原子力科学技術委員会 原子力研究開発・基盤・人材作業部会 群分離・核変換技術評価タスクフォース(第2回) 議事録

1.日時

令和3年9月3日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

新型コロナウィルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 第1回タスクフォースでの主なご意見について
  2. 今後の研究開発の方向性について
  3. 基礎基盤的な研究開発について
  4. その他

4.出席者

委員

中島主査
小山主査代理
小竹委員
竹下委員
辻本委員
長谷川委員
藤田委員
山本委員
 

文部科学省

松浦 原子力課長
鈴木 原子力課室長(人材・研究基盤担当)

オブザーバー

雨宮 尚之 京都大学大学院工学研究科 教授
横山 啓一 日本原子力研究開発機構 物質科学研究センター アクチノイド化学研究グループ グループリーダー
西原 健司 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 分離変換技術開発ディビジョン 核変換システム開発グループ グループリーダー
松村 達郎 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 分離変換技術開発ディビジョン 副ディビジョン長
竹内 正行 日本原子力研究開発機構 燃料サイクル設計室 室長
前川 藤夫 日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター 核変換ディビジョン ディビジョン長
高野 公秀 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 燃料・材料工学ディビジョン 燃料高温科学研究グループ グループリーダー
林 博和 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 分離変換技術開発ディビジョン MA燃料サイクル技術開発グループ グループリーダー
伴 康俊 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 分離変換技術開発ディビジョン 群分離技術開発グループ グループリーダー
 

5.議事録

科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会
原子力科学技術委員会 原子力研究開発・基盤・人材作業部会
群分離・核変換技術評価タスクフォース(第2回)
令和3年9月3日


【鈴木原子力課室長】 それでは、定刻になりましたので、第2回群分離・核変換技術評価タスクフォースを開催いたします。
今回のタスクフォースについては、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からオンラインで開催しておりまして、これに関連した確認事項などもございますので、議事に入るまでは事務局にて進めさせていただければと思います。
まず、オンライン開催に際しての留意事項を御説明いたします。

[オンライン開催に際しての留意事項について事務局より説明]

以上が本日の進行に当たっての留意事項となります。
続いて、本日の配付資料を確認させていただきます。
資料については議事次第に記載してございます。本日の議事については、第1回タスクフォースでの主な御意見について、今後の研究開発の方向性について、基礎基盤的な研究開発について、その他となってございますが、配付資料の1から3として、それぞれ議題(1)から(3)に対応した資料を配付させていただいております。
参考資料といたしましては、前回御議論いただいた運営規則等を配付してございます。参考資料4と5と6としまして、前回の作業部会で追加でいただくとしていた各委員からの御意見についても配付しております。これについて説明の機会は特に設けておりませんが、ご一読いただければと思っております。
それでは、委員の皆様の御出席を確認いたします。映像が映っていない委員もいらっしゃるため、お名前をお呼びいたしますので返事をしていただければと思います。
中島主査でございます。
【中島主査】 中島です。よろしくお願いします。
【鈴木原子力課室長】 小山主査代理でございます。
【小山主査代理】 小山です。よろしくお願いいたします。
【鈴木原子力課室長】 小竹委員でございます。
【小竹委員】 小竹です。よろしくお願いします。
【鈴木原子力課室長】 竹下委員でございます。
【竹下委員】 竹下です。よろしくお願いいたします。
【鈴木原子力課室長】 辻本委員でございます。
【辻本委員】 辻本です。よろしくお願いします。
【鈴木原子力課室長】 長谷川委員でございます。
【長谷川委員】 長谷川です。よろしくお願いします。
【鈴木原子力課室長】 藤田委員でございます。
【藤田委員】 藤田です。よろしくお願いいたします。
【鈴木原子力課室長】 山本委員でございます。
【山本委員】 山本です。よろしくお願いいたします。
【鈴木原子力課室長】 ありがとうございました。
本日は8名の委員全員に御出席いただいておりますので、会議は成立しております。
また、本日は京都大学の雨宮先生、原子力機構の横山様にも御参加いただきまして、後ほどプレゼンテーションをいただく予定となってございます。
また、原子力機構より、西原様、松村様、竹内様、前川様、高野様、林様、伴様の7名にも、質疑応答の対応として御参加いただいてございます。
それでは、これから議事に入りますが、運営規則第4条に基づき、本会議は公開とさせていただきます。また、第5条に基づき、本日の議事録につきましても、後日ホームページに掲載いたします。
事務局からは以上でございます。
ここからの進行は中島主査にお願いいたします。
【中島主査】 ありがとうございました。
では、委員の皆様、よろしくお願いいたします。本日、議事次第にございますように、その他を入れて四つの議題ということです。前回いろいろ御意見をいただきましたので、まずはそれのレビューということになるかと思います。
資料1について、まずは事務局より説明をお願いいたします。
【鈴木原子力課室長】 それでは、資料1について説明します。
資料1については、前回、委員の皆様からいただいた御意見について、追加でいただいた御意見も併せて、簡単に概要を事務局でまとめたものになっております。
まず、全般への意見として、廃棄物問題を考える上で、再処理技術、MAの分離・核変換は、引き続き重要性については変わらないのではないかという意見がございました。
一方で、ADSの要素技術の開発は着実に進められているが、実用化までには相当距離がある印象ということで、今後の進め方としては、原子力システムにADSをどのように導入するかということをきちんと検討した上で技術評価をしていくことが必要ではないか。
また、それに当たっては、将来の原子力システムについては、ウランショート時期の見通しの変化により軽水炉の活用が比較的長く続くと考えていることや、我が国の核燃料サイクル政策が不透明であるといったようなことも踏まえた上で、シナリオを考えていくことが必要ではないかというような御意見がございました。
また、研究開発の進め方については、原子炉の研究開発については、従来のモデルとは異なる方法が取られるようになっていることも踏まえて、ADSについてもニーズ起点の突破型の研究開発を目指すマネジメントに変更していったほうがいいのではないかといった御意見もございました。
また、国民の理解を得るということも重要であり、コストやメリットの定量化、説得力のある説明をできるようになるということが重要ではないかということや、研究開発の各ステップで民間事業者を巻き込むことが重要ではないかといった御意見がございました。
個別の技術について、分離技術については、実スケール化の課題がまだ特定されておらず、今後明確にしていく必要があるといったことや、溶媒抽出か抽出クロマトかどちらに絞り込むのかの検討に当たって、いつ頃、どのような評価軸でといったことを今後決めていくことが必要ではないかという御意見がございました。
核変換技術については、ADS初号機の性能目標を示す必要があるといったことや、技術的実現性の現状はどの程度かを示すことが必要といった御意見がございました。
また、アメリカやフランスについては、ADSの工学試験に入る前に高速炉に舵を切っているといったことから、工学試験に入るかどうかを判断する前に、高速炉との比較をきっちりしていく必要があるのではないかといった御意見や、ADSの安全性について、1Fの事故を踏まえて再検証をすることが必要ではないか、加速器開発については、パーツ個々での開発・実証が可能という利点もあり、ビーム強度が大きい加速器についてはRI製造等にも考えられるので、こういった研究開発については重要ではないかといった御意見がございました。
燃料製造・再処理技術については、実用化までのクリティカルパスをきちんと整理していくことが必要であるとの御意見がありました。
J-PARCの実証施設については、原子力開発においてもシミュレーションに置き換えていくところがあるので、ADSについてもシミュレーションでの置き換えについて検討が必要であるということと、一方で、どうしても実証は必要であるところは残るはずなので、そこをきちんと整理していくことが必要ではないかという御意見がございました。また、実証施設ができることのJ-PARCの状態についても、きちんと考慮していくことが重要ではないかというような御意見がございました。
簡単ではございますけれども、前回の意見についてはこのようにまとめさせていただきました。これらの御意見等を踏まえて、原子力機構より本日プレゼン資料を用意していただいております。全部にきちんと答えられているかどうかというのは課題がありますけれども。文科省からの説明は以上でございます。
【中島主査】 鈴木室長、ありがとうございました。
今御説明がありましたが、前回での議論と、先ほど紹介がありましたけれども、その後いただいた、添付のほうに参考資料として追加されている御意見も反映した形で取りまとめていただいたということでございます。この内容について、発言の意図が違うとか、ここが抜けているとか、何か御意見ございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。特によろしいですかね、事前にも多分御覧になっていただいているかと思いますので。では、この意見をベースにということで進めます。なお、主査としてはこのタスクフォースでこれらの意見を全部クリアした上で報告書をまとめる必要があるのかということについて、今後の宿題に残さざるを得ないところもあるのかと思っております。
先ほど鈴木室長からもお話がありましたけれども、この意見を踏まえた上で、JAEAさんのほうで今日の説明資料を用意いただいたということですので、これについて、全てではないにしても、ある程度の回答あるいは見解が次の御説明で得られるものと思っております。
では、よろしければ議題2に早速移りたいと思いますが、よろしいでしょうか。 特に御意見なければ、それでは議題2として、今後の研究開発の方向性ということでございます。
資料が2-1、2-2と二つございますが、まずは資料2-1のところですね。ADSの導入シナリオとその効果について、JAEAさんより御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】 原子力機構、西原です。
私のほうから、ADSの導入シナリオとその効果ということで、資料2-1を説明させていただきます。
2ページに行っていただいて、分離変換の導入シナリオというのは、原子力発電の利用に非常に影響を受けます。現在、第6次エネルギー基本計画が議論されていますけれども、そこではこのようなことが言われています。
参考値として、2050年に原子力プラスCO2回収火力で30から40%程度を発電する。2050年に向けた道筋を複数描くとされています。この参考値をそのまま見ますと、原子力発電は2050年にゼロから40%の幅で発電するというふうに読めます。つまり、幅広い利用あるいは不利用のシナリオが想定されるわけです。
下のグラフは、現在稼働中の軽水炉から、今世紀の原子力発電容量を予測したものです。2040年半ばに軽水炉リプレース時期が来ますけれども、そこでリプレースに成功した場合は原子力利用を継続することになります。ここでは33ギガワットでリプレースした場合ですけれども、おおよそ電力需要の20%ということになります。一方、リプレースしない場合は原子力フェードアウトシナリオに移行します。
3ページをお願いします。
分離変換の導入シナリオでは、ケーススタディーとして、この継続とフェードアウトからおのおの一つずつシナリオを選定しました。シナリオ1では、今世紀末に高速増殖炉を本格導入するとし、それまでの期間、つまり今世紀後半に発生する軽水炉使用済み燃料に分離変換を適用する場合です。シナリオ2は、フェードアウトし、終了後に残る軽水炉使用済み燃料に分離変換を適用する場合です。
4ページをお願いします。シナリオ1から始めます。
横軸に西暦を取ってあって、左上の小さな四角が現在の状況です。間もなく六ヶ所再処理工場が竣工し、そこから回収したプルトニウムをプルサーマルで軽水炉利用します。プルサーマル使用済み燃料は当面貯蔵になります。六ヶ所再処理工場からはマイナーアクチノイド(MA)とフィッションプロダクトを含んだガラス固化体が発生して、それが将来処分されます。
2050年頃にこのシナリオではプルサーマルの使用済み燃料再処理を開始するものとしています。このプルサーマル使用済み燃料からのプルトニウムを少数基の高速炉で利用し、その使用済み燃料は本格導入まで貯蔵するとしています。これは現在、高速炉戦略ロードマップで言われている、今世紀半ばに少数基、今世紀後半のしかるべき時期に本格導入というものに沿ったものになっています。
2050年の軽水炉の再処理では、MAとフィッションプロダクトを取り出してガラス固化体処分します。
右上の四角ですけれども、2100年には高速増殖炉が軽水炉のリプレースとして本格導入されて、そこで併せて高速炉燃料の再処理も開始されます。ここではプルトニウムと併せてMAが分離されて、これは高速炉に戻される、あるいはADSで核変換するというオプションがあります。
今回考えたのは、今世紀後半、2050年から2100年の間の四角の部分です。ここに階層型の分離変換を導入しますと、軽水炉使用済み燃料ウランもプルサーマル使用済み燃料も、再処理でMAを分離することになります。MAはADSで核変換します。
このようなシナリオを諸量評価した結果を、次の5ページに示しています。
左上のグラフは発電容量を示していて、33ギガワットで一定になっています。2065年から、一番下の紫ですけれども、高速炉が1.2ギガワット、例えば0.6ギガワットが2基とかいった感じで運転開始されます。また、2065年から5基のADSが建設されて、MAを核変換します。高速増殖炉は2086年から導入されています。
真ん中のグラフは再処理量を示したもので、現在800トンでウラン使用済み燃料が再処理されています。それに対して、2050年からMAの分離が実用化され、ウランとプルサーマル使用済み燃料に対して適用されます。
最後に、右上のグラフは使用済み燃料の貯蔵量を示したものです。
6ページをお願いします。分離変換を実施したときの処分概念について、ここで補足しておきたいと思います。
左のグラフはガラス固化体1体の発熱量を示したもので、作った当初は2キロワット程度の発熱量を持っています。それが50年間冷却すると、おおよそ350ワットの発熱量となって、これは右上の図に示したように、処分場で離間して定置する、そういった概念が必要となります。
発熱量の内訳を見ますと、ストロンチウム、セシウムとMAがほとんどで、MAを核変換することによって長期の発熱がなくなり、ストロンチウム、セシウムが支配的となります。ストロンチウム、セシウムの半減期は30年で、例えば10半減期、300年程度冷却すると、右下に書いてあるような非常にコンパクトな、集積的な定置が可能となります。今回の解析では、この右下の集積的な定置が適用できるとしました。
7ページをお願いします。こちらに示してあるのが処分場の負荷低減です。2086年以降の廃棄物、つまり高速炉サイクルからの廃棄物を除いて記載しています。これは今回の階層型分離変換導入あり・なしにかかわらず発生する部分になります。
左のグラフは高レベル廃棄物の発生本数を示したもので、左側が階層型なし、右側が階層型ありになります。2049年以前のものは変わりません。2050年以降、4.2万本のプルサーマル・ウラン使用済み燃料からのガラス固化体が発生します。それに対して階層型を導入すると、60%程度減少していって7万本になります。
右のグラフはそのための処分面積ですけれども、階層型なしの場合は1.9平方キロメートル程度であったものが、階層型ありの場合は非常に集積的なものになって、事実上無視できるほど小さくなります。
次に、シナリオ2について示したいと思います。8ページをお願いします。
シナリオ2では現状は同じで、六ヶ所再処理工場を稼働します。ただし、プルサーマルでプルトニウムを消費し切れない場合は、六ヶ所再処理工場を停止するということになります。2050年頃にはウラン使用済み燃料とプルサーマル使用済み燃料が残っている状況になり、それは直接処分します。分離変換を導入した場合は、この直接処分する部分に対して再処理を行い、プルトニウムとMAを核変換することとなります。ここではMAだけではなく、プルトニウムも追加しています。
9ページで、プルトニウムを核変換する必要性について説明します。9ページは、プルサーマル使用済み燃料中のプルトニウムとMAの重量及び発熱量、それから放射性毒性を示したものです。
重量で見ますと、プルトニウムが7%、MAが1%ということで、7倍程度物量が多いことが分かります。
発熱量はMAの半分程度です。
最後に放射性毒性ですけれども、これは1,000年から10万年、100万年ぐらいのレンジで、プルトニウムのほうが大きいことが分かります。また、プルトニウムは核拡散上の懸念も生じますので、MAと同じかそれ以上に核変換の必要性が高い物質ということになります。
10ページをお願いします。こちらに諸量評価の結果を示しました。
ADSは2065年から6.3ギガワット、24基が導入されるとしています。ここでのADSはMA核変換用の設計を用いていて、出力が0.26ギガワットと非常に小さいものを用いているために、24基と大きくなっています。これを今後、プルトニウム用の設計に変えていくこと、あるいは高速炉や軽水炉といった可能性も模索していくことが課題だと考えています。
再処理に関しては、2050年からMA分離を行います。量としては年間400トン、あるいはプルサーマルに関しては100トンです。このようなことをすることで、2100年にはこういう使用済み燃料は全て処理できるということになります。
11ページをお願いします。
この場合の廃棄物ですけれども、発生本数としては、階層型なしの場合は使用済み燃料直接処分用のキャニスターということになります。これは非常に大きなもので、ガラス固化体よりも処分負荷の高いものになります。これがおおよそ4.3万本発生します。それに対して、階層型を導入した場合には全て150リットルのものになって、このように減少します。
処分面積は、直接処分の部分は5.3平方キロメートルだったものが、非常に小さくなるということが示されています。
以上、諸量評価のまとめですけれども、今回は今世紀後半に着目した解析を行いました。原子力シナリオというのは不透明ですけれども、軽水炉からの使用済み燃料バックエンド対策というのはいずれにしても必要となります。それに対して、階層型の分離変換を導入することで、発生量や処分場規模を低減できます。ただし、フェードアウトシナリオではADSの導入基数が非常に多く、その辺りが研究開発課題となっています。
以上でシナリオの部分は終わって、13ページから、第1回タスクフォースの補足として、経済性と安全性について説明したいと思います。
14ページは、前回の作業部会でも示した資料ですけれども、コストの予備的検討の結果です。
上の表はADSのコストで、建設費が2,300億円、運転維持費と合わせて1基で6,000億円というのが40年間の見積りです。
左下のグラフは、軽水炉40基・40年運転に規格化したもので、その場合はADSの基数は4基となります。
そのほか、群分離、MA燃料製造、MA燃料再処理等を合わせて、おおよそ4兆円というコストがかかります。それに対して売電であるとか処分場のコスト低減というメリットを合わせますと、合計1兆3,000億円程度の赤字というかコストになります。これを軽水炉40基・40年の発電量で割ると、おおよそ0.12円から0.13円の発電原価ということになります。
最後に15ページですけれども、ADSの安全性に関する検討状況を説明します。
これまでレベル1のPSAを行って設計基準事象を抽出し、対応方策を検討しています。10のマイナス6乗/炉年を超える事象というのは二つしかなくて、ビーム窓破損と外電喪失です。
ビーム窓が破損した場合、この青の図に示してあるように、ダクトの中に鉛ビスマスが流入していって振動し、最後に静定するような事象になります。この場合、中性子源が炉外に押し出されますので、炉心出力が急激に低下して炉心損傷には至りません。また、真空度悪化によって破損を検知して、加速器の最終段にある即時遮断弁で上流を保護するとともに漏えいを防止します。
また、外電喪失の場合はDRACSとか、そういう受動的なもので崩壊熱を除去することができます。それが4系統全て失敗した場合でも、右下のグラフにありますように、温度上昇の速度は緩やかで、炉心損傷に至るまでに時間オーダーの余裕があり、アクシデントマネジメントといったことは可能になります。
私のほうからは以上です。
【中島主査】 ありがとうございました。
今、JAEAさんからシナリオ、それから最後のほうでコメント、回答的な説明もいただきました。では、まずこれにつきまして、内容についての御質問あるいは御意見をお願いしたいと思います。挙手ボタンか、あるいは直接ミュートを外して御発言でも結構かと思いますが、いかがでしょうか。
小山委員。
【小山主査代理】 二つほど教えていただけますか。
一つは、諸量計算をされて、ADS5基とか4基とかいう話があったんですけれども、ここで言われているADSと、前回お話があった初号機の絵を見せていただいたADSは同じものかどうか。初号機を造れば、今、諸量評価をされたような未来が描けるかどうかということが一つ。
それからもう一つは、6ページ辺りで、分離変換でどれだけ廃棄物が減るか、処分場が楽になるかという計算があったんですけれども、この辺の計算というのは、MAの回収率を幾らに置くかで全然違ってきますので、ここではどれぐらいのMA回収率を設定してあって、それはこれまでの研究開発で実現性のある値と考えているかということを教えていただければと思います。
以上2点、お願いいたします。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】 例えばシナリオ1では5基としていますけれども、その最初の1基が初号機に当たるわけです。この初号機でいきなり800メガワットを達成できるかどうかというのは、今後のR&Dにもよるかとは思います。例えばそれが400メガワットだったり200メガワットだったりした場合は、5基ではなくて6基必要であるとか、そういった結果になる可能性があります。いずれにせよ、最終的には800メガワットの実機というのを目指すべきかなと考えています。
2番目の質問に関しては、この解析ではかなり高い回収率を設定しています。具体的には、最初のMA分離のところでは99.9%です。9が三つです。これが例えば90とか95とかになっていくと、集積定置ではなくて、もう少し定置面積の大きな、余裕を持った置き方のレイアウトがふさわしくなってくるかと思います。
99.9%の実現性については、松村さんか伴さんに少し補足いただきたいんですけれども、いかがでしょうか。
【松村原子力研究開発機構分離変換技術開発ディビジョン副ディビジョン長】 原子力機構の松村からお答えいたします。
回収率99.9%については、多段抽出を行えば全く問題なく実現可能であると考えております。現状の実液試験におきましても、実際に検出限界以下まで回収できておりますので、問題ないと考えております。
以上です。
【中島主査】 小山委員、よろしかったでしょうか。
【小山主査代理】 ありがとうございました。
最初の質問のところですけれども、ここで議論となっている今後のTEF-TとかTEF-Pとかの開発で初号機に至ると。その初号機に対する、そういった投資で出てくる初号機というのが、どれぐらい実効的なメリットがあるかということを議論していた点で、そうすると今のお話は、初号機と諸量評価との間には結構距離があるというふうに聞こえたんですけれども、そういう解釈でよろしいですか。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】 そうですね、このシナリオにおいては、初号機1基では力不足であるということになります。
【小山主査代理】 その1基を多数にするのは別にいいかと思うんですけれども、それでは、複数にしさえすればこれは実現できると、そういったものが初号機としてできますよというお話という理解でよろしいんですか。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】 はい、いいと思います。
【小山主査代理】 分かりました。ありがとうございます。初号機のところが、もう少し具体的にどういうものかというのが今後出てくるとありがたいなと思っています。
ありがとうございます。小山からは以上です。
【中島主査】 では、まず山本委員からお願いします。
【山本委員】 名大の山本です。御説明どうもありがとうございました。大きく3点コメントさせていただきます。導入シナリオの話と経済性の話と安全性の話です。
まず、導入シナリオについては、こういう分離変換技術が実用化に至ったときの処分場の負荷低減について改めて定量的に示していただいて、非常に大きな意義があるということを共有できたのは意味があったかなと思います。
一方で、この分離変換技術は300年程度の長期貯蔵の話を前提にしていまして、そこの社会的であるとか技術的な課題というのがまだ全然議論されていなくて、これは結構大きなポイントかなと思っております。
もう一つは、後で小竹委員からもしかしたら御発言があるかもしれませんが、やっぱり高速炉のオプションとの比較で議論する必要があって、その点がないので、なかなか評価が難しいかなと思いました。
二つ目の経済性ですけれども、今回はサイクルコストのみでこれを見ておられるんですが、やはりそれでは若干単視眼的というか、若干見方が狭いような気がしております。そもそもの話なんですけど、廃棄物の処理ってやっぱり費用がかかるわけで、コストは重要なファクターではあるんですが、コストだけじゃなくて、環境負荷低減であるとか長期的な安全性ですよね、そういう多角的な視点から見ないと議論の方向性を見誤るんじゃないかなと思いました。
最後、安全性の話なんですけれども、若干辛辣な言い方で申し訳ないんですけど、1F事故の後、安全性についてADSの分野では議論してこなかったんだなと私は受け取りました。本当にこれが実用化に向けて進むのであれば、きちんと安全の考え方から議論をする必要があるかなと思います。
以上です。
【中島主査】 ありがとうございました。
機構さんのほうから何か御意見はございますか。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】 300年の件に関してはそのとおりだと思います。
それから、高速炉オプションとの比較ということについては、2100年頃に実際そういう比較を行う状況が出てくると考えています。それより以前の今世紀後半に着目した検討というのが今はちょっと足りていないかなと思っていて、そういうところで今やっているところです。
サイクルコストだけではなくて多面的評価も重要だという御指摘をいただいていて、ここに関して学会等の活動でこういったところを始めているところになります。そういったところで、外部も入れて進めていきたいと思っています。
最後、安全のところなんですけれども、外部事象等ですね、そういったところに関してはあまり検討が進んでいないのは確かです。そういったところは高速炉の考え方と非常に近くなっていくと思っていますので、ADS独自の部分というのをそれに加えながら検討を進めていけたらなと思っています。
以上です。
【中島主査】 山本委員、特に追加はよろしいですかね。ありがとうございました。
多分、藤田委員が先に手を挙げていたかと思いますので、藤田委員、お願いします。
【藤田委員】 御説明ありがとうございました。
二つ質問がありまして、一つは、7ページのパワーポイントで、先ほど小山委員からもちょっと出ましたMAの回収率です。もともとJAEAさんはスリーナイン(99.9%)で議論していらっしゃって、工学的に考えたときに99.9%は確かに可能なんですけれども、二次廃棄物の発生量等を考えると、やはり99.9%ではなくて、せいぜいツーナイン(99%)で評価をするほうが一般産業界が入りやすいので、99%という値についても評価をしていただきたいというのが1点。
それから、先ほどから経済性の話が出ているんですけれども、実はまだ機器の仕様も明確でない時点で経済性というのは非常に予備的なものでありますので、ここはもう少し根拠をはっきりさせるといいのかなと考えております。また、ADSの炉心ではなくて加速器側は、今日、後ほど京大の先生からお話があると思うんですけれども、いろいろな加速器の可能性がまだありますので、ここで変に経済性で固定しないほうがいいのではないかと考えております。
以上です。
【中島主査】 西原さん、どうぞ。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】 ありがとうございます。
99%の場合の評価というのも、今後やっていく必要はあると思っています。
コストについては、設計が煮詰まっていない段階でいろいろなスケールファクターみたいなものを使って出した粗いもので、根拠という意味ではかなり怪しいところは御指摘のとおりであります。そういう意味では、今後新しい技術も検討しながら、経済性の評価を進めていくのが大事だと思っています。
以上です。
【松村原子力研究開発機構分離変換技術開発ディビジョン副ディビジョン長】 原子力機構の松村です。先ほどの回収率の御質問に関しましてお答えいたします。
99.9%、確かに実現は可能なんですが、プラントがどうしても大きくなるという欠点がございます。そこで今、回収率を90%、70%とかなり極端に下げた状態で、どのぐらいの段数が必要であるか、全体の分離プロセスの単純化がどこまでできるかというような検討を始めたところでございます。そういった検討をするためには、地層処分関係の方々とも協力が必要ですので、そういった連携も進めております。今検討を進めておりますので近々公開できるかと思います。
以上です。
【藤田委員】 よろしくお願いいたします。
【中島主査】 よろしいですかね。それでは長谷川委員、お願いいたします。
【長谷川委員】 発表ありがとうございました。
私からは二つ質問がございまして、質問というかコメントです。
最初は、先ほど山本委員のほうからありました処分場の負荷低減の件について、今回いろいろ数値が出てきてよかったなと思います。ただ、表現のし方として、面積だとか本数を書いてあるという点を、もうちょっと強調したほうがいいかなと思います。、要は「直接処分をして、そのままほっときなさい。ほっとけば、それでしばらくは問題解決は先延ばしにできますよね」という意見を言う方もおられるわけですよね。「下手に触っていろいろ変なものを増やすよりは、そのまま再処理しないで直接処分しておいたらいいじゃないですか」と、将来の技術開発を相当過大に期待して、そういうことをおっしゃる方もいるわけです。
具体的に今回、面積がどのぐらいとか本数がどのぐらいと出てきていますし、それから、処分したことによってボリュームがどのぐらい小さくなるか、具体的に6ページにある図で示されているわけですから、直接処分に比べて面積だけでなくボリュームがどう変わるかとかを示した方がよいと思います。一方で集まれば集まっただけ放射線の強さが高くなるのはしょうがないのですけれども、現実的に社会から隔離したところにこれだけのボリュームがあって、何もしなければこれだけの面積とかが本来必要だというものがここまで小さくなりますというように、もう少し数字と、もう一つはイメージがもっと湧くような情報を出していただけるほうが、この分離核変換技術の有効性というか、処分場の負荷低減をもっとアピールできるのではないかと思いました。
それから二つ目は、ADSの安全性に関する検討状況のところで、PSAによるものだけが出されているのですけれども、福島のときには水素爆発だとかそういうものをあまり深刻に考えていなかった部分があったと思います。このADSの場合には、例えばそういう爆発性のガスがどのぐらい出て、あるいはそれが爆発して飛散することはないのですかとか思ってしまいます。それから前にもちょっと出ましたけれども、圧力バウンダリーですね。このADSはそんなに圧力が上がらないからいいんだという話もありますけれども、隔壁がない分、ビーム窓が壊れた後で、ここの絵で説明されているのは、ただPb-Biがビーム輸送管の中に入ってきて、液面が上昇したという話で終わってしまっています。この後どういうふうに中に入っていたものが外に出ていったり、それから加速器系を逆流して外部に放出されていくシナリオも考えられるのではないでしょうか。それはどんなところで防ぐようにしているとか、そういうところをもう少し説明されたほうがいいんじゃないかと思いました。
この安全性の中に炉心損傷というのがありますけれども、ここで想定されている炉心損傷というのは、溶融しているPb-Bi金属の中での燃料集合体のメルトダウン、溶けているものの中にメルトダウンというのも何か変な感じがして意味がよく分かりません。どういう事象がこの炉心損傷に相当するのでしょうか。
コメントと意見として、この二つです。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】 一つ目の、処分場のボリュームとかそういったイメージをよく伝えるようにという件、拝聴しました。工夫したいと思います。
二つ目の安全性に関しては確かに今のところ、外部放出されるとして、それがどの程度であるかとか、レベル1PSA以上のところに関しては未検討になっています。今後の課題であると認識しています。
最後、炉心損傷とは何かということですけれども、我々は被覆管の破損というのでまず一つ目の線引きをしています。被覆管が高温になって内圧で破れるという事象になります。
以上です。
【長谷川委員】 そのとき、今、デブリの問題とかいろいろ出ていますけれども、炉心損傷というと多くの人は、1Fでメルトダウンが起こり、その後にデブリができ、燃料とか非常に放射能の高いものが格納容器の底に落ちていって、それがすごく気になっているわけですよね。ですから、例えばこのADSの造りとしてそういうものに起因して、被覆管が損傷して、周辺の鉛ビスマスの一部、あるいは最悪であればかなりの分が出てしまうわけですが、それがそれ以上広がらないのかという、深刻なことを普通の人はイメージするのでは無いかと思います。ですから、そういうことに対しても、今考えているこのADSの安全性はこういう形で担保されますとか、もうちょっと踏み込んだ、事業者にとっては嫌なシナリオに対しても十分考えて、対応されたらと思います。
以上です。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】 ADSの場合は燃料が浮く方向に行きます、沈むというよりは。そういった事故進展事象というのはごく予備的なものしかしていなくて、御指摘のとおり課題です。
以上です。
【長谷川委員】 ありがとうございました。
【中島主査】 小竹委員、お願いします。
【小竹委員】 私は、先ほど山本先生がおっしゃったように、最初の5ページ目のシナリオ1の意味合いを理解しかねているのでお聞きします。
まず最初に、P5の真ん中の図を見ると、2050年から86年までの間で諸量評価しましたと書いてあり、右図のようにSF貯蔵量が減っていきますというのは、このウランSFは再処理量が800トン、プルサーマルSFも100トン/年で動きますから当然です。気になったのは、右図のプルサーマルSFは赤線で示されていて、2086年の断面ではまだあまり減っていません。にも拘わらず、P8では、ADS(階層型)のあるなしで、プルサーマルSFからのHLW発生本数や処分面積が大きく減っています。この理由が、よく分からないことが1点目の質問です。
2点目は、P5での左図では、高速増殖炉が2100年以降に本格的に入ってきているんですけれども、2070年頃から1.2ギガの高速炉が動いていると想定しています。この高速炉で、MAも一緒に燃やすということを考えれば、21000年頃までに1.2ギガですけれども、ある程度減っていきます。当然、2100年以降、本格的に高速炉が入ってきて、MAサイクルを進めていけば、SF貯蔵量も減っていくわけです。はっきり言って、ADSが2070年頃に最初に1.3ギガで入って動き出したら、これだけ早期にSF貯蔵量が減っていきますというのは分かりますが、MAを燃焼させる機能は高速炉にもあるわけですから、高速炉の導入時期や導入規模によっては同じような効果が出るわけで、わざわざADSを先行して導入しなきゃいけないという意味合いが理解できません。この辺の補足説明をお願いできますか。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】 2番目のほうから先に回答したいと思います。1.2ギガワットでMAを受け入れることは可能です。ただ、高速炉のほうはMAの含有率に、例えば3%とか5%とかいった制限があって、同じ出力のADSと比べると、恐らく数分の1しかMAを入れられないところがあります。そのカバーをするために、高速炉をある程度、恐らく数ギガワットまで建設する必要があるかと思います。ただ、そういったシナリオはもちろん成立します。
それから一つ目の質問ですけれども、2086年に残っていると。この部分というのは、2086年以降もADSに回しています。7ページで「2086年まで」と書いてありますけれども、これは高速炉を除くという意味で、2086年以降の軽水炉、ウラン及びプルサーマル使用済み燃料も含まれています。ちょっとすみません、これは誤解を招く書き方でした。
【小竹委員】 ああ、そういう意味では、8ページ目は2086年までの話ではなくて、プルサーマルの再処理が終わる2100年ぐらいまで、その結果としての話ということですね。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】 はい、そうです。
【小竹委員】 ああ、それだったらまだ理解できます。御指摘のように、高速炉の燃料にはMAを均質に装荷するには5%ぐらいが上限になり、MA専焼炉であるADSのほうが処理能力が高いというのは自明です。しかし、それは高速炉の導入時期や導入量によっても変わってくるわけです。P5で示したような高速炉の本格導入を2100年からとして、それ以前にはADS1.3GWと1.2GWの高速炉だけ稼働した条件では、ADSの効果によって2100年までに間に早期にウランSF、プルサーマルSFを減らすことができるというシナリオを示しても、ADSの導入が有利ですということにはならないと思います。
それからもう一つ、さっきと同じといいますか、先ほど経済性の話は藤田委員がおっしゃったとおりだと思います。あまりにも安過ぎる感じがします。一つお聞きしますが、こういう経済性を評価するとき、普通は概念設計ぐらいをやって、物量評価をして、その物量ベースでどのようにコストになるかを積み上げて示します。多分、そこまで設計検討が進展しないない段階では、設計、製作してくれるメーカーさんに一次見積り的なものを出してもらって、その考え方とかを聞いて、「これぐらいかな」というふうに示すと思います。建設コストは、設計メーカーさんとの会話とかも含めた上での評価なんでしょうか。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】 そうですね。こちらはもちろんメーカーとも相談させていただいて出した数値にはなります。ただ、設計として積み上げられるほどのものはその当時も詰まっていなくて、結局のところは、これよりも数倍大きな鉛冷却高速炉からのスケーリングファクターで評価したというのが実際のものになります。そういう意味では、設計研究というのがまだ煮詰まっていない段階です。
以上です。
【小竹委員】 ありがとうございました。私からは以上です。
【中島主査】 どうぞ。
【竹下委員】 竹下です。ちょっと教えていただきたいんですけれども、プルサーマルは要するに20%かそこらぐらいですよね。それで50年間ぐらいの話で、高速炉の導入時期まで、2050年から50年間ぐらいのところが非常に問題なのかもしれないんですけど、結局、99.9%MAを取っていて、非常に極端な例になっているんですが、MAの回収率なんかももうちょっと下げて、工夫して最終処分の検討をしっかりやれば、高速炉時期までの50年間のためにわざわざADSを造ってMA処理をするようなことをしなくても済むんじゃないかなという気がするんですけれども。ADSの位置づけが、この50年のためかというような感じがするんですけど、その辺はどうなんでしょうか。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】 例えばMA分離だけしておいて、高速炉時代まで稼働すると。
【竹下委員】 そうです。99.9%なんてやる必要も多分ないと思うんですよね。ほとんどU02燃料で、プルサーマル燃料が20%程度ということなので。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】 50年というこの時間を社会がどう考えるかということに尽きるかと思います。MAを回収して、分からないけど将来世代に向けて置いておくという考え方と、今やってしまうという考え方、どちらもあると思います。
もう一つ質問がありましたでしょうか、すみません。
【竹下委員】 要するに、この処理の仕方ですよね。MAの処理の仕方を工夫して、例えば軽水炉燃料とプルサーマル燃料と、プルサーマルのほうは確かにMAを取ったほうがいいし、軽水炉のほうは別に最終処分するときに、そんなにMAの影響って大きく出てくるわけじゃないですよね。ですから、最終処分をコンパクトにしていくために、例えば処理した燃料をうまく混合して発熱量を抑えて処分していくとか、処分場のほうに対してもうちょっと工夫してやれば、処分場面積の問題というのももっと考える余地がありそうな気がするんですけど。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】 そうですね。例えば7ページに示してあるような1.9平方キロメートルとかそういった辺りは、数割減らすとかいった行動は可能になると思います。
【竹下委員】 ええ。ですから、極端なこういうケースばかり考えないで、現実的なケースを少し考えてですね。処分場の面積を抑えなきゃいけないですから、それを考えられたほうがいいような気がするんですけど。それで、ADSの存在価値をいうと、僕は必要なのかなと実は思っています。その辺どうでしょうか、御意見は。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】 いろいろなシナリオがあると思いますので、評価していって、ADSがある場合はこうというのを示していくと。
【竹下委員】 はい、そういうのを突き詰めてやらないと、このシナリオ1・2だけだと、非常に極端なケースですよね。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】 そうですね。
【竹下委員】 ですので、そうなるとADSをわざわざこれだけのお金をかけて造って、MAを処理していくんだという意味が、やっぱりこれだけだとちょっと分かりにくいかなという気がします。
【中島主査】 ありがとうございました。
今、挙手が上がった形になっている方は。辻本委員が新たに挙げられましたかね。
【辻本委員】 簡単に。このシナリオ検討は、竹下先生がおっしゃるように、かなり極端なケースということでお示ししました。もちろんこの間にもいろいろなオプションがあるわけで、そういったものも我々は検討しておりますけれども、今日はそこまで詳しい話もできませんので、極端なケースとしてお示しさせていただきました。
それから、このADS、あくまでこれはケーススタディーということでお示ししております。小竹委員からも御指摘があったように、別に高速炉であってもいいわけで、これはADSじゃなきゃいけないとかいうシナリオではなくて、ADSを導入するとこういう効果があるということを示した、あくまでケーススタディーとお考えいただければいいと思います。
【中島主査】 ありがとうございました。私も説明を聞いた後の感想としては、竹下委員と同じような感覚を持ってしまいました。先ほど小竹委員、山本委員からも御指摘がありましたけれども、トータルとしてのコストというか、環境負荷を含めて、どういうふうにコストに焼き直すかは難しいですけれども、トータルとしての将来負荷がどのぐらいで、導入することによってメリットがあるかというところがなかなか見えてこないなというような印象も持っております。単なる感想ですけれども。
あと、今日は極端なシナリオということで、フェードアウトのシナリオで、まあ、これは単なるいちゃもんなので聞き流していただいて結構ですけれども、原子力がフェードアウトすると言っているのに、本当にADSを造るというような環境になるのかなというところが。ADSといえども、やっぱり世間から見ると原子炉でしょうというようなことになると、原子炉をやめるために原子炉を造って処分するのかというような、何かそんな声が聞こえてきそうな気がしました。まあ、単なる感想ですので、すみません。公の場であまり言わないほうがいいのかもしれないです。申し訳ありません。
あと御意見は。今手が挙がったままですが、竹下先生、はい、どうぞ。
【竹下委員】 西原さんのところでまた、こういう極端なケース以外にいろいろおやりになっていると思うんですよね。だから、そこをしっかり示していただいたほうがいいと思うんですよ、ADSの導入をもし訴えるのであれば。だから、おやりになっていることをもうちょっとお示しいただきたかったなというのが印象です。例えばいろいろなシナリオをやられていますよね。ですから、少し現実味のあるものを見せていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
【中島主査】 最後の今後の進め方のところでまた議論させていただければと思います。JAEAからもう一つ資料がございますので。
はい、どうぞ。
【藤田委員】 藤田ですけれども、今の竹下先生と中島先生の解釈に私はちょっと抵抗があります。先ほどの5ページのシナリオ、2086年とか、この世紀の後に非常に広範に高速炉を入れるとかいう話は、一般の人たちには全く受け入れられない話です。ですから、やっぱり2050年頃に溜まってきたMAをどうするかということが具体的に示されないようなシナリオでしたら、原子力は完全にフェードアウトだと私は思います。
一般の人の目といったらせいぜい二、三十年なので、先ほど直接処分の話も出ましたけど、二、三十年の間に、本当に日本でそういう広さの処分場が見つかるかということも考えると、やっぱりこのMAの分離核変換はすごく重要です。そういうことが分かるような資料をJAEAさんに作っていただければよかったんだと思うんですけど。今日の資料だと、中島先生、竹下先生のようなコメントが出てきちゃうのだと思います。2050年ぐらいまでの間、その先せいぜい二、三十年にどうするかということが具体的に出せなければ、原子力というのは、幾らカーボンニュートラルと言われても、一般の人に受け入れられないという社会科学的な目を持っていただきたいと思います。
ですから、逆に言うと、もうちょっと早めに入れる、先ほど高速炉との比較もありましたけど、高速炉がいつ入るか分からないときに、MAをどんどん積み上げていくというのもどうかと。実際にはそういうことも考えた、より現実的なシナリオを検討していただきたいと思います。
以上です。
【竹下委員】 私も言っているのはそういうことでありまして、現実的なシナリオを見せていただきたいということだったんですね。あまりにこの二つのシナリオは極端過ぎるんですね。処分に対してもっといろいろな工夫ができるはずだし、そこのところの考慮が入っていない、ですから、MAの分離についても、とにかく極端に99.9%ですよと言っているし。もっといろいろな考えがあるはずなんですね。その中で高速炉の導入時期とにらみ合わせて、どうMAを核変換していくのかという話をしなきゃいけないところだと思うんですが、そこがこのシナリオ二つでは論議もできない。
【藤田委員】 あくまでも2050年ぐらいまでの間のシナリオをつくらないと、一般社会から受け入れられないので、少なくとも社会実装は2050年ぐらいをターゲットにした、例えばプラント概念とかをつくるために、どういう研究開発が必要かというような視点にしていただきたい。この2100年とかじゃなくてですね。今の原子力政策の中ではそういう議論をされているのかもしれないですけど、それをやっている限り、原子力に賛成する一般の人たちはいなくなるというふうに考えていただきたいと思います。
以上です。
【中島主査】 はい、ありがとうございました。
なかなかタイムスパンをどのレンジまで取るかというのは結構議論としては難しいなと私も思います。まあ、自分たちが実感できるのは二、三十年とかだとは思うんですけどね。科学技術としてどこまで見据えなくちゃいけないかというところも、ちょっと考えなくちゃいけないのかなとは思っておりますが、また、これは今後の進め方の中で考えたいと思います。すみません、ありがとうございました。
あとはよろしいですか。
次の資料に移りたいと思います。では、資料2-2で、今後の研究開発の進め方というところで御説明をお願いいたします。
【辻本委員】 辻本から、今後の研究開発の進め方について御説明させていただきます。時間もありませんので、ポイントだけ絞って説明させていただきます。
まず2ページ、ADSの研究開発目標です。
エネルギー基本計画の話がありました。今、第6次を議論しておりますけれども、現在の第5次エネルギー基本計画では、減容化、有害度低減のための技術開発を推進するための具体的な方法として、高速炉や加速器を用いた核種変換の研究開発を推進するということになっております。
こういった国の方針を受けまして我々は、ADSを用いた階層型分離変換システムに関しましては、この実現性、実用性の判断に向けて、それぞれシステムを構成する各要素、MA分離ですとかADSの燃料製造、ADSに対する技術開発を行って技術基盤を確立させるということを目標に研究開発を行っております。
具体的なこれまでの研究開発成果は前回報告させていただきました。ここでは客観的に見て、我々の研究開発の状況は今どこにいて、今後どこを目指していくのかということを説明させていただきます。
まず、MA分離、それからMA含有窒化物燃料の製造・乾式処理についてですけれども、4ページ、研究開発段階と課題ということで、ここではTRLの評価を基にいたしまして、今どこにいるのかということと、今後どこを目指すのかということを御説明させていただきます。ここで用いているTRLの評価は、OECD/NEAの専門家会合でそれぞれ評価されたものをベースとさせていただいております。
御存じのようにTRLは、下から概念実証、原理実証、性能実証という段階で研究開発が進んでいくことにしておりますけれども、あくまで研究開発の成果というものは、原理実証、TRL6というところがゴールだと私どもは考えております。TRL7以上になりますと、かなり大規模なシステムが必要ということで、政策的な判断の部分が大きいと考えておりますので、先ほど申し上げた技術基盤の確立という部分は、あくまでTRL6レベルの達成が目標になると考えております。
5ページです。
MA分離に関するTRLの評価に関しましては、先ほど申し上げたOECD/NEAの専門家会合で、世界中の様々な技術に関して評価されております。ここで用いているのは、はしご状の開発段階をどんどん上っていくのではなくて、マトリックス状の評価がされております。そこにSELECTプロセスと抽出クロマト、それぞれのTRLの評価のマトリックスを示しております。横軸が試験の規模と考えていただければと思います。
縦軸は試験に用いる物質の質ですね。下から順に、トレーサーレベルから一番上の実際の使用済み燃料の廃液まで進んでいる。このSELECTと抽出クロマト、それぞれOECD/NEAで評価されたものが、水色でハッチングした部分です。それに加えて、我々の中で研究開発の進展を考慮して、ここまで到達しているという部分が1か所、薄く水色でハッチングした部分になります。細かい点は省きますけれども、SELECT、それから抽出クロマト、両方ともTRL6相当に達していると我々は判断しております。
では、この後、どういった研究開発が必要かということで、6ページに示させていただいております。
先ほど示したように、メインのプロセスに関しましては、SELECT、抽出クロマト、それぞれ実廃液試験まで実施したので、TRL6レベルと判断しております。ただし、これはあくまで一通りやったということにすぎません。この後、もっとプロセスの改良ですとか、そういったものも必要になります。
したがいまして、今後の研究開発の方針としては、このTRL6レベルの基盤を強化する。具体的に言いますと、プロセスの高度化をそれぞれ図っていく。また、コールド工学規模のユニット試験に向けて必要な機器の開発を進めていく。そうしたそれぞれの、SELECT、抽出クロマトグラフィのTRL6レベルでの基盤強化を行って、次の中長計、具体的にはこれからの7年間で、どちらかという絞り込みに必要な知見を蓄積することを目指したいと考えているところであります。
次の7ページが、ADS用のMA窒化物燃料のTRLの評価となっております。
こちらは左が燃料の製造、右が燃料のふるまいに関するTRLの評価となっておりまして、同じようにマトリックス状の評価となっております。OECD/NEAの専門家会合で評価された部分は、この黒丸がついた部分になります。MAの窒化物燃料に関しましては、ここに示しておりますように、製造、それからふるまい、それぞれTRL3から4レベルというのが客観的な評価となっております。
これを踏まえて今後どこを目指すかということを8ページに示しております。
ADSでは、実用規模と言っている部分が、高速炉ですとか軽水炉と比べてかなり量が少ないということがありますので、我々は小規模なサイクル試験と準工学規模のユニット試験で、実機相当のものの設計は可能だと判断しております。したがって、次の段階では、実験室規模での小規模なサイクル試験、具体的には回収MAを使った少量のサンプルを使った試験を行いたいと考えております。
これと並行して、準工学規模のユニット試験、こちらはコールドの物質を用いますけれども、それである程度の規模の工学規模のユニット試験を行って、この二つを併せて、実機レベルでの設計が可能だと考えております。併せて、燃料のふるまいに関しまして、照射試験は必ず必要になりますので、照射試験用の試料の準備を進めていきたいと考えております。
9ページが、乾式処理技術のTRL評価となっております。水色でハッチングした部分が窒化物燃料の乾式処理プロセスに関するTRLの到達ということになっておりまして、こちらもTRL3から4レベル相当と評価されております。今後は、模擬燃料を用いたフローシート試験を目指して、これをやることによってTRLレベル4から5が達成となると思いますので、今後はここを目指した試験を行っていきたいと考えております。
次に、ADSについて御説明させていただきます。11ページになります。
我々は前回のタスクフォースでもお示ししましたように、次の段階として、J-PARCで核変換実験施設の建設を目指してきました。それに必要なR&Dや施設設計を実施しまして、技術的には建設着手の準備は整ったと判断しております。ただし、今の原子力機構の状況、原子力をめぐる状況からは、建設はなかなか難しいと判断しております。したがいまして、このまま新しい実験施設の建設を目指すのではなく、多くのリソースが必要なこうした実験施設の建設に代わって、合理的かつ効率的に研究開発を進める方法を検討いたしました。
そのアプローチといたしましては、計算科学技術を活用した新たな計算シミュレーション手法の開発を中心とした研究開発を進めたいと考えております。ただし、シミュレーションだけでは単なる計算に終わってしまいますので、できるだけこの開発したシミュレーションを、既存の実験施設を使った実験で検証しながら、研究開発を進めていきたいと思います。この計算科学的なアプローチを導入して、ADS設計の合理化を図るとともに、課題であります材料、燃料開発の効率化を図っていきたいと考えております。
具体的な例といたしまして、次の2ページでお示しします。
12ページは計算科学の活用例ということで、核熱構造連成解析システムの開発について示しております。
前回お示ししましたように、左の図で示したような一連の解析システムは構築しております。ただし、右の図で示したような非常に大規模な熱流動解析の結果を見ますと、ビーム窓周辺で鉛ビスマスが渦巻くような状況が観察されております。こうした大規模な計算シミュレーションをさらに応用して、構造にも連成させて、今後、研究開発を進めていきたいと。そういう中で、実機の安全性も見直していきたいと考えております。
13ページは照射損傷シミュレーション手法の開発でありまして、こちらはミクロな現象からマクロな現象の予測を試みるというもので、かなり意欲的なアプローチとなっております。
ADSの開発で問題になっているのは、ビーム窓の鉛ビスマスの流動化での照射損傷になります。これをできるだけシミュレーションしたいということで、こういった手法を開発していきたいと考えております。ただし、こうしたシミュレーション手法というのは、あくまでその外挿ということになりますので、最終的に物をつくる段階では、やはり実験は必要になってくると考えます。ただ、こういったシミュレーション手法を開発することによって、最小限の実験で済ませることが可能になるのではないかと期待されるわけです。
そうした中で、14ページですけれども、J-PARCの施設構想の見直しも図っていきたいと考えております。
前回、長谷川委員から指摘されましたように、やはり最後はやってみなくては分からない部分があります。幾らシミュレーションを開発しても、最後、物をつくる前には、やはりこういった実験は必要になりますので、J-PARCでの実験は考えていきたいと。ただし、その機能というものは、今まで考えていたようなTEF-P、TEF-Tから成る二つの実験施設ではなくて、材料照射をメインとしたTEF-Tの機能を優先とした施設を再検討したいと考えております。
これは、安全性の問題もありますし、そちらに記載しておりますように、TEF-Pでの実験で想定していた燃料が使えなくなったということもあります。そのために、TEF-Pで実施予定だった研究開発項目が大幅に制限されるということもありますので、こちらのTEF-Pで実験を想定した部分は、できるだけシミュレーションで補うことを考えたいと思います。ただし、新しい実験施設に関しましては、単にADSのための施設ではなくて、貴重な高強度陽子・中性子の照射場として、多様なニーズへの対応可能性も含めて検討したいと考えております。
15ページが見直しの概要ということです。今までJ-PARCの核変換実験施設、それからベルギーで建設を計画しているMYRRHAというものも併せて、実機を目指した研究開発と考えておりました。新たにそのシミュレーションを中心とした研究計画、PSi計画では、TEFというものはすぐには建設せずに、できるだけシミュレーションで活用できる部分は活用していくと。ただし、最後、実機の前は陽子照射が必要になりますので、ここはできるだけ研究開発項目を絞った形で、新たな施設を考えていきたいと。
併せて、ベルギーで計画されているMYRRHAは、2024年に建設可否を判断するということも言われております。例えば、高速炉はASTRIDというものをフランスと共同で実証をというふうに位置づけました。我々がこのMYRRHAに参加するのも、なかなか資金の面で難しいところはありますけれども、仮に建設が決まれば、世界中で1基造ればいいわけですから、我々がMYRRHAに参加するという可能性もあると思いますので、そこはベルギーの動向も踏まえて、研究開発を進めていきたいと考えております。
16ページが、海外におけるADS開発の位置づけです。
参考資料には、前回、小竹委員から指摘がありましたCEAの報告書の概要ですとか、こちらに示しましたフランスのCNEの報告書、それから欧州の持続的原子力産業戦略の概要等を示しております。ここでは最近の報告書のポイントだけ示したいと思います。
まず、フランスの放射性廃棄物管理に関する調査研究評価委員会の第15次報告書が今年の7月に出されました。これはフランス政府によるエネルギー複数年計画の変更が廃棄物処理に与える影響を調査分析したものでして、優先的に取り組むべきテーマといたしまして、深地層処分の代替技術、分離に関する研究開発、それから放射性廃棄物処分場CIGEOというのが優先的に取り組むべき三つのテーマとして挙げられています。
この中で、深地層処分の代替技術になり得るのは核変換技術だけであると。候補概念としては、高速炉、ADS、溶融塩炉、レーザーというものが挙げられておりますが、いずれについても、工業化に至る具体的な計画段階ではないと記載されております。
フランスでは高速炉だけでなく、ADS、溶融塩炉、レーザーも含めた研究開発を今は進めていると示されております。また、欧州の持続的原子力産業戦略の2021年ビジョンでは、ベルギーのMYRRHA計画を最も実現性の高いR&Dプロジェクトに位置づけております。
このように、欧州はいろいろな国が様々な取組を実施しているという利点を生かして、高速炉だけでなく、ADS、それからそのほかの技術等にも研究開発を実施しているところがあります。我々も一国だけで研究開発というのは無理ですから、国際協力による研究開発も活用しながら研究開発を進めていきたいと考えているところです。
17ページはADS開発のロードマップということで、我々が今後目指すべきところを示しております。この下、参考資料にはADSのTRLも示しておりますので、こちらも参考に見ていただければと思っております。
最後にまとめですけれども、先ほど分離変換の導入シナリオということで、様々な御意見をいただきました。我々もADS自体の研究開発を中心としてやってきましたので、このシナリオ検討がこれまで不十分だった点があります。今後、現実的で柔軟性のある分離変換導入シナリオを継続的に検討していきたいと考えております。
また、MA分離に関しましては、候補技術として、SELECTプロセス、抽出クロマトの研究開発を実施していきたいと。この中では現有施設を最大限に活用して、TRL6レベルの基盤強化を再処理研究の一環として実施し、大学・民間企業との連携を積極的に支援していきたいと考えているところです。
ADSにつきましては、分離変換導入シナリオと連携して、最適なシステムの検討を継続していきたいと考えております。
研究開発の方針としては、多くのリソースが必要な施設建設に代わって、計算シミュレーションを中心とした研究開発を進めていきたいと考えております。その中では、海外機関との連携、特にベルギーのMYRRHA計画との連携を積極的に進めながら、合理的な研究開発計画を再検討し、その中で安全性等を含めまして、ADSの概念の再検討も行っていきたいと考えております。
それから、J-PARCの実験施設に関しましては、シミュレーションを中心とした研究開発成果を踏まえながら、多目的の応用を考慮して、陽子加速器が利用可能であるという利点を最大限活用する施設を再検討していきたいと考えております。
それから、窒化物燃料に関しましては、製造、燃料、ふるまい、それから再処理に関しまして、TRLで示したような研究開発を実施していきたいと考えているところであります。
すみません、駆け足になりましたけれども、以上で説明を終わらせていただきます。
【中島主査】 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に対しまして、御意見、御質問があれば挙手をお願いしたいと思います。
長谷川委員の手が挙がっていますが、これは御意見ということでよろしいですか。
【長谷川委員】 すみません、挙手ボタンは消し忘れただけなのですけど、ちょうど質問したいことがあったので、質問させて頂きます。
【中島主査】 はい。では、このままどうぞ。
【長谷川委員】 燃料のほうについても今後照射用の燃料を作るとか、燃料の照射試験をやるという話があるのですが、これは具体的にはどこの炉を使ってやるということは想定されているんでしょうか。
【辻本委員】 まだ具体的な計画にまでは行っていませんけれども、できれば常陽を使いたいと考えているところです。
【長谷川委員】 海外炉とかいうのは、まだそこまでは考えていない?
【辻本委員】 できれば国内で行いたいところです。海外だと、やはり輸送とか、特に照射後試料の移送が困難ですし、海外でやっても照射の試験のノウハウが継続されませんので、できるだけ国内でやりたいとは考えているところです。
【長谷川委員】 私もそういう仕事ばかりやっているものだから、特に海外からの照射試料の輸送は非常に大変だというのは実感しています。そこにまた核燃料が入った燃料の照射材になると、かなり実現可能性が低くなるなと思っていました。
それからもう一つは、プロトン照射の装置についてですけど、陽子加速器、この後も多分、新しい加速器システムの話が出てくると思うのですが、シミュレーションの実証のところの一番の問題は時間なのですよね。ちょっとやって、すぐにそれに対応して現象が出てくるものであれば、それは簡単に顕微鏡の中で見ればいいとかいう形で実証できます。しかし、火力発電のボイラーとかタービン用の素材でも、10万時間というとんでもない時間の高温環境でのクリープ試験をやらないと、実際の機器にはその材料を使えないというような非常に難しいところがあります。特に安全性に関わるものだと時間というのがかなり大事なファクターになってきます。
国内のいろいろな加速器を使うにしても、いろいろな照射装置を使うにしても、極端な話、普通はマシンタイムは1週間ベースで、1週間もその装置を占有できれば良いほうなわけですよね。だけど実際、安全性に関わるビーム窓の材料の腐食の挙動だとか、経年劣化の挙動を知るためには、やはり月レベルとか年レベルの装置の占有が必要になってきます。その間、装置がダウンしたりすると困るので、この後の話で、複数の小型の加速器を使ってビームがダウンしない安全性を担保するようなものを提案されていますけれども、長時間の安定性を考えると必要な措置だと思います。やはり小規模でもいいので、長時間の実験で実際の機器の環境を模擬したシミュレーション実験だとか、腐食の挙動と、あと疲労とかクリープ、高温強度の問題というのは、時間がすごく大事な因子です。またこれが実験上のネックですので、そういう意味では、小規模でもいいので占有して長期間使えるものを、いろいろな工夫、予算の問題も含めて考えていただくのが現実的なところかなと思っています。
それから最後にもう一つ、MYRRHAのほうがポシャっちゃったらどうするかという話はどうお考えなのでしょう。MYRRHAを2024年にやめますと言ったときに、どんなふうにお考えなのか、そこをちょっとお聞かせいただければと思います。
【辻本委員】 もともとMYRRHAに我々が参加すると決めたわけではなくて、MYRRHAを横目で見つつというところで考えています。仮にMYRRHAが実現しなかった場合どうするかということですけれども、本当にADSを国内で造ると、国内で実験用ADSを造るということになるかと思います。ただもう一つ、ベルギー以外では、前回でも御紹介しましたけれども、中国も実験用ADSの建設計画を進めています。ただ、中国との研究協力がどこまで可能なのかということはありますけれども、そういった動向も踏まえていきたいとは考えています。
【長谷川委員】 ありがとうございました。
【中島主査】 藤田委員、どうぞ。
【藤田委員】 御説明ありがとうございました。
2点ございまして、1点は、以前のTEF-T、TEF-Pをベースにした研究ではなくて、シミュレーションをある程度活用して、少なくともなるべく施設を造らないでやろうとしている計画は評価できると思います。
もう一つは、先ほどから皆さんと私は違うんですけど、やっぱり2050年、60年に社会実装をするという、ある程度ターゲットを明確にして、そのためにはどういう研究開発、技術開発が必要かというのを、基礎研究、それからパイロット試験とかいうロードマップを明確にして、それに対して必要な課題を抽出していくという、後ろから前に持ってくるような研究ロードマップをつくっていただきたいと思います。
それはなぜかというと、やっぱり2050年、60年の社会実装ということを挙げると、一般社会からの協力も得られる。特に分離核変換は、原子力の中ではちょっとトーンダウンしているんですけれども、先日もJSTのお偉方から、分離核変換の研究ってどうなってるのと。今はJ-PARCに一つ出ているだけで、ImPACTの次もないし、ムーンショットにも出てこないと。一般の人たちは分離核変換が一番重要だと思っているし、2040年、50年の社会実装でしたら、実際に社会からお金を調達するということも可能になるんですね。
そういう観点で研究計画を見直していただきたいという点と、では、アウトプットを最後はどういうふうにするかというと、民間からのアドバイスとしては、やっぱりプラントの概念設計ができるところまで持っていかれれば、例えばその研究計画がそこでクイットしても、その概念設計だけは残るので、10年後、20年後に詳細設計が可能なんですね。だから、概念設計まで持っていくことを目標にして研究開発を進めていただきたい。
その2点です。
【辻本委員】 ありがとうございます。分離変換もいろいろな要素で構成されていて、一概に全部を示すことは難しいんですけれども、その中でも分離のほうは研究開発が割と進んでいると私は思っていて、先ほども申しましたように、あるものに関してはTRL6レベルに相当していますので、そこを強化することによって、藤田委員がおっしゃったように、今後どうするかという施設の概念検討まで見ると考えていますので、そこは目指したいと考えております。ありがとうございます。
【藤田委員】 そういうふうに概念検討ができたとすると、そこで経済性評価が必要だと思います。経済性評価をすると、いやいや、ここはこういうふうにかかり過ぎだからと言って、また課題が出てきて、R&D項目でコストダウンする研究開発も出てくるから、概念設計ってすごく重要なので、そこで経済性評価をよろしくお願いいたします。
【中島主査】 すみません、大分時間も押してきましたので、今手が挙がっている山本委員の御質問でこの議題については終わりにしたいと思います。山本委員、お願いします。
【山本委員】 名大の山本です。
このシミュレーション技術を活用してというのは、方向性として多分そうだろうなと思いますが、辻本委員がおっしゃったように、シミュレーション技術ってそれだけで閉じてしまうと、どうしても実用的なものにならないので、必ず実験的なデータが必要になるというのは明らかだと思います。ただ一方で、従来は計算科学技術があまり複雑なものは扱えなかったので、その代わりにモックアップ実験をやるという流れだったんですけど、今後はそうではなくて、データ同化の考え方をちゃんと使って、計算で足りないところを取るような実験をデザインするやり方にしていかないといけないので、ぜひそういう新しい取組の方向性で実験をうまく活用することを期待しております。
15ページ目に実用ADSへの道のりを書いていただいておりますけれども、さすがに何もなしで実用規模ADSができるとは思っておられないと考えておりまして、途中に何がしかの実験施設は必要になると思うんです。その実験施設の全体をモックアップするという考え方もあるんでしょうけど、先ほど申し上げた計算に足りないところをパーツパーツで補うというやり方もあると思って、そういう観点から見直しはあり得るのかなということ。
あともう一つ、先ほど安全性の話を申し上げたんですけれども、やっぱり1F事故で安全設計の考え方って相当変わったので、ADSの設計もそこは全面的に見直すべきだと思います。具体的に言うと、安全の考え方の基本をきちんと議論した上で、1番目に加速器の信頼性に頼らない設計にすべきだと思います。加速器の性能が低くてもきちんと運転できて、あとは未臨界度が0.97とかって、最初はかなり難しいので、これをもっと大幅に下げて、あと熱出力密度を下げた上で、受動安全性を十分に使って、こういう安全性を追求するというのと、あと、過酷事故への対応というのが十分考えられていないので、例えば最近の高速炉だと炉容器とガードベッセルの二重破損とかも考えつつあるので、そういうところも含めて目標を描いて、「これだったら確かにできそうだし、大丈夫だな」と多くの方が思われるようなものを目指されるといいんじゃないかと思います。
以上です。
【辻本委員】 ありがとうございます。
シミュレーションの活用は本当に進めていきたいと思います。山本委員御指摘のように、例えばですけど、今まで実験で網羅的にやっていた部分をある程度シミュレーションでピンポイントに絞るということも考えられると思いますので、そういう方向で検討したいと思います。ありがとうございます。
【中島主査】 では、議題1についてはここまでとさせていただきます。申し訳ない、大分時間が押してしまいました。
議題2として、ADSあるいは核変換に関連する基盤的な研究開発の状況ということで、まずは資料3-1を用いまして、京都大学の雨宮先生に御紹介をお願いしたいと思います。
お待たせしました、雨宮先生、よろしくお願いいたします。
【雨宮京都大学教授】 御紹介いただきました、京都大学の雨宮です。よろしくお願いします。それでは、資料に基づいて説明させていただきます。
まず、C-ADS、コンパクトADSの略称として我々は呼んでおりますが、そのコンセプトについて、資料2ページ以降からで紹介させていただきます。
まず、3ページ目を御覧ください。こちらに従来の大型ADSにおける課題と、その課題に向けた我々の着想についてまとめてございます。
従来の大型ADSにおける課題でございますが、まず加速器の面に関しましては、大強度の線形加速器に起因した課題がございました。本質的課題としましては、線形加速器というのは多数の直列した高周波の加速装置を使っておりまして、そのうち一つの障害がビームの停止に直結してしまいます。さらに、設置スペースが600メートルと長大になってしまうという問題がございます。さらに研究開発で開発していくべき課題といたしましては、この大強度ビーム発生のための加速空洞、特に超伝導空洞は高度な技術の開発が必要となってまいります。
原子炉に関して言いますと、こちらの低コスト化との関連でなかなか難しいところではあるんですが、基本的には高出力の炉心を想定しております。そのために本質的な課題といたしまして、除熱量、事故時の崩壊熱が大きいために、ポンプ除熱機能喪失時の影響が大という問題がございます。さらに研究開発によって解決していかなければならない課題として、高負荷に耐えるビーム窓、被覆管材料の開発といったものが挙げられます。
それに対しまして我々の着想といたしましては、加速器については、並列の円形加速器を用いたらどうかと。円形加速器というのは、少数の高周波加速装置を何度も何度も通して加速していく装置ですので、直列の段数が削減できます。さらに加速器を並列冗長化すれば、ビーム停止の頻度が低減できるのではないか、さらに設置スペースが短小化できるのではないかと考えました。
また、炉心につきましても、高出力を追求するのではなくて、まずは低出力でもよいのではないか。それによって、自然循環による安全性向上の可能性や、あるいはSMRなどの開発成果の活用もできるのではないかと考えております。
4ページ目に行きます。
C-ADSの構成と使用例について紹介させていただきますが、C-ADSとは、高繰り返しシンクロトロン(RCS)を複数基並列化した陽子ビーム源と小型炉心を組み合わせたADSのことでございます。ここに書いてございますように、複数のRCSから出てきた陽子ビームをマージいたしまして、炉心に注入するという形になっております。
加速器の仕様としましては、ビームエネルギーは1.5GeV、加速器1基当たりのビーム電流は1mA、それを出力に応じて3から7基並列すると。それによってビーム電流を3から7mAにして、ビームパワーは4.5から10.5MWを得ると。対応する原子炉の熱出力としては、200から400MWを想定しております。
さらにRCSを含む円形加速器全般の場合、ビームを曲げるという線形加速器にはない余計な要素が必要となっておりまして、それに用いる電磁石の消費電力が余計にかかってしまうという問題がございますので、そこは超伝導を使って解決できないかと考えております。
次に5ページ目は、今度はADSに絞りまして、大型ADSとC-ADSの加速器の比較をしてございます。
ここに概念図を描きましたように、大型ADSというのは大型線形加速器を使い、C-ADSは前段の小型の線形加速器とRCSを組み合わせたものを並列化して使います。加速器の種類と大きさは既に説明しましたので省略いたします。炉への入射陽子という点では、従来検討されていた大型ADSがそこに書いてあるように30MWなのに対して、C-ADSは4.5から10.5MWを想定しております。
では、そのような必要な加速器に対して、現状の加速器技術がどうかということでございますが、大型ADSに必要な線形加速器の場合、例えばJ-PARCのリニアックを見ていただきますと、これは0.4GeV、0.325mA、0.13MWというスペックになっておりまして、これと30MWの間には相当な乖離があり、相当な研究開発が必要であると。それに対しまして、C-ADSで想定している加速器というのは、J-PARC RCSが3GeV、0.333mA、1MWということで、おおむねではございますが、現状のJ-PARC RCSというのは、加速器システム技術という点ではほぼC-ADSを実現できるレベルに達しております。
ただ、先ほど申しましたように、円形加速器全般に、これは実際J-PARCの3GeV RCSでもかなり問題になっていると聞いておりますが、マグネットが大きな電力を使ってしまうと。そこは超伝導を使って効率改善できないかと想定しております。
それから、ビームの安定供給性能という点でございますが、これは先ほど述べましたように、大型の線形加速器というのはどうしてもビーム停止の頻度が高くなりがちであると。それに対しまして円形加速器は、高周波加速器の直列段数を減らすこと、さらにRCSを並列化することによって、ビーム停止の頻度の低減を図っております。
次に、今度は炉心側のお話でございますが、これは多様な炉心が想定できます。例えばJAEAが開発している大型ADS設計を基にした、自然循環を利用した安全性を高めた小型炉心も想定されます。こちらは、機構の西原さんと一緒に検討しているものでございます。それ以外に、PRISM炉心の改良したようなものですとか、同じく機構が概念設計している溶融塩炉心といった多様なものとの組合せが考えられまして、この辺りは開発が活発化しているSMR概念等との組合せも可能ではないかと考えております。
次に7ページ目に参ります。こちらではC-ADSの独創性、革新性、特徴をまとめてございます。
このC-ADS、まず高周波加速装置の直列数の少ないRCSを使い、さらに並列化して、ビーム停止の頻度を低減してございます。
その下に、ちょっと字は小さくなりますが、あらあらですが少し定量的に検討した結果を紹介させていただきます。J-PARCの運転実績を基にした概算でございますが、同じビーム強度で比較して、RCSプラス前段の線形加速器も含めてですが、このビーム停止回数は、線形加速器のみの場合と比べて約2.5分の1になるという試算をしております。さらに、並列化によってビーム停止回数は低減できると考えております。
それから、先ほどから申し上げておりますように、余計な電磁石による電力増大は、高温超伝導の適用で克服できるのではないか。それから、低出力化することにより受動的安全性を実現できるのではないか。
それから、次のところは青字にはしていないんですけれども、これまでの原子力の開発とはかなり違うアプローチが想定されまして、要素機器、マグネットなどの単体の技術開発を行えば、基本的にはその組合せで大規模加速器の実現は可能です。
実例として、欧州にLarge Hadron Colliderという加速器がございます。こちらは数年前にヒッグス粒子を見つけてノーベル賞を取ることにもつながったものでございますが、これは長さ15メートルの超伝導マグネット単体の開発を行って、その性能が担保された後は、それを1,200台量産して、山手線ぐらいの周長のところにばっと並べて加速器を実現してしまったということで、このような要素技術開発からいきなり実機に行くといった研究開発のパスも取れるということです。
さらに今度、加速器のシステムという点では、1.5GeV、1mAのRCSというのは現状技術化の飛躍が小さいということで、もし社会が必要とするのであれば、早期の社会実装も可能であると考えてございます。
次に参りまして、8ページ目以降、平成28年度から令和元年度にかけまして、原子力システム研究開発事業の御支援を受けまして、こちらの加速器の部分に関しての概念検討を行いましたので、その成果について、ごく簡単に紹介させていただきます。
加速器については、ページ番号9に書いてございますように、超伝導マグネットを用いてビームを曲げて、これから共鳴ビーム取り出しというビーム取り出し技術を用いた加速器の設計をいたしております。この加速器においては、高温超伝導を使って低消費電力化を行うと同時に、共鳴ビーム取り出しという技術を用いてビーム取り出しの高信頼化を図っております。
さらに、この高温超伝導マグネットの部分については、より詳細な概念設計を行っておりまして、銅コイル、アルミコイルにおける消費電力に比べまして、超伝導を使うことによってコイル部分の損失は約10分の1、さらに、周りにある鉄芯の損失も減らすことができるといった成果を出してございます。
11ページ目以降には、このC-ADS実現に向けた技術課題と研究開発要素をまとめてございます。
まず12ページ、超伝導マグネット実現のための研究開発要素といたしましては、高温超伝導大電流ケーブルのコイル化技術というものが一つ必要であると考えられます。ちょっとカメラでお見せしますと、今ある高温超伝導線というのは、見えるかどうか分かりませんけど、幅4ミリぐらいのテープで、こんな感じのものですけれども、大体これ1本に100アンペアとかそのぐらいの電流を流すことができます。これは幅4ミリ、厚さ0.1ミリですから、銅線に比べると物すごい密度で電流は流せるんですが、これで直接コイルを巻くとインダクタンスが大きくなって、発生する電圧が大きくなるとか、いろいろな問題がございます。また、工業的にもこれは結構ヤワで、これで大きな電磁石をつくるのは、なかなか製造技術として大変というところがございます。
それに対しまして、例えばこちらは今、我々の研究室で、文科省、JSTさんの御支援をいただいているんですけれども、これを複数束ねたSCSCケーブルというものです。ちょっとカメラではよく見えないかもしれませんが、多数の線を束ねてあって、大体これ1本で1,000アンペアまでは行きますが、目指しているのは数キロアンペアの電流を流すと。そうすると基数が減らせてインダクタンスも減らせるし、これは先ほどの線に比べるとかなり手頃というか、工場で巻線をするのにも巻きやすくなっています。
例えばこういうものを使ってコイルを作る技術が必要になるですとか、あと、作ったコイルを収納するクライオスタットという低温容器がありまして、今までの超伝導はほとんど直流で用いられていたものが多かったんですけれども、交流で使うとなると、クライオスタットの渦電流も問題になってきます。ですので、そういうものを低減する技術、それから鉄芯の損失を減らす技術、さらには小型のマグネットで実証してマグネットをスケールアップしていく開発、そういったものが必要なのではないかと考えております。
次に13ページ目に参りまして、こちらは陽子ビーム源としてのRCSの研究開発要素でございます。いろいろ細かく書いてございますが、大強度となるので、電荷の反発力を抑えてちゃんと粒子を回す技術ですとか、円形加速器にビームを入れたり出したりする技術、さらには、総合的にビーム低振動を低減するための研究開発等が必要ではないかと考えております。
最後に、14に未臨界炉心の研究開発要素と書いてございますけれども、基本的には、例えば小型化することによって自然循環炉心ができないかですとか、あと、材料開発に関しましては、パルス陽子ビーム入射に適応したビーム窓やターゲットの開発、加速器仕様へのフィードバック、さらに、並列加速器の一部のビームが停止した場合、10%、20%レベルでビームのパワーが変動しますから、それに適応した炉心設計の検討等が必要と考えております。
最後にまとめでございますが、C-ADSは、RCSを複数基並列化した陽子ビーム源と未臨界炉心の小型炉心を組み合わせたADSであると。高周波加速器の直列数低減、円形加速器の並列化によって、ビーム停止の頻度・時間を低減し、炉心としては受動的安全性を目指すと。さらに、消費電力低減のためには、日本が培ってきた超伝導技術を適用するといったことを考えてございます。
補足資料の最初の17ページにも書いてございますが、今日のお話の内容は、原子力システム研究開発事業における概念設計検討と、それからもう一つ、特に原子炉の部分に関しましては、このADS、円形加速器、超伝導に関する研究会というのを、京大、原子力機構、物材機構の研究者で、2017年から21回にかけて、非公式なクローズなものでございますが開催しておりまして、そこで検討した結果をまとめたものでございます。
以上でございます。
【中島主査】 ありがとうございました。
では、ただいまの説明につきまして御質問、御意見等ございましたら、挙手の形でお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
小山委員、どうぞ。
【小山主査代理】 非常に興味深いお話、ありがとうございました。
二つ教えていただきたいんですが、複数のRCSを並列化して、それで陽子を束ねて原子炉に入力するわけですけれども、束ねるというところでは、特に新しい技術開発のポイントはないのかということと、それから、原子炉側のビーム窓もADSの課題なんですけれども、その課題は変わらず存在するということでよろしいでしょうか。
【雨宮京都大学教授】 どうも御質問ありがとうございます。
まず1番目の質問につきましては、資料の22ページ目を御覧いただきたいんですが、こちらのほうにその辺りの詳細を書いてございます。実は私も、加速器というよりはどちらかというと超伝導マグネットが専門なので、ここの辺りは難しいんじゃないかと、いろいろ加速器屋さんに聞いたんですが、実はそれほど難しくなくて、これは研究というよりは設計問題ですので、私もかなりしつこく聞いたんですが、あまり心配はないと。それよりは、先ほどちょっと紹介しましたように、ビームの中の陽子が反発する力を抑え込んで安定に回すところとか、円形加速器から最後にビームを取り出すところとか、そちらのほうが開発要素はあるという話を聞いております。それが1番目の話です。
2番目の話は、全くおっしゃるとおりの話でして、ただ一つには、少しパワーが落ちますので楽になるのと、ただし逆にちょっと違うのは、このRCSの場合、ビームがパルス状になっているんですね。ですので、そのパルスに耐える窓材料の開発は必要であろうということです。その辺りは、14ページのC-ADSの炉心の研究開発要素の2番目、パルス陽子ビーム入射に適応したビーム窓とターゲットの開発ということで挙げさせていただいております。
【小山主査代理】 ありがとうございました。よく分かりました。
【中島主査】 藤田委員ですね、はい、お願いします。
【藤田委員】 すみません、一つだけ、4ページのところ、ビーム電流ですね。どうしてもシンクロトロンだと、なかなかビーム電流を上げるのが大変ですよね。
【雨宮京都大学教授】 はい。
【藤田委員】 線形加速器ですと、ビーム電流は割と簡単に上げられますが、シンクロトロンでは、やはりこのビーム電流値を上げるということに対する課題が大きい。ビーム電流値が低いとたくさん配置しなくちゃいけなくなって、スペースも必要だし、その辺のところのビーム電流値を上げるような課題に対してはどういう検討をされようとしているんでしょうか。
【雨宮京都大学教授】 まさにおっしゃるとおりでして、ただ、電流値という点では、今のJ-PARCの3GeV RCSが0.333 MAなので、大体いいところまでは行っていると。例えばあと3倍すればいいと。その3倍するための話が先ほど言った話で、これもRCS屋さんと相当議論したんですけれども、やっぱり3倍上げると空間電荷効果が大きくなってくるから、何とかうまくしなきゃいけないので、そこの研究開発要素はあるという話になっております。
【藤田委員】 多分そこが一番の課題じゃないかなと私は考えておりまして、そこは幾つかのアイデアを検討していただきたいと。
【雨宮京都大学教授】 どうもありがとうございます。おっしゃるとおりです。的確な御指摘ありがとうございます。さすが藤田先生です。
【藤田委員】 よろしくお願いいたします。
【雨宮京都大学教授】 はい。
【中島主査】 あと、よろしいでしょうか。
竹下先生、どうぞ。
【竹下委員】 ちょっと現実的な話を教えてほしいんですけれども。実際のMAの年間処理量が参考資料のところにあるんですが、結果的に処理量が少なくなるということは、実際に全体を処理するのに必要な数は多くなるということになりますよね。
【雨宮京都大学教授】 はい。
【竹下委員】 その辺の経済的な見通しといいますか、そういう大型のADSに比べてどうだというところは検討されているんでしょうか。
【雨宮京都大学教授】 すみません。正直なところ、まだ十分に検討できておりません。特に加速器のほうは、我々は概念検討等もやっているので多少、それでもそれほど正確な数字は出せませんけれども、炉心に関しては、前回の原子力システム研究開発事業等では検討しておりませんので、まだそこは十分な検討はされていないというのが正直なところでございます。
この辺りもしあれでしたら、西原さん、何かコメントございますか、補足といいますか。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】 協力している西原です。
もちろん、一般的に小型化するとコストが上がる、そこをどうモジュール化等、あるいは受動的な安全性による機器の削減で補っていけるかというのが、これからの研究開発の観点だと思っております。
以上です。
【竹下委員】 はい、分かりました、まあ、これからというところでございますね。
【中島主査】 では、よろしいでしょうか。すみません、もう12時を回ってしまいましたが、もうちょっとお付き合いをお願いできますでしょうか。申し訳ございません。
あともう一件、原子力機構の横山様から、資料3-2で、量子ウォークによる同位体分離の原理的研究ということで、御説明をお願いしたいと思います。どうもお待たせしました。よろしくお願いいたします。
【横山原子力研究開発機構アクチノイド化学研究グループリーダー】 ありがとうございます。原子力機構の横山です。
私のほうからは、「量子ウォークによる同位体分離の原理的研究」というタイトルで、我々がやってきている同位体分離の研究について御紹介させていただきます。
資料の2ページ目は内容、3ページ目で位置づけですけれども、御存じのように、核変換によって地層処分の負担を軽減するために、今はMAの核変換ということで検討されていますけれども、FPも核変換すれば、公衆被曝のリスクを低減するとか、社会的受容性を改善することにつながるということで、できればいいと思うんですけれども、ただ問題として、FPの中には同位体分離しないとうまく核変換できないものがあるということです。
例えばセシウム、これはFPの中で一番公衆被曝のリスクが高くなるものですけれども、これを核変換しようとすると、135を核変換すればいいわけですけれども、同時に存在する133などが中性子を吸ってしまうので、中性子捕獲反応によって核変換するのが難しくなることが分かっているということです。これは前回、平成25年頃のこの作業部会でも検討されていたことだと思います。
ですので、今はできないということなんですけれども、同位体分離がうまくいかないということで、必要処理量を見込めるものがない、その分離原理がないという認識でいると思います。なので、ここで我々はその原理の探求を継続することが重要だろうということで研究を続けています。主にレーザーを使った新しいスキームを探すということを我々はやってきたんですけれども、その中で新しいスキームになりそうなものを見つけましたので、それについてここで報告させていただきます。
それが次の4ページ目の、量子ウォークを用いた同位体分離なわけです。一言で言うと、今までの同位体分離と違うのは、例えば量子コンピューターと従来型コンピューターのような関係になっていまして、つまり、これまでの方法は物質の確率密度、確率振幅の2乗ですね、これで扱っていたのを、確率振幅そのもの、あるいは波動関数そのものとして扱って分離するという原理になっています。
量子ウォークとは何なのかということですけれども、その図の左側にランダムウォークというのが書いてありますが、量子ウォークはランダムウォークの量子力学版です。ランダムウォークというのは酔歩問題とも言われますけれども、酔っ払いが右に行くか左に行くか分からないような千鳥足で動いて、ある時間経過したときにどこにいるのかという問題ですね。これを数学的に解いていくということで、一つのモデル計算ですけれども、ランダムウォークでは、例えば初期時刻ゼロで位置がゼロのところにあったものが、何代か、右か左かどっちか分からないけれども、例えばさいころを振って奇数が出たら右、偶数が出たら左みたいな形で場所を移動していくときの確率密度の分布の変化を表しています。
一番下の図だと、50回さいころを振ってどうなったかというのが描かれています。これは実数が動くときの分布の確率密度の挙動になるわけです。これを見つけたのが200年とか300年前のガウスさんとかラプラスさんとかそういう人たちで、ガウス分布と言われているわけです。
これに対して、量子力学というか、実数じゃなくて複素数でそういうランダムウォークみたいなことをすればどうなるかということで、確率密度の極限分布というのが、実は2001年に横浜国立大学の今野先生によって見つけられ、証明されました。それがその右側の量子ウォークと書いてある赤い線ですけれども、そのように全然違うものになっています。拡散していく速さも違うし、ピークの位置も違うということです。これが何に起因しているかというと、複素数が位相を持っているところに起因しているわけです。
つまり、波動関数だと位相はくるくる時間とともに回っているわけですけれども、そのために、さいころを振るタイミングを変えると変わってしまう。実数の場合は、いつさいころを振っても結局同じものになってしまうんですけれども、量子ウォークの場合は、さいころを振るタイミングによって全然結果が違うと。
それが量子ウォークの図の青と赤の違いですね。赤というのは、ちょうど位相が同じになるタイミングでさいころを振ってやると広がって分布していくのに対して、微妙に位相がずれているとき、例えば同位体で、セシウム133と135が質量差でずれているだけの位相のずれでも、そういうふうに全く違う、局在化と速い拡散が起こると。これを使うと同位体の差が非常に大きく増幅できるということに気がついたわけです。というか、最初に現象を見つけたときは分からなかったんですけど、後から量子ウォークだということが分かったんですね。
それを使ってやると、どういうふうに同位体分離にきくのかというのが、その右側の絵でして、ウラン濃縮に用いられた三つの分離法、ガス拡散法と遠心分離法とレーザー法に対して、量子ウォークによる分離の原理の概念的な違いを説明しています。
左上の図がガス拡散法で、これはガウス分布と同じものでして、拡散速度は質量によって違うというだけのものなので、ほとんど同じですね。その左下の遠心分離法の場合は、重たいものがより壁面に近づくという分布になるので、多少ポピュレーションの差ができるところがあるので、濃縮などには有利に働くと。ただ、分布の形自体は同じです。右上のレーザー法というのは、エネルギー準位の一つのものを選んで、そこに共鳴する光を当てて、その準位に存在する物質を励起してやって、イオン化なりして分離するということで、その部分だけ取ってみると完全に分離できるんですけれども、全体から見るとごく一部しか分離できないということになります。
それに対して量子ウォーク法というのは、ターゲットになっている分子などの回転周期にぴったり合わせて量子ウォークを動かしてやると、その同位体の部分は位相が合わないので全然動かないということで、分布が全然違う形になってしまって、熱揺らぎとか熱雑音を凌駕する新しい分離法になる可能性があるわけです。
実際それを、計算機上ですけれども、テラヘルツの周波数コムというものを使って、テラヘルツ波のパルス列を二原子分子に照射することによって、分子の回転角運動量空間にこういうことが起こるということを突き止めたわけです。
次の5ページ目ですけれども、これを実際に実用化するのに、主に三つのクリアすべき基本的な課題がありまして、一つは、テラヘルツ波領域で周波数コムをつくると。周波数コムというのは、2005年にノーベル物理学賞を取った技術ですけれども、光が左の図のように、くし状のスペクトルになっているものですね。これを分子の純回転遷移スペクトルの同位体のどちらかのものにぴったり合わせてつくる技術が必要で、これは可視光とか赤外ぐらいではもうできている技術なんですけれども、テラヘルツ波領域ではできていないということです。
それから、実際にその分子、今のセシウムの場合だと、ヨウ化セシウム(CsI)という分子を作用分子として考えていますので、ヨウ化セシウムが光分解したものと光分解していないものに分かれたときに、光分解したものだけを回収するような回収材を見つけなければいけないと考えています。
さらに、セシウム以外に適用する場合ですと、二原子分子ではなかなか難しいので、多原子分子に拡充しなければいけないということがあります。この三つが主なものになるということです。
その下にはロードマップを描いていますけれども、2009年に発見してから、いろいろなところでマイルストーン的な技術を確認していて、これから先5年程度で、テラヘルツでの基本原理実証と回収反応の概念実証をしたいと思っています。
今までの成果などを出していますけれども、時間もないので、6ページ目の一番上ですけれども、ヨウ化セシウムという二原子分子にテラヘルツのパルス列を当ててやって、そこに書いているような電波強度のパターンで当ててやると、右のグラフのような133と135が混じっているような状態で当ててやっても、133のヨウ化セシウムだけが回転遷移して、完全に分布が分離できるという計算機実験とか、実際の実験で、左下の図ですけれども、可視光の周波数コムで窒素分子に対して分離を実験してやって、分布が分離しかけているところまではできていると。まだ十分な光周波数コムをつくれていないので、途中までしか分離できていないんですけれども、これをさらに進めていきたいと。また、テラヘルツを使ったそういう分離実験のための発生の技術などもつくっています。
また、回収材のほうについても、次の7ページで、候補としてフラーレンが一番いいのではないかということで、量子化学計算によってそれを見いだして、実際にフラーレンの薄膜をつくって、そこにセシウムの原子状の蒸気を当てた場合と、ヨウ化セシウム分子の蒸気を当てた場合で、セシウム原子の場合だと中に入っていくけれども、ヨウ化セシウムだと中には全然入らないというようなことを、放射光分析によって調べたと。あるいは数学のコミュニティーの人たちと連携して、左下ですけれども、極限分布というのを数値計算ではなくて解析式によって導いたりしています。
それから右下は、最近出た今野先生の量子ウォークの本です。我々もそこの応用の部分で1章を書かせていただいています。この本で応用というのが七つぐらいありまして、ほとんどがアルゴリズムとか量子コンピューターの数学的な話なんですけれども、物理的な応用というのはトポロジカル絶縁体とこの同位体分離だけだったんです。なので、まだまだ応用というのは少ないんですけれども、確かに応用として可能だろうということで認めてもらっていると。
ということで、8ページのまとめとしましては、FPの核変換には同位体分離が必要ということで、量子ウォークの原理的な優位性に着目して、セシウムの同位体分離の可能性を検討しましたと。前駆現象などを確認して、数学者とのネットワークを構築、さらに今後はテラヘルツ波を使った基本原理の実証などを目指していくと。
右下に書いてあるのは、今野先生が書かれた総説の中で、締めくくりとして、量子ウォークによる同位体分離と放射性廃棄物低減への取組を紹介してもらっているということで、載せさせていただきました。
私からの発表としては以上になります。
【中島主査】 ありがとうございました。
それでは、今の御発表につきまして、コメント、御質問ございましたら挙手をお願いします。
もう小山委員の手が挙がっていますけれども、これは前回の分ですか。
【小山主査代理】 すみません、前回のままだったんですけれども、1個だけ聞かせていただいてよろしいですか。
同位体分離というと、我々原子力の人間は、重いアクチノイドのことを考えてしまうんですけれども、これはアクチノイド等のf電子原子についても、こういった現象は計算できるというか、あり得ると考えてよろしいでしょうか。
【横山原子力研究開発機構アクチノイド化学研究グループリーダー】 はい、ありがとうございます。そうですね、重さが違うだけなので、原理的には全く同じで、我々としてはアクチノイドまで行けたら、それこそいろいろな原子力に関係するものに応用できるのではないかと考えております。
【小山主査代理】 分かりました。まだ、そういった応用は世界でもやられていないということで。
【横山原子力研究開発機構アクチノイド化学研究グループリーダー】 そうですね、ないと思います。原理的な話で、まだ本当に原理的な、物理化学の人たちと一緒に基本原理の話をしているぐらいなので、実際にそういうものに使うというのはないと思います。
【小山主査代理】 ありがとうございました。
【中島主査】 竹下委員。
【竹下委員】 大変面白かったんですけれども、ちょっと教えていただきたいんですが、実際のこういう分離装置を造るということになると、光で分解させた後に、例えば再衝突するとか、分子が衝突しないでそのままやれば原理的には分けられるとか、そういうような問題はないんでしょうか。これは理論ではそうだが、実際のところでは分子衝突やいろいろなことを考える必要があるように思いますが。その辺を教えてください。
【横山原子力研究開発機構アクチノイド化学研究グループリーダー】 はい、ありがとうございます。まさにおっしゃるとおりでして、例えば5ページ目に回収技術の目標というのが、概念というか、図が描いてあるんですけれども、その中で衝突というのがあるので、衝突する前に分解したセシウム原子は回収材に行かなきゃいけないと。そのためには、そんなに圧力は上げられないと。しかも回収材を効率よく配置してやって、衝突をできるだけ少なくすることが必要になってくるんですね。それが、衝突による同位体交換というのが起こってしまう速度になってしまうということで、その速度の評価なども今、理論的にですけれども、やっております。
【竹下委員】 分かりました。実用化ということになると、その辺がまた問題になるというところでございますね。
【横山原子力研究開発機構アクチノイド化学研究グループリーダー】 はい、そうです。
【竹下委員】 ありがとうございました。
【中島主査】 藤田委員、どうぞ。
【藤田委員】 すみません、一つだけ。5ページのところにあります回収反応の概念実証の試験って、ある程度目途が立っていらっしゃるんでしょうか。この話を私は実は前からよく伺っているので、その辺はどういうふうになっていらっしゃるか。結構、アメリカの方たちとか御協力されているふうにお見受けしているんですけど、具体的なことを教えていただきたいと思います。
【横山原子力研究開発機構アクチノイド化学研究グループリーダー】 回収に関しては、回収材がとにかく必要だということで、普通の、福島で例えばセシウムが吸着しているとかいうのと全く逆でして、極性のあるセシウムのイオンが吸着する鉱物とかそういうものではなくて、無極性のものでセシウム原子がくっつくというのも、イオン性のヨウ化セシウムはくっつかないみたいなものとして、理論計算で、7ページですけれども、フラーレン類が有望だということが分かったと。それを実際に材料に落として試験して、思ったような性質になっているということまでは確かめたんですけれども、実際の回収する条件で、回収する機能が発現するのかというところを、これからの5年間でやっていきたいなと、そういうレベルです。
以上です。
【中島主査】 藤田委員、よろしかったですか。
そのほか、特に御質問等ございませんか。
では、どうもありがとうございました。横山様、それから、さっき御発表いただきました雨宮先生もありがとうございました。ちょっと時間が押していて申し訳なかったです。
一応、予定の議題としては以上でございまして、今後の進め方は、今日もまた少し、もうちょっとシナリオの検討が必要ですとか、コストの問題とか、特に高速炉との比較の話でのメリットがまだよく見えないとか、いろいろ議論がありましたので、またこれらを踏まえた上で、次回、資料をまとめてJAEAさんに御説明をお願いするということになろうかと思います。
当初、委員会発足のもくろみとしては、3回ぐらいで終わりというか、まとめたいと思っておりましたが、事務局とも相談ですけど、まだもう少し相互の理解が必要かなと、説明も必要かなと思いますので、また回数を増やすことも考えながら詰めていきたいと思います。
何かこの場で、閉じる前に各委員から、今後こういうことをやってほしいとか、もし強い要望があれば、今、手短であれですけど、よろしいでしょうかね。多分また後で、前回と同じように、事務局宛てに文書等で御意見をお出しいただくということもあり得るかと思いますので、よろしいでしょうか。時間を大幅に超えてしまいましたが、それでは今日、このタスクフォースとしての議論はここまでとさせていただいて、事務局にハンドリングをお返ししたいと思います。よろしくお願いいたします。
【鈴木原子力課室長】 本日はありがとうございました。第4回の開催については、また主査とも相談させていただきまして、必要に応じて日程調整をさせていただければと思っております。
また、追加の意見については、来週月曜日中までに一度いただけるとありがたいと思っております。前回、皆さんに審議会にも出せるような形の資料で御意見をいただきましたが、そういったことだけではなくて、次回、原子力機構にはこういうところをぜひ発表してほしいとか、ちょっと言い足りなかったのはこういうところだというような、簡単なメール、べた打ちの文章などでもいただければと思います。本日は事務局の時間の設定も不具合で、皆さんの御意見をきちんと伺えなかったようで大変申し訳なかったです。
本日の議事録につきましては、でき次第メールにて御確認いただいた後、ホームページに掲載させていただきたいと思っております。
また、第3回のタスクフォースは10月5日を予定しておりますので、よろしくお願いします。
事務局からは以上です。
【中島主査】 ありがとうございました。
それでは、時間を大分オーバーしてしまいましたが、これをもちまして、本日、第2回のタスクフォースは終了とさせていただきます。どうも皆様、お疲れさまでした。

―― 了 ――
 

お問合せ先

研究開発局原子力課

 電話番号:03-5253-4111(内線:4543)
 メールアドレス:genshi@mext.go.jp