科学技術社会連携委員会(第8回) 議事録

1.日時

平成31年1月22日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 東館15F 科学技術・学術政策局1会議室

3.議題

  1. 科学コミュニケーターに期待される役割と必要とする資質について
  2. 今後の社会技術研究開発センター(RISTEX)の取組みの方向性について
  3. その他

4.出席者

委員

小林 傳司 主査、藤垣 裕子 主査代理、内田 由紀子 委員、片田 敏孝 委員、小出 重幸 委員、田中 恭一 委員、原田 豊 委員、山口 健太郎 委員、横山 広美 委員

文部科学省

坂本 人材政策課課長、石橋 人材政策課課長補佐

オブザーバー

説明者:科学技術振興機構社会技術研究開発センター企画運営室長 津田様

5.議事録

【小林主査】  定刻でございますので、第8回の科学技術社会連携委員会を開催いたします。
 出席者、それから、配付資料等については、事務局の方から説明をお願いいたします。
【石橋補佐】  今回第8回でございます。皆様、お忙しいところ、お越しいただきまして、ありがとうございます。
 出席者の紹介をさせていただきます。今回の議題2と致しまして、今後のRISTEXの取組の方向性について御報告していただくために、科学技術振興機構社会技術研究開発センターの津田室長に御出席いただいております。
 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。本日の議事次第にございますとおり、議題の1と2がございます。それに対応いたしまして、資料1及び資料2を御用意させていただいております。あと、先生のお手元だけではございますが、机上の配付資料ということで、A3判の横の本日の議題1関連で修正点をまとめております資料について用意をさせていただいているところでございます。会議の途中でも構いません。過不足等ございましたら、事務局までお知らせいただければと思います。
 以上でございます。
【小林主査】  ありがとうございます。
 それでは、議事に入ります。議題1は、科学コミュニケーターに期待される役割と必要とする資質についてでございます。お手元の資料1ですが、これは前回の委員会で原案、たたき台をお示しして、いろいろと御意見を頂きました。その御意見を踏まえてある程度の修正をしてみたというところで、今日の獲得目標はこれをほぼ確定すると。最終的にまだ若干修文とかそういう課題が残った場合には私と事務局の方で引き取らせていただける程度のところまでは今日は確定に近付けていきたいということで、御協力をお願いしたいと思います。
 それでは、石橋さん、説明をお願いいたします。
【石橋補佐】  今、主査からお話しいただいたとおりでございます。前回の議論を踏まえまして、今回、資料1のとおり、「今後の科学コミュニケーションのあり方」についてということで、今回この委員会での議論の取りまとめをさせていただければと考えております。第7回、前回におきまして、こちら、事務局よりたたき台を出させていただきました。それに関して、第7回での議論を踏まえまして、皆様のお手元の資料では新旧表のような形で修正点と簡単なメモを書かせていただいている修正点を示させていただいております。その上で、それを溶け込ませたものが資料1で配付させていただいているものでございます。先ほど主査におっしゃっていただいたとおり、こちらをある程度固めて取りまとめということでできればと考えております。
 この取りまとめについては、前回取りまとめました人社連携の関係の取りまとめと共に、次回開かれる分科会の方に是非報告ということでさせていただければということで分科会の事務局とは調整を取っているところでございます。
 以上でございます。
【小林主査】  ありがとうございます。ということで、この対照表で見ていただくとかなりいろいろな箇所が修正されているということであります。これは事前にお送りしていると思いますので、御一読をされている方もいらっしゃるだろうと思います。まず何かお気付きの点とか、ここはというところも含めて御意見を頂ければと思いますが、いかがでしょうか。
 最初の部分のところはかなり短くはしたんですけれども、前回たしか小出委員から、本当に伝えたいことにぽんと持っていくためには冒頭のところでもうちょっと強くメッセージ性を出したらどうかという御意見もあったのですが、それは少し考えたんですが、事務局としては、なかなかほかのものとの整合性もあってということでそこまでは踏み切れなかったという理解でしたっけ。
【石橋補佐】  もう少し強くもできるのかなとは考えられます。しかし、変わるものなのか、それとも、新たに社会課題が追加されるといいますか、今のがあった上でのものなのかというところを考え、検討させていただいた上で、現在はこのような案を出させていただいているというところでございます。
【小林主査】  でも一応、社会が変わればコミュニケーションが変わるよということだけは最初の3行のところで書いたということです。そして、その次の文章では、負の側面を伝えたり、議論を促したり、利害の調整に関わるようなところ、そういうところにまで踏み込むんですよということはちょっと書いたということですが、いかがでしょうか。
 現実に科学者の方々の多くあるいは社会一般も、科学コミュニケーションというと、やはりまだまだ正確な科学技術情報の提供とかこういうところにやっぱり焦点を置いた感覚で読んでいる方が多いような気はするので、それをむげに否定してもよくないだろうし、それだけではないという形で伝えていかないとなかなか理解してもらえないと思います。
 しかも最近これが微妙なのは、KPIとか研究の数値データによる評価みたいな議論が非常に広がってきて、それで、研究者が結構きりきりとさせられている状況になってきましたね。そこへこのコミュニケーションというものが上乗せされるということは、研究者にとっては、必要なのは分かるけれどもちょっとしんどいというふうな負担感みたいなものも出ていますので、これからは本当はそういうところも考えていかないと、ただこれをやりましょう、やりましょうと言うだけでは駄目だろうし、まずこういうものが大事であることを理解していただいて、そして、これを中心的に担ってくれる人も一定必要である、そして、研究者自身もこういうものに取り組める場合には取り組むという、そんなメッセージにならざるを得ないのかなという気はします。
 どうぞ御自由に御意見頂ければと思います。小出委員、この辺り、まだまだ踏み込み不足でどうですか。
【小出委員】  誰に何を伝えたいのかというのがいまだに私、理解できていないんですけれども、これは行政官の中で合意するための文書なのか、それとも、パブリックに見せるのか、若しくは研究者を対象にしているのか、その辺りを少し交通整理していただけると、表現も、それだったらあまり上から目線じゃなくてというふうな表現があるかもしれないですし。行政官同士でこれである程度意思疎通ができて、それで、いわゆるイン・ザ・サークルでいいんだということであれば、これまでと同じやり方でいいんじゃないかと思うんですが、その辺がこの性格をいまひとつ私理解していない。
 これやるならば、恐らくこの内容から見て、社会に対してメッセージを何かで投げるということは必要かなと思うんですが、そこら辺りはどのように受け止めておられるのか、それから、これはどういうふうな性格のものになるべきなのか、そこを教えていただけると。
【坂本課長】  これは基本的にはまずは行政的に現在科学コミュニケーションというのはどういう課題が見えていて、あるいはどういう取組を行っていくかというところの、行政内部及び行政に関わっていただく専門家の方々です。委員会の先生方もおられますし、あるいは科学コミュニケーションの活動を実際に進められている方々のうち、本当は現場まで浸透するといいんですけれども、まずはマネジメントしていただいているレベル、層の方々に伝わるようなというのがまず主眼にあります。したがって、どちらかというと、今、小出委員からお話がありましたが、いわゆる行政文書的な表現、あるいは科学技術基本計画に書かれてあるような、ある程度ここはもうお分かりいただいているであろうということで専門用語を使っているところが、今のようなターゲットの考え方に表れております。
【小林主査】  よろしいですかね。これ、なかなか微妙なところで、この後、学術分科会でも報告ができればというお話がありましたよね。ですから、当面のターゲットは、科学技術政策を議論している文科省あるいはそれ以外のところも含めて、そういう政策形成の集団をちょっと拡張して理解したときに、その方々に理解していただくというところが今のところ主眼になっているという御説明です。もしこれを社会全体に対してアピールするということを考えると、それは別途考えた文書を作らなくてはいけないんだろうなという気はします。
 問題は、科学技術基本計画は、あれは誰に向けているんだろうかというのが悩ましくて、あれは政策文書でもあるけれども、結構社会に対してメッセージ性を作ろうともしているので、あれがもっとも微妙な位置付けだろうなと思うんですね。だから、それの更に先なのか、別の形で、日本が科学コミュニケーションをこういう形で位置付けて取り組みますというふうに政府は考えるから、社会の方々もこの考え方で一緒にやりませんかみたいなメッセージを出すということはどこかであってもいいのかなと。そうすると、書き方は全然違ってくるだろうという、そういうことなんだろうなと思います。今回とりあえず、広い意味での政策サークルの中でこの議論をきちんと理解していただくということが第1の目的であるということを共有して検討したいと思います。
 どうですか。横山さん、何か気付いたことはありますか。
【横山委員】  この委員会中にもう一回じっくり拝読しながらと思うんですけれども、冒頭部分にやっぱり今の時期に出す時代性というか、必然性のような文が少し加わるといいかなと思います。例えば私などSTEM教育も興味があってよく見ているんですけれども、最近STEAM教育というふうによく言うように、STEMプラスアートが注目されています。そのときにアートが入ってくる必然性としては、今、新しいヒューマニズムというような言葉で人道主義が非常に強調されているんですね。人々のためになる、あるいは困っている人たちのために科学と技術とデザインで何ができるだろうかという、そういう考え方が非常に強くて、これはSDGsにも非常に近しい考え方だと思うんですね。
 科学者の正当性をアピールするような科学コミュニケーションではなくて、時代に沿ったよりよい社会というのは、やっぱり弱者にとってよい社会が最終目標だと思うんですね。そうした人道的な科学コミュニケーション。みんなの気持ちがまとまっていくような一つの方向性を、そうした人道主義に基づいたというのも漢字で書くとちょっとどうかなと思いますけれども、少し時代の背景を含めながら書いていただくとよろしいのかなというのを少し思った次第です。
【小林主査】  それは冒頭のところですかね。
【横山委員】  はい。
【小林主査】  多分おっしゃっているSTEAMというのは最近アメリカなんかもそういうことを言っていますよね。この間アメリカのNational Academies of Sciences, Engineering, and Medicine、そこが出した報告が、The Integration of the Humanities and Arts with Science, Engineering, and Medicineというレポートで、だからもうSTEMではなくて、ArtとかHumanitiesを入れるということをやらなければいけないと。2,3年結構調査をしていたようで、そのレポートが出ていますね。去年大阪大でもシンポジウムをやりましたけれども、そういう議論は確かにおっしゃるように出ているということもありますし、SDGsの中には、割と大事なキーワードというのは、幾つかの目的以前のベースのところでソーシャルインクルージョンみたいな、誰も取り残されないとか、そういう議論がすごく共通のトーンとしてありますよね。
 AIに関して日本政府がAI原則をまとめていますよね。今度、G20の前哨戦の会合がつくばで開かれるのかな。そこではそれを日本政府としてAIの原則として世界に出すと。これも人間中心のAI社会原則なんていう、そういうサブタイトルが付いていたと思いますので、共通しているそういうトーンは全部あるわけですね。そういうにおいをちょっと出したらどうかという御提案だろうと。今からどこに入れるかというのはちょっと悩ましいですね。でも、おっしゃる意味は分かります。そういうことを割と議論する場面は増えているような気はします。特に日本でもSociety5.0というのは、ある意味でヒューマンセンタードということを置きたがっているわけですよね。
【片田委員】  若干関連するかもしれません。全体として科学コミュニケーションの位置付けが、今横山さんがおっしゃったように、どちらかというと、科学の方が正しくて、それを伝えるという方向に重きが置いてある。もちろん社会の声を聞くなんていうようなことは2ページ目の上から2行目辺りで、社会の声を研究者に伝えるなんていうこともちゃんと書いてはあるんですけれども、あくまでコミュニケーションということを考えると、情報を伝えという、これだけではコミュニケーションにはなっていなくて、インフォメーションのやりとりにすぎないという感じもしないでもないんですね。
 特に防災というような領域に身を置いておりますと、社会としての究極の目標があるわけです。減災だとか、犠牲者を出さない社会づくりだとか。そこにおいて、科学としてもちろんそれを標榜してそれぞれの分野でそれぞれの研究がなされているわけなんですけれども、問題の複雑さからいってその延長上にそれが本当に達成できるのか。例えば地震の予知・予測をやったとしても防災に役立つところのレベルまでは達しないというのは地震学会も言っておられるとおりで、一方で、進んだ進んだという情報のメッセージが依存度を高めていくというような状況。社会の声を聞くと、予知・予測の精度を上げてやってくれという。そこにどういうふうに情報をやりとりしても、よかれ方向には進まないコミュニケーションがそこにあるように思うんです。
 そうしたときに、科学のコミュニケーションを単に研究の意義を社会に分かりやすく説明し、社会の要望を研究者に伝えるというだけではゴールに向かって達成できないことがいろいろある。そうなると、科学そのものの持っている目標に向かって、それがどういう意味を持っているのかというのを俯瞰的に見て意見できるコミュニケーションもあるように思うんです。今ここで位置付けられているコミュニケーターというのが、単に研究者と社会の仲立ちをするという何かそこにコンパクトに収まってしまっているような気がするんです。
 そうすると、もう少し社会のありよう、例えば防災という世界であるならば、今の研究の延長には本当にそれが達成できますかと。多分社会もその技術そのものは望んでいるんだけども、非常に表面的には、予知・予測やってほしいという。でも、その延長に本当にそれが達成し得る……、研究者ですから、非常に高い目標を掲げて頑張っている。けど、どう考えてもそこまで達しないよというのは地震学会が明らかに自ら言っておられるように、でも、そこに向かって頑張っているんだという、そのアピール、このように研究者は頑張っておりますというふうに社会に説明する。社会は期待する。でも、どうやったって、最後の最後行き着かないことだってあるわけですね。
 そういったときに、非常に冷静、客観的に、その技術がこの先社会が達成しなければいけない、本当に災害のときの犠牲者が出ないような社会を作っていくということに対して、どういう意味を持っているのかということをしっかり見定めて、それを社会にも研究者にも発信できるようなコミュニケーターという立場もあるんじゃないのかなと思うんですけれども、どうもそういう視座をここには感じないんですね。研究者と社会との間に立って、双方向に両方の橋渡しをしている、それだけでコミュニケーションと言えるんだろうかというところは少し感じるところがあるんですね。
 そうすると、そもそも論に戻ってしまうんですけれども、科学コミュニケーションとはというのか、そこにおけるコミュニケーターとはというところにもう少し機能的な拡張というのがあるんじゃないのかなという感じもしないでもないという感じはしながら読ませていただきました。
【小林主査】  おっしゃるとおりで、コミュニケーションというフレームは、際限なくでかくもできるし、際限なく矮小な言葉としても理解できるという融通無碍があって、これはやや、つなぐというところで広げているようだけれども、つなぐという切り口はそれなりの狭さがあるだろうという御指摘で、それはおっしゃるとおりなんですが、さりとて、これを全部広げてしまうと、またものすごく拡大、拡散するんですね。
 ただ、片田さんがおっしゃっているニュアンスはちょっと意識しているのは、例えば3ページの下から二つ目の段落といいますか、ここら辺はちょっとそういう意識があるんですね。真ん中辺りですね。つまり「科学技術が社会実装され、科学技術により新たな価値が創造され、社会が変容していく過程においては、その科学技術を社会がどう受け入れるかが重要となる」と、これが常識的なアクセプタンスの議論なんですね。これはこれとしてというところで、もう一回、「さらに言えば」といって、「科学技術によるものに限らず、社会の変容そのものが社会の構成員にとって明暗両面を持っている以上、各構成員がその明暗について理解を共有し、どのような社会が望ましいかを対話し、協働することがますます重要になると言える」と、ここまで書くと、ちょっと言っているわけですね。というニュアンスは出したとは思うんですね、ここは。ただ、その後のところは全体にやっぱり、つなぐの機能とかそういう話になっているので、片田さんの指摘はおっしゃるとおりかなと思いながら聞いていました。
【片田委員】  それを受けたところのコミュニケーターの役割をちょっと記述していただくといいかなという。ただ、大変難しい仕事ですけどね。
【小林主査】  そうなんです。
【片田委員】  かなり高度な。
【田中委員】  小林先生が「受け入れるか」となっているのが、少し気になりました。しかし、これは「受け入れる」という前提で話を進めるわけですね。普通は、社会と対話するわけだから評価の部分も入るのかなとは思いましたが。
【小林主査】  やっぱりパブリックアクセプタンスという感覚はそれなりに強いし、そういう形でもこういう問題に取り組んでくださる方はやっぱり大事かなという気もするんですね。確かに技術的に可能だから全部受け入れて実装しなければいけないというわけではもちろんないんです。だけれども、やはり研究をしている人には、社会や人々がそれを望んでいるかどうかについて、1回対話をしていただいて、そう簡単に受け入れてもらえないこともあるというのは経験していただいた方がいいとは思うんですけれども、でも、最初から拒否するみたいなニュアンスの書き方をすると、読んでもくれないのかなという気がちょっとしたものですから。
 どうですかね、課長、この辺りの微妙な。
【坂本課長】  ありがとうございます。今の点ですが、先生方が今御議論いただいたこと、まさにそのとおりのことを我々も現場の方々、例えば日本科学未来館のコミュニケーターの方とかとお話ししても感じます。さっきの地震の例も含めて考えると、今まさに小林主査に御指摘いただきました、どのような社会が望ましいかを対話するというところの機能においては、これは実はものすごく複雑な機能なんですね。それはどのような社会像が望ましいかというビジョンを議論している、ここのレベルだとまだコミュニケーションと言っているのですが、これが実際、具体論として意思決定のレベルになると、これはもう完全に行政の世界に入ってきたりとか、政治の世界に入ってくるんです。例えばこの前も津田室長と議論させていただいたんですけれども、子宮頸がんワクチンの問題ですね。これは多分、今、福島で問題になっているトリチウムの問題も同じだと思うんですけれども、リスクというのは、それぞれリスク自身もそれぞれの方々で捉え方が違いますよね。それと、今、そのリスクに比して、そのリスクを回避しようと思ったら掛けなければいけないコストをどういうふうに、結局はこれ、意思決定の問題で、社会的な意思決定としてどうバランスさせるかというところが問題になるわけですけれども、これはもはやコミュニケーションの世界を超えるわけです。
 でも、やっぱりどうあるべきか。子宮頸がんワクチンもそうですけれども、そもそも子宮頸がんワクチンは、接種率があれだけ高かったのが、今、1割ぐらいまで下がったと言っていますかね。それによってものすごいバイアスが掛かって、避けられるがんの罹患が避けられない状態になっているんじゃないかというところをチャレンジしたいというふうな思いを持っているコミュニケーターの方が日本科学未来館に実はおられる。でも、それ自身が社会の中で大議論を起こすと。ものすごいネガティブキャンペーンを起こさせる。ちょっと生々しいですけれども。これはコミュニケーションの世界を超えて、政治の世界に入ってくるんですね。だから、そこまで機能を議論し出すと、これは相当複雑な問題になります。
 今さっき主査がおっしゃったように、つなぐというところでとりあえず収めているというのは、そこから先の機能というのは、本当は社会にとっては必要なんです。地震もそうですよね。地震も、学問的限界があると言いつつ、でも、期待感はあるわけです。ではその期待感だけでどれだけの投資をするかというのは、投資の世界になってくるから、これは政治的意思決定なんです。それはコミュニケーターの役割をもはや超えます、はっきり言うと。
【小林主査】  おっしゃるとおり。そういうのがごろごろと転がっている。
【坂本課長】  そう、科学コミュニケーションの先にはごろごろ転がっているんです。だから、さっき横山委員がおっしゃっていた、人々に寄り添う科学技術というのは、これははっきり言うと大原則としてあるべきなんですけれども、寄り添う先にはやっぱり結論が必要で、行動が必要で、そこまで至る過程にはコミュニケーションを超えた、非常につらい、厳しいプロセスがあると。その部分は、この科学コミュニケーションの議論を多分超えているんじゃないかなというのは我々行政から見て思います。
【小林主査】  おっしゃるとおりで、往々にしてそこをコミュニケーションで解決できないかと期待する方も科学者の中にいらっしゃるんですが、トリチウム水といった、ああいう問題群というのは、やっぱり課長おっしゃるとおりで、コミュニケーションを超えた世界のところまで行きますね。だから、無関係ではないんだけれども、コミュニケーションで何とかなるという考え方自体が問題になるような政治の場面になるだろうと思います。
【坂本課長】  ただ、ここで議論することはすごく大事で、コミュニケーションが成立しないところに、協働の意思決定というか、もっと言うと、協働の統治というか、そういうものは存在しません。だから、コミュニケーションは絶対要るんです。ただ、それだけ解決できるかというと、それはなかなか難しいということだと思います。
【小林主査】  そういうところなんですね。
【山口委員】  ゴールをどこにするかって非常に悩ましいんですね。共に分かり合うまではいいんですけれども、そこから先にカドミウムが危ないといったときに、週末のシンポジウムでも、くわばたりえさんがおっしゃっていたんですけれども、「じゃあ、私、どうしたらええの」となるんですね。そこから先はやっぱりコミュニケーションでは、コミュニケーションとしてどうするのかなと思いながら、私もそのシンポジウムを聞いていたんですけれども、今のようなお話であれば、ちょっと安心してというか、取り組んでいくこともできるかなというところもあるので、そこの前提がもしこの中に書いてあれば、私もこれを参考にして実務の中でやっていけることができるかなと。そういう意味で役に立つ文書なのかなというふうには思ったんですけれども、そこまで書くと生々し過ぎるんですかね。
【小林主査】  だから、科学コミュニケーションの限界みたいな議論があってもいいんじゃないかと思いますよね。
【山口委員】  と思いました。
【小林主査】  やっぱりそれが大本営発表のように、科学コミュニケーションをやれば何とかなるんだみたいなメッセージはかえって危険で、必要だけれども、限界もあるということをわきまえるという、そういうスタンスがあってもいいかもしれないということですね。
【小出委員】  よろしいですか。
【小林主査】  どうぞ。
【小出委員】  今、課長がおっしゃったように、科学コミュニケーションの枠を今のように捉えると、とても政治的な判断は、ディシジョンメーキングまでもちろん行かないわけですよね。ただ、ディシジョンメーキングする際に一番重要なのは、やはりサイエンティフィックなアプローチだし、そこをつなぐのはサイエンスコミュニケーションの一つの役割ですよね。ですから、幾つもの階層的になっている問題でして、子供たちの教育、それから、研究者仲間の中で誰かがやっぱりやらなければいけないというリーダーシップを取らなければいけないという問題があるし、その先には、最終的にポリスメーカーがディシジョンメーキングする。それもやみくもにやってもらうのではなくて、その部分で何を根拠にするのかという、エビデンスに基づいた政策決定という、2年前にちょうどオープンフォーラムがありましたけれども、そこに結び付くようなお話も、そこもコミュニケーションの重要な役割ですし、国によっては、そこにチーフサイエンティフィックアドバイザーとそのグループを持ってくるという、それなしには動かないよというそういう考え方の国もあります。
 そういうふうな幾つかの階層の中で、ただ、問題は決めていかなければいけないわけですね。日本はずっとモラトリアムで先まで行けるつもりでいますけれども、そろそろそういう限界じゃないし、先ほどのワクチンの問題にしても、社会防衛論という視点と、それからもう一つの中で、リスクはゼロということはあり得ないし、では、どうやってトレードオフするのかという議論に持っていかなければいけない。それもコミュニケーションの役割ですよね。だから、いろいろな役割があるので、この範囲の中だけで議論しますってそれは一つ可能かもしれないですけれども、ただ、せっかく行政がこれだけの努力をいろいろしていて、国民へのメッセージをどこかで出すというときには、その大局観を示すということが一番重要じゃないかと思います。
 もちろんなかなかコミュニケーションだけでいかないということは、多くの市民といいますか、主権者たちも分かっているわけです。じゃあ、どうしたらいいのかという方向が見えないというのが彼らにとって一番今困ることですから、先の方向が見えないといって、だったら、からめ取られるだけでいいかということになります。それが今一番ネガティブに出ているのが教育の現場です。いわゆる人生のロールモデルを持たない子供が非常に多いというのを海外のジャーナリストから、日本の中でディスカッションしたときに、今の大学生というのは人生のロールモデルを持っていないんじゃないかというようなことを言われて、そういうバックグラウンドにはそういうふうな社会的な背景もあるわけですから、どこかではそのメッセージを投げなければいけない。
 そのときに実はコミュニケーションというのはそこまでも含んだ役割で、その階層が幾つかあるという中の、じゃあ、どこを今どういうふうにやろうとしているのかというふうな全体観があって、それにメッセージといいますか、志があって、今ここをやりますというふうな説明をされると、より多くの人たちが、そういうふうな方向で見なければいけないのかなということが分かるというふうに私は考えていたんです。ですから、それを幾つかの文章に分けてやることも可能ですし、ここの場合には、じゃあ、こういう範囲でやりますという、全体の中の位置付けをしていただけると、我々としてももう少し理解がしやすくなるような気がします。
【小林主査】  なかなか難しいですね、書き方としては、それはね。
【小出委員】  いろいろな領域に刺さってしまっていることでしょうかね。
【小林主査】  科学者の政策への助言に関する議論をいっときJSTでもなさって報告書が出たり、海外でもしていますけれども、あそこでもやっぱりそういうエビデンスベースでの意思決定というのは大事で、科学は貢献できるという片一方の面があると同時に、やっぱり限界があって、まさしく課長がおっしゃった、政治という観点での判断というのは科学には閉じなくなるわけで、そこで、じゃあ、科学の助言はどういう形で生かされるべきかというところはマニュアル化できないんですよね。もうこれはアートの世界になるんです。
【坂本課長】  本当におっしゃるとおりです。
【小林主査】  でも、そこでも、お互いがわきまえるべき視点の限界みたいなものを共有するとか、そういう書き方になるんですね。だから、科学者の方は、科学だけで政策が決まるんじゃないということを理解した上で助言をすべきだという話になるし、政策決定者は、科学の言葉が必ずしも決定的な解答を与えているわけではないということを理解した上で科学を使わなければいけないというふうになって、その両方やれと言ったら難しい話なんだけれども、そこがまさしくアートの部分、政治のアートの部分だと思うんですが、そこは逃げられない話で、これはコミュニケーションの場合でも同じことが起こるということですよね。
【坂本課長】  おっしゃるとおりです。
【小林主査】  だから、そういう意味での限界がある。だからといって、要らないとか、役に立たないという話ではないので、4ポツか3ポツの終わりにでも、その種の限界のようなものを少し書いておくというやり方はあるかもしれませんね。
【坂本課長】  そうですね。
【小林主査】  余り生々しく書いても分量的バランスが崩れますから、小さめのパラグラフ1個ぐらいでいいとは思うんですけれども、そういう限界について語って、ここの先にはもっと大きな問題が当然あるんだと。それが科学技術を社会の中で使うときの宿命だという感覚ですよね。
【藤垣委員】  よろしいですか。先ほどの課長の子宮頸がんワクチンの話を聞いていて、遂に日本の科学コミュニケーションも痛みを伴うコミュニケーションを中に含むようになったのかと少し感慨深く思いました。2006年にイギリスを訪問したとき、当時のイギリスは結局BSE関連で、まさに政治も絡むところまで含めた痛みを伴う科学コミュニケーションを行っていました。科学コミュニケーションは痛みを伴う、ということに対する感受性が非常に強かった。しかし、2000年代の日本はそうではなかったので、ある意味、向こうから見ると生ぬるい科学コミュニケーションでした。ただ、今のお話を伺う限り、やはり日本の中の科学コミュニケーションも、福島以後かもしれませんけれども、そういう痛みを含んだ科学コミュニケーションになりつつあるんだということが分かりました。
 でも同時に、先ほど小林主査がおっしゃったような、コミュニケーションだけでは解決できない部分もあるので、その生々しいところも含みつつ、それをどうやって切り分けるかみたいなところが難しいところです。痛みを伴うところまで含むようになったということは、やはり日本の科学コミュニケーションにおける進歩だと私は思います。
【小林主査】  成熟ですよね。
【藤垣委員】  成熟だと思いますので、それはやはり第1段落の中にもう少し、さらっとでもいいから書き込んだ方がよろしいですし……。
【小林主査】  冒頭の方?
【藤垣委員】  はい。ですから、負の側面も正しく伝え、議論を促すことや、社会課題や利害の調整に関わることも一層に求められているという、その後ですね。そこに入れ込んで、その生々しい話、痛みを伴う科学コミュニケーションが日本でも発生している。かつ、社会課題の解決やイノベーション創出なども同時に求められている。その中でというふうな書き方をした方がいいと思います。
【小林主査】  確かに、福島以後の科学コミュニケーションの成熟というか、視野の広がりはリアルにそうだったわけだから、それはもとへもう戻らないので、そういうことまで含めたコミュニケーションがやっぱり必要になった社会ですよね。イギリスが確かに遺伝子組換えとBSEの後大きく変わっていったというのと同じようなことを日本も経験しているわけで、そこをさらっと第1段落で。
【藤垣委員】  そうですね。
【小林主査】  ちょっと考えます、それは。
【藤垣委員】  そこを変えたときに、もう一つ、5ページの一番上がその点に多分呼応してくるところなんですけれども、リフレクシヴィティのところですね。現在の文章はさらっと書いていますけれども、例えば共創によるというところ、「共創による」とたった5文字で書かないでもう少し、例えば研究開発者と多様なステークホルダーや社会の構成員が、括弧して「共に創る」と書き込むとか、それから、あるいは4行目、相対化しとありますけれども、研究の初期段階から共に考慮しとか、何かそういう書き方があってもよいかなと。
【小林主査】  これは、RRIの紹介が3ページ上の方の段落の真ん中辺、注6の後ぐらい、そこで、「イノベーションの早い段階からの一般市民やステークホルダーの参加が提案されている」と、ここにちょっとその言葉が出てきていますね。
 「科学技術白書」の言葉がここで引用されているというのが7の注ですね。だから、こういう事例がここで書いてあって、そして最後に、だから機能のところでは、それをきっちりと対応して、対応関係があるような書き方をするというので5ページに書くということになりますかね。こういう能力というか機能を一人で体現できる人を作ろうと思うと大変だというのは本当に思いますね。じゃあ、ここの対応がもう少しクリアになるように、前で出てきた記述と対応してここの5ページにも書き込むということにしましょうか。
 あと、いかがですか。今御意見を頂いていて、確実に修文してでも追加しようとしているのが、科学技術コミュニケーションの、時代が変わればコミュニケーションも変わるという形で書いているところで、やはり日本の経験としての福島以後の成熟のような科学コミュニケーションの深化といいますか、そういうことをまず冒頭で触れるということ。
 そして、できれば、横山委員がおっしゃったような、社会的包摂とかそういうところでの科学技術の役割を強化するようなコミュニケーションとか、何かそういうニュアンスがどこかで書けないか、これが二つ。
 それから、5ページの辺りの「共創」という言葉とか、相対化、反省的という抽象概念で済ませるのではなくて、その前の記述、2ポツ、3ポツの記述に対応して、もう少し具体的な表現にしておくということ。
 それから、コミュニケーションだけで全てが解決するわけではなくて、その先には非常に厄介な課題があってというところで、科学コミュニケーションは万能ではない、限界について語るということを少し入れる。
 今それぐらいの意見が出そろったところですが……。
【内田委員】  すいません、一つ。
【小林主査】  どうぞ。
【内田委員】  2ページ目の、社会課題の解決に取り組む重要性の1段落目の最後に、「新たな役割を果たす必要がある」と書いてあるんですけれども、この新たな役割というのがどこの部分に当たるのかというのがさっと読んでいると分かりにくいと思います。3の必要な機能で書かれている、幾つかの知識翻訳機能、対話・調整機能、共創のためのコーディネーション機能がこれに当たるのかなとも読めたんですけれども、もしそうであれば、3で述べるようなとかを書いておくのはいかがでしょうか。新たな役割と書いてあるので、今までと違う何が新たな部分なのかというのが、伝わるとよいかと思いました。
 この段落で社会課題に対して対応するというのが一つの役割として書かれていると思うんですけれども、リスクがあるときというよりは、平常時いうように読めなくもないけれども、これはこのままでも良いのでしょうか。つまり、何か災害時の取扱いはどうなりますでしょうか。
【小林主査】  今回、いわゆるリスクコミュニケーションは明示的には触れていないし、議論の中から余り入っていないですね。それもやると、リスクコミュニケーションまで入れなければいけなくなるので。
【内田委員】  ではそれは除外するということですね。
【小林主査】  今回は除外してもいいと思いますけれども。
【内田委員】  分かりました。
【小林主査】  新しい新たな役割というのは何ですかという問いに対しては分かるように書かないといけないというのは確かにそうで。これ、でも、実は2ポツの内容そのものが新たな役割だというふうに書いたわけですよね。違いますか。
【坂本課長】  そうです。おっしゃるとおりです。「このような状況を受けた取組として」と、これは取組で書いてしまっているんですけれども、今、新しい取組が始まっているというのは、そこにコミュニケーションの役割があるから取組が始まっている。例えばさっきお話があったRRIの話とか、あるいはオープンイノベーション2.0の話とか、更にそれをもうちょっとまとめた形で「このように」のパラグラフがあるわけですね。だから、これはあくまで本当に限られた例ですけれども、こういった取組の中に見える役割という意味で書かせていただいているんです。さっきの機能は、こういった役割を果たすのに本当に活動としての機能みたいなものが3ポツで整理されているという、そういう構造だと思います。
【小林主査】  だから、2ポツそのものが新たな役割なんだから、それをどこかにサブタイトルに書きますかね。
【内田委員】  そうですね。
【小林主査】  2ポツが、社会課題の解決に取り組む重要性、これが新たな科学コミュニケーションの役割なんですよね。
【坂本課長】  そうですね。
【小林主査】  それは翻って、ハイライトを付けるためにややこれはわら人形を作っているんですけれども、科学館、博物館でやっている科学コミュニケーションみたいなものをまずわら人形にしておいて、これじゃないところの問題の生じている現場に立ち入ってというふうな形でコントラストを付けて書いているという。じゃあ、今までの科学コミュニケーションは本当は博物館だけでやっていたのかというと、そんなことはないんだけれども、とりあえずコントラストとしてはそういう書き方をしたわけね。
【内田委員】  2のサブタイトルが新たな機能について述べられているセクションであるというようには読めなかったのですが。
【小林主査】  そうですね。そういうことをちょっと明示した方がいいですよね。
【内田委員】  はい。
【坂本課長】  そうですね。
【小林主査】  ちょっとそれ、書きましょうかね。この節は新たな役割のつもりなんだから。
【坂本課長】  そうですね。
【小出委員】  ちょっとよろしいですか。我々ジャーナリストは科学コミュニケーションといったときに、やはりまず社会と科学との間に起こるコンフリクトにどう向き合うかということがまず最初に出てきてしまうんですね。もちろん先ほどお話ししたように、教室の中若しくは科学館、そういうところでのコミュニケーションもあるし、それから、科学者同士の間のものもありますし、幾つかの階層性があるという中で、我々が一番シビアに見なければいけないのは、政治的決定を求められるところでのコンフリクトもあるし、そこまで含めて科学コミュニケーションだというふうに認識してしまっていたので。
 ですから、一番分かりやすいのは、我々が体験したのでは、ダイオキシンの環境ホルモンの問題がありますし、それから、BSEの全頭検査という科学的根拠のないものをずっとだらだら続けるというものは、いわゆる主権者たる国民も考えなければいけない問題です。それから、ワクチンの問題がありますし、それから、福島の後のコミュニケーションの失敗の問題がありますし、そういうふうな幾つかのコンフリクトを解決するのに、やはり科学のコミュニケーションというのはなしにはできないだろうと思うんです。
 それはいろいろな形の工夫が必要だし、これから培っていかなければいけない問題もあるでしょうけれども、そういう中で恐らく人材の育成も必要でしょうし、いきなりスーパースターは出てこないわけで、藤垣先生のおっしゃったようなイギリスの例だと、やっぱり20年少なくとも掛けるという教育も一緒に併せながらやってきていますけれども、そういうふうな枠組みをどういうふうに考えるのかという一つの考え方がどこかで出ると、もう少し多くの人がその中のこの部分を扱っていきますというふうな表現ができると、我々には分かりやすいような気がします。
 最初に、社会と共にあるために必要不可欠な機能ということはもちろんそうですが、あると言うよりも、社会と科学、それから、技術、そういう問題をつなげるというのが、本来の我々がコミュニケーションと言うときにその機能として考えるのはつなげるという作業だと、そういうアクションだろうというふうに考えていたんです。その中には楽しさ、それから、有意義なところ、それから、カッティングエイジを伝えるという新しいものを伝えると同時に、いろいろな形で起こっているコンフリクトなり、それから、混乱、そういうものを解決するために努力をする、何か投入される、その資源もそれは科学コミュニケーションであると考えていたので、ここからこっちはリスクコミュニケーション、ここからこっちはというふうに分けるのはもちろん行政の立場で必要なんですけれども、全体として何をやらなきゃいけないのかという方向がどこかで見えるといいなと思っているんですが、こういうふうな類いの文書の中にそれを全部盛り込むということが難しいようでしたら、何かしらそういうメッセージが一緒に出てくると、これの意味がもう少し分かりやすくなるんじゃないかと思います。
【小林主査】  多分そのような表現は冒頭に書かないといけないですよね。
【小出委員】  冒頭のところにだけあれば、あまりディテールは入らなくていいような気がしますね。
【小林主査】  そうですね。
【小出委員】  こういう志でやっていますよということがどこかそこで伝わるならば、多くの人たちはいかに難しいかというのもよく分かっている方が多いわけですから、だから、そこまで見てますよということをどこかでメッセージを投げないと、もうこの範囲でいいのかというか、逆に読者が最初のところからダーッと減っていくような気がしてしまって。我々はとにかく読んでもらうための文章ばかり書いていますので、どういうふうに書くと読者がサーッと消えてしまうというのは、そういう恐れだけはよく分かるので、何とか少し先まで読者を捕まえたいというそういう意思表示をするためには、コアなところだけで。決して長くなくていいと思うんですけれども。そこまで含めてやらなければいけない。ただ、一概にそれ全部できないけれども、それぞれにいろいろな立場のそういういろいろな階層でもって、やらなければいけないというふうな理解がありますよということがもし出せるならば、それは多くの人たちが、そこから先は、へーとまず思うでしょうから。
【原田委員】  一つよろしいですか。もしそうだとすると、これの冒頭部分の2番目の段落、「なお、一概に「科学コミュニケーション」といった場合」というところから始まる段落で、全部をやるのは困難なんだけれども、当委員会においてはということが書いてありますから、ここをもう少し今までの議論を踏まえるような形の、ちょっとコンパクトにまとめるようにできると、比較的場所的にもいいんじゃないかなという気がします。
【小林主査】  つまり、この広がりの中では、今小出委員がおっしゃったような、そういう大きな多様なものはちゃんと一応視野には入っていますよというメッセージをここに書くと。
【原田委員】  そうですね。示す範囲が非常に広いと書いてあるだけなので、そこをもうちょっと具体化して、かつコミュニケーションだけでは済まない問題もその先には当然存在する。だけれども、コミュニケーションというのは全ての前提として必要であろうみたいな議論があったと思いますので、そういうような趣旨が入り込めるといかがかなと思いました。
【坂本課長】  よろしいですか。
【小林主査】  はい。
【坂本課長】  今のは、全体論の中に入れる方法もあるかと思うんですが、我々の視点から見ると、今小出委員がおっしゃった話というのは、その上の一つ目のパラグラフの、「社会課題や利害の調整に関わること」という、ここでさらっと言われていますけれども、要は、さっきのコンフリクトを社会としてどう折り合いを付けるかというか、ソリューションを見出すかと。それは当然エビデンスを示す。このエビデンスにも不確実性があるので、これはもう大議論が起こるわけです。それもそうですし、あと、そもそもリスクについてどう捉えるべきかというところ、教育みたいなところ、さっき階層性とおっしゃいましたけれども、多分ここはそれが全部、含まれているんです。ここをもう少し書き下すという手もありかなと思いました。
【片田委員】  そこをちょっと書き砕くのであれば、必ずしもコンフリクトが生じないまま誤った方向に走ることが防災においては多くてですね。
【小林主査】  コンフリクトにならない?
【片田委員】  はい。社会もそうだという、研究者がそれを逆手に取って、というわけで、もっと進めますと言って突っ走っていく。最後、東日本で突き付けられて、やっぱりできませんでしたと白状するという構図のものですから、コンフリクトすら生じてない場合もありますね。
【小林主査】  確かに。
【坂本課長】  しかし、そこまで行くとなかなかきついですね、コミュニケーションは。もはやそういうことですね。潜在的リスクを掘り出すというのは、どちらかというと、これはそもそもアカデミアの中で本当に社会にとって必要な、情報もそうですし、あるいは価値観というか、例えば気候変動で言われていた予防原則みたいなものを含めて、それは地震の世界でも多分本当はあった方がいいと思うんですね。そういったところまで含めてどういう価値観というか、意思決定のフレームを作るかというところまで踏み込んで本来は多分議論されなければいけないんですが、これはコミュニケーションではものすごく大きな問題になるんです。コミュニケーションは必要なんですけれども。
【小林主査】  もう本当に、地震の発生確率を推本が出していますよね。あれをどう伝えるかというのだけでもう七転八倒ですよ。福島の後、推本の方であの確率論的なものをどう説明するかの検討をされたとか聞いていますけれども、どんなのが出てくるかと思って楽しみに待っていたんですが、やっぱり確率が低くても地震が起こらないと思ってはいけませんとかね。それは分かっているんだと。聞きたいことはそこじゃないんだというんだけど、やっぱりうまくできないんです。
【坂本課長】  おっしゃるとおりです。確率論的な手法というのは、さっきの科学コミュニケーションの不確実性のところはものすごく難しい問題で、スペースシャトルの打ち上げとかでも、確率論的な評価で絶対大丈夫だと言われていて、200回程度で2回落ちたわけですね。確率論的な安全性の評価というのはいかにそこに限界があるかということを、科学者、エンジニアは突き付けられたというふうなことを、じゃあ、どうすればいいんだというところを、そこを議論するのは多分サイエンスの世界あるいはエンジニアの一番本質的な役割なのかなと思うんですけどね。
【小林主査】  だから、コミュニケーションね。話せば分かるわけでもないしね。話せば分かるときがあるという世界なので。世の中ほとんどそう。だから、そこで過剰な期待というのもよくないんですけれども、さりとて、やっぱりこれを大事にしないという社会も非常にまずくてですね。冒頭のところの今頂いているニュアンスをどうやって盛り込むか、石橋さんと2人で悩むことになるかと思いますが、ちょっとやってみます。
 あと、ちょっと細かい論点になるかもしれませんが、必要な機能のところの、鍵括弧で機能を言葉で並べているんですね。三つ並べていますが、こういう整理でよろしいですかねという。知識翻訳機能、対話・調整機能、共創のためのコーディネーション機能。ちょっと気になるのは、対話・調整機能と共創のためのコーディネーション機能というのは何が違うのかというところがですね。
 これは事務局でお書きになったときは、どのぐらい意識して書き分けられたんですかね。初めは、共創のためのコーディネーション機能という言葉はそんなに出てなくて、私がちょっと手を入れたときに付けたんですけれども、付けたものの、私自身も余り自信がなくて。どうですか。
【石橋補佐】  事務局でこれを書いたときには、知識翻訳と対話・調整というものは、従来のコミュニケーション、従来のと言っていいのかどうか分からないんですけれども、社会課題、そういうコンフリクション云々のない状態でのコミュニケーションというのは、当然これはあったんでしょうと。そこに対して、共創のためのコーディネーション機能というものが、より今後社会課題なりに対応していくとか、利害の調整をするとか、今御議論いただいているような、今後のコミュニケーションにより重きというか、重要になってくるものであろうということでの書き分けでやっております。
【坂本課長】  言い方を変えると、三つ目の共創のためのコーディネーション機能のところ、これはコーディネーションという言葉にあるのは、対話・調整とともすれば同じように取られますけれども、やはり対応策、ソリューションを作り出して、それを実行するというところ。対話・調整の方は、どちらかというと、少し言い方悪いですけれども、意見集約です。合意点を見出すということで、ソリューションを作るという能動的な行為というところが多分弱かったんだと思うんです。でも、さっきコミュニケーションには限界があると言いながら、我々自身がコミュニケーションに一つの大きな使命を負わせようとしているところが実はここに見え隠れすると私は実は思っているんです。あなた方、ソリューションを作り出す主役になりつつありますよというのをですね。でも、これはコミュニケーターにとってはすごい重い話ですよね。
【小林主査】  そうですね。
【坂本課長】  ここで言っている対話・調整を超えてくるんですね、多分。自分から発意するとか、あるいは草案を作る、起草する集団を作るみたいなという機能まで多分ここは要求しているんだと。だから、対応策について相対化し、反省的に見直すとかいう機能が多分求められてくるのかなと思っています。
【小林主査】  なるほど。とすると、やっぱり先ほど藤垣さんがおっしゃったように、もうちょっとかみ砕いて書く方がいいんでしょうね。
【坂本課長】  そうですね。
【小林主査】  「共創による」ぐらいで収めてしまうんじゃなくて、具体のステークホルダーが立場の違いを前提にしながらこういうことをやっていきますよみたいな表現があって、しかもその出口としては何かのソリューションを求めるような活動にまで行くというところですね。
【坂本課長】  そうですね、はい。
【小林主査】  そうすると、当然、相対化したり、反省的な議論をせざるを得なくなるんだよと。なるほど。そうであれば、書き分けられているので、そういう観点で並べるというのはあると思うんです。
 そうすると、その次の段落の、「さらに」のところの「前述」が、対話・調整機能までで止まっていて、「等」で引っ掛けているんだけれども、実は一番最後のが大事なわけじゃないですか。だから、そこを「等」で拾うのはよくないかなという。
【坂本課長】  そうですね。ちゃんと明確に書いた方がよろしいですね。
【小林主査】  明確に出した方が。多分、前述の知識翻訳機能、対話・調整機能に加えて、共創のためのコーディネーション機能まで果たすためにはというぐらいのニュアンスですよね。
【坂本課長】  そうですね。
【横山委員】  今のところでちょっとお教えいただきたいのが、「共創」という言葉は、今お話しのような文脈で政府・行政ではお使いになっているんでしょうか。というのは、私などが拝見すると、新しい価値創造のような言葉として今まで認知しておりましたので、ソリューションという言葉を使われたように、もうちょっと違う言葉の方が誤解がなく読めるかなというのを今感じたというところです。
【小林主査】  そうですね、共創ってね。
【山口委員】  具体的にこれ、共創といったときに、例えばコンセンサス会議ってどこにあるのか。コミュニティベースドリサーチ、原田先生から前回あったみたいに、それ、どこに入るかというのでちょっと読み方変わってくると思うんですけれども、その辺り何かお考えありますか。共創の具体例ですね。
【小林主査】  これ、バズワードですよね、今、典型的に。いろいろなところ、大学も使っているし、私の所属大学も使っているし。
【石橋補佐】  基本計画上でいくと、多様なステークホルダーの対話・協働、すなわち、共創という受け方をしていますので、基本計画的な考えで行けば、多様なステークホルダーの対話・協働というような考え方にはなるのかなと。共創という言葉については言い換えればですね。ただ、共創という言葉が、今はそういった意味を超えてというか、広がっていっている現状があるというのがあるので、そこをここの取りまとめ上で、この共創は何なのかというところは新たに示すのか、やり方はあるかと思うんですけれども、必要かもしれないなと。
【坂本課長】  今、横山委員がおっしゃったのは、多分、これは私の前の部署の感覚からいっても、産学連携の文脈で共創というのがよく使われている。典型なのは、キョウソウのキョウが違うんですけれども、東大の産学協創推進本部。ただ、この共創というのは、さっき石橋が御説明しましたけれども、対話・協働という。これははっきり言うと、産学連携に限らないですよね。要は、社会変革というか、ソーシャルイノベーション的なところまで使われ方が今どんどん広がっている、これは多分間違いないと思います。産学連携では相変わらず使っていますけれども、それ以外のところで今どんどん使われ始めているというのはあるかと思います。
 だから、ほかにいい言葉があれば別に変えればいいと思うんですけれども、そこの、対話からコラボレーションをして、更に新しい価値なのかソリューションなのかを生み出していくということを含めた概念をどう表現するかという、そこかなと思います。
【横山委員】  今の御説明で大変よく分かりました。ありがとうございます。
 もう一つ追加で質問なのが、山口委員がおっしゃられたことと関連するんですけれども、対話・調整機能の方は、おっしゃったようなコンセンサス会議みたいに議論を収れんさせるものに限るのか、あるいはさっきから政治の話がたくさん出て興味深いんですが、政治学の方の議論では、これはSTSの先生方の御専門ですけれども、ハーバマス的な統一的な意見を、見解を出すということの限界といいますか、むしろアーレント的な多様な意見が、科学であってもあり得るんじゃないかと私は思っておるんですけれども、この辺が、何というのかな……。
【小林主査】  収れんなんかしないよと。
【横山委員】  そう、収れんなんかしないのが現状だし、それをどこかで政治で線引きをするという現状の中で、多様な意見を許される。だから、例えば低線量被ばくの話も今すごい盛り上がっていますけれども、収れんしないんだと私は感覚的には思うんです。その辺りはコンセンサス会議やいろいろなことを含めて、この対話・調整機能の書きぶりとしてどの辺が妥当なのか。理想的には収れんしたいですよね。収れんしたいけれども、現実と理想のギャップといいますか。
【小林主査】  そうですね。だから、これは収れんということが本当に、むしろ議論の整理以上のところまで行かなかったりすることが多いわけですよね。違いの明示みたいな話になるんですよね。ここにはどうにも調整が付かないですよねということが分かるという。そうすると、その次のステップはやっぱり政治にどんどん近付くんですけどね。
【石橋補佐】  それで行くと、対話・調整機能のところに書き加えているんですけど、収れんするといいんだけれども、「又は」のところにつながって、収れんに向けより活発に建設的な議論を進めて、その結果なので。
【小林主査】  収れんしなくてもいいわけか。
【石橋補佐】  ええ。平行線であろうと、収れんしようとしまいと、その結果を自らのものとして受け止められるようにしていきましょうというところが対話・調整機能というようなところで今この案としては示させていただいているところではあります。
【小林主査】  調整という言葉が何を意味するかですね。対話・調整って、そのとき、どんなイメージですか。
【石橋補佐】  もちろん収れんという意味での調整もあるかもしれないんですけれども、お互いが全く平行線になった場合の調整というのもあるはずなんですね。発散をしないように、しっかりと対立点とか、受け入れられない部分をしっかりと示すというか、こういうところで食い違っていますね、平行線になっていますねというところをしっかりと示すというところも調整には入るのかなというところがあるので、そういう意味での調整というふうに今はこちらでは。
【小林主査】  ウェルオーガナイズドオピニオンのようなニュアンスですかね。一致はしていないけれども、オーガナイズドされているような、そういうことですよね。これを調整という言葉で表現する・・・、何かもうちょっといい言葉ないですかね。
【小出委員】  当事者の中、ステークホルダーだけの中で議論が済むのであれば、調整とかディスカッションの意味があると思うんですけれども、つかない問題も結構ありますよね。その際には、今度は政策決定者が決断しなければいけないわけですよね。なかなか決断しない国もありますけれども。ただ、そのときにきちんと材料を提示できる、若しくはそこできちんとコミットして、コミュニケートして、彼らがディシジョンメーキングする材料をきちんと出せる、そこまで含めた作業が多分サイエンスコミュニケーションは必要なんじゃないかと思います。
 それを、これを読むと、何となく一人で大変な能力を持っている人が、確かにそれも必要なんでしょうけれども、恐らく集団であるなり、タスクフォースとしての力が必要になってくるでしょうし、そういうふうな人材をどういうふうに作るかということもあるでしょうけれども、政策決定の部分と、それから、こういうコミュニケーション、サイエンス等の部分が余りにも距離が乖離してしまっていると、結局物は混乱するだけというケースを我々は多く見ています。
 そこをどう近付けるかというときに、調整だけで済めばいいですけれども、大抵調整だけで済まなくて、最後はディシジョンメーキングしなければいけないというときに、どういう材料をどういうふうに提示するのかという、そのプロセスも含めて多分この作業が必要な、そこまでにらまなければいけないことだと思うんですね。それは今日本にというか、多くの国がそういうプロセスを持ってきていませんから、科学がその前に動いてしまったので、それに向かってどういうふうにプロセスを組んでいくかということも当然必要になってくるんでしょうけれども、それを避けてはなかなかこれから先日本が進んでいけないこともまた事実だろうと思います。
【小林主査】  ここ、機能と書いてあるので、ファンクションとしては3層あるんだよというニュアンスですよね。これを一人でできる人がいたらすごいけれども、なかなかそうはならないという意味では、タスクフォースみたいな人たちが担っていくべき機能として3層あると。この2層目は、論点整理以上のところまで行かない可能性があるわけですよね。そういうことですよね。だから、議論のマッピングをしているとか、そういうことですね。俯瞰的に議論を整理しているとか、そういうことをやっているフェーズで、そこで収束すれば話は簡単だけども、そうならなかった場合は当然出てくるわけで、意思決定しなくてはいけないという、そういうフェーズがその先には待っている。さっきの、政治が最後に待っているわけなんですが、共創のためのコミュニケーションというのはその手前なんですかね。
【石橋補佐】  ここでイメージしたのはそうですね。2段階目までで議論というか、そういうところをやって、最後のディシジョンメーキングのところが、ここの共創のためのコーディネーション機能のところにいくと。
【小出委員】  その部分をコミュニケーションする人にコーディネーションまでやれと言うと、多分すごく負担が重いような気がするんですね。
【石橋補佐】  もちろんコミュニケーションとコミュニケーターはほぼ一体になのかもしれないですけれども、そこのコミュニケーションとしての機能はそれはあるでしょうと。それで、そこを担う人たちが、それぞれのステークホルダーみんなが持っているのか、それとも、コミュニケーターという人間が入ることでうまく回るのか、それはいろいろな形があるでしょうと。ただ、そういう機能が必要なので、今後そういった機能を担えるような活動、みんなできればいいかもしれないですけれども、そのうちのこの機能はできますよとか、そういう人材を今後育成していく必要があるんじゃないかというような形で後ろの方に述べられればいいのかなと。
【原田委員】  1点よろしいでしょうか。
【小林主査】  はい。
【原田委員】  必要な機能はということで三つ示されている形になっていると思うんですけれども、これ、三つの違うものが並列されているというよりは、階層的な構造で示されているということに聞こえるんですけれども、その理解でよろしいでしょうか。
【小林主査】  と思います。
【原田委員】  そうだとすれば、その辺がもう少しはっきり明示的に書き込まれて、例えばこれまでの科学コミュニケーションとかコミュニケーターの役割と言われていたものというのが、2層目ぐらいまでのところで止まっていたものが、更にそれを超えてもう一歩先に行くことが、ずっと翻って返っていくと、新しい役割が求められているという一番冒頭に出てくる、その辺りにつながってくるということにもしなるようだと、全体の構造観みたいなものが見えやすくなるんじゃないかという気もします。
【小林主査】  だとすると、多分山口さんがおっしゃったような、コンセンサス会議的なものとか、コミュニティベースドリサーチみたいなものは、むしろ3層に近いところなんですかね。2層から3層に移行していくというフェーズなんですかね。
【原田委員】  そもそも自分のそういう理解が正しいのかどうかも含めてなんですけれども、もしそういう階層構造ということになると、先ほど主査がおっしゃった「さらに」以下のところももう少し意味がはっきりするのかなと思うんです。やっぱり「等」で収めては絶対いけなくて、その先が問題だという形に多分なると思うので。
【小林主査】  大変密度の濃い議論になりましたね。たくさん宿題がたまっていますね。でも、やりがいがある。あと時間もないですから、4ポツもざっとレビューをしていただきましょうか。ここは具体の政策を考えるときの手掛かりになるような部分のはずですので。
【原田委員】  よろしいでしょうか。4ポツについて、実は直前にメールも差し上げたのですけれども、もとの前回資料の中で、タイトルにもあるように、「育成機関は」、「国は」、「研究者は」というのがそれぞれ、もとの文では三つ書き分けられていたんですけれども、新しい今回の資料では、「育成機関は」と「国は」は書いてあって、「研究者は」という主語のところがちょっと出てこない感じがしてですね。
 とても詳しく書き込んでいただいているのはもちろんなんですけれども、何となくこれを読んだときに自分が思いましたのは、「研究者は」というのが、要するに、コミュニケートすることを我が事として、自分自身が本来やるべきことなんだという根本理解みたいなものが、研究者個人とか組織体としての学術団体とかいうところにもっとちゃんと認識されなければそもそも話が始まらないような気がするので、その旨の指摘は必要なんじゃないかなと思ったのが1点です。
 それからもう一点は、この前の例えば10月のときの坂本課長とか内田委員の発言とか、片田委員の発言などでたしかあったと思うんですけれども、要するに、科学コミュニケーションをいくらやっても研究者の業績としてちっとも認識されていないという重い現実があると思うんですね。結局、若い研究者とか大学院生がやりたがらないということにつながってくると思いますので、「国は」あるいは「育成機関は」、「研究者は」という形で書くとするならば、何らかの形でそういうものについて、実際にそれを担ってくれる人のあれが、立場というか、ちゃんと評価されるような仕組みを作る必要があるとか何かそういうことを書かないと、要は、アウトソーシングすればいいじゃないのみたいなことになるのが一番よろしくないと思いますので、その辺りの書き込みがもしお願いできればと思います。
【小林主査】  おっしゃるとおりですね。前回の資料では、「研究者は」という主語の文章がありましたから、それが今回確かに消えていて、アウトソーシングの対象として読まれてしまったら、そこは趣旨が違うだろうと思います。ただ研究者は、じゃあ、これにどのぐらいコミットするかという観点では読みますよね。でも、現実には若手の人に押し付けられているんですよね、割と。
【横山委員】  アピールすれば得をする、評価も上がると考えていると思います。一方で、本当に貢献する大事なコミュニケーションというのはやっぱり志がある人しかせず、しかも損をする傾向が大きい。だから、若手も面倒くさいことはやらないけれども、目立つことはやるという傾向があるのではと懸念します。
【小林主査】  そうなんですね、現実ね。本当は、研究者というのは志があるから研究しているんでしょうと。そして、それで社会に対してもそういうものを、というふうになってくださいよねと言いたくなるんですけれども、そんなものを許さないような環境を作っておきながら何言ってるんだというふうに言われると、もう下を向くしかなくなるんじゃないですか、今。
 だって、今回は、Top10%の論文のコストを計算しましょうという議論が始まって、研究費をTop10%の論文で割り算して、1本当たり幾らでやっているかというので研究集団の優劣を付けるみたいなことが行われるわけですね。そういう世界にはまっているときに、コミュニケーションやれとか何とか言われて、「はい、分かりました」となかなかならないですよね。だから、この辺書くときにそういうブレーキとアクセルを両方踏むような矛盾した政策になりかねなくて、それはちょっとひるむんです、私、最近。今までは、研究者はもっとこういうことを関心を持ってやるべきだというふうに言うことを旗振っていたんですけれども、何かリアルに見ていると気の毒な感じがして、何かそんなことばっかり言ったらどうしろと言うんだと、ダブルバインド状態になってしまいますよね。
【藤垣委員】  でも、先ほどの原田委員の意見は、そういう評価の場面に真に研究費をTop10%で割るような評価指標が本当によいのかというところに疑念を差すのが、科学コミュニケーションの仕事でもあるということですね。
【小林主査】  まあそうなんだけどね。
【原田委員】  それ自体が科学コミュニケーションであるというね。
【山口委員】  最後の段落だと思うんですけれども、経団連さんを引いてらっしゃいますけれども、これ、別に続いて書かれていることそんなに大した話ではないので、権威付けのために引かれていると思うんですけれども、これはこれでいいんでしょうかという、ちょっと微妙な質問ですけれども。
【小林主査】  同じ土俵の上に乗せてしまおうと思ったんですけどね。お盆の上にね。学術会議のところで経団連の人たちとこういう問題を議論しているんですけれども、今まで余りこういうこと言ってこなかったじゃないですか、経団連さん。どちらかというと、人社系って邪魔みたいなニュアンスがあったりしていたんですけれども、急に今そういうことを一生懸命言ってくれているんですね。彼らの発言というのはやっぱり政策形成においては割と影響力が今ありますので、彼らとちゃんと議論した方が私はいいかなと。
 実際やってみると、そうむちゃなことを言っているわけではない。ただ、ちょっと気になるのは、彼らは自覚的にやっていたんじゃなかったと言っていましたけれども、Society5.0のために人文社会系が必要である、ELSIが必要である、実装するためにという言い方をすると、それは人文社会科学とかコミュニケーションをある種の道具のように扱っているようなそういうふうな書きぶりで、それはやっぱり人文社会科学なんかの本質的なものとはちょっとずれているということを申し上げたんです。
 そうすると、あ、そういうふうに受け止められると夢にも思わなかったと言い方をされて、そのこと自体が日本の人社系の大学での教育が失敗しているんじゃないか、ちゃんとそういうことを伝えていなかったのではないかと思いますけれども、そういう意味で、聞く耳持たないという形よりは、むしろ何か一緒にできないかという期待を持ってくれているので、そういう方々が手を出してきているときに、握手を拒否する必要はないだろうという感覚で私はここには書いたんです。だから、ある意味で権威付けと言えばそうです。
【山口委員】  意図があるのであれば、私はいいと思います。
【小林主査】  意図はあると言っていいと思います。一緒に考えましょうよというメッセージのつもりなんです。
 本当に大学とか研究の世界と、それから、産業界って、本当にお互い実はよく知らないですね。だから、いまだに国立大学法人会計に減価償却がないということを産業界の方は御存じないんです、結構。それを言うともうびっくりされますよね。そんなところですね。退職金引当金がないとかね。そうすると、えっというふうに驚かれるというところで、大学に対していろいろ注文付けておられたりしているし、それから、業務命令が大学の教員に対してはそう簡単に利かないということがなかなか理解されないですね。だから、「学長が命令すればいいだろう。首にできるだろう」「いや」という。教員の側も、そんなもので首にされるわけないというふうに強い確信を持って生きていますよね。それが、だから、駄目なんだというふうにおっしゃられても、やっぱりそうなんですよというところですよね。
 だから、その辺からやっぱりちゃんと議論しなければいけないなと思いますね、最近。なので、避けるよりは、一緒に議論した方がいいというふうには思います。科学コミュニケーションなんて言おうとしているこのペーパーがコミュニケーションを拒否するようなことを言ってもいかんだろうとも思いますので、できるだけ多くの方と、産業界もステークホルダーですから、これ自身が科学コミュニケーションの一つの実践例と。
 そうすると、4ポツに関しては、原田委員おっしゃるように、研究者はという文言を復活させて、そこはやはり研究者の志とかそういうところに響くような何か絶対入れるべきだと。単なるアウトソーシングの対象と見ないでほしいということは重要なメッセージですよね。
【原田委員】  御検討いただければうれしいです。
【小林主査】  それは入れなければいけないと思います。
 たくさん宿題が出てまいりましたので、これ、どんなスケジュールになりますかね。頑張って作って……。
【石橋補佐】  今後、2月の皆様のこの委員会の任期中に仕上げを。
【小林主査】  2月末が任期ですか。
【石橋補佐】  2月14日です。
【小林主査】  2月14日まで、皆さん。
【石橋補佐】  なので、報告をしようとしている分科会が2月13日にございますので、それまでには取りまとめを完了させていただければと思っております。
【小林主査】  ということで、今日頂いた議論を踏まえて、可能な限りそれを反映した文書を作成し、そして、それはもちろん御披露というかお示しはしますけれども、最終の取りまとめのところは私の方で御一任いただければと思いますが、よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。
 それでは、今日の第1の議題はここで終えまして、二つ目です。今後の社会技術研究開発センター(RISTEX)の取組の方向性について。これは資料2をごらんいただきたいと思います。津田さんに説明していただきます。よろしくお願いいたします。

○資料2に基づいて、津田室長より説明

【小林主査】  どうもありがとうございました。これから、だから、こういう活動をRISTEXさんではなさっていくということで、一番最後のSDGsのは、ファンディングは来年度早々?
【津田室長】  はい。来年度早々には公募ができるように今準備をしております。
【小林主査】  以前だと、領域の検討をするときに、論点の広がりを把握するためのシンポジウムみたいなことをされたりとか、探索型の、そういうことをなさっていたりと思うんですが、今回はそういうのは?
【津田室長】  今回はある程度、今、我々のほうでいろいろ文科省さんの原課、地震防災課さんとか、あと、環境エネルギー課さんともちょっと御議論をさせていただいておりまして、基本的には防災関係と、それから、環境エネルギー関連を重視するテーマとして掲げてとりあえず始めようかなと思っています。ただ、それ以外のテーマについても当然対象としようと思いますが、まずは一旦そこで少し中心的なテーマを考えていきたいなと思ってはいます。ただ、そういう形なので、あまり今までのような領域設計のようなプロセスではなく、少し緩やかな形で始めさせていただきたいと思っています。
【小林主査】  なるほど。それで、ステージゲートは、これ、1年で回す?
【津田室長】  はい。1年から2年で考えています。シナリオが明確になったものは、次のソリューションフェーズに進んでいただくと。できればシナリオ創出の段階でアウトプットがソリューションへの提案というふうなものができればベストだなとは思っております。
【小林主査】  なるほど。ほか、御質問とか御意見とかあれば。
【山口委員】  取り上げる社会課題のスケールというのは、いろいろ取りそろえてやってみるのか、逆にできることから逆算して課題を考えると、結構何かちんまりしたものがたくさん出てきてしまいそうな気がするんですけれども、シナリオまでは出来たけれども、ソリューションが難しいということが分かっても、それを成果として見てあげるのかどうかというところを教えていただければ。
【津田室長】  そうですね、一応、基本的にはこのプログラムとしてはやはりソリューションまで行っていただきたいというのが一番大きいと思ってはいます。ただ、シナリオフェーズで終わってしまったものについては、もし我々で引き取れなかったとしても、実は、ここには記載がなかったんですけれども、内閣府の地方創生事務局のほうでいろいろなSDGs絡みの自治体向けの事業とかを展開されていらっしゃっていまして、そこのネットワークとこれとをつなごうということを考えています。なので、我々の成果もそちらに流したいと思っているので、シナリオだけというのもそこに流せるんじゃないかと思っています。
 また、例えばこういう公募情報なんかもそのネットワークに流すと、もともと環境未来都市という名前でやっていたのが、今、SDGs未来都市という名前になって衣替えしたんですけれども、そこのネットワークを通じていろいろな情報の共有をしていただきたいと思っています。
【小林主査】  あとよろしいですか。
【原田委員】  よろしいでしょうか。また新しい事業を立ち上げられるということですばらしいと思うんですけれども、こういうようなものに対して、例えばこれまで既にRISTEXで行われてきた事業に私自身もステークホルダーの一人として関与しているわけですけれども、そういう者が実際に経験してきたような経験値のようなもの、それを何か反映していただけるような仕組み、枠組みはありませんでしょうか。
【津田室長】  そうですね、一つ分かりやすい例としては、例えば総括とかアドバイザーを選ぶときにそういう経験者の方に入っていただいたり、元代表者とか、元共同研究者だった方とか、ステークホルダーだった方に今度はマネジメント側に入っていただくというようなことがよくありますので、そういう意味でマネジメントサイドとしてそういった経験値をプロジェクト側に披露していただくということはあり得ると思います。当然、ほかのプログラムをやった代表者の方が今度は別のプログラムにまた代表者として入るというようなケースも過去にありましたので、そういうレベルではいろいろな経験が、いろいろ輪廻転生しているんじゃないかなと思っています。
【原田委員】  ありがとうございます。是非その辺も検討していただければと思いますのは、恐らく競争的ということであり、それから、もとの言葉でいうと社会実装という言葉もあったと思うんですけれども、そういうものは通常の3年とか5年とかいう研究のスパンと恐らく時間感覚が全然違ってくると思うんです。そうすると、ともすれば、普通の研究者というのは、3年、5年単位で全部物が完結するように考えがちなんですけれども、現場にも持ち込もうとすると全然そうじゃないということですよね。その辺の感覚というのはやっぱり経験値として思い知っている者と、それほどでもない方はかなりギャップがあると思います。
 今は自分は連綿としてやっているわけなんですけれども、そういう部分の、昔から引きずりながやっているような者たちの見てきたもの、聞いてきたものというようなもの、そういうものが本来次にまた新しく始められる方の、きちんとしたスタート地点のための参考になるとかいうことをやっていかないと、何となく往々にしてこういう大きな国のファンディングとかというのは、これまでのやり方はこういう点で足りないので、新しく次にやるみたいな形の新規性をあれしないと、多分予算が取りにくいというところがあるんだろうとは思うんですけれども、でも、こと、世の中にそれを返していくかとか、ステークホルダーを巻き込んでいくかということになると、どう考えても、どれだけ粘り強くやれるかということが極めて重要になってくるような気が私はするんです。
 だから、そういう意味で、とにかくこれ、例えば始めるからには3年や5年でやめないでくださいねとか、そのためのちゃんとしたフォローアップを10年越しやりますよとかいうような、そういう部分がある程度評価基準としてないと、結局のところ、本当の共創型みたいな形のものとして世の中に定着することが難しくなるんじゃないかという気が正直私していますので、できればそういうところの、例えば過去にRISTEXで研究開発活動をやって、今でもその結果を何とかしようとしているような、自分もその一人だとは思っているんですけれども、いうようなところに過去の事例のヒアリングみたいなことをしっかりやっていただくとかですね。
 そうやっていくことによって、社会課題の解決のためのボトルネックとか、それが明確化するというのはある程度見えてくるところがあるような気がするんです。ですので、その辺りのところを、せっかくRISTEXとしても過去に大きなプロジェクトを幾つもなさっているわけですから、そういうものの成果をこの中に、新しい枠組みの中にどうやって取り入れるかということ、その辺を検討していただけないかなと思います。
【津田室長】  ありがとうございます。
【原田委員】  ありがとうございます。
【小林主査】  おっしゃるとおり、時間の掛かるものだと思うんですけれども、実証事例は3年ぐらいなんですか、これ。
【津田室長】  そうですね。一応3年で、2プラス3というようなのが今一応デフォルトの形になっています。ですから、トータルでは5年になる。
【小林主査】  トータルでは5年。
【横山委員】  よろしいですか。今の原田先生のことすごく心強く伺っていたんですが、私、2年目でお世話になっております。それで、私のプロジェクトは、SDGsでいうと8番に結構係ってくる、ジェンダー平等とか平等教育とかそういうところの領域で、大学でSDGsに関連したプロジェクトをやっていますかというアンケートが来て、それで、私、8番やっていますというふうに申請して、大学では8番のラベルが付けられて集約されて報告しているんです。ということで、以前あるいは現行のプロジェクトでもラベリングで何番に相当するものがきっと点在していると思いますので、そうしたものも取り入れて、一体化してRISTEXとしてどういうものをやっているのかというのをお示しいただくようなことが、より豊かにやっていることを見せられるかなというのを思いましたというのが一つです。
 あともう一つ、JSTさんの中の低炭素社会戦略センター(LCS)の評価に関わらせていただいているんですけれども、あれはもう10年も低炭素のためのソリューションを細かく分析して提示しているんですね。だけど、政策に入れ込むところでご苦労されています。そうした優れた成果がこのRISTEXとせっかくJSTの同じ枠組みの中にあるのに分離してしまうと非常にもったいないように思いますし、それを知らないまま環境系の新しいプロジェクトが提案されても、またばらばらすると思うんですね。その辺何かうまく整理なりをして、何度も同じようなことが提案されないような枠組みをお考えいただくとよろしいのかなと伺いました。
【津田室長】  分かりました。LCSからの提言に関係するプロジェクトというのは、実はうちの別の実装支援プログラムという昔からやっているものがあるんですけれども、そこで採択をしていたりしておりまして、これまでも全く関係がないわけではないんです。ただ、これに関してはLCSにはまだ全然話はしていないので、これからまた情報共有したいと思っています。
【原田委員】  実装支援プログラムというのは、今でも続いているんですか。
【津田室長】  新規公募は今はやってないです。
【原田委員】  すごく残念です。我々なんかの感覚からいうと、今日の資料の中で5ページに書いてある、取組に際しては最先端の科学技術が唯一のイノベーションの原動力ではなく、既存の技術や適正技術を含む様々な意見を活用していくことが大切であるという書き方になっているんですけれども、私たちが聞いた限りでA-STEPの判断基準が何か全くこれと一致していない感じがしてですね。先ほど横山委員がおっしゃったように、もう少しいろいろな連続的な、幾つかのファンディングの中での連続性みたいなものが評価基準の面でも担保できるようであっていただけるとうれしいかなと思いました。
【坂本課長】  おっしゃった、連続的に成長させるという仕組みは常に追求し続けてはいるんですけれども、ここは文科省、JSTのミッションそのものにも関わってきて、産学連携であっても、やっぱり革新性の方に重きを、JST、文科省がやるのは、大学なり研究機関が生み出している革新的な技術をいかに社会に実装していくか、あるいは市場に投入していくかというところに重きを置かざるを得ないというのが事実です。
 だから、そこは引き続き、我々としても努力をしていきたいと思います。ただ、NEDOさんとか、情報系ですと総務省さんとか、いろいろなところのファンディングとつながろうというのは一生懸命、あるいは環境問題ですと環境省とつながろうということは我々もやっていますので、そういったところはまた引き続き情報提供させていただきたいと思います。
【原田委員】  ありがとうございます。
【小林主査】  大体予定していた時刻になってまいりましたので、特にこれ以上なければ、一旦議事は閉じて、終わりたいと思います。
 冒頭にもありましたように、この委員会は、今期は2月14日までが委員の任期でございまして、それで一旦任期を閉じるという形になります。この期において、私、主査として議論をさせていただきまして、お手元に7回分の資料、連携委員会の資料があるかと思います。かつては、これ、安全安心委員会と申しておりまして、3.11を受けてかなり深刻な社会的課題に対応するという意識もあってそういう名前で議論させていただいたと思いますが、収束したとは申しませんが、より広いスコープということで、科学技術社会連携委員会という形の議論を進めてまいりました。
 科学技術基本計画の中でいうと、科学技術と社会の関係を論じる章は大体必ずあるわけですが、それに対応する文部科学省の委員会がなかったということもあって、この委員会はそこを少しでも補うような委員会でありたいということで議論をしてまいりました。これから第6期の科学技術基本計画が作られるのだろうと思っておりますが、主体が今は第5期以降、特にCSTIの方になってきております。ただ、CSTIの議論、メンバーの中では、こういう科学技術社会連携というふうな観点を積極的に議論する力量というか、そういう場は余りないように見えますので、たとえ第6期がCSTI中心で作られることになっても、やはりここの議論が学術分科会などを通して、あるいは対応する総合政策特別委員会ですね。あそこに持っていっていただくとか、そういうチャンネルはあろうかと思います。
 それと、特に最近非常に強く感じるのは、CSTIの方々も、ELSIとか人文社会科学の振興ということについて言及されることが非常に増えているように思います。基本法の改正は視野に本当に入っているのかどうか、メディアの動きだけではよく分かりませんが、専ら、人文社会科学に係るものを除くという文言の削除みたいな議論が浮上しているということ自体が現代の状況を表している。
 そういう文脈の中では、RISTEXのファンディングもそうですし、ここでの議論、今日も、コミュニケーションの先にはコンフリクトあるいは政治というところにつながる、そういうふうな問題が大事だという議論をここではしておりますが、非常に貴重な議論の場だと思っておりますし、こういう議論が、先ほど藤垣委員がおっしゃっていたように、2000年頃にはほとんどする場が文科省の中ではなかったように私も記憶していますので、こういう議論ができるようになったと。それはグローバルな観点からいえば普通になったということだと思いますので、大変大事な場を一緒に議論させていただいたと思っております。
 各委員には非常に建設的にいろいろと御意見を頂いたこと感謝申し上げます。私もこれで一旦この期は皆様と共に閉じるということになろうかと思います。どうもありがとうございました。それから、事務局の方も本当に、まだ宿題残っておりますけれども、どうもありがとうございました。
 それでは、事務局の方からも一言御挨拶頂けますでしょうか。
【坂本課長】  私のほうから一言お礼の言葉を申し上げさせていただきます。先ほど小林主査の方からもお話ありましたけれども、今日も非常に内容の濃い議論をしていただいたと思います。この報告書一つ取っても、様々な切り口で、科学コミュニケーションと、それからあと、学問のあり方、関係のあり方、あるいは科学コミュニケーションと、あるいは政治・行政の関係のあり方を鋭く突いていただいたなと思っております。
 今、小林主査の方からも少しお話ありましたけれども、例えば原田委員からお話があった、コミュニケーションの担い手が評価される仕組みというのは、これは非常に重要なんですけれども、これはそもそも、これは私の私見ではありますけれども、学問、学会あるいは大学の役割が今どんどん拡張している。先ほど小出委員からお話があった、課題とかコンフリクトとか、そういったものに学問がどう取り組むのかと。学問はどう取り組むかということは、そこはソリューションを直接生み出すのではなくて、ソリューションを生み出すために必要な枠組み、それはソリューションを形成する枠組みかもしれませんし、あるいはそれに必要な情報かもしれませんし、そういったものがどうあるべきかということをもっと学会は、あるいは大学は議論し、かつそういったことができる人材を育成する必要がある。
 そういった人材が必要だということは、まさに経団連さんの提言にも書かれたわけです。要は、AIを社会実装するとき、一体どんな法的問題が起こるのかとか、倫理的問題が起こるのかというのはまさにそういう問題でして、そういったところに鋭く切り込む学問というのがまだまだ日本に薄い結果、科学コミュニケーションというものは、ある意味、誰か困っている人をお助けしている、学会あるいは大学からある意味相当端にある活動として取られていると私は理解しています。
 それじゃいかんだろうと。実はこれ、産学連携でも同じ問題が起こっていて、それじゃいかんということで、我々としても、例えば先ほどのRISTEXの取組もありますし、そういった、社会の課題なりコンフリクトを学問的にその解決にどう貢献していくのかというところを、学会なり大学自身で本当にやっていただかないと、学問と社会との関係は埋まらないということをしっかりと我々も伝えていき、実践例も作りながら、それがいかに早く広がるかということを我々はトライをしたいと思っています。
 あと、政治と行政とコミュニケーションの関係も、先生方御存じのとおり、我々、この委員会もそうですけれども、審議会がございます。一方で、草の根のコミュニケーションもございます。そういったものを、先ほど機能の階層構造がありましたけれども、そのそれぞれの階層構造でどうつなげていくのかというところはこれは非常に重要な問題でして、これは一つの解はありません。一つの解はない。そういったところをいかに最適化するかということも大事な問題です。
 ただ、これは完全にコミュニケーションを超えて、統治機構の問題になってきます。今日、改めてそういう問題、特に科学技術に係る法律とか、まとまった政策とか、あるいは個々の施策について、こういったコミュニケーションをどうつなげるかというのは非常に重要な問題ということを改めて認識させていただきましたので、そこは是非今後、我々も日々の行政の取組の中で生かしていきたいと思っております。
 本当に貴重な議論をしていただきまして、ありがとうございました。今後とも是非よろしくお願いいたします。
【小林主査】  ありがとうございました。
 それでは、最後に、今後のスケジュールについて事務局から説明をお願いいたします。
【石橋補佐】  先生方の任期中に、今回頂きました御意見を踏まえまして、主査とも相談させていただきながら、また作業させていただきます。
 また、議事録に関しまして、皆様方御確認をいただきたいと思っておりますので、また今回の議事録が終わりましたらホームページに掲載という流れになってまいります。それまで皆様方、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【小林主査】  それでは、今日は先ほどいろいろずっと議論いただいたので、もし愛があれば、メールで石橋さんに、自分が言ったことはこんなことだとか、こんなふうに書いたらどうかとかいうことを頂けると、石橋さんは大変助かるし、我々も助かるということで、最後に一つだけお願いをして閉じたいと思います。
 長時間本当に建設的な議論をいただきまして、ありがとうございました。

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