第9期 環境エネルギー科学技術委員会(第7回) 議事録

1.日時

平成31年1月25日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 3F1特別会議室

3.議題

  1. 環境エネルギー分野における2019年度予算案について
  2. 気候変動適応に係る最近の研究開発動向について
  3. 今後の環境エネルギー分野の研究開発について
  4. その他

4.出席者

委員

高村主査、花木主査代理、市橋委員、江守委員、河宮委員、瀬川委員、田中(加)委員、田中(充)委員、谷口委員、手塚委員、本郷委員、山地委員

文部科学省

佐伯研究開発局長、横地環境エネルギー課長、佐藤環境科学技術推進官、三木課長補佐、平田課長補佐、滝沢専門官

オブザーバー

NHKエンタープライズ 堅達エグゼクティブ・プロデューサー、三菱電機 マルタ総合エネルギーシステム技術部長

5.議事録

【高村主査】  それでは,時間になりましたので,ただいまから科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会の第9期の環境エネルギー科学技術委員会の第7回会合を開催いたします。本日は,大変お忙しい中お集まりいただきまして,ありがとうございます。
 既に事務局からも御案内があったかと思いますが,今回が第9期環境エネルギー科学技術委員会の最後の回となりますので,是非活発な御議論をしていただければと思います。最後に御出席されている各委員の先生方から御発言をお願いしたいと思っておりますので,こちらもよろしくお願いします。
 では,まず事務局から,本日の出席者と資料の確認をお願いできればと思います。
【三木課長補佐】  それでは,出席者等々を確認させていただきます。本日御出席の委員数でございますが,16名中12名で過半数に達しておりますので,委員会は成立してございます。欠席の先生方は沖委員,奥委員,加藤委員,関根委員でございます。
 続きまして,資料でございますけれども,今,お手元のタブレット上に資料が入っているかと思います。資料1から3-3です。3は枝番になっていて3-1,3-2,3-3とあるかと思います。また,議事次第も入っています。
 事務局からは以上です。
【高村主査】  ありがとうございます。
 それでは,早速ですけれども,本日は議事次第にありますように三つの議題を予定しております。なお,本日の会議終了時刻は,12時を予定しております。
 それでは,これから議事に入ってまいります。議題1,環境エネルギー分野における2019年度予算案についてということで,先般,2019年度政府予算案が決定されておりますけれども,そのうちの環境エネルギー分野について,事務局から御説明をお願いしたいと思います。
【三木課長補佐】  それでは,引き続きまして三木から説明させていただきます。
 資料1をごらんください。本日の最後に,先ほど話があったように委員の先生方から御意見を頂く時間を,できれば多めにとりたいと思ってございますので,予算の報告は簡単にと思ってございます。
 ページを二つおめくりいただいて,上に「9.クリーンで経済的なエネルギーシステムの実現」と書かれている全体の資料を見ていただければと思います。こちらの方ですけれども,右側にあるITERの部分は当環境エネルギー委員会の対象ではございませんので,そちらの方は省略させていただきますが,左側,徹底した省エネルギーの推進ということで,先日中間評価も行っていただきました,次世代半導体の研究開発でございます。こちらは前年度14.4億円だったものが今年度は15.5億円という形で伸びている状態でございます。
 下側は,JSTの中で二つ事業がございまして,一つは未来社会創造事業で,その中に低炭素社会の実現領域という領域がございます。こちらの方が6.8億円のものが8.54億円ということで,こちらも伸びてございます。
 もう一つは戦略的創造研究推進事業,こちらにも低炭素化技術開発という形で,こちらは2030年の社会実装を目標にしているものです。実は研究開発として新規の採択自体はこちらの方は終わってございまして,今の開発している事業の継続でずっといっているんですけれども,もともと50億円ちょっとあったものが48.86億円ということになってございます。
 下側,地球観測・予測情報を活用して環境・エネルギー問題に対応ということで,イニシアチブという形でまとめてございますけれども,この中には統合,SI-CAT,そしてDIASの3事業が入ってございます。こちらの方は,後で細かい話はさせていただきますけれども全体で昨年13.3億円が12.81億円ということで少し減となってございますけれども,2次補正予算でDIASのストレージの改修に予算が付きまして,そこで2.8億円ほどの予算が付いているというような状況になってございます。
 続いて,おめくりいただきまして気候変動適応戦略イニシアチブ,先ほどは全体の話しかできませんでしたけれども,そこに細かく載ってございます。左側,統合ですけれども,全体で5.8億円だったものが5.4億円で微減と。DIASにつきましては補正も付いておりますけれども,こちらは前年同額で3.7億円。気候変動適応技術社会実装プログラム(SI-CAT)の方は3.7億円だったものが3.5億円ということで,こちらは微減という形になってございます。この中で,昨年度実施しているような計画とは別のものということでいきますと,統合の中で日EU気候変動ワークショップの予算の方を積ませていただいてございます。このプログラムがEUの研究者と交流しながら,更にモデル開発を高度化していくということで,2019年度に開かれる予定のワークショップの予算が入っているというような状況でございます。
 少し先に進んでいただきまして,フューチャー・アース構想の推進というのが8ページにございます。これはJSTのファンディング事業でございますけれども,フューチャー・アース構想,地球規模問題をTD(Trans-Disciplinary)研究を用いて解決していきましょうというような話になってございまして,国内向けと国際向けの二つのファンディングがございます。その事業について,これも前年同額になりますけれども1億3,000万円ほどの予算が付いている状況でございます。
 続きまして9ページ,省エネルギー社会の実現に資する次世代半導体研究開発ということで,こちらは先ほど申し上げたとおりの金額になってございますが,増額分としてこちらで研究開発を進めようと思っておりますものが,今この研究開発ですと領域としては三つの領域がございます。パワーデバイス,レーザーデバイス,そして高周波デバイスでございますけれども,窒化ガリウムの半導体を組み込んだ回路の研究まですることになってございますが,そういった回路研究の中,例えば,高周波デバイスの回路領域のノイズの対策,回路にしたときに非常にノイズが強く出てしまうという課題がございまして,そのノイズ対策ということで拡充して積んであるというような状況になってございます。
 その他,説明できていないものとしましては13ページに低炭素社会実現のための社会シナリオ研究事業というのがございまして,こちらはJSTの中にあるLCSというセンター,田中先生が御所属ですけれども,こちらの予算額が1,000万円ちょっと増額という形で,引き続きシナリオ研究を推進していきたいと思ってございます。
 あとは理研の方がセンターを二つ持ってございまして,こちらは理研全体の運営費交付金の内数という形になっていますので,金額はちょっと申し上げられない状況ではあるんですけれども,創発物性科学研究事業,あと環境資源科学研究事業が14ページ,15ページという形で紹介されている状況でございます。
 当方からは以上です。
【高村主査】  ありがとうございます。
 それでは,ただいま御説明いただきました2019年度予算案についてですけれども,決まった内容ではありますが,特に御質問,御意見がございましたらお願いできればと思います。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは,こちらの議題についてはこの間の決定された予算案について御説明いただいたということで,早速ですけれども次の議題に移ってまいりたいと思います。
 議題2でありますが,気候変動適応に係る最近の研究開発動向についてです。こちらも事務局から御説明していただきたいと思います。
【平田課長補佐】  それでは,平田から資料2に基づきまして説明申し上げます。
 資料2,近未来の地域気候変動適応研究(地域モデル研究)の今後の在り方(ディスカッションペーパー)ということでございます。こちらはSI-CATが2019年度末に終了するということで,その後の取組をどうするかということで,現状の文部科学省としての認識と,それからこういうことがまだ課題として残されているのではないかということにつきまして御説明させていただきまして,忌憚(きたん)のない御意見を頂きたいということでございます。
 資料の一番上の方でございますが,近未来の気候変動適応研究,ここでは地域モデル研究と仮に定義させていただきますが,SI-CATでは気温,降水量それから海洋情報の一部に関して予測情報を創出しています。それから先端的なダウンスケーリング技術,それから影響評価技術を開発し,モデル自治体のニーズに基づきましてその適応策の検討を支援しているところでございます。
 1ポツの背景ですが,SI-CATを取り巻く状況といたしまして4点挙げさせていただいております。まず,御案内のとおり昨年12月に気候変動適応法が施行されました。国については科学的知見を充実することが責務とされており,自治体においては適応施策を推進すること,それから計画を策定するということの努力義務が課されてございます。
 それから,SI-CATももちろんのこと,これまで前身事業のRECCAでありますとか,あるいは創生,統合プログラムを通じて知見が蓄積してきているということもございます。
 三つ目ですが,SI-CAT立ち上げ以降,その当時は行われていなかった取組が環境省の方で開始されていると,地域適応コンソーシアム事業でありますとか,A-PLATなどの取組が始まっているという状況の変化もございます。
 それから4点目ですが,こちらは文部科学省の研究開発局長と,それから気象庁長官の懇談会として気候変動に関する懇談会を開始してございます。こちらの方では文部科学省と気象庁が協力しまして政府,自治体の気候変動対策推進に貢献すること,そのために関係機関と連携して三つの目標を置いて取組を進めることとしております。その三つの目標というのは,一つが我が国の気候変動に関する情報の統一的な見解をまとめるということ。二つ目が気候予測データセットを整備していくと。そして三つ目がそのデータセットの利用者向けの解説書を作成するということを目標として掲げてございます。
 2ポツですが,国又は文部科学省としてこの気候変動適応に関して取り組むべき課題は何なのかということでございますが,(1)のところにございますように環境基本計画でありますとか,あるいは科学技術基本計画においては,気候変動の影響への適応を推進するために科学的知見を充実するということが定められておりまして,その後,適応計画が昨年11月に閣議決定されているという状況でございます。その適応計画においては,こちらに挙げた五つの基本的役割というものが定められておりまして,この中で⑤の科学的知見の充実・活用及び気候変動影響の評価というところが特に文部科学省として重要なところと認識してございます。
 (2)ですが,文部科学省といたしましては,気候変動適応計画に基づいて予測情報の創出,あるいは気候変動の影響に関する調査研究を行うということが適応計画に書かれてございます。
 3ポツですが,他省庁においてどういう研究開発に関する取組が行われているかということを整理しました。一つ目ですが,気象庁においては長期的な観測監視,将来予測を行って,その情報を提供されています。それから気象研において,統合プログラムやSI-CATと連携・協力いただいておりまして,気候変動対策の強化に関する研究を推進されております。
 環境省においては,平成29年度以降,適応策の検討に資する取組を次々と開始されておりまして,適応コンソーシアム事業でありますとか,あるいは推進費が来年度からフィージビリティスタディを始めるとか,さらには適応法において国環研の役割が規定されまして,気候変動適応センターを通じて情報の収集,整理,分析及び提供等の業務,あるいは自ら研究を実施されるということでございます。
 三つ目ですが,文部科学省としてはSI-CATや創生,統合で作られたデータセットをDIASを通じて提供する,あるいはJAXAやJAMSTECによる様々な観測が実施されているところでございます。
 2ページ目でございます。4ポツとして,留意・検討する際の視点(案)ということで書かせていただいております。SI-CATにつきましては,先ほど申し上げましたとおり近未来の予測情報をモデル自治体等に提供してきておりますが,適応法の施行に伴いまして環境省さんが自治体における適応策の検討を支援するという取組を強化されてございます。一方,適応法に基づいて地方自治体は適応計画を自ら策定する努力義務が課されたということで,それぞれの地域ごとに適応計画の策定に資する近未来の地域気候モデルというものをより一層精緻なものとして予測情報を提供するという必要が生じていると認識してございます。また,自治体において適切な適応計画を策定していただくためには,我々が提供する科学的知見でありますとか,その元になっている気候モデルというものを的確に御理解いただくということが必要になるかと思います。さらには,気候変動に伴う課題に挑戦する,様々な今までSI-CATの枠組みでは取り組んでいないような研究開発も進んでございます。
 このようなことを踏まえますと,文部科学省の行う近未来の地域モデル研究の取組として,環境エネルギー分野として以下の視点が重要なのではないかということで4点挙げさせていただいてございます。
 1点目ですが,SI-CATにおいて創出された近未来の予測情報は,気温,降水量,それから海洋の一部のデータのみであるという状況でございます。一方,地域の適応策を策定するためにはこれだけの情報では足りないというような御意見も頂いておりまして,十分な精度が,そもそも気候モデルにおいてここに挙げた要素以外は十分ではないというような状況があるのではないか。それから,適応計画に定められた国としての役割,科学的知見の充実,提供という役割を十分に果たしているかという観点から検討すべきではないかというのが1点目でございます。
 2点目はSI-CATが担っているモデル自治体等への適応策の検討支援ですが,先ほども申し上げましたとおり環境省でもその取組を強化されているという状況でございますので,その対応状況に留意すべきではないかという点が2点目でございます。
 3点目が,自治体あるいは自治体から影響評価等に関して業務を請け負われるコンサルタントなどの事業者さんが適応への対応を円滑に行うためには,まず文部科学省が予測情報の出し手として分かりやすい情報を提供できているかという点。また,受け手の自治体や事業者さんのリテラシーというものは必要十分な水準を満たしているかという観点で検討すべきではないかという点が三つ目。
 最後に4点目ですが,エネルギー分野において技術革新が及ぼす近未来の影響というものについて,気候モデルや影響評価に適時適切に反映するとともに,自治体に関連情報とともに提供することを検討すべきではないかというのが4点目でございます。
 以上の私どもの認識,それから検討の視点につきまして忌憚(きたん)のない御意見を頂ければと思います。以上でございます。
【高村主査】  ありがとうございます。
 それでは,このSI-CATの貢献をはじめとした,今後のこの分野の研究開発の方向性も見据えた上で,気候変動の適応に関する研究開発についての今回の御提案について,御質問,御意見を頂ければと思います。札を立ててお知らせいただければと思います。
 まず,花木委員からお願いいたします。
【花木主査代理】  花木でございます。
 私,この気候変動への適応あるいは解明に関して,環境省,国立環境研究所と一緒にコラボレーションすることは非常に重要であり,また適切なテーマだと思っております。その関連でお伺いしたい点がございます。今の御説明の中に留意・検討する際の視点というのが四つございました。この中で環境省との連携ということが書いてあるのですけど,もう少し具体的にどういうふうに補完し合うかということをお伺いしたいと思っております。特に第2点のところで,環境省の対応状況に留意すべきではないかと,どちらかというと役所用語で少し分からないんですが,留意っていうのは補うのか,あるいはあるところは任せて文部科学省ではやらないということなのか,その辺はどういうようなことが具体的に想定されているのかをお伺いしたいと思うんです。
【高村主査】  ありがとうございます。たくさん札を立てていただいておりますので,意見少しをまとめていただいてからお答えを頂こうかと思います。
 それでは,本郷委員,その後田中充委員,それから田中加奈子委員の順番でお願いいたします。
【本郷委員】  御説明ありがとうございます。私はたまたまSI-CAT,それからDIASの両方に関係しているんですけれども,適応計画との関係についてコメントいたします。適応については,個々の地域の特性があって,それに応じた対応を考えていかないといけないというところが重要な点の一つかと思います。SI-CATは大学と自治体が協力してやっているという点で非常に好ましいというか,望ましい形態で,成功しつつあるのだろうと思います。しかし,全ての自治体ができているわけではないので,今後考えていくためにはまだ取組ができていない地域で,その個性を反映した形で作っていくという意味で大学との連携,巻き込みについても注力していく必要があるのではないかという気がいたします。
 環境省の取組というのはどちらかという汎用的なものを作って提供していきましょうというもので,これは大事なことなんですけれども,それではできない部分として,個々の地域特性を生かしたというところに文部科学省のプログラムとしては取り組んでいただいてもいいのかなという気がいたします。
 それからもう一つは海外です。海外においても同じような状況でございますので,特に海外の場合は日本から協力してもずっとやっていけるわけではございませんので,海外の大学,研究機関と協力することによって自律的に進んでいくような体制というか協力の仕方を考えていただいてはどうかなと思います。
 それから最後,3点目なのですけれども,近未来の予報について,これだけでは分からないとか,精度を増さなければいけない,そういう御意見が出ているということでございますが,それはそれで大事ではあるのですが,もう一つ企業の方で,例えばインフラ投資をするようなときに考えますと,どの程度正確か,もちろん正確にこしたことはありませんけれども,現在あるものを利用するということが現実です。最終的には判断の問題ですので,精度,精度,精度と言っていつまでもできないよりは,あるものを提供していただけたらどうかなと思っています。過去のデータを使ってインフラ事業を設計していくわけですけれども,将来のことをどの程度反映して設計するかというのは非常に大事になってきていますので,是非企業の考える目線というか,それにも合わせた形でタイムリーに出していただくようなことも御検討いただければと思います。
 以上です。
【高村主査】  ありがとうございます。
 それでは,田中充委員,お願いいたします。
【田中(充)委員】  ありがとうございます。私はSI-CATに関わっていますので,その観点から発言させていただきたいと思います。
 SI-CATの特徴としては,気候予測技術のシーズというかその作り手側と,それからそれを使うニーズである自治体であったり,場合によっては企業が,比較的近いところで共同研究している,これが特徴的で,したがって,現場で実際に活用されるデータを整備していくとか,データを発信する,また現場ニーズを踏まえながら技術を活用していく,そうした手法や方法論も開発していこうと組み立ててあり,そういう点でとても特徴があり,実際に成果に近いものが出てきているのではないかという認識です。
 その上で3点ほど発言です。第一は,こうした気候予測技術というのがいよいよ将来予測データの提供の段階から,それを活用しての社会実装段階に少しずつ移ってきている。ですから,社会の中にどういう形で活用されていくか,そういう視点が大変重要であり,それに対してどのようなインプットをしていくのか,あるいは提供していくのかということが大事ではないかと思います。その一例を申し上げますと,例えば気候変動予測技術を活用した結果が本当に住民に受け取られる,受け入れられているのか。例えば,よく言われる災害の気象情報,警報が出ているにも関わらず人々が動かないという状態というのはどう考えていくのか。つまり,気象予測に対して,人々を動かす誘引は何で,どういう伝え方がいいのか。それはコミュニケーションであったり,リスク評価の在り方であったりするわけですが,そういう観点も入れていく,社会実装技術の在り方といった点もこれからの研究の射程に置く必要があるのではないか,これが1点目の話です。
 二つ目は,いよいよ適応策というものを現実に取り入れて地域で展開していくことになりますので,気候予測が適応策を組み込んだときにどういう影響が出てくるかという点,つまり,適応策を組み込んだ将来予測といったことが現実の局面でこれから必要になってくるだろうと思います。そういう点では適応策の組み込み,例えば農業であるとか,暑熱であるとか,そうした幾つかの課題について,きちんと予測することで人々の気候変動リスクを減らすことができる,適応策を組み込んだ形での将来予測,これを考える必要があるのではないか,これが2点目です。
 それから3点目は,先ほど他の委員からも発言がありましたが,ほかの省庁との役割分担をどうするのか。とりわけ環境省が地域の気候変動問題に対して関心を持って様々な施策を展開していますので,そことの役割分担と,かつ連携という観点からきちんと整理していく必要があるのではないか。自治体などのこれらの気候データを使う側から見ると,様々な研究プロジェクトが走っていて,どういう全体像なのかということがなかなか見えてこないということがあります。ですので,是非,プロジェクト間あるいは省庁間の連携,そして分担といったことに留意してほしいと思います。
 以上です。
【高村主査】  ありがとうございます。
 それでは,田中加奈子委員,お願いいたします。
【田中(加)委員】  ありがとうございます。私もこういったプロジェクトの目的といいますか,もっと先のところでどうつなげていくかというところに興味がございます。例えば先般出ましたIPCCのSR1.5報告書の御説明などを拝見しておりますと,適応のコスト,インパクトのコスト,気候変動が起きてどんなダメージがあるかというコストについて,世界全体で見たときに定量化する手法がまだ余り確立されていない。もちろん日本,あるいは限定した地域で見るならば,保険会社等もかなりのデータベースを持っていらっしゃると思いますし,こういったことを踏まえて自治体が経済的にどの程度の損害がありそうかを予測して対策をとっていくと思うのですが,今の段階ではそういうのを俯瞰(ふかん)したような定量的な評価が,日本全体や地域や世界といった規模についてのものは出てきていません。
 何を申し上げたいかといいますと,せっかく日本の中でもそういった目的に合わせたデータというものが個別には存在しているわけです。これを今データベースとしてきちっとやっていこうという流れの中では,ある程度汎用性の高いものにしていく必要があると思います。例えばデータが不足しているとき,あるいは,精緻にデータが得られない場合に,どのようなデータがあれば補完できるのか,ということです。これにより,いろいろな地域で応用が可能になります。コスト情報は非常に重要であり,データを充足することで活用できるものを出していくことが重要だと思います。
 日本の中でこのようなコストを俯瞰(ふかん)する手法と,必要なデータが何かを判断する手法が確立すれば,先ほど本郷委員もおっしゃった,例えばほかの国で考えるときに,更にコストについてしっかりと議論が進められるのではないか,つまり,その手法論の開発といったところで日本がリードできる部分ではないかと思うのです。ソフト的な対応ということですね。
 それから,今田中充委員がおっしゃったことは,私もとても面白いなと思っています。適応策が講じられた後で,今度はどういったことが影響としてあるかという点です。ほかの国ではなかなか適応されていないことが,既に日本ではもう適応されていることはあります。そのある状態からのインパクトを見る必要があります。例えば台風一つとっても,なかなか台風が来なかった地域や国に突然台風が来たら,全く備えがなくて非常にコストが高くなる,影響が大きくなるというようなことは今までも他地域でございました。そういったことからも,そういった田中充委員が御指摘されたようなことを考える必要があります。現時点で影響として数値として出せるようなところを振り返って,その内訳として既に日本という国で適応が進んでいるからこそこういうダメージで済んでいるんだというところもブレークダウンできれば,他国への,あるいはほかの地域,あるいは日本の中でも新しく気候変動による新たな影響が起きるところでも適応ができますので,そういった過去の例に関してもブレークダウンしてそういった分析をすると面白いのではないかと思います。
 以上です。
【高村主査】  ありがとうございます。
 それでは,この後,河宮委員,それから江守委員,市橋委員の順でお願いいたします。
【河宮委員】  ありがとうございます。私は気候科学専門ですので,その観点から感じたことを述べたいと思います。
 御説明の中で,これまで気温とか降水量とか基本的な量は自治体などに提供されているけれども,そのほかのデータをという話があって,それはそれで確かに日射量であるとか細かい風速の変化であるとかは必要なんですけれども,非常に基本的なところで雨というのが大きな課題かなと思っています。もちろんこの程度の強い雨がこれぐらい増えそうであるとか,ないとか,そういう大まかな統計量というのはそれなりに信頼が持てるものが出てきて提供されているんですけども,極端な話,去年の夏の豪雨のようなとんでもない,100年だか200年だけに一遍のような雨,そういう確率分布でいえばすごい細いテールのところに当たる現象というものは,今まで比較的気候モデルの高度化という観点では対象になっていなかったのですけれども,適応に関してはまさにそういうところが大事というところで,そこをどう扱うかというのは非常に大きな課題になってくるし,それは全球モデルの高度化,またダウンスケーリング,両方にとって大事になってくると思いますし,先ほどから何度か話に出ている環境省とのデマケ,デマケというのは役所用語かもしれないですが,そういう観点からでも,これは文部科学省がやっていかないといけない仕事だと感じているところです。
 あと,ほかの項目になりますけれども,技術革新の環境影響みたいなこともしっかり見ていかなければいけないのではないかというのが項目としてありましたけれども,こういう話は実際気候科学の分野でも少しずつ盛んになってきていまして,技術革新が起こると,それがどれぐらい緩和抑制策に反映されるというのは,これは山地先生がお詳しい分野ですけれども統合評価モデルというのがありまして,それのアウトプットを気候モデルのインプットとして使うわけなのですけれども,そこのところのジョイントみたいなところをもうちょっとしっかり検討して,両者が協力していかなければいけないのではないかという話になっています。特に例えばバイオフューエルとの絡み,森林伐採との絡みで土地利用の気候影響というところは大きな課題になっていますので,エネルギー問題に関して技術革新が起こって,それが回り回って,例えば土地利用にどう影響して気候にという話は,今後気候科学のモデルとして大きな話かと思っています。これもやはりデマケという点では,文部科学省がやっていかなければいけない仕事かと感じているところです。
 あと,これは何人かの方が触れていた話で,繰り返しになるので,デマケというよりはおまけみたいな感じなのですけれども,適応策と気候予測に関しては,例えばダムのオペレーションがどうであるから,将来の水循環はどうなるというような話というのは気候モデルと水環境工学との連携として研究が進んできているところですので,それを農業であるとか,水産業であるとか別の産業に拡張してみるというのは,これもあり得ることかなと思いました。これは伝統的な気候モデルとか気候科学の分野の話ではないので,SI-CATのようなそういう事業ということで進めていくのは必要なことではないかなと,説明を伺っていて感じた次第です。
 以上です。
【高村主査】  ありがとうございます。
 それでは,江守委員,お願いいたします。
【江守委員】  ありがとうございます。三つ言おうと思っていたんですけれども,一つ目は単純な質問で,これは今河宮委員がおっしゃった中に入っていたところで,説明の最後の技術革新が及ぼす近未来の影響というのが,僕は少し意味が分からなかったので単純に聞こうかなと思っていたのですけれども,河宮委員がおっしゃったような,例えばバイオマスをたくさん利用するようになって,土地利用の変化が気候に及ぼす影響とかそういうことであれば分かるんですが,ほかにも例があれば教えていただきたいと思いました。全体の趣旨としてうまく,僕を含めほかの皆さんにもどう伝わったのかと少し心配になったものですので。
 二つ目は環境省,国立環境研究所の視点から何か言わなければいけないと思ったんですが,環境省が何と言うか知らないし,うちの適応センターが何と言うか知らないのですけれども,個人的にはSI-CAT的な研究というのは,何人かの関わっている方もおっしゃったように,恐らく地域での影響評価適応策開発の手法であるとか技術とかを開発するという趣旨の研究だと思っているので,そこでグッドプラクティスというか,モデルケースというか,そういうのが開発されてきて,環境省の適応センター等を通じてそれがいろいろな地域に横展開していくような,そんな連携ができたらいいと思いました。ですので,そういう観点からは引き続き文部科学省でそういったことをやっていただくというのは,環境省側から見ても歓迎なのではないかという,これは僕が中でしっかりと話したことではない個人的な意見です。
 それから,最後に気候科学目線で一つ申し上げたいのは,気象庁と文部科学省の懇談会で三つ目標にしているとおっしゃったときに,統一的な見解であると,これはある意味では結構なことなのですけども,少し心配な言い方だと思ったのですが,もう一つはその精度がこれから地域的な気候を考えるともっと必要になってくるという言い方だと,これもある意味では正しいのですけど少し心配なのは,これは非常に昔から言っていることなのですけれども,気候変動予測ということを考えたときに,不確実性という問題とどう向き合っていくか,どう付き合っていくかというのがいつまでたっても残るはずで,それが研究開発したので不確実性が狭まって,その外側は見なくてもよくなりましたということを言っていいのかどうかという問題は,これはずっとあると思います。
 統一見解というのは,日本のいろいろな地域でいろいろな分野の影響評価に使えるような統一的な,統一的という名前がいいかどうか分かりませんけれども,気候シナリオのセットがデータセットと解説とともに構築されて提供されてみんなで使えるようになるというのは,これは気象庁,文部科学省で是非そのようにしていただきたいと希望するところではあるんですけれども,その際の,例えば気象研のモデルはある振る舞いをしますと,ある地域で雨が増えますと,例えば東大-JAMSTECのモデルは別の増え方をします。では,その二つのモデルを使って統一データセットを作りましょうと,仮にそういうふうになったときに,ほかの国のモデルではまた少し違う振る舞いをする,例えば降水量がある地域では減るモデルがあるといったときに,では,ほかの国のモデルのようなことが正解である可能性を無視していいのかとか,そういう話がずっとあるわけです。これは,やっている人の中ではCMIPという世界の気候モデルアンサンブルがあって,その幅を見ながら将来予測というのは考えていかなくてはいけないということがある意味で常識になっているのですけれども,それが影響評価,適応策検討と伝わっていくときに,恐らく単純化されてその不確実性というものがだんだん意識し続けるのが難しくなるような状態になってきます。これを以前は確率分布でシナリオを提供したらいいのではないかという一つの考え方があって,今でもその考え方をやっているところもあるんですけれども,最近新しいはやりとして,確率分布だと使う人が使いづらいし,よく分からないので,こういう可能性もあるし,ああいう可能性もあるという幾つかの少数のストーリーラインと呼んでいますけれども,幾つかの可能性のストーリーを示すことによって不確実性の幅を,影響評価とか適応策検討側でも評価しやすくなる,検討しやすくなるようなコミュニケーションとか,そういう気候シナリオの開発が必要なのではないかということが言われてきています。そういうことを含めて不確実性の問題に向き合っていくということを,文部科学省としても是非これからも意識していただきたいと思いました。
 以上です。
【高村主査】  ありがとうございます。
 それでは,市橋委員,お願いいたします。
【市橋委員】  2点ほど申し上げます。江守委員の言っていることとかぶる部分が多少あるのですけれども,1点目のところで気候モデルの精度という話が十分かどうかという問い掛けがあるのですが,まずよく分からないのが気候モデルの精度,例えばSI-CATは5年間でどれだけ上がったのかというところは,簡単になかなか答えられないことだと思うのです。前に都のプロジェクトでやっていたときも,いろいろなステークホルダーからその精度はどのくらいなのかという議論が多くあって,なかなかうまく答えられない。一方で,今出している精度が十分かどうかというのは,恐らく影響評価をする対象によっても精度の要求が違ってくるでしょうし,対応インフラなんかについても計画の仕方によって要求精度も変わってきてしまうのだと思うのです。なので,なかなか十分な精度がどこにあるかというのがうまく見せられない。SI-CATみたいな,先ほどグッドプラクティスと言いましたけど,そういうところで例えばインフラならインフラの目指すべきところみたいなものを確定するというか,こういうところまで精度を上げればこういうことができるんですよというのを幾つか見せることによって,逆に目標の設定ができるのではないか。SI-CATでやっていることをそういう使い方もできるし,こういう計画のやり方をする場合はここまで,若しくは国土交通省がインフラと言っているのは,インフラが恐らく一番精度の高いところを目指さざるを得ないのではないかと思っているのでインフラと言っているのですけども,国土交通省のやり方でやるとここまで精度が必要なんだとか計画側とセットで精度を考えていかないと,若しくは対象とセットで考えていかないと,なかなか分かりやすくどこを目指すのかというのは見せられないのではないかと考えます。
 あともう一点は,先ほど適応策の実施を組み込んだ影響評価が必要なのではないかという話だったのですけれども,私も同様に感じてはいるのですが,例えばIPCCの方で話が最近出てきていますのは生物多様性の話と気候変動自体がお互いにリンクしている,だけど多分生物多様性の影響評価って一番難しくて一番遅れている分野ではないかなと思っていまして,そういうところに少し重点を置くとか,そういうこともあってもいいのではないかと思います。
 以上です。
【高村主査】  ありがとうございます。
 手塚委員,お願いいたします。
【手塚委員】  済みません,追加で手を挙げさせていただきました。いろいろな委員の方のお話を聞いていて少し触発されたので,産業界的な立場でコメントさせていただきます。
 一つは,文部科学省と環境省のデマケという話がありましたけれども,多分この分野では,たまたま環境省が一番自治体のプロジェクトをいろいろやられているから表に出されたと思うのですけれども,実際は農林水産省や国土交通省もほぼこれに類型する事業に予算を付けてやられているはずですし,ますますこれからやられることになるはずです。なので,是非とも関係者で調整していただいて無駄のない行政や施策をやっていただくのがよろしいのではないかと思います。
 それから,江守委員の方から不確実性に関するコメントがあったので,それについて私の方からもお話しさせていただきたいのですけれども,三つ目のポチにある情報の出し手の分かりやすさと,それから受け手のリテラシーという話があるのですけれども,この問題が非常に難しいと思いますのは,気候予測モデルの中には非常に大きな不確実性がまだ存在しているということです。これを分かりやすく表に出そうと思うとシンプルにするということで,不確実性がある種捨象されてシンプルなものが出ていくんですね。ただ,現実にそれを何かアクションにしようと思うと,お金を掛けてそれに対する対策をとっていくということが起こってくるわけなのですが,シンプル化する際にそぎ落とされているいろいろな要素,例えば分かりやすく「こういうことが起きる」ということを啓発しようと思うと,どちらかというと最悪の事態を想定したようなメッセージが出ていきやすくなるんですけども,最悪の事態を想定して対策を立てようと思うと無限大に予算が掛かってくる。台風予測みたいに「来ますよ」と言っていて来なかった場合は,ああ,よかったなで済む話だと思います。多少の対策は皆さんとるんでしょうけども。ところが,ここで書かれているものというのは本当に年間の降雨量がどれだけ増えるかとか,あるいは水位がどうなるかとか,かなり壊滅的な状況も含めた予測になってくるわけなので,来なかったときによかったなで済むかという問題も,どうしてもビジネス的な観点からは出てくるわけです。つまり,最悪のケースがどういう状況で,どれぐらいの確率で来るかということと,ベストエスティメートとこういうふうに来るかというようなことも,先ほど江守さんが幾つかのパターンに分けてシナリオでという話があったと思いますけども,そういう意味で類型してコミュニケーションしないと,受け手の側はミスリードされるリスクがあり,つまり,事業を実際に行う側はミスリードされてしまうリスクがあるのではないか。
 もっと言いますと,民間と違って行政のプログラムというのは非常にイナーシャが大きいと思うんです。一旦事業化を決めてしまうとずっとそれをやり続けていくというパターンが割と多い,特に自治体がやると。そうすると,例えばモデルの内容が何年かたって新しい知見が増えてきて変わってきたときに,気候変動科学の世界はもう少し先の2.0とかの世界に行っていても,実際にその何年か前の知見を前提に立て始めてしまった予算とか事業とかというのがずっと継続されてしまうリスクがあります。つまりどこで世界が変わってきているかということを適宜うまくコミュニケーションしていかないとならず,フォローアップの部分もとても大事になってくるのではないのかなという気がいたします。余り不確実なものに対して確定的な,しかも長期の事業なり予算なりが立てられていくというのは,かえって物事が硬直的になる。だからそこの部分をいかに柔軟にするかとか,しなやかに対応するかというようなことも,コミュニケーションの部分のところにうまく組み込んでいかないとよろしくないのではないかと思いました。
【高村主査】  ありがとうございます。
 本郷委員,お願いいたします。
【本郷委員】  済みません,2回目のところで。江守先生の御説明のところで,私,まさにそのとおりだと思っていて,今適応という場合,自治体もありますけど企業のインフラ,企業がインフラ投資するときに,これは考えなければいけないようなところになってきているのですね。その場合には,予測というのは余り言葉としてなじまないような気がしています。
 というのは,ストーリーあるいは確率でもいいのですけど,こういうことが起こる可能性があると二つ,三つのパターンを考えて,それが起きたらどれだけの被害が経営あるいは事業に与えるか,その結果としてどういう対策を立てるかということを検討していくので,今この現実に使われようとしてきている段階においては,先生のおっしゃるような不確実性があるということをむしろ強調していただいて,その上で使ってくださいと言っていただく方が有り難い。間違いなく使わなければいけないという状況になってきているので,そこは言葉として予測というのが適当かどうかというのがどうも引っかかる。かえってそれに頼り過ぎるというのは企業としては余りなじまないところなので,予測ではなくシナリオとか,何かそういう適当な言葉があるのであれば,ここをちょっと工夫していただいてもいいかという気がいたしました。
【高村主査】  ありがとうございます。
 ほかに委員から御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 事務局の方でまとめてお答えを頂きたいと思いますが,私から2点簡単に申し上げます。既に先生方からおっしゃっていただいた点なんですけれども,どういうふうに他省庁と連携していくかという点です。一つ大事かなと思っていますのは,確かに地域協議会あるいは地域のコンソーシアムを作って適応策を進めていくのですけれども,そこに気象・気候予測の影響ないしはリスクの予測について,文部科学省が対応できる研究ニーズがあるかどうかということをきちんとお互いにキャッチボールできるような仕組みというのが必要かなと思います。これは,別の言い方でいうと,国レベルの気候変動予測あるいはそのリスク,影響予測をうまく地域にフィードインしていく仕組みということでもあります。地域の議論の中できちんと大局的に重点を明らかに設定していただくためにも,そうしたやりとりをどううまく作っていくかというのが必要かと思います。
 二つ目はプライオリティについてですが,防災についてはずっとこの間もやってきているのですが,個人的には農林水産業への影響が非常に大きいと思っていまして,農林水産省も適応計画を昨年11月に作ってくださっていますけれども,この分野は生態系のリスクの評価が難しいという市橋委員の御発言にもありましたけれども,難しい分野であるがゆえに,しかしながら取り組むべき課題ではないかなと思っております。
 では,幾つか御質問もありましたので,事務局から御回答ができるところを御回答いただければと思います。
【平田課長補佐】  様々な御意見,ありがとうございます。幾つか御質問も頂きましたので,お答えさせていただきたいと思います。
 まず,環境省の対応状況に留意すべきではないかというところですが,SI-CATでは,プログラムを立てる段階で分野を限定するとか,ここまでの範囲でしかやらないようにしようとかいうことを決めず,一応あらゆる分野について取り組むと,しかも影響評価を研究者が行うだけではなく,自治体のニーズを踏まえて研究し,自治体の取組を支援するということでやっていたんですが,環境省で新たに推進費などで研究開発の部分も取り組まれるということを考えると,文部科学省プロジェクトで作った予測情報を,計算するだけではなくて当然影響評価に使ってみて,このあたりがちょっと合っていないという形で検証していただくということも,現に環境省の地域コンソの事業の中でも使っていただいたりしているんですが,それを必ずしも文部科学省事業の中で全ての分野について影響評価までやる必要は,もしかしたらないのかもしれません。つまり,限られた財源ですので,真に文部科学省でしか取り組めないところにある程度注力するというのが,国全体の取組の中で抜けがないようにするというためには必要ではないかなという趣旨でございます。
 具体的にどう環境省と相談していくかですが,きのうも担当者と打合せなどやっているんですが,環境省が来年度,推進費のFSをやられるということですので,その動きを十分注目しながらこちらは考えていく必要があると考えています。当然,文部科学省としてもやらないといけないということを考えつつ,お互いの考えを持ち寄ってすり合わせが必要ではないかというところでございます。
 それから,たくさん御質問を頂いたんですが,統一的な見解という部分が若干不安を感じるという御指摘がございましたが,もうちょっと詳しく申し上げますと,今まで気象庁が異常気象レポートというものを出されていましたが,そちらは気象庁気象研の知見,基本的には気象庁で苦労する形で知見を使って書かれていたものを,今後は文部科学省プロジェクトの成果も大いに活用して,オールジャパンという形で出したいという趣旨でございます。その中で不確実性のお話もございましたが,様々なデータセットがあって,データセットに,気候モデルによって予測が少しずつ違ってくるというようなところにつきましては,確信度も含めてそれぞれの情報について見通しを書けないだろうかということで,今相談をしているところでございます。
 それから,あとはストーリーラインのお話もございましたが,環境省,あるいは国環研の方で研究者コミュニティのワークショップなども開かれていたかと思います。そちらの方も我々は拝聴いたしましたが,その中でもストーリーラインのお話がございました。そのあたりも不確実性の問題をどう考えるかと,企業の取組の中では不確実性ということを強調していただいた方がよいというようなお話もございましたが,一つの検討課題として認識したいと考えてございます。
 あとは農林水産省や国土交通省などとも調整してということで御意見を頂きましたが,国土交通省とは既にSI-CATのデータを提供するということで,d4PDFのデータを使って,インフラ整備の過去のデータだけではなく,気候変動の影響も加味して今後のインフラ整備を検討すべきではないかという方向に国土交通省も最近動きつつあるということで,既に連携は開始しているところでございます。
 あとは,文部科学省がどういうところに取り組んでいくのかという点ですが,文部科学省は先端的な研究開発の部分で取り組むということで,それをいかに現業官庁の方で活用していただくかと。農林水産省や国土交通省が自ら取り組まれる部分もあろうかと思いますので,文部科学省の取組ということでいうと,今すぐには使えないかもしれないけど,こういう評価手法もありますということの御提案をして,少し先に実際に使っていただけるようなものに取り組んで提案するということが文部科学省のやるべき研究開発かなと考えてございます。
【高村主査】  ありがとうございます。1点,多分江守委員から御質問があった最後のところのフレーズの御趣旨を説明していただいてもよろしいでしょうか。
【平田課長補佐】  失礼しました。
 技術革新が及ぼす近未来の影響というのは,まさに河宮委員が御発言いただいたものでございまして,というのも,統合のテーマBの研究会議の方で聞いてきた内容に近いなと思いつつ,ここは書いたものでございますが,おっしゃる趣旨のとおりでございます。
【高村主査】  ありがとうございます。
 随分重要な御指摘を,今後の,特に適応分野の研究開発に向けて課題,留意点等についていただいたと思います。今頂いた御意見を参考にして,事務局のところで今後の施策の検討を進めていただきたいと思います。
 それでは,議題3に移ってまいります。今後の環境エネルギー分野の研究開発についてということですけれども,第9期環境エネルギー科学技術委員会の最後の議題になります。まず議題の趣旨について,事務局からお願いしたいと思います。
【三木課長補佐】  議題3の趣旨について御説明させていただきます。本日何度かお話があったとおり,本日は今期最後の環境エネルギー科学技術委員会となる予定でございます。このため,最後に委員の皆様から,事前に御案内しているとおりですけれども,今期の委員会の総括的な御意見でありますとか,あとは今後の環境エネルギー科学技術の検討に向けた御意見を頂きたいと思っております。ここで頂いたコメントや,これまでの委員会での御議論というものを踏まえまして,今後の環境エネルギー科学技術の検討にうまく引き継いでいければと考えているところでございます。
 そうした御意見を頂くに当たりまして,これまで当委員会での議論というのは科学技術そのものについて御議論いただくということが中心だったわけですけれども,この後少し御説明させていただきますたたき台としてお示ししております基本認識のペーパーにも書かせていただきましたが,研究開発を進める際の最終的な課題として,社会はその技術を受け入れるか否かという点というのは非常に重要な視点かと考えているところでございます。この点での話題提供という形で,本日NHKエンタープライズの堅達様から,「世界の動向と国民への発信」という切り口でお話を頂こうと考えております。後ほどのお話にも出てくるかと思いますが,堅達様は一昨年12月の「NHKスペシャル」で放送されました「“脱炭素革命”の衝撃」という番組制作に携わるなど,報道の立場で長年この分野に携わられている方でございます。
 また,前回,水素について御議論いただきましたけれども,気候変動に対応する,つまりCO2削減のための様々な技術ということを考えたときに,現在の政府のエネルギー基本計画でも再エネを主力電源化しようという方向性になっているわけでございますけれども,再エネについては非常に変動が激しいというような欠点がございます。その変動をシステム全体でマネジメントしていく,いわゆるエネルギーマネジメントシステムというものがコア技術になると考えておりまして,その点での話題提供として三菱電機のマルタ様からお話を頂きたいと,こういうふうに考えてお呼びしているところでございます。
 マルタ様は三菱電機で総合エネルギーシステム技術部長をされておりまして,JSTの戦略のCRESTでこの分野の領域アドバイザーも務められている方でございます。このお二人からお話をしていただいた後,質疑を挟んでたたき台としてお示ししている基本認識ペーパーの御説明をさせていただいた上で,委員の皆様から御意見を頂戴したいと考えておりますので,よろしくお願いいたします。
【高村主査】  ありがとうございました。
 それでは,早速ですけれども,御紹介いただいたような趣旨で,本日はNHKエンタープライズの堅達様,それから三菱電機のマルタ部長に話題提供いただくということになっております。その後で事務局からありましたように基本認識というペーパーを御紹介いただいて議論してまいります。
 では,まず,早速ですけれども堅達様からよろしくお願いします。
【堅達エグゼクティブ・プロデューサー】  よろしくお願いいたします。ただいま御紹介にあずかりましたNHKエンタープライズのプロデューサーをしております堅達京子と申します。きょうは「環境エネルギー科学技術に関する世界の動向と国民への発信」ということで,正直,今のお話を伺っていて専門家の皆さんを前に大変僭越(せんえつ)でございますし,知識不足ではございますが,メディアの立場から少しお話をさせていただきます。
 次のページで,今の御紹介にあったとおり,もうおととしの暮れになりますが「NHKスペシャル 激変する世界ビジネス“脱炭素革命”の衝撃」という番組を放送いたしました。このほかにも私,江守委員たちにも御出演いただいたりして10年余り気候変動やエネルギーの問題をメディアで伝えてきたわけです。もともとは2007年にIPCCのAR4が出た際に,当時のパチャウリ議長に「未来への提言」という番組でインタビューしたのがきっかけだったのですが,その当時は「2100年には世界はこうなる」という語り口で語られてきたし,私どもも報道してきたというのが実際のところなんですが,一般の国民から見れば2100年というのは正直遠い話のことだったと感じています。
 次のページ,ところが,御承知のとおり,何と言っても去年はIPCCから1.5度の特別報告書が出ました。これはある意味で衝撃的だったんですけれども,月の平均気温が既に1度上昇して,早ければ2030年までに1.5度上昇してしまうという見通しが初めて示されたと。この2030という数字が,さっきの2100に比べると圧倒的に身近で,「えっ,私もまだまだ,皆さんも現役ですよね」っていう,そこのところが大きく,実は考え方を変えるべき示唆に富むレポートだったと思っております。
 1.5度という数字は非常に象徴的で,ここはいろいろ皆さん御承知のとおりティッピングエレメントというものがこの1.5度とか2度のレンジ,パリ協定のレンジを超えていくと,どんどん悪くなっていくということ,その差について示されたわけですけれども,分かりやすいのでポツダム気候影響研究所のシェルンフーバー博士らによるこちらの図で説明したいと思いますけれども,明らかにこのパリのレンジを超えると非常にリスクが大きいということで,はっきりとこの1.5度というのが人類にとってのセーフティネットであり,ガードレールなんだと,そこに達するまでにわずかあと10年余りしかないということが科学者の総意として突き付けられたということは,とても重要なことだとメディアとしては感じております。BBCはこれをトップニュースで伝えました。残念ながら日本のメディアでは,もちろん伝えてはいるのですけど,NHKも含めてこれがいかに,どれほど重要なことかということは正直十分伝え切れてはいないと感じております。
 もちろん先ほどから不確実性の話がありますし,1.5度に達するのは,マスコミはすぐ2030と書くのだけれども,もちろん運がよくてもう少し遅ければ2052年までの間と記述されているわけなのですけれども,だからといってこの10年を,うちの会社も作っておりますチコちゃんではございませんが,ボーっと生きているともう取り返しのつかないことになるということを,これは改めて認識しないと,本当に私は手遅れになるというか,悔やんでも悔やみきれないことになるということを思っておりまして,そういう意味では,先ほどからすばらしい予算ですとか,研究の計画に皆さんが日々取り組んでおられると思うのですけれども,今後の環境エネルギー分野の研究というのは,このタイムリミットというのを意識して進めなければ,後々どんなにいい成果が出ても手遅れになりかねないということをやはりちょっと意識した方がいいのではないかなと思っております。
 中でも私が最も懸念しておりますのは,このグリーンランドの氷床が解けるのが止まらなくなるティッピングポイント,これはこの図にもありますとおり,従来1度上昇から4度上昇のどこかに,これは最近のものですので4度よりもう少し低い数字で書かれておりますけれども,この10年,ずっと私はそういう言われ方をする中で取材してきたのですけれども,どうも最近出ているいろいろな新しい研究によると,もちろんどれかのストーリーの一つかもしれませんが,1.5度から2度の間にこのティッピングポイントがあるのではないかという研究も最近発表されています。これは,今年IPCCから雪氷圏の特別報告書が出されるので,今次々みんな研究者が続々とデータを間に合うように発表しているという状況のようですが,わずかここ数日に出された発表を見ましても,グリーンランドの氷の解け方が2003年から13年の10年間を見ても4倍に加速していて,中には手遅れだという言い方をするような人まで現れるといったことを見ますと,仮にもしこの1.8度とかそういったあたりに,あるいはもっと低いところに人類の命運を分ける分岐点があるのだとしますと,本当にこの10年,2030年までの10年というのが正念場ということを,腹をくくって考えていかなければいけないと思っております。
 このことは,去年の夏に発表されました研究論文でホットハウス・アースという研究でも警告されているところです。ウィル・ステッフェン博士ですとか,ヨハン・ロックストローム博士らが提唱したこの理論では,2度を超えてしまうと様々なフィードバック,温暖化の連鎖,いわゆるドミノ倒しのようなことが起きて,御承知のとおり永久凍土からメタンが噴き出したり,これまでCO2を吸収してくれていた森が逆にCO2を吐き出すようになったりとか様々なことも起きまして,最終的には海面上昇が,相当先ではありますが止まらなくなって,60メートルの海面上昇に達するような引き金を,まさに下手するとこの10年で引いてしまうかもしれない。これはホラー映画のような話なんですけれども,でもこの異常気象の頻発ですとか,食料の危機ですとか,生物多様性の喪失ですとか,まさに私たちの暮らしにも大きく関わっていることでございまして,地球そのものが恵みを与えてくれるものという側面よりもむしろ牙をむく,そういった存在に変わってしまうとこれだけの科学者が警告しているというのは,少し考えていかなければならないと思っております。
 もちろんこれは最悪のストーリーラインとも言えるものでして,異論もあると思いますし,私も長年メディアで伝えておりますと,危機をあおるばかりではなかなか世の中というのは動かない,もう逆に諦めモードに入ってしまったり,人間はやはり,世の中を変えられる,まだ変えられるんだという意識がないとポジティブな行動を起こしてくれなくなってしまうので,そこの兼ね合いというのは非常に大事とは思うんですけれども,ただし,この10年と区切られた以上は,いささか大げさでもノーリグレットポリシーということで行動していった方が,後々後悔しないんではないかなと思っております。
 でも,なかなかそういう意味では,先ほどから発表されておられる計画等ももちろんすばらしいものなのですが,飽くまでこれは平時の観点で作られている計画というイメージですけれど,ひょっとしたら今は有事で,がん患者で言えばステージ4を宣告されているような状況で,このまま同じペースで暴飲暴食的なライフスタイルを続けていると死に至ってしまいます。ただし,アカデミズムもメディアも,そこまでの危機感を共有しているのかと言われると,率直に言うとないのではないかなと思います。今の日本は特に,今年でいうとメディアは特に,回顧モードも含めた“平成最後”と,“来年2020年のオリンピック・パラリンピックまであと1年”,もうこれがメディアの最大の関心事ですから,なかなか気候変動がと言っても,人々の心に届かないのが正直なところです。でも,そんなことを言っていられないし,諦めるわけにいかないので,何とかして総力戦で臨んでいきたいということを訴えたいと思っております。
 この『1.5℃特別報告書』は,1.5度に抑える道は辛うじて残されているということも併せて伝えているわけです。しかし,この残されたナローパスというのは本当にナローなところでございまして,世界の排出量を2030年にマイナス45%,そして2050年には実質ゼロにしなければいけないと。これはもう2度目標よりも四半世紀も前倒しにするということですから,相当に厳しい数字です。そのためには,急速かつ広範囲な前例のないスケールで経済や社会のトランジションをしていかなければいけないということが記されているわけですけれども,やっぱり今までと同じペースでは絶対間に合わないということかなと思います。
 経済学者のニコラス・スターン氏に以前インタビューしたときにも例えとして出していたのが,「真珠湾攻撃の後のアメリカも,自動車産業が民間車生産を国の命令でパッとやめて,全部軍事車両に一夜にしてトランジションした」という例を,「だからできるんだよ,人類は」なんて言われてしまうので,余り例としては,日本人としては悲しい事例なので,それはどうかなとは思いつつも,本当に人間って本気を出したときにはそれくらいやらないと,実は変われないのかなというのは感じる次第です。このスピード感がないというのが,実は日本という国の残念ながら悲しい特性で,特に日本にとっては大きな問題だと感じております。
 次のページですけども,ある種ビジネスルールがそういう意味でいうと変わらなければいけないという中で鍵を握っているのは,本当に再生可能エネルギーです。報告書によりますと1.5度に抑えるためには再エネを2050年までに70%から85%導入して,石炭をゼロにしなければいけないと計算されています。世界の大企業は,御承知のとおりこぞってRE100という再生可能エネルギー100%の事業運営に参加していますし,日本でも14社以上に増えてきています。そこはいいんですが,残念ながら一方で相変わらず石炭火力の新設が続いていたり,そういった「あの報告書が出ているのに」という部分では世界から批判を受けているわけです。
 この後,マルタさんが御専門ですので,そこのところは詳しく御説明されると思いますが,次のページ,ある種,肝心の再生可能エネルギーというのは,ヨーロッパの場合などではもうとにかく最優先で送電網に接続するという1行,規定となるルールが示されていることで,全てのところがマーケットベースでどんどん変わっていくという現象が起きているのですが,残念ながら日本の場合は最優先というところが全く担保されておりませんので,まだまだ価格も高いですし,いろいろな空き容量がないとか,発送電分離とかの電力システム改革が整っていないこともあって非常に周回遅れの状況が続いています。
 やはり変わらなければ生き残れないと分かっているのであれば,そのボトルネックとなっている政策,何か1個ボタンを押せば変わるというそこをしっかりと見極めて政策決定のスピードを上げていただいて,とにかくマーケットが自分で動けるような,そういう道筋を最高スピードで実現しなければならないと思います。当然この再エネ最優先ルールだったり,カーボンプライシングといったところがベースとなるルールだと思うんですけれども,このあたり,あと高い目標を立てて着実に実行するということも含めて,今度のG20の議長国ということですので,日本は本気で脱炭素のリーダーシップを示せるのか,世界が注目していると思いますので,是非ともここのところは本当に頑張って先頭に立っていければなと思っております。
 研究分野の課題ということにつきましても,このタイムリミットという感覚を持った以上は,優先順位の高いものをどれだけスピーディに実現できるかということを少し意識しなきゃいけないと思います。もしかしたらトリアージュ的な考え方も必要になるのかもしれません。
 一方で,スピード感は大事なんですけど,この闘いは非常に息の長い闘いでございますので,逆に言うと基礎研究の充実ですとか,本当のイノベーションを見いだす環境づくりとか,そこをもっと整えていかなきゃいけないと。だから中長期的に役立つものと,今すぐ優先順位の高いもの,そこのバランスというか,そのポートフォリオをどう作っていくかということこそ重要なのではないかなと感じております。
 もう一つは,この分野の研究にもっともっと若い人が参入してこられるように,中学生や高校生の段階から気候変動と自分たちの未来について最新の知見というのを教えていかなければいけないと痛感しています。先日,ドイツのESDの専門家が去年来日して,立教大学でワークショップがあったので,私も出ていたんですけど,ドイツでは何と地理の分野でこの気候変動について教えているとのことで,もう既に2015年のパリ協定とかSDGsのこととかが詳細に記された教科書を使って子供たちが学んでいて,あと学際的なことも学んでいます。これはドイツのカールスルーエ教員養成校というところの地理の学部長のトーマス・ホフマンさんという人の授業だったんですけど,何で地理なのか。最初,私は気候変動というのは理科じゃないかなと思ったんですけど,彼によるとグローバルな問題と,身近で自分事にできるローカルな対策を同時に考えられるのは地理という分野が適しているんだそうで,あと,この画面に書いてあるような全ての物事が複雑につながり合っているのだと,こういうことをSDGsと絡めて学ぶのにも地理がいいということで,既にパリ協定から4年近くがたとうとしているんですけれども,果たして日本の教育現場でこうしたことがきちんとできているのかと,ここでもスピードが問われているなと感じております。
 去年のCOP24のときに,直前でオーストラリアの小・中学校生が数千人で気候ストライキというのをしたというニュースもありましたし,COPではスウェーデンの15歳の少女のスピーチが非常に話題になりました。あなた方は自分の子供たちを何よりも愛していると言いながら,その目の前で子供たちの未来を奪っていますと,グレタ・トゥーンベリさんという,15歳としてはすごいしっかりしたスピーチをして世界でも話題になったわけですけれども,彼女のように若い世代が気候変動の問題を自分事として捉えたら,大学に入って何を学ぶかというのを考えるときにも,もしかしたら,地球を救う学問を学びたいとか,世の中の役に立つことをしてビジネスに生かしたいとかと思う人が増えるのではないかなと思うんです。しかし残念ながら,なかなか今の状況だとそうした世代から,「ええっ,そこまで悪くなっていたんだったら,手遅れになる前にちゃんと教えてほしかった」と言われてしまうのではないかという気がしておりまして,メディアの責任も,科学者の発信の責任というのも極めて重要だと感じております。
 そこで,私どもが日頃報道していく中で感じていますのは,とにかくトータル・ソリューションを語れる人材を増やさなきゃいけません。安倍総理のダボス会議の発言にもありましたけれども,今この問題と,AIやIoTなどSociety5.0的なことも含めてテクノロジーとどう共存していくかということも含めて,イノベーションをもうみんなとにかく全ての英知を結集して総掛かりでやらなければいけません。コベネフィットですとか,こういうトータル・ソリューションという緩和,適応,そして防災や健康とか高齢化社会の問題とか,住宅とか都市問題とか,あるいは消費者を巻き込んでいく力とか,場合によってはアートとかそういったことも全部が実はつながっているのだということをしっかりと意識できる人間,それを語れる人間を増やしていかなければいけないんだけれども,なかなか全部縦割りだったり,専門領域に閉じこもりがちだということで全体像を俯瞰(ふかん)して語れる人が少ないなというのが率直なところです。
 あとは,私もフューチャー・アースのプロジェクトのオブザーバーとかも務めさせていただいているのですけれども,やっぱり欠けているのはスピード感と,あと本気度が見える予算規模だと思うのです。皆さん,少しずつ上積みするとか頑張っておられると思うのですけど,もう本当に有事という構えで思い切ってここに予算を投入するという,これは文部科学省だけでできることではないと思いますけど,率直に言ってこの問題が本当に大事だと思ったら,防衛予算を積むのも大事ですけど,気候変動との闘いに投入する予算規模ももっと思い切って積んでいかないと,この本気の総力戦には勝てないなと思っております。
 あとはやっぱりビジネス界の変化ということでサーキュラー・エコノミーということが非常に今,プラスチックの問題も含めて重要になってきているので,G20でも大きなイシューになると思いますけれども,大事なのは,日本国民の視聴者の方というのは,プラスチックはまだウミガメ,ストローがあってかわいそうというレベルで,なかなかこれが実は脱炭素とか,気候変動とも絡んでいる問題だというところが伝わっていないところもありまして,その意味ではEUのプラスチック戦略なんかははっきりとそういうところ,脱炭素の文脈の中でも伝わっているということがありますので,そういったところをしっかりと伝える係り結びみたいなものをメディアも頑張っていかなければいけないと思っております。
 あと,きょう,私はメディアということですので国民への発信ということなのですけれども,タイムリミットを意識して国民に発信していくという意味では,実は今はなかなかテレビを見てもらえない時代になっていますので,SNSを使ったりしての情報発信というのも非常に重要になっていますし,あるいは,先週ニューヨークに行っていたのですけれど,多分ブルームバーグの影響なんでしょうがタクシーの中でのショートクリップ動画みたいもので気候変動問題のショートムービーが流されていたのを見て,なるほど,あらゆる手段を使ってこのことの意識を変えるということをしていかなければいけないのだと思って,トランプ大統領の中で大変なのに頑張っているなと思っていた次第です。
 あとは,まさに不確実性とか科学的な正しさということと,去年の熱波とか,西日本豪雨も含めて異常気象と温暖化がどういう関係にあるか,イベントアトリビューションの問題とかいろいろな問題があるけれども,やっぱりある程度はちゃんとシャープに関係があるということを,WMOとかも今はしっかり発言している時代ですので,もやもやっとするのではなくて,きちっと言えるその語り口を見いだしつつ,教育というのも大事かなと思っております。テレビ関係者とか気象予報士の皆さんに,しっかりとお伝えする教育も必要だと思いますし,サイエンスコミュニケーター的な人材の育成ということも非常に重要になってくるのかなと思っております。
 NHKも防災が使命ということもありまして,最近のこのすさまじい気象災害を見ておりますと,私たちの幸せな暮らしとか,ビジネスとか,あるいはもう多種多様な分野で自由に学問,研究できるということも,全て安定した気候というのがベースにあってこそだとつくづく思っております。是非とも専門家の皆様,それから文部科学省の皆様におかれましては,この2030年に1.5度上昇してしまうかもしれないという最悪シナリオのことを,危機感を意識して発信していくということをやっていただきたいと思っております。
 一方で,それほどのことを伝えるときにはベースがしっかりしていなければいけないと,統計データではありませんけれども,ますます基礎となる学問の公正さとかも非常に一層問われると思いますし,トランジションと言っても,やっぱり弱い立場の人がそこで雇用も含めて取り残されてしまうわけにはいかないので,公正な移行ということも今言われていますし,もともと一番弱い人にしわ寄せがくるクライメート・ジャスティスということも,なおのこと意識していかなければならないなと思っております。
 最後になりますが,私どもが去年やった「NHKスペシャル」とか,「シリーズ脱炭素革命」というのは今も,有料ではございますがNHKオンデマンドでごらんいただくことができますので,御案内申し上げておきます。
 御清聴ありがとうございました。
【高村主査】  ありがとうございました。
 それでは,次にマルタ様の方から御報告をお願いいたします。
【マルタ部長】  三菱電機のマルタと申します。私はイタリア人なんですけども,23年ぐらい日本にいて,電力関係の仕事をずっとやらせていただいています。本日,再生可能エネルギーが入ったときには本当の課題はどこにあるのかと,その課題の対策,技術的に何を考えるのかを簡単に説明させていただきます。
 前の発表の中でも少し話が出たのは,環境対策として再生可能エネルギーが一番というか,考え方があるということなんですけれど,実は私,個人的には再生可能エネルギーはもちろん一つすごく重要なものなのですけど,省エネもすごく重要だと思っていまして,特に教育的にとか,将来的な経済の考え方では,どこまで省エネできるかどうかは結構重要だと思います。ただし,本日は再生可能エネルギーの対策になりますので,再生可能エネルギーが増えたときには何の課題があるのか,そしてその対策の説明になります。
 資料の2ページ目のところですけど,いろいろなところを見られたと思うのですけど,再生可能エネルギー,特に風力と太陽光は,実はバイオマスになったときには余りないんですけど,変動によって電力は,皆さんにというか,工場を含めて届くのは難しくなると考えています。周波数が変動していたりとか電圧が変動したりというときは,電気が届かないところの課題がよく聞かれると思います。
 本日のいろいろな質問の中でもありましたが,全体で再生可能エネルギーが増えたときには直接環境影響もあると考えられると思うのですけれど,これは別で,まだ研究中と思います。
 では,この電力系統というか,電気を配るための影響については,次のページ,3ページになります。これは大体イメージ的なものです。いろいろなところで発電して,普通の発電機,火力発電機以外は再生可能エネルギーがたくさん入ります。送配電を使って需要家まで配るのですけど,扱いによる全体のシステム,判定するかどうかは変わります。特に技術的な考え方として,私から見たらポイントが二つあります。一つはエネルギーマネジメントシステム,一般的にエネマネと言われていますが,ちゃんと作るときには使える状況になっているかどうかとか,蓄電池とか蓄熱を使っていて,1回ためて後で使えることと,あと,実はよく話に出ていますので皆さんは御存じと思いますけど,特に再生可能エネルギーはDC,直流で作っていますので,何とかの形,今のACシステムで配るためにはパワーエレクトロニクスの機器が実はすごく増えています。パワーエレクトロニクス機器のいいところは簡単に制御できるところなので,EMS(エネルギーマネジメントシステム)の手になるというか,足になるようなところはパワーエレクトロニクスと考えています。
 パワーエレクトロニクスについては,実はこの30年,40年で技術はすごく進んでいまして,この委員会の一つのテーマを担っていると思うのですけど,もともと昔はACからDCにするのは大変だったというか,効率が悪くて,シリコンベースがいいと分かったときには大分簡単によくなっていって,次,今はちょっとずつ広がっているのはシリコンカーボンで,今はマテリアル的な研究がどんどん進んでいまして,将来は結構いい未来が見えるところになります。
 エネルギーマネジメントについては次のページ,5ページになりますが,実はエネルギーマネジメントといっても種類がいっぱいあって,本日は簡単な整理で何が違うとか,何が同じかということをテーブルの形で持ってきました。一番サイズ的に大きいのは中給EMS,これは昔から電力会社で運用しているEMSで,全体を見るところです。あとはどんどん小さくなっているというか,目的も変わっているのは,リストとしてマイクログリッドEMSと地域EMS,FEMS(ファクトリーEMS),BEMS(ビル向け),HEMS(ホーム向け)と複数あるので,実はテーブルに書いているとおり目的が若干違うと思います。一番重要なところは,中給EMSから見たら,実は省エネとかエネルギーを効率的に使うのはちょっと目的とあれなのですけれども,一番重要な目的はしっかりと電気を配ることができる,停電にならないのが一番の目的になりますから,管理的にはエネルギーだけを見ているということではないということです。反対にFEMS,BMESとかHEMSは個人とか工場のコストメリット,どのぐらい安くできるかどうかを含めてあるので,お話ししたようにもともと省エネとかエネルギーを効率よく使う目的もあります。
 機能的には実はもう少し変わっていまして,系統管理はもちろん中給ぐらいしかないのですけど,あとは最適化とか予測という技術も重要になると思います。
 簡単に1個ずつのスキーム的には何が必要かどうかの説明をしたいと思います。6ページは中給EMSです。簡単な絵になっていますが,メインはやはり現在の系統上で制御するのは,この絵の中でも大きいボリュームをとっています。もちろん計画とか,予測の上で計画とかもあるけど,どちらかといったら制御するときには問題にならないための考え方になっています。
 7ページはCEMS,これは実は10年ぐらい前に結構はやっていたものですが,最近は少し難しいところがあって,この辺は研究含めて必要であると思います。CMESのCはコミュニティかシティの意味ですけど,いろいろな人の考え方とか使い方をどううまく組み合わせていって価値を出せるかどうかというのが一番の課題だと思います。
 次はマイクログリッド,これは独立した別の形になっているEMSになっているものです。特にヨーロッパでは分散型的な電源が増えていまして,自分のところしか使いたくないというか,できるだけローカルでうまくいけばトータルとしては全体もうまくいくのではないかという考え方もありまして,マイクログリッドは結構はやっています。実はもともとの中給EMSに結構近い作り方,考え方ですけど,小さいものでやるので,予測と計画はもっと重要になります。大きいものがあれば,とりあえず制御できる範囲でいいですけど,小さいものであればはっきり計画しないと困ることが多くて,計画と予測は重要になります。
 最後は9ページ,一番小さいものになりますがHEMSです。ホームの中のエネルギーマネジメントシステムです。これは本当の整理として考えてください。一個一個のホームでマネジメント,下の絵では地域とマネジメントして全体をマネジメントすれば,多分考え方として一番正しいのでやるべきなのですけど,若干みんな同じことをしたいとか,同じ目的はないのですから,コーディネーションがポイントになると思います。
 最後はまとめというか,考え方として将来も含めてのことなのですけど,もちろん現在でもいろいろなところでEMSを使っていますが,実はまだ技術的にはいろいろな課題があります。ちょうどきょうお話があったのは,予測の部分は,できるだけ予測が正しければいろいろな無駄が出ないので,予測の部分はすごくポイントになると思います。
 あと,皆さん,よく忘れるのですが,計測,計量,どのぐらい本当に電気を使ったかどうかはすごく重要だと思うので,そこの研究は進めるべきだと思います。
 あとは最適化です。実はいろいろなところの技術はあるけれど,まだまだ足りないようなところがあって,難しくて解けない問題とか,解けていても1時間かかるので,今すぐ制御しないといけないというようなところは重要になります。
 同時に,EMSの手足というか,アクションをとれるところというのはパワーエレクトロニクスデバイスになっていると考えていますので,パワーエレクトロニクスデバイスについては,マテリアルとか効率を高くするのはもちろんすごく重要ですけど,ちょうどこの間,パワーエレクトロニクスの先生と話したら,まだアプリケーションも全部しっかりと勉強できていない,考えていないのではないですかと,おっしゃっていました。もっともっと広がっていって,もっとエネルギーの扱いがよくなる可能性が高いのですけど,この辺はまだ研究が足りないのではないかなという考え方も含めて,ちょっとヒントとしてきょうお話ししたかったところです。
【高村主査】  ありがとうございます。
 それでは,お二人の御発表について御意見,御質問を頂こうと思います。実は随分時間が押しておりまして,できる限り御報告の内容についてのクラリフィケーションの御質問に限っていただくと大変有り難く思います。
 それでは,瀬川委員,お願いいたします。
【瀬川委員】  東京大学の瀬川と申します。マルタ先生,どうもありがとうございました。私は東京大学の教養学部で教育,それから先端研で太陽光発電の研究,それから経済産業省の方では大型蓄電池の実証事業,それから系統整備のお手伝いもしています。マルタさんのお話は非常によく分かりやすくてよかったと思います。5ページを見ていただいて,中給EMSが一番左にあって,そこから右側にマイクログリッド,地域,それからFEMSとありますけれども,一番大事なところは,中給EMSとマイクログリッドより右側というのは全然話が違っていて,今問題になっているのは本当は中給EMSなんですね。それで,周波数変動あるいは電圧変動を抑制するのに,従来の火力等では追随できないから,そこの部分を大型蓄電池でやるという話になっているかと思います。恐らくマイクログリッドより右側のところはもう民間にお任せして,いろいろなアイデアが出てくるのでこれは余り国が関与せずに,むしろ競争が自由にできるような環境を維持してやっていただいて,これから本当に大事になるのは中給EMSだと思うんです。これは実は担い手がいなくなる。なぜかというと発送電分離が法的に起こって,要するに系統管理する人の体力がなくなるのです。こういったところを,三菱電機はこれからどういうふうに取り組もうと考えているのか。例えば日立は日立ABBを作って,直流送電のところをもう全部日立が買収してやっていくというような話になっていますけど,そこらあたりのお考えをお聞かせいただければと思います。
【高村主査】  ありがとうございます。
 田中加奈子委員からも御質問があるようですので,御質問を全て受けてお返ししたいと思います。
【田中(加)委員】  お二人のお話,興味深く拝聴させていただきました。ありがとうございます。
 私,堅達様に少しお話をお伺いしたいと思っております。大変市民の方々,人々に正確な情報を広く危機意識を持って伝えていくのは本当に重要なことだと私も常日頃から思っておりましたので,こういったメディアの方が本当に何年もかけて情報も収集して正確に伝えてくださっているというのは,本当に頭の下がる思いですし,心強いと思っております。特におっしゃっていたトリアージュが必要だ,優先順位をきちっと見ていくというのは大変大事だというのも,そのとおりだと思います。
 そのときに,私がすごく興味がございますのは,例えば国連が何年か前,3年ぐらい前に行いました人々への重大課題とは何かというアンケートをとったところ,選択肢の中の一番上に気候変動が書いてあったにも関わらず,気候変動が優先順位として一番下だったというような結果がありました。世界の人々の一番の関心事項はエデュケーションであったり,ヘルスケア,雇用やよい統治の問題でした。
 そのような中で,例えば番組を通じて反響といいますか,どのぐらいそういった手応えといいますか,優先順位が少しでも高まったのではないかという意識があるのかをお伺いしたいです。また,そのアンケートではエデュケーションというものが一番に来ましたが,皆さんの興味があるエデュケーションでこういったことをしていくといったところで,よりこういったことをもっと皆さんやりましょうではなくて,NHKとしてこういうのをやっていくんだというような御計画がありましたら,是非お伺いしたいなと思いました。
【高村主査】  ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは,堅達様と,それからマルタ様から,できましたら簡潔にお答えいただけると大変有り難いです。
【マルタ部長】  三菱電機のポジションではなくて,私が個人的に思っていることになるのですけど,理論的には,私のイメージは将来的には中給EMSはなくてもいけるのではないかと考えています。やはり分散型の方法では,大きいの,高速道路でいいんですけど,送電分ですね。だけど高速道路では自動で使えることもできるではないかなと思っています。イメージ的にはインターネットに近い,みんな使える,だけど1人が全部管理するようなことがなくても,もっともっと将来にはできるのではないかなと思っています。特にデジタルになった上では可能と思います。HVDCのお話があるんですけど,実はHVDCは一つのこの方法のツールになっていまして,HVDCはどっちの制御もできるし,一般の系統の課題はなくなる状況になるので,分岐して小さくするようなことではよくなる方法になっています。
 ただし,何を問題にするかどうかの話なんですね。一般的にEMSはエネルギーマネジメントシステムですから,電圧制御をEMSでやるべきかどうかとか,周波数制御は本当にエネルギーマネジメントシステムでやるべきかどうか,もうちょっと長いことかどうかを含めての課題もあるので,これから日本の一つにまとめて周波数制御できる話も含めてあるので,いい方法にいくのではないかなと思っています。
【高村主査】  ありがとうございます。
【瀬川委員】  ちょっと補足させていただいてよろしいですか。
【高村主査】  お願いいたします。
【瀬川委員】  恐らく細かな技術的な話は対象ではなかったのかもしれないなと思うのですけども,恐らく日本の場合には大規模な災害等があるので,マイクログリッドだけができていればいいということになると,そのグリッドのコミュニティが閉じているところは大丈夫なのですけれども,系統にぶら下がっているところが,やはり中給EMSがしっかりしていないと,これは全然対応できなくなるので,そこのところはすごく重要だと思います。また,恐らく全ての地域がそれぞれの地域のエネルギーマネジメントシステムが出来上がるのに相当なロングスパンの時間が掛かるので,それまでの期間はやはり中給EMSというのは非常に大事だろうと思います。なくてもいいというわけにはいかないのではないかなと思います。
【高村主査】  よろしいでしょうか。
 では,堅達さん,お願いいたします。
【堅達エグゼクティブ・プロデューサー】  重大課題だと認識できないという問題は,気候変動というのが多分,さっきも言ったとおり本当は高齢化の問題にも絡んでいたり,雇用の問題にも絡んでいるのだけれども,目の前の課題の方がビジュアルには先に見えてしまう,一般の国民から,その背景に気候変動があるという認識だと,チョイスで気候変動を最初にクリックとならないことがあると思うので,そこはどういうリンケージがあるのかということをしっかりと伝えるというところを地道にしていかなければいけないというのを感じています。本番組については確かに非常に大きな反響がありました。このビジネス界がこれだけ大きく動いているというのは,本当だったら2015年のCOP21のときに,その段階でパリにCEOがみんな集まっていたのですけど,テロが起きたりしたのでなかなかマスコミが報道しきれていなかったのです。翌年はマラケシュで,トランプが大統領になったりして,またすぐ人気の話題に目移りするというのがメディアの特性なので,だからさっきの,今は平成の最後ばかりが関心なのですけれども,NHKもそういう中ではありながら,今年はG20もありますし,是非何とか気候変動についての第2弾的な番組を報道できないかと,今模索しているところでございます。
【高村主査】  それでは,お二人の御報告,どうもありがとうございました。
 それを受けて事務局から,資料3-3ですけれども,趣旨を御説明いただければと思います。
【横地環境エネルギー課長】  それでは,タブレットの資料3-3に基づいて御説明させていただきます。私から簡単に趣旨を説明させていただいて,中身については三木から説明させていただきます。
 環境エネルギー分野を取り巻く現状をまず俯瞰(ふかん)しようというのが一つ,さらに,それを俯瞰(ふかん)した上で,多少議論のフックになるように我々の問題意識を一部発露させていただいている,というような仕様になっております。本日,この内容を説明させていただいて,次のフェーズでまた御議論いただくための一つの考え方,たたき台とできればと考えておりますので,是非忌憚(きたん)のない御意見を頂ければと思います。
 それでは,三木から内容を説明させていただきます。
【三木課長補佐】  説明させていただきますが,もう余りお時間もありませんので簡単に説明させていただきます。事前にお送りさせていただいておりますので,変更点を中心にという形で説明させていただきたいと思っておりますけれども,冒頭でCOP,まさに今我々の一丁目一番地というか,こちらが大目標として掲げられるわけですけれども,こちらのパリ協定の話を書かせていただいております。当然COP24で実施指針も決まったところですので,その旨を書いています。1.5度の努力目標等々が出ているところですけれども,それに対して政府も各種計画,ここに書いていないもので,後ほど書いておりますが環境基本計画とか,エネルギー基本計画なども昨年閣議決定されているような状態,相次いで我々としても,政府としての対策を打ち出すというようなタイミングになってございます。
 また,25行目以降,環境基本計画にも言及されているとおりと書いていますけれども,金融全体として見たときにも,環境分野というところは非常に注目されているというような文脈も書かせていただいてございます。
 その最後のところ,31行目あたりからになりますが,この部分は先日お送りしたものから修正されておりますけれども,SDGsの動きについても追記させていただいて,今回の資料として提出させていただいております。
 また,36行目以降にノーベル経済学賞の話を書かせていただきました。我々としても社会学の分野で,これが気候変動との関係でノーベル経済学賞をとられたというのは非常に大きなことかなと思ってございまして,またそれが文理融合という文脈でスピーチがされているということも非常に重要かなと思ってございます。
 その後,48行目以降,ただ,なかなか立ちはだかる壁が高いというようなお話をひとしきり書かせていただいた上で,緩和,適応等々をやっていかないといけません。
 また,83行目以降,緩和あるいは適応を考える上で,そういった基礎的な基盤的な情報,我々は統合であったり,先ほど御議論いただいたSI-CAT等々情報を提供する側,若しくはDIASとして発信していく側にいるわけですけれども,こういった情報の扱いについても触れさせていただいております。
 その後,認識を幾つか書かせていただいておりまして,またきょう,先ほどの御議論の中にもあった人材というような話,そういったものも110行目以降に書かせていただいております。ここでは明示的に書いてはおりませんけれども,研究開発を進める人材のこと,加えて受け手の国民側のリテラシーの醸成というような話,こういったところが重要になってくるのかと思ってございます。
 あと118行目以降は,これはこの環境エネルギー科学技術委員会としてどういうふうなところ,環境とかエネルギーという文脈で射程として入れているのかといったときに,本来は多分かなり広いところを射程に入れているのだろうと我々としては考えております。ただ,当然限られた予算の中で,若しくは今の政策的な優先順位の中でどういったものをここで取り上げているか,事業としてやっているかということは当然あるのですけれども,本来的なところはどこかということを考えたときにということで記載させていただいているというような状況でございます。
 137行目以降,最後のところですけれども,今後環境エネルギー科学技術を考えていくときに,一つリスクというものを切り口にして考えていくのがどうかと。そのときにはリスクをマネジメントする,減らしていくという観点で緩和及び適応というものの研究開発を進めていった方がいいのではないか,また先ほど申し上げたような基盤的情報の創出というものはやっていく必要があるのではないか。また人材育成の重要性,加えてそうした意思決定を我々はしていくわけですけれども,世界市場の動向ですとか,環境エネルギー問題の最新動向ということを把握して,その上で技術課題の優先順位といったものを環境エネルギー科学技術委員会として検討していただくということがいいのではないかというような観点で書かせていただいております。
 最後は環境エネルギー科学技術委員会の位置付けとか,あとは政府として大方針が出ているのが第5期科学技術基本計画ですので,それは参考という形で書いております。
 これを事前にお送りした上で,本日御欠席の沖先生から少しコメントを頂いてございますので,そちらだけ紹介させていただきます。
 全体を通して非常によくまとまっていると思いますが,先ほど申し上げたような,最後に書かせていただいている144行目から149行目あたりのところに関わっているものに絞るというようなことになりますけれども,何のために気候変動リスクを管理,マネジメントするのかという視点,これが欠けているんではないかと思いますと。
 すなわち,UNFCCC,IPCCといった枠組みの上位にSDGsを据えて,持続可能な開発の実現の一部として気候変動リスクへの行動,SDGsでいうところの13番になりますけれどもこれを位置付けて,常に他のSDGsとのトレードオフであったりとか,相乗効果,シナジーを考慮した研究開発が必要になると思いますというようなコメントを頂いておりますので,この場で御紹介させていただきます。
 以上でございます。
【高村主査】  ありがとうございます。
 それでは,議題の最後になりますけれども,事務局から事前にこちら,今御紹介いただいた基本認識の案というのを送っていただいているかと思います。それについての御意見も含めて,今期の委員会を総括する形で各委員から一言ずつ御意見を頂こうと思います。
 それでは,先に山地委員,そして河宮委員,市橋委員にお願いして,その後は順にお願いしたいと思います。お願いいたします。
【山地委員】  まず環境エネルギー分野というのは気候変動問題だけではない,こういう認識は必要だと思うんですけど,文書を読むとそれは分かる。ただ,最後のところで当面気候変動のリスクにフォーカスして,それに対応していく,それに関しては結構だと思います。
 それで1か所気になっているのは94行から96行にかけて,Climate Justiceが出てくるところなのですけれど,この文章を読むと,気候変動に対する緩和や適応の動きは何々で正義でありと読めるわけです。正義という言葉はエビデンスベースで固められるものではなくて,どうしても主観に関わるところがあるわけです。Climate Justiceということが言われていることは私も認識していますけれど,それが正義でありと言っているのは決めつけの表現だし,社会全体がこの方向に向かい始めている状況を認識する必要がある。社会がこっちへ動いているから科学技術もそっちへ行くんだというのは,ちょっと私には納得のいかないところで,社会の動きが必ずしも正しいとは限らない,正義というのも主観的要素を含む。やっぱり科学は,カール・ポパーじゃないですけど,間主観的とか,科学が科学であるための条件というのがあるわけなので,ここで正義だと言っているのは非常に表現としては気に掛かったと,それだけは申し上げます。
【高村主査】  ありがとうございます。
 それでは,河宮委員,その後市橋委員,お願いいたします。
【河宮委員】  ありがとうございます。この最後の資料の中で防災の観点から気候変動予測のお話が述べられていましたけれども,最近こういうこともやらなければいけないと思うのは複合災害の話でありまして,この辺のところは細かいことを言うと環境エネルギー課と海洋地球課とかその話になってきますけれども,きちんとそういうところは複合的な問題として捉えた上で,気候変動予測というものにも組み入れていくべきかなと思いました。
 あと少し全体的なこととして,この会議の役割みたいなところで中長期的な観点から基礎科学を振興するというところがありましたけれども,これはすごく大事だなと思っていて,多分短期的に世のため,人のために役立つという研究であれば科学者が世の中のことを勉強してもいいし,あるいはそれこそ役人さんが研究がどんなふうに進んでいるかということを俯瞰(ふかん)した上で提案することもできるんですけれども,中長期的な観点に関しては,お互いがお互いのことを勉強した上で自分も頭をひねらないといけないというところがあるので,まさにこういう委員会の役割かなと感じています。
 私は長いことこの委員をやっていて,更新の回数の制限でこれで終わりになりますので,今後もそういう観点でいろいろ議論していっていただけたらいいかなと思っています。
 以上です。
【高村主査】  ありがとうございます。
 では,市橋委員,お願いいたします。
【市橋委員】  河宮委員のおっしゃったこととかぶるところがあると思うんですけども,私も8期,9期と4年間やらせていただいて,その間,研究成果をどう社会に還元するのかというのが一つ大きなテーマになっていたと思います。私も自治体の立場,若しくはステークホルダーの立場から意見を言わせていただいてきたつもりであります。社会に成果を還元できる研究を志向するために,やっぱりもっとステークホルダーと話をする機会が必要ですし,この中で130行ぐらいかな,すぐには見つからないですけれども,研究者が社会に対して情報発信をしていくということとか,国民全体のリテラシーの向上ということが書かれているのですけど,それはそれとして非常に重要なことなのですが,そういう科学者自体がもっと社会の中で自分の研究の位置付けを常に模索する必要があるのかなと思ってきました。そういうステークホルダーとの議論の機会みたいなものをもっと作っていった方がいいのではないか。社会課題というのはすごく複合的になってきていますので,学際的な議論も必要ですし,それ以外のステークホルダーとの意見交換も必要だと思っています。
 そういう意味では,まだまだ科学技術分野自体が十分にオープン化されていない気がしますし,もっと民主化していった方がいいと思います。例えばこのような委員会なども,もっと違う分野の人であるとか,違うバックグラウンドのある人たちを採用されていくともっとよくなっていくのではないかと思います。
 ありがとうございました。
【高村主査】  ありがとうございます。
 本郷委員から順にお願いできればと思います。よろしいでしょうか。お願いいたします。
【本郷委員】  ありがとうございます。私も大変勉強になって,実際の仕事にも随分役立て,そしてまたそれを通じて何か貢献できるのかなと思っておりますので,まずはお礼までというのが最初でございます。
 今後の方針についてなんですけれども,二つほどコメントがございまして,一つはこちらで取り扱うのが基礎研究ということであれば,かなり長いタイムスパンで考えられるべきものではないのかなと。例えば私も関与していますCCSですが,これは2030年以降の対策として出てくるのではないかと言われているわけです。そうすると,現在の予算制度の制限というのはありますけれども,5年計画という枠組みで考えると2回やってもまだ足りないという世界ですので,日本制度の制約は分かりつつも,是非ここの5年という縛りを超えたような形で何か提案といいますか,改革できると,実際効果が上がってくるのではないかと思います。
 それから,研究者の方々と話をしてみましても,この5年の縛りというのが非常に,少し言い方は悪いですけれども,気の毒な状況に研究者の方がおられますので,そうすると,先ほどありました人材を育成するといっても,育成される側も安心して研究できないわけですので,ここは制度の制約はあることは分かっておりますが,繰り返し是非改良の方向で取り組んでいただければと思います。
 二つ目は選択肢の問題です。特に長期の話になれば多くの選択肢があるわけで,今から絞り込むというのが適切かどうか,これは分からない話ではないかと思います。先ほどの予算の中でというのもありましたけれども,分かりやすく言うと選択と集中というのが基礎研究にふさわしいのか,むしろ多様化というものがふさわしいのかもしれないですね。ですので,ここも是非選択と集中的な経営マネジメントの,どちらかというと短期的な戦略に引きずられることなく,基礎研究の独自性というものを考えて,多様性を考えていただければいいのかなと思います。競争と言うのは語弊がありますけれども,選択肢を増やすという形を是非御検討いただければと思います。
 以上です。
【高村主査】  ありがとうございます。
 それでは,手塚委員,お願いいたします。
【手塚委員】  書かれたことに関して,全体的に特に異論はないのですけれども,産業界的な目線でもって少しコメントさせていただきますと,やっぱりパリ協定も2020年からインプリメンテーション,つまり,実施の段階に入っていくわけです。ですから,これからは行動そのものにいかに直結させられるかが課題になります。ここで実装という言葉がいっぱい書かれているのはまさにそういうことで,多分文部科学省的な観点からすると大変ユニークな取組になってくるのだと思うのですけれども,一方で,これは非常に長期で見たときには大規模なインフラの総入替えのようなことをやっていかなければいけないチャレンジであるということも事実でございまして,鉄なんかも昨年11月に「ゼロカーボンスチールを目指す」という長期ビジョンというものを出させていただいていて,この中で2100年にゼロカーボンができるか,できないかというビジョンになっているわけですけども,これは莫大(ばくだい)な量の水素のインフラ,あるいはCCS,CCUのインフラがないと,鉄という基礎素材はゼロカーボンにできないという逆のメッセージも実は入っているわけです。その莫大(ばくだい)な量の水素のインフラとかCCS,CCUというのは,自然体でもって社会がそういうふうになるためには何が必要かというと,結局経済便益,コストが安く,かつアベイラビリティが物すごく大きいということが実現しないとそういうことができないわけです。ですから,実験室でもって1トンできましたとか100グラムできましたという話と,今申し上げている世界で既に16億トン毎年鉄が作られて,世界に蓄積されている総量が300億トンもあるような素材を将来的に入れ替えていくという作業にはとてつもないスケールの移行が必要になってくる。その移行を,しかも強制的ではなくて自然体で行おうと思うと,やっぱりコスト/ベネフィットの非常に冷徹なる分析が必要になってくるだろうと思います。あるいは一気にそれはできないと思いますので,段階的にそういう一つ一つをどうクリアしていくかというようなストーリー的な旗の立て方が必要になってくるのではないかということです。
 ちなみに,このベネフィットの部分なのですけれども,気候変動のベネフィットというのはローカルには発現がほとんどしない,適応はローカルなメリットが見えるのですけれども,緩和の方は基本的にグローバルにしか発現しないベネフィットなわけです。ですから,ある技術が実用化されたといっても,それを日本だけが使っていたのでは全くベネフィットが薄まってしまって国内には発現しない,実際それをやった人のところに戻ってこないわけですから,いかにしてこれを最後に最終的にグローバルな取り組みにして,そういった技術の実装を世界に持っていけるかという,これも多分大きなテーマになってくると思います。したがって,ここでの論点は,余りローカルな世界で閉じた議論ではなくて,パワーエレクトロニクスのテーマもそうなんでしょうけども,いかにしてこれを世界レベルのムーブメントにするかということを頭の片隅に置きながら,実装という議論をしていっていただけるといいのではないかと思います。
【高村主査】  ありがとうございます。
 どうぞ,お願いいたします。
【谷口委員】  私はJSTのALCAとか未来社会創造事業で大学の先生方から出てきたアイデアに対してファンディングをしているのですが,再生可能エネルギーの分野に限って非常に採択しにくい状況がございます。御承知のとおり風力とか地熱,もっと極端な例としては潮流のエネルギーを使った発電があります。しかし,実際には大学の先生が実験する場がありません。実際,再生エネルギー開発のアイデアは幾つか出てきてもそれを実証する場がないのが一番の問題です。その辺を何らかの形で準備できれば,再生可能エネルギーの研究が進展すると思います。
 そういった意味では地方自治体,特に人口減少が顕著な場所,例えばリアス式海岸の入り口を防潮堤で閉めて潮の満ち引きをうまく利用した発電をすることは比較的容易にできると思います。過疎地を活性化するためにも研究者を集めて,再生エネルギーの社会実験をやる仕組みが必要なのではないかと思います。具体的には、社会実験を希望する過疎地の自治体名を公開し、その自治体と共同提案の再生エネルギーのアイデアを公募して、優れた内容の提案にファンディングをする仕組みを作ることです。こうすれば大学の教員が実験場の確保に奔走する必要もなく、自治体も研究期間が終了後に設置した設備などを無償で使えるなど、双方に大きなメリットになります。
【高村主査】  ありがとうございます。
 では,田中充委員,お願いいたします。
【田中(充)委員】  ありがとうございます。このペーパーを読ませていただいて,3点ばかり気が付いたことがありますので,申し上げたいと思います。
 1点目は,先ほどもキーワードが出ましたが,基礎研究とか基盤研究と,環境エネルギー分野に係る基礎研究,基盤研究,そういう分野もありますし,さらにはそのちょうど対極にある応用研究とか,社会実装研究とかそういう分野もあると思います。そうすると,まず第1点目は文部科学省の環境エネルギー技術政策というこの領域は,どの分野を担っていくのか,戦略的な方針を明確にした方がよいという点です。基礎研究の分野を担うという選択肢もあるし,それから実装研究を担うという選択肢もある,両方やりますということもあると思うのです。そこのスタンスにめり張りをつける必要があるのではないかと考えます。特に,実装研究,応用研究の分野になると,各省庁との関係が,もちろん基礎研究の分野でもできますけれども,そういう点ではほかの省庁とどのようにすみ分けしつつ,あるいは分担しつつ,環境エネルギー技術の分野をどうやって伸ばしていくのか。この点について,まずめり張りをつけた方がいいのではないかという印象を持ちました。1点目です。
 2点目は,今のJSTのお話もございましたように様々なところでエネルギー,環境に関する研究が行われているのですね。ここの環境エネルギー科学技術委員会という審議会は,恐らく政府の中で唯一なのかもしれませんが,環境エネルギー分野の研究政策に係る方針を打ち出していく役割があろうと考えます。この環境エネルギー科学技術委員会は,かなり重要な役割を担っており,環境エネルギー科学技術の技術研究のある種の方向性を決めたり,ある種の司令塔になるべき役割だろうと思います。そういう点では,様々な環境エネルギー分野の研究レビューをしっかりとしていく必要があるのではないか。どの分野ではどういう研究が行われていて,どこまで進んでいるのか。そうすることで次に新しく行う分野を作る研究の相乗効果が出るとか,あるいは,そこは重複が見られているので,ここは少し整理した方がよいとか,そういう環境エネルギー研究の動向を俯瞰(ふかん)していく役割があるのではないか,と考えております。ペーパーの6ページにあります156行目あたりの当委員会の役割に十分ある話で,そこをしっかりと押さえる必要があるのではないか,これが2点目です。
 3点目は,144行目あたりに書いてございます幾つかのこれからの方向性の中で,人材育成,リテラシーの向上とともに人材育成,これは大変重要なことだと思います。まさに先ほどのお話にもありますように総力を挙げてこれから気候問題に取り組んでいくということになると,その人材を作っていく,あるいはリテラシーを高めていくということが必要です。そこで,ここで考えているという人材育成というのは,場合によっては実務レベルというか,あるいは担当レベルの人のリテラシーを高めていくというようにも読み取れますが,私は文部科学省としてはもう一つ,環境エネルギー教育のようなきちんとした基礎教育といいましょうか,そうしたところにもインプットしていく必要があるのではないかと考えます。実務レベルの教育と同時に,幼少期からの環境エネルギー教育の在り方というのをインプットしていって,そういうところにも是非課題を提起していく必要があるのではないかと思います。
 以上です。
【高村主査】  ありがとうございます。
 では,田中加奈子委員,お願いします。
【田中(加)委員】  まず最初に資料3-3の中で,少し細かい点ですが一つ気が付いたことをお伝えした後,総括的なもう少し大きな話をしたいと思います。
 まず資料3-3の48から55のパラグラフに,『1.5℃特別報告書』からの少し引用といいますか,参考にしながらの部分がございます。これを読みますと少し誤解を与えるかなと思ったので,あえて手を挙げました。52行目の「加えて,1.5℃努力目標を追究するのであれば」といったところの「加えて」というところですが,加えてというのは何に加えてというところを読み返してみますと,これまで言われている再生可能エネルギー,省エネの徹底,いろいろなことをやってといったところが少し抜けているかなと思います。これだけ見ると削減するには省エネとか再エネとかではなくてCCSをやれとも読めなくもないので,エディトリアルですが,そこだけ確認と書き直しをしていただけたらと思います。
 全体の話で申しますと,今まで社会実装により近いところの委員会に出ることが多かったので,科学技術や基礎研究に直結する議論は,今回大変よい勉強をさせていただきました。ただ,基礎研究で今やっていることが社会的に,最後の社会でどのように入ってくるのかといったところの道筋というものを何らか示しながらでないと,先ほども少しお話しいただきました,例えば優先順位,それは人々がその日,その日に足る優先順位ではなくて,本当に研究の中で,今,日本として何をやったらいいのか,世界として何をやったらいいのかというような優先順位を見るのに,そういった流れ,基礎から社会への実装のところまでの道筋というのが全く見えていないところでは優先順位を付けられないはずなんですね。例えばそこでは何があるかというと,本当に基礎的なところをやっている段階で,物理的ポテンシャル的にこの技術はどれだけ意味があるのか,あるいは技術的には少し下がっている,いろいろなバリアがあるから技術的なポテンシャルではどれぐらいやれそうなのか,そしてそれを社会に入れていったときには,どういう地域にはどう,どういう条件にはどうというような社会や経済的なポテンシャルがどれぐらい下がってしまうのかというのは必ずあるはずです。それをごちゃまぜにしてしまうと,例えば本郷委員が先ほどおっしゃった本当になくしていかなきゃいけないという前にやらなければいけないことがたくさんあるような中で,一番最初にもうCCUがバンと来てしまう。CCUももちろん大事なものだと思うのですけども,それが大事になってくるのは,本当にカーボンの種が全く石油からとれなくなるような世界だと思うのです。そこに行くまでの時間というのは何十年,まだそこに行くまでというのはまだ少し30年,40年ございまして,その間の研究開発というのはもう少し先にやっておかなければいけないことがあると思います。例えば,文部科学省が見ていくようなところではないかもしれないのですが, BAT(Best Available Technology)を徹底的に浸透するというのもきっとあるでしょう。このような文脈で,技術のタイムフレームとポテンシャルの種類の議論が足りてないと思います。いろいろな技術がある,というのをただレビューしているだけでは,せっかくのレビューが生かされません。結局「みんないいものではないか」となりかねないというのが懸念としてございます。是非タイムフレーム,ポテンシャル種類の議論というのを入れていただきたいと思います。
 以上です。
 【高村主査】  ありがとうございます。
 それでは,花木委員,お願いいたします。
【花木主査代理】  全般的なことをお話しさせていただきます。私がこれから申し上げるのは大きくいうと一つなんですけど,文部科学省として社会の中で果たす役割というのを強く意識していただきたいと思っています。社会の中でというのは,向こうに社会があって,社会に働けるというのではなくて,社会の中にどう入っていくかということです。文部科学省が,そういった考え方で方針を定める,あるいは技術を評価する,さらにはファンディングするということが,結局は研究者,技術者がどういうふうに社会と関わるかということに非常に強い影響を及ぼしますので,そういう意味で是非文部科学省はその先頭に立って,難しいテーマですけど,それをやっていただきたいなと思っております。
 そういった観点でこの環境エネルギー科学技術委員会が果たすべき役割というのを考えますと,まず社会との関連が一番強いのはSDGsだと思うのです。とはいえ,SDGs自身を研究テーマとして設定するというのは必ずしも容易ではないし,必ずしも得策ではないかなと思っています。文部科学省としては科学技術とSDGsの関係ということで,STI for SDGsという基本方針を定めておられるので,基本的にはその方針の中で,今回御提案があったような気候変動に絞って議論を展開する,あるいは評価するという方向がちょうどいいのではないかと思います。ちょうどいいというのは,実質的にも効果が見えて,それが結果的にはSDGsに貢献するということでちょうどいいと申し上げたわけであります。
 気候変動に関する様々な研究を評価し,推進していくという中で,特にきょう話題になったSI-CATのように社会との協働が必ず必要になるものはテーマとして非常にふさわしいと思います。モデルとしてこうやって社会の中で研究活動を進めていくのだ,ということを示すのにふさわしいと思っていますし,またきょうは直接話題には余り出なかったわけですが,DIASであるとか,あるいはフューチャー・アースのように,プラットフォームを作る,すなわち,場を作って,そこに研究者と社会がかかわり,しかもそれは世界全体で動いていくと,そういったプラットフォームづくりも非常に意味があるなと考えております。
 それからもう一つ,教育に関わる文部科学省ということで特に申し上げますと,学術の様々な分野をどう巻き込んでいくかということにも更に力を入れていただきたいなと思っています。きょうのペーパーの中でも,文理両方含めて,とさらっと書いてあるのですが,なかなか実際に人文社会科学の研究者の人たちを巻き込むというのはうまくできていないですね。高村先生がこうやって主査をされているんですけども,高村先生が本当に関心がある話題というのが余り出てこないですよ。高村先生が半導体の評価をするっていうのは,もちろん役割上されますけど,本当に御自身の能力が必ずしも生かされてない。そういう意味では,研究テーマとして人文社会科学の人が関心を持つテーマを是非考えていただきたい。どっちかといえば,人文社会科学の人が入っているのは,チェックするような立場で入っているというのが多いのです。技術を開発しました,でも社会的に問題があるかどうかを人文社会科学の人がチェックする。そうではなくて,人文社会科学の人が研究テーマにしたいものというのを,これは低炭素センターの方でもやっておられますけども,それを更に考えていただくという努力をしていただければ大変有り難いなと思っています。
 以上でございます。
【高村主査】  ありがとうございます。
 瀬川委員,お願いいたします。
【瀬川委員】  まず資料3-3を拝見して,非常によくできた文書だなと感心いたしました。特に問題はないと思うのですけど,ただ一方では,若干めり張りに欠けているのかなという気もいたします。それで私がこの中で一番大事だなと思っているのは,もうこれまでも複数の委員が言及されていますけど,やはり人材育成だと思うんです。文部科学省として一番この分野で取り組むべきものというのは人材育成であって,それ以外の何ものでもないと思います。これはなぜかというと,2050年,2100年を考えたときに,恐らくこの中にいる何人の人がまだ御存命かというぐらいの話になってしまう。そうすると,今の本当に中学生,高校生あるいはそれ以上,大学生を含めてきちんと教育を施す,それから場合によっては今現役でばりばりやっている社会人の方も教育をする。特に小・中・高あたりの教員というのはそれぞれ自分の教科でもって採用されている先生方なので,恐らくこういう分野融合型のものというのは,教育がすごく難しいと思うのです。そういう方たちをきちんとリカレント教育等で大学で引き受けて,それを本当に子供たちにフィードバックしてもらうような仕組みを早急に作る必要があるのではないかと思います。
 その次に出てくるのは基礎研究だと思うのです。これはよく環境省,国土交通省,経済産業省,エネルギー庁といろいろあって,その中でどうしてもやりがちなのが分野ごとにデマケをするというやり方があります。これは,僕は全くふさわしくないと思っていて,文部科学省がやるべきなのは,全ての分野の基礎は全部文部科学省がやると,そこで芽が出てきたものは,例えば環境省なり,経済産業省なり,国土交通省の実証事業につなげていくと,こういうルートを作るハブにならなければいけない。先ほどキャリアパスの話をどなたかの先生がおっしゃっていましたけども,文部科学省のこういう時限付きのプロジェクト等の研究の非常に悲しいところは,いい成果が出てもそれで終わりなのです。実証になかなかつながらない。これは実証ベースのことになると文部科学省の手は離れて,他省庁に回してやるというのが必要だと思います。我々は,主に太陽光発電なのですけど,波力発電とかもちょっとやっていまして,そちらは環境省の実証事業で,実際福井県の方で海洋のブローホール型のものを作ったりもしています。谷口委員でしたか,海洋のもう少し有効利用という話が出たと思うのですけれども,実際に大学の先生がなぜそこに取り組めないかというと,漁業権なんです。これはもう大変で,とても大学の先生が担えるような話ではありません。これはやはり農林水産省等も絡んでいただいてやる必要がある。
 いずれにしても文部科学省としてやるべきなのは,むしろいろいろな種を文部科学省の基礎研究として拾い上げていただいて,それを大きく育てていくような仕組みです。例えばベンチャーでいえば,ベンチャー企業を1,000個立ち上げて事業化できるのはそのうち10個と,本当に利益が出るのは1個みたいな話があるかと思うのですけれども,研究もそういうところがあります。逆に言うと,今水素を特出ししたり,あるいはCCUを特出ししたりすると,いろいろな誤解を招くと思うんです。そこに集中するのかという話になりますよね。実際に,しかし水素の方はもう経済産業省でさんざんやっているプロジェクトで,実証も環境省等も含めてやっているところもあります。CCUも多分そんな感じになるかと思うのです。それよりも,大学の先生の生かし方というのがあって,それは誰もが気付かないような種を見つけてくるというその作業を大学の先生に担わせる,これが僕は一番正しいやり方なのではないかと思います。
 あともう一つは環境エネルギーの人材育成に関する拠点というのは全然どこにもないという問題です。これを何とか作っていただきたいと思っています。やはり予算取りというのはなかなか大変だと思うのですけれども,これからの将来を考えたときに,僕は決して高い投資だとは思わない,むしろ絶対やらなければいけない投資だと思うので,そこら辺のところは是非次期の委員会で御検討いただければと思います。よろしくお願いします。
【高村主査】  江守委員,お願いいたします。
【江守委員】  ありがとうございます。二つ言うと思います。基本的に僕が理解したのは,すごく大ざっぱに言うと気候変動をはじめとする社会課題を,科学技術を推進することによって解決していきましょうということだと思うのですけれども,その方向性には僕自身は基本的に賛成しています。賛成していますけれども,そのときに補助的な視点が幾つか要るのではないかと思っていて,一つはSDGsで,沖委員のコメントにあったようにシナジートレードオフがあるので,例えば気候変動で,ある技術をたくさん導入すると気候変動は解決するけれども,ほかの項目にトレードオフがあるようなものというのはもう一度よく考えなくてはいけないとか,もう一つのものというのは,これは市橋委員がおっしゃっていたことと少し関係があると思うんですけれども,対話的なことだと思います。これは例えばこの資料の146から7というところの最後のポツの三つ目には,教育と科学技術リテラシーの向上ということが書いてあって,これはすごく上から目線で書いてあるわけです。それに対して,ステークホルダーとか市民と専門家や行政が同じフラットなところに立って意見交換するというのが,リスクコミュニケーションという言い方を特にした場合にも必要な見方だと思うので,そういうことがあるかなと思います。それによって市民の科学技術リテラシーだけではなくて,専門家の社会リテラシーを高めていくということだと思います。
 そうやって見たときに,一つ具体的なこととしてすごく最近気になっているのがありまして,これは技術を大量に導入していくと出てくる懸念みたいなものの非常にはっきりと一つ今現れている例として,メガソーラーの反対運動というのがいろいろなところで起きているんです。FITである意味ゆがんだ形で結構メガソーラーが増えて,それに対して,木を切っているではないかとか,土砂崩れが起こりやすいところに設置しているではないかということで結構な反対市民運動が起きて,再エネが悪者になっています。風力ももちろん鳥がぶつかるではないかとか,景観がといって悪者になって,そういうことがずっとあるわけですけれども,そういうことを考えたときに,そうすると,低炭素の問題でいくと,クリーンな技術を使って脱炭素を目指そうというと,再エネ100%というのは一つの理想的なビジョンになるのだけれど,そこでそういう反対のされ方をすると答えがなくなってしまうという問題があって,そこでどうやって答えを見つけていくかということが今すごく具体的に考えなくてはいけないこととしてあるのかなと思います。
 例えば風力だったら,前に話を聞いたことがあるのが,羽根がない風力とか,棒が立っていて,それが振動することで発電するやつが,それがどれぐらい本当に使えるのかは知りませんけれど,例えばそういう技術がもしかしたら研究が必要ではないかとか,あるいはソーラーの土地の問題でいうと,農地のソーラーシェアリングみたいな話が,これはむしろ規制の方が問題で,技術的な問題はもしかしたら少ないかもしれませんけれども,そういうものをもっと増やすにはどうしたらいいかとか,何か環境調和型配慮型で再エネをもっと爆発的に増やすにはどうするかみたいな,そういうことを考えたり,そういった形で科学技術を追究するときのスコープというのを,SDGsとか社会との対話とかに目を配ることによって広げていくということがこれから特に必要になるのではないかなと一つは思いました。
 もう一つは,今僕が申し上げたのは,ある意味では方向を広げる話なんですけれども,一方でこの資料に書いてあることの一つとして優先順位の検討というのがあって,これは田中加奈子委員からも言及がありましたけれども,僕自身はこの優先順位というのは,ある意味ではこれは狭めること,集中することだと思いますが,それは資源を大事なところに投下するという意味では大事なことだと思いますけれども,すごく怖い感じがしています。自分がそこに関わるとしたら,非常に光栄なことだし,やりがいがあるけれども怖いと。それを決めるというのをたまたま集まった10人ぐらいの人の話の雰囲気で決めていいのかとか,すごくそういうところがあるような気がします。やるのであれば非常にオープンに意見を受け付けるべきだし,トランスペアレントに,透明な議論に,どういうふうに決まったかということにするべきだし,エビデンスベースにするべきだし,アカウンタブルにするべきである。優先順位というのはそれぐらいの配慮で決めるべきものなのではないかというのが,これを見て思ったことであります。
 以上です。
【高村主査】  ありがとうございます。
 今江守委員が言及された田中加奈子委員から少し御発言があるようです。田中加奈子委員,どうぞ。
【田中(加)委員】  済みません,私の発言がちょっと分かりにくくて誤解をもしかして招いてしまったのではないかと思いましたので,お時間がない中,一言だけ申し上げさせていただきますと,優先順位と申しましたのは,優先順位を決めるべきだというお話ではなくて,優先順位を今後いろいろな段階で,政府の方や,もちろん人々に至るまでいろいろ決める上で,優先順位を考えることができるための情報が今足りていないと感じています。そのためには何が必要かというと,この技術は例えばこういうタイムフレームでこういうことがこういうレベルで可能になるといった情報が,必ずそういうことが必要になってくるし,それがないまま逆に優先順位を決めようとしていることに少し警鐘を鳴らしたいという意味で申し上げました。
【高村主査】  ありがとうございます。
 私からも一つだけ申し上げたいと思います。まず9期にわたって皆様方に闊達(かったつ)に御意見を頂いたことに,心からお礼を申し上げます。
 今回のペーパーにもありますように,ここ二,三年の社会の変化というのは非常に大きいと思っていまして,先ほど花木委員からもっと社会科学,人文科学がちゃんと興味を持って議論できるような研究課題あるいは委員会の議題設定をというお話がありましたけれども,その変化にどういうふうに科学技術が応えていくか。この変化は,私は科学技術がある意味でドリブンして生じている変化だと思っていますけれども,同時に変化にどう科学技術が応えていくかということを考えないといけないタイミングかと思います。これは堅達様の御報告からもありましたけれども,少なくとも一定の不確実性はあるとはいえ,科学からはこのままいくと明らかに大変なことになるというメッセージが出ています。それに向けて社会が何らかの形でそこに対処しなければいけないという課題ははっきりしている,それにどう答えを出すかということだと思います。
 多くの先生方がおっしゃったように,他方でこれと決め打ちは余りしないでくれという,これも正しい御指摘と思っておりまして,特に長期の目標の達成を目指していくときに,今ここにいる私たちが持っているような知識では出てこないようなといいましょうか,より幅広い知見をうまく生かして研究開発につなげていくような仕組みも必要だと思っております。それをどういうふうに制度として作っていくかというのが,イノベーションをうまく作っていく意味でも,文部科学省のプログラムの運営等々というもう少しミクロな点からも非常に大事かなと思っております。
 今回,この三,四十分の議論でも十分有益な御意見を頂きましたので,これを是非10期に引き継いでいただきたいと思っております。
 では,事務局の方にマイクをお返しいたします。
【横地環境エネルギー課長】  ありがとうございました。まさに今,高村先生からもあったように頂いた御意見,相当高いボールも投げられている点もあろうかと思いますけども,なるべく漏らさないように受け止めながら,進められるところから進めてまいりたいと考えております。ありがとうございました。
【高村主査】  ありがとうございます。
 それでは,事務局からもし補足がございませんでしたら,佐伯局長が本日いらしてくださっておりますので,委員会に対して一言いただければと思います。
【佐伯研究開発局長】  ありがとうございます。これまで2年間にわたりまして御指導いただきましたこの委員会もきょうが最後ということでございますので,一言御礼の御挨拶を申し上げます。
 これまで2年間にわたりまして環境エネルギー分野の研究開発の推進・評価などについて精力的に御議論いただきましたとともに,本日も含めて様々な御示唆を頂いたことを,改めて心より感謝申し上げます。特にこの9期の2年間といいますのは,今高村主査からも話がありましたように非常に変化があり,なかなか難しい時期であったかなとも考えてございます。基本認識のたたき台の部分で先ほど御説明したとおり,この1年だけでも様々なことが起こりました。特に先月にはCOP24においてパリ協定の実施指針が採択されまして,今の御議論にもありましたようにまさにこれからは実施の段階に,パリ協定の設計の段階から実施の段階に移っていくという状況でございます。
 そういう状況も踏まえまして,今総理大臣の下でパリ協定に基づき,なおかつ成長戦略という側面を持った長期戦略策定に向けた検討が進められておりまして,高村主査にも委員に入っていただいておりますが,政府としてもこれまでの常識にとらわれず,環境と成長との好循環の実現,非常に難しい課題ではございますが,これを目指して世界のエネルギー展開,脱炭素化を牽引(けんいん)する,国内だけではなくてグローバルに考えていくという決意の下,研究開発を更に促進する必要があると我々としても考えております。
 この点につきましては,おとといのダボス会議での基調講演で総理から今年6月のG20では気候変動に立ち向かう上においてイノベーションがなせること,イノベーションがどれほど大事かということに大いに光を当てたいというような御発言があったところでございました。まさに私ども,その御趣旨の下,いろいろやっていきたいと思っています。
 また本日も本当に様々な御意見がありまして,課長が申し上げたとおりなかなか重たい宿題ですが,それだけの責任を負って私どもも行政をしていかなければいけないという覚悟を持って当たっていきたいと思っております。
 今後は,ただ,きょう御意見を頂きながら,私たちが何をするかということをよく整理した上で議論していかないと,もちろん文部科学省全体では教育ということも大事なので,そのことも視点に入れていきますが,それをここだけで議論することもできませんので,そこに対する,教育を議論することに対するインプットとして何を議論していくかということになるのかなということも思いながら,他方,大学における拠点の育成みたいなところは,確かに私どものプロジェクトの中でできる可能性もありますので,そういったことも含めてよく次のサイクルで検討してまいりたいと思っております。
 最後になりますが,これまでの先生方の御尽力に改めて感謝を申し上げますとともに,引き続き環境エネルギー科学技術の分野に御指導,御鞭撻(べんたつ)いただきますことをお願い申し上げて,私からのお礼の御挨拶とさせていただきます。本日はありがとうございました。
【高村主査】  どうもありがとうございました。
 今回最後に時間を頂いてしまいまして,長くなってしまいましたこと,改めておわび申し上げます。
 これをもちまして第9期の環境エネルギー科学技術委員会の第7回会合を閉会いたします。きょうはどうもありがとうございました。

── 了 ──

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