原子力科学技術委員会 原子力研究開発・基盤・人材作業部会 群分離・核変換技術評価タスクフォース(第1回) 議事録

1.日時

令和3年7月30日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

新型コロナウィルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 群分離・核変換技術評価タスクフォースの設置について
  2. 群分離・核変換技術のこれまでの経緯・研究開発状況について
  3. その他

4.出席者

委員

中島主査
小山主査代理
小竹委員
竹下委員
辻本委員
長谷川委員
藤田委員
山本委員
 

文部科学省

松浦 原子力課長
鈴木 原子力課室長(人材・研究基盤担当)

オブザーバー

西原 健司 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 分離変換技術開発ディビジョン 核変換システム開発グループ グループリーダー
松村 達郎 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 分離変換技術開発ディビジョン 副ディビジョン長
竹内 正行 日本原子力研究開発機構 燃料サイクル設計室 室長
前川 藤夫 日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター 核変換ディビジョン ディビジョン長
高野 公秀 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 燃料・材料工学ディビジョン 燃料高温科学研究グループ グループリーダー
林 博和 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 分離変換技術開発ディビジョン MA燃料サイクル技術開発グループ グループリーダー

5.議事録

科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会
原子力科学技術委員会 原子力研究開発・基盤・人材作業部会
群分離・核変換技術評価タスクフォース(第1回)
令和3年7月30日


【鈴木原子力課室長】それでは、定刻になりましたので、第1回群分離・核変換技術評価タスクフォースを開催します。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からオンラインにて開催しております。本タスクフォースは、科学技術学術審議会へ設置されてから初の開催となりますので、冒頭、事務局にて進めさせていただければと思います。
 まず、オンライン開催に際しましての留意事項を御説明いたします。
 
[オンライン開催に際しての留意事項について事務局より説明]

 以上が本日の進行に当たっての留意事項になります。
 それでは、冒頭にお話ししましたとおり本日が第1回となりますので、まず原子力課長の松浦より皆様に御挨拶いたします。
【松浦原子力課長】  皆様おはようございます。原子力課長の松浦です。
 タスクフォースの開催に先立ちまして、一言御挨拶申し上げます。
 この群分離・核変換技術、主にADS技術については、この原子力科学技術委員会の下に設置されております群分離・核変換技術評価作業部会において検討を行ってきております。平成25年に論点を取りまとめ、その論点取りまとめに基づいて、原子力機構はこれまで本分野の研究開発に当たってきました。その内容は、機構の中長期目標、そして計画に今盛り込まれています。現在の中長期目標期間は、今年度で7年間が終了します。今、来年度の中長期目標、計画策定の検討を行っておりますが、それに当たりまして、ADS技術の再評価を行い、そして今後の進め方についていろいろ検討していただく必要があるということでこのタスクフォースを設置しております。
 放射性廃棄物の減容、有害度の低減を図ることについては、原子力の社会需要のためにも大変重要な取組でありまして、ADS技術は将来のオプションの一つであるということについては変わりないと考えております。一方で平成25年度中間取りまとめからはかなり時間が経過しております。J-PARCの核変換施設の整備を含め、技術開発の進め方については、他分野での技術の進展等を踏まえ、見直しの議論をすべき時期であると感じております。
 また、原子力機構の新たな中長期目標、計画の策定に当たっては、この原子力科学技術委員会の人材作業部会の議論においては、大学や企業と共同で研究開発を進めるプラットフォームの役割を機構が担うことが求められております。今後のADS技術の開発に当たりましては、初期の段階から産業界やアカデミアと共同で進めるべきだと感じております。こういった観点からも、今後の進め方について皆様方の御意見を賜れればと思っております。
 また、このADS、群分離・核変換技術そのものは、エネルギー基本計画においても定められております。皆様御案内のとおり、現在、経済産業省の総合エネルギー調査会におきまして次期エネルギー基本計画の検討が進められております。先週21日には次期計画の素案が示されておりまして、本日また開催される基本政策分科会においては、さらに前回の議論を踏まえた改定案が示されると聞いております。
 前回の素案を見ておりましても、基本的には書きぶりは現行のエネルギー基本計画と変わりません。そういう意味で、今の基本計画と同様に今後も高速炉や加速器を用いた各種変換技術の技術開発を進めるという方向性で次期も行くものと考えております。
 今回のタスクフォースは、秋頃に取りまとめをお願いしたいと考えておりまして、皆様方大変御多忙の中、申し訳ありませんけれども、秋頃までインテンシブな議論をしていただき、忌憚のない御意見や活発な議論をよろしくお願いしたいとに考えております。
 以上です。
【鈴木原子力課室長】 続きまして、本日の配付資料の確認をしたいと思います。
 委員の皆様及び傍聴の登録をされた方々宛てには、事前にメールで配付資料を送っております。会議中、遠隔会議システム上では資料を表示せずに進めたいと思いますので、各自のお手元にて資料を御確認いただければと思います。議事次第に配付資料一覧がございますので、議事次第を見ながら聞いていただければと思います。
 本日の議事については、議題1は群分離・核変換技術評価タスクフォースの設置についてとなっておりまして、これについては資料1-1、1-2を送付させていただいております。議題の2といたしまして、これまでの経緯、研究開発状況についてということで、資料2-1から2-5までを配付してございます。
 そのほか、参考資料1と2としまして、原子力科学技術委員会等の運営規則を配付しておりまして、これは議題1のところで少し触れたいと思います。参考資料3としまして、原子力システム研究開発事業の群分離・核変換技術開発の一覧を配布しておりますが、これは資料2-4の関係で、御参考としてお時間があればご覧いただければと思います。参考資料4、群分離・核変換技術に係る検討の経緯については、資料2-1、群分離・核変換技術に関するこれまでの経緯を補足するものとして、これもお時間があればご覧いただければと思います。
 本日の配付資料及び議事は今申し上げたとおりでございまして、時間は12時までを予定しております。
 続きまして、本タスクフォースの委員として御就任いただきました皆様について御紹介をいたします。資料1-1の上から順番に御紹介させていただければと思います。中島健委員でございます。
【中島主査】  中島です。よろしくお願いいたします。
【鈴木原子力課室長】  続きまして、小山正史委員でございます。
【小山主査代理】  小山でございます。よろしくお願いいたします。
【鈴木原子力課室長】  続きまして、小竹庄司委員でございます。
【小竹委員】  小竹でございます。よろしくお願いいたします。
【鈴木原子力課室長】  続きまして、竹下健二委員でございます。
【竹下委員】  竹下でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【鈴木原子力課室長】  続きまして、辻本和文委員でございます。
【辻本委員】  辻本です。よろしくお願いいたします。
【鈴木原子力課室長】  続きまして、長谷川晃委員でございます。
【長谷川委員】  長谷川です。よろしくお願いいたします。
【鈴木原子力課室長】  続きまして、藤田玲子委員でございます。
【藤田委員】  藤田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【鈴木原子力課室長】  続きまして、山本章夫委員でございます。
【山本委員】  山本です。よろしくお願いいたします。
【鈴木原子力課室長】  皆様、ありがとうございました。
 本日は8名の委員全員に御出席いただいております。
 また、本日は日本原子力開発機構より西原健司様、松村達郎様、こちらの2人についてはプレゼンターとして御参加いただいてございます。また、質疑応答に対応するため、竹内正行様、前川藤夫様、高野公秀様、林博和様にも原子力機構より御参加いただいてございます。
 また、本タスクフォースについては、親作業部会に当たる原子力研究開発・基盤・人材作業部会において委員の任命に関する手続が定められております。人材作業部会の運営規則第2条第3項に基づき、中島委員には、作業部会の主査からの指名を受けましてこのタスクフォースの主査を務めていただくことになりました。同じく第2条の第7項に基づきまして、中島主査より小山委員が主査代理に指名されてございます。
 主査をお引受けいただきました中島主査より、まず一言御挨拶いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【中島主査】  改めまして、おはようございます。
 主査を務めることになりました、京都大学の複合原子力科学研究所の中島でございます。
 私、今御紹介もありましたけれども、このタスクフォースの親委員会といいますか分科会であります原子力研究開発・基盤・人材作業部会のメンバーでもあるということでございまして、その前身であります原子力研究開発基盤作業部会でもメンバーでした。先ほど松浦課長から御紹介がありましたけれども、前回、平成二十五、六年の頃に行われたADSといいますか、群分離・核変換に対する議論にも参加させていただいて、報告の取りまとめ作業をさせていただいたという経緯から、今回、主査という大役をいただきました。ちゃんとまとめられるか、9月までにまとめてほしいという御要望でございましたので、当然私1人では何もできませんので、委員の皆様の御協力を得ながら、前回の議論から多分大分年数がたっておりまして、いろいろな状況も変化しておりますので、そういったところもしっかりと考えた上で、今回また議論を取りまとめていきたいと思います。それがうまいこと原子力機構さんの今後の中長期の目標、計画に反映することができれば良いと思っておりますので、何とぞ御協力のほどよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【鈴木原子力課室長】  ありがとうございました。
 それでは、ここからの進行は中島主査にお願いいたします。
【中島主査】  それでは、早速ではございますが、ここから議事に入らせていただきます。
 多分各委員の皆さんもいろいろ自己紹介を兼ねてお話ししたいと思いますが、後でお時間を設けてございますので、そちらでお願いしたいと思います。
 まず、議題の1として、群分離・核変換技術評価タスクフォースの設置について、事務局から説明をお願いいたします。
【鈴木原子力課室長】  本タスクフォースの設置及び運営規則について、資料1-2、1-3に基づき説明をさせていただければと思います。
 まず、資料1-2を御覧ください。
 本タスクフォースの設置については、5月28日の人材作業部会で設置が決まってございます。趣旨のところにありますように、これまで原子力科学技術委員会には群分離・核変換作業部会が置かれておりまして、そこで検討を行ってまいりました。平成25年11月には、群分離・核変換技術評価作業部会の中間的な取りまとめを行っております。ここから少し時間がたち、令和4年度から新たな原子力機構の中長期目標、計画を策定するということも踏まえ、今回、再度内容について検討するため、タスクフォースが設置されたものでございます。
 群分離・核変換技術作業部会の審議内容については、現在は人材作業部会で実施することになっておりますが、専門的な内容ですので、タスクフォースを設置して集中的に議論をいただくことが適切であろうということで、今回タスクフォースを設置しました。
 調査検討事項としましては、1番下に記載されてありますようにADS研究開発の国際動向と技術評価について、実証施設の在り方について、研究開発項目のリストアップについてとなっております。これらが設置目的等の説明になります。
 続きまして、資料1-3で運営規則について説明致します。
 運営規則は、参考資料1、原子力科学技術委員会の運営規則と同様であり、一般的な審議会等の運営規則だと思っていただければと思いますが、今回、本タスクフォースとしてこのやり方でいいということを御承認いただきたいと思ってございます。
 まず、最初の趣旨のところは、この運営規則の趣旨について記載しているものでございます。
 続きまして、第2条が議事になりまして、タスクフォースについては、委員の過半数の出席を求めるものとしており、本日は8名全員がそろっておりますので、会が成立しているということになります。
 続きまして、第3条、書面による審議ですが、必要に応じて書面による審議ができるということを記載してございます。
 第4条が会議の公開になってございまして、基本的に公開となっておりまして、本日の会議についても公開でございます。
 第5条が議事録でして、タスクフォースの会議は議事録を作成して、皆様にお諮りした上で公表するものとしてございます。本日の会についても、このように進めたいと思っております。
 附属資料として、ウェブを使った場合の進め方を指針として定めておりまして、これについてもほかの審議会と違いがあるものではありません。
 説明については、以上でございます。
 資料1-3は本委員会で決定するものですので、もし何かありましたら御意見をいただければと思います。事務局からは以上です。
【中島主査】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明につきまして何か御質問あるいは御意見があれば、挙手ということでお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 特に御意見がないようでございますので、それでは資料1-3の運営規則案というところは、事務局の案のとおりということで案を取らせていただいて、承認されたということにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、次の本題の議題2へ入りたいと思いますが、群分離・核変換技術のこれまでの経緯から研究開発状況についてでございます。まず最初に全体の進め方についてでございますけれども、資料2-1については事務局から説明の後に5分程度のQAを設けるということ。それから、残りの資料の2-2、2-3、2-4は、機構からまずは一通り三つまとめて説明をいただいた後に15分程度のQAを設けたいと思っております。そして、最後に資料2-5で御議論いただきたい論点を説明の後に、各委員から意見交換ということで、最初に全ての委員から名簿の順番に御意見をいただきます。そこで自己紹介も兼ねてということでございます。ですから、最初の2-1から2-4のところにつきましてはQAの時間を短めに取っておりますので、意見というよりは、できれば事実確認程度にとどめていただいて、御意見につきましては一番最後の資料2-5の後の議論の中で、この意見交換は40分程度ということで予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、まずは事務局から資料2-1のこれまでの経緯について御説明をお願いいたします。
【鈴木原子力課室長】  それでは、事務局より資料2-1を用いてこれまでの経緯について説明をいたします。
 先ほどから何回も出てきておりますけれども、群分離・核変換作業部会において平成25年、2013年に中間的な論点の取りまとめを行っておりまして、そこで一定の方針が示されてございます。具体的にどのような方針が示されたのかについて、資料1ページ目に中間取りまとめの概要を記載しており、これは中間取りまとめを作成したときに一緒に作成した概要になります。
 中間的な論点の取りまとめの概要の二つ目にあるように、群分離・核変換技術については、実験室レベルの段階から工学規模の段階に移行することが可能な研究開発段階にあるとしておりまして、J-PARCに核変換実験施設を整備することが期待されるということが記載されています。また、今後高速炉による核変換技術との相互評価であったり、核変換実験施設の実現性のチェックアンドレビューを行いながら研究開発を進めることとするということが記載されてございます。
 続きまして、2ページ目に参りまして、中間取りまとめで、ADS技術についてどのような考え方が示されたのかについて説明をさせていただければと思ってございます。
 まず、作業部会で2013年11月に中間的な論点を取りまとめた後に、2014年、15年と1回ずつ進捗状況のフォローアップをしておりまして、それぞれ見解を取りまとめております。
 中間取りまとめでのADS技術の考え方については、下に二つのポツを記載してあります。まず最初のポツですが、将来の様々な状況に柔軟に対応できる可能性を有しているものであると。そういったことから、高速増殖炉の研究開発と並行して研究開発を進める有望な技術選択肢であるとしておりまして、その上で、ADSを用いた核変換技術については工学規模での技術的成立性の確認に取り組むことが必要であると提言されております。
 今後については、まず我が国における原子力政策の方向性が明確になっていく段階で導入シナリオを検討するということと、この群分離・核変換技術を本格導入する段階で、ADSと高速炉利用の概念について技術的成立性と費用対効果を相互比較して、どうするのかを判断することが適切ではないかという提言になってございます。
 3ページ目に、施設整備について具体的にどのような施設を作るべきかを記載してございまして、まずADSターゲット施設、TEF-T施設として、大強度陽子ビームでの核破砕ターゲットの技術開発及び材料の研究開発を行う施設、TEF-Pとして、低出力で未臨界炉心の物理的特性探索とADSの運転制御経験蓄積を目指す施設を目指すという方向性が示されてございます。
 4ページ目に行きまして、文部科学省の委員会の前に原子力委員会が2009年に分離変換技術検討会の報告書をまとめております。その中では、高速炉、ADS両方の研究開発について検討しまして、その意義、課題等をまとめております。その中で、分離変換の導入効果についても検討しております。参考資料の4に詳細が載っておりますので、もしお時間があれば参考資料4を見ていただければと思います。
 分離変換技術を用いると、高レベル放射性廃棄物からマイナーアクチノイドを分離変換することによって、潜在的有害度の低減や地層処分場に対する要求の軽減、廃棄物処分体系の設計における自由度の増大といった利点があることが示されております。
 具体的には、下のかぎ括弧書きで記載されているようなことが記載されておりまして、例えば高レベル放射性廃棄物の有害度の低減にかかる年数がかなり短くなるといったことや、発熱量が発熱物質を分けることができるので、定置面積を低減できることが示されてございます。
 5ページ目に、原子力委員会が示した研究開発課題をお示ししてございます。これの進捗状況については、後ほど原子力機構から説明があると思ってございます。
 6ページ目に、分離変換技術。これまでどういった政策的な議論がなされてきたのかをリスト化しているものを示してございます。
 最後にはなりますが、7ページ目に、今、分離変換技術が政策的にどういった位置づけになっているのかをまとめております。エネルギー基本計画では、加速器を用いた各種変換など放射性廃棄物に長期に残留する放射線量を少なくし、放射性廃棄物の処理・処分の安全性を高める技術等の開発を推進するということが記載されておりますし、特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針では、最終処分の負担軽減等を図るため、長寿命核種の分離変換技術の研究開発について着実に推進すると記載されてございます。
 新しいエネルギー基本計画についても、先ほどの課長からの挨拶にもありましたように、同様の記述が入る方向で検討が進んでいると聞いております。
 文科省からの経緯の説明は以上になります。
【中島主査】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明につきまして、主に事実確認中心でお願いしたいと思いますが、御質問等ございましたらお願いいたします。小山委員、どうぞ。
【小山主査代理】  小山です。今の資料で、処分場の面積低減のところでは、ヨウ素などMA以外のFPの記載もあったのですけれども、このADSとALの目的は、基本的にはMAを対象としているということでよろしいでしょうか。
【鈴木原子力課室長】  今までの議論としまして、MA分離と核変換をまず最初にやるべきではないかということで、そちらの研究開発をまずは進めていくべきという議論が進んできたと思ってございます。
 FPについて、特段今回詳細に議論をするということではないと思っておりますが、ImPACTが実施されたことについては御紹介させていただきますし、今後どういった進め方をすべきかという点について御意見があればぜひいただければと思っております。
【小山主査代理】  理解しました。ありがとうございました。
【中島主査】  よろしいでしょうか。資料2-1については以上でございます。
 それでは、先ほど冒頭に申しましたように、次の資料のところは続けてやってもらって結構ですか。2-2、2-3、2-4ということで、まずは2-2について機構さんから御説明をお願いしたいと思います。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】  原子力機構、西原です。
 ADSを用いた核変換技術の研究開発状況ということで、資料2-2を説明します。
 2ページの6個の内容について説明します。
 早速ですけれども、3ページに行っていただいて、概要として、ADSを中心とした分離核変換システムというものの研究開発を行っています。これは、左下に示した図のように、軽水炉とか高速増殖炉からなる商用発電サイクルとは別に、核変換専用サイクルというものを用意する概念です。このことから、階層型と呼ばれます。
 核変換サイクルの中には、ADSのほかに燃料製造プロセスと燃料処理プロセスがあって、ADSと合わせて三つの研究開発について説明します。
 ADSの概念としては、鉛ビスマス冷却のADSが有力候補になっていて、これは右下の図に示すようなものです。上から加速器で加速された陽子ビームが入ってきて、ターゲットに入射されます。加速器の真空とターゲットを隔てる薄い板があって、これをビーム窓と呼びます。このビーム窓が大きな開発課題の一つです。ターゲットの周りにはMA燃料があって、そこで核変換が起こります。
 4ページをお願いします。
 先ほどありましたように、原子力委員会のチェックアンドレビューでは、ADSの研究開発に関してCR-1からCR-4までの四つの指摘がされました。
 CR-1は未臨界炉心の制御等の炉物理的課題を高い信頼度で解決することということで、それに対応してJ-PARCで核変換物理実験施設TEF-Pの建設許可を目指して研究開発を実施しています。また、既存の臨界実験装置を用いた実験等も行っています。
 CR-2として、鉛ビスマス冷却炉の設計及び安全性といったところが指摘されており、それに対して概念設計を実施しています。
 CR-3として、ビーム窓の工学的成立性の確証が指摘されて、それに対応してJ-PARCのTEF-T施設、ADSターゲット試験施設の研究開発を実施しました。
 CR-4として、安全性、信頼性の高い加速器を実現することというのがあり、それに対応して設計であるとか要素機器の試作を行っています。
 1ページめくっていただいて、5ページで、このチェックアンドレビューに対応して、先ほどありました文部科学省の作業部会で策定したロードマップを示しています。
 CR-1からCR-4、おのおの対応して、このようにTEF-P、それからCR-2に関してはベルギーで建設を計画し、一部開始されているMYRRHAとの協力を想定していました。
 また、CR-3がTEF-T、CR-4はJ-PARCの経験を生かした研究開発ということになります。
 6ページに行っていただいて、ADSの燃料製造及び乾式再処理に関しても、おのおのCR-5とCR-6という指摘事項がありました。
 CR-5では、燃料性能という部分と燃料製造の確証というのが指摘されていて、おのおの物性データの測定等々製造技術の開発を実施しました。
 CR-6の乾式再処理に関しては、実用性を示すことというのが指摘されていて、それに応じてプロセスフローの提示であるとかコールド試験を実施しました。
 1枚めくっていただいて、7ページで、同じく作業部会ではこのようなロードマップが示されていて、CR-5とCR-6については黄色でハッチングした部分を研究開発しています。
 概要の最後ですが、8ページでJAEAの中長期計画を示しています。
 こちらの2番目のポツにおいて、J-PARCの施設についてはTEF-Tの建設着手、それからTEF-Pは許認可を得て建設着手というところが期待されています。
 ここまでが概要で、以降は個別の研究開発について説明します。
 まず、ADSについてですが、10ページをお願いします。
 実用規模ADSの概念検討を実施してきました。そのために、右端の四角に囲われている高信頼、高精度の解析を実現しました。これは、モンテカルロ法による粒子輸送コードPHITSとCFDのFLUENT、それから構造のANSYSを同一ジオメトリで接続するという解析システムになっております。この場合は、ビーム窓について構築して解析を実施しています。
 また、下の図にありますように、炉心の中に未臨界度調整機構というものを持ち込んで、運転中の臨界度変化を小さくするという設計改良を行いました。
 このように、解析の大規模化、詳細化等を行っていて、また柔軟なADS概念の創出を今後も実施していきます。
 11ページに行っていただいて、炉物理実験に関しては、既存の施設を使って国内外研究機関との協力で実施しています。
 ADSでは、未臨界度を常時監視していく必要がありますけれども、これに関して、新しい手法を開発しました。それは、非常にばらつきの大きかったこの左のグラフのようなものを、信頼性の高い、ばらつきの小さな値を得るように改良したもので、KUCAでFFAG加速器を用いて実証しました。また、右半分に示しているように、ADSで用いる核データを臨界集合体を用いて検証しています。このグラフでは、鉛の核データに関するC/E値を示していますが、古い、1世代前のJENDL-3.3ではあまり再現性がよくなかったものが、4.0では改善しているというのが見て取れます。これは、米国のCOMET炉で取得したデータですが、そのほか京大炉でも同様のデータを取得しています。
 12ページに行っていただいて、ADS加速器について、高い信頼性と経済性を目指して、従来は高エネルギーのみが超電導化されていたのですが、近年、低エネルギーも超電導化した基本設計を完成させました。あわせて、低エネルギー部の超伝導化速空洞の試作に着手しています。
 また、右半分ですけれども、信頼性評価に関して、2020年度のJ-PARC実績を調査しました。ADSで許容されるトリップ頻度に比べて、5分以下の領域では随分改善してきているというのが分かってきています。一方、5分以上のトリップについては、依然として226回と回数が多いことも明らかになっています。
 このような加速器の研究開発は、KEKとか理研、量研機構、それからベルギーとの連携をこれからも進めていきます。
 次に、TEFの説明に移ります。
 14ページに行っていただいて、TEF施設というのは、先ほどありましたように10ワットの臨界集合体原子炉であるTEF-Pと、250キロワットのRI施設であるTEF-Tから成ります。右下にありますように、既に稼働しているJ-PARCのリニアックの最後段のところに建設することを計画していました。
 15ページに行っていただいて、TEF-Tのための要素技術については、まず陽子ビームを用いないターゲットモックアップループを作って、各種センサーであるとか運転実績を積んできました。そういったものを通じて、LBE取扱技術確立の見通しを得ています。また、TEF-Tのターゲットというのは完全遠隔で交換する必要がありますので、切断及び溶接技術についてモックアップを作成して実用の見通しを得ました。
 16ページに行っていただいて、TEF-Pの安全に係る研究開発を実施しています。TEF-Pで事故が起こって炉心を冷やすこと及び止めることができなくなった場合の炉心温度上昇を評価して、最大300度程度で炉心は健全であると評価しました。また、マイナーアクチノイド燃料中のアルファ崩壊によるヘリウムが蓄積して、事故時には内圧が上がって破裂することが心配されますが、それを破裂試験により確認し、600度以下では破断しないことを確認しています。
 以上のような検討から、周辺に過度の放射線被曝を及ぼすおそれがないため、Bクラスと判断し、安全設計書を作成しました。
 17ページに行っていただいて、TEF-Tの建設及びTEF-Pの許認可申請のために必要な技術設計書と安全設計書を作成しました。これをT-TACという国際技術諮問委員会に諮っていただいて、いずれもよくまとめられているという評価を得ています。
 こういった研究開発によって建設の準備が整っているのですけれども、現在のところ建設のめどは立っていません。一つには、FCAの燃料返還で、TEF-Pで用いる予定だった高濃縮ウランであるとかプルトニウムが米国に返還されたということもあります。そこで、将来構想として、早期の施設整備に代えてシミュレーションを活用した研究成果を反映しつつ施設概念の見直しを進めることを考えています。この点に関しては、第2回会合で議論いただきたいと思っております。
 次に、MA燃料製造について説明します。
 19ページにMA燃料の製造フローを示しています。
 ADSで用いる燃料はウランを含んでいませんので、濃度調整であるとか安定化のために母材が必要となります。従来型の母体としてジルコニウムナイトライド、先進型としてチタンナイトライドという二つがあって、おのおのこういった工程を考えています。この工程の研究開発を行っていますので、20ページで説明します。
 また、ADSに装荷した際の燃焼中のふるまいについて、物性測定とかふるまい解析コードの整備を行っています。
 20ページに行っていただいて、マイナーアクチノイドの燃料を作る初段のほうで、粉末の取扱いを避けるために球形状に造粒します。その造粒試験を行った結果、非常にばらつきの小さい、真球度の高い粒子を得ることができました。また、それらを窒化することで高純度の窒化物が得られることを実証しています。
 また、右半分に示してあるように、ペレットを焼結する際の気孔率制御を実際に行いました。プルトニウムとネプツニウムに対して気孔形成材を添加してペレットを作成した結果、よく制御できることを実証しています。
 次の21ページに行っていただいて、燃焼中の燃料ふるまいを理解して予測するために、様々な物性特性の測定を行っています。左に示したように、被覆管とMA燃料の高温における化学両立性を、模擬物質を使って確認しました。反応の痕跡がなくて両立性が良好であることが確認できました。また、右のグラフですけれども、室温でヘリウムによってスウェリングするのですが、それが高温でどのぐらい回復するかを試験しました。そういったふるまい解析の基となる物性データの取得を進めています。
 一方、ふるまい解析ではPIEデータのフィードバックが必須になりますので、そのための準備を進めています。右半分になりますけれども、NUCEFで燃料を作成して、常陽で照射、大洗FMFでPIEということを考えています。現在、ピン封入の基本設計までが終わっていて、今後はその製作と各所との調整といったことで、照射試験を実施していく必要があります。
 最後にMA燃料再処理について説明します。
 23ページにMA再処理の工程を示してあります。
 ADSから取り出された集合体が剪断されて溶融塩電解されます。溶融塩電解では、カドミウム極にTRUが回収されて、それを再窒化することでTRU窒化物を得て燃料製造工程に回されます。この再窒化の部分、それから電解の部分というのが窒化物に固有の部分で、ここを中心に研究開発をしています。そのほか、右に書いてあるような還元抽出、化学溶解といったところは、電中研さんの知見あるいは協力を基に研究開発を行っています。
 24ページに行っていただいて、左半分が溶融塩電解装置の開発です。ガドリニウムナイトライドの模擬物質を使って電解挙動を確認したところ、不活性母材を含まない状態では非常によい回収率を達成しました。一方、チタンナイトライドを含んだ場合は、右端の写真にあるように、上部析出物が確認でき、これが課題です。それから、右半分の再窒化工程については、こちらはジスプロジウムの模擬物質を用いて試験を行いました。カドミウムを蒸発させて回収するわけですけれども、カドミウムの回収は非常にうまくいっております。また、ジスプロジウムを使った窒化物への転換に成功しています。
 最後に、6ポツとして国際協力の説明を行います。
 ADSの炉物理分野に関しては、先ほどありましたような米国との協力研究、それからロシアとの情報交換を予定しています。また、IAEAの共同研究では設計ADSのベンチマークを実施しています。鉛ビスマス材料関係では、PSI、スイスポールシェラー研究所において照射を行い、現在、照射試験片の取り出しを待っているところです。また、ベルギーとは広範な協力関係を持っていて、核工学、LBE技術、加速器技術等について研究協力を実施しています。また、ドイツのKITとも鉛ビスマス関連の協力取決めを締結し、協力を実施しています。
 27ページのまとめは、時間の関係もありますので割愛したいと思います。
 以上です。
【中島主査】  ありがとうございました。
 引き続きまして、次の資料2-3、MA分離技術の状況について御説明をお願いいたします。
【松村原子力研究開発機構分離変換技術開発ディビジョン副ディビジョン長】  それでは、資料2-3、MA分離技術の研究開発状況につきまして、原子力機構の松村から御説明いたします。
 早速内容に移ります。3ページに移ります。
 MA分離技術の位置づけでございますが、MA分離技術とは、使用済み燃料中のマイナーアクチノイドを分離回収し、核変換システムの燃料製造工程に供給する技術でございます。分離変換概念ですが、JAEAが取り組んでおります分離変換概念は2種類ございます。3ページの一番下に二つの図が並んでおりますが、左側が発電用高速炉を利用したサイクルでありまして、使用済み燃料から再処理をいたしまして、そこから出てきたマイナーアクチノイドをまた発電用のFBRに装荷するものでございます。右側が階層型でございまして、これは先ほど西原が御説明したとおりのものでございます。
 どちらにおきましても、MA分離技術はこの発電用の原子炉から出てきた使用済み燃料の再処理工程に組み込むことによりまして機能するものでございます。したがいまして、ここから出てくる廃棄物は固化体となって地層処分されますので、十分高い除染性能が求められるものでございます。したがいまして、高度な分離性能が期待できる湿式分離法を採用して研究開発を進めてまいりました。
 次のページに移ります。4ページです。
 MA分離プロセスの構成ですが、MA分離プロセスに要求される性能としましては、先ほど申し上げましたように核変換システムに供給するMAを回収することと、処理後の廃液はガラス固化して地層処分されますので、環境負荷低減のために十分な除染性能が必要だということです。
 これを実現するためには、極めて放射能濃度が高く、多成分、高硝酸濃度のHLWから十分な分離をしなければいけないということで、1度の分離操作で分離することは不可能でございます。したがって、ここではまずMAと希土類元素を一括して回収するところを設けまして、そこで回収できました製品をMAと希土類元素を相互に分離する操作をいたします。この2段階の分離操作を行うということです。
 次のページに移ります。5ページでございます。
 このロードマップでございますが、先ほどの資料にございましたとおりでございまして、その中にMA分離についても示しているとおりでございます。ここに示しましたのは溶媒抽出のものですが、赤字で示しているところが現在進めているところでして、実廃液試験を行うとともにデータベース整備やプロセス最適化等に適用する基礎基盤的な研究を進めているところでございます。
 6ページに移ります。
 第3期中長期計画における実施内容とその成果でございます。湿式分離法を採用し、その上で、平成21年度の原子力委員会のチェックアンドレビューや文科省の作業部会における指摘事項に対応しつつ進めてきたところでございます。この内容につきましては、参考資料の14ページ、15ページにお示ししております。
 JAEAの第3期中長期計画の記載についてはこのページの下のほうに示しておりまして、複数の候補技術のプロセスデータと高レベル放射性廃液を用いた試験による分離回収データを取得いたしまして、それぞれ技術的な成立性を評価すると示されております。これにつきまして、溶媒抽出法と抽出クロマトグラフィによるデータを取りまして進めてきたところでございます。原子力基礎科学研究部門と高速炉・新型炉研究開発部門におきまして、適切に分担をいたしまして研究開発を推進しております。どちらにつきましても、工学的な基盤研究を進めまして、グラムスケールのMAの分離は可能であることを示し、技術的な成立性を明らかにしてございます。
 以下、具体的な成果について簡単に述べさせていただきます。
 7ページに移ります。
 まず、溶媒抽出法によるMA分離技術の開発状況ですが、2次廃棄物の発生量低減につながる焼却処分可能な抽出剤を開発いたしました。これによる溶媒抽出プロセスの開発を進めてきたところでございます。この開発した分離プロセスにはSELECTプロセスという名前をつけました。下に示しております。これにつきまして、ブロックフローをお示ししています。全体としては、再処理からMA分離、さらにアメリシウムとキュリウムまでの分離を行う一連のステップでございます。今回御紹介するのはMA分離の部分でございます。
 全ての分離の段階につきまして、焼却処分可能な抽出剤を適用しております。NUCEFのホットセルでグラムスケールのフィードストック試料の回収に向け実廃液試験を実施いたしまして、0.3グラムのMAの回収に成功しているところでございます。平成30年度から実施を開始いたしまして、令和2年度に達成ということです。
 次のページに移りまして、8ページでございます。
 これがSELECTプロセスの実廃液試験の概要でございまして、一番左側にそれぞれの分離の段階に使用した抽出剤の分子構造と名称を示しております。MAとREの一括回収、その相互分離、さらにオプションとしてアメリシウムとキュリウムの相互分離と、それぞれの段階につきまして適切な抽出剤を開発しました。詳細につきましては御説明は割愛させていただきますが、0.3グラムのMAを回収いたしまして、さらにこれらの分離プロセスのシミュレーションを行うシミュレーションコードも開発しておるところでございます。
 次に移りまして、9ページです。
 抽出クロマトグラフィによるMA分離性能の評価といたしまして、抽出クロマトグラフィ法による分離技術の開発を進めてまいりました。この手法につきましては、利点としては希釈剤が不要であることで設備がコンパクトになるといった非常に大きなメリットがございますが、一方で課題として再処理分野の適用実績に乏しいことがございます。こういった観点から研究開発を進めてきたところでございます。
 まず、リファレンスとなる、よく特性の理解されている抽出剤による分離試験を実施いたしまして、十分な分離性能が得られることを明らかにして、適用性を確認しております。この試験の結果、MAの試料といたしまして約2グラムの回収に成功しております。これは、フランスにおけるエグザム法による回収の実績に並ぶ成果であります。このMAを利用いたしまして、常陽で照射試験を実施するというSmARTサイクル研究を現在進行中でございます。この試験に関しましては、現在世界で唯一の具体的な計画であります。
 次のページに移ります。10ページでございます。
 抽出クロマトグラフィによるMA分離フローシートの改良の検討でございます。
 これは、原子力科学研究部門におきまして開発されました新しい抽出剤を抽出クロマトグラフィに適用しようという試みでありまして、実際に実験を行ったところ、これまでよりもよい成果が得られたものでありまして、十分な性能が得られることを確認しております。
 次に、11ページです。
 国際協力です。主に米国とフランスと協力を進めております。
 米国では、CNWGの枠組みにおきまして、アイダホ国立研究所のガンマ線照射試験装置において試験を実施いたしました。これは、抽出工程における条件を摸擬するものであります。また、INLの研究者の協力によりまして、ブルックヘブン国立研究所においても加速器によるパルスラジオリシスのデータを取得いたしまして、この両方のデータを合わせて放射線分解メカニズムに関する研究を進めてきたところでございます。
 フランスとの協力では、新規の抽出剤及びMA分離プロセス、さらにこれらのプロセスシミュレーションコードにつきまして情報交換を継続して実施してきております。知見の共有と研究者間の議論によりまして、両者の研究開発の方向性の検討に有効に反映させております。また、マルクール研究所のATALANTE施設におきまして、国内で取得できないデータの取得につきまして今後の実施に向け検討しております。フランス側は実施可能であると回答しておりますが、具体的な内容については現在検討中でございます。
 以上、まとめですが、溶媒抽出法、抽出クロマトグラフィ法、どちらにつきましても技術的な成立性を示し、十分なMA、現在のところ可能なMAの量を回収できたという状況にありまして、論文につきましても両方合わせて60報以上パブリッシュしている状況にございます。引き続き、基盤研究を継続するとともに、工学規模への展開の検討を進めたいと考えております。
 以上であります。
【中島主査】  ありがとうございました。
 それでは、続けて資料2-4の国内外の状況ということで御説明をお願いいたします。
【辻本委員】  辻本です。
 私から国内外の研究開発状況について簡単に御説明させていただきます。
 まず、2ページですけれども、ベルギーのMYRRHA計画です。
 これは、ベルギーのSCK・CENが老朽化した研究炉、BR2の後継炉として計画しているもので、熱出力が約100メガワットの鉛ビスマス冷却ADSを建設する計画です。これにつきましては、2018年9月にベルギー政府が約560ミリオンユーロの支出を決定しておりまして、それによって現在100ミリオンまでの加速器の建設が進められているところです。その後の加速器の状況、それから炉心の建設については、研究開発状況を踏まえて、2024年に実施するかどうかを決定することになっております。
 それから、次のページが中国のCiADS計画です。
 こちらは、複数の加速器を組み合わせた複合施設の一部として、熱出力が10メガワットの鉛ビスマス冷却のADSを建設する計画となっております。現在、2024年の完成を目指して建設が進められているところで、一応、そこの写真で示しておりますように、敷地の造成が終わっている段階と聞いております。
 次のページは、ウクライナで建設された中性子源施設になります。
 こちらは、アメリカが世界中で進めている高濃縮ウランの回収計画の一部としてアメリカとウクライナが共同で建設したものでありまして、低濃縮ウラン、水冷却の炉心と電子線加速器を組合せた施設として、既に建設が終わって運転されていると聞いております。
 次の5ページがロシアのBREAKTHROUGH計画になります。
 こちらは高速炉ですけれども、鉛冷却の高速炉、それから窒化物燃料の製造プラント、それから乾式再処理を用いた乾式処理プラントということで、我々が検討しておりますADSと非常に近い技術が用いられているということです。既に鉛冷却高速炉であるBRESTというものの建設が始まっていて、それ用の燃料製造、それから再処理プラントの建設も計画されているものになります。
 次の6ページが国内で実施された関連研究開発ということで、本日御出席の藤田委員がプロジェクトマネジャーとして実施しましたImPACTプログラムになります。我々ADSはマイナーアクチノイドを核変換することを目的としておりますが、ImPACTは長寿命FPの核変換、それから資源再利用を目的として研究開発が進められました。このプロジェクトの中の一部に我々JAEAも参加させていただいたということになります。
 それから、7ページが分離に関する研究開発の状況ということで、フランスが中心となって欧州で実施されている研究開発プログラムでありますGENIORSというものを紹介させていただいています。こちらのプログラムは、今年の3月まで約4年間実施されたものでして、様々な分離プロセスの研究開発が実施されております。ただ、これはMA分離に関する基礎基盤の維持、それから人材育成を主目的として、欧州内の研究開発プログラムとして実施されているものです。
 それから、最後になりますけれども、国際機関でありますOECD/NEAで、今年の4月にこちらに示しておりますようなタスクフォースが立ち上げられております。ベルギー、フランス、日本、ロシア、イギリス、アメリカが参加しておりまして、このタスクフォースでは分離変換に関わる様々な技術のTRL、技術開発レベルを評価しまして、これらの技術を準工学レベルに引き上げるために必要なものを提示することになっております。
 様々な分離変換に関わる研究開発が各国で進められておりますけれども、いずれも基礎基盤段階にあるということで、これを工学規模に引き上げるためにはどうすればいいのかを国際的に検討するとともに、可能であるならば国際共同プログラムも検討しようというタスクフォースが立ち上がっている状況であります。
 簡単ですけれども、こちらの資料の説明は以上になります。
【中島主査】  ありがとうございました。
 ただいま三つ、資料2-2から2-4について御説明いただきましたので、これにつきまして各委員の皆様から御質問があればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 長谷川委員、お願いいたします。
【長谷川委員】  御説明ありがとうございます。
 資料2-3で、私よく分離技術の詳細がよく分からないのですけれども、いろいろ説明されている中で、何グラムのMAを分離回収したというところが出ているのですが、もともとはどのくらいのものからその量を分離して、例えば想定された分離効率というのでしょうか、それは何%ぐらいだったとかということはここでは示されないのでしょうか。
【松村原子力研究開発機構分離変換技術開発ディビジョン副ディビジョン長】  すいません。そういった具体的な数字はもちろんございますので、一部、今回のこの資料の中にお示ししているところを御説明します。
 資料の8ページを御覧ください。
 溶媒抽出法の数値がここに一部示されております。右上のほうに、MA・RE一括回収プロセスのデータとしまして、供給液が再処理抽出残液7.4リットルでございます。この中に含まれているアメリシウムとキュリウムを、この下の表にありますように製品溶液に98.5%のアメリシウム、キュリウムを99.9%回収しております。この製品溶液を使いまして、下のMA・RE相互分離プロセスに供給いたします。ここで、下の表にございますようにアメリシウムを94.7%回収いたしまして、キュリウムと合わせまして両方でMA約0.3グラムを回収という実績になっております。
【長谷川委員】  こういうときに強調すべきが効率のほうなのかボリュームのほうなのか、そこはよく分からないのですけれども、もともと想定されるものからかなり高い分離効率でグラムレベルのものを抽出したとかという結果で、短い文章にまとめるにしても、図を見れば分かるではなくて、結論のところにはっきりと入れたほうがアピールしやすいのではないかなと思いました。
 本件についてはそれでいいです。ありがとうございました。
【松村(原子力機構)】  申し訳ありません。
【中島主査】  藤田委員、どうぞ。
【藤田委員】  御説明ありがとうございました。
 非常に簡単な質問なのですけれども、2-3の資料で、10ページ目で抽出クロマトグラフィによるMA分離性能の評価とございますが、ここはJAEAさんが単独でされたのでしょうか。どこかメーカーも参画しているのでしょうか。それを教えていただきたく存じます。よろしくお願いします。
【竹内原子力研究開発機構燃料サイクル設計室室長】  JAEAの竹内でございます。御質問ありがとうございます。
 10ページ目のMA分離フローシートの改良検討におきましては、先ほど松村が申しましたように原科部門との協力で機構内では連携しておりますけれども、外部のメーカーを使って共同した研究成果ということではなくて、JAEAの中での成果でございます。
 以上です。
【藤田委員】  ありがとうございました。
 やはりこれから工業化という場合はメーカーの参画が重要だと思いますので、御検討をよろしくお願いいたします。
【竹内原子力研究開発機構燃料サイクル設計室室長】  ありがとうございます。
 現在、工学的な検討にも一部入ってございまして、そこにはメーカーさんにも入っていただいた格好で研究開発を進めている状況でございます。ありがとうございます。
【藤田委員】  ありがとうございました。
【中島主査】  よろしいですか。
 順番でいくと、小山委員が確か次に手を挙げていたかと思いますので、お願いいたします。
【小山主査代理】  小山です。
 資料2-2の3ページ目、ADSの図のところですけれども、私がお聞きしたいのは、ADSの目的、目標が何であるかということになります。というのは、一つはMAの核変換効率、初期装荷量2.5トンで10%MAということで、年間当たり0.25トン変換すればいいという目標が最終的な目標に合っているかどうかということと、それから熱出力ということが書いてあるのですけれども、これはADSで入力に対して出力が1を超えているような形を狙っているような、発電までそれを狙っているようなADSなのか、その辺の機構の考えている目標を教えていただいてよろしいでしょうか。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】  西原です。
 まず、250キログラムという目標は、おおむね軽水炉10機からの年間発生量に整合していて、そういったところから大体適していると考えています。熱出力の800メガワットというのは、この250キロにほとんど比例した量でして、そこから基本的には決まっている量です。結論として、800メガワットから発電された電気で加速器を回して若干売電することもできます。
 以上です。
【小山主査代理】  分かりました。
 だから入力に対して出力が1以上のところをもう狙っているということですね。
 理解しました。ありがとうございました。
【中島主査】  よろしいでしょうか。
 それでは、竹下委員お願いいたします。
【竹下委員】  それでは、一つ質問させていただきます。
 いつもADSのお話を聞くと、こういう要素技術的なところが大変よくできているのはよく分かるのですが、ADSを実際導入したときに、将来、開発目標がいろいろあると思うのですが、それを達成したときにどのくらいのことがどうできるのだということですね。例えば核変換効率であるとかそういうことも含めて、やはり全体の物質の収支であるとかエネルギーがどのくらいかかるのかとか核変換はどの程度できるのかとか、実用化の目安をいつも示しておいて、そして技術開発すべきところはここでこれを達成したいという感じの御説明だと非常に納得しやすいのですけれども、その辺はどうお考えなのでしょうか。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】  そちらについては、恐らく第2回で予定されていると考えていますので、ここに盛り込んでいきたいと思います。
【竹下委員】  実用化の見通しが大変重要になると思うのですね。高速炉といずれ並行して進めるといったら、どこかで先をどう進めるか考えなくてはいけない時期が来るわけですから、常に実用化への道筋とその可能性は示していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それと、もう1点、分離のほうですけれども、一つは再処理の話が入ってくるわけですけれども、こういうSELECT法を導入したときに、将来どんな燃料サイクル系を考えていて、それでこのSELECTプロセスを入れれば有用だというところを示していただくことが重要ではないかなと。
 例えば、高速炉が入ってきて、高速炉MOXをちゃんと処理する、あるいは軽水炉でプルサーマルをやってそのプルサーマル燃料を処理すると。そして、MAを取り出して、最後核変換に持っていきますというシナリオの部分があって初めてこの再処理がはまるかはまらないか判断されるのではないかと思うのですね。第1ステップの再処理もモノアミドとなっていますけれども、こういうことは今までのPUREXとは違うわけで、そういうことも含めて全体の中でSELECTプロセスをちゃんとはめ込んだときに、どうこのプロセスが役に立つのか、その辺を御説明していただけるとありがたいのですが、いかがでしょうか。
【松村原子力研究開発機構分離変換技術開発ディビジョン副ディビジョン長】  今の御質問の件につきましても、第2回で。
【竹下委員】  第2回分で詳しく説明をいただけるのですね。
【松村原子力研究開発機構分離変換技術開発ディビジョン副ディビジョン長】  ただ、一般的な、これまで我々の考えていた内容ですけれども、SELECTプロセスというのは基礎基盤的な研究から立ち上げて、今やっとここまで来たという状況でございますので、これではある想定される核燃料サイクルの物質フローの中にどのように最適化してはめていくかという部分はこれからではないかなというのは、研究の現場。
【竹下委員】  ただ、研究をやっていく以上は、それを常に意識して、フローシートは常に最適化して考えていくということはどこかでやっておかないと、無駄な研究をやってしまう可能性も出てくると思うので、常にシステムを意識しながら要素技術を考えていただくほうがいいのではないかなと思います。
【松村原子力研究開発機構分離変換技術開発ディビジョン副ディビジョン長】  おっしゃるとおりでございます。
 もちろんそういったことを念頭に置きながら研究を進めております。ありがとうございます。
【竹下委員】  あともう一つだけ、抽出クロマトですけれども、これは溶媒抽出プロセスとの利点、欠点をいつも考えてしまうのですけれども、このプロセスは化学工学的に考えると溶媒抽出に比べるとフレキシビリティという面ではあまり利点があるように思えないのですね。その辺は研究をもう十数年続けていらっしゃるわけですけれども、見通しはどうでしょうか。溶媒抽出といずれ比較しなくてはいけなくなると思うのですけれども、御意見あればいただきたいのですが。
【竹内原子力研究開発機構燃料サイクル設計室室長】  JAEAの竹内でございます。御指摘ありがとうございます。
 今やっている研究は、この成果でも示しましたようにようやく分離性能にかなりめどが立ったという段階に来ておりまして、今それを受けて、まさに先生の御指摘があったフレキシビリティでありますとかロバスト性、そういったところを意識しながらプロセスフローシートの今改良検討を進めているところでございまして、まだそこは十分に今の時点で実証できていない状況ではありますけれども、今そこに向けて研究開発を進めている段階でございます。
【竹下委員】  MA回収ということは高レベル廃液を扱うわけですので、こういうプロセスのフレキシビリティや何かは大変重要な点なので、ぜひそこのところは常に溶媒抽出との比較をしながら、利点、欠点を明らかにしていっていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
【竹内原子力研究開発機構燃料サイクル設計室室長】  ありがとうございます。
 処理する燃料のタイプも相当変わってくることも考えに入れながら、そういったフレキシビリティも十分意識して研究開発を進めていきたいと思っています。ありがとうございました。
【竹下委員】  どうもありがとうございました。
 以上です。
【中島主査】  藤田委員、もう一回手が挙がりましたでしょうか。
【藤田委員】  加速器で二つほどお伺いしたいことがあります。
 まず11ページで、JAEAさんではビーム窓を使うことを検討されているのですけれども、ビーム窓は結構課題があって難しいと思うのですが、ビーム窓のない形、ビームなしを検討されることはないのでしょうかということが1点と、21ページ、これはもう簡単な質問ですけれども、左側の摸擬燃料の長時間加熱試料断面というのが書いてあるのですが、この長時間とは時間はどのくらいでしょうか。
 以上2点、よろしくお願いいたします。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】  1点目のビーム窓なし概念については、JAEAでは検討しておりません。こちらはMYRRHAで初期に検討されたのですけれども、実際に建設する段階になって許認可の問題にぶち当たって、窓ありに変更した経緯がございます。
 二つ目の質問に関しては、高野さんからお願いします。
【高野原子力研究開発機構燃料高温科学研究グループグループリーダー】  JAEA高野です。
 普通、長時間というと本当は1年、2年やりたいところですが、現状、通常運転条件で2か月、それからここにあります以外には、過渡条件ということで700℃、800℃で2週間という条件で試験しております。
【藤田委員】  ありがとうございます。
 ビーム窓のほうは了解です。
 この長時間試験のほうは、やはり実際に工学的レベルですと1年とかということが必要だと思いますので、今後そういう計画をしていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
【西原原子力研究開発機構核変換システム開発グループグループリーダー】  ありがとうございます。
【藤田委員】  以上です。
【中島主査】  ありがとうございました。
 そのほか、よろしいでしょうか。確認ですが、資料2-2の中にロードマップが2枚ありましたけれども、一応これは2020年度までの実績で線を引いてみると、一応そこまではほぼ終了しているか、あるいは黄色の現在実施中ということで、一応ここまでのところは必要なところはしっかりとできているという認識でよろしいでしょうか。
【辻本委員】  辻本です。
 委員の私が言うのもあれですけれども、中島委員御指摘のように、ここまではできていると我々は認識しております。
【中島主査】  分かりました。
 特に、まだ当然これからの実用化に向けての課題はあるけれども、基本的なところではしっかりとできているという認識ですかね。
【辻本委員】  はい、そのとおりです。
【中島主査】  ありがとうございました。
 時間の都合もありますので、続きまして資料2-5ということで、ご議論いただきたい論点について事務局から御説明をお願いいたします。
【鈴木原子力課室長】  資料2-5でご議論いただきたい論点を記載してございます。
 今後、これらについて第2回、第3回も含めて御意見をいただければと思っております。まず2009年の原子力委員会における指摘についての技術的進展がどの程度あるか、現時点における技術的課題はどこにあるのか、シミュレーション技術等他分野の科学技術の進展を踏まえて取り入れるべき点はあるか。国際状況や高速炉サイクルを含む原子力関連政策の現状を踏まえまして、ADSの見通しに変化はあるのか。限られた予算の中で集中的に取り組むべき技術開発課題があるのか。当面の目標をどこに設定するのか。上記を踏まえた上で、整備予定のJ-PARC核変換施設に見直すべき点はあるのか。ADSを実現するに当たって、長期的な視点でどのような取組が必要か。経済性、社会的需要、産業界との連携、基礎研究、共通基盤の充実も含めて、原子力機構だけが研究開発をやっていてもなかなか実現性が低いのではないかという中で、どういった取組が必要であるかということも含めて御意見をいただければと思ってございます。
 次回以降には、本日の皆さんの意見を踏まえた上でヒアリングを実施しまして、今後の進め方について第3回に一定の方向性を得られればと思ってございます。
 今後のスケジュールとしましては、第2回に御意見も踏まえた上で、関係者、主に原子力機構ですけれども、原子力機構とその他基礎研究の方からヒアリングを行いたいと思ってございます。また、第3回で一定の方向性をまとめて示せればと思っておりますが、もし御議論が続くようであれば第4回を開催することも考えられると思っています。
 事務局からの説明は以上でございます。
【中島主査】  ありがとうございました。
 今、1枚もので御説明いただきました。
 冒頭申しましたように、これから意見交換ということで40分ほど、12時ぐらいには終わりたいと思いますけれども、名簿順に今の論点も参照いただきながら、御意見を承りたいと思います。
 名簿順でいくと私が一番上にありますけれども、まず小山委員から順番にお願いしたいと思います。
 小山委員、お願いいたします。
 大体3分ぐらいでお願いします。
【小山主査代理】  ありがとうございました。
 電中研小山です。
 私は、昔、30年ぐらいこの分野をやっていたのですけれども、1F事故の後は1Fに集中して、もう先の長いこういった仕事は若い人に譲って、どちらかというとちょっと離れた目線でこれを見ておりました。ちょっと離れた目線で今日のことで多少考えを述べさせていただきますと、一つは高速炉とADSサイクルの関係づけですけれども、確か両者は並列で対抗馬という形ではあったのですが、高速炉は発電が目標であったということで、発電の必要性を考えると、高速炉が必要になるためにはウランのショートがまず大前提にありまして、それで考えると、軽水炉時代が思ったより長く続くので、ひょっとしたら今世紀も終わりのほうまで続くでしょうということを考えると、私は、ADSと高速炉が必ず並列であるというのは少し時代が変わってきたのかなという認識があります。
 その中で、ADSの位置づけですけれども、将来的には高速炉の中でその技術が生かせると思うのですが、高レベル廃棄物がたくさん出てきて、その処分方法ということで考えたときに、そこの解の一つとしてADSの位置づけというのはよりはっきりしてきているのかなという気がしています。
 今日、最初に課長から第6次エネ基の話がありましたけれども、火力でもCCSあるいはCCUSという、発電をしてその後のCO2を埋めたり利用したりということが必要になってくるのですけれども、言わば原子力の軽水炉の後処理、それとしてそこがペイするような形で示すことができれば、そういう形をベースでまず進んでいって、必要な技術は高速炉で引き継ぐという考え方があるかなと思っています。
 その観点で、さっき私がお聞きしたADSの目標設定が、先ほどの話でMAはどれだけ核変換をするかということと、それからエネルギー的にブレークイーブンを狙っているということで、それに対して今日の発表で見ると、サイクル側ははっきり回収率と分離効率の目標を示して、それに対してどれだけだということが出ているのですけれども、ADS側は全然そこが出ていないので、それは研究管理としていいのかなと思いましたので、今後、目標に対してどういうところにいっているのかを明確にしつつ進めていただきたいなと思いました。
 私からはその二つです。ありがとうございます。
【中島主査】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして小竹委員、よろしくお願いいたします。
【小竹委員】  私、今回、産業界といいますか電力側から出させていただきまして、先ほど竹下委員がおっしゃいましたように、研究成果としては、特にMA分離のところは私も高速炉関係を中心に新型炉の全般を見ている立場なのですけれども、そういう意味では非常に勉強になりました。
 ただ、今日冒頭文科省の方から、最初のタスクフォースの設置のところで調査検討事項を4項目紹介された、特に2番目の実証施設の在り方についてという話と、最後に御説明いただいた御議論いただきたい論点で、実証施設の在り方というのはどこで読むのかなと思ってさっきから資料を見ていました。本当に実証施設という話になりますと、先ほど小山委員も指摘されましたけれども、そもそも日本としてそれなりの投資を行ってADSと高速炉の両方とも実証化を目指していく方向でいいのかどうかをしっかり、これは研究の立場だけではなくて事業として、国としてどうするかを考えていく必要があるかと思います。
 私は、高速炉サイクルの開発に携わっていますが2003年にはアメリカDOEは、アメリカはADSと言わずにトリプルAと言っていたわけですけれども、それをやめてAFCI、革新的燃料サイクル・イニシアティブを開始しました。米国は、使用済燃料を再処理せず、直接処分する国ですけれども、将来的には燃料サイクルが必要だという中で、そういう判断でAFCIに転換して、2005,6年頃のGNEP(Global Nuclear Partnership)という方向に展開していきました。その後アメリカは、基礎研究はやっているかもしれませんが、ADSの開発は実施されていないと理解しています。
 それと、同じくフランスも2012年に例の廃棄物管理法(バタイユ法)の関連で、フランス原子力庁(CA)がいろいろな報告書を出しています。その中で、米国と同じように高速炉にするのかADSで走るのかという議論をして、そのときに高速炉であるASTRIDのほうを選び、ADSの研究を取りやめています。残念ながらASTRIDは建設フェーズには入らなかったのですけれども、現在も、日本とフランスは、高速炉の研究協力を続けています。
 今日の御説明の中にはADSと分離回収の話があって、分離回収は当然高速炉でも必要な技術ですので、これについては、異論は全くございませんが、少なくともADSを本当に使ってこういう階層シナリオでいくのか、従来から我々電力も入って議論をしております高速炉サイクルにこれから移行していくその中でマイナーアクチノイドも一緒に処分していくという話は、1999年のFSの時代からやっておりますので、そういう観点から言うと、本当にこのADSの実証炉をつくって実用化を目指すと、一体誰が面倒を見ていくのかも含めてきっちりした議論をしないとまずいのではないかなと感じます。
 私からは以上です。
【中島主査】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして竹下委員、お願いいたします。
【竹下委員】  今日聞かせていただきまして、やはり将来に渡って原子力を持続的に続けていこうというときには、今、軽水炉の時代が長く続くかもしれませんけれども、プルサーマルもやっていく。そうしたら、プルサーマルの燃料をどう処理するのだと。そうなると、マイナーアクチノイドの問題がやはり出てくるし、将来高速炉導入時期がまたどこかに来るわけです。それらも全部含めて、さらに使用済み燃料を再処理すれば、最後に処分の問題がどうしても出てくるわけで、処分場はただMOX燃料をそのままガラス固化して処分するわけにとてもいかないと思います。やっぱりマイナーアクチノイドをちゃんと分離しなくてはいけないと。こういう意味では、今日のお話に出ている分離核変換は大変重要になるというわけであります。
 ただ、先ほど質問のときにも言ったのですけれども、ADSにしろ再処理技術にしても、原子力の将来にいろいろなシナリオがあるわけですけれども、その中でこれらがどういうふうにはまっていくのか、これをいつも見ていかないと、ただただ並列で技術開発をしていくのは大変問題ではないかなと思います。常にシステム評価をしっかりしていかないと駄目だと思います。今小竹様から意見をいただきましたけれども、全てそれには賛成でございまして、やはり将来高速炉の方向に向かっていくべきか、ADSは階層的に使うこれだけの価値があるのだということをかなり説得力を持って説明していただくことがADSを将来やっていくための重要な点になるのだと思います。ですので、JAEA側では高速炉計画も実際にお持ちですね、ASTRIDでおやりになると、タンク型炉を考えられているということであれば、そちらの高速炉計画の現状を踏まえて、ADSをどこで導入して、この階層型のものをつくればこれだけの価値があるのだということを示していただくことが重要になろうかと思います。
 私はいつもJAEAの委員会で要素技術に関して聞かせていただいていて、ADSの燃料作りから含めて大変よく要素技術的には出来上がっているものだと自覚しておりますけれども、やはり、今言った観点、全体の大きな観点、システムとして導入するときの価値をしっかりお示しいただかないと、その先を実用プラントに持っていくという話はなかなか難しいのではないかなと思っております。ですので、ぜひともそこら辺を次回の委員会でしっかりお示しいただければと考えております。
 特に、今回ADSだけの御説明ですが、当然高速炉の計画がどうなっているのかも、この委員会の中では比較の意味でもお示しいただくべきではないかなと思います。そうしないと、判断はなかなかできないかなと思っております。ですので、ぜひとも大きな観点からADSの価値を示していただきたいと思っております。
 以上です。
【中島主査】  辻本委員、お願いいたします。
【辻本委員】  私は、ADSの開発を実際に実施している立場でもあるのですけれども、最初小山委員がおっしゃられたように、我々が今まで考えていた将来の原子力利用と大分異なったものになることがまず前提としてあると思います。今までは、軽水炉を使って、多分今世紀中頃までには高速炉に置き換わるだろうという想定があったわけですけれども、小山委員もおっしゃったように、大分軽水炉が長く続くのではないかという状況が予想されるわけです。
 最初に文科省さんから、このタスクフォースの前身である群分離・核変換技術評価作業部会の中間取りまとめが御紹介されましたけれども、その中で、結局原子力政策の方向性が明確になっていく段階で導入シナリオを再検討する必要があるという指摘は、今もそのとおりだと思いますし、その中で、本格導入する段階で、FRであったりADSが相互比較されるというのはそのとおりだと思います。
 ただし、そのときに軽水炉時代が長く続くということを考えると、FRの均質サイクルがすぐに導入されるわけではなくて、FRで一部核変換もやりながらということが現実的になってくると思うんのです。そうすると、FRにしろADSにしろ、今まで考えていたシナリオではなくて、いろいろな不確定要素もある、軽水炉時代が長く続く可能性も踏まえた上でどういうシナリオが考えられるのかというところが、多分今竹下先生がおっしゃったところなのだろうなと思うわけです。
 そういうシナリオを想定した上で、ADSであり高速炉があって、それぞれがその中でではどういう役割を果たすのかというところが多分一番重要だと思います。だから今、じゃあADSだ、FRだ、どっちにするのだという段階ではないと思いますし、原子力政策があまり明確になっていない状況では、幾つかのオプションを踏まえた上で、いろいろな柔軟性も確保していることが大事なのではないかなと考えているところです。
 以上になります。
【中島主査】  ありがとうございました。
 それでは、長谷川委員、お願いいたします。
【長谷川委員】  東北大の長谷川です。
 私自身は専門が材料で、材料の原子力機器の中での健全性とか寿命とかそういうものをずっと研究していて、皆さんが御議論されている核変換そのものについてはあまり専門ではないのですけれども、どの原子力プラント機器であっても、プラントの安全性とか寿命を決めるのは一番条件が厳しいところの材料です。ですから、どこの委員会に行っても何となくメインストリームではなくてその少し外側から、材料的な関知からどうだ、原子力特有の中性子の問題とか核変換の問題でどうなのかというお話をさせていただいている立場なのです。そういう立場から見て思うことを幾つかお話ししたいのですが、一つは、以前、私も分離・核変換技術の前の作業部会でもいろいろお話を伺ったのですが、今日お示しいただいた資料2-1の2ページ目のところにいろいろなレベルが書いてあります。このタスクフォースで今日の議論を聞いていても思うのですけれども、高速炉とADSの役割とかいろいろな非常に先の話と、それから原子力をどうやっていくのだという、原子炉の関係をやっているといつもぶつかる命題について、ここで議論していってもどうなのかなという印象を持ちました。
 さっき言った2-1の2ページのところに幾つか段階を示されていますよね。工学規模での技術的成立性の確認と、それから方向性が明確になっていく過程でいろいろ考えていって、最後に本格的導入についてまた何をやるかという、それぞれのステップにおいて何が重要で何を考えていかなくてはいけないかを見ていくのだと思います。今、一番最後のところの、本格導入するときに社会の情勢がどうなっているかとかその辺が非常に不確定な状態で、まして軽水炉の寿命がどうだとか、しばらくは軽水炉の時代が続くという何十年も先の話をここで細かくやっていって最後に答申を出すのかというと、やはりもう少し絞らないとどうにもならないと思っています。ここのメンバーだけで議論をしてもとても話が収束するわけではないのだろうなと思っていまして、どこに議論するポジションを持っていくのか、もう少し明確にしていただいたほうがいいかなと思っています。
 ですから、工学規模での技術的成立性をきちんとやるのには、今の段階で何が必要かをまとめるというのは、まずはこのタスクフォースの中でまとめていくのにすごくいい目標かなと思っているところです。
 もう一つは、この中にJ-PARCと常陽を使っていろいろ工学技術の技術的成立性の話をするという計画が出ているのですけれども、私、実はJ-PARCの国際諮問委員会でしばらくやらせていただいて、J-PARCの状態をずっと見させて頂いています。それからJ-PARCの水銀ターゲットのときの、水銀とターゲット壁の間の両立性とかそういうものも随分昔から作業部会か何かでお話を伺ってきました。実際に、最後のバウンダリー、あるいは中性子が出てくるところと、それからそれ以外のバウンダリーのところというのは材料で安全性を保っているわけで、実際のバウンダリーの健全性はやってみなくては分からないところがいっぱいあります。特にJ-PARCの水銀ターゲットのときも、当初予想していなかった照射ビームによる水銀の局所加熱で発生するキャビテーションの問題をどう解決するかががどうなるか課題となりました。もしキャビテーションの問題が解決しなくて短い使用期間内で水銀ターゲットの隔壁が破れてしまったら、水銀がターゲット室の中に皆吹き飛んでしまったりして大変なことになるというので、JAEAの皆さんが一生懸命対策を考えられて、今、結構長く使える水銀ターゲットができてきたわけです。あれはもうシミュレーションではなくて、実際にやってみなくては分からなかったわけですね。
 だから、これから先のシミュレーション技術がいろいろ出てくるのですけれども、シミュレーションではすでに分かっている要素を突っ込んで計算して、あるいはいろいろな比較をしてやっていくわけですけれども、アンノーンなものとか新しいものを使ったときは必ずわけが分からないことが起こってくるので、やってみなくては分からない部分があると私は思うのですね。
 実はJ-PARCのISCの中で毎年出てくるのがTEF-TとTEF-Pのプログラムの進展状況です。今年も変わりませんでした。今年もデザインとか設計をやったところから先にいろいろな問題で進みませんでしたというのは、まさしくさっき皆さんがおっしゃったような、先のところが見えない状態で、ここの議論いただきたい論点というところにありますけれども、限られた予算の中でそこに踏み込むかどうかがJAEAさんも判断の非常に難しいところで、毎年その選択を迫られているのだろうなと思っています。
 TEF-TやPとは対象的にJ-PARCではどんどんどんどん成果が出てくるのです。J-PARCは今どんどん使っているわけですから、ある意味ではできたときから消耗しているわけです。じゃあ、すぐにTEF-TとTEF-Pができるかと。暦を見ても、つくると決めてから出来上がって動くまで何年もかかるわけです。TEF-TやTEF-Pが稼働にこぎつけたときにJ-PARCは動いているのですか、大丈夫ですか、とも思うわけです。
 もう一つは、常陽の話も出てきますけれども、私も実は材料照射の観点から常陽を早くスタートアップしてほしいなと思っています。JAEAの皆さんは今、とにかく許認可の問題、安全性審査のところで非常にもめていて、なかなか進まないということでジレンマを抱えているわけです。常陽自身の寿命だとか、常陽自身の今の核燃料なども課題の一つです。これから先、常陽、動いていいですよと言った先に、常陽の見通しがどのくらいあるかとかということです。私が今言っているのは、工学的な規模での技術の成立性のためのハードウェアが果たして今の段階で大丈夫なのかという、原子力の将来という問題に比べて、もっと足元のちょっと小さな問題に割とこだわっているのです。そこはどんなふうになってくるのかというのを、先ほどの少し先の見通しと、それから現在の既存の技術とか設備とかの両方を見ながらやっていかないと進まないことは確かなので、そこをこれからもう少しクリアに、議論していく論点とか必要なものをまとめられればいいのかなと思うのです。中島先生、なかなか難しいことだと思うのですけれども、そういうところで、私のほうで今までの材料とかそれから安全性とかに関わる問題なんかで議論できればというふうに思っています。
 以上です。
【中島主査】  ありがとうございました。
 引き続き、藤田委員、お願いします。
【藤田委員】  私、先ほど辻本さんの資料で出てきたImPACTという内閣府のプログラムで、核変換による高レベル放射性廃棄物の大幅な低減、資源化というプログラムのマネージャーをしておりました。私自身は、どちらかというと分離の乾式再処理、一部湿式も含めての分離が専門分野ですけれども、このImPACTのプログラムをやって、加速器に対する考え方がちょっと変わりました。といいますのは、今、加速器で、日本でいろいろ動いているのは基本的に研究用の入射エネルギーが非常に大きな加速器ばかりなのですね。それに対して、ImPACTもそうでしたけれども、ADSも処理装置としての加速器の概念で、これは日本で出てきた新しい考え方なので、将来の加速器開発の目標にしていくことが重要だと思います。この加速器というのは、医療用の物質を作るときにも製造技術として重要なので、そのためにも加速器開発をするということは、私は無駄ではないと考えております。
 もう1点ですけれども、私のImPACTの非常に拙い経験からしますと、加速器というのは原子炉と違って全部がきちんと設計できないと物ができないというわけではなくて、パーツ、パーツをきちんと研究課題を明確にしてグレードアップしていけば、最後にきちんと加速器としてまとめたときに実証ができるという利点があります。ですから、個々の要素技術を並行してできる利点もありますので、こういう研究開発はぜひ続けていくことが重要だと思います。
 その際にもう一つ、JAEAさん単独ではなくて関係するメーカーを取り込んでやることが、技術が社会実装に対して非常に明確にできる点ではないかと考えています。ですので、TEF-T、TEF-Pについては、本当にそういう施設が必要か、その最後の最後で確認する考え方もあるので、そこの考え方はもう少し練っていただいたほうがいいかなと思います。
 あと、ADSを用いた核変換に対する考え方ですけれども、今、国のほうが原子力の2050年以降のビジョン等を明確にしておりません。しかしながら、1970年代と違うのは、やはりMAを分離回収して核変換するということは、日本の高レベル放射性廃棄物の処分にとって非常に重要です。これはなぜかというと、技術論だけではなくて、原子力は常に技術論で議論されているのですけれども、やはり一般の方たちから原子力についての賛同を得るためには、社会科学的な観点が必要です。それには、やはり高レベル廃棄物の貯蔵期間を短くできるというのは安心に対する材料になりますので、MAの分離核変換がすごく重要です。それを高速炉でやるのか加速器でやるのかという議論ですけれども、今、国はまだそういう議論を進めるのは時期尚早だと言っているのですが、私は今やらなかったら高速炉サイクルは多分永遠に成立しないと思っていますが、そうなると、先ほど辻本さんも言われたように、軽水炉時代がすごく長く続きます。そうすると、どうしても処分場という観点になったときに、やっぱりMAは取っておかなくてはという基本的な社会ニーズが上がってくることも考えると、この研究開発は地道に続けることが重要だと思います。
 実は、日本原子力学会の核燃料サイクルの成立性の研究専門委員会で、この辺のことを委員は、産官学、かなりいろいろなメンバーが入って、チャタムハウスルールといって自分の組織の利益代表ではない形で議論したところでは、やはり高速炉の燃料サイクルは経済性のあるものが必要だと。だけど、それが成立するとは限らないといったときに、軽水炉時代が長く続いたら、やはりMAを回収して分離核変換するということは、原子力をやめるという選択肢が出てきたときに非常に重要です。並行してというよりは、必ず補完してという立場で技術開発をするべきだと考えておりますので、先ほどから申し上げていますように、処理装置としての加速器を進めていただきたいと思います。
 以上です。
【中島主査】  藤田委員、最後のところが切れてしまったようですが、大体趣旨は通じたかと思いますので、よろしいでしょうか。
 藤田委員、どうもありがとうございました。
 山本委員、お願いいたします。
【山本委員】  名古屋大学の山本です。
 かなりいろいろあるのですけれども、事務局さんに最初にお伺いしたいのは、今日ここでは要点だけお話しして、後で論旨を文書で提出するということでもよろしいでしょうか。
【鈴木原子力課室長】  はい、お願いします。
【山本委員】  了解です。
 要点だけお話ししたいと思います。
 まず、一番最初、群分離・核変換の基本的な考え方ですけれども、この重要性は現時点で変わっていないと思っていますが、やりたいことが基礎研究なのか実用研究なのかがよく分からなくて、実用化を目指すのであれば今の延長線上にはないと思います。つまり、研究開発を加速しないと実用化ができないと私は思います。
 あともう一つが、さっきから話に出ていますけれども、原子力政策の不確かさが大きいということを考えると、核燃料サイクルのレジリエンス性というか柔軟性というか、そういうのも観点に入れて考えないといけないかなと思います。
 二つ目が研究開発マネジメントに関する話で、従来の基盤研究は、どういう研究をやって、原型炉を作って実施炉を作ってみたいな流れはもはや時代の社会情勢に合っていなくて、例えばSMRとか核融合で最近見られるように、一点突破型とか、何というかニーズドリブンの開発にしないと実用化はできないと思います。つまり、研究開発マネジメントを抜本的に見直さないと駄目だろうと私は思います。
 実験をやらないと分からないことももちろんいろいろあるのですけれども、計算科学技術をうまく活用して、何を本当に実験で求めないといけないのかというのをきちんと特定するアプローチに切替えたほうがいいと思います。
 それで、ADSですが、先ほどから皆さんがおっしゃっているように基礎的なというか学術的な研究はいろいろ進められておりますけれども、私の感覚だと実用には相当距離があって、簡単にはいきませんねというのが私の感覚ではあります。特に、加速器を含めて難しい技術開発要素が多いと思います。
 あと、もう一つの重要なポイントが安全性の話ですけれども、今日はあまり話が出てこなかったのですが、やっぱりあの1Fの事故から10年たって、我々としては苛酷事故であるとか安全設計に関する理解は相当深まっているわけで、そういう意味では現時点の知見を持って、例えば高速炉とADSの安全性を比較した場合に、本当にADSはより安全と言えるのかというところはかなり慎重な議論が必要で、と申しますのも、ADSというのがやっぱり原子炉でいろいろ言われてきた深層防護設計にのっとっていないところが何点かあって、例えば一例を挙げますと、ビームダクトがベッセルを貫通しているのですけれども、それはすなわち物理障壁が一つ少ないのと同じなのです。じゃあ、そういうところを補って余りあるほどのメリットがあるのかというのは、次回以降でもいいかもしれないですけれども、議論が要ると思いますし、そういう議論をするときは、やっぱり日本は外的事象のリスクがすごく大きいので、外的事象に対してそこまで含めてリスクプロファイルの評価をしてどうなのかを見ないと、なかなかバランスのとれた議論にはならないと思います。
 あと、分離技術ですけれども、これは私はあまり専門ではないのですが、第三者的に見ていると、原理立証のためのラボレベルの取組は非常に盛んに行われておりまして、しばらく前に藤田さんが行われていたImPACT等があって、結構活動としては活発だと思っています。
 ただ、一方で、実スケールへの拡大を考えたときに、何が課題なのかもまだ特定されていない状態だと私は理解しておりまして、実スケールのプラントがどれぐらいの規模になるのかというのはあまりイメージがついていないのですけれども、まだそこにはかなりの距離があるとは思っております。
 燃料技術というのは、基礎的な技術開発がいろいろ行われているのですけれども、それをインテグレートしてものを作れるかというと、まだ分からないところがあって、逆に言うと何ができないから燃料製造ができないのかというのは、まだあまりうまく可視化できてないと思っています。
 さっきから実用化の話をしているのですけれども、今のこの現状というか今の社会情勢では、民間の事業者がADSの話に乗れるような状況では全くないので、そこのところはやっぱりよく考えないと駄目だと思います。じゃあ、JAEAが単独で実施するのですかというと、それもかなり難しいところがあるでしょうから、その辺も含めて検討が要ると思います。
 私からは以上になります。
【中島主査】  ありがとうございました。
 いろいろな御意見がありまして、どういうふうにこれからまとめていったらいいのだろうかと思っているところですが、一応私、主査ではありますが、簡単に考えというか、そんなに大きなところはないのですけれども、述べさせてもらいます。皆さんも認識されているように、こういった群分離・核変換技術は重要であるということは同じと思っておりまして、特に藤田委員からもありましたけれども、例えば一般への社会受容性、要するに高レベルの廃棄物が減るとか管理が楽になるとかそういった観点から、そういった技術をしっかりやっていくことが必要であろうと。ただ、皆さん同じことですけれども、日本の原子力の政策というか先行きが不透明な状況のままで、どうしようかというところです。
 個人的にはというかみんなも同じかもしれませんけれども、原子力依存度は低減すると言いつつも、多分やめるという選択肢は日本はなかなか取れないとは思っております。そういった中では、まずはそういった技術をしっかりと持っていることが重要で、特に大学という立場でいくと、前回こういった議論をしてからでも相当年数が経って、人だって入れ替わるわけですけれども、そういった技術とか知見をしっかりと継承して、必要があるときに使えるようにしておくことはやっぱり大事だという。
 社会の実装というか実用化というところは、確かに山本委員もおっしゃるように非常にまだまだバリアはあると思うのですけれども、そこに向けての、少なくともそういったことができる、取り組む人材をしっかりとつくっておく、あるいはそれに必要な基盤としての基礎的な研究開発ができるところは整理しておくというところは必要なのではないかというのが今の考えです。
 時間は一応12時までとはなっておりますが、もうちょっとだけ延長して、今まで皆さんに御意見をいただきましたけれども、これについて、ほかの委員の意見を聞いて何か言いたいとかあれば少しフリーな意見交換を行いたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
 竹下委員、どうぞ。
【竹下委員】  なかなか将来の原子力が読み切れないところでこういう話をするのは難しいというのはよく分かるのですけれども、でもこういうシステムがどう役に立つのかというのは、常に評価をしておかなくてはいけないのです。システム評価がしっかりされていなくてこの論議をするのは無理だと思います。将来、社会実装するという意気込みでやらない限り、基礎研究をただ続けますというのではなかなかモチベーションも上がらないと思いますし、ぜひとも次回、またその次かもしれませんが、そういうところをJAEA側からしっかり示していただきたいと思います。
 そうしないと、結局工学的な評価が全くできません。いろいろなシナリオがあるかもしれませんが、その中で今考えられることをせめて示していただくことが重要で、高速炉の開発もJAEAがやっているわけですから、それと並列してADSを開発していった場合、高速炉が将来開発されていく場合、いろいろなお考えをJAEA側が持っていると思われるので、それを全て比較できるようにしていただければ判断はある程度できると思いますので、ぜひともそこはお願いしたいと思います。
【中島主査】  どうもありがとうございます。
 そのほかいかがでしょうか。
【小竹委員】  小竹ですけど、よろしいでしょうか。
【中島主査】  はい、どうぞ。
【小竹委員】  先ほどから、確かに今原子力政策が曖昧というか明確ではないから、軽水炉は今後長く続くというお話があるのですけれども、その一方で、御存じのようにカーボンニュートラルという動きの中で、世界は原子力と再エネでCNを実現していくという方向に動きつつあるわけです。そういう中で、まず我々がやるべきことは、日本として、特に原子力を進めていく上でどういうことに重点を置いて投資していくか。特に日本の限られた資金、マンパワーの中で、重点化していかないと、いろいろ手をつけても途中で頓挫することは目に見えるわけです。
 それで、私が先ほど申し上げたアメリカとかフランスは、2003年あるいは2012年頃にそういう判断をして、高速炉でやっていけるのだと。特に、先ほどから議論になっているマイナーアクチノイドの核変換というか燃焼であれば、高速炉でも十分できるという話が、少なくともアメリカとフランスと日本の、あるいはロシアもそうですけれども、そういう認識になってきているわけです。そういう中で、本当にこのADSをどうするかというところはきちっと考えておかないといけないと思うのです。
 先ほど竹下先生もおっしゃったように、社会実装していく実用化のシナリオがあればもちろんいいのですけれども、そのときになぜアメリカとフランスと違った結論になるのかを考えなくてはいけないわけで、逆にアメリカ、フランスが、ADSができないといったところについて、日本が独自にブレークスルーできているというものがなければ、判断を変えることは難しいと思うのです。
 私も、そういう意味で、次回その辺りをきちっと説明していただきたいと思っております。
 以上です。
【中島主査】  ありがとうございます。
 そのほか、よろしいですか。
 お二人の意見で、次回に向けてのある程度の方向性というか、そういったサジェスチョンがございました。
 小山委員、どうぞ。
【小山主査代理】  国内ではこの分野から外れていたのですけれども、海外とはこの関係は結構話をしていて、2017年にCEAの燃料サイクル研究の審議会に呼ばれて、向こうの研究開発とか方針変換のところの現場にいたので、守秘義務的な事実的な詳細は話せませんけれども、そういった方向性についてお話ししますと、やはりFBRの開発は長期的な課題ということで、基本的にはアメリカもフランスも一致しているのは、MAを含まないプルトニウム単身での開発を進める、それで電気の発電方法として必要性があったときのために備えてやっていくと。一方、MAについては、アメリカは既にしばらく前からMAはあまり熱心ではないですけれども、フランスもMAの研究開発が一応終わって、これからはCEAの予算ではMAのことはやらないと。それは、EUの予算でMAの研究をするという仕分になってきているわけです。
 その中で、フランス、アメリカという非常にリーディングな国でやっていることと必ずしも歩調を合わせなくてはいけないかどうかというのは、僕はまた別の考え方があると思っていまして、その上でも、竹下先生もおっしゃっているのですけれども、ADSが入ることの利点をもうちょっときちんと明確にして、それを例えば実用化の観点でいうと今どこにあるのかということをきちんと定量的に出して、その上で、私がCCS、カーボンキャプチャーストレージの話を申し上げましたけれども、例えば火力にCCSを入れるのと同じように、原子力軽水炉サイクルの中にこれを入れたときに、これだけのコストはかかるのだけれどもこういう便益がありますよと、その辺を定量的に示していかないと、なかなか国民の理解も得られないと思います。
 そういう点で、私はこの研究開発を進めることに対してポジティブですけれども、そこの進め方としてもう少し分かりやすく進めていかれたらと考えております。以上です。
【中島主査】  ありがとうございます。
 藤田委員、どうぞ。
【藤田委員】  今、海外のお話が結構出てきたのですけれども、欧米は処分場のスペースにそれほど困っていないということもあるので、そこは海外でも困っているところを見るべきだと思うのです。私も実はIAEAの放射性廃棄物の負担軽減というプログラム(Technical Meeting and Consultancy Meeting on Advanced Fuel Cycle for Waste Burden Minimization 、2016年6月から2020年2月まで5回開催)に参加したときに、これ(分離・核変換)が必要だと言っていたのは韓国、中国、日本です。米国とフランスはMA分離・核変換は必要ないが、アジアの人口密度の高い国では、MAは回収して核変換する必要があって、そこを高速炉かADSにするかというところはきちんと広く議論しなくてはいけないと思うのです。
 ただ、JAEAさんは、先ほどから私が申し上げているように民間が入るのは大変といっても、民間にそれだけの研究開発費を供与することによって民間が入ると、社会実装のターゲットも全然変わってきますので、民間の力をうまく利用するということで、原子力では全然それができておりません。逆に、一般産業ではそれがうまくできたものが社会実装できていると。ですから、いろいろな工夫が必要だと思うのですけれども、民間を入れて社会実装ができるようなターゲット、スケジュールをぜひ立てていただきたいと思います。
 以上です。
【中島主査】  ありがとうございました。
 あと、そのほかよろしいですか。
 これからどうまとめて次回に持っていくか、非常に難しいところではありますけれども、今日皆さんからいただいた意見を踏まえて、また事務局とも相談させていただいて、特にどんな役に立つのだという関係が見える形での説明をできるような形で、それを踏まえた議論ができるようにしていければいいかなと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 ほかに、この機会で言いたいことがある人はいませんか。よろしいですかね。
 それでは、予定していた議事としてはこれで終了でございます。
 ほかに御意見がなければ、事務局にお渡ししたいと思います。よろしいですか。
あとは事務局からよろしくお願いいたします。
【鈴木原子力課室長】  本日はありがとうございました。
 御意見につきまして、追加でいただける場合は、来週水曜日中までに出していただければと思います。出していただければ、原子力機構と相談し、次回以降の資料発表に反映していきたいと思ってございます。
 本日の議事録につきましては、メールにて御確認いただいた後にホームページに掲載いたします。また、次回のタスクフォースについては、9月3日を予定しております。
 以上でございます。
【中島主査】  今日はお忙しいところ御参集いただきましてありがとうございました。
 これで、タスクフォースを終了といたします。お疲れさまでした。

―― 了 ――

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