研究開発計画の策定に当たって

 我が国の科学技術の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本方針を示す第5期科学技術基本計画(以下「第5期基本計画」という。)が、平成28年1月22日に閣議決定された。
 研究計画・評価分科会では、主に第5期基本計画の第2章及び第3章に関する研究開発課題に対応するため、今後10年程度を見通し、おおむね5年程度を計画の対象期間として、本分科会下の各委員会における議論を中心に、今後実施すべき「重点的に実施すべき研究開発の取組」及び「推進方策」について、委員会の枠を超えて検討し、「研究開発計画」を取りまとめることとした。

 また、文部科学省では、第5期基本計画に掲げられた諸課題に対応するため、文部科学省政策評価基本計画において定められる「文部科学省の使命と政策目標」(以下「政策評価体系」という。)の見直しを行った。見直しに当たっては、1:第5期基本計画の政策・施策体系、2:文部科学省における政策評価体系、3:科学技術・学術審議会等が策定・実施する計画・評価体系を可能な限り整合させることで、効果的なフォローアップの実施が可能となるようにされたところである。このことを踏まえ、本計画は、政策評価の体系に合わせた構成とすることとした。

 なお、第5期基本計画では、政策の4つの柱として、世界に先駆けた「超スマート社会」(Society5.0)の実現を目指した1:未来の産業創造と社会変革、2:経済・社会的な課題への対応、3:基盤的な力の強化、4:人材、知、資金の好循環システムの構築が示されている。超スマート社会の実現には、人材育成、オープンサイエンス、オープンイノベーション等のこれまで以上の推進が欠かせず、組織やセクター、さらには国境を越えて、人材、知識・技術、資金を循環させ、多様なステークホルダー間で対話と協働により共創していくことが重要である。
 研究計画・評価分科会では、本研究開発計画の策定に当たって、研究開発に携わるすべての個人・組織は科学技術と社会との関係がこれまで以上に重要性を増していることを踏まえ、研究開発は、社会からの信頼の上に成り立っており、社会との価値観の共創が重要であることを認識しつつ研究開発を推進することに留意することとした。具体的には、1:社会との関係深化の前提となる研究公正(論文作成の過程のみならず、研究に対する信頼性の醸成の観点から)を確保した上で、2:当該研究開発がどのような社会変化をもたらすのか、またどのような課題を伴うことがあるのかについて自ら考えるとともに、3:社会・国民から研究開発や政策立案へのインプットないしフィードバックを活(い)かすための方法論や、人文社会科学の役割・連携の強化、4:基礎研究の重要性についての認識や、研究開発の将来成果に対する期待や懸念について、適切に社会と共有すること、5:研究開発に携わるすべての者が、人文社会科学分野との連携などにより、国民と対話・協働するために必要なコミュニケーション能力の向上を図ること、その上で、研究開発と人文社会科学、ステークホルダー等との橋渡し人材(※)等の育成と活用を行うことなどである。なお、これらの留意点を踏まえ、各計画を策定しているところであるが、経済・社会の状況は日々刻々と変化を続けており、その変化に適宜対応することが必要である。
 ※ここでは、研究者、国民、メディア、産業界、政策形成者等の多様なステークホルダーを対話・協働を通して結び付けるとともに、人文社会学的視点も踏まえた研究開発の実施や成果普及方策の創出を促す能力のある人材を指す。

 一方、研究開発の評価については、第5期基本計画の策定を受け、国の研究開発評価について基本的な方針を定めた「国の研究評価に関する大綱的指針」が平成28年12月に改定された。本指針では、政策立案者や推進する主体等の行動及びその結果について評価を行う「研究開発プログラムの評価」のさらなる推進等が示された。研究計画・評価分科会における評価は、これまで当分科会所管の個別の研究開発課題の評価にとどめていたが、今後、研究開発計画に掲げた中目標単位で研究開発プログラムとしての評価も実施することとし、新たに第6章として研究計画・評価分科会における評価の在り方を盛り込むこととした。

 本計画は、政策評価とともに、「企画立案(Plan)」「実施(Do)」「評価(Check)」「反映(Action)」を主要な要素とする政策のマネジメントサイクルが効果的に回り、第5期基本計画が掲げる科学技術イノベーション及び社会との関係深化が効果的に進むよう、必要に応じて適宜見直されるべきものである。

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科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室

(科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室)