原子力科学技術委員会 原子力研究開発・基盤・人材作業部会 群分離・核変換技術評価タスクフォース(第3回) 議事録

1.日時

令和3年10月5日(火曜日)13時30分~15時30分

2.場所

新型コロナウィルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 今後の研究開発の方向性について
  2. タスクフォースとりまとめ(素案)について
  3. その他

4.出席者

委員

中島主査
小山主査代理
小竹委員
竹下委員
辻本委員
長谷川委員
藤田委員
山本委員
 

文部科学省

松浦 原子力課長
鈴木 原子力課室長(人材・研究基盤担当)

オブザーバー

西原 健司 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 分離変換技術開発ディビジョン 核変換システム開発グループ グループリーダー
松村 達郎 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 分離変換技術開発ディビジョン 副ディビジョン長
竹内 正行 日本原子力研究開発機構 燃料サイクル設計室 室長
前川 藤夫 日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター 核変換ディビジョン ディビジョン長
高野 公秀 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 燃料・材料工学ディビジョン 燃料高温科学研究グループ グループリーダー
林 博和 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 分離変換技術開発ディビジョン MA燃料サイクル技術開発グループ グループリーダー
伴 康俊 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 分離変換技術開発ディビジョン 群分離技術開発グループ グループリーダー
 

5.議事録

科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会
原子力科学技術委員会 原子力研究開発・基盤・人材作業部会
群分離・核変換技術評価タスクフォース(第3回)
令和3年10月5日


【鈴木原子力課室長】 それでは、定刻になりましたので、第3回群分離・核変換技術評価タスクフォースを開催いたします。
今回のタスクフォースでは、新型コロナ感染症拡大防止の観点からオンラインにて開催しておりまして、これに関連した確認事項などもありますので、議事に入る前まで事務局にて進めさせていただきます。
まず、オンライン開催に際しての留意事項を御説明いたします。

[オンライン開催に際しての留意事項について事務局より説明]

以上が本日の進行に当たっての留意事項になります。
続きまして、本日の資料の確認をさせていただきます。議事次第に記載しております通り、議題は(1)から(3)までございまして、議題(1)に関連する資料としまして資料1-1、1-2、議題(2)に関連する資料としまして資料2をお配りしてございます。また、参考資料4としまして、藤田委員より前回タスクフォース終了後にいただいた御意見、参考資料5としまして、山本委員より前回の終了後にいただいた御意見を配付してございます。
資料については以上になります。
それでは、委員の皆様の御出席を確認いたします。竹下委員のみまだお入りになっていないですけれども、委員7名が参加されておりますので委員会として人数については成立してございます。
また、今回、質疑応答対応といたしまして、日本原子力研究開発機構より、西原様、松村様、竹内様、前川様、高野様、林様、伴様の7名にも御参加いただいてございます。
それでは、これから議事に入らせていただきますが、運営規則第4条に基づき、本会議は公開とさせていただきます。また、第5条に基づき、本日の議事録につきましても、ホームページに掲載いたします。
事務局からは以上になります。
ここからの進行は中島主査にお願いいたします。
【中島主査】 ありがとうございました。中島です。本日もよろしくお願いいたします。
今日は、議事次第に記載のとおり、その他を入れて議題が三つ、今後の研究開発の方向性について、それからタスクフォースのとりまとめの素案についてということで出ております。前回は私の進行が悪くてなかなか十分な議論ができませんでしたので、今日はできるだけ、予定としてはまとめて議論をしていきたいと思っておりますが、具体的な進め方はまた個々の議題の中で説明させていただきたいと思います。
まず、議題1として、今後の研究開発の方向性についてということで、前回のタスクフォースでの色々な御意見を踏まえまして、原子力機構さんで意見を整理して回答案を作っていただきました。それについてですけれども、その前に事務局のほうから、第2回タスクフォースへの主な御意見ということで、資料1-1を説明いただいて、その後、辻本委員から資料1-2について説明いただきたいと思います。
議論の進め方ですが、時間をうまく利用したいということもございますので、ここの議題になっている研究開発の方向性については、資料2のとりまとめの素案も踏まえて、まとめて御意見いただいたほうがよろしいかと考えております。議題1の中では、事実関係の確認といいますか、質疑応答のみとさせていただいて、意見交換については、議題2でまとめて行っていただきたいと考えております。よろしいでしょうか。
それでは、まずは資料1-1につきまして、事務局より説明よろしくお願いいたします。
【鈴木原子力課室長】 事務局より簡単に前回のタスクフォースでの議論の御意見について御紹介させていただきます。
資料の1-1を御覧いただければと思います。前回、導入シナリオと研究開発の進め方について御意見をいただきました。
導入シナリオについては、まず、処分場の負荷低減について定量的な評価が示されたことについては、一定の意義があったのではないかという御意見がありましたが、さらに、実際にイメージが湧くような資料を今後検討する必要があるといった御意見であったり、分離変換後、最終処分前に300年程度貯蔵することの前提については、妥当性や社会的受容についても検討することが必要ではないかという御意見がありました。コストについては、環境負荷低減や長期的な安全性も経済性に含めて評価する必要があるといった追加で検討すべき事項についても御質疑がありました。
また、提示されたシナリオは極端な例であって、より現実的なシナリオがあるのではないかといった御意見もありました。提示されたシナリオでは、高速炉に対する優位性、ADS導入の意義が分かりにくく、例えば、シナリオ1については、高速炉の本格導入時期までに、マイナーアクチノイド(MA)の回収のみを実施しておけば、ADSを導入しなくても、高速炉が本格導入されたときにまとめてやることも可能ではないかというような御意見もあったと思います。
一方で、今世紀末に高速炉を広く導入するという前提で議論することについて、一般の人も受け入れられるかという点についても考える必要があるといった御意見もありまして、今後20~30年のうちに蓄積されたMAをどう処分するかについて、社会にちゃんと示していくということが必要ではないかといった御意見もございました。
また、コスト評価について、なかなか十分とは言い難いという御意見が複数の委員からあったと思います。一方、概念設計がきちんとできていないとコスト評価というのはできないという御意見もあり、まずは概念設計をきちんとして、それに基づいたコストを算出し、それ以降にコストダウンをどうやっていくのかという次の検討ができるのではないかといった御意見がありました。
最終的には、現実的なシナリオを今後示していく必要があって、その中で、高速炉によるMA核変換オプションとの比較についても議論していくべきではないかといった御意見がありました。
研究開発の進め方について、分離については、実験段階ではMA回収率99.9%を目指しているが、実用化を考える段階では、二次廃棄物の発生量や、施設の規模やコスト等を踏まえた現実的な設定を考えていくべきだという御意見がありました。
シミュレーションの活用については、こういった研究開発の方針は妥当であると。一方でシミュレーションだけでは実用的にはならないので、実験と組み合わせる必要があり、データ同化の思想に基づき、計算科学を中心とし、足りない部分を実験で補うという方向性が期待されるという意見のほか、具体的な照射実験のやり方について、マシンタイムの確保、長い時間が必要になることが考えられるので、そういったことができるところを探していくことが重要だといった御意見がありました。
また、実用化を目指す上では、安全性について再検討すべきだというような強い意見もいただきまして、加速器の信頼性に頼らない概念設計を考えるべきであるといったことや、1F事故を踏まえた過酷事故の評価もきちんと実施すべきであるといった御意見がございました。
主な御意見については、以上でございます。
【中島主査】 ありがとうございます。
次の説明に行きたいと思いますけれども、もし1-1で、何か、これ抜けているとか事実誤認だよというのが今あれば、御発言いただいても結構かと思いますが、後でまとめて時間を設けたいと思います。よろしいですか。
それでは、資料1-2で、委員からいただいた主なコメントへの回答ということで辻本委員お願いします。
【辻本委員】 資料1-2、委員の皆様からいただきました主なコメント等への回答と併せて、前回タスクフォースの会合でもお示しさせていただきました今後の研究開発の進め方について、改めて御説明させていただきたいと思います。
まず、2ページですけれども、前回、分離変換のシナリオとともに、分離変換を導入したときにどういった効果があるかということを示させていただきました。その際に設定しているマイナーアクチノイドの回収率ですとか、ストロンチウム、セシウムの貯蔵期間といったものが、このMA分離変換の導入効果にどう影響するのかというような御質問等があったと思います。
このMA回収率とストロンチウム、セシウムの貯蔵期間に関しまして、今回この二つをパラメーターといたしまして、具体的には、廃棄物発生量、それから、地層処分場面積低減効果がどのように変わるかといったことを新たに検討させていただきました。
MA回収率についてですけれども、当然、回収率を変えると工程の規模も変わってきますので、各工程で発生する二次廃棄物といったものの量も異なります。しかしながら、こういった工程の規模によって出てくる廃棄物の量については、今回の検討では割愛させていただきまして、単に回収率の違いのみによって、廃棄物の発生量、それから処分場面積はどう変わるかといったことを設定しております。
当然、MA回収率を実際に工学規模で設定する際には、こういった工程の規模ですとか、各工程から出てくる二次廃棄物の量といったものも勘案して、最終的な設定をするものでありますけれども、今回は単にこれをパラメーターにするのみといった検討にとどめさせていただいております。
また、ストロンチウム、セシウムの貯蔵期間ですけれども、地上保管の期間が変われば当然廃棄体から発生する熱の量が変わってきますので、廃棄体配置に変更が生じます。こういった効果を考慮いたしまして、発生する廃棄物の量、それから処分場面積について検討いたしました。
検討の前提といたしましては、資料に示してありますように、UO2燃料の一部にプルサーマル燃料が入ったというような状況で検討をしております。
次の3ページが具体的な検討結果になっております。
まず、左のグラフでオレンジ色で示しておりますのが、分離変換導入なしの場合の廃棄体発生量をUO2のみの場合とMOX燃料を混合再処理した場合で比較して示しております。
MOX燃料を混合再処理しますと、MOX燃料から出てくる発熱性のMAが多くなるという効果がありますので、若干廃棄体の発生量は増えております。
これら両方に分離変換を導入いたしますと、発熱性のMAといったものが分離、回収されますので、その分、ガラス固化体を高含有することができます。このために、発生します廃棄体発生量、ガラス固化体につきましては、約6割減容化することができます。
また、新たに発生いたしますストロンチウム、セシウムを分離することによる廃棄体というのは、そこの青で示しておりますような量が発生するということになっております。
これらを、まず、青で示しておりますストロンチウム、セシウムにつきましては、横軸、貯蔵期間をパラメーターとして実際の処分場面積の低減効果といったものを右のグラフで示しております。また、オレンジ色のガラス固化体に関しましては、横軸、MA回収率を取りまして、同じく処分場面積の低減効果を示しております。これら二つのグラフ、縦軸はログスケールとなっていることに御注意いただきたいと思います。
まず、ストロンチウム、セシウムについてですけれども、貯蔵期間を長く取れば取るほどそれだけ発熱量が下がりますので、集積配置が可能になります。
こちらでV0、V1、V2、あるいはCと書いてありますのは、その下に示してありますようにそれぞれの廃棄体の地層処分場での配置を示しております。V0からV1、V2に減るに従いまして、より密に廃棄体を設置することが可能になって、その分、処分場面積が低減するグラフになっております。
100年以上ストロンチウム、セシウムを地上保管しますと、顕著に処分場面積は低減することができ、300年程度ですと100分の1程度まで処分場面積は低減することが可能と考えております。実際に処分場の面積がどこまで低減するかといったものは、こういった地上保管に関する社会的受容性との兼ね合いで最終的には決められるものと考えております。
また、一方でMAの回収率につきましては、回収率を上げれば上げるほど、その分処分場面積の低減効果は大きくなっております。
これは、ガラス固化体に含まれておりますアメリシウム241をどれだけ回収するかということが、ガラス固化体の発熱に直接効いてきますので、このように、MA回収率を上げれば上げるほど処分場の面積低減効果は大きいということがお分かりいただけると思います。
これにつきましても、先ほど御説明しましたように、実際の工程で出てくる廃棄物の発生量や技術的な困難さというものも含めて、最終的には決めるものと考えておりますけれども、99%以上というものは、目標として設定して考えていきたいと考えているところであります。
次の4ページが、ストロンチウム、セシウムの長期貯蔵施設の検討ということで、これがどこまで現実的なのかということで検討した例を示しております。
長期貯蔵施設に関しましては、日本では、ガラス固化体の乾式貯蔵が実際に行われております。これと同様の概念が適用できるということを仮定いたしまして、簡易な温度評価で、これらの施設の成立性といったものを確認しております。
また、参考といたしまして、アメリカのハンフォードサイトの例を示させていただいております。
アメリカのハンフォードでは、核兵器用の核燃料物質の製造が1960年代からずっと続けられたわけですけれども、そこで発生する廃液の貯蔵で発熱が非常に問題になるということがありまして、1970年代から80年代にかけて、実際に高レベル放射性廃液からストロンチウム、セシウムが分離されております。
この分離したストロンチウムとセシウムは、それぞれカプセル状容器に封入いたしまして、写真で示しております貯蔵プールで貯蔵しております。総量といたしましては、ストロンチウム、セシウムと合わせて約1トン以上が実際にこうしたプールで貯蔵されております。
この貯蔵プールですけれども、当初の想定耐用年数は30年ということで、1970年代からずっと保管されているということもあって、耐用年数を過ぎております。ハンフォードサイトのクリーンナップが進んでおりますので、この貯蔵プールから、現在、乾式貯蔵に移行する準備が進められていると聞いております。
乾式貯蔵に移行しますと、50年以上は乾式貯蔵をするということで、100年単位での地上での保管というのも、あながち非現実的な想定ではないと我々は考えているところであります。
次に、5ページのシナリオ検討の補足について説明させていただきます。
前回議論では、ケーススタディといたしまして、今世紀末に高速炉を本格導入するまでに発生する軽水炉使用済燃料を分離変換するために、ADSを導入するというシナリオを提示させていただきました。
こちらにつきましては、13ページ、参考資料になりますけれども、高速炉開発の戦略ロードマップに沿ったケーススタディとしてお示しさせていただきました。
13ページの高速炉開発の戦略ロードマップ、概略を示させていただいておりますけれども、高速炉の本格利用が期待される時期は、今世紀後半のいずれかのタイミングとなる可能性があると。それを見据えますと、今世紀半ば頃の適切なタイミングにおいて現実的なスケールの高速炉の運転開始が期待されるということが、戦略ロードマップで述べられていることであります。
これに沿ってケーススタディを実施したわけですけれども、この戦略ロードマップにも示されておりますように、あくまでその高速炉の本格利用が期待されるという時期になりますので、必ずこのシナリオがこのとおり想定するというわけではありません。
仮に2050年にADSを導入しても、2100年に高速炉が必ず導入されるとは限りませんので、このまま軽水炉が長期利用されるということも想定されるわけです。
ADSは、もともと核変換に特化したシステムでありますので、このように、核変換専用に小規模なサイクルを設けて核変換するというのは、軽水炉の長期利用が想定される場合には非常に柔軟に対応できる可能性を持っていると考えております。また、特にプルサーマルの使用済燃料に対しましては、分離変換の導入効果は大きいとされております。
これにつきましては、同じく参考資料14ページから17ページになりますけれども、2009年の原子力委員会のチェックアンドレビューのときに示された資料を掲載させていただいております。
例えば、15ページには、MOX燃料をプルサーマルの場合とUO2燃料の場合での潜在的な有害度を比較しております。このグラフからお分かりいただけますように、プルサーマルの場合は、発生するMAの量が多くなりますので、その分、潜在的な有害度というものは高くなります。
また、16ページには、発電電力量当たりの高レベル放射性廃棄物の発生量を示しておりますけれども、こちら、比較していただきますと、2番のLWRと4番のプルサーマルを比較していただきますと、発熱量がプルサーマルの場合はLWRよりも大きいということで、分離変換導入の効果も比較的大きくなっております。
また、17ページに示したように、処分場の廃棄体定置面積で比較いたしますと、プルサーマルの場合は、LWRから見て分離変換導入効果が大きいということがお分かりいただけるかと思います。2番と4番を比較していただきますと、廃棄物発生量については、倍以上、プルサーマルの場合は大きくなります。やはり廃棄体の定置面積といったものも同じように大きくなります。
分離変換を導入いたしますと、それだけ効果が大きいということが、16ページ、17ページからもお分かりいただけたと思います。
ただし、プルサーマルというのは、全ての軽水炉に導入されるわけではありません。UO2と必ず混合されて使われるわけですので、これはあくまで定性的な評価ということになります。
いずれにしましても、プルサーマル処理済燃料を含めまして、軽水炉の長期利用が想定されるといった場合には、核変換専用のサイクルというものを導入する効果というのは大きいということは言えると考えております。
そうした場合に、比較対象となりますのは高速炉とADSになるわけですけれども、6ページに、これまでに検討されてきた核変換システム概念の整理ということで、発電用高速炉を利用した場合とADSの場合とで、それぞれのシステムの性能比較を示させていただいております。
発電用高速炉を利用する場合は、燃料に均質に混ぜる場合と、炉心やブランケットの一部にMA燃料を非均質に導入する場合とで比較しております。
当然、発電用高速炉は核変換だけではなく、発電と核変換の両立を目的としておりますので、核変換専用のシステムではございません。したがって、単にMAの核変換能力だけを比較するのは、ここではあまり意味があると思いませんけれども、単に核変換能力だけを比較するということでこの図を示させていただいております。
こちらも、18ページに示しました原子力委員会でのチェックアンドレビューのとりまとめの表から抜粋した値となっております。
こちらに示した表からお分かりいただけますように、発電用高速炉に比べまして、ADSでは、マイナーアクチノイドの核変換能力といった点では、約6倍程度の能力の差があるということがお分かりいただけるかと思います。
もともとADSは、核変換に特化した階層型システムを想定しておりますので、小規模なシステムで効率よく、かつ経済的にも優れた核変換システムを実現できる可能性があると我々考えているところであります。
経済性につきましては、こちら、参考資料になりますけれども、19ページにフランス、CEAの分離変換に関する報告書の概要を抜粋させていただいております。
まず、こちらにも、高速炉とADSの場合の核変換能力の比較が示されております。高速炉の場合ですと、やはりその均質装荷の場合が、この場合4%になりますけれども、核変換能力としては最大になります。それでもやはりADSと比較しますと7倍程度の核変換能力の差があるということがお分かりいただけるかと思います。
一方で、コスト比較は、下の表になりますけれども、この場合、ADSを導入したした場合には、高速炉の核変換なしに比較して、約25%程度コストアップという評価になっております。
しかし、これは、もともと高速炉が40基導入されているという場合を100といたしまして、そこから出てくるMAを核変換する場合にADSを新たに導入すると25%コストアップするという評価になっております。したがって、高速炉でMAを核変換する場合は、新たに高速炉は導入されておりませんので、その部分はほとんどコストアップはしないという評価になっております。
したがって、1基当たりのコストで比較しますと、高速炉の場合は、一番上に条件を示しておりますように40基で100になるわけです。ですから、1基当たり2.5というコストになるわけです。
一方でADSは、100に対して26を約20基のADSでそれだけのコストアップになりますので、一基当たりのコストは約1.5、高速炉の半分程度ということが言えると思います。
一方で、ADSと高速炉、1基当たりの出力は異なっております。出力を比較しますと、高速炉はADSの約9倍という設定になっております。
したがって、それぞれの1基当たりの核変換能力を比較しますと、高速炉の場合は、ADSの約1.3倍の核変換能力があります。しかしながら、1基当たりのコストは高速炉のほうが2倍あるということで、コストが2倍かかって、MAの核変換は1.3倍ということになりますので、単にMAの核変換能力だけを比較すると、ADSのほうがコスト的には優れているということも言えると思います。
当然、これは単にMAの核変換能力だけを比較したものですので、高速炉導入の場合には、当然、発電というメリットがありますので、あまりフェアな比較にはなっておりませんけれども、こういった解釈もできると考えているところです。
6ページに戻っていただきまして、こういったように、もともとADSは、商用サイクルに小規模なシステムとして、核変換を専用としたシステムを導入するということを考えておりますので、核変換能力だけを考えた場合には、我々としては、非常に優れたシステムだと考えているところであります。
ここまでがADS導入シナリオの検討の補足ということになります。あまり定量的な評価になっておりませんけれども、定性的ではありますが、ADS導入の効果というものがあるということが御理解いただけるかと思います。
このADSの研究開発の進め方でありますけれども、7ページにロードマップという形で示させていただきました。
ADS研究開発を進めるに当たりまして、様々な分野の研究開発を進めていく必要があります。それぞれの分野の詳しいTRLの表を含めまして、現在、我々がどこにいて、今後どういった研究開発を進める必要があるかというところは、参考資料の20ページから23ページに示させていただいております。
それぞれの分野に関しまして、水色で示しておりますのは、既に実施済みの研究開発段階、黄色で示しておりますのが、現在実施中の研究開発項目になります。それぞれのTRLの中で、例えば、TEF-Pの機能ですとかTEF-Tの機能と書いてある部分につきましては、以前御説明しましたように、原子力機構でJ-PARCで新たに施設を建設して研究開発を進めると考えていたところであります。
これにつきましては、前回御説明いたしましたように、なかなか今新しい研究施設を建設できる段階にないということで、それに代わって、シミュレーションの高度化、それから既存実験施設の活用で、何とかこの部分を今後、研究開発を進めていきたいと考えているところであります。
7ページに戻っていただきまして、今までそのTEFというものを考えていたわけですけれども、それに代わる部分ということで、今後、赤字で示している部分を、研究開発を進めていきたいと考えているところであります。
具体的な項目について、簡単に御説明させていただきます。
8ページになります。こちらは前回、お示しした資料を再掲載させていただいておりますけれども、今後のADS研究開発の考え方ということで、目標といたしましては、ADSを用いた階層型分離変換システムの実現性、実用性等の判断に向けて、システムを構成する各要素に対する技術開発・技術基盤の確立というものを目標として研究開発を進めていきたいと考えているところです。
委員の皆様から、我々が進めているそのADSを中心とした階層型の分離変換システムというのが、基礎研究、基礎基盤的な研究なのか、それとも実用化を目指した研究開発なのかという御質問もあったかと思います。
我々としては、まさにその間にあると考えております。単に基礎基盤をやるのでもないですし、今、既に実用化を目指した研究開発をすぐやるという段階ではないと。ただし、実用化を目指した研究開発を実施するか否かという判断に資するような技術基盤の確立というものは目指して研究開発は進めていきたいと考えているところです。
具体的にADSの各項目について、今後の研究開発、実施する項目について、9ページで御説明させていただきます。
前回御説明しましたように、ADSの開発に当たりましては、PSi計画という計画の下で計算機シミュレーションの高度化という計算科学的なアプローチを導入し、それぞれの研究開発を進めていきたいと考えております。
まず、ADSの概念検討ですけれども、特にADS特有のものでありますビーム窓等につきましては、解析の詳細化・高度化、具体的には、核・熱・構造を連成させた詳細解析ですとかビーム窓材料の照射損傷モデルの構築等を進めていきたいと考えております。
また、特に福島事故以降の規制基準の見直しといったものも含めまして、外的事象やシビアアクシデント等への対策を含めて、安全性の検討といった部分は強化していきたいと考えております。
また、炉物理、核データに関しましては、運転時の未臨界度監視設備の概念設計を行うとともに、ADS核設計の信頼性向上を目的とした核データ検証実験のデータベース化及び核データ測定を進めていきたいと考えております。
それから、鉛ビスマス熱流動、材料研究に関しましては、既存の鉛ビスマスループを用いて運転制御技術化等の開発を進め、運転経験を蓄積しながら、国内外の既存施設を活用して、ビーム窓材料の照射試験を実施し、照射損傷解析モデル構築に寄与したいと考えております。
加速器に関しましては、国内外機関と連携し、ADS用超伝導加速器開発を継続するとともに、ビームトリップ低減策の検討を進めていきたいと考えているところであります。
原子力機構では、本年度が第3期中長期計画の最終年度となっておりまして、来年度から7か年の第4期中長期計画が始まります。第4期中長期計画におきましては、ADS開発に関しましては、こちらに示した項目について具体的な研究開発を進めていきたいと考えているところであります。
次の10ページですけれども、群分離とMA燃料サイクル研究開発のロードマップについてお示しさせていただいております。
こちらにつきましては、前回、第2回でそれぞれの分野について、外部機関、OECD/NEA等で評価されたTRLを用いて具体的な研究開発の進め方等を御説明させていただきましたので、今回は、おおよそのロードマップの提示にとどめさせていただきたいと思います。
次のページになりますけれども、それぞれの研究開発の進め方につきましても、そちらに書いてありますように具体的な研究開発を進めていきたいと考えております。
まず、マイナーアクチノイドの分離に関しましては、JAEAの現有施設――こちらはCPF、BECKYといった現有施設になります。それぞれの施設の特徴に関しましては、参考資料の24ページに示させていただいております。それぞれの施設を用いまして、CPFでは、工学化に向けた課題抽出等の応用研究、BECKYでは、抽出プロセスの改良等の基礎基盤研究を進めていきたいと考えております。
また、ADS用窒化物燃料に関しましては、実燃料で必要となるTRU実証試験を目指すとともに、燃料ふるまい解析の精度向上のための照射試験を目指した試料の作製に着手したいと考えております。また、乾式再処理技術に関しましては、MA含有窒化物燃料を模擬した試料を用いて原理実証段階の研究開発を進めていきたいと考えているところであります。
資料につきましては、以上で説明を終わらせていただきます。
【中島主査】 辻本委員、ありがとうございました。
それでは、冒頭申しましたように、まず質疑応答という形で、これについて御質問等ありましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
山本委員が挙手されていますね。
【山本委員】 山本です。事実関係の確認に2点ありまして、1点目が、3ページ目と17ページ目に処分場の面積の比較が書いてあるんですけど、この二つの表の関係が若干分からないので、それを御説明くださいという話と、もう一つが、3ページ目のグラフで「分離変換なし(2.0)」というのが横一直線になっているんですけど、これは時間がたてば分離変換しないやつも発熱量が落ちていくので、右下がりになる気がするんですけど、その点いかがでしょうか。
【中島主査】 お願いいたします。
【辻本委員】 まず、3ページの評価と17ページの評価ですけれども、これは直接比較できるものではありません。
17ページは、2009年に原子力委員会でチェックアンドレビューのときに示された図ということで、参考までに提示したものでありますので、前提条件とかが違っておりますので、これが直接比較できるものではありません。17ページは、単にプルサーマルとUO2燃料の比較を示す意味で示させていただきました。
それから、3ページのグラフですけれども、分離変換なしの場合2.0ということですが、当然、年数がたてばそれだけ処分場面積の低減効果が出てくる場合があります。ただし、マイナーアクチノイドに関しましては、比較的寿命が長いですので、あまりそこは、置いといても、それほど処分場面積の軽減効果というのは大きくはないと考えております。
【山本委員】 分かりました。どうもありがとうございます。もう1点だけ。6ページ目の表のADS階層型で想定されているADSというのは、例のあれですかね。800メガワットの設定ですか。
【辻本委員】 はい。我々はそれを想定しております。
【山本委員】 了解です。
以上です。ありがとうございました。
【中島主査】 そのほか、いかがでしょうか。小竹委員お願いします。
【小竹委員】 ありがとうございます。詳しい説明をありがとうございます。
一番最後におっしゃった、実用化を目指した研究開発の実施判断にする技術基盤を確立するために、今後7年間、研究開発を進めていくということで、7ページ目でしたか、ここにロードマップの見直し案があって、こういう黄色で描いたところを中心にやっていきますということなんですけど、意味は何となく理解できるんですが、この全体の研究開発の予算規模というか、規模感ですね。端的に申し上げると、基盤研究といっても、結構規模の額が変わるものもあるし、実用化研究になると、当然民間も入って、機器製作とか実現性に関わるいろんな研究開発とか技術開発が入ってきますので、当然予算も膨らみます。
ここでおっしゃっているADSの実施判断のための研究開発、中間的なものだという、その規模感というのはどんな程度なんでしょうか。それをまず教えていただけますか。
【辻本委員】 我々が現在、ADS、それから関連する燃料、分離等に対する研究開発で使っているお金というのが、運営費交付金で言いますと数億円規模になります。ですから、今後7年間もそれぐらいの規模感を我々は想定しているところになります。
【小竹委員】 ということは、今までは基礎基盤的な研究という意味合いでやられたと思うんですけど、その延長線なので、基礎基盤的な研究の継続というような意味合いと理解できるんでしょうか。
【辻本委員】 基礎基盤というのがどの規模かというのは、恐らく人によっていろいろ考え方はあると思います。私個人の中で言いますと数億円規模というのは、基礎基盤というには結構大きい額を頂いていると考えています。
【小竹委員】 私が申し上げたいのは、従来から指摘されているように、先ほどから詳しく説明して頂いた放射性廃棄物の分離変換によって廃棄物量の削減や処分場面積を削減するという意味では、高速炉の処理能力はADSと比較して少なくても、発電炉として何基か導入していけば、ADSと同じ処理量にできる。つまり、単基の処理能力は違うけれども、導入の仕方で分離変換する能力は同等になるわけです。
高速炉は、発電をしながら、ウラン資源の代替のプルトニウム利用を本格化するという意味もあるわけで、それで、従来から高速炉でMA燃焼(核変換)を行うという話があったわけです。その高速炉のMA核変換と同じ目的で、ADSを基礎研究として進めている。様々な分野に応用できるとか、いろんなことを工学的に研究するという意味において、基礎基盤研究というのは重要だとは思います。しかし、本当に実用化していくという判断をするためには、あと5年とか7年続けた後でも、あるいは今判断しても同じではないかという疑問をこの前も指摘させて頂いた。事実、フランスやアメリカでは、それぞれ2003年と2013年に、選択・判断がなされているわけで、なぜ日本だけ未だに判断しないのかというのを不可思議に思うので、質問させていただきました。
これから7年間、こういうことをやって、本当に、これができるんだ、あるいはその御利益が高速炉よりもいいんだというところまで行くんだったら、やる価値はあるかもしれないけど、その前に、そもそも高速炉とADS、どっちが重要なのかということを判断しないと、非常に限られたマンパワーとか予算の中でいろんなものに手を出すというのはいかがなものかというのが私の意見です。
【辻本委員】 小竹委員の意見は承りましたけれども、私としては、今、アメリカ、フランスの例が出ましたが、再処理をそもそもしないと言っているアメリカはあんまり参考にならないと思っています。フランスが、高速炉の研究開発に集中しているのは、それはそのとおりですけれども、だからといってフランスがADSの研究開発をしてないというわけではありません。前回までにも説明しましたように、ベルギーが進めているMYRRHA計画にはフランスも参加しております。
ヨーロッパは1国だけで研究開発を進めているわけではなくて、役割分担を持って研究開発を進めていると思いますので、フランスは高速炉の研究開発をしていますし、ベルギーはADSを選択していると考えています。フランスが全くそこに関与してないというわけではないと思います。
【小竹委員】 研究を全くしてないというつもりはありません。基礎基盤研究的な意味合い、いろんな可能性を探る意味の研究アクティビティは当然、フランスだけでなくアメリカでもやっていると思います。ただ問題は、実用化に向けてADSの開発を本格的にやっているかという問題なんです。
それと、先ほどアメリカは再処理しないとおっしゃいましたけど、確かに現時点の政策判断はそうですが、アメリカは将来も直接処分から変えないとは言っていません。既にARDP(先進的原子炉実証プログラム)というプロジェクトを開始し、高速炉の開発も始めています。未来永劫、再処理しないという話ではなくて、フランスや日本と同じように放射性廃棄物を何とかしていくという研究開発はアメリカでも進んでいます。そういうことを考えたときに、ADSをわざわざ開発していく必要性がどこにあるのか。高速炉と比較検討しないといけないんだったら、そういうのをすべきじゃないかと思うんです。
【辻本委員】 もちろん性能比較はしていくべきだと思います。
【中島主査】 中島ですが、これはこの次の議題の議論のほうに大分移っているような気がしますので、個人的には聞いていて面白いって言ったら怒られますけれども、非常にいい議論をされていると思いますが、まずは今のところまでというところでよろしいですか。
【小竹委員】 はい。
【中島主査】 では、小山委員、お願いいたします。
【小山主査代理】 私からは、質問なんですけど、7ページと10ページのロードマップなんですが、このロードマップから、実際実施する実験、計算機の、研究とのつながりが見えづらくて、どれがボトルネックになって、どういう優先順位でこれをやらなきゃいけないのか。この7ページ目の図を見ると、どの研究についても平たく並行して進めて次の段階に進むということになっていますので、そこはロードマップとしてクリティカルパスをできるだけ見せていただいて説明していただければありがたいなと思いました。
【辻本委員】 ありがとうございます。7ページには、一つの目標といたしまして、実用規模のADSプラントの設計・機器開発ができるところまでということを目標にしておりますので、全ての項目、横並びで最終的にはそろえています。
そこに至る段階というのは、やはりその現状凸凹ありまして、21ページから23ページになりますけれども、現在我々がどこにいて、今何をしているかということを各項目ごとに示させていただいております。
これがロードマップの各項目にも相当する部分でありまして、見ていただくとお分かりのように、黄色の部分が今実施しているところでありますけれども、それぞれの項目によってやはり凸凹はあると考えています。
ただ、最終的にその性能実証の段階に行くまでは、それぞれの項目で原理実証段階までは進めなくちゃいけないと考えておりますので、その部分がそのロードマップで示した黄色の部分に相当するというふうに考えております。
【小山主査代理】 そうですか。では、このロードマップの黄色の部分には、優劣というか、これがなくてもいいといったようなことはなくて、全て同じ位置づけであるという、そういうお話ですか。
【辻本委員】 はい。そのとおりです。
【小山主査代理】 分かりました。ありがとうございます。質問ですので。
【中島主査】 長谷川委員、お願いします。
【長谷川委員】 ちょっと資料を、私、聞き逃したのかなと思って、確認したいところがあります。7ページ目と10ページ目のロードマップ見直しというのは、今回、見直されたという意味で見直されたのですか。
【辻本委員】 はい、そうです。第1回だったと思いますけれども、以前考えていたロードマップということで、例えばADSの研究開発では、J-PARCで考えていたTEFというのがロードマップの中に入っていました。
今回、見直しというのは、特にADSでは、そのTEFがなくなったことによる見直しというものが大きな部分であります。
【長谷川委員】 そうすると、ここに書かれている7ページ目のJ-PARC陽子施設が消えるわけですね。
【辻本委員】 違います。こちらはTEFではなくて、J-PARCでの実験というものは、最終的にはやはり実験で確認というところは必要になりますので、こちらは考えていきたいと考えているところです。
【長谷川委員】 要するに核燃料を使った鉛ビスマスのループみたいなものをJ-PARCのどこかに造るということは変わりないけど、TEF-Tとかそういうレベルのものよりももっと小さいものにするという、そういう意味なのでしょうか。
【辻本委員】 小さくなるかどうかは、今後検討を進めていきたいと思っております。
【長谷川委員】 何かこれを見ると、見直しにはなっているけど、前とあんまり変わりないなという印象です。ここのところは何が見直しになっているか、この絵からははっきり分からなかったのでお聞きしました。前とは違うけど、でも、J-PARCにプロトンビームを使ったものを残す、何らかの形で造るということについては、変わりないと、そういう理解でよろしいでしょうか。
【辻本委員】 そこは、造るかどうかも含めて検討はしていきたいと考えています。
【長谷川委員】 分かりました。そうすると、9ページ目のところにある鉛ビスマス熱流動の材料の国内外の既存施設って、前回も質問したかと思うのですけれども、既存施設ということは既にあるものを想定されているんだと思うのですが、これは何を想定されているのでしょうか。
【辻本委員】 ビーム窓の候補材料の照射試験に関しては、国外では、スイスのPSIの施設を考えておりました。実際に照射試験は実施しておりまして、次期中長計では、照射後試験まで実施できると考えています。それから、国内では、さっきのTIARA、そういったものを考えております。
【長谷川委員】 PSIのほうも、随分運転されて長くなっていますけど、これはまだ当分大丈夫なのですか。
【辻本委員】 当分かどうか分からないですけど、取りあえず今やっている実験は大丈夫だと考えています。
【長谷川委員】 分かりました。TIARAでやるということですね。この前もちょっとコメントしましたけれど、TIARAのビームポートをずっと使って実験やるというのはあんまり現実的じゃないですよね。
【辻本委員】 そうですね。
【長谷川委員】 現在は夜間の運転はしていませんし、前回も指摘しましたけれど、こういう環境試験というのは数時間でできるものではないので、そこのところははっきり認識されるようにした方が良いと思います。PSIの場合は多分ずっと照射しているから大丈夫なような気がしますが、TIARAとかというと、あまり現実性がどうなのかなという気がしなくもないです。
それから、もう一つの質問は、4ページ目なのですけど、この長期貯蔵施設の検討というのは、結局アメリカでやっている場合でも、砂漠の真ん中のハンフォードサイトでも50年おきに建て替えているわけですよね。
【辻本委員】 建て替えているというよりは、今、プールから乾式に移行しようとしているところですね。
【長谷川委員】 その乾式は大体50年ぐらいと先ほどおっしゃったような気がするのですが、そういうことではないんですか。
【辻本委員】 当面50年程度の保管を考えているということです。その後、地層処分にするかどうかは、その後に決めるとアメリカでは言っています。
【長谷川委員】 3ページ目で、長期貯蔵というのをやるときに地層処分で入れてしまえばいいかなという気がしなくもないのですけど、地上にずっと置かれっ放しで300年というのは、あまり現実的じゃないような気がするのですよね。
【辻本委員】 300年貯蔵するのか、あるいは100年程度なのかというのは、実際には、社会的な環境、あるいは社会の受容性といったものを含めて最終的に決めていくことになると考えています。
【長谷川委員】 そこは分かりますが、結局、結構面積を要するものを地上にあれをずらっと並べてという話になりますよね。
【辻本委員】 はい。
【長谷川委員】 要は地下での面積を減らすために、地上に非常に広大な面積を使って貯蔵をしてという話だと、地下の広大な面積よりも地上の広大な面積のほうが結構拒絶反応が大きいような気がします。その辺、前回も収容体積とか収容面積とかというのをもっと実感できるようなものに数値か何かで書かれるのがいいなと言ったんですが、その辺、長期貯蔵を地上で非常に広い面積でやるというのが、日本の場合、現実的かどうかというのを少し考えてみたらいいんじゃないかなと思いました。
【辻本委員】 はい。
【長谷川委員】 コメントとしては以上です。ありがとうございました。
【中島主査】 藤田委員、お願いします。
【藤田委員】 今の長谷川先生のお話で、セシウム、ストロンチウムは多分、地上保管かもしれないけど、MAは半減期がより長いので、地上に長く保管するよりは核変換をしたほうがいいという理論になるんじゃないかなと個人的に思いました。
質問とコメントは三つあって、一つは2ページ目のプルサーマルの使用済み燃料10%を混合再処理するという、この10%にした理由ですね。それが一つと、あと、先ほどから基礎基盤と、いわゆる実用化を目指した研究の話。これは次のところできちんと議論すればいいと思うんですけれども、基礎基盤で実用化を目指さない基礎基盤というのは完全に絵に描いた餅になってしまうので、やはり、いわゆる基礎研究、基礎基盤とはいうけれども実用化を目指したところまでするべきと考えています。私はメーカーにいましたので個人的な考えとしてはプラントの概念設計まで基礎基盤でやっておけば、たとえそのプロジェクトが中断しても、何年か、何十年後でも、生き返る可能性があるので、プラント概念までは基礎基盤で行う。それがいわゆる基礎研究とかは違うレベルであるので、今、辻本さんが御説明されたのでいいと思います。
先ほどから、高速炉とADSの話が出ているんですけれども、今のこのシナリオでしたら、高速炉って全く日本で導入されることはないと考えたほうがいいと思います。こんなことを言っているのは原子力ムラだけで、一般社会では2050年前後に社会実装が目指せないものにそんなお金使えませんから。実際にもう10年、20年たつと、今まで高速炉の研究開発していた方も皆さんも鬼籍に入られてしまうので、実際にそれを議論しようとしても、そういうメンバーはいなくなることからすると、今のシナリオだと高速炉はやらないと言っているようなシナリオです。後で議論すればいいけれども、高速炉に関係している方々はもっと早くに社会実装するということを推奨していかなくちゃいけないと思うんですが。そういう意味でいうと、軽水炉が長く続いたら、日本は、アメリカでもフランスでもなく、処分場をそんなに広く、例え地下といっても取れません。そのことを考えて減容化処理、面積の低減というのは、日本にとっては非常に重要な研究開発課題なので、日本の国情に合わせた特別な研究開発である。しかも、もう一つ言わせていただくと、先月の原子力学会の秋の大会を聴講された方が何人いらっしゃるか分かりませんけれども、高燃焼度燃料、それから、プルサーマルの燃料をガラス固化すると、ガラス固化体の表面温度が100度以下になるのに350年かかると。今、軽水炉のガラス固化体は50年という貯蔵期間を考えているんですけど、350年必要になるという結果が発表されています。
そうすると、先ほどの地上にセシウム、ストロンチウムを300年保管するのと同じような形になって、そのときに、取りあえずやっぱりガラス固化体を今と同じ形で処分するんだとすると、MAはもう取り出す以外ないという結論が、つい最近の研究開発でも出てきています。
ですので、こういうところで議論する場合は、最新の研究成果を入れて議論することが重要だと思います。
3点です。1点目が質問です。よろしくお願いいたします。
【辻本委員】 ありがとうございます。
御質問は、プルサーマル使用済み燃料の混合再処理10%をどういう根拠で設定したかということだったと思います。これ、実際にシナリオ検討した西原が今日いますので、西原から答えてもらったほうがいいかと思います。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】 お答えします。2ページに示してありますように、実際、シナリオ評価をやった結果、2万4,000トンのウランと3,000トンのプルサーマルになったということで、おおむね11%ぐらいプルサーマルなんですけれども、10%にしたということです。
これは実際いろいろなシナリオ解析をやってみますと、大体10%から20%の間にプルサーマル割合というのは来ることが多いように思います。
以上です。
【藤田委員】 ありがとうございます。そうすると、軽水炉がいわゆる併用されているときの再処理しかあり得ないということですね。プルサーマル単独とか、それから高速炉燃料の場合ということは想定していないと。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】 この場合はそういうことになります。
【藤田委員】 ありがとうございます。
【中島主査】 あとは竹下委員ですね。
【竹下委員】 どうもありがとうございます。ADSの効果があることはよく分かったんですが、ただ一つちょっと教えてください。
今、軽水炉MOXでこれを使うのがせいぜい10から20%で、90%から80%は普通のUO2燃料でずっとやっていくと。それでプルサーマルの時代をやっていったときに、出てくるマイナーアクチノイドの量というのはそんなに多いもんじゃないと思うんですね。それで、これを分離するのはやっぱりある程度必要だと思います。部分分離でもやっぱりしておかないと、さっき藤田さんもおっしゃったようなことが結構起こりますので、やっぱり部分的には分離する必要がある。
ただ、よく分からないのは、ちょっとここは量的なものを教えてほしいんですけれども、実際MAを分離しておいて、一時貯蔵のような格好の簡単な固化体にしておいて、それで、ある程度貯蔵して、高速炉に入ってから、その燃料にそれを均質に混ぜて燃やしていくと。こういうことをやることでも十分処理できるということにはならないのか。あるいは、こんなことをやったら、MAであふれちゃってどうにもなりませんということなのか。そこら辺はどうなんでしょうか。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】 十分に可能だと思います。可能というのは、現実的なスケールでMAの貯蔵というのが、例えば50年間とか、できると思います。
ただ問題は、50年後に本当に高速炉が導入されるのか断言できない。なので、取り出したものは、すぐにでも核変換できる技術があるということが、やはり分離するに当たっての前提条件になってくると。そうしないと後の世代に残された方々は、手段もなく、そういったものが残されてしまうということになります。
【竹下委員】 そこの要するに判断かなという感じはしますよね。後の高速炉時代が来るんだと本当に言えれば、貯蔵で十分対応できてしまうんじゃないかと思います。
ただエネ基では、やはり高速炉開発はしますと。核燃料サイクルは開発しますと。今のところ、こう言われるわけですよね。だとすると、それを信じないかということになるので。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】 もしそれが実現できればそれは非常にいいことだと、ハッピーなことだと思います。だけれども、そうでない場合というのは、我々、考えておく必要があるかなと思っています。
【竹下委員】 僕の口からあんまり言いたくないんですけど、原子力がフェードアウトするようなことが起きるんであれば、これは必要だろうなとは思います。やっぱり最後の始末をしなきゃいけないので。だけど、高速炉時代にだんだん移行していくことを前提とするんだったら、むしろ高速炉に任せればいいんじゃないかとも思います。分離はしておいて、一時貯蔵するということですので、それでいけないかなと思うんですけど。
あとは国の判断をどう思うかというところに行っちゃいますけど、私の意見としては、それでも十分対応できるんじゃないかと思いました。
以上です。
【中島主査】 ありがとうございました。ちょっといろいろ既に今後の議論に移っているところでありますけれども、まずは、この議題については、ここまでで一旦。ここでどうしても発言したい人がいれば。よろしいですか。
それでは、すみません、議題2のタスクフォースとりまとめ(素案)ということで、資料2について事務局から御説明をお願いいたします。
【鈴木原子力課室長】 それでは、資料2について説明します。
まず、最初の目次にありますように、はじめに、群分離・核変換技術の現状、今後の進め方、引き続き検討が必要な事項という形で四つに分けて記載しております。
1ページ目に「はじめに」がございますけれども、最初の三つの丸はADSの簡単な説明になっています。四つ目の丸で、平成21年の「分離変換技術に関する研究開発の現状と今後の進め方」という内閣府のとりまとめについて触れています。この中で、本タスクフォースの資料として出てきましたけれども、核変換技術の意義の説明や、高速炉との比較などがなされております。
これを踏まえまして、文部科学省の審議会でも群分離・核変換技術の進め方について検討を行ったというのが次の丸になりまして、平成25年11月に中間的なとりまとめを行っています。中間的なとりまとめの中でそれぞれの技術についての進め方が示されるとともに、J-PARCに核変換実験施設を整備するということについても提言されてございます。
下から二つ目の丸になりますけれども、これを踏まえて、原子力機構の第3期中長期目標の中にも、実験施設の建設着手を目指すということが記載されました。
最後の丸ですが、令和4年度から新たな原子力機構の中長期目標を策定するために、この実験施設の再評価が必要なことなども踏まえまして、今回タスクフォースを設置し、全般的に議論を行っていただいているところです。
2ページ目になりますけれども、2ページ目の最初には、政策的な位置づけを記載しています。政策的な位置づけについては、前回の中間とりまとめ策定時から大きな変化はないと考えていまして、特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針や、エネルギー基本計画においても、群分離・核変換技術の必要性は指摘されておりますし、加速器を用いた核変換の研究開発についても進めるべきであるとの提案がなされております。第6次の基本計画においても、同様な記載がなされる方針でございます。
最後の丸には高速炉ロードマップの記載を書いていまして、高速炉については、21世紀半ば頃の適切なタイミングで現実的なスケールの高速炉が運転開始されるということが期待されるとの記載があります。
続きまして、海外の動向ですけれども、海外においても研究開発が進められておりまして、ベルギーではMYRRHA計画が進んでいるほか、ウクライナやロシア、中国においても、その関連技術の研究開発が実施されています。
ベルギーのMYRRHA計画については、2018年にベルギー政府が必要なお金の支出を決定しまして、前半部分の研究開発が進んでいるというところです。2026年に加速器の前段部分の運転を開始する予定となっています。また、このほか、OECD/NEAで現在、各国の廃棄物処理技術状況の現状の調査と、今後実施すべき事項のまとめなどを実施しているところです。
続きまして、3ポツの研究開発の進捗状況では、これまで原子力委員会の検討報告書において、それぞれの研究開発項目についての課題が示されておりますので、その課題についてどこまで研究開発が進んだのかということについて記載してございます。
長くなりますので、ここは飛ばしまして、5ページ目に参りますけれども、5ページ目の下のほうから、群分離・核変換技術の研究開発の今後の進め方について記載しています。
まず、群分離・核変換に関する現状の評価といたしまして、最初の丸については、引き続き、廃棄物の減容・有害度低減を進めていくことが重要であるということを記載しております。
続きまして、これまで本タスクフォースで議論を重ねてきたシナリオについてですが、二つ目の丸の下のほう、研究開発を進めるに当たっては、今世紀後半のいずれかのタイミングと期待される高速炉の本格的利用から既存の軽水炉の閉鎖後は原子力発電そのものがフェードアウトすることまで、様々なシナリオが考えられるかと思います。そういった中では、例えば、軽水炉の活用が比較的長く続くようなシナリオも考えられて、このようなシナリオでは、MA核変換を実施する場合は、高速炉の導入より先にADSを導入する可能性も考えられるというふうに、研究開発に当たっては、様々なシナリオを考えることが必要であるということについて記載してございます。
これを踏まえ、ADSについては、技術選択肢の一つとして引き続き研究開発を進めるべきであるということが、その下の丸で記載してございます。
最後の丸については、研究開発の進め方としては、数値シミュレーション等を活用していくということの必要性を書いています。
2ポツ、上記を踏まえまして、今後の研究開発の方向性としましては、シミュレーションによる研究開発の効率化・迅速化が進んでいることを踏まえて、ADSに関しても計算科学技術を利用して研究開発を積極的に取り入れて、研究成果の最大化を図る必要があると記載しています。
また、原子力機構の次期中長期目標期間中には、現在ある国内外の既存施設を最大限活用しまして、性能実証の実施に必要な課題に対応した研究開発を実施することが適当であると、特に、工学規模に引き上げるための課題の特定や、技術の絞り込みを判断するために必要な知見、データの取得を進めることが適当であるとしてございます。
また、最後の丸では、国際協力についても適切に決めていくべきであることを記載しております。
その6ページ以降については、それぞれの分野で何を実施していくべきかを記載しています。
群分離技術については、小規模実験によって原理実証が既に行われておりますが、今後は、溶媒抽出か抽出クロマトか、どちらを選択するのかの評価を行うことが可能なデータの取得を進めることが必要であることや、99%としているMA回収率については、適切な回収率というのを検討していくことが必要であるということを記載してございます。
続きまして、ADSの部分についてですけれども、ADSについては、原子力機構でシミュレーションを活用するPSi計画を提案しておりまして、そのシミュレーションを活用するというやり方については適切であるという記載にしておりまして、それ以下の三つの丸で、具体的にどのような研究開発を実施するかを記載しています。
そういった研究を踏まえて、下から三つ目の丸になりますけれども、柔軟性、経済性の観点を考慮した実現性の高いADSの概念設計を提案することが求められること。その下になりますけれども、概念設計の検討に当たっては、安全性の評価をきちんと行うこと。また、初号機の熱出力などの目標値設定については、段階的で現実的な実用化が進められるように適切な設定を考えていく必要があることを記載してございます。
続きまして、8ページ目には核燃料サイクル及び燃料についての今後進めていくべき研究を記載しています。ここについては、基本的には、これまで実施してきたものを引き続き進めていくという方向だったと思っています。
4ポツが、J-PARCの核変換実験施設の在り方についてですが、TEF-P、TEF-Tによる実験については、計算機シミュレーションの高度化や既存施設の活用を進めるということで代替を目指すということを記載してございますが、引き続き、実験がどうしても必要な部分があるということを記載しております。具体的には、TEF-Tで予定していた陽子照射下、かつ高温の鉛ビスマスの流動環境下におけるビーム窓材料の実証実験というのは、シミュレーションだけでは代替困難ではないかということを指摘しています。
また、TEF-Pで使用を想定していた原子力機構保有の核燃料の一部が米国に返送されたため、TEF-Pで実施予定であった炉物理研究についてはなかなか厳しいということもございまして、TEF-Tの機能を優先とした試験施設を今後検討していく。この検討に当たっては、多様なニーズへの対応の可能性を含めて考えていくことが必要であるということを記載しております。
5ポツがロードマップでして、先ほど御意見をいただいたロードマップについて、ここに記載しています。
10ページ目に、5ポツとして、基礎基盤研究の充実について記載しました。前回のタスクフォースで発表がありましたが、新たな手法やコンセプトにつながるような成果が引き続き出ていくような環境の整備が非常に重要ではないかと指摘しています。
今後は、群分離・核変換研究者以外の原子力分野の研究者の知見の活用、そういった研究者を積極的に巻き込んでいくことや、異分野融合も含めて促進していくことが必要であると記載しています。
最後に、引き続き検討が必要な事項として、将来、原子力システムの見通しが示されていく過程で、ADS導入のシナリオについても、開発や実運用のコスト含めて明確化して、研究開発の方向性を再検討する必要があるということ。また、将来の原子力システムの在り方や技術の進展によっては、MAに加えてFPやプルトニウムの核変換を対象とすることや、比較対象としては、専焼炉の概念を持ってくることも考えられるということを記載しております。
また、群分離・核変換の実用化は、産業界を中心として進めていく必要があり、次のステップが工学実証だということであれば、工学実証をどのように進めるかについても関係者との議論や意見交換を進めていくことが望ましいと記載しています。
また、原子炉の開発においても、従来のリニアモデルの研究開発ではなくて、ニーズ突破型の研究開発を進めることが必要ではないかということで、研究開発マネジメントについても検討していく必要があるということを記載しています。
最後に、最終的にはどのやり方にもメリット、デメリットがあることを踏まえて、国としてどのような方向を示していくかを判断するということかと思いますので、社会一般の方々からきちんと理解が得られるように、理解増進活動も着実に実施していくということが必要だということを記載しております。
とりまとめの素案については、皆様の御議論を踏まえまして、このようにまとめさせていただきました。
以上です。
【中島主査】 ありがとうございました。それでは、ただいま御説明いただきましたこのとりまとめ素案といいますか、今後の方向性について、御質問、御意見をお願いしたいと思いますが、山本委員が既に挙手されていますので、お願いいたします。
【山本委員】 山本です。まず、文科省さんにお伺いしたいんですけれども、この報告書はこのタスクフォースのクレジットになっているんですけど、そもそもこれってどういう位置づけのものになるんでしょうか。これ、誰が読むんですかね。
【鈴木原子力課室長】 公表されるので、誰でも読めます。これは文部科学省がどのように施策を進めていくかについて有識者に聞いているものでして、文科省の問いに対しての有識者の回答です。
【山本委員】 ですね。はい。そこはオーケーで、この内容をJAEAがどういうふうに取り込むかは、JAEAに裁量があると、100%の裁量があると、そういう位置づけのものなんですかね。ちょっとそこがよく分からないんですけど。つまり、ここでいろいろなことを我々が提言したとして、JAEAがそれをどれぐらい取り入れるかということは、自分で決めることであると。単なるアドバイスという、これはそういう位置づけなんですか。
【鈴木原子力課室長】 基本的には、報告書に沿ってやっていくということだと思います。
【山本委員】 つまり、この内容にJAEAはコミットするという、そういう位置づけのもの。
【鈴木原子力課室長】 基本的にはそうです。法律で100%やらなければならないと縛るものではないですが、審議会への意見と違うことをやれば、当然、説明責任が発生するということだと思います。
【山本委員】 ああ、了解です。では、位置づけはそういうものですね。はい、了解です。
【松浦原子力課長】 松浦ですけど、1点、補足いいですか。
【山本委員】 どうぞ。
【松浦原子力課長】 原子力課長の松浦です。今回、ADSにかかるものは、予算的には原子力機構のみならず、内局からも直接やっているのと、あと、現在、来年度の初めから、次の中長期目標期間にはJAEAは入るので、一応その中長期目標をつくる上では、役所が目標を示すという中に、今回の評価結果を参考にさせていただくということになります。
【山本委員】 補足ありがとうございました。非常に位置づけはよく理解できました。
その上でなんですけれども、次にちょっとJAEAさんにお伺いしたいのが、さっき辻本さんからの御説明で、実用化研究に進めるかどうかの基礎基盤研究をやるんだというお話があって、それは、言い換えると今のままではちょっと自信のないところが何点かあるので、そこを見極めてから次に進むかどうか考えますと、そういうふうに私は受け取ったんですけど、まず、そこの理解は正しいですか。
【辻本委員】 そのとおりです。今すぐ、この状態で、例えば、ADSの実験炉をつくれとか、MAの分離、実証してつくれと言われても、やはりそこは不完全な部分かあると私どもは考えています。
【山本委員】 分かりました。ありがとうございます。
その二つを伺った上で、まず、この報告書に書かないといけないことは、これまでいろいろ議論してきたんですけど、大ざっぱに言うと分離と核変換技術が必要だというのはみんなここでコンセンサスがあって、非常に重要な案件だというのは改めて合意が取れたということはまず書いておくと。ADSについては、それの一つのオプションだというのは、多分これも概ねコンセンサスが多分取れていて、では、そのオプションをどう扱うかという話を書くわけですね。
そこで、さっき辻本さんにお答えいただいたように、実用化研究に進めるかどうかをこれから判断するための材料をつくるということであれば、何がクリティカルパスになっているのか、つまり、実用化の阻害要因になっているのかというのは明確にした上で、それに優先順位をつけてどう取り組むかという話になるのかなと思います。
それで、前回から安全性の話をしているんですけど、特にやっぱり耐震の話が私は非常に気になっていまして、必要であれば、小竹さん、後で補足いただければいいと思うんですけど、高速炉もタンク型炉はそもそも耐震設計が非常に難しくて、これは前も申し上げましたけど、3次元免震とか今は実用化してない技術を使わないとできないわけで、ましてやこういう鉛ビスマス炉みたいな重たいやつは、基準地震動を考慮して造れるかどうかというのは非常に疑わしいわけですね。
それをクリアしようとすれば、例えば、炉のサイズを大分小さくしないといけないとか、そういう話もあるわけで、そうなるといろんな前提条件が覆ってしまうわけですよね。
まずは、そういうところが私は優先順位が高いのかなとは思います。その辺のことを、この報告書でクリアに述べればいいかなとは考えています。
大ざっぱなコメントは以上で、あと細かい点はまた後でコメントを出します。私からは以上です。
【中島主査】 山本委員、どうもありがとうございます。非常に明確にこの位置づけと方向性を示していただきましたが、今のに関連して、もし何か御意見があればあれですけれども、よろしいですかね。では、藤田委員、どうぞ。
【藤田委員】 すみません、今のことに関連して。山本先生がおっしゃったのは、基礎基盤でやるべきことなのか。本当に実用化のフェーズに行ったときにやるべきことなのか、同じ安全についても、研究開発の項目を分けなくちゃいけないんじゃないかと個人的に思うんですけれども。
先ほど言われた耐震の施設の設計までというと、それは実用化研究でやるべきで、まず、このADSのコンセプトなりが概念検討でイエスかノーかを決めてからの話で、そこは切り分けなくちゃいけないんじゃないかなと。
そうしないと、非常に多くの予算が必要になって、本来、ADSのコンセプトとしてやっておくべきことに予算が割けなくなるので、ちょっとそこは考えていただきたいというのが1点です。
先ほどから、高速炉がメインだからADSはやらないという、そういう発想を私は非常に懸念しています。というのは、今まで原子力政策で国が決めたものがうまくいったためしなんか、ある意味でないじゃないですか、もんじゅも含めて。そうだとしたら、必ずリスクヘッジをかけなくちゃいけないんですよ。
高速炉がベストだとしても、高速炉が駄目になる可能性というのを考えない。それが、ある意味で原子力ムラの欠点だと思うんですけれども、アメリカあたりは必ず、非常にお金をかけるプロジェクトと、そのリスクヘッジをかけられる基礎研究から基盤のものと、必ず補完してやっています。
そういうことをきちんと考えない、それは、こういう原子力政策を考えるお役人がよくないのか、その周りにいる有識者の方たちがリスクヘッジは重要だということを申し上げないのか、どっちか分かりませんけど。そういう意味で言っても、この研究はJAEAだけしかできない研究ですし、リスクヘッジをかけるためにも重要です。リスクヘッジをかけなかったために起こってしまった例として、東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故(福島事故)があります。
福島の事故は、深層防護の考え方が、2003年ぐらいまで原子力白書で述べられていたものを日本では事故は起こらないという判断の元で結局やらなくていいということにしたために、安全研究が全部されなくなったという逆の作用があるので、一律、高速炉が本命だから、ADSに予算をつけるのはどうかという単純な発想は、ここではしないほうがいいと思います。
以上です。
【中島主査】 ありがとうございます。
【山本委員】 山本ですけど、ごめんなさい、その最初の耐震設計について少し補足させていただければと思います。
私がさっき申し上げたのは、実際のプラントのレイアウト設計を行ってとかそういう話ではなくて、もっと基礎的なところで、例えば、解析でどれぐらい厳しいのとか、見通しがあるのとかという、基礎基盤に近いところでまずやったらどうかという、そういうお話です。
以上です。
【藤田委員】 ありがとうございます。それでしたら結構なんですけれども、そこに大きなお金を使わないような安全性検討というのは重要だと思います。さっき聞こえていたのは、高速炉の耐震設計とか出てきて、そこまでやるのという感じになりますので、そこはシミュレーションということにしていただければ良いと考えています。
【中島主査】 少なくとも、多分この中で課題としては上げておくというのは大事かなと思います。ありがとうございました。
順番から行くと小竹委員が先だったような気がしますので、お願いします。
【小竹委員】 ありがとうございます。
先ほどからの政策的な話のところから入りたいんですが、高速炉開発は、少なくとも、国として核燃料サイクルのためにやっていくという方針は、関係五者(METI、MEXT、JAEA、電力、メーカー)で合意している話です。次期高速炉の運開が2050年頃では遅過ぎるとい意見は理解しますが、そのように決められているという事実は認識しておく必要があります。その事実を否定して、高速炉の導入はもっと遅れるから、その前にADSを実用化していくという話はあり得ないと思います。それが1点。
それから、2ページ目の1.政策的な位置づけの最後のブリットの丸のところですけれども、「また」以下のところですが、JOGMECからいったら135年分のウランがあるという話のところ、この文脈とは関係ないことを引用しています。むしろここで引用すべき点は、戦略ロードマップで、21世紀半ば頃の適切なタイミングで運開が期待されると書いてあり、実用化は21世紀後半ぐらいと書かれている点を引用して記載するのが妥当だと思います。
それで、私が本文で一番気になっていますのが、5ページ目の最後のところです。まさに高速炉の導入は遅れるんだから、その前にADSを導入する可能性も考えられるとある部分です。そのように考えることは自由ですけれども、高速炉開発がうまくいかなくて、言い方は悪いですけど、国内で、より知見のないADSが実用化できるという技術的な根拠がさっぱり理解できないというのが2点目です。
高速炉はできないという話の中で、前回の会合のときも、最後のほうで議論がありましたけど、原子力をやめていくという中で、また新たにこんな複雑なADSをつくって放射性廃棄物の後始末をするという話には違和感があります。そんな考え方は現実的じゃないだろうと言われるような話だと思います。
したがって、ここで一番大事なのは、本当に実用化を考えるのであれば、我々個人レベルで出ている委員会の議論も踏まえた上で、高速炉サイクルでも長年議論してきたように、関係五者、将来の、これは電力会社がやることになるのかどうか分かりませんけれども、国がしっかりやるのか、電力がやるのか、その辺も含めた関係者がきちっと政策的な議論をしないと話にならないと思います。
私が申し上げたいのは、これから7年間、いろんな研究されるのはいいのですが、ADSを原子力システムの中で、きちんと位置づける。そういう結論を出すことがこのタスクフォ―スや上層の委員会にできるのかというのが素朴な疑問なのです。
これはJAEAさんに言うのではなくて、文科省さんに御確認したいのですが、本当にADSを開発していくとしたら、その事業者をはっきりさせるべきと思います。その場合は、実用化を目指して開発していくのですから、高速炉よりもADS開発を優先するという判断をするように理解されてしまいます。この部分を曖昧なままにしておくと、うまくいかないというのは明らかだと思います。
やはり限られたリソースの中で、真剣にこの技術を実用化していくんだというものがなければいけないのではないでしょうか。いろいろなものに手を出して、「皆さん、それぞれやってくださいね」では、物になるとは到底思えないし、それから、物を作って運用していく組織が明確ではないものが実用化の議論って何なのかというのが一番素朴な疑問があります。
したがって、JAEAの提案を基本的に、こういう方向で引き続きやってくださいねというとりまとめに対して、私が、タスクフォースメンバーとして合意できる範囲というのは、研究開発をやることは相応の、それはJAEAあるいは文科省で決めていただく中において適切と思われる額でやっていくということに対し、異論は唱えませんけれども、そういうきちんとした、誰が本当にいつ、どうやって決めていくのかということを書かずに、いつも先送りして、まず続けましょうとなっているのは非常に問題ではないかなと思います。
私からは以上です。
【中島主査】 ありがとうございました。これ、どうですかね。文科省さんから何かありますか。
【鈴木原子力課室長】 貴重な御意見ありがとうございます。なかなか、現在の段階で、誰がどうやっていくべきかを示していくというところは難しいかなと思っておりますが、研究開発として、可能性があるのか、ないのかということを示していくことは必要ではないかと思っております。
おっしゃるとおり、限られた予算の中では選択と集中が必要かと思いますけれども、この場で、もうADSはやらなくていいということではないと思っておりまして、シミュレーション等も活用しつつ、山本先生から御指摘もあったように、何が優先してやるべきところかを明確にして、研究開発をしていくということだと思っております。
そういった中で、御意見のとおり、今後、誰がどのように実証試験を進めていくのかなどの検討も必要になっていくと思っております。
【小竹委員】 おっしゃるとおり、委員会の中で、高速炉と比較して判断すべきだと何年か前に指摘されているわけですね。今回も残念ながらそこまでは議論が進まなかった。で、今回は、少なくともこういう状況なので、こうして、しばらく続ける。ただし、今後こういうことをやって決めていく必要があるぐらいのことを、やっぱり最後ぐらいに書いておかないと、何かいつまでたってもopen issueみたいな感じで「取り組みます」としか言えないと思います。
【松浦課長】 原子力課長松浦です。先生がおっしゃることは非常によく分かります。
文科省はこれまでやってきたことも、今後やろうとしていることも、一応エネルギー基本計画に書いてある文言の範囲の中でやっているつもりでありますので、先生の御理解により、文科省あるいはJAEAが、現在認められている範囲内のことの活動しか今後もこの報告書を踏まえてやるつもりはないので、高速炉の扱いについては、当然戦略ロードマップを今後さらに、今まだ技術のいろんな絞り込みの段階ですので、そこをどうやって進めるかというのは、経産省とも連携しながら結論を出していく話ですので、今日はいただいたコメントを踏まえて、その高速炉の扱いに関する記載も含めて検討させていただきたいと思います。
以上です。
【小竹委員】 よろしくお願いいたします。
【中島主査】 松浦課長、ありがとうございました。
今までもというか前も、これの分離変換の、平成20何年だかにとりまとめて、作業部会で報告はされていて、私、そのときの1メンバーとしては参加しておりましたけれども、やはり小竹委員がおっしゃるように、言いっ放しで終わってしまっているようなところが感じられるので、何か、その後のフォローアップというか、そういったところがしっかりできるようなことを提言の中にも入れてもいいのかなというように感じました。ありがとうございました。
【藤田委員】 すみません、その件についてよろしいでしょうか。今、小竹委員が言われたことは、高速炉もADSも大して変わらない。国がやると言っているのだって結構燃料サイクルに対しての批判もあるので。私は、出口はある程度どういう位置づけというのは、先ほど軽水炉自体が長く続いた場合には必要となるというような、そういうような位置づけで書くことは重要だと思うんですけど。高速炉が圧倒的優位で、ADSが全然そうじゃないという解釈に対しては、ちょっと私は異論があります(マイナーアクチニド・リサイクル高速炉に関する技術的討議は十分されていないため)。
【中島主査】 まずは、文科の委員会の下の部会としては、基本的には国の方針の枠の中でと先ほど課長からも御説明がありましたけれども、その中でのバリエーションとして、どこまで書けるかということになるのかなと思います。
すみません、何かちょっと物が挟まったような言い方で申し訳ないですけど。
竹下委員、お願いいたします。
【竹下委員】 今の論議は非常に重要なところだと思っていまして、高速炉を入れることが前提になれば、廃棄物的な意味からしたら、本当にこういうADSをそこに導入する必要があるのかというのはちょっと疑問に思っています。
何を気にしているのかというと原子力予算がそんなにたらふくあるわけではなくて、集中して物をやらないと、とてもやっていけないと思うんですよ。高速炉を実用化するといっても、ASTRIDの話がタンク型炉で出てきますけど、あれだってフランス側が、もうほとんどやる気が半分ないような状態のところの話です。それを日本側が今お金つけてJAEAがやっているというところでしょう。
ですから、炉型なんかももっと高速炉を考えて、真剣に考えて、本当に高速炉を実用化するというのをもっと真剣に考えなきゃいけない時期に来ているはずなんです。でも、そこのところをないがしろにするのは全くよくないと。
藤田さんの言うことも理解はできます。リスクヘッジをやっぱりしなきゃいけないのは確かですから、基礎基盤部分、とにかくシミュレーションを中心にして、基礎技術としてやっていくと。そういうことは、ある程度進めていかなきゃ駄目だと思います。もし、何か、どうしようもなくなった場合のことも考えておかなきゃいけないでしょうから。
だから、あくまで、やっぱり高速炉を実用化するんだという、こっちのほうを重要視しないと、予算をしっかりつけないと、やはりこの原子力をサステーナブルにすることはなかなかできないと思います。
ですので、こういうADSの論議はしていただいて、大いに、今回は役に立ったんですけれども、やはり基礎基盤に限ってADSは続けていってもいいと。ただし、やっぱり実用化に対しては高速炉に集中してやっていくべきだと私は考えております。
廃棄物の処理ということでは、そんなに軽水炉時代がちょっと続いたからといって、それほどマイナーアクチノイドの量が増えるわけではないので、それを後で、高速炉で処理処分することはできると思うんですよね。ですので、基礎研究という意味でADSは続けていくというような形にするのがいいのではないかと思っています。
以上です。
【中島主査】 ありがとうございました。
今のは何か議論をしたほうがいいですか。このタスクフォースで、日本の原子力政策そのものを議論する場ではないので、そういう意見も当然出ているというところはどこかに、テークノートはしておきたいとは思いますけれども。すみません。
では、小山委員、お願いします。
【小山主査代理】 ありがとうございます。
私も、もともとFBRをやっていた立場ですので、今の竹下先生、それから小竹先生のお話はよく分かるんですが、私はADSのことをサポートしてみたいと思っています。というのは、研究開発投資として考えたらどうだろうと思うわけです。
FBRは、もう本当に結構昔からやられていて、海外ではスーパーフェニックスまで、日本でもんじゅまで行ったわけですね。次に前進しようと思ったら、例えば日本だともんじゅの次、もんじゅより大きいぐらいのものを造らなきゃいけない。あるいはRETFみたいな再処理工学施設を造らないと前に行かないんですよね。
第1回のときにいろいろ話をしたんですけれども、ウランの枯渇がまだまだ先であるということを考えると、そういった非常に多額な研究開発に国と事業者がお金を出すという段階は大分先じゃないかなと思うんですよね。つまり、先に進めようとすると、非常に大きなお金がかかってしまう段階に居るというのが高速炉サイクルの研究開発だということです。
一方、ADSを用いた分離・核変換は、まだまだどこか基礎的にやらなきゃいけないことがたくさん残っていて、これは、研究開発投資として非常に効率性がいいんじゃないかなと、研究者の立場だからなんですけど、こういうふうに考えます。世界でまだきちんとできるところまで持っていった人はいないわけで、そういう点ではやる価値があるのかなと思っています。
ということで、研究開発投資としてはADSを用いた分離・核変換にある程度の見通しをするということは、日本としてはいいんじゃないかなと思っています。
一方、報告書にまとめられた今後の計画がこれでいいかどうかというのが、実はやや否定的で、というのは、初回からお話を伺っていてそうなんですけれども、基本的に非常にぼんやりした計画が多いんですよね。
というのは、今日もロードマップの話がありましたけど、目標とするものが明確になってなくて、クリティカルパスをはっきり考えられていなくて、そのために何をするかという積み上げがなくて、ともかく核変換ができますよ、発電はできますよと、何でもできますよと、では、こういうこと何でもやりましょうというふうな、そんなお話になっているところがあります。
そういう点で、本当に必要であるというか、その前に、まず目指すのは何であるかを絞ることが必要と思います。例えば、発電は優先度を下げて、核変換をちゃんと安全にやるということで、臨界度をもっと浅くして、温度を下げて、それで核変換をどんどんするというふうな最初の目標を具体的に考えて、それでクリティカルになるのはこういう研究だということで、だから7年やると、MA核変換というのがここまで進みますよというところを明快にしてほしいと思うんですよ。それをなしに計画で了解というのは、なかなか、今の原子力の状況だとちょっとできないかなというふうな思いがあります。
いいことと悪いことと両方なんですけど、私の意見です。以上です。
【中島主査】 ありがとうございます。
今後の進め方のところは、冒頭の山本委員からも同じようなコメントがあって、大きく具体的なところ、どこが問題かというのを明確化してほしいというところですね。ありがとうございました。
辻本委員が先に手が挙がっていましたね。
【辻本委員】 ありがとうございます。
高速炉、ADS云々の話はあまりこれ以上議論してもというところだと思いますけれども、一言だけ言わせていただければ、そもそも目的が違うものを比較しようとしているところがあって、私は、そこはあまり意味がないと思っています。
高速炉は将来の原子力システム、発電システムとして私は有効だと思っていて、マイナーアクチノイドの核変換もできるシステムなんだと思います。だから、軽水炉、もし長期利用が続く場合というのは、そのためにそこから出てくるMAを核変換するために高速炉を導入するというのは多分あり得ない話だと思います。
やっぱり選択肢を幾つか持っておくというのは非常に重要だとは思うので、そういう意味でも、高速炉、ADSというのは引き続き研究開発しておく価値はあると考えているところです。
それから、今の、山本先生、それから小山さんからも御指摘がありましたように、では、今後7年間でどう具体的に進めていくかというところがあまり明確になっていないというのは御指摘のとおりだと思いますので、そこは真摯に受け止めて研究開発は進めていきたいと考えているところです。
以上です。
【中島主査】 ありがとうございました。あと長谷川委員が挙手されていたかと思います。
【長谷川委員】 私も最初から話を聞いていて、FBRとADS、先ほどもいろいろ議論ありましたけれども、それぞれのプロジェクトの規模とか、見据えている時間とか、タイムスパンが大分違うような気がするんですよね。小山委員が先ほどおっしゃいましたけど、ADSはまだまだ芽の段階で一機もできていない、変な言い方をすれば。予算規模も多分、双方で比較して桁で幾つかとは言いませんけど、かなり違っています。
先ほど来、JAEAの中長期計画という話がちょろちょろ出てきていますけれども、その中で、では、解決できる規模とか、スケールとか、国の政策的なものとのつながりとかと考えると、今ここで正面切ってFBRとADSの比較とか何かやっても、それは将来的な50年先のものではいいんですけれども、JAEAのこれからの中長期計画に資するものというのであれば、もっとADS寄りに、先ほど基礎基盤研究のシミュレーションも含めて、やることについては妥当であるというような言い方もあるのではないでしょうか。7年間だけシミュレーションの研究やって、それで一体何が出てきて、1機でも何かできるのかと、あるいはモックアップでもできるのかというと、そういうものでもなさそうな気がするのですよね。
1機でも日本でつくるというか、設計の案をつくるぐらいのものを目指すというような感じでADSの基礎基盤研究の持っていきどころというのをやることについては、いいのではないかと思います。ADSのシステム相当のものができて、あるいはできそうだというところまでいって初めてFBRとの比較がまともにできそうな気がします。
ですから、ここのタスクフォースの中で、分離核変換でADSの問題をどうするかということをやるのであれば、何というのか、当たり障りのない言い方になってしまっている基礎基盤研究を続けることというのをもうちょっと踏み込んだら良いと思います。何が重要で、モックアップというか1号機とは言いませんけれども、それを実現するのに、何に対して注力していくのかということをもっとはっきりさせて、それを研究資源とかマンパワーを入れていくという方向で進めていくというか、そんな言い方になってしまうのかなと思います。そうするとまた総花的になってしまって、一体何を言っているんだということになってしまいますけれども、私としては、規模も成熟度も違うADSとFBRを正面切って比較して、こっちがいいかな、どうだというよりも、今はまだ未熟な段階である、だけどまだ将来に対して目があり、廃棄物を減容できるという可能性を持っているADSに対して、マンパワーとかリソースをちゃんと計画的に入れて、その7年後に何らかのものを、具体的なものとは言いませんけど、何かこうターゲットを見据えて、それに持っていけるような研究計画を立てるというのが必要なのではないかと思いました。
以上です。
【中島主査】 ありがとうございます。竹下委員からでよろしいですか。
【竹下委員】 僕、ADSの基礎的なことをずっと研究していくのに何も反対しているのではないんですけど、一つだけよく分からないのは、廃棄物の立場と考えたときに、例えば、さっきちょっと僕、西原さんにいろいろとお聞きしたけど、一度マイナーアクチノイドを回収しておいて、それを一時貯蔵しておいて、それで高速炉でいずれ燃やしていくんですという話で困らないんだったら、さっきの軽水炉時代が長く続くからADSは必要ですという論議をされていましたよね。だけど、どうもそこは理解できないんですね。廃棄物の上で、どうしてもこれやる必要があるということをやっぱり訴えていただかないといけないんじゃないかなと。辻本さんからさっきそういう意見があったんですね、確か。軽水炉時代が長く続いた場合にはADSの導入が必要だということを言われた。それは、廃棄物上どうしてもそういうことになるんだという理解ができないんですよ。
だって、そんなに難しいことを言っているんじゃないですよ。一度分離したものを一時貯蔵しておいて、後で処理しなさいって言っているだけなんですが。
【辻本委員】 いや、それを全く否定するわけではないですけれども、多分、その問題は、技術的な話というよりも社会的な問題なんだと思います。原子力に携わる我々が、今後の世界に貢献できる道というのは、我々としては、やっぱり原子力を使い続けるということが大事だと思っていますけれども、社会が、必ずしもそう思っていない人たちもいるわけです。
一番我々が直近で考えなくてはいけないのは、原子力、今の軽水炉リプレースを進めることだと私は思っています。それなくして高速炉はあり得ないですし。そういったときに、どうしても出てくるのは、やっぱ安全性の問題と廃棄物処分の問題だと思います。
その廃棄物処分に対して何らかの答えがあるかないか。貯蔵しておけばいいというのも選択肢かもしれませんけれども、それを結局社会が受容するかどうかという問題だと思います。そういうときに、貯蔵していつか高速炉ができるからいいというのを受容するか。それから、こういう核変換、高速炉なりADSなりで核変換という道もあるというものを選択するかどうかというのは、我々研究者あるいは技術者が決めることではなくて、社会がどう受容するかだと思いますので、我々としては、そこに選択肢を用意しておくということは必要なんだと私は考えています。
【竹下委員】 私もそれは同意なんですよ。別に全部否定しているわけじゃなくて、どうしても基礎技術としてやっぱり研究しておくことは必要で、この7年間で一体どこまで研究ができるのかについては、少し計画を示していただく必要があるにしても、基礎的なことは続ければいい。ただ、本当にこの廃棄物処理という面で計画をしっかり立てて見せておく必要が、そういう場合だったらあると思います。社会にこれを造ればマイナーアクチノイドがなくなるんですよと。それはすごく社会的に訴えるのはいいですけれども、では、それがいつまでにできて、どのくらい減るんだというようなことをちゃんとお示しいただいて、これがそれだけお金かけるだけの役に立つもんなんだということをやっぱり言わないと、そこのところは世の中だって、ああそうですか、そういう技術やっていていいですねとはならないでしょう。だから、そこをやっぱりしっかりお示しいただくというのが今重要なんじゃないでしょうかね。
【辻本委員】 分離変換の御利益と言ったらいいんですかね、そういうものは、常に示していくようにはしたいと考えています。
【竹下委員】 そういうところの訴えるところが、今回のシナリオ、研究、出してくださいとかいろいろ言って、それで少し論議ができたので、少し見えてきたんですけど、もっといろいろADSの存在価値を言わないと駄目だと思います。もし、今のように論理展開するのであれば。
【中島主査】 ありがとうございました。藤田委員がまだ手が挙がっておりますので、お願いいたします。
【藤田委員】 すみません、今の竹下先生のお話に対して、やっぱり取り出したものを置いておくというのは、原子力ムラでは容認されるかもしれませんけど、やっぱり社会科学的な観点からは、それをどう処理するかという道筋は示すことが重要なので、そこはきちんとADSでできるということを示したほうがいいと思います。
では、基礎基盤研究で、どこをアウトプットにするかというのは、今日、すみません、僣越ながら、私が今後の進め方ということで参考資料4にお示ししたんですけれども、今日の委員の皆様、メーカーの方はお一人もいません。
メーカーの観点からすると、先ほどから何回かちょっと申し上げたんですけど、この資料の②に書いてあるんですが、プラントの概念設計、概念検討までできると、その先をきちんと経済性も含めて評価できるので、そこを今後7年間の目標にしていただきたいなと思います。
それによって、本当にメーカーが参入するかどうか決まりますし。ただ、これ、概念検討するときに、恐らくJAEAさんと研究者だけではできませんので、ある程度、企業どこかとかとタイアップする必要があると思うんですけれども、そこを最終目的にするということが重要だと思います。
僭越なんですけど、私ども、カザフスタンでレアメタルの回収のプラント設計をしたときには、やはり当初の原理的な予備的な経済性評価は成立するという評価でしたが、いざ、実際のウラン鉱山の抽出の残液の濃度を調べてみたら、当初言われていたよりも1桁薄かったということで、そうなると概念検討まではしたけれども、基本的に経済性は成り立たないのでその先に進まなかったという経験もあります。ぜひ、概念検討まですると、ああ、ここもできてない、ここもできていないというふうに課題が明確になるので、そこを7年間の目標にしていただければよいのではないかと考えています。
以上です。
【中島主査】 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
【竹下委員】 すみません。今、藤田さんの意見に本当に賛成です。7年間でそこら辺ぐらいまでやるのが一番いいと思うんですよ。それであれば、今の言ってきた論議が、全部答えが出せるはずですよね、その間にADSの必要性と。ぜひ、そういうところを今回の結論にしていただけると大変いいのかなと思います。
【中島主査】 ありがとうございます。
また今日いろんな御意見をいただきましたので、これを踏まえて、どういうふうにまとめるかなかなか難しいところもあるかとは思いますけれども、皆さんの思い、そんなに大きくずれているとは、私、思っていませんので、最後のタスクフォースのとりまとめの資料について、事務局とも相談させていただいて、修正させていただければと思います。また、今日、御意見等、追加であれば、まだメールなりでお出しいただければと思いますので、これはまた後で事務局からアナウンスしていただければと思います。
今後の予定なんですけれども、今、次回の部分も、日程確保、11月下旬でしたかね、お願いはしておりますが、実はその前にこの親委員会の原子力研究開発・基盤・人材作業部会がございますので、今日までの議論のところについて、まずは報告、中間という形になるかと思いますが、させていただいて、そこで御意見いただくということで、そこの議論の結果も踏まえて、また第4回、実施の有無も含めて決めていきたいと思っております。全体の流れとしては、そういった形で今考えているところでございます。
では、一応これで今日の議題については、全て終了ですけれども、そのほか御意見等ございますでしょうか。よろしいですか。
それでは、事務局から、また連絡をお願いしたいと思います。今日は活発な意見交換ありがとうございました。
【鈴木原子力課室長】 本日の議事録につきましては、出来次第メールにて御確認いただいた後、ホームページに掲載させていただきます。主査から御指摘がありました追加の意見については、今週中、8日金曜日までにいただければと思ってございます。
本日の御意見を踏まえたとりまとめの素案については、事務局と主査で相談して修正したものを再度委員の皆様にて御確認してもらった後に、11月に予定しております人材作業部会で意見をいただきたいと思っております。その後、主査と相談して、第4回、次期タスクフォースについて、皆様に御連絡申し上げます。
以上です。
【中島主査】 それでは、これをもちまして、第3回のタスクフォースは終了とさせていただきます。どうも皆様、お疲れさまでした。


―― 了 ――

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