第6章 研究計画・評価分科会における研究開発評価の在り方(抜粋)

1.基本的な考え方

1. 研究開発評価の在り方の策定の背景

 第5期基本計画の策定を受けて、実効性のある研究開発プログラム評価のさらなる推進、アイデアの斬新さと経済・社会インパクトを重視した研究開発の促進、研究開発評価に係る負担の軽減の観点から、平成28年12月に「国の研究開発評価に関する大綱的指針」(以下「大綱的指針」という。)が改定された。これに伴い、文部科学省では、評価を行う基本的な考え方をまとめたガイドラインである「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」(以下「文部科学省研究開発評価指針」という。)について必要な改定を行うこととしている。

2.研究計画・評価分科会における研究開発評価

 本研究開発計画の目標達成及び次の政策・施策に向けた取組等に活(い)かすため、本分科会における研究開発評価については、大綱的指針及び文部科学省研究開発評価指針に基づき、次の評価を実施する。
1: 中目標を単位とする研究開発プログラムの評価
2: 重点課題(※1)の評価
※1:総額(5年計画であれば5年分の額)が10億円以上を要することが見込まれる新規・拡充課題及び研究計画・評価分科会において評価することが適当と判断された課題

3. 研究開発評価の改善への新しい取組

(1) 「研究開発プログラム」(※2)単位での評価
 研究開発計画の評価については、研究開発計画に掲げた中目標を「研究開発プログラム」として、俯瞰(ふかん)的な評価を新たに行うこととする。その際、分科会が所管する内局予算による個別の研究開発課題の評価結果に加え、当該中目標に係る国立研究開発法人の行う研究開発課題の評価結果(国立研究開発法人評価の結果等)や政策評価における事前分析表等を活用し、中目標達成のための研究開発の取組全体を総合的に評価する。
※2:「研究開発プログラム」とは、研究開発が関連する政策・施策等の目的に対し、それを実現するための活動のまとまりとして位置づけられる。
(2)政策評価との関係
 研究開発計画に掲げた中目標と政策評価における達成目標を可能な限り整合させることで、本分科会における中目標(研究開発プログラム)の達成状況の評価を政策評価に反映するようにする。

2.対象別評価の実施

1. 中目標を単位とする研究開発プログラムの評価

(1) 評価の目的
 研究開発プログラムの評価は、設定した中目標ごとに評価を実施することにより、実施の当否を判断するとともに、研究開発の質の向上や運営改善、計画の見直し等につなげることを目的とする。
(2) 評価の時期
 研究開発プログラムの評価は、進捗・達成状況の確認等をするとともに、政策評価への反映や次の施策等に活用するため、課題等の進捗状況や政策評価の時期を考慮して、研究計画・評価分科会で研究開発プログラムごとに定める時期とする。
 事前評価は、評価の重複等を避ける観点から、重点課題の事前評価時に、研究開発プログラムとの関係性を明らかにすること等により、その実施を省略することができることとする。また、必要に応じて追跡評価を行う。
(3) 評価方法等
 評価方法等の詳細は、評価実施年度ごとに研究計画・評価分科会において決定する。

2.重点課題の評価

(1) 評価の目的
 研究開発課題の評価は、課題の採否を判断するとともに、実施されている研究開発の質の向上や運営改善、計画の見直し等につなげることを目的とする。
(2) 評価の時期
 重点課題の評価は、当該課題の実施前及び実施後にそれぞれ事前評価及び事後評価を実施する。また、必要に応じて研究計画・評価分科会で定める時期に中間評価及び追跡調査を実施する。
(3) 評価方法等
 評価方法等の詳細は、評価実施年度ごとに研究計画・評価分科会において決定する。

3.特に留意すべき事項

 研究開発プログラム及び重点課題の目的、規模、段階などに応じ、以下の項目に留意しつつ実効的な評価を行う。
(1)中目標の達成状況を把握するために設定する指標(目標値)
 中目標の達成状況を把握するため、各中目標達成状況の評価のための指標で設定されたアウトプット指標においては、定量的に判断するために、可能な限り目標値を設定する。ただし、定量的指標は対象の一側面を表しているにすぎないことから、各種の定性的指標等の情報も活用しつつ、総合的に評価を行う。この場合、定性的な評価がより本質的な意味を持つ場合もあるため、設定された目標値そのものが自己目的化され、本来の目指すべき状況とのかい離や 望まざる結果を招かないよう、留意することが必要である。また、アウトカム指標についても継続的にモニタリングを行う。その他、指標や目標値は、科学技術の急速な進展や、社会や経済の大きな情勢変化等に応じて、適宜見直されるべきものである。
(2)挑戦的(チャレンジング)な研究開発の評価
 挑戦的(チャレンジング)な研究開発に関しては、社会情勢の変化や研究開発の進捗状況等に応じ、目標やアプローチの妥当性について検証し、見直しを実施する。また、直接的な研究開発成果における目標の達成度に加え、関連する制度、体制、運営といった研究開発過程(プロセス)が成果の最大化に向けて適切に対応し、組み合わされたたかという視点での評価も必要である。さらに、技術的な限界・ノウハウ・うまくいかなかった要因等の知見、副次的成果や波及効果、研究開発プログラム全体として得られる成果の大きさなども積極的に評価するなど、ハイリスクであることを前提とした評価項目・評価基準を設定する。
(3)「道筋」の設定
 中目標を達成するために、成果の受け手に対して、何を、いつまでに、どの程度届けるかといった具体的で実現可能な目標(アウトプット目標)と成果の受け手が行う活動及びその効果・効用として現れる価値(アウトカム目標)を、時間軸に沿った「道筋」として示すことにより、誰の責任で、何をどのように実施するのかを明らかにすることが重要である。本研究開発計画では、この「道筋」は、関係者がそれぞれの役割を明らかにした上で内容の妥当性についてコミュニケーションを図った結果や科学の進歩、得られた経験などを踏まえて試行を重ね、段階的に充実、見直しを図っていくこととする。
(4)イノベーションを生むためのマネジメントに係る評価
 イノベーションを生むためには、研究開発を実施する主体の長のマネジメント力、成果の最大化のための体制作り、有機的な連携や多様な専門知の結集による実用化までを考慮した取組等を適切に評価に反映する。
 特に、研究開発マネジメントの評価では、研究開発を実施する主体の長及びそれをサポートする者について、それぞれの役割と権限が明確にされているか、また、実施主体の長のパフォーマンスについて評価することが重要であり、例えば、成果創出のためにどのようにリーダーシップを発揮しているかといった観点での評価も行う。
 また、組織のミッションや、実施主体の長やその長をサポートする役割の者等が置かれている立場によって、実施主体やその長等の役割、権限、責任が異なり、それに応じて評価項目・評価基準も変わっていくことに留意する。
 さらに、実施主体の長がどのように選定・任命されたか、誰がその任命責任を持っているのかを明確にする等、実施主体の長を任命する側の役割と権限の妥当性についても評価する。

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科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室

(科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室)