令和6年7月19日(金曜日)10時00分~12時00分
オンライン会議にて開催
原澤主査、本郷主査代理、伊香賀委員、石川委員、大久保委員、堅達委員、佐々木委員、佐藤委員、竹ケ原委員、田中委員、中北委員、藤森委員
堀内研究開発局長、山口環境エネルギー課長、田村課長補佐 他
東京大学生産技術研究所 平本教授
【原澤主査】 ただ今より、第12期環境エネルギー科学技術委員会の第2回会合を開催します。最初に、進行上の注意事項や配布資料の確認などを事務局からお願いいたします。よろしくお願いします。
【田村(事務局)】 環境エネルギー課の田村と申します。本日はお忙しい中ご出席いただきましてありがとうございます。本日はオンラインでの会議となります。オンラインで発言される際はビデオ、マイクをオンにし、発言されない時はオフにするよう、お願いいたします。ご発言をいただく際ですが、挙手のボタンが下の方にございますので、そちらの方を使って挙手をしていただきますようお願いいたします。ご発言いただく際にはお名前をおっしゃってからご発言いただきますようお願いいたします。また、ビデオとマイクをオンにしていただければと思います。本日の資料でございますが、議事次第、資料、参考資料を事前にお送りしておりますが、届いてないなどの不備等ございましたら、事務局の方にメッセージ等で教えていただければと思います。 本日の委員の出席状況でございますが、本藤委員と関根委員が御欠席されると伺っております。また、佐々木委員が途中で退席されると伺っております。 本日は、次世代半導体のアカデミアにおける研究開発等に関する検討会に関する議題を取り扱いますので、検討会の主査を務めていただきました東京大学の平本様にご出席いただいております。また、事務局に人事異動がございましたのでご紹介させていただきます。
研究開発局長に堀内、研究開発局担当の審議官に清浦、環境エネルギー課長に山口が着任しております。事務局を代表いたしまして研究開発局長の堀内から一言御挨拶させていただければと思います。
【堀内局長】 文部科学省研究開発局長に着任しました堀内と申します。第12期環境エネルギー科学技術委員会の開催にあたり、ご出席いただきありがとうございます。本日の委員会では半導体の研究開発や人材育成についてご議論いただきますが、半導体は、グリーントランスフォーメーション、デジタルトランスフォーメーションを実現する上で欠かせない技術であると思っております。経済安全保障上もその重要性が非常に高まり、また、認識されてきていると思います。日本にとっても最重要の技術の一つだと考えております。3年ぐらい前になりますが当局の審議官をしていた時にX-nics事業を企画していた頃でありますが、サプライチェーンの論点が非常に盛り上がった時であります。その時にはまだ研究開発の問題ではないのではないかというふうにいわれておりましたが、今や研究開発も先端技術開発も待ったなしというような取組ではないかと思っているところであります。そのため、総合的かつ効果的な施策を検討するということで昨年12月から次世代半導体のアカデミアにおける研究開発等に関する検討会というものを開催しまして、我々が取るべき政策を議論いただきました。この度取りまとめました提言を踏まえて、文科省として効果的な政策を推進していきたいと思っております。推進方策や評価の方針について、本日はいろいろ御意見を賜れたらと思っております。文科省といたしまして環境エネルギー分野の科学技術の発展に向けた取組をしっかり強化していきたいと思っております。引き続きどうかよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
【田村(事務局)】 事務局からは以上でございます。原澤先生、お願いいたします。
【原澤主査】 本日の議題のうち議題2は非公開とさせていただきます。議題2に入る前に傍聴者向けの配信は終了させていただきますのでご了承ください。議題1までの議事録及び会議資料につきましては後日文部科学省のホームページに掲載いたします。それでは、議題1に参ります。先ほど堀内局長から御紹介があった検討会報告書についてですが、次世代半導体のアカデミアにおける研究開発等に関する検討会報告書について、文部科学省におきましては昨年12月から次世代半導体のアカデミアにおける研究開発等に関する検討会を開催し、先日の7月5日に最終報告書が作成されました。本日は本検討会の報告書につきまして事務局からご報告いただきたいと思います。では、よろしくお願いします。
【田村(事務局)】 事務局から資料に基づきましてご説明させていただきたいと思います。資料1-3を投影させていただきます。資料1-3の2頁目から順番に説明させていただきます。まず、背景でございますが、経産省の方で半導体・デジタル産業戦略というのがございますが、その中で、文部科学省が研究開発や人材育成を取り組むということで政府全体としては位置付けられております。その中で総合的に今後長期的に取り組むべき技術的なボトルネックや将来必要となる人材像について議論するため、産学の代表する方々にお集まりいただきまして、昨年12月以降議論を行ったというものでございます。検討事項としては、右上にございます国内外の施策動向ですとか優先的に取り組むべき課題、未来社会での先端半導体の活用領域、産業界のニーズ、アカデミアの強みを生かして重点的に取り組むべき技術課題、研究基盤や高度人材育成、産学連携施策について議論を行いました。本日ご参画いただいております平本先生に主査として取りまとめていただきました。その内容について事務局から簡単にご説明させていただきたいと思います。
3頁目でございます。3頁目は国際的な動向になっております。言わずもがなではございますが半導体というのはデジタルだとかGXの基盤的な技術であると。また、経済安全保障にも直結する重要な戦略技術であるということで、各国ともに産業界のサプライチェーンに対する補助金、支援に加えて、大学の基礎研究についても、アメリカのNSFだとかEUのHorizon Europeだとか、そういった各国で基礎的な研究、人材育成についてもしっかりと支援をしているということで、日本についても同様に議論すべきではないかという問題意識で今回検討会でご議論いただいたということでございます。
4頁目になりますが、4頁目が検討会での検討の方向性になります。まず、施策の方向性としては一つは研究開発という柱、あともう一つは人材育成、それから研究基盤。この三つの柱の切り口で議論を行っていただきました。
5頁目でございます。まず重点的に取り組む研究開発課題として、技術的な、どこに重点化すべきかについてご議論いただきました。その際の観点ですが、未来社会を見据えて何が必要か、地球規模課題の解決に日本はどのように貢献していくか、日本の今の課題や弱み、今の強みをどうやって生かしていくべきかについて議論を行いました。未来社会については、AIを搭載したロボティクスが今後長期的には拡大してくるだろうと。その際にエッジの知能化。エッジというのは携帯ですとか自動車ですとかスマホですとか、そのサーバーではないエッジ側を指す言葉でございますが、そのエッジ側が知能化してフィジカル・インテリジェンスと呼んでおりますが、そういったフィジカルとサイバーの融合が行われてくることによって、例えば研究開発、科学研究を含めたあらゆる産業分野が自動化してGXが進むということが可能になるのではないか。あと、地球規模の課題になりますが、今はAI等の活用によってサーバー側のクラウド側の消費電力が爆発的に伸びるのではないかというようなおそれがございまして、その辺りを解決するためにも低消費電力なエッジAI半導体の性能開発が必要なのではないかという御議論がございました。また、日本の課題ではございますが、今顕在化している労働力の不足が今後さらに深刻になってくるおそれがあると。それにあたって、長期的にはサービスだとか医療、福祉、製造分野などのあらゆる分野での労働力を補うようなロボティクス等の自動化について日本が注力すべきではないかというような御意見がございました。また、日本の弱みとしては、メモリやセンサー等は一定の強みがございますが、ロジック半導体、先端的なAI半導体のようなものについては今のところ日本がまだ遅れをとっているというところでして、その辺りはアカデミアも含めてしっかりと整備する必要があると。あと日本の強みとしては、自動車だとかロボットの産業は、出口産業がある程度日本がシェアをまだ持っていますので、その辺りとコラボレーションすることによって将来必要となるようなエッジAI半導体というのを開発してはどうかというのをご議論いただきました。
その中で6頁目にございますが、まず一つ研究開発項目としてはここに重点化してはどうかということで取りまとめていただきました。方向性1、2、3とございますが、1がロボットロボティクスが普及する未来社会を見据えてユースケースを想定した次世代のエッジAI半導体。ユースケースを見据えてどのような用途に使うかということまで考えて、それに最適なAI半導体というのをアカデミアも入れて研究開発すべきではないか。あと方向性2でありますが、先ほど申し上げましたエネルギー問題というものを解決するために、超低消費電力の半導体というものを開発する必要があると。あと方向性3になりますが、アカデミアが総力を結集した総合的な研究開発ということで、各大学が個別のラボや講座でやるのではなくて、全体となって協力してできるような支援というのが必要なのではないかということをご議論いただきまして、下の赤い矢印のところに書いておりますがアカデミアが重点的に取り組むべきコア技術例として、例えば高効率の半導体システム設計だとか次世代AI半導体、あと次世代AI回路、あとBeyond1ナノ世代チップだとか、そういった技術に重点化すべきではないかというような御議論を頂きました。
7頁目でございますが、その半導体を開発する際にユースケース側の研究が必要だということで、正に今後広がると考えられているロボティクスを含めたフィジカル・インテリジェンス。そういったAIの研究が必要だということで、サイバー空間を今ChatGPT等で文字情報、サイバー空間の情報を大量に読み込ませて学習するということが行われておりますが、自動運転が今始まっておりますが、自動運転だけではなくてロボティクスのようなあらゆるリアルなもののAIの活用というのが今後広がっていくということが考えられるのではないかという御議論がございました。
8頁目でございますが、例えば今は産業用ロボットでありますけれども、人間と隔絶された環境で自動車の組立てを行うですとか、決まった定型的な動作を数万回繰り返すですとか、そういったものが作られておりますが、そうではなくて人間と協調しながら介護ですとか調理ですとかそういったいろんなサービスを行うような社会受容性を持つAIというのを研究すべきではないかというのを御議論を頂きました。
9頁目でございますが、先ほど申し上げましたエッジAI半導体に関する技術課題でございます。高効率な半導体システム設計ということで、今は半導体の設計自体にかなりのコストが掛かっているということが課題になっております。その辺りを解決するために自動設計できるような研究が必要なのではないか。あと、右側にありますが超低消費電力な次世代AI半導体としてフォン・ノイマン・ボトルネックというロジックとメモリの間の通信が爆発的に増大しているというのがAIの処理では今課題になっていますが、その辺りを解決するような研究が必要なのではないかと。
あともう一つは、めくっていただきまして、Beyond1ナノ世代チップに向けた新材料・デバイス・プロセス・集積化技術として、トランジスタレベルの低消費電力化に取り組む必要があるのではないかと。あと、右側にございますPFAS問題に代表されるような半導体の製造プロセスを含めたいろんなところでPFASが使われておりますので、そこに対応できるような新材料ですとか改修、分解の技術開発にアカデミアが取り組むべきではないかという御議論を頂きました。
11頁目が、それ以外のものも重要だということで、エッジAI半導体に直接は関係しないものではありますが、例えば日本が強みを持っているパワエレだとかセンサーだとかメモリ、その辺りについてもアカデミアは産業界としっかりと連携しながら産学連携できるような体制を整備するべきではないか、そういったことから設計・試作環境を整備するために半導体プラットフォームというものを整備してはどうかというのをご議論いただきました。
12頁目は施設面の整備ということで、これは死の谷というふうにイメージとして書いておりますが、左側が大学のラボレベルで行っているような小さな規模の欠片レベルで新しい材料開発ですですとかそういった取組が行われているわけですが、そこを産業界につなげて実際に商用化するには300ミリウエハーですとかそういった大規模な高品質なものに技術開発を続けていかなければいけないと。そこまでの間のギャップがありまして、その辺りを何とか研究が止まってしまわないように続けるにはどうするべきかというような御議論がございまして、例えば右下にありますようなアカデミア発シーズの実証に必要な最先端設備の設備強化ということで、アカデミアが思いついた新しい材料ですとかそういったものを実用化までつなげられるような、統合できるような、そういった施設が必要なのではないか。あと、左側にございますが多様なシーズ創出・産学連携を支援する設備整備・共用ということで、各ラボで持っているような設備をアップグレードしてネットワーク化して、いろんな人たちが共用できるようにしてはどうかというような御議論がございました。また、一番下に大型研究施設の整備・高度化とありますが、SPring-8ですとか富岳ですとか、大規模な日本を代表するようなトップの研究施設というものを半導体にもしっかりと活用して、次世代の半導体材料ですとか半導体というのを開発すべきではないかというような御議論がございました。
13頁目は人材育成施策についてでございます。人材育成については三つのレイヤーについて分けて議論を行いました。トップ人材については、半導体の事業戦略や研究戦略に携わるトップ人材、また、新たなユースケースを開拓する卓越した研究人材、そういった人材を今後育成する必要があるのではないか。それにあたっては右側にございますがアカデミアの総力を結集してオールジャパンでの先端的な研究開発やグローバル連携を通じた人材育成をすべきではないか。また、その次に続くような高度人材―設計・製造・研究開発をメーカー等で取り組むような高度人材というものについては、あと下にあります基盤人材―半導体の製造と各工程の改良品質管理を行う実践的人材、そういったものについては全国の大学の実習・研究できるような設備をしっかりと整備するとか、大学・高専の機能をしっかりと強化していくということが必要なのではないかというような議論を行いました。
14頁目に例がございますが、イメージとして例えばオレンジ色のところにありますが、全国レベルで設計ですとか強みを持つ大学はありますので、その大学はお互い良い教材ですとかカリキュラムというのを共有できるような仕組みが必要なのではないか。あと、青色のところになりますが各地域内、例えば各経産局ぐらいの地域レベルでコンソーシアムを組んで今半導体人材を育成していこうという取組がございまして、そこと連携して各地域で高専と大学が協力するなど、そういったことを支援すべきではないかというような御議論がございました。
15頁目が全体になりますが、こうしたラインナップで今後施策を検討すべきではないかというのをご議論いただきました。一つはユースケースの開拓に関する研究開発として、先ほども申し上げましたAIに関係するような次世代のロボティクスAIですとかそのような研究。また、それとしっかりと連携するような、それらAIを高速に処理できるような次世代エッジAI半導体を開発すべきではないか。また、先ほどのプラットフォームとしてアカデミアの研究開発を支援できるような施設の整備ですとかネットワーク化が必要なのではないか。また、人材育成については、高度人材や基盤人材を育成するために全国規模でカリキュラムだとか教材ですとかをシェアできるような取組というのが必要なのではないかというような御議論を頂きました。
資料1-4が全体の研究開発側のロードマップとして取りまとめていただいたビジョンになります。上がフィジカル・インテリジェンスの研究と書いておりますが、次世代のAIロボットですとかそういったものに必要なAIの研究ですとかシステムの研究をすると。それを実行するために必要な目標値として、低消費電力化というのが一つのキーではないかというような御議論がございまして、例えば2024年にデモレベルで100 TOPS/Wというような処理能力の指標がありますが、それが今後2040年までに10倍、100倍というのを目指していくということをするべきではないかと。それを実現するために、左下の方にありますような例えばロボティクスAIに最適化されたAIの回路ですとか、トランジスタレベルでの低消費電力化ができるような新材料の開発、3次元集積といってチップ間を密接に近付けるために積層させていく技術ですとか、そういったものを産業界と連携して、アカデミアが基礎的な新材料の開発ですとか熱マネジメントですとかそういった学理のところを深掘りするような取組というのをやってはどうかというような御議論を頂きまして、そういったものを今後推進すべきであるというような御提言を頂いたところでございます。事務局からは以上になります。
【原澤主査】 ありがとうございました。主査をされた平本先生にもご出席いただいております。平本先生、補足等がございましたらお願いいたします。
【平本先生】 東京大学の平本でございます。今回の次世代半導体のアカデミアにおける研究開発等に関する検討会の主査を務めさせていただきました。少しお時間を頂きまして補足説明をさせていただこうと思います。皆様御存じのように半導体というのは非常に裾野が広い産業でございます。しかも生産額はどんどん上がっておりまして、6年後の2030年には1兆ドル産業になるだろうといわれております。一大産業ですね。日本では皆様御記憶にあると思いますが1980年代に日本が強過ぎて日米貿易摩擦というのが起こってしまったわけです。その後日本の半導体は競争力を失ったといわれておりますが、当時は強かったものですから、それと比較して非常にネガティブな印象を与えるという産業になってしまいました。特に2010年代になりますと、文科省関連のプロジェクトでも大学でも半導体がなかなか見向きもされない、エレクトロニクス全体が人気がないという非常に不幸な状態になっていたわけですが。実はその2010年代から世界では半導体の重要性というのが再認識されて、どの国もものすごく半導体を重要視するようになりました。その状況で実はコロナになって半導体不足といことが起こって、それで半導体が日本でも再び脚光を浴びました。そうしますと今でも日本は実は半導体が結構強かったのではないかということが再認識されました。昔のように50%のシェアはありませんけど10%ぐらいあります。これはかなり強いですね。特にメモリやイメージセンサーでは圧倒的に強く、ロジックと呼ばれるところで弱いといわれています。また、半導体チップではありませんが、それを支える材料や装置は日本はものすごく強い。半導体のシリコンウエハーはもう日本が5割以上です。装置も非常に強い。先ほどもお話がありましたように、出口として車ですとかそういうものも非常に強いということで、日本はこの分野はものすごいポテンシャルを持っているのですね。それが再認識されて2021年に国として半導体を強化しましょうということで、半導体・デジタル産業戦略というものが作られました。これが基になって文科省でも議論が始まったと理解をしています。
今回取りまとめるにあたりまして様々なことを考えましたが、一つ非常に注意したのは、半導体の開発というと何となく皆さんは微細化のことを考えるようなのです。微細化は重要ですが、微細化だけやっていても全く駄目で、それ以外のことも十分にやらなければいけないということで、今回はあえてそのユースケース、何に使われるかというところを非常に強調しました。たくさん例はあるのですが、その中でも特に次世代エッジAIというのを取り上げました。これも既に競争が始まっていますが、具体的な例を挙げて、ケーススタディをきちんとしましょうということになりました。ロボティクスも入れた次世代AIで具体的なロードマップを作ってみたわけです。半導体のロードマップを作るのは非常に難しいのですが、定量的な指標の入ったロードマップができあがりましたのでいろんなところで参考になるものだろうと思います。そのときに指標になるのは、単なるスピードではなくてエネルギー効率です。消費電力が低くなければ駄目なのです。そのエネルギー効率が重要であるということを強調しました。それから、大学の総合力でこの多くの分野で貢献はしたいと思っておりますが、日本が強い材料、デバイスだけではなくて、余り強くないといわれている設計システム、上位のアーキテクチャの部分ですね、そこを強調いたしました。材料、デバイスは元々かなり強かったということです。
重点4項目というのを挙げました。従来はその中で代表的な半導体はトランジスタ研究だったのですが、それは実は3番目に持ってきていて、1番目、2番目はより上位のアーキテクチャや回路、システムの方を挙げたのです。そのように今までの検討会とはかなり違った特色を出して、もちろんトランジスタ研究、微細化の研究を行いますが、それ以外もアカデミアで総合的にやっていきたいということを考えております。当然、経済産業省とは差別化が必要だということで、より次世代、より先の世代の研究をおこなうことになります。そこになりますと実際にデバイスを集積化するというのは大学ではできませんが、そこに詰め込む知見については今のうちからやっておかないともう全く間に合わないという状況です。各国は既にやっているわけであります。
そこで今回のようなロードマップを参考にして、より上位の、必ずしも半導体等の分野ではないところまで巻き込んだ総合的な研究が必要だろうということでございます。人材育成も当然取り上げました。ですが、半導体という産業規模から考えますと、そこにいる大学人材が少な過ぎるという危機感がございます。これはどの分野もそのように思っていらっしゃると思いますが、半導体分野は特に足りない、特に設計人材が足りないというふうにいわれております。そこもしっかり報告書に盛り込んでおりまして、大学としてできることをしっかりやっていこうということでまとめさせていただいた次第でございます。私からは以上でございます。ありがとうございます。
【原澤主査】 どうもありがとうございました。半導体のおかれている立場とか、検討会の報告書のポイントをお聞きして、大変感銘を受けました。それでは、ただ今の御説明につきまして、委員の先生方から御質問や御意見がありましたらお願いいたします。では、中北委員、よろしくお願いします。
【中北委員】 おはようございます。京都大学の防災研究所の中北と申します。ご説明ありがとうございました。非常によく練られて、今までの轍も踏まないような、それから国内でも総合的にというような構想にまず敬意を表したいと思います。その中で2つだけお伺いしたいのですが、既におっしゃっていました、いかに使われるかというところも大事に考えられて、一つはAIということを考えた上で技術開発として何がポイントになるかというようにされているというところを拝見しました。これもすごいと思っているのですが、今回の技術開発の目標だけではなくて、これらの技術が今度開発した後に日本全体の産業界、アカデミアで更に多く使っていかれるような、そういう裾野を並行して育てていくというのも非常に大事かなと思うのです。例えば私が属しているのは地球科学の分野、温暖化も含めてですが、複雑系のことをいろいろ紐解いていく中で半導体の発達が非常に大事なところになるのですが、そういうところのいろんなこういう今回の提案されているものが二千何年にできたときには、こういう利用の仕方ができるべきだというような、裾野としての並行した技術開発、研究開発みたいなことを入れていただいて、相対的にもう少し広めなことも、ここをベースに訴えていただけると、さらに日本の国力が上がるのではないかというふうに一つ思いましたので、今具体的なことを申し上げているわけではないのですが、そこら辺もまたお話を進めていただければと思いました。
また、大学の、国全体の総力を挙げてということもすごく素晴らしいと思います。若い人もどんどん育て上げながらというところで、半分国際卓越研究大学構想みたいな、それと似たような動きを持ちながらのアイデアが出ている感じがしたのですが、国際卓越の場合は例えば海外の研究者にも魅力的な環境を整えてというのがあるのですが、今回こちらの半導体のアカデミア支援というのは、やはり日本の将来の国力を考えて、国内の研究者を中心に、あるいは次世代も中心に、産業界と連携した総体を日本独自のものを作りたいという考えでいらっしゃるということでよろしいでしょうか。2つ目は御質問でございます。どうぞよろしくお願いします。
【原澤主査】 ありがとうございます。これは平本先生にお願いしましょうか。
【平本先生】 1件目、どうもありがとうございます。1件目はですね、実際に使われる分野を幅広く網羅して何かすごい絵が描けるとよいなと思っております。防災の分野にも当然たくさん使っていただいていると思いますので、少しユースケースを更に拡大したような絵が描けるとよいなと思いました。
2件目でございますが、これはもう日本で閉じるということは考えておりません。国際連携は重要です。国によりますが、これは足りないところはもちろん外からも取ってくると。日本もそれで相乗効果で進歩するということで、特に東南アジアの方の国との連携というのは今後より必要で、視野に入れて書いております。
【中北委員】 どうもありがとうございました。
【原澤主査】 ありがとうございます。それでは、続きまして本郷委員、お願いいたします。
【本郷委員】 ご説明ありがとうございました。非常に勉強になりましたし、何か勇気付けられるような内容で、本当にありがとうございました。それでコメント、質問で2つほどあるのですが、エネルギー気候変動でも半導体の役割というのは非常に大きいなというところ、長期のエネルギーシナリオを考える上では大事だということが認識されてきているのですが、そこで、はたと警戒しなければいけない点があるなというのが最近出てきておりまして、それはクリティカルミネラルズ等に見られるような地政学リスクがあるのではないかと。特に極東地域において非常に大きなリスクがあるのではないかというふうにいわれていまして、安全保障上欠かせないというような認識がEUでも日本との対話の中で出きているかという気はいたします。そうした中で、国際連携はどんどん進めていかなければいけない。最初にありましたように日本の前提として人口減少、そういうことを考えても国際連携を進めていかなければいけないのですが、一方で安全保障上の対策というのも必要だというところで、一種ルールといいますかバランスといいますか、その辺りが必要だと考えられます。それについて何か御配慮といいますか、検討で出てきたようなことがあるのか、これを一点教えていただきたいなと思います。
2つ目は、出口の、これは産業というところでひとくくりにされていますが、日本の社会的な課題からすると、生産あるいはエネルギーという分野ではなくて、人との関わり。最近はWell-beingとかいわれてますが人との関わりの部分でも、この半導体というのは非常に重要になってくるのではないかと思うのですが、それについて何かそういうような関連した議論が出たかどうかについても教えていただければなと思います。2点よろしくお願いいたします。
【平本先生】 私から答えましょうか。どうもありがとうございました。1件目は実は非常に微妙な問題で、今私はうまく答えられないのですが、この問題は今回のアカデミア検討会のスコープを少々超えておりました。そこで最終回に私の方から今正に本郷先生がおっしゃったような問題がありますと言うにとどめて、他の委員会でしっかりと議論していただく必要があるということにしました。既に産業界ではこの問題に多分直面していると思いますが、国として文科省がどのようにするかというような方針はこれから文科省の中でしっかり議論されていくべきことだと思います。本日は申し訳ございませんがここまでにさせていただきたく思います。
2番目でございますが、Well-being、人との関わり。直接これについて深く議論したわけではございませんが、ロボットというのがここに非常に大きく関わってきています。人と関わるロボットというのは非常に難しいですね。現在ロボットというのは産業ロボットのようなものはものすごくうまく機能しておりますが、人が入った途端に大変になるらしく、そこはAIの正に腕の見せ所のようなところがございますので、そういう意味で人と関わるエレクトロニクスのところは議論されました。これは非常に大きな可能性の秘めた分野だと思っておりまして、正にエッジAI、ロボティクスの重要テーマだというふうに考えております。ご指摘ありがとうございます。
【原澤主査】 どうもありがとうございます。最初の方の質問ですが、事務局から何か回答はございますか。
【田村(事務局)】 検討会でもそのお話は議論はございまして、ただ、確かに半導体というのは非常に経済安全保障上でも重要な技術であるということで、経済産業省が役所の中では主になって対応していると思いますが、その辺りとしっかりと連携しながら今後検討していくべき課題かと考えております。
【原澤主査】 ありがとうございます。続きまして、大久保委員、お願いいたします。
【大久保委員】 大変俯瞰的な報告書を作成いただきましてありがとうございます。特に今回低消費電力化、エネルギー効率の問題が前面に位置付けられているのは大変重要なことと考えております。このことは報告書の中では経済安全保障という書き方でございますがエネルギー安全保障の観点からも、そしてまたカーボンニュートラルの観点からも大変重要なことと思ってお伺いしておりました。
私の質問は実は先ほどの資源の問題とも関わるわけですが、この一連の研究開発がその他の側面でどのようなインパクトをもたらすかということに関するものです。別の聞き方をさせていただきますと、今回の報告書でも統合的研究開発が重要であるということ、それからLCAの重要性というものも書き込まれております。具体的にこれをどのように実施していくのかということについて、最初プラットフォームの活用というようなことを考えていらっしゃるのかなと思ったのですが、報告書の中ではプラットフォームはもう少し別の文脈で出てきているような気もいたしまして、PFAS問題や鉱物採集に対する地元へのインパクトも含めまして、様々なLCA的な観点を統合的に進めていく具体的な方策というものについて何か現時点でお考えがあればお伺いしたいと思います。以上です。
【原澤主査】 平本先生、お願いいたします。
【平本先生】 これにつきましては文科省の方から回答をお願いできますか。
【田村(事務局)】 正にLCAについては、PFASのところに書いてございますが、そこの辺りは非常に重要なのではないかと産業界の方から要望がございました。製造過程のところでPFASの問題が非常に問題になってございまして、製造中止だとかそういうのも発表されているようですので、その辺りもしっかりと対応できるような技術開発を、そのPFASが前提でないような技術開発も必要なのではないかというふうに御議論がございました。
【原澤主査】 ありがとうございます。それでは、続きまして藤森委員、お願いいたします。
【藤森委員】 藤森と申します。私は製造業に携わっているので、そちらの観点からお伺いしたいと思います。先ほど言われていた省エネとかエッジとか、戦略としては非常に的を射ているなと感じました。それで、お伺いしたかったのは、まず1点目は、死の谷を越えるのだと。大型の300ミリのウエハーとかですね。こういうところは多分産業界の人材というところの活用が必要になってくるのではないかと。産学の人材交流ですね。かなり日本のこういう分野の方というのは逆に国内に行かずに海外に行ってしまわれるとか、そういう例もいくつか聞いていますので、まず一つお伺いしたかったのは、その産学連携の人材の交流に対しての計画です。もちろん若手の交流というのも非常に重要なのですが、そのスキルを持った方です。そういう方にあえてそういう死の谷を越えるといいますか、そのつなぎのようなところに持ってくるとか、そういう計画がないのかということをお聞きしたいのがまず1点目です。
2つ目は、他の委員の先生方からもあったように、海外との交流というのはもう必須だというふうに思いますので、こちらもぜひ進めていただきたいのですが、もう一つそれに関して、いろんな製品、車もそうですし、例えば航空分野もそうなのですが、国際的な標準化というのが非常に進んで、そういう中で議論されていくものが実装されていくわけで、こういう分野も含めて、半導体がそういうところに乗るかどうかというのは先端分野は直接は乗らないとは思うのですが、そういうところから次世代の技術の目とか方向性などをつかんでいく、そういう連携も非常に重要ではないかということで、この分野での標準化とか基準化など、国際的な枠組みへの人材の供給というのですかね。そういうところについてもお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【原澤主査】 ありがとうございます。平本先生、よろしいでしょうか。
【平本先生】 どうもありがとうございます。1点目でございますが、産学の人材交流は重要でございまして、日本には余りないですよね。これは全くまずい状況だと思いますが、人材流動性がないというところは大問題だと思います。ただ、技術的な交流は大分進んでいます。今おっしゃったような強制的に人材を産業界から大学に移すですとか、そういうところまでは今回の議論は出ませんでしたが、先日経産省の方で行われた人材に関するワークショップのようなところではそういうような意見をおっしゃる方がいました。そのくらいやらないと日本は人材流動性が出てこないのではないかというような危機感があると思います。少し産業がうまく回ってくると人材流動性も上がるのではないかと思いますが、これは今後の課題だと思います。ただ、人材の流動性が駄目でも、技術的なしっかりした連携があるということをまず前提として進めていきたいと思っています。
それから、2つ目の標準化。これがまた日本で余り重要性が認められていないところです。半導体の分野でも国際標準化というのはたくさんございます。主に企業の方が行っているわけですが、企業の中で国際標準化の重要性というものがしっかりと認識されるというところまでいっていません。他の国の企業に比べると力の入れ方が弱いというのが私の印象です。国際標準化でもって何か一つ突破してやろうというようなことがなかなか日本で起こらない。ところがアジアの国はそれをやっているということで、今は日本は防御的なところが主体になってしまっていますね。ここは戦略を変えていかなければいけません。今回の検討会でも国際標準化をしっかりしなければいけないという意見が出ました。私もそれに同意して、特に企業の方の意識を変えていく必要があるという発言をいたしましたので、これはしっかり認識していただいて変えていくということが必要だと思っております。
【藤森委員】 ありがとうございます。特に標準化のところは企業側もかなり頑張らなければいけないと思いますが、何かしら日本としての戦略というのが必要かなと。これは半導体だけではないのですが、かなりそういうところから将来の方向などが決まっていくような分野もございますので、ぜひご検討いただければと思います。以上です。
【平本先生】 はい。そのとおりだと思います。ありがとうございます。
【原澤主査】 ありがとうございます。続きまして堅達委員、お願いいたします。
【堅達委員】 非常に詳細で希望の持てる戦略をありがとうございました。私の方からは、これはこの戦略そのものに言っているわけではないのですが、この半導体の分野はやはり世界的な競争が非常に激しいところだと思うのです。そこを研究を進めていく上で、そもそもの今の日本の研究体制と予算、これが2桁ぐらい予算が付くのが少なかったり、若手の人材がちゃんと研究分野に育っていけない、そういう大学全体が困っているという、大学側からもこの円安も含めて予算的にも限界であるようなことが表明されるこの時代にありまして、この体制の脆弱さというのをどのように乗り越えていこうという危機感であったり対策を持っておられるのかというところを一つお伺いしたいと思います。というのも、AIがこれからどんどん大事になっていくときに、AIに掛かる予算も全然規模が違い過ぎて、本当に日本はこの研究分野で将来海外の先端的な、特に中国、アメリカと勝負していけるのかという疑問を素朴に私は持っていますので、その辺のこの戦略を作るにあたっての危機感を一つお伺いしたいというのが一点です。
もう一つは、省エネをこの半導体でやるのはとても重要であり、そこで勝負していくというのは大変大事なことだと思っているのですが、この資料の中でやはり今後2050年に大型火力発電所換算で4,500基が必要とか、エネルギーが膨大に掛かるようになっていく未来像というのが引用されておりますが、この辺はそこまでは掛からないのではないかという、これは過剰な見積もりではないかという、そういう研究をされていらっしゃる方もいらっしゃいます。私はもちろん一定の電力需要が増えていくことは理解しているのですが、ある程度その辺をエビデンスに基づく消費電力分析というのをしっかりやっておかないと、変な言い方ですがエネルギー基本計画の見直しも行われていますが、AI半導体がものすごく電気代が掛かるというのを、石炭火力を温存する口実に今使われている現状というのもあるのも事実です。その辺りどれくらいこの辺りの見積もり分析をされておられるのかという、2点お伺いできればと思います。
【原澤主査】 ありがとうございます。これは平本先生か事務局か。
【平本先生】 これは私が回答してから文科省にお願いしたいと思いますが、国の予算が少ないというお話でございますけれども、実際そのとおりでした。ただ、経産省の最近の半導体への取組は非常に力強くて、他の国が羨ましがるぐらいになってきているのですね。という意味で日本は本気で半導体をやるぞということは内外に伝わっているというふうに思います。主に経産省関連、それから企業向けですね。それを受けて、これだけ半導体に国が力を入れるわけですので、人材を供給する側の大学としてもしっかりしたことをやりましょうと思って始まったのが今回の検討会だと理解をしております。元々基礎研究のレベルが非常に高かったのですが、教員の数が減ったということで相対的な力が落ちてきていたということは否めなかったと思います。ただ、私の感覚としては、その産業界が競争力を失ったといわれた2000年から2010年代にかけても大学の人がしっかり研究を行っていて最先端の研究をしっかりフォローしていた方がたくさんいたというのが私の印象です。経産省の方でその力強い予算措置をおこなったところ、手を挙げる方がたくさん出てきたと。私もやります、私もやりますということで、今経産省系のプロジェクトでとても力強いプロジェクトが始まっております。経産省ですので、より実用に近い研究開発の予算なのですが、文科省からもう5年、10年先の課題に対する予算が来るようになれば、日本は大分また変わるのではないかという期待を持っているところです。以上が予算に関することでございました。
二つ目の話は私はちょっと分かりませんでした。どこまでエビデンスに基づいてエネルギーの議論をされたかということだったと思います。ここは申し訳ございません、田村さんにお願いしたいと思います。
【田村(事務局)】 私たちの会議で使用した資料はJSTの報告書を基に議論を行いました。その辺りをどうやって算出したかというのは今私の手元にございませんので、それ以上はお答えできないのですが、一応JSTのレポートに基づいて私たちの方で議論を行ったということでございます。
【原澤主査】 よろしいでしょうか。それでは、続きまして竹ケ原委員、お願いいたします。
【竹ケ原委員】 どうもご説明ありがとうございました。微細化ですとか速度もさることながらエネルギー効率とかユースケースに着目することでより強みを生かせるのだという御説明はとても分かりやすくて非常に勇気付けられました。ありがとうございます。おそらく先ほどご説明あったように、この展開というのは過去を踏まえての取組だと思うのですが、私もかつて日本がDRAMで圧倒的に強かった頃に半導体産業に対する融資をずっとやっておりまして、その当時からこれだけ優れた加工技術を持っているにもかかわらず、どうしてASICとかCPUとか、より付加価値の高い方に入っていけないのだという議論などをよくメーカーの方ともお話を聞かせていただいておったのですが、その時は正直余り答えがよく分からなかったのです。電卓戦争以来のいろんな話があって、実際技術力の話ではなくてマーケティングの話だったり、より政治的な話で日本の半導体産業というのはCPUの世界に入っていけなかったのだみたいな話もお聞きしました。今回のエネルギー効率とかユースケースの方に比重を置いて戦略を作られた御議論をするにあたって、過去の振り返りといいますか、その辺の見方というのはどういうふうな議論があったのかを少し教えていただきたいのが一点であります。
もう一つ、今回大学の役割ということで、正に材料ですとか本来の強み、あるいは製造技術の話。こういったところにフォーカスされているというのは非常に合理的だなと思う一方で、ユースケースになりますと介護、福祉でありますとか非常に人に近いところのロボティクスみたいな話が入ってくると思うのですが、材料の話とユースケースの話はかなり距離がありますので、この両方をうまくつなぎ合わせてやっていかれるという意味で大学のハンドリングはすごく難しくなると思うのですが、この辺をどう考えたらよいのか補足いただけると有り難いです。
【平本先生】 どうもご質問ありがとうございます。1件目で過去どのように総括したかということでございますが、これにつきましては、御存じかと思いますが牧本様をお呼びしました。あの半導体のDRAMから、その後ソニーに移られてロボットのこともなされましたが、牧本様のメッセージはやはり非常に明快で、何に使うかというところをしっかり議論しなさいということに尽きますね。ということで、牧本様との議論だけではありませんでしたが、よりユースケースにしっかり方向を向けて、何のためにやるのかということを皆さん意識した上で研究開発を進めていくという、そういう方向性に最初からなったという感じでございました。そういう議論が最初にあってユースケースなのですが、これが実際にできるかという話はまた別でございまして、今おっしゃったようにASICやCPUに入れなかった理由は様々あると思いますが、基本的により大きなシステムになってくるとアジア系の人は苦手なのですかね、そのように感じます。メモリとかイメージセンサーのように同じようなものをたくさん並べるようになると急にアジアが得意になるというような傾向があるかと思います。そういう意味では、半導体物理ですとかプロセスには強くても、それが何のために使われて、その大きなシステムを構築する力みたいなものはなかなかアジア系が弱いような印象を持っております。今回、エッジAIというのを掲げましたが、実は余り簡単ではなくて、特に日本が余り強くないといわれている設計技術、EDA技術、それからさらに上のレイヤーのアーキテクチャとその連携みたいなものですね。そこは今日本が最も人材が不足している部分でございまして、そこを解決しないととてもビジネスまで行けないのではないかというようなことは当然考えております。ただ、やはりここをやらないと日本は駄目だろうと。日本はやはりこれをできるだけの力はあるだろうということで今回それが前面に出てきたというような感じです。そのような経緯でこのような結論になったということでございます。
それから2件目は、ユースケースと介護・福祉、あるいは材料とユースケースは距離があるということですが、半導体は余りにも範囲が広いので同じ土俵で議論できないようなことがたくさんありますね。そこはおそらくプロジェクトも階層的になってしまうと思いますが、一つひとつの分野が分断しないように前後左右のつながりのあるような風通しのよいプロジェクトを組んでいく必要があって、それができるための何かプロジェクトリーダーに相当する方の力量が非常に問われるのではないかと考えております。
【竹ケ原委員】 ありがとうございました。よく分かりました。
【原澤主査】 ありがとうございます。それでは、続きまして田中委員、お願いいたします。
【田中委員】 田中でございます。ご説明ありがとうございました。非常に感銘を受けて、私も脱炭素系でエネルギーの研究などをしているのですが、やはりこの末端の方に権限を付与していくといいますか、末端のエッジでいろいろやらせてみるとか学習させるみたいなものも今研究として始めているところなので、大変期待をしながら聞かせてもらっておりました。
質問は2つありまして、1つはユースケースを見ていただけるということで非常に有り難いなと思っている一方で、まずは日本でユースケースをやると思うのですが、標準化とかを考えていくとやはりグローバル展開も必要かなと思いますけれども、その辺のところでハードウェアを開発しながらそのユーザー側の巻き込みみたいなものも正に先ほどのお話かと思いますが、どういった形が一つの勝ち筋なのかみたいなものがもし検討会で御議論があればぜひ教えてもらえばと思いますし、逆に我々のようなユーザー側がどのように入っていければよいのだろうかみたいなところも何かあると、非常にその待ち方というのもあるかと思ったので、それが質問の1つ目です。
2つ目は、人材の育成も非常に勇気付けられるお話を頂きましたが、若手の獲得競争という意味においてはそのキャリアパスといいますか、どういう若手の将来像みたいのがあるのだろうみたいなところで、先ほどの産業界とアカデミアの交流みたいなお話があったかもしれませんが、そういった意味でそのキャリアパス的なところでこういう魅力があるので若手をいっぱい誘い込む、というようなそんな議論ももしあれば教えてもらえばと思います。2つほど質問させてもらいます。
【平本先生】 どうもありがとうございます。ユースケースに対してどのような勝ち筋かというのは非常に難しい御質問でございまして、そういうような勝ち筋があれば非常によいなというふうに思っておりますが、最後におっしゃったユーザーがどのように入っていくかというところが重要だというふうに思います。日本はどちらかというと分断されているのですね。アメリカを見ているとベンチャーも含めて成功しているところというのは元々半導体屋さんではない人がいつの間にか半導体の分野に入ってきて自分がユーザーとしてやりたいことをやっているというケースが多いのです。ですので、多くの場合は半導体は目的ではなくて手段なのですね。それで、半導体を使うと自分のビジネスがうまくいくぞという方が半導体にたくさん入ってきて、それでベンチャーがとても多くなって今やもう大メーカーという所がいくつもあります。日本はそこのインターフェースが何か弱いのですね。そういう意味で人材交流も含めて技術の交流、そのいくつかの技術レイヤーの間の対話、交流がまだまだ足りなかったと。そこを十分に広げていくということで半導体の人も活性化するしユーザーの人も活性化して相乗効果を生むというようなシステムを作っていくということが重要だと思っております。そういうような意見がもちろん出ましたが、一部報告書にも入っていたかと思います。そのような議論がございました。1件目は以上でございます。
2件目の人材育成とそのキャリアパスですが、こういうことを言ってしまったら余り身もふたもないのですが、やはりその半導体メーカーが強くなるということが重要ですよね。ですので、もちろん我々は大学あるいは文科省の立場として人材を供給しますが、その方たちが企業なりに入って活躍してもらうためには、その企業が強くなるということが重要です。今は例えばTSMCとかサムスンというのは学生はみんな入りたいわけですよね。あれだけ大きな会社ですと社内に入ってからもしっかりしたキャリアパスができていて、もちろん競争は激しいですが、キャリアパスが見えているのですね。それが日本でも見えてくるとよいなと思っておりますが、もちろん既に大きな会社、ソニーさんですとか製造装置メーカーの東京エレクトロンさんみたいな所はおそらくキャリアパスが学生にとってちゃんと見えていると思うのですね。ですので、まず企業が強くなってもらうということが重要で、しかも一つの会社にこだわらなくて、しっかり人材流動性を保つということで強くしていくしかないなというふうに考えているところです。
【田中委員】 ありがとうございます。それでは、続きまして佐々木委員、お願いいたします。
【佐々木委員】 九大の佐々木です。エネルギー関係で委員として、堅達先生ともかぶるのですが、一つコメントさせていただきたいと思います。お話に出た前提とされている電力供給、これはやはりかなり厳しいのではないかというところを改めて感じております。私がおります九州でも半導体の工場が次から次へとできていまして、その電力供給が律速になりつつありますし、データセンター等がまた増えてきますと更に電力供給がひっ迫するという状況にあります。なのでぜひ研究の中に、もちろんいろんな新しい取組も大事ですが、半導体の更なる省エネ化というところをやはりきっちり入れ続けていただくというのは大事かと思いますので、検討はされていると思いますがコメントをさせていただきます。私からは以上です。
【原澤主査】 ありがとうございます。平本先生から何かございますか。
【平本先生】 半導体チップが消費するエネルギーと、半導体工場が消費するエネルギーと二つあるわけでございまして、今のご質問は半導体を作るための電力だと思いました。これはまだまだすごい電力が要るのですよね。そこはなかなか大学では難しく、今回の報告書にも、一部しか入らなかったと思いますが、それは今後の大きな課題として業界として全体として皆さん危機感を持っていることは間違いございません。どうもコメントありがとうございました。
【原澤主査】 ありがとうございます。それでは、伊香賀委員、お願いいたします。
【伊香賀委員】 ありがとうございます。私からは一点のみです。言わずもがなで特に記載がないのかもしれないのですが、半導体にレアメタルが使われているという前提があって、特定の国にそのレアメタルの産出が集中していて、その資源の安全保障といいましょうか、最先端の半導体製造に進む中で、その性能を上げるがゆえに特定の国のレアメタルに限定したものだけを開発していくと、何かあったときに大変なことになるのではないかと考えますと、一方で十分日本でも安全に手に入り得る資源をベースにした半導体の開発ということも一方で念頭に置いておかないといけないのかなというところが一点気になりましたので発言いたしました。以上です。
【平本先生】 ご指摘ありがとうございます。今回はその話は出なかったかもしれませんね。ただ、これにつきましては材料メーカー、装置メーカー等がもう十分にアンテナ高く気にしているところだろうというふうに思います。これは材料を替えるというのは大変なことで、逆にいいますと今周期表の中で半導体製造に使われていない元素を使う方が珍しいぐらいほとんど全ての元素を使っているぐらいになっていますので、そのうちの一つが欠けてもできないという状況になってしまう可能性がございます。その代替の材料の研究で、これは正に大学に適しているのではないかと思いますので、これはぜひ検討していこうと思います。ご指摘ありがとうございます。
【原澤主査】 ありがとうございます。それでは、石川委員、お願いいたします。
【石川委員】 JAMSTECの石川です。いろいろ説明ありがとうございました。聞きたいことは他の皆さんへの回答で大体お聞きすることはできたのですが、いくつかコメントさせていただきたいと思います。一つ目はまず今回の中でいうとやはり基礎研究から産業につながるところの死の谷をいかに埋めるかという説明もありましたが、そういうところに着目したレポートというのは非常に素晴らしいものだと思っております。特に人材育成に関しては、卒業した方々の、先ほどもキャリアパスという言い方をされましたが、非常にそういうところはこういう基礎研究をやる上で非常に大事なので、正に文科省の事業としてこういうところに投資を今後もしていただくというのは必要だと思っております。
その中で、今回はコメントがなかったのですが、例えばこういうものを大企業からのスピンオフとかベンチャーとかそういうものが担ってくというのは一般的によくあると思うのですが、そういうところの支援というのは別途例えば経産省さんとかの方で具体的な話がもう進んでおられるのでしょうか。それともまたここのところも課題になっているのでしょうか。というのが質問になります。できればそういうところがあると、キャリアパスの中で人材流動性を確保する中で大きなところだけでなく、大学と大企業を結ぶところ、人材流動性の中でもそういう役割というのは非常に重要ではないかというふうに考えていますので、そういうところも検討してあるのであれば安心ですし、もしないのであれば今後検討いただきたいなと思っております。以上です。
【原澤主査】 ありがとうございます。平本先生から何かございますでしょうか。
【平本先生】 ベンチャーを含めたところは余り日本としてうまくいっていないところですが、昔に比べればベンチャーは大分増えていますよね。特に設計ベンチャーがいくつか増えて、有名な例ではPreferred Networksというような会社が出てきています。特に半導体を使う側、作りたいものを設計するというような能力がある会社がたくさん出てこないと、先ほど言いました製造ではなくて上側の設計からアーキテクチャのところが活性化しないのですが、そのときに大問題になるのがEDAなのですよね。いわゆるEDAツールという設計ツールはアメリカが今もほぼ独占していて、これはソフトウェアのライセンス料がものすごく高いのですね。何億円というもので、ライセンス一つ買うのがやっとみたいな形になっています。そこはもう昔から問題で、経産省で多くの取組がございます。ただ、中小の小さいところには国が支援してEDAの費用を負担するというようなことがやられておりますので、様々なことが行われていることは間違いないと思います。ただ、一般的にまだ企業からのスピンオフは少ないと思います。ベンチャーキャピタルの投資も少ない。これはもうアメリカとか中国とか比べたら正にその通りであり、国としての問題で、経産省がこれから取り組んでいくことになろうかと思います。人材育成の点でもこの点が重要だという点は全く同感でございます。
【石川委員】 ありがとうございます。今回もユースケースを絞って具体的な検討をされるというのですが、一方でユースケースについてやはりこの半導体の利用もほぼ全ての産業だと思いますので、あらゆるところに対してはできないと思うので、そういうところを担うのは多分ベンチャーとかになるかと思いますので、そういうところでもこういう話が広がっていくことを期待しております。
【平本先生】 ありがとうございます。
【原澤主査】 どうもありがとうございました。平本先生には本当に丁寧にお答えいただきました。ありがとうございます。
【原澤主査】 では、次の議題に参りたいと思います。次の議題は、研究開発課題の事前評価についてです。冒頭にお伝えしたとおり本件は非公開で行いますので、傍聴の方はここでご退席いただきます。事務局の方で配信の停止をお願いいたします。よろしいでしょうか。
【田村(事務局)】 OKです。
【原澤主査】 それでは、研究開発課題の事前評価に移ります。事業概要と事前評価書の案について、事務局より説明をお願いいたします。
(議題2. 研究開発課題の評価について議論)
【原澤主査】 ありがとうございます。時間も残すところ10分ということですが、他に御意見ございますでしょうか。よろしいですか。いろいろな御意見ありがとうございました。本日頂いた御意見を踏まえて、事前評価票を修正したいと思います。資料の2-1についても同様ですが、修正につきましては私主査にご一任いただければと思います。その点よろしくお願いいたします。以上で本日予定されている議題は終了です。最後に事務局から事務連絡等をお願いいたします。よろしくお願いします。
【田村(事務局)】 ありがとうございました。本日の議事録につきましては委員の先生方にお諮りした後にホームページに掲載させていただきたいと思います。資料については誤記等ございまして大変申し訳ございませんでした。引き続きよろしくお願いいたします。事務局からは以上でございます。
【原澤主査】 これをもちまして第12期 環境エネルギー科学技術委員会の第2回会合を閉会いたします。本日はどうもいろいろありがとうございました。以上です。
―― 了 ――
研究開発局環境エネルギー課