第1章 未来社会を見据えた先端基盤技術の強化(抜粋)


1.大目標

 ICTを最大限に活用し、サイバー空間とフィジカル空間(現実世界)とを融合させた取組により、人々に豊かさをもたらす「超スマート社会」を未来社会の姿として共有し、その実現に向けた一連の取組を更に深化させつつ「Society 5.0」として強力に推進し、世界に先駆けて超スマート社会を実現していく。このため、国は、超スマート社会サービスプラットフォームの構築に必要となる基盤技術及び個別システムにおいて新たな価値創出のコアとなり現実世界で機能する基盤技術について強化を図る。


3.大目標達成のために必要な中目標(量子科学技術分野)

 内外の動向や我が国の強みを踏まえつつ、中長期的視野から、21世紀のあらゆる分野の科学技術の進展と我が国の競争力強化の根源となり得る量子科学技術の研究開発及び成果創出を推進する。
 ※量子科学技術分野の「中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組」等については、現在、量子科学技術委員会で、これまでの研究動向など現状を分析しつつ、文部科学省としてどのように研究開発を推進していくべきか検討中。このため、量子科学技術分野においては、現在までの検討状況を記載したものであり、平成29年度中に検討結果を踏まえて改定予定。
(1)中目標達成状況の評価のための指標
■アウトプット指標
1:論文数
2:若手の関連事業参画数
■アウトカム指標
1:優れた研究成果の創出状況(論文被引用数 等)
2:優れた研究成果の創出事例
(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
先端研究基盤部会量子科学技術委員会「議論の骨子案(※)」を踏まえ研究開発を推進する。なお、「議論の骨子案」において、「推進方策の検討にあたって考慮すべき点」として以下が挙げられている。
(※)量子科学委員会で報告書が取りまとめられた段階で、報告書の名称に変更。

1:量子情報処理・通信
ア. 量子コンピューティング
 我が国の限られた資源と欧米の投資規模を考えると、正面突破は難しく、現時点で本命技術を決めて集中投資するのは時期尚早で失敗する確率が高いと考えられる。
 独自の視点やアイデアを生み出すことが非常に重要。欧米とは地理的にも距離があるが、それを逆手にとって勝負すべき。
 世界的に興味深い技術、アイデア、ソフトウェアが出続けており、現在ある点や線を深掘りするより、突出した点と点をつないで新しい領域を拓(ひら)くような、ハイブリッド的な推進方策が望ましいのではないか。
 その際、世界的な潮流は理解した上で、若手研究者のアイデアを開花させるような、探索的でクリエイティブな研究の新しい芽を育てることが重要。クリエイティブな人材を生み育むための方法でもある。
 量子コンピューティングの実現に向けては数々のマイルストーンが存在するため、国際的にも、基礎研究の成果としてオープンな研究交流がなされることが重要であり、その切磋琢磨(せっさたくま)の中でブレークスルーが生み出されるのではないか。

イ. 量子シミュレーション
 既に実験室レベルで実現している大規模な量子多体系の存在を前提に、物性理論研究者や潜在的ユーザーと一緒になって、探求すべき物質等について一定の目標を定め、量子状態の個別観測・制御の高度化といったハードの課題に取り組むとともに、現実の物理系を量子シミュレータに写像する理論や誤差の理論的評価といったソフトの課題に取り組むような、トップダウン的な開発アプローチが必要ではないか。
 層の厚い欧米に対し、我が国は独自性のある研究を進めていくことが非常に重要であり、物性理論の強みを基に、例えば、定常状態の計算より格段に難しい非定常な時間発展(ダイナミクス)のシミュレーションや、ガラス・液体等のソフトマターといった不規則系の物質を対象にしたシミュレーションに挑んでいくことも重要ではないか。
 理論や実験など、各分野のレベルが高度化している中において、分野間の協力や融合努力を積極的に評価する視点や、基礎物理からシステム開発まで見通せる人材を育成する観点が必要ではないか。

ウ.量子通信・量子暗号
 現在の量子通信・暗号の技術体系に、情報理論や光ネットワーク技術、ワイヤレスネットワーク技術といった異なる分野を融合した技術体系に移行することで普及を促すことが必要。その際、量子暗号と数理暗号といったライバル分野や、周辺分野との連携関係も構築することが、短期的なニーズに応えながら、我が国の強みである理論研究や基礎研究を長期的に継続できる基盤となると考えられる。将来の潜在的ユーザーと対話しながら、段階的に、着実に量子技術を向上させる取組が効果的。
 基礎理論や基礎研究における斬新なアイデアを重視し、それを国内で実証しやすい環境にすることも、想像をはるかに超えた量子科学技術の進化に対応するための取組として必要ではないか。
 研究や実験など、各分野のレベルが高度化している中において、分野間の協力や融合努力を積極的に評価する視点や、基礎物理からシステム開発まで見通せる人材の育成が必要ではないか。

2:量子計測・センシング・イメージング
ア.量子計測・センサ(生物・生命科学系)
 量子計測・センサは、半導体・ナノテク分野で培われた材料作製技術、デバイス開発、光量子物理学、量子ビーム利用など、我が国の強みが多面的に発揮できる上、医療からエネルギー・製造業まで非常に波及効果が広い。突出した点と点をつないで競争力を生み出す組合せがほぼ無限にあって、若手研究者の多様なアイデアを基に、新しい領域を拓(ひら)くような、ハイブリッド型の研究推進による競争力強化が強く望まれる典型である。
 比較的小規模な研究費から立ち上げが可能な点でも、若手研究者が斬新なアイデアを出せる分野であり、若手研究者をどのように幅広く支援、育成し、活躍、独立させるかを考える良い領域である。
 量子計測・センサの開発には、理論、基礎物理、材料、物性、デバイス、計測、分析化学、生命科学など、異なる分野や技術段階の間での連携や流動性が重要で、このような広がりに跨(また)がるような基礎研究や人材育成が重要である。これにより、オープンイノベーションをリードしていく人材の育成が期待される。例えば、異分野の若手研究者同士の協力関係を加速するための中規模の研究費の枠組みや、各々の研究費を合わせて大きな研究開発に展開できるようなフレキシブルな枠組み、異分野の一流のシニア研究者が若手研究者に対して支援・アドバイスを行う体制などの工夫により、一層の分野を超えた連携や流動性が期待できる。
 異なる分野や技術段階の連携によりプロトタイプを示す進め方は、可能性を明確化し異分野融合を促進するためにも有効である。また、国際競争の観点からも、産業界を含む大きな体制での研究開発が必要であり、その中で、人材育成、知的財産確保、標準化も進めることが重要である。これらには、ネットワーク型の研究拠点の形成による推進が適切ではないか。

イ.量子計測・センサ(物理系)
 量子計測・センサは、半導体・ナノテク分野で培われた材料作製技術、デバイス開発、光量子物理学、量子ビーム利用など、我が国の強みが多面的に発揮できる上、医療からエネルギー・製造業まで非常に波及効果が広い。突出した点と点をつないで競争力を生み出す組合せがほぼ無限にあって、若手研究者の多様なアイデアを基に新しい領域を拓くような、ハイブリッド型の研究推進による競争力強化が強く望まれる典型。
 比較的小規模な研究費から立ち上げが可能な点でも、若手研究者が斬新なアイデアを出せる分野であり、若手研究者をどのように幅広く支援、育成し、活躍、独立させるかを考える良い領域である。
 量子計測・センサの開発には、理論、基礎物理、材料、物性、デバイス、計測、分析化学、生命科学など、異なる分野や技術段階の間での連携や流動性が重要で、このような広がりに跨がるような基礎研究や人材育成が重要。これにより、オープンイノベーションをリードしていく人材の育成が期待される。例えば、異分野の若手研究者同士の協力関係を加速するための中規模の研究費の枠組みや、各々の研究費を合わせて大きな研究開発に展開できるようなフレキシブルな枠組み、異分野の一流のシニア研究者が若手研究者に対して支援・アドバイスを行う体制などの工夫により、一層の分野を超えた連携や流動性が期待できる。
 異なる分野や技術段階の連携によりプロトタイプを示す進め方は、可能性を明確化し異分野融合を促進するためにも有効。国際競争の観点からも、産業界を含む大きな体制での研究開発が必要であり、その中で、人材育成、知的財産確保、標準化も進めることが重要。これには、ネットワーク型の研究拠点の形成による推進が適切ではないか。なお、出口としてのアプリケーションが明確に決まっている場合には、ノウハウ等の成果情報の取扱いについて留意が必要である。
 光格子時計では、地道で継続的な研究によって、当初想定しなかった応用と、将来の経済・社会にインパクトを及ぼす可能性が見いだされている。今後の量子科学技術の推進に当たっての示唆とするとともに、光格子時計の研究進展や展開の注視及び時宜に応じた推進を図ることが重要と考えられる。

3:最先端フォトニクス・レーザー
(量子科学技術委員会にて今後議論予定)

(共通的事項)
 欧州では研究者が国境なく往来して共同研究を実施しており、一国当たりの研究者数は限られていても、欧州全体として見ると多くの研究者が存在している。我が国の研究環境を改善することで、欧米との研究協力や共同研究を促進し、相乗的に技術を向上させるような国際的な対応も重要ではないか。また近年、中国やシンガポールといったアジアの研究グループも急速に力を付けてきている。アジアの研究グループとの積極的な研究協力や共同研究を含む研究ネットワークの構築についても考える時期に来ているのではないか。


2.研究開発の企画・推進・評価を行う上で留意すべき推進方策

(1)人材育成
3:量子科学技術分野
 先端基盤部会量子科学技術委員会「議論の骨子案(※)」を踏まえ実施する。特に、「議論の骨子案」の「推進方策の検討にあたって考慮すべき点」(上記「(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組」に記載)における関連部分について留意する。
(※)量子科学委員会で報告書が取りまとめられた段階で、報告書の名称に変更。

(2)オープンサイエンスの推進
3:量子科学技術分野
 先端基盤部会量子科学技術委員会「議論の骨子案(※)」を踏まえ実施する。特に、「議論の骨子案」の「推進方策の検討にあたって考慮すべき点」(上記「(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組」に記載)における関連部分について留意する。
(※)量子科学委員会で報告書が取りまとめられた段階で、報告書の名称に変更。

(3)オープンイノベーション(産学連携)の推進
3:量子科学技術分野
 先端基盤部会量子科学技術委員会「議論の骨子案(※)」を踏まえ実施する。特に、「議論の骨子案」の「推進方策の検討にあたって考慮すべき点」(上記「(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組」に記載)における関連部分について留意する。
(※)量子科学委員会で報告書が取りまとめられた段階で、報告書の名称に変更。

(4)知的財産・標準化戦略
3:量子科学技術分野
 先端基盤部会量子科学技術委員会「議論の骨子案(※)」を踏まえ実施する。特に、「議論の骨子案」の「推進方策の検討にあたって考慮すべき点」(上記「(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組」に記載)における関連部分について留意する。
(※)量子科学委員会で報告書が取りまとめられた段階で、報告書の名称に変更。

(5)社会との関係深化
3:量子科学技術分野
 先端基盤部会量子科学技術委員会「議論の骨子案(※)」を踏まえ実施する。特に、「議論の骨子案」の「推進方策の検討にあたって考慮すべき点」(上記「(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組」に記載)における関連部分について留意する。
(※)量子科学委員会で報告書が取りまとめられた段階で、報告書の名称に変更。

お問合せ先

科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室

(科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室)