令和7年8月18日(月曜日)15時00分~17時00分
対面及びオンライン会議にて開催
黒﨑主査
村上委員
秋山委員
上田委員
尾崎委員
小澤委員
高木委員
中島委員
松浦委員
有林 原子力課課長
水野 研究開発戦略官
田村 研究開発戦略官付課長補佐
前田 原子力連絡対策官
滝沢 原子力課課長補佐
【話題提供者】
日本原子力研究開発機構 経営企画部 脇本部長
日本原子力研究開発機構 大洗原子力工学研究所 関根副所長
日本原子力研究開発機構 高温ガス炉プロジェクト推進室 坂場室長
日本原子力研究開発機構 高温ガス炉プロジェクト推進室 佐藤次長
原子力科学技術委員会 原子力研究開発・基盤・人材作業部会(第26回)
令和7年8月18日(月曜日)15時00分~17時00分
滝沢補佐:それでは、定刻になりましたので、第26回原子力研究開発・基盤・人材作業部会を開催いたします。本日は、お忙しいところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。
今回の作業部会は、対面とオンラインを併用したハイブリッド形式にて開催いたします。確認・留意事項もございますので、議事に入る前まで事務局にて進めさせていただきます。
まず、オンラインにてご出席されている方々への留意事項です。委員の皆さまにおかれましては、現在、遠隔会議システム(WEBEX)上で参加をいただいておりますが、ビデオをオンにしていただきますようお願いいたします。また、ご発言される場合は、挙手ボタンを押してください。画面の左上に挙手マークが表示されますので、順番に主査よりご指名をいただきます。指名されご発言いただいた後には、もう一度、挙手ボタンを押して手を下ろしてください。
また、会議中にビデオ映像が途切れている場合、その時間帯はご退席されているものとなりますので、ビデオの映像をオンにしていただきますようお願いいたします。システムの接続の不具合等が生じた場合には、随時、事務局宛てにお知らせください。
続きまして、傍聴者の方々への留意事項です。ビデオ映像および音声をオフとしてください。議事進行の妨げとなる行為を確認した場合には、遠隔会議システムからご退席いただきますのでご承知おきください。
最後に、皆さまへの留意事項です。本日の会議につきましては、事務局にて録音・文字起こしのうえ、委員の皆さまに確認をした後に議事録として公開いたします。事務局以外の方々の録画および録音はお控えいただきますようお願いいたします。最後、冒頭のみカメラの撮影が入っておりますので、ご承知おきください。以上、よろしくお願いいたします。
続きまして、本日の議題と配布資料の確認をさせていただきます。委員の皆さまおよび傍聴登録をされた方々に、メールにて配布資料を事前にお送りさせていただいております。お手元に議事次第を配布しておりますが、本日は議題が3点ございます。1点目が「革新炉(高速炉、高温ガス炉)の取組」、2点目が「基礎研究支援の在り方」、最後、3点目が「その他」でございます。また、配布資料は、資料の1、2、3、参考資料の1から3でございます。お手元の資料を確認いただき、不備等ございましたら事務局までお知らせください。
委員の皆さまのご出席状況については、本日は、委員10名のうち9名に出席いただいておりまして、参考資料3の運営規則の第3条に規定されております定足数の過半数を満たしております。
また、本日は議題1における報告のため、日本原子力研究開発機構より経営企画部脇本部長、大洗原子力工学研究所関根副所長、そして高温ガス炉プロジェクト推進室坂場室長、佐藤次長にご出席をいただく予定でございます。
続きまして、事務局からの出席者についてご連絡いたします。文部科学省からは、原子力課長の有林、研究開発戦略官の水野、原子力連絡対策官の前田、研究開発戦略官付課長補佐の田村、そして、私、滝沢が出席しております。
それでは、これから議事に入らせていただきます。
運営規則第5条に基づきまして、本会議は公開とさせていただきます。また、第6条に基づき、本日の議事録についても、後日、ホームページに掲載いたします。
それでは、撮影されている方々におかれましては、ここで退出をお願いいたします。
ここから黒﨑主査に議事の進行をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
黒﨑主査:承知いたしました。それでは、本日最初の議題に移りたいと思います。議題1は「革新炉(高速炉、高温ガス炉)の取組」です。
本議題では、高速実験炉「常陽」、高温ガス炉「HTTR」の2つを取り上げます。それぞれの内容で説明をいただいた後、質疑をいただく段取りといたします。まずは、「常陽」の運転再開に向けた取組と運転再開後の照射利用について、JAEA関根副所長より、資料1-1に基づきましてご説明をお願いいたします。
関根副所長:はい、ありがとうございます。それでは、私のほうから、運転再開に向けて新規制対応工事の状況と、その後、どういった照射試験を「常陽」で計画しているのかについてご説明いたします。
それでは、新しく委員になられた方もいらっしゃるかと思いますので、資料1ページ目「常陽」の概要を簡単にご説明いたします。概要の欄のところに丸を3つ打っておりますが、「常陽」はわが国初の高速炉ということで、昭和52年に初臨界を迎えております。かなり古い原子炉にはなりますが、運転時間でいうと、ちょうど寿命の半分を少し超えた程度になっております。
従来は、高速炉用の燃料や材料照射試験を実施してきている原子炉ですが、2つ目の丸に黒太字で書いてあります通り、現在OECD諸国では、高速中性子照射場を提供できるのは「常陽」が唯一であり、「常陽」の設置許可以降に関しましては、アメリカやヨーロッパのいわゆる革新炉のベンチャー企業からも「常陽」を使いたいというご要望を受けております。それに関しては、また後ほどご説明したいと思います。
3つ目の丸では、原子炉設置変更許可の進捗状況を記載しております。既に令和5年7月の段階で原子炉設置変更許可は取得しております。それから、翌年9月の段階で、茨城県と大洗町において、茨城県の原子力安全協定に基づく新増設等に対する事前了解をいただいている状況になっており、「常陽」を使ってラジオアイソトープを作る計画を持っております。このための原子炉設置変更許可は昨年の10月に取得しております。
その下のところに主要仕様を記載しておりますが、熱出力に関しましては100MW、kW単位でいうと10万kWになりますので、発電量で比べると、出力としては30分の1程度になります。
右に蜂の巣状の炉心構成図をお示ししておりますが、紫や赤で示している箇所が、いわゆるウランやプルトニウムの燃料が装荷されている領域になっております。この部分が大体直径でいうと78センチ、高さ方向でいうと50センチぐらいになりますので、ちょうどドラム缶を半分で切ったぐらいの非常にコンパクトな原子炉になっております。
その外側を水色の集合体で囲んでおりますが、これはステンレス鋼製の反射体を装荷しています。本来、高速炉ですと、ブランケット燃料を装荷するのですが、中性子をブランケットに吸わせるのではなく、なるべく照射試験に効率良く使用するために、ステンレス鋼製の反射体で覆う構成になっています。
こちらの図で黄色で示しているのが、試験用の集合体になります。燃料集合体と試験用集合体の断面図をその下に緑の背景で示しております。燃料集合体については、大体六角形の対辺間距離が8センチほどになりますが、この中に127本、燃料ピンをぎっしり詰めたような構造になっています。試験用集合体を装荷する場合には、この燃料集合体と取り替える形で、その横に示してあります集合体の中に円管状の装置を入れて、その中に試験用の燃料ピンや材料を装荷するという構成になっております。試験用の集合体については、燃料領域ですとか反射体領域に装荷して試験を行うという形になっています。
次に、今行っている新規制基準対応の工事概要を簡単にご紹介したいと思います。
こちら「常陽」のプラント断面図になっておりまして、大きくは、右と左に2つの建物から成っています。右側の建物がいわゆる原子炉建屋と言われるもので、黒い少し卵型状になっているのが原子炉の格納容器になります。左側の地盤からいうと少し浅い建物が、ナトリウムを空気で冷やすための施設が入っている主冷却建物と呼んでいる建物になります。こちらの建物に関して、耐震補強工事、火災対策、シビアアクシデント対策という各種工事を行っており、大きな工事に関しては、今年度内に終了する予定とであり、来年度半ば、原子炉を運転再開したいということで、現在工事を進めております。
実際に工事の外観の写真をお付けしているのが3ページ目以降になります。一つ大きく影響してきますのが耐震補強工事です。震災前と比べますと、基準地震動の加速度が約3倍ほど大きくなっており、主にはナトリウム配管系のサポートの交換・追加を行っております。
資料の下にどのくらい交換しているのか記載しております。1次系のナトリウム配管でいいますと、従来、896カ所、配管のサポートを付けておりましたが、このうち229カ所を交換、追加が51カ所です。2次系のナトリウムにつきましても、従来の519カ所に対して交換が130カ所、追加が20カ所になり、おおむね3割程度の配管サポートの取り替え、追加の工事を行うことになっております。既に2次系のナトリウム配管の交換・追加は終了しており、1次系ナトリウム配管の交換・追加に関してもほぼ終了し、検査を残している段階のため、工事は着実に進めております。
5ページ目には、その他で耐震補強を行っている部分の写真もお付けしております。特徴的なものでいいますと、上の段の写真、真ん中に赤と白で書いております排気筒、地上面からの高さ80メートルほどある煙突があります。これが倒れた場合には、隣にある原子炉、すなわち核領域に影響が生じますので、主排気筒が倒れないように根元の部分の耐震補強工事を行っております。それから、地盤改良と書いてあるのは、先ほどご説明した左側にある主冷却建物、こちらに関しては、原子炉建物自体は、地下30メートルまで埋まっているのですが、主冷却建物は、主な装置が地上階にあるといいう特徴があり、地盤より下にあるが20メートルと若干浅くなっております。
このため、規制用語でいうとすべり安全率になりますが、地震の時に建物が揺さぶられる力に対して周囲の地盤が建物を抑える力は1.5倍なければいけないというのが新規制基準です。残念ながら1.3倍では滑りませんが、1.5倍を満足しないため、地面に対して浅く埋まっている建物に関しては地盤改良を行っております。こちらの工事に関しても、既に終了しております。
それから、5ページ目に進んでいただき、「常陽」で今後予定している照射試験をご説明いたします。
まず、第7次エネルギー基本計画におきまして、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減、ウラン資源の有効利用に、高速炉を使っていく方針が明記され、「常陽」の運転から得られる知見も最大限有効活用するという方針がエネルギー基本計画にも記載されています。
戦略ロードマップにも各段階でどういった活動を進めていくのか示されております。2028年度頃には、実証炉の基本設計・許認可フェーズの移行判断となっており、これに向けて実証炉に関する照射試験を実施していくのが「常陽」の役割になります。
6ページでは、グリーン成長戦略、GX実現に向けた基本方針、こちらのポイントをまとめております。グリーン成長戦略の中におきましては、実証炉に向けて「常陽」を用いた照射試験による検証が不可欠という点、また、医療用ラジオアイソトープ、高速中性子を使った先進的ながん治療等への貢献が期待されておりますアクチニウムを作ることができ、そのような分野にも「常陽」を活用するという方針が記載されております。
それから、現在ロシアは難しい状況になりますので、米国、ヨーロッパ各国のベンチャー企業から多く問い合わせをいただいており、フィージビリティスタディとして、照射条件の調整、試料数の調整を検討させていただいている状況になっております。
外部からの期待ということを踏まえて、7ページ目には、「常陽」運転再開後の照射利用として、大きく3本柱を考えております。1つ目は高速炉の実証炉開発、2つ目が医療への貢献、3つ目が大学との共同研究・国際協力です。
次に、高速炉実証炉開発への貢献として、やはり期待されているのは高性能・高燃焼度燃料の開発、MA含有燃料の開発というのが、一つ大きなポイントになってくると思っております。これらの詳細については、参考資料をお付けしております。大きくは太径中空MOX燃料の性能実証、MA含有燃料の照射特性の評価・健全性の実証、金属燃料の性能実証・高性能化に関する照射試験、経済性の向上を目的とした酸化物分散強化型のフェライト鋼を使ったODS鋼の照射試験等を、「常陽」を用いて進めていきたいと考えております。
これらの照射試験につきましては、「常陽」を運転してきた時にも、最初の照射試験は終了しており、おおよその技術的な見通しは立っていると私は判断しております。今後、実証炉の許認可を取っていくうえで、目標の燃焼度・照射度までしっかり「常陽」で確認していくことが重要になってくると考えております。
医療用RIに関しましては、9ページ目にまとめております。現在、世界的に注目されているアクチニウム225を、「常陽」で作れないかという検証を、「常陽」運転再開後、直ちに実施したいと考えております。
この効果について、このページの左下の図は、末期の転移性の前立腺がんの患者にアクチニウム225を投与した結果です。これはドイツで取られているデータになりますが、下部にPSAという値が記載してあります。2015年の9月、この図のBの部分でPSA419とあり、全身転移している前立腺がんを示しています。Dの写真、2016年4月にアクチニウムを投与した結果、1年も経たない間できれいにがんが消えていて、PSAの値も0.1と示されています。がん治療に大変効果があることが確認されているものです。
原子力の先生方には、アクチニウムはネプツニウム系列だと言えば多分お分かりいただけると思いますが、天然に存在しないアルファ崩壊を連続発生する原子核ですので、がん細胞の近くから照射できれば、期待される成果が出てくる原子核になります。
こちらについて、9ページの右側に記載の通り、ラジウムに高速中性子を当てて2個中性子をはじき出す(n,2n)反応と言われるものです。この反応を使ってラジウム225を作り、半減期約15日でアクチニウム225に変わるという製造法です。常陽の運転再開後、来年度中にはこの製造法の実証を進めたいと考えております。
10ページには、アクチニウム225の製造実証計画として、医薬品にする観点では、「常陽」でアクチニウムを使って終わりではなく、アクチニウムを抽出し、薬品にするという段階がございます。「常陽」だけではなくアクチニウムを抽出する研究に関しては、JAEAの原科研、それから大学と連携して行っております。医療利用の観点では、国立がん研究センターと共同研究を行い、「常陽」だけではなく、周辺環境も含めて準備を進めております。
11ページでは、大学の照射利用実績を整理しております。従来の実績としては、東北大学を中心とした国内の大学から約40,000試料を受け入れており、主な研究分野として、核融合炉材料、高速炉材料などの照射試験に「常陽」を使っていただいております。「常陽」運転再開後も照射利用したいというご要望を大学からいただいており、現在、延べ42件ご要望をいただいております。こちらも「常陽」の運転再開後、大学と連携して「常陽」の利活用を進めていきます。
最後にまとめですが、高速実験炉「常陽」は、新規制基準への適合性に係る原子炉設置変更許可を取得しており、運転再開に向けた工事を着実に進めております。
運転再開後は、高速炉の戦略ロードマップ等に基づき、実証炉の燃料、材料の照射試験、大学連携、国際協力といった観点での受託照射等を進めていきたいと考えております。
医療用ラジオアイソトープに関しましても、一般の方から期待の声が多く寄せられておりますので、着実に成果を出していきたいと考えております。
黒﨑主査:ありがとうございました。続いて、文部科学省水野戦略官より、資料1-2を用いて、「常陽」の研究開発に関する当面の課題についてご説明をお願いいたします。
水野戦略官:承知しました。資料1-2を用いてご説明させていただきます。
2ページ目は、先ほどJAEAからご説明いただいた概要ですので、3ページ目をご覧ください。議論いただきたいポイントを3つほど抽出させていただいております。
先ほど「常陽」の運転再開に向けた現在の取組、それから運転再開後の計画を中心にご説明いただきました。その中のポイントとして、まずは、運転再開に向けた対応と書かせていただいております。既に地元の自治体にはご了解をいただいておりますが、地元の方を含めて、今後も幅広いステークホルダーに対して継続的な情報発信あるいは効果的な対外発信が必要ではないかと考えております。地元の方ですと、どのように分かりやすく「常陽」の魅力を発信すべきか、特に「常陽」運転再開時には、報道・プレスの発表機会もあると思いますので、どのような情報発信の在り方が効果的なのか、ご意見をいただきたく思います。加えて、若手人材を引きつける観点から、ぜひ学生の方にも、高速炉に関心を持っていただきたいと思います。最近ですと、原子力分野では核融合や原子力発電所の再稼働がトピックになっていますが、臨床関係といった他の分野の学生の方も含めて、どう働きかけると高速炉に興味を持っていただけるか、情報発信の在り方についてご意見をいただきたく思います。
2つ目が運転再開後の計画です。高速炉の実証炉開発に向けた研究開発、医療用RIの製造実証、あるいはその他の分野を含む基礎・基盤研究や人材育成等、重要な役割を果たすことが「常陽」には期待されています。あるいは、先ほどの説明にもありました通り、OECD諸国唯一の高速炉の運転になりますので、海外からの関心も非常に高いと認識しています。他方で、「常陽」の運転期間や運転時間は有限という点を踏まえ、ユーザー側からのニーズやリクエストにどう対応するか、整理が必要と考えております。今後、「常陽」運転計画を整理・精査する上で、例えば、どのような研究分野にどういったバランスで運転時間を割り当てるべきかなど、ご意見をいただきたく思います。
3つ目が「常陽」以降のアクチニウム225製造実証の在り方です。既存炉である「常陽」を最大限活用しアクチニウム225の製造実証を行うことについて、今後の実用化に向けては、医療用RIを安定的に供給することが重要ですが、残念ながら「常陽」運転中は照射した試料を取り出すことができません。こうした課題への対応策の検討として、医療用RI製造を含む多様なニーズへの対応が可能な新たな高速中性照射炉、新造炉の必要性も指摘をされております。文部科学省として今後必要となる取組についてご意見をいただきたく思います。先月開催されました本作業部会の親委員会である原子力科学技術委員会でも、国や行政のリソースが限られる中、実現性が高く効果的な政策を進めていくことをモニターすることが重要という趣旨のコメントを頂戴しておりますので、この観点からもご議論いただければ幸いです。
本課題については経緯がありまして、昨年の国会で、医療用RI製造の国産化を進めるために新たな高速炉を建設するにしても相当の時間がかかってしまうため、医療用RI製造用の新造炉の検討も開始すべきではないかという議論がありました。個別事項とはなりますが、本日の議論ポイントとして提示させていただきました。よろしくお願いします。
黒﨑主査:ありがとうございました。それでは、意見交換に移ります。本件について、委員の皆さまからご意見、ご質問等をお願いいたします。おひとり2~3分程度でご発言をいただければと思います。いかがでしょうか。松浦委員、よろしくお願いします。
松浦委員:ご説明ありがとうございました。特に「常陽」に対して、高速炉の実証だけではなく、医療用ラジオアイソトープの製造という新しい役割を与えられたという点、非常に興味を持って聞かせていただきました。
2つお聞きします。ここで行う医療用ラジオアイソトープの製造実証について、私は専門外ですが、どうしても医療用ラジオアイソトープとなると短半減期で使いたい時に作るというイメージがあります。今回は,炉心の常陽の運転に合わせて製造するということですので,がん治療に活かすという段階ではなく,アクチニウム225がうまく作れているかどうかの製造実証の段階という認識でよろしいでしょうか。
もう一つは、にわか勉強で調べたのですが、世界各国でアクチニウム225の大量製造は課題になっている理解をしております。
資料にありますように、(n,2n)反応で作る場合、閾値が6.4MeVでかなり高いところにあるように思います。量的にはどの程度なのか、例えば、量的に少なくてもアクチニウム227が入るとあまり良くないという話も聞いております。品質が良いものができるのであれば、それを売りにもできると思っています。その2点について、教えていただきたく思います。
関根副所長:まず、うまく作れるかという点について、2026年の運転再開のタイミングでは、(n,2n)反応を使って、予定している量が製造できるかを確認するのが目標です。その後、徐々に量を増やして、2028年、30年のタイミングで、ある程度の量は作りたいと思っております。おっしゃる通り、いきなり患者に提供するわけではなく、薬事法上の認可も取らなければいけません。まずは、2030年ぐらいまでの量として、少人数を対象として効果を確認するための臨床試験ができる程度の製造が、我々のターゲットとなっています。
量的な観点では、ターゲットを幾つ、どれぐらい原子炉の中に入れるかという問題も出てくるのですが、大体、我々が狙っている2~3グラムのラジウムを原子炉の中で照射することによって、前立腺がんステージ4と診断されている国内の患者に行き渡る程度は製造できると考えております。
ただ、タイミングを考えていく必要があるという点はご指摘のとおりです。「常陽」の場合でも、1年間運転すると最低でも半年は定検で止まりますので、マシンタイムも考慮しながら、薬剤メーカーの要望にどう対応していくのかが、今後の課題と思っております。
松浦委員:分かりました。ありがとうございます。
黒﨑主査:中島委員、お願いします。
中島委員:1つは、地元をはじめとする対外発信の仕方についてです。私は、J-PARCの説明をして歩いた時に地元をひと通り回っているのですが、彼らが一番求めるのは地元の活性化ですので、その観点でいかに将来どれほどの夢があるかについて語れることが一番大事だと思います。実際、トラブルを起こしてその時も謝罪に回りましたが、その時も理解を示してくれる半数以上の組織がありました。そのような取組が非常に重要だと思っております。
それから、人材育成の観点から、JAEA単独ではなく、大学等々とよく連携することによって、この実証に向けて、どういう人物・スキルが必要か明確にしながら計画を立てられることがいいと思います。実証炉の体制はほぼ決まっていると思いますが、よく相談しながら何を求めるかの議論が重要と思います。
実際、ANECの実習の中でも「常陽」のシミュレーターを使わせていただいたり、炉物理に係るツールを使わせていただきましたし、材料研究には非常にいい場だと思いますので、燃料も含めてぜひ相談しながら進めることがよろしいかと思います。特に燃料に関しては、実証炉は少し変わった燃料を使います。中空燃料、これは相当難易度が高いと思いますので、そこはよく話し合うことが重要と思います。燃料製造の会社というのは、国内では確保できているのでしょうか。
関根副所長:燃料製造に関しましては、昨年度のこの作業部会でもご説明させていただきましたが、従来「常陽」の燃料に関しては、東海にある核燃料サイクル研究所、こちらにあるプルトニウム燃料工場で製作していました。当然あの施設を使うとなった場合、新規制基準対応が必要になってきますので、一つ課題としてはあります。
「常陽」の燃料は、対辺間距離8センチの集合体になっておりますので、1つの集合体の中に入っている核燃料物質は10キログラムほどです。年間およそ40体まで運転できてしまうため、400キログラムを取り扱える燃料製造施設が必要です。軽水炉でいうと燃料1~2体分取り扱う燃料製造施設があればいいのですが、燃料製造施設の許認可上も大型のJ-MOX等を想定したものしかないので、リスクに合わせた製造施設の在り方もあり得るのではないかと考えております。
中島委員:実証炉に向けて、そこまで想定して日本全体で考えるということがよろしいかと思いますので、ぜひご検討をよろしくお願いします。以上です。
黒﨑主査:あと何かございますでしょうか。では、尾崎委員、よろしくお願いします。
尾崎委員:はい。国内外の大学等との共同研究は、知財を共有する形態でしょうか。大学側の研究インセンティブという意味でそれをお聞きしたいです。もう1点、海外のベンチャー企業からの問い合わせがある件ですが、海外企業の場合はどういう取り扱いをされるのか、方針を教えていただきたいと思います。
関根副所長:分かりました。「常陽」を運転していかなければいけないので、なるべく稼ぎたいですが、国内の大学に関しては知財共有という形で、なるべく安価な料金でこれまで通り使っていただきたいと、少なくとも私の希望としては考えております。一方で、海外ベンチャーは、ビジネスとして考えておりますので、照射料金の体系は、切り分けたいと思っております。そのあたりの価格交渉も含めて調整をしている状況です。
尾崎委員:はい、分かりました。
黒﨑主査:次に小澤委員、その後、上田委員で終了とさせていただきます。それでは小澤委員お願いします。
小澤委員:はい。ありがとうございます。まず、再稼働について、変更許可以降、現場で創意工夫があってうまく進んでいるということですので、このまま安全に進めていただきたいと思っております。実際に運転を始めてから、やはり運転の経験が海外、特にロシア等に比べると少ないと思いますので、そこが一つの関心になると思います。
そういう意味で、医療用RIは作り始めると、供給し続けるニーズがあると思いますので、どのように実績をつくっていくかが重要な課題だと思います。同時に、実証炉の貢献といいますと、ある程度、熱出力を出しながら長く照射して、そこで得られた結果は、商業炉に向けた検討に活用するという役割。また、実証炉もきちんと運転する必要があるので、実証炉を運転するためのデータ蓄積が必要になってくると思います。
RIの製造では、そんなに熱出力は要らず、中性子が飛べばいいと理解しています。一方、実証炉というと、熱負荷があって長く運転したらどうなるかというデータが必要になってきます。これは条件が全く違います。ここを上手に進めていく必要があるので、計画をしっかりと立てていく必要があると思います。
それから、「常陽」も「そんなに長い寿命では」ということをおっしゃっていましたが、そこは、交換すべきところは交換しつつ、長く使えるような工夫も大切と思います。以上です。
黒﨑主査:続けて、上田委員もご発言いただいた後で、まとめてご回答でお願いします。
上田委員:「常陽」についてですが、運転再開までのロードマップ、再開後の研究計画を明確化し、国内外と連携を強化することで世界最先端の高速炉研究機関としての役割を発揮していただきたいと考えております。
また、医療用RIの安定供給や先端利用など、社会的価値の高い活用にも期待しております。これにより学生や若手研究者の関心を高め、人材確保にもつながります。その際の情報発信ですが、特に若者向けにはSNS、YouTubeなども活用いただければと考えておりますし、プレス向けには、例えば施設見学会を開催されてはどうかと考えております。
質問ですが、アクチニウム225は、令和8年度内の製造実証を目指すということで、臨床という観点で目標はございますか。
関根副所長:まず最後の質問からお答えします。臨床に関しては、まずはアクチニウムができることを確認して、がん細胞にくっつくタンパク質と一体化させるところは国立がん研究センターのワークになります。まずはその段階を進めた上で、おそらく2030年度あたりから臨床試験に入っていきたいと考えております。
それから、アクチニウム製造が実証炉の照射試験と同時にできるのかというご質問だと思いますが、基本は、アクチニウム製造も実証炉の照射試験も同じ原子炉出力100MWで実施しようと考えています。ラジウムがベータ崩壊してアクチニウムになりますが、この半減期が15日です。「常陽」は非常に小さい原子炉になるので、1年ぐらい長く運転するわけではなく、1サイクル当たり60日の運転で燃料交換をします。つまり60日というと、15日の半減期に対して4半減期分なので、ちょうどいい期間の長さです。3半減期で止めるかどうかという細かい検討事項はあります。
運転経験についてですが、確かにかなり長期止まっていたことで、不安に思われている先生方もいらっしゃるかと思います。まず、シミュレーターを使った訓練を行っているということ、それから、停止中も動かしている機器はあり、停止中でも機器を使って技術は磨いている実態があります。今回の新規制基準対応工事を通じてかなり特殊なプラント状態もつくらなければいけないため、技量は維持できているのではないかと思っています。
また、運転経験した者がまだ3分の1ぐらい従事しており、かつ60日ごとの短期運転を繰り返す形になりますので、この過程で技術継承も進めていきたいと考えております。
黒﨑主査:どうもありがとうございました。それでは、「常陽」についてはここで終了とさせていただき、続いて、HTTRに関して、JAEAの坂場室長よりご説明をお願いいたします。
坂場室長:高温ガス炉プロジェクト推進室の坂場と申します。よろしくお願いいたします。私からは、高温ガス炉HTTRの取組状況ということで、HTTRを用いた水素製造の熱利用試験の現況に関しましてご説明申し上げます。
1ページ目でございます。まず、高温ガス炉の社会実装に向けた課題といたしまして、政策、社会、技術の3つの観点から記載してございます。
まず、政策という意味では、事業の予見性確保、性能に応じたスケーラブルな緊急時区域の設定ということでございます。高温ガス炉は安全性に優れていますので、避難区域、緊急時の区域を狭めることができるといった取組をアメリカなどは進めており、敷地境界400メートル、それを国内で達成できるかどうかが、一つの課題になってございます。それから、それに応じて、許認可審査の予見性確保にどのぐらいの期間かかるのかという課題もございます。
それから、社会に関しましては、立地の選定と実施体制の確立です。立地に関しましては、今年6月に茨城県が実証炉を誘致することを要望している状況にございますので、話が進んでいくことに期待しております。次に、実施体制の確立として、誰が事業主体になるのかは、まだ決まっていないという現状がございます。
技術に関しましては、原子炉技術の確立と熱利用技術の確立とで、2つに分けました。
原子炉技術に関しましては、炉心、設備、燃料、安全基準、構造規格等々ございまして、特に茨城県の大洗町にHTTRの試験研究炉がございますが、実証炉に向けましては規格基準がございませんで、いかに整備するかという課題がございます。こちらは、JAEAの取組として実施しております。
安全基準、構造規格に関しましては、それぞれ専門委員会を立ち上げまして、そちらで議論いただいております。それ以外の炉心、設備、燃料等々につきましても課題がございますが、三菱重工が関連企業として決まっておりますので、その中で検討は進めているということ、三菱重工とJAEAで解決を図っているという現状でございます。
次に、熱利用技術の確立でございますが、接続と水素製造でございます。
接続に関しましては、水素製造施設の適用法規を決定する、原子炉施設とそれ以外の化学プラントを直接繋げた事例は世界でもまだございませんので、適用法規をどう決定していくかが課題としてございます。実証炉に先立ち、HTTRを用いて水素製造をすると、その中で議論が開始されている状況でございます。
さらに、高温の熱を原子炉施設の外に取り出しますので、そこの隔離をするための隔離弁等の開発も課題として挙げてございます。
それから、水素製造に関しましては、ゆくゆくはカーボンフリーにしなければいけないため、どう進めていくかは、三菱重工の中で検討を進めているという状況でございます。
次のページに参ります。ご説明した中で、特にHTTRを用いた水素製造施設・試験、これによって接続技術を確立したいと考えています。内容としましては、高温熱源として世界最高温度950度を記録したHTTRを活用する。次に、高温ガス炉と水素製造施設の接続に係る安全設計、安全評価技術を確立する。さらに、必要な機器、システム設計技術を確立するといったことでございます。これらを成し遂げることによりまして、高温ガス炉と水素製造施設を高い安全性で接続する技術が確立できると考えてございます。
右側のポンチ絵ですが、この絵の中で右側がHTTR、左側に水素製造施設、こちらは本プロジェクトで設置という形で、今は水蒸気改質器を使おうとしています。水蒸気改質器は、炭酸ガスを出しますが、既に技術としては確立されているものでございますので、まずは水蒸気改質器、すなわち水素製造ラインに技術開発要素を求めたくないという理由でこちらをやっています。この次にステップとしましては、カーボンフリーに繋ぐということを計画として載せております。
2ページ下の試験スケジュールについてです。R4年度より以前から始めておりますが、スケジュール上はR4年度から安全設計、安全評価を開始してございます。昨年度の最後、2025年3月27日に設置変更許可を申請いたしました。その後、今年度に入り2回ほど審査会合をしているという状況にございます。
順調に進めれば年度内の許可の取得、さらに次年度の設工認の取得を目指していきたいと考えており、設工認が終わり次第、HTTRの改造工事、水素製造施設の据え付け・製作等々を進めていくスケジュールでございます。2028年度には、何とか最初の水素を出したいという計画でございます。2030年までに水素を作るというのがグリーン成長戦略ですが、目標としましては2028年、最初の水素を出したいと考えております。
次のページになります。その中で具体的な課題でございますが、まず左上のポンチ絵をご覧ください。原子炉、それから高温隔離弁、高温の配管、ヘリウム循環機といったところに主要な課題が存在しています。
まず、高温隔離弁ですが、融着による弁体・弁座の損傷の対策、あるいは製作性およびシール性能確認、特にヘリウムガス自体は非常に小さな分子でございますので、そういう意味でシール性能の確認というのは、一つの技術開発が必要です。過去にモックアップとしまして2004年ぐらいに作ったことがありますが、それを大型化する中でこういった課題の解決を図りたいと思います。
それから、高温配管でありますが、新規断熱材採用に伴う断熱性能等の特性の把握、製作性の確証ということで、過去にカオウールとかを使ってたんですけど今は使うことができませんので、新たな断熱材が必要になってくるという観点での課題です。
それから、ヘリウム循環機は、磁気軸受け等を用いました循環機性能の確認といったことがございます。
さらに、パッケージとして技術開発が必要な部分としましては、プラント全体の設計、安全設計、これは新規制基準の対応を含めております。そういう意味で、主要な課題としましては、起動停止や定格運転を通じた原子炉と水素製造施設の協調した運転技術がございませんので、どう起動停止するのか、特に稼働時にどう運転するかというのは、この試験を通して確認していきたい課題としてございます。
それから、プラント過渡試験データを用いた実証炉用プラント動特性解析コードの妥当性の確認というところがございます。こういった技術は、当然ですが実証炉に生かしていくということになります。
さらに、安全設計に関しましては、先ほど申しましたように、適用法規の確定が非常に重要になってくるわけでございます。将来、原子炉施設は原子力事業者が運転するということになると思われますが、一方で、化学プラントに関しましては、一般の参入を期待したいと考えています。
そういう意味では、適用法規を明確に分けることによって、その参入のための障壁を低くしたい点が最も求められるポイントでございます。そういう意味で、水素製造施設の接続に係る原子炉施設の安全設計を確立することがJAEAとしての大きな課題と認識しております。
次のページになります。こちらは参考ですが、試験施設の設備構成を示しております。左下の既存のHTTR原子炉から移りまして、赤い線と交わってるところが中間熱交換器でございます。赤い線が高温のヘリウムガスの2次冷却材でございます。途中から点線になってございますが、点線のところが、一般産業施設と考え、実線の部分が原子炉施設と考えているところでございます。
後処理設備としましては、フレアスタックで燃やすという計画でございますが、実態としましては、どういったデモンストレーションをするかといったことも課題として捉えております。
次のページになります。具体的な適用法規の議論に関しましては、これまで設置変更許可を申請する以前の行政相談から始めまして、この間、規制庁、経産省および茨城県との相談を進め、規制庁は原子炉側、経産省と茨城県に関しましては一般産業側という整理でございます。その意見交換会、公開で開かれましたもの2回を通しまして、ケース1とケース2で議論されて、ケース2で申請するということをJAEAとして決定し申請いたしました。
ケース2を説明いたしますと、右側のこの図になります。原子炉、中間熱交換器、その外側に隔離弁を用いまして水素製造施設、その外側に熱利用施設、水素製造施設という一般産業法規と、ここの赤い点線と緑の点線で適用法規を分けるということを提案して申請いたしました。これは、原子炉の運転は、一般産業施設のいかんによらず、常に運転を継続できるシステムという意味でこのようにしたという経緯がございます。すなわち、一般産業施設のいかなる異常事態においても原子炉をスクラムさせずに運転を継続させることができるという意味で許可が得られました。
その後、第1回審査会合におきまして、「2次ヘリウム冷却設備に関し、許可基準規則への適合性の考え方を整理すること」とコメントを受けました。さらに、第4回のヒアリングにおきましては、「適用法規の分界点を隔離弁とすることを検討すること」とのコメントを受けました。これらを受けまして施設区分を再検討した結果、左側のケース1に変更することにいたしました。この議論の過程におきまして、水素製造装置側の異常において原子炉がスクラムしてよいという見解を得られたところが大きなポイントでございます。
左側のポンチ絵でありますが、原子炉と中間熱交換器、さらに外側に原子炉建家の隔離弁、ここで法律の分界点を定めまして、実際に水素を製造する水蒸気改質器は、一般産業法規として分類されます。ここは非常に大きなポイントでございまして、もともと実証炉はケース1にすべきであると思っていたわけですが、やはりいかなる異常状態においても原子炉をスクラムさせてはいけない、HTTRの研究炉は非常に多くのスクラム信号が入っていますので、やむを得ずケース2で出したところであったのですが、ケース1でよいということになりましたので、委員からのそういったコメントを受けて、今回、新たにケース1で申請する方向で補正申請をしたいと思っています。現状、部内審査、所内審査、JAEA内の審査を経まして、9月の終わりには補正申請をしたいというスケジュールで考えてございます。
さらに、次のページに参り、適用法規の説明でございますが、適用法規1は、原子炉を安全に停止し、その状態を維持するために必要な設備のみを、青点線部としてございますが、炉規法を適用するということでございます。原子炉建家隔離弁は、原子炉施設と一般産業法規の分界点となりますので、一般産業施設に異常が発生した場合には閉止して、一般産業施設を原子炉施設から隔離する機能を求めます。
適用法規の2でございますが、原子炉を安全な停止や、その状態の維持に必要ない設備、これは緑点線で一般産業法規に区分するところでございます。これは、漏えいの可能性がある可燃性ガスに起因する火災・爆発等、すなわち水素、メタンの漏えいであったり、こういったものの火災・爆発に関しましては、一般産業法規を当然満足するとともに、原子炉施設に対しましては、原子力発電所の外部火災影響評価ガイドに従いまして、原子炉施設と水素製造施設の間に十分な離隔距離を確保するということが求められますので、それに対する対応、審査をしていくということでございます。
簡単に言えば距離を離すということになります。こういった方向で、この先、規制庁と進めていくというところになります。
最後、7ページ目でございますけれども、こういった今後のスケジュールに関しましては、冒頭申しましたとおり、年度内の許可の取得を目指したいと考えてございます。次年度に設工認を取得しまして、2、3、それぞれのここで得られる技術というのは当然でございますが、高温ガス炉実証炉に役立っていくということになります。これらの経験を踏まえて、今、三菱で行っております、実証炉の設計にも反映させていきます。
一方で、実際の施設自体は、基本設計、現状、詳細設計も開始しておりますが、設工認のタイミングである程度終えまして、改造と機器設計、製作・据え付けに入っていきたいと思っております。これらの途中で得られる技術というのは、全て実証炉の設計に生かしていきまして、実証炉自体は2030年代後半の運転開始を目指すということで、現状はHTTRと同じように水蒸気改質器を第1プランとしますが、間に合えばカーボンフリーに置き換えるということもあります。これが、現在JAEAにおけるHTTRの取組状況でございます。
黒﨑主査:ありがとうございました。それでは、意見交換に移ります。本件について、委員の皆さまからご意見、ご質問等をお願いいたします。
それでは、中島委員、その後、小澤委員お願いいたします。
中島委員:スクラムをさせてよいというのは、非常に私としては驚いたのですが、それはガス炉特有の話として扱われているんですか。
坂場室長:一番難しかったポイントは、IHXの伝熱管が非常に高温を使いますので、これを差圧制御してるんです。1次、2次ヘリウム差圧大というのが起きるのですが、守らせるためという観点も含めて、まずは分界点を水蒸気改質器の外側にしたというのが最初の申請でありました。それでスクラムさせてはいけないということです。
一方で、スクラムさせてよいとなりましたので、今度はより原子炉に近い方向にできるというポイントになっています。そこで実証炉は、HTTRのように厳しいスクラム信号を多く入れることはなくなってくると思われますので、そういう意味では、実証炉により近づくポイントで法令の分界点が認められたと捉えています。
中島委員:大変な進歩だと思います。良かったと思います。
黒﨑主査:では、小澤委員、お願いします。
小澤委員:ありがとうございます。最初、ケース2で変更許可申請したという時には驚きました。こういう実績が実証炉に繋がるといかがなものかと思ったのですが、ケース1に落ち着いて良かったです。炉側から見ると、水素製造側はいってみれば外部事象です。安全の考え方と産業利用の部分とは、しっかりと分けて整備すればこういう結果になると思いました。今後の審査もそうですし、場合によっては設工認もあるのでしょうから、設工認でもきちんと技術的に妥協することなく規制委員会と技術的な議論をしっかりやることが重要だと思います。
それから、次の実証炉を考えますと、規模的に実証炉と実用炉ってそんな変わらないかと思うので、カーボンフリー水素がニーズだとすると、実証炉といいつつ、実態としては1号商用炉のような扱いになると思いますので、しっかりとHTTRで必要なデータを取ることが重要になると思います。これは「常陽」でも申し上げた運転経験をしっかり積んでおくことが重要だと思いますので、その辺も検討の軸としては重要だと思います。
坂場室長:ありがとうございます。おっしゃられたことは非常に重要だと捉えておりまして、一刻も早く水素を出したいということでやむを得ずケース2で出したのですが、審査の過程でこのような結論になったことは、非常に良かったと私も捉えています。一方で、実際、30MWのうちの2MWしか使いません。これを実証炉に生かすために、その点の説明性をクリアするとともにHTTRの実績を積み重ねていきたいと思います。ありがとうございます。
黒﨑主査:他、何かございますでしょうか。それでは上田委員、お願いいたします。
上田委員:ありがとうございます。高温ガス炉HTTRにつきましては、国際的優勢性を活かし、計画や成果を分かりやすく発信することで若い世代、海外からの協力を呼び込むことが重要です。研究炉開発での規制対応や設計・建設の経験から得られる知見は、日本全体の原子力の安全・信頼をより高いものにするために必須でございますので、将来の次世代革新炉の開発にも活かせるということで、産業界との共有をお願いします。
1点質問です。2ページのところに、将来のカーボンフリー水素製造法による水素製造施設をHTTRに接続と書いてありますが、こちらは従来からHTTRで採用している熱化学法ISプロセスということでよろしいでしょうか。
坂場室長:今、3つ候補がございまして、おっしゃられるとおりISは一つの方法となっています。それ以外にSOEC電解、あるいはメタンを分解して固体の炭素を出すという点です。三菱重工は、今、FSを進めているところでございますが、今のところ候補としては、SOECが最も高く、その次にメタンの熱分解と思っております。ISは、自ら開発してきましたが、やはり長時間の制御性はまだ開発が残っており、徐々に化学組成が変わっていくところをコントロールしているかという点が一つのポイントになっておりまして、なかなか2050年までの運転は厳しいかなと考えてございます。
黒﨑主査:他、何かございますでしょうか。それでは、HTTRにつきましてもこれで終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、議題2「基礎研究の在り方」に入っていきたいと思います。基礎研究の在り方につきましては、文部科学省の有林課長よりご説明をお願いいたします。
有林課長:文部科学省原子力課長の有林です。それでは、資料の2に基づき説明させていただきます。タイトルは、「文部科学省における原子力基礎研究支援の取組」ということで、文部科学省においては、国の直轄の公募事業に加えまして、JAEAにおいても運営費交付金で基礎研究を行っております。
そのうち本日は、国の直轄で行っています公募事業を中心に説明させていただき、JAEAの運営費交付金については、現在、JAEAで、基礎研究をどうすべきかという検討が行われておりますので、また次回にその検討の結果をご報告させていただくことにいたします。JAEAでの検討に少しでも反映することがあればということで、本日、経営企画部の脇本部長にご参加いただいておりますので、何かございましたらコメントいただければと思います。
それでは2ページに、本日説明する2つの事業を示しております。1つ目が英知を結集した原子力科学技術・人材育成事業、これが福島にフォーカスした事業でございます。2つ目が原シス事業、一般的な原子力全般における基礎研究支援を行っているものでございます。それぞれ予算的には英知事業が12億、原子力システム事業が10億という予算規模で行っています。それぞれ順番に説明させていただきます。
3ページをご覧ください。まずは英知事業からご説明します。こちらは、東電の1F事故を受けまして、廃止措置等に係る研究開発について、JAEAのCLADSと呼ばれる専門の福島チームを中核に国内外の大学・研究機関等と連携をしながら人材育成、基礎・基盤研究に取り組むという事業です。大きくは3つのプログラムがあり、課題解決型、国際協力型、そして研究人材育成というプログラムです。右側の絵で示している通り、これまでに中核とし86の研究代表、再委託も含めて延べ222大学と連携してきた実績がございます。
次のページをご覧ください。英知事業の実施体制です。英知事業は平成27年に始まっており、当時は、文部科学省が直接委託事業を実施しておりました。そのため、文部科学省が公募の審査委員会を開き、文部科学省と採択機関との間で委託契約を結んでおりました。
英知事業が目指すところは、大学で行われた研究をいかに東電に反映していくかです。文部科学省との委託契約ですので、研究成果が文部科学省に集まってきた場合、その成果を文部科学省としてうまく1Fに展開しづらいという課題がかつてございました。
その状況がある中で、平成29年に福島の富岡町にJAEAの拠点ができ、そのタイミングに合わせて、JAEAのほうに補助金として移管し、JAEAのほうで審査委員会を立ち上げ課題を選定し、JAEAと個別機関との間で委託契約を結んでいただくという仕組みに新規事業から順次移管をしました。平成30年度の新規採択分から段階的に移管し、令和2年度をもって全ての事業がJAEA補助金で行われるようになったという経緯がございます。
体制としては、文部科学省からJAEAへ補助金を出し、JAEA/CLADSが、NDFや東電、メーカー、有識者から成るステアリング・コミッティというものを設けて、基本方針を示していただき、それに従ってJAEAが公募を経て委託契約で研究をサポートするという体制で行ってます。
その時に、リサーチサポーター制度を活用しています。実際に大学と研究を結んだ時に、先生が東電の要望をしっかり意識しながら研究を進められるようにサポーターを付けまして、その進捗に応じて、現場からのフィードバック、不明点があれば相談に乗るという制度を設け、できるだけ現場を意識した研究開発の体制を取っています。
次の5ページ目のほうになります。左側に青と赤と黄色のマップがありますが、英知事業で公募する時に、廃炉の作業としてどういった作業があるのか網羅的なマップにしています。青が英知事業のターゲットとしてやるべき部分、赤が東電を含め電力サイドで対応済という形で、どこの部分をこの公募事業でターゲットにしなければいけないのかという情報を、東電含め現場の方々のご意見を伺いながらこのマップに落とし込み、マップに基づいて、どこの部分に新しい研究テーマを当てていくのかという形で公募事業をコントロールしております。
それ以外に、4者連携会議として、廃炉支援機構や東電、JAEAのCLADS以外に東電のDecom.Techなどを含め関係者の連携にも努めております。また、採択された研究者の方々がまず初めに行うこととして、福島の現場の方々を目の前に、これから3~5年間かけて何を研究するかについてプレゼンしていただくワークショップを開催しております。
現場からは、こういった観点が抜けている、そのままだと適用できないという、かなり厳しいコメントをいただき、研究を始める時にしっかり現場からインプットしていただくという機会をこの事業として設けております。廃炉の現場にいかに適用していくのかというゴールに対して、CLADSにマネージいただきながら進めております。
次に6ページ目、原シス事業でございます。英知事業とは異なり、幅広い研究開発ということで、平成17年から原子力工学や核燃料、材料、核計装、核データなど幅広い分野を中心に、これまで200件を超える課題を採択しております。直近6年間を見ましても、本当に幅広い分野で、大学だけではなく民間企業、研究機関を含め多くの団体に研究資金が流れ、さまざまな研究の下支えをしております。
7ページ目で、実施体制をまとめております。先ほどの福島の英知事業と比べ、こちらはまだ国の直轄で行っております。国のほうで公募の審査委員会を立ち上げ、実施主体としてPD・PO制度を取っており、PD・POにサポートいただきながら課題選定をし、推進している状況です。
次に8ページ目です。令和7年度、昨年取りまとめた中間取りまとめにおいて、一部見直すべきだという指摘をいただき、見直したポイントが赤い部分でございます。テーマとしては、これまで個別に具体的なテーマを決めておりましたが、幅広く募るという観点で、特に特定のテーマは決めず、大規模連携、異分野、若手という3つのカテゴリーで課題を設けております。
若手枠については、これまで45歳を上限に設定しておりましたが、准教授を目指す助教や、さらに若いポスドクをサポートするという目的で、40歳以下に上限を下げさせていただきました。
研究期間については、若手課題などは多くの取組を支援し、当初の計画と違った課題があれば、次の課題にすぐに振り分けられるよう3年間に設定し、成果が上がっている課題はプラスアルファで最大2年間延長し、結果的に5年間支援を受けられるステージゲート方式を採用しました。
金額については、従来、1億円の研究が5年分で計5億円という提案が多く提案されていましたが、重要な課題や、他と比べてどちらを優先するかという観点で審査委員会の審議が進めやすいように、まずは最低限必要な基本額を設定してもらい、プラスアルファでいくらあればどれほどのアウトプットを追加で出せるかという、2段階のプロポーザル制度にさせていただきました。
この結果として、最大1億円の大規模チーム課題では、本当に7,000~8,000万円で申請額が抑えられ、より多くの課題を採択することができるという、金額的な改善が得られたと考えております。
9ページ目に令和7年度の採択テーマを参考に載せております。毎年行っている公募の中で予算的に谷間に当たる年度で、多くは課題を採択できない年度であったものの、結果的に大規模チーム1件、異分野連携2件、若手5件と、当初の想定よりもかなり多くの採択ができたという結果が出ております。
10ページに移りまして、元は経済産業省のNEXIP事業へうまく橋渡ししていくべく、NEXIPに関わっている研究機関、企業などとの交流を目的に、年に1回NEXIP交流会という研究発表の機会を設けております。昨年は10月に開催しており、NEXIP側から企業として取り組んでいる分野を説明していただき、文部科学省から、採択された方々に最新の研究動向を発表していただいて、意見交換の機会となりました。
以上が英知事業と原子力システム事業の説明でございますが、本日議論いただきたいポイントの前提情報として、幾つかご紹介させていただきます。
11ページ目をご覧ください。文部科学省における研究開発の取組ということで、英知事業と原子力システム事業が、平成17年から予算的にどう推移してきたのかを示しております。
点線で3つの期間に分かれております。赤い折れ線グラフが原子力予算全体に占める公募予算の割合でございます。競争的資金をどんどん増やしていこうという流れがありましたが、平成17年から震災前の23年頃まで、2%から3%ほどの割合で予算規模が推移しておりました。それが3.11を受けまして、1.5%から2%ほどの割合で推移し、そして最近は、1.5%で推移をしているという状況になってございます。
棒グラフで斜線が入っていない部分が原シス事業、斜線が入っている部分が原シス事業以外の公募事業の推移になります。最近では、赤い斜線が入っておりますが、こちらが平成27年から立ち上がった英知事業を示しております。
次に12ページ目で、原シス事業だけを取り上げた予算推移になります。直近5年間の動きとして、予算的に多く採択できる年とできない年があり、応募総数に変動はありますが、採択率としては3割ほどキープしております。資料の右側に移り、その採択課題のうち、JAEAが圧倒的に採択件数として多い状況になってございます。
一方で、金額単位にしますと、グラフ右から2つ目にございますように、大学が増えているのに対し、JAEAは減少傾向にあります。その理由を調べてみたところ、JAEAの応募件数は3割程度のフラットですが、採択割合はどんどん右肩上がりで増えています。
一番右の緑と紫の折れ線グラフに移り、紫の折れ線は、いわゆる普通の大学や研究機関が代表になった時に、自分たちが支援を受けたお金のうちどのくらいの割合を採択先に投げているかをパーセンテージで表しております。概ね1よりも小さな値になっているのですが、JAEAの場合は、再委託割合がどんどん右肩上がりに上がっております。原シス事業ではJAEA採択課題がどんどん増えている一方で、JAEAから民間や大学などに広がりを持ってお金が流れているという現状が分かってくると考えております。
最後、文部科学省における原子力基礎研究支援の在り方についての論点ページに移ります。現状のパートについて、英知事業では、CLADSを中核とし、廃炉の現場のニーズに合った推進体制を実現しておりまして、CLADSが東電と研究者間の調整役となり、公募の開始から研究終了まで十分にフォローし、研究成果の現場適用に多大に貢献をしているという状況にあります。
原シス事業では、平成17年の立ち上げ以降、国直轄の公募制度の下、さまざまな分野を支援してきており、近年は、経済産業省のNEXIP事業と連携をしつつ、新規性、独創性、革新性、挑戦性の高い研究や異分野との連携に取り組んでおります。
JAEAでは、原科研を中核に運営費交付金を原資として基礎研究や応用研究を実施しております。JAEAの取組については、次回作業部会で報告させていただきます。
次回作業部会に向けての論点として、これまで申し上げましたように、さまざまな公募事業がありますが、原子力自体の基礎研究力というのが脆弱化している中で、国として、少ない規模の研究費をいかに使っていくかが重要と考えております。
本日、JAEAのCLADSの例であったり、原シス事業におけるJAEAの働き・役割について説明させていただきました。基礎研究を進めるにあたり、JAEAと大学等の役割分担がどうあるべきかという点、限られた予算でより効率的な成果を得るためにどういった研究支援体制がいいかという点につきまして、さまざまな視点から、先生方のご意見をいただきたいと思っております。
英知事業の場合は、JAEAに補助金交付して運営してもらう形にした結果、JAEA自体が応募できないという問題も抱えております。JAEAを中核にするのであれば、JAEAに対して、何かしらインセンティブが働く仕組みをしっかりと確保した体制が必要ではないかと考えております。
また、次世代革新炉のフェーズが第4世代ということで、さまざまなアイデアを出しながら、10年後、20年後に実用化していくかもしれないという状況にあります。大学、研究機関からさまざまなアイデアが出て、システムとして提案していくということで、大規模な予算を付けて研究開発に取り組んできた経緯があります。昨今は、革新軽水炉はリプレースのほうに向けて動き出しており、SMRは企業を中心に海外展開していく動きもあります。
高速炉、ガス炉につきましては、実証フェーズに移っていく中で、20年前から目指していた第4世代の姿というのは、やはり少しずつ変わってきていると感じております。そういう中で、基礎研究として求めるものはNEXIP事業との連携というものを念頭に置いておりますが、経済産業省の革新炉が実証フェーズに移っていく中で、求められる基礎研究の在り方が重要です。これまでは自由にアイデアを出していたものが、成果の活用を求めてしまうと出口寄りになってしまう懸念がございます。
一方で、あまりに出口寄りになってしまうと、大学の良さが失われてしまう可能性もあり、この辺りのバランスを、JAEAが運営費交付金で進める基礎研究と併せて、何を念頭に置いて検討すべきかという点について、先生方から忌憚のないご意見をいただきたく思います。よろしくお願いいたします。
黒﨑主査:ありがとうございました。それでは、意見交換に移ります。本件について、委員の皆さま全員よりご意見、ご質問等をお願いいたします。どなたからでも結構でございます。それでは、秋山委員、その後、小澤委員でお願いします。2人お話しいただいてからご質問等あれば回答という流れにしたいと思います。秋山委員、よろしくお願いします。
秋山委員:ご説明ありがとうございました。よく現状が理解できたのですが、1つ目の英知事業に関しては、JAEAが管轄しているためJAEAが応募できないという問題はありますが、大学側の意見として、大学側はニーズ寄りですので、ニーズとシーズの間にちょうどいらっしゃると大学として受け止めているのですが、そういう点では、現在の体制がいいと思っております。
原シス事業については、やはり採択が偏っている。一方で、実際には、大学にある程度、資金が流れているということで、大学が主体となった事業が採択されにくいという状態になっていると思います。これに関してアンケートなどで、大学の先生が主体となって原シス事業に応募しにくい、採択されにくい等、何か大学側ハードルがあるかどうかについて把握されていますでしょうか。
黒﨑主査:ありがとうございます。次の小澤委員に移りまして、その後、併せて回答をお願いいたします。小澤委員、お願いします。
小澤委員:英知事業でいいますと、5ページ目に書いてあるニーズをお持ちの方々との意見交換、現場で厳しい意見をいただいて、実際にこの研究を適用していく。こうあるべきと思いますので、やはり厳しい面を積極的に出して進めるほうがいいと思います。最近の新聞にも、福島の研究について書かれていたと思いますので、そちらに負けないような成果を出していただければと思います。
原シス事業は、NEXIPとの協調という中で、進めるうちに対象を広げすぎている印象がありますので、もともとの社会的要請に応えるという中で、実用に近い事業はもっと大きくして、その実用の過程で必要な基礎研究があっても良いと思います。ただ、いつまでも続けるのは良くないので、メリハリをどう考えるかが論点になるかと思います。
NEXIPの中には高速炉もあれば高温ガス炉もありますので、それが今やっている実証炉に向けた開発と何が違うのかという点もあると思います。やはりここは、NEXIPの中で進める取組を拾い上げて、新しい開発を大学と一緒に、あまり閉じこもらないような大胆な基礎研究をやっていけばいいと思います。以上です。
黒﨑主査:ありがとうございました。では、文部科学省のほうからご回答をお願いします。
有林課長:秋山委員からご指摘いただきました、大学が応募しづらい要因分析ですが、昨年、中間取りまとめを整理する際に、さまざまな大学から意見を伺いました。
その中でありましたのが、AIや様々な先端的技術が出てきた中で、いかに原子力の分野に入れ込むかという狙いで公募テーマを設定した時期もありましたが、いわゆる炉物理や熱流動など、本来原子力を支えるべき人たちからすると、個別のテーマ設定をしてしまったがために応募しづらくなってしまったというコメントもございました。そういったことも踏まえて、具体的なテーマは設定せずに、大規模型、異分野連携、若手というカテゴリーで公募させていただきました。
その結果としまして、我々の想定を超える応募がありました。そのような公募の仕方について分析しながら、流れの中で改善すべきところは改善しながら、常に大学の先生方のご希望に添えるようなテーマ設定は行っていきたいと思っております。
また、小澤委員からご指摘について、まさに、原シスとNEXIPの連携というところは、旗印にしている一方で、NEXIP自体が例えば3年間で成果を出しますという中で、あまりに出口寄りになってしまうと、どうしてもNEXIPのほうの、既にスペックが定まってきている技術について、基礎研究として、その中に取り込まれることを目指そうとした時に、どこまでのテーマセッティングができるかです。もう基礎研究ではなくて応用研究であったり開発研究になってしまい、大学の自由な発想による研究が形にもならないかと思っています。
一方で、その形で進めようとすると、それなりの金額規模がないと、企業として必要なデータも取れないという問題もあると思っております。その辺りが一昔前であれば、どんどんアイデアを出してその中から何かが実を結ぶといい、と思っていた状況というのは、ここ5~10年で少し変わってきたと思っております。少ない規模の中で基礎研究でやった成果を何に求めるのか、当然、底上げであったり人材育成であったり、または成果の民間活用であったり、さまざまあると思いますが、どこにウェイトを置くべきかにつきまして、ご意見をいただきたいと思っております。
黒﨑主査:それでは中島委員、尾崎委員の順でお願いして、まとめてご回答にいたします。
中島委員:NEXIPのほうに関して、ここに例えば新型軽水炉、高速炉等、多く挙げてありますが、炉が中心になっていて、燃料や再処理など、そういう一つのサイクルとして考えるべきものが単体で扱われてるという点が気になります。原子力システム全体を考えるサイエンスコーディネーション的な取組をJAEAが本来やっていいと思っております。
例えば高速炉にしても、中空燃料等、開発要素がかなりあるようなもの、それから炉心にしても、高速炉の実証炉になってくると大型の扁平炉心。これは、炉物理的なセンスが問われるところで非常に実証が難しいと思いますし、そういったところには、基礎研究的な要素が入ってくるんだろうと思います。それらに伴う材料研究になりますと、さらに広い範囲の大学研究というのが生かされる範囲があるだろうと思います。そういった全体的なコーディネーションがJAEAで取り組まれるのが本来あっていいのではないかと思います。
実際、英知事業はそのような体制だと理解しておりますので、そちらは機能してるんだろうと思います。企業との関係、そこでニーズを明確にした上での橋渡しというのは、あってしかるべきと思います。先ほどJAEAが代表として参加できないという話題がありましたが、JAEAは自分たちがコーディネーションしているわけですから、一番テーマを出しやすい立場であり、非常に優位性を持ってそこに参画できるのではないかと思います。
黒﨑主査:では、尾崎委員、お願いします。
尾崎委員:英知事業のリサーチサポーター制度ですが、これは単なる研究のコーディネーターなのか、JAEAの施設を使った大学研究のサポートなのかで、やり方が変わると思います。おそらくJAEA施設の効率活用、拡大活用という意味のサポーター制度と理解してますが、そのように機能していないのであれば、見直していただきたいと思います。
先ほど有林課長がおっしゃった基礎研究と実用化のどちらを重視するかという点ですが、これは原子力だけでなく様々な研究で抱えている永遠の課題であり、正解に辿り着くのは難しいと思います。どの研究分野でもそういう事態が起きます。基礎か実用化という振り子は常に振れるもので、今は実用化に振れているのであれば基礎を重視する、逆も必要に応じて振り子を元に戻すべきと私は理解しています。
振り子を動かす時に、研究者に納得してもらえる理由をきちんと説明すれば良いと思います。振り子が振れると批判は常に起きるので、見直しが起きるのはやむを得ません。
有林課長:ご指摘ありがとうございます。中島委員からご指摘いただきました、JAEAが機能し、かつ研究にも参加してという体制は、我々もエッジプラスアルファのような形もあり得るかなと思っております。そのため、この点については、議論が必要とは思います。どういった形がいいのか、全ての可能性を排除せずに、次回も含めて、議論し調整していきたいかと思ってます。
私自身、英知事業をJAEAのほうに移管した時に英知事業を担当していたのですが、上がってくる成果が、国に上がってくるよりも、知見を持った研究機関でコーディネートしていただいてどのようにうまく使うか考える体制の方が、国全体で見た時にうまく成果が使われると思います。また、リサーチサポーター制度も、尾崎委員がおっしゃったように、様々なパターンとして施設を活用してもらうものであったり、または、福島でのニーズが分からないから教えてほしいというリクエストであったり、柔軟に対応していただいています。JAEAが国唯一の原子力研究機関でございますので、うまく大学の基礎研究と相乗効果が生まれる仕組みがどんな仕組みなのか、引き続き検討していきたいと思います。
また、振り子のお話については、おっしゃるとおりだと思っております。経済産業省とも、NEXIPとして、研究をどう進めていくかが大事ですし、アカデミアとして基礎研究がどうあるべきか、国研としての研究、コーディネーターとしての役割がどうあるべきかについては、幅広く意見を聞く場を設けさせていただいて決めていく形にしたいと思います。ありがとうございます。
黒﨑主査:それでは高木委員が手を挙げられたので高木委員、その後、上田委員でお願いします。
高木委員:ありがとうございます。ご説明ありがとうございました。研究者等といった該当する立場にないので的外れかもしれず、願望的なことになるかもしれませんが申し上げたいと思います。
有林課長からご回答いただいたことに重なるところはありますが、英知事業やNEXIPのテーマというのは、課題解決型として非常に大事なことだと思います。人材育成の視点からすると、若い人にもそういった課題に取り組もうと使命感を持ってこの業界を目指し、勉強したいと考える人もいるでしょうし、そういった人たちに夢を持ってもらいたいと思っています。
そのように夢を持てるシステムの維持という観点から、基礎研究の部分もぜひ大事にしていただきたいと思います。3年たって芽が出なかったら次に切り替えられるように制度を改められたというご説明もありましたので、やり方を工夫をしながら、ぜひ基礎研究の部分は閉じずにある程度はキープしていただきつつ、若い人が夢を持てるような仕組みにしておいていただきたいなと思います。以上です。
黒﨑主査:ありがとうございました。では、上田委員、お願いします。
上田委員:ご説明ありがとうございます。本年4月に原産年次大会を開催しており、米国の原子力エネルギー協会のジョン・コーテック副理事長が、米国の場合、DOEが数十年にわたり大学が産業界の研究助成を継続し、その成果として大学発の技術、小型モジュール炉として商業化に至った事例を紹介されました。
例えば米国のニュースケール社の場合、DOEの支援を受けた大学研究を起点にしまして、長年の開発を経て2020年代初頭に商業化段階に入っております。我が国におきましても、2050年のカーボンニュートラル実現を踏まえまして、次世代革新炉や関連技術の研究開発において、基礎研究から商用化までのロードマップを描き、継続的かつ一貫した支援を行うことが必要だと思っております。
その過程で過去の基礎研究の成否に関する要因分析をすることは、研究課題の選定、資源配分の最適化に資するものだと思います。基礎研究の多くは、製品化・商用化に至らないが一般的だと思いますが、成否要因を明らかにすることによって、研究開発をより効率的かつ戦略的に進めることが可能になるかと思います。その際に、Aの基礎研究が直接的にAというものの製品化・商品化に繋がらない場合でも、Bという技術開発に繋がる場合や、人材育成に貢献したなどの視点も必要かと思います。さらに、基礎研究の段階から原子力への国民理解を高めるためにも、例えば、宇宙探査機用原子力電池など将来性のあるテーマについては積極的に情報発信を行いまして、社会全体に原子力の意義ですとか可能性が共有されることが良いと思っております。
1点質問で、英知事業は長く続けられたと思いますが、成果が具体的にどの現場にどのように生かされているといった情報発信は行われているのでしょうか。私からは以上です。
黒﨑主査:では、文部科学省からご回答あるいはコメント、よろしくお願いします。
有林課長:高木委員からご指摘ございました、基礎研究自体が課題解決だけではなくて人材育成にも寄与するという点は、おっしゃるとおりだと思っております。前回の本部会では、国際原子力人材育成イニシアティブ事業を取り上げさせていただきましたが、私自身、ポストANECを考えるに当たり、研究と人材育成は表裏一体だと思っておりますので、人材育成を想定した基礎研究の在り方という観点も、しっかり考えていかなければいけないと意識を持っております。
また、若い人たちにとって夢の持てるシステムというのはおっしゃるとおりで、実は、原子力分野の公募事業自体、私が文部科学省に入って2年目に原子力分野で初めて公募事業を立ち上げ、自身の同期でドクターに進んだ人たちにしっかりと若いアイデアで夢を目指してほしいという思いがあって、原子力分野の公募事業を立ち上げたと今でも思っております。その流れを引き継ぐこの原子力システム事業について、引き続き若い人に夢を持ってもらえる事業となるよう、しっかりと改善すべき点は改善に努めたいと思います。
また、上田委員からご指摘ございましたDOEと大学の関係、アメリカの場合は、DOEイコール国立研究所だと思いますので、日本でいうJAEAと大学がどのように連携していくのかという点において、ポイントになると思っております。そこについては、しっかりと次回以降、JAEAの在り方も含めて検討させていただきたいと思っておりますし、宇宙も含めた領域の研究の良い点については、積極的に情報発信していきたいと思っております。
また、英知事業の成果につきまして、さまざまなホームページもそうですし、東京電力が様々取り組まれているところです。例えば最近ですと、デブリの取り出しをする時に、英知事業の中で、取り出さないと、ウランが含まれてるかどうか分からないところを、機材の先端にレーザーを付けて、デブリ含有物を特定する装置の開発をし、効率的にデブリ取り出しができるという技術開発も進めております。そのような研究成果が様々な場で紹介されていると思いますし、実際の場で使われているものも幾つかございますので、より一層、積極的に英知事業の成果として発信できるように努めていきたいと思っております。
黒﨑主査:では、最後、松浦委員と村上委員、松浦委員からお願いいたします。
松浦委員:英知事業については、立ち上げられた経緯について教えていただきたいのですが、文部科学省からより現場に近いところに受け渡されたということで、具体的にどういうところが以前だと活用しづらく、JAEA/CLADSに渡した以降、現場に実装できる技術が増えたというのは、どんな場面で実感なさったかをまずお聞きしたいです。
また、原子力システム研究開発事業のご説明の中で谷間の年度だったとありました。他の既に進んでいる研究の予算との兼ね合いがあったと思うのですが、応募された案件の採択時は、非常に悩まれたところもあると思います。私自身、全く提案はないのですが、非常にいい提案を来年度以降に生かしていくようなやり方があればいいと思いました。
黒﨑主査:では、村上委員、お願いします。
村上委員:私自身は、研究者としては、原シス事業に非常に鍛えていただき、また、教育者としては、英知事業に鍛えられたというのがあります。まず、こういう事業をうまくモディファイしながら運用してきてくださったことに感謝を申し上げたいと思います。
その上で、一応今回は、公募事業をメインにということですが、ビッグピクチャーで思っていることをお話しさせていただきたいと思います。まず、学術を支援するという文脈の中での原子力エネルギー技術に対する助成制度というのと、エネルギー政策を支えるという意味での助成制度という、文脈としては2つ大きなものがあると理解しています。
学術を支える仕組みということで、かつ原子力という文脈を捉えると、いわゆる原子力エネルギーの学術だけではなくて、量子科学のほうの文脈というのもあります。それぞれに文脈やカルチャーが違う形で研究が行われていますし、それぞれ学術と応用と両方の側面を持っているということもありますので、この2つが混ざってしまうと、少し話が複雑になるのかなと思っております。所掌する部局が異なっているということもお聞きをしておりますので、関係する3局の中で横串が通るような全体の仕組みが出来上がるといいなと思っているということ、まず大きなことです。
その上で、話を原子力エネルギー利用の、かつ科学技術といったところに絞ってさせていただくと、ちょうどこのスコープとしては、原シスですとか英知事業といったところの中にはまってくるのかなと思いますが、原子力エネルギーの研究というのは、常に2つの流れを意識してやるべきだと思っております。
1つは、予見性の高い国策としてロードマップを描きながら一歩一歩進めていくというタイプの研究です。そういう意味で「常陽」がきちんと動くとか、HTTRが次のステップに進めそうになっているという状況は非常にうれしいことです。それは、その幹の部分があるので、研究者が枝葉のところでものすごくいろんな新しいアイデアを出しながら研究をさせていただけるという、そういうような仕組みがあると思っています。この枝葉や、あるいは実がなる部分を支えていただくというのが原シス事業なのではないかと思います。
そういう意味で考えますと、まず、英知のほうから先にお話をさせていただきたいと思いますが、教育にフォーカスをしているところも含めて、いろんな取組を進めてこられたというのは、非常に良かったと思っており、具体的にお示しいただいていませんが、英知事業に参画をした結果として原子力業界に残ってくれる方は、非常に多くいらっしゃると思います。そういう意味でも確実にその成果を上げているという意味で、英知事業の果たしてきた役割は非常に大きい。
一方で、英知事業の助成の対象というのは、むしろ原子力の学術というよりも周辺の方たち、ロボットですとか原子力エネルギーではないディテクターの分野を扱っておられる方、あるいはもう少し土木工学寄りの学術を扱っておられる方、そうした方々に原子力について知っていただいて裾野を広げるという意味で、サポーター制度、厳しい要求にさらされるという仕組みまでつくり込まれてきたと、非常に立派なことだと思います。
ただ、原子力発電システムの研究をしている側からすると、自分たちのところに渡るものが少し減ってしまうという感覚もあるので、どちらがいいのかすごく難しいと、いつも見ながら思っております。バランスを常に調整しながらやられていく部分だろうと理解をしておりますので、ぜひ定期的にバランスを見直しながら、より良い形で進んでいくことを期待しております。
一方で、原シス事業ですが、これはまさにエネルギー利用の学術を支えるために貴重な事業で、しかも幹のところではなくて枝葉に新しいものを付けるという、非常に重要だと思っております。有林課長もおっしゃっていたように、以前はジェネレーション4の文脈の中で、例えば超臨界水高速炉のような新しいコンセプトを出して、非常に大きな予算を付けて、大学が主導で回していくという体制でした。2006,7年の頃まで行われていたと思います。現在は、12ページでも見せていただいているように、どちらかというとJAEAのむしろ国策に近いところから、ほんの少しだけその枝葉を付ける部分にJAEAの研究者の方が核になって、要素技術として大学に依頼するというお金の付き方をしてしまっている。
これは何を意味しているのかというと、大学が0から1で新しい原子炉の形あるいは新しい核燃料サイクルの形を提案するという能力が、著しく落ちているということを示唆しているんだろうと思っています。
超臨界水高速炉を例に取ると、炉心の研究があって、それから冷却水のほうの腐食の研究、また核燃料の研究があるというのを、大学の幾つかの研究室でユニットを組んで、大きなお金を回して、複数の教員を育てるという形を私が若いうちにやらせていただいたというのが、ファカルティーを育てるために非常に有効だったと認識しております。毎年そんなことができるわけではないというのも十分承知をしていますので、何年かに1回、新しい炉型に対して、複数の分野の先生たちが集まって、新しい原子炉の炉型はこういうものがいいのではないかという議論ができるなど、そのような環境が整備されることがすごく大事だと思います。
そうなりますと、ある種のステージゲートを設けて、最初はパワーポイントリアクターみたいなところから少し広げていって、良さそうなテーマに対しては、複数の研究室が連携して新しい原子炉のコンセプトを議論するという仕組みが将来的にできると、長期的な目線を見た上で、プレイグラウンドとして例えば「常陽」が使えるということになると、海外のベンチャー企業にだけ「常陽」の照射炉を使わせるのではなくて、日本から出てきている新しい原子炉コンセプトに対して供用されるということにもなります。
これは、MITの先生とディスカッションをした際に、OECD/NEAの原子力教育に関するワークショップの中でかなり取り扱っていると言われたのですが、最近MITでは最も優秀な学生が原子力領域に戻ってこようとしつつあり、ずっと我々が仕込んできたのは、常に原子力スタートアップの人たちがMITに定期的に来て、自分たちがどんなピクチャーを描いているのかを学生にプレゼンし続けた結果として、2020年前ぐらいからリバイバルが起きるようになってきたということをおっしゃっていました。応用かそれとも基礎かというよりも、新しいものをつくる経験を大学でできることが非常に重要ではないかと思います。その辺をプロモートできるようなプレイグラウンドに文部科学省からも支援いただけると非常にありがたいと思っております。以上です。
有林課長:ありがとうございます。松浦委員からご指摘ございました補助金に変えた時の経緯でございますけども、目の前に福島がありまして、特に長い時間をかけてというよりも、本当に現場で使われる研究を進めていただかなければいけないという状況がございましたので、毎年国がお金を出し、その報告書が3月に上がってくるというものではなく、1年を通じて常にさまざまなフィードバックがかかるような仕組みが必要ではないかということで、タイミング良くJAEAのほうに福島チームが拠点とともにできましたので、そこをうまく活用しながら東電との橋渡しをJAEAにやっていただくということになりました。
村上委員からさまざまなご指摘がございました。我々としても英知事業につきましては、バランスを定期的に見直していくようにしたいと思いますし、原シス事業につきましても、公募で突き詰めていった時に多分出てくる究極の答えとは、この人たちが考えたものであれば、これ以上ないというレベルの日本のベストチームをつくり、そこでアイデアを出し合って新しいコンセプトが出来上がるのであれば、おそらく一番いい形だと思います。
ただ、そのベストなチームをどうやってつくるかがすごく大切なところです。スモールスタートでステージアップさせていき、その中から良いアイデアを醸成していくという形は、いまの公募制度ですと、3~5年は研究者任せになる側面があります。なのでその意味、人材育成のほうでは、ANECで大学同士が連携し合う仕組みがありますが、そのような連携の仕組みを研究の分野においても何とか作れないかと、自分の宿題として、しっかりと引き続き検討していきたいと思っております。どうもありがとうございます。
黒﨑主査:どうもありがとうございました。それでは、議題3に移ります。これは、事務局より、先日行われた第2回国際原子力科学オリンピックの日本代表チームの結果についてご報告いただきます。それでは、有林課長、よろしくお願いいたします。
有林課長:資料3をご覧ください。国際原子力科学オリンピックという国際大会が昨年から開催されております。IAEAの主催で、昨年はフィリピンで開催され、日本は不参加でした。この時にIAEAの専門家として参加いただいていた東京大学の飯本先生が日本も何とか参加できないかということで、多大なご尽力をいただきました。第2回は、飯本先生をはじめ、さまざまな民間・研究機関等からのご支援もいただきながら、日本チームを組織し、本年度の第2回は参加しております。
スケジュールを簡単にご説明させていただきます。2025年選考育成スケジュールでございますが、代表4名に対して22名の参加登録がございました。代表に選出した4名に対しまして、内容としては、炉主任レベルなので結構難しい内容が出るのですが、約30人のスタッフの方々が高校生をサポートしていただきました。
このオリンピック自体は、7月末から8月にかけて今回はマレーシアで行われました。結果は、日本代表4名のうち、金メダルが1名、銀メダルが2名、銅メダルが1名と、全員メダルを獲得しております。大変素晴らしい成績でございますし、また、この中の田部君は実験部門において最高得点賞、佐々木さんは、最優秀女性選手賞と、日本チームが本当に華々しい成果を上げていただきました。
ご支援いただいた方々に熱く御礼申し上げるとともに、こういった取り組みをしっかりと今後も継続できるように、国としてもできる範囲でサポートしていきたいと思っております。簡単ではございますが、紹介させていただきます。
黒﨑主査:どうもありがとうございました。本日予定していた議事は以上になります。最後に私から振り返りも兼ねてコメントさせていただきます。
まず前半は、「常陽」とHTTRの話がありました。少し議論に出たのですが、特に「常陽」については、長期間止まっていた経緯がありますので、いざ動かしてみる時にきちんと動かすことができるようにすることが非常に大事だと思います。スタートしてからは、安定に安全に運転をしていくことが第一に重要だと思っております。
やりたいことは多くあり、実証炉開発のためのデータ取りも必要ですし、アクチニウムの話もありました。海外からの話もあるということで、本当に多くあるのですが、リソースが決まっている中でうまく運用していくことが非常に重要で、実証炉の話とアクチニウムの話は、両立できる見込みというご説明もいただきました。
話題にはあがりませんでしたが、HTTRとの共通課題として、これから長期間動かしていくと、動かすための燃料もいずれ枯渇していくと思います。今のうちから考えておくことが大事だと思いました。
後半の研究についても、先生方からたくさんご意見をいただき、特に出口・応用を志向するのか、あるいは基礎研究を志向していくのかについて、振り子のように振れるという話を尾崎委員のほうからいただき、その通りだと思って聞いていました。私としては、どちらも大事だと思いますが、村上委員が育てていただいたという話をされていましたが、その要素が非常に重要です。若手の方々がこのプロジェクトでうまくチームを回していくという経験が非常に大事だと思っております。その要素を念頭に、新しい制度設計をしていただければと思って聞いていました。以上になります。
それでは、最後、事務局から連絡事項等をお願いいたします。
滝沢補佐:黒﨑主査ありがとうございました。本日の議事録につきましては、整理でき次第、委員の皆さまにメールにてご確認お願いしたいと思います。その後、文部科学省のホームページに掲載させていただきます。次回の作業部会の日程等につきましては、別途ご案内させていただきます。
黒﨑主査:それでは、これにて第26回原子力研究開発・基盤・人材作業部会を終了いたします。ありがとうございました。
― 了 ―
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