ナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略検討作業部会(第6回) 議事録

1.日時

平成30年6月15日(金曜日)10時~12時

2.場所

3F2特別会議室

3.議題

  1. 第4回ナノテクノロジー・材料科学技術委員会での議論について
  2. ナノテクノロジー・材料分野に関するヒアリング
  3. ナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略(素案)に関する審議
  4. その他

4.議事録

【中山主査】  おはようございます。定刻となりましたので、ただいまより第6回ナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略検討作業部会を開催いたします。本日は、お忙しいところ、お集まりいただきまして、ありがとうございます。前回に引き続きまして、研究開発戦略の策定に向けた議論をさせていただければと思います。
 本日は、策定に向けての意見聴取の一環といたしまして、早稲田大学教授・野田優様、三菱電機株式会社・佐竹徹也様のお2人にお忙しいところお越しいただいております。どうもありがとうございます。積極的な御議論をよろしくお願いいたします。
 早速ですが、事務局より委員の出欠及び配付資料の確認等、よろしくお願いいたします。
【丹羽補佐】  事務局の丹羽でございます。本日は、井上委員、染谷委員、内藤委員、中嶋委員、早川委員が御欠席となっております。本日から、近藤委員が御退任をされまして、新しく佐藤委員に着任を頂いておりますので、一言簡単に御挨拶を頂ければと思います。
【佐藤委員】  三菱ケミカルからやってまいりました佐藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【丹羽補佐】  よろしくお願いいたします。本日は、お手元の議事次第にもありますとおり、2名の方々より御発表いただく予定となっております。お手元に配付資料1というもの及び、机上配付といたしまして、1から5までございます。欠落等がありましたら、事務局までお知らせください。
 以上でございます。
【中山主査】  どうもありがとうございました。また、本日は内閣府から千嶋様にお越しいただいております。また、経済産業省の小宮様、後ほどお越しいただけるということをお伺いいたしております。いつもお越しいただきましてどうもありがとうございます。いろいろ注文等、付けていただければと思います。途中でも構いませんので、よろしくお願いします。
 それでは、議事1に入りたいと思います。初めに、4月11日に行われました第4回ナノテクノロジー・材料科学技術委員会での議論において、研究開発戦略の策定に向けて本作業部会においても検討すべきと考えられる御意見等、いろいろ頂きました。概要とともに事務局より簡単に御紹介させていただきます。丹羽さん、よろしくお願いします。
【丹羽補佐】  お手元の机上配付資料1をごらんいただければと思います。
 少し時間があいてしまいましたが、4月11日に親委員会でありますナノテクノロジー・材料科学技術委員会を開催をいたしました。議題として、①ナノテク・材料分野の取組ということで、現在、さきがけやCREST等で進められており、着実に成果を出している3つのテーマ、具体的には、「元素戦略」、「分子技術」、「空間空隙」につきまして、それぞれの取組や成果等について御発表いただきまして、意見交換をしました。
 机上配付の2として資料の一式はお配りをしておりますので、御参考いただければと思いますが、この中での意見交換としまして、元素戦略の中の資料中で、トランプ大統領によるCritical Mineralの件。これはホワイトハウスから2017年の12月に米国版の元素戦略とも言える希少元素に関するレポートが提出されまして、現在、それに応えるべく、関係省庁、アメリカの中の各部局がレポートを出してきているという状況にございます。かなり動きが激しくなってきているという現状等を踏まえて、国際動向については継続的に把握していく必要があるという問題意識が示されております。中山委員から頂きました。
 それから、先般の本作業部会で化学連合にお越しいただいて、空間材料に更に時間軸を足したような概念で研究を進めてはどうかという提案があったことに対して、空間空隙の提案を募集した際に、それに近い提案もあり、準安定相を作るという提案が多くみられた、あるいは、時間的な変化によって構造が変わっていくものを利用するということも近いのではないかという御意見がございました。
 それから、次のポツとして、研究開発投資に対する時間軸を考える必要があるという御指摘が橋本委員からございまして、この分野、論文を書いて終わってしまう。この分野は特にその傾向が強くて、材料は作っても実際にものにつながっていかないのではないかという問題意識が示されました。
 2ポツでございますが、次の議題として、物質・材料研究機構の最近の取組ということで、これもレビューしておく必要があるという観点で議題として扱いまして、橋本理事長からNIMSの最近の取組についてご発表いただいたところでございます。特に最近の成果でもございます電池に関するソフトバンクとの企業連携センターについて御紹介を頂きました。
 また、参事官の齊藤の方から、電池に限らず、材料の社会実装に向けては材料分野に固有な課題が眠っているのではないかという問題提起をさせていただきました。具体的には、例えば材料を作った後、それを大型化する、ボリュームアップする、それから、システムとして組み上げ作り込んでいくというところ、それから、その製造プロセスの開発、あるいは評価技術がない、こういった課題ですね、これらについて示させていただいたところです。
 実際に委員の意見からも、一つ一つの正極材料や負極材料という、個別の材料がどんなによくても実電池にするとうまくいかない、また、大きくしていくと直面する技術的な課題がある。そういった個別要素に限らないシステム化されたものの研究開発が重要だという御指摘を前田委員から頂いております。
 それから、NIMSで電池を重点化するというのは企業としてありがたいという指摘とともに、材料の革新がないと電池の革新というのは事実上難しいと。そういった材料の課題の最も根っこのところにサイエンスの課題が眠っているんだという御指摘を射場委員から頂きました。
 おめくりをいただきまして、まさに先ほどと同じですが、こういう取組は蓄電池だけでなくてほかの分野に拡大することも重要であるという意見が馬場委員からあったほか、材料だけやっているとデバイス化した際の課題が分からない。ですので、物質・材料から一歩踏み込んだ取組をNIMSでも行っているということが橋本委員からありました。
 中山委員から、研究室でいい成果は出るんだけれども、論文を書いて終わってしまっているものが多く、産業界につながらなかったというものはこれまでも山ほどあったと。運良く企業と一緒に研究できたり、熱意でものになったというものもあるにはあるんだが、非常に多くの成果はやはり産業界につながらずに死蔵してしまっていて、それを回避する施策が必要じゃないかという問題意識が示されました。逆にそこに手を打てれば、我が国としてはまだまだ相当なアウトプットを今後出していけるるのではないかということが中山委員よりございました。
 3ポツとして、まさに今皆様に御議論いただいている研究開発戦略の検討状況について報告をさせていただいたところ、それに対する御意見として、瀬戸山委員から、国内、海外双方の特許出願というものも考えていかなければいけないが、その経費、維持費というものをどう考えていくかという御指摘があり、第6期の科学技術基本計画を見据えてしっかり議論していくことが大切だというご指摘がございました。
 それから、次の丸になりますが、ナノ構造の相互作用等、いろいろな分野での共通原理というものがあるはずで、プロジェクトの中でうまく情報交換、交流できるような形にしていくと様々な分野の発展が期待できるのではないかという御指摘がございました。
 次のポツですが、ナノ材料については、これまで教科書が全くない。つまり、まだ体系化されていない分野であって、それぞれの研究者の得意分野で活躍しているにとどまっているので、共通基盤としての体系を作っていくことがとても大事だという御指摘がありました。
 最後の丸になりますけれども、システム化、デバイス化ですね。先ほどもお伝えしたような部分に関する研究開発は非常に重要であると。従来ナノテクで培ってきた知見をいかにマクロに使いこなしていくか、ここには大きな壁があって、ナノテクの研究開発がデバイスにつながっていない、つながらなかった理由の1つになっているのではないかという御指摘を栗原委員から頂きました。
 おおむねこのような意見が出たところでございます。
【中山主査】  どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明に対しまして、御議論いただければと思います。
 ナノ・材料委員会で頂いた意見も、本委員会で皆様から頂いた意見を拡充するようなものが多く、考え方としてはそろってきていると思います。もう少し議論する時間もございますので、より富ませる方向、深くいく方向に、貪欲に行きたいと思います。
 なければ次に進みます。この後は今日お越しいただきました先生方から御意見やプレゼンを頂きまして、その後は戦略の全体議論を行います。ナノ・材委員会の意見を横目で見ながら、また最後の議論のところで深掘りをさせていただければと思います。
 今、ナノ・材料委員会等での話を御説明いただきましたが、例えば電池のような材料をシステムとして組み立てていくところでぶつかる課題、スケールアップしていくときの課題、実際に社会実装していくときの課題など、この部会では大事だと言いながらもあまり議論できておりませんでした。そこで、ここでは、早稲田大学の野田先生、そして三菱電機の佐竹様をお招きいたしまして、化学工学のような観点、あるいは、電機メーカーでいろいろな材料を産業に上げていくというお立場から、問題点、ボトルネック、あるいは、何をなすべきかという御議論を頂ければと思っております。
 それでは、野田様、佐竹様の順で御発表いただきます。それぞれの質問後に10分程度の質疑時間を設けさせていただきます。その後、全体の議論にうつります。
 それでは、野田様より15分程度で御発表いただきます。よろしくお願いします。
【野田優先生】  御紹介ありがとうございます。早稲田大学の野田と申します。10分、15分と伺っていたので、少し長くなるかもしれませんか、説明させていただきます。
 私は化学工学の分野でカーボンナノチューブを主に研究をしております。その立場から、ナノテクで盛んに研究開発投資されながらも、なかなか実用、世に出てこないところに対して、どういう課題があるか、個人的な考えを発表させていただきたいと思います。
 1つ、私のモチベーションとしては、夢の材料、もういい材料はたくさん見つかっているので、それをいかに夢から現実にするのかと。よく、0から1にする、0から100にするという話がされていますが、ナノテクの分野ですと、出口が100ではなくて1000や10000となり、そのときに1からいきなりそこまで持っていけないというのが大きな課題だと思っていますので、そこに関しての問題意識を話させていただきます。
 また、材料から見れば、1を100、1000にするという話なんですが、一方でプロセス自体でも、ないプロセス、ナノ材料に適したプロセスって実はないことが多いので、新たなプロセスを開発する。そこには0から1にするサイエンスもあるわけです。ですので、そこのプロセスの立場での0から1をお話しさせていただきます。
 もう一つ問題意識として感じているのは、我が国のものづくりで、コスト競争では勝てないから品質で勝負という考え方が主流ではないかと思うんですが、そもそもコストで勝てなくて性能で勝てる根拠があるのか。海外の技術も相当上がっていますので、ここを疑問にも思っていますし、一方で、プロセスの性能で勝てない根拠があるのか。性能がまさっていれば安く作れてもいいのではないかという考え方もあります。こういった話をさせていただきます。
 ここは釈迦に説法ですので、スキップさせていただきますが、私はナノチューブに力を入れております。
 1つの観点からすると、ナノチューブで半導体素子も作れるし、ディスプレイ応用もできる、タッチパネルになったり、電池や太陽電池なども作れる。こういった20世紀に元素を変えながら実現してきた機能を炭素の構造を変えるだけでも実現し得る。これは元素戦略という観点でも、サステナビリティという観点でも重要なわけです。
 こういった研究でナノチューブがいいというのを見出したのが、サイエンス、物理の分野ですが、実は、いいナノチューブは依然として非常に高価ですので、それをいかに現実的に作るのかというところのプロセス開発が重要だと考えております。化学工学の立場でそれに貢献したい。
 ナノチューブと一言に言っても、実は多様なナノチューブがあるのが難しいところの一因です。例えば、これはナノチューブの断面の模式図ですが、炭素1層からなる単層カーボンナノチューブというものもありますし、一方で、10層、20層の多層のカーボンナノチューブ、これは量産、普及が特に中国を中心に進んでおります。
 一方で我が国では昭和電工さんがVGCFという炭素線維、気相成長炭素線維、カーボンナノチューブの一種ですが、これを長らく作ってきました。これを図面にするとこれぐらいの断面積を持っています。
 ですので、ナノチューブと一言で言っても、非常に多種多様でして、私はここで炭素のみから成る無機の高分子だというぐらいに考えたいと思っています。ですので、この方法がいいという1つの方法に特定できるわけではないと考えています。
 ナノチューブを作る方法としても、固体炭素を作った物理蒸着法、数千度のプロセスと、一方で炭化水素等の気体原料を用いて千度前後で反応させるCVD法がありますが、いずれの場合も、反応を促進し、かつナノチューブの直径を大体決める鋳型となる触媒粒子が鍵となります。
 サイエンスの分野では、例えば電子顕微鏡の中でカーボンナノチューブを成長させて、その場観察するということが10年以上前から可能になっています。触媒の重要性は分かっているわけですが、プロセスとしていかに実用的に作るのかとなると、多様になるわけです。先ほどの気体原料を用いた化学プロセスで合成する場合でも、反応器に触媒を、気相中に浮遊しているエアロゾルとして触媒を供給する方法もあれば、シリコンの基板の上に固定して、保持したまま、ガスと接触させてナノチューブを合成する担持触媒法もあります。
 一方で、固体の粉末の上に触媒を担持して、その粉末を三次元的に反応器に充填する方法、流動層等もあります。
 我が国ですと、eDIPS法と、あとスーパーグロース法、それら産総研さんの技術が日本が誇る二大合成プロセスとなっていますが、世界ですと、流動層法で千トン/イヤーぐらいのプラントが幾つか建ち始めていますので、こちらが主流となっています。
 それぞれできるプロダクトの特徴も違いますので、どれがいいというのはケース・バイ・ケースで選ぶべきですが、多様なプロセスがあって、多様な構造ができる。それに対して多様な用途があるので、組み合わせの問題になります。無数の組み合わせがあって、宝の山なんですが、ただ、いいかげんにつなぐとみんな失敗してしまいますので、いかに合理的にプロセスと出口をつなげていくのかが大事になります。
 少し基礎のところに戻らせていただきますが、担持触媒を用いるとナノチューブがこのように束状に成長してミリメートルに至るというのは、20年前に多層のカーボンナノチューブでは実現されています。我が国では、東大の丸山先生が2002年に、また、産総研の畠先生が2004年にこういったような技術を実現しています。このとき、触媒をいかに、小さい触媒を担持して活性を保持するのかが決め手となるわけです。
 この触媒探索なども試行錯誤がなされているんですが、合理的に答えを見つけることもできます。基板の上に触媒を担持する際、スパッタ法という、真空中で触媒をまく方法がありますが、邪魔板を入れると膜厚分布を付けることができます。これを反応器に入れて還元し、アニールすると、触媒の粒子、様々な粒子を基板1枚の上に作れる。そこに炭素源ガスを流してあげれば、カーボンナノチューブが、ここは小さ過ぎて活性を示さない。適度なところでナノチューブは高速に伸びていきます。触媒が大き過ぎるとまた活性が下がるというのが、1回の実験で見出すことができます。
 このナノチューブというのはシリコンの板に対してそれ以上に伸びる。長さ1ミリで、直径は2、3ナノといったようなものが合成できます。
 これは、産総研のスーパーグロース等で微量の水添加が重要だということを見出しているんですが、水を入れなくても特定の触媒条件ではちゃんとナノチューブが生えるということも分かりますし、一方で、下地、鉄触媒をSiO2に直接担持すると全然活性が示せない。一方で、アルミナ担体を付けると非常に活性が出る。ですので、アルミナが重要ということも一目瞭然で分かるわけです。
 また、プロセスの理解という意味では、炭素原料も大事です。アルコール派、エチレン派、アセチレン派、メタン派、いろんな流派がありますが、そもそもどの分子が非常に活性が高いのか。反応器の中ではガスも加熱されますので、気相反応も同時に進行して、何が実際に反応するのか分かりません。触媒を担持した基板を通電加熱して、触媒だけを温めて、ガスを接触させると、ガスが加熱される時間を非常に小さくすることができます。上流からガスを流すときに、制御して気相反応を起こすということをしてみると、エチレンを供給した場合にはガスを加熱しないと下流でナノチューブは伸びないんですが、上流で加熱すると下流でよくナノチューブが伸びるようになる。実はこれはエチレンやエタノールから熱分解でできる低濃度のアセチレンが前駆体だということがわかってきました。低濃度のアセチレンを直接供給すれば、ガスを加熱しなくても下流でよくナノチューブが伸びる。こういうことを1個1個調べていく必要があります。
 すると、非常にシンプルに、アセチレンが重要な前駆体で、たくさん入れると触媒が炭化失活するので、アルゴンで薄めてあげる。これだけで添加剤も何も要らない。シンプルな方法でちゃんとハイクオリティのカーボンナノチューブを合成させることができるわけです。
 実験施設の反応器の中でも実は非常に複雑な現象が起きています。エチレンから、炭素と水素ができるという単純な反応ですが、ガスが伝熱で温まって気相で分解して、アセチレンが出来て、これが拡散をして、触媒にたどり着いて、解離吸着して成長するという、多数のプロセスを経ているわけですが、このとき出来たナノチューブの基板上での形態を見ると、どの過程が律速段階なのかというのも判別することができる。どこがボトルネックか分かれば、手も打てるわけです。それに対して、プロセスの効率的な制御をしたりとか、ちょっと画面、下が切れてしまっていますが、新しいCVDをデザインすることも可能になります。
 ナノチューブが基板上で高速に成長する。非常に面白いんですが、このままでは実用が限られます。ですので、例えば半導体集積回路の中でナノチューブの配線を作りたいとなると、400度、半導体が壊れない低温でナノチューブを密に、かつ導電体の上に成長させる必要があり、そういう技術を開発したり、また、ディスプレイ応用ですと、いかに大面積に高速にナノチューブの部品を実装するのか。1秒の合成技術。これは後ほど紹介します。
 また、このナノチューブをかき集めても量はとれないので、いかに量を作るのかといったプロセスの開発を進めています。
 ナノチューブをシリコン基板の上に合成するというのは、半導体デバイスの製造プロセスのようなものですので、ここからかき集めてナノチューブをバルクで使うというのはなかなか難しいです。三次元の化学プロセスとしては、流動層という方法がありますので、セラミックスのビーズの上でナノチューブを合成して、たくさん回収できるのではないか。
 例えば縦型の反応器に対して、セラミックスビーズを入れておいて、有機金属蒸気を供給して触媒を担持し、炭素源を流してナノチューブを合成し、キャリアガスを高速に流してナノチューブだけ吹き飛ばして回収して、このサイクルを、温度一定のまま、ガスを切り換えることで回すというプロセスを開発しました。
 ナノチューブを合成中にはこのセラミックスビーズがよく、下からガス流されて、混合されている状態です。次にキャリアガスを高速に流すと、ナノチューブだけ吹き飛ばされて、これが重力沈降でたたまってきますが、ガスはフィルターを通して外に排気される。分離は1分ぐらいで終わりますので、ガスを少し止めると、フィルターの上のナノチューブも回収されて、1サイクルが終わります。
 このサイクルを繰り返すと、小さな反応器を使って大きな反応器をナノチューブで満たすことができます。生産性が悪いプロセスをそのままスケールアップすると赤字が拡大するだけですので、まず効率を高めた上でスケールアップをするということが大事になり、今、産学連携で共同研究で開発を進めているところです。
 このとき、アセチレンが、反応器を0.3秒で通り過ぎているんですが、その70%はカーボンナノチューブになっています。出来ているナノチューブのクオリティも、純度が99%といった、非常にいいものが作れます。
 この方法は、実はシリコン基板の上でのナノチューブの成長速度の解析から速度情報を得て、それを化学工学的に設計し直すと、この反応器、どれぐらいの粒径のビーズを使って、どれぐらいの速さでガスを流すと、どれぐらい反応するのかというのが計算できます。大学院の演習問題に出して解かせていたんですが、その後、プロジェクトで実際の実験が追いついて、大体予想したとおりの条件で最適解が得られるということが分かっています。
 また、ディスプレイ応用で1秒でディスプレイガラスの上にナノチューブを作るという技術です。一時期、フィールドエミッションディスプレイが盛んに研究されていました。ガラス基板は500度で壊れるので、CVDを低温化するという研究が盛んになされていたんですが、それだと反応に1時間かかったりします。
 一方で、800度で先ほどの成長速度ですと、1秒で数ミクロンナノチューブが伸びるので、ガラスが800度で1秒で壊れるのかという実験をしてみました。例えばガラスの上に電極パターンを付けて、触媒をまいておいて、ガラス管の中にセットして、DC電流を流して、そのときに雰囲気に炭素源を入れておくというものです。これ、1秒の実験なんですが、通電加熱すると基板が赤くなります。真空ポンプもヒーターも要らない簡単な実験ですが、この基板の上に実際に、これ、触媒の分布を付けています。厚いところと薄いところで多層のカーボンナノチューブと、単層のカーボンナノチューブが生える。電子を飛ばして、カソードルミネッセンスを見ると、こういった条件のナノチューブが一番電子をよく飛ばすということも分かります。
 ですので、ちゃんと理解すれば、電極パターンを作る方がとても大変な実験で、一方でナノチューブを成長させるのはとても簡単です。ですので、理解ができれば、実はナノ材料を作るというのはそれほど難しくないということが起きています。
 その他、企業さんがよく相談に来られるので、共同研究しているんですが、異方性導電膜を作ったり、熱界面材料を作ったり、あとは放熱部材を作るような共同研究を進めているところです。
 たくさん盛り込み過ぎましたが、様々なアプリケーションがある中で、プロセスの完成度が低過ぎるというのが現状の課題だと思っています。今、ナノチューブ、非常にハイクオリティのナノチューブが実験的には作れるんですが、ただ、例えばコンピューターを作るとなると、まだ制御性が足りな過ぎる。一方で、電池とか、導電性樹脂などに使うとすると価格が高過ぎるわけです。それぞれに対して使い方が違うので、その方法に合ったプロセスの開発が必要になると考えています。
 まとめさせていただきますが、先端材料の合成法というのは、たまたまその方法で見つかったということがよくあって、その方法は必ずしも合理的ではない。いかに合理的なプロセスを生み出すかというのが大事だと思っています。
 その際に、ただやみくもにやってもいいプロセスはできるはずもないので、基礎的な現象をしっかり理解する。これは自分で実験するだけではなくて、論文情報とか、いかに効率的に吸い出してくるのかも大事になります。
 基盤研究として、純粋科学でなくて、基盤、ベーシックとして、知識をいかに効果的に創出して、抽出して、消化、接続するのか、理解してつなげていくのかが大事だと考えています。
 あとは、プロセス、0から1のプロセスを考えるところは、設計どおりにはいかないので、頭の中で自由に高速に思考実験を繰り返す。その中でこの方法ならうまくいきそうだというものに対して定量的な設計をしていくということをやってきたんだと思っています。有望な方法があったら、それを定量的に設計し、大学院の演習で設計できてしまうぐらいですが、実験をする。そうすると、長尺・高純度のナノチューブが出来るので、これをプロダクトに応用する、界面材料とか、あとはスポンジ電池という、御紹介できませんが、そういった従来にない電池の開発などへとつなげていっています。
 一方で、もう一つの例は、ディスプレイ応用でナノチューブを、いいものを作ってくださいという話があったわけですが、そのときに、どういう構造なら簡単に作れるのかというのを考えて、機能と作りやすさを両立する概念設計が大事で、ここも高速にいろんな試行錯誤の思考実験をしていきますと、この構造なら作れるということで、実際にパルス通電加熱法というのとセットで考えて、これもエクセルで計算できてしまうんですが、有望案を定量的に設計して、実験をして、開発する。
 こういうことができていると、このプロセスで自在に使いこなせますので、ほかのアプリケーションへと展開していくということを現在行っております。
 このあたり、日本はどうしても基礎研究といっても純粋研究に近いところがあって、自在に使いこなすという基盤研究が大事だと思っています。また、定量計算、設計が大事だとか、コンピューターで処理するというのも大事なのは確かですが、やはり頭に入っていて、高速に思考実験ができると。0から1を生み出すところはそこが必要だと思っています。発想と類推も大事で、ここもコンピューターが支援できると思います。
 あと、要素の開発が大学では重視されがちなんですが、組み合わせが非常に大事で、自由につなげて、積極的につなげて、接続に無理がある箇所に未解明のサイエンスがあると思っております。
 こういったプラットフォーム、どう作るのか、非常に難しいんですが、少なくともこの思考実験を支援するプラットフォームはある程度できそうですし、当面は人がそこを担っていく、人材育成かなと考えております。
 以上になります。
【中山主査】  どうもありがとうございました。ただいまの御説明に対しまして御意見あるいは御質問等ございましたらよろしくお願いいたします。
【渡慶次委員】  ありがとうございます。確認させていただきたいのですけれども、カーボンナノチューブというのは今でも電子材料としてものすごく魅力的であるものの、実用化が余り進んでないというのは、コストが高いということに原因があるということで間違いないですか。
【野田優先生】  原因は2つほどありまして、実は中国ではかなり実用化が進んでいます。日本では余り進んでいない。1つは、日本の電池産業が不純物に対して非常に慎重ということがあります。昔の発火事故とかもありましたので、鉄の不純物を200ppm以下に抑えなさいといったようなことを規定するので、そうするとナノチューブは難しいというのはあります。
 一方、中国はその点寛容で、作ってみて問題起こさなければいいんじゃないかという面があるんだと思うんですが、もう一つが価格です。中国は実用で安いものを電池を作るのに使っていきますので、生産規模を上げて安くして、安いから逆にたくさん使えるわけですが、1,000トンクラスのプラントですと、キログラム1万円切って、数千円で売っていると聞きます。
 従来の炭素材料、例えばカーボンブラックとかアセチンブラックといったのが導電助材として使われてきたんですが、それはキログラム、1,000円、2,000円ですので、日本の技術ですと、万とか数十万とかの話ですから、それだと使えないという。生産規模、コストと、あとは使い方、実際に機能に対して本質的に求められているプロダクトの要件、そこの考え方だと思います。
 あとは、ナノチューブをカーボンブラックの代替に使うだけですと面白くないと思っていまして、ここで挙げているスポンジ電池といった、これは私もまだ探索的な研究なんですが、金属箔の要らない電池を作るというのを今プロジェクトで進めていて、いいナノチューブを作るとそういうことが可能になりますので、従来なかったデバイスを作れるということにできればつなげていくのが大事だと思っています。
【渡慶次委員】  ありがとうございます。
【中山主査】  そのほかございますか。一杉先生、よろしくお願いします。
【一杉委員】  ありがとうございます。お聞きしたいのは、ここのスライドに書いてある純粋研究と基盤研究、それから、一般に言っている基礎研究についてです。この三つは意味が微妙に違うのだろうと思います。それらの意味について考えをお教えいただきたいと思います。
【野田優先生】  純粋研究というのは真理の探求ですね。分かっていないものを解明していく。これはとても大事ですが、そのままですと、工学的には応用が効かない。研究している人たちが応用の逆向きのベクトルに関心があるかどうかというのが一番大事だと思っています。ベクトルが真理の探求のみに向いていると、その方と例えば企業の方が訪問しても話がかみ合わないので、この知識をいかに使うのかという意識を持つというのがまず大事。それが基礎研究だと私は思っています。
 基盤研究というのは、その知識を自在に組み合わせられるようにしていくというのが基盤研究で、特定の応用を意識しているわけではないので、ここでは基盤と言っております。
【一杉委員】  そうすると、世の中で基礎研究と言っているのは、今おっしゃっている中で純粋研究だということですね。
【野田優先生】  純粋研究が多いんじゃないかというのが不安要因です。
【一杉委員】  分かりました。それを踏まえて、基盤研究の方が社会につなげるためには重要だという前提で、プロセス設計から基盤研究につながるというところ、そこの左側のところはどのように理解すれば良いでしょうか。例えばプロセス開発を行っていると、基礎の理解をしなければならない。すると、そこに新しいサイエンスを見つけるチャンスがあるとか、そのようなことを基盤研究とおっしゃっているのでしょうか。
【野田優先生】  そうですね。有る知識をともかくつなげる。つなげたときに、つなげる要素が足りないときには、そこは純粋研究のほうに戻って構わないわけですが、ここは実は分かっていないところは解明する。そしたら、また知識のデパートの中にそれを組み込むということをしていくのが基盤の作業だと思っています。
 ナノチューブの例で端的に言いますと、皆さん、触媒、ナノサイズには興味があるんですけれども、反応器スケールには興味がないんですね。
【一杉委員】  何スケールですか。
【野田優先生】  反応器スケールに対しては興味が。
【一杉委員】  反応器スケール。
【野田優先生】  はい。ないです。実はナノチューブが生えない原因が、触媒が悪いんじゃなくて、ガスが温まっていないから気相の熱分解が起きてないだけというような条件もよくあります。やはり小さいところに未解明のサイエンスがよく眠っているので、そこを研究して論文を書くというのは盛んなんですが、実はごくマクロな当たり前のところが理解できていなかったりする。そこを応用を志向した際、社会実装を志向した際には、出口に向けて既存の知識をいかにつなげるか。つなげるときに足りないものを開発するというのが大事かなと思っています。
【一杉委員】  その反応容器を大きくするところで興味を持たなくなるというのは、よく理解できます。今の日本の風潮からして、つまり、インパクトファクターが高くなる研究をやりなさいと言われる中で、そこに向かうのは研究者として非常に勇気が要ります。一方、社会実装しなさいとも言われて、インパクトファクターか社会実装かという相反する要求の中で、どう研究を進めていけばいいでしょうか。
【野田優先生】  本来はそこを担ってきたのが化学工学、化学の分野ですと化学工学の学問なんですが、インパクトファクターの高い論文が書けないから、合成化学、ピュアケミストリーの方に転身している人が多いです。ですので、ますます社会実装を担える人材が減ってしまっているのが1つです。
 それに対して、一応私も論文書いて生き残って、生きられるぐらいは書かなきゃなと思っているんですが、その1つのポイントとしては、プロセスに発見、発明がないのかというところです。0から1の材料というのは分かりやすいオリジナリティなんですが、0から1のプロセスを開発するというのも立派なオリジナリティで、そこは自信を持って主張すべきだ。これ、化学工学者、我々に向けた自戒なんですが。それをしていないので、新しい材料を見つけることがオリジナリティだと思って、化学工学屋までそれをしてしまうと、実装なんてとても無理ですので、0から1を見つける、マテリアルを見つけてくれる人がたくさんいるんだから、見つかったマテリアルを仕上げる仕事を自信を持って担えばいい。そこの成果を主張すればいいというふうには思っております。
【一杉委員】  分かりました。もう少し何か言いたいことがありますが、頭を整理してからまた発言します。ありがとうございます。
【中山主査】  ありがとうございました。そのほかございますか。
【髙尾委員】  髙尾です。よろしくお願いします。ありがとうございました。この言葉も非常に意味深というか、自由・高速な思考実験というのが、プロセスと構造の概念設計の両方にあるんですけれども、試す、行うじゃなくて、概念を設計するということなのでバーチャルで全てやるという理解でよろしいんでしょうか。
【野田優先生】  はい。0から1のプロセスを生むような過程では、バーチャル、頭の中でやるというのはとても大事だと思っています。私もいろんな装置とかプロセスを思いつくんですが、多分100個に1個ぐらいしか試していないです。これはこう考えて面白そうだと思ったんだけど、実はここにネックがあって無理だねというので、全て装置を作って実験していたらとてもお金も時間もかかり過ぎるので、いろんな頭の中で実験をして、これならいけそうだというものを実際にアクションに移している。それを、基礎知識をいかにつなげて自在に使いこなすのかというのは大事だというところです。
【髙尾委員】  バーチャルというのは、コンピューターとか、インフォマティクスを使うとか、そういうことではなくて、研究者の頭の中ということですか。
【野田優先生】  そうですね。暗算で大体計算、設計はできますので、オーダーの計算まではできて、これならちゃんと乗りそうだとなったら精緻なシミュレーションをすればいいわけですが、例えばコンピューター、シミュレーションで、一旦入れば、計算結果が出てくるのは正確で速いですけど、条件を入れるというのは非常に大変な作業で、曖昧とした概念を明確にしてコンピューターが理解できる形に入れていくというのは相当大変ですので、全部それをやっていると間に合わない。なので、暗算であたりを付けといて、これならいけるなというので、それを実験した方が速ければ装置を作って実験してしまいますし、装置を作るのが大変そうでしたら、計算、シミュレーションをするといった、そこの段階も大事だと思います。ただ、これが形に出ないので、ここが大事だということを主張する機会が余りないと思うんですけれども、シミュレーション基盤だとか、そういうのはもちろんあるわけですが、シミュレーション基盤があったときに一番のネックは何かというと、シミュレータに入れるまでが。この自由、自由というのは常識にとらわれないで自在に発想するというところなんですが、そこの自由なところの設計では大事だと思っています。
【髙尾委員】  分かりました。自由は、今までこう作っていたけどということは外して、作り方を根本的にそのものから考えるという理解ということですか。
【野田優先生】  はい。
【髙尾委員】  ありがとうございます。
【野田優先生】  先ほどの流動層の例をお示ししましたが、あれ、私、板の上でナノチューブがちょろっと出来るという時代に始めたことでして、学会で発表すると、ミリグラム作るの大変なのに、グラムでああいうふうに同じ大きさの装置で作れるというので、皆さん、衝撃受けてくれるわけです。でも、そんなことできるはずもないと専門家は思っているわけですが、合理的に考えればできる。そこにミリグラム、苦労して0からミリグラム作った人たちは、なかなか飛んでいけないので、ここはプロセス屋としては自由に考えるべきだと思っています。
【髙尾委員】  ありがとうございます。
【中山主査】  ありがとうございます。そのほかございますか。
【生越委員】  序盤の7ページのところで、プロセスが3種類あって、真ん中のものが今主流で、残念ながら日本のものは主流ではありません。その理由についてお伺いしたいということが1つと、それから、今後、何を変えたら日本のやり方というのは主流になれるのかということをお聞きしたいんですけど。
【野田優先生】  ここは結構難しい、あとは話しづらいという面もあるんですが、1つは、日本はやはりクオリティ優先で、例えばeDIPS法、非常に導電性のいいカーボンナノチューブが作れて、中国の流動層は安かろう悪かろうだという見方をしていることが多いんですね。ただ、実は、彼らは作りながらもどんどん品質も改善していますので、かなりいいものが生産性としては数桁違う規模で作れるようになってしまった。当面年産が例えば数十キロだ、で、数トンだという見通しのときですと、企業さんは実用化したときに、例えばキログラム1,000円で使いたいような用途というのは検討できないわけですね。ざっくり言うと、企業さんが事業化するときには年商10億ぐらいを想定していると聞きますが、キログラム1万円のナノチューブですと、年産100トンで10億円。これが一声です。なので、100トンぐらい作るプランがないとキロ1万円にはならないので、そうなると、その用途、とても高級な用途としか想定できなくなって、その高級な用途を満たすためには、まだ性能が足りないといった問題が起きてくるわけです。
 どうしても質優先で考えてしまうので、丁寧に制御して合成しやすい方法で、これの開発は日本では盛んなんですが、一方で、流動層法はすごく乱暴な合成法なんですが、そこに関しては、ナノテクが中心でプロセス開発しているので、こんな方法だといいもの作れないだろうという考え方が根強くあります。
 実際に作ってみると、うちは、多孔質担体に変えてシリコンと同じような平滑な支持体を使っていますので、このクオリティでこの規模でということをやっていて、出来ているものは確かにいいものだという評価は頂いています。
 これをどうするかというので、もう一つは、ナノカーボンですと、拠点がここだというのが大体決まっていて、国プロが走ると大体メンバーはいつも同じというのがあって、そこも大きな問題かなとは思います。
 私はこの部分に関しては、オープンにはしていませんが、企業さんとの共同研究で開発をしていくことにしています。
【生越委員】  今のお話を聞いていると、このままいったらいつまでたっても主流にはならないということですかね、ありていに言ってしまえば。言いにくいかも分かりませんけれども。
【野田優先生】  このままだと、日本はナノカーボンに予算をたくさん使ったのに失敗だったという烙印を押されるのが一番怖い。もの自体はいいものですし、うまくやればちゃんと挽回できるとは思っています。
【生越委員】  このままいったら、その烙印がきっちり付きますよという警告みたいな話ですね。
【野田優先生】  はい。危ないと思っています。
【生越委員】  ありがとうございます。
【中山主査】  ありがとうございました。そのほかございますか。
【田中委員】  どうもありがとうございました。一番最後のページ、見せていただいたまとめのところで、一番上の行に、「先端材料の合成法は必ずしも合理的ではない」という一文がまずあって、ここだけを拝見させていただくと、やはり今、マテリアルズインフォマティクスというか、AIというか、そういうことがすごくうたわれていて、合理的な条件を出すだけであれば、今お話しさせていただいたような方向でいいんじゃないかと思うんですね。先ほど先生の質疑応答の中だったと思うんですが、0から1を生み出すプロセスというのが評価されてもいい。0から1を生み出すというのは多分人間じゃないとできないという話ですよね。としたところで、そこの関係性がちょっとよく分からなかったんですが、簡単に教えていただけると。
【野田優先生】  0から1を生み出す。例えば先端材料の合成法は必ずしも合理的ではないという、ここの一文ですが、最初は、ナノチューブ、飯島先生が1991年に発見された際の見つけ方というのは、アーク放電法でのフラーレンの合成研究の中で、フラーレンの収量が少ない側の捨てていた煤をもらって、それを分析したら、その中にナノチューブが入っていた。なので、アーク放電法で作るべきだというので、盛んにアーク放電法が研究されたんですね。そのプロセスが合理的かというと、合理性はなくて、たまたまその場で見つかって、合成できる1つの手段であるけど、それがいいとは限らないという典型的なパターンだと思います。
 実際には、CVDプロセスに行ったわけですが、CVD法ですと、こうやるものだという常識があるわけです。このときに、当初は流動層法という言葉自体をナノカーボンの研究者、知らなかったので、私もナノカーボンの世界に入ったのが2004、2005年ですから、日が浅かったんですが、実は中国とかで2002年ぐらいから始まっていました。それは、私もそのコミュニティの中で知らずにこれを始めていたんですが、こういう方法かこういう方法で作るものだと思っている人たちが、これを思い付けないというのがあります。
 それに関しては、本当にどういう意味で0から1かというのは難しいんですが、ほかのバルクの例えばポリマーを作るプロセスとか、そのほかのガソリンを作るプロセスとか、そういったところで流動層は使われているんですが、それを知っている人は、ナノチューブがこれで出来ない理由はないというのは分かるわけですね。ナノチューブに適用したという点では0から1なんですが、一方で、プロセスから見れば、それだけですと、0から1ではないです。転用になるわけですね。ただ、ナノチューブに適用するためには、そのままでは当然適用できないので、それに対して、サブの要素技術、例えば反応器の中でそのまま触媒を付ける技術とか、そういうのはなかったものは開発しながらここに持っていく。
 あとは、ナノチューブ、ガラスの上に壊さないで、ナノチューブを生やす。1秒、通電加熱して、そこに成長させるということに関しては、先行例があるかどうかは知らないですが、これもジュール加熱をしていて、1秒でガラスが壊れるのかという仮説さえあれば、すぐに実験できるんですが、ほかの人は、20年間誰も思いつかない方法を思い付ける。
 そういうところが、AIでできるのかどうかは、いかにAIがうまく処理できる形で、人のアイデアがコンピューターに入るのかということですね。類推という意味ではある程度可能だとは思っていますが、多段階の発想というのはできるかどうかはわからないと思います。多段階の仮説を組み合わせたものがうまくいくかどうか。ほとんど外れになるので、そこはやはり思考実験を繰り返すことで打率を上げていくしかないだろう。そこの方法論があるかどうかは、私は素人で分からないんですが、当面は人が担うのではないかと思っています。
【田中委員】  両方大事だという理解でよろしいんですよね。AIもツールとして大事だし、今まで歴史的にやられてきたストラテジーも併用してやっていくのが今後のやり方だという理解でよろしいんですね。
【野田優先生】  はい。
【中山主査】  どうもありがとうございました。
【内田委員】  どうもありがとうございました。先ほどのお話を伺っていると、日本だとどうしても質を優先してしまうということがなかなかうまくいかない要因の1つというふうにお伺いしたのですが、そうすると、それでは少々質が悪くてもいいというふうに、どこの人が思えばいいのか。大学の人なのか、会社の人なのか、予算を配る人なのか、どこでマインドを変えればうまくいくというふうに。
【野田優先生】  そこも難しい御指摘ですが、日本の文化だというのもあるかとは思いますが、ちょっと私、高度成長期がどうだったのか分からないんですが、多分バブル以降、かなり定着しちゃったのかなとは思うんですが、コストでは中韓に勝てないので、質でいくんだというところに来てしまったのかなと思っていますが。
 あとは、流動層みたいな乱暴な方法で良質なものができるわけがないという思い込みですね。実は純度という意味では、ほかの方法よりもずっと、超高純度の精製品よりも高純度なものが作れますので、質も両立できるんですが、量がたくさん出来ると質は犠牲になるという思い込みもあるので、そこの思い込みをどう打破するか、難しいですが、やはり成功例を増やしていって、考え方を変えていくしかないのではないかというのはありますね。
【内田委員】  ありがとうございます。
【中山主査】  ありがとうございました。どうぞ、林さん。
【林委員】  最後のまとめのスライドのところで、一番下に思考実験を支援するプラットフォームがあったらいいのかという文章があるんですけれども、こういう一連の研究と思考実験というのを繰り返していくプロセスが、研究者の皆様が皆できればいいですが、学生さんが減っているとか、研究者の方が論文を書くというところに集中したいという思いがあるのが現実。その中で、どういうプラットフォームがあったらいいとお考えなのか、教えてください。
【野田優先生】  プラットフォームは、大きく分けて3つ機能が必要かと思っていますが、1つは、AIとかインフォマティクスでいかに情報を効果的に処理するのか。ナノチューブ関係の論文も年間1万報を超えて出てきますので、それを全部熟読して理解するのは不可能ですので、いかに情報を効果的に抽出して、また、AIでその組み合わせを提案してもらうのかというのは一定の役割があると思っています。
 もう一つが、その結果を実際に思考実験したり、現実の実験をして確認をする人材も大事ですし、人材というのは1人じゃ自在な発想は身に付かないので、こういうことを議論できるような、コンソーシアムなのか、プロジェクトなのか分かりませんが、オープンに議論する場があるといいなと思っています。
 食べるために論文を書いていくという流れになってしまうと、本来の論文の位置付けでもないんじゃないかとは思いますが、少なくとも技術の社会実装は加速するはずもないので、そこはやはりこういう会を文科省さんが開いていらっしゃいますので、変えたければ変えるしかないと思います。その際に、評価をいかに引用の多い論文を書いたのかという評価軸にしてしまう。少なくとも大学は分かりやすいので、それで人事選考してしまう。そこを変えなさいというようなことをしていただくかどうかだと思います。
 ただ、評価しないというのはもちろん昔の悪い状態に戻ってしまいますので、何らかの評価は必要で、引用数、数になるとコンピューター処理が簡単なので、誰でも分かるので、数で皆さん見てしまうわけですが、こういう試みが役立てばやるべきですし、役立つことをどうやって分かる指標にするのかというのが大事なポイントだと思います。
【中山主査】  ありがとうございました。よろしいでしょうか。
 私から、やや乱暴な質問です。先生のやられていることは、香り高い化学工学だと思うのですが、普通の多くの化学工学の人がそっちに行っていないような御発言をされました。ということは、化学工学で工学をやっていない、ケミカルエンジニアリングでエンジニアリングをやっていないとおっしゃっているんですよね。
【野田優先生】  はい。おっしゃるとおりで、論文を書くために結構サイエンス側に振れてきてしまっている人も、ケミストリーに振れてしまっている人も多くなっています。
【中山主査】  化学プロセス工学でさえも、化学プロセス工学をやったらば論文が評価されないとおっしゃっている。
【野田優先生】  そうですね。分野内では評価されるのですが、外からは評価されにくいのだと思います。
【中山主査】  だけど、先生みたいな、ちゃんと評価されている方もおられる。
【野田優先生】  それは難しいんですが、化学プロセス工学の仕事は化学工学の中では評価されます。ただし、化学工学単独の学科専攻というのはほとんど残っていませんので、応用化学、ケミストリーと組んでいる、その中の一部隊に化学工学がいるということが多いと思います。その際に、次の教員、誰を採りますかというときに、化学工学の人が定年退職して、次誰を採るかというときに、化学工学系で評判が高い人とほかの分野の化学で評判が高い人が並べられると、インパクトファクターで見ると、後者の方がいい。かつ、その学科の多数が化学系の方というのが通常ですので、どんどん化学工学系教員が減っていっているというのが実際だと思います。
【中山主査】  ありがとうございます。デパートメント・オブ・エンジニアリングでありながら、エンジニアリングやっていたら評価されないとおっしゃっていますか、全体としては。
【野田優先生】  そうですね。うちの場合はややこしいんですが、理工学部なので。
【中山主査】  そうですね。それは分かります。
【野田優先生】  もちろんテクノロジーとデバイス研究をすれば、それはそれでインパクトの高い仕事もできるので、デバイスに振れてしまう人もいますし、あとは、材料探索に振れてしまう人もいる。一方で、新しい材料を見つける人がたくさんいて、いい材料がたくさん見つかっているんだから、それを調べようと化学工学者が思うべきですし、仕上げたことを積極的にアピールすべきなんですが、それがなかなかできていないのが化学工学分野の問題だと思っています。
【中山主査】  ありがとうございました。その辺の議論を後でまたできればと思います。ありがとうございました。
 時間ですので、次へ行かせていただきます。続いて、佐竹様よりお願いいたします。
【佐竹徹也先生】  三菱電機の佐竹と申します。きょうはよろしくお願いします。本日は、「新材料の作り込み技術について」ということで、弊社の考え方というか、取組を少し紹介させていただきます。
 最初、配付の資料の方にはないんですけれども、簡単に自己紹介も兼ねて、弊社の組織を紹介させていただきます。三菱電機ですけれども、事業本部が幾つもあって、こちらの方は製品を担当していて、私が所属する先端技術総合研究所というのは、コーポレートのラボラトリーの組織になっています。ですので、弊社の製品群に対して、全て研究開発を請け負うということで、先端技術総合研究所は尼崎と長岡京にありまして、主にハードウェアの研究開発をしております。
 それから、情報技術総合研究所、これは大船の方にありまして、こちらはどちらかというとシステムとかソフトウェアの研究をしております。
 それから、デザイン研究所は、弊社、エアコンとかありますので、そういった工業デザインの方とか、あと、最近はインターフェースの方を研究しているところで、こちらも大船にあります。
 それから、アメリカとイギリス、フランスにも海外研究所として、主にソフトウェアであったり、先端的なところの大学とのやりとりのような連携のような業務があります。
 先端技術総合研究所の組織なんですけれども、5つの部門から成っていまして、そこにはこういった部がぶら下がっておりまして、私はここの先進機能デバイス技術部の部長をしております。今回の材料というか、デバイスは、我々の部門が引き受けておりまして、部としては、デバイスがほかに、パワー系のSiCと、それからシリコン系のデバイス部があって、それから材料とか評価の部隊があって、それと機能デバイス部があるという状態です。
 デバイスに関しては、シリコンとSiCに関しましては、ここはターゲットが決まっておりますので、我々の部としは、それ以外のデバイス全て扱うということで、先ほどのナノカーボンであるとか、そういった新たな材料を使った新用途のデバイスの開発を請け負っている部であります。ちなみに、ここの部門長は、先ほどから出てきていますが、化学工学の卒業生ですね。基本的に我々は化学系も多いです。
 簡単に私の自己紹介をしますと、私も実は化学でして、工業化学専攻で、91年に入社して、当時は弊社もトップ10に入っていましたので、DRAMのCVD成膜プロセスに従事しておりました。96年から液晶パネルに変わりまして、そのまま液晶パネルをずっと続けていて、部長となると同時に開発管理に従事しているんですけれども、先ほどのシリコンであったり、SiC以外のデバイスということで、現時点では、弊部としては、表示デバイスで、液晶ディスプレイ、タッチパネル、光でいうと、半導体レーザー、センサーでいうと、ADAS系ではなくて、エンジン制御系のMEMSのセンサーであったり、あるいは、赤外線センサーといったものの研究開発を担当しております。
 作り込み技術なんですけれども、弊社の中で非常に多いのは、性能・サイズアップ時の作り込み技術でして、こちらの方は、もう既にあるデバイスですね、メモリであったり、液晶ディスプレイであったり。この図ですけれども、材料メーカー、製造装置メーカー、我々がいて、こういったものを開発していて、そのときの研究開発のポイントは、こういったものになるだろうということで、青字で示しているんですけれども、性能・サイズアップとか、そういう場合においては、どちらかといえば材料メーカーさんの方は、純度とか、添加剤とか、あるいは、何とか飛ばしたい金属のアルコキシドであるとか、あるいは、液晶であったり、ネガ液晶とか、強誘電液晶であったり、こういったものに開発の主眼が置かれていたと思います。
 製造装置メーカーとデバイスメーカーというのは、主に比較的現行の製造方法の改造であったり、そういった装置構造の改造であったりして、こういったプロセス条件ですね、圧力とか、温度とか、流量とか、プラズマパワーとか、そういったところを一緒に頑張ってやっていくと。たしか90年代、私が入社した当時というのは、基本的にCVDでしたので、CVDメーカーの人と一緒に工場にいて、この辺は総当たり的にやるといったような作り込み技術を開発しておりました。
 更にそのときは、ウエハの大口径化とかがありましたので、化学工学の研究室が大学にもいっぱいあって、我々も東大の化学工学の先生と共研をして、いかにウエハに均一に付けるかという研究開発をしていて、そういった論文を書いたりしていました。
 こういったところの特徴としましては、既存プロセスで製造可能な場合は、ほとんどの場合はデバイスと製造装置メーカーで開発が進められていまして、ネガティブな特徴としては、かなりの部分、製造装置メーカーに情報が集中してしまうということがありまして、液晶ディスプレイに関しても、メモリに関してのそういう状況が発生してきたと思います。
 液晶ディスプレイ、弊社は全然追いつけていませんけれども、今、10.5世代、3×3.4メートルまでが量産されていて、スパッタですと、ULVACのこういった装置、これが人の大きさですけれども、ここに3メートル角ぐらいのガラスが縦に並んでざーっとスパッタ装置が動くような、こんな巨大な装置が普通に出来ています。
 CVDでいいますと、AKT社ですけれども、こういった大きな装置、これはチャンバーが横になっているんですけれども、こういった装置が量産されていて、ここにノウハウであるとかが恐らくほぼ入っているんじゃないかなと思っています。
 こうすると、何がデバイスメーカーで起こるかというと、これは製造ラインの数というのをずっと示したものなんですけれども、G8とか、G10とか、この辺は、今、アモルファスシリコンでよく使われている、テレビとかで使われているガラスサイズですが、最終的には2メートル角とか3メートル角ぐらいのものですけれども、日本の数は、2つと1ラインあって、それから韓国。実際には中国がすごく多い状況で、10本以上あります。
 一時期、低温ポリシリコン、技術的に難しいと言われていたんですけれども、高精細スマホで中国メーカーがセットメーカーとして作っていたところが、デバイスメーカーもどんどん参入してきて、今は、低温ポリシリコン、まだ少しサイズが小さくて、5.5世代のガラスを使うんですけれども、中国が9ラインある。稼働しているかどうか、ちょっとまだ不明なところもあるんですけれども、あると言われています。
 ですので、こういった作り込み技術の場合は、非常に重要なんですけれども、製造装置メーカーが保有するということになってしまうと、大型基板工場建設の投資能力があるデバイスメーカー、あるいはデバイスメーカーのある国が強くなるということになってしまうというのは1つの課題かなと思っています。
 今回の場合は、新規材料というか、新コンセプト材料の作り込み技術ということですけれども、弊社として想定されるのはこういった材料かなと思っておりまして、有機機能材料であったらば、量産、一部進んでいますけれども、有機ELであったり、有機TFTであったり、あと、多元系の材料ですね。IGZOに代表されるような酸化物半導体であったり、磁性材料であったり、圧電材料だったり、あるいはメモリに使われるカルコゲナイド合金であったり。で、ナノ・原資薄膜材料であれば、グラフェンであったり、カーボンナノチューブだったり、クァンタム・ドットであったりといった、こういうところがデバイス適用として有望だと考えております。
 こうなりますと、製造装置メーカーとしては、先ほどもありましたけれども、プロセス装置は、今までに使ったことがないようなものが多くなってきますし、おそらくパターニングの部分はそんなに変わらないと思うんですけれども、主に膜形成の部分が非常に重要かなと思っています。
 デバイスメーカーは、それぞれいろんな用途があると思いますけれども、高速、高集積、フレキシブル、あるいは全く新しいセンサーを目指して開発を進めていると考えています。
 特徴なのは、今までの既存のものの性能アップの場合と違いまして、材料メーカーとのやりとりですね。主にこういう有機系だったら、信頼性であったり、効率であったり、あるいは多元系だったら、制御性であったり、コストであったりするんですけれども、こういったところと併せてやることが必要で、例えば顕著な例だと、有機ELの場合は、青色ELが寿命が少ないというので、液晶の場合だったらRGBって基本的に同じ面積ですけれども、有機ELは、ご存じのとおり、青だけでかい画素になっていたりして、その部分は、デバイス側として、やりとりをしながら作っている状態だと思っています。
 もう一つは、分析・評価方法が非常に重要で、ここはデバイスメーカーが買ってきてやるだけではだめなところで、不純物準位であったり、そういうところを測るときは分からないときとか、分析装置メーカーと一緒にやらないと分からないという状態になったりしています。
 ですので、こういった新コンセプト材料の場合は、やっぱりプロセスのみならず、デバイス構造、分析・評価手法で新しい技術が必要で、かつ、作り込み技術の難易度が高くて、広い範囲にわたりますので、アカデミアであったり、あるいは、材料、デバイスのメーカー連携が必要だと考えています。
 弊社の場合は、1つ手がけているのはグラフェンデバイスでして、これはちょっと引用でいろんな用途ということですけれども、グラフェン、いろんな用途がありますけれども、弊社の場合、左側に図だけ付け加えていますけれども、トランジスタタイプの光センサーというのを開発しております。
 我々としては、グラフェンというのは、今現時点、光デバイスを手がけてはいるんですけれども、そのほかにも、高速トランジスタであったり、あるいはセンサーであったり、あるいは、導電膜としてはフレキシブルディスプレイであったり、こういうところが有望だと思っていまして、まず今現時点、光センサーをターゲットに開発を進めています。
 グラフェンの形成プロセスですけれども、これはご存じのとおり、現状、弊社もこの方法ですということなんですけれども、まず単純にやりたいときはテープ転写を使っておりまして、普通のスコッチテープで、ご存じのとおりの方法です。
 最近は、ちょっとデバイスらしくなってきまして、銅薄にグラフェン作ったものを溶かして、それで上に樹脂塗ったものを残して水の中で基板ですくうということをやっているんですけれども、現時点では、作れるのは作れるんですけれども、これがそのままイメージセンサーとか、光センサー、いろんな用途に使えるような状況にはないと思っていまして、やっぱり工業的な製造方法が必要だと思っております。
 光センサーの場合は、比較的、まだ1層積めばいいんですけれども、トランジスタ用途の場合は、それをナノリボンというサイドのエッジを出したり、あるいは2層化が必要と言われていますので、やっぱり光センサーでできたとしても、その後のトランジスタ用途にはまた更に1段階難易度があって、恐らくこの辺というのは、デバイスメーカーだけでは何ともならなくて、アカデミアとか材料メーカーから入った連携が必要じゃないかなと考えております。
 ただ、ちょっと気を付けたいというのは、有機ELも恐らく非常に難しくて、三星だけだ、と思っていたんですけれども、結局、中国がどんどん入ってきているという状況です。
 これは大型マスク蒸着装置で、有機ELのRGBを塗り分けるときに必須の装置と言われる、いろいろなニュースで出てくる装置なんですけれども、基本的にはこの装置が、あればできるというか、まず買わなくちゃできない状態でして、非常にでかい装置です。今現状は、三星ディスプレイがRGB3色発光タイプという、ギャラクシーとかiPhoneに載っているやつですね、これを量産しているんですけれども、で、ほぼ独占状態なんですが、ここ近年、中国のBOEとかTianma等の大手の液晶ディスプレイメーカーがこれを買っているんですね。どんどん買っているという状況ですので、基本的には最先端の新コンセプト材料であっても、有機ELのような感じで、投資能力があるデバイスメーカーが強くなる。「(デバイス)」とカッコ付きにしているのは、有機ELに中国で投資しているメーカーは、ディスプレイ関係のメーカーだけではないんですね。基本的に投資を人ごと投資してしまうので、やっぱり投資能力あるところが強くなってしまうんじゃないかというおそれがあります。ただ、現実にこれを買ったからといって本当にできるかどうかというのはまだ現時点では分かりませんので、そこにすごく難易度があるとは思うんですけれども。
 ですので、他の新規デバイス、材料デバイスに関しても、同様になってしまうようなリスクがあって、結局、投資能力が左右するんじゃないかというリスク懸念があります。
 ディスプレイというのは非常に分かりやすくて、結局面積でいくので、ディスプレイ用途って、やっぱり投資力がすごく効くんですね。じゃあ、半導体メーカーはどうかというと、半導体、実はメモリとプロセッサメーカーが非常に強くて、これは去年のトップ10なんですけれども、メモリとかプロセッサが非常に多いです。一部アバゴが購入したBroadcomのレーザー、半導体が入っていますけれども。
 ですので、やっぱりこういう巨大メーカーに関して、これは三菱電機としては、ということになるかもしれませんけれども、開発力からいっても、例えばここに研究開発をしていっても投資能力では勝てないだろうと思っていて、そうしてみると、実はセンサーデバイスが非常に魅力的で、センサーデバイスというのは、ご存じのとおり、多様な用途、種類があって、同じ圧力センサーでも、用途で仕様が全然違いまして、現時点で特定のセンサーに強いデバイスメーカーが多数存在しているという状態です。
 ですので、ある用途のこのセンサーデバイスは特定の日本の企業がトップ1になっていたりする状態です。
 それで、申し上げたとおり、現時点で技術的に優位の国内メーカーが多いという点で、ですので、ターゲットとてしも、このセンサーデバイスというのは魅力的だなと我々は考えています。
 規模がない場合はですけれども、ファブも重要だなと考えておりまして、大手でない、事業規模が小さいデバイスメーカーの場合、弊社もデバイス事業としては非常に小さいので、ここに当たるんですけれども、そうすると、キーとなる作り込み技術以外のプロセス開発が実は重くて、なるべくこういう形で、例えば余り気にならない絶縁膜、気になる場合もあるんですけれども、絶縁膜の成膜加工であったり、そういうところはファブにお任せして、キーとなる成膜、あるいは加工まで我々でやって戻すというようなことをとることが多いです。
 重要なポイントとしては、先ほどのセンサー用途を考えますと、MEMSであったり、あるいはレーザー用途を考えますと、化合物半導体への対応というのが重要かなと思っていまして、実際には、現状、MEMS対応のファブは今日本にはたくさんありますので、ここは困りません。
 あとは、自社ウエハサイズとの適合性というのがありまして、これは、弊社の中でもウエハサイズがいろいろ違います。メモリとかと違いまして、12インチとかではなくて、センサーデバイスというのは、5インチが主流なところだったり、6インチが主流なところがありますので、そういうところからすると、そこの適合性が気になります。
 それから、日本ではそんなに多くないのが、量産対応のファブが実は少なくて、研究開発はできるんですけれども、そこから量産に行くときに苦労することが多くて、そうすると、装置が大きくなると実は作れなかったりして、作り込み技術をもう1回やるということがあります。そういうところがやっぱり今課題かなと思っています。
 最後、もう一つの懸念点が特許でして、我々、デバイスメーカーとしての立場なんですけれども、材料の特許は材料メーカーが保有します。それから、製造装置特許も製造装置メーカーが保有することが多くて、我々デバイスメーカーとしては、これは買ってくるだけで済むということになります。多少、もちろん値段に反映されているんですけれども、ここは係争という問題では問題ない。
 作り込み特許というのは、デバイスメーカーが保有するケースが多くて、デバイスメーカーの差別化技術となります。ですので、ここは実は共有したくないところです。
 それから、もう一つは、市場規模が大きいデバイス、メモリとかディスプレイの場合は、こういった材料・製造装置・デバイスメーカーといった当事者メーカー以外の企業であったり個人が特許を取得する場合、よくあります。とすると、基本的には一方的な契約になりますので、事業化・事業拡大の障壁になるケースがあります。ディスプレイでいうと、3Dの特許とかって結構個人が持っています。
 ちょっと技術的な内容ではなかったですが、まとめですけれども、既存プロセスでは製造できないような新コンセプト材料を用いたデバイスの製品化においては、作り込み技術というのは非常に重要だと我々は考えています。
 その場合ですけれども、材料とか、製造装置、デバイス、分析機器の各メーカー及び既存技術の基礎を担うアカデミアの連携が重要だと思います。
 ただ、矛盾するんですけれども、作り込み技術はデバイスメーカーの差別化技術になるケースが多くて、これは具体的には連携時の障害になります。競合メーカーと同じプロジェクトを担うために、デバイスメーカーとしてはすんなりと入れないところがあります。
 それからもう一つは、最終的に投資能力を有するデバイスメーカーが強くなる場合がありまして、数量の大きいものであるとか面積の大きいものというのはなかなかやりにくいところが弊社の場合はあります。
 弊社の場合かもしれませんけれども、センサーデバイスというのが、多様性とか市場規模、ちょうどいいということなんですけれども、その点で有力で、各社の作り込み技術を生かせる有望な分野だと我々は考えています。
 例えばMEMSのあるプロセスであったら、そこは共有化して、用途は変えるということができるんじゃないかなと思っています。
 以上です。
【中山主査】  どうもありがとうございました。ただいまの御説明に関しまして、御議論等、よろしくお願いします。
【関委員】  ありがとうございました。製造装置メーカーと協力をして作り込み技術を開発していくのが大事だということをおっしゃられたと思うんですけれども、その具体例として、さっきULVACの名前を出されていたと思うんですけれども、日本のそういう製造装置メーカーの市場におけるシェアとか競争力について、今どういう印象をお持ちでしょうか。
【佐竹徹也先生】  特定の例えば新コンセプト材料系の場合は、特定の装置メーカーが圧倒的に強いです。ですので、例えば先ほどのULVACでも、サイズだけではなく、例えば多元系の酸化物半導体材料とかは恐らくULVACが強いです。
【関委員】  国内の製造装置メーカーというのは、世界的に見てちゃんと強いという印象でよいんでしょうか。
【佐竹徹也先生】  と思います。そこはちょっと限定がありますけれども、比較的私は長くディスプレイのところをやっていましたので、ディスプレイに関してはそうですね。ただし、有機ELに関しては、有機ELの製造装置はマスク蒸着装置も内製の動きがありますし、韓国でですね、それから、有機ELで、液晶ディスプレイに使わなくて、有機ELを使ったレーザーシールの技術があるんですけれども、それは韓国メーカーが強いです。
【関委員】  もし製造装置メーカーがそういう技術開発のキーになるのであれば、そういった分野も日本の競争力を高めていくという上でどういうことを考えたらいいのかというのは、もし何かヒントみたいなのがあれば教えていただきたいなと思ったんですけれども。
【佐竹徹也先生】  それはそうだと思います。
【中山主査】  ありがとうございました。
 先ほどの野田先生の御発表と絡めた話ですが、材料を作る人がどのぐらいまで高めてくれるとメーカーとしては受け入れやすいのか。もしかしたら今の御発表だと、それは材料メーカーの仕事かもしれないですが、ただ、新しい材料がぽっと出来ましたよというのでは、多分とても三菱電機さんとかでは受けられないと思うのです。材料がどういう状態になると、それが検討に値するものになって、自社のラボラトリーで試験を始めたりするものでしょうか。あるいは検討を始めるものでしょうか。
【佐竹徹也先生】  面積等によらず、やっぱり社内でデバイス検討ができる状態になったら、恐らく大抵の場合は始められると思います。グラフェンが非常に良かったというのは、ある面積に限定すればやりやすい。ただし、製品を作ろうとするとそこにハードルがありますので。ですので、デバイスの開発と同時に、そういう材料の開発というのが並行にできるようなものはある意味良い候補かなと思います。
 ですので、我々としては、デバイスとしてブラッシュアップしていく。材料メーカーとしては、それを大量生産なり、品質を上げる中で、ブラッシュアップしていくというのが、並行に進む。シリーズではなくて、並行に進められるということですね。その際に、例えば欠陥に対する感度とかが分かってくると思います。いろんな欠陥があって、それは実は全く気にしない用途というのがある可能性がありますし、非常に欠陥に厳しい用途もありますので、そういったところは、今の現状だったら、用途を見ながらです。用途がまだ確定していないところがあれば、一緒にできて、このぐらいの品質でという話ができるんじゃないかなと思います。
【中山主査】  大学の研究に対する要望のようなものはございますか。どこを重視して欲しいとか、どこまで引き上げてほしいとか。要求、要望、あるいは企業としてどういう在り方であってほしいという点がもしあれば。
【佐竹徹也先生】  今現時点は、改めてはないですね。というのは、先ほどの話では、ナノカーボン系の研究室はかなり恐らく共研はされていると思います。我々もしています。ですので、比較的開かれているイメージが強いですね。それは多分まだ現時点では用途がきちんと確定していなくて、余りコンタミがないからかもしれないんですけど、単純に材料をこの面積、この品質まで上げてくれというのは、基本的にデバイスメーカーとしては、どの用途であっても恐らく同じ要求なので。ですので、今現時点はまだ支障は出ていないと感じています。
【中山主査】  ありがとうございました。田中先生、どうぞよろしくお願いします。
【田中委員】  どうもありがとうございました。このまとめの2番、3番なんですけれども、2番は、これはセンサー分野においてという理解でよろしいんですよね。センサーデバイス分野において、オープンイノベーションを推進していきなさいと。3番目は、ただ、そうなったときに、今度、各社間の問題等が出てくるので気を付けなくちゃいけない。常に起こる問題だと思うんですけれども、そうしたときに、センサーデバイス分野で、協調領域と競争領域というような考え方をしたときに、何が大事なのかというのを、基盤技術としてこういうのがあるといいなというのを教えていただけるとすごく参考になるんですけれども。
【佐竹徹也先生】  センサー用途にかかわらず、材料の種類にかかわらず、材料、製造装置、デバイスというのは、比較的やりとりをしたり組んでいるケースが多いと思いますけれども、分析関係は意外に、こちらから大学の方とかのこういうのが測れるという提案を見て行くケースがちょっと多いんじゃないかなという気はします。
 ですので、分析機器、あるいは評価分析のアカデミアとの連携が重要だというところと、それからもう一つは、ちょっと最後に書きましたけど、センサーデバイスの場合でも、例えばイメージャーみたいにすごく大きい市場の場合は、特許の問題が出てくるケースがあると思っていて、そこを、こういったプロジェクトをやるときに、どういうふうにこの技術を特許で固めて強みにするかというところが重要かなと思います。
【田中委員】  どうもありがとうございました。
【中山主査】  ありがとうございました。上杉先生、よろしくお願いします。
【上杉主査代理】  1つ手前のスライドに戻っていただけます? 特許のところです。基礎研究の社会への実装化を考える上で、恐らくこの3つの特許の段階があるんだろうと思います。1つは材料の特許、2つ目が製造装置の特許、最後に作り込みの特許ということですね。それぞれの段階でアカデミアがどういうふうに関わっていけるかに興味があります。材料特許はもちろんアカデミア自身が出す場合もあるし、アカデミアと企業がともに出す場合もあると思うんですね。製造装置特許も、化学工学の先生らと一緒にやることもあれば、企業が独自でやられることもあります。作り込み特許のところで、アカデミアがどういうふうに関われるかのイメージがわかないんです。どういう場合があるんでしょうか。基礎研究がこのように役に立てる、アカデミアの先生がこのように役に立てるという、そういうのあります?
【佐竹徹也先生】  特に性能アップとかサイズアップのときはほとんど、御指摘のとおり、大学の先生との共同研究の中で、共同出願の仕方はほとんどないかもしれませんね。
【上杉主査代理】  そうですよね。
【佐竹徹也先生】  それと、やっぱり新規材料の先ほどの固有のプロセスといったところを出願するということになるのではないかなと思いますね。ですので、グラフェンの場合でしたら、今ほとんどまだいろんな試行錯誤の段階かなと思っているんですけれども、そこの部分を、恐らくそれは科学系のアカデミアの方が取得されるケースが多いんじゃないかなと思うんですけれども、それをするときに、やっぱり実際それを装置化するときにはいろんな特許が入ってきて、それを使えるようにしないと、特許として有効なものにするというところがあると、そこをデバイスメーカーか、装置メーカーかと一緒に連携して出願するというケースかなと思います。
【上杉主査代理】  ありがとうございます。
【中山主査】  そのほかございますか。どうぞ渡慶次先生。
【渡慶次委員】  最初の液晶ディスプレイのところでおっしゃっていたんですけれども、今、現状、確かに中国メーカーさんの方がものすごい投資をしていて、G10とかバンバン作っていますけれども、実際に高性能のやつが動かせるかどうか分からないとおっしゃっていたんですが、例えばTianmaさんみたいに、NECそのまま、液晶部分を買っちゃったりとか、そうすると、高性能のやつも現状作れるわけですよね。そうなった中で、日本はどうすればいいと思いますか。どこを強化するべき。多分投資能力があるというところを何とかしようとしてもなかなか競争できないと思うんですね。そういった中で、どういうふうに今後こういうデバイスだとか、そういうところで競争していくために必要だと考えられますか。
【佐竹徹也先生】  なかなか解が厳しいんですけれども。まず前提は、それは、購入して中国メーカーができるかということだと思うんですけれども、おっしゃるとおり、低温ポリシリコンにしても、それから、有機ELにしても、恐らく人ごと投資されているんですね。ですから、これを立ち上げるのは恐らく元三星のエンジニアだと思うんですよ。ですので、そういう点からいうと、こういったサイズが大きいものとか、本当に数量が出るものは、やっぱりある程度、本当に1兆円、2兆円のレベルの投資をされているので、そういった投資をしないと恐らく勝てないと思います。
 ですので、我々というか、弊社の場合は、よく言われるんですけど、カスタム性のあるところで考えますと、センサーデバイスというのが比較的広いかなというか。それはある程度、イメージャーのようにすごく数量のあるもので強いメーカーもございますけれども、そういうものから、特別仕様等の1品ものまでやって、それが社内にあるメーカーであれば、用途があるメーカーであれば、やっていけるのかなと思っております。
【渡慶次委員】  ありがとうございます。
【中山主査】  そのほかございますか。野田先生。
【野田優先生】  すいません、私からも少し意見をさせてください。6ページ目を見せていただいてよろしいですか。グラフェンの作り方のところです。これの次でしょうか。この左の方法を使われているというので少し驚いたんですが、これ、数十ミクロンのグラフェンの高結晶性のグラフェンが出来て、もともとブームグラフェンブームグラフェンブームのきっかけとなった一番最初の製法で、実験室的な方法なんですが、これではまずいというのでいろんな合成法が研究されていて、ただ、品質ではまだかなわない。今回のセンサーの応用ですと、センサーは検出部が小さくて構わないので、テープ剥離・転写のものでセンサーが作り込めるということで、ナノカーボンでうまくいっている結構珍しい例で、これは一般的な例ではないようにも思うんですが。前のページを見させていただいてよろしいですか。この中に例えば、ディスプレイも御専門ということで、ディスプレイをこの方法で作るというのはあり得ないわけですね。透明導電膜とかも載っているわけですが、これは平米1,000円とかで作りたいわけです。で、こういう技術はない。
 一方で、実験室の方法でも作れる製品があって、センサーデバイスとかですと、グラフェンは原子原子1層しかないので、外乱に対してセンシティブなので、非常に感度がいいものが作れるというので、とてもいいところを対象にされているとは思うんですが、このときに、実験室で生まれた材料と、あとは、実験室で生まれたデバイス、こう使うと面白い。そこはダイレクトに企業さんと共同研究して、企業さんがカスタマイズして製品化していくのは非常に面白い例だと思うんですが、一方で、じゃあ、ナノ材料をナノテクの本格的な実用化というときには、ここに書いてあるような絵をたくさん実用化したいんだと思います。これを実用化しようと思うと、ほとんどのものができないのが現状で、センサーとか特殊用途が今の技術でできるというふうに私は理解しているんですが、その際に企業と大学の共同研究が多いというのは、デバイスが作れるところからデバイスを製品化するような共同研究は多いかと思うんですが、一方で、じゃあ、まともに作ろうというプロセスに関する共同研究がどれだけあるかというと、それは余り多くないのかなというのが私の率直な実感です。実用化といっても、スケールが小さくていいものもあれば、大規模でなければいけない用途もあって、どこを目指すのか。1つでも実用例ができればいいというふうにするのか、それとも産業基盤みたいなものを目指していくのかというので大きく違うと思います。
【中山主査】  どうもありがとうございました。
【佐竹徹也先生】  ちょっと今、誤解があったんですが、今、弊社のセンサーデバイスの開発は基本的には右側です。左側はごく初期に少しだけ。
【野田優先生】  分かりました。少しだけ私も右の方法をしばらくやっていたんですが、例えば透明導電膜も性能は出るけど、実際には実用化していない。銅薄を全部溶かして作るときに、平米1,000円で作りなさいとなると、今のCVD法で平米1,000円で作ろうと思うと、企業さんは絶望されるかと思うんですが、センサーみたいに非常に小さいものですと、付加価値が高いので、そういうところではある程度できるというふうに理解をしているんですが、よろしいですか。
【佐竹徹也先生】  そうですね。ですので、今、センサーと申し上げましたけれども、イメージャーのようにかなり面積をどんどんとるようなものは今現時点では考えていないですね。
【中山主査】  どうもありがとうございました。時間ですので、先に進ませていただきます。この先も今のお話を含んだような議論でございますので、お2人にも是非とも議論に参加いただければと思います。
 続いて、議題3に移らせていただきます。これまでこの部会で様々な方から多くの意見を頂き、議論を1年近くかけて行ってきました。それらを踏まえ、ナノテクノロジー・材料科学技術研究開発戦略の素案の案を机上配付資料としてお配りさせていただいております。これまでの議論とナノ材委員会からの御意見等を含めて、整理させていただいたものがこれでございます。本日の議論をもって作業部会からの素案として取りまとめ、親委員会であるナノテクノロジー・材料科学技術委員会に報告するという流れを考えております。
 傍聴の皆様には資料を配布してございませんが、概要はスクリーンに映させていただいておりますので、議論を追っていただければと思います。
 まず私の方から簡単に変更点をお伝えさせていただきます。机上配付資料の素案の案という、見え消しの資料をお開きください。1ページ目の目次のところでございます。変えているところは全て見え消しになっております。
 最初の項立てを少し変えております。マテリアルというものを世に送り出すためのサイエンスに挑戦する。きょうのプレゼンいただいた内容を大きく含む項目を新たに立てました。そして、新材料を世に送り出すためのサイエンスに挑戦し、それを基に産学官連携により技術へと昇華させるという趣旨を記載いたしました。これは後の方で出てまいります。
 そのほか、いろいろそれに伴って項目名の変更をいたしております。
 次のページに行っていただきまして、(2)を、今お伝えしました理由で設けております。
 次、4ページ目でございます。(1)で「ナノテクノロジー・材料分野を取り巻く状況の変化」ということで、これはパラグラフ内での順番を入れ替えただけです。
 次へ行きます。5ページは何も変更ございません。
 6ページ目は軽微な変更でございます。
 7ページ目から14ページ目まで変更ないです。15ページで、「新たな未来社会像の実現に向けて」という(6)のところで、SDGsに関するコメントを頂いております。SDGsの1つの目標を達成すると、連鎖的に他の目標も貢献できるということで、SDGsの項目を少し加筆しております。大事な御意見を頂きました。
 次、16ページ。魅力的なマテリアルを社会実装するためにマテリアルそのものを作る話のほかに、創出されたマテリアル、革新的マテリアルを世に送り出すためのサイエンスの基盤をしっかりやるべきという内容、きょうの話ですが、記載しております。
 16ページの間のところ、2年後をめどに改訂することを明記いたしております。ここで出てきた戦略というのは、今、これから我が国のこの分野の施策をどうしようかというものではございますが、ちょうど2年後というのは、第6期基本計画のまさに議論の真最中です。これはその議論に資する、最初の取っかかりとして出すものも含んでいますが、そういう時期に更にこの改訂版をしっかり出すべきと、未来への付け出しをしております。
 17ページです。ここも軽微な変更ではございますが、ナノ材料委員会の議論を踏まえて産業界が抱える基礎フェーズへの課題のようなことを書かせていただいております。
 18ページでございます。創出された革新的マテリアルをどう次につなげていくかということを書いております。
 19ページ、これも軽微な変更ですね。生物を活用した物質合成というのも大事ですよという御意見を取り入れました。
 あとは、新しい切り口が出てくるということに対して、今後も考えていくということで、そういうことを受けるような文章を記載しております。
 21ページです。これもナノ材委員会の意見を踏まえて修正しております。ウェアラブルデバイスとか、高分子フィルム上への精密配線とか、そういうことを少し書かせていただいております。その他、バイオ材料工学のところは一般的な文言に修正いたしております。
 22ページでございます。これは、創エネ・蓄エネに加えて、省エネの概念も大事だねという御意見に対応した修正でございます。
 23ページの後半ですけれども、プロセス的なお話を2ポツの(2)に回したことに伴って、多少文言を修正しております。
 その先、25ページへ行きます。これもナノ材料委員会からの意見で、ロボットにおける重要点に、潤滑のような話も大事ですよという御意見を頂いたので、記載しております。
 26ページへ行って、これは(1)のところがプロセス的なところを除いたような記述になっているので、それに対応した変更でございます。
 次の(2)、これもきょうのプレゼンにかなり近いような内容をここに集積して、1項目を設けたということでございます。
 次が28ページ目です。これは継続の重要性のようなことを書いております。
 次、29ページ、これはちょっと主述というかな、趣旨が不明確であったので、分かりやすい記述に変更しております。
 次、29ページの(4)、推進方策に関して、ここで映像されている資料でいうと一番右下の推進方策というところを、読みやすさを重視して、しっかりと検討していますということを全体として修文をいたしております。新たに書き加えたというよりは、読みやすくしたということでございます。
 ほぼ以上でございます。委員の皆様には事前にお送りし、一読はしていただいているとは思いますので、御意見を頂ければと思います。映っているものはその柱立てを映したものでございます。主に変えたところは、4ポツ、右下のところの「マテリアル革命を実現するための取組」のところで、(2)のところを設けました。世に送り出した革新的な材料、新機能を持つようなものを、その先へつなげるためには、そこにしっかりと施策を発動する部分があるのではないか、それがないとイノベーションが起こりにくいのではないかということを(2)のところで記載しております。あとは、(4)の推進方策のところ、一番下ですね。そこを更にきちんと書き込んだということが大きな変更だと思っております。
 以上でございます。これに関しまして、御意見等頂ければと思います。
【髙尾委員】  今の中で、IoTとか、ビッグデータとか、17ページでいくと、3の「マテリアル革命の実現に向けた課題」というところで、データ駆動型が非常に重要で、データベース化して利活用するということが、たくさん出ています。こういうことは、私もすごく重要だと思っていて、推論エンジンとは非常によくやられています。そこに入れるデータは、ビッグデータとして、世の中にあふれていいて、構造化、非構造化、いっぱいあるんですけれども、どんなデータを入れたらいいのかというところが一番大事だと思っています。その点で、質のいいデータを利活用するという言葉を言いかえると、データフィケーションという言葉があり、是非そういう言葉を重要だということで入れたいなと思っています。
【中山主査】  ありがとうございました。どのくらい一般的に理解してもらえるかということを含めて、ちょっと預からせていただきます。
 じゃあ、そのほかの観点でございますか。上杉先生、よろしくお願いします。
【上杉主査代理】  一番左の一番下のところなんですけれども、論文を書きにくい技術領域とあります。野田先生、どう思われます? これは論文を書きにくいですか。論文で評価されにくいですか。
【野田優先生】  論文で書きにくいという面もあるし、書きにくいと思い込んでしまっているという面もあると思います。マテリアルの論文というのが、こんなものができました、こんな機能が出ましたというのがたくさんあるので、それを見てしまうと、似たような論文を書いてしまうという面もあるわけですが、ただ、プロセスの開発の場合は、材料の開発と違って、入れるものを変えたら違うものができましたって、どんどん数を書く分野ではもともとがない。1つのプロセスを開発するのに2、3年かけて論文1個というのが本来の習慣だった分野もありますので、そういう意味では数が出にくい領域。数が出ないので引用もされにくい領域というのが確かにあるとは思います。
【上杉主査代理】  それは、「論文を書きにくい技術領域」でいいですか、こういう言い方でいいでしょうか。
【野田優先生】  そうですね。はい。
【髙梨委員】  今のことに関連してなんですけれども、先生のお話を聞いていて、私は逆に評価が出てこないというふうな意味だとずっと思っていたんですが、そういうことではないんですか。例えば評価ですと、それこそ大学の在り方ですとか、研究の在り方というところにメスを入れないといけなくなってくる。方策が違ってきますよね。ちょっと確認させてください。
【野田優先生】  お2人の御質問を正確に捉えているかというのはありますが、まず、評価はとても大事ですし、その評価が基本的には現状は論文になってしまっているというので、連動しているとは思うんですが、論文を書きにくい領域というのは、プロセス開発とかは、先ほど申し上げたようにかなり時間をかけて仕上げてから論文を書くので、数がそもそも書きにくい領域ではあります。ただ、先ほどのプロセスの基盤ということを意識して研究すれば、実はそのプロセスを実現するためには要素は結構新しいものを開発していて、そのサイエンスがあるんですね。そこを切り出して論文を積極的に書いていけばいいんですが、それはプロセスをやっている人がその意識がまだ低いという面もあると思います。
 あとは、論文以外に評価のいい指標があれば、無理に論文書かずにプロセス開発に専念してもいいとは思うんですが、それに代わる指標がないというのが現状の問題だと思います。
【髙梨委員】  ありがとうございます。
【上杉主査代理】  逆にこういうのはどうです? プロセス、スケール化、化学工学でインパクトのある論文を書きにくいわけですね。逆に、その分野でインパクトのある論文が出たことありますか。それはどういうタイプのものですか。つまりインパクトがあるというのは、サイテーションが多い論文と考えてもいいと思うんですね。それはどういうタイプのものですか。
【野田優先生】  例えば先ほどのグラフェンのお話ですと、テキサスのグループが銅薄を触媒に用いると単層グラフェンが簡単に作れるよというような、これもある種の実験室的なプロセスなんですが、そういうプロセスの論文はサイエンス誌に載って、数千とか万とかの引用があるかとは思います。そういうものは時々出てきます。ただ、余りにもプロセスの研究としては特別なもので、一般的ではない。
【上杉主査代理】  何らかの新しいコンセプトがプロセスの中にあればインパクトがある論文になるわけですね。
【野田優先生】  そうですね。あとは、読み手が、母集団がどれだけいるのかというのもあるわけですが、材料開発の人たちがプロセス開発に比べると数が数倍多いというのは現状感じていて、インパクトあったときに何人が読んで引用してくれるかとなると、プロセスに関しては、プロセス屋にとってインパクトは大きいんだけど、母集団が小さいので、絶対値で見ると引用数は少ないということは起きると思います。
【上杉主査代理】  分かりました。
【中山主査】  ありがとうございました。そのほかございますか。
【生越委員】  すごい細かいところかも分からないんですけれども、前の文章も、きょう来てこれ見ていると、ちょっと違和感が残るのは、右のピンクのところですかね。「社会変革をもたらす魅力的な」という、その「魅力的な」が要るかどうかと。ここだけ何かファジーな言葉が入っていて、これがあると、何かちょっとチープな感じになる気がするんですけど。どうしても抜いてくれないと嫌だというほどの主張ではないです。
【中山主査】  文言って難しいですよね。社会変革とは何ぞやから始まって、すごく難しいんですよ。だけど、本当に社会に役立つ、もしくは社会を変える可能性のある、もしくは社会を先導する、生活を先導するような新しい材料を作りたいというのは、誰しも研究者が思うところ。それって魅力的だよねというところですけれども、もちろんいい文言があれば頂きますという感じです。
【生越委員】  はい。別に一生懸命主張するほどのことではないんですけど、ただ、ここだけが、わりと大きなタイトルの中で、ちょっとこびているかなみたいな気がしただけで、もうこれ以上何も言いません。
【中山主査】  私ってかわいいでしょうみたいな、そんな感じ?
【生越委員】  そういう印象を受けました。
【上杉主査代理】  前に議論をしたことがあったと思います。「魅力的な」という言葉を使うかどうかです。「魅力的な」というのは何でしょう。社会変革を目指す。産業を興すことができる。お金がもうかる。新しい考え方を引き起こす。いろいろなことが「魅力的な」に含まれてました。そう考えると、社会変革をもたらすのは「魅力的な」の一部です。社会変革をもたらすと書くのか魅力的と書くのか、どっちかを使えばいいのかもしれません。「魅力的な」機能を持つマテリアルの創出と書いて、その1つが社会変革をもたらすもの。新しい考え方のものも魅力的じゃないですか。「魅力的」にはいろんな意味がある。いろんな意味を持って「魅力的な」という言葉を使っていると思うんです。絞りたくないからというのもあるんじゃないですかね。僕も余り強い主張じゃないですけど。
【中山主査】  絞りたくないというのはあります。この分野って、材料作っていればいいわけじゃなくて、それをどうやって作るかもあるし、どうやって測るかもあるし、どこに応用しようかもあるし、ほとんど科学技術全体をカバーしているようなところで、なかなか絞りにくいというところがあります。それでわりとやわらかい言葉を使わざるを得ないということもあるかな。ちょっとこれもファジーな言い方なんですけど、考えます。
【一杉委員】  本日の講演者の主題は、4の2のところが該当すると思います。ここを読んでいて、既存手法をベースにスケールアップするようないわゆる化学エンジニアリングに近いことを述べているのか、それとも、例えばグラフェンを大面積化する際に見つかる新しいサイエンスや化学的な新反応方法を見つけるのか、という二つでは大分違うと思います。このどちらを志向しているのかがすぐには理解できませんでした。どのようなイメージを抱けばいいでしょうか。
【中山主査】  私のイメージは、かなり大きなところ、きょうのような化学工学とかプロセスに閉じるものでもなく、より広く、要は、きょうの御発表でもあった1から10にするようなところです。とにかく1個だけ作っただけじゃ、ちょっと作っただけじゃ、その研究室出ないよねというところを、その研究室を出るような形にする。研究室を出て、次につなげるところをどうしようかというところです。そこは多分イノベーションの穴みたいになっているところでしょう。
【一杉委員】  そう、そこ、いつも僕も谷がある。
【中山主査】  そこが、たまたま共同研究していれば、それはくっつくでしょう。たまたまいい人が見つければ、あるいは、ものすごく熱意のある先生が身を賭してそこを渡れば、それは渡れるかもしれません。けれども、多くが渡れないで止まっているんじゃないのか? 基礎研究に相当のお金を投じていて、そこを渡してあげないと、お金が生きないよねという感じです。かなり広いところだと思います。
【一杉委員】  はい。それ、イメージできます。
【中山主査】  橋渡しと言うから道が狭いのです。橋渡しではなくて埋め立ててしまえという感じです。
【一杉委員】  そうすると、僕も何度もそういう経験があります。例えば1センチでいいものが出来ましたといって、企業に持っていきました。1センチではだめだよ。10センチとか20センチ角にして持ってきてくださいと言われたら、そこは大学がやるのかと思うと、大変厳しい状況になってきます。先ほど化学工学でなかなか評価が高くならないという話もあったように、なかなか評価されないと。10センチを20センチにしたから大学人としてすごいねと言われないのですね。そこに評価軸を入れるところは、具体的にどうするのかが見えていないと思います。
【中山主査】  評価しにくいところだから、自発的にいかないから、こここそが施策を発動すべき大事な部分ではないかということですよね。
【一杉委員】  例えば大きくするとか、そういうプロジェクトに対してお金を出すということですね。それはJSTでは、企業と大学とが一緒にやっているプロジェクトにファンドすることが該当しますね。
【中山主査】  そうかもしれない。
【一杉委員】  NEDOも、企業と大学がジョイントでやっているプロジェクトに投資するとか。
【中山主査】  そういうこともあるかもしれないですけど、ここは産学連携の施策を打つ場所ではないかも。もちろんそういう人たちにも伝えて、他の施策を誘導することも必要でしょう。ここでは、材料の面から攻めるとすれば、どうやってスケールアップをしようかなということです。これは、研究開発の基盤として、我が国のイノベーションのボトルネックをどうやって埋めていくかという大きな議論をする核にしたいと思います。だから、ここの分野に閉じる話では全然ない。だけど、この分野の予算でやるならこの辺かなというところの目星は付けたい。だから、先生とかがよく言われる、薄膜でやってバルクにならなくてどうするという話もそうです。材料のところの話に対して、更に産学連携だとか、ほかのいろんな施策誘導ということの議論に、もちろんこれは広げていきたい話だと思います。広げるにはどうするか、これを出した後のまた次の絵だとは思います。
【一杉委員】  あと、この議論の延長ですごく心配なのが、化学工学に近いところへの人材集めです。その実情について野田先生にお聞きしたいところです。どのように人を集めるのかということは非常に重要だと思います。
【野田優先生】  私、6年前まで東大におりましたので、化学工学科がどん底で看板を変えた年に化学工学科に入った人間です。その間、一時期は底点が80ぐらいまで付けて、大人気なときもあったんですが、今は、おっしゃられるように、かなり苦戦されているわけですが。
 1つは、早稲田でいうと、化学系、応用化学の中に化学工学部門というものがあって、定員比率が小さいので、化学工学系は実は人気です。ですので、ある意味学生さんの志望に対して定員が大きいから相対的に抜けが生じて、底点だけが見えるので、非常に質が低いように見えるけど、一定割合で優秀な子も入ってきていますので、必ずしも悪いというわけではないです。
 ただ、世の中に対して化学工学が見えにくい。なので、学生がそもそも認知していないというのも大きな問題だと思っていまして、高校の教科書などにもほとんど出てこないわけで、そもそも知らない。ここが重要だということで、先端技術を仕上げる学問だということを位置付けて力を入れられるんでしたら、それを発信して、それも若いときから、中高ぐらいから、そういう学問領域もあって、夢の材料を社会に出していくのも大事だよねというのを伝えると、少し増えてくれるのではないかというのが個人的な意見です。
【一杉委員】  そうですね。人材育成とリンクしていないと。会社では、化学工学は極めて重要です。大学ではしっかりとサイエンスをやって技術を切り拓ける学生を育て、その後、企業でエンジニアリングにしっかり取り組んでもらうという考え方もあると思います。今の大学の化学工学はどっちつかずで、何となく、サイエンスもエンジニアリングも中途半端なところを感じるところがあるので、いろいろ考えていかねばならないと思っているところです。
【野田優先生】  1つの解決策としては、先端材料のところに化学工学がもっとしっかり進出する。で、ちゃんとコラボレーションするというのが大事だと思うんですが、クラシカルな材料のプロセス工学をずっと研究する分野ももちろんあるんですが、それですと、おっしゃられたように、企業でやることと大学でやっているのがはっきりしてこなくなるところがありますね。
 ですので、ナノはやはりナノなりの難しさ、特有の難しさがあって、そこを自在に扱う学問というのは確立していないので、そこに化学工学系の人たちを誘導できるようなプログラムがあるといいなというのと、あとは、その成果が、ニワトリと卵になりますけど、しっかり発信して、高校生が大学の学部を選ぶぐらいのときにその分野を認知しているといいのかなとは思います。
【中山主査】  どうもありがとうございました。今の世相と将来は違うと思います。施策の世界もそうで、今の世相に合っていない施策をやめちゃったりしますが、本当は科学技術というのはその先を見ておかないといけないですよね。情報分野の人が足りない、いないと言って今すごく騒いでいますが、一昔前は情報分野なんか人行かなかったですよね、日本の情報系の企業がどんどん潰れている頃。で、人、いない、いないと言っていて、その頃は施策誘導さえもやめちゃっていましたよね。今、ロボット、もてはやされているけど、ちょっと前の機械科学って惨憺たるものでしたよね。
 でも、その先、何が必要かということをちゃんと言っておかないといけないなというのは、きちんとものを見る委員会の仕事ではないかなと思います。化学工学に限りませんが、そういうことをしっかり考えていきたいなと思います。ありがとうございます。
 そのほか。じゃあ、髙尾さん、林さんの順で。
【髙尾委員】  さっきの一杉先生がコメントされた2のところなんですけれども、最後の技術への昇華というところは、何を技術に昇華するのかという部分で、確認なんですが、野田先生のお話にあった純粋研究をサイエンスの基盤研究にして技術にということなのか、学術から技術、工学につなげるという意味の技術への昇華という理解でよろしいんでしょうか。技術って何というのが、改めて考えて。
【中山主査】  多少技術は曖昧だったかもしれないですね。技術を昇華というのは、結局次のフェーズへ持っていくということ。もうちょっと考えます。どうしようかなと悩んじゃいますけど。
【髙尾委員】  学術、純粋研究を次につながる基盤研究にしていくところのフェーズアップのところを技術にという意味でしょうか。
【中山主査】  そうですね。はい。
【髙尾委員】  すいません。改めて、技術ってどの位置なのかなと思ってしまいました。
【中山主査】  曖昧ですね。きょうの議論、技術の話余り出てこなかったので、技術、曖昧なので、そこはクリアにします。林さん。
【林委員】  概要の3ポツの上から3つ目のところですが、今、データの量・質の確保とデータベースの構築に向けた対応という書きぶりになっています。単にデータベースを構築するだけではやはり意味がなくて、それを使うとか活用するというところが本文のほうにはしっかり書かれているので、ここの表記も、例えば「利活用されるデータベースの構築に向けた」といったような本文に合わせたような書きぶりを考えてはどうでしょうか。
【中山主査】  分かりました。書きぶり、検討します。確かにこれだけ読んでどこが大事かというのを分かるようにするのは重要です。ありがとうございます。
【髙尾委員】  一般的かどうか分からないですけど、それが先ほど述べたデータフィケーションという言葉に表されてくることかなと思います。
【中山主査】  分かりました。そのほかございますか。
【内田委員】  ナノテク・材料ということで、シーズ志向が全体的に強い。いい材料があって、それをいかにスケールアップするかとか、社会実装するかというところが多いと思うのですが、実際には今後の社会にどういう機能が必要になって、その機能を実現するためにどんな材料が必要になるかということを考えることがやはり大切だとは思っていて、その意味では、4ポツの(1)の(ⅱ)の「戦略的・持続的に進めるべき研究領域」というところで、Society5.0やSDGs等の実現に向けて必要となる機能を見出すとか、機能を考え、その機能を実現するナノテク・材料、科学技術を継続的に育成というような観点があるといいかなと思いました。先ほどの例えばセンサーの話があったときにも、どんな機能のセンサーが本当にこれから必要で、じゃあ、そのセンシングを実現するためにはどんな材料が必要でという、そこを考えないと、なかなか最終的に、10年後、20年後に勝っていくということができない時代なのかなと思いますので。
【中山主査】  分かりました。ありがとうございました。確かに機能がないと材料じゃないので、機能という言葉を丁寧に考えて、記載できれば記載できるように考えます。ありがとうございます。大事だと思います。
 そろそろ時間ですが、ほかにどうしてもという御意見があれば。
 じゃあ、ありがとうございました。もし何かございましたら、なるべく早めにメール等でお知らせいただければと思います。
 本日のプレゼン内容も含めて、頂いた御意見に関しましては、うまく反映する、もしくは考えさせていただきます。修正については私の御一任いただくということで進めさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。修正させていただいた素案については、次回のナノテクノロジー・材料委員会において作業部会案として報告させていただきます。
 それでは、最後に、その他の事務連絡を事務局よりお願いいたします。
【齊藤参事官】  一言よろしいでしょうか。この場を借りまして、お礼を述べさせていただきたいと思います。まだ主査にもう一御苦労、一任ということでございますけれども、ナノ材委員会に報告というところまで来させていただきました。いろんな調整、御相談も含めれば、1年以上の間、ここまでやっていただいたこと、本当にお礼申し上げます。承った方といたしましては、今月中にまとめられるであろう成長戦略に、是非この戦略を策定していると、それを実現するといったことが書かれたらいいなと思ってございます。
 もう一つ、この中で幾つか、31年度予算要求で出ていくものもあろうですし、なければいけないと思っています。是非それは実現したいと思っています。そして、それを、こうなりましたという御報告をきちっとしたタイミングでしたいと思ってございますので、そのときには、またこの会議を開くのかは別にいたしまして、報告をさせていただきたいと思います。
 また、本文にもございますように、2年ぐらいをめどにこの戦略を見直すというところ、場面がございますので、その折につきましてはまた御協力いただきたいと思います。ありがとうございました。
【丹羽補佐】  本日の議事録につきましては、事務局で案を作成して、また皆様にお諮りして、主査に御確認いただいた後、ホームページで公開をいたします。
 資料についても、今回配付したものをホームページに掲載をさせていただきます。机上配付のものは除きます。
 それから、本日の配付資料、また、封筒にお名前を書いて置いておいていただければ、後日事務局からお送りいたします。
 以上でございます。
【中山主査】  どうもありがとうございました。本日、千嶋様、小宮様、お越しいただきましてありがとうございました。もしよろしければ一言ずつお伺いさせていただければと思います。
【千嶋調査官】  内閣府の千嶋でございます。本日も非常に活発な御議論ありがとうございます。
 やっぱり個人的にも、どういうものを、新しい材料を作るかというのも大事ですけれども、やっぱりどう作るかというところをしっかり押さえることで世界に勝つというような戦略というのが非常に大事だし、もともと日本人としても、そういうところが得意なマインドセットもあるんじゃないかと思っているところですので、是非しっかりこの戦略に基づいた動きができるようになればと思っております。
 あと、すいません、内閣府側からのお知らせを少し申し上げさせていただければと思いますけれども、2点ありまして、1つは、統合戦略というものをまとめておりました。本日閣議決定されれば、オープンになると思いますので、是非ごらんいただければと思いますというのが1点と、その中でも、材料開発についても、それほどたくさんではないですけれども、特に計算科学の応用みたいなところで書かせていただいておりますというのが1点と、あと、本日から戦略的イノベーション創造プログラム、SIPというのを内閣府でやっておりまして、それの第2期の計画書が本日から24日間、7月8日までパブリックコメントとしてオープンにさせていただいております。特に材料開発部門では、こちらの文科省のナノ材の方にも非常に御協力を頂きまして、「統合型材料開発システムによるマテリアル革命」というタイトルでテーマアップしておりまして、ごらんいただくことができるようになっております。是非有益なコメントを頂きまして、より良いものにしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 以上です。
【中山主査】  ありがとうございました。
【小宮課長補佐】  経済産業省素材産業課の小宮でございます。本日まで、長い間、皆さん、御議論いただきまして、お疲れさまでございます。
 よく技術で勝って市場で負けるというようなことが言われ続けているところでございますけれども、本日の野田様と佐竹様のご発表、まさに非常に勉強になるところでございます。参考にさせていただければと思います。
 また、今後、AIとかIoTとかビッグデータといったところを材料開発に進めていくことが今後重要でございまして、そういった観点で、当省としても、そういった観点も踏まえて、先日ものづくり白書を出させていただいたところなので、是非ごらんいただければと思います。
 本日はありがとうございます。
【中山主査】  どうもありがとうございました。あともう一つ、最後になりますが、本検討会、及び新しい期のナノ・材料委員会等で戦略の策定に非常に御尽力いただきました田村様、もうすぐ御異動になられるということで、今回来ていただくのが最後になるかと思います。一言。
【事務局(田村)】  後ろから失礼いたします。ナノ材参事官付の田村と申します。本作業部会を立ち上げたときから皆様とは御一緒させていただいて、振り返ってみれば、いろんなことを試してはうまくいかないなとか、いろいろ思ったりもしたんですけれども、本戦略の検討をやらせていただいたのは、私自身、非常にいい経験になりました。非常に勉強になりましたし、御一緒できてよかったかなと思っています。
 今後とも、比較的というか、圧倒的にこの委員会は若い人たちで構成されているはずなので、僕の方が若いもしれないですけど、なので、引き続き末永くおつき合いいただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【中山主査】  どうもありがとうございました。(拍手)
 それでは、本日のナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略検討部会を閉会させていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――


お問合せ先

研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付

(研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付)