革新的GX技術開発小委員会(第3回)議事録

1.日時

令和5年2月14日(月曜日)17時30分~19時30分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

 1. 前回の議論のまとめ
 2. GX関連領域の研究動向等について話題提供
 3. GX関連領域における産業界からのアカデミアへのニーズについて話題提供
 4. 革新的GX技術創出事業(GteX)の基本方針、研究開発方針の骨子案等について
 5. 総合討議

4.出席者

委員

杉山主査、森主査代理、石内委員、菅野委員、五味委員、佐々木委員、佐藤委員、志満津委員、田中委員、田畑委員、所委員、新田委員、平本委員、本郷委員、水無委員

文部科学省

千原研究開発局長、林研究開発局審議官、轟環境エネルギー課長、吉元環境エネルギー課長補佐、奥ライフサイエンス課長、根橋ライフサイエンス課長補佐、葛谷ライフサイエンス課長補佐 他

オブザーバー

経済産業省、科学技術振興機構、ALCA-SPRING  PO、物質・材料研究機構、技術研究組合FC-Cubic、技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター、一般財団法人バイオインダストリー協会 他

5.議事録

【吉元(事務局)】  ただいまより、科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 第11期環境エネルギー科学技術委員会 革新的GX技術開発小委員会の第3回会合を開催いたします。
 冒頭、進行を務めさせていただきます環境エネルギー課事務局の吉元です。本日はお忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日もオンライン会議になります。これまでどおりでございますが、事前にお送りした進行上のお願いのとおり、発言の際は、ビデオ、マイクをオンにし、発言されていない際はオフにするよう、御協力をお願いいたします。また、御発言をいただく場合は、「手を挙げる」のボタンを押していただくか、チャットにてお知らせいただくよう、お願いいたします。指名を受けて御発言をされる際はマイクとビデオをオンにし、お名前をおっしゃってから御発言をお願いいたします。
 また、本日の議題は全て公開議題となり、会議の様子はYouTubeを通じて一般の傍聴者の方に公開されております。
 議事に入る前に、まず、本日の資料を確認させていただきます。議事が5つございますが、配付資料として、資料の1から2-1、2-2、3-1から3-3、それから、4-1から4-4、資料5、参考資料として出席者名簿をつけております。もし不備などございましたら事務局までお申しつけください。
 なお、本日の出席者でございますが、事務局の文部科学省研究開発局のほか、ALCA-SPRINGの魚崎PO、それから、物質・材料研究機構の出村部門長、技術研究組合FC-Cubicの雨宮様、それから、リチウムイオン電池材料評価研究センターの幸様、一般財団法人バイオインダストリー協会の佐藤様、それから、当省の研究振興局ライフサイエンス課、経済産業省、科学技術振興機構、有識者として近藤科学官よりオブザーバー参加がございます。それぞれの御紹介は出席者名簿に代えさせていただきます。
 また、委員の皆様方の御出席でございますが、現時点で13名と過半数に達しておりますので、委員会は成立となります。
 事務局からは以上です。
 ここからの進行は杉山主査よりお願いいたします。
【杉山主査】  皆さん、こんにちは。杉山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入っていきたいと思いますが、本日は、議事次第にありますとおり、5件の議題を予定しておりまして、委員の皆様からは忌憚のない御意見を頂戴できればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 また、本日の委員会終了見込みは19時30分頃を予定しております。
 それでは、早速ですが、議事に入らせていただきます。
 
議題1. 前回の議論のまとめ
 
 まず、議題1は、「前回の議論のまとめ」となっております。事務局より説明をよろしくお願いいたします。
【吉元補佐】  資料1を御覧ください。後ろのページの細かいところは、一つ一つ御説明はいたしませんが、前回、第2回のGX技術開発小委員会ということで、文科省の関連予算だとか、第1回の議論の振り返り、それから、先生方も含めて、様々な関連の話題提供した後に、GteXの事業の今後の進め方というところで総合討論をしていただいたと。総合討論において、かなりいろいろな観点が出たかなと思いますが、ポイントだけかいつまんでご説明すると、ここの見出しのところに書いておりますけれども、研究開発を進める中で資源循環の概念を取り入れたものとか、それから、研究のテーマも含めて、研究の方向性を適宜見定めながら、研究を研究するというような言葉も出ましたけど、そういった形で研究開発を進めていくことが重要ではないか。
 それから、今回、対象になる領域というのは、企業との連携というのが大事になってくるんですけども、アカデミアの役割というのは苗床であると。それから、橋渡しをするというのが本事業の一つの目標にはなってくるわけですけども、その前だけじゃなくて、後もサイエンスというところは非常に重要になってくるといった御意見。それから、やはり若手の研究者の方がいろいろな主要な場に自分事だと思って参画していくと。そういった仕掛けも大事ではないかと。やはりいろいろなことを機動的にやっていく必要があるので、事業で想定しているようなPD/POのマネジメントというのは、柔軟な運営が可能になるような適切な裁量権というのが必要なのではないか。こうした、いろいろ研究開発の進め方とか、テーマ設定、それから、人材育成、PD/POの司令塔機能、産業界の関与とか海外の連携とか、かなり幅広く意見をいただいたかなと思っております。
 こうしたものを踏まえまして、本日、議題にもありますけれども、基本方針とか研究開発方針の骨子として反映しておりますので、本日議論させていただければと思っています。
 以上です。
【杉山主査】  どうもありがとうございます。
 
議題2. GX 関連領域の研究動向等について話題提供
 
【杉山主査】  それでは、次の議題に進めていきたいと思います。次の議題2ですけれども、GX関連領域の研究動向についての話題提供をいただきます。今回は、関連領域の研究動向等として、次世代蓄電池での先行事例、すなわちALCA-SPRINGの例であるとか、データ活用事例に関する話題提供をいただきます。
 では、まず、ALCA-SPRINGの事例紹介について、ALCA-SPRINGの魚崎POより説明をお願いいたします。
【ALCA-SPRING 魚崎PO】  物質・材料研究機構、魚崎でございます。
このALCA-SPRINGは、2013年度にスタートし、本年3月に終了という10年のプロジェクトでした。このプロジェクトの開始に際しては、蓄電池ビジネス及び研究開発における日本の地位低下という危機感がございました。まず、下にありますように、リチウムイオン電池のシェアが数量ベースで下がってきている一方で、市場規模の大幅な拡大が想定される中でどうするかということがありました。それから、サイエンティフィックな面でも、関連論文発表数が、相対的に位置が低下しています。これは2010年までのデータですけども、そういうことが見えてきており、その後その傾向はより顕著となっています。。
 ALCA-SPRING以前に、もちろん蓄電池関連プロジェクトはいろいろありました。内閣府でFIRSTがありましたし、NEDOでは主としてリチウムイオン電池に関する研究があり、次世代蓄電池に関する、革新型蓄電池先端科学基礎研究事業、今で言うRISINGが2009年にスタートしておりました。文科省においても、元素戦略拠点(触媒・電池、京大)が2012年から、JSTにおいても先端的低炭素化技術開発(ALCA)の蓄電デバイスが2010年から開始し、CREST等もありました。 しかし、これらプロジェクト間の実効的連携が不足しているということも指摘されておりました。
 ALCA-SPRING発足に向けては、JSTの中のCRDSがワークショップを行ったり、戦略プロポーザルを提案したりしておりました。2012年の5月に、文科省と経産省の関連局長の会議において、両省が連携して次年度予算を要求する、連携すべきテーマは二次電池、エネルギーキャリア、未利用熱エネルギーとする、という非常に重要な決定がなされました。それを受けて文科省では、既存のALCAの中に特別重点領域新設という形で、次世代二次電池、エネルギーキャリア、未利用熱エネルギーを概算要求したということです。それも受けながら、JSTでは再度ワークショップを行っております。そして、9月から翌年の2月にかけて、7回にわたって、環エネ課所管で蓄電池ワーキンググループが行われました。ここでは、現在、JSTの理事長をしております橋本東大教授がコーディネーターを務め、文科省環エネ課、ナノ材室、経産省の関連課、JST、NEDO等のメンバーに加えて、多様な背景を持つ有識者が参加していました。
 第1回会合で既に文科省側からガバニングボードで連携を図ること、システム研究・戦略研究をやること、他プロジェクトに参加中のメンバーを含む日本中のトップ研究者を集約し、研究を加速すること、チーム一体での研究をすること、橋渡しを考えること、プラットフォームを考えることということが提案されており、実際それに基づいて具体的計画が作られプロジェクトが運用されました。しかし、一方で、産業界から基礎への立ち返りを提案するということがこの図には書かれておりますが、そういう仕組みはできませんでした。
 2012年12月のワーキンググループにおいて、既にここに示す具体的なチーム構想が出されています。このようなチーム研究体制は文科省プロジェクトとして新しい試みでした。第1回会合で示されたガバニングボード、システム研究、プラットフォームなどがここでは具体的に位置づけられています。
 最終的に2013年度予算では概算要求に含まれていた熱利用は認められず、二次電池とエネルギーキャリアがALCA特別重点技術領域として新設されることになりました。もともとALCAに2010年度から置かれていた蓄電デバイス領域では、研究が個別的に行われるのに対して、ALCA特別重点技術領域(蓄電池)においては何度も示したようにチーム研究として実施されるところに大きな違いがあります。なお、同時に設置された特別重点技術領域(エネルギーキャリア)は翌年度からSIPに移行しております。
 ALCA-SPRINGは、2013年の4月に公募、6月に採択決定、9月にキックオフが行なわれました。トップ研究者を集めるということで、他プロジェクトに参画中の研究者についても募りまして、発足当初にCRESTから辰巳砂先生、ALCA蓄電プロジェクトから渡邉先生、金村先生、林先生、菅野先生、今西先生といったトップサイエンティストがここに集まって、チームを構成しました。特に辰巳砂、渡邉、金村先生はチームリーダーとして研究を推進されました。右の地図にありますように、北は北海道から、南は九州までのトップサイエンスが集まり、プロジェクト期間を通して、延べ50機関、120研究室が参加しました。徹底したサイエンスに基づいて材料探索・開発をやるが、それだけに留まらず、電池システムを構築するということが最大の観点です。最終的に革新電池を実現するという観点を明確に持って、個別材料の最適化にとどまらず、電池設計から正・負極、電解質材料開発、電池総合技術、評価解析までを一気通貫でやるということでプロジェクトを実施してまいりました。また、先ほどもあげましたように、システム・戦略研究に基づいて明確な知財ポリシーを当初から持って、技術開発を推進しました。
 これが当初のメンバーですが、先ほど言いましたように、全固体電池チームの辰巳砂先生、中長期型のチームの渡邉先生、それから、長期型のチームの金村先生がJSTの他プロジェクトからこちらに参画してきています。それから、左にあります分科会委員の先生方に公募審査、後で述べますステージゲート審査、研究推進に対するアドバイス等を行っていただきました。そして、これも先に述べましたように、システム研究・戦略検討チームでは、経産省、NEDOのプロジェクトとの成果の橋渡し等を当初から考えていました。
 文科省、経産省の関連4課・室長が合同議長、戦略コーディネーター橋本先生、そして、JST、NEDO、各プロジェクトリーダーほか、有識者がメンバーであるガバニングボードが設置され、ここに掲げられておりますようないろいろなプロジェクト間の連携が図られました。文科省の元素戦略拠点とは、ナトリウムイオン電池等は元素戦略拠点で実施するというすみ分けもしました。そして、先ほど言いましたように、本プロジェクトは文科省・経産省合同会議で提案されたものであり、同時に経産省、NEDO側では左端にあります先進・革新の蓄電池材料評価技術開発というプロジェクトがスタートしており、そちらとは当初から連携会議、実務者会議というものを設置して、非常に密接に連携を図ってまいりました。また、システム研究・戦略検討チームでは、当初は、オープン・クローズ戦略を議論し、それから、知財ポリシーを決定し、後半においては、国際動向調査を引き続き実施してまいりました。
 ALCA-SPRINGにおいては、知財マネジメント支援を当初から考えておりました。外部発表審査、特許出願審査はいろいろなところでやっておりますが、本プロジェクトでは、単に審査するだけではなく、請求項の書き方、追加データ取得など強い特許となるアドバイスを実施しました。調査、解析、啓発・教育支援、出願支援、それから、パテントポートフォリオ化などの支援を行い、強い特許を出させるということで、数そのものはそれほど多くなく特許出願107件ですが、うち44件が外国出願になっています。
 先ほどのプラットフォームですが、一番下に書いてありますように、横断的にプロジェクトを支えるということで設置されておりました。実際には、2013年4月の本プロジェクトスタート以前の2012年度補正で、このプラットフォーム(蓄電池拠点)がナノプラの一環として措置され、公募されました。それに対して、NIMS、産総研、早稲田大学が合同で提案し、採択いただいております。ALCA-SPRINGプロジェクトはまだスタートはしていませんでしたが、同プロジェクトと連携して、優先支援する、ということが公募にも明記され、採択条件にも入っていました。なお、プラットフォームの維持費に対するナノプラの支援はなく、ALCA-SPRINGが維持費を出すことで、メンバーは無料で専門家の支援を伴う機器使用を可能としました。なお、プラットフォームはALCA-SPRING以外の大学、研究機関、民間企業などについての支援も行っていますが、それらについては、NIMSの運営費交付金、それから、使用料収入で賄っています。
 プラットフォームにおいては、大学の研究室ではなかなかできない小型電池の試作・評価を可能にしていますし、や蓄電池材料評価に特化した最先端計測設備群を設けています。これらの装置は、個々の機器が最先端であるだけではなく、大気非曝露搬送であるとか、低ダメージでリチウム元素分析ができるとか、ユーザビリティがあるといったことで、世界的にも非常に優れた装置となっております。
 10年間と言う長期のプロジェクトにおいては、中だるみ、マンネリなどの弊害が起こりやすいのですが、このプロジェクトの大きな特徴は、ステージゲート評価で組織を改編し、緊張感を持ってプロジェクトを進めてきたという点にあります。当初、2013年に開始したときは先ほど言いましたように、5つのチームでしたが、1回目のステージゲートにおいて、中・長期型チームを正極不溶型リチウム硫黄電池チームに、また長期型チームを次々世代電池チームに改編しました。また、金属-空気電池チームは、長期的な検討が必要ということで、次々世代チームの中のサブチームに組み込みました。それから、新たに実用化加速推進チームを設け、その中にリチウム金属負極の研究を集中してやるリチウム負極特別ユニットを設置しました。2017年度実施の2回目のステージゲートとそれを受けた2018年の組織改編が特に重要です。当初から連携していましたNEDO先進・革新電池材料評価技術開発プロジェクトが第2期ではSOLiD-EVとなり、硫化物型全固体リチウムイオン電池に集中することを受け、同プロジェクトに全固体電池チーム硫化物型サブチームの成果のみならず、研究者全員を移管しました。ALCA-SPRINGの全固体電池チーム硫化物型サブチームにおいては、その一歩先を行くリチウム硫黄型の全固体電池に集中しました。また、全固体電池チーム全体としては、酸化物型に重点化するという選択と集中を行い、全固体電池の発展を目指しました。
 これがSOLiD-EVの組織で、集中研がLIBTECに置かれ、サテライトを大学・公的研究者が構成しているわけですが、サテライトの大半は、ALCA-SPRINGの全固体電池チーム硫化物型サブチームから移管したメンバーで構成されています。SOLiD-EVとは引き続き密接に連携しています。
 また、第2回ステージゲートにおいては、空気電池の応用部分をNIMSソフトバンクセンターに移管しています。
これが最終(最後の2年間)の連携体制です。
 これは平均年齢の推移を示しております。当初45歳で、10年間ただそのまま進めていますと、当然平均年齢は10歳上がるわけですが、実際にはここにあるように、約半分のスロープになっており、ステージゲートごとの新陳代謝が有効に行なわれた事を示しています。当初メンバー77名のうち現在も参画しているのは約半分の36名ですし、現在のメンバーの内28名は途中から参画しておりまして、その多くは他分野から参画した電池研究の未経験者です。
 分科会委員も現在8名で、その内企業経験者5名(国研2名、大学1名)ということで、企業のニーズを吸い上げるとともに、実電池開発とアカデミアでの研究のギャップを狭める努力をしてきました。なお、メンバーは、構成員の転勤等に併せて随時変更してきております。
 研究開発面での成果です。
まず、全固体電池というのはいろいろなところで報道されていますように、実用化に近くなっておりますが、特に実用化に近い硫化物型全固体リチウムイオン電池については、先ほども言いましたように、NEDOプロジェクトと当初から密接に連携し、2018年に成果、メンバー全員を移管しております。その後は、リチウム-硫黄型の全固体電池に関する研究に集中し、世界最高性能の正極材料開発、劣化メカニズムを明らかにするなどの等の成果をあげています。
 さらに安全性などの観点で究極の全固体電池ということで、酸化物型を目指しています。これはプロジェクト開始当初は薄膜電池だけが存在しており、バルク型の電池は反応相が生成するなどの理由で作動していませんでした。しかし、本プロジェクトでは、チーム一体となって、統合的に研究を進め、バルク型電池で世界初の室温作動に成功しております。加えて、実用化を目指したグリーンシート法での電池作製にも成功しております。世界的には、材料開発に関わる研究が激しい勢いで行われていますが、電池としての研究報告は日本の研究に限られています。
 とはいえ、全固体電池の研究開発においてはリチウムイオン導電性の高い固体電解質の開発が引き続き重要であり、それを加速する上で、ネガティブデータを含むデータベースの構築が非常に重要であり、後で出村さんからも話があると思いますが、酸化物から始め現在では硫化物にも展開し、既に組成情報600件等、かなりの量のデータを収集しています。さらにはこのデータを活用した固体電解質探索についても研究を進めております。次のプロジェクトにおいてはデータを活用した研究が重要になるものと考えています。
 リチウム硫黄電池は、これも比較的実用に近いところにあり、本プロジェクトにおいても、350 Wh/kg-セルの比較的大きなものを実際に作って実証しております。
 次々世代電池は当初はほとんど形のなかったもので、空気電池については、エネルギー密度等は当初の目標を達成いたしましたが、サイクル数の問題があって、現在、基礎研究に集中しております。同じく次々電池チームのマグネシウム金属電池は、元素戦略的、あるいは資源の問題で非常に有力の電池として以前からいろいろな報告がありましたが、電池としては動いていませんでした。チームとして、正極、負極、電解液、セパレータ、さらには電池作製技術に関する研究を総合的に行うことによって、世界で初めてフルセルの実証に成功しています。
 マグネシウム電池を除く全ての電池について、リチウム金属負極の利用が高エネルギー密度実現に不可欠ですが、その使いこなしには多くの困難な課題を解決する必要があり、リチウム負極特別ユニットにおいて、リチウム金属の加工、電解液,セパレータなどの基礎研究を積み上げ、現在、500 Wh/kg級のリチウム負極電池を目指して、電池が作られつつあります。
なお、金属-空気電池、リチウム硫黄電池、マグネシウム電池、リチウム負極などでの研究で用いられた電解液についてのデータベースも現在作成中です。
 最後に、人材育成に関する成果ですが、色んな階層で非常に多くの人材を輩出しました。それまで電池研究を実施してなかった12機関に本プロジェクトのメンバーが教授あるいは独立性の高い准教授として赴任し新しい研究室をつくりました。加えて、教授の昇任、准教授昇任、助教採用等が多数あり、さらには多数の異分野の研究者を電池研究に引き入れるなど、電池研究の裾野を大きく広げました。
特に強調しておきたいのは学生の育成です。このプロジェクトに関与した学生は昨年度終了時点で、約700人(学部卒100、修士終了500、博士修了100)であり、そのうち600人が企業、さらにそのうち約500人が電池関係企業に就職していますし、博士課程修了者を100人も輩出しています。博士課程に進学した多くの学生は、もともと博士課程進学を考えていなかったが、ALCA-SPRINGのチーム研究を通して、研究の面白さに目覚め、博士課程に進学したとのことです。
 以上、まとめをここに示しました。時間が来ておりますので、ここで終了しますが、全国規模のプロジェクトをチーム研究として実施したことで、成果を上げることが出来たと言うことを強調しておきたいと思います。最後に示しますように、蓄電池といった統合デバイス開発においては、基礎基盤研究においても全国のトップ研究者が参画するチーム研究が有効であることを、人材育成も含めて、ここでは実証しました。
 以上です。
【杉山主査】  魚崎先生、どうもありがとうございました。
 それでは、次に進みたいと思います。
 続きまして、研究開発におけるデータ収集・プラットフォーム構築の事例紹介として、物質・材料研究機構の統合型材料開発・情報基盤部門の出村部門長より御説明をいただきます。よろしくお願いします。
【出村部門長(物質・材料研究機構)】  杉山先生、どうも御紹介ありがとうございました。出村でございます。よろしくお願いいたします。
 DXによる材料開発の効率化ということが大変期待されているわけでございます。材料の開発というのは典型的な逆問題ですので、材料の探索空間の広さから考えると、ぜひ大きなデータを集めてAIで効率化させていきたい、そのためにはとにかく、材料のデータをきちんと集めないといけないということになります。
 NIMSはこれまでに、いわゆる材料の専門の研究所として、世界最大級の材料データベースをコツコツと蓄積して皆さんに閲覧サービスをご提供してきたという実績がございます。左側にあります無機材料は、AtomWork-Advというものですけれども、これは世界最大級の無機材料データベースになっています。また、右上の高分子のPolyInfoですね。これはもう高分子の世界でいうと世界に比類がないような断トツの材料データベースになっています。そのほか右下にあります金属に関係する、これはNIMS自身が信頼性に関わるデータシート事業という試験研究を行っていまして、そのデータをデジタル化するという形で提供しています。このように、非常にバラエティーに富んだ、かつ世界最大級の材料データベースということで、皆さんにサービスを提供しているわけですけれども、下に書きましたように、材料データをめぐる国際競争が非常に激化しております。
 例えば米国化学会を母体とするChemical Abstracts ServiceがSciFinderというサービスを提供していたり、あるいは出版社のElsevierがReaxysというサービスを展開したりしています。私たちとしては研究機関としての特徴を生かした戦略へと大きく舵を切ることにいたしました。
 この戦略は非常にシンプルでして、私たちは材料研究機関ですから、日々研究をやって、材料のデータをどんどん生み出しているわけですね。まさにデータをつくると。そのデータを再利用できる形でためて、それを使っていく。世界最大級の材料データベースの数を誇るだけではなくて、機械学習に実際に活用して、データの再利用を進めて、材料の成果につなげていく。そこで出たデータがまたたまっていくという形で、このつくる、ためる、つかうのサイクルを回すと。
 NIMSが実践してきたマテリアル研究のDXということで、実際に材料をつくるところを例えばハイスループット化していく。それから、ためる技術を、ここにあるように、非常にバラエティーのあるシステムの中で実現していく。ためたデータを使うデータ駆動研究もかなり集中投資をしてやってきました。今日は特にこの右にありますRDEというものに着目して、データをためるという話をまず差し上げたいと思います。
 これはNIMSの社会実験と書かせていただきましたけれども、私たち2017年にこれを始めたときに、大変試行錯誤、苦労いたしました。その苦労をここにまとめていますが、要するに、データを出す側の気持ちとデータを使う側の気持ちがかなり乖離して、すれ違っているんですね。データを提供する研究者としては、中途半端な形で提供したくないとか、手間暇をかけてまで提供したくないということがあって、この思いは時間が経つとともに実験条件を忘れるといったことがあって、その気持ちはどんどん強くなって、出したくないな、面倒くさいなという気持ちが強くなる。一方で、データを利用する側からすると、できるだけ価値が分かるようなデータにしたいとか、使いたいとか、網羅性に優れた共用データを使いたいとか、あるいは生データを使いたいというような要望もあります。それから、手持ちのデータと統合する際に、できるだけ手間なく統合できるようにしたいといった、お互いで相当乖離があったわけですね。結局、この矢印の下に書いていますように、きちんとしたデータを後日作成するということをやってしまうと、大変間違いが多く発生する。また、結局これをやっちゃうと、論文とか報告書のサプリメントデータ以上のデータ蓄積が進まない。ネガティブデータなどが集まらないということになるということが分かってきました。
 ということで、後日ではなく、実験をやっている研究のフローの中に自然にデータ登録を入れていく。実験中にデータ登録、データ構造化していくことを私たちはかなり試行錯誤してきました。そのためにつくったシステムが、ツールとテンプレートの組合せでハイスループットにデータを構造化していくというソリューションでして、これをシステム化したものがResearch Data Expressの略でRDEというものです。左側に書いてあるツールというのは、いわゆるデータが出てくる装置のファイルの中身を解析して、そのデータがどういう条件で取得されたかをちゃんとメタデータとして格納するというものです。右側に書かれているテンプレートでは、測定対象の材料のつくり方や由来みたいなものをしっかりと、かつ、効率よく書いてもらうためのものです。
 このResearch Data Expressというものは、研究のデータ、あらゆるデータを安全にためることができます。かつ、どの範囲で閲覧させるかということもコントロールできるシステムになっています。研究中は専用領域で、中で閉じて使っていただくことができ、そして、研究が終わって、これは日本の全体、あるいはGteXのメンバーだったらいいよというデータであれば、如何様にでも共用化できる、そのための仕組みも整っていまるわけです。
 このRDEのシステム、NIMSの中でもう既に稼働していまして、現在140台の実験装置につないで、日々データがどんどんたまっているという状態になっております。
 こういうデータを使って実際に材料研究がうまくいくのかということも、この5年間、集中的に試してきました。これはその一部をカタログ的にまとめているものですけれども、データ科学は非常に汎用性がある、要するに数学ですから、当然の帰結として、様々な分野に使うことができるわけですが、それを実際に私たち味わってきています。例えば左上の例では、実際に研究者は一切、研究・実験をしないで、過去のデータを再利用して、Bi/Siという候補を出してきたんですけど、こういうデータの再利用の価値によって材料をつくることができますよという事例であったり、あるいは、右の上にありますような僅か1%の実験、あるいは左下にあるような6,600万通りの中から40回の追加実験という、非常に実験として限られた回数の中でもデータ駆動によって逆問題が解けるということや、右下にありますように、自動自律実験と組み合わせると非常にデータを高速に回すことができるといったことを私たちは経験してきております。
 このNIMSの取組をプロトタイプとして日本全国のマテリアルを強化していく。マテリアル強化戦略の一環として、マテリアルDXプラットフォーム事業というものが打ち立てられております。これは3つの事業で構成されています。「ためる」技術については、NIMSがデータ中核拠点としてNIMSの交付金の内数の中で、全国の皆さんに使っていただくためのクラウドのデータ基盤をつくっております。この「つくる」という部分は、ARIM事業、マテリアル先端リサーチインフラ事業で、これはもともとナノテクプラットフォームだったわけですけれども、設備の共用からデータの共用へということで、設備の専門家が入って、データの共用化に入っていると。右側の「つかう」、これは最近、DxMTと呼んでおりますけれども、この中でまさに、つくってためたデータを使っていく。使っていくだけではなくて、ここから出てきた粒のそろったデータをまたためて共用化していくということになっております。
 これが全体の部分のデータ中核拠点のシステムの構成をより細かく書いたものですが、この囲みがあるところがポイントでして、私たちがつくっているデータ中核拠点のデータシステムは、世界にオープンにするのではなくて、戦略的にオープンにする、シェアの範囲を戦略的に制御することができまして、その中で共用化を図っていき、自身のデータと混ぜながら解析すると。データは一度、ダウンロードされてしまうと価値を毀損してしまうので、ここにpinaxと書いていますけど、高度なAI解析システムでこの上で解析できるようなものも用意しているということになっています。
 そういうわけで、NIMSで試行錯誤して大変苦労しました。この苦労がまずホップということで、次にARIMで装置の専門家に入っていただいて、まさに研究DXを進める次のステップに入りました。そして、最後にジャンプとして、DxMTで研究室にDXをもたらしていくというような流れになっています。この中で、私たちは、ALCA-SPRINGのような大きなプロジェクトに対しても、DXということの取組を進めてまいりました。
 今日、参考資料で、事務局と委員の皆様にお配りしておりますものを手元で御覧いただきたいんですけれども、参考資料1の2ページ目を御覧ください。魚崎POの非常に強いリーダーシップの下で、ALCA-SPRINGで出てきたデータが雲散霧消しないようにまずきちんと集めようというところから始めました。
 参考資料の3ページ目を御覧ください。これはかなり皆さんに時間をかけていただいて、このデータを集めていくということをさせていただいたんですけれども、左上にありますように、参画機関の研究室の方に、データをどう集めているのか、どう整理しているのかという情報を提供いただきまして、私どものデータ専門家のほうでそれを分析して、データのフォーマット案をつくり、また、それを皆さんにお配りして、駄目出しをしてもらってということで、実験データの蓄積、記入に入るところまで約1年かかりました。その後、先ほどのResearch Data Expressを通して、X線の回折プロファイルであるとか様々な装置データをその中に入れていくという設計を1年かけて、ちょうど2年前に始めましたが、今ちょうど、4ページ目にあるような、データ構造の体系をきちんと合成プロセスに沿ってつくったり、あるいは5ページ目、それぞれのデータの項目間の関係をきちんとつけたようなデータベースと言っていいようなデータ構造をしっかりつくり上げ、6ページ目、最後には、現在、RDEの中にX線プロファイルであるとか、右側は、これはCole-Cole プロットだと思いますけど、こういうさまざまな計測データなども格納できるようになってきています。
 最後、7ページにございますように、酸化物、硫化物それぞれ組成データが併せて600以上、合成体データで800以上というデータが集まるまでに至っております。この中で私たちが得た教訓としては、新しくプロジェクトを始めるのであれば、最初からデータの構造化、収集、蓄積、そして、それをどう活用していくかということを考えて、プログラムの中にメカニズムを組み込んでおくということが大事だろうと思っています。
 それから、これまで、ALCA-SPRING等で培ってきたDXに向かっているノウハウというものはやはり最大限活用して、例えば今回つくったデータフォーマットについても横展開していくようなことを考えていくべきだろうと考えております。さらに、データは公開できないですが、データ構造は公開できると思いますので、こういうものを公開していくことで、いわゆる事実上の標準化、デファクトを握って、データ収集でリードしていくというのが戦略としてはいいのではないかなと考えております。
 最後、資料2-2に戻りまして、資料の14ページをご覧ください。世界に勝つための産学連携として、日本のマテリアル革新力強化のために、私はこの「シェア」という新しい考え方を皆さんに御提案したいと思っています。「クローズド」というのはよく理解できると思いますし、「全世界オープン」というのは、アカデミアの先生方は常にやっていることだと思います、論文を書いていてですね。この「シェア」というのは、限られたメンバーでデータを共用する、あるいはデータから出てくるモデルを共用すると。それをぐっと狭い領域にやると、限定グループで、例えば今、ALCA-SPRINGでやっている、ある特定のグループの中だけで共用することになりますけれども、これをもう少し広げて、日本全体の中で、あるいは事業全体の中で、広域でシェアしていく。このためにNIMSは、クラウドのデータシステムを整えてきておりますので、ぜひこれを御活用いただいて、こういうシェアの中でデータの再利用率を高めて投資効率を上げていく。そこに勝ち筋を見いだしていただければと思っております。
 最後に、私どもNIMSがこの中で培ってきたラインナップがまとめてございますので、今日、御質疑等を通してどういうことができるのかとか、どういうことがあるのかということを理解を深めていただければありがたいと思っております。
 以上です。
【杉山主査】  出村様、どうもありがとうございました。若干時間が押しておりますが、短い質問ありましたら受け付けますが、いかがでしょうか。魚崎先生、出村様の御発表に関しまして何か御質問ありましたらお願いします。よろしいですか。
 それでは、またありましたら総合討議の際にお願いできればと思います。
 
議題3. GX 関連領域における産業界からのアカデミアへのニーズについて話題提供
 
【杉山主査】  続きまして、次の話題に入っていきたいと思いますが、次の議題は、「GX関連領域における産業界からのアカデミアへのニーズについて」の話題提供ということでございます。今回は、関連領域として、水素、蓄電池、バイオものづくりの分野について、それぞれ10分程度、産業界の方から、アカデミアに対するニーズについて話題提供いただければと思っております。
 では、まず水素分野につきまして、技術研究組合FC-Cubicの雨宮様より説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
【雨宮氏(FC-Cubic)】  御紹介ありがとうございます。FC-Cubicの雨宮です。本日は、私から、燃料電池の技術研究組合の立場としまして、産業界を代表しまして、水素全般の研究ニーズについてプレゼンさせていただきたいと思います。このような貴重な発言の場をいただきましたこと、深く感謝申し上げます。本日はよろしくお願いします。
 最初に、こちらが、私たちが実現させたいと考えてございますエネルギー資源循環型社会です。ここ数年で、カーボンニュートラルは欧州を発端に大きく潮目が変わったということは御存じのとおりでして、その中で、特にこのカーボンニュートラルを設計する上で水素が重要な位置づけになったことは非常に大きな変化点と捉えてございます。「水素をつくる」、「ためる・はこぶ」、それから、「つかう」、そして、さらにその用途を広げていくという、こういった一連のサプライチェーンをつくり上げるということが、日本としてとても重要になってきています。
 そして、この2050年のカーボンニュートラルを実現させるために必要な水素を「つくる、ためる、つかう」という技術について、開発ロードマップが、先週、NEDOから公開されました。2050年にカーボンニュートラルを考えるとなると、やはり2040年頃には技術的な成立に目鼻がついている必要がございます。その断面で、製品目標ですとか、あるいは技術の課題というものを整理しまして、基礎研究から製品実装までのシームレスなシナリオ、これを産学が混然一体で議論して策定したというところが今回の特徴点です。
 例えば、右に示してございますような移動体用の燃料電池、水素貯蔵のロードマップについて言いますと、18企業、16大学、4研究機関、そして、2つの行政機関。これは経産省様と文科省様にオブザーバーとして参加していただいたわけですが、こういった大勢の機関の方々が関わって、9か月かけて仕上げました。この見出しの中に、本音の議論をしたと申してございますのは、特に製品とシステムという部分のワーキング活動ですけれども、ここは主に産業界で、これまでとの違いというのは、産業界が製品目標ですとか、あるいはシステムの情報というのを一切隠さずに出したということにあります。これを受けて、アカデミアが中心となって組織したシナリオワーキング、この3つのワーキンググループの活動の中で、最後のシナリオワーキングの部分は、システム目標の達成手段を真剣に検討しました。こうやって合意したものが2月9日、ちょうど先週ですけれども、公開された技術開発ロードマップになってございます。産業界とアカデミアが合意した、大変意味のある、この先、日本が世界に対して勝つためのシナリオのたたき台ができたと感じております。
 そのロードマップの議論の中から、燃料電池、それから、水素貯蔵材、水電解に関して、技術の課題と必要な革新について御説明してまいります。
 まず最初に燃料電池です。こちらに示してございますのは、ロードマップで、2040年頃にメジャーになるような移動体群にとって、必要な要求性能と耐久目標が設定されました。ここでは特に性能の部分を取り上げてございますけれども、2040年に燃料電池モビリティーが社会に受容されるためには、こちらにございますような2040年目標というえんじ色のカーブ、ここまで性能を上げなければなりません。この性能カーブというのは、基本的には理論電圧からの様々な電圧損失で決まりますので、その損失を最小化して目標を達成しなければいけないということになります。中央の棒グラフに、2030年の電圧損失の内訳を示してございますけれども、それを見ますと、特にこの酸素還元触媒の損失というのが大部分を占めているということが分かります。ORR触媒と書いて示している部分です。このORR触媒の損失を低減することで、性能のカーブを向上させることが可能になるわけです。そのためには、触媒自体の活性を向上させる革新的な材料が必要になります。そうした新しい触媒創製というのも将来の性能向上の一つの鍵になってくるわけです。
 次は、水素貯蔵材料についてです。移動体には水素を燃料として蓄えるようなデバイスが必要不可欠になります。燃料電池は、特に大型トラックですとか、鉄道、建機、重機といったヘビーデューティユースにおける、これまでのディーゼルパワートレインからの置き換えというところが特に世界中で注目されているわけですけれども、現在の高圧タンクというのは、この左上のプロットに示してございますが、黄緑色の帯がございますけれども、なかなか進化の伸び代が小さいということがもう自明となってございまして、ディーゼルの場合と同じような荷室の利用とか、商品性の担保に対して懸念される声が出ているというのも事実でございます。今回のロードマップでは、そういった部分に対しまして、新しいコンセプトの水素貯蔵材料を組み込んだような水素容器を新たに目標設定しました。こうした高貯蔵密度の選択肢が増えれば、一気に多様な移動体に展開がなされる潜在的なポテンシャルがあると我々は考えてございます。例えばドローンみたいに、とにかくたくさんの水素を積みたいんだというユーザーにとっては、もう爆発的に、まさにゲームチェンジになる可能性が大きいと考えてございます。
 こちら最後ですけれども、水電解です。それぞれの分野で長所短所などをまとめたものが左上のテーブルになってございます。それぞれのタイプで特徴があるわけですけれども、ここでは多少主観も入りますけれども、PEM型とAEM型に特に注目してございます。その理由は、両者の技術の肝である電解質材料が、燃料電池と共通化できますので、お互いで相乗的な研究加速が期待できると考えたためであります。ただし、PEM型の水電解に対しましては、固有のイリジウム触媒の課題がございまして、イリジウム自体の資源リスクがあるので、触媒量の低減というのが必達の課題となっています。また、AEMが製品化できれば貴金属触媒を必要としないというような非常に多くのメリットがある反面で、現状、技術的なハードルが非常に高いという実態がございます。特にこのAEM、アニオン交換膜のことですけども、その膜の安定性が課題でございまして、今、そのブレークスルーを期待して、世界中でも非常に多くの研究、チャレンジングな研究が進められているというところが実態でございます。
 こういった水素に関する非常にチャレンジングな目標を達成するような材料の革新、これが将来の水素の目標達成に重要ですが、こういった材料の革新をやるためには、これまでの研究のやり方そのものを変えていかなければいけないと。そうしないと目標達成できないというふうに、ロードマップを議論の中で私たちは結論しています。その一つのやり方の提案として、こちらに示してございますようなフィジカルとバーチャルのそれぞれのループを連携させるようなスキームの実現ということが非常に重要ではないかと考えてございます。これは先ほどの出村先生のDXの御発表にも通じるものがございますけれども、特に下段のフィジカルな部分はリアルな世界で材料を探索することを示してございます。 ここではAIを用いたインフォマティクスあるいはロボットの自動自律実験というところを前提としておりまして、まずSpring-8ですとかJ-PARCのような非常にパワフルな大型の解析施設を組み込むことで、もう圧倒的なスピードで、極めて広い材料空間を探索する、そういったことを表しています。その結果を上段のバーチャルに送りまして、ここではもうデバイスをつくることなく、性能や耐久のような機能性を計算で一気に予測すると。そういった正確な大規模な現象シミュレーションには、当然ながら超高速の計算機の利用が必要になります。再び、その結果をフィジカルにフィードバックすることで、お互いバックアンドフォースすることで、発展的にいい材料を見つけていくスキームの構築、こういったところが特に我々産業界からしましても、緊急かつ重要と考えてございます。
 最後、これがまとめのスライドになります、繰り返しになりますが、水素の研究というのは非常にチャレンジングでございまして、研究のやり方から変えていく方法の革新というのが特に必要であると考えてございます。これまで、100年、1000年かかっていたような研究を1年でやる。そういった仕組みをつくる研究というところに産業界は非常に強い期待を持っています。 そういった上で、先ほどの出村先生のDXというのが一つ、重要なキーワードになってくるのかなと思っています。こういった武器が必ず日本の競争力になるというふうに、ロードマップでは、全員一致で意見がそろいました。最後に5ポツ目ですけれども、こういった新しいアプローチをやっていくためには、ぜひ柔らかい頭脳を持った若手の研究者というのを積極的に登用していただきたいと考えてございます。先ほどの魚崎先生のALCA-SPRINGでの取組も、年齢というのをKPIにしてございましたけども、そこの部分は大変重要だと考えてございまして、あともう一つ、ここの中に、若手かつ多様性とありますが、多様性という表現は、これはまさにロードマップのことを言っておりまして、多様な人たちが関わるロードマップというものを継続的にメンテナンスして議論を通じて、研究者たちが全員腹落ちした中で、革新、チャレンジできるという意味を込めてございます。水素のパートのプレゼンは以上となります。御清聴いただきまして、どうもありがとうございました。
【杉山主査】  大変ありがとうございました。
 続きまして、技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター、LIBTECの幸様より、今度は電池に関しての御発表をいただきます。よろしくお願いいたします。
【幸氏(技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター)】  LIBTECの幸と申します。本日はこのような機会を賜り、ありがとうございます。本日は、液系LIBや全固体LIBに関して、国内材料メーカーのための仮想電池メーカという立場のLIBTECから話題提供させていただきます。
 まず、こちらはLIBTECの紹介ですが、設立12年目の技術研究組合です。2つの事業をやっておりまして、1つは自前資金で運営して、液系LIB用の開発材料を評価する自主事業と、もう1つは、NEDO様から委託された硫化物系全固体LIBのプロジェクトであります。
 次、まず液系からですが、材料メーカや大学さんでは各材料を開発するということで、それぞれ正極の専門家、電解液の専門家といった分業的なことがなされているのが実態ですが、一方で、実電池ですり合わせて評価するということの技術は電池メーカ内にノウハウが蓄積されていまして、表にはなかなか出てきません。しかし、そこへ踏み込まないとなかなか実用化される電池には、使える材料にはなりませんので、忙しい電池メーカさんに代わって、我々LIBTECが仮想電池メーカとして、各社の新材料を実電池に組み込んで、評価して、フィードバックすることで、材料メーカの開発支援、加速化ということをやっております。主に液系ではこのような役割を我々はやっております。また、電池メーカさん、忙しいので、フィードバックが少ないですとか、そもそも材料評価の機会のチャンスを得ることすらハードルが高いというのが実態でありました。
 次、もう一つのNEDOプロのほうですが、SOLiD-EVというNEDOプロジェクトでは将来の実用化が有望視される全固体電池について、産学官がタッグを組んで、オールジャパンでやってきています。このプロジェクトは、ALCA-SPRINGから、硫化物系全固体LIBのテーマの移管を受けまして、魚崎先生からもお話ありましたが、それとともに多くのアカデミアの先生方もこちらのプロジェクトへ移籍されました。その先生方が中心となって、材料の探索や開発、機構解明など、サイエンス面では大きな貢献をいただきまして、プロジェクト全体としては予想以上の成果を上げることができてきております。
 一方で、LIBTECの集中研側の動きとしてはこのような形になります。電池の材料メーカさん、プロセス屋さん、電池メーカと、それのユーザーである自動車メーカさんという形で、車載用蓄電池の川上から川下までメーカが一堂に会して、出向研究員が数名ずつ出ております集中研、それぞれのニーズやノウハウを共有して、一つの大部屋にいるんですが、そういった方々で研究してやっております。アカデミアの先生方は、右下に書いてございますが、新規材料の探索や開発や高度解析、メカニズム解明など、サイエンス面を先生方に強化いただいて、この連携というのは今、大変うまくいっている状況でございます。
 次、我々がやっているプロジェクト、SOLiD-EVというのは、全固体電池の性能を追い求めるという電池開発ではなくて、一つ特徴的なのは、新材料の評価を共通の物差しとなる実電地でやれるようにする共通基盤技術開発というのが目的でやっております。標準電池モデルという電池仕様を策定しまして、組合員企業に共有しています。これを土台にして、個社の材料開発や電池開発、あるいはアカデミアでの新規の解析技術の開発や標準化、国際標準化などに貢献してきております。
 また、LIBTEC、SOLiD-EVは、ALCA-SPRING以外の国プロとも積極的に密に連携を進めてまいりました。共創の場、NIMSさんですとか、新学術、蓄電固体界面科学、RISING3といったプロジェクトとは、単なる情報の交換にとどまらず、互いの強みを生かすような形で、電極電池の提供であったり、高度解析をやっていただいたりという形で、Win-Win、ギブ・アンド・テイクの形で技術連携を密に進めてきております。
 その成果の一部を次のページにお示ししますが、これはプロジェクト間連携の成果の一例ですが、ALCA-SPRINGとは、左にありますような液系リチウムイオン電池、全固体リチウムイオン電池などの分野で連携しまして、我々側は、川下側ならではの役割として、電極やセルの試作開発を行ったり、それを御提供したり、そういった電池の性能のフィードバックをしてまいりました。また、蓄電固体界面科学とは、右側にありますが、最近、膨張、収縮のない正極材料というものを用いた全固体電池の取組の成果が論文になりまして、取り上げられたところであります。こういった形で、連携は進めていますが、一方で、こういったプロジェクト間連携ではやはり課題もありまして、それについては後ほど述べさせていただきます。
 この図は日本人として、なかなかつらい図なのですけれども、各種の電子デバイスの日本企業の世界市場におけるシェアの推移を示しています。オープン・クローズ戦略の小川先生の本から引用を許諾いただいて出しておりますが、そこにLIBTECのほうで、このモバイル用のLIBと車載用LIBのプロットを追記したものです。これまでのデバイス同様、LIBもかなり10年ぐらい前は、それぞれ初期は日本が寡占状態でしたものが、10年前後でシェアを大きく落としているというパターンに入っております。
 この右上にあります次世代二次電池、ここには全固体電池ですとか、まさに今から始められるGteXの電池などがあると思いますが、こういったことにならないように、今までを振り返りますと、最初、強い知財、初めの知財を持っていたんですが、その知財が競争力の維持になかなか寄与できなかったという反省も踏まえまして、今日、私は答えを持っていませんが、今から、こういった次世代の二次電池についてどうしていくべきかということを考える必要があるのかなと考えております。
 こからAPPENDIXに参考データや資料を載せておりますので、後ほど御覧いただければと思いますが、統計の資料などを見て、いろいろ提言に入ってまいりたいと思います。米国、中国などの研究者数、蓄電に限らず、全研究分野では、人口の違いもありますが、日本の2、3倍あります。また、今は研究開発費も3倍程度あるようです。全固体電池に特化してみますと、最近、日本の直近では、中国、米国、欧州に続く4位となっておりまして、トップに関しては2016年に単年での出願件数が中国に抜かれまして、22年にはもう累積の出願件数でも追い抜かれるというような状況になってきております。
 中国のみならず、欧州でもAIを活用した蓄電池の研究プロジェクトというのが数多く立ち上がっておりまして、先ほど来ありましたが、AI、機械学習によるデータの処理部分、これは後工程に当たると思いますが、その前のフィジカルな部分、前工程での合成の評価の高速化、ハイスループット化、昔で言うコンビケムですとか、今のラボオートメーション化、こういったものがかなり必要になってきているのではないかなと考えます。なかなか我々のほうでは、すぐに導入は難しいので、アカデミアのほうからこういうことを早く進めていただければと考えております。
 また、最後の点は、日本では今、ニッケル、コバルト、マンガンなど三元系と呼ばれるこういった正極材料が主力でEV用として使われておりますが、一方で、世界ではもうリン酸、鉄、リチウム系、今年から多分過半数を超えていると思いますが、そちらへシフトしています。キーワードとしては、パック化技術、セルtoパックの技術、ニッケル・コバルトフリーですとか高耐久性、高安全性がこの材料の特徴ですが、三元系と比べて、材料のエネルギー密度は低いものの、こういった左側のものが重視されているという状況です。したがって、これはEVの例ですけれども、こういったふうに用途に応じて、今までのプロジェクトにありがちなエネルギー密度を追い求めるという以外の目標値の設定というのも検討が必要かなと考えています。また、我々のプロジェクトは全固体をやっていますけども、当面はまだ液LIBが主力であると思いますので、液LIBの研究開発の継続というのも必要かなと考えております。
 こちらは最後のページですが、我々、川下側での困り事と、短期、中期、長期でまとめまして、それに対して、アカデミアへの期待というものをまとめてございます。
 上から参りますが、新材料がなかなか、特に活物質は出てきませんので、高効率な材料開発というのをお願いしたいと思います。また、国内の新材料、国内外では入手しにくいです。特に国内のメーカさん、気持ちは分かるんですが、なかなか小競り合いしている場合ではないという状況ですので、海外の材料メーカさんは自信があるのか、簡単に、もうNDAなしで、ドラム缶ベースで、無料で提供するというような実態もございますので、そういったところを埋めていく必要があるのかなと思います。あとは、我々だけでは高度解析、TEMや放射光、中性子の利用などは日常ではできませんので、プロジェクト間連携などを通じて先生方にぜひお願いしたいところです。全固体では固固界面の反応メカニズムも不明瞭ですので、学理構築をしていただいて、川下への展開というのもお願いしたいです。あとは、我々は標準電池というものをつくっておりますが、アカデミアでも、そういった統一的な物差しというものも持っていただけると、データを受ける側としてはいいかなと思います。一番の問題は、この中期にございますアカデミアからよい材料が出てきても1グラムではなかなか、我々、電池材料、電池として評価ができないので、出願を終えたもの、発表を終えたものに関しては、合成技術の移管を我々にしていただいたり、あるいは、下にありますように、スケールアップしてくれるような機関を育てたり、量産工程の研究開発機関、量産インキュベータのようなものを設置できると、この辺りの受渡しが非常にスムーズになるかなと思います。時間ですので、長期のほうに参りますが、あとは電池総合技術を持った人材がまだまだ不足しておりますので、先ほど来ありました、AI、機械学習の使い手も併せて、サイエンスだけでなく、テクノロジーもカバーできるような人材を育てていただければと思います。あとは、プロジェクト間の橋渡し時、我々は受ける側ですが、その初速を上げたいので、ぜひ材料の取扱い時の失敗事例、デメリットなども一緒に、いい話だけではなくて、そういうものも共有していただければと思います。
 私からは以上です。
【杉山主査】  どうもありがとうございました。
 続きまして、一般財団法人バイオインダストリー協会、JBAの佐藤様より御説明をよろしくお願いいたします。
【佐藤氏(一般社団法人日本バイオインダストリー協会)】  佐藤から説明させていただきます。一般社団法人日本バイオインダストリー協会の一員として、株式会社カネカ、アグリバイオ&サプリメント研究所の佐藤から、「バイオものづくりの取り組み及びアカデミーに対するニーズ」ということで話題提供をさせていただきます。
 まず、バイオインダストリー協会についてと活動について説明させていただきます。
 続きまして、カネカのバイオものづくりについて、また、現在、バイオものづくりの一つの出口として社会実装を進めている生分解性バイオポリマーGreen Planetの実例について紹介させていただき、最後に、アカデミアに対するニーズを説明させていただきます。
 一般財団法人バイオインダストリー協会というのは、バイオの分野の橋渡し的な役割を担っている協会でありまして、ここに示しましたように、ミッションとしては、バイオビジネスの発展を牽引し、バイオが拓く豊かで持続可能な未来社会の実現に貢献するということに取り組んでいる協会でございます。
 現在、会員数は1,000を超えていて、現在も増加傾向にあります。特に基盤整備に向けた産学官の連携等を推進して、バイオものづくり全体の活性化に貢献しています。
 毎年の活動は多岐にわたっているんですけれども、例えば、毎年のBioJapanというアジア最大のバイオ系のマッチングイベントを主催したり、あとは9つの研究会を運営して、年間100回を超えるバイオに関するセミナーを開催しています。また、2022年からは、内閣府から認定されたグローバルバイオコミュニティであるGreater Tokyo Biocommunityの事務局を務めており、今後のバイオモノづくり、バイオエコノミーの発展の推進に寄与しております。
 JBAのバイオモノづくりには4つの研究会がありまして、アルコール・バイオマス研究会、新資源生物変換研究会、植物バイオ研究会、発酵と代謝研究会があるんですけれども、この4つの横串を通しているのがこのグリーンバイオイノベーションフォーラムという組織でありまして、その全体の世話人代表は東京大学の石井先生に務めていただいております。また、写真にあるほかの4名の先生が副代表を務めており、GIF全体で会員数、産学併せて153名という組織になっております。このGFPですけれども、現在、大きく2つの活動を実施しています。
 まず、ここに示している左側の待ち受け型テーマ提案活動ということで、これは近く開始が予想される国家プロジェクトに備えて、GIFのメンバーが保有する技術シーズを内部でブラッシュアップしていくような活動をしています。現在6件のテーマがスタンバイしていて、今後さらにこの活動を拡大していく予定にしています。
 また、右側、切り込み型のテーマ提案活動ということで、これは中長期的な視点に立って、将来、どのような研究プロジェクトを立てていくべきかということを考えながら、GIFメンバーの意見を取りまとめて、関係省庁へ提案していくような活動をしております。また、1枚目のスライドであったGreater Tokyo Biocommunityとも連携しながら、GIFの活動を進めております。
 その中でカネカも、このJBAのメンバーとして活動させていただいておりまして、カネカのバイオものづくりの事例を説明させていただきます。
 バイオものづくりというのは、従来は、薬草を使った治療であったり、交配や挿し木を使った農業技術の開発や、古くは、発酵食品、みそ、酒、チーズのような発酵食品を使っていくようなところから使われていまして、世の中の経済活動の中で大きな部分を占めているのがバイオものづくりであると考えています。
 ただし、今後、いろいろな社会課題が出てくるということと、さらに技術開発が近年、かなり進んでいて、メッセンジャーRNAワクチンに代表されるような次世代の医療、医薬、そういったものであったり、今後の食糧危機等や、健康への意識の拡大も含めて、食糧や農業への拡大、こういうところもゲノム編集の技術であったり、植物たんぱくをつくっていく、サプリメントをつくっていく。新しい技術が生まれてきています。
 最後に、環境問題というのも、今後は、石油を使い続けるのではなくて、石油資源の利用を最低限に抑えながら環境に優しいものづくり社会をつくっていくというところで、微生物開発の技術を使っています。ここで我々、生分解性のバイオポリマーを一つの出口として事業開発を進めているところでございます。
 プロセスに関しても、バイオものづくりでは、一般的な高温・高圧の反応が、発酵ですと、常温・常圧できるというようなメリットもございます。
 カネカも創業以来、バイオものづくりの先進企業として活動しておりまして、古くは、1940年代にパン酵母の生産を始めたところから、バイオ技術開発が進んでいて、その後、コエンザイムQ10であったり、医薬中間体のバイオ生産やバイオポリマーの発見等々で、バイオものづくりの技術開発を進めている企業の一つでございます。
 現在、カネカにおいても、医療ですね。バイオ医薬品や再生・細胞医療、サプリメントを含めた健康や医療に向けたバイオものづくり、また、食糧生産支援ということで、ゲノム編集植物やストレス耐性を付与するようなバイオ肥料、酪農や乳製品ですね。こういうところにも取り組んだ領域での活動をしています。また、環境においては、生分解性ポリマー等を含めたところで、3つのドメインからバイオモノづくりに貢献しております。
 ここから生分解性ポリマーに関して紹介させていただきます。
 現在、カネカでは、Green Planetというブランドネームで、生分解性のバイオポリマーの事業化を進めています。このポリマーは、1991年に日本で初めて見つかったポリマー材料になるんですけれども、これは天然の微生物がつくるバイオポリマーの一種ですので、非常に生分解性も高く、また、海でも分解するという機能を持っていますので、次世代のバイオ材料として非常に有望だということで、30年間、研究を進めて、実用化に至っております。
 このようにいろいろな、今、我々が使っているプラスチック製品やガラスや缶とかそういったものというのは、我々が使っていく時間よりも再生される時間が圧倒的に長い時間かかりますので、循環型の社会にはなかなか適さないというところで、生分解性ポリマーの需要が近年高まっています。
 我々のポリマーは、左側のストローであれば、約3か月もあれば、実際、海の中でボロボロに分解されていく。右のカトラリーなどは分厚いので時間かかるんですけれども、これも3か月あれば、薄いところはもう分解がほぼ済んで、今後、数か月、数年かけて、ほぼなくなっていくというところで、環境蓄積がないというようなところが特徴となっています。
 このバイオポリマーを微生物を使ってつくっていくというところが我々の特徴でありまして、この物性をコントロールする、上の構造式の中の黄色い部分が硬い成分、グレーの部分が柔らかい成分となっていて、これの共重合ポリマーなんですけれども、共重合比率自体を微生物を使って変換していく、代謝工学を使って制御していくというところが新しいバイオモノづくりの見せる技というか、こういうことが微生物でできるようになってきたのが最近の新しい技術かなと思っています。
 このGreen Planetですけれども、実際、植物がCO2を固定化してつくった油、植物の油ですね。これを原料として、微生物が細胞の中に合成、蓄積してつくります。これを取り出して、一般的なプラスチックの代替のような使い方をして使いまして、使った後は生分解してCO2に戻るので、このように炭素循環を実現する循環型のバイオものづくり産業に貢献する事業でございます。
 プロセスですけれども、これは一番左から右に向かって、まず、培養をして、ここで微生物によってポリマーをつくらせて、その後、微生物からポリマーを取り出して、水で何回も洗ってきれいにして、一番右ですね。これを濃縮、乾燥させて、パウダーをつくるというようなプロセスでつくりますので、まさに微生物と、その後のダウンプロセスの科学工学のハイブリッドのような、そういった革新プロセスでものづくりをしています。
 我々、この技術を使いまして、今、2023年になったところですけれども、いろいろな材料として技術開発を進めていて、今後、カーボンニュートラルに向けた取組として、さらに、使える、つくれる材料を増やしていって、事業拡大を進めていって、広がる消費に対して、ものづくりをきっちりしていこうというところで、事業開発を進めています。
 実際、既にこのようにJALUXさんのショッピングバッグであったり、ファミリーマートさんのスプーンであったり、大手ホテル、東急ホテルさんの歯ブラシであったり、伊藤園さんのストローであったり、いろいろな用途で、既にプラスチックの代替として社会実装が進んでいる材料でございます。
 あとは、生分解するというような機能を利用して、植物の育苗ポットであったり、農業用のマルチフィルム、こういった分解することで機能が発揮されるような、こういった農業資材への適用も現在進めているところでございます。
 今後の開発・普及ロードマップと能力増強ですけれども、現在、2023年ということで、プレスリリース等々もしていますが、現在、5,000トンの能力から、2024年には2万トンまで能力増強を進めるということで、現在、プラント建設を進めています。2030年までには最低でも10万トンの生産キャパシティーまで能力を増強させ、売上高2,000億円程度を狙っていくというところで、バイオものづくりの、まだまだこれはスタートラインですけれども、世の中に貢献していきたいと考えておりますし、プラスチック、4億トン使っている中で、10万トンというのはまだまだ少なくて、今、Green Planetで置き換えられる用途というのは、全世界で2,500万トンあると考えていますので、どういったことをしていくと、ここまで大きくしていけるのかというところを、これも考えて行動していこうと考えているところでございます。
 最後に、ここまでの話の中で、CO2をどう使っていくかという話があったかと思うんですけれども、今は植物の油で、ポリマー材料、Green Planetをつくっていまして、ただ、これは食用の油なので、食料との競合が出てくるだろうということで、今、環境省さんとも取り組ませていただいているのが、廃食用油からGreen Planetをつくっていこうということをやっています。ただ、これも、量、入手性が限られるということで、また、近年はサフとの取り合いということもありますので、今後、さらに三角形の一番上のCO2から直接、Green Planetをつくっていくというようなところを我々研究として取り組んでいるところでございます。
 我々が今、使っている微生物は、水素があればCO2を固定化していくという能力を持った水素酸化細菌という細胞を使っていますので、このバイオの利点を利用して、CO2を直接資源化するというところに今後大きくかじを切っていこうと考えているところでございます。
 最後、ちょっと簡単になってしまったんですけれども、今後、バイオものづくりを広げていき、また、我々としては、CO2から直接、物づくりをしていくというような革新的な技術をつくっていくに当たり、アカデミアにどういったニーズがあるかというところですけれども、ここに挙げましたのが2つでして、まず、ウエット研究をしっかりと遂行できる研究人材の育成が大事だと考えています。近年、ITとかAIとか、そういったドライの研究に興味を持っておられる方は非常に増えてきていまして、弊社に入社してきた新しい新入社員なども、自分でプログラミングが書けたり、AI解析ができたり、かなりそういう人材というのは育ってきているのかなと感じるんですけれども、我々、実際生きている微生物を使っていくというところで考えると、やはりそういった生命をしっかり見ながら、ウエットの実験ができるという方の育成はやっていかないといけないだろうなと考えているところです。もしかすると今、そういった将来のことをよく考えられている学生さんは、ITとかAIとかそういうところに行っちゃっているのかもしれないということもありますので、やはりもう一度バイオの研究をしっかりできる、そういった高度な人材を育てていってほしいなという要望がございます。
 また、2番目ですけれども、培養工学、プロセス工学の専門家の育成をお願いしたいというところで、やはり昔は発酵工学というと、醸造だとか、アミノ酸発酵がありましたので、そういったことを大学で学ばれて、企業に入ってくる方が多かったと思うんですけれども、今はなかなかアカデミアでそういうことをしているところがないということがあって、培養したことのないプロセス工学、なかなかファミリアじゃないという方が多いので、我々としては、企業としては、そういった培養工学をきっちりできる、そういう人材も育てていかないといけないかなという思いでここに挙げさせていただきました。
 私からは以上になります。ありがとうございました。
【杉山主査】  佐藤様、どうもありがとうございました。
 佐藤様はここで御退席となりますので、もし御質問になりたい方いらっしゃいましたらお願いいたします。
【森主査代理】  よろしいでしょうか。
【杉山主査】  森先生、お願いします。
【森主査代理】  大変面白いお話、ありがとうございました。このGreen Planetは、半減期はどのくらいですか。どのくらいのタイムスケールで分解していきますか。あと、それを制御できるかどうか教えていただけますか。
【佐藤氏】  まず、微生物が繁殖するという状況下に置かれない限りは非常に安定な物質なので、ふだん使っている状態で分解していくということは全くございません。例えば10年前に成形加工してつくったGreen Planetの箱は10年たっても何も変わらずに、そこにありますので、通常使っている状態では分解しないということです。分解に関しては、その環境に置かれたときに、その環境にどれぐらいの微生物がいるかということと、その環境の温度とかpHとかそういった状況にも影響されてしまうので、確かなことはないと思うんですけれども、例えば、先ほど示しましたように、ストローのような薄さのものを実際の海洋中に置いておいて、例えば夏場、それなりに有機物の多い、微生物の多い海だと、3か月もすればほぼなくなると思いますが、非常にきれいな海で、冷たいような海に置いておいても、恐らく数年は分解せずに残るだろう。そういった、かなり自然環境によって、半減期というか、分解速度が変わってしまうというような材料です。
【森主査代理】  ありがとうございます。早くても数か月ということですね。ありがとうございました。
【杉山主査】  ありがとうございました。他にございますか。よろしいですか。
 それでは、すみません。前、2件の発表につきましては、総合討論の際にまとめて御質問いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
議題4. 革新的 GX 技術創出事業(GteX)の基本方針、研究開発方針の骨子案等について
 
【杉山主査】  それでは、次の議題に進んでまいりたいと思います。次は議題4ですけれども、「革新的GX技術創出事業(GteX)の基本方針、研究開発方針の骨子案等」について議論していきたいと思います。
 まずは文部科学省の研究開発環境エネルギー課の轟課長から、「革新的GX技術創出事業(GteX)の基本方針骨子案、そして、蓄電池領域及び水素領域の研究開発骨子案について御説明いただきまして、続きまして、ライフサイエンス課の奥課長より、バイオものづくり領域の研究開発骨子案について御説明をお願いいたします。
 それでは、順番によろしくお願いします。
【轟(事務局)】  それでは、GteXの制度全体に係る基本方針について説明いたします。
1つ目、1.(1)、最初のポツで、今後10年間、官民併せて150兆円、その呼び水として、公的資金投資として20兆円規模のGX関連投資を政府として実現を目指す。その中で本事業、GteXを実施するということです。4つ目のポツですが、現在、経産省において、企業を主体としたグリーンイノベーション基金事業を実施されていて、今般、文科省は、大学等アカデミアを主体としたGteXをJSTに基金造成するということでございます。
 (2)事業概要について、本事業では、蓄電池、水素、バイオものづくりという3領域で、オールジャパンの統合的なチーム型の研究開発を行います。次のポツで、社会実装に向けた技術成熟度(TRL)の向上や、そのための基盤となる人材の輩出等について、領域ごとにアウトカム目標、アウトプット目標等を設定して、事業を実施していくということでございます。一番下のポツのところ、アカデミアにおける研究を進める上で、産業界におけるボトルネック課題の明確化、また、産業界におけるアカデミアでの研究成果の早期展開等、ここを各省連携や、あるいはファンディングエージェンシー間の連携を促進して進めていくということでございます。
 2. 事業実施方法ですが、研究開発テーマの設定というところで、短期、中期、長期で時間軸を設定して事業を進めていきたいと考えています。①から③にそれぞれ標準的な研究開発期間を設定しますが、後ほどお話しするとおり、3年目、5年目には、ステージゲートの審査を行います。そこで継続・中止について厳格に判断していくということです。支援対象は、原則として、これはオープンイノベーション型による研究開発を支援するということで、主な支援対象は、大学・国立研究開発法人としますが、同時に、早期の社会実装を目指すために、本日も御説明いただきました技術研究組合、あるいは企業等の参画も可能とするという形で進めたいと思っています。
 また、次の(2)研究課題選定の観点ですけれども、JSTはこちらに書いてあるような観点で研究課題の選定を行います。また、提案された研究課題の見直しや再編も行っていくということです。1つ目は、当然ですけれども、温室効果ガス排出削減に大きく貢献し得る技術の創出及びその実用化について高い実現可能性を有することということです。以下、これまで御説明してきた本事業の趣旨が並んでいるというところでございます。
 (3)ステージゲート評価について、本事業ではPD/PO及び産学の外部委員によるステージゲートの評価を行います。3年目、5年目で実施し、中止・見直し・加速・強化等について判断していくということでございます。その際、採択当初のチームを大前提とはせず、チームの再編成を促進していくということでございます。
 (4)共用やDXの推進については、大型の設備等は中核となる機関に整備して運用を行うとともに、本日も魚崎先生、出村先生の事例がありましたけれども、研究DXは非常に重要であるということで、JSTはそのための方策を検討して、データ運用の在り方に係る方針を定めるということで進めていきたいと思っています。また、オープン・クローズ戦略についてですけれども、ここも本日お話ありましたけれども、研究成果は、原則として公開する一方で、PD/POによる判断の下で、研究成果やデータの共有範囲等について適切なマネジメントを行っていくということでございます。次に、JSTの関連事業との連携ということで、前回お話ししましたけれども、探索型のALCA-Nextといった事業がありますので、こういったものとは連携体制を構築して行っていきます。
最後、(5)成果の最大化のところですけれども、ここは、ステージゲート評価に当たっては企業等の関係者の協力を得て、社会実装の可能性の観点からもしっかり評価していくということでございます。
 次に、3. 事業実施体制のところです。(2)PD/POの役割ですけれども、ここは前回も御意見いただきまして、まず、PD/POは、科学的見識を有するのはもちろんですが、国内外の動向にも精通して、厳格な判断やマネジメントができる者であることが望ましいと。こういった方に十分な裁量を与える一方で、各審査や評価、運営に当たっては、PD/POのみならず、それに加えて産学の有識者の協力を得る等、多角的な観点を確保するという形で進めたいと思っています。
 (2)の資源配分方式ですけれども、そこに記載のある(ア)から(ウ)の評価軸でやっていくということです。PDが事業全体の資源配分について決定し、POが各領域内での資源配分についてPDとの合意の下、決定していくということでございます。
 (3)有機的な「チーム」の構築については、縦割りを排除していくということで、基礎と実用化研究が止揚する、両者のいいところを高い次元で生かしていくといった有機的な研究体制を構築していきたいと思っています。また、LCAですが、ライフサイクルアセスメントやシステム評価、資源循環の可能性といったところも、シナリオ研究を同時に行って、各技術目標を見直していくということもやっていきたい。
 (4)海外連携ですけれども、GteXの領域は、日本のアカデミアが強みを有する領域であるということで、海外のトップレベルの研究機関との戦略的な連携をやっていくと。また、本日も、幸様からお話ありましたけれども、高い技術を持ちながら、実証、標準化、市場導入で後れを取るということにならないように、国際的な視野に立ってやっていきたいと思っています。
 (5)若手については、GteXは人材育成の観点も非常に重要ということで、特に博士人材を含め、我が国の将来の産業界、アカデミアを牽引することが期待される研究者、技術者等を育成していくということでございます。
 (6)成果の発信ですけれども、シンポジウム、ホームページ等を通じて、国民から見て分かりやすい形で積極的に広報を行っていくということを考えています。
 これが全体でございまして、この全体方針と、次の領域別の研究開発方針ということで進めていきたいと思っています。
 まず蓄電池ですけれども、本日も御説明ありました通り、蓄電池は今まさに最重要技術の一つであるということで、蓄電池の市場は大きく拡大する見込みがあるということです。海外メーカーが急速に供給を拡大する中で、日本のシェアは低下傾向にあると。産業競争力、国際競争力の強化に向けて、当面続く液LIBの製造基盤を強化しつつ、次世代電池の開発・実用化の加速と市場の創出・獲得が急務であるということです。
 そうした中で、(2)にあるような政府目標が示されていて、(3)、アカデミアとしては、一番下のところですけれども、企業側の電池開発・実装と、アカデミア側の原理解明・材料開発をすり合わせながら革新的な次世代電池を実現するための非連続なイノベーションを創出すること。そして、将来の成長を支える人材を持続的に育成していくことが期待されているということです。
 次のII.目標・項目のところですけれども、短期的には、早期に達成すべき事項というところでは、車載用の蓄電池のエネルギー密度の向上や、長寿命化・リサイクル性の向上といったところがあります。また、長期的な視点に立ち、達成すべき事項としては、定置用蓄電池をはじめ、将来社会のニーズに合わせた電池の開発というところで設定しています。次の(2)では、こうした方向性に対して、アカデミアで取り組むべき具体的な科学技術的課題を抽出すると。これは短期、中期、長期ということで抽出してやっていく。その際、それだけでなくて、横串の共通課題ですね。計測・計算科学の活用とか、資源循環、LCA、エンジニアリングの観点等についても整理していくということでございます。
 次、III.研究開発実施体制ですけれども、今日もお話ありましたが、電池については、トータルとしての電池システムを俯瞰・検討できる研究者が中心となってチームを編成するというところがポイントかと思います。共用設備・プラットフォームの活用というのも、先行事例であるALCA-SPRINGでの共用プラットフォーム、あるいは経験も生かしてやっていくということであろうと思います。
 IV.研究開発マネジメントのところは、基本方針とほぼ同様の内容ですので、割愛させていただきます。
 続きまして、水素領域でございます。水素は利用時に温室効果ガスを排出しないクリーンなエネルギーであるということで、その利活用を通じて、発電、輸送、産業等、様々な分野の脱炭素化を行うことが期待されているというところでございます。これはまた、エネルギー安全保障の確保や新たな市場の創出・産業競争力強化の観点からも重要であると。この水素社会の実現に向けては、需給両面の技術開発やサプライチェーンの構築が重要であるということと、グリーン成長戦略というのを政府でつくっていますが、カーボンニュートラルを達成するためには年間2,000万トンの水素供給を目指すということで、このためにはギガワット級の再エネ電力による水電解プラント、大量の水素を安全かつ高効率に輸送・貯蔵する技術等に取り組んでいく必要があるということです。その下のポツのところ、「つくる」、「ためる・はこぶ」、「つかう」と、それぞれ並行してやっていくことが重要です。本日、雨宮様からもお話ありましたけど、NEDOでロードマップを作成されているということで、そこに書いてあるような水素製造、それから、貯蔵・輸送、利用ですね。課題が出されておりますので、こういったものに取り組んでいくということです。アカデミアの役割というのは、経産省により、産業界中心に水素関連のディスカッションが活発に行われていますが、一方、2050年のカーボンニュートラルや海外市場を含む社会環境の変化を鑑みると、革新的な技術開発により、既存の延長線上にないものをつくっていく必要があるというところにアカデミアの役割があります。継続して、将来の産業を支える人材供給も重要です。
 次のII.研究開発目標のところ、ここは基本方針とほぼ同様ですので割愛させていただきます。
III.研究開発実施体制のところですけれども、水素製造、貯蔵、運搬、利用ですね。それぞれで複数の課題を設定して、チームで解決することを想定しているということです。共用設備・プラットフォームの活用のところは、本日もお話ありましたけれども、触媒等の新たな材料を開発する上で、幅広い範囲で探索の高速化が不可欠であると。マテリアルズ・インフォマティクス等の手法が有効であるということで、DXツールをまずやっていく。それから、自動自律実験法の開発は非常に重要であるというところでございます。その次のポツのところでは、まさに、特に水素領域では、本日もお話ありましたけれども、SPring-8といった大型放射光とかJ-PARCといった中性子実験施設等々が非常に有効だというところで、そういったものの共用や共同利用の体制の構築というのもまた考えていきたいと思っています。
 IV.マネジメントのところは、それぞれ製造、貯蔵、利用分野で、実用化までの道筋や距離感が異なっているというのが水素の分野の特徴で、諸外国の技術動向を常に注視しつつ、引き続き、産業界、アカデミアが議論して、状況を常時把握して、研究の方向性を適時適切に修正していくことが求められるというところでございます。
 水素は以上でございます。
【奥(文部科学省ライフサイエンス課)】  バイオものづくり関係について御説明します。
1ページ目のところ、背景、目的のところは、バイオものづくりに関しては、社会的課題解決と経済成長を両立するということで、世界的にも注目を浴びている。こうした中で、経済産業省においても、グリーンイノベーション基金等において基金造成を図っていますが、やはり幅広い研究が必要ということで、アカデミアについても革新的な技術開発であるとか、継続的な人材育成も大事だという辺りを書かせていただいています。
 2ポツの研究開発目標・項目ですけれども、やはりカーボンニュートラルの実現に向けて、CO2削減にかかるバイオものづくりの革新的技術開発であるとか、産業界のボトルネック課題の解決、さらに、高度人材の提供等で産業界にも貢献していくことが大事だと。これを全体的な目標として掲げさせていただいています。
 2ページ目のところ、一般的な内容になりますけれども、アウトカム目標、アウトプット目標をそれぞれ設定させていただいています。2ポツの(2)の研究開発実施項目では具体的な研究開発課題例として3点挙げています。1つ目、微生物に関しては、有用物質生産の元となるようなハブ細胞、ベーシックセルの開発であるとか、微生物のプラットフォームの整備等、さらに、有用物質を生産するための有用遺伝子・新規酵素の探索、新規代謝経路の開発を挙げています。
 ②、植物に関しても、同様ですけれども、代謝経路の機序解明、それと、新規有用物質の生産等に必要となるような代謝経路の開発などを挙げています。
 また、③、横断・基盤技術として、微生物、植物の代謝経路等に係るデータプラットフォームの整備であるとか、DBTL、Design–Build–Test–Learn技術の高度化、オミックス解析技術、さらに、無細胞等について、研究課題例として挙げています。
 3ポツは、研究開発実施体制です。チーム構成についてですけども、先ほどの①から③、それぞれについて革新的な技術開発を行うようなチームを設定するということ。それと、これはばらばらで行っては何も意味がありませんので、それを統合、融合するような統合・加速チームというのをそれぞれ設けるということを書かせていただいています。
 統合・加速チームの要件として、3ページ目の下の辺り、第一線の研究者の集積、他分野との融合、連携のハブとなるような機能、複数の研究を統合するような機能、さらに先端的な研究基盤について整備・共用するような仕組み。これを要件として課すということを書かせていただいています。
 (2)推進体制の整備ですけれども、これらが有機的に連携を図られるように、4ページ目のところ、POと各チーム長、さらに、必要に応じて、内外の関係者が一堂に会するような進捗状況を定期的にチェックするような体制を整備するということを書かせていただいています。
 さらに、(3)共用設備・研究基盤については、複数の機関で共同で利用されるようなものとして、先ほどの統合・加速チームにおいて、こうした共用基盤を整備するということを書かせていただいています。
 さらに、研究開発のマネジメントですけれども、企業とのボトルネック課題に対応するということ、あるいは知財戦略を念頭に置きながら、きちんとマネジメントを図っていくための体制整備が必要だという辺りを書かせていただいています。
 簡単ですけど、以上です。
【杉山主査】 どうもありがとうございました。次は、資料5に基づきまして、科学技術振興機構(JST)の未来創造研究開発推進部の大矢部長より、JSTのほうで現在どういう検討がなされているのかということを御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【大矢部長(科学技術振興機構)】  JSTの大矢です。よろしくお願いいたします。
 JSTでは、2010年からALCAという事業で、低炭素化技術の開発を推進してきております。事業のトップのプログラムディレクターは、今、理事長を務めている橋本が長く務めておりました。理事長就任後は、先ほど御講演いただきました魚崎先生にお願いしております。また、魚崎先生には、このトップダウンで進める特別重点領域のALCA-SPRINGのところを御担当していただきました。この事業を引き継ぐ形で、今、御議論いただいているGteX、そして、ALCA-Nextの事業を来年度始めたいと思います。
 5ページ目、これはJSTの今現在、行っている事業を整理しております。今回御議論いただいていますGteX、そして、ALCA-Nextは基礎研究の中でも比較的応用寄りの事業になるかと思います。ALCA-NextはGteXを包含する広い領域で実施する予定ですので、該当する領域に関しては、うまく連携する形で事業を推進していきたいと思います。
 次のページ、GteXについて計画書、いわゆる公募の計画書をつくる予定をしております。会議体としては、今回新たに革新的GX技術推進準備委員会というものを立ち上げました。この会議体の中で、来月、小委員会で御説明する計画書を作成していきたいと思います。また、この小委員会の中、準備委員会の中で議論するだけではなくて、各領域でワークショップを別途開催いたしまして、幅広い意見を取り入れた形で計画を作成し、小委員会のほうで御助言をいただきまして、最後、JSTで決裁、公募の開始を行っていきたいと思います。
 次のページ、JSTにおける検討の方向性は、準備委員会、そして、ワークショップでの議論になってきますが、このような項目を考えております。先ほど御議論いただきました体制の部分、そして、NEDO等の産業界につなげていく政策、また、人材育成なども当然ながら計画の中に入っていきたいと思います。また、DXの件も計画の中で言及していきたいと思います。また、ワークショップ等では、さらに領域ごとの特徴というものが出てきますので、どのような特徴を持ってマネジメントしていくかという議論、また、共用設備をどのように使っていくかも領域ごとに検討をワークショップ等でしていきたいと思っております。
 最後になりますが、計画書に書く項目は、このような構成案を考えております。公募を行うに当たって必要な情報を書き込む形で作成し、小委員会で御報告したいと思います。
 以上になります。
【杉山主査】  どうもありがとうございました。
 
議題5. 総合討議
 
【杉山主査】  それでは、総合討論に入っていきたいと思います。時間の制約もございますし、また、先ほどJSTの話にもございましたように、まさに今後のGteXの公募の具体的な内容にも関わってくる話になりますので、基本方針についての御意見を、限られた時間の中ではございますが、優先して取り上げていきたいと思っております。かつ、本日、大変申し訳ありませんが、多くの委員の先生に御参加いただいている中で、時間の制約上、全員から御意見いただけない可能性が非常に高くなってしまっていますが、次回にもまた基本方針、特に各領域の方向性につきましては、議論を継続していきたいと思いますので、そうしたことを御勘案いただいた上で、ぜひ、次回に向けて、時間をある程度かけて検討すべきような課題について、まず優先して御意見をしっかり、かつ、できれば端的にいただければと思っております。注文が多くて大変申し訳ございませんが、ぜひよろしくお願いいたします。
 ということで、いつもながらですが、挙手制で御意見を賜りたいと思いますので、ぜひ委員の先生方、よろしくお願いいたします。
 それでは、佐々木先生、よろしくお願いします。
【佐々木委員】  九大の佐々木です。私から手短に3点発言させていただきます。
 まず一つは、全体につきましては、若手研究者をきっちり入れるということで、非常によくできていると思います。多分、魚崎先生の御尽力された事業に沿って、博士課程生の例えば育成数などをKPIに入れるというところが、全体としては価値があるのかなと考えております。
 あと水素分野につきましては、今回、「つくって、ためて、つかう」という、雨宮さんからのお話もありましたけれども、エネルギー体系がバランスよく入っているということは高く評価できると思います。特にやはり水素製造の辺りが、欧州を中心に猛烈に研究開発がされておりますので、その部分はなかなかNEDO事業でも立ち上がっていないところがありますので、むしろアカデミア主導で、文科省、JSTさんに御尽力いただくと、三本柱の一つとして生きてくるかなと考えます。
 あと3点目ですけれども、やはり若手研究者を育成するという観点は非常に重要でして、その中で多分、多くの先生方が感じているのは、JSTのさきがけという事業が非常に評価が高いのかなとアカデミアでは言えると思います。なので、水素も各分野で、さきがけ的なサブチームをつくって、その中でシニアの研究者や企業人のサポートの下で、横連携や切磋琢磨しながら、革新技術やサイエンスを構築していく。GteXをそういうような場にぜひしていただきたいと思いますし、多様な分野の若手研究者をぜひ巻き込むような形でつくっていただくことが価値があるかなと考えます。
 私からは以上です。
【杉山主査】  佐々木先生、大変ありがとうございました。
 それでは、続きまして、委員の先生方、御意見よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
 それでは、本郷先生、よろしくお願いいたします。
【本郷委員】  ありがとうございます。御説明ありがとうございました。私からは総論的なところで3点でございます。
 チーム編成あるいは国際連携というところが挙がっていましたけれども、やはり目的は、勝つことかなと。ですので、勝てるチームをつくる、勝てる組織をつくるという観点から、その一手法として、国際連携が結果として出てくるのかなと。やはり目的意識としての強者連合、こういったものを目指すというのがにじみ出てくるといいなという気がしました。文言修正してくださいということではありませんが、そんなニュアンスです。
 2つ目は、御説明いただいた中で、PD/POに知見が要求されるということ、全くそのとおりだと思うんですけれども、その中で一つ必要な要素としては、その技術を知っているというだけではなく、その技術の総体的な位置関係、競合技術、補完する技術、全体のバリューチェーン、そういった中での位置関係をよく判断するという要素があってもいいのかなと思います。
 3つ目は人材の話でございますけれども、社会科学というか、私のやっているようなところですと、一つ、いつも出てくる課題としては、それを解決する人材というだけではなく、何が問題かを見つけ出す人材が必要なんじゃないかという意見がよく出てきます。ですので、教育というところ、もう少し長いスパンかもしれませんけれども、問題が何かを考える、問題を見つける、そういう観点も含めた教育というのがあってもいいのかなと思いました。
 以上3点です。ありがとうございました。
【杉山主査】  本郷先生、大変ありがとうございます。
 続きまして、志満津先生、よろしくお願いします。
【志満津委員】  志満津です。よろしくお願いします。今日のお話の中で、データ駆動による材料開発や、J-PARC、SPring-8などの大型施設、また、計算インフォマティクスを活かした、研究のやり方を変えるということはすごく大事だと思っています。やはり研究のスピードが変わると、企業の開発そのものの姿が変わります。また、水素の世界は、中長期のアカデミアの目標とともに、企業、現場で持っているリアルな課題から出てくる指針というものを非常に練成して考えることが必要だと考えています。そういった意味で、少し時間のかかる技術だと思いますが、こういった基盤の研究のやり方を変えるというところも、GteXの課題として一緒に進めていただければと思います。 また、企業とアカデミアの目標の共有とか、データのつながりということを考えると、お話の中にもありましたけど、研究組合の活用も含めた研究の体制というのも非常に有効だと考えています。
 以上です。
【杉山主査】  どうもありがとうございます。
 続きまして、田畑先生、よろしくお願いします。
【田畑委員】  かずさDNA研究所の田畑です。いろいろありまして、これは後でメールでお送りしてもいいかなと思っていましたが、2点だけ述べます。
 まずは先ほど、雨宮様のご説明で、産学が協働して、産業界とアカデミアが本音で議論してということで、これはすばらしいことだと思いますが、実はこれはとても難しいことだと思うんですね。大抵の場合は、やはり企業さんというのはなかなか本音でお話しされませんので、いかにして企業の本音を聞き出すかというところが工夫のしどころかなと思います。これが1点。
 それからもう一つは、先ほどからいろいろお話を伺っていて、やはりアメリカ、中国にどうしても押されるということですが、少なくとも今現在は予算的にも、それから、人的な資源にしても、もうまともに勝負したら負けというのが当然だと思います。ですので、ここで、もちろん勝負したいという気持ちはありますが、やはりどれだけ独創性で勝負できるかということが、今は重要だと思います。特にバイオの分野は、独創的、挑戦的、とがった研究テーマをどれだけ走らせられるか、と思いますので、そういう選定の仕方、工夫が必要かなと思いました。
 以上です。
【杉山主査】  どうもありがとうございます。
 続きましては、佐藤先生、よろしくお願いします。
【佐藤委員】  産総研の佐藤でございます。細かいことはメールでお送りさせていただきますが、2点、意見を申し上げます。
基本方針骨子案については非常に理想的に書かれていて、私も賛成しております。その中で、後半ですけれども、有機的なチームの構築に関係するのかもしれませんが、ぜひ新しいプレーヤーを積極的に発掘する仕組みというのを何かうまく取り込めないかなというのが一つあります。
 あともう一つは、もう少しバイオのことを知りたかったということがあります。国際的な強みとか、そういったものを今日、魚崎先生、幸様のほうでお話しされたような感じで、長期的な視点で日本がどう変わっていって、そこで世界はどうなっているのかというのをもう少し情報として知りたかったなということがあります。
 以上でございます。
【杉山主査】  どうもありがとうございます。
 それでは、田中先生、よろしくお願いいたします。
【田中委員】  田中でございます。御説明ありがとうございました。非常に刺激を受けましたが、特に刺激を受けたのは、LIBTECさんの9ページの知財とシェアの図ですかね。かなり日本が先行しているにもかかわらず、どんどんシェアが落ちていくというのがすごく刺激的だったんですが、研究開発能力はやはりすごく高いものがあると思いますし、どの分野も研究があるというので、これは本件、どんどん進めてほしいなと思う一方で、日本が必ずしも強くない分野に関してはどういう状態に持っていきたいかというところの逆算から、本郷委員もおっしゃっていましたけれども、外と積極的に組みながら日本のイニシアチブで進めるような形のものが見えてくるといいかなと思いました。
 そういった意味では、技術協同組合ですかね。組合を活用するとか、企業の方も活用するという、本音も言っていただくというようなところ、そのとおりと思いますので、ぜひ、その点を、文言も入れてもらっていましたので進めてもらえればと思っています。全般的には大変期待しておりますので、ぜひ進めてもらえればと思っています。
 以上です。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 続きまして、菅野先生、よろしくお願いいたします。
【菅野委員】  菅野です。大変よくまとめていただきまして、本当にありがとうございます。私から1点だけ。産と学との連携が大変重要になってきますが、ここで最も学が得意とするところを引き出せるようなプログラムにしていただくのが一番重要かと思います。魚崎先生の御報告にありましたが、最初のシステム構築のときに、産からのフィードバックが取り込めなかったということでした。そのようなことも含めて、学がアカデミアの知恵をどう生かすか、最も得意とするところでプログラムが立ち上がるように期待します。
【杉山主査】  大変ありがとうございます。非常に重要な観点だと思いました。
 続きましては、新田先生、よろしくお願いします。
【新田委員】  ありがとうございます。新田です。こちらにつきましては、先生方、今いろいろとコメントされていますように、非常によくできていますし、私もそのとおりだなと思います。時間がありませんので、私も1点だけ。私には産業界の立場があります。私もALCA-SPRINGのほう、魚崎先生に相当お世話になっているんですけども、学の方につきましては、いろいろなテーマで、非常にチャレンジングなテーマをこなして、世界初というような快挙を幾つも出してきているということで、非常に良かったと思っています。 人材育成と技術は育ちましたが、肝心かなめの企業の方へということで、説明の中で、なかなか日本が産業界、電池産業として前に出られないという現実もありますので、研究と産業界のつなぎというところ、ここを実質的にどうつなげばいいのかというところが私はまだ引っかかっているところがありまして、ぜひ、これを進めるに当たって、アカデミアの発展と人材育成というのはもちろんですが、産業とどうつなぐか、そこの仕組みについては少し考えていかないといけないのではないかなと思っておりました。
 以上です。
【杉山主査】  どうもありがとうございます。貴重な御示唆ありがとうございました。
 平本先生、よろしくお願いします。
【平本委員】  平本でございます。骨子については本当によくできていると思います。
知財の重要性は当然だと思いますが、少ない資源でどのように闘うかという有力な手段は知財ですよね。今日、様々な企業の方からの説明もありまして、複数の企業が加わったときに知財をどう取り扱うかというところを真剣に最初から決めておくということがとても重要だと思います。出てきた成果をすぐに産業界に持っていくときに、知財の問題が引っかかって、会社に持ち帰れないということがないように、そこを一番最初によく決めておくことが肝要だと思います。
 以上です。
【杉山主査】  御指摘、大変ありがとうございます。
 ほかに先生方、いかがでしょうか。それから、途中で先生方から御発言いただきましたとおり、今日言い切れないことがたくさんあると思いますので、あるいは、公の場でなかなか言いにくいということもありましたら、そちらに関しましては遠慮なく事務局のほうにメールでフィードバックをいただきまして、冒頭申し上げましたとおり、これから第4回に向けて、さらに、内容をリファインしていく必要があるかと思いますので、そのためのインプットとしてぜひ貴重な御意見を承れればと思っているところでございます。
 それでは、水無先生、よろしくお願いいたします。
【水無委員】  御説明ありがとうございました。いろいろチーム編成が記載されているところを見ると、やはり実際にこれだけ人材が揃えられるのかなと、少し不安もあります。ですので、これは基本方針に反映させてくださいというのでありませんが、運用の段階で、人を開始時にアサインして取り組むだけではなくて、人材を育成しながら人財の幅を広げていく、そういう考え方をぜひ取り入れていただきたいと思いました。
 以上です。
【杉山主査】  ありがとうございます。育成の視点、大事だと思います。
 ほか、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。
 繰り返すようですが、議論は次回につながりますので、ぜひまたこの後も見直していただいて、ただ、こちらは文科省の方針が、その後、JSTのより具体的な方針のほうに受け継がれていくということになりますので、既に先生方、非常に正当に基本方針あるいは研究開発方針について御理解をいただいているのかなと思いますが、引き続き、このような形で全体像を規定する、こうした方針に対してのフィードバックをいただければと思っているところでございます。
 では、御協力いただきまして、最後の巻きに御尽力いただきまして、ありがとうございます。何とか時間の中でかなりの先生方から御意見をいただくことができましたので、今日のところはここで総合討論を終了したいと思っております。
 ということで、本日予定しておりました議題は以上でございますが、最後に事務局から事務連絡をよろしくお願いいたします。
【吉元(事務局)】  本日の議事録は、後日、事務局より、メールで委員の皆様にお諮りした後、ホームページのほうで公表させていただきます。また、先ほど主査からございましたが、今日、いろいろ言い足りなかったこと等々、あると思いますので、2月17日金曜日まで、事務局までメールでいただくか、また、次回以降も議論の場がありますので、その際におっしゃっていただければと思います。次回の委員会は3月13日(月曜日)に開催予定です。引き続き御議論のほどよろしくお願いいたします。
 事務局から以上です。
【杉山主査】  ありがとうございました。
 それでは、本日御協力いただきまして、ありがとうございます。これをもちまして、環境エネルギー科学技術委員会革新的GX技術開発小委員会の第3回会合を閉会いたします。
 どうもありがとうございました。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
 
―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局環境エネルギー課

(研究開発局環境エネルギー課)