第8期地球観測推進部会(第1回) 議事録

1.日時

令和元年5月29日(水曜日) 16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 部会長の選任及び部会長代理の指名(非公開)
  2. 地球観測推進部会の議事運営について(非公開)
  3. 我が国の地球観測の現状について
  4. データ統合・解析システム(DIAS)と活用事例について
  5. 海洋プラスチックに関する取組について
  6. 地球観測に関する政府間会合(GEO)への対応について
  7. 第8期地球観測推進部会の活動について
  8. その他

4.出席者

委員

赤松委員,上田委員,浦嶋委員,春日委員,河野委員,小池委員,三枝委員,関根委員,高村委員,舘委員,中北委員,中田委員,堀委員,武藤委員,六川委員,若松委員

文部科学省

佐伯研究開発局長,千原大臣官房審議官,林開発企画課長,横地環境エネルギー課長,佐藤環境科学技術推進官,葛谷課長補佐,池田地球観測推進専門官

オブザーバー

内閣府 太田参事官

5.議事録

・部会長の選任までは佐藤推進官が議事を進行。
・議題(1)(2)は非公開。
・資料1の名簿をもとに,委員の紹介。

議題(1)部会長の選任及び部会長代理の指名(非公開)
科学技術・学術審議会令第6条第3項の規定に基づき,委員の互選により,小池委員が部会長に選任された。また同第6条第5項の規定に基づき,春日委員が部会長代理に指名された。

議題(2)地球観測推進部会の議事運営について(非公開)
地球観測推進部会運営規則について事務局より説明。
以降,運営規則第5条の規定に基づき公開。

【小池部会長】  それでは,これから第8期の議論を始めたいと思いますが,部会の発足に当たりまして,文部科学省から御挨拶をお願いしたいと思います。佐伯局長,よろしくお願いいたします。
【佐伯研究開発局長】  佐伯でございます。委員の皆様方におかれましては,大変お忙しい中,この地球観測推進部会の委員をお引き受けいただきまして,誠にありがとうございます。また,本日は暑い中,文部科学省まで足をお運びいただきまして,心より感謝申し上げます。今期初めての会合ですので,一言,御挨拶申し上げます。
 地球観測推進部会は,政府全体の戦略でございます「地球観測の推進戦略」を踏まえまして,より具体的な観測実施の方針を御議論いただいております。前期の第7期の部会では,パリ協定を踏まえた気候変動対策に貢献する温室効果ガス観測及びデータの利活用について御提言をおまとめいただきました。パリ協定が実施の段階を迎える一方,温暖化の影響と考えられますような,大きな被害をもたらす極端な気象現象が頻発するようになってきておりまして,これらの対策の基盤をなす地球観測の重要性がますます高まっております。昨年秋には,地球観測に関する国際的な一大イベントでございますGEO Week 2018が,日本で初めて京都において開催されました。この会合では,地球観測がこれから貢献すべき国際枠組の優先3分野であります,SDGs,パリ協定,仙台防災枠組2015-2030を中心に,ユーザーの視点も交えた活発な議論が行われました。閣僚級会合を含みますGEO Week 2019につきまして,今年の11月にオーストラリアで開催されますが,我が国の取組や今後の展望等につきまして,この部会でも御議論いただきたいと考えております。
 また,現在,第6期科学技術基本計画の策定に向けた議論も始まっております。地球観測に関しても様々な検討を進めていく必要がございまして,特に具体的には昨今の地球観測をめぐる国内外の動向を踏まえながら,平成27年8月にお取りまとめいただきました「今後10年の我が国の地球観測の実施方針」について,こちらの部会でフォローアップの御議論をいただき,第6期の科学技術基本計画に反映させるように考えていきたいと思っております。
 委員の皆様方には忌憚のない御議論をいただきまして,これからの地球観測の具体的な実施が効果的に行われるようになりますようにお願い申し上げまして,私の御挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
【小池部会長】  佐伯局長,どうもありがとうございました。
 これからこの議題に沿って地球観測推進部会がどういうことを所掌しているか,どういうことが問題になっているかについて議論をはじめたいと思います。その前に御提案なのですが,今,局長から御挨拶いただきましたので,委員の皆さんから,お一方1分ずつ,最後に御発言いただきたいと思います。最後にその時間を是非設けていただくよう事務局にはお願いしておりますので,御準備いただきながら議論に参加いただきたく,お願いいたします。よろしいでしょうか。

議題(3)我が国の地球観測の現状について
 それでは,議題3「我が国の地球観測の現状について」でございますが,事務局からまず資料の御説明をお願いいたします。
【葛谷課長補佐】  資料3に基づき,御説明させていただきます。まず2ページ目から御説明させていただきます。全体の構成といたしまして,国内,国際,最近の動きという形で,それぞれ1枚ずつまとめております。
 まず,国内の地球観測に係る現状について御説明させていただきます。これにつきましては,過去の経緯,地球観測に係る経緯も踏まえながら御説明させていただきたいと思います。机上資料の5番目のところに,当時,総合科学技術会議でおまとめいただきました「地球観測の推進戦略」というものがございます。これにつきまして,我が国の地球観測の方針ということで平成16年にまとめられたものでございます。この中には,重点化すべき点,国際的な枠組みへの対応などがまとめられております。
 資料にまた戻りまして,p.2の右側の方に図があると思いますが,オレンジのところで,「総合科学技術・イノベーション会議」というところがございますが,「地球観測の推進戦略(平成16年12月)」の下に「レビュー」というのがございます。これにつきましては,10年経過したタイミングでレビューが行われております。このレビューを踏まえまして,本部会において,「今後10年の我が国の地球観測の実施方針」をまとめております。現在,この方針に基づきまして,我が国の地球観測が実施されている状況でございます。
 この実施方針につきましては,机上資料6にございまして,大きく2つの点についてまとめられております。資料2の左側に内容を書いておりますが,1つ目が「課題解決型の地球観測」,2つ目が下側で「共通的・基盤的な取組」という形でまとめております。こちらの「課題解決型の地球観測」につきましては,課題を8つに分けておりまして,それぞれについて必要な地球観測について取りまとめております。具体的にどのような観測が行われているかにつきましては,毎年度,実施計画というものをまとめております。昨年度の計画につきましては,机上資料の7番にございます。こちらにつきましては,課題ごとに,どの省庁がどのような観測内容を,どのような方法で,予算などどのぐらいを使ってやっているかという形で,全体を取りまとめております。まさにこの実施計画というものが,我が国における地球観測の現状を取りまとめたものになっております。今年度につきましては,次回の観測部会において報告を御予定しております。
 続きまして3ページ目について御説明させていただきます。国際的な取組になります。地球温暖化や防災,エネルギー等の状況を把握するためには,我が国だけではなくて世界中の国や機関が,人工衛星・地上・海洋観測によって,様々な観測が行われております。こちらは左側の図に書かれているとおり,様々な衛星,あるいは海洋に関してはブイ等による観測などが行われております。また,気候変動等の課題解決に向けた取組については,一層効果的にするために,観測データや科学的知見に各国が容易にアクセス・入手することができるよう,複数のシステムで構築されたGEOSSというもの,ここに書かれております全球地球観測システムというものが構築されております。我が国からは,DIAS,右側にございますけれども,データ統合・解析システムというものが統合されておりまして,世界的な観測データ・情報の共有に貢献しております。DIASにつきましては,次の議題において具体的に御説明させていただく予定でございます。また,GEOSSを推進するための国際的な枠組みとして,p.3の下側にございますけれども,地球観測に関する政府間会合(GEO)というものがございます。こちらにつきましては,今年は閣僚級会合が11月に予定されております。本件についても別途,最後の議題がございますので,後ほど具体的に説明させていただければと思います。
 そして,続きまして4ページ目,最後のスライドになりますが,本部会における最近の動きについて御説明させていただきます。参考資料というのがp.6以降にございますけれども,6ページから9ページにかけてです。気候変動に関する主な動きが書かれております。p.6に関してはパリ協定に関して,p.7に関して,パリ協定を受けた我が国の主な動向,8ページには,それを受けた気候変動適応法と適応計画,そしてp.9には,気候変動適応計画に対応するために,文科省と気象庁による懇談会に関する情報がございます。このような国内外の動きを受けて,昨年度,「パリ協定を踏まえた気候変動対策に貢献する温室効果ガス観測及びデータ利活用」という提言をまとめております。具体的には3ポツというところで,提言が大きく3つございます。1つ目は,人工衛星,航空機,船舶,地上の既存の観測に加えて,実施中若しくは新規に開始する観測とも協力し,効果的な観測の拡充とその維持を図るべきとあります。2つ目は,グローバル・ストックテイクのタイミングに合わせて,人為起源・自然起源の排出量・吸収量の推定精度を上げつつ,5年ごとに公表する仕組みを国内に構築すべきと。そして最後に,温室効果ガス観測データを可能な限り迅速に収集整備し,適正な品質管理を行い,高度な分析システムと統合する手法の開発を推進する体制を整備すべきとまとめております。こちらにつきましては,昨年,内閣府の総合科学・イノベーション会議にも説明しております。
 最後になりますが,最初のスライドで御説明しました実施方針がございますけれども,こちらにつきましては,策定後4年を経過しておりまして,今期,フォローアップする予定でございます。このフォローアップにつきましては,内閣府で今,議論しております次期基本計画にも関係するものと考えております。フォローアップの具体的な方法等については次回御説明いたしますが,関係府省の方々に御協力いただき,本部会で御審議いただく予定でございます。
 簡単でございますが,地球観測をめぐる現状について説明を終わらせていただきます。
【小池部会長】  どうもありがとうございます。ただいまの御説明につきまして,御意見,御質問等ございましたら,どうぞお願いいたします。どうぞ,三枝委員。
【三枝委員】  国立環境研究所の三枝です。詳しい御説明をありがとうございました。
 ただいま御説明いただきました項目のうち,資料4の,パリ協定を踏まえた観測及びデータ利活用のところで,1点補足させていただきます。この提言につきましては,私どもも温室効果ガスの観測に取り組む機関の者ですので,詳しい提言をおまとめいただき,総合科学技術・イノベーション会議へ報告を出していただきまして,本当にありがとうございました。ここから実際に,本当によい観測の実施に結び付けていくことが必要と考えております。
 今年度になりましてからの情勢について1点補足いたします。今年5月,京都で行われましたIPCC総会,これは連休後のことでありますが,ここで1点,温室効果ガスのインベントリガイドラインの改訂という動きがございました。これは何かと申しますと,各国がこれからパリ協定に従って,国別の温室効果ガスの排出量を,ある算出方法に基づいて報告していくものなのですけれども,そのガイドラインの改訂があったということです。これまでは,温室効果ガスの排出量については,各国がエネルギー消費量等の統計データから求めるものとされており,今後もそれが主な算出方法とはなりますが,地球観測との関係で言いますと,1点,非常に新しい第一歩がありまして,このガイドライン改訂版のオーバービューの中に,温室効果ガスの大気観測とインバースモデルを使った排出量・吸収量の推定結果を,国別報告の品質管理や検証システムの一部として,従来のインベントリと比較可能なデータとして利用し得るということが記されたということが挙げられます。温室効果ガスの地球観測は,これまで研究レベルでは数多くの研究に非常に重要なデータとして使われてまいりましたけれども,国別の報告という,これから世界各国が重要視する報告の中に,温室効果ガス分野の地球観測のデータも大いに利用し得るという方向性が公に認められたことですので,私どももこれに十分に活用できるような,地球観測データの精度を高め,時間空間分解能を上げて,世界の各国が利用できる形で提供していけるようになりたいと強く希望しております。引き続きどうぞ御指導をよろしくお願いいたします。
 以上です。
【小池部会長】  どうもありがとうございます。私も新聞で拝見して,大変すばらしい一歩だなと思いました。地球観測というものが,各国の意思決定,世界全体の意思決定にきちっとコミットできるということが合意されたわけです。三枝委員は,当時はまだ委員ではいらっしゃいませんで,国立環境研究所の御担当としてこの委員会でいろいろ御説明いただいたわけでございますが,この提言も何かしらお役に立っているものと思います。地球観測の果たす役割が非常に大きく求められている中,今後はその確実な実施に向けて,是非気を引き締めて,皆さんと一緒にやっていきたいと思います。どうもフォローアップをありがとうございます。
 他にございますでしょうか。よろしいですか。

議題(4)データ統合・解析システム(DIAS)と活用事例について
 それでは次の議題に移らせていただきたいと思います。議題4は「データ統合・解析システム(DIAS)とその活用事例について」,まず事務局から資料4-1で御説明をお願いいたします。
【池田地球観測推進専門官】  データ利活用の観点から,地球観測・予測データの利活用を促進するデータ統合・解析システム(DIAS)について御紹介したいと思います。資料4-1の2ページ目を御覧ください。
 DIASは,文部科学省の委託事業「地球環境情報プラットフォーム構築推進プログラム」におきまして,地球環境ビッグデータを蓄積・統合解析し,気候変動等の地球規模問題の解決に資する情報システムとして開発されております。右下の図にお示ししておりますように,DIASの利用者は年々増加しておりまして,平成31年3月末の新しい情報ですと,4,792人の利用者がおります。
 3ページ目を御覧ください。こちらはDIASの体制図となっております。DIASには,基盤システム,アプリケーション開発,研究開発コミュニティーのそれぞれの階層にICTの専門家がおりまして,DIASにおいて,ICTの専門家と協働して研究開発を進めることにより,効果的・効率的に成果を創出することができます。
 4ページ目を御覧ください。DIASにリアルタイムで蓄積されているデータです。ひまわり8号,アメダス,ライブカメラ画像など,各種データがリアルタイムでDIASに蓄積されております。また,次のページにありますように,CMIP5,d4PDFなど,約50の気象・気候変動予測モデルのデータセットも投入されております。
 最後の6ページ目を御覧ください。防災,生物多様性,健康など,DIASは様々な分野に活用されております。この中の浸水予測につきまして,5月20日にプレスリリースが行われ,多くのテレビ番組や新聞で取り上げられました。この後,リアルタイム浸水予測システムの開発者でいらっしゃいます関根委員から詳しい御説明があります。DIASの紹介は以上になります。
【小池部会長】  ありがとうございました。続いて関根委員から,資料4-2の御説明をお願いしたいと思います。
【関根委員】  説明の最後に動画を御覧いただきたいと思いますが,それまでは紙の資料を御覧いただきながら説明させていただきます。
 お手元の資料4-2を御覧いただきたいと思います。これは,先週月曜日にプレス発表をした際に作成した資料とほぼ同じものです。
 私が開発しました「精緻な都市浸水予測システム」のことをS-uiPSと呼ぶことにしています。これを2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでにリアルタイム化して社会実装することが当面の目標でした。これは,道路の交差点毎の浸水の状況をリアルタイムで予測してお知らせするシステムです。これを実現するのが夢です,とどこかで申し上げたようで,DIASの中心人物でいらっしゃる小池委員,それから喜連川先生のお目に留まり,その夢を実現しようと言っていただいてから約1年半で,今日の状態までにたどり着き,ついに実現することとなりました。
 研究ならびに社会的な背景については,長々とご説明する時間はありませんが,ご承知のとおり今,地球規模の気候変動のさなかに我々は暮らしているわけです。来年,東京でしかも雨季にオリンピック・パラリンピックを開催するわけですから,期間中に豪雨被害に遭う可能性は否定できませんし,今の時点で確かなことを言うことは誰にもできません。ただし,浸水が起こることになってもその20分前に状況をお知らせすることができれば,対処して難を逃れる可能性は増すことになります。
 都市は人が設計し創り上げてきた人工的な空間です。設計したということは,インフラ施設についても様々な正確なデータが残っています。これらをすべて入力し,詳細にわたってしっかり計算しようとすれば,予測ができないはずがありません。しかし,数年前の時点でもそれはただの夢である,などと言われてきましたが,DIAS上でこれを可能にすることができ,ここでご紹介できるようになったことをとてもうれしく思っております。ただし,豪雨の予報がどの程度正確にできるかという課題は今も残っているのかと思います。今後に期待したいと思います。
現時点でできあがりましたのは,東京都23区全域のリアルタイム浸水予測システムです。ここには,実在する(猫道みたいな路地も含めた)すべての道路・すべての下水道・神田川に代表される都市河川,ならびに環七(都道環状七号線)地下調節池などの都市インフラすべての情報を取り込み,実在の東京をコンピュータ空間に忠実に再現できるようにした上で,そこに降り続いた雨水の流れを原理に基づき正確に解くことにしました。これには,各家庭から伸びている直径が25センチ程度の下水管から,地下鉄のトンネルスケールの大口径の幹線下水道までの全ての管路やポンプ場・水再現センターなども含まれています。この計算には膨大なデータを取り扱うことになりますので,私たちの研究室規模で買えるコンピューターではどうにも遅くて埒が明きません。そうした状況下で2017年,文部科学省のDIASのFS研究に採択され,以後,東京大学の喜連川先生ならびに喜連川研究室の生駒先生・山本先生とともに取り組んできましたので,ようやく実現することができました。文部科学省ならびに喜連川先生にはこの場をお借りして御礼を申し述べたいと思います。
現時点では30分先を10分ほどで計算して配信できることになりましたので,実際にイベントが起こる20分前には状況をお知らせできることになります。この20分がリードタイムということになります。このリードタイムをより長くするためには,豪雨の予報データを,もう少し先の時間まで精度を上げていただく必要があります。
 この方法の一番の特徴は,仮定・仮説や数字合わせのパラメータなどが一切持ち込まれていない点にあります。原理のみに基づいて解いているがため,パラメータのチューニングが不要であり,それゆえに将来発生する記録的な豪雨に対しても同じ精度で予測ができることになります。精度検証も続けてきており,十分に信頼できるものになっていると考えていただいて結構です。
 このシステムは,都市の浸水を予測する世界で唯一のシステムであり,これ以上のものをつくるのは難しいと信じるほどに練り上げてまいりました。そういう意味で,究極的なシステムと書かせていただいております。
 次に具体的な話に移っていきます。資料の8ページに概念図が描かれていますが。都市に降る雨とは道路・街区あるいは都市河川のいずれかに降ることになりますので,その雨水の流れは黒の矢印に相当します。ところが,都市河川に流れ出た水は最終的には東京湾に出るのに対して,もし高潮が発生すると赤の矢印のように海から都市河川,都市河川から下水道へと遡り,地上に出てくることになります。河川の水が直接あふれ出ることもあり得ます。こうしたときに,建物の配管に逆流防止弁を付けていないとその水が風呂場やシンクに戻ってくるということも起こり得ます。そのような仕組みになっていますので,都市に降った雨や海からの高潮の水が,経路上のいずれかの場所にどのくらいの量だけ存在し,それがどちらに向かってどのくらいの速度で流れているのかを計算すれば,浸水や洪水がいつどこで発生するのかが分かるのです。
 
 今日は雨が降っておりませんので,リアルタイムで浸水の状況を御覧いただくわけには行きませんので,過去のイベントの再現計算の結果をご紹介します。これは2017年7月23日に発生した豪雨時の浸水の状況を動画にまとめたものです。これから動かしますので,御覧ください。画面の左上に小さく書かれているのが一分毎の雨の強さの空間分布です。赤色になりますと1時間に100ミリを超える強さの雨が降っていたことになります。一方,右側の図は全ての下水管の中の水の充填状態を色分けして描いたものです。赤色になりましたら,下水管から空気が完全に抜け出して水で満たされた状態(満管状態)になっていることを意味します。状況によれば下水道のマンホールのふたから水が吹くというようなことが起こっているということになります。
 東京の下水道は1時間当たり50ミリの雨を設計値にしているので,その雨を下回るところまで強さが弱まりますと,下水管の中の水は流れてなくなり,速やかに空の状態に戻ります。一方,1時間に100ミリの強さの雨もまれではなくなってきましたので,これほどの雨になりますと,短時間で下水道が水で満たされるようになります。この結果,地上の水が下水道に入らなくなり,結果として地上で浸水が起こることになります。
 この図の右側には,浸水深の空間分布と都市河川の水面高の状況を色分けして描いたものが示されています。局地的に80センチを超えるような浸水になっている箇所があったことが確認でいました。また,予測精度に関して調べた結果にふれますと,目黒川で発生した洪水の状態がかなりよく予測できていることが分かると思います。洪水のピークまでしっかりと一致しており,十分精度があると判断されます。それから,道路上の浸水深についても予測誤差は5センチ以内というのが現時点で確認されている精度です。
 このほか,S-uiPSによれば,地下空間の浸水や高潮氾濫,大河川の堤防決壊時の浸水のプロセスなどを同じ精度で予測することができますが,本日はこれについて説明することは省略します。
われわれは今後こちらのような動画を公開していくことを考えております。これは2018年8月27日の夕方に発生した豪雨時の浸水状況を表しています。右上に表示されているのが時刻です。これをスマートフォンやタブレットで御覧いただけるようにしようと思っており,自分で画像を拡大してみることができます。なお,図には道路の冠水の状況だけを表示していますが,道路で囲まれた街区内の浸水の状況も同時に計算されていることを付け加えておきます。1か月後くらいを目途に試験的に公開を始めていく予定です。
 説明が長くなり申し訳ありませんでした。言葉足らずの部分もあると思いますが,これにて終わりにさせていただきます。お時間を頂戴しましてありがとうございました。文部科学省の皆様におかれましては,今後とも御支援のほど,よろしくお願い申し上げます。以上でございます。
【小池部会長】  関根委員,どうもありがとうございました。ただいまの御説明につきまして,御意見,御質問がございましたら。どうぞ,上田委員。
【上田委員】  まず,非常に美しい画像で分かりやすかったです。私は公衆衛生の分野を担当しておりまして,DIASの資料4-1の2ページにもありますように,公衆衛生の分野では感染症や熱中症予防のためにDIASのデータが使われている。そして私も使いたい。気候変動の適応に関する法律が昨年,出来上がりまして,やはり地方自治体の方も,こういった地球観測の情報を使って,公衆衛生のために何か役立てたいという思いはある。とはいえ,実際のところ,空間情報に余りなじみのない一研究者としては,やはりDIASはまだ少し敷居が高いという状況です。
 質問は,最近,経産省から,これは衛星に関する情報ではないかと思うのですけれども,Tellusというデータプラットフォームが出て,そうすると,あまりなじみのない私どもとしては違いが分かりづらく,どのようにプラットフォームを使い分けたらいいのかという疑問がありまして,その違いと,他にも確かG-Portalとか,いろんなプラットフォームが,今出てきているところではないかと思うのです。それで,省庁が違うということだけではなくて,やはり特徴があると思いますので,その違いも含めて分かりやすく教えていただけないかと思いまして,質問を差し上げました。
【池田地球観測推進専門官】  御質問ありがとうございます。Tellusとの違いですけれども,文部科学省ということで,研究開発に主軸を置いていること。あと,先ほどの説明資料4-1の3ページにありますように,DIASにおきましてはICTの専門家が全面的に支援を行いまして,協働で研究開発を行うというのが一番の特徴になっております。ですので,アプリケーションの開発者がICTの知識を持たずとも,ここに来て研究開発を行えば,アプリケーション開発に注力して,効率よく効果的に開発が行える。そういったシステムになっております。
【上田委員】  少しそれに関連して,私も何度かDIASにアクセスして,どういったデータが使えるかと見ているのですけれども,実際にアプリを協働してできるということを,あまり存じ上げなかったので,今お話を聞いて,それはすごくいいことだと思いました。もしよければ,それはどのようにアクセスしたらいいのか,一緒に協働できるのかということも,分かりやすくお示しいただけると大変助かります。
【池田地球観測推進専門官】  個別にいろいろと使い方とか,そういったことがあると思いますので,是非DIASの事務局にお問い合わせいただいて,ケースに合った利用支援を行いたいと思いますので,御連絡いただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
【小池部会長】  では中北委員,どうぞ。
【中北委員】  よろしいですか。すみません。
 関根委員も御説明ありがとうございました。関根委員はおっしゃらなかったのですが,ここに今,入力として使われている雨の情報が,XRAINと呼ばれる国交省が作られたもので,私もその推進者の一人だったのですが,非常に高精度な多量のデータがDIASに入って,DIASの中で計算されて,それがもう今,ほぼリアルタイムで動こうとされているというところが,非常に喜ばしい。関根委員の高精度なシステムでリアルタイムに持っていくという夢も実現しましたし,非常に高精度なデータもリアルタイムで飛んで生かされていくと。システムと高精度な情報がタイアップして活用されるというのは,ますますこれから進めていけるような,非常に大事なことだと思って拝見しました。
 今の関根委員のシステムとか,あるいはThompsonのモデルとか,一部書いてありますが,DIASの中で,それ以外の分野でモデルとデータがひっついて,何か今,アウトプットを出そうと動かれているような大枠が,もしあれば教えていただきたいと思いました。今の水分野は,小池委員のプッシュ等もあり進んでいると思うのですけれども,それ以外で,衛星観測情報も含めて,単なる監視だけではなくて,先ほどの逆問題の話も少しありますけれども,何かモデルとかませた上に,それがDIASの中で動くというよさのようなものが,どれくらい今出てきているのかというのを少しお伺いしたいと思います。
【池田地球観測推進専門官】  先ほどの資料4-1の6ページですか。こちらの感染症予報とありますけれども,気候変動予測データとマラリア患者数といったデータを統合しまして,実際にそれでマラリアの感染予報といったことも行っておりますし,水に関係したことではありますが,スリランカの洪水予測であったり,そういった国際貢献での洪水・渇水予測といったことにも現在使われております。
【中北委員】  お聞きしたかったのは,もう少し他の分野で,こういうモデル,単なるオブザーブあるいはウオッチングだけではない,DIASの中でモデルが動くことのよさを生かしているところが,もう少しあったらなと思ってお伺いしました。すみません。別にまた後でも結構ですけれども,そういう活用のされ方が,ますます進むといいなと感じましたので。
【関根委員】  一言申し上げさせていただいてよろしいでしょうか。私が作ったのはモデルではございません。原理しか使っていないので,モデルとは分けて考えていただきたい。
【中北委員】  とにかく,現象を表現しているものとデータとがコンバインして,中でちゃんと動いて,しかもそれがリアルタイムだというのがDIASのすごいところだと思いますので,そういう分野が水分野以外にも広まっていくというのは非常に大事なことなので,もっとプッシュしていただいたらいいのかなと思って発言しました。関根委員の気持ちはよく分かっております。パラメタライズされていないという意味ですね。すみません。ありがとうございます。
【堀委員】  よろしいですか。
【小池部会長】  堀委員,どうぞ。
【堀委員】  大変すばらしい研究成果だと思います。
【関根委員】  ありがとうございます。
【堀委員】  1つ御質問は,今,東京23区ですけれど,これをもし関東全域に広げたときに,例えば計算機としてDIASで足りるのか,もしかしたらスパコンみたいなものを使うのかとか,計算の方の能力というのはどの程度必要とされるのでしょうか。
【関根委員】  精緻に解いてはいますけれど,あるアイデアの基でしっかりと解いている割には無駄な計算はしていません。詳しくお話をすることもできますが,とても上手に解いています。
【堀委員】  上手に解いているとか解いていないとか,そういうことではなくて,要は関東全体になったときにDIASの計算能力で足りるのか,そのときはほかのマシンを使った方がいいのかとか,若しくはDIASの計算能力を向上させた方がよいとか,そういう意味の質問です。
【関根委員】  私は詳しくはありませんので,しっかりお答えすることはできません。DIASでの高速計算の部分は東京大学チームにやっていただいており,どれくらいのコンピューターの能力があればいいのかというところは詳しくは分かりません。実際の計算は,XRAINを使った現況の計測値を基にした計算と,気象庁のナウキャストの予報雨量を使った予報の計算を同時並行で動かしていますが,お答えにはならないと思います。
【堀委員】  もっとDIASの計算能力が上がるといいということを期待した質問だったのですけれど。でも,十分に分かりました。
【関根委員】  実は横浜市・川崎市まで展開した計算も,ほぼ準備できつつあります。あとはリアルタイム化してどう動かすかというところの段階もあります。もっと広い範囲に展開しようとすると,さらに大きな計算資源が必要ということにはなります。
【堀委員】  プログラム自身に高いスケーラビリティーがないと,少し夢物語になるかもしれないので,是非その点は御注意した方がいいと思います。ハードウエアだけの問題では決してないと思います。
【池田地球観測推進専門官】  高度化も含めて,システムの設計の段階からICTの専門家が協働で実施しておりますので,もちろん必要な処理能力を見積もって設計しています。
【堀委員】  ICTではなくてコンピューターサイエンスです。
【池田地球観測推進専門官】  そういった専門家が協働する形で開発しておりますので,必要な処理能力を用意しながら進めているところです。
【小池部会長】  では一言言うと,堀委員,計算能力はもう今,アップアップです。
【堀委員】  アップアップ。やっぱりそうですか。
【小池部会長】  そこを強化しないといけないというのは,もう間違いないことだと思います。
【堀委員】  そうですか。分かりました。
【小池部会長】  関根委員の計算が実現したというのが,もう限界かなと。ですから,文科省には是非,このデータのリアルタイムの処理能力は十分ありますので,これの計算能力を高めるというのが今後の課題だと思います。
【堀委員】  大変よく分かりました。もしそういうことだったら,ほかの分野からの協力もいろいろ依頼できるのではないかと思いますので。
【小池部会長】  是非よろしくお願いしたいと思います。
【関根委員】  ありがとうございます。
【小池部会長】  正にカッティングエッジというのでしょうか,それが社会に実際の利益をもたらし始めているということで,大変すばらしい内容を御発表いただきまして,どうもありがとうございました。
【関根委員】  ありがとうございました。

議題(5)海洋プラスチックに関する取組について
【小池部会長】  それでは,次の議事に移りたいと思います。議題5は,今,非常に大きく注目されておりますし,G20でも大きな話題になっておりますが,国連をはじめとする様々な国際会議におきまして,地球規模での環境汚染,特に海洋プラスチックの議論が行われております。この取組につきまして,河野委員から資料の説明をお願いしたいと思います。
【河野委員】  海洋研究開発機構の河野です。きょうはJAMSTECにおける海洋プラスチックに係る取組について御紹介いたします。私自身の研究成果ではございませんので,完璧に質問に答えられるかどうかはちょっと自信がございません。
 まずページをめくっていただきますと,背景が書いてあります。新聞等で話題になったので御存じの方もいるかもしれませんが,2050年には海洋プラスチックの総量が,海の中にいる魚の総量を超えるのではないか。それほどの危機的な状況にあるということが言われております。1ページ目にはその根拠が書かれています。このようなプラスチックは,2枚目にありますように,住環境,観光,漁業などにも影響いたしますし,またIPBESという,環境に係る国際会議の中では,海洋生物への影響が出始めているということが言われています。もちろん,漁具へ絡まるとか,そういったこともございますけれども,外来種を運ぶなどの問題もありますし,次のページをめくっていただきますと,化学物質の汚染が懸念されています。プラスチック自身には毒性はございませんけれども,作るときに使われる添加剤が有毒な場合もございますし,またマイクロプラスチック自身が,海の中にある汚染物質を吸着するという性質がございます。こうなった場合,これを体内に取り入れますと,生物の体の中に蓄積してまいりますので,生体系の食物連鎖に沿って,上位にいる生き物にまで影響を及ぼすのではないかということが心配されているわけです。
 次のページにございますように,非常に国際的にも重視されていて,様々な取組が行われておりますが,正直申し上げて,日本はいささか立ち遅れている状況にあると認識しています。ここの表は,ちょっと薄めに書いてありますが,2017年に当機構で調査したときの表ですが,これは既にもう古いというか,こんなものではないというような爆発的な研究の広がりを見せています。最近では日本でも,S20コミュニケにも記載されておりますし,G20でも言及される見込みで,もちろんSDGsのGOAL14のターゲットの1番がプラスチックということになっておりますので,非常に重視されているということです。様々な戦略が考えられており,我が国でも海洋プラスチックごみ対策の推進に関する関係府省会議というのが開催されておりまして,海洋政策本部の中では,参与会議の中に,プラスチック対策プロジェクトチームなどが作られておりまして,方針が徐々に決められているところということになります。
 次のページをめくっていただいて,実は私たち海洋研究者としての立場で申しますと,プラスチックを減らす努力は,我々が排出を抑える,これしかございませんので,現在の政策の主流は,そちらの規制をどのようにしていくかということが主眼になっています。ただ,私たちといたしましては,出ていってしまったプラスチックの動態が全く不明のまま放置していいのかということが大きな問題だと思っています。
 最後の方の参考資料に,14というスライドになりますけれど,Missing Plasticsということが書いてあります。これは,想定される,現時点で海洋にあるであろうというプラスチックの総量に対して,研究者が何らかの対象として認知できた量というのは,たかだか1%にしか過ぎないことを示しています。ほぼ何も分かっていないという状態だと言っても過言ではない状況です。
 少し戻っていただいて,「プラごみが集積する5つのジャイア」というのがありますが,海の中には大きな循環がありまして,ごみもマイクロプラスチック等もこの循環に沿って流れてまいります。よく知られているのが,北太平洋の東側にあります,グレートパシフィックごみパッチというところで,ここには,簡単に言いますと,ジャイア,よどみのようなところがあって,ここにごみが集積すると。最近,アメリカの大統領が,日本からごみがアメリカの海岸に流れてきていて問題だと言ったのは,恐らくこれを指しているのだろうと思います。それで,この原理にのっとりますと,日本側にもよどみがございますので,ここにもプラスチックのパッチがあるのではないかということが強く懸念されています。
 その次のページを見ていただくと,これは,ごみの排出量の図です。茶色が濃いほどいっぱい出しているということで,一目でお分かりになりますように,世界的に見ても,プラごみを出す排出源としては,私たちのいる東南アジア地区というのが非常に多いということで,ここから出されたごみが東太平洋のみでなく西側にもたまっているのではないかということが懸念されますので,我が国としても是非,プラスチック問題にはきちんと取り組む必要があるであろうと考えています。
 ページをめくっていただきますと,海洋のプラスチックにとって何が大きな問題かといいますと,そもそもデータがあまりないということが問題です。実はこれまでトラディショナルな方法としてどうやっているかといいますと,プランクトンネットと称する目の細かい網を引っ張りまして,その中に入ってきた粒子,この中には動物プランクトンもいますし,大きな植物プランクトンその他,本当の海藻の切れ端とか,そういうものもございますが,それを全部,顕微鏡などで見て,プラスチックを1粒ずつ取り出して,その1粒ずつ取り出したものを分析器にかけて材質を調べる。これがトラディショナルな方法です。したがって,データがないのは当然といいますか,容易に想像ができる状況ということになります。
 これだと,人の手で拾い出すので,実は見逃しがあるだろうということもありますし,何しろ時間が掛かり過ぎるということですので,私どもとしては文科省の予算を頂きまして,一目で総量が分かるような仕組みというのを現在考えています。これは,次のページの右下にあるのですが,網をぐるぐる回して,その上から海水を流す。それで,網の上にたまったものを,ハイパースペクトルカメラという,いろいろな波長の光を一気に捉えられるカメラによって撮影することで,色と形を見て,材質によって発するスペクトルに特徴があるので,その特徴と形状などを,AIを使う,ディープラーニングのようなことを使って分別していって,走りながら数と物の種類が分かるというようなことを計画していて,2018年,昨年からですが,お金を頂いたのが昨年末の方なので,ほぼ今年度から着手して2022年度を目途に実用化するという研究に着手しております。
 もう一つの取組が,深海のごみを,写真を撮って調べるというものです。当機構には,古くは「しんかい2000」,今は「しんかい6500」という深海調査船がございまして,プラスチックごみがこれほど問題になる以前からたくさん写真を撮っておりました。覚えておられる方がいるかもしれませんが,深海底にマネキンの頭が出ているような新聞発表を随分前にしたこともあります。こういう問題がございましたので,今回改めてデータベースを総ざらいし,プラスチックのごみを様々集めて写真に撮って公表しております。将来的には,この写真を基に,海底にあるプラスチックの総量を何らかの形で算出して,実際どの程度のものが海底にいるのかというようなことまで分かるようになればいいなと考えています。
 もう一つの取組が教育・育成です。2021年から,国連の「持続可能な開発のための海洋科学の10年(2021-2030)」というキャンペーンが始まります。この中では,もちろん教育あるいは人材の育成というのが大きな話題になっておりますので,プラスチックというのは海岸に行けば目で見て分かる,取っつきやすいものということですので,啓発を兼ねまして,例えば沖縄では学習体験コンテンツを作って,若年層の方に,こういった環境保全の重要さを訴えるというようなことをやったり,東北の方では実際,高校生ぐらいを対象に浜に出て,プラスチックの数を数えて密度を調べるというようなことを展開しております。
 もう一つ,ページをめくっていただきますと,私たちとしては比較的新しいのが,市民参加型の観測というのを目指しています。プラスチックを拾って数を数えることは,比較的どなたにでもできますので,身近な学校その他の方が同じように取り組んでいただいて,方式を統一していれば,それはちゃんとした科学のデータとして使えるということ。それから,これは今検討中ですが,ヨットレースなどが行われるときに,実際,海水をフィルターの中を通してもらって,そのフィルターを回収してプラスチックの観測に寄与するというようなことを考えています。実際,レジャーで使うヨットは何万隻もございますので,こういうことができると一気にデータが増えるということで,着手しようと考えております。
 今後の課題・展望ですが,そうはいっても,海表面や沿岸の分布データというのは比較的集められつつあります。そこで,今後は国際的なデータベースを構築するということが重要になってまいります。それから特に,海洋柱と我々は申しますが,内部にあるものについてはほとんど分かっておりませんので,これは観測網を充実させていく必要があるということです。あと,今,量れるプランクトンネットというのは,メッシュ300マイクロメートル,マイクロプラスチックの中では大きい方ということになりますが,そういうものしか量れていませんので,更なる技術の開発というのも必要になります。非常に小さくなりますと,生物の血管の中に入って,それが,例えば人間で言いますと,脳幹網を抜けて脳の中にも入り得るようなサイズにまでなりますので,非常に憂慮すべき事態にあると考えています。
 あと,これから国際的にネットワークを作る上で,標準分析手法あるいはデータ標準化というのが重要になります。これについては,日本では環境省が非常に頑張っておられて,英語版のガイドラインを出しています。これが今後,国際的に比較されて,統一の方向に行くと期待しています。
 そのほか,動態の予測,生体系への影響については,今後の研究課題ということになっておりまして,現在,GOOS(Global Ocean Observing System)の中で,監視対象とすべきデータについては,Essential Ocean Variablesで指定されていますが,その中の一つに,新たにマイクロプラスチックを入れようという動きが活発化しています。特に東南アジア地区はごみの発生源でもありますし,我が国も非常に,ひょっとしたら大変な事態をもたらすかもしれませんので,本部会,GEOなどにおいても,これを積極的に取り入れていくというようなことをお願いしたいと思いますし,またGEOの中の海洋のワーキンググループの中では,これを1つ話題として取り上げる計画で,今,準備を進めているところです。
 以上です。
【小池部会長】  どうもありがとうございました。ただいまの御説明につきまして,御意見,御質問等ございましたら,どうぞお願いいたします。
 これから非常に大きな話題になっていくと思いますし,地球観測の一つの,先ほど市民の手も借りてというようなこともございましたが,科学的にもミッシングされている部分を埋めていくというのは非常に重要だと思いますので,引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

議題(6)地球観測に関する政府間会合(GEO)への対応について
 よろしければ,議題6に移らせていただきます。議題6は,「地球観測に関する政府間会合(GEO)への対応について」でございますが,事務局からまず御説明をお願いします。できれば少し短めにしていただけますと有り難いです。
【佐藤環境科学技術推進官】  それでは,大分短めに説明したいと思います。資料6,地球観測に関する政府間会合,我々はGEOと呼んでおりますけれども,この閣僚級会合等に向けた準備状況について説明したいと思います。
 1ページおめくりください。先ほども葛谷からGEOの概要の説明がありましたけれども,またおさらいになりますが,説明させていただきます。左にありますように,地球観測に関する政府間会合は,GEOSSを推進するための国際的な枠組みであります。では,このGEOSSは何かといいますと,右に移りまして,衛星,海洋及び地上観測等の,複数の観測システムからなる包括的な地球観測のシステムであります。世界各国が,衛星,海洋,地上観測を実施し,そこで得られた観測データをみんなで共有し,共有されたデータを,気候変動ですとか,エネルギーですとか,防災,生物多様性,農業等の分野に生かしていきましょうといった,地球観測の枠組をGEOSSと呼んでいます。
 こういったGEOSSを推進するための会合が,GEOです。GEOで最も大事な会合が閣僚級会合で,2年から4年に1回開催され,文科省からも政務レベルが出席しています。前回開催されましたのは2015年で,このときにSDGs,気候変動枠組条約,仙台防災枠組等への貢献について記載した「メキシコシティ宣言」が採択されています。次回は2019年,今年11月,オーストラリア,キャンベラで行われる予定になっています。
 その次に大事な会合は本会合で,毎年1回開催されています。昨年,日本で初めて開催され,同会合では,今年行われます閣僚級会合につなげるために,SDGs,パリ協定,仙台防災枠組について焦点を当てた白熱した議論が行われたところであります。
 執行委員会は年に3,4回開催されています。日本も執行委員会のメンバーとして,この会合に参加しています。それ以外に,プログラム委員会は専門家の会合で,GEO事務局は事務局の機能を有しているものです。
 次のページに移りまして,2ページ目です。これまで本会合は15回開催されました。2005年5月からスタートし,2018年10月に日本(京都)で開催されました。今年,2019年11月,オーストラリア(キャンベラ)で閣僚級会合が開かれます。この閣僚級会合と同時に16回の本会合も開催されます。
 もう1ページおめくりください。3ページ目です。去年,京都で開催されました第15回GEO本会合の結果概要について簡単に説明したいと思います。これは2018年10月に,国立京都国際会館で行われました。出席者数が約500名ということで,相当大規模な会合が行われたところであります。開催国挨拶ということで,永岡副大臣,またJAXAの宇宙飛行士の油井亀美也グループ長にも参加いただいています。基調講演として,水鳥真美UNISDRの代表にも来ていただいて,講演を頂きました。
 概要ですけれども,先ほど申し上げましたとおり,GEOが掲げております優先連携3分野,SDGs,パリ協定,仙台防災枠組の3つそれぞれについて,パネルセッション等が行われました。また,最近,商業セクターとの連携を深めましょうということで,これに関するセッションも行われました。いずれにしましても,2019年,今年の閣僚級会議につながる有益な議論が行われたところであります。
 4ページ目に移ります。いよいよ今年行われるGEO閣僚級会合についてですけれども,日程としては,11月4日から11月9日まで,サイドイベントや執行委員会,本会合,閣僚級会合といった様々なイベントが行われる予定です。場所はキャンベラです。テーマ案は,「地球観測~デジタル経済への投資」が設定されています。ここで言っている投資というのは,財政支出だけではなくて,アイデア,知見,データ等の投入も含むという概念です。
 続きまして,閣僚級会合の主な議題については,地球観測データ・情報が,いかにして持続可能性,包括的な経済成長をもたらし得るのかということについて議論してもらいましょうということで,今,調整しているところであります。具体的には,専門家から非常に大切なニーズに関する議論を喚起していただいて,これに対して,各国閣僚が,では自分の国ではこういった取組をやっていきますというような宣言を出していくというような議題がセットされているところです。閣僚級会合は,閣僚級宣言を採択するという段取りになっております。
 閣僚級会合の前に開催される第16回本会合の主な議論については,去年,日本の京都で行われたテーマと同様,優先連携3分野(SDGs,パリ協定,仙台防災枠組)に関するこれまでの実績を踏まえた,今後の活動の方向性について議論を行う予定になっています。これに加えて,世界,地域,地方というレベルでの地球観測・GEOの貢献拡大に向けた検討について議論が行われる予定です。また,ワークプログラム2020から2022の承認が行われる予定になっています。
 別紙は,今,閣僚級ワーキンググループの検討中の案ですので,これはお時間があるときに御覧いただければと思っています。
 説明は以上になりますけれども,委員の皆様におかれましては,今年のGEO Week 2019において我が国として発信すべき取組や展望について,忌憚のない御意見を頂ければと思っております。まだ議題もふわふわしているところではありますけれども,現段階において,日本としてすばらしい具体的な取組を是非世界に発信していくべきだというようなコメント等,何でも結構ですので,是非御意見を頂ければと思っております。
 以上です。
【小池部会長】  どうもありがとうございます。短めにしていただきましたので,御質疑も含めて,議論の時間が取れると思います。昔はサミットと言っていたのですけれども,4回サミットをやって,それから閣僚級会合が3回開催されました。今度は4回目の閣僚級会合ということでございますが,こういう議題,主張をするとよいのではないかという,それぞれのお立場で御意見がございましたら,どうぞよろしくお願いいたします。
【赤松委員】  それでは。
【小池部会長】  どうぞ,赤松委員。
【赤松委員】  国際航業の赤松でございます。私は民間の委員として参加しているものですから,GEOの世界が最近かなり,民間の参画ですとか,産業や社会実装の方に結構向かってきているということを,去年,一昨年あたりも感じました。そして今度の閣僚級会合でも,デジタル経済への投資ですとか,世界経済成長をもたらす,それから地域に関しての貢献拡大,そういったキーワードが非常に多く並んでいるということが見て取れるわけでして,これに対して我が国からもやはり積極的な発信をしていきたいと考えております。我が国の中でも,地球観測を,実務の中あるいは社会のシステムの中に組み込むということを結構やっておりますので,そういう例を含めて発信できればと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
【小池部会長】  どうもありがとうございます。他にいかがでございましょうか。
 前回がメキシコで2015年に開催されたわけで,このときに第2回目の10年実施計画,戦略計画がつくられて5年目ということですね。10年計画なので,2025年までのちょうど真ん中の年になります。第2期の10年実施計画が非常にうまくいっているか,ここをもっとやらないといけないのだというような議論が,特に執行委員会で閣僚宣言をこれから作っていく中では,今のような第2の出発点であるメキシコ以降のレビュー等を含めて,今後どうすべきというのは,今の段階ではどんな議論になっているのでしょうか。
【佐藤環境科学技術推進官】  まさしくメキシコ宣言において掲げられましたのは,GEOとして優先連携を定めて,それに対して貢献していきましょうということが掲げられました。すなわち,SDGs,パリ協定,仙台防災に対していかに地球観測が貢献していくのかということは,ここ数年でぐっと集中した議論が行われていると認識しています。加えて,産業分野における地球観測活用についても,例えば執行委員会や本会合に産業界の方に参加していただくといった関係が構築されています。
【小池部会長】  どうもありがとうございます。他に何かございますでしょうか。どうぞ,堀委員。
【堀委員】  ちょっと実際に困っている問題で,地球観測の防災利用なのですけれども,大規模災害になると通常2時間で国レベルの災害対策本部ができて,そのときに,大規模災害の場合には,衛星を利用した被害想定ができると,その後の初動体制が変わるので,誇張して言うと,そこで上手くいくかいかないかが,復旧の大きな経済的挙動を支配すると。大げさに言うとそういうことになります。それで,やはり衛星コンステレーション的に,世界の国の衛星が2時間を目標に災害の同定ができるようになると,ものすごく大きな恩恵があると思います。そういうことがもし可能であれば,是非このレベルでの合意につながると助かります。時間という概念が,もしかするとあまり意識されなかったので,災害に関して,特に大規模災害に関しては,2時間で何か衛星観測による正確な情報を全世界で共有できるというのは,非常に大きな目標になろうかと思います。
 以上です。
【小池部会長】  どうもありがとうございます。舘委員,何かございますでしょうか。
【舘委員】  今の件,堀委員などにお話しましたけれども,なかなか厳しい。2時間というのはものすごく,運用する方からは厳しく,実際御存じと思いますが,人工衛星は1回100分で回ると,1日2回は必ず来るのですけれども,なかなかその2時間に合うか合わないかというところがありまして,我々は一応,衛星が来るまでの1時間前までは観測要求受け付けをいたしまして,観測したら,そのデータは1時間ぐらいで出す。この2時間は基本的にキープしよう。ただ,細かいデータの解析というのはなかなかできないので,それは多少時間が掛かりますけど,そういう形で2時間であれば我々はできる。実際に,ALOS-2を使ったものは,それを実現しているところですけれども,海外がどうかという視点に立ちますと,こういう実用に使っているというのは実はほとんどなくて,研究に使っているというのはたくさんありますけれども,実用に使っているのは,恐らく私が知っているぐらいでは日本ぐらいしかやっていなくて。そういう実態だと思います。ですから,その一歩先に行くと,実用に持っていくということを議論していただくのは非常に意義があると思っています。それで,世界でそのデータを使っていくという,そこは非常に大事なポイントだと思いますが,各機関の思惑がありますので,合意を取るのはなかなか難しいというのが実態だと私は思っています。
【小池部会長】  どうもありがとうございます。日本の強みを是非前面に出して,みんなが引っ張っていくというのが,GEOの日本の立ち位置だと思います。
 若松委員,こういう面ではいろいろ御経験がおありだと思うのですが,いかがでしょうか。
【若松委員】  そうですね。本当はいわゆる災害直後の即応体制に衛星がダイレクトに使えるといいのですけれども,今おっしゃったように,なかなか難しい課題もあるので,どちらかというと平時のハザードマップ作りだとか,そういうところで,まずお役に立って,プラス即応体制ができるために何をしていくかというのを議論していくということではないかなと思います。
【小池部会長】  どうもありがとうございます。予めハザードマップを作っていると,その地域の災害の解析はすごく速くできますので,そういう相乗効果をちゃんと持っていくことも大事だと思うのですが。
【舘委員】  正におっしゃるとおりだと思っていまして,我々も東日本大震災のとき,ハザードマップを事前に作っていましたので,それを展開するという形で,動きが速かったのです。あるいはハイチの大地震のときも,我々はハザードマップをすぐ作りまして,実際に海外の派遣隊に使っていただくというようなこともやりましたので,事前に準備しておいて,それをいざとなったときに使うということは,この一環でもできる話なので,そこは皆さんやりませんかというのはあるかと思います。
【小池部会長】  いろいろ戦略をお示しいただいていますが,他にございますでしょうか。春日委員。
【春日部会長代理】  日本の強みになるかどうかはちょっと私もよく分からないのですけれども,今まで御議論がありましたような,災害発生時の対応ということで非常に短時間の活用から,パリ協定ですとかSDGsを対象とした場合に,かなり時間軸が長いものまで,活用のオプションはあると思うのです。その中で,例えば投資の話がありましたけれども,実際の金融投資の分野でも,環境をきちんと視野に入れた投資,それからもう少しガバナンスですとか社会面への影響を考えた投資というものも出てきているわけで,そういう金融の流れにも影響を受けるような,地表面での大規模な生態系の変化というものも,長期にわたる地球観測では見えてくるわけです。それから,人間社会の中では,紛争や気候変動による様々な大規模な人の移動・避難というものもありまして,そういう人の社会の変化による地表面の変化というものも,また見えてくるものがあるはずです。そういうことは,例えばSDGsですと,17の幅広いゴールにそれぞれ影響を与えてきて,その中でGEOとしてはどのあたりに焦点を当てて今後の議論を進めていくのか。それから,その中で日本として特に強みを生かせる分野はあるのか。そういうことを,もう一歩,幅広く全体を見通すことも必要ではないかなと感じました。
【小池部会長】  どうもありがとうございます。ただいま,投資の話がありました。浦嶋委員,何かコメントを頂けますでしょうか。
【浦嶋委員】  正に,後の自己紹介でお話をしようかと思っていたのですけれども,新聞等でも,皆さん,よく目にされていらっしゃるかもしれませんけれども,TCFDといいまして,いわゆる事業活動が今後の気候変動の影響によって,どれだけ経営にインパクトを受けるのかということを,民間企業が積極的に情報開示をしないと,いろいろな投資家が,グローバルにお金が動いている中で,リーマンショックのような連鎖的な景況の悪化が起きるということで,私はこれは気候変動についてだけではなくサステイナビリティ全体だと思うのですが,特に気候変動についてはパリ協定を踏まえて,企業の事業活動も2度目標に整合するようにしないといけないのです。それに対して,例えばCO2排出量の多い石炭火力発電とか,いろんなことがどこまで許容されるのかとなってくると,大きなビジネスパラダイムシフトが起きるというようなことで,将来的にはいわゆる有価証券報告書にまで,できれば数量的な裏付けをもって情報公開していかなければいけないという時代に,今,来ているわけです。先ほど言った,脱炭素社会への移行に伴う「移行リスク」というのと,正に自分たちのビジネスサイトが,洪水とか,そういった気象災害によって受ける物理的リスク,それらを,かなり長期にわたって企業は分析していかなければいけないということで,今お話しされている議論は,正に投資ですとか事業活動とかにダイレクトに結び付いてきているというのが,ここ数年の非常に大きな変化だと思うのです。
 ですから,ここの部分がこれまでますます求められてきているということで,我々保険会社もそういったサービスを実際に提供していますが,RCP8.5のシナリオでいくときに,全世界で,あと50年,100年で,どれだけこのエリアは洪水被害を受けます,高潮被害を受けますということが簡易的に分かるようなサイトを公開して,お客様に提供しています。そうすると,150社の企業が実際にログインして確認されていらっしゃるということでありますので,気象観測・地球観測と実体ビジネスや投融資との融合,ここが本当にますます大きな流れになると思うので,そこをどういう議論で進めていくのか,世界が大きくサステナビリティに向けて進むときに,世界に貢献でき,また日本国が競争優位を保つために何が一番有利なのか。その辺が非常に重要になるのかなという気がします。
【小池部会長】  今,非常に重要な視点を頂いたと思うのです。どうしても,地球観測への投資と思ってしまいますが,民間企業活動への投資を促すような,それを保証するような情報の提供という意味でのデジタル経済への投資を進めていけるとよいと思います。あまり下品な言葉は使いたくないのですが,みんなが儲かることが大切ですね。
【浦嶋委員】  そうですね。
【小池部会長】  助かるということ,幸せになるということが大事なのですが,儲かるということも重要ですね。
【浦嶋委員】  それがサステイナブルなビジネスに移行するようにしないといけないと思うのです。破滅型ではなくて,それがちゃんと地球が持続可能になるというビジネスを応援できる。それでみんなが儲かるというのがいいかなと思うのです。
【小池部会長】  大変いい視点を頂いたと思いますので,事務局の方で是非おまとめいただいて,これから正念場となる宣言案の策定やいろいろな場面で是非反映していただきたいと思います。他によろしいでしょうか。

議題(7)第8期地球観測推進部会の活動について
 それでは議題7に移りたいと思います。第8期地球観測推進部会の活動がどういう活動かということで,事務局から資料の説明をお願いいたします。
【池田地球観測推進専門官】  議題7では,第8期地球観測推進部会の令和元年度の活動案について御説明いたします。資料7-1を御覧ください。
 第8期部会の主な審議・報告事項としまして,年度ごとに取りまとめております「我が国の地球観測の実施計画」の取りまとめ,「地球観測の推進に関する調査・検討」,平成27年8月に策定されました「今後10年の我が国の地球観測の実施方針」のフォローアップ,地球観測の国内外の動向に関する報告,地球観測に関する政府間会合(GEO)への対応を予定しております。毎年度行っております「我が国の地球観測の実施計画」の取りまとめにつきましては,関係省庁・機関の皆様に御協力いただきまして,現在,今年度の実施計画の取りまとめ作業を行っているところです。2の「第8期の当面のスケジュール案」にありますように,次回部会で御報告したいと思っております。
 また,議題3にもありましたように,今期部会におきまして,「今後10年の我が国の地球観測の実施方針」のフォローアップを行う予定です。フォローアップで委員の皆様に御協力をお願いすることがあると思いますが,どうぞよろしくお願いいたします。
 あと,議題6で説明がありましたように,昨年度,初めての日本開催としてGEO本会合が京都で開催されましたが,今年度はオーストラリアでGEO本会合と併せて閣僚級会合が予定されております。GEOに関する各々のイベントの日程につきましては資料7-2に記載しておりますので,御参照ください。
 11月のGEO Week 2019に向けまして,本部会においてGEOについて御議論いただきたいと思っております。GEOについては,本日を含む期間,ジュネーブでシンポジウムが開催されておりますが,次回部会におきまして,シンポジウムに参加していらっしゃいます村岡委員から御報告がある予定です。本部会において議論されたい議題などございましたら,随時事務局まで御連絡ください。
 第8期地球観測推進部会の活動案については以上となります。
【小池部会長】  どうもありがとうございます。この活動の内容及びスケジュールにつきまして,御質問,御意見がございましたら,どうぞお願いいたします。
 資料7-2を御覧いただきますと,先ほどもございましたように,GEOの閣僚級会合が11月にあるのですけれども。「キャンベラ」とあるものですね。その前に,3回が9月から10月予定で,2回が7月29日予定というのは,これは決まっているのだと思いますけれども,まだ先かと思われるかもしれませんが,これは閣僚級会合ですので,事前協議がもうスタートしているのです。それで,これは恐らく第2回,7月29日になりますと,大分もう固まっている段階になっていると思います。それで,誠に恐縮ですが,今日の御議論を踏まえて,閣僚級会合に是非こういうことをちゃんと日本としてインプットすべきだということがございましたら,是非事務局にお出しいただいて,随時それを執行委員会での議論等に反映いただければと。執行委員会が7月23,24日,次の会合の前にございまして,恐らく次のこの会合のときは,その報告を受けることになります。大体執行委員会で大枠が決まると思いますので,この会合が終わりましてお気付きの点がございましたら,是非事務局に御発信いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 他に何かございますでしょうか。

議題(8)その他
 皆さんの御協力を頂きまして,時間が残りましたので,赤松委員から1分ということで,よろしくお願いいたします。
【赤松委員】  名簿順で赤松からコメントさせていただきます。私は,先ほど申し上げましたように,国際航業という会社で,リモートセンシングですとか測量の関係を担っている人間でございます。民間の人間ですので,国の衛星施策の中に実利用ですとか社会実装というものをどう反映できるかということを中心に,いろいろ意見を述べさせていただいております。今日の議論の中にもありましたように,GEOという世界的な会合の中でも,社会実装,産業利用ということが,大きくクローズアップされていることを,今,考えなければならない時代になっていると思います。我々民間が,いかに政府機関と連携しながら,こうしたものを進めていけるかということを,これからも是非積極的に発信させていただきたいですし,先ほど出てきたTCFDなどの言葉がこの場で語られるようになったというのは,私にとって非常に衝撃的なことでして,これからが非常に期待できるようになってきたなと思っております。是非よろしくお願いいたします。
【小池部会長】  ありがとうございます。上田委員,お願いいたします。
【上田委員】  京都大学の上田でございます。私は公衆衛生の立場から,空間情報,こういった地球観測にはあまりなじみがない者の立場の意見を申しております。それで,この前期と,参加しておりまして,グローバルに地球を観測するということから,だんだんと,観測した情報を使って解決へ導いていくということの方向に向かっているのだなというのを実感しました。その中で,解決は,どちらかというとグローバルというよりはローカルにアクトしないといけないということになると思います。そうすると,ローカルにアクトするには,その地域特有の状況をよく御存じである,その地域の余り地球観測に詳しくない方とも協働する必要が出てくるのではないかということがある。今日,そういった趣旨で質問させていただいたのですけれども,ICTの専門家がいて,研究開発のコミュニティーもあるということをおっしゃっていたということで,是非ともこういった,ICTも協働で開発をするという,こういった機能も強化していただければと思います。
 以上です。
【小池部会長】  どうもありがとうございます。今の点は,先ほど関根委員からありました,3年ほど前ですか,DIASで公募型のフィージビリティスタディを行いました。あれは1年で終わってしまいましたね。お考えいただくと有り難いです。
 浦嶋委員,どうぞお願いいたします。
【浦嶋委員】  MS&ADホールディングスの浦嶋と申します。前任は,私どものグループ会社の三井住友海上で天候デリバティブを担当している部署の人間が,こちらの委員をさせていただいておりましたけれども,テーマがやはり非常に多岐にわたっていて,必ずしも天候デリバティブといったことだけに収れんする話ではないということで,サステナビリティ推進室の私が,こちらに参加させていただくことになりました。
 私どもの保険会社はリスクを扱うことが本業でございますが,保険を提供し続けるためには,レジリエントでサステイナブルな社会でなければ,そもそも保険というものは成立しないというところから,その社会を新しい中期経営計画で目標に掲げ,我々もサステナビリティ推進室という名前で新しくスタートしました。この間も新聞で報道されたのですが,昨年度,非常に災害が多い1年でございまして,損害保険協会が発表した保険金支払いは1.5兆円を超えるということで,最高を更新しています。もちろん地震もありましたので,気象災害だけではないのですが,どうやって,こういった社会的損失を抑制していくのかということを,本当に官民で連携して考えていかなければいけないということで,こちらの研究会を大変楽しみにしておりますし,いろいろと勉強させていただければと思っております。引き続き,どうぞよろしくお願いいたします。
【小池部会長】  どうもありがとうございます。それでは河野委員。
【河野委員】  海洋研究開発機構の河野です。私はいわゆる海屋さんですので,衛星の人たちとなじみがないところはなきにしもあらずなのですが,私は比較的最近こちらに参加してきて,最初のGEOの頃は,何とか地球観測網を世界中で,きちんとしたものを組み上げようという段階だったように感じました。そのときの話題はいかに観測するかだったような気がしますが,最近ではそれが,もはや今,投資の話まで進んできて,それはそれで当然の流れだろうとは思うのですが,こういう流れの中にあって,その基になっていた観測がきちんとなされていて,投資の方が使っているデータは本当に正しいものなのかということを,こんなタイミングですけれど改めて考える必要があるかなと考えていて,その観点から,「今後10年の我が国の地球観測の実施方針」のフォローアップをするということを非常に期待しております。
 それで,昨今を取り巻く状況で,ここにある,私も一部書いたりしているのですけれど,海洋に関する観測の方針というのは,もう既に本当に古いので,今,ちょうど転換期も迎えていることですので,本当に必要な観測をニーズに応じてやるにはどうしたらいいのかというようなことを考えていきたいと思っています。
【小池部会長】  どうもありがとうございます。それでは三枝委員,お願いいたします。
【三枝委員】  三枝です。今,ちょっと勇気付けられました。私も基礎的なデータの重要性について,どうしても一言言わなければいけないと思っていたので。
 先ほど,温室効果ガス分野の地球観測も国際的な場面で公式に貢献し得る道筋が新たにできたというところは大変喜んでおりますが,そのデータの精度を上げていくのに必要なのは,各国が実施しております地上での観測。それから船舶や航空機を使った地道な観測。そして最近世界でも増えてまいりましたけれども,温室効果ガス観測技術衛星を成功裏に進めていくこと。こうした一つ一つの観測データが合わさって初めて,次の世代の,精度の高い,利用価値のあるデータになっていくと思いますので,今後も日本の関係府省・機関の皆様と,そういった観測を続けていくとともに,アジア等ではまだ観測空白域がたくさんありますので,そういうところを埋めていく努力も続けていかなければならないと考えております。
 それから,そうはいっても,それがどれだけ役立つかは,明らかに見える形で見せていかなければなりません。日本の例えば排出インベントリの向上というのは,日本のインベントリは非常に精緻な算出システムが出来上がっているので,日本のところはちょっと難しいのですけれど,アジアには新興国・途上国等たくさんありまして,各国の排出量を正確に出すところが難しい部分もありますから,そういったところできちんと,世界の人たちと協力した観測及び解析システムで,ここまで高精度化できるということを見せていくこと。それから,また世界の例えばC40,世界の40以上の大都市が協力して温室効果ガスの削減をしていこうという協力関係も作られつつあるそうですから,そういった大きな都市からの排出量をモニタリングしていくことにより,排出削減の努力の効果がなるべく早く分かるようにする。そのために,排出削減の動機付けを強めていく。そうした努力にも結び付けていく必要があると考えております。
 以上です。
【小池部会長】  ありがとうございます。それでは関根委員,お願いいたします。
【関根委員】  私はすでに十分話をさせていただいたので申し上げるのは控えたいと思います。今後,この部会の中で私にしか申し上げられないことがあるかもしれないと思いながら,ちょっとわくわくした思いでおります。これから日頃からしっかり考えてこの会に出席させていただき,できるだけの貢献をさせていただければと思っております。議論に加わらせていただくのをとても楽しみにしております。
【小池部会長】  どうもありがとうございます。髙村委員。
【髙村委員】  ありがとうございます。遅く到着しまして申し訳ありませんでした。簡単に3点申し上げたいと思います。もう御指摘がありました点ですが。
 例えば日本の強みとしてと,先ほどの議論にもありましたけれども,何を観測するかという点で,いくつかやはり,この間,非常に必要になっている分野があるのだろうと思います。1つは,もう浦嶋委員,赤松委員もおっしゃいましたし,環境エネルギー科学技術委員会では竹ケ原さんが同じようにおっしゃっておりましたけれども,やはりビジネスの対応として,気候変動リスクというものを,ビジネスのリスク評価に使っていく。これは,物理的リスクも,環境エネルギー科学技術委員会では,移行リスクの方も入っていましたけれども,やはりそこには非常に大きなビジネスのニーズがあると。ここにやはりどう応えていく。観測だけではなく,恐らく環境エネルギー科学技術委員会で所管しているような気候変動のプログラムもそうだと思うのですけれども,そこは1つ,やはりあるのかなと思っております。
 2つ目が,先ほど私は半分聞き漏らしてしまった,河野委員のプラスチックのところも,やはり同じように非常に大きな国際的な関心を集めているところで,これも何をという意味でいくと,今の社会的ニーズから見ますと非常に重要な点かと思います。
 何をという意味での3点目なのですけれども,あまり日本で議論がないのですが,気候変動枠組条約ですとか,国連の場で今非常にやはり問題になっているのが,災害等に起因した,場合によっては気候変動がその一因になっているケースが想定されるわけですけれども,人の移動についての対応であります。それは,早期の通報もそうですし,先ほど災害時の支援の話がございましたけれども,実際に支援をしていくときに,どこに人がいるのか,あるいはどういう状況になっているのかということ自体が,きちんとリアルタイムあるいはタイムラインで把握できる,情報のギャップというのが非常に大きな課題として指摘されておりまして,このあたりは日本でどこまでできるのかということは,日本がどういうプライオリティーを置くのかというのはありますけれども,何をという意味では重要な点かなと思っているところであります。
 2点目は,先ほど環境エネルギー科学技術委員会でも同じ議論があったと申し上げましたけれども,恐らくかなり連携できる,あるいは包括的にそのプライオリティーを考えていく必要があるかなと思っている点であります。これは同じく中北委員とも御一緒している環境省の気候変動影響評価等小委員会でも同じような議論をしていまして,そういう意味で,少しやはり省庁も超えた連携というものを考えることができるような,今挙げたようなイシューは,そうかなと思っております。基礎的な観測の,あるいはデータの重要性というのは,三枝委員がおっしゃいましたので,全く賛同でございます。
 以上です。
【小池部会長】  どうも包括的にありがとうございました。春日委員,お願いいたします。
【春日部会長代理】  私は国立環境研究所に所属して,本務としてフューチャー・アースの国際事務局の運営をしているという立場なのですけれども,フューチャー・アースは本当に多様な分野をカバーしておりますので,地球観測をしてデータを提供しているコミュニティーもありますし,またそれを使う側のコミュニティーもあります。ですので,本当にどちらの重要性も非常に痛感しているところなのですが,使う側からのニーズを観測する側がよりよく理解し,また観測している側も,こういうものが提供できるということを,より分かりやすく使い手側に提供していくという,双方向の努力がますます必要だなと思います。
 最近のトピックスとしましては,浦嶋委員とお知り合いになったきっかけにもなりましたけれども,金融セクターと地球システム科学者との対話を行うということを実施しました。そこで本当に私としても,TCFDも含めて,新しい言葉と現実を勉強させていただきました。それから,健康分野の研究者と幅広く議論する機会がありまして,そこで今までにないような形での地球観測データの活用を目指したらいいのではないかということで,非常に多くの専門の先生たちが非常に面白い議論をしまして,それを先週,台北で行われましたフューチャー・アースのHealth KAN,Knowledge-Action Networkの会議でも発表してきたところです。こんな形で,結び付けるお役に立てればと思っております。
【小池部会長】  どうもありがとうございました。舘委員。
【舘委員】  JAXAの舘と申します。私どもは当然,衛星を打ち上げて運用しているという仕事でございます。私はその衛星の運用と開発を担当しております。
 現在JAXAには,運用している衛星,地球観測衛星ですが,6基ございます。6基の衛星を運用しているということです。今,計画して開発を進めているのが3基ございます。そういう状況でございます。
 先ほど,G-Portalという話がちらっと上田委員から出ていましたけれども,G-Portalは,JAXAが持っています衛星データを出すところでございまして,そこには解析したデータも含めて,かなり「しきさい」のデータを追加したもので,たくさんのデータがございます。その中で,他のデータを混ぜているわけではないので,オリジナルのデータがあります。それを是非使っていただければ。そこのG-Portalに,Googleでも何でもいいですから,G-Portalと検索していただければ,G-Portalのポータル画面がありますので,登録はしていただきますけれども,フリーでダウンロードできるということでございます。このG-Portalに載っているデータを,例えばDIASさんにも出したり,あるいはTellusさんにも出しているので,オリジナルなデータがそこにあると御理解いただければと思います。
 続いて私も2点目を申し上げたいのは,実は衛星データというのが,継続することが大事だと思っています。先ほど三枝委員からありました温室効果ガスというのは,衛星で観測することが,最初のIPCCのガイドラインには,それほど役に立つという記述ではなくて,むしろあまり役に立たないというような形で書かれていました。これが2006年で,その後,2009年に「いぶき」の打ち上げがあって,その後,10年間,運用していくうちに,精度がどんどん高まっていって,これは使えますねということで,今般,記述が変わった。その過程の中で,GOSATの記述も含まれていると思っています。そういう状況ですので,やはり継続して観測していくということが大事だと思います。ヨーロッパにコペルニクスという計画がございまして,これは衛星で言いますとセンチネルという衛星ですが,これは10年とか,あるいはその先を目指した計画を立てられているということですので,我々もそれに沿った形で,先ほど6基と言いましたけど,これがそのままずっと続けるような観測。当然,アップデートはありますけれども,そうすることによって利用が広がるし,新たなビジネスのチャンスも広がると思っています。そのためには,やはりどういうところをやればいいかというところを,この部会でしっかり議論して,是非そういう提言を頂いた上で進めていければ,我々もその次の衛星を出したときも結び付くのではないかと思って,この委員会に期待しているところでございます。
【小池部会長】  どうもありがとうございます。それでは中北委員,お願いいたします。
【中北委員】  今日はいろんな側面からのことを勉強させていただいてありがとうございました。私自身は,気象災害,水災害,それからそれの気候変動で,どうこれから変わっていくか,適応に結び付けてというようなところを,多くの皆さんとやっているところですが,やはりGEOSSに対して求めたいところは,古典的な言い方ではありますけれども,例えば雨の降り方が気候変動で変わってきているというのが見えるということ。だから,そういう意味では,先ほどお話がありました継続性というのは非常に大事なこととして私も申し上げたいと思います。
 それから,今日,関根委員のお話でもありましたように,リアルタイム情報として,より有効に,減災に対して活用していけるということが非常に大事になってくるということなのですけど,恐らく時間分解の話とか,いろいろ出てきて,細かい話になるのですが,特に災害と関連するということは,エクストリームな状況,極値を,だんだん監視していけるような流れにもなっていけばと思います。特に気候変動のイメージで言うと,ある程度の空間平均,時間平均のものがどう推移していくかというシグナルが見えて,観測で取り出せる,気候変動予測でも取り出せるというのが,今までずっと来ていますけれども,気象災害などの点で言うと,そこに含まれている,気候から見たらノイズのような部分に,確かに大事なシグナルがあって,私たちはそれを,より減災に使っていかなければいけないと思っていますので,今までノイズと呼ばれているものも,だんだん継続観測の世界に入っていくようなことですね。例えば簡単な言い方ですと,極値がどう推移していくか。そういう世界にも入っていくことが考えられればいいと思います。
 なかなか宇宙からだけだと厳しいかもしれませんので,そういう意味では地上観測との連携を深めることも大事だと思いますし,先ほどからずっと申し上げています,モデルとのタイアップをすることによって,よりノイズの部分が,ノイズではないシグナルになるということもあり得ますので,総枠で言うと,そういうことも考えていければと。より具体的にまた御提言などできればと思っていますけれども,そういうふうに,今日はお話しさせていただきました。どうもありがとうございました。
【小池部会長】  どうもありがとうございます。中田委員,どうぞ。
【中田委員】  私は,水産研究・教育機構というところで,水産業というものを対象とした研究であるとか教育といったことに関わっております。
 昨年,水産分野では非常に大きな転換がありました。漁業法という基本的な法律が70年ぶりに改定されたのです。それによりまして,これまでに比べてより厳密な資源管理をしていくということになったわけですけれども,それの基となる資源評価の対象種を今までの50種から200種まで増やすということが打ち出されています。そのためには,それを可能にしていくためには,様々な観測データ,それから,あと漁業者からの情報といったものをどんどん吸収していかなければいけないという状況になっているわけですけれども,そのための仕組みの整備や技術の開発が追い付いていない。今,急速な転換を図らなければいけないという立場にあります。
 一方,世界の様々な水産資源というのは,気候変動に大きく影響を受けるわけです。例えばマイワシ,今,すごく捕れているわけですけれども,これにどの程度,投資していいのかというところを,みんな非常に迷っているわけです。といいますのも,1980年代にマイワシ資源がピークになった時点で,漁業者は船をいっぱい建造したわけです。ところが間もなく資源が落ちてしまって,その負債を漁業者は抱え,なおかつ加工業は,例えば北海道の釧路の加工業はほぼみんななくなってしまうというような状況になってしまいまして,その二の舞をしてはいけないというので,どういう情報を私たちが取って,どういう説明をするかということが,これから水産業への投資というものに非常に大きな影響を及ぼすことになるというので,今,水産庁も研究所も一緒になって考えているところです。
 そういったことに,水産分野だけではなかなかいかないというのをいろいろ認識しておりますので,ここにいらっしゃる方々,あるいは,よって立たれるところの知識も得ながら,対応していきたいと思っております。以上です。
【小池部会長】  ありがとうございます。堀委員,お願いします。
【堀委員】  JAMSTECの堀でございます。私がいるのは,付加価値情報創生部門という部門で,この4月からできた部門でございます。これはどういう部門かというと,情報を創生する。どんな情報かというと付加価値です。地球観測で得られた情報に対して,可能であれば付加価値を付けたいと。どのような価値か。もちろん学術的な価値もありますし,もしかしたら産業にお役に立つような価値を付けるということを目標にしています。ポイントは,どうやって付加するかというところで,先ほど大分,飛ばしましたけれども,例えば計算機,計算科学のような分野のノウハウ,若しくは河野さんからの話にありましたけれども,海ごみのときには,九州大学のマス・フォア・インダストリという数理科学のグループが入っていると理解していますけれども,そういう数理科学のグループに加わっていただくことで新たな価値を付加しようと。そんなことを考えています。そのような視点で,この分科会に御協力できればと思っています。以上です。
【小池部会長】  ありがとうございます。武藤委員,お願いします。
【武藤委員】  初めて参加させていただきました,JICAの地球環境部,武藤と申します。なぜJICAにお声掛けいただいたかというところで,私も最初,びっくりしたわけなのですけれども,よく考えてみますれば,SDGs,パリ協定,それから仙台フレームワークをODAで実施するのはJICAということですので,ユーザーの一人としてお話を伺い,それからいろいろアイデアをシェアさせていただきたいと思っております。
 今ここで申し上げたいのは2つございます。ユーザーとしてこちらに伺わせていただいて,いい意味,ポジティブな意味なのですけれども,軽いギャップを感じております。ギャップの第1は,社会実装と普及の違いということです。例えばなのですけれども,関根委員のプレゼンでも「社会実装」と書いてくださっていて,このコンテンツで社会実装という意味合いは私もよく理解しているのですけれども,一方,ODAの分野で求められています開発効果の実現というのは,先ほど来,プライベートセクターの話がいっぱい出ましたけれども,プライベートセクターのお金をこういうところにどういうふうに入れてきて,ビジネスとして成り立つようになるかというところまでいって,やっとODAで求められる普及なのです。ですから,例えば関根委員の研究に保険会社がどうお金を出されて,金融商品にして,皆様がどう買われるかというところまでいって,やっと私たちも開発途上国に普及を提案できるものとなると。そのあたりのギャップをどうやって埋めていくか。是非議論させていただきたいと思います。
 第2のギャップでございます。観測リモートセンシングと,あとは社会の行動変容とどう結び付けるのかというところです。例えば私ども,森林のリモートセンシングを,いろいろJAXAさんと一緒にやらせていただいておりますけれども,やはり開発屋としては,どんどんアマゾンを切り開いてしまう農業事業者さんのインセンティブをどう削ぐかというところに真正面に向きませんと。リモートセンシングしているだけでは,まだまだほんの,入口に立っただけという気持ちにどうしてもなってしまうのです。言い方が申し訳ないですが,あえて問題提起させていただきます。私はもともと社会科学の方から来ておりまして,経済の中でもミクロ実証経済学という,データと理論の照合をやっていくというところですので,皆様のコミュニティーと考え方の親和性はあると思うのですけれども,しかし,やはり開発屋としてど真ん中の仕事をするには,観測と一緒に手を組ませていただきつつ,でも,もっと本当は社会にどっぷり真正面に向いた仕事もしなければいけないと思っておりますので,そこのギャップも一緒に埋めていきたいと思っています。
【小池部会長】  どうもありがとうございました。六川委員,お願いいたします。
【六川委員】  六川でございます。環境については,実は放送大学で,地球温暖化と社会イノベーションの話をしているのですが,先ほどちょっと,その中で赤松さんから御指摘がありましたけれど,やはり最後の章の方では,いわゆるESG投資とか,従来の学問ではあまり出てこなかったようなことがある。やはり本当に社会に,先ほど普及と実装は違うのだというお話もありましたけれど,そういうフェーズになってきたかなという気がしています。
 それから衛星についても非常に求められることが,先ほど堀委員がSIPの件で,2時間で結果を出せと。衛星が14日に1日しか回ってこないのに,どうやって2時間だというような議論もありまして,コンステレーションという話があったのですが,そのときもJAXAさんがデータを取られて,そのデータを,私といいますか,グループの人たちが処理している状況なのですけれども,非常にやっぱり求められているハードルが高くなってきたと思っています。本当は学術の解析ぐらいまででやっていると楽だなと思っていたのですけれども,どうも世の中はそれを許してくれない。ちょっとそういう,心構えを変えなくてはいけないなというのが,日頃,感じているところです。
 それで,これは要望になるのですけれども,小池委員の御尽力をはじめ,非常にDIASはいい成果を出していると思うのですが,恐らく産業の方が使われるときに,このデータはどこまで使っていいのでしょうか。知財の問題ですとかクレジットの問題ですとか,やはり多分これから研究をするにおいても,この成果というのは,いわゆる日本でよくやるのは,官の人たちだけが使えますよと。民間の人たちは保証しませんからみたいなのが多いのですけれど,多分そういう仕組みではもう通用しなくなってくる。ですので,やはり研究の成果,それからデータについても,言ってみると知財,簡単に言うと血統書を明確にしておかないと使えないと思います。ですので,小池委員のDIASなども,ちょっとそういう点も少し書いていただけるといいのかなと。民間の活用が相当広がると,個人的には感じました。
 それから,堀委員には非常に痛い御指摘なのですけれど,タイムラインというのがものすごく大切で,タイムリーにデータが出てこないと,結局,あんたたち退場ということになってきますので,そういう研究の質も変わってきたなと思っています。そういう意味で,タイムラインということのキーワード。
 それからあとは,大学の方では,もともと資源をやっていたのです。ですから,エネルギー開発が本業です。それで,途中から技術経営戦略学というのを,専攻を立ち上げろと言われて立ち上げて,今,実は工学部全体の教育のプロジェクト教員のような形でいろんなことをやっているのですけれども,簡単に言うと,教育とかデータを社会に売れと。それで銭に変えろと。そういう意味で,発想としては,大学のキャンパスを歩いたら,キャンパスには銭が転がっているというような発想でやれというのが,今の大学の流れでありまして,大変きついところでありますけど,逆説的には,もっと社会に貢献しろという意味だと思っておりますので,そういう観点で,皆さん,社会人の方,実業の方も多いので,いろいろ勉強させていただきたいと思います。
 どうも長くて失礼しました。
【小池部会長】  では最後,若松委員,お願いします。
【若松委員】  リモート・センシング技術センター,RESTECの若松でございます。私自身は長くIT企業に身を置きながら,地球観測のデータ,主に商用の高分解能衛星だったわけなのですけれども,そういったものを使って,どうやってお客様の課題解決につなげるかということをずっとやってきました。更に言えば,それでどうやってもうけるかというのもものすごく大きな課題でした。おかげさまで,やはりここ数年になって,ようやく,設けるというところまでいかないのですけれども,それなりにビジネスになってきたなと思っていまして,その中で,非常に大きい要因というのは,バズワードになってしまっていますけれども,ビッグデータ,AI,クラウドの3つのIT技術が我々のビジネス感にもすごく大きな貢献をしているなと思っています。
 特にクラウド,今日もDIASをはじめプラットフォームの議論がありましたけれども,ここについてはものすごくいろんな可能性があるなと思っていまして,最初にいわゆるリモセンデータなどに触れた頃というのは,本当に1枚,衛星画像を買ってきて,もう大事に大事に,そこからいろんなデータを絞り出してみたいなことを,皆さんも御経験したのかなと思うのですけれども,今は本当にもう,1枚のデータなどというのは,使ったか使っていないか分からないぐらいで,もう次から次へといろんなデータを組み合わせて使うみたいなことをやっていて,そういうことをして初めて,いろんなビジネスの可能性というのが広がってきたなと思っています。
 一方,またGEOの議論の中でも,例年,商業セクターとの連携というのが大きなキーワードになっていまして,そこについても,私自身もその議論に参加させていただきましたけれども,引き続きどういう議論ができるかというのは,私も関心を持っていきたいと思っています。
 少し今のRESTECでの仕事の話もさせていただきますと,引き続き,いわゆるソリューション提供だとか,あとはお客様と一緒にお客様の課題を考える,コンサルティング,シンクタンクみたいな機能をやっております。それに加えて,私自身があまり経験してこなかった分野としては,研修とかトレーニングとか,キャパシティービルディングの分野も,今,手掛けるようになっておりまして,そこにもものすごく大きな可能性があると思っています。普及啓発だとか社会実装だとかという中では,実はやっぱりキャパシティービルディング的な話も物すごく大きいのだろうなと思っていまして,そういったところでも何か新しい可能性を見付けられないかなと思っています。
 既に新しい気付きとしては,私たちは今,これもクラウドの一つなのですけれども,Google Earth Engineを使ったリモセンの研修というのをやっているのですけれども,ここにいらっしゃる方というのは,全然リモセンの研究者でも技術者でもなくて,単に地球観測衛星データというのを使ったら何かできるかなみたいな感覚で,なおかつGoogle Earth Engineという,比較的洗練されたツールでいろんなことができるので,そこに関心を持って研修を受けてくださる人たちというのが,それなりにいます。Google Earth Engineの研修については,eラーニングみたいな形で,本当にどこからでも受講できる。あとは今,英語のテキストも作っていますので,それもグローバルに展開しながら,こういう地球観測というものが本当にいろんな人に広がっていくように貢献できればなと思っていますし,またそういう議論もしていきたいなと思っております。
 よろしくお願いいたします。
【小池部会長】  どうもありがとうございました。第8期に入りまして,いわゆる実施計画の議論というのは定常的にあるわけで,それに加えて今年は方針のフォローアップと閣僚級会合というのがございます。先ほど触れられましたが,この地球観測推進部会は府省連携の組織ですので,全府省が関係しております。是非皆さんのいろいろな御意見とか御関心,今までの御経験を出していただければ有り難いと思っておりますので。
 いくつかキーワードを頂いて,全て整理することはできませんが,やはり観測を大事にしないといけないですねと。継続とか質とか,あと時間というのもございまして,ノイズからシグナルに変換するとか,観測が一丁目一番地であることは間違いないということがあったと思います。それから,プラスチックもそうなのですが,あと人の移動というのも御指摘いただいた。新たに認識された現象をどう地球観測でしっかり見るかと。質や量で変改していく災害も同様だと思います。
 ただ,先ほど武藤委員から,アマゾンを切り開いたのを見ただけでは駄目だよというのを言われたのですけれども,1972年のランドサット打ち上げで,初めて実態を人類は知って,行動が起きてきたわけなので,まだ認識されていない地球の問題も多くあるのです。地球観測はその情報を創り出してきたわけです。CO2の濃度でもそうです。地球観測はこの重要な役割を持って,人間の生き方そのものを変えてきたわけなので,我々が知らないものを地球観測によって発見し,認識されているものをきちんと認識していくということも大事で,そういうことが我々の使命だと思います。加えて,投資へ向けた発展というのは今年の閣僚級会合の非常に大きなキーワードです。これについては,いろんな側面から今日はお話がありました。水産のお話もありましたし,保険の話もありましたし,災害の話もありましたし。こういう投資へ向けた発展というものが大きいのだと思います。勝手ながら全体をまとめると,重要なのは武藤さんがお話しになったギャップなのではないかと思います。ギャップがきっと,いろんなところにあるのです。時間についての議論にもありましたように,我々はまだ気付いていない部分が結構あります。この部会は多様な分野の委員の皆さんで構成されていますので,皆さんからいろんな御意見を頂きながら,ギャップを理解して,ギャップを埋めていくという方向で,この部会が進められればよいと思います。フォローアップや閣僚宣言へ向けた発信など,皆さんの御意見を伺うことができました。本当にありがとうございます。
 ちょうど15分ほど過ぎております。申し訳ありませんが,本日予定されていた議題は以上ですが,その他,皆様から何かございますか。よろしいですか。
 それでは事務局から連絡事項をお願いいたします。
【池田地球観測推進専門官】  本日の公開部分の議事録は,後日,事務局よりメールで委員の皆様にお送りいたします。各委員に御確認いただいた後,文部科学省のホームページで公表させていただきます。
 旅費の書類をお配りしている方は,内容を御確認いただきまして,そのまま机上にお残しください。
 次回,第2回の部会は,7月29日,月曜日の15時からを予定しております。開催案内につきましては改めて御連絡させていただきます。
 以上です。
【小池部会長】  それでは,以上をもちまして,地球観測推進部会の第1回会合を閉会といたします。本日はどうもありがとうございました。


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