量子科学技術委員会(第9期~)(第29回) 議事録

1.日時

令和5年6月19日(月曜日) 14時00分~15時30分

2.場所

オンライン開催

3.議題

  1. 主査代理の指名について【非公開】
  2. 議事運営について(運営規則、公開要領)
  3. 量子ビーム利用推進小委員会の設置について
  4. 政策、研究開発に関する最新動向について
  5. 量子科学技術委員会における第12期の活動について

4.出席者

委員

大森主査、青木委員、川上委員、小杉委員、小林委員、畑中委員、早瀬委員、水落委員、美濃島委員、向山委員、山田真治委員、山田真希子委員
【外部有識者】JST/CRDS 佐藤隆博氏
 

 

文部科学省

迫田量子研究推進室長、機構・総括係長

 

5.議事録

【機構・総括係長】  それでは第29回量子科学技術委員会を開催させていただきます。本委員会の事務局を担当させていただきます文部科学省量子研究推進室です。皆様、本日はお忙しい中、御出席いただきありがとうございます。
 初めに、量子研究推進室の迫田より一言御挨拶させていただきます。よろしくお願いいたします。
【迫田室長】  皆様、こんにちは。よろしくお願いします。本日はお忙しいところお集まりいただきましてありがとうございます。
 量子科学技術委員会はこれまで、去年は人材育成などを中心に議論をしてまいりました。特に量子委員会では、おととしであれば量子未来社会ビジョンであったり、また昨年であればQ-LEAPの新規プロジェクトの立ち上げに向けた御検討など、様々な面から御支援、御指導いただいたところでございます。
 今期は新しく大森先生に座長を務めていただきまして、メンバーも一部入替えを行いまして、この2年間、新しい期で議論を進めたいと思います。今後どのようなことを議論するのかは本日意見交換をさせていただきながら事務局として整理し、御相談させていただく形にしたいと思います。
 いずれにしましても、この量子分野は特に今までの量子ビームから新しい量子技術、量子コンピュータであったりセンシングであったり、広範に注目される大変今後のポテンシャルを感じさせる大きなフロンティアの分野でございますので、これまでにないような発想で新しい施策を生み出せたらなと思いますので、ぜひとも御指導、御支援のほどよろしくお願いします。
 本日はどうぞよろしくお願いいたします。
【機構・総括係長】  それでは本日の配付資料の確認をさせていただきます。委員の先生方には事前にメールで送付させていただいております。本日の配付資料は議事次第に一覧を記載しております。もし不足などございましたら事務局まで御連絡ください。
 次に、オンライン会議の留意事項について御説明させていただきます。まず、通信を安定させるため、御発言されるとき以外はマイクをミュートにしていただければと存じます。また御発言される際にはミュートの解除をお願いいたします。議事録の作成のため速記者を入れておりますので、御発言の際にはお名前を言っていただくようにお願いいたします。会議中にトラブルが発生した場合には、事前にお知らせしている事務局の電話番号にお電話いただければと存じます。
 なお、本日は議題1、主査代理の指名を除き、報道関係者、一般傍聴者によるWebexでの傍聴を認めておりますので、その点、御了承ください。
 それでは議事に入る前に、本日は第12期における1回目の委員会となりますので、簡単に委員の皆様の御紹介をさせていただきます。私から資料1の名簿の順にお名前をお呼びいたしますので、その際はお手数ですけれども、画面をオンにしていただき、マイクのミュートも解除いただいて一言頂ければと存じます。それでは読み上げさせていただきます。
 青木隆朗委員。なお青木先生は後ほど御退席の御予定でございます。
【青木委員】  早稲田大学の青木でございます。よろしくお願いいたします。本日3時頃から退室させていただきます。よろしくお願いいたします。
【機構・総括係長】  続きまして岩井伸一郎委員。岩井委員は15時頃御退席の予定でございます。
【岩井委員】  東北大の岩井と申します。よろしくお願いいたします。
【機構・総括係長】  続きまして大森賢治委員。大森委員には本委員会の主査を御担当いただきます。
【大森主査】  大森でございます。前期に引き続きお世話になります。よろしくお願いいたします。
【機構・総括係長】  続きまして川上恵理加委員。
【川上委員】  理化学研究所の川上です。よろしくお願いします。
【機構・総括係長】  小杉信博委員。
【小杉委員】  KEKの物質構造科学研究所の所長の小杉です。よろしくお願いします。
【機構・総括係長】  小林研介委員。
【小林委員】  こんにちは。東京大学の小林です。今回から参加させていただくことになりました。いろいろ勉強したいと思います。どうぞよろしくお願いします。
【機構・総括係長】  早瀬委員は現在接続がうまくいっていないため、まだ出席にはなってございません。
 続きまして、水落憲和委員。
【水落委員】  京都大学の水落です。どうぞよろしくお願いいたします。
【機構・総括係長】  続きまして美濃島薫委員。
【美濃島委員】  電通大の美濃島です。前期に引き続きよろしくお願いいたします。
【機構・総括係長】  続きまして向山敬委員。
【向山委員】  向山と申します。去年まで阪大にいたのですけれども、今年から東工大に移りまして、引き続きよろしくお願いいたします。
【機構・総括係長】  続きまして山田真治委員。
【山田真治委員】  日立製作所の研究所におります山田です。よろしくお願いします。
【機構・総括係長】  続きまして山田真希子委員。
【山田真希子委員】  QSTの山田真希子です。今回新たに参加させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
【機構・総括係長】  早瀬委員が接続できました。それでは早瀬潤子委員、一言お願いいたします。
【早瀬委員】  慶應義塾大学の早瀬です。よろしくお願いいたします。
【機構・総括係長】  ありがとうございます。
 なお、畑中美穂委員でございますけれども、後ほど御参加される予定でございます。
 以上13名となりまして、なお畑中委員、早瀬委員におかれましては委員委嘱手続中でございまして、大変恐縮ではございますけれども、7月以降に正式に委嘱予定となってございます。
 事務局からは以上になります。以降の議事進行については大森主査にお願いいたします。
【大森主査】  ありがとうございます。今期の主査を仰せつかっております大森でございます。よろしくお願いいたします。
 私もかれこれ立ち上げの時分から携わってきましたので、もう10年ぐらい、もうちょっとで10年になるのですけれども、その間、量子技術は産官学も全般的にプレゼンスは増すばかりでして、これからも国際競争が続いていくと。この上で、量子技術を発展させていくことはもちろんですけれども、そのためには今後特に、迫田室長からも御挨拶いただいたように、人材育成といったところが大事になってくるとともに、国際的な人材獲得といったところで各国の今後の量子技術の推進の差が出てくるように思いますので、そういったことも含めて議論していきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 本日の議題は5つございます。まず、本委員会の主査代理の指名を行い、続いて運営規則案、量子ビーム利用推進小委員会の設置などを審議いたします。その後、4つ目の議題として、文部科学省及びJST/CRDSより最新の政策動向と研究開発動向を御説明いただき、質疑応答を行います。最後に5つ目の議題として、第12期の本委員会の活動案について審議を行います。
 それでは早速議題1に移ります。「主査代理の指名について」です。事務局は傍聴者の退室手続をお願いいたします。
【機構・総括係長】  ありがとうございます。
 傍聴者の皆様、大変恐縮ではございますけれども、一度御退室をお願いいたします。
(傍聴者 退室)
(傍聴者 入室) 
【大森主査】  では続いて議題2に移ります。「議事運営について」です。事務局より説明をお願いします。
【機構・総括係長】  ありがとうございます。本委員会の運営規則案についてでございます。委員会の運営に必要な事項のうち、親委員会である科学技術・学術審議会令及び科学技術・学術審議会運営規則、並びに研究計画・評価分科会運営規則もございますけれども、そちらに定められていない事項については本委員会の運営規則として定める必要がございまして、その案になってございます。
 具体的には、小委員会ですとか作業部会が設置できるということでしたり、過半数の出席をもって会議の開催とする旨、また、書面による決議ができる旨、あとは欠席に関する事項ですとか会議の公開に関する事項、議事録の公開、主にこういった事項が記載されてございます。こちらの内容については基本的に毎期同じ内容となってございますので、今回も前期からの踏襲という形で案を作成してございます。
 事務局からの説明は以上になります。
【大森主査】  ありがとうございました。それでは本案を委員会の運営規則などとして決定してよろしいでしょうか。
(異議なしとして了承)
【大森主査】  それでは異議なしとして決定させていただきます。
 それでは次の議題に移ります。
【大森主査】  「量子ビーム利用推進小委員会の設置について」です。資料3のとおり、今期も引き続き、先端的な量子ビーム技術の高度化及び利用促進方策について調査検討を行うため、小委員会を設置することといたしますが、御意見などありますでしょうか。なお、当該小委員会の委員及び主査については小委員会の事務局にて検討中であり、今後量子科学技術委員会の主査である私より任命予定です。もし御意見などありましたら御発言をお願いいたします。よろしいでしょうか。
(異議なしとして了承)
【大森主査】  それでは異議なしとして、議題4に移ります。議題4は「政策、研究開発に関する最新動向について」です。文部科学省量子研究推進室及びJST/CRDSより量子技術に関する最新の動向を御説明いただき、その後、質疑の時間を設けます。まずは政策の最新動向について、文部科学省の迫田室長、お願いいたします。
【迫田室長】  迫田でございます。よろしくお願いいたします。本日は冒頭御挨拶で遅れましたけれども、15分ほど遅くなりまして大変申し訳ございません。いろいろと我々の不手際で皆様のお時間を頂戴しまして大変恐縮でございます。
 それでは量子技術に関する政策動向ということで、最新の動向につきまして私から御説明差し上げたいと思います。
 目次としましては、最新の「量子未来産業創出戦略」という新しい戦略と、今後の取組、まとめということで御説明差し上げたいと思います。後ほど議論させていただく今後の本委員会での検討事項にもつながる話でございますので、その議論をする前提として、今どんな政策が打たれているのかということについて御説明できればと思います。
 既に御存じの方もいらっしゃるかと思いますけれども、昨年4月に「量子未来社会ビジョン」という戦略を策定いたしました。これはやや大きな、量子技術を使った未来社会とはどのような姿なのかというビジョンであったり、またそのビジョンに向けた大きな方針についてまとめたものでございます。
 ここでは量子技術活用イメージとして様々な分野で量子技術を使って、これはコンピュータのみならず、センシングだったり通信も含みますけれども、こういった用途を開拓していきましょう、また社会実装に向けて、研究であったり、産業であったり、そういったことに取り組んでいきましょうということを書いたものでございます。まだまだ先がかなり長いものや、社会実装が近いのかなというところは種々ございますけれども、こういったところで量子技術を使っていきましょうということで政府の取組として、方針として決めているものでございます。
 こういった大きな方針とともに、具体的な数値目標も決めましょうということで、量子技術の利用者を1,000万人にしましょうとか、生産額を50兆円規模にしましょう、ユニコーンベンチャー企業を創出しましょうというような、3つの目標も決めているものでございます。これはなかなか野心的な目標でございまして、本当に実現するかどうかというところはこれからの取組次第でございますけれども、しっかりとこういったところをKPIにして取り組んでいくといったところを目標にしております。
 未来社会ビジョンを策定したところではあるのですけれども、特に今、基礎研究から産業の技術移転だったり、また基礎研究と産業の距離がかなり縮まっておりますけれども、そういったときに産業戦略としてどうあるべきなのかということで、ビジョンや大きな方針はともかくとして、具体的なアクションプランといったものがないじゃないかという御指摘を多々各方面から受けまして、3番目の産業の戦略を策定したところが、今回この4月にまとまった量子未来産業創出戦略の背景でございます。この3つの戦略の行き着く先は先ほどの未来社会ビジョンであったり、また2030年目標、1,000万人・50兆円規模・ユニコーンベンチャーというところは変わりないと。同じ目標を目指すといったものでございます。これが4月14日、先々月にまとめたものでございます。
 本日はこれを中心に御説明させていただくとともに、また具体的な取組も含めて、あとは今後の積み残しみたいなところも含めて御説明差し上げることができたらと思います。
 未来創出戦略については先ほど申し上げましたとおり産業の3つ目の柱ということで、産業関係の量子技術の実用化・産業化に向けた具体的なアクションや支援策について書いたものでございます。
 大きく3つの視点を大事にしたいということで、戦略では取り上げております。一番下に書いていますとおり、コラボレーションであったり、アクセシビリティーであったり、インキュベーション、この3つの視点を大事にするということでございます。
 1つ目のコラボレーションは、量子技術だけでは、これはAIも同様でございますけれども、量子技術はあくまでも産業にとってはツールの一つであると。生産性向上であったり、新産業創出のツールであるという観点から、多様な産業、上のほうに量子技術を囲む小さな丸がございますけれども、材料化学であったり、健康医療であったり、まちづくりであったり、各分野のセクターとコラボレーションしていくことが重要であるといったところで、コラボレーションをうたっております。ですので、量子技術に閉じるのではなくて、オープンな観点で様々なユーザー、産業であったり、また周辺技術の産業とコラボレーションしていくといったところをうたっております。
 また、周辺分野の方々とコラボレーションするためには、やはり量子技術はまだ実際に使うとなるとなかなかハードルが高いところがございますので、アクセシビリティーといったところも、産業界に開かれた量子技術の利用環境の実現といった観点でアクセシビリティーもしっかりと確保していきましょうということを書いております。
 また、この量子技術はまだまだほとんど実際の市場が少ない状態でございますので、こういったプリミティブな段階、または今後新しい市場がほとんど0→1で生まれるような市場においては、やはりスタートアップ、ベンチャーといったところのアジャイルかつ新しい市場を切り開けるようなプレーヤーが重要になってくるだろうということで、スタートアップ、ベンチャー、また既存企業からのスピンアウト、カーブアウトベンチャーの支援、新事業の創出支援、インキュベーションといったところもうたっております。
 これは目指すべき未来産業のイメージでございます。これはどちらかというと産業の本当に具体的な絵姿というよりも、フォーマリティーといった姿勢であると。仕組みであったりそういった体制づくりといったところをうたったものでございます。
 特に基礎研究と産業の距離が縮まっていますので、産学官連携であったり、スタートアップ創出・成長であったり、また日本国内だけではなかなかサプライチェーンであったり技術的な全体のシステム構築も難しい時代でございますので、グローバル連携・展開を有志国とも連携しながら水平・垂直の連携を図っていく。また、下にありますとおり、先ほど申し上げました量子技術に様々な産業であったり、国民の皆様がアクセスできる環境づくりをしていきましょうと。また、多様な産業の参画・協働・共創をしていくといったところをうたっております。
 実用化・産業化の主な課題です。皆さんに参入してくださいといったときに、やはりそうはいっても現実問題として、産業でございますのでしっかりマネタイズしなければいけない、収益を上げて初めて産業は持続可能なビジネス、存続ができますので、そういったところを乗り越えるために向けて、ビジネスにしっかりと振り向けるための課題をまとめました。
 1つ目が量子活用の効果的なユースケースが少ないといったこと。またハードルが高いことであったり、将来の技術・市場が不透明で事業リスクが高いと。これは量子コンピュータでもかなり顕著だと思うのですけれども、量子コンピュータはイオントラップであったり、超電導であったり、光であったり、様々な技術がありますけれども、勝ち筋がほとんどまだ決まっていないと。誰も予測ができないと。ただ、これに対して投資が行われているという、なかなか先取りしたような業界でございますけれども、そういったところでやはり不透明で事業リスクが高いところは正直あるだろうと。
 また、スタートアップ・新事業の創出・成長の環境が不十分と書いていますけれども、長期的には2030、40ぐらいに本当の市場が生まれるのではないかといったところが予想されている中で、やはり長期的な投資が必要になってくると。長期戦を臨まなければいけないところでいうと、スタートアップをこういった長期的投資で支えて支援していくためには、まだまだ日本の環境は不十分なんじゃないかという指摘もございました。
 また、産業人材が不十分ということでございまして、これはもう産業人材のみならず、研究人材、全体の人材が世界的にも不足しているということでございますけれども、こういった5つの課題があるといったところでまとめたところでございます。
 こういった課題に対してどういった取組をしていくのかということで、基本的対応方針として5つほど示しております。
 1つ目はユースケースづくり支援ということで、経営者視点で本当に魅力的なユースケースづくりを支援していくこと。また利活用による効果・性能指標を冷静な視点で量的な指標を設定していく、示す必要があるのではないかと。それによって投資が喚起できるのではないかということで、今、施策としてこれから取り組んでいきましょうということで目指しております。
 また、利用環境整備ということで、これは公的な機関であったり、または産業との関係で民業圧迫にならないような観点での前提でございますけれども、量子コンピュータ等の利用環境整備であったり、産業界への教育プログラム、技術支援等の各種プログラム提供であったり、新規参入に対する情報提供もしていきましょうということも大きな方針として示しております。
 また、事業リスク対応としては、将来の技術方式が決まっていないような量子コンピュータの世界で単一の企業だけではなかなか投資リスクが高いところがありますので、例えば複数の企業が共有できるようなインフラがあれば、そういったところを設備整備していくとか、また共通部品があれば、例えば複数社で共同出資し合って合弁会社をつくって製造していくとか、そういったリスクをなるべく低減するような対応も必要ではないかといったところもありました。もちろん基礎研究のほうも一番リスクが高いところでございますので、ここは公的機関がしっかりと出るべきでしょうというところも示しております。
 また、スタートアップ等の創出に関しましては、長期的支援の仕組みであったり、起業人材育成、またアイデアコンテスト・ピッチコンテスト、エコシステム形成をしていきましょうといったところも書いております。これもまだまだこれから取り組むところでございますけれども、こういったエコシステム、イノベーション基盤をしっかりと整備していきましょうということで、今、準備をしているところでございます。
 産業人材育成は、とにもかくにも人材といったところが恐らく研究でも産業でも重要になるのかなと思いますけれども、産業人材向けの、例えばですけれども異分野向けのプログラムの提供であったり、これは即効性のあるようなプログラムですけれども、中高生向けの、やや若い方々向けのプログラムであったり、縦と横の教育プログラムの充実に努めているところでございますし、また今後も充実させたいと考えております。
 具体的な取組でございますけれども、こちらはこの委員会に関連する取組だったり、また特に代表的なプロジェクトを後ほど説明いたしますけれども、こういった量子コンピュータであればソフトウエア・利用環境整備であったり、ハード、基盤技術の整備であったり、こういった取組を行っているところでございます。
 また、イノベーション基盤であれば、グローバル連携・展開の官民一体となった海外展開の支援であったり、それを支えるような対話・交流の枠組みであったり、またスタートアップであればインキュベーション事業者、パートナー企業とのマッチング支援であったり、起業家人材育成も行っているところでございます。
 ほかにも産業人材の育成、また、Q-STAR、産業団体がございますので、Q-STARと量子技術イノベーション拠点のアカデミアと産業界のパートナーシップの構築であったり、標準化・知財化・ベンチマーク設定等であったり、そういったところも含めて、今、様々な観点から取り組んでいるところでございます。
 また、量子技術イノベーション拠点の強化も図っております。既存拠点の強化、産総研であったり理化学研究所、また量研機構の拠点の強化であったり、また様々な分野とのコラボレーションという観点でいえば、化学・材料分野に強い大学の量子分野への参入を促すべく、東海機構にも追加で拠点になっていただいたりしております。
 全体像でございますけれども、11拠点になりまして、新しい拠点も含めて、しっかりと研究開発から産学官連携、国際協力までしっかりと強化していく、強力に推進していく予定でございます。
 こういった戦略を踏まえて、今後の具体的な取組でございます。今、政府プロジェクトマップで、主に大きなプロジェクトとしてはこのような取組がございます。縦軸が基礎研究から産業化・大規模化のところ。横軸が量子コンピュータのハード・ソフト、また量子アニーリングマシンといったものでございます。量子コンピュータに特化したような形で書いていますけれども、センシングも似通ったところかと思っております。
 産業化・大規模化につきましては、ムーンショットで誤り耐性型コンピュータということでこのプロジェクトが動いております。また、アプリケーションや、先ほどのユースケースづくりといった観点では、産業に近いところの支援ではSIPが今年度から始まる予定でございます。今、公募中でございます。真ん中にあるのはQ-LEAPですね。これは伝統的なプロジェクトでございますけれども、真ん中のところで基盤的な取組を行っていると。またアニーリングマシンはやや出口に近いところもございますので、NEDOプロジェクトで支援しているところでございます。下のほうにさきがけ、戦略的創造研究推進事業ということで、本日御参加いただいている小林研介先生も総括になっていただいていると思いますけれども、こういった取組を行っているところでございます。またこの下に科研費や、そういった基礎研究がございます。また、ソフトウエア関係でいうと、未踏ターゲット事業、共創の場といったような中心的な拠点事業も取り組んでいるところでございます。
 最初にSIPのプロジェクトでございます。特に量子未来産業創出戦略の具体的なアクションを実行していく場としてSIPを今設定しております。5月から公募を開始しておりますけれども、量子ソフトウエア、セキュリティーネットワーク、センシング、イノベーション基盤、これにつきましてしっかりと具体的な産業支援を中心とした取組を行っていく、また、研究から産業への橋渡しの支援を行っていくといった取組でございます。
 具体的にはこの課題の構成でございますけれども、この4本柱に従ってテストベッド構築であったり、ユースケース開拓であったり、先ほど申し上げました経営者にリーチするようなベンチマーク・標準化、量子技術を使うことでいかにこの量子産業にとってメリットがあるのかということもしっかりと同定していきましょうということで、これも産学が連携しながら検討して、社会に示していくといったところも考えております。
 また、サプライチェーン強靱化、有志国とも連携しながらいかに強靱なサプライチェーンを構築し、国際競争力のある量子コンピュータのハードやセンシング、通信などをつくっていくのかというところも含めて、今議論をしているところでございます。これはぜひ、今公募中ですので、関係者の皆様に周知していただければと思います。
 次はムーンショットでございます。こちらは本日出席していただいている大森主査にも御参加いただいているプロジェクトでございます。量子コンピュータのハードもので、ハードといいますか、誤り耐性コンピュータ、FTQCですので、誤り耐性型のアルゴリズムを含めて、ソフト・ハードをフュージョンしたようなプロジェクトでございますけれども、この制度の中ではかなり大きなプロジェクトということで位置づけております。
 研究開発の内容としましては、こういったハードウエア、様々な方式であったり、またそれを横串でつなぐ、異なる量子計算をつないで大規模化していくような通信ネットワークのプロジェクトであったり、またこの誤り耐性、将来のFTQCに向けて誤り抑制の研究も行っているものでございます。
 Q-LEAPでございます。こちらは文部科学省のプロジェクトでございます。上のムーンショットとSIPは、一応といったらあれですけれども、内閣府の主導するプロジェクトでございまして、Q-LEAPは文科省のプロジェクトでございます。こちらは何回もこの場で御説明を差し上げていました。恐らく本日御出席の方はもう釈迦に説法かと思いますけれども、歴史的な、本年度で6年目を迎えるプロジェクトでございまして、量子情報処理や、計測・センシング、次世代レーザー、人材育成も含めて総合的に行っているプロジェクトでございます。本年3月に大きな成果として国産コンピュータをリリースしたものでございます。こちらがリリースしたものでございまして、3月にやっと国産コンピュータができたということで、報道でも大変注目されたものでございます。
 また、Q-LEAPの取組として人材育成で、冒頭申し上げましたけれども人材育成プログラムをこの委員会で前の期で御議論いただいたものがようやくビジブルになって具体的な取組として実行したものになっております。
 左上にありますとおり、若年層・大学・産業人材、人材育成のプログラムは様々な層に向けてプログラムを提供しておりました。今まで提供しておりましたし、これからも提供する予定でございますけれども、この様々な層に向けたプログラムの充実を図っていくと。ブルーオーシャンは恐らく若年層の教育であったり、また、こういった点になったプログラムをつなぐような取組がブルーオーシャンかなという御指摘・御提案を受けていたものですけれども、今年度から面的にこういったものをつなぎましょうとか、また若年層にもプログラムを提供するということで、QunaSysさんが事業者として受託されて、これからプログラムを行っていくところでございます。こちらのほうは折に触れて進捗状況の提供であったり、また今後の施策の議論もしていただきたいなと思いますので、重点的に御検討、御指摘、御指導いただきたいなと思っております。
 やはり文科省の役割として研究と教育が2つ、これはどこの他省庁にもなかなかできないところでございますので、産業界もなかなかこれはやりにくいところもございますので、我々がしっかりとここは主導するところに意味があるのかなと思いますので、ぜひその観点から今後も御議論、御指導、御鞭撻いただければと思います。
 下がさきがけ、CREST等でございます。こちらは本当に将来のブレークスルー技術、まだまだ技術が決まっていない世界において、今後本当に実用化しようとしたらブレークスルー技術が必要だと言われている中で、そういった技術の担い手になるような新しいパラダイムを切り開く若手の人材育成をするプログラムでございます。
 今年度から量子フロンティア開拓のための共創型研究ということで、東大の井元先生に領域総括になっていただいて、先ほど量子技術戦略でも未来社会ビジョンでもこれは提案したのですけれども、様々な分野と連携しながら、システム化であったり、新しいパラダイムを開拓していくような研究を行っていきましょうということで、量子フロンティアを開拓するための様々な分野との共創型研究といったプロジェクトを今年度開始しているところでございます。
 前のCREST、さきがけどちらもですけれども、このさきがけは昨年度に始まったものでございまして、こちらは本日御参加いただいている小林研介先生に領域総括を務めていただいております。日本では量子物性分野はかなり強い分野でございますし、研究人口も多いところで、ここと量子情報の融合で新しく、量子物性の知見がありながらまた量子情報も開拓できるような人材育成、また2つの分野の出会いを意識して、この新しいさきがけ領域を去年から立てております。こちらも大盛況と聞いておりまして、今、大変先進的な研究者の方々に、若手研究者の方々に研究開発を進めていただいているところでございます。
 一番下が共創の場でございます。こちらはオープンイノベーションを様々な産業と連携してプロジェクトを進めましょうということでございます。2拠点ほど、大阪大学さんと東京大学さんがございまして、産業界と連携しながら新しい量子アプリケーション、ソフトウエアをつくっていきましょうという取組を行っております。大阪大学は北川先生に拠点長になっていただいて、様々な側面から企業と連携しながら研究開発を進めていただいております。こちらは昨年度に発足したプロジェクトでございますけれども、東京大学です。こちらは東大の藤堂先生に代表になっていただいて推進しているところでございます。西と東にこういった拠点がありまして、これからしっかりとソフトウエア関係の拠点を設けて人材育成また産学連携、新しい産業創造をしていくといった拠点の整備が行われたところでございます。
 またQ-STAR、ここもかなり活発に活動が行われていまして、現在80社加盟したということでございます。発足当初は二、三十社だったのですけれども、80社になったということで、これからこのQ-STARは、組織的に産業界のまとまりである団体と、また先ほど申し上げました量子技術イノベーション拠点、理研、産総研、QSTであったり、QIHと言われている量子技術イノベーション拠点との組織的な連携が今後期待されるのかなと感じております。
 まとめでございます。時間が超過して大変恐縮でございます。最新の政策動向としては未来産業創出戦略を策定いたしましたということで、3冊ほど戦略を策定しましたので、これからは実行していくフェーズでございます。様々な政策を、SIPをはじめとしてしっかりとこれから実行していきますし、また足りないものがあれば、こういった委員会の場で御議論いただきながら、サプリメントとして施策として打っていきたいと思いますので、ぜひとも御意見を頂ければと思います。
 3つの基本的な考え方、こちらはもう言わずもがなでございますけれども、しっかりと様々な分野と協業していき、量子分野だけで閉じないような人材育成や産業でのアプリケーションづくりを行っていくといったところが重要なのかなと。また、アクセシビリティー、インキュベーション含めて取り組んでいきたいと思っておりますので、ぜひともこの場で積極的に前向きな御意見を賜ることができましたら幸いでございます。
 私からの説明は以上でございます。急ぎ足となりまして大変申し訳ございません。よろしくお願いいたします。
【大森主査】  迫田室長、ありがとうございました。
 ただいまの説明について御質問などありましたら御発言いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【機構・総括係長】  事務局でございます。大変失礼します。
 先ほど畑中先生が入られましたので、お知らせだけさせていただきます。
【大森主査】  私から頭出しで御質問させていただきます。量子技術は各国非常に力を入れてやっておりますので、もう完全に国際競争の分野ですけれども、どうやって外国に差をつけるかという点が一番大事かと思うのですが、今ここで走っている政策で、ここで外国とは差がついていくんじゃないかとか、あるいは今後こういうことをやったら外国と差がついていくんじゃないかとか、そういった面について何かビジョンがありましたら教えていただきたいと。
 というのは、やっぱり量子技術、特に量子コンピュータですけれども、室長もおっしゃったようにもう完全な0→1案件で、今から開発が進んでいって、恐らく早ければ数年後とか、あるいは先ほど言われたように2030年ぐらいにいきなりあるスレッシュホールドを超えたマシンが出現して、そこが相当の部分を取っていく事態も考えられなくはないので、協調はもちろん大事ですけれども、やっぱり競争に勝つのが一番大事です。そこについて何かビジョンがありましたら、あるいは今御説明いただいた政策上のポイントがありましたら教えていただきたいなと思います。
【迫田室長】  ありがとうございます。
 私ども、やはり産業戦略をつくるときに結構いろいろと、強みであったりそういったところを分析はさせていただきましたけれども、何点か日本の伸ばすべき強みはあるのかなと思っています。
 1点目は、ムーンショットが先ほどございましたとおり様々な、イオントラップだったり、大森先生の冷却原子だったり、超電導だったり、様々な技術を我々は幅広く総合的に持っているところが強みかなと思っております。ですので、今後本当にパラダイムが変わるような技術があった場合に、そういったところに素早くキャッチアップできていく、変化に追随していくところは可能なところがあるのかなと思っています。まだまだ、何といいますか、古典コンピュータでいえば真空管レベルのものかと認識しておりますので、古典でいうと今、ENIAC、真空管コンピュータができて七十数年ぐらいたっているぐらいですので、やはり70年ぐらいかけて本当に新しいブラッシュアップしたビジネスでつくっていくものですので、まだまだ勝ち筋は分かっていないと思いますので、今のうちは様々な技術を、多様性を持って探っていく段階かなと思っています。
 ただ一方で、なかなか日本の資源も限られているところもございますので、ある一定程度たったときにステージゲートをしながら絞っていくのかなと思っております。特にムーンショットに関しましては、2年か3年後ぐらいにステージゲート評価で絞っていく段階になりますので、その時に一定程度方向性は立てられるのではないかなと思っています。ただ、まだまだ決まらないけれどもねということで、多様性ということで引き続きやりましょうという結論もあるかもしれませんけれども、折に触れて絞っていく姿勢も重要なのかなと思います。
 あと、もう一つ強みとしましては、産業の面で申しますと、先週ですかね、日経新聞でもずっと取り上げられていたと思うのですけれども、部品、コンポーネントですね。我々、日本は幅広い部品であったりデバイスであったり、そういった部素材であったりを持っている、強みを持っている企業が中小企業を含めてたくさんございます。そういったところを今、海外企業もかなり日本のこういった裾野の広い産業力というか技術力、製造能力にかなり期待しているところもございますので、こういったところで力を発揮しながら、例えばですけれども、フルスタックとかを本当は目指したいところでございますけれども、フルスタックを取れない場合でも部素材であったり、生産・製造能力で、生産装置であったり、またTSMCのような生産でマネタイズ、GDPとしてしっかりと確保していく、そういったところも戦略としてあるのかなと思っております。これもこれからサプライチェーンの議論もしていく段階でございますので、日本の強みがどこにあるのか、また日本の強みを生かしてどういった産業を構築すればいいのかは、今後SIPや政府部内の場で議論していく予定でございます。
 そういったところが以上でございます。回答になっているかどうか分かりませんけれども、よろしくお願いいたします。
【大森主査】  ありがとうございます。非常に重厚な資料をお作りいただいて、非常に感銘を受けている次第です。
 ほかに御質問等おありでしたら、積極的にこの機会ですので御発言いただきたいと思いますが。
【岩井委員】  よろしいでしょうか。
【大森主査】  岩井先生、どうぞ。
【岩井委員】  ありがとうございます。大変すばらしい計画だと思うのですけれども、ちょっと教えていただきたいところがあります。 資料の4ページとか9ページにこの全体像みたいなものが書いてあって、大変分かりやすいなと思ったのですけれども。この中で、いろいろな出口のイメージがあります。今、私が見ているのは4ページですが、9ページにも同じような絵がありました。例えばこの中で材料化学だけはほかの項目とはちょっと違って、それ自体が目的ではないわけですよね。私はこの材料化学がこの中に入っているのは大変すばらしくて、非常に大きな可能性を秘めている、未知数な部分を秘めているので、ここにこれが入っているのは大変良いと思います。ただ、逆に言うと、その位置づけはとても難しくて、具体的なアウトプットに向けて、ここに書いてある新機能材料の開発とか化学反応の最適化をどう結びつけていくのか、どのように考えていらっしゃるのでしょうか。ボトムアップもトップダウンも両方あると思いますが、その辺の基礎研究からどうアウトプットにつなげていくのかという、戦略的な部分はどのようにお考えなのか、この絵の中では多分ややこしくて書けなかったと思うのですけれども、その辺りをちょっとお聞きしたいと思います。。
【迫田室長】  大変鋭い御質問をありがとうございます。何といいますか、この図の中で、ちょっとこれって最終的なサービスを書いている中に材料という基盤的なものがあるのはおっしゃるとおりだと思います。これは実は意識して書いておりまして、やはり日本というと……。
【岩井委員】  これ自体に私は反対しているわけではなくて。とてもすばらしいと思います。。
【迫田室長】  なぜここを書いたのかということは今後の戦略とかも関係するのですけれども、ここの化学、やはり材料産業は日本がかなり強いところでございますので。実はこのビジョンは企業へのアピールというか、経営者の皆様に自分ごととしてというか、投資対象として量子もあるんですよということをしっかりと情報提供していくためにこれを書いたものでございまして。材料産業、化学産業の方々にこういった開発であったり、最適化であったり、コストの削減であったり、そういったものがありますよということを示したものでございます。
 具体的には、先ほどちょっと紹介しましたユースケースづくりで化学産業の方にも入ってもらって、まだ企業名は申し上げることはできないですけれども、そういったところにしっかりと参入していただいて、化学×量子のところ、また材料×量子のコンソーシアムづくりであったりとか、ユースケースづくりであったりとか、そこを重点的にしたいと考えております。
 やはり量子コンピュータで力が発揮できるところもかなり有望な分野として化学・材料は示されていますし、また日本が強い産業でもありますので、生産性向上や、新しい素材開発、ここは日本の産業で強いところだと思いますので、ここを伸ばすべく意識して書いているところでございます。
 以上でございます。
【岩井委員】  ありがとうございました。全くおっしゃるとおりだと思います。材料・化学は日本がとても強い部分なので。一つ加えてお願いしたいことがあるとすれば、こういった量子科学、量子技術が本当に非常に盛んに研究できるようになって、そうすると材料化学や物質科学の観点からも一つのアウトプットとしての目標が新しくできたわけなので、そういう観点からも物質科学や材料化学もこれからどんどん新しく発展すると思います。そういうところもうまく取り込んで一緒にやっていただけたらなと思いました。ありがとうございます。
【迫田室長】  ありがとうございます。また、これはちょっとアピールというか、もう一つの戦略じゃないですけれども、人材の面でいうとQunaSysさんですね。QunaSysさんは化学×量子でかなり強いポジションですので、海外からも注目されている企業さんですので、こういったところにも協力のサポートをしていただきながら、化学×量子の人材育成面でもサポートしていただきたいなと思っておりますので、人材であったり、研究面であったり、産業面であったり、総合的に行っていく予定でございます。今後とも、頂いた御意見を踏まえながら進めてまいりますので、よろしくお願いします。
【岩井委員】  ありがとうございます。
【大森主査】  そのほか御質問、コメント等ございましたら、御発言を。
【山田真治主査代理】  よろしいですか。
【大森主査】  山田委員、どうぞ。
【山田真治主査代理】   産業化というときに、どうしても知財が気になります。13ページに標準化やベンチマークと並べて知財化という言葉は書かれているのですけれども、例えば企業が事業化を進めようというときに、日本の開発したものがどれぐらい外国の知財に対して守られているのか、あるいは国内でいろんな機関で部分部分を開発しますから、国として知財を使いやすくなっているのかは気になります。知財に関して、全体のそういうコントロールというか、そういうことはどのような考えで進められようとしているのかを知りたいと思いました。それぞれの事業の中で知財が一つも出てこないので、少しお考えだけでもお伺いできたらと思います。
 以上です。
【迫田室長】  ありがとうございます。この知財は、なかなか、じゃあ国で一括して制御するかということは難しい領域でございますので。基本的には民間の皆様の知財については民間の皆様に委ねるところをやっています。一方で、QIHとか国の影響が及ぶところで知財の獲得段階のところはしっかりと、昨今いろいろと知財を出願しようとすると本部のほうに止められたりとか、なかなか出しにくい状況だということは現場からも御意見を聞いていますので、この中にも、実はしっかりと知財を獲得しましょうということは、この概要紙には今書いていないですけれども、本文のほうにも書いているところでございます。
 一方で、じゃあ産業の知財はそのまま野放図かというとそうではなくて、産業界の皆様とも御相談させていただきながら、まずは知財化をする際にどういったベンチマークがあるのか、要するに例えば知財化するにも量子コンピュータの性能指標が定まっていないところには、物差しがないところになかなか知的財産の権益を確保できないので、まずはベンチマークみたいなところをしっかりと数値の目標を設定してくれたら、あとは企業のほうでそういったベンチマークを参考にしながら、知財化や標準化を出していくというような御意見を伺っていまして。そこはベンチマーク指標や根っこのところ、各企業に共通的なところは国で行っていく、その先については民間の自由経済に任せていくというスタンスでやっております。
【山田真治主査代理】  分かりました。ありがとうございます。
【大森主査】  そのほか御質問、御意見がございましたらよろしくお願いいたします。
【向山委員】  私からもよろしいでしょうか。
【大森主査】  向山委員、どうぞ。
【向山委員】  人材育成のところでちょっと教えていただきたいのですけれども、国内で人材をどのように育成していくかというところ、いろんな施策を考えていただいていて非常に強力な体制ができていきそうだなと思っているのですけれども、一方で、海外から人材をどのように獲得、呼び込んでくるかというところがもしあれば伺いたいと思っていまして。
 というのは、優秀な日本にいる方が海外に行く話はよく聞くのすけれども、優秀な海外の方を引っ張ってこられる先生は結構少なくて、本当に世界的にビジブルな先生はできていると思うんですけれども、なかなか孤軍奮闘といいますか、非常に少ないグループでという形になるので、やはりもっと海外の人材を獲得できればなと私は個人的には感じるんですけれども。そういったところに対して何か特別な支援とかプログラムとか、そういうことは何かあるのかを教えていただければと思います。
【迫田室長】  ありがとうございます。海外人材の獲得については、実は2年ぐらい前、例えばQ-LEAPなどで海外人材を獲得してくださいねということで、結構予算を措置させていただいたのですけれども、その後、コロナもあったかもしれないですけれども、なかなか海外から呼びにくいという御意見を現場から聞いております。
 そこがそもそも呼ばなかったというところもあったり、予算をこちらとしては海外人材で獲得してほしいのですけれども、呼べなかった方だったりとか、またそもそもがコロナ禍の影響でなかなか難しかった方もいたり、様々な形がありまして、我々としては、大きなプログラムというより、海外の人材を獲得する向けにちょっと上積みして研究費を乗せたりしているんですけれども、あと、研究者の皆様に海外人材を獲得していただきたいなという思いはずっとあるんですけれども、逆になかなか呼んでもらえないところは僕らとしては課題かなと思っております。
 政府で例えばトップダウンで人材交流プログラムというプログラムで出す手もあるのですけれども、なかなかそこは例えば硬直化してしまう可能性があるので、我々としては研究者の方々また研究機関が呼びたい人材を呼ぶところに価値があるのかなと思いますので、何も国を指定するとかしないで、分野を指定するとか、そういった硬直化を避けるために研究費の上乗せをまた推奨しているところでございます。
 ただ、どうしてもなかなか進まないので、今後恐らく議論していくと思うのですけれども、どうやってじゃあ海外から呼べるような対策をしていくのかというところは、多分いろんなレイヤーで、いろいろ研究者ができることであったりとか、できないところのビザとか在留資格とかそういったところもあるかもしれませんし、コロナ的なものもあるかもしれませんし。恐らく様々な課題があるかと思いますす。多分分解して考えないといけないと思うのですけれども、そういったところも今後議論できてもいいのかなというところは思っています。
【向山委員】  ありがとうございました。恐らくやっぱりお金だけではなかなか解決しないのだろうなというところは思いますので、議論がもしできるようであればぜひ深めていきたいなと思ったところです。
【迫田室長】  ぜひよろしくお願いします。
【向山委員】  ありがとうございます。
【大森主査】  これは先ほど私も言いましたけれども、人材獲得は物すごく大事な部分で、例えば本当に最先端、例えば量子誤り検出・訂正の実機に近いところの理論の人ってほとんどいないんですね、国内に。それはなぜかというと、アメリカがどんどんベンチャーを含めて人材をかき集めているから、日本に来ないんですよ。それをどうやって呼んでくるかは、一番大きな問題は待遇の違いが大きいですよね。例えば大学で雇用しようとしたらほとんど給与の額が決まってしまいますよね。アメリカは人材を集めようとしたら、もう日本の2倍3倍ぐらいは簡単に例えばスタートアップとかで給与として供給できるわけで。そこら辺の対策を取らないとなかなか難しい部分があるのかなと個人的には感じております。いずれ、こういった問題については今後この委員会でも検討していきたいなと思っていますので、皆さんよろしくお願いいたします。
 もう大分議論できたと思いますが、よろしいでしょうか。
【小杉委員】  小杉ですけれども。
【大森主査】  小杉委員、どうぞ。
【小杉委員】  人材エコシステムと書いている以上、人を増やすばかりではなくて、全体として流動性を持って発展的に考えないといけないのですけれども、そこまでの視野である程度プログラム化されているのでしょうか。先ほど70年とかいう話もありましたが、70年はちょっと長過ぎますけれども、その中にせっかく入った人材の力を伸ばせるよう、かといって同じことをやるんじゃなくて、いろいろこの分野で生かしていくシステムをつくらないといけないと思うのですが。
【迫田室長】  おっしゃるとおりです。よく研究人材、博士とかをつくって、結局研究ポストがなくて詰まりましたという話もよくありますので。そうならないようにしっかりと、例えばこの図でありますとおり、大学・研究機関から産業人材にしっかりと円滑に移れるような交流の場づくりですね。例えばですけれども、化学産業の方であったり、金融であったり、そういった方が量子をやっていることを、そういった産業が量子をやっていることを学生さんは知らないケースも多いので、こういった出口を、間口を、就職口をいかにつくっていくかというところも、一つの目詰まりをなくすところのものを政策として打ちたいなと思って、最初の交流の場づくりを示しているところでございます。
 ただ、受け手の産業もしっかりつくっていかなければいけないので、例えば先ほどのユースケースづくりとかを通じながら、ユーザー産業による量子技術の活用によるマーケットをつくっていくと。マーケットができればまた学生の就職先も出てくるだろうということで、こういったエコシステムを様々なところでやっていきたいなと思っております。
【小杉委員】  どうもありがとうございました。
【大森主査】  どうもありがとうございました。いずれにしても人材育成は非常に大事で、将来的な日本の国力を決める要素ですけれども、意外に人材育成の効果が出始める前に勝負どころが来る可能性も、今の量子技術の開発状況を見ているとうかがえますので、そういったところはやっぱり人材を外から獲得していくような政策が必要になってくるように思います。
 それでは次に進みたいと思います。次はJST/CRDS、佐藤様より、研究開発の最新動向を御説明いただきます。佐藤様、よろしくお願いいたします。
【佐藤フェロー】  JST/CRDS、ナノテクノロジー・材料ユニットの佐藤と申します。本日はお時間を頂きましてありがとうございます。本日は先に迫田室長から日本の政策については大分詳しく御説明いただいたので、私からは海外の話と、それから研究開発というよりは人材育成が海外でどうなっているかを皆さんに御紹介したいと思います。
 本日の内容はこのような流れで進めたいと思います。
 まず、各国の支援政策の動向についてです。2022年、大体300億ドルぐらい全世界で量子技術に投資がなされているということが、この調査会社が調査して発表されております。この調査自体は毎年発表されますけれども、2011年は230億ドルぐらいだったと思います。順調に量子技術に対する投資が増加しています。特にこの2022年は、それまで調査がされていなかったかは不明ですが、それまでになかった例えばスペインといった国が新しく入ってきておりまして、量子技術の投資の広がりが全世界的になされているのが見てとれます。
 日本の主な動きですけれども、この辺りは先ほど迫田室長から詳しく御説明があったので、この資料だけは見ておいていただければと思います。次に進みます。
 アメリカの動向ですけれども、Quantum Information ScienceのQIS政策として、国立情報科学技術研究所など、国の研究機関がそれぞれ量子情報科学に取り組んでいます。こちらに、量子技術への米国の投資の状況を示しておりまして、順調に増えていますけれども、2023年は2022年よりは少し減りました。しかし8億4,400万ドルというかなり大きな規模の予算が措置される予定であるという状況です。
 先ほどから人材育成がかなり重要だというお話がありまして、私どももそのように考えております。米国の量子人材育成では当然かなり力を入れてやっていますけれども、特に目立った動きとしては、初等教育のほう、幼稚園から高等学校までに至るK-12の教育期間に対してもかなり力を入れてきています。特に、ここには書いていないですけれども、国が力を入れるのは当然ですけれども、グーグルやマイクロソフトといった企業がこうしたところにかなり協力している状況が見てとれます。こういった教科書は例えばアマゾンで無料公開されている状況です。
 EUの量子技術教育です。これまでQuantum Flagshipの一環でQTEduというプログラムが走っておりまして、これがまさしく量子技術教育のプロジェクトで、2022年までなされておりました。実際その成果は、Resources for everyoneということで、誰でも成果物を使って量子教育を自分で自主学習できますし、例えばどこかの研究施設を実際に見る際には、ここに申し込めばいいという情報が全てここに集められている状況です。
 2023年になりまして、今度は人材へのニーズが高まっておりますので、そこに対応するために、例えば企業の中の人材のトレーニングをするプログラムが新たに立てられています。これはスペインのベンチャー企業が代表になっておりますけれども、こういった企業が中心となって企業人材も育成しようという動きが加速しています。
 欧州全体としては高性能コンピューティング共同事業というものがあるので、これを御紹介いたします。この事業の中で2023年後半までに量子コンピュータを6拠点に設置するために動いている状況です。どこにどう設置するかをリストにしておりますけれども、投資総額はこれだけの大きな額の投資をしていくということです。出口としてはデジタルツインとか物流の最適化、それから仮想環境での開発と実証実験を目指している状況です。
 中国政府の動向です。中国政府はオフィシャルな発表がなかなかないので、内情がどれだけ正確につかめているかはJSTもなかなか確たるところが言えないですけれども、中国は14次5か年計画が2021年に発表されておりまして、その中では量子情報技術は、やはりここに並んでいるほかの技術と同様に、テクノロジーフロンティア分野における研究であって重要であるとされています。それから国防・軍、軍事に関しても量子技術は非常に重要なものであると記載されております。実際どれぐらいの金額が中国として投資されているかは、正確なところはなかなかつかめないですが、各調査会社がそれぞれの調査結果としてこのような金額を、これぐらいでないかと推測して発表しております。
 各国の状況を一覧にまとめました。もちろんこれだけではないと思いますが、目につくところだけをまとめておきましたので、後で御参考にしていただければと思います。
 次は各国の開発状況、技術の現状です。JST/CRDSでは2年に1回、研究開発の俯瞰報告書を発行しております。2年かけて調査して発行しており、ナノテク・材料分野の報告書のほかにも、環境・エネルギーや、システム・情報、ライフと3つ分野があって、それぞれに俯瞰報告書が出ております。その報告書の中で紹介しているものを抜粋しております。量子技術はナノテクノロジー・材料分野を広く俯瞰した中でもかなり重要な課題であろうということでST/CRDSが今はこの辺りがトピックであるというところを10個抜き出していますけれども、その中でも量子技術はかなり大きな目立つ存在であると思っております。
 量子技術そのものの研究開発課題としては、量子コンピュータと量子センシング、量子通信、量子マテリアルの4つの大きな領域があると思っておりまして、その領域の中でそれぞれこういった技術課題・研究課題があると、思っております。この4つの課題の基盤となる共通の量子技術基盤も非常に重要だと思っておりまして、この辺りはもともと日本が得意だったところがベースとなって、この4つの領域をそれぞれ盛り立てていると見ております。
 量子技術と広く言いましても、技術の成熟度レベルがそれぞれの領域で異なっていることは我々も分かっておりまして、例えばNISQはもうTRL6に行き着こうかというところかと思いますけれども、誤り耐性の量子コンピュータはまだまだこれからという感じ、それからセンサーはもうすぐTRL6に行ってもいいかなというところまで来ていると思っております。
 少しだけ、昨年の研究で大きなことかなと思っているものを抜き出してきました。産総研で量子回路シミュレーションに成功し、41量子ビットをシミュレーションできるということで、実用的な量子ソフトウエアの開発がこれでかなり進展するのではないかなと思っております。
 それから、これは迫田室長でも御紹介がありましたけれども、やはり国産の量子コンピュータの初号機が公開されたことは日本の量子技術の進展にとっても非常に大きなことと思っております。最大64ビットということですが、64ビット全部がきちんと動くまでには少し時間を要するようですけれども、かなり大きな第一歩かなと思っております。
 次に、市場動向を紹介します。かなり幅広い応用分野で徐々に量子コンピュータの市場が広がっていくだろうということが現状予測されています。
 ただ、少し気になるデータがありまして、量子技術の新規スタートアップ企業の推移をまとめてある図があるのですけれども、この最後の2022年は年度の途中なので、ここはデータが集まっていないから少なめだということは置いておいても、スタートアップ企業の数が少し落ち着いてきているのかなという状況です。量子技術の中でも分野ごとに分離して見てみても、みんな少し落ち着いてきているかなという状況だと思います。
 その中にあって、日本は順番でいうと量子技術のスタートアップ企業数が今9番目ぐらいに位置しているということで、スタートアップ企業が、この辺はドングリの背比べかもしれませんが、多いほうであるということでかなり頑張っているほうではないかなと思います。
 それから論文動向です。量子コンピューティング、量子シミュレーションで論文動向を調査しますと、中国・米国が総論文数で圧倒的なのはそうなのですけれども、トップ10%論文を見てみると日本もかなり健闘しているなというのが見てとれます。量子センシングのほうでも同様で、中国と米国は圧倒的なのですけれども、トップ10%の論文数になると日本はかなり健闘していて、研究のクオリティーという点で日本は健闘して頑張っていると思っています。
 以上をまとめますと、まず、多額の研究開発投資が、結果、ここで継続されております。基礎研究だけでなく、実用化を目指すような動きがかなり加速してきているかなと思っています。量子人材育成に関しては、初等教育から博士、企業技術者のトレーニングまで幅広い分野の人材育成の取組が各国でなされてきています。ベンチャー企業の設立は2018年をピークに少なくなって落ち着いてきているかなというところで、理由としては、そもそも立ち上げられるような人材はベンチャーを立ち上げてしまっていることと、ハードウエアはある程度成熟してきたので課題が少なくなってきていること、ユースケースが少し不足していること、これに必ず使えるというものがまだ見えていない状況で、インベンターの興味が少し薄れてきている可能性もあると言われております。総論文数は米・中が圧倒的ですけれども、トップ10では日本はかなり健闘しているのではないかなと思っております。
 以上です。
【大森主査】  興味深い御報告をありがとうございました。
 ただいまの説明について御質問、コメントなどがありましたら御発言をお願いします。委員の皆さん、よろしくお願いします。
【小杉委員】  小杉ですけれども、よろしいですか。
【大森主査】  小杉委員、どうぞ。
【小杉委員】  20ページに量子コンピューティングの市場の説明があったのですが、先ほどの日本の取組状況の中に入っていない内容として、下から2番目のアグリカルチャー、農業が入っているのですけれども、これはどういう内容なのでしょうか。
【佐藤フェロー】  すみません。この中身についてはよく分からないのですけれども。恐らくセンシングとかそういった辺りで、応用としてアグリカルチャーが挙がっているのかなというのは一個あると思っています。
【小杉委員】  ほかのものは先ほどの御説明でも大体カバーしているようですが、アグリカルチャーだけが相当するものがなくちょっと変な感じがしたので。もうちょっと調べていただくと参考になるかなと。
【佐藤フェロー】  ありがとうございます。
【小杉委員】  量子ビームの中性子や放射光の応用としては農業も結構重要なターゲットであるのですけれども、これは量子コンピューティングなのでちょっと違うと思うので、その辺りが気になりました。
【佐藤フェロー】  おっしゃるとおりですね。ありがとうございます。
【大森主査】  ほかにコメント、御質問はございませんでしょうか。
【畑中委員】  はい、慶應義塾大学の畑中です。
【大森主査】  畑中先生ですね。どうぞ。
【畑中委員】  途中から出席してすいません。
 ちょうどここに売上高と書いてあったので、さっきまで人材育成とか、割とアカデミアの話が多かった、その前に知財の話も出ていましたけれども、売上げというところを見てちょっと引っかかったのですけれども、まだ量子コンピュータって研究の段階じゃないですか。研究の段階から売上げ、国として稼いでいくことを意識した活動をしたほうがいいと思っているということなのですかね。
 私なんかがずっともやもや思っているのが、量子アニーリングって日本発じゃないですか、西森先生たちの。でも量子アニーリングで稼いだのは日本じゃないじゃないですか。D-Wave社さんとかが稼いでいらっしゃって。そういうことの二の舞をしないのだというつもりで、売上げをあらかじめすごく強く意識されているのか。それはそれ、これはこれ。何の理論が芽を出すかはよく分からないからそれはそれ、みたいな感じなのか。
 もし、できた理論からは結構いろいろちゃんと国内で稼げるように考えるのであれば、それこそQunaSysさんとかがもっと大学に入りまくって、いろんなところのどこで誰が何をしているのかを分かるように動き回れるシステムがあったりしたほうがいいのかなとか、いろいろ思ったんですけれども。そういうことはどんなふうにお考えなのでしょうか。
【佐藤フェロー】  すみません。この売上げがどの程度確実性を持ってこの調査会社が報告しているのかというところは私どもも把握していなくて、確実なことは言えないのですけれども、QunaSysさんが今かなり努力されているところだと思いますけれども、やはり以前から量子コンピュータが役に立つと言われている最適化問題、輸送とか金融予測とか、そういうところに対する期待感があって、そこに対して例えばコンサルみたいな感じですね。そういうところに興味を持っている金融機関が例えばQunaSysさんに助言をもらいに行くとか、そういうところで売上げが上がっているのかなと思っています。
 なので、そこから翻って科学技術の開発をどうしていくかと考えたときに、どんな基礎的なことであっても、やはりその出口をきちんと考えて開発していかないと、皆さんの興味も、インベンターの興味もだんだん薄れてきちゃいますし、特に誤り耐性の量子コンピュータは、先ほど大森先生がもしかしたら20年後、30年後にできちゃうかもしれないとおっしゃっていて、そういう可能性もかなり高いと思いますが。一方で今、そうはいっても20年後、30年後かもしれない。その20年後、30年後までちゃんと興味を持ってもらう。逆に言うと、がっかりさせてはいけないと思うんですよね。こういうものができるできるとみんな言っているけれども、実はできないとなってしまうとすごくよくないと思いますので、きちんとできることを発信していく、こういうことを目指して私たちはちゃんとやっていますよということが重要じゃないかなと思っています。そういう意味では売上げも、希望的観測の部分もたくさんあると思いますけれども、ちゃんとうまくいけばこれぐらいの売上げが上がるはずですというところをきちんと示していくのは大事かなと思います。答えになっていますでしょうか。
【畑中委員】  示していくことを研究者にも努力してくださいというふうにするのですかね。
【佐藤フェロー】  私も元研究者なので研究者の気持ちもよく分かりますが、研究者はやっぱり自分のやっていることが20年後、30年後にこういうことに役に立ちますよ、ちゃんとこういうふうに社会を変革しますよということを発信していくことが重要じゃないかなと思います。
【畑中委員】  そうですね。まあ、そうなのですけれども。D-Waveさんアゲインみたいなことにならないための何かということは考えなくていいのですかね。
【佐藤フェロー】  いや、日本発の技術なのに、それが海外で取り上げられてということは過去にも……。
【畑中委員】  本人たちはうれしいと思うのですけれども、国としてはいいのかなと。私、自分が西森先生だったら、十分うれしいかなと思いますけれども。
【佐藤フェロー】  過去にもほかの分野でもそういうことがあったと思いますので、そういうところをやはりうまく目利きを、それはJST/CRDSが本務としている、頑張らなければいけないところですけれども、目利きである我々がそこを見逃さないように政策に打ち込んでいく努力が必要だと思っております。
【畑中委員】  分かりました。ありがとうございます。
【大森主査】  ありがとうございます。ちなみにD-Waveは今は経営状態が大分悪いですね。だからあまりこれからうまくいかないような見通しになっていると思います。
【畑中委員】  ありがとうございます。
【大森主査】  ほかにございませんでしょうか。
【水落委員】  よろしいでしょうか。
【大森主査】  水落委員、どうぞ。
【水落委員】  21ページ目と22ページ目のスタートアップ企業数が減っているところは目立つ点としてあると思うのですけれども、これはどのように分析されているのかを教えていただけますでしょうか。例えば統計上の何かまだ取りこぼしがあるとか、実際に減っている背景があるのか等を含めて、何か御存じのことがありましたら教えていただけますでしょうか。
【佐藤フェロー】  先ほどちょっとこの資料を表示したときに申しましたけれども、まず2022年のこの下がっているのは、まだデータがその時に2022年分全部が集まっていなかったということです。最後のデータはもうちょっと上だなと思っているんですけれども、ほかのこの辺で下がってきているのは、このレポートには明確に書いていなかったんですけれども、別なレポートでも同じようなデータが示されていまして、、大体4つぐらい理由があるだろうとそのレポートでは述べていました。
 1個目は、最後に私は申しましたけれども、そもそも量子技術を知っているヒューマンリソースが、スタートアップを立てられる人はもう立てているので、新規立ち上げがなくなってきているのだろうと。
 2番目は、10年ぐらい量子技術が立ち上がって、マーケットがある程度マチュアになってきているので新しい課題が減ってきていると。なので、ベンチャーを立ててまで解決しなければいけない課題が減ってきているのではないかと。
 3番目は、ユースケースがちょっと少ないのでだんだん何の役に立つのだろうというところが出てきて、投資をする人たちはちょっとモチベーションが落ちているのではないかと。
 4つ目がインベンタートレンズとありますが、これは(3)とも関係すると思うのですけれども、10年ぐらいたって、みんなだんだん、言い方は悪いですがちょっと飽きてきているということがあるんじゃないかなと、別なレポートですけれども分析されております。
 ちょっと定性的な話なので、定量的にはもう少し我々も調査しなければいけないかなと思っているところです。
 以上です。
【水落委員】  ありがとうございました。
【大森主査】  この減少は非常に面白くて、私がアメリカの連中と話していて、私が調査したわけではないのですけれども、アメリカの連中が言っている理由としては、やっぱり今はハイプサイクルになっているので、要するに空約束、ベンチャー企業がいっぱい夢のようなことを言って、時間がたっても実現できなかったということで、投資家のマインドが冷えているのは聞いたことがありますね。訴訟問題なんかも今起きています。
 あとは今、金利が高いので、金利が高いときはやっぱり企業は投資を渋るらしくて、それも一因になっているという話も聞きました。
【佐藤フェロー】  ありがとうございます。
【大森主査】  ほかにありますでしょうか。
 ではそろそろ次に進みたいですけれども。中国の論文のトップ10%が非常に少ないのは非常に興味深いというか。大体、政府の統計とかでも中国・アメリカに比べて論文数が物すごく少なくて、これは危機的だという話ばっかり出てくるのですけれども、こうやって10%で比べると中国が非常に低いですよね、パーセンテージとしてね。
【佐藤フェロー】  そうですね。たくさん出しているということが大きいと思うので。
【大森主査】  皆さん、よく知っておいたほうがいいかなという気はしますね。あと、途中で農業の話が小杉委員から御質問であったと思いますけれども。多分、これは推測ですけれども、やっぱり肥料の合成とか、ああいったところで量子コンピュータが役に立つとか、そういう感じの希望的なパースペクティブがあるのではないかなと思うのですけれども、違いますかね。
【佐藤フェロー】  すみません、私、さっき回答したときにセンシングではと言ったのですが、あの図はコンピューティングの話だったので、確かに大森先生のおっしゃるとおり、化学として窒素肥料の合成のあたりで役に立っているのかなと思います。
【大森主査】  何かそういう気もしますね。量子化学計算というかね。
【小杉委員】  あるいは気象環境変化のコンピュータの利用かなと思いました。
【大森主査】  はい、そういう関係かもしれないですね。農地をどういうふうに効率化して利用するかとか、そういう最適化問題とか、応用の余地はいろいろあるかなという気はします。
 ほかにないようでしたら、かなり時間が押しておりますので、次に進みたいと思います。佐藤様、どうもありがとうございました。
【佐藤フェロー】  どうもありがとうございました。
【大森主査】  それでは議題5に移ります。「量子科学技術委員会における第12期の活動について」です。事務局より説明をお願いします。
【機構・総括係長】  こちら、事務局でございます。
 JST/CRDSの佐藤様、御発表ありがとうございました。また、委員の皆様におかれましても大変活発な御発言・御議論をありがとうございます。
 その上で、今期の活動内容について資料5に案をおまとめしてございますので、御説明させていただきます。
 まず上からでございますが、(1)で記載しておりますとおり、今年4月に統合イノベーション戦略推進会議、CSTIにおきまして量子未来産業創出戦略が策定されてございます。こちらは先ほど迫田より説明させていただいたとおりでございます。そこで量子イノベーション戦略、量子未来社会ビジョンと並んで3つ目の柱となってございまして、これらを一体的に推進していくことが今後求められているところでございます。
 その点、本委員会においても産学連携ですとかスタートアップ企業の創出のための方策ですとか、人材の裾野拡大のための方策、また情報発信の在り方などについて、有識者からのヒアリングも踏まえまして、委員会の中で御議論できればと考えてございます。
 また、先ほど決議いただいた量子ビーム利用推進小委員会でございますけれども、こちらについては供用開始から約25年が経過しておりますSpring-8について、技術革新の進展等に対応した施設の高度化についての検討ですとか、今後供用が開始されますNanoTerasuの共用ビームラインの在り方についての検討でありますとか、量子ビーム施設間の連携について御議論頂くことを考えてございます。
 続きまして(2)でございます。科学技術政策全体として総合知の創出・活用を掲げさせていただいております。この量子科学技術分野においても、量子未来社会ビジョンにおいて「経済成長、イノベーション」ですとか「人と環境の調和、サステーナビリティー」「心豊かな暮らし、ウエルビーイング」というこの3つを価値観として掲げてございまして、これらの実現には人文・社会科学の知見が不可欠と考えております。こうした点についても委員会の場において様々な御意見を賜れれば幸いでございます。
 事務局からの説明は以上となります。
【大森主査】  ありがとうございます。
 ただいまの御説明について御意見などありますでしょうか。よろしくお願いいたします。何かございませんでしょうか。
 ないようでしたら、私が気づいたところでは、今日もいろいろ議論が出てきました人材獲得ですね。特に国際的な人材獲得。どうやって日本が量子技術に貢献する人材を国際的に日本に集めるかということについて議論するのがよろしいかと思います。いかがでしょうか。何か御意見がございましたら。
【水落委員】  よろしいでしょうか。京都大学の水落です。
【大森主査】  水落先生、どうぞ。
【水落委員】  先ほど大森先生から、大学のシステムとして、人事として獲得するのはいろいろハードルが高いのかなと思うのですが、可能な施策として、既にある施策として例えばCREST、さきがけ等で外国の方に来ていただくのもあると思いますし、既にいる方に研究を継続して発展させていただく施策もあるのかなと。例えば多様性という観点である一定の割合を設けるとか。例えば私が関与させていただいた量子生体という、さきがけのアドバイスをさせていただいたのですけれども、そこでは3名の外国籍の方がいらして、そういうような枠組み、一番うまくいくのが、研究が日本でうまくいくこと、成功例を出すことが一番の宣伝になるのかなと。日本に来たいと思っていただくということがあるのかなと思ったのですが。
 そういう観点で量研室の方への質問にもなるかもしれませんが、そういう統計とかは取っているのでしょうか。例えば全体の中でどのぐらいの割合で外国籍の方がいるかとか、応募件数が増えているかどうかとか。日本で外国籍の方が研究をしていただくことにいろんな問題が現状やっぱり大学であるかと思うのですけれども、そういう面でのサポートがあるといいのかなと思った次第なんですが、いかがでしょうか。
【機構・総括係長】  事務局でございます。水落先生、御意見ありがとうございます。また大森先生からも御指摘ありがとうございます。
 今御質問いただいた統計のようなものを取っているのかという点でございますけれども、すいません、今取っているか取っていないかを調べ切れていないところはございます。もしかしたら省内のさきがけ・CRESTの担当課でそういった数字があるかもしれないですけれども、例えばですけれども、量子分野でというところでは、少なくとも資料を御用意できていないかなというのが現状であるかと思います。
 ただ、まさに御指摘は非常に重要な点であると思いますし、またこの委員会でそういった外国人材の獲得についてその方策ですとか在り方について議論する、それこそ今御示唆いただいたような成功事例を探してきてそれを御講演いただいたりして、委員会の場でどうほかの研究開発のスキームですとか場に応用できるかを御議論いただくとか、そういったところは非常に重要と思いますので、きちんと第12期中の議題として入れ込めるように、検討させていただきたいと思います。
【水落委員】  ありがとうございました。
【大森主査】  ありがとうございます。そのほかに、どうぞ。
【小杉委員】  今の件、WPIは国際化をしないといけないので、そこでどういう海外の人を雇用しているかということも調べられるといいかなと思います。WPIです。
【機構・総括係長】  事務局でございます。
 まさに御指摘いただいたWPI、当然存じております。そこもアンダーワンルーフということで、外国人研究者を含めてやっていると認識しておりますので、お調べさせていただきたいと思います。
【大森主査】  よろしくお願いします。
【小林委員】  東大の小林ですけれども。
【大森主査】  小林先生、どうぞ。
【小林委員】  今回初めて参加させていただきました。非常に充実した資料で大変勉強になり、本当にありがとうございます。
 今後の人材の裾野拡大のための方策ということで、教育に関して1点お伺いしたいです。先ほどご紹介頂いたQ-LEAPでの教育に関する取組は、非常に重要だと思います。お伺いしたいのは、最近、デジタル人材を拡大するということで大学定員の規制を緩和するという話が出てきていますけれども、この話と量子科学の話は何か結びついたりしているのでしょうか。そういう形で結びついていくともっと強固に量子科学が広がっていくのではないかという期待からお伺いしたいと思います。
【大森主査】  では事務局、お願いします。
【機構・総括係長】  事務局でございます。小林先生、御意見ありがとうございます。
 まず御質問いただいた点、デジタル人材の教育のところですと、最近まさに何人デジタル人材をつくるみたいな形で議論が活発になっているものと我々も認識しております。今現在、量子について量子人材何人という目標自体は、量子未来戦略などで一応ユーザーとして将来的に1,000万人ですとか、そういった数字は掲げさせていただいているところではございますけれども、その途中と申しますか、それを実現するために直近どうしていくのかというところは今まさに議論しながら、御紹介もさせていただいたQ-LEAPの人材施策をいろいろ打ってみている中で、検討を重ねているところと考えております。
 そこの起爆剤をどうつくって、デジタル人材のようにまさに量子ネイティブみたいな人たちを一般に浸透させていくかというところは、非常に重要な論点であるとも思いますので、まさに御紹介させていただいたQunaSysの取組も走り始めたところですので、実際にどういう取組をしてどういう反応が得られたかですとか、あるいはどういう成果が認められたのかは、この委員会の中でも御紹介させていただければと思いますので、そこもしっかり我々も論点の一つとして、情報提供ですとか議論の呼び水になるものを御用意できればと考えてございます。
【大森主査】  ありがとうございました。
 ほかに御意見、御質問、コメント等ございましたら御発言をお願いいたします。
【山田真希子委員】  すいません、QSTの山田ですけれども。
【大森主査】  山田委員、どうぞ。
【山田真希子委員】  人材の話ではなく、(2)の話ですけれども。話が移ってしまいますけれども、よろしいですか。
【大森主査】  どうぞ、お進めください。
【山田真希子委員】  ありがとうございます。今日、量子未来社会ビジョンをお伺いさせていただいて、様々な量子科学技術が将来人々にとって役に立つものにするためには、事務局の発言にもありました、この(2)に対応する、人間の生活の質の向上やウェルビーングを適切に評価し、予測する方法論の確立も非常に重要だと思います。量子科学技術の開発と、それを使う人々の意思決定・行動選択・感情の評価と予測が同時に進むと、将来社会の中でより役に立つ技術として利用できるようになるのではないかと考えております。そこで、人間の行動を説明する際に、実は、量子論が重要な役割を果たすことを共有させて頂きたいのですが、これまで人間の認知判断や意思決定などは、主に古典確率論の枠組みの中で展開され、特にベイズ推定によって様々な認知モデルが確立されるなどの一定の成果を挙げてきました。ですが、研究が進展するにつれて、古典的論理の枠組みでは説明ができない人間の推論や認知判断が多く存在することもわかってきました。それに対応する形で、近年、重ね合わせや量子もつれなどの量子論に特徴的な数学的構造を認知プロセスにあてはまめることで、不確実な状況における人間の曖昧な態度をより高い精度で説明できる可能性が示されてきています。これは量子認知という学問領域になるのですけれども、ニューラルネットによる量子認知モデルの実装も理論的には構築できると言われていますので、量子コンピューティングやAIへの応用にも関わるかとも思います。人間の行動をどう説明するかということに関しても量子論が実は重要な概念になりそうなので、そういったものも技術開発と一緒に並行で考えていければと思いました。感想でございます。
【大森主査】  大変興味深い御指摘、ありがとうございました。
 ではほかに御意見はございますでしょうか。
 それでは時間も押しておりますので、ただいまの御意見などを踏まえまして、事務局にて資料修正などを行います。最終的には主査である私に一任していただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 御異論がないようですので、了承いただいたと理解させていただきます。ありがとうございます。
 以上で本日予定していた議事は全て終了しました。事務局から連絡事項などがあればお願いいたします。
【機構・総括係長】  大森先生、ありがとうございます。事務局でございます。
 委員の皆様、本日は大変ありがとうございました。
 次回以降についてでございますけれども、こちらは書面による開催も含めて、事務局より追って御連絡させていただきますけれども、恐らく例年の流れでいきますと夏とか秋ぐらいが次回になろうかと思います。なるべく早めに御相談できるように進めさせていただきますので、大変申し訳ありませんが、少々お待ちいただければと思います。
 事務局からは以上でございます。
【大森主査】  ありがとうございます。
 それでは本日は長時間にわたる御議論をありがとうございました。閉会といたします。お疲れさまでございました。

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