量子科学技術委員会(第9期~)(第34回) 議事録

1.日時

令和7年2月14日(金曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省17階17F 1会議室及びオンライン開催(Webex)

3.議題

  1. 量子技術の研究開発に関する最新動向について
  2. 量子分野の人材育成について(サイエンススクール)
  3. 令和7年度政府予算案の量子技術関連予算について
  4. その他

4.出席者

委員

大森主査、山田真治主査代理、青木委員、岩井委員、川上委員、小杉委員、小林委員、水落委員、山田真希子委員
【外部有識者】JST/CRDS 鈴井氏、眞子氏

文部科学省

田渕量子研究推進室長、室長補佐、企画調整係長、機構・総括係員

5.議事録

【川井係員】 それでは、定刻となりましたので、第34回量子科学技術委員会を開催いたします。本委員会の事務局の文部科学省量子研究推進室でございます。
 本日はお忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。初めに、量子研究推進室長の田渕より一言御挨拶申し上げます。よろしくお願いします。
【田渕室長】 量子研究推進室長の田渕でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 昨年の7月の末に着任いたしまして、それから私としては初めての量子科学技術委員会なんですけれども、また、ぜひ先生方にいろいろと御指導いただきながら量子政策進めていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 もう私が申し上げるまでもないことなんですけれども、非常に重要な委員会として、これまでも大きな役割を果たしてきていただいております。私たちが科学技術・イノベーション基本計画で量子が重要な分野として位置づけられて、その中でどういう政策をつくっていくかということで、調査・分析であるとか、あるいは政策の検討であるとか、そういった大事な役割を担っていただいている委員会として、これまでもお力添えをいただいているということに本当に心から感謝を申し上げます。
 量子技術の重要性、まだ世の中がそれほど量子には関心が高くはなかった頃、平成29年に、この委員会で「量子科学技術の新たな推進方策について」を取りまとめていただいて、当時の政府としては初めての研究開発の戦略を策定いただきました。そこから8年がたちまして、今や量子技術は文科省だけではなくて、政府全体で取り組むべき、重点的に取り組むべき戦略分野の一つとして位置づけられておりますし、また、最近では、先日の日米首脳会談におきましても、AIですとか、あるいは半導体、先端半導体と並ぶ重要な協力すべき分野として量子が位置づけられるなど、量子への注目というのはますます高まってきていると思っております。
 そうした中で、その基盤をつくっていただいたのが、この委員会であると認識しておりますし、これからますます量子技術を世の中に役立てていくということを考えたときに、私たち文部科学省が果たすべき役割も大きいと思っておりますので、この委員会にお力添えをお願いしたいこともたくさんございますので、また引き続きの御指導をお願いできればと思っております。
 本日もお忙しい中、お集まりいただきまして、本当にありがとうございます。また、最新の動向を御紹介いただくために、JSTからも鈴井フェローと眞子フェローにお越しいただきまして、本当に御協力ありがとうございます。本日は限られた時間ではございますけれども、今後の量子技術の発展に向けて、意義ある意見交換、議論をさせていただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【川井係員】 ありがとうございます。
 それでは、事務局より本日の配付資料の確認をさせていただきます。対面参加の方はお手元にある資料を、オンライン参加の方は事前にお送りした資料を御確認ください。
 議事次第に記載しておりますとおり、資料1から資料3の3点を配付しております。全ての資料は事前に送付させていただいておりますが、不足等ございましたら、事務局まで御連絡ください。説明の際には画面のほうに共有させていただく予定ですが、対面参加の方は、お手元の資料を御覧ください。
 続いて、オンライン参加の方もいらっしゃいますので、ウェブ会議システムの留意事項について御説明いたします。
 通信を安定させるため、御発言時以外は、原則音声はミュート、マイクオフの状態にしていただきますようお願いいたします。御発言の際は、音声をオンにして、発言の意思を示していただくか、挙手ボタンをお使いください。大森主査に御指名いただき、速記録の都合もございますので、名のってから御発言いただくようにお願いいたします。
 また、会議中、不具合などトラブルが発生した場合は、事前にお知らせしている事務局の電話番号にお願いいたします。
 なお、本日は報道関係者や一般傍聴者による傍聴を認めておりますので、あらかじめ御了承ください。
 また、本日は9名が出席予定となっておりますので、本委員会の定足数、こちらを満たしております。
 本日は畑中委員と早瀬委員、美濃島委員、向山委員の4名が御欠席という御連絡をいただいております。
 また、予定等で途中退席される場合は、お時間になりましたら適宜御退席いただいて問題ございません。
 事務局からは以上でございます。以降の議事進行については、大森主査にお願いいたします。お願いします。
【大森主査】 ありがとうございます。
 大森でございます。皆様、お久しぶりでございます。
 コロナ禍以降、これで6年経つんですかね。6年目で初めての、半分ではありますけれども対面の量子委員会ということでございまして、ずっと亀井さんとかに、早く対面にしてほしい、ほしいとお願いしてきたんですね。やっぱりネットでやるのと対面でやるのとでは、議論の表情を見ながらであるとか、しぐさを見ながらやりますと、議論の深さ、激しさが違ってきますので、今回、コロナ禍以降、初めての対面ということで非常に喜んでおる次第でございます。
 本日の議題は3つございます。まず議題1として、量子技術の研究開発に関する最新動向について、JST/CRDSの鈴井様より御発表いただきます。次に、議題2として、文部科学省より、量子分野の人材育成(サイエンススクール)等について御説明いただきます。続いて、議題3として、文部科学省より、令和7年度政府予算案の量子技術関連予算について御説明いただきます。最後に、議題3までの内容を踏まえて、全体で御議論いただきます。
 それでは、議題1に移ります。量子技術の研究開発に関する最新動向についてです。JST/CRDSの鈴井フェローより御発表いただき、その後、質疑の時間を設けます。
 それでは、御発表をお願いします。
【鈴井フェロー】 御紹介、どうもありがとうございます。JST研究開発戦略センター、CRDSの鈴井と申します。
 本日は、このような場で発表する機会を与えていただき、誠にありがとうございます。量子科学技術に関する最新の研究開発動向の紹介というタイトルで話題提供させていただきます。
 本日の内容でございます。最初に、各国の政策動向について御紹介した後に、2つ目として、研究開発・技術の現状、本日は量子情報処理、量子計測・センシング、量子マテリアルのホットトピックを、それぞれ紹介したいと思います。また、量子マテリアルにつきましては、CRDSが2023年度より社会応用に向けた量子マテリアルの調査活動を行ってまいりましたので、そちらについても簡単に御紹介させていただければと思います。そして、論文動向、まとめという形で進めたいと思います。
 それでは、最初に各国の政策動向について御説明いたします。
 このスライドでは、各国政府の量子技術への投資額の御説明となっております。お手元の資料では、2023年の資料のみお示ししておりますが、こちらプレゼンテーションのスライドショーでは2021年から2022、2023年の推移を示しておりますので、画面のほうを御覧いただければと思います。
 まず2021年ですが、全世界予算が24ビリオンドルでございます。そのうちで中国が10ビリオンドル、その次がドイツの3ビリオンドルとなっております。2022年には、世界では30ビリオンドル、その半分の10ビリオンドルが中国、次いでドイツが3.1ビリオンドルとなっています。そして2023年には、世界では38.6ビリオンドルで、中国が15ビリオンドル、次いでアメリカの3.75ビリオンドル、続いてイギリス4.3ビリオンドルとなっており、中国が引き続きトップを占めておりますが、各国の推移は変わってきている状況でございます。また、2021年から2023年にかけて、全世界予算が24ビリオンドルから38ビリオンドルと、1.5倍に増加している状況でございます。
 こちらのスライドでは研究投資額の対GDP比をお示ししております。黒い棒グラフが各国の量子技術への投資額のUSドル換算の値でございます。一番左の中国に関しましては予測が難しいために、棒グラフではなく、幅を持たせた線グラフを示しています。
 こちらの情報につきましては、本年、2025年1月に発表されたOECDのレポートからの引用でございます。注目していただきたいのは黄色の点で、各国のGDPに対する量子技術への投資額のパーセンテージをプロットしています。
 注目すべきはイギリスと韓国がGDPに対して非常に高い、約0.14%という高い投資がなされております。一方で、日本につきましては0.01%という状況でございます。
 もし、日本が各国に並ぶ対GDP比の0.05%を目指した場合、3,000億円の投資が必要となります。現在の日本政府の投資額が約1,000億円ですので、対GDP比0.05%を目指した場合、さらに2,000億円の投資が必要であるということが、このグラフから読み取れるかと思います。
 それでは、ここから日本とアメリカと中国、それぞれの国内の動きについて御説明いたします。
 日本に関しましては、皆様御存じかと思いますので詳しくはご説明しませんが、2020年の量子技術イノベーション戦略から始まり、2021年のその見直し検討、2022年の量子未来ビジョン、2023年の量子未来産業創出戦略、そして2024年の量子産業の創出・発展に向けた推進方策と、2020年から毎年、様々な戦略が発表されている状況でございます。
 米国に関しましては、National Quantum Initiativeというプログラムが2019年から始まっております。こちらはアメリカの様々な研究機関に対して、量子関係の投資が行われているプログラムでございます。
 こちら、右上のグラフは各分野における投資額の内訳の年間推移、下のグラフは各研究機関の投資額の年間推移でございます。右上のグラフを御覧いただけるとお分かりになるとおり、2022年を頭打ちにして、投資額はほぼ横ばいになっております。
 また、左下に示しましたが、トランプ新大統領が2025年1月に大統領科学技術諮問委員会、通称PCASTを設立しました。この発表の際に、重点項目としてAI、量子コンピューティング、バイオテクノロジーが冒頭に述べられました。トランプ政権に替わって、科学政策に様々な影響が生じているニュースが聞かれますけれども、量子技術に関しては引き続き投資が続くのではないかと考えております。
 また、中国政府に関しましては、なかなか情報が取れない状況でございます。中国国民経済、社会発展、第14次5か年計画が2021年から2025年の期間で行われております。こちらはテクノロジーフロンティア分野における研究として量子情報が注目されております。また国防・軍の近代化・強化におきましても、量子技術といったキーワードが述べられております。また、15次年計画に関しましては、現在、情報が取れていない状況でございます。
 また、量子技術への財政支援に関しましても様々な予測がされておりますが、どの予測に関しましても中国政府が発表している数字と大きく異なっている状況でございます。
 以上が日米中の量子技術に対する動向でございます。
 続きまして、このスライドでは、産業界の最近の動向について御説明いたします。
 2024年8月にQuEra社から、ユーザーや研究者を対象にした調査結果が発表されました。この調査結果は非常に興味深い内容で、こちらのURLから御覧いただけるかと思います。ハードウエアの安定性やスケーラビリティの期待が高い一方で、プログラミングの整備を求める声がたくさん寄せられたというレポートが発表されております。
 また、本年に入りまして、主に量子コンピューターに関するニュースが立て続けに発表されております。
 まず、マイクロソフトからQuantum Readyプログラムという、企業や開発者を対象としたプログラムが発表されまして、量子時代に向けたスキルやソリューションの提供が開始されています。
 また、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが、今年の1月にCESの講演におきまして、量子コンピューターが非常に有用となるまで20年程度かかる可能性があるという言及がありました。こちらは多くのメディアに取り上げられ、この影響で量子コンピューター関連の株価が低下するといった流れも見られました。
 また、Googleのスンダー・ピチャイCEO、こちらは昨日のニュースでございますが、ドバイの世界政府サミットにおきまして、量子コンピューターの実用化は5年から10年先になるという見通しを提示しております。
 このように、今年に入りまして、非常に活発なニュースが飛び交っている状況ですが、2025年は国連が定めた国際量子科学技術年でございます。この2月4日、5日に、パリのユネスコにおきましてオープンセレモニーが開催されております。こちらの様子に関しては、こちらのURLから御覧いただけます。
 また、日本におきましても量子フェスというイベントが開催されます。こちらは本年6月14日、15日に、日本物理学会が主催、応用物理学会が共催、会場が日本科学未来館で行われます。内容に関しましては、量子に関する専門家の講演会、サイエンスコミュニケーターによる量子や物理に関する展示ツアー、そして量子と音楽が融合した演奏会といった魅力的なイベントが予定されています。2025年はクォンタムイヤーということを御承知いただければと思います。
 それでは、ここから研究開発・技術の現状について御説明いたします。
 まず、こちらのスライドでは、2020年、量子科学技術イノベーション戦略が対象とする技術の範囲を俯瞰した図を引用させていただきました。こちらの俯瞰図の中から、本日は量子情報処理、量子計測・センシング、そして量子マテリアルについて、それぞれホットトピックを御紹介させていただきます。
 まず、量子情報処理のホットトピックでございますが、FTQCの実現に向けて、量子誤り訂正、QECの実証実験の成果が2023年に立て続けに発表されております。
 まず、Googleは大規模な量子誤り訂正の実験を行い、量子ビットのスケールを拡大することでエラー率を低減することを示しております。また、IBMは論理量子ビットのエラー率を物理量子ビットよりも低くすることに成功し、誤り訂正の有効性を実証しております。さらに、Harvard、MIT、QuEra社の共同研究で、中性原子を用いた量子誤り訂正の手法を開発し、異なるプラットフォームでも誤り訂正が機能するということを示されております。これらの研究は、FTQCの実現に向けた重要な一歩であるとされます。
 続きまして、量子計測・センシングのホットトピックを2つ御説明いたします。
 まず1つ目は、京都大学の水落先生の研究室からの昨年のプレスリリースから引用させていただきました。極小ダイヤモンド量子センサーで安定的に温度計測を実現したという成果でございます。こちらは爆轟ナノダイヤモンドという、粒径が約11ナノメートルのNVセンターを製造し、温度、感度を計測することに成功しております。
 この成果の画期的な点は、センサーのサイズが11ナノメートルと非常に小さいことです。例えば、細胞の中の細胞内小器官、細胞の中のミトコンドリアや核といった、違う機能を持つ小器官の中に、このセンサーが入って、温度を計ることができるので、例えば、細胞の中の核とミトコンドリアの温度がどのように違うか、どのような場合にどのように変わってくるか、そして、そのためにどのような遺伝子が関与しているか、といった新しい生命科学のパラダイムが見られるというのが非常に重要な成果であると考えております。
 2つ目は、超核偏極MRIプローブを用いた生体内における代謝反応をMRIで直接計測した成果で、東京大学の山東先生とQST量医研を含めたグループの2024年のプレスリリースからの引用でございます。
 こちらはグルタチオンというアミノ酸が3つ連なった、生理的に非常な重要を果たす物質ですが、こちらの超偏極プローブの製造し、急性腎臓障害の疾患を持つモデルマウスに注入して、MRIでイメージングすることで、グルタチオンが代謝される瞬間を捉えることに成功しており、非常に画期的な成果であると考えております。
 ただ、グルタチオンのプローブに関しては半減期が非常に短いので、数十秒程度の代謝反応しか追えないのですが、今後、こちらのグループから長い半減期のプローブの開発も現在進められていると聞いておりますので、こちらが実現すれば、MRIを用いまして、単なる分子の分布画像ではなくて、分子の代謝の過程を可視化することが今後可能になるのではないかと考えております。
 最後に2つの量子マテリアルのホットトピックをご説明します。
 1つ目が、東京大学の関真一郎先生を中心とした研究グループからの成果です。室温で情報の書き込みが可能な交代磁性体、第3の磁性体を発見することに成功しています。
 交代磁性体では上向き下向きと、下向き上向きのスピンで情報を記憶し、かつ強磁性体と同等の手法で情報の読み書きを行うことが可能です。これによりまして、磁気に対する耐性が強いといった特徴を持ちますので、次世代の超高感度、超高速な情報媒体、情報メモリーとしての活用が期待される非常に興味深い材料が発見されたプレスリリースが、今年度、2025年に入りまして行われました。
 2つ目は、東京大学の林田先生と木村先生を中心とした研究グループからの成果です。反強磁性体における新たな光学現象を観測したことに成功した成果です。こちらに関しましては、反強磁性体の新たな新機能を開拓いたしまして、反強磁性体の応用に向けたスピントロニクス分野などの研究発展に大きく貢献することが期待されております。
 以上3つ、量子情報処理、量子計測・センシング、量子マテリアルのホットトピックについて御説明いたしましたが、ここからの3つのスライドを用いまして、CRDSが2023年から取り組んでおります量子マテリアルの社会実装に向けた取り組みに関する調査活動について簡単に御紹介させていただきます。
 まず、量子技術全体像における量子マテリアルの立ち位置について、こちらは2020年にCRDSが発行いたしました戦略プロポーザル「量子2.0」において、量子マテリアルを量子技術の4つの大きな柱として提案させていただきました。
 時を同じくして、2020年の量子技術イノベーション戦略におきましては、量子マテリアルは量子通信・量子暗号、量子情報処理、量子計測・センシングの3つの柱を支える基盤技術として位置づけられ、研究が進められている状況でございます。
 しかしながら、近年の量子マテリアル研究におきまして、幅広い分野に革新を起こす、先ほど御紹介したような新しい材料や概念が出始めているために、量子3本柱の基盤技術にとどまらない、応用に向けた研究開発が必要であるという動機から、CRDSが調査活動を開始しました。
 こちらは量子マテリアル研究の俯瞰図でございます。CRDSの調査チームでは、量子マテリアルを「量子状態を制御することで、新たな量子力学的機能を発現する物質・材料・構造体」と定義しました。そして基盤研究、基礎研究、応用研究にわたって、様々な材料系をこのように俯瞰してマッピングいたしました。そして2023年半ばからチーム活動を行う中で、この赤で示す材料系、トポロジカル量子物質、フォトニクス材料、スピントロニクス材料、二次元層材料に特に注目が集まっていることが分かってまいりました。さらに、この基礎研究と応用研究の間に大きなギャップがあることも分かってまいりました。
 こちらをいかにして社会実装につなげるかということですけれども、現在、先ほど示しました4つの材料系のうちに、エマージングな材料系として、スピンフォトニクス、非エルミート系、モアレ超格子、トポロジカル反強磁性体という新しい量子マテリアルに注目しております。こちらはそれぞれ古典的な材料のスピントロニクス材料、あるいはフォトニクス材料におきまして、新たな物理現象が発見されて、それが社会実装に役に立つのではないかという期待を与えております。そして、こうした物性を、物性研究だけにとどまらず、その先の応用を見据えた研究につなげるために、どうすればいいのか、どのような枠組みをつくればいいのか、どのような研究支援体制を整えればいいのか、ということを現在CRDSの中で調査している状況でございます。
 以上がCRDSが行っている量子マテリアルの調査活動の御紹介でございます。
 続きまして、論文動向でございます。こちらも3つ、量子情報処理、量子計測・センシング、量子マテリアルの3つの論文動向を御紹介いたします。2015年から2022年にかけての動向でございます。
 主要5か国の論文数を比較いたしました。左のグラフは各国における論文の、この分野、量子情報に関する論文の総数でございます。御覧いただくと分かるとおり、中国とアメリカが非常に高い論文数を出しております。
 右のグラフはトップ10%論文割合です。分母が各国の総論文数、分子が各国のトップ10%論文数で割った値でございます。こちらに関しましては、日本は総論文数が少ないにもかかわらず、非常に健闘している状況であるというふうに読み取れます。
 量子計測・センシングにおきましても、同じような傾向です。中国、アメリカが論文数では多いけれども、トップ10%論文割合に関しましては日本が健闘しています。
 量子マテリアルについても同じく、中国、米国の論文数が多いけれども、トップ10%割合に関しては日本が健闘しているという状況でございます。
 以上、まとめます。
 量子科学技術に対して各国政府が多額の研究開発投資を継続しておりますが、他国と比較して日本の投資額の対GDP比は低い状況にございます。量子情報処理の分野では、FTQCの実現に向けて誤り訂正、QECの実証実験が進展している状況でございます。量子計測・センシングの分野では、社会実装に向けた計測技術の高度化が着実に進展されています。量子マテリアルの分野では、新たな材料系が近年になりまして立て続けに発表されて、それが社会実装につながることも期待されております。
 論文に関しましては、総論文数では日米が非常に圧倒的でございますが、トップ10%割合に関しましては、日本は非常に健闘している状況であると言えます。
 私からの話題提供は以上となります。御清聴、どうもありがとうございました。
【大森主査】 ありがとうございました。
 では、ただいまの発表について、御質問、コメント等があれば、お願いいたします。
 小杉委員、どうぞ。
【小杉委員】 小杉です。
 5ページの投資額の図を見て、2つほど簡単な質問あるんですが。これは量子技術に関係なく、科学技術一般に言えるんじゃないかと思うんですけど、その辺の全般の科学技術の投資額に比べて、量子技術は特にひどい状況になっているということなのか、日本の量子技術の投資というのを、全体の科学技術投資の割合から中国と比べたとき、低いのか、というふうな比較を知りたいというのが一つ。
 それから2つ目は、量子技術と言ったときの意味が、多分、各国違うと思いますし、量子マテリアルなんか、昔からやっているところでいろんな材料が出ているんですけど、今回、社会実装という意味で、いろんな応用があるという意味で、量子技術に位置づけているという組替えのところもあると思うんですけど、その辺り、各国の量子技術という意味づけの、この予算の投資額に反映されている意味が多分違うんじゃないかなと。ただこれだけで、日本は非常に投資がないと言うのは、ちょっと違うんじゃないかというところの、ちょっと気になったという、その2点です。
【鈴井フェロー】 ありがとうございます。
 1つ目に関しましては、他の技術と比較してないので、お答えすることができません。
【眞子フェロー】 2つ目に関して、ヨーロッパは、量子マテリアルというものが、そんなに大きなポジションでは入ってないと思いますけれども、ただ、クォンタムテクノロジーの中に、一応、日本でいう4つのものは名前としては入っています。メインはコンピューティングとかセンシング、通信が多いと思いますけれども、それは、日本も特にそれが、量子マテリアルが日本の割合が多いからといって、そこが全体をゆがめてはいないとは思っています。
 クォンタムテクノロジー、量子コンピューティング、特に今回のこの中で、イギリスの割合が非常に高いというのは目立つところだと思っています。コンピューティングとか、そういったところに対して、非常に一生懸命やっているというのが、オランダ、イギリスといったところがやはり目立つなとは思います。
【小杉委員】 国によって、拠点になる組織、研究機関があって、そこにぼんと投資するというスタイルがあると思うんですけど、日本の場合は、そこまでの拠点が、大きな拠点があるわけじゃないので、その辺りが違うんじゃないかなという気がするんですけれども。
【眞子フェロー】 そうです。投資の仕方の問題ですね。それはあるかもしれないです。
【大森主査】 今の件に関して、私もちょっと感じていたんですけれども、実際、私、中性原子の量子コンピューターをやっている人間なんですけれども、その分野の人たちと会って話すことが多いのですが、ヨーロッパであるとか、アメリカであるとか、そのときの肌感と、ここに書いてある投資額というのが、あまり一致しないなという印象がありまして、日本700ミリオンですか。これに対して非常に差があるんですよね、ヨーロッパとかアメリカというのは。だけど実際は個別のプロジェクトの開発予算というのは格段に多いものもあるんですよね、日本というのは。非常に向こうの人が驚くこともあるわけです。
 今、小杉委員が言われたようなこと、それをきっかけにちょっと私も感じたんですけれども、量子技術と言ったときに、いわゆるコアのところありますね。例えば、量子コンピュータであるとか、量子センサであるとか、量子通信の、ハードウエアとか理論、アルゴリズム等を支援する部分と、あと、それからイネーブリング・テクノロジーですね。要するに、量子マテリアルもそうだと思うんですけれども、イネーブリングというのは、要するに、コアの技術の発展を促すような技術を含む周辺領域の技術、レーザーとかも含まれると思います。これは分けて考えたほうがいいような気がするんですよね。データを集めるとき大変になると思うんですけれども、その結果がどうなるかというのが、ちょっと興味がありますね。
 あともう一個は、コアの部分の中にもモダリティがいろいろあるわけですね。まず分野もありますね。先ほど言った量子コンピュータ、量子通信、量子センシング、これを別々に評価できればもっといいと思いますし、あと量子コンピューティングの中でも、超伝導であるとか、イオンであるとか、冷却原子、そういったところを分けてデータを持ってくると、割と話しているような、向こうの人たちと話している肌感と、その乖離が、どこが原因になっているかというのが分かってきて、それが多分、非常にこの資料自体は私も勉強になったんですけれども、最近の動向として、より我々の国際的な視点を強化するような気がするんですよね。
 先ほど小杉委員が言われたように、国名は挙げないですけれども、既に何年か運営しているレーザー開発のプロジェクトを量子のプロジェクトとして読み替えたりとかしているところというのは、やっぱりあるので、海外にですね。日本もあるのかもしれないですけど、そこら辺は慎重に見たほうがいいような気がするんですよ。そういった感想を持ちました。
【鈴井フェロー】 ありがとうございます。
【大森主査】 だけど、すばらしい資料で、ありがとうございます。
 ほかに御質問、コメント等ありましたら。どうぞ、山田委員。
【山田真治主査代理】 2点あります。1点は7ページで、アメリカの例を出しているのですが、22年度か、政府からの投資が増えているというよりは、むしろ減っていると。これが何を意味しているのか。既にこの領域の研究開発が停滞しているのか、それとも民間投資にどんどん移っていっているのかを教えて下さい。また似てますが2点目で21ページや23ページのトップ10%論文の分析がありますが、これも主要国がいずれも下がっています。これは、ここに出ていない国が台頭してきているのか、それとも実用化などを見据えて、だんだんと共著論文を減らしているのか、あるいは論文の執筆自体を減らしているのか、その辺りについて分析があったら教えていただけますか。
【鈴井フェロー】 まず最初のアメリカの投資額につきまして、民間の投資額が上がっていると考えております。
【山田真治主査代理】 やっぱりそういうことですね。
【鈴井フェロー】 論文数に関しまして、どの分野も右肩下がりで下がっています。特にこの主要国以外の国、例えばインドやシンガポールなどのシェアが上がっているというわけではないので、先ほど先生がおっしゃられたように、共著の数が減っているとか、あるいは論文自体が減っているとか、そういった考察になると考えております。
【眞子フェロー】 これは割合なので、全部の国が同じ平均的な質を持つ、全部が10%にそろうべきものだと。やっぱり主要国のほうが、10%割合が高かったということが、割にいろんなところからハイインパクトな論文が出始めたということを意味しているのかもしれないのですけど、全部を比べることは、まだできていません。
【山田真治主査代理】 半導体分野を振り返ると、徐々に民間中心にシフトして、まず論文化自体が減ってくる、民間からの論文を出さなくなり、特許のほうに回していったということがあります・もしかしたら初期は1つの論文に対する共著者がたくさん並んでいるのが、だんだんと減ってきたのか、少し分析されると傾向が見えてくるかなとも思いました。
【眞子フェロー】 ありがとうございます。
【鈴井フェロー】 ありがとうございます。その点、考慮して調査進めたいと思います。ありがとうございます。
【大森主査】 ほかに御質問、御意見ございませんか。
【川井係員】 小林先生。手を挙げています。
【大森主査】 じゃあ、まず小林先生に。小林先生、どうぞ。
【小林委員】 こんにちは。東京大学の小林研介です。
 今日、せっかくの対面の機会で、すごく残念だったんですが、学内会議等の都合でオンラインからの参加となります。大変申し訳ありません。そこに行けなくて残念に思っております。
 まず、今日、資料、非常にすばらしい資料で、勉強になりました。
 18ページの量子マテリアルの辺りでコメントと質問があります。
 私、今、さきがけの物質と情報の量子協奏の総括をしておりまして、この量子マテリアルを量子技術にどう組み込んでいくかという部分は重要なものであると考えております。
 それで、日本は実は伝統的にこの分野、高温超伝導の辺りからもそうですけど、非常に強いんですよね。
 それでお伺いしたいのは、ここに量子マテリアルとして、新たな量子力学的機能を発現するという文言があって、こういうふうに非常に上手にまとめてくださって、すばらしいと思っているんですが、今後、これを本当にどういうふうにして実現していくのかという具体的な方策が非常に重要になると思います。日本はこの分野、強いんですけれども、それは基礎研究のみであって、それを応用に展開していくという部分が弱いというか、日本だけの問題ではないと思いますけれども、それを私、さきがけの量子協奏でも、そういうことをすごく口をすっぱくして言っているんですけれども、具体的にどのような方策によって量子マテリアルで量子力学的な機能を発現し、量子技術に応用していくのかという、そういう部分に関する具体的な方策というのはどの程度御検討され、どういうものがありますでしょうか。すいません。教えていただければと思います。
【鈴井フェロー】 ありがとうございます。まさに我々CRDSのチームでそれを議論しているところでございます。
 量子マテリアルに関しましては、キュリオシティ・ドリブンの研究が多く、新奇の現象が見つかるので、インパクトが高い新しい論文を書くことだけに専念される研究者が多い状況です。しかし、それを実用に向けた研究開発フェーズになった場合に、論文にならない研究に従事する必要が生じます。例えば、地道な古典的なハードウエアのつなぎ合わせなど、応用に向けた技術開発を行う必要があります。そこで、私どもは「目的基礎研究」という言葉を使いまして、純粋基礎研究とは区別して、ある用途を想定して、それに向けた研究を行うべきであると考えています。そのためにはキュリオシティ・ドリブンの研究者だけではなくて、基盤技術や計測技術をやっている人たちとタッグを組んで研究を進める。さらにその目的基礎の研究の枠組みと、活用基盤技術と呼んでいる枠組みが相互連携することで、役に立ちそうな魅力的なデバイスを作り上げて、それを産業界に提示することで、少しでも産業界から量子マテリアルの研究にコミットする人たちを呼び込む。さらには大学の研究室からスタートアップが立ち上がる。こういったシステムを回すことで、現在の量子マテリアルのキュリオシティ・ドリブンの研究を、評価デバイスの作成を通じて、産業界を巻き込んだ体制を進めることができればと、現在考えております。
【小林委員】 どうもありがとうございます。まさにそこがポイントだと思っておりまして、やはり量子技術への転換というものが基礎研究者の中にないといけないと思っておりまして、それを私もさきがけで皆さんにお願いしているところです。
 日本は、この量子マテリアルの分野では本当に伝統的に非常に強くて、世界的にもプレゼンスがあって、なので、物すごく大きな可能性があるので、こういうところに注目していただいて、そういうのが量子技術になるよということを示していただけるということは非常に重要なので、引き続きよろしくお願いします。ありがとうございます。
【鈴井フェロー】 ありがとうございます。
【大森主査】 では、岩井委員、どうぞ。
【岩井委員】 今、小林先生がまさしくおっしゃったことに関係しているんですけれども、単なる基礎研究に終わらせないで、どういうふうに展開させていくのかということは、まさしく重要で、ただ、その方法論って、やっぱり皆さん御存じのように相当難しいんですね。
 この文脈は、実は25年ぐらい前に経産省の産総研で同じような議論が行われています。基礎研究と応用研究の間に「死の谷」というものがあって、ここは論文が出なくて、研究者にとっては非常につらい。そこをやろうというキャッチフレーズがあったんですけれども、難しいんですね、やっぱり。若い研究者のキャリアを棒に振らせる可能性もあるので。
 この問題に明確な答えはないと思うんですが、ただ、外国の研究機関でどうやっているかを見ると、結果として、そんなに悪くない。量子マテリアル、量子物質の研究が、計測技術やデバイス開発の研究と戦略的に結び付けられている。日本の強みは、物質開拓とか物質開発が伝統的に非常に強い。一方で、計測技術も、それはそれで日本は強いんですけれども、計測技術と材料開発、開拓が、割と別予算、別プロジェクトで動いていて、別の枠組みで動いちゃっている。個人の、研究者個人のネットワークを使って、それはうまくやっているんだけど、それをもうちょっと組織的に国のほうでサポートすれば、そこはもっと伸びるんじゃないかというのが、現場にいて実感として感じるんですね。それはなかなか難しい問題だと思うんですけれども、もう少しそこに注力をされてもいいんではないか。
 外国の研究機関では、そこを非常に効果的にやっているので、場合によっては、日本の材料開発とか日本の光源開発をうまく向こうに取り込まれてしまっている場合もあるわけです。国内でやるのが基礎研究として、必ずしもいいかどうかは別問題ですけれども、それは日本の材料開発と日本の光源開発とか装置開発によって、やったってできるようなこともあるんですね。それは国として、それをうまく使わないのは国益に反するという面もあるので、そこにもう少しだけリソースを割いても、いいんじゃないかなというのはちょっと感じました。
 基本的には小林先生がおっしゃっているとおりで、例えば、さきがけでも、CRESTでも、各JSTプロジェクト領域総括の裁量でそういうことをやってらっしゃるんですけれども、もう少し大所高所から規模の大きい形でやってもいいのかなというのは外国の研究の動向を見ていても思います。
 もう一つ、一番初めに小杉先生とか大森先生がおっしゃっていたように、この鈴井フェローの資料は私も大変勉強になりました。その中で、海外との予算の量子技術の定義の仕方が違うというのは多分そのとおりだと思うので、それはちゃんと調べていただく必要があると思います。それを踏まえても、日本よりも大きな予算を使っている国は確かにあると思います。そういう中で、まさに大森先生がおっしゃったように、戦略ってあるわけですよね。どれだけでも予算使えるわけじゃないから、その中でどこに集中をするのか、あるいはどこに差別化をするのかということがとても大事だと思います。今の日本の研究の動向から考えて、どういうところに注力したらいいかとかという戦略は、どこでどういうふうにこれから立てていかれるのかというのをお聞きしたいんですけれども。
【鈴井フェロー】 まず1つ目のコメントに関しまして、私どものチームでは一気通貫の研究体制と呼んでいます。物性の理解から計測、そして評価デバイスの作成までを一気通貫にした研究体制を構築することが非常に重要であると考えております。そのためには大型の研究プロジェクトというものがないといけない。どこかに拠点を作り、予算をつけて、その中に行けば一気通貫の量子マテリアルの研究ができるという体制が必要であると考えております。
 2つ目に関しましては、現在の日本におきましては、御存じのとおり量子技術の3本柱である量子暗号・通信、量子情報処理、量子計測・センシングに非常に予算が投資されておりまして、量子マテリアルに関しましては、大きな予算がついていないという状況でございます。御質問は、それをどう変えればいいかということですか。
【岩井委員】 予算全体をでかくできれば、それにこしたことはないんですけれども、それは大変難しいでしょうから、そうすると、その限られた予算の中で、どこにつけるのかとか、どこにつけないのかという選択は戦略としてしなきゃいけないわけですよね。それはどういうふうに外国と差別化するのかとか、どういうふうにそういう戦略を立てていくのかという、それも難しい話だと思うんですけれども。
【大森主査】 本来、この委員会が一つの機関ですので、ここで議論したことを政府に上げていくとか、多分、各省にそういうところがあるんじゃないですかね。経産省も経産省であるだろうし。やっぱり現場から我々が集約して、それで政府に上げていって議論してもらうと、そういう流れになるような気がしますけれども。
【岩井委員】 とてもそれは重要な話です。
【大森主査】 重要な話ですね。だから、そういう意味で、日本が国際的に開かれていないと、国際的な状況というのが分からないまま決めてしまうので、これは恐ろしいことですね。
 政策決めるときというのは国際的な相場観というのが必要になってきますね。自分だけのロードマップだけじゃなくて、例えば、Harvard、MITは次何やろうとしているかとか、どの程度のレベルにあるかとか、Infleqtionはどうだとか、我々の分野ですけれども、分かってないといけないんですね。そこが一番、これからは大事になってくると思いますね。
 だから、仲よくしなきゃいけないんですよ。競争ももちろんそうですけど、仲よくして、それで、それができるのは、やっぱり研究者なので、我々がそういった交流を通じて、こうしたほうがいいという意見は、ここで議論して上げていくという、そういうのが理想的なんじゃないかと思いますけど。
【岩井委員】 分かりました。
 あともう一つだけ、先ほどお答えになったことで、一気通貫とおっしゃいましたっけ。それはそれでとてもすばらしいと思うんですが、別の見方もあって、外国でよくやっているのは、それぞれの、餅は餅屋ってあるので、それぞれのところに専門分野としている人がテンタティブに集まってプロジェクトをやるみたいなところで、専門家は専門家なんだけど、別の専門家と集まることによって新しいものが生まれるというのを非常に効果的にやっているというのは印象的なので、必ずしも組織をオーガナイズしなくても、そういうのはできるんじゃないか、もっとフレキシブルにやってもいいんじゃないかというのはちょっと感じました。
【鈴井フェロー】 ありがとうございます。
【岩井委員】 もちろん組織をつくってもいいと思うんですけれども。
【鈴井フェロー】 はい。
【岩井委員】 すみません。以上です。
【大森主査】 ありがとうございます。
 ほかにないようでしたら。
【川井係員】 はい。大丈夫です。
【大森主査】 それでは議題2に移ります。量子分野の人材育成について。
 鈴井さん、ありがとうございました。
【鈴井フェロー】 ありがとうございました。
【大森主査】 それでは、議題2に移ります。量子分野の人材育成について、文部科学省より御説明いただきます。
 それでは、御説明お願いします。
【堀係長】 文部科学省量子研究推進室の堀より御説明させていただきます。現在、我々のほうで検討しております新規の量子人材育成事業について御説明いたします。
 先ほど鈴井フェローより、国際動向について一部御紹介がありましたが、日本の国家戦略が発表されたあたりをめどにして、諸外国においても量子技術の国家戦略が相次いで発表されております。
 先ほど大森主査からもお話がありましたとおり、政府としては、仲よく、諸外国と国家連携を進める方針ではありますが、一方で、研究開発の現場においては、国際競争がより激しくなっていくことが予想されます。そのため、国際的な量子研究のコミュニティにおいて、日本の研究者のプレゼンスをいかに維持・向上していくかというのが一つの課題になるかと考えております。
 ここに一つ、米国物理学会の国際会議における招待講演者数の例を示しておりますが、招待講演者数全体における日本人研究者の割合というのは実は減少傾向にあります。全体としては招待講演者数が増えているにもかかわらず、日本人研究者の数は横ばい、むしろちょっと減少している状況にありまして、今後、量子分野の国際的な研究者コミュニティにおいて、我が国の存在感が低下する可能性というのが危惧されるのではないかと考えております。
 そこで、量子分野の次世代研究者をどのように育成していくかという方向性が重要と考えているんですが、一つは世界の研究者とネットワークを形成し、その最先端で活躍する研究者を長期的に増やすことが重要だと考えています。また、釈迦に説法でありますが、量子技術はまだ歴史が浅いので、人材育成というのは、これからの産業の立ち上がりと同時並行で進んでいくべきでありまして、今後が正念場であると考えられます。
 ただ一方で、量子の研究分野というのは多岐にわたりますので、個々の研究機関で全ての分野をカバーするというのはなかなか難しい状況ではあります。そこで、それらを包括的に行う量子サイエンススクールというような事業を支援できないかと考えております。
 具体的に申しますと、量子の様々な分野、量子情報、計測・センシング、通信・ネットワークなどの分野においての幅広い知識を、それぞれの最適な講師を集めて、一挙に体系的かつ効率的に教えることができる、サイエンススクールというものを開催できれば、それが持つ意味というのは非常に大きいと考えております。
 諸外国におきましては既に幾つかの著名なサイエンススクールというのが長年実施されておりまして、例を示させていただきます。日本の研究者も参加されているんですが、一つはこのレズーシにおける物理スクールでありまして、学生や若手研究者が世界のトップ研究者とコミュニティを研究する場として活用されております。
 特徴的なのが、独立の運営組織というものを持っておりまして、そこが国からのファンディングを得て運営されており、専門の施設もあったりする形でやっておりますので、体制が既に整っておりまして、ここによってコミュニティ形成の基盤が向こうの研究者界隈では機能している一つの理由かと考えております。
 その他、御参考になりますが、米国コロラドのAspen Centerですとか、イタリアのEnrico Fermi国際スクールなんかも有名なスクールになりまして、日本人研究者も参加されております。
 一方、日本ではどうかというお話ですが、日本でも長年にわたりまして量子のサイエンススクールが行われております。
 具体的には、左下、少し小さくて申し訳ありませんが、水色の四角の中にあります、幾つか例で示しておりまして、山本喜久先生が指揮されておりましたCREST及びFIRST事業におけるサマースクールですとか、現在も毎年行われていますQ-LEAP・Moon Shot事業でのサマースクール、沖縄のOISTが独自に開催されているOkinawa School of Physicsというのがあります。沖縄のスクールについては、海外からの参加者というのが多数を占める国際スクールとして運営されております。
 長年、こういうスクールというのは実施されてきているんですが、その中でも課題というのが少し浮き彫りになってきております。
 まず、それぞれ、特定のプロジェクト予算で実施されておりますので、毎年、その予算の中に係る異なる機関というのが運営体制として中心になって運用されていることもあって、なかなか運営のノウハウが蓄積されないですとか、また、各機関が個別に事務方を持って対応していますので、事務方の負担が非常に大きいということがあります。、また、個々の機関というもので事務決算規定が違っていたりしますので、毎年ちょっと異なる形でのお金の使い方になってしまっているような状況もありまして、それが学生の参加費等へも影響を与えて、学生の負担も増えていっているような例があるとお聞きしております。
 他方でOISTのサマースクールは独自に動かれているんですが、こちらはOISTの先生の専門に沿った講義ばかりが行われておりますので、幅広い分野という意味合いでは、少し一辺倒になった形になっているということが現状になっております。
 これらを踏まえまして、幾つかの量子の研究者の方々にヒアリングを行ってきましたので、それについて御紹介させていければと思います。
 こちらは内部資料だけになっておりますので、画面を御覧いただければと思いますが、まず1人の先生について御紹介しますと、先生は国際的に若手研究者が活躍することを強く推奨されておりまして、量子に限らないんですが、国際的なスクール、仮で名前をつけますと、ジャパン・サイエンススクールのような仕組みが必要ではないかとおっしゃっておりました。
 日本はずっと遣唐使の時代から海外に人を送って、いろいろなものを取り込んできたんだから、研究の世界でもそうあるべきだというようなお言葉もいただいております。
 また別視点の意見としましては、サイエンススクールのような、いろんな分野の方が一堂に会する場所というのは、学生にとっては非常に、研究者を選ぶ場合でも、熱心な先生を探す場にもなるんではないか、また先生のほうからは、学生をスカウティングとは言いませんけど、出会いがあるような場所になるんじゃないかというお話もありまして、他分野の研究者が集まる場というのも、双方の進路面にとっても非常に重要であるということが考えられます。
 この先生は海外の学生さんを持っておられる関係上、もしサイエンススクールが日本語だけで開催されると、海外の学生が参加できないんじゃないかとも懸念もされておりました。
 ほかの例なんですが、まず海外のサマースクールに送り出すというと、日本のサマースクールというのは双方、並行での実施がいいのではないかというような意見がございました。こちらについては、やはり日本語で学べることに対してのメリットというのは非常に大きいと考えておられまして、集中的に理解が進む日本語でやるものと、あとやはり研究者、そして海外とのつながりを持っていくために、海外のサマースクールというのを別枠でそれぞれ動かすべきじゃないかという御意見でありました。
 こちらも有名な先生なんですが、海外のサマースクールに参加された先生たちも、その同世代の出会った研究者の人たちと、今もそれぞれが著名な研究者になられて、そこのつながりが非常に大きな財産になっているというお話でして、間違いなくコミュニケーション形成の場になっているというお話でした。
 他方、この先生の御意見としては、お金がたくさんついている大学の学生というのは参加しやすい状況なんですが、地方の大学の学生にも、ぜひ間口を広げて、その辺を支援するような仕組みがあればいいというお話でした。
 最後にFIRST事業のサマースクールに実際に参加されていた先生のお話なんですが、そこでできた若手、つながりというのは非常に重要であったというお話でした。こちらは今の研究活動にも非常に生かされているというお話でして、やはりコミュニティ形成の場としてはサマースクールというのは非常に活用されたということが言えると思います。
 仮に国際的にやるのであれば、アジアというものを一つの地域として見ることで、そのハブとして、日本が役割を果たせるような形も有意義じゃないかというような御意見もいただいておりました。ですので、これらのヒアリングの御意見をまとめる形で、我々の新事業についての取組の方向性というのを考えてみました。
 まず、目的としましては、繰り返しになりますが、中長期的に世界のトップ研究者コミュニティにおいて存在感を発揮できる我が国の研究者の人材の層の厚みを増すということになります。そのためには、まず量子サイエンススクールを開催しまして、量子コンピューターや通信・ネットワーク、量子計測・センシング、マテリアルなどといった日本全体の量子分野を横断した人的ネットワークの形成プラットフォームを構築できればと考えておりまして、そして中長期的には、国際的なサイエンススクールの開催というのを目指していただけないかと考えております。こうした取組を通じまして、国際学会などで活躍する研究者の育成、ここに資するとともに、将来的に著名な国際会議で議長職を務めるなどのトップ研究者コミュニティ活動を牽引する人材を増やすことができればと考えております。
 具体の取組内容ですが、大きく分けると2本立てになります。まず1つは、諸外国のサマースクールのプログラムへ金銭的支援によって学生を派遣しまして、そこでの得た経験を我々にフィードバックしてもらう形で、派遣と調査というものを行ってもらおうと考えております。それらと並行しまして、主に院生以上を対象とした形で考えておりますが、量子サイエンススクールプログラムの実施というものを検討いただければと考えております。
 その詳細については、先ほど言いましたが院生や若手研究者を対象にして、特定の分野にこだわらない、幅広い分野をカバーした量子サイエンススクールをやっていただく。そして重要なのは運営体制ですね。継続的に実施を行っていく運営体制の構築というのをぜひ行っていただきたく、その中でも研究者の方々に過度な負担が集中しないように、事務的なサポートをする事務局体制というものをしっかり構築していくということを要件に加えられればと考えております。
 一番重要なのは、現在動いている学会やコミュニティというのもありますので、ぜひ、そことの連携は進めていただきまして、日本における量子研究とコミュニティというものを、しっかり進める形にしていただければと考えております。
 説明は、私のほうは以上になりますが、ぜひ、この委員の先生方にお集まりいただいている機会に、こちらに書いてありますようなことをはじめとしまして、また、これ以外についても、ぜひ御意見をいただける場とさせていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。以上になります。
【大森主査】 ありがとうございました。
 では、ただいまの説明について、御質問、コメント等あれば、お願いいたします。
 小林委員、どうぞ。
【小林委員】 小林です。大変ありがとうございます。
 今回の量子サイエンススクールをやっていきましょうということは、私も非常にすばらしい試みだと思います。やはり量子技術は総力戦なので、いろんな研究者間の連携が物すごく重要です。
 私、先ほど申しましたけれども、さきがけの量子協奏というのをやっておりまして、そこでは素粒子理論の人もいれば、AMOの人もいればということになっていて、30人以上いるわけですけれども、ふだんの学会で出会えない人と議論ができるということが物すごく重要だと、彼らは、研究者は言っております。なので、できるだけ幅広い分野の研究者を呼んでいただきたいと。巻き込んで、そして量子技術をつくりましょうという目的で集まるという、そのことが非常に重要だと思います。
 それで、ここでお伺いしたいのは、運営体制が非常に重要だと思うんですよね。量子サイエンススクールをやりましょうといったときに、例えば、私も、もしお手伝いできることがあったらしたいとは思うんですが、運営体制がちゃんとしていないと、自分がどれだけ頑張っても、1回きりになっちゃうんじゃないかと思ったりすると、怖くてなかなか手伝えないんですよね。
 私、量子協奏でドイツの大きな研究プロジェクトと定期的に研究会やろうとしていて、それも非常によいんですけれども、例えば、そういうところを巻き込むということはすごくよいんですが、量子サイエンススクールをやりましょうというときに、長期的なビジョンも一緒に示していただけると、いろんな参加者が、いろんな研究者が安心して参加しやすくなると思います。だから運営体制と長期的な展望とを同時に明確にしていただくことが非常に重要じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
【堀係長】 御意見ありがとうございます。
 我々のほうとしましても、運営体制というのは、ヒアリングにおいても、いろんな先生からお話を伺っておりまして、実際に運営された先生たちは負担が非常に大きかったということで、率直に申しますと、またやりたいかと言われたら、なかなか難しいというお話も多々ある状況であります。なので、今回の事業については、ぜひ実際に教える側の先生たちと運営側の組織というのを分けたような形で、うまくできないかなと感じておりまして、そのため、まだどこの組織というようなところは検討段階であるんですが、しっかり運営に集中して、それを継続的にするような形というのを実施していただきまして、そこに講師や教える側の研究者の人たち、もしくは大学、場合によっては学会など、コミュニティというのに参画いただいて、その形でサイエンススクールというのを実施できればというふうな形にできればと考えております。
【小林委員】 ありがとうございます。やはり1回だけじゃなくて、数回ぐらいやるという見通しを最初に示していただけると、みんな参加しやすくなりますし、研究者も応援というか、すいません。関わりやすくなると思うので、ぜひ御検討よろしくお願いします。ありがとうございます。
【堀係長】 承知しました。ありがとうございました。
【大森主査】 山田委員、どうぞ。
【山田真治主査代理】  どうもありがとうございます。
 量子を少し離れて、例えば、ナノテクやAI分野などの他分野でのグッドプラクティスが探せると思います。制度設計を検討する場合には、できれば日本の中で、そういうグッドプラクティスを大いに参考にしたらいいと思いますが、ありそうでしょうか?
【堀係長】  一応、海外の少し御紹介しましたスクールなんかは、決して量子だけじゃなく、フィジックス全体のもので、民間投資でも、入れ替わり立ち替わり、どんどんいろんなテーマが開催されていたりしていますので、そういうのも参考になるかなと思っております。
 国内においては、まだ調査が進んでいない段階ではあるんですが、親和性のあるような分野もたくさんあると思いますので、そちらについてもいろいろ調査を進めながら、グッドプラクティスになるようなものを調べられたらなというふうには、参考にできればなと考えております。
【山田真治主査代理】  海外のは刺激にはなるんですけど、やっぱり基盤にある制度が違っていたり、お金の出どころが違ったりとか、結構背景が異なるので、日本の中で構想を動かそうとしているのであれば、国内事例がやはり大事かなと思います。
【堀係長】  承知しました。今後調査を進めてまいります。
【眞子フェロー】  日本だと夏だけですけど、若手が、物性、夏の学校。
【山田真治主査代理】 阪大とかやってませんでしたっけ。
【眞子フェロー】 もう60年ぐらい続いています。あれは年中やっているわけではないですけれども、ああいったものはモデルにはならないですか。
【亀井補佐】 物性夏の学校はおっしゃるとおりで、ドクターの学生や修士の学生がサークルとは言わないんですけれども、皆さんが後輩に回しながらやっていると聞いています。今回の取組は、もう少し安定して運営できるような体制を整備したいのと、行く行くは海外の講師だったり海外の学生といったところまでを見据えるのがネットワーキングの意味するところです。そこまでは、物性夏の学校のスケールとは違うと思っています。国としては、もう少し高いところを目指してスタートしたいなと思っているところでした。
【大森主査】 小杉委員、どうぞ。
【小杉委員】 まず、2つほどあるんですけど、最初簡単な2ページの日本の研究者の招待講演者が低下しているというんですけど、私の感覚は、減っている理由は、アジア全体で考えると、中国、韓国、台湾とかの人の招待講演者があまり目立たないので、アジアとして考えた場合に、日本は少し抑えめにして、そちらを増やすというようなことを、私が関係している放射光とか顕微鏡とか、そういうところでは、そういう配慮があって、少し減っているように見えるというのがあるというところだけ、ちょっとコメントです。決して悪くはないと思うんですけど。
【大森主査】 そうですね。
 水落委員、どうぞ。
【小杉委員】 それから、もう一つ。
【大森主査】 失礼。ちょっと待ってください、水落委員。
【小杉委員】 もう一つ、量子ビーム関係では、もう四、五十年たってきて、最初の頃どうだったかとか思い返すと、最初、施設ができる前は、1回きりの、いろいろスクールをちょこちょこやっていたと、勉強会ですね。そのうち施設が、拠点ができると、拠点が自分の拠点をいかに育てるかという、あるいはいかに開発するかという、開発的な、技術開発という観点に重きがあったようなスクールなり研究会を、拠点が大きくなっていく過程では、そういうのがありました。開発がある程度落ち着いてくると、今度は利用者、いかに使うかという方向のスクールが各施設でやるようになって、日本全体、幾つか施設があるので、学会つくりましょうってなって、学会が主導して、利用の観点でスクールをやるようになって、それで日本からアジアに展開して、オセアニアに展開して、今、アジア、オセアニアで、各国順繰りにそういうスクールをやるというところまで現在、来ているんですけど、実は大きな問題があって、施設がさらに成長するためには、技術開発を絶えずやっていかないといけないですよね。そういうところの魅力というか、人が集まる体制が今できなくなって、次の世代に技術開発を渡すところで、利用者に重きがあり過ぎて、利用のほうが楽なんですよ。使っていればいい。別に日本でできなきゃ、海外行って使えばいい。別に日本でなくてもいい。でも、実際、日本で開発をしっかりやらないといけない。こういう四、五十年の長いスパンで見ると、スクールといっても、いろんなフェーズがある。四、五十年たった今、量子ビーム関係では、施設側の技術開発の人材が非常に問題になっています。今、量子技術のほうでは、まだ開発の人材をいかに育てて進んでいくかというところだと思うんですけど、量子ビームでの中長期的問題を少し学ばれて、スクールを設計されるといいかなというコメントです。
【大森主査】  ありがとうございました。
 水落委員、どうぞ。
【水落委員】  ありがとうございます。
 このたび、私もそちらにお伺いしたかったんですけれども、学内の行事があって、参加できなくて申し訳ありませんでした。
【大森主査】 次どうぞ。ぜひ。
【水落委員】 よろしいですか。
【大森主査】 はい、どうぞ。
【水落委員】 サイエンススクールについて、私もここにありました山本先生のサマースクールに何度か参加させていただいて、非常にすばらしいもので、ぜひ続けていただきたいなと思うんですけれども、最後の御意見いただきたい点と書かれているところに関して、ちょっと述べさせていただきますと、山本先生の人脈がすばらしくて、なかなか日本に来ていただけないようなルーキン先生とか来られて非常に刺激的だったということで、取組としては、既に人脈をお持ちの先生方に依頼して、ぜひすばらしい先生方を呼んでいただきたいなと思ったというところと、あとセンシングとかマテリアルもそうかもしれませんけど、裾野が広がってきていると。例えば、産業応用とか社会実装なんかを見据えた場合、大学の、例えば、学部とかのレベルでは、必ずしも量子ではなかったようなところの方でも、ぜひ学んでいただけるような、間口を広げていただくような観点もあってもいいのかなと思いましたということで、基礎的な内容とか講義内容というところはございますけれども、そういうような点もあって、間口を広げて、エンジニアリングとか、そういう将来的にさらに発展していくような方向づけでの観点もあるといいのかなと思いました。
 以上です。
【大森主査】 ありがとうございます。
 ほかに御質問、コメント。
【岩井委員】 いいですか。
【大森主査】 どうぞ。岩井委員、どうぞ。
【岩井委員】 一番初めに、小杉先生のほうからも御指摘ありましたけど、APSのマーチミーティングの招待講演者の数の推移で、これを見ていて思ったのは、2014年から19年にかけて、各国で急激に落ちているんですが、その後、割とほかの国は戻っているんですが、日本は戻っていないというのが大きな問題かと思います。恐らくこれはコロナのときに対策が日本はちょっとほかの国と違ったというのがあって、割と閉めたんですよね。
 それで学振のPDとかで、本来、外国から入ってくる人が来なかったりとか、こっちからも行けなかったりとかというのが結構効いてそのダメージが結構残っているとおもいます。御指摘のように、こういう海外の先生と日本の若手研究者の交流の方策を積極的に立てるというのは、とても重要だと思います。それはそれで全く賛成なんですけれども、それとは別に、やはりこうしたはっきりした、こういうことやったから、こういう結果が出ているということは、しっかり分析を因果関係ははっきりさせておいた方が良いと思います。もちろんそのときは安全面というのがあったのでしようがなかったと思うんですけれども、外国からわざわざ日本に来てくれるという人を断らなきゃいけない。
 そのときの政府の判断として、それはしようがないにしても、そういう判断すると、こういうことが起き、しかも、それはそのときだけじゃなくて、何年にもわたってダメージが残るかもしれないだということは、今後の知恵として残した上で、こういう対策を取られるのがいいんじゃないかなと思いました。
 以上です。
【大森主査】  ありがとうございました。
 ほかにコメント、質問等。
 じゃあ、私から一言。確かに量子技術、もうちょっと時間かかりますから、量子人材育成、10年、20年スパンになると非常に重要なんですけれども、サイエンススクール、非常にいいと思います。絶対にやるべきだと思うんですけれども、サイエンススクールの場合、たくさんの学生が集まって交流するということで、どうしても広く浅く的な側面というのが出てきてしまうんですね。
 これと並行して、これはちょっと難しいんですけれども、欧米の学生たちがやっているように、大学院生のインターンシップですね。ああいったものが可能になるといいなと思っています。例えば、アメリカであるとかヨーロッパであるとかの先進的な研究室に半年ぐらい滞在して一緒に研究開発活動を行い、そして、そこの優秀な学生と知り合いになって、生涯の友人になるというようなやり方も非常に有効ではないかと思う次第で、実際、アメリカとかヨーロッパの場合、それでちゃんとクレジットを取れるようなシステムできてますので、簡単じゃないですけれども、文科省の場合、サイエンスもやっているし教育もやられているので、両方守備範囲ですから、ぜひ、そういった制度で日本に根付かせられるような方向で御検討いただけると、非常に有効なんじゃないかなと。
 うちもアメリカとかヨーロッパからどんどん来るんですけど、毎年、我々、日本の学生にとっても非常にいいし、それを逆側でやるというのも、また感謝されていいのかなという気もしますので、ぜひ御検討いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 どうぞ、山田委員。
【山田真治主査代理】 既にサイエンススクールはすごくいいとおっしゃっていただいているのでコメント不要なんですけども、ビジネススクールなんかの、例えば、1か月とか2か月のコースとかに送っていただくと、そこで学んだこともすごく良い財産になるんですけども、それよりもっと大きなのは、ずっと何十年も続く、そこでできたつながりなんですよね。そういう意味では、どれぐらいの期間が適当かをまさに問われていますけども、ここで同じ釜の飯を食ってというのは本当に貴重な、民間に散ろうが、アカデミックに散ろうが、関係性はずっと残るので、良いと思います
【大森主査】 けんかも含めてですね。
【山田真治主査代理】 はい。
 これはぜひ実現していただけたらと思っています。よろしくお願いします。
【大森主査】 ありがとうございます。
 川上委員、どうぞ。
【川上委員】 申し訳ございません。本当はそちらに伺う予定にして、それで提出していたんですけれども、1時から別の会議がそちらに入りまして、申し訳ございません。
 サマースクールの話なんですけれども、中長期的には国際的なものを日本でも開催するという文面を入れていただいて、非常にうれしかったというか、その最初の米国大学の教授の先生のコメントでおっしゃっていた、日本だけで間に合うというのは勘違いであるとか、国際的なネットワークから取り残されているという感覚を割と国内のほかの研究者と話しても共有しづらくて、どうしても国内で終わってしまうスクールの方向に流れてしまうということがあるので、すぐには無理だと思うんですけど、いつか日本でも国際的なサマースクールができればいいなと思いました。
 すみません。以上です。ありがとうございます。
【大森主査】 ありがとうございます。おっしゃるとおりですね。日本の人たちが思っている以上に、日本は海外とコネクトしてないというのは私も痛感しています。ありがとうございました。
 では、大体時間になりましたので、続いて議題3に移ります。令和7年度政府予算案の量子技術関連予算について、文部科学省より御説明いただきます。それでは、御説明をお願いします。
【川井係員】 文部科学省量子研究推進室でございます。令和7年度の政府予算案のうち、量子技術に関連する予算案について御説明いたします。
 ちょっとこのスライド、ビジーとなっておりますけれども、政府予算、政府全体の予算について御説明いたします。
 政府全体の予算につきましては、毎年、内閣府のほうでまとめて、こちらの一覧表を作って計上しております。
 主な取組につきましては、内閣府、総務省、文科省、経産省において実施しておりますが、この中には国立研究開発法人の運営費交付金の内数や基金などがございますので、厳密に量子技術に係る予算のみを切り出してくるということはできませんので、推定額、推計額となっておりますが、令和6年度の補正予算として約635億円、令和7年度の当初予算案としては約361億円を計上していると推計しております。
 2ページ目となりますが、こちらは文部科学省の施策のみを抜粋した予算案の一覧となっております。
 令和7年度の予算案としては約284億円、令和6年度の補正予算は約102億円と推計しております。内数として計上している部分というのが、文部科学省の施策のみでも多いというふうになっておるんですけれども、文科省全体としては、令和6年度の予算、当初予算に比べて約10億円程度増加していると推計しております。
 続きまして、3ページ目となります。こちら量研室のほうで担当しておりますQ-LEAP事業でございます。
 令和7年度の予算案としては、令和6年度と同額の45億円ということになっております。皆様、御存じのところかと思いますけれども、Q-LEAP事業につきましては、3つの技術領域と人材育成の領域に分かれておりまして、今年度は事業が開始して7年目ということになっております。各領域で着実に成果を上げていただいているものと考えております。
 スライドにはないですけれども、Q-LEAPの成果といたしましては、量子情報処理では、2023年度に国産量子コンピューターの実機が稼働したということ。また、令和2年度に採択して開始した事業である量子AIフラッグシップのほうから令和3年度に大阪大学発ベンチャーとして設立された、量子コンピューターのミドルウエアの開発や販売を担うQuELという会社が、令和6年の8月に大学発ベンチャー表彰において文部科学大臣賞を受賞するなど、優れた成果が創出されていると考えております。
 最後、4ページ目となります。4ページ目は、Q-LEAPの予算の推移について示しております。
 令和7年度につきましては、Q-LEAP事業が開始して8年目ということになります。グラフでお示ししておりますとおり、これまで予算については継続して大体増額ということになっております。こちらにつきましては、世界的に量子に対する期待というのが高まっていることが反映されて、この継続的な増加につながっているということを考えております。
 政府といたしましては、令和2年の量子技術イノベーション戦略を皮切りに、令和4年、令和5年に3つの戦略を策定してきましたけれども、昨年、2024年の4月に、その3戦略を補完するものとして、量子産業の創出・発展に向けた推進方策というものを策定いたしました。引き続き、研究者の方々や産業界の皆様とコミュニケーションを取っていきながら取組を進めていければと考えております。
 また、Q-LEAP事業につきましては、来年度8年目になっておりますので、8年目のステージゲートというものがございます。TRL6を目指している事業でございますので、本事業が量子技術の社会実装につながるよう、研究者の方々、産業界の方々と一緒に、引き続き頑張っていきたいと考えております。
 以上となります。
【大森主査】 ありがとうございました。
 ただいまの説明について、御質問はおありでしょうか。
 特におありでないようでしたら、最後に本日のこれまでの議題について、改めて御議論いただければと思います。今期の量子科学技術委員会については本日が節目ということになりますので、今期の委員会を通じてのコメント等でも結構でございます。
 よろしいでしょうか。非常に活発に議論がありましたので。
 それでは、ありがとうございました。
 以上で本日予定していた議事は全て終了いたしました。事務局から連絡事項などあれば、お願いいたします。
【田渕室長】 改めまして、量研室長の田渕でございます。
 本日は御議論ありがとうございました。本日の開催をもちまして、量子委員会の第12期が終了となります。本日、それから本日に限らず、これまでの建設的な御議論に本当に心から感謝申し上げます。
 先生方からいただいてまいりました御意見、これをしっかりと政策に、私たちのできる限り反映をしてまいりましたし、これからも反映していきたいと思っておりますので、また、この委員会の場も含めて、様々な場で先生方の御知見をいただきながら、お力添えをいただきながら、政策を共につくっていければと思っておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。本日はお忙しい中、お時間をいただきまして、ありがとうございました。
 あとはちょっと事務連絡がございますので、事務局より御連絡申し上げます。
【川井係員】 ありがとうございました。
 最後に事務局から御連絡となりますけれども、議事録につきましては、議事録の案ができ次第、皆様にメールにて御確認をいただければと思っております。御確認をいただいた後、文科省のホームページにて、議事録については公開をさせていただきます。
 事務局からは以上になります。
【大森主査】 本日は長時間にわたる御議論ありがとうございました。
 実は、私、審議会委員の10年ルールというのがございまして、今日が最後でございます。この量子委員会の発足当時より主査代理、そして主査として10年を無事に完走できまして、ほっとしております。
【山田真治主査代理】 おめでとうございます。
【大森主査】 ありがとうございます。
 これまでの歴代の委員の皆様、そして発足当時の工藤室長、上田室長から、現室長の田渕室長に至る歴代の室長の皆様、並びに量研室の皆様の御支援に心より感謝いたします。
 私ごとで恐縮ではございますが、今から13年前、2012年にドイツよりフンボルト研究賞というのをいただきまして、この賞をもらうと、ドイツの大学のどれかに、ホストつきで、向こうのコミュニティの一員となって研究をするという機会を得ることができます。私の場合はハイデルベルグ大を拠点として、EUのコミュニティの一員として迎え入れられたわけであります。
 向こうのコミュニティに入りますと、いろいろなことが聞こえてきます。日本でメール等では聞こえてこないことが、いろいろ秘密裏に飲み会の席等で聞こえてきます。
 当時は2012年で一番話題になっていましたのが、どうもイギリスがフラッグシップを立ち上げるらしい、量子のフラッグシップを立ち上げるらしい、この二、三年で立ち上がるそうだと、パブコメなんかもすごく集めていると、EUも何か立ち上げそうだと、どちらも物凄く大規模なものになりそうだということを聞きまして、このままではまずいなと、このままでは日本が取り残されるなと思いまして、こういった情報を当時の工藤室長、上田室長、当時の量研室の皆さんと、2014年、2015年にかけて、そういった件について議論を重ねまして、日本がこの流れに遅れを取ることのないようにとの思いで、力を合わせて量子委員会を立ち上げ、稼働させたわけであります。
 当時の日本は、先ほど申し上げたような英国やEUの急激な進展から大きく取り残されておりましたが、それから10年たった今、何と日本は、先ほども申し上げましたように、世界トップレベルの、驚くような、勝るとも劣らないダイナミックな政策を展開していただいており、当時からは隔世の感があります。その中で、この量子委員会が果たしてきた役割は極めて大きいと感じております。
 今後も量子技術は発展を続けていくわけで、そしてその時々で我々のライバルの動向、いろいろあります。今日も御紹介ありました。QuEraであるとか、IBMであるとか、ああいった動向に一時的に世間がざわつくこともあるかもしれないです。しかしながら、広く社会で実用的な量子技術の実現には、まだまだ時間がかかります。量子コンピューターの場合は最低10年、長ければ20年かかるかもしれない。こういった状況ですので、ぜひ、こういった世間のざわつきに一喜一憂せずに、自分自身のしっかりしたロードマップに沿って、皆さん、研究や開発を進めることが重要だと思いますし、政策側も、そういったスタンスで政策を立案していくことが重要であると考えます。
 とはいえ、走り続けていないと、この世界はあっと言う間にライバルに置いていかれます。そういう意味では、どっしりと構えて全力疾走するという、ある種、矛盾したメンタリティを保つことが非常に必要であると思います。それを実現する上で、この量子委員会が重要な役割を果たし続けるよう心より祈っております。皆様のますますの御活躍を期待しております。10年間、ありがとうございました。(拍手)
 以上でございます。
【田渕室長】 ありがとうございました。
 先生、主査は終わりますけれども、お付き合いは終わりませんので、これからもよろしくお願いします。
【大森主査】 こちらこそよろしくお願いいたします。
【川井係員】 閉会となりますので、御参加いただきました先生方、本当にありがとうございました。

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