第9期地球観測推進部会(第7回) 議事録

1.日時

令和4年10月14日(金曜日)16時00分~18時00分

2.場所

オンライン開催

3.出席者

委員

春日部会長,小縣部会長代理,赤松委員,岩崎委員,岩谷委員,上田委員,浦嶋委員,河野委員,川辺委員,三枝委員,佐藤委員,嶋田委員,神成委員,平林委員,堀委員,村岡委員,六川委員,若松委員

文部科学省

林研究開発局審議官,久芳環境科学技術推進官,伊藤課長補佐,甲斐地球観測推進専門官

4.議事録

【春日部会長】  お待たせしました。それでは、ただいまより科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会、第9期地球観測推進部会の第7回会合を開催いたします。
 本日はお忙しい中お時間をいただきましてお集りいただき、ありがとうございます。
 最初に、委員の出欠と資料の確認をお願いしたいと思います。また、本日もオンラインでの会議になりますので、進行に当たっての御留意点など併せて御説明をお願いします。
【甲斐地球観測推進専門官】  ありがとうございます。
 それでは事務局より、委員会の進め方について簡単に御説明をさせていただきます。
 まずは、ウェブ環境の安定のために、この後議題に入りましたら、御発言をされていないときはマイクとビデオはオフの状態でお願いいたします。
 また、御発言をいただく際には手を挙げるボタンを押して、挙手をしていただくようにお願いいたします。その際、お名前をおっしゃってから御発言お願いいたします。
 挙手ボタンが見つからないような場合には、画面をオンにして直接手を挙げていただくか、直接御発言をいただければと思います。
 それではまずは議事に入る前に、本日の資料の確認をさせていただきます。まずは議事次第がございまして、その後、資料1-1から、1-2、1-3がありまして、2-1と2-2、その後、3がありまして、最後、4-1と4-2がございます。これら一式ファイルをメールでお送りさせていただいておりますけれども、不備等がございましたら事務局のほうにお申しつけいただくようお願いいたします。
 では、ここで出欠の確認というところで、本日は全部で18名の委員に御参加いただいております。欠席の御連絡をいただいているのが蟹江委員と中北委員となります。小縣部会長代理は、現在御参加いただいておりますが、所用により本日は途中退席されると伺っております。
 また、本部会にはオブザーバーといたしまして、科学技術・イノベーション推進事務局の内閣府、辻原参事官の代理で、本多様にも御参加をいただいております。
 また、前回7月の部会の後に文部科学省の中で人事異動がございまして、久芳推進官が新しく着任をされておりますので、ここで御紹介をさせていただきます。
 久芳推進官、一言ございましたらお願いいたします。
【久芳環境科学技術推進官】  御紹介ありがとうございます。7月に服部の後任で環境科学技術推進官を拝命いたしました久芳でございます。よろしくお願いいたします。
【甲斐地球観測推進専門官】  ありがとうございます。
 本部会は、部会運営規則により公開とさせていただきます。
 最後に傍聴者の方へお願いとなります。本日はオンラインでの開催となっております。万一システムトラブル等で傍聴不可となった場合には、後日公開する議事録を御確認いただくようお願いいたします。
 御説明としては以上となります。
 では、春日部会長、議事のほうをよろしくお願いいたします。
【春日部会長】  甲斐さん、ありがとうございました。
 それでは、議題1に移ります。
 最終取りまとめに向けた今後の部会の進め方についてです。
 これまで中間取りまとめを公表し、そして、今後、今後の部会を重ねて最終取りまとめを作成するわけですけれども、ここまでの議論を踏まえて私たちが今どういう位置づけにあるか、今後必要なことはどんなことか、また、先日皆様から御意見をいただいていますが、それについても取りまとめいただいたので御説明をいただきたいと思います。
 では早速ですが、久芳推進官、お願いいたします。
【久芳環境科学技術推進官】  ありがとうございます。資料の共有お願いできますでしょうか。資料1-1でございます。こちらから御説明させていただきます。
 今後の部会の進め方、すなわち最終取りまとめの審議の進め方の案でございます。
 既に日程調整をさせていただいておりますけれども、今後、第8回の部会を12月16日、第9回の部会を1月20日に予定しております。
 先ほど部会長からも御示唆ありましたけれども、4月に取りまとめました中間まとめ、そして本日を含む審議内容を踏まえまして、11月の初めをめどに事務局にて最終取りまとめのたたき台を作成し、委員の皆様に御送付したいと考えております。その後、委員の皆様から二、三週間程度でたたき台に対する御意見を頂戴し、その御意見を踏まえて12月上旬までに事務局にて最終取りまとめの素案を作成、第8回の部会にて御審議いただくという流れを考えております。その審議の結果を踏まえまして、1月の部会に向けて最終取りまとめ案を事務局にて作成、そして、最終的に2月の上旬をめどに公表をしていくという流れを想定しております。
 このようなスケジュールを考えておりますが、御指摘等いただけたら幸いでございます。
 続きまして、資料1-2の共有をお願いいたします。
 先ほどたたき台を御送付させていただくとお伝えしましたが、最終取りまとめの全体像のイメージが見えてこないと、御意見もなかなかというところがあるかと思います。そのような観点から、部会長の御指導もいただきながら、こちらの全体像を作成してみました。中間まとめの内容に生物多様性・自然資本などの論点を加えて、審議してきた事項の関係性を整理したものでございます。
 図の下の地球観測における課題・対応から始まりまして、データ創出・提供における課題・対応、気候サービス産業などのデータバリューチェーンにおける課題・対応、気候変動分野における課題・対応、生物多様性・自然資本分野における課題・対応、そしてSDGsへの貢献という流れに沿って、これまで審議いただいてきた事項を配置しております。それぞれを一つの章立てをいたしまして、記載しておりますような論点例を記述しながら、課題、求められる対応を整理していくということを想定しております。
 このような全体像のイメージ案、そして先ほど御説明いたしましたスケジュール案で、最終取りまとめに向けて今後進めていけたらと考えておりますが、御指摘等ありましたら頂戴できたら幸いでございます。
 また、資料1-3でございますけれども、前回の部会の最後に重点課題候補についてメール等で御意見を頂戴できればと御依頼申し上げました。こちらがその頂戴した御意見を取りまとめたものでございます。
 幾つか御紹介いたしますと、例えば3でございますが、「シーズ先行の論法ではなく、これが必要とされているからこういう観測データなどが必要だという論調に変えていく必要があるのではないか」という御意見であったり、4では、「データバリューチェーンという概念は極めて重要である。一方で、データ提供者たる国のデータ統合は、サービス提供者の存在以前にできる限り行うことが必要ではないか」という御意見であったりとか、次のページに参りまして、6番では「生物多様性・自然資本については、明確なビジョンが産官学の間で共有されるような政策が必要なのではないか」などの御意見をいただいております。
 いただいた御意見、事務局にて拝見させていただいたところ、新たに審議の論点として設定するというよりも、今後の最終取りまとめのたたき台、素案、最終案の策定の中でこれらの御意見を反映させていただき、途中途中の第8回、第9回でその案について御審議いただくという流れが、効率的という表現が適切か分かりませんけれども、進め方としてよいのかなと考えておりますが、いかがでしょうか。
 また、こちらの御意見の中の10に関しましては、御意見というより御質問という形でございましたので、この場でお答えさせていただきたいと考えております。
 「防災という明確な頭出しはありませんが、気候サービス・気候レジリエンスに含まれているという理解でよろしいでしょうか」という御質問をいただいておりますけれども、こちら事務局としても、気候サービス・気候レジリエンス、特に気候レジリエンスの中に、防災という概念が含まれてくるものと認識しているところでございます。
 簡単ではございますけれども、事務局からの説明は以上になります。よろしくお願いいたします。
【春日部会長】  久芳推進官、大変分かりやすい御説明をありがとうございました。また、部会委員の皆様からいただいた御意見に対しても、どのように反映させていくか、また、御質問に対してもお答えいただきましてありがとうございました。
 ただいまの御説明を受けて、本日、次の議題の情報提供、また、それをお聞きいただいた上での意見交換に生かしていければというふうに思います。
 少し時間は迫ってきてしまいましたが、せっかく御説明いただいたので、ここははっきりさせたいというような御質問がございましたらいただきたいと思います。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 では、議題2に移りたいと思います。
 今の御説明にもありましたように、また前回に引き続き、最終取りまとめに向けて生物多様性等についての検討を充実させるために、本日は、生物多様性・自然資本のテーマに関して琉球大学並びにリモート・センシング技術センターから、取組について御紹介いただき、そして意見交換を行いたいと思います。
【甲斐地球観測推進専門官】  すみません、ただいま事務局のほうで調整しているところですが、琉球大学の久保田先生の接続が今うまくいってない状態ですので、申し訳ありませんけれども先に若松委員のほうから御説明をお願いしたいと思います。申し訳ありません。
【春日部会長】  承知しました。
 若松委員、急な変更で申し訳ありませんけれども、よろしいでしょうか。
【若松委員】  はい。大丈夫です。
【春日部会長】  ありがとうございます。
 では、RESTECの生物多様性分野における取組ということで、御説明をよろしくお願いいたします。
【若松委員】 リモート・センシング技術センター(RESTEC)の若松でございます。
 本日は、RESTECの生物多様性分野における取組というタイトルで発表させていただきたいと思います。
 RESTECの生物多様性や自然資本に関する取組というのは、それほど多くあるわけではないのですけれども、幾つかの事例を御紹介させていただきまして、そうした分野でのデータ利活用の課題についてもお話しさせていただきたいというふうに思います。
 御専門の先生方もいらっしゃる中で非常に恐縮なのですけれども、しばしお付き合いいただければと思います。御紹介したいスライドを数多く準備してしまいましたので、少し早口になってしまうことをお許しいただければと思います。
 まず、アフリカ野生生物保護に関する取組でございます。
 アフリカにおいては、人間と野生生物とのコンフリクト――日本語では「あつれき」と言ってみたり「衝突」と言ってみたりしますけれども、これが非常に大きな問題になっております。その解決のために、リモートセンシング技術や地理空間情報技術を活用したSDI(Spatial Data Infrastructure)を整備し、SDGsに資するといった取組を行っているところでございます。
 アフリカでは、近年人間が暮らしている場所がどんどん広がっています。それに伴い野生生物、例えば象が暮らしている場所と人間が暮らしている場所が非常に接近してきており、人間の暮らしている村や畑に象が入ってきたり、象の保護区に人が入ってきたりするという、そういったケースが出てきているそうです。時には数十頭の群れで民家のあるところに入ってくることもあり、タンザニアでは年間数十人から、場合によっては100人を超える方が、象による被害で亡くなっているそうでございます。
 もう一つの問題は、野生生物の密猟問題、これも非常に大きな課題となっております。象牙の売買目的で象が殺されるという部分に関しては皆さんも御存じかもしれませんけれども、それ以外にも、サイの角がベトナムですとかタイとかで薬として使われているということがありまして、そのための密猟というのも非常に大きな問題になっているというようなことでございます。
 RESTECがこの課題に本格的に取り組むようになったのは、2019年、タンザニアで行われた国際ワークショップに参加してからでございます。この場では、人間と野生生物のコンフリクトに対処するために、情報の共有インフラとガバナンスの枠組みを強化する必要があることが確認され、RESTECもそのお手伝いをするようになってきました。
 基本的な考え方は、SDIと呼ばれる地理空間情報基盤です。
 国レベルのSDIをNSDI(National Spatial Data Infrastructure)といって、国家の一大プロジェクトになっていたりいたしますけれども、こちらのSDIではそれを国をまたいで実現しようというものになっております。
 そのためには、国をまたいで、組織をまたいで、様々な情報を供することが重要になりますし、地球観測のデータはその中で広域をカバーし、時系列に客観的なデータを提供する役割を担います。
 その中で最も代表的な例といたしましては、土地利用や土地被覆といったデータを時系列で解析したもので、そのレイヤーとほかのレイヤーを重ね合わせることによって、より客観的にデータに基づいた議論ができるようになっていきます。
 そうしたシステムは技術的には実現できたとしても、運用がなかなか難しいことが多いのですけれども、このプロジェクトではLATF(ルサカ協定タスクフォース)がその役割を担います。
 LATFは、もともと今から30年ほど前にザンビアのルサカで採択された協定がありまして、その協定を実施するために設立されたタスクフォースです。このタスクフォースが中心になって、先ほどの2019年の国際ワークショップも開催されましたし、このSDIの実現に向けて様々な活動を進めているところでございます。
 このSDIが実装されますと、各国、各組織の端末ではこのようなイメージのダッシュボードで位置情報ベースのデータの視覚化が可能になっていきます。RESTECはそこに地球観測データに基づく客観的なデータを提供すべく、プロジェクト推進の一翼を担わせていただいております。
 続いて、イオン環境財団さんとの森林分野における取組を御紹介させていただきます。
 イオン環境財団さんとは2019年に連携協定を結びまして、リモートセンシング技術を活用して森の健康診断や植樹候補地の選定といったお手伝いをさせていただいております。
 少しイオン環境財団さん、もしくはイオングループさんの取組について御紹介させていただきます。
 イオン環境財団さんは、1990年に設立されまして、地球環境の保全に関わる様々な活動をされております。今回のテーマである森づくりに対しても、イオングループさん全体でも取り組まれておりますし、そのほかにも、環境教育、各種助成、そしてパートナーシップづくりも広く取り組まれております。その中でRESTECも仲間に入れていただいたといったような状況になっております。
 森づくりにつきましては、1991年より取り組まれておりまして、日本国内のみならずアジアを中心にアフリカ、ケニアを含め、世界各地で植樹活動をされております。少し古いデータで恐縮でございますけれども、2020年のデータで1,200万本を超える植樹の実績がございます。
 その狙いは、人間と自然の共生を目指して持続可能な森をつくるというところでございまして、長期にわたり環境教育の実施から学術的な研究への貢献といったことまで幅広く、広範な活動をされてきております。
 具体的にRESTECがお手伝いしている内容ですけれども、森の健康診断という点につきましては、NDVIによる植樹地域の全域での健康度を時系列に分析するといったことをさせていただいております。こちらのグラフは、植樹した地域全域で緑が増えていることを表しておりますし、右下のグラフにつきましては、草のようなものから太くしっかりした木に移行しているということを表しております。
 それ以外にも国内外植樹地の健康診断を行い、いずれもNDVIが右肩上がりで、植樹地が健全に成長しているというような診断ができております。
 こうした森づくりの取組を子供たちに環境教室といった形で広く学んでもらうお手伝いも、RESTECがさせていただいております。
 こちらはイオンさんの施設の中でRESTECの職員が白衣を着てそれっぽく御説明させていただいている様子です。同様に、エコプロといった環境界の展示会の一角で、子供たちに学んでもらう場を提供したりもしております。
 今御紹介した写真はいずれも2019年のものだったのですけれども、その後、コロナ禍の中で、新しい環境教育の在り方として野外教室的なものも始めました。
 これは、子供たちにスマートデバイスを持ってもらいフィールド調査をお願いし、リモートセンシングによる炭素蓄積量の推定と併せて精度を高めていくといった取組でございます。
 事後学習としては、こういったスライドを使っております。こうしたスライドも子供たちに分かりやすくということで、現場の先生方と何度も何度も打合せをさせていただきながら作ったものです。
 フィールド調査の正確性と地球観測データの広域性を生かして、広い範囲の正確な炭素蓄積量を推定する仕組みを勉強していただきました。実際にこのぐらい炭素量があるのですよということを御説明させていただいたり、調査対象エリアのクヌギ455本の吸収するCO2がどのぐらいで、それが身近なものに例えるとどんなものに相当するのかといったような形で、環境問題を身近に感じ取っていただくための取組を進めております。
 こうした活動をさせていただきました上で、私どものほうで今データ利活用に向けてどんなことを課題として考えているかという部分でございますけれども、大きく以下の3点が課題だというふうに考えております。技術的な課題というのは比較的解決可能なものが多いのですけれども、どちらかというとそれ以外の部分に関しての課題かなというふうに思っているところでございます。
 まず一つ目、パートナーなのですけれども、RESTECというのは技術はあっても、この生物多様性分野、自然資本に関する分野における課題に正面から取り組む知見というのは残念ながら持ち合わせておりません。アフリカの野生生物保護に関してはLATFが、森林分野における取組に関してはイオン環境財団さんが、強力な推進力となってくれているパートナーという形で、私たちの活動を円滑に進める非常に重要な役割を担っていただいております。
 二つ目が各種データとの融合ということでございまして、地球観測データだけで分かることは限られておりまして、他のデータとの融合というのが必須となってきているというのは、この部会の中でも何度も議論に上がっていることかなというふうに思っております。
 また、データ共有ポリシーでございます。各種データとの融合を推進するためにも、データ共有ポリシーをしっかりと定めるというところと、さらにはその的確な運用というのが必要だというふうに感じているところでございます。
 以上で私のほうからの御説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。
【春日部会長】  若松委員、国際的な協調、それから国内での取組、最後に利活用に向けた課題についての御紹介、大変多岐にわたる御説明をありがとうございました。
 特に、国際連携では、なかなかこういう密猟対策のようなところに衛星観測が使われているという実例はそれほど知られてないのではないかというふうに思いますし、また国内事例では、市民や子供たちを巻き込んだデータのコ・プロダクションですね、そういう実例も御紹介いただきました。また、利活用に向けて、問題提起だけではなくて、それを克服するための実例も御紹介いただけたと思います。ありがとうございます。
 当初は、若松委員、久保田先生のお二人から話題提供いただいた後でまとめて質疑応答と思っていたのですけれども、久保田先生が現在接続対応中のため、先に若松委員からの話題提供に関して、皆様から御質問、御意見等いただけたらというふうに思います。
 村岡委員、お願いいたします。続いて赤松委員、お願いいたします。
【村岡委員】  村岡です。ありがとうございます。若松委員、ありがとうございました。大変勉強になりました。特に森の健康診断のところに大変興味を持ちました。
 今の若松委員からのお話ですとか以前の赤松委員からの御発表にもありましたけども、生物多様性とか自然資本に関連して、温暖化の緩和策としても、森林の炭素固定量の推定のために、なるべくその精度の高い計測とモニタリングというのが非常に重要になっていて、今まさに見せていただいているページの中でも各種データとの融合ということで、衛星観測と恐らく地上観測を組み合わせることがさらにそこを推進するのではないかと思いました。そういったことを考えると、特にカーボンニュートラルの推進の観点で、例えばJ-クレジット制度などを出口に見据えた場合に、こうした衛星観測や地上での地球観測データを融合的に活用することで、吸排出の算定の簡素化あるいは標準化、精緻化といった研究開発がさらに推進されると、社会的な意義やインパクトが大きくなると思いますけれども、その辺り若松委員どのようにお考えか教えていただければと思います。
 ありがとうございます。よろしくお願いします。
【若松委員】  ありがとうございます。
 御指摘いただいたとおり、そういったものが具体的なカーボンニュートラルにつながるような形になっていかなければいけないなというふうに思っております。そのために、本当に今御指摘いただいたとおりなのですけれども、それをしっかりと基準化していく、標準化していく、指標化していくことが、一番重要なのかなというふうに思っているところでございます。
【村岡委員】  ありがとうございます。
 何か特に地上と衛星をつないで、それで衛星でしかアクセスできないところもきちんと測れるようにしていくということは重要になりそうですね。
【若松委員】  はい。
【村岡委員】  ありがとうございました。
【春日部会長】  ありがとうございます。
 では、赤松委員お願いします。
【赤松委員】  国際航業の赤松でございます。若松委員、大変すばらしい事例を発表いただきましてありがとうございました。
 2点ありまして、1点目が、10ページのアフリカの象の例で、土地利用、土地被覆が衛星側から適用されるという話があったのですけども、具体的にこの問題の中でどのようにそれが寄与していったのかとか、象の密猟に関するニーズに対してどのように地球観測データの加工として対応されたのかということがもしありましたら、お教えいただければと思います。
【若松委員】  これ自体はまだ残念ながら実装はされていなくて、コンセプトモデルなのですけれども、今考えておりますのは、衛星観測による土地被覆が時系列的に把握できることによって、人の居住地の広がりとの関係、象の保護区との関係、そういったものを把握した上で、そこにほかのいろいろな事例ですね、例えば象にGPSをつけてそれで観測しているようなデータもありますので、そういったデータを重ね合わせることによっていろいろな役に立つのではないかなというふうに考えております。
【赤松委員】  なるほど。今回「SDGsへの貢献」についていろいろ議論をしていく中で、バリューチェーンをつくっていくということと、サービス提供者としてそのニーズを踏まえたサービスをつくっていくことが大事だとされているかと思うのですけども、もう少し進んだ段階かもしれませんが、具体的なニーズとデータのシーズの連係のところまでお示しいただけると、より具体的な話になっていくかなというふうに思いました。ありがとうございます。
 あと、もう一つが、先ほど村岡委員からのお話にもあったかと思うのですけども、イオンの森の取組の中で、NDVIを使っていろいろ分析をされている例があったかと思います。この例では、多分、NDVIで見られる情報と、実際に森の健康と言われる情報をつなぐために、もう少しいろいろなデータ、例えば先ほどの地上のデータとか、ドローンのデータとかいろいろあるかと思うのですけども、そういうところとの連係が私はやっぱり必要になってくるかなと思いました。そういった部分をもう少し埋めていくことで、ニーズに対応したサービス化を図るというのが、これも今回「SDGsへの貢献」についていろいろ議論してきた中で示されているように、また、先ほど村岡委員もおっしゃられたように必要になってくるのではないかなと思いますが、その辺の展開は今後何か考えられていることはありますでしょうか。
【若松委員】  できることは限られている部分もあるのですけれども、できる範囲でより精緻なモデルを作って、健康診断というものがよりリアルになっていくようにしていきたいというふうには思っております。
【赤松委員】  分かりました。多分そういった部分の組み込みというのが、我々が求めていく具体のサービスの形態には必要になってくるかと思いますので、またその辺が進んだら情報を提供いただけるとありがたいなと思いました。
【若松委員】  ありがとうございました。
【赤松委員】  ありがとうございました。
【春日部会長】  ほかの方から御意見、御質問等ございますか。
 私から一つお伺いしたいのですが、今後の進め方に関して皆様から御意見いただいた中に、「どういう課題を解決するためのデータが必要だから、そのためのデータを作成しましょう、あるいはそのニーズに合わせた精緻さを追求しましょうという、そういう考え方が必要」という御意見があったと思います。その点で、若松委員、今回御紹介いただいた事例は、どういうきっかけでニーズを把握されたのでしょうか。
【若松委員】  いずれも先方さんとのお付き合いの中で、例えばイオン環境財団さんであればこういう森づくりというのをやっていて、その中で一緒にできることがないだろうかみたいな話になってきたときに、森林分野であれば地球観測とも相性がいいので、こんなことができますよみたいな話で進んでいったという。
 最初やっぱり、マッチングというか、技術とニーズが出会う場所というのがどのくらい多く確保できるかというところがポイントじゃないかなというふうに思います。
【春日部会長】  アフリカについても以前から付き合いがあってということでしょうか。
【若松委員】  そうですね。アフリカについても、ある意味、そういった人との出会いといいますか、そういったところで始まっているはずですね。
【春日部会長】  ありがとうございました。赤松委員もニーズとシーズのつなぎ目のことを発言されていましたけれども、関連して伺いました。
 さて、久保田先生のご準備ができたようですので、これから久保田先生にもう一つ話題提供をお願いしたいと思います。
 琉球大学の久保田先生です。よろしくお願いいたします。
【久保田(琉球大学)】  どうもありがとうございます。接続に時間を要し、エントリーするのが遅れてしまって申し訳ございません。それでは始めさせていただきます。
 今日は地球観測情報のバリューチェーンに基づいたデータ移行システム構築の重要性ということについて、話題提供させていただきます。
 背景としては、2030年ネーチャーポジティブと、昨年のG7サミットで自然協約が合意されて、これから10年の間、2030年までに、生物多様性の損失にブレーキをかけて抑止をかけてそれを増やす方向に持っていくということが合意されたわけですね。
 さらに、生物多様性条約の枠組みでは2050年までに生物多様性を十分に回復し、自然と共生する社会を目指すというターゲットもあります。
 国際的な条約とG7の枠組みにおいて、生物多様性保全・再生というのが、社会の目標として明確になったということですね。
 それに対応して、地球観測によるネーチャー関連のデータを今後どう扱っていけばいいか、どういうふうに生成し、どのように利用していけばいいかというのが、重要になっていると考えています。
 データというのは、主に研究者が研究する目的で生成して、それを分析して論文にするために利用するということだったわけなのですが、先ほど申し上げたような社会的な背景からすると、ネーチャーポジティブという目標を達成するために、ビジネスセクターにおいてもネーチャー関連データが活用されていくと、そのデータ自体が価値をもたらすような状況になりつつある。
 したがって、ビジネスの世界でどういうふうにデータを活用してもらうか、もっと言うとデータに付加価値をつけていかにデータ自体を有効活用してもらうかということが、非常に重要な取組になっていると思います。
 現状の生物多様性関連のデータのサプライチェーンを見ると、システム的には脆弱性があるというふうに私たちは考えています。例えば、地球観測によるデータ生成は、主に国の予算によって支えられています。研究者にしても、国から様々な研究予算という形でデータ収集のための資金を獲得しています。データの一次生産は公的枠組みによっているわけです。
 主なデータの消費者というのは我々のような研究者です。その活用されたデータというのは本来研究だけで留まるわけではなくて、さらに再利用されてしかるべきなのですが、そのデータをキュレーションするところのリンクはすごく脆弱で、データを整理、統合してデータの価値を長期的に維持したり、データの再利用を促すような活動というのはなかなか進んでこなかった。ましてやデータ利用のアプリケーション開発というのも、なかなか発展しなかった。
 さらに、収集されたデータを公開するときに、それは当然何らかのユーザーを定義した上で公開する必要があるのですが、ユーザー目線でデータが提供されることはまずなくて、幅広くいろいろ使ってくださいみたいな形で、ただ単に公開されているだけの状態でした。したがって、データの再利用の循環が進まない、という問題がありました。
 データの消費者がさらにその消費を通してこんなに価値があるのだからさらにデータ取りましょうよ、だから地球観測によるデータ収集が大事だよねみたいな、データ利用が更なる一次データ収集を推進するエコシステムにはなっていない。データのバリューチェーンにミッシングリンクがあるような状況です。
 こういった現状に問題意識を持ちつつ、私たちの研究チームで12年くらい前から、生物多様性を可視化するという目的でデータ整理を進めて、それを基に生態学の基礎研究や生物多様性の保全・再生の応用研究を続けてやってきました。
 その過程で、実際どういうふうにデータを整理してきたのか。これは、その状況を動画にまとめたものなのです。研究者が収集したデータは様々な文献に記載されて、あるいは標本情報という形で眠っています。そういうデータを網羅的に電子化して、そのためのツールも開発しながらデータ整理を進めていきました。
 電子化されてデータポータルに載っているデータは、全てのデータの10%ぐらいにすぎなくて、まだ9割方眠っていると言われています。我々はそれを文字どおり電子化して掘り起こすという作業を進めて、例えば、様々な生物種がどこに分布しているかという情報を、分析可能な状態にしていきました。
 そのようなデータを機械学習などで分析して、生物分類群毎に、例えば種分布を可視化する作業を進めていきました。
例えば、これは、日本の陸域の植物と動物の種類数のホットスポットを可視化したものになります。赤いところほど種数が多い場所を示しています。一方、これは、沿岸海域の生物多様性(分類群毎の種数)の分布を可視化した結果です。
 さらに、こういう生物多様性の空間情報を基にすると、保全すべき重要な場所がどこなのか、といった空間的保全優先度の順位付け分析もできます。これはSpatial Prioritizationという分析なのですが、保全上どこが重要かをランクづけすることができます。陸とか沿岸あるいは沖合海域、日本の陸地、領海、保全上重要なところがどこかというのが数値的に評価できます。例えば、30by30という保護区を30%まで増やして生物多様性の保全を推進する国際的な目標があるわけですが、それを達成するときにとても重要になるのは、保全上の重要エリアの特定です。それができないと、仮に保護区を拡大したにしても生物多様性の保全効果を必ずしも上げることはできません。
 例えば、これは高解像度で保全上重要なエリアというのを可視化した事例です。自治体がこういう情報を基にして、効果的な保全政策を検討する、あるいは開発者側はこういう情報を見て、生物多様性に対するインパクトが大きい場所での開発は回避する。あるいは、ネーチャーポジティブ事業をやる観点でどこが効果的かということを把握する。このような高解像度な生物多様性空間情報は様々な使い方ができます。
 我々はこういう可視化した情報を自治体や企業の皆さんに見てもらって、保全政策や企業の自然関連事業を支援するということを今進めているところです。
 このサイトを見るといろいろな情報を見ることができて、例えば、これは東京都の千代田区ですけれども、生物の多様性分布がどうなっているのかという情報をウェブ上で見ることができます。日本全国の生物多様性情報というのを可視化した結果を、様々な指標情報を基にして見てもらえるような状況にしているところです。
 ネーチャーの可視化に関するニーズの高まりというのは、この数年ですごくニーズが高まっています。
 ビジネスの枠組みでも自然資本の持続的な利用を考えるために、データに基づいたアクションが求められています。このような背景から、私はサイエンスとビジネスの接点が、ここ数年で顕在化してきていて、この10年でギャップが埋められていく状況になると予想しています。
 SBTN、TNFDという枠組みがあります、いずれも、ビジネス(企業活動)が自然に与える影響を把握してネーチャーポジティブを目指す枠組み、あるいは、自然関連リスク機会を把握してそれが財務パフォーマンスに与える影響を評価し、それを開示する枠組みです。
 我々研究チームでスタートアップを立ち上げて、このTNFDのデータカタリストのワーキンググループにも参画して、このような枠組みによるアクションの実効性強化(ネーチャーポジテイブ)に貢献できればと考えております。
 今後10年地球観測がどうあるべきかという点で何か思うところがあれば述べてくださいということで、この話題提供の前に文科省の方に要望されましたので、非常に恐縮ではあるのですが、私見を述べさせていただきます。
 これから地球観測などで得られたネーチャー関連のデータというのが、ビジネスの世界でも、その価値が理解されるような状況になりつつあります。データ自体が収益をもたらすということがもう見えてきている。この10年で、ネーチャー関連の情報サービス市場は間違いなく形成されていきます。
 だとすると、こういう観点から地球観測は戦略化すべきだろうというふうに考えます。今まではデータを生成する人の目線だけだったのですが、データを消費する立場からの目線の統合というのが重要だろうと。ジョブ理論ベースのデータのマーケティングというのを本気で考えないといけないのではないかと思います。
 でもこういう話をすると、データを生成する立場の人にその出口まで要求して「どういうデータを取ったらいいのか考えてください」みたいなことが、言われがちですが、それは無理だと私は思います。データ生成側はあくまでデータのジェネレーションに特化すべきであって、公的機関や研究者などのデータ生成者にデータマーケティングまで求めるのは適切ではないです。この部分(データマーケティング)は、別のプレイヤー(民間)が引き受けないといけないだろうと考えます。そういう意味でいくと、公的な地球観測というのは、民間との戦略的連携というのが必要だろうと。
 実際、データに付加価値を加えて収益を上げていくビジネスはリスクマネーを引き受けることでしかできませんので、やはりスタートアップというのがここでとても重要な役割を果たすのだというふうに考えています。
 この10年で間違いなく生物多様性市場が形成され、そのデータ基盤や関連したテクノロジープラットフォームができていくと予想します。ここは、日本発で、プラットフォーマーを目指すべきだと思います。
 冒頭にお示ししたデータのエコシステム化のところ、この黒い部分で示したプロセスが重要と考えています。1番目のキュレーションサービス、2番目のシステムエンジニアやサービスエンジニア両目線でのデータ提供の仕組み作り、そして3番目がデータサプライチェーンをサーキュラー化する部分です。
 これからは、民間企業もデータを整備してそれを売買するというような状況になっていきます。今まで主に公的な枠組みでのみ行われていたデータの一次生産に、民間が参入してくるので、場合によっては公的な地球観測が民間のデータを買い取る形で強化される可能性もあります。今後、データサプライチェーンがエコシステム化し、産業化するのは間違いないので、そういう点も含めて民間と官の戦略的連携というのが大事になると感じます。私たちもスタートアップを立ち上げたので、この黒で囲ってあるところのプラットフォームをしっかり作っていきたいなというふうに考えているところです。
 以上になります。
【春日部会長】  久保田先生、大変多岐にわたる非常にイノベーティブなお話をありがとうございました。いろいろな観点において刺激を受けるお話だったと思います。
 早速ですけれども、委員の皆様から御質問、御意見等いただきたいと思います。
 村岡委員、お願いします。
【村岡委員】  ありがとうございます。久保田先生、ありがとうございました。9月末のAOGEOシンポジウムでも大変お世話になりました。ありがとうございました。
 今、すごく深い話も含めて、これから展開していかなければいけないというその内容についてもお話しいただきました。このデータバリューチェーンについては今まさに映していただいているスライドが、この地球観測推進部会でもさらに検討すべきポイントを整理していただいていると思いました。
 この戦略化すべきということと、戦略的な連携が必要ということもおっしゃいましたけど、特に今映していただいているエコシステム化のことを進めるに当たって、多分いろいろな主体がここで入ってくると思うのですけども、まずそういったことも考えて何に取り組む必要がありそうかということを少し教えていただけますか。
【久保田(琉球大学)】  私は研究者で、スタートアップを立ち上げた経験から私見で述べさせていただきます。地球観測は非常に幅広い視点で、幅広い方たちが利用可能な汎用性のあるデータを収集することが目的になると思います。一方で、それがどう使われて社会にどう役に立つのかというのもちゃんとアピールしないと、地球観測自体が持続可能ではない、予算が打ち切られてしまったりする場合もありえます。つまり、矛盾するような要求を常に突きつけられてきていたと思います。
 幅広いデータを取るためには何か特定のニーズに特化するようなことはできないのだけれども、でも、予算を持続的に確保する必要があるので「こういうニーズがあって、その役に立つのですよ」みたいなことは言わないといけなくてということで、ジレンマがあるわけですよね。このような課題(データ利用の出口)を、観測者(研究者)サイドに求めるというのは無理があると思います。
 ここでポイントになるのが、データ収集とデータ利用のギャップを埋めるミドルマンの存在です。得られたデータに付加価値をつけて販売するという役割、そういうプレーヤーが要ると思うのですね。例えば、地球観測のプレーヤーが、ミドルマンの役割を担うスタートアップのプレーヤーを使って自分たちの生成しているデータに、より付加価値をつけてもらうみたいな、お互い連携してお互いの価値を高めていくみたいなことが必要なのかなと。
 今までだと、研究者に、いかに社会実装するのかみたいなことをよく言われて、私も実際そういう経験で何とかやってきたのですけど、なかなか限界があると思うのですね。社会実装するためには民間企業でないとできない要素がありますし、一方で民間の企業だとなかなかそういうリスクは取れないので、ではそれを誰がやるのかといったら、スタートアップということになるのだと思うのですね。地球観測情報についても、そういうスタートアップをミドルマンにして、このエコシステムをうまく駆動させていくことが大事かなと思っています。
【村岡委員】  ありがとうございます。そこの今後を見据えた戦略をつくるというところ、あと、いろいろな主体、プレーヤーを交えた形でスキームをつくっていくにしても、それをどういうふうに、例えばポスト2020生物多様性枠組とか30by30、あるいはTNFDのようなビジネスセクターのいろいろな動きが国際、国内である中で、そういった潮流も踏まえながら日本としてこれどう進めていくかということを早急に検討して、実効的な枠組みをつくるというところが必要でしょうかね。
【久保田(琉球大学)】  そうですね。
【村岡委員】  そのときに多分、プライベートセクターや観測主体など、こういうプラットフォーム構築という様々な主体が連携して、あるいは関連省庁だとか観測コミュニティーを含む関係者の、言ってみれば協議体みたいな、そういうことがもしかしたら最初に必要になってくる、早急に必要になってきそうですかね。
【久保田(琉球大学)】  はい。そう思います。
【村岡委員】  ありがとうございます。
 もう一言だけ、これは質問じゃなくて、今のお話とこれまで数回の地球観測推進部会で生物多様性とか自然資本に関する議論を伺っていて、今まさに確信したのですけれども、ぜひこの地球観測推進部会の下で、この生物多様性や自然資本に関する連携拠点の設置を検討していただければというふうに思います。これは部会の皆様への御提案と、ぜひ今後検討していただきたいという事務局へのお願いです。よろしくお願いします。
 久保田先生、ありがとうございました。
【春日部会長】  村岡委員、御質問と、そして最後に御提案をありがとうございました。
 確認ですけれども、今の最後の御発言ですね、連携拠点の設置を地球観測推進部会からの提案に含めたいという、そういう御発言、御提案ですか。
【村岡委員】  はい。ぜひそういうふうに御検討いただければと思います。以前の中間取りまとめの頃にも、様々な地球観測、幾つかのその柱となるテーマに関する協議体の検討も必要になってくるということが含まれておりましたけども、これだけ生物多様性・自然資本に関する課題が大きくなってくる中で、そこにいち早く対応していくということでも、連携拠点の設置をこの部会で検討していただければということの御提案です。よろしくお願いします。
【春日部会長】  御提案として承りました。今後の部会の中での議論において、中間取りまとめで大きな柱として提案しました、データバリューチェーンですね、気候サービス産業も含むという形の。そういうことの提案と併せて、どういう形で部会からの提案にまとめられるか、審議を続けたいというふうに思います。
【村岡委員】  よろしくお願いします。どうもありがとうございます。
【春日部会長】  では続いて、赤松委員、それから嶋田委員から御質問を受けたいと思います。
 赤松委員、お願いいたします。
【赤松委員】  国際航業の赤松と申します。久保田先生、大変すばらしい御発表をいただきましてありがとうございました。
 私は民間の人間ですので、この御提案に大変共感をしているところなのですが、実はこのバリューチェーンのエコシステム化というのは、まさにこの部会で検討してきた「SDGsへの貢献」と一致しておりまして、そういったお考えをお持ちの方が実際にいらっしゃるということに我々としても非常に勇気づけられると感じたところでございます。
 ちょうど今出していただいている絵の中で1点だけ、この②の「システムエンジニア」と「セールスエンジニア」と書かれているところがあるのですが、実は我々の部会のほうではここのところを「サービス提供者」という形で記述しております。私はどちらかというと利活用のコンサルティングをやっている人間ですから、そういった機能が重要だというふうに御提案差し上げてきているのですが、この「システムエンジニア」とか「セールスエンジニア」という言葉だと若干システムに特化したようなイメージもあるのですが、そこのところはいかがでしょうか。
【久保田(琉球大学)】  この辺は私の造語で言っているので、民間でもう既にビジネスをやっておられる方の表現が正しいと思います。私の言わんとしているところは、ユーザー目線でいろいろなデータの価値であるとか、データ分析の手法の有用性というのを整理するというふうな意味で使っております。
 ですので、よくビジネスの世界ではジョブ理論では、顧客目線で様々なサービスというのを考えるというのが一般的だと思うのですけれども、データの利活用という点に関してはそういう視点というのは今までほぼ全くなかったと思うのですね。データを生成する側は地球観測が目的ですから「生成されたデータはユーザーが考えて使ってください」みたいなスタンスにならざるを得なかったわけですね。
 先ほど私が申し上げたもう一つのプレーヤーですね、その間をつなぐミドルマン的なプレーヤーというのがまさにそのデータユーザー目線とデータジェネレーターの目線両方を調和させて、データの利活用を駆動させていくみたいな、そういう意味合いでこの両目線を統合したデータ提供というのは大事じゃないかというふうに、表現させてもらっています。
【赤松委員】  分かりました。おっしゃっている内容はまさにそのとおりだと思いますので、もし「SDGsへの貢献」の最終取りまとめが出ましたら、それと歩調を合わせて言葉も使っていただければと思います。
【久保田(琉球大学)】  はい。
【赤松委員】  あと、もう一つ、保全の優先度の図があったかと思うのですが、このデータは、ランクマップなので相対的な区分をされているかと思うのですが、実は前回のこの部会の中でTNFDのメンバーの方から、「ちゃんと標準化されて、例えばこの数値だったらこの保全につなげなければならないとか、そういったデータが必要になってきます」ということも言われたのですが、この図で、例えば一番上のランクというのは必ず保全しなければいけないといった標準化についてはどのようにお考えですか。
【久保田(琉球大学)】  とてもそこは重要なポイントで、こういう分析をするときにはどのスケールでこういう分析をするかによって結果が違ってきます。
 ですので、全球を通して世界スケールで見たときのプライオリティーエリアはどこかみたいなことをまずやって、まさにそれはCBDがやっているような話になるのですが、プライオリティーエリアを特定すると。その上で、国レベルのターゲットにそのグローバルスケールのターゲットを落とし込んで、国レベルで分析をするということですね。さらに、国の国家戦略ができた後に地域戦略ということで地域に落とし込まれるので、地域レベルで分析をするということになります。
 そういうグローバル、ネーション、リージョンということで、いろいろな階層を設けて一貫した分析をすることができるので、今御質問にあったような標準化ということも可能になります。したがって、グローバルで見たときにどこを優先的に保全すべきなのかというのを見た上で、国レベルでどこか、地域レベルでどこかということで評価することができて、こういうデータを基にしたプライオリティーランキングのアルゴリズムを使うと、データに基づいて客観的に保全上重要なエリアが保全できるので、例えば30by30を推進する場合にも、このような科学的エビデンスベースをもとに推進しましょう、ということをいつも提案させていただいています。
【赤松委員】  分かりました。ありがとうございます。
 恐らくTNFDなどの中で実用に供していく上で、今のお話というのが非常に重要だと思います。ここは我々のような民間だけではなかなかできなくて、研究されている方の論理的な組立てというのが必要になってくるかと思いますので、ぜひその辺を早めに組み立てていただいて、ビジネスに適用できるような環境を整備していただければと思っております。ぜひよろしくお願いいたします。
 以上でございます。ありがとうございました。
【春日部会長】  赤松委員、ありがとうございました。
 では続いて、嶋田委員、お願いします。
【嶋田委員】  埼玉県環境科学国際センターの嶋田と申します。よろしくお願いいたします。久保田先生、本当に、興味深いというか刺激的な発表ありがとうございました。
 気候変動対策がやっとある意味ビジネスにつながるような時代になってきたわけですけども、次はネーチャー分野だなというふうに強く感じました。
 実は私どものセンターでは、埼玉県の生物多様性センターなどもやっているのですけれども、そのときのお悩みなのですけれども、日本だけではないかもしれませんけれども、いわゆる市民科学的なデータというのは非常に厚いと思うのですね。昔から鳥の観察だとか昆虫の観察とか採集をやってきた、そういったコミュニティーが結構あって、そういった方がたくさんのデータを集めていて、それが実は引き出しの中に眠っているというケースがたくさんあって、それをどうやって引き出して、例えばGBIFみたいなものにきちっと実装するのかということがこれから大事だなと思っているのですけれども、先ほどミドルマンという話もありましたが、そのほか何かそういったデータをたくさん吸い上げるような、そういったアイデアがあったらぜひ教えていただきたいと思います。
【久保田(琉球大学)】  おっしゃるとおり、日本というのはナチュラルヒストリーの研究が研究者レベルだけじゃなくて民間でもすごく活発で、実際我々10年前からこういう可視化を始めたのですが、やってみて驚いたのは日本にこんなにデータがあるのかということだったのですね。
 いろいろな国でこういう生物多様性を可視化するということはやられているのですけれども、データの取られ方に空間的な偏りがあるのですね。研究者が行きやすいところ、人が住んでいる周辺でデータが取られていて、僻地だとデータがないがよくあります。しかし、日本の場合は全国くまなくいろいろなところでデータが取られています。
 したがって、今紹介しているこのマップは機械学習をかけて推定したマップなのですが、実は機械学習をかけなくてもこれとほとんど同じような地図が描けてしまうのです。これは論文で投稿したときにも本当びっくりされるところで、こんなにデータがあるのかというのを驚かれます。このような点でも、日本は生物多様性の可視化をする上ではモデルになるような国であるということですね。
 さらにおっしゃるように、まだまだデータが眠っています。我々、一通り日本全国集めて、沖縄でももうあるだけ集めたのですが、沖縄でもうこれ以上ないというぐらいまで全部掘り起こしたのですけど、その量でいくとほかの地域にはまだまだ眠っているなというのも同時に見えていて、モーバライズ(データの可動化)と称して、行政機関や自治体等にもお話をして「一緒にやりませんか」みたいなことを提案しているところですね。
 実際この紙媒体で眠っているデータを電子化して可動化させるというのは、なかなか難しい作業で、これ我々も紙媒体の情報を電子化するいろいろなツールを作っているので、我々に任せていただければ非常に効率的に電子化ができると思っています。
 過去のデータは将来を予測するときにとても重要なので、文字どおり宝の山です。それをいかにうまく可動化するかというのは依然として大きい課題だなと思っていて、いろいろな地域の方とか市民の方と連携して今後も進めていきたいなと思っております。
【嶋田委員】  ありがとうございました。非常に貴重なというか御意見だったと思うのですけど、今回の文科省の地球観測推進部会のテーマとは多少違うと思いますけれども、今先生がおっしゃったようなそういう、データの可動化というのでしょうか、利用というのもある意味、文科省の中でも扱っていってもいいのではないかなというふうに思いました。ありがとうございました。
【春日部会長】  嶋田委員、そのデータの可動化、データを活用されやすくする工夫ということは、この部会のミッションの一つだというふうに思います。
 それと、今の御質問に関連してちょっと確認させていただきたいのですが、ということは、紙媒体で眠っているかもしれないデータ、それから市民がたくさん集めてくださったデータを、より広く活用できるためには、今のところ久保田先生に頼るしかないのでしょうか。ほかにそういうことをやってくださる方はいないのでしょうか。
【久保田(琉球大学)】  はい。今は我々のチームしかいないと思います。
 なぜかというと、例えば紙媒体、論文、報告書などに何々町、何々村とかというので字まで書いてあって生物の名前が例えば記載されていたとすると、その地名情報を入力して生物の和名情報を入れることになるのですけど、それではデータとして分析可能な状態にはならないのですね。地名情報を緯度経度情報に直すみたいな作業が必要であったり、和名で表記されている生物データを標準学名に直したりしないといけないのですね。
 ちなみに地名情報というのは、時代とともに変わります。なので、地名の時系列情報、それがどういう緯度経度に対応しているかという地名のデータベースも必要になります。我々は、それも今まで10年かけて作ってきました。生物の名前も、学名がどんどん付け替えられていきます。なので、和名に対応してどういう学名が当てられているのかとかというのも別のデータベースが要るのですね。それも我々が作ってきています。
 今までの10年間で少しずつ技術開発してきたベースがありますので、これについては我々のチームでないとできないかなというふうに考えています。ですので、そういう電子化というのもぜひ我々を使っていただければ。
 さらにもっと言うと、そういう技術を汎用化させていければいいなというふうに考えています。我々だけではなくて、いろいろな人ができるようなツール化ということもやっていきたいということで、完全自動化は難しいのですけれども、そういう紙媒体の情報を分析可能な状態にまでモーバライズするところをやってくれるツールをパッケージ化できればいいなというふうに考えています。
【春日部会長】  大変心強いお返事をありがとうございました。
 それでは、川辺委員、お待たせしました。お願いいたします。
【川辺委員】  ありがとうございます。久保田先生のお話、非常に興奮しながら伺いました。
 紙媒体等で自然保護団体とか市民科学とか、あるいは行政とか大学とかに残っているようなデータを、活用して生物多様性を知るのに生かすというのは本当にすばらしいとは思うのですけれども、そのときの質の保証というのでしょうか、信頼性の担保というのを、どういうふうに考えればよいのかというところが私の疑問です。
 今のお話ですと、紙媒体のもの、例えば地名であったらば緯度経度というふうに直していかれるようなツールをお持ちだということですけれども、そもそもそのデータの信頼性をはかるような、そういう仕組みというものは何かお考えでしょうか。
【久保田(琉球大学)】  ありがとうございます。
 その点もとても重要なところで、例えばある場所にこういう生物がいましたよというふうな記録があったとして、その情報の信頼度というのはどういう人がその記載をしているかによると思います。
 一番確実なのは研究者が書いた学術論文ですね。それは文句なしに信頼していいと思います。もちろん誤同定の可能性はゼロではないでしょうけれど、研究者がやった記載情報であれば信頼できます。
 その次に信頼できるのは、例えば環境アセス企業や行政がやった報告書ですね。これは専門家が報告書としてまとめているものですから。
 さらにもっと言うと、例えば、アマチュアの方たちが収集している情報があります。
 先ほども申し上げましたけど日本の場合は、ナチュラルヒストリーのアマチュアの研究者の方たちの層が分厚くて、いろいろな地域に植物同好会とか昆虫同好会とかがあるのですね。そういう同好会で出ている会報にも膨大なデータがあって、我々はそれを一通り全部集めたのですけれど、とても信頼性があって研究者が書いているレポートとほぼ変わらないなということで、そういうアマチュアの方たちが出している記載情報、報告書というのも使わせてもらっています。
 さらには、最近ではネット上にいろいろな人たちが「こういう生物がいた」みたいな記録も散在しているのですね。
 その情報についてはどういうふうに扱おうかというのは私たちの中でもまだ判断ができてないところです。
 一方で、御質問の趣旨としては、いろいろなデータが集まってきて「この場所でこういう生物がいました、といった情報がどれだけ信頼が置けるものなのか」。これは、生物の分布情報から、明らかにその種の本来の分布域から外れているようなデータというのは判別ができるので、「これは間違いかな」みたいな形ではじいたりするということはできるので、明らかな異常値に関しては統計学的にはじいたりするということもある程度はできるかなというふうに考えています。
 今ので御質問に対する回答になっていますでしょうか。
【川辺委員】  はい。ありがとうございました。本当にすばらしいと思いました。どうもありがとうございます。
【春日部会長】  ありがとうございます。
 では、佐藤委員、岩崎委員、続いてお願いいたします。
 佐藤委員、お願いできますか。
【佐藤委員】  はい。どうもありがとうございます。
 久保田先生の御発表を興味深く伺いました。文書になっているドキュメントのデジタル化と分析をここまで進めていらっしゃるということに感動いたしました。
 私からの質問は2つあります。最後の辺りのスライドで、データバリューチェーンのエコシステム化で、データの一次生産には官民連携の枠組みがとても大事ということでしたが、官でやるべき観測、それから民でやるべき観測のイメージを具体的にお持ちでしょうか。これが1点めです。
 2点目は、生物多様性の指標についてです。確かに種類が多い少ないというのも一つの指標だと思いますが、一方で非常に厳しい環境、例えば砂漠などで生きているような生物というのは1種類しかいなくても、地球全体で見ると多様性として非常に価値のあることになるかと思います。つまり、多様性の指標というのは、いろいろあるのではないかなと思いますが、現在どのように理解されているのか、提案されているのか教えていただけるとありがたいです。よろしくお願いいたします。
【春日部会長】  佐藤先生、ありがとうございます。
【久保田(琉球大学)】  どうもありがとうございます。
 1個目の御質問で、このデータのジェネレーションのところで官と民でどういうふうな役割分担をするのか、あるいは連携するのかということなのですが、これは正直言ってどうなるのかなというのは私もまだ見えないところです。
 ただ、例えば宇宙観測の人工衛星データは、北米などですと民間が衛星を打ち上げてその観測データを国が買うみたいなことがもう実際行われているので、場合によっては自然関連データもそうなる可能性があると思います。
  あとTNFDとかSBTNの観点からすると、これから民間の企業が自社の事業インパクトを評価する、あるいはネーチャーポジティブ事業をするというところで、自社のお金を使って企業が一次データを取ることが国際的に盛んになってくると思います。
 そういうデータが市場にあふれることになるので、そういうデータを例えば公的な機関が利用して、公的な生物多様性の保全計画に使うみたいなことも出てくるかなと思っています。そうなると民が取ったデータを公が買って使わせてもらうみたいなこともあり得るのかなと。これは、ターゲットになる生物分類群や地域によってそういうふうなことは実際起きてくるのかなと。
 ですので、官の側もそういう民間の活動をプロモートするような形で、なおかつ民間が収集した情報をうまく公的な枠組みにインプットする観点で、戦略的な連携が必要ではないかと思います。官と民いろいろな組み方があると思うので、いずれにしてもいい形で連携できれば、日本の地球観測の将来像というのは明るくなるので、いろいろな可能性を想定した連携というのを考えていくといいのではないかなと、私見なのですが、思っているところです。
【佐藤委員】  ありがとうございます。
【久保田(琉球大学)】  あと二つ目の御質問で、生物多様性の評価というのをどういう指標で行うべきかということなのですが、それもとても重要な点で、例えばTNFDのレポートを見ると、評価指標3,000ぐらいあると書いてあるのですね。我々生態学の研究者ですが「3,000もあったかな、でもあるかも」と思って、いずれにしても無数の指標があるわけです。
 生物多様性というのは概念なので、直接的に測れるものではないのですね。カーボンだったら物質量として量ることができるのですが、生物多様性はいろいろな要素があります。私がよく喩えて言うのは、生物多様性は学力とか体力みたいなもので、それ自体は直接的に測れないので、学力や体力もそれを構成する測定可能な要素で測定しますよね。国語、算数、理科、社会のテストをやってそれを評価することで学力を評価するのですけど、それでいくと学力の評価指標もいっぱいあるわけですね、メトリックがいっぱいあると。生物多様性も同じで、その構成要素がもっと多様なので、評価指標はたくさんあるということになります。生物多様性のどのような観点に関心があるのか、その評価視点や評価目的のニーズに応じて、適切な評価指標を使うということになると思います。
 例えば保全の場合ですと、どこが保全上重要かといった場合に、例えば一般的によく皆さんがそうかなと思われるのは、種類数が多いところが重要なのではないのと思って「生物多様性ホットスポットは保全上重要だよね」みたいなことがよく言われます。一方で、先ほど御指摘されたように、生物の種類数は少なくてもそこにしかいない生物がいるような場所というのもとても重要になります。
 したがって、保全の重要度を評価するときのアルゴリズムというのは、種数だけじゃなくて、その場所にしかいない希少種がどれだけいるのかというのも考慮したアルゴリズムがあります。私たちが、私が先ほど紹介したプライオリティーエリアをランキング評価した結果というのは、まさにそこにしかいない生物の分布というのも評価して計算した結果で、「かけがえのなさ度」みたいな言い方をするのですけれども、種数だけではなくてそこにしかいない希少な生物がどれだけいるかみたいなことも考慮して、可視化したものになります。
 保全計画の目標に応じてどういう指標が適切かというのをチョイスする。例えばTNFDの枠組みなどでも、企業の事業活動というのはいろいろで、どういう生物多様性の要素にインパクトを与えるかというのは企業によって産業セクターによって違いますから、それに応じて適切な指標を使うと。3,000あるということなので、その中からちゃんと適切な評価指標を使うということが大事になってくると。
 したがって、ここでもやっぱり、どういうデータを使ってどういう指標を使うのかというところで、この最後で言っているキュレーションサービスというのがやっぱりとても重要になってくるというふうに私は考えるところです。
【佐藤委員】  よく分かりました。どうもありがとうございました。
【春日部会長】  ありがとうございます。
 では、最後に岩崎委員からお願いいたします。
【岩崎委員】  久保田先生、本当にありがとうございました。途上国における日本の国際協力においてもいろいろな可能性を示唆しているプレゼンテーションだったと思いました。
 非常に刺激を受けたのは、生物多様性分野におけるデータバリューチェーンのエコシステム化に関しては、これは公的機関だけではなくてまさに今ビジネスの対象にもなり得て、官民連携で生物対象性保全が進もうとしているということに非常に感銘を受けました。
 途上国にはホットスポットが多く存在する状況ですので、こうしたものがビジネスとなり、このデータバリューチェーン構築に関し民間の方々もインセンティブを持って参入いただけると、途上国における生物多様性保全が非常に大きく進むのではないかと期待をしております。
 先ほど久保田先生が「官がプロモーションをする」という言葉をおっしゃったと思うのですけれども、こうした官民連携でデータバリューチェーンのエコシステムを促進する上で、公的機関の役割、どういうことを担うとこうしたことが途上国のようなところでもエコシステムの構築が進むのかについて、お考えがありましたらぜひ教えてください。よろしくお願いします。
【久保田(琉球大学)】  ありがとうございます。
 例えば、日本はODAなどを通して発展途上国の援助というのを長年続けてきています。その中には、研究あるいはモニタリングに相当するような事業もたくさんあると思います。そういう事業というのを、今まで国が予算をつけて担っていたわけですけれども、それをある意味民間に委ねるみたいなことも一つは考えてもいいのかなと。例えば今だと社会インパクト投資みたいな仕組みもありますから、社会インパクト型の投資ということでネーチャーポジティブを推進するような事業を発展途上国でやるみたいな。
 国がやるよりも民間に委ねたほうが恐らくというか間違いなく費用対効果はいいので、そういうネーチャーポジティブという観点でのODAを民間に委ねるというのはあり得るのかなと。それは文字どおり民間の活動をプロモーションするということになるので、民間が担えば予算があるときだけということではなくてそれ自体が事業になってシーズになって、その後もサステナブルにその発展途上国でのネーチャーポジティブ関連のビジネスが発展していくみたいなことにもなると思いますので、それは一つあり得る有望なやり方かなというふうには思うところです。
【岩崎委員】  ありがとうございました。
 まさに途上国の行政は資金が不足している現状がありますので、公的機関が民間に委ねていくということも重要だと思います。
 もう一つの同じような質問なのですが、先ほどおっしゃった「官がプロモーションする」との点に関し、こういう民間によるデータバリューエコシステムが育つような環境づくりに関して公的機関が期待される点もあろうかと思います。民間がエコシステムをつくっていきやすくなる環境づくり、あるいは先ほどデータの質という話もありましたけれども、民間に委ねつつ質が標準化されたデータが蓄積されていくとの点で公的機関の役割というものもありましたら、教えてください。
【久保田(琉球大学)】  私は、海外と比較するとやっぱり、こういうネーチャーポジティブビジネスもそうなのですが、スタートアップの役割というのが日本はすごく脆弱だなと感じます。
 我々、研究者チームでスタートアップを立ち上げたのですが、ネーチャー関連のスタートアップを支援する国の仕組みがあれば、日本としても今後のネーチャーポジティブ活動を進めていくときに、民間にとってもすごく重要かなと思います。
【岩崎委員】  どうもありがとうございました。
【春日部会長】  大変活発な御議論をありがとうございました。
 久保田先生、本当に、委員の皆さんおっしゃっているように刺激的なお話だったと思うのですけれども、特に、この部会での議論の取りまとめに対しても大変有益な御示唆をいただいたと思います。
 久保田先生がこちらにアクセスしてくださる前に、これまでの中間取りまとめを踏まえて、資料でいうと1-2という形で、最終取りまとめのイメージ案を用意していたところなのですけれども、それを非常に進化させるような、そういうアイデアをたくさんいただいたと思います。そういう意味でも本当にありがとうございます。
 若松委員にお尋ねしたのと同じことをもう一度今度は久保田先生にもお尋ねしたいと思うのですが、久保田先生がおっしゃっていたミドルマン、先生の例でいうとスタートアップに相当するということでしたけれども、先生のプロジェクトにとってのミドルマンは、先生御自身がそういう立場に転身されたのでしょうか。それとも、別の方との出会いがあってそういうことに成功されたのでしょうか。
【久保田(琉球大学)】  このシンクネイチャーという企業を立ち上げたのはもう3年前なのですね。なぜ起業をしたのかその理由ですね。
私は生物多様性の研究者で、生物多様性保全を推進したいということで論文を書いてきたわけです。ただ、論文を書くだけだと社会実装なんてとても無理だということを日に日に痛感して。例えば、いろいろな自治体の方とか企業の方とかと話していても、「研究者の人たちがやることだから」でなかなか響かないのですよね。我々が書いている論文の成果というのは、社会に使ってもらえるかどうか、という点に関しては実現性が全然ないと。であるならば、自分たちで起業して、自分たちの研究成果を売り込んでいくということをやらないと駄目だなということで、それを始めたのが3年前でした。
 いろいろな企業や自治体に説明に赴きました。「科学的知見に基づいた形での生物多様性の保全事業やりませんか」みたいなことを述べて、少ないながらも一緒にやってくれる企業さん、自治体さんなどもあってやってきたのですね。
 それで3年たって、去年の年末にまた気づきがありました。「でも小さいスケールでこれをやっていてもやっぱり埒が明かないな」と、「ネーチャーポジティブとか言っていてこの10年でネーチャーポジティブなんて絶対このレベルでやっていたら無理だ」ということも痛感するようになりました。それでいろいろな方に相談したのですが、「それはやっぱり外部資本を入れてスケールさせないと」ということを言われたのですね。
 それまでは外部資本を入れるというのはすごく抵抗があったのですね。でも「生物多様性市場というある程度の大きな市場をつくらないと、この10年でネーチャーポジティブは絶対達成できない」というふうに思うところがあったので、であるならばもう外部資本を入れてスケールさせて、生物多様性市場を創出するスタートアップにするしかないと考えるに至ったのが、今年になってからですね。「もうここまで来たら生物多様性市場をつくるための人柱になってやろう」みたいなふうに考えています。
 さらに言うと、私たちが属している学問領域の生態学の分野というのは、キャリアパスがほとんどないのですね。研究者以外は就職先がないのです。もしうまく生物多様性市場をつくれたら、これは生態学分野の若い人たちが就職できる職業領域もつくれると思っていて、これは人柱になってでもやる価値はすごくあるだろうと。この10年でネーチャーポジティブを実現する過程で生物多様性市場をつくれれば、若い人たちの未来も広がってくるということで、私としては腹をくくってもやろうとしているところです。
【春日部会長】  すばらしい御覚悟をお持ちだということが分かりました。人柱というよりも、もう本当に旗を振ってくださる方というふうに感じます。
 ここまで、若松委員、そして久保田先生から、大変有益な話題提供いただきました。また、活発な御議論をありがとうございました。
 本日のこの審議を踏まえて、最終取りまとめの構築に生かしていきたいと思います。
 本日、あと二つ議題があります。
 それでは次に、地球観測に関する政府間会合(GEO)次期戦略の検討について、こちら、また久芳推進官からでしょうか。状況報告をお願いしたいと思います。
【久芳環境科学技術推進官】  長時間にわたりまして、ありがとうございます。
 では資料3につきまして、御説明させていただきます。GEOの次期戦略ミッション策定に向けた検討についての経過等の報告でございます。
 では次のページをお願いします。GEOの次期戦略ミッション策定に向けた動きですが、2023年の閣僚級会合において戦略ミッションを策定し、その後戦略ミッション実現のための具体的取組の検討を行うという2段階のアプローチが現在採択されております。そのため戦略ミッションの文書の作成を担うポスト2025ワーキンググループというものが設置されておりまして、我が国からはJAXAの落合様に参画いただいております。
 では次のページお願いいたします。このポスト2025ワーキンググループでの検討状況ですが、当初想定していたスケジュールから遅れが見られております。現在中間まとめについての議論がなされている状況で、こちらの資料にその概要の速報を載せさせていただいております。
 読み上げますと、GEOの価値を政策決定者に届け、地球観測に係るバリューチェーンにおけるGEOの在り方を認識し、見直していくことが必要であるとの方向性が示されるとともに、GEOのビジョンは現在も有効であることを認識し、社会的、政策的インパクトの創出や民間・ファイナンス部門などを含む多様な地球観測のプレーヤーとユーザー――これはグローバル、リージョナル、ナショナル、ローカルの4段階にされています――の巻き込みが必要であること、また、GEOのミッションとして民間部門やファイナンス部門との連携――Public-Private Partnershipと言われております――によりユーザーに対して価値を提供するため最適なネットワークの確立の役割を担うことが重要であることが強調されております。
 では次のページをお願いいたします。ご説明したような形で中間まとめの議論がワーキンググループでなされているのですが、今後の予定として、来月1日からガーナで始まりますGEO Weekにて中間まとめの報告書が出されてくる予定でございます。この報告書を踏まえまして、第8回、第9回の部会にて状況を改めて御報告いたしまして、御意見を頂戴する流れを想定しております。
 なおポスト2025ワーキンググループは、先ほどのガーナのGEO Weekでの議論などを踏まえ、次期戦略ミッションの文書のドラフティングの作業を始める予定であるとも聞いております。このような状況も踏まえつつ、第10期の部会においても、継続してこの次期戦略ミッションについての議論、検討を進めていけたらと考えているところでございます。
 事務局からの説明は以上でございます。
【春日部会長】  推進官、ありがとうございました。
 この議題について、御質問等ございますか。ございませんか。
 では引き続きGEOについては、情報の共有をお願いしたいというふうに思います。
 それでは、次の議題に移ります。
 令和4年度の我が国における地球観測の実施計画について、こちらを毎年取りまとめてこの部会で共有していただいているのですけれども、今年度について、再び事務局から御説明お願いします。
【甲斐地球観測推進専門官】  はい。では、私甲斐のほうから、取りまとめた実施計画について御説明させていただきます。
 ただいま画面に映しておりますのが、今年度、令和4年度の我が国における地球観測の実施計画を取りまとめたものの表紙となっております。
 ページ数は77ページとなっておりまして、目次としてもこれくらいいろいろな項目がありますので、中身については概要のほうで説明をしていきたいと思います。
 この実施計画の取りまとめですけれども、地球観測の推進戦略が平成16年に制定されて、その後、今後10年の我が国の地球観測の実施方針がその後を引き継いだわけですけれども、その中で毎年策定するということになっておりまして、その流れで、毎年関係の府省庁に対して実施計画をお伺いして取りまとめを行っている次第となっております。
 こちらが実施計画の集計を行ったその概要でございます。(1)が全体の登録数となっておりまして、令和4年度は410件、うち再掲が260件ございました。
 ここで「再掲」と書いてございますのは、同じ取組というものが実施方針の項目で複数の項目に関係しているということで、何度か登場するということがありますので、既に別の実施方針の項目で既出である場合には再掲というふうになっております。以後の説明でも、再掲というものはこちらの意味になっております。
 2番目が、府省庁等別の登録件数です。各省庁で取り組んでいる数を、再掲を除いて記載いたしますとこのような数になっております。
 3番目は、観測、機器開発、データ利用研究、その他という項目ごとの数を集計したものになりまして、こちらは令和2年度から令和4年度までの3年間のものを並べた値となっております。
 次に、4番目にその観測手段がございまして、こちらも令和2年度から令和4年度までの3年間で並べて記載をしております。3年間でどれくらい取組の数に変化があったかというところを御覧いただければと思います。
 5番目、次のページが、実施方針の件数推移というところで、実施方針の項目に該当する件数がどれだけあるのかというところで、こちらは先ほどの再掲も含めた数になります。こちらは括弧の中が昨年度、令和3年度の実績となっておりまして、令和4年度と令和3年度の間でどれくらい変化があったのかというところを御覧いただければと思います。そこまで大きな変化はないのかなというところかと思います。
 次のページ、最後、6番目ですけれども、こちらが昨年度からSDGsに関連する施策があるかどうかというところを御回答いただくようになっておりまして、その中で、各関係府省庁から、施策ごとにSDGsの目標のどれに該当するのかというところを回答いただいたものを集計した数となっております。こちらも括弧の中が昨年度、令和3年度のものになっておりまして、令和4年と令和3年度の間で比較ができるようになっております。こちらに関しましては、先ほどの再掲は除いた形で件数を集計しているというところです。
 こちらも比較しますとそこまで大きな差はないのですけれども、最後のパートナーシップで目標を達成しようというところで、少し件数の増え方が大きいかなというところがございます。こちらに関しましては恐らく、SDGsの目標を検討した結果、このパートナーシップというところに該当するというふうに御判断いただいたものがちょっと増えたというところに起因するのかなと考えております。
 簡単ではありますけれども、集計の概要については以上になります。
 こちらの実施計画について、来年度に向けての御意見などございましたら頂戴できればと思いますので、何かあればお願いいたします。
【春日部会長】  甲斐さん、ありがとうございました。
 資料4-1は非常に大部のまとめになっていますけれども、毎年この部会で御報告いただいて、共有するということがこの部会の役割の一つになります。
 概要については資料4-2でまとめていただき今御説明いただいたところですけれども、この点について御質問や、それから、甲斐さんもおっしゃっていたように、来年度以降の実施に当たっての御意見等ございますでしょうか。
 三枝委員、お願いします。
【三枝委員】  個々の地球観測について、あるいはその取りまとめの方法についての意見ということではないのですけれども、今日の話題であれば、生態系の地球観測は非常に幅広いので、ゴールから見るとどういう視点になり得るかという話があったかと思います。SDGsの視点は長期的に非常に重要で、SDGsの指標を今まであまり整備されてなかった生態系分野でもつくっていきましょう、これも一つの重要な視点であると思います。
 そして私が今日どうしても、例えばこの委員会あるいは生態系分野の先生方とも共有したい、急ぎ日本のコミュニティーで取り組まなければいけない課題があると思っております。それは、2020年から始まっております気候変動対策の国際枠組みであるパリ協定の進捗確認を、日本から、これから5年ごとに出していく必要があるという取組です。
 これはグローバルストックテイクと呼ばれて、第1回は2023年でこれについては日本からは簡単な文書を既に出してあると思いますけれども、この後、5年ごとにパリ協定の目標達成に向けた、各国あるいは各国の持つ大きなプロジェクト等からの進捗確認を出していく必要があります。
 パリ協定の進捗確認というと温室効果ガスの削減がどこまで進んだかというところに注目されがちですけども、それだけではありません。気候変動の緩和と適応、実施手段と支援、支援には資金や技術移転、組織や人の能力構築も含まれます。そして必要に応じて、対応措置と、そしてロス・アンド・ダメージ(損失と損害)も評価するというところが含まれるので、極めて広い範囲を含むものであると聞いています。
 そしてCOP27の今回の主たるテーマの一つが気候変動の適応であると聞いておりまして、今日のテーマである生態系の活用というのはそこに深く関与してくるものであると思います。
 私からの説明は少し不十分だとは思いますが、これから5年ごとに日本としてパリ協定の目標達成に向けてどこまで何が進んでいるかを報告していくに当たり、生態系の分野でも地球観測をどのように最大限活用していくかということについての知見をまとめていくということが必要ではないかと思っております。こうしたことを今後の部会でも、少し視点に入れていただけたらと思っております。
 場合によっては、村岡委員が最初のほうに言われておりましたけれども、関連する関係府省庁が議論できるような場、村岡委員は連携拠点と呼ばれていたかと思いますけども、そういう場を持つことも必要かもしれませんと感じております。
 以上です。
【春日部会長】  三枝委員、ありがとうございました。
 もう時間になりましたが、資料1-2を最後に出していただけますか。ありがとうございます。
 ここの一番左の枠のところでグローバルストックテイク、論点例として既に挙がっていますが、三枝委員、今おっしゃったことを、簡単な文字にして事務局に送っていただけるでしょうか。それも含めて最終取りまとめに生かしたいというふうに思います。
 また、先ほども申し上げましたが、本日若松委員、そして久保田先生に御説明いただいた内容は、このイメージ図を一段と進化させるものになると思います。そういうことも含めて、この議題は御質問等ほかにないようですのでこちらで閉じたいというふうに思いますけれども、それも含めて次からの審議に生かしたいというふうに思います。
 ありがとうございます。資料ありがとうございました。
 本日予定されている議題は以上となったのですけれども、最後に委員の皆様から特にという御発言等ございますか。
【赤松委員】  すみません、赤松ですけれども、よろしいでしょうか。
【春日部会長】  どうぞ。
【赤松委員】  すみません。時間がない中申し訳ないのですが、手短に。
 昨年も御紹介差し上げたのですが、今年もG空間EXPOが開催される予定でして、その中で衛星データの利活用に関するシンポジウムを、日本写真測量学会とリモートセンシング学会、それから地理情報システム学会で共催して今年も開催いたします。
 その中身が実は、この部会で今テーマになっております自然資本・生物多様性に対する地球観測衛星の貢献ということで設定しておりまして、この部会でお話しいただいた方も講演者としてお呼びしてシンポジウムを開催する予定になっております。
 オンラインのオンデマンド配信ですので、皆様ぜひ御興味がありましたら聴講いただければと思います。12月1日から25日の予定でございます。また具体の内容が決まりましたら、文科省様を通じて御配信させていただきます。
【春日部会長】  そうですね。情報を事務局にいただければありがたいと思います。
【赤松委員】  そういうことで、事前情報ということでよろしくお願いいたします。
 以上でございます。ありがとうございました。
【春日部会長】  貴重な情報提供ありがとうございました。
 では、事務局から連絡事項お願いします。
【甲斐地球観測推進専門官】  ありがとうございます。
 それでは、事務局のほうから説明いたします。
 本日の議事録に関しましては、後日事務局よりメールで委員の皆様にお送りいたします。
 それで各委員の皆様に御確認いただいた後、文部科学省のホームページにて公表するという流れとなっております。
 また、次回の第8回は、今回の議題の中でもありましたけれども、御案内差し上げているとおり12月16日に開催いたします。詳細につきましては改めて御案内させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 事務局からの連絡事項に関しましては以上となります。
【春日部会長】  甲斐さん、ありがとうございました。
 改めまして、本日は、若松委員、そして久保田先生、大変お忙しいところ、示唆に富む有益な話題提供いただきましてありがとうございました。
 以上をもちまして、第9期地球観測推進部会の第7回会合を閉会いたします。
 本日はありがとうございました。
 
―― 了 ――

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