量子科学技術委員会(第9期~)(第28回) 議事録

1.日時

令和5年2月10日(金曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

オンライン開催

3.議題

  1. 国産量子コンピュータの開発状況、利用方針等について
  2. 「量子人材育成・確保の推進方策について」のフォローアップ
  3. 「量子技術の実用化推進ワーキンググループ」の中間取りまとめについて
  4. 量子関連の令和4年度補正予算及び令和5年度予算案について
  5. その他

4.出席者

委員

上田主査、岩本委員、川上委員、早瀬委員、平野委員、美濃島委員、向山委員、山田委員、湯本委員
【外部有識者】理化学研究所 萬副センター長
 

 

文部科学省

迫田量子研究推進室長、亀井量子研究推進室長補佐、山村量子研究推進室機構・総括係長、柴田量子研推進室企画調整係長

 

5.議事録

【山村係長】皆さん、おはようございます。それでは、定刻になりましたので、第28回量子科学技術委員会を開催いたします。
 本委員会の事務局を担当させていただきます文部科学省量子研究推進室の山村と申します。どうぞよろしくお願いします。
 皆様、本日は、お忙しい中、御出席いただき、ありがとうございます。本日は、9名の委員に御参加いただくこととなっています。岩井委員、大森委員、小杉委員、根本委員は御欠席となります。今、議事次第を画面共有しておりますけれども、本日の配付資料、こちらの議事次第に一覧が掲載してございます。全ての資料は事前に送付しておりますけれども、不足などございましたら事務局まで御連絡ください。説明の際は画面に共有する予定でございます。
 次に、オンライン会議の留意事項について説明いたします。通信を安定させるため、御発言されるとき以外は、可能な限りマイクをミュート(マイクオフの状態)にしてください。御発言される際は、ミュートを解除(マイクオンの状態)にしてください。議事録作成のため、速記者を入れておりますので、お名前を言っていただいた後に発言をお願いいたします。会議中、不具合などトラブルが生じた場合は、事前にお知らせしている事務局の電話番号にお電話をお願いいたします。
 なお、本日は会議公開の原則に基づき、報道関係者や一般傍聴者によるZoomでの傍聴を認めておりますので、御了承ください。
 事務局からは、以上になります。以降の議事進行については上田主査にお願いいたします。
【上田主査】上田でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。本日の議題は4つございます。まず、第1の議題としまして、国産量子コンピュータの開発状況、利用方針につきまして、理化学研究所の萬様から御説明の後、質疑応答を行います。続いて2つ目の議題として、量子人材育成・確保の推進方策についてのフォローアップを行います。その後、3つ目の議題としましては、内閣府の量子技術の実用化推進ワーキンググループの中間取りまとめにつきまして、事務局から御報告がございます。最後に4つ目の議題としまして、文部科学省における量子関連の令和4年度予算、補正予算及び令和5年度予算案につきまして事務局から報告がございます。
 それでは、早速、議題1に移ります。国産量子コンピュータの開発状況、利用方針につきまして、理化学研究所の萬様より御説明をよろしくお願いします。
【萬副センター長】理研の萬です。上田先生、ありがとうございました。では、当方から画面共有させていただく形で御説明させていただきたいと思います。資料は、配付資料と同じものですが、パワーポイントのバージョンになっています。
 それでは、本日は量子コンピュータの開発状況、利用方針などについて御説明させていただきます。最初のページは、量子コンピュータへの期待が高まっているということを書いたスライドでございまして、ここで説明する必要はないかと思います。後で、質疑応答のところで必要になれば使おうかと思いますが、情報処理性能の向上に期待が高まっている中で、量子コンピュータが実機として出てきているということで非常にいろいろな形での期待が高まっているというのがポイントであります。
 その中で理研の量子コンピュータ研究センターは、このような研究体制を敷いております。大きな特徴は様々なプラットフォームの量子コンピュータ研究開発を基礎と実用化の両面進めているというところです。一番大きなグループは超伝導のグループで、センター長の中村泰信をはじめ、たくさんのPIが所属しております。
 また、今、実用的な量子コンピュータになり得ると話題になっております光、それから、半導体、原子、少しユニークな系として浮揚電子系というような研究をやっております。ソフトウエア系も量子計算理論のチーム、それから、応用開拓などをしていくチームというようなものを配置しております。理研の中には計算科学や物性科学の非常に強いチームがたくさんございますので、そういうところとの連携ができるという辺りも強みになっております。
 それから、実用化への押し出しということで富士通さんとの連携センターも構築しています。さらに、量子コンピュータ研究センターは、量子技術イノベーション拠点活動ということの中核組織でもあります。10の研究機関が量子技術で日本を牽引する機関として制定されており、理研はそれを取りまとめるという形で、量子技術で必要な国際連携や人材育成、産学連携や知財・標準化に関する議論を取りまとめる機関としても活動しております。
 国産実機研究開発の話に移ります。量子時代の競争力強化ということを考えても、フルスタックの量子コンピュータ研究開発を国策として進めることが重要であろうと考えております。そのポイントとしては、量子コンピュータを製造して動作させるまでの一連の技術を保有すべきということ。統合的な利用技術の開拓への貢献につながるであろうということ。それから、人材育成の観点でも、量子コンピュータ全体を理解して俯瞰できる人材を育成できるであろうと。さらに、こういったハイエンドのコンピュータというのは、常に先端技術領域のテクノロジードライバとなり得るということは、いわゆる古典のHPCでも示されていることで、この量子コンピュータの研究開発にもつながるであろうと考えております。
 実際にどのようなことをやっているかということですが、理研はフルスタック量子コンピュータ開発拠点として、国産第1号機と勝手に呼んでおりますが、その実現を目指しています。現在は64ビットの量子コンピュータを開発しています。これはQ-LEAPのフラッグシッププロジェクトにより進めています。フルスタックと呼びましたのは、ハードウエアでは量子プロセッサ、チップ設計、作成やパッケージング、それから、量子プロセッサの制御ハードウエア技術、それから、それをソフトウエアとしてコンパイラとかミドルウエアの技術、そしてアプリケーションにつながる計算プログラムをやるということです。量子プロセッサに関しては、拡張性が高い量子ビット回路をオリジナルのものとして設計、製造しております。スケーラビリティを重視した独自の垂直配線パッケージを採用して大規模化に備えています。
 これが64ビットのチップでありまして、ここが実際の1量子ビットのパターン、これが一番重要となるジョセフソン接合の写真です。スケーラビリティが非常に高いパッケージング技術というのは、こういった下から2次元面的に信号を取り出せるような仕組みでありまして、これを実際に構築したのがこれです。それから、スケーラブルな制御装置開発ということで、64ビット分の高周波の信号を生成したり、解析したりできるような制御装置の開発を行っております。これが冷凍機実装の一部分であります。それから、ソフトウエアの研究です。今、64ビットですが、大規模化に向けた研究開発、これはQ-LEAPの活動の中で次世代機、100ビット以上の開発を並行継続しておりまして、さらに、高集積を目指した3次元実装技術などにも取り組んでおります。
 これは量子コンピュータで、冷凍機で制御装置があります。これを皆様に対して公開するという目的で、クラウドサービスシステムの開発を行っております。開発は阪大のソフトウエア拠点とも連携しています。一般ユーザはクラウドサーバーにインターネットで接続していただければ、そこから理研のサーバーに、このクラウドサーバーからつないで、この理研のサーバーから量子コンピュータにつないで演算をして、またデータを返していくというようなことをします。
 具体的なアクションは、ここに書いておりますが、ここではユーザ認証とか、ユーザが自分で計算したい回路の情報を送るとか、あるいはスケジューリングなども行っていくというようなことをやります。理研サーバーは頂いたジョブをこの量子コンピュータの中で動かせる波形に変えまして送り、出力も分析した上で返していくというようなことを行うというような仕組みであります。
 以上のことをやっているのがQ-LEAPでございまして、産官学連携の下、進めているということであります。実機運用を具体的に始めようと今試みているわけですが、ここの実機運用の狙いというところを少し御説明させていただきたいと思います。これは国の公的な資金をいただいてやっているということを鑑み、科学技術研究の推進と発展に資することを目的として、非商用として運用していくという考えであります。Q-LEAPで直接的には開発しており、社会に送り出す初の国産実機となり、期待も高いと聞いております。広く門戸を開放する必要があるという役割を自覚しているところです。
 公開の考え方は、対象となる実機は公的利用に限られている理研の所有機で、最初は64ビット、この3月頃に利用プラットフォーム化する予定です。それから、第2号機は、今、R7年度の計画で進めておりまして、こちらもリリースする予定であります。それから、公開する先は量子コンピュータのコア研究者にもちろん使っていただきたいのですが、企業での応用開拓の方々、あるいはミドルウエアとかハードウエアのベンダー候補の技術者などを含めて、利用を拡大しこの領域の発展に貢献したいと考えています。とはいえ、使えるマシンの台数というのは限られておりますので、利用の仕組みというのは公平性を保つようなものを検討しております。共同研究契約を結ばせていただく形で使っていただくと考えております。
 この実機運用の狙いのもう一つの大きな柱としましては、量子システムエンジニアの育成ということです。プラットフォーム化を進めているわけですが、こういったことを行うシステムエンジニアは現状では不足しています。この理研のマシンを運用することによってハードウエア、ソフトウエア、いろいろなレイヤーのシステムエンジニアを育成し、理研で学んでもらって産業界との間で量子人材をうまく循環させていくようなエコシステムを作れればと考えているところであります。
 まとめます。理研の量子コンピュータ研究センターの活動を少し御紹介させていただきました。多様なプラットフォーム研究、理論や基礎をバランスよく進めていくというような活動です。量子技術イノベーション拠点、10拠点の中核組織でのイノベーション創出も行われております。研究中の超伝導量子コンピュータをご紹介しました。64ビットマシンを今年度中の公開を目指して進めております。幅広い層への非商用の公的利用を図るという考えで進めております。
 以上です。ありがとうございました。
【上田主査】ありがとうございます。
 それから、質疑応答に移ります。ただいまの説明に関しまして、御質問等があればよろしくお願いします。時間は15分程度を予定しております。向山先生、よろしくお願いします。
【向山委員】大阪大学の向山です。萬先生、御説明、ありがとうございました。非常に強力な体制で臨まれているなという印象なのですけれども、それで、超伝導系を中心として様々なプラットフォームでやられているというお話だったのですけれども、イオントラップ系はどなたかやられている、あるいは検討等されているのでしょうか。
【萬副センター長】我々のセンターの中では野口さんが電子トラップになるのですが、そういうトラップ系の有利な点を生かした研究開発を進めています。
【向山委員】では、原子のイオンは、検討は。
【萬副センター長】原子のイオンは、今のところないですね。
【向山委員】あ、そうなんですか。それは戦略的な御判断等もあってということなのでしょうか。
【萬副センター長】いやそういうことではありません。
【向山委員】そういうことではない。ごめんなさい。
【萬副センター長】積極的にやらないというわけではありません。今後、このセンターも、もう少しプラットフォームの幅も広げていく、基礎も実用もきちんと位置づけていくというような計画の中で追加する可能性はあると思います。
【向山委員】なるほど。
【萬副センター長】この電子系も浮揚電子系なので、まあ、考え方は似たようなものになりますね。
【向山委員】そうですね。はい。分かりました。
 あと、すみません、もう1点。国際的な連携みたいなものというのは何か御検討とか、具体的な活動とかあるのでしょうか。
【萬副センター長】共同研究、大きい小さいはともかく共同研究は個別にあります。それから、量子技術イノベーション拠点活動というようなものの一環として国際連携みたいなことはテーマとして掲げておりますので、例えば欧州、あるいは米国などのコンソーシアムとか、拠点の皆さんとの交流のようなことは進めています。まだコロナがありましてオンラインが多いのですけれども、シンポジウムをやるということで、大きな枠組みから入っていくというような活動は進めています。
【向山委員】分かりました。ありがとうございました。
【上田主査】それでは、山田委員、よろしくお願いします。
【山田委員】萬先生、どうもありがとうございました。実機運用の狙いに関して、量子システムエンジニアの育成という観点が非常に良いと思います。Q-LEAPにおける量子人材の育成プログラムにおいても、直接的な対象にこういう周辺技術に関わる人たちをスコープに入れられていません。今回の理研の実機やシステム公開に併せて意識いただいていることは非常に期待をします。
 その一方で、実際、1台の実機で、まずは1台を公開するので、例えば年間どれぐらいの研究者や技術者が使えるかが気になります。そこは、現実問題としては重要ですし、制限にもなると思うのですけれども、大体どれぐらいのユーザがトライできる計画になるのでしょうか。
【萬副センター長】前半のところ、どうもありがとうございます。後半のところは、実は我々も悩んでいるところでございまして、特に初年度というか、来年度1年目はやってみなければ分からないところが多分に出てくるだろうと。ここに量子システムエンジニアの育成が絡んでくるわけです。ですので、はっきりは言いにくいのでが、初年度はそれほど多くはないのではないかと見ております。例えば利用時間はマシンの運転のコンディションに合わせて多少調整していただくとかいうような形となると思います。1年目は限定的かもしれないけれども、できるだけ多くの方に実感していただく機会は作っていきたいとは思っています。まだはっきり言えないところがありまして、すみません。
【山田委員】将来的には、資料に記載されているように、コア研究者も、企業も、あるいはほかのベンダーも使えるのでしょうが、、ご説明の状況でしたら、1年目とか2年目は、目的とする対象にぐっと限定する、絞り込んでもいいのではないかと個人的には考えます。ありがとうございました。
【萬副センター長】ありがとうございました。参考にさせていただきます。
【上田主査】ほかにいかがでしょうか。では、私から質問させていただきますが、この科学技術の推進と発展という観点に立ちますと、量子ネイティブの人口を増やすという意味での若手、これからこの分野に入っていきたいと思う若手に対するアピール、それから、出口で言いますと、それを実際に使う産業界との連携、裾野を広げる試みの2点が同時に重要だと思いますけれども、これについてはどのようなお考え、あるいは具体的な行動をお考えでしょうか。
【萬副センター長】この資料には触れていないのですが、やはりこの実機というのは国の資金でできているということもありますから、教育的な部分というところは配慮しなければならないと思っております。ですので、教育的な利用、学生や若手研究者中心になるかもしれませんけれども、の仕組みというものも組み上げていかなければならないと思っているところです。一方、産業界へももちろんできるだけ広げていきたい。
 そうすると運用のテクニックを上げていかなければならないので、その運用のテクニックが例えば1年目、2年目よりは3年目、4年目、5年目というところのほうがはるかによくなってくると思いますので、そういった運用技術を高めていく中でどんどん裾野を広げていくことを意識しているところです。教育的利用については、今年の4月からできますというような話にはなりませんので、あえて資料には書いておりませんが、そういう意識は最初から持っています。
【上田主査】ありがとうございます。
 それでは、湯本委員、お願いします。
【湯本委員】湯本です。よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。これは全体の3ページですか、チームのテーマの中で超伝導だけではなくて、電子とか光、原子とか書いてありますけれども、ミドルウエアとかは全く違うものになってしまうのでしょうか。あるいは現時点では、どちらがいいという議論は非常に難しいと思うのですけれども、将来的にそれを例えばどちらかにシフトするとか、そういう判断というのは、いずれされるということなのでしょうか。その辺の状況を伺えればと思っています。
【萬副センター長】例えば超伝導と光、半導体、この中でどこまで超伝導で開発したものが使えるのかというような意味合いの御質問でよろしいでしょうか。それで言いますと、このセンターの中で研究開発しているテーマで言いますと、超伝導と半導体は似た周波数のマイクロ波で制御しますので、技術の共通的なところは割とあると思います。もちろん実際の信号レベルなどは違いますので、すぐにはそのまま置き換えられるということはないと思います。
 一方、この光もかなり期待されておりますが、アーキテクチャ的にユニークな測定型の量子計算ですので、これはどちらかといいますと、さっきのクラウドサービスで言いますと、この辺ぐらいまでは1つのプラットフォームとして見ることができるかもしれない。ユーザから見ると、いろいろな量子コンピュータが選べるようなものにはなっているけれども、その先はさすがにやはり違ってくるかなというような印象であります。
【湯本委員】すみません。今、この辺と言われたのは、サーバーの辺りですか。カーソルが見えなかったので確認させてください。
【萬副センター長】サーバーへ届くところまでです。ユーザから見ると、やりたいことは決まっていて、それをどのマシンで回すかというだけですので、そこは共通なプラットフォームをとれるのではないかと思います。もちろん、全く同じかどうかは進めてみないと分からないので、大ざっぱな印象なのですけれども、そういう気がしております。
【湯本委員】はい。分かりました。
【萬副センター長】それから、今後どの技術にいくのかというのは、我々も予想はできないところです。また、理研は企業ではありませんので、どれかに張っているというわけではなく、総合的に研究開発を行うという考え方です。どこかが走ってくれれば、それはそれで理研としてはいいと。どれかでもちゃんと使えるものになれば、理研としてはありがたいという立場かなと思っております。
【湯本委員】はい。分かりました。ありがとうございます。
【上田主査】ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。量子コンピュータセンターとしては、超伝導キュービットに限らず、ここに出ているようないろいろな量子コンピュータに向けたポートフォリオの中で、同時並行的に推進していくというようなスタンスだと理解してよろしいでしょうか。
【萬副センター長】はい。そうです。そう思います。
【上田主査】ありがとうございます。
 ほかに、いかがでしょうか。岩本委員、よろしくお願いします。
【岩本委員】萬先生、どうもありがとうございました。先ほど山田さんも少しコメントされたというか、質問されたシステムエンジニアの育成の点なのですけれども、これ、結構、難しい課題だと思いますし、時間もかかるのかなと思うのですが、具体的にアプローチを既に考えておられたら御紹介いただき、可能な範囲で構いませんので御紹介いただけないかなと思いました。お願いいたします。
【萬副センター長】やはりまだ初号機、1号機ができたところということもありますので、いわゆるシステムエンジニア、システムを見れるような方々、だけど、量子ではないという方に来ていただいて研究現場で運用を一緒に、研究者も含めてやっていく中での育成、OJTみたいなものですかね。現場で最初は成長していただくと。1人でも2人でもできれば、そこで少し育成のシステム化というのはできると思うんですね。どこがポイントで、どこが難しいところで、その人の持ち味の何が使えるのかというのが、1人、2人やると分かると思いますので、ちょうどこの実機の完成に合わせて、そういう人材を実際に育成するプランを今進めているところです。
【岩本委員】ありがとうございました。まず最初の方の育成が大事ということで。
【萬副センター長】そうですね。
【岩本委員】よく分かりました。ありがとうございます。
【萬副センター長】そこから大きくしていく。
【上田主査】ほかに、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。では、どうもありがとうございます。理化学研究所におかれましては、ただいまの質疑も参考にしながら、年度末の公開や、そのほかの利活用に向けた取組を進めていただくようにお願いいたします。
【萬副センター長】ありがとうございました。
【上田主査】どうもありがとうございました。
 それでは、議題2に移らせていただきます。量子人材育成・確保の推進方策につきましてのフォローアップです。事務局より説明をお願いいたします。
【山村係長】ありがとうございます。文科省量研室の山村でございます。量子人材育成・確保の推進方策についてのフォローアップということで、事務局から御説明いたします。
 まず、フォローアップの趣旨等でございますけれども、背景・経緯としまして、もう皆様、御存じのとおりかと思いますが、昨年度、2回の量子科学技術委員会における議論を踏まえまして、「量子人材育成・確保に向けた推進方策について」というものを量子委員会のほうで取りまとめました。その取りまとめにつきまして、内閣府の量子技術イノベーション戦略の戦略見直し検討ワーキンググループというところに上田主査より御報告いただきまして、昨年4月に策定されました、この右側に書いております「量子未来社会ビジョン」、こちらに反映したというところでございます。この中で例えば人材育成・確保のところで、こういった形で実際の文章として反映することができましたということで御報告させていただきます。
 今回のフォローアップの趣旨でございますけれども、こういった報告書、取りまとめの策定後の取組状況ですとか、あるいは今後の予定について意見交換、この場でさせていただくことで、今後の量子人材育成・確保に向けた推進等に活用していきたいと思っております。
 ちょうど1年前の2月10日、まさにこの推進方策の取りまとめをさせていただいたところでございますけれども、そちらから抜粋しておりますが、大きく5つの柱があったと記憶してございます。1つ目が国内外の連携・交流を活性化する仕組み・枠組みの構築。2つ目が教育プログラムの体系化、「○○×量子」人材の育成ということです。3つ目が量子分野への持続的な支援ということで、こちらは若手人材育成、若手研究者への持続的な支援というところで考えております。4つ目が幅広い層への量子技術の導入・アウトリーチ活動の推進、最後が産業界への裾野を広げる研究・人材育成エコシステムの構築というところで、こういった5つの柱で方策を取りまとめたところでございます。
 推進方策、文字面だけだと分かりにくいので、イメージ図をこちらに御用意したのですけれども、大ざっぱに考えますと若年層、小中高生、年齢層で分けますと若年層、それから、大学、研究機関、最後に産業人材、産業界へ羽ばたく人材というところで、こういった年齢というところでカテゴリー分けできるのかなと思っていまして、その中で下からいきますと、幅広い層への量子技術の導入・アウトリーチ活動の推進というところをまず入り口としてやっていくというところ。それから、大学進学後は教育プログラムの体系的な提供も展開していく。あるいは若手人材については、研究グラントをしっかり確保して、若手研究者支援をしていく。
 それから、そういった大学で育った方々を今度は実際、産業界にどうつなげていくかというところで、産業界の裾野を広げる研究・人材育成エコシステムの構築というところで、こういった線がつながっていくというところを支援していければなと思っておりますし、その際には量子人材、量子分野の人材のみではなくて、先ほどの議論でも出ていたとおり、異分野との連携というのはすごく大事なところだと思っておりまして、○○×量子人材の育成ですとか、国内外の連携・交流活性化というのも通じて外部、異分野等からの外部人材の参入連携、交流促進というところを推進していく、こういったことで全体のイメージとしては、こういうふうに考えております。
 ここから個別の、1つ1つ柱に沿って具体的な取組を御紹介していくのですけれども、まず、国内外の連携・交流を活性化する仕組み・枠組みの構築というところで、こちらは報告書では量子分野に関する情報をワンストップで集約・発信する仕組みの構築。また、国家間での国際連携の枠組みや国際シンポジウム等を契機とした海外機関との共同研究、人的交流の更なる推進というところで提言をいただいたところでございます。
 こちら、現在の取組状況ですけれども、ワンストップで情報を集約・発信する仕組みとしましては、今、理化学研究所、先ほど萬先生からも御紹介があったヘッドクオーターとしての機能を担っておりますので、そこのポータルサイトというものを公開するというところで、現状、こういった、もうデザインもほぼ固まっておりますけれども、こういった画面を準備しておりまして、ポータルサイトの公開に向けてコンテンツなど検討しているところでございます。
 それから、先ほど他分野の巻き込みというところのお話もありましたけれども、ヘッドクオーターに広報担当の人材を配置するなど、拠点内外からの情報を集約していくというところを検討しております。今後の予定としましては、年度内にこのポータルサイトを公開するというところで考えておりまして、こういった周知活動と併せて先ほどの議論でも出ていたような、当然、実機が公開されるというところで、そういったプラットフォームも生かしながら、こういったところを入り口にして外部人材を巻き込んでいく仕組みみたいなものを文科省も一緒に理研と考えていけたらと思っております。
 国際交流のところにつきましては、先ほども萬先生からもお話があったとおり、国際シンポジウムというものを量子拠点を中心に開催してございます。昨年はオンラインで開催していまして、50か国から1,000人を超える登録者があったというところでございます。こちら、コロナの状況、読めないところもありますけれども、来年は全面オンサイトという形でシンポジウムを開催したいと思っておりまして、オンサイトで開催すると密な議論ができるということで、そういったところを契機に若手研究者の交流ですとか、そういったところを契機にした研究プロジェクト等の予算を活用した人材交流、研究者招聘、国際交流を推進していきたい、そういうふうに考えてございます。
 続きまして2点目でございますけれども、こちらは教育プログラムの体系化、「○○×量子」人材の育成というところで、報告書の中では良質な教育プログラムを幅広い人に提供する人材育成の仕組みの開発、または量子を第2言語として扱う「○○×量子」人材育成の推進というところで提言をいただいたところでございます。
 まず、取組状況ですけれども、こちらは体系的なプログラムの提供というところの面でございますが、今日、残念ながら欠席なのですけれども、根本委員が主導していただいている標準カリキュラムの開発というところで、大学生向けの講義も開発していただいているところでございまして、こちら、ちょうど開発した、こういうコースを実際の大学の集中講義ですとか、あるいはNICTのQuantum Campというような人材育成プロジェクトと連携して試行的に実施を開始しているというところまで行っております。
 こちら、右側のほうは電通大の岸本先生、こちらも昨年の議論のときにお呼びしたものでございますが、こちらはどちらかというと、大学に入ってきた当初の学生、高校生からちょっと上がってきたような学生に対して、量子を気軽に触って体験できるような実験キットの開発というところで、現在、デモ機がこういった形で完成しておりますので、イベント等で活用して改良していくところでございます。いずれも、こういったQ-LEAPの事業でやっているのですけれども、事業終了後も持続的かつ幅広く展開していくための方策というのが重要になってくると思いますので、こういったところは引き続き検討していきたいと考えております。
 今後の取組のところでございますけれども、こちら、「○○×量子」人材の育成の点でございますが、これまでQ-LEAPでサマースクール、野口先生に御協力いただいてサマースクールの開催ですとか、あるいは東北大の大関先生がYouTubeによるライブ授業の配信等を行ってきたところでございますが、今後、今年度からこういった成果を活用いたしまして、新しく民間企業さんによる教育プログラム開発というものをQ-LEAPの中で新しく開始したところでございます。
 こちらの民間企業さんなのですけれども、AI、IoTの分野で主に名古屋方面を中心にハンズオンの教育に実績のある民間企業さんなのですけれども、そういったところと組みながら、彼らの教育の事業として、こういった取組も展開していただくということで、1つの大学ではなかなか幅広く展開というのは難しい、仕組みとして難しいところだったかもしれませんが、こういった民間企業さんの事業として活動していただくというところで、持続可能な人材育成の仕組みの構築というのも推進していきたいと考えてございます。
 3つ目の柱でございますが、量子分野への持続的な支援ということで、こちらは若手研究者が個人で独立した研究が可能なグラント等を分野全体で継続的に確保というところは、報告書のほうに記載されています。現在の取組ですけれども、ちょうど令和4年度から「量子物性×量子情報」というものをテーマとした「さきがけ」、JSTの戦略目標が新たに立ち上がりまして、去年、公募も終わり、12件採択いたしましたというところで、こちらも量子情報ど真ん中というよりは、量子物性と異分野との掛け合わせというところで幅広く人材を育てていきたいというテーマでございます。
 こういったCREST、さきがけなのですけれども、今後の取組としましては、今、こちらの画面に示しているとおり、量子関係のCREST、さきがけというのはなかなか、先ほど御紹介した「量子×物性」のもの以外は、現在、走っているものはありますけれども、ほとんど公募終了してしまっているというところで、これはまだ省内検討中のステータスではございますが、来年度から新しい戦略目標を立ち上げるべく、ただいま省内で検討しているところでございます。間もなくよい知らせができるのではないかなと考えております。
 これは政府プロジェクトの全体像でございますが、我々、先ほども申し上げた戦略目標というのを、今、基礎研究のところを考えておりまして、そこから今の光・量子飛躍フラッグシッププログラムみたいな、Q-LEAPみたいなところですとか、最後はムーンショットですとか、SIPみたいなところで産業化、大規模化に向けたプロジェクトに進んでいく、こういった政府全体のプロジェクトというのを考えておりまして、まさにこの戦略目標というところは、ここにつながっていくような人材を育てるというところで非常に重要な仕組みだと思っておりまして、ここの基礎研究のところ、我々自身もしっかり拡充していく。その際は、ここの人たち、量子分野の人たちだけではなくて、先ほどの物性×量子みたいなところですとか、あるいは今後、古典エレクトロニクス、情報通信技術、ユーザ分野といった他分野からの流入も促しながら、全体として量子分野の人材育成エコシステムを構築していきたい、そういうふうに考えてございます。
 こちらは4つ目の柱でございます。幅広い層への量子技術の導入・アウトリーチ活動の推進というところで、教育啓蒙コンテンツや科学館等を活用した若年層等へのアウトリーチ活動の推進という御提言をいただいておりますけれども、今、現状の取組状況ですけれども、科学技術館へのイベントの開催、こちら、去年、理化学研究所が科学技術館さんと協力して、夏休み頃に量子コンピュータや量子を学ぶための実験ショーなどを行ったところでございますけれども、夏休みということで親子連れも1,000名程度の方に御参加いただいたというところ、あるいは今度、3月に、これは今日欠席の大森委員と連携させていただきまして、文科省と分子研で全国の小中高生にGIGAスクールという枠組みの中でオンライン授業を配信するという企画を提案してございます。
 また、これらのほか、川崎市において高校生を対象としたサマースクールも開催するなど、ポツポツとこういった高校生以下の方を対象にした取組というのが進んでいるところでございますけれども、国としてしっかりそういった単発のイベントに終わるのではなくて、これを継続的にやっていくという観点から、Q-LEAPの事業におきまして来年度、新しい事業としてこれら、この若年層向けのプログラムというものを立ち上げようと考えておりまして、実施内容としてはコンテンツの作成ですとか、インフルエンサー等と連携した情報発信または量子関連のイベントの実施、出前授業、そういったものを事業としていく、そういうところで、Q-LEAPで新規事業として来年度から展開していきたいと考えてございます。
 こちら、最後になりますけれども、産業界への裾野を広げる研究・人材育成エコシステムの構築というところで、教育と社会実装の協調領域でアカデミアと産業界が連携する仕組みの構築、学生等のキャリアパス多様化に向けた産業界との交流機会の拡大という御提言がありますけれども、研究プロジェクトの中で、産学連携プロジェクトの中で交流の推進というのは行われているというのが現状でございますが、例えば東工大さんのフラッグシップ、Q-LEAPのフラッグシップでは学生が企業の方に教えたりですとか、あるいは学生が量子人材育成のサービスを事業目的として起業する、そういった学生が教える中で問題意識を持って自ら起業するみたいな、そういった好事例もあるというところでございます。
 また、こちらは少しユニークな取組ですけれども、理化学研究所さん、Q-LEAPの中で量子コンピュータの企業だけを対象にしたジョブフェスタということで、就職説明会みたいなものを開催いたしまして、これは今年も開催する予定ですけれども、これは昨年、開催した際は大学、大学院生等300名というのが参加して非常に好評だったということで、こういった活動も続けられたらと考えております。
 ということで、この各プロジェクトですとか、個別の取組というのはあるのですけれども、こちらも先ほどと同様に、Q-LEAPのほうで、こういった取組を国の事業としてしっかりやっていくというところを考えておりまして、こちらも新規公募をそろそろ開始したいなと思っていまして、例えばインターンシップですとか、アントレプレナー教育支援による産業人材の交流、産学人材交流、量子分野を専攻する学生を講師とした企業向け量子教育、ロールモデル人材の情報発信などしてキャリアパスの顕在化を図っていく、そういったところを取組内容とする事業を立ち上げようというところでございます。
 事務局からは以上でございます。長くなってしまいましたが、よろしくお願いいたします。
【上田主査】ありがとうございます。
 ただいまの説明につきまして、御質問、御意見をいただければと思います。時間は10分程度を予定しております。いかがでしょうか。岩本委員、よろしくお願いします。
【岩本委員】御説明、ありがとうございました。ちょうど今出していただいているスライドの2番目の「○○×量子」というのは、これから非常に重要になってくると思いますし、既に幾つか方策、取組が行われているところかと思うのですけれども、さらに拡大していく必要性というのがあろうかと個人的には思っています。それについてお考えというか、こういう方向性を文科省としては打ち出していきたいというのがあればお聞かせいただきたいなと思いました。
 何となく今日お話しいただいた取組というのは、やっぱり量子のほうに寄っているような気もしていて、もともとそこにあまり興味がない人たちを引きつけるには、もう少し違った取組が必要かなと感じるところもあるんですね。具体的な策がなくて申し訳ありませんが、その点、そういうような意見も踏まえて、もしお考えがあればお聞かせいただければありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
【山村係長】ありがとうございます。「○○×量子」人材のところについては、ライトな入り口的なところに関して言えば、先ほど申し上げたこの民間企業さんのところですと、彼ら、AI、IoT分野で非常に実績のある活動をされているので、そこで培ったノウハウを量子に持ってくる、あるいは、ここにお客さんがいらっしゃるわけなので、そういったところから、まず異分野の方に量子の教育プログラムを提供していくというところで、まず、彼らのそういった顧客基盤なども生かしながら、そういうところが1点、ライトな入り口としてあり得るのかなと考えています。
 もう一つは、先ほど、さきがけ、CRESTみたいなところもありましたけれども、がっつり研究というところに入っていくときに、量子物性×量子情報みたいなテーマを出していくといったところですとか、あるいは、これはまだ公表できないものなのですけれども、新しい戦略目標の検討の中では、先ほど示した、こういった理念というものを持っていまして、どちらかというと、異分野連携、古典のエレクトロニクスですとか情報通信、あるいは量子コンピュータ全体のアーキテクチャみたいなのを考えられる方々が入ってきたいなと思えるようなグラントを用意して、そこから引きつけていく、そういった方針を考えてございます。
【岩本委員】大変ありがとうございます。ぜひいろいろな分野の方が入るような戦略目標というか、立てつけを作っていただけるとありがたいかと思います。
 あと、すみません、とんちんかんなことを言うかもしれませんが、例えば加工技術、物づくりとか、研磨とか、そういう技術も実はすごく役に立つのではないかと思うのですが、そういう方は、実は、そういう企業の方とか、町工場の人たちというのは、別にAIとか興味ないかもしれないと思うのですけれども、何かそういう方たちも将来的には取り込めれば、皆さんの研磨技術がすごくなれば、こんな量子技術が発展しますみたいなアピールができればいいのかなと個人的には、いつも思ったりしています。コメントです。ありがとうございました。
【山村係長】そちらの点、先ほどポータルサイトというのもある。周知の形としてあるのかなと思っているのと、あと、先日、ナノテク展みたいなところに量子拠点の方からブース出展等もさせていただいたと伺っておりまして、そういったところも草の根的な活動から拾っていければいいのかなと考えています。
【岩本委員】ありがとうございます。いろいろな活動をされているのがよく分かりました。ありがとうございました。
【上田主査】それでは、早瀬委員、よろしくお願いします。
【早瀬委員】慶應義塾大学の早瀬です。非常に重要な取組を御紹介いただき、ありがとうございます。人材育成、非常に重要で、特に学生、大学院生等が自分の就職先にこの量子分野を選ぶようにするという施策が非常に重要だと思います。そういう意味では、11ページにあったような産業界の裾野を広げるシステムの構築というのは非常に重要だと思います。その中でもこういった取組、非常に重要だと思うのですけれども、この量子コンピュータジョブフェスタの開催とか、そういった開催をしているというのも、実は私が不勉強で知らなかったんですね。
 学生も多分、うちの大学とか学科の学生は全然知らなかったと思うので、その辺りもう少し広報活動とか広げていく必要もあると思いますし、あとは、今回、量子コンピュータ分野だけということですけれども、量子技術、周辺技術、量子センサーとか、量子通信もありますし、その周辺技術、裾野を広げていくということも重要だと思うのですけれども、このようなフェスタというか、特に大学生、大学院生の就職活動の際にこういった分野を選ぶようにするような施策というのは、いろいろ考えておられるでしょうか。すみません、抽象的なのですけれども、例えばこのフェスタを、規模を大きくするとか、そういったことは考えておられるでしょうか。
【山村係長】ありがとうございます。まず、周知という点では、昨年1回目ということで、トライアル的なところもあったかと思うのですけれども、これ、結構、好評だったということで、こんな企業が量子コンピュータをやっていると思いませんでしたとか、実際のリアルな話を聞けてすごいよかったという反響がありましたので、ここは続けていきたいと思いますし、先ほどおっしゃられましたセンシングとか通信というところももちろん重要なピースだと思っていますので、例えばこのQ-LEAPの中で、この取組の中で、そういったところもスコープにしながらやっていただくというところにするのか、あるいはQ-STARさんという産業界の団体等もありますので、そちらの方とも連携して、60社ぐらいあるので、全ての分野がカバーされているところかと思いますので、そういったところと連携してやっていくみたいなところで、学生に知ってもらうというところが結構大事かなと私も思っております。すみません、お答えになっていますでしょうか。
【早瀬委員】はい。これ、令和4年3月ということは、次の4月に就職するという時期ですよね。
【山村係長】そうです。次の4月。令和5年の4月の就職。だから、ちょうど1年前ぐらいにやるというイメージです。
【早瀬委員】実際に1回目ということですけれども、実際、300名程度の学生が参加して、例えば実際、この企業に就職を決めた学生とか、何かそういうフィードバックみたいのはありましたか。あるいは多少は興味を持って面接まで行ったとか、そういうことがあれば教えていただきたいのですけれども。
【山村係長】そこはすみません、残念ながらデータとしてまだ取れていない。取れていないというか、取っていないというところがありますので、次、今年も3月2日にやる予定になっておりますので、その点はフォローといいますか、どういった効果があったのかという検証になりますので、プライベートな情報でもあるのでどこまで行けるかなというのはあるのですけれども、そういった情報も可能な限り取っていきたいかなと思います。
【早瀬委員】ちなみに、3月2日ということですけれども、単独のイベントということですかね。
【山村係長】そうですね。3月2日のやつは、これと同じような形式で理化学研究所が主催という形でやる予定のものです。
【早瀬委員】なるほど。まずは最初の試みとしては非常にいいと思うのですけれども、多分、理研で、特に3月2日、解禁日2日目で、多分、学生はほかのところにたくさん行ってしまって、なかなかそういったところと競合すると思うので、例えばいろいろな企業が集まっているような、そういった説明会とかに参加するとか、なるべく学生に響くようなところでだんだん規模を広げていくような施策をしていただけると、だんだん広がっていっていいのかなと思います。
【山村係長】ありがとうございます。
【早瀬委員】ありがとうございます。
【上田主査】ありがとうございます。
 それでは、最後に美濃島委員、よろしくお願いします。
【美濃島委員】御説明、ありがとうございました。電通大の美濃島です。今日、御説明いただいた中には直接出てこなかったのですけれども、人材を流していくというか、育てていくということに関して言うと、博士人材をいかにたくさん育てて、流していくかというのが非常に重要だと感じております。もちろん小中高などの若年層から育てるのは重要ですが、大学に来て、ある程度育てて修士まで何とか行ったとしても、やはりそこで途絶えてしまうというのが今の日本の大学の一番大きな課題です。これに関しては、将来的にも明るい要素がなかなかないという状況で、諸外国からも一番日本が遅れている点であるという御認識は皆さん共通していると思うのですが、人材を博士にどうやってパスをつなげていくか、博士への入り口をどうやって確保して、さらに高度な人材につなげるかというのは非常に大きな課題だと思いまして、今日、御紹介いただいたような取組もできるだけそういう視点とつなげるような形にしていただくというのは重要だと思うんですね。
 あと、その中でもちろん、学生に直接響くのは経済的な支援ということで、本人たちの生活費、つまりフェローシップ的なことでして、もちろん、文科省さんとしてもいろいろな取組をされているのはよく存じているのですが、でも、全然不十分だというのが私の認識です。最近だと、いろいろなところで、もう、博士のフェローシップ支援は十分というような、もともとのJSPSのほかにJSTのプログラムもあって、支援は十分というような御発言を時々聞くのですが、私の現場感覚で言うと全く足りていなくて、現実的に私の周辺の学生もようやく博士に行きたいという気持ちになっても、そこが、非常にハードルが高くて支援が受けられないという現実があります。
 このようなせっかく量子という分野の軸で縦に人材を流そうという取組をされているので、いろいろな形があり得ると思うのですけれども、この取組自体を担っていく人材を育てるという意味でも、やはり博士人材が必要だと思うんですね。そこはぜひ、こういった仕組みの中に必ず入れるというような形でお考えいただきたいと思います。例えばせっかくこの産業人材というようなキーワードや、異分野との交流というような仕組みがありますので、そのような枠組みで、博士人材、博士に行く学生のフェローシップというところをぜひ文科省さんとして推進していただけたらと思います。
 例えば産業人材として、量子人材が必要というような認識を今後の課題に挙げていただいた場合に、もちろん就職活動フェアみたいなことはあるのですけれども、そのすぐの就職や採用ということだけではなくて、例えば、博士人材を育てるための産業界からのフェローシップですとか、共同研究で、その後、産業界に人材が出ていく仕組みなど、学生が博士に行ってちゃんと経済支援が受けられる仕組みを作るとか、様々なことがあり得るし、個々にされている取組も少しずつあると思うのですけれども、それをもっと太い柱でお願いしたいと思います。これは日本の本当に重要な課題だと思っているんですね。そこが切れてしまうと、今の取組の全てがうまく回らないと思いますので、ぜひその辺の観点を入れていただきたいと思うのですが、今、何かそれに関してコメントいただけるような取組とかありますでしょうか。
【山村係長】ありがとうございます。その点は何年も、私が入省した5年前からもずっと同じことを繰り返し言われているところなので、すごく認識をしているところでございまして、この前もNISTEPの調査などでも、博士人材、何で博士に行かないんですかというところは、先行きが不透明とか、経済的な支援が不安というところは言われていたところなので、まず、そこの支援というのは文科省としても恐らく全体の話なのであれですけれども、拡充していく方針だとは思います。
 量子の中でそれをどうしていくかというところに関して言えば、おっしゃるとおりジョブフェスタ等、なかなかそういったところに関して有効的な施策かというと、ダイレクトに効くところではないと思っていますが、私の個人的な意見としては、産学の連携のこういった交流の場みたいなのを作っていくというところは、将来的には事業が終わっても例えば産業界と寄附講座みたいな感じでつながっていくですとか、そういった中で産業界から支援をいただく。あるいはこの中で育った博士が実際に就職につながって、その人が活躍したら産業界からも、ああ、すごいなというところで御認識が変わっていくのかなと思っていまして、そういった、すみません、少し遠いところかと思いますけれども、そういったところにつなげていきたいなというところは思って事業をやっていこうかなと考えています。
 最後はやっぱり、将来が見えないというところは、量子分野がどこまで最後、産業としてポテンシャルを発揮して、市場を拡大していくかというところだと思いますので、そこは改めて先端研究を推進しながら、量子分野、これだけ可能性があるんだよ、社会に出たら、これだけすごいことになるんだよという、量子分野がすごいよというところを、認識を持っていただけたら、そっちの分野に進みたいというところも増えるかなと考えております。
【美濃島委員】ぜひその活動は続けていただいてというのはあるのですけれども、でも、本当に直近で、直接的に何か手を打たないと、かなりまずいのではないかなというのが現場の感覚です。そういった周りの、自然に出てくるというのを期待するという状況ではもうないように私は思っておりますので、文科省さんとしては、ぜひ仕組みのほうも主導していただけたらと思っていますので、よろしくお願いいたします。
【山村係長】はい。承知しました。ありがとうございます。
【上田主査】ありがとうございました。
 文部科学省におかれましては、ただいまの御意見を踏まえて、今後の取組を進めていただきますようにお願いいたします。
 それでは、議題3に移ります。量子技術の実用化推進ワーキンググループの中間取りまとめについてです。事務局より説明をよろしくお願いします。
【迫田室長】皆様、こんにちは。事務局、量研室長の迫田でございます。ありがとうございます。量子技術の実用化推進ワーキングというワーキングは、内閣府のほうに設置をされておりまして、量子未来社会ビジョンという国の戦略を昨年4月に作ったのですけれども、その次の戦略として今策定をしております。この議論の中間取りまとめについて御報告をさせていただきたいと思っております。
 2ページ目は目次、2ページ目は量子未来社会ビジョンでございます。3ページ目でございます。量子未来社会ビジョンの位置づけでございますけれども、昨年にも御説明していますけれども、量子技術イノベーション戦略というものが3年前の1月に策定されて、その後、様々な海外状況の変化であったり、または産業の競争力が、かなり競争が激化しているだろうということがありまして、しっかりとその出口戦略として量子技術をいかに使って社会または産業の変革をしていくのかという戦略を昨年4月に量子未来社会ビジョンとして策定したところでございます。
 4ページ目をお願いいたします。4ページ目のほうは、量子未来社会ビジョンにこの3つのゴール、1,000万人、50兆円規模、ユニコーンベンチャーということが載っているところでございます。こういったところをかなり具体的な目標を掲げているのですけれども、では、これに基づいて具体的に産業事業化という視点では、どういったような具体的な取組を進めたらいいのか。直近5年間ぐらいでしっかりと重点的にやるべきことは何なのかということを5ページ目でございます。今、議論をしておりまして、5ページ目に提示しておりますメンバーで、伊藤慶應大学塾長を座長になっていただいて、また、岡田Q-STAR事務局長にも、実行委員長にも副主査になっていただいて、産学官、今、連携の構成で、ワーキンググループで議論を進めているところでございます。
 6ページ目、お願いします。これが中間取りまとめでございます。産学で様々な産業界、議論を進めて、産業界であったり、また、研究者の皆様、ヒアリングしながら議論を進めてきた内容を今まとめております。これ、改めて上のほう、この産学連携の下、未来社会ビジョンで目標を実現するために産業化・実用化に向けて重点的・優先的に取り組む事項を検討いたしましたと。3つの視点を踏まえながら、量子未来社会ビジョンに基づく3つの視点を踏まえながら、産業上の主な課題であったり、また、これに対応した方針を検討した上で具体的な方策を検討するといったところを進めてまいりました。本報告書は、量子未来社会ビジョンと量子技術イノベーション戦略と、以前の戦略とどういった位置づけかということにつきましては、先ほど申し上げましたとおり未来社会ビジョンを踏まえた実行計画というような位置づけでございます。
 この下に今まで議論した上での産業上の主な課題ということで、若干、生々しいではないのですけれども、ストレートにしっかりと産業上の、今、課題を棚卸しましょうということで、正直に書き下しております。1つ目が将来の技術・市場が不透明で事業リスクが高い。ここは将来の、例えば先ほど出ましたとおり超伝導以外にもイオントラップであったり、光であったり、量子コンピュータ1つとってもなかなか技術方式がまだ定まっていないところもありますし、また、これを使ってどういったサービスが提供できるんでしょうか、売り上げもどうでしょうかというところもまだ不透明であるので、ここは事業リスクがほかの分野と比べたら高いほうかなとは考えております。
 2つ目が量子技術を活用したユースケースが少ない。従来技術と優位性のあるようなユースケースといったものが、まだ、一部はアニーリング等で出ているように見えますけれども、なかなかパッとした市場規模、キラーアプリケーションといいますか、将来の本当に大きな市場を形成できるような、そういったユースケースというのはまだないのかなというところが正直なところです。
 3つ目が量子技術に対するハードルが高いということでございます。先ほど異分野との連携とか、多分、ユーザサイドとの連携も含めてシステム屋さんであったり、古典のアーキテクチャ屋さんとの連携も必要だと思うのですけれども、ここの中小企業も含めて、皆さんもまだまだ量子技術に知見を有するような、そういった人材といったものはなかなか社内にいなかったり、また、知見もないというところも多い。ない企業が多いのかなと思っておりまして、こういったところを踏まえるとやはりまだまだハードルが高いのかなと。いかにこのハードルを下げるかというところが重要なのかなと考えています。
 4つ目がベンチャー企業・新事業の創出・成長の環境が不十分と書いておりますけれども、もともとスタートアップ企業の支援全体、量子に限らず投資額、VCの投資額といったもの、海外に比べて何桁か違うというところもございますが、この量子技術のベンチャーサイドの特徴というのは、やはり長期的な投資が必要。長期戦になるところもありまして、こういったところを踏まえますとリスクが結構、ベンチャー企業さんにとっては高いという部分もあるので、どういうふうに長期的に投資または人材を引きつけるような仕組みを構築したらいいのかというところも課題かなと考えています。
 最後、産業人材が不足しているというところでございますけれども、ここは研究人材も含めてだと思うのですけれども、世界的にも不足をしているところですので、ここをいかに育てていくのかというところがキーなのかなと思っています。
 ここに対して3つの視点とありますけれども、これも量子未来社会ビジョンに基づく3つの視点を踏襲したような形ですけれども、多様な産業、異分野連携も含めましてコラボレーションしていきましょうとか、または産業界に開かれた量子技術の、先ほど萬さんから国産量子コンピュータのコンテストベットの公開みたいな話がありましたけれども、こういったところも活用しながら、いかに様々な方々が量子技術に触れる、活用する機会を作っていくのかというところもあるのかなと思っています。また積極的なベンチャーであったりとか、また、大企業からのカーブアウトベンチャーとか、ベンチャーでなくても新事業、部を設置するなどして新しいベンチャー新事業創出のための支援であったり、エコシステム形成が必要でしょう、インキュベーションも必要でしょうということで3つの視点として書いております。
 こういった3つの視点を大事にしながら、グローバル連携、融資国との連携も見据えながら、これまで以上に加速していきましょうということで基本的な対応方針が下に書いております。1つ目が事業リスク対応としましては、ここは産総研のほうで複数の企業が共有できるような設備の整備ということ、例えば試作品を作るときとか、また、試作品を作ったときに、その性能を評価するような装置といったものをやはり個社で準備していてはなかなかリスクが高いという御意見もございまして、こういった試作品関係、プリミティブな段階のそういったプロトタイプの検証につきましては、共有できる設備を整備する、こういった方針が示されております。
 また、共通部品も重要でございまして、例えば量子技術の市場だけだと、マーケットだけだとなかなか売り上げの規模が確保できないということであれば、民生市場、民生品も利用しながら、民生品というか、一般的な汎用品も利用しながら共通部品を作っていって、中小企業さんが参入しやすいような環境を作っていくといったところもあるのかなと思います。また、量子コンピュータの中でもいろいろな技術方式がありますけれども、共通部品といったものはあるかもしれないので、こういったところも検討しながら、どういった部品があるのかということを検討していくといったことでございます。また、事業リスク対応として基礎研究支援、これは文科省に対する期待となっていますけれども、しっかりと長きにわたる長期戦ですので、基礎研究支援もしっかりとやっていくということです。
 2つ目がユースケースづくり支援をしていくということで、訴求力あるユースケースであったり、また、しっかりと情報発信していきましょうとか、また、ベンチマーク設定、なかなか研究者サイドだけでユースケースを作っていると、性能だけはよくてもコストがばか高いとか、全然生産性がすごい低くて一点物になって量産できないとか、利便性であったり、ユーザビリティであったり、そういったところも含めて総合的にベンチマーク設定する必要があるのかなということで、ここもユースケースを作る際にはしっかりと示していくことが重要なのかなと捉えています。
 3つ目が利用環境整備ということで、量子コンピュータ等の利用環境整備であったり、または例えば量子センシングとかだと結構技術的なハードルが高いので、利用環境整備して利用してくださいというふうに設備をただ単に並べるだけではなくて、その使い方自体も支援するような技術的支援、人材育成も含めて支援していくとか、また、新規参入者に対してしっかりと情報提供していく。まだまだ知られていない技術ではありますので、様々なユーザサイドの方々にリーチできるような情報提供をしていくというところもあるのかなと思っています。
 4つ目がベンチャー企業の創出ということで、長期的な視点での支援とか、もう既に結構、国のグラント、研究開発サイドには行っていますけれども、ベンチャー企業も採択できるような、積極的に応募できるような形にして研究支援を行っています。ただ、まだまだ企業人材がいなかったり、あとはアイディアがシーズ側からばっかり、今、ユースケースづくりをしているので、こういったユーザサイドと連携しながら、エコシステム、ビッチコンテストとか、アイディア発掘していくとか、またはベンチャー企業さんと大企業さんがパートナーになるようなエコシステム形成をしていくとか、こういったところもまだまだしなければいけないのかなと考えています。
 5つ目が産業人材育成ということで、産業等人材向けの教育プログラムということで、先ほども人材育成でありましたけれども、異分野の方が流入しやすいように、かなりプロフェッショナル向けだけの、研究者向けだけのプログラムだけではなくて、若干、敷居を下げるような優しい入門編から徐々にステージアップしていくような、こういったような教育プログラムというのはあるかなということで、各社のリスキリング等も結構意識も高まっていますので、こういった意識もしっかりと拾いながらプログラム提供していきたいなと思っています。
 また、先ほど産学の、産業界の説明会みたいな、大学の学生さん向けの就職説明会みたいなことをしますとかありましたけれども、また、ベンチャー企業さんにインターンシップとかするような仕組みとか、そういうのがありましたけれども、産学官の人材流動、交流を活性化するような仕組みづくりもしっかりやっていきたいなと思っています。
 また、産業人材というと恐らく量子技術の市場といったものが本当に本格的にビジネスとして、サービスとして開花する際、また、20年後、30年後とかなるかもしれないということで言うと、やはり今の若年層の方が小中高の方々、恐らく20年後、30年後には主役になるだろうと考えると、やはり若年層向けの教育プログラムも充実させていかなければいけないということで、先ほど山村からも御説明したとおり、ここは文科省の、しっかりとやるべきところかなと考えていまして、充実を図っていきたいと考えております。こういった対応方針を踏まえて、量子技術の実用化・産業化に向けた取組を推進していくといった次第でございます。
 7ページ目でございます。具体的に何をやるのかというところでございます。まだ議論中でございますので、簡単に御紹介いたしますと、量子ソフトウエアに関しましてはユースケースづくり支援であったりとか、また、ユーザ産業拡大・振興していく。また、一部のユーザ産業さんにまでしかリーチできていないところがありますので、こういった他社さんを含めて拡大できるような方策を練っていく。また、ユーザ産業さんが参入しやすいような性能指標、量子コンピュータ、ソフトウエアを使ったら、こんなベネフィットがありますよということを、性能のみならずコストまたはユーザビリティも含めて提起していき、拡大を図っていくとか、また、サービス事業者、ベンチャー企業さんが結構、量子コンピュータとユーザをつなぐようなサービス事業者さん、結構、最近ベンチャー企業さんが出現していますので、こういったところの育成も図っていく。
 また、国産量子コンピュータの産学官による幅広い、先ほど言ったとおり、しっかりと限られた研究者だけではなくて、産業界も含めて使い倒していく。えてして、大体、技術を作って終わりということになりかねないところもありますので、しっかりと活用していって、この活用の知見をフィードバックしていって、またハードにも生かしていくというような、そういったエコシステムを回すような仕組みというのが重要かなと考えています。また、産業界をリードするような、実際に実利用環境構築とありますけれども、これ、産総研さんのほうでも検討されていますけれども、産業界に開かれた古典量子ハイブリッドのような計算環境の構築であったりとか、また、産業界、科学のフロンティアを開拓するような計算環境構築も理研のほうで検討しているところでございます。
 量子コンピュータについては、しっかりと技術開発・事業化の強化・加速、または運用の経験、先ほどシステムエンジニアの御意見がありましたけれども、しっかりと運用の経験・ノウハウの蓄積をしていくといったことも重要なのかなと思っています。また、このハード分野、なかなかレベルが高いところがありますので、民間企業の更なる参画・活動促進も重要なのかなと思っておりますので、こういったところもしっかりやっていく。
 また、安定かつ強靱なサプライチェーン構築ということで、必要なデバイス、そろそろ量子コンピュータであればどういったデバイスが必要になってくるのかとか、こういった部品、材料とかデバイスに対して、恐らく中小企業、日本が抱える中小企業、結構、強みを有しているところもまだまだあると思いますので、こういったところが企業参画できるような仕組みづくりであったりとか、また、高品質化、安定共有であったり、チョークポイントを押さえるような、そういったような戦略も検討していくといったところが提示されております。
 量子セキュリティ・ネットワークについては、ユースケースづくりをしっかり引き続き行っていくとともに、安全保障関係の用途も期待されますのでアンカーテナンシー、アーリーアダプタとして利用促進をしていったり、また、テストベッド運用による技術開発支援をしていくなど、また、認証利用基盤構築も重要なのかなというところで書いております。3番目がやはり量子セキュリティ・ネットワーク、まだまだ全てのデータを量子セキュリティで通信していては、なかなかコスト的にペイしないところもありますので、量子・古典の総合的なアーキテクチャ構築をしていくというところもうたっております。
 右側が量子計測・センシング/マテリアルでございます。こちらは徐々に、徐々にユースケースづくりに向けた研究開発も進められていますけれども、まだまだ足りないところもありますので、産学コンソーシアム等、体制整備しながら技術開発とともにユースケースづくりも行っていくといったところも書いています。また、マテリアル産業の方々にヒアリングしたのですが、量子計測・センシングのユースケースであったり、またはコンピュータもユースケースがしっかりとサービスとして市場が確立して、なかなかマーケットが見込めないので参入しづらいといった御意見もありましたので、こういったところ、ハード、ソフト一体的に連携しながら研究開発していくことも重要なのかなと考えています。
 共通事項、下にありますところはグローバル連携であったり、またはパートナーシップ、産学官のパートナーシップ構築であったり、こういったその他の分野については、また引き続き議論を進めていくといったところでございます。
 今後の見通しですけれども、4月ぐらいにこの報告書を固める予定でございまして、やや産業化の話ですので、ここの文科省の委員会とかなり合致する内容では、完全に一致する内容ではないですけれども、産業化の入り口の先ほどの人材であったり、基礎研究であったり、こういったところでしっかりと文科省として貢献できるところがあるのかなと思いますので、文科省に対する、この産業化の議論、期待ということで、本日お示しした内容が示されているということでございます。
 以上でございます。
【上田主査】ありがとうございます。
 ただいまの御説明に関して質問などはありますでしょうか。いかがでしょうか。湯本委員、よろしくお願いします。
【湯本委員】どうもありがとうございました。湯本です。3ページぐらいでしたっけ、ベンチャー、今の緑のところです。すみません。その4つ目の箱、下の緑の4つ目の箱でベンチャーとか書いてあるのですけれども、日本ではなかなかうまくいっていないと思っております。
 それで、私も米国の状況をかなり調べたのですけれども、特にハード系、AIとかソフトではなくてハード系を考えると、米国では、結構、重点的に取り組んでいるのが、スモール・ビジネス・テクノロジー・トランスファー(STTR)とか、スモール・ビジネス・イノベイション・リサーチ(IBIR)という考え方で、活動が非常に活発です。これは大学とか国の研究所が学生に資金を出して、学内、あるいは国研の設備も優先的に、あるいは非常に安く使えるような形で、物づくりまで、その施設でやるというような形になっております。ぜひ日本でも、SBIRとか、STTRとか言葉はあるんですけれども、言葉だけで米国のものとは全く違うものという理解をしています。
 そういう意味では、アメリカのまねをすればいいというわけではないですけれども、せめて、その辺の活動を充実していくことが新しいネタを探す、見つけ出す一番のポイントになるかと思います。ですから、その辺もう少しベンチャーキャピタルが出資できるようになるまでどうやって育てるか、その辺をいろいろ考えていただければありがたいなと思っています。
 以上です。
【迫田室長】ありがとうございます。おっしゃるとおり、なかなか投資規模が1桁、2桁、ベンチャーキャピタル関係、海外と違いますので、やはり日本というのは、私の個人的な感覚ですけれども、ソフト系ベンチャーが多いのかな、今、13社ほどソフト系ベンチャー企業が国内にあるんですけれども、やはり大半がソフト系なのかなと考えておりまして、ハード系というのはなかなかリスクが高いというか、そもそもVCの投資がなかなか少ない中、手を出しにくいところがあるのかなというところで捉えておりまして、しっかりと御意見を踏まえながら、先ほどの企業が共有できる設備の整備であったり、しっかり試作品を作るようなところをベンチャーに優遇して、配慮して使用を、設備を提供したりとか、またはVCとの接続であったり、まだ個でVCとベンチャーが対話しているところですので、もう少しダマでVC同士、横で連携したりとか、または組織、n対nでVCとベンチャーが対話できるような、そういったコミュニティであったりとか、様々なことはやるべきかなと思っています。
 また、VCへのつなぎになるまでの政府の研究開発投資といったものをしっかりベンチャー企業が後押しになりやすいような仕組みづくりも重要なのかなと思っていますので、御意見を踏まえましてしっかりと人、物、技術、全ての面において支援していきたいと思います。ありがとうございました。
【湯本委員】ちっぽけなテーマでもどんどん始めるような文化を作らないと、いいものだけを最初から狙っていると、絶対うまくいかないと思います。この辺を小さな支援で構わないと思うので、柔軟に運用できるような、そういうことを考えていただければと考えています。よろしくお願いします。
【迫田室長】はい。ありがとうございます。
【上田主査】それでは、山田委員、よろしくお願いします。
【山田委員】どうもありがとうございます。実用化を進めるときに少し気になるのが2点あります。1点は知財で、もう1点は評価です。知財に関しては、拠点やコンソーシアムということになると、その中のさばきだけでも結構大変だと思います。萬先生のお話にあったように、多くの拠点がある場合に、それをどういうふうにお考えになるのか、個別に任せるのか、それとも何らかの共通のガイドラインを持って国として管理し進めていくのかに対する御意見をいただきたい。
 それから、評価と申し上げるのは、資料にもテストベッドとか、ベンチマークという記載があるので、意識されていると思うのですけれども、候補となる幾つかの方式が出てきて、ましてや量子超越性もしっかりとは提示できていないときに、フェアで、横並びで評価することが重要と感じます。開発している本人たちが本人たちの都合で評価するのではなくて、全体として戦略的にやっていかないと、結局、何がいいのか、どういうものに使えるのかに関する知見が残らないような気がします。そういった評価の重要性というのをどのようにお考えなのか、その2点、御意見いただければ幸いです。
【迫田室長】ありがとうございます。1点目の知財なのですけれども、知財は基本的には知財協定とか、各主体が結ぶものですので、こちらの運用に委ねる。一律的に全て十把一からげでやっていると、知財戦略もなくなってしまいますので、何をオープンにして、何をクローズにするかというのは、結構、それぞれの技術の特徴に合わせてやらなければいけないので、これはそれぞれの拠点であったり、コンソーシアムでやるべきかなと思っています。
 ただ、一方で、なかなか研究者の皆様がそういったマネタイズとかも含めてオープン、クローズというのをやはり考えるのはなかなか難しいと思いますので、拠点でしっかりと知財の専門家、充実していくべきかなと考えております。何でもかんでも研究者がやっていると、時間もないですし、やはりしっかりと専門家に任せていくというところが重要なのかなと思っています。こういった意味では、先ほど○○×量子人材育成とありましたけれども、恐らく知財×量子って、そういった人材育成も今後スコープに入れてやらなければいけないのかなと思っております。
 もう一つ、性能評価ですね。性能評価についてはおっしゃるとおり、例えば自分たちの技術をお手盛りするような評価をされたら、ユーザからすると、大変判断しにくい性能仕様になってしまいますので、ここはフラットな関係、しっかりと客観的な評価になるように努める必要があるのかなと捉えております。ここはなるべく、何かあまり主観が入らない数字的なデータで示していきたいと思います。
 ただ、一方で、今後、技術も発展していくものもありますので、そこも、今、性能がこれだから今後絶対伸びませんよみたいな、そういったミスリードになるようなところではなくて、今の現状ではこうですよみたいな、今後の伸びしろも含めてしっかりと示していくことも重要なのかなと考えております。
【山田委員】特に知財に関しては、関係者がばらばらに対応すると、結局、誰も使えないというような最悪の状態になることが往々にしてあります。やれる範囲でうまくガイドラインを作って、うまく運用されるのが良いと個人的には思います。よろしくお願いします。【迫田室長】  はい。ありがとうございます。
【上田主査】ありがとうございました。
 文部科学省におかれましては、内閣府などの関係省庁とも連携し、引き続き量子技術の実用化に向けた施策の検討をよろしくお願いいたします。
 それでは、議題4に移ります。量子関連の令和4年度補正予算及び令和5年度予算案についてです。事務局より御説明をお願いします。
【山村係長】事務局の山村でございます。令和4年度補正予算及び令和5年度の予算案ということで御説明させていただきます。こちら、文部科学省における量子関連予算の全体でございます。全体の額としましては、昨年、令和4年度が270億ということであったのですけれども、こちら、令和5年度の予算案というところでは318億程度ということで、例年順調に伸びてきているかなというところ、また、補正予算も100億円程度稼げているというところでございます。
 いろいろな施策があるのですけれども、令和5年度または令和4年度補正予算の中で、特に重要なポイントとしまして3つほど御紹介させていただきますけれども、1点が理化学研究所の新しい施策、また、光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)、それから、最後がQST、量子機能創製拠点というのが量子未来社会ビジョンというものを踏まえて立ち上がったものでございまして、そちらの令和4年度の補正予算というところを御紹介させていただきます。
 こちらは理化学研究所の新しいTRIP――Transformative Research Innovation Platform of RIKEN platformsというものの頭文字を取ってTRIPという事業がございまして、こちらは新しく着任された五神理事長のイニシアチブの下、立ち上がった新規事業でございまして、23億円の新規事業となってございます。
 概要としましては、こちらの右下の図を御覧いただくと分かりやすいのかなと思いますが、理化学研究所、バイオリソースですとかSpring-8、SACLAのようなプラットフォームを運用しておりますので、こちらの良質なデータを取得、または統合していくというところ、それから、下のほうも計算可能領域の拡張というところでスパコン、あるいは量子コンピュータを接続した量子・古典のハイブリッドコンピューティングというところを構築して、こちらの良質なデータをこういった潤沢な計算機を持って、最先端のAI×数理的なモデルを使いまして、全く新しい価値を創造していく、そういった構想の下で始まっている事業でございます。この中で量子・古典ハイブリッドコンピューティングというところが掲げられておりまして、そちらのところで、量子関連予算というところで、今回、御説明させていただいたというところでございます。
 2点目がQ-LEAPでございます。こちらは昨年度の予算が36億円、37億円程度だったのですけれども、来年度、令和5年度は6億円程度増額することができまして42億円ということで、かなり巨額の予算、プロジェクトとなってございます。令和5年度の予算のポイントとしましては、今、理化学研究所で、今年度に公開する64ビットの次の世代、100量子ビットの次世代機の開発というものを加速していくための増額予算ですとか、先ほど御紹介した人材育成プログラムも新しく開始していくための予算というものを確保してございます。
 最後ですけれども、QSTの量子機能創製拠点の基盤強化のための施設整備ということで、こちら、令和4年度の補正予算で22億円を計上してございます。こちらは内容としましては、QSTの高崎研究所のところに新しく量子機能創製のセンター棟を整備して、主にダイヤモンドNVなどを作るときの電子加速器の整備ですとか、量子マテリアルを作ったときの創製プロセス基盤の整備、こういった創製するときのプロセスをQSTの中で一体的にやるための装置群、あるいは作ったもの、マテリアルやデバイスなどを評価、分析するシステムの整備ということで、こちらは基本的に物買いの予算でございますけれども、全体として22億円を計上しているといったところでございます。
 簡単ですが、以上になります。
【上田主査】ありがとうございました。
 ただいまの御説明につきまして、質問などはありますでしょうか。よろしいでしょうか。では、ありがとうございました。文部科学省におかれましては、今回、確保した予算も活用し、引き続き効果的、有効的な施策の推進をお願いいたします。
 以上で本日予定しておりました議事は全て終了いたしました。事務局から連絡事項などがありましたら、よろしくお願いいたします。
【迫田室長】事務局、量研室長の迫田でございます。本日は、ありがとうございました。本日をもちまして、この今期の量子科学技術委員会は節目ということでございますので、私から御挨拶をさせていただきたいと思います。
 Q-LEAPの推進であったり、また、先ほどの人材育成、CREST、さきがけであったり、そういった人材育成等につきまして、これまで真摯に御意見いただき、御議論いただき、感謝申し上げます。研究から人材まで施策のエコシステムというのは、結構、一定程度できたのかなと思いますし、また、今後も、まだ道半ばでもございますけれども、しっかりと充実してまいりたいなと思っています。先ほど博士人材の育成も含めて現場の皆様、緊迫感を感じましたので、しっかりと気を引き締めて、なるべく目詰まりのないようにしっかりと行っていきたいと思います。とりわけ、文部科学省に期待されているのは、基礎研究と、あと人材育成というところでございますので、こういったところはしっかりと基盤としてやっていきたいと思っています。
 また、国産の量子コンピュータ、先ほど萬さんから、理研から御発表がありましたけれども、基礎研究が実用化につながっていく過程の明るいニュースといったこともございます。これ、3月に公開していく予定なのですけれども、歴史的な成果でもあるのかなと思っております。次にも、しっかりと次につなげて、Q-LEAP等で乗っかっている基礎研究を実用化につなげていきたいなと思っております。一方で、パブリック予算、結構、充実は図ってきた。先ほど山村からも御説明がありましたとおり、かなり国際的に見ても充実は図られているのかなと思っていますけれども、一方で、なかなかプライベートセクターの予算がない。先ほどスタートアップを含め、ありましたけれども、なかなかこの予算が大企業からの投資であったり、またはVCからの投資であったり、金融回り、アクティビティがなかなかまだ事業化、産業化という文脈では活発ではないのではないのかなと考えております。
 ですので、しっかりと事業化、産業化に向けての議論を進めてまいりたいと思いますし、または研究人材側もしっかりと基礎研究を産業界にバトンタッチしていくような意識の改革も重要なのかなと思っております。なかなか理学部、物理系の方々、多いので、産業界から、ややもすると遠い方々もいらっしゃるかもしれないので、意識してこういった産業界につないでいくことが重要なのかなと考えております。また、その産業界のつなぎとともに、先ほど周辺技術、やはり運用が始まってまいりますので、こういったシステムサービス側であったり、また、ユーザサイドで言うと本当に材料、金融であったり、エネルギーとか、量子分野からするとかなり遠いというか、いわゆる異分野の方々と連携していくことがこれからしっかりと量子技術を社会、産業で価値化していくためには必要な取組なのかなと思っております。
 また一方で、この分野は技術的な基盤が必要になってくる。絶対、この研究人材の知見というのは必要になってきますので、こういったところ、研究側、基礎研究側とこの異分野の連携というのをいかに図っていくのかというところが今後の課題かなと思っていますし、または今後も取組を進めてまいりたいと考えています。このためにも産学は、政府もしっかりとお互いが連携できるような場づくりもしますし、また、皆様、こういった場も含めて活用しながら、産学がお互いに粘り強く連携、交流しながら、敷居を低くしていく取組を地道に進めていくことが重要なのかなと思っております。
 以上、大変、これまでの御意見を含めて施策も充実してまいりますし、今後も御指導いただくことがあろうかと思いますが、今後とも引き続き御指導いただければと思います。これまで上田主査をはじめとしまして、委員の皆様には、お忙しい中、御参画いただいて大変貴重な御意見をいただきまして、感謝申し上げます。しっかりと御意見を踏まえながら取組をさらに飛躍させていきたいと思いますので、今後とも御指導、よろしくお願いいたします。私からの御挨拶は以上でございます。
【上田主査】  本日は、長時間にわたる御議論、本当にありがとうございます。最後に私からも一言、御挨拶申し上げさせていただきます。
 まず、迫田室長、山村係長をはじめ、量研室の皆様には委員会の運営やその他の資料づくりなど数多くの御尽力を賜り、心から御礼申し上げます。また、委員の皆様には様々な角度から活発な御議論をいただき、本委員会の議論を深め、また、スコープを広める上で本質的な役割を果たしていただきました。改めて感謝申し上げます。
 量子科学技術は、基礎研究の進化が最先端の技術の推進に直結するという非常にユニークな特色を有しており、国家の産業競争力を図る中核的な課題である、こういう観点からも世界的に最も競争の激しい分野となっております。そのような中で、我が国の競争的優位性を維持、確保するためには、産官学が一体となり、有機的、機動的、そして戦略的に施策を実行することが重要になると思われます。その意味で、本委員会の果たす役割は、今後ますます重要になってくると思います。本委員会のますますの発展を祈念して私の挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 それでは、これをもちまして閉会とさせていただきます。
 

―― 了 ――

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