革新的GX技術開発小委員会(第8回)議事録

1.日時

令和6年3月1日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

 1.文部科学省のGX関連施策の状況
 2.前回の議論のまとめ
 3.GX関連領域における話題提供
 4.総合討議

4.出席者

委員

杉山主査、石内委員、菅野委員、五味委員、佐藤委員、志満津委員、田中委員、田畑委員、所委員、平本委員、本郷委員、水無委員、森委員

文部科学省

千原研究開発局長、林研究開発局審議官、轟環境エネルギー課長、後藤環境エネルギー課長補佐 他

オブザーバー

東京大学、アーサー・ディ・リトル・ジャパン株式会社(ADL)、経済産業省、科学技術振興機構(JST) 他

5.議事録

【後藤(事務局)】  おはようございます。本日は、お集まりいただきまして、ありがとうございます。お時間になりましたので、開始させていただきたいと思います。
 ただいまより、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会第12期環境エネルギー科学技術委員会、革新的GX技術開発小委員会の第8回会合を開催いたします。冒頭、進行を務めさせていただきます、研究開発局環境エネルギー課の後藤です。本日は、お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。
 本日は、オンライン会議になります。発言の際は、ビデオマイクをオンに、発言されていない際はオフにするよう、御協力をお願いします。また、御発言をいただく場合には、「手を挙げる」のボタンを押していただくか、チャットにてお知らせいただくようお願いいたします。指名を受けて御発言をされる際には、マイクとビデオをオンにし、お名前をおっしゃってから御発言をお願いいたします。
 また、本日の議題は全て公開議題となり、会議の様子はユーチューブを通じて一般傍聴者の方に公開されています。
 議事に入る前に、本日の資料を確認させていただきます。議事次第、資料1から4、参考資料0から1のファイルをメールでお送りしておりますが、もし不備等ございましたら、事務局までお申しつけください。よろしいでしょうか。
 なお、本日、出席者でございますが、文部科学省のほか、東京大学、アーサー・ディ・リトル・ジャパン株式会社、経済産業省、科学技術振興機構(JST)より、オブザーバー参加がございます。それぞれの御紹介につきましては、出席者名簿に代えさせていただきます。
 本日は、本藤委員が御欠席、五味委員、田中委員、本郷委員が途中退席の御予定でございますが、定足数を満たしておりますので、委員会は成立となります。
 それでは、ここからの進行は杉山主査にお願いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【杉山主査】  おはようございます、杉山です。よろしくお願いします。
 それでは、本日は議事次第にありますとおり、4件の議題を予定しております。委員の皆様からは忌憚のない御意見を頂戴できればと思っていますので、よろしくお願いいたします。なお、終了見込みは、12時頃を予定しております。
 それでは、議事に入ってまいります。
 まず、議題1は、文部科学省のGX関連施策の状況ということで、事務局より御説明をよろしくお願いします。
【後藤(事務局)】  それでは、文部科学省のGX関連施策の状況について御説明をさせていただきます。少し時間はたってしまっておりますが、昨年12月に令和6年度の政府予算案が閣議決定をされて以降、今回が初めての開催となりますので、GX関連領域から見た主な文部科学省関連予算の状況について御説明をさせていただきます。
 こちらは俯瞰図になりますが、様々な施策がございます。ピンクで囲っております部分を特に環境エネルギー課が担当しておりまして、GX関連領域を主眼とした施策になっておりますので、これらの状況について、本日は御紹介をさせていただきます。
 次、お願いします。まず、先端的カーボンニュートラル技術開発(ALCA-Next)でございます。こちらは、JSTが実施しておりまして、本委員会でも議論いただいておりますチーム型のGteX事業と対をなす探索型で、非連続のイノベーションを生み出す技術シーズを育てるという事業になってございます。
 令和6年度につきましては、16億円を政府予算案として計上させていただいております。前年度から比べますと6億円の増となっており、本事業は、スモールスタート、ステージゲート評価で育てていくということで、最初のスモールフェーズの部分で新規の15課題分を計上しております。
 また、次のページで御紹介をいたしますが、未来本格型といたしまして、もう一つ走っております、未来社会創造事業の低炭素領域について、そちらもやはりステージゲート評価を行って、探索研究から本格研究に移行するものでございますが、本格研究へ移行する課題は本年度からALCA-Nextで一体的に実施をすることといたしまして、その分の新規移行1課題分を計上してございます。
 次のページをお願いいたします。こちらは、先ほど申し上げた未来社会創造事業の低炭素領域でございます。こちらについては、新規の募集は停止をしておりまして、今後ALCA-Nextで実施をするということとさせていただいておりますので、継続課題分の10億円について計上してございます。
 次、お願いいたします。次に、半導体関係の施策でございます。次世代X-nics半導体創生拠点形成事業ということで、将来の社会で求められる半導体の創生を目指した中核的なアカデミアの拠点を形成する事業でございます。現在、3つの拠点で行ってございます。令和6年度予算額につきましては、前年度と同額の9億円を措置しておりますほか、令和5年度の補正予算において3億円を措置してございます。
 その内容といたしましては、次のページでございますけれども、昨今あらゆる分野で話が出てまいります生成AI、これに対応した次世代半導体研究開発、そのための環境整備の予算を計上してございます。生成AIの登場によってAI処理に必要になる計算量が加速度的に上昇する中、その消費電力が爆発的に増加をしております。そうした生成AIに対応する次世代半導体技術を創出するということを目的といたしまして、X-nics事業で支援しております3つの拠点、東京大学、東北大学、東京工業大学を代表機関とする拠点、それらの強みを生かしまして、用途に応じたAI半導体を迅速に設計できる自動設計技術の研究や、AI計算、それに向けた高速性能を満たすスピントロニクス材料、強誘電体材料等の研究開発を行う、そのために必要な装置を新たに導入する経費として、3億円を計上してございます。
 次のページが、革新的パワーエレクトロニクス創出基盤技術研究開発事業ということで、次の世代のパワーエレクトロニクス、ガリウムナイトライド等の次世代の半導体の創出に向けて、パワーデバイスと、その特性を最大限に生かすための回路技術、受動素子技術を一体的に行うものでございます。こちらも、前年度と同額の14億円を計上してございます。こちらについては、事業の折り返し年度を迎えておりますので、今年度、中間評価も行っております。いずれについても革新的な成果が出ていると、環境エネルギー委員会のほうでも評価をいただいておりまして、しっかりとそれらを評価しつつ、今後、それぞれの領域間でしっかり統合的に進めていくということが重要であるという御指摘を受けております。
 最後のページは、GteX事業のポンチ絵を参考につけさせていただきましたが、こちらについては、御説明を省略させていただきます。
 事務局からは以上でございます。
【杉山主査】  ありがとうございました。ただいまの御説明に関しまして、何か御質問がありましたら、お願いします。特によろしいですか。
 それでは、また、お気づきの点がありましたら、後ほどの総合討論でいただければと思います。
 それでは、次の議題に移ります。議題2は前回の議論のまとめです。引き続き、事務局から説明をよろしくお願いします。
【後藤(事務局)】  それでは、事務局から、前回、第7回の小委員会におきまして出ました主な御指摘について、振り返りとして御報告をさせていただきます。前回は、大きな議題の1つといたしまして、GteX事業及びALCA-Next事業の公募採択を行いまして、その結果が決まりましたので、その結果を報告した上で、GteX事業のマネジメントやプロジェクト運営について、本委員会でも御審議いただきました基本方針等を踏まえて、どういったことが必要かといった御助言をいただいたところでございます。
 もう一つは、GXの関連領域における産業界等からの話題提供ということで、特許庁、COCN、それからNEDOのTSCから話題提供をいただいた上で、委員の皆様からは事前アンケートなどもいただきまして、GX実現に向けて、今後取り組むべき研究開発の方向性について御議論をいただいたところでございます。
 主な意見を簡単に御紹介させていただきます。1ページ目に行っていただきまして、GteX事業のマネジメント・プロジェクト運営の関係につきましては、まず、カッティングエッジな目標達成を期待したいというところではあるものの、開始当初は具体的な目標を設定しにくい場合もある中で、いつまでに、どのような具体的な指標をつくるかといったことも含めてマネジメントを行っていただきたいという御意見。
 また、チャレンジングな新しい技術が出てブレークスルーを生むためには、研究者の層が厚くなることも必要で、場合によっては勇気ある撤退を促すことも重要であるが、一方で、撤退した研究者がまた戻ってこられるような循環が必要であり、柔軟な制度設計、運用を工夫していただきたいという御意見。
 また、戦略コーディネーターなどを設置して、俯瞰的に見た上で具体的に成果につなぎ込んでいく仕組みも重要ではないかという御意見。
 また、横断的な視点として、上流や下流での連携や領域間の連携を行い、GteXの取組を広げていくということも考慮すべきではないかという御意見。
 また、実装に向け、量産化やハードウエア導入時の枠組みといった、研究開発の周辺部分でもジャパンイニシアチブでリードをとっていただきたいという御意見や、諸外国と比較した際に、産業があるということが強みにもなり、弱みにもなるという御意見があり、この強みを生かす方向で研究していただきたいという御意見。
 そしてまた、サプライチェーンリスクの問題などもある一方、日本単独で行うことは難しい中で、同志国との国際連携というのを意識して進めていただきたいという御意見がございました。
 次のページに行っていただきまして、今後、取り組むべき研究開発の方向性についても御意見をいただきました。上から行きますと、重要な技術がたくさんある中で、そうしたものを俯瞰的に見る視点が非常に重要ではないかということで、その中で技術的な観点だけではなくて、社会科学的な観点での評価指標というのも充実させていく必要があるという御意見がございました。
 また、日本は研究の幅が非常に広いということが強みであるといった中で、一方で、各国の取組が進展した際にも、いかにそのプレゼンスを保っていくかというようなことが必要ではないかという御意見もございました。
 また、アカデミアはGXの苗床になるべきであって、政府全体としてどういった役割分担で進めていくか。チャレンジングな取組の部分で、新しいシーズを創出する、そういったところを文科省・JSTで行うことで、社会全体としてプロジェクトの価値が上がるのではないかといった御意見。
 そしてまた、本委員会でも度々御議論いただいておりますニーズ側とシーズ側のコミュニケーションをしっかり図っていくことが重要ではないかといった御意見でございます。
 また、最後2つのところでございますが、研究自体の幅を広げるということと併せて、需要側がどう使いたいかということを把握した上で、例えば価格の面や、需要側がそれにどう取り組むか、あるいは製造技術としてどう落とし込むか、そうした観点において、アカデミアがどのように協力できるかということも考慮していくことが重要ではないかという御意見がございました。
 簡単ですが、以上でございます。
【杉山主査】  ありがとうございました。こちらにつきましては、最後の総合討議でまとめて御意見等をいただいていければと思いますが、田中委員がもうしばらくしますと御退席と聞いておりますので、田中委員、まだ始まったばかりですが、もし何かコメント等ありましたら、いただければと思いますが、ございますでしょうか。
【田中委員】  お時間ありがとうございます。今日、調整して12時まで出席いたします。
【杉山主査】  了解いたしました。それでは、また他の委員と一緒にまとめて最後にお願いできればと思います。ありがとうございます。
 それでは、次の議題に移っていきたいと思います。こちらから議題3に入りますけれども、話題提供になります。今回は、これまでの委員会で議論いただいてきたポイント等を考慮いたしまして、文部科学省の委託事業で実施しています、社会課題、国家戦略といったミッションと具体的な研究技術領域を関連づけて体系化し、分析を行うための方法論、あるいは、その分析結果を紹介していただきたいと思っております。それが1つ目です。
 2つ目は、様々な分野にまたがる横軸的な視点といたしまして、本委員会でも議論されておりましたけれども、サーキュラーエコノミーの状況や研究ニーズについて御発表いただきます。
 それから、3つ目は、本分野における重要な潮流の1つでありますClimate Techに関しまして、その現状やアカデミアへの期待について話題提供いただきたいと思います。
 盛りだくさんになるかと思いますけれども、それぞれ説明15分、質疑5分程度で進行していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、まず、アーサー・ディ・リトル・ジャパン株式会社マネージャーの菅様より、「科学技術・イノベーション政策における分野別研究開発課題の技術開発・研究領域及び関連の需給・インパクトの体系的な整理及びそれらを活用した検討の方法論のための調査」について、御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【菅氏(ADL)】  御紹介にあずかりました、アーサー・ディ・リトル・ジャパン株式会社、マネージャーの菅でございます。
 2ページをお願いします。本日は、このような章立てで、MFTツリー、すなわちミッション、ファンクション、テクノロジーツリーの設計思想や、それらツリーを活用した分析手法の考え方、初期的なトライアル結果について話題提供させていただきます。
 次、お願いします。まず、背景・目的から御説明させていただきます。
 次、お願いします。分野間の垣根の曖昧化や、EBPMの重要性の増大など、イノベーションに取り組むステークホルダーの拡大や複雑化が進んでおります。これら、環境変化を捉えて分野やステークホルダーを横断的な視点から、有機的にミッションやテクノロジーの関係性を整理し、国が取り組むべきミッションに資する研究に投資していく必要性や、あるいは、それらを関係するステークホルダーとともに議論するコミュニケーションツールが一層求められているという認識でございます。
 そのような背景の下、今回、MFTの考え方を活用した方法論の構築にトライアルいたしましたので、御報告できればと思います。
 次、お願いします。MFTについて、こちらの考え方を御紹介できればと思います。技術経営のフレームワークのひとつで、ミッションとテクノロジーを直接的に考えるのでなく、途中にファンクションを介すことによって、ミッションとテクノロジーとの関係性を有機的に整理するフレームワークでございます。
 次、お願いします。このフレームワークを活用しながら、今回、2つのことを検討しております。1つが、国が取り組むべき社会課題、ミッションを起点に、その解決に必要な機能や技術を導出し、MFTのツリーの形で体系整理いたしました。後ほど2章で御説明いたします。
 続いて、2点目が、作成したMFTツリーに対して、論文、特許分析、JSTやKAKENなどの投資動向、あるいは海外の国家プロジェクトの投資動向などのデータを付与することで、研究・産業における技術動向、世界の注目度や投資動向などを可視化・分析する方法論を構築、設計いたしました。こちらは3章で御紹介いたします。
 今回は、これらの検討をまだ一周した状況ではございますが、理想的にはこの2つの検討を繰り返しフィードバックをかけていくことで、分野横断的な投資配分の一助としたり、ステークホルダーとのコミュニケーションツールとして活用するなど、そういった可能性を秘めた方法論でございます。
 次、お願いします。ここまでの話を整理しまして、本日の検討の押さえどころが1つございます。MFTはあくまでMとTの関係性を体系的に整理したツリー、言わば骨格で、これにどんな情報を付与するのかによって、得られる分析内容というのも変わってまいります。決して何か特定のデータを付与すれば万事何でも分析できるような魔法のツールとまでは行きませんが、得たい示唆ごとに必要なデータを付与し、分析する方法論でございます。後ほど、こちらの手法例、A、B、Cを3章で御紹介させていただきます。
 次、お願いします。ここから、まずMFTの体系整理について具体事例を用いながら御紹介いたします。まず、今回、環境エネルギー分野のMFTツリーの構築を3つのステップで検討しております。1つ目のステップが政府で掲げている「GX実現に向けた基本方針」を基にミッションを体系整理いたしました。2つ目は、そのミッションの実現にどのような機能が必要か、機能を体系整理いたしました。最後、3つ目のステップでは、考え得る機能に対して、どのような研究・技術で貢献できるかをひもづけ、整理いたしました。
 次、お願いします。MFTツリーの体系化の際には、ツリーを縦に、横に広げる、つまり、分岐においてMECEかつ論理的な関係性を保つことに留意しながら、体系化を実施いたしました。
 次、お願いします。ここからMFTの整理結果の一例を御紹介できればと思います。まず、Mの全体像ですが、「二酸化炭素削減を通じた新産業の創出・経済成長への貢献」を起点に、「GX実現に向けた基本方針」の思想を基に要素分解いたしました。この中で、青で囲んであるところ「サーキュラーエコノミーの推進」のMFTについて、後ほど3ページにわたって御紹介できればと思います。
 次、お願いします。「サーキュラーエコノミーの推進」のMを具体的にF、Tに書き下したものが、こちらでございます。各技術がどのような機能や、またミッションの実現に貢献するものであるのかをこのような形で整理いたしました。こういった形で整理することで、サーキュラーエコノミーの推進に資する研究や技術領域というのを俯瞰可能でございます。
 次、お願いします。また、俯瞰整理の際には、理工学系はもちろんですし、社会構造モデリングや、社会受容性評価など、人文科学系や社会科学系の研究なども意識しながら、体系化を実施いたしました。
 次も、同様にMFTの結果でございます。次、お願いします。続いて、2章でつくったMFTツリーに対して、どのようなデータを付与することで、どのような定量分析を行ったのか御紹介できればと思います。今回、3つの分析にトライアルしております。それぞれ分析例を御紹介できればと思います。
 まず、1つ目の分析例を18ページ目から御紹介いたします。
 次、お願いします。先ほど2章で作成した、MFTのミッションの部分に社会的インパクトに関するデータを付与することで、Mの実現度を可視化し、その重要なミッションの解決に資する研究・技術を、1つ目のアプローチで可視化いたしました。
 次、お願いします。もう少し具体的に申し上げますと、今回、国が取り組むべき大きなミッションとして、「CO2削減を通じた新産業の創出・経済成長への貢献」を掲げましたので、その社会的なインパクトのデータとしては、2つの観点を採用しました。こちらの表の中の緑と青の部分に該当するものでございます。
 1つ目が、2030年、2050年のCO2削減目標に対する現在との差分、2つ目に、2030年の削減目標達成に向けて必要な変化率と過去5年のペースとの差分、すなわち、目標達成に向けて、どれだけCO2削減ペースをこれまで以上に一層加速させなければならないのか、この2つの指標を採用いたしました。これらの表の緑と青の部分の差分が大きいところが、アーリーステージへの投資役割を持つ文部科学省にとって重要なMの候補になり得るとして、Mを評価いたしました。
 その結果、例えば青の最も多いところ、「サーキュラーエコノミーの推進」が、重要なMの候補の一つとして見えました。
 次、お願いします。先ほどの2章の結果とこの結果を併せて見ると、「サーキュラーエコノミーの推進」に資する研究は、ひいてはカーボンニュートラルに向けた重要技術・研究の一つになり得るということが、このような形で分析できました。
 続いて、2つ目の分析、アプローチの御紹介でございます。2章でつくったMFTに対して、論文・特許データ、JST・KAKEN投資状況を付与することで、世界で注目されている研究や、産業界から注目されている研究に対する文科省の投資状況を分析いたしました。
 次でございます。こちらの分析では、4つの指標を採用して、2つのバブルチャートで可視化しております。
 まず、1つ目の指標が、世界の注目度を示す指標として、技術キーワードのGoogle Scholar上でのヒット件数、成長率を採用しました。右側のバブルチャートで言うところの横軸や、バブルのサイズに値するものでございます。
 続いて、2つ目の指標が、国内産業界からの関心を示す指標として、国内特許の累積件数の成長率を採用しております。こちらは、右のバブルチャートの縦軸に対応しております。
 続いて、3つ目の指標が、文部科学省の投資状況としてJSTの累積投資金額の成長率を採用し、こちらは、上の紫色で書かれているバブルのカラーで表現しております。
 最後、4つ目の指標に国内研究者層の育成状況として、科研費の累積投資金額の成長率を採用し、こちらは水色のバブルカラーで表現しております。
 なお、Google Scholarの採用については、賛否両論あるかとは思いますが、今回は期間内での方法論のトライアルや、今後の横展開を見据えた公開データベースの利用というところを優先して、一旦、論文分析にGoogle Scholarを採用しました。
 次に、2章でつくった先ほどのMFTのツリーのMの部分とTの部分、この掛け合わせのキーワードを、先ほどの4つの指標でバブルチャート上にプロットすることで、MFTから見えてきた技術が、世界あるいは国内産業界からどれだけ注目されているのか、そこに対してJSTは投資してきたのか、研究者層の育成は進んでいるのか、そういったものをこのような形で分析しております。
 例えば、緑の吹き出しのように、世界の注目度が右下のほうに振れているものについては世界で注目度が上がっているといえます。それに対して、バブルを見ることで、JSTやKAKENの投資状況はどうか、と分析可能です。
 同じく、オレンジの吹き出しのように縦に伸びているところを見ると、産業界からの注目度が上昇していることが分かります。こういった形で、今回、分析をいたしました。
 例を2つほど御紹介できればと思います。1つは、電力調整の例でございます。オレンジの吹き出しの部分を見ていただきたいのですが、こちら、キーワードとしましては、「電力&マイクログリッド」というキーワードで分析したものでございます。国内特許の累積件数の伸びが高いことが縦軸から見てとれるかと思います。
 また、バブルの色がどちらのプロット図においても濃いので、JST、KAKEN共にポジティブに投資中で、研究投資、研究者育成がなされてきた分野とも言えるのかなと思います。ここから、文部科学省で今後支援していく際には、産業移行を見据え、産業化支援事業への橋渡しを意識することが有効である可能性が、一定示唆されます。
 なお、今回、各研究分野に対する、それぞれのプロットの点の位置の正しさや、それぞれ検索しているキーワードそのものの最適性については未検証でございますので、皆様いろいろと御意見はおありかと思いますが、その点、御理解いただけますと幸いです。
 続いて、2つ目の例を御紹介できればと思います。水素の導入促進の例ですと、「水素&SAF」は右下にあることから、国際的に注目度が高まっていることが分かります。また、右側が白抜きになっていることから、研究者数も一定存在することが分かります。
 一方で、左側のプロット図を見ていただくと、バブルが灰色ですので、JSTでの支援はまだまだ限定的な可能性が示唆されます。ここから、国際的に注目されつつあり、国内でも研究者層が一定存在する当分野では、政府の戦略的な研究投資先として一目置くとよいのではないか、そういった1つの方向性の投げかけにつながるのではないかと思います。
 続いて、3つ目の分析手法について御紹介いたします。こちらでは、JST、Horizon、NSFの投資状況のデータを付与し、諸外国が投資している分野に対する国内の投資状況を可視化・分析いたしました。
 先ほどと同じように、バブルチャートで今回も分析しております。横軸にHorizon、またはNSFの累積投資金額の絶対値、縦軸にJSTの累積投資金額の絶対値を設定しております。バブルのカラーについては、JSTの累積投資金額の成長率、バブルのサイズについては、Horizon、NSFの累積投資額の成長率を採用しております。
 次、お願いします。先ほどと同じように、MFTのMとTの組合せキーワードに対して、JST、Horizon、NSF、それぞれの投資状況をバブルチャートに示しています。今回は、JST VS Horizon、JST VS NSF、その2つで分析を行っております。赤色の均衡基準線に対して、右下の領域ですと、JSTに比して相対的にHorizon、NSFのほうが投資が盛ん、一方、左上ですと、オレンジの吹き出しのように、Horizon、NSFに比して相対的にJSTのほうが投資が盛んであるということが見てとれます。
 こちらも、具体例を2つほどお示しできればと思います。まず、左側がJST VS Horizon、右側がJST VS NSFのプロットでございます。こちらの電力調整の分野で、例えばオレンジ色の吹き出しが入っている「電力&デマンドレスポンス」、「電力&エネルギーマネジメント」等のキーワードについては、どちらも右下にあることから、両分野、NSF、Horizon、共に積極的に投資していると言えます。
 一方、バブルの色がポジティブですので、JSTは金額はまだまだ限定的ではあるものの、近年、増加傾向にあるとも言えるかと思います。ここから、諸外国が投資している分野に、JSTとしても一定アンテナを張れており、引き続き注視していくとよいのではないか、そういったことが示唆されるかと思います。
 続いて、2つ目の例ですが、こちら水素の例でございます。先ほど同様、「水素&エンジン」というキーワードは右下にございますので、諸外国は積極的に投資中と分かります。一方、バブルカラーがネガティブですので、JSTは相対的に投資金額・増加率がともに限定的と言えます。こういった分野が可視化されることで、政府の戦略的な研究投資先として一目置くとよいのではないかといった投げかけにつながるのかと思います。
 最後に本日のまとめでございます。駆け足になりましたが、本日お伝えしたかったことはこちらの3点でございます。2章のアプローチのように、Fを介してMを捉えることで、既存の技術枠組みにとらわれず、分野横断的な視点から重要技術を見いだすことが可能でございます。また、3章のようにMFTに適切なデータを付与することで、中長期的な社会インパクトに資する重要研究や、世界の注目度、産業移管ステージを意識した研究分野の分析が可能でございます。
 また、これら構築した方法論は別の分野にも展開していくことで、分野横断的な省内連携や省庁間連携などの際のコミュニケーションツールとしての活用可能性も秘めてございます。
 私からの発表は以上です。御清聴ありがとうございました。
【杉山主査】  どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明の御質問を受けたいと思いますが、委員の先生方、いかがでしょうか。
 水無先生、よろしくお願いします。
【水無委員】  ありがとうございます。御説明ありがとうございました。御紹介いただいたこの手法は、非常に有用そうだなと理解しました。特に、手法例のBとCに関しては、定量的な分析も含めて非常に納得感がある分析かなと思いました。
 一方、手法例のAについて、19ページ目の青のバーの大きさを見ればいいのかと思いますが、サーキュラーエコノミーがこれだけバーが長いということと、なぜそれが長くなったのかということについて、例えばその上に書いてあるCCSも、もう少し長くなってもいいのではないのかなという気がしましたが、分析の定量的な根拠について簡単に教えていただければと思います。よろしくお願いします。
【菅氏(ADL)】  ありがとうございます。おっしゃるとおりでして、正直申し上げますと、今回、長くなっている、短くなっている、その背景がどういったところにあるのかというところまでは、まだ検証ができていない状況でございます。
 今回採用させていただいたデータ自体は、今後、横展開していくことも1つの可能性として見据えているため、既に政府の公式な資料の中で発表されているデータを一旦採用して、構築させていただいていますので、今いただいた視点を踏まえて、それぞれこのデータ自体が横比較に適切なのかなど、今後の検討の際の参考にさせていただきます。
【水無委員】  ありがとうございます。手法自体は非常に魅力的に感じましたので、ぜひブラッシュアップをお願いしたいなと思います。ありがとうございました。
【杉山主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 本郷先生、お願いします。
【本郷委員】  御説明ありがとうございます。非常に興味深い分析・手法だなと思います。1つ質問ですが、この引用件数というのは、商業化が近くなると増えてくるのではないかという気がします。特許の件数で、分析した同僚がいるのですが、比較的基礎研究に近い部分と、商業化に近い部分では大分違うというようなことがあります。
 今回の場合、スポットで、今の時点で、ということかと思いますが、時間軸で分析するということは可能なんでしょうか。あるいは、そういうことをやられたことはありますでしょうか。先ほどのNEDOの水無さんからあったブラッシュアップにつながるポイントかなと思いますが、いかがでしょう。
【菅氏(ADL)】  御意見いただきまして、ありがとうございます。まさに時間軸の観点は、私たちとしても重要視しているところです。23ページの中で本日御紹介したものは、特定の時間軸での御紹介にはなっておりますけれども、おっしゃるとおり、それぞれのデータベースごとにその時間軸が読み取れる考察というのも違ってくるかなと思っていますので、そのデータベースの特性と、あとは幾つかのポイントで時間軸を取りながら分析できると、より有用なものになると認識しております。
【本郷委員】  ありがとうございます。基礎研究のところも、比重がどこに行くかというのは非常に重要かと思います。あとは、サーキュラーエコノミーのところは、特定の分野が多かったり、ほかと違う動きがあった場合は、国別の政策の影響もある可能性がありますので、そういった分析も加えられると面白いかなと思いました。いずれにせよ興味深い研究でした。ありがとうございました。
【菅氏(ADL)】  ありがとうございます。まさにCの分析でも生かしてまいりたいと思います。
【杉山主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 菅野先生、お願いします。
【菅野委員】  ありがとうございます。私にとって初めての手法ですので、参考になりました。
 1つ教えていただきたいのですが、例えば自動車産業はCO2に関してダイレクトに影響が大きいと思います。それを支える、例えば今日は、水素の話題がありましたけれども、水素や蓄電池、その他の基盤となる分野、すなわちワンステップ置いてCO2に直接関係するというようなところは、この手法に含まれているということなんでしょうか。
【菅氏(ADL)】  ありがとうございます。結論としては、11ページのような形で、「GX実現に向けた基本方針」の中で述べられている分野は一通り網羅しておりますので、含まれております。
 ただ、おっしゃるとおり、恐らく定量分析する際には、先ほどのプロット図の縦軸・横軸、その結果を眺めるときに、どの分野も一律に眺めるわけではなく、これは基礎的な分野だから、こういうふうに捉えるべき、逆に、一歩進んだ際の分野なので、このように捉えるべきというふうに、捉え方はそれぞれの分野に応じて変えるべきだとも思っております。
【菅野委員】  ありがとうございます。裏に潜り込んでいる基盤となるようなところを、どのように表に出すかというところが少し気になりました。ありがとうございます。
【菅氏(ADL)】  承知いたしました。
【杉山主査】  すみません、司会の私も1つ、聞かせていただいてよろしいですか。今の菅野先生の最後のコメントと関係するのですが、今回、MFTというところで、Fが入っているというのが非常に大きな特徴かなと思います。ただ、今回の分析の中で、いわゆるミッションと技術の間の相関を深掘りするツリー図をつくったというところが、今回のF分析なのかなと思ったのですが、本日、プレゼンされた内容の3つのトピックの中で、実際にFがどう機能しているのかというのが、よく分からなかったのですが、そこをコメントいただけますか。
【菅氏(ADL)】  はい、御質問いただきありがとうございます。まさに、正直申し上げますと、Fを介すことで一番うれしいことは、分野間で見たときに、まさかこんなところで使えるとは思わなかった、といったところがきちんと可視化されることだと思っています。
 そういう意味では、今回、特定の分野の中での事例しか御紹介できなかったので、本来的にはこの複数の分野での結果などをお見せすれば、もう少し先ほどの定量分析のところなどのありがたさも御理解いただきやすいものになるのかなと理解しております。
【杉山主査】  菅野先生も少しおっしゃったように、例えば自動車の脱炭素化をするというときに、水素も出てくるであるとか、思ってもいない材料がぽんと出てくるとか、いわゆる芋づる式に、直感的に考えたところでは見えてこない相関関係が、ミッションの重要さから、テクノロジーの要素が掘り出されてくるというところが、うまくやると出てくるはずなんだけどなと思いながら聞きました。
 その辺りがもう少し深掘りできると、この委員会にも関係する、次、どのようなことにフォーカスしていけばいいのかということがよりクリアに見えてくるし、人間の直感に必ずしも頼らずに、体系的にいろいろな相関関係を可視化することによって、その辺りが明らかになるというのが、こうしたツールを使った分析の非常に重要なところかなと思いましたので、ぜひその辺りをまた深めていただければなと思います。
【菅氏(ADL)】  承知いたしました。
【杉山主査】  田中先生から御質問がありますので、よろしくお願いします。
【田中委員】  発言の機会をいただき、ありがとうございます。御発表ありがとうございました。非常に分かりやすくて、ネーミングがMFTというと、ブロックチェーンも研究しているので、違うものを一瞬イメージしましたが、面白いなと思って聞きました。
 2つあって、1つはコメントに近く、今の杉山先生の話にも近いのですが、左から右、ミッションからファンクションのところで、市場や社会経済的なところがうまく定量的なところに入ってくる部分ということが、今後もう少しうまくまとまると、すごく使えるかなと思ったので、ぜひ期待したいなと思いました。
 あとは、分析のCについて、日本がイニシアチブをとる部分と考えたときに、海外がやっていて、日本がやっていないというのもやるべきなんですけども、逆に、日本が先行していて、海外が勃興してきている、左上から右下に行く部分というのは、イニシアチブもとれる気もするので、これの見方、アクションのとり方が見えてくると、すごく面白いかなと思いました。何かそういった点で御知見があれば、教えてもらいたいと思いました。
【菅氏(ADL)】  ありがとうございます。1点目については、まさにそのとおりだと思いますので、今後、参考にさせていただきます。
 2点目のCの分析については、まさにおっしゃるとおりで、今日は分かりやすく右下の例しか御紹介しませんでしたけれども、左上のところなども分析したりだとか、強いから伸ばすのか、あるいは、弱いから強化するのか、どういったロジックで今後、領域を定めていくのかというところに、それぞれ使えるものになっているのかなとは思います。
【田中委員】  分かりました。ありがとうございます。
【杉山主査】  ありがとうございます。五味先生がそろそろ退席のお時間に近づいているかと思いますが、何か今までのところで御質問、御意見等ございますか。
【五味委員】  非常に面白い解析だと思いました。いずれにしても、あまり十分理解はしていないのですが、こういう解析から、実はここをやはりやってみたらよかったということが、まず現実として出てくると、もっと面白いかなと思いました。こういうのがうまく利用できるといいのではないかなと感じました。
 簡単ですけど、ありがとうございました。
【杉山主査】  五味先生、ありがとうございます。ほかに御質問等はないですか。
 また思いつきましたら、最後の総合討論でいただければと思います。それでは、どうもありがとうございました。
 では、次のトピックに移りたいと思います。次は、東京大学の大学院工学系研究科教授の村上先生から、「サーキュラーエコノミーの社会実装の現在地と研究ニーズ」というタイトルで御説明をお願いいたします。
【村上氏(東京大学)】  どうもありがとうございます。東京大学の村上と申します。どうぞよろしくお願いいたします。今日は、こんなタイトルでお話をさせていただければと思います。
 次、お願いいたします。もともと私は、資源開発、天然資源の鉱山の開発のマネジメントのところから、社会全体の持続可能な資源利用といったところをやってきている、社会システム工学のような研究者です。今日のトピックの関連で言いますと、今、サーキュラーエコノミーは、ISO化が進んでいまして、最初のドラフトが今ファイナルドラフトまで来ている段階にあるのですが、そこのエキスパートや国内の委員会の主査などをさせていただいているところです。
 ですが、あくまで今日のプレゼンは私の私見ということで、よろしくお願いいたします。
 次、お願いいたします。サーキュラーエコノミーとは、という話で、説明の仕方はいろいろありますが、私自身、この説明の仕方は簡単だなと思って気に入っております。その下にありますのは、エレンマッカーサー財団という人たちのものです。3つの原則と言っているもので、driven by designも大事だと思いつつ、waste and pollutionがなくなるということ、また製品とマテリアルが循環する、しかも、高い価値で回すという、当たり前のことがきちんと書かれているところが重要です。
 また、上の箇条書にある、下線を引いているところですが、気候変動だけではなく、生物多様性などといった、ありとあらゆるものに向かって取り組むための1つの施策といったことを、彼らは言っているというところも重要かなと思ってございます。
 次、お願いします。では、なぜ取り組むのかという話が実はクリアではありません。サーキュラーエコノミーは、それ自体は目的ではなく、アプローチなので、何を目的として取り組んでいるのかという話です。
 次、お願いします。まず、1つ大きいのが、資源デカップリングというものです。人類社会のウェルビーイングを上げたいという目的を持っているとすると、それを支えるために経済活動も上げる必要があろうということです。
 それを支える上で、資源の投入量も多少増えるますが、その伸び率で言えば、例えばGDP2倍になるときに、天然資源投入量は1.5倍ぐらいで済みませんかという形で、徐々に切り離していきたいということを資源デカップリングと称しています。それに由来するような環境負荷や、そのほか、様々なネガティブなインパクトも含めてもいいような気はしますが、もっと、明らかに下げていきたいというのを、インパクトデカップリングという言い方をしています。
 逆に言うと、資源デカップリングが滑ってしまうと、インパクトも減らし損ねるので、経済活動レベルが同じだとしても、ウェルビーイングを下げてしまうのではないかというような意味で、ここは重要だという話をしているところです。
 次、お願いいたします。何でこんな話が出てきているのかという1つの理由ですが、資源分野の方には当たり前のことですが、天然資源は、使いやすいところから使ってきています。使いやすいものがなくなってきているということは、逆に言うと、使いにくいものが残っているということであり、これを称して、劣化という言い方を最近よくしています。
 金属みたいなものを御想像いただくのが一番分かりやすいと思います。金属は濃度概念的な質の概念が簡単に分かると思いますが、平たく言うと、薄くなったり、入っていてほしくない元素が入っているものも、しかたがないから使うということが起こる、より社会環境に近い話でいうと、アクセスしにくいところでの採掘が必要になっているといった現状があります。
 細かいところは後で御覧いただければと思いますが、簡単に言うと、同じ量の資源を使いたいときに、それを取ってくるために必要なネガティブなインパクトは、基本的には増加するということです。
 また、それを社会は認識しつつあるので、使うこと自体が何らかのリスクに見えるように、世の中が変わってきてしまっているというのが現状かと思います。
 次、お願いいたします。この話をしているときに、世の中が別の研究で気がついてきているのは、既に我々は大分資源をため込んでいるという話です。6つのグラフを貼ってありますが、後ろにある論文からの借り物ですけれども、左上が世界全体での天然資源の採掘量です。これはありとあらゆる資源が入っていますということで、大体ここ100年と少しで約10倍になっているという話です。ただ、最初の1というのはほとんどバイオマスなので、それ以外のものがほとんどなかったものが、その9倍分ぐらい出てきているという話かなと思います。
 結果、我々は、こういったものを社会にため込んでいるので、もう少しダイナミックなモデルにして推計してみると、真ん中の下のストックというところにあるように、山のように世の中にため込んでいることになります。なので、これを使おうということです。
 右側の表ですが、先進国の1人当たりのストック量と、途上国の1人当たりのストック量は全然違います。逆に言うと、途上国は多分まだ入れていかなければいけないので、せめて先進国はストックをちゃんと回そうという話になるのは、極めて自然かなと思います。
 次、お願いいたします。そのため、何をしたいんだという話をすると、これまで、古い循環型のような視点で見てきた考え方は左側で、普通につくって、使って、使い終わったら、集めて、再資源化しましょう、できるだけ捨てないようにしましょう、という循環だったわけですが、使用のところにフォーカスをきっちり当てましょうというのが、違いかなと思っています。
 要するに、使用を変革するというと大げさですが、極力製品のままストックにとどめて、そこで機能を発揮させ続けるというところで、何をするかというのがキーワードです。言い換えると、下に書きましたが、長持ちで、かつ高付加価値で、しかし、どうしても循環させなくてはいけないときには循環しやすいという製品などをつくるということが、社会からのお題だということかなと思います。
 次、お願いいたします。エレンマッカーサー財団がよく見せるバタフライダイヤグラムを日本語に書き直していますが、左側に自然界による再生可能資源の循環が書いてあります。他方、右側は人工物を我々が回しているものがいろいろ書いてあります。
 1つだけ申し上げておきたいのは、左側の循環は自然が回すものなので、当然ながら、我々は循環そのものは制御できず、そこからどれだけ取ってくるのか、どれだけ戻して平気かというフローのコントロールをするだけが我々の仕事ですが、右側は、我々がストックごとに、どう回そう、どうためようということが制限できるので、当面右側を頑張らなければいけないというのも、極めて自然な考え方かなと思います。
 次、お願いします。これは、素材分野の人に頼まれて描いてみた絵ですが、左側から天然資源を取ってきて、右側の最終的には捨てられるところまでを考えて、途中でリサイクルされたり、輸出されたり、いろんなことがあり得るという話です。
 赤いところで、何らかのネガティブなインパクトが、循環の行為が起きるたびに大きく出ますが、使っている間にも出ます。一番奥の黄色のところは、さりとて、負のインパクトを出しつつも、経済インパクトはプラスが出たりもしますというところです。その間に、先ほどの御発表でも、MFTのFという言葉遣いがありましたけれども、マテリアルの人目線で言う、マテリアルのパフォーマンスみたいなものも多分あるのだと思っています。
 最初のサイクルにいるときは、多分、パフォーマンスの高い状態で動いているので、これを長時間続けてあげることで、経済的な付加価値も上がるんだろう、といったことを考えるんだろうなと思っています。
 次、お願いします。少し評価の話を挟みたいと思います。
次、お願いします。今日のプレゼンのタイトルの現在地というのが、実はこれだと思っています。これはレビューの文献の結果ですが、CEと一言に言ったときに、社会でやっている実装の仕方はたくさんあるということは御承知のとおりで、今、左側のグラフの横軸方向にいろいろ書いてみています。リースであったり、レンタルであったり、リユースであったり、リマンであったりです。
 世の中にいっぱい転がっているLCA的な文献を比較可能な形に整理をして、それを、例えばリユースなどの戦略や、アクションと言っていますが、それごとに固めてみて、その分布を箱ひげ図に描いたものです。
 ボックスプロット自体は削減効果で書いているので、左から右に向かうにつれて削減効果は高いと読んでいただければいいのですが、その上に赤い点が打ってあるのを御覧いただればとおっもいます。この赤点は、右側の縦軸に書いてあるバックファイア効果が生じたシナリオ割合というもので、平たく言うと、GHGが増えてしまったケースの割合が書いてあります。
 そのため、赤点が上に行くということは、増えてしまったものが多いという意味なので、例えば、リユースとプーリングを比較いただくと、削減効果の中央値は同じぐらいなんですけど、赤点が大分リユースのほうが上にいるので、リユースのほうがハイリスク・ハイリターンで、プーリングのほうがローリスク・ハイリターンだという言い方ができます。
 これはレビュー文献であり、レビューした対象にもよるので、一概にこれが正しいとは言い切れませんが、ただ1つ言えるのは、ケース・バイ・ケースでかなり変わるということです。つまり、皆さん、とりあえずやってみていますが、正しい効果が出ているかどうか分かりませんというのが現在地だ、というのが私の理解です。
 次、お願いいたします。そのため、評価しなくてはいけないのですが、評価するときに気をつけなければいけないのは、分数的な指標に最終的にはならざるを得ないところです。下の四角に書いた通り、例えばスクラップを使ってはつくれない超高機能の材料と、スクラップを山ほど使っている普通のレベルの材料と、どちらがパフォーマンス的にいいのかと聞かれると、少し困るよねという話です。
 つくるときのCO2発生量だけで測られると、多分後者のほうがいいと言われるのですが、前者の材料も、その後でまた回せるかもしれない、といったことをきちんと考えていくことと、それがまさしく発揮する材料としての機能、そして、そこから生まれる製品としての価値を考えないと話にならないという当たり前のことが時々欠けてしまうので、そこは重要だというのが1つです。
 また、下の箱の2つ目のほうのドットですが、評価するための情報が必要で、それを多分サプライチェーン上で追いかけなければいけないので、よく言うサーキュラーエコノミーのためのDXのような話は不可避で、この辺の話にきちんと参画しておくことは大事だなと思っている次第です。
 次、お願いいたします。そういう評価の話で、今Circularityという言葉をよく使うようになっています。Circularityは、平たく言うと、評価対象はどのくらいCEっぽくなっているかという話です。なので、1つは、リソースデカップリングを測ります。どれだけ非再生可能な天然資源を入れる量を減らせていて、かつ、それがどのくらい何か経済的なプラスを発揮しているかというところです。
 ただ、1つ気をつけなくてはいけないのは、マテリアルとエネルギー消費だけではなく、特に天然資源供給のところがかなり律速してきているので、水の話はすごく大きな話で盛り上がっているというのは忘れてはいけない、日本人が忘れがちな話だと思っています。
 その上で、さらに間接的なインパクトも取りにいくと、インパクトデカップリングの話もできますということになります。そこで、これを追いかける上で、DX的なものに対する期待は高く、それはまず、この評価した結果が多分マネタイズする話につながるので、Green Washさせてはいけないという当たり前の話から、信頼できる情報の技術というのはかなり必要です。それが高まると、マネタイズして評価するだけでなく、当然資源循環の高度化にも一役買えますというところかなと思います。
 次、お願いします。ここは、今の話のリピートになるのでスキップしますが、これが実際ISOとして出てくる段階に入ってきているということであります。
 次、お願いいたします。最後に、研究・教育ニーズに無理やりつなげます。途中で申し上げたとおりで、少なくとも私の理解としては、CEに関するビジネスモデルはいっぱい出てきていると思います。それをやろうとしているけれども、それに合致している製品や材料というのが多分きちんと組み合わさってないという状況だと思っています。
 それが、そもそもシーズとしても存在しないのか、あるものが使えていないのかという辺りは、もう少ししっかりと考えないといけないところにいるのだと思っています。
 あと、CEを実践するための技術として、今申し上げた情報管理の話です。トレサビとも言いますが、もう少しフィジカルなものを合わせたデジタルツインのようなイメージをしたほうが正しいと思っていますが、それが重要というのが1つです。
 あとは、繰り返し言ってきていることですが、リサイクル、再資源化のための要素技術というのはまだ足りていない気がしています。
 もう一つは、評価のところが、多分今申し上げたビジネスモデルと、材料や製品の技術的な話をつなぐ話だとも思っていて、そこが足りていないと思います。それは研究レベルも足りないし、実務者の養成も足りていないと思っているところです。
 人を引きつけるためにという意味で、この辺りの分野は、実は仕事として魅力的だよということを、多分次世代に発信しなくてはいけないというのは、半分ぐらい自戒の念ですけれども、その辺の努力が足りてないということはあるのかなと思っていたりします。
 すみません、時間に限りがあったので粗っぽいプレゼンになってしまいましたが、一旦これでおしまいにさせていただければと思います。
 以上です。
【杉山主査】  村上先生、大変ありがとうございました。ただいまの御説明に関しまして、御質問があれば承りますが、いかがでしょうか。非常に参考になる、示唆に富んだ話だったなと感銘を受けましたが、委員の方々、いかがでしょうか。
 では、すぐに出てこないようであれば、まとめて総合討論の時間に御議論いただきたいと思いますので、村上先生にはもうしばらくお付き合いいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【村上氏(東京大学)】  ありがとうございました。
【杉山主査】  それでは、3つ目のトピックに移りたいと思います。今度は、東京大学FoundXディレクターの馬田様から、「Climate Techスタートアップの状況とアカデミアへの期待」というタイトルで御説明をお願いいたします。
【馬田氏(東京大学)】  よろしくお願いします。では、私から15分程度で話題提供させていただければと思っております。私は、今、東京大学でFoundXというプログラム兼施設を運用しています。主に卒業生向けのスタートアップ支援、起業支援です。その中で、GXの分野、スタートアップだとClimate Techと呼ばれているような分野に、昨年ぐらいからかなり注力し始めまして、幾つかのプログラムや、先生方に御協力いただきながら、イベントなどを開催していたりするという状況になっております。
 今回、Climate Techの状況とアカデミアへの期待というところで、まず、Climate Techの状況に関して少しお話をさせていただこうと思っております。まず、Climate Techですが、いろんな定義があます。ただ、一般的には気候変動や、その悪影響を理解・緩和・適応するための技術的なソリューションやそのビジネスのことであると思っております。
 GXという言葉とかなりかぶってはきますが、日本の文脈ですと、GXというと大企業系の話が多いのかなと思っていますが、Climate Techというと、どちらかというとスタートアップのような印象が強くなろうかと思います。
 主な産業としては、交通、電力、食料・水、自然環境、産業、炭素除去といったような、幾つかの大きなカテゴリーがあるという状況です。以前、Clean Techというスタートアップのブームが2010年前後にあったと思います。そのときはかなりエネルギーが主力で、今回は、Clean Tech 2.0などと言われたりもしますが、Climate Techに関しては、先ほどのリストにあるとおり、エネルギーは非常に大きな比重を占めるのですが、それ以外のところも、スコープとして入ってきているという点が大きく違います。
 それを踏まえた上で、本当に気候変動を止めていくために必要なソリューションを構築していくためには、幾つかの手法が必要だと思っておりまして、それが理解・緩和・適応だということです。
 まず、理解に関してです。こちらに関しては、カーボンアカウンティングをはじめとした、今現状どうなっているのかというところを把握すること、あるいはリスク分析をすること、あるいはメタンの排出の測定をするといったような、しっかり測定をしていきましょうというところなのかなと思っています。
 その上で、緩和の領域に関しても、多くのスタートアップが出てきています。それぞれのモビリティー、電力、食料・水みたいなところも含めて、それをどう緩和していくのかというところにおいて、さらに生産だけではなくて、それをどうデリバリーしていくのか、あるいは、モビリティーであれば、いわゆるEVのチャージャーのスタートアップのようなソリューションを促進していくような、そうしたスタートアップも出てきているという状況です。
 そして、どうしても気温上昇が起こってしまったときに、それに対するリスクに対応していく、あるいは変化に対応していくということで、適応があります。保険の提供であったり、あるいは新しい作物の品種の開発のようなところの事後的な対処というのも、スタートアップとして出てきているという状況です。
 大きく、この理解・緩和・適応という3つの分類において、いろんなスタートアップが今出てきている、経済的に、ある程度成り立とうとしているという状況で、そこに向けたビジネスが今設立してきているという状況なのかなと思います。これが非常に盛り上がっているというところが、今現状だと思っています。
 例えば、ビル・ゲイツはブレークスルー・エナジー・ベンチャーズというベンチャーアームを設立しているのですが、彼が言うには、8から10社程度のテスラ規模の会社がグリーンの領域が出てくると2020年前後に言っていましたし、ラリー・フィンク、ブラックロックのCEOなどは、次の1,000社のユニコーンがグリーンビジネスから出てくるだろうということを言っていた時期もありました。
 また、最近の話題ですと、スタンフォード大学が新しい学部、サステナビリティー学部を設立したというところがありますが、その背景にはジョン・ドーアという非常に有名なベンチャーキャピタリストが1,000億円以上を寄附して、スタンフォード大学にこのビジネス領域が非常に関わってくるような形で、学部を設立したという話がありました。
 また、IT系の起業家が今続々とClimate Techの領域に入ってきているというところもあります。例えば、Viberというメッセージングアプリ、楽天が買収したアプリケーションになりますが、そこの創業者は、その後、エグジットして、1社起業した後、H2PROと言われている水電解装置の製造販売のスタートアップの起業をイスラエルで行っていますし、マット・ロジャースという、nestというGoogleが非常に高額で買収したサーモスタットの会社に関しては、フードリサイクルのごみ箱のスタートアップを今起業したりしています。
 このように、いろんな起業家がこの領域は可能性があると判断して、入ってきているという状況なのかなと思っています。
 それに加えて、投資家側、ベンチャーキャピタル側も幾つか動きがあります。Lowercase Capitalという非常に有名な、250倍以上のリターンを出したと言われているベンチャーキャピタルが、今はLowercarbon Capitalと呼ばれている脱炭素専用のファンドを立ち上げて、2号ファンドも立ち上げているという形になっております。Y Combinatorと呼ばれているスタートアップ支援機関に関しても、非常にClimate Tech領域には期待しているという記事を出したりしています。
 実際に、投資の金額は非常に上がってきております。ただ、2022年を見てみますと、89%と急激に増加しております。実は、この2022年に投資された金額に関しては、2006年から2011年にかけてクリーンテック1.0と呼ばれているようなところで投資された金額を1年で超えたという形になっています。
 ほかにも、スタートアップ全体として、2023年は世界的に見ると非常に投資額が冷え込んだ年になりますが、その中でもClimate Techは比較的健闘しておりますし、ベンチャー投資全体の中のClimate Techの割合も上昇しているという形になっております。
 世界では、既に4,000社以上のClimate Techスタートアップがあると言われていまして、現状ですと、少しGHGの排出量とのアンバランスさが目立つところではありますが、ビジネスになるということで、Transportation mobilityとEnergy、Food and Land Useの割合が投資額を見てみると多いという形になっています。
 この背景として、スタートアップ側、あるビジネス側がなぜこんなにスタートアップをできるのかというと、当然ながら、儲かると思われているからだと思っています。もちろん、フィランソロピー的にやっていく人たちもいますが、これだけのお金が集まっているということは、儲かるという判断が行われているのかなと思っています。
 ですので、そういう環境系のビジネスとかをやっていると、意義がある社会的貢献だよねというふうに思われがちなのですが、それ以上に、今は儲かるという風潮が出てきているのかなと思っている次第です。ジョン・ケリーさん、Climate Changeの特使を辞められるという話を聞いていますけども、彼が特使の時代に、産業革命以降の史上最大の経済的変革であるということをおっしゃっています。
 炭素を基盤とした、産業革命以来の250年かけてつくられてきた様々な産業があると思いますが、それを一気に、基本的には脱炭素の方向に、30年でつくり変えるということになってきている、ここには大きな変化があると考えています。この変化に関して、どう捉えるのかというところが問題です。
 まずは、大きく電気やITのように、目に見えて効果的になる、効率的になるという変化ではなく、静かな産業革命で、あまり目立たないという特徴があります。
 ただ、一方で、裏側が非常に変わってくると思っています。変わってくるというところは、機会であり、脅威であるとも捉えられるのかなと思っています。既存産業にとっては脅威になりますが、スタートアップにとっては、それを機会として捉えて、短期間で起こり得る大きな変化を、いかに新しい事業につなげていくのかという捉え方がされ、判断がされているのかなと思っています。
 実際に、全てが全て変わるというわけではないと思いますが、これぐらいGHGを出しているところが、基本的にはネットゼロになっていくという中で、新しいビジネス、新しい事業、そして新しいつくり方というのは一体何なのだろうということを考えて、今はまさに産業政策、あるいは産業競争、ビジネスの競争として行われているのかなと思っています。
 それを市場の力を使ってうまく解決していかないと、気候変動は止められないというところもあると思うので、ここに関してスタートアップは挑み始めているという状況かなと思っています。
 これを、かつてないスピードと、かつてないスケールで行っていく。スピード・アンド・スケールと言われたりしますが、これをどう実現していくのかというときに、このスピードとスケールという観点は、もしかしたら、スタートアップが得意な領域であるかもしれないと思っています。
 実際に、このSolugenという、2016年段階ではビーカーでプロトタイプをつくっていたMITのポスドクの方々だったと思いますが、彼らがやっていた事業が、2019年には自社で化学プラントを持っています。エクイティーで資金調達をしてきて、一気にこうした形で、すごいスピードでスケールをしていくというふうなことが起こり得るということが、スタートアップの面白さであり、可能性であるのかなと思っています。
 こうした大きな変化が起こっていく中で、スタートアップが立ち上がり始めています。ただ、幾つか注意点があるかなと思っています。まず、何よりもスタートアップという言葉の裏には、ハイグロース、急成長するというところがあると思っています。少なくとも、エクイティーで資金調達する企業は、ハイグロースを求められると思っております。
 多くの場合、起業といってもスモールビジネス型、スモールビジネスという言葉がいいのか分かりませんが、着実に成長していく型のビジネスと、本当に赤字を掘ってでも、短期間で急成長していく、ハイグロース型のスタートアップ、起業があります。
 今後、Climate Techで大学発スタートアップというところが多く言われていくと思いますが、特に気をつけるべきこととしては、大学発の起業の多くは先端技術の商業化を行っていくというところが中心になっていくだろうという点です。一方、もし「大学発スタートアップ」と呼ぶのであれば、それは「スタートアップ」として急成長するかどうかというところにこだわらなければならない、という注意点ところがあると思っています。
 「大学発スタートアップ」は、大学からの起業全般のことを指すのではなく、大学発で、かつ急成長していくスタートアップであること、少なくとも急成長を志向するスタートアップでなければなりません。
 そのため、議論していく上で、「大学発Climate Techスタートアップ」と、「大学発ベンチャー」、「大学発起業」とを区別しないと、議論がぶれてしまうのかなと思っています。次の産業となるような、いわゆる大きく成長していく起業を促進したいのか、あるいは、とにかく大学からの起業を促進したいのか、こちらを区別しておかないと、議論がぶれるのは、特に大学発Climate Techに関しては気をつけておくべきことかなと思っています。
 実際に、いわゆる大学発ベンチャーと呼ばれる企業の統計を見てみますと、1億円を超える売上げを持つところはあまり多くはないという状況です。それは、ディープテックだから時間かかるという意見もあろうかと思いますが、一方で、大学発ベンチャーが15年、20年と時間をかけても、売上げ平均が1億円、2億円に留まってしまっているという状況があります。だからこそ、大学で起業を語るとき、特に起業全般ではなくスタートアップという議論をしていくときには、やはり急成長を志向していくかというところが大事になってくるかなと思います。
 なぜこんなことが起こるのかということ、私見になりますけども、やはり技術起点か、市場起点かというところが、大きく分岐点かなと思っています。多くの場合、大学発ベンチャーは技術シーズありの議論になっているます。実際に、これはこれで有効な場合もあります。例えば漸進的な改善の場合であるとか、技術起点でも機能するときもあると思います。
 なので、全部を否定するわけではありません。ただ、全く新しい技術や先端技術などの場合に関しては、その技術に合う市場を探索していく必要がある。そのとき、多くの場合、ニッチとか、極めて小さな市場というところに行き着きがちだったりする。それは、探索が悪いわけではありませんし、そうしたチャレンジは非常にいいものだとはいえ、そこばかりやっていると、なかなか大きくなる事業にはならないというところがあるかなと思っています。
 一方、Climate Techのように、市場側が急激に変わって立ち上がっているようなときには、やはり市場起点で必要な技術をいかに集めてくるのかが重要です。市場起点で、市場拡大する、普及のために必要な技術的なギャップ、スペック的なギャップは何なのかというのを考えて、そこを埋めていく。あるいは、先ほどMFTという議論がありましたが、Fをやるときに、単独の技術だけ、最先端のテクノロジーだけでFを達成できるかというと、そんなことはないので、幾つかの技術を集めてきて、市場性のあるビジネス、ソリューションとしてつくっていくという発想が必要なのかなと思っております。
 イノベーションの定義に照らし合わせて、それを経済的な価値を生み出す新しい物事のことだと考えると、経済的な価値がないと、イノベーションとは呼べません。このような市場が変わりつつあるような領域でそういうイノベーションが起こっていくときには、市場から逆算して事業を設計して、その事業に必要な技術開発をしていくという発想が必要なのかなと思っています。
 実際に、これはSPAC上場したEnergy Vaultという会社ですが、彼らがやっていることは、再エネが安い昼間にコンクリートブロックを上に上げるという位置エネルギーの蓄電をする。これは最先端技術が必要かというと、そんなことはありません。知財は出していますが、これが研究になるか、論文になるかというと、また少し違う。ただ、そこに市場があり、そこに技術が必要だから、技術開発が必要というところがあったりすると思っています。
 ですので、技術起点と市場起点のどちらで行くのかというのは領域によって違うと思うのですが、今Climate Techの領域に関しては、やはり市場が大きく変わりつつあるので、市場側から始める必要がある傾向にあるのだろうなと思います。例えばバッテリーリサイクル。ここにいらっしゃる先生方にも御協力いただくことがあるかもしれませんが、バッテリーリサイクルは、国に1つ必要な事業なので、その事業をつくるために必要な技術を集めてくる、そして、それを何とか成り立たせる。そこにはファイナンスのスキームをしっかりつけてくるといった、市場起点の考え方が必要なってくるのかなと思っています。
 そしてその中で、新しい技術の開発が必要になってくるという可能性があると思います。そこで研究の種も生まれます。何度も前提といいますか、注釈をつけるようで恐縮ですが、創薬やバイオに関しては、恐らく技術の強さが事業の強さに直結するので、技術を磨いていくという方向で、多くの場合、成功する確率が高まるのではないかなと思っています。
 一方で、市場を起点に考えるべき領域もあると思っているということです。
 あとは、10年以上、15年以上先のことを見据えているかどうかに関しても、どういう目線で技術開発を見ていくのかということが違ってくるのかなと思っています。
 また、スタートアップに関しては、やはりリスクの高いところにアプローチできるというのがいいのかなと思っていますし、そのためのビークル、仕組みだと思っています。例えば事業に関しては、技術リスクと市場リスクという、2つの軸でリスクを整理したときに、既存の多くの企業はいろんな組織上のインセンティブが働いてしまうので、どうしてもリスクを取りづらいということがあるのかなと思っています。
 そこに対して、Climate Techなどのスタートアップに関しては、基本的には高いリスクをとれるようなビークルとして設立されるので、ここに対してきちんとポートフォリオを組んで、両方の領域にきちんとやっていく、そのためのビークルを用意しておくというのが、国全体のイノベーション政策、あるいはClimate Techの技術を事業化していくという観点では大事なのかなと思っています。そこに対して研究開発もつけていくというのが大事なのかなと思います。
 最後に一、二分でアカデミアに期待することをお話しさせてください。まず、やはりアカデミアへの期待というのは、人材交流、人材輩出だというふうに思っています。研究成果以上に、研究を通した人材育成というのが大事かなと思っていますし、リカレント教育の波などもうまく使うことによって、やはりそこで人が交わって、そこから起業していくというパターンが多いのかなと思っています。
 特に海外のスタートアップの設立のファウンダー、起業家の皆さんのプロフィールを見ていると、やはり大学に戻って、例えばMBAで1回戻って、そこで出会った人と一緒に起業する、出会った先生と一緒に起業するという流れが結構あるのかなと思っております。やはり、そうした人材輩出、人材交流の場として、アカデミアというものが機能し得ますし、他の機関にはない唯一の機関だと、唯一というか、ほぼ、ほかのところにはなかなかないような必要な機能だと思っているので、ここに関して非常に期待しているというところです。
 あとは、先ほど申し上げた市場起点での研究開発の一部実施というところが大事かなと思っています。こうした事業をつくるために、新しい研究開発を一緒にさせていただけませんかというところが、一部そうした研究開発もあるといいのかなと思っています。もちろん、すべてがそうである必要はないと思いますが。あと、ハイリスク・ハイリターン型の研究開発も、一方でシーズからの探索型もやっていく必要があるというところがあるのかなと思っています。
 特に、何をつくればイノベーションなのかということをあらかじめ明確にして、研究開発するというところは、先ほどのイノベーションの定義にもあるとおり、大事なのかなと思っています。DARPAでよく行われる質問においても、ハイリスク・ハイリターン型のところにせよ、何をもって成功とみなすのか、それをいつまでにやるのかといったところがあります。ここを考えながら、例えばビジネスの場合に関しては、製品に必要なスペックを決めてから、それをつくり始める、ある意味、つくってから売るのではなく、売ってからつくる、に近いようなグラデーションの中で、売ってからつくるに近いスペックをつくるというところを、やっていくことが必要かなと思っています。
 こちらは飛ばさせていただきますが、例えば超音速ジェット機を造っているところは、造る前に要はLOI:Letter of Intentを結んで、スペックを決めて、それから造り始めるということがありました。買ってくれるという約束があれば、そのスペックを満たす製品を造ればいいので、造れば売れるという関係にできますので、そうしたスペックシートをつくっていくというプラクティスもあります。
 このような仕組みをうまく活用していくと、どういうものをつくれば売れるのかということが分かりやすくなるのかなと思っているというところです。売れるようにしてから造る型の研究開発が、Climate Tech領域にはあるのかなと思っているところです。
 最後に、産業を支えるから、産業つくり、雇用をつくるというところのアカデミアに対する期待も、個人的にあります。すでにある地場産業への貢献というものが、これまで多かったと思いますが、これからはそれ以上に、大学が自ら地場産業をつくっていく、地域に応じてカンパニークリエーションのような機能を持ち、アカデミアが産業と雇用を牽引していくというのは、今アカデミアができる貢献なのかなと思っています。
 実際に、カンパニークリエーションがこのClimate Techの領域だと、特にEU圏では非常に注目されているのかなと思っております。こうした中で、あえて必要な事業をつくりにいくというところ、そのつくっていく中で、このVargasというところに関しては、やはり小さな数万人規模の町に、かなり大きな工場を設立してやっています。再エネが安いからというところでやっているので、こういうところを大学がある意味やっていくというのも、1つの役目といいますか、期待なのかなと思っているところです。
 すみません、駆け足になってしまいましたが、Climate Techの潮流と気をつけるべき点、そして期待に関して、お話しさせていただきました。
 以上で終わります。
【杉山主査】  馬田様、大変ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明に関しまして、御質問がありましたら承りますが、いかがでしょうか。
 森先生、お願いします。
【森主査代理】  とても興味深いお話をどうもありがとうございました。やはり、創薬などは技術を磨きながらも市場をつくっていくという中で、このClimate Techは、市場を起点としながら進んでいくのが良いというのは、非常に興味深いお話でした。アカデミア側が基礎研究、基礎技術で尖ったものをつくっていく中で、次に市場を見ながらイノベーションにつなげていくというステップがあり、双方ギャップがあるとは思いますが、その中で起業するには、どのようなシステムや体制を構築するのが一番理想的かというところで、御意見があれば、よろしくお願いいたします。
【馬田氏(東京大学)】  そうですね、そこに関して私もすごく悩んでいるところです。先ほどのドキュメントの中でも、少しだけ論文の一部を引用しながらお話をさせていただきましたが、このArora2023と書いている、最近、米国の経済研究所から出た論文だと、やはり大学の研究がすぐに生産性に貢献できるかというと、結構悩ましいというか、そこまで貢献できていないのではないかといった論の論文で、「エコノミスト」などにも掲載されています。
 やはり、そこの間をつなぐ必要がある。創薬などの場合だとトランスレーショナル・リサーチなどがありますが、今回、Climate Techの領域だと、どうすればいいのかというのは、正直まだ分からない、模索中だというところが私の認識です。
 その中で、どうやっていけばいいのかというところですが、市場からのこういう事業を一緒にやりませんか、そのために技術開発をやりませんか、ということを受け取っていただいて、そこから副次的に生まれる新しい研究をネタにしていただくというところに対して、予算がつく仕組みというのがあると、研究者の皆さんにとっても新しい研究になるかもしれない、予算もつくかもしれないというインセンティブも生まれるのかなと、個人的には思っているところです。
【森主査代理】  ありがとうございます。やっぱり、そこのコネクトが大事ですよね。どうもありがとうございました。
【杉山主査】  ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、またこの後の総合討論で、引き続き御意見もいただけるかと思いますので、まず先に進ませていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
 それでは、議題4は、総合討議となっております。これまでGXの実現に向けてアカデミアにおいて、今後取り組むべき研究開発の方向性等についての議論を重ねてまいりました。大きな方向性や論点はある程度出そろってきたのかなと思っております。ということで、これまでの議論を一度事務局において中間的に取りまとめていただいておりますので、まずそれを資料に沿って御説明いただいた上で、本日、さらに議論を深めていただければと思います。
 ということで、事務局から御説明をよろしくお願いします。
【後藤(事務局)】  ありがとうございます。それでは、御説明をさせていただきます。ただいま主査から御紹介いただきましたとおり、これまでの議論を1度、中間的に素案としてまとめさせていただきました。大きく3つの構成になっておりまして、現状認識・目的と、これまでの御議論を踏まえた大きな方向性、そして、具体的な論点として、これまでいただいた御意見を方向性に沿って整理をしているというところでございます。
 順番に、簡単に御説明させていただきます。まず、現状認識・目的のところでございます。ここは、第1回で文部科学省から少し説明をしたような、周辺状況をもう一度しっかりまとめています。近年、期限付カーボンニュートラル目標を表明する国・地域が増加しておりまして、世界全体、GDPベースでは90%を占めるぐらいに、世界各国でこの取組が進んでございまして、温室効果ガス排出削減と経済成長、これを共に実現するようなグリーントランスフォーメーション、これに向けた非常に長期的、かつ大規模な競争が世界中で進んでいます。
 このGXに向けた取組の正否というのが、企業・国家の競争力に直結する時代に突入していると認識しています。そうした中で、文部科学省、アカデミアとしての視点で考えますと、IEAの分析などを見ると、2050年カーボンニュートラルの達成に向けては、既存技術の展開・普及、もちろんこれは重要なわけでございますけれども、それと同時に、新規技術、今はない技術の実現・普及というのが不可欠とも言われております。
 そうした中で、諸外国においても、企業の実証研究のみならず、基礎・基盤的な研究開発への投資も加速しているという認識です。
 また、これまでもよく御議論がございましたが、循環型経済、あるいは持続可能性への関心の高まりも受けまして、欧州のバッテリー規制ですとか、カーボンプライシング、そうした規制・制度の導入・検討がまさしく世界各国で進んでおります。また、毒性や可燃性、環境影響などの有害性を持つ材料、そうしたものについての問題意識というのも非常に高まっています。
 こうした社会・経済制度が非常に迅速に動いていく中で、その動向にいち早く対応していく、そうしたことを求められていると考えています。
 カーボンニュートラル実現に向けては、産業界における技術開発や実証と並行いたしまして、アカデミアにおける研究開発と人材育成の支援、そして企業とアカデミアの連携による社会実装が求められているという認識です。
 これを踏まえまして、文部科学省でも、令和5年度からGteX、そしてALCA-Nextなどを開始いたしまして、GteXの開始に当たっては本委員会で議論・審議を行っていただいてございます。
 他方で、GX実現に向けた研究領域というのは、本日もいろいろ御議論ございましたが、非常に多岐にわたります。そうした中で、いろいろな施策を組み合わせて推進していくことが必要であると認識しています。そのため、本委員会におきましても、GX実現に向けて、アカデミアが取り組むべき課題・役割や様々な関連領域や政策の方向性などについて検討を進めてきたということで、1枚目の導入としてございます。
 ページをめくっていただきまして、2枚目です。これまで出た御議論につきまして、GX実現に向けてアカデミアが取り組むべき研究の方向性として、大きく3つにまとめてございます。まず1つ目は、やはり社会ミッションからのバックキャストというのが、この領域では非常に重要だと考えております。それは、社会経済システムの変革を伴うということもございますし、また、実現に向けては、様々な技術や選択肢を組み合わせて、全地球規模で俯瞰的に考える必要がございます。
 規制や、国際標準化なども見据えまして、社会的ミッションからバックキャストするという視点が常に必要です。それらを実現するためには、様々な観点での最適化ですとか、人社系などを含めた様々な分野の融合の中で、研究領域をまたいだ議論というのが不可欠です。その際に、アカデミアや企業の若手研究者が密に交流をして、テーマを検討することも重要です。
 そしてまた、バックキャストをしていくに当たって、技術が持つ社会的な価値の評価やシナリオ形成といったソフトな研究開発や、そうしたことをできる人材の育成、あるいは横断的な新規技術の応用先を考えるような人材の育成が重要であるという認識です。
 2つ目といたしまして、そうした中で文部科学省、あるいはアカデミアの部分で貢献できる部分は何かというところで、やはり革新的な技術の創出というのがあるという認識でございます。様々な技術シーズにつながるサイエンスの芽を生み出すということ、そして、それらを企業がコミットや経営判断ができるところまで育てること、ここがまさに貢献できる部分ということで、基盤となるような従来からの学問体系の発展ですとか、人材育成を置き去りにせずに、しかし、同時に新たなプレーヤーを積極的に発掘、異分野の多様な研究者をこの領域に巻き込んでいく、そうしたような仕組みが求められていると認識しています。
 他方で、こうした研究開発、革新的な技術をしっかり社会課題の解決につなげるという観点では、この領域は特にやはりボトルネック課題といった需要側のアプローチによって、社会が求めるサービスというのを意識した研究が常に求められると考えておりまして、ニーズ側とシーズ側、その密な連携・交流の仕組みが重要だということです。
 また、同時に、サイエンティフィックな部分でも、境界領域や、思いもしないような組合せによるイノベーションを生み出すことも重要であるという認識です。
 そして3つ目といたしまして、これらを実現するためのマネジメントにも非常に戦略的な工夫が必要だということです。社会実装を念頭に置いた上で、代替技術や競合技術等の動向を常に注視をいたしまして、研究開発開始後も軌道修正を図れるような仕組みですとか、あるいは、先の展開が非常に読みにくいような冒険的な提案をいかに企業につないでいくかという仕掛けを検討する中で、シナリオの策定段階でアカデミアと企業が協働したりですとか、社会が求めるサービスを、要素技術研究の段階から意識をするというようなことが重要だということです。
 2つ目のポツですけれども、こうした社会実装においては、オープン・クローズ戦略や知財、国際標準化、国際連携なども意識をしながら研究開発を進めていくことが重要です。また、社会実装の観点ですと、コスト削減や、製造技術、そうした産業側の課題となるような部分についても、アカデミアにおいて貢献がどのような部分でできるかといったことを探索していくことも重要だということです。
 最後の部分につきましては、こうした戦略的なマネジメント、それ自体が非常に様々な論点ですとか、ユースケース、事例もあるという中で、マネジメント自体の研究というのも重要ではないかというような御意見もございましたので、ここに記させていただきました。
 3ポツの部分は、今御説明をしました3つの方向性に即しまして、これまでの御議論を載せているものでございます。より具体的な例などが、この部分で補足されていると考えてございます。
 御説明は省略させていただきますが、5ページのところには、4つ目に個別領域として、事前に実施させていただいたアンケートなどで重要領域の例ということでいただいているものについても、載せさせていただきました。
 次のページは、これまでの審議状況をまとめたものでございます。その次のページですが、本日、この後、総合討議をいただく中で御議論いただきたい観点として、大きく3つあると考えております。
 1つ目は、このように3つの章立てで、これまでの御議論をまとめさせていただきました。このまとめにつきまして、欠けている観点ですとか、あるいは、もっとこういうふうな表現、こういうような打ち出しをしたほうがよいといった点について御議論いただきたいというのが1点です。
 2つ目は、本日も情報提供、いろいろいただきました。これまでの議論の内容、方向性にも即した御発表をいただいたと思っておりますが、こうした話題提供を踏まえまして、委員会のまとめにどのように反映すべきかというような御議論もいただければと思います。
 そして、最後の部分ですが、ここまでは研究開発の方向性について御議論いただいたと思っております。その上で、次の部分として、具体のアクションといたしまして、どういった施策にこうした方向性を落とし込んでいくか、そうした部分について御議論いただけますと、大変ありがたく思っております。
 事務局から、以上でございます。
【杉山主査】  ありがとうございました。あと30分少しありますので、総合討論を進めていきたいと思います。先ほど既に論点を御提示いただきましたので、順不同で結構ですので、各委員から、ぜひ御意見をいただければと思っております。
 本郷先生が間もなく御退出されると聞いておりますが、もし本郷先生、御意見がございましたら先に伺いますが、何かございますか。
【本郷委員】  ありがとうございます。調整しまして、あと20分ぐらいは大丈夫なのですが、せっかくですのでコメントさせていただければと思います。
 事務局にまとめていただいた内容、これまでの議論を踏まえたもので、非常に包括的によくまとまっているなと、改めて勉強になったというところでございます。
 そうした中で幾つかコメントさせていただきますと、最初の現状認識についてです。非常に力の籠もった文章ですが、例えば大規模な投資競争が激化しておりとか、この辺り、非常に力が入っています。ただ、実際の現場の感覚でいいますと、実はこれはこれで問題に直面しておりまして、一番大きなポイントは、技術の供給側と需要側の間のギャップが大きいということです。
 具体的に言うと、価格なんです。価格差が非常に大きくて、需要側が動けない。だから、投資も動かないということです。ここは非常に大きなポイントになっております。このスライドの2ポツのところで、新規技術の必要性というところ、ここにつながるものとしては、やはり価格を下げていく、コストを下げていくというニーズが明確にあるというところ、ここを書かれてはどうかなという気がいたします。
 それから、2つ目、今後の方向性のところで、バックキャストの話というのが出てきております。これ、非常に重要だと思いますが、前回か、前々回か、議論としてあったと思いますが、両方が必要ではないかなと思います。産業側からの話と、産業側が持っているニーズと、それから、アカデミアが持っているシーズの両方が大事だと思います。
 だから、この全体トーンの中では、コミュニケーションとか対話というようなことが重視されているように思いますので、言葉尻でありますが、最初のポツ、社会的ミッションからバックキャストをする視点が常に必要と、この辺り、バランスというようなニュアンスをちょっと含めたような書き方をしたほうが、全体の思想にフィットするのかなと思いました。
 それから、具体的な論点でございます。ここがまさに、3ポツの具体的な論点が一番重要だと思いますが、少し気になったというか、もう少し強調してもいいのかなと思ったのが、循環経済、自然資本というのがあって、また、資源のエネルギーの安全保障、経済安全保障という話もあります。こういった問題は、決して新しい問題ではなくて、常にあった問題ですが、今まで割に重視されていなかったという問題ではないかなと思います。
 つまり、外部環境の変化があったことで、改めて重要性が認識されて、今、我々が取り組まなければいけない課題だということではないのかなという気がします。ですので、外部環境変化というような形で、どういうニーズが生まれてきているのか、今までの社会、経済とはちょっと違ったニーズが出てきているという、そういうつながりが出てくるのかなという気がいたしました。
 見落とされていたというか、例えば安全保障でいうと、冗長性というものをあまり考える必要のない世界にいたわけですけど、今、冗長性も必要になってきているというような外部環境変化かなと思います。
 それから、もう一つは、国際協力、海外との協力で、日本の競争力が弱い分野ということを限定しているように見えますけど、あまり限定する必要はないのではないかなと思います。やはり、大きな市場があったほうが技術開発も進みますし、それから、普及のときは当然必要になってきますので、あまり弱いということを考えるよりは、実際の普及段階を想定するというような形で、もう少しフレキシブルに国際連携を進めていくというのがいいのかなと思います。
 個別領域のところで、前回出たデジタルのところ、デジタルとして独立するものではなく、どこにでも共通に利用されるものかなと思いますけれども、デジタルについても、これと一緒に並べるような性格ではないと思いますが、どこかで触れられたほうがいいのかなと思いました。
 すみません、少し長くなりましたけど、私のコメントは以上です。
 ありがとうございました。
【杉山主査】  事務局のほうからお願いします。
【後藤(事務局)】  本郷先生、コメントをありがとうございます。いずれも非常にクリアな御指摘で、文章のほうにも反映させていただきます。
 1点だけ、最初にいただいた御指摘で、コストの面ですが、この部分はおっしゃるとおりで、以前、文部科学省からプレゼンした資料の中にも、政策投資銀行のデータの中で、日本企業は技術導入の課題として、やはりコストの部分が非常に大きいという資料、データなどもございますので、その辺りなども入れさせていただきたいと思います。
 ほかのことにつきましても、ありがとうございます。検討させていただきます。
【杉山主査】  ありがとうございます。大変包括的で、重要なポイントをいただいたかと思います。
 それでは、ここからは順不同で、ぜひ委員の方々から御意見をいただければと思います。こちらの中間まとめはもちろん非常に重要で、そちらに関する意見もいただきたいですが、先ほどいただいた話題提供に関しての御質問も承りますので、ぜひアドホックにお願いします。
 それでは、田中先生お願いします。
【田中委員】  ありがとうございます。御説明ありがとうございました。まず、最初に、総合討論についてお話しさせていただき、馬田先生と村上先生に質問があるので、質問させていただきたいと思います。
 本郷委員の御指摘にも触発されて、になりますけれども、幾つかコメントさせてもらえればと思います。まず、3ページですが、経済性と価格のところ、本郷委員、指摘がありましたが、日本はいろんな技術を隈なく、満遍なく持っているというすばらしいところがあるのですが、経済需要性のある形で出すというところが、研究としても必要な部分もあると思うので、そこの部分を確かに書いていただけるといいかなと思いました。
 そのような点で、下から5つ目の人材のところで、例えば電池でオールジャパンで人材育成するというのは非常にすばらしいと思いますし、そのとおりだと思いますが、ここに書いてあるような、俯瞰できるという意味において、経済性や、社会課題のようなところと連携するような連関的な人材という字句も、ここに書いてあると思いますが、それも期待していますということを、あえて言わせてもらおうと思います。
 本郷委員と同じことになりますが、5ページ目のイニシアチブのところです。同じ観点で、技術の裾野や、要素技術の深さのようなところは日本はすばらしいと思いますが、イニシアチブというと、例えば安くつくる生産技術の開発、事業化のところ、また大きな市場を持っているなどといったところは、日本が強い分野であっても、産業化する上においては、海外と連携する部分が出てくると思うので、弱い技術だけというよりは、強い技術も、場合によっては海外と組みながら、プレミアリーグというか、強い人同士で集まった形でジャパンというものができるといいかなと思っております。本郷委員の指摘とほぼ同じになります。そこが私の指摘でございました。
 馬田先生と村上先生に御質問です。特に馬田先生には、Climate Techは、市場が見えてない部分もあるかなと思いますが、制度と市場がまだ確定していない中で、音速ジェット機の話はすごくいい例だなと思いました。こういうものが出たら買いますかというものを、不確実な中でも、探索しながらそこに投資をしていくという形になるかなと思います。
 その辺りのところ、政府の制度が決まってからやったほうがいいのか、それとも、そこも探索しながら、こういった形のものを出せばいいのか、御知見があれば、ぜひ教えてもらいたいなと思いました。
 東大で、私も教育をやっていて、こういったスタートアップの話をやっていただくと、今までなかなか横連携がとれなかったものが、学生が主体になって、工学部のいろんなところに分野を超えて聞きに行ったりして、自動的に横断型になっているので、非常にありがたいなと思っています。その中で、馬田先生の話もよくお聞きするので、ぜひ御意見をいただければと思います。
 また、村上先生のご発表なのですが、カーボンニュートラルについて定量化がうまくできるような仕組みを何とかつくったので、サーキュラーエコノミー、さらに難易度が高いかもしれませんが、これがもう動き始めているということかなと思います。ここで、経済性の観点から、やれるポイントと、もう少し支援をすることによって、一気に進める部分みたいなところが知りたかったかなと思います。
 今回、文部科学省さんのこういった研究開発において、どんなサポートがあるといいのかといったところが、漠とした御質問ですけども、もう既に大分書いてあるかなと思いますけども、もう少し御意見を伺えたらいいかなと思いました。
 すみません、ちょっと長くなりました。
【杉山主査】  ありがとうございます。では、最初の質問の馬田さんのほうからお願いできますか。
【馬田氏(東京大学)】  では、私から回答させていただきます。このClimate Tech、まだ制度が決まっていなくて、市場がやや柔かい段階で、果たして事業をつくりにいくのか、参入するべきなのか、それとも、もう少し探索していくべきなのかというふうなところだとは思います。だからこそ、個人的には、その制度が決まっていないようなリスクをとれるスタートアップを事業化に活用できるのではないかと思います。
 そうしたリスクの高さを、ある程度許容した起業家が起業をし、投資家が投資してくれるのがスタートアップだと思うので、スタートアップという観点だと、制度が決まる前に事業をつくりに行くというやり方はあるのかなというふうに思っています。
 かつ、やはり海外の事例なども見ていても、制度を一緒につくりにいくという動きをしているところもあります。ベンチャーキャピタルでも、パブリックアフェアーズ部隊を持っているベンチャーキャピタルもあったりします。例えばビル・ゲイツが創設したブレークスルーエナジーは、20人ぐらいパブリックアフェアーズの部隊がいて、本当にカーボンニュートラルにやっていくためにはこういう制度が必要ですというのを、スタートアップとかベンチャーキャピタル側から提案していっているようです。
 それは利益誘導ではなくて、公益に資する形で制度設計を一緒にやっていくというところができ得るのかなと思っています。もちろん、そのときに結構アカデミアの知見が必要になってくると思っていまして、やはりその制度に対して公益性、中立性、あるいは、しっかりした評価を行った上で、こういう制度をつくりましょうということが必要になってきます。
 ですので、そこに対してアカデミアで培った知見、あるいは新しく研究した知見を使って、この制度が正しいんですということを提案しに行く、あるいは国際標準としてつくりに行くという動きを、スタートアップ側、あるいはベンチャーキャピタル側がやっていくべきなのかなと、個人的には思っています。
【杉山主査】  ありがとうございます。続きまして、村上先生、よろしければコメントをいただければと思います。
【村上氏(東京大学)】  どうもありがとうございます。おっしゃっていただいているとおりなんだろうと思っていています。経済性でやれるところがあるかどうかというところですけれども、今のところ、利幅が少ないというか、あまりマネタイズし切っていないところがあって、やっぱり何がしかの後押しが必要だろうと思います。
 カーボンを見ているところもありますが、カーボン以外のところで、何かのお金にするロジックというのは、誰の仕事か分かりませんが、多分必要なんだと思っていて、それが評価の話とつながっているんだと思います。
 特に、文部科学省的なところで、何かしていただけるといいかなというところは、すごく難しい質問だと思ってはいます。ただ、技術開発を見ておられたり、シーズレベルの基礎研究の話をよく見て俯瞰している人というのが、多分足りていないと思っています。ある種、そこにファンドを出しておられる皆さんは、我々より広く知っていらっしゃるのではないかと思っています。
 その辺の方の御知見と、ビジネス側でビジネスモデルを用意している人の間のお見合いなどが、まだ足りていないのだと思います。先ほど学生が動いてくれるといった話をおっしゃっていましたし、私の周りでも、そのような話は最近増えていますが、学生さんにお願いする部分はありつつも、俯瞰的に見えているところの人がそのような動きをするというのもあってもいいかなと思っています。
 直接的なお答えになり切っていませんけど、そのような御知見をもう少し違う形で使っていただくという手が、実はあるんじゃないかなという気がしています。
 以上です。
【田中委員】  ありがとうございました。
【杉山主査】  どうもありがとうございました。有益な議論だったと思います。
 続きまして、御質問、承ります。水無さん、お願いします。
【水無委員】  NEDOの水無です。ありがとうございます。まず、中間取りまとめについてですけれども、今までの議論を非常によくまとめていただいていると思います。1点、多分御苦労されたのかなとは思いますが、個別領域のところで、特にバイオの視点、あるいはサーキュラーエコノミーの視点を、ぜひ入れていただけないかなと思っています。
 入れるとしたら、化学・素材技術のところかなと思いますが、今日の議論でもサーキュラーエコノミーについても非常に重要性を議論されたと思いますので、少しその辺を検討いただけないかなというのが、まずは中間取りまとめについてのコメントです。
 それから、論点の2番目について、今日の情報提携も含めて、少しコメントさせていただきたいなと思います。まず、今日の3点の情報提供は非常に中身の濃いもので、非常に参考になりました。
 それを踏まえて、今までの議論に加えることがあるとは必ずしも思ってはいないですが、より強調していくべきところとして、やはりコミュニケーションは非常に重要かと再認識しています。これまでも、企業や産業のニーズを把握するようなコミュニケーションということが議論されてきておりますが、それに加えて、三次産業、商社さんであるとか、あるいは金融の方々の御意見も入れられるようなコミュニケーションというか、そういう全体のネットワークをつくっていく、コミュニケーションのハブをつくっていくということも重要かなと、再認識いたしました。
 また、村上先生のお話を聞いて非常に感銘を受けたのですが、LCAも含めて評価というのは非常に重要ということを認識しております。東大の未来ビジョン研究センター等でもいろいろ取り組まれていると聞いておりますが、例えばそこの学生さんは、留学生の方も多いということで、技術がどんどん流出してしまう可能性もあるやに聞いています。ぜひ、この辺りを施策的に手当てしていただいて、興味を持った学生さんがより集まるような仕組みづくりも、今回の取りまとめとは外の話になるかもしれませんけれども、非常に重要なのかなと感じました。
 また、馬田先生の最後のほうで、創薬・バイオは別とおっしゃいましたが、やはりここで議論されているものづくりに関しては、やはりバイオ×エンジニアリングや、バイオ×化学、あるいはDXなどが非常に重要だと思いますので、同じような観点で取組を進める必要があるかなと思います。
 これは、先ほどのコミュニケーションということも加わってきますが、プロトタイピングや、POCの早期化を通じながら、やはり経済産業省、NEDOと、文部科学省、JSTの連携をさらに強化していくということが非常に重要ではないのかなと感じました。
 以上です。すみません、長くなりました。
【杉山主査】  いずれも、非常に重要なコメントをいただきました。ありがとうございます。
 まず、バイオ、あるいはサーキュラーについて、事務局からコメントをいただければと思います。
【後藤(事務局)】  いずれもコメントをありがとうございます。また、最初にいただいた個別領域のところは、全く御指摘のとおりでして、資源循環は前のほうに書いてあったので、入れるのを忘れました。失礼しました。
 しっかり重要領域として書かせていただきますというのと、バイオもおっしゃるとおりですので、書かせていただきます。また、今日、スタートアップの観点についても、バイオ領域特有の事情なども御説明いただいたので、そういったことも含めて少し記載を考えたいと思います。ありがとうございます。
【杉山主査】  ありがとうございます。先ほど、御発表いただいた話題提供の方々から、水無さんの御質問に関して何かございますか。
 村上先生、どうぞ。
【村上氏(東京大学)】  ありがとうございます。人の話のところについて、学生の話のようなところで、我々動いているというのをおっしゃっていただいていて、非常にありがたいところではありますが、ただ、評価に限って話をさせていただくと、学生の段階で学ばせてしまうと、今のところ、出口が足りてないというのはかなり致命的です。
 その辺の仕事をつくってあげるという作業も重要かなと思っていまして、そこは少し考えなければいけないかなとは思っているところです。
【水無委員】  ありがとうございます。必ずしも学生さんだけではなくて、例えば企業からの国内留学であるとか、そういう門戸を開くということも非常に重要ではないのかなと思っています。ありがとうございます。
【杉山主査】  いずれも重要ですね。学生さんの行き先をより創出していくということと、リカレントも含めて、今既に社会で活躍されている方に、こうした分野にまた来ていただくというのも大事かと思いました。
 ありがとうございます。では、菅野先生、よろしくお願いいたします。
【菅野委員】  菅野です。2点、御質問というか、コメントというか、述べさせていただきたいと思います。
 まず、馬田先生の講演のところで、10年以上については、別の粗筋ということがありましたけれども、それについて少しお伺いしたいのが、1点目です。例えばGXのプログラム、今走っているプログラムは、大抵が非常に長期のスパンにわたる研究開発を目的としているので、短期にすぐに利益が出るようなスタートアップにつながる開発をという要求に対して、少し違う論理構成をしないといけないのかなと思いました。要するに、現在のプロジェクトの成果が製品になって、それがさらに自動車なら自動車へ搭載されるというように、ワンステップ、ツーステップ経て、カーボンニュートラルに貢献するということです。そのスパンが非常に長いところをどのように考えるかというのを、理論武装する必要があるというのが第1点です。
 2点目は、日本が弱い技術に関しては、こうしないといけないという粗筋は比較的書きやすいのですが、強い技術をさらに強くするということに関して、先ほど御指摘がありましたけれども、どのように対応していくのかというのが、少し明らかでないように感じます。
 というのは、海外のコンペティターとどう付き合うか、大変悩ましい問題があると思います。産業側から、海外とのコンペティターはシャットアウトすればいいという要求がありますけれども、産業は産業で、基盤のところは、材料などに関しては付き合っているわけです。サイエンスに関しては、共通基盤ということもあって、そこの付き合い方が、少し腰が定まってないという印象を持っているので、その辺りの議論がどこかであれば、ありがたいと思います。
【杉山主査】  菅野先生、大変ありがとうございます。まず、馬田さんから、10年問題について、何かコメントがありましたら、お願いします。
【馬田氏(東京大学)】  ロングスパンのものに関しては、少し評価方法を変えなくてはいけないかなと思っているので、さっきの別というふうに書いたところです。例えば、ハーバーボッシュ法に代わるアンモニア合成の手法や開発は、それができたら、すごいハイリターンがあるので、それはそれで探索的にやってもいいと思っています。
 直近で市場性が見えない、10年以上にハイリターンが出てくる型のものに関しては、それは市場の起点で考え過ぎると、全く評価されないので、そこに関する評価軸は変えたほうがいいのかなと思って、あそこに関してはそういう注釈をつけたというところです。
 ただ、逆に、スタートアップの観点からいくと、スタートアップは急成長して、上場するまでに大体10年とか、7年、8年スパンで考えるということを考えると、2050年、カーボンニュートラルに貢献するためには、2045年ぐらいには上場というか、ある程度の形になっておかなければいけない、ということは、10年前の2035年には、起業しておかなければいけない、スタートアップを始めておかなければいけないということになります。
 2035年に、ある程度アベイラブルになっている技術をつくらなくてはいけないから、そのためにどうやっていくのかという逆算は、ある程度はカーボンニュートラルの領域においてはできるのかなと思っています。だから、その辺を意識しながら、10年以上かかるような研究は、10年かけてもいいのかどうかを含めて評価していく、別の評価軸が必要かなと思っているところです。
 お答えなっているか分かりませんが、以上になります。
【杉山主査】  よろしいですか。さっき、コミュニケーションという話が出ましたけど、今の話に関しては、市場に対して、2050年以降を見据えたときに、この技術は足が長いですが、非常にインパクトが大きいです、といったことは、むしろ、研究者側、技術開発している側からも積極的にアピールしていって、評価してもらえるような意識醸成をすることも大事かなと、個人的には思いました。
 では、続きまして、先ほどの強いところをいかにして強くしていくかの打ち手や、海外のコンペティターとどう付き合うかというお話もあったと思います。
 こちら、事務局から少し見解をいただけますか。
【後藤(事務局)】  ありがとうございます。その点については、まさに問題意識は持っておりまして、今先生に言われて、まさにそうだなと思いました。その意味では、今この瞬間に解がないところではございますので、今日、どこまでお時間があるかということもありますが、ぜひ強い分野をどう伸ばしていくかというところについても、これまでの議論もさらいながら、また考えてみたいと思います。
 本日、できましたら、可能な範囲でその部分についても御意見をいただけると、ありがたいと思います。
【杉山主査】  重要な策ですけれども、菅野先生を含めまして、委員の皆様方から、打ち手についての御示唆があれば、ぜひいただければと思いますが、何かございますでしょうか。
 では、石内先生、お願いします。
【石内委員】  石内でございます。本日の話は非常に興味深く聞きました。実際にプロジェクトを進める研究者が、なかなかこのようなお話を聞く機会が実は少ないのではないかと痛感している次第でございます。
 それで、今出ているページの出口を見据えた戦略的マネジメントに関わるところですが、実際に研究開発を行っている研究者の方々が、その研究を進めていくに当たって、今日プレゼンされたような社会との関係やMFTの分析を自分の領域でやってみるとか、結果的に、それに係る研究コストとエネルギー削減へのインパクトやサーキュラーエコノミーに対するインパクトと、そういうのを継続的に評価していく、考えていくという体制が非常に大事なのではないかと感じた次第でございます。
 最後に、いろんなプロジェクトを伴走させるというケースもあるというところは、示唆に富んでいると思います。特に、実際にプロジェクトを進行している中に、今日でありましたような社会科学的な、または経済的な観点、経営的な観点で、一緒にアドバイスをしたり、議論をしたりするという仕組みをプロジェクトの中にビルトインするというのは非常にいいことではないかと思いまして、このような観点を、出口を見据えた戦略的マネジメントに付け加えていただければよいのではないかと思った次第でございます。
 技術者がいろんなことをやるというのは、スーパー技術者がそう簡単にすぐ現れるわけではないので、先ほどのコミュニケーションのところと関係しますけれども、その技術者、開発チームの中に社会的インパクトを一緒に考えていただけるメンバーが入っていると、競争力の点でもよいのではないかと思います。
 私からのコメントは以上でございます。
【杉山主査】  貴重な御意見ありがとうございます。
 では、事務局のほうからもコメントをいただきたいと思います。
【後藤(事務局)】  石内先生、ありがとうございます。まさにおっしゃる点は、どうやってここでいただいた御議論を実際に反映していくかという点、ここをまさに御議論いただきたいと思っていますけれども、そうした点で非常に重要だなと思っています。
 まさに交流の場や、また、社会にバックキャスト、研究の価値をしっかりやるということで、シナリオ研究、技術分析、それ自体も非常に重要だと思いますが、それはやっぱり実際の研究プロジェクトや研究者とどういうふうに一緒に取り組まれていくか、そういった仕組みを、例えばプロジェクトにビルトインするですとか、そういった形で考えていくということが重要かなという示唆と受け止めました。ありがとうございます。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 では、続きまして、佐藤委員からお願いします。
【佐藤委員】  佐藤でございます。今日は、3人の先生方のお話、ありがとうございました。どの先生方も、非常に心揺さぶられるというか、重要なことが分かってまいりました。ありがとうございます。
 特に最後の馬田先生のコメントは、前半、すごく力強く柔軟に対応していかなくてはいけないという、世界的な状況もあったのですが、アカデミアに期待するところ、多分お時間がなかったということもあって、1番の人材輩出と交流、2番の市場起点の研究開発の一部実施というところ、もう少し詳しく聞きたかったというところがございます。
 一方、私が感じたのは3点ございます。コミュニケーションの重要性と、それに追随していく人材育成や研究分野のスピード感を持った推進を、どこかに入れ込みたいと非常に感じました。
 そして最後、3つ目は、そのようなことを含めて、常に組織レベル、あるいは個人レベルで、考え方のアップデートというのが常に必要だなと感じました。
 また、今申し上げたこの3点は、実は今御説明された素案の中にもしっかり盛り込まれてはいるので、どのようにして目立たせていくかなということがあります。例えば、素案の中、2ページ目、①社会ミッションからのバックキャストのところの2ポツ目にも、経済的、社会的ということで、若手研究者が密に交流するということや、③出口の1ポツにも、研究開発後も軌道修正しながらということや、3ポツにも、研究マネジメント自体の研究も必要とあります。
 そして、後ろの3ページ目の下から5ポツ目、人材育成をどうするかということもよく盛り込まれているので、これにもう少し文言を練っていただくと、いい素案から中間まとめになるのではないかなと感じました。
 コメント、以上でございます。
【杉山主査】  大変ありがとうございます。馬田さんから、何かコメントありますか。
【馬田氏(東京大学)】  時間が足りなくて申し訳ありませんでした。1、2、3と、最後の提言のところに関しては、もう少し付け加えておきたいので、ブログなどで補足させていただければと思っております。
 また、2点目、市場起点というところと、バックキャストというところに少し加えてコメントしておきます。バックキャスティングは非常に有効ですし、意味がある活動なんですが、バックキャストするときの起点となる未来の想像自体が結構ぼんやりしてしまうことも多いのかなと思います。そうすると、そこから逆算してバックキャストしていくと、途中のゴール設定もなかなか難しくなるのかなと感じています。2番目でお伝えしたかったところとしては、遠い未来を想像した前提で、一歩目のバックキャストというか、お客様に売るためのスペックはこれだよねというふうな、一、二年後の未来の技術開発の研究のゴールを設定する、いわば市場に受け入れられるかちっとしたスペックを決め、そこから短期的なバックキャストをして、今やるべきことを見定めていくのも、結構大事ではないですかというところに関しては、少し補足的に付け加えさせていただければと思っていました。
 ありがとうございます。以上です。
【佐藤委員】  ありがとうございます。
【杉山主査】  ありがとうございます。平本先生、お願いします。
【平本委員】  もう時間がありませんけれども、日本の強いところをどう強くするかという議論が残っていました。チャットを見ますと、皆様、御意見をおっしゃっているようですね。私も国際連携だと思います。やはり、国際的なパートナーづくりです。これは日本はあまり得意ではありませんが、ここを克服しないと、強いところをより強くできません。人材形成、育成も含めて、いかに国際的なパートナーづくり、国際的なコンソーシアムづくりをしていくか、これが日本の大きな課題だと思っております。
 以上です。
【杉山主査】  平本先生、大変重要な御意見、ありがとうございました。全くそのとおりかと思います。
 本日、非常に中身の濃い議論が展開されたと思います。特に、これから中間まとめをしていく中で、基本的には、事務局で本日提示していただいた資料が骨子になるかとは思いますけれども、その中でさらに抜けている観点、それから、より強調していく点というのが明確になったかと思います。
 また、先ほどの最後の平本先生の御指摘にもございましたけども、強みをいかに強くしていくか、また、いろんな意味で、コミュニケーションというキーワードが重要かなと、改めて思った次第です。そうした強みをエンハンスしていくための海外とのコミュニケーション、仲間づくりというのも非常に大事であろうと、改めてお話を聞いていて思った次第です。
 この委員会といたしましては、今まで議論したようなことを実際の施策に、文部科学省に特にどのように実装していただくかということを、今後も議論し、また、ぜひ施策になるように後押ししていくことが重要です。そのような中で、今年度の前半で議論いただきました、GteXが今はプロジェクトとして実際に走り始めました。
 その評価というものもこれからまた入ってくるかと思います。その際に、ただ単にそれぞれのプロジェクトがうまく、革新的な成果を出しているかどうかという個別視点での評価だけではなくて、まさにこれまでもいろいろ御指摘いただきましたように、それが社会実装に向けてどういう位置づけになるのか、あるいは、今回で言えば、GteXですので、CO2の排出削減であるとか、あるいはサーキュラーエコノミーの促進、また、それがいかに社会に実装される技術になり得るかということ、そこにはコストダウンという視点も入ってくると思います。そうしたことを、それぞれのGteXのプレーヤーの範疇を超えて、横串を刺すであるとか、メタな視点という中に入って評価するようなファンクションが、やはりこの議論の中に常にあるべきだろうと、私もお話を聞いていて非常に強く思いました。
 そうした統合的評価と申しましょうか、そういう機能をいかに今後は強化していくのかということが、この委員会をより実りあるものにしていくために重要であり、また、そこに様々な学生さんであるとか、若い研究者も含めて、人材が入ってくるような仕組みをつくれるのかというのが、非常に大きなポイントかなと思いました。
 一方で、もちろん、ここはバックキャストだけでやるべきということで、ターゲットを決めて、がちがちに固めるということが、文部科学省の主導権を持ったプロジェクトの全てであってはいけないと思います。施策の中でありましたALCA-Nextなどもうまく使いながら、バックキャストをする、あるいは総合評価をする中で、こういうランドスケープが見えてきているということを、これから参入してくる研究者と広く共有して、我々の議論の結果を広くコミュニケーションで広げた結果として、新しい方々が柔軟なアイデアを持って、新しいシーズをこうした領域に持って参入してきてくれるエコシステムをいかにつくるのかということが、今後、重要なポイントになってくるかと思います。
 ですので、こうしたことをぜひ念頭に置きながら、また今後のこの委員会運営等もしていきたいなと、私としては思ったところでございます。ということで、本日、非常に重要な御議論をいただきまして、大変ありがとうございました。
 残念ながら時間になりましたので、本日はここで総合討議を終了いたします。
 以上をもって、本日予定しておりました議題は全て終了でございます。最後に事務局から連絡をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
【後藤(事務局)】  本日はありがとうございました。本日の議事録につきましては、後日、事務局より、メールで委員の皆様にお諮りした後に、ホームページのほうに掲載することで公表させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 次回の委員会につきましては、6月頃を予定してございます。日程が決まり次第、改めて御案内をいたしますので、どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。
 事務局からは以上となります。
【杉山主査】  ありがとうございました。それでは、これをもちまして、環境エネルギー科学技術委員会革新的GX技術開発小委員会の第8回の会合を閉会いたします。
 本日も、大変ありがとうございました。
 
―― 了 ――

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