についてはもう少ししっかりとしなければいけないなという部分は課題だと考えております。一方で、例えば自治体も含めての人材をどう育成するかということにつきましては、実はDIAS単体ということよりも、わが国の地球観測データを扱う人々の層をどういうふうに厚くしていくのかという、もう少しナショナルな話だと考えておりまして、これにつきましてはDIASを使っている人たちのことも含めて、地球観測推進部会の実施方針を策定していく中で考えていくべきものかなと考えております。またおっしゃる通りで、ナショナル、ローカル、インターナショナルという様々な層があるんですけれども、例えばインターナショナルにつきましては、DIASは例えば国際的な全球地球観測システム、GEOSSにつながっているというところもございまして、そういうつながりを通じてインターナショナルにも幅を広げていくと。またナショナルにつきましては、先程の実施方針といいますのはナショナルのわが国の地球観測の戦略でございますので、そういう中でしっかりと規定していくということで、わが国全体の地球観測データの活用の人材を育てるということも含めて、しっかりと議論をしていきたいと考えております。ありがとうございます。
【原澤主査】  ありがとうございます。それでは続きまして、竹ケ原委員、お願いいたします。
【竹ケ原委員】  ご指名ありがとうございます。ご説明ありがとうございました。上位施策への貢献のところでお書きいただいている災害対応に関するいろいろな局面での意思決定の支援、今回の能登の地震なんかを考えてもますます役割が大きくなってらっしゃるなと思うんですが、この辺の具体的な意思決定の支援の在り方についてのイメージがあれば教えていただきたいのと、これを最終的に連携させて、関係省庁間で連携した統合型のシステムを構築されるということなんですが、この現状の見立てといいますか、方向性というんですかね、この辺りを補足いただけるとありがたいんですが。
【原澤主査】  では事務局、お願いします。
【甲斐(事務局)】  今ご指摘いただきました、災害対応の意思決定に関するシステムといったところに関しましては、まずは防災科学技術研究所のほうで構築を進めておりますSIP4Dといったところへの接続から対応していくのかなと認識しております。SIP4Dとの接続の部分に関しまして、DIASのほうでの共同研究を進めていくというところが見えてきておりますので、そちらのほうを今後引き続き進めていくというところが必要になってくるのかなと考えております。
【原澤主査】  ありがとうございます。ほかにご意見、ご質問ございますでしょうか。よろしいですか。それでは2つ目の事業、革新的パワーエレクトロニクス創出基盤技術研究開発事業の中間評価案について、ご質問やご意見がありましたらご発言をお願いいたします。よろしくお願いします。いかがでしょうか。本事業も順調に進んでおり、成果も出ているということで、中間評価としては継続すべきという評価です。本郷委員、お願いいたします。
【本郷委員】  ご説明ありがとうございました。実際ご説明をお聞きしまして、非常に重要であり、気候変動はもとより、日本の産業競争力、それから安全保障でも非常に重要な分野であることが理解できました。結果を期待したいなと思います。その中で最後に、統合的に、技術単体でじゃなくて、システムとしてどう使っていくかというところも考えながら、ということが重要でありまして、まさにそこがキーであり、ぜひ頑張っていただきたいなと思います。質問なんですけれども、これは各国が同様に力を入れている分野だと思うんですけれども、日本といいますかこちらのプロジェクトの国際的な位置づけというのはどういうようなものなんでしょうか。進んでいるというのは分かったんだけれども、ライバルというか、他国の状況と比べてどういう状況にあるのかというのがご説明なかったので、そこを教えていただきたいというのがあります。
 それからもう1つ、もし他国とか他のプログラムに比べてやや遅れているということがあるのであれば、キャッチアップを図らないといけないわけですけれども、そのときの手法として、海外の研究機関や海外の研究者を巻き込むというようなことは考えられているのでしょうか。というのは、研究機関のところを見ますと、全て日本の大学、あるいは研究機関ばかりですので、この辺りもう少し、私自身としてはもう少し幅広く、結果を出すためには他国で強いところとも組むとか、そういうことを考えてもいいんじゃないかなと思ったので、他国との連携みたいなところはどうなっているかというのを質問させていただいた次第です。よろしくお願いいたします。
【原澤主査】  それでは事務局、よろしくお願いいたします。
【後藤(事務局)】  本節、ご指摘ありがとうございます。なかなかクリアパットにご説明するのが難しいところもありますが、拠点の事業者、あるいはPD、POと話している中での認識としてお話させていただきますけれども、少なくとも国際的な立ち位置という面につきまして、わが国の研究は、特にGaN-on-GaNのパワーデバイス、そうした面では非常に世界を先導する位置にあるというふうに認識してございます。この分野で米国でも有名な研究所ございますし、欧州でもプロジェクトが立ち上がったりしているんですけれども、聞くところですとそういったプロジェクト、1度終わってまた立ち上がって、というように、支援が断続的になっているようなかたちだというふうにも聞いてございます。一応このプロジェクト、前身の事業から踏まえまして、縦型GaNのデバイスというところで、もちろんスコープなんかは変わってきているんですけれども、ある程度しっかりした体制で継続的に取り組んできてございます。そうしたこともあって、様々な国際学会でも日本の研究者が発表されているのかなとも思っております。
 産業界の面では、パワーデバイス、パワーエレクトロニクスの面では、日本はしっかりとしたシェアを持ってございますけれども、こうした新しい取り組みの部分でしっかり国内メーカーに渡していけるか。そうした点につきましてはやはり課題だなと考えておりますので、その部分はしっかり省庁ですとか、あるいはこうしたパワエレ機器トータルとしての性能を追求するというところが、実際の量産、大型化にあたっての課題解決につながっていくと思いますので、そこをしっかり取り組んでいく必要があるかなと考えているところでございます。
 また海外との連携につきましては、この事業の中で実施しているわけではないんですけれども、実際に拠点なんかにサイトビジットに行きますと、ある意味で当然のようにではあるんですけれども、海外の機関と、例えば米国の大学なんかと人的交流はしておりますし、施設もやはり世界に限られたところございますので、お互いのノウハウなどを交流をしてやっているというふうにも聞いてます。あとはそういう意味で、どういったかたちで連携を事業の中で進めていくかというところは、一方で経済安全保障といった文脈ですとか、技術をしっかりと守り育てていくというところもあるかと思いますので、そうした中で考えていくところかなと思っております。すいません、雑駁でございますけれども。
【本郷委員】  ありがとうございます。せっかくリードしている部分があるのであれば、こういうところでもPRされてもいいかなと思いますし、海外との連携のところは先程のGteXのところでありましたけれども、安全保障というなかなか難しい問題もあるので、同種国との連携みたいな話も念頭におきつつ注意しながら進めるというのは結果を出すという意味では非常にいいことではないかなと思います。ぜひ頑張っていただければと思います。ありがとうございました。
【原澤主査】  ありがとうございます。ほかにご意見、ご質問ございますでしょうか。いかがですか。私から1点質問です。最後のほうに出口戦略と企業との連携が大事だということで、このところには、表でいうところの分野横断の共同研究件数といったところには反映されているんでしょうか。具体的には企業との共同研究という位置づけなんかも重要かなと思うので、そこを確認させてください。
【後藤(事務局)】  ありがとうございます。まず指標のところにつきましてですけれども、今この分野横断の共同研究件数というところにつきましては、今この事業で15のテーマ走っておりますけれども、その事業の中でお互いに連携をしているという件数を書いてございます。というのは、事業の趣旨としまして機器トータルとしてやっていくという中で、ただやはりそれぞれ、例えば回路の方とデバイスをやっている方、全く言語も違うというような、そういった同じ中であっても非常に連携していくのにハードルがあるという中で、しっかりと分野横断的な研究をするというところに価値があろうというところで、指標として置かせていただいているところでございます。
 一方で、先生のおっしゃったように、出口への導出に向けた指標という点でもう少し考えられないかというところは重要なご指摘かと思いますので、その辺りは今後まだ事業も続いていく中でございますけれども、検討させていただきたいと思います。ありがとうございます。
【原澤主査】  ありがとうございます。それではほかにご意見は
【藤森委員】  すいません、よろしいでしょうか。1つ今のに関連して、ほかの研究でもあるんですけども、いわゆるドクターコース、ポスドクですね。論文相当出されているということなんですけど、最近なかなか日本人でドクターコース行く学生が減って、少し戻ったという話も聞きますけれども、そういうところにはどれだけコントリビューションされているのか。逆にこういう開発を通じて、そういうドクターを持った学生をなるべく多く社会に輩出するというのも非常に重要じゃないかと思ってまして、そこら辺のところはどのように施策として動かれているのか、ご説明いただけると幸いです。
【後藤(事務局)】  ありがとうございます。例えば人材育成の観点は、おっしゃる通りわれわれも非常に重要だと認識してございます。ここの中で支援をしているチーム、テーマは本当にパワエレ機器、特にガリウムナイトライド系に関する、本当に様々な全国の研究室が参画してございますし、その中では当然ポスドクですとかドクターコースの学生、あるいは修士も含めて人材育成は進んでいると考えてございます。で、その点につきまして、今まだデータは取りまとまっていないんですけれども、実際どういった人材育成効果、例えばここの事業にどれだけの人が関わってきたかですとか、そうしたところは少し調査をしてみようかと考えておりまして、まだ取りまとめ中ではあるんですけれども、ご指摘になられた重要な点として、今後施策の効果の把握として取り組んでいきたいと考えてございます。
【藤森委員】  ぜひよろしくお願いします。やはり基本は人なんでね、どれだけこういう先端的な研究に携わって、人材がこういう分野で出ているかというのが必ず将来につながると思いますので、よろしくお願いいたします。
【原澤主査】  重要なご指摘、ありがとうございます。それでは本日いただいたご意見を踏まえて、中間評価案を修正したいと思います。修正につきましては主査、私のほうに御一任いただければと思います。
 それでは次の議題にまいります。次の議題は、大学の力を結集した地域の脱炭素化加速のための基礎研究開発の実施状況についてであります。環エネ分野の開発プランにつきましては、大学の力を結集した地域の脱炭素化加速のための基盤研究開発事業、本委員会で中間評価を行うことになってはいませんけれども、その実施状況を本委員会で聴取し、今後の効果的な実施に向けた方策を議論したいと思います。本事業の研究代表者である東京大学の藤田教授から事業の実施状況を伺って、委員のご質問やご意見を伺いたいと思います。それでは藤田先生からご説明をお願いいたします。ではよろしくお願いします。
【藤田氏】  東京大学の藤田でございます。本日は貴重な機会をいただきましてありがとうございます。それでは画面共有させていただきまして、15分ほどで簡潔にこれまでの研究の進捗をご説明させていただければと思います。私の声と画面は伝わっておりますでしょうか。
【原澤主査】  はい、声も画面も大丈夫です。
【藤田氏】  ありがとうございます。この研究は大学等コアリションの大学の力を結集した事業、地域の脱炭素化加速のための基盤研究開発事業としまして、2021年から採択をいただいて進めている研究事業であります。基本的には7つの大学と2つの国立研究機関で、私どもが研究代表ということで、それ以外に今一覧で見ていただいているような大学に入っていただきながら、いわゆる脱炭素地域のガイドラインづくりを行っている研究であります。おおよその全体像を、少し忙しい図でありますけれども、ご覧いただいております。
1つは、脱炭素先行地域というのは、ある程度具体的に先行しておられる地域がございます。そうしたところのいわゆる技術インベントリ、あるいはそのための事業システム、あるいは合意形成システムということをそれぞれの特徴に応じた先行例として要素化するということを下のレイヤーで考えております。下のレイヤーでは、まずは地域エネルギーを軸にして脱炭素化を進める北九州市と北九州大学。さらに交通システムを、特にLRTが開通もしましたが、交通システムを軸に脱炭素地域を進める宇都宮市、宇都宮大学と早稲田大学。それから脱炭素の都市ストックマネージメントを行っている名古屋大学、岐阜大学と連携する中で、さらに農山村のルーラルなアイデアで脱炭素を取り組む地域と連携するようなことを、これを地球研におすすめいただいております。それぞれの先行する、先導する脱炭素の試みというものを、いわゆる技術要素、あるいは先程申し上げました政策要素、それから計画要素、これを要素化しております。要素化したものを真ん中のレイヤーであります、全体統合研究ワーキングと呼んでおりますけれども、東京大学と国立環境研究所が、このあとご質問があるように聞いておりますけれども、国環研で開発された統合評価モデルの地域版を使って、地域のシナリオを描くとともに、さらにそれを合意形成の場、ワークショップを通じた合意形成のプロセスデザインということを、この真ん中のレイヤー、全体統合のグループで、東大、東洋大、国環研で進めているところであります。
 今構想しておりますガイドラインというのは、非常に単純化、簡略化しておりますけれども、大きく3つの要素から構成されると考えております。1つは、地域の課題、あるいは地域の特徴を定量的に明らかにするという現状の診断と、それから右側にいきまして、統合評価モデルの地域版、地域AIMとわれわれは呼んでおりますけれども、地域の統合評価モデルを使いまして、その地域の将来的な脱炭素の目標を2030年、2040年、2050年、定量的に、大々的なシナリオを提示するということ。これは右側の(2)であります。加えまして、脱炭素地域はアクションのステージに来ておりますので、各地域ごとにまず先導的に実現するべきモデル事業というのを、これを定量的に設計するという、それぞれの要素を具体化して地域に実装していくというような研究を始めております。
まずはそれぞれの地域でのワーキングでありますけれども、北九州市はご案内の通り、既に様々なタイプの地域エネルギー源を整備して、現在はその供給側と需要側の連携、あるいは様々な産業系、あるいは民生系、あるいは都市系の様々なエネルギー事業の統合化というのが課題になっております。実際に再生可能エネルギーの社会連携と、試案としましては、風力発電を使った水素、さらには蓄電システムを使った需給の連携ということを、この北九州市の場で実際に、脱炭素先行地域としても実装が始まっておりますので、これを要素化して一般化するということを北九州大学を中心に始めていただいております。特に発電特性、あるいは需要特性というものがある程度明らかになってきておりますので、それを使ってどのような蓄電機能をこの場に整備するのがいいのかというのは、特にV 2ビルディングと言われているような、EVを使った地域のクラウド蓄電というものがどの程度脱炭素に貢献できるかということを、具体的な実際の地区を想定しながら定量化しております。その結果の中で、V2Bのシステムを入れることによってある程度CO2が、約2割程度削減できる2030年を描けるというような、こういうシナリオをこの研究の中から出しまして、これは北九州市の方々にも見ていただいております。
このエネルギーの北九州のチームは、右側のエネルギーの供給に関する解析のサブシステムと、それからエネルギーの需要の解析システム、それと右の緑の四角がございますけれども、地域でそれを受給を連携したかたちで蓄電する、あるいはV2B、V2Hを含むような、地域での自律的な蓄電システムというものを、これを定式化して、北九州の中での将来展開の可能性をシミュレーションするとともに、同時にこのプロセスがほかの都市で展開できないかということを考えているところであります。
 2つ目の地域のワーキングとしましては、宇都宮であります。宇都宮はLRTが昨年開通しました。このLRTを軸に、地域電力のネットワークを作る、あるいは地域のディマンド交通とLRTを連携させるという、そのようなシステム、事業が具体的に始まっておりますので、ここに計画の段階からこの研究に携わってこられた早稲田大学、宇都宮大学との連携の中で、必ずしもLRTに限らないんですけれども、MaaS、CASEと言われているような地域の交通システムというのがどの程度要素化できて一般化できるかということを、宇都宮をベースにして考えております。で、実際に交通というのは様々な波及効果を持ちますので、LRTの導入以外に、この系統、この地域の電源が脱炭素化、低炭素化するということ、あるいはテレワークなりの導入、あるいはEVの導入によってこの地域で、これも2030年までに29パーセントまでCO2が削減できると。このLRTを1つのきっかけとして、交通とエネルギーをリンケージさせる脱炭素インフラを作る場合にどの程度脱炭素効果があるかということを具体的に要素化して、一般化しようとしております。
 実際にこの宇都宮グループでは、交通行動を実際に自己診断するとか、あるいは将来的に土地利用を転換させた場合にどのようになるかということも含めて、いわゆるコンパクト化をLRTの周辺で行うことによる脱炭素のシミュレーションも行っておりまして、そのための基礎調査としまして、今年度は具体的な交通行動のモード選択の調査ということを行っております。こうした実証的な交通行動調査に基づきまして、2030年、さらには2040年、2050年の脱炭素な地域システムを、交通とエネルギーを軸にして描いていこうということをこの宇都宮で行ってまいります。
 少し時間も限られておりますが、名古屋大学、岐阜大学では実際に建物のストックマネージメントをGISを使ってシミュレーションできるような、時系列の空間ストックデータベースを作っております。実際にコンパクトな都市を作ることによって、物質の投入量を減らしながら同時に脱炭素も実現するような、そういう地域マネージメントが後進の中で実現できないかということを、これも名古屋、さらには岐阜で検討を始めておるところであります。
元の前段の統合評価のチームに、統合研究のワーキンググループに移らせていただきます。先程申し上げましたような、それぞれのモデル事業の要素、さらには将来のシナリオ予想(2)、(3)というものを、それぞれの北九州、あるいは宇都宮の実践例からこれを要素化、一般化することによって、このインベントリをほかの自治体に参考にしていただくと。あるいは定量的なデータとして使っていただくようなことを考えております。ただそのためには地域の課題、あるいは地域の特性、長所、短所を評価する必要がありますので、まずは(1)の一番左側では現状の診断を行えるツールを実際に様々なスケールの自治体に使っていただくものを作りつつあります。例えばこれは越谷市で実際にこの研究の統合的なテーマ、様々な交通から、エネルギーから、それからストックマネージメント、複合的に展開するようなことを考えておりますけれども、その前段としまして、地域の診断をするためには、例えばSDGsのローカル指標を使ったかたちで、その地域の長所、短所を相対的に描くことであるとか、で、これからこの研究事業の中での地域診断として着手しておりましたが、その地域のエネルギープロファイルを定量化して、その定量化することが脱炭素の地域の計画、あるいは将来目標を作るためには必要だということで、実際に空間ごとの需給のデータを集計的に見るものと合わせまして、その地域のデータを活用するかたちで季節ごとの時系列の需給のバランスを見るというような、そんなプロセスを今開発しております。これは実際に左側1月で、右側が5月とすると、赤字が需要の24時間変動でありまして、上の山形、つり型になっておりますのが、これが越谷におけます再生エネルギー、主に太陽光エネルギーの発電特性でありまして、この時系列の特性を受給で解析することによって、ここにおけるエネルギーの将来目標、脱炭素エネルギー事業を軸にした脱炭素の将来目標、さらには事業の設計を行うことを考えております。
 さらに先程来見ていただきました各先行する地域の交通エネルギー、ストックマネージメントの技術要素を2050年にその地域でどういうふうに導入できるかということをインベントリとして定式化しまして、先程来申し上げました、これは福島に実際に展開した統合評価モデル、福島AIMと呼んでおりますが、これの越谷版、あるいは北九州版を作りまして、実際に将来のシナリオ、脱炭素の可能性というものを2050年、2040年のシナリオ予測とするようなことをいくつかの自治体で始めております。今見ていただいておりますのは統合チームで進めております、越谷市におきまして、先程のような技術をボトムアップ、フォアキャスティングで導入するだけじゃなくて、バックキャスト的に導入した場合の2050年の脱炭素ポテンシャルというのを定量化しております。
現在中心的に取り組んでおりますのは、どうやってモデル事業を設計するかということでありまして、現状の特性診断、さらには将来の目標、この2つと整合するモデル事業を設計するために、今それぞれの地域ワーキングが一般化、要素化しております技術メニュー、技術インベントリを、これを定量化、定式化することを行っております。具体的な北九州のエネルギー系の技術メニューというのは、この曼荼羅図の中でいうと左側に位置付けられております。それ以外に交通系の技術メニュー、さらには廃棄物の活用とか、あるいは地域の産業排熱。こちらのほうは北九州で具体的に始めておりますけれども、そうしたそれぞれの地域ワーキングから出てくるものを、こうしたかたちで定量的なメニューとして要素化、一般化することによって、各自治体が脱炭素の未来、それに脱炭素の事業を設計するための1つの指針となるようなエビデンスを提供するというような、そんなシステムを作っております。
 実際に越谷では、部分的に北九州、あるいは交通のシステム等見ていただきながら、今の段階では、1番がバイオマスごみ発電を活用する地域エネルギー事業の創生、それから2番目が、多自治体が連携することによる蓄電を含めましたカーボンニュートラルなエネルギーマネージメント、さらに熱電併給を志向するかたちでのスマートアグリというような、そういう事業を地域診断と将来のシナリオ予測と合わせて並行して進めております。この研究事業の特徴、特に統合のワーキングの特徴としましては、これを実際にエビデンスベースドなディシジョンメイキングとして、ワークショップに展開することを考えております。こうしたワークショップの運営デザインについては東洋大学を中心に考えていただいておりまして、今年度既に北九州で市民会議の形態での、いわゆるボランタリーな参加ではない、くじである種の強制力と言いますか、任意の方々が集まるような会議体を北九州で作っておりまして、実際に北九州における現状と将来のシナリオ予測をワークショップで実現するようなかたち。これもガイドライン化することでその知見をほかの自治体で展開できるように考えております。この内容は文科省さんの支持もいただきまして、ホームページで発信、公開しております。英文も今月中に公開するかたちで進めております。
そうしたことを含めまして、今年度はコアリションの総会シンポジウムで基調講演としてこの内容を、もう少し前の進捗を発表するなり、あるいは環境科学会、あるいは土木学会等の共催シンポジウムで本研究事業を発信することで、実際の社会実装研究として一般化を図ろうとしております。来年度につきましては北九州市、越谷市と連携するかたちで、市民シンポジウムを考えております。コロナで少し遅れ気味になっておりますけれども、国際学会、インダストリアルエコロジー国際会議等の各メンバーが連携をしております。国際会議と連携するかたちで国際シンポジウムを、まずはアジア、ヨーロッパで来年度計画を検討しているようなことであります。こうした会につきましては、定期的に文科省とのご担当との研究会議の場を持たせていただくとともに、環境省の脱炭素先行地域をご担当の部局と定例的な、Zoomが今まで多くありましたけれども、定例的な会議を今年度から始めまして、来年度、それをより具体的なフィードバックをいただいて、研究の実用性を高めていこうということを考えているところであります。私からのご説明は以上とさせていただきます。どうもご清聴ありがとうございました。
【原澤主査】  藤田先生、どうもご説明ありがとうございました。それではただいまご説明、ご発表に対して質問、コメントありましたら挙手ボタンを押してください。いかがでしょうか。藤森委員、よろしくお願いします。
【藤森委員】  藤森です。ご説明ありがとうございました。非常に興味深い。今日の会議の冒頭で、発表しては。というコメントも、対外発表されては。ということもあったんですけども、これだけ成果出されているので、ぜひこれは、まさに大学の、中立の立場でしっかり科学ベースに、データに基づいて最適なシナリオを考えてやられた研究だと思うので、成果を公表する意義は大きいと思います。発表を見ると、土木学会とコアリションというところだったんですけれども、もう少し広く、学会、あとはその他のところで出していただきたいなと思っております。
 それとあと質問は、先程人口の話があったんですけれども、2030年、どういうスパンで考えるか、やっぱり50年ぐらいで考えると人口減少とか過疎とか、そういうところも踏まえて考えていくと非常に日本のモデルというか、人口減少していく中でどうやって、インフラの維持というのも非常に重要なことになってまいりますので、そういうのも含められて考えられると、さらに独自性のある素晴らしい活動になるんじゃないかなと思っています。期待しております。以上です。
【原澤主査】  ありがとうございます。お答え、いかがでしょう。
【藤田氏】  いくつか非常に有意義な議論をいただきました。越谷を例に出しましたが、越谷では地域脱炭素のコアリションとコンソーシアムというものを研究会形式で立ち上げようとしております。同じような経験を受けて、今文京区でも大学と文京区との連携の中に企業が入るかたちの研究会を、本研究事業と連携するかたちで進めておりまして、そうしたかたちで産官学、特に産に対して発信をしていく場は来年度一層確保していきたいと思っています。今藤森先生がおっしゃっていただいた、地域でこのシミュレーションモデルを展開しますと、コホートで人口で減少するというのは、これは否応なく出てくるんですけれども、ただ雇用の確保できる可能性がないのか、特に地域エネルギー産業が成立した場合に、カーボンニュートラルの、データセンターに限らないと思いますけれども、それが企業の立地の要素にならないか、あるいはそれによって雇用が生まれて将来的に、大学がないような自治体で、人口が減少するということは仕方がないにしても、20後半から30にかけてもう一度雇用を確保しておければ、人口の世代のUターンができるんじゃないかという、人口についても、あまり細かい詳細なシナリオは描けませんけれども、産業誘致、それから雇用の確保、その経済効果というのは、先程見ていただいたモデルの中でも検討していきたいということは思っているところでございます。ありがとうございます。
【藤森委員】  ありがとうございます。追加で1つだけお聞きしたかったのは、この研究は学生、いわゆる社会人学生というんですかね、そういう方とかもかなり入られているんでしょうか。ぜひそういう方にも入っていただきたいですね。
【藤田氏】  なかなかまだ社会人学生とかはいかないですが、7つの大学が入っておりますので、大学院学生が実際に参加してもらっているようなことを整理しております。そういう人間が、また就職もこういう地域エネルギー、脱炭素、カーボンニュートラル系に就職するような例も出てきておりまして、ぜひ文科省からいただいた事業でありますので、人材育成は優先課題として考えていきたいと思っております。ありがとうございます。
【藤森委員】  ぜひそういうところも人材輩出していただけると、非常に期待を持てると思います。ありがとうございました。
【原澤主査】  ありがとうございます。続きまして大久保委員、お願いいたします。
【大久保委員】  大変興味深いご説明、ありがとうございます。合意形成をして、特定のプロジェクトを実施するというところまで持っていくというのは大変なことだと思いますが、計画レベルでどのレベルを考えていらっしゃるのかということで、これは温対法に基づく実行計画レベルだけではなくて、先程のスライドの中には総合計画のことを書いてある北九州もありました。そうしますと、どのレベルにしろ、かなり多様な観点を組み込んでいく必要があって、これは環境だけではなくて、環境の中だけでも、例えばカーボンニュートラルにとってはインパクトがあるんだけど、逆に生物多様性に対しては負のインパクトがあるとか、あるいは災害でありますとか、そのほかの多様な観点での検討が必要になってくるのではないかと予想されるのですが、そうしますと、それをどのようにやっていくのか、環境以外の情報も統合して、代替案がA案、B案、C案と検討できるようにしていくということを現在していらっしゃるのか、あるいは今後そういうことを考えて、ある意味持続可能アセスメントであるとか、あるいはSEAといったことのガイドライン、モデルとなるようなことまで考えていらっしゃるのかどうかという部分ですね。特にカーボンニュートラルの視点では最適かもしれないけれども別の視点では最適とは限らないという場合の代替案の比較検討のようなものをどう考えていらっしゃるかということをお聞きしたいと思います。
【藤田氏】  ありがとうございます。委員がおっしゃるように、将来の2050年の脱炭素のシナリオというところにはどうしてもソシオデモグラフィック、プラス経済のシナリオということも視野に入れる必要があるだろうとは考えております。実際に越谷市では総合計画への入力ということを考えて、北九州ではまさにカーボンニュートラルから計画づくりを見直そうとされておられまして、総合計画を考えてまで入力をいただけるかと思います。ただこの研究事業そのものが、いわゆる計画づくりの主体化ではないようにも考えておりまして、あくまでもわれわれは学術側としてツールを用意しまして、実際にそれをどのような計画策定の場でお使いいただけるかというのは、ある程度自治体の自由度に任せるようなことで考えております。
それと委員がおっしゃっていただいてるように非常に重要なポイントなんですが、将来シナリオを一位的にA、B、Cで出せるというよりは、自治体ごとに、ご担当も含めたお考えに幅がありますので、ある程度参加型の、われわれ参加型ワークショップなんて呼んでおりますけれども、実際にシナリオシミュレーションを参加型のワークショップで行って、その中でフォーカルな技術エリアを選んでいただく。それからその変化の幅、事業の規模についてもある程度代替的なものをその場でパラメータとして選んでいただいて、そこから産官の中で代替案を複数えらんでいただく、そのようなことを国立環境研究所、東洋大学とは話をしております。もう少し来年度はその辺りを具体的に見せれるようにしていきたいと思います。どうもありがとうございます。
【原澤主査】  ありがとうございます。あと3名の委員の方にご意見伺いますけれども、藤田先生、4時までということですので、各方3分以内でお願いします。では本郷委員、お願いします。
【本郷委員】  藤田先生、ありがとうございます。今お話あった自治体参加型といいますか、自治体の参加は非常に合理的だなと思いますので、ぜひ頑張っていただければなと思います。コメントですが、環境省の地域脱炭素化担当の部門と連携されているというご説明があって、それは非常に重要なことかなと思いました。というのは、たまたま私は環境省の脱炭素の各種補助金の事後検証の委員会の委員長をやっておりまして、そこではどのくらいの削減量があったか、またそれにどれだけのコストが掛かったかという、効果の定量表ををやっています。そこでも地域脱炭素というテーマで様々に補助金使って行っていますので、ぜひこうしたところのデータも活用していただければと思います。、最適といったときにコスト面も意識しなければいけないと思うので、コスト面の情報として活用していただければなと思います。これは提案といいますか、お願いですね。
 それからもう1つ、実際に事後検証をやっているときに思うのは、どこの広がりでやるかが重要になってくると思います。地域的に小さな広がりでの最適化か、もう少し広い広がりでの最適化か、どの広がりで考えるかです。先程の例で福島の最適というのがありましたね。これは県域です。それから日本全体での最適化というものもあります。この辺りが現場で検証作業をやっていますと悩ましいところでありまして、この辺りなども盛り込んでいただけると非常に有益なのではないかなと思いました。ぜひよろしくお願いいたします。
【藤田氏】  ありがとうございます。環境省との会合は定例化するように先方とも、文科省さんともお話をしておりまして、本来であれば先生おっしゃっていただくように、脱炭素先行地域であるとか、いくつかの事業の効果を客観化するというところでこういうツールは使わないといけないと思っておりまして、そういうことも引き続き提案、発信していきたいと思います。ありがとうございます。
【原澤主査】  ありがとうございます。引き続き堅達委員、お願いします。
【堅達委員】  貴重な取り組みありがとうございます。ローカルの声がしっかり反映されているこうした脱炭素の計画がちゃんと1つのスタンダートとして示していかれるのは大事なことだと思うんですが、質問は、やっていくと必ずみんな理想があるんだけどボトルネックに引っかかる。特に再エネとかを導入しようと思うと、現状の送電網の問題だったり、それからV2HとV2Bのことは書かれていますが、本来中長期的にはV2G、グリッドのことも考えてやっていかないと地域の脱炭素なんかできっこないわけですし、あと再エネのさっきのマネージメント、日中帯との差も、もっと世界では効率的にAIを使った気象予測とディマンドコントロールを使って、まさにもっとぴったり合わせられる技術もいっぱい出てきているわけですよね。この現状日本ではできていないことをこれから取り入れていくと、今のプランだとここまでできるけれども、もっと削減できるよ、なんていう提案型の、アカデミア側からのご提案みたいなこともされる可能性はあるのか。少なくとも何がボトルネックでどういう解決策があり得るのかということをご提示される予定があるのかということをぜひ教えていただければと思います。
【藤田氏】  先生からご示唆いただいた水準には達しないんですが、やはり地域ごとに明らかに需要と供給のインバランスがあるところがございまして、脱炭素先行地域も1期、2期までのところは既にエネルギー事業を自前で進めているところが採択されています。そこは明確な脱炭素効果ができるところではあるんですが、やはり多くの自治体は、ゼロカーボン宣言をしたけれども、その地域のエネルギー事業が自立しないとバランスが悪いということで、そこで終わってしまっているところがございますので、そこに、まさにV2Gなんだとは思うんですが、そのグリッドを官が行うのか、あるいは民が行うのか、あるいは官民連携なのかというところで、例えば越谷がイオンモールが大きなユーザーとしていまして、イオンモールもコンソーシアムに入っていただいて、実際に供給事業体、それから需要化、さらに外部からグリーン電力を調達できるような事業体にも入っていただいて、そこでまず事業の最初のブレークスルーを考えてみようと思っておりますが、そういう場合にどうしても自治体さんでもそこまでのことは考えてないと。カーボンニュートラル言ってみたけれども、とりあえず事業までは考えていないというところもあったりして、その辺りが、市長のお声を聞いて連携をしてみるとなかなか事業に行かないという例も、越谷以外でもありましたので、そういうところもどうやって、北九の例であるとか宇都宮の例を見ながら、どう産官学でそこの合意形成を事業にまで、アクションプランにまで作り上げるかというのはぜひ考えていきたいと思います。
クライメイトチェンジの、まさに適応も含めたかたちで考えないといけないと思って、どうも今、われわれはミティゲーションが緩和側によっておりまして、今いただいたご示唆をまた研究メンバーとも連携しまして、もう少しクライメイトクライシスそのものに対して地域発信のソリューションを描けるようにするにはどうするべきかということも研究事業として発信できればと考えます。どうもありがとうございます。
【原澤主査】  ありがとうございます。それでは石川委員、お願いいたします。
【石川委員】  どうも発表ありがとうございました。私もこういうふうに地域の人たちが使えるようなガイダンスを作っていく取り組みは非常に重要だと思っておりますし、その中で1つ質問は、地域の方の特性みたいなもの、また地域ごとの違いみたいなものというのはどのようなかたちで取り組まれているのかを教えていただきたいというのが1点ですね。もう1つは、今お答えになったので同じことになりますけれども、緩和策というのは適応策とのシナジー効果があるものは非常に進めやすいですし、逆にコンフリクトするものはなかなか難しいということもありますので、適応と緩和のシナジー効果をどう評価していくのか。同じく最近は自然生態系、ネイチャーポジティブというのも非常に重要視されていますので、こういうものとの両立をどう図っていくかというのも、指標の中に入ってくるとより良いものになるのではないかなと思ってコメントさせていただきたいと思います。
【藤田氏】  ありがとうございます。われわれも、若干ネイチャーポジティブまで手が伸びないんですが、サーキュラーエコノミーまではカーボンニュートラルと合わせて、少しフォーカルなソリューションとして考えていきたいというかたちで、技術メニュー、インベントリを整理しているところではございます。その中で緩和適用、特にレジリエンスというものも考慮しないと、特に長期的な基盤の再構築ということに対してご提案ができないところありますので。ただ、それを全て同じ制度で、粒度で定量化できるわけではないところ、あまり定性的に評価するということを考えているメンバーは今回入っていないんですけど、その辺りのフォーカスをどのように絞っていくのかということは考えていきたいと思っております。
【石川委員】  今回使われているAIMなんかをネイチャーポジティブに使おうというプロジェクトが環境省のほうでも始まっていますので、そういうところともぜひとも連携していただいて、自分たちだけというよりは、みんなほかのところの成果も取り入れていただければと思います。
【原澤主査】  ありがとうございます。藤田先生におかれましては、本日頂いたご意見を踏まえて、今後の事業運営に反映いただければと思います。今日はどうもありがとうございました。
【藤田氏】  ありがとうございました。
【原澤主査】  それでは次の議題に移ります。次の議題はカーボンニュートラル実現に向けたシナリオ研究についてです。カーボンニュートラルの実現に向けたシナリオ研究に取り組まれている国立環境研究所の増井様にお話を伺うことにしました。増井様は国立環境研究所で温室効果ガス排出量の予測、対策や影響を評価するための、先程もありましたが、統合評価モデルに関する研究を長年されています。それでは増井様からご説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
【増井氏】  どうもご紹介いただきましてありがとうございます。国立環境研究所の増井と申します。本日はこうした機会をいただきましてありがとうございます。それでは脱炭素社会の実現に向けた将来シナリオの役割と課題ということで発表させていただきます。先程原澤委員長のほうからご説明ありましたけれども、われわれAIMという統合評価モデル、藤田先生のほうからも一部紹介していただきましたが、AIMというモデルを使って分析をしております。今日こうした機会をいただくにあたりまして、文科省のご担当の方からどういうふうな話をすればいいのかということで、こういう3つの議題をいただいております。1つ目は、脱炭素社会の実現に向けたシナリオ研究の取り組み状況、シナリオ研究における課題。2つ目として、シナリオを踏まえて重点的に研究開発を支援すべき技術。3つ目として、国として充実させるべき施策。例として大学におけるシナリオ研究への支援方策ということで、全てに応えられるかどうか、やや自信はないところはあるんですけれども、定量的な結果に関しましては、昨年の4月に地方環境審議会のほうで報告した内容を一部今日紹介させていただきます。そちらについては時間の関係もありますので、本当にごく一部ということで、詳細な分析結果はこちらのURLを参照していただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず釈迦に説法ではございますが、シナリオとは一体どういうものなのかということでまとめているのがこのスライドでございます。将来というのはかなり多様であると。その不確実性を0にするのはできないということで、今回説明させていただきますシナリオというものを使って、将来の可能性を分析し、さらにそのシナリオをベースに意思決定の判断材料を様々なステークホルダーに提供するということをわれわれも行っています。
特に気候変動対策におきましては、温室効果ガスの排出が非常に重要になってくるわけなんですけれども、それに関わります人口、消費行動、さらには政策。こういったことについていろいろな前提入力をしまして、それらがどういうふうなかたちで最終的にアウトプットとして得られるのか、整合的な結果が出てくるのか、またそれをどういうふうに活用するのかということを見ております。シナリオに関しましてはフォアキャストという、現状から積み上げてその将来を描く描き方と、バックキャストという、目標を明確に設定して、そこに至る道筋を描くという2つのやり方がありますけれども、明らかに脱炭素社会の実現に向けた将来シナリオの描き方というのはバックキャスト型で、その目標をどう実現していくのか、そのためには今から何をしていかないといけないのかということが重要になっています。
 このシナリオ研究、われわれも1990年からということでもう30年以上続けているわけなんですけれども、われわれを含めまして様々な研究機関がこの脱炭素社会の実現に向けたシナリオの定量化を行っております。この委員会の委員でもあります本藤先生のグループと、あと東大の杉山先生のグループがJSTの低炭素センターのシナリオ研究に採択されて、私とか、あと関根先生もアドバイザーというかたちで入らせていただいていますけれども、今大規模にシナリオ研究ということを、国の視点、あるいはローカルの視点、こういったかたちで分析が行われています。
 一方でシナリオ研究における課題としまして、いくつもあるんですけども、シナリオにおけるモデルの課題として、モデルというのは社会全体の一部だけを取り出して、どうしても足りない側面というのがまだまだあって、それをどう補っていくのかということが重要になっていますし、あと将来像を描くにあたって様々な前提条件があるわけなんですけれども、その前提条件が分析によってかなり異なってくるという問題点というのもあります。また脱炭素社会というのは、これまでの単純な延長ではとても実現できるようなものではなくて、いろんな社会の変革が必要になってきます。それをどう実現していくのかも非常に重要なポイントではないかなと思います。
あとシナリオの見せ方ということで、たまにシナリオというのは将来の予言みたいなかたちで捉えられる、そういった誤った見方もあるんですけれども、決して将来の予言ではなく、むしろどういう情報を入力するのか、それをどう活用していくのかというところのほうが重要で、このシナリオというのは将来を今のうちから体験しておく、想定外のことが起こっても上手く対応していく。そういうことをやるためのツールであるということを十分認識した上で使っていく必要があるんじゃないかと思います。またシナリオを活用する側の課題として、モデルとかシナリオというものを正しく理解した上で利用する。先程予言ではないというお話をしましたけれども、決してそういうものではないんだということを理解した上で使っていく。こういうことが重要であると思っています。
この大学コアリションに関連しまして、私ども国内の主だったモデル研究をやっている研究者の方々にお集まりいただきまして、2年ほど前なんですけれども、実際このモデル研究者の立場から、モデルとは一体何なのか、シナリオとは何なのか、どういうかたちでステークホルダーと関係を構築していけばいいのかという、そういう意見交換を行いました。大体ここに参加していただいているいろんなモデルの研究者の方にお集まりいただいたんですけれども、大体のところは認識が全く違うというのではなくて、同じようなかたちでモデルの重要性、あるいはシナリオの役割、さらにはそのシナリオの課題、そういった先程スライドで示したようなことを、どの研究者の方もお持ちだということを改めて認識いたしました。
この脱炭素に向けたシナリオという意味ではいくつか重要な方策があるんですけれども、まずはエネルギー効率の改善で、2つ目に電化。で、使うエネルギーの脱炭素化というのが重要になってまいりまして、それでもいくらか排出してしまうというときにはネガティブ排出対策というものが重要になってきます。また技術的な対策だけではなくて、サービス需要の低減ということで、無駄を省くというような、もちろんわれわれの生活水準、経済的な役割は維持するということは大前提なんですけれども、そういった中でいかに無駄を削っていくのかというのも重要であるということがわれわれの研究から分かってまいりました。
 そういうような様々な技術的な対策、それとともに今言ったような無駄を省く、そういった社会変容。さらには脱炭素技術をいかに普及させるか。技術があっても普及しないと宝の持ち腐れになりますので、そういう技術をいかに広めるかということも重要だと認識しています。われわれ国立環境研究所で開発している将来シナリオにおきましては、技術を比較的詳細に扱う技術選択型のモデル、それに加えまして、特に脱炭素になってきますと、再生可能エネルギーの供給が重要になってくるのですが、再生可能エネルギー、特に太陽光、風力は変動性の電源ですので、1時間単位できちんと電力の需給がバランスしているのかということを見ておく必要があるということで、従来は左側の技術選択モデル、さらには経済モデルというものを使った分析が中心だったんですけれども、現状われわれの分析では電源モデルというものも使いまして、再生可能エネルギー十分かということも合わせて検討しています。
 将来シナリオの分析としまして、2030年のNDCが将来も続くというようなことを前提とした技術進展シナリオ。ただこの技術進展シナリオでは脱炭素、2050年ゼロというのは達成できませんので、いかにしてゼロを達成するのかということで、1つは革新的な技術に頼る、そういうようなシナリオと、革新的な技術とともに社会変容も活用していこうという、そういう2つの追加的なシナリオを設定しております。それぞれ現状、NDCが延長する場合と、脱炭素を実現してくためにどういう技術が追加的に必要になるのかを分析しているわけなんですけれども、こちらに示しておりますのが、脱炭素に向けて必要になる技術の種類となってまいります。水素ですとか余剰風力、さらにはCCS、こういったものが重要になってまいりますし、産業でも水素、さらにはセメントですとか化学での炭素の減量化、こういうものが重要になってきます。
 それぞれの分野が民生部門、運輸部門、産業、こういうそれぞれの分野で、先程申し上げました省エネ、あるいは電化、こういうそれぞれの側面でどういったものが必要になってくるのかということも評価をしておりますし、あと社会変容といったことに関しましては、定量化が難しいんですけれども、とりあえず産業と運輸についてDX、デジタル化、あるいは循環経済、こういったものを活用して無駄を省いていくというようなことで、どの程度脱炭素に貢献するのかということを見ております。
 こちらが将来の活動の変化ということで、こういったことを前提に計算をしております。実際脱炭素社会を実現していくためには、省エネがやはり重要である。現状のエネルギーの消費量から大体半分ぐらい、今使っている最終エネルギーを半分ぐらいに減らしていく。さらにその使うエネルギーの内訳なんですけれども、電力ですとか新燃料、こういったもののシェアが極めて高いという結果になっております。水素ですとかアンモニア、こちらどれだけ国内で供給するのかというところは難しい問題でして、現状では水素は約3割、アンモニアは100パーセントを海外に依存するという想定を置いておりますが、この辺りどこまで国内で賄うことができるのかということも追加分析として行っております。
 あと電力の需給なんですけれども、水素をはじめとする新燃料、これを生産するために非常に多くの電力が必要になる。そういうような電力を含めて再生可能エネルギー、電力供給の7割ぐらいが再生可能エネルギーによって賄われる。その中心は太陽光と洋上風力という結果になっています。こういう諸々の技術を加えることで、2050年実質ゼロというのは実現可能であると。この革新的な技術に頼るシナリオと、技術はもちろん頼るんですけれども、社会変容というようなことも生かすことで、こういう2つの経路が存在するということを示しております。このNDCを延長する場合と、革新的な技術を導入する場合でそれぞれどの程度対策の導入度が違うのかということもイメージしております。
その2つの脱炭素を実現するシナリオにおいてどういうところが違うのかということなんですけれども、サービス需要量の変化ということで、その分がネガティブ排出対策技術に寄与しているということで、ネガティブ排出対策技術、まだ開発途上といったものもありますので、そういう不確実な技術に依存する比率をなるべく減らしたい、小さくしたいといったときには、われわれの需要側の活動なりを見直していく。こういうことが重要であるということがこういう結果から示唆されています。
 あと、こういうような対策を行ったときに必要なコストなんですけれども、技術進展シナリオ、NDCの延長におきましても、2021年から2050年まで総額で200兆円ぐらいの追加的な投資が必要になってまいります。それが革新技術シナリオ、革新的な技術を2030年以降最大限導入するということで、その投資額は300兆円ということで、大体100兆円増加するという結果になっています。一方で社会変容シナリオを実現するとなりますと、その300兆円が大体250兆円減少するということで、この社会変容、われわれの行動を変えていくというのは費用の面からも非常に重要であるということが分かりますし、もちろんそれでも250兆円という極めて高い費用が必要となるわけなんですけれども、そういうことによって一次エネルギーの国内供給6割以上、現状では1割程度の受給率ですが、それをかなりたくさん高めることができますし、エネルギーの輸入額も大幅に削減することができる。こういうメリットも存在します。今説明したようなことをまとめたのがこの2枚のスライドですので、詳しい説明は割愛させていただきます。
 で、国として充実させるべきシナリオとして、あくまでこれは私自身の考えなんですけれども、先程藤田先生のほうからお話にありましたように、実際脱炭素を実行していくのは自治体ですとか、あるいは企業、国民であるということで、こういう分析結果をなるべく分かりやすく説明していくということが重要であると思っておりますし、あと地域へのブレイクダウン。先程の質疑でも、地域によってかなり特性が違うということがありますので、そういう地域に根差した対策、こういったもののメニューを提示していく。こういうことが重要であると思っています。そういった点は各地にあります大学と協力して実行できたらなと思っております。
 あとは、やはり革新的な技術の動向把握ということで、どういうふうにこの新しい技術、まだまだ取り組んでいない技術はいくつかありますので、そういうものをどう取り込んでいくのか。またそのための技術動向を把握するということも重要であるかなと思っています。また先程見ていただきましたように、かなりの研究者、研究機関がこういう分析を行っておりますが、結構バラバラで行っているということで、標準的なシナリオを検討する必要があろうと思っております。2008年にわれわれRITEさんですとかエネ研さん、日経センターさん、こういう研究機関と一緒に内閣官房が立ち上げました中長期目標検討委員会、そういったところに参加していろんな情報を提供してきましたが、そういう共通的なシナリオ、共通の全体の下でのシナリオを提供していくのも重要であろうと思っています。
 最後に、こういうかたちでモデルシナリオ研究と、ステークホルダーが一緒に分析できたらいいなという、そういう理想的なものを書いております。様々な意見をステークホルダーのほうからいただいて、それをモデルで解析をして、モデル側からステークホルダーにフィードバックする。さらにそういった結果を元に、将来の絵姿というのを改めて検討する。そういう情報の繰り返し。これによって気候についての目標、社会についての目標、これらを達成できる持続可能な脱炭素社会が構築できると認識しておりますので、こういう関係の構築を目指してわれわれも今後研究を進めていきたいと思っています。簡単ではありますが、以上が私からのご報告になります。ご清聴ありがとうございました。
【原澤主査】  増井さん、どうもありがとうございました。それではただいまのご発表に関してご意見、ご質問等ありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。それでは堅達委員、お願いします。
【堅達委員】  どうも発表ありがとうございました。まさに気候変動も思っているよりもスピードがアップしておりまして、ダボス会議でも今後10年のリスクの中でティッピングポイント超えということが挙げられているような状況なので、本当に待ったなしだと思うんですけれども、ここに書かれているシナリオが、ぶっちゃけ1.5度目標に整合しているのかどうかということを、このシナリオの場合、どれぐらい認識して作っておられるのかということと、先日COP28で、IGESが1.5度のロードマップで、1.5度に整合する道筋も作ることは可能だといった発表をされていたかと思いますけれども、そちらとはどういう連携があるのかないのかという辺りを教えていただきたいというのが1点と、間違いなく将来化石燃料はCOP28で脱却を10年で加速するということが決まっていて、特に石炭火力は、仮にアンモニアを混ぜるということも恐らく認められない時代が来るのではないかと想定されますし、かなりはっきり言って、コスト的にもパフォーマンスに合わない。このエネルギーの輸入量の金額が18兆とかそれぐらいになっていましたけども、実質は去年もう35兆円化石に使っちゃっているので、そういった最新事情をどれぐらいこれから盛り込んでいくところなのかをぜひ教えてください。
【増井氏】  はい、ありがとうございます。まず1.5度目標に整合かどうかというところなんですけれども、これはあくまで2050ゼロということを目標に掲げておりますので、グローバルも同じようなかたちでいくと、もちろん1.5度目標に整合に近いかたちになるんではないかなと思います。ただやはり先進国はより早くゼロにしていくということが求められていますので、そういう意味ではまだまだ甘い想定ではないかなと思っております。IGESさんが分析されて公表されております1.5度のロードマップの関係ということなんですけれども、直接は関係してないんですけれども、いろいろ事前に情報いただきまして、われわれのほうからコメントさせていただいております。やや水素が多いかなとか、やはり前提と言いますか、どういうところに重点を置いてゼロを目指すのかという、研究機関とかモデルによって違うところがありますので、そういった様々な結果の中から実際どういうかたちで脱炭素に向けていろんな対策を実行していくのかということが今後必要になってくるのではないかなと思っています。
 最後、エネルギー価格のところ、これは2018年がこのモデルの中での最新ということで、それから比べると石油価格の高騰ということでどんどん上がっていっている。その分2050年脱炭素との差はさらに大きくなっているということなんですけれども、そういうエネルギー価格の高騰というのはいろいろな前提の下で計算しておりますので、なるべく最新のものを反映するようにはしております。将来的にエネルギーの価格が変わっていくというような、そういういくつかの想定も考えられますし、また化石燃料そのものが使えなくなるとなりますと、需要がなくなってきますので、化石燃料の価格自体が下がってくるというような見通しもあったりしますので、先程から不確実性ということで、いろんなパターン、ケースを想定して分析はしております。ただステークホルダーの方々に示すときに10も20も計算結果を示すと、これは逆に、じゃあどれが一番もっともらしいの。というようなご意見もいただいたりしますので、その辺りどういうかたちで示すのが最も効果的なのかというのを、内部でも議論しながら計算を進めているという状況になります。
【原澤主査】  ありがとうございます。堅達委員、よろしいですか。
【堅達委員】  はい、ありがとうございます。
【原澤主査】  では続きまして佐々木委員、お願いいたします。
【佐々木委員】  九大の佐々木です。聞こえてますでしょうか。
【原澤主査】  はい、聞こえてます。
【佐々木委員】  まずはシナリオの分析、非常に興味深く聞かせていただきました。ご尽力に心より感謝申し上げたいと思います。ちょうどカーボンニュートラルの宣言がされた頃に突貫工事でいろんなシナリオが出てきて、その中で前提が異なるとかなり結果も違うということを改めて思い出したところがございます。いろんな組織はそれぞれの組織の、いろんな今までのやり方も踏まえたシナリオが出てくるというのがよくあるんですけれども、大学や国研も含めたアカデミアは、やはり自由な発想で、客観的に議論できるというところはわれわれの強みだと思いますので、ぜひこういうシナリオ研究を加速していただきたいなと思いました。
 それで、今回2つのシナリオを出していただいて、なるほど、そういう違いもあるのかな、という感じがしますし、中でも触れていただきましたように、技術開発はされているものでもその技術開発が上手くいくかどうかというのでかなり試算が違ってくるというところだと思います。GI基金でも10年でやっててモニタリングしておりますけれども、明らかに加速しているものもあるし、なかなか苦労しているところがあるというのもわれわれ見ているところですし、シナリオも大都市圏と地方圏で根本的に違うのかなというのも地方にいますと感じます。
あとカーボンニュートラルとかエネルギー政策的な点でこういう議論がよくされるんですけれども、日本がどうやって食べていくかという、産業政策とか雇用をどう維持するかとか、そういう視点で考えるというのも大事だと思いますし、昨今の状況も考えますとよりエネルギー安全保障に重点を置いたシナリオもあってもいいのかなと思います。いくつもありすぎると分かりにくくなるというのはおっしゃる通りですけれども、ぜひいろいろな視点、複数の視点で多面的にシナリオを作っていただけますとアカデミアらしいシナリオ研究になると思いますし、今後の取り組みに期待しておりますのでぜひよろしくお願いいたします。私からはコメント、以上でございます。
【増井氏】  ありがとうございます。
【原澤主査】  増井さん、何かご意見あります。よろしいですか。
【増井氏】  はい。
【原澤主査】  では続きまして本郷委員、お願いします。
【本郷委員】  増井先生、ご説明ありがとうございます。特に最初のところで、シナリオとはどういうものかということで、シナリオ研究の方同士ですり合わせしたら大体似たようなところがポイントになるというところ、改めて重要なポイントだなと思いました。企業でも、今シナリオをどう使いこなそうかという話が出ていますので、シナリオとは何かなど基本的な部分も含めていろいろご説明いただくと助かるなと思っております。それで、実際の中身の話でいろいろ議論がありそうだなと思うのは、日本の標準的なシナリオというところです。私自身もいろいろな研究会に参加し、あるいは企業間での意見交換をしておりますけれども、不確実性については、やはり両方の人がいるんですね。技術の不確実性がありますよというのは、これは基本的には共有されていると思うんですけれども、そうした中で技術を絞り込みたいので何か頼りになるものがほしい、つまり予言ではないとはいえ、その中で絞り込み方をするためのお墨付き的な使い方をしたい、という企業もいます。一方で、不確実性はそれはもうそう受け止めて、ポートフォリオ的に考えていきたいという人もいるわけですね。この辺りニーズが様々あるなという点。それはもしかすると、佐々木先生がご指摘された、どういうステークホルダーを意識しているかによりけりだと思うんですけれども、あまり絞り込み過ぎてはいけないという気もします。もちろん、そういうものをほしがる企業、人もいれば、もう少し多様なものがあってよく、それがどこで違うのかを知りたいという期待もあると思います。これは先程言った後者のポートフォリオ的なものをほしがる企業、人向けだと思うんですね。この辺りどうバランスを取るのかというのはなかなか難しいとは思います。しかし、このポートフォリオ的なものについて、その違いは何か、どこが理由で違ってくるのか、などというところが分かるようにしていただくと企業としてはありがたいなという気はします。
 全般的に最近の傾向を申し上げますと、例えば4、5年ぐらい前ですと、どちらかというと絞り込み型が多かったんですけど、今はやはり不確実性が多いということへの認識が高まったこともあって、ポートフォリオ的なものを考えなきゃいけないよな。と考え、どこが違いなのかというところを気にされる人が少しずつ増えてきているような気がいたします。すいません、コメントでございます。ご説明ありがとうございました。
【増井氏】  はい、どうもありがとうございます。どういう情報をこのシナリオに求めているのか、それによって必要となるモデルも違ってまいりますし、またその情報の質も違ってまいりますので、その辺りわれわれとして注意して結果を出していきたいなと思っております。一方で、国とかマクロなシナリオですと、どうしても個別の企業さんとかステークホルダーさんとの間のギャップと言いますか、そういったものがまだまだかなりありますので、その辺りどうギャップを埋めていくのか。それはわれわれの仕事なのか、あるいは個別の企業に勤めてらっしゃる研究者の方々の役割なのか。その辺りは難しいところなんですけれども、いずれにしてもシナリオというのは万能なものではないんだという、その辺りもきちんと理解した上で使っていただきたいと思っています。どうもコメントありがとうございました。
【原澤主査】  では続きまして藤森委員、お願いします。
【藤森委員】  ご説明、増井先生ありがとうございます。非常に興味深く聞かせていただきました。皆さんからのご指摘で、その通りだと聞いておりますし、内容については私も先程佐々木先生おっしゃったように、大学というのはいろんな意見があってしかるべきで、あまり集約しないでいろんな意見が出てもいいんじゃないかなとは思っております。で、1つ視点として、日本で検討されているかと思いますけど、いわゆるレジリエンスですね。今月ですか、元旦で地震があったとか、非常に災害の多い、特異的に災害の多い地域にもなっているということなので、そういうところも踏まえてぜひモデル、われわれとして将来こういうものが可能性としていいんだということを検討いただけるとありがたいと思ってます。
 それともう1つ、これだけのことをやって、正直言って海外に比べて少しこういう検討は日本は出遅れたようなところもあるんですけど、ここまでのところまで来られているんで、ぜひ外に対して発表するとか、例えばレポートを出すとか、論文で出すとずっと残ってあるんですけれども、レポートというのは海外のシンクタンクとかそういう人たちと話すと、時代とともに、社会の変革、技術の進化とともに変わるものだというかたちで、案外そういうことで厳密にきちんとエビデンスを取るというよりも、その時点で考えたシナリオ、前提とか、そういうことで、ぜひレポートというかたちで何か出されるということも検討されては。既におやりになっているのかもしれないんですけど、ぜひ文科省ともご相談されて、検討いただきたいなと思っています。
さらに言えばテーマに絞って、ワークショップとかこういうシナリオモデルをベースにしたような検討ですね。それとあとここにあるような、ステークホルダーも入れたようなかたちでのディスカッションもどんどん広がっていくと、こういうシナリオを出発点として議論していくと。最終的にはステークホルダーの人たちも巻き込んで動かないと実現しませんので、ぜひそういうかたちにも結び付けていただきたいなと。情報発信とぜひステークホルダーを巻き込むような活動に発展させていただきたいなと思っている次第です。期待しております。
【増井氏】  どうもありがとうございます。貴重なご意見、3点いただきました。特にレジリエンスに関しましてはインフラの問題、あるいは高齢化、過疎、そういう問題も日本社会は抱えておりますので、そういうところも踏まえて脱炭素が維持できるんだ、両立できるんだということを目指して、今モデル改良等を行っております。海外につきましては、実はこのモデルを使ってタイですとかインドネシア、さらにはベトナム、こういったところがそれぞれの国の長期戦略を書いて、国連にも提出されております。日本以上にわれわれのモデルを使って、計算結果を使って分析していただいているというところがありまして、それを今後もさらに広めていきたいなと思っています。最後のステークホルダーに対する意義ということで、われわれも方針会議等、こういう結果を説明する機会がございまして、逆にいろいろなステークホルダーの方々から、こういう考えはどうなのか。というフィードバックもいただいておりますので、そういうことも今後踏まえて研究を発展させていきたいなと思っています。
【藤森委員】  なかなか日本は完全にオープンというのが、ディスカッションが難しいんですけど、クローズド、セミクローズド、いろいろなやり方あるので、ぜひ進めていって、こういう考え方を浸透させるという意味では非常にいい手段だと思っておりますので、検討いただきたいと思っております。
【増井氏】  ありがとうございます。
【原澤主査】  ありがとうございます。ほかにご意見、ご質問ございませんでしょうか。すいません、原澤ですけど1つ質問させてください。今回ご説明のあったモデルは、技術をある意味中心としたモデルになってるわけですけれども、IAEAは毎年のようにテクノロジーパースペクティブですか、最新の技術に関する情報を集めて発信していたりするんですけれども、日本の場合は数年ごとのエネルギー基本計画とか、サイクルが長いような感じが個人的にはしているんですけど、そういう中で日本のいろいろな技術、言ってみればロードマップを、何を使ってらっしゃるのか、というのは、本委員会でもいろいろな技術開発を研究の基礎から応用、さらに技術開発、実証まで扱っている中で、技術は日々進歩していると思うんですが、最新の情報というのがなかなかあるようでないような感じがするんですけれども、そういう意味でこのモデルの開発の中で日本における革新的な技術の情報に関してどう扱ってらっしゃるか、教えていただければと思います。
【増井氏】  ありがとうございます。なかなか革新的な技術をどう扱うのかというところは難しいところでして、実際モデルにインプットするためには、例えば費用の情報ですとか、なかなか普段得られないようなことも考慮した上で入力していかないといけないという、そういう課題があります。そういった意味では、われわれもできる限り新しい情報を仕入れたいとは思いつつも、なかなかそういう必要な情報が得られないという、そういうジレンマの下でいろいろ計算をしておりまして、そういう意味ではなかなかこういう技術があるからというよりも、むしろこういう費用の技術が出てくればここまで温暖化、脱炭素というのはこれぐらいのコストで実現していけるんだよという、そういう技術開発の目標みたいなものを提示できるのではないかなというふうにも考えております。そういったところを企業の方とか、より技術開発に特化したような関係者の方々と意見交換しながらこのモデルを随時アップデートとしていくという、そういう作業が必要だなと思っておりますので、われわれその技術の情報を使うユーザーではありますので、その辺り、この委員会等でまた新しい情報が得られれば、われわれもそういったものを使わせていただきたいなと思っています。すいません、お答えになってないかもしれませんが。
【原澤主査】  どうもありがとうございます。ほかにご質問、コメントございますでしょうか。
【藤森委員】  藤森ですが、今の件について、例えばわれわれもIAEAとかセミインターナルなセッションってやるんですよね。で、彼らは日本の情報を知りたがっていて、インバイトというかたちでやって、情報を仕入れて、それで自分たちの中でレポートの元みたいなものを作るわけですよね。だからぜひそういうこともやって、海外もそうですし、日本の企業でそれを呼んで、自分たちでレポートを作る元の情報を吸い上げるというんですかね、そういうことも今後やっていくと、今の原澤委員長の質問に対しての回答にも近づくんじゃないかなと。ぜひそうやって技術もアップデートしながらレポートを出して、情報発信していただけるといいというふうに思って期待しております。
【増井氏】  ありがとうございます。しっかりと取り組んでいきたいと思います。
【原澤主査】  どうもありがとうございました。ほかにご意見ございませんでしょうか。ないようですので、本議題に関する質疑を終えたいと思います。増井さん、どうもありがとうございました。
【増井氏】  どうもありがとうございました。
【原澤主査】  本日予定されている議題は以上です。最後に事務局から事務連絡等をお願いいたします。
【田村(事務局)】  ありがとうございました。本日の議事録につきましては、後日委員の皆様にメールでお諮りしたのち、文部科学省のホームページに掲載させていただきたいと思っております。事務局からは以上でございます。
【原澤主査】  これをもちまして第12期環境エネルギー科学技術委員会の第1回会合を閉会といたします。本日は皆様、どうもありがとうございました。
【一同】  ありがとうございました。

 
―― 了 ――

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