科学技術社会連携委員会(第10回)議事録

1.日時

令和元年8月29日(木曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省 東館15F 科学技術・学術政策局1会議室

3.議題

  1. 第6期科学技術基本計画策定に向けた検討
  2. その他

4.出席者

委員

小林 傳司 主査、小野 由理 委員、小原 愛 委員、小出 重幸 委員、調 麻佐志 委員、田中 恭一 委員、堀口 逸子 委員、横山 広美 委員

文部科学省

真先 文部科学戦略官、奥野 人材政策課課長、丸山 人材政策課研究公正推進室長、小田 人材政策課課長補佐

5.議事録

【小林主査】 定刻よりも若干早い、ほぼ定刻ということで、第10回の科学技術社会連携委員会を開催したいと思います。前回は少し欠席の方もいらっしゃったのですが、今回は比較的、でも何人か逆に欠席されておりますけれども、今回新たに参加していただいた方もいらっしゃいます。たしか前回は横山委員が欠席でしたね。それから調委員も欠席でしたか。で、今回は来ていただいた。ありがとうございます。
ということで、今日はこのアジェンダの紙を見ていただくとお分かりのように、議題は第6期科学技術基本計画策定に向けた検討となっております。お手元にはその資料が置いてございます。それから事前に各委員にはこのたたき台の案については送付して、御一読、御検討をお願いしたと思います。今日はそれを中心にした議論としたいと思っております。それでは事務局から資料の説明等をお願いいたします。
【小田補佐】 まず、今回初めて御出席される方を御紹介させていただきます。まず初めに科学技術社会連携委員会委員を御紹介させていただきます。調委員でございます。
【調委員】 よろしくお願いします。
【小田補佐】 続きまして、横山委員でございます。
【横山委員】 よろしくお願いします。
【小田補佐】 続きまして、文部科学省の出席者を御紹介させていただきます。真先文部科学戦略官でございます。
【真先戦略官】 真先でございます。よろしくお願いします。
【小田補佐】 丸山人材政策課研究公正推進室長でございます。
【丸山室長】 丸山です。よろしくお願いします。
【小田補佐】 それから、配付資料について確認をさせていただきます。まず、クリップ留めの薄い方でございますが、本日の資料は議事次第に記載させていただいておりますとおり資料1-1、1-2と、委員の席上に配付させていただいております紙ファイルでとじている机上資料、これら3点になります。机上資料でございますが、附箋を2か所張らせていただいております。こちら一つ目のオレンジの方は、第5期科学技術基本計画の該当部分に附箋を付けております。それからもう一つ水色の方でございますが、こちらが科学技術基本計画第1期からの推移の図に附箋を付けております。これらはこの後の議論で参考になる部分かと思いますので、附箋を付けさせていただいております。議論の途中でも結構ですので、過不足等がもしございましたら御指摘いただければと思います。以上でございます。
【小林主査】 前回、ソーシャルイノベーションに関して何人かのプレゼンテーションを頂いておりますが、今日初めていらっしゃった方には、その資料がどこに存在しているかを見ていただいた方がいいかなと思います。附箋の付いている机上資料の丸4、ここに前回の資料が載っておりまして、最初の方はたたき台という資料2-1がありまして、資料2-2以降が前回の大変興味深いソーシャルイノベーションに関する議論の御紹介でした。
そして、今、事務局から青い附箋が付いていると説明いただきましたけれども、これが日本の科学技術基本計画の中で科学技術と社会の関係についてどういう記述が順番として展開されてきたかということの年表のようなものになっております。それぞれの基本計画のところの下に赤でアンダーラインが引いてありますが、これがとりわけこの委員会にも関係の深い記述になろうかと思います。
それで、今、我々は第6期に向けてどのような提言をするかということになります。事前にお送りしたものがこの資料の1-1になりますが、この1-1の概要は小田さんから説明してくださいます?それから参考資料に調査報告書が二つありますが、これの位置付けとか何か、御説明はありますか?
【小田補佐】 概要につきましては事務局から。
【奥野課長】 資料1-1は後ほど事務局から説明します。もしほかの参考資料等に関して座長から特に御紹介等あれば。
【小林主査】 参考資料を二つ付けておりますので、御覧いただければと思います。まず、まだきちんと製本されていない方(参考資料 科学技術イノベーション政策における社会との関係深化に向けて)が新しくて、もう一つの方(参考資料 自然科学と人文・社会科学との連携を具体化するために -連携方策と先行事例-)はもう少し前に出たもの、昨年出たかと思います。
昨年出た方の製本されているものというのは、いわゆる共創という概念と、それから文理融合的な研究というものに焦点を当てたもののレビューになっております。だからこれも当然この委員会にとって非常に大事な問題点になります。この報告書、お読みになった方はいらっしゃいますかね。これはなかなかに具体的に考えておられまして、例えば8ページあたりになぜ連携がうまくいかないかということの分析までされておりまして、これは経験者としては身につまされる話です。研究方法や用語の違い、社会的課題に対する認識の違い、相互のコミュニケーションと信頼の不足、研究成果に対する評価の違い。これは本当にこういう問題がいつまでも残りまして、連携がうまくいかないときの原因になっているだろうと思います。
こういうことを踏まえて、12ページ以降に連携のパターンが設定されていて、そしてこういう形の連携のパターンがあって、それは同時により深い連携につながるわけですが、そういう具体的なフェーズをちゃんと設定してやっていってはどうかという提案がされているという意味で、ともすればよくある「こんなことが大事ですね」と言って終わるという文書が多いのですが、これは、もう少し具体的に「こうやったらうまくいくのではないか」という提案までが作り込まれた、なかなかよくできた報告書ではないかと思っております。
こういうものが一つありまして、それともう1冊の方はよく似たタイトルに見えるのですが、こちらはELSIに特化していると言ってもいいかもしれません。これもELSIに関しては、最近非常にブームと言ってはいけないですね。Ethical, Legal and Social IssuesというのでELSIというわけですが、元々はヒトゲノムの解読をする事業のときに、ノーベル賞学者のワトソンが、やはりゲノムを全部読んでしまうということは相当に社会に大きな影響を与える可能性があるのではないかということで、解読の作業と並行的に人文・社会科学系の方々に研究費を出して、この自然科学的な研究の持つインプリケーションを検討してもらうことを同時進行で始めたというのがきっかけです。もっともその後、歴史研究などを見ますと、ワトソン自身は横で議論だけしてくれればよくて、あまり余計なことはしてほしくはないと思っていたような節はあります。
しかし、結果的にこういう議論がどんどん必要になってきているのが現代でありまして、科学技術政策が社会実装とか出口志向というふうな観点で動き出すと、どうしてもその技術を社会の中に入れるときに、研究者が思っているような善意だけですっと受け入れられるとは限らないわけですね。実際、既存の社会システムとの間のハーモナイゼーションがものすごく大事になりますので、そこの部分はやはり自然科学の研究者だけではできないということがあります。
そこで、ライフサイエンス以外のところでのELSIも大事ではないかという議論が最近は出てきておりまして、2大ELSI課題と現在言われているのはAIとゲノム編集ですが、これからも次々とそういう候補は出てくるだろうと思います。そういうこともあって、このELSIという議論をアメリカ、ヨーロッパ、そして日本がどのように取り組んできたのかということのレビューをした上で、共創的科学技術イノベーションの実現に向けてという形で、その核心にELSIがあるのだという議論の立て方をし、具体の事例というのが第2部で挙げられていると。そういう立て付けですので、大変時宜にかなったものではないかと思います。
昔、吉川先生が、東大元総長ですが、学術会議の会長であった頃に、ブダペスト会議という世界科学会議で「社会のための科学、社会の中の科学」というメッセージを発せられたことがありますが、今年20年ですかね、そうですね、それでまたブダペストで会議があると。そこでのテーマがScience and Ethicsだと聞いております。やはり科学の研究ができることをどんどんと広げていくわけですが、それがやっていいことなのかとか、やらなくてはいけないことなのかとか、やってはいけないことなのかとか、そういう議論との間のバランスが崩れているわけで、それをどう調整するかという問題は世界全体の課題になってきている。ということで、この問題がこれから非常に重要になっていくのだろうと思いますので、この報告書も多分、今、日本で類書がないと思います。これだけのものがまとまっているものはこれしかないという意味では、非常に時宜にかなったものだと思いますので、是非御活用いただければと思います。
こういった参考資料なども踏まえた上で、しかもこの委員会が今までどのようなペーパーを出してきたかということも踏まえて、まずたたき台として作っていただいたのが資料1-1ということになりますので、ではそこからお願いしましょうか。
【奥野課長】 では、お手元の資料の1-1を御覧ください。また、先ほど紹介がありましたとおり、第6期の科学技術基本計画の策定を視野に入れてございます。机上お手元の参考資料の附箋を付しております第5期科学技術基本計画の第6章「科学技術イノベーションと社会との関係深化」を脇に置いていただいた上で、それでは第6期をどのように向けて考えていくのかという観点で1-1を御参照いただければと思います。
まず、1-1の全体の構成でございます。1ポツ、2ポツ、3ポツ、4ポツ、5ポツ、6ポツという形でそれぞれ章立てになってございます。
1ポツのところには今回、議論を論じていくに当たっての、先ほど御紹介があったこれまでの流れと、CRDS(科学技術振興機構研究開発戦略センター)の参考資料等にあるように、議論をしておくときに諸外国等の事例でどういった点に着目すればいいのかという、(1)(2)で議論の背景及び着目点等を整理してございます。その上で、テーマごとに2から6までございまして、そのうち特に6ポツ、研究公正の確保というものが、従前の科学技術基本計画におきましては章として特に研究公正の確保と独立したものでございまして、2から5までに相当するところが、第6章の(1)に入ってございます共創的科学イノベーションの推進に関するところを今度どのように考えていくべきなのか、そういった対応関係で御覧いただければと思います。
お時間がございますので、簡潔にそれぞれの項目の要点について御説明申し上げます。では、1-1の1ページにお戻りください。まず1ポツの背景についてでございます。背景につきまして、先ほどこの附箋でもう一つ、青の附箋で発してございまして、議論に際に御紹介がございました、これまでの基本計画において科学技術と社会、特に科学技術コミュニケーション等に着目した場合に、第1期からそれぞれ理解増進、双方向コミュニケーション、対話、参画、さらに共創といったプロセスでこれまでの議論の推移及びこういった課題の取組、ELSIに関するこれまでの取組が(1)に記載されてございます。
(2)には、海外における科学技術イノベーションと社会との相互作用の拡大という形で、主として欧米において正にELSIに関する取組等の発展、またCRDSの報告書にも言及されてございますが責任あるイノベーション、RRIといった概念等が提起されていると。海外において今回の議論の際、まず検討の際に着目すべき点、考慮に入れるべき点を(2)の中の記載で整理してございます。
次に、2ポツから5ポツまでに関して、課題ごとに論点整理がございます。2ポツはまず、科学コミュニケーションについてでございます。先ほど1ポツの(1)にございましたとおり、これまで科学技術基本計画においては理解増進から共創に至るまでの各課題がこちらの参考資料の青の付箋で付してあるように整理してございます。今回の事務局案は、この推移として第6期において共創の先の観点を提起するという考え方ではなくて、これまで科学技術基本計画で順次提起してきたこれらの取組を単線的な推移モデル、つまり第1期は理解増進、第2期は双方向という形で捉えるのではなく、これらの取組が重層的に積み重なっているという観点から、最終的にはこれらの取組の共創という目的を捉えながら、各プロジェクト・施策において、これらの重層的に重なっている取組の中から適宜選択して実施していくというような形で、より実装を定着させていってはどうかという提案を(1)で述べさせていただいております。
さらに(2)におきましては、このイノベーションに関するコミュニケーション機能の向上といたしまして、全体の推移、重層だけではなくて個々のコミュニケーションの向上に関して必要な取組に関する考え方、科学コミュニケーションの機能の強化の方向性、またそういったコミュニケーションにつきましては、総合的な人材育成、コミュニケーションの場を当初の科学館・博物館から研究開発・政策現場への拡大といった機能の拡大に関する事項を(2)と整理してございます。
次に3ポツでございます。3ポツは各ステークホルダーの取組に関しまして、3段落に分かれてございますが、第1段落でいわゆる国民という観点に立った際に、政策への共創等を見据えた場合に、科学技術リテラシーの向上といった取組が必要であるという観点、そして最後の3段落目に研究者の観点から、研究者の側は逆に社会リテラシーの向上、及びステークホルダーとの信頼構築における研究公正の重要性というのが書かれており、この両方にかかる間に2段落目として、科学館・博物館における取組ですとか、メディアといった場の国民の科学リテラシーの醸成等に関して果たすべき役割というのが第2段落の形で構成されてございます。ここで各ステークホルダーのリテラシー等に関する事項が3ポツで整理されてございます。
次に4ポツ、ELSIに係る取組でございます。ELSIに関する取組に関しては、先ほど紹介されましたとおり、AIですとかヒトゲノム、ゲノム編集等、ELSIに係る対応がより必要になっているという形を第1段落に記載した上で、第2段落のポイントとしては、こういった観点のELSIを、先ほど初期の例でも紹介されましたが、いわゆるブレーキ若しくは関係ないものと捉えるのではなく、科学技術イノベーションが社会課題の解決に貢献する際に、社会との調和、受容可能性を考慮するために必要不可欠な取組と認識した上で、特に主要な科学技術プロジェクトにおいては初期段階からこういった取組を実装して進めていくべきであるというのをより強く打ち出してはどうかというので、2段落を整理してございます。
また、3段落目といたしまして、さきに御紹介いたしました、前回の際に紹介されましたRISTEX等の取組とこの社会技術、国際協力に係るトランスディシプリナリティー、分野を超えた取組等に係る取組も重要であるという指摘もございます。また、この点に関しましては前回の説明等、ここに全て包含し切れるのかどうか等も含めて御検討、御議論を頂ければと思います。
その上で、次の段落といたしまして、このような科学技術イノベーションに係るELSIの解決に当たっては、特に自然科学系の専門知識をベースに人文・社会科学の知識を深めた文理融合人材を育成する取組をより積極的に行っていく、この点に関しましては先ほど紹介がありました正に文理融合の取組を進める際の様々な課題若しくはアプローチとある中で、特に今回、自然科学系の専門知識をベースとした形で人文・社会の知識を深めた文理融合人材の育成が有効ではないかという形での提案を御提起させていただいているところです。
5ポツ、政策形成に係る科学的助言に関しては、ここは基本的にはアップデートはされておりますが、大きな考え方といたしまして、科学的助言といいますものの限界等を明確化した上で活用しつつ、(2)のような形で国際動向等を踏まえ、その充実を図っていくという方向性が指し示されてございます。
次に6ポツでございます。研究公正の確保につきましては、現在取り組まれております研究公正に係る我が国の取組の概観を全体として記述しているところでございます。当然この研究公正の重要性を1段落で書いた後に、研究者の取り組むべき内容及び研究機関が今後取り組んでいくべき内容等を記載した上で、こういった我が国の研究公正に係る取組を国際社会に積極的に発信していく点が強調されてございます。
また、具体的にこの研究公正の取組をより確実、充実したものとしていくための配慮事項と後段に記載してございます。
一応、簡潔ではございますが、今回、検討のたたき台として事務方で用意させていただきましたものの簡単な構成、記載内容に関して御説明させていただきました。
【小林主査】 どうもありがとうございます。
まず、これはたたき台ですが、スケジュールをもう一回確認しておきたいのですけれども、一番最後に付いていますが資料の1-2、今日が8月29日の第10回ですが、今日はできる限り皆さんから幅広の議論を頂きたいと。その御意見を取りまとめたものを主査預かりでちょっとまとめさせていただきまして、もう一回9月27日の第11回のところで、取りまとめた文書を皆さんに御提示して、そこで若干御意見があれば、それはある程度修正も可能だと思いますが、そこでほぼ中間取りまとめという形で結論に近づけていきたいと。10月18日には、総政特は総合政策特別委員会で、要するに科学技術基本計画に関する文科省の原案を作る委員会に我々の検討結果を提出することになります。ということで、提出様式も3~4枚程度ということですので、余りだらだらと長く書くわけにはいかないという、その文量の制約の中で取りまとめるという状況の中で今日は御議論いただきたいと思います。今日は文量のことを気にせずにできる限り御自由に、これがないとか、こんなことは書かなくてもいいとか。
特に第5期で書いていることとの関係がどうしても出てきまして、同じことを書いているだけで終わるのでは足踏みになってしまいますということが問題です。ただ、第5期で書いたけれどもやれなかったことは実はいっぱいありますよね。そこをどうするかというのもちょっとやはり考えなくてはいけないと思います。
ちなみにですが、新しい方の参考資料でヨーロッパの例がなかなか面白いことが書いてあるので幾つか御紹介をしたいと思います。14ページを見ていただきたいと思います。ヨーロッパのRRI、Responsible Research and Innovationという、日本の科学技術基本計画とほぼ同じような役割を果たすコンセプトなんですが、その表の1が14ページにありまして、ヨーロッパが科学技術をどう見ているかというのが非常によく分かります。Excellent Scienceと書いてありますが、これがいわゆる卓越した研究、ノーベル賞に象徴される、あるいはインパクトファクターとか、ああいうもので評価されていくようなすごい研究というやつですね。
二つ目が日本でいうと狭い意味でのイノベーションとか、技術開発とか、産業技術の展開とかそういうところへの貢献というのがIndustrial Leadershipというところだろうと思います。
もう一つがSocietal Challenges、これが日本でいうとややSociety5.0に近い部分もありますが、もうちょっとこれは幅広いのかもしれません。つまりSDGsなんかとつながりやすいですね。社会的課題に向けて研究をどう動員するかという問題の立て方、これはもう世界各国の科学技術政策がそうなってきていますし、大学もこういう形で自分たちの研究を表現しなくてはいけなくなってきています。そこに挙がっているものは見ていただくと分かるように、社会の側からの言葉遣いで課題が挙げられていて、それに対して研究が動員されていくという立て付けで書かれています。
次のところにSpreading Excellence and Widening Participationというふうに、参加というものを拡大したいということが書いてあって、ちょっとゴチになっているのがScience with and for Societyと書いてありまして、社会とともにそして社会のための科学という言葉遣いになってきているのだということです。
その中でどんなことが柱になっているかというのは、実は15ページにちょっとだけ書いてあるんです。これがヨーロッパ的だなと思いますが、市民参加、オープンアクセス、ジェンダー、倫理、科学教育の5つの次元において頑張るのだというのがHorizon 2020の発想です。これはだから大変ヨーロッパ的な書き方ですね。多分、市民参加とかジェンダーというのは、日本の科学技術政策にはこれほど表に出てこないのですけれども、それでよろしいかという問題はあろうかと思います。オープンアクセスも、日本は今、オープンサイエンスということは政策の中でかなり議論されてきておりますので、それはこれからも出てくるだろうと思いますが、第5期の日本の基本計画でも書いたシチズンサイエンスというふうなものは、日本ではなかなか広がらなかった状況にあるかと思います。
そういう点で、このヨーロッパ的なるものはこんな感じですよということと、それからこれもなかなか面白いなというか、年表が付いているのでこれは便利だなと思ったんですが、資料の59、60、これが科学史上の重要な出来事と研究組織の設立期間年表と書いてあるんですが、これはCRDSの方で作られた年表なんですね。これを見ると、こういう社会との関係を議論するときに非常に手掛かりになるような年表になっております。60年代、スプートニク・ショックが57年ですけれども、ベトナム戦争があって、それで72年にテクノロジーアセスメントの局がアメリカにできて、で、石油危機となってきます。その真ん中の列に科学技術政策のユニット、Science Policy Research Unitというのが出てきますが、これはSPRUだと思いますのでイギリスですね。その後も、これはどこでというのが書いていないですけれども、その下の二つはアメリカだと思いますが、こういうものが作られていると。日本も実はこのときにぽつっと三菱化成生命科学研究所ができていたと。これはかなり先駆的なものだったわけですが、2010年に解散してしまいます。
それから90年代になりますと、先ほど申し上げたヒトゲノム計画ですね。このあたりでクローンとか遺伝子組み換えとかIT、こういうものが一斉に花開いていく時期です。この頃に海外はたくさんの研究センターが大学の中に埋め込まれ始めます。日本はどうしたかというと、タイミングとしては98年という、全然後れを取っていない時期に「情報倫理の構築」(FINE)プロジェクトというのが振興調整費で行われました。ここで相当の議論と資料に蓄積等が行われたのですが、振興調整費ですので終わります。そうするとこのリソースがほぼ消えてしまいました。で、ここは苦し紛れにグローバルCOEとかと書いてありますが、これは余り関係ないですね。リーディングプログラムも関係ないです。実質は2015年の理化学研究所の革新知能統合センターの中に人工知能研究センターとか、こういうところに社会科学的なものが入ってくるというところまでは、組織的な対応は余りきちんと行われてこなかった。研究費が付くことによって、ナノテクノロジーに関する社会とのコミュニケーションとかそういう議論は単発で幾つかありましたけれども、何か組織的なものを作るという動きは、日本はほとんどなかったわけです。
真ん中のところを見ていただくように、2000年代以降は続々と、特にアメリカとイギリスが多いんですが、ヨーロッパはテクノロジーアセスメント機関というのがありますので、それが代替的なことをやるということも含めて、彼らが議論を蓄積しております。ですので、今、国際会議で科学技術と社会と倫理とか、Ethical, Legal and Social Issuesなんていう議論をしようとすると、この真ん中の列のところで議論してきた人たちの論点がアジェンダとして出てきてしまいまして、日本側として対抗するだけの人材と議論の質がないというのが現状だと思います。これはちょっとまずいなとは思います。
割と数少ない、日本側がイニシアチブを取ろうとしたのはAI原則だと思います。これはOECDの議論の中に日本の提案が取り込まれたということで、日本としてはかなり頑張ったものだと思いますが、あのメンバーシップを見ると、日本の情報系の研究者の主要な方がほぼ全部入って、かつ哲学とか政治学とか法律学の人たちまでが入って議論してまとめていると。そういう試みをされたという意味では貴重な、ナショナルプロジェクト的な事例だろうと思います。あれはこれからどうやって定着させていくのかが課題だろうと思いますが、日本の場合、どうしてもこういう研究組織のところに埋め込むことをやってこなかったというのは課題として残っています。
同時に、組織がなぜできなかったかというと、人もいなかったということ。なぜ人もいなかったかというと、そういう人間を教育、育成するシステムがなかったと。そういう意味では非常に文系と理系が固く分離したままなんですね。ですから、文科系の人たちはサイエンス・アンド・テクノロジーに関しては疎いし、コミットしようとしない。理工系の方々は逆に人文・社会科学系のことに疎い人が多いということで、何となくそこの間に真空地帯、空白地帯ができてしまったということが、こういう現状を生んだのではないかと思います。
今までの基本計画でもずっとそういうところを何とかしなくてはいけませんよということは書いてきたんですが、なかなかできなかったんですけれども。今回、もうちょっと踏み込んで本当にやりましょうというふうに書けるかどうかというのは一つのポイントかなと思っています。
そういう意味でこの資料を見ていただくと、次の61ページには代表的なものの設立年とか大学の名前が書いてありますので、こんな形でセンターとか研究所ができていますということです。
この資料はお持ち帰りいただいて、是非御一読いただければと思います。こんな背景の中で、今日まとめていただいたものについて率直な御議論、御意見をこれから頂きたいと思います。どうしましょうか。順番にいくという手もありますけれども、まず読んで一番気になったこととか、これがないというところとか、これは何のことか分からないとか、いろいろあったかと思いますので、余り順番どおりにやらずに、今日は放談でいけたらと思いますが。どなたからでも結構ですけれども。
【小林主査】 小出委員なんかも、こんな文章では人に伝わらんとかって絶対おっしゃるだろうなと思って。
【小出委員】 まず領域が広過ぎて、どこを焦点……。
【小林主査】 どこを焦点。そうなんです。だからこれはちょっとエッジを立てる部分をちゃんと決めていかないと、今はちょっと総花的になっているので。たたき台ですから、まずそれで議論の幅がこのぐらいですよということが示されている状況ですので。いかがですか。
【調委員】 すいません。すごく小さい話だけ、まず先に。責任ある研究とイノベーション、わざわざ研究を外したのは何か理由があるんでしょうか。
【小林主査】 ああ、本当だ。Responsible Research and Innovation。
【小田補佐】 これは失礼しました。これは脱字です。
【調委員】 分かりました。
【小林主査】 特に意図があったわけではないと。
【調委員】 よかった。
【小林主査】 責任ある研究とイノベーションですね。
【調委員】 あともう1個だけ面倒くさそうな話なんですが。たまたま前の前の基本計画、第4期が2011年の震災の前だった。そこから震災の間、時間がたったので、第5期に余り震災のあれが、少なくともコミュニケーションとか出てないんです。で、特に問題は、例えば科学者の信頼の話とか、そういうことは本当は前のときに出ているべきだったのが出ていなくて、では問題は解決しているかというとそうでもないので、このまま置いていっていいのかどうかというのは一つ考えた方がよいかなと思いました。
例えば理解増進の方はまだ生き残っていてリテラシーの向上とあるのに、信頼の話は何かステークホルダーとの信頼関係の構築云々で研究公正につなぐと、ちょっと、それはそれで大切ですけれども、えっ、というふうにも見えなくはないですね。
【小林主査】 なるほど。第5期のときは46ページのところの(1)の丸1、しょっぱなの段落のところで、研究の不正と並べて原子力発電所事故ということで関係が問われているという書き方では残っていたわけですね。
これ、だけれども結局、コミュニケーションの話でもあるんですけれども、ELSIの話でもあるんですよね、信頼の問題というのは。
【調委員】 そうです。
【小林主査】 この間のリクナビの事件などというのは、企業の側のガバナンスの問題だという扱われ方もしていますけれども、研究でできることは幾らでも広がっているわけですよね。多分やっている研究者はどこかでわくわくして楽しく思ってやるんですよね、ああいうのって。研究者ってそうだと思うんですよ。それ自体は悪いとは言わないんですけれども、そこからどうするかというところへ、どうしていかなくなってしまっているのかというのは。今、あのパターンが起こったというのは、私は結構ショックで、さんざんfacebookとかで言われていたでしょう。メディアでさんざん報道されている話ですよね。それがあんなにするっといってしまうところに何が欠けているんだろうなというのは、私はむしろショックだったので。どうなんですかね。
【横山委員】 同じような視点で、今、先生方がおっしゃられたように、製造責任に関することと、説明責任と、信頼、研究公正と、多分混ざって分散しているんだけれども、これが製造責任の倫理として必要で、これが説明責任で、というのをちょっと科学者寄りにしたパーツを入れ込んでもいいかもしれないですね。リテラシーの向上とかそういうところで説明責任が少し入り込んでいるんだと思うんですが、研究公正だけが6ポツでこれだけ大きいのに対して、非常に重い製造責任、説明責任がちょっとぼやけてしまっているのかもしれません。ちょっとそれを掘り出していただくということと、あとやはりジェンダーのことは入った方がいいんじゃないでしょうかね、と思いました。
【小林主査】 そう思います。知の製造責任というところでは、先ほどの信頼とかそういう話、それとも研究不正の話?
【横山委員】 前者の方です。不正じゃなくて、リクナビと同じようなことで。だから助言のことは書いてあるけれども、そもそも研究活動の中に組み込まれる倫理的な問題に関して、もう少し特出ししてもいいのかなという印象を持ちました。
【田中委員】 私には、やはり6番にあげられている研究の公正性が、何か「与件」として、いきなり登場してきているような印象を受けます。恐らく、他の委員の皆様は「出てきて当然」ということなのかもしれませんが。私にとっても、書かれていることは「もっともなこと」なのですが、1番から5番まで流れてきて、何でこれが6番目なのか。説明を聞き逃してしまったのかもしれません。「与件」としてというよりも、論理性というのか、もし背景にストーリーのようなものがあるようでしたら、説明をお願いしたいのですが。
【奥野課長】 文量の点ですとか配置の点に関しては、元々、先ほど科学技術基本計画の中でも大きく(1)という領域がこの資料の2から5という領域であって、(2)という領域で研究公正という形になっておりまして、したがって分野としてはこれは大きく二つ、それぞれが二つの分野になっていると。したがって、まとめてはありますが、ある程度、先ほど5と6で切ったというのは、政策体系だとか分野体系としては一応それぞれが独立した政策分野としてこれまでも整理しておりましたし、恐らく総政特へ上げていくときもこの2から5の政策体系と6の政策体系が分かれておりまして、6は6である程度ここに書いてあるようなものが研究公正政策という、ある種独立して実装された政策として進んでいるという点があるので、そういう意味では、先ほど若干ミシン目のようなものが入っている領域です。
【田中委員】 ちょっとギブンというか、そんな感じ。
【奥野課長】 恐らく主査とも御相談ですが、この研究公正という、したがってある種ミシン目が入っている独立した体系をここの中でまとめて書いていく方がいいのか、これはこれ、あれはあれがいいのかというのは、そもそも論としてあろうかとは思います。
【田中委員】 よく分かりました。ミシン目。
【小林主査】 第4期までこういうふうになってましたっけ。
【丸山室長】 第4期はそこまで書かれていませんでした。
【小林主査】 なかったですよね。第5期から入ったんですよね?
【丸山室長】 第5期からきちんと入ったということです。
【小林主査】 そうなんです。しかもそのときは結構実例として問題をいっぱい起こしていたんですよね、日本は。
【奥野課長】 起こしていたというか、明らかになって……。起こったのはもっと昔から。
【小林主査】 それもあって、対応を入れなくちゃいけないという問題意識があの時期生まれたんですよね。
【奥野課長】 そうです。
【小林主査】 それをどこに入れるかというと、やっぱりこの科学技術と社会のエリアに入れるしかないかなという議論になったのかな。
【小出委員】 そうなんですか。
【小林主査】 だから、人材政策課の管掌事項になっていますよね。
【奥野課長】 分野としてはある意味、自然科学的観点ではなくて、分野としてはやはり人文・社会科学的観点を踏まえたという形の政策体系としてここに収まっておりますが、逆に研究公正の方はそのうちかなりシステム化が進んでおりまして、たくさん書いてあるというのは、それに基づいた政策実装等が逆に短期間ではありますがかなりガイドライン等が精緻に進んでいるので、そういった記述が精緻に書かれていることになっているかと。
【小林主査】 だから、私、これは基本計画の中に絶対に書かなくてはいけないとは思っているんです。というのは、昨年と今年と『Nature』と『Science』でそれぞれたたかれて、やはり日本の研究公正のシステムは問題があるんじゃないのかみたいなニュアンスでしたよね。
【奥野課長】 そうです。
【小林主査】 しかも、ウィズドローしている論文のベスト10の中に日本の研究者が複数入っていて、という変な形で有名になってしまっている。むしろここに埋もれていいのかぐらいのことを、今だったら本当は政策的にはもっと前に出すべきかもしれません。で、日本の研究というものの、これもやっぱり信頼の問題だと思うんですね。品質管理と信頼をちゃんと担保するための仕組みにやはり問題があるということであれば、最初の方に書いた方がいいかもしれないと。この中の章の中の一つでいいのかなというぐらい、実は重要かもしれないという気もします。
【真先戦略官】 正に先生がおっしゃるとおりだと思うんですね。第4期基本計画の全体の目次構成をもう一度もしかしたら御覧いただいた方がよろしいかなという気もしまして。研究公正の対応の件について、正に科学と社会との関係から研究者倫理みたいなところの筋からこっちの方に一応位置付けられておるのですが、ともすればこの話というのは円滑に科学振興を進めていく観点から、いかにきちっとシステムを構築していくかという政策論につなげていく必要があるものですから、そうしますと第5期の基本計画の構成から見ましても、例えば知の基盤の部分ですね。そういったところとの兼ね合いでむしろしっかり位置付けて、対応するためのシステム構成的にどう政策を打っていくかという切り口の方がもしかしたらなじむかもしれません。
ただ、そもそも第4期のときには一応こちらのセクションに入っておることも、これありで、したがって、今後、第6期基本計画の全体構成とかはまた別途検討が進むことになりますが、まずは提案として、どういったものを我が方から持ち出していくのがよいかと。今、こういうベースとなる部分の検討という理解だと思います。
【小林主査】 そうですね。
【調委員】 二つに分けてはいけないんですか。つまり、研究公正を確保するシステムの話は基盤的な力の強化の話ですし、じゃあそれに対して社会がどのような監視を行うかとか、場合によってはインタービーンするかとか、そういう話はこちらにまだ残ってもいいような話というのはあって、そういうふうにしたときには、先ほどの横山先生が言ってらした製造物責任の話とかとまとめて議論しやすいですけれども、こういうシステム的な話だけだとそこに一緒に乗らないですよね。なので分けた方がいいのかなと。
【小原委員】 科学技術と社会を連携させる提言をするのがこの委員会の目的だとすると、この提言(案)を読んでいると、誰が行動すべきで、誰と連携するべきなのか、ちょっと読み取れないように思います。この提言内容を政策に反映するのが目的だと思いますので、これが細かい政策に落ちていくときに、誰に対する政策で、誰と連携するのかを明確にしておかないと、議論がぼんやりして、誰に訴え掛けているかがわからないような気がします。この提言を受けて、誰が行動するのか?文面から読み取ると「研究者」という言葉は読み取れますが、では、どこの研究者かというと、大学の研究者というのは明確ですが、民間企業の研究者がこれを読むと、そこまで深く刺さってこない気がします。「研究者」といったときに、大学だけじゃなく民間もあり、もっと広く、中学校とか高校とかも入るのかもしれないですし、いろいろな研究者がいらっしゃると思いますので、「研究者」という場合であっても、「あなたのことを言っているんです」というところを、もうちょっと明確に入れられるとよいかと思います。
それと、「誰と連携すべきか」という点については、「様々なステークホルダー」という言葉が入っていますが、では、具体的には誰かというと、提言の後半を見ると「博物館、科学館、メディア、国民」などと書いてありますが、それだけでしょうか?例えば、企業が入るかもしれないですし、この間の岩見沢市のように「地方自治体」も連携先だと思います。
第6期の基本計画に今さら入れる必要がないのかもしれないですが、「誰が行動して、誰を対象に連携するのか」という点がもうちょっと明確に入っていないと、連携先の人たちがぴんとこないのではないかという気がします。そういう点を入れる余地があるのかどうかというのが、提言(案)を読ませていただいて、まずは気が付いた点です。
【堀口委員】 新人ではないんですが、私も第5期の計画を見て、各ステークホルダーって出てきて、読んでもステークホルダーが何なのかよく分からなくて。で、この計画を別途外から見ていると、何か政治家さんがステークホルダーなのかしらねって思うような感じの話が多いよなって思ったりもしますし。あと、私、やっぱり一番重要なのは研究者自身がこの計画をちゃんと読むかどうかというところが抜けているのかなって、実は思っていまして。ここにおられる委員の先生方はちゃんとお目通ししていると思うんですけれども、自分が大学の中で例えば計画のここのところにこう書いてありますよねと言っても、皆、「は?」というような、ぽかんとした顔をされたりとか、やっぱり研究者と自分が思うのであれば、日本の国で研究をしているのであれば、この基本計画を大体雑駁(ざっぱく)頭の中に入れた上で研究活動をする。だからこそ不正とかそういうところにもつながってくる、不正がなぜちゃんとやらなきゃいけないのかとか、何かつながってくるのかなと思うようになりました。
なので、今、学生にはこういう計画がありますと。今日も共創までいくステップがあるので、それはたまたま一般教養を担当させていただいているので、学生には今から伝えていって、私たちがリタイアする頃の第一線で活躍する学生には、やはりこの計画がこうやってこうなってというところのプロセスを理解して、先ほど小林先生の言われた途中空白な部分があって、その間に研究者もしているというのはちょっとつらいなと思いましたが、この空白な部分を埋めるような研究者に育ってほしいなと思っているところです。
なので、やはりステークホルダーのイメージがなかなか湧かないというのは私も実感しております。
【小林主査】 ありがとうございます。一番根底的なところの問い掛けでした。もっと言うと、この基本計画は誰を名宛て人にした文書なのかという問いに最終的に行くわけです。これは当然財政当局が含まれるんですよね。だから法律の立て付けから見て基本計画を作って、そしてそれをちゃんと実行するために予算的な措置をするということまでが一応基本法には書かれているんですよ。財務省としては数字を入れることは余り好まないので、いろいろ抵抗はすると。そして実際数字を入れてみたところで、ここ2回ぐらいは達成できてないんですかね。3期、4期達成していないと思う。5期はどうですかね。
【真先戦略官】 頑張ってます。
【小林主査】 頑張っている、という話なんですね。ですから、正にこの計画のところの、この章は余りそれほど利害はないのですけれども、もっと前半の方ですね。どういう分野に重点的な国家戦略として投資をするかというところには、皆さん、研究者は自分のステークがそこにまさしくあって、そこに書き込むことに全力を挙げるわけです。で、書き込まれると、それが予算措置の根拠規定としても機能し始めますので、そういう形で動くという構造なんです。それに対して第6章はちょっと違うんですね。そういう意味でのステークを持っている人ってそんなにたくさんいないし、持っているとしても科学コミュニケーターの人が若干書いてくれると自分たちの予算が取れるかなみたいな話なんですが、そこよりもむしろ違うところに焦点を当てているのは事実なんです。
【小林主査】 そう、6章だけがちょっと異質。
【小林主査】 そういうことですね。
【小原委員】 予算を社会のためにどう使いましょうよ、ということだと思うんですね。
【小林主査】 という立て付けであるということが、どうも現実なんですね。その上で、ステークホルダーが余りに抽象的であるというのは、おっしゃるとおりで。
【小原委員】 どう使っていいかが分からない。
【小林主査】 でも逆に言うと、何でも入るんですよ。
【小原委員】 そうですね。
【小林主査】 だから、例えば企業を排除しているわけではないし、NPOやNGOを排除しているわけでもないしという。いわゆるヨーロッパ的にはシビルソサエティーとインダストリーとこういうふうに、で、ガバメントと、というふうにいいますよね。そういう感じです。それでユニバーシティーとかリサーチャーとか。だから、たしかヨーロッパが最近言い出しているのはクワドルプル・イノベーションか。四つですよね。、日本の戦後の通産省を中心とした技術開発モデルをトリプル・ヘリックスというふうにアメリカの研究者が言ったわけですね。それは産官学なんですよ。それをヨーロッパが最近はクワドルプルと言って、四つ目を入れている。それは何かというと、シビルソサエティーなんですよ。そういうモデル、だからヨーロッパがやたらとそういう言葉遣いをするわけですが、日本でもかろうじてそういう匂いをさせているのは、いつも第6章なんですね。
だからそういう意味では、このステークホルダーという言葉で広げることによって、産学官以外のところも視野に入っていますよということの表現ではあったんです。だけども、もっと具体的に指定した方がいいのかどうかというのは、ちょっと御議論いただきたいところですね。
【小原委員】 そうですね。「この5年間で、ここに投資し、特にここと連携することが重要だ」と言うことこそが提言なのかなと思います。
【小林主査】 そうですね。それとあと、中高の教員という話があったんですが、ここはなかなか難しくて。中等教育はダイレクトにはちょっと対象にしにくかったんでしたっけ。微妙なんですよね。
【真先戦略官】 そうですね。
【小林主査】 高等教育とか初等・中等教育の管轄があって、例えばJST(科学技術振興機構)のやっているスーパーサイエンスハイスクールってありますね。あれも義務教育段階までウイングを広げようとすると、ちょっと待ったがかかるわけですね。お金の立て付けの構造で、どうしてもちょっとそこにミシン目を入れないといけないという話がありますから。そういう問題があるんですけれども、議論一般として見れば、もちろん初等・中等も含めて人材育成という議論でくくることは私は可能だと思いますけれども。だから、高校の先生も当然ということになると思います。
ただ、研究というときの主たる研究者のイメージは、大学とか国研のイメージがやっぱり強くて、企業の研究者というのは実はこれだけたくさんいながら、正面から取り扱われていないのではないかといえば、それはそうだと思います。なかなか難しいですね。企業研究者をこういうところの議論に入れるというのは、どうなるんですかね。
【真先戦略官】 ただ、発散しそうなので、もう少し単純化して物を考えますと、やはりこれは科学技術基本計画であるということ。つまり科学技術基本法という法律があり、これを着実に進めるための基本計画を作ることになっているので、それを作ります。それが幾つかパーツで分かれていまして、そのうちの一つに科学と社会の議論があります。科学と社会の話はあくまでも科学技術政策、科学技術基本法に基づく科学振興を目的とした取組の中のパーツとしての科学技術コミュニケーションですよね。科学と社会は。そういう目で物を見る方がよいと。なおかつ国の基本計画ですので、これは法律とはちょっと違いまして、国の行動計画なんですね。国が何をするのかという話をまとめてある。だから閣議決定をして、国はこういうことをすることをお約束しますと。今後5年間、まあ10年を見越して5年でこういうアクションをとることで、こういうものを実現しますということを取りまとめるのがこの基本計画とイメージすれば、国は何をやります、何をやるべきか、何をやりますというものが書いてあるというのが、一番分かりやすい見方ですね。
ただ、やっぱり世の中にこうやります、例えば国民もそうですが、法律ですと国民の責務ですとかそういったものが登場しますけれど、これは法律ではなくて基本計画ですから、やはり産業界も含めて、こういうふうになるように国はこういう行動をしますということ、文章的にはそういう構造になるべきものだと思います。
ですから、そういう意味で御覧いただいて、第5期基本計画の第6章が若干異質なような文章上の表現が見受けられるというのは、第4期からかなり共創というところに第5期はシフトしたんですね。ですが、御覧のとおりこの共創というのは手法論として非常に難しいところがありまして、どうやってやるのかというHowの話がいまだに試行錯誤やっておりますよね。
【小林主査】 確かに。
【真先戦略官】 でありますから、何が大事かという理念を重視して書かれたのが第5期の第6章だと見ると多分よいと思います。ですから、冒頭に今般取りまとめの奥野課長からの説明もありましたように、共創の次を第6期で担うのかということではなく、一遍ここで立ち止まり、共創をさらに進化させるという、今はそういうフェーズではないかというのが今般の御提案かなという気がしております。そういう中で、国の計画ですので、国はどういうことをやるべきかみたいなところをどの程度クリアに、第5期の策定時から比べて少し歴史的に進化しておりますから、この状況を踏まえて何をやるべきかというのを、今、立ち止まって御議論いただくのが適当かなと思います。
【小林主査】 ありがとうございます。この資料の青色の附箋のところをちょっともう一回見ていただけますかね。これで上のところに、第1期「理解増進」、第2期「双方向」、第3期「対話」、第4期「参加」、第5期「共創へ推移」と書いてあるんですね。これは確かにこういうふうに強調点が変わっていったということなんですが、今回、奥野課長とも打ち合わせをしているときに申し上げて、実際そういうふうにちゃんと書いてくださっているんですが。全部要るんですよ。つまり、これ単純に、理解増進はもう駄目だよねといって双方向に切り替えて理解増進がなくなったとか、そういう話ではなくて、全部今も必要なんです。そういう意味では重層モデルとして考えた方がよくて、あれかこれかという形でファッション、着物が変わっていくのではなくて、重ね着になっているというかですね。そういうイメージで捉えましょうというのが今回の提案の一つのポイントです。だから、2ポツの(1)のところで多層的な科学コミュニケーションといっているのは、そういう心を表現している。
どうもキャッチフレーズが一つ変わるとみんなそれに向けて、わーっと走って、前のやつを忘れるみたいなやり方はもうやめた方がいいのではないかという意味で、戦略官がおっしゃるように、一回立ち止まるということで、共創から次のところの衣を考えるよりは、実質化するために本当に必要なことをやった方がいいんじゃないかというのは、今回の発想にはあります。ですからステークホルダーとかそういうところをもう少し具体できちっと書くとか、そういうのはあり得ると思いますが、それも含めてもうちょっと御意見を頂ければと思います。どうぞ。
【小野委員】 多層的になっていくというのは非常に合理的な考え方だなと思います。多層的であるということは、例えば(2)の科学コミュニケーション機能の在り方やステークホルダーの在り方というのも併せて多層的になっていくということだろうと思います。その意味で言うと、皆さん、共創の先を考えたときの多層のステークホルダーというのが科学館とか博物館と言われると、違うなと思われているのではないでしょうか。(1)でせっかく多層にしているのを、2番、3番というところも多層な書き方にされると、一番初めの方針で書かれたことが後ろにもつながる……、何かぶつ切りで書かれている印象があるので、書き方を工夫されてはいかがでしょうか。
、ELSIを考えるときに、イノベーションにおけるシーズオリエンテッドではなくて、ソーシャルイノベーション的なことをお考えになられてELSIということを書かれると、広がりのある話になるのではないでしょうか。
【小林主査】 もうちょっと広がりのあるというイメージというのは、この間のソーシャルイノベーションのいろいろプレゼンをしていただいたような、ああいうふうな視野がこの中に、今回確かに入っていないんですね。
【小野委員】 せっかくであれば、入った方がいいと思います。それが言葉先行ではなくて、立ち止まって深掘りするという意味につながるのではないかと思います。s
【小林主査】 これはなかなか、イノベーションという言葉の使い方が、科学技術イノベーションという言葉の定義を第3期で、何か欄外にしていましたよね。
【真先戦略官】 書いています。それはあります。
【小林主査】 ですね。それのときに、だからある種イノベーションの元々の意味よりはちょっと狭くなっているんですよ、科学技術イノベーションというのは。
【小野委員】 そうですか。なるほど。
【真先戦略官】 昔は技術革新という言葉も使っていましたから。
【小林主査】 昔は技術革新だった。で、さすがにこの科学技術を活用しながら社会システムを変えるというところまで広げてはいるんです。だから単純に技術の開発が進んだらイノベーションだとは言わなくなったんだけれども、科学技術を使わないイノベーションみたいな発想は余りないんです。だから、例えばよく言われるのは、蒸気機関の発明はイノベーションではなくて、蒸気機関を使ってシステムが変わってしまうというときに、これはイノベーションが起こったんだと。これはぎりぎりOK、蒸気機関という科学技術の産品が入っているのでいいんですけれども。科学技術も何もなしで、物の考え方とかそういうところだけを組み替えてもイノベーションって起こり得るわけだけれども、それは科学技術イノベーションというコンセプトの中では余り主たるターゲットにはなっていないというか、余り扱うというイメージはないんだと思います。
ソーシャルイノベーションというのも、この間のITとかいっぱい使っておられるので、私は立派に科学技術イノベーションだと思いますけれども、あの辺をどのぐらい入れられるかということはちょっとあるかもしれません。
それからもう一つ、科学館・博物館の話なんですけれども、これはコミュニケーターという人材をどうやって作るか、どうやって活躍してもらうかということを考えたときに、実際には科学館、例えば日本科学未来館なんかがコミュニケーターのトレーニングプログラムを持って、そこでコミュニケーターという人が生まれてきている現実があったわけです。そういうふうな働きのところが科学コミュニケーターの最初の主たるフィールドだと思われていたけれども、それだけじゃないよねというふうに広げましょうという趣旨でこういう書き方になっているので、広げるべきでしょうという御趣旨であればもちろんそのとおり。
【小野委員】 はい、そうです。広げるべきだと思います。
【小林主査】 だということですよね。それはもちろんそのとおりだと思います。イノベーションは難しいですね。科学技術イノベーションの範囲って微妙ですよね。
【真先戦略官】 まあ、難しいんですけれども。科学技術という言葉を付けることにより、サイエンス・アンド・テクノロジーがどうイノベーションに貢献するのかという文脈でこれは語ると。やっぱり、あくまで科学技術基本計画の守備範囲ですから。
【小林主査】 初心者というか新人の意見ウエルカムですので、全然遠慮なくどうぞお願いします。もちろん新人じゃない方も遠慮なくどうぞ。横山さん、ジェンダーっておっしゃいました。私もジェンダーは入れるべきだと思いますが、どういうロジックで入れますか。
【横山委員】 どうでしょうか。一向に進んでいないという印象を持っているので。
【小林主査】 私もそう思います。
【横山委員】 ちょっと活を入れていただきたいという感じを強く持っておるのですが。人材の員会にも少し入っていて、でもやはり同じような議論で、前と全然代わり映えがしないんですよね。といったときに、やはりヨーロッパの事例なんかも鑑みながら、いかに日本がこの観点についても今後の努力が必要なのかというのを、ちょっと具体例が余りないのですけれども。
【小林主査】 議論の仕方って二つあって、ジェンダーをこうしなければ損しているんだよ、だからジェンダーをちゃんとやることはこんなに得しますよという、損得の議論で展開するというのが一つなんですね。もう一つは、当たり前のことなのになぜやっていないのという問い方があるわけです。私は後者の当たり前のことなのにやっていないのはけしからんという議論が好きなんですけれども、多分それでは政策論的にはちょっとつらい。
【横山委員】 そうですね。
【小林主査】 だろうと思うんですね。そうすると、例えばですよ、日本の知的キャパシティーをフルに使うことを考えたときに、女性の能力を使い切れていないわけですよ。これは損ですよね。これが一つ。それから社会実装が極めて大事になってきている科学技術の研究において、社会が男女半々であるにもかかわらず、研究者の方だけが偏っているのは、やはり科学技術にとってマイナスに働いているんじゃないか。例えば、この間のAIのディープラーニングで顔認証するときの、カラードの女性の識別がものすごく低いという事例がありました。それからアジア系の人の識別もおかしいんですけれども。それは基になったデータベースが白人男性のデータベースを使っていて、研究者が男性だったということなんです。そこのゆがみを発見できたのはカラードの女性の研究者なんですね。という意味では、研究の質を高めるためにも、特に社会実装を考えたときに、女性の参画は絶対プラスだというふうなロジックの立て方。これはだから損得論理なので、そんなことまで言わないとできないのかという気分はありますけれども、まあ、でも説得するにはそういう損得論があるとは思うんですが。ほかに何かロジックはありますかね。
【小原委員】 損得論だと思います。社会が動くのは損得勘定なので。
【小林主査】 当然の論理では駄目?
【小原委員】 やはり損得論かと。
【小林主査】 損得しかない。やっぱりそうか。
【小原委員】 損得、もしくは「これは楽しいよ」のどちらかだと思います。「これをやれば、すごく楽しい研究が進み、すごくイノベーションが進むよ」と言うことに尽きると思います。あるべき論で動くのはもう中学生ぐらい。
【小林主査】 中学生。
【小原委員】 いやいや。先生に言われて、はいって聞くのは、おとなしく聞くのは中学生までかなと。
【小林主査】 悲しい現実というか、まあそうでしょうね。きちっとした損得論を提案すれば、社会も動いてくれるかなという気はしますね。
【真先戦略官】 ジェンダーをどういう切り口で議論するのかというのが多分ポイントでして、第5期基本計画の目次を御覧いただきますと、やはりどうしても第4章に目が行くんですね。人口減少社会で日本の知的活動の基盤を支える人材問題、そういう中で日本というのは女性の力を生かし切れていないのではないか。特に自然科学系の女性の参画割合といいますか、これ自体も数値目標が設定されているわけですが、3割目標。なかなか達成するにはしんどい状況なんですが、そこをどうするということで、正に政策が必要になってきてという話になっています。こういう一連のくだりは第4章で基本的に登場します。その中で、第6章から見たときの、アプローチをどういう切り口で議論するのかというのはちょっと、必要であればそういう議論をしておくことが多分必要でしょうね。
【小林主査】 第4章だとこれは丸2のところですね。女性の活躍促進ですよね。
【奥野課長】 そうですね。そちらも別途担当しています。したがって今、御議論があった、科学技術政策の多分アクターとして女性の活躍領域をより広げていくことが科学技術政策に貢献するという観点は、恐らく人材政策の中での、戦略官が指摘申し上げたように、女性の活躍促進だとかそういったところが出てくるかと思います。したがって、一般論的に、もしこちらの領域の、例えばELSIのSだとかそういうところで書くとすれば、むしろ研究開発の在り方だとかというときに、あるべき論的なジェンダーというものがどのような形で入っていくかという議論だとすればこの領域になりますが、女性を積極的に活用することが科学技術政策にポジティブだというのは第4章の方で。
【小林主査】 多分ELSIの中で忘れてはいけない観点として書いておくことは可能かもしれません。
【調委員】 正に同じようなことを考えてまして。例えばの話、SDGsを持ってくる中で、女性は結構大きく出ていましたから、そこの話も入れるとかいう形にしないと。やはりここの章でなければ損得論で書けるので、ここの章だと損得は書きにくいんですよね。なので、何かを持ってきて説得するのはSDGsぐらいかなと気はします。
【小林主査】 では、ちょっとジェンダーの書きぶりについては工夫をさせていただくと。そんなにこの章がジェンダーを全部背負って書くという話ではないとは思いますけれども。ただ、ジェンダーについてはいろんなところで書かないと駄目なんでしょうね。大学の中にいても本当に動かんですものね。工学部9対1なんてそんな比率、どうするんだと思うんだけれども、やっぱりなかなか変わらないですね。せめて7対3と言っているんですけれども。
【奥野課長】 損得論で言えば、この中でも論点を出していますが、今後科学技術プロジェクトだとかそういったものの社会受容だとか市民社会が受容していくという観点で、そういった要素が抜け落ちていくのが、将来的にやはり社会受容が今後、よりされなくなる方向で進んでいくというような問題認識であれば、恐らく損得論的な観点も含めつつも、そういう説得という観点も今後、世の中の流れとして……。
【小林主査】 実際、社会受容になると女性の観点はすごく大事で、かつて遺伝子組み換えの食品とかを受け入れるか受け入れないかという議論のときには、子育て中の女性が非常にネガティブで、それで男子大学生は食べてみたいと言い、50代以上の男性も食べてみたいと言うんです。それと今似たような問題が培養肉。細胞培養で肉を作るというのを今、やっていますよね。あれも多分同じような構造が起こるんだろうなと思うんです。安くて霜降りの肉が食えるんだったらいいよという50代男性と、お金のない20代の男子学生と、それから多分子育て中の女性とで大分意見が違うことが予想されます。そういった問題がいろいろなところに出てくるわけで、だからELSIの議論をするときにジェンダー的視点って、なしでは多分進まないはずなんです。
【堀口委員】 先生、各ステークホルダーとして、ステークホルダーでそのおっしゃる、実際仕事のときも妊婦さんとか、やっぱり30前後の女性って一つのステークホルダーに捉えていることが実は多くて、再生医療の意向調査をしたときも30代、40代の女性は、自分は命は助けてもらいたいんだけれども、研究の参加意向とか、連結可能匿名化のものしか使いたくないというような、非常にセンシティブなところがある集団なんだなというのは論文にもなっているので、やはりそういう意味でもジェンダーを意識するところは必要なのかなと思います。
【小林主査】 そうですよね。だからELSIの問題をやろうと思ったら、必然的にジェンダーの議論に巻き込まれるし、それに対する感受性がなかったら多分こういうものはうまく動かないんだろうと思います。
【小出委員】 ちょっと今、奥野さんの議論の参考になるかどうか分からないですけれども、我々の体験したところで、例えば科学ジャーナリストの世界会議というのがありまして、今年スイスであったんですけれども、全体で1,000人を超えるジャーナリストが世界中から来るんです。新しく入った国も、アフリカとか東欧なんかであるんですけれども、全体の中の6割近くが女性のジャーナリストとコミュニケーターだったので。
例えば原子力の話で、日本と北欧なんかを比較したときに、フィンランドなんかで原子力をもう一回使い始めるというときに、じゃあどういうコミュニケーションをするかというときに、基本的にある時点から先に非常に進むようになったという時点は、女性の技術者出身の人が広報官となってコミュニケーションを始めるというときが、一つの臨界点だったという話を、彼女は私よりちょっと上の人でしたけれども、もう十何年か前にスタートしたときにそういうことを話していましたし、今の日本の原子力の中でコミュニケーションの能力が極めて低いのは、つまり技術者に女性がほとんどいないと。語り掛けるのは常におじさんと、そういう再稼働再稼働と頭の中で考えている人たちしかいないのではないか。反対の方では、原発も原子力も原爆も皆一緒だというようなファンダメンタリストがいるという中で、きちんとした議論ができなくなるときに、女性の持っているコミュニケーションの能力というのは、これまで余り考えられていなかったのかもしれないですけれども、我々の取材の現場ではかなりこれはセンシティブに考えなければいけないなという視点を持っていたんです。
科学ジャーナリストの会議ですけれども、来るのはコミュニケーターであったり、企業の広報官であったり、組織の科学広報官であっても、大体ジャーナリスト出身の人間が行ったり来たりしていますので、しかも多くの人がやはり原子工学をやったり、若しくは機械だったり、医学だったり、そういうサイエンスのバックグラウンドを持っている人たちが多い。それは増えてきてどういう状況なのかということを見たときに、社会との連携という中のコミュニケーションということを考えたときに、女性でしかも自然科学系の出身だったり、決して自然科学系だけじゃなくていいんですけれども、そういう人間が増えながらいろんなところでコミュニケーションを担っていくというのは、ある面で科学技術政策を進めるというその足元をもう一回見直すという面で避けて通れない話じゃないかと思いますね。
それをだからどこに入れるかというのは、これは読み手が国民というよりも財務官ということであれば、もう少しそこに効果的なあんばいの仕方があるのかもしれませんけれども、それはどこかでは社会との連携というときにコミュニケーションということと、それから女性の持っている能力と、それから彼女らがどういうふうなネットワークを持ちながら広げていけるのかというあたりは、もう一度見直してもいいような気がしますので、それはちょっとどこかで何かのことの関連で触れられればと思います。
【小林主査】 ありがとうございます。ジェンダーはとにかくコミュニケーションとELSI両方で当然関係してくるという方向で何とか記述を考えたいと思います。
あと、今回第6期に向けての一旦立ち止まって、新しいキャッチフレーズではなくて、共創という言葉で表現し今まで積み重ねてきたものをどう進化させるかという論点のときに、何を重点的に強調するかということの御意見も頂きたいんですけれども、いかがでしょうか。
基本的に、これはコミュニケーションとELSIと、それから別途ミシン目かどうかは分からないけれども研究の公正の問題があると。もう一つ、アドバイス、科学的助言をどうするかという論点があるんですけれどもね。あれ、論点としてはちょっと特殊なんですよね。でも、ここしか書くところがないんですかね。エビデンス・ベースト・ポリシー・メーキングの議論なんかも関係してくるんですけれども、むしろこの科学的助言という議論が日本で出てきたときというのは、それの限界をわきまえてどうやって活用するかという議論だったんですよね。つまり、科学的助言が決定的な役割を果たすわけではないという部分を政策側が分からなくちゃいけないというのが一つと、助言をする側が自分たちの言ったことが受け入れられなかったということで怒るというか、無視されたと考えてはいけないと。つまり政策決定というのはもっと総合的で複合的な営みなので、科学の論理だけで決まらないんですよというのは片一方にあって。逆に、政策決定者は、科学というのは限界があるので彼らの言っていることが全部正しい、確実だと思ってやったら危ないですよという、両方の側面がある。
という話である意味で終わりで、あとは具体化するときにどうするかという議論で、第4期から第5期にかけては科学顧問を置く・置かないという議論もありましたよね。それが結局、外務省の科学顧問だけになって、それ以上議論が進んでいないので、そのあたりを視野に入れるかどうかというのが難しいんだな。さもなかったらやっぱり抽象的に、科学的助言というものはどういうものだということで、それを大事にしましょうという議論にしかならないんですよ。
【真先戦略官】 ちょっと話は違うかもしれないですけれども、第5期の基本計画でいういわゆる共創というものが一般論的に出てきているわけではなくて、やはり多様なステークホルダーと政策形成を結び付けるツールとしての共創なんですよね。ですから、そこに実は科学的助言も……。
【小林主査】 ああ、そこに入れる。
【真先戦略官】 一つ、政策形成の過程の一部を担うシステムというふうに捉えて、それが日本の中で現状でいいのか、さらに踏み込んでやるべきかというところで、もしかしたら何らかの提言が出せるかもしれませんけれども、そういう文脈で語るというのはあるかもしれません。あるいは、一般論的に正にステークホルダーと政策形成をちゃんと結び付けるところに含まれておるという理解もできるかなという気がします。その辺、御議論いただければよろしいかと。
【小林主査】 なかなかそこが難しいところで。
【堀口委員】 さっき、横山先生が言われた信頼の話がここにはめられるんじゃないかなとちょっと思ったんですけれども。科学者、研究者が科学的助言の質の確保に努めて、限界も含めて明確に説明して理解を得るというのは、信頼がベースにないと多分難しいと思うので、ここに信頼の単語は入れておいた方がいいんじゃないかと。先ほどの共創まで行くところの中では、やはり全てに信頼は……。
【真先戦略官】 そのとおりですね。
【堀口委員】 だと思うんですよ。わざわざそこで特出しするよりは、ここの科学的助言のところに信頼というのを一つ、単語をぽそっと入れたらいいのかなと思ったんですけれども。
【真先戦略官】 目次っていうか、一つの章立てにしちゃうかどうかなんですよね。
【小林主査】 そうなんです。
【奥野課長】 一方で、従前書いていた章がなくなるというのは、それはそれで政策的な重みに関する変更につながりますので。
【小林主査】 それはそうですね。
【小出委員】 ちょっとよろしいですか。科学的助言の中に、チーフ・サイエンティフィック・アドバイザーがエマージェンシーのときに働くというのが一つの方向でありますけれども、もう一つは、例えば2年前にもオープンフォーラムがイイノホール(東京都千代田区)でありましたが、いわゆる政策決定に当たって科学的な根拠をもう少し明確にして入れていこうじゃないかというような、各省をまたいだ議論がありましたけれども、それはやはり科学的助言の一側面だと思うんです。
【真先戦略官】 そうですね。
【小出委員】 我々のように雑駁(ざっぱく)に見ると、この日本ほど政策決定に当たって根拠、データ、科学的なバックグラウンド、それなしにどんどん決まっていくというのは非常に珍しいじゃないかというような議論をよくするんですが。その辺の足元を少し見るというので、一つの政策決定に、特に科学技術政策だけじゃなくて、広く政策決定に当たって、科学的な助言という言葉が本当にいいのかどうか分からないですけれども、その根拠になるものをきちんと示す。で、それをオープンにすることによって信頼を得るというプロセスはどこかであってもいいような気がする。だから、もちろん岸さん(外務大臣科学技術顧問)のようなアドバイザーも一つの在り方ですし、一方では科学的助言若しくは科学的な根拠を政策決定の中にどういうふうにプロセスに入れていったのかをオープンネスそれからトランスペアレンシーできれば、それは信頼を得る一つの方法ではないかと思うんです。その両方の面で考えられてはいかがかと思うんですが。
【真先戦略官】 今の正にエビデンス・ベースト・サイエンス・ポリシーといいますか、エビデンスに基づいて物事を政策決定、政策創生していくというのは、もう政府全体の方向性にもなっているものでもあり、統合イノベーション戦略でもその旨うたわれておりますので、割とそういったところに話をつなげていくというのは自然なのかなと気もしないではないです。
【小出委員】 それはいわゆる社会との信頼ということを考えたときに、一つの非常に有効な、ということですね。
【真先戦略官】 おっしゃるとおりです。
【小林主査】 でもなかなか、確かに既に存在していた節を消してしまうのはいかがなものかというのは分かるんですけれども。さりとて新しいことをそんなに書けないんです。
【奥野課長】 助言というのを概念としては、今おっしゃった議論だと、例えばより広げていって助言という形だけではなくて、正に政策形成においてこういった科学的なものをよりしっかりと活用していかなければ、正にいけないし、そのために信頼という要素もなければ活用してもらえないし、逆に使う側は今まで以上に、助言というと確かにヒューマンインターフェースだけのような形にもなるので、そういう形ではなくて、科学技術がより政策形成に活用されていく形で。章はより膨らますような形で。
【小出委員】 発展的に解消。
【奥野課長】 解消はしていないけれども、発展させていくと。
【小林主査】 あと、だからパブリックエンゲージメントみたいな、参加みたいなそういうフェーズをもうちょっといろいろなところに入れるみたいな議論をしなくていいかということですね。4期、5期と一応そういうことを書いているんだけれども、なかなか進まないんですよね。やっぱりやり方としては難しいんです。でも、やっぱり信頼という議論を本気でやろうと思うと、そういうフェーズを入れないと多分うまくいかないと思うし、ELSIなんかは当然そういう議論が入ってくるんだろうと思います。政策形成、ここがエビデンス・ベースト・ポリシー・メーキングみたいな議論と、それから参加型の議論とはどういうバランスになるのかというのは、ちょっとまだ私もよく分からない。難しいところなんですね。どうですか。参加とかそういうキーワードを必要だとお考えですよね。
【小原委員】 そう思いますし、民間企業の研究機関もどんどんオープンになって、研究所を地域に公開したり、小学生、中学生を集めてビジネスアイデアを創り出すキャンプなどを開催したりしています。
【小林主査】 そこはすごく大事で、アウトリーチなんていう言い方をしたりもしますし、それはなぜやっておられるんですか。
【小原委員】 それはCSR活動ではなく、事業に取り入れられるアイデアがそこから出てくるからです。例えば、Mono-Coto Innovationという活動があるのですが、企業がスポンサーに付いて、中高生たちから出てきたアイデアを半年間かけて一緒に商品・サービス化していくという活動で、本当に生徒も企業も真剣なんですね。オープンにすることによって、様々なアイデアが取り込めて、それがちゃんと製品・商品化できるという、すごく真面目な取組につながるんですよね。
【小林主査】 これはある意味で共創なんですよね。共創であり、アウトリーチであり、パブリックエンゲージメントなんですよ、ある意味で。だからそういうものが逆に産業界の方では当然のようにやり始められているということを研究者セクターも当然学んで、そういうことを考えるというのは必要ですよねという議論ですね。
【真先戦略官】 。特にこの数年、第5期基本計画で共創という概念が出てきたんです。バックグラウンドとしてSDGsの話が当然あります。こういう社会課題解決に向けてどう政府、官民一体となって実際のアクションを起こしていくのかという中にあって、この共創の概念、様々ステークホルダーの議論を巻き込みながら、なおかつこれは意見を聞くだけではなく、ともに行動していくというスタンスで、幅広く活動を広げてきている。それがすなわちそのままファンドにつながるという、その部分をどう作っていくのかというのがなかなか難しいところでもあり、ということなんですが、いろいろ試行錯誤しながら、今、自立化させていっていると思います。
このレポートの狙いが予算獲得とかそういったところにあるとするならば、正にそういった活動の重要性を訴える。なおかつ、これ、この資料にも登場しますが、ゴールは科学館・博物館の活動だけではない。その先にある政策形成にどうつなげていくのかにあるといったところは、もう少し強調されるといいのかなという気はいたします。
【小林主査】 今おっしゃったものとつながった論点として、インクルーシブという概念ですね。そういう観点をやはり入れるべきではないかと。これは政策形成もあるんでしょうけれども、結局これはジェンダーの話にもつながってしまうんです。そういう観点で科学技術と社会との間をちゃんとかみ合わせるような試みが必要ですよねということだと思います。
論点、どんどん拡散していますけれども、キーワードとしては今、幾つか入ってきたようなものを入れていくということになろうかと思います。で、このステークホルダーというのを、様々なステークホルダーという形で開いておくのがいいのか、もうちょっと具体化した書き方の方がいいのかというのは、何か御意見ありますか。産官学民みたいな話になってしまうと余りおもしろくないですよね。もうちょっと何か気の利いた表現はないですかね。
【奥野課長】 書いていく側とすれば、恐らくどちらの方向性もありますが、それをどちらかに進めたことによって書き方も変わっていくだろうと思います。
【小林主査】 変わりますよね。
【奥野課長】 先ほどの共創という話も、相手が抽象化されている段階だと総論賛成になりますが、結局共創といってもコミットできるリテラシー、入ってくる者があって、資源配分といったときに、もっとも共創のステークホルダーがそこにもし産業界というのがインプットされた場合の評価が変わってまいりますので、集団としてはコミットしていますけれども、具体化していくとその局面局面でコミットメントしてくる人は決して全体ではありません。そうするとそういう中での書き方だとか文章の置き場所というのは全体とのバランスだとか見え方、絵図というのは、書き方によってはちょっとセオリーが必要ですね。
【小林主査】 多分、この章でないと書けないステークホルダーは誰かということなんですよね。つまり、産業界は別の章の中でもいっぱい登場するんですよね。大学も登場するんです。ここにしかなかなか登場させてもらえないのは誰かという問題があって。そうすると市民社会みたいな話になるんですよね。
【小原委員】 あとは、地方ですね。地方自治体など。
【小林主査】 地方ね。自治体とか地方。
【小原委員】 SDGsとの絡みでも、やはり地方が活力になっていますし。
【小林主査】 そうですね。
【小原委員】 はい。いろいろな科学技術で解ける課題というのが地方にはたくさんあります。
【小林主査】 そうですね。
【調委員】 案外出てこないのがSMEs(Small and Medium Enterprise:中小企業)なんですよ。
【小原委員】 ああ、そうですね。地方といった場合に、自治体とSMEsの両方ですね。
【小林主査】 そうするとちょっとエッジが立ちますよね。やっぱり産官学とやったらどこの章でも同じみたいな話になってしまうので。で、産業界はもう大きなステークホルダーとしてほかの章で当然のごとく出てくるはずですので、今のようなものをちょっと入れて、第6章ならではのものをちょっと入れたいなと思います。
【調委員】 文章の中でものすごく気になるところが2か所ほどあるんですが、どうしましょうか。
【小林主査】 御指摘いただいたら。
【調委員】 いいですか。2ページ目の上から2段落目の「こうした科学コミュニケーションに当たっては」のところの、能力が重要であるというのはそうなんですけれども、それを総合的に備えた者の育成が求められるって、これは無理な話なので。これはおかしいので。それをシステムとしてどうやって実現するかという話でなければいけないので、ここはちょっとまずい。
【小林主査】 一人の人間にこの能力を全部持たせるのは無理ですよと。
【調委員】 そう。それはあり得ないわけです。
【小林主査】 それはそうですね。
【調委員】 なので、そこは、逆に言うと、それが政策的な課題としてどうやってシステムを作るかということが出てくるんだと思います。ついでにそこの文章を読んだので、その次の「科学館、博物館等に限らず」というところにもうちょっと具体的な、「限らず」ではなくて、例えばURAだったり産学コーディネーターだったり、あと例えばファンド、ベンチャーファンドの人たちとか、いろいろな関係する人材ってあるので、それを入れておくと、後々政策的な何かのきっかけにできそうな気がしました。
もう一つ、ちょっと文章が気になっておるのが、3ページの2段落目と言った方がいいのかな。「一方」からの後ですね。「研究者は、政治的意図に左右されることなく」。
【小林主査】 これね。ここはおかしい。
【調委員】 これはちょっと無理なので。むしろ、当然研究者は左右されるわけですから、これもどうやってシステムとして、つまり一人の研究者ではなくて、システムとして科学的助言のある種の中立性を確保するかということが重要であるという書き方にしないと、ちょっとこれはまずいと思います。
【小林主査】 ありがとうございます。ここは私も気になったところで。しかもその前の文章が「研究者は」と来ていて、そしてまた「一方、研究者は」と来ると、ちょっと何か変な感じがするので。
【調委員】 ついでだからもう1個だけ。自分にとってだけなので言っちゃいます。公正性の確保のところに、個人的にはORI(Office of Research Integrity:米国研究公正局)的なものは入れられないのかしらと。今、推進室はあるわけですけれども、そうじゃなくて、今、各大学に最終的な研究不正の判断がほぼ任されていて、実際には非常に怪しい事例が大学が隠したまま終わっているという現状を顧みると、ある種のさらに上位機関のようなものがあった方がいいのかななんていうふうにちょっと思ったりします。
【小林主査】 このORIの問題は、日本の場合、大学の自律とか自治という形で一応やっていないんですよね。だけれども、逆に日本の研究倫理のチェック体制とか研究の質の向上に資する取組が甘過ぎるんじゃないのかというのが、『Nature』でしたっけ、『Science』かな、あの辺が言っているわけですね。大体、何らかの国家機関的なものを作っている国があって、日本はそういうものを作っていないと。ここは微妙なところなんですよね。でも確かに現実の日本の研究不正って、やっぱり多いんですよね。
【真先戦略官】 ここは多分冷静な評価が必要ですね。それこそ、先ほど出ましたエビデンスベースですが、これはちょっとどうでしょうね。研究活動を円滑に推進するということ、それから研究倫理を一層徹底させること、これをそういうチェック体制をいわば強くすることでやる方向で本当にいいのかという、ここの部分はかなり大きな政策転換になりますので。
多く報道に出ることが、すなわち日本がルーズだというふうには必ずしもならないはずでございます。
【小林主査】 ただ、チャンピオンが2名ほどいるために、余計目立つんですよね。
【真先戦略官】 はい。そういったところをちょっと冷静に見て、日本の研究現場が果たしてそれほどそういう状況なのかというのは、その辺もし必要でしたら、データも含めて。データでなかなか難しいんですけれども。
【小林主査】 というか、この研究の公正性に関する政策の議論をする委員会ではないんですよね、ここって元々はね。それは別途あるんですか。
【事務局】 有識者会議という形で。
【小林主査】 やっておられるんですよね。
【事務局】 はい。研究の公正に関することを。
【真先戦略官】 仕組み自体ですね。
【小林主査】 そうです。だからそこでの議論を踏まえずにここで勝手なことを書くわけにもいかんなと気もしていて、私もこれはORIとかそういう議論まで踏み込むのかというのはちょっと考えたんですけれども。どうしますかねというのは、ここはちょっと課題ですよね。Office of Research Integrity。でもORIってライフサイエンスにたしか特化していませんでしたっけ。
【横山委員】 NIHなどライフ系に特化しているものですよね。
【小林主査】 そうですね。
【横山委員】 アメリカでは科学者が適切に対応できないかのように思われ行政を怒らせ、コミュニティや大学では管理ができないから監督させなければいけないという議論を経て、ORIができました。一方でドイツは、大きな事件があっても自分たちで自治管理ができるということを言って、自分たちで自治をした。大学やコミュニティがしっかりして自治ができることが一番であるが、調先生のご指摘は、今の大学が自治をできているかというご指摘ですね。
【調委員】 雑ですよね。
【横山委員】 そうですね。だからこういう話が出てくるのであって、それを大学の方がもうちょっとしっかりやらなければいけないという、正にそういう御指摘だと拝聴いたしました。
【小林主査】 この間まで理事をやっていたので、いっぱい実例は知っておりますので。
【小出委員】 この問題は着地点、いわゆる社会との間、その信頼ということですよね。だからその社会の信頼を失わないためにという視点から何か盛り込めるのであれば、こういうところに入るかもしれないですし。
【調委員】 ああ、なるほど。
【小出委員】 その一つ一つはここでの議論でなくていいと思うんですけれども。
【真先戦略官】 今の日本の仕組み、ガイドラインに基づき、各大学がやはり責任を持って取り組むというこのスタイル。このやり方、常にいろいろ過去にあった事例を踏まえながらガイドラインの改定も行われてきて、それで対応してきている現状。こういう取組が要は功を奏してきているのか、それともやっぱり手に負えず悪化して、どちらの方向に向かっていますかというところを冷静に見た上で、要は思いっ切りアクセルを踏まなきゃいけないかどうかというのは判断しないといけないのかなと思います。
【小林主査】 多分研究者の側からすると、非常にきつい、研究の競争的環境のプレッシャーというのは、やっぱり機能している、効いているのは事実だとは思いますね。それと、研究不正というのは大体ハラスメント的な事案とセットの場合が多いんですね。だから、多分、今の研究時間の減少とかそういう問題群とも全部セットになってくるので、例えばアウトリーチ活動とか、こういうことをもっとやりましょうと言うのは簡単なんですが、やっぱり大学の理事で研究の現場を見ていると、彼らは悲鳴を上げますよね。そしてそ弱い者にそういう作業が押し付けられるという構造が起こってしまうんです。なので、本来の研究に時間をくれと言っているところに、いや、アウトリーチ第一です、コミュニケーション第一です、それをやれとかと言うと、やっぱり現場は何でそんなことまで俺たちにやらすんだという意味で、かえってこういう活動に対する敵意を持つことも起こりかねなくて、そこら辺の書きぶり、結構難しいところがあると思います。
【小出委員】 そのコミュニケーションの活動をリサーチャーがやるという場合ももちろんあってもいいですけれども、基本的にはリサーチャーだけじゃなくて、そこにコミュニケーションでいろんな役割の人間がいるわけですから、そういう連中とサポートしながらという。それをリサーチャーにと言うと、かなりしんどいだろうと思うんですね。ポール・ナースみたいに偉くなっちゃった人は、別にやってもいいけれども。一般のアクティブなリサーチャーに言ったら、余り現実的でないような気がしますし。
【真先戦略官】 研究公正に係る具体の政策的な議論というのは、先ほどありました有識者会議の方で一応担当させていただくことになっております。審議会ではないんですけれども。今正に、そこの具体的な議論はそちらの方に委ねておいてはどうかなというのが御提案なんですけれども。
【小林主査】 そうですね。ここの書きぶりに関しても、ヒントになるものがあれば参考にして入れたらどうかなという気がして。ここで今まで全然議論していなかったものですから。
【真先戦略官】 そうですね。基本、やはり信頼の文脈、科学と社会の健全な共創を作っていく、やはり一番の鍵は信頼かなと。
【小林主査】 第6章(1)の品質保証があっての信頼ですから。
【真先戦略官】 はい。そのためには、やはり各ステークホルダーが科学的根拠に基づきながらきちんとした態度で取り組んでいただくことが大事で、それは大学であり、産業界であり、それから個々の研究者についてもそうであるという話ではないかなと思います。その流れの中で研究倫理という話も登場するのかなと思いますが、いかがでございましょうか。
【小出委員】 それをいかに言わずもがなと受け取られないような文脈でうまく入れるかということは、技術的な問題だろうと。
【小林主査】 あと、ELSIに関してはどうしましょう。最近見られるのは、大型の研究プロジェクトの公募の際の文書の中に、公募要件の中でELSI的なことも当然取り組んでくださいというのは出てきていますよね。そういう形で多分研究プロジェクトの公募をファンディングの側がしていったときに、それに対応する人材って実はあんまりいないんですよね。ただ、課題としては必ず出口志向で社会実装を見据えるという議論になったら、ELSI的な配慮をしていますよねというのは当然問わなくてはいけない。ところが、問われる側がじゃあどうすればいいのかというところが対応できているのかという問題が多分残っているんですよね。だからそこの対応を各研究機関がどうやってやるかというのは政策課題になるんじゃないかなという気がします。
御存じのようにうちの大阪大学は来年からELSIのための教育研究センターを作ってやっていきますけれども、本当はもうちょっと日本全体であった方がいいかなと。各大学で1個ずつ作るというのは相当きついので、無理であろうとは思いますけれども、中核的なところに幾つかそういうものを教育・研究していかないと、人材が出てこないんです。そういう課題はやっぱりあるのかなと思います。
【横山委員】 れは是非、小林先生に引っ張っていただいて、大きく育てていただきたいと。我々の近いところだと、例えばハワイに造るはずのTMT望遠鏡が、地元の山を神聖だと思っている方たちがこれ以上建てないでくれということを問題にしているのに対し、研究者の方は当初、理科教育で貢献して受け入れられていると主張する「ずれ」がありました。住民の中でのステークホルダーも違うし、問題設定は全く違うところで起きており、こうしたコミュニケーションの設計に研究者は慣れていません。
【小林主査】 なぜそれが分からないのか不思議ですね。伊勢神宮の真ん中に何か建てますとかいったときに、日本人みんな反対するじゃないですか。それと同じことをやろうとしているんだという想像力の問題なんですけれどもね。
【横山委員】 はい。他の望遠鏡を造るときは、日本からは皇族の方々が山に行ってご挨拶したという話も耳にしました。敬意をもって接したと理解され受け入れられたと聞きます。
【小林主査】 なるほど。
【横山委員】 いろんな事例があると思います。非常に研究者はそれを必要としているんだけれども、でも自分たちではどうしたらいいのか分からないという現場の問題は多いです。
【小林主査】 多分、堀口さんはよく御存じだと思うけど、長崎大はとにかくBSL-4。あれは何とか造る方向で動いて、できては……。
【堀口委員】 まあ、お金はですけれど、裁判は起こっています。
【小林主査】 そうですか。
【堀口委員】 はい。やっぱり、地元出身の先生方は当然いらっしゃるんですけれど、浦上四番崩れって、キリシタンの頃からのいろんな庄屋さんの話とか、原爆とかあって、まあ造ってしょうがないよねと思っている人たちは、受け入れる人たちももちろんいるんですけれども、やはり高飛車な態度でお話をするのはやめた方がよくないかなとは思うところはあります。
【小林主査】 なるほどね。いや、だから、そのタイプのものって、至るところにある話題ですよね。
【堀口委員】 はい。特にやっぱり長崎大学は長崎の中では企業という形で見ても、要するに従業員というか、大きい組織なわけで、そこに住民がまともに立ち向かって、この民主主義をベースにして話ができるかというと、それはそれでやっぱりちょっと難しいかなと思います。
【小林主査】 あれは難しい問題なんですね。日本国内、全然ないんですけれども、ないというのは非常にまずいんですね。社会的な防衛という観点から言うと。本当に難しいですね。
【真先戦略官】 ちょっと一言よろしいですか。前回のRISTEXの取組について説明があったかと思いますけれども、RISTEXでも網羅的になかなかできるのはちょっと難しいのかなという気もしますが、国全体を見ますと、例えばSIPというでかいプログラムは社会実装を見越してのプログラムなので、当然自然科学系の研究開発のみならず、社会システム構築のための様々な研究も同時並行で進められる、そういうパターンのものがあります。JSTの事業でもほかにリサーチコンプレックスでもそのようなことをやっておりますし、このようにプロジェクトを打つときに、そのプロジェクトの性格、狙い、そういったものとの対応で、必然的に社会技術的な検討というのはもう必要不可欠なものは当然やるという話だろうと思います。一方、純粋に自然科学系の基礎的なところを狙っているものについてどこまでやるのかというのは、また別の議論があろうかと思うので、一律にどれもこれもという話ではなく、やはり事業の性格等をよく見据えた上で、社会システムとの構築というものをちゃんとにらみながらプロジェクトを回していくというのが大事ではないかという、そういったところではないでしょうかね。
【小林主査】 おっしゃるとおりです。だから、そういうことを研究の出発点にちゃんと入れておいて、ブレーキではなくて、これを最初から入れることが安定したハンドリングになるんだという意味で、COドライバーになるようなね。ともすると、研究の邪魔をしに来る集団が入ってくるというふうな感覚に捉えられるんですが、そうじゃないんだと。社会実装を視野に入れているタイプのプロジェクトの場合には、最初からそれを入れておかないと、後々困りますよということをちゃんと明確に書いた方がいいかなと思うんですね。で、全部の研究にそれをやれなんて言う必要は全然ないわけで。
ただ、科学技術イノベーション政策で社会実装を視野に入れていれば、必ずこの問題を避けて通れなくなっているので。多分、次の大きな分野というのは脳科学ですね。やっぱりあれはマインドリーディングみたいな話にどんどん行きますから、これは恩恵と同時に、非常に様々な問題を起こす可能性があるわけで、だからそれもやっぱり最初の段階から議論しておかないといけないんだと思うんですね。
【調委員】 ELSIだけを特出しにするのも今どうなのかなと、ちらっと思っちゃったりするんですよね。つまり、例えばニーズの把握みたいなものとELSIの間って、結局は地続きだったりするわけじゃないですか。だけどもELSIっていうふうに書くとブレーキに見えて、でもニーズの把握は重要だよと言ったら、企業の方は少なくともそれは当然だと思う。だからそれを切っちゃうのはどうなのかなと。
【小林主査】 ELSIという言葉で全部表現するのがいいのかどうか。だから共創とかという言い方をしたりしているわけですね。社会が求めている科学技術は何かということをちゃんと一緒に探りましょうという話なんです。簡単に言えば。
【調委員】 そうそう。
【小林主査】 社会が本当に必要だと思っている科学技術を、研究者と知識のユーザーとが一緒に考えましょうと。そうすると、研究者だけでは気付かない問題点が見えてきたりするじゃないですか。それは法律で対応した方がよかったりとか、倫理的な配慮だったり、ガイドラインで対応したりとか、いろんなパターンがあるでしょうと。それを一緒にやらないと、せっかく研究者が善意の下にやっていても止まりますよという話なんです。それがELSIというと駄目なんですかね。
【小原委員】 今の御説明の方が、よく分かります。
【小野委員】 私もすごく、そういう意味で4番目、そういうニュアンスを入れられた方がいいかと思います。
【小林主査】 今みたいな説明が分かりやすい?
【小野委員】 分かりやすい。
【小出委員】 これはアブリビエーション(略語)を使うと、途端に一つの別のイメージになっていって、移行していっちゃうんですね。安保という言葉が日本では聞いたらすぐに反対っていうようなところがある。ナショナルセキュリティーって、本当はもっとちゃんと大事に考えなきゃいけないのにみたいな、ちょっとそういうふうな、行政の使う言葉って結構そういうふうにスライドして使われちゃうことがある。メディアとしても、これはこういうふうに書いて、余りうまく素直に受け取られていないよなというのが幾つかあるんですよね。イノベーションなんていう言葉もそうです。ただ、だけどちょっと新聞で簡単に言い換えるわけにもいかないしというような、いつもずれを感じるので、今のようなのを埋めれば必ずそれは伝わりますよね。ELSIという言葉だけでやると、何かそれがなかなか伝わりにくいという。これは多分日本語だけじゃなくてもそうだと思うのですが。
【小林主査】 そうですね。これはやっぱり業界用語なんでしょうね。
【小出委員】 業界用語。
【小林主査】 多分。
【小出委員】 ジャーゴンだと思われる。
【小林主査】 科学技術政策の人たちだったら一発で分かる言葉にはもうなっているけれども、そうじゃない人にとったら「何ですか」っていう話ですよね。それはそうですね。コミュニケーションとか言いながらこんなことをやっていたら……。
【小野委員】 先生がおっしゃった言葉で一番大事なのは、科学技術だけで解決できない制度だったりとかということがあって、そういうものを総合的に取り組むんだということをお書きになられると随分違うと思います。科学技術は割と正で、それをいかにぐぐっと押すかという印象を受けるんですね。でも、必ずしも全てが科学技術で解決しないので、何かそういうニュアンスを入れるだけで社会との調和ってもっとやりやすくなるんじゃないかなという気がしました。
【小林主査】 なるほどね。それはだから書き方の問題はかなり大きいですよね。
【小野委員】 書き方の問題は大きいと思います。
【小林主査】 そうですよね。
【田中委員】 ここまでの議論で、必要な要素は全部出そろっているのではないでしょうか。ジェンダーと信頼性ということに関しては補足が必要なのかもしれませんが。誰に対してのという視点は重要ですが、現在想定しているステークホルダーだけではなく、新たなステークホルダーの掘り起こしという点も大切なのではないでしょうか。「自分ごと」化できるような文章だと良いですよね。それこそが、長い目では「共創」につながっていく。「共創」も一方向ではなく、理解、共感、双方向なのかなと。乱暴かもしれませんが、「共創」というのを前面・全面に押し出すというのも一案ではないでしょうか。いずれにしても、後は編集次第だと思います。
【小林主査】 今日はかなり幅広にいろんな議論ができておもしろかった。そうか、聞いてくれるのは中学生。あれは名言だと思いました。ありがとうございました。
【小出委員】 最後に。表現で、先ほども調さんの方からも出ましたけれども、誰に何を伝えるのかという文章として、いわゆる財務官に理解してもらいたいというこれであるならば、それはそれで一つの表現でいいのかもしれないですけれども、我々第三者が見たときに、例えば2ページの一番下の「育成する取組が有効と考える」とか、次のページの最初の1のところの下の方に「期待される」というふうな表現というのが、先ほどもありましたけれども、いかにも余り伝えたくないみたいなニュアンスを伝えますし、誰に責任があって、何を言おうとしているのかというのが非常に遠くなるんですよね。
ただ、これが霞が関のレトリックとしてむしろこういう方が有効であるならば、これは一つの意味があると思うんですが、少なくとも社会の外から見たときにこういう文書が役所で出てくるというと、「んーと」というふうに逃げていくという。言葉の使い方で必ずしもいいかどうか分からないですけれども、例えばNUMOというところがありますけれども、あれが原子力発電環境整備機構という日本語になっています。あれを聞いた瞬間に、みんな、まず「あ、これ逃げようとしているな」というのを捉えちゃうんですよね。英語ではNuclear Wasteと書いてあるにもかかわらず、というような幾つかの言葉の使い方でちょっと工夫があると、より多くの人に伝わりやすいのになというときが時々ありますので。その辺は、ただ、これが誰に何を伝えるのかということがまず明確にならなくてはいけないですし、それが国民よりもむしろ重要なところはそちらがターゲットなんだということだと、それでもいいのかもしれないですけれど。その辺は後で御検討をよろしく。
【横山委員】 一つだけ。今のに少し関連するかもしれないですけれども、多層的という言葉は、全部必要だよということが一言で分かるいい言葉だなと思うんです。だけれども、これが多分切り出されて共創みたいに使われることになると思うんですよね、6期計画のこの分野の重要な言葉として。そのときに、多層的でいいのか、多層性がいいのか、何かその辺のちょっとした工夫が割と後々まで響くような気がして。多層的というので共創みたいなまとまったキーワードとして使われるか、多層性か、もうちょっとひねりがあるのか。でも、このコンセプト自体は、実は今回どういう言葉になるのかなと興味津々でおりますので。非常にうまくまとめられたなと。これも賛同いたします。
【小林主査】 でも、これを一回使ってしまうと、もう第7期では使えないんです。
【横山委員】 多層性2.0とか。
【小林主査】 一回使っちゃうと。第7期の人は大変だ。第7期は作るかどうか分からないけど。
【真先戦略官】 文言はよく吟味をすべきかなと思います。もう一つ、文章表現として、ちょっと他人事みたいに聞こえるような表現が多いようですけれども、最終的に第6期基本計画は閣議決定文書でございます。先ほど申し上げたように国が何をするという文書なものですから、したがって国がこういうことをします、それについて責任を持ちますと、そういうことなんですね。論文ではないという感じです。そこをちょっと最終的には意識していくことが必要だと思います。そのことだけとりあえず、今日はピンポイントで押さえておきました。どこまで書けるかが、したがって大変難しい問題になるということです。
【小林主査】 そうですね。今日はたくさん頂いた意見を基に、事務局と一緒に文章表現を考えて、そして次回には中間取りまとめ案としてお見せするようにしたいと思います。小田さん、頑張りましょう。
【小田補佐】 はい、よろしくお願いします。
【小林主査】 それでは今日の議論はこれで閉じたいと思います。事務局の方から何か御連絡があれば。
【小田補佐】 小林先生の方から先ほど御紹介いただきましたが、次回の委員会について御説明させていただきます。次回は来月9月27日、金曜日の朝10時から12時までとなっております。場所につきましては同じ、こちら第1会議室を予定してございます。それから今日の委員会の議事録につきましては、作成次第、皆様にお目通しを頂きまして、その後にホームページに掲載させていただくこととさせていただきます。引き続きよろしくお願いいたします。以上でございます。
【小林主査】 どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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