革新的GX技術開発小委員会(第1回)議事録

1.日時

令和4年12月20日(火曜日)8時30分~11時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

 1. 議事運営について
 2. グリーン分野に関する政策動向について
 3. GXを取り巻くアカデミア・産業界の研究開発・技術・産業動向等について
 4. 国際動向、技術評価等の視点からの話題提供
 5. GX関連重要領域の動向について話題提供
 6. 総合討論

4.出席者

委員

杉山主査、森主査代理、石内委員、菅野委員、五味委員、佐々木委員、佐藤委員、志満津委員、田中委員、田畑委員、所委員、新田委員、平本委員、本郷委員、本藤委員、水無委員

文部科学省

千原研究開発局長、林研究開発局審議官、轟環境エネルギー課長、吉元環境エネルギー課長補佐、奥ライフサイエンス課長、根橋ライフサイエンス課長補佐、葛谷ライフサイエンス課長補佐 他

オブザーバー

経済産業省、新エネルギー・産業技術総合開発機構、科学技術振興機構 他

5.議事録

【吉元(事務局)】   ただ今より、科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 第11期環境エネルギー科学技術委員会の革新的GX技術開発小委員会の第1回会合を開催いたします。冒頭、進行を務めさせていただきます環境エネルギー課補佐の吉元です。よろしくお願いいたします。
 本日はオンライン会議になります。事前にお送りした進行上のお願いのとおり、発言の際はビデオ、マイクをオンに、発言されていない際はオフにするよう御協力をお願いいたします。御発言をいただく場合は手を挙げるボタンを押していただくか、チャットにてお知らせいただくようお願いいたします。
 また、本日の議題は全て公開議題になり、一般傍聴者の方も入室しております。
 議事に入る前に資料の確認をさせていただきます。議事次第のほうで、資料1-1から資料6-4、それから参考資料を3つ、0から1-1、1-2をつけています。もし不足等がございましたら、チャット等でお知らせください。
 なお、本日、事務局の文部科学省研究会開発局のほか、ライフサイエンス課、経済産業省、新エネルギー産業技術総合開発機構、JST、有識者として近藤科学官、日産自動車 大間主管研究員よりオブザーバー参加がございます。それぞれの紹介は出席者名簿に代えさせていただきます。
 開会に先立ちまして、研究開発局長の千原より一言御挨拶させていただきます。よろしくお願いいたします。
【千原(事務局)】  皆様、おはようございます。文部科学省研究開発局長の千原でございます。
 本日はお忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。また、委員の先生方におかれましては、本小委員会の委員をお引受けいただき厚く御礼を申し上げます。
 本日が第1回目となります本小委員会でございますが、CO2排出削減等の社会課題解決と経済成長の両立を目指す、将来の重要産業のグリーン成長に資する革新的GX技術の推進に関する重要事項について、調査・審議することを目的として設置しております。
 御案内のとおり、2050年までのカーボンニュートラル実現や経済成長を実現するグリーントランスフォーメーション(GX)の重要性はますます大きくなっております。政府といたしましても、重点政策分野として、官民が協力し、重点的な投資と改革を行っていくこととしております。
 カーボンニュートラルの実現には、既存技術の展開、実装だけでなく、非連続的なイノベーションをもたらす革新的技術の創出が不可欠です。こうした認識の下、文部科学省として、アカデミアにおける基盤研究や人材育成の方策についてさらに検討を進め、果敢に政策を打っていかなければならないと考えております。
 文部科学省におきましては、2010年から先端的低炭素化技術開発事業を開始するなど、低炭素社会の実現に向けた研究開発を推進してまいりました。こうした取組を大きく展開していくべく、今般の補正予算におきまして、革新的GX技術の創出に向けたアカデミアを中核としたチームによる大規模な基盤研究を複数年度にわたって弾力的に支援していく新たな基金事業として革新的GX技術創出事業―GteXと言っておりますが、これを立ち上げることとなりました。
 本小委員会では、本事業の基本的な方針策定も御審議いただく予定でございます。大きなGXの流れの中での基盤研究や人材育成の在り方、大型事業の方針等、ぜひ忌憚のない御意見をいただきますようお願いを申し上げます。
 結びになりますけれども、GXへの貢献に向けましては、本日、オブザーバーとして御参加の経済産業省との連携は欠かせません。関係省庁ともより一層緊密に連携をしながら、これらの分野で日本が世界をリードしていく、明確な決意の下、アカデミアを支える文部科学省といたしまして、さらなる取組を進めてまいりたいと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 以上でございます。
【吉元(事務局)】  ありがとうございました。
 引き続きまして、本小委員会の委員を御紹介いたします。資料1-1を御覧ください。
 まず、本委員会の主査は、東京大学の杉山先生に務めていただきます。杉山主査、一言お願いします。
【杉山主査】  主査を仰せつかっております杉山でございます。ぜひよろしくお願いいたします。
【吉元(事務局)】  また、小委員会の主査代理につきましては、東京大学、森委員が指名されております。森先生よろしくお願いします。
【森主査代理】  東京大学の森です。どうぞよろしくお願いいたします。
【吉元(事務局)】  上から五十音順に読み上げますけれども、ビデオのほうをオンにしていただけるとありがたいです。よろしくお願いします。
 まず、石内委員になります。
【石内委員】  石内でございます。よろしくお願いいたします。
【吉元(事務局)】  菅野委員になります。
【菅野委員】  菅野です。よろしくお願いいたします。
【吉元(事務局)】  五味委員お願いします。
【五味委員】  五味です。よろしくお願いいたします。
【吉元(事務局)】  佐々木委員お願いします。
【佐々木委員】  九大の佐々木です。よろしくお願いいたします。
【吉元(事務局)】  佐藤委員お願いします。
【佐藤委員】  産総研の佐藤です。よろしくお願いします。
【吉元(事務局)】  志満津委員お願いします。
【志満津委員】  豊田中央研究所の志満津です。よろしくお願いします。
【吉元(事務局)】  田中委員お願いします。
【田中委員】  田中でございます。よろしくお願いいたします。
【吉元(事務局)】  田畑委員お願いします。
【田畑委員】  田畑です。どうぞよろしくお願いします。
【吉元(事務局)】  所委員お願いします。
【所委員】  所です。よろしくお願いいたします。
【吉元(事務局)】  新田委員お願いします。
【新田委員】  日産自動車、新田です。よろしくお願いします。
【吉元(事務局)】  平本委員お願いします。
【平本委員】  平本です。よろしくお願いします。
【吉元(事務局)】  本郷委員お願いします。
【本郷委員】  本郷でございます。よろしくお願いいたします。
【吉元(事務局)】  本藤委員お願いします。
【本藤委員】  本藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【吉元(事務局)】  水無委員お願いします。
【水無委員】  水無です。よろしくお願いします。
【吉元(事務局)】  以上になります。
 本日は委員16名全員が御出席されていますので、委員会成立となります。
 なお、一部の委員におかれましては、御都合により退席される時間がありますことをあらかじめ御承知おきください。
 事務局からは以上です。
 ここからの進行は杉山主査にお譲りいたします。よろしくお願いします。
【杉山主査】  ありがとうございます。それでは、時間の制約もございますので、早速進めていきたいと思います。
 本日は、議事次第にございますとおり6件の議題を予定しておりますが、委員の皆様からはぜひ忌憚のない御意見を頂戴いただければと思っております。よろしくお願いいたします。
 なお、終了見込みは11時頃を予定しております。

議題1. 議事運営について

【杉山主査】  それでは、議事に入っていきます。
 まず、議題1は本委員会の議事運営についてですので、こちらは事務局よりお願いいたします。
【吉元(事務局)】  事務局です。資料1-2を御覧ください。
 こちらは科学技術・学術審議会の下の委員会になりますので、運営規則を定めてございます。書かれていることは、一般的なことでございまして、基本的には委員会は委員の過半数が出席しなければならないだとか、書面による審議の事項だとか、それから、基本的にはこの会議は公開が原則になっていますので、後日、議事録等をホームページ等に公開させていただきます。
 簡単ですが、以上です。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 事務的なことでございますけれども、特に問題なければ規則どおりで、案のとおり決定したいと思いますが、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。
        (「異議なし」の声あり)
【杉山主査】  では、本件は異議なしということで、決めさせていただきます。
 それでは、本案のとおり進めてまいります。

議題2. GXに向けたグリーン分野に関する政策動向

【杉山主査】  では、次の議題ですけども、議題2で、GXに向けたグリーン分野に関する政策動向についてでございます。こちらは文科省の研究開発局環境エネルギー課の轟課長より説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【轟(事務局)】  環境エネルギー課長の轟でございます。
 それでは、資料に沿って説明させていただきます。GXに向けた研究開発政策についてでございます。
 まず、グリーントランスフォーメーション(GX)という言葉でございますけれども、温室効果ガスの排出量削減を経済成長の阻害要因ではなく、成長の機会と捉え、排出削減と経済成長の両立を目指していくという概念でございます。 
 これまで政府は、2050年のカーボンニュートラル、それから2030年の46%削減というものを国際的にも掲げておりまして、各種の戦略をつくってきております。その中でこのクリーンエネルギー戦略というものを経産省さん中心につくられておりますけれども、その中間整理の中では、GXのイノベーションを創出する重要な要素として研究開発及び人材育成が位置づけられております。その際、企業等における研究開発投資等と連動しつつ、飛躍的に成長を遂げる分野においてその基盤となる大学等の研究開発支援を強化し、両者が緊密な連携・協働を行うということが書かれています。
 左側はIEA(国際エネルギー機関)のものですけれども、これによれば、世界がネットゼロに至るまでのCO2削減要因の割合ですが、既存の技術のみならず、新規技術が同程度に必要とされております。また、右側ですが、これは政投銀の調査でございますけれども、日本企業が脱炭素化に取り組む上での課題認識ということで、技術的問題や開発コストの大きさということを挙げております。つまり、イノベーションの資金提供の拡大による技術開発の促進が非常に重要と捉えられています。
 こちらは諸外国の研究動向です。諸外国では企業の実証研究のみならず、基礎・基盤的な研究開発への投資も加速しているということで、そちらにありますとおり、米国、ドイツ、英国等といった国で、エネルギー関連の基礎研究への投資が数百億円から数千億円規模で行われているという状況でございます。
 そういった状況の中で、文科省の関連政策の全体像ですけれども、GXの実現に向けては、多様なアプローチを文科省は持っています。
 例えば、JSPSの科研費に代表される研究者の独創的で自由な発想を伸ばすためのものとか、JSTや本省直轄でやるような分野ごとの戦略、あるいは基礎・基盤的な研究といったもの、それから産学連携、国際、研究基盤、人材育成といった横断的なものもあるということで、こういったものを総動員して、このGX、カーボンニュートラルに向けて取り組んでいくことが必要と考えております。
 文科省の研究開発ファンディングの現状と課題でございますが、これまで先ほど申し上げたような様々な学術領域における基礎研究力というのは蓄積されてきたところでございます。一方、社会課題解決に結びつけるためには、複数の要素技術や知見のすり合わせを行うことが必要であるということですけれども、こういった観点を意識した基盤的な研究開発支援がこれまで限定的でありまして、特に企業主体の技術開発等と十分に連動しきれていないところが課題でございます。
 このような認識の下、文科省内で、本年の1月から具体的な取組方策等を検討する若手中堅職員による省内ワーキングを立ち上げるとともに、日本のアカデミアが強いところ、強みを持つ技術領域(蓄電池、水素・燃料電池、バイオ等)ごとに抱える課題や支援方策等を深掘りする外部有識者による会議を立ち上げて、議論をしてまいりました。
 これらの検討会における議論では、ファンディングの方向性として3点挙げられております。一つ目が掛け算の統合研究。社会課題解決が前提となる研究開発については、単に要素技術の研究ではなく、複数技術のすり合わせ、エンジニアリングが必然的に必要であると。同時にAIやDXを取り込むことが必要であるといった御指摘。それから、二つ目、アカデミアのトップレベル研究者をつなぐオールジャパン体制が必要。先ほどお示ししましたように諸外国では官民合わせて桁違いの投資が行われている中で、我が国の限られた研究リソースも鑑みると、特にこれまで不十分であったアカデミアの研究開発を抜本的に強化して、オールジャパン体制に取り組むことが必要であるという御指摘。三つ目は幅広い領域における研究シーズの掘り起こしと新技術シーズの創出が重要であるといった御指摘です。
 こういったところをまとめて大学等における技術開発と人材育成がやはり鍵となってきまして、特にその蓄電池、水素・燃料電池、バイオものづくり等というところをまず最初に重要領域として、文科省としてアカデミアへの大胆な公的投資が必要であろうといった総合提言をいただきました。これを受けまして、8月の概算要求を行ったというところでございます。
 概算要求の結果としまして、本年度、令和4年度は補正予算に大型のものがございましたので、そちらのほうで当面5年分の予算として496億円を確保させていただくことができました。
 支援対象期間は大学や国研等、それから、先ほど省内検討会で出てきました、蓄電池、水素・燃料電池、バイオものづくりの3領域を想定して、事業の3年目、5年目等にステージゲート評価を行い、研究テーマの継続・見直し・中止等について厳正に判断し、最長10年程度まで研究ができるといった仕組みでございます。
 下のほうですが、機動的で柔軟な支援により、長期・安定的なマネジメントを確保するために基金化をしております。
 また、文科省による大学等における基盤的研究開発強化・人材育成と、経産省等による企業等の開発力の強化の緊密な連携・協働を図っていくというところでございます。
 このチーム型の先行事例としましては、JSTの次世代蓄電池プロジェクト、ALCA-SPRINGというものを2013年から2022年まで実施してございます。こちらは約40機関、70研究室、170人が全国で参加をしまして、真ん中の雲のところですが、文科省/JST、経産省/NEDO事業が連携する仕組みを構築して、一つの例としまして、世界最高レベルの硫黄系正極による全固体電池をJSTのほうで電池として組み上げて、NEDOさんの事業のほうに橋渡しをさせていただいたと。NEDOさんのほうでさらにその性能を上げていただきまして、2020年代後半には、我が国の自動車会社等で実装していきたいという報道も出ています。そういった研究成果の観点のみならず、産業界への持続的な人材供給というところも実績がございまして、左側の下ですけれども、10年の事業で博士を102人輩出しております。また、企業への就職は640人、うち電池系直接で488人という人材の供給もしています。こういった実績を参考にしまして、今回、新たなGteXという事業で領域を増やして、さらによいものにしてやっていきたいというところでございます。
 経産省と文科省の連携は先ほどお話ししましたが、経産省のNEDOさんのほうは、既にグリーンイノベーション基金というのを始められております。
 経産省/NEDOのGI基金では、主として具体的かつ野心的な2030年目標を設定して、企業等による研究開発を実施され、それに対して、文科省/JSTのGteXは、2050年カーボンニュートラルというゴールからバックキャストしたボトルネック課題を特定の上、大学研究機関等による研究開発をチーム型で行っていくというものでございます。両者連携しまして、合同ワークショップを開催するとともに、GteXで社会的実装に近づいた研究課題はGⅠ基金のほうへ橋渡しをさせていただき、また、逆にGⅠ基金のほうで学術的課題が生じた場合はGteXのほうへ橋渡しをしていただいて、連携してやっていくといった構造で進めていきたいと思っております。
 チーム型のみならず、もうちょっとチャレンジングで、不確実性が高いといったようなものの幅広い新規技術を掘り起こすことも重要であろうということで、こちらは先ほどの補正予算の基金とは別途、GteXとは別に今JSTの運営交付金の中で、当初予算の要求をさせていただいております。こちらは探索型ということでございまして、こちらの先行事例としては、JSTのALCA、未来社会創造事業の低炭素領域というところで、いろいろと取り組んでいますけれども、こちらは新規募集は停止しておりますので、今後、新規を取ろうと思ったら、今要求中のこの探索型のほうでやっていくとを考えています。
 最後ですけれども、本小委員会については、最初の設置趣旨はこれまでお話ししましたので割愛させていただきまして、二つ目の主な審議内容ですけれども、広く革新的GX技術推進に係る事項をまず御議論いただき、それから、特にGteX等の個別の研究開発プロジェクトの実施方針や事業体制等について御審議いただきたいと思っております。
 3.今後のスケジュールですが、本日がGX関連動向を俯瞰し、今後、アカデミアで行うべき研究開発の方向性等について御議論をいただきたいということで、今年度、つまり来年3月までの中では、特にそのGteX基金について、実施方針や研究開発方針を先生方、お忙しいところ大変恐縮でございますけれども、三、四回程度開催させていただければと思っております。
 4月以降ですけれども、今度はGteXに限らず、GXにつながる様々な領域や施策の方向性について御議論いただければと思っております。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。
【杉山主査】  どうもありがとうございました。
 文科省の施策の方向性について、丁寧に説明いただきましたが、質問、承りますけれども、先生方はいかがでしょうか。特にございませんか。
 説明内容としては、非常にクリアだったかと思いますが、よろしいでしょうか。
        (「なし」の声あり)
【杉山主査】  では、後のほうで総合討論の時間もございますので、無理に質問をひねり出す必要もないかなと思います。 次に、進めさせていただければと思います。ありがとうございます。
 では続きまして、経済産業省産業技術環境局エネルギー・環境イノベーション戦略室の金子補佐、それから産業技術環境局カーボンニュートラルプロジェクト推進室の笠井室長より、GXを取り巻く産業政策動向について御説明いただきます。よろしくお願いいたします。
【金子補佐(経済産業省)】  よろしくお願いします。経済産業省エネルギー・環境イノベーション戦略室の金子です。
 まずは私のほうから、GXを取り巻く政策動向ということで、昨今のGXに関する総論的な議論がどのようになっているのかという点について御説明させていただければと思います。
 まず、カーボンニュートラルを巡る動向というところでございますけれども、近年、期限付のカーボンニュートラル、例えば2050年や2060年のカーボンニュートラルを示す国が急増しておりまして、GDP総計は世界の9割を超えているというぐらいの状況になってございます。
 一方で、金融機関や産業界の対応について見ていきますと、金融機関ではESG投資額というのが急増しておりますし、また、企業情報の開示ですね、IRの動向や気候変動に関する情報を入れていくものを義務化する動きも増えてきている状況でございますし、産業界としても、サプライチェーン全体でカーボンニュートラルを目指していく企業が増えている状況でございます。
 すなわち、環境対応の成否自体が企業や国家の競争力に直結する時代になっているという状況でございます。
 そういう中において、諸外国においてはGXへの投資というのが加速しておりまして、例えば、EUであれば10年間に官民協調で約140兆円と言ったり、あるいは直近アメリカですと、インフレ削減法により10年間で50兆円ぐらいをGX関係の分野にというところでございまして、まさに世界でも投資がされている分野というところでございました。
 そういう中、次のページでございますけれども、先ほど文部科学省様のほうからも簡単に御紹介ありましたクリーンエネルギー戦略でございます。
 2050年カーボンニュートラルであるとか、あるいは2030年46%削減といったような目標値というものがこれまでエネルギー基本計画やグリーン成長戦略の中で示したところではありますけれども、こういったものを実現するために将来にわたって安定的で安価なエネルギー供給を確保しながら、いかにそれをさらなる経済成長につなげていけるのかと、そういう方策を検討するためにクリーンエネルギー戦略について検討してまいりました。
 クリーンエネルギー戦略(中間整理)ということで、今年5月にこれを取りまとめました。第1章のエネルギーの安全保障の確保については、エネルギーの観点から前提となる施策や方針を示したものでありますけれども、第2章の中で、産業のグリーントランスフォーメーションや、それを実現するためのエネルギー構造転換、あるいはそういったものを実現していくに当たって必要な政策要素の整理について示したところでございます。
 その政策要素については、必要な投資を加速させるための予算措置であるとか、あるいは予見性を高めるための規制制度的措置、金融パッケージ、あるいはその国内市場の投資誘導を行うためのGXリーグやグローバル戦略といったところを整理するとともに、イノベーション創出・社会実装といったものが一つの要素として非常に重要だというところで検討を示したところでございます。
 こういった、特にその予算措置や制度的措置について検討していくために、総理官邸に「GX実行会議」というものを設置しまして、この中で、日本のエネルギー安定供給の再構築に必要となる方策や、それを前提として、脱炭素に向けた経済・社会、産業構造変革への今後の取組みたいなところをまとめるべく、検討を進めてきました。
 そういう中で、今まさに何を検討しているかというところでいきますと、9ページの下のところに記載のある「成長志向型カーボンプライシング構想」というものでございます。これは、GX経済移行債を活用した規制・支援一体型投資促進策とカーボンプライシングによるGX投資先行インセンティブ、また、新たな金融手法の活用によってこれをさらに後押ししていくというもの。また、アジア等への国際展開戦略や社会全体のGXに必要な要素というものを整理いたしまして、これをもって脱酸素の実現と競争力強化、経済成長を進めていければと考えています。
 では、これは具体的にどういう内容になっているのかというところでございますけども、11ページのほうをお願いいたします。 まさに官民投資を引き出すために、この下の図で言うとオレンジ色とブルーのところですね、二つの面から投資を促進させられればと考えております。
 まず、将来的に排出量取引制度の稼働であるとか、あるいはその炭素に対する賦課金、いわゆるカーボンプライシングでございますけども、そういうGX投資に先行的なインセンティブを与えるのに、投資促進策としてあらかじめカーボンプライシングをどれぐらい導入するのか、いつ頃から導入するのかというのを示しながら、150兆円超と言われる官民のGX投資の実現に対して、まず予見性を与えるというところ。また、そうやって将来に、カーボンプライシングを導入することを踏まえますと、財源としてそういったものが見えてくる部分がございますので、そういったものを活用しながらGX経済移行債を発行いたしまして、規制・支援一体型の先行投資支援を行っていくというところでございます。
 こういう形で投資促進を行いながら、同時に新たな金融手法、サステナブルファイナンスやブレンデッド・ファイナンスといったものを活用しながら、GX投資を前倒しで取り組むインセンティブを後押しさせていければというところでございまして、これはちょうど今、検討していますけども、今年中にこの大きな方針というものを取りまとめたいと考えています。
 すみません、ざっとになりますけれども、私のほうからの説明は終了とさせていただきます。
【笠井室長(経済産業省)】  続きまして、カーボンニュートラルプロジェクト推進室のほうから、グリーンイノベーション基金事業について御説明できればと思います。 
 このグリーンイノベーション基金については、一昨年2020年になりますけれども、2050年のカーボンニュートラルを政府方針として打ち出すに当たって、それは従来の政府方針を大幅に前倒すというものになりますので、それをしっかりと支援するという意味で、エネルギー・産業部門の構造転換や、大胆な投資によるイノベーションを起こすためにつくったものになります。
 これはNEDOに2兆円の基金を造成しまして、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業に対して、10年間、研究開発・実証から社会実装までを継続的に支援するという事業になってございます。
 特徴は、下の三つの丸の中にあります。
 一つ目は、過去にない規模の基金で、長期間に継続的な支援ができるということ。
 それから、二つ目は、グリーン成長戦略というものを2020年で取りまとめまして、これと連動した野心的かつ具体的な2030年の目標というものを設定しました。それに向かって取り組む企業をサポートしたいということでございます。
 それから、特徴の三つ目は、企業経営者に対して経営課題としての取組。つまり、その研究事業部門の技術開発の取組ということではなくて、全社の将来に向けた成長のための取組ということで取り組んでいただきたいということで、企業経営者に対してはそういう取組としてのコミットメントを求める仕掛けを入れたというのが大きな特徴になっています。
  これはグリーンイノベーション基金の基本方針ということになります。ちょっと細かいので、説明については割愛させていただきたいと思います。
 しっかりと事業運営に関する方針というものをまとめまして、これに基づいて今事業を推進しています。
 右下3ページですけれども、この基金の造成に先立ちまして、このグリーン成長戦略というのを政府としてまとめています。これは2020年12月に1回取りまとめまして、その後2021年、昨年の6月に中身を拡充して、今、この形になったというものです。この中に重要14分野というものを設定しまして、この14分野を対象にこの基金で事業を支援していくということになります。この中でも特に長期に継続的支援が必要な技術分野というものをしっかりと選定しまして、サポートを進めている状況でございます。
 4ページですけれども、このグリーンイノベーション基金事業の実施体制ということで、これはかなりしっかりとしたガバナンスの仕組みというのをつくって今事業を推進しているということになります。
 一番の上のレイヤーですけれども、ここは我々の産業構造審議会という審議会に、グリーンイノベーションプロジェクト部会という会合をつくりまして、さらにその下に分野別のワーキンググループを三つ設けて、今議論を進めています。
 左側の部会のほうは、先ほどを御覧いただきましたこの基本方針、基金運営の全体に当たっての方針を取りまとめいただいておりまして、それから分野別の資金配分方針ということで、この2兆円をどういった技術分野に投資をしていくのかといったところを御議論いただいているということになります。
 その方向性に基づきまして、右側の分野別のワーキンググループというところで個別のプロジェクトの技術開発、研究開発、それからそれをどういうふうに社会実装していくかという計画についての審議をしていただいているということです。あわせまして、実際に企業の採択が進みまして、研究開発が進む段階に当たっては、その個々の企業の取組についてこのワーキンググループに各社の経営者をお招きしまして、取組状況についても説明をしていただき、そこでモニタリングをするという取組を現在進めています。
 それから下のレイヤーですけれども、左側の産業技術環境局が私のところになりまして、その右側にあります経済産業省及び関係省庁のプロジェクト担当課室となっているところは、各プロジェクトの研究開発・社会実装計画ということで、まさにどういう技術開発をどのレベルで、それからいつまでに、どのように達成していくのかと、さらにそれをどのように社会実装につなげていくのかという計画を担当課室のほうでつくってもらっています。
 これをつくるに当たっては、外部の有識者の方、それからNEDOであるとか、当然そういったところと意見交換もした上で、ドラフトをしまして、実際にこのワーキンググループに提出をして議論をしていただくという形を取って、決して役所の中の閉じた方向性ということではなくて、様々な御意見を踏まえた形での技術開発の方向性、社会実装の方向性というのを定めていると、このような進め方をしております。
 その定まった計画を基にNEDOのほうで公募し、実施企業の選定をするというプロセスを経ているところであります。
 5ページはこの部会のほうです。親会合のほうの会議のメンバーということでございます。御参考までに御覧いただければと思います。
 続きまして、6ページです。この基金の特徴的な取組を紹介できればと思います。
 一つ目は、基金事業おける成果最大化に向けた仕組みについて、取組状況が不十分な場合には、この事業を中止して一部返還をお願いするという仕組みを入れたということになります。極めて簡単な例で申し上げますと、この10年間で、100億円でプロジェクトを進めようといったときに、仮に4年目において、応募の際に経営者の方に示していただいたコミットメントをしっかりと果たしてないのではないかということがこの先ほど御紹介したワーキンググループの中で御指摘がありましたら、これに1回目のイエローカードを出すと。イエローカード出した上で次の年にこの取組に対する改善が進んでなければ、場合によってはこの事業を中止した上で、一部返還、お支払いをしたお金の返還を求めるということもありますよと、こういう仕掛けを入れたということでございます。
 次に、7ページですけれども、併せまして、インセンティブ的な措置も入れようということでありまして、これを極めて簡単に申し上げますと、一番右側のところ、この研究開発、技術開発の事業を進めまして、その出た成果を用いて、社会実装に向けて取組をさらに進めるということをしっかりと表明していただけた場合については、一部上乗せをして最後にお金を支払いして、取組をサポートしようというインセンティブ的な措置も入れたということでございます。
 8ページですけれども、基金における各主体の役割ということで、先ほど御紹介しました審議会の部会、ワーキンググループ、それから事務局から産業技術環境局、それからプロジェクトのオーナーシップを持っている担当課室、それからその実施を担うNEDOと、こういう各主体のそれぞれの役割分担で進めているところですけれども、左側から基本方針の策定をし、その後プロジェクトの組成をするという段階、それから、さらにプロジェクトの実施ということで、公募を経た形での企業の選定、それからプロジェクトの評価という流れで進めてきていまして、今このプロジェクトの評価というところの取組状況のモニタリングというのを順次進めています。
 ここについては、経営者の方にはこの我々のワーキンググループのほうに来ていただきまして、より専門的な技術面、それから事業面については、NEDOの中にある委員会のほうに、担当の方に来ていただいて、それで説明をしていただくということで役割分担をしながら進めています。
 9ページにつきましては、分野別ワーキンググループの設置ということですので、これは御参考までに御覧いただければと思います。
 それから、この後の3ページはこのワーキンググループの各メンバー、委員の方々を御紹介しております。これも後ほど御覧いただければと思います。
 それから、13ページのところですけれども、これまでに事業を実施中もしくは今後想定しているプロジェクトということで、今現在19個までプロジェクトをラインナップしております。
 まだ一部中身が決まっていないもの、それから、今、公募の期間中、公募期間が終わって選定中のものもございますけども、19個ということで、それぞれ進めてございます。こちらもよろしければ後ほど御覧いただければと思います。
 最後に、進捗状況ということで今申し上げましたとおり、この19のプロジェクトについて、審議会での議論を経まして、それぞれどういった金額の予算を張りつけしていくかということ。それから今の公募採択の進捗状況というのを一覧にしております。
 これらを踏まえまして、今、既に2兆円のうち1兆8,000億強については、使途として定めたプロジェクトというのが固まっておりまして、今回、補正予算の中でも3,000億円ほど追加での予算を確保することができたということで、この取組をさらに深めていきたいという状況でございます。
 私から以上でございます。
【杉山主査】  どうも丁寧な説明ありがとうございました。
  それでは、今までの御説明に関しまして、何か御質問等ございましたら承りますが、いかがでしょうか。特にございませんか。
        (「なし」の声あり)
【杉山主査】  では、こちらの施策について明確に御説明いただいたと思いますので、少し時間は巻き気味で幸い来ていますが、できるだけ最後の討議の時間を丁寧に取るように進めていきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
        (「異議なし」の声あり)
【杉山主査】  それでは、どうもありがとうございました。次の議題に進んでまいりたいと思います。

議題3. GXを取り巻くアカデミア・産業界の研究開発・技術・産業動向等について

【杉山主査】  次は、今度は議題3になりますが、GXを取り巻くアカデミア、産業界の研究開発、技術産業動向等についての発表でございます。
 まずは、科学技術振興機構(JST)の研究開発戦略センター(CRDS)の中村ユニットリーダーより御説明をよろしくお願いいたします。
【中村ユニットリーダー(科学技術振興機構)】  中村です。よろしくお願いいたします。
  今回、事務局のほうからいただきました三つのトピックスについて御紹介させていただきます。
 一つ目は、国内外のエネルギー分野の研究開発動向についてです。こちらは今現在、私どものほうで取りまとめ中の研究開発の俯瞰報告書の中から少しエッセンスを抜き出したものでございます。まだ今現在進行形で、取りまとめ中ですので、エッセンスとなりますところを御承知おきください。
 例えば、この分野動向としては、火力発電ですと水素、アンモニアへの燃料転換に向けた研究開発が進んでいることや、太陽光発電に関して国内においては未利用場所への展開あるいは薄膜型の開発が精力的に進められているといったことが書かれております。
 風力発電に関しては世界で大型化が進んでおりますが、需要が増加する中で、欧州では水素製造の一つのものとしてこちらを位置づけているという動きもあります。
 バイオマスの発電や利用に関しては、国内においては資源不足で輸入依存という状況ではありますが、研究開発としては微細藻類による燃料のみならず、高付加価値品との併産という形で研究開発が行われているといったこともございます。
 水力においては揚水発電が蓄エネの一つの機能として重要視されているところもございました。
 地熱に関しては資源量増大のための地下資源探査の研究開発というのが活発です。
 太陽熱の発電や利用に関しましては、こちらは熱に変換してためるというような、いわゆるカルノーバッテリーというものが最近注目されているということがございました。
 蓄エネルギーは、主には蓄電池などの動向でございます。蓄電の目的は多様化しているということで、マルチユースを念頭に置いた検討が進められているということと、また先ほどもございましたが、熱として蓄えるという検討が進んでいる状況がございます。
 CCS(CO2の回収・貯留)に関しては、CO2の分離回収の技術開発が国内外で活発でした。
 水素・アンモニアに関連する研究としては、水電解に関する開発が活発であるというところは、国内、海外でもそうであるというところでございました。
 CCU(CO2の回収・利用)は、ターゲットとして、メタンやメタノール、合成燃料などを中心とした研究開発が活発であるというところでございます。
 産業熱利用においては、潜熱蓄熱材カプセルの開発などが行われています。
 地域・建物のエネルギー利用という観点においては、世界的にはZEBが成長しているという中で、地域のレジリエンス向上のための研究開発というのが活発であるということが見えてまいりました。
 カーボンニュートラル実現において、ネガティブエミッション技術は不可欠という位置づけになってきていますが、これをどう社会に実装していくかという中で、そのポテンシャルの正しい評価法や制度の設計などに関する検討が技術的な開発と並行して進んでいるということでございました。
 エネルギーマネジメントシステム・消費者行動に関しましては、自然災害の頻発を背景としたマイクログリッドへの関心の高まり、いわゆるレジリエンス強化という観点での再注目というところがございます。
 また、スマートメーター等からデータが蓄積されつつあるということに対して、その解析も進められているというところです。
 エネルギーシステム評価に関しては、時間的・空間的に解像度の高い電力システムのモデリングなどが研究としては活発であるということと、人間の行動に関しての知見を活用しようという動きがあると。
 あと基盤的な技術としては、先ほどの燃焼に関連するところでは、水素燃焼エンジン開発の加速などがあると。あるいは新たなCN(カーボンニュートラル)燃料に対する排ガス対策などの検討が行われています。
 トライボロジーは風力発電などにおいては非常に重要になってくるところだと思いますが、オペランド観察や計算科学を取り入れた研究が活発です。
 破壊力学においては、積層造形材料、あるいは異材料界面の研究というのが、マルチスケール・マルチフィジックスの手法を取り入れながら進められているというような状況がございました。
 以降は、主要国の研究開発、特に基礎研究に対する動きということで、取り上げさせていただいています。
 米国について、一つ目の予算のところについては、これはDOE(エネルギー省)が予算要求上、示している資料によれば、基礎・応用・開発は、およそ1対1対1ぐらいの割合で、言ってみれば基礎研究は全体の3分の1ぐらいを占めていますが、これは予算上の整理ということで、いろいろな技術局において基礎研究を含むプログラムが進んでいるというのが実態だと考えています。
 その中で、特に基礎研究フェーズを担当するのは科学局というところですが、この2023年度の予算要求においてハイライトを三つ挙げておりました。
 そのうち一つ目は、Energy Earthshots Initiative、これはDOEの今非常に大きなイニシアチブですが、これをほかの技術局と共同で推進していくということについて言っています。
 もう一つは、エマーシング技術のイノベーション加速ということで、基礎的な研究成果をいかにその社会実装につなげていくかという部分に力を入れるんだということで、右下にございますが、超学際的なチーム活動を支援するという位置づけで、新たな準備をしているというところがございました。
 インフラ投資法などに基づく中でも、クリーンエネルギー技術の研究開発などは、予算が充てられておりますが、地域水素ハブプログラムなど地域での実際の実証などを推進していくというものもこの中に含まれておりました。
 DOEはNSF――NSFは日本で言うところのJSTやJSPSと非常に近しい組織になりますが、そういったところとの連携を強化すると。特に、現時点で想定されている領域としては、こちらにお示ししたような内容が想定されていると言われておりました。
 実際にどういった形で連携するかは、これからのお話というところかと思います。
 あとは、大統領府としては、常に一つ先――2024年度の研究開発優先項目というのを毎年挙げていますが、ここ数年は気候変動の取組を優先事項の一つに必ずやっています。
 この中で注目すべきは、クリーンエネルギー・気候技術もそうですし、気候変動への適応やレジリエンス、あるいは自然に基づく気候の解決策といった自然資本を重視するような動きもあるというところは見逃せないところだと考えております。
 次をお願いいたします。
 EUはアメリカと比べると少し基礎研究の部分を数字ですとか明示的に見い出しにくいんですが、その一つは、Horizon Europeというこの研究イノベーションの7年間の枠組みの中で、今はミッション志向型研究開発を推進するということを掲げています。
 ミッションからのバックキャストで、必要な研究開発ですとか、制度、あらゆる政策を総動員するというようなパッケージを考えているという中ですので、基礎研究はその中に非常に重要な要素として含まれていると考えられます。
 ミッションは気候変動への適応ですとか、気候中立・スマートシティなどが掲げられています。
 昨今のウクライナ情勢などを踏まえて、EUとしては政策優先事項、これまでグリーン化とデジタル移行が非常に強調されてきましたが、それ加えて、この開かれた戦略的自立性の確保と呼ばれているものも、非常に重要視するようになってきたと言われております。
 御案内のとおりREPowerEUという政策パッケージが出されて、その中において、水素に関する研究開発が支援される形になっておりました。
 ドイツは第7次エネルギー研究プログラムというのに基づいて、連邦政府のエネルギー関連の研究が推進されています。こちらの資料によると基礎研究が占める割合というのは大体9%から10%程度で年々推移していましたが、2021年、最新のものについては、15%に増加していました。その中身としては、セクターカップリング・水素という項目に関する基礎研究が大幅増額していたと。右側の図の真ん中ぐらいでしょうか、濃い青のところがありますが、非常に多くの基礎研究予算がここに充てられていました。
 従来の水素関連予算としては、製造ですとか貯蔵・輸送、燃料電池、システムアプローチ、Power-to-Xプロジェクトなど、あとはもう一つ基礎研究としてセクターカップリングと水素というのが充てられていたわけですが、この基礎研究部分の費用を増額させていました。
 加えて水素フラッグシッププロジェクトというのを、国家水素戦略を受けて、新たにさらに立ち上げています。こちらにお示ししたようなプロジェクトがこれから進められていくという状況です。
 なお、このドイツにおいては、連邦政府に加えて、州政府も非常に研究開発投資を行っていまして、連邦政府のおよそ3分の1から5分の1に相当する額をそちらからも充てられています。
 次の国は中国になりますが、中国は御案内のとおり、先日、第14次5か年計画が出まして、それに基づいて、国の大きい全体方針は進められています。
 その中で基礎研究投資増大方針というのは、引き続き提示されていました。研究開発投資全体の8%以上というのを目標として掲げております。加えて、それは民間からの研究開発投資の促進ですとか、人材育成の支援強化とセットで掲げているという状況です。
 最近のトピックスとして、このカーボンピークアウトとカーボンニュートラルを支える科学技術実施計画というのが公表されました。
 習近平国家主席による国連での2060年カーボンニュートラルを目指すといったような発言を受けて、国内でいろいろ方針が制定されている中の一つ、科学技術に関連するものがこちらです。
 実施手段――政策的な手段としては、ここの国家自然科学基金(NSFC)ですとか、国家科学技術重大プロジェクト、あるいは国家重点研究開発計画というものを使って、そのエネルギー分野への研究開発投資を行っている状況です。 
 こちらのスライドが先ほど申し上げた今年の8月に出された科学技術実施計画の概要となってございます。
 例えばこちらで言いますと1番、2番、あるいは、4番、5番といったところが研究開発に関連する項目、それ以外ですと、地域のゼロカーボンをどう進めるか、あるいは政策立案等のプロセスをどう変えていくか、あるいは人材育成をどうしていくかというものがそのほかの項目で挙げられているといった状況です。
  最後三つ目のトピックスはJSTにおける環境エネルギー分野関連のプログラム例を挙げるというところですが、こちらは非常に広い意味で関連するものということで挙げています。
 ただ、先ほども御紹介ありました未来社会創造事業や、低炭素社会実現のための社会シナリオ研究事業などは、まさに低炭素などを意図した事業になってございますが、それ以外については、多くのテーマの中の一部として、環境エネルギー関連のものも取り上げています。
 以上になります。
【杉山主査】  どうもありがとうございます。
 そうしましたら、今度はNEDOになりますけれども、新エネルギー・産業技術総合研究開発機構のグリーンイノベーション基金事業統括室の梅原室長から御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【梅原室長(新エネルギー・産業技術総合研究開発機構)】  NEDOの梅原でございます。
 NEDOのほうからは、既存のグリーンイノベーション基金事業に関しましての概要ということで御説明をさせていただきます。
 資料3-2を御覧ください。
 表紙をめくっていただきまして、まずプロジェクトが19個並んでいます。
 NEDOの役割といたしましては、先ほど経産省の笠井室長から御説明ありましたが、経産省のがグリーンイノべーション基金の基本方針、それからプロジェクトの基本計画になるものを作成しまして、プロジェクトマネジメントということで実際に執行していくのがNEDOの役割ということになっております。
 10年間という非常に長いプロジェクトということになってございますので、NEDO自身も、モニタリングというもの、特に技術動向でありますとか、市場動向、それから昨今の社会情勢というものを踏まえながら、しっかりとモニタリングして、技術開発、進捗管理、それから進めるといったところを役割として担っています。
 プロジェクトが19個あるということをお話しさせていただきましたけども、大きく三つの分野に分かれています。
 一つ目はグリーン電力の普及促進分野でございまして、洋上風力、それから次世代型太陽電池の開発を行っています。
 次の分野は、エネルギー構造転換分野、真ん中の青い線のところですが、後ほど少し詳しく話しますけれども、水素分野ということで、水素サプライチェーン、それから水素を作るというところで、水電解による水素製造というものが二つ目、それと、真ん中のほうに行きますけども、製鉄プロセス、特に鉄の分野、製造分野では結構なCO2排出量となってございますので、石炭、コークスを極力減らしていって、最終的には水素還元鉄といったものを研究開発しています。
 それから、真ん中の段の一番右になりますけれども、燃料アンモニアです。現状は肥料での活用が進められているアンモニアですけれども、水素キャリアということもございますし、アンモニアを利用して、特に火力の混焼や専焼といったものを研究開発しています。
 一番下段に行っていただきまして、左側から行きますと、ここはCCUというところになりますが、CO2を利用しまして、プラスチックの製造をやるもの、それからその右ということになりますと、燃料というところで、SAFの研究開発、それから、さらにその右ですけども、コンクリートです。コンクリートが固まる際にCO2を吸収して固定化するという性質がございますので、CO2の固定量を増やすというもの。それから、コンクリートの原料になっているセメントの製造においてもCO2を排出しますが、これをキャプチャーする技術。それから、一番右のほうに行きますとCO2の分離回収になります。先ほどCCUという話をしましたが、これの基盤となる研究ということで、CO2の分離に関しては特に今の火力、CO2の濃度20%よりもう少し低い10%前後でも回収できる技術をこの中で開発しています。
 1枚めくっていただきまして、三つ目の産業構造転換分野でございます。
 まず、一つ目は次世代蓄電池・次世代モーターの開発ということで、特にEVの開発をしています。
 それからその右は、特に自動車分野、将来的な自動運転等を含めたセンサリングが重要となってきます。こういったところで、特にそのセンサーのところでありますとか、そういったものの技術開発を進めています。
 それから、その右に行きますとスマートモビリティーということでございまして、特にエネマネというものを意識しながらスマートモビリティーをどうやっていくかという開発をしております。
 それから、さらに一番右は、デジタルインフラということで、パワー半導体の開発や、あとはデータセンター、省エネというところで、光電気変換の技術といったものをこの中で研究開発をしています。
 下段に行っていただきますと、次世代航空機ということでございます。航空機分野は特に民間での協定というところで、ICAOで50%削減という目標を立てられておりますので、水素航空機の開発をここでしています。
 それから、その右でございますが、次世代船舶ということで、特に油からの転換ということでアンモニア、水素を利用した船のエンジンの開発をやっています。こちらのほうは、国土交通省とNEDOで協力しながら開発しています。
 さらに、右でございますが、食糧・農林水産業ということでございます。日本で言うと農林水産業の排出量は4%程度ということですけども、世界で見ると4分の1ぐらいが食糧・農林水産業で排出されております。
 その一方で、CO2の固定先というところで考えてもかなりのポテンシャルがあるということでございますので、農業分野、林業、それからブルーカーボンといった開発をこの中で進めております。
 最後でございますが、バイオものづくりのということでございまして、バイオの機能、特にエネルギーを最小限にして、いろんなものを作り出すと、バイオ機能を使ったものづくりというものについてプロジェクトを実施しています。
 めくっていただきますと、幾つかトピックス的にということでしたので、水素、蓄電池、バイオについて、少し詳しめの資料を載せています。
 4ページ目、大規模水素サプライチェーンの構築でございます。この分野は特にサプライチェーンと需要の創出ということでございまして、現状、国際的に見ても社会情勢を見て、水素市場というのがかなり期待されてきています。技術的に見たときには日本のコンテンツとして水素を使うというところ、運ぶというところの技術はかなり先行していますので、こういったものを技術的にさらに社会実装というものにつなげていくものを目標としております。
 下のほうに書いてございますが、目標のほうも供給コストを2030年には30円/Nm3、2050年には20円/Nm3以下ということで、原油の化石燃料と同等以下にすることを目指しています。
 5ページ目、事業体制ということで既に始まってございます。企業が中心となって、サプライチェーンのほう、それから水素の発電ということで、ここで示した事業者が入っています。
 6ページ目、今度は水素を作るというところでございます。
 作るほうでございますが、欧州勢がかなり先行してきています。というのも、再エネがかなり余剰にあって、安くあるところが、その背景にあるということもございますし、特に最近では大型化プラントを目指している施策というのも大きく出てきておりまして、そういったところに適用できるようなものを作り込もうということで、今回、このプロジェクトの中では、大型化・モジュール化というものを要素研究として実施していくということでございます。
 この目標においても、装置コストというものを最大6分の1程度までを目指すという目標でございます。
 7ページ目を御覧いただきますと、実施会社を書いております。
 テーマ2のところでございますけども、性能評価ということで、産総研が入っております。先ほど社会実装、市場を目指すというところで、技術開発以外のところの重要分野として、標準化的なものとルールをどう形成していくか、ほかの競合する他社との差を生み出していくことが重要ですので、こういった性能評価技術も含めたプロジェクトということで、これは水素に限った話ではありませんので、先ほどお話しさせていただいた19個のプロジェクトの中でも、こういった標準というものを意識しながらも技術開発をしております。
 続いて、8ページ目、蓄電池でございます。蓄電池のほうは、先ほどALCAプロジェクトの動向で御紹介もありましたけれども、そういったものをベースに置きながら開発を進めています。特に社会実装という視点で見たときには、蓄電池においては希少資源を多用しているということになりますので、こういったものをいかに極力減らしていくか、それからリサイクルというものが最近では話が出てきております。こういった燃料、それから資源、リサイクルといったものをどういった形で、社会像も含みながら、社会実装に近づけていくというのが今回のプロジェクトの目的になっております。
 めくっていただきますと、蓄電池の開発、それからリサイクル、それからモーターについて、事業体制を示しております。
 10ページ目は、バイオものづくり技術でございます。
 こちらは現在公募を行っておりまして、審査中となっております。
 バイオものづくり、要するにバイオの機能を使いながらCO2を原料にして、バイオものづくりをしていこうということになっています。特に微生物の機能を利用したものということでございます。
 事業者はこれから決定になりますけども、目標もかなり野心的なものということでして、開発期間を10分の1に短縮するような技術や、あと製造技術そのものを今、代替していくような製品のコストを1.2倍以下に低減するという目標を置いた上で、今、事業者を選定しています。
 以上がNEDOのほうからのグリーンイノメーション基金事業に関する概要についての御説明となります。ありがとうございます。
【杉山主査】  ありがとうございました。
 それでは、今までの2件の内容につきまして、御質問等ございましたらよろしくお願いします。
 なお、経産省さんとNEDOさんはこの後、御退席されるということですので、今までの質問に遡っていただいても結構ですけれども、経産省、NEDO関係の御質問がまとめてございましたらよろしくお願いいたします。
 では、本藤委員よろしくお願いします。
【本藤委員】  横浜国大の本藤でございます。
 CRDSさんの資料3-1をちょっと拝見できますでしょうか。資料3-1のスライド3をお願いしたいのですが、ありがとうございます。
 諸外国の研究開発投資状況は非常に参考になりました。この中で二つ目のHorizon Europeというのがございます。お話の中で、ミッションを設定して、バックキャスティングによって推進すべき研究開発テーマを設定するというお話があったかと思います。もしお分かりになりました2点ほど教えていただきたいと思っております。
 1点目は、これはあくまで基礎・基盤研究の設定に関するものなのか、それとも応用開発に関する研究の設定の仕方なのか、どういう種類の研究開発に対してこのような方法を取っているのかということです。
 2点目は、実際に設定するとき、どのようにバックキャスティングしているのか、研究テーマの設定プロセスのようなものをもう少しお分かりになれば教えていただきたいと思うのですが、よろしいでしょうか。
【中村ユニットリーダー(科学技術振興機構)】  御質問ありがとうございました。よろしいでしょうか、JST中村です。
【本藤委員】  よろしくお願いします。
【中村ユニットリーダー(科学技術振興機構)】  Horizon Europeは、研究イノベーション枠組みと呼ばれるもので、EUをフィールドに、どうイノベーションを実現するかということから発想していますので、研究開発に加えて、制度面での改良なども含めたパッケージをデザインしていくというようなアプローチになってございます。ですので、基礎・基盤的な研究あるいは応用的な研究のみならずというのが、このミッション志向型研究開発の視野の範囲に入ってきています。
 二つ目の御質問のどういうプロセスでということに関しましては、非常に何年も、数年にわたって、こちらは議論を積み重ねて、ミッションはたしか五つあるんですが、それが何に定まるかというのも、かなり複数年にわたって、ずっと検討がされていて、集約されていっています。
 その中で、実際どういう研究課題をやるかということについては、一部は公募での研究になっているところもございますので、大枠としてのターゲットが決められていると理解しています。
 例えば、お示しした気候変動の適応もございますが、二つ目は100のスマートシティを実現するというようなミッションですので、かなり具体的にどこの都市を選定するみたいな、そういう発想のミッションになっているかなと思っています。かなりミッションごとに、その中身というのが見え方は大分変わっています。ほかのミッションとしては、海洋などもありますが、そちらは非常にバラエティーに富むような構成になっていたりします。
【本藤委員】  ありがとうございました。
 社会的ミッションからバックキャストして、研究開発テーマを設定するというのは、多分この小委員会でも議論する大きなポイントになるかなと思いますので、また、ぜひいろいろと情報提供をしていただければと思います。どうもありがとうございました。
【杉山主査】  本藤先生、御指摘、御意見ありがとうございました。
 続いて、本郷先生よろしくお願いします。
【本郷委員】  御説明ありがとうございました。
 私はどちらかというと、ご説明頂いた政策のバックグラウンドといいますか、考え方について2点質問があります。
 一つ目は、技術において、いろんな競争があると思うんですよね。同じ目的に対して、異なる技術アプローチをする場合もありますし、また、同じ技術アプローチに対して、異なる企業が研究開発しているような場合もあります。こういうところで、一種の競争条件をつくるということで効率的にできるという面と、資源を集中的に配分するほうがいいという面と、考え方は両方あると思います。競争的な環境を作りだすということについて、どういうふうに考えていらっしゃるのか、教えていただきたいという点が一つ目です。
 二つ目は、今まで出てきた例を見ますと全て日本の企業の名前が入っています。だけど、海外の企業との協力というのは必要ないのだろうか。比較をするときにアメリカ、EU、中国と並べて出てきましたけれども、今や経済規模の点からいくと日本は、そうした三つのエリアに比べて半分以下です。ですので、そうした比較対象にした3つの地域と同じことをやるというのはなかなか難しいのではないかとも思います。海外の企業との協力、あるいは研究機関との協力というのはどういうふうに考えるべきか。あるいは一方で、安全保障上の問題というのも出てきていると思うので、安全保障上の問題を考えながら海外との協力どういうふうに進めていくのか。海外との関係について、政府の政策といいますか、方針について教えていただければなと思いました。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 それでは、経産省から何かコメントいただけますでしょうか。経産省いかがでしょうか。
【金子補佐(経済産業省)】  経済産業省エネルギー・環境イノベーション戦略室の金子でございます。
今おっしゃっていただいたところの競争に関する部分についてでありますけれども、やはりここはある程度、経産省がやっていく世界では少なくとも競争領域中心になってくる部分もありますので、そういうところは競争させていかないといけない、あるいは、その中でも特に評価が高いもののみに支援を集中していく形になるのかなと考えております。
 また、他方で、その基盤的な部分については協力してやっていく部分もありますので、そういう意味では、産総研さんや、そういうアカデミアみたいなところを中心にしながら取組を行っていくというところで、グリーンイノベーション基金でもそういう類型のものもあったりするところなのかなと考えております。
 あとは、海外企業との協力という部分については、うまくその海外のリソースも活用しながらというところは間違いなくあると思っておりまして、特にヨーロッパやアメリカなどとは、イノベーション協力も行いながら、グローバルに貢献していければと考えています。
【杉山主査】  本郷先生、よろしいでしょうか。
【本郷委員】  ありがとうございました。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 引き続きまして、田中先生お願いします。
【田中委員】  田中でございます。ありがとうございます。
 先ほどの本藤先生の質問で、もう少しお聞きできればと思ったのですが、CRDSさんの3ページで、Horizon Europeの件が指摘されていたと思います。やはり学会などに行くと、Horizon Europeでどういうミッションをやっているので、この研究を始めていますとか、モチベーションのところで結構これは使われているなと感じています。ここはもう日本は研究開発から応用まで結構リレーでお渡ししながらきれいに流していくというスタイルだと思いますが、このHorizon Europeを日本的に考えるとすると、基礎研究とか研究のほうからミッション志向型にするというのは、何かしら取り入れることは可能なのでしょうか。そういう考え方というのはありなのでしょうかというのが御質問の一つ目です。
 もう一つは、中国が面白いなと思ったんですけども、同じCRDSさんの資料の中で、6ページに10項目あったと思いますが、7や8などの基礎研究的なところもありますが、それをいかに実際の意思決定に入れたり、その基礎要素を社会に組み込んでいくか、そんな研究分野というのも設定されているのかなと思って、これは面白いなと思って拝見させてもらいました。
 ちょっと私はこの後にいなくなってしまうので、全体のコメントのところも少し話させてもらいますと、非常に日本の仕組みは御説明いただいてよくできているなと思っていますが、一方で最後の実装やミッション型を考えるときに、少し機能として、補完をするべきところがやっていると出てくると思うので、そういう目的みたいなものを出しながら、一緒に基礎研究をする研究者のほうにもコミュニケーションすると、勝手にここは要るのではないかとか、研究を始める部分もあるかなと思いますので、その要素開発のところもあれば、その製造プロセスの削減とかもあるかもしれませんし、そのハードウェアを入れた後の社会の導入の仕組みの研究を始めたりというのもあると思ので、こういう切り口は、今の日本の整理をすごくきれいだと思うんですが、その抜けのところをうまくフォローアップする仕組みがあるといいのではないかと思いました。
【杉山主査】  田中先生ありがとうございます。
 CRDSさん何か、ショートコメントございますか。
【中村ユニットリーダー(科学技術振興機構)】  コメントありがとうございます。
 そうですね、ミッション志向型研究開発は、日本においては一つ、ムーンショットなどですね、そちらは結構そういう同じような考え方を持って進めている事業ですし、日本とEUでのコミュニケーションというのは、そういった事業間でもあったかなと理解しております。
 あともう一つ、中国については、御指摘のとおり、非常にこの研究開発に加えて、意思決定の支援や、人材育成というのもこの計画に取り込んでいるというのは非常に参考になるところがあるなと思いながら見ています。
 片や日本においても、グリーンイノベーション戦略推進会議などといった会議体などを使って、いろいろな議論が行われてきたところと、ある程度対応するようなところもあるなと思いまして、ひょっとしたら日本の動きなども参考にされながらこういうのができてきているのかなというのも想像していました。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 ちょうど森先生に御意見伺おうかなと思ったんですが、どうぞ森先生、ありがとうございます。
【森主査代理】  どうもありがとうございます。
 今回のポイントは、産官学民合わせて、GXということで、課題解決していくということが大事な中で、いろいろCRDSさんから各国の状況を伺って非常に興味深く拝見いたしました。
 その中で、やはりアカデミアでのポテンシャルとそれから産業界でのポテンシャルをどう気持ちを合わせながらというか、どういう方向に向かってどこが産業界の現場のニーズなのかというところをアカデミアが十分に分かっているかというと、なかなか分かっているところと、分かっていないところもあると。あとは産業界の方もアカデミアがどういう、例えば水素なら水素を見るとか、いろんなものをダイナミックスを含めて今エネルギーがどういうふうに動いているのかを見るというところも分かっているような、分かってないようなところがあるというところで、やはり、基礎、応用、開発をシームレスにつないで、みんながこういうところでやっていこうという気持ち合わせるところがとても重要だと思います。そのときに超学際的チームというのをDOEでもつくっているということで、シームレスに基礎から応用、社会実装のところまで行くようなシステムをつくるのにはどういうところがポイントなのか、どういうシステムがいいのかというところを海外から学べるところがあったらちょっと教えていただきたいんですけど、CRDSさんのほうにお願いいたします。
【杉山主査】  CRDSさんお願いします。
【中村ユニットリーダー(科学技術振興機構)】  御指摘ありがとうございます。
 アメリカのDOEのエマージング技術のイノベーション加速に関しまして、私どもも非常にこれは興味深いなと思っています。
 現状は今RFI(Request For Information)を出している段階のようでして、どういうテーマ、あるいはどういう設計でこのプログラムをやっていくかというのはこれからつくり込んでいくような段階にあるように見ています。
 我々も引き続き、ちょっとここは注視しておきたいと思っています。
【森主査代理】  ロードマップをどうやって一緒につくっていくかというのがポイントだと思います。ぜひ、また、それはとても参考になると思いますので、一緒に共有していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それを我々のほうから発信――別にまねすることではなくて、この委員会からこういうのがいいのではないかと発信していくのが重要なのかなとも思いますので、また、意見交換のほうよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
【杉山主査】  森先生、大変貴重な御意見ありがとうございます。
 所先生も手を挙げていただいているんですが、10時に抜けられる先生方がいらっしゃる関係で、1回、この後御意見をいただきたいのですけど、私のほうから一言総括させていただいた上で、所先生につないでもよろしいでしょうか。
【所委員】  結構です。私も10時過ぎに抜けなければいけないので。
【杉山主査】  この後に回そうと思っていますので、よろしくお願いします。
 ということで、今まで各種の施策、それから海外の動向をまとめていただきまして、早くも今後につながる議論が出てきたかなと思っております。後で30分ぐらい時間がまた取れるといいかなと思っているんですけれども、議論をしていきたいと思います。
 そういう中で、今回、私としての考え方を少し披露させていただければなと思っております。
 まず、資料を今出していただいておりますけれども、今回、革新的なGX技術開発ということでございまして、様々な論点が今までも出つつありますけれども、大きな方向性として、我々が目指していくものとして、カーボンニュートラルの実現に不可欠なトランジションをやはり後押し、加速していくという技術開発をぜひ支援していきたいというのが大きな方向性であるかと思います。
 このカーボンニュートラル実現に向けたトラジションとして重要なものは三つというのが、これが大体エネルギートラジションをやっている人間から見ると出てくるところです。一つが電化ですね、電化の再エネ化、2番目が燃料のCO2フリー化、この技術として、最も確実なものの一つが水素であるという位置づけになるかと思います。それから、後でバイオも出てくるかと思いますけれども、このCO2の固定化、資源化というのは、やはりこの電化の再エネ化、それから燃料のCO2フリー化だけではどうしても取りこぼしになってしまうCO2排出というのがございますので、そちらについて、やはり新しい技術を入れていって、それによって完全なカーボンニュートラルを図るということが重要であると考えております。
 さらにこうした事項を達成するのに必要なことといたしまして、右側の緑のほうで書いてありますけれども、大量供給、それから低コストですね。ただ、化石燃料に対して本当に低コストになれるかどうかは、なかなか議論があるところだと思いますが、相対的に低コストであるということ。
 それから、あともう一つ重要なのが、ライフサイクルでカーボンニュートラル/ネガティブになっているというのも非常に重要で、特にCO2の固定化・資源化に関しては、場合によってはあまりにもエネルギー消費がプロセスとして大きいものだから、電源由来のCO2排出で、むしろカーボンポジティブになってしまうこともよくありますので、この辺りも含めた上で、この我々が取り組むべき技術というものを考えていく必要があるだろうということ。
 それから、先ほど申し上げたように、この社会実装の加速というのは、当然、経産省、NEDOさんがやられている中で非常に重要ですけれども、そこに対して、このイノベーションの種をしっかりと供給するということ、それから、何より人材ですね、これを創出していくというこの辺りのアカデミアとしての取組が非常に重要なのではないかと考えているというのが全体的なポイントになります。
 論点といたしましては、また後でもう一度振り返りたいと思うんですけれども、今いろいろ御発表いただいたように、社会からの要請、あるいは現在こういう取組をしています。また、その中で今後社会実装に向けて、法体系であるとか、経済安全保障等の観点もございましたけれども、こうした社会背景があると。これは研究開発の前提として十分理解しておいた上で、2ポツ目になりますけれども、各国のGXへの取組との比較において、日本のどこが優れているのか、あるいはどこを強化していけるのか、また、世界と共通の課題というのもあると思います。それに対してどういうふうに取り組んでいくのか、協調していくところもあるでしょう。また、そういう中で日本のアカデミアへの期待・課題というのが出てくるであろうと思われるわけです。
 3ポツ目に入りまして、そういう中で、この革新的GXに関して日本として推進すべき技術というのが、あぶり出されてくるだろうと考えておりまして、そういう中で先ほども御意見が出かけていましたけれども、産業界とアカデミアのよい関係、よい役割分担というのをファシリテートしていくというのが今後非常に重要であろうと。すなわち、GI基金等で今日も御紹介いただいたように社会実装に向けた取組というのがかなり強力に進められている中で、それにさらにこの加速をするための要素技術でありますとか、イノベーションの種、そして何よりそのGIにおける取組の次の世代を担うような人材の供給というのが重要になってくるだろうということでありますので、そうしたことでここに四つほどポツを書かせていただいておりますけれども、こうした項目について最後の討論でぜひ深めていきたいと思うところでございます。
 ということで、10時に中座される先生方もいらっしゃいますので、御意見を伺っていきたいと思いますけど、森先生が先ほど、まず質問に絡めて御意見いただきましたので、お待たせしました、所先生、まずよろしくお願いいたします。
【所委員】  
 私もちょっと10過ぎに退席しなければいけないので、本当は最後の総合討論でお話しすべきだと思うんですけれども、発言させていただきます。
 ここまでのお話を伺って、2点意見させていただきたいと思います。
 1点は、今のお話もありましたけれども、まさに企業とアカデミアの関係というふうにも言えると思いますし、社会実装フェーズと基礎研究フェーズとの関係というふうにも言えると思うんですけれども、冒頭最初の轟さんのお話で非常によかったなと思ったのは、これまでの基礎研究からどんどん矢印が社会実装のほうに延びていって、どんどん大型化していって、社会実装のほうへ結びつけていくという仕組みはあったんですけれども、幾つか大型研究の企業との共同研究をさせていただいたアカデミアの立場から申し上げると、社会実装の大型研究をすればするほど、基礎研究に戻りたくなるというか、基礎研究ですべきことがより見つかってくるというようなことがあります。こういったことは非常に大事で、まさにここまで意見が出たように、社会のことが分かって初めてやるべき基礎研究がまた分かるという、アカデミアの最も重要な役割だと思うんですけども、実はここに戻りたいと思ったときに、仕組みがなかったと認識をしています。
 なので、社会実装フェーズに行ったんだけれども、そこで見つかった、また次につながる、あるいは拡大につながるような基礎研究というところにまた大型で基礎研究ができるというような、行ったり来たりという関係がここで築けるということは非常に大事で、またそのフェーズに今、ALCA-SPRING事業なども走っていますけれども、しっかりとアカデミアの博士を中心とした人材育成としっかりと絡めていく必要があるのではないかと思っているのが1点です。
 もう1点は、まさに今、低炭素、カーボンニュートラル、CO2ということで非常にホットで、非常に大事ですけれども、私、資源循環を専門にしている立場から申し上げるとちょっとNEDOの最後のほうにリサイクルも大事というお話が出てきたんですが、今のところ資源循環という観点が一言で言ってしまうと抜けていると感じています。
 資源循環というのは単なるリサイクルではありませんで、これから成長戦略というふうに考えていくと、まさにサーキュラーエコノミーという考え方が出ていますが、これは全てのものづくりがサーキュラーを意識して、そのサーキュラーで経済的にもいろんなことが成長していくべきだという考え方で、これは非常にこれから重要な考え方になっていくのではないかと思っています。
 例えばALCA-SPRINGの中など、固体電池の中でも、一部リサイクルなどを意識していただいた考え方が入ってきているだけでも、革新的ではあるんですけれども、やはり実態はものづくりと資源循環がかけ離れていますので、そこの部分がしっかりと一気通貫で、最初から両者が強く意識して連携していくような、サーキュラーを強く意識した低炭素戦略、あるいはGXということがこれから大変必要になっていくのではないかなと思っています。
 そのためには、それぞれが分断されていってはいけないので、例えば海外では私が聞くことによると、太陽光電池、あるいは太陽光とか、蓄電池の開発のときに、ゆりかごから墓場までの助成の仕組みがあると聞いていますので、そういった俯瞰的な視野に基づいた支援が必要なのではないかと思っています。
 すみません、ここでの発言が適切だったかは分かりませんが、以上2点です。よろしくお願いいたします。
【杉山主査】  非常に大事な観点でございます。ありがとうございました。
 あと五味先生も時間の制約があると伺っておりますが、五味先生、何か御意見がございますでしょうか。
【五味委員】  五味です。時間は一応11時までは何とかなるとは思います。
 今の所先生のお話は非常に大事なことだと思っておりまして、今までの御説明の中では、今回このお話を受けたときにNEDOさんでやっている事業とこのJSTが主体になってやっている事業で住み分けというのではないですが、どういうふうに分けてやるのかなというのに疑問を持ったところがあるんですけれども、最初にお話があったようにNEDOさんのほうでは、出口戦略のところで、企業さんといろいろ組んでやって、その中で課題が出た場合、こちらのほうのJST主体の研究のほうに課題を持って行うということで、そういうところでうまくそれが連携されるといいなと思いました。そういう意味では所先生が言われたような応用をやって、開発をやっていると必ず基礎をやらないと解決にならないということは当然起こり得るわけで、そういうことをきちんとサイクルを回して、課題が出れば、基礎をしっかり固めて、その基礎から出てきたまた課題解決のためになる技術などを出口というか、応用開発につなげるのは非常に大事だと思いますので、そういうものをうまく連携させることを考えていただくと非常にいいのではないかなと思います。
 私ももう少しおりますので、またほかの先生方の御意見等をお聞きしながら、バイオものづくりの関係なので、そのときに何かコメントがあるようであれば、そのときにまたコメントさせていただきます。そんなことでよろしいですか。
【杉山主査】  どうもありがとうございます。貴重な御意見ありがとうございます。
 森先生も10時までと伺っておりますが、先ほども御質問されましたけど、改めて何か御意見ございましたら承りますが、いかがでしょうか。
【森主査代理】  私も調整して11時まで大丈夫なので、最後まで伺います。
【杉山主査】  そうですか。ありがとうございます。皆様の御協力に感謝いたします。

議題4. 国際動向、技術評価等の視点からの話題提供

【杉山主査】  それでは、先ほど中締めの総括をさせていただきましたが、さらに今度は議題4に入りまして、国際動向、技術評価等の観点からも話題提供ということで進めてまいりたいと思います。
 まずは三井物産の戦略研究所の国際情報部シニア研究フェローの本郷先生に御説明をいただきます。よろしくお願いします。
【本郷委員】  ありがとうございます。
 私は個別の技術というよりも、別の角度から話題提供をさせていただこうと思っています。
 このスライドで鍵となるのは需要側の視点ということです。技術開発や技術普及に関する検討に関する今までの議論を聞きますと、技術の供給側のアカデミアと、それから産業側の二つに分けています。そして産業側がアカデミア側にとっての一種の需要と見えているわけです。しかし、もう少しネットゼロという目的に立ち返ってみると、産業の中も、技術を提供する企業と実際に使う側、と分かれるわけで、アカデミアと産業と単純に2つに分けないほうがいいかなとは思います。
 技術イノベーションが必要だというのは、当たり前の話で、誰も否定しないわけです。私の話題提供では、どのようにして技術を使うか、何をアカデミアあるいは供給側のほうに期待するかといった点を紹介したいと思います。
 技術イノベーションというのは当然不確実性があるわけですね。例えばIEAのネットゼロシナリオで考えますと、現状で既に間違いない水準に達した技術で達成できる削減というのは、大体3分の1ぐらいで、それ以外の部分は、アーリーアダプションや、あるいはプロトタイプといったものになっています。その技術が確実に利用できる状況まで発展しているかどうかは分かりませんから、ネットゼロのシナリオにも不確実性が大きいと考えるべきと思います。
 「正しいシナリオはない」というのはちょっと書き過ぎかもしれませんけど、産業側で異なる企業が集まっていろいろ議論をすると意見が分かれます。先ほど質問させていただいたように企業によって取るべき技術が違いますので、また、それは競争しているわけです。そういう意味で企業と企業が集まって議論すれば、「正しいシナリオ」はなかなか合意できないというのが現実かなと思います。
 ただ一方で、例えば、環境NGOのような方からは「これが正しいシナリオだ」という主張がよく出てきます。この辺りは現実との間にはギャップがあるというところかなと思います。
 その次のポイントは、技術単体でできても、それだけではネットゼロ目標実現に対しては駄目ですよねと。それはやはり最終的に使われなければいけないので、使われるためには、価格も妥当で、十分な量の技術、あるいは機器が供給されなければいけません。ネットゼロで必要なサプライチェーンも必要ですよ。例えばこの左下にあるIEAのネットゼロのシナリオのところをまとめた表ですけれども、ネットゼロを実現するためには、膨大な量の蓄電池を使わなければいけないし、EVも生産しなければいけない、太陽光パネルも生産しなければいけないというわけですが、それだけの量を誰が作るのだろうか、それが安くできるのか、ここが一つ課題になるわけですよね。ですので、技術イノベーションのときは、その先を作れるかどうか、非常に大量に作れるかというところもポイントになってくる。
 それから、また水素、アンモニアは、ここには書いていませんけど、当然サプライインフラが必要になるわけで、水素、アンモニアとなると今までのインフラ供給、天然ガスのインフラとは違った別のインフラ、サプライチェーンをつくらないといけないと。それを誰がつくるんだ、どうやってつくるんだと。そのコストの負担も考えていかないといけないところがあります。
 それから、三つ目のポイントは、ネットゼロシナリオ、これはIEAのネットゼロシナリオを例にして言えば、世界が協調して取り組むということが前提になっているわけですね。世界が協調できなかった場合というのもIEAでは用意していて、協調できなかった場合には、2050年ネットゼロが2090年になるというようなことを、細かい分析はしないですけど、書いている。この場合は、今や二、三年前と違って現実のものになってきているわけです。ロシア、ウクライナの問題で、世界が分断化するという中で、安全保障にも気を配りながらどうやって実現していくか、これももう一つ不確実性ということが言えるのではないかなと思います。
 そうした中で、どんな技術イノベーションが必要か、期待されるかと言っているんですけど、今まで出てきたものとは外枠というか、別の話をすれば、一つは同じイノベーションであっても、安価な生産、素材で作れるもの、あるいは簡単に大量に作れるといった技術が必要でした。効率がいいというだけでは、なかなか使われないというのが一つの事実です。
 それから、サプライチェーンのところで言えば、例えばCO2であれば輸送だとか、あるいは水素も輸送が必要になるので、そういった意味でのサプライチェーンのイノベーションも非常に期待されるところだと思います。
 三つ目は、Critical Mineralsの話で、これはエネルギーの世界では非常に課題になっていて、例えばEUで、ロシアからのガスがないから太陽光発電を活用するんだと言ったんだけれど、太陽光発電のパネルというのは9割中国が供給しているわけです。それで本当に大丈夫かと。省エネだといったら、高効率のモーターに使うレアメタル、レアアースは中国ですよねという話なので、今EUや英国ではCritical Mineralsに対してどういうふうに安全保障上から対処するかという話が出ているので、これは今までにはなかった重要な点として、特定の国にサプライが集中する素材を使わない技術というものが産業の現場では必要になってくるのではないかなと思います。
 それから、もう一つ脱炭素社会を目指すに当たって変わってきたのは、過去の10年ぐらい前を例にすれば、新技術はできたものから、出来た段階で使いましょう、という意識が強かったと思うんですけど、今、2050年ネットゼロという目標ができていますので、それに合わせて供給しなければいけない、イノベーションしなければいけないわけです。そのときに、先ほど経済産業省さんのほうから説明あったかと思いますけど、カーボンプライスが重要になってきます。カーボンプライス、それに実質的な排出コストがこれから上がっていくと想定されます。技術開発のタイムラインといいますか、スケジュールとしては、カーボンプライスの上昇に合ったスピード、タイミングでモノをつくということかと思います。あるいは将来のカーボンプライスが技術開発のタイムラインの目標になるのかなという気がいたします。
 それから最後、技術を実際に使うに当たっては投資環境整備というのが必要だというのが現実ではないかと思います。例えば最近話題になっているSMRについて、国際原子力機関(IEA)と話をすると、技術としてはある程度成熟しているが、すぐには使えない。なぜかというと安全基準は同じ水準としても、今の安全に関する規制が大型の原子炉を前提にした規制になっていて、それをそのまま適用したらSMRのよさが生きないから無理だねと。だから、SMRに合った法制度、規制を整備していかなければいけないよ、というのが良く出てくる話です。それと同じようなことがCCSでもあって、CCSの技術ができても、public acceptanceがないと実際には導入できないでしょう。投資環境は非常に大きな課題であり、そういった点について十分配慮したものを準備しないと、せっかく作った技術が無駄になってしまうというのがあるかと思っています。
 それから、もう一つは、技術イノベーションで生まれた技術は、大量に生産、大量に供給することによってコストが下がってきたという例がたくさんあるわけです。PVやLEDが好事例です。PVのコストはどんどん大量生産によって下がりました。例えば、インドではLEDの大量購入プログラムを政府が実施しコストがすごく下がったわけです。排煙脱硫装置なんていうのは、1980年代後半からでしたけど、私の現場でやっていて感じたのは、需要が確実あっていろんな会社が競争で参入したら、あっという間に、1年ちょっとの間に、価格が半分になったという例もあるんです。ですから、マーケットを大きくするというのがすごく大事なんだろうなと思います。
 最近の取り組みの一例としてCCSがあります。Public acceptanceが大事だということで、国際排出量取引協会でHigh Level Criteriaというのを作ったんですね。操業の安全性の話や確実な貯留の話であればISOだとか、あるいは様々なクレジット制度や各国の規制とか準備されています。しかし、重要なのはpublic acceptanceです。その国の政策の中に位置づけされているか、国民に対して十分に説明されているか、あるいはそのセーフガード、サステナビリティーといったことにも注意しましょうというのがこのガイダンスのポイントです。技術を使う環境も整備することを前提にして、技術イノベーションとに取り組んでいくべきではないかと思います。なおこのハイレベルクライテリアというのはエネ庁さんの支援で出てきたものです。
 私からの説明は以上です。ありがとうございました。
【杉山主査】  本郷先生、どうもありがとうございました。
 ちょっと時間が押し気味になってきまして、先生方、5分程度の説明で進めていただけるとありがたいですけれども、次は本藤委員のほうから説明をお願いしたいと思います。
 よろしくお願いいたします。
【本藤委員】  分かりました。
 私のほうからは、技術評価の観点から少し話題提供をさせていただきたいと思います。
 技術というのは、通常、工学的、社会的機能や価値を求めて、開発されるわけです。ですので、何かしらの技術が価値や機能をきちんと持っているかどうかという評価が必要になってくると思います。
 この技術評価という概念でございますが、人によって非常に解釈が異なる、重層的かつ多義的な概念だと考えております。端的に申し上げますと、私としてはこの三つに大きく分類できるのではないかと考えております。
 一つ目は、これは自然科学的な、工学的な評価ですね。例えば身近な例ですけども、材料の開発をしたと。その強度や耐久性、防食性といった工学的な性能を評価する、これも一つの技術評価であるということです。
 ただ、それだけではなくて、技術が社会的にどのような機能を発揮するかということで、社会的な技術特性を明らかにするという技術評価もございます。これが真ん中の2番になります。第2層になります。こちらのほうでは例えばある技術を導入したときに、CO2の排出がこのぐらい変化するのではないか、金銭的なベネフィットやコストはこれぐらいではないか、また、また社会の安定性に影響するような雇用といったものにどういった影響を与えるだろうか、という社会的な技術特性を明らかにするというのが2層目の技術評価になります。
 さらに3層目に行きますと、そういった第2層目で評価された技術特性、CO2をこれだけ削減できるよ、経済成長にこれぐらい寄与できるよ、ではそれが本当に社会にとって価値があるのか、社会的な価値を定めるというのが第3層目になります。
 1層目と2層目は、主に専門家によって行われる評価だと私は考えております。それに対して、第3層目というのは、社会にとってその技術の価値があるか否かという判断ですから、専門家だけではなくて、専門家でない方、具体的には市民の方々の関与も必要になります。第3層のコンセンサス会議とシナリオワークショップと言われているものは、市民の方々も交えて、技術の社会的な価値を評価するという段階になるかと思います。
 非常に端的に申し上げれば、第1層は比較的自然科学的な評価であり、上の2層、3層に行くに従って、人文社会科学的な評価になります。このように、技術評価という概念は非常に幅広いので、この辺りは少し分類して議論ができるとよろしいのかなと思っております。
 これが一つ目の技術評価についてのお話です。
 2ページ目はその技術評価が、今後の研究開発においてどうあるべきかということに関して簡単にまとめたものでございます。既に御説明にもありましたように、この小委員会の重要な課題でもありますが、社会課題解決を前提とした研究開発が今後多分アカデミアにも求められてくると思います。そのとき、単なる基礎研究ではなく、出口も見据えたシーズ創出が必要になる、重要になる。となると、その基礎研究が社会にどのような価値を与える可能性があるかという評価をする必要がある。具体的には温室効果ガスの排出削減効果であったり、省資源化の効果、経済成長、社会の安定性に与える影響といったものまでしっかりと見据える必要があるということです。
 先ほどの、1層、2層、3層の3段階技術評価モデルを見れば、この第2層に相当する評価は少なくとも実施すべきであろうと考えております。
 ただ実際に、基礎・基盤研究に関して、このような技術評価を実施するというのは、それほど簡単なことではありません。
 したがって、論点としては、こんなところがあり得るだろうということを、スライドに簡単に示しております。例えば、何を評価項目とするか。どういうものを評価レベルに置くか。また、評価者・評価体制はどうするかということですね。
 時間も限られていますので、真ん中はちょっと分かりにくいので、真ん中だけお話ししますと、例えば蓄電池であれば、蓄電池そのものの評価をするのが「当該技術」の評価に相当します。それから、蓄電池が利用されている自動車交通システム、それを評価するということがこの2番目の「利用技術システム」の評価になります。3番目の「適用社会システム」というのは、蓄電池が社会の様々なところに導入されたときに、その社会システムはどうなっているかという社会レベルで評価することを意味しています。
ですので、どういうものを評価項目とするか、どのレベルで評価するのか、評価者や評価体制をどのようにするかといったことが、今後やはり議論のポイントになるのではないかと思っております。
 雑駁になりましたけど、私からは以上です。
【杉山主査】  本藤先生、大変重要な点を御指摘ありがとうございました。
 今までの御説明に関しまして、何か御質問はございますでしょうか。よろしいですかね。
        (「なし」の声あり)
【杉山主査】  それでは、若干時間が押し気味でございますので、次の議題に移りまして、まとめて最後に総合討論の形で議論を進めていきたいと思います。

議題5. GX関連重要領域の動向について話題提供

【杉山主査】  それでは、議題5に入りまして、GX関連重要領域の動向についての話題提供ということでお話を伺います。
 こちらは次回に向けて2回に分けて話題提供をいただく形になりますけれども、今回は、蓄電池、水素・燃料電池、そしてバイオものづくり、最後に半導体と、この四つについて御説明をいただきたいと思っております。
 それでは、まず蓄電池につきまして、東京工業大学の菅野先生からよろしくお願いいたします。
【菅野委員】  菅野です。それでは、御説明させていただきます。かいつまんで、簡略にいきたいと思います。
 まずは蓄電池の位置づけです。蓄電池をどのように開発していくかという、いわゆる世間で言われているロードマップです。
 鉛蓄電池が開発されて150年たち、リチウムイオン電池が開発され世の中に浸透して、現在、次世代の電池にむけて様々な方向性で開発が進んでいます。この左上の図にありますように、先進リチウムイオン、リチウム空気、全固体、フッ化物、多価イオン、亜鉛空気と様々な方向性があることが、まず蓄電池の分野の特徴です。
 もう1点、ここから見えることは、材料開発によって、この様々な蓄電池が実際に大きく進歩することがある点です。要するに材料の重要性がこの蓄電池の特徴であると思います。
 この右上にあるのは、NEDOのSolid-EVプロジェクトで書かれたマップです。以前は現行LIBから先進LIB、その次に、Post-LIB(革新電池)というあらすじだったのですが、固体電池が何とかものなりそうだということが急にわかり、それも材料の進展に起因したものですが、この間に挿入されました。ロードマップは材料開発によって、書き換わることを如実に表しています。
 下がこの固体電池を含めて、次世代の電池に到達するシナリオがロードマップとして描かれて、これに従って様々なプロジェクトが進んでいます。
 御存じのところですが、蓄電池は現在どんどん日本のシェアが減っています。資料はこの8月に経済産業省から報告された「蓄電池産業戦略」というレポートに基づいています。日本のシェアがどんどん下がっているのに対して、蓄電池の市場は非常に大きくなっていることを表しています。
 これは先ほども御紹介がありましたが、CRDSの俯瞰図から抜粋したものです。ちなみにこのCRDSがまとめた俯瞰図は、ナノテクノロジー材料分野とエネルギー分野の両方に蓄電池が入っています。蓄電池が、先ほど言いましたが、材料が発展の基本となっていることもあって、エネルギー分野だけから見ると実態をつかむのが難しいところもありますので、ここでは、ナノテクノロジー・材料分野から抜粋しています。
それぞれの蓄電池系には、このような電池があって、このような市場が広がっていること、各国でいろんなプロジェクトが進んでいることが記述されています。
 左下の部分に、大変良い指摘があります。リチウムイオンが出てきた後、そのリチウムイオンの改良のためには、リチウムイオン電池のさらなる技術開発、知識の集積が必須で、その開発が次の新しい電池技術につながるとの指摘です。電池材料と電池設計が電池研究・技術開発の両輪ですが、両方ひっくるめて産学連携ができるような運営が望ましいということです。
 電池分野では、産業界で人材の流動化は十分起こっていますが、人材の流動化が必要という指摘もされています。
 蓄電池プロジェクトとして、JSTプロジェクト、NEDOプロジェクトをまとめています。御覧いただければと思います。そもそも2006年に経済産業省が次世代の電池が必要であるとの報告をして、それに基づいてLi-EADプロジェクトが2007年にスタートし、その後、いろんなプロジェクトが立ち上がりました。SOLiD-EV、RISINGⅠ、Ⅱ、Ⅲと展開して、今のGIにつながっています。JSTではALCA-SPLING、新学術で電池プロジェクトが走っています。さらに、元素戦略、共創の場、データ創出などでも電池関連課題が走っている状況です。
 これは海外の状況です。先ほど来、詳しい説明がありましたので省略しますが、右上は産業に関するもの、左下は基礎研究に関するもので、少し分野を限定しています。いろんなプロジェクトが走っていることがわかります。
 特に、EUでは産業のプロジェクトと並行して、材料の基礎のプロジェクトが走っている点がなかなかEUらしいところです。英国やドイツなども新しい電池系が出た場合に、その電池系に対してプロジェクトが進んでいます。
 次のスライドは、いろんな電池系に対してどのような研究論文数が出てきたかを調べたグラフです。2011年ぐらいから急速にこの分野が活発になっているのが分かります。右下に示しましたが、リサイクルに関しての論文数も増えています。
 この図をまとめるに当たって、日本の基礎研究の特徴は何であるかということを考えてみました。新しい概念に基づくデバイスを作り出すような研究は、日本から出ていないという基礎研究の弱点なども見えてきます。
 ちょっと細かいですが、一応論点をまとめてみました。
 物質研究から材料研究になって、電池ができて、それが実電池になって、商業化されて、世界市場が制覇されてという流れが、今まで考えられてきた研究・技術開発の方向性です。しかし、そうではなくて、実際どの段階でも、電池を作ったとき、それから、その電池が世界に行き渡ったあとであっても、基礎研究があります。特に、実際にまさに実用化されようとするところ、すなわち固体電池開発がALCA-SPLINGからSOLiD-EVに橋渡しをした段階であっても、基礎研究はますます重要になることを強調しておきたいと思います。特に産業からの期待は、蓄電池のサイエンスを明らかにすることであるということがひしひしと感じられます。
 日本の強みは、材料から製品に至るその中間地点に最も強みがあって、それは大学の研究、産業の研究・開発の強みがそこに集中しています。新しい電池が出てくるのは、多分日本からしか出てこないという状況ですが、実用電池を開発する段階から実際に製品になった後も、さらに高度に発展させるためには、支えとなる基礎研究が非常に重要であることを強調したいと思います。
 もう1点、人材育成で一つ例を示します。たとえばEUではALISTOREプログラムというのがあって、蓄電池に関して、EU内の様々な国で、共同でドクターコース、マスターコースで人材を育てるというプログラムです。それぞれ国の大学が共同で人材を育てようとしています。なかなか日本では難しいと思いますが、ヨーロッパにはそのような試みも入れながら人材を供給していることを少し付け加えたいと思います。
 以上です。
【杉山主査】 菅野先生どうもありがとうございました。
 それでは、次は水素・燃料電池分野につきまして、豊田中研の志満津委員から発表をお願いいたします。よろしくお願いします。
【志満津委員】  志満津です。このようなタイトルでお話しさせていただきます。
 まず最初に、水素の役割について簡単にまとめました。
 現在、世界中で注目されているカーボンニュートラルの実現には、多様な再生可能エネルギーの大規模・効率的な活用が必要となっています。特にこのような再生可能エネルギーが電力量として確保が十分でない現状では、電源系統だけに依存しないエネルギーの輸送、貯蔵や需要に合わせたキャリア変換が重要となっています。その最初のキャリアとして水素が重要な役割を持っていると考えられています。また、日本においては国内で生産できるキャリアとしてエネルギーセキュリティーの面でも重要性が認識されています。
 一方で、水素の社会インフラやモビリティーのエネルギー源としての位置づけを主力である電力(二次電池)と比較したものが書かれています。IPCCやIEAなどの最近の報告にもありますように、社会インフラ・モビリティーともにエネルギーの選択肢として、水素が併記されております。ここには適地・適材・適用といった考え方が示されており、つまり、どちらかのみでは成立しないということを示しています。
 例えばモビリティーにおいては、電力の再エネ比率が低い、また、車両のサイズや使い方、また、船、航空機などの特徴に合わせて、エネルギーとしての水素が選択されると予想されています。
 水素は電力、二次電池と並ぶ重要なエネルギー媒体として、今後も需要拡大がIEAのレポートなどで予想されております。
 ここまででも、たくさん話題が出ましたので、簡略に説明します。水素の関連予算については、多くの国で大規模な投資計画が進められており、水素事業拡大への意思が示されていると考えております。
 一方、研究開発の動向を示す指標として、燃料電池に関連する論文掲載、特許出願の数による動向を見てみます。
 燃料電池に積極的な各国に比べますと、日本の論文数は少し低調であり、知財では優位性が2010年代に入り、失われつつあります。近年では、中国の台頭が顕著です。もちろん数そのものが指標ではありませんが、水素・燃料電池研究開発の活性化が非常に重要になってきております。
 近年、活性化している海外における水素・燃料電池研究の取組を米国の例で示しています。左図のように、米国ではDOEを中心とした材料からシステムまでの包括したチーム型研究が進められています。また、右図のように、各チームも国立研究所、大学、企業が参画する産官学研究で構成されています。これらの取組は、基礎研究から積み上げるのと、製品からのバックキャストを早いサイクルで回し、性能を上げるとともに、社会実装における課題解決を同時に達成するために、非常に有効に進められていると思われます。
 欧米ではオープンイノベーションを軸に、出口製品を意識したコンソーシアム型研究開発で成果を創出しています。一方、日本では要素ごとの深掘り研究がまだまだ主体であると感じています。
 現在、左図のNEDOで様々なモビリティー対象に策定されている燃料電池に関するロードマップでは、目標をこのように上げています。現在の「MIRAI」に比べ、2030年、2040年における目標は非常に高い性能要求が描かれており、現状技術の積み上げによる境界線を超える性能が予想されています。これを触媒の例で記載すると右図のようになります。現在の論文ベースの触媒活性に対し、2桁から3桁の非連続なイノベーションが必要となっています。また、国内と海外での現状のレベル差も課題となります。現在、基礎から応用までアカデミアへの期待が増しており、そのための支援が必要と考えております。
 さらに加えますと、論文ベースの触媒が産業に展開され、製品化され、世の中の皆さんに活用されるまでには、耐久性やコスト、さらに資源循環などの様々な技術開発が必要となります。例えば触媒性能要求は、外温度や負荷などにより大きく異なる。これは時間がかかるだけではなく、その中心にある目標値をどうやってシステムと一緒に決めていくかが非常に重要となっています。
 アカデミアの期待の観点から人材育成についても大変期待しております。水素・燃料電池研究を活性化するためには、やはり研究人材の確保、特に若い研究者が育っていくことが必要だと考えています。できるだけ若いときから水素・燃料電池に触れる機会を持ち、興味を持って博士課程で学び、特に異分野と触れる機会をたくさん持っていただけると、非常に有望だと思います。また、安心して博士課程に進むための雇用の確保が必要です。企業の目から見た場合、企業研究開発と大学における研究のスタイルの違いなどから、複数の選択肢が必要と考えています。
 また、研究を加速するための異分野融合のチーム型研究、さらには産学官連携、人材流動による研究者育成など、産業界として一緒に取り組んでいきたいと考えています。
 以上です。ありがとうございます。
【杉山主査】  どうもありがとうございました。
 続きまして、今度はバイオものづくり分野に行きたいと思いますが、こちらはオブザーバーとして御参加いただいております神戸大学副学長の近藤先生のほうからお話をいただきたいと思います。
 よろしくお願いいたします。
【近藤副学長(神戸大学)】  よろしくお願いします。聞こえていますでしょうか。大丈夫でしょうか。
【杉山主査】  はい、聞こえています。
【近藤副学長(神戸大学)】  それでは、バイオものづくりの領域の動向について、説明させていただきたいと思います。
 まず、目次ですけれども、1番目としてバイオづくりによるGX、つまり、カーボンニュートラルと経済成長への貢献、そして2番目として、国際的な政策動向、3番目として、日本のアカデミアのポテンシャル、そして最後に、革新的なものづくりの例といった内容で説明させていただきたいと思います。
 まず、バイオものづくりですけども、産業革命と今、銘打っております。バイオマスやCO2など多様なグリーン炭素源からの物質生産の実現ということになります。下の図にありますように、現在は光合成によって二酸化炭素を固定した植物体バイオマスからそれをある意味餌として微生物が発酵生産することで、多様なものを作っております。我々人類が必要とするほぼ全てのものが原理的には作れるという状況です。今後さらにこの光合成に頼らず、大気中のCO2を直接餌として微生物が発酵生産するということも必要になってきます。産業規模は200から400兆円ということで、OECD加盟国でも予想されています。
 バイオものづくりによりますGHG排出削減効果についてです。縦軸がGHGの排出量になっておりますが、PET、ポリプロピレンといった石油で作られるものに比べまして、バイオマスで作るともちろん排出量は減りますが、さらにこれをCO2から直接作れるようになりますと、生産においてCO2を吸収しておりますので、さらに減るということで非常に大きなCO2削減効果が見込まれます。
 こういったことを、バイオの研究は、従来、非常に時間かかっていて、それが実は問題だったわけです。ところが最近このEngineering Biologyあるいは合成生物学、バイオファウンドリ、あるいはDBTLサイクル技術というものが出てきまして、革新的に速くなってきております。この図にありますように、ゲノムの解析技術やゲノムエンジニアリング技術、IT・AI技術、ロボット・自動化技術を融合したところのEngineering Biologyと、これを学位としてつくられますバイオファウンドリ、これは微生物開発の高速なプラットフォームですけども、こういうものができることによって、実は開発が非常に飛躍的に加速されております。
 ここに示しますように、デザイン・ビルド・テストはさっきのDBTL技術ということですけども、まず、多くの細胞をデザインして、ロボットで作り、テストで高速に評価して、そのデータで学習していくというような、こういうことで開発速度の期間を10分の1以下にできるようなことが起これば非常に大きく発展していくということになります。
 これは各国のそういった分野に対しての研究助成ですけども、縦にいろんな国がありますが、やはり欧米に比べまして、日本の研究開発助成は小さいというのが現状です。
 米国では、最近特にバイデンがこのサプライチェーン強化に向けた大統領令を出しておりまして、ここでは特にバイオテクノロジー アンド バイオマニュファクチャリングの強力なイニシアチブを発表しております。
 世界の生産高の3分の1を占める製造業で、合成生物学あるいは先ほどのEngineering Biologyが利用され、金額では4,000兆円を超えるということで、やはりサプライチェーンを強化、自国の経済基盤を強化しながら、人類規模の課題解決やっていこうということが強力に言われております。
 アメリカはもともとDOEを中心に、かなり長期にわたりまして、研究開発が進められてきております。ここにありますように拠点プラスネットワーク型のセンターを四つつくって、そこは2007年に始まっておりまして、15年がたち、今年の2022年からまた新たなイニシアチブが始まり、20年の研究開発が続けられております。
 英国におきましても、従来英国も六つ合成生物学の拠点をつくってきましたけども、2021年からEngineering Biologyのプログラムということで、このような各種の領域の開発が進められております。
 では、日本のポテンシャルはどうなのかということですけども、バイオものづくりに関連する論文の動向を見ております。代謝工学、植物合成、光合成細菌、ゲノム編集などを取り上げておりますけども、ここにありますように、5位、3位、5位、7位、4位といったところで、アメリカや中国からは引き離されていますが、その他のエリアは横一線でありまして、まだまだ巻き返しが可能な状況です。
 ゲノム編集に関しまして特に知財も含めて示しておりますけれども、やはり米国や中国に比べますと少ないというのが現状であります。
 続きまして、専門人材の育成についてですけど、この合成生物学の世界大会というのがありますが、ここにありように日本の参加団体は非常に少ないということで、不足している可能性があります。
 ここから先は、実例ですけども、ここにありますように光合成の能力を大腸菌などの微生物に入れて、CO2から直接作るとかですね。ここにありますような微細藻類を使った開発も非常にいいものが日本から出ています。それから、ここにありますように、従来は作れなかったブタジエンというものを微生物を使って作るような代謝経路を設計した成功例などです。
 非常に、史上最高耐熱のプラスチックを植物原料から作る例とか、様々な成功例が日本から出ております。
 最後にまとめですけども、ポテンシャルと課題です。バイオものづくりは、二兎を得る分野として非常に大きなポテンシャルを持っております。二つ目の丸にありますように、この様々なCO2を原料とした有用物質の生産等々、アカデミアが担うべき研究内容は非常に多いです。しかし、国際競争は非常に激しいものがありまして、我が国の優れた研究者を糾合する仕組みづくりや研究に必要な高度な機材、装置を使用できるような研究環境を整備していくことが重要であると考えております。
 さらに、アメリカでさえ今、人材不足と言われておりますけども、日本は特に人材供給源、アカデミア・産業界ともに、これをつくっていく拠点が必要だと考えております。
 以上です。
【杉山主査】  近藤先生、どうもありがとうございました。
 それでは、報告の最後になりますけれども、元先端ナノプロセス基盤開発センター 代表取締役社長の石内様に御発表いただきます。よろしくお願いいたします。
【石内委員】  石内でございます。半導体の集積回路の研究をずっと続けておりまして、今はEIDECを辞めておりますけれども、そういう立場からGXがどういうふうに見えるかという話をしたいと思います。
 今日はこういう話をしたいと思います。半導体を直接GXにつなげて、話題になることはそれほど多くないかもしれませんけれども、いろんな分野に半導体が使われていまして、その陰で支えるという役割もございます。ちょっとそういう認識ということで、幾つかの事例を紹介させていただきます。
 まず、半導体の産業ということですけども、電気を使う分野ではほとんど何かしら半導体が使われております。それから、ここ数年、戦略的な重要性が認識されて、各国が半導体振興策を策定しています。それで、GXへの貢献というのが陰に陽に多岐にわたっております。
 それから、半導体産業の規模は実はそれほど大きくなくて、5,800億ドルでございます。成長率は、今、7%です。日本のシェアとしては、今10%未満で、少し低落傾向です。今後の国のプロジェクト、民間の活躍に期待したいと思います。
 どういう研究分野があって、何が進行しているかをちょっと御紹介したいと思います。半導体のロードマップというものを策定しています。それを引用する形でお話ししたいと思います。
 1番目はまず微細化ですけれども、微細化だけではなくて、トランジスタ構造の3次元化とか、3次元実装技術を駆使して、集積密度を上げていくことを進めていて、これが半導体開発の一つ流れになっております。さかんに研究開発が行われて、巨額の資金が投入されているということでございます。
 ただ微細化だけではなくて、今までになかった組合せを半導体で実行することで、例えば、アナログ回路やパワー素子を集積回路と組み合わせる、センサーと集積回路を組み合わせることで、新しい機能を作って、これが結果的にいろんなところに使われて、省資源、省エネルギーに使われるということがございまして、この分野も進展しております。
 もう一つはBeyond CMOSと呼ばれているところですけれども、今までなかったものを作るということで、シリコンから外れて違う材料を使うとか、今までのアーキテクチャと違うアーキテクチャを作るとか、新しいことを作るということで、破壊的なイノベーションがこれで実現されるということを期待して、基礎研究の分野でも盛んな研究が進んでいます。特に新しい材料には期待するところが大でございます。
 最近の話題の一つとしては、3次元実装技術ということで、複数のチップを組み合わせて、新しいパッケージを作るということで、チップ間の信号配線が非常に短くなりますので、省資源、省エネルギー、かつ高速化が期待されるということでございます。この分野でも大きな進展がございます。
 半導体に関するそのほかの技術動向ですが、集積回路以外ではパワー半導体がとても大事で、電車、それから電気自動車のインバータとしても使われています。主流は今でも多分シリコンがたくさん使われていますけれども、新しい材料、シリコンカーバイト、ガリウムナイトライドを使うとエネルギーの損失が少なくなるということで、今後のGXへの貢献が期待されます。
 それから、酸化ガリウムなどの新しい材料にも期待されます。ダイヤモンドも候補になっています。それから、そのほかにもいろいろな半導体素子があって、受光素子、発光素子、CMOSイメージセンサーなどもありますし、そもそも太陽電池も半導体できておりますので、そういう形でいろんな分野でGXに貢献できるかと思います。
 半導体から見たGXです。まず半導体が使われる機器の省エネルギー化というのが一番大事でございまして、これに向けて半導体の研究者も研究を進めていると。それから一方で、半導体を作るときに大量なエネルギーを消費しています。ですから、そこの中の省エネルギー、省資源化、リサイクル、あとは無害化ですね、余計なものを出さないということが大事でございます。それから、今日もちょっとお話がございましたライフサイクルアセスメントがとても大事で、こういう何らかの簡便化手法が開発されていくと研究開発がよりきちんとできるのだろうと思います。
 アカデミアへの期待ということで、元々半導体は、非常にアカデミアの貢献が多いところでございます。原理実証から製品化まで実は10年以上かかるものが非常にたくさんありまして、基礎・基盤研究が大事だと。それから、大学と特に国立研究機関も含めてですけれども、この先10年かかるかもしれない研究に果敢にチャレンジしていただくということを期待しています。
 一方で、開発の初期段階からバックキャスト、今日も出てきましたけれども、応用時の効果でどういうことがありそうかということをバックキャストして、企画をしていただくということが大事であります。それから、試作・開発の環境の共有ですね。施設、研究装置の共有、それから産業界との連携が大事になりますし、今でもそうでございます。
 それから、国際連携はとても大事で、半導体は非常に競争も激しいですけども、国際連携も緊密に行う必要がありまして、この中で人材育成がとても大事だということを少しだけ最後に付け加えさせていただきます。
 今日、話したことはこういうことでございますけれども、半導体もGXに非常に大きく関わることができると思いますので、この機会を通じて皆様とも議論できることを期待しております。
 私からは以上でございます。どうも御静聴ありがとうございました。
【杉山主査】  石内委員、どうもありがとうございました。
 ここまで少し時間がかかってしまいましたけれども、各省庁の施策の方向性、あるいはファンディングの方向性、状況、そして国内外の比較、それから、また各分野における動向についてお話をいただきました。
 それで、本日、私の不手際で長引かせてしまいまして、11時までが予定時間となっておりますが、2回目の会では、かなり長めの議論を取ることも計画しておりまして、また、今回全ての領域についての御発表をまだやっていただくだけの時間はございませんでしたので、こちらに関しては2回目に、また第2回のシリーズを行っていきたいと思います。

議題6. 総合討議

【杉山主査】 こうした状況を踏まえまして、この後、手短ではございますけれども、議題6の総合討論を10分少しぐらい頭出し的な形でやらせていただければと思いまして、それを2回目につなげたいというふうに思っております。
 その中では、先ほど申し上げましたとおり、様々な諸動向を皆様にお聞きいただいた中で、今後、特に文部科学省を中心とした、このアカデミアをいかに活性化するかというような視点も含めて、ただそこにはやはり今日も御議論いただいているように、社会実装に向けたこのイノベーションの創出、人材の育成といったところでのアカデミアの役割の大きさというものを勘案しつつ、方向性を議論していくことにできればと思っております。
 本日は時間がかなり限られておりますので、できれば今まで御発言されてない委員の方々に、御発言をいただければと思うんですが、先ほど申し上げましたとおり、2回目に向けた頭出しという観点で、若干手短に論点をお示しいただければと思っております。
 ということで順不同で、御希望の委員の方々から発言を賜ります。
 では佐々木先生よろしくお願いいたします。
【佐々木委員】  九大の佐々木です。
 私は環境エネルギー科学技術委員会のメンバーをしておりますので、この小委員会は非常に期待しております。
 冒頭、千原局長様からち連続のイノベーションの重要性ということで言われましたけれども、今まで特にエネルギー分野ですとNEDOさんの事業が多くて、文科省さん、JSTの事業がなかなか立ち上げにくかったと思います。
 GIの戦略推進会議のワーキンググループでも申し上げたんですけれども、まさに社会実装に向けて2兆円規模の基金が創生されておりますが、逆にそちらだけですと次の技術の芽が育たなくなる、そしてその次の技術の芽を育てるアカデミアに人材がほとんどいなくなるという危機感をずっと持っておりました。
 本来でしたら科研費等で自由な発想で、芽を生み出して、それを文科省さん、JSTが、芽を育てて、NEDOさんが花を咲かせて、社会実装させるというスキームの、ちょうどど真ん中の文科省さん、JSTさんの事業がなかなかなかったということでありまして、今回のGXの事業というのは非常に重要だと考えています。
 私からは今後議論いただきたいということにもなるんですけども、3点だけ手短にお話しします。
 1つ目はまず、どの分野をネットワーク化するかということなんですけども、もちろん蓄電池、水素・燃料電池、バイオものづくり、半導体と出ておりますし、これはもちろん重要な分野だと思いますので、ネットワークをつくっていただきたいと個人的にも思います。ただし、個別研究をぜひ並行して幅広く、募集して、そういうところから次のネットワークをつくっていただくような、ちょっとフレキシブルな制度設計というのが重要だというのが1点目です。
 それから2点目は、今日の本体でもありますけども、人を残すは金と言いますけれども、2050年に活躍する人材を育成するというのが、経産省事業ではなかなかできない文科省事業だと思います。なので、ALCA-SPRINGで博士を102人育成した素晴らしい実績がありますので、これをぜひほかの分野でも入れることを考えていただきたいと思いますし、こういう事業の評価項目の中に、何人博士をきちんと育成したかということを入れるのも制度設計の例かなと思います。
 最後に3点目は、ネットワークをつくることが非常に大事だと考えています。NEDOの事業ですと当然選択と集中ということで、切磋琢磨してというところが中心になりますけれども、やはりアカデミアのいいところは、お互いにいろんな議論をして、まさに皆さんで議論して、共働して、サイエンスをつくっていけるというのがアカデミアの特徴であります。なのでそういう事業になるようなネットワークができる事業にしていただきたいと思いますし、その中で同志国になる海外の大学や研究機関にも、サテライトみたいな形で行って、入れていただいて、日本の若手の研究者が海外でも武者修行できるというグローバルなネットワークの核にこのGXの事業がなればと考えております。
 最後の3点は、ぜひ次回以降も議論していただければと思います。
 私から以上です。
【杉山主査】  佐々木先生ありがとうございます。
 続きまして、水無委員、よろしくお願いいたします。
【水無委員】  水無です。杉山先生、御指名ありがとうございます。
 まずは、今回ここの事業はNEDOとJST、あるいは文科省さんと経産省さんがうまくタッグを組んで、社会実装に向けて進んでいくことと理解しておりますので、産業界からも非常に高い期待が持たれると思います。それを実現するための制度設計であるとか、あるいは研究開発計画を議論するのがこの委員会だと思っています。特にバイオ分野においては、これまでの経緯を見てみますと次々に新しい技術、ゲームチェンジとなるような技術、例えば遺伝子組替えだとか、あるいはゲノム編集であるとか、そういうものが生まれて、産業界に対して貢献してきたということがあると思います。
 何をどこまでやるのかということは重要だと思いますけれども、そこをうまく決めていくと。それから同時に、途中から新興的に出てきたような技術もうまく取り入れられるような、フレキシブルな制度設計が必要かなと思います。
 それから、領域を決めるためには、企業のニーズをうまく取り入れることが大切だと思うんですけども、それを企業は密室では話をするもののオープンなスペースではなかなか話をしたがらないという傾向もあると思いますので、ぜひそのニーズをうまく取り込めるような制度設計も重要かなと思っています。
 それから、アカデミアの先生方に期待したいことの一つとしては、言葉を選ばずに言いますと仲良しクラブではなくて、うまく連携をしたチームづくり、それから、サッカーに例えるわけではないですけども、スタメンで出た選手が、メンバー交代をすると、さらにまた戻って来られるような制度設計も重要ではないかなと思っております。
 今回も含めて、今後議論させていただけたらなと思っています。
 以上です。
【杉山主査】  ありがとうございます。重要な観点でございます。
 続きまして、佐藤委員、よろしくお願いいたします。
【佐藤委員】  産総研の佐藤と申します。よろしくお願いします。
 短く四つを発言させていただきます。非常にいろんなお話を伺えてよかったと思います。
 一番危惧しているのは、JSTのCRDSでも発言させていただいたんですけども、これだけ高い技術を持っている日本であっても、市場導入や、そういう実証、標準化で負けてしまって、導入が遅れるとか、結局、全部取り上げられてしまうというのは絶対に避けなければいけないと思うので、社会への導入なども頭に入れておきながら、急いで、同時にこの研究開発を進めなければならないということを非常に一番に考えたいと思っています。
 そのためには常にウオッチして、軌道修正をしながらこの研究の方向を合わせていくという、後に4番目に言おうと思った人材というところにも絡んできますけれども、そういった研究をしていく必要があると思っています。
 2つ目は、先ほどほかの先生もおっしゃっていましたけども、その研究開発や基礎が終わったとかそういうことではなくて、既に弾み車的というか、回転型の研究の進め方をこの枠組みではしていただければなと思います。社会実装が終わっても実際はまたそこで必ず基礎研究が発生してくるので、常にそれを戻っていく仕組みが必要であると思います。もちろん金銭的には限られているので、いろいろと問題がありますけれども、そういった仕組み、回転型が要るなと思っています。
 3番目は、ALCA-SPRINGの分科会委員を長年、担当させていただいたので思ったんですけれども、非常に思い切った新しいプレーヤーというか、メンバーを入れていく必要があるなと思っています。一見関係ない分野に非常にこの革新的な技術となるようなところがあると思うので、発掘して、それを取り入れるといった仕組みが必要だなと思っています。先ほどの仲よしクラブもそれは本当に大事なんですけども、それをちょっとある意味脱却するというのも大事かなというふうに思っています。
 四つ目です。人材に関しては二つの視点から考えたいと思っています。一つは今の革新的GX技術開発の委員もそうですけど、この全体のプロジェクトを引っ張る人材ですね、どちらかというとシニア――シニアというとちょっと言い過ぎですけども、全体を引っ張る人材として、自分たちのところばかりを考えないで、日本あるいは世界全体の広い意味できちんと俯瞰できる人材を発掘する、それを我々も応援するということが一つあります。もう一つは、将来を担う人材で、一つは大学院生、大学学部生といったことですけれども、学力が下がっていることも少し気になるところですが、そういったところを意識啓発していく必要もありますので、大学の先生への意識啓発も要るかなと思います。二つ目は中高生です。今日はこの場では議論できませんが、中高生の学力アップが必要かなと思っています。また興味を持ってもらって、小中教育の重要性というのは非常に重要だと思うので、ぜひ、何かの形で見直していただきたいと思います。
 以上です。
【杉山主査】  どうもありがとうございます。
 続きまして、田畑委員、よろしくお願いいたします。
【田畑委員】  かずさDNA研究所の田畑です。
 私はバイオの分野におりまして、今日はいろいろなお話を興味深くお聞きいたしました。特にGXに関わるバイオの分野では、基礎研究に興味がある研究者は非常に多いのですが、その中から社会の要請とか、あるいはもっと生々しく言いますと研究費の事情によって、勇気を持って実用化研究に踏み出しているという状態かと思います。
 ほかの分野に比べて比較的小型で、個人レベルの研究開発が多くて、研究者の数だけ新しい発想やシーズがあると思います。これらをできるだけたくさん具体化、具現化して、その中からさらに展開が期待できるものに対して、大型の研究費とか設備を提供して大きく育てるという戦略が有効かと思います。
 実用化研究分野で既に活躍している研究者が少ないため、ややもすると、研究費の集中化がやはり起こりがちで、これはもちろん成果は期待できるんですが、一方でどんどん効率が下がってきますので、それよりはより挑戦的、冒険的なものを取り上げるメリットのほうが大きいのではないかと思います。ですので、ここは文科省らしいファンディングで、いかに若手研究者とか有望なシーズを発掘して育てるかというところがポイントかというふうに思いました。
 一方、産業界のほうですと、国内については、このGXに関連するバイオ分野で、大きな事業が既に確立して、走っているという企業はごく僅かかと思います。でもこれを逆に言うと、これまでの産業の発展にとらわれない新しい産業も立ち上がる可能性があるというふうにも考えることができると思います。
 また、この分野で大学院生が非常に少ないことが大きな問題になっているんですけども、社会への出口が増えれば、若手の育成にもつながるというふうに思います。もちろんクリアすべき方は非常に多いですが、バイオ分野にとっては非常に大きなチャンスだと捉えています。
 以上です。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 志満津委員が手を挙げられておりますので、非常に手短にお願いできますでしょうか。
 お願いいたします。
【志満津委員】  今日お話を聞いて、大学、企業だけではなくて、社会課題まで含めた専門分野を融合した研究が重点に置かれるということを大変頼もしく思いました。
 1点だけコメントですが、そういった場合に社会課題のニーズの分析に基づく要素研究の切出しや、有望テーマをどういう形で研究すべきなのかという研究マネジメントについての研究がもっと加速するべきだと考えています。そういった領域においてもアカデミアの中で、研究テーマとして取り上げられていることを非常に期待しております。
 ありがとうございます。
【杉山主査】  大変重要な観点だと思います。ありがとうございます。
 時間になってしまいましたけども、まだ日産自動車の新田委員からは御発言いただいていませんが、何かございませんでしょうか。
【新田委員】  すいません、最後になりました。もう時間がないので、また、次回以降にお話ししたいですけど、非常にこういう機会で議論させていただいてよかったと思っております。
 私は自動車のほうにいますので、今、電動化ということでバッテリー技術というのが非常に重要になっております。今まで、バッテリーを作って、車を作って、それを消費するという考え方だったんですが、今はリユース、リパーパスで、最終的なリサイクルをしてもう1回戻すという形になります。その部分の仕組みができておりませんので、やはり資源の問題と環境の問題、それから生産のときに発生するLCA的な観点ということで、やはりそこに手をつけないと、なかなか競争力と社会から受け入れられるということはなくなるのではないかと思っております。
 もう一方では、法的な考え方ですね、レギュレーション、私もちょっとJABEEで、コンビナーを何年かやっていたんですけども、国際標準とか国際規格というのがありまして、それでかなりいろんなアメリカ、ヨーロッパ、中国であるとか、そういったところが主導しておりますので、単に技術だけではなくて、そういった法的な、いわゆる技術法規といったものもうまくマネージに取り込みながらやっているというのが非常に印象的です。ですので、技術と同時に、社会的インセンティブとか先ほどから議論ありますけども、そういった意味で法的な措置といいますか、考え方を入れながら研究開発を進めていければいいのではないかと思っています。すみません、よろしくお願いします。
【杉山主査】  重要なポイント、大変ありがとうございます。
 ということで、本日、限られた時間ではございましたけれども、様々な御発表をいただき、また議論の頭出しということになってしまいましたが、いただきました。
 これまでいただいた御意見に関しましては、次回の委員会に向けて、事務局のほうと協力しながら一旦整理させていただいて、また、それを基に次回の委員会をできるだけ効率よく、また実り多い議論に持っていけるように整理をしてきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 ということで、本日、少し延びてしまいましたけれども、予定された議題は以上となります。
 最後に、事務局から事務連絡をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【吉元(事務局)】  本日の議事録は、委員の皆様に確認の上、ホームページに掲載して公表させていただきます。
 また、今日は、かなりいろいろな議題がありましたけど、時間の都合で御発言、または言いたいことがある、御意見等がありましたら、メールのほうで御連絡いただければなというふうに思っています。
 次回の委員会は1月23日を予定しております。杉山主査のほうからお話ありましたけれども、また、ここでも総合討論の時間をなるべく多く取ろうと考えていますので、また、引き続きよろしくお願いいたします。
 事務局からは以上です。
【杉山主査】  ありがとうございます。
 それでは、これをもちまして、環境エネルギー科学技術委員会 革新的GX技術開発小委員会の第1回の会合を閉会いたします。
 どうも御協力ありがとうございました。次回もぜひよろしくお願いいたします。

―― 了 ――
 

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(研究開発局環境エネルギー課)