科学技術社会連携委員会(第7回) 議事録

1.日時

平成30年12月26日(水曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省 東館15F 科学技術・学術政策局1会議室

3.議題

  1. 科学コミュニケーターに期待される役割と必要とする資質について
  2. その他

4.出席者

委員

小林 傳司 主査、藤垣 裕子 主査代理、内田 由紀子 委員、片田 敏孝 委員、小出 重幸 委員、田中 恭一 委員、原田 豊 委員、堀口 逸子 委員、山口 健太郎 委員、横山 広美 委員

文部科学省

坂本 人材政策課課長、石橋 人材政策課課長補佐

5.議事録

【小林主査】  定刻になりましたので、第7回の科学技術社会連携委員会を開催いたします。
 本当に年末の押し詰まったときにお集まりいただきまして、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 まず、出席者、配布資料等については、事務局の方から説明をお願いいたします。
【石橋補佐】  本日、議題は一つでございます。資料としては、資料1の1種類、あとは、先生方の机上配布資料となっております。資料の過不足等ございましたら、途中でも構いませんので、事務局までお知らせいただければと思います。
 以上です。
【小林主査】  ありがとうございます。
 それでは、議題1番、科学コミュニケーターに期待される役割と必要とする資質についてであります。
 お手元の資料を基にして、事務局より説明をお願いいたします。
【石橋補佐】  前回、第6回におきまして、今回取りまとめていただきたいコミュニケーション、コミュニケーターのあり方についての構成の案ということを提示させていただきました。それを踏まえまして、今回、資料1といたしまして、事務局の議論のたたき台として取りまとめのイメージを提示させていただいておるところでございます。
 先生方には、先週末ではありましたが、事前送付として送らせていただいておりました。そこから若干修正をさせていただいておりますので、こちらの案を基に、本日御意見を頂戴いたしまして、できれば次回、1月の回でこちらの取りまとめを終わらせることができればと考えております。今回は、この中身につきまして議論していただくというのが、その議題でございます。
 以上です。
【小林主査】  それでは、この文章を中心にして、科学コミュニケーターのあり方についての提言をまとめていきたいと思います。
 事前にいろいろと読んでいただいて、御意見もあろうかと思いますので、まずは1ページ目から行くということでよろしいですかね。それとも、全体の構成そのものという議論もあり得るかと思うんですが。
 全体の構成そのものについてという議論の立て方をされる方は、どなたかいらっしゃいますか。そもそもの章立てが問題であるというレベルであると、1ページ目からやるという議論にはならなくなるので。
【原田委員】  構成ということではないんですけれども、今回のこの取りまとめ文章の意味付けというか、それはどういうところを狙われているんでしょうか。
 別のところで幾つか、例えば、学術会議の提言書とか、そういうのを拝見すると、大体総論が前段にあって、その後、少し各論的なところが出てくるようになっていることが多いと思うんですけど、今回の場合は、割合大きな総論みたいなところでずっと終いまで行っているのかなという気がしていて、これに基づいて、例えば、どんな政策をどういう形で導いてくるのかというようなことについては、今回はそこまでは踏み込まないということなんでしょうか。
【小林主査】  そのあたり、なかなか微妙なところですが、例えば、前回ここで「人文社会科学と自然科学の連携の推進について」という文章をまとめました。これなどは、学術分科会の下に人文社会科学の振興についてのワーキンググループというのが作られていまして、この11月ぐらいからぱたぱたと議論したんですが、そのときには、これそのものをその委員会で示して、この委員会はこういう議論をちゃんとやっています、そして、こんな提言をまとめていますというのを出して、それが、そのワーキンググループが取りまとめている人文社会科学振興策の中にはかなり取り入れられた。そして、そのとき、あれがどう政策に持っていかれるかという、そういう流れですよね。
 そして、その次のステップは、恐らく第6期の科学技術基本計画に対する文科省の提案を作っていくというのが、来年の4月以降の作業になるんですが、そこに向けて全部流れ込んでいくという理解だと思います。
 そもそも文科省のたてつけから言いますと、この資料の参考資料に、第5期の科学技術基本計画というのが9ページにありますが、この第6章の科学技術イノベーションと社会との関係深化というところが、この委員会が関係しているところです。大体基本計画というのは、それぞれの章、項目に対応する委員会が文科省の中に作られています。ところが、この科学技術と社会の関係の部分だけは、第4期まで固有の委員会がなかったんですね。
【石橋補佐】  第4期の途中、安全・安心科学技術及び社会連携委員会のところで、この関係深化の推進方策を作っていただいたんですけれども。
【小林主査】  そうそう。だから、第4期の途中から対応する委員会として、これが成立したということになっていますので、ここでの提言は、最終的には、第6期の科学技術基本計画がもし作られるとすれば、そこの中の科学技術イノベーションと社会との関係のようなテーマの章のところに反映されることを期待して文科省でまとめていると、そういう段取りになると思います。
 今は基本計画が内閣府で作られているので、直接これがそのまま行くかどうかは分からないですが、文科省の案というのは。でも、この部分に関してはかなり重要で、ほかにあんまり議論する場所はないと思いますので、反映される可能性が高いと思います。
 今、第6期科学技術基本計画に向けてといった議論は、CSTI(総合科学技術・イノベーション会議)、あそこでちょっと始まっているようで、先週の、20日木曜日、本会議が開かれていたと思いますけれども、そこでもちょっとそういう議論がされていたような気配があって、提出されている資料なんかも、そんな議論に向かっているようです。
 ということで、今回は、全体が総論的だと原田さんはおっしゃっているわけですが、まず総論的なことを言って、そして、若干具体的な取組方策の提案が最後に出ているという、そういう構造ですかね。よろしいですかね。
【原田委員】  はい。
【小林主査】  そうしたら、特に全体の構成がなければ、1ページ目からまず行きましょうか。
 ここは科学コミュニケーションもある程度限定しているところだと思いますが、ここのページで何かお気付きというか、気になった箇所はございますか。
【横山委員】  よろしいですか。非常に小さい点で恐縮なんですが、上から4行目の「テレビ、新聞、雑誌等のメディアが」というところに、インターネットとかSNSとかを入れていただくといいかなと思います。
【小林主査】  そうですね。テレビも、最近、若者は、直接は見ていなくて、ネットで見ているし、新聞はまず見ないと。雑誌もあんまり見ないんでしょうね。もう雑誌、特に週刊誌は最近は、団塊世代対応のものばっかりですものね。
 だから、インターネットとかSNSという言葉を入れる必要がありますね。
【田中委員】  その場合、順番とかはどうなりますか。あえて前に持っていっちゃうのか、でも、そこまではちょっとできないから、同列の扱いでどうでしょうということにするのか。何となく今の感じだと、前のほうなのかなという気もするんですけど。
【小林主査】  メディアの分量としては、多分、そうでしょうね。既存メディアは、もうウエートは下がっていますよね。このメディア環境は本当に変わったということは、ここは先にインターネットから入った方がいいでしょうね。
 もうこういう文章を書くときに、朝、新聞が来ていないと落ち着かないという世代が書いたら駄目ですね。
【横山委員】  日本は、巨大新聞社が率いてくださっている、世界的にも特殊な状況だと思います。
【小林主査】  そうですね。
 そうしたら、そういうメディアの変容にちゃんと対応した書きぶりにするということですね。
 科学コミュニケーターの役割、活躍の場というのが、科学館や研究機関というふうに書いて、その後、育成は大学も入ってくるんですけれども、これでよろしいですかね。科学館、研究機関と。
 この最初の2段落は、つなぐという言い方で一応表現していて、3段落目で役割が多様になったと言って、4段落目になると、社会課題の解決に科学技術が期待されているという文脈でのコミュニケーションの役割というふうに、ちょっと具体化するわけですね。これは、あえてこの方向に科学コミュニケーションを方向付けましょうという提案になるわけですかね。
【石橋補佐】  ここに書いた意図というのは、方向付けというよりは、その広がりというか、社会課題に対応するようなコミュニケーターというのも今後必要となってくるであろうと。従来のコミュニケーターの活躍というのは十分これからも必要であって、そこから社会課題というところに向けての活躍の場が広がっていくんですよというところを示すことができたらなという。
【小林主査】  それは結局、科学技術が社会課題解決に動員されるという流れが強まっていると。だから当然コミュニケーターも、そういうところで仕事をすることになるだろうという。
 このときの社会課題のイメージというのは、最近の例の持続可能な開発目標(SGDs)のようなやつですかね。
【石橋補佐】  そこも背景には十分あるかなと思います。
【山口委員】  ほかにイノベーションという言葉が出てこないんですけど、そこはあえて。後ろでは出てきているけれど。
【石橋補佐】  そうですね。
【小林主査】  そこは確かに、イノベーションと社会課題解決とはイコールなのかどうかというのが、ちょっと微妙な感じがいつもするんですよね。どういうふうに整理しますかねという。
【山口委員】  実態として、社会課題解決に科学技術は活用されているイメージが余りまだ持てなくて、どっちかというと、世の中を見ていると、イノベーション、イノベーションでワッショイワッショイやっていて、まだそっちの方がイメージしやすい部分はあるんですね。だから、併記してもいいのかなという気はしますが。
【小林主査】  社会課題の解決と言うと、地球環境問題なんかのところで、解決にいっているかどうかは別にしても、そこはコミュニケーターの役割が出てくるというのはちょっとイメージしやすいですが、SDGsぐらいになってしまうと。全部要ると言えば、要るんだけれども。
 でも、イノベーションの場合のコミュニケーターの役割って何ですか。
【山口委員】  割とシーズを持っている人というのはニーズに疎いというのは、前回も話をさせていただいたとおりなんですけれども、そこがないと、逆に、弊社のような部分が立ち回れないということになって、そこをつなぐとか、お金とつないでいくとかというのが、それをコミュニケーターと言うかどうかだと思いますけど。シーズを翻訳してニーズ側に伝えるとか、こういうニーズがあるよというのをシーズに伝えるとか、世の中におもしろおかしく楽しいように打ち出していくというのが、うちみたいな会社にとってはあり得る役割なので、それをコミュニケーションと言うかどうかだとは思います。
【小林主査】  そうですね。目利きとか、つなぐ人材とか、そういう形で、産学連携のところでもよく言われますよね。そこが切れているから駄目なんだとかね。それをコミュニケーターというふうに今まで呼んできたかというと、呼んでこなかった。
【藤垣委員】  今まで呼んできたことにこだわらず、今後は、こういうものもコミュニケーターの役割ですよということを伝えるのが、この文章の目的なわけですよね。そうだとすると、2ページの注4で、「持続可能な多世代共創社会デザイン」の研究開発領域、多分、この委員会で私たちはプレゼンテーションを聞いたと思いますけれども、これで地域住民、コミュニティーも入れて、世代を超えて共にデザインしていくと書いてありますね。その、共にデザインという共創みたいなものに、科学コミュニケーターも携わるという立場で、きっとこの文章は書かれているわけですよね。
【小林主査】  そういう意図で、明らかに広げようということですよね。
【石橋補佐】  はい。
【藤垣委員】  そうだとすると、イノベーションとの関係は十分。
【小出委員】  今の藤垣先生のお話も含めて、いわゆるステークホルダーのインボルブメントに関わるもの、そこに関わる人間と作業のことをサイエンスコミュニケーションというふうに今呼ぼうとされているわけですね。
 そういう中だと、社会実装とかいうものが書いてありますけれども、今、世界的な流れの一つとしては、政策決定に科学的根拠なりデータなりをどのように反映させていくかというのが一つの流れになっています。この間も11月に日本で3回目の国際会議が開かれたばっかりでしたけど、デシジョンメーキングのためのサイエンスと、それをどう伝えるのかというのも、ここの広い意味でのコミュニケーションで、日本ではこれからは大きな課題になっていくだろうと。そこまでにらんでいいのかどうか、そこはなかったことにした方がいいのか、それとも。
【石橋補佐】  そこはどんどん入ってきていただくという方向だと。
【小出委員】  先のにらむ方向としては、それも含まれるわけですね。
【石橋補佐】  はい。
【小林主査】  だから、イノベーションという言葉を入れるかどうかですね。当然、イノベーションは入るだろうという理解では、皆さん合意するだろうと思うので。
 実際、この1ページの下から二つ目のなお書きのところが、まさしく非常に幅が広いんだということをはっきり書いているわけで、従来、必ずしも科学コミュニケーションの対象と思われていなかった事柄も、基本的にファンクションとして見れば、もう一括してみたいなことをやっているんだ、だから、それは全部もう含めて考えるという議論ですね、これ。
【石橋補佐】  大学を始め、いろんな機関で科学コミュニケーターというのを育成しているという現状がある中で、その科学コミュニケーターの方々が今後どのように活躍していくのか、本当に狭い意味での科学館なり何なりでのそういった役割だけでいいのかと考えたときに、そうじゃないですよね、もっと幅広い活躍の場というのがちゃんとありますよねというところを示すことができれば。その意味では、政策決定のところにももちろん入ってきますし、イノベーションのことも入っていますけれども、そういったところも十分あって、それだけ広い世界があるんですよということをある程度しっかりと示してあげられるような、今後はそちらのほうが重要になってきますよねというところを示すような方向になればいいのではないかなとは考えております。
【田中委員】  参考になるか分からないんですけど、科学コミュニケーターと言ったときに、英語だと、サイエンスコミュニケーターでよろしいですか。
【石橋補佐】  そうです。
【田中委員】  そうすると、そちらのほうが概念的には広いのでしょうか。
 身近な経験則の話で恐縮ですが、福祉分野ですと「社会福祉士」という資格がありますが、社会福祉士協会さんでも、最近では「ソーシャルワーカー」という呼称を使い始めているようです。明らかに「ソーシャルワーカー」の人たちのほうが母数が多いし、活動範囲も広い。でも「ソーシャルワーカー」さんたちは、必ずしも国家資格である「社会福祉士」ではなかったりします。ここからのヒントは、「ソーシャルワーカー」の中には「社会福祉士」も入るわけですので、「サイエンスコミュニケーター」として「科学コミュニケーター」も含むようにしてはどうでしょう。便法かもしれませんが。
【小林主査】  でも多分、広義と狭義みたいな形の使い分けが必要な場面が出てくるだろうなと思うんですね。
【田中委員】  広くしておいた方が、いろいろと。
【小林主査】  そう。だから、広くしようという話で、9ページの第5期のところでも、実は、ステークホルダーの間をつなぐ役割というふうに、非常に広く取った言葉遣いをしていますよね。
 これは、科学という言葉は絶対要るんですよね。そうすると、この科学をまた広くしておかないといけなくて、狭い通常のナチュラルサイエンスだけではなくて、実は、これ、多分、社会科学なんかも対象に入ってきますよね。
【石橋補佐】  中にも書いてありますけれども、それだけ広いものですという。
【小林主査】  だから、科学も広くなって、コミュニケーションという言葉もがっと広くなって、ですよね。
【石橋補佐】  ただ、この委員会で議論いただく、普通にコミュニケーターと言ってしまった場合の捉え方というところを考えてしまうと、自然科学を背景としたものがしっかりとあるべきだというところがあると、こういう名称のほうがというところでですね。
【田中委員】  そうですね。
【小林主査】  そうすると、4段落目というのは、「社会課題の解決やイノベーションの創出に科学技術が期待されている現代において」というふうに入れますかね。
 「しかし、社会課題の解決の場には」というところをどうするかだな。2行目もやっぱりイノベーションを入れないといけなくなる。ここはイノベーションを入れるというので工夫してくださいますかね。何か所かその言葉遣いが出てくると、全部それに合わせないといけなくなりますね、これ。社会課題等に、以下は「等」にするとかという手もないわけではないね。最初のところだけ、イノベーションとか、そういうのも入れておいて。そこは工夫が要りますね。
【堀口委員】  社会課題特有の事情って、どんなイメージなんですか。
【石橋補佐】  例えば、利害関係者がまさに対立しているような状況というところがある場合、従来のサイエンスコミュニケーションとなった場合、例えば、サイエンスカフェでどうのこうのとか、活動するとか、そういったのを考えた場合には、そこまで利害関係が直に対立するというところは余り想定されない。ただ、生の社会のところを扱うということになってくると、利害関係が本当に真っ正面から対立する状況が生じる。そういう、そこのことを「特有の」という表現で今書いているということです。
【堀口委員】  社会課題があるところには、それしかないように書いていますけど、別にそれは特有の事情ではなく、本質的なところだと思うんですけど。
【小林主査】  だから、社会課題の解決の場にはという、この「場」というのは、フィジカルな意味ですかね。
【石橋補佐】  活動をする、その想定されるところが、その場での活動になるので、「場」という。
【小林主査】  これに、「従来の科学コミュニケーション、科学コミュニケーターに加え」の、この科学コミュニケーションの後の「、」は何を意味するのか。すなわちなのか。科学コミュニケーションと科学コミュニケーターとを並べるというのは、コミュニケーターって、やっぱり具体的な人のイメージがあるじゃないですか、コミュニケーションというと、抽象的な活動ですよね。それを並置しているというのは。
【小出委員】  これは従来の科学コミュニケーションの方法、その担い手としてのコミュニケーターというような理解でよろしいですか。
【石橋補佐】  はい。
【小林主査】  だから、半分等値に近い。
【小林主査】  そうすると、従来想定されている科学コミュニケーション活動に加えということですか。加え、社会課題特有をどう説明するか。これは特有じゃなくて。
【堀口委員】  いや、もう少しここの1行ってシンプルに書いた方がいいんじゃないですか。要するに、社会課題の解決やイノベーションの創出というところにあなたたちはコミットしていくのよというメッセージが何度も何度も強く発せられることのほうが大事だから、これまでの活動プラスそこというには、あんまりここで特有の何かがあるとかいうよりも、やっぱり課題の解決とイノベーションの創出の場のコミュニケーションとコミュニケーターはみたいな書き方をした方がシンプルになるんじゃないですかね。
 だから、そこでの役割と機能をここに明らかに書きました、まとめましたみたいな感じでいったほうが、回りくどくなくていいんじゃないですか。
【石橋補佐】  ここでこういう言葉を使って入れた理由の一つでもあるんですけど、後ろで、国の取組として、そういうコミュニケーターを育成するための仕組みという、その辺の取組をしなさいというところにつなげるために、今までとはちょっと違うんだから、その違うなりの取組を国はやれというような形にする、そこの前の仕掛けというか、という意味で特有というのは入れたんですが、確かに、そこに入っていただくことが重要なので、御指摘ありがとうございます。
【小林主査】  だから、社会課題の解決やイノベーションを対象とする場合には、多様な利害の対立が含まれており、従来の科学コミュニケーションの機能だけでは十分対応できないとか、そういう言い方をして、だから、新しいのが要るという、そういう議論をしたいわけですよね。
 やっぱり日本は、そういう科学コミュニケーションから入ったわけだな。片方で、最初から対立の現場で科学コミュニケーションをやってきた人たちもいるわけじゃないですか。原子力関係なんて完全にそうなので、あれはもう対立の中でのみやっていたわけだから。それと、博物館で分かりやすく説明するモデルからスタートするのとの違いですよね。
【石橋補佐】  ただ、そういう場で今までずっと活動されてきた方というのも、科学コミュニケーションをやっていた中で、一方で、科学コミュニケーターの育成という点で考えると、そういった人を育成という形にはなっていないのではないかと。そうすると、科学コミュニケーターの育成というのを考えたときに、そちらもあるでしょうと。そちらの部分についてもしっかりと取り組めるような育成をしていく必要がありますよねと。単に楽しいよねというところを伝えるだけじゃないでしょうという部分ですね。そこも科学コミュニケーションですよねというのを、前からそうなんですけれども、改めてしっかりと打ち出すことができればいいのではないかと思っております。
【小林主査】  なるほど。15年経って、こういうことがここで議論できるようになったという趣旨はよく分かりました。
【小出委員】  石橋さんの趣旨はよく分かるんですが、ここの部分は、総論の前文に当たるやつですね。
【小林主査】  そうですね。
【小出委員】  これ、我々の感覚だと、人にものを伝えたいとするならば、ここでもう少し、科学コミュニケーターは変わりますというのが、まず最初にヘッドラインの部分に来たほうが、多くの人には伝わると思うんですが。ただ、これが文章の種類として、書くことが大事であって、人に伝えるものではないという、要するに、学術論文のように、いろんな書き方があると思うんです。ただ、多くの人に届けるということになると、ちょっと趣が変わるような気がするんですよね。
 科学コミュニケーター、科学コミュニケーションって、これまで割と狭い範囲でずっと営々とやってこられて、一つの成果はあるけれども、今の社会の状況を見ると、これ、このままではとても対処できませんよと。一番わかりやすいやつなんかは、狂牛病で全頭検査をもう十何年無駄にやったけれども、あそこにも誰も科学的な根拠もなしにやっていたみたいな、そういう具体例がある中で、どうしようかというときに、やはり一つには、畜産環境アドバイザーだったり、国の政策決定にも要るし、それから、いろんなコンフリクトがある現場でもやらなければいけないしと言って、子供たちの教育もしなければいけないしというふうに、非常に広がります。それは社会と科学の関係性というのは非常に密接になってきて、だから、そういう背景の下にそうせざるを得ません、だから、その方向で人材育成も行政の方向もやりませんかということで済む話ならば、そこまで前文になると思うんですが。
 そこから各論に入っていくと、メッセージとしては、この前文だけ読んで大体みんな分かればいいわけで、という気がしちゃうんですけれども、我々は、早い話がって、すぐ早い話をしてというふうに言われるので。ただ、それはあくまで、メディアのように多くの人にものを伝えたいときには、そうなんですね。ただ、この文章の種類として、どういう位置付けなのか、その辺は分かりませんので。ただ、これは何かで誰かが読んでもらって、しかも、多くの国民に読んでもらって、ぱっと考えたときに、「ああ、なるほど、時代はそうなっているんだな」と思わせるのであれば、そういうふうな入り方で、もっとコンパクトにしてしまうというのがインパクトがあるような気がします。
【堀口委員】  あと、科学技術コミュニケーターの人が読んだときに、「何かやらなきゃいけないんだ」と思ってくれる、気付いてくれる、あなたたちの今までの活動プラスアルファがすごく広がっていますよって。
【小出委員】  そこにもメッセージを投げたいわけですよね。
【堀口委員】  はい。
【小林主査】  そのことを、この段落にはもっと明確に書こうということですよね。だから、これ、割と遠慮がちに書いていますよね。
【小出委員】  そうなんです。
【小林主査】  今までも良かったんだよ、頑張っているよ、でもねと言って。
【小出委員】  穏やかな人柄を表して。例えば、「問題解決の場には」とありますけど、これはやっぱり文科省独特の日本語の言い回しで、普通だと、これは「問題を解決するには」というふうに入ったほうが、より多くの人に分かりやすいですね。それを一歩手前に引いて分かりにくくすると、「場には、こうこうこう関わりがある」みたいなふうにすると、そうすると役所の文章ができ上がるんですよ。
 その辺を誰に伝えるかというあたりで、そこにフォーカスするならば、もう少しやりようがあるかなと。
【小林主査】  だから、やっぱり科学コミュニケーターの役割が変わってきているということの認識が必要だということをはっきり書くべきなんでしょうね。それをここで。
【小出委員】  それは前のほうに、文章の書き出しの部分に、何行か目の間にあったほうが。
【小林主査】  本当はね。
【小出委員】  読む人は、そこで「あっ」と思って目を留めますし、関係ないやと思えば、そこで読むのをやめちゃいます。
【田中委員】  説明のしやすい方が。
【原田委員】  私が最初に申し上げかけたこともそれに近いところがあるような気がしていまして、誰のために、どういう目的で書く文章なのかということによって書きぶりも変わってくるでしょうし、あと、何となく読ませていただいて感じたのが、科学技術コミュニケーターというのとコミュニケーションというのが、微妙に位置付けが同義なのか、ちょっと違うのかみたいで、従来の位置付けみたいなものと、この間から議論してきたような、いや、コミュニケーターという人にみんな押し付けるよりは、コミュニケーションそのものの仕組みであるとか機能とかのほうが大切だよね、第一義だよねという話みたいな議論とがまだちょっと入り混じっているのかなという感じの印象があったんです。
 そういう意味で、ある意味では、小出先生がおっしゃったみたいに、一番最初のところで、一つコンセプトとして、従来とは違うものが社会的に求められているのだ、それは、もしかすると対立のある場みたいなところのあれも含む、政策決定みたいなものも含むようになるかもしれないとか、それから、それがコミュニケーターという、これまでの分かりやすく伝えるのが使命という印象だったもの自体が変わらざるを得ない状況なんだとか、そんな感じで整理した形でもし示すことができれば、文字どおり、読んだ方にとってのインパクトは強いんじゃないかなという気がいたします。
【小林主査】  そうですね。冒頭の部分というのを、実質的にもう2の内容を書いてしまわないといけないんでしょうね。だから、最初のところでもっと強く出しますかね。
 これは、この文書の種類は提言、取りまとめ、審議の取りまとめでしょうか。
【石橋補佐】  審議の取りまとめというのを今考えております。
【小林主査】  審議の取りまとめね。そうすると、やっぱりスタンスとしては、本委員会は、今後の科学コミュニケーションのあり方についての審議を重ね、このような取りまとめを作りましたという、そういうスタイルなわけですね。
 そこでの結論というのが、今おっしゃったように、従来の分かりやすく科学を説明するということに力点を置いたコミュニケーションから、社会課題の解決やイノベーションの創出に貢献するような科学コミュニケーションへと拡大していかなくてはならないという認識であるということをうたっておくのが、やっぱり冒頭にあった方がいいということですね。そういうメッセージがまずあると分かりやすい。
【原田委員】  分かりやすいような気がします。それから、さっき示していただいた共創的科学技術イノベーションという、あの文章とも整合するような気がするんです。
【小林主査】  むしろ、そのメッセージさえあれば、ここはもっと短くてもいいということですね。そうすれば、1で具体的に今までのものがちゃんとレビューされて、2でどう変わらなくちゃいけないかというのがあって、3で具体論になって、4に行くと。最終のところが、今後の取組のために何をやるべきかという話ですよね。だから、3に書いてあるような役割を、今まで科学コミュニケーションできちっと焦点化してこなかったけど、ここが大事になっているんだよという話ですよね。
 そうすると、1の前の部分というのは、もう少しメッセージ性を強化して、もう少しコンパクトにするという方向でよろしいですかね。
 1は、1に移っていいですかね。これは、現状、今までのところのレビューと考えていいですかね。
【内田委員】  最後のところで、「このように、科学コミュニケーターは現在、科学館、博物館、大学を中心に活躍しており、企業、行政にも活躍の場を広げつつあるが、その数は」という、その数というのが、活躍の場のことを指しているのか、科学コミュニケーターという人々そのものの数なのかがちょっと曖昧だと思いました。
【小林主査】  1のセクションの最後のところ。
【内田委員】  最後です。これは、活躍の場のことと推察しましたが、明確であるほうが良いと思います。
【小林主査】  そうですね。これだと、ひょっとして、コミュニケーターの数だと読めてしまいますよね。
【内田委員】  コミュニケーターの数を増やせと読める。
【小出委員】  活躍の場はということですね。それを受けるわけですね。
【小林主査】  注3が付いているということで、輩出先として、資料2、p8と書いてあるんですが、これは注としては、もうちょっと具体的に書いたほうがいいと違いますかね。資料2のp8って、こっちに付いているp8ですか、これ。
【石橋補佐】  違います。過去のこの委員会で出た資料でございます。第3回の未来館の提出資料の8ページ目に、科学コミュニケーターの輩出状況というのが円グラフになっている資料がございます。
【小林主査】  この資料の中のp8ね。
【石橋補佐】  はい。
【小林主査】  これか。(未来館資料の)「7、科学コミュニケーターの輩出状況」。
 多分、この文章を読む人は、この資料にアクセスすることはなかなか困難では。だから、もう図を入れちゃってもいいかもしれませんね。何かもうちょっと具体がないと、これじゃ分からないものな。
【石橋補佐】  そうですね。
【小林主査】  確かに、この文章、科学コミュニケーターの数に読めてしまう。
 科学コミュニケーターの活動は、企業、行政にも場を広げつつあるが、依然として、科学館、博物館、大学が中心であることも事実であるみたいに書いたほうが、「その数は全体として」と言わずに分かるんじゃないですかね。広がっているけれども、依然として、中心は科学館、博物館、大学ということ、というふうに書いた方がいいかもしれません。
 これ、その上は、基本計画でどういうふうに書かれていたかということが順番に並んでいるわけですよね。第3期、第4期、そして、第5期で「共創」の重要性。だから、第5期で、一応コンセプト的にはいろんなステークホルダーに視野を広げているんだけれども、ちょっとはやったんだけれども、現実はやっぱり大学と科学館の議論が中心になってしまっていますよね。本当にやりましょうよというのは、次に行くわけですね。
 ここは、最後の部分はちょっと修文をするということで、2のところこそが大事になっていくわけですね。ここを「社会課題の解決に取り組む」とやっているけれども、イノベーションをどうするかという、さっきの山口さんの言っている問題が出てくるんですけれども。ここを、さらに、これでイノベーションを入れて、そして、科学コミュニケーションと科学コミュニケーターとを並べると、すごく長いですね。もう科学コミュニケーターは要らないんじゃないですか。科学コミュニケーションだけでもいいと思いますけどね。やる人はコミュニケーターなんだから。そして、イノベーションを入れるとかなんかのほうがいいかもしれないな。
【原田委員】  後ろの段ともつながると思うんですけれども、これまでの議論を思い出してみると、むしろコミュニケーターという言葉は少し少なめにして、「コミュニケーション」のほうが大切であって、その担い手としてコミュニケーターは重要ですけれども、むしろ研究者そのものの側がそういうマインドを持たなければいけませんよとか、そっちの方向の議論がこれまでもここの委員会でも重ねられてきていただいていると思うので、その意味では、コミュニケーターという言葉は、今回、もしコンセプト性というか、メッセージ性を強めるということであれば、文章そのものの中から少し少なめにする方向のほうがいいのではないかと思います。
【小林主査】  ありがとうございます。確かに、コミュニケーションのあり方そのもので議論していくのであれば、コミュニケーターという言葉をあんまり並べて書くと、ちょっとリダンダントになりますので、そうしましょうか。
 この2ポツの最初の2行というのは、これはやっぱり官僚文体なんですかね。何となく、僕らはこうは書かんなという文体ですよね。「ところ」というのは、これは行政文書には多いですよね。「大きな社会変革を起こすなど社会との相互作用を通じて発展してきたところ」。
【内田委員】  その後の、相互作用がより強まっているというのが、すぐには理解しがたく、どのような相互作用なのかを具体的にした方がよろしいのではないかと思います。
【小林主査】  ここを本当にちゃんと歴史的事実を踏まえて書こうとすると、戦争に貢献してきたのが科学技術だという話になっちゃうんですよ。歴史的には、明らかにそうなんです。第一次世界大戦、第二次世界大戦で科学技術は発展するんですよ。それはある意味で当時の社会課題の解決だったんですよ。
【小出委員】  この見出しですけれども、タイトルですけれども、科学コミュニケーションと科学コミュニケーターの話をしているところで、あえて短い文字で見出しを立てるんだったら、社会課題の解決と、それから、イノベーションを支えるということだけで、この全体の流れとしては、普通の雑誌や新聞の感覚だと、これは当然科学コミュニケーションの話をしているのに、そこに加えなくても、読者は普通は分かるんですね。ただ、行政文書として、そこにも科学コミュニケーターという言葉がないと誤解を招くというようなバックグラウンドがあるのであればあれですけど、でないならば、ここで次にフォーカスするものというので、それが見出しとして取るのが可能であれば、そういう方が恐らく読み進めやすいだろうと。
【小林主査】  なるほど。確かに、言うまでもない言葉は書かなくてもいいと。
【小出委員】  これ、全体が科学コミュニケーションの話で、そこにわざわざ文字を入れていくよりは、できるだけ見出しを短くした方がいいですよね。一発で分かってもらうということのほうが。
【小林主査】  この辺は学ぶところが多いですね。やっぱりプロのおっしゃるとおりですね。できるだけその辺はシンプルにしましょう。
 そして、最初の3行、どうしますかね。これ、すごい抽象的なんですけど。
 だから、社会に利便性をもたらしとか、疾病を克服しとか、寿命が延びてとか、そういう近代の成果を支えてきたのは科学技術であることは間違いがないという話を書くのは、別に普通のことで。これ、「社会課題を解決し」と言うと、「例えば?」って聞きたくなるんですよね。人間としてはね。
 結局、これ、Society5.0につなごうという狙いがあるんですよ。これはもう基本計画の5期の目玉商品、超スマート社会とSociety5.0で、しかも、これが今いろんなところでバズワードになっていますから、これとつないでいくというのは必要だろうと。
【横山委員】  Society5.0とのつながりという意味では、情報化社会で変化が激しくて、どんどん進んでいく社会の中で、コミュニケーションのあり方もものすごくスピード性とその場の感情のコントロールが必要とされてくる時代になってきているという意味で、相互作用はより強まってきているという例として、内田先生もおっしゃったように、何か二つ三つぐらい例が入るとよいのかなという感じがいたします。防災はイメージをしやすいですし、狂牛BSE、防災、ワクチン問題とか、そういうところでしょうか。
【小林主査】  問題はいっぱいあるんですよね。課題先進国という小宮山さんの議論の言葉遣いを使うか。それとも、Society5.0って、情報科学の集約の一つだけれども、それだけでもないので、ここに持って行くかですよね。
 最初の3行、僕も、相互作用はより強まってきている。具体的にはどういうことかって。
【横山委員】  温暖化の問題も、アメリカを中心として大変なことになっているということもあるかもしれないし、世界的には、そのあたりはやはり大きいですよね。
【小林主査】  そうですよね。
 あと、やっぱり現代社会で一番顕著なことって何ですかね。Society5.0って、4.0と5.0の違いは何かというのは、実はうまく説明できる人に会ったことがないんですよね。今が4.0なんでしょう、たしか。5.0になると、どんないいことがあるんでしたっけ。ほら、止まるでしょう。みんな、止まるんですよ。結構、ここで「えっ」っと思って。
 やっぱり4.0の現代社会はどうよくないかというのを書いてあるんですよ。政府のホームページなんかを見ているとね。そうすると、やっぱり情報技術が出てきているんだけれども、選択肢が爆発的に増えて、その情報に足を取られて、自分で何が本当に必要なことなのかがよく分からなくなってきているといったことが書かれている。本当にそうかなとも思うんですがね。
 5.0なるとどうなるかって、そこへAIが登場して、本当に必要なことは全部AIがやってくれるから、余った時間を自分のクリエイティブなところへ使えるようになりますというのが5.0ですと書いてあるんですよ。本当ですよ。皆さん、見てないでしょう。
【堀口委員】  全ての人と物がつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服しますって書いてある。
【小林主査】  うん。それは抽象的な文章で、その後にポンチ絵みたいなのが付いているんですよ。
【堀口委員】  付いています。
【小林主査】  そこでは、今までは余りの選択肢の多さで、もうそれの処理だけで大変であるというようなことが書いてあるんですよ。それをAIがすっと整理をしてくれて、そして、本当に必要なという。だから、ほとんど主体性がなくなっていないかという気はするんですけれども。5.0で、そういう話なんですね。
【堀口委員】  そうですね。そんな、みんなで共有していいんですかね。危ない情報を。
【小林主査】  でも、もう今は5.0、5.0なので。ただ残念ながら、海外に余り知られていなくて、今年9月か10月に、ドイツでイノベーションの会議でしゃべって、日本はIndustry4.0に対して、Society5.0だとか言ったら、変に爆笑されましてですね。中身もちゃんと説明して、「ふーん」とか言ってましたけど。全然知らんとか、聞いたこともないと言ってました。英語版もちゃんと政府は作っているんですけどね。
【坂本課長】  これからですね。
【小林主査】  これからですね。でも、これ、第5期でやる話と違いました?
【坂本課長】  はい。実は、そうです。こういうコンセプトは、まだ時間がかかりますね。経団連の中西会長もおっしゃっていましたけど、まだこれからです。Industry4.0も、評価はすごく分かれています。あれは単にものづくりの、ある意味、生産現場の電子化というか、デジタル化というか、それしか言っていないんじゃないかという話と、いや、全く違う生産システムをイメージしているんだという議論と、真っ向分かれているんですね。
【小林主査】  Society5.0も、これ、横文字が入っているので、新聞が縦書きなので、日本の場合、書きにくいというので、経団連が、漢字の言葉遣いを今作っていますね。創造社会とか言ってたかな。そんな言葉に変えようとしています。そして、新聞にもっと出してもらおうと。そこで新聞を狙っていること自体が、もう終わっているんだけど。
【田中委員】  情報社会といったときに、やはりそういう部分もあると思うんですけど、逆に、今まで特定の人しか知り得なかったことが、それこそ入手しようとすればできてしまうので、それでいろんなことが顕在化してしまい、社会課題というのが、もともとあったんでしょうけど、出てきているというのが本当のところじゃないかなと私は思ってしまうんですけれども。
【小林主査】  もともとあったと。
【田中委員】  ええ。そういうことは書けないでしょうから、どうしたらいいのかなと。
【小林主査】  その辺の話を書き出すと、ここはどんどん長くなりますね。
【田中委員】  だから、さらっといっちゃったほうが。
【小林主査】  この相互作用というところで何をイメージするかですよね。科学技術と社会の相互作用というので。
【田中委員】  だから、相互作用ってなかったんじゃないですかね。中身は分からないですけど。
【坂本課長】  多分幾つかの切り口があると思うんですけれども、間違いなく我々あるなと思っていますのは、これは基礎研究に対してどう考えるのか、今、相当議論になっていますけれども、政府の研究開発投資、あるいは、大学に対する投資そのものが、今、政策的にすごい議論が、大学改革の関係で起こっています。そのとき、研究投資というものは社会にちゃんと還元されるのかという議論というのは、これはアメリカでも大議論が80年代、90年代に起こっています。
 そのときに、やっぱりイノベーション――当時はイノベーションという言葉はあんまり使われていなかったかもしれないんですけれども、テクノロジーというか、サイエンステクノロジーというか、そういったものと社会とがどうつながっていくのかと。様々な発明なり、あるいは、実用化が生まれたというところも、さんざんアメリカで議論があった。そういったものというのは、今もまた問われているというところは、多分間違いなくあると思います。
 そういう側面で見ると、相互作用というものは、これまでもずっとあったと言ってもいいのかなと。別の技術からすると、なかなかまだつながっていないということもあるかもしれないんですけれども。
【田中委員】  そういう言い方だったら。
【原田委員】  シチズンサイエンスみたいなものというのは、ここには含まれないんでしょうか。今ちょうど高校で地理が必修になりますので、それに向けた議論というのは随分なされているようなんですけれども。そのときに、これまで自治体とかが、部内データという形で、外に余り出てこなかったような、いろいろな基本的な社会の現状を示すデータ、それが個別の場所とか時間とかと組み合わせられた形で、誰でも自由に使えるようになっている。
 国土地理院も、そういう形で、非常に使いやすい地理院地図というのを出すようになっていて、一方で、QGISという、びっくりするようなフリーのオープンソースのGIS(地理情報システム)が出てきていて、もう本当に誰もお金をかけずに、そういうものを、社会のある地域とか、基礎になるデータを実際に自分のパソコンに取り込んできて、自分で分析して、その結果、例えば、あなたの地域の将来のフォーキャストだったかな、ああいうサービスも出てきているような形で。だから、一般市民自身が、自らそういう一次データに接して、かつ、それによって自分たちの将来までもある意味予測したりするようなことができるサービスも現れてきて、それで、市民自身による自己決定みたいなものに貢献するというところが目指されているような動きがあるような気がするんですけれども、そういう部分は、ここでの今の相互作用というものの中に含めて考えた方がよろしいのかどうなのかと思ったんですが。
【藤垣委員】  でも、今の話は、3ページの第2段落の4行目に出てきます。だから、今、原田先生がおっしゃったのは、こっちへ入れ込めばいいんだと思います。
【原田委員】  そうですね。イノベーションの早い段階からのステークホルダーの参加とか。
【藤垣委員】  上流工程からの参加とか。
【小林主査】  だから、この3ページの最初の総論のところのモチーフみたいな文章がどうも落ち着かんのですな、これ。これ、要りますかという話ですよね。
【藤垣委員】  もうSociety5.0が入ってしまっている、3行を取ってしまう。
【内田委員】  これは2の全体に関わることかもしれないんで、今申し上げるのがいいかどうか分からないんですけど。例えば、2ページ目の2ポツのところの2段落目に、先ほどから話題に上がっているSociety5.0とかSDGsの話が出ているんですけど、例えば、ここの書きぶりでは、「Society5.0の実現や国連で採択された持続可能な開発目標の達成など」というふうに、Society5.0であるとかSDGsというのは、もう疑う余地のない目標であるということが前提になって、それを絶対に実現したり達成したりしないといけないというような感じに読めます。実は私は、科学コミュニケーターの役割というのは、そういうことに対してある種批判的な思考を持つということも重要なのではないかと思うんです。そうすると、例えば、実現とか達成という言葉で表していいのかどうか。例えば、実りある達成とか、意義ある実現とか、良き実現とかなら納得できるんですけど、ここの書きぶりだと、本当に国が決めたある種の意思決定に対して、必ずやそれに向かっていかなければならないというのは、やや危なさを感じなくもないんですが、どうでしょうか。
【小林主査】  経団連のやつのポンチ絵というのは、要素技術としての様々な最高の科学技術があって、こっちはSociety5.0になって、そして、ここをインプリメンテーションという矢印が付いて、ここの矢印のところに人文社会科学というのが大事だと書いてありますね。そうすると、これはある種の道具として人文社会科学を使っていて、それはそういう側面もあるだろうと。法的な議論とか、そういう整備をするとか、そういうところは人文社会科学は必要だと。それはそうなんだけれども、それだけではやっぱりまずいんで、人文社会科学というのは、本質的には、この達成すべき目標が、達成を追求するのに本当に値するかどうかということも考えるのが人文社会科学の仕事なんですよという話をして。だから、トラブルシューターになっているというふうな位置付けというのはちょっと変だと言ったら、「いや、そんなつもりはなかったんですけど」とは言われましたけれども、やっぱりそう見えてしまうんですよ。
 そのときに、いろいろほかの議論もしていて、ヨーロッパのHorizon 2020とかRRIとかには大体必ず出てくるんですが、日本の行政文書で、似たような発想でやっているにも関わらず、絶対出てこない言葉が一つあるんです。必ずヨーロッパの場合は出てくるんです。ビリニュス宣言という人文社会系の人が書いているもののなかにも出てくるし、RRIのところにも出てくるんですね。それは、社会のリフレクシヴィティを高めるというようなことを書くわけです。これが日本の行政文書にはまず出てこないんです。反省的思考みたいな、そういうものが社会にとってすごく大事なんだという議論は、日本の文脈ではほとんど無視されるんです。分からないんですよね。それはなぜ分からないかというと、日本の人文社会科学がちゃんとした教育をしていないということなんだろうなと思います。
【藤垣委員】  教養教育の問題でもありますね。
【小林主査】  だから、批判という言葉がネガティブな意味にしか使われていなくて、批判というのはすごく大事な重要な活動だという意識が全然なくて、批判ばっかりしているとか、そういうふうな文脈で否定的に扱われる。そうじゃないんですけどという。
【内田委員】  とりあえず達成しなければみたいな感じの。
【小林主査】  そこがいつも気になるところなんです。
 今だと、でも、ちょっとそういう問題を考えなくちゃいけないかということも併せて言うべきなんですよね。
 同時に、もちろん、本当のイノベーションを生み出すために、人文社会科学というのは積極的に貢献すべきだというメッセージは私は必要だと思っているので、そこを両方もちろん言っていかなくてはいけないんですが、ここの場合、今御指摘のように、現在の政策の表現をそのままストレートに受け過ぎているだろうと。だから、現代は、超スマート社会であるSociety5.0の実現や国連で採択された持続可能な開発目標の達成などが求められているで一回切って、しかし、これらを含め、今後顕在化する社会課題に対応するためには、科学技術の活用が重視されると同時に、というふうに、まず一回切ってしまうということが必要かもしれませんね。
 それと、本当にいいのというニュアンスをどうやって出すかですね。すごく難しい。
【小出委員】  よろしいですか。今の小林先生の言っているお話は、割と問題の本質に刺さっちゃっていますよね。
【小林主査】  そうなんですよ。
【小出委員】  特に、日本の行政文書だけじゃなくて、日本の社会構造自体もそうですけれども、いわゆる演繹的な上意下達の一つの伝え方、把握の仕方というのは得意ですけれども、日本になくて、ヨーロッパで必ず付いて回るのは、やっぱり機能的なそれぞれのステークホルダーから何がどういう関連で上がっていくのかと、その両方の機能的な思考と、それと、両方をどうカップリングさせるかということで、リフレクションというのも、その中で出てくる視点だと思うんです。
 それは、あくまで主権者は一体誰であるのかということから社会構造を作ってきた国と、それから、明治のときに、いわゆる帝国主義の犠牲になりたくないぞ、この国はという意思でもってずっと走ってきた国との違いだと思うんですが、そろそろこういう臨界点であるというふうに考えるならば、こういう一つの国の施策を上から下へ流す形でやるのも重要だけれども、それは社会にどのようにリフレクトするのか、それをどうフィードバックするのかも、サイエンスコミュニケーションの重要な役割であるというふうな視点を少し入れられるのであると、ちょっとお役所の文章という雰囲気から変わるかなという気もするんですが。
 ただ、いわゆるSociety5.0とかSDGsという言葉を入れたがるというのが、やっぱり一つの、それがないと文科省の文章にならないというところもあるという。そこら辺はちょっとお考えいただいて、特にコミュニケーションの問題というのは、上から演繹的な方向でものを流しただけでは絶対育たないものですし、それを一つの機能的な方法と一緒に、それ自身を評価するのが本当のサイエンスであって、それはソーシャルサイエンスも入るわけですよね。もっとたどれば、そこはフィロソフィアという、知を愛するという考え方の中にあるので、そうすれば、科学もすぐ同じところにいるんですけれども、その骨格からものを考えるというところがちょっと見えないと。
 日本の文章を英語にしたときに向こうで相手にされないのは、やっぱりそこの根幹の思考から立ち上げたという文章がなかなか見えてこないから、方向性、視点、価値観というのがなかなか見えてこないというのは、多分、彼らがいう、「何か書いてあるんだけど、何が書いてあるのかね」というところになってしまうんで。ただ、日本では、それは成り立つんですよね。それはやっぱり日本の特殊な事情があるからで。
 ただ、普通の問題ならばともかく、コミュニケーションという問題になってきたら、どうしても、サイエンスももちろん重要なコミュニケーションのツールですけれども、社会科学的な、この問題は一体どこから見ていかなければいけないのかという、見ているパースペクティブが、視座がきちんと見えるようなものにするときには、これを実現すると同時に、それがどんなリフレクションを起こしているのかという、現場からのフィードバックと両方併せてコミュニケーションとしてはウォッチングしなければいけないというふうな概念が少し入ると、少し小林先生のおっしゃっていたような方向に近づくのではないかなと思うんですが。
【小林主査】  今のような御意見を受けて文章を考えてみましたので、ちょっと読んでみますね。
 Society5.0は残すんですけれども、「現代は、超スマート社会であるSociety5.0の実現や国連で採択された持続可能な開発目標の達成などが求められている。しかし、高齢化や人口減少などの既に顕在化している社会課題や今後顕在化する社会課題に対応するため、科学技術の活用が重視されるのと同時に、科学コミュニケーションが新たな役割を果たす必要がある」、とやると、ちょっとタメができるでしょう。
 ただ、科学技術でいいやという話ではなくて、実は、それだけでは駄目で、科学コミュニケーションがちゃんと今までよりも違った役割を本当に果たさないと問題解決につながらないよというのは、この取りまとめの基本メッセージだと思うので、そういうふうにしてはどうですかね。
 そうして、実際に実例としては、多様なステークホルダーが関与したという、RISTEXの例が注で挙がってくると、これはやっぱり、この中には新しいコミュニケーションがもう埋め込まれているんですよという意味になってくるわけですね。世界でもそういう話ですよという形で、ここでELSIまで行くわけですよね。
 このESG投資なんかも、本当に最近増えてきていますよね。
で、ELSIが来て、RRIが来ると。ここでも、早い段階からのステークホルダーの参加。
【坂本課長】  今は、従来と違ってきているかなと自分でも考えるのは、3ページの真ん中の、今、小林先生がずっと追いかけていただいたところの下にありますけれども、公的資金による研究は誰のものであるのかと。要は、これをもっと広げて言うと、科学技術は誰のものかというところで、オーナーシップの問題というのもここで書かせていただいているので、これ、強めてもいいかもしれませんけれども。
【小林主査】  この問題だって、インターナショナル的には、この間のILCの問題でもろに議論したものですよね。実は、8,000億かけてあの設備を作る、税金を使うと、この研究、誰のものだという話になったときに、研究者は研究者のものだと言っているわけですよ、やっぱり。科学の進歩に役に立つと。その価値をおまえは認めないのかと言って、学術会議はけしからんと大分言われてましたよね。
 だから、そういう意味で、パブリックなお金を使って研究するときに、どこまでいわゆるピュアリサーチ、純粋研究に対して投資をすることを社会が認めるかというのはなかなか難しくて、衛星「はやぶさ」物語に関して結構お金をつぎ込んでいても、国民は文句を言わないのは、あれはやっぱり上質なエンターテインメントの側面があるからなんですよね。だから、結局、エンターテインメント性ぐらいしか正当化する根拠はないのかと思ったりね。それか、あとは、金の卵論で、将来ひょっとしたらという、ばくちを打っているんですという議論をするか、どっちかなんですよね。
 でも、絶対に、ばくちでも、当たらないばくちをやっている人たちが、将来ひょっとしたらいくかもしれませんと言うのは、モラルハザードなんですよね。だから、そこはすごく難しいんですよね。
【田中委員】  関係するか分からないんですけど、課題解決と言ったときに、やっぱり何となく課題を解決された、マイナスだったものがゼロに戻るだけじゃないかなという気がしていて、それがこの中から伝わってくるんですけど。そうじゃなくて、今おっしゃったような「はやぶさ」の話なんか、要するに、ゼロサムじゃなくて、ゼロサムの反対で。
【小林主査】  価値創造。
【田中委員】  プラスサムというんですか、分からないけど、そういった新しいものの価値というのを創り出していくというのを、もう少し分かるようにしてもいいのかなと。でも、イノベーションって、どっちかというと、そういうふうなニュアンスで僕なんかは感じていますけどね。
【小林主査】  イノベーションはそうですね。
【田中委員】  マイナスものをゼロに戻すだけではないかなという気がしていて。
 そうすると、多分、マイナスなものをゼロにするという発想だと、助成したものの成果が何で、評価がどうかとか、そんな話ばっかりになって。そうじゃなくて、そこは伏せられるというか。
【小林主査】  でも、確かにおっしゃるとおりですね。これ、2ポツの最初の段落のところというのは社会課題解決なので、ちょっとマイナスをプラスに戻す方向にずっと書かれていて、3ページに行くと、今度はどんどんイノベーションで新しい価値創造につながるような方向に議論が行くんですよね。
【坂本課長】  価値創造って入れましょうか。2ポツの一番初めのところですかね。
【小林主査】  そうですね。課題解決と価値創造と両方やらなくてはねということを書き込んだ方がいいかもしれない。
【堀口委員】  価値創造のほうが多分関わりやすいと思います。それはハッピーだから。だけど、課題解決のほうは、本当にマイナスをゼロにするだけで強力なエネルギーが必要で。でも、やっぱりそこに科学技術のコミュニケーションはとても重要だと認識しているので、ハッピーじゃないところにもあなたたちは活躍してもらいたいというところは、きちんと言っておかないと、また楽しい話ばっかりになってしまうと思います。
【小林主査】  今、本当に面倒くさい話が結構ありますからね。女子の子宮頸がんワクチンの問題なんかも、本当に難しい問題ですよ。それから、福島の甲状腺の集団検診の関連ですね。あれもなかなか難しい問題です。トリチウム水の問題も。そういう厄介な問題が明らかになって、あそこにコミュニケーション問題はやっぱりありますものね。 それは両面要るというのが堀口さんの……。
【田中委員】  きっと循環していくんでしょうね、両方。
【横山委員】  補足で大変恐縮なんですけれど。「はやぶさ」が新しい価値創造で、エンターテインメント性を持っていたというのは、本当にそのとおりだなと思います。
 一方でそのエンターテインメント性は宇宙を非常に美しく感動的に見せるものであり、それは事実なのですが、ほかの問題が覆い隠されていて、そこに当たるコミュニケーターもいないです。
【小林主査】  宇宙開発基本法はそうですよね。
【田中委員】  そういうことが顕在化できるような科学コミュニケーションが必要なのかなという気はしたんですけど。
【小林主査】  そういうのは疎まれるんです。
【坂本課長】  今のところはだんだん難しくて。でも、これはコミュニケーションの問題だけに押し込むのはちょっとかわいそうかなと。だけど、人文社会科学の本質ですよね。そこを、例えば、安全保障問題とか、そういったところをきちんとあぶり出すという、人文社会の、いや、多分、学問そのものの役割ですね。コミュニケーションというよりも。多分、コミュニケーションを超えていますよね。
【小林主査】  超えていると思います。だから、例えば、JAXAと防衛省は切り離すべきであるという議論って、やっぱりあり得るわけですよね。アメリカだったら、NASAとペンタゴンは一応切り離すというような制度セッティングはするわけですよね。ところが、日本はすぐにオールジャパン体制を作るじゃないですか。大好きですよね。そして、何かズブズブになってしまうと。それで、そこを目くらましをしているのが「はやぶさ」だという意味で、この科学コミュニケーションの危険な役割というかな、両義性を持っているんだということを常に自覚し続けるというのは、コミュニケーターにとっては必須の教養だと思いますけどね。それはおっしゃるとおりだと思います。
 それをここに書くのはちょっとしんどいな。
【横山委員】  そうですね。
【小林主査】  ただ、何かこういう提言を受けて、コミュニケーション、コミュニケーターの育成を考えるところでは、そういう問題群に気付くようなコミュニケーター教育をしてもらいたいという気はするんですけどね。下手をすると、大本営発表の提灯持ちみたいになってしまうという危険性があるので、そうではないんですよということは。
 でも、ここでELSIとかSDGsという言葉を意識的に入れていくことによって、コミュニケーションというのが、単なる情報伝達のスキルに尽きるものではないというメッセージは明確に入っているとは思うんですね。
【小出委員】  コミュニケーションは、いわゆるポリシーメーキングに深く関わる問題でもあるということですね。それをどう育成するかは、一番最後のパラグラフで。さっき原田さんがおっしゃっていたシチズンサイエンス的な議論というのは、3ページの二つ目の段落のような内容の部分に一定関係している。
 もう一つ、ちょっと前かな。この本、オープンサイエンスは割と議論するのが好きなんですよ、研究者はね。だけど、シチズンサイエンスを議論するのは少ないんです。これもやっぱり日本の特性なんですね。アメリカとかヨーロッパは、もちろん、マッチョな研究はいっぱいあるんだと思う。同時に、シチズンサイエンスとか、そういうのも割とやっていますよね。日本だと、やっぱりこういうものに対する感受性の高い分野というのは、天文学と考古学なんですね。アマチュアのそういう人たちがいたということで。だから、そういう人たちは割と分かるんですけれども、ある時期には、計算機の余力を全部使って膨大な計算をするとかいう、そういうのをやりましたよね。
【小出委員】  SETIですね。
【小林主査】  ああいう問題とか、それから、観測系のところは、シチズンサイエンスはかなり多いはずなんですけれども。さっきの地理のやつも、さっき原田さんがおっしゃっていましたね。
【原田委員】  そうですね。いろいろな野生動物の渡りの調査とか、随分やっていますよね。
【小林主査】  そうですね。
【坂本課長】  ここは、オープンイノベーション2.0について、平成29年度科学技術白書を引用していますけれども、これは学問に直接関わるというのではないんですが、非常に重要なのは、医療の分野。ここで科学技術白書を出しているのは、高度研究への市民の参加。その高度研究は、単にデータを取らせるだけではなくて、市民自らが行動変移を起こすと。その行動変移において、その差分を自ら明らかにしようとするというところは、オープンイノベーション2.0の動きとして紹介されていますね。だから、市民の行動意識がサイエンスに非常に大きな影響を及ぼすと。
【小林主査】  もともとtransdisciplinary researchという言葉とか、それから、evidence-based medicineという議論が出てきたときのバックにあるのが、例えば、evidence-based medicineというのは、何となく今まで医者が勘でやっていたのを、定量的データでやっているというふうに思っているんだけれども、一番最初にそれを提言した人の論文を読んだら、そんなことは書いてないんですよね。医療者のプロフェッショナルなエクスパティーズと、それから、科学的なエビデンスと、もう一つあるんです。それは、patients and families experienceとか、そういう言い方をしていて、要するに、患者さんたち、あるいは、患者家族のエクスペリエンスと医師の専門性と科学的データの三つを統合することがevidence-based medicineの真の意味だと最初に出てきていますので。そういうふうな患者集団と医師集団が一緒になって、治療とかをやるというときに、transdisciplinaryという言葉の概念が生まれると。そういう歴史があるんですが、なかなか日本ってそういうのは。
 でも、お医者さんに話をすると、患者団体との意見交換は研究にとって大事だという分野はいっぱいあるんですよね。だから、そういうところにはモデルがあるんだけれども、それと一番遠いのが、やっぱり工学の基礎研究に近いところですね。やっぱりそういう感覚はすごく低いですよね。理学もそうです。
 なので、ここでオープンイノベーションも今は広がっているし、ここにもステークホルダー、あるいは、知識のユーザーを巻き込んだという。これをオープンイノベーションと訳すか、transdisciplinary researchと書くか、どうしますかね。両方あるんですよね。だから、環境問題のFuture Earthはtransdisciplinary researchという言葉遣いをしているし、今度、OECDが日本にも呼びかけてきて、transdisciplinary researchの研究会をやろうとか言っていますから。注で、シチズンサイエンスとか、transdisciplinaryとか、そういう話を、ここのオープンイノベーション2.0のところに付け加えて、同じような問題の立て方をしているものがいろいろあるんだというのをちょっと加えますかね。だから、6の注のところに付け加えればいいんですよね。
 このあたりの注の付け方は、お任せいただけますかね。そして、事務局と一緒になって、ちょっと書き込めれば。
【山口委員】  社会変革という言葉は、少し気にはなります。革命的なすごい大きな話もあれば、ちょっと生活様式が変わるみたいな、それも大きいんですけど、割とイメージしやすいものから、いろいろあるような気がしているので、定義なり例示なりがあったほうが読みやすいかなと思いました。
【小林主査】  第2段落の5行目の社会変革を引き起こすという、これですね。
【山口委員】  そうですね。途中から割と頻発していたような気がするので。
【小林主査】  そうですね。
【小出委員】  この社会変革とか、市民を巻き込んでというふうなところの中に、例えば、クラウドファンディングみたいな動きというのは、どちらかに含まれている、関わる問題なんでしょうかね。あれ、新しい形の、いわゆるサイエンスコミュニケーションなんですけれども、単にお金を出すというだけじゃなくて、例えば、KEK(高エネルギー加速器研究機構)なんか、お金がないものだから、高校生の夏のキャンプができないといったときに、クラウドファンディングを仕掛けたら、そのお金が集まっちゃったんですよね。そういう中に、前にそれを体験した高校生がお小遣いの中から1,000円出して、あんなにいい体験をしたんで後輩にもやってもらいたいというふうな手紙と共に投げてくるような、そういうお金の集まり方になって、今度、逆に、そういう連中の一つのソサエティやネットワークがより広がることになったというふうな、あれなんかはシチズンサイエンスという捉え方をしたらいいのか、それとも、科学は誰のものかという視点でもあるのか、よく分からないですけれども。
 ただ、明らかにコミュニケーションの新しい広がりの形態ではあるでしょうし、これからいろんな形で、相当基礎的な科学にも刺さったりしていますし、いろんなところに入る一つの新しい要素かなという気がするんです。その言葉を出すかどうかは別にして、そのようなサイエンスコミュニケーションの領域の問題というのは、さらに広がっているという気がします。
【小林主査】  それは、僕は、すごく重要だと思いますね。
【小出委員】  一種のシチズンサイエンスですね。
【小林主査】  京大の理学部が、基礎研究のお金がもうなくなったので、クラウドファンディングでやって、それの結果を逆に市民に還元するということは、当然セットでやっているわけですね。大学では今、かなりやっていますよ。
【小出委員】  その間でコミュニケーションが広がるということは、お金を出した高校生たちは、必ずサイエンスというものとその先というのは、どこかで心の中に残るでしょうし、実験と体験と観測というのがどんどんなくなっている今の学校教育の中では、貴重な機会ではないかと思います。
【横山委員】  アメリカは、エクスペリメントドットコムという大きなプラットフォームがあります。日本ではアカデミストさんやReadyfor、Japangivingなどいろんなプラットフォームがあって、非常におもしろいですね。
 しかし懸念もあります。「お料理の研究したいから世界一周旅行の旅費をお願いします」とか、「ちょっとオーロラを観測にいきたいです」など、調査に行きます、研究したいですと言っている職業的研究者ではない方たちも受かっています。これは市民科学の観点からは非常に応援したい内容にも見えますが、研究や調査と言う言葉を使いながら、おそらく職業人から見るとそうではない企画が受かっていることは、社会から見たときにそれでよいのか少し懸念が残ります。
 でも、そういう大きなムーブメントを生み出す装置として、すごく興味深いものだとは思うので、とてもいい側面がたくさんあるのではないかと思うので、私も何か入れていただけたらいいかなと思います。
【小林主査】  そうですね。でも、確かにクオリティコントロールが必要になるんですよね。こういうものは、確かに。
【横山委員】  エクスペリメントドットコムはプロ研究者の提案を扱っていて、さらに推薦者を1人付けるという仕組みでソフトにピアレビューを行っています。日本は学術に特化したサイトはきちんとしていると思いますが、他はケースによると思います。
【小出委員】  そちらのほうは、余りレギュレーションをかけていないんですか。
【横山委員】  プラットフォーム側に専門家がいない場合は、あまりないと見ていて感じます。出版をしなければいけないとか、そういう制約も何もないですので、面白くて話題性があれば受かる傾向があると思います。
【小出委員】  それこそ、いわゆるコンセプトをどういうふうにクリエイトするかという、あれによるんでしょうけれども。基礎研究の中で、誰がこんなものに興味を持つんだみたいなのも、結構ちゃんとお金――1,000万なんて集まらないですけれども、100万、200万って割とすぐ。昆虫じゃなくて、樽になってしまうクマムシの研究みたいなものにも、ちゃんとファンドが行くみたいですし。だから、どういうふうに伝えるかって、それこそ本当にコミュニケーションの能力の問題も随分あるような気がするんですね。
 だけど、逆に、一人一人が考えるという面で、シチズンサイエンスと小林先生がおっしゃる、その枠の中に捉えられるものでしょうから。
【小林主査】  これ、おもしろい例ですね。社会変革というのがちょっと強いというのが山口さんの意見で、社会が変容していくぐらいで、ニュートラルな言い方にしておけばね。
【小出委員】  そうですね。
【小林主査】  確かに、私たちの世代とは違うような感覚がいろいろと生まれていますよね。シェアリングエコノミーとか、そして、情報の獲得の仕方とか、それから、直接金融的というか、クラウドファンディングみたいなものは普通に使っているし。ああいう世代が何かを生み出すんだろうなと思うんですが、残念ながら、もう私にはよく分からないんですよ。でも、何か感覚の違う世代が、30代ぐらいのところを中心にすごく増えてきていて、あの人たちが何かを作るんだろうなと。邪魔をしてはいけないなと最近思います。多分、国際感覚なんかも全然違うでしょうし、そういう人たちのコミュニケーションの感覚と、我々がここで一所懸命追い付こうとして書いているのが、ずれている可能性が結構あるんですよね。
 本当に30代ぐらいの人たちがこれを読んだら、どう思うんでしょうね。御苦労様ですって、一言言われちゃって、それが一番つらい。
【原田委員】  逆に、今後の若手という意味では、その人たちが重要なステークホルダーなわけですよね。
【小林主査】  そうそう。やっぱりデジタルネイティブですからね。もうちょっとすると、21世紀生まれが大学へ入ってくでしょう。くらくらしますよね。
【山口委員】  スキル面だけの話じゃなくて、今の若い方なんかを見ていると、結構恵まれた世代だったりするわけです。会社とかへ入るのにしても。そうすると、やっぱりすぐ隣にある不公平とか、そういったものに結構感度が低かったりとかというのは、何となくですけど、そういうのが、私は40代ですけど、それとも結構違うなという感じがしているので、あえてそういう社会課題とかというのもここに書いていくというのは、非常に重要なことかなとは思います。
【小林主査】  でも、割と社会に貢献したいという意識を持っている学生がそれなりに増えているという話も聞くんですよね。
【山口委員】  その辺は定量的なデータがあるわけでもないんですけど。イケイケで来た層もいるし、この20年ぐらいですか、格差の問題などの議論が結構あったと思うので、そういうところを勉強してきた層とか、いろいろあるとは思うんですが。
【小林主査】  そうですね。だから、福島の経験を何歳ぐらいでしているかというのは、結構効いてくるんじゃないかと思っていて。あれが7年前じゃないですか。あれを高校生ぐらいで経験すると、結構影響を受けているのではないかと思うんですよね。そうすると、今、多分、大学生ぐらいになってきているわけで、それから、もうちょっとすると、中堅の研究者とか、社会に出ていくわけでしょうけど、その世代が何か新しい感覚を持っているグループになるのか、あるいは、防災研究者が増えるのかとかですね。
 というのは、阪神淡路を高校生ぐらいで経験した人たちって、現在の防災研究者の割と中核に数がいるんですよね。やっぱりあれがきっかけだったと。だから、ああいうものを何歳ぐらいで経験しているかというのが、社会にとっては割と意味があるんだろうなという気はするんですけどね。
 でも、どうですか。時間は大分迫ってきていますけれども、クラウドファンディング的な議論というのは、何らかの形で入れた方がおもしろそうですよね。
 それと、変革は、社会の変容みたいな、ちょっとニュートラルな言い方で述べておこうと。
 ここでも社会の変容が明暗両面を持っているということは明記されていて、そんなにゆめバラ色の世界が生まれるというような単純な話ではないと。どのような社会変革が望ましいかを対話しという、こういう文言は割と大事ですよね。変容にしてもですね。だから、さっきのSociety5.0が本当に望ましいかどうかということ自体も議論の対象だという。
【小出委員】  ここに入っているわけですね、それが。
【小林主査】  その感覚はやっぱりあるべきなんですよね。
 だから、こういう問題群を考えようとすると、コミュニケーターの活躍の場が変わりますねという話が次に行くと。
 これ、次回1月22日でもう大体固めたいと言っていましたよね。
【石橋補佐】  できれば。今期の委員の皆様方の任期との関係もありまして。あと、次回が1月の末ですので、その後、2月の10何日かが皆様方の任期ですので。
【小林主査】  何とかそれまでにという。そうすると、今日頂いた意見でのまとめたものを、一回メールで流して、22日に間に合わせるようにしないといけないということですね。
【石橋補佐】  はい。
【小林主査】  大変だ。
 ここは知識翻訳とコンバージェンスをやっているわけですね。知識翻訳は絶対要るだろうと。
【藤垣委員】  これは、3はコミュニケーターでよろしいんですか。先ほど来、科学コミュニケーション……。
【原田委員】  そう、私もちょっとそこが気になっていました。
【藤垣委員】  後の科学コミュニケーションに必要な機能にしておきますか。そうすると、この部分は第1段落が知識翻訳で、第2段落が対話・調整機能なんですけれども、第2段落は、対象となる科学技術を受け入れるか否かと3行目のところに書いてあるので、既にでき上がってしまったエスタブリッシュされたものを受け入れるか受け入れないかという立場で書かれていることがわかりますから、2のところで延々と議論してきた、共に創るあるいは上流工程からの参加といった概念がなくなってしまっているんですね。
 ただ、第2段落のような側面も必要ではあるので、恐らく第3段落を立てる必要があって、共に創るという側面、あるいは、上流工程からの参加において科学コミュニケーションには何が求められるか、共創には必要なコーディネーション機能とか、そういうのを第3段落に入れる必要がある。
 あとは、今までの議論を集約しますと、第4段落に、先ほどから出ているリフレクシヴィティの話ですよね。社会に対して、政策であるとか、いろんな目標を、反省的に、あるいは、内省的に見直す機能が必要になるでしょうというのを挙げておいた方がいいかと思います。そうすると、機能が4つ挙げられますし。知識翻訳、対話・調整、それから、共創のためのコーディネーション機能と、リフレクシヴィティ。
【小林主査】  その4点を書いておけば、議論してきたものにちゃんと対応できるコミュニケーションだということになりますね。
【堀口委員】  対話・調整機能のところなんですけど、受け入れるか否かで、受け入れるとした場合だけではなくて、受け入れないとした場合も、同じように合意の形成ですよね。なので、別に受け入れるとした場合って特に限定しなくてもいいんじゃないですか。
【小林主査】  社会実装の場においては、対象となる科学技術を受け入れるか否か、どのような形、方法が良いか。受け入れるか否か、その後に、どのような形、方法が良いかと言ってしまうと、もう受け入れるの話になっちゃうよね。だから、受け入れない……。
【藤垣委員】  受け入れるとした場合という言い方が強いので、どのような形、方法ならば受け入れ可能となるかとか、せめてそのぐらいにしておきますか。
【小林主査】  受け入れるか否かといった問題についてと、いきなりそっちへ行って、一定の合意を最終的には得る必要があるとやれば、受け入れないということでの合意もあるわけで。というふうに、すっきりする方がいいようですね。これ、受け入れるとした場合だけ書いているから、結局、受け入れさせるのかよという読み方をされるというのは、堀口さんの言っていることですよね。
【堀口委員】  はい。
【小林主査】  だから、否かといった問題についてというふうにやったらどうですかね。やっている人から見たら、もう先刻承知の話ですからね、これは。
 だから、とりあえず、どっちに転ぶにしても、中立的な立場でコンバージェンスさせるということが大事なんだと言っているわけで、これがなかなか認めてもらえないんですよね。「で、あなたは一体どっちの立場なんですか」という、必ず踏み絵を迫るんですね。いや、だから、私は、このコンバージェンスのために、あえて役割を果たしているんですというのは、なかなか認めてくれないですね。
 じゃ、その4点でまとめるということにして、4ポツをざっといきますかね。
 ここも「コミュニケーターは」になっているのは、「コミュニケーションは」にしておきますね。コミュニケーションの機能という形でずっと説明してきているので。
 「これらを調整するスキル」という言葉遣い、これはスキルなのか。スキルで何とかなる話じゃないんですよね。でも、スキル的なものも若干はあるんですけどね。
【片田委員】  でも、スキルとしないと、育成させられない。
【小林主査】  そうですよね。もうしょうがない。
【片田委員】  発掘しかないですよね。
【小林主査】  発掘しないと、そうです。ここはちょっと妥協しましょう。確かに、育成にならない。
 本当は資質の涵養ぐらいのほうがいいんでしょうけどね。
【藤垣委員】  資質の涵養、いいですね。
【小出委員】  そうですね。
【藤垣委員】  資質の涵養なら育成できますから。
【小林主査】  育成できるような。だから、スキルというよりも、もっと経験をさせるとか、そういうことって結構大きいじゃないですか。そして、非常に厄介な場面に巻き込まれている人を横から見て、サポートすることによって学ぶとか、そういうやり方って結構あると思うんですけどね。
【小出委員】  これ、スキルというのは、実行力とか、実現力とか、そういう問題ですよね。
【小林主査】  そう。
【小出委員】  スキルというと、マニュアルがあって、そのとおりやればいいようなイメージですけれども、そこの裏に、思索と志がなければいけないですね。
【小林主査】  そうそう。そこが大事なの。
【小出委員】  それをうまく入れた言葉があった方が、「あ、スキルか」みたいな感じで受け取られるよりはいいような気も。
【原田委員】  あと、純粋スキルと言うと、もう教室で勉強すればいいみたいな感じのニュアンスもあるような気がするんですけど。資質というのは、むしろ現場と直に向き合わないと、多分そのインセンティブは出てこないんで。
 思い出すのは、自分たちがある学校で子供の安全の調査をやらせてほしいと頼みにいって、説明会をやったんですね。一般の住民の方も来て、説明会をやったんですけど。そうしたら、最前列に陣取っていたおじいちゃんたち数人が、「何か質問ありませんか」と言ったら、ぱっと手を挙げて、「皆さん、こういう研究をやるのはいいんですけど、それはどうやって現場に返ってくるんですか。地域に返ってくるんですか。先生、それで論文書くんでしょう」と言ったんですね。みんな、回りの若手研究者たちは凍りついてしまってですね。余りにも図星だったから。
【小林主査】  でも、そんな経験は大事です。
【原田委員】  やっぱり何かそういうショッキングな体験というのがないと、資質の涵養にはつながらないんじゃないか。もう見透かされているということがね。
【小林主査】  そうなんです。
【原田委員】  やっぱりそれは、体験的には、出ないと学べない気がします。直接は言わないんですよね。研究者の先生方みたいな感じなので。だけど、みんな分かっている。そのこと自体をこっちが気が付いていないみたいな。
【小林主査】  そうなんですよ。
【小出委員】  これは、コミュニケーター、特に科学だけではないですけれども、必要な資質の一つは、今、先ほど小林先生がおっしゃったように、一つ一つの領域だけではすまない問題で、いわゆる多領域にいかに目を配りながらアクセスできるかということと、それから、やはり一つのリーダーシップというか、まとめてメッセージを投げる力というのが問われるんだろうと思うんですね。
 この育成のときに、能力、スキルというと、ちょっと勘違いされてしまうような気がするし。もちろん、スキルだけで済む場所もあるかもしれないけれども。だから、多くの場合に、そこに一番今足りないのは、志を示してくれる人がいないということと、それから、なぜそれはそうなのかという、物事の根本に戻って、そこからきちんと考えた、積み上げた意見なり発言というのがなかなか見えにくいけれども、コミュニケーターって、多分、その両方がかなり必要な場面が多いですよね。それだけで済むわけではもちろんないですけれども。
【内田委員】  ただスキルというのではなしに、例えば、調整するような発想であるとか、態度、あるいは、スキルというふうに、つなげないでしょうか。スキルだけだと、本当にマニュアル的に何かやればいいとなると思うんですけど、やっぱり一番大事なのは、コミュニケーションを取ろうとするような志と態度であると思いますし、あるいは、そういう発想力みたいなところ。
【小出委員】  思索力ですよね。
【内田委員】  ええ。それは育成可能な部分も結構あるような気がします。スキルと併記できればと思いますが。
【小林主査】  そうなんですよね。だから、育成においては、コミュニケーションに関する多様なスキルについて習得することだけでなくとか、それに加えてということなんですよね。後段の部分で、そこをどう表現するかですよね。
【横山委員】  公共に資する志みたいな、そういうところだと思います。信頼概念では、能力のスキルと、もう一つは、まさに志という言葉に当たるような人柄の意図であるとか、その人のモチベーションのところを指して、その両方が合わさって、信頼概念になるという考え方をします。
【山口委員】  信念とか、そんな感じで。
【内田委員】  そうですね。信念、態度、志向性みたいな感じですね。並べて言うなら。
【片田委員】  でも、そういうのが備わった人は、ほかにもっと活躍する場があるので。
【小出委員】  片田先生、これからそういう人材をここの領域に押し込まなければいけない。そうしないと、国が回らないというのが。
【原田委員】  いや、でも、そのことがまさにコミュニケーターというところに押し込めるかどうかという問題に関わってくるような気がするんですね。だから、それをみんな下請みたいな人に押し付けてしまうのは、いろんな意味で危惧されるというのは、これまでも随分議論になってきたと思うので、だからこそ、やっぱりそういう役割を一人の職種とかものにみんな投げ付けるのではなくて、そういうマインドセットを全ての関係者が持つことが必要であるからこそ、コミュニケーション機能であるという、そこが前面に打ち出せると、小出先生おっしゃったメッセージ性みたいなところがよりはっきりするのではないかという気がします。
【片田委員】  このコミュニケーターという独立した一つのものではなくて、研究者でありながら、コミュニケーターとしての活躍ができるというような、一つの能力的な側面を表現するものでないと、うまくいかないような気がします。
【小林主査】  そうなんです。
【原田委員】  全く同感ですね。それがまた研究者の基礎的な、それこそ資質としてちゃんと評価されるということが、また、それこそ次の世代を考えると絶対必要だという気がします。
【小林主査】  ちょっと作ってみたのは、「コミュニケーションに関する多様なスキルについて習得することに加え、多様な経験を通じて公共的役割を果たそうとする志を涵養することが非常に重要である」、ぐらいにしましょうかね。
【小出委員】  これ、このコミュニケーターの一番先には、トップにある、いわゆる国の政策、科学顧問がいるわけですね。それもコミュニケーターで、もしくは、博物館でやっている人もコミュニケーターで、そういう長いレンジというか、スパンがあるというのが伝わると、この最後のほうで、科学コミュニケーションというのはそういう広い領域なんだという、それぞれにみんな専門性があるでしょうけれども、その全体感がもうちょっと見やすくなるかなという気がします。
【小林主査】  そうですね。
【山口委員】  前回も申し上げたんですけど、先ほどの小林先生の話に続けると、そのためには、やっぱり育成機関が、学生さんなり研究者に対して、そういう場とか座組をどんどん提供していくこと。で、コミットメントしたという経験を一つ二つ持たせて社会に出していくと、やっぱりそういう経験を持っている学生さんというのは、我々から見ても全然違う感じがするんですよね。二つモードを持っているというか、研究は研究でやっているんだけれども、こういう活動もしてきたという、それが必ずしもつながらなくても、いろんな面ですごく魅力的な人材だなと感じることが多いので、そういう場をどんどん大学さんとかには作ってあげていただきたいなと日頃思っておりますので、こういうところにも書いていただけると非常にうれしいです。
【小出委員】  同志社大学の先生でしたっけ、いろんな研究者、学生に、その領域のコミュニケーションのインターンシップをやらせたりというプログラムを持っておられましたね。あれなんかは、一つの大学の中での方向なんだろうと思うんですが。何回目だったか忘れちゃいましたけど。
【原田委員】  同志社の先生と、岡山大学の先生がありましたかね。話題提供されたときだったような気がします。
【小出委員】  これが同志社ですね。そうそう、野口先生か。
【小林主査】  肝になるポイントは大体御意見いただいたと思うんですけれども。あと、時間が若干押してきましたけれども、これだけはどうしてもということがあれば。あとは、今頂いた意見で取りまとめをしていきたいと思うんですけれども。
【横山委員】  RRIの訳語は、責任ある研究とイノベーションとなるのでしょうか。
【小林主査】  レスポンシブルね。責任。どうなんですか、専門家として。Responsible Research and Innovationのレスポンシブルって。
【藤垣委員】  呼応可能か。
【小林主査】  呼応可能って訳している。
【藤垣委員】  いやいや、私は、責任あると訳しましたけど。
【小林主査】  両方を含んでいるんですよね。責任あるというのは、なぜ責任あると言えるかというと、レスポンスしているからだということですよね。
 応答責任とかいう言葉もありますよね。でも、応答責任のある……。
【藤垣委員】  応答可能な研究というんでしょうか。
【横山委員】  分かりやすい訳です。これが最新バージョンか確認をしたいと思いお伺いしました。ありがとうございます。
【小出委員】  これは、ステークホルダーという言葉は、どこかに訳が入っていましたっけ。
【石橋補佐】  この段階では入っていません。どこにも入っていないです。
【小出委員】  これは今ストレートに使える?
【小林主査】  これ、訳しにくいでしょう。
【小出委員】  新聞では使えない。ステークホルダーは、いきなりは使えないですね。つまり、高校生は分かるものの、おばあさんは分からないですよね。
【小林主査】  そうか。利害関係者というやつは、何かニュアンスが違うので。
【小出委員】  利害関係人というと、ちょっと違う。
【小林主査】  金銭的な利害だけのような話になってしまうんだけど、そうじゃないんだよね。
【小出委員】  いわゆる当事者とか、関係……。非常に日本語にしにくいですよね。
【小林主査】  そうですね。
【小出委員】  stakeholder involvementなんて、概念としては非常に分かりやすいんだけれども、日本語にしにくい。
【小林主査】  だって、ファシリテーターも結局日本語にならないでしょう。
【小出委員】  調整……。
【小林主査】  モデレーターとかファシリテーターって、片仮名にしてるでしょう。やっぱり日本社会になかった役割なんですよ。だから、日本語にならんですよ。明治の人だったら何とか翻訳したでしょうけどね。漢字で。ソサエティは、やっぱり世間と違うので、社会という言葉をでっち上げたわけで、あれは漢字で書いた片仮名語みたいなものなんですよね。
 ステークホルダーは許していただくことにしましょうかね。確かに、これ、利害関係人とやると、読んでいる方は、知っている人は、ステークホルダーのことを言っているんだなと思ってしまうような、そういう読み方をするものね。どっち向けの翻訳だという話ね。
 いや、予想以上にたくさんの御意見を頂いたので、多分、石橋さん、結構頭を抱えて。
【石橋補佐】  いえいえ、ありがとうございます。
【小林主査】  これを基にした修正バージョンを作って、1月22日の会議までには、ある程度の姿をお見せするようにしたいと思います。
 残った時間で、机上配布の資料の分を含めた説明を事務局の方から、簡単に御案内ですね。
【石橋補佐】  はい。
【小林主査】  お願いいたします。
【石橋補佐】  先日、2019年度予算案が閣議決定されました。この委員会でいろいろ御議論いただいている関連の事業につきまして、先生のお手元のみの資料でございますけれども、横でカラーの資料がございます。戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)ということで、科学技術振興機構の社会技術研究開発センター(RISTEX)が行う事業の関係で、俯瞰・戦略ユニットというところに、ELSIに取り組むための機能拡充ということで、規模は余り大きくないんですけれども、ELSIへの対応というところをより深くやっていくというところが予定されています。
 あとは、下から2行目のところにございますが、新規ということで、SDGsの達成に向けた課題解決・共創プログラムというのを走らせる予定になっております。
 次回、できれば、この取りまとめプラス、こちらの事業について取り上げさせていただければと思います。重点テーマを基にして、社会課題の抽出ですとか、実証体制が整っているか否かで、上のラインなのか下のラインなのかというところが変わってくるんですけれども、既に整っているようなものについては、公募を基に実証実験ということで研究開発を行いましょうと。そういうのが整っていないものについては、まずはボトルネックの明確化やシナリオの創出のためのコミュニケーション活動というものをやっていただきましょうと。その上で、ある程度ステージゲートで絞り込みはしますけれども、研究開発に向けていくというような二本立てのプログラムを実施する予定でございます。
 これの具体について、次回、RISTEXから説明を受けて、御意見を頂戴できればなと思っておりますので、その紹介でございます。
 あと、もう1点、今回の議論に多少関連しております、社会課題のコミュニケーター育成、やっぱり実際の現場での経験というところの話があったと思います。そういったところが必要かと思いますので、非常に小規模ではありますけれども、そういう育成する、大学を主に想定しておりますけれども、取組に対して、文科省で補助をしようというような事業が、今の予算案の中に入っているというところでございます。
 以上、簡単ではございますけれども、来年度の予算の中で関連する事業の御紹介でございました。
【小林主査】  ありがとうございます。
 この二つ、この委員会の関係するところでの予算として成立したという御報告でした。
 そうすると、次回は1月22日で、そのときに、この最終の取りまとめと、それから、RISTEXが来てくださって、社会技術研究開発についての説明をするということでございますので、御予定いただければと思います。
 ほぼ定刻になりましたので、これで閉じたいと思います。どうもありがとうございました。皆様、良いお年をお迎えくださいませ。
【石橋補佐】  一応御議論いただいたほかに、何か個別でコメントあれば、メールで頂ければ、なるべく集約して反映できるような形にしてまいりますので、よろしくお願いいたします。

── 了 ──

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