革新的GX技術開発小委員会(第7回)議事録

1.日時

令和5年12月19日(火曜日)17時30分~19時30分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

 1.GteX及びALCA-Nextの採択結果等
 2.GX関連領域における産業界等からの話題提供
 3.前回の議論のまとめと事前アンケートの結果紹介
 4.総合討議

4.出席者

委員

杉山主査、石内委員、菅野委員、五味委員、佐々木委員、佐藤委員、志満津委員、田中委員、所委員、平本委員、本郷委員、水無委員

文部科学省

今枝副大臣、千原研究開発局長、轟環境エネルギー課長、後藤環境エネルギー課長補佐 他

オブザーバー

経済産業省、特許庁、産業競争力懇談会、新エネルギー・産業技術総合開発機構、科学技術振興機構 他

5.議事録

【後藤(事務局)】  それでは、お時間になりましたので、ただいまより、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会第12期環境エネルギー科学技術委員会の革新的GX技術開発小委員会第7回会合を開催いたします。
 冒頭、進行を務めさせていただきます、研究開発局環境エネルギー課の後藤です。本日は、お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。
 本日は、オンライン会議になります。発言の際はビデオ、マイクをオンに、発言されていない際はオフにするよう御協力をお願いいたします。また、御発言いただく際には、「手を挙げる」のボタンを押していただくか、チャットにてお知らせいただくようお願いいたします。指名を受けて御発言をされる際には、マイクとビデオをオンにし、お名前をおっしゃってから御発言をお願いいたします。
 また、本日の議題については全て公開議題となり、会議の様子はユーチューブを通じて一般傍聴者の方に公開されています。
 議事に入る前に、まず、本日の資料を確認させていただきます。議事次第、資料1-1から3-2、そして参考資料0のファイルをメールでお送りしておりますが、もし不備等ございましたら事務局までお申しつけください。皆様、よろしいでしょうか。
 なお、本日は、文部科学省のほか、GteX PD・POの先生方、産業競争力懇談会(COCN)、経済産業省、特許庁、新エネルギー・産業総合開発機構(NEDO)、科学技術振興機構(JST)よりオブザーバー参加がございます。それぞれの御紹介については、出席者名簿にて代えさせていただきます。
 また、新田委員につきましては、御都合により10月をもって委員を退任されましたので、この場にて御報告をさせていただきます。
 また、本日は森主査代理、田畑委員、本藤委員が御欠席、田中委員、平本委員が途中退席予定です。定足数を満たしておりますので、委員会は成立となります。
 また、本日ですけれども、今枝文部科学副大臣が御出席されておりますので、開会に当たりまして、副大臣から一言御挨拶をお願いいたします。副大臣、どうぞよろしくお願いいたします。
【今枝副大臣】  皆様、こんばんは。文部科学副大臣の今枝でございます。皆様におかれましては、お忙しい中、本日の小委員会にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。冒頭の御挨拶ということで数分いただきまして、御挨拶をさせていただきます。
 これまでコストとして考えられてきたカーボンニュートラルが経済成長のドライバーになろうとしていると思います。世界の主要国間での経済成長とカーボンニュートラルの二兎を追うGXに関する政策競争が起こっており、我が国も本領域を重点政策分野として、官民が協力をし、重点的な投資と改革をやはり行っていかなければならないと思っております。
 これまで、「グリーン成長戦略」による重点分野の設定や「GX推進法」によるGX経済移行債の整備など、国による中長期支援を通した予見性の確保など、官民が協調をして投資を促進していく、そういった策が可能となっております。
 カーボンニュートラルとコストカット型ではない付加価値向上型の経済成長の実現には、既存技術の展開・実装だけではなく、非連続的なイノベーションをもたらす、いわゆる「革新的技術」の創出が不可欠です。こうした認識の下で、我々文科省といたしましては、今年度から「革新的GX技術創出事業(GteX)」を立ち上げて、10月から研究開発を開始したところであります。
 GteXは、GX移行債を財源としておりますけれども、温室効果ガスの削減への貢献に加えて、経済波及効果に対する量的、さらには質的な貢献を求められている中で、こうした観点で、「蓄電池」、「水素」、そして「バイオものづくり」の3つの重点領域において材料等の開発やエンジニアリング、評価・解析等を統合的に行うオールジャパンのチーム型研究開発を実施いたします。私自身も、もともと理系出身ということもありますし、39歳という若さもございますので、いわゆるディープテックのイノベーションというものはずっとライフワークとして、例えば、それぞれ水素やバイオものづくりについて推進する国会議員の会の事務局長を様々務めたりしながら、これまでもずっと推進をしてまいりましたので非常に強い思いがあります。
 また、これらと連携して、カーボンニュートラル達成に向けたチャレンジングな提案を募る探索型研究開発も実施をしてまいりたいと思っております。
 本日は、10月から研究開発を開始したGteX事業の採択結果などを御報告し、皆様より、御議論をいただいたGteX基本方針等を踏まえて、この推進に当たって留意すべき点など、御議論・御助言をいただければと思っております。
 加えて、GX関係領域における産業界等の様々な動向を踏まえた上で、GX実現に向けて、アカデミアで今後新たに取り組むべき研究開発の方向性について、皆様から御意見を頂戴できればと思っております。やはり、社会実装、産業化、これがしっかりあって、そこにどうつながっていくのかということをアカデミアでも考えていく、そこのつながりを考えたアカデミアの在り方、研究の在り方が、この分野においては特に地合いとしても重要かなと思っております。
 GXへの貢献に向けましては、今日お越しの経産省の方々をはじめとした関係省庁とより一層緊密に連携をしながら、本分野で日本が世界をリードしていく明確な決意を持って、アカデミアを支え、イノベーションを推進する文科省として、さらなる取組を進めてまいりたいと考えておりますし、私もその最前線に立って全力を尽くしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げて、冒頭の御挨拶に代えさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
【後藤(事務局)】  副大臣、どうもありがとうございました。
 それでは、議事に入りたいと思いますので、ここからの進行につきましては、杉山主査にお願いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【杉山主査】  よろしくお願いいたします。
 本日は、議事次第にありますとおり、4件の議題を予定しております。委員の皆様からは忌憚のない御意見を頂戴いただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 なお、本日の委員会の終了見込みは午後7時30分頃を予定しております。
 それでは、議題に入ってまいります。まず、議題1ですが、GteX及びALCA-Nextの採択結果等につきまして、JSTより御説明をお願いいたします。
【魚崎GteX・PD】  それでは、全体のプログラムディレクターをしております魚崎からまず全体の紹介をし、それから各領域の説明に入ってまいります。
 次、お願いします。
 GteXの運営体制はここにあるとおり、この革新的GX技術開発小委員会の下で策定された研究開発方針に基づいて事業を実施するという形になっております。そして、GteXは、先ほども副大臣のお話にありましたけれども、基盤的なところをやるALCA-Nextとセットで私はPDとして運用するということであります。その中の委員会として、さらに革新的GX技術推進委員会を設置しておりまして、ここにあります7名の先生方にいろいろ大所高所からのアドバイスをいただきながら進めております。GteXにつきましては、蓄電池、水素、バイオものづくりの3領域について実施をしております。
 次のページ、お願いいたします。
 ここにありますように、5月11日に募集を開始し、7月6日に締め切りました。積極的に提案を募るために公募説明会を、通常東京だけでやるところを福岡、札幌、仙台という地方にも出かけていって現地で開催し、オンラインと併用で500名を超える参加者の下、説明を行いました。7月6日に締め切り、研究をできるだけ早く開始したいということで審査員の先生方にかなり無理を言って書類選考、面接選考を非常にタイトなスケジュールの中で進めていただきました。そして、9月下旬には採択課題の通知を行い、10月に研究が開始されまして、プレス発表を行いました。
 次、お願いいたします。
 このGteXは前身の蓄電池プロジェクトであったALCA-SPRINGの成功を受けて、Mission-oriented型のトップダウン、チーム研究で実施するということが基本ではありますが、それに加えて、そのチーム構成では漏れているかもしれない研究者、特に若手を中心に、革新的要素技術を併せて公募するということをいたしました。
 チーム型研究については、26件の応募に対して採択15件、採択率58%、一方、革新的要素技術は、これはほぼ1名あるいは少数のメンバーの参画ということでありますが、92件の応募に対して16件ということで採択率17%ということでありました。
 次、お願いいたします。
 これが採択結果全体でありますが、蓄電池領域では5つの大きな分野に対して、ここにあります7つの蓄電池チームが採択されております。POの桑畑教授を中心に選考を進めました。そして、水素については山梨大学の内田教授を中心に選考を進め、水電解、燃料電池、水素貯蔵という3チームが採択されております。また、バイオものづくりについては神戸大学の近藤教授を中心に選考を行い、微生物中心、及び植物中心の2つの中核チームに加え、生物間相互作用、人工系評価システム、解析・数理といった、それを支える3チームの合計5チームが採択されております。
 蓄電池では53機関、水素は32機関、バイオは30機関という非常に多数の機関が参画するオールジャパンの体制になっております。
 次のページをお願いします。
 研究開発マネジメントは本小委員会でいろいろ御指導いただいたとおり、ALCA-SPRINGの経験も踏まえつつ、基本的にはPOが各領域をマネジメントするということですが、重要なものとしては、ステージゲート評価がございます。ステージゲート評価をすることで、研究開発目標の達成に最も適した体制となるよう新陳代謝を図っていくということであります。
 さらに、経産省、文科省の課長級で構成されるガバニングボードを通して、あるいは直接他プロジェクトとの連携を行って成果の最大化、早期の社会実装に向けた仕組みをいろいろと組み込んでおります。また、ALCA-SPRINGで既に策定、実施してきた知財戦略、オープン・クローズ戦略を踏襲しつつ、その後、約10年たっておりますので、現状に即した見直しを随時行って、効果的なマネジメントを実施していきたいと考えております。
 共通研究機器・データ活用でありますが、大型機器の共通利用については、既にALCA-SPRINGで蓄電池基盤プラットフォームの実績がありますので、そのやり方事業を全体に展開し、機器利用効率の最大化を図るということで大型機器を集約し、供用を図るということであります。さらに、GteXにおきましては、データの自動収集等を積極的に行い、自動・自律実験等の新たな研究手法を導入して、データマネジメントを策定した上でデータの提供者の利益を守りつつ、データを共用し、それを用いた材料開発の短縮を目指していきたいと思っております。
 非常に大事なこととして人材育成がございます。10年間の蓄電池のプロジェクトでありましたALCA-SPRINGでは実施期間中に、学部生・修士・博士合わせて約900人の学生が参画し、その内、約700人が企業に就職しております。特に、100名以上のドクターがこの研究プロジェクトから巣立ち、そのうち半分が企業に就職したということは特筆すべきことであり、人材育成の観点で非常に成果があったわけですが、GteXにおきましては、それも参考にしつつ、より積極的に人材育成を進めていきたいと思っております。
 長期的にGX分野で世界をリードしていくためには、世界トップレベルの研究開発を推進することはもちろんですが、研究開発あるいは研究開発戦略、政策等に多様な階層で世界をリードする人材の育成が必要であるというふうに考えております。そのために、GteXの実施に際しては積極的にパートナー国となる諸外国の大学、研究機関と相互に研究者、特に若手研究者の派遣、受け入れを行い、さらには共同研究を実施して、個々の研究者のレベルアップを図るとともに、領域全体、あるいはGX研究全体の我が国の存在感を示していくための環境づくりに注力したいと思っております。既に蓄電池領域ではアメリカ、イギリス、ドイツなどとのアライアンスの形成を目指して、具体的に計画が進んでおります。
 次、お願いします。
 これは先ほど言いました全国からの参画を表しておりまして、各領域とも北は北海道から南は九州まで、全国から研究者が参画しております。
 次、お願いします。
 では、蓄電池領域について、本日はPOの桑畑教授が欠席ですので、私が代わって説明させていただきます。
 蓄電池では、リチウムイオン電池の革新と次世代蓄電池イノベーションということで、高容量、高安全性、資源制約フリー、長寿命化、低コスト、リサイクルなどの要求に対応した多様な蓄電池のチームを募集いたしました。この3月まで行いましたALCA-SPRINGにおきましては、電気自動車への利用を念頭に、高エネルギー密度の次世代蓄電池の開発ということにほぼ1点集中で行ってきたわけですが、現在では、蓄電池に対して非常に多様な要求があり、今回の募集では募集テーマの対象を広げたということです。
 公募テーマ1は実用電池の革新、公募テーマ2は安全性を特に強調したもの、公募テーマ3は資源を強調したもの、公募テーマ4は高エネルギー密度電池というものであり、さらに加えて、横断的に共通基盤研究として、計測やDX等の共通基盤の構築を図るということにしております。
 次、お願いいたします。
 この領域では、大阪大学工学研究科長・教授であります桑畑先生をPOとして、そのほか、ここにありますような企業、産総研、そして大学関係者という皆さんにアドバイザーとして参加いただき、選考を行っていただきました。
 次、お願いいたします。
 ここでは、先ほどの5つの課題に対して、公募テーマ1、実用電池については東京都立大学の金村先生のリチウム系電池の開発について採択、また、公募テーマ2の高安全性といいますのは、現在、世界的にも非常に競争が激しくなっております全固体電池の開発について、大阪公立大の林先生による硫化物、名古屋大学の入山先生による酸化物という2つの電解質系に基づく固体電池を対象としたチームを採択しております。
 また、資源制約フリー電池ですが、ナトリウムイオン電池、これも中国を中心に非常に進んできているものですが、この分野の世界的リーダーであります東京理科大学の駒場先生によるチームを採択、また、より長期の課題となりますが、ナトリウム、リチウムよりさらに難しいながらも資源フリーということでマグネシウムを取り上げまして、東北大学の市坪先生のチームが採択されております。
 公募テーマ4の軽量・小型・大容量という観点では、リチウム硫黄電池を対象とする関西大学の石川チームが採択されております。
 共通基盤としては、物資・材料研究機構の増田さんをリーダーとするチームが採択され、こちらでは、蓄電池のみならず、水素領域も横断的にサポートした計測DX基盤技術を構築したいというふうに考えております。
 次、お願いします。
 これが蓄電池領域の参加者研究分布ですが、蓄電池だけとっても、北は北海道から南は九州まで、先ほど言いましたように53機関、契約した主たる共同研究者だけでも126名という、日本のトップ研究者を網羅した非常に大きな組織であります。特に、若手あるいは女性研究者を積極的に採用したチームが多いことを強調しておきます。
 次、お願いします。
 以上で、蓄電池は終わります。水素領域は、内田先生、よろしくお願いします。
【内田GteX・PO】  それでは、水素領域について説明をいたします。この水素領域では、水素を電解で高効率に製造して、高耐久・低コスト化というキーワードがつきますが、それを高効率に利用する燃料電池、そして、水素を高密度に蓄える水素貯蔵システムという3つの公募テーマを設定し、具体的な技術例も挙げまして、公募いたしました。
 先ほどお話もありましたが、蓄電池領域での共通基盤研究との連携を図る、そういうものが全体に統一に入っております。それから、革新的要素技術として少し選ぶということであります。
 次、お願いします。
 こちらは領域アドバイザーです。これらの先生方に参加いただいております。
 次、お願いいたします。
 採択課題の一覧でございます。まずは、グリーン水素製造用革新的水電解システムの開発で、東京大学の高鍋先生をチームリーダーとしたものでございます。こちらに内容が書いてございますが、再生可能エネルギー電力の変動や頻繁な起動停止に耐える低温型の水電解システムについて、それらの課題を根本的に解決することで圧倒的な低コスト・高効率・高耐久化を達成するということでございます。具体的には、強アルカリの電解液を用いるアルカリ型、それからプロトン交換膜を用いるPEM型、そして、現在は発展途上でありますが、これがもし完成すれば非常にインパクトが大きいアニオン交換膜(AEM)型ということで、それから、中性付近のpH、海水の電解液への直接利用を志向したものが提案されております。
 2番目の課題は、高効率・高耐久・低コスト化を可能にする燃料電池システムの実現で、これは同志社大学の稲葉先生をチームリーダーとするものが採択されております。2040年頃のHeavy Duty Vehicle、すなわち大型トラックとか、船舶とか、非常に用途的に負荷が大きいもの、それは当然水素をたくさん使うのですが、そのような次世代の燃料電池システム実現のために、現在の燃料電池を根本から見直して、主要材料である触媒、電解質膜、アイオノマーに用いる革新的な材料を開発し、新しい燃料電池システムを開発するということでございます。
 3つ目の課題は、高密度・高耐久・低コスト化を実現する水素貯蔵システムの開発で、東北大学の折茂先生をチームリーダーとする課題が採択されております。こちらは重負荷移動体への搭載などを目指した水素貯蔵技術の開発のためのボトルネック課題として、貯蔵水素をとにかく高密度化することであり、これは既存技術の延長線上ではできないことでございます。多様な材料を用いた水素貯蔵メカニズムの理解を進め、そしてそれを材料開発に生かすことで、システムからのバックキャストも踏まえて、いろいろな連携を含めて、材料、解析、DXの研究を推進するということでございます。
 革新的要素技術課題も5件採択して編入を検討しております。
 次、お願いします。
 これが水素領域の参加研究者の分布でございまして、こちらも北海道から九州まで32機関、主たる共同研究者だけでも64名ということで研究を既に開始しております。
 水素領域は以上です。
【近藤GteX・PO】  続きまして、バイオものづくり領域を説明させていただきます。POを務めております、神戸大学の近藤です。
 バイオものづくりの領域におきましては、新たなバイオものづくりの基盤技術を確立するということと、それを活用いたしまして、ゴム、プラスチック、化学繊維等の原料、あるいはSAFなど、次世代の燃料や化学品に関して製造できるものをどんどん増やしていくこと、あるいはその効率を上げていくこと、そして、新しいゲノム編集・DNA合成技術の革新的な技術を生んでいくことなどを推進しております。
 これを実現するために、下にチーム構成がございますけれども、まず次世代のものづくりを実現するプラットフォームとして中核研究チームを2チーム採用してございます。
 1つ目のチームは、微生物を中心とした研究チーム、2つ目は植物を中心とした研究チームということで、対象ごとに次世代のものづくりのプラットフォームをつくっていこうということを目指しております。もちろん植物といいましても、植物自身でものをつくるということもあれば、微生物にその植物の資源を移して微生物で生産するという形もあり、フレキシブルに対応していくということであります。
 一方、この中核研究チームの飛躍的な発展のための基盤技術の研究をしていく、そういうチームを3つ設定しております。
 1つ目は、生物間相互作用の探索・解析研究。自然界では本当にいろいろな植物、微生物、微生物間が相互作用をしながらいろいろなものをつくっております。そういったものを理解して、活用していくということであります。
 2つ目は人工系による評価システムということですけれども、たんぱく質等、いろいろなものをつくるときに、細胞を使わない人工系というものが最近活用できるようになってきております。これを高度化していくということです。
 そして、3つ目のチームとしては、解析技術の高度化・情報数理科学研究ということで、やはりこういうバイオの場合の部分では、先端的な解析技術が必要になってきます。解析技術はより高度になればなるほど、情報数理と一体化されてきますので、そういったところの研究をするチーム、この3つの基盤チームをつくってきております。それとともに、若い研究者からなります革新的要素研究チームを採択してございます。
 次、お願いします。
 評価者でございますけれども、大学、産総研、あるいは民間企業からバランスよく選んでございます。
 次、お願いいたします。
 採択課題の一覧です。先ほど説明しました中核チームの2つが公募テーマ1と公募テーマ2と書いてあるものであります。微生物中心チームにつきましては、多様な微生物機能の開拓のためのバイオものづくりDBTL技術の開発ということで、大阪大学の本田教授をリーダーとするチームを採択しております。このDBTLというものはデジタル技術とロボット技術、こういったものを様々融合させていく中で、革新的なスピードでバイオものづくりを実現していくというプラットフォームをつくるということであります。そして、特にCO2を原料として、先ほどありましたように、様々な化学品や燃料をつくっていける人工的な微生物の開発をしていくと、基盤技術、プラットフォームをつくりながらそういうものをどんどん実現していく、ものづくりを実現していくということであります。
 2つ目は植物を中心としたプラットフォームということで、先端的植物バイオものづくり基盤の構築。こちら、理化学研究所の大熊室長がリーダーでございます。CO2の削減と、ものづくりの両立をしていくということでいいますと、植物も非常に大きな候補になります。そういう意味で、植物を活用し、植物を使ったものづくりを実現するとともにそのための基盤技術を整備していくというところを進めていくチームでございます。
 3つ目は、生物間相互作用の探索をテーマといたしまして、GXを駆動する微生物・植物「相互作用育種」の基盤構築ということで、筑波大学の野村教授をリーダーとするチームであります。自然界では、微生物間、あるいは微生物と植物間で、相互作用によって初めて生まれるものが豊富に存在しております。こういったところを解明して、それに基づいて物質生産に活用していこうということ、これを実現していくものを相互作用育種という呼び方で言っておりますけれども、こういった視点から新たな技術を創出するというものがこのチームであります。
 4つ目のテーマ、人工系による評価システムということで、超並列たんぱくプリンタの開発ということであります。これは超並列で遺伝子を合成して、そしてその遺伝子を合成したところからタンパク質までをつくっていく。つまり、プリンタのように、いろいろなたんぱく質を超並列でつくっていく。そして、超並列でつくった多くのものの中から、新しい機能、優れた機能を持った酵素を開発していけるような、そういった総合的なシステムの開発をしていくことで、今までバイオものづくりで実現できなかったブレークスルーを起こしていこうというところであります。
 最後、テーマ5ですけれども、解析技術の高度化・情報数理研究ということで、次世代バイオものづくりを駆動する高度オミクス計測・解析基盤の開発ということで、九州大学の馬場教授をリーダーとするところであります。近年、生物を総合的に理解して育種をしていくためには、いわゆるオミクス解析技術というものが重要なんですけれども、特に、メタボローム、プロテオーム、トランスクリプトームとその3つの階層をつなげられるようなマルチオミクスの計測・解析基盤を構築していく、世界に行って勝負できるような強力なツールをつくっていく、生物をよりよく理解して新たな設計やものづくりにつなげていく、マルチオミクス技術の革新をしていく、こういったことを進めているのがこのチームでございます。
 これに加えまして、革新的要素技術も5件採択しております。非常にとがった情報処理技術については、実は若手が非常に大きな能力を持っております。特にそういうところがうまく採択できたのではないかと考えております。
 次、お願いいたします。バイオものづくりにおきましても、北は北海道から南は九州まで、30機関から非常に多くの研究者が参加いただきまして、先日200名以上が結集いたしましてプロジェクトのキックオフを行っております。
 以上でございます。
【大矢部長】  それでは、JSTの大矢から、ALCA-Nextの事業についての採択結果を説明させていただきます。次、お願いいたします。
 ALCA-NextはGteXと異なりまして、GteXは基金で動いておりますが、このALCA-NextはJSTのいわゆる運営費交付金で運用させていただいております。また、GteXがチーム型に対してALCA-Nextは個人型で、個々の研究者のアイデアを、自由な発想に基づく提案を採択していく形で目指しております。GteXのほうは水素、蓄電池、バイオものづくりという限られた領域ではありますが、ALCA-Nextはカーボンニュートラルに貢献する幅広い研究分野をカバーして採択をしており、またスキームとしては、右の図にございますがスモールフェーズ、加速フェーズがあり、前半3年半、後半3年間で、間にステージゲートを設けて、3分の1程度の課題数に落としていく、また研究単価も上げていく形で選択と集中を行っていく事業になります。
 次のページをお願いいたします。
 体制はこのようになっております。先ほどお話ありましたように、PDは魚崎先生にALCA-Next、GteXともに見ていただいております。GteXは下のほうに書いてありますように、桑畑先生、内田先生、近藤先生にお願いしておりますが、ALCA-Nextも同様に3名の先生にお願いしております。横浜国立大学の渡邉先生、筑波大学の江面先生、そして東京大学の黒田先生にお願いしておりまして、それぞれ技術領域という形で、グリーン成長戦略に基づき設定をした技術領域がございまして、それぞれご担当いただいております。渡邉先生には蓄エネルギー、エネルギー変換等の3技術領域、江面先生にはグリーンバイオテクノロジー、そして黒田先生には半導体、グリーンコンピューティング・DXの技術領域をお願いしております。
 次のページをお願いいたします。
 今回、28件採択しております。それぞれの技術領域、採択数が書いてありますが、このような形で採択をさせていただきました。
 次のページをお願いします。
 応募した方々、採択者の方々の年齢分布を示しております。いわゆる個人型ですし、よりGteXと比べて基礎的なところを狙っているということもありまして、ぜひ若い人たちに応募してほしいと我々思っておりましたが、狙いとしていた大体30代、40代の人たち、半分以上の方々に応募していただく形で、まあまあ若い人たちに応募してきてもらっているかなというふうに思っております。
 次のページをお願いします。
 最後になりますが、今回のポイントを少しまとめてみました。我々、グリーン成長戦略を基に6つの技術領域を設定しまして、募集をしました。さらに具体的に何が問題になっているかを提示して、解決する課題を募集しました。もちろんそれ以外のところも応募できるんですが、いわゆるボトルネックという形で潜在している問題点を提示して、応募していただいております。
 今回、先ほどありましたようにGteXの応募も重なりました。今回、同じPDの下、POがそれぞれ調整をしまして、重なりがないように、また今後の連携が取りやすいような形での調整を行っております。今後はGteXとより連携をしていく形になると思います。特に若手のところの交流会も含めて、またGteXの共通機器利用もありますが、そこもうまくALCA-Nextのメンバー、研究者も使えるような形の制度設計を今後していきたいと思っております。
 以上になります。
【杉山主査】  御説明どうもありがとうございました。
 採択の結果について御説明いただきましたけれども、資料1-2に、改めましてこの委員会で議論してまいりました基本方針を踏まえたGteX推進に関する論点について新たなメモを残しております。時間の関係で一々読み上げませんけれども、事業マネジメントでありますとか、量的な貢献の可視化、定量化、社会実装に向けたシナリオやオープン・クローズ戦略、そしてデータマネジメントや知財の方針、研究DX、それから国際連携といった観点も踏まえて、これらの採択結果を見ていろいろとお思いになったことがあると思いますので、御意見を伺えればと思っております。
 まず、田中委員が本日途中で御退席になりますので、もし御意見ありましたら、田中委員のほうから御意見いただきたいと思いますが、何かございますでしょうか。
【田中委員】  ありがとうございます。田中でございます。
 御説明ありがとうございました。非常に多くの研究グループ、そして研究者の皆様のプロジェクトが始まって、楽しみだなと思って聞かせてもらっておりました。
 資料1-2の観点で少しコメントさせてもらいますと、一番下のところと、2番目ですかね。日本が得意な部分が非常に多いと思いますけれども、例えば、最後、量産化でしたりハードウエアを導入するにおいてのプラットフォーム、デジタル的な枠組みや、実際に導入するときの枠組みなど、ちょっと研究とは違うところがあると思いますけども、実用化するときに必要となることも踏まえて、実際に事業化とか活用するときにはどういう構成がいいのかみたいなところを、オールジャパンというよりは日本が強いところで、ジャパンイニシアチブでそれぞれリードをとってもらえると非常にありがたいかなというところが一つのコメントです。
 特に、リチウムイオン電池は歴史的に日本がずっとリードしてきたと思いますが、量産のところはなかなか苦しんでいるところもあったりしますので、その周りのシステムも含めて、電池の部分も進化しながら、その周りをどうするかとか、そういったところを見てもらえればと思いますし、水素に関しても日本が非常に期待される部分だと思いますので、そこの研究開発の部分とそのほかのところに関しても、何か組み方みたいなものもちょっと考えていただけると非常にありがたいと思っております。
 すみません、1番目ということでコメントをさせてもらいました。一旦お返しします。
【杉山主査】  大変貴重な御意見ありがとうございます。
 先ほど御説明いただいた魚崎PD、全体を眺められまして、いろいろと御苦労が多かったと思いますけれども、そういった中で、今、田中先生からいただいた御意見も踏まえまして、特に魚崎先生は海外の中で、それは研究の流れだけではなくて、中国でナトリウム電池がかなりブームになっているようなことも先ほどおっしゃいましたけれども、そうした今後の実装も踏まえた動きも眺めながら今回採択をされたわけですけども、今後に向けていろんな問題点等もお気づきになったかと思いますので、是非御意見いただければと思います。
【魚崎GteX・PD】  ありがとうございます。今回採択された電池系にはいろんな開発段階のものがあります。現状既に実用化され、広く使われているリチウムイオン電池もあれば、TRLが非常に低いマグネシウム電池のようなものもあります。文部科学省、JSTのプロジェクトとしては、次世代あるいは次々世代に向けたものもやらなければいけないと思いますし、一方で実装に近づいている電池の基盤研究も必要ということになるかと思います。
 それで、今コメントがありましたように、当然実装化の段階ではエンジニアリングやマニュファクチャリングといったところが必要です。私は、9月、10月にかけて国際連携の可能性調査のためにイギリス及びドイツの大きな蓄電池プロジェクトに関わる研究機関を訪問してきましたが、この点に関連して、日本には、日本は蓄電池の大きな民間企業があり、エンジニアリングやマニュファクチャリングについての研究開発は企業で行われる(アカデミアはあまり手を出さない)のに対し、イギリスやドイツにはそういった会社がないということから、エンジニアリングやマニュファクチャリングについても国としてアカデミアから強化していこうということで、アカデミア中心のプロジェクトの中にエンジニアリング、マニュファクチャリングのメンバーが非常に多く入っていたことが、非常に印象的でした。
 勿論、日本では、先ほど少し触れましたが、ガバニングボード等を通して経産省、NEDOのプロジェクトとの連携、あるいはGI基金との連携等も言われておりますので、文部科学省、JSTのプロジェクトであるGteXの中でどこまでやるのかというところは今後の議論になっていくかと思います。
 前回のALCA-SPRINGにおきましても、開始から前半5年の間でもNEDOプロジェクトとは連携していたのですが、5年目の段階でALCA-SPRING成果をもってアカデミアメンバーがNEDOプロに移るというようなこともございましたので、今回においても成果の展開あるいは実用度の高さに応じてぜひ随時、NEDOだけではなく直接企業へということもあるかと思いますので、その辺も考えていきたいと思っています。よろしいでしょうか。
【杉山主査】  魚崎先生、大変ありがとうございました。
 ほかに委員の先生方から何か御意見、コメント等ございますでしょうか。
 水無先生、ではよろしくお願いいたします。
【水無委員】  ありがとうございます。ALCA-NextとGteXの採択結果の紹介、ありがとうございます。わくわくするようなテーマが採択されているのかなと思います。先ほどの論点整理のところで、1ポツ目と2ポツ目に関わるのかなと思うんですけども、ぜひお願いしたいなと思うことがあります。
 一つは、成果としてカッティングエッジとなるような新しい挑戦的な目標を達成するということを期待したいと思うんですけども、逆にカッティングエッジとなるようなものは開始当初には具体的な達成目標というのが設定しにくい場合もあるかと思います。ぜひ、いつまでに具体的な指標をつくるのかなども含めながらプロジェクトマネジメントを行っていただきたいと思っています。
 あともう1点、これは委員会の際にもいろいろ御意見申し上げましたけれども、場合によっては勇気ある撤退を促すことも重要かなと、メンバーチェンジですね。しかし、撤退した研究者がまた戻れるということも必要だと思いますので、その点も併せて制度設計等を御検討いただきたいと思います。
 最後に、2ポツ目に関わるところですけども、領域アドバイザーの先生方が技術詳細であるとかその辺りをアドバイスされると思うんですけども、ぜひ戦略コーディネーターのようなものを設置していただいて、俯瞰的に見た上で領域アドバイザーの方たちとも連携しながら、具体的な成果につなげていくということも重要かなと思いますので、この辺りも御検討いただければと思います。
 以上です。
【杉山主査】  ありがとうございました。
 続きまして、本郷委員、よろしくお願いいたします。
【本郷委員】  説明ありがとうございます。
 私自身、今まさにここに映っておりますスライドの最後のところ、同志国のトップレベル研究機関と連携していくというところ。ここは非常に興味深いというか重要だなと思ったんですね。やはり今はサプライチェーンのリスクとか言われているわけで、だけれども日本単独で全てをやるということはなかなか難しいところなので、ぜひこのあたりを戦略的に同志国といいますか、国際連携を注意深く進めていただくことを期待したいと思います。これは質問ではなく単純なコメントです。ありがとうございます。
【杉山主査】  ありがとうございます。こちらの点に関しましては、また最後の総合討議でも魚崎PDを交えまして議論できればと思っております。ありがとうございます。
 それでは、議題がまだたくさん残っておりまして、次に移らせていただきたいと思います。
 議題2ですけれども、GXの関連領域における産業界等からの話題提供をいただきます。前回の委員会において、本委員会における今後の議論の進め方として、GXの実現に向けた様々な領域や施策の可能性を議論していくこととなりました。今回はその一環として、特許庁、COCN、NEDOのTSCからそれぞれ話題提供をしていただきます。
 まずは特許庁の総務企画調査課、知財動向班長の永冨様より、GX関連技術の特許情報分析について御説明をお願いいたします。
【永冨氏(特許庁)】  GX関連技術の特許情報分析について、副題としてGXTIを用いた調査結果概要と題して、特許庁総務部企画調査課より説明いたします。
 次、お願いいたします。
 近年、企業等において、気候変動問題を含む社会的課題の解決に向けて、自社が提供する価値、製品やサービスがどのように貢献できるかについて、客観的に示すことが求められております。その動きの一つとして、2021年6月に東京証券取引所が行ったコーポレートガバナンスコードの改訂がございます。この改訂は、上場企業に対して知的財産への投資についても自社の経営戦略、経営課題との整合性を意識しつつ、分かりやすく具体的に情報を開示提供すべきであること、さらにプライム市場上場会社に対しては、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきとしています。こうした状況によれば、各企業において特許情報を分析して自社が保有するGX関連技術の位置づけを明らかにするということが各企業の気候変動への問題の対応を客観的に示す手法となると考えられます。
 次のスライドをお願いいたします。
 コーポレートガバナンスコードは2021年6月に改訂されたわけですが、実際にどのくらいの企業が対応できているのかを示すのがこちらの表となります。右のコンプライ率を見ていただければと思いますが、プライム市場もスタンダード企業も6から8割の企業が対応できているようですが、まだ対応できていない企業もあるということになります。このように知的財産への投資の開示、監督に関しては、そしてTCFDまたは同等の枠組みに基づく開示に関しては、まだ手探りの状況のように見受けられます。
 次、お願いいたします。
 このような背景を踏まえまして、GX技術に関して特許情報分析が容易に、そして客観的に実施できるように、特許庁ではGXTIというものを策定し、公表しております。こちらのGXTIのGX技術の選定に際しては、GX技術に深い知見を有する外部有識者6名からなる検討会において、2回の議論を経て技術を選定し、策定しております。
 次、お願いいたします。
 こうした経緯を経て、特許庁は2022年6月にGXに関する技術を5つの技術区分と横断的な4つの視点から俯瞰できる技術区分として、そちらをGXTIと称して公表しております。また、各技術区分に対応する特許文献を抽出して、技術動向を把握するための検索式も作成し、公表しております。GXTIは大区分6、中区分32、小区分86を備えた階層構造となっておりまして、小区分ごとに特許検索式を公表しております。
 参考として、大区分がどのようなものかということを御紹介いたしますと、エネルギー供給に関するgxA、エネルギー利用する際の省エネ・電化・需給調整に関するgxB、エネルギーを蓄える電池、蓄エネに関するgxC、リサイクルなどの非エネルギー分野のCO2削減に資するgxD、さらに、既に放出されている温室効果ガスを回収したり、貯留したり、利用したりするgxEの5つの大区分と、さらに横断的な視点のgxYの6つの大区分が設定されています。最後の横断的なgxYについてはさらに4つの視点がございまして、制御・調整、計測・測定、ビジネス、ICTの4つの視点で分析が行われるようになってございます。
 次のスライドに移ってください。
 こちらの図は、前のスライドの右図を拡大したものでございます。先ほど申し上げたとおりGXTIでは特許検索式を公表しておりますので、誰でも同じ条件で検索することができます。こちらの検索式についてですが、特許庁の様々な審査室の審査官が、国際的に用いられている国際特許分類、IPC及び絞り込みのキーワードを使って作成しております。このため、GXTIを用いることで100か国以上の国・地域の特許文献を検索することができるようになっております。
 次に進んでください。
 こちらはGXTIの全体を示すものでして、先ほど申し上げたとおり小区分86個を示すものでございます。
 次のスライドに進んでください。
 以上、まとめますと、GXTIに3つ特徴がございまして、5つのGX技術と横断的な4つの視点でGX技術を俯瞰できるということ、さらに、公表された特許検索式で誰でも同じ条件で調査可能であること、最後に、国際特許分類(IPC)に基づく式で、世界中の文献が検索可能という特徴がございます。
 次のスライドからは、このGXTIを用いて特許庁が今年の5月に公表した調査結果の概要を御紹介いたします。
 まず、GX技術全体の動向を示すものがこちらのスライドでございます。ここでちょっと用語の説明をいたします。特許の出願人が、ある発明について特許出願をする際、1つの国・地域だけに出願することもありますし、同じ発明について複数の国・地域に出願することもございます。このスライドにおいて、発明件数とアスタリスクが書いてありますが、こちらはいずれかの国・地域に出願された発明の数を示すものでして、同じ発明を複数の国・地域へ出願した場合も、1つだけの国・地域に出願した場合も、いずれも1件とカウントしてございます。
 この発明件数の推移を見てみますと、2010年時点では日本国籍の発明件数が最も多いものとなっておりますが、2013年以降は横ばいとなっております。他方で中国籍の発明件数を見てみますと急増しておりまして、2013年以降が最多となっております。また、右図は左図2,000件以下の拡大図となっているんですけれども、インド国籍の発明件数が2015年頃から増加傾向となっていることが見て取れます。
 次に進んでください。
 先ほどの発明件数の推移とは別に、ここでは国際展開発明件数と称するものの年次推移を見ていきます。国際展開発明件数とは、先ほどの発明件数のうち基本的に複数の国・地域に出願されたものだけをカウントしております。ですので、1か国のみに出願されたものは含まれておりません。一般的に複数の国・地域に出願された発明のほうが1か国だけに出願される発明よりも出願人にとって価値が高い発明と考えられますので、この国際展開発明件数を指標として使えば、発明の価値や国際的な影響力を考慮した分析が可能になると思われます。こちらの国際展開発明件数について見ますと、日本国籍は調査期間を通じて最も多く、GX技術分野における日本の存在感の大きさを示唆していると言えます。
 また、中国籍の国際展開発明件数は、漸増はしているんですけれども、2019年時点で日本国籍の半分程度と、発明件数に比べて伸びは緩やかです。これはつまり、中国は中国のみへの出願が大部分と見られる、そのような傾向が見て取れます。
 次に進んでください。
 上の図にありますとおり、大区分の技術動向について見てまいります。ここでは国際展開発明件数の年次推移等を見ていくわけですが、まず、ボリュームについて見ますと、gxA、gxB、gxCが非常に多いということが分かります。gxBとgxCは増加傾向になっているんですけれども、gxAのエネルギー供給のところは少し減少傾向にあることが見て取れます。また、下の図は各区分の出願人国籍を見たものになっておりますが、日本と米国と欧州、ほとんどの大区分でトップスリーとなっております。中でも日本国籍は、gxBの領域と、gxC、電池、蓄エネルギーのところで件数が多くなっておりまして、他方、欧州はエネルギー供給のgxA、米国は非エネルギー分野のCO2削減やガス回収や貯留の区分でトップになっているということが見て取れます。
 次に進んでください。
 今度は、中区分別の技術動向を示すものでございます。こちらは国別のランキング推移を見たものでございますが、日、米、欧、中、韓の間で2011年から2013年におけるランキングと2017年から2019年におけるランキングを比較しております。御覧になれば分かるかと思うんですけれども、2011年から2013年は日、米、欧がトップスリーとなる技術が非常に多かったわけですけれども、2017年から2019年になりますと、中国、韓国がランキング上位になった技術もございます。中でも中国が大きく存在感を増しておりまして、例えば、エネルギー供給、gxEにおける中区分は、当初日本がトップスリーに入っていたんですけれども、現在は中国と順位が逆転しているところも多くなってございます。ただ、日本もきちんと頑張っている領域がございまして、特に電池、蓄エネの二次電池については2011年から2013年には1位でしたし、2017年から2019年についても引き続き1位を維持しているものになります。
 次に進んでください。
 今度は、中区分の動向をもう少し詳しく見てまいります。ここでは二次電池を最初に見てまいります。黒い線を見ていただければと思いますけれども、この分野の国際展開発明件数の合計件数は右軸ですが、2010年の大体5,000件弱から、2019年、2020年の8,000件強へと大幅に増加しておりまして、研究開発が活発に行われていることが示唆されております。さらに国際展開発明件数の年次推移を見ますと、首位の日本国籍が全期間を通して2,000件以上で推移しておりまして、2位以下は1,000件程度なんですけれども、そちらを凌駕していると言えるかと思います。
 次に進んでください。
 次に、国際展開発明件数の上位20社を見ますと、その中の12社を日本国籍が占めるということになっております。右図が高被引用国際展開発明件数となっておりまして、こちらが論文のインパクトファクターと同じような指標でして、どれだけその特許文献が審査会に引用されたかという数字を指標として示している数字なんですけれども、こちらについても日本国籍が1位となっておりまして、この領域の日本の強さを示していると言えます。
 次に進んでください。
 次は、国際展開発明件数の上位20社の推移を示しているものでございます。全ての機関において国際展開発明件数の上位20社の半数を日本国籍が占めております。日本企業に着目しますと、トヨタ自動車が年々存在感を増しているとともに、パナソニックやTDK、本田技研工業が件数を大きく伸ばしてございます。韓国籍では、LGグループが件数を増加させているのと対照的にサムソングループが件数を減少させております。中国籍では赤いところで寧徳時代、CATLと言われている会社でございますが、こちらの会社が2014年から2017年に出てまいりまして、2018年から2021年には第3位と非常に躍進していることが分かります。
 次に進んでください。
 次に、水素技術でございます。全体的な件数規模では二次電池よりも小さくて、世界全体で約1,000件程度となっております。ただ、2019年以降は1,000件以上に増加する見込みでございますし、2011年以降から首位の欧州籍は2018年頃まで300件前後で横ばいだったのですけれども、2019人以降、増加傾向が見られるというところになっております。
 次に進んでください。
 そして、国際展開発明件数の上位社だけ見ますと、9社を欧州籍が占めております。日本国籍も5社含まれているというところで、決して日本の技術力が低いというものではないというふうに考えております。ここではサウジアラビア国籍の企業が2社含まれていることが特徴的となっております。高被引用国際展開発明件数では、首位の米国籍が84件、2位の日本国籍が25件となっておりまして、価値が高い出願件数において米国と日本に技術力があるということを示しております。
 次に進んでください。
 次に、上位20社の推移でございますが、全ての機関において欧州籍のエア・リキードが首位を維持しているということになります。日本国籍に注目しますと、パナソニック株式会社、トヨタ自動車株式会社、本田技研工業株式会社が上位10位を維持しているということになります。
 次、お願いします。
 最後に、バイオマスからの化学品製造を御紹介します。この技術分野は、バイオマスプラスチック、セルロースナノファイバー等が含まれるものでございます。この分野は米国が青い線で、さらに続いて欧州が緑色の線で、米欧の存在感がとても強い領域と言えますが、近年は赤い線、中国の件数が伸びているということが見て取れます。
 次、お願いいたします。
 国際展開発明件数の上位20社及び高被引用国際展開発明件数で見ても米国と欧州の存在感が大きいことが分かります。この分野の出願人ランキング20社を見ますと、北欧籍の企業、あるいは中国の江南大学、米国のカリフォルニア大学と、大学や研究機関がランクインしていることが見て取れます。
 次、お願いいたします。
 最後にランキングの推移なんですけれども、2010年から2013年は上位20社中6社を米国籍が占めていたのですが、近年、米国がランクインしている数は2社と減っております。中国籍が近年ランクインしているというところで、ちょっとプレーヤーが変わっているというところが見て取れるかなと思います。また、特に近年のところを見ていただければと思いますが、先ほどの繰り返しになりますけれども、大学・研究機関がランキングに入っている点が特徴的となってございます。
 次、お願いいたします。
 最後に、おさらいとなります。繰り返しになりますが、GXTIを用いますと、先ほど御紹介したようなグローバルな特許情報分析を誰でも同じ条件で実施することができます。そのことによりまして第三者による比較や評価も可能となります。ここでは示しませんでしたが、検索式に出願人の名前も併せて検索することができまして、そうしますと出願人ごとのデータを取得するといったことも可能となります。こちらは特許文献の検索の際にGXTIの検索式に自社や他社の出願人名称をかけまして検索することによって、企業が自社の強み、弱みを把握できるようになりますし、そういった比較を通して事業戦略や特許戦略の立案に役立てていくといったこともできると考えております。また、我々政府機関等は特許情報を活用することで、途上国を含めた世界各国・地域のGX間連技術の動向を可視化することができまして、エビデンスベースで世界各国・地域のGXへの取組を後押しできるのではないかと考えております。
 次、お願いいたします。
 私の発表は以上となりますけれども、GXTIについて御関心をお持ちになりましたら、ぜひとも特許庁のホームページを御覧いただければと思います。こちらにQRコードを示しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上です。
【杉山主査】  永冨様、どうもありがとうございました。
 なお、永冨様はこの後、御退席されてしまいますので、もし御質問ありましたらこの場で承りたいと思いますが、御出席の方々から何かございますでしょうか。
 魚崎先生、お願いします。
【魚崎GteX・PD】  ありがとうございました。非常に興味深い説明をいただきましたけれども、今説明されたような結果は、例えば我々がどこかで紹介してもいいのでしょうか。今いただいたパワーポイントの具体的なグラフとか図といったものです。
【永冨氏(特許庁)】  はい。ぜひ活用いただければと思います。出典として特許庁の報告書等を引用いただければ、御活用いただけます。
【魚崎GteX・PD】  分かりました。ありがとうございます。
【杉山主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 よろしいですか。それでは、どうもありがとうございました。
 続きまして、今度はCOCNの理事・事務局長であられます山口様より、COCNとしてCO2削減に関するこれまでの推進テーマの概要及び主な課題について、御説明をお願いいたします。
 よろしくお願いいたします。
【山口氏(COCN)】  産業競争力懇談会の山口と申します。本日はお招きいただきまして誠にありがとうございます。本日、COCNとしてのCO2削減に関するこれまでの推進テーマの概要について御説明をさせていただきます。
 目次でございますけれども、私どもの団体の概要、推進テーマの取組について、CO2削減のロードマップ、各推進テーマ、これは文部科学省様からピックアップしていただいた4つのテーマの概要につきまして御説明をしたいと思います。
 ページをもう2枚めくっていただいて、まずCOCNの概要でございますけれども、私どものもともとの成り立ちというのは、尾身幸次先生を囲んだ主要企業のトップの有志メンバーによるサロン的なところから出発をいたしまして、そこでいろんな政策提言を行ってまいりました。2000年を過ぎたあたりで、課題提起の政策提言だけではなく行動を伴う具体的なプロジェクトによる提言と実現の体制へ持っていこうということで、2006年に産業競争力懇談会が発足いたしまして、2015年に一般社団法人化されました。ここに目的と書いてございますけれども、「国の持続的発展をねらい、産業競争力の強化、科学技術の推進、イノベーションの創出に関わる政策を、産学官の対話と連携を重視しながら提言として取りまとめ、実現をはかる」と。これは定款に書かれている文言でございます。
 我々の主な活動でございますけれども、その下、最初のポツに書いてございます、課題を共有した会員が手弁当で推進テーマ活動を行う、そういうことを我々のモットーとしてございます。
 次のページをお願いします。
 これまで、2006年から2023年まで、142のテーマをいろいろと検討してまいりました。この推進テーマの決め方につきましては、会員からのボランタリーで、こういうテーマでぜひチーミングをして、仲間を集めていろいろ活動を行いたいというものと、理事会からこういうことをやったらどうかというテーマが落ちてまいりますけれども、そういったテーマを合わせて142、これまで行ってまいりました。その出口としては、1、具体的ビジネスモデルに基づく事業化ということで、旗を振っていた企業の皆様がそれぞれの会社で事業化をする。2、技術研究開発組合や連絡協議会をつくって引き続き活動の継続をする。3、SIPなどの政府のプログラムへの参加、ここで引き継いでいただく。こういった出口を大体持ってございます。
 右の円グラフは、これまでどんな推進テーマを行ってきたのかということでございますけれども、エネルギー/資源・環境、右端ですけれども、48件で34%。次に多いのが左側の青いところで基盤技術。デバイス、素材、その他ございますけれども41件ございます。左下に、これまでの推進テーマ事例で主な成果例を書いてございます。2006年の交通物流ルネサンス、トヨタがプロジェクトリーダーになってございましたけれども、これがSIPとなって自動運転のほうに結びついていきました。一番下、STEAM教育のプラットフォーム、東京大学の藤井先生が引っ張っていただいたものが、今は一般社団法人化されまして、学びのイノベーションプラットフォームということで活動を継続してございます。
 次のページは、私どもの活動ビジョンについてでございます。ありたい未来社会像に向けて、新しい社会システムのデザインと、社会の全体最適化、こういったことをモットーに、活動の具体的なプロジェクトによる提言と実現を図っていくと、そういう団体でございます。
 その次のページ、もう一つめくっていただきまして、会員は正会員37社、特別会員5大学、3国研ということで、特別会員には大阪大学、京都大学、東京工業大学、東京大学、早稲田大学と、5つの大学から御参画をいただいてございます。
 その次、ガバナンスの体制でございますけれども、理事長はNECの遠藤特別顧問、副理事長は第一三共の中山常勤顧問ということで、理事の中にも大学から、東京工業大学の益学長、早稲田大学の田中総長、このお二方に理事として参画をいただいてございます。
 その次のテーマでございますけれども、推進テーマの取組、ここは少し重複してございますけれども、次のページお願いします。
 少し文字が見えにくくて申し訳ございません。後ほどCOCNのページに行っていただければ、2006年からどういったテーマで活動を行ったかということが分かるようになってございます。先ほど申し上げましたように142件、赤枠で囲ってあるところ、エネルギー・環境のテーマが48件で、全体の34%を占めているところでございます。
 それでは、その次のページをお願いします。
 CO2削減のロードマップということで、ここに書いてございますのは、私どものテーマの中で、カーボンニュートラル関係のテーマをマッピングしたものでございます。左側にIEAのネットゼロエミッションシナリオで約500トンCO2/年の削減における技術分野ごとの寄与が示されてございます。ここに対して我々は、こういうテーマで2018年から活動をしてまいりましたということで、私どもの推進テーマのマッピングでございます。
 その次のページは、では、そういったマッピングで活動を行った結果、よし、もしうまくいったなら、という仮の設定で、前提条件はいろいろございますけれども、どのくらい貢献できるかというのをイメージしたのがこの図でございます。
 2050年は、世界で500億トン、日本で10億トン、このぐらいの削減が必要なんですけれども、その辺に対する寄与がどのぐらいの大きさになるのかというのを、丸印で書いたものでございます。濃いブルーのところ、例えば、水力発電システムなどはまだまだ小さいもので、日本では非常に寄与は少ないんですけれども、世界を見渡せばもっともっとあるんじゃないかということです。浮体式原子力発電、今日は説明をいたしませんけれども、もしこれがうまくいって各国で採用されるとすれば、2050年には非常に大きなCO2の削減に寄与するのではないか。そういったことでロードマップを作成してございます。
 それでは、各推進テーマの説明、簡単で恐縮ですけれども、御説明をしたいと思います。本日はこのAmbient Energy Platform、水素・超電導コンプレックス、緑のエコシステム、カーボンニュートラル実現に向けた水力発電システム、4つについて説明をしたいと思います。
 その次のページ。これはAmbient Energy Platformの構築と社会実装ということで、早稲田大学の齋藤先生にプロジェクトリーダーになっていただき、検討を加えたものでございます。EMSの技術開発の多くはデジタル技術と親和性の高い電力系が中心に進展しておりますけれども、エネルギーの最終利用の50%程度が熱でございます。熱利用技術の中核となるヒートポンプ技術の導入が進むと、2050年までには約1トンを超えるCO2排出削減効果が試算できております。電力のみならず、熱利用を含めたEMSによるエネルギーの全体最適化が必須ですけれども、極めてアナログ的な熱利用の技術によって、対応が非常に遅れてございます。そういった関係で、目標に書いてございますけれども、EMSを早期に実現するために異なるシステムや業態等の連携を容易とするハードウエアから、IoT、データ通信などソフトウエアまでも含めたAmbient Energy Platformを構築し、社会的要請にも柔軟に対応間可能なEMSの社会実装を示す、そうしたことを目指したものでございます。
 その次のページ、構築するエコシステムの例と書いてございます。ソフトウエアとしてのEMSだけでなく、ハードウエアとしての機器やセンサーも含めて、異業種、異システムの連携を容易とするプラットフォームを確立し、さらに右側に書いてございます「見える化」をするためにも、デジタルツイン技術等を活用した効果を予測、検証可能な体制の構築、これにより熱も含めたEMSの早期復旧に貢献すると、そういった提言を行いました。これは2022年にCOCNとして推進テーマ活動は終了いたしまして、本年度からはSIPの第3期のテーマに熱エネルギーマネジメントの基盤技術開発共通化、ここに引き継がれて、引き続き検討が加わっている状況でございます。
 その次のページでございますけれども、課題について。これは早稲田の齋藤先生から現時点での課題についてヒアリングをしたものでございます。(1)の5行目に書いてございます、熱というものは面的な広がりをもって放熱等で容易に損失するということ、また、熱の見える化が実現できていないという課題があって、どういうふうに熱の効果的な利用をやって、見える化を進めるのか。一番下の、熱のEMSをとおした最適機器制御・運用効率向上といったものが重要で、産学官で連携した基礎研究、デジタル通信技術の推進が不可欠であるということで、今現在SIPのほうでも少し検討を加えておられるようです。
 20ページも、EMSというのはグローバルな課題ということもございまして、世界中で課題を解決するための研究が非常に期待されていると、そういう状況でございます。
 その次の、テーマ、水素・超電導コンプレックスでございます。これは昨年から始めまして、まだ今年、検討をやっている最中でございます。超電導というのは、御存じのとおり臨界温度以下に冷却することでその機能が発現するわけですけれども、いかに冷やすかというところの考え方で、将来来るであろう液体水素の冷熱をうまく利用することで経済合理性も含めたいろんな提案ができるのではないか、日本の産業競争力につながるのではないかということで、今現在検討を深めているところでございます。
 目標のところに書いてございます1つ目は、カーボンニュートラルに貢献する水素冷熱を活用した新しい超電導を創出するということ。2点目が、超電導応用の国際競争力を強化し、欧米・中国に対する国内産業の優位を構築することでございます。基本的な考え方は主な結果の2つ目のポツでございますけれども、昨年度から水素と超電導のシナジーとなるコンプレックスというものにフォーカスをしております。液体水素冷熱と非常に相性のよい高温超電導を用いた新しい超電導の利用による水素・超電導コンプレックス、これを核といたしまして、エネルギー・物流・交通・情報・人流等を含めた将来のネットワーク構築、そういった社会像を今提案する最中でございます。
 次のページ、実際に広域再エネ連系の構想の中で、頭の中にある構想でございます。非常に見づらいところがございますけれども、左の図の左下に、飛行機の横に船がついている絵がございます。そちらが液体水素を乗せた海外からの輸送船になります。液体水素の陸揚げ拠点には水素を利用した産業が広がって、さらにその中で液体水素の冷熱を利用した超電導を要する産業も広がるということで、複合産業体、コンプレックスが形成される将来像を考えてございます。
 赤線の中、これもまた非常に見にくいんですけれども、右に少し大きな図を書いてございます。液体水素の冷熱を利用した高温超伝導発電機と、水素ガスタービンを組み合わせたシステムです。高温超伝導発電機の冷却した液体水素は、その後、水素ガスタービンを組み合わせて、燃料として使用します。将来のこういった再エネの大量導入に当たって電力系統の安定性が社会課題となってございますけれども、このシステムで国内の再エネ電源を広域に連系することで、電力系統の安定化、及びカーボンニュートラルに大きく貢献すると考えてございます。こういった構想が一番下でございますけれども、NEDOの調査事業につながり、定量評価をいただくことに今なってございます。
 次のページ、これは開発のシナリオで、まだまだこれから検討を加える必要があるところでございますけれども、2030年あたりに小規模な実証を、2050年には社会実装する開発のシナリオを描いてございまして、国プロによる基本技術確立、国立研究機関の試験環境整備、共同利用、こういったものを提案したいと考えてございます。
 次のページ、報告のポイント。ボトルネックでございますけれども、いろいろございます。卵と鶏の問題の解消をしなければならないということと、(2)の2、キー技術の国産化。超電導応用機器にとって、非常にキーとなる技術については国産化が非常に望ましいということで、少しこういったことも報告のポイントとしてこれから挙げていきたいと考えてございます。
 続いて、次の2点は簡単に報告をいたします。
 緑のエコシステムは次のページ、森林でのCO2の吸収、森林の伐採をして木材を利用した物で炭素の固定をする、これをうまく回していこうということでいろいろと検討を加えたものでございます。ここもそういった緑のエコシステムをうまく回していこうと、そういった報告でございます。
 すみません、時間の関係で、続いて34ページ、カーボンニュートラル実現に向けた水力の発電システムでございます。これはなかなか日の当たらない、揚水と一般水力という、既に老朽化しているものをもう一度見直して揚水と一般水力の設備更新をしながらカーボンニュートラルの実現に向けてやっていこうということで、昨年終了いたしまして、今現在、有志が残りまして勉強会を開催しているという状況でございます。
 以上でございます。最後、早口になって大変申し訳ございませんでした。
【杉山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、質疑等は最後の総合討議の時間にまとめて行わせていただくとしまして、続いてNEDOのTSCユニット長の仁木様より、カーボンニュートラル社会実現に向けた再生可能エネルギーの役割拡大について御説明をお願いいたします。
【仁木氏(NEDO)】  ただいま御紹介にあずかりましたNEDOの技術戦略研究センターの仁木と申します。よろしくお願いいたします。この重要な委員会で講演をする機会をいただき、ありがとうございます。主催者の皆様に、心より御礼を申し上げます。
 本日は、カーボンニュートラル社会実現に向けた再生可能エネルギーの役割拡大と題して、お話をさせていただきます。
 次、お願いします。
 まず、最初に我々の組織について簡単に紹介をさせていただきます。皆さん御存じのように、NEDOはエネルギー、地球環境問題の解決と産業技術力の強化という2つのミッションを掲げております。下の図にありますように、経産省と産業界・大学・公的機関の間に入って、技術戦略の策定や、プロジェクトのマネジメントを行っております。
 技術戦略研究センターでは、赤で囲った部分、技術インテリジェンスの提供をミッションとしております。こちらはTSCの体制を示しております。総勢81名で、私はサステナブルエネルギーユニットを担当しております。
 次、お願いします。
 ここでは、気候変動問題に向けたNEDOの考え方をお示しいたします。気候変動問題は人類共通の課題であり、たとえ大きな混乱が伴ったとしても我々は、この気候変動問題を乗り越えて、持続可能な社会を目指す必要があると考えています。エネルギー環境分野の活動基軸として、「持続可能な社会実現に向けた技術開発総合指針2023」を発表しています。我々、サーキュラーエコノミー、バイオエコノミー、そして持続可能なエネルギー、3つの社会システムの一体的な推進と、それを支える基盤としてデジタルトランスフォーメーションの存在は欠かせないというふうに考えております。
 次、お願いします。
 総合指針2023策定の狙いを示しております。2050年のカーボンニュートラルを見据えて、重要技術のCO2削減効果を総合的・客観的に評価することを提唱しております。最新シナリオ等に基づいて、3つの社会システムとDXに関する重要技術のうちCO2削減ポテンシャルとCO2削減コスト分析・試算を行っております。右の図にありますように、新技術の開発加速によって対策費用の大幅な低減が可能になります。
 次、お願いします。
 こちらは再生可能エネルギーの重要性を示しております。電力分野は世界のCO2排出量の40%を占めております。再生可能エネルギーはCO2削減に最も有効な技術の一つであります。特に太陽光発電と風力発電はCO2排出量の削減ポテンシャルが大きく、2050年に向けて大幅な導入拡大が期待されております。
 次、お願いします。
 日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しております。2030年のエネルギーミックスでは、再エネが36から38%、特に太陽光発電、風力発電の重要性が高まっております。
 次、お願いします。
 トピックス、太陽光のほうのお話をいたします。こちらも世界の太陽光発電システムの累積導入量の推移を示しております。2022年には大きなマイルストーンである累積導入量1テラワットを超えて、PVはテラワット時代へと突入しております。太陽光発電は導入拡大が着実に進んで、世界各地で最も安価な電源となっております。
 次、お願いします。
 こちらは生産量の推移になりますけれども、モジュール市場の拡大が進む中で、海外メーカーの低価格攻勢によって日本メーカーのシェアは2013年の約13%から、2022年には0.1%と、近年大幅に低下をしております。一方、各種太陽電池において世界最高レベルの変換効率を保持するなど、いまだに日本の技術は世界のトップレベルにあると考えております。
 次、お願いします。
 こちら、開発の方向性を示しております。主力電源化に向けて今後も導入拡大が求められる中、設置に適した土地がだんだん少なくなっていると。これまで導入が進んでいない水上・農地・壁面・そして車載分野への対応が必要となります。これらの新しい用途では既存のモジュールでは実現不可能な高い性能、例えば超高効率、軽量、高い意匠性、そして特殊な環境における長期信頼性などの付加的な性能が求められます。
 次、お願いします。
 次世代太陽電池として期待の大きい、ペロブスカイト太陽電池について説明をいたします。2009年に、桐蔭横浜大学の宮坂先生によって発見されたもので、僅か数%から、今、26.1%まで効率が飛躍的に向上しております。軽量でフレキシブルなモジュールを低コストで実現できる可能性がありますけれども、長期信頼性が課題となっております。
 次、お願いします。
 次に、タンデム太陽電池について御紹介をします。様々な用途で大幅な高効率化が求められておりますけれども、単接合太陽電池は理論限界で約30%に近づいてきております。さらなる超高効率化に向けた技術のうち、変換効率向上が最も進展しているのはこのタンデム技術になります。真ん中の図にありますように、光の吸収体の異なる2種類以上の対応電池を重ね、太陽光を幅広く吸収することで高効率を実現しております。現在、安価で高性能なトップセルがないということで、高い技術力を持つ日本が優位と考えております。GaAs系、ペロブスカイト系、CIGS系などが候補になります。
 次、お願いします。
 太陽光発電は、2050年で19テラワットの大量導入が見通されております。原料供給リスク、大量廃棄など、様々な問題が顕在化する可能性があります。太陽光発電を今後50年、100年と信頼できる主力電源として利用するためには、ライフサイクルを通じての持続可能化が求められます。最少の資源で最大の電力を得ることが重要です。
 次、お願いします。
 次に、風力発電について説明をさせていただきます。風力発電は導入が着実に進んで、IRENAによると2050年に陸上風力が5,000ギガワット、洋上が1,000ギガワットと見積もられております。
 次、お願いします。
 こちら、洋上風力の日本のポテンシャルを示しております。水深によって様々な形式の洋上風力発電が検討されております。遠浅な海岸が少ない日本では、浮体式の洋上風力発電への期待が大きくなっています。そして浮体式に適した海域は着床式の約5倍と見積もられております。
 次、お願いします。
 こちら、日本の洋上風力ビジョンを示しております。まず、政府からは2030年までに10ギガワット、2040年までに30から45ギガワットの案件を形成するという導入目標が示されております。産業界からは、国内調達比率を2040年までに60%にする、また、着床式発電コストを2030から2035年までに8円から9円パーキロワットアワーにするという目標が設定されております。次世代技術として浮体式の洋上風力が注目をされております。
 次、お願いします。
 日本における風力発電のコストというのは、先行する欧州と比較してまだまだ高く、低コスト化は必須となります。項目が多岐にわたっているために、一つのボトルネック課題を解決するだけではなく、全ての分野でのコスト低減が不可欠となります。
 次、お願いします。
 こちら、浮体式洋上風力に関する各国の状況を示しております。欧州ではノルウェーや英国で試運転が開始されております。中国や米国でも計画が検討され始めています。国内でもGI基金事業含め様々なコンセプトの浮体式洋上風車の研究開発・実証が進められております。
 次、お願いします。
 重要な技術として、ウェイク制御を紹介させていただきます。複数の風車を配置すると、風車の後流の影響が発生いたします。ウインドファーム全体での発電量を最適化するためには、最適な風車の配置を行う必要があります。岸から近いところにつくられる日本のウインドファームでは、陸地の影響を考慮した設計が必要となります。
 次、お願いします。
 新しい動きとして、垂直軸型の風車の紹介をいたします。水平軸型は重い発電機をタワーの高い位置に置くため、重心が高くなることから、基礎構造が大きくなるという問題があります。特に浮体式では、浮体の動揺が大きくなるため浮体構造も大きくなり、高コストになります。この課題の解決に向けて、浮体と一体化した垂直軸型が提案されて、開発が進められております。
 次、お願いします。
 次は、地熱のお話をいたします。地熱発電の特徴としては、天候・季節等の自然条件に左右されず安定的な発電が可能なベースロード電源というメリットがあります。下に示しますように、高温の蒸気・熱水を利用するフラッシュ型、100℃以下の熱水を利用しながら熱交換器をうまく利用するバイナリー方式、この2つが主な技術となります。
 次、お願いします。
 地熱発電は、着実に導入が進んでおります。近年の地熱開発は、トルコ、インドネシア、ケニア、アメリカ、アイスランドにおいて目覚ましい勢いで進んでおりますが、一方、日本では停滞傾向にあるという状況になっています。
 次、お願いします。
 課題といたしましては、まず、日本は資源量がもともと多いんですが、残念ながら現状、アクセス可能な地熱資源量が少ないということで、国立国定公園内への地熱の開発、この辺りが課題になります。あとはコストの問題で、開発リスクの低減、開発コストの低減ということで、探査技術、掘削技術を含めて低コスト化が必要となります。あとはリードタイムの問題で、調査から発電開始までに長い期間を要するということで、地元の理解を得ることが重要となっております。
 次、お願いします。
 新しい技術として、超臨界地熱発電を御紹介します。プレートテクトニクスによって地下に引き込まれた海水に起因する水分が高温高圧で賦存していると考えられております。超臨界地熱発電は、この地熱資源を活用しようとするもので、超臨界地熱資源は100メガワット以上と規模が大きく、新しい地熱資源として期待されております。
 次、お願いします。
 こちらは蓄電技術に関して示しております。変動、再エネの大量導入を実現するためには蓄電技術が必須となります。下の図は様々な蓄電技術を示しております。縦軸に出力規模、横軸に放電時間を取っています。左右の図を比べていただきますと、電力の周波数調整には蓄電池、月、季節を超えた長期間、大容量の貯蔵には水素が適しているということがお分かりいただけると思います。
 次、お願いします。
 水素は、フリーで製造可能で輸送・貯蔵ができ、さらに利用時にCO2を出さないということで、脱炭素化に向けた重要技術であります。また、日本のエネルギー供給構造を多様化させて、エネルギーの脱炭素化が実現する手段の一つということで、水素製造では再エネ由来の水電解、そして水素の輸送貯蔵では長距離大量輸送技術、そして大幅な利用拡大、これらの技術開発が進められております。
 次、お願いします。
 蓄電池は、再生可能エネルギーの貯蔵、そして電動自動車の利用拡大という点で、CO2削減に貢献する技術となっております。車載用蓄電池の需要は急拡大が見込まれることから、2030年における車載用の蓄電池の需要は、電力貯蔵用の15倍から30倍と大幅に上回る見通しであり、車載用蓄電池が蓄電池の主要マーケットとなることが予想されます。
 次、お願いします。
 こちらに示していますけども、車載用蓄電池は時代とともに新しい電池が開発されて、エネルギー密度が向上しております。2030年代には全固体リチウムイオン電池、2040年以降に革新型電池が主力になると考えられております。
 次、お願いします。
 最後にまとめですけれども、下の2つのポツを説明させていただきたいと思います。「GX達成には再生可能エネルギー以外の取組(例えば、CCUSやDX等)も重要であり、ブレイクスルーとなりうる技術シーズについてアカデミアに対する産業界の期待は大きい」と考えております。最後に、「地球温暖化の問題は日本1国ですべて解決できるものではなく、国際的な連携やルール作りを通して世界全体で取り組むべき重要な課題である」と考えております。
 次、お願いします。
 少し駆け足での説明になり、大変失礼いたしました。以上で私の講演を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
【杉山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、次の議題に移りたいと思います。
 議題3ですが、前回の議論をまとめた事前アンケートの結果紹介ということで、事務局より説明をお願いいたします。
【後藤(事務局)】  ありがとうございます。それでは、総合討議に先立ちまして、事務局よりごく簡単に御説明をさせていただきます。
 まず、資料3-1でございますけれども、こちら前回の委員会における主な御指摘等をまとめております。前回総合討議では、GXに関する俯瞰的な話題提供を杉山主査及びJSTのCRDSよりいただいた上で、GX実現に向けてアカデミアにおいて今後取り組むべき研究開発の方向性について御議論をいただきました。
 主なポイントといたしましては、我が国が戦略的に注力すべき技術領域については、例えば、TRLが低く、まだ企業がコミットや経営判断できないところなど、アカデミアがどういった部分に貢献できるか、そういった領域の議論が重要ではないか。また、各技術が持つ社会的な価値や法的な観点も踏まえつつ、注力すべき技術領域を探索することが重要ではないかといった御指摘がございました。
 また、人材の観点につきましては、若手同士が密に議論をして、研究テーマを議論できるような場があるとよいといった御指摘ですとか、シナリオ分析や技術経済分析ができるような人材、また横断的に新規技術の応用先を考えられるような人材を育てることも必要といった御意見がございました。
 議題1でも御議論いただきましたけれども、GteXの運用につきましては人材の流動実績、そういった人材育成といった観点もしっかりと評価をしていくということですとか、事業運営の中で産と学とが常にしっかりと対話をしていく、そういったことが非常に重要ではないかという御指摘をいただいたところでございます。
 本日、この後に総合討議をお願いいたしますけれども、GX実現に向けてアカデミアの今後取り組むべき研究開発の方向性について、引き続き御意見をいただければと思います。一方で委員会の時間も限られてございますので、効果的に議論を深めていくため、今回委員の皆様に事前にアンケートを実施させていただきました。資料3-2にまとめさせていただいてございますけれども、GX実現に向けた基本方針などに掲げられました主要分野なども踏まえつつ、我が国のアカデミアが強みを発揮できる技術領域、また、戦略的に注力すべき技術領域などにつきまして、理由とともに御意見を伺ったところでございます。
 概要を簡単に3枚ほどにまとめてございますけれども、まず、俯瞰的、全体的な観点といたしましては、1つ目のポツにありますようにエネルギーと環境負荷についての研究分野の枠を超えた全体を見るような研究・技術領域が重要ではないかというところで、全地球上での物質循環を考えた上で、研究分野枠を超えてトータルで考える必要がある中で、全体を俯瞰しながら中長期的な提言、判断ができるような研究・技術、そうした部分についてアカデミアとしては、個別技術分野はもちろんではありますけれども、精緻な研究・技術をもって、俯瞰・予測・提言ができるような、そういったところが重要ではないかといった御指摘。
 あと、社会シナリオ研究ですとか、国際標準化研究の観点として、諸外国が規制等の動きがある中、国としてしっかり対応していくために、資源循環などの体系化が難しいような研究領域を俯瞰的に研究して、国際連携によるシナリオを形成する。そうした部分ですとか、あるいは次世代インフラとして分散リソースの協調が重要といった、そういったこともある中でこれらを法律的に運用するための社会システムやメカニズムの設計研究といったものにも注目すべきではないかといった御指摘がございました。
 あとは、他分野との協力を前提としたデジタル技術も重要ではないかといった御指摘がございました。
 次のページをめくっていただきまして、領域横断的な観点といたしましては、1つ目として資源循環という観点を横軸として、蓄電池、鉄鋼といったそれぞれの製品分野を縦軸としまして、それを掛け合わせたような技術領域が重要ではないかというところで、先ほどの論点とも少し関わりますけれども、EUの規制などにも見られますように、新製品に再生材利用率が明確に求められる、そういった規制対応が進む中、単なるリサイクルではなくてリソーシングが求められるのではといった御指摘。
 また、2つ目にありますように、領域横断や境界領域といたしまして、例えば量子、AI、先端バイオ、あるいは宇宙などの境界領域、あるいは思いもしない組合せによるイノベーションといった観点も重要ではないかといった御指摘。また、異種の領域が協力した技術開発ですとか、CO2削減とともにアップサイクルを実現するような技術開発の視点も重要ではないかというような御指摘でございました。
 最後、個別領域といたしましても幾つか具体例を挙げていただいております。GteXのほうでも取り組んでおります燃料電池・水素・アンモニアや蓄電池についても挙げられておりまして、日本の産業やアカデミアが世界の中で強みを持つ技術領域としてさらに現在の強みを生かす必要があるという御意見をいただいております。
 次のページでは、そうした技術を支えるものとして、化学・素材関連技術についても日本が強い分野として、現在の強みをさらに生かす必要があるといった御意見。
 また、エネルギーを効率的に利用するために、デジタル技術の活用は必須でございますけれども、半導体の分野につきましてはこうしたデジタル化において直接的あるいは間接的に貢献できる分野が多くあるというところで、アカデミアでの研究開発の促進が期待されるというところで、人工知能とデジタル製品による最適化ですとか、クラウドサーバーの省電力化、あるいはパワーデバイスや半導体の製造プロセス自体の省エネルギー化、省資源技術、そういった部分について御意見をいただいてございます。
 そのほか再生可能エネルギーですとか、系統・調整、あるいはデジタル投資、インフラ、自動車、次世代革新炉等についても御意見がございました。
 最後、留意点といたしまして注書きで書いてございますけれども、アカデミアにおいては領域横断型での技術開発ですとか、幅広い領域の人材育成も重要であることから、バランスにはなるかと思いますけれども、注力すべき技術領域として過度に絞り過ぎることのないように留意も必要ではないかといった御意見もございました。
 こちら、事前アンケートにつきましては、最初に申し上げましたとおり、あくまで本委員会における検討の足がかりとするものですので、この結果によって具体的な技術領域を特定・決定等を行うことを目的としたものではございませんけれども、こうした御意見ですとか本日の話題提供なども踏まえまして、この後、総合討議においてさらに御議論いただければと存じます。
 事務局からは以上となります。
【杉山主査】  ありがとうございました。
 ということで、総合討議に入っていきたいと思いますが、まず冒頭に、今回はGteX、それからALCA-Nextの両方の採択が決まりまして、テーマの紹介がございました。その観点でマネジメントをどうしていくのか、あるいは今後のプレーヤーの新規追加、あるいは入替え等も出てくるかと思いますので、プロジェクトを今後どのように運営していくのかという観点の御議論が一つあるかと思います。
 それから、後半では若干盛りだくさんになりましたけれども、特許、それから産業界での検討、そしてNEDOが俯瞰的にグリーントランスフォーメーションを眺めたときの状況認識と戦略といったことを御議論いただきまして、またそれに合わせまして、既に皆様方からいただいたアンケートの内容等について改めて紹介させていただいたところでございます。
 ということで、論点は大きく分けると、マネジメントと、それから今後新たにどういうテーマ等を発掘していくべきなのかという観点があるかと思いまして、これは蛇足になるかもしれませんけれども、先ほどの資料3-2のページ4に、改めて総合討議のポイントの参考ということで幾つか論点を書かせていただいておるところでございます。そうした中で特に先ほど申し上げましたとおり、技術領域をいかに見出していくか、そういう中には俯瞰的な観点も非常に重要であるとか、領域横断の研究が非常に重要であるということも改めて強調されていたかなというふうに思っております。
 ということで、限られた時間ではございますけれども、ぜひ委員の皆様方から御意見をいただきたいと思っております。今回は順不同でいただきたいと思います。また、ちょっと時間が限られておりますので、途中で尻切れトンボになってしまいましたら、また次回に持ち越しながら議論を深めていくということも考えていきたいと思います。
 まずは、御意見のある委員の方々、ぜひよろしくお願いいたします。
 本郷委員、お願いします。
【本郷委員】  いろいろ説明いただきまして、本当にありがとうございます。そこで、ちょっと見えてきたポイントの一つなんですけれども、日本にはいい技術がたくさんありますよと。また、それが当初非常にリードしていたけれども、結局、競争力を持ち得なかった。それはなぜだろうかと考えたとき、一つに製造技術というのがあるかもしれないと。この製造技術についてアカデミアがどういうふうに協力できるのか、この辺りについてももう少し考えてもいいのかなというふうに思ったところです。
 それからもう一つ、今回、様々なところで産業側が取り組んでいますということをお聞きしました。では、その中で、産業側でさらに進めていくためには何がボトルネックになっているのだろうか、という点が気になりました。アカデミアのほうに産業が欲しいものに対応できるか、などの問いかけというか、情報をどういうふうに発信しているのでしょうか。この辺りも、鍵なんじゃないのかなという気がします。アカデミアの人たちと話をすると、こんなにいいものがあるんだけど、どういうふうに使ってもらおうかと。シーズ側からニーズ探しをしています。一方で産業側、つまりはニーズ側からシーズ、つまりはアカデミアへの問いかけ、ここが十分なのかちょっと気になったというのが、今日御説明をいただいた印象でございます。ありがとうございます。コメントです。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 続きまして、佐々木先生、よろしくお願いいたします。
【佐々木委員】  九大の佐々木です。私からは1点だけお話しさせていただこうと思います。
 先ほどの資料で、やっぱり研究領域を過度に狭め過ぎないという御指摘がありましたけれども、これはすごく大事なポイントだと思います。GXの中で、日本全国いろんな省庁でもやられていますけれども、アカデミアがまさにGXの苗床になるべきだと思いますし、そういう中でチャレンジングな取組ができるのが大学であり、国研かなと思います。なので、特にGXの分野ですとNEDOさんとのデマケというのが大事になります。ある程度産業界のロードマップがあって、それに対応できるようなものがNEDOの事業で実施されますけれども、それとの差別化、デマケという観点では、まさにチャレンジングな取組をして、アカデミアからいろんな新しいシーズを出すというところにぜひ取り組んでいただければ、文科省さん、JSTさんのプロジェクトの価値が社会全体で上がるのかなと考えます。
 私からは、1点コメントとさせていただきます。以上です。
【杉山主査】  ありがとうございました。
 続きまして、水無委員、よろしくお願いいたします。
【水無委員】  ありがとうございます。NEDOの水無です。
 2点あって、1点目は本郷委員と同じで、産業界とのコミュニケーションをどのように行っていくか、有効にニーズを反映させてということがポイントだと思います。
 それから2点目が、いろいろやりたいことがある中で、多分予算も限られていることもありますので、技術的な観点から見るだけではなくて、このアンケートにも記載されているように、社会科学的な観点での評価指標などをもう少し充実させながら、その実施事項がどのように環境や産業に影響してくるのかということを客観的に評価した上で決めていくというプロセスも必要なのではないかなと思いました。
 以上です。
【杉山主査】  どうもありがとうございます。
 今のところ手が挙がっていませんが、先ほどの産業界とのコミュニケーションにつきましては、ぜひプロジェクトの運営の前線に立っております魚崎先生から何かコメントがあったらいただければと思いますが、魚崎先生、いかがでしょうか。
【魚崎GteX・PD】  先ほども少し言いましたが、産業との連携は非常に重要なわけですが、一方でアカデミアの先生方にどこまでそれができるのか、また、GteXやALCA-Nextの限られた資金の中でどれだけのことができるのか、などについてはよく考える必要があると思います。アカデミアと産業界の連携という大きな枠組みでは、NEDOがあり、NEDOの中にもいろんなレベル感があるわけですね。そしてGI基金もある。そういう中で、文科省の委員会である本委員会ですべてを議論することは困難で、実際問題は国全体として、文科省による基礎基盤研究、経産省による応用、実用化研究開発、そして企業による社会実装をどういうふうにやっていくのかという大きな議論が要ると思います。もちろんそれはおのおのの水素、蓄電池、バイオのガバニングボードもありますし、その上の文科省、経産省の局長会議もありますので、そういうところで大きく議論していくことが非常に重要ではないかと思っております。
 せっかく当てていただきましたので、先ほど最初のところと、直前にもありましたことについて少しだけ触れさせていただきますと、チャレンジングなことをやるべきだというのは全くそのとおりで、そういう意味でGteXは目的志向のチーム研究ですが、それにつなげていく、ALCA-Nextという枠組みを設定しているわけです。今年度の公募で非常に多数の応募があったのですが、チャレンジ性という観点ではまだまだ物足りないのかなというところがありまして、チャレンジ性の高いテーマの応募を増やすために積極的に研究者を発掘していく必要があり、特に若い人たちのアイデアをどう発掘していくのかが課題です。面白いアイデアだが、十分な予備実験はできていないといったテーマについて、受け止め、挑戦してもらう、といったことをこれからやっていく必要があるんじゃないかというふうには思っております。
 あともう一つだけ。ステージゲート、あるいは新陳代謝ということも先ほど質問にあり、ステージゲートで退場していく必要があるんじゃないかというコメントもありましたが、これはまさに大事な点で、実際ALCA-SPRINGにおいては、チーム自体が退場したこともありますし、チームの中の研究者が退場したということもあり、、当初参画した研究者の半分しか最後まで残っておらず、逆に最後の時点でのメンバーの半分は新たに入った人で、特に異分野の人を途中段階で積極的にメンバーに入れております。このようにALCA-SPRINGで10年間厳しくやってきていますので、今回のGteXの運営においてもステージゲートの厳密な実施、研究者の新陳代謝、異分野研究者の参画など積極的にやっていきたいと考えています。
 以上です。ありがとうございます。
【杉山主査】  魚崎先生、どうもありがとうございました。
 佐藤委員、よろしくお願いいたします。
【佐藤委員】  よろしくお願いします。魚崎先生の後に、なかなかちょっと発言しにくいのですが、今日は本当にいろいろお話をありがとうございました。
 特許庁様のお話を伺って、いろいろ近年の動きも分かり、多分、蓄電池分野はやはり文科省様の実施された効果が非常に出ていて、日本がイニシアチブを取れているということがすごく分かった思いがしましたし、COCNの皆様のお話やNEDOのTSC仁木様のお話を伺いますと、この流れが、大学、アカデミアの先生方にもう少し伝わると、さらに目的を持って進めることができるのかなというふうに一層強く感じた次第でございます。
 最後に、事前アンケートの1番は、私がコメントさせていただいたのですが、重要な技術がたくさんある中で、やっぱり俯瞰的に見ることは非常に大事だなというのを感じています。日本でも将来的な考えをきちんと言える先生は多いと思うのですが、さらに一歩上の立場から、こういうことが我が国として大事なんじゃないかと提言できる先生が増えるような流れが大きくできるといいなと個人的に感じております。そのようなことにも協力できればと思いますので、今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
【杉山主査】  どうもありがとうございました。
 続きまして、菅野先生、お願いします。
【菅野委員】  菅野です。どうもありがとうございます。2点コメントをさせていただきたいと思います。
 1点は産業との連携ですが、先ほど、蓄電池で日本は産業があり、ヨーロッパ、アメリカは産業がないという話がありました。それは日本の強みでもあるし、逆に基礎研究にとっては弱みでもあります。できるだけ産業がある強みを生かすような方向で研究をしていただきたいというのが1点。
 2点目は、横断的という観点です。どの課題でも「横断的」が強調されていると思いますけれども、GteXで研究を進める上で、材料に広げる、応用に広げる、それぞれの課題の近くのところで領域を広げて横とのつながりを広げてゆくのが重要です。例えば、GteXが3分野で走り始めましたけれども、すぐには無理かもしれませんけれども、この3分野間で何か連携ができるような方向を探るのが、とりあえず連携を進める手っ取り早い方法かと思いました。
 以上です。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 続きまして、田中先生、お願いいたします。
【田中委員】  田中でございます。御説明ありがとうございました。非常に興味深い話だったかなと思います。特許庁のGteXに関しては、私も参加させてもらっていましたので、10年ぐらいの特許の推移とかを見て、二次電池は非常に強いなというのはやっぱり思っていたところでございました。
 一方で、研究がすごく幅があるといろんなバリエーションをひたすら増やしていくんですが、ちょっと気をつけなきゃいけないなと思ったのは、全てにおいて研究をしておくのも必要なんですが、需要側がどう使いたいかというところも見ておきつつ、ある程度ニーズが見えてきたものをいかにリーズナブルな価格で出していくかという研究、需要側がどう取り込むかという研究も併せてできていくとすごく幅が出てくるかなと思っていたところでございます。
 あと、いろんなお話を聞いていて、洋上風力はNEDOさん、COCNさんも書かれていましたけれども、非常にこれから期待できるなと思っていますし、日本の資源はかなり大きいので、これは期待できるところかなというのが今日勉強させてもらったところでございました。
 最後のアンケート、これは非常に示唆深いものがいっぱいありますので、ちょっとまだ全部読み込めてないですけれども、こういったところも含めながらぜひできたらと思いますが、私のポイントとしては、IPCCのCOPの会議でも、少しテーマが変わったとき、どんな分野でもものが出せたのは日本で、非常に研究の幅が広かったんです。一方で、しばらくそれに注目が集まって進展すると、だんだん日本のプレゼンスが下がっていくところもあるので、最後までプレゼンスが出せるような、そういう形の演出もしていただけると非常にいいかなと思って、期待をしているところです。
 以上でございます。ありがとうございます。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 続きまして、五味先生、よろしくお願いします。
【五味委員】  ありがとうございます。今日は非常にいろいろお聞かせいただきありがとうございます。
 皆さんと同じ意見なんですけれども、やはり先ほど佐々木先生が言われたようなチャレンジングで新しい技術が出てくるにはいろいろ研究者の層が厚くならないとどうしようもないと思いますし、言葉は悪いんですけど、変な考えを持った人がどんどん入ってきてやっていただきたいということもあるんですね。やっぱり今回、チームも優秀な人たちが入っていていいと思うんですけど、革新的技術開発で5、6件ずつ、若手の人でチャレンジングなところを取っていただいて非常にありがたいと思います。こういうものをもう少し増やしてあげて、いろいろ切磋琢磨して、若手の人たちを生かすような採択のことも今後考えていただけると、その中から思いもかけないブレークスルーが出るかなと。期待したいと思いますので、ぜひそういうところもよろしくお願いしたいと思います。
 以上です。
【杉山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、お時間押していますが、最後に文科省の轟課長から、一言お願いします。
【轟(事務局)】  先生方、様々有用な御意見をありがとうございました。
 その中で、産業界とアカデミアの連携とか、あとは俯瞰的に見ていく必要性と、そういったことは経産省と文科省の間の課長級のガバニングボードや、局長級の合同検討会のほうでも意見が出ておりまして、一つは社会実装できる技術開発であるかどうかを見極めていく、そのためにもシンクタンク機能の強化が重要であろうと。異なる角度から調査を行っている、NEDO、本日もTSCのほうからもプレゼンをいただきましたけれども、それとアカデミアのJSTのCRDSが連携するといったようなことも考えていくことが必要であろうといった意見もいただいております。そういったところも含めて、引き続き本会議でも議論をしていただきたいと思っています。
 以上でございます。
【杉山主査】  どうもありがとうございました。
 若干、時間を超過しまして申し訳ありません。それでは時間となりましたので、総合討議を終了いたします。
 ということで、本日の議題は全て終了となりましたので、最後に事務局から事務連絡をお願いいたします。
【後藤(事務局)】  ありがとうございます。本日の議事録につきましては、後日事務局よりメールで委員の皆様にお諮りした後、文部科学省ホームページに掲載することで公表させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 次回の委員会につきましては、2月頃を予定しております。日程が決まり次第改めて御案内をいたしますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
 事務局からは以上となります。
【杉山主査】  ありがとうございました。
 これをもちまして、環境エネルギー科学技術委員会革新的GX技術開発小委員会の第7回会合を閉会いたします。
 本日は、遅くまでどうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局環境エネルギー課

(研究開発局環境エネルギー課)