科学技術社会連携委員会(第11回)議事録

1.日時

令和元年9月27日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 東館15F 科学技術・学術政策局1会議室

3.議題

  1. 第6期科学技術基本計画策定に向けた検討
  2. その他

4.出席者

委員

小林 傳司 主査、小野 由理 委員、小原 愛 委員、片田 敏孝 委員、小出 重幸 委員、調 麻佐志 委員、田中 恭一 委員、堀口 逸子 委員、横山 広美 委員

文部科学省

菱山 科学技術・学術政策局長、真先 文部科学戦略官、奥野 人材政策課課長、丸山 人材政策課研究公正推進室長、小田 人材政策課課長補佐

5.議事録

【小林主査】 定刻前ですけれども、今日出席予定の方は全員おそろいになったと思いますので、第11回の科学技術社会連携委員会を開催したいと思います。
今日の出席者及び配付資料等については、事務局の方で説明をお願いいたします。
【小田補佐】 本日は、科学技術社会連携委員会、10名の先生方のうち、京都大学の内田先生が御欠席で、9名御出席を頂いております。科学技術社会連携委員会の運営規則第3条に定める定足数の過半数を満たすことを御報告いたします。
それから、配付資料につきまして確認をさせていただきます。お手元に配付させていただいておりますとおり、資料1、それから、これは机上配付資料という取扱いでございますけれども、資料1の見え消し。これは、前回御議論いただいた内容から、事務局、小林先生との間で御相談をして修正をした見え消し版になります。それから、参考資料1、こちらは、海外動向について追記をさせていただきましたので、それに関する参考資料として御用意しております。
議論の途中でも結構ですので、過不足等がございましたら事務局までお知らせください。
以上でございます。
【小林主査】 ありがとうございました。
それでは、議事に入ります。議題の1というか、今日はそれしかないのですよね。
【小田補佐】 はい。
【小林主査】 第6期科学技術基本計画策定に向けた検討でございます。資料1及び参考資料などを基に、事務局の方から説明をお願いします。奥野課長、よろしくお願いします。
【奥野課長】 では、お手元の資料1及び机上配付資料にございます、資料1の説明補助といたしまして見え消しにしたものがございますので、こちらの資料1の見え消しを御参考にした上で資料1を順番に説明申し上げます。
まず、資料1の1ポツでございます。先般の御議論の中に、従前記載がございました東日本大震災、それに伴う原子力発電所事故、また、研究不正の事案の発覚等の記述というのが落ちているという点がございました。落とすということにまた積極的な意味付けというのがあるというような趣旨でもございませんので、御指摘を踏まえまして、今回も引き続き同事項について記載をすることとしたのが、資料1の1ポツ、(1)の一番最後の段落でございます。
次に、1ページの1ポツ、(2)でございます。(2)につきましては、先ほど資料の配付等がございましたが、海外の状況の紹介の箇所につきまして、配付資料のJSTの研究開発戦略センター海外動向ユニット等の情報等も参考にしつつ、周辺状況に関してアップデートの記述がございます。アップデートの記述につきましては、最初の第1段落で、RRIに関して、欧州におけるHorizon2020の取組に記載されてございますが、お手元の参考資料にございますとおり、欧州におきましては、その次の計画の検討が進んでいるという観点で、その検討の内容というのが比較的見えてきておりますので、この内容に関して追記しております。
更に、1ページ、(2)の一番最後の段落でございます。こちらにつきましては、この報告書が最終的にまとまるタイミング等の関係で、時制が過去形にはなってございますが、近々11月にブダペストで開かれます世界科学フォーラム、こちらにつきましても既にアジェンダ等が公開されているという観点から、報告書を取りまとめる時点では、こういった取組も踏まえた形で報告書をまとめておくのがアップデートの状況として適切ではないかという観点で記述の追加がございます。
次に、「2. 科学コミュニケーションについて」でございます。2ポツ、(1)、こちらは、多層的な科学技術コミュニケーションという観点が、全体としてのこのコミュニケーションの多層性というような形にまとめてはどうか等の御議論がございましたので、そういった観点から文章の表現等を見直してございます。2ポツの(1)でございます。
次に、「2. 科学コミュニケーションについて」の(2)の第1段落についてです。こちらは、先般の御議論の中でステークホルダーという議論がございましたが、特にこの論点において、どういったステークホルダーに着目するのかどうか、もう少し具体化してはどうかという御指摘がございました。そういった観点から、特にここでは具体例として、NPOでございますとかNGO、また地域住民ですとか地方自治体、更にベンチャーですとか、そういった民間企業の活動等というような議論がございましたので、中小企業などをメインにしてございます。
また、後段におきましては、先般、特に新たな観点としてジェンダー等の多様性の視点が提起されました。そういった観点で、ジェンダー及び、前回はあまり御議論はございませんでしたが、主査の方から、多様性の例として、例えば宗教その他の多様性に関する考慮事項に関してもお諮りの上、今回御議論いただければと思います。
更に、(2)の一番最後の段落等につきまして、科学コミュニケーションの具体的な場につきまして、これもベンチャーですとか地域等の観点がございましたので、より具体的な例として、基本法等の表現を引用して、企業、大学、公的研究機関ですとか、国、自治体の政策形成、こういった表現の具体化を行ったところでございます。
次に、「3. 各ステークホルダーの取組について」でございます。こちらの取組に関しては、第1段落の国民という観点、そして、第2段落としてこのメディア等の観点のほか、特にこの第3段落、「このほか、研究者も」という観点につきまして、先般、提起といたしまして、例えといたしまして、製造物責任等のような観点というのがこの研究者の責任として考えられないかという御指摘がございました。また、後段の研究公正との関係につきまして、研究公正は別途独立した段にあるので、この段においては、信頼関係構築という観点をより前面に出してはどうかという御指摘がございましたので、記載のとおり修正させていただいております。
特に製造物責任という御指摘を頂いた点に関しては、この「研究者も、様々なステークホルダーとの信頼関係の構築のためには、研究の公正性の確保と共に、社会リテラシーを向上させ、分野を超えた知識・視点を駆使して研究の内容やその成果が社会に及ぼす影響等をわかりやすく説明し」という観点で、そういった観点を盛り込んでございます。その上で、「社会のための科学を共創していく責任を果たさなければならないことを強く認識しなければならない」という形で盛り込んでございます。
次に、「4. ELSIに係る取組について」でございます。4ポツの第3段落につきまして、前回の御議論におきまして、先々回聴取させていただきました、御意見等を頂きましたソーシャル・イノベーション等に係る取組に関しての御議論がございましたので、そういった観点からソーシャル・イノベーション等に関する観点を加えますとともに、また、ジェンダー、インクルーシブなどの論点の提起がございましたので、4段落目、「併せて、これらの取組の推進に当たっては」に、改めて「企業、大学、公的研究機関」という場を具体化した上で、ジェンダーなどの多様性の観点、また社会との対話の重要性というのを追記してございます。
また、後段につきましては、より表現内容というのが明確になるように、表現内容等を随時推敲を進めておるところでございます。
次に進みまして、「5. 政策形成における科学的知見の活用」でございます。従来の助言という観点については、特定の助言者等の個人に着目するという観点よりも、より広く、科学的な知見というのを活用するという観点で、対象というのをよりシステム的、広い形に直した上で記載内容等を修正し、かつ表現ぶりを簡潔にするために、(1)、(2)となっていたものを一つの項にまとめるような形で表現ぶり等の修正等を行ったところでございます。
今般、先回の御議論を受けまして、事務方として御提起させていただきました案については以上でございます。
【小林主査】 どうもありがとうございました。
補足ですが、研究の公正性の確保に関しては手を入れていないわけですけれども、これは、この委員会からの文書にしか入れることができないという論点があってこのままになっていますけれども、有識者会議での議論というのは、ここに反映される可能性はこれからまだありますか。これでもうフィックスでよろしいですか、丸山さん。
【丸山室長】 はい。
【小林主査】 もうこれで特に別に加えることもなく。
【丸山室長】 そうですね。特段加えることはないと考えています。
【奥野課長】 有識者会議の委員長等にも御相談して。
【丸山室長】 御相談した上でお話ししています。
【小林主査】 そうですか。ということですので、結局、総政特(総合政策特別委員会)に持っていくときの文書として、研究公正に関しては、この文書で出すしかないというルートだということもありますので、この文書でとりあえずフィックスしてはどうかというのが原案でございます。
それから、海外情報、参考資料が一つございまして、これは、JSTの研究開発戦略センターがまとめたもので、Horizon2020からHorizon Europeにバージョンアップしていくわけですけれども、そのHorizon Europeの中身というのはどういうものかというのがここでは紹介されております。
RRIに関して、先ほど課長からも説明がありましたように、Horizon2020でかなりフォーカスが当てられた言葉だったわけですが、Horizon Europeの中では、その言葉が正面からは扱われていないのではないかという問題が一つありまして、それから、同時に、一部には、RRIは死んだというふうに言われ、こういう考え方が消えたのだというふうなことを言っている人も中にはおります。それで、少しそこは気になっていたのですが、9月の前半に実はJSTの社会技術研究開発センターのリサーチャーがイギリスに行っていろいろとインタビューをしてきております。そのときに、イギリスのこのエコノミック・アンド・ソーシャル・リサーチ・カウンシルという、イギリスの研究ファンディングを統括するような組織ができているわけですが、そこのダイレクターの発言としては、Horizon2020になっても、レスポンシブル・イノベーションという言葉はどこにも行かないのだと、今後もその方向性で続くはずだよと、むしろラウンド・ツーに入ったという、そういう認識の方が良いのではないかという言い方をしています。
ただ、面白いなと思ったのは、このレポートというか、調査員のインタビューなのですが、レスポンシブルという言葉が、日本で我々が考えているのとは少し違ったニュアンスで彼らは議論をしているようです。つまり、当然のごとく、科学者やポリシーメーカーだけではなくて、国民とか、市民との間のダイアログ、共創ですね、我々が言う、をやっていくと。そうすると、その共創の結果というものに対する責任というのは、市民の側にも行ってしまう。そうすると、余りにレスポンシブルを強く言うと、全部市民に押し付けるのかと、おっかぶせるのかというふうな批判が出かねないので、政府及びポリシーメーカーとか科学者の方が、より大きな、ビガー・レスポンシビリティと言っているようですが、より大きなレスポンシビリティを担うのだということを前提にした形で、パブリック・エンゲージメントみたいなものをやっていくということをきちんと示す必要があるのだという議論をしているようです。
このあたりは、日本はまだそのエンゲートジメントでレスポンシビリティの分有というかな、担い手としての、パートナーとしてという議論までまだ行けてないのかもしれません。むしろ我々がきちっと説明をする、科学者が説明をするというところのレスポンシビリティの方がまだ強調される状態で、このエンゲートジメントに伴って、参加してくる方々のレスポンシビリティの議論というのは、余りまだ焦点化はしていないと思います。しかし、いずれはそういう議論も出てくるだろうと。
科学技術の在り方に関して、社会と共創するというときには、社会の側がその結果に対して一定のレスポンシビリティを負うという、そういうことが、論理的にはそうなっていかざるを得ない。文句だけ付けて、あとは全部政府の責任だという構造で共創という概念を捉えるのには限界があって、そういう意味では、社会サイドとか市民サイドが与党的な感覚を一定持つことが必要なのでしょう。批判的であるけれども責任を持つという、そういうスタンスがこれから求められていくのだろうなという気がいたしました。イギリスでの議論では、そういうところに今問題があるのだということで御紹介させていただきました。
ということで、Horizon Europeのところの予算構造を見ても、多分RRIというものが正面から出ているわけではないわけですが、恐らくグローバルチャレンジという、この社会的課題に対する部分とか、それから、オープンイノベーションというところでは、常にそのレスポンシブル・イノベーションというHorizon2020で提起された考え方が、通奏低音のように響き続けるのだというのがイギリスのダイレクターの理解でありました。
それで、今日お諮りしている検討結果、修正案ですけれども、前回の議論を受けて、今、課長からも説明いただきましたように、できる限り皆さんの意見を取り込むように努力をいたしました。まだ十分かどうかということもありますし、それから、この表現はどうかとか、こういう議論はどうなったかということもあろうかと思いますので、今日は、最後のラップアップとして、是非忌憚のない御意見を頂きたいと思います。
最終的には、委員会を開くという時間もございませんので、今日頂いた意見を基に、更なる修正が必要であれば修正をした上で、取りまとめを私の方の責任でさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
ということで、まず、修正部分も含めての御意見を頂ければと思います。
【田中委員】 確認させていただいてもよろしいですか。
【小林主査】 どうぞ。
【田中委員】 ありがとうございます。細かいことかもしれませんが、2の(2)のところNPO、NGOと書かれています。以前、公益財団法人トヨタ財団でプログラム・オフィサーとして働いておりました。振り返ると、このプログラム・オフィサーの役割というのも科学コミュニケーションと親和性が高いように思えるのです。NPO、NGOとは非営利の活動団体を包括的に指しているでしょうから、当然イメージとして含んでいただいているとの理解でよろしいでしょうか。
【奥野課長】 概念として。
【田中委員】 別にいちいち明記して欲しいという要望ではございません(笑)。
【奥野課長】 はい、含まれていると。
【田中委員】 科学コミュニケーションというのは大切だと思います。どうしても理系の印象が強いのですが、政治学、経済学、社会学等も科学ですし、NPO、NGOも含めてメディア(媒介)を担っているイメージを伝えてくださろうとしていると好意的にとらえておりますが(笑)。
【奥野課長】 恐らく語感として、NPOとNGOを書くことが、そういった団体というのを最も包括的に広く含み得るような表現になるのではないかという観点でこの二つの用語を選ばせていただいております。
【田中委員】 確かに米国ですと連邦法501(C)(3)で、非営利団体、つまりNPOが規定されておりまして、その中に財団等も全て入ってきますので、同じような解釈なのかと想像しておりました。確認させていただきました。
【小林主査】 ありがとうございます。
ステークホルダーをどう表現するかというのは、結構事務局と一緒に悩んだ問題で、何かを特定排除するつもりはないのだけれども、うまく包摂的に書き込むためには、どういう言葉遣いが良いのかというのは悩んだところなので、そのあたりにも御示唆があればと思います。
では、小野先生。
【小野委員】 3点申し上げます。まず今のところ、2の(2)についてです。ベンチャーというイメージで「中小企業」と書いていただいていると思います。しかし、例えば、FacebookやGoogleは、かつてはベンチャーでしたが、既に世の中に大きな影響を与える科学技術分野の大企業になっています。立ち上げ時期は、こうした企業を含むのであれば、あえて「中小」と付けなくても良いのかなというのが意見としてございます。1点目です。
2点目として、3番目の各ステークホルダーの取組ということで、「初等中等教育の段階から教育をする」ということを書いていただいています。他方で、今は人生100年時代ともいわれます。学校を卒業し、場合によってはシニアになってから大学で学び直すケースも多いと思います。シニアの人数が日本は多いということを考えると、初等中等教育に加え、大学の役割、高等教育の社会に対する役割を排除することもないと思います。科学館よりも大学で学びたいという人たちは、多くいらっしゃるのではないかと思いますので、それをここに表現されたらどうかなというのが御提案です。
それから、最後に、先生から今御紹介いただいたHorizon Europeの件です。全く素人なので、この記載の方が正しいかもしれないのですけれども、今の小林先生の御説明だと、RRIというのは、第一、第二、第三、それぞれの柱の根底をなすものとして流れる思想であるというふうに理解したのですが、今記載されていただいているものだと、第一の柱に引き継がれているというふうに読めるので、第一だけではなくて全体に流れるものであるという記載の方が、先生の御説明と合っているのかなという印象を受けました。
【小林主査】 ああ、なるほどね。
【小野委員】 ここは、分からないので、正しく御記載いただくのが良いかなと思いました。
【小林主査】 確かにそうですね。オープンサイエンスのところだけで書いているけれども、そうではないのではないかということですよね。
【小野委員】 ええ。
【小林主査】 多分そうではないのだろうと思いますね。ここは少し書き方を工夫しましょうか。
【奥野課長】 あとは、そうですね、もう一度、恐らく政策形成過程になると思うので、考えられると書いていますから、そういう御認識であればそういう表現で。
【小林主査】 そうですね。ここは少し工夫させてもらいます。ありがとうございます。
確かに、ベンチャーだけではないというのはそうですね。最近、ザッカーバーグは本当に変わったのかという議論がありますよね。つまり、大企業の振る舞いというのが、大企業になるからこそ逆にああいうことを考えるのだという、そういう構造ですよね。企業の社会的責任論も、企業が社会の中で果たす役割も、大きくなると単なる営利だけではないのだと。社会の中の重要なプレーヤーとしてのビヘイビアは、それなりの見識が求められるということだと思いますね。ここはそうですね。
【小野委員】 アメリカのビジネス・ラウンドテーブルの議論でも、株主至上主義から、ステークホルダーを意識した企業活動へと力点がシフトしてきていると伺います。、大企業もきちんと頑張りなさいというメッセージの方がよいように思います。ただ、そうすると問題は、ピンが立たなくなりますね。企業というと何か誰でもみたいな言い方なので、そこは表現で工夫していただけるとよいと思います。。
【奥野課長】 先回の御議論ですと、産業界だとか企業全般とやったときに、特に一般的に全体で捉えてしまうと着目点が特に見えてこないというような観点で、恐らく新しくこれまで見てこなかった点というので、より、恐らく中小規模の事業体という点に着目点を移していると思うので、どちらの表現ぶりがここに書いた場合に適切かという御判断かと。
【小原委員】 これについては、私も企業の方がよろしいかなと思います。こういうふうに並べると、NPO、NGO、地域住民、地方自治体と一般的対象がきたのに、「中小企業」だけ少し具体的すぎるかなと。
【小林主査】 ベンチャー等を含む企業。
【小原委員】 いえ。
【小林主査】 ベンチャーとも書かずに企業。
【小原委員】 そうですね、大企業も含む企業全体。前回、「地方の中小企業が元気です」というようなお話を差し上げたので、その印象が強く残ってしまったかもしれないのですけれども、ここのコミュニケーションの機能の強化、対象としては、企業全体の方が私はよろしいかなと。
【小林主査】 いや、言いたいことは、多分皆さん大体共通して分かっているのだけれども、表現ですね。むしろ、ベンチャーの段階でも社会との共創とか対話というところでの活動のパターンと、それから、GAFAに象徴されるような、ああいう企業が今社会を意識し始めたということは、少し位相の違う問題を含んでいるのかもしれないのですけれども、どちらも今すごく大事になってきていて、日本では余り好まれないのだけれども、企業のガバナンスを考えるときに、エシックス(ethics)という切り口が一番良いのだというのはヨーロッパ的な感覚のようなのですね。ところが、日本の場合にエシックスという形で語ると、何となく抵抗感のある雰囲気がまだあって、だからガイドラインとか、規制とまでは行かないのかな、でも何かそういうふうな言い方の方が日本は好まれるというどうも風土があって、ここがヨーロッパの人たちと議論をするときにいつもうまくかみ合わないのですよね。彼らは、エシックスというのは、もっとあまねく普通に守るべきものとしてあって、それが一番根本として使っても良い言葉になっているのでしょうけれども、日本の場合は、倫理というと何か堅苦しくなるのですかね。何か道徳っぽくなるのですかね。何かそんな感じがしませんか。
【小出委員】 このワールド・サイエンス・フォーラム、今年の。
【小林主査】 サイエンス・アンド・エシックスですよね。
【小出委員】 「Ethics and Responsibility will be the main theme」になっていますよね。エシックスというのは、本来は一神教のキリスト教の考え方が原点にあってのエシックスですよね。特にアメリカみたいにいろいろな連中が来る中で一つのルールを作らないとというのが、特にバイオエシックスなどの言葉のときの裏の。日本にこのエシックスという言葉をそのまま持ち込むのも難しいでしょうし、しかもそのレスポンシビリティも本当はなかなか難しいですよね。良い翻訳をしないと、セクシーのように、日本語と英語でニュアンスが少し違うというようなものを、その間をどう埋めるかというのは。エシックス・アンド・レスポンシビリティと言われても。
【小林主査】 これは、確かに中小企業という言葉ですくっていった部分というのは、たしか調さんがこういう部分に対するメンションがないのではないかということだったですよね。
【調委員】 そうです。
【小林主査】 確かに出発点でベンチャーであっても、今はもうものすごい大企業になっている、そういう大企業の振る舞いの中に、そういうコミュニケーションとか、共創とか、そういう概念が当然今入ってきているというところ。実際、ファンディングもそうなのですよね。ESG投資という議論は、ある意味でファンディング機関が企業のビヘイビアに対する一定の方向付けをするための手法ですよね。だから、今度、ワールド・フォーラムでも科学研究の助成、ファンディングのエシックスというテーマでもセッションがあるみたいなのですけれども、言われてみれば、そのJSTみたいなファンディング機関がどういうふうな研究、リサーチ・プロジェクトを採択するかというときに、ある種の判断を当然しているわけですが、そのときにエシカルな判断というのが入るのか、入らないのかというのが、今、ワールド・サイエンス・フォーラムでは議論されようとしている。日本の場合だと、イノベーションとか、研究の水準とか、そういう観点から評価するということが中心だったわけですが、これからもそれで行けるかという問題が出てきそうな予感がするのですね。だからそういう感覚ですよね、ここで出さなくてはいけないのは。
株主の利益だけではない企業のビヘイビアというのと同じような意味で、サイテーションインデックスとか、そういう観点での研究、だけの評価だけではないような研究の評価というものがこれから必要になってくるでしょうと。特に出口志向でイノベーションというような議論をすれば、いよいよそうなるでしょうということをどう伝えるかということですね。これね、いきなり言うと、まず研究者集団は大分抵抗があるでしょうからね。そこを、いや、必要なのだということをうまく。
【奥野課長】 御指摘の箇所の文意に鑑みると、今の点ですけれども、こちらの中小企業と書くかの点ですが、ここに関する書き方に関しては、恐らくこれは客体としてその重要性を認識するという形の文体になっておりまして、多分、調先生との御議論等の趣旨としては、ここに書かれているのは、どちらかというと今まで政策施行等において、余り重視されてこなかったところに着目すべきだという文体になっております。前回の経緯で、この文体、行政の文章にして、企業とした場合の趣旨としては、むしろ政策軸的に産業界というのを重視、産業界に責任を負ってもらうという趣旨というよりも、どちらかというと政策遂行の観点として、企業という形で入れると、そういう形での政策は遂行できるのですが、産業界、企業集団というものに引き続き重視して着目していくべきであるという主張が入ってきて、ほかの箇所は、どちらかというと、これまでそこを重視してこなかったのではないかという問題意識があるのですが、ですから、企業と書いた場合には、前回の御議論のときに、まさに産学というような表現のときに、産というのを使ったときよりもむしろ新たに着目するようなポイントとして書いてはどうかという観点を入れれば、何らかの形の方向性がないと、引き続きむしろ産業界というステークホルダーを大事にしながらコミュニケーション政策というのを今後考えていくべきだというような形にも読めるのではないかと、補足。
【小林主査】 なるほど。確かにこの2ポツの(2)の下の段落の一番最後は、「科学コミュニケーション活動は、科学館、博物館等に限らず、企業」と、ここは企業になっていますね。
【小原委員】 おっしゃったように、「産業界」というのは企業の集まりであり、科学コミュニケーション活動の対象は「企業」なので、先生がおっしゃったとおり、中小企業やベンチャーも含む「企業」の方が両方の意図を汲み取る表現だろうと今のお話を聞いて思いました。どうでしょうかね。
【小野委員】 そうですね。
【小林主査】 少しそこを工夫させてください。ありがとうございます。いや、本当に表現の問題は難しいです。
それから、もう一つおっしゃった、初等中等だけではなかろうと。大学が、「から」という言葉で、今までこのあたりの部分では、初等中等教育では、恩恵のことばっかりというか、科学知識だけ教えるという側面が強かったのだけれどもというニュアンスなのですよね、これは。初等中等でもこういうことを教えなくてはいけなくて、大学は当然というニュアンスなのですけれども、それをもっと明示的に書いた方が良いと。大学に至るまでと書けば良いんですよね、高等教育に至るまでというふうに。初等中等教育の段階から高等教育に至るまでとやれば取り込めますよね。実際こういう感覚を大学の基礎的な共通教養としてどうやって与えるかというのは、これから課題になってくると思いますので、各大学はそういうことは取り組んでいるわけですよね。特に、不確実性、こういったところを正面から取り上げなくてはいけないという議論が、割と受け入れられるようになったのは東日本大震災だったのですけれども、それを奇貨として日本がどれだけ取り組めるかという問題だと思いますし。ここは、では高等教育に至るまでというふうに付け加えたいと思います。
【堀口委員】 質問して良いですか。
【小林主査】 はい。
【堀口委員】 先ほどの2の(2)の一番下から2行目に、先ほど企業のお話が出ていたと思うのですけれども、企業ではなくて、研究機関が公的研究機関と書いてあるのですけれども、公的なのですか。公的ではない研究機関も最近結構、の方が積極的にやっているかもしれないのですけれども、大学もここに多分私学とかいろいろな、入っていると思うのです。ここは、公的研究機関の研究開発なのですか。
【小林主査】 企業の研究開発、大学の研究開発、公的研究機関の研究開発というつもりですよね。
【奥野課長】 はい。
【堀口委員】 では、公的ではないところにいたら違うのですね。研究機関が必ずしも公的という感じなのですか。
【小林主査】 いや、これ、公的研究機関というと具体があるのですよね、国研ですよね。それ以外の研究機関はどこで拾っているかということになったときは、企業と大学で拾っているのですが。
【堀口委員】 なるほど。
【小林主査】 大学は当然私立大学も国立大学もありますし、企業の研究機関、研究開発というのは当然ここで拾っているつもりなのですけれども。
【奥野課長】 公的研究機関と書いた場合は、基本的に今言った。
【堀口委員】 国研ですよね。
【奥野課長】 地方公設試等を積極的に読むときに、行政の文章では公的という、恐らく地公体の研究開発活動も含むというニュアンス。
【小林主査】 公設試もそうですね。ですので、別に公的で、そういう縛りを掛けているわけではない。
【田中委員】 企業の研究機関でも該当するのかとは思うのですが、法人格という点ではどうなのでしょうか。公益財団法人格であると公益的な印象を持たせるように思えるのですが、営利とは違いますよといった。
【奥野課長】 それは公的の範囲を拡張して読んだ方が良いのか、列記した方が良いのか。
【田中委員】 はい。
【奥野課長】 ですよね。これは、恐らく基本法等の従前の表現の中から比較的意味が近い。
【田中委員】 余り細かいことを言いだすとわかりにくくなりますので、その点も含まれている程度でよいのかもしれません。失礼しました。
【小林主査】 だからそうやって「等」という言葉が乱発される行政文書になっていくのですよ。拾えるように、拾えるように、排除していませんということを言うために。
【小出委員】 この公的研究機関の中には、県とか、自治体とか、地方が作ったものも含まれる。
【小林主査】 含まれる。
【奥野課長】 はい。非営利団体が含まれるかどうかというのは、明示的に確認はしてないのですが、ただ、語義としては含まれるのですけれども、一般的には、国、地公体を読んでいることが多いような。
【小林主査】 非営利の研究機関。
【調委員】 日本では余りないですね。
【小林主査】 日本では余りないけれども。
【調委員】 ヨーロッパとかにはありますよね。
【小林主査】 そういうことになりますよね。
【片田委員】 関連して良いですか。
【小林主査】 はい。
【片田委員】 ここの部分、科学コミュニケーションの活動は、最終的にはその強化が求められるということですけれども、強化とは何かというと、恐らくその機会を増やすだとか、人員を増やすとか、そんな方向に行ってしまいそうなのですけれども、本当に重要なことは、能力向上なのではないのかというふうに思うのですよね。何かこのままだと、人員を増やして、機会の回数を増やしてになってしまいそうなのですけれども、最も研究者というのか、が欠けているのは、研究者のこういう能力なのではないのかという気がしてならないのですね。
そこの部分は、具体的にどうしていったら良いのかということについては、具体の方策もよく分からないですし、議論も十分ではないと思うのですけれども、本当にこういうことの必要性というのは、社会に認知され、特に研究機関に認知され、こういう活動はどんどんどんどんやられるのですけれども、何かパンフレットが増えているだけ、講演会が増えているだけとか、何かそんな状況でして、実効性という面にはお寒い状況のような気がします。最も求められるのは、研究者側の能力の向上だと思います。
【小林主査】 お手元のこの、これは多分片田先生もメンバーで作ったものでありますけれども、今年の2月にやった「今後の科学コミュニケーションのあり方」についてというペーパーをこの委員会で出しているわけですが、そこでは、どういう能力がこれから本当に必要なのかということが書いてあって、むしろその機会を増やせば良いという話ではないと。そうではなくて、単に分かりやすく説明するだけでは済まなくなっているということを縷々(るる)書いておりまして、しかもこれに基づいたプロジェクト提案を最近公募されましたよね。もう審査も終わったのかとは思いますけれども。そういう意味では、このペーパーそのものが実はここに本当は入った方が良いのだけれども、文量の関係でこうなってしまっているので、このマル3で書いたトーンをもう少しここにきちんと入れるということなのですか。
でも、この第1段落の最後の方のところでは、知識の翻訳機能、それから、対話・調整機能やコーディネーション機能を強化というふうに、どういうタイプの能力かというのは触れてあると思うのですけれども、もう少し書いた方が良いですか。要するに、研究者のというところが必要ですか。
【片田委員】 そうですね、そういうのというのは個人に依存する能力ですので、そこの部分は少し書いた方が良いのではないですかね。このままだと、何か回数を増やされて、予算を増やされて、パンフレットが増えるだけみたいな感じがしてならないのですけれども。
【奥野課長】 恐らく能力向上という、量だけではなくて質という観点、それは、はい、必要かと思います。一方で、今のここの科学技術コミュニケーションの主体というのは、研究者個人と特定することに関しては、今、一方で研究者の人材政策の中においては、これは学校の先生と同じなのですが、個々の研究者単体が極めて多忙化していて、研究等に専念できないという観点がありまして、政策全体としては、研究者により研究に専念させるために、システムとしての機能というのを研究者以外の人にもバイアウトしていくというような観点も、一方で研究能力向上という観点では進められていますので、これは、後ほどの恐らく研究者の責任という観点もそうなのですが、研究者という個人に対してどこまでの責務、義務を課すのかというような観点に関しては、よりシステム、チームで考えていこうという別途人材政策等もありますので、少し御議論においては、そういった観点というのも。一方でこの研究者個人に対して、余りに研究以外の多様な義務というのが一人の労働の中にオンされ続けると、研究者自身が非常に多忙になる、過大になるとともに、一方で、本務である研究の方のエフォートというのが低下しているのではないかという、そういうセクターからの提言もございます。当然科学コミュニケーションは必要ですので、それを全て研究者が担うのではなくて、研究者以外の科学コミュニケーターだとか、研究者以外の人も含めた形で社会とのコミュニケーションをやっていくというような観点も、一方では、今度は研究能力向上を進めている立場からは求められているという。
【横山委員】奥野課長のおっしゃることもとてもよく分かります。一方で片田先生のおっしゃることに非常に共感するのですけれども、マスで考えると研究者は80万人いるわけです。80万人の1%の人が、科学コミュニケーションを一生懸命やってくれる方がいれば、未来館の50人の科学コミュニケーターはとても助かるわけです。したがって、研究者の科学コミュニケーションの参加の効果というので非常に大きいという感じがいたします。
あと、この背景のところで、主査がおっしゃってくださった多層性が皆さんの目に一番つくところの概要みたいな形になっていますので、これからは多層性の時代なのだというようなことを書き込んでいただくと、ペーパーとしては、ぱっと見たときに分かりやすいかなと思った次第です。
【小林主査】 ありがとうございます。多層性の件は、もう少しハイライトを掛けろということですね、おっしゃるとおりだと思います。
今の片田さんのおっしゃっていることは、ここはものすごく微妙なところで、研究力が低下しているというのは非常に強く議論されて、それは一定現実としてあるのですね。大学で見ていても、研究以外の時間が増え過ぎてもうたまらんという声が出ているのは事実です。それは、単にコミュニケーションをやらせているから駄目なのだという話ではなくて、それ以外の要因がいっぱいあるのですけれども、そこでコミュニケーションもやれと言うと、そこにコミュニケーションに対する怨念みたいなのが生まれやすい構造があって、かつ、それでもやれと言うと、若手の助教とかのクラスにそういうことを押し付けてしまうみたいな行動が起きやすいのですね。ですので、この研究者が科学コミュニケーションというものを大事だと思うということは、もう片田さんおっしゃるとおりで、そこが変わらなければ駄目だということをどうやって政策的に持っていくかということを悩むところなのですが、例えば、この第1段落で「対話・調整機能やコーディネーション機能を適宜強化していくことが望ましい」というところの後に、そのためには、科学コミュニケーションに取り組む研究者を積極的に評価するような仕組みが必要であるとか、何かそういう形で後押しをしてやるということとセットで持っていかないと、多分悲惨に若手がこき使われるという、それでパンフレットを作るんですよ、おっしゃるとおり。それはね、余りに気の毒で。本当はPOクラスの人たちが、自分が率先してこういうことをやらなくてはいけないということを言うというふうに持っていかないといけない。これはELSIなんかも同じ構造がありまして。
【堀口委員】 たしか再生医療学会か何かが、その学会員にコミュニケーションの活動について聞いている調査があって、その中で、必要だとは認識しているけれども、それを評価されないというのがアンケートの結果で出ていましたので、今、主査がおっしゃっていただいたように、それがその研究者としての評価につながるように持っていかないといけないのかなと。先ほどのところの5行の文章を読んでいると、最初は行う者の育成とかという感じで、人のイメージが文章の中から受け取れたのが、そこが削られることによって、人のイメージがなくなっていって、後半で、「その上で」ということで、大きな組織の名前が出てきたので、少しイメージができにくくなったかなという気がしました。
【小林委員】 確かに、備えた者の育成が求められると書いていたのを、行うことが求められるになっているから、余計、そうですね。
【堀口委員】 はい、なったので、人のイメージがなくなって、誤解を生むではないですけれども、受け取りにくくなってしまったのかなとは思いました。
【小林委員】 ただ、これをこういう方向にした理由の一つは、これだけのことができる者を1人の人間にその能力を持たせるというのは無理だよねと、だからある種システムとしてこれをやっていくために分業体制も含めてということを言うためにこうしたのですよね。そうすると、今度は、科学者は何も変わらなくて良いのかという議論を惹起するというのが片田さんの御指摘。
【堀口委員】 そうですね。
【小林主査】 それはそうではないわけで。これは、文量的にはぎりぎりなのですか、もう。
【小田補佐】 まだ、はい、4ページ。
【小林主査】 4ページにまだこの下がこれだけ残っているわけですね。そうすると少し書き込みましょうかね。もう少し、片田さんのおっしゃった点を。あと数行この部分については書き込んでいくと。
【調委員】 「こと」ではなくて、体制と人材を何とかする、整備するとか。
【小林主査】 そうでしょうね。ここでは総合的に行うために必要な体制と人材育成が求められるというぐらいのことは書けますよね。
【小出委員】 よろしいですか。
【小林主査】 はい。
【小出委員】 今のその体制と人材なのですけれども、このサイエンス・コミュニケーション、科学コミュニケーション自体そのものが、インターディシプリナリー、いろいろ多領域へのアプローチが必要ですね。そのコミュニケーション活動の主役にサイエンティストが持ってこられてしまうというのは、もちろん科学者にも責務があるのですけれども、もっと広い視点から見たとき、社会と科学の間をつなぐミドルのウェアが何か必要ではないかと思うのです。そういうフレームの中で、サイエンティストがこれだけ貢献すれば、こう評価される、というように、全体を俯瞰させるような設計図があると、どちらを向いて進んだら良いか、分かりやすくなると思います。サイエンスコミュニケーターとして育てられた方も、なかなか職場のフィールドが広がっていませんが、そういうものを含めて、社会と科学の連携は、これからどういう方向に行かなければならないか、理念が示されれば、サイエンティストのうち何人かは、必ずそういう貢献をしなければいけないと考えると思うのですが。そして、努力はどう評価されるのかが見通せれば、みんなもう少し受け止めやすくなると思います。
【小林主査】 なるほどね。
【小出委員】 そういうコンセプトをここに盛り込めば、これが財務省の説得に意味があるかどうかは分かりませんが、社会と科学の連携という取り組むべきプロジェクトの全体像を見せて、その中でどのような役割を果たす人材が必要になる、という方向が示されれば、国民に向けてのメッセージにもなり、みなさん納得しやすいだろうと思います。
【小林主査】 だから、その研究時間の問題で議論になっているときは、研究支援者の増強とか、そういう議論が起こりやすいのですよね。海外に比べて日本の研究環境は。
【奥野課長】 そうですね、バイアウト。
【小林主査】 そう、バイアウトという議論が出てくるのですが、科学コミュニケーションをバイアウトで終わらせて良いかという問題がまた別途あるわけですよね。研究者一人一人がそういうマインドを持つということをやらないと駄目でしょうという議論は、確かにそうなんだよな。ELSIにしても、科学コミュニケーションにしても、バイアウトだけで済ましていたらまずいんだよな、多分。
【小出委員】 ただ、エンゲートジメントという言葉の中には、個々にレスポンシビリティがあるということと、効果的なコミュニケーションができるということは、少しフェーズが違うような気がするのです。個々にレスポンシビリティがあるということはもちろんなのでしょうけれども、実際にこれをどう進めていくかという、大枠の方向性が見えていると、それぞれのステークホルダーはそこで何をやったら良いかな、という方向にステップが進み、もう少し先が見通しやすくなるのではないかと思います。
【奥野課長】 主査がおっしゃられたり、まさに横山先生御指摘のような点で、もし科学者集団としてのレスポンシビリティという観点ですと、3ポツの中で特に名宛て人を研究者にして、次の3ポツの中で「研究者も、様々なステークホルダーとの信頼関係の構築のために」という後ろに、社会リテラシーの向上という観点と。
【小林主査】 それは書き込んであるね。
【奥野課長】 はい。この成果が社会に及ぼす影響等を分かりやすく説明するというような観点。おっしゃるとおり、システムとしてコミュニケーションの一定量の作業ですとか水準を一律、これはまたPIの業務として盛り込むというと、恐らくこれは労働管理的な問題も出てくる。
【堀口委員】 1点教えてほしいのですけれども、科学者と研究者というのは、どういう感じで使い分けるのですか。
【小林主査】 科学の定義を広くとるか狭くとるかなのですね。科学者と研究者はニアリーイコールだというふうに言うときは、科学者というのは広くとっているのです。人文も社会科学もみんな科学だというふうに言えば、科学者と研究者は一緒だと思うのでしょうけれども、狭くとると、科学者というのは、ややナチュラルサイエンス的に聞こえるときがある。これが一つ。それから、多分研究者と言うと、それはなりわいかな、どちらかというと。
【堀口委員】 なので、食品安全委員会は、リスクコミュニケーションの在り方をまとめるときは、あそこは研究者という言い方をしないで、科学者という言い方をしている役所なのですよね。なので、研究者というのは、あえて全部削っている感じだったのですけれども、あそこはいろいろな業界の人がいるので科学者という言い方にしているのですけれども、こっちは研究者なのかなという。
【小林主査】 文部科学省はどうしていますか。
【堀口委員】 文部科学省はどうしているのですか。
【小林主査】 基本計画などで、科学者と研究者を使い分けているのかですね、まず。
【堀口委員】 文部科学省はどんなふうに使い分けてるのかなと思って。
【奥野課長】 人材政策課は、基本的に研究者という語しか使わないし、そちらの研究公正のときも科学者の語は。
【丸山室長】 基本、研究者。
【奥野課長】 研究者を使っている。
【小林主査】 そのときの研究者の定義というのは、フラスカティ・マニュアルみたいなものですか、OECDの。あれはある種の定義ですよね。
【堀口委員】 科学コミュニケーターと言っているときに、研究者というとまさにその研究の時間がないとかそういう話になるのですけれども、科学者となると、何かその話にそんなに触れなくても良いのかなという、イメージとしては。
【小林主査】 触れなくても良いというのは。
【堀口委員】 研究不正がどうだとかというのも、研究という文字があることによって不正の話が出てくると思うのですけれども、科学者がコミュニケーションに関わるとなれば、そんな科学の時間にとらわれないとか、そんな話にはならないかな。
【奥野課長】 基本、科学技術基本計画は、全ての表記を研究者に統一して、科学者は使っていません。
【小林主査】 食品安全委員会も研究者、科学者。
【堀口委員】 いや、うちは科学者です。どうしましょう。研究者と書こうとしていたら、いや、科学者に、うちは科学者なんですと。
【調委員】 ただ、医療研究者のことは科学者って言わないんじゃないかなって、ちらっと思うんですけれども、食品産業系の人のことは科学者ではないのだという。
【小林主査】 科学者じゃないんですか。
【小出委員】 サイエンティストではない。
【小林主査】 サイエンティストではないと言うの。
【堀口委員】 なので、ステークホルダーのそれぞれの役割を書いているのですけれども、なので、企業の方々、消費者及び消費者団体みたいな感じで書いていたときに、研究者と書くのかなと思ったら科学者と言われた。科学者になっているのです。
【小出委員】 新聞の表現では、研究者というのは、今リサーチしている人だけではないと思います。研究者OBの方とか、過去に大きな業績をあげて、リタイアされている人も含めて科学者なのです。例えば、日本の核科学のパイオニア、仁科芳雄先生なども科学者と呼びますし、だから科学者というのは全体を示す言葉で、その中で今なにかのテーマでリサーチしている人を研究者というように、使い分けることが多いと思います。
【堀口委員】 なので、OBと言ったら失礼ですけれども、最前線のリサーチャーではない人こそ、その研究の楽しみとかいろいろ、それこそコミュニケーションをするところには実際にも出てきていただいていたりもするので、何かどうなのかなと思って。
【小林主査】 でも、片田さんがおっしゃりたいのは、まさしくその意味では、研究者がそういう内容に移っていくのが大事だという論点ですよね。
【片田委員】 それに関連して、更にもう一歩踏み込んで言うならば、2ページの3wの最後のフレーズは、ステークホルダーの話なのですけれども、これを読んでいくと、研究者も「社会リテラシーを向上させ、分野を超えた知識・視点を駆使して研究の内容やその成果を社会に及ぼす影響をわかりやすく説明し」となっていますよね。説明することよりも、自らが正しく認識し、そしてソーシャル・イノベーションを進めるための戦略的な行動がとれるというところまで踏み込んで初めて能力ではないですかね。そんなふうになってなくて、「説明し」みたいな。何かパンフレットを作り、みたいな感じですよね。ですから、僕はその研究者の能力と、先ほど、そういう能力と言っているのは、何かここの今のところを見ると、研究者自身がリテラシーを向上させて影響を分かりやすく説明できるような人みたいな、何かそういう解説者っぽい話になっていますよね。違いますよね。それを研究者本人が正しく認識し、それに対する社会的な影響の構造というのをしっかり把握し、社会をどう導くかということに対するソーシャル・イノベーションを起こすための方向性、倫理観を持って、そこに対して戦略的に行動がとれるその戦略策定と実行力、それがコミュニケーション能力なのでしょう。何かそこまで書かれてなくて、よき説明者にしかない。そのときには、何か後ろの方にある「ソーシャル・イノベーションを進める必要がある」と書きながらも、それに対する戦略的な行動をとらなくてはいけないみたいなことが書いてあるけれども、それは研究者個人には求めてなくて、その能力向上の部分については、何ら触れられてないという感じですよね。こうあるべきだという、何か倫理解説書になっているみたいな、そんなイメージを持っています。
【堀口委員】 分かりやすく説明できないです。数学者の人とかの話を聞いていると。「わかりやすく説明し」という言葉は、私も余り良くないと思います。もう少しおっしゃっていただいたように、大きく書いていただいた方が全部含まれて良いのかなと。
【小林主査】 いや、この「わかりやすく説明し」というのは、若干単調かなと私も気にはなっていたのですが、この及ぼす影響等を自ら認識しとならないと駄目でしょうというのは、まさにそうですね。
【片田委員】 そうですね。まずそれが認識できているのかという問題ですよね。
【小林主査】 そうですよね、そこですね。自ら認識し、社会のための科学を共創していく責任を果たす方がすっきりしますね。
【片田委員】 更に言うならば、戦略的な、そこに対して貢献できるよう戦略的な行動まで本当は求めるべきだと思いますけれどもね。
【小林主査】 少し難しいですよ。具体的にどんなイメージですか。
【片田委員】 私のやっている分野なんてまさにそんなのばっかりですけれども。部屋に閉じこもって何やってるのという感じですよね。
【小林主査】 いや、だから研究者か科学者か分からないのだけれども、ものすごく研究とか科学の多用性があるので、そういう社会との一番の課題のところに直に触れ合うタイプの研究から、そこからかなり遠くて、そもそも認識もしてないでラボにこもっている研究まで、すごいギャップがあるじゃないですか。
【片田委員】 そうですよね。
【小林主査】 だから、そのラボにこもっている人たちは、まず認識するところをやりましょうよと言うのが精いっぱいで、そこから先までやらせるというと、すごく単純な産学連携に走り出すのですよね。
【片田委員】 そうですね。おっしゃるとおり。
【小林主査】 このニュアンスを分かっていただけますか。
【片田委員】 分かります。
【小林主査】 なかなか難しいところもあるのです。
【小野委員】 小林先生、でもそのHorizon Europeの予算の構成を見ると、今、片田先生がおっしゃったような、社会的な課題を解決するとか、その市場を創るというところまで含めたところにその、何ていうか。
【小林主査】 圧倒的にお金が行っていますね。
【小野委員】 冒頭に海外の事例をお入れになるのであれば目指すところがあるのだとすると、目指す像を示すことで、、入れた意味が後ろでつながってくるという印象を受けます。
【小林主査】 確かに、258億、527億、135億ユーロというふうになっているので、第二の柱にお金がいっているのですが、これね、グローバルチャレンジで書いているけれども、実は、その中黒の後の産業競争力の方にお金が行っていると思いますね、現実にはね。ヨーロッパにとっての危機感というのはそこに明らかにあって、そのヨーロッパが産業競争力をどうやって回復するかというのは、すごく大きなアジェンダだと思うのですね。日本も同じ部分があって、世界で一番イノベーションの起こしやすい国でしたっけ、総理が言っているのは。というふうに、低成長時代で、日本がこれからどうやって生きていくかというところでの産業競争力、あるいはイノベーション政策にかじを切っているというのはそこなのですよね。なので、それをむげに否定することもできないわけで。この、今、片田さんがおっしゃったところをどこまで強く書けるかは検討してみたいと思いますが、少なくとも「わかりやすく説明し」で説明しちゃってしまうことはやめたい、ということは取り組みたいと思います。
【真先戦略官】 1点だけよろしいですか。今の、「3. 各ステークホルダーの取組について」の、今言及がありました「このほか、研究者も」というそこの段落なのですけれども、そもそも片田委員の御意見に関しますと、「このほか、研究者も」というこの書き出しの部分が、何ていうのですかね。
【小林主査】 後からおまけでついている感じが、「このほか」ということで。
【真先戦略官】 はい。そもそもこの話が一番実はポイントであって。
【小林主査】 一番の胆のところ。
【真先戦略官】 ええ、それが「このほか」では少しどうかなという。
【小林主査】 これは、研究公正がここに少し入っているので、研究公正に触れるために「このほか」という言葉が入ってしまったのですけれども、そうではないだろうと、確かに。
【真先戦略官】 そういった意味で、もう少しさかのぼりますと、2ポツの(2)の最初の段落です。ここで先ほども少し御議論がありました、いろいろなステークホルダーの例示が並んでいるわけですが、これは、ある意味意図を持って、従前ハイライトを当てようということでここにNPO、NGO云々とあるわけですが、もともとステークホルダーというものの種類といいますか、第5期基本計画の第6章を見ますと、「研究者、国民、メディア、産業界、政策形成者といった様々なステークホルダー」という言い方をしています。ですから、研究者自身も実はこのステークホルダーの一つなのですよね。ここで強調したいのは、研究者自身に更なる進化を求めたいというのが最大のメッセージであるならば、ここにも何らかの言及があってもしかるべきかという気もいたします。これは御意見です。
【小林主査】 確かにそうですね、研究者は重要なステークホルダーということが書かれていないというのは問題ですね。分かりました。これは書き込みをしてみましょう。
【小原委員】 1点、今のお話で、そうすると、その下に「様々なステークホルダーと研究者」となっていて、何となく気になりました。
【小林主査】 「と研究者をつなぐ」。
【小原委員】 入るのか、相対するのかというところが、確かに重要な話で。
【小林主査】 研究者がステークホルダーに入っていれば、ステークホルダー間をつなぐになりますよね、そうですね。先ほどのレスポンシビリティのその案分問題みたいなものと同じで、どこに一番大きなレスポンシビリティのポイントがあるかというときに、研究者というのは相当大きなレスポンシビリティがあるのだということをどう強調するかということですね。
【奥野課長】 恐らく議論にするときに、ほかの箇所との違いなのですが、国民というのは、これは集合体ですし、この下のメディアというのも集合体ですが、研究者と書いたときに、これが個々人の研究者に当てられていると解してしまうと、今、恐らく片田先生がおっしゃるような義務が個々人の研究者に分有されると解すれば、今の研究システムを考えますと、ある種研究者というのは、官僚機構的な形で末端に、PIの方は良いのですけれども、PI以外の研究者も今言ったような立場に立てるのかというと、なかなか厳しいような点があるので、この研究者というのが、ここの委員会で見ているのは、研究者集団、ステークホルダー集団として見て書けば。
【小林主査】 そうです。
【奥野課長】 おっしゃるような深いことも書けますし、個々人と受け取られると、恐らく小林主査が言われたような観点なので、集団として捉えるようなニュアンスを出して、恐らく高い基本。ただ、そういう書き方をしたときには、おっしゃるように、結局個々人のレベルにおりていかないような可能性もあるので、個々人の研究者の方は、最低限こう考えてねとするのか、より高く研究者集団はここにたどり着かなければならないのか、どちらの方で恐らく書いてまとめられるかで、確かに前段の国民というのは明らかに集団、集団になって、ここが若干個人のように、個人というような色彩が今若干出ている議論と、恐らく集団に対する議論があると思いますので、どちらの方向にも多分事務的にはまとめることはできるかと。
【小林主査】 集団としての表現方法ってどんなことになるのですかね。
【奥野課長】 後ろの書いている内容をそういうようなトーンにして、研究者を集合体だというような形で、一貫して書いていく。
【小林主査】 1回それで書いてみましょうかね。だから、一人一人に自覚せよというふうに言うと、多分強過ぎて反発を食う。さりとて集団にすると希薄になり過ぎるという、その部分ですよね。さりとて学協会とやってしまうと、また余りにも遠くなってしまうし、難しいな。
【奥野課長】 あともう1点、3ポツで、先ほど頂いた中で、少し文の構造的に、3ポツの中で、「国民が、初等中等教育の段階から」で、今度高等教育と書くと、これ、名宛て人が国民になっていますので、後段で受ける恩恵だとかそういったものの理解を深め、リテラシーを向上するというのは、恐らく教育政策から見ても、ライフサイクルとしては、今生涯学習という観点があるので、高等教育で止めずに多分一生を通じてというニュアンスを名宛て人との関係で。
【小林主査】 そうですね。
【奥野課長】 そういう形で工夫をさせて。
【小林主査】 先ほどの小野さんの趣旨はそうですよね。
【小野委員】 はい。
【小林主査】 では、そういうふうにしないと。
【調委員】 済みません、良いですか。2ページの(1)の最後のところなのですが。
【小林主査】 修正版ではなくて、確定版というか見え消しではない方。
【調委員】 そうですね、見え消しではない方を見ていました。最後のところで、「多層性ある科学コミュニケーションを的確に選択、実施していくべきである」で、ここは2か所少し気になりまして、まず、多層性あるなのか、多層的なのかというのは一つ、言葉の使い方としては、何となく多層性にこだわっちゃったから入れているけれども、少し不自然な言葉。
【小林主査】 2ページのどこら辺。
【調委員】 2ページの(1)の一番最後です。
【小林主査】 一番最後か。「多層性ある」。
【調委員】 多層的の方が。それとともに、「的確に選択、実施していく」の的確に選択は、この幾つかのレイヤーのどれかから選択していくという意味なのだと思うのですけれども、この文章はそういうふうにとりづらいですよね。多層的でも多層性ある科学コミュニケーションを的確に選択していくというのは、この集合体の科学コミュニケーションを選択するに読めるので。
【小林主査】 なるほど。ここは文章を工夫します。
【調委員】 次が、何かそういう小さいことばかり。その次の(2)の4行目のジェンダー、宗教などの」で、「など」で入れているのですけれども、このとき、多分人種は「など」に込めないで出すのが普通だと思います、感覚的に言うと。ジェンダー、人種、宗教、あるいはジェンダー、人種でも良いかもしれない。
【小林主査】 人種を入れますかね。人種って何ですかねという問題が出てきてしまうのですよ。人種って科学的概念ではないんですよね。
【調委員】 まあ、そうか。
【小林主査】 そもそもこれは宗教を入れるかどうかも迷ったところで、ここはだから「【P】」にしているのです。
【調委員】 なるほど。
【小林主査】 皆さんの御意見を聞きたいところです。
【調委員】 宗教を抜くのなら割とむしろすっと入ります。
【小林主査】 ジェンダーだけで良いのかという議論もあったのですよね。多様性のところはジェンダーだけではないだろうという議論もあって、そうすると何が入るのだという話になったときに、宗教を考えなくて良いのかという議論があって。
【小出委員】 宗教は、今、ハワイの天文学が一番直面していますよね。だから宗教と文化というのもその一つの手かもしれないですし。
【堀口委員】 長崎のBSL-4に関して言えば、宗教かなとは思います。浦上地区は。カソリックの地域なので。
【小林主査】 聖地なわけだ。
【堀口委員】 はい。あそこは、だから、例えば、阪大がBSL-4を建てようとか、北大が建てようと思ったとしても、少し違うと。
【小林主査】 なるほど。
【堀口委員】 そこの配慮は必要で。
【小林主査】 もう現実にそれが起こっているわけね。だから日本もこういうことになるのですね。日本は、今まで余り気にせずにやってきたのだけれども、海外ではハワイの話とかありますよね。
【横山委員】 欧米では、先生方御指摘のように、人種と宗教でばしっと明らかな違いが意識調査では出てきますけれども、日本はそれが出なくて、長崎はなるほどなと思ったのですけれども、全体としては、日本は、キリスト教は2%で、大体神道と仏教が混ざり合ったような感じで、余り差異がないのは今までだったのですけれども、確かにどこまで入れるのか。
【小林主査】 これからしかもどうなるか分からないですよね、日本は多民族国家化していく可能性がありますものね。
【横山委員】 移民の方が増えてきているという。
【小林主査】 そうすると宗教の問題、今まで気にせずに済んだのが、気にすることになるのかもしれない。まだ分からない。
【堀口委員】 例えば、新宿区とかも公立小学校の子供たちの3割とかが海外の子供たちだとか、科学に直接結び付いてないけれども、例えば、ブラジルから来ている人が多く住んでいる地域とか、あと、沖縄を考えれば、人種という言い方は失礼かもしれないけれども、あるような気はするのです。
【小林主査】 それはね、北海道のアイヌの骨の問題とかね、ああいう話になってくると、単なる科学で押し切れない議論になるのですよ。
【小出委員】 常識というブレが、スペシフィックってあるのかもしれないけれども、文化という中に織り込めた方が、整理しやすいと思います。宗教と文化は重なっている部分もありますが、宗教には明らかに文化と違う部分もありますよね。
【小林主査】 ジェンダー、文化というふうにしますか。宗教と表立って書かずに。そこで読めますし。
【小出委員】 でも、ハラールの問題もわかり易い例ですが、宗教はもう、日本はこれから絶対……。
【小林主査】 避けて通れない。
【小出委員】 一神教には、いろいろと繋がなければならない部分も多く。
【堀口委員】 長崎の人たちにとっては、長崎駅よりも大浦天主堂とかああいう観光地の人たちは仏教徒だから、全然長崎駅よりも北に行ったことはないと普通に言われますし、駅から大学があったりした兵器工場だったりとか、そういうところはクリスチャンのところだし、もう少し奥に行けば結核の療養所がありましたとか。BSL-4とかを考えるときには、そこの宗教の背景を考えないと多分。
【小林主査】 動かないでしょうね。
【堀口委員】 動かない。
【小林主査】 むしろそういうことが増えるでしょうね。
【小出委員】 多様性の認識をする必要があるこの多様性というのは、社会の多様性という意味ですよね。
【小林主査】 そうですね。
【小出委員】 そこに文化が入ってもおかしくないかもしれないです。社会というものをどういうふうに表現するか。
【小林主査】 人種という言葉を、ヨーロッパ、欧米はレイスで使っているのですか。人種を英語ではどういう表現をしているのですか。サイエンティフィックに別に人種ってそんなに。
【奥野課長】 民族とかいう。
【小林主査】 民族って英語で何ていうの。
【菱山局長】 エスニシティとかか、使うのだったらよいかもしれません。ただ、ここで使うことはまた別ですけれども、多分、我々行政的にはあまり使わないかもしれません。
【奥野課長】 行政文書の中で人種という概念はないですね。
【菱山局長】 使えないと思います。使うと、それはそれでまたいろいろ、違ういろいろな捉え方をしてしまいますので。
【小出委員】 どんどんそれにはまってしまうような気がします。
【小林主査】 だから人種はここで入れなかったのはそういうこともあって、宗教をどうするかというのは迷ったところなので、今日皆さんの御意見を聞こうと思っていて。
【横山委員】 ジェンダーを入れた方が良いと申し上げたことが、この一連のことを起こしてしまっていることを考えれば、ジェンダーを含めて多様性というふうに入れてしまえば一番すっきりはするかもしれないですね。確かにジェンダーの問題は、日本は非常に遅れているということは皆様御認識のとおりなのですけれども、特出ししなくても多様性に入れてしまっても大丈夫です。
【堀口委員】 でも、どこかに言葉がないと、ずっと遅れたままになってしまう。
【小林主査】 多分ね、食べ物とかになってくると文化的な多様性って効いてくるのですよ。極端な話、犬を食べるかどうかみたいな議論が韓国であるのと同じで、それと同じように、日本でも昆虫食というのは信州ではありふれている話ですよね。そうすると、バイオ肉の開発によってタンパク質不足を進めるべきか、昆虫食を推進すべきかみたいな選択肢を議論するときに、これは文化的差異が物すごく大きくて、というような話が今も起こり始めていますからね。
【堀口委員】 そもそも世界的に言えば、日本の食生活は不思議な国。毒がある魚をどうして食べるのかと。毎年人が死んでいるじゃないかと国際会議で言われても、食べますという。
【小林主査】 BSEが起こったときにアメリカから言われましたよね。お前たち、そんなことを言うけれども、フグを食ってるじゃないかと。農林水産省のその担当者が、いや、それは何か違うんですけどねって。でもうまく説明できないわけです、フグを食べてるわけですよね、毎年一定数死んでますよね。
【小出委員】 BSEも、ふぐ料理も、危険部位だけ除去すれば良いという、同じ発想で向き合えますね。
【小林主査】 そうなの、そうそう。
【小出委員】 特定危険部位だけ除けば良い。最初からそうやって説明すれば、農林水産省はもう少しトラブルがなかった。
【堀口委員】 例えば、伝統食で一つ認められているので、金沢の方で。
【小林主査】 そうですね。
【堀口委員】 発酵した肝を。
【小林主査】 発酵して、それで無毒化するやつね、ありますよね。
【小出委員】 ここは、だから文化という言葉が入るのが一番素直ですね。
【小林主査】 素直ですね。宗教の後に文化。
【片田委員】 宗教の前の方が良いのではないですか。
【小出委員】 前の方が良いのか。
【片田委員】 包括するから。
【小林主査】 包括するから。ジェンダーの後ぐらい。
【片田委員】 ジェンダー、文化、宗教か。
【小出委員】 それは、今後コミュニケーションは絶対アクセスしなければいけないという領域だという。
【小林主査】 そうなのです。コミュニケーションのときには必ずそういうことを意識しないといけない場面がこれから増えてくるだろうと思うのですよね。
【横山委員】 先に進んでしまいますが、5ポツで質問をよろしいですか。
【小林主査】 どうぞ。
【横山委員】 再読してよく理解ができないままになってしまって、ページ4の5ポツの下の段、「科学的知見は、政策形成過程において尊重されるべきものであるが、それが政策決定の唯一の判断根拠ではないことを各ステークホルダーが認識することも重要である」、これ、背景がよく分からないのですけれども、状況としては良く理解はできるのですが、どういうことを意図されてこういうことを書かれているのでしたでしょうか。
【小林主査】 ああ、ここですね。これは、多分、政策形成過程というのは、科学的な判断だけで決まらない、もっと総合的なアートのような側面があるということを言おうとしたのですけれども、どうしようかな。これは、前の基本計画にもこう書いていませんでしたっけ、たしか。これのベースになっていったのが、CRDSが作った科学的助言に関する報告とかのところで積み上げられてきた議論だったと思うし、欧米などでもそうなのですけれども、安全性の評価とかのところは、科学的データだけで線引き問題は決まらないのですよね。それこそフグを食べてるような話になりますね。あれ、毒です、はい、毒です、以上と言われても、おいしいから食べたいというときに、行政が毒だから全部禁止というふうな判断をするかといったら、できないのですよね、日本の場合は。同じような毒性を持っていて、ほかの魚で外国からやってきたら入れるのをやめるというようなことを普通にできてしまう場合もあるだろうとか。
【横山委員】 この5ポツの上のその前の段落までが言っていることはとてもよく分かるのですね。この委員会から総政特に打ち込んでいくときに、科学的知見をシンプルに提供して役立てていただきましょうというふうに言っているということは分かるのですが、この最後の今の段落は、むしろ提供者側に、これだけではないんだよということとを、だから何か納得するようにというような意味合いを持っていて、多少違和感がある。もし、これがそんなにこの5ポツにおいて重要でないのであれば、重要だとは思うのですけれども、これはこの段落自体はなくても良いのか、それとも必然性があるのかというのが少し分かりにくかったです。合意形成は複雑だから科学だけでは決まらないけれども、でも科学的事実をなるべく尊重して、合理的な判断をしてほしいというのが恐らく多くの国民の願いではあるわけですね。そことは矛盾するような書きぶりのような印象を受けました。
【小林主査】 これ、強調点は、「唯一の判断根拠ではない」なのです。「唯一の」なのですよね。だから、科学的知見を使うなと言っているのではなくて、唯一これだけでどうも決められない問題というのが、多分政策形成においてはあるだろうということを言いたかったわけです。
【奥野課長】 恐らく、削除するかどうかという議論はありますが、元の場に戻って、従前やっていた、切ったときの説明責任と、あと、1点、これは一方の効果として、政策形成過程に研究者等が参画する際の、ある意味の責任の有限化にもなっている側面はございますので。
【横山委員】 そうですか。
【奥野課長】 原子力等、シビアな案件で科学的知見を使う際は、政策決定との間における一定の有限化というのがないと、なかなか研究者の方はコミットしづらい、政策形成領域にはコミットしづらいような観点もあるので、そういった点も踏まえて、この政策決定者側というのがその助言を位置付けるというのは、科学研究人材的に、ある意味研究者の円滑なコミットとこの責任の有限化というのは、研究者側から見ればポジティブな要素もあるのです。
【横山委員】 なるほど。
【小林主査】 実際には、これは政策担当者が科学を唯一の判断根拠であるかのように利用するという場面が出てくるのですよね。その責任をそちらに転嫁するみたいなことをやると、今度は研究者の側はコミットしにくくなるという、そういう意味では両方が離れていく構造が起こりやすいと。多分、テクノクラシーとか科学主義みたいな形だけで政策は決まらないのだという総合的判断の余地と科学の持ち出す知見との間の有限化というか、隙間ですよね、これが必ずあるのだということを残しておくのが政策立案にとっては重要ではないかというふうには思うのですけれどもね。いかがですかね、真先さんとか、局長とか、こういう部分の「唯一の」というところに今ポイントを置いているわけですが。
【真先戦略官】 第5期の基本計画。
【小林主査】 にも書いてありますね。
【真先戦略官】 書いてあります。この机上資料の第5期科学技術基本計画、47ページを御覧いただきますと、ここの47ページのマル3というセクションがあるのですが、実は、そこをほとんどなぞっている文章なのです。まさに意味としては、小林主査から言及がありましたとおり、研究者の助言に対して責任転嫁をされやすい部分がどうしても生じますから、そこに対する一定の保険と言ったら変ですけれども、そういう意味があるのかなと思っております。
【小林主査】 ここは残させていただきたいなと思いますけれどもね、よろしいですかね。
【横山委員】 はい。
【調委員】 頭からなのですけれども。今度は、3ポツの2行目の「論理的な方法等」というところなのですけれども、これは、どっちが良いかなというところがありますが、むしろ科学の手法とか、そういうことを意図しているのですよね。だとしたら何か「論理的な方法」だと合理的に考えることを学べとか、そういうことを想起させる部分もあるので、もう少しダイレクトに言ってしまった方が良いのではないかと思いました。
【小林主査】 例えば、科学的な。
【調委員】 科学的な手法とか、科学の手法とか、そういう。
【小林主査】 限界不確実性の後に科学の方法と来るのも何か変だよね。
【小出委員】 多分逆だと思います。
【調委員】 逆なのだと思いますので、順番としては。
【小出委員】 サイエンスアプローチと、それからそれの持っている限界という感じですね。
【調委員】 そうですね。
【小出委員】 アンサーテインティ(Uncertainty)ですが、不確定性というか、それと並列の方が。
【小林主査】 そうですね。だから。
【調委員】 科学の知識ではなくて、科学についての知識を学べということですかね。
【小林主査】 順序としてどうする、どこに入れますかね。科学的な方法の特性みたいな話を理解しろと言っているわけですよね。
【調委員】 その前まで行く必要がありますよね。
【小林主査】 そうすると、初等中等教育の段階から、科学的な方法の特性を学ぶとともにというふうに、そこに持っていかないと。
【調委員】 なるほど。
【小林主査】 恩恵と限界をセットにしようとしたときに、後に入れると何か変ですよね。
【調委員】 そうですね。難しいな。
【小林主査】 科学的な方法の特質を学ぶとともに、か。これは、本当にELSIの議論をしようとしているときのPOの方々が常におっしゃることで、よく分かるのですけれども、感情的な批判ではなくて、科学というものをきちんと理解した上でという言い方をされる。それは一定もっともなところがあるので、これを入れるべきだろうとは思うのです。
まだありますか。
【調委員】 まだあります、たくさんあります。4ポツは下から3段落目ですけれども、これは少し難癖的なところもあって申し訳ないのですけれども、「特に主要な科学技術プロジェクト」というふうに書いてある、この「主要な」って何なのだろうなという気はします。例えば、社会的な影響が大きいと想定されるとか、そういうことなのかなとか少し思っています。つまり、何だろう、例えば天体望遠鏡、あのハワイの問題がありますけれども、天文台を作るとかそういうのって、それほどこういうことは要らないですよね、主要なプロジェクトであってもというイメージがあったので。
【小林主査】 「主要な」というのが曖昧だということですね。
【調委員】 そうですね。
【小林主査】 もう少し何か。
【調委員】 これは、あと大型プロジェクトは全部やらなければいけないみたいな、そういう意味で、小型は逆に言うと良いのかしらみたいな。
【小林主査】 社会実装を目指すぐらいですか。
【調委員】 それは一つありますね。
【小林主査】 社会実装を目指すからこそアセスメントが要りますよね。社会実装とは何ぞやという議論をしないと。表現は工夫させてください。言いたいことは、単なる「主要な」では分からないよということですね。
【調委員】 はい。
【小林主査】 承知しました。
【調委員】 次が、5ポツの2段落目ですけれども、最後の「独立の立場から提供されるべき」、これは提供すべきですね、多分、主語がステークホルダー。
【小林主査】 そうですね。
【調委員】 そこから、ここ、どうしようかなと思うのですが、「こと」が2回出てくるのがここともう1か所あるのですけれども、これは、良いのでしょうか、政策文書では。一般の文書だと悪文で避けたりしますけれども、ここはもう良いものなら良いのですけれども、その次の段落にも「こと」が2回出てくる部分があります。
それから、あと、最後、これは、ここは手を出さないということが基本なのですが、研究の公正性の部分で、2行目の「研究の公正性の確保が前提となる」というのは少しおかしいと思うのですね。これは研究の公正の確保ですよね、多分。最後の段落にも「研究の公正性の確保」が出てくるのですが、これは2か所とも多分公正の確保だと思うのですけれども。
【小林主査】 どうですかね、丸山さん、このあたり、公正性と使わなくてはいけない積極的理由はありますか。
【奥野課長】 前の基本計画をそのまま引いている部分は。
【丸山室長】 活性化法で「公正性の確保」という言葉を使っているので、それを今使っています。
【奥野課長】 法律を引いている。
【調委員】 でも、少しおかしいですね、「公正性の確保」というのは、多分、研究公正の確保、あるいは研究の公正の確保ですよね。
【奥野課長】 研究公正という言葉が、恐らくまだ法律等で使えるほど実は確定的な言葉でもない。
【丸山室長】 そうですね。
【小林主査】 ガイドラインの名前は何でしたっけ。研究公正という部分につながってなかったっけ。
【丸山室長】 ガイドラインの名称は、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」です。
【調委員】 ああ、そうか。
【小林主査】 リサーチ・インテグリティの訳としての研究公正。
【奥野課長】 研究公正、多分法令に書けるほど当時は固まってなかった。
【小林主査】 透明性の確保は別にそんなに違和感はないでしょう。
【調委員】 でも、本当は多分そこは日本語がすごい雑にずっと使われているから。
【小林主査】 なじんでしまった。
【調委員】 なじんでいて、何とか性というのを僕らはすごく雑に使っているのですよね、確かに。関係性と関係だったら、本当は関係なのに関係性と言うような、それと同じ。専門性も実はそうだなと思って見ていたのですけれども、これはもうしようがない、常語になってますから。
【横山委員】 多層性も気を付けなければ。
【調委員】 多層性もまさに。
【横山委員】 多層的な方が。
【小林主査】 多層の方が良いですね。言葉は難しいですね。
【調委員】 でも、公正性だけは、もう研究公正になってますよね。
【小林主査】 6ポツの「研究の公正性の確保」から来てますね。
【調委員】 そうです。この一番上を見落としてた。
【小林主査】 ここで一気に研究公正の確保とやってしまうことが許されるかですね、行政の文書で。
【奥野課長】 今度、基本法をそうするかどうか、今、関連法規の用語を調整しています。一般的に行政文書でこれを使うときは、恐らく研究公正という言葉がまだ確立されてないところで、「性」を付けることで、法文等を書くときに付けたというのは、恐らく研究公正という言葉が日本語として多分、法文で使えるほど確定してなかった。基本法は今度の議論ですね。基本法と条文、ときの造語を確認します。
【小林主査】 今はかなり研究公正って使うようになりましたよね、もう日常的に使っていますけれども。
【奥野課長】 文部科学省では、一般的には研究公正を使っています。
【丸山室長】 そうですね。
【小林主査】 もうそうなっているでしょう。できたらそうしましょうよ、頑張ってください。
【小出委員】 研究公正性推進室じゃないですものね。
【小原委員】 言葉の問題に関して、そもそもの話になってしまうのですけれども、2ポツの「科学コミュニケーション」は、「科学技術コミュニケーション」が正しいのか、「科学コミュニケーション」でよいのか、どちらでしょうか。第5期では、「科学技術コミュニケーション」とおっしゃっていて、2月の提案では「科学コミュニケーション」と使い分けられていて、委員会の名前は「科学技術社会連携」なので。何をもって「科学コミュニケーション」と「科学技術コミュニケーション」を使い分けているのか、分からなくなっているので、もし答えがありましたら。
【小林主査】 どうでしたっけ。科学技術コミュニケーションと科学コミュニケーションで。
【調委員】 こっちの文章では技術が入っている。
【奥野課長】 恐らく2月にまとめたときは、科学コミュニケーションでまとめられていますが。
【小林主査】 基本計画はどうなっていますか。
【小原委員】 前回は科学技術コミュニケーションと書かれている。
【小林主査】 第5期は科学技術コミュニケーションですよね。
【小原委員】 先ほど、ステークホルダーの多様性の話になると、「科学技術」と入れると、民間などは、「ああ、自分たちも入るんだな」と認識しやすい感じはあると思うのですが、「科学」というと、ナチュラルサイエンス的な意味合い、印象が少し強くなって、「あまり関係ないな」となるように思います。ただ、意図をもって使い分けられているのであれば、そのままでも。
【小林主査】 これね、科学技術と科学という神学論争に巻き込まれたくないんだよな。あるんですよ、まだ。
【小原委員】 そうなんですね。
【小林主査】 まだその中黒を付ける付けないという話も出てくるのですよね。今はだから中黒を付けないのですよね。それを付けるべきだというふうにおっしゃる方がまだ時々ちらほら出てきますよね。科学技術基本計画、科学技術・学術政策局も全部科学技術に中黒なしなのですよね。そうすると、科学と技術は違うのだという議論をする人が中黒を入れたがるのです。じゃあ男女で中黒を入れるかという話になって、中黒はなくても男と女は別だってみんな分かっているだろうという論法で対抗したこともあるのですけれどもね。
【堀口委員】 片仮名の単語では、サイエンスというのは、非常にすごく今普及していると思うのですけれども、最近サイエンスの言葉の方がテクノロジーよりも聞くようになったなという印象があります。だから、科学が非常に優位なイメージがあって。テクノロジー、でも実際は、その実装となってくると、テクノロジーに入ってこないと実装には結び付かないのに、サイエンス、サイエンスと言って。
【小原委員】 そうですね。コミュニケーションの中身を言うのであれば入れた方が良いのだろうと思います。
【小林主査】 今、でも全体としてね、基礎科学の振興を怠った、駄目だったのではないかという議論をするじゃないですか。そのときの基礎科学という言葉は、技術と距離を持ったものをおっしゃるのですよ。そういう方々からすると、科学技術という言葉に抵抗があったりするのですよね。
【堀口委員】 科学からいきなりテクノロジーを抜いて実装って、ちょっと、ですよね。ただ、普通に聞いている分には余り考えないのだけれども、そういえば、最近テクノロジーという、実装という言葉と、サイエンスという言葉はよく聞くけれども、テクノロジーという言葉を聞かなくなったなと思って。
【小林主査】 科学技術コミュニケーション、振興調整費でやったときは、あれは、3拠点は科学技術だったか。
【奥野課長】 確認しましたが、机上資料のマル3の「今後の科学コミュニケーションのあり方について」と書いた、2月8日の報告書の段階ですと、これの2ページの注記の下によりますと。
【小林主査】 「本とりまとめにおいては、同義のものとして扱う」。
【奥野課長】 同義として、だから恐らく同義と解していますので、もしそうだとするならば、恐らく従前第5期基本計画で科学技術コミュニケーションを使っているならば、特段の点がなければ、科学技術を使うことも従前の積み重ねから見れば可能かとは存じます。
【小林主査】 第3期、4期は科学コミュニケーター。第3期においては、「科学コミュニケーターは、科学技術コミュニケーターとされているが」、この注記はどういう意味。第3期、第4期は科学コミュニケーターと呼んでたの。科学技術コミュニケーター。
【小田補佐】 反対ですね。
【小田補佐】 科学技術コミュニケーターというふうに。
【小林主査】 3期、4期は言ってた。
【小田補佐】 はい。
【小林主査】 第5期は。
【小田補佐】 第5期は科学技術コミュニケーションという用語が使われておりまして、46ページになりますけれども、ここの(1)のマル1の1行目に「第3期基本計画以降」。
【小林主査】 「科学技術コミュニケーションを政策的に誘導してきたこともあり」という形で。
【小原委員】 ただ、コミュニケーターということで47ページの一番上は「科学コミュニケーター」とおっしゃっている。決めの問題かと思いますけれども。
【小林主査】 なるほど。
【片田委員】 科学はコミュニケートするもので、技術は伝承するものみたいな、特定の者に伝えるものみたいな、そんなイメージがありますよね。サイエンスカフェと言うと良いけれども、テクノロジーカフェと言うと何か埃っぽくなっちゃうみたいな。
【小林主査】 でもね、ゲノム編集というのは、サイエンスでもあり、エンジニアリング的なテクノロジーでもあるのですよね。
【堀口委員】 テクノロジーではある、そうです。それこそ社会実装の割と分かりやすい事例だと思います。
【小林主査】 AIもそうですよね。
【堀口委員】 はい。
【小林主査】 だから、その辺の区別がつかなくなってきているときに、科学技術と一語で表現できる日本語は便利だというふうに海外では言われたりしたこともあって、科学はサイエンス・アンド・テクノロジーというふうに、アンドでつなぐのではなくて、テクノサイエンスという言葉は作られたりはしたのですけれども。これ、ずっと科学技術イノベーションと言いながら、コミュニケーションのところだけ科学コミュニケーションになるというところの平仄をそろえるべきかどうか。これは、政策文書的にはどうなのですかね。次の第6期でどう書くか問題と直結する。
【奥野課長】 一般的に処理するとすると、前例を踏まえれば、科学コミュニケーションの語の前には科学技術を使って統一した上で、ただ、コミュニケーターという言葉が科学技術というのが一般的に流通してないならば、そういう言い方だとして科学コミュニケーターと科学技術コミュニケーション。ただ、科学技術イノベーション、コミュニケーションまでなかなか行けないなとは思います。
【小林主査】 科学技術というのは使いにくい言葉ですね。これは、工学系の方と理学系の方で、本当にここはいつも争いが出てくるのですよね。振興局の名前は研究振興局ですね。だから科学技術という言葉を使っているのは科政局(科学技術・学術政策局)だけ、局の名は。
【菱山局長】 現在の文科省はそうですね。昔、科技庁のときは科学技術振興局という局がありましたけれども。
【小林主査】 研究3局、そうか。どうしましょう。科学コミュニケーターと科学技術コミュニケーションという使い分けをするというのが一つ。横山さんだと科学コミュニケーター、科学コミュニケーション。
【横山委員】 短いほうが使いやすいですね。でも、意味を考えれば、先ほどからの御議論があるように、特に民間の大きなところを考えると、技術は入れておいた方が良いと思います。シンプルにいつも使う分にはつい科学コミュニケーションとかコミュニケーターとか言ってしまいますけれども。
【奥野課長】 今の本文中だと、コミュニケーターは今回使われていませんので、そうすると全てを科学技術コミュニケーションに統一する形に原稿本文ではなるかと。
【小林主査】 そうか、コミュニケーションという言葉だから、ここは科学技術コミュニケーションに統一をするということにすると、この「今後の科学コミュニケーションのあり方について」というふうに題してしまった、今年の2月に出したものが、政策文書の流れで逆に少し浮くわけね。同じ委員会でそういうことを言って良いのかしら。
【片田委員】 でも、2ページのところにきちんと注意書きされているから、良いのではないですか。「同義のものとして扱う」とあえて注書きしてある。
【小林主査】 では、そうしましょう。
ほかにもお気付きの点があれば。
【小原委員】 もし細かいところに入ってよろしければ、「3. 各ステークホルダーの取組について」のところで、冒頭に「「共創」への深化の」とありますが、これも「共創の」かもしれないですね。
【小林主査】 そうですね。
【小原委員】 「「共創」への深化のためには」で、上の方で共創の深化も含め、最終的には多層、ここも「性」のある科学コミュニケーションを最終目的にしているので、ここで「「共創」の深化のためには」と冒頭持っていくと、あれ、これをやるんだったっけというふうに私は印象を受けますので、ここは「多層的な科学コミュニケーションのためには」が良いのではないかなとは思いました。
【小林主査】 共創と多層的科学コミュニケーションの関係をもう一回よく見ておかないといけないということですね。
【小原委員】 はい。
【小林主査】 「「共創」のみに着目するのではなく」と言っている。
【小原委員】 そうですね、先祖返りしているような感じがします。
【小林主査】 なのにまた共創に。だから、(1)のところの、単線的モデルではなく多層的にやっていって、その中で共創というものも位置付けられている。ほかのタイプのものも全部必要だと言ったではないかと。なのに、最後のところで、3のところで、また。これ、「共創」と「「共創」への深化」を書き分けているのだよね、よく見ると。
【奥野課長】 そうです。
【小林主査】 そういうことですね。深化させているものと、それから単純な共創とを分けているということで整合をとっているのだな。分かりにくいでしょうね。
単線的な推移モデルとしての共創ではないということなのだから、多層的な科学コミュニケーションを踏まえた共創なのだよね。多層性ということをきちっと強調するのだったら、それが分かるように書くべきだという御指摘ですね。分かりました。これは、前の方のところにも、深化だけでは少し分かりにくいということか。
【小原委員】 横山先生が先ほどおっしゃったように、「多層的な」というところが今回重要だと思うので、その言葉がなるべくいろいろなところで前に出ていると良いかなと思います。
【小林主査】 これは少し検討いたします。
【調委員】 嫌なことに気が付いてしまったのですけれども、科学という言葉が至るところに単独で出てきているもの、これを全部見直すのですか、ここの中で。例えば、先ほど私、科学の手法とかそういう言葉を言いましたけれども、科学技術の手法にしなければいけないのかとか、科学館とありますけれども、これは技術館もありますから、科学技術館にするのかとか。国際科学協力というのは、これはもともと科学技術協力と元の文書も書いてあるから科学技術協力にするのかって、これ、余り考えたくないのですけれども、そういうものというのは、整えるべきであるのであれば整えた方が良いのか。
【小林主査】 科学技術イノベーションと科学技術コミュニケーションは全部同じようにしますよね。それ以外のところをどうするかですね。
【奥野課長】 科学的手法は言葉として恐らく確立しておりますし、科学館も言葉として確立して、博物館、科学館、そこは行政上の、もう一度改めて精査させていただいて、行政上、科学館という言葉で確立していれば、むしろ変えると違う意味になってしまう。
【調委員】 あと、科学的知見もあるのですが。
【小林主査】 科学的知見は良いのではないですかね。
【調委員】 良いですか。
【奥野課長】 科学的知見は、はい、全然よろしいと思います。
【小林主査】 国際科学、どこの何ページだったっけ。
【調委員】 4ポツの下から2段落目の。
【小林主査】 「社会技術や国際科学協力に関する」で注記5。
【調委員】 注記5のところを見ると、そのプログラムの例が「国際科学技術協力プログラム」になっている。
【小林主査】 JICAのSATREPSですよね。
【奥野課長】 ここは技術を入れても。確認します。
【小林主査】 Future Earthは別に科学技術協力ではないんだよね。だからこれは一般名詞ですよね。
【奥野課長】 これも政策担当課が使っている公文書の表記と、もう一度改めて整合を確認します。
【小林主査】 お願いします。出てくるものですね、いろいろと。
【横山委員】 細かいところで、5ポツ、よろしいですか、一つだけ。2段落目の「説明し、信頼と理解を得ることが求められる」、「理解を得る」というのが、震災後、割と上からの目的なイメージがあるということで避けられてきたことがあるかと思うのですが、例えば、信頼と支援を得るというような言い方はいかがでしょうか。理解ではなく支援。
【小林主査】 理解を得るではなく支援、これもよく考えると誰にというのが書いてないのだよね。誰に説明をして、誰の信頼と誰の理解か、支援を得ることが求められるかということが書いてないというのが問題だよな。これは広く社会ですかね、とりあえずはね。
【奥野課長】 社会にしてしまうと、ただ、ここ、前段は政策形成におけるとなっているので。
【小林主査】 そうですよね。
【奥野課長】 したがって、恐らく政策形成に参画している主体というのをどう捉えるかで、社会が政策形成に参画しているととるのか、従前のように主として行政、立法などと向き合っていると捉える、助言者と書いた場合、恐らく行政や立法だったので。
【横山委員】 なるほど。
【奥野課長】 御指摘のとおり理解というのは自然ですけれども、政策形成とすると、より市民等も参画する広いものだと捉えると、ここの中にそういった層がいると捉えると、恐らく今のような。
【小林主査】 これも第5期がそのままなんだな。誰を書いてないんだな。
【堀口委員】 リスクコミュニケーションでは、理解を得ることだけではなくて、相手を理解する、要するに研究者がステークホルダーを理解することを含めていて、そうでないと合意形成にも至らないから、理解を得てもそこから先が進まない。
【小林主査】 これは、だから先ほどの片田さんの指摘などともつながってくるところで、ただ理解するための、説明するだけの、それで良いのかという議論と同じになってくるんだな。
【堀口委員】 なので、よく使っているのは相互理解ですね。
【小林主査】 ああ、なるほどね。
【小出委員】 信頼と相互理解。
【堀口委員】 はい。
【小林主査】 なるほどね。その方が良い。第5期は「社会の多様なステークホルダーと」と書いていますね。ステークホルダーに対してという言い方。一方、政策形成に関わるステークホルダーは、だから当然これは、研究者は、政策形成に関わるステークホルダーに対してという意味なのですよね。
【調委員】 済みません、先ほど自分が指摘したことが間違っていることに気が付いてしまいました。
【小林主査】 そうですね。されるで良いのですね。
【調委員】 されるで良いですね。これ、割と読みづらい文章だなと。主語がこっちではなくて知見がになって、ステークホルダーの場所を変えた方が本当は分かりやすいのですよね。
【小林主査】 そうですね。科学的知見が、政治的意図に左右されることなく、独立の立場から提供されるべきことに鑑み、政策形成に関わるステークホルダーは、その環境の整備に留意すべきであるというふうな文章にすべきですね。
その対象を少し書きますかね。第5期ぐらいにはせめて書いておいた方が良いような気がしますね。そうか、この第5期の段落の部分を数行にまとめて短くしているためにそういう言葉が飛んでいるわけね。結局、第5期からの課題が書かれていながら、現実に今我々が書けるような新たな展開みたいなものがないんですよね。だから、そこがつらいところなのですけれども。結局、やったことというのは、外務省の科学技術顧問、この助言者のあれぐらいですか、この間に新しくなったのは。
【真先戦略官】 新しくやったのはそのぐらいですね。
【小林主査】 ぐらいですね。
【小出委員】 活動されてないですよね。
【小林主査】 だから、それ以外のことって、実はできてないのだよな。本当は、ここはもう少しきちっと考えてやっていくべき課題があるのだろうなとは思うのですけれどもね。医薬品などに関してよく言われますよね。製薬会社からの研究費をもらっている人が審議会で議論するというときに、問題ではないかというのが常に出てくるわけです。でも、全然そういうのをもらってない人たちばっかりで集めてやれと言われたら、有能な知見を持っている人を必ずしも十分集められないという、そういうトレードオフの構造じゃないですか。それに対して、例えば、イギリスなどは、自分がどこからどんな金をもらっていたかというのを全部公表するという仕組みを導入したりしてという。つまり、我々の社会ですぐれた科学知見を使うためにどういう工夫が必要かという観点からこの問題は本当は取り組むべきで、そのための制度整備を本当はやるべきなのだけれども、十分できてないのではないかというところはあるのですよね。
【横山委員】 日本でも寄付金と審議会の関係が取りざたされたことがありました。おっしゃるようにそういう整備はすごく必要です。
【小林主査】 だから、これ、「科学的知見が、政治的意図に左右されることなく」というのは、これは実はすごく大事なことを言っていて、そのための制度とか環境の整備が重要であるというのは正しいのだけれども、それを本当にやるかどうかですよね。もうやらないと、きつくなってくるのではないかという気がするんですけれどもね。どうですか、AMEDなどはよくやっておられるので、問題状況をよく御存じだと思いますが。
【菱山局長】 COI(利益相反)できちんと申告しろというのはやっています。ただ、幾らとかいうのまでは多分やってなかったと思いますが。AMEDの場合は、薬の審査というわけではないので、企業からの研究費とかそういうものの申告制はなかったのですが、ただ、共同研究をやっているとか、当然ながらそういうのはCOIとして申告をしてもらう。
【堀口委員】 食品安全委員会は、三親等までバツにしてあります。なので、最初に確認をとってから審議はスタートしています。委員の中でも、例えば論文に名前があったとしても削除という、そこでは議論に加わらないとか、消費者調の場合は、アドバイザーとして置いてあるけれども、基本的には議論の中には入らない。消費者事故調ですね。
【小林主査】 これ、各省庁で扱いが大分違うの。
【菱山局長】 その事柄によって違うと思います。
【小林主査】 違うのですね。
【堀口委員】 厚生労働省の薬は、すごい枚数書かされますけれども、これをもらっている、もらってない、幾らもらっているか、そこまで記載して。
【小林主査】 この抽象的な書きぶりで良いのかという問題はあるけれども、この5ポツの適用省庁ってどこになるのですか。政府全体ですよね、書きぶりとしては。
【奥野課長】 現時点では、文部科学省の文書ですが、基本計画に出しているその意図としては、政府全体で一本化、具現化していただきたいという趣旨で書いております。
【小野委員】 上の話より下の話、6番の研究公正の話に近いのかもしれないのですけれども、最近、MITのメディアラボの伊藤穣一さんがお辞めになりましたよね。あれも彼がどうこうというよりは、そのファンディングを受けていた先が倫理的に問題があるということで、いろいろトラブルがあったと伺っています。日本はアメリカほど民間からのファンディングがあるわけではないのだと思うのですけれども、大学にもこれからそういう動きが広がっていくのだとすると、日本でもルールが必要になりますね。現状はどういう状況なのでしょうか。公正性というのを、誰が許容するルールになっているのかというのは、米国でも曖昧な部分も大きのかなと思います。日本は多分もっと曖昧なのだろうなというふうに思います。
【小林主査】 メディアラボの件は、むしろそういうところからもらっているということを隠そうとしたような動きもセットになって、それで一気に辞任に追い込まれましたね。
【小野委員】 そうですね。何か、それも大学自体がそういう方針だったというような話もあったりして、真偽はわあっと盛り上がっているからよく分からないですよね。
【小林主査】 そうなのですよね。いや、だから研究機関が研究費をどんどん産学連携も含めて推進しましょうという議論になっていったときに、そこでの透明性の確保みたいなものはすごく大事な課題になってくるのですけれども、今は、とにかくその寄附金を集めることの方が評価されるという流れなので、そこの透明性のところのチェックの議論というのは、そんなに強くないですね。
でも、いろいろあります。研究所の研究講座を作りますといったときに、その研究講座の特任の教授にその企業の人を採用するというときに、研究者としての資格だけで本当に評価しているのかという疑義が持たれる場合がないわけではないので、それを内部できちんとチェックして、これはお金をもらったから教授のポジションを与えるみたいに見えないようにするということは、すごく大事なことだというような議論は学内ではありましたから、そういう意味でのチェックという機能を持たないと、これから多分難しいでしょうね。国のお金だけで研究機関が動いている場合だったら、そこのチェックの掛け方というのは割とクリアなのですけれども、いろいろなルートからお金が入ってきてということになると、そこの部分というのは問われていくだろうと思いますね。
ここをどうしますか。でも、そこまで踏み込んで書くということをやろうとすると、でもこれは少し抽象的過ぎるよな。
【小出委員】 ここに関連して、いろいろな不祥事を取材して感じることは、研究者といっても、例えば理化学研究所でもあれだけ研究者がいれば、その中の何人かは不正なことをやる人間はいるだろうという視点が一つあるのですね。それは、どの組織、企業でも同じで、不正なことをやる人間は必ず何人かはいる。この事実を前提に、ではどう考えるか、という視点が必要なのではないかと思います。不祥事や事件が起こるたびに、元検察官や弁護士たちと議論をすると、彼らはこうした視点を持っていると感じます。特に刑事事件を扱う法律家たちの視点というのは、会社がある、役所がある、どんな組織でも、何割かは必ずそういう人がいるのだから、それを前提とした仕組み、意識改革が必要ではないか、とよく言われます。我々も、贈収賄や研究不正などの事件を取材するときに、同じことを痛感します。いま大切なのは、こうした意識を共有することではないでしょうか。研究不正や、コンプライアンス問題に対して、「規則遵守は大事だ」ということを繰り返すことはもちろん重要なのですが、こうした方向の表現だけでは、研究者、組織人の、士気を落とす方向に力が掛かりそうな感じがして、それが気になっているのです。
研究者たちは、もちろん、大半が前に向かって、まっとうにやろうとしています。ただ、不祥事というのは無くならない。一部の不正事件などが発覚したときに、規則厳格化、点検強化、研修の義務化、不祥事が起こったときによく出てくる、「二度とこういうことが起こらないように」というコメントが繰り返されるのですが、この方向の動きだけで、本当に良いのかと、いつも疑問に感じます。このコメントと同時に、先の方向性を示すポジティブなメッセージを発信する、若しくは士気を落とさないフレームというのを、考える余地はないだろうか、将来を見据えた、少し息の長い課題として、考えるべき方向の一つではないかと思います。
【堀口委員】 大学とかは、開かれてないところだなと思っていて、予算を見ようにもよく分からないし、不正を例えば皆さんで議論をするといっても、みんな顔見知りの人たちで、本当にきちんとジャッジができるのかというところもありますし、BSL-4の海外の研究所を見ていると、地域住民とかを入れたステークホルダーの集まる第三者委員会を必ず設置して、どういうウイルスを使ってどんな研究をやるとか、そういうものをずっとコミュニケーションするのがすごく大事なのだという言い方を各担当者が言われていたのは10年前のことですけれども、それを考えると、日本は、全然、独法化もされたけれども、開かれずのままで、逆に言うと内にこもるというか、ただ人を入れたから良いでしょうというような感じになっているかなと。議事録を見ても、例えばこの会議とかも、非常に議事録は丁寧に出てきますけれども、第何号議案については了承されたとか、そんなのが議事録になっていて、一体何を議論しているのかさえも、中の職員も分からないというようなのが今の大学という研究機関ではあるなとは思っているので、こういう共創をしていくのだったら、お金の使い方だけではなく、地域に開かれていかないと共創はできないし、本当の産学連携も難しいのかなと思うので、何か10年遅れている気はすごくしているのですけれども、ニュアンス的に前に向かって、本当に共創して多層性を持ってやるのには必要なのかなと思っています。
【小出委員】 思っていますということは、みんなコミュニケーションも全部つながったテーマではあるのですよね。
【小林主査】 言葉は言うのですけれども、なかなか現実がというところはありますね。
もう時間が来ましたのですけれども、5ポツの部分の表現はもう少し工夫することにはしたいと思います。
【調委員】 5ポツのここの、「政治的意図に左右されることなく」って、これだけ特出しすると何かものすごくある意味、挑発的に見えるのですけれども、私は割と好きだけれども、これは、独立の立場であることの一例、例えば、利害関係や政治的意図とかにして、少しニュアンスを和らげた方が良いような気がします。
【小出委員】 全体として、研究者というのがシュリンクしない方向での表現になっているとありがたいです。基本的には、自分たちでまずやりなさいなど、主体性を維持できる表現を考えていただければと思います。
【小林主査】 いや、それはおっしゃるとおりで、きちんとすぐれた科学的知見を社会が活用するためには、研究者が安心して科学的知見を述べることができる環境が必要なのだけれども、逆に研究者もそういう役割だということをきちんと自覚しているし、そういう意味でのチェックが掛かっているという緊張感は要るのですよね。
【小出委員】 それは間違いないですね。
【小林主査】 少しそのニュアンス、工夫をしましょう。これはいつまでにやらなくてはいけないのですか。もう時間が余りないのですよね。
【小田補佐】 10月の18日に。
【小林主査】 10月18日。幾つかというか、たくさん宿題をもらいましたけれども。
【小出委員】 お任せいたします。
【小林主査】 課長と御相談しながら取りまとめていきたいと思います。
今、最後におっしゃった点をとっても、本当はこれから大事になる、本当にいろいろな場面でオープンな形での共創をするための課題というのはいろいろなところにあって、それをコミュニケーションにだけ特化して議論をしても多分駄目で、というところですよね。これは、まさにこの委員会の任務だろうと思いますので、今後ともそういう議論の方をやれるようにしたいと思います。
今日は、本当に具体の経験をお持ちの方々からいろいろと説得力のある発言を頂けて、本当に感謝しております。少しでも良い案を総政特の方に出せるように努力したいと思っています。
特に何か、これだけはというのはよろしいですか。大体言っていただけましたでしょうか。
そうしたら、少し時間を超えましたけれども、今日の委員会はこれで終わりたいと思います。あと、事務局の方で何かスケジュール等について御説明はありますか。
【小田補佐】 先ほど申し上げたとおり、本日御議論いただきました提案に関しましては、10月18日に総政特の方に最終案として提出するという運びになってございます。この提案に関しての議論はここでおしまいになりますが、委員会そのものは引き続き継続されるという形になっておりますので、次回の委員会につきましては、先生方の日程を調整の上、改めてまた御連絡をさせていただければと思います。
それから、本日の委員会の議事録につきましては、作成次第、先生方にお目通しをいただきまして、文部科学省のホームページに掲載させていただくという形になります。引き続きよろしくお願いいたします。
以上でございます。
【小林主査】 どうもありがとうございました。今日は、これで散会いたします。

―― 了 ――

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