原子力科学技術委員会 原子力研究開発・基盤・人材作業部会(第18回) 議事録

1.日時

令和6年2月9日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

対面及びオンライン会議にて開催

3.議題

  1. 原子力科学技術に関する政策の方向性について
  2. 新試験研究炉の建設に向けた取組状況
  3. JRR-3 における中性子利用の現状
  4. 総合討論
  5. その他

4.出席者

委員

寺井主査
尾崎委員
小澤委員
黒崎委員
高木委員
中熊委員
松浦委員
和田委員

文部科学省

林 担当審議官
奥 原子力課 課長
髙倉 原子力課 課長補佐

オブザーバー

日本原子力研究開発機構 新試験研究炉 推進室長 和田様
物質科学研究センター 上級研究専門官 武田様

5.議事録

原子力科学技術委員会 原子力研究開発・基盤・人材作業部会(第18回)
令和6年2月9日(金曜日)10時00分~12時00分
 
【髙倉課長補佐(事務局)】定刻になりましたので、第18回 原子力研究開発・基盤・人材作業部会を開催いたします。今回の作業部会は、対面とオンラインを併用したハイブリッド形式にて開催しており、これに関連して確認事項等がございますので、議事に入るまで事務局にて進めさせていただきます。
 まず、オンラインにて御出席の方へご留意事項をご説明いたします。委員の皆様におかれましては、現在遠隔会議システムの上で映像及び音声の送受信ができる状態となっております。ご発言を予定される場合は挙手ボタンを押していただくと、画面の左上に挙手マークが表示されますので、順番に主査よりご指名いただきます。もう一度ボタンを押すと挙手マークが消えますので、ご発言いただいた後挙手ボタンを押していただいて、手を下ろしてください。会議中にビデオ画像及び音声が途切れる場合は、その時間帯はご退席しているものとみなします。遠隔会議システム接続の不具合等が生じた場合は、随時事務局宛にお電話ください。傍聴されている方々におかれましては、ビデオ画像及び音声をオフとしてください。議事進行の妨げとなる行動を確認した場合は、遠隔会議システムからご退出いただきます。議事録につきましては、事務局にて会議を録音し後日文字起こしをいたします。事務局以外の方の録音・録画はお控えください。以上が本日の進行に当たっての留意事項になります。
 続きまして、本日の配付資料の確認をさせていただきます。今回は委員の皆様及び傍聴の登録をされた方宛にメールにて配付資料をお送りしております。お手元に議事次第を配布しておりますが、本日の議題は5点ございます。1点目が「原子力科学技術に関する政策と方向性について」、2点目が「新試験研究炉の建設に向けた取組状況」、3点目が「JRR-3における中性子利用の現状」、4点目が「総合討論」。最後に5点目が「その他」です。配布資料として資料5つと参考資料が4つございます。お手元の資料をご確認いただき、不備等ございましたら事務局にお知らせください。また、その他ありましたら随時お申付けください。
 本日は12時までを予定しております。委員の皆様の御出席状況について、事前に事務局にて確認させていただいております。なお、本日は中熊委員が少し遅れての御出席となり、秋山委員は御欠席となっております。このとおり、本日は9名の委員にご出席いただき、運営規則の第3条に規定されている定足数の過半数を満たしておりますので、ご報告をいたします。また本日は、話題提供のため日本原子力研究開発機構より新試験研究炉の推進室長 和田様、物質科学研究センター上級研究専門官 武田様にご参加いただいております。続きまして、事務局参加者についてご連絡いたします。文部科学省からは研究開発局担当審議官の林、原子力研究課長の奥、おなじく課長補佐の私、髙倉が参加しております。
 それでは、ここから議事に入らせていただきますが、運営規則第5条に基づき本会議は公開とさせていただきます。また、第6条に基づき本日の議事録につきましてもホームページに掲載いたします。事務局からは以上です。ここから寺井委員に議事の進行をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
【寺井主査】おはようございます。それでは、ここから替わって私の方で議事を進行させていただきます。本日の議題は、お手元の議事次第にありますとおり議題1から議題5まででございます。時間は12時までを予定しております。それでは、早速でございますが本日最初の議題1「原子力科学技術に関する政策の方向性について」に入ります。文科省より御説明お願いいたします。
 
【奥課長】おはようございます。原子力研究課長の奥です。私の方から原子力科学技術に関する今後の方向性と題して御説明をさせていただきたいと思います。
 資料1をご覧ください。元々の背景といたしまして、昔原子力委員会の方で原子力長計というのがありましたが、それがもう今はなくなってしまっていて、中長期の研究開発科学技術戦略というのがないという状況があります。こうした背景を踏まえて、文科省の方において原子力科学技術について今後の中長期的な考え方というのをまとめた方がよいのではないかということで、この親委員会に当たります原子力科学技術委員会の方で、昨年の12月20日に議論を開始したところです。
 この部会においては、後ほどありますが、この検討課題のうち特に新試験研究炉や、高速炉「常陽」のお話等を集中的に議論いただきたいと思っておりまして、今回はそのキックオフ、第1回目になります。
 それでは、資料1の3頁目をご覧ください。原子力科学技術については、御承知のとおり原子力自体がカーボンニュートラルや、GXの中でも重要性が示されております。また、経済安全保障的な観点からも、原子力については先端技術・機微技術が多いということで極めて重要だというような指摘があります。また、原子力については総合科学、総合技術という位置付けがありますので、エネルギー利用だけではなくて例えば医療や材料、製造業等、幅広い利用を期待されるということで、引き続きこの分野を推進していく重要性は高いと思っています。
 4頁目になりますが、一方で最近の原子力の状況を見てみると、なかなか憂慮すべきところがあるかと思います。左下の図は、この分野のTop10%論文数のシェアの推移です。昔はトップ集団を走っていましたが、今はその2位集団、3位集団の方に落ち込んでしまっているというところがあります。また、右側にありますように原子力関係学科に進む学生の数、特に学部生についてはかなり減少傾向にあると思っています。この原子力関連学科等は、学部レベルでは他の量子であるとかエネルギーというふうに名称変更をしているという部分がありますが、長期的なトレンドとしてはやはり減少傾向にあるのではないかと思っています。
 一方で、5頁目にありますように政府の政策文書の中では原子力の重要性というのはいろいろなところで位置付けられています。GXの基本方針であるとか原子力委員会の考え方、あるいは原子力の関係閣僚会議等において、次世代の革新炉の開発に取り組むであるとか、研究開発、人材育成、サプライチェーンの強化に努める等々書かれています。こちらについて文科省としてやるべきことというのをより具体化しようというのが、今回の議論の出発点になります。
 6頁目のところで、ここで位置付けになります。今回の検討に際して、この原子力科学技術委員会は科学技術・学術審議会の下に置かれていますが、ここで右下のスケジュールにありますように去年の12月から検討を親委員会の方で開始をしましたが、この部会の方で更に集中的に議論を進めていただいた上で、今年の中頃に中間的なまとめをしたいと思っています。委員会の下には三つ部会がぶら下がっていまして、ここの研究開発・基盤・人材作業部会、それとバックエンド作業部会、核不拡散・核セキュリティ作業部会。この三つでそれぞれミッションを分けた上で検討を進めてまいりたいと思っています。当面の課題として5つここに掲げていますが、次の頁をご覧いただければと思います。
 当面の政策の方向性。これは我々事務局としての一つの案でございますが、5つ柱を掲げています。1つ目が、「もんじゅ」サイトを活用した新試験研究炉の開発・整備になります。これは原子力機構(JAEA)として、あるいは新規制基準対応後初めての新設炉という形になりますので、様々な課題等もあると思っています。この新試験研究炉を我が国の協力研究の基盤としてより発展させるべく、位置付けを明確にしていきたいと思っています。
 2つ目が次世代革新炉の開発です。文科省のミッションというのは、幅広い一連の技術体系というのをきちんと保持していくということが大きい役割であろうと思っています。その意味で高速炉の「常陽」であるとか高温ガス炉のHTTR、こうした次世代の革新炉の開発を進めるとともに、関連して原子力の安全研究というのも推進・強化をしていく必要があると思っています。
 3つ目の柱が、廃止措置を含むバックエンド対策になります。やはり入口ではなくて出口の方も極めて重要ということで、特に文科省・原子力機構においては、「もんじゅ」、「ふげん」、東海再処理という大型施設について廃止措置を優先的に進めてきました。ただし、これら以外にも様々な廃止措置対象施設というのがあります。既に原子力の研究開発を始めてから半世紀になりますので、多くの施設が廃止措置に移行しています。こうしたものの取扱いとともに、最終的な処分場の整備のようなものも併せて考えていきたいと思っています。
 4つ目が、研究と人材育成基盤の強化ということで、原子力の新しい研究の芽を育てるという意味で原子力科学技術イノベーションの推進、それとその裏腹になります原子力の人材育成の強化を併せて進めていきたいということです。
 さらに、5つ目の柱としては東京電力福島第一原発の事故への対応ということで、廃止措置に関する研究の推進。あと、原子力損害賠償に関する取組というのも柱の一つとして掲げています。
 この作業部会においては、このうち特に1つ目の新試験研究炉の整備、それと2つ目の次世代革新炉の整備、それと4つ目の研究・人材育成基盤の強化、この辺りを集中的にご議論いただきたいと思っています。3つ目のバックエンド対策については、原子力バックエンド作業部会が別にありますので、こちらの方で議論を進めているところです。ちょうど今週の初めに作業部会がありまして、キックオフしたところです。
 それぞれについて簡単にご説明させていただきます。8頁目、9頁目をご覧ください。まず1つ目が、「もんじゅ」サイトを活用した新試験研究炉の整備になります。御承知のとおり、「もんじゅ」については5年ほど前に廃止措置の段階に既に移行しています。ここのサイトを活用して新しい試験研究炉を作ろうという構想を今進めているところです。昨年の3月に概念設計の段階が終了しまして、今は詳細設計の段階に移行しています。概念設計の段階では、10 MW級の中出力炉、それと照射機能を持つビーム炉という形で検討を進めています。今JAEAと京大と福井大学の3者で協定を結んで、具体的な構想について具体化をするとともに、これを整備する主契約企業として三菱重工が選定されています。
 今後については、この詳細設計の段階について、今日も和田さんに来ていただいていますのでJAEAの方から御説明を頂きたいと思っています。さらに、建設予定地の整備、それと今後の予算確保、予算計画の在り方、さらには地域あるいは産業の基盤として、広く地域、それから全国に裨益するような施設として整備する必要があると思っていまして、利用の在り方というのもこの場で検討していきたいと思っています。
 10頁目にあるのは今後のスケジュールです。今は一つの目安として今年中に原子炉の設置許可申請の時期を見通すということを目標に進めているところです。こちらについての詳細は後ほどJAEAの方から御説明をさせていただきます。
 11頁目が、もう一つ現在稼働している試験研究炉で東海にJRR-3という研究炉があります。こちらについては令和3年に既に運転再開をし、供用運転を開始しています。年間2万人程度の利用実績があります。これについてはアカデミア、それと産業利用に広く供していくとともに、今般は医療用RI、特にモリブデン99の製造に利用できるのではないかということで、今製造試験等を進めていただいているところです。
 こうした利活用を進めるとともに、さすがにJRR-3もかなり老朽化が進んでいるということもありますので、この実験装置群をどうするかというのは一つの課題だと思います。そうした観点で「もんじゅ」のサイトを相補的に利用できるような実験装置群の在り方というのを今後検討する必要があるかと思っています。
 続いて、12頁目から2つ目の柱となる次世代革新炉の整備になります。1つ目は高速炉の「常陽」です。「常陽」については昨年の7月に原子力規制委員会の方から設置変更許可の認可を得まして、今は安全対策工事を進めているところです。右側にあるように令和8年度半ばの運転再開に向けて、今設工認の認可等の取組を進めているところです。これは着実に安全対策工事を進めて運転再開に向けた取組を進めるとともに、「常陽」用の燃料をどうするかというのが一つ大きい課題としてあります。こちらの燃料製造に向けたオプションというのを、今後この作業部会の場でも議論を頂きたいと思っています。
 14頁目が今後のスケジュールになります。申し上げたように令和8年度半ばの運転再開を目指すというのが一つですが、エネルギー庁の方で高速炉の実証炉に向けた検討というのを進めていただいています。今のところ2040年代の運転開始というのを一つの目標に据えていまして、これに向けて「常陽」を使って技術的な知見を提供していくというのが大きいミッションであろうと思っています。
 15頁目が、2つ目の革新炉の高温ガス炉になります。高温ガス炉については固有の安全性を有する原子炉ということで期待が非常に大きいと思っています。このガス炉の実験炉として大洗の方にHTTRという炉があります。こちらについては令和3年に運転を再開していますが、今は運転を停止しておりまして、今年度中にその運転再開というのを一つの目標に据えています。
 右側にあるように今後ですが、運転再開をした後、固有の安全性をきちんと確認をするということで、100%運転時の炉心流量喪失試験というのを実施をするとともに、高温を用いて水素製造の実証をするというのを目的として挙げています。さらには、これも同じようにエネ庁の方で実証炉に向けた基本設計というのを今後進めていくことになっています。
 16頁目にありますように実証炉については下にあるように2030年代の運転開始というのを一つの目標として据えていまして、これに向けて同じようにHTTRの技術的な知見、これは水素製造と炉の両方ですが、知見を提供していくというのが大きいミッションかと思っています。
 17頁目になります。原子力の安全研究です。原子力機構は原子力規制委員会の技術支援機関として指定をされていまして、特に軽水炉における技術的な検討と安全研究、それと技術支援というものを実施しています。今後については、JAEAの方においてもより効果的かつ科学的に合理的な安全規制にしていくべく、主体的に安全研究を実施して、原子力規制委員会の方に提言・提案をしていくということが大きいミッションだろうと思っています。こうしたことについて委員会等において検討を進めていきたいと思っています。
 18頁目からはバックエンドになります。こちらは作業部会の方で議論しますので、簡単に御紹介だけさせていただきます。19頁目です。申し上げたようにJAEAの方では、「もんじゅ」、「ふげん」、東海再処理という三つの大きい施設を優先的に予算配分をした上で廃止措置を進めてきました。これ以外にも36施設が既に廃止措置段階に移行しています。こちらは見積りですが総額として1400億円が廃止措置のための費用として掛かるとありますが、実際に予算的に措置できているお金は毎年5億円~7億円ぐらいということで、このままのペースだと相当な年数が掛かってしまうという問題があります。ということで、その間の維持管理費というのも当然ながら掛かってきますので、こうした廃止措置というのを効率的且つ計画的、戦略的に進めていくべく、資金計画の策定であるとか、そのための資金確保の方策というのを今後検討していきたいと思っています。
 20頁目がJAEAの方で策定している廃止措置のロードマップになります。21頁目からが、主要施設の廃止措置になります。「もんじゅ」については計画を4段階に分けて廃止措置を進めていまして、今は第2段階の廃止措置で使用済み燃料とナトリウムの取出しを計画的に進めています。
 22頁目が「ふげん」です。「ふげん」は比較的廃止措置が進んだ炉になっていますが、こちらも使用済み燃料の海外搬出、それと原子炉本体の解体工事というのが若干後ろ倒しになっています。こちらも新しいスケジュールに沿った形で着実に進めていくというのが大きい課題かと思っています。
 23頁目が東海再処理になります。こちらは既に廃止措置段階に移行していますが、高レベルの放射性廃液がかなり残っているということで、このガラス固化というのを優先的に進めています。このガラス固化をするための溶融炉を随時交換した上で、合計で800本を超える量のガラス固化体で、こちらを計画的に進めていくというのが大きな課題だと思っています。
 24頁目が処分場の整備になります。JAEAは研究施設等廃棄物の処分の実施主体として規定されています。こちらは毎年埋設処分勘定に必要な金額というのを積み立てて、処分場の整備に向けた検討というのを進めています。
 今後の課題として、立地をどうしていくかであるとか、物量がどれくらいあるかという規模感の検討というのを併せて進めていくことになろうかと思っています。こちらはいずれもバックエンド作業部会の方で検討を進める予定になっています。
 続いて25頁目が4つ目の柱で、人材と研究基盤の強化になります。26頁目です。原子力科学技術イノベーションの推進とイノベーションを支える人材を育てるということが非常に重要だと思っておりまして、現在文科省の方で原子力システム研究開発事業という、いわゆるファンディングプログラムを実施しています。こちらも既存の課題を中心に支援をすることになっているのですが、今後右側にあるように原子力について新領域、新しい研究の芽を切り開くような新発想型、ゲームチェンジと書いていますが、このような新しい研究について支援を強化していくということを一つの方向性として考えていきたいと思っています。同じような形でJAEAの方でも、現在、例えば劣化ウランを使った蓄電池の開発を行っています。
 27頁目は人材についてです。原子力人材に関しては、文科省の方で原子力の教育コンソーシアム(ANEC)という枠組みを設けて、カリキュラムの開発であるとか国際的な人材の派遣、それと実験・実証を共同でやる、あるいは産学連携といった取組を進めています。ANECの活動を着実に進めていくということが極めて大事だと思っていますが、この中でも特に原子力のコア人材だけではなくて、原子力を学ぶ人材のマスを広げていくということが必要だろうと思っておりまして、こちらも作業部会あるいは委員会の方でぜひその方策というのをご議論いただきたいと思っております。
 28頁目は、福島第一原発の廃止措置に向けて、文科省・JAEAの方ではCLADSという事業を進めています。1Fの廃止措置等に向けて研究開発と人材育成を一体的に進めていくということで、こちらも来年度以降着実に進めてまいりたいと思っています。さらに、今回はこちらとJAEAとの間で連携・協力した取組、特に環境動態研究等について進めていくということが必要かと思っています。
 30頁目です。文科省の方では原子力損害賠償紛争審査会を持っておりまして、中間指針を策定し、ADRの方で和解仲介等の取組を進めています。こちらはセーフティーネットとして着実に進めていくということが今後も必要であると思っています。
 最後の31頁目は、文科省の原子力関係予算になります。昔は3000億円の規模があったのですが、現在は大体1500億程度になっています。内訳の詳細は説明しませんが、JAEAの予算としても施設の維持管理に掛かる固定経費が非常に大部分を占めているというのが大きい問題で、実際の真水の研究にお金が割けていないというのが非常に大きい問題だと思っています。そうした観点から今回こうした形で今後の方向性というのをご議論いただいて、研究の厚みを増そうということを大きい方針として打ち出していければと思っております。ということで、ぜひ活発な御議論を頂ければと思っております。どうぞよろしくお願いします。
 
【寺井主査】どうもご説明ありがとうございました。それでは、本件につきまして委員の皆様方から御意見、御質問等ございましたらお願いいたします。会場にて御参加の方におかれましては挙手でお願いいたします。リモートで御参加の方につきましては、Webexの挙手機能をお使いください。その場合、指名した方はミュートを外してご発言いただきますようにお願いいたします。それでは、御質問、御意見のある方は挙手にてお願いいたします。いかがでしょうか。小澤委員、どうぞ。
 
【小澤委員】小澤でございます。6頁目、7頁目で当面の検討課題ということで5つの柱として示していただいたこと、これには異存はございませんので集中的に深く議論できればと思っております。一方で、資料の書き出しも冒頭3頁目からカーボンニュートラルと書いてあったりして、前回も指摘していました日本全体で失われているインフラ機能、これも例えばJMTRの後継炉の話も以前ありましたが、今回の集中の議論の中にはないかもしれませんが、あるところで集中的に議論できるように準備を着々と進めていただければよいかと思っております。
 それから、後ろの方にそれぞれ今後議論する「常陽」とか高温ガス炉の実証炉に向けた話が出ておりますが、こういった実証炉を次の経済的であるということが実証できる実証炉になるようなことができるように、既存の「常陽」とかHTTRを使って進めていただければと思います。その良い例としては22頁の「ふげん」、残念ながら経済性等の観点から実証炉計画に発展しなかったと書いてありますが、プルトニウムの利用とか、25年間運転していろんなデータを取った実績がありますので、こういったことも横に見ながら進めていただければと思っております。以上です。
 
【寺井主査】ありがとうございました。奥課長、いかがでしょうか。
 
【奥課長】おっしゃるとおりだと思います。原子力の研究開発の基盤というのは非常に大切だと思っていますので、こちらは新試験研究炉というものを一つ新しく整備をするということがありますが、その他含めて、「常陽」もいわゆる研究基盤として重要なものだと思っていますので、こうしたものの維持強化策というのは、この場でもぜひご議論いただきたいと思っています。
 「常陽」とかHTTRというのは、本当に実証炉に向けた技術的な知見を提供すると。実証炉はある種経済実証するための炉ですが、その一歩手前の技術実証はあくまでこういう実験炉の実証をするということですので、こちらの知見というのを着実に実証炉につなげていくべく、実証炉の方はエネ庁が主導でやっていただいていますが、そちらと我々が歩調を合わせて進めさせていただきたいと思っています。
 
【小澤委員】ありがとうございます。
 
【寺井主査】多分最初の小澤委員の御指摘のところは、いわゆる「もんじゅ」後継炉、今は新照射炉と呼ぶのかもしれませんけれども、これについて、今回は中長期的なビジョンというお話だったので、今すぐという話では当然ないのですが、10年とか20年とかの中長期の範疇に入ってくるかという気はしますから、それもぜひ念頭に置いていただきたいということかと思います。
 「常陽」につきましては照射ベンチとして使っていた時期も確かあって、高速炉のいろんな材料照射というところで当然使える話かと思いますし、それから、HTTRは100%のところから冷却材停止をやって安全性を実証すると。そこで一段落して次は水素製造の方にという話に多分なっているのですが、HTTRをその後どう活用するかというところを含めて、その辺り検討すべきかという気がしますので、よろしくお願いいたします。その他いかがでしょうか。黒﨑委員、どうぞ。
 
【黒﨑主査代理】ありがとうございます。私の方からいくつかお話しさせていただきます。まず、今原子力の流れというのが大きく変わろうとしている状況ですので、この状況を受けて中長期的な政策の方向性というのを文科省として何ができるのかということを示そうとされていることは、非常に重要で良いタイミングだと思っています。この部会ではその中でも人材と研究開発の基盤のところを見ていくということは非常に納得できます。まずそれが一点です。
 その上で2点お話がありまして、1つが研究開発のいわゆる整理の仕方のところです。これはこの後話すお金のこととも絡むのですが、要は原子力の研究は地に足をつけてしっかりやっていくというところが非常に重要なのですが、やはりそれだけではなかなか若者に響かないところもありまして、その意味では夢を見るといいますか、新しい学問領域を切り開くといいますか、そういったうまく見せるようなところも研究開発の中に含めてうまく整理をして、しっかりやっていくところと夢を見ながらやっていくところ、というような形で見せられたらよいかと思いました。その意味では奥課長の方からも新しい研究の芽であるとか新領域みたいなお言葉もありましたし、非常に良いかと思っています。それが1つ目です。
 2つ目がお金の話なのですが、最後の方で、3000億円ぐらいあったのが今は1500億円ぐらいということで、その大半が高経年化した施設の修繕等に使われていて、真水の研究というところにあまり今は行っていないのだというお話を聞きました。やはりこれから本当に国として原子力をやっていくということになれば、当然古い施設は修繕しなければいけませんし、新しい研究もしていかなければいけないので、やはりここは声を大にして、本当にやるのであれば必要なものは必要だということでアピールしていくのが重要かと思います。そういう形でうまくまとめていければと思いました。私の方からは以上2点です。
 
【寺井主査】ありがとうございます。奥課長、何かございますか?
 
【奥課長】ありがとうございます。1点目は、申し上げているように原子力がやはり総合科学技術ですので、エネルギー利用だけでない新しい学問領域を広く切り開くというのは非常に大事だと思っています。4つ目の柱で原子力科学技術イノベーションとあえて掲げていますが、こうしたところで次の研究の芽、新領域の開拓ということを打ち出していけたらよいかと思っています。
 もう1つ、施設の維持管理はおっしゃるとおりで、元々3000億円あったと申し上げましたが、核融合が外に出ていってしまい、レーザーが外に出ていってしまいという要因もあり減っているところもありますが、これまでのいろいろな事故あるいは不祥事等があって、原子力についてはかなり長期的な傾向として予算が削減傾向にあるのは否めないかと思っています。ということで、こうした新しい方針を打ち出して、原子力について引き続き国としてコミットしていくのだと。そのために必要な予算額をちゃんと確保していくのだという方向性を打ち出していければと思っておりますので。ぜひ多面的にご指導いただければ有り難いと思います。
 
【寺井主査】よろしいでしょうか。それでは、尾崎委員、どうぞ。
 
【尾崎委員】7頁ですが、科学技術イノベーション、基礎研究を多面的に強化して、それを革新炉やHTTR等に役立てるという、その関係が非常にわかりやすく書かれていまして、7頁の方もよく理解できました。それに関連してなのですが、頂いた資料の14頁の中では、基礎研究があって、「常陽」のような実験炉があって、それから実証炉があってという流れになるわけなのですが、これは文科省さんもよく御存じのとおり、なかなか絵に描いたとおりに行かない話で、「もんじゅ」等の経験でここの連結ですね。リジッドにロードマップを決めると後で修正がきかなくなるし、でも非常に柔軟にすればよいというわけでもないというところなのですが、そこの落としどころといいますか、実施体制、それから、責任を持っている組織との、政府とのコミュニケーションとか、いろんなものがあると思うのですが、この点についてどういった計画をお持ちか、ぜひ教えてください。
 
【寺井主査】ありがとうございます。奥課長、どうぞ。
 
【奥課長】実証炉の開発に向けては、エネ庁の方で高速炉に関するロードマップというのを引いていただいていまして、こちらの方ではお示しさせていただいたように2040年代に実証炉を整備すべく、今はGXのお金が付いていまして、大体高速炉関係だと600億円ぐらいですかね、お金が付いているところです。こちらで今後概念設計を進めて、次に基本設計の段階に移行していくということですが、こちらの実施主体、整備主体、それと電力の関与の在り方というのは、高速炉開発会議であるとか関係する協議会みたいな所で精緻な議論を進めていくことになろうと思っています。そちらはエネ庁の主導できちんとやっていくことを見守るというのは一つありますが、我々としてももちろん積極的にそこに関与して貢献していきたいと思っていますし、これまでの「常陽」と「もんじゅ」の方で一定の技術的な実証というのができていると思っていますので、そちらの知見というのはきちんとロードマップ等にも反映していくということが大きいミッションになると思っています。
 
【尾崎委員】わかりました。
 
【寺井主査】高速炉の実証炉、あるいは高温ガス炉の実証炉はエネ庁さんが主体的にやられるということですね。中核企業も決まっていると聞いておりますので、文科省サイドとしてはこれまでの知見をそこに生かしていくというスタンスだということでございます。よろしいでしょうか。その他いかがでしょうか。和田委員、どうぞ。
 
【和田委員】和田でございます。ご説明ありがとうございました。7頁に挙げていただいている種々の政策の方向性は非常にそのとおりだと思っております。特に4つ目の柱に掲げていただいている人材基盤の強化について、こちらは非常に大事な課題だと考えております。27頁に人材育成機能の強化として挙げていただいておりますが、人材育成を図るにはまず人材を確保することが必要になってくると思いますので、政策の方向性を検討するにあたっては、人材の確保という観点も入れていただければと思います。
 原子力産業協会では、就職活動を行う学生を対象にした原子力産業セミナーという合同企業説明会を毎年開催しておりまして、ここ数年出展企業の数というのはかなり増えているのですが、参加学生数が2011年に大きく減少してから、ほぼ横ばいで回復しておりません。原子力を目指す人材の不足というのは、今後国内外で原子力の最大限の活用を図っていくにあたり大きな懸念となることが予想されますので、ぜひ人材確保の観点を入れていただければと思っております。
 関連してもう一点です。企業の採用担当者からは、理系人材の確保は非常に競争が厳しいというお話を聞いております。理系人材を増やすという観点では、やはり初等中等教育の段階でSTEM分野に興味を持ってもらうことが重要であると考えております。
 STEM教育に積極的に取り組んでいるような諸外国などをぜひベンチマークいただいて、初等中等教育段階においてもSTEM分野に関心を持っていただくような施策を強化していただければと思っております。以上でございます。
 
【寺井主査】ありがとうございます。奥課長、いかがですか。
 
【奥課長】おっしゃるとおり原子力の人材の規模を広げていくということが非常に大事で、これまでのANECの取組というのはどちらかというと原子力の専門人材を育成するというところが中心でしたが、それだけだとやはりマスは確保できないので、先ほど申し上げましたがいわゆる他学部・他学科にいる人たち、あるいは社会人の人たちに原子力を広く基盤として学んでもらって、他の分野の専門だけれども原子力もちゃんと知っているという人たちを増やしていくという取組が、人材の層の確保として重要かと思っています。
 理系人材の話は、原子力のみならず他の分野でもすごく共通的な課題で、文科省としても理系人材の育成確保というのは、別の部署になりますが力を入れて進めています。初等中等教育段階から高等教育段階まで、いわゆる理系バイアスのようなところも若干あるので、そこを解決すべく他の部署とも協力しながら進めていきたいと思っています。
 
【寺井主査】ありがとうございます。多分、人材育成あるいは人材確保というのは、ある種いろいろな分野で必要で、もちろん原子力の中でもそうなのですが、いろいろなレベルの人を対象にしたい、先ほどお話があった初等のレベルから、あるいは中高生、それから大学の他学部の学生、それから、いかに原子力に教養学部の人を連れてくるか。それから、原子力産業にいかに人を入れていくかというところもありますね。後は、やはり企業の中で非原子力専門の人に原子力をやってもらって原子力産業に移ってもらうとか。いろんな意味で必要だと思うのですね。そういう意味で今いろんな組織が活動していて、27頁に、これは文科省さんの政策でANECとJNENですが、原子力産業協会の方は企業人材、それから企業に入れてくる人材をしっかり確保するということをやっておられるし、それから、JAEAの人材育成センターでもいろんなことをやっておられて、昨日も確かワークショップがあったと思うのですが、そういった組織がうまく連携するというのは結構大事ではないかと思うのです。昨日のワークショップ等もその一つの表れだと思います。その辺りうまく仕組みで有機的にやっていただくというのが結構大事かという気がしますので、関係者におかれましてはぜひそこをよろしくお願いしたいと思います。他にいかがでしょうか。石川委員、どうぞ。
 
【石川委員】ご説明ありがとうございます。この原子力科学技術イノベーションの推進というのは非常に良い標語だなと思って、素晴らしいと思っています。これと人材育成の方と共通すると思うのですが、先ほどからその周辺領域から人材を呼び込む、あるいは理系人材が必要というところで、それは多分他の分野との競争になると思うのですが、原子力で多分特有だと思うのは、そもそも原子力は原子核のエネルギーの解放、原子核反応の利用というところで、例えば原子核物理を物理学科で勉強した人は多分ほとんどその後アカデミアに行くとか、基礎研究としての核物理しか興味ない人が多いかもしれないのですが、実はそういう原子力分野で例えば医療用RIの製造とか、あるいは他の核燃料廃棄物の処理・処分、あるいは転換、先ほどの蓄熱なんかもありましたが、多分軽水炉とか革新炉とか、設計が始まった頃に比べると原子核物理でもかなり進んできて、もしかしたらそちらの分野で勉強した人のアイデアというのが新しい原子力技術の方につながっていくというようなこともあるのではないかと。他の産業分野に比べてやはり原子力だと入りやすいのではないかなというのは最近考えております。
 あと、先ほど、核融合が出ていってレーザーが出ていってとおっしゃっていて、今更元に戻すというわけにはいかないと思うのですが、全然違う舞台だということではなくて、イノベーションの創出へ向けて改めて連携していくということも考えてもよいのではないかというふうに考えております。以上です。
 
【寺井主査】ありがとうございます。奥課長、いかがでしょうか。
 
【奥課長】おっしゃるとおりです。この原子力科学技術イノベーションは何か新しい領域、新しい研究の芽というのはどういうものがあるのかというのは今いろいろ大学の先生たちにヒアリングして回っているのですが、一つはやはり原子力の原理原則のところに立ち戻るというのがあるのではないかというのがあって、そこの正に中核が原子核物理学だと思うのです。それと中性子の利活用のところを突き詰める。そうした根源的なところの方にもある種立ち返った研究というのも支援すべきなのではないかと思いまして、一つのエネルギー利用だけではなくて、そこのさらに1歩2歩手前のところというのを対象としたような領域というのも、原子力の領域としてあってしかるべきなのではないかと思います。その意味で原子核物理学まで立ち戻ると、いわゆるフュージョンであるとかレーザーであるとかの他の領域とかなり近くなってくるので、そうしたところも連携・協力の対象としては当然あり得るかと思うので、ぜひアイデアを頂ければと思います。
 
【寺井主査】よろしいでしょうか。
 
【石川委員】はい。アイデアは私の中ではなかなか思いつかない……レーザーはやっておりますが。
 
【寺井主査】ありがとうございます。他はよろしいでしょうか。高木委員、どうぞ。
 
【高木委員】ご説明ありがとうございました。先ほどの和田委員から初等中等教育との連携という御意見があったかと思うのですが、私もそこは非常に大事だと思っております。例えばアジアの国々でも原子力の技術を今から導入していくにあたって人材を育成しようというような教育活動が展開されていますが、初等中等教育のいわゆる学校の先生の部門と、それから研究や産業利用を推進するような部門と、タッグを組んで教育をしていくことでかなり成功しているという事例もあります。また、持続性を持たせるという意味でも非常に大事だと思いますので、先ほど奥課長の方からも連携していくというようなお話がありましたが、ぜひそこも意識して、持続性ということも含めて進めていただければと思います。以上です。
 
【寺井主査】ありがとうございます。奥課長、いかがでしょうか。
 
【奥課長】先ほど寺井先生からお話がありましたように、まさに昨日、原子力人材育成ネットワークでのシンポジウムがありましたが、あそこの場で我々のANECの活動であるとかJNENの活動であるとか、あと原子力産業協会さんでやられている活動であるとか、そこら辺を連携・協力しながら進めていくということが一つありますし、あと、政府の方でも文科省だけではなくてエネ庁の方でサプライチェーン人材であるとか、規制庁さんの方で規制人材の育成というのをそれぞれやっていて、これはばらばらでやっていても勿体なくて、人材育成をする立場である大学の側からすれば、出し手は違いますがやっていることは同じということもあるので、ここはぜひ連携・協力しながら進めてまいりたいなと思っています。
 
【寺井主査】ありがとうございます。そこの連携は極めて大事かと思います。限られた資源で最大の効果をということを考えると、やはりその辺はちゃんと協力する必要があるかという気がいたしますので、よろしくお願いします。今の件について和田委員から何かありますか?
 
【和田委員】今、人材育成ネットワークの方でも、色々な関係の省庁ですとか企業が、どうやって効果的に同じ方向を向いて進めていくかということで、人材育成戦略ロードマップの改定を行っております。今年度中にロードマップ自体の改定は行う予定なのですが、その改定したロードマップを使ってぜひ関係省庁の皆様と連携を図ってやっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
【寺井主査】ありがとうございます。高木委員、よろしいでしょうか。
 
【高木委員】はい。ありがとうございます。
 
【寺井主査】ありがとうございました。その他にもまだご意見があるかと思うのですが、時間が予定を超過しておりますので、この全体の議論につきましては今後引き続き議論を行っていくことになりますし、個別の内容につきましては次回以降更に詳細に詰めていくということになっていますので、そこでまたご意見いただければと思います。ありがとうございました。
 それでは、次に議題2に行きたいと思います。議題2は「新試験研究炉の建設に向けた取組状況」でございます。こちらは原子力研究開発機構様より御説明をお願いいたします。
 
【和田室長】  
日本原子力研究開発機構 新試験研究炉推進室の和田です。本日はよろしくお願いします。私の方から、新試験研究炉の建設に向けた取組状況についてご説明していきます。
 説明内容でございますが、本日の項目は目次の通りとなります。1つ目が、新試験研究炉の設置の経緯等。2番目が、それの概念設計。3番目が、詳細設計Ⅰの現在の検討状況。4番目に、利用設備の検討状況。5番目に、利用促進に係る検討。最後に、まとめとなってございます。
 まず1頁目、新試験研究炉の設置の経緯と背景等になります。左上に経緯・背景を記載してございますが、平成28年12月の原子力関係閣僚会議におきまして、「もんじゅ」を廃止措置し、「もんじゅ」サイトに将来新たな試験研究炉を設置するということが決定されております。また、施設の高経年化、新規制基準への対応等によりまして、多くの研究炉というのが廃止の方針になっており、我が国の研究開発、人材育成を支える基盤というのが脆弱化しているといったような状況になっておりました。
 一方、右上の方にあります新試験研究炉の役割ですが、新試験研究炉を利用した高度な原子力人材の継続的な確保・育成強化というのが重要となっておりまして、また、中性子利用の需要に対応した研究基盤の維持・整備も重要な状況です。そうした状況から人材育成、中性子利用の基盤として新試験研究の重要度が増加し、「もんじゅ」サイトに設置する新たな試験研究炉の在り方について、文科省審議会等を通じて検討を行ってきたところ、中性子ビーム利用を目的とした10 MW級の中出力炉といったところに絞り込まれて、令和2年度から概念設計等の検討を開始したといったところになります。
 2頁目に、その検討をお示ししております。まず、10 MW級の中性子ビーム炉の概念設計を実施してきたところ、資料の中心にその実施項目を順番に示しております。その検討項目の外枠に応じた色が左右の項目に該当します。まず目標でございますが、左の上の方に記載していますが、安全性、安定性、経済性、利便性、将来性といった5項目を目標に設定しておりまして、それに基づいて基本仕様を策定して、熱中性子束等の性能を検討したということです。その熱中性子束の解析結果ですが、10 MW未満の中出力では世界最高レベルの性能であるというのも確認してございます。その他、原子炉の成立性や制御手法というのを検討してきたといったところです。最後にその他ですが、右下にありますように敷地内の調査等を行っているというような状況です。
 3頁になりますが、こちらが新試験研究炉の基本仕様を表に示しております。炉の型式でございますが、軽水減速冷却重水反射体付スイミングプールタイプというものを検討しているところです。資料の右上に炉心をイメージした図というのを示しておりまして、その中心部が茶色くなっておりますが、それが燃料領域を示しております。燃料領域は20体でございまして、白い丸のところが照射できるところとなっております。その周りが重水タンクになっております。右下に建屋のイメージを載せておりますが、緑色の屋根の建物が原子炉建屋になります。左側が青い色の屋根になっていますが、こちらがビームホールと呼んでいる、多くの実験ができる建屋で、原子炉建屋から向かって右側ですが、こちらが照射関係ができるホットセル等の建屋になります。
 次に4頁になります。こちらが現在検討しているスケジュールになってございまして、令和2年から4年にかけまして概念設計を実施し終了しており、4年度の末から詳細設計になってございまして、ⅠとⅡといったところを含めて詳細設計で、現在は詳細設計Ⅰというステージでございます。許可を取るために原子炉の設置許可申請書を策定するのですが、それを作成する期間に入っております。設置許可には必要な機器の重要度分類等が必要ですので、そういった検討をしているところです。設置許可の申請の見込み時期ですが、今年中には提示できるように予定を組んでございます。
 5頁、原子炉には一体どんな安全要求がされるのかといったところを表にまとめてございます。一番左が、500 kW未満の出力が低い原子炉(試験研究炉)になります。内部溢水であったり自然災害、火災とか電源、耐震、津波といったところが一般的に要求されております。次に出力がそれよりも高い500 kW~50 MWです。新試験研究炉は10 MWですので、ここの部分に該当するわけですが、一番下の耐震、津波といったところが強化されております。低出力の場合から追加されているのが、青く塗っているところで、多量の放射性物質等を放出する事故の拡大防止というところになります。最後、実用発電炉の場合はどうなるかといったところが一番右側になります。重大事故といったところで、意図的な航空機の衝突、放射性物質の拡散抑制対策、格納容器破損防止対策や炉心損傷防災対策といったところが更に追加されます。
 続いて6頁、では設置許可申請書に具体的にはどういうものが要求されているのかというのがこちらです。左側の表が本文に記載する項目になります。右側がその添付関係で書類を作るといったところになります。左側の本文の五といったところが、メインとなる記載すべきところでして、計測制御系統であったり冷却系統等の機器・設備の主な項目を記載するところになります。それを補足するという観点から、添付書類の八といったところに安全設計に関する説明等を記載します。その他、添付書類の六に関しましては、気象、地盤、社会環境等を記載しまして、そのデータ等を活用して平常時の影響評価を添付書類の九といったところに記載します。最後に十でございますが、機器等の故障等で環境へ与える影響というのを記載するといったところになります。
 次に7頁でございますが、調査の項目には、先ほど説明したように気象や社会環境、地盤、津波、火山の影響等が必要になります。ここでは記載していませんがその他に竜巻や、森林の植林がどうなっているのかというのも当然ながら調査が必要になります。植林に関しては外部火災というところに影響します。その他、風向、風速というのもデータを取らなくてはいけないのですが、当然ながら該当年が異常でないということを示す必要がありますので、複数年のデータも収集するというような形になります。
 新試験研究炉を設置する場所が「もんじゅ」サイトですので、「もんじゅ」での既存のデータというのはございます。そういったところも活用できるのではないかと思っておりますし、不足しているものを順次収集するといったところになります。現在ボーリング調査もしていますが、そこはこの調査の一環といった流れになります。
 8頁に、現在のボーリング地質調査はどうなっているのかを記載してございます。ボーリング調査ですが、下の図で赤く囲ってあります③、こちらが地点Bといったところで、写真を載せてございますが、現在2本のボーリング調査をしています。大規模な破砕帯やすべり面になるような脆弱部分があるかないかというところを確認しているような状況です。
 その他、地質調査に関しましては土石流のシミュレーションも実施しており、土石流に関しましては現在の砂防ダム施設の有効性の確認や、追加的な砂防施設の必要性といったところを確認しております。
 9頁目、説明項目が替わりまして、こちらは新試験研究炉の調達といったところです。原子炉の性能や安全性を確保するために、設計から施工までを一貫して進めていくことが重要と考えておりまして、そのために新試験研究炉の新設に関する技術提案を求めて比較・評価した上で契約を取り交わす「企画競争方式」を採用して、原子炉の設置にあたり炉心等の枢要部の設計・製作を一貫して担当する受注者を選定してきたところでございます。
 審査の方法ですが、今年の6月から仕様や審査基準を公開して募集を行って、説明等を行い、外部委員を含む機構内の審査機関を立ち上げ、ヒアリングをした後に公表済みの審査基準を基に審査をしてきました。昨年、令和5年11月に三菱重工業の提案を選定し、原子炉設置に関する基本契約というのを締結したところでございます。
 今後の予定でございますが、三菱重工業と協力して原子炉施設の完成までの工程を明らかにするとともに、新規制基準に沿った安全設計方針を作成して、これに適合する原子炉施設の安全設計を進めていきたいと考えております。
 次に10頁です。こちらが原子炉の設置業務の主な流れでございます。原子炉設置に係る基本契約に基づきまして、主契約企業とともに詳細設計Ⅰから原子炉施設の使用前事業者検査・確認終了までの長期にわたる各取組を節目節目で国のレビューを受けつつ遂行することにしております。
 詳細設計Ⅰでは、新規制基準への適合性を確認するためのデータ取得に向けて、原子炉施設の安全解析評価を進め、その後、詳細設計Ⅱでは、設備・機器の実機製作に先立ちまして構造の健全性、作動の信頼性及びシステムの安全性をモックアップ試験等により確認していくことにしております。また、中性子利用の機器につきましては、京大をはじめとしたアカデミアや産業界を含めた体制による諸検討を進めて、既存施設を活用して新試験研究炉のビーム装置用のプロトタイプの開発を進め、最新の装置等を整備することを計画していきたいと考えてございます。
 11頁、中性子ビームの実験等についてご説明していきます。中性子ビームの実験装置でございますが、こちらは汎用性や利用頻度が高い、中性子の小角散乱、中性子粉末解析装置、中性子イメージング装置、中性子反射率測定というのを最優先で設置するということにしております。後続装置はどのようなものかといったところは下に例として載せております。
 続きまして12頁。こちらは照射関係の装置です。照射関係の装置は、中性子の放射化分析というのを優先装置として最優先で整備するといったことを考えてございます。その他、後続の装置に関しましては下に書いてございますが、研究用のRIや、陽電子ビーム、材料照射、生物照射というのを検討しているといったような状況になります。
 続きまして13頁ですが、実験装置の検討体制というのはどのようになっているのかというのを資料で示してございます。装置整備の検討・整備計画を練るタスクフォースを実験装置ごとに設定しまして、進捗段階に応じてチームを編成し、利用開始に向けて着実な整備を実施していきたいと考えています。また、後続の装置につきましては、研究の発展やコミュニティの意見を踏まえて、予算確保の上、順次整備を開始していきたいと考えております。
 14頁になります。こちらが利用促進に係る検討といったところになります。新試験研究炉の設置に向けた地域との協働及び地域振興の在り方に関する助言を得ることを目的として、地域関連政策検討ワーキンググループというのを立ち上げまして、その中にさらに三つのグループというのを設けております。今年度の取組ですが、左の下に書いておりますように、サブグループ1というのは、利用促進に必要な機能の検討、トライアルユースに向けた地元企業との対話等。グループ2におきましては、複合拠点に必要な機能等の検討。最後のサブグループ3ですが、こちらは福井大におけるカリキュラム準備等を実施しているというところになります。
 最後に15頁がまとめになります。1つ目として、炉心設計の概念設計が終了しましたので、詳細設計Ⅰといった段階に移行しております。2つ目ですが、詳細設計を進める主契約企業を選定し、契約を締結しております。原子炉設置許可申請に向けて詳細設計Ⅰを推進するとともに、原子炉施設の完成までの工程を明らかにしていきます。また、詳細設計Ⅰでの検討結果を踏まえた原子炉建屋を設計するために、原子炉建屋に関する検討というのも進めていきます。3つ目に、建設場所の決定に向けて地質調査の分析等を継続して、その結果、土石流や斜面の安定化等の対策、廃止措置への干渉等の観点から総合的に評価し、設置場所を設定していきます。4つ目が、地域関連政策検討ワーキンググループでは、利用促進に必要な機能や複合拠点に整備すべき機能等について、アカデミアや地域の関連機関と協力し、運転開始前の準備段階期間も含め検討し、その整備に向けて取り組んでいきます。5つ目が、中性子利用装置については京大等のアカデミアのコミュニティとともに既存施設を活用してプロトタイプを開発していき、最新のビーム装置の整備を図っていきます。6つ目に、10 MWの新試験研究炉に高性能冷中性子源装置と広いビームボール、優先5装置と関連先端装置で研究のコアを作って、産業利用展開を目指す等、最先端の研究がいかに地元貢献に展開できるか留意しつつ、学術界、産業界、地元関係機関等の関連コミュニティから幅広く意見を聴取して、意見を取り入れながら事業を進め、今後もコンソーシアム会合において活動報告するとともに、実施主体として活動を行っていきます。説明は以上になります。
 
【寺井主査】どうもご説明ありがとうございました。それでは、本件につきまして委員の皆様方から御意見、御質問等ございましたら、挙手にてお願いいたします。尾崎委員、どうぞ。
 
【尾崎委員】中性子照射装置についてですが、QST六ヶ所村にも中性子ビームの研究設備があります。あれとは目的とかそういうものが全く違うものなのでしょうか?
 
【和田室長】ご質問ありがとうございます。元々こちらは原子炉から発生する中性子ビームを活用したものです。すみません、六ヶ所のところの中性子というのは分かっていなかったのですが、茨城県の東海村のJ-PARCでは中性子を活用したビーム実験が行われています。
 
【林審議官(文部科学省)】よろしいですか。六ヶ所でやっているのは核融合の構造材の材料の健全性を確認するための装置を作るためのビームで、核融合の方は14 MeVぐらいの中性子が出てくるので、それに合わせてそれぐらいの強度の中性子を大量に当てないと、照射された材料の健全性がわからないので、そういう加速器を今ヨーロッパと開発しているということです。一方、こちらで考えているのは多分いろんな解析用の中性子を作ることです。かなりエネルギーの低いところのものでありますし、あと原子炉から出てくるので、J-PARCのものと違って、連続的に出てくる中性子なので、エネルギーは結構低めだけれども、量としては大量に出てくるという性能の違いがあるのではないかとは思います。
 
【尾崎委員】わかりました。ありがとうございます。この質問をした理由というのは、今までお話ししましたが人材が足りない、学生が足りないというところで、基礎研究の方で中性子を扱う限りでは、目的は違うとしてもそんなに大きな差はありませんよね。共通の人材やスペックになってくると思いますので、JAEAとQSTでは全然違う組織なのですが、やはり基礎研究人材が必要ということであれば、そこはオープンに考えた利用方法、人の出入りとか企業の例も含めてなのですが、それを検討されたらよいのではないかということでお聞きしました。
 
【林審議官(文部科学省)】材料の研究は多分共通のところがあると思います。エネルギーは違いますけれども、どこまで中性子が得られるのか、どれくらい低下するか、その辺のプロセスは同じだと思いますので、そこは材料の世界と同じような人がやっていると思います。ただ、加速器を作るというのと原子炉、解析装置を作るというのは全然違う話なので、加速器は加速器で多分J-PARC等と共通しているところがあると思います。
 
【寺井主査】林審議官、ご回答ありがとうございました。尾崎委員、よろしいでしょうか。
 
【尾崎委員】わかりました。
 
【寺井主査】今の件ですが、中性子を使うという意味で、QST六ヶ所との違いは今の回答で明確だったのですが、例えばJ-PARCでも分析用の中性子が出てきます。それから、JRR-3とか、そういう意味で分析用の中性子が出てくる所が結構あるのですが、その辺りの相補性や関連性等も一度整理いただいた方がよいかという気がします。人材に関してはまさに今ご覧いただいたとおりで、commonのところかと思うのですが、この辺りあと3号炉とかのところでお話があるかと思います。よろしくお願いします。その他いかがでしょうか。黒﨑委員、どうぞ。
 
【黒﨑主査代理】ありがとうございます。いくつかコメントをさせていただきます。まず一つが、この新試験研究炉は東日本大震災の後初めて我が国で作られる原子炉、試験研究炉とはいえ原子炉ということもあって、やはり結構注目をされると思うのですね。なので、今もそうだと思うのですが、しっかりと間違いのないように設計、建設、そして完成まで持っていっていただきたいというのがまず一つです。非常に注目されている事業だと思っています。
 その上で、どういう方向性でこれを作り込んでいくかというところなのですが、一つは、せっかく作るのだから、やはり本当に良いものを作ってもらいたいと思っています。原子炉の出力は10 MW未満ということで、そこはもう決定していますので、それを大きくすることはできないのですが、ただ、例えば実験装置群のところとか、中性子を取り出してきて、その先々でいろんな研究ができるのですが、そういう実験装置群のところは、例えば本当に世界で一つしかないとか、現在の最先端のものとか、そういったのを積極的に設置することで、敦賀のここでしかできない研究、産業応用でもいいのですが、それができる施設を目指していただきたいなと思っています。それは先ほどの議論にもあったのですが、いろいろな中性子発生の装置というのがあって、この後JRR-3の話等もあると思うのですが、そういったところでできることとできないことというのをうまく整理して、この新しい新試験研究炉でしかできない最先端のこと、あるいは地域振興に貢献できることということを考えたらよいのではないかと思いました。そうすることで、ここに人がどんどん集まってきて発展していくような、そういう絵姿を描いていただければと思っています。すみません、コメントばかりでした。私の方からは以上です。
 
【寺井主査】どうもありがとうございました。先ほど私も申し上げました中性子の利用の整理、それから、いま黒﨑委員がおっしゃった最先端の設備という辺りが、JRR-3でできないことがここでできる、そういうところがしっかり言えるとよいかということだと思います。よろしくお願いいたします。そういう意味で、CNS(Cold neutron source)のところは元々京大炉もあったし、それからJRR-3にもあると思うのですが、その辺りはどの程度の進化になっているのかわかりますか。
 
【和田室長】新試験研究炉の和田です。私の方からご説明しますと、JRR-3で減速材容器は材質としてはステンレスを使っています。諸外国はもう大体アルミニウム合金を使用してございますので、新試験研究炉としては中性子断面積が小さいアルミニウム合金で作ろうと考えてございます。
 また、JRR-3では減速材容器内は液体水素なのですが、新試験研究炉では液体重水素を使うことで、より強度な中性子を提供できるようにということで、JRR-3とはまた違った、より高度な中性子提供といいますか、そういった取組をしようと考えております。以上です。
 
【寺井主査】ありがとうございました。なので、今は冷中性子あるいは超冷中性子を作るところの冷媒が、これまでは液体の軽水素だったのが、今度は重水素にすると。それで吸収断面積が小さくなってフラックスが稼げるということでよろしいですか?
 
【和田室長】はい。
 
【寺井主査】ありがとうございました。他にいかがでしょうか。どうぞ、小澤委員。
 
【小澤委員】小澤でございます。ご説明ありがとうございました。1頁目~3頁目は大分イメージがはっきりしてきたかと思っております。次の資料と見比べてみたら比較的参考になるところが多いのではないかと感じましたので、そういったJRR-3の課題みたいなところも反映しつつやっていただければと思います。
 4頁目のスケジュールは期待が高いところでありますが、再稼働に数年掛かったとか、建設にも8年とか7年を要していると書いてあるように、こういったことを考えると、先ほど指摘のあった震災後初めての新設炉ですので、相当な時間が掛かるのではないかと思います。もしかすると20年ぐらいになってしまうのかな、というイメージを持ちました。そうすると、JRR-3の方がもう60年経っているから、それが80年ということになりますね。そうすると、こちらの新試験研究炉を運転し続けるということが更に重要になってきて、取替え部品等もあってその停止期間が長くなってしまうようなことがないように、そういった運用のところも考えつつ、それから、規制のところも、運転を始めてから現場が苦労しないように、しっかりと設置許可とか設工認のところで規制側にきちんと説明して、合理的な建設・運転ができるように期待しているところです。
 そういった意味では、最後の15頁のまとめの6番のところには、最先端の研究がいかにと書いてありますが、ここは非常に期待するのですが、その手前のところの最先端の装置でというのは黒﨑先生のおっしゃったとおりだとは思うのですが、先ほどの20年後30年後に取替え部品が調達できませんみたいな話にならないように、その時点でも調達できるようなことも念頭に置きつつ設計していただければよいかと感じました。以上です。
 
【寺井主査】ありがとうございます。和田さん、いかがでしょう。
 
【和田室長】ご意見ありがとうございました。新試験研究炉は、確かに震災以降、新規制基準を適用して新たに作るといったところなので、JRR-3等の、新設ではないのですが、新規制基準を適用して許可を取得しているところがありますので、そういったQ&A集とかノウハウというのを当然ながら原子力機構として共有して、なるべく早くに申請してから許可が取れるようにというところは取り組んでいきたいと思います。
 また、設置するときにはできるだけ汎用品などを使って、部品の入手というのが速やかにできるようにという取組等も考えていきたいと思っております。また、JRR-3が当然ながら現在60年目を迎えておりますので、そういったところでも速やかに新試験研究炉も立ち上げて貢献していきたいと思っています。以上になります。
 
【小澤委員】ありがとうございます。
 
【寺井主査】よろしいでしょうか。先ほど小澤委員が20年ぐらい掛かるのではないかという話があったのですが、これは見込み的にはどんな感じなのでしょう。
 
【和田室長】まず、場所がまだ候補地として決まっておりませんので、現在ボーリング調査をしているコアの分析や、ここのまとめのところにも書きましたが、廃止措置の工程とかリスクとかを総合的に判断して、まず候補地を決めるといったことが重要だと思っています。
 その次に、やっと主契約企業のメーカーさんが決まりましたので、メーカーさんと一緒になって特に全体工程でどうなるのかというのを決めて、それと同時並行してJRR-3の許可を取っていますので、そういったところのノウハウを担当者と相談して、速やかに進めていきたいといったところになります。
 
【小澤委員】単純に足し算したら20年ぐらいになってしまうという意味で申し上げたのであって、いろいろJRR-3とかが参考になるなと感じていますので、速やかにというのはそのとおりだと思います。一方で、その「速やかに」を最優先にすると、いろいろと規制側からコメントを受けたことが運転段階でしわが寄らないようにということで、そこはしっかりと規制側に説明していただきたいというのが趣旨でした。ありがとうございます。
 
【寺井主査】ありがとうございました。その他いかがでしょうか。石川委員、どうぞ。
 
【石川委員】この施設が世界でここでしかできない照射ができる、研究ができるというふうになると、それが先ほどの議題の原子力科学技術イノベーションにつながっていくかと思うのですが、一方で、小澤委員がおっしゃったように20年待つのかというと大変なところで、そうはいってもしっかり建てていかないといけないのでそこは仕方ないところで、あと人材育成もそれに向けてやっていくのだと思うのですが、以前から位置付けがよく分からないと思っていたのが複合拠点についてで、建設・稼働するまでの複合拠点というのはどういう位置付けになるのでしょうか。ここのロードマップは、例えばどういう施設ができるのかとか、14頁の複合拠点ということで、敦賀の駅前に複合拠点を作るという話が以前あって、つながっていると思うのですが。
 
【和田室長】こちらは「もんじゅ」サイトに原子炉を建てますので、敦賀駅からかなり距離がございます。それで、利用者が遠方地から来られる方にわざわざ「もんじゅ」サイトまで来ていただかなくてもいいように、例えば照射の情報を駅前辺りの部屋の中といった所でも見ることができればといったところで複合拠点というところを考えています。当然ながら原子炉建屋を作っていくと同時に、複合拠点という名称を付けていますが、そういったことを一緒に検討して、まず機能とか、どういったものが必要であるか整理するといったことを今検討していて、当然建てるときにはそういったものも同時並行で一緒に完成するというイメージのスケジュールです。
 
【石川委員】その10年後20年後という話で、その間のDXの進歩を考えたときに、どうせ現地に行かなくてモニターで見るのなら、もう自分の研究室とか会社の本社で見れた方がよいかと思うので、何か位置付け的には企業インキュベーションセンターとか、企業の現地オフィスが入れるような、あるいは大学のサテライトキャンパスになるとか、国際会議場になるとか、何かそういうような位置付けとしてもあわせて検討していただくとよいかと思いました。
 
【奥課長】おっしゃるとおりで、複合拠点は正に複合的な機能を持つ拠点だと思っていまして、いわゆる産業界であるとかアカデミアとか、連携・協力するコンソーシアムのインキュベーションのための場作りというのが一つ。それと、「もんじゅ」のサイトにわざわざ行かなくても利用実験ができるような、実験的な設備を設ける。もう一つは大学です。今回京都大学が主で実験装置群を検討いただいていますが、京都大学のサテライトキャンパスみたいなものがあそこに来ていただけると有り難いのではないかというような地元の要望もありまして、そうしたところを総合的に考えながら今後検討していきたいというところです。自治体の方からも複合施設あるいはその利用促進のためのロードマップをある程度引いてくれという要望もありまして、いつまでにどういうものができるのかというのを、ここの中でもお示ししながら検討していきたいと考えております。
 
【石川委員】よろしくお願いいたします。
 
【寺井主査】ありがとうございます。非常に重要な視点だと思いますので、ぜひその検討もお願いいたします。その他いかがでしょうか。松浦委員、どうぞ。
 
【松浦委員】先ほど全体の新試験研究炉の建設・運転まで非常に長い時間が掛かる可能性があるということをお話しいただきました。教えていただきたいのですけれども、研究炉の設計や建設・運転と同時に、現地では「もんじゅ」の廃炉というのを進めていかれると思うのですが、「もんじゅ」の廃炉の進捗と関係なく研究炉の建設が独立して進んでいくのか、どこかクリティカルになるような、つながっているようなところがあるのか、そういうようなのがあるか教えていただければと思います。
 
【寺井主査】ありがとうございます。こちらは和田室長からよろしいですか。
 
【和田室長】私が答えられる範囲で答えますと、「もんじゅ」サイトなので建設は建設、廃止措置は廃止措置で進んでいきます。当然ながら工程がぶつからないようにということも考慮しなければいけませんので、同じ機構の中ですので情報共有して進めます。今年度「もんじゅ」の駐車場でボーリングをやってございますが、候補地Bになりますと当然ながら隣接しますので、道路等も共有したりしますので、廃止措置に影響がないように進めるということで現在「もんじゅ」の中でも相談をしているという状況です。
 
【寺井主査】ありがとうございます。松浦委員、いかがですか。
 
【松浦委員】わかりました。ありがとうございます。
 
【寺井主査】機構の中でうまく連携を保ちながら調整していただければと思いますので、よろしくお願いします。その他いかがでしょうか。よろしいでしょうか? また時間が少し超過してしまいましたので、それではこれで議題2は終了させていただきます。ありがとうございました。引き続き御検討のほどよろしくお願いいたします。それでは、次に議題3に移りたいと思います。議題3は「JRR-3における中性子利用の現状」です。こちらも原子力機構様より御説明をお願いいたします。
 
【武田専門官】ありがとうございます。日本原子力研究開発機構の武田です。私は播磨のSPring-8と、今日も話題になっていますJRR-3で研究活動を進めている物質科学研究センターに所属しております。時間が結構なくなってしまっているので、急ぎ足でご説明いたします。
 
【寺井主査】よろしくお願いします。
 
【武田専門官】頁番号は右下にございます。1頁目です。JRR-3は私が勤務している茨城県東海村の原子力科学研究所の中にあります。この施設の特徴として、この敷地の中に定常中性子源と、国際的に最大強度を誇るJ-PARCというもう一つの実験施設があるというのが大きな特徴になっていまして、これというのは諸外国のものと比べましても、この近距離で二つの中性子源があるというのは他に類を見ないものです。
 2頁目。3号炉の概略ですが、先ほどからお話がありましたけれども、初臨界が昭和37年ということで、昨年還暦を迎えています。初臨界を迎えてから原子力の黎明期を支える多くの研究に活用したのですが、その後の海外の動向であるとか、研究者、利用者の方のニーズに応えるために、1980年の後半に原子炉の本体を全て置き換えるという大工事をしまして、1991年に2回目の臨界を迎えています。ですので、建屋等は60年を超えていますが、原子炉としては先ほどの東日本大震災の後に新規制基準対応で止まった期間を入れても60年は経っていないということです。止まっている期間は別にしましても年間170日ぐらい運転していまして、利用者の方に多く使っていただいています。JRR-3では半分の装置を大学の先生方が実施しているので、研究成果の多くも大学の先生方に出していただいていますので、今日はあくまでも原子力機構の武田の見解として述べさせていただきます。
 次の3頁目なのですが、これはJRR-3の国内外における位置付けです。これはIAEAが公開している発電用を除いた試験研究炉のデータベースになります。これを見ますと今運転中が223という数字が出てきまして、研究炉も用途が多岐にわたっていますので、私の専門である中性子ビーム利用ができるという研究炉は、検索しますと45ぐらい。改造後のJRR-3は熱出力が20 MWとなっておりまして、その熱出力だけ比べると、20 MWを超える原子炉というのは世界中には9基しかありません。左の方にアジア・オセアニア地区の原子炉、下に欧米諸国の原子炉を書いていますが、見ていただくと分かるように中国では60 MW、韓国では30 MW、インドネシアには30 MWの炉があります。
 ただ、そういう意味では熱出力で見るとJRR-3はトップクラスではないのですが、やはり研究炉というのはそこからどんな研究成果が出てくるかというのが重要になります。4頁目のグラフは、私の方で、縦軸を発表論文数、横軸を年次として、JRR-3を含む著名な海外の施設の論文数の推移を表したものです。JRR-3が立ち上がってから年200近くまで達してからまた下がっていったというのは、震災の影響もあったということです。左上に表がございますが、やはり熱出力だけではなくて装置の台数であるとか、年間何日使えるのかというのも成果創出には関係あると思っています。これはあくまでも指標ですが、論文数を熱出力と装置台数と利用可能日数で割って規格化したものを効率として表の一番右に書いています。これを見ていただくと、効率が大きい方が良いのですが、熱出力が大きいからといって必ずしも効率が大きいとは限らないということがわかります。JRR-3を含む20 MWの炉は赤で書いています。ここを見るとJRR-3は決して劣っているわけではないと思っているのですが、まだまだ伸びしろがあると私自身は感じているところです。
 次の頁からは、中性子で何ができるのかということを書いてあるのですが、時間の関係もありますので、5頁は中性子のそういった優れた能力があるということを書いてあるだけなので、後でご覧いただければと思います。
 6頁目、JRR-3で使ってできることには2つあります。1つは炉心の近くの強度の強い中性子を使って、主に核反応をして、例えばRI製造を行ったり、というような、物質が変換されるというような利用をしているところがあります。もう1つは、方向性のそろった中性子を炉外に取り出しまして、ミクロな物質の構造であるとか機械構造物の内部の透視をしてみたりという、そういった大きな2つのことができる設備が整っております。
 次に7頁に行きますと、まずは中性子照射利用の例をご説明します。これは照射利用の概要なのですが、左上に原子炉の模式図があって、左下の図は、炉頂までプールの中に沈めますので、水面の上から炉頂を見たところですが、四角いところが制御部になっているので、わかりにくいのですが真ん中にドーナツ型の丸いものがあります。他にも丸いものがあるのですが、ここが垂直照射設備といっているもので、この穴のところに、右上の写真にありますような照射キャプセルであるとか材料照射キャプセルといったものを炉内に挿入して照射します。右下のグラフは和田の資料にも出ていたと思うのですが、横軸に熱中性子、縦軸に高速中性子をプロットしたもので、JRR-3は赤い囲みの中で左下の方にいるのですが、1018という単位の中での動きですので、我々としては海外の試験研究炉とも遜色のない中性子照射が可能であると自己評価をしているところです。
 8頁目ですが、先ほどドーナツ型と言ったところのJRR-3の垂直照射設備ですが、実績として約100個の材料照射キャプセルの照射実験をしています。新たな取組としては、原子炉圧力容器の長期運転時に関する中性子照射試験を可能にするために、原子炉の運転中の温度変化を精密に模擬するようなシステムを今導入していまして、昨年末にそれが完了して、これからそこに取り組んでいくということになっております。
 9頁目は、医療用RIの製造の実績です。これは大きな外科的な処置が要りませんので、治療後も患者さんの生活の質の大幅な向上を見込めるというものでありますが、こちらの実績としては金198グレイン、イリジウム192の線源というものも作っております。数字は小さいのですが金グレインにつきましては隔週50個で年約700個。イリジウムに関しては48個。これは医療用RIの実績として実際に供給しているということです。
 また、10頁ですが、これは奥課長の最初の御説明の中にも出てきたモリブデン99の製造ですので割愛します。
 次に、中性子ビームの利用例に移ります。
 11頁はJRR-3の平面図になります。左側の丸い建物の中心に原子炉があります。そこから右の方に実験室がありまして、炉心の周りにも実験装置が並んでいるのですが、右側に炉心から中性子を運んでいく中性子導管というパイプのようなものがありまして、それに沿っていたくさんの装置が設置されています。その装置は今28台ぐらいあるのですが、その中の約半分は私ども原子力機構が保有しておりまして、残りの半分は大学さんが保有して研究活動であるとか教育活動に使っているというのが今の実態です。
 12頁。JRR-3では学術的利用も産業利用もやっているということで、ここには産業利用の例を4つ出していますが、左上は中性子の優れた透過力を利用したエンジンのレントゲン写真ですが、これは実際には動かした状態で潤滑油が動いているところを観測することに成功しています。右上は、水素脆性を引き起こす、水素が鉄鋼材料中にどのように分布しているかというのを中性子小角散乱という手法で明らかにしています。左下は、中性子を使った元素分析法でありますとか、ガンマ線分析を使いまして、玉ねぎに含まれる元素を分析して、佐賀県産か北海道産かを見分けることができました。右下は、中性子が水素との関連性が非常に強いという特徴を利用しまして、これはエイズの発症を止める阻害剤がどのように作用して阻害するのか、発症を止めるのかというものの機構を解明したという例になります。
 13頁は学術成果例です。これは運転再開後に出てきた学術成果からいくつか取り上げていますが、これは後ほど御興味があった場合に質問いただくということで、このような成果がこれだけでなく出ているということを示すものです。
 次に14頁、利用実績です。これは利用年度に対して延べ利用日数というものを棒グラフで示しています。青いところは大学さんが設置した装置、黄色のところが原子力機構の装置です。装置が半々ぐらいですので、利用日数についても半々ぐらいです。その中で、我々原子力機構では産業界の方にもご利用いただいていますので、そこの部分を産業利用延べ日数ということで赤い折れ線で示しています。初期の頃はほとんど利用がなかったのですが、15年ぐらいから伸びているのは、これは文科省さんの方で、トライアル(お試し実験)をするという推進プログラムを立ち上げていただきまして、後ほどご説明しますが企業の方にも興味を持っていただき、このように利用が右肩上がりで伸びています。平成22年度の終わりに東日本大震災の影響で炉が10年近く止まってしまったことによって利用日数は当然ゼロになっています。一昨年度に新規制基準プラス耐震補強を経て運転再開を果たし、利用がほぼ戻りつつあるところです。産業利用につきましてはもう少しというところはありますが、今年度は増えているという傾向があります。
 15頁目、これは大学さんを含まない原子力機構の装置の利用枠の分類です。利用日数で整理しますと、実際に行われなかった実験等もありますので、これは申請書の申請ベースの日数の内訳を書いています。左上が利用枠分類で、いろいろな利用枠があるのですが、原子力機構が使っているのは左上にある茶色い部分の装置担当者、それから原子力機構独自研究と、あと共同研究を含めて約全体の3分の1を使っていまして、残りは外部の方に使っていただいています。
 外部の方に使っていただくときにいくつかの利用枠があるのですが、大きく分けて成果占有と成果非占有。知財法の観点から成果の公開を義務とせず公開するかしないかは利用者の御判断に任せるということでの利用枠と、原則として成果は公開してくださいという枠があります。若干、成果占有という知財保護の重みが多いような利用形態が大きくなっていますが、ほぼ半々ぐらいです。右に示したのは申請書に書かれた利用分野ですが、こちらに示すように非常に多岐にわたり利用していただいていることが分かると思います。
 16頁目、これは人材育成を進める観点で大学のことを書いております。大学さんが設置した装置は、東京大学物性研究所さんが窓口となって、全国大学共同利用という制度の中で、全国の先生方、学生さんにこの円グラフに示すような様々な分野で使っていただいています。これは運転再開後の利用状況ですが、この共同利用は左側の年表に示したように1960年にJRR-3の前身であるJRR-2が運転開始した頃から非常に長いプログラムがありまして、累計で下に書きましたように学術論文が2,000報以上、博士・修士論文は重複はもちろんあるのですが317報の学位論文が出ていまして、学位の授与にも貢献しているということがわかります。
 17頁、これは研究成果の指標になりますが、JRR-3から出た論文数の推移を棒グラフで示しています。2度目の臨界の改造後に立ち上がって徐々に論文数が増えていって、でこぼこあるのですが大体150報ぐらいで推移していって、大震災の影響で止まって論文数は徐々に減っていったという形です。今は運転再開を果たしましたので、また1992年当時のように運転再開後の論文数がどんどん伸びているというような状況になっています。
 次に18頁、産業利用の実績です。先ほど成果占有の話をしましたが、知財法の観点から、なかなか我々の方にも出せないところがあります。これは先ほど企業さんの利用が伸びた一つの要因としてトライアル制度を使うという形を説明しましたが、これは文科省さんの平成18年~23年度に立ち上げていただいた中性子利用技術移転推進プログラムというものがあります。これで無料でお試しで使っていただいたということです。これは報告書が出ています。その報告書の中に、これは当時の会社の名前になっていますが、挙げさせていただきます。ご覧になっていただくと非常に多くの会社、多くの分野で、次の頁に続くのですが、国研や公設試験場といわれるような方々に使っていただいていて、これが冒頭にご説明しましたJ-PARCで行われている産業利用であるとか、JRR-3で徐々に始めている産業利用につながっているということで、残りのプログラム非常に効率良く行うことができていると私たちとしては感じているところです。
 20頁目、そんな3号炉にも課題がないわけではないのです。先ほどから申し上げていますが震災後10年近く止まっていましたので、その間に我々は特に海外の研究炉を代替として使われていた方にアンケートを取っています。海外炉との比較の下で、運転再開した後にJRR-3をどうしたらよいかということを検討したいということで、ここに書かれているようなアンケートを取りました。
 21頁に行きますと、これは先ほどの頁のところには詳細な結果が出ていますが、21頁は私がそれを要約したものです。海外炉の利点として挙げているのは、中性子強度がJRR-3より強いという感想を述べる方。あと、学術利用(成果公開)であれば無料であるということ。欠点としてはやはり大型の機器であるとか、御自身の移動についても国内移動より大変ですので、特に大型、特殊な環境を持っていくということは大変だということ。後は学生さんに自由な研究をさせることができないこと。あと挑戦的な課題に取り組むことがなかなか難しい、知財の流出が心配だという声が上がってきました。JRR-3は基本的には上記の利点・欠点の裏返しなのですが、海外炉の場合は専門スタッフがいますので、利用者支援が手厚いと感じる利用者の方もおられたというようなアンケート結果になっています。
 こういった声も後押しになりまして、我々や大学さんの方でも停止期間中に設備、装置の更新というのをできる限りやってきたというのが22頁です。
 22頁は原子力機構側が行ったものでありまして、例えば中性子を炉心から実験室へ導く中性子導管というのがあるのですが、それを入れ替えたことで中性子強度が3倍以上になったということです。
 あと、大学さんの方で行っていただいたことは23頁で、AGNESという左の装置でありますと、装置を改良することによって強度が7.7倍。HERという装置では50倍以上の測定効率に達することができたといったことがあります。
 JRR-3の課題として24頁に書かせていただいていますが、大きく4つあると思います。長期停止の期間に人材流出が起きて新たに人材を育成できなかったということがあったり、原子炉施設に固有のリスクがあったり、安全確保のために予算のリソースが割かれていて、実験装置の方になかなかお金が来ないであったり、施設供用制度は先ほど言いましたように窓口でいくつかあって、その利用者の方に必ずしも使い勝手が良いということにはなっていないかというふうに考えています。
 そんなことをここに書いたときに私の中で頭に浮かんだものが、25頁にある、原子力機構を発足するときにあたって新しい法人がどういったことを期待されるかということです。まさに赤で書いたところがJRR-3に求められるところかと思うのですが、我々も別にこれを何もしていないわけではなくて、施設供用の基本方針というものを出させていただいて、今ここに向かって我々としてもいろんな整理を進めているという状況になります。
 26頁に行きまして、最後はJRR-3への期待ということで終わらせていただきたいのですが、やはり国内唯一の大規模中性子源が動いておりますので、その貴重な研究基盤としての役割があるのだろうと思っています。今回話題になっています2.3.ですが、新試験研究炉ができても、やはりそこで活躍する研究者、技術者がおられなければ生かされませんので、そういった方たちが実地で育成できる重要な研究基盤であると考えておりますし、これもお話しいただきましたが、やはり最新の装置を設置したいというのは我々も同じ思いですので、そういったものの装置開発であるとか、JRR-3を供して試験をして、そういうものを結び付けるような役割を果たせるのではないかというふうに思っています。ただ、2.3.は我々が思っているだけではやはり動きませんので、新試験研究炉に深く関与していただいている京大さんであるとか、JRR-3で今人材育成等を行っていただいている物性研さんと思いを共通にして、強い連携関係の中で人材交流等を図りながら進めていく必要があると考えております。少し急ぎ足になってしまいましたが、以上です。
 
【寺井主査】どうもありがとうございました。時間もない中で簡潔に明解にご説明いただきましてありがとうございました。それでは、ただ今の御説明につきまして御質問、御意見等をお願いいたします。和田委員、どうぞ。
 
【和田委員】和田でございます。2点質問があるのですが、10頁の医療用RI製造のアクションプランはスケジュールどおりに進んでいらっしゃいますかというのが1つ。
 もう一点、24頁の課題のところで、中性子利用を支える人材の流出というご説明がありましたが、こちらは企業とか研究機関とか、どういうところに流出されているのか、分かる範囲で結構ですので教えていただけますでしょうか。
 
【武田専門官】アクションプランの取組ですが、現在のところ予定よりも進んでいます。それから、人材流出の観点ですが、我々は研究者であり、3号炉が動いていれば3号炉でいろいろな実験したいという研究者は、私もそうですが、そういう者が10年止まっていると、このまま実験できないのにここにいるのかという観点からですね、やはり大学に移って研究成果を挙げられているような方が、大学で拠点を構えていただいて、そこからまた利用に戻ってくるという面もあります。必ずしも悪いことではないです。ただ、現場の人間が減ってしまうというところがあります。
 
【和田委員】わかりました。
 
【寺井主査】ありがとうございました。最初の御質問に関連してなのですが、モリブデン99はかなり今注目されていて、内閣府等でも結構推しているという話になっていると思うのですが、実際にこれまではJRR-3でRI製造をやってこられてきたと思うのですが、密封線源が多かったと思います。モリブデン99はそうではなくて非密封の話なので、そういう意味でターゲットの準備とか、あと照射した後の試料の取扱いとか、製薬会社等と協力と書いてありますが、薬剤を作るところとか、いろいろやらないといけないことがいっぱいあって、付帯設備が要ると思うのですが、その辺りも計画には入っていて、実行中という理解でよろしいですか?
 
【和田室長】私の方から回答させていただくと、アクションプランに基づきましてモリブデン99をJRR-3で進めております。それで、どこまでを機構の装置を使ってやるか、当然ながら医薬メーカーさんとの絡みもありますので、三酸化モリブデン、そしてターゲットはモリブデン99に変えるわけですが、そのまま固体としてメーカーさんにお渡しするのか、それとも、三酸化モリブデンを苛性ソーダで溶かして、液体でメーカーさんにお渡しするのかという、そういったところもどこまでを機構でやるかというところは、まだ調整を今やっているところがありますので、これからの調整というところになります。
 
【寺井主査】わかりました。いろいろと密封線源と違って非密封は大変なところがいっぱいあるので、その辺りのところは実際やっておられると思うのですが、しっかりお願いしたいと思います。ありがとうございます。それでは、他にいかがでしょうか。石川委員、どうぞ。
 
【石川委員】海外からの利用というのはどれくらいあるのですか。
 
【武田専門官】海外の利用は、大学さんはやはり大学同士としての利用というのがあるのですが、そんなに多くはないです。例えば先ほどご説明したJ-PARCは国際供用施設ということをうたっていますので、非常に海外のボリュームが多いのですが、3号炉はこれからまたそういうことをやっていかなければいけないと思うのですが、現状ではそんなに多くないです。
 
【石川委員】海外の利用を増やすとなると、海外の研究者にとってはこの海外炉の欠点と書かれているところはJRR-3の欠点になるのですよね?
 
【武田専門官】逆にそういうことになります。
 
【石川委員】大型の機器とかは抱えられないと思うのですが、専門スタッフがいて支援が手厚いとかが結構こういう海外利用を増やしていく上では重要になってくるのではないかと思います。
 
【武田専門官】そうですね。利用を増やすという観点では、やはり海外ですと例えば試料を測る場合に我々が試料の方を冷やすとか、温度上げるとか、磁場をかけるとか、特殊な装置が要るのですが、そういったものも我々だと研究者自らがいろいろやるわけですが、海外施設に行くとそういうことをやってくださる専門スタッフがいますので、そこで研究者は研究アドバイザーと一緒に議論したりということで時間を使える。そういう姿を見ていて、やはり日本ではJRR-3では研究している人が働いているという印象を持たれているのだろうなと思います。
 
【石川委員】そこは改善できるのかなと感じました。
 
【武田専門官】はい。ぜひそこは改善したいということもあります。ただ働き方改革というのもございますし、安全確保にも非常に重要なので、自分に聞きながらしっかり休んでもらいながら。我々管理職側も、実験でミスが出ないよう、スタッフはしっかり休ませた上で、無駄にしないようにという観点で、DXまで行かないのですが、ある程度いろいろ自動化を進めて、人がそこにいなくてもいいような形に今どんどん移行しているところです。
 
【寺井主査】ありがとうございます。その他いかがでしょうか。よろしいですか? 1件だけ、8頁にJRR-3の垂直照射設備があって、材料の照射もやっていますというお話で、確かに実績はそうだと思うのですが、今後少し圧力容器鋼等の長期運転をやれるようにしますということなのですが、例えば高温高圧水環境等の話とかを考えておられるのかわからないのですが、そういう話とか、それから、これまでJMTRでやってきたようなところをどこまでこれで肩代わりできるのか、その辺りの見込みについてはいかがでしょうか。
 
【和田室長】和田の方からお答えしますと、現在この8頁の下のところに令和5年12月に更新が完了と書かれていますが、実はJMTRの方で制御設備を持っていたものをJRR-3の方で引き取りまして、JMTRさんと一緒になってこういう照射設備を整備しているといったような状況でして、その上の改造内容のところに書いてありますが、ヒーターで温度制御といったところで、高温高圧の状態にしてできるといったような設備になっています。震災前にも、当然ながら同じような高温高圧、400℃ぐらいまで上げて照射することを3年間で1本ずつやった実績もありますので、ある程度技術的にはできるというのはもう確認を取っているというような状況でございます。
 
【寺井主査】わかりました。ありがとうございます。そこも結構重要かと思いまして今後の革新軽水炉、まず次の革新炉としては大型の革新軽水炉、特に燃料の長寿命化とか、あるいは高燃焼度化と、やはりある程度その高温高圧水環境での長時間照射といいますかハイフルエンス照射が必要なのかなと思うのです。そういう意味でJMTRが期待されていたのだけれども、それが廃止措置ということで、ある程度の期間、今後どうするかは別にして、その肩代わりできるような仕組みというのは絶対必要かと。その辺につきましても十分ご検討いただければと思います。
 
【和田室長】ありがとうございます。ただ、一方で震災後から10年間ぐらい止まっていたと。こういったJMTRも廃止措置も結構長く、照射のノウハウを持っている人材というのはやはり少なくなってきて、当然ながらJRR-3はビームを主としたところなので、照射がメインではなかったので、やはり照射に関わるノウハウを持った人材というのがなかなかいないということで、これからまず確保してから育成してくるという、そういったところになろうかと思います。
 
【寺井主査】ありがとうございます。そこも極めて重要なポイントかと思います。よろしくお願いします。その他いかがでしょうか。よろしいでしょうか。時間がもう超過していますので、それでは議題3につきましてはこれで終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。
 
【武田専門官】ありがとうございました。
 
【寺井主査】それでは、議題4は「総合討論」ということで、30分間時間を頂いていますが、もう12時になってしまいましたので、ただ、重要なポイントかと思いますので少し延長させていただいてよろしいでしょうか。それでは資料4、総合討論でございます。今後の当面の課題ということで、事務局の方からご説明いただいた後、情報交換をしていただきたいと思いますので、それでは文科省さんから御説明をお願いします。
 
【奥課長】ありがとうございます。ごく簡潔にやらせていただきたいと思います。資料の4をご覧いただければと思います。これはあくまで今後の議論のたたき台として事務局としてまとめさせていただいた資料になります。
 2頁目のところは、これまで和田さんの方からも説明があった背景・経緯のところを書かしていただいているものですので、ここは省略をさせていただきます。
 3頁目からは当面の課題としてですが、まず5つの全体項目を掲げています。1つ目は、詳細設計を着実に進めていくということで、この詳細設計は令和6年中に設置許可の申請の時期を見通すとありますが、ここは全体計画について適切かどうかというのをきちんと御確認を頂ければと思います。
 2つ目は設置場所で、今は3つ候補地がありますが、この候補地それぞれについて今ボーリング調査をやっています。ここは技術的に総合的に評価をした上で、この設置場所の適切性、先ほど「もんじゅ」との廃止措置工程とのバッティングみたいな話もありましたが、こうしたものに支障がないかどうかも含めて御確認を頂ければと思っています。
 3つ目が実験装置群の整備になります。これは次回以降、実験装置の具体的な中身についてまた別途プレゼンをしていただく予定になっていますので、そちらがアカデミアあるいは産業界にとって利用しやすい実験装置群かどうか、あるいは最先端の実験装置群になっているのかどうか、ここら辺をぜひご議論いただければと思っています。
 4つ目ですが、こちらは極めて重要なのですが、実際に建設を進めるにあたって予算の合計金額というのが適正かどうかというのが極めて大事になってきます。今後は三菱重工が主契約企業になりましたが、そこと共同で予算の推計、全体の工程というのを示していただくことになっていますが、ここの適正性についてきちんと確認を頂きたいと思います。
 5つ目ですが、先ほど複合拠点の話もありました。実際にその供用利用に供するための利用の促進体制であるとか複合拠点の在り方、あるいはその人材育成の在り方というのが重要な課題であろうと思っていますので、こうした研究・教育の基盤としてきちんと利活用しやすいような環境整備というのをぜひご議論いただきたいと思っています。
 5頁目からがJRR-3になります。こちらは背景・経緯のところは先ほど武田さんから御説明を頂いたとおりです。JRR-3については今後の課題として4つ挙げています。まず、必要な運転体制。先ほどの支援体制という話がありましたが、運転体制の適正性、それと高経年化対策の在り方というのをご議論いただきたいと思います。
 2つ目が医療用のRIです。モリブデン99はアクションプランに沿って着実に進んでいるということですが、製薬企業とともに実際に製剤化するための必要な工程というのをぜひ御確認を頂きたいと思っています。
 3つ目、中性子利用ですが、JRR-3のみならずJ-PARCであるとか新試験研究炉、あるいは他の中性子源というのも多々ありますので、こうしたところの相互利用、連携協力の在り方というのをぜひご議論いただきたいと思っています。
 4つ目が、新試験研究の技術的な知見の提供とありますが、先ほど武田さんの方の説明の中にあったように、実験装置群のある種テストベッドとしてこのJRR-3の活用というのは非常に大事だと思っておりますので、そうした技術の展開・利点というのもぜひご議論いただければというふうに思います。私からは以上です。
 
【寺井主査】どうもありがとうございました。奥課長、限られた時間で極めて簡潔に今後の議論の要点をご説明いただきましてありがとうございました。中身の詳細は次回以降また具体的な資料を頂いて、それで議論を差し上げますが、この時点で何かこの論点が抜けているとか、ここは大事だというようなことあれば、ぜひご指摘いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。小澤委員、どうぞ。
 
【小澤委員】小澤です。当面の課題はたくさんあるのですが、当事者がしっかりとやっていればよいものということが何か含まれているような気がするので、どういう課題があるのかというのをきちんとテーブルに載せて、そこでこの委員会で議論すべきことを明確にすればよいかと思いました。以上です。
 
【寺井主査】ありがとうございます。多分網羅的に全部出ているので、ここで何を議論すべきかというところをもう少し明確にしていただければということですが、奥課長、いかがですか。
 
【奥課長】実施主体としてJAEAがあり、主契約企業として三菱重工があり、ここはきちんと実施をするということが最優先ですが、ここの進捗がきちんとしているのかどうかというのをある種第三者的に評価してもらうというのも非常に重要な役割だと思っているますので、その詳細設計の具体的な中身というのをこちらに出させていただいて、こちらでぜひ御確認を頂ければと思います。それ以外に、特に利用の在り方とか、他の施設との相互利用の在り方というのは、幅広い観点からアカデミアや産業界の方からご意見いただきたいテーマでもありますので、特に3番目、4番目、5番目の辺りを集中的に御意見等を頂ければ有り難いなと思います。
 
【寺井主査】ありがとうございます。評価ということもここに入ってくるということですので、よろしくお願いします。黒﨑委員、どうぞ。
 
【黒﨑主査代理】ありがとうございます。一つ追加という話で言いますと、我々京都大学の複合原子力科学研究所はまだKURを保有していて、これは今絶賛運転中ということになっております。同じようにその中性子ビーム利用の試験研究炉ということで運転しているのですが、2026年の5月をめどに運転を停止するということがありまして、KURが運転停止した後、新試験研究炉までどうつなげていくかというところで、やはりこのJRR-3というのが非常に重要になると我々は認識しておりまして、その辺りのことももしよろしければどこかで言及していただければと思いました。以上です。
 
【寺井主査】ありがとうございます。KURから新試験研究炉に至るまでのロードマップというのですかね、JRR-3も含めてどういう形で利用をトランジェントで動かしていくかという、多分そういう話かと思います。
 
【黒﨑主査代理】おっしゃるとおりです。
 
【寺井主査】ぜひその点も議論の対象にしていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いします。その他いかがでしょうか。よろしいでしょうか?
 特に手が挙がっておりませんようですので、またこれの細かい具体的な中身は次回以降にいたしますので、そこでまた改めてご議論いただきたいと思います。ありがとうございました。本日予定していました議事は以上でございますが、その他に御意見等ございますでしょうか。もしなければ事務局の方から連絡事項等をお願いいたします。
 
【髙倉課長補佐(事務局)】ありがとうございました。最後に事務局から今後の予定の御連絡をさせていただきます。資料5をご覧ください。この作業部会は新試験研究炉及び「常陽」の燃料製造を中心に、複数回の議論を予定しております。7月の取りまとめを目指して1カ月に1度のペースで開催を予定しております。次回の作業部会は3月7日14時から開催予定になっています。テーマは「常陽」の運転再開に向けた取組についてです。本日の議事録につきましては、でき次第ご確認した後、メールにてお送りさせていただきます。文部科学省のホームページに掲載させていただきますので、ご覧ください。以上になります。
 
【寺井主査】どうもありがとうございました。委員の先生方から何か御発言はございますか? よろしいでしょうか。それでは、これで第18回の原子力研究開発・基盤・人材作業部会を終了いたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

 

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