第9期地球観測推進部会(第3回) 議事録

1.日時

令和3年10月15日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン開催

3.出席者

委員

春日部会長,小縣部会長代理,赤松委員,岩崎委員,岩谷委員,浦嶋委員,蟹江委員,河野委員,川辺委員,三枝委員,佐藤委員,嶋田委員,神成委員,中北委員,平林委員,堀委員,村岡委員,六川委員

文部科学省

堀内研究開発局審議官,土居下環境エネルギー課長,服部環境科学技術推進官,橋本課長補佐,堀川地球観測推進専門官

オブザーバー

内閣府 辻原参事官

4.議事録

【春日部会長】 おはようございます。ただいまより、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会、第9期地球観測推進部会の第3回会合を開催いたします。
本日はお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。
真鍋淑郎博士がノーベル物理学賞を受賞されました。真鍋先生、そして、それに続く皆様が開発された気候モデルは、地球観測のデータに基づいて作られているものです。ですので、この部会としても大変今回の御受賞に意義を感じたところです。
それでは、最初に、委員の御出欠と資料の確認をお願いします。
また、本日はオンラインでの会議になりますので、進行に当たっての留意点があれば、それについても事務局から併せて説明をお願いいたします。
【堀川地球観測推進専門官】 それでは出席確認ですが、本日は18名の委員に御出席いただいており、過半(11名)に達しておりますので、部会は成立となります。
なお、本部会にはオブザーバーとして科学技術・イノベーション推進事務局の内閣府辻原参事官にも御参加いただいております。

本部会は部会運営規則により公開させていただきます。
次に、資料の確認です。配付資料については、昨日、各委員に御連絡いたしました資料送付と接続先に関するメールにて、資料掲載ページのURLを御連絡しております。メールが不着の場合は、改めて事務局よりメールをお送りいたしますので、事務局までお申しつけください。
配付資料については、資料1、第9期地球観測推進部会の当面の進め方(案)、資料2-1、地球観測に関連するMS&ADの取り組み、資料2-2、地球環境データプラットフォーム動向、資料2-3、地球観測によるパリ協定への貢献及びCOP26対応についての資料となります。
続きまして、部会の進め方について御説明いたします。本日はオンラインでの会議となります。ウェブ環境の安定のため、御発言されていないときには、音声と画像をオフにしていただきますようお願いいたします。御発言される際は、挙手ボタンを押していただきまして、部会長もしくは事務局から指名いたしますので、御発言の際に画像をオンにして発言いただきますようお願いいたします。指名順は挙手した順ではない場合もございますが、御了承ください。
挙手ボタンの使用方法について御説明いたします。まず、画面中央下部を御覧いただきますと、丸形のボタンが並んでおります。その丸形ボタンの中に、人の形が描かれた参加者ボタンがございます。参加者ボタンをクリックしていただきますと、画面右側に参加者のリストが表示されます。参加者リストが表示された枠の下のほうに手の形をしたボタンがございます。このボタンが挙手ボタンとなります。御発言される際は、この挙手ボタンをクリックしていただきまして、御発言が終わりましたら、再度、挙手ボタンをクリックして、挙手を解除していただきますようお願いいたします。
また、発言の際は、お名前を言ってから御発言をお願いいたします。
なお、パソコンの環境によっては、挙手ボタンの表示場所が異なることがございます。挙手ボタンが見つからない場合は、直接御発言いただければと思います。
最後に、傍聴者の方へのお願いとなります。本日はオンラインでの開催となっております。万が一、システムトラブル等で傍聴不可となった場合に関しては、後日公開する議事録を御確認いただきますようお願いします。
【春日部会長】 御説明ありがとうございました。
それでは、議題1に移ります。これまでの第1回と第2回の本部会において、地球観測データによるSDGsへの貢献について、SDGsの動向や実施機関における取組状況、関連動向について議論してまいりました。これまでの議論を踏まえて、今後の議論の方向性について議論したいと思います。
それでは、まず事務局より10分程度で御説明をお願いいたします。
【服部環境科学技術推進官】 どうもありがとうございます。環境科学技術推進官の服部でございます。
資料1を御覧ください。今画面にも映っているかと思います。第1回の部会で、こちらの当面の進め方(案)につきまして、御議論をいただいたと承知をしております。
これまでの議論や議論の流れを踏まえさせていただきまして、フォーカスをよりどこに当てていくのかを整理していきたいということで、資料1の御提案を事務局から準備させていただきました。
まず、1ポツ目の第9期における議論案についてを御覧いただければと思います。
第1回におまとめいただいた当面の進め方からの変更箇所につきまして、下線を引いてございます。その部分を中心に御説明をしたいと思います。
箇条書の3点目「このような状況踏まえ」の段落を御覧ください。こちらの下線を引いております「地球観測・予測データ」について、予測のデータを活用するという議論は非常に高まってきていると承知をしておりますので、この予測データ、地球観測のデータのみならず、そこから気候モデル等を活用した予測データの創出、それを使っていくところにも焦点を当てていこうということで、その「予測」を追加させていただいております。
また、このデータの利活用――今日の議論でもそのデータの利活用について御議論をいただくための様々な情報提供をいただけると承知をしておりますが、そういったインプットもいただきながら、こういったデータを社会で活用していくと、アカデミアとして知を生産することはもちろんでございますけれども、それを社会としてどういうふうに使っていけるのかを議論することが大事だと考えております。そういった観点からデータの利活用を促進するデータプラットフォームをしっかりと位置づけて議論をしていくことが大事かなということで御提案を申し上げています。
2ポツ目を御覧ください。議論の進め方でございます。
論点といたしまして、SDGs達成に向けた動向について、地球観測データによる貢献が期待される取組は何か。将来のポストSDGsへの貢献として期待されるものは何か。今後取り組むべきこと、さらに強化すべきことは何かという基本的な論点をお示しいただいたところでございます。
こちらの今後取り組むべきこと、さらに強化すべきことは何かといった部分についてこの矢印で示しておりますけれども、どういった観点で深掘りをしていくのかといったところを御提案申し上げたいと考えております。
「これまでの議論を踏まえ、論点を具体化」と書いてございますが、地球観測・予測データによる貢献が期待される取組と課題が何であるのか。地球観測データと社会経済データとの組合せをすることによって貢献が期待される取組と課題が何であるのか。また、データプラットフォームの必要性・方向性についても具体化をしていく。地球観測・予測データの利活用に向けた取組と課題について、あぶり出していくというところで議論をまとめていってはどうかと御提案を申し上げています。
2ページ目を出していただけますでしょうか。
今後のスケジュールでございます。今回の第3回で様々なインプットを――今日は特にこの下線を引いた部分で、インプットをさらに追加していただく部分を御発表いただきます。第4回も引き続いてそういったインプットの強化をした上で、第4回で、まず一度こういった貢献についての取りまとめの案を議論させていただきたいと思っております。第5回で最終的な議論を進めまして、取りまとめに向けて作業を進めていくということで考えております。
この取りまとめた結果につきましては、我々が今予算要求をしておりますけれども、ポスト統合のプロジェクト、気候変動予測モデル開発のプロジェクト運営、具体的には公募要領等に反映をしていくということ。また、DIASの今後の運営や経営といったものに反映をさせていくということ。また、関係省庁のデータプラットフォームとの連携を深めていくためにどのようなアクションを取っていくべきなのかといったところを御提案いただきたいと思っておりますので、そういったアクションにもつなげていくと。府省連携のプロジェクト等も恐らくあろうかと思いますので、そういったところへの打ち込みも我々は検討していきたいと思っていまして、こういった議論を出していただいた上で、検討してまいりたいと考えています。
私からの説明は以上でございます。
【春日部会長】 服部推進官、少し短い時間でしたけれども、大変わかりやすくまとめていただいて、また皆様からいただきたい御意見の焦点、方向性についても具体的に御示唆いただきました。ありがとうございました。
それでは、皆様から御質問やコメント等をいただけたらと思います。どうぞよろしくお願いします。
赤松委員、手を挙げていただいていると思います。赤松委員、村岡委員、順番にお願いできますでしょうか。
【赤松委員】 赤松です。すみませんでした。ちょっと手間取りまして申し訳ありません。
私は産業界の人間ですので、いつも申し上げるのですが、こうしたSDGsの取組として、例えば産業界での利用や社会実装につなげていくことが既に結構行われている部分もありますし、今後も地球観測推進の方針の中にしっかりと組み込んでいくことが大事かと思っています。今回の御提示いただいた中で、利活用の促進やプラットフォームという話がありますけども、その中に、産業利用や社会実装の要素も込められていると理解したらよろしいのでしょうか。
【春日部会長】 ありがとうございます。
続いて、村岡委員からも御質問、コメントいただいて、まとめて議論したいと思います。
【村岡委員】 村岡です。ありがとうございます。
推進官に御説明いただきありがとうございました。
1点、生物多様性に関するところから質問を差し上げます。ただいま画面に映っているページの最後の段落にあるコメントのところに関連しますが、ちょうど生物多様性条約COP15が開催されていて、来年4月にまたインパーソンで第2部が開催され、Post-2020 global biodiversity frameworkが調整されると聞いています。今年前半には生物多様性が生物だけの問題だけではなくて、生物多様性が気候変動緩和・適応やEcosystem-based Disaster Risk Reductionにも関する問題として、IPBESとIPCCの合同ワークショップも開催されてレポートも提出されたところです。今後もこの議論の中で、生物多様性分野では衛星に限らず様々な観測調査方法による様々なスケール、あるいはデータフォーマット、予測などの課題がありますけれども、そういった知見あるいは情報基盤との連携ということについて、これから取りまとめていく案の中ではどのように扱われる御予定があるか、あるいは今後どのような連携、または調整が期待されるかということについてお伺いします。よろしくお願いします。
【春日部会長】 ありがとうございます。
お二人からの御質問は、産業界または具体的なSDGsへの取組において、どう活用するか。それから、生物多様性と生態系システム、それから気候変動との連携、それについても基盤を進めるべきではないかという御指摘、御質問だったと思います。
こういうことをこの提言の中に盛り込んでいくということで皆様から強く御指摘いただけるとありがたいのではないかと思いますけれども、この点を推進官はいかがお考えでしょうか。
【服部環境科学技術推進官】 ありがとうございます。
まず、1点目、赤松委員から御質問いただきました産業利用の取組についてのお話でございますけれども、今回御提案申し上げているところはまさにそこの部分で、産業利用で、この部会でどこまで議論をしていくことが適切であるのかといったところをちょっと我々も深く考えてみました。
そういった観点で、我々は軸足――そもそもこの部会の名前が地球観測推進部会という言葉がありますので、やはり地球観測といったものに軸足を置いた議論が大事であると認識をしております。
そういった中で、今後、我々はSociety5.0という社会像をある意味で言うところの国の理想像として掲げて、様々な施策が展開されていますけれども、やはり、サイバーとフィジカルの融合という観点で言えば、我々が今最も弱いかなと思っているところがデータ戦略の部分であります。様々な観点で研究開発や、そういった知への投資は行われておりますが、その知を活用するためにはデータインフラがないと、社会としてのインフラをつくっていかないと、社会での活用というのは、永遠に絵に描いた餅になる部分があろうかなと思っております。このデータプラットフォームの形ですね、日本の社会で、例えばこの気候変動というところでのデータプラットフォームの形、どのような社会インフラを日本として持っていって、その社会インフラをどのように社会で経済的な負担で支えていくのかといったエコシステムを議論していくこと、それはまさにこの推進部会で議論をしていくに値する課題ではないのかなということで、このデータプラットフォームというキーワードを使って、社会への活用のある意味、礎となる基盤となる議論をするという観点で御提案を申し上げたということが趣旨でございます。その基盤があってこその活用につながっていく部分になってくるのかなと思っています。
当然のことながら議論するに当たって、どういうふうに使われるのかといったことを議論しないとデータプラットフォームの形も出てこない。そこがこの仕事の難しいところであると思いますけども、そういった議題の運営に先生方の御助力もいただきながら努力をしていきたいと思っておりますし、そういったスピーカーの方や委員の皆様からのインプットを踏まえて、その議論を進めていけたらと思っております。
あとは生物多様性の議論です。まだこの第9期の推進部会でそこの部分の議論について十分なインプットがあるとは思っていませんので、第4回目以降にそういったインプットをいただきながらこの部会の運営を進め、最終的な報告書にしっかりとそういった文脈についても反映をして、特にデータという観点で生物多様性のデータについて、どのような活用方法をしていき、どのような形をつくっていくのかといった議論をしていきますと、将来につながるいい議論になるのかなと思っていますし、いい取組ができるのかなと思っております。
【春日部会長】 推進官ありがとうございました。
赤松委員、村岡委員、よろしいでしょうか。追加のコメント等ございますか。
【村岡委員】 村岡です。ありがとうございました。よく分かりました。また、今後ともよろしくお願いいたします。
【赤松委員】 赤松からも一言。推進官がおっしゃられたとおりで、プラットフォームというインフラをつくって、やはりその先のどう使うかという部分が私は非常に重要かなと思っておりまして、その部分も焦点を当てていただければと考えております。
以上でございます。
【春日部会長】 はい、ありがとうございます。
では続いて、川辺委員、そして平林委員から御意見いただきたいと思います。
【川辺委員】 ありがとうございます。
私も論点を具体化していただいて、非常にありがたいなと思っています。同時にすごく範囲が広いので、どういうふうにこれを具体化していくのかなというところを疑問に思っております。
特にステークホルダーとして、どういう人たちを想定するのかというところが一つのポイントになるのではないかなと思っております。今までのこういう議論では、何となく専門家の方たちや、あるいは産業界でも高い専門知識を持った方たちがいらっしゃる企業を考えているのではないかなと思います。しかし、実際にSociety5.0を実現していくうえでは市民レベルでの理解もまた必要になってくると思っています。
この専門家と市民との間には、たとえば実際に仕事で関わっている方もいらっしゃるでしょうし、全くそうじゃない方もいらっしゃるでしょう。いろいろなレベルの理解を持っている方たちがいらっしゃるなかで、どのようにステークホルダーを想定していくのかについても、ぜひお考えいただけないかなと思っております。
それはデータプラットフォームをつくるという場合の設計にも関わる話ではないかとも思います。このICTのリテラシーをどの程度持っている人たちを対象としてどういうものをつくっていくのか、あるいはこのデータをいかに社会において利活用しやすい形で提供していくのかというところに関わってくる問題ではないかと考えております。
もし今の段階で御意見等あればお伺いしたく思っております。よろしくお願いいたします。
【春日部会長】 大変大事な御指摘をありがとうございました。
では、平林委員からも御意見をいただけますでしょうか。
【平林委員】 この報告書がこの後どういう形で活用されることになるのかという観点でお聞かせいただければと思います。データプラットフォームというのが大きな出口の一つになるというのは今の御説明で理解したところではございますけれども、地球観測のデータは様々な形でSDGsのターゲットやインディケーターに貢献できるのだろうと思っておりまして、政府全体でのSDGsの取組や国際的な枠組みとの関係で、今回の報告書というのが何らかの形で活用されていく姿になるのか、文科省さんとしての施策として何か使っていくというイメージなのか、その辺の今後の活用の考え方についてお聞かせいただければと思います。
以上です。
【春日部会長】 ありがとうございました。
推進官、少し時間がなくなったので、短めに2点お答えいただけますか。
【服部環境科学技術推進官】 分かりました。了解しました。
ありがとうございます。まず、川辺委員から御指摘いただきましたステークホルダーについてどう考えていくのかという点につきまして、非常に重要な御指摘かなと思っております。
この短期間でそのステークホルダーの全て、ここに焦点を当てていきましょうかという議論を煮詰めていくことはなかなか難しいかなと思っております。ただ先行している分野だとか、動きがある分野というのは何となく特定できるのかなと思っております。そういったところの御提案を第4回目にまず、たたき台を差し上げて、議論を進めていけたらいいかなと思っておりますし、その第4回、5回の議論に、今後ステークホルダーをどんなふうに特定していくのかという議論もしていただくような方向で考えていければいいかなと思っております。
やれるところまでは、この9期のここの部分で議論をして、やれないところは、こういったことをやるべきであるというアクションを次にきちんと残しておくことが重要かなと考えています。
あとは平林委員からこの使われ方について御指摘をいただきました。先ほどの御説明でも触れたとおり、まずは文科省の我々事務局がどういうアクションを取っていくのかというところに反映をしていくことが大事かなと思っております。我々文部科学省が持っている施策にまずは反映することはしっかり最低限やらなければいけない仕事かなと思っております。それのみで完結できる課題であるのかというと、特に地球観測やSDGsなどはそうではないので、文部科学省が汗をかいて関係省庁とどういう連携をして、どういうアクションが取り得るのかといったところもこの議論の中に含めていけたらいいかなと思っております。
内閣府等での施策や関係府省連携でやるようなプロジェクト等もありますので、そういったところへの議論に反映をしていくなど、そういった努力も含めて、私どもはしていきたいということで、そういったインプットをこの場でいただけるとありがたいかなと思っている次第でございます。
そういった観点でこういったところに反映すべきだとかいう御示唆をいただけますと私どもも動きやすくなるかなと思っております。
【春日部会長】 推進官ありがとうございました。ステークホルダーには使う側のステークホルダーと、それからデータを提供する側のステークホルダーと両方あると思います。そういう点も含めて、委員の皆様からのインプットはとても重要ですので、よろしくお願いしたいと思います。
佐藤委員からも手が挙がっているようです。佐藤委員、よろしくお願いします。
【佐藤委員】 どうもありがとうございます。私のほうからは質問およびコメントをさせていただきます。
この「当面の進め方(案)」には、新たに予測データの活用ということが入っております。地球観測データはパラメータやその精度がはっきりしているものですが、気候モデルの予測は、扱うシステムが非常に複雑なので、予測の検証は結構難しいものです。モデルによっても予測の確度が違っております。IPCCなどでも、そういうことを踏まえて、多くのモデルグループが参加して、レポートをまとめられています。
そこで、まず、質問としては、この「当面の進め方」の中で想定されている予測データというのは、一体どのようなものなのか、今の時点でのお考えを教えていただきたいということです。次に、コメントとしては、確度のよく分からない予測データの利用は、もしかすると社会にネガティブに働く可能性もあるため、どのような予測データを使うかを明確化しておいたほうがよいということです。
【春日部会長】 佐藤委員ありがとうございました。
この点、推進官から何かコメントはありますか。
【服部環境科学技術推進官】 佐藤委員ありがとうございます。
まず、予測データにつきましては、おっしゃるとおり精度の問題の課題があるということは承知をしております。そのデータにつきまして、今我々が想定しているのは、まさに我々が研究開発プロジェクトを御支援して、皆様に出していただいたD4PDFみたいなデータセットがございますので、そういったものの活用はまず考えていかないといけないと思っております。
精度の観点につきましては、これはなかなか難しい問題もあります。ビジネスの観点で言えば特に気候変動に関する物理的リスクを開示せよという投資家からの圧力は高まってきていて、そういったビジネスが起こりつつあるわけでございます。その予測の精度は必ずしも高くはないかもしれない。まずはやってみるといったところも重要かなと思っております。そのバランスです。精度とやってみるというバランスで、またそれをどういうふうに検証していくのかという社会システムも多分重要になってくる課題になっていると思いますので、海外動向等をにらみながら日本のシステムをどういうふうに組み上げていくのかという、ちょっとここの部会だけで議論するには非常に困難な課題かもしれませんけれども、そういったことは認識しておかなければいけません。報告書でもそういった要素を入れていくことが、御指摘のとおり大事かと思っております。そういったことも踏まえながら、報告書の案の執筆等を考えていければと思っております。ありがとうございます。
【春日部会長】 ありがとうございます。
この部会の取りまとめの中で、具体的に予測をするわけではないのですが、データプラットフォームと予測の連結に当たってどういう点に留意しなければいけないか、どういうことが基準になるのか、そういう点について皆様から御意見いただけるとありがたいと思います。
御議論ありがとうございました。
それでは、次の議題に移りたいと思います。
【中北委員】 すみません、中北ですけど。
【春日部会長】 すみません、見逃してしまいました。
【中北委員】 すみません、今、推進官が御返答されたのに横から補強してもいいですか。
【服部環境科学技術推進官】 どうぞお願いします。
【春日部会長】 お願いします。
【中北委員】 今、おっしゃられましたように同じ環境エネルギー課の中で、15年ぐらいもう既に国プロジェクトで、日本の将来気候予測というのがずっと精度がアップして、展開されている中で、今後はそういう取組と、それからJAXAをベースにした地球観測とのタイアップというのが今やっと真剣に考えられているところで、こういう観測衛星を使って、気候モデルの不確定なところをよりモデル化につないでいくということと、それから逆に気候モデルそのものの将来予測、あるいは再現性と衛星観測、これは気象の部分だけではなくてハザードの部分も含めてですけれども、タイアップしていこうという大きな流れがありますので、その中で、共に検証をしていくといういい関係が築かれていくだろうと思っていますし、この部会のほうでも、それを横のつながりということで、大きくサポートいただけたらいいかなと思いました。
以上です。すみません。
【春日部会長】 ありがとうございます。双方向の検証ということですね。ありがとうございます。
それでは、次の議題に移りたいと思います。
議題2としまして、SDGs等へ貢献可能な取組について、今回は2回目のヒアリングとなります。
MS&AD、RESTECでの取組状況や関連動向について御報告をいただいて、意見交換を行います。
浦嶋委員、向井田様から御発表をお願いしたいと思います。発表時間は15分程度ということでお願いしています。どうぞよろしくお願いいたします。
各御発表後に10分弱の質疑応答を設けたいと思います。
それでは、浦嶋委員よろしくお願いいたします。
【浦嶋委員】 MS&ADインシュアランスグループホールディングス、総合企画部の浦嶋と申します。
私どもは損害保険金融グループでございまして、右側のとおり幾つかの損害保険会社と生命保険会社から成るグループでございます。
我々は2018年に、現在の中期経営計画で、サステナブルでレジリエントな社会を目指すということで取り組んでいます。その中の重要課題として、左上にあります気候変動の緩和と適応に貢献することで、取組を進めています。保険会社のビジネスモデルは、分かりやすく言いますと、リスクを見つけ、お伝えするということと、そのリスクができるだけ現実のものとならないようにするという、ロスプリベンションというところが非常にポイントになります。もし万が一不幸にもリスクが現実になったならば、その経済的な補償をさせていただくと。これがビジネスのモデルのリスクの考え方になります。
次をお願いします。
御承知のとおり、昨今、非常に自然災害、気象災害が激甚化しておりまして、非常に膨大な損害が社会にもたらされているということで、我々保険会社の支払い保険金もこのような形で非常に高額にのぼっています。1兆円を超える年が2年続いたということと、着色されているように、近年に非常に高額な保険金支払いの災害が続いているということも顕著になっていると思います。
次をお願いします。
こういう中で、我々は先ほど申し上げましたとおり、リスクをお伝えするというところではいろいろなサービスを展開しています。本日は時間に限りがあるものですから、ごく一部の御紹介になります。こちらはグループ会社で取り組んでいる、cmapというリアルタイム被害予測と言っているものになります。
発災時、これは地震も含めてなんですけれども、災害がまさに起きている時からどのぐらいの被害になるのかと、予想される被害の規模をこういった形で可視化しています。これは保険契約者に限らず、どなたでも御覧いただけるものです。こちらの右下にあります地図で、リアルタイム浸水危険度推定情報は、東京大学生産研とJAXAさんが開発されたToday's Earthという仕組みをこの画面に分かりやすい形で御紹介していまして、まさに地球観測のデータをお客様に分かりやすくお伝えするインターフェースになっていると思っています。
左上は台風がどういうふうに進んでいて、どのくらいの被害規模になるかということをお伝えしています。過去の主要災害のシミュレーションは平時でも御覧いただくことができます。
ありがとうございます。次をお願いします。
最近、非常に力を入れているのが、災害が発生した後、いかに早くお客様に保険金をお支払いするかというところです。特に風水災につきましては、浸水深によって保険金が変わりますので、実測調査が必要になります。大規模災害になりますとこの業務に長い時間を要してしまいますので、足で調査すること以外にドローンを使ったり、衛星データを使ったり、そういったものをモデル化して、ある程度解析をしながら、素早く浸水深を測り、そしてお客様に迅速に保険金を届けることに取り組んでいます。
もちろんすぐお金を使って、すぐさま自宅を改修できるわけではないのですが、やはり大きな災害が起きたときは、こういった経済的な備えがすぐに手元に入るということが心理的な安心感につながることだと思っていますので、お客様の安心安全をサポートする努力をしています。
次をお願いします。
これが先ほど議論にも出たところですけど、今まではいわゆる目前の災害に対して、どのように対応するかということで、保険会社ができることについて御説明をさせていただきましたけれども、こちらはもう少し長い、中長期的な目線でどういった気候変動のリスクにさらされるかといったことを、我々保険会社グループとしてどういった支援ができるかとに関する話題になります。
気候変動は企業にとって非常に大きなビジネス上のリスクになるということで、投資家がその度合を適切に認識した上で、投資行動を行っていくことが経済の安定に欠かせないという認識を踏まえ、企業はそれぞれが自らの気候変動による財務影響を開示していくことが今求められています。
何を開示していかないといけないかということのポイントを示したのがこの図でございます。
企業の気候変動リスクで、分かりやすいところが左下の物理リスクになります。これがいわゆる気象災害や、あとは気象の変化によって、例えば原材料が高騰する、確保しにくくなるといったことが慢性リスクです。急性は御承知のとおり大きな自然災害によるものです。こうした物理的なリスクから、それ以外に例えば石炭火力発電所が一定の国で禁止されたり、エンジン車両が禁止されたりといった政策や規制、技術革新、評判リスク、そういった社会が変わることによって伴うリスク、こういったものが移行リスクと言いますけれども、こういったリスクがどれだけあるのか。また一方で、右側を見ますと、ビジネスチャンスとして、気候変動に対策を先んじて打つことによるビジネスチャンス、こういったものがどういったものがあるのかと、こういったことを合わせて、それを何らかの財務的な影響として、できるだけ定量的に開示をしていこうと。これがTCFDが求めているところでございます。
今日は、主にこの物理リスクを御説明させていただきたいと思っています。
次をお願いします。
こちらが、我々が産学連携の研究で進めておりますLaRC-Floodというプロジェクトでございます。我々と東京大学生産研、芝浦工業大学の三者で、これから気候変動によってグローバルにどういった洪水リスクがどう頻度が変わっていくかというもので、こちらも無料のサイトで、ログインのアカウントを取っていただければどなたでも無料で公開をしています。これはすみません、たしかCMIP5の地図のままですが、今現在ウェブサイトで公開しているのはCMIP6に更新をしたマップになっています。色が濃いところほど100年に1回だった洪水の頻度が高まるということです。例えばこういったものがどういった方々に役に立っているかと言いますと、グローバルで生産拠点を持っている企業様、またはグローバルに何らかのサプライチェーンで調達をされている企業様、自らの事業に非常に関係が深いロケーションが将来どれだけの気候変動――こちらは降水だけですけれども、リスクが高まるというものが分かるというものです。
次をお願いします。
次は、これはまた違うサービスですが、同じように洪水だけではなくて、様々な自然災害リスクを定量的に評価するものです。平均気温が1.6度、2.5度、4.3度とそれぞれ三つのシナリオ使って、ここにあるように、河川洪水、風災、熱波、沿岸洪水、あとはひょうもアメリカなどではよくありますけれども、それをAIを活用して、90メートルグリッドでスケールダウンして、どれだけのリスクになるかということを、定量的に、例えば洪水では、浸水深の値を算出するサービスでございます。
これが右側で、例えば自分たちの企業が23拠点がありますと。それが200年に1回の河川洪水が発生した場合、どれだけ2020年から2070年で被害が増えるかといったことをこのサービスによって算出しているということで、非常に多くの企業様に御提供させていただいています。こういった客観的な分析に基づいて、先ほど2枚前に御紹介した情報開示を今企業が進めていかなければいけないという状況であります。
先ほどもちょっとお話がありましたけれども、不確実性は当然残るものであって、どのくらいの不確実性なのかといったことも併せて情報提供しています。
ですから、そういったその不確実性を認識しながら、どういったことを、ここまでは分かるというようなことを開示していくことを始めていくことが重要ではないかなと思っています。
次をお願いします。
これは配付資料としてお渡しはしていないですけれども、どういった画面になっているかということで、90メートルグリッドということですので、これはどこまで水がかかるかみたいなことの浸水深がこれだけ細かいエリアで分かると思っています。
次をお願いします。
それによって、例えばどのぐらいの被害があるのか、何%被害が高まるのかを計算するという形で分析をしています。
ありがとうございます。ちょっと最後に簡単ですけれども、我々損害保険会社がどうやってリスク評価をしていくか、リスク分析をしていくかについてです。今まで保険会社は、確率論で考えていますので、どれだけ今まで台風が発生してきたのか、過去の自然災害の発生を踏まえてどれだけの確率で、どのぐらいの規模のものが発生するかという、そのハザードを用いるのと、あともう一つは、どれだけの対象物が強いのか、弱いのか、例えば地震であれば鉄筋コンクリートなのか、木造なのかによって脆弱性は変わりますということで、災害の強さと脆弱性ということ、それとどういった契約を我々が持っているのかという、その契約条件ですね、そういったことに基づいて、これぐらいの規模の確率の災害が起こるとこれだけの損害になるとはじき出しています。
ですから、ハザードの確率を考える、ハザードの発生変化を踏まえることも大事ですけれども、社会の損失を考えていくときには、どういった社会経済的な状況として、例えば住宅が全体的にどの程度脆弱かということを認識することが、気候変動によって最終的に受ける被害がどうなるかが関係します。こういったデータも非常に重要になってくるのかなと思っております。ちょっと御参考までに御紹介しました。
【春日部会長】 浦嶋様、御質問の時間が少なくなると思いますので、短めに御紹介いただければと思います。
【浦嶋委員】 短めにさっと御紹介します。
【堀川地球観測推進専門官】 申し訳ございません、文科省側のネットワークの制限がかかっておりまして、御連絡いただいたURLのほうが開けない状況です。
【浦嶋委員】 分かりました。
ちょっと口頭で御説明をしますけれども、御紹介できればと思ったのですが、スイス・リーという再保険会社がバイオダイバシティアンドエコシステム・サービスのインデックスを公表しています。先ほど我々の洪水のマップをお見せしましたけれども、世界各地で生物多様性としてどこが脆弱なのか、どこが豊かというところを評価しています。生態系サービスが損なわれているエリアなのかどうか、そういったところをグローバルでマップ化をしています。要はそういうところでビジネスをすると危険ですよという、気候変動だけではなくて、生物多様性についてもそういうリスクがかなりクローズアップされてくると思います。そういった取組は既に欧州の保険会社では始まっている状況で、先ほど少し生物多様性についてのコメントもありましたので、先ほどお見せした気候変動の洪水リスクだけではなくて、生物多様性や生態系サービス、水源涵養やポリネーションといった生態系サービスから防災・減災の機能の効果まで、脆弱なところと、安定しているところ、開発されていないからこそ、そこはこれからも開発をしないようにするべきだということが見える化されています。そういったデータを社会に、ビジネスにと展開していくことがこれから求められてくる時代になっていくと思います。
以上です。
【春日部会長】 浦嶋様、ありがとうございました。
【浦嶋委員】 ありがとうございました。
【春日部会長】 ちょっと時間が押していますので、一つか二つ御質問をお受けしたいと思います。いかがでしょうか。
佐藤委員、岩谷委員、ではここで一度締切りさせていただきます。このお二人からそれぞれ御質問を短めにお願いいたします。
【佐藤委員】 すみません、佐藤ですが、先ほどの手を下ろし忘れていました。失礼しました。
【春日部会長】 分かりました。岩谷委員、お願いいたします。岩谷委員、それから中北委員お二人お願いいたします。
【岩谷委員】 浦島委員、ありがとうございました。既に企業レベルで、いろんな情報を公開しているということで、非常にプラットフォームという意味では市民が活用できる予測データ、観測、気候変動の影響リスク、防災上の情報などを公開されているということで、非常に役立つ情報だなと理解して、これが多分まさに、これから地球観測推進部会でプラットフォームをつくっていく上で重要な一つなのかなと感じております。
その上でちょっと質問ですけれども、このcmapについてですが、このcmapの被害予測はリアルタイムで出されるということで、台風が来たときなどに被害の刻々と変わる情報を被害予測という形で出されていますけれども、こういったものが多くの市民が利用するに当たって、例えばですけれども、報道、気象情報の中で活用できるようなものなのか、それともそこまでのあまり信頼度というか、リアルタイムに気象庁の予測もありますけれども、こういったものの活用の仕方というのですか、精度の問題もあると思うのですが、これはどういう活用の仕方を考えられて、公開されているかを伺いたくお願いいたします。
【春日部会長】 ありがとうございます。
続いて、中北委員からも御質問をお伺いして、まとめてお答えいただきたいと思います。
【中北委員】 どうもありがとうございます。京大防災研の中北です。いろんな包括的な取組を勉強させていただきまして、ありがとうございました。
特に、気候変動も含めて、あとエコも含めて、脆弱性あるいはリスクの高い場所などを特定されて、情報提供していくという話ですけれども、保険会社さんそのものにとってのこういう情報のフィードバックはどういう感じなのですか。
気候変動の中の例えば災害関連で言うと、危ないところに人が住まない、工場を置かないという、ある程度10年、20年、30年かけての都市構造や地域構造の変化というのも大事なところで期待されている中で、保険会社さんの普段のリスクに応じた保険料率を決める以上にさらに人がそこに住まないような料率を決めていくところも期待されていると思いますけど、そういう議論はどこまで今進んでいるのかをお教えください。よろしくお願いします。
【春日部会長】 ありがとうございます。
では、浦嶋委員少し短めにお答えいただけますか。お電話で質問は聞こえていましたか。
【浦嶋委員】 はい、ごめんなさい。間違ってボタンを押してしまいました。ありがとうございます。
冒頭のいわゆる予報にどう使うかということで、もともとの意図は損害保険会社の支払い体制をいかに盤石なものにするかというところがありました。つまり、どこに被害が多く出るかに応じて、そこに社員をたくさん配置しておかないといけない、すごく大きい被害であれば、たくさんの社員を一気にそこに集めて体制を整えなければいけないということもあって、このシステムをまずつくったところがあります。
ちょっと時間がないので、あまり詳しくは御説明できないですが、この予報業務のところは気象庁の規制がありまして、そこが今、まさに規制緩和に向けて動いているところであります。やはりポイントになるのは、そのモデルの確からしさというところ、その証明が非常に重要になってきます。
また、これは予報なのか被害予測なのかというところも違いますので、そこのポイントもすごく重要だと思っています。
ちょっとすみません、時間が限られているので、そういった形での御回答とさせてください。
あともう一つは、すみません中北先生から御質問どうもありがとうございました。まさにご質問いただいたところもポイントでございまして、私もそこはすごく課題感を持っています。財務省の資料などを見てもどうやってそういった安心安全な社会にまちづくりを進めていくかと、そのインセンティブやその社会制度づくりが課題だと挙げられていました。海外では、例えば公的な災害復興支援金を、1回被災し、その地域が自然災害リスクが高いと判断された場合地域では、もしそこに住み続けるのだったら2回目は払わないというような事例がカナダにあると聞いています。やはり官民合わせて、かなりドラスティックに気候変動に対して、人の社会づくりを変更していく方向があると思うのです。日本は今まさにそういった検討をしていかなければいけないという状況だと思いますけれども、そこが今からの問題なのかなと認識をしていて、まさにそういったところを官民合わせて知恵を絞っていかなければいけないということではないかなと思います。
一方で、なかなか今住んでいるところを退去するのは非常に難しい問題があるので、そのためのデータ出し、そのための官民で考える場というところが重要なのかなと改めて思っております。
以上です。
【中北委員】 どうもありがとうございました。
【浦嶋委員】 答えになっていないかもしれませんけど、すみません。
【岩谷委員】 ありがとうございました。
【中北委員】 ありがとうございました。
【春日部会長】 浦嶋委員、また委員の皆様、大変深い議論になりました。ありがとうございました。
個人的に感じたことですが、一つの国の中でしたら、例えばまちづくりということで補償も効くかもしれないのですけれども、グローバルな予測を途上国に当てはめたときに、ある国や地域の開発を止めないといけないということになった場合、これは地域にとっての不公平性を増長するようなことにもつながりかねないと思います。その辺りも本当に幅広い議論が必要ではないかと感じました。どうもありがとうございました。
それでは、続いて、RESTECの向井田様、御紹介をお願いいたします。
【向井田(RESTEC)】 リモート・センシング技術センタの向井田でございます。私の声は届いていますでしょうか。
【春日部会長】 はい、聞こえます。
【向井田(RESTEC)】 それでは、今共有いただいている資料に基づきまして、地球環境データプラットフォームの動向について御説明をさせていただきたいと思います。
次のページお願いいたします。
本日御紹介する内容ですけども、地球環境データプラットフォームの現状と動向ということで、国内外と書かせていただいておりますが、主に米国、欧州が今どういった流れなのかを中心に御紹介をさせていただきたいと思います。
次のページをよろしくお願いします。
まず、RESTECですが、私どものリモート・センシングは地球観測衛星のデータを扱っている財団になりますので、基本的には今ここでお示ししている概略図で言うと、下段の衛星データに深く関わっています。昨年度まで文科省の環境エネルギー課さんの下で、DIASの運用を5年間させていただきました関係で、データがどのように流通しているのか、どこの国でどういう使われ方をしているのかを御紹介できればというところで今日お声がけをいただきました。
まず、米国と欧州、それから、データもかなりざっくりした分けですけど、気候と衛星データで少しずつ状況が違うというところを四つの象限にまとめさせていただきました。
まず、米国の気候データですけども、主にDoEなどのデータセンターを運用しながら商用クラウドへもデータをオープンにしていく傾向がございます。研究開発やモデルを回す部分は、自前のデータセンターで、計算環境でしていくということです。
一方、同じ気候でも、欧州ですけども、欧州もデータセンター、あとはクラウドですが、研究用クラウド環境を運用していると。ユーザーへは商用クラウドにデータをオープンにするということで利用を図っています。
まとめますと欧州、米国共通して自前の計算リソースを持っているものの、エンドユーザーには商用クラウドを利用し始めてきているということ。欧州に関しては研究用のクラウド化があるということです。
下段でございます。衛星のデータに関してですけども、まず、米国はデータセンター運用しながら、商用グラウンドへもデータをオープンにしているというところで、少し特徴的なのは、例えばNASAやUSGSは、Landsatの処理済みデータは、それぞれの研究のかなりの部分が商用クラウドにオープンにしているデータを彼らは使っているという現状が報告されています。
もう一つ、欧州の衛星データの話としては、Copernicus DIASという、ちょっとこれは期せずしてDIASと同じ名前ですけど、こちらに代表されるようにAmazon、Googleではない欧州の商用クラウドをベースにしたプラットフォームを構築しているという状況でございます。こちらもデータセンターを一部有効利用しながら商用クラウドを利用している。欧州に関して言うと、この後も申し上げますCopernicusの思想上、欧州の産業育成ということもあるので、欧州の商用クラウドを利用している傾向が伺われます。
次のページをお願いします。
まず、衛星データプラットフォームの動向というところで、今申し上げたところを簡単にマップにさせていただきました。これは昨年私どもの外向けのフォーラムで、データプラットフォームに関してのディスカッションさせていただいた資料になるのですが、衛星データのプラットフォーム及び衛星データを用いたアプリケーションのプラットフォームを簡単に地図上に示しています。
傾向としましては、オープン&フリーということで、データをどんどん商用クラウドに展開しているという状況にあります。
特に米国のNASA、NOAA、USGSは政府主導で商用クラウドに積極的に移行しています。欧州機関は先ほど申し上げたとおりです。Copernicus DIASを主導されて、欧州系のクラウド環境を利用しています。
日本はそのマップの一番右端の部分に三日月を上に向けたようなものがございますが、経産省さん、さくらインターネットさんのTellusというプラットフォームが今JAXAさんのデータのみならず、いろいろな衛星データをアーカイブして、プラットフォームを構築している状況でございます。
先ほど申し上げたとおりクラウド上のデータを使って、民間衛星のデータプラットフォームであったり、アプリケーションのプラットフォームというのがどんどん出ている。逆に言うとクラウドの事業者さんにしてみると、おいしいデータを入れておけばお客さんが集まってきて、そのリソースを使って、ビジネスをするための利用料をクラウドに払っていくというところで、全体を見ますと力の強いGoogle、Amazon AWS、Microsoft Azureといったところの勢いがあるなということで、国内に関してはさくらインターネットさんと経産省さんがTellusを開発運用しています。
気候系のプラットフォームの動向は、少し衛星とは変わってくると思います。
次のページをお願いします。
まず、大きな取組としまして、ESGF(Earth System Grid Federation)という組織の下で、気候変動の研究、CMIPのデータの収集・蓄積・配信といった活動をリードしているというところで、例えばアメリカですとその下にNASA、NOAA、DoEといったような機関があったり、欧州ですとIS-ENESといったところがスポンサーをしながら運用している。具体的には参加機関が同一にソフトウエアスタックで構成されたノードというローカルデータセットを運用して、その連携をすることで、全球規模の分散データベースを構築していると。
日本では、私どもも昨年企画推進の立場でかかわったDIASがデータノードになっているということで貢献しています。
欧州に関しまして申しますとIS-ENESというインフラプロジェクトが欧州部分を構成していて、ここも全世界の役割を果たすために欧州の別機能がうまくそこをカバーしているという形で、こちらもサーバーサイドコンピューティング、あるいはWeb Processing Serviceと読んでいますが、これもサイエンスクラウドとよく申し上げていますけれども、大規模なデータをダウンロードするのではなくて、そのデータの下でというところの方向へ移行が始まっていると感じています。
一方、米国においては、NOAAがBig Data Programを展開して、データをどんどんオープンにしていると。その上で商用クラウドのIaaSの上に公開して、個人がデータをダウンロードすることからデータのあるところは処理をするというパラダイムシフトを進んでいるという状況です。
全体でしてみるとユーザー目線でいきますと欧米ともにデータを持ってくるからデータのあるところに行くというシフトが起こっているということです。欧米と違うところは、米国はそれを商用クラウドの上でやっているし、欧州はサイエンスクラウドという研究用のクラウドで行っているということでございます。
今、ビッグデータプログラムやCopernicus DIASといったお話が幾つか出ました。そのキーワードを幾つか拾い合わせていただきます。
欧米の宇宙利用のアプローチといたしまして、アメリカですとLandsatのデータ、あとはビッグデータプロジェクトというところが、ほとんどここに書いているIBM、Amazon、Microsoft、Open Cloud Consortium、Googleで、コンペティションをして、最終的にAmazonがリーグをすることになるのですが、データ自身はオープンですので、全てのクラウドの上でデータ利用が可能ということで、オープン化を強力に推進いたしました。
これがアメリカでの最近の大きな動向です。
「Sentinel Data Hub(欧州)」と書いていますが、これは実は次のページになりまして、今現在はCopernicus DIASということになっています。
【春日部会長】 向井田様、失礼します。あと3分間くらいでお願いできますか。
【向井田(RESTEC)】 もう終わります。
最後はこのページを御説明いたします。Copernicus DIASはもちろん欧州連合で運用されておりますけども、五つのコンソーシアムで、今右下です。CREO DIAS、ONDAというロゴと文字が見えているかと思います。五つの欧州の商用クラウドにデータを提供されています。ということで、ユーザーにはグラウトを使うと。そして、自身では、データセンターで計算をする。衛星データで処理をするという形になっていまして、利用推進するためにコンソーシアムができていると。
最後の1枚をお願いいたします。これらの取組によって、SDGsにどういう貢献があるかということで、ちょっと星取り表をお示ししていますが、これは日本のDIASのアプリケーションやデータがそれぞれ17のゴールのうち、どういうところに貢献しているかをお示ししています。DIASは御承知のとおり気候変動のデータ、衛星のデータを含めていますので、今回御紹介した地球環境系のデータプラットフォームはほぼこの星に準ずる形で貢献しているのではないかと思っています。
すみません、少し長くなりました。
【春日部会長】 いえいえ、とんでもございません。ちょうどぴったり15分に収めていただきまして、ありがとうございました。
非常に詳細に海外の事情、そして、SDGsへのDIASの貢献についてもまとめていただきありがとうございました。
それでは、委員の皆様から御質問をいただきたいと思います。
赤松委員、中北委員、嶋田委員、では三人続けて御質問をいただけますでしょうか。
【赤松委員】 赤松です。大変しっかりとまとめた情報をいただきまして、ありがとうございました。
こうした欧州や米国のプラットフォームの運用経費というのは、どういう形で賄われているのかということを、ちょっと教えていただきたいのですが。
【向井田(RESTEC)】 いつもお世話になっております。ありがとうございます。
運用経費に関して言うと、恐らく欧米は少しずつ、やはり状況は違うのかなというふうに思っています。もともと特に象徴的なのはアメリカのビッグデータプログラムですけれども、彼らがオンプレで支えているデータセンター、これをどうやって経済的に、予算的にも圧縮していくかというところがビッグデータプログラムを実行された一つの大きいトリガーになっていまして、御自身でアーカイブする、製品をもっと利用する経費はぐっと削減します。その分はクラウドに持っていきます。クラウドはアーカイブ料をどうするかというと別にNASAがAmazonに払っているわけではなくて、要はデータを置いておくことでお客さんが来ますというところで彼らは運用経費を稼いでいると聞いています。ですので、データセンターの運用費、データをアーカイブするところで、国の予算としてはぐっと小さくなって、クラウド事業者は、今度はそれは利用料としてユーザーから出ているというメカニズムで回っていると言われております。
【春日部会長】 ありがとうございます。赤松委員よろしいですか。
【赤松委員】 結構です。もう少しそこら辺の構造の情報があれば、今後提供いただきたいなと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
【向井田(RESTEC)】 ありがとうございます。
【春日部会長】 嶋田委員、ちょっとお待たせしてすみません。嶋田委員、よろしくお願いします。
【嶋田委員】 嶋田でございます。
意見というか、質問ではないですけれども、前回もお話をさせていただきましたが、データのオープン化というのは非常に重要だと思っています。例えば埼玉県では地盤沈下の監視のために600か所ぐらい水準調査を毎年実施しています。ただこの水準調査については、かなりお金がかかるので何とか圧縮をしたいということで、今は環境省さんがリモート・センシングを使ってはどうかというガイドラインなども出しています。実際にリモセンデータを使って、センチオーダーの監視は可能なのですが、コンサルタントさんなどに委託の見積りを出すと、数千万規模の見積書が上がってきます。その多くの部分は、実はデータの取得であるという話もあったりして、そこがすごく大事で、せっかくあるデータをうまく使うためにはそのデータのオープン化というのは絶対必須だなと思っております。
先ほどの議論の中でも、ステークホルダーの話もありましたけれども、ステークホルダーとして誰が利用するのかはすごく大事ですけれども、むしろ、あまりそれを限定しないで、本当にオープンにして、使える人はどんどん使っていくほうが何となく健全なのではないかなと私は思いました。
以上でございます。
【春日部会長】 貴重な御意見をありがとうございました。
ほかに御質問等はございませんでしょうか。
赤松委員は先ほどの御質問でよろしいですか。
【赤松委員】 はい、失礼いたしました。消し忘れです。
【中北委員】 すみません、中北も消し忘れでございました。失礼しました。
【春日部会長】 途中で消えていたので、分かりました。ありがとうございました。
今日の午後にはRESTECフォーラムが予定されていますので、RESTECとしてのいろいろな御活動について、皆さんに知っていただけるのではないかと思います。
【向井田(RESTEC)】 告知いただきまして、ありがとうございます。
【春日部会長】 若松委員に代わりまして、ちょっとだけ御紹介させていただきました。
【向井田(RESTEC)】 ありがとうございます。
【春日部会長】 それでは、次に参ります。
次の発表は地球観測によるパリ協定の貢献及びCOP26の対応についてです。
三枝委員と平林委員と続けて御発表いただきます。ちょっと押しているので、合わせて28分ぐらいでいただけるとありがたいと思います。
【三枝委員】 承知しました。
【春日部会長】 三枝さんからよろしくお願いします。
【三枝委員】 では、資料の共有をお願いいたします。
私とJAXA第1宇宙技術部門の平林さんと二人で交代しながら標記のタイトルで報告いたします。そして、この報告の最後のところで、今月10月31日から11月12日にかけて、英国グラスゴーで開催されるCOP26に気候分野の地球観測コミュニティーがどのような知見及び情報をインプットしようとしているか、その対応についても併せて報告いたします。
次のスライドお願いいたします。
今、世界全体で2050年カーボンニュートラルを目指す様々な動きが加速しているところですが、パリ協定のグローバルストックテイクといいますのは、パリ協定の長期目標達成に向けて世界の気候変動対策の進捗を確認する仕組みです。
基本となりますのは、全ての国が提出します自国の削減目標及び各国の人為的な温室効果ガスの排出量・吸収量のデータとなります。
ここで私どもの温室効果ガス分野の地球観測コミュニティーはこうした各国の温室効果ガス吸収・排出量の精度を向上することができるようなデータ、あるいは精度を確認することができるようなデータを作成し、提供するということを今鋭意進めておりまして、本日はそのような活動を様々報告したいと思います。
なお、第1回グローバルストックテイクは2023年に開始される予定で、もうすぐですけれども、新型コロナウイルス感染症の影響もありまして、様々な国際的な議論が遅れております。COP26で詳細な手順が議論される見込みということで、まだ私どももあまり詳しい状況を知らないのですけれども、COP26を起点として、これから評価用のデータの収集が始まると聞いております。
次のスライドお願いいたします。
グローバルストックテイクのスケジュールについてはここに示しました年表のような状態となっております。地球観測のコミュニティーが貢献できるタイミングが幾つかあります。まず、第1に丸1 のところで、情報収集と準備期間です。これはUNFCCCが統合報告書と呼ばれるレポートを作成するためにデータを収集しますけれども、2022年の初めに行われます。そして、こうして得られた情報を基に統合報告書が作成され、丸2 のところに記載されております技術的評価が行われます。この技術的評価はこの図の左下に書いてありますけれども、今年の8月から公表が始まりましたIPCCの第6次評価報告書、ワーキンググループ1から統合報告書まで発表が続きますけれども、ここに既にまとめられている、あるいはまとめられつつある知見やデータがこの技術的評価に使われるとされています。
なお、統合報告書や技術的評価へのインプットの一つの方法としまして、このスライドの上のところにも少し小さい字で書いてありますけれども、統合報告書は、グローバルストックに利用可能性のある最新のデータや情報をUNFCCCが収集するものであって、そこへのインプットの一つとしまして、科学技術上の助言に関する補助機関であるSBSTA、そして、その専門機関――例えば研究と組織的観測に関する専門機関などからも情報提供が可能ということで、私どもはこうしたところと情報交換しながら今、活動を進めているところです。
次のスライドお願いします。
そして、国内のコミュニティーとしましては、これはちょっと英語のままで失礼しますけど、下のところにポイントを書きましたので、ちょっと眺めていただければと思います。日本における温室効果ガス観測と解析を推進している関係府省、機関や大学は協力しまして、欧米の機関等とも協調しまして、特に世界の温室効果ガスの排出削減量の算出と検証に必要となる大気中の温室効果ガスの濃度や地表での温室効果ガスの排出量・吸収量、それから世界のバイオマスデータなどを重視してデータ作成に取り組んでいるところです。
次のスライドお願いいたします。
そうしたデータをどのように使って、温室効果ガスの吸収量・排出量の高精度化あるいは気候の将来予測の向上に役立てようとしているか。これは研究コミュニティーが今取り組んでいるところですが、一言紹介します。
まず、第1に丸1 と書きましたが、今、大気中の温室効果ガスの濃度と地球レベルの輸送モデルなどを掛け合わせて、地表の温室効果ガスの収支を逆推定する研究が進んでおります。これは人為起源、自然起源の両方を含むものです。
そして、丸2 のところで、海や陸の温室効果ガスの収支を現場で直接関係観測し、これをスケールアップするデータが様々精度向上されています。
そして、3番目が今も既に各国から上がっている温室効果ガスインベントリです。この三者は全部合わせますと全ては整合するはずのものですが、ところどころにまだ不確実性が大きいものがありますので、そうした不整合を検出し、問題を解決することで全体の精度を上げようとしています。そして、日本のコミュニティーもそうやって精度の上げられたデータをこの後、最新のデータとして、これまでもIPCC等へ提供してきましたが、これは今後も提供していく予定です。
そして、そのように精度も上げられた人為起源、自然起源の温室効果ガスの収支のデータは、高い時間・空間分解能で、この後も整備をし、気候の将来予測モデルの向上や、それから特に近未来の予測精度を向上し、世界各国の温暖化対策の効果を予測するといったところまで貢献したいと。これが研究上のストラテジーです。
次のスライドお願いします。
こういうストラテジーにのっとって、今様々なプロジェクトが行われています。これは一つの環境省のサポートを受けてグローバルストックテイクに対応しようとしているプロジェクトが作成し、今回の情報収集期間に間に合うように公開しようとしているデータです。詳しくは説明しませんけれども、トップダウン手法とボトムアップ手法の両方からグローバルのデータから地域、国レベルのデータまで作成して、公開しようとしています。なお、これは主に温室効果ガスは収支の研究のアウトプットのデータだけを示しておりまして、使われるデータというのはこのほかにたくさんあります。気象庁の各種データですとか、それからこの後、平林さんから御紹介があります様々な衛星観測データは、これらのグローバルな解析のインプットとして重要な役割を果たします。
次のスライドお願いいたします。
今示しましたデータの中から、ほんの2例だけですけれども、例を紹介いたします。これは先月のSDGsターゲットに貢献するデータとしても紹介しましたけれども、例えばこれから重要になりますのは地表における温室効果ガスの吸収、放出量の高い時間・空間分解能で、その変動モデルで捉えたデータです。例えば右下の図を御覧いただければ、3月といった季節には人間活動の大きいところで、赤色の強い排出量の大きいところが現れていますし、また、7月の夏になりますと北半球の中高緯度で森林によるCO2吸収の強いところなどが現れるといった形でこんなデータを重要な吸収量・放出量のデータとして整理しております。
次のスライドお願いいたします。
また、こちらは農業の活動などもカバーしております陸域生態系モデルによるボトムアップ的な温室効果ガス、主要な温室効果ガス、複数の吸収・放出量のデータです。こうしたデータにより、例えば世界規模で今はメタンの排出を急いでどこまで減らせるかといった取組が各国で議論されておりますけれども、そうしたところにも貢献できるものと考えております。
ここで一端、国立環境研究所からの報告を終了いたします。
平林さん、お願いいたします。
【平林委員】 では、次のページお願いいたします。
では、ここから地球観測衛星によるグローバルストックテイクへの貢献としてJAXAの取組状況を御説明いたします。
三枝さんのほうから御説明ありましたけども、第1回目の2023年、さらには第2回目の2028年のグローバルストックテックに向けて温室効果ガスの排出と吸収の両面で、衛星観測結果が科学的なエビデンスとして活用されるように、GEOやCEOSなどの国際的枠組み、国内関係機関と連携して取り組んでおります。
排出という観点では、温室効果ガスを専用に観測する世界初の人工衛星でありますGOSAT及びその後継機、GOSAT-2での観測データによりまして、グローバルストックテイクに貢献を果たしていきたいと考えております。
また、吸収という観点におきましては、農業・森林・その他の土地利用(AFOLU)の分野におきまして、L-Bandの合成開口レーダーSAR、光学衛星、ライダー技術等を合わせて陸域の炭素収支を解明することで、グローバルストックテイクに貢献してまいりたいと考えております。
具体的には次のページ以降で御説明いたします。次のページをお願いいたします。
環境省、JAXA、国立環境研の共同プロジェクトとして進めておりますGOSAT及びGOSAT2では、主たる温室効果ガスであります二酸化炭素及びメタンに関しまして、全球大気中の濃度分布やその推移を12年以上にわたり監視をしております。これだけの長期観測データを有していることがGOSATシリーズの強みの一つでもございます。
このように長期にわたり観測を続けてきた中で、下のほうに書きましたけれども、2019年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の総会におきまして、各国の温室効果ガス排出・吸収量を算出する上での基礎となるガイドラインが改良されました。
この中で、各国の排出量報告の精度向上に衛星データを活用することの有効性が初めて記載されるとともに、温室効果ガス観測衛星「いぶき」の活用事例が多く記載されるなど、衛星観測の手法が世界標準に位置づけられるまでに至りました。
こうした中、全球の大気グローバルストックテックに向けまして、GOSAT及びGOSAT-2のデータを温室効果ガスの排出量を推定するモデル機関等へ提供し、その成果が統合報告書等に活用することを目指してまいりたいと考えております。
次のページをお願いいたします。
人為起源の温室効果ガスの主要な排出源であります都市域及び大規模排出源における評価のために、JAXAではGOSAT及びGOSAT-2の2層の排出量推定プロダクトを作成し、公開しております。この2層プロダクトのイメージを示したものが、下の左図でありまして、地表面からの太陽反射光のみを利用する従来型の観測解析手法ですと、地表面から大気上層までの気柱全体のGHG濃度を把握できますが、GOSAT及びGOSAT-2では、この太陽反射光に加えて、熱赤外放射を観測する機能を有しております。一方で、熱赤外バンドにつきましては、4キロより上層の大気中の濃度を観測することができますので、気柱全体から上層分を引き算することで、地表から4キロまでの下層とそれより上層の2層情報を取得することができます。排出源により近い大気下層の情報を分離して算出できるのは、世界でもGOSAT、GOSAT-2だけであり、強みとなっているところです。
また、右の図に示したように、観測する地点をGOSAT、GOSAT-2では瞬時に、かつ自在に変更することができますので、都市域や大規模排出源に集中して観測することが可能となります。
このように、都市域を集中観測できること、そして、下層と上層に分けて排出源により近い大気下層のCO2、メタン濃度を導出することで貢献してまいりたいと考えております。
具体的には、今後の統合報告書等に活用されることでグローバルストックテイクへの貢献を目指したいと考えております。
次のページをお願いいたします。
次に、AFOLU分野での貢献について御説明いたします。
IPCCのガイドラインにおきまして、AFOLUの分野ではGHGの吸収源となる森林バイオマスの推定に当たり、合成開口レーダー(SAR)とライダーを用いた森林バイオマスマップの作成方法に関わるガイダンスが追加されております。
また、JAXAのALOS-2データの利用についても、このガイドラインに盛り込まれました。
下の図は、ブラジルのアマゾンにおける2007年と2017年度との森林変化を示したものでございまして、赤が森林減少したエリアを示してございます。
次のページお願いいたします。
これは衛星観測による地上部のバイオマスの推定について示したものでございます。下の図は、欧州宇宙機関(ESA)と協力して作成中の全球バイオマスマップでありまして、1ヘクタール当たりのバイオマス量を示したマップとなっております。
JAXAでは25年超に及ぶJERS-1、ALOS、ALOS-2での長期の観測データセットを有しておりまして、これを用いてNASA、それから欧州のESAと共同で全球バイオマスマップを作成しております。今後、その検証を進めていくこととしております。
作成されたバイオマスマップにつきましては、GHG吸収量推定を行うモデル研究機関等々に提供いたしまして、バイオマスマップ、そしてその成果が統合報告書等に活用されることを目指していきたいと考えております。
次のページをお願いいたします。
次に、マングローブマップについて御説明いたします。
左下が全球のマングローブマップでありまして、緑色で示したのがマングローブのエリアを、薄い黄色がマングローブを保有している国を表しております。
また、右下はインドネシアのスラウェシ島での1996年から2020年での変化を示したもので、赤はマングローブが減少したエリアを示しております。
AFOLUでのその他の土地利用のプロダクトの一つとして、この全球マングローブマップを作成しておりまして、今後モデル研究機関等に提供していきたいと考えております。
そして、これらのデータとその利用成果が統合報告書に反映されることを通じて、グローバルストックテイクに貢献してまいりたいと考えております。
次のページをお願いいたします。
ここからCOP26への対応について御報告いたします。
冒頭、三枝さんからも御紹介ありましたけれども、COP26は英国のグラスゴーで、ここに書いている期間で開催予定でありまして、JAXAではUNFCCCのバーチャル展示及び日本パビリオンのバーチャル展示におきまして、地球観測衛星による気候変動問題への貢献やGHG観測、森林観測などについての紹介を行う予定です。
では、ここで三枝さんのほうにお戻しいたします。
【三枝委員】 次のスライドお願いします。
国立環境研究所からも一つオンラインの展示で、今回、COP26の公式展示は全てオンラインとなりましたので、オンラインにて温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)シリーズ、それから、日本と世界の脱炭素に関する研究、それから、特にアジア太平洋における気候変動適応の情報プラットフォームなどを紹介する予定です。
次のスライドお願いします。これで最後です。
さらにこれは環境省が主催します、ジャパンパビリオンという公式イベントがありまして、これは11月2日、現地にて、パリ協定の目標達成状況の観測・監視に向けた日本の貢献としまして、1時間半のセミナーを開催します。ここではNIES、JAXAから参加しまして、日本からの取組、それから、米国から世界的な温室効果ガス観測衛星を活用したパリ協定への貢献の取組、それから、今回のグローバルストックテイクの統合報告書に大きな役割を果たしますIPCCに取りまとめられた知見やデータを含む、アジア・太平洋における観測・監視網に関する取組、それから、アジアの各国へのこれらの技術の反映ということでモンゴルの事例などを紹介するということで、COP26への参画とアピールを果たしていきたいと考えております。
以上です。
【春日部会長】 三枝委員、平林委員、大変広範な内容について、非常にコンパクトに短くまとめていただいてありがとうございました。
日本の観測や研究のデータが国際的な枠組みや報告書にいかに貢献して活用されているかということがよく分かりました。
委員の皆様から御質問やコメントをいただきたいと思います。
浦嶋委員、お願いします。
【浦嶋委員】 ありがとうございます。
すみません、CO2吸収のAFOLUでの取組について、私伺って御質問させていただきたいのですけれども、御承知のとおり、今、産業界では脱炭素に向かって、どうやって自社のCO2排出を削減していくかということに取り組んでいます。一方でやはりなかなか実質的な排出をゼロにできないところで、自然による吸収といったクレジットの取得ということも非常に注目されています。今この国ベースで例えばバイオマス測定やCO2の吸収の計測をされているとのことですけれども、例えばとある地域を植林したことによって、そこで発生する――ですから、かなり狭いエリアですけれども、そういったところでの、例えばクレジット取得にこういった衛星での観測が活用できるのかといったところに関しては、どのようなお考えでいらっしゃいますか。
【平林委員】 では、私のほうからお答えいたします。
衛星につきましては、宇宙空間から観測するということもございまして、いわゆる空間分解能という観点で、CO2をきめ細かく観測するというところについては、性能的に限界がございます。それで、今おっしゃられた観点というのは恐らく民間事業者一つ一つでのクレジットがどうかという御質問かと理解いたしました。ということはかなり細かいレベルで把握をすることが求められてくると思いますので、衛星だけが全ての観測手段ではなくて、航空機を含めていろいろな観測手段もございます。また、衛星で培った技術をそういうところに展開していくというのも一つのアプローチでございます。例えば排出のほうにつきましては、今、宇宙で培った技術を航空機のほうに乗せて観測する取組を全日空さんと共同でやっていますので、細かいものを見る場合には、別のアプローチになろうかとは思います。
【浦嶋委員】 そうなりますとそういったことが転用可能ということなのですか。今、衛星に乗せている観測方法が、別の例えばドローンや航空機にも転用可能かもしれないということですか。
【平林委員】 地上技術が既に進んでいる部分もございますし、衛星の技術を転用する部分も多々あろうかと思います。
【浦嶋委員】 なるほど。どうもありがとうございます。
【春日部会長】 三枝委員からもこれについてお答えはありますか。
【三枝委員】 そうですね、今おっしゃられたとおりです。そしてまた、こうした森林のバイオマスを測るという方法と同時に、例えばですけど、今、世界で数百地点の森林のところにタワーを建てて、二酸化炭素の吸収・放出量を直接気象学的方法で測るといった取組も行われ、両者が一致するのかどうかという研究などもたくさん行われているところですので、様々な方法を組合せて、プロットスケールからグローバルまで精度を上げていこうとしているところです。
以上です。
【春日部会長】 ありがとうございました。
【浦嶋委員】 ありがとうございました。
【春日部会長】 では、岩崎委員お願いいたします。
【岩崎委員】 JICAの岩崎です。発表をありがとうございました。
JAXA、国立環境研究所さん、どちらもJICAの途上国に対する協力に長年協力いただきましてありがとうございました。
特にALOS-2に関しましては、熱帯雨林保全のための違法伐採取り締まりや防災分野にて幅広く活用させていただいており、本当に感謝申し上げたいと思っております。
御発表の中で言及ありました温室効果ガス(GHGs)管理や森林減少・劣化に由来する排出削減(REDD+)というテーマに関しましても途上国から要望が多い状況になってきております。今まではALOS-2を中心にいろいろと国際協力の中で活用させていただきましたけれども、御紹介いただいたいぶき等の地球観測技術を活用させていただくことで、新たな付加価値をつけることができるのではないかと思いました。引き続きその可能性については探らせていただきたいと希望しています。
以上、コメントになります。ありがとうございます。
【春日部会長】 岩崎様ありがとうございます。
どういうふうに具体的に活用されているかという事例を御紹介いただきました。
これについて、特に三枝委員、平林委員から……。
【平林委員】 JICAさんとは様々な形で協力、連携をさせていただいております。今御紹介いただいた森林分野ではJJ-FASTで協力をさせていただいておりますし、それ以外にもレーダー衛星を使った協力、さらには地球観測衛星を使った協力について、進行しているものもあれば将来の種として議論を始めさせていただいているものもございます。我々の研究成果が日本国内だけではなく、途上国を含めいろんな形でソリューションにつながっていけるように、引き続きJICAさんとは連携させていただきながら進めたいと思っていますので、引き続きよろしくお願いいたします。
【春日部会長】 ありがとうございます。
利活用の具体的な事例をお話しいただけると、この部会としての取りまとめの方向性にも非常に役に立ちます。貴重な議論をありがとうございました。
では、赤松委員お願いいたします。
【赤松委員】 赤松です。今、皆様が御質問や議論されたことにちょっと追加情報ということです。最初に平林委員がおっしゃられたように、やはり実際のプロジェクトレベルで吸収量を確定して、クレジットに持っていくということになりますと、今やられている衛星ベースのグローバルなモニタリングではちょっと足りない部分というのもあります。我々は実際にREDDプラスのクレジットの創出等をやっていますが、その際には地上調査も行いますし、分解能の高い衛星を使ったり、場合によっては航空機も使っています。
やはり、対象のレベルによって衛星などの使い分けも出てまいりますので、その場面、場面で最適な方法を使っていくことが必要になってくるかと思います。
浦嶋委員、もし御要望がございましたら、直接、我々のところに問い合わせていただければと思います。具体的な事例がございますので、よろしくお願いいたします。
ついでですので、この間のBS朝日の気候変動の番組のときに、浦島委員がコマーシャルで語られていたのを見ました。大変すばらしいコメントだったと思います。ありがとうございました。
【春日部会長】 これは貴重な情報も含めてありがとうございました。
【浦嶋委員】 ありがとうございます。お恥ずかしい限りです。
【春日部会長】 今の赤松委員からのコメントに対して、何かございますか。
【平林委員】 まさしくおっしゃるとおりでございまして、衛星とその場の観測、それから航空機の観測、それぞれが補完し合うことも大切でございますし、あと精度を高める上で校正と検証という形でも、非常に有効な関係になっていくかと思いますので、引き続き、関係する機関と連携して取り組んでまいりたいと思っております。
【春日部会長】 ありがとうございます。
様々なスケールでのデータの組合せ、そして、その組合せによる補完的な検証、これは冒頭で佐藤委員からいただきましたコメント、御質問にも答える形になるかと思います。この点についても取りまとめで大きな柱になるかと思います。
ほかに御質問等ございますか。
三枝委員、平林委員、非常に効率よく御発言いただいたので、少し押していた時間が元に戻りました。ですので、あと3分程度、これまでの議論に関してでも結構です。何かこれを言い忘れた、ここはその後の御発表を聞いてもとても重要だと思ったというようなことがございましたら、どうぞ御発言ください。
六川委員、お願いいたします。
【六川委員】 六川でございます。
本当にいろんな御発表をいただきまして、ありがとうございました。
全体を通じて二つほど少し感想といいますか、御礼も兼ねて申し上げたいのですけど、今SDGsの全体の方向性についてはお話がありましたが、少し社会実装や貢献ということを、ある意味で強調するということですと、現在企業の価値というのがSDGsの延長と言ってもいいでしょうけども、いわゆるESG投資というようなところで企業価値を定めるという方向が非常にいろんな投資行動についても大きくなっていますので、もし必要であればSDGsの全体の方向性に、ESGについてもちょっと触れられたほうがよりその実装についての取組が伝わるのではないかなと思った点が一つです。
それからもう一つ、プラットフォームについてですけれど、向井田さんがいらっしゃるので、今のESGに関係しますけど、今後データの今は素性といいますか、非常にいろんなことを問うのに問題になってくると思いますので、私の言葉ですと、ぜひプラットフォームにいろいろ蓄えたり、リファーするときに、データの素性といいますか、血統書ですけど、そういったこと等にも留意されて、これが商用活動で使っても問題がないということがきちんと担保できるような形のデータのプラットフォームのつくり方をしていただければ、いろんな産業振興も含めて総合的に日本そのものの発展に貢献できるのではないかなと思いました。
以上二つ。どうもありがとうございました。
【春日部会長】 六川委員どうもありがとうございました。
この御指摘に関して、ほかの皆様、御発表者に限られなくても結構ですけれども、何か御意見はございますでしょうか。
なければ、川辺委員どうぞお願いいたします。
【川辺委員】 ありがとうございます。国環研さん、JAXAさんの発表は非常に参考になりました。陸域に関してさまざまな情報を得て活用していこうという思いに感心いたしました。
これはお願いになるのですけれども、海洋環境に関する同じような取組について、もしお話をお伺いする機会がいただけるとたいへんありがたく思います。御承知のように、海洋環境は今、グリーンランドや北極のほうで氷が解けているなどの気候変動の影響が起きていて、その海洋変動がまた気候に影響して、と相互に作用しているかと思います。気候と海洋の相互作用の全体像を描く上で、海のほうもカバーしていただけるとありがたいなと思いました。
以上、お願いです。ありがとうございます。
【春日部会長】 ありがとうございます。
この前、河野委員からも話題提供があったかと思いますけれども、河野委員、今の点について、何か補足的なコメントをいただけますでしょうか。
【河野委員】 すみません、今、ちょっとすぐにはフォローし切れないです。ごめんなさい。
【春日部会長】 すみません、突然振りまして。
【平林委員】 平林から一言よろしいでしょうか。温室効果ガスという観測に関しましては、海上も観測はしております。一方で、観測原理上、太陽の光を観測するという観点から、極域観測については得意としていない側面がございます。
一方で御質問あったのはGHTだけではなくて様々な観点での海洋環境ということかと思います。海洋の海面水温をはじめとしてクロロフィル量などの色々な観測をしておりますし、JAMSTECさんとも連携させていただきながら研究活動は進めております。
また、紹介する機会がございましたら、御紹介させていただければと思います。
【春日部会長】 ありがとうございます。
海洋環境の研究に基づいて、海洋政策の中でSDGsをどう考えていくかという動きは内閣府のほうにもあるようです。併せて御紹介いたします。
ほかに。どうぞ。
【河野委員】 ちょっとテーマを整理していただければ説明することはできるかと思います。
【春日部会長】 ありがとうございます。
【河野委員】 事務局のほうで御依頼があれば、短いレポートぐらいはできると思います。
【春日部会長】 次回に向けてまた御相談させていただきたいと思います。
それでは、皆様本当に非常に密度の濃い話題提供、御議論をありがとうございました。
本日御説明いただいた内容もぜひCOP26において御報告いただければと思います。
それでは、本日いただいた御議論や御意見を踏まえて、今後の議論に向けて準備を進めてまいります。
次回部会では、また続いてヒアリングを予定しておりますので、活発な御議論をお願いしたいと思います。
本日予定していた議題は以上ですけれども、最後にもう少しという方はいらっしゃいますでしょうか。
SDGsにどう貢献するかというのが柱なので、蟹江委員はワシントンから入っていただいていますけれども、何か最後に一言コメントございますか。
ないようでしたら、予定の時間が近づいてまいりましたので、事務局から連絡事項をお願いいたします。
【堀川地球観測推進専門官】 本日の議事録は、後日事務局よりメールで委員の皆様にお送りいたします。各委員に御確認いただいた後、文部科学省のホームページで公表いたします。
次回第4回の部会は12月に開催を予定しております。開催案内については、また改めて御連絡いたします。
事務局からの連絡事項は以上となります。
【春日部会長】 ありがとうございました。
本日は、浦島委員、向井田様、三枝委員、平林委員、大変貴重な情報提供と御発表ありがとうございました。委員の皆様も活発な御議論ありがとうございました。
以上をもちまして、第9期地球観測推進部会の第3回会合を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。

 ―― 了 ――

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