第9期地球観測推進部会(第4回) 議事録

1.日時

令和3年12月24日(金曜日)14時00分~16時00分

2.場所

オンライン開催

3.出席者

委員

春日部会長,小縣部会長代理,赤松委員,岩谷委員,上田委員,浦嶋委員,河野委員,川辺委員,三枝委員,佐藤委員,嶋田委員,神成委員,中北委員,平林委員,堀委員,村岡委員,六川委員,若松委員

文部科学省

土居下環境エネルギー課長,服部環境科学技術推進官,橋本課長補佐,堀川地球観測推進専門官

オブザーバー

内閣府 辻原参事官

4.議事録

【春日部会長】  皆様こんにちは。時間となりました。ただいまより科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会、第9期地球観測推進部会の第4回会合を開催いたします。
 本日は年末のお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 最初に、委員の出欠と資料の確認を事務局のほうからお願いいたします。また、本日はオンラインでの会議になりますので、進行に当たっての留意点についても併せて説明をお願いいたします。
【堀川地球観測推進専門官】  事務局より委員会の進め方について簡単に御確認をさせていただきます。
 まず、ウェブ環境の安定のため、この後、議題に入りましたら御発言されてないときはマイクとビデオをオフにしていただきますようお願いいたします。
 また、御発言いただく際には手を挙げるボタンを押していただくようお願いいたします。御発言の際にはお名前をおっしゃってから御発言をお願いいたします。
 挙手ボタンが見つからない等の場合は、画面をオンにして手を挙げていただきますか、直接御発言いただければと思います。
 次に、議事に入る前に本日の資料の確認をさせていただきます。議事次第、資料1-1から資料3-2のファイル、参考資料を昨日、メールでお送りしておりますが、もし不備等ございましたら事務局までお申しつけください。よろしいでしょうか。
 続いて、出席確認ですが、
 本日、御出席いただいている委員は、半数(11名)に達しておりますので、部会は成立となります。
 また、本日の本部会にはオブザーバーとして科学技術・イノベーション推進事務局の内閣府辻原参事官にも御参加いただいております。
 本部会は、部会運営規則により公開とさせていただきます。
 最後に、傍聴者の方へのお願いとなります。本日はオンラインでの開催となっております。万が一、システムトラブル等で傍聴不可となった場合は、後日公開いたします議事録を御確認いただきますようお願いします。
 事務局からは以上となります。
【春日部会長】  堀川さん、ありがとうございました。
 それでは、本日は議事次第にありますとおり、三つの大きな議題を予定しております。
 委員の皆様からどうぞ十分忌憚のない御意見を頂戴できればと思います。
 また、本日の会議終了時刻は午後4時を予定しています。
 それでは、議題1から始めたいと思います。
 SDGs等への貢献可能な取組についてのヒアリングです。
 これまで、第1回から第3回の本部会で、地球観測データによるSDGsの貢献について、SDGsの動向や実施機関における取組の状況、関連の動向について御紹介いただきながら議論をしてまいりました。
 本日の部会で取組をまた御発表いただく前に、これまでの発表と議論についてここで一度整理をしたいと思います。
 それでは、また、堀川専門官からこれまでの発表と議論について御説明をお願いいたします。
【堀川地球観測推進専門官】  
 それでは、発表に入る前に、これまで第1回から第3回まで、委員の皆様のほうから御発表いただきましたので、これまでの発表について、一度整理のほうをさせていただければと思っております。
 では、資料1-1の3ページ目を御覧ください。
 こちらのページが第1回の部会の内容となっております。
 第1回部会では、蟹江委員より「SDGsに関する最近の動向について」を御発表いただいております。
 SDGsの特徴や動向、日本の推進体制やその課題などを御説明いただきまして、地球観測が指標測定に貢献できる期待などが述べられております。
 次に、総務省より「SDGsグローバル指標における地球観測データの活用への期待」について御発表いただきました。地球観測データの活用への期待やその具体例、衛星画像データを用いた新たな指標の算出等について御説明いただいています。
 次に、6ページを御覧ください。
 こちらが第2回部会の概要となっております。
 まず、こちらは河野委員ほうから「海洋研究開発機構におけるSDGsへの取り組み」を御発表いただいておりまして、新しい観測と従来の観測における継続の難しさやプラットフォームの重要性など、データをオープンデータとして公開していく取組の必要性などの御意見等をいただきました。
 次に、平林委員より「JAXAの地球観測分野におけるSDGsの取組み」について御発表いただき、データを常時公開する必要性やまちづくりで衛星観測が貢献できる可能性、SDGsの指標にはローカライズが重要であること等の御意見がございました。
 次に、7ページを御覧いただきまして、三枝委員から「国立環境研究所における持続可能な開発目標(SDGs)への貢献およびグローバル指標に関する研究について」を御発表いただきまして、部会としてもSDGsの進捗状況にどれくらい貢献しているのか、今後どういうデータが必要なのか、評価的な観点の重要性や、あとは地域ごとの中長期的予測の必要について意見等がございました。
 次に、9ページを御覧ください。
 第3回部会の概要となります。
 
 こちらは、まず事務局のほうから今後の部会の進め方としまして、これまでの議論を踏まえて、観測データのみならず、予測データも含めた議論も行っていくことと、あとデータプラットフォームのSDGsや気候変動予測研究への貢献について議論を行っていくことを御説明いたしました。
 御発表のほうですけども、次に浦嶋委員のほうから「地球観測に関連するMS&ADの取り組み」について御発表いただきまして、リアルタイム被害予測情報の活用への期待などについて御意見等ございました。
 次に、RESTECの向田様より「地球環境データプラットフォーム動向」について御発表いただきまして、プラットフォームの運用経費の構造の把握やデータのオープン化の必要性について、御意見等ございました。
 次に、三枝委員と平林委員から「地球観測によるパリ協定の貢献及びCOP26対応について」を御発表いただきまして、衛星観測によるバイオマス、CO2吸収量計測の活用への期待などの御意見がございました。
 以上、駆け足での御説明となりましたが、これまで第1回から第3回までの御発表内容を踏まえまして、予測データに関する情報提供が必要であることやプラットフォームについてさらに掘り下げていく必要があるというところで、本日の部会では、プラットフォームと予測データに関する御発表を予定しております。
 事務局からの説明は以上となります。
【春日部会長】  堀川さん、ありがとうございました。
 今御紹介のあったページの間に、それぞれの御発表を踏まえた意見交換の中で、どんな御意見が出てきたか、こちらもまとめていただいています。それも御参照ください。
 それでは、本日の発表に移ります。
 SDGs等への貢献可能な取組についてのヒアリング、第4回目としまして、DIASとA-PLATについて御発表いただき、意見交換を行います。
 その後、気候変動予測データに関する御発表と意見交換を行います。
 まず初めに、JAMSTECの石川様と国立環境研究所の吉川様から御発表いただきます。
 それぞれ10分程度でお願いできればと思います。お二人に続けて御発表いただきまして、その後まとめて15分間の質疑応答の時間を設けたいと思います。
 それでは、JAMSTEC、石川様、よろしくお願いいたします。
【石川(JAMSTEC)】  御紹介いただきました海洋研究開発機構(JAMSTEC)の石川と申します。
 本日は、DIASにおける地球観測・予測データの活用によるSDGs等への貢献ということで、DIASの取組を中心に紹介させていただきます。
 次をお願いします。
 SDGsについては、改めてここで紹介することもないのかと思いましたが、導入としてつけさせていただきました。
 気候変動というのは目標13として、気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じるとして掲げられていますが、それ以外の目標においても気候変動が関係するものは数多くあります。
 次をお願いします。
 例えばですけれども、目標の中には、サブ課題みたいなものがありまして、例えば1.5の中では、ここは貧困をなくそうという目標ですけれども、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に対する暴露や脆弱性を軽減するという目標がありますし、2.4、飢餓をゼロにという中にもやはり気候変動という文言があります。
 気候変動という文言が用語に含まれているもの以外にも、そのほかにも健康、それから水、都市、エネルギーなどは気候変動に関係していますし、14番、15番の海の豊かさを守ろう、陸の豊かさを守ろうというのも生態系という観点からも気候変動と大きく関連しているものになります。
 次をお願いします。
 気候変動への適応とデータの活用ということで、今紹介したようにSDGsにおいては、目標13、気候変動の課題だけでなく、影響を受ける分野というのは非常に多くなり、それぞれの分野において、気候変動の適応が求められています。
 気候変動のリスクはハザード、いわゆる気候外力に加えて、対象の脆弱性や暴露というものによって決まることがあるので、例えば同じ規模の気候外力であってもリスクの大きさが異なったり、リスクを評価したり、その対応という意味では、非常にデータを活用して、対象ごとに、それは例えば地域によって違う、セクターによって違うリスクを評価する必要があります。
 次のページをお願いします。
 もうすぐ出る、今編集されているIPCCのワーキンググループ2のレポートです。ワーキンググループ2というのは、影響、適応、それから脆弱性などを議論するものですけれども、セクターとしては、2番から8番までで、例えば2番から陸域のエコシステム、海域のエコシステム、水、食料、都市、インフラストラクチャー、健康、貧困などといった分野における影響とその適応策がまとめられておりまして、最後はClimate resilient development pathwaysというタイトルのチャプターですけども、気候について強い開発経路ということで、SDGsに沿った議論がこの中ではなされております。
 次をお願いします。
 これはIPCCのレポートの第5次報告書にあるものの和訳です。リスクというのが今言ったように、ハザードのほかに脆弱性や暴露といった社会経済と関連したものによっても決まることから、実際にリスクを評価し、また、それの対策を取るためには、非常に様々な評価を行う必要があります。
 次をお願いします。
 そのためには、やはりリスクのスクリーニングや適応策を具体的に考えるところにおいては、気候変動の予測データとその対象となるような、セクター、場所、地域の脆弱性や暴露というのを組み合わせて行う必要がありまして、個別の情報を――汎用的に適応策というよりは個別の状況にマッチした適応策を考える必要があります。
 また、その適応策の中には、具体的に観測や予測情報を活用した適応というのは十分に有効であるものが考えられておりまして、その中では特にモニタリングの重要性やリスクの早期検知システムみたいな観測・予測情報を活用することによって、気候変動へのリスクに立ち向かっていくことができるのではないかということが考えられています。
 このようなものというのは気候変動のデータだけでは難しいですし、対象のデータだけでは難しく、それらをうまく組み合わせ、また、さらにその実装まで含めた垂直統合型のソリューションという形で求められています。
 次をお願いします。
 DIASでは、このようなものに対して対応できるような研究開発を進めてきておりまして、大きく分けて二つの柱を今、我々としては考えています。
 一つは気候変動予測データの収集と公開ということで、データセットの公開システムやデータセットの利用ツールみたいなもの。もう一つはその適応を考えたアプリケーション開発で、先ほど紹介したように、個別の対応で気候変動データや観測データとセクターごとの状況やそれらに関するデータというものをうまく組み合わせることによったアプリケーションの開発というのを進めてきました。
 今回は特に前者の例及び後者の例としては、生態系のモニタリングや洪水、干ばつの早期警戒などのアプリケーションを紹介させていただきます。
 次をお願いします。
 これはDIASの中に格納されているデータの1例です。ちょっとこれは古くてすみません。例えば将来予測データとしてはCMIP5データ、それから、アンサンブル予測データで、d4PDFと呼ばれるもの、また、過去のシミュレーション、それから再解析データと呼ばれるもので、JRA-55というのが入っていますし、JRA-25とありますけども、現在、新しいバージョンで、JRA-3Qという75年分、サードクオーターの長期再解析のデータをDIASから公開するべく準備をしています。
 次をお願いします。
 CMIP5データの公開については、DIASがEarth Grid Systemのノードとして、2011年からデータを公開しておりまして、オリジナルデータに関しては、世界のノードの中でも有数な最大のデータ公開数を誇るようなノードになっております。
 次をお願いします。
 同じく、新しいCMIP6についても2018年からデータセットの公開を始めていまして、データの量というのは、5に比べて6はかなり大きくなっておりますが、これについても、ここに挙げたようなデータセットの公開が順次進められています。
 次をお願いします。
 d4PDFというのは先ほど紹介したように大規模アンサンブルデータということで、後ほど河宮さんのほうからも紹介があると思いますけれども、統合プログラムで開発された将来5400年分、過去6000年分にわたる非常に大規模なデータセットになっており、様々な分野での応用が進められています。
 次をお願いします。
 DIASでは、このデータのダウンロードシステムを開発しておりまして、アンサンブルや変数ごとにデータを指定してダウンロードするシステムで、非常に大きなデータになっているので、領域や変数などを指定した範囲だけ切り出すような、先ほど言ったように、気候変動適応においては、全部のデータが要るわけではなくて、特定の領域などに合わせたデータだけ必要なユーザーもいますので、そういうユーザーに合わせた切り出しツールなどを提供しております。
 次をお願いします。
 これも切り出し用のAPIの例です。ここはスキップして次に行きます。
 このようなデータ提供システムと併せて、DIASでは、先ほど言ったように垂直統合型、英語ではエンドツーエンドアプリケーションと言ったりしますが、データを集めるところからその活用までを統合的にやるようなアプリケーションを進めています。
 その一つとして生態系の分野では生態系のモニタリングに市民科学アプローチを導入しまして、いろんな方々に写真を撮ってきてもらって生態系の分布やそのモニタリングにつなげるような仕組みをつくっており、これが東京の蝶に関するデータです。
次のページをお願いします。
 コウノトリのデータなどがあります。コウノトリのデータに関しては、2018年から運用を開始しましたけども、2021年10月、この秋までに3万9,000件のデータが収集されていまして、下に示すように、公開画像や個体の分布マップみたいなものが図示できるシステムが出来上がっております。
 次をお願いします。
 また、防災分野では、気候変動のリスクに対する適応の一つとして、早期警戒システムというものを開発しておりまして、これはスリランカの洪水管理の支援の仕組みです。
 次をお願いします。
 そのほかにも、ブラジルでは干ばつの予測システムなどを開発していまして、様々なところで、このような研究開発の成果というのを、これは国際的にですけども、活用していただいております。
 次をお願いします。
 このようなデータ連携のDIASの将来像も含めて考えていくときに、データ連携というのはいろんなレベルがありまして、ここでは1から4まで挙げていますが、基本的にはデータはオープンにしなければ始まらないというレベルのところから、いわゆるデータセンター的な機能ですね、データを収集し、データベース化するもの。さらにはソリューションを提供するために、分野横断型の連携、特に垂直統合型のものがあります。
 DIASは3番を中心にこれまで研究開発が行われてきていまして、気候変動については、データベース化なども進めてきていますが、今後はこの垂直統合型の連携をやりやすくするような仕組みづくりを考えていきたいと思います。
 このような動きは、国際的にも進んでいまして、次をお願いできますか。
 欧州や米国でも、例えばここではNOAAのビッグデータプログラムや、欧州ではCopernicus Projectみたいなものが進んできております。
 すみません、ちょっと時間がないので、そろそろ次に行きます。ほかの国でも欧州のOpen Data Cubeや、中国ではBig Earth Data Science Engineeringがあって、ここら辺のものは基本的にデータセンターから発展する形になっておりますけれども、ソリューション提供まで意識したものが進められています。
 その中で私が今回紹介したいのは、1個だけで、ヨーロッパの海洋分野における取組でして、2ページほどスキップしていただいて、blue-cloudというプロジェクトがあります。これは何かというと、ここの中に入っている各アイコンというのは、いろんな分野のデータセンターです。例えば、生物分野だとurOBISみたいな生物多様性のもの、それから、波浪のデータやゲノムのデータも入っていまして、こういう様々なデータ、あとは環境場のデータですね、というデータセンターがいろいろヨーロッパにはありますけれども、これらのデータセンターを連携する形で、解析機能を提供するというプロジェクト、blue-cloudというのが一昨年ぐらいから始まっております。
 次をお願いします。
 このプロジェクトというのは、まさにそれぞれのデータセンターが持っていたものを横断的に使うことによって、先ほど紹介したようなエンドツーエンドアプリケーションを作っていこうということで、五つのパイロットプロジェクトというのがありますし、また、このようなパイロットプロジェクトを通じて、新しいソリューションを提供しやすい環境をつくっていくことが目的になっていまして、先ほど言った4段階のデータ連携の3から4のところを強化しようという動きがあって、これは私が見ている限り国際的にもかなり先進的な取組ではないかと考えております。
 次をお願いします。
 これが最後になりますけども、このようなものを含めて、DIASとしては将来的なビジョンとして、一つは我々も気候変動に関する研究開発プロジェクトでありますので、最先端の研究開発を行い、社会実装まで含めたデータ活用の成功事例を創出していくことが一つの使命だと思っております。
 また、それだけでは、自分たちが研究するだけではなく、多様な分野の専門家や研究者、技術者などが集まってきて、この中で成果を創出できるような基盤としての役割も果たしていきたいと思っておりますし、これらの先進的な事例を通じて、いろんなツールなどを整理し、また、そのツールを使って新しい成果が出やすくするようなサイクルを回していけるような仕組みを今構築しようとしています。
 以上になります。
【春日部会長】  はい、石川様どうもありがとうございました。大変密度の濃いお話をいただきました。御意見等は後で受けたいと思います。
 それでは、引き続き、吉川様お願いいたします。
【吉川(国立環境研究所)】  ありがとうございます。
 私、国立環境研究所、気候変動適応センターの吉川と申します。本日はこの場にお招きいただきまして、ありがとうございます。
 それでは、早速、私どもが運用しております気候変動適応情報プラットフォーム、通称A-PLATと申します。こちらの御紹介をさせていただきます。
 次のページをお願いします。
 こちらはビジーなスライドで申し訳ありません。気候変動適応法の概要です。詳しく割愛いたしますけれども、気候変動適応法という法律は平成30年12月に施行されております。こちらの法律では適応の総合的推進ということで、5年ごとに科学的な知見を集めて、気候変動影響評価を実施して、それに基づき気候変動適応計画という閣議決定されるものを改定していく仕組みが出来上がっております。
 この法律の中で弊所は適応の情報基盤の中核ということで位置づけられまして、地方公共団体への技術的援助の任務を担っております。
 地域では都道府県や市町村に計画策定の努力義務が課されておりまして、各地域の情報のハブとなる地域気候変動適応センター、通称LCCACと呼んでおりますけれども、こういったものの設置が順々にされています。
 次のページをお願いいたします。
 その次のページに、その設置状況を示していますけれども、施行から丸3年となりますが、都道府県のほうでは地域気候変動適応計画の策定が43都道府県で相当進んできたなという状況でございます。
 地域の気候変動適応センターの設置のほうも順々に進んできておりまして、これは色がいろいろ違いますのは、設置の形態がいろいろあって地方公共団体のいわゆる県庁の中の組織でやっているところ、そのほかに研究機関とそれがタッグを組んでいるところ、あるいは大学等の研究機関がそのままLCCACなっているところ、いろいろな形態が各地域であって、そういったものと我々は連携しながら仕事をしています。
 次のページをお願いいたします。
 これが連携の模式図になりますけれども、気候変動適応という分野は皆様御存じのとおり大変幅広く、農業から自然生態系、そして災害、都市生活、そして産業と様々な分野に影響が及んでおりますので、国立環境研究所だけではなくて、国の21の国研との連絡会議を置いて、協力体制をつくりながら、このA-PLATという情報プラットフォームを使って地域の皆様、それから企業や国民の皆様への情報発信をやっています。
 次のページをお願いいたします。
 こうした構造は気候変動適応計画、今年の10月に改定をされて、閣議決定されましたけれども、こちらの基盤的施策というところでも位置づけられておりまして、基盤的施策として、科学的知見の充実活用、情報基盤の整備、地域の取組の推進、事業者の適応の促進、国際協力といった施策群がありまして、そこに先ほど御発表のあったDIASとそれから私どもの運用するA-PLAT、それから同じく私どもが運用しているアジア太平洋向けの情報プラットフォーム(AP-PLAT)といったものが連携して情報提供していく姿になっております。
 次のページをお願いいたします。
 さて、そのA-PLATのトップページがこちらになります。地域、事業者、個人とそれぞれのユーザーに合わせて、地域の適応というアイコンをクリックしていただくと、例えば地域適応計画の策定に関する事例やマニュアル、それからLCCAの活動のヒントになるような様々な資料、それから事業者の適応をクリックしていただくと、気候リスクへの対応事例、ビジネスでの対応例、あとは適応ビジネスの事例、TCFDといったものへの資料が見られるようになっております。このサイトのページビュー数は昨年度90万ページビュー、今年は4月から11月までで、既に110万ページビューということで、順調にアクセス数が伸びてきています。ユーザーの全体像はちょっとつかめていないのですが、都道府県や政令指定都市の方々への調査では、月1回以上使っているところが七、八割という状況でございます。ただ規模の小さい自治体の基礎自治体の皆様になると、まだ存在を知らない状況が結構ありまして、この辺はこれから気候変動適応計画、都道府県はほぼ策定し終わったところで、市町村が今後は策定の主体になっていくことを考えますと、まだまだ努力と認知が必要だなという部分でございます。
 次のページをお願いします。
 こちらがA-PLATから御提供している科学的知見でございまして、地域の適応というページから観測・予測データ提供ということでクリックしていくと、このとおりいろいろな研究プロジェクトで出されたデータや、それから気象官署による観測データといったものがそれぞれの地域ごとに選んで見られるようにグラフなども整備しております。
 また、ほかの省庁で提供している観測データの見方、アクセスの仕方みたいなところも資料として掲載しております。
 次をお願いいたします。
 こういうデータを地図化したり、あるいは地域ごとにグラフ化してという御提供は少し時間がかかりますので、なかなか全て一気にとはいっておりませんけれども、順々に進めておりまして、こちらに今映しておりますのが、今年度、既に掲載した追加情報です。
 次のページをお願いいたします。
 先ほど少し触れましたけれども、私どもはアジア太平洋向けの情報提供というものも行っております。これは途上国がナショナルアダプテーションプラン、通称ナップと申しますけれども、そちらを策定するのを応援するためのサイトということです。今年のCOP26に向けて、ClimoCastというツールをリリースいたしまして、この左上のほうの図になりますけれども、これは世界で初めてCMIP6の予測データを国別、地方別に表示して、さらにそれを右クリックすると、CSV形式で国や地域ごとにダウンロードできる機能を備えたツールとなっております。また、右下にありますClimate Impact Viewerは、いろいろな影響予測研究の成果を搭載した実施ツールですけれども、こちらも今年大幅に拡張してリニューアルしました。
 次のページをお願いいたします。
 もう一つ、A-PLATのファミリーと呼んでおりますけれども、その一つとしてA-PLAT Proと呼んでいるシステムがございます。こちらは登録すれば誰でもお使いいただけるように公開しておりますが、もともとの意図は影響評価研究者にタイムリーに影響評価に使う気候シナリオを提供するということで作成したものですので、かなり無骨な味も素っ気もないインターフェースにはなっておりますが、ただ最低限の切り出し機能や、それから切り出し前にそれが目的のデータかを確認する表示機能を備えています。
 次のページをお願いします。
 ここまで、気候予測や影響評価の話ばかりをしてしまいましたけれども、当然ながら観測とそれによるメカニズム解明というのがあって、予測影響評価、適応策検討、さらにその効果検証、見直しができるということで、こちらは今年11月の地球観測に関する政府間会合のアジア・オセアニア地域会合において、気候変動適応について御説明の機会を得たときに私がプレゼンした資料になります。
 弊所内でも観測を担うPJ1、影響評価のPJ2、適応戦略のPJ3というのがございまして、それらが連携して適応研究に取り組む体制になっております。
 次のページをお願いいたします。
 こちらもAOGEOという先ほど申し上げた会合で御紹介した資料ですけども、AP-PLATのほうに載せている影響評価事例になります。
 衛星観測データを活用して、地形情報などを整備し、高潮と暴風雨のリスクがどうなるかなどが検討された事例となっておりまして、我が国のプロジェクトでフィジーなどのリスク評価を行ったものです。こうした取組事例、JISデータの表示や科学的なデータの提供だけではなくて、こういう実際に政策でどういうふうに活用していくのかみたいなところにつながる事例をしっかり政策決定者に提供していくことがA-PLATやAP-PLATの大きな役割だと考えております。
 次のページをお願いいたします。
 ということで、今後の方向性と課題を少しまとめてみました。私どものA-PLATというのは気候変動適応計画に基づいて運営しておりますので、そちらに示された方向性を幾つかピックアップしてまいりました。
 一つには、気候リスク情報といったものは、国、地方公共団体、事業者、国民等の各主体が気候変動適応に取り組む上での基礎であると位置づけられております。こうした各主体が情報に容易にアクセスできて、正確で分りやすい形で気候リスク情報等を得られるという基盤をつくっていくことが我々には求められていると考えています。
 基本戦略4の中で地域の適応推進というものも大きな柱でございますが、A-PLATやDIASの情報をしっかりと活用しながら、地方公共団体の計画策定、そして実施の支援が我々A-PLAT、AP-PLATに課せられた大きな任務と考えています。
 その上での課題ですけれども、一つには、この気候変動適応というものが非常にまだ認知度が低いといいますか、昨年の世論調査では気候変動という言葉と取組をともに知っているとお答えになった方は11.9%であったということで、こちらは適応計画の中で、5年後までに25%にするという目標が立っておりますけれども、より分かりやすく、広く各主体に届く情報発信を我々もA-PLATを通じてやっていかなければいけないということで、なかなかどうやっていくか、SNSなどいろんな取組に手をつけておりますけれども、まだまだ課題が多い分野と考えております。
 また、先ほども申しましたが、都道府県レベルでは相当計画が策定されてきていて、実施フェーズに移行してまいりました。一方で市町村はこれからの策定状況という形ですので、支援ニーズが非常に――これから計画をつくる、まだ適応もあまり知らない、A-PLATの存在も知らないといったところから、もう既に適応計画をつくって、次は何していこう、もっと高度な検討をということで、非常に高度な専門的なデータも含めてお求めになっている自治体と非常にニーズが多様になってきております。
 また、これから主役となる市町村においては、人員体制が非常に脆弱なところもありますので、そういったところにきちんと届く、役に立つ情報を届けていく、そしてそれをしっかりと支援していくためのやり方も大きな課題だろうと捉えております。
 次のページをお願いいたします。
 こうした課題に取り組むために、私ども関係者間の連携やステークホルダーとの協働のための仕組みを幾つか設けております。
 まず、大きな柱で、地域への支援というところでは、地域気候変動適応センター、既に44が立ち上がっておりますけれども、そういったところとの二月に1度のオンラインでの意見交換や、あるいは共同研究のスキームを立てまして、そういったものを通じての協働ということで取り組んでいます。
 そして、分野の違う研究者同士をつなぐ取組として、影響観測・監視に向けた検討チームということで、この観測・監視、多分野にわたるものを体系的に整理して、長期的な観測・監視を戦略的に進めるために、どういう現状になっているのか、そして今後何を優先すべきかを整理する検討チームを昨年度まで設置しておりました。
 この成果については、昨年度の気候変動影響評価報告書のほうに反映をされたというところでございます。そして、今、進めているのが気候変動予測・影響評価に係る連携ワーキンググループということで、こちらも昨年度まで検討チームということで、影響評価のグループとそれから気候予測のグループをつないだ連携の場としてつくっていますけれども、そういうものが適応策実施につながる情報の創出と伝達としてより役に立つようにということで、それらの研究グループだけではなくて、企業、それから自治体、そしてメディアの関係の方といった幅広いステークホルダーの方々をお招きして、意見交換をする場を設けて今検討を始めています。
 さらに企業の方々の中で、TCFDというのが非常に今盛んになってきておりまして、気候変動リスク情報を提供したり、リスクコンサルティングを行うようなビジネスが非常に速い勢いで育ってきていると思います。こうした民間企業の方々と私どもとの意見交換・協働の場というのを気候変動リスク産官学連携ネットワークという形で立ち上げまして、環境省、文部科学省様、そして私どもという形で運営をしています。こちらもまだ活動を始めたばかりでございますが、こういったものを通じて先ほどの課題に取り組んでいって、分かりやすい情報をしっかりといろいろな主体のポリシーメーカーにしっかり届けていく体制をつくっていきたいと思っております。
 次のページで終わりになります。
 先ほど申し上げたとおり、そういう工夫の一環として、様々なSNSも運用しておりますので、ぜひ皆様にツイッター等のフォローをいただければありがたいと思います。
 御清聴ありがとうございました。
【春日部会長】  吉川さんありがとうございました。
 お二人から気候変動適応に関して、データのプラットフォームの御説明をいただきました。国内から国際に向けて、予測も含むデータの連携のシステムや、国内政策やアジアへの貢献、また、ニーズが多様化しているということや、温度差が出てきているところもあるというような課題も伺いました。
 幅広いユーザーに向けてどちらのプラットフォームも様々な工夫をされていますけれども、その中には研究者が使いやすい形も工夫されていると伺いました。
 それでは、委員の皆様、御質問等ございましたらお願いしたいと思います。
【中北委員】  すみません、ボタンがないので声を上げさせていただいてよろしいですか。
【春日部会長】  中北委員ですね。はい、お願いいたします。
【中北委員】  お世話になります。よろしくお願いします。御発表ありがとうございました。
 今、DIASとA-PLATのお話をいただいたのですけれども、一つのお話で、環エネ課が進められているやつで、補足しておいたほうがいいのかなというのが、気候変動予測データセット2022というのを文科省の環エネ課さんと気象庁とで、これから出される予定をされていると思うのですが、それは前に発表があったのでしたっけ。
 そういうのが、DIASとA-PLAT関連の情報も含めて、全体を見た中でこういうデータセットがあって、それをどう利用するというデータセットと解説書が出される予定があるというのを少し補足で言っておいてもよろしいでしょうか。
 というのが1点と、それから、吉川さんのお話の中で適応に関する認識が低いというお話がありましたが、私も最近すごく感じていて、私の立場はこの文科省の統合プログラム、あとは河宮さんからもお話があると思いまが、その一連の中で、ハザードの影響評価と、それから適応の研究をやっていて、国土交通省の治水関連とかなり密にして、今、国土交通省の治水のほうはもう気候変動影響を入れた計画の見直し、それからどう適応するかというので、川から水があふれる前提で、流域全体で新しい知恵を出し合って、リスクから人を守ろうというところまで今動いています。それ以外で、農水とかももちろん進められますけども、地方行政や一般の方は、治水だけではないのですけど、気候変動適応に関する認識が全然高くないというのが最近よく分かってきまして、緩和に関して一生懸命やってこられている民間企業の方やNGOの方ですら「適応が大事なのですね」と今頃はっと気がついているステージだというので、先ほど古川さんがおっしゃったのにはすごく共感をします。
 どうしたらいいのかなというイメージのことをよく考えたのですけど、緩和は民間企業の方も、NGOの方も、あるいはもう全ての団体、大学であろうと何であろうと今取り組んでおられますよね。
 最初の一つは情報共有とそれから適応に関しては、やはり緩和の経験をいっぱいお持ちの環境省さん、緩和で今言いましたNGOや全ての人たちが動いていますね。それと同じような手法というか、やり方というのをボトムアップのやり方を考えていかないと適応は進まないのではないかなと思いました。
 以上です。
【春日部会長】  ありがとうございます。
 認知の向上のためということですね。
 では続けて、三枝委員、嶋田委員、お二人ちょっと続けて御意見いただきます。すみません、時間が迫っているので、短めにお願いいたします。
【三枝委員】  ピンポイントで聞きますと今の中北先生のお話ともちょっとつながるのですけども、二つのお話はとても重要だと思いまして、その間をつなぐのが多分d4PDF直接ではなくて、ダウンスケールされた空間・時間的に詳細化したデータをどこかが作って、これはDIASの側なのか、また別の機関なのかは分かりませんが、そういうものがありますと、例えば農業従事者の方々や自分たちの市町村でこういうことが起こるのかということがより分かるので、適応の意識も高まるのではないかと思いました。というわけで、時間・空間的に詳細化されたデータはどこで作るのでしょうかというのが質問です。
 以上です。
【春日部会長】  ありがとうございます。質問としてお受けしておきます。
 嶋田委員お願いします。
【嶋田委員】  これは質問ではなくて、意見ですけれども、石川委員からの発表にあったような市民科学的なアプローチというのはすごく大事だと思っています。昨年、気象庁が生物季節観測を縮小するという発表を行いました。これは予算や人材といった面で仕方がないと思いますが、その後、それを補うものとして、市民参加による調査を国環と気象庁が共同で行うと発表されました。
 この市民科学的なアプローチというのは、今後さらに重要になってくるのではないかと思いますし、文部科学省としても、取り組んでもいいのではないかなと強く感じます。
 観測精度が低いとかいろいろと問題はありますけれども、ITやビッグデータ解析とか補完できる方法は多いと思います。プラットフォームとしては、生物調査では国の生物多様性センターが「いきものログ」というプラットフォームを結構前に用意していて、様々な主体が調査をセットできるような便利な仕組みですけれども、やや手続が煩雑でして、ハードルが高いということで、より簡単に参加できるようなプラットフォームの整備をぜひ進めていただけるといいなと思っています。
 以上です。
【春日部会長】  重要なコメント、御意見をありがとうございました。
 では、ほかの委員の方に行く前に、三枝委員からの御質問で、ダウンスケールしたデータが必要ですけれども、それをどこが作るのかということに関して、どなたかお答えいただける方はいらっしゃいますか。石川様、吉川様、答えられる範囲でお答えいただけますか。
【吉川(国立環境研究所)】  ダウンスケールデータはいろいろと種類があって、様々な研究プロジェクトでも取り組まれていると思います。私ども国立環境研究所のグループでも統計的ダウンスケーリングという手法で、1キロメッシュのデータを作りまして、それをCIMP6ベースのものですね、ニーズ2020という名前のデータセットになりますけれども、それを影響評価予測などで使えるデータとして先ほどのA-PLAT Proのほうに載せまして、提供しています。
 ですので、誰か特定のところがというわけではなくて、ほかにも力学的ダウンスケーリングなど様々な機関で取り組まれていると思うので、この辺は多分全体像は環エネ課さんのほうがお詳しいのではないかなと思うのですけれども、そういう形で取り組んでいると。
 あと先ほどちょっと嶋田委員から御指摘いただきました生物季節観測も私ども気候変動適応センターで取り組ませていただいておりまして、おかげ様で大変反響を得て、今260人ぐらい調査員の方々が公募に応募してくださって、全国で輪が広がっています。
 そのための寄附金募集みたいなものを始めてみましたので、よろしければ御支援をいただければと思っております。
 以上です。
【春日部会長】  どうもありがとうございます。
 石川さん、追加の御意見、コメントはございますか。
【石川(JAMSTEC)】  今、吉川さんのほうから紹介あったように汎用的なものについては、環境省、環境研のほうで整備されておりますけども、力学ダウンスケーリングで詳細に、また正確かつ力学的なものを使って極端現象みたいなものをダウンスケーリングするというのは、この後は発表する河宮さんが紹介する統合プログラムのほうでもモデルを開発されておりますし、DIASのほうでは先ほど紹介したエンドツーエンドアプリケーションの中で、必要に応じてダウンスケーリングを行う仕組みというのがこれまでつくられたことがありますので、やはり、汎用的なものとそれから問題に合わせたものというのをうまく組み合わせて使っていただくというのが必要かなと思っており、DIASとA-PLATで連携をしながら、そのようなニーズに応えていきたいと思っております。
【春日部会長】  はい、どうもありがとうございます。
 これまでのこの部会の中でも、部会の委員からダウンスケーリングを独自にされているような工夫のお話も伺いました。今、石川さんがおっしゃってくださったように、問題に合わせて、それぞれの工夫と汎用のものと組み合わせていくことが重要だと思います。
 赤松委員、上田委員から手が挙がっています。短めにお願いいたします。お二人の御意見をお受けしたいと思います。
 赤松委員、お願いします。
【赤松委員】  では、赤松のほうから非常に簡単な御質問ですけれども、このプラットフォームが特に専門家にとっては、大変すばらしいツールに仕上がってきているということを私も感じます。お二方の御発表の中でもあったように、非専門家にどういうふうにこれを使ってもらうようにしていくのか、特に事業やビジネスという側面で使ってもらうことを推進するために考えられていることが幾つか今日あったかと思うのですが、特にそういうビジネス面などに限って考えたときに、何か方策がございましたらお教えいただきたいと思います。
 以上です。
【春日部会長】  はい、ありがとうございます。
 上田委員、お願いいたします。
【上田委員】  すみません、ありがとうございます。
 中北委員、三枝委員、赤松委員からの意見ともほぼ重なりますけれども、私も自治体で委員をやっておりますと適応部分に関しては、どうしたらいいか分からない。特に市町村に関してはより地域スペシフィックな情報が必要になってくるのだけれども、どこにアクセスしたらいいか分からないというのがあるので、そういった意味で言うと、そういう人たちのニーズをくみ上げるようなシステムというのもあっていいのかなと思いました。
 以上です。
【春日部会長】  はい、ありがとうございます。
 それぞれ、いろいろな方に届くような工夫を今現在されていると思いますけれども、御意見として、受けたいと思います。
それでは、次の御発表に移りたいと思います。石川さん、吉川さんありがとうございました。
 では次に、再びJAMSTECですが、河宮様から御発表いただきます。時間が押してしまって申し訳ありません。10分ということでよろしくお願いいたします。
【河宮(JAMSTEC)】  承知いたしました。海洋研究開発機構(JAMSTEC)の河宮と申します。今日はこのような機会を与えていただきありがとうございます。
 気候変動予測研究の現状と今後の方向性というタイトルで報告をいたしたいと思います。よろしくお願いします。
 次をお願いします。
 気候変動予測に関しては、今年度までの5年間の事業で、統合的気候モデル高度化研究プログラムというのがございまして、ここで地球全体や日本付近の気候変動の予測を行ってきております。
 そこに上げたボックスにある四つのコンポーネントで構成されておりまして、それぞれ、左から東大、左下がJAMSTEC、真ん中のボックスが気象業務支援センター、1番右のボックスが京大主幹で、予測から最終的にはハザード予測までつながる構成になっております。
 次のページをお願いします。
 代表的な成果としましては、例えばこの夏に公表されたIPCCの報告書に大きく貢献したような気候変動予測のデータの創出や、先ほどから話に上がっておりますd4PDFのデータセットの構築というのがあります。
 d4PDFは、地球全体のモデルと日本付近だけを切り取って、解像度を非常に高くしたようなモデルを併せて使って、特に今の時期に関しては高解像度のデータを創出して、治水やそのほか適応に関わる諸分野の研究者らとも共同しまして、実際の政策提言に役立つようなデータを創出してきているデータセットであります。
 次のページをお願いします。
 そのd4PFについてもう少しお話ししますと、非常に特徴的なこととしては、アンサンブル数の多さというのがあります。つまり、似たような条件でたくさんのケースについて予測を行って、言ってみれば、予測についてのサイコロをいっぱい振るような形ですけれども、そうすることで非常に起こる確率が低いけれども、起こったら大変みたいな極端な気象現象についても一定の知見が得られるようになってきているところが非常に特徴的なデータセットかなと思います。
 例えば、2018年だったと思います。災害級の暑さというので非常に騒ぎになった猛暑に関しても、こうしたデータセットの解析から温暖化がなければ、あれだけの猛暑は起こり得なかったという研究結果も出ておりまして、メディアでも盛んに報道されました。
 また、右にあるのはそうしたデータセットが実際の政策提言を行うような出版物にも採用されて、政策にも反映されてきていると。これは中北委員がいらっしゃる前で私が説明するのは非常に僣越で、汗顔の至りですけれども、非常にいい成果が得られてきているということをお伝えしたいと思います。
 次のページをお願いします。
 幸いなことに、いろいろ活用されてきてはいるのですけれども、当然課題もございまして、例えば先ほど申し上げたような猛暑に対して、温暖化の寄与がどの程度あるかといった話、あるいは大雨に対してはどうなんだという話は一括りにしていく、イベント・アトリビューションと呼ばれますけれども、そうした評価が可能になってきたというのは特定の異常気象をきちんとモデルで再現できるという再現性の向上というのは大変重要な役割を果たしておりますが、当然、今までその再現性を上げる努力というものに乗っかった成果ではあるわけです。
 ただ、いまだにできるものについてだけやると言ったところもなきにしもあらずで、こうしたモデルの再現性については、今後も向上させていく必要があります。
 また、この会議の主題でもありますSDGsなどについても、気候モデル、気候変動予測だけに限らず、応用が利くようになってきておりまして、人間活動の効果などもモデルに取り入れて計算を行えるようになってきております。
 例えば、一番下にあるような生物燃料の生産を進めたときに、食料生産とかち合うという問題はどう対応するのか。かつ食料生産、生物燃料生産に関して気候変動の影響はどうであるかといったことを全部一くくりにして考えられるようになってきていますけれども、ここら辺については、取組が始まったばかりということで、一層の高度化を進める必要があります。
 こうした課題があると思っているということのほかに、次のページをお願いします。
 ここは、先ほど三枝委員から御指摘のあった点に近いかなと思います。先ほど御紹介したd4PDFといったデータセットは、例えば2度上がって世界はどうだろう、4度上がった世界はどうだろうという予測を統計情報とともに出しています。それはそれで重要なアプローチで、先ほど公表されたAR6、IPCC報告書の中でも重要視されていますけれども、一方で適応策を進める上では、だんだんだんだん温暖化していく中で、自然変動も重なって、極値がぽんとある中で、下のポンチ絵にあるような図ですね、インフラが耐えられなくなる時期はいつ頃であるかも見据えながら、適応政策を進める必要がありますので、時間・空間的に詳細なデータセットを用いながら、ハザードも予測するようなモデルというものがどうしても必要になってきます。
 こうした点については、これから取組が必要であるということで、そこでありますように先ほど中北委員から御紹介があったデータセット2022の作成に先立ってユーザーからいろいろ意見を聞く会なども開いております。そうしたところで時間・空間的に詳細なデータセットの重要性は指摘されているということで取り組みますけれども、これをやると問題なのは先ほどちらっと申し上げた必要なアンサンブル数が膨大な実験数で、数限りなくやらないといけない問題があります。そういうところは、例えばAIを用いて、いい意味でサボると。働き方改革の折でもありますので、サボるところはサボるということをAIを使ってしてはどうかという提案があったりして、それについても取り組もうと思っているところです。
 次のページをお願いします。
 そのAIについて、活用の1例です。これは日本付近の黒潮に沿った海面行動のデータですけれども、そこに白めの日本地図がぽんぽんと四つあって、右上が一番大本のデータです。2キロ解像度の元データをその左側ですが、あえて10キロメートルに平滑化したデータを作って、その平滑化したデータから右上の2キロメートルのデータをAIで復元できるかということをやってみた結果を示しています。その復元をトライした結果が左下ですけれども、完璧ではありませんが、比較的よく細かい構造が再現できているということで、こうした技術も活用しながら時間・空間的に詳細なデータセットの作成に取り組んでいこうという話を現在こちらの研究コミュニティーでしています。
 次のページをお願いします。
 そうしたデータの配信に関しては先ほどから紹介があったA-PLAT、あるいはDIASといったところと密に協力していく必要があるかと思っています。適応策を実際に推進する人たちの窓口は、やはりA-PLATになると思いますけれども、そこでよく使われるデータは、A-PLATの手元にあるけれども、いざこういうデータが足りないなと思ったらDIASに行けば何でもある。その何でもあるDIASを支えているのが気候モデルによる予測データ創出であると。そういった形を整えられるように関係者で連絡を取り合いながら体制を組み立てようとしています。
 次ページをお願いします。
 途中で、確か上田委員でしょうか、ニーズをくみ上げることが非常に大切だというお話がありましたけれども、言ってみれば我々気候モデル開発者はデータ創出の一番上流側にあって、ユーザーとはちょっと遠いところにあるのかもしれないんですけれども、それでも予測データ創出の段階からユーザーのニーズがどういったものがあるかというのはある程度把握しながら実験セットを進める必要があるだろうということで、データセット2022に向けたユーザーとの交流の場なども設けまして、共通のビジョンを構築して、データを創出すると。そうしたデータに関しては責任を持って、利用法や制度の限界などを示した解説書というものを作ろうという話をしています。
 最後はまとめのページですけれども、ここは今までお話ししてきたことなので、繰り返すことはしないことにします。御覧になってください。
 ここで終わります。御清聴ありがとうございました。
【春日部会長】  河宮様、どうもありがとうございました。
 気候変動の予測研究と統合や高度化ということについて、前のお二人のお話とも組み合わせる形で御説明いただきました。ありがとうございました。
 それでは、委員の皆様から御質問等をお受けしたいと思います。
 佐藤委員、今のところお一人ですね。では、佐藤委員お願いいたします。
【佐藤委員】  どうもありがとうございます。大変分かりやすい御説明でした。
 私の質問は、先ほどの三枝さんのダウンスケーリングの話とも関連するのですが、AIによる統計的ダウンスケーリングにしろ、モデルによるダウンスケーリングにしろ、予測には精度があります。予測精度は地域や、入力の観測データの分布などに依存するため、ユーザーに提供する必要があります。どのように情報公開をされようとしているのかお聞かせください。
【春日部会長】  ありがとうございます。
 河宮様、お願いいたします。
【河宮(JAMSTEC)】  このまとめの前のページになると思いますけれども、そこのところです。前のページに行っていただきますか。
 データを実際にダウンロードしてどう使うんだという、そのノウハウとともにデータの精度の限界などもできるだけきちんと御説明した解説書は必要であるという認識はあります。それで、統合プログラムの次の発展形がきちんと構築されるとすればそこで、そういったものを作ろうかなということを話しています。
 実際海外での先行事例などではそうした解説書も出来上がっているようですので、そうしたものを手本にきちんとどこまで使っていいんだよ、ここから先はちょっと注意してくださいねというのがきちんと伝わるように、また、そういうところがきちんと――例えばA-PLATで、皆さんに対して窓口に当たっている人たちにきちんと伝わって、それが本当に日本全国の実践している人たちにも伝わるようになるといいかなと。もちろん今の段階では理想論ですけれども、そういうことを考えています。
【佐藤委員】  精度や確度をどう伝えるかはとても難しい問題です。先ほど河宮さんが説明されたように、大体このぐらいの偏差があるというのと、非常にまれだが非常に外れた現象が起こりうるというのとの両方を示す必要があります。時間をかけた、精度設計が重要かと思います。
【河宮(JAMSTEC)】  難しいことだけは我々も自覚しているつもりですので、コメントとしてありがとうございます。
【佐藤委員】  はい、よろしくお願いいたします。
【春日部会長】  ありがとうございます。多様なユーザーに分かりやすく精度の解説をするということに加えて、専門的なユーザーに対しては、精度の情報を添えて提供するという、その二続きが必要なのではないかなというふうに感じました。
 ありがとうございます。
 ほかに御意見等ございますか。
 岩谷様お願いします。
【岩谷委員】  岩谷です。
 すごく分かりやすい御説明ありがとうございました。
 今、佐藤委員がおっしゃっていたのと同じ質問というか内容ですけれども、私も同じように普段天気予報を伝える仕事をしている部署で仕事しております関係で、非常に社会実装の上で、精度――その信頼度ですよね、そこをどう見るかというところが、使い方によっては非常にあおったものであったり、それから間違った情報として広まるのではないかというところが使い方によって起こり得ると思っていて、気温の予測とかの幅ぐらいであればいいのですが、その後、降水の分布であったり、災害リスク、被害とか、それから、それを基に都市計画や防災対策までに持っていったときに、元の誤差が大きくだんだんだんだん広がっていくといいますか、精度の使い方によっては、間違ったものになりかねないのではないかというところがすごく危惧があって、一つの説明書を作られるということだったんですけれども、その説明書をできればいろんな研究機関が、例えばAR5などですと、可能性が非常に高いとか、そういう表現を共通の表現に合わせていただくといろんなものを出してきた研究機関が別々の信頼度の指標といいますか、その基準をつくられてしまうとよく分からなくなってしまうので、そこが統一されるといいなと感じました。
 以上です。
【河宮(JAMSTEC)】  よろしいですか。
【春日部会長】  はい、どうぞ。
【河宮(JAMSTEC)】  大変貴重な御意見をありがとうございます。
 そういった言葉遣いの統一というのは、細かいことのようで、非常に大事なところかなと思います。
 こういうデータセットに関わっている研究者の中にも、それこそIPCCの報告書を書いている者もおりますので、そうした用語の統一で精度に対する感覚を伝えるということには、ある程度訓練された人もおりますので、そうした経験はこういう解説書を作るのにも役立つのではないかなと思いました。ありがとうございます。
【岩谷委員】  ありがとうございました。
【春日部会長】  河宮様、途中で中北委員から先ほど御指摘のあったデータセット2022についても御紹介いただきまして、ありがとうございました。
 それでは、この議題についてここで終了したいと思います。
 本日、3人の皆様にいただきました御発表の内容、そして、委員の皆様からいただいた御議論や御質問を踏まえて、取りまとめに生かしてまいりたいと思います。
 それでは、議題2に移ります。
 地球観測・予測データの活用によるSDGs等への貢献の中間取りまとめ、この案について、審議を進めたいと思います。
 この部会の開催に先立って、本日に先立って、事務局から議題の論点について、委員の皆様に事前検討のお願いをしていますけれども、改めて事務局から御説明していただきたいと思います。
 その後、少し時間を取りまして、意見交換の場を設けたいと思います。
 それでは、堀川専門官、御説明をお願いいたします。
【堀川地球観測推進専門官】  それでは、資料2-1を御覧ください。
 こちらは中間取りまとめの目次(案)となっておりますが、現在、中間取りまとめに向けまして事務局で目次の構成を検討しています。
 構成としまして、「1、はじめに」から「4、今後の施策に向けた提言」の4章の構成となっております。
 「1、はじめに」では本取りまとめを作成するに当たりまして、作成経緯を1-1で記載しまして、1-2で、SDGsから見たら地球観測・予測データへのニーズとして、問題提起のほうを記載していくところで、2章目の地球観測・予測データによるSDGs等への貢献に関しては、2-1で地球観測・予測データによるSDGs等への貢献の現状としまして、これまでに御発表いただきました取組事例等について記載をしていく予定です。
 これまでの発表の中で御提示をしていただきましたデータプラットフォームの利活用の重要性や必要性等を踏まえまして、2-2でデータプラットフォームの国内外の動向について記載をしていきます。
 3章目は、方向性と課題としまして、昨年の第8期の地球観測推進部会で取りまとめましたフォローアップ報告書のほうに記載されております今後の方向性に掲げられた4項目に基づきまして、こちらに3-1から3-4のところで四つの項目ごとに記載しております。
 今回、この議題のところですけども、方向性と課題につきまして、議題で、方向性とそれぞれの課題を洗い出していくことを目的に議論を進めていきたいと考えております。
 事務局のほうで抽出しましたそれぞれの論点のほうを資料2-2に整理をしまして、部会開催前の事前の検討依頼として各委員に御連絡したところでございます。
 最後に、第4章としまして、今後の施策に向けた提言を記載していきまして、中間取りまとめを作成していきたいと考えております。
 次に、資料2-2を御覧ください。
 こちらの資料に関しましては、今回の中間取りまとめを作成するに当たりまして、議論の論点を事務局のほうで抽出して、整理した資料となっております。
 2ページ目を御覧いただきまして、こちらは先ほども触れましたが、昨年度の第8期地球観測推進部会にて取りまとめましたフォローアップ報告書に記載されております今後の方向に限られた4項目に沿って中間取りまとめの方向と課題のほうを整理していきたいというところでございます。
 御議論いただきたい論点に関しては、事務局にて抽出したものが3ページ目に記載しております。3ページ目に記載をした論点に関しまして、全委員のほうに事前に検討の依頼をいたしましたので、本議題で委員の皆様のほうから御意見をいただきたいと考えております。
 また、記載の論点以外の御意見もございましたら、ぜひ御意見をいただければと考えております。
 なお、本日御欠席となっております岩崎委員から事前に御意見をいただいておりますので、ここで御紹介したいと思います。
 岩崎委員からは、フォローアップ報告書に該当するところで言いますと、課題解決を試行した地球観測インフラの長期性、精密性の確保の項目に関しまして、論点として、事務局が抽出したもので、我が国の地球観測による連携貢献について、特にどの国際的枠組みに注目して活動を展開するのかという論点に関しましての御意見をいただいております。
 御意見の内容としましては、分野横断的であり、国際的関心が高い国際枠組みというところで、SDGsや気候変動枠組条約、パリ協定のほうが上げられるという御意見をいただいております。さらに個別のテーマに関する国際的枠組みとしましては、仙台防災枠組と生物多様性条約、あと、日本であまり注目度が高くないということですけども、砂漠化対処条約、こちらも数年前のお話でありますけども、大阪ブルー・オーシャン・ビジョンといった取組があるという御意見をいただいております。そのほかに、アフリカ開発会議のような日本政府が力を入れている地域的な開発協力の枠組みでも地球観測貢献をアピールしていくことも重要かと思うという御意見をいただいております。
 以上で事務局からの説明を終わります。
【春日部会長】  はい、堀川さんありがとうございました。
 それでは、今、最後に見せていただいている四つの大きなフォローアップ報告書の項目、この順番で御意見をいただきたいと思います。
 最初の地球観測情報をデータ利活用の現場につなぐ取組の強化、この点について御意見等いただけますでしょうか。
 若松委員、赤松委員、そして、村岡委員から手が挙がっています。ちょっと私のほうでは、どの方がどういう順番で手を挙げたか、ほとんど同時だったので、ちょっとここで上から申し訳ありません。
 若松委員からお願いします。
【若松委員】  若松です。
 1番目と4番目も関係するかもしれないですけれども、専門家でないユーザー、特に企業や自治体などをどうやって巻き込むかというのが大きな論点の一つなのかなと思っております。そのときに、多分利用と言っても2種類あると思っていまして、必然性のある利用と、あと言葉は悪いかもしれないけど、必然性のない利用の両方があるのかなと思います。
 必然性のある利用については、そこそこ行き渡っているのかなとは思いつつも、必然性のある利用をどうやってさらに増やしていくか。それには、法律やルールやガイドライン、企業向けであれば、今日も話題に出ていたTCFDの話だったり、自治体においては、何か業務に関するルール、ガイドラインなどに地球観測データ利用を刷り込んでいくところが重要かと思います。
 一方、ちょっと言葉が悪いかもと言いましたけども、必然性のない利用については、どうやって、そういった人たちにも、きちんと露出する、そういう人たちと接点を持つかということを考える必要があって、どちらかというともう何かグーグルマップみたいなイメージになってくると思いますけれども、ユーザーにとって使いやすいものであり、欲しいデータがそこにある、なおかつ地球観測データだけではなくて、ほかのデータともきっちり組み合わせることができる。あとはエンドユーザーからはお金を取らないグーグルマップのやり方みたいなのが参考になると思いますし、グーグルマップやほかのいろんなYouTubeサイトにデータとして提供するやり方も重要なアプローチかなと思います。
 以上です。
【春日部会長】  はい、ありがとうございました。貴重な御意見ありがとうございます。
 それでは、次に赤松委員お願いできますか。
【赤松委員】  ありがとうございます。
 事務局のほうで私の参考資料を表示できますでしょうか。3ページ目です。
 今日プラットフォームの話がございました。プラットフォームは非常に大事で、ここが今充実してきているということは、論を待たないですけれども、やはりプラットフォームがあるだけではなかなかうまくいかないということがあります。それはなぜかというと、プラットフォームでは、例えばこの資料では我が社のワンストップサービスと言っていますけども、測って、解析して、利活用まで持っていくというのを全部一貫して誰かがまとめてやれないと、なかなか専門家でない利用者まで届けることができないというのが現実であります。
 今、プラットフォームもいろいろありますけれども、それぞれのコンポーネントがあるという形になってきているかなと思うので、やはりここをワンストップでまとめられるような、いわゆるサービスプロバイディングやコンサルティングの機能がないと、エンドユーザーまでなかなか届かないということが一つあるかと思います。
 それをドライブするのに、先ほど石川さんのほうからちょっとお話ございましたけれども、欧州のCopernicusのような仕組みを回していくことが必要になるかと思います。衛星オペレーター、サービスプロバイダー、利用機関が一体となった体制をつくって、その上でアプリケーションを開発して、実際の運用をドライブしていくというプロジェクトの形成というのが必要になってくるかと思います。
 今日は石川さん、それから吉川さんのプラットフォームの話を聞いていて、そこのところをより強めていく必要があるのではないかなと思いました。
 以上でございます。
【春日部会長】  赤松様、ありがとうございました。
 資料は皆様のお手元にあると思いますけれども、本当に貴重な事例だと思います。また、このようなサービスが広がっていくことによって、データを作っている人たち、また、プラットフォームを整備してきた人たちの努力もより報われる形になると思います。
 では、村岡委員お願いします。
【村岡委員】  ありがとうございます。村岡です。
 この四つの論点のうち、一番上の生物多様性に関するところも入れていただいていますので、それに関して少しだけキーワードだけになるかと思いますが申し上げます。
 生物多様性というと絶滅に瀕した生物や珍しい生物がよく取り上げられますけれども、やはり生態系全般としての生物多様性という考え方、あるいは自然資本としての生物多様性、生態系という考え方でもって、恐らく大きく分けて四つ取り組むべき、検討していくべき課題があると理解しています。
 一つは、自然再生あるいは保全の問題です。これは背景としては、今年のG7サミットで、「30 by 30」、すなわち、2030年までに各国内の陸地と海洋の30%を保全・保護するという目標が合意されましたので、これに対応するための生態系・生物多様性観測・評価の課題があります。またCBD COP15では「Post-2020 Global Biodiversity Framework」が今後定められることになっています。自然生態系の保護、あるいは人が持続可能なかたちで利用する生態系、人為あるいは気候変動の影響が及ぶ生態系という問題に対応するための生物多様性に関する観測、あるいは知見の創出というものが必要とされます。
二つ目は、Nature-based Solutionsです。自然を基盤とした課題解決と言われます。これがカバーするものとして気候変動の緩和・適応、Ecosystem-based disaster risk reduction、新たな感染症に対する問題などが挙げられます。自然を基盤とした課題解決、生態系、生物多様性を適切に利活用するためには、フィールド観測や衛星観測などを含むさまざまな地球観測データ、あるいは知見が非常に重要な役割を持ちます。
 三つ目、我が国でも推進していくことになっていますカーボンニュートラル問題です。当然、生態系は陸上のグリーンカーボン、あるいは水域のブルーカーボンと呼ばれているように炭素の吸収源になっていますが、それに加えて生態系が持つ多面的な機能による環境調節機能の理解と活用が重要です。そこにさらに緩和策、適応策の適切な計画と実施においても生物多様性や生態系の観測、知見が非常に重要になってきます。例えば再生可能エネルギーのインフラ設備導入の促進の場合にも、自然環境保全と両立していくということが必要とされますので、そこでも自然生態系に関する観測と評価が重要な役割を持ちます。
 四つ目、最後にします。長くなってすみません、産業、経済と生物多様性の問題です。一つは自然資本の勘定です。Ecosystem Accountingあるいは生態系、生物多様性の経済的な価値、こういったものをきちんと観測あるいはその社会経済的な分析によって明らかにしていくことが求められます。特に一次産業への影響であるとか、経済的にはESG投資、またTNFDへの対応ということがあるかとか思います。そういったところに全般的に生物多様性の問題というのはかなり大きくなってきていますので、地球観測データの役割というのが大きくなると思います。
 以上です。長くなりました。
【春日部会長】  村岡委員、どうもありがとうございました。
 今おっしゃってくださったことは非常に整理された形ですので、取りまとめにも生かしていきたいと思います。
 次に手を挙げてくださっているのは、浦嶋委員でしょうか。
【浦嶋委員】  すみません、浦嶋です。今ちょっと発言をしようと思ったのですけど、村岡委員が本当に全てを網羅してくださったので、全く何か補足することはあまりないなと思いました。今まで色々な委員の先生方がお話をされているどれもが本当に思っていることと同じで、村岡委員がお話しされたその前の赤松委員がお話しされた、コンサルティング、コンサルタントが必要だ、重要だということ、その話とダウンスケーリングと不確実性のことについてちょっとコメントさせていただきたいと思っています。
 やはり、先ほどからありますとおりダウンスケーリングがすごく重要だと思いますが、そこにはやはりどうしても不確実性が伴う訳で、私どももそういったTCFD対応として、ダウンスケーリングした気候変動影響の評価をお客さまに提供しています。やはり、そこへコンサルティングが間に入って、学術的ないろいろな研究成果や、その不確実性のことも含めて、できるだけ分かりやすくご説明することがすごく重要なのかなと思っています。ですから、やはりユーザーの人たちの属性といいますか、業種といいますか、そういった特性ごとにどのように分かりやすくリーチするのか、産学連携と簡単に言えばそうなのですけども、どういうチャネルでその情報をきちっと使って、こうした地球観測のデータを有益に、有効に活用していくのか、間に入るチャネルというのがすごく大事なのかなと改めて思いました。不確実なデータを出していくことに関して、研究サイドの皆さんは、すごくリスクが高いとお思いなるかもしれないですけど、ここはすごく対話が重要なのかなと思っていまして、不確実であっても、言葉を尽くして対話をしていく、そこからまた新しくどういうデータが必要なのかとか、このデータはどこに問題があるのかと、やはりそこから次のいい道が出てくるのではないかなと。すみません、非常に感覚的な物言いで大変恐縮ですけども、そんなことをちょっと思いました。ありがとうございます。
【春日部会長】  はい、ありがとうございます。
 御指摘の点は本当にとても皆さん悩まれるところだと思います。不確実性を踏まえて、研究者としての言葉で説明すると要は何を言っているのか分からないという御批判をいただくこともありますので、本当に両面、悩ましいと思いますが、十分な対話という点は本当に必要だと思います。
 次に、嶋田委員お願いします。
【嶋田委員】  はい、嶋田です。企業、自治体を巻き込むために何が必要なのかという論点についてです。そもそも規制緩和や積極的なデータの公開によって以前に比べると地球観測データへのアクセスのハードルはすごく低くなっていって、利活用は既にかなり進んでいると思います。
 気象庁は、基盤的気象データのオープン化を進め、カタログやAPIなども用意して、誰でも使えるようにしたという結果、多くの国民にとって気象データというのは、大変身近なものになっていて、今や小学生がスマホでXバンドMPレーダーのデータを見る時代になったという意味では画期的な進歩だと思います。というわけで、地球観測データの利活用をさらに進めるためには、とにかくデータのオープン化が鍵だと思いますし、ぜひ進めていただきたいと思います。
 その中から、様々な活用のアイデアは、ある意味自然発生的に出てくると思っています。誰でもいつでも自由に使えるということが利活用の近道だと思います。
 以上です。
【春日部会長】  はい、ありがとうございます。
 では続いて、堀委員、川辺委員から御意見いただきたいと思います。ほかの項目についても議論したいので、短めにお願いできればありがたいと思います。
【堀委員】  はい、非常に後ろ向きな指摘になりますが、4番目の論点です。明確なユースケースがある場合は、利用についてさまざまな「美しい話」がありますが、明確なユースケースがない場合、歩留りが悪い利用になってしまうというのが一般論ではないかと思います。共通的、基盤的な取組は、必ずしも明確なユースケースがなく,利用の歩留りが悪いことを考えた上で、コストパフォーマンスを冷静に考えて、どこまで利用に取り組むかを真面目に考える必要があるのではないでしょうか。
本当に後ろ向きで申し訳ございませんが、利用の「美しい話」ばかりではなく、データ利用の専門ではない企業、自治体を巻き込む際に、どれだけ人的資源を当てて、正しくデータを利用してもらうかを考えなければなりません。決して簡単ではないということを踏まえた上で、利用を考えることが必要であると思います。
繰り返しですが、後ろ向きな意見で大変恐縮です。しかし、歩留りが高くないということを踏まえた上で取り組むべきではないかと考えております。
 以上です。
【春日部会長】  ありがとうございます。
 ちょっと確認ですが、今の御意見はフォローアップ報告書の論点の4番目にも関係することですね。
【堀委員】  4番目です。決して簡単なことではないということです。
【春日部会長】  本当に現実を踏まえた重要な御指摘だと思います。ありがとうございました。
 それでは、川辺委員、それから神成委員、お二人とも今議論しているのは一番上の取組の強化のところですが、そういうことでよろしかったでしょうか。
 川辺委員、お願いします。
【川辺委員】  はい、ありがとうございます。
 先ほどのモデルの話も踏まえてですけれども、1番目の2ポツで、専門家でないユーザーの話というのが出てきました。この、ユーザーとの関わりをどう考えるのかですけれども、現場につなぐ取組とは、現場とのパートナーシップをどう構築するかということかと思っております。
 例えば、何かモデルをつくって、予測して、それを提供するというお話が先ほど出てきたと思いますが、地域の方たちに提供するときに一方的に提供するのではなくて、その地域の方たちの経験的な知識や情報というものも、そのモデルに取り込むことができないかと考えます。そうやって経験知と突き合わせをすることによって、現場で有効に使える予測モデルができるのではないかなと思います。リスクコミュニケーションにおいては対話と共考と協働が大切と言われますが、この地球観測・予測データの利活用でもまた、対話を通して共に考え協働することを一つの柱にしていただけるとよいのではないかと思います。
 以上でございます。
【春日部会長】  はい、ありがとうございます。
 今の御意見は先ほどの浦嶋委員からのどういうチャネルをつくるかということ、それから河宮様から御発表があった中で、研究をするところからのコデザインが必要という御指摘とも共通するのではないかと感じました。
 それでは、神成委員、お願いします。
【神成委員】  すみません、神成です。手短に申し上げます。
 この自治体に関する点でコメントします。現在、各地方自治体がそれぞれSDGsの計画策定を進めておりますが、現状では、地球環境関係の内容が含まれておりません。この状況は、必要性の点から生じたものでは無く、どのように考え、記載すべきかという点に関する知見が自治体の現場に不足しているからではないかと推察しております。本部会の取り組みを、内閣府の部局含めた関係部署に情報提供することで、状況改善が図られると考え、検討したらどうかという提案です。
 以上です。
【春日部会長】  貴重な御意見をありがとうございました。
 それでは、次の項目に行きたいと思います。
 課題解決を試行した地球観測インフラの長期性、継続性の確保、この項目について、また論点の例が挙がっていますけれども、これらについて御意見いただけるでしょうか。
 河野委員お願いします。
【河野委員】  はい、ありがとうございます。ちょっと手短にしたいと思います。
 まず、どういう国際枠組みでアピールしていくかという点につきまして、喫緊の課題となっている気候変動に対する対策、全球の生物多様性の保護など、グローバルな課題に対応する枠組みに参画し、その中で一定の役割を果たすという形がよいと思っています。
 海洋の分野で申しますとGEOやIOC-ユネスコにおける活動が一つの軸となると思います。
 国連海洋科学の10年などは、全球海洋観測システムがそれに該当します。
 もう一つ、現在、特に大きな話題となっているのが北極域ですので、北極域で今つくられつつある国際観測ネットワーク、これは「SAON」と書いて、セイオンと申しますが、こういったところへの貢献を今後していくべきだと思っています。
 こういったグローバルな課題について、科学的根拠を与えるようなデータを取れる国は一握りだというのが現実です。
 我が国としましては、現在の国際情勢を踏まえると、こういったデータの活用、観測方法の普及・啓発、これも含めまして、ASEAN諸国や太平洋の島嶼国といったところへ貢献していく姿を見せることも大事な観点かなと思っています。
 今まで我々フロートや船舶による観測が幾ら強いとは言っても、これ以上プレゼンスを減らすのはよくないと思いますけど、これをずっと続けていくというのはあまり賢くなくて、今後は10年先、20年先を見据えて、自動観測やリモートセンシングなどの新技術の導入を積極的に推進していくことが大事かと思います。
 最後に官民の連携についてですが、観測データ、本当のデータですね。観測データ得るためのリソースを官民で分担するというのはちょっとやや困難なのかなと感じています。先ほど来言われているとおり、オープンにするのが原則です。一方で、市民参加型の観測については、今回の国連海洋科学の10年の重要な要素だと思っています。石川からの発表にも蝶やコウノトリの市民参加型観測の例が挙げられていました。海洋プラスチックなど市民の関心が深いものについては、こういった市民観測が広がりつつあると。それから漁業者へ何らかのデータを提供するサービスも漁業者側からデータをフィードバックしていただけるというふうになってきました。これが先ほどの川辺委員からの現場の経験知を何らかの形で活かすことにつながると思います。
 以上です。
【春日部会長】  国際枠組みから将来を見据えた地球観測の必要性、そして市民観測のチャンス、機会について、いろいろと重要な御意見をいただきました。ありがとうございます。
 それでは、赤松委員お願いします。
【赤松委員】  ありがとうございます。それではまた、事務局のほうで、私の参考資料の4ページを表示できますでしょうか。
 今から話すのは、衛星の話ですけども、我々が使っている衛星は今このくらいあって、17種類以上あります。時間がないので結論だけ言いますが、我々のような実務サイドからすると、公共的な衛星、公的な機関の衛星は例えばALOS-3、4を続けていただくというのがいいですし、民間の衛星は、実は今はもうコンステレーション衛星が物すごくたくさん出ていて、これを活用していけばいいですし、民間は民間でどんどんこれからやっていくので、あまりこの部分を気にしなくても、リソースは増えていくだろうなと考えています。
 これは情報の紹介ですけども、今、G空間EXPOがオンラインで開催されていますが、この中で「衛星コンステレーション時代の本格到来と将来展望」というシンポジウムをオンライン配信しています。12月26日、日曜日までですけれども、こういった情報が全て満載されておりますので、もし、御関心ありましたら、ぜひ御覧いただければと思います。
 情報提供でございます。以上です。
【春日部会長】  はい、貴重な情報ありがとうございました。
 では、平林委員お願いします。少し短めにお願いできれば幸いです。
【平林委員】  今、赤松委員から地表面を高分解能で観測する衛星についてお話がありましたけど、こちらのほうからは地球環境を観測する衛星について少し意見を述べさせていただければと思います。
 SDGs、さらにポストSDGsやパリ協定での目標は、今後、20年、30年というスパンで長期的に取り組むべき目標でございますので、その実現に向けては、長期継続的な地球観測システムの構築発展というのが必要ではないかと思います。
 また、ユーザーが定着して、安心して、データを使う環境を整えていくという意味においても、地球観測インフラの長期継続的な予見性を可視化するということもとても重要なことではないかと思います。
 一方で国際的な観点で言いますと、国際的な枠組みもいろいろとありますけれども、その中で国際スタンダードを取っていくということや、一目置かれるような強みと戦略を持って臨むことが大切ではないかと思います。
 強みという観点では、もちろん性能の高さといったような差別化技術もありますけれども、地球環境の分野に関しては長期継続的なデータセットというものも強みであり、重要な要素になってまいります。これらがあって初めて外交的なカードや国際的なプレゼンスを発揮できるのではないかと考えておりますので、地球観測インフラの長期継続性というのは非常に重要なことではないかと思っています。
 以上です。
【春日部会長】  ありがとうございます。
 重要なキーワードを幾つかいただいたと思います。まとめに盛り込んでいきたいと思います。
 それでは、ちょっと時間が押していますので、次の項目、予測情報の高精度化について御意見をいただきたいと思います。
 まず、先ほど、手を挙げていただいた佐藤委員、お願いします。
【佐藤委員】  はい、ありがとうございます。これは画面共有はできないですよね。
【春日部会長】  できません。申し訳ありません。
【佐藤委員】  はい、分かりました。では、ちょっと言葉のほうで説明をさせていただきます。
 私がいただいた問題は、2番目の問題になります。
 気候モデルの初期値に地球観測データが活用されている(データ同化)が今後どのような地球観測データを活用することが考えられるのかということです。
 まず、気候モデルでカバーすべき領域ですが、水平にはグローバルとなりますが、高度領域というのも大切で、大気の循環や波動でよく混ざった大気はトップが約100キロメートルです。この地上から100kmの大気の初期値が必要ということになります。
 一番大事なのは、気温と風です。これはもう基本的な要素になります。
 その観測法というのは、地上からの観測が主体で、気球やプロファイラーというレーダーです。ただし、地上観測は分解能や精度がとても高いのですが、グローバルな配置が均一でないとか、海洋では観測できないという問題があり、衛星観測が非常に大事です。
 しかし、一方、衛星観測というのは、宇宙から見るため、分解能や精度に限界があります。ですので、地上観測と衛星観測というのは相補的でどちらも重要ということになります。
 それから、先ほど観測には長期連続というキーワードが大事だということを委員の方がおっしゃっておりましたけれども、これも大事な視点です。衛星は一般に寿命が短いです。ですので、基本的な地上観測で、バリデーションをしながら次々と衛星を打ち上げていくということが必要になります。そういう意味でも相補的ということになります。
 今のところ気温を反映する赤外放射のデータが、データ同化でモデルに組み入れられて、モデルの初期値や解析値がつくられています。水平スケール2000km以上では気温の場から風速場を推定することができますが、気温だけでは風速場が推定できない場所があります。それは熱帯域です。熱帯域は気温だけ測っていても駄目で、風は独立に測らないといけません。また、2000kmより小さなスケールになると、気温の場と風の場がバランスしないため、やはり気温と風の両方が必要になります。これからの風を測るライダーやレーダーを積んだ衛星が稼働中または将来計画としてあります。領域解析にはこのような衛星の風観測データがかなり利用されて、初期値の精度が上がってくると考えられます。
モデルによる予測に必要な物理量は気温と風が基本ですが、加えて降水の予測には水蒸気の観測が必要です。また、大気微量成分の観測も重要です。オゾン層の変動をとらえるためのオゾン観測とオゾン化学に関わる大気微量成分、また、二酸化炭素、メタンなどの温室効果気体の観測も重要でしょう。気象要素という意味では、雲、降水、雷といった基本的な気象要素のモニタリングも大事になってくると思います。
【春日部会長】  佐藤さん、まとめていただいているようなので、後ほどメールでいただけますでしょうか。
【佐藤委員】  はい、そのようにさせていただきます。まとめますと、この基盤となる気温と風の観測の継続性も重要性が理解されず危うくなる可能性があるため、きちんと書く必要があるのではということかと思います。
【春日部会長】  はい、重要な意見をありがとうございます。
 ほかの委員の方々にも後ほど申し上げますけれども、今日出尽くせない議論、御意見については、後ほど文書でいただきたいと思います。
 それでは、小縣部会長代理、そして中北委員お二人から御意見をいただいたところで、この議題については終了とさせていただきたいと思います。
 では、小縣様、お願いします。
【小縣部会長代理】  部会長、時間がないので、簡単に申し上げます。
 この3番目の予測情報の高精度化についてですけれども、これは1番目の現場ユーザーの利活用にも当然つながってくると思います。私どもはここに1番目に表現された「専門家ではないユーザー企業」ではあります。先日も、部会長以下、事務局の皆様に、JR東日本防災研究所を訪れていただきまして、ありがとうございます。そのユーザー企業も防災研究所を作って、観測システムとして、精度が低かったものを精度を高くすることで、より有用なものにしてきたという歴史がございます。最初は観測精度が低くても、その精度を上げる。モデルの成熟度が低くても、そのモデルを磨いていくということで、精度を上げていく、しかし一方、上がる前でも十分活用してきたという経験がございます。
 そういう意味では、私どもは鉄道ではございますけれども、私どもの持っているインフラというのは、応用の場、「fields of applications」と言っているのですけど、まさに応用の場だというふうに思います。
 この3番目に書かれているような、研究者とユーザー間のコミュニケーションについても、その「コミュニケーションの場」というものを何か適切に研究側でも、それから利用者側でも設計することで、かなりの成果が出てくるのではないかと思います。すなわち、そういう場で適切なコミュニケーションを取れば、私どもは様々なユースケースを想定して、具体的な要望もできますし、結果それを応用の場で活用した場合においては、研究の方も、そのニーズや結果を基にさらに高精度化の進む道筋がつけられるのではないかと思います。双方向のコミュニケーションが重要だと思います。資料では、全体として、専門性がないユーザー・サイドの方が使うというワンウエーみたいなイメージも出ておりますが、ぜひ私どもとすればそういう双方向で、高精度化を行う道筋がつけられればいいなと思います。そういう面での応用の場を持ってございますので、よろしくお願いいたします。
 以上です。
【春日部会長】  どうもありがとうございました。
 先日は本当に防災研究所を見学させていただきまして、ありがとうございました。
 双方向のことが重要ということはほかの方からも御指摘があったとおりと思います。
 中北委員、申し訳ありません。本当に一言でお願いできるでしょうか。
【中北委員】  簡単な2点ですね、一番上のことも聞かれているのかなと思いましたが、上の話はもうかなり意見がありましたので、話から外します。
 僕は上の三つのポツですけれども、不確実性低減の話と利用したユーザーの間をどう取り持つかということで、1点目は不確実性があっても利用できるよということを前提にした結びつきをきちんとしましょうと。そのときに、このデータはどういう意味を持つか、不確実性がある中で、どこまでは信号として、あるいは情報として呼んでいいか、あるいはここはまだ信じては駄目ですかというようなところの情報の結合と。それからもう一つは、不確実性をどううまく利用するかというところに関しても、研究開発及びアイデアを共有していくことがすごく大事だと思います。
もう一つは、さっきありましたようにリテラシーが高くなっていただきたい気象や土木のコンサルタンツのところを通してのコミュニケーションというのも大事にしていただければと思います。
 以上です。
【春日部会長】  どうもありがとうございました。
 皆様、本当に御準備いただいたところ進行の不手際で申し訳ありません。
 今後、事務局のほうから御意見についてメールでいただく御連絡をしていただきます。それを含めて、取りまとめに生かしていきたいと思います。
 それでは、最後の議題になります。
 これは服部推進官のほうから。
【服部環境科学技術推進官】  部会長、GEOのほうは急がなくてもいいので、今回はスキップさせていただいて、環境省さんのほうが多分お急ぎだと思いますので、そういうふうにさせていただいてよろしいでしょうか。
【春日部会長】  分りました。それでは、最後の議題です。環境省よりグローバル・ストックテイクに向けた監視に関する取組について御説明をお願いいたします。
【吉富(環境省)】  環境省研究調査室の吉富と申します。今日はこのようなお時間をいただきどうもありがとうございます。
 環境省よりグローバル・ストックテイクに向けた温室効果ガス監視に関する取組の御報告及びこの内容について、UNFCCC事務局に対して外務省を通じて提出することを皆様に御報告いたします。
 次のスライドをお願いします。
 パリ協定では次のような世界共通の長期目標を掲げています。
 一つ目として、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保ち、1.5度に抑える努力をすること。
 二つ目として、そのためにできる限り早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には温室効果ガス排出量と森林等による吸収量のバランスを取ることを定めています。
 パリ協定の実施状況を確認し、目標を見直すため、2023年の第1回以降、5年ごとにグローバル・ストックテイクと呼ばれる制度が実施されることになっています。そこでは、各国の政府が大量の科学的根拠に基づいて、各国の温室効果ガス排出量と削減目標に向けた進捗状況を報告する義務があります。しかし、各国の報告に用いられるデータや手法は統一されておらず、客観的な手法で検証する必要があります。
 温室効果ガスに関する地球観測には、次のような三つの特徴があります。
 一つ目として、地球規模で大気中温室効果ガス濃度の監視が可能であること。
 二つ目として、地球規模で人為起源・自然起源の排出量・吸収量の監視が可能であること。
 さらに三つ目として、国別インベントリーでは把握しにくいとされる項目も監視することが可能であること。
 このような特徴からグローバル・ストックテイクへの貢献が期待されています。
 すなわち、都市から国、地域、そして全球にわたる相関的なマルチスケールでのGHG動態を把握し、観測から収支評価までスピーディーに情報提供する監視システムを構築することこそとかグローバル・ストックテイクへの貢献につながると考えています。
 これはまた、温暖化の現象解明と予測精度の向上にも寄与することが見込まれています。
 次のスライドをお願いします。
 そこで、グローバル・ストックテイクへの着実な実施を科学面で支援するため、GHG収支の高精度かつ継続性がある監視体制を提案し、各国による報告の透明性を検証できるよう、各種の観測、モデル推定を統合して報告する体制を構築しようと考え、環境省では環境研究総合推進費、戦略課題を立てました。
 国立環境研究所、気象庁、気象研究所、JAMSTEC、千葉大で構成される研究チームを構成し、温室効果ガス収支のマルチスケール監視とモデル高度化に関する統合的研究を今年度より3年間で行っています。来年2月までの第1情報提供期間でこの研究課題を主体としてまとめる知見を報告書として提出し、日本の貢献として、2023年グローバル・ストックテイクに提供していきたいと考えています。
 そのため、この第1回情報収集期間において、現時点までの研究のサマリーとして報告書を作成しました。その特徴としては、下の中央部分に掲げている3点の特徴があります。
 一つ目として、複数の空間解像度で自然起源・人為起源のGHG吸・排出量を推定したこと。
 二つ目として、アジア・太平洋域での継続的な高密度観測データにより、東アジア域の推定に取り分け強みを持っていること。
 三つ目として、2020年までの推定結果をトップダウン及びボトムアップともに示し、従来に比べてスピーディーに値を出せる体制を構築し、それは政策、社会ニーズに応えることに将来的につながること、これらを特徴としています。
 この報告書は外務省を通じてUNFCCC事務局に提出する予定です。
 最後に、時間的に限られているので、この報告書から2点だけ皆様に内容を共有させていただきたいと思います。
 次のスライドをお願いします。
 一つ目として、全球及び地域のメタン収集をモデル計算により推定しました。ここ20年間におけるメタン収支の時間的、地域的な変動を明らかにした図が上の図となります。
 例えば、最も排出量の変化が大きかった地域や経済部門に関する知見ももたらされ、メタン排出の削減に重要な指針となる示唆を与えるものとなっています。
 石炭やシェルガス等、化石燃料採掘時を漏えいといった正確な統計情報が得られにくい排出源の変動を検出することが可能になりました。
 同様の評価は、メタンだけではなく、CO2やN2Oについても実施済みであり、温室効果ガス収支を包括的に監視する体制確立に貢献しています。
 もう一つの具体例としては、COVID-19の感染拡大に伴う経済活動の制限により、中国における化石燃料消費による二酸化炭素の放出量が減少したことを、日本へ移流してくる大気観測から検出しました。
 この結果は大気観測が国別・地域別温室効果ガス排出量の客観的な検証に役立つことを立証しています。
 今回の御紹介は第1回情報収集期間での事務局への提供となりますが、今後続く、残る2回の情報収集期間においても、このSⅡ-8より、日本の報告値として結果をインプットしていけるように努力していきたいと思います。
 以上です。
【春日部会長】  はい、環境省様ありがとうございました。
 日本の地球観測のデータ、そして研究を基に日本としての報告書、パリ協定のグローバル・ストックテイクに提供する、発表するということを地球観測推進部会として承りました。どうもありがとうございます。
 それでは、この議題を終了いたします。
 本当に司会の不手際で時間をオーバーしてしまって申し訳ございません。
 本日は、石川様、河宮様、そして吉川様からの情報、そしていろいろな意見の御発表ありがとうございました。
 最後に、事務局から連絡事項についてお願いしたいと思います。
【堀川地球観測推進専門官】  本日の議事録につきましては、後日事務局よりメールで委員の皆様にお送りいたします。各委員に御確認いただいた後に、文部科学省のホームページで公表いたします。
 次回、第5回部会は2月に開催を予定しております。開催については、改めて御連絡いたします。
 事務局からの連絡事項は、以上となります。
【春日部会長】  以上をもちまして、第9期地球観測推進部会の第4回会合を閉会いたします。
 本日はどうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

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