宇宙開発利用部会 将来宇宙輸送システム調査検討小委員会(第1回) 議事録

1.日時

令和2年1月15日(水曜日) 14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省 15階特別会議室

3.議題

  1. 将来宇宙輸送システム調査検討小委員会について
  2. 我が国の宇宙輸送に係る国内の主要動向について
  3. 将来宇宙輸送システム調査検討小委員会における検討項目素案について
  4. その他

4.出席者

委員

主査(専門委員)         遠藤 守
主査代理(専門委員)      永田 晴紀
専門委員             有田 誠
専門委員             石井 由梨佳
専門委員             石田 真康
専門委員             稲川 貴大
専門委員             大貫 美鈴
専門委員             神武 直彦
専門委員             齊藤 靖博
専門委員             竹森 祐樹
専門委員             中村 裕子
専門委員             野口 裕一
専門委員             野中 聡
専門委員             兵頭 翔洋
臨時委員             松尾 亜紀子
専門委員             山崎 直子

文部科学省

研究開発局長                   生川 浩史
研究開発局宇宙開発利用課企画官      原田 大地
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐    渡邉 真人
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐    岡屋 俊一

(説明者)
内閣府
 宇宙開発戦略推進事務局
  参事官                      中里 学
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 研究開発部門 第4研究ユニット
  ユニット長                    沖田 耕一
スペースワン
 取締役 企画・営業・渉外本部 本部長    阿部 耕三

5.議事録

【事務局(原田企画官)】 定刻となりましたので、ただいまから宇宙開発利用部会将来宇宙輸送システム調査検討小委員会の第1回目の会合を開催させていただきます。
委員の皆様にはご多忙のところ、お集りいただきまして誠にありがとうございます。御礼を申し上げます。
本日は、昨年9月26日に開催された第51回宇宙開発利用部会において設置された将来宇宙輸送システム調査検討小委員会の初の会合となります。議事進行につきましては、主査にお渡しさせていただくまで事務局のほうで進めさせていただきます。
議事に先立ちまして、まず、本日ご出席いただいております委員の皆様のお名前を、50音順で事務局よりご紹介させていただきます。
また、本日は、初の会合となりますので、委員の皆様から、20秒程度の簡単なご挨拶をいただければと思います。
50音順で恐縮ですが、まずJAXAの宇宙輸送技術部門の有田委員、よろしくお願いします。

【有田委員】 JAXAの有田でございます。H3ロケットプロジェクトのサブマネージャーをしております。
普段はH3ロケットの開発をしておりますが、この将来宇宙輸送に関しては、H3ロケットをどのようにこれにつなげていくかというような観点、立場で参加させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

【事務局(原田企画官)】 次に、防衛大学校准教授の石井委員、お願いいたします。

【石井委員】 防衛大学校の石井由梨佳と申します。
私は、国際法、宇宙法、航空法等を勉強しておりまして、その観点から参加させていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【事務局(原田企画官)】 ありがとうございます。次にA.T.カーニー プリンシパルの石田委員、お願いいたします。

【石田委員】 A.T.カーニーの石田と申します。よろしくお願いします。
普段、経営コンサルティングとSPACETIDEという宇宙ビジネスファームを主宰させていただいており、政府関係だと宇宙政策委員会の幾つかの部会の委員をさせていただいております。よろしくお願いします。

【事務局(原田企画官)】 ありがとうございます。
次に、インターステラテクノロジズ社社長の稲川委員、お願いいたします。

【稲川委員】 インターステラの稲川です。よろしくお願いします。
我々インターステラは北海道南十勝の大樹町に本社を置いて、ベンチャー企業としてロケット開発を行っているところです。本日もこの後、説明する時間をいただきますが、ベンチャーの経営という部分と、自分自身の技術者としての部分と、両方で意見を言わせていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【事務局(原田企画官)】 ありがとうございます。
次に、スペースアクセス代表の大貫委員でいらっしゃいます。

【大貫委員】 大貫美鈴です。よろしくお願いします。
宇宙ビジネスコンサルタントをしています。輸送系に関しては技術者というような専門家ではありませんが、マーケット視点での発言等で貢献できたらと思っています。よろしくお願いします。

【事務局(原田企画官)】 ありがとうございます。
次の、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の神武委員でいらっしゃいます。

【神武委員】 慶應大学の神武と申します。よろしくお願いします。
最近は、どちらかというと、測位衛星や地球観測衛星のリモセンデータを使って、いろいろな見えないものを見たり、測ったりするというようなことをやっておりますが、20年前にH-Ⅱ8号機が失敗したときには、JAXAにおりまして、当時はNASDAでしたが、ロケットエンジンを探しにいくことをやりました。そのときの上司が遠藤主査で、一緒に海に探しに行ったのが有田さんで、非常に懐かしく思っています。あれから20年経ったのでもっとすごいことが起きる時代なのではないかと思っていますので頑張りたいと思います。よろしくお願いします。

【事務局(原田企画官)】 ありがとうございます。
次に、JAXA研究開発部門CALLISTOチーム副チーム長の齊藤委員でいらっしゃいます。

【齊藤委員】 JAXAの齊藤です。よろしくお願いします。
私は、ドイツやフランスと一緒に1段再使用の実験機をやるCALLISTOというプロジェクトの副チーム長をやっております。これから、1段再使用化ということが本流になりつつあるという動きもありますので、その辺の見極めをどうしていくかという観点で議論、対応を深めていければと思っております。よろしくお願いいたします。

【事務局(原田企画官)】 ありがとうございます。
次に、日本政策投資銀行イノベーション推進室長兼航空宇宙室長兼担当部長でいらっしゃる竹森委員でいらっしゃいます。

【竹森委員】 日本政策投資銀行の竹森でございます。イノベーション部門と、あと航空宇宙部門を統括しております。
この中では、完全に部外者というか門外の人間なのですが、もともとうちの銀行では、航空及びエンジンの開発ファイナンスをずっとやってきました。それで、2年前からこの宇宙の村に入らせていただいております。銀行の中でいろいろと議論はありますが、ファイナンス面で貢献していきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

【事務局(原田企画官)】 ありがとうございます。
次に、東京大学スカイフロンティア社会連携講座特任准教授の中村委員でいらっしゃいます。

【中村委員】 皆さんよろしくお願いします。中村です。
イノベーションマネジメントを専門にしていまして、航空という固い産業の中で、ドローンや空飛ぶ車をどうやって安全に導入していくか、その環境整備にかかわっています。宇宙に関しては、航空宇宙学科の人材育成をやっているものですから、優秀な彼らが、今自動車産業等に行ってしまっておりますので、卒業後も航空宇宙産業に入りたいと思い続けられるよう、産業力あるものにつながるビジョンを皆さんと議論できればと思っております。よろしくお願いいたします。

【事務局(原田企画官)】 ありがとうございます。
50音順から外れて恐縮ですが、次に、公益財団法人日本宇宙少年団専務理事の遠藤委員でいらっしゃいます。

【遠藤委員】 遠藤です。よろしくお願いいたします。

【事務局(原田企画官)】 ありがとうございます。
次に、北海道大学機械宇宙工学部門教授、副研究院長の永田委員でいらっしゃいます。

【永田委員】 北海道大学の永田と申します。よろしくお願いします。
研究分野はハイブリッドロケットの研究開発を主にやっております。うちの研究室から卒業生が4名、インターステラに採用いただいております。今、人材提供元として重要な研究室になっております。
また、うちの研究室が主体となって、新たなハイブリッドロケットの販売をするベンチャー企業の立ち上げも予定しておりまして、民間としての立場でもいろいろ議論させていただければと思います。よろしくお願いします。

【事務局(原田企画官)】 ありがとうございます。
次に、IHIエアロスペース宇宙輸送システム技術部主査の野口委員でいらっしゃいます。

【野口委員】 IHIエアロスペースの野口裕一と申します。よろしくお願いします。
私はイプシロンロケット等を含むロケットのシステム設計を担当してきました。この場でいろいろな将来の輸送系のありたい姿をきちんと定めて、そこへ向けてどうやって実現していくかという議論で貢献できればいいかなと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

【事務局(原田企画官)】 ありがとうございます。
次に、JAXA宇宙科学研究所宇宙飛翔工学研究系准教授の野中委員でいらっしゃいます。

【野中委員】 JAXA宇宙研の野中です。
主に再使用ロケットの研究に取り組んでおりまして、今はRV-Xという実験機の開発を進めているところでございます。今、我々が研究していることをこの先の将来、どのようにつなげていけばいいかということについて、いろいろと議論をさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【事務局(原田企画官)】 ありがとうございます。
次に、三菱重工業株式会社宇宙事業部技術部主任の兵頭委員でいらっしゃいます。

【兵頭委員】 三菱重工の兵頭といいます。よろしくお願いします。
三菱重工では、H-ⅡA/Bロケットの運用やH3の開発をやっておりますが、それらのシステム設計を担当しています。それらの経験を踏まえて、H-ⅡAロケットの商業のマーケットに売り込むということや、宇宙探査領域でどのような活用法があるかといったものを議論させていただいております。
将来的に国際市場においても力があるような宇宙輸送システムについて皆さんと議論していきたいと思います。よろしくお願いします。

【事務局(原田企画官)】 ありがとうございます。
次に、慶應義塾大学理工学部教授の松尾委員でいらっしゃいます。

【松尾委員】 慶應義塾大学の松尾と申します。よろしくお願いします。
学科としまして、理工学部機械工学科で、いわゆる、「The・技術」というところで教育をしております。自分の主な研究は、圧縮性流体や燃焼というような宇宙と航空に関連した推進システムにかかわることをコンピュータシミュレーションで研究しております。
この4月からは、日本航空宇宙学会の会長になりますので、そのような意味でもいろいろな新しい方々のお話を聞きながら、次の学会の運営にも生かせればいいかなと思っております。よろしくお願いします。

【事務局(原田企画官)】 ありがとうございます。
次に、一般社団法人スペースポートジャパン代表の山崎委員でいらっしゃいます。

【山崎委員】 山崎と申します。元JAXA宇宙飛行士であり、宇宙政策委員会の部会を含めた委員及び日本ロケット協会で理事をやっており、皆様にはお世話になっております。
本委員会では、スペースポートジャパンの代表理事という立場で参加させていただきます。後ほど発表させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

【事務局(原田企画官)】 ありがとうございます。
続きまして、事務連絡として申し上げます。本日の会議の成立についてでございますが、本小委員会の親部会に当たる宇宙開発利用部会の運営規則第2条10項におきまして、小委員会はこの小委員会に属する委員の過半数が出席しなければ会議を開くことができないと定められております。本日、構成委員の先生方全員にご参加いただいておりますので、定足数を満たしております。よって、本日の会議が成立していることをご報告いたします。
二つ目は本日の資料についてですが、お手元の議事次第の紙をごらんいただければと思います。小委員会では、ペーパーレス会議としておりますので、各委員の皆様方にタブレットのほうを配付させていただいております。そちらのほうから資料へのアクセスをお願いいたします。もし、問題等がございましたら事務局にご連絡いただければと思います。
事務連絡としては以上でございます。タブレットのほうは特に問題ないでしょうか。何かありましたら途中でもご指摘いただければと思います。
続きまして、本日、初回の小委員会ということでございますので、当局、研究開発局の局長である生川から一言ご挨拶をさせていただきます。

【生川研究開発局長】 研究開発局長の生川でございます。今、お話がありましたように、この小委員会は本日が初めての会議になりますので、冒頭、簡単に一言ご挨拶を申し上げたいと思います。
委員の先生方におかれましては、日ごろより宇宙開発事業にさまざまな観点からご協力をいただいておりまして誠にありがとうございます。
そして、今回、お忙しい中、将来宇宙輸送システム調査検討小委員会の委員をお引き受けいただき、また、本日も年はじめにもかかわらず、今紹介ありましたように、委員の先生方全員にご出席をいただいております。心から感謝を申し上げたいと思います。
文部科学省は我が国の宇宙開発の黎明期から宇宙開発事業の推進に尽力をしてきたところでございます。特に、全ての宇宙活動の入り口となる宇宙輸送機、ロケットについては、遡ること約65年前、東京大学のいわゆるペンシルロケットの打上げのころから研究開発の推進をさせてきていただいているところでございます。
その後、衛星投入用の基幹ロケットを含め、600機を超えるロケットの打上げに携わってきたところでございます。
我が国のロケットは、日本の強みであります精緻なものづくり技術によりまして、これまで他国と比較をしても、非常に高い打上げ成功率を誇ってきているところでございまして、来年度に初号機打上げ予定の新型の基幹ロケットとなりますH3ロケットについても、着実な打上げ成功に向けて引き続き準備をしっかりと進めてまいりたいと考えております。
他方で、近年では、海外でも宇宙輸送ビジネスを行うさまざまな企業が現れ、打上げサービスの国際競争力の強化が重要な課題となってきているというところでございます。
このような中で、昨年度に改訂をされました政府の宇宙基本計画工程表におきまして、再使用型ロケットを含めた将来宇宙輸送システムに係る課題の調査検討を文部科学省で行うということを明記いただいたところであります。
これを受けて、この小委員会では再使用型ロケットを含む宇宙輸送の国際競争力強化に向けた幅広なご議論を行っていただければありがたいと考えております。
また、本日は、宇宙政策委員会が平成26年にまとめました宇宙輸送システム長期ビジョンについて、内閣府宇宙事務局よりご紹介いただくことになっておりますが、宇宙政策委員会では、この小委員会の検討結果も踏まえながら今後宇宙輸送システム長期ビジョンの見直しも含めた宇宙輸送政策全体の議論を進めていく予定でございます。
従いまして、この小委員会は非常に重要な役割を担っているということが言えると思います。
ぜひ、先生方の忌憚のないご意見をいただきながら、私共もまとめていきたいと考えておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
以上、簡単ではございますが、冒頭の挨拶に代えさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

(1)将来宇宙輸送システム調査検討小委員会について

【事務局(原田企画官)】 それでは、議事に入らせていただきたいと思います。
一つ目の議題は、「将来宇宙輸送システム調査検討小委員会の設置について」でございます。
お手元の資料1-1-1をごらんいただければと思います。
冒頭で、ご説明さしあげましたとおり、将来宇宙輸送システム調査検討小委員会は、昨年9月26日に開催されました第51回宇宙開発利用部会におきまして設置が決定されているところでございます。
資料1-1-1の1ポツの設置の趣旨でございますが、冒頭、当局局長から申し上げましたとおり、文科省においてはあらゆる宇宙開発利用の基盤となる輸送系の研究開発を進めさせていただいております。我が国の宇宙活動全体を支える宇宙輸送系の自立性の確保のため、これまでH-ⅡA/Bロケット、イプシロンロケット、さらに来年度打上げを予定している新型基幹ロケットとなるH3ロケットの開発を進めているところでございます。
他方で、海外では、皆様ご承知のとおり、SpaceXなどの民間企業による再使用ロケットのような取組みも進んでいるところでございますので、そのような状況も踏まえながら、平成30年度の宇宙基本計画工程表におきましては、再使用型宇宙輸送システムを実現するに当たっての課題の検討を行うこととされたところでございます。
このため、再使用型宇宙輸送システムを含め、政府として定めた宇宙輸送システム長期ビジョンの内容の更新などを見据えまして、本小委員会にて調査審議を進めさせていただければと考えているところでございます。
資料1-1-1の参考に、小委員会の立付けについてもつけさせていただいておりますが、宇宙開発利用部会の中のこのような体制下での小委員会ということで今回設置させていただいております。さらに添付しておりますとおり、工程表34番で、我が国の再使用型宇宙輸送システムを実現するに当たっての課題の検討をすべきということで、本小委員会を設置させていただいております。
また、調査検討事項でございますが、資料1-1-1に記載されてございます。2ポツにございますとおり、(1)の再使用型宇宙輸送システムを含む将来の輸送系のあり方につきまして、また(2)再使用型宇宙輸送システムを実現するに当たっての課題について、さらに(3)国内外の将来宇宙輸送システム研究開発動向、その他の事項などを想定しております。本小委員会における具体的な検討項目につきましては、最後の議題でもまたご議論させていただければと思いますが、委員の先生方と調整させていただきたいと考えております。なお、本委員会の設置期間は、昨年の9月26日から令和3年の2月14日までとなっておりますのでよろしくお願いいたします。
続いて、資料1-1-2をごらんください。本小委員会の構成員の名簿となっております。委員の皆様を先ほどご紹介させていただいたところですが、主査につきましては、親部会に相当する宇宙開発利用部会運営規則第2条第5項にしたがい、宇宙開発利用部会の白石隆部会長から遠藤委員を主査にご指名いただいておりまして、遠藤委員には既にご快諾をいただいているところでございます。また、同規則第2条第9項にしたがい、遠藤主査から主査代理として永田委員をご指名いただいておりまして、永田委員からもご快諾をいただいておりますことをご報告いたします。
ここまでで、ご意見、ご質問等がございましたらよろしくお願いいたします。
よろしいでしょうか。
それでは、以降の議事進行を主査の遠藤委員にお渡しさせていただきたいと思いますので、以降の進行のほど、よろしくお願いいたします。

【遠藤主査】 原田企画官ありがとうございます。
遠藤でございます。よろしくお願いいたします。
先ほど、公益財団法人日本宇宙少年団の専務理事をしているとご紹介をいただきましたが、ご存じの方も多いと思いますが、私はJAXAで40年以上、宇宙輸送にかかわる仕事をさせていただいておりました。そういうことで、今回も主査の大役を任命されたのかなと思っているところでございます。
この小委員会について、若干、私の思いを申し上げますと、今後の20年あるいは30年後の日本あるいは世界の、社会の様相の中で、この宇宙輸送というものがどういう役割を果たしていくのかということに思いを馳せながら、今後10年、H3以降の日本の宇宙輸送における役割、特に国におけるこの将来の宇宙輸送系に対する研究開発がどうあるべきか、という方向性のようなものを、あるいは社会の中でどういう立ち位置なのかというようなことも含めて、本小委員会の中にはさまざまなご経験をされている方も来ていらっしゃいますので、ぜひ一緒に議論をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

(2)我が国の宇宙輸送に係る国内の主要動向について

【遠藤主査】 それでは、早速、2番目の議題に入らせていただきます。
議題は「我が国の宇宙輸送に係る国内の主要動向について」です。我が国の将来宇宙輸送システムについて、この小委員会で調査検討を行うに当たっての前提として、現状の国内外の宇宙輸送システムの取組み状況について今回と次回、JAXA等で担当されている方々からご説明をいただきます。本日は議事次第にあります4項目についてご説明をお願いしております。
まずは、1ポツ目の基幹ロケット開発にかかわる過去の政策文書について、事務局から説明をお願いいたします。

【事務局(原田企画官)】 資料1-2-1にて説明。

【遠藤主査】 ありがとうございました。
質疑については、まとめて後ほどにさせていただきます。続きまして、2項目目の「宇宙輸送システム長期ビジョン」について、内閣府からご説明をお願いいたします。

【内閣府中里参事官】 内閣府の中里でございます。よろしくお願いいたします。資料1-2-2にて説明。

【遠藤主査】 ありがとうございました。
それでは、引き続きましてJAXAからご説明をお願いいたします。

【JAXA沖田】 JAXA研究開発部門第4研究ユニットの沖田と申します。資料1-2-3にて説明。

【遠藤主査】 ありがとうございました。
それでは、これまで3件のご説明をしていただきましたので、これについて質疑をお願いいたします。何かご意見等ありましたら、挙手にてお願いいたします。

【永田主査代理】 よろしいですか。最後に説明いただいた「J-SPARC」の取り組みについて、もう少し教えていただきたいと思います。国が主導で宇宙輸送の開発を行っていくということは日本ではなかなか難しいところがございまして、今後は民間参加がだんだんと活発化してくるという国際的な情勢の中で、自在性の確保ということで、国がどこまで予算を確保できるかということの先行きがだんだん不透明になってきている中、国の取組みとして民間での活動を支援するという一つの事例としてとてもいい試みだと思います。
その中で、国の仕事としては、民間ではなかなか開発しきれない、大規模でリスクが高い技術開発を先導してやるということと、もう一つ加えて、国が民間企業にある種の信用のようなものを与えて、この民間企業の技術レベルは一定のレベルに達しているというようなお墨付きを与えるというようなやり方があると思っており、J-SPARCに選定されてJAXAと組んでやっていますということも、その一環としてある程度機能するのではないのかなと思いながら伺っていました。そこで、ここに稲川さんがおられるのでお聞きしたいのですが、J-SPARCでJAXAと組み始めてから民間資金が集まりやすくなったというようなことはあるのでしょうか。そういう効果でもこのプログラムは機能していると考えてよろしいでしょうか。

【稲川委員】 はい、具体的に数字でどこまで効果があったかということをお答えすることは難しいところではあるのですが、ちょうど連携を発表させてもらったタイミングが2019年3月19日で、発表後に我々の打上げ実験も成功したこともあいまって、それ以降のタイミングでうまく合計15億円程度の資金調達ができました。うまくいった理由の一つに、こういうJAXAさんとしっかりパートナーシップという形を組んでいるところが投資家さんにも実際に刺さったところがあるということは、感覚としてある程度あります。具体的にどこまでかということについては申し上げることは難しいですが。

【永田主査代理】 実際に、このようなパートナーシップを結んでいますということを、投資家さんへの説明では積極的に盛り込んでおられるのですか。

【稲川委員】 そのために、わざわざ はっぴ を着たような写真も載せておりまして、これだけのパートナーの人たちと一緒にやっていますと、絵まで含めてのことをやっているところです。

【永田主査代理】 ありがとうございます。

【遠藤主査】 そのほかございますか。
それでは、私から事務局に一つ質問をさせていただきたいのですが、宇宙輸送システム長期ビジョンはちょうど5年前に策定されたということで、この後、政策委員会あるいは文科省において、フォローアップや見直しのような作業は何かあったのでしょうか。それはこの小委員会ができるまでは特段なかったのか、その辺を教えていただければと思います。

【事務局(原田企画官)】 文部科学省のほうからわかる範囲でお答えいたします。この「長期ビジョン」を踏まえて、JAXAにおいてどのような活動をしているか、将来宇宙輸送システムについてどのような活動をしているかというところは、今JAXAからの説明があったとおり、CALLISTOといった再使用型ロケットの研究や、あるいはLNG推進系、エアブリージングエンジンといった個々の研究活動としてご紹介をさせていただいたところでございます。
文部科学省の宇宙開発利用部会におきましても、このような宇宙輸送にかかわる活動につきましては、個別にJAXAからご報告をいただいていたところです。このような事実関係はございますが、これまでこの「宇宙輸送システム長期ビジョン」のフォローアップという意味で明確にやられたかということに関して言いますと、明確にそのような形では行われていないということが私どもの認識でございます。この時の状況とは現在変わっており、技術の進捗あるいは米国のSpaceXのようなベンチャーが実際に再使用型ロケットを運用しているような事実もありますので、長期ビジョンの見直しということも、内閣府で検討されていると思いますが、この5年間の状況変化も踏まえながら、今後の将来宇宙輸送のあり方、あるいは将来宇宙輸送だけではなく、今我が国として技術を持っている基幹ロケットの維持・発展のあり方も含めて、フォローアップをしていくといったことが、当小委員会の一つの役割になってくるということでございます。

【遠藤主査】 ありがとうございました。
そのほかに何かございますか。竹森委員どうぞ。

【竹森委員】 少し細かい話なのですが、今JAXAさんのご説明であった資料の40ページでCALLISTOのメリット・デメリットの表があったと思います。再使用型宇宙輸送システムはまさに当然必要だと思っていますが、銀行員なので、コストパフォーマンス等いろいろ計算しながら民間資金を使いつつ実現させていきたいと思うのですが、どのくらい資金がかかるものなのか全然わかりません。その一つの指標で単独のデメリットのほうに150億円という表現が見えるのですが、逆に言えば150億円かければどのくらいまでできるのか、この150億円という数字がどういう意味があるのかヒントだけでも教えていただければと思います。

【JAXA石本】 資料1-2-3の40ページにございます150億円という数値は、CALLISTOの実験機を開発するにあたってこのぐらいの規模の資金が必要ではないかという一つの見積もりであり、単独として概算するとこのぐらいの費用が必要になります。日本とフランスとドイツ3カ国で出す場合は、それを分けることができるということでメリットがあるということです。150億円でございますが、実験費ということでSpaceX社のFalcon9や、Blue Origin社が開発したNew Glenn 等実用衛星打上げ用のロケットの開発規模がどれくらいになるかという予測は、おそらく一桁ぐらい上だと思いますが、そこまで正確な数字は申し上げられないです。

【遠藤主査】 ありがとうございました。そのほかございますか。
それでは、まだあと民間事業者からのご報告がありますので、それを終えてからまとめて質疑をさせていただきたいと思います。
まず、インターステラテクノロジズ社につきまして、稲川委員からお願いをいたします。

【稲川委員】 ありがとうございます。 資料1-2-4にて説明。

【遠藤主査】 ありがとうございました。
では、続きまして、スペースワンの阿部取締役、お願いをいたします。

【スペースワン阿部取締役】 スペースワンの阿部でございます。本日このような場を頂きましてありがとうございます。
私のほうから弊社の概要及び弊社の提供する宇宙機関の概要についてご説明させていただきます。 資料1-2-5にて説明。

【遠藤主査】 ありがとうございました。
それでは、続きまして、サブオービタル関連をスペースポートジャパンの代表でもあります山崎委員からご説明をお願いいたします。

【山崎委員】 スペースポートジャパン(SPJ)について資料1-2-6にて説明。
引き続いて資料1-2-7でPDエアロスペース概要を、資料1-2-8でSpace Walker概要を代読。
これらの通り、民間企業さんにおかれましても、スペースプレーンの開発を国内で着々と進めているところで、そうした民間事業者さんが技術実証し、かつ運用できるスペースポートの整備をしつつ、さまざまな技術基準を整えないといけないというところです。また、技術開発がまだまだ伴いますので、国の施策と連携をとりながらできればいいと考えている次第です。
以上です。ありがとうございます。

【遠藤主査】 ありがとうございました。
それでは最初のご報告と、今回の民間事業者の取組みをあわせまして、全体で質疑をしていただこうと思いますので、何かありましたらよろしくお願いします。神武委員どうぞ。

【神武委員】 宇宙輸送という意味で、稲川委員が今日来られていますが、ロケットをこれからやっていくぞという会社が増えていることはすごくいいと思います。民間事業には、「協調領域と競争領域」があると思っており、そのあたりについて、横のつながりが結構あって、このあたりは協調していきましょうというようなことを既にされているのか、あるいは、まだどちらかというと立ち上がり期なので、それよりもまずは自分たちが独り立ちすることが優先という状況なのか、そのあたりを教えていただければと思います。射場等を考えると、将来的には協調しながら競争するというあり方がいいのかなと思います。

【稲川委員】 まずは、それぞれがそれほど大きい会社ではないというところで、やはり自分たちで全部は抱えきれないので、部品などはある程度外の会社にお願いをしており、そういう会社さんについては他の事業者もやはり似たような会社を使うことが非常に多いです。また、そういう会社はこれまで宇宙領域に直接もしくは近いところでやっていたという会社さんでもあるので、共通の産業基盤を使っているという意味においては他の事業者さんとも一緒だとはいえると思うのですが、それ以外の点では結構独立しているのかなというところが技術面についてです。一方、場所の話でいうと、あまり選択肢がないという点が大きな問題です。この頃、打上げ場所として大樹町とはっきり出す会社さんが近いところで何社か出てきておりますが、これは純粋にリソースというか場所が少ないからだと認識しています。

【神武委員】 なるほど、ありがとうございます。将来的には、例えば部品供給等はクリティカルになるのかなと思っております。そのあたりについて、どの会社も情報公開できる範囲でこのようなものが必要で、それをJAXAの支援を受けながら安定供給してもらいたいというような話になっていくような流れになるのかなと予想したりもするのですが、そのようなシナリオを考えられていらっしゃれば、よくわかっていないので教えていただければありがたいです。【稲川委員】 はい。我々の方針が違うということもあるのかもしれないですが、国でこれまでH-ⅡA用に開発されていたものが、そのまま我々が目指しているロケットに合うかというと、価格等さまざまな面で合わないということが正直なところです。そのため、ある程度カスタマイズしてもらう必要があったり、違う領域に出荷している部品をベースにつくってくれませんかとお願いすることになったりということになり、国の基幹ロケットで使っているものが他でも直接そのまま使えるかというと、結構難しいというところだということが、今までやってきた感覚です。

【神武委員】 わかりました。ありがとうございます。

【遠藤主査】 ありがとうございます。
阿部さんのほうから、何かご発言ありますか。

【スペースワン阿部取締役】 さまざまな会社さんがあるとは思いますが、基本的に切磋琢磨してそれぞれいいところをお互いに学びあいながら成長していくということではないかなと思っております。例が適切かどうかわからないですが、日本に自動車の開発メーカーは数多くありますが、そのようなところが切磋琢磨して業界自体が大きくなってそれで競争関係を作ればいいと思いますので、まずは自分たちの事業化に専念するというところが一番大事だと考えます。我々よりもはるかに会社としての歴史が長い会社さんもございますので、彼らの活動から学べるところは学んで、自分たちが競争力を維持していき、世界のマーケットの中で確固たる地位を築けるように活動していくということに尽きるかなと考えております。

【遠藤主査】 ありがとうございました。
それでは、そのほか、ございますか。
ないようですので、次の議題に移らせていただきます。

(3)将来宇宙輸送システム調査検討小委員会における検討項目素案について

【遠藤主査】 次は「将来宇宙輸送システム調査検討小委員会における検討項目素案について」ということで、事務局のほうで準備をしていただいておりますので、これをご説明いただいた上で、今日の説明・議論を踏まえて、今後の検討の方向について、皆さんのご意見を伺いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【事務局(原田企画官)】 資料1-3をごらんください。
まず今後の予定についてご説明差し上げます。
本日第1回目ということで、本小委員会を設置させていただき、主に国内の事項について、現在行っていますJAXAの基幹ロケットの取組みや、あるいはその将来輸送にかかわる研究開発の動向、さらに民間事業者の方が独自に進めておられる民間のロケット、サブオービタル機の検討などといったことをご紹介いただいた上で、本日は、検討項目の素案ということで示させていただいています。2週間後で恐縮ですが、1月30日に第2回の開催をさせていただき、そこで国外の動向などを踏まえながら、将来の宇宙輸送の需要・ニーズについても、可能な限り情報提供させていただきながら、この小委員会での検討の方向性を次回以降につきましても、引き続きご議論いただければと考えています。
2月、3月では、月1回程度のペースでご議論いただきつつ、さらに親部会である宇宙開発利用部会での報告等を踏まえながら、6月の夏前ぐらいに一旦取りまとめ的なものを作らせていただければと考えているところでございます。
1枚目にお戻りいただきまして、次回以降このような趣旨で、国内外の動向などを踏まえながらということで検討の方向性といったものをまたご議論いただければと思いますが、まず、事務局のたたき台という趣旨で、方向性というものを記載させていただきました。
将来にわたりまして我が国の宇宙開発利用がこれの全ての土台となる宇宙輸送システムの自立性を確保していくという観点で、そもそもの本小委員会の趣旨であります再使用型宇宙システムを含めて、将来の宇宙輸送システム全体の在り方について、次の観点から調査検討をしていただければと考えているところです。
まず、改めてということになりますが、宇宙輸送システムを維持するそもそもの意義とは何かといった論点があろうかと考えております。こちらは意義のみならずさまざまな課題等もあろうかと思いますので、そのようなところもご議論していただければと考えております。
また、2ポツについて、本日、国内の主な開発動向をご紹介させていただきましたが、次回説明予定の国外の動向等も踏まえ、再使用型の宇宙輸送システムを含む将来の宇宙輸送システム及びそのニーズのあり方にどのようなものがあり得るのかという点をご議論いただければと考えています。
3ポツについて、そもそもの小委員会の宿題でもありますが、再使用という選択肢も含め、中長期的な視点で宇宙輸送システム研究開発に、基本的技術課題あるいはコスト的な課題等も踏まえ、どのように取り組むべきかといったところでご意見をいただければと思っております。中長期的という期間はどれくらいのタイムスパンを想定するかという点は、ここもいろいろなご意見もあろうかと思いますが、参考として、現在宇宙基本計画の改定の議論においては、前提として20年を見据えた10年計画といったような見方をされておりますので、2040年ぐらいのタイムスパンを想定するのがよろしいかと考えております。なお、この小委員における議論と宇宙基本計画改定の議論とをどのようにリンクさせるかという点は事務局にて整理させていただければと思います。そのようなタイムスパンを見据えて、我が国の将来宇宙輸送システムの研究開発にどのように取り組むのかということを、ご検討いただきたいと思います。
下の論点はその具体的な中身になりますが、本日JAXAから説明がございましたとおり、国主体の開発から、官民の役割を踏まえた研究開発体制にこれまでシフトしてきております。また、輸送機の開発や輸送サービスという概念も含めて民間独自のさまざまな取組みが進められている中で、研究開発の体制やあるいは社会実装を見据えた役割分担といったものをどのように捉えるかといった論点もあろうかと考えております。
最後の項目になりますが、宇宙開発利用の根幹となる宇宙輸送について、宇宙政策の基本としては自立性の確保といったところがそもそもの大前提としてあると考えていますが、また他方でそれのみならず、国際的な競争力を確保することでしっかりと産業基盤及び技術基盤を維持していくといった大きな目標を掲げた上で、将来に向けてはどのような理想像かといった点及びその社会実装も踏まえた上での技術的な課題やルール、ファイナンスを含む制度的な課題についてご指摘・ご議論いただければと考えているところです。
本日JAXAや委員の先生方から、さまざまな情報をいただきましたが、このような課題につきましてはヒアリングを経ながらご議論いただき、今後の方向性をまとめていければと考えています。
私からは以上です。

【遠藤主査】 はい、ありがとうございます。
それでは、次回以降に向けて、まずは今日一日お聞きになっていて思われた皆さんのご意見を、ぜひご発言いただきたいと思います。どなたからでも結構です。よろしくお願いいたします。

【齊藤委員】 一点、確認です。項目案を見るに、中長期的な視点の要素が結構大きいのかなと思っていますが、そう見たときに近々の基幹ロケットの価格や能力の課題に対する検討についてはどのように扱えばいいのかと思っています。具体的には、H3の開発が終わった後の基幹ロケットの発展の方向性や、CALLISTO後の見極めを含めた次ステップの青写真というような喫緊の課題もあると思いますので、その点はどこで読むのか確認させてください。

【事務局(原田企画官)】 ご指摘いただきましたとおり、現在H3ロケットあるいはイプシロンロケットが、ある意味我が国唯一の技術的体制を持った宇宙への輸送手段となっていますので、当然そこは前提としつつ、それをいかに将来にわたって継承させていくかといった発展の議論はこの委員会の中でもしっかりと取り込みながら、そこを土台として将来どのようなあり方が望ましいのかご議論いただければと思っております。当然その土台となる基幹ロケットの発展の議論をスキップすることではないとご理解ください。

【遠藤主査】 私からも意見としてつけ加えさせていただくと、将来の宇宙輸送に対する我が国のあり方に影響することであれば、当然その中で議論すればいいのではないかと思います。

【齊藤委員】 ありがとうございます。

【遠藤主査】 その他、ございますか。

【石田委員】 ありがとうございます。検討事項のところで、2点ほど意見がありますが、話したことは議事録に残るのでしょうか。非公開情報を話すときは、その旨言えば、残らないのでしょうか。

【事務局(原田企画官)】 傍聴は一般の方も入っておりまして、公開が前提となっておりますので、留保していただければと思います。

【石田委員】 わかりました。それでは公開を前提でお話しします。米国で再利用ロケットをやっている関係者の方と話した際、再利用は何のためにやっているのかと聞くと、明確にコストのためだと言い切る人が多いので、本当にコストが下がるのかという議論はあるにせよ、コストのためにやっているということは、おそらく正しいのだと思います。しかし、再利用技術だけではコストは下がらないということは皆さん明確に言っていて、再利用技術と打上げの頻度がセットであるという認識をしている方が多いと思います。そのため、再利用ロケットで年間5回しか飛ばさない人と、再利用ロケットで年間20回飛ばす人では、求められるシステムと運用のベースが全く違う世界であり、これからの世界の基幹ロケットはどのロケットも年間20回飛ぶことになっていくのかなと考えています。SpaceX社は既に年20回飛ばしており、中国の長征も20回飛んでいます。ArianeもOneWeb社との契約があるので、おそらくどんどん飛ぶことになると、大型ロケットで考えても年間20回程度飛んでいくロケットがおそらく標準になっていき、稲川さんがやっているような小型ロケットは20回どころか40回飛ばす人も出てくるときに、この再利用という技術だけではなく、年間20回、30回飛ばす射場のオペレーションができるか、そのようなシステムができるか、あるいは毎月打上げができるようなサプライチェーンが組めるのかといったような、そういうトータルシステムで議論する必要があると思っています。再利用技術だけができても、年間3回しか飛ばないのであれば、全く競争力がないと思うので、この小委員会では技術の議論が中心にはなると思うのですが、再利用だけではなく、高頻度/高回数の打上げシステムという議論をしないと意味がないと思っています、ということが一点目です。
加えて、国際競争力という文言をもう少しかみ砕いたほうが良いと思います。おそらく、一般的には国際競争力という表現は商業打上げマーケットにおいて、シェアをたくさんとれるというような感じかと思うのですが、ご案内のとおり、商業打上げマーケットは非常に価格競争の厳しい世界なので、企業としてシェアをたくさんとればとるほどがんがん儲かりますかというと、必ずしもそうでもない世界だと思っています。政府が発注する衛星の打上げと、民間企業が独自でとってくる商業衛星のハイブリッドで民間事業者も経営をやっていくという体制であるときに、国際競争力というものをどう定義するのかという論点があると思っており、メガコンステーションのようなものが今後増えていく中で、打上げ受注を頻繁にとれるところを国際競争力が高いというのか、あるいは今世界中が開発している有人輸送のような新しいマーケットをとれるようところを国際競争力があるのか、オンタイム打上げのような、ニッチかもしれないけれども必ずニーズがあるようなものができるユニークさをもつところを国際競争力があるというのか。おそらく従来以上に「国際競争力」の定義が幅広になっており、その捉え方次第でシステムが変わる時代であると思っています。その点も議論に入れてみるといいと思いました。
以上でございます。

【遠藤主査】 ありがとうございます。
大変重要な論点をご提案いただいたと思います。先ほど事務局からも論点としてご説明いただいたときに、「自立性」という言葉がやはりキーワードとして出てくるわけですが、今石田委員もおっしゃったように、自立性といったときに、従来我が国では国の政策としての自在性を確保するという意味での自立性と、経済的に自立できる、経営的にペイするというような自立性と両方あったわけです。今までは「政策的な自立性」が上位の概念にあったのかなと思いますが、今後将来の輸送系を考えるとき、そういう「経済的な自立性」というところは現時点でも焦点になってきていると思います。大きな議論のポイントだと私も思います。

【野中委員】 石田委員のおっしゃっていることは、まさにそのとおりだと思います。我々再使用ロケットの研究をやっていますが、とにかく運用性が一番重要な技術の一つであろうと認識しております。我々の提案している再使用型の観測ロケット等も、100回再使用、年間10回は打ち上げるということで、今までやってきた実験機、それから現在取り組んでいる実験機につきましても、24時間で一回打ち上げる(ターンアラウンド)ということも一つの目標として掲げておりますので、将来のコスト低減に向けては運用性がとても重要な要素だと認識しております。そのような技術を獲得していくにはどういうことをしていかないといけないかということは、十分に議論なり実験させていただくことになると思います。

【山崎委員】 「宇宙輸送の自立性」といったときに、どの範囲を考えるかということを、どこかで議論できたらいいと思います。具体的には低軌道までなのか、現在アルテミス計画ができて、米国も月までを範囲に入れているわけであり、そうした地球低軌道以遠の輸送に関しては、どのように、どこまで自立性を保つのか、そのようなより広いスコープはどのようになるのか、どこかで議論できればいいかと思います。

【遠藤主査】 ありがとうございます。
稲川委員、よろしくお願いします。

【稲川委員】 ありがとうございます。私自身の立場を、はっきりしておきたいという観点で発言しますが、再使用で実際にロケットが安くなるかというと必ずしもそうではない、かなり懐疑的だというのが私の見方です。
Blue Origin社のNew GlennやSpaceX社のStarship等、あれほどすごく大きいロケットであれば、再使用でのコストメリットが出てくると思いますが、小さいロケットで本当にコストメリットが出てくるかというと、それは打上げ頻度によるだろうと考えています。その上で、現状程度あるいは年間10~20回程度のロケットが再使用で安くなるかというと、素朴に設計してしまうとそうならず、何らか技術のジャンプアップが必要になってくると思われるので、このジャンプアップの検討なしに、SpaceXでやっているから、そのまま後追いでの再使用化という流れは相当危ないと思います。そのため、一つは需要という観点で、現在の需要ではなくさらに需要が増えるというような将来のビジョンがあった上での検討であれば、再使用の輸送系はいいと思うのですが、その需要が5年後、10年後、20年後とどのレイヤーでどこの目線かという点は、必ず議論をしておかないと、のちに合理性という点でおかしな話になると思っています。
加えて、メーカーとしての立場から言うと、再使用ロケットになると、ロケットを製造する数が減ってしまいますので、メーカーが経営的に成り立つかという点も考えなければならないと思います。再使用にするとなって、年間何十回も打ち上げられるが機体自体は年間2機3機しかつくられないとなれば、その事業に部品メーカーとして携われるかというと相当難しい、あるいは、現状年間何個か収めている部品の値段を相当上げざるを得ない、という感覚です。やはり開発の人的リソースに係ってくるものなので、そのような産業育成・産業基盤の維持の面においても、国の自立性はあるにせよ、再使用ロケットは相当先細りの話をしているように思うので、この観点も必要だと思います。

【遠藤主査】 ありがとうございます。
ぜひ、先細らない将来宇宙輸送を考えたいと思います。
そのほか、ございませんか。

【兵頭委員】 石田さんが言われましたように、最近、国際的な商業上のマーケットが激化してきており、単純にその価格だけの競争となってしまうと、どうしても向こうの規模に対して負けてしまいますので、どのような面で国際的にプレゼンスを出すかといった議論はすごく大事かなと思いました。
また、山崎さんが言われましたように、需要の面として、今アルテミス計画の議論が盛んになっておりますが、そのような高軌道域の月探査計画等に対して、どのように日本も貢献してプレゼンスを出していくかといったところも、この委員会の中で議論をしていきたいと思います。
最後に再使用について、再使用は安くする手段として現状研究開発を進めることはいいのですが、最終的には100回、あるいは1,000回とエアラインのように使うことをゴールに定めないと、メーカーとしては受注がどんどん減ってしまって、結果、頑張って研究開発したもののどんどん売り上げが減ってしまうような状況になってしまいかねないので、最終的なゴールを見据えて進めることが重要だと考えます。

【遠藤主査】 ありがとうございます。
最後に、だんだん盛り上がってきたところですが、時間にもなりましたので、本日のところはここで中断という形をとらせていただいて、また次回、新たな情報を踏まえて、このあたりの議論を深めてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

(4)その他

【遠藤主査】 それでは、最後に事務局から連絡事項等をお願いいたします。

【事務局(原田企画官)】 会議資料と議事録の公開について申し上げます。
本部会の運営規則に基づきまして、本日の会議資料は公開となりますので、既に文科省のホームページにも掲載させていただいております。議事録につきましても公開となりますので、委員の皆様のご確認いただいた後、文部科学省のホームページに掲載させていただきますので、よろしくお願いいたします。

【遠藤主査】 ありがとうございました。
それでは、本日の会議は全て終了いたしました。どうもありがとうございます。次回もよろしくお願いいたします。

(説明者については敬称略)

―― 了 ――

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