第9期地球観測推進部会(第2回) 議事録

1.日時

令和3年9月3日(金曜日)15時00分~17時00分

2.場所

オンライン開催

3.出席者

委員

春日部会長,小縣部会長代理,赤松委員,岩崎委員,岩谷委員,浦嶋委員,河野委員,川辺委員,三枝委員,嶋田委員,神成委員,中北委員,平林委員,堀委員,村岡委員,六川委員,若松委員

文部科学省

堀内研究開発局審議官,土居下環境エネルギー課長,服部環境科学技術推進官,橋本課長補佐,堀川地球観測推進専門官

4.議事録

【春日部会長】 ただいまより、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会、第9期地球観測推進部会の第2回会合を開催いたします。
本日はお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。
最初に、事務局に人事異動がありましたので御紹介いただき、続けて委員の皆様の出欠と資料の確認をお願いします。
また、本日もオンラインでの会議になりますので、進行に当たっての留意点など、事務局から併せて御説明をお願いしたいと思います。
【堀川地球観測推進専門官】 事務局から研究開発局の人事異動について御報告させていただきます。研究開発局環境科学技術推進官に服部が着任しております。服部推進官から御挨拶いたします。
服部推進官、お願いします。
【服部環境科学技術推進官】 御紹介ありがとうございます。私は環境科学技術推進官にこの8月に着任をいたしました服部と申します。よろしくお願いいたします。
最近の私のポジションは、内閣府に出向いたしまして、統合イノベーション戦略やバイオ戦略の策定を担当したり、直近では、高等教育局というところでデータサイエンス・AI教育の推進、大学教育のDXを担当しておりまして、今のポジションに来ております。
今回、地球観測を議題にする部会というふうに伺っておりますけれども、まさにデータサイエンス、AIの活用といったことが最近注目されつつあるところかと思いますので、そういったコミュニティーとの連携とかいったことも私自身尽力していきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
【堀川地球観測推進専門官】 ありがとうございました。
続きまして、出席確認ですが、通信状況の確認も兼ねて、委員の皆様を一人ずつお呼びいたします。御返答をお願いいたします。
春日部会長。
【春日部会長】 春日です。よろしくお願いします。
【堀川地球観測推進専門官】 よろしくお願いします。
続きまして、小縣部会長代理。
【小縣部会長代理】 小縣です。よろしくお願いします。
【堀川地球観測推進専門官】 よろしくお願いします。
続きまして、赤松委員。
【赤松委員】 赤松です。どうぞよろしくお願いいたします。
【堀川地球観測推進専門官】 よろしくお願いします。
続きまして、岩崎委員。いらっしゃいますでしょうか。
続きまして、岩谷委員。
【岩谷委員】 岩谷です。どうぞよろしくお願いします。
【堀川地球観測推進専門官】 よろしくお願いします。
続きまして、上田委員については、本日御欠席の御連絡をいただいております。
続きまして、浦島委員。いらっしゃいますでしょうか。
続きまして、蟹江委員については、本日御欠席の御連絡をいただいております。
続きまして、河野委員。
【河野委員】 河野です。よろしくお願いします。
【堀川地球観測推進専門官】 よろしくお願いします。
続きまして、川辺委員。
【川辺委員】 川辺でございます。よろしくお願いいたします。
【堀川地球観測推進専門官】 よろしくお願いします。
続きまして、三枝委員。
【三枝委員】 三枝です。よろしくお願いいたします。
【堀川地球観測推進専門官】 よろしくお願いします。
続きまして、佐藤委員については、本日御欠席の御連絡をいただいております。
続きまして、嶋田委員。
【嶋田委員】 嶋田です。よろしくお願いいたします。
【堀川地球観測推進専門官】 よろしくお願いします。
続きまして、神成委員は、本日、5分か10分程度遅れるかもしれない旨の御連絡をいただいておりますので、後ほど出席の状況について確認させていただければと思います。
続きまして、中北委員。
【中北委員】 中北です。どうぞよろしくお願いいたします。
【堀川地球観測推進専門官】 よろしくお願いします。
続きまして、平林委員。
【平林委員】 JAXAの平林でございます。よろしくお願いいたします。
【堀川地球観測推進専門官】 よろしくお願いします。
続きまして、堀委員。いらっしゃいますでしょうか。堀委員は接続はされていますが、通信状況が悪いかもしれませんので、後ほど再確認をさせていただきます。
続きまして、村岡委員。
【村岡委員】 村岡です。よろしくお願いします。
【堀川地球観測推進専門官】 よろしくお願いします。
続きまして、六川委員。
【六川委員】 六川でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【堀川地球観測推進専門官】 よろしくお願いします。
続きまして、若松委員。
【若松委員】 若松です。よろしくお願いいたします。
【堀川地球観測推進専門官】 よろしくお願いします。
先ほど御返答いただけなかった方々に再度確認させていただきますが、浦嶋委員、いらっしゃいますか。
【浦嶋委員】 入室に大変手間取ってしまいました。よろしくお願いします。
【堀川地球観測推進専門官】 よろしくお願いします。
続いて、神成委員、いらっしゃいますか。
【神成委員】 神成です。よろしくお願いいたします。
【堀川地球観測推進専門官】 よろしくお願いします。
続いて、堀委員、いらっしゃいますか。接続はされているようですので、また別のタイミングがあれば確認をさせていただければと思います。
岩崎委員については接続できない状態との連絡がございました。接続ができ次第、ご出席いただく予定です。
それでは、確認を終わります。
本日、本部会に、オブザーバーとしまして科学技術・イノベーション推進事務局の内閣府辻原参事官にも御参加いただいております。
本日の委員出席数は過半数(11名)に達しておりますので、部会は成立となります。
本部会は部会運営規則により公開させていただきます。
次に、資料の確認です。配付資料については、昨日、各委員に御連絡いたしました資料送付と接続先に関するメールにて、資料掲載ページのURLを御連絡しております。メールが不着の場合は、改めて事務局よりメールをお送りいたしますので、事務局までお申しつけください。
配付資料については、資料1-1令和3年度「我が国における地球観測の実施計画」(案)、資料1-2令和3年度「我が国における地球観測の実施計画」(案)集計概要、資料2-1、海洋研究開発機構におけるSDGsへの取り組み、資料2-2JAXAの地球観測分野におけるSDGs取組み、資料2-3国立環境研究所における持続可能な開発目標(SDGs)への貢献およびグローバル指標に関する研究について、資料3今後のスケジュールとなります。
続きまして、部会の進め方について御説明いたします。本日はオンラインでの会議となります。ウェブ環境の安定のため、御発言されていないときには、音声と画像をオフにしていただきますようお願いいたします。御発言される場合は、挙手ボタンを押していただきまして、部会長もしくは事務局から指名いたしますので、御発言の際に画像をオンにしていただきますようお願いいたします。指名順は挙手した順ではない場合もございますが、御了承ください。
挙手ボタンの使用方法について御説明いたします。まず、画面中央下部を御覧いただきますと、丸形のボタンが並んでおります。その丸形ボタンの中に、人の形が描かれた参加者ボタンがございまして、参加者ボタンをクリックしていただきますと、画面右側に参加者のリストが表示されます。参加者リストが表示された枠の下のほうに手の形をしたボタンがございます。このボタンが挙手ボタンとなります。御発言される際には、この挙手ボタンをクリックしていただきまして、御発言が終わりましたら、再度、挙手ボタンをクリックして、挙手を解除していただきますようお願いいたします。
また、御発言の際は、お名前を言ってから発言をお願いいたします。
なお、パソコンの環境によっては、挙手ボタンの表示場所が異なることがございます。挙手ボタンが見つからない場合は、直接御発言いただければと思います。
最後に、傍聴者の方へのお願いとなります。本日はオンラインでの開催となっております。万が一、システムトラブル等で傍聴不可となった場合に関しては、後日公開する議事録を御確認いただきますようお願いいたします。
【春日部会長】 堀川専門官、ありがとうございました。
それでは、まず、議題1「我が国の地球観測の実施計画」の取りまとめについて、こちらになります。事務局から再びの御説明となりますけれども、この実施計画の位置づけも含めて御説明をお願いしたいと思います。
堀川専門官、お願いします。
【堀川地球観測推進専門官】 それでは、議題1について御説明いたします。
初めに、今期より新たに就任された委員の方々もいらっしゃいますので、「我が国における地球観測の実施計画」について御説明いたします。
平成16年、総合科学技術会議、現在の総合科学技術・イノベーション会議でございますが、こちらで「地球観測の推進戦略」が取りまとめられまして、推進戦略の策定後10年を迎えた平成27年に、今後10年程度を目途とした「今後10年の我が国の地球観測の実施方針」が策定されました。この実施方針では、課題解決型の地球観測に向けて、地球観測が貢献すべき課題が抽出され、必要な観測内容が示されました。
そして、第6期地球観測推進部会において、我が国全体で効率的かつ効果的に地球観測を推進することを目指し、今後、我が国が新たに必要とする地球観測の内容を俯瞰できるような形で実施計画を作成することとなった経緯がございます。
これを受けまして、毎年、関係府省庁に対して、実施方針に基づく実施計画の提出を依頼しておりまして、資料1-1の形で整理をしているものでございます。
以上が本実施計画作成の背景の説明となります。
それでは、資料1-1を各自御覧ください。本資料は、関係省庁に対して令和3年度の実施計画内容で更新をお願いしておりまして、取りまとめたものでございます。
表の中の黄色で塗り潰されている枠に関しては、昨年度から変更があった箇所となりまして、1行全てが黄色で塗り潰された箇所に関しましては、今年度新たに追加された取組となっております。また、灰色で塗り潰してある箇所については、今年度削除された項目となっております。
なお、今年度の実施計画には、SDGsに関連する施策であるかをマルとバツで示しておりまして、SDGsに関する施策である場合は、その関連する目標の番号も併せて記載しております。複数の目標にまたがる場合は、複数の目標番号を記載する形になっております。
資料1-1の実施計画(案)に関しましては分量がございますので、資料1-2の集計概要で御説明いたします。
それでは、資料1-2の集計概要を御覧ください。
(1)には、総登録件数を記載しております。令和3年度の総登録件数は408件でございまして、そのうち再掲が260件となっております。再掲は、実施方針の複数の項目に貢献する観測事業となっております。昨年度の総登録件数に関しては428件、再掲が272件となっておりまして、昨年度から登録件数は減少しているという状況になっております。
(2)は、省庁等別の登録数をお示ししたものでございます。
次に、(3)につきましては、令和元年度から令和3年度まで、3年間の登録数の推移をまとめております。再掲を除くものについて、項目の種別ごとの推移も記載しております。推移を御覧いただきますと、再掲を含む登録件数は昨年度から20件減少しておりますが、観測や機器開発などの項目の件数は昨年度と同程度となっております。
(4)につきましては、観測手段として、衛星、地上、船舶、航空機及びその他に分けて推移をまとめているところでございます。
なお、(4)でお示ししました登録件数には再掲は含まれておりません。
観測手段ごとに見てみますと、登録件数としては全体的に昨年度と同程度となっておりますが、その他の項目については8件の増加、1.5倍ぐらいの増加となっております。この内訳につきましては、3件の新規登録が林野庁からございましたが、残り5件分に関しては特別な何か傾向を示すものではなく、各省庁から施策内の方針によりそれぞれ増加したものでございます。
次に、2ページ目を御覧ください。
(5)につきましては、実施方針の項目ごとの観測事業の件数をお示ししております。ここにお示ししました件数には再掲が含まれておりまして、括弧内は前年度の件数となっております。前年度の登録件数と比較しても、(1)から(4)の項目と同様に、前年度と同程度もしくは微減という形になっております。
(6)につきましては、SDGsに関連する施策について示しております。総登録件数は325件で、そのうち再掲が217件となっております。その下に、17の目標ごとに登録件数を示しております。1事業で複数の目標がある場合は、それぞれの目標で計上しているという形になっております。
登録されたSDGsの施策のうち、件数が最も多い目標は目標13の「気候変動に具体的な対策を」の83件となっておりまして、次に件数の多い目標は11の「住み続けられるまちづくりを」の41件、目標14の「海の豊かさを守ろう」の28件、目標15の「陸の豊かさも守ろう」の25件です。この四つの目標で、目標1から目標17まで足し合わせた件数の約75%を占めております。
今回の実施計画で記載されましたSDGsの関連施策と目標の内容につきましては、今後の地球観測データによるSDGs等への貢献の取りまとめに向けたエビデンスデータとして活用していくなどしてまいります。
集計概要としては以上となります。集計結果としては前年度と同程度でありまして、傾向としては大きな変化はございませんが、気になる点がございましたら、引き続き調査を行いまして、改めて御報告いたします。
議題1の説明は以上となります。
【春日部会長】 御説明ありがとうございました。
この実施計画の位置づけ、どうして始まったかということとどういうものかということ、それから各省庁において非常に多くの地球観測が業務としてなされているということがお分かりいただけたと思います。この資料1-1については、SDGsに関する項目は今年から加わったということです。それから、毎年、これは調査が入る項目になるということですね。
【堀川地球観測推進専門官】 はい、その予定で検討しています。
【春日部会長】 ありがとうございました。
それでは、皆様、御質問、御意見等はございますか。
赤松委員、お願いいたします。
【赤松委員】 早速、御質問させていただきたいと思うのですが、今のSDGsの項目の一覧の中で、気候変動が多いのは予測できたのですけれども、まちづくりが実は2番目に多いというのに気がつきました。私、前回のときに蟹江先生と「まちづくりで地球観測ってなかなか難しいですよね」というふうな話をしていたのですが、実はこれだけ既になされていることにちょっと驚いたこともあって、実際にどのようなことをなさっているかを、もし教えていただけるのであれば、お願いしたいと思います。
【春日部会長】 ありがとうございます。
これは災害に関係するという点でしょうか。説明をお願いします。
【堀川地球観測推進専門官】 この41件の内訳は、環境省が5件、経済産業省が2件、国土交通省が1件、文部科学省の分に関しては23件、総務省が9件、農林水産省が1件となっています。割合としては、文部科学省のものが非常に多く含まれております。このうち海洋研究開発機構のものが7件、JAXAは8件、防災科研は6件となっており、それぞれ衛星データを使った火山や地殻変動のモニタリングなどの内容のものが多くを占めているという状況になっておりました。
【赤松委員】 例えば、対象は防災とかそういう関係が多いのでしょうか。
【堀川地球観測推進専門官】 火山や地殻変動の観測など、モニタリング関連が多く含まれております。
【赤松委員】 なるほど。防災関係がまちづくりの中に入っているという理解でよいでしょうか。
【堀川地球観測推進専門官】 はい、そのような傾向がございます。
【赤松委員】 了解いたしました。一つの在り方として、防災がSDGsのまちづくりの中で位置づけられているということが理解できました。ありがとうございました。
【春日部会長】 ありがとうございます。
中北委員、お願いします。
【中北委員】 同じくSDGsの項目のところで件数が一番多い、気候変動の具体的な対策という13番ですけれども、緩和とか、あるいは色々な海面水温とかCO2濃度の監視とかいろんな現状の監視があると思うのですけど、緩和と適応という両輪でイメージしたときに、適応というようなものは目指しているのでしょうか。これからの適応と、多分この衛星観測を含めて、これからいろいろ新しい活動を考えていくべきときにあるとイメージしているのですけど、その中で、今、適応的なやつはどんなものがありますか。あればですね。それをちょっと聞いていいですか。
【堀川地球観測推進専門官】 この83件の内訳、具体的なものを全て把握できていないところではあるのですけれども、適応の部分を含めたものも中に含まれておりますので、こちらの中を1度整理して、別途、御報告させていただければと思います。
【中北委員】 ありがとうございます。今申し上げた監視、緩和、適応といったときに、適応がだんだん重きをなしてくるかどうかということを見ることができたらと思いましたので。分類した数でも結構です。また教えてほしいです。
【堀川地球観測推進専門官】 承知いたしました。
【中北委員】 どうもありがとうございました。
【春日部会長】 ありがとうございます。ただいまの御質問について、どなたか委員の中で情報を持っていらっしゃる方がいらっしゃいましたら、共有していただけるかと思うのですが、細かい数字までは御存じでなくても、適応に関してこんなものがあるはずだとか、そういう情報をお持ちの方はいらっしゃらないでしょうか。
【三枝委員】 国立環境研究所の三枝です。
御存じのとおり、国立環境研究所に気候変動適応センターが2018年にできまして、様々なデータを収集しています。特に、日本におけるA-PLAT(Adaptation Platform)やアジアにおけるプラットフォームを出しておりますので、そこに様々なデータがあるのですけれども、今回の地球観測というデータの収集においては、これまでのイメージとしまして、何かの連続観測手法で捉えられるものという意識で集めたので、今回の調査にあまり入っていないかもしれないのですが、何らかの方法でその情報をうまくこちらにつなげる工夫をすれば、系統的に出てくるのではないかと考えます。例えば、バイオマスとか海面水温とかいえば、物理量で出てくるのですが、適応のデータといったときに、何を今回の収集に入れられるのかというところに、少し情報の変換といいますか、情報収集の仕方において一工夫があると、大変情報が増えるように思いました。
明快な答えになっておりませんで、すみません。以上です。
【春日部会長】 三枝委員、どうもありがとうございました。
【中北委員】 中北です。ありがとうございました。
適応センターでいろいろ関連していくというのもよく分かります。文科省の気候変動のプログラムそのものでも、今後、地球観測とのタイアップで進んでいくということで、私たちは、どちらかというと、今まで防災のハザードで影響評価をやってきていますけど、今後、適応がより大事になるということで、そのときに、こういう観測と適応をどう結びつけるかということを考えています。今三枝委員がおっしゃったように、何を通して適応が進んでいると見るかという、そこにはもう一変換が結構大事になってくるだろうと今お伺いしていて思いました。そういう意味でも、またこの関係のところでもこういう議論を進めていただければいいかなと思いました。どうもありがとうございました。
【春日部会長】 大変重要な視点から御議論いただきまして、ありがとうございました。
では、小縣部会長代理、お願いいたします。
【小縣部会長代理】 小縣でございます。今年から、本部会に参加させていただいております。ありがとうございます。
先ほどの一覧の中でも、共通的・基盤的な取組みというのがあって、大変関心があります。観測データのアーカイブ、それはそれとして、データの統合化、利活用の促進がありますし、プラットフォームの構築もあると思いますが、それらの方向感、それからスケジュール感、あと利活用利用について、お伺いしたいと思います。例えば、前回も御議論がございましたけど、私どもは、膨大なインフラを所有し、防災計画をしているのですけれども、様々なデータを利用してまいりたいというような、公共交通かつ民間企業です。データ利活用の方向性について、教えていただくとありがたいです。
【春日部会長】 ありがとうございます。
事務局から御説明いただけますか。
【堀川地球観測推進専門官】 今回、観測データのアーカイブとデータの統合化、利活用の促進に該当するものとして各省庁から12件登録されたというところで登録件数の報告をさせていただいておりますが、実際に登録されている施策については、それぞれ各省庁で取り組まれているものでございまして、個別具体的な内容やスケジュール感といったものに関しては、1度事務局で確認をして、別途、御報告をさせていただければと考えております。
【小縣部会長代理】 ありがとうございます。
ただ、やはりプラットフォーム的なものを想像するのですけれども、そうなってきますと、取りまとめを強力にしなければいけないと思います。その辺の方向性としては、今言われた関係各省庁、数が多いわけですが、究極は日本のためにということで、プラットフォームのようなものをつくって利活用をしやすくするということでよろしいのでしょうか。
【服部環境科学技術推進官】 環境エネルギー課の服部でございます。今の御質問についてお答え申し上げます。
今、政府全体といたしまして、科学技術イノベーション政策の文脈の中では、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)というプログラムが立ち上がっておりまして、そこの中でSociety5.0という、まさにおっしゃったとおり、官民でのデータ連携によるサイバーフィジカルな社会の実現に向けた、様々なプルーフ・オブ・コンセプトのようなプロジェクトが走っております。その中には、例えば、神成委員も関わられているバイオ農業もありますし、物流、自動運転、防災など様々なプロジェクトが走っておりまして、そういった実証を通じて、どのようなデータ連携の基盤があれば持続可能なSociety 5.0を実現できるのか研究開発が進められています。当方の地球観測の文脈でいえば、DIASと防災との連携といったことが進みつつあるというのは御案内のとおりだと思います。そういった形の様々なケースを積み上げていきながら、政府全体のデータ連携基盤、国のインフラとしてのデータ連携基盤の形といったものを今模索している状況でございます。
【春日部会長】 服部推進官、御説明ありがとうございました。
では、小縣委員、よろしいでしょうか。
【小縣部会長代理】 はい、ありがとうございました。ぜひ強力なプラットフォームをつくっていただいて、国全体としてのインフラになるようにお願いいたします。
【春日部会長】 そうですね。
では、議題2に移らせていただきたいと思います。議題2は、SDGs等へ貢献可能な取組についてです。
前回、第1回の地球観測推進部会で、第9期の地球観測推進部会の進め方について御承認いただきました。これに基づきまして、本日からSDGs等へ貢献可能な取組についてヒアリングを何度か進めていきたいと思います。その1回目としまして、本日はJAMSTEC、JAXA、国立環境研での取組状況、関連動向について御報告いただき、皆様と意見交換を行いたいと思います。
河野委員、平林委員、三枝委員からそれぞれ御報告いただきます。時間はお一人15分程度でお願いいたします。御報告の後にそれぞれ10分間の質疑応答を設け、3人の御報告後に10分程度の総合的な意見交換の場を設けたいと思いますので、活発な御議論をお願いいたします。
それでは、河野委員、お願いいたします。
【河野委員】 海洋研究開発機構の河野です。
当機構のSDGsへの取組について御説明をいたしたいと思います。
当機構では、実は、海洋のみならず、あるいは気候変動のみならず、様々な分野でSDGsに貢献するような研究をしております。中には必ずしも地球観測と直結しないものもございますが、JAMSTECとしては、様々な研究開発を通じてSDGsに貢献するというのが立場でございます。
例えば、すべての人に健康と福祉をということでありますと、海洋の中のRNAウイルス検出技術の開発でありますとか、気候変動予測データを使ってマラリアの発生予測をするといったような研究もしております。
そのほか海底インフラの構築、あるいは海底資源探査、それから地球シミュレータについては産業利用を促進するなど、産業と技術革新の基盤をつくるという面でも貢献をしていると自負しております。
先ほど話題になりましたまちづくりで、例えば、数値シミュレーションを使って、臨海都市の暑さ、こういったものの環境シミュレーションをするというようなこと、あるいは海洋地球インフォマティクスというプラットフォームをつくりまして情報基盤をつくるというようなこと、それから極端な気象現象の予測、あるいは水・人間環境の構築、そういったようなもので貢献するほか、このピンクのやつが観測ですけど、先ほど出ました海底火山の噴火、あるいは地震、津波、それから巨大地震、そういったもので、観測のほうは主に防災・減災に寄与するような研究ということで実施をしております。
気候変動についてです。これも先ほどの御質問の緩和と適応という観点でいうと、緩和というのは、二酸化炭素を出さない、温暖化の原因物質を出さない、あるいは出ているものを吸収するということになりますので、今、そういったことを直接という感じではなく、どちらかというと、緩和のために必要なデータを取っている、あるいは緩和のために必要な情報を出しているというようなところになろうかと思います。もちろん気候モデルの開発、応用、それから気象・気候変動予測、それからアンサンブルを使った短期の予測、あるいは海洋全体の熱の予測、そういったものを実施しております。海洋研究開発機構ですけど、実は陸域の研究もしていて、それは、環境変動予測に必要な特に重要な場所については、陸域であっても観測をする必要があるということです。
海洋についてです。さすがに海洋について項目が多くて、左上の薄いブルーで囲っているところは機器開発です。機器開発以外に、海洋の観測、地球観測の一部だと思っているのですけど、in situ観測としては、海洋プラスチック、生態系、二酸化炭素の吸収、あるいは海洋環境一般ということで、多くは全球の観測データを出す必要があることから、国際的な観測プログラムの一翼を担うというような形で貢献をしています。
特に、GOOSと呼ばれます海洋観測網については、JAMSTECは長年関与してきております。例えば、こちらにある図は、線が気候変動の予測、気候変動のモニターのための船舶による観測網の観測線です。ピンク色が縦横に走っていますが、こういった観測線を10年に1度ぐらい精密に観測して、その変化をモニターしていこうという計画が1990年頃から始まっていて、それに積極的に参加しています。
点の多くは、フロート観測という、この左上にありますが、アルゴフロートと呼ばれるもので、これは、海の中に投入すると、自動で1,000メートルまで沈んでそこを10日間漂った後、2,000メートルまで沈んで浮き上がってくると。浮き上がってくるときに水温や塩分を計測して、海面に出たところで衛星を通じてその水温と塩分のデータを送信するというもので、今、全世界に大体4,000個入っています。これを表層の主に温度や水循環の研究に使っているということで、日本はこの計画が始まったときからの主要貢献国でありまして、JAMSTECと気象庁が主たる貢献をしているということになります。
それから、ちょっと区別がつかないですが、例えば、インド洋のダイポールという気象現象や赤道域で発生するエルニーニョ、こういったものは係留系によるモニターが必要ですけれども、その観測のためのネットワークにも参画しているということです。
ただ、今これを御覧になって一目で分かるように、北極海というところは氷と海なわけですけれども、観測はきっとされているに違いありませんが、データがインビジブルなことが多く、今後はここでの観測の充実が求められているというふうに認識しております。さきに公表されたAR6のときの議論で、実は、ちょっと前に、ハイエイタスと呼ばれて、温暖化が停滞したことがあったのが御記憶にある方もいらっしゃると思います。あのとき、科学者の予測が外れているということが盛んに言われましたけれども、今回、これまでなかった北極域のデータをきちんと考慮すれば、ちゃんと説明可能なものであったということが分かったということもありますので、こういった観測の空白域、データの空白域をなくすということが、一つの非常に重要な今後の我々の貢献の仕方だというふうに考えています。
もう一つは、実はこれがきっと緩和策に貢献するでしょうが、研究船はどうしようもないですけれども、なるべく再生可能エネルギーを使った観測をするということで、少しでも二酸化炭素の排出を抑えていくような観測手法も今後は考えていかなければいけないのかなというふうに考えています。
こちらの写真は、波と太陽電池で観測を実施できるWave Gliderと風と太陽電池で観測が実施できるSaildroneという装置で、こういうものを使うと、例えば右下にあります係留ですね、こういうものに取って代われるかもしれないということで、そういった開発を進めているところです。
SDGの指標と定義です。私たちは、SDGの指標を1機関で全て賄えるようなデータとして提供することはできませんけれども、一番関係が深い海について見てみますと、このピンクのところは、実は指標の定義がなくてやりようがないというところで、真ん中の赤いところは、観測値をそのままある程度指標化できるというものです。
例えば、14.1.1ですと、沿岸の富栄養化の指標あるいはプラスチックごみの密度ですので、これらは観測値を平均するとか、特定の場所を設定してそこをモニターすることで指標にできるはずですけど、まだ定義がなされていません。これはもうちょっと議論すれば何とかなるのではないかと思っているところですが、なぜ進まないのか私には理解ができていないところです。プラスチックごみのほうは、観測が大変なので、観測値を平均して指標にしようと言われても、対応が難しいから工夫が必要という状況になるかと思います。
それから、14.3.1の海洋酸性化は、非常にうまくいっているグローバル指標の例だと思います。代表的な抽出地点を各国で定義して、そこでの海洋酸性度の平均値を出す形にしています。日本では気象庁が一手に引き受けておりまして、気象庁は東経137度線という観測線の、長期間にわたる、本当に財産と言えるような観測データを持っておりまして、この中からpHの値を平均して提出しているということになります。
それから、14.5.1の保護領域の範囲です。これは面積ではありますけれども、生物多様性の観点から重要度の高い海域を観測によって確認して設定するということで、少し観測と関係があるというふうに考えています。
ここの指標は、観測値をそのままダイレクトに使えないということで、それでもまだ幾つか定義がなされていないものがあるので、例えば気候変動に比べると、少し難しいかもしれないですね。
比較的うまくいっている例として、海洋酸性化を挙げさせていただきます。グローバル指標は、承認された代表標本抽出地点で測定された海洋酸性度(pH)の平均値ということになって、日本では、この折れ線グラフのように、東経137度における平均pHの時間変化を提出しております。過去10年分ぐらいあって、pHが下がるというのが酸性化ですけれども、徐々に酸性化している様子が分かるかと思います。
海洋酸性化は、炭素循環の研究の一環として古くから行われているので、結構データがあることから、この指標は比較的いろんなところから集まっています。この右の図、IPCCのAR6の図5.20ですけれども、こういったように各国から集まっていて、どこの海域でもおおむね酸性化を示していて、10年間でpHにして0.05ぐらいの酸性化を示しているということです。このグローバル指標は、一目で酸性化の進行が分かるよい例だと思います。
反対に、うまくいってない例が海洋汚染です。このうち、例えばプラスチックごみの密度ですけれども、プラスチックごみの場合、非常に分析が難しいこと、それから比較的最近になって注目が集まったことから、観測データがさほどありません。しかも、グローバルに一括して計測する方法もなく、今のところ、船で行って、ネットで集めて、目で見て数を数えるという方法です。今のところ、全世界でこれしかデータがないので、分布そのものもさることながら、変化は分かりようがないというところが問題なのかもしれません。観測手法が専門的で労働集約型なので、データを取るためだけに非常に多くの人手が必要ということになります。そのために、全球プラスチックモニタリングネットワークといって、各国があるデータを全部共有するようなシステムの構築が急務ということになります。
先ほどの小縣委員の御質問にもありましたが、この部会では、古くからDIASというものを非常に重視して大切に育ててきておりますので、SDGs、地球観測といっても、特にDIASのように、それを利用していただくためのプラットフォームの充実についてはしっかりと視野に入れて、何らかの政策文書を書くのであれば、そういうところに含めていくべきだというふうに考えています。
JAMSTECでは、オンラインプラットフォームとしていろんな海洋情報を発信するページ、あるいは海洋生物の多様性を示すようなBISMaLと呼ばれるデータセットの公開ページ、それから先ほどのプラスチック、そのうちの深海にたまっているようなもののデータベースなどを公開しているところです。
実は、DIASに力を入れるべきだと言ったのは、JAMSTECが受託したからというわけでは必ずしもないですが、今年度からJAMSTECがDIASの運用を受託しましたので、JAMSTECが持つ地球シミュレータとうまく組み合わせることで、地球観測データを付加価値のついた役に立つデータに変えていこうともくろんでいるということです。
実は、今、国連海洋科学の10年というのが始まっています。2021年から10年間です。私たちが10年後に望む海というのが左側に書いてあるのですが、こういったものを実現するための10の挑戦課題があって、このうち赤い丸がついているものが地球観測に関わるものであります。この国連海洋科学の10年はSDGsに貢献することを目指しているということでありまして、地球観測は海洋の分野では今非常に重視されているということです。
右下の青い四角で囲ったのがリテラシーの向上ということで、次のページ、これが最後だと思います。実は、地球観測もそうですし、気候変動その他もそうですけれども、理系のこういった学問、分野に来てくださる若い人は年々減っていくわけで、一般市民の方の協力を得るということやそういった研究者を育成するという意味で、アウトリーチあるいはリテラシーの向上が非常に大事だと考えています。ちょうど国連海洋科学の10年も始まったことですので、JAMSTECとしては、リテラシーの向上や若手研究者の育成、例えば、実際、大学生にしんかい6500に乗っていただいて、ちゃんとテーマを与えて、研究者の一員となっていただくというようなことを実施しているところです。
以上です。
【春日部会長】 河野委員、大変幅広い分野についての御説明をありがとうございました。DIASについても、先ほどの議論にありましたが、プラットフォームの非常に優れた例としてはっきりと御提示いただきまして、ありがとうございました。
では、河野委員の御説明に対して、御質問やコメント等はございますか。
岩谷委員、お願いいたします。
【岩谷委員】 河野委員、ありがとうございました。貴重なお話を伺いました。ありがとうございます。
感想から言いますと、JAMSTECさんは非常に広範囲というか、様々な観測……。
(通信トラブル)
【岩谷委員】 観測の空白地域を埋めるために、新たな観測をする必要があるというお話があったのですけれども、そういう新しい観測が増える中で、従来の観測を続けていくと、どんどん予算が増えていかざるを得なくなっていくのですが、JAMSTECさんでは、従来の観測のうちのどれを残していくのか……。
【春日部会長】 ちょっと通信状況が不安定のようですが、今後、どう取捨選択していくかということでしょうか。
【岩谷委員】 そうですね、新しい観測と従来型の観測を継続する難しさといいますか、そういう評価の仕方はどう工夫されているのかというところです。
もう一点は、長期の観測を続けるというのは国民の理解がすごく必要だと思うので、その辺、どうアピールをしていくのかというところを伺えればと思います。
【春日部会長】 ありがとうございます。
続いて浦嶋委員からも御質問をお受けして、まとめて河野委員からお答えいただけますか。
浦嶋委員、よろしいでしょうか。
【浦嶋委員】 浦嶋です。
すみません、私は門外漢なので、基本的なところから教えてください。DIASですが、先ほどJAMSTECの河野委員がお話しされたいろんなデータは、すごく面白そうだなというか、それをどうやってビジネス利用していくのかというところを、民間企業出身の、我々のような会社の人間は考えたいと思っているのですけど、いろいろと説明されたいろんなデータは既に公開されているのか、例えばDIASみたいなプラットフォームに載っていて、取ろうと思えば取れるデータなのかということ、あとDIASとかそういったデータが公開されているとして、そのデータは、お金を払って企業が活用するという仕組みが出来上がっているのか、今出来上がりつつあるのか、そういったステータス、すみません、皆さんにとっては当たり前の話なのかもしれないですけど、素人的な質問で申し訳ないですが、御教示いただければ幸いです。
【春日部会長】 お二人から御質問、ありがとうございました。
では、河野委員、順番にお答えいただけるでしょうか。
【河野委員】 まず、空白地帯を埋めるために新たなものをやろうとすると、お金が増える一方で、どういうふうにスクラップ・アンド・ビルドしているのかという御質問かと思います。すばらしいアイデアはなくて、基本的な方針として、船舶を使った観測は船舶でしかできない観測にする、それ以外は全て自動化の方向へ持っていくという大方針の下にやっています。それが1点です。
もう一つは、率直に言って、例えば、赤道域のエルニーニョ観測のための係留系というのを長くやってきていましたけれども、学問が進み、かつ衛星などのデータも取れるようになり、いろいろなことが分かってきたので、太平洋の西側についてはこれ以上同じことを続ける必要がないだろうということを、5年ぐらいかけて国際的な合意を取って、それからやめるというようなこと、当たり前ですけど、少しやらなくてよくなったようなものはやらない、それから基本的に、モニター観測で本当に重要なものは、気象庁と手を携えながらやっていくというようなことを考えています。基本的には、現業機関ではなくて研究機関ですので、研究のめどが立ったところから少しずつ減らしていくというようなことが大方針です。
今回の場合に限って言いますと、北極域の観測を増やすためには、砕氷船を造らないとどうしようもないということですので、昨今話題になっている砕氷船の建造に着手したということであります。
もう一つは、長期の観測を続けることのアピールですけど、これは本当にこの部会でも何回も話題になっていて、今のような、温暖化みたいな現象を扱うためには、本当に長期のデータが必要で、1回の観測からどんなことが分かったのか、費用対効果はどうなんだと言われると非常に困るわけです。それについての回答は私たちも持っていません。ただひたすらどれだけ重要で、どれだけ役に立っている……、例えば、アメリカがやったように、この観測によってこういうことが分かるようになって、もし何も知らずに台風の被害を受けたらこんな額になるというような試算を見せる。これはアメリカが見せているのを流用するわけですけど、そういった地道な努力を続けるしかありません。ただ、今の国連海洋科学の10年の中で、リテラシーの向上、教育が非常に重視されていることから、こういった枠組みを使って皆さんの理解を得ていくことを工夫しようと考えております。
それから、DIASに関しましては、今私がしゃべったデータ全てがDIASに入っているわけではございませんが、多くの海洋観測のデータ、あるいはIPCCに出しているような地球温暖化予測のデータはDIASの中に実装されておりますし、各研究機関が持っているデータのカタログ的な、ポータルサイト的な役割も果たしているので、かなりのデータがDIASの中に入っているはずです。ホームページを見ていただくと分かりますが、それぞれ利用主体分野ごとにきちんと整理されていて、たしかDIASは今のところ民間の利用にもお金を取っていないと思いますが、そういった仕組みになっています。それで、中には、少し解析もできるようになっているはずだと思います。ただ、今のところ、かなり陸域の防災のところに力が入っているので、JAMSTECが引き受けた後は、少し海洋気候にも手を広げていきたいと考えているところです。
以上です。
【春日部会長】 御説明ありがとうございました。
嶋田委員、少し時間が押していますので、短めに御質問いただけますか。
【嶋田委員】 嶋田でございます。
これは河野委員にお聞きするというよりは事務局側にお尋ねをしたいのですけれども。DIASについては、非常に重要なプラットフォームで、我々も多少は使わせていただいているのですけれども、基本的には、専門家、研究者のプラットフォームだと思うのですが、これをもっと一般の方々なども使えるようなオープンデータとして公開するような取組は文科省でもなされているのかどうかをちょっとお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【春日部会長】 こちらは服部推進官からお願いします。
【服部環境科学技術推進官】 御質問ありがとうございます。まだDIASについては、おっしゃったとおり、ある意味でいうとプロ向けの活動になっているというふうに認識をしております。具体的なユースケースをつくっていく必要があるというふうにも考えていますし、また環境省のほうでA-PLAT適応策のデータベースをつくっておられますので、そういったところとどのような連携を図っていけばいいのかということも踏まえながら、そういったことを考えるようなアクションを今後起こしていけたらいいと思っています。そのようなアクションを起こす上において、様々なサジェスチョンをこの地球観測推進部会の場でも今後御議論いただきたいと思っております。ぜひその点にもお力添えをいただければと思っておりますので、また御相談をさせていただければというふうに思っております。
【春日部会長】 ありがとうございました。
【嶋田委員】 ありがとうございました。
【河野委員】 すごく短くでいいので答えさせていただけますか。JAMSTECとしても、シーズ側、研究者側から、あんなことができるこんなことができると宣伝するのではなくて、ユーザー側が何を求めているかの調査をすることが今後必要になっていくというふうに考えていて、重要視しています。
以上です。
【春日部会長】 大変重要な視点だと思います。
また最後に総合討論をしますので、ぜひこの点を御議論いただければと思います。
それでは、次に、JAXAの平林委員から御報告をお願いしたいと思います。
平林委員、よろしくお願いいたします。
【平林委員】 よろしくお願いいたします。
それでは、JAXAの平林から、JAXAの地球観測分野におけるSDGsへの取組について説明させていただきます。
最初に、JAXA全体としての取組姿勢といたしまして、SDGsを世界の共通言語及びイノベーションの機会として活用し、様々なパートナーと連携しながら、安全で豊かな社会の実現に取り組んでおります。
次のページから、地球観測衛星による主な貢献につきまして、具体的な事例も含めつつ御紹介させていただければと思います。
まず、この図例は、地球観測衛星は宇宙から全球の大気、陸域、海域を観測することができます。具体的には、温室効果ガス、水循環、植生や森林の変化、雲やエアロゾル、海水温等々、地球環境に関わる様々な物理量を長期継続的に観測しております。また、これらの観測データにつきましては、高い透明性を担保する科学的根拠ともなります。このような特質を持った地球観測衛星によりまして、JAXAはSDGsをはじめパリ協定、仙台防災枠組といった世界共通の目標、グローバルアジェンダへの貢献を目指しているところであります。
この一覧表は、それぞれの地球観測衛星がSDGsのどのゴールに貢献するのかということを示したものであります。今後も、このSDGsへの貢献に向けまして、随時、発展、アップデートしていきたいと考えているところでございます。
次に、具体的な事例といたしまして幾つか御紹介させていただきたいと思います。
最初に、熱帯雨林を守る活動について御紹介いたします。SDGsのゴールといたしましては13、15、17、ターゲットとしては15.2の森林減少を阻止するといったようなところに貢献する取組となります。年間約600万ヘクタール、北海道の77%程度に相当する熱帯雨林が減少していると言われておりまして、雲があっても観測可能なレーダーセンサーを搭載した衛星観測によりまして、森林の変化を捉え、森林の違法伐採の取締りなどを森林管理に活用してもらうためのJICA-JAXA共同の事業であるJJ-FASTというものを進めております。現在、アマゾン地域など77か国を対象に、約1.5か月ごとに森林の変化を抽出しております。
それで、左側の真ん中の地図の黄色いポツポツで示した箇所が変化を捉えたところでありまして、赤い部分は最近1.5か月での最新の変化を表したものでございます。
それから、右側の写真は、違法伐採の取締りにこのJJ-FASTが活用された事例を示したものでございます。
JAXAにおきましては、上段の真ん中の図に示しておりますGSMaPと呼ばれる世界の降水量や干ばつの度合いをマップ上に示すシステムを開発運用しておりまして、現在、136の国と地域のユーザーに、気象監視、防災、農業など様々な分野で利用いただいております。
このスライドにおきましては、GSMaPの活用事例の一つといたしまして、地上データと統合して、下流地域の洪水を数日前に予測して避難情報を住民に発信するという、パキスタンをはじめとした国々での事例を御紹介しております。特に、下のほうに書かせていただきましたけれども、越境地域の水位等の情報共有が難しい国際河川では、衛星による全球降水データが有効となります。
SDGsといたしましては、ゴールの6、11など、ターゲットとしては、6.5の統合水資源管理、11.5の水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減といったところへの貢献を目指した取組となります。
次に、災害対応分野での利用事例を幾つか御紹介いたします。
災害対応の取組としては、先ほども話題になりました、ゴールの11番に貢献する取組であります。具体的には、衛星による観測情報を用いた火山監視、洪水状況の把握、土砂災害、地震災害の把握に加えまして、予防保全といたしまして堤防をはじめとしたインフラ変位監視にも使われております。
次に、国内外の宇宙機関、防災機関との連携という観点で、アジアの各国が有する衛星をアジア太平洋地域の自然災害の監視に活用することを目的といたしまして、JAXAが主導してまいりましたセンチネルアジアという国際プロジェクトがございます。日本のほかにインド、台湾、タイ、シンガポール、ベトナム、韓国、UAEの衛星がこの地域にあるセンチネルアジアというプロジェクトの中で活用されておりまして、現在まで約360の災害に対して緊急観測を行っております。
また、世界的な連携枠組みといたしましては、国際災害チャータというものもございまして、これにもJAXAは加盟、貢献をしております。
次に、センチネルアジアでの活用事例を御紹介いたします。このスライドで示しておりますのは、2018年7月にラオスにおきまして水力発電所ダム決壊による洪水災害が発生した際の活用事例でございます。この際にセンチネルアジアに対して緊急観測要請がなされまして、JAXAのだいち2号(ALOS-2)による観測を行い、その観測データを提供いたしました。その情報につきましては、現地での避難場所の設置先決定、救難支援物資の展開先決定に活用されたということでございます。
次のページは、昨年発生いたしましたモーリシャスの重油事故への観測協力について示したものでございます。下の画像の黒い部分が重油を示していまして、流出範囲の状況変化がお分かりいただけるかと思います。この情報につきましては、政府の国際緊急援助隊専門家チームに参加していた海上保安庁さんに提供するとともに、現地ではモーリシャス政府関係機関と共有され、防除計画の策定に活用されたとお聞きしております。
次に、衛星により大気汚染物質を監視して、健康被害の防止に貢献する取組について御紹介いたします。SDGsのゴールの3、すべての人に健康と福祉を、ターゲット3.9、大気汚染による死亡や疾病を減少させるに貢献することを目指した取組でございます。
JAXA、気象研、九州大学は、ひまわり8号の観測データを活用いたしまして、アジア・オセアニア地域の黄砂やPM2.5等の飛来予測の精度向上を図りまして、その画像とデータセットをJAXAひまわりモニターという形で公開しております。また、開発いたしました衛星推定アルゴリズムと同化システムにつきましては、気象庁さんに導入され、黄砂情報として運用がなされております。
次に、農業分野での事例を御紹介いたします。御案内のとおり、日本の食料需給率は40%程度でございまして、食料の多くを海外に依存している状況でございます。JAXAでは、衛星データを用いまして、世界の主要耕作地における土壌水分量、日射量、地表面温度、降水量など、農業に重要な気象情報を一元的に閲覧できます情報提供システム――JASMAIというものを開発いたしまして、その情報を農水省さんに提供することで、食料供給リスク分析に関わる情報収集や、農水省さんが毎月発行する海外食料需給レポートなどで活用されていまいりました。そして、このシステムにつきましては農水省さんに移管され、今年の1月から農水省さんでの公開が開始されたところでございます。
次も農業関連であります。東南アジアでの水稲作況の把握に、衛星で観測した降水量、土壌水分量、温度などの農業気象情報が使用されている例でございます。衛星で観測した農業気象情報は、ASEAN食料安全保障システムから毎月発行されております水稲作況レポートに活用されるとともに、G20のイニシアチブでありますGEOGLAMを通じて作況情報を提供中でございます。
次に、宇宙からの温室効果ガスの観測という観点での貢献について御紹介をいたします。
左側の図は、環境省とJAXA、国立環境研の共同プロジェクトでありますGOSAT(いぶき)が宇宙から観測した全球のCO2濃度の分布の推移を表したものでございまして、オレンジ色から赤になるほど濃度が高いことを示しております。
また、右側のグラフにつきましては、いぶきが観測したCO2の濃度の変化を表したものでございます。季節変動はございますけれども、トレンドとしては年々増加しておりまして、最新状況としては、2020年7月から2021年7月までの1年間で2.6ppm増えているということが観測されております。
また、一昨年、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の総会におきまして、温室効果ガスの排出量算定ガイドラインが改良されました。その中で、各国の排出量報告の精度向上に衛星データを活用することが初めて記載されまして、衛星観測の手法が世界標準に位置づけられるということになりました。いぶきシリーズで継続的に温室効果ガスを観測いたしまして、増加がこの後鈍ってくるのか、あるいはこのままのペースで増え続けていくのか監視を続け、パリ協定の実施状況を確認するグローバルストックテイクに貢献できるように、国内外の関係機関と連携して取り組んでいるところでございます。
次は、少しグローバルストックについて書いたページでございます。パリ協定の目的や目標に対して、国際社会全体の進捗や各国の取組状況などを評価するグローバルストックテイクが5年ごとに開催されますけれども、これに対して、衛星観測を通じた温室効果ガスの排出それから吸収の両面から貢献すべく取り組んでいるところでございます。
次からは、SDGsのインディケータへの貢献について簡単に御紹介をしたいと思います。
【春日部会長】 平林委員、申し訳ありませんが、少しだけペースを速めて御説明いただければ幸いです。
【平林委員】 はい、承知いたしました。では、次は飛ばしていただいて、SDGs進捗のモニターと報告というところでございます。これは全体の体系図を模式的に示したものでございまして、JAXAはインディケータの設定に関わる地理空間情報作業部会に専門家として参加するとともに、この作業部会に対してインプットを行っておりますGEOのEO4SDGというところで共同リードを担っております。
SDGsのインディケータに向けてJAXAのデータがどのように利用されているのかということで、赤枠で示したものがJAXAデータの貢献として検討中あるいは実際に採用されたものでございます。
この中で、右の表の一番上にあります全球マングローブマップについては、UNEPのほうで公式データとして採用されています。一番下の山地グリーンカバー指数については、日本版について、JAXAデータを利用した数値が外務省さんのウェブサイトで公開されております。
具体的な例は、以降に示しておりますが、時間の関係で割愛させていただきまして、最後のページ、まとめになります。
JAXAといたしましては、地球観測衛星を活用したプロダクトの提供により、SDGs等の地球規模課題の解決に貢献をしてまいりたいと取り組んでおります。また、SDGsの指標の算出及び手法開発、改訂にも貢献したいと考えているところでございます。
以上でございます。
【春日部会長】 途中で急いでいただいて、申し訳ありませんでした。質疑応答の中で、最後のあたりのスライドについても御説明いただければというふうに思います。
それでは、皆様から御質問やコメント等をいただけますか。
川辺委員、中北委員、続けてお願いできますでしょうか。
【川辺委員】 川辺でございます。
御説明いただき、どうもありがとうございます。非常にいろいろな観測データのプロジェクトをお持ちだというので驚いたのですけれども、お伺いしたいのは、こういった地球観測データでの海洋観測と海洋における、例えば先ほどJAMSTECさんから御説明があったような観測システムをドッキングさせたようなプロジェクトについては、お持ちなのか、あるいはお考えなのか、何かその辺りのことを教えていただければと思います。
【春日部会長】 ありがとうございます。
では、中北委員から御質問いただけますか。
【中北委員】 御説明ありがとうございました。
水管理と防災関連の利用というのを今日御説明いただいて、いろいろされているのを聞いたのですけど、すごく簡単な質問を二つさせていただきます。一つは、7ページのところに洪水状況把握や土砂災害についてありましたが、洪水状況把握のところで、日本だと水位がばっと上がってばっと下がるから、観測頻度との関係が少しあるので、利用できたらいいなという質問ですけれども、観測頻度はどれぐらいの感じになりますかということ。それから、土砂災害、これも利用できたらいいですねというので、これも結構汎用化されていらっしゃるのかということ。
それから、これはコメントですが、前のページのところ、GSMaPの一番右に数値標高モデルと書いていますけれども、これは降雨流出氾濫モデルと書いたほうが適当だと思います。すみません、これは合わせたほうがいいかなと思います。
最初の二つの質問、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【春日部会長】 赤松委員から手が挙がっていますが、後でお受けしたいと思います。
では、平林委員、今の御質問に対してお答えをお願いできますでしょうか。
【平林委員】 まず、海洋観測とどのような連携なり、ドッキングなり、プロジェクトがあるのかという御質問だったかと思います。これは海洋観測に限った話ではないと思いますけれども、宇宙から観測できることで全てが分かるわけでは決してございません。地上の観測の方が当然いい観測精度を持っておりますが、宇宙から観測することによって、地球全体を網羅的に、均一に、長期継続的に観測できるので、いろいろなデータ、地上観測のデータや宇宙から観測したデータを複合的に使っていく、そしてそれはJAXAだけで全部できるわけではございませんので、いろんな機関と協力をする、さらにはモデル研究をしている機関とも連携協力しながら将来予測をしていくといったような取組がとても大切なことだと認識しておりまして、そのような取組を今行っているところでございます。
それから、観測頻度についての御質問でございます。現在、JAXAの高分解能衛星は、だいち2号(ALOS-2)だけであり、この衛星ですと、いろいろな条件はあるのですが、概ね1日に1回程度の観測となります。
それで、この観測で浸水の深さがどれぐらいかというところまではまだ、これは今研究途上でございまして、どのエリアが浸水しているのかといったような形で、現状、メインで使っていただいております。
それから、土砂災害の御質問をもう一度よろしいでしょうか。
【中北委員】 結構汎用化される程度まで、よく使われるところまで来ているのですかという質問です。
【平林委員】 これは国交省さんのほうで実際に御利用いただいています。地方自治体におきましても、土砂災害がどういったところで起きているのかという検出の手段の一つとして実際に使われ始めておりますし、地方自治体における災害対応のマニュアル等でも、衛星利用というものが位置づけられ始めているところでございます。
【中北委員】 常時、どこか、ホームページか何かに公表されているかという意味での質問です。
【平林委員】 それでいうと、私どもは、防災インタフェースシステムという、ユーザーさんが防災に係る情報を取れるシステムを持っていて、そこは観測要求も出せるのですけれども、そういうシステムで、防災ユーザーに観測に基づく判読結果を2時間後、5時間後に提供しているといったような形になります。
【中北委員】 なるほど、すばらしい。どうもありがとうございます。
【平林委員】 それから、御指摘いただいた件、ありがとうございます。訂正をいたします。
【春日部会長】 ありがとうございます。
では、赤松委員、お願いします。
【赤松委員】 御説明いただきまして、ありがとうございました。
先ほどの実施計画の件とちょっと重なるのですが、やはりまちづくりのところに結構関わっておられるということがあって、その中身は主として防災だということは理解しているのですけれども、防災以外に、例えば都市の環境とか都市の計画とか、いわゆる本当のまちづくりの部分で、もちろん防災は大事ですが、何か検討されていることとか、SDGsのインディケータを考えるときに、やっぱりローカライズは結構大事なので、自治体の方と話をして進めることを考えられているかについて、お教えいただければと思います。
【春日部会長】 ありがとうございます。
では、平林委員、お願いします。
【平林委員】 御質問ありがとうございます。
今、JAXAのほうで、高分解能な、地表面を観測できる衛星としては、だいち2号というレーダーセンサーによる衛星を持っております。ただ、このレーダーセンサーによる観測情報につきましては、いわゆる光学写真のようなものと違いまして、視認性という意味においてはなかなか難しい面もございます。
一方で、今年度打ち上げを予定しております先進光学衛星、だいち3号につきましては、いわゆる光学的な、高分解能に観測する衛星でございますので、防災はもちろんのこと、いろいろな形で御利用いただけるポテンシャルを持っているのではないかと思っております。
私どもJAXAとしては、この先進光学衛星、それからJAXAがやっている他の色々な環境観測衛星の情報を複合的に使って、行政はもちろんのこと、民間も含めて使っていけるように、これからの利用推進活動に取り組んでまいりたいと考えております。
【赤松委員】 分かりました。ありがとうございます。
【春日部会長】 ありがとうございました。
それでは、御質問がほかにもあるかもしれませんが、最後に取っておいていただければと思います。
最後の御発表になりますが、三枝委員、お願いいたします。
【三枝委員】 国立環境研究所の三枝です。
私からは、国立環境研究所における持続可能な開発目標(SDCs)への貢献ということで、特にグローバル指標、グローバルデータに関するデータや取組について報告いたします。
なお、今回機会をいただきましたので、私から国立環境研究所の各部署の責任者に「資料や情報を提供してください」と依頼したところ、今のところ、ここに挙げておりますように、地球システム、衛星観測、資源循環、生物多様性、社会システム、福島地域協働研究拠点といった様々なところから情報提供がありました。それで、これからお話しします内容の中には、地球観測という取組とはかなり距離があるもの、文献調査や地上で集めたデータなどもありますけれども、ほかのデータとの組合せや様々なリモートセンシング手法との組合せで新しい指標の開発にもつながる可能性があるのではないかと考えまして、かなりそのまま御紹介したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
国立環境研究所は、2021年、今年の4月に新たな第5次中長期計画というものに入りました。ここでは、特に、global sustainabilityとlocal prosperityを両立するということで、地球規模の持続可能性についてもこれまでにも増して取り組んでいく予定ですので、今後もどうぞよろしくお願いいたします。
本日は、1、2、3としまして、特に、グローバル指標、グローバルデータとして公開しているものを中心に前半お示ししまして、後半少し時間が足りなくなりましたら、若干割愛するところがあるかもしれませんけれども、御関心のあるところは後で資料を御覧いただけたらと思います。
まず、1番目、国立環境研究所がグローバル指標に貢献している例です。これは、気候変動、13番に関するものですけれども、国立環境研究所温室効果ガスインベントリオフィスが策定し、環境省を通して気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局に提出しています日本の温室効果ガス排出量データです。これはまさにグローバル指標でありまして、この後、世界各国は国別排出量を下げていかなければならない、日本でも2014年以降鋭意取り組み、排出量は下がっていますけれども、これからまさにこれを下げていくことで持続可能性を高めるという指標になっている例です。これがオフィシャルな貢献の1例です。
続いて、これは少し前につくられたデータベースの紹介です。これは国等が策定する持続可能性指標(SDI)のデータベースというタイトルになっております。これは、グローバル指標が国連総会で承認されたのが2017年と聞いておりますけれども、それより前につくられたデータベースのため名前が違っておりますが、様々な持続可能性を表す指標、1,800あまりの指標の内容とその数値等を参照できる原著論文のかなり膨大なリンクのリストです。そういうわけで、データとしては少し過去のものですけれども、どの指標にたくさんの文献があるかとかどこに抜けがあるか、あるいは長期の変遷といったものも参照できるかもしれない重要なデータベースと考え、ここに掲載しております。
次からは少し具体的な例になるのですけれども、これは6番、安全な水に関するグローバルデータです。これは、国立環境研究所は霞ヶ浦をはじめ全国幾つかの河川、湖沼などの水質データを集めておりますけれども、それとは別に、国及び地方公共団体が実施する公共用水域の水質の調査結果を集め、国連環境計画(UNEP)が取りまとめるGEMS Waterという取組にデータを提供しております。これは国連の依頼を受けてGEMS Waterがグローバル指標6.3.2を算出するのに使われている事例です。
次から二つほど、住み続けることのできるまちづくり、都市に関わるグローバルデータを紹介いたします。
これは環境研における資源循環という分野の研究をしているグループからの情報提供です。これは日本の一般廃棄物のデータベースです。定義としまして、都市で生み出された固形廃棄物のうち、管理された施設で収集、処理されるもので、これはグローバル指標の11.6.1に相当するものがありますことから、日本におけるデータを収集し、国立環境研究所から公開している例です。
次は、同じく都市の廃棄物のうち、アジア太平洋地域における都市廃棄物管理に係るデータベースを作成し、公開している例です。これも同じくグローバル指標の11.6.1に貢献している例です。
次は、climate、気候変動から四つほど紹介したいと思います。
これは先ほどJAXAの平林委員から既に御紹介がありましたけれども、環境省、JAXA、国立環境研究所で取り組んでいる温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)のデータから出しました全大気の平均濃度という指標です。これは何かといいますと、WMO(世界気象機関)などが地上での温室効果ガスの濃度のデータを長期に発表されたり取りまとめられていますけれども、これはGOSATのデータから地球の大気の輸送モデルなどを介しまして地球全体の、しかも地表から大気上端までの大気全体の平均濃度を求めているものです。つまり、温室効果ガスの濃度は、地上のどこで測るか、どの高度で測るかで大分違うのですけれども、これはグローバルな一つの指標、CO2で一つ、メタンで一つのデータとなっているものですから、この後、パリ協定の下、各国の温室効果ガス排出削減が進んだときに、地球の全大気の濃度に削減効果がどれだけ反映されているかを見ることのできるよい指標になるのではないかと私は考えているところです。
次は、先ほどやはりJAXAの平林委員からお話がありましたけれども、大気中の濃度から地上での二酸化炭素やメタンの吸収・排出量を逆推定あるいは逆解析という手法により算出することができるようになっておりますので、そうしたデータをプロダクトとして出している例です。
右下の図を見ていただきますと、夏は森林等による二酸化炭素吸収、これは下に行くほど吸収が大きいという図なのですけど、夏に吸収が大きく、冬は人為起源の排出量により二酸化炭素の排出量が大きいという、このような時系列になっております。
こうした逆解析のシステムが過去数年間で非常に分解能を上げることができました。11ページの右下の図は、先ほどよりもはるかに時間分解能が上がっていることがお分かりいただけるかと思います。これは上が3月、下が7月の例なのですけど、3月はところどころ赤い、CO2排出量の多い大都市域、人口密度の高いところなどがよく表れておりますし、下の7月の例ですと、シベリアやカナダなどの森林地帯が二酸化炭素を強く吸収するために、吸収量が強い緑のエリアが広がっている、こうした二酸化炭素の吸収、放出の動態が非常に高分解能で出せるようになってきております。これも先ほど平林委員から御紹介がありましたとおり、世界の二酸化炭素排出量の急速な削減、そして人為起源の吸収源もつくっていかなければ、気候は安定化しないと言われていますので、吸収源の拡大などの対策の効果を見るために非常に有意義な指標ではないかと考えております。これもこのスライドの中にありますURLからデータを公開しておりますし、今後も1年に1回程度の頻度で更新していく予定です。
次は、特に陸域に特化しまして、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素などの重要な温室効果ガスがどこでどれだけ放出されているかということを、過去から現在まで、1900年からと言っていますので、かなり長期間のデータセットとして、これも公開しているものです。こうしたデータを使うことによりまして、二酸化炭素に限らず、農業分野などの温室効果ガス排出削減の効果を指標として知ることができるというふうに考えております。
少しスピードアップしないといけないみたいなので、少し飛ばしぎみに紹介させていただきます。
こちらはつくる責任つかう責任ということで、例えば国際標準化機構(ISO)などは様々な認証制度をつくっていると思うのですけれども、持続可能な調達などの制度を策定するときに、持続可能性をどう評価するかといったところに使えるような、ターゲットとする公共調達などで参照すべき観点をまとめたような研究を進めているところです。すみません、申し遅れましたけど、このスライド以降は、SDGsの指標開発の関連研究となります。12番の関連研究を御紹介しました。
次は、一言で申しますと、どの指標に根拠がたくさんあって、どの指標に根拠があまりない、まだ指標として弱い分野であるかというようなことを判断するための研究を進めております。
続いて、持続可能な発展の指標としまして、そもそもどのような社会を目指すときにはどのような指標が必要である、また違った形の社会を目指すときには違った指標でのモニタリングが必要になるという観点の下、例えば、高い経済成長を目指す社会の場合にはこういった指標の優先度が高いとか、逆に、ネットワークを活用した資本利用の最小化により公平な分配を行うような社会であれば、別の指標に優先順位が高く置かれるべきだとか、そういった研究を進めているところです。
そして、時間の関係で少し飛ばしまして、その次を飛ばして、その次に行きます。
こちらは、横軸に二酸化炭素の排出削減率を書いております。つまり、二酸化炭素の削減策が強く行われると、SDGs指標はどうなるかということを示しています。分かりやすいところだけかいつまんで説明しますと、一番左上の飢餓人口、二酸化炭素の排出削減を極めて強く進めますと、飢餓人口は増えてしまいます。これは、その隣の農作物価格と併せて見ていただければと思うのですけれども、限られた土地を例えば植林やエネルギー資源作物などに優先的に使うとなりますと、農作物の価格が上がるといったことを示しています。しかしながら、温室効果ガスの排出削減は、その隣、大気汚染物質の排出削減も同時にコベネフィットというか、大気汚染を改善するために、幼年期の死亡率を非常に大きく下げることができると。こういった指標の検討を行っております。数が多いので省略しますが、こうした一つの取組を進めたときのトレードオフみたいなものについても検討が必要だというところです。
またちょっとはしょらせていただきます。最後のページ、20ページです。
これは、17番、パートナーシップというところについての取組の例です。これは国立環境研究所の福島拠点というところから、災害環境を研究する分野の取組です。先ほどの質疑の御議論のところにも一部ありましたけれども、SDGsを地域の課題解決に活用する取組としまして、まだこれは着手したところだと思うのですが、例えば、郡山市がSDGs未来都市を構想しているといったときに、地域の解決策を様々挙げまして、例えば、地域の活性化をしたい、気候変動対策に貢献したい、身近な環境や健康、福祉を改善したい、環境教育を改善したいといった地域の取組に対して、それぞれのSDGsの目標がどのように連関するかということを対話、コミュニケーションをしながら発案していくという取組をしているといったところです。
非常に駆け足になりましたけれども、国立環境研究所の取組を紹介させていただきました。以上です。ありがとうございました。
【春日部会長】 三枝委員、非常に多岐にわたる取組について、時間のことも考えていただきながらまとめていただいて、ありがとうございました。
それでは、早速ですが、皆様から御質問、御意見等をいただきたいと思います。いかがでしょうか。SDGsに貢献できる実際の観測データだけではなくて、グローバル指標の開発に関する取組、それからパートナーシップの地域での実例まで御説明……。
では、赤松委員、お願いします。続いて小縣委員からもお願いします。
【赤松委員】 何度も質問を差し上げて申し訳ないです。
最後に、地域課題の解決にいろいろ取り組まれていくという話があります。こう言っては非常に失礼ですが、国立環境研究所さんは、どちらかというとグローバルなことに取り組まれていたと私は理解していたので、ここで、郡山市でSDGs未来都市構想に活用という具体的な話まで出てきているのに少し驚いたこともあって、質問させていただきます。ここの中で、具体的にどのような、例えば指標などに取り組もうと考えられているのかを教えていただきたいです。
【春日部会長】 では、続いて、小縣委員、お願いします。
【小縣部会長代理】 小縣でございます。
本日のお三方のご説明に共通してくると思われるのですが、取りあえず、最後の三枝委員に質問です。CO2については、過去の測定等のデータから、将来、CO2がどれだけ増えていくかなどを予測しています。一方、今日も、御説明があったのですけど、実際の気候変動の結果、中長期のレンジで、例えば一つは降雨についての予測、すなわち降雨等の強度であるとか、ピンポイントでなくてもいい、ある程度広い範囲でもいいですが、地域的な変化の予測とか、あるいは降雨強度の分散など、実際に現れる現象の地域ごとの中長期的予測はもうかなり出ているのでしょうか。あるいは、それは公開されているのでしょうか。インフラ部門が、その対策として、土木構造物、システムなどを整備するのには、時間がかかりますので、お聞きしました。
【春日部会長】 では、お二人の御質問に答えていただいて、その次に、中北委員からの御質問をいただきたいと思います。三枝委員、お願いします。
【中北委員】 すみません、中北は今の最後の雨の将来予測はどうなっていますかということに従事していますので、横からですけれども、お答えしたいと思って手を挙げました。最後にお答えいたします。
【春日部会長】 ありがとうございます。
まず、三枝委員、赤松委員と小縣委員の御質問にお答えいただけますか。
【三枝委員】 はい、分かりました。まず、郡山市の取組です。グローバルな研究をしているのは特に地球システム領域、私どものところは多いですけれども、国立環境研究所には、ほかにも地域環境とか生物多様性とか社会システムとかそういった様々な分野がありまして、地域スケールから社会科学の研究までカバーしているのが特徴でございます。
そして、東北では、東日本大震災がありました後から、福島に災害環境の研究を行う拠点を置きまして、そこで福島の幾つもの都市あるいは地方自治体と協力をしているところです。
郡山市について言いますと、郡山市と国立環境研究所の間で基本協定を締結いたしまして、環境と経済が調和した持続可能で気候変動に適応した暮らしと産業の実現を目指すということで、これは多分始まって今取り組んでいるところだと思うのですけれども、地域コミュニティーの調査分析、まちづくりに資する土地利用、人口分布の将来予測、環境とエネルギーのモニタリングとスマートコミュニティー導入などによる都市の低炭素化、それから気候変動適応も一つのターゲットになっておりまして、この地域における気象災害の激甚化の影響予測やこの地域の適応策の立案支援といったものも併せて取り組んでいるところのようです。これらが郡山市のSDGsの構想の具体的にどの施策にどのように反映されたかというところは、まだ本日のところはお答えできませんけれども、このようなターゲットに向けて共に協力しているところです。
【赤松委員】 ありがとうございました。途中で口挟んで申し訳ありません。もしここの中で地球観測がこういう形で使われるという具体的な例があれば、機会がありましたら、ぜひ御紹介いただければと思います。
以上でございます。
【三枝委員】 ありがとうございました。
続いて、気候変動予測のデータのことですけれども、はい、ございます。これは先月、8月に公開されましたIPCCの第6次評価報告書のWG1に大きく使われましたCMIP6(第6期結合モデル相互比較プロジェクト)のデータが膨大にございまして、これについては、先ほどJAMSTECの河野委員からもありましたが、JAMSTECのほうでデータの提供をされている、DIASを使ったデータの公開がなされると思うのですけれども、国立環境研究所でも気候変動予測の国際共同研究に参画し、データを基に温暖化の影響評価などができ得るデータの作成をしております。
また、ちょっと申し上げましたけれども、気候変動適応センターにおいては、このデータをさらに日本の各県などでも利用できるように、独自に高分解能化して提供する取組を行っております。このデータについてはたしか最近記者発表されておりますので、追ってそれについて、できればこのチャットでURLをお知らせするようにいたします。
【春日部会長】 後ほど事務局にお知らせいただければ、委員の皆様に転送していただけると思います。
【三枝委員】 分かりました。ありがとうございます。
【春日部会長】 関連して中北委員からも補足の御説明をいただけるということでしょうか。
【中北委員】 はい。ひょっとしたら我が国の状況も含めての雨の将来予測の状況の御質問かなというのもあって御返答させていただきます。基本は、この部会の事務局をされています環境エネルギー課のほうで主導されて、気候変動予測――先ほどJAMSTECから御紹介がありました地球シミュレータを使って、世紀末2度上昇、4度上昇の世界のいろんな先の情報を予測して、それを我が国で、例えば大雨も含めて、より地域レベルの細かな情報にして予測をずっと行ってこられていて、それをまた私たちを含めて防災関連の人たちが加工した上で、いろんな情報になって出ていっているということです。鉄道のほうはまだそこまで利用はないのかもしれませんけど、かなりいろんな、保険の分野、電力の分野、治水の分野等でかなり活用されている情報が世の中に今出ています。
環境省さんからもそういう将来予測の情報が出ていて、多くは今三枝委員がお話しになられたような形で、適応センター絡みでより多くの人が利用できるようになっています。
あるいは、DIASを通して、多くの方が、何1,000アンサンブルという、5,000何年分の将来予測とか、学術的な情報を物理的ベースで出力した情報がありますので、そういうのはDIASを通して利用するという形で今はできるようになっています。それがだんだん今民間に開放されつつあるというような状況だと思っています。
以上です。
【小縣部会長代理】 ありがとうございます。
【春日部会長】 中北委員、どうもありがとうございました。
ただいまチャットのほうに三枝委員から情報を書き込んでいただきました。
それでは、大分時間が押しているのですけれども、河野委員、平林委員、三枝委員から大変密度の濃い御報告をいただきましたので、全体を通して御質問等がございましたら、一つか二つお受けしたいと思います。いかがでしょうか。
私も伺って、様々な地球観測のデータが実際に指標に貢献しているということがよく分かったのですけれども、まだゴールやターゲットが具体的に定量化されていないものもあります。そうしますと、今のデータをどこに向かって活用したらいいのかというところ、ここにまだギャップがあるのではないかというふうに感じました。
川辺委員、どうぞ、お願いします。
【川辺委員】 川辺でございます。
今の春日部会長と全く同じようなことで申し訳ないですけれども、SDGsへの貢献可能な取組ということでいろいろおやりになっていて、それはそれですばらしいと思うのですが、この評価をどういうふうにされるのかというところがまだよく分からないのかなというふうにお話をお伺いしながら考えておりました。具体的にSDGsの実現にどれぐらい貢献したのかというような評価の方法については、どれぐらいお考えになっていらっしゃるのか、もし可能でしたら教えていただければと思いました。お願いいたします。
【春日部会長】 ありがとうございます。
前回御説明いただきました蟹江委員と総務省のほうで政府のSDGs推進円卓会議進捗管理・モニタリング分科会をリードしていただいていますので、地球観測データも含めて全てのSDGsの進捗状況については、そちらで包括的に見ていく部分があるとは思います。その中で、地球観測データの在り方、データそのものの評価、そういうことも関わってくるのかなとは思います。一方で、地球観測推進部会としても、どのくらい貢献しているのか、今後どういうデータが必要なのか、そういう評価的な観点を常に持っていくことも重要かというふうに思います。
3人の皆様から何かこの点について加えることがございましたら、ごく短くお願いできればありがたいと思うのですが、いかがでしょうか。
よろしければ、次回以降も、様々な委員の皆様から御発表をいただきつつ、今のような観点についても継続的に議論できたらというふうに思います。
改めまして、3人の委員の皆様、本当にお時間を使って御準備いただきまして、ありがとうございました。
最後に、事務局から議題3について御説明をお願いしたいと思います。
堀川専門官、お願いいたします。
【堀川地球観測推進専門官】 それでは、議題3について御説明いたします。資料3を御覧ください。
6月10日に開催されました第1回の部会にて御説明いたしましたスケジュールについて更新がございますので、簡単に御説明いたします。第4回部会は、前回御説明したタイミングでは、来年度の初め、4月頃の開催を予定していますということで御連絡をしておりましたが、これを前倒ししまして12月頃の開催を予定しております。実施機関からの報告、意見交換と併せまして、仮称ではございますが、地球観測データによるSDGs等への貢献についての骨子について議論を今年中に行う予定です。その後、年明けの令和4年2月頃に第5回部会を開催しまして、地球観測データによるSDGs等への貢献について(仮称)の案について議論を行う予定で考えております。
資料3の説明は以上となります。
【春日部会長】 ありがとうございました。
これから年末に向けて少し忙しくなりますけれども、委員の皆様それぞれ非常にすばらしい御経験の蓄積をお持ちですので、これからの部会でも、引き続き皆様からのヒアリングを続けさせていただきたいと思います。
本日予定されている議題は以上です。委員の皆様から特に最後に御発言等がございませんでしたら、事務局から連絡事項をお願いしたいと思います。
堀川専門官、お願いします。
【堀川地球観測推進専門官】 本日の議事録は、後日、事務局よりメールで委員の皆様にお送りいたします。各委員に御確認いただいた後に、文部科学省のホームページで公表いたします。
次回、第3回の部会は、10月15日金曜日午前10時より開催を予定しております。開催案内については改めて御連絡いたします。
事務局からの連絡事項は以上となります。
【春日部会長】 ありがとうございました。
本日は大変密度の濃い御議論をありがとうございました。以上をもちまして、第9期地球観測推進部会の第2回会議を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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