量子科学技術委員会(第9期~)(第31回) 議事録

1.日時

令和6年1月16日(火曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

オンライン開催

3.議題

  1. 大強度陽子加速器施設中間評価作業部会の設置に関する書面審議の結果について
  2. 大強度陽子加速器施設の中間評価結果について
  3. 令和6年度政府予算案の量子技術関連予算について
  4. 量子技術の研究開発に関する最新動向について

4.出席者

委員

大森主査、山田真治主査代理、青木委員、川上委員、小杉委員、小林委員、早瀬委員、水落委員、美濃島委員、向山委員、山田真希子委員
【外部有識者】JST/CRDS 嶋田義皓氏

文部科学省

澤田量子研究推進室長、量子研究推進室機構・総括係長

5.議事録

【機構・総括係長】  それでは、定刻になりましたので、第31回量子科学技術委員会を開催いたします。本委員会の事務局を担当させていただきます、文部科学省量子研究推進室です。
 皆様、本日はお忙しい中、御出席いただきありがとうございます。初めに、量子研究推進室長の澤田より一言御挨拶いたします。よろしくお願いします。
【澤田室長】  量子研究推進室長の澤田です。昨年8月に、迫田の後任で着任しております。
 量子の世界は、先生方に言うのも釈迦に説法ですけれども、動きがとても速くて、去年もいろいろなニュースがありました。国内では理研の量子コンピュータ初号機、2号機、3号機と出てきましたし、海外でも、論理量子ビットが実現かという話や、量子コンピュータの大規模化についての話もありました。私が着任してから、既にデンマーク、スイス、フィンランドとのバイ会談、日米韓の大学間連携などがあり、ダボス会議のマージンでも量子が話題になると思いますが、そういった動きが激しいところでございます。文科省としては、量子技術を産業につなげていくことを狙いながら、委員の皆様と科学技術、基礎研究の観点を中心にお話しできればと思っておりますので、よろしくお願いします。
【機構・総括係長】  それでは、事務局のほうから配付資料の確認をさせていただきます。
 本日、議題4つございますけれども、それぞれ資料1から4、参考資料1から3を送付してございます。委員の方で、お手元に資料が届いていないなどございましたら、御連絡をお願いいたします。
今回オンライン開催ということで、オンライン会議の留意事項について御説明させていただきます。
 まず、通信を安定させるため、御発言されるとき以外は、可能な限りマイクをミュートにするようにお願いいたします。御発言される際はミュートを解除して御発言ください。
 また、議事録作成のために速記者を入れておりますので、委員の皆様におかれましては、御発言の際には、まずお名前をおっしゃっていただけると大変助かります。
 会議中、不具合など、トラブルが発生した場合は、委員の方は、事前にお知らせしております事務局の電話番号にお電話をお願いいたします。
 なお、本日は報道関係者、一般傍聴者によるZoomでの傍聴を認めておりますので、御了承ください。
 また、傍聴の方々におかれましては、万が一、審議会の進行の妨げになると判断されるものがございましたら、事務局のほうで退出などをさせていただく可能性がございますので、御了承いただけますと幸いでございます。
 また、本日の委員の御出欠でございます。岩井委員、畑中委員が御欠席です。そのほか、また、御予定等で途中退席される場合は、お時間になりましたら、適宜御退出をお願いいたします。
 事務局からは以上になります。以降の議事進行については、大森主査にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【大森主査】  ありがとうございます。主査の大森でございます。おはようございます。本年もよろしくお願いいたします。
 澤田室長がおっしゃったように、量子技術、ある意味、当初の予想を超えて進展している部分もぽつぽつと出てきております。現在の施策の源流となりましたのは本委員会でございますけれども、今後もこういった流れに柔軟に対応して、政策を先導する気概を持って審議を進めていただきたいと思いますので、よろしく御協力のほど、お願いいたします。
 本日の議事は4つございます。まず議題1として、昨年10月に実施をしました書面審議について御報告いたします。次に議題2として、本委員会の下に設置されている大強度陽子加速器施設中間評価作業部会が取りまとめた評価結果について審議いたします。続いて議題3として、文部科学省より、令和6年度政府予算案のうち、量子技術の関連予算について御説明いただきます。最後に議題4として、JST/CRDSより量子技術の研究開発に関する最新動向について御発表いただきます。
 それでは、議題1に移ります。先般実施しました書面審議について、主査より報告いたします。
 大強度陽子加速器施設J-PARCについて、今年度に中間評価を行うため作業部会を設置する必要がありましたので、令和5年10月に本委員会において書面審議を実施いたしました。
 各委員からは特段御意見ありませんでしたので、資料1のとおり、10月12日付にて同作業部会の設置を決議いたしました。
 報告は以上でございます。
 それでは、議題2に移ります。大強度陽子加速器施設の中間評価結果(案)についてでございます。
 作業部会の事務局である科学技術・学術政策局研究環境課より中間評価結果(案)について御説明いただき、その後、質疑の時間を設けます。
 それでは、御説明をお願いいたします。
【稲田課長】  資料2に基づいて、御説明させていただきます。
 本委員会は、先ほど議題1でございましたように、3つの委員会にまたがる所掌ということで、合同の委員会を設置しまして、議論を行ってきました。
 具体的には、6人の委員の下、11月2日に第1回目の議論を開始し、現地視察も合わせて5回の委員会開催の結果、1月10日に中間報告書をおまとめしたものです。
 一方、この報告書は、計評分科会にかける標準フォーマットがございますので、評価書をコンバートしたのが資料2でございまして、作業部会に参加した委員の名簿がついているとともに、その内容について、4ページ以降にまとめたものです。
 この評価に関しては、平成12年度から開始されたのですが、評価指針の規定に基づきまして、およそ5年ごとに中間評価をやることになってございまして、平成15年、19年、24年、平成30年に続きまして、第5回目の中間評価となります。
 研究開発の目標・概要に書いてあるのは、こちらのとおりですが、世界最高レベルの物質科学、ミュオンとかニュートリノとかいった素粒子科学のところから実利用のところまで、幅広いところをやっていて、研究開発をするもの。研究開発の必要性については、必要性、有効性及び効率性について記述ございますが、これは実際に後ろの個票の3の(2)のところに具体的にもう一遍出てきますので、そちらのほうで御説明させていただこうと思います。
 続きまして、どれだけ予算をこの5年で投入したかというところを示すのが4ポツ、予算の変遷のところでございまして、こちらに示すとおり、資本投入がされていると。
 実施体制に関しては、先ほど申しましたように、JAEA、KEK及び利用機関、法律に基づく共用に関して、登録施設利用促進機関というところをかませてやりますが、そこのCROSSが一緒になってやっているという内容でございます。
 中間評価の評価票本体が次のページでございまして、施策名、関連する施策の上位施策とどのようなストラクチャーになっているかというところを示して、こちらに2ポツで示した後、先ほど書いておりました、どのぐらいの運転がされたとかいうような、アウトプット、アウトカム指標等々に関して、こちらに記載がされているところです。
 評価結果についてが3ポツでございまして、事業の進捗状況として、5年間どのようなことを行ったのかというところ、これは具体的にどういうことが実施されたか、報告書の中から代表的なものを記載してございます。その上で、各評価の観点について再評価をしているのがこちらでございまして、その有効性・効率性について評価、確認を行ったところ、下のとおりになっております。
 今後、新たにモニタリングすべき指標は適切にモニタリングすることが必要であると示した上で、必要性としては、世界最高強度のビームを利用して、自然界の基本原理を探究する素粒子物理学から産業応用まで、幅広い研究開発を飛躍的に発展するものであり、上位施策とも合致するものであって、我が国のイノベーション政策の着実な推進に関して、J-PARCの貢献がますます期待されているということを記載してございます。
 有効性でございますが、特に原子核・素粒子物理学の分野において、CP対称性の破れの証明への貢献であるとか、あるいは物質・生命科学分野においては、最近、燃料電池等において、中性子でよく写る水の動きというのがかなりキーポイントになっておりまして、燃料電池のオペランド計測などの基礎研究から社会実装に至るまで、幅広い取組が行われており、施設全体において、新たな技術獲得の基盤整備に貢献しているというところを評価しています。効率性としましては、これは先ほど申しましたように、2つの機関が共同して運営しておりますが、一体的に運用されていること、それから外部委員会における評価等を定期的に行いまして、研究開発の手段やアプローチの改善に取り組んでいること、さらに、今後の課題として、人材育成や、利用料収入を施設の整備に還元するということが求められているというような点を指摘しているところでございます。
 最後に(3)ですが、上位施策の貢献として、第5期科学技術基本計画、第6期科学技術・イノベーション基本計画、おのおのに関して適切に貢献しているということ、それから第4のところとして、前回の平成30年の指摘事項に対して、どのような対応がされているかという点について、おおむね適切に対応されているけれども、例えば計画的な人員確保であるとか、放射性廃棄物の減容化に関する技術の獲得や高経年化対策など安定的な施設運営、それから施設の将来計画の具体化、ユーザーの利便性の向上とサイバーセキュリティのバランスであるとか、あるいは施設の持続性に関係する自己収入の獲得の在り方等、あるいは中性子、ミュオンのプラットフォームを放射光の利用にも拡大していくとか、あるいは広報とか国際連携について、まだまだやるところがあるという点を指摘しているところでございます。
 その上で、これが最後の結論でありますけれども、今後の研究開発の方向性に関しては、以上のものを含めまして、継続ということをしておりまして、理由として、J-PARCというものが、研究分野において大きな利用と成果の創出が期待されることから、引き続き取り組むことが適当としており、なお、次回以降、以下について具体的な対応を進めていく必要があるということで、第2ターゲットステーションというのは、簡単に言うと研究施設の拡張計画を具体的に示すとともに、人材であるとかいうところも含めて、きちんと対応が必要ということ、それから、最近、燃料が高騰していることも踏まえて運営の改善を図ること、最後に、GX社会等を含めて、産業界における中性子利用のさらなる裾野拡大や、その他の計測手段との融合・連携等を通じた社会実装例の創出等々を通じまして、国民生活への還元をしっかり図るということを指摘しているところでございます。
 以上、雑駁でありますけれども、こちらの中間評価の案でございます。
 本評価に関しましては、本日の委員会で決定された後、研究計画・評価分科会に上がっていくものです。
 以上です。
【大森主査】  ありがとうございます。ただいまの説明について、御意見、御質問ございますでしょうか。
 もしおありでないようでしたらば、本案を中間評価結果として決定してよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【大森主査】  それでは、異議なしとして、決定いたします。
 続いて、議題3に移ります。令和6年度政府予算案の量子技術関連予算について、文部科学省より御説明いただきます。
 それでは、御説明お願いいたします。
【澤田室長】  量子研究推進室長の澤田です。改めまして、よろしくお願いします。
 予算の御説明の前に簡単に、もう2024年になりましたけれども、2023年の動きを振り返りたいと思います。
 国内の動向ですけれども、社会的にも大きく取り上げていただいて、私も3月、実は現地へ見に行きましたけれども、国産機が稼働したということがございました。これはQ-LEAP事業の成果として、理研のRQCが3月に公開した初号機、スライドの上のほうに写真が載っていますけれども、それを皮切りとして、10月には、スライド右の、富士通と理研の連携センターにおける成果としての2号機、スライド左側には西日本側ということで、12月に阪大のQIQBが共創の場事業を活用して、3号機を公開しています。共創の場という、企業と組んで研究開発に取り組む事業で、量子というすごい最先端の分野があることは、文科省としては、とてもエポックメイキングと思っています。
 この3機とも設計は共通していまして、理研の量子チップを使っており、阪大3号機についてはプレスリリースもされていますけれども、内部部品の国産比率を高めたという特徴があるということです。
 理研、阪大の実機はクラウドで公開されていて、国内どこからでもアクセスできるようになっていますけれども、日本の東西で物理的にアクセスできるようになったことが、研究開発を進める上でも、研究者の方にメリットがあると思っています。
 役割分担は、決め切っているわけではないですけれども、理研、富士通では実機のスケールアップに向けて、引き続き研究をしていますし、富士通では産業利用を目指して、複数のユーザー企業とユースケースの創出に向けて取り組んでいます。阪大さんは共創の場事業で、量子ソフトウエア研究拠点を形成していますので、約40の機関と人材育成やユースケース創出に取り組んでいます。先日のまちかね祭でも、一般公開して、親子連れの方などに量子コンピュータを見てもらったのは、結構話題になったと思っております。
 一方、年末にはIBM社がロードマップどおりに1,000量子ビット級の実機ですとか、今後、さらなるスケールアップを見据えて、複数のチップを実装した実機の構想を公開するなど、超伝導方式に限っても国際競争は熾烈になっています。
 後ほど議題の4で、CRDSの嶋田さんから講演いただきますけれども、FTQCの実現を目指す論理量子ビットに関する研究成果も出てきています。
 2枚目、お願いします。世界の動きに目を向けますと、とても動きが多くありました。濃い赤が2023年、薄い赤は2022年ですけれども、アメリカなど戦略アップデートした国もあれば、韓国のように、キャッチアップを目指して、新たに戦略をつくったり、韓国では法律も最近12月に策定していたり、また、ほかにもデンマークがNATOのプログラムを活用して、研究組織を新たに立ち上げるなど、安全保障面からも量子技術に対する注目度が高くなっています。多くの国は国家戦略の一部として量子技術の実装やエコシステムの形成を掲げていますので、研究開発のみならず、社会実装を意識していると思っています。
 その点、我が国でも、昨年の4月に量子技術の実用化・産業化に向けた量子未来産業創出戦略を策定しているところで、スライドにも日本に印がついております。
 他方で、各国、量子技術の関心が高まって、また安全保障的観点も意識せざるを得ない状況を踏まえますと、いわゆる有志国との連携をはじめとして、戦略的に国際連携を模索する必要があるのではないかと思います。文科省もそうですが、内閣府、政府全体としても感じているところで、その点、もし後ほど、こういったことを着目すべきだというコメントが先生方からあれば、ぜひ教えていただきたいと思っています。
 3枚目、お願いします。政府全体の予算ということで、毎年こういう一覧表を作って計上しています。
 内閣府、総務省、文科省、経産省が主に取組を実施していますけれども、国研の運営費交付金の内数や基金などがありますので、厳密に量子技術関係を切り分けられませんが、令和5年度の補正予算としては約379億円、令和6年度の当初予算案としては約368億円を計上していると推計しています。
 当初予算案で比較した場合に50億円ほど減となっていますけど、これは総務省の事業で令和5年度に終了したものがあったり、事業スキームに変更があって、量子分野で幾らという数字が切り出せなくなってしまったために集計から外れてしまった事業があることが理由です。
 4枚目は文科省施策のみを抜粋した予算案のスライドです。今回のトピックとしては、令和5年度の補正ではありますけれども、ムーンショット型の研究開発制度について、基金積み増しが実現いたしました。あくまで基金全体の金額で、量子以外も含んでいるので、実際に量子の目標6に、どれくらい予算が投じ、今後、毎年配分されていくのかは、その都度、検討されるということですが、いずれにせよ量子分野にとっても良いニュースと思っています。内数部分が多いですけれども、文科省全体としては、昨年とほぼ同額と言えると思います。
 5枚目、お願いします。量研室が担当、所管しているQ-LEAP事業でございます。これもありがたいことに財務省から増額を今回認めていただきまして、予算案は45億円ということで、四捨五入したら50億円に達しました。
 御存じのとおり、3つの技術領域と人材育成の領域に分かれていまして、各領域で着実に成果を上げていると考えています。特に先ほども申しましたけれども、国産量子コンピュータの開発の成功が各メディアで大きく取り上げられております。
 実機を作ることができる、また、複数台稼働しているという国は、まだ少ないですし、国研が作ったということも世界的に評価が高く、我が国のアドバンテージであると思っています。もちろん超伝導方式がFTQCまでスケールするかというのは、まだ議論がある状況ですので、政府としても、まだ全方位に投資している状況ではありますけれども、このアドバンテージを生かした取組を引き続き支援していきたいと考えています。
 6枚目です。Q-LEAPの予算推移を示していますけど、令和6年度は、Q-LEAP事業の開始7年目に当たります。グラフでお示ししていますけれども、これまで予算の増額を継続して認めていただいて、これは量子に対する財務省の期待もあるんじゃないかなと私個人は思っています。今では省内最大規模の内局事業となっているところです。
 特に令和2年度から阪大の量子AIフラッグシップ、QSTの量子生命フラッグシップの追加を認めていただいたことは、量子技術の分野をさらに広げるということで、加速していると考えています。
 また、令和元年度の量子技術イノベーション戦略を皮切りに、量子未来社会ビジョン、量子未来産業創出戦略を、3本策定しています。研究者の方々や産業界の皆さんとコミュニケーションを取って、国家戦略を補強しながら、その取組の裏づけとなる予算についても、しっかり確保できたと考えています。
 Q-LEAP事業は、令和2年度に採択した課題も、いよいよ後半5年に入るということで、この量子のような先端事業でTRL6を目指すのは簡単ではないと思っていますが、これをいち早く社会実装につなげていくよう、研究者の方々、産業界の方々と一緒に頑張っていきたいと思っています。
 以上です。
【大森主査】  ありがとうございました。
 ただいまの説明について、御質問等ありますでしょうか。
 3枚目の世界各国の量子技術の政策動向というスライドについてなんですけれども、この中で中国の政策についてのフォローがないですけれども、これはどういった事情かと。
 御存じのとおり、中国はアメリカと並んで、量子関係の予算が突出している国の一つですので、ここの政策をフォローしておくのは大事かなと思いますが、いかがでしょうか。
【澤田室長】  おっしゃるとおりだと思います。中国の正確な情報を入手するのはなかなか簡単ではないと思いますが、3枚目に関しては政府戦略として公開されたものを一覧にしている資料です。そこに中国の情報はなかったというのは、ご指摘のとおりです。2024年に、中国は量子以外のAIなど先端技術を含めて、産業化に向けた戦略、計画をつくると聞いておりますので、それがどういったものになるかは引き続き注視していきたいと考えております。
【大森主査】  ありがとうございます。
 ほかに御質問等ございませんでしょうか。
【向山委員】  よろしいですか。
【大森主査】  どうぞ。
【向山委員】  2点、伺いたいことがあります。一つは、国産量子コンピュータのクラウド公開ができたことはすばらしいと思うのですけれども、これは研究者の方が運営されているのですか。
【澤田室長】  はい。理研で運営しています。
【向山委員】  研究者の方はどうしても入れ替わりも早いと思うのですが、継続的に続けていけるような仕組みはあるでしょうか。
【澤田室長】  理化学研究所は、確かに入れ替わりという意味では、政府の与えた目標を機動的に受けて、センターを改廃するという機能はありますが、それはそれとして、中長期的な取組はしっかりとやっていく必要があるので、量子コンピュータ研究センターRQCを立ち上げて、しっかりやると。もちろん将来的には見直しをするタイミングもあると思いますが、現在は理研のRQCでQ-LEAP事業を請けていただいています。そこでは中村先生はじめ、世界に名だたる研究者の方々が、もちろん研究もそうですし、量子コンピュータの技術的な面も含めて、しっかり対応していただいていると思っています。
【向山委員】  なるほど。そういうふうになっているのですね。分かりました。
 あと、もう一個。Q-LEAPに参加されている若い研究者の方で所属が替わると、Q-LEAPのプロジェクトを止めなければいけないと言われたという話を聞いて、それはまずいなと感じたんですけど、そういう状況なんでしょうか。
【澤田室長】  Q-LEAP事業は、基本的に機関で採択しているので、そこから全く関係のない機関に行ってしまうと、もしかしたら研究が続けられなくなるというお話なのかもしれません。その場合にどういった手当てができるかは、もちろん、文科省が排除しているわけではありませんので、例えば共同研究をすることはできるのかとか、そういった対応も可能ではないかと思います。もしそういった問題があればご相談を受けたいと思います。
【向山委員】  その研究者の方自身はできないと認識されていたので、そういう可能性があると御本人が認識できるとよいと思います。その方はそれでポストがあっても応募しないという判断をされていたので、ちょっと心配になり伺いました。ありがとうございました。
【澤田室長】  ありがとうございます。
【大森主査】  小林委員、どうぞ。
【小林委員】  御説明ありがとうございました。量子関係で、このように予算配分されて、世界の動向を意識して、国として開発進めていくのは非常にすばらしいことで、どうもありがとうございます。
 それで、お伺いしたいのは、今日、予算の話を重点的にされましたが、私自身、こういった量子系の実験系に非常に近い部分で研究をしておりますけれども、量子コンピュータを実際に作ったり、あるいはそれを動かしたりするときというのは、やはり人材が非常に重要で、物理や材料、あるいは情報系の博士号を持った人、あるいはポスドク以上でないと、そういうことはできないわけです。
 それで、こういった予算を配分するときに、今後、そういう人材がどれぐらい配置されるか、人数の観点も、重要ではないかと思います。
 どのように人材育成をしていくかという、具体的な人数を意識した計画のようなもの、あるいは配分された予算がどの程度人材育成に貢献したかという評価、そういったものに関して、文科省でどういう取組があるか、教えていただければうれしいなと思います。よろしくお願いします。
【澤田室長】  ありがとうございます。先生のおっしゃるとおりだと思います。
 我々のQ-LEAP事業で、量子コンピュータ・量子情報、量子センシング、レーザーという3つの研究の領域を設けています。そのほかに人材育成プログラムというのが基盤的に走っていまして、そこできちんと人材を育成していこうとしています。
 また、さらに量子の人材を増やす必要があるのではという話もいただいているので、さらにどういったことができるかを、文科省事業だけに閉じず、内閣府等の関係府省も含めて検討を開始しているところです。
 また量子技術のユーザーという観点からは、政府戦略で、意識せずに使う人も含めて、2030年に利用者1,000万人という目標を掲げているので、これは簡単な数字でないと思いますけれども、1,000万人を超えると量子技術がさらにどんどん広がっていくという閾値のようなものだと思っていますので、それを目指して、政府として対応していきたいと思っております。
【小林委員】  どうもありがとうございました。利用者1,000万人というようなことになっていきますと、量子がインフラとして機能するために、それを支えるプロフェッショナル人材が必要で、そういうことを既にされているというのは非常にいいなと思います。
例えば名簿のようなものは文科省のほうで作成されているのでしょうか。
【澤田室長】  名簿までは作っていないですけれども、私が補足しようと思ったのは、理研でまず1号機を作ったんですけれども、2号機は理研・富士通の連携センターということで、富士通が共同研究を理研と行って、研究ももちろんなんですけれども、技術的な部分、安定稼働させるとか、チップがどういうふうに機嫌よく動いてくれるかという、いわゆる秘伝のたれみたいなところも含めて技術を供与して、上から目線に聞こえたら恐縮ですが、富士通の人材のレベルも上がってきたのではないかと思っています。また阪大がかなり頑張ってくれていると思っていて、先ほど、まちかね祭の話もしましたけれども、ご家族とか、小さいお子さんとか、学部生もいたのではないかと思いますがトータルで数百人も一般公開を見に来たと聞いています。そういった人材育成に寄与する取組は、この3拠点ではもう既に始まりつつあります。これから商用化に向けた動きも加速すれば、さらにそういった取組が増えていくのではないかなと期待をしています。
 ただ、我々も日常的に研究者の方々やセンターの事務の方々とお話ししていて、どこに誰がいるという大まかなことは把握しているつもりですが、名簿を作るという計画はありませんでした。
【小林委員】  1,000万人を支えるためのインフラとしての人材のストックは数百人とか1,000人規模だと思いますけれども、既にそういう方向で進められているということであれば大変安心しました。ありがとうございました。
【大森主査】  川上委員、どうぞ。
【川上委員】  理化学研究所の川上です。質問というよりはコメントですけれども、私は国産のクラウドに載せる、クラウド公開の量子コンピュータには関わってないですが、理化学研究所に所属しているからか、いろいろな人から、どうやったら使えるか、よく聞かれます。例えばIBMのように、誰でもアクセスできるように早くなればいいなと思っています。研究者としても興味があるし、厳密な意味では、研究者でなくても使ってみたい、触ってみたい人もいると思います。そういう方向で動いているという話は聞いていますが、早く実現すれば、アウトリーチ的な意味でも、研究的な意味でもいいと思います。
 以上です。
【大森主査】  では、早瀬委員、どうぞ。
【早瀬委員】  慶應大学の早瀬です。様々な施策を広げていただいて、ありがとうございます。予算に関して2点ほどコメントがあります。
 国内外の予算に関して、こういった取組があるといったような紹介がありましたけれども、主に今年度、あるいは来年度の予算額が示されているだけで、それが時間軸方向にどう長期的に支援していくとかいうところがなかったように思います。こういった量子科学の支援というのは、長期的な視野に立って、長期的、そして戦略的に支援していく必要性があると思いますので、時間軸方向の情報があるといいかなと思います。何年にわたって、どれぐらいの規模で支援していくのか、なかなか予算立ての見通しが読めないところはあると思いますが、恐らく紹介していただいた海外の施策等も、期間の記載があると思いますので、そういった情報もあるといいと思いました。
 もう一つは、予算額は書いてありますけれども、一つのところに多く予算を配分するのか、あるいは、広く配分するのか、どういった予算配分の仕方が効果的なのか、常にフィードバックをして、最適な配分というのを考えていただければなと思います。
 私が個人的に、様々な予算の審査等に関わっている立場として申し上げると、量子は結構お金がかかるので、かなり少ないところにたくさんの額を配る形が多いように見えるのですが、一方で、最近の研究だと、中規模の予算を広く配ったほうが研究成果として上がりやすいといったような話もありますので、常にフィードバックをして、配り方などもよく検討いただければと思います。
 以上です。
【大森主査】  ありがとうございます。
 山田委員、どうぞ。
【山田真治主査代理】  どうもありがとうございました。
 室長から、Q-LEAPをはじめとして、今は量子コンピュータ実現のための方式は、絞り込まず広く手を打っているという御発言があり、私もそのようなやり方が今はいいのではないかと思っています。
 一方で、例えば海外を眺めたときに、海外の事情がどうなっているのか、方式の重点化がなされる動きがあるのかということ。それから日本でやる場合に、例えばQ-LEAPは10年の事業ですから、適宜、見直しはあるにせよ、大きな重点化というのは、その中では難しいと感じます。この現状を踏まえて、どのような施策を打って重点化に向かっていくか、お考えを教えていただけたらと思います。
【澤田室長】  よろしいですか。
【大森主査】  室長、お願いします。
【澤田室長】  ありがとうございます。3人の先生方から貴重な意見をいただいたと思っています。
 早瀬委員と山田委員のコメントには共通するところがあると思いますが、量子技術関連予算は令和3年から集計したところ、当時は230億円程度だったものが、令和6度は政府予算案で360億円程度ということで、1.5倍ぐらいに増えてきています。一方で、政府投資はかなり増やしてはいるものの、海外では産業界が投資をしているところもあって、諸外国の投資と比較するとまだまだ多くないというところはあるかと思います。、Q-LEAPは10年ですし、ムーンショットはあと5年ということで、長期的支援とも言えますし、もっと30年、40年というスパンでの予算はなかなかないですけれども、事業の切替えのタイミングで、また見直しが必要と思っています。
 Q-LEAPはおっしゃるとおり、フラッグシッププログラムのほかにも基礎基盤課題というのをやっているので、そこで量子コンピュータのほかの方式にも取り組んでいますし、そういった予算は各分野のそれぞれの領域の研究者の方や、Q-LEAPのガバニングボードで事業の統括をしてくださっている先生方と相談しながら予算配分を年度ごとに決めているところです。
 また海外の話は、議題4で言及があると思いますが、研究動向についても、我々自身もそうですし、先生方とも共有しながらキャッチアップをしていきたいと思っています。また、現在では基金が科学技術関係の予算として計上されていて、内閣府のムーンショット事業がありますが、そこで量子コンピュータの主要な方式についてはポートフォリオを持ってやっています。基金なので、Q-LEAPといった当初予算の事業とは異なり、年度ごとにかなり柔軟に見直しが利くと思っていますので、これも事業の残り5年の後半に向けて、勝ち筋はまだ決まってない中ではありつつどれに投資をすればいいのか議論しながら進められると思っております。
 また、川上委員の、みんなが量子コンピュータにアクセスできるようにしてもらいたいというのは私も同感でして、今、理研では共同研究契約を結んだところとまずやっていこうという状況と認識していますが、いずれ台数が増えてきて、より一般の、子供たちも含めてアクセスできるようになってくると、中にはデジタルネイティブといいますか、ずっとプログラミングをしている子たちもいるので、もしかしたらすごいソフトウエアができるかなということも期待しているので、将来的にはそうなっていくといいなと私も思っております。
【大森主査】  皆さん、御議論ありがとうございました。
 それでは、議題4に移りたいと思います。量子技術の研究開発に関する最新動向についてです。
 JST/CRDSの嶋田フェローより御発表いただき、その後、質疑の時間を設けます。
 それでは、御発表をお願いいたします。
【嶋田フェロー】  JSTの嶋田です。今日は話題提供ということで、最近の量子技術、特に量子コンピュータ、先ほど大森先生からもあったと思いますが、2023年にかけて、非常にいろいろな進展があったので、そのところを話題提供させていただければと思います。
 個人の感想ですけれども、2023年は、論理量子ビット元年とも言えるようなお祭り騒ぎが結構多かったと個人的には思っています。グーグルが表面符号の結構大きいやつを実装して、実際に論理Xゲートとか論理Zゲートの評価をしたという話がありましたし、IBMもヘビーヘキサゴンという、ちょっと変わったタイプのネットワークを持つ誤り訂正をデモンストレーションしたというのがありました。、あるいは12月に入ってですけれども、ハーバード、MITのグループが、やはり似たような、ちょっと一風変わったネットワークで、これはブロック符号ですけれども、冷却原子系で、誤り訂正符号を実装して、その上で計算するということを少しデモンストレーションしたというのがあり、論理量子ビットについてはこれまで理論の話がメインでしたが、符号長を延ばしたときに、何dBエラーが減るとか、そういった議論を実験的に議論できるようになってきたかなというのが非常に大きな流れとして感じています。
 それで、一方の誤り訂正のかかっていないNISQはどこに行くという議論も、かなりいろいろなところで、非常に厳しい意見から楽観的な意見までいろいろありますけれども、エラーがどうしても下がってこないと、このままではスケールアップできないということは、かなり多くのところで認識がされてきています。実際にデバイスを作りながら、FTQCに向かって、世界的にも、どういうルートで行けばいいか、どういう構成をすればいいかというのは、手探りでやっている状況と思います。
 つい最近、2023のシリコンバレーであったQ2Bでは、年1回、プレスキル氏が何を言うかを聞くというのがありますけれども、そこでNISQは結構厳しいのではないかというのを改めて彼が表明するということがありました。分かっていたことではあるものの、広くNISQのアプリケーションを探しても現状ではなかなかその利点が、きちんとした形で実証されていないということを真摯に受け止めるべきじゃなかということを言っています。
 ただ、これは別に、NISQをこのままやっても無駄だとか、そういう意味では全くなくて、冷静に今の状況を見たときに、合理的に判断できることは、今の範囲でなかなか誤り訂正や誤り抑制をしないままでNISQをただ単にスケールアップしていって、何か説得力のある応用を見つけてくるというのは、かなり現実を見ていないということになるだろうということだと思います。ですので、スケールアップの肝というのは、これはもう理論的にはずっと前から言われていたとおりですが、量子誤り訂正符号をどういう形で入れていくかということになると思います。
 ただ、量子誤り訂正符号は、かなりいろいろな種類があって、特徴がそれぞれあるので、物理系にマッチした誤り訂正符号を実装して、デモンストレーション的にですけれども、実験・検証していくという形が、今後、非常に大きくなっていくのかなと思います。
 誤り訂正符号というのは古典の情報科学の中でももちろん使われているわけですが、量子コンピュータで使う場合の特有の事情というのが幾つかあると。一つは、通常のビット反転エラーだけじゃなくて、Z方向の位相反転エラーがありますし、それからノークローニング定理があるので、単純にコピーしておいて復元するという方法は取れない。とはいえ冗長なビットを用意するという方法は、古典に倣って量子でも使うのですが、そうだとしても、エラーの種類とか位置を確認するために測定したいのですが、その測定をしてしまうとデータのビットが壊れてしまうので、それ以外の方法でエラーの位置と種類を特定しないといけないということがあります。
 もちろん量子特有の事情というか、今の物理系の最大の制限ですけれども、エラー訂正のための操作、あるいは測定操作というのにも高い確率で誤りが乗ってしまうので、ある閾値よりも物理的なフィデリティを上げた状態でこういうことを実装しないと、誤りが雪だるま式に膨れ上がってしまうという、量子のせいではないですけれども、今の量子コンピュータの実装系特有の事情があるので、この辺を全て考慮したような誤り訂正符号というのが必要ですということが言えるかなと思います。
 よく使われている量子誤り訂正のスキームというのは古典の誤り訂正とほぼ一緒で、古典の場合には、多くは通信とか、そういうところで使われるのが結構多いですが、量子コンピュータの場合には、これを計算中のレジスターに対して、常に誤り訂正をかけ続ける、誤りを検出、位置を検出して、その誤りの種類を特定して、それを直すという作業を、あるフレーム、リフレッシュレートで常にやり続ける必要があるということが最大の特徴で、あとのスキーム自体は古典の話とそんなに変わらなくて、例えばこれは、論理「0」を、00000とゼロが9個並んだ反復符号で符号化すると。論理「1」は1の並んでいるもので、それ以外は全部誤りだとみなす。というわけで、この2の9乗次元のベクトルの空間の中で、この2つだけが符号として正しくて、それ以外の空間というのは全部直交していて誤りなので、それを検出してくればいいでしょうというわけです。このときに最初に正しかった符号語から、例えばビット反転で1個変わっているというのを距離1というのですが、1個、2個変わっている、3個変わっているというふうに距離が変わるのですが、この符号語同士の間の距離の半分までしか正しくは直せないと。これよりも超えてしまうと、例えば1が5個になっちゃうと、論理「1」から4個間違えて、真ん中の状態に来ているのか、論理「0」から5個間違ってこっちへ来ているのかが2分の1の確率で間違ってしまうので、基本的には、dという符号距離を延ばしていくと誤り耐性は増えるんだけれども、この符号距離の半分までのエラーしか基本的には直せないという関係になっています。なので、基本的には量子コンピュータとしては、この符号距離をなるべく大きくするというのが求められるというわけです。
 よく使われている表記法は、これも古典と同じですけれども、[[n,k,d]]と書いてあって、n個の物理ビットでk個の論理量子ビットを表すというのが表記法です。dは符号長です。
 量子特有なのは、一つは直し方で、直し方は補助量子ビットを導入して、こいつとQ2と書いてある青の量子ビット、Q3とかQ1とか書いてある、これはデータが入っている量子ビットなので、これを測定することなく、パリティチェックといって、この間にCNOTをかけて、このQ1とかQ2の間のパリティの情報を持ってきて、Q1やQ2を測定することなく、このP1、P2という補助量子ビットを測っちゃうというわけで、この例でいうと、3個の量子ビットに対して2個の補助量子ビットが必要です。このP1とP2だけを測定すると、Q1、Q2、Q3に、どういうエラーが起こったかというのを、その測定結果に応じて、どこにどういうエラーが乗ったかというのを判断することができるということになっています。この場合には、例えば1方向だけしかできないので、実際には2方向ですかね。例えば表面符号であれば、X方向とZ方向というか、2つ位相方向と普通のビットフリップというのを量子の場合には見分けなきゃいけないので、これだけでは十分ではないですが、原理はもうほとんどこれと同じことが基本的にどの符号でも行われています。
 閾値が非常に重要で、結局、誤りを直す操作、あるいは検出する操作にもエラーを起こしてしまうので、一個一個の物理的なゲート操作のエラー率が、ある一定量よりも低くないと、誤り訂正をかけても、符号距離を延ばしても、全然誤りが減らないということになるわけですね。誤り訂正符号の種類によって、この閾値というのは変わってくるので、なるべく閾値は高いほうが実装容易度としては望ましいですが、それが、基本的に10のマイナス3乗とか10のマイナス4乗くらいにこの閾値が来ているので、それよりもフィデリティ高く実装しないといけない、ゲート操作を実現しないといけないというので、なかなか一筋縄ではいかない。ですが、基本的には、この閾値よりも低いところで物理操作を行って、それで誤り訂正をやれば、その符号長を伸ばす、つまりスケールアップしていくだけで、論理エラー率というのはどんどん指数関数的に下げることができるということが誤り訂正の閾値の特徴です。
 それで、その閾値が非常に低いとして注目されているのが表面符号というので、これが今、超伝導の系では、実装して実験実証をするということが試されています。
 これの特徴は、一つは閾値が低いことですが、もう一つは実装のスケールアップが容易だと。これは例えば、85個で1量子ビットを表す、あるいはこれ25個で1量子ビットを表すという符号ですが、結局、縦掛ける横の面積をどんどん大きくしていく、この格子の辺を大きくしていけば、どんどん符号距離を延ばすことができるというわけで、インテグレーションというか、チップに回路を書くという操作においては非常に容易と考えられます。もちろんこれはコントロールが容易とか、そういうことは言っていないですが、作る上では無理がない設計になっており、格子を大きくすると符号距離が簡単に延びるので、デザインを作り替えないでも符号距離をどんどん延ばしていけるというので好まれています。
 それを実験実証したのがグーグルの、この前にも1つ論文が出ているんですけれども、2023年の結果で、表面符号を載せると論理エラー率が大体3%ですかね。これは論理Xゲート、論理Zゲートの何万回かやった平均値ですけれども、3%くらいの論理エラー率にとどまっていて、かつ符号距離を延ばすと、統計的には有意に下がるということが分かっていて、エラーの閾値の直上ぐらいでやっているので、この論理エラーの減り方はなかなか厳しい値で3から2.9に減ったぐらいなので、本当は指数関数的に減ってほしいところですが、なかなか現状では難しいという状況になっています。ただ、これは実験的にちゃんと実装して作り込んだというので、非常に注目をされていると思います。
 ちなみに、この青線は繰り返し符号で、符号距離25というのは、1個飛びに補助量子ビットが入るので、距離25というのは大体50量子ビット全部使って数珠つなぎにしています。ただ1方向しかないので、例えばX側のエラーしか直せないとか、そういう状況ですけれど、それでやると、かなり符号長を大きくできるので、きれいに指数関数的に下がって、最終的には宇宙線が入ってきてエラーを起こすというようなところまで、見えるようなレベルまで論理エラーを下げることができるということが実験的に確かめられています。
 今後何をするのだという話ですが、もちろんNISQはNISQ側で、先ほど言った実用的なNISQに向かって走るというのはあるのですが、FTQC側は、FTQCの枠組みの中で、誤り訂正符号をかけた状態で、何らかの計算まで至らなくても、何かのタスクを実行して、量子加速があるのだと、あるいは量子超越の実験をするのだということが次のマイルストーンに当然なるわけですね。その上で誤り訂正、量子コンピュータ上での有用なタスク実行みたいなのが控えているわけですが、今、ここにちょうど差しかかっているところなのかなと思います。
 FTQCのリソース見積りというのは結構古くからやられていて、最近の結果ですと、量子超越の53量子ビットの実験がありましたけれども、それをFTQC上でやる場合のリソース見積りも出ていて、大体2万5,000量子ビットで0.25秒ぐらいの速度で60量子ビットのランダム量子回路が10%のフィデリティでできると。ある種の仮定はあるのですが、それなりにリーズナブルな仮定を置いた結果、これぐらいのFTQCのリソースが必要だと見積もられていて、なかなかこれをやるのは現状では大変ですね。物理量子ビットで2万5,000必要なので、ちょっとこのランダム量子回路は厳しい状況かなとは思いますが、こういう方向に、当面は進むのかなと思っています。
 もう一つ、最近になってハーバード、MITなどのグループが出したネイチャーの、実はこれ、ネイチャーに通っているわけではなくて、arXivに載っているプレプリントと同等の論文が、Natureにレビュー前論文として早期掲載されているものです。ここでいろいろな実験がなされていますが、今の文脈で特徴的なのは、[[8,3,2]]と呼ばれているブロック符号ですね。8個の物理量子ビットで3論理量子ビットを表すと、符号距離は2というわけで、符号距離2なので、なかなか厳しい。検出はできるのですけれども、訂正はできないというのがあって、かつ使えるゲートの種類というのが現状では限られているというような状況で、トランスバーサルに実行できるような、CCZとかCZとか楽に実行できる論理ゲート操作を使って、何か面白いタスクをしようということが、この論文の発想の興味深い点です。
 実装上、非常に面白いのは、このトランスバーサルCNOTで、原子を光ピンセットで持ってきて、隣に合わせて、多数の原子同士に一度にCNOTをかけるというのが並列にできることです。ですから、こういった事情をうまく使った面白いアプリケーションは何かというので、恐らく彼らが見つけてきたのが、このIQPと呼ばれている、量子超越の実験に使われるような回路が挙がってきたのかなと思っています。詳細は今日は説明しませんが、彼らの実験は、誤り訂正をせずに、基本的には誤ったものを捨てるというのが、方針になっていて、それも功を奏して、このIQPというのが実行できることが非常に特徴的な論文だったかなと思います。論理量子ビットというのはこのようなネットワークで表され、そのネットワークで表現された論理量子ビット上でIQPを実行するということができております。
 ただ、IQP自体は、古典コンピュータにとっても、このぐらいのレベル、48量子ビットぐらいのレベルだと、まだ秒で計算できてしまうので、もうちょっと規模を大きくしないといけないのかなという気はしますけれども、非常に有望そうな結果が得られていると思います。
 IQPというのは、先ほど言いましたように、いろいろある量子超越の実験方法のうちの一つです。基本的な戦略はランダム量子回路の場合と似ていて、量子コンピュータとしては万能じゃないですし、弱いですけど、多項式時間で古典でシミュレートできないような、そういう回路が実行できるということを利用しているものです。
 今回、非常に特徴的だったのは、この[[8,3,2]]符号を使うとCZとかCCZというのはトランスバーサルになって、この符号上で非常に容易に実行できるというのがあるので、これでできる面白いアプリケーションを探すということで見つけてきたのがIQPだったということになるかなと思います。ただ、これら以外のゲートを論理ゲートとして実装しないと万能量子コンピュータにはならないので、万能ゲートセット構築には、やっぱり何らか特殊なことが必要になってくるというわけです。
 その事情が、今後非常に重要になってくることで、たとえば表面符号では、Tゲートというのが万能ゲートセット上は絶対必要ですけども、表面符号上での論理Tゲートはうまく実装できない。何かの形で実装しなければいけないのだが、今考えられている方法は、T状態と呼ばれている状態を用意して、それを使ったゲートテレポーテーションでTゲートを実装するというのを、これを何度か、何ステップか、何サイクルか繰り返すことで、誤りの低い論理Tゲートを実装するということになっていて、非常にそのリソースの負荷が高い。他の論理ゲートと比較して高価なゲートになっているというのが、知られています。
 最近の面白い取組を紹介したい。これまでTゲートというのは非常に重たくて、なるべくTゲートを減らすアルゴリズムとか、そういうのまで考えられたぐらいなんですが、もう少し手前のところで何かいい方法はないかということで、阪大、富士通のグループからEarly-FTQCのSTARアーキテクチャーと呼ばれているアーキテクチャーが提案された。これは表面符号上の論理Tゲートが高コスト過ぎるということを目をつけて、それをやめて、論理Hはトランスバーサルに実行できるので、そこからある別な誤り訂正符号を使って実装した位相回転ゲートで置き換えてしまうというような考え方になっていて、これの中でも、誤り訂正というか、誤りを測定した後、間違った場合には捨てるとか、そういう非常に面白い操作を含んだ位相回転ゲートというのを実装して、それをこの全体のゲートセットの中に含めることで、この論理Tゲートを作るがために必要だった大量の物理量子ビットを削減できるということが提案されています。これだと、必要になる量子ビットを10分の1くらいまで抑え込むことができて、かつ誤り訂正もかかっている状態でありますので、そのトレードオフをうまく手前側に、近未来的に実装できるほうに持ってくるということに成功しているアーキテクチャーの一つかなと思います。
 最後に、今日、量子コンピュータの話が非常に多かったですけれども、量子センシングについても触れます。今、この量子コンピューティングでやられているような誤り抑制とか誤り訂正の話というのが、今後、非常に大事になってくるんじゃないかなということが、いろいろなところで議論されていて、これは日本のQuemixのグループが発表していた論文ですけれども、量子センシングの枠組みと量子コンピューティングの枠組みは非常にいい関係があって、量子コンピューティングのほうで考えられているエラー訂正、あるいはエラー抑制の考え方というのを量子センシングに輸入すると、いい展開が見られるのではないかなという考え方が少しずつ出てきています。
 最近だと、NTTのグループが、量子エラー抑制のひとつの手法である仮想蒸留法で量子センシングにおける系統的エラーを取り除くことができて、非常に系を大きくしたときに、きちんとエラーを訂正した効果が出るようになるというのが報告されています。また量子センシングはアメリカでは軍関係の研究開発が盛んですが、誤り抑制は量子の誤りを量子で直すのではなくて、古典の情報処理で直すというのが基本になっていて、この場合には、ざっくりAIでノイズを除去する、となっています。あまり詳細は分かっていないですが、地磁気航法に使うような量子センサーの誤りを抑制することで精度を向上させる。その結果、地磁気を使ってGPSなしで飛行機を飛ばすようなことができるようになったりというのをデモンストレーションしたり、あるいはQ-CTRL社は、量子コンピュータのコントローラーの部分もやっているスタートアップですけれども、ソフトウエア・ディファインデッド量子センサーといって、古典のソフトウエアの力と量子センシングヘッドを組み合わせて使うことで、通常どおりやるとノイジーなデータが非常によくなる、古典のソフトウエアの力でよくなるということをデモンストレーションしていて、こちらのほうはNature Communicationsに論文が出ていたりしています。
 というわけで、量子誤り訂正、量子誤り抑制の力を使って、量子性をフルに生かすような量子技術というのが、今後、非常に重要になってくるのではないかなという、2024年度というのは、そういう年になるのかなと期待をしています。
 以上です。
【大森主査】  ありがとうございました。非常にポイントを押さえて、簡潔でフェアなまとめだったかと思います。
 ただいまの説明について、御質問などありますでしょうか。
 今後の展望ですけれども、途中でEarly FTQCが出てきましたけど、Early FTQCでどの程度までできるかといった出口側、そのあたりについてコメントいただけると、皆さんもイメージがつかめるかと思いますが、いかがでしょうか。
【嶋田フェロー】  Early FTQCはプラットフォームごとに、かなり特徴といいますか、得意・不得意、あるいは速度という面でも、フィデリティという面でも、まだまだいろいろあるので、それに合わせた誤り訂正符号のスキームというのが、まだ各グループ、模索をしているところだと思いますので、特に最近出てきた冷却原子系だと、CNOT、Xがアクロバティックにトランスバーサルにかけられるというのは、これまで表面符号一辺倒だった超伝導のタイル状にスクエアに並べるという考え方からすると、結構ジャンプがあって、すごい刺激といいますか、量子誤り訂正符号の研究にも非常にいい刺激になってきていると思います。ですので、そのハードウエアとソフトウエアの組合せというのを、これからいろいろなところが見つけてくるのかなと思います。Early FTQCとしてどこまでというのは、なかなか現時点で見通しにくいですが。
【大森主査】  向山委員、どうぞ。
【向山委員】  ありがとうございます。東工大の向山です。1点ほどお伺いしたくて。
 量子誤り訂正の話、詳しく分かりやすく御説明いただきまして、ありがとうございます。量子誤り抑制のほうにはあまり言及されてなかったですけども、現状や展望は、どのようなになっているか、もしあれば教えていただきたいです。
【嶋田フェロー】  結構いろいろな種類が提案されていまして、基本的には、大量にコピーを用意しておいて、その情報を使って、ある種、統計的に直すという方法と、あとはもう少し軽易に、トモグライフィーみたいな形で、系をもうちょっと調べるという話と、幾つか提案されている方法があります。
【向山委員】  冗長化というか、ビット数増やすということをマイルドにしてというか、抑えてやるアプローチですよね。優劣は特についているという現状ではなくて、どちらも可能性としてあり得るのでしょうか。
【嶋田フェロー】  誤り抑制と誤り訂正ですか。
【向山委員】  はい。
【嶋田フェロー】  優劣だと、当然、誤り訂正をするべきであると思います。ただ、やっぱり誤り訂正符号をきちんと回そうとすると、非常にたくさんの量子ビットが要るというのと、非常に高いフィデリティが閾値的には求められるので、なかなかそこまですぐには手が届かない。
 NTTのグループから誤り抑制の方法と誤り訂正の方法とを少しマイルドにつなぐ、グラジュアルにつなぐという方法も提案されているので、そういったのを、誤り抑制をやりながら、ゆくゆくは誤り訂正の成分のほうに行くとか、あるいは先ほどの阪大と富士通の提案していたアーキテクチャーも、一部そういうような考え方にもなっている。この例では誤り抑制とは言っていないですけれども、フルの誤り訂正符号を作り込んで、全部実装するのではなくて、部分的にリソースの負荷が高いところは違う符号に乗せたり、違うスキームで誤りをなるべく抑えるというような、なるべくフルのFTQCと現状の間をジャンプでいくのではなくて、もう少し緩やかに上っていける筋道を描こうとしていると思っています。
【向山委員】  なるほど、分かりました。ありがとうございました。
 もう一個、最後に言及された、量子センシングに生かすというところについてですけど、量子センシングのアプリケーションに適用すると、出力にバイアスが出るというような話を聞いて、実は思っているほど量子誤り訂正をかけても、補正されないというような話を聞いた気がしますが、このNTTのところの絵で、系統的エラーを高精度に抑制というのは、そこのことなのですか。
【嶋田フェロー】  この図でいうと、ノイズモデルが未知だというのがまず一つあるんですが、結局正しいところがずれてしまうという話と、分布が広がってしまうという話があって、このずれるのを戻せるということですね。ですから、バイアスというのは、そういう意味でしょうか。
【向山委員】  はい。それから、統計的な誤差は繰り返していけば何とかなるということでしょうか。
【嶋田フェロー】  そうだと思います。系統エラーをこっち側に寄せられる。統計エラーのほうは、もう数でというのが基本的な考え方かなと思います。
【向山委員】  なるほど。分かりました。ありがとうございました。
【大森主査】  では、小林委員、お願いします。
【小林委員】  東大の小林です。非常にすばらしいまとめをありがとうございます。大変有意義で勉強になりました。
 4ページ目で、今日、誤り訂正ということを非常におっしゃっていたわけです。最初にNISQの現状ということをお話しになられて、その部分をどう捉えるかというのはすごい重要だと。つまり、この数年間は、例えば、量子コンピュータは完璧じゃないにしても、量子という利点が生かせる、そういう成功例を出したいというので、NISQが物すごい勢いで進められてきたわけで、それに対して現状は割と悲観的だなということで、お伺いしたいのは、今後、NISQにとって明るい材料というのはあるのでしょうか。
 誤り訂正自体は、もちろん正しい方向ですけども、それを頑張ると。頑張るというのは、NISQを進めてきた、ちょっと相反する部分もあるわけで、今後、やはりNISQの方向で頑張るという、そういったモチベーションとして、何か明るい材料があるかどうかお伺いしたいなと思います。
【嶋田フェロー】  プレスキルさんが言っていた口調は、そんなに厳しくはなかったですけど、文章で読むと結構厳しい口調で書いているなという印象を受けていて、言われてみると、確かに、少なくとも現時点でNISQの誤り訂正、誤り抑制がない状況で、何か有用そうなものができるという理論的な証拠みたいなものは、確かに見つかっていないと思います。
 それに加えて、明るい材料というのが、私もちょっと探していて、見当たっていないというのは正直あります。
【小林委員】  ありがとうございます。そういうことかなと思いましたけど、やはり現状を共有できるということで、少し確認のために質問させていただきました。ありがとうございました。
【大森主査】  ほかに御質問ありませんか。
 今回、御説明いただいた最後のほうで、詳しく解説いただいて、ハーバードの成果なんか典型だと思うのですけど、例えば最初の頃というのは、結局、個別の基盤技術の開発をみんなやっていって、そこでブレークスルーが出てくるわけですね。
 今の段階というのは、かなり基盤技術がたまってきて、例えばすごくフィデリティが高いゲートとか、そういったものが蓄積したものを、今、組み合わせて動かしているという状況だと思います。だから、今回のハーバードの技術に関しても、個々の技術は、もう大分前に発表されていて、それをシステムとして組み上げて、制御系まで含めて、クラシカルなエレクトロニクスまで含めて1個のシステムにして動かすというシステムエンジニアリング的な成果だと思います。
 そうすると、どうしてもワークフォースが非常に重要になってきまして、しかも非常に特殊性の高い分野で、世界中探しても、それほど多くいるわけじゃないようなワークフォースが必要になってくるということで、なかなか1国だけで人材を補えるような状況ではなくなっていると思います。ハーバードも典型例ですけれども、世界中から非常に優秀な人が集まってくるような人材の吸引装置みたいなものになっていて、そういったのがアメリカに今幾つかあって、こういったシステムエンジニアリングをすごい短期間で組み上げて作り込むというのが可能になっているんですよね。
 ですので、日本も2つ方法があって、これは私の私見ですけれども、日本もそういった、世界中から優秀な人材、研究者、エンジニアの待遇も含めて集めてこられるようなシステムを作り上げるという点と、もう一つは、さきほども言ったように、1国だけで開発できるほど生易しい技術ではないので、適宜オープン・クローズは必要になってくると思いますが、必要なところでは外国と連携しながら進めるといった、この2つの視点が、こういった非常に早く組み上げる人たちと競っていく上では非常に大事になると思います。
 これは嶋田さんだけに対する御質問ではなくて、文科省に対する御質問でもあるんですけれども、そういったことを踏まえて、日本は基盤技術では決して劣っているとは思わないので、こういったシステムエンジニアリングで最終的に勝ち切るというか、日本が利益を得るような状態にするために、それ以外のシステムづくりが大事になってくると思うのですけれども、これは澤田室長も併せて、何かコメントがあれば、嶋田さんからもあればお願いしたいなと思っております。
【澤田室長】  ありがとうございます。
 先ほど口頭で申しましたけど、量子の3戦略をつくってきて、3戦略はつくったが、それを実装、さらに早期に実現するにはどうしたらいいかという議論を内閣府と一緒にやっています。そこで、政府で議論して、文書書いて、関係者の皆様に示していきたいですけど、オープン・クローズを示すのは難しいと思っています。できないと言っているわけではないですけれども、どこをオープンにして、どこをクローズにするかというのを国が示すのはなかなか難しいので、まずはどこの国がどういう技術を持っていて、日本はどういう技術を持っていて、どこに優位性があって、どこはほかの国から学ぶべきだというところを常にアップデートし、地道ですけど、産業界とかアカデミアの皆さんと共有する仕組みというのを、国が結構汗かいてつくるしかないのかなと。文書にすると、すごくざっくりしか書けなくなってしまうし、それを他国に示すのも変なので、私は最近、そういうふうに思っております。
【大森主査】  どうもありがとうございます。
 外国の技術を生かすのと同時に、日本側の優れた技術もあるので、そういったものをうまく使って外国から引き出すというような、本当にしたたかなポリティクス的なところが今後大事になっていくんじゃないかなという印象を、開発している現場の人間としては痛感している次第です。
 海外のスタートアップからのアプローチも、最近はどんどん激しくなっていますし、彼らは国境を越えて開発を進めようとしているわけなので、日本もそれに後れを取らないようにフレキシブルに対応していく必要があるのかなと。
 特に今回、嶋田さんに御説明いただいたような、システムエンジニアリング的なものが絡んでくるフェーズになりますと、いろんな技術の複合体になってきて、チーム構成も含めて総合力になってきますので、そこがもう今年あたりから非常に重要になってきて、そこの差が出てくるのかなというところを、若干、現場としては危惧しているというところで、我々自身もそこに尽力しないといけないと思っています。
【澤田室長】  ありがとうございます。
【大森主査】  嶋田さんから、何かコメントありますか。
【嶋田フェロー】  CRDSでも、この量子の戦略を立てていく中でも、量子を量子たらしめる古典技術というのが極めて重要だろうというのを、当初から言っていたつもりです。基盤技術と書いてあったので、あまり目立たなかったんですけれども、そこのところが量子コンピュータを組み上げる上で重要で、そこが今、量子技術に関わっていない人たちが持っている技術群だというところまでは、かなり押さえてあったんですけど、その意味での業界への巻き込みというのが、かなり重要になってきたかなと認識はしています。
 プラスアルファ、超伝導のところは、もともとNECさんの技術があり、これで今回、富士通さんが組み上げるということまでやりながら、もともと持っていたことに、そこの力もあるでしょうし、コンピュータを組み上げるというシステムエンジニアリングの力もあるので、そういったものを使ってやられているということかなと認識しています。一方で、イオントラップや冷却原子は、基盤となっている技術がAMOなので、今、そこの人材というんですか、何度も戻ってしまいますけれども、AMOが分かりながら、それをシステムとして組み上げられるというような、非常に高度なテクニックが要求されていると思うので、今まではかなり超伝導を国の全体の戦略としても見ていたと思いますけれども、光とかAMOのところを、もう少しきちんと下から支えていくようなことをしたほうがいいかなと思っています。
【大森主査】  理論もそうですね。アルゴリズム、アーキテクチャー、そういったところでも、要するに量子物理学の非常に基礎のところから実機サイドまでも全部対応できるような理論系の人たちというのが、今、非常に世界的に充分じゃないような状態で、取り合いになっているので、そういったところの勝負を今後かけてくるような局面の一つかなと感じますね。私見ですけれども。
 ほかに何か質問、コメントございましたら、お願いします。
 ありがとうございました。嶋田さん、ありがとうございました。
【嶋田フェロー】  ありがとうございました。
【大森主査】  以上で本日予定していた議事は全て終了しました。事務局から連絡事項などがあれば、お願いいたします。
【機構・総括係長】  皆様、本日、長時間にわたる御議論ありがとうございました。
 まず、今日の議事録は、今後、各委員の御確認を経た上でホームページのほうに掲載をさせていただきます。
 また、次回については、書面審議も含めて、事務局より追って御連絡いたします。
 事務局からは以上になります。
【大森主査】  ありがとうございます。
 本日は、長時間にわたる御議論ありがとうございました。それでは、閉会といたします。

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研究振興局 基礎・基盤研究課 量子研究推進室

(研究振興局 基礎・基盤研究課 量子研究推進室)