革新的GX技術開発小委員会(第6回)議事録

1.日時

令和5年9月21日(木曜日)15時30分~17時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

 1.文部科学省のGX関連施策の状況
 2.前回までの議論の振り返り及び今後の議論の進め方
 3.GXに関する俯瞰的話題提供
 4.総合討議

4.出席者

委員

杉山主査、森主査代理、石内委員、菅野委員、五味委員、佐々木委員、佐藤委員、志満津委員、田畑委員、所委員、新田委員、平本委員、本藤委員、水無委員

文部科学省

林研究開発局審議官、轟環境エネルギー課長、後藤環境エネルギー課長補佐、釜井ライフサイエンス課長、田崎ライフサイエンス課長補佐 他

オブザーバー

経済産業省、科学技術振興機構 他

5.議事録

【後藤(事務局)】  それでは、お時間になりましたので、ただいまより、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会第12期環境エネルギー科学技術委員会の革新的GX技術開発小委員会第6回会合を開催いたします。
 冒頭、進行を務めさせていただきます、研究開発局環境エネルギー課の後藤です。本日は、お忙しい中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 本日は、オンライン会議になります。事前にお送りした「進行上のお願い」のとおり、発言の際はビデオ、マイクをオンに、発言されていない際はオフにするよう御協力をお願いいたします。また、御発言いただく際には、「手を挙げる」のボタンを押していただくか、チャットにてお知らせください。指名を受けて御発言をされる際には、マイクとビデオをオンにし、お名前をおっしゃってから御発言をお願いいたします。
 また、本日の議題については全て公開議題となり、会議の様子はユーチューブを通じて一般傍聴者の方に公開されています。
 議事に入る前に、まず、本日の資料を確認させていただきます。議事次第、資料1から4、そして参考資料0のファイルをメールでお送りしておりますが、もし不備等ございましたら事務局までお申しつけください。資料のほう、よろしいでしょうか。
 なお、本日は、事務局の文部科学省環境エネルギー課及びライフサイエンス課、経済産業省産業技術環境局エネルギー・環境イノベーション戦略室、科学技術振興機構、有識者として近藤科学官のオブザーバー参加がございます。それぞれの御紹介につきましては、出席者名簿に代えさせていただきます。
 また、本日ですが、田中委員、本郷委員が御欠席、また、佐々木委員が少し遅れて御参加されるかと思います。現時点で御出席の委員は13名と過半数に達しておりますので、委員会は成立となります。
 事務局からは以上となります。
 ここからの進行につきましては、杉山主査にお願いできればと思います。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 皆さん、こんにちは。主査の杉山でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は、議事次第にございますとおり、4件の議題を予定しております。委員の方々からは忌憚のない御意見をぜひ頂戴いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 また、委員会の終了見込みは17時頃を予定しております。
 それでは、議題に入りたいと思います。まず、議題1ですけれども、文部科学省のGX関連施策の状況について、事務局より説明をお願いいたします。
【後藤(事務局)】  ありがとうございます。
 それでは、事務局より説明をさせていただきます。環境エネルギー課で課長補佐をしております後藤です。
 では、資料1に基づきまして、文部科学省のGX関連施策について、概算要求の状況を含めて御説明をさせていただきます。
 まず、1ページ目になります。こちらは過去に、この委員会でもお示しをさせていただきましたが、GX関連領域から見た主な文科省の関連施策のマッピングになっております。GXは関連領域が非常に多岐にわたっておりますけれども、文科省の施策といたしましても、赤枠でくくっているようなGX関連領域を主眼としたような施策から、青枠で示しているような基礎研究や産学連携、国際連携や拠点形成、そうした事業の中において一部にGX関連領域を含むもの、あるいは緑枠に示すような、分野は特定しないものの広く基盤整備や人材育成に資するものなど、様々なスコープの施策が存在しており、GX実現に向けた、主にアカデミアの取組を支援してございます。
 この中でも、本日、赤枠で囲みましたGX関連領域を主眼とした施策について、もう少し御紹介をさせていただきます。
 2ページ目は、既に御案内の方も多いかと思いますけれども、JST、科学技術振興機構で実施しておりますGX関連の技術全般を対象とした研究開発事業の変遷をお示ししております。まず、2010年にALCA事業が発足をいたしまして、温室効果ガスを大幅に削減するためのブレークスルーを目指した研究開発を推進してまいりました。2017年には、JST内の事業の統合・再編によって未来社会創造事業が立ち上がりまして、その中の領域の1つとして低炭素領域で、この分野の新規提案募集が実施されてまいりました。そして近年、国内外のGX関連の動きの高まりに対応いたしまして、まさに今年度から、チーム型のGteX基金事業、そして探索型のALCA-Next事業の研究開発を開始するといった状況になってございます。
 GteX基金事業につきましては、昨年度末、本委員会の皆様にも集中的に御議論いただき、基本方針及び研究開発方針を決定いたしまして、今まさにJSTにおいて公募選考作業の大詰めを迎えているところです。こちらは10月頃から研究開始の予定でして、本日、残念ながら採択結果の御報告はできない状況ではございますけれども、次回の委員会において、状況を御報告させていただきたいと考えております。
 次に、ALCA-Nextですけれども、こちらについては、本年度の公募選考をGteXと連動して行っておりまして、11月頃に研究開始の予定となっております。こちらはJSTの運営費交付金によって実施しておりますけれども、GteXよりも幅広い6つの領域で、毎年、継続的に新しい提案を募り、様々な技術シーズを育成していきたいと考えておりまして、令和6年度の概算要求におきましては、今年度とほぼ同規模の30課題程度を新規に採択することができるよう予算の要求をしているところでございます。
 また、その下には、未来型として、新規移行2課題分を計上しております。こちらは未来社会創造事業の低炭素領域で採択をいたしました探索研究課題から、ステージゲート評価を経て本格研究フェーズに移行すべき課題について、ALCA-Nextと一体的な運営を行うための工夫の一環といたしまして、ALCA-Nextのほうに予算を計上させていただいております。
 こちらは先ほど御説明をしたGteX、そしてALCA-Next公募採択スケジュールになります。もう間もなく公募選考結果もオープンになるかと思いますので、次回以降の委員会で御報告をさせていただきます。
 続いて、半導体関係の施策でございます。半導体はカーボンニュートラルの実現やデジタル社会を支える重要な基盤でありまして、経済安全保障にも直結する技術として、省エネ・高性能な半導体の重要性はますます高まっております。文科省においては、主にロジックやメモリなどの半導体集積回路の研究開発におけるアカデミアの拠点を形成するために、令和4年度からX-nics事業というものを開始しております。こちらでは既に3拠点を採択しておりまして、東京大学拠点では自動設計技術、東北大拠点はスピントロニクス、東工大拠点はGreenな半導体技術など、それぞれの特徴を生かした拠点運営をしていただいております。令和6年度の概算要求においては、生成AIの台頭等を踏まえました半導体研究開発の動向を踏まえまして、各拠点の強みを生かした研究開発を加速するための経費を含めた12億円を要求しております。
 もう一つの半導体関係の施策として、電力の変換や制御を担うパワーエレクトロニクスを対象としまして、ガリウムナイトライド、GaN等の次世代半導体の研究開発を推進しております。平成28年度から実施した前身事業において創出されました高品質なガリウムナイトライドの結晶成長技術などを基にいたしまして、パワーデバイスや受動素子、回路システムなどを含めたパワエレ機器トータルとしての総合的な技術開発を推進しております。令和2年度より開始をしておりまして、今年度、事業の折り返しに当たりますので、これまでの進捗を踏まえまして、領域間の一体的な研究開発や企業等との連携をさらに進めて着実に事業を推進していきたいと考えております。
 資料1の御説明については以上でございます。
【杉山主査】  御説明ありがとうございました。
 ただいまの説明に関しまして、御質問等ございましたら承りますが、いかがでしょうか。特によろしいですか。では、特にないようでございましたら、また、後の討論で、まとめて御質問等をいただければと思います。
 では、次の議題に移りたいと思います。議題2は、前回までの議論の振り返り、及び今後の議論の進め方ということで、まずは、事務局より御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
【轟(事務局)】  環境エネルギー課長の轟です。
 昨年12月から3月までの短期間において5回の集中的な御議論をいただいて、現在GteXは間もなく採択課題が決まるという状況になっております。誠にありがとうございます。
 それでは、これまでの議論の振り返りということで御説明をさせていただきます。国内外でグリーントランスフォーメーション(GX)に関する大きな動きがある中で、我が国のアカデミアがGXにどう貢献できるかという大きなテーマ下で委員の先生方から様々な分野にわたって話題提供をいただきまして、それも踏まえて、まずは、昨年度の補正予算で確保できましたGteXについて集中的に御議論をいただいたということでございます。
 その中で、いただきました御意見を簡単に振り返らせていただきますが、小委員会の進め方については、社会的ミッションからバックキャストした研究開発テーマを設定すべきであるということで、諸外国の動向を含め専門家からの様々な情報提供をお願いしたいという御意見がありました。
 それから、研究テーマ設定等については、様々な技術シーズにつながるサイエンスの芽を育てることが重要、ボトルネック課題の洗い出しは必要、異分野の多様な研究者を巻き込む仕組みが重要、将来社会が求める新たな価値軸を取り入れることが必要で、循環経済、自然資本という概念の導入も一案であるといった御意見をいただきました。
 次、GX実現に向けた研究開発の進め方についてですけれども、領域をまたいだ議論・研究ができるような環境が重要、既に実用化された技術であっても、基礎研究が必要になるものもあり、それらについては基礎研究に立ち返りながら社会実装を進められる仕組みが重要、研究開発開始後も軌道修正をしながら進めることが必要、研究マネジメントについての研究もアカデミアの中で加速していくことに期待したい、それから日本が必ずしも強くない分野に関しては海外と積極的に組みながら、日本のイニシアチブで進める方法も有効ではないか、などの御意見をいただきました。
 次のページ、出口を見据えたアプローチについてですが、橋渡しの仕組みが必要であり、その際、企業の本音を聞き出す工夫が必要で、例えば研究シナリオの策定段階からアカデミアと企業が一緒に活動することを期待するといった御意見をいただきました。また、オープン・クローズ戦略や知財、これは重要でありまして、特に知財の外国出願、技術の国際標準化も重要であろうという御意見をいただいております。
 次、人材育成についてですが、プロジェクト全体を牽引する人材として、日本あるいは世界全体を広い意味で俯瞰できる人材を発掘・育成することが必要、問題を解決する人材だけではなく、何が問題かを見つけ出す人材の育成も重要、アカデミアと企業とが密接に連携した若手人材育成のシステムづくりが必要であるといった御意見をいただきました。
 その他としまして、GteXはGXに貢献するということで、温室効果ガス削減への効果を的確に把握することが必要、それから、これは経産省/NEDOと連携してやっていくという立てつけですので、その協力や役割分担について、ガバニングボード、これは経産省、文科省の担当課長レベルでやっているもの、それから、その上では合同検討会を局長級でもやっておりますので、そういったものをしっかり組んでやっていってほしいといった御意見をいただいております。
 こうした貴重な御意見をいただきまして、それを踏まえてGteXの基本方針を4月に決定させていただきました。全体の主な方向性というところで、トップレベル研究者によるオールジャパンのチーム型で行う統合的な研究開発を支援する、温室効果ガス削減・経済波及効果に対して量的貢献等が期待できる短期・中期・長期の研究開発課題を設定する、それから主な支援対象は大学・国研等とするが、必要に応じて技術研究組合や企業等の参画も可能とする、総括責任者としてのPD、各領域の責任者としてのPOを任命して、採択審査・ステージゲート評価等において、研究開発課題やチーム体制等を機動的に見直していく、それから、協調領域から競争領域への移行シナリオ等を検討し、オープン・クローズ戦略を策定する、研究成果やデータの共有範囲等についての方針や知的財産に関する方針を策定する、自動・自律実験等の新たな研究手法、研究DXの導入を行う、あとは、同志国のトップレベル研究機関との戦略的な連携を促進する、こういった方向性で、このGteXを進めていくということになっております。
 上記の観点に加えて、科学的にも優れたものであり革新性があるが、アカデミアからの独自性のある貢献が期待できるか、などの観点から、蓄電池、水素、バイオものづくりの3領域で今、公募をしておりまして、間もなく採択が決定し、10月から研究開発が開始されるということになります。
 そうした中で、本委員会で、どういう議論を進めていくかということですけれども、2点ほど提案をさせていただきます。1つ目は、GteX事業の推進の方向性についてです。本委員会での議論に基づいて策定したGteXの基本方針等を踏まえて、GteX事業の進捗状況を定期的に御確認いただき、必要に応じてアドバイスをいただくということでございます。GteX基本方針の最後のページに、基本方針等については、事業の進捗状況等を踏まえて、必要がある場合には、本委員会等での議論を踏まえて柔軟に見直すという趣旨の内容が明記されておりますので、ぜひ、本委員会の先生方には、御協力をお願いしたいと思っております。
 2つ目は、GX実現に向けた様々な領域や施策の方向性についてでございます。説明の冒頭でも述べましたけれども、我が国のアカデミアがGXにどう貢献できるかという大きなテーマの中で、まずはGteXについて前回まで御議論をいただいたということでございます。今後ですけれども、他方で、GX実現に向けた研究領域は多岐にわたるとともに、チーム型に限らず探索型や研究者養成などの多様な施策手段を組み合わせて推進する必要があることから、これまでの議論の振り返りも踏まえつつ、GX実現につながる様々な領域や施策の方向性について御議論いただいてはいかがかと考えております。例えば、諸外国におけるGX関連の政策・産業・研究開発投資動向、日本のアカデミアが強みを持つ技術領域、産業界等における技術的なボトルネック課題等について、外部の有識者も含めてヒアリングを行い、GX実現に向けてアカデミアが今後重点的に研究開発に取り組むべき技術領域等を御検討いただいてはいかがと考えております。
 以上、御検討よろしくお願いいたします。
【杉山主査】  轟課長、大変ありがとうございました。
 ということで、今まで主にGteXに向けて集中した御議論をいただいていた中で、GteXに限らずGXに関する今後のアカデミアの活性化策についての委員の方々からいただいた御提言を振り返りまして、また、最後には轟課長からいただきましたように、この委員会はGteXのためだけに行っている委員会ではございませんので、今後の総合的なGX推進のためのアカデミアの活性策について、どういう策を展開していったらいいかということについて改めて今回議論いただきたいというようなことを表明いただきましたけれども、委員の先生方から、何か振り返りで漏れていることであるとか、あるいは一言付け加えておきたい、あるいは今後の方針について、こういうことも大事ではないかというような御議論がありましたらぜひいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 特によろしいですか。では、また、まとめて、話題提供も踏まえまして、最後に少しまとまったお時間を取っておりますので、御議論いただければと思っております。よろしくお願いいたします。
 それでは、次の議題に移りたいと思います。議題3は、GXに関する俯瞰的な話題提供ということでございまして、今まで私、主査の席でいろいろと司会させていただいておりましたけれども、たまには話題提供もということでありまして、今回は一委員として話題提供をさせていただきたいと思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 それでは、資料を投影していただいておりますので、15分ほど御説明させていただければと思っております。
 今回は、GteXに限らず、私自身は、もともと再エネの研究者、特に太陽光中心、水素中心などでやってきたんですけれども、最近、エネルギーシナリオということでいろいろと検討しているところもございまして、そうした中で思うところを少しお話しさせていただければと思います。
 では、次、お願いいたします。このGXに関する動きというのは非常に多岐にわたっておりまして、とかく私自身もそうなんですけれども、いろいろなことが頭の中に入ってきて、ともすると取っ散らかってしまうというのは、そういうこともあるかと思っております。そういうことで、これは私があえて申し上げるまでもないかもしれませんけれども、こうしたGXに関する様々な取組というものは、本当に時間スケールでも、あるいは空間スケールでも、いろいろな観点でマッピングできるのではないかと思っておりまして、そういうマッピングをした中で、いろいろな注力すべき領域、あるいは、場合によっては投資規模などというものも考えていく必要があるのかなと思って、このようなことで書かせていただきました。あえて中身については、この後、説明するので、ここでは申し上げません。また、ほかの軸でも、地域軸、縦軸と少し似ているかもしれませんけれども、例えば各技術がどのぐらいの量をカバーできるのか。場合によってすごくいい技術なんだけれども、導入可能量は極めて限られているようなこともあるかもしれません。あるいは、その技術の成熟度、こうした観点でもマッピングもできるかもしれませんので、この多軸なマッピングの中で、それぞれの技術を位置づけて、どのように取組を強化していくのかということを考える必要があるのかなと思っております。
 そういう中で、まず、一番左上の地産地消のまちの魅力創造というところで考えていきたいのが次のスライドでございます。こちらは私が所属している先端研が連携しております長崎の壱岐市、福岡から船で、ジェットフォイルで1時間半ぐらいでしょうか、離島でございまして、ここは電力系統も本土とつながっておりませんので、まさに電力の自立した島であると言えます。ここで、1つの再エネの自立型供給システムをつくってみようということで、太陽電池から蓄電池、それから長期電力貯蔵用の水素に電力を蓄えるという仕組みを併用することによって、フグの陸上養殖場に無停電で電力を届けようということをやっておりまして、今、順調に稼働しているところでございます。
 こちらは、ポイントは幾つかございます。まずは、こういう地産地消の取組、メリットを出せるとすると、いわゆるコジェネレーションと申しますか、電力だけではなくて熱などのエネルギーも併用していく、これによって総合エネルギー効率を上げていくということでございます。それから、酸素と書いておりますけれども、実は水の電気分解で電力を水素に変換して蓄える際に、酸素が副産物で出てきます。なかなか有効利用するのが難しいんですけれども、この場合では、酸素もフグの生育に有効に使えるということで、エネルギーだけではなくて物質の無駄ない利用ということも心がけているところであります。
 それから、実はフグを狙ったのは理由がありまして、比較的高級魚でありますので、幾ら電力をかけてフグを育てても、最終価格が結構高いので、フグの最終価格に占める電力代の割合ってあまり大きくないんです。ですから、再エネを進めようということでよく問題になるのが、エネルギーコストが上がるということですけれども、エネルギーコスト以上の価値を持っているものに優先して再エネという新しい概念を加えていけば、ある意味、ちょっとした価格上昇の中で、この再エネ100%という新しいパラダイムの付加価値が受け入れてもらえるのではないかと、こんなこともと狙ってやってみたということでございまして、要はこのエネルギーだけではなく社会の受容性であるとか、物質循環・エネルギー循環ということの価値も絡めた総合的なストーリーづくりというものが必要かなと思いまして、こういう取組の例を紹介させていただいたというところでございます。これはもちろん1つの例でございまして、皆様方の周りにもいろいろな例があるかなと思いますし、ますますこういうことを仕掛けていくのが重要かなと思っております。
 では、次のページをお願いいたします。一方で、こうした右上にございますような地産地消の取組を進めていくだけでは、なかなか国全体あるいは世界全体のカーボンニュートラルの達成というのは難しいものがございますので、やはりこのエネルギーシステムを俯瞰的に眺めて総合的な対策を施す必要がございます。そういう中で、釈迦に説法のことをもう一度申し上げて恐縮ではございますが、我々、これから脱炭素の世界、脱化石の世界の中では、太陽光・風力を主なエネルギー源にしていきたいものでございますから、そうすると電力が主要なエネルギー源になる必要がございます。したがいまして、真ん中辺に書いてあります電化率の拡大、これが非常に重要になってくるわけです。ただ、電化を進めただけでは、実はカーボンニュートラルは達成できませんで、燃料がどうしても必要。それは電力の変動する太陽光・風力をマネージするための火力発電にも必要ですし、また、下のほうに書いてあります移動体、それから右下のほうに書いてあります工業用の高熱源、こうしたものに全て燃料が必要ですので、この電化率の拡大とそれから燃料のCO2フリー化、この2つが両輪となってエネルギーシステムのカーボンニュートラルが進むと考えられます。また、このCO2フリー水素の右に書いてあるe-Fuel、いわゆる合成燃料です。こちらの位置づけがなかなか難しいところではございます。便利なのでたくさん使いたいんですけれどもという話を最後ちょっとさせていただきたいと思います。
 では、まず、次のページをお願いいたします。こういうようなことを定量的にまとめることが非常に大事でございます。実は2050年の日本のカーボンニュートラルを達成するためのエネルギーシナリオというのは、多分10近い数が発表されているかと思います。我々も最近、東京大学のグローバル・コモンズ・センターのアクティビティーといたしまして、こちらにリンクを書いておりますけれども、2050年の、これは積み上げ型でエネルギー需要を見積もりまして、そして電力に関しては電力ミックスを考えていくと、そういうアプローチで2050年のエネルギーシステムが脱炭素する、脱化石燃料をするためには、あるいはNet Zeroを達成するためには、こういうやり方があるんではないかということを提言させていただきました。
 ここでは細かいことは申し上げませんけれども、各セクターにおける縦軸の大きさに相当するエネルギーの大きさ、それから横軸の、どういうエネルギー源を使っているのかということで、色のプロット見ていただければと思うんですが、左側の化石を重用している現在の姿から、右側にあります、先ほど申し上げました電化が進みまして、そして燃料源といたしましては、化石燃料に代わってCO2フリーな水素もしくはアンモニアが使われていくと、こういうような社会に持っていけばNet Zeroができるということを提唱させていただいているということでございます。
 次、お願いいたします。そういう中で、この電力需要は電化が進むにつれて、省エネ化は進むんですけれども、電力需要自体は増えます。つまり化石燃料の直接利用から電力の利用に転換してくるということでございます。その中でのエネルギーの電力ミックスも非常に重要なポイントでございまして、この電力ミックスが、これは右側のほうに2つ、真ん中と右でシナリオを書いておりますけれども、太陽光・風力が抑制的に入る場合と、あるいは非常に大量に入る場合、これ、コストや賦存量の想定によって変わってくるわけですが、こういう極端な例を2つ示していますが、ここに示すような極端な例をベースにしながら多様な可能性があるということであります。
 この太陽光について言いますと、この下のほうに表が書いてありますけれども、2050年の最大限入れたときの容量を見ていただくと、およそ現在の10倍に近い容量が必要になってくるということで、太陽電池なんかも、研究開発的にはもうほとんど一段落についているかなというふうにお思いになる方もいらっしゃると思うんですが、今から、この10倍の量的拡大をどうやって可能にするのかといった意味では、実は、発電の基礎原理開発とまたちょっと別の観点で、例えば信頼性向上であるとか、導入用途拡大であるとか、そうしたことも含めた、次の段階でのアカデミアの参画というものが必要になってくるのではないかといったことを書かせていただいております。
 では、次、お願いいたします。次に、水素でございますけれども、今のシナリオに基づきまして、2050年の日本の水素需要がどのぐらいになるかということを量的に見積もってみましたのが、こちらのグラフでございます。真ん中と右側、それぞれ先ほどの太陽光・風力が大量に入るか、あるいはそこまでいろいろな制約、コストや賦存量の制約によって入らないかということで2つシナリオを用意してございますけれども、見ていただきたいのは、明るい緑の一番下にありますのは、これは発電用の水素あるいは水素等量のアンモニアでございます。その上にいろいろな色が乗っかっているのが、各セクターで使う水素の量ということになりまして、これは一目瞭然でございまして、発電用に使う水素が非常に多いわけであります。あとは再生可能電力がたくさん入るか、あるいは水素による火力発電、あるいはアンモニアによる火力発電がたくさん使わざるを得ないのかということによって、水素の必要量は2倍以上の開きが出てくるということであります。
 この水素に関して申し上げますと、GteXでも水電解というのがフォーカスされているところでございますけれども、端的な理由といたしまして一番下に書きましたように、発電用の水素の需要が一番大きい。この発電用は、必ずしも燃料電池を使うわけではなくて、恐らく大規模に火力発電をする。つまり今の燃料として水素を使って直接燃焼させてタービン等で発電していくというケースが多いだろうと考えられますので、そうすると水素を作るほうが燃料電池で使うほうよりも多分多くなるということでありまして、そういった意味で燃料電池よりも水電解の需要のほうが大きくなるというのは、こうした考察からも見えてくるということであります。
 ちょっと1枚戻っていただいていいですか。2050年の再エネ高位というところ一番表の右下を見ていただきたいんですが、実は車載用に蓄電池が必要になるというふうによく言われておりますけれども、もちろん必要なります。多分、4,000、5,000ギガワットアワーぐらい必要になるかなと、このシナリオの中でも出ているんですけれども、それを別枠で、1,322と書いてありますが、電力系統調整用の蓄電池が非常に多量に必要になってまいります。この蓄電池は車に乗せるのではなくて、例えば変電所に置くとか、あるいは、冒頭に申し上げた地産地消の電力貯蔵に使うということなので、基本的には定置用になるわけでございます。ですので、定置用にも相当大量の蓄電池が必要になり、かつ、車と違って、より長い寿命を求められる蓄電池になりますので、そういった意味で充放電寿命が非常に長いとか、低コストであるとか、レアメタルによる、レアアースによる供給不安がない、しかも低コストと、そういうような新しいパラダイムの、でも重くても、大きくてもいいというような、そういう蓄電池も必要になってくるだろうということがここから見えます。
 次の水素からもう1枚飛ばしていただいて、先ほどの2,000万トン/年の水素、これはちょっと閑話休題ということで、どうやって日本で作るのかという課題がよく出てくるわけでございます。水電解のエネルギー原単位を考えますと、1キログラムの水素を作るに当たっては、大体50キロワットアワーぐらいは、エネルギー効率がよくても必要になるだろうと考えられますので、それを基に計算しますと、大体2,000万トン/年の水素を得るには、年間1,000テラワットアワーの電力が必要になると。これがグリーン水素を日本で作りたいということであれば、全部再生可能電力である必要があるわけです。先ほど1,500テラワットアワーの全体の電力が2050年の日本には必要であると言った直後にこの話をするわけでございますので、この1,000テラワットアワーの電力を1,500テラワットアワーに付け足しでどうやって確保するのかというのは、これは非常に大きな課題であるということでありまして、場合によっては、この左下のように、日本で太陽光発電所を確保するのは非常に難しいので、オーストラリア等の海外に出ていくと、こういうことを真剣に考える必要があるのではないかということをかねがね申し上げているところでございます。
 次のページに行っていただきまして、そういう中で、皆さんも御存じのような水素キャリア技術というのが脚光を浴びてくるということになるわけでございますが、そうしたシナリオの下に考えますと、この下に書いてあるように、このグリーン水素の関連技術といたしましては、日本よりもさらに苛酷な、特に温度環境等で、発電設備あるいは水電解設備を稼働させていく必要がございますので、とにかく苛酷な環境、それから水も日本のようにきれいな水が手に入るとも限りませんので、多様な水環境への対応というのが求められますし、また、輸送を考えますと、単に作るところではなくて、輸送・貯蔵も含めてCO2の排出が減るということが必須になってくるということでございます。
 それから、ちょっと補足のところで余分なことを書いているかもしれませんけれども、今ここでは水素を運ぶと書いてありますが、先ほどの水素需要を見ていただいた中で、2ページ戻っていただいてよろしいでしょうか。行ったり来たりで恐縮なんですけれども、その発電のところの明るい緑は、水素・アンモニアとして持ってこざるを得ないと思うんですが、例えば化学用の水素であるとか、あるいは製鉄用の水素というところをどう捉えるのかというのは、これまたちょっと別の考察が必要なってくるかもしれません。
 もう1回戻っていただいて9ページでございます。この補足のところですけれども、例えば化学用の水素であれば、2つありまして、燃料用に使うか原料用に使うかという観点があるんですが、もし原料用に、カーボンと一緒に炭素原料のパートナーとして水素を使うのであれば、むしろ、例えばオーストラリアなんかでCO2を回収して、その回収した、外国で回収したCO2と外国で作った水素を反応させて、運びやすいメタノールなどとして日本に、水素ではなくてメタノールなどとして持ってくるというチョイスもあるかと考えられます。つまり何が何でも水素を運ばなきゃいけないということではないということです。
 それをさらにもう少し持っていきますと、例えば、今は高炉をどうするかということが非常に大きな問題になっていますけれども、もしこの高炉が水素製鉄になるとすると、実は、この水素製鉄は、日本ではなくて海外でやって、銑鉄として日本に持ってきたほうがいいかもしれないと、こういうような議論すら出かけているというのが現状であるかと思います。
 では、次、お願いいたします。最後に、このCO2のほうについて少し話題提供させていただきたいと思うんですけれども、先ほどのシナリオに基づいて申し上げますと、大体、日本で2050年に回収できるのが6,500万トン、回収できない大気放散されるが1,700万とか1,800万トンぐらいが出てしまうではないかと思われます。これをどうするかということですけれども、当然のことながら、左側の高濃度排出分は回収して処理したいわけですが、残念ながら日本近傍のCCSの適地は少ないと言われています。非常にまだ曖昧さが多いところかと思っておりますけれども、人によっては、年間1億トンぐらいが安全な処理量かなと言っている方もいらっしゃいます。また、大気放散される真ん中の列に関しましては、じゃあ、この分をどうするのかと。海洋とか森林の吸収分だけでオフセットできるのかと。大気からのダイレクト・エア・キャプチャーから入れるとしたら、日本にそれが入れられるのかということも考えられます。
 次、お願いします。そういう観点で見ますと、最近、ダイレクト・エア・キャプチャーと、それからCO2の資源化の組合せというのが中央の注目を浴びておりまして、私自身も若輩ながらムーンショットを1つ頂きまして、都市部でビルを使って、ビルの空調設備をうまく使ってCO2を回収して、その回収したCO2を比較的コンパクトに実装可能な電気化学の技術で、ビルの地下にある補機室等で、エチレンなどの化学品原料に変えていくって、上のほうに書いてあるようなシナリオを考えさせていただいているわけで、技術を開発させていただいているわけでございますが、実はこれは、恐らくは日本全量の、先ほど示したようなCO2排出を処理するには至らないと正直には思っておりまして、恐らくはやはり、大規模にCO2を処理しようと思うと、下に書いてあるような、より再エネが安い、例えばオーストラリアなどの場所、願わくは、そこにさらにCO2を埋設するための適地も隣接しているというようなところで、大規模にDAC、大気からのCO2回収と、それから埋設貯蔵していくほうがいいんじゃないかと。つまり様々な技術を、地産地消したいということであれば上のようなシナリオで、大量に処理したいということであれば、むしろ下のようなシナリオで使い分けて考えていくと、こういう最適配置というものが必要ではないかと。ちょっと青い字で書いていますけれども、場合によっては下のように回収したCO2は、先ほど申し上げましたが、重要な炭素原料となる可能性もありますので、オーストラリアとの現地で作ったグリーン水素と反応させてメタノール等の形で日本に持ってくる、あるいは植物を使ってバイオエタノールみたいな形で日本に持ってくるということもあり得るのではないかと思われるわけでございます。
 次のページをお願いします。もうそろそろ終わりになりますけれども、このCO2の資源化なんですが、1つ注意していただきたいのは、非常にエネルギーインテンシブです。水の電気分解もエネルギーインテンシブなんですけれども、このCO2の資源化は、さらにエネルギーインテンシブだということを申し上げておきます。先ほど言及させていただいたムーンショットの中で、これも非常に粗い試算ですがやらせていただいているんですけれども、この上に書いたようなこの工程を想定いたしまして、その中でどこが一番エネルギーを食うのかということを計算しますと、左下のグラフにございますように、実に4分の3は、高濃度にしたCO2を電気化学的にエチレンに持っていくという、この過程で4分の3のエネルギーが食われてしまうというような試算結果が出てまいります。なぜこうなるかというところで右下のグラフになるんですけれども、実はこのCO2の電解還元というのは、水の電気分解に比べて極めてエネルギー効率が悪い。これは、1つは現状の技術レベルが低いからというふうにも申し上げられますので、理論値的には、そこまで水を電気分解に比べて見劣りするものではないんですけれども、理論値に対するこの実際に投入しているエネルギーの割合というのが、水の電気分解に比べてはるかに大きい。つまりエネルギー効率が悪いということです。これをいかにして技術開発していくのか。技術開発した結果として、ちゃんと我々が狙っているCO2の濃度の減少につながるような方向に持っていけるのかということをしっかりと踏まえた上で、技術開発の目標を立てていく。もし、その目標が達成できない技術であれば、やはりちょっと別の選択肢を考える必要があるのではないかといったことをここでは申し上げたいということであります。
 ちなみに我々のムーンショットでありますと、何とかこの星印ぐらいのところでやれば、ここはできると思って開発目標にしているんですけれども、それでも今のようなCO2の還元に全体の4分の3のエネルギーを使ってしまっているということになるわけです。
 次のページをお願いします。これは1つの非常に単純化された例なんですけれども、CO2の資源化というのはバイオものづくりとも対応するんですが、極めて複雑系でございます。というのは、CO2を無機的な方法で大気から回収するのか、あるいは、この図に書いてあるようにバイオで回収するのか、これは非常に、チョイスとして多様であると思われます。無機的にやるほうが効率はいいですけれども、日本のような森林が多いという状況をうまく生かそうと思うと、森林がCO2のキャプチャー装置であると考えたくなるわけでございます。もし、この左上にありますように糖類を生成してくれるような植物でありましたら発酵に持っていきます。発酵に持っていったら、エタノールは化学品原料になります。それから、発酵から出てきた高濃度のCO2が実は副産物なんですけれども、これは、考えようによっては、植物が大気からキャプチャーしたCO2であるとも考えられるわけなので、この矢印を追っていきますと、見事に植物由来でエタノールも得て、なおかつ高濃度なCO2が得られる。ある意味2回おいしいプロセスであるというふうにも、このバイオプロセスは考えられるわけです。セルロース系でありますと技術開発は必要ですけれども、もし、うまくいかなかったとしても燃やすやり方があります。燃やしたら電力が得られますし、また、燃やしてできたCO2は比較的高濃度ですから、これをやはりうまく回収して、先ほど申し上げた電解還元であるとか、あるいは次世代のフィッシャー・トロプシュ等の触媒反応に持っていくと、こういうルートもあるわけです。こういうところには、別途作った水素も必要になってくるということでありますので、要は言いたいことは、要素技術の開発はすごく大事なんですけれども、それをどのように社会実装していくかという中では、やはり全体プロセスを考えていく必要があるだろうというのが、このスライドの言いたいことでございます。
 最後にまとめさせていただきますけれども、まず、多軸で整理していきましょうというのが1番目のポイントでございます。
 それから2番目は、定量的なシナリオに基づいて、やはりそれぞれの技術の重要性というものを見極めていく必要があるであろうと考えられます。
 3番目は、特に日本のカーボンニュートラルということを考えますと、この国際サプライチェーンがどうしても必要になってくるんじゃないかなと思われます。その中で、水素をダイレクトに運ぶのか、あるいはアンモニアを運ぶのか、はたまた、先ほど言及したようなメタノール、エタノール、そして場合によっては還元された鉄、こうした形で等価的に再エネを運んでくるのかといったことは、シナリオと併せてよく考えていく必要があるだろうと考えられます。
 それから4番目のポイントは、要素技術のみに注目するのではなくて、社会実装を見据えたシステムとして考察していく必要があるということで、その中では絶対にLCAは不可欠になります。また、LCAから技術開発目標を設定していくということも非常に重要になってまいります。
 最後でございますけれども、この1つ前のページに示したように、例えばカーボンリサイクル1つ考えても、技術の実装の仕方というのは一意ではありません。ですので、技術の進展を見込んで、常にどういう可能性があるのかということを、ある意味、広い心を持って見直していく必要があるんだろうと思っておりまして、そのためには最後2つのポイントになりますけれども、シナリオ分析と技術経済分析を担う人材育成が、この技術開発を担う人間と同時に必要になります。そして、この技術開発を担う人間と、シナリオや技術経済分析を担う人間が両輪として密接に議論をしながら、本当は1人が全部できるのもいいんですけれども、なかそれは難しいので、そうしたそれぞれの得意技を持った人たちが、近接して議論をしていくという環境をつくっていくのがとても大事ではないかと、こういう観点で若手の人材育成をしていくのが理想ではないかというふうに最後述べさせていただきます。
 ちょっと長くなって申し訳ありませんが、私からは以上でございます。
 御議論は、また、後でいただくといたしまして、続きまして、今度はJSTのCRDSの中村ユニットリーダーから、引き続きまして話題提供いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【中村ユニットリーダー(科学技術振興機構)】  よろしくお願いいたします。私、JSTの中村と申します。
 私のほうからは、カーボンニュートラルの実現に向けた政策と研究開発の動向ということで御紹介させていただきます。
 政策については、ここ一、二年の動向、特にアメリカとドイツに着目した動向について御紹介させていただきたいと思います。研究開発の動向につきましては、この4月に公表させていただいた研究開発の俯瞰報告書、私どもセンターのホームページで公開しておりますが、こちらから概要を御紹介させていただきます。
 まず、アメリカの政策動向について御紹介させていただきます。アメリカについて、まず、大統領府において御案内のとおりインフラ投資・雇用法ですとかインフレ抑制法といった、国内、国全体の大きな政策の中でも、エネルギー安全保障ですとか気候変動対策を考慮した施策を取り込んでいます。とりわけ、ここで赤字で示しております水素に関連するものですが、国内の国立研究所の設備更新から始まって、地域におけるプログラム、あるいはもっと研究開発そのものへの投資なども含めたものをやっています。そして、また、インフレ抑制法などにおける税額控除といったいろいろな方策を打ちながらの施策展開をしているというところが注目すべきところです。また、水素については、それに特化した戦略を打ち出しておりますし、それ以外にも、ネットゼロ・ゲームチェンジャー・イニシアチブということで、水素に閉じないこのカーボンニュートラルの実現に向けた37の研究開発分野を特定し、その中でも5つの優先分野をこれから押していくんだと。これは必ずしもDOEに閉じない話ですが、押していくといったことも方針として出しています。
 エネルギー分野における中心的な所管省庁であるDOE、エネルギー省におきましては、こういった大統領府の方針も受けながら、エネルギー・アースショットイニシアチブ、これは、一番初めが水素だったわけですが、こういったものもやっています。ただ、このエネルギー・アースショットイニシアチブは低コスト化といったような社会実装をかなり強く意識したプログラムですが、その下にありますクリーンエネルギー技術・低炭素製造に関する基礎研究支援、これは、アメリカ国内には43のエネルギーフロンティア研究センター、いわゆるハブ研究拠点への投資ですとか、様々な大学への投資というような基礎研究支援も同時に行っているというところが注目すべき点です。また、新興技術の実装加速化研究プログラムという、基礎的な成果を社会実装につなげていく、その間の橋渡しを加速化させていくということに着目したプログラムでは、従来のような単なる加速化ではなくて、高性能計算機、ハイパフォーマンスコンピューティングですとかAI、製造技術、材料あるいはバイオテクノロジーといった最先端科学技術を活用して社会実装を加速させるようなターゲットに着目するプログラムも始まっています。また、DOEと基礎研究支援を行う組織であるNSFとの連携強化などの動きもございます。
 先ほどのところで、特にこういった展開を見ますと、水素への投資というのは顕著に見られるというふうなことを感じております。社会実装加速ということを強調しましたが、一方でDOEの科学局、主に基礎研究を支援するところですが、ここでは基盤的な科学、サイエンスとしてやるべきところはどこかといった検討も同時に行っております。そのレポートが出ていますところによりますと、これ、アメリカ国内での関連の研究者らがオンラインでのワークショップを開催し、その中での集約された結論ですが、大きく4つの優先課題があるだろうということを特定しています。この御専門の分野の方にとっては当たり前、かなり基本的なところかもしれませんが、やはりこういう基礎に立ち戻った課題が、これからやっぱり重要になるだろうということを改めて、こういったところから気づかされるというものでございます。
 アメリカから移ってドイツのほうを見ますと、ドイツについては、ウクライナ情勢を受けてエネルギー安全保障に関わる施策を強化しております。ただ、気候変動対策というのは、その一方では従前からの方針を維持しています。むしろエネルギー安全保障との組合せ、両輪で行くに当たって、その取組を加速させるための政策を展開しているというふうに見えます。例えば、気候保護法に基づいて各種施策が展開されていっているわけですが、2022年3月にはエネルギー確保法とともにイースター・パッケージを展開し始めています。その中においては、再生可能エネルギーの導入をさらに拡大するため、目標をさらに高いものに変えるですとか、水素の貯蔵ですとか蓄電に関する助成を拡大するといったことも同時に行っていくということをしています。これとともに国家水素戦略、つい最近、改訂版が出されたわけですが、ここでも水素の生産能力の目標値を倍増させるとか、水素のパイプラインを長く延ばすといったことに加えて、研究開発の加速のためのファンディングも強化していくということもうたっています。こういったことで、気候変動対策とエネルギー安全保障、あるいは経済安全保障とか産業的な、そういう文脈における政策と、科学技術イノベーション政策を一体的に進めるような動きというのがかなり顕著にあるかと思われます。
 ドイツの研究開発の投資の状況について、2022年度の状況が公表されておりまして、そこから数字をまとめております。右側のグラフの縦軸方向にありますのが、いろいろな予算の項目になります。青い部分は、その項目の中で基礎研究、ベーシックリサーチというふうにうたっているようなもの、あるいはそれとみなされるようなものを青く色づけしております。それ以外が基礎研究以外です。基礎研究への投資というのは、全体の予算の中でも15%程度を占めるということで、かなり大きくあります。これは、2年前までは大体10%前後で推移していたものが、昨年度来、15%に大幅に増額しています。その増額の内訳の中では、やはりこの赤枠でくくりましたような水素に関する投資が非常に大きくなっているところがございます。この2022年度、前年度2021年度との比較で、予算的に増加した領域というのを少しピックアップしました。もちろん、1年1年の増えた減っただけで、その分野を判断するというのは慎むべきですが、傾向として、前年度からの増加した領域は、例えば水素、火力、資源効率、CO2技術、あるいはトランジションと社会、地下利用、国際連携などが、予算として増加した領域でございました。トランジションと社会というのは、社会の移行を進める中での社会との関わりにおけるいろいろなことに対応した研究という意味です。地下利用というのは、例えばCCSのようなものになるかと思います。
 また、ドイツは近々、これまでは第7次エネルギー研究計画というものに基づいて、こういったエネルギーの予算配分がなされて、連邦政府における研究開発が推進されてきておりますが、これが第8次、新しいエネルギー研究計画に変わろうとしています。今、こういうプロセスの最中でして、本当なら、予定どおりであれば、この夏に公表されるというような見通しでございましたが、今のところ、私どもで見る限りでは、まだ協議中というような状況かと思います。ただ、この協議をするに当たって、基本的な方向性として、先ほど杉山主査もおっしゃっていらっしゃいましたが、技術中心のアプローチから、これからはミッション指向型アプローチに変更する方針であるということは、既にうたわれているようです。社会、トランジションを実現するに当たって、バックキャストで何が必要かと、そういうことに対して研究開発を支援するというような大きな方向性を言われているという状況でございました。
 後半は、私どもの「研究開発の俯瞰報告書」から概要を御紹介させていただきます。多数の有識者の方に御協力いただきながら、それぞれの研究開発領域についての動向をフラットにまとめております。これについては、量的な関係性というのは、ここには反映されておりませんが、まず、客観的に見たときに、それぞれの領域でどういうことが起きているかというのをまとめているような形でございます。
 これはビジーな図ですが、俯瞰図と呼んでおりますが、我々が見ているエネルギー分野の広がりは、こういうようなものですということをやっています。青く色づけしたところが、我々が研究開発領域として取り上げているところになります。同様にして環境分野も取り扱っております。
 トピックスといたしまして、合計16のトピックスをここでは御紹介させていただきます。もう少し研究開発の動向として御覧いただきたいものは参考資料につけておりますので、また、追って御覧いただけましたら幸いでございます。
 エネルギー分野に関しましては、例えば再生可能エネルギーについては、変動性に対して発電量予測ですとかスマート保守、系統連携など、変動性再エネ特有の課題の克服にフォーカスされているというふうなトレンドかと思います。
 水素製造に関しましては、コストの問題はやはり大きいというところがございます。
 脱炭素燃料転換においては、先ほど御紹介もありました、水素・アンモニアの混焼から専焼に向けた技術実証が進むという中で、特にアンモニアは日本が先行的に取り組んでいるようなトレンドでございます。
 蓄エネルギーも、やはり研究開発として非常に見られるのはLIBの関連ではございますが、それに限らず、世界を見れば、定置用のほうのレドックスフローなどにおいても投資がなされているという状況はございました。
 エネルギーマネジメントシステムにおいては、スマートメーターの普及が世界的に進む中で、そこから得られるデータをどう活用していくかというのは1つの興味になってございます。
 ネガティブエミッション技術、どうしても残ってしまう排出分を相殺するオプションとして期待がされているわけですが、その中でも自然を活用した方法においては、様々な取組、技術開発、研究開発のみならず、社会の仕組みをつくっていくことと並行しての検討というのがあるかと思います。
 CO2利用に関しては、これはサプライチェーン、CO2回収と再エネ由来電力確保の連携というのが社会実装に向けては必要になってくるという段階まで、世界的には関心が向いているというところでございます。
 太陽光については、未利用場所への設置拡大というのが1つの興味だと思われます。
 環境分野においては、カーボンニュートラルという中においても、この観測・予測というのは非常に重要な研究分野でございまして、IPCCの評価報告書をはじめとして、そういったものへの貢献を通じて研究も大きく進んでいるというところがございます。
 特に降水観測ですとか予測、いわゆる水循環に関する分野というのは非常に進展していますし、統合評価報告書の中でも取り上げ方を格上げしているというようなところがございます。
 また、自然資本の価値評価、これはカーボンニュートラルというよりTNFDによる自然関連財務情報開示という大きな社会的な流れの中で、研究としても関心が向いているところがあります。この価値評価をするに当たっての評価手法の開発は非常に重要ですが、同時に、それを知る上での現状の把握としての生態系、生物多様性の観測においても研究は活発に行われているといったようなことはございます。
 また、右下のリサイクルにおいては、様々な技術開発が活発に行われておりますが、一方で、循環資源の情報を追って、これを集約していくというような仕組みについても非常に検討が始まっているという状況があろうかと思います。
 非常に駆け足ではございますが、俯瞰報告書の中でざっくりと見ていくと、環境エネルギー分野における顕著な研究開発動向としては、やはりカーボンニュートラル実現に向けた取組が中心にあったように思います。基礎基盤的な研究に加えて、いかに社会実装を加速していくか、そのためのシステム構築に向けた取組というのが非常に多かったように思います。これ、事例としては参考資料のほうにもつけておりますので、ぜひ御覧いただければ幸いです。
 一方で、ウクライナ情勢を受けて、従来どおりのカーボンニュートラル社会への移行というだけではなく、同時にエネルギー安全保障との両立という新たな問題設定になっているというところもございます。数年前にはそういう機運はそこまで強くなかったように、トランジションには様々な不確実性が伴います。ですので、このトランジションの過程における不確実性のマネジメントも重要な課題になってくるだろうと思われます。それを踏まえますと、今後の研究開発の方向性としましては、いかにトランジションを進めていくかという促進と、それがどれだけ進んでいるかという状況把握、これからの予測や評価に加えて、仮にこのトランジションがうまく進まなくて停滞したり、あるいは、そのトランジションを進める中での負の側面が何か出てきたところへの備えという視点も必要になってくるんじゃないかと考えております。例えば、それはローカルな地域を見たときに、トランジションがどう進むか、停滞している、いないかということを見る視点も出てきますし、エネルギーのカーボンニュートラルを実現する中で、水利用がどう影響を受けるかという別の観点、相互連関を見る視点というのも出てくるかと思います。
 以上、非常に駆け足ではございましたが、私のほうから御説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。共有を停止します。
【杉山主査】  中村様、大変ありがとうございました。非常に包括的な御説明をいただきまして参考になりました。
 ということで、2つの話題提供を経まして、これから議題4の総合討議に入ってまいりたいと思います。本日、今までの議論の振り返りから、あるいは文科省の施策の現状、方向性、そして話題提供ということで進めてまいりましたけれども、ぜひ、これらを踏まえまして、今後のGXの実現に向けた取組を加速するような、アカデミアの活性化に向けた方向性を議論いただければと思います。
 ということで、今、総合討議のポイントを映していただいておりますけれども、今後、どういうことを議論していくべきであろうか。これは1つの例示でございますけれども、まず、1番目のポイントといたしまして、カーボンニュートラルの達成に向けて、シナリオや俯瞰の動向を踏まえまして、我が国の強みを発揮できる、あるいは強みを強化していく領域とはどういうとこなのかということをぜひ御議論いただければということです。
 2番目は、諸外国の状況や日本の長所・課題等を踏まえまして、グローバルな協調・競争の中で我が国が戦略的に注力すべき技術領域、すなわち国際的な観点も取り入れた上でどこを注力していくのかということです。
 それから3番目、日本のアカデミアの強み、そしてGX実現に向けた産業界のボトルネック課題、こうしたものをぜひ御議論いただければということです。
 それから、今度は仕組みのほうに入ってまいりますけれども、4番目です。成果を最大化する研究開発のマネジメント。
 それから5番目で、このGXを支える人材を育成する仕組みです。
 既に、これまでの5回の御議論の中でもいただいているとは思いますけれども、改めまして、そうした内容を踏まえながら、今日の話題提供等も御参考にしていただきながら、残りの時間、30分ほど御議論いただければと思っております。
 そういうことで、順不同で御発言、ぜひいただければと思っておりますので、委員の方々、ぜひ積極的によろしくお願いいたします。
 佐々木先生、よろしくお願いいたします。
【佐々木委員】  九大の佐々木です。まずは、御説明どうもありがとうございました。
 私もこの分野、エネルギーとか水素の分野は30年以上関わっておりますけれども、文部科学省さんに行ったら、エネルギーとか水素は経産省さんがやっているんでということで、お話も聞いていただけなかった時期が長かったので、文部科学省さんの会議でエネルギーとか水素という話を真正面から取り組んでいただいて、本当に感謝申し上げたいと思いますし、感慨深いところがございます。
 特にGXについては科学技術がまさに重要だということは、もう皆さんの思いだと思いますし、他方、各省庁さんで、例えばグリーンイノベーション戦略推進会議って数年前から始まっていますけれども、その中では経産省のみならず環境省さんとか農水省さん、国交省さんということで、いろいろな省庁で、やはりGXに向けた取組が並行して進んでいるというところもございます。なので、ぜひ、どの分野が大事かという議論も大事だと思いますけれども、恐らく文部科学省、そしてアカデミアが貢献できる領域というか分野、研究テーマというのが何なのかというところもすごく大事ではないかなと感じます。
 特に0を1にするような革新技術を生み出すところは、やはり文部科学省系の議論がふさわしいと思いますし、その中でJST様に御指導いただけるのかなと思いますし、他方、1を100、1,000、万に発展させるところは、予算的にも潤沢で、いろいろな事業を今しております経産省さんとか環境省さんも含めて、できるのかなと思います。
 なので、ぜひ役割分担、すみ分けというのを検討いただいて、その中で文科省らしい取組、文科省だからこそできる事業、そしてアカデミアだからこそ貢献できるところというのをやっぱり考えていくというのも大事だと思います。
 特にTRLが低いようなところ、まだ企業さんもコミットできなかったり、企業さんも経営判断をできないようなところで、やっぱり芽を生み出しているところが、文科省さんの、JSTさんの事業だと思いますので、そういうような領域をこれから探していって、ぜひ文部科学省様のほうでもエネルギーやカーボンニュートラルに向けた取組を発展させていただければと感じます。
 私からは以上です。
【杉山主査】  佐々木先生、大変貴重な御意見をありがとうございました。
 では、続きまして、志満津委員、よろしくお願いいたします。
【志満津委員】  豊田中央研究所、志満津です。様々な情報の展開をいただきまして、進捗状況とか取組がよく分かりました。
 今、ここに示していただいている議論の方向性の中の下から3つをやはり少し気にしています。日本のアカデミアの強みと産業界のボトルネック課題をうまくつなげていって、研究開発マネジメントにおいて実証に結びつけるということを考えたときに、これを支える人材を育成する仕組みという議論が前回までもたくさんされていたと思います。そんな中で、アカデミアと企業とを密接に連携した若手人材の育成のシステムとか、企業とアカデミア間の流動性みたいなことに対する議論に対して、現在どんな取組がされているかということに対して教えていただければ幸いです。
 以上です。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 質問になっていますので、まず、文科省の事務局から何かありましたらと思いますが。
 じゃあ、轟課長、よろしくお願いします。
【轟(事務局)】  高等教育局のほうでは、今、インターンシップ制度を進めていまして、有償でインターンを引き受けていただけるような企業さんに手を挙げていただいて、それに対して学生さんのほうでも手を挙げて、マッチングするような事業、そういったところだと、企業のほうもお金を払いますので、学生の人選を厳しくしますし、学生側もすごく意欲があって、この企業で働きたいということでありますので、非常にインターンの効果も高いと。長期にやるというところがポイントになっています。例えば、そういった事業というのは取り組んでおりますので、御興味があれば、また、事務局のほうにお問合せいただければ御紹介させていただきます。
 以上です。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 委員としての発言ということでお許しいただきたいんですけれども、インターンってなりますと、どうしてもやっぱり就職する前の学びの場で現場に近づいていこうという取組だと思うんだけれども、多分、志満津さんがおっしゃっているのは、もう少し研究開発の過程で、大学と企業の人間が入り交じるような、博士課程の学生が企業に行って研究するというのもあるだろうし、あるいは、今度は企業の研究人材が、また、大学に来て、それで一緒に研究するとか、そういう人材の流動性を回転ドアみたいにどうやって確保するのか。今の大学のシステムだと、環エネ課というよりはちょっと別のまたセクションを巻き込まなきゃいけないかもしれませんけれども、大学自体がよりオープンに、ダイナミックに企業と一緒になって開発をしていくというような仕組みをつくっていかないと、どうしても諸外国の中での日本の競争力というのを強化する方向に行かないんじゃないかなという問題意識がやっぱりあるんじゃないかなと思うんです。
 後藤補佐からも発言がありますか。
【後藤(事務局)】  ありがとうございます。
 今、主査からも言っていただいたように、そういった、まさに産業界とアカデミアの、特に若手の部分が連携しながら研究開発を進めていくというのは非常に重要だと思います。今回GteXですとか、あるいは、そのほかJSTで行っている研究事業の中でも、たくさんチームでやって、その中には博士人材の人ですとかポスドク、若手研究者の方も入っていると思います。そうした人も含めて企業の、産業界の方と研究を進めながら連携していきながら人材交流を進めていくというのは、研究開発の事業の仕組みとしても非常に重要かなと考えております。
 御指摘ありがとうございます。
【杉山主査】  後藤さん、どうもありがとうございます。
 志満津さん、いかがでしょうか。
【志満津委員】  ありがとうございます。幾つかそういう動きがあるのは存じています。今回、いろいろな議論の中で、もう少し何か踏み込んだ、中短期のテーマの将来を語るような場も含めて、若手の人たちが密に何かそういう議論をして、研究テーマを提案していくみたいな場があるといいなという議論が幾つかあったと思いますので、また、何かそういう場を含めて御検討いただければと思います。
 以上です。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 ですからGteXの運用を今後よりよいものにしていきましょうということも、この委員会の方向性の1つだと思いますので、そういう中に、もちろん具体的な研究開発成果というものもありましょうけれども、以前、委員会の中でも魚崎先生が話題提供されたと思いますが、博士人材をこれだけ排出しましたとか、あるいは人材の実際流動した実績とか、そういうのも何か尺度になるようなフォローアップができるといいのか、フォローアップというか、それで縛るというよりも、そういうこともちゃんと評価軸になりますよというような打ち出し方ができてくるのも1つの方向性かなと思いました。
 轟課長、よろしくお願いします。
【轟(事務局)】  すみません、1点だけ補足しますけれども、先ほどのインターンシップはジョブ型研究インターンシップという制度でございまして、研究開発業務を含むというところで展開しておりますので、志満津委員の御関心にもあたるところがあるかもしれませんので、また、事務局を通して制度の概要等を送らせていただきたいと思います。
 以上です。
【杉山主査】  ありがとうございます。
【志満津委員】  情報をいただいて、また、勉強します。ありがとうございました。
【杉山主査】  どうも重要な観点、大変ありがとうございました。
 それでは、本藤先生、お願いできますでしょうか。
【本藤委員】  御指名ありがとうございます。丁寧な御説明をありがとうございました。大変私も勉強になりました。
 私のほうから1点だけ、簡単なコメントをさせていただきたいと思います。今、御提示いただいている資料で言うと、上から1つ、2つ目に関わることかと思います。強化が必要な技術領域はどこかと、戦略的に注力すべき技術領域はどこかということですが、やはりこういった領域を考える上で、技術が持つ社会的な価値をある程度把握した上で検討していく必要があるかなと思っています。つまり、技術が持つ社会的な特性、社会的な価値をしっかり把握して、そのエビデンスに基づいて、今後はここが重要なんだというような説明力のある技術領域の選び方がやはり重要になってくるのかなと思っております。
 今申し上げた社会的な価値というのは、例えば、もちろん脱炭素というのは、これは極めて社会にとって重要な価値であると。それだけではなくて、例えば希少鉱物資源をどう管理するかとか。今、お話にもよく出てきましたエネルギー安全保障の面から、その技術はどのぐらいの価値を持つのか。さらには経済安全保障の面ではどうなのか。さらには、社会の格差を広げるんではなくて縮める方向という観点ではどうなのか。そういった脱炭素のみならず社会で重要と思われる価値、これを実現するために、各技術がどの程度寄与するんだろうかということを、できればもちろん定量的なほうがよろしいんですが、全てそうはいかないと思うので、定量並びに定性的にしっかりと評価した上で、技術領域を探索していくことが重要かと思っております。
 ですので、やはり個別の要素技術の開発というのは極めて重要でございます。ただ、一方で、そういった要素技術が社会に導入されたためにどんな社会的価値を生み出すんだろうかといったような、もう少しソフトな研究開発ということにも力を入れていく必要があるかなと思っております。もちろん、これらのことはJSTさんの資料にも書いてありますし、ある意味、当然のことかもしれませんが、改めて一言、強調させていただきたく発言申し上げました。
 以上です。
【杉山主査】  本藤先生、大変重要なポイントをありがとうございます。
 これは多分、最初に佐々木先生からいただいた、0、1をしっかりと担うような文科省のプロジェクトというところとも関連するのかなと思いますけれども、0、1は確かに非常に重要で、これまでにない新しいシーズをどんどんと育て上げていくというのは、なかなかほかの省庁さんではできないところで、ぜひ文科省のプロジェクトでという中で、そういう姿勢を取りますと、一方で、育て上げる新しいテクノロジーなりシーズが、どういう社会的な立ち位置を持ち得るのか。少し量的な貢献ということで、あまり定量的なとこだけに限定してはいけないかもしれませんが、非常に、何ですか、例えばですが、脱炭素効果のポテンシャルが大きいものなのか、小さいものなのか、それは今の段階では分からないけれども、もう少し進んでいったときにどういう見込みがあるのかというところをうまく見極める。あるいは、先ほど本藤先生がおっしゃったように、いや、むしろ定量的な貢献は厳しいかもしれないけれども、人々の価値観に大きく訴えるようなものになるかもしれないとか、そうした社会科学的なインパクトというものも考える必要があるかもしれません。そういった意味で、やはり0、1を育てるということを今、本藤先生がおっしゃった、それぞれの技術の社会的な価値を定量的あるいは定性的に把握していくというようなところは、両輪としてやはり持っておくべき必要ものなのかなと思いました。
 どうでしょう。CRDSの中村さん、この辺り、CRDSとしてもいろいろとアンテナを張っているところかとは思いますけれども、そうした技術の社会的価値の把握ということについて何かコメントありましたらいただければと思いますが。
【中村ユニットリーダー(科学技術振興機構)】  ありがとうございます。技術の社会的価値、定性的なものになってしまいますが、やはりその点は重要だと思っております。特にその社会実装時に、社会との接点で何が起き得るかということを考えるというのは非常に重要な視点かなと私どもとしては考えております。なかなか体系立った方法論は、まだ私どもも見いだしておりませんが、引き続き考えていきたい点と思っています。
 ありがとうございます。
【杉山主査】  ありがとうございます。CRDSは精力的に情報を把握されていますので、そういう情報をうまく生かしながら、特に若い人材がこういう議論に入ってきてくれて、様々な技術シーズ、あるいは既にもうかなりTRLが上がりそうになっているところでも、社会的価値をCRDSさんなどが取ったデータを基にしながら議論していくというようなプラットフォームが、うまく文科省のプロジェクトをより進化させていく試みの中でも何かあるといいのかなと思ったところです。
 それでは、水無委員、よろしくお願いいたします。
【水無委員】  文科省の御説明、それから2人の先生方の情報提供をありがとうございました。非常に参考になりました。
 私から、先のコメントとかぶるところもあるかと思うんですけれども、3点、コメントを差し上げたいと思っています。
 1つは、1ポツ目、2ポツ目に関係することだと思うんですけれども、GXであるとか、カーボンニュートラルの達成のためには、様々なことをやっていかなきゃいけないということは確かだと思います。一方、資源、それからお金、いろいろなものが限られている中で、どのように集中化していくか、あるいは逆に分散化していくかということが重要だと思いますので、これはしっかりワーキンググループみたいなものをつくって議論することが必要ではないかなと思いました。特に若手の研究者であるとか、企業の、特に若手の方々も含めた、そういう場があればいいのではないかなと思いました。それが1点目です。
 それから2点目は、特に杉山先生の情報提供の中で、シナリオ分析とか技術経済分析、そういうようなことができるような人材を育てる必要があるのではないかということについては、非常に共感します。技術だけではなくて、特に社会学的なものであるとか経済学的なものについてしっかり捉えるということが重要だと思いますので、サイエンスプラスそのようなこと、これを連携させていくことが必要と思いますので、人材育成も含めて、特に博士研究者を増やした後に、例えばそのような方向性に進んでいく方もいてもいいのではないかなと思います。それをたたえるような仕組みづくりということも必要ではないかなと思っています。
 3点目は、やはり研究開発のマネジメントなのかなと思います。特にヨーロッパ等では、マネジメントの手法を開発するようなプロジェクトも立ち上げて、伴走させながら進めていることがよく見えますので、そんなことも参考にすべきかなと思いました。
 以上です。
【杉山主査】  水無委員、大変ありがとうございます。非常に重要なポイントかと思います。
 先ほどの本藤先生の御指摘にも関わってくるかと思いますけれども、やはりそういう各技術の価値を、1つの軸ではありませんが、他軸から評価して、また、それが単なる技術的な観点だけではなくて社会科学的な、あるいは人々の受容性といったところも含めたような、行動変容を促すというようなことを含めたようなマルチな観点で、そうした開発を進めている技術の、広い意味での価値というものをやはり見ていくというようなことは、確かに議論すると、やりましょうといつも言うんですけれども、次の議論のときには、また、やりましょうってなって、いつまでたっても何か実装されないということは懸念としてありますので、その仕組みとして何かそういう各技術を開発する、それぞれのメインプレーヤーの方たちと伴走するような形でそういう、もう少し全体を見ながら、それぞれの技術の位置づけなり、これから取り組むべき、取り入れていくべき位置づけ、こういう今の委員の方々がこういった限られた機会で意見をいただけるような、そういうアクティビティーをもう少し恒常的にうまくインプリメントして、そこに若い才能をうまく取り入れて、今後、そうした戦略策定を担えるような人を育てていくというのは、これは非常に重要です。何かそういうのがうまくGteXの枠組みの、あるいはGX推進の文科省の枠組みの中で出てくると理想的かなというふうに今の話を聞いて思いました。
 ありがとうございます。
 菅野先生、よろしくお願いいたします。
【菅野委員】  菅野です。どうも御説明ありがとうございました。
 2点、述べさせていただきたいと思います。まず、1点目は、CRDSの報告書についてです。中村先生、御説明どうもありがとうございました。去年の会議で説明の資料を作るときにも読ませていただきました。今年度版も拝見させていただきたいと思います。このGteXの蓄電池に関して、エネルギーのところと、それから材料・ナノテクノロジーのところの、双方に蓄電池がまたがっている状況になっています。双方での捉え方が、少し違っていて、エネルギーの観点から見た蓄電池と、材料から見た蓄電池で取りあげられていますが、主に材料・ナノテクノロジーのほうでメインに記載がされています。双方乗り入れて記述するような方法は、できないでしょうか。材料の観点から見たエネルギーという見方もありますし、エネルギー観点から見た材料という見方もあるので、見方の違うところを、管轄が違うのでなかなか難しいかもしれないですけれども、乗り入れがあると、より分かりやすくなるということを感じました。
 2点目、先ほどの産業と学との相互の役割分担、それから入り込んでどうするかという課題です。産業と学とが常に会話をすることが非常に重要であると思います。特に若い人がお互いに入り込んでプロジェクトが運用できるような環境にあればいいというのは前から指摘している点です。NEDOのプロジェクトなどには学がかなり入り込んでいますし、このGteXにも、できるならば産のほうから若い人が入り込んで、双方の強みとやり方のを知ると、技術の0から1を生み出した後、1から100への引渡しもうまくいくと思います。人材育成も兼ねて、プロジェクトの運用を適切にしていただきたいと思います。それと関係しているのですが、海外も連携できるところとは、うまく連携するとよいと思います。この会議でも海外の状況を御報告いただけるような機会があれば、大変うれしいです。
 以上2点です。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 菅野先生の最初の質問の、右から左を見るか、左から右を見るかって、これは確かに非常に重要でございまして、よろしければ中村さん、ちょっとその辺り、コメントがございますか。
【中村ユニットリーダー(科学技術振興機構)】  ありがとうございます。御指摘のとおりで、今まさに次回版に向けて、ナノテクノロジー材料ユニットとは相互に相談しながら、蓄電池と、あと太陽光、あるいは水素とか物質変換、そういったところについて、今回版以上に相互補完性を、分かりやすさを出せるように議論をしているところです。
 御指摘ありがとうございました。努力していきたいと思います。
【杉山主査】  ぜひ、大変な課題ではありますけれども、よろしくお願いいたします。
 ほかにいかがでしょうか。所先生、よろしくお願いします。
【所委員】  ありがとうございます。
 短く1点だけ、私から発言させていただきます。今までの議論で、文科省のプロジェクトは0から1をつくり出すような研究をすべきであるというご指摘に賛同しております。特に現状の社会課題を見据えた上で0から1の研究をしっかりとやっていくという点に非常に賛同しています。
 ただ、研究者として、幾つかのプロジェクトに関わらせていただいた経験からすると、出口をしっかりと見据えながら、0から1を生み出す技術開発をするというのは結構難しく、0から1を生み出すところにこだわると、研究初期はうまくいくと思っても、社会的課題の解決には、困難であったり、まだ遠いというようなこともよくあるかと思います。そのときに、その0から1を生み出した技術開発は、見る人が見れば、むしろほかの分野に有用な技術や研究であることがあると思います。このように新規技術の応用先を俯瞰的に見る人が現状まだ育ってない、あるいはそのような人が、そのプロジェクトにうまく入り込めていないような気がしています。企業の方でもよいですし、社会的課題解決に近い分野の研究者、もしかしたら人社系や学際系の研究者かもしれませんけれども、そういった方も含めて、守秘義務を守りながら、横断的にいろいろなプロジェクトの新規技術の応用先を考えられる人材も、これから育てていく必要があるのではないかなと感じております。
 以上です。
【杉山主査】  ありがとうございます。非常に重要な観点で、ぜひ検討していきたいと思います。
 佐藤委員、よろしくお願いします。
【佐藤委員】  よろしくお願いします。
 先生方のお話は全て納得をいたしますし、すばらしいと思いました。特に今日、JSTのCRDS中村様の俯瞰報告書の話、私どもも微力ながら協力させていただきましたけれども、非常に分かりやすかったと思っております。個人的な感想としては、地政学とか安全保障は大事だと分かっていたんですけれども、そういう視点がもうちょっと本当に必要だなと思いました。
 続きまして、2つ、3つほど、意見というか感想を申し上げます。産総研にいるので、私の周りには学校ほど若い人はあまりいないのですが、元気な研究職に憧れるというか、若い人には、若い研究者が元気にやっている姿を見せることが本当は大事なんだなと思っています。実際にそういう元気な姿を見ると、次の人材も育っていくのかなとは思うんですが、それをどうしたらいいかなと常に思っているところです。先ほど人材育成って話がたくさん出ておりましたけれども、METIでは、バッテリー人材育成がもう置かれていると思うんですが、受け身の人材を増やすばかりではなくて、もうちょっと自分から考えるような人材をぜひ育てていただきたいなと思っています。
 どうも若い人たちと話すと、閉塞感がある毎日であるということを感じます。多分若い人は、結構意見を持っていると思うので、場当たり的な座談会がいいとは思えないんですが、何かそういう若い人が元気づけられるような、若い人同士のつながりがあるとよいと思います。さきがけアドバイザーとして参画させていただいているんですけれども、相互乗り入れて共同研究するとか、そのときにお互いにいろいろなバックグラウンドを話し合うとか、そういったところから明るい将来も見えていくようなことも事例として聞き取っていますので、若手の交流の場などから意見を拾い上げるのもいいのかなとは思っております。
 ちょっとまとまりがありませんが、以上でございます。
【杉山主査】  大変ありがとうございました。
 時間も大分迫ってきましたので、非常に重要なポイントなのは、若手の、もっと元気にというところは、ぜひ考えていきたいと思います。
 新田委員、手を挙げられていらっしゃると思いますが、いかがでしょうか。
【新田委員】  今日の、いろいろな情報提供であるとか議論に参加させていただいて、非常にありがたいと思います。勉強になりました。
 私は、もう時間がないので1点だけちょっと申し上げたいんですが、ここの今見えているスライドの1番目と2番目、皆さん、もう既におっしゃっているんですが、ちょっと私の目線から見て、やや気になっているのが、カーボンニュートラルとかという言葉はすごくいいんですが、なかなか企業が、やはり利潤を追求する立場もありますので、なかなかこれは前に進めにくいというのがあって、一方で学術的に基礎的なことを築き上げていかなきゃいけないというサイエンティフィックな見方というのももちろんそのとおりだと思います。これは難しいんですが、産学がやはり、できる限りベクトルをそろえようとすると、何に向かっていくのかということで、ここに書かれてあるとおり、社会の実装したときの価値という、その価値軸というのが、やはり重要になると思っています。それで、一番指標になっているのが、私たち、日頃からちょっと気になっているのが、アメリカにしても中国にしても、それからヨーロッパにしても、やはり法規制であるとか、レギュレーションであるとか、入っていますね。ビジネスチェーンで、ブロックチェーンをうまく使ったようなMOBIであるとかCatena-Xとかもそうです。ああいうものというのは、先に出られると、それに応じた技術開発と産業への実装というのが入ってくる可能性があって、いや応なく従わざるを得ないのか、連盟を取るのかという、そういう動きというのは必ず起こりそうで、既に起こっていると思います。そういうことから考えて、日本の立場から見た場合に、基礎技術があるというのはそのとおりなんですが、そういう法的な縛りというのも含めて、真に社会実装させたときに、どういうふうに有利になるのかという点、そこを少し議論できるといいんではないかなと思っていまして、私、何回か前に、理工系の話だけではなくて文系の人たちも入るべきだと思ってはいたんですが、そういう、ちょっと社会実装的な視点と法的な視点も含めて、バランスの取れた研究開発テーマができるといいなとは思っております。
 以上です。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 非常に重要なポイントで、恐らくはそういう倫理的な側面のほうに行く価値軸の話もありだと、多分、最後のほうでおっしゃったルール形成的な観点で、より何かそういう専門的なというか、掘り下げた議論ができるような人たちを、こういうプレーヤーの近いところにも置いておくということがとても大事であろうと。そうしないと、技術を作っただけでどうするんだっけという話にもなってしまうというところを、ぜひもっと考える必要があるのではないかと、そういう御意見かというふうに承りました。
 ありがとうございます。
 先ほどの若手の元気な姿を何とかというところも含めて、ぜひまた検討していく必要があるなと改めて思いました。
 ということで、大変活発な御意見いただきましてありがとうございます。残念ながら全ての委員の方々から御意見を伺う時間がなくて申し訳ないんですが、本日、予定していた終了時刻になってしまいましたので、ここで総合討議を終了したいと思います。
 ということで、議題は以上で終わりといたしまして、最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。
【後藤(事務局)】  皆様、御議論、誠にありがとうございます。
 本日の議事録につきましてですが、後日、事務局よりメールで委員の皆様にお諮りした後に、文部科学省ホームページに掲載することで公表させていただきますので、どうぞ御確認よろしくお願いいたします。
 また、次回の委員会につきましては、11月頃を予定しております。日程が決まり次第、また改めて御案内をいたします。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
 事務局からは以上となります。
【杉山主査】  ありがとうございました。
 それでは、これをもちまして、環境エネルギー科学技術委員会革新的GX技術開発小委員会の第6回の会合を閉会いたします。本日も大変ありがとうございました。引き続き、また、よろしくお願いいたします。
 
―― 了 ――

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