革新的GX技術開発小委員会(第2回)議事録

1.日時

令和5年1月23日(月曜日)17時30分~19時30分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

 1. 令和5年度予算案における文部科学省関連施策について
 2. 前回の議論のまとめ
 3. GX関連領域の研究動向等について話題提供
 4. 革新的GX技術創出事業(GteX)の概要及び今後の進め方について
 5. 革新的GX技術創出事業(GteX)の基本方針、研究開発方針の検討事項について
 6. 総合討議

4.出席者

委員

杉山主査、森主査代理、菅野委員、五味委員、佐々木委員、佐藤委員、志満津委員、田中委員、田畑委員、所委員、新田委員、平本委員、本郷委員、水無委員

文部科学省

千原研究開発局長、林研究開発局審議官、轟環境エネルギー課長、吉元環境エネルギー課長補佐、奥ライフサイエンス課長、根橋ライフサイエンス課長補佐、葛谷ライフサイエンス課長補佐 他

オブザーバー

経済産業省、科学技術振興機構 他

5.議事録

【吉元(事務局)】  ただいまより科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 第11期環境エネルギー科学技術委員会 革新的GX技術開発小委員会の第2回会合を開催いたします。
 冒頭、進行を務めさせていただきます環境エネルギー課の吉元です。本日はよろしくお願いします。
 本日もオンライン会議になります。事前にお送りした進行上のお願いのとおり、発言の際は、ビデオ、マイクをオンにし、発言されていない際はオフにするよう、御協力をお願いいたします。また、御発言をいただく場合には、「手を挙げる」のボタンを押していただくか、チャットにてお知らせいただくよう、よろしくお願いいたします。指名を受けて御発言をされる際はマイクとビデオをオンにし、お名前をおっしゃって御発言をいただくよう、よろしくお願いします。
 また、本日の議題は全て公開議題となります。会議の様子はYouTubeを通じて一般の傍聴者の方に公開されております。
 議事に入る前に、まず本日の資料を確認させていただきます。資料は、議事次第と、電子メールでお送りしているかとは思いますが、資料1から2、3-1から3-4まで、それから資料4と資料5、それから参考資料として1と2ということでお送りさせていただいております。もし不備などがございましたら、事務局までお申しつけください。
 なお、本日、事務局の研究開発局のほか、研究振興局ライフサイエンス課、経済産業省、科学技術振興機構、有識者として近藤科学官、オブザーバーとして日産自動車 大間主管研究員より参加がございます。それぞれの御紹介は出席者名簿に代えさせていただきます。
 本日は、委員として石内委員、それから本藤委員が御欠席となります。
 また、御出席の委員は13名と過半数に達していますので、委員会は成立となります。
 事務局からは以上です。
 ここからの進行は杉山主査にお願いいたします。
【杉山主査】  杉山でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は、議事次第にありますように6件の議題を予定しております。委員の皆様には忌憚のない御意見を頂戴できればと思いますので、よろしくお願いいたします。
 なお、終了は19時30分頃を予定しております。
 それでは、議事に入ってまいります。
 
1.令和5年度予算案における文部科学省関連施策について
【杉山主査】  まず、議題1ですけれども、令和5年度予算案における文部科学省関連施策についてです。
 では、事務局より説明をお願いいたします。
【吉元(事務局)】  事務局でございます。資料1になります。
 まず、1ページ目をめくっていただいて、令和5年度、それから、令和4年度の補正予算も含む文科省のGXの関連の研究開発施策ということで、1ページ目のほうに整理をさせていただいております。我々の環境エネルギー課の所管の事業以外にも、文科省として全体の主に基礎研究事業をある種俯瞰図のような形でまとめています。もちろん、科研費とか創発とか特にGXという色のついていない事業もありますし、我々が所管しておりますような、これから御紹介いたしますALCA-Next、それからGteXのような、まさにGXに向けた事業、それから、例えば戦略的創造研究推進事業、これはJSTのほうですけど、または未来社会創造事業といったところで、例えば材料とかも含めてGXに貢献していくような施策、それから、これも我々の事業になるんですけれども、半導体の関係の事業、それから、広くデータ創出というところで、主に材料を中心にやっているようなデータ創出みたいな事業がございます。今御説明したのは研究開発関連ということでございますけれども、それ以外の産学連携とか、それから国際連携、特に国際の関係でいくと、科研費の国際先導研究だとか、あと先端国際共同研究推進事業、今回の補正予算でも大型の基金が措置されていますので、こういったところもGX関連について応募可能な事業になっております。そのほか、WPIだとか、それから基盤的なところで設備の共用、それから人材育成、あとは国立研究所、NIMSとか、それから理研等々における国立研究開発法人の取組ということで整理をさせていただいております。こうしたところで、この小委員会では、今後、GteXというようなところの議論になっていきますけれども、ALCA-Nextとか、またその他の事業についてもどういった形で取り組んでいくのかというところも広く議論していければなと考えています。
 次のページで、ALCA-Nextということで、これがJSTの戦略的創造研究推進事業のうちALCA-Nextというプロジェクトになります。これは新規事業になります。前回の委員会のほうでもいろいろ御指摘ありましたけど、GteXがある種チーム型で、かつ領域を指定してある種の集中的な投資をやっていくというところに比べて、こちらのほうはもう少し研究室レベルで、かつ広い領域設定をして、ここは例示としてエネルギーキャリア――事業概要のところの1ポツ目のところに例とありますけれども、エネルギーキャリア、デジタル基盤(エレクトロニクス)、半導体とかですね、それから資源循環みたいなところで、広く技術領域を設定して、右側のほうにありますけど、事業スキームのところで、これは年間で初めが3,000万円程度、それからステージゲートみたいなところを通過すれば年間1億円程度という形で、全体で4年プラス3年の7年というようなプロジェクトを来年度から始めることを予定しております。今日も、資源循環、所先生にも御発表いただきますけれども、必ずしも蓄電池とか水素、バイオものづくりというところに限らず、この小委員会では幅広く議論していければなと考えております。
 それからGteX、こちらはもう既に御案内かもしれませんけれども、補正予算のほうで当面5年分ということで約500億円措置されております。領域設定としては、蓄電池、水素、それからバイオものづくりというところで、そこでもやっぱりチーム型ですね、単発の研究室というよりはオールジャパンで幅広くネットワーク型のチームを展開していただいて、そこに対して支援をしていくと。もちろん、ステージゲートというところで、やっぱり蓄電池とか水素、バイオというところ、産業の動向というところを注視しながら、かつ研究進捗というか、よくよく見ながらチームの編成を見直ししていくというようなプロジェクトを予定しております。事業イメージのところで、これはあくまで一例ということですけども、蓄電池の事例ということでチームのイメージですが、単純に正極界面・負極界面の分析をするということだけではなくて、活物質とか、それから電解質、それから統合的な解析みたいなところの、これは恐らくほかの研究プロジェクトだとそれぞれ個別の課題になっていると思うんですけど、この辺をしっかり連携してチームとして申請をしていただいて、そこに対して支援をするというようなことを考えております。
 以上です。
【杉山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に関しまして、何か御質問等ございましたら承ります。お願いいたします。よろしいですか。
 それでは、また後、総合討論でも議論していただければと思いますので、次に進みたいと思います。
 
【杉山主査】  次は2番目の議題、前回の議論のまとめとなっております。
 では、事務局より説明をよろしくお願いいたします。
【吉元(事務局)】  こちら、資料2のほうになります。
 前回、我々のほうから、それから経済産業省さん、NEDOさん、JSTのほうを含めて、あと各委員の先生方から話題提供ということで、かなりGXに関する話題提供という幅広な観点から議論していただいたかなと思っています。その中で、我々、これから、まさに今日から議論をさせていただくところになりますけど、GteXに関連するような御発言というのも既にいろいろいただいております。特にこれ、経産省さんでGI基金というところである種出口側のプロジェクトがある中で、やはりGteXみたいな大学の基礎研究もしくは人材育成というところである程度の規模感でやるというところの期待は非常に高いという中で、そこで基礎、応用、開発、こういったところをどうつないでいくかというところをこれからよく制度設計が必要じゃないかというところの御意見がございました。
 一番下から2ポツ目ぐらいにありますけれども、GteX事業では、NEDOとJST、文科省と経産省がうまくタッグを組んで、その中で企業のニーズをどううまく取り込んでいけるか、この辺をまさにこれから先生方にも御議論いただければなと考えています。
 次のページ、その中で、このGteXというところはやはり500億で3領域というところになっているんですけど、この上から2ポツ目のところで、一方で集中することによって多様性が生まれず、ある種、アカデミア全体としては斬新なアイデアが生まれる確率が下がるみたいな話もございましたので、集中しながらも、とはいえ、どう、面白い斬新な、ある種研究シーズみたいなことを拾い上げていくか、そういった仕組みもこの事業の中で可能であれば検討していければなと考えています。
 それから人材育成、これ、ある種、前身の事業という形だとは思いますけど、ALCA-SPRING、蓄電池の関係の事業が今年度まで走っていますけども、その中でやっぱりドクターですね、多数の博士人材が育成されたみたいな事例もあるので、そうした取組、今回、蓄電池だけではなくて水素とかバイオものづくりみたいなところの領域もその範疇に入ってくるわけですけども、そうしたところもどう展開していくかというのが一つの観点になるんじゃないかという御指摘がございました。
 それから次のページで、海外展開ですね。やっぱり10年前、15年前は、産業サイドも含めてこの分野というのはシェアも日本企業がかなり高かったわけですけども、その中でちょっとシェアが落ちてきている中で、やっぱりアカデミアとしてここを国際的にどう盛り上げていくのか。特に若手の研究者、これ、1ポツ目にありますけども、日本の若手の研究者が海外でも武者修行できる環境づくり、こういったところもまさにGteX事業のほうでできる範疇になってくることなので、しっかりそういったところも検討していければなと考えています。
 それから最後、その他のところで、今回、領域設定が3つというふうになっているんですけれども、特に蓄電池もしくは燃料電池みたいな話になってくるとレアメタルみたいなところが必要になってきていて、資源をどう活用するかというのは安全保障の観点からも必ず意識をしなければならないところがあって、そうしたところ、リサイクルとかも含めて検討していくべきじゃないかというような御指摘がありました。
 今日は特にGteXの事業に関していろいろ意見をいただくことになっていますが、こうしたところ、私が申し上げたところも含めて様々御議論いただければなと思っています。よろしくお願いします。
【杉山主査】  どうもありがとうございました。
 ということで、前回、既に活発な御議論をいただいておりまして、吉元さんおっしゃるとおり、本日もよりGteXに向けた議論が進んでいくのかなというところでございますが、それに向けた全般的な方向性についての御示唆が多く入っていたかと思いますので、これらのことも踏まえまして、本日この後、まず話題提供いただいた後で総合討論に入っていく予定でございますので、その中でさらに深掘りしていければ、あるいはまた別の観点があれば御提起いただければと思っているところでございます。
 
3. GX関連領域の研究動向等について話題提供
【杉山主査】  それでは、まず、議題を進めていきたいと思います。議題の3ですけれども、GXの関連領域の研究動向等について話題提供いただくことになっております。今回は、GX関連の重要領域として、蓄電池、それから水素・燃料電池、バイオものづくり、資源循環という4つの分野を取り上げましたので、それぞれ10分程度で御説明いただきたいと思っております。
 まずは、蓄電池分野について、日産自動車株式会社パワートレインEV技術開発本部エキスパートリーダーの新田委員より御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
【新田委員】  ありがとうございます。日産自動車の新田です。それでは、第2回の資料として、私どものほうからxEV化に付随するGX課題ということで少しお話をさせていただきます。
 次、お願いします。これ、Executive summaryなんですけども、今日申し上げたいのは3つありまして、1つは電動車用のバッテリーのGWPの低減ということです。2つ目は使える資源の確保。資源ではなくて、使える資源という意味に限定しております。3つ目が流通ですね。これは物質と情報を含めたものになるんですが、そのサプライチェーンの革新というふうに挙げさせていただきました。
 まず、1番目の電動車用のバッテリーのGWP低減ということなんですが、バッテリーは、皆さん御存じのように、山からレアメタルとかを取ってきて、いろいろ加工してバッテリーに仕上げて、そして自動車とか蓄電池になって、最終的にはもう一回リサイクルに戻さないといけないんですが、今はリサイクルというよりはブラックマス化されるようなことがありまして、完全に元に戻っていないという現状があります。私どものほうとしては、マイニングから例えば電動車に使い、その後にバッテリーのセカンドユースという形で蓄電システムをより広く活用して、トータルとして、ライフとしてGWPを低減するという考え方。これはちょっと俗的な言い方ですが、動脈系と書きました。で、廃棄をされたバッテリーのリサイクルをして、再生をして、例えばBtoB(バッテリー・ツー・バッテリー)というのはもう一回バッテリーに戻すという意味なんですけども、その還流系という意味において非常に効率的な技術を入れてGWPを下げる。これは戻すという意味において静脈というふうにしていまして、動脈と静脈で材料を取って、もう一回材料に戻すと。使われるのは車であったり蓄電システムであるというような考え方で、これを効率よく使いませんかという意味においてトータルでGWPを下げるという考え方。
 2つ目は、使える資源の確保。これはバッテリー向けの高純度レアマテリアルが必要です。最低限のクラス1以上が必要です。例えば、高純度化するためには多大なエネルギーの投入が必要で、それは言わずもがなですが、CO2の負荷にかかってきます。当然高コストにもなります。2つ目は、その重要レアマテリアルというのは地政学的な制約の対象になっていることが多いです。後にお話しいたします。
 3つ目は流通ということで、物質と情報ですね。そのサプライチェーンの革新ということで、原料、バッテリー、車載、セカンドユース、リサイクラー、ロジスティック、これら関連ループ内でのGWPの低減ということですね。これは、国内は当然なんですが、海外で非常に盛んに検討されておりまして、国際標準・国際規格でいろいろと進んでおります。特に欧州と中国とアメリカ。その中で日本というのはもちろん関与はされているんですけども、少し中途半端なところがありまして、この辺りをどういうふうに率先していくかというのがあると思います。2つ目のポツですが、資源ですね。これはGWPの情報を含んだ資源の物質的な流通の流れ、それに情報を加えたデータサイエンスを活用した形で、例えばデジタルツインとか、そういうようなものを入れて物質と情報を同時に流していくというようなことをしていかないと、その材料はどこのどういう生まれで、どう育ったのかということはよく分からないということになります。
 黄色いところで書きましたが、これらは技術的なことだけではないんですが、非常に性質の異なるハード・ソフト技術、それから政治経済的な話、それから技術規格など非常に多岐にわたる基礎分野、これらのコンバージェンスが必要で、その人材育成とともに盤石な産業基盤の形成というのが不可避であると考えております。
 これは代表的に全体を表したものです。バッテリーの輪廻転生って書いておりますが、バッテリー資源によるバッテリー製造と、それから再生時のCO2の負荷の最小化、あと高寿命と用途拡大によるエネルギー貯蔵能力、それと効率の最大化ということを掲げております。絵のとおり、つくられて、使われて、リユースされて、もう一回リサイクルして戻る。もちろんこれで成立すればいいんですが、これではパイが大きくならないので、パイが大きくなるに応じて必要資源を投入し、やっていこうと。次第にパイが大きくなる形をイメージしています。資源ロスというところで、左の下のところに赤い字で書いていますが、これをもし使わないといいますか、このループから外れると、言うならば、人間に例えますと出血するようなことになりますので、それは静脈系として元に戻らないでしょうということで、もう一回きちんと心臓を通じて戻らないといけないという意味において、パイを大きくしながら無駄を省くというような考え方で、CO2の負荷削減、それからバッテリーとしての電力活用を最大化する、そういう考え方を入れております。
 次、資源確保ということなんですが、これは取りも直さずイベントリという形で、どういうふうにしてインベントリが記録されていくかということになります。当然、CO2の排出量ということになるんですが、左下のところに資源の確保って書いてありまして、これはHHIの資料ですが、これを見ますと、鉱石の偏在性ということがいろいろうたわれておりまして、赤く囲んでいるのがこれら電池にとって非常に重要な元素ですね、これらはほとんどが中国がトップシェアになっておりまして、一部、今いろいろ騒がれていますような地政学的なリスクを抱えています。右側の絵を見ていただきますと、円グラフがありますが、これは代表的な正極材料のつくり方を一例として示しています。ほかに電解液とか負極もあるんですが、正極だけを今、例として挙げておりますが、このような複雑な工程を経て、先ほど申したクラス1のレベルから材料をつくっていかなきゃならず、その過程で非常に電気エネルギーを使っているということになります。材料の精錬と正極材料の製造ということでCO2の負荷が非常に危惧されます。
 次、これはセルからバッテリーシステムということで、材料がやっとできたとすると、今度はセルといいまして電池そのものをつくらなければいけませんので、そのセルをつくるためのプロセスを書いております。簡単に書いております。この間にもやはりエネルギーを必要とします。そのためには必要なLCA負荷の形をつくらないと、これもコストに跳ね返りますし、このつくり方自体が一つ競争力にもなっているという実態があります。右側は、さらに、その電池ができたとしてモジュールとかパックとかBMSとかという形でコントロールするんですが、そういったものに対してもLCAの負荷の低減というのが必要な場面がたくさん出てきまして、ここも競争力につながりますし、大きく言えばGWPの抑制の重要な因子になってきます。
 今度は、リユース・リパーパスによるロングライフですね。まず、バッテリーそのもののロングライフ化というのは言わずもがな必要なんですが、そうやってできたバッテリーといえども、いずれ劣化をしますので、やはりリパーパスで使うか、リサイクルでもう一回戻すかということが必要になります。先ほど申しましたように、欧州なんかはバッテリーパスポートという形で規格化されていこうとしていますが、この中には非常に情報が入っておりまして、恐らくサイバー・フィジカル・ネットワークであるとかデジタルツインのような形で情報と実物としての資源そのものを管理しなきゃいけない。山でつくられたものが動脈系として例えば車に使われて、車を例えば心臓と例えますと、この後にもう一回、ほかのセカンドユースに使われて、もう一回材料に戻る、すなわち静脈系と。こういった形で回していくという形が必要になるのではないかと思います。右下のところに書いていますのは、使われたバッテリーですね、車として使われたものが再度どう利用されるかということを簡単に模式化して書いております。リユースでリマニュファクチャリングになったり、リパーパス、ESSに使うであるとか、そういったものに使われるんですが、最終的にはやはり電池はもう一回材料に戻らないといけないという形になります。再循環ですね。
 次、4番目のところなんですが、リサイクルによる資源の還流達成ということで、やはりここは高効率、高収率、低コストという形で材料をもう一回元に戻さないといけません。戻った材料は、ただの元素であればほかの産業界でも使われるかもしれないんですが、もう一度バッテリーに使えないかということで、クラス1ぐらいのレベルで非常に高純度化されているものを、わざとブラックマスみたいな形でもう一回、インピュリティーが多い状態にするのではなく、できる限りピュアなものからピュアなものとして使えないかということで、ダイレクト・カソード・リサイクリングという言葉を使っておりますが、これは一例です。いろんな手法があるんですが、どれが一番理にかなっているかというのは、まだいろいろ論議をされているところです。
 右側に、収益化のためのビジネススキームということで少し書きました。法規対応、国際標準化対応等々ありまして、当然これ、1社でどうのこうのではなく、非常に地政学的なこととか法律的なことを含めて、今後考えられるカーボン・プライシングに対して対応しなきゃいけない。例えば、今描いている絵の中に入っているステークホルダーですね、これらステークホルダー間での情報の共有、これが非常に重要なんですが、ここは非常にプロテクトがかかって危ないといいますか、ブロックチェーンになってしまっている部分が現実であります。さらには、地域で見ますと、欧・米・中を拠点化としたサーキュラー・エコノミーで、その中で閉じてしまうということがあって、なかなか情報が回らない。あるいは、必要な情報ってどれなんだというようなことで少し問題になっている。しかし、そうしますと、全体としてのそこのスキームですね、流れが取れないということで、収益を取るためには、やはりこういったところでどういう情報を扱っていくのかということを考えなきゃいけないというふうに考えております。
 次、まとめなんですが、1枚目と同じことを書いておりまして、黄色いところを見ていただきたいんですが、やはり今申し上げましたように、ハード・ソフトの技術と、政治経済的な見方と、それから法規的な見方、非常に多岐にわたる基礎分野のコンバージェンスが必要で、まさに国内の文科系・理科系関係なく、今後、こういった裾野の広い分野に対してどういうふうにして産業基盤を盤石にしていくか、そのためのテーマであったり、次の人材を育成していければなと考えている次第でございます。
 以上です。
【杉山主査】  新田委員、大変ありがとうございました。
 質疑等はこの後まとめて行うことにさせていただきまして、次に、水素・燃料電池分野について、九州大学の副学長で主幹教授でもあられます、それから水素エネルギー国際研究センター長、次世代燃料電池産学連携研究センター長の佐々木委員より御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
【佐々木委員】  九大の佐々木です。私のほうは水素分野を中心に御説明させていただきたいと思います。大学で水素エネルギーの研究をしておりますし、あと政府のほうの水素政策小委員会のほうで委員長も務めておりますので、国内の動向も踏まえて、この分野への期待をお話しさせていただこうと思います。
 これは皆さんに言うまでもありませんけれども、脱石炭から脱石油、そしてまさに脱炭素の時代になっております。これは、下のほうに書いておりますけども、炭素の塊でした石炭から炭化水素に変わってきているわけですし、天然ガスのほうを使うようになっているというのは、炭素に対して水素の割合が増えてきたというのが今までの変遷でございます。他方、天然ガスでも炭素を含むということですので、やはり炭素を含まない脱炭素燃料を使おうと、これが水素が注目されている理由ですし、水素・アンモニアということで期待されている理由でございます。
 数年前から政府のほうでもまさにこのグリーンイノベーションの議論がされております。それがまとめられているのがこのスライドですけれども、ちょうど中心に水素が位置づけられているということが御理解いただけると思います。つまり、左上にありますように、再生可能エネルギーを使いやすくすると。その中で電気で余るようなものは水素にできますし、右上にありますように世界中で再エネが安くなりつつありますので、それを送電線で持ってくるわけにいきませんので、水素もしくは水素キャリアで持ってくるという中で水素が期待されております。あと、右下にありますように、回収したCO2を再利用するときに、やはり大量に安く水素が使えればということでありまして、そのCO2リサイクルともこの水素というのが密接に絡んでいるところでございます。
 もともとこの分野は、ちょうどNEDOさんができた頃に燃料電池というのが期待される発電システムとして、長年、日本が研究開発をしてきたところでございます。それが、最近はやはり脱炭素ができるということで、水素循環ができる水素に重点がどんどん移ってきたところでございます。なので、右側に書いておりますように、まさに、直接化学エネルギーから電気に変えられる燃料電池、これはコアな技術であり続けると思いますし、また、この左側にありますように、内燃機関でも水素を使っていただけるようになってきたという時代になってまいりました。
 私自身は30年以上、この分野で水素の研究をしているんですけれども、社会が見る水素への期待というのは少しずつ変わってきていると感じております。左側にありますように、2000年代前半は低炭素社会と言っておりましたけれども、カーボンニュートラル、そして脱炭素ということが普通に言われるようになってきましたし、その一つの究極の姿が水素社会ということになります。なので、水色で書いておりますような燃料電池、そして高効率化というところも着実に進む必要がありますし、他方、やはり脱炭素に向けますと、例えば水素貯蔵とか、まさに水電解、水蒸気電解というところも今後重要になってくるというのが、この分野の特徴だと思います。
 やはり水素を社会で使っていただくためには、ある程度、今の既存の燃料と価格がとんとんでないとなかなか入らないということでございまして、政府の水素政策小委員会でも、まさにこういうような水素価格を下げていくための政策の議論を進めているところでございます。ちょうど1月4日に中間整理も出させていただきました。水素といえば燃料電池自動車と言っていたのが長年続きましたけれども、実は研究開発では、左上にあるような、乗用車というよりは、まさに研究開発の主戦場が耐久性が求められる商用車にかなり今シフトしております。さらには、水素発電、化学工業、そして水素還元製鉄、この辺りはGI基金でかなり集中的な支援がされておりますけども、これらが入ることによって水素が安くなって、それで水素が普及してくるという好循環をつくっていくということが大事になってまいります。
 2017年に日本が世界に先駆けて水素基本戦略という国家戦略をつくったんですけども、今現在起こっていることは、世界中でこの脱炭素燃料を使うということが重要だということの認識が進んでまいりました。なので、ここには、ドイツ、アメリカ、EU、フランス、中国の取組が書いておりますけども、ポイントは下の4つにまとめられます。まず、各国が国家戦略を策定していること、それから大型の公的支援がされていること、そして研究に関することとしては、水電解とヘビーデューティーな商用車ですね、ここが研究開発のまさに世界の大競争が起こっている分野ということでございます。
 これらを比べますと、今回のGteXの事業の話をお聞きして改めて感じますのは、一番上に書いたんですけれども、グリーンイノベーション基金で日本は非常にこの分野に力を入れているんですが、まだまだかなり産業界寄りの支援・プロジェクトが進んでいるということでありまして、今回、GteXというのは、いわゆる大学、アカデミアがこのグリーン分野に大きく貢献できるチャンスをいただけているのかなと思いますので、そういう面ではこのGteXに多くの研究者が期待していると思います。長年この分野にいた人間としては、一番下に書いてあるんですけれども、当然、科研費でいろんなチャレンジの研究はするんですけれども、いきなりそれで成果が出ると産業界主導のNEDOさんの事業にやっぱりチャレンジしてくるということがありまして、実は真ん中にあるアカデミア主導の本格研究、これがなかなかできなかったというのがやはり大きな課題だったと思います。なかなか新しいシーズを発展させる場がなかったということですから、まさにこのGteXはこの辺りを主に注力して育てていただければと思っております。それから2番目に、やはり多様な技術シーズの中では、革新的な材料の創製と最先端の評価手法と、これがやっぱり大事な基礎分野だと思いますので、そういうところでぜひこの分野を盛り上げるような取組が期待されるところであります。あと3番目でございますけれども、やはり2050年のカーボンニュートラルを担うのは今の20歳代の方々でございます。国際会議に行っても、発表するのは当然博士課程の学生もしくはポスドクレベルなので、そこが日本がやっぱり弱いところであります。なので、ぜひこういうような研究の投資は若い世代にぜひお願いしたいと思いますし、他方、国、大学にもそれなりの施設はそろってきましたので、そういうところはぜひハブ拠点として皆さんに使っていただくような形になると、より若い世代に投資ができると考えます。
 この分野、特に上に書いておりますように、全てを文科省の事業でやるというのは難しいと思っています。現に2兆円を超えるGI基金のほうでかなりいろんな取組もされておりますので、ぜひそちらは役割分担を考えていただいた上で、文科省、JST様でできるような取組をぜひ注力いただければと思います。この幾つかの取組、水素の製造、貯蔵、利用、そして共通技術、水素社会と書かせていただきましたけれども、いずれももちろん大事でございます。ただし、先ほど申し上げましたように、やはり水電解ですね、これは世界で大競争が行われていること、さらには燃料電池も特に高分子型でかなりのチャレンジが必要であります。あと水素貯蔵、そして共通の計測技術、さらにはライフサイクル・アセスメントのような人社系との連携というところが大事なポイントだと考えますので、ぜひそういう要素はGteXの中で取り入れていただければいいかなと考えます。
 最後のスライドでございますけれども、人材育成につきましては、先ほど吉元補佐からもお話がありましたように、人材育成、やはり文科省の事業だからこそできる部分だと思います。この分野、アカデミアの力が残念ながらかなり足腰が弱くなってきたなというのは責任も感じるところがございますし、シーズが不足していかないよう、そのシーズを生み出せる人材を育成していく、これがやっぱり文科省系の事業で根っこにある必要があると思います。2点目でございますけれども、世界中ではそうですが、やっぱり20代の博士レベルの学生さんがまさに新しいチャレンジをしているというのが世界のトップレベル大学で行われていることでございます。なので、ぜひこういうような国家プロジェクト、例えばこのGteX事業に博士課程の学生さんが入って、産学のネットワークのチーム型の中でまさにもまれて、日本全体で次の世代の最先端の研究者を育てると、そういうようなチーム型の取組というのが大いに期待されると思いますし、最後になりますけれども、やはりコロナで日本はかなり海外から取り残されている部分がございます。ぜひこういうような取組の中で同志国の連携機関と連携をして、海外武者修行ができるようなチャンスも与えていただければ若い世代が育っていくのかなと思います。
 私からの説明は以上です。
【杉山主査】  佐々木先生、大変ありがとうございました。
 続きまして、バイオものづくり分野ですけれども、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の技術戦略研究センターバイオエコノミーユニット長の水無委員より説明をよろしくお願いいたします。
【水無委員】  NEDOの水無です。それでは、私から、「バイオものづくりに関わる革新的GX技術創出についての論点整理と期待」として、話題提供、そして本GteX事業について考えを述べたいと思います。第1回の委員会にて近藤科学官がかなり俯瞰的なお話をされましたので、どちらかというと現場感覚でこのようなことが大切ではないかという観点でお話ししたいと思います。
 ここに示す流れで話を進めたいと思いますが、ここで【参考】と書いたものについては、説明は省きますけれども、御質問等があれば使用することで進めたいと思います。
 これはバイオものづくりの特徴をまとめたものです。生物は高分子化合物や高機能品を製造することが得意で、未知の可能性が眠っている領域であると。また、常温常圧でものづくりが可能で省エネルギー型生産プロセスが組めること、それから、高選択性の反応が多いですので、省資源型生産プロセスが組めることなどが特徴として考えられます。バイオものづくりは、ここに示しますように、化成品でも多くの種類、それから食品をGteXで扱うかどうか分かりませんけれども、食品素材など、いろんなものにゴールとして設定ができるということがあります。ですので、これらのゴールに対して、様々な手段を用いて共通基盤をつくること、そして社会実装に向けることということが非常に重要であると考えています。
 次の2枚のスライドは参考としてですけども、産業界もカーボンニュートラルについて声明を出していて、バイオもその中に位置づけられているということであります。
 5ページ目ですけれども、素材ものづくりにおける現状について整理してみたいと思います。これはコンベンショナルな化学的生産プロセスを示しておりますけれども、化学工業は、左側ですね、安い化石原料、原燃料を用いて高温高圧反応などエネルギー投入が大きく、また、反応においては選択率や転化率が必ずしも高くないというという反応において、これは廃棄物とか排熱が多く生じてしまうような生産系ですけれども、これを基本的には用いていると。これは、産業界の、それからアカデミアの先生方のたゆまぬ努力、特に省エネとか省資源化への絶え間ない改善で経済合理性を確保してきて今に至っていると。ここにおいて触媒開発であるとかプロセス開発、これらを100年単位で行ってきた、これはすごいことだと思っています。
 ですが、ここが、左側ですね、素材ものづくりもカーボンニュートラルの流れの中で化石原燃料の削減であるとか不使用という状況に置かれております。ですので、代替原料の探索であるとか、あるいはさらなる省エネルギー化の技術開発、それから製品の3R、これらの多くの課題が検討されてきていると。これに対しましてバイオものづくりは、少ないエネルギー投入量で、また高選択性でものづくりができるということから、省エネルギー型・省資源型の生産プロセスが期待されますが、現状においては生産性にまだ課題があり、原料バイオマスは低濃度のCO2を低コストで固定されたものですので、うまく活用できるポテンシャルはありますけれども、収集であるとか運搬等を考慮するとまだまだコスト高であるということが挙げられます。またさらに、活用できるバイオマスの資源は多様でありますので、それぞれを使いこなす技術がまだ未成熟であるというような多くの課題が残されているということが言えるかと思います。
 これらの課題を解決するためにアカデミアに期待したいことをまとめました。本GteX事業の対象となるのではないかなと思われるものを太字にしております。まず、左の下になりますけれども、生産反応の生産性を向上させるために、いわゆるDBTL(Design・Build・Test・Learn)のサイクルをさらにブラッシュアップさせるということが必要と。そのための革新的な要素技術を開発することが必要ではないかと。それから、右側の上になりますけれども、未活用資源の利活用を可能とする革新的な技術、例示しておりますけれども、ガスであるとか廃棄物であるとか、これらを利用できるものについては大切ではないかと思われます。それから、右の下になりますけれども、製品のところですね。製品自体は産業界の責任事項だと認識しておりますけれども、製品設計に必要な、例えばカーボンニュートラルに有望な分子の選択あるいは設計、また、新用途開発につながるような新たな新機能であるとか物性開発、これらの萌芽技術、これについてはアカデミアに期待したいところかと思われます。
 次のページ、まず、先ほどお示しましたDBTLのところですね、これについて簡単に触れますと、このDBTLのサイクルをさらにブラッシュアップさせる革新技術として、例示となりますけれども、例えば新育種技術、あるいは新しい分子生物学のツール、それから分析・解析・イメージング技術、あるいはロボティクス、それからシミュレーションとかモデリングなどの基盤的な技術、これの革新的な要素技術ということが挙げられるのではないかと思われます。個々の技術分野については幾つもの技術シーズが実際出てきておりますので、それらの中から適切なものを開発していくということかなと思います。また、バイオものづくりは様々な分野の技術が活用されますので、バイオ系だけでなく様々な分野の研究者と横断的な研究開発も重要と考えます。
 これは未活用資源の利活用についてですけども、これは例示ですが、例えばグリーンイノベーション事業でのバイオものづくりの課題を例示しておりますけれども、このようにこれまであまり注目されてこなかったようなCO2のような原料ですね、これをゲームチェンジを狙うことを意図して、設定するということは重要かなと思います。例えば水素や一酸化炭素、これらを還元力とする、CO2直接原料化以外にも課題設定が可能なのではないかと思います。
 それから、カーボンニュートラルに有望な分子の選択や設計については、ここに示しますように、シミュレーションやマテリアルインフォマティクスのような技術を活用することによって、原料となるバイオマス等からカーボンニュートラルに適切な分子を選択する、また機能を発揮する分子設計を行うということが非常に有望ではないかと考えられます。
 この次の2枚のスライドは、どちらかというと産業界が担うべきところだと思いますけども、社会実装のためには産業界との連携が非常に重要と思いますので、特に産業界のニーズをよく理解して、具体的なターゲットを設定することが重要だと考えます。GteX事業においても、産業界とのコミュニケーションを良好に進めていただきたいと思っています。これは石化系の化合物のパイプラインですね。これらに対して適切なターゲットを設定して、バイオものづくりで仕上げていくということが大切ではないかということでお示ししています。
 これは海外のプロジェクトの事例ですけれども、例えば再生可能原料からのプラスチック生産であるとか、あるいはリサイクル、これはナショプロとして取り組まれているものですけれども、このようなものを意図として、具体的なターゲットを設定してチームで取り組んでいくということも重要ではないかと思っています。
 あとは口頭でまとめをお話ししたいと思いますけれども、最後に、本GteX事業について意見を3つ述べさせていただきたいと思っています。
 1つは、非連続のイノベーションを取り込む制度設計が重要ではないかと思っています。社会実装を目的とした取組は、通常、計画・目標を立てて連続的に進めるために、非連続のジャンプアップ、これを計画的に起こすことは難しい点があると思います。しかし、多くの場合、産業化の正否を握るものは、非連続のジャンプアップであることも多いのも事実かと思います。一般に、イノベーションは、若者、よそ者、変わり者によりもたらされると言いますけれども、若者を育て、登用し、挑戦の機会を与えること、また、よそ者は分野外の研究者や研究成果との有機的な連携を取ることが必要かと思いますが、これらについて積極的に行っていくと。また、変わり者というのは常識を恐れずに挑戦する者と理解しますけれども、このような挑戦の機会を与えるということが大切だと思っています。特に、科研費であるとかJST事業で育て、芽が出たものは積極的にGteXに登用していくということが可能な制度設計であるとか、あるいは課題設計をお願いしたいと思っています。
 2つ目は、競争と連携ということかと思います。第1回の委員会で、メンバーチェンジした後でも再度復活できることということを少し申し上げましたけれども、同じ意見でございますが、文科省・JST事業であるとか、経産省・NEDO事業、それぞれの目的と役割を理解した上で、積極的な競争と連携を促す制度設計や課題設計が大切なのはないかと思います。例えばですけども、グリーンイノベーション事業では、社会実装を目標として挑戦的な目標を入れながら進めておりますが、進める上で想定よりも大きな技術ハードルが生じることもあるかと思います。その際に、別の視点から一緒に解決に導くような連携であるとか、あるいは場合によって勇気ある撤退を促して置き換える、これは競争になるかと思いますけども、これができるようなオールジャパン体制の中でも適切な競争環境、これが重要ではないかと思います。もちろん、この場合は、一旦退場した研究者も再度挑戦の機会が与えられることが極めて重要かと思います。このような制度設計が必要ではないかと思います。
 それから3つ目、最後は、GteX事業のバイオものづくりのサポート体制、これを充実させることではないかと思います。高度な技術的な目利き機能を集めて適切な課題を設定することが大切だと思いますけれども、それに加えて、広く研究者から提案を募集すると。例えばRFIのような形で募集すると。その技術評価を行い、積極的に挑戦の機会を与えると。そのようなサポート、これが大切かと思います。これらの機能をPOの下に設置して、十分なサポート体制、それから競争と連携を促すこと、これが大切ではないかと思います。
 以上で話題提供とGteX事業に対する思い・考えの提示を終えます。ありがとうございました。
【杉山主査】  水無委員、大変ありがとうございました。
 では、続きまして、資源循環分野に参ります。早稲田大学の理工学術院の教授の所委員よりお願いいたします。よろしくお願いします。
【所委員】  所です。それでは、私、資源循環を専門にしていますので、その立場からこういったタイトルでお話しさせていただきます。
 先ほど新田委員から電池を例として資源循環の重要性をお話しいただきましたので、非常に私としても話しやすくなったんですけれども、環境負荷というのは非常に多様で、もちろんGHGのカーボンニュートラルだけではないわけですけれども、やはりこういったような環境負荷の中でも一番両立しづらいのがGHG削減とか環境負荷の削減と資源消費ではないかと思われます。この図は、人間が人類のウェルビーイングをどんどん向上させていって、今の価値観ではそのために経済活動をどんどん拡張していくときに、これまでは環境負荷も右肩上がりで資源もたくさん使ってきていたわけですけれども、これからは環境影響は避けなければいけない。それから、資源循環を促進して資源消費はもう増やさないようにしなければいけない。両者デカップリングしなければいけないんですけど、ここでいうところの緑と青の両方のデカップリングの両立というのは非常に難しいということを指摘するレポートが多数出ています。そのレポートの例を下に示しておりますけれども、これを両立させるために、資源循環あるいはサーキュラー・エコノミーという概念が出てきているなと理解をしています。
 この両立が難しいということの一つのレポートの例なんですけれども、先ほど電池の資源循環の重要性もお話しいただきましたが、カーボンニュートラルをどんどん促進していったときに、ある2つのシナリオに基づいて鉱物所要量がどれぐらい増えてしまうかということを示しているのがこの図です。左側に示しているのがまさにバッテリーに関係する鉱物使用量でして、例えばリチウムであれば、2020年と2040年の比で13倍から42倍になるとか、コバルト、ニッケルが必要だとか、あるいはこういったいわゆるレアメタルと呼ばれるものだけではなくて、右側にはカッパー(銅)みたいなものも2倍から3倍の需要増加があるということで、世界的に資源循環が必要になる、資源の供給・需要バランスが崩れるということは大きく懸念をされています。
 また、こういった資源不足ということだけではなくて、こういった世の中の動きを察知して、世界的に、もともと素材に高純度なものを求めるというのはものづくりであったわけですけれども、さらにそこに再生資源利用であるとか高資源循環を求める動きというのが活発化しています。昨今、デューデリジェンスという言葉も非常に重用されるようになりましたけれども、それぞれの素材が責任ある適切な方法で生産されているかということを認証するような世界的な方向であるとか、あるいは、いろんなメーカーが自社の製品に対して再生素材が利用されているということをアピールするいろんなブランディング戦略であるとか、あるいはバッテリーに関しては、EUが法整備などで仕組みづくりで先に行こうとしているわけですけれども、サーキュラー・エコノミー推進政策のために、既にカーボンフットプリントの明示化とか、あるいは再生資源の使用量の規格化とか、あるいは回収率の定量的な明示とか、そういった施策をいち早く出しているとか、もちろん、環境負荷はGHGだけではないので、多様な環境負荷に対する評価に対する要望というのも高まっているように感じます。
 この中で、2015年にはいち早くEUがサーキュラー・エコノミーという政策を出しているんですけれども、このサーキュラー・エコノミーというのは、もともと、これまで真ん中のリニアエコノミーであったもの、それからリニアエコノミーでたくさんつくって出てきたものは経済性に従って一番外側のリサイクルという循環でできるだけ可能な限り戻しましょうという、それだけではなくて、できるだけ内側のループをつくって、機能を回す。機能を回すことによって、そこに新たに経済性を見つけるというようなことかと思います。つまり、こういった資源とか環境とかという制約がどんどん大きくなっていくと経済も停滞してしまうということを誰もが心配しているわけで、環境という制約、資源という制約もうまくクリアしながら経済をさらに活性化するためには、もはや物に経済性を持たせるということではなくて、循環、ぐるぐる回るということに経済性を持たせようという考え方であって、さらにこの図は、左側に再生可能資源、右側に枯渇性資源が取ってあって、右側の枯渇性資源をぐるぐる回すにもエネルギーが要りますので、このエネルギーは左側の再生可能エネルギーの範囲内にしなければいけない。非常に制約は多くて課題も多いんですけれども、こういった考え方が出てきているということだと思います。
 これに対して、日本でも現在、これを成長志向型の新たな経済的な、あるいはものづくりのチャンスと捉えて、日本版のサーキュラー・エコノミーを考えていこうというような動きがあります。例えば経済産業省では、ここにありますようなタイトルの成長志向型の資源自律経済デザイン研究会というのが立ち上がっておりまして、左側に示しましたように、経済界、いろいろな業界のトップの方々がここにお名前を連ねていらっしゃいまして、この環境制約・資源制約を強く意識した循環型社会構築を日本の成長のチャンスと捉えようと。具体的にどういうチャンスかというと、循環に経済性を持たせるための新しいビジネスモデルであるとか、DXであるとか、新たな素材・製品戦略、さらに日本のものづくりをしっかりと中心に据えた、そこに高精度な材料や素材をさらに成長させるための再生材利用であったりとか、あるいは国内で循環することの意味としては、昨今、非常に耳にするようになりました資源安全保障、経済安全保障という観点も非常に大事だということです。僣越ながら、私も第2回で説明をさせていただいています。
 こんな中でアカデミアとして何ができるかということなんですけれども、いろんな要素があると思いますが、私自身は分離技術を専門にしていますので、ぐるぐる回すことを実現するためにはかなり多様な分離技術が必要になってくると考えています。これまでは、精度を出すための一番外側のリサイクルのループを確立するためのイオンにしてぐるぐる回すというところは、大分、分離技術が整ってきているわけですけど、それでもまだまだ選択性やコスト、エネルギーですね、エネルギーを下げるという点でより高度化するようなことが必要ですし、もっと機能を残して分離をするためには、界面だけを分離するであるとか、もともと分離しやすい設計にするであるとか、あるいは界面だけを分離するようないろんな外部刺激をうまく使っていくというようなことがこれまで以上に必要になってくると考えていて、こういった分離技術が学術的に精査され、俯瞰的に整っていくということが非常に大事だと思っています。
 ただ、現場を見ますと、今、リサイクルの現場は、機械的なシュレッディングのようなもの、あるいは手解体みたいなものを想定した分離ぐらいしかなかなか社会実装されていませんので、これももっともっと洗練させて高度化することもできますし、ここに書いたように、こういった機械的な外部刺激のみならず、マイクロウェーブとか電気パルスとか、あるいはレーザーとか、より選択性が高いような、あるいはバイオも考えられると思います。圧力を利用することもあると思うんですけれども、選択性の高い外部刺激を使って分離したい部分だけを分離して、残りは機能が使えるように残していくと。さらにこれ、縦軸に大量処理できるかという効率と、横軸に異相境界面をきれいに分離できるかというような選択性を取っていますけど、それをできるだけ右上に持っていくような新しい技術、こういったものがつくられていくことが必要だと思います。あるいは、こういった外部刺激というのは高度なものづくりのところでは検討されてきたものですので、それを分離と製造の両方に使うとか、そういった発想が必要になってくると思います。
 また、このアカデミアの研究においてこれまで非常に感じているのがやはり、先ほど新田さんのお話でもありましたけど、動脈・静脈という言い方をよくされますが、そこが非常に分断されているということです。ここを、サプライチェーン全体を理解して、静脈側は動脈のことをもっと理解しなければいけないんですけれども、動脈も静脈側のことをよく理解して、サプライチェーン全体の最適化をきちんと理解した上での課題設定、こういうことができるアカデミアというのが必要になってくるかなと思います。
 これは1つの例ですけれども、元素戦略みたいなものも今までありましたけれども、何か1つの元素を使うとか使わないとか、これを代替するという議論が非常に多いのですが、元素の分離というのは、副産物も含めて、プロセスの中で順次行っていかれるものなので、何か1つだけを使うとか使わないということではなくて、バランスを考えて使うということが大事だということを全体でよく理解して課題設定することが大事だということ。
 1つの元素だけを使うとか使わないということではなくて、分離というのは、プロセス全体で副産物も含めていろいろな元素が徐々に分離されていくようなプロセスですので、製造しやすい、あるいは分離しやすいバランスを持って、使うということが大事なので、こういったサプライチェーン全体を理解した元素の分配ということをよく理解した課題設定が必要になるかと思います。
 そういった意味では、日本は本当にものづくりのところ、動脈のところと静脈のところが、研究助成あるいは研究者も含めて、これまで、間に消費者がいたということもあって分断されているような傾向がちょっとあるんですけれども、諸外国を見ますと、動脈や静脈を区別しないで研究チームをつくる、研究助成をするというような組織はたくさんあります。例えばこれはヨーロッパのEIT Raw Materialsですけれども、製造する人が分離のことも考える、分離する人が製造のことも考える、そこの区別がないような研究助成です。あるいは私が聞いているのは、オーストラリアの太陽光パネルのいろいろな助成に関しても、処理する人とつくる人が一緒にチームを組んで、最初から開発がされている。それに比べて、例えば日本の場合、次世代型の太陽光パネルで、今から処理の方と製造、素材をつくる方が一緒に組んでいるかというと、そういったことはないので、こういった姿勢もこれから必要になってくるのではないかなと思います。
 ということで、以上まとめますと、資源循環というのは、バランス感覚といいますか、全体俯瞰が非常に大事なので、サプライチェーン全体で環境制約や資源制約の最適化の方向性を理解した研究課題を設定できること、あるいはそういうチームが必要になると思いますし、ずっと動脈と静脈の融合が必要ということを申し上げたんですけど、分離と精製を組み合わせること、あるいは高度化させる材料や素材や製品づくりが可能な革新的な技術やプロセスを構築するための理学的・工学的研究が必要となると思います。あるいは、サプライチェーン全体の最適化を理解するためには、技術だけではなくて、デジタル・システム学的な研究も必要となりますし、循環を社会に受け入れていくためには、新たな価値を創造するための人文学との連携ももちろん必要で、一番下に書きましたのは、今この瞬間は、個別の製品の課題に沿った、例えば電池なら電池、バイオならバイオ、水素なら水素のプロセスや素材に対して、資源循環を達成するためにどうしたらいいかという研究が個別に進んでいますけれども、少し先を見ますと、資源循環というものを主軸にした俯瞰的、横断的な研究が必要となりますし、将来的には資源循環もものづくりもごちゃ混ぜになった、資源循環を最初から想定した素材・製品・プロセスのための研究というのが必要になってくると考えています。
 以上です。
【杉山主査】  所先生、大変ありがとうございました。
 
4.革新的GX技術創出事業(GteX)の概要及び今後の進め方について
【杉山主査】  それでは、4つの非常に示唆深い発表をいただいたところでございますけれども、若干時間が押しておりますので、質問等はまとめて総合討議の時間に進めていただくといたしまして、次の議題、すなわち、4番目の革新的GX技術創出事業(GteX)の概要及び今後の進め方について、文部科学省の研究開発局環境エネルギー課の轟課長より説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【轟(事務局)】  それでは説明させていただきます。資料4の共有をお願いします。
 まず、これはGteXの概要ということで先ほど説明があったので、次のページに行かせていただきまして、実施方針等に係る検討の進め方ということで、大きく2つ説明します。
 文部科学省がこの小委員会における議論を踏まえて、基金に関する基本方針、それから、蓄電池、水素・燃料電池、バイオものづくりの各領域に係る研究開発方針を策定いたします。JSTは、この基本方針、研究開発方針の検討状況を踏まえて、より専門的事項、具体的事項を含む研究開発計画を策定する形で、これらをこれから並行して進めていきたいと考えているところです。文部科学省の小委員会からは、JSTに対して助言等をしまして、JSTの研究開発計画の検討状況の報告を受ける、並行してやっていきたいと思っております。
 第2回ということで、今日は基本方針と研究開発方針の検討事項の案を、この後お話しさせていただきます。次回は2月14日になりますけれども、本日と同じく話題提供があった後に、基本方針・研究開発方針の骨子という形で、より精度を上げたものについて議論いただくとともに、JSTでつくる研究開発計画の検討状況についても報告いただきたいと思っています。これら、年度内に合わせて都合5回になりますけれども、議論させていただいて、GteXについては取りまとめて、JSTで公募を開始したい。
 それ以降、4月以降は、GteX基金事業に限らず、GXに係る様々な領域や施策の方向性等について議論を進めてまいりたいと思っております。
 以上です。
【杉山主査】  ありがとうございました。
 皆さんも関心が非常に高いと思われますGteXに関しまして、この委員会を含めた今後の進め方について方針を説明いただいたところですが、重要なお話ですので、もし、御質問等ございましたら若干承りたいと思いますが、いかがでしょうか。
 よろしいですか。
 それでは、次の議題と併せまして、最後の総合討議に向けて進めていきたいと思います。
 
5.革新的GX技術創出事業(GteX)の基本方針、研究開発方針の検討事項について
【杉山主査】  それでは、今度は5番目の議題になります。革新的GX技術創出事業(GteX)の基本方針、研究開発方針の検討事項について、進めていきたいと思います。
 引き続きまして、環エネ課の轟課長より説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
【轟(事務局)】  今御説明しました、文部科学省が本小委員会で御議論いただいて策定する基本方針・研究開発方針における、まずは本日、検討事項ということで案を御説明いたします。
 1つ目の基本方針は事業全体の方針に関することですけれども、背景、目的、事業概要、これはポンチ絵でも既に示されている内容です。それから事業実施方法というところ、ここで特に、研究開発成果最大化や企業等への橋渡しを目指した仕組み、ここはGteXからGI基金への橋渡しも含む、ここが今回の特徴、ポイントになるところかと思っています。それから、事業実施体制は、研究課題のモニタリングのところが、先ほど話題提供でもありましたけれども、ここはまさに社会実装を目指す観点から、産業ニーズと照らし合わせて、どうモニタリングしていくかといったところがポイントになるかと思います。 その次、効果的な研究開発推進方策、本事業はまさにオールジャパンのチーム型でやるということで、全国ネットワークとして有効な最先端設備の共用をどうやっていくかといったところがポイントになるかと思っています。その次、情報発信、海外連携、若手の育成への考え方といったところ、GteXの分野は日本が非常に強いところを選んでいくということなので、そこが海外とお互いどうウィン・ウィンでやっていくのか、あとは頭脳循環の観点といったところもポイントになろうかと思います。
 2つ目、研究開発方針ということで3領域、蓄電池、水素、バイオものづくり各領域の方針でございます。1つ目は背景、目的。2つ目、研究開発目標・項目ですが、本事業はGXということでございまして、前回、経済産業省さんからもお話がありましたが、この事業自身がCO2の削減と経済成長という2つを追っていくことになっておりますので、削減、それから、将来産業育成への貢献度というものをどう見ていくのかといったところがまたポイントになろうかと思います。あと、研究開発実施体制ということで、効果的なチーム編成ですけれども、3分野ごとに、最適な体制というのは、また違ってこようかと思います。また、地域性もあろうかと思いまして、その辺り、次の共用設備・プラットフォームの活用といったところも、どこにどういう共用設備を整備していくのが効果的かといったところも御議論いただく。その中で、今既にあるもので大型放射光施設とか富岳というスパコンも活用していきたいと思っています。それから、研究開発マネジメントということで、ステージゲートでやっていくというところ。それから、企業の関与をどう設定するか、例えば企業が入ってくることを加点するか、といったところも議論していただければと思っているところでございます。
 以上でございます。
【杉山主査】  大変ありがとうございました。
 
6.総合討議
【杉山主査】  ということで、これから、特にここ数回、GteXのプロジェクトの骨太の方針を決めていくに当たりまして重要な論点というものが提起されたと理解しておりまして、先ほど課長の説明にありましたとおり、まず基本方針で、前回の御意見の中にもあったと思いますけれども、研究成果の最大化や企業等への橋渡しをどのように行っていくかという中で、ある意味、企業で社会実装してから、一度基礎に立ち戻るといったことも必要ではないかというような御意見もありましたけれども、こうしたところは、1番の基本方針にもある程度関わってくるところかなと思っておりまして、同様に、産業ニーズ等のマッチング度合いをモニタリングしていく必要性というのも、1番の基本方針で考えていく必要があるかと思います。
 それから2番目の研究開発方針、これはまさに皆さんも非常に関心が高いところであるかと思いますけれども、先ほどのお話にもありましたとおり、基本的には、やはりグリーンイノベーション、グリーントランスフォーメーションに資する、かなり波及効果の大きな開発成果が求められるというところもあると思いますので、そうした観点を踏まえた上で、先ほど「CO2削減」というキーワードも出てきましたが、もちろん循環型の技術をつくることによってCO2削減に貢献していくという観点もあるかと思います。いずれにしても、そうした量的な貢献を期待できるようなところも重要なことかと思っておりますし、また、キーワードで出てきました「経済成長との両立」、やはりここは日本の競争力強化というところに大きく貢献していく必要がありますし、ちょっとそれた話になってしまうかもしれませんけど、昨今、日本のアカデミアの研究力は大丈夫なのかというような声もございますが、そうした懸念に対しまして、こうしたGXの分野を強力に牽引していくような新しい動きをつくって、そこで、もちろん若い人あるいは異分野にいた人の参画も促して、日本が世界の潮流の幹にきちんと組み込んでいく、そういう流れをつくっていくような分野の設定といったものが今後論点になってくるのかなと考えております。
 ということで、こちらに関しましては、先生方、非常に多くの御意見があるかと思いますので、この後45分ほどではございますけれども、特に指名せずに、御発言を自発的に承るということで進めていきたいと思いますが、申し上げましたとおり、あと残り45分で、発言したい方がたくさんいると思いますので、論点は簡潔に述べていただけると幸いでございます。
 ということで、ここからは委員の皆様方の自由な発言をお願いしたいところでございます。挙手あるいは直接声を出していただいても結構ですので、よろしくお願いいたします。
 では、まず本郷委員、よろしくお願いします。
【本郷委員】  最初の4つの御説明をいただきましたが、その中の開発方針に係る検討事項、ここに非常に重要なヒントがあったのかなと思います。1つ目は、日産の方から説明がありましたけど、あそこで重要な点は「バリューチェーンが全部できないと目的を達成するための技術は完成しないよね」というところなのかなと思います。そうした場合、1つの企業あるいは1つの分野の先生が全体のバリューチェーンを見るということは、なかなか難しい話だろうと思います。そう考えていくと、誰かが司令塔あるいは全体最適を考えるような機能が必要なのではないのかなという気がいたしました。そのときに、海外との関係ですけれども、1つのバリューチェーンを全て日本で完結するというのは、これもまた現実的ではないかもしれない。ですので、バリューチェーンの中で、日本でできていなくても海外でできるものがあったら、それを全体バリューチェーンの中に組み込む、こういった感覚、方針があってもいいのかなと思いました。これが第1点です。
 第2点は循環経済の関係です。アカデミアではなく産業側からの話ですけれども、産業、企業でビジネスとして考えていくと、「循環経済というのは非常に重要だね。次の課題だね」と全体では理解は進んでいるんです。しかし「やみくもに全てで循環経済をやればいいというものではないよね」ということが重要になります。会社、企業の中で限られたリソースをどう配分していくかと考えたときに、やはり一番早くビジネス化しそうな分野というのを狙っていくわけですね。そのときに、どういう分野、どういう考え方で整理していくかというと、1つの考え方は自然資本ですか。今、自然資本の考え方が経済学でも大分注目されておりますので、自然資本という考え方を再整理した上で、外部不経済になっており、特定化され、定量化され、規制が出来る部分が一番早くビジネスコマーシャルの世界に入ってくるのではないか、こういった点で見ていくことも大事だと思います。企業へどうつないでいくかといったときには、1つの尺度として自然資本という概念で整理することもあっていいのかなという気がいたします。
 それから3つ目ですけれども、佐々木先生の水素のところで、例えば電解技術の話とかがありましたけれども、電解技術といっても、いろいろな企業あるいはいろいろな大学の先生がいろいろな方法を考えているかなと思います。それがそれぞれ強み、弱みがあって競争しているわけですけれども、GteXの中で、限られた資源、お金、それから人的資源、これをどうやって様々な取り組みに配分していくのか。この配分の仕方について、やはり1つ整理しておいたほうがいいのではないのかなと思います。
 それから4つ目ですけれども、やはりR&Dをやってアカデミアの研究をやれば、うまくいかなかったということもあると思うんですけれども、それをいかに共有していくかということも大事だと思います。失敗の共有というのはなかなか難しいと思うんですけれども、教訓として整理することにつき、何か一工夫できないのかなと思いました。
【杉山主査】  どうもありがとうございました。
 続きまして、志満津委員が手を挙げられていますね。よろしくお願いいたします。
【志満津委員】  よろしくお願いします。
 新田先生、所先生から、電池、資源循環の必要性についてお話をいただきました。私たち産業界で最近考えていることとして、資源循環などの検討では、経済的、社会的、環境的最適化に加え、社会科学、人文学、地政学など様々な分野融合を加え、将来シナリオ、将来価値が何か、何を研究すべきかを、研究する領域が非常に重要になると思います。その観点で、同じ目的を持って研究領域をまたいだ議論、研究ができる環境が、GteXのようなアカデミアの取組の中から出てくることを非常に期待しております。
 以上、コメントです。
【杉山主査】  大変ありがとうございました。
 ほか、いかがでしょうか。
 今のところ、それぞれの分野そのものということもありますが、先ほどのように全体を見渡した司令塔的な、これをどう組み込んでいくかという議論にもなるかと思いますけれども、全体戦略というのが非常に重要であるというような御発言をいただいたということと、それにも少し絡んでくるかもしれませんけれども、もう少し大局的な立場で、そもそも2050年に向けてこの価値がどうなっていくのかといったところも分野を超えて議論できるような体系が必要ではないかという御指摘をいただいたと理解いたしました。
 場合によっては、4件いただきました本日の話題提供に関する質問をここでいただいてもよろしいかと思いますが、いかがでしょうか。
【佐々木委員】  九大の佐々木ですけど、よろしいですか。
【杉山主査】  はい、お願いいたします。
【佐々木委員】  本郷先生からお話がありまして、それについて3番目で電解の例がありましたので、私からも発言させていただこうと思います。
 本郷先生から、「配分の仕方」という非常に重要なキーワードを言っていただきました。恐らく、例えばNEDOさんの事業ですと、幾つか研究シーズがあって、それぞれの方が競争して、最後、使えそうなものが生き残っていくという形だと思いますけれども、他方、アカデミアの本質的な役割というのは、ある種、苗床ですよね。ですから、多様なシーズがあって、それを客観的に、メリット、デメリットを比較して、多分、適材適所で、これだったらこういう技術が入る、別の用途でしたら別の技術が入るという客観的、包括的、俯瞰的な知見を得るのが、やはり大学、アカデミアだからこそできる、文部科学省事業だからこそできるかなと思います。なので、配分の仕方って実は非常に大事なポイントだと思いますし、他方、NEDOさんみたいにというよりは、むしろ、いろいろな技術を育てる、いろいろなサイエンスの芽を育てるというところがやはり大事になってくるのかなと思いました。
 ちょっと補足というか、発言させていただきました。以上です。
【杉山主査】  佐々木先生、大変ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 それでは田中委員、よろしくお願いいたします。
【田中委員】  田中でございます。
 御説明ありがとうございました。基本方針、研究開発方針における検討事項、大変すばらしいなと思って聞かせてもらったのと、あと、先生方の御発表もありがとうございました。
 基本方針の中にDXを幾つか書いていただいていまして、本郷委員からはバリューチェーン全体のお話があったり、新田委員からも全体の電池の選択の話の中で、基礎技術とデジタル活用みたいなお話があったかと思いますけれども、データの共用、活用という観点でDXは記載されていますけれども、バリューチェーン全体を見たとき、要素技術をうまくつなぎ合わせながらその価値を出していくような、司令塔ではないんですけれども、そういった付加価値を出す技術みたいなものも幾つかあると思いますので、データ活用と計算機の活用、プラス新しい技術、付加価値を出すためのシステム的な研究とか、つなぎ合わせる研究みたいなところというのも、ぜひ、やったらいいかなと思いました。ちょっと表現を変えると、社会課題に合うよう、1個新しくできた要素をどう配置すればいいのかみたいなところを一緒に考えるというところなのかなと思っております。
 1つ質問ですけれども、一番最初の電池のリユース、循環のところでブロックチェーンのお話があったかなと思いましたが、これは資源連関した資源に関してはブロックチェーンと称してビジネスモデル的にもメリットを得られるような仕組みが考えられているという御紹介なのかなと思いますけれども、もう少し教えてもらえれば面白いかなと思いました。ここで要素とともに付加価値をつけていくという研究分野もあると思いますので、何とかやったらいいかなと思います。
 以上でございます。
【杉山主査】  田中委員、大変ありがとうございます。
 では、御質問に関しまして、よろしければ御発表いただきました新田委員から、何かありましたら御説明いただければと思います。
【新田委員】  御質問ありがとうございます。
 ブロックチェーンですね。おっしゃるとおり、実はこれ、まだ成立していないので、何がブロックチェーンかということすらまだ十分分かっていないのが本当のところで、ただ、これからとか、先ほど申しましたように、欧州とか、中国とか、北米といいますかアメリカとかで今既に動いているのは、特に今はそれぞれの地域で抱え込みというのが入ってきているので、ブロックチェーンの資源の流れと、情報の流れと、どの原単位の電力でそれをピュリファイしたのかとか、そういったものの情報の出し入れというのが非常に閉鎖的であります。それを共通的に、共通ワードというのか、共通式というのか分からないですけど、まだ十分ではないんですが、そういったものでつなぐという形の動きが出始めていると聞いています。ですので、プロジェクトの話と、それから隠すといいますか、prohibitされているものとがまだちょっと混在していて、進んでその情報を出したがらないとか、いや、出したいとか、実はここもいろいろ分かれています。ですので、非常に技術的ではないところでまだ問題があるので、ブロックチェーンの捉え方というのが、今のところ、まだ完全には定まっていない。非常にはっきりした答えは言えないんですが、今そういうふうに捉えております。
【杉山主査】  新田委員、どうもありがとうございました。
 それでは、挙手されている方もいらっしゃいますので続けていきたいと思いますが、佐藤委員、お願いいたします。
【佐藤委員】  よろしくお願いします。産業技術総合研究所、佐藤でございます。
 先生方のお話、非常に勉強させていただきましたし、まさにそのとおりだと思うお話が多かったと思っております。
 感想になってしまいますけれども、やはり何をするにも手詰まり感というか、この辺を見てもすごい閉塞感を感じるというようなことは、よくいろいろな――いろいろなというのは実は企業さんも含めてですけれども、お話を聞くことが多いです。
 それで、2つのことを申し上げたいと思います。資料2に前回のものをまとめていただいたものがございますが、人材育成についての2ポツとか、その他のところ、3ポツですね、多分、私が発言したことも入っていると思うんですけど、やはりプロジェクト全体を引っ張っていく人材ですね、先ほど委員の先生方、どなたかコメントされたと思うんですけれども、司令塔の役割というのは非常に大事で、その司令塔1人が間違っていたらプロジェクト全体がしぼんでしまうかもしれませんが、そこを1人にするのか2人にするのかは別として、司令塔ですね、自分たちの利益だけではなくて全体、日本あるいは世界全体の中で日本がどうあるべきか、そういったことを見て、ある意味、もう少し2050年、あるいはその先も俯瞰できるような人材を発掘し、ってなかなか難しいんですけれども、また、将来、そういう人材になっていく教育も必要だなということを非常に感じています。それが1つ目、司令塔の大事さですね。
 もう一つは、いいかどうか分からないんですけれども、ALCAの経験から見ていきますと、ものづくり、本当に製品として必要なものに結びつくアカデミアの研究というのはどんなものか、こういうことをしてほしい、具体的な細かいことだけではなくて、こういう観点でこうしてほしいというのは、多分、企業さんはいっぱい持っていると思うんですね。ですから、企業さんは時間もないですし、言えること、言えないこと、あると思うんですけれども、企業が期待するアカデミアの研究スタイルというのも少しまとめて、多分、資料はあると思うんですけれども、聞いてみてもいいのかなとは思いました。
 また、こんなことばかりしていると発散ぎみにはなってしまうんですけれども、そういった発散ぎみの中を、それをおさえながら一つ、今回のこういったことを進めていくのは非常にいいなと思っています。
 よろしくお願いいたします。
【杉山主査】  佐藤委員、大変ありがとうございました。
 それでは、本日まだ発言されていない先生を先に当てさせていただきたいと思います。恐縮です、よろしくお願いします。
 まず菅野委員、お願いできますでしょうか。
【菅野委員】  菅野です。
 今日はどうもありがとうございます。4人の先生方の説明、大変、役に立つお話でした。ありがとうございました。
 3つほど、指摘させていただきたいと思います。
 まず一つは、産業とアカデミアの役割についてです。ものづくりについて、産業と学の役割について、どのように役割分担するかは大変悩ましいところです。佐藤先生のお話もありましたけれども、分担をどのように設定するかが、大変重要なところです。新しいものを共につくって、それが役に立つように、低炭素化に役に立つようにとの目標は一緒ですけれども、どう役割分担して達成するかです。これまでは概して、アカデミアでまいた種をピックアップして産業に移管し、製品にするという流れが考えられていましたが、前回私が報告しましたように、橋渡しをすればそれで終わりではないということを、ここでもう一度、主張したいと思います。橋渡しをした、その時点からが、また出発点であると私は考えています。あくまでもアカデミアの役割はサイエンスであって、それが橋渡しに役立つものであると同時に、橋渡しした後、サイエンスで如何にサポートするかが重要であると考えています。
 2番目、サーキュラーエコノミーに関して、新田先生から、現状、蓄電池は、日本にとって大変まずい状況になりつつあるという指摘がありました。現在のリチウムイオン電池に関しては確かにこのような課題があるということを私も改めて理解しました。
 ALCA-SPRINGで行ってきたような次世代の電池研究については、GteXでも次世代電池のメインの研究課題になると思いますが、このような目で捉え直す必要があると感じています。
 さらに、リサイクルなり、サーキュラーをうまく回すということを逆にメリットにして、特徴をここに求めて蓄電池開発戦略として使うことが、重要であることをより強く感じました。
 リサイクルの内側のループのお話もいただきました。そのループに割って入るような、新しい電池、新しい技術をつくり出すのが、GteXに求められていると感じました。
 3番目、人材育成です。これも言うまでもなく、皆さん重要だと考えていますので、より強く意識して人材育成を行うべきであると感じます。ただ、現在、ドクターに行く学生が減っています。ドクターをどのように育てるか。蓄電池の分野はドクターの学生は産業に何の問題もなく行きますが、ドクターに進学する学生が少ないという課題がありますので、そんなところも解決できればいいなと思います。
 以上です。
【杉山主査】  菅野先生、大変ありがとうございました。
 それでは続きまして、森先生、お願いできますでしょうか。
【森主査代理】  どうもありがとうございます。今日は、非常に興味深いお話を聞かせていただきましてありがとうございます。
 最初に吉元さんが示されましたように、今回はアカデミアと産業をつなぐ位置にGteXがあるということで、諸先生方からも、双方が連携していくことが重要だというご指摘がありました。やはりオールジャパンで、次世代を考えていくことが重要だと言われたのが非常に印象に残っていて、その中で、やはり産業界とアカデミアが一緒にロードマップをつくる、産業界では〇〇という課題がある、学術界では**という問題があって、そのような課題に対して一緒に話し合って、課題を解決しながら夢を語り合うロードマップをつくるような場があってもよいと感じています。例えば電力貯蔵、水素、バイオと分かれたら、それぞれの分野で皆さんがフラットに話し合いロードマップをつくるというような機会があった場合、ぜひ、若い研究者がその話し合いに参加して、未来世界を構築する場はGteXが中心になって行われるのがよいと感じています。GteXのグループだけに閉じるのではなく、広くいろいろな専門の方が集まって、共通課題に関しては合意形成をするようなロードマップを若い方と一緒につくっていくような機会がGteXにあると、次につながるのかなとも思いました。
 以上です。
【杉山主査】  森先生、新しい観点からの御提案、ありがとうございます。非常に重要な論点かと思います。
 水無委員、大分お待たせしてすみません。ぜひよろしくお願いいたします。
【水無委員】  ありがとうございます。NEDOの水無です。
 今提出されている資料5の基本方針・研究開発方針について、少しコメントを差し上げたいと思います。
 書かれている内容は非常に重要なことばかりですけれども、これらを詰めていく上で私が重要かなと思うのが、1つは、PD/POの任務ですね、どのような責任と権限を持たせるのかということが重要だと思います。DARPAタイプのように1人のプロジェクトリーダーに強い権限を持たせるのか、あるいは合議制でいくのか、いろいろな考え方があると思うんですけれども、合議制で推進側、それから合議制でブレーキ側になると、なかなか意思決定ができないケースが多いと思いますので、そこが重要かなと思います。
 それからGI事業で行っているモニタリングですね、伴走している中で感じることが、やはりモニタリングって非常に重要である。それから、やり方についても非常に重要なことがあると思いますので、これはGIの経験も生かしながら、いろいろな御提案ができればなと思っています。
 それから研究開発方針については、これも重要なことばかりですけれども、オープンクローズの戦略についてどこで議論するのかなという点と、それから、具体的な内容について、これはオープンの場で必ずしも議論できないとは思うんですけれども、具体的な内容について、どのようなやり方で詰めていくのかということが少し気になりました。
 それから全体で、今回3つの分野に分かれていますけれども、GXが基本ですので、例えばLCAであるとか、いろいろな評価ですね、それについてどのように扱うのか、GteX以外がやるのか、あるいは連携させるのかということも議論が必要なのかなと思いました。
 以上です。
【杉山主査】  ありがとうございます。いずれも大変重要な論点かと思いますし、また、もし時間が残れば、文部科学省側も含めて、少し議論していきたいなと思っていますが、まずは挙手されている先生方がいらっしゃいますので、先に進めていきたいと思います。
 それでは平本先生、よろしくお願いいたします。
【平本委員】  平本でございます。
 様々な意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。私の専門は半導体です。前回の小委員会でも、半導体の話が少し出ましたけれども、半導体に携わっていて感じることを幾つか申し上げたいと思います。
 まずは、やはり人材育成です。これはとても重要で、司令塔が要るということも全く同感ですけれども、大学だけではなくて、私は企業にはかなりいい人材がいるなと思っています。日本は流動性がないんですね、なかなか動かないということになっています。もっともっと流動性を高めて、アカデミアのほうにも企業の方が入ってくるような、もちろん逆も必要ですけれども、それが起これば人材の問題は、流動化することで人も育ちますし、1つ解決の糸口になるのではないかと思います。
 それから、アカデミアの役割として、サイエンス、橋渡しなど、いろいろな意見がございましたけれども、問題は、企業に大学の技術を持っていくところで、いろいろうまくいかないケースがあることです。コンソーシアムをつくったりしても、なかなかうまくいかないんですね。半導体は過去にコンソーシアムがたくさんあって、全部失敗していると、たまに言われてしまうんですけれども、その原因の一つが、やはり仕組みがよくないということですね。日本は、コンソーシアムでの成果を企業が持ち帰りにくいような仕組みになっています。海外を見ると、例えばimec、ベルギーで有名な半導体のコンソーシアムがあります。あるいはアメリカのAlbanyにはIBMを中心としたものがあります。いずれもその辺りが非常に整理されていて、どの企業もしっかり自分の領域を持って、オープンクローズの戦略がはっきりしていて、それができるということで、安心してコンソーシアムに入っていけます。そういう仕組みづくりが必要だと思います。
 3点目は、研究開発を進める際に、日本で閉じてはいけない、ということです。日本の半導体は自前主義だ、それがいけなかったんだとよく言われます。研究の分野でも、もっともっと海外と連携し、それをいかに生かすかが重要です。それから、日本では、1つの企業あるいは国と連携すると、ほかの国とはうまく付き合えないというケースがよくあります。海外を見ていると全くそんなことはなく、皆さん、全方位外交をやっているんですよね。それは複数の連携をうまく切り分ければよいだけの話で、日本もその辺り、もっとしたたかになって、もっと積極的にいろいろな交流を続けてよいのではないかと思います。
 以上でございます。
【杉山主査】  平本先生、大変ありがとうございました。人材は企業にいるというのは私も非常になるほどと思いまして、要はGteXでもアカデミアが元気になるということが大事だと思うんだけど、その人材は別に今アカデミアにいる人だけには限らないというのはおっしゃるとおりだと思いますので、そういった意味では、このプロジェクトがある意味、企業と大学あるいは研究機関の間の人材流動をさらに促すような触媒になるのが非常に重要な論点かなと、すみません、私の意見を挟んでしまいましたけど、思った次第です。ありがとうございました。
 では続きまして、田畑委員、よろしくお願いいたします。
【田畑委員】  田畑です。
 今日はどうもありがとうございます。いろいろなお話を伺って、私が何を言うべきか、ちょっと迷っていたんですけど、まず、若手育成のことについて多くの先生方が発言されていまして、若手の育成が重要ということですけれども、実際は、育成というより、若手こそが戦力になるんだろうなと思うわけです。それで、ポスドクというよりは、やはり博士課程の学生の段階から何らかの形で参加できるような仕組みをつくることによって、5年先、10年先、20年先の中長期的な人材育成ができるんだろうなと思います。
 また、頭が軟らかい若手の発想を酌み取る機会とか、異分野の若手がブレーンストーミングのようなことを行う機会とか、その結果、若手人材がチームを組んで提案できるような仕組みがあるといいなと思いました。
 それとも関連があるんですが、既にエスタブリッシュされている先生方に加えて、やはり今後の展開が読めないような冒険的な提案をたくさん取り上げて、その中から取捨選択していくような、チャットにもありますような分散投資がやはり望ましい。これは私、前回も申し上げたとおりです。
 それからもう一つ重要なポイントとしては、産業界の関与というのは必須ですが、先ほど申し上げたような先の展開が比較的読みにくいような冒険的な提案にどのような形で企業に乗っていただけるか、その仕組みを考えることもとても重要だろうなと思いました。
 最後に、先ほど指導体制のお話がありましたけれども、リードしていく人材が非常に重要ということで、これは間違いのないところですが、たくさんの領域からできていますので、それぞれの個別の分野に精通しながらもフェアな判断ができる、少数でいいと思うんです、あまり多くない先生方がコアになって全体を引っ張っていくような体制が望ましいのではないかなと思いました。
 以上です。
【杉山主査】  大変貴重な御意見ありがとうございました。いずれも非常に示唆深い御提案だと思います。
 続きまして、それでは五味委員、よろしくお願いいたします。
【五味委員】  どうも、五味でございます。
 今日は、私の知らないことをいろいろ伺って、非常にためになりました。私は田畑委員と水無委員と共に多分バイオ関係だと思うんですけれども、バイオ関係の方で、聞いた話で申し訳ないんですけど、お話し申し上げると、今日お話があった3つの革新的GXのターゲットとして、水素と蓄電池とバイオということでバイオを取り上げていただいて、バイオの関係者としては非常にありがたいんですけれども、私は全部理解しているわけではなくて、間違ったことを言っているかもしれないんですが、水素とか蓄電池というのは、目的として水素をきちんとつくって、それを燃料としてうまく使おう。蓄電池も同じように、蓄電池でエネルギーを何かして使おうということで、ターゲットが絞れているように感じます。だから、そういう技術開発というのは、今日、情報提供していただいた先生方のお話でもターゲットが絞られているんですけど、バイオに関しては、ものづくり、それでものがつくれるとか、非常に幅広くて、水無委員の報告にもありましたように、タンパク質から、食品から、低分子とか、医薬品とか、様々なものがものとしてはできてきます。さらにそれをつくる微生物なり、植物なり、つくる生物も非常に多様ということもありますので、これらのものをどういうふうにしてまとめて、GXの中で、先ほどお話があったように非常にいいアイデアだと思うんですけど、大きなネットワークをつくっていくということは非常にいいんですけれども、生物も出てくる製品も多様という中で、どのようにまとめてあげるかというのは非常に、私としては、まだ自分自身はそんな能力がないので、捉えきれないところがあるので、そこら辺のところをクリアにするのか。または、分散というのは私も非常にいいと思うんですけれども、あまり分散させ過ぎてしまうと、まとまりがつかなくなってしまうのかもしれないという危惧もあるんで、その辺のところをどのようにまとめ上げていくかというのは、私はあまりアイデアがないんですけれども、そういうところを皆さん、JSTさんも含めてお考えいただきたいと思っております。
 また、田畑委員から話もありましたように、ほかの委員の方からもあったと思うんですが、人材育成というのは非常に大事ですので、ぜひここは、当然、これも文部科学省、JSTさんがやっていただくことですので、人材育成をうまくしていただきたいと思います。特にバイオの部分って、やはり工学に比べて、多分、バイオはさらにドクターに行く学生さんが少なくて我々も非常に困っているところで、何か知恵がないか考えているところではあるんですけど、なかなか妙案がないというところもありますので、こういうプロジェクトというのは、バイオの関係で人材育成にも活発していただけるようになっていると非常にありがたいと思っています。以上です。
【杉山主査】  五味委員、大変ありがとうございました。
 ここまでで一通りは御発言いただいているんですけれども、御発表いただいて、その後の御議論をお聞きになって、所先生、何かございましたら承りますが、いかがでしょうか。
【所委員】  改めまして、いろいろな委員の皆様からフィードバックをいただきまして、そのとおりだなと思って見ております。全体を通して議論のあった俯瞰的に全体を見られる、少数でいいから、人間は必要というのは非常に賛同しておりまして、資源循環の分野においても、サプライチェーン全体を理解する、それからアカデミアと企業とのそれぞれの事情をよく理解する、動脈と静脈のそれぞれの事情を理解する、さらには分野を超えて新しい価値を創造するような、文理融合も含めたいろいろなバランスを理解する、そういったことができる人というのは非常に限られるかもしれませんけど、そういった人を俯瞰的な立場で課題設定ができる人間として育てなければいけないというのは賛同させていただきます。また、こういったプロジェクト、事業を通して、そういう人が育っていかなければいけないのではないかなと思います。
 以上です。
【杉山主査】  大変ありがとうございました。
 新田委員は、先ほどの質問に対する回答で少し御発言いただきましたけれども、今までの御議論をお聞きになって、追加で何かございますでしょうか。
【新田委員】  ありがとうございます。
 いろいろな先生方がおっしゃっているとおりで、私もさっきプレゼンをさせていただいたんですけれども、やはり一番の悩みというのは、1つの企業ではできないということですね。
 もう一つは、テクノロジーといいますか、科学技術を使うんですが、恐らく、政治的あるいは経済的、あとはリーダーシップとか、そういうことを含めて、非常に裾野の広い業界になるのではないか。情報も、俗にいうDXとかいろいろ言って、AIなり、マシンラーニングなり、いろいろありますが、それも個別でどうのこうのではなくて、パッケージで、セット論で考えないといけない。そのときに、恐らく相当、根底にある戦略というんですかね、さっき「司令塔」という言葉がありましたが、私もそういう感じはしております。ですが、神様のような方がいらっしゃるかどうか分からないし、でも、たくさんの人と議論すると、また割れて前に進まないとかもあるのかも分からないんですが、1つは、私は賢く進めているなと思うのはやはりヨーロッパで、非常にしたたかだな、中国もそうですが、そういうところをちょっとベンチマークをして、どういうふうにして、ああいう地域、ビジョンは決めていっているのか、その辺りを少し探ってみてもいいのではないかなと私はちょっと思いました。
 以上です。
【杉山主査】  どうもありがとうございます。非常に貴重な御意見をいただいたかと思います。
 いろいろと議論を伺っている中で、今後の研究開発方針に関わる検討事項に直接影響する御意見も非常にいただいたと思っておりまして、先ほどから何回か「司令塔」という言葉が出てきておりまして、やはりこの大きなプロジェクト、産業界との橋渡し、あるいは、渡すだけではなくて、行ったり来たりということが重要だというお話もありましたけれども、やはり、グリーンイノベーション、カーボンニュートラルにつながる大きなイノベーションの流れをつくっていくというところを全体を見据えていく、そういう司令塔機能というのは、やはり、このプロジェクトには必要だろうという御意見で、それから、それと関連したところで、PD/POの体制をどうしていくのかというところも論点で出てくるかと思いまして、こちらは、まさに今日も論点を出していただいた基本方針の中でも考えていかなければいけないことなのかなと、整理させていただきたいと思います。
 それから、御議論の中で、結局のところ、どういう技術分野を想定するのかという議論はいつするんですかという話もありましたけれども、これをまさに次回に向けて、かなり精緻化していかなければいけない状況かなとは思っていますが、なかなか難しいところがあって、今日の御議論にもあったように、産業界の期待が大きい、あるいは先ほども申し上げたような、ある程度、量的な効果が見込まれるテーマあるいは方向性を重視したいという話がある一方で、アカデミアですので、ある程度の分散投資といったこと、あるいは分散投資をしていく中で、横をつないだというか、相互比較をした上で学理の構築といったことも非常に重要であろうというような話が出てきておりますので、この辺りをどうバランスを取っていくか。もちろん、最終的にはJSTさんとの役割分担ということも出てきますので、文部科学省の委員会としては、比較的骨太の大きな方針を引き続き議論していくということになるかとは思いますけれども、次回に向けて、この辺りをより深掘りしていく必要があるのかなと思いました。
 あと、ここは個人的な意見になることを御了承いただきたいのですが、シナリオというか、ロードマップをつくるということを、ぜひ若い人にも参画してもらってやろうではないかという御意見をいただいたんですけれども、これ、私としては非常に重要なことかなと思っていて、どちらかというと業界の今後のトレンドみたいなものは、シニアの人が議論して、若い人はそれに従って、研究応募するときにも、こういうロードマップがあるから、ロードマップに書いてあることを応募したら採択されるのではないか、そう思ってしまう若手が多いのではないかなと思うんですけれども、そこに対して、むしろ、これからの2050年に向けたロードマップを私たちが目利きをしてつくるみたいな、そういう気概のある若い人たちのユニットというものをうまいことこのプロジェクトの中にも一つ併設させていって、それとGteXの中で行える、あるいはその周辺で行われている国際的な状況も含めた技術開発の俯瞰をしながら、そうしたマッピングをしていくような機能があると、とかく日本も、次どこを狙うのかというところが非常に問われるところだと思いますので、そういう人材をつくっていく。そういう意味では、文部科学省関係でもシナリオ作成等を行っていたユニットもあるかと思いますので、そうした資産なんかもうまく使いながら、全体感を議論していくようなアクティビティというのも、技術を掘っていくというアクティビティとヘッジして、あるポートフォリオの下に検討していくというのもあってもいいのかなと、これは個人的な意見ですけれども、思ったところでございます。
 大分既定の時間に近づいておりますけれども、2回目でも結構ですが、最後にごく手短に、今までの議論をお聞きになって、さらに発言されたいという委員の方がいらっしゃいましたら承りますが、いかがでしょうか。
 どうぞ、お願いいたします。
【新田委員】  私は大学にいるわけではないんですが、最近、テレビとかでもZ世代の話が多く出てきて、随分考え方が変わってきていて、環境に対してすごく、むしろ、今の大人といいますか、我々がそうかもしれないんですけど、それに対して対峙するような勢いを出しているのをよくニュースとかで見るんですが、大学の先生方は毎日のように若い人たちと接していて、そういう勢いがあるのかどうか、私はよく分かっていませんが、そうであれば、ちょうどGXの取組の中でやっていければいいのではないかなとちょっと思ったんですけれども、そういう起爆剤になるようなことというのは可能でしょうか。
【杉山主査】  これもぜひ議論していくべきだとは思いますけれども、どちらかというと技術開発側にも寄ってきてしまった大学院生、特にPhDの学生になってくると、だんだんおとなしくなってきてしまうのかなというのは少し個人的には思って、ただし、若い人はもっと議論していいんだよという、そういう風潮、雰囲気は、ぜひこのプロジェクトでも何か出していけないかなというのが、先ほど私も申し上げたとおり、未来を語るといっても、彼らの未来、彼女たちの未来ですから、未来を語るようなアクティビティもこのプロジェクトのどこかに入れておいて、それをもって、より自分事として将来に対する積極的な考え方を出してもらうようなモチベーションづけをしていくというのも、特に、どちらかというといわゆる理系の人たちにそういうマインドセットをより持っていただくような取組も必要なのかなとは思うところです。ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 よろしいですか。
 それでは、ちょうど時間にもなりましたので、ここで総合討議を終了したいと思います。
 ということで、本日予定しました議題は以上となりますので、最後に事務局にお返しいたします。よろしくお願いします。
【吉元(事務局)】  事務局です。活発な議論、ありがとうございました。
 GteXのほうは、ある種、日本がいろいろな構造的な問題を抱える中で、これまでの既存の文部科学省のプロジェクトでは実はちょっと手当てできていなかったとか、かゆいところに全然手が届いていなかったとか、そういったところ、新しいプロジェクトの仕組みというのはどんどん入れていきたいと思っていますので、次回以降、もうちょっと各研究開発領域に絞った議論ということも行われるとは思いますが、文部科学省事業にまさに求めること、今欠けていることをどんどんアドバイスいただければなと思っています。今日いただいた意見も含めて我々で検討を進めますが、論点に応じて、また外部から有識者をお呼びしたり、いろいろ準備を進めたいなと思っています。
 最後に、事務連絡になります。本日の議事録は、後日、事務局よりメールで委員の皆様にお諮りした後、文部科学省のホームページに掲載させていただきます。また、今日は様々御発言いただきましたけれども、このほかに御意見がございましたら、1月27日の金曜日までに事務局までメールにて御連絡ください。
 次回の委員会は、2月14日、火曜日になります。引き続き、活発な御議論のほど、よろしくお願いいたします。
 事務局からは以上です。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 それではこれをもちまして、環境エネルギー科学技術委員会革新的GX技術開発小委員会の第2回会合を閉会いたします。
 本日はどうもありがとうございました。次回もぜひよろしくお願いいたします。
 
―― 了 ――

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研究開発局環境エネルギー課

(研究開発局環境エネルギー課)