革新的GX技術開発小委員会(第9回)議事録

1.日時

令和6年7月30日(火曜日)16時00分~18時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

 1.前回の議論のまとめ及び革新的GX技術開発小委員会中間まとめ(案)について
 2.GteXの取組状況等について
 3.次世代半導体のアカデミアにおける研究開発等に関する検討会報告書について
 4.総合討議

4.出席者

委員

杉山主査、石内委員、菅野委員、佐々木委員、佐藤委員、志満津委員、田中委員、所委員、平本委員、本郷委員、本藤委員、水無委員、森委員

文部科学省

清浦研究開発局審議官、山口環境エネルギー課長、田村環境エネルギー課長補佐、後藤環境エネルギー課長補佐、吉田ライフサイエンス課長補佐 他

オブザーバー

経済産業省、科学技術振興機構(JST) 他

5.議事録

【後藤(事務局)】  それでは定刻になりましたので、ただいまより科学技術学術審議会研究開発評価分科会第12期環境エネルギー科学技術委員会革新的GX技術開発小委員会の第9回会合を開催いたします。
 冒頭進行を務めさせていただきます研究開発局環境エネルギー課の後藤です。
 本日はお忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日はオンライン会議になります。発言の際はビデオ、マイクをオンに、発言されていない際はオフにするよう御協力をお願いいたします。また、御発言をいただく場合には、「手を挙げる」のボタンを押していただくか、チャットにてお知らせいただくようお願いいたします。指名を受けて御発言をされる際にはマイクとビデオをオンにし、お名前をおっしゃってから御発言をお願いいたします。
 また、本日の議題は全て公開議題となりまして、会議の様子はユーチューブを通じて一般傍聴者の方に公開をされています。
 議事に入ります前にまず本日の資料を確認させていただきます。議事次第、資料1-1から3-4、参考資料0のファイルをメールでお送りしておりますが、もし不備等がございましたら、事務局までお申しつけください。よろしいでしょうか。
 なお、本日の出席者は、文部科学省のほか、経済産業省、科学技術振興機構(JST)よりオブザーバー参加がございます。それぞれの御紹介は出席者名簿に代えさせていただきます。
 田畑委員につきまして、御都合によりまして、3月をもって委員を退任されましたので、この場を借りて御報告をさせていただきます。
また、本日は五味委員が御欠席でございますが、定足数を満たしておりますので委員会は成立となります。
 事務局に人事異動がございましたので御紹介をさせていただきます。
 研究開発局担当審議官に清浦が着任をしております。
【清浦(事務局)】  清浦です。どうぞよろしくお願いいたします。
【後藤(事務局)】  また、環境エネルギー課長には山口が着任をしております。
【山口(事務局)】  山口でございます。よろしくお願いいたします。
【後藤(事務局)】  それでは、ここからの進行は杉山主査にお願いをいたします。
【杉山主査】  それでは、本日は議事次第にありますとおり、4件の議題を予定しております。委員の皆様からは忌憚のない御意見を頂戴できればと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。会議の終了見込みは18時頃を予定しております。
 それでは議題に入ります。まず議題1は、「前回の議論のまとめ及び革新的GX技術小委員会中間まとめ(案)について」でございます。それでは、まず事務局から説明をよろしくお願いいたします。
【後藤(事務局)】  それでは、事務局から資料1-1、1-2に基づいて御説明をさせていただきます。
 前回第8回の委員会におきましては、文科省の令和6年度の関連予算の報告と、GX関連領域における話題提供といたしまして、外部からADLと、サーキュラーエコノミー、Climate Techの関係で話題提供を頂いた後、これまでの議論の中間まとめのような形で素案をお示しし、その後、総合討論をしていただきました。その際の主な意見をまとめたものが資料1-1となります。また、この際の意見を踏まえまして、前回お示しした議論の中間まとめを赤字で修正をしておりますのが資料1-2になります。こちら二つを見比べながら、前回の御意見とそれを踏まえた中間まとめの変更点について、事務局から御説明をさせていただきます。
 まず、資料1-1の「1.現状認識・目的」のところでございますが、この点で出た御意見といたしましては、まず「大規模な投資競争が激化」という前段の導入のところでございます。この点、より丁寧な説明ということで、具体的には、需要が動くに当たって、価格差を下げることが重要で、価格が下がらないと実際の投資が進まないので、そのために技術開発投資や研究開発をまさに進める必要があるのではないかといったことを記載すべきという御意見がありました。
 2点目といたしまして、IEAの分析を示しましたが、その中で新規技術としては、まだ商用化に至っていないけれども、ある程度見えている技術や、今はないような技術といった軸もあるのではないかということで、時間軸や成熟度なども考えたほうがいいのではないかという御意見がありました。
 3点目といたしまして、ここは言葉のニュアンスもございますが、この議論のまとめの中で一つポイントとして、アカデミアと産業界が相互にコミュニケーション・対話をすることを踏まえると、表現としても「取り組むべき」というより「求められている」課題や役割といったニュアンスで表現をしたほうがいいのではないかというような御意見がございました。
 こうしたことを踏まえまして、資料1-2の1ページ目について、下の図の真ん中に、カーボンニュートラル実現に向けた日本企業の課題意識というようなデータを追加しまして、この中でもカーボンニュートラル実現に向けて、技術的な問題や開発コストの負担が大きいというデータを足させていただきました。また、赤字の真ん中のところで、技術的問題や開発コストの課題がまさに重要になってきていて、イノベーションへの資金投入拡大による技術開発促進が重要であるという趣旨を補足させていただくとともに、一番下のところをアカデミアに求められている課題・役割というような形で表現を修正させていただいてございます。
 また、新規技術につきましては、今回、個別の技術は深くブレークダウンしてございませんが、より先を見据えた新規技術も重要であるというような趣旨を踏まえまして、1枚めくっていただいた2ページ目に3本の柱で記載しております。その中で革新的な技術の創出をしっかり進めていくことが重要というところ、ここで将来的に必要になる技術などを付け加えております。
 また1-1の資料に戻っていただきまして、「2.GX実現に向けて、アカデミアに求められる研究開発の方向性」につきまして大きく二つ御意見を頂いております。
 一つは、産業界側が持つニーズとアカデミアが持つシーズのバランスを重視するような姿勢が重要ではないかということで、表現ぶりも、それを意識したものにしてはどうかという点です。そしてもう一つは、このとりまとめ全体として相互の対話・コミュニケーションの重要性が強調してございますが、それに当たって考慮すべき要因としては、人材や研究開発のスピード感や様々な状況を踏まえたアップデートが重要であるというような御意見がございました。このあたりのニュアンスにつきまして、資料1-2の2ページ目に赤字で、考え方をアップデートしながら密にコミュニケーションする、外部環境の変化もしっかりと踏まえながら、というようなこと、また、スピード感を持って軌道修正するといった記載で反映をさせていただいております。
 資料があちこちに行ってしまって申し訳ありません。資料1-1にまた戻っていただきまして、ここから、具体的な論点になります。このあたりは資料1-2と見比べていただきながら、ここに書いてある内容を基本的には記載をしております。
 まず、全体といたしまして、この部分に小見出しのようなものをつけさせていただきました。
 その上で御指摘として出たものとしましては、先ほども少しありましたが、循環経済、自然資本、安全保障は必ずしも新しい課題ではなく、以前からあったものが外部環境変化によって重要性が顕在化されてきたというような御指摘や、バックキャストが柱の一つになっておりますが、そのバックキャストをする際に、どうしても未来像がぼんやりしてしまうようなこともある中で、一つの考え方として、もう少し具体的に1~2年後ぐらいをゴールとして、市場にどんなスペックであれば受け入れるかといったことを設定してバックキャストしていくやり方も考えられるのではないかというような御意見がございました。
 また、人材育成の面でも、俯瞰的な視野が大事というような御意見ございましたが、そこについても技術面だけではなくて、経済性や社会課題の観点も見られるような人材育成に期待すべきではないかというような御意見や、基礎研究・技術開発の人とビジネスモデルを見ている人、その間のコミュニケーションも重要ではないかといった御意見がございました。
 二つ目の革新的な技術の創出のところでは、大きく2点ございまして、一つはバイオ分野、これはまさに横断的な分野でございますが、そのバイオ分野は様々なほかの技術との組合せ、掛け算によるイノベーション、この部分をしっかり打ち出すのが重要ではないかという御意見と、様々な技術を横でつなぐようなツールとしてのDXが重要ではないかといった御意見がございました。また、経済産業省・NEDOと文科省・JSTの間の連携をさらに強化していくべきというような御意見もございました。
 3ページ目に行っていただきまして、③出口を見据えた戦略的なマネジメントの観点では、コミュニケーションの話題の中で、三次産業、商社、金融といったところの意見も取り入れられるようなことも意識すべきではないかというような御意見がございました。
 また、二つ目から五つ目のポツについては、全体として文科省で対象としていくようなロングスパンの研究や、Climate Techのような、なかなか直近で市場性が見えないもの、あるいは制度が固まっていないようなものも多くあり、そうした部分については例えばLCAも含めて評価をすること、様々なコストとエネルギー削減、またサーキュラーエコノミーへのインパクトの評価をしていくことなど、異なる評価軸を打ち出していくようなことが必要ではないかといった点や、アカデミアからの情報発信などの点についての御意見もございました。
 また、国際連携の観点では、日本が強い分野、弱い分野は様々ございますが、それを意識したパートナーづくりの重要性という御意見がございました。
 最後に、またプロジェクトを進める際にも、社会科学的、経済的、経営的な観点で見られるようなメンバーが入って、アジャイルにアドバイスや議論を行える仕組みを取り入れることが重要ではないかといった御意見がございました。
 最後の個別領域につきましては、幾つか抜けているところとして御指摘いただきました。一つはデジタル技術のところで、ここはまさに分野をつなぐ共通のツールとして記載すべきという御指摘です。もう一つはバイオやサーキュラーエコノミーです。この点は委員会の中で議論しておりましたが、前回記載が漏れておりまして、この点も付け加えさせていただきました。
 こういったあたりを盛り込みまして、資料1-2として今回修正をさせていただきました。
 事務局からは以上になります。
【杉山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、今の御説明につきまして御意見・御質問等がありましたら承りたいと思いますが、いかがでしょうか。
 事務局で今までの議論をひととおり俯瞰してまとめていただいたことになります。
 本郷先生、よろしくお願いします。
【本郷委員】  大変上手に分かりやすくポイントをまとめていただき、またさらに理解が深まり、勉強になりました。
 そうした中で逆にしっかり見ていくと幾つか気になった点がありまして、一つは技術イノベーションに対しての期待について、需給ギャップがあるからコストを下げることは当然大事なのですが、追加コストなしに実現できるとは言い切れないと思います。脱炭素社会であれば、炭素排出コストがかかってきます。それは最終的には消費者、国民負担になっていくわけでしょうから、そのときにできるだけその負担を少なくするのは大事なのですが、ゼロではありません。最近、ほかの会議体で同じような議論があって、全く影響がない、経済や社会、生活に影響がなくなるようにみたいなところがあって、そこは少しミスリードだったので、ある程度、社会生活に対して影響があることも踏まえることが必要なのではないかなと思います。また、書きにくいかもしれませんが、炭素コストを顕在化させるための規制も併せて整備していく必要があります。技術は技術で頑張るのだけど、規制も併せてやらないと、せっかくの技術も生かし切れないことになるのではないかなと一つ思いました。
 それから二つ目は、技術について集中と分散とあったのですが、競争的にやっていくということも必要なのではないのかなという気がいたしました。二つ目のところは多分、言葉だけの問題だと思うのですが、そういうニュアンスがあっていいのかなという気がいたします。
 以上2点でございます。コメントです。
【杉山主査】  どうもありがとうございます。重要なポイントを頂きました。
 もちろんコストダウンは今と同じエネルギーコストというわけにはなかなかいかないのは全く御指摘のとおりなので、少しでも普及を後押しするような、現状がリファレンスではないところは重要なポイントかと思います。
 事務局からお願いします。
【後藤(事務局)】  本郷委員、ありがとうございます。
 1点だけ確認でございますが、集中と分散をキョウソウ的にというところで、漢字としてはコンペティションのほうでしょうか。共に創る「共創」など、いろいろあるかなと思いまして、念のため確認させていただければと思います。
【本郷委員】  共に創るのも大事なのですが、様々な技術があって、どれが勝ちになるかは分からない、不確実性があるということなので、そこはコンペティションのほうを意図しています。
【後藤(事務局)】  分かりました。
【本郷委員】  それからもう一つ、政策サイドのところで、持続的に支援していくなどの言葉を入れるわけにいかないのでしょうか。産業側からすると、イノベーションのための技術開発支援がストップ・アンド・ゴーということになれば技術開発を継続することは難しい話になりますので、駄目なものは駄目で途中で諦めるのでしょうが、持続的に支援する、ストップ・アンド・ゴーをできるだけ避けるような、言い方としては、長期的な戦略に基づいて持続的に、などの言葉があってはどうかという気もいたしました。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 重要な御指摘かと思います。いい技術は長い目で支えていくことも重要かと思います。
 ほかにいかがでしょうか。ぜひ御意見を頂ければと思います。
 水無委員、お願いします。
【水無委員】  ありがとうございます。水無です。しっかりまとめていただいて大変ありがとうございます。
 特に加えてほしいというわけではないのですが、新しい技術をつくり上げることや、コストダウン、バリューアップにつながる技術を開発することも重要だと思うのですが、プラスして、市民の行動変容につながっていく、あるいは社会システムが変化していくことを狙った場合に、いわゆるトランスフォーメーションに資するようなサイエンスも必要だと思います。社会ミッションからバックキャスティングのところのどこかに、そのような記載というか含みがあったらいいかなと思いました。もちろん人材育成や、新しい技術の視点ということで、近いところは触れられていると思うのですが、単に技術だけではなくて社会システムの変換に加わるような形を目指していくべきではないかなと思ったので、少しコメントさせていただきました。
 以上です。
【杉山主査】  ありがとうございます。重要なポイントを頂きました。
 いわゆるソフトサイエンス的な、全体を俯瞰するというシナリオ的な話と、もう一つ、行動変容をいかに促していくのかというトランスフォーメーションのためのサイエンスというところも重要であるのはおっしゃるとおりかと思います。
 ほかに御意見があれば承りますがいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、また後ほど、お気づきの点がございましたら、総合討論の際に御意見を頂ければと思いますので、次の議題に移らせていただければと思います。
 議題2「GteXの取組状況等について」です。昨年10月にGteXの研究開発が開始してから10か月がたちましたが、その間、研究開発体制の構築に加えまして、事業の運営面でも様々な取組が進められておりますので、本日は、その取組状況について、GteXの魚崎PDから、15分程度、御説明を頂きたいと思います。魚崎先生、何とぞよろしくお願いいたします。
【魚崎PD】  どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは1ページをお願いします。具体的には3番から先が今日御説明するところなのですが、まず全体概要とGteXの研究開発体制について少しイントロをして、その後、進めたいと思います。
 次をお願いいたします。全体概要ですが、ここに書いてあるように日本がGX推進におけるグローバルネットワークの核になることを目指して、この体制でやっているところです。本委員会の下で、こういう体制をつくり、赤で囲んだのが本日の中心の話題でありますGteXですが、それに加えて、より少人数の研究者によるゲームチェンジングテクノロジーの創出を目指すALCA-Next等も含めて、PDである私の運営の下で総括的にやっているということです。
 次をお願いいたします。GteXの研究実施体制は、ここにありますように、JSTの中で革新的GX技術推進委員会のアドバイスを受けながら、私がPDとして全体を統括し、蓄電池領域、水素領域、バイオものづくり領域について、おのおの大阪大学の桑畑名誉教授、山梨大学の内田名誉教授、神戸大学の近藤副学長/教授の3POの下、7、3、5チームで研究開発を推進しております。
 GteXは既に御承知のとおり、チーム研究でターゲットに向かって進んでいくという体制です。参加機関は蓄電池領域50機関、水素領域32機関、バイオものづくり領域31機関で、重複があるため、全体では75機関です。研究担当者は事業全体では260名以上という非常に大きな体制になっております。
 次をお願いいたします。これは参画者の分布ですが、こうして見ていただくと分かりますように、関東・関西が中心ではありますが、北は北海道から南は九州まで広く研究者が分布して、GteXに参画していることが分かるかと思います。
 次をお願いいたします。先ほどの体制は昨年度公募して今進んでいるところなのですが、各領域のポートフォリオをいろいろ考え、研究を戦略的に進める上で不足しているところはないかを検討し、今年度は蓄電池領域において追加公募を行いました。対象は資料に示すとおりで、若干数、10億円程度/課題で公募しました。
 次をお願いいたします。ここには蓄電池領域のポートフォリオを示しています。将来的な企業投資が見込まれる革新電池創出に向けたチームが現在一つしかないということから、この部分を強化したいということで公募を行いました。
 5ページをお願いいたします。ここに示すように4月から5月まで募集し、書類選考、面接選考を経て、革新的GX技術推進委員会で採択候補を決定、JSTの理事会議を経て、プレス発表する予定です。9月以降、先ほど示したチームに、今回採択する予定のチームを加えて強力に研究開発を進めていきたいと思っております。
 次をお願いいたします。その次、4番、国際連携についてです。各領域で研究開発を進めるのは当然のことですが、GteXが対象とする地球規模課題の解決には、いくつかの視点の国際キョウソウ、競争、共創、協奏を考えながら進めていく必要があります。ここでは主として若手の研究者に国際的なネットワークへの参画を支援し、研究のリーダーとなることはもちろん、いろいろな今後の社会的な議論の中でもリーダーシップを取れるような若手を育てたいということで国際連携に力を入れております。
 イギリスとは、電池研究の中心研究組織でありますFaraday Institutionと、GteXスタート時から議論しており、既に政府から1.8ミリオンポンド(約3億円)の資金を確保し、UK Japan Energy Storage Fellowshipを設定、5件のテーマを採択し、先方から日本に人を派遣する予定で、対応する研究者が既に決まっております。一方、日本側からは、GteXのメンバーをGteXのサポートで派遣することを計画中です。
 ドイツについては、昨年11月にミュンスターでワークショップを行って、ドイツ側の予算確保に協力していましたが、その後ドイツの政府全体の予算の凍結、引き続き、蓄電池関連予算の大幅カットがあり、現状、ドイツ側から日本への派遣は難しいのですが、日本側の派遣について現在検討中であります。
 アメリカについては、昨年3月、ALCA-SPRINGの終了時にワークショップを行っておりますが、本年5月には私が、後で出てきますDOEの水素関係のミーティングに参加した折に、DOEの電池の関係部門にも訪問して、今後の展開について議論をいたしました。ワークショップを行うことのほかに、メンバーの交流についても議論いたしました。
 それから、これは急遽話があったわけですが、今年のG7がイタリアで開催された関係で、日本とイタリアの科学技術協力に関する打合せが行われ、イタリアのベルニーニ大学・研究大臣と盛山文部科学大臣が6月27日に、重力波と蓄電池の二つの分野で協力をすることが合意されました。それに先立ちまして、これに向けて、GteXと先方の研究機関でありますCNRの間で詳細に研究連携について議論を進め、その結果として、この両大臣の合意に至りました。今後、連携内容について議論を進め、テーマ等を固めた上で、年内には連携をスタートすることで合意されております。
 それに加えて、JSTではASPIREという国際連携プログラムを行っておりますが、GteXのメンバーである早稲田大学大久保教授がリーダーとして、エネルギー領域のチームを率いており、同チームとGteXの合同シンポジウムを、海外から18名の研究者の参加のもと開催いたしました。
 水素領域については、蓄電池に比べるとまだ進捗が遅いところがありますが、今年5月のDOEの水素関係の研究の状況調査に、私と水素領域の内田POが一緒に行きまして、先方の水素の担当者と議論をいたしまして、今後、連携を深めていくところで意見は一致しております。
 バイオについては、ネットワーキング等をやるために、近藤POと若手研究者が、この10月に英国研究者を訪問することに加えて、DSIT、向こうの科学技術担当の省と議論することを検討中であります。
 次をお願いいたします。この研究を進める上で共通機器を有効に使っていきたいということで、当初に東北大学、NIMS、東工大、理研、大阪大学、神戸大学に機器の設置を認めております。これらは共通機器として利用を図るということで、全体を共通機器ネットワークとしてくくって、既存設備も含めて有効利用していきたいと考えております。
 それからデータマネジメントをきちっとやるということで、JSTでデータマネジメント方針の大枠を策定して、共通基盤チームが中心となってデータ収集、その後の具体的な取扱いについてマネジメント規則を策定予定です。それから、既にこれまでに行いましたALCA-SPRINGのプロジェクトで収集した酸化物の全固体電池のデータがありますが、それの活用と、今後、GteXにおいてデータ収集を早期に開始するために、現在、共通基盤チームが中心となって関係者を集めて打合せ等を開始しております。
 次をお願いいたします。成果創出に向けた活動強化についてです。GteX自体は昨年の秋にスタートしておりますが、この3月にGteXの第1回公開シンポジウムを行いまして、ここにありますように私の全体の説明と各領域の説明に加えて、その後、ポスターセッション、それから本小委員会の主査であります杉山先生に主宰をしていただきまして、パネルディスカッションを行い、方向性、異分野交流の重要性等を指摘いただいております。なお、本会合には盛山文部科学大臣も出席いただき、御挨拶を頂いております。
 次をお願いいたします。加えて、先ほど異分野交流という話もありましたが、それが当初から重要であることは分かっておりまして、GteXでの蓄電池、水素、バイオに加えて、ALCA-Nextでの資源循環や半導体、グリーンコンピューティングという非常に幅広い領域で、三百数十名の研究者が参画しております。共同研究者、学生を加えますと1,000名近い人たちが、このGX、カーボンニュートラルの研究に参画しており、異分野という観点で交流することで新しい展開が期待されるわけですが、1,000人を一遍に集めてもなかなか難しいということで、北海道、東北、つくば、東京大学、近畿地区、九州地区で地域シンポジウムを行いました。関東は、参画者が非常に多く、その中でつくば地区と東京大学が特に多いということで、このような形で行いました。ここにありますようにオンラインと現地参加を合わせて、合計で769名という非常に多数の参加がありました。しかも、そのうちの4割が、この研究に参画していない人たちでした。シンポジウム終了後にはさらに意見交換会でも交流いただきましたが、ある面、想像通りだったのですが、同じ大学に所属していても、他分野の人を知らないというケースが多々あり、このような横断的な試みの重要性が確認されました。なお、ALCA-Nextについても本年度公募を行いましたが、ここに参画した人がかなり応募されており、いろいろな意味で、いい試みだったかなと思っております。
 次をお願いいたします。最後になりますが、社会実装戦略の検討についてということで、これは以前、この委員会でも指摘されましたが、GteXの各領域について研究開発戦略を策定する必要があることもあり、オープン・クローズ戦略、実装シナリオ等を含めてやっていきたいということで、委員会をつくって調査を行っていきます。想定される調査として、特許出願、研究開発動向、将来市場予測があります。次のページの組織図のような形でGteX研究開発戦略検討会議というものを設置し、PDである私が議長をし、PO、企業、VC、それから外部有識者、関係省庁で含まれる検討会議をつくり、その下に領域ごとの分科会をつくって、先ほど言ったようなミッションを行っていただく想定です。似たような組織は、ALCA-SPRINGの時代にも、システム研究会ということで、やはり文科省、経産省、それからJST、NEDOのメンバー、あるいはVC等も入りながらつくって、オープン・クローズ戦略の議論、それから知財ポリシー等もやってきましたので、それを参考にしながら開催したいと思っております。
 前のページに戻っていただけますでしょうか。ここにありますように、さっき言ったオープン・クローズ戦略等々もありますが、やはり領域ごとに、あるいはチームごとに現状の世界動向、世界の技術レベルを確認して、今後どこへ展開していくかというようなことも含めて深い議論をしていきたいと思っております。
 以上です。どうもありがとうございました。
【杉山主査】  魚崎PD、誠にありがとうございます。
 それでは、ただいまの御発表に関しまして御質問あるいは御議論等がありましたらよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
 研究者の研究だけではなくて、こうしたプロジェクト側の全体のマネジメントの取組も活発に進められているということでございますが、特に御意見は出てきませんか。よろしいでしょうか。
 所先生、お願いいたします。
【所委員】  ありがとうございます。大変興味深い取組と、それから包括的に連携の仕組みを教えていただきまして、ありがとうございます。
 1点、私もASPIREに少しだけ参画させていただいている立場から、蓄電池のところの海外との連携について、もしさらに一歩踏み込んだことができたらということで話題提供といいますか、課題認識をお話しさせていただきます。
 海外と連携をしていくと、蓄電池、特に私は資源循環なのですが、どうしてもお互いの蓄電池のやり取りをしたくなるのですが、人は行ったり来たりはできるものの、材料のやり取りが海外と日本と行ったり来たりができないということがあります。もちろん最先端の技術が流出するような物の行ったり来たりは絶対駄目だと思いますが、資源循環は必ずしもそうではなく、もう既にコマーシャライズされている物を分解したり壊したりするようなところですら、やり取りができないところが、ややもすると研究のネックになっているところがあるかなと思っています。
 この辺、材料や製品のスタンダードモデルとか、何か方法があると、必ずしも人が行き来しなくても、物が行き来することで、うまくそれぞれのオープン領域をつないだような連携がもっと活発にできるのではないかなと思います。これは多分、蓄電池だけではなくて、いろいろな材料のところでもしかしたらあることかもしれないので、そんなことはできないかなと普段思っていることを話題提供させていただきました。
【魚崎PD】  ありがとうございます。
 蓄電池の場合は逆になかなかそこの物のやり取りは、戦略的にといいますか、いろいろ難しいところがあります。つまり、国際連携をやっていますが、材料に関わったところには、知財の関係、それから競争の関係もあって、枯れた材料ならいいのですが、特に最先端の研究をしているところはなかなか難しい面もあります。連携のときも、その辺をいかに避けながら、計測、計算や、材料でも既にオープンになった材料で共同研究するかといったところを議論しながら進めているので、資源循環とは逆に我々の場合は縛られたところでやっている状況です。連携はしつつも競争的な領域で、世界のトップをみんな目指しているところであることを認識しながらやらなければいけないということが一つです。
 それから、イギリス、ドイツ、アメリカやイタリアと書いていますが、これらの国と日本はかなり蓄電池の状況が違います。電池会社が日本はあって、日本、韓国、中国という東アジアが産業面ではリードしているわけです。一方、イギリスにしろ、ドイツにしろ、アメリカにしろ、これから頑張ろうということで、国がギガファクトリーをつくる予算もサポートしたりとかというようなことになっていて、ちょっと研究者の置かれた位置も違って、ヨーロッパの国々では、エンジニアリングなどを一生懸命やっている研究者が多く、逆にその辺は日本の研究者にとって非常に刺激になるところなのです。日本はほとんど材料研究者なのですが、ヨーロッパでは電池会社がないために、その辺のところまで大学の研究者がやっていたり、マルチスケールシミュレーションをやっていたりということで、その辺、相互にお互いプラスになるような格好で、しかも経済安全保障的なところに触れないようにやっていくことに、苦労しながらやっている状況ではあります。
 以上です。
【所委員】  そのとおりだと思います。資源循環は最先端の材料が必要なわけではないのですが、そこですらちょっと難しくて、歯がゆい思いをしているような状況ではありますので、今後ともよろしくお願いいたします。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 続きまして、佐藤委員、お手を挙げていらっしゃいますので、よろしくお願いします。
【佐藤委員】  よろしくお願いします。魚崎先生、10か月と少しの取組、本当に御説明ありがとうございます。非常にすばらしいと思って聞かせていただいております。
 特に今回、感想なのでございますが、4.の国際連携についての御紹介や、私がすばらしいなと思ったのは、やはり6.の成果創出に向けた活動強化です。PD自ら回られたと現場の先生にも伺いまして、大変だったと思われますが、1,000名近い人が集まって、その中で4割が初参加、そして今回応募にもつながってきているということで、非常に便利なネット社会ではありますが、顔と顔を合わせるとか、実際、現地に参加された方はいろいろな思いがあったと思うのですが、私の周りでもよかったと言う方もいらっしゃるので、こういう取組はとても大変だと思います。本当にPD自ら牽引されて、すばらしいと思いました。感想でございます。
 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
【魚崎PD】  どうもありがとうございます。
 ここに書いたようなところでやったのですが、逆に中部地区というか、名古屋大学の先生からは「何で名古屋が外れているのだ」とかというようなこともちょっと怒られましたし、関東では東京大とつくばだけではなくて、もちろん東工大、早稲田など、いろいろな大きな大学があるので、これは来年度、また工夫しながらやりたいなと思っております。
 これを思いついたのが2月ぐらいで、それから急遽やって、ALCA-Nextの応募締切りの2週間ぐらい前には終わりたいということで、非常に詰めた日程でやったのですが、それなりの成果があって、よかったかなと思っております。今後も引き続き、こういう努力は続けていきたいと思います。
 今回は、参画研究者、あるいはこれから参画しようという研究者中心でしたが、地域に向けて、先ほどの公開シンポジウム的なことも含めてやっていく必要も今後はあるのかなと思っております。
 どうもありがとうございます。
【佐藤委員】  どうもありがとうございます。以上でございます。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 ほかに委員の先生方、いかがでしょうか。特に出てこないですかね。
 魚崎先生、ぜひ最後の社会実装戦略のところは、この委員会でもかなり議論になっておりましたので、しっかりと進めていらっしゃると認識しておりますが、ぜひ、この技術開発が社会実装につながるような戦略策定をお願いしたいと思います。それから先ほども少し議論に出ておりましたコストダウンは決して今のエネルギーコストあるいはデバイスコスト等々がレファレンスにはならないことは先生も十分御認識だと思いますが、一方で、こういう開発の中から、そうは言いながら革新的なコストダウンのネタや、規制緩和でここをやってくれれば実はすごい楽になるのだというところも多分これからいろいろ出てくると思いますので、そうした声を今回のような委員会にも上げていただくのも一つ重要なポイントかなと思います。引き続き、そちらもよろしくお願いいたします。
【魚崎PD】  ありがとうございます。
 まさにおっしゃるとおりで、なかなかコストはその時点でのコストで議論しても難しいわけなので、その辺は将来の置かれた位置でのコスト、あるいはCO2排出に伴う、それを回収するためのコストをどう考えるのだとか、いろいろなことがあると思います。
 それから、今後のブレークスルーとして、特に例えば水電解なんて今はもう枯れた技術のようでもありながら、一方で、よい電気触媒ができれば一気にコストカットができます。あるいは、そういうシーンを、貴金属フリーにしないと先が展開していかないようなこともあります。そういうことで、いろいろな要素がありますので、それも含めながら議論していきたいと思っております。
 どうもありがとうございます。
【杉山主査】  どうもありがとうございます。
 ほかの先生方、よろしいでしょうか。
 魚崎先生、どうもありがとうございました。
 では、次の議題に移りたいと思います。それでは、議題の3番目、次世代半導体のアカデミアにおける研究開発等に関する検討会の報告書が出てきましたので、こちらについて御報告いただきたいと思います。
 先ほどの議題1の中間まとめの案においても、個別領域として半導体分野の研究開発の期待が盛り込まれておりましたが、文科省におきましては、昨年12月から次世代半導体のアカデミアにおける研究開発等に関する検討会を開催して、先月の7月5日に最終報告書が作成されたところでございます。ということで、本日は本検討会の報告書について事務局から御報告を頂きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【田村(事務局)】  それでは御説明させていただきます。
 まず、今回の検討会の委員名簿になります。半導体については、経産省を中心に半導体・デジタル産業戦略が策定されております。こちらは、基本的には産業界の支援方策について中心的に取りまとめられている戦略になってございます。その中で文部科学省の取組・役割として、基礎研究や人材育成について取り組むことになってございますが、総合的な研究戦略や人材育成戦略はなかったということで、こちらを議論するため、昨年12月から有識者の方々にお集まりいただきまして、御議論いただいたところでございます。こちらの委員名簿にございますとおり、平本先生と石内先生に委員として、この小委員会からも御参加いただいたきました。
 2ページ目をお願いします。今回の検討会を開催した趣旨に関係しますが、海外で取り組まれているアカデミア・大学支援、人材育成の支援に比べて、日本の支援が比較的限定的であり、こちらを重点的に取り組むべきだということで、今回、問題として議論いたしました。
 例えば事例を書いてございますが、アメリカ、EUでは、それぞれ、NSF、DARPA、Horizon Europe、Catapultプログラムなど、半導体の基礎研究や人材育成を欧米でも支援しておりまして、日本でも、そちらと並びを取るような、長期的な人材育成戦略と研究戦略が必要だということで議論を行いました。
 次をお願いいたします。議論の方向性は、3つの柱、研究開発、人材育成、研究基盤に基づいて行いました。それぞれの取組について、これまで比較的、研究開発については研究開発だけ、研究基盤については研究基盤だけというふうに、それぞれ個別に議論されておりましたが、今回は、それぞれを総合的に関連して連携するように議論を行ってまいりました。
 次のページお願いいたします。特に技術的に今後、何に重点化すべきかについても議論を行いまして、まず未来社会、地球規模課題、日本の課題、日本の弱み、日本の強みという、それぞれの要素を分析しながら、今後、どういう半導体分野に日本は重点化していくかについて議論を行いました。
 未来社会については、AIを搭載したロボティクスの活用拡大、エッジの知能化、フィジカルインテリジェンスによって科学研究を含む様々な産業分野を自動化して、GXを推進することが可能であるということで、そのあたりのロボティクスに搭載されるようなAIに今後重点化するべきであり、今後利用が広がっていくであろうということを議論しました。
 また地球規模課題については、2030年代には爆発的にAIに必要な電力量が増大し、全クラウドシステムの消費電力が全世界の発電エネルギーを超える恐れがあるということで、そちらに対応するためにも、今、サーバ側でAIを動かしているわけですが、今後、エッジ、ロボティクス、自動車、ドローンなど、そういった側のAIチップの低消費電力化が必要だろうと御指摘いただいております。
 また、日本の課題として、今、特に話題になっているのは、労働力不足が今後深刻になるだろうということで、そういう点でもロボティクスというような関連する技術が重要になってくるだろうとご指摘をいただいております。
 日本の弱みとしては、ここ30年間、先端ロジック半導体には日本の産業界でもあまり力を入れてこなかった背景がございまして、アカデミアでも講座が減っているなどの現状がございまして、今後、Rapidusが量産を開始した後に必要となる日本の研究開発を支えられるような人材育成体制を今後整備しなければならないという御指摘を頂きました。
 また、日本の強みでございますが、日本の比較的強い分野として、エッジ側に当たる自動車・ロボット産業では一定の世界シェアを持っておりますので、そちらと連携するような研究開発プロジェクトをしてはどうかと御指摘いただいております。
 次をお願いいたします。そういった中で重点項目として三つの方向性があるのではないかと、ここにおまとめいただきました。方向性①としては、ユースケースを想定した次世代エッジAI半導体研究開発を推進するということです。これまで、半導体であれば半導体だけを研究開発するようなものでしたが、ユースケースの拡大も念頭に取り組みながら、それと連携したエッジ側のAI半導体の研究開発をするべきなのではないかとご指摘をいただきました。
 また方向性②として、エネルギー効率の改善をするということで、先ほどのAIによる消費電力が爆発的に増大することを解決するために、国家として必要な低消費電力なAI半導体を開発すべきであるとご指摘をいただきました。
 方向性③として、アカデミアの総力を結集した統合的な研究開発ということで、GteXでは、いろいろな研究室が統合的に連携して取り組んでいることが行われておりますが、半導体についても個別の研究室が個々に行うのではなくて、連携して取り組むようなプロジェクトを支援すべきではないかと御指摘いただいてございます。
 コア技術としては、下に書いてございますが、AIを活用した高効率な半導体システム設計、次世代AI回路や、Beyond1ナノに必要な新チャネルや配線材料、また環境技術としてPFAS対応などが必要なのではないかと御議論いただきました。
 次をお願いいたします。もう一つ、先ほどのユースケースに関係する研究でございますが、AIの進化と物理世界の融合として、サイバーと現実世界の融合が今後広がってくるだろうとご指摘をいただきました。例えばChatGPTなどはサイバー空間のウェブ上の文字情報を大量に扱っているわけですが、今後、ロボティクスが波及してきたときに、リアル世界のデータも取りながら、端末側で処理して行動するなど、現実世界とサイバー空間が融合していくような取組みが必要なのではないかと御指摘いただいております。
 次をお願いいたします。そういった中で一つの研究例として、AIロボット研究と書いてございますが、Physical Intelligenceということで、空間全体、例えばIoT機器も含めて、いろいろなものにAIが搭載されてくることが考えられます。分かりやすい一つの例として産業ロボットを下の図に書いてございます。産業ロボットとして、例えば同じような行動を何回も繰り返すような単純なロボットが工場では働いているわけですが、今後、社会で介護や育児など、人と協調しながら複雑な行動、手術などを行っていくためには、より受容性があって、なおかつ学習時間が短い状況でも新しいことができるようになるなどの研究が必要なのではないかということで、AIロボットを真剣に取り組むべきではないかと御議論いただきました。
 次をお願いいたします。それと関連して、AI半導体の研究が必要であるということで、一つはAIを活用した高効率半導体システム設計です。半導体の設計にかかるコストが増大している背景がございまして、そちらを解決するということで、AIを駆使して自動設計をするような研究を日本としてもしっかりやらなければいけないのではないかと御指摘いただきました。また、超低消費電力な次世代AI回路として、例えばフォン・ノイマンボトルネックとはロジックとメモリ間の通信がボトルネックになっているという課題がAIでは特に指摘されているわけですが、そういったものを解決するために例えばin memory回路など、アカデミアが得意とし、重点的にできそうなものの研究開発に取り組んではどうかと御指摘いただきました。もう一つは、企業がメインで今は取り組んでいるところでございますが、3D集積技術などにもアカデミアが基礎的に解決すべき課題について取り組むべきではないかと御指摘いただきました。
 次をお願いいたします。左側のBeyond1ナノ世代チップに向けた新材料・デバイス・プロセス・集積化技術でございます。こちらについてはトランジスタレベルの材料を変えて、より微細化を追求していくということで、新材料や配線も変えていくことが必要で、このあたり、アカデミアの力が必要なのではないかという議論を行いました。
 右側はPFAS問題になりますが、半導体の製造工程で大量のPFASが使われている中で、PFASの規制が今後強くなるという動きがございますので、例えばそちらに対応できるように回収工程や代替技術の開発などのチャレンジングな取組に、アカデミアにぜひ取り組んでほしいと産業界から強く要望がございました。
 次をお願いいたします。このほか、AIに直接関係しないものの、日本として強い分野、例えばメモリ、センサ、パワエレなどがございますので、そういったものも個々の大学が企業としっかりと連携できるような環境を整備することで、設計・試作・検証環境ということで半導体プラットフォームというものを整備すべきではないかと御指摘いただきました。
 11ページ目をお願いいたします。研究基盤については、先ほどのプラットフォームが左下にございます。各大学個別で、いろいろな機器を持っており、そちらを協力しながらお互い融通しながら利用し合うというナノテクプラットフォームが材料の世界ではございましたが、半導体の世界でも、そういったものを活用していくべきではないかと御議論いただきました。
 また、研究室で生まれた新しい材料などがありますが、そちらをデバイスとして統合していく、実装していくような、ある程度大きなハブ、ファシリティが必要なのではないかということで、スーパークリーンルーム等のアカデミア発シーズの実証に必要な最先端設備の整備を強化すべきではないかと議論いただきました。
 また一番下に書いてございますが、大型研究施設ということでSPring-8、スパコンの富岳、新材料のシミュレーション、半導体のシミュレーション、計測に使えるものが、個別にまた別途、プロジェクトが動いておりますが、そういったものをしっかり半導体の研究者の方々にも開放すべきであると御議論いただきました。
 次をお願いいたします。あとは人材育成についてでございます。人材育成については、三つのレイヤに分けて議論を行いました。一つは、新たなユースケースを開拓することができる卓越した研究人材ということで、そういったレベルのトップの研究者も含まれるような人材を育成すべきであるということです。そういったものについては、右側に書いてございます先端的な研究開発やグローバル連携を通じて人材育成に取り組むことを支援することによって、トップの人材が最高の研究をできるようにするような環境整備を進めることを御指摘いただきました。また高度人材と基盤人材でございますが、工場での研究開発や新しい設計に取り組む高度人材、工程の改良や、品質の改善に取り組む基盤人材、それぞれについて、カリキュラムの支援などの大学で実施できるような環境を整備することが必要なのではないかと議論いただきました。
 次をお願いいたします。人材育成について、特にカリキュラムについては高等教育局が中心となって対応することになりますが、赤色と青色に分けて議論しておりまして、赤色は全国レベルで各地域の拠点になっているような大学同士でも、例えばテック系の先生が足りないなどの特殊な事情がございますので、そういった先生方を、例えばカリキュラムを全国で融通し合えるような、そういうことでシェアすることが必要なのではないかと御議論いただきました。また青色になりますが、各地域で半導体のコンソが今立ち上がっておりまして、そちらで高専、地域の大学、また企業が連携しているところなのですが、今のところ、ボランタリーな形で各地でやっております。その中でもしっかりと教育コンテンツを共有したり、出前授業を共有したりできるように、しっかりと文科省でも支援するべきではないかと指摘いただいてございます。
 14ページ目をお願いいたします。御提言いただいた施策を1枚にまとめたものがこちらになります。1番目はユースケースの開拓に関する研究開発として、ロボティクスに関係するようなAIロボットの研究開発です。次世代エッジAI半導体の統合的研究開発として、それと連携した次世代のエッジAI半導体を統合的に研究開発すべきであると御指摘いただきました。また、半導体基盤プラットフォームとして、それ以外にも幅広い、いろいろな種類の半導体がございますので、そういったものに取り組めるような環境を整備すると。クリーンルームをアップグレードして、ネットワーク化することが必要なのではないかと御指摘いただいてございます。
 また一番下が先ほどのカリキュラムの連携ということで、そういったものを高専・大学と連携できるような枠組みが必要なのではないかと御指摘いただいてございます。
 こちらが報告書の本体になってございます。
 次は資料3-4になります。検討会で、技術のロードマップ、ビジョンを示すべきだという御意見もございまして、こちらのほうを平本委員におまとめいただきました。2040年、便宜的に10年以上後に何を目指すべきかということで、上にPhysical Intelligenceの研究と書いてございますが、そういったPhysical Intelligence、ロボティクスのAIなどに必要な研究をして実現していくと。そのために、それぞれの必要な研究要素として、左に入ってございます、ロボティクスAIに最適化されたAI回路、高集積化・低消費電力化に対応するような新しい超微細なトランジスタの研究、また、三次元集積などにそれぞれ取り組んで、右側にそれぞれの要素技術が書いてございますが、それぞれに必要なアカデミアが取り組むべき基礎的な研究を今後支援すべきであると御提言いただいておりまして、文科省としても、これを受けとめて今後、施策化していきたいと考えてございます。
 私からは以上でございます。
【杉山主査】  御説明どうもありがとうございました。
 議論に参加いただきました平本委員、石内委員から、もし補足等がございましたら頂ければと思いますが、何かございますでしょうか。
【平本委員】  それでは少し補足説明をさせていただいてよいでしょうか。
【杉山主査】  お願いいたします。
【平本委員】  田村さん、どうもありがとうございました。
 我が国として半導体に力を入れることを経産省を中心に3年ぐらい前から行っておりますが、文科省でも、人材育成を含めて基盤開発をしっかりやっていかなければいけないという方向性になり、今回、検討会が立ち上がったわけであります。
 半導体というと皆さん、どういうイメージをお持ちになるか分かりませんが、1980年代は日本がトップだったわけです。その後、言葉は悪いですが、低迷とか凋落という言葉で言われています。ただ、実際に見てみると、いわゆるロジック半導体では競争力を失っていますが、メモリやセンサでは世界に伍して戦っているのですね。特に半導体の製造装置や材料では日本はトップレベルにあるということで、そのあたりが全く見過ごされていたかなという感じがします。その後、コロナになり、半導体不足ということで半導体が脚光を浴びました。日本は実は強かったのですねということが世の中に知らされたという感じがいたします。それを受けて経産省、今回、文科省が本当に力を入れることになりました。これは日本には大きなチャンスだと思います。
 ただ、世界中で半導体に力を入れておりますので、決して簡単なことではないと思っております。半導体が、AIをはじめ様々な分野での競争力の源泉だと思いますので、日本もこれだけ本腰を入れてやるということです。技術ももちろんやります。文科省では集積化までは難しいのですが、基礎研究で集積化に必要な基礎的なデータ、それからシミュレーションを使ったモデリングと、それから新材料の開発等が十分に行われると思います。
 それから大きいのが人材育成ですね。これはどう考えても、半導体の産業規模から見ますと、日本は半導体人材が少な過ぎます。したがって、それをいかに大学、あるいは、その前の段階から教育していくかが重要だろうということで、危機感を持って、こういう枠組みをつくったということです。
 幾つか特徴がございます。半導体をやるというと、デバイスを微細化して、ロードマップを引いて終わることが多いのですが、今回はロードマップも普通とは全然違った形になりました。具体的なユースケースを入れて、数字も入れました。微細化が貢献するところは全体から見ると実は僅かなのですね。微細化以外で、目に見えないところ、特にソフトウェアであったり、アーキテクチャであったり、システム設計であったり、そういうところに力を入れるようなロードマップになりました。従来のいわゆる半導体ロードマップとは違った形で人材育成、技術育成をしていくような形になっています。これを基に我が国の競争力をぜひ復活させていきたいと考えております。
 以上でございます。
【杉山主査】  平本先生、ありがとうございました。
 石内委員は何かございますか。
【石内委員】  平本先生のおっしゃるとおりです。ちょっとだけ補足させていただきます。
 言わずもがなですが、今回の取りまとめは文科省が中心になって行っていただいて、私どもは委員として参加したわけですが、併せて文科省と経産省が非常に密に連携を取られ、その中で、よりよい提案がつくられていくことになっておりまして、そういう意味で異なる省庁間の連携の好例かと思います。
 もう一つは、半導体というのは、半導体のために技術開発をしたり、教育をしたりというプランは立っているわけですが、ここで上げられた成果は半導体以外の産業分野に広く応用される可能性がございます。半導体の開発の結果として、AIがより身近に使えるようになったり、性能が向上すると今度は、AIの力を使って、GXで検討されているいろいろな研究開発が加速すると思います。AIを利活用いただく場面が広がっていくと思いますので、そういう意味でも、GXの研究開発の発展に貢献できるのではないかと思いますし、そういう形で広がりを持った半導体技術の開発に期待いただければと思います。
 私からは以上でございます。ありがとうございました。
【杉山主査】  石内委員、大変ありがとうございました。
 それでは、委員の皆様方から御質問・御意見等がございましたら頂ければと思いますが、いかがでしょうか。
 これは私の個人的な印象ですが、ロードマップに、ついにワット当たり何TOPSというのが出てきたことはすごいなと思っています。
 本郷委員、お願いします。
【本郷委員】  どうも御説明ありがとうございました。非常に元気が出るような内容で、うれしく拝見いたしました。
 それでちょっと質問なのですが、4ページに日本の強み・弱みがあって、この弱みに設計がありました。これはイギリスやオランダの企業が強いと言われている分野の設計のことかなと思ったのですが、これについては、例えば後半のほうでAIの支援を受けてという説明があったのですが、全体の中で、どういうような戦略で臨まれるのか、私はあまり詳しいことが分からない人間なのですが、簡単に何か教えていただけると助かります。
【平本委員】  私が答えてよろしいですか。
【杉山主査】  お願いいたします。
【平本委員】  平本でございます。
 設計に関してはアメリカが圧倒的に強いのですね。日本はこの分野が非常に弱いです。何をつくると決まってから、それを設計する回路設計で、システムに落としていくのが弱いと言われている上に、そもそも何をつくるかというところが日本にはないと言われています。それから設計は、いわゆるEDAツール、要するにコンピューター支援で設計をするのですが、そのコンピューター支援のためのソフトウェアはもう完全にアメリカの独壇場だということで、もう差がつき過ぎてしまって、どうしましょうかというような段階ですね。
 ただ、日本も捨てたものではありません。最近の若い人はそういうところが得意な人がいますので、これだけ半導体が盛り上がっていることを聞いて、かなり多くの方がここ1~2年でこの分野に入って来てくれています。人材育成から始めるしかないのではないかと思います。そのぐらい半導体の設計者は危機感を持っている感じです。設計会社が、いわゆるスタートアップも含めて非常に少ないということです。ここは大問題という認識で、人材育成からしっかり始めていくところだと思います。
【本郷委員】  ありがとうございます。
 説明を聞いていて、設計については、戦略的に諦めたとは言わないのですが、少しウェートが低いのかなと思いましたが、そうではなくて、人材育成で支援しているということだったのですね。ちょっと見にくかったのですが、戦略的に落としているわけではないということが確認できました。
【平本委員】  様々な人材育成と、それから研究でも当然、設計に力を入れていきます。研究はもちろん行いますが、長い目で見たら、恐らく人材育成だと思います。研究開発でも様々な施策は行っております。
【杉山主査】  よろしいでしょうか。ほかにいかがですか。
 菅野先生が手を挙げられていますね。菅野委員、お願いいたします。
【菅野委員】  菅野です。どうも御説明ありがとうございました。大変元気になるような報告で、ありがとうございます。
 少し御質問なのですが、海外機関との連携・協働に何かするか、人材の交流などについて、もし何か議論されたことがあるのであれば少し教えていただきたいと思います。
【平本委員】  これにつきましては、日本としては経産省を中心にアメリカと連携することになっています。Rapidusという新しい会社がロジックのナノメートルを狙うということで北海道に工場をつくっていますが、そこはIBMと連携をするわけです。文部科学省でも、アメリカをはじめ、ヨーロッパの諸外国と当然連携をしていきます。それに加えて今回新しく出た意見としてはアジア諸国ですね。東南アジア、ASEAN諸国などとより緊密にしていき、優秀な人材を日本に引きつけるような施策を進めていきたいと考えております。
 いずれにしても国際連携はもう必須というか、当たり前ですね。それを前提にいろいろな戦略が考えられております。
【菅野委員】  ありがとうございます。
 競争領域と協調領域との切り分けもあるでしょうし、それから日本の弱み・強み、どのように連携に生かすかはなかなかタフな議論が必要かと思いますが、ぜひよろしくお願いいたします。
【平本委員】  ありがとうございます。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 続きまして、佐々木委員、お願いいたします。
【佐々木委員】  佐々木です。まず、包括的な戦略をつくられて心強く感じました。
 私は九州におりますので、半導体の分野で特に人材育成については非常に重要だと、まさに現場でも感じているところなのですが、他方、大学院生を指導している立場から見ますと、修士1年生がすぐに就活でいろいろ巻き込まれていまして、ちょうど今は期末試験の時期なのですが、どちらかというと「インターンシップがいろいろあるので、期末試験は受けられないです」というふうに、かなり人の取り合いが激しくなっているのも現実です。
 半導体関連ですと、さらに学生の取り合いが激しいのかなと思いますが、そうしますと、ここに書いてありますような特に高度人材、博士レベルの学生さんを本当にちゃんと確保できるのかちょっと不安に感じるのですが、そのあたり、日本の中で人材を取り合う中で、このトップ人材、それから高度人材をどう確保されるのかの戦略を教えていただければと思いました。お願いします。
【杉山主査】  こちらもどうでしょうか。平本先生、お願いできますか。
【平本委員】  はい。どうもありがとうございます。
 博士人材については、どこの分野も同じく困っていらっしゃると思いますが、半導体も同じでしたね。特に企業が青田刈りといいますか、そういうことをするようになっているわけですが、やはり博士課程の方が大学で最先端の研究に触れて、それで人材育成として育っていくようなルートをつくることが重要だと思います。それには企業の助けも必要でございまして、博士課程を卒業した人をどれだけ重視してくださるかです。そういう点では、御存じのように、日本より海外のほうが学歴主義があります。一方で、アメリカや台湾などの考え方が日本に入ってきていまして、博士に進んだほうが得であるような感じにもなりつつあります。お給料も高いですが、それにつられて日本もお給料が大分今はすごく上がっています。そのようなことが半導体で起こりつつあって、人材育成と博士課程の位置づけも半導体から何か変わっていくのではないかというような期待感を持っているところでございます。
【佐々木委員】  どうもありがとうございます。
 やはり最後は「我々は博士レベルの学生さんを取ります」と企業側から言っていただけると、学生さんも、むしろ博士課程に進学したらいいのではないかという意識にもなりますので、ぜひ半導体の業界でも、特に産業界の方に言っていただければありがたいなと思います。私も同感です。
 よろしくお願いいたします。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 まだ手を挙げていらっしゃる委員がいらっしゃいますね。
 志満津委員、お願いいたします。
【志満津委員】  よろしくお願いします。人材育成の件、大変心強く思います。
 御質問なのですが、実際に教育環境を整えて最先端の技術を教えられる環境をつくった上で人材が育って、それが研究者になって研究が加速するというサイクルは比較的長くかかると思うのですが、そのサイクルを短くするための手段として、海外を含めた連携の仕組みや育成のプロセスなど、何かそういったものの工夫点はあるのでしょうか。そのあたりを教えていただければと思います。
【平本委員】  これもよろしいですか。
【杉山主査】  お願いします。
【平本委員】  具体的に、いつどこに何人を送るというようなところまでは詰められておりませんが、いずれにしても海外の大学や企業を利用して人材育成することは当然、視野に入っていると思います。これは、もう当然ですよね。逆に言うと、日本も多くの方を引き受ける感じになるかと思いますが、そうやって切磋琢磨して、巣立つような感じのことを当然ながら想定をしておりました。
【志満津委員】  ありがとうございます。
 当然、海外から来ていただいたり、海外の技術を導入するということは、日本からも吸い出されていくものもあると思うので、うまい具合で知財も含めて、うまく教育の仕組みのプロセス化が決まっていくといいなと思います。ぜひよろしくお願いします。
【平本委員】  ありがとうございます。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 続きましては、本藤委員、お願いいたします。
【本藤委員】  御指名ありがとうございます。非常に分かりやすい御説明ありがとうございました。私からはちょっと違う観点で一つ御教示いただきたいと思います。
 スライドの7をお願いできますでしょうか。ここの上のほうに、社会的受容性が課題と書いてありました。あくまで個人的見解ではありますが、新たに生み出される技術、そして、さらにそれを利用した技術、そういったものの社会的受容性は多分、社会の支援を受けてポジティブに技術開発を進めていく上で非常に重要かと思っております。
 この報告書並びに検討会の外側の話になるのかもしれませんが、もし検討会におきまして、社会的受容性に関わるところで何か議論がございましたら教えていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
【杉山主査】  こちらも平本先生、お願いできますか。
【平本委員】  はい。ロボティクスのところにつきましては、文科省のロボティクスを担当されている方と随分打合せを行いましたが、さすがに今回の検討会では社会的受容性の議論にまでならなかったかなと思います。
 田村さん、いかがでしたか。
【田村(事務局)】  半導体の検討会では半導体をメインにあくまで議論をしましたので、深く意味までは議論は行いませんでしたが、ここで社会的受容性は何を意味するかというと、例えば先ほどの介護や育児などのときに、危険だと人間が思わないかどうかや、ロボットが行動するときに人間にとって気持ち悪いような動きをしないかどうかなど、人間から見てどう感じるかも含めて課題だとは研究者の方々から伺いました。
【本藤委員】  ありがとうございます。
 今回の検討会の外側かなとは思っておりますが、今後、半導体だけではなくて、技術開発一般を進めていく上で、かなり社会を大きく変える可能性があるので、やはりこの技術開発を皆さんに応援していただくためには、この技術が将来、どういう社会をつくり出すのかといったところまで、あくまで今後ですが、議論を進めていく必要があるかなと思いまして、一言、御発言させていただきました。
 どうもありがとうございました。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 続きまして、田中委員、よろしくお願いいたします。
【田中委員】  田中でございます。ありがとうございます。大変分かりやすく御説明いただきまして、ありがとうございました。
 私からは二つでして、一つは教育のところです。東大工学部のほうも高専生から編入した学生が結構いるのですが、組込みシステムなどがすごく得意で、非常に優秀だなと思って見ているのですが、こういったところも含めて、いろいろ人材を育てていかれるということで、大学のほうでもウォッチしながら、うまく人材の活用というか、育てるほうに注力したいなと思っております。そういった意味で高専の話でもし何か特殊なものが出てきたり、編入生みたいなところの話があれば教えてもらえればというのが一つです。
 もう一つ、そういった意味で5ページのユースケースを想定してというお話を頂いていましたが、ここのソフトウェアで、プログラムで書き込む部分と半導体に落とし込んでいく部分とは、なかなか境界は難しいのかなと思ったのですが、半導体からすると多分、相当桁数がないと規模が足りないことになるのかなと思う一方で、組込みで相当、ハードウェアにして、半導体にしていただくとすごくよかったりするとかもあったりするのですが、その辺の規模感みたいな議論があったらちょっと教えてもらえればと思います。
【杉山主査】  平本先生、お願いします。
【平本委員】  高専につきましては、高専の専門の方をお呼びして、様々な議論を行いました。高専生はものすごい人数がいるそうですね。そして、非常に戦力になっているということです。特に九州でも力を入れているということでございますが、一部の方は大学に編入されて、さらに博士課程まで進んで研究者になられるような方から、工場の現場で活躍される人までものすごく幅広いですよね。そのための教育システムをはじめとする様々な連携が行われておりまして、特に産業界で高専生には非常に注目をしています。文科省のこのシステムも、高専を中心に地域連携が進んでいる状況でございます。そこで高専についてはものすごく重きを置いて、文科省では施策を進めております。これは間違いないと思います。
 二つ目のユースケースなのですが、ここで言うユースケースとは、もう少し規模の大きな、例えばロボティクスや、ハイパフォーマンスコンピューティングなどを言っております。半導体といいますと半導体デバイスがあって、その上に回路設計があって、システム設計があるのですが、さらにその上、半導体を使いたい人との融合が重要だという意味で申し上げました。分かりやすい例はGAFAです。GAFA、それからMicrosoftは全部、半導体をつくっています。ただ、工場を持って自分で製造しているわけではなくて、製造は全部、台湾に任せて、設計だけをしています。自分たちのつくりたいチップの概念を考えて設計するところまではやるのですが、製造は任せるということです。そういうように半導体を利用してビジネスをやるような方に入っていただきます。その半導体を使いたい方がなさりたいことがユースケースであるという意味で、かなり規模感ももっともっと大きなところを指しています。
 そこが日本に欠けていることの一つですね。アメリカにあるのに日本にないということで、そこも含めて、「半導体を使えばもっともっと、あなたの性能は上がりますよ」と半導体側から言って、使ってくださる方を見つけていくようなところをもってユースケースと申し上げています。その一つの例がAIを使ったロボティクスです。それはもうチップだけではなくて、アクチュエータやセンサなども含めた固まりですよね。そういうところを想定してユースケースと申し上げました。
【杉山主査】  よろしいでしょうか。
 それでは、佐藤委員ですね。お願いします。
【佐藤委員】  よろしくお願いします。御説明ありがとうございました。
 人材育成が大事だということで、ほかの委員の先生もたくさんコメントされていましたが、今、田中先生への回答で大分理解が深まりました。人材育成について、資料3-3の参考資料の16ページで気になったのが、「半導体 アプリなければ タダの石」ということです。また、後半の説明で、半導体を使いたい人、つまりユースケースになりますが、そういったユースケースやアプリを考えられる人の育成もまた人材育成の一つになるのでしょうか。アメリカと大分差をつけられている中で、諦めているような印象はなかったのですが、その辺はかなり難しいと認識されている感じでしょうか。その辺をちょっと伺ってみたいと思いました。
【平本委員】  ここは意識の問題で、日本のいわゆる弱いところですね。ただ、少ないとはいえ、幾つかスタートアップが出てきて、非常に目立っているところがございます。AI向けのチップをつくっているとか、そういう形でですね。そういうところをさらに支援していって、彼らが設計しやすい環境を整備することは経産省も文科省もしておりますので、そのあたりから進めて、この分野にもっと入っていただき、自分たちのチップをつくるのを支援していきたいと考えております。
【佐藤委員】  そうすると、かなり若い時代から、誘導という表現は正しくないと思いますが、夢を持ってもらうような活動も必要となりますでしょうか。
【平本委員】  それはそのとおりです。夢を実現するのが半導体だという感じもあります。ただ、設計コストはものすごく高くて諦めてしまう方もいます。それから、技術的な障壁も大きいですよね。そのバリアを下げるのが、お金の面では経産省、それから技術の面では文科省だと考えます。
【佐藤委員】  どうもありがとうございました。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 それでは、あと森委員から御意見ですかね。森先生、よろしくお願いします。
【森主査代理】  どうも御説明ありがとうございました。非常によくまとまっており、委員の先生方の御尽力に感謝を申し上げたいと思います。
 その中で、今回は、半導体の中でも、ユースケースとしてAI技術を使ったロボット、IoT、それらにAIを利用することだったのですが、そういう場合は、やはりロボットとかIoTとか、ハードだけではなくて、ソフトなエレクトロニクス材料も広く使うのが適切と思います。日本の強みである材料を利用してすそ野広く進めていく面と、やはりBeyond1ナノメートルのとがったところを極めるのだというところと両方の方向性があると思うのですが、今回はそれを包括的に考えるのか、半導体として極めていくほうを考えていくのか、どのような形で半導体戦略を考えておられるのかを少しお聞かせいただいてよろしいでしょうか。
 もう少し新材料も含めて、ハードだけではなく、オルガニック・エレクトロニクスや、先ほど電子層が1ナノメートルのBeyond1ナノメートルのところでは必要材料として、原子層材料を含めて考えていくのはいかがかというのもあったと思いますが、新しい材料を含めて生かしながら進めていくのか、それとも、とがったところを重点的にやるのかというところで、全体像について教えていただければと思います。よろしくお願いします。
【平本委員】  半導体は非常に大きな産業で、1兆ドルになろうかと言われている巨大産業ですよね。それに対応する経産省と文科省ですが、文科省も一つ二つの集中テーマだけをやるという選択肢は多分ないと思いまして、ある程度はバランスよくやっていく必要があると思います。そういう意味では、ただいまの質問でソフトな様々な新材料、それからBeyond1ナノ、これは両方ともやるということです。両方ともやるのですが、あまり総花的にならないように特に力を入れるところとして、エッジAI向けの技術をやりましょうということです。エッジAI向けの技術をやるだけでも十分大変で、それは材料から、その上のほうのソフトウェアから、それからデバイスを微細化していくものまで全部要るのですね。それが全部できないと、恐らくこの技術は達成しないと思います。そういう意味では全部やるのですが、その中で様々ある半導体関連の技術の中からエッジAI技術を最初に取り上げたという意味です。
 メモリをやらないと言っているわけではなくて、メモリもやるのです。それだけ大きな分野ですので、様々な施策を同時並行でやっていく必要があると考えております。
【森主査代理】  ありがとうございます。
 そういう意味では、基盤技術のほうも連携を取りながら、新しい材料も含めて、エッジAI半導体を極めていくような政策だということですね。
【平本委員】  はい、そのとおりです。
【森主査代理】  そういうところの連携は全体のニーズとシーズですよね。そういうところをどのようにマッチングさせるのかに関しては何か特に新しいことはあるのですか。
【平本委員】  目的指向で研究をすることは、様々なほかの分野の人と連携をするということだと思います。それによって、新しいプロジェクトを立ち上げるにしても、一つだけやるのではなくて、様々なレイヤの中で縦につなげられるようなテーマ設定をすることによって連携を促すということです。
 日本は、縦の連携は苦手ですよね。それは行政的にプロジェクト等で連携をしていくような仕組みにするようなことが必要だと思っています。一部、文科省でそういうことが既に行われております。
【森主査代理】  ありがとうございます。
 やはりどのように連携を推進するかが肝ですね。ありがとうございます。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 ひととおり御意見を頂いたかと思いますので、半導体の件につきましては以上で終わりにしたいと思います。
 平本先生、たくさんの質問に答えていただきまして、ありがとうございました。
【平本委員】  ありがとうございました。
【杉山主査】  それでは最後の議題に移ります。議題4「総合討論」です。
 議題1で御議論いただきました中間まとめの案につきましては、本日頂いた意見を踏まえて修正を行いまして、一度そこで取りまとめとしたいと思います。したがいまして、まだ議論をし切れていない観点や、言いそびれていた御意見等がございましたら、ぜひこの場で頂きたいと思っております。それから2番目、3番目の議題にありましたGteXの取組、あるいは半導体の件につきましても何か御意見等がございましたら承りたいと思います。
 ということで、先ほどの1番目の中間まとめに向けた、この文書を御覧いただき、また、その他の点につきまして、ぜひ御意見があれば頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。
 もう大分出尽くした感がありますかね。皆様方に今までも意見を大分頂いておりまして、今回、事務局でも小見出しをつけるところも含めて、かなり包括的に見やすくなるようにまとめていただいたと思います。
 菅野先生、よろしくお願いいたします。
【菅野委員】  ありがとうございます。
 別に付け加えるということではないのですが、少し気になったのは、産業界との連携、それから国際連携などの記載がありますが、協調領域と競争領域との切り分けを少し気にする必要があるのかなとちょっと感じました。
 以上です。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 先ほどのGteXの蓄電池のところでも関連する議論は出ていたかと思いますが、まさに最先端の開発をしていきますと、どうしてもクローズにしなければいけないところもあるかなという一方で、やはり国際的な展開も必要であるということで、まさにおっしゃるとおりですね。競争・協調のうまい切り分けもありますでしょうし、また、これが技術の進展に伴って、開発の進展に伴って線引きがどんどん動いていくこともあるかと思いますので、そのあたりをダイナミックに絶えずフィードバックをかけていく、あるいはアップデートしていく仕組みを実装しながら、競争・協調をうまく使い分けた上で連携を図っていくところが必要かなとは思います。ありがとうございます。
 事務局から何かありますか。
【後藤(事務局)】  確かに今言っていただいたとおりだと思います。文書も少し書きぶりは工夫したいと思いますが、今、主査からも言っていただいたとおり、そのあたりは単一の軸で切り分けるよりは、本当に技術や、周辺諸国の状況なども移り変わってくる中で、まさに考えていくべきところかなとも思いますので、そのあたりも含めて考えていきたいと思います。ありがとうございます。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 一言加えると、そこには研究インテリジェンスの観点も当然入ってきますので、そういった意味で全体を見渡す機能が大事だというのは、従来、議論していて書き込んでいただいたところであると思いますが、そうしたインテリジェンスを踏まえた上での、競争・協調領域の設計がポイントになってくるのかなという御指摘をいただいたと御理解いたしました。ありがとうございます。
【菅野委員】  ありがとうございます。
 まさにそのとおりで、研究インテグリティーとセキュリティーの話は、これから重要になってくると思いますので、少し御検討いただければと思います。
【杉山主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 本藤委員、よろしくお願いいたします。
【本藤委員】  御指名ありがとうございます。私、しばらく、この小委員会に参加しておらず、今さら申し上げるのはちょっとどうなのかなと思ったのですが、一言だけ申し上げたく、挙手をしました。
 全体を通して非常によくまとまっていると思うので、これでよろしいのかなと思ったのですが、少しだけ気になった点が、今回、社会ミッションからの技術開発が一つ重要なポイントになっていると思っておりまして、この文書の中に、技術をつくる側のアクターというか、ステークホルダーに関しては十分記載がされています。例えば産業界とか、学術界などですね。ただ、開発された技術を用いて製品ができてきたときに、その製品を使う一般の利用者の視点があまり書かれていないのかなというのが少し気になりました。必要ないといえば必要ないのかもしれないのですが、やはり社会受容性は、その技術を使う側の視点も非常に重要だと思うので、どこかに何か書き込んだほうがいいのかなと思いながら、ずっとスライド見ていたのですが、あまりよい案は思い浮かばず、とりあえず発言だけしておこうかなと思って発言をさせていただきました。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 非常に重要なポイントかと思いまして、中盤でもありました行動変容などという話もございましたが、社会的なインパクトに近いところかなとは思いますが、受容側のソフトサイエンスはやはり非常に重要なポイントかと思います。これは多分うまく書き加えることができるのではないかと私は思いますので、ぜひ論点を入れていくべきだと思いますし、そうした形で、使う人に寄り添った形でのビジョンをつくった上で技術開発にフィードバックをかけていくという姿勢をぜひ論点として入れられればと思います。
【本藤委員】  ありがとうございます。以上となります。
【杉山主査】  大変重要な論点をありがとうございました。
 事務局もそういう形でよろしいですかね。
【後藤(事務局)】  ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。今回、第三次産業や金融などの御意見があったので書き加えさせていただきましたが、一般のところはあまり書かれてなかったなとも思いますし、途中でありました行動変容などの論点は入れさせていただければと思います。
 ありがとうございます。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 志満津委員、お願いいたします。
【志満津委員】  よろしくお願いします。
 ちょうど今開いていただいているところにLCAというキーワードがあったり、先ほど半導体のところにPFAS規制の話があったりするなど、技術の行き着く先に同時に行われているルールメーキングのような世界の動きに対して、どんな形で研究を進めていくのかに非常に関心があります。ルールメーキングが研究なのかということはあると思うのですが、ちゃんと考慮しながら進めていかないと、将来使えない技術になってもいけないと思いますので、研究と併せて、規制に対する対応とか、規制に対するルールをつくりながら働きかけていくことも含めて一緒に進めていけることが期待値としてありますので、ぜひ御検討いただければと思います。
 以上です。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 こちらもやはり重要な論点かと思います。途中でも私自身が魚崎先生に対して、研究の進展を踏まえて、ルールメーキングに対する、あるいは規制の在り方に対する御提言もいただければという発言もいたしましたが、やはり技術開発は、先ほどの消費者の受容性というところとはまた別の観点のソフトサイエンスがルールメーキングということで入ってくるかと思いますので、ぜひそういうことを念頭に置きながらの研究戦略を絶えずアップデートしていくようなことで、うまく組み込んでいければと思いますが、事務局はいかがですか。何かございますか。
【後藤(事務局)】  ありがとうございます。
 その点、規制に対応することもそうですし、発信していくと。規制や国際標準化なども含めてというところはもともと御議論をいただいておりまして、例えば2ページ目とかにも幾つか、その要素としては散りばめさせていただいてはございます。この点、なかなか日本全体としてもどう対応していくか、実際のところは難しいという御議論もあるかなとは思うのですが、非常に重要な御指摘だとも思いますので、目立たせた記載にするなど、少し考えたいと思います。
【杉山主査】  ぜひそういう形で検討を追加したいと思います。ありがとうございます。
 ほかには御意見はいかがでしょうか。田中委員、お願いいたします。
【田中委員】  ありがとうございます。おおむねこれでいいかなと思っていたのですが、せっかく機会があるので発言させてもらいます。
 3ページについて、先々週ぐらい海外に行っていて、ロンドンの工学系の研究者に女性がすごく多くて、すごく感銘を受けました。日本だとテクノロジーと経済、そして政策みたいなところで結構頑張っているところなのですが、彼らは、さらに社会変革というところで、3ページでいうと社会科学とか人文学で、どうやったら社会が変革できるかを女性中心に相当研究されています。より経済性もあって、政策もつくったのだけど、その先で行動変容しないみたいなところを大分検討されているような感じがしましたので、ここの文言はこれでいいと思うのですが、その心として社会変革といいますか、そういったサービスを受け入れてもらうための仕組みみたいなものをもう少し幅広に考えていくニュアンスも少しあっていいかなと思いました。
 それと、志満津委員の御指摘もありましたが、デジタル系のところも、そういった観点で行動変容の部分を幅広に考えながら社会を変えていくというような、そんなニュアンスがあるとさらにいいなと思いましたが、これはあえてということで、このままでも全然いいと思いますし、そういうニュアンスが入れば、よりいいかなと思った次第です。
 私からは以上です。
【杉山主査】  御指摘ありがとうございます。
 先ほどの本藤委員からの御意見とも通じるところがあると思いますが、やはりそうした社会変革に関わるようなソフトサイエンスがうまく技術開発と両輪になって進む必要があるのは、特GX関系では重要なポイントかと思いますので、ぜひ、もう一ひねり、このあたりが強調できるように考えていければと思います。ありがとうございます。
【後藤(事務局)】  ありがとうございます。
 社会変革、行動変容というソフトサイエンスの中で、今、女性の観点をご指摘いただきましたが、参画する者の多様性の点は確かにここに入っていなかったなと御意見を聞いて思いました。議論するステークホルダー、若手などは入っていましたが、そのあたりも少し考慮したいと思います。ありがとうございます。
【杉山主査】  そうですね。人材育成のところで、ぜひ、いろいろな意味での多様性、世代の多様性もありますし、ジェンダー的な多様性もありましょうし、それから社会の中の役割という意味での多様性もありましょうから、そういう多様性の中で育つ人材、あるいは、そこから出てくる行動変容なり、社会受容や社会変革のソフトサイエンスというようなところがうまく盛り込めるといいかなと思いました。ありがとうございます。
 本郷先生、お願いいたします。
【本郷委員】  たびたびすみません。
 3ページで、社会的インパクトの考慮のバックキャストと書いていますよね。ここで「未来像をはっきり定義しにくい場合は抽象的な未来像を持った上で、1~2年後の技術開発のゴールとして短期的なバックキャスト」という話があり、何か分かったような分からないようなところがあります。これは二つのことを言っているのかなと思いました。例えばネットゼロについて、もう少し具体的にイメージをつくろうと思ったとき、ネットゼロの社会とはどのような社会かは具体的には描きにくいので抽象的な描き方でもいいということなのか、あるいは、道筋も幾つかパターンが違うものがあるのと同じように複数の未来像もあることを意味しているのでしょうか。そこの内容を教えていただきたいと思います。
 それから、それをした上で1~2年後というのは、何かちょっと次元が違う話かなという気もしたのですが、ここについて少し補足で教えていただければ助かります。
【杉山主査】  こちらは事務局からお願いします。多分、これはこの前のベンチャーの話を拾ったのかなと思います。
【後藤(事務局)】  そうですね。ここは、書きぶりを工夫させていただきたいと思います。前回、馬田先生より、一つの考え方として、カーボンニュートラルなどの社会像、遠いゴールに向けてバックキャストして技術開発していくと、その間が非常に抜けてしまう、飛んでしまうといったこともあると思うので、そういったときには具体的なスペックシートのようなものをあらかじめ設定した上で研究開発をしていくといったやり方もあるのではないかというような御意見をいただきました。二つのことを言っているというよりは、そういったやり方もバックキャストの取組としてはあるのではないかというようなことを意図して書いておりました。
 書きぶりがコンフュージングかなと思いましたので、そこは直させていただければと思います。
【杉山主査】  正直、私も言われてみると、これは違和感があったのを忘れていたところが若干あるのですが、多分、バックキャストという言葉が二つ出てきている中で、最初のバックキャストはかなり長期的なバックキャストなのですが、1~2年後のスペックを考えた上でという後で出てくるバックキャストは別の言葉で表したほうがいいのかなという気もしています。だから、1~2年後の到達目標から、何か開発項目に落とし込むとか、そういう意味合いで多分、ここは語られているのだと思います。
【後藤(事務局)】  そうですね。
【杉山主査】  ですので、我々の全体の流れとしてのバックキャストとは少し長い時間軸でのバックキャストということで、言葉の定義を少なくとも内部的には行ってまとめておいたほうが混乱が少ないかなとは思いましたが、本郷先生、そのような形で直せば納得できそうですかね。
【本郷委員】  よく分からなかったところが整理できました。今のお話ですと、手前のところは1~2年後なんでしょうか。ちょっと時間軸として近過ぎるような気もします。先ほどの御説明だと、中間があった方が良いということでしたので、中期的、例えば長期的な目標が2050年だとしたら、これは2030年とかではないかなという気がしました。
【後藤(事務局)】  この点は、その意味では想定としていたのがまさにベンチャーを立ち上げるなど、比較的早いスパンの活動を念頭に置いていたので、1~2年後としていますが、方法論としては、確かにおっしゃるとおり、もう少し短期的な意味での達成すべきスペックを設定してやっていくという中間的なものということで趣旨としては含まれると思いますので、この1~2年後はちょっと考えたいと思います。
 ありがとうございます。
【本郷委員】  ありがとうございました。
【杉山主査】  そうですね。ちょっと限定し過ぎのような気もします。この前のベンチャーの話は、確かにまずは1~2年後、何か技術が出てこないと、そもそもベンチャーは起こらないしという話もあった一方で、全体的に見ると、もう少し中期目標、短期目標みたいな形に抽象化できるかもしれないところかなと思いました。
 ただ、未来像が漠としていたとしても、その中でも市場に受け入れられる技術のスペックは想定可能であることが一つ重要なポイントかなと思うので、未来があまりにも漠としているからもうどうしようもないということではなくて、その中から何か具体的な目標を立てて、それで企業化にまで持っていける可能性もあるところが本質かなと思いますので、こちらは相談しながら直していきたいと思います。ありがとうございます。
 水無委員、よろしくお願いいたします。
【水無委員】  ありがとうございます。水無です。
 少しコメントを差し上げるのを迷ったところもあるのですが、いろいろな先生方の意見を聞いていても、技術インテリジェンスは非常に重要だと思っています。このまとめの中にも、例えば文科省のJSTと経済産業省のNEDOの連携ということも書いていただいていますが、どちらかというと、これはプロジェクト自体の連携がイメージされます。一方、いわゆるシンクタンク機能、NEDOですとTSC、JSTですとCRDS、あるいは文科省のNISTEPも含めて、国としてのまとまったシンクタンクの連携を行うことによって技術インテリジェンスを強化して、プロジェクトマネジメントの強化や、攻める分野の明確化、あるいは標準化に関する進め方に関しても具体的に取り組めることもあると思いますので、具体的に記載するかどうかは別として、シンクタンク機能を国家としてももう少し強化していく観点で御検討いただくといいのかなと思いました。
 以上です。
【杉山主査】  水無委員、ありがとうございます。
 実はその話、別のところでも同じ省庁の中でしていました。研究開発関係で、全部を統一する必要はないのですが、もう少し全開発であるとか政策にまたがって、もっとハイレベルから研究インテリジェンスなり、あるいはストラテジックインテリジェンスとそこでは言っていますが、そうしたいろいろなデータに基づいて戦略を立てていく機能を、既存のユニットをうまく、統合しなくてもいいのでしょうが、またぐ形でつくっていき、そこから政策をしっかりと考えていく必要があるのではないかという議論はなされておりますので、ぜひこちらでも、先ほどの規制の問題、あるいはルールメーキングの問題などにもかなり関係してくるところでもあるし、社会実装政策にも関係してくるところだと思いますので、そうした全体を俯瞰するようなシンクタンク機能の強化みたいなところはうまく取り込んでおけるといいのかなと御意見を聞いて思いました。
 何か事務局のほうでございますか。
【後藤(事務局)】  ありがとうございます。
 非常に重要な論点かと思っております。まさにGX分野もそうですが、分野を限らず、様々出てくるエマージングテクノロジーなどがある中で、どう取り組んでいくかという非常に大きな重要な話だと思っております。この委員会だけで議論し尽くすのはなかなか難しい話だと思っておりますが、政府全体では重要な議論として進んでいるところも活用しながら、また、前回も、GXの分野で技術分析と社会ニーズをつなげてみようということで、シンクタンクを使いながらやるといった取組も幾つか進めておりますが、そういった大きな動きとGX分野でやっていける部分を、いろいろ探ってやりながら少しずつ進めていくのかなと今は考えております。
【杉山主査】  いずれにしても必要性としては書き込むのはいいかなと思いますので、ぜひ水無委員の御指摘を踏まえてアップデートしたいと思います。ありがとうございます。
【水無委員】  ありがとうございます。
【杉山主査】  ほかに御意見はいかがでしょうか。よろしいですか。
 皆さんにしっかりと読んでいただくと様々なポジティブなフィードバックがまた出てきまして、誠にありがとうございます。このような形でさらに重要な論点を頂きましたので、中間まとめ案をアップデートさせていただきたいと思いますが、先ほど申し上げましたとおり、そろそろ一旦、セットしておく必要もあるのかなと思いますので、ここまでと先ほど先生方から頂いた意見も含めて、それらを踏まえて、改めて事務局で修正を施していただきたいと思います。
 その内容は、最終的には主査の私に御一任いただければと思うところでありますけれども、こちらはいかがでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【杉山主査】  ありがとうございます。
【森主査代理】  結構だと思います。何か書き方について意見があった場合は主査に申し上げればよろしいですか。
【杉山主査】  事務局のほうにまずはお願いします。信頼性の観点からいくと、事務局に出していただいたほうが良いと思いますが、事務局にちょっと言いにくいことがあったら私に言っていただければと思います。
【森主査代理】  分かりました。ありがとうございます。
【杉山主査】  最後は必ず事務局と私でしっかりともう一度精査しまして、皆様方から頂いた意見をしっかりとまとめた形で昇華させた、いい議論のまとめにしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 よろしいでしょうか。それでは、最終的な取りまとめは事務局と私でさせていただくということで御了承いただけたということで、今回の議論を終わりたいと思います。
 ということで、本日予定されていた議題は以上でございますが、最後に事務局から事務連絡を頂きたいと思います。よろしくお願いします。
【後藤(事務局)】  ありがとうございます。
 先ほど杉山主査からもございましたが、革新的GX技術開発小委員会の中間まとめという形にさせていただきたいと思いますが、中間まとめにつきましては、今回頂いた御意見等を踏まえまして、杉山主査と御相談の上で取りまとめさせていただきます。
 本日の議事録につきましては、後日、事務局よりメールで委員の皆様にお諮りをした後に、文部科学省ホームページに掲載をすることで公表させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 また次回の委員会につきましては、年明け頃の開催を予定しております。日程が決まり次第、改めて御案内をさせていただきます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
 事務局からは以上になります。
【杉山主査】  ありがとうございました。
 それでは、これをもちまして環境エネルギー科学技術委員会革新的GX技術開発小委員会の第9回の会合を閉会いたします。
 本日もどうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局環境エネルギー課

(研究開発局環境エネルギー課)