量子科学技術委員会(第9期~)(第26回) 議事録

1.日時

令和4年1月28日(金曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

オンライン開催

3.議題

  1. 量子ネイティブの育成、量子技術の普及・啓発について
  2. 産業界と連携した人材育成について
  3. 量子科学技術委員会における議論のとりまとめについて
  4. その他

4.出席者

委員

上田主査、岩井委員、岩本委員、大森委員、川上委員、小杉委員、根本委員、早瀬委員、波多野委員、美濃島委員、向山委員、山田委員
【外部有識者】岸本准教授、西野研究科長、小澤主任、藤堂教授、山城CEO

 

文部科学省

迫田量子研究推進室長、山村量子研究推進室機構・総括係長、百合量子研究推進室行政調査員、古関量子研究推進室係員

 

5.議事録

【山村係長】それでは、皆様おそろいになりましたので、第26回量子科学技術委員会を開催したいと思います。よろしくお願いします。
 本日の委員会の事務局を担当させていただきます、文科省量研室の山村と申します。
 皆様、本日はお忙しい中御出席いただき、ありがとうございます。本日は12名の委員に御参加いただくこととなってございます。平野委員、湯本委員は御欠席となっております。
 それでは、議事次第の画面共有をお願いいたします。
 こちらに映っておる議事次第のとおり本日議事を進めていきますけれども、配付資料は、こちらに表示しておりますとおり事前に配付しておりますが、不足などございましたら、事務局まで御連絡いただければと思います。説明の際は画面に共有しながら進めていく予定でございます。
 次に、オンライン会議の留意事項について説明いたします。
 通信を安定させるため、御発言されるとき以外は、可能な限りマイクをミュートにしておいてください。御発言される際はミュートを解除にしてください。議事録作成のため、速記者を入れておりますので、お名前を言っていただいた後に御発言をお願いします。
 会議中、不具合などトラブルが発生した場合は、事前にお知らせしている事務局の電話番号にお電話をお願いいたします。
 なお、本日は会議公開の原則に基づき、報道関係者や一般傍聴者によるZoomでの傍聴を認めておりますので、御了承ください。
 事務局からは以上になります。以降の議事進行については上田主査にお願いいたします。よろしくお願いします。
【上田主査】上田でございます。本日はどうぞよろしくお願いします。
 本日も前回に引き続きまして、量子人材の育成・確保策について御議論いただく予定でございます。議論は3つございます。まず、1つ目と2つ目の議題として、量子ネイティブの育成、量子技術の普及・啓発について、また、産業界と連携した人材育成について、それぞれ有識者の皆様から御発表、意見交換を致します。その後、3つ目の議題として、本委員会での議論の取りまとめについて、事務局から説明後、意見交換を致します。
 それでは早速、議題1に移ります。量子ネイティブの育成、量子技術の普及・啓発について、電気通信大学の岸本様及び西野様、日本科学未来館の小澤様より御発表をいただきます。その後、御質問なども含めて、意見交換の時間を設けております。
 まず、電気通信大学の岸本様及び西野様より御発表をお願いいたします。
【岸本准教授】ありがとうございます。それでは、始めたいと思います。本日は、量子人材育成の観点から、前半を「若いうちに量子に『触れられる』機会を作る試み」と題しまして私、電気大の岸本が、後半は「量子×AI」の内容で西野先生が発表いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、これまで例えばQ-LEAPの量子人材育成プログラム、さきほど御紹介があったかもしれませんけれども、既に開発中のプログラムというのは、基礎的な部分からスタートして、高度な知識と技術を持つ、さらにプロを目指すようなところの量子ネイティブ人材の育成にも力を入れたプログラムになっています。量子人材育成という意味では、我々としては、量子技術に特化した専門性の高い人材のほかに、ほかの分野で活躍する人材も量子に触れられる機会を設けておくことで、最終的に量子を第2言語のように使いこなす人材も育成していくことが大事ではないかと考えている次第でございます。
 まず、我々が考えている量子ベース思考型人材育成についてです。量子ネイティブ人材というものが、量子計算とか量子通信などのプロの人材の育成に至るまでがターゲットになっているかもしれませんけれども、言葉の意味の取り方の違いかもしれないけれども、異分野の人にも裾野を広げた量子ベース思考型人材というものを我々は考えています。量子学的素養を兼ね備え、それをベースとした思考に基づいて各自が多様な専門分野で活躍できることを想定しております。
 次のページをお願いいたします。いろいろな国内外の動向を見てみますと、国内でいうと、Q-LEAPのほかに、NICTのQuantum Campとかにありますような、ICTのエキスパート、量子ネイティブ育成に軸足が置かれているように感じます。海外ですと、EU、UK、それから、アメリカ等でもやっぱりプロ育成を主にやっておりますけれども、アメリカなんかでは、Q-12で中高生相手にもしっかりしたプログラムを用意しているようになっているようです。
 そんな中、これまで現代社会においてあらゆるところにセンサーとかが例えば実装されているわけですけれども、それらが量子センシング技術を今後取り入れていくことになったとしたときに、幅広く応用先を拡張していく上で、物理現象に根差した教育が重要となってくると考えています。その点から、専門分野に細分化されていく前の段階で量子の世界に触れられる、あるいは体験する機会を設けることが、多様な分野で活躍する量子ベース思考型人材を育成する上で大事になると考えております。
 次のページお願いします。量子力学は、一般的に抽象的で捉えどころがないものに思われがちですけれども、手を動かすことで量子力学を参加者に体験してもらう、あるいは心理的に敷居を下げる上でそういうことが重要になってくると考えます。もちろん式まで理解して全て理解することがゴールの一つになるわけですけれども、例えば右上に書いてありますような2020年の教育系のプロシーディングでも書かれておりますが、students face difficulties in sketching the shape of a wavefunction even if they know the correct mathematical form。結局のところ、波と粒子の二重性とか不確定性の原理とかイメージをつくり切れていない部分があるのかと思います。そこで、現在の量子技術イノベーションにつながる研究の基礎を築いてきた原子とか光学の実験を追体験する機会を与えて、そこで学ぶことで量子と量子の世界特有の概念を理解することが重要ではないかと考えていて、その体験を通じてイメージをつけていくことが大事という観点から、実験を主体とした体験型のプログラムの構築を考えております。
 次のページお願いいたします。本プログラムの例えば概要としまして考えていることは何かというと、もちろん興味を持ってもらうような教材の提供・開発が大事になってくる。それで、「あ、そういうことだったのか」、「それは面白い」というような実体験をしてもらいたいという視点から工夫していきたいということです。
 それから、専門外の人も参加できるような、プログラムへのリクルーティングを考えなければいけないわけですけれども、電通大においてはそういう点で、専門に分かれる前の段階に触れられる機会を設けようと考えていて、今、いろいろ鋭意調整を頑張っているところですけれども、学域1年生での必修化を考えています。そこでのノウハウを培っていきますとスタンドアローン教育プログラムのパッケージが出来上がるので、そのまま外部への提供、ほかの機関あるいは企業への技術の提供、それから、集中講義を通した提供も可能になるかと考えています。
 裾野拡大ということも大事になってきますけれども、そのときにインストラクターがたくさんいないと、少数でやるには回し切れないという部分がありますので、例えばプログラムを全て修了した者に対して認定証などを与えて、その人たちがインストラクターになるというような自己複製型のサイクルの構築を目指しております。
 次のページお願いします。量子ベース思考型人材というのは、量子ネイティブ人材と円滑にコミュニケーションすることが大事で、この辺省きますけれども、量子力学の基礎の部分で習ってくるような重ね合わせの原理とかエネルギーの量子化とかそういうものをキーワードとしてどういうテーマが考えられるかというときに、光子、原子、光コム等の実験を考えております。
 次のページお願いいたします。そうなったときに、例えばその3つのキーワードでスタートして考えたときに、確実にステップアップしていくために、1種類じゃなくて、難易度別にある程度、例えば初級・中級・上級というようなステップアップしていく形で用意していくことが重要かなと思っております。
 次のページお願いいたします。この開発に当たりましては、自分のところ以外のところへ持っていく、あるいはそれをその後やってみたいというところが出てきたときに対応できるように、できる限り低価格化する、あるいは操作性、安定性、それから、ポータビリティーが重要になってくると思います。その辺をきちんと落とし込んでいければと思っております。
 次のページお願いいたします。先ほどの繰り返しになりますけれども、インストラクター育成に当たっては、受講した人が自分のところに持ち帰って、あるいは出前をするなどということによって自己複製型サイクルを考えております。
 次のページお願いいたします。本学自身がちょうどいいプラットフォームかなと思って、Q-LEAP、量子人材育成に提案をさせていただいているところですけれども、環境としては、幾つかの研究グループが採択されている、研究部門で採択されているということ以外に、教育という点からしますと、例えば本学のレーザーセンターが主体となって、これまで96年からずっと続けております、学生主体で研究テーマを考えて、実際の講義のところでやる実験まで落とし込むようなプログラムがあります。実はそれはもう学外にも波及していて、レーザー夏の学校とかでもそれが導入されて、先生が行くのではなくて、受講した学生が、院生とかがインストラクターとして派遣されていくような形になっていて、その辺のノウハウをうまく使っていきたいと。
 最近、我々の量子人材育成のこのプログラムに合わせて、UEC Quantum Baseというものを立ち上げつつあって、開発段階から学生に関わっていただいて、彼らもインストラクターになり得る人材として育てていこうと考えております。
 次のページお願いいたします。それによって裾野を広く広げていきたいということと、連続性、接続性を持って波及効果を広めていきたいと思います。我々の後に御講演される日本科学未来館とかともタイアップ、いろいろ協力しながらやっていけると面白いかなと思うところです。
 次のページお願いします。前半は以上になります。次、西野先生、お願いいたします。
【西野研究科長】電気通信大学大学院の情報理工学研究科長をしております西野と申します。よろしくお願いいたします。私のほうからは、本学で進めております量子×AI教育についてお話しさせていただきたいと思います。このプログラムは、量子ネイティブ教育とは別に、文科省さんのほうで推進されている数理・AI・データサイエンス教育に対する電通大の対応ということで考えてきましたプログラムでございます。
 次のページをお願いいたします。この教育プログラムのコンセプトですが、これを1枚のポンチ絵で表現しております。目指すところとしては、Society5.0に貢献するような人材ということでございます。電気通信大学には情報系の学生さんとそれ以外の理工系の学生さんがおられますけれども、情報系の学生については、AIを作る人材ということで、新たなAIツールを開発できるような人材を育成する。それから、それ以外の理工系の学生については、各自の専門分野、機械工学とか物理工学とかいろいろな分野の学生がおりますけれども、それぞれの分野でAIツールを活用してイノベーティブな研究を進められるような人材を育成していこうということです。
 特徴としましては、実社会と連携して教育を進めていこうということで、コンソーシアムが形成されておりまして、いろいろな参画企業さんから、大学の教育であれば使っていいよということでリアルなビッグデータを頂いていたりしますので、そういったものを使いまして、実社会と連携を取りながら実践的な学習をさせるということを特徴としております。
 次のページお願いいたします。これは日刊工業新聞の2020年5月に掲載された記事でございまして、これは電子版から取っています。電気通信大学で量子AI教育プログラムを進めていますよということで記事として取り上げていただきました。このときの記事の趣旨は、この右下にございますオレンジ色の表ですけれども、総合コミュニケーション科学という授業がございまして、これが学部1年生と修士1年生にそれぞれございます。学部版と大学院版があります。
 学部1年生のほうは、これ、必修科目になっておりまして、750名程度の1年生が全員受けるんですが、この科目の内容は年ごとにいろいろ変化するんですが、総合コミュニケーション科学の中の、最初は8こまもらいまして、来年からはもう全てのこまを使うことになるんですけれども、この科目の中でAIの基礎とか、量子コンピュータの基礎とか、それから、パイソンというプログラミング言語の基礎、それから、データサイエンスや機械学習の基礎を教えるということです。1年生に対する必修科目でこういうものを教えているのは面白いということで記事に取り上げていただいたんですけれども、この記事、電子版の記事は、日刊工業新聞の電子版の2020年5月のアクセス件数のナンバーワンを取ったということを後で教えていただきまして、非常に世の中の方たちの注目を集めた記事だったようだということでございます。
 次のページお願いいたします。これは大学院科目のほうなんですけれども、本学で開講している大学院の科目を分類いたしますと、数理・統計学系とか、データ工学系、あるいは人工知能系、経営工学系ということで、かなり授業としては内容的にはもう既にいろいろ行っています。ですから、こういった授業の中からコアカリキュラムを編成しまして、推奨される授業を学生に提示して、履修してもらうというようなことによってこの教育プログラムを構成しております。
 次のページお願いいたします。これはまとめになります。電通大のほうで考えている量子×AI人材のイメージでございます。そもそもは文科省さんの数理・データサイエンス教育強化コンソーシアムの一番上のエキスパートレベルに対応しようということで数年前から準備をしておりました。ただ、エキスパートレベルは今、ペンディングなんですかね。それで、一番基礎のレベルのリテラシーレベルは既に認可されている大学がございまして、これから真ん中の応用基礎レベルの募集が始まると聞いておりますが、エキスパートレベルのほうは募集の話が聞こえてこないので、本学独自で進めていこうというような位置づけにしております。
 この量子×AIというのは我々のオリジナルではなくて、アメリカでグーグルとかNASAが量子人工知能研究所を2016年ですかね、開設しておりまして、その研究所の研究分野をカバーするような組織が日本にないものですから、この研究所の研究分野をカバーするというようなことを意識して教育プログラムを設計してまいりました。それで、電通大大学院は情報理工学研究科という単一の研究科から構成されておりまして、この研究科の中に理学系の専攻と工学系の専攻が両方入っております。ということなので、同一研究科内で専攻横断で科目履修してもらいますと、量子×AIの人材の教育に必要な授業を取ることができるという、非常に教育がやりやすい環境にあるということがございます。
 それから、AIの人材教育の学習目標のほうは、教育強化コンソーシアムさんのほうで3つ挙げられています。まずはデータから意味を抽出して現場にフィードバックする能力を養成して、それから、AIを活用し課題解決につなげる基礎能力を習得した上で、自らの専門分野に数理・データサイエンス・AIを応用するための大局的な視点を獲得するということを目標としておりますけれども、さらにそこに量子ネイティブ教育を融合させることで、いわゆる量子情報科学分野で活躍する人材を育成できるのではないかと考えております。
 具体的には、量子コンピュータの開発とか、それから、量子コンピュータ上で動作するアプリケーションの研究開発、それから、耐量子コンピュータ暗号といいますけれども、量子コンピュータが出来たとしても安全なもの、そういったものの設計、実現を考える。それから、その量子コンピュータによる実問題の高速解法ということで社会実装を考える。あるいは、量子人工知能の実現ということで、例えば機械学習を量子コンピュータで高速化させると、そういったような研究に貢献するような人材の育成が行えればということでこういった教育プログラムを進めております。
 以上でございます。御清聴ありがとうございました。
【上田主査】ありがとうございます。続きまして、日本科学未来館の小澤様より御発表をお願いいたします。
【小澤主任】日本科学未来館の小澤と申します。どうぞよろしくお願いします。では、これから、未来館の活動について簡単にお話をさせていただきたいと思います。
 ページをお願いします。まず未来館なんですけれども、ざっくり言って未来館というのは国立の科学館なんですけれども、特徴としては大きく2つあります。そこで扱っている内容は、先端の科学技術、特に今まさに研究開発されている科学技術を皆さんと共有したい、伝えたいということが1個。それからもう一つは、そこには科学コミュニケーターと呼ばれる特殊な技能を持った人たちが四十数名今おりまして、そういう方々中心に来館者の方と科学コミュニケーションを行うというのが大きな特徴かなと思っています。なお、量子コンピュータに関しましては、今はないんですが、かつて3年前までは量子コンピュータを扱った展示がございましたので、その辺の話も後でさせていただきたいと思います。
 では、次へお願いいたします。では、未来館がどういう人たちがどれぐらい来るのかという話を先にさせていただきます。こちらの来館者総数のグラフがありますが、大体、コロナ前までは100万程度の方々が常にいらっしゃっているという状態でした。ただし、コロナの今の状況においては、特に昨年度とかはほとんどの期間を閉めていたということもあって非常に下がったんですが、今年度、来年度辺りからは徐々に回復していこうという状況にあります。
 お客様の特徴としては、大人の方が多いんですね。通常、科学館というと、どうしてもお子様が非常に中心になる、小中学生が中心になるのが多いと思うんですけれども、未来館は非常に大人の方も多いし、子供の方も修学旅行とかも含めれば非常にいらっしゃってはいるんですけれども、ある意味バランスは取れているかなと思っています。
 それから、外国人の方が多いんですね。外国人、いろいろな情報を基に未来館というところがあるということを聞きつけていらっしゃっている方がたくさんいらっしゃって、コロナ前までは、肌感でいうと3割ぐらいの方が外国人の方かなというふうなイメージでおりました。ただ、御存じのようにコロナによって外国人の観光客が今、ほとんどいらっしゃらないということもあって、今はほぼ外国人の方はいらっしゃっていないです。
 それから、お客様は非常に科学に対してポジティブな方が多いんですね。ですので、例えば実証実験をやりますとか、被験者になってくださいという僕たちのリクエストに対して受けていただく方が非常に多いんです。非常にポジティブな方がいらっしゃいます。
 それから、VIPも多数いらっしゃっていまして、例えば政治家の方とか、例えばオバマ大統領とかメルケルさんとかもいらっしゃいました。それから、ミュージシャンとかアーティストの方も多数いらっしゃっているというのが未来館の特徴かなと思います。
 では、次のページへお願いいたします。未来館でアウトリーチを行う意義として4つ考えてみました。一つは、やっぱり圧倒的にお客さんが多い。100万人ぐらいのお客様の目に触れるということはなかなかほかの場所ではないんじゃないかなと思っています。ですので、研究活動とか科学技術への関心や興味を高めるということには非常に貢献しているのかなと思います。
 それから、ELSIとかRRIとかは最近言われますけれども、科学技術が市民生活とかに与える影響とかというものは、やっぱり市民と対話をしながら信頼を醸成しながら進めるということも大事であって、そういうことを進めることが、未来館の中でお客様と話し合いながら進めるということができるというのが2つ目。
 それから、3つ目としては、先ほど話しましたように、お客様が非常にポジティブな方が多いということもあって、市民のニーズを把握したりとか、あるいはそこでいろいろな被験者になっていただいて実験データを取得するということもよくやっております。それによって研究を次に進める、ステップアップすることができるということが3つ目。
 それから、これは研究者自身のことなんですけれども、やっぱり研究者というと、なかなか自分の研究室に閉じ籠もって進めることが多いと思うんですけれども、やっぱり市民といろいろ対話をしたり、対峙したりすることによって、市民とか社会に目を向けるきっかけになることができるということも未来館の特徴なのかなと思っています。ですので、研究者の方々もたくさん未来館は出入りしていますし、未来館の中にも研究室が幾つかありまして、そういう方々と一緒に市民と対話をしているということが行われております。
 次のページへ進んでください。科学館なので、科学を伝えるということが第1のミッションなんですけれども、伝え方はいろいろありまして、未来館は常に新しい手法を開発しています。これ以外にもたくさんいろいろな手法があるんですけれども、大きく言って3つあるかなと思っています。
 1個目が、本物をそこに置くということです。例えばASIMO、ロボットであったり、アンドロイドであったりというものがそこにあれば非常に説得力があるわけですし、H-2Aのロケットエンジンがあったり、霧箱で放射線を可視化することなどがあるかと思います。例えば量子技術でいうと、例えば香取先生の光格子時計みたいなものがそこにあって実際に動いていれば、それは非常に説得力があるわけです。
 2つ目がモデルです。例えば本物を置けないものとかがありますよね。例えば地球とか非常にサイズの大きなものとかは、シミュレーションによって、モデルによって可視化することができることがあるかと思いますし、また逆に小さいもの、やはりそういったものもモデルを置くことができます。それから、インターネット物理モデルというのがありますね。これはTCP/IPの仕組みを解説するようなものなんですけれども、TCP/IPは御存じのように目に見えるものではありませんので、可視化して、なおかつハンズオンによって体験することができるということが言えるかと思っています。あと、カミオカンデも本物は無理ですので、モデルにしてそこに置くということがあるかと思います。
 それから、3つ目が、演出とか体験とかをそこで行うことによって伝える。例えば「アナグラのうた」という展示がありまして、これは情報世界なんですけれども、情報は御存じのように見ることはできませんので、それを実際プロジェクションとか、あるいは自分が動くことによってインタラクティブに映像が動くとかというふうな手法によって情報の世界を体験することができます。それから、最近はゲーミフィケーションと呼ばれていますけれども、ゲームという手法を使うことによっていろいろなことを伝えることができるかと思っています。あるいは、一番最後に「ボクらのうんちと地球のみらい」という展示があったんですけれども、トイレで排泄物が流れる仕組みを実際に体験するという。これ、結構バズったんですね。なので、シンプルなアイデアであっても何か一つ工夫することによって、科学を身近に感じることができることを手助けするというのかな、そういうことができるんじゃないかなと思っています。
 次のページへ行ってください。先ほど話しました量子コンピュータの展示がかつてあったんですけれども、それがどんなものであったかというものを簡単に御説明いたします。これは慶應義塾大学の伊藤先生に監修していただいたんですけれども、量子コンピュータの本当にシンプルな仕組みをハンズオン展示によって理解してもらおうというふうな展示でした。
 真ん中にあるのが、これ、グローバーのアルゴリズムを簡単に展示にしたものなんですけれども、データベース検索の仕組みではあるんですけれども、人がここでカメラに撮って、それを後ろのパネルにどんどん表示させていって、何か似ているものを探すとか、そういうふうな仕組みになっているんですが、なかなかこれが説明するのが難しい展示で、ちょっと腑に落ちない方とかはもしかしたらいらっしゃったのかもしれません。この辺の手法とかまだまだこれから検討していかなければいけないのかなと思っています。
 それから、左側にあるデスクなんですが、これは真ん中の裏側に当たるところなんですけれども、その中では基本的な仕組み、重ね合わせの仕組みであったり、エンタングルメントであったり、非常に壊れやすい性質であったりというものをちょっとしたハンズオン展示によって、知識の提供みたいな感じかな、ということを試みたような展示であります。だけど、ここでお客様の反応とかを見ていて、なかなか刺さる人というのは難しいんですね。ある程度予備知識がある人は、あ、これ、こういうことなんだよねということが言えると思うんですけれども、量子の振る舞いとかを知らない人にとっては、これが一体何なのとか、これがどう計算に生かされているのというのを伝えるというのはなかなか難しいかなというのが正直な感想でした。この辺についてはまた議論とかができればなと思っています。
 次のページに行ってください。ほかにもいろいろこれからの技術、今はなかなか実現するのがまだまだ難しくても、これから先に花開くような技術であったり、難易度が高いような技術であったりというものも、我々科学コミュニケーターが展示者の方と話し合いながら、こうすることで一般の方々にも分かっていただくようになるんじゃないかということでいろいろな試みをしております。
 例えば合原先生の最先端の数理モデルみたいなやつは、なかなか数理の世界ですので話としては難しいんですけれども、いろいろなキャラクターを作ったり、いろいろなストーリーを作ったりすることによって、なるべく皆様に理解していただきたいとか、持ち帰るものを多くしたいとか、ハンズオン展示を作ることによって展開なんかしております。
 例えばテキストによって説明するというよりは、実際に手を動かして、ここで一番右にありますのは、動物園問題といって、幾つかの組合せによって動物同士がけんかしないようにどういうふうに配置したらいいのかということを実際にハンズオンでお客様に展示していくものです。これも背景には非常に高度な数学とかがあるんですけれども、直感的にお客様に手を動かしていただくことによって、その難しさを理解してもらうみたいなことを試みたりなんかはしております。
 次のページが最後だと思います。これは湊先生のアルゴリズムの展示です。アルゴリズムもなかなか形がないものですので、説明するのは非常に難しいかなと思うんですけれども、これはアニメーションとかを使うことによって皆さんの理解をなるべく促進していきたいなと思っています。
 もしかして御存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、おねえさん問題とかおねえさん動画というものが実はユーチューブでバズったものがあります。組合せ問題の難しさをこのおねえさんが解説することによって、どんどん話がおかしい方向に流れていくというものを作りました。ここで問題意識を持っていただくことによって、次の、それを解決するための方策をみんなで考えるということを理解しやすくするようなものを私たちで作ったものがありますし、これはいろいろ商品展開も行ったりなんかしています。
 ですので、量子の世界は非常に難しいというのは多分皆さん御存じだと思っておりますので、どういうふうにして理解していったらいいのかということを、いろいろなクリエーターの方々と一緒に考えていければなと思っております。
 私からは以上です。
【上田主査】ありがとうございました。それでは、意見交換に移ります。ただいまの御発表につきまして、御質問や御意見、今後の量子ネイティブの育成や量子技術の普及・啓発の方策について御議論いただければと思います。
 岩本先生、お願いします。
【岩本委員】岩本です。大変重要な取組の御紹介ありがとうございました。特に電通大さんのアーリーエクスポージャーというのは私も全面的に賛成です。すばらしい取組だと思いました。
 電通大の西野先生、岸本先生に2点御質問と、小澤さんのほうに1点、全体のことで質問があります。AIの話もありまして、情報系と理工系の間の教育のつながりというお話があったんですけれども、岸本先生のような取組に対して、情報系の方も物理の基礎を知るというのは重要だと思うんですが、どれぐらい参加されているんだろうかというのが一つ疑問でした。
 あと、まだプログラムが始まったばかりかもしれませんが、そこを経験した学生さんがどういうふうに活躍しているかという実例があれば教えていただきたいと思いました。
 先に質問だけ言わせていただきます。小澤さんのお話の中でも、量子の振る舞いを説明するのは苦労されたということがあったわけですけれども、やはり基礎、ある程度のバックグラウンドがないと難しいというところがある。これはほかの分野もそうだと思いますが、どこまで正確に伝えるかということと人に分かりやすく言うかというバランスってすごく難しいと思うんですけれども、その辺り、ある程度正確性を犠牲にしながら伝えていくということは、ちょっと質問になっていないかな、いいのか、悪いのかと言うのも変なんですけれども、含めて考えていかないといけないのかななんて思いまして、少しその辺りの御意見を伺えればと思いました。
 以上3点よろしくお願いします。
【西野研究科長】電通大の西野でございます。私から簡単に回答させていただいて、その後、岸本先生に補っていただければと思います。
 まずは、岸本先生の量子ネイティブ教育と我々が行っている数理・AI・データサイエンス教育を融合させようというのは実は来年度からスタートすることになっております。量子ネイティブ教育の話を知りましたのが、私がつい先日ということでございまして、それで、この4月から先ほど申し上げた総合コミュニケーション科学という1年生の必修科目の中に、岸本先生たちのほうで御用意くださる量子力学の基礎のこまを3こま入れることになっています。それで、15こま全体で、残りの12こまは数理・AI・データサイエンス関係の教育をするということで、先ほど御紹介したような内容で行っていきます。それをこの4月から開始すべく今、準備を進めているというところでございまして、詳しい内容は岸本先生のほうからあるかと思います。
 それから、数理・AI・データサイエンス教育のほうは、実は電通大は応用基礎レベルという真ん中のところにこれから申請しようとしていまして、応用基礎レベルはこれから募集が始まりますので、それで準備を進めていたというところなんですけれども、準備を進める中で教育自体を行っております。
 それで、電通大の学生さんの進路みたいなことを見ますと、特に私の科目を履修する学生なんかが量子コンピュータの基礎なんかも学習することになるんですけれども、私のゼミの学生含め見ておりますと、やっぱりそちらの方面に就職する学生が散見されます。ですから、フィックスターズという量子コンピュータのシミュレータを開発している会社とか、その方面の企業に就職していく学生が、新し物好きの学生さんということだと思いますけれども、散見されるような状況にはなっております。基本は情報系の就職が多いのが私の周辺ですので、その中でゲームメーカーというのも今すごい人気なんですけれども、それと併せて量子情報科学関係のほうに就職する学生も目についていると、そういう状況でございます。
【岩本委員】ありがとうございます。
【西野研究科長】では、岸本先生、お願いいたします。
【岸本准教授】ありがとうございます。では、情報系のほうじゃなくて、割り切るところをどうするかというところが一つあったと思います。御指摘ありがとうございます。それはこれからもずっと悩む部分だとは思うんですけれども、難しいことを難しく教えることよりも、それをいかにshave offしてどこで踏ん切りつけるかというのを、僕が言うのもあれですけれども、やっぱり海外のほうがその辺の割り切りがしっかりしていて、一つの教え方というよりは、そういう割り切った教え方もあって、要するに、連続性、接続性をきちんと持たせることの方が大事で、一つだけの教え方、一つのところだけ読めばいいというのではなくて、まずそこで敷居を下げて入ってきてもらった上で、いくつかの方法で連続性・接続性を持って触れる機会を用意しておくことが重要だと考えます。MOT一つでも、やっぱり見学してもらうと、始めにそれこそ何百メートル毎秒で室温原子波飛んでいますよと言っているのが、冷却された原子を見るとフワーッと原子がゆっくり広がるところを見て、えっ?と思うのが、やっぱり学年が下になるほど素直に驚くわけですので……。
【岩本委員】だから、段階や対象に応じてその辺りのバランス具合をうまくコントロールする必要があるということですね。
【岸本准教授】ええ。だから、不足する部分は出てくると思うんですけれども、大事なのは、だから、実験とともに紐付けされるテキストの内容だと思っていて、教科書でどこか習ったようなキーワードがちょっと入っているだけで、少し興味を持つかなというイメージで進めようとまずは思っています。
【岩本委員】ありがとうございました。
【小澤主任】未来館の小澤です。まず僕らが考えるのは、本物をまず見せたいということがあるんです。本物があれば、そこに置くというのが一番いいんです。例えばASIMOは本物を見れば、みんな納得しますからね。本物がないものをどうするかというと、やっぱりモデルを作ったり、シミュレーションをしたりするものを見せるしかないと思うんです。その場合、正確性が担保されていないと、なんちゃってで終わってしまうわけです。やっぱり本物が持つ迫力にはかなわないですね。だから、そこのせめぎ合いなんです、いつも。
 だから、例えばさっき話しましたけれども、香取先生の光格子時計みたいなものもやっぱり本物を置きたいんです。本物があって、そこで動いていて、例えば置く場所によって時計の進み方変わるよねみたいなことがみんなぱっと見て分かるというのが非常に重要だと思っているので、そこのところがいつもせめぎ合いなんです。せめぎ合いをやっていると、どこで妥協するかということでもあるんですけれども、そこはやっぱり研究者の方々といつも話し合いながら進めています。ただ、理解を促進しなければ意味がないことですので、やっぱりそこもちゃんと重要に考えております。
【岩本委員】ありがとうございます。一概に簡単にすればいいというものでもないということだと理解しました。大変曖昧な質問に、すみません、お答えいただいてありがとうございました。
【上田主査】それでは次、根本委員、お願いします。
【根本委員】ありがとうございます。まず最初の岸本先生のほうに2点、それから、JSTの方に2点お伺いしたいんです。
 1点目、岸本先生のスライドの最初のところでQ-LEAP人材育成の中身、プログラムの位置づけがあったと思うんですけれども、これが文科省から公開されている資料に基づいての認識が大分現状と異なるのではないかと思います。その辺の位置づけというのは、御自分の研究テーマというかプロジェクトの説明に具合がよいんだと思うんですけれども、やはり議論は現状をきちんと踏まえた上で行っていかないといけないと思いますので、位置づけのところはきちんとしていただきたいというのが1点目です。
 もう一つ目が、先ほどの岩本先生の御質問とも絡むんですけれども、知の伝播を期待するということで、それはもちろんそうなんだというのは非常によく認識しているところではありますが、大体、知が伝播するとディケイするんですね。それがとても量子の場合は問題であると。先ほどもどこまで理解するべきかということが議論になっていましたが、確かに興味を持ってもらうということもとても大切だとは思うんですね。そのときに、自分自身が、学んだ人一人一人が自分の理解がどのぐらいのレベルであるのかということがきちんと自覚できるようにしていくことが大事だと思うんです。でないと、正確じゃないけど分かりやすいというものを、きちんと分かったというふうに捉えてしまうことによって非常に曖昧な理解が広まってしまうということが実際に起きているということもあると思いますので、その辺りはどのようにお考えかということを教えていただきたいと思います。
 JSTの2点の点は、まず一つは、このお話、手前みそで申し訳ないんですけれども、研究者との協働ということがやっぱり未来館であまりなされていないように私は感じています。これは個人の経験なので、一般的にはもっと開かれたものなのかもしれませんけれども。例えば先ほどゲーミフィケーションというものが出てきていましたけれども、ゲーミフィケーションは例えば10年ぐらい前に、一度はやったという言い方はおかしいですけれども、から盛り上がりを見せていて、最近というよりはかなり長い間盛り上がってきている部分だと思うんですけれども、10年ほど前に量子コンピュータのゲーミフィケーションというものを未来館に相談に行ったことがあるんです。そうしましたら、門前払いといいますか、お金払ってやりたいんだったらスペース貸してあげますよ的なことで、あまり研究者と最先端研究についての展示というものに対して一緒にやっていこうみたいな仕組みはないのかなというふうに感じております。
 もう一点目は、未来館のウェブサイトを見せていただいたんですけれども、オンラインでの展示というのがあまりないようなんですけれども、その辺りどうなっているのかというところを教えていただきたいと思います。
 以上です。
【岸本准教授】ありがとうございます。では、幾つか御指摘いただきましたが、まず文科省が掲げているものの位置づけとの関係についてですけれども、その辺りはまた文科省サイドと確認しながら、今後しゃべり方に気をつけるべきところがあれば気をつけたいと思います。
 もう1個目の、読み違えていなければ、要するに、分かった気になってしまった挙句の、きちっと深く理解しないということは確かに難しいところかと思いますけれども、そういう趣旨の御指摘でよろしかったでしょうか。
【根本委員】違います。最初のところもそうですが、私、実は共通プログラム、コアプログラムのほうを担当しているわけですけれども、領域会議とかでもそういう位置づけには全くなっていないので、領域会議、出席されていると思いますけれども、きちんと現状を把握した上で位置づけをしていただきたいというのが1点目でした。
 2点目のほうは、要するに、知の伝播が起こるときにどんどん理解度が下がっていくというのが普通の傾向なんですね。それが量子の場合、著しいというふうに思います。それは今すぐにそのようなデータがあるわけではないですけれども、そういう傾向が非常にウェブとかでも見られるというところです。つまり、理解が浅いというのは悪いことではないと思うんです。興味を持っていただくときにちょっと知るというのはやっぱり最初のきっかけなのでとても大事で、そこがない限りは先に進めないでしょうというのはおっしゃるとおりだと思います。
 ただ、私がお伺いしているのは、そのときに、自分がどのぐらい理解したのかということが自覚されていれば、知の伝播が起こるときにそんなに急激なディケイが起こらないように思うんですね。そこの組合せといいますか、どのぐらい自分が分かったかということをどうやって、正しくないけども興味を持つという中で、自分の理解度が認知できるようなやり方をどういうふうにお考えかということをお伺いしました。
【岸本准教授】ありがとうございます。2点目については、自分の、要するに、どこまできちっと理解していますかという評価の仕方とかに関してはまだクリアに今持っているものはないんですけれども、恐らく学生実験を通していく中で見ながら進めていくしかないかなと思っています。
 いじる前と後では明らかに経験値、体験することによる差が出てくると思うんですけれども、それが正しい理解のほうにつながっているかという評価の仕方というのは、海外の幾つかのそういう教育系の論文や報告書で、例えば、擬似的にオンラインで波動関数を理解していますかというのをいじらせたりとかそういうものがありますが、結構そこの評価をどうするかというときも、テクニカルタームを忘れてしまったんですけれども、意図的にどんどんしゃべらせて、「ここ、こうだった」、「ああ、そういうことか」みたいなところをすべて録音しておき、後でそれをすべて解析して、そこでどこまできちんと理解して、どこで勘違いしているかというのを評価しようとする試みなど調べる限りあるにはあるようなんですけれども、ただ、それは膨大な人が解析するために必要で、まだサンプル数が足りていないという注書きが最後に書いてあって、多分その辺は海外においても今試行錯誤しているところなのかと理解しております。
 すみません、そんなところでございます。
【上田主査】小澤様のほうからお願いできますでしょうか。
【小澤主任】分かりました。小澤です。では、簡単にお答えいたします。まず1個目なんですが、ゲーミフィケーションが確かに10年ぐらい前にはやった技術というか手法だと思っていまして、ゲーミフィケーションの展示を作ったのもまさにそのぐらいだと思っています。なので、我々は展示を作るたびにいろいろな手法を考えながら作っておりますので、その都度、適宜、状況に合った手法を使っていきたいなと思っています。
 先ほど研究者と協働されていないという印象をお持ちになったというのはもしかして、量子コンピュータを御提案されたときに門前払いになったとおっしゃっていましたけれども、そういう経験があったのかなと思って非常に申し訳ない……。
【根本委員】すみません、途中でごめんなさい。1回の経験ではないので。1回そうだったということではありません。例えばという例で挙げさせていただいただけです。
【小澤主任】なるほど。すみません、そこのところは我々もちょっと敏感になるべきだったなと思っていて非常に申し訳ないなと思っているんですが、全く僕は聞く耳を持たないわけではありません。ただし、展示コーナーとか展示の面積とかお金とかも限られていますので、どうしてもタイミングということが重要になってくるんですね。多分そのときは、もう既に量子コンピュータは、一部ではあるんですけれども、展示があったということで、タイミング的にもしかしてまずかったのかもしれません。
 今、かつてあった量子コンピュータの展示がなくなってしまっているというときも、実はやっぱり僕らがそのときに作った量子コンピュータの展示は、非常にある展示ゾーンの中の本当に一角だけであって、なかなか理解され難かったという反省があったんですね。なので、今度作るときは、もうちょっとちゃんと本格的な展示を作らなければいけないなという、そういう反省もあったんですね。なので、まさに今、量子技術の展示をどうしようかということを内部でも話し合っている最中だったんです。
 すみません、展示に関しましては、やっぱり展示って一回作ってしまうと5年、10年続けるものですので、タイミングということもあるかと思います。なので……。
【根本委員】すみません、ごめんなさい、途中で申し訳なくて、長くなって申し訳ないんですけれども、議論の内容が全然違う方向へ行っているので、私の意図がそういうことではなくて、要するに……。
【上田主査】申し訳ありません。すみません、私の不手際で時間が大幅に後ろにずれていますので、また後に総合議論がありますので、そのときでよろしいでしょうか。
【根本委員】はい、それでよろしいと思います。
【小澤主任】すみません。
【根本委員】そういうことをお伺いしたわけではないということをお伝えしただけです。失礼しました。
【上田主査】あと3人の方が御質問ありますけれども、その後の総合的な議論でよろしいでしょうか。もしどうしても今という方があれば御発言いただけますでしょうか。
【山田委員】1点だけ確認させてください。よろしいですか。
【上田主査】どうぞ。
【山田委員】量子ネイティブの育成という際に、その定義が必要と思います。
 岸本先生の1ページ目に量子ネイティブ人材と量子ベース思考型人材があり、このケースの定義でいえば、量子ネイティブはプロフェッショナルとのことですが、デジタルネイティブなどのアナロジーでは、逆じゃないかと思います。まさに小澤さんの資料にある、解説を読まないでも使いこなしていくような。議論を深める前に共有しておいたほうが良いと思いました。
 以上です。
【上田主査】ありがとうございます。もし御発言がありましたら、どうぞ。よろしいでしょうか。
 大森委員はいかがでしょうか。
【大森主査代理】ありがとうございます。総合討論のときで結構です。ありがとうございました。
【上田主査】申し訳ありません。それでは、議題2に移りたいと思います。産業界と連携した人材育成につきまして、東京大学の藤堂様、Jijの山城様より御発表をいただきます。その後、御質問も含めて、意見交換の時間を設けております。
 まず、東京大学の藤堂様より御発表をお願いします。
【藤堂教授】上田先生、ありがとうございます。東京大学の藤堂と申します。本日はこのような機会をいただき、ありがとうございます。本日は我々が進めている「量子ソフトウェア」寄附講座について、特に産業界と連携した人材育成という観点から御紹介させていただきたいと思います。
 私のバックグラウンドなんですが、量子統計物理とか計算物理の研究を進めてきました。この次にお話しされる山城さんの指導教員、東工大の西森先生の私は弟弟子に当たるんですかね。それで、これまで「京」コンピュータとか「富岳」とかを使った量子多体現象のシミュレーションの研究なども進めてきましたが、計算物理という観点から量子コンピュータの分野でも面白い研究とか教育ができるのではないかと考えて、このような取組を始めました。
 この「量子ソフトウェア」寄附講座の概要ですけれども、昨年6月に立ち上がって、一応3年間という計画で進めています。教員は私と大久保特任准教授、それから、特任助教1名、この4月に着任予定で内定しております。目的としては、量子コンピュータの研究と教育ですけれども、理論的な面から、情報圧縮とか情報抽出という観点から取り組むということで進めています。
 次お願いします。この寄附講座ですけれども、右上に書いてあります10社の企業様から寄附を頂きまして進めています。それで、研究、教育ですけれども、東京大学の理学系研究科の中にある知の物理学研究センター、これは上田先生がセンター長をされていますけれども、そこと連携して進めると。内容としては、研究に加えて、量子機械学習とか量子アプリケーションの研究に加えて、人材育成関係の活動をしていくということになっています。次のスライドで具体的に紹介したいと思います。
 次お願いします。人材育成活動としては、今、主に4つ進めています。まずはワークショップ・シンポジウム、それから、大学院生向けの講義、この2つについては後のスライドでもう少し詳しく紹介します。
 それから、社会人向け講座。これは量子力学あるいは量子コンピュータ、量子機械学習とかを進めていくためには、やはり数学とか量子力学というのは避けて通れないものです。ですので、そこをきちんと学びたいという人向けにやろうと。それから、それに加えて、テンソルネットワークとかサンプリングというものを教育していくということで、セミナー形式で実施します。今年度はこの2月に第1回目を開催予定と。量子コンピュータの基礎と、あとは企業様から量子デバイスの現状について講義いただく予定です。
 それから、産学協働ゼミですけれども、これは関係者、大学の学生あるいは企業の研究者の垣根を超えて情報共有とかディスカッションをする機会として、協賛・協力企業の業務的な課題を持ち寄って、それで、量子コンピュータを使うことによって、あるいはテンソルネットワークのシミュレーション手法を使うことによって、どういうふうにそれに取り組むことができるのかというような取組をやろうということで、この3月に第1回目の開催を予定しています。
 次お願いします。量子ソフトウエアワークショップですが、年2回程度今後開催していく予定です。まず第1回目は昨年12月に開催しました。そのときのテーマは、「テンソルネットワークと量子計算の展望」というタイトルで以下のような方々に御講演いただきました。大学関係者から3名、それから、企業の方から2名ということで、量子物理、機械学習、光量子計算、それから、量子化学計算あるいは材料計算という、いろいろな立場から御講演いただきました。参加登録260名、実際の参加者は200名ですけれども、半数が大学の研究者・学生、それから、残り半数は企業からと、かなりたくさんの方に参加していただいて、アンケートも取りましたけれども、非常にポジティブなフィードバックをいただきました。来年度以降も開催予定です。
 次お願いします。それから、大学院講義ですけれども、来年度の秋学期に「計算科学・量子計算のための情報圧縮」という講義を理学系研究科で開講予定です。それに先立ちまして、今年度はパイロット講義という形で非公式なセミナー形式で4回分実施しました。資料等はここのリンクからたどれます。内容としては、やはりテンソルネットワークをキーワードに、それの物理現象への応用、それから、量子コンピュータシミュレーションへの応用、量子誤り訂正の応用、それから、ハイブリッドアルゴリズムへの組合せというようなことで4回、つい今週の火曜日に4回目が終わったところです。毎回50名から70名程度が参加してくださいました。主には大学院生、それから、少し学部学生、それから、社会人、協賛企業・協力企業の方からも参加していただいています。
 次のスライドお願いします。これ、最後のスライドです。この「量子ソフトウェア」寄附講座をどういう考えを持って進めているかというところです。これまで御紹介のあったような非常に大きなプロジェクトではなくて、予算もスタッフも非常に限られたものなので、フルスペックの教育とか研究とかを目指すのではなくて、ゲリラ的に我々の得意な領域に特化して進めていきたいと。特にテンソルネットワークとサンプリング。これまで非常に我々自身経験がありますし、今後、量子計算の分野で非常に重要になってくると考えているキーワードですので、そういうものに特化して面白い研究とか教育をやっていきたいと。特に量子コンピュータをもちろんターゲットに挙げているんですけれども、逆に量子にインスパイアされた古典アルゴリズムとか、テンソルネットワークのような古典インスパイアード、古典アルゴリズムにインスパイアされたような量子アルゴリズムについても、あまり量子コンピュータだけにこだわらずに進めていきたいと考えています。
 それで、企業との関係ですけれども、先ほど見ていただいた協賛企業・協力企業の中には、量子のデバイスを開発されているメーカーもありますし、量子コンピュータを金融とかそういうものに応用したいと考えている企業もありますし、量子コンピュータ関係のサービスを提供している企業もあります。ということで、いろいろな立場の協賛企業・協力企業が参画してくださっています。そういう利点を生かしながら進めていきたいと。
 具体的には、先ほど紹介したような全ての活動に協賛・協力企業から企画の段階から参加してもらう。受け身ではなくて、意見を言っていただく。実際、小さいプロジェクトですので、お互いに顔が見えて直接意見のやり取りができるのが非常に強みだと考えています。活動の企画とかワークショップの講演者、それから、パイロット講義にも社会人の方に受講していただきましたし、社会人向け講座とか産学協働ゼミの講師、あるいは企画の段階から加わっていただいて、フィードバックもいただくということで、今後も進めていきたいと考えています。
 私からは以上です。ありがとうございました。
【上田主査】ありがとうございました。続きまして、Jijの山城様より御発表をお願いします。
【山城CEO】では、よろしくお願いします。
 では、次のスライドに行ってもらって。今回は、Jijの会社での取組、当座の人材育成についてお話しできればと思っています。せっかくなので、僕がこの分野に入った経緯も一つ参考になればと思って、この紹介からさせていただきます。
 では、次に行っていただいて。もともとは沖縄で専門は素粒子のほうで研究室にいて、そこから、とはいえ、量子情報処理のほうに興味を持ったんですけれども、大学にそういう先生がいなかったという背景もあって、移ってという形で、今、最終的に東工大にいます。そこの東工大でその研究室の先輩である大関先生のプロジェクトに入って、そこでSTARTプロジェクトの成果としてこのJijを設立しました。
 次に行ってもらって。もう少し簡単に紹介すると、人のつながりでこの分野に入ったというのが僕は多くて、大学にいたときに、量子情報処理に興味があるというのをずっと周りに言い触らしていたら、大学の先生に、OISTで実際に実験している方がいますよというので紹介いただいて、OISTのほうに行ってOISTで量子情報処理の実験のチームに参加しました。なんですけれども、もともとやはり理論をやっていたというのもあって、理論で何かしらやりたいという形で、そこのOISTのスーパーバイザーの知人の方の紹介で、西森研究室が面白いことをやっているというのと、ちょうど統計力学に関しても興味があったので、西森研に移ります。そこで、西森研では量子アニーリングというアルゴリズムをやっているという形で、そこの理論研究を始めて、次はまた、先輩だった大関さんという方がツイッターで公募していたので、それを見て、またそこも人の紹介でSTARTに参画するという形で、比較的僕は運よく、同じ物理ですけれども別のことに興味を持っていたところから運よく入ったというような形になっています。
 では、次に行ってもらって。簡単に会社の紹介をさせていただくと、我々量子技術を用いた最適化アルゴリズムの開発を行っているんですけれども、最適化だけではなくて、最近だと量子機械学習なども取り扱っています。メインは、量子の中でも量子アニーリングという技術を使ったクラウドサービスの提供を行っています。ソフトウエアの提供を行っているので、パートナーとして、ハードウエアを提供している、もしくはサービスを持っている企業さんと連携していて、その企業さんが持っているハードウエア、提供しているサービスを弊社のZeptのバックエンドとして組み込むことで量子技術を使っているというような形になっています。
 次に行っていただいて。ミッションは、計算困難な課題を解決するということをミッションにしているんですけれども、我々のトライしている計算が困難というのは非常に複雑で、数学的に難しいもそうなんですけれども、ビジネス的にボトルネックになっていて、なかなかそもそも数学的な問題に落とすことも困難みたいなところもあるので、そういったレイヤーも含めて我々は解決するということをミッションにしています。
 実際のビジネスのほうでいうと、我々はこの3つの技術レイヤーを分けています。量子コンピュータだけに限らず、通常のCPU、GPU、最近だと、テンソル系の専用計算機とかベクトル計算機をメインで扱っていて、その下に、実証実験ができるよう、特殊な計算技術として量子アニーリングマシン、さらに、まだ基礎研究の必要な段階として量子コンピュータを置いていて、この3つの上から順にユーザーさんに技術提供していくということを考えています。
 次に行っていただいて。今までの取組でいうと、イジングマシン、量子アニーリングといった分野では、オープンソースのシミュレータを開発して、それを使った実証実験、最適化技術のコンサルティングを行っていて、逆に量子コンピュータの領域だと実は、Jijという名前からして統計力学の人が多いかなという印象はあるんですけれども、実際、量子コンピュータの研究もしています。特に我々は、実は量子アニーリングという分野のほうで量子アニーリングを研究するためにテンソルネットワークは非常に使われていて、それでテンソルネットワークに詳しいメンバーが多いんですけれども、その技術を使って、量子改良シミュレータを2019年からずっと開発してきていて、それを使った研究開発を社内でずっと行っています。
 次に行っていただいて。現在、それらを生かしたところと、先ほどのオープンソースのOpenJijを拡張したところでJijZeptというクラウドサービスも提供して、今、NEDOのSTS事業でその2つにまたがる部分の研究開発を行っております。
 次に行っていただいて。そういった流れで、大きなメインの事業は、共同研究開発と、あとはJijZeptというソフトウエアになります。
 次に行っていただいて。この後の人材の話をする前に、弊社でどういった技術レイヤーをやっているかというところをお話しすると、特に我々が提供しているZeptというサービスは、最適化問題を解きたいといった場合に上のレイヤーをサポートするものなので、数理最適化という分野だとメタヒューリスティクスで実際に問題を解くというのがよく行われるんですけれども、最適化のメタヒューリスティクスで非常に大事なのは、近傍と呼ばれるものの定義が非常に重要になってきていて、特に量子アニーリングとかもしくは量子アルゴリズムでいうと、物理の言葉でいうと、保存量の定義が非常に重要になってくるんですけれども、そういったものを、社会課題を解きたいユーザーが自分でそんな数学的な知識を持って解くのは非常に困難だと。なので、それを自動生成するようなアルゴリズム、我々、コンパイルシステムとかと呼んでいるんですけれども、そういう最適化問題に特化したコンパイルシステムとか、パラメーターを調整するようなアルゴリズムといった、実際のコンピュータ上で動くよりももう少し上位のレイヤーのソフトウエア開発を中心に行っております。そういった量子科学技術以外の研究開発項目も多いというのが弊社Jijの大きな特徴となっております。
 次に。ここからは、Jijの社員のメンバーがどういった形の研究開発だったり、どういった組織体制になっているかを簡単に紹介します。3つの部門に大きくは分かれていて、クラウド計算基盤を開発するメンバーと、社会実装、企業との共同研究を開発するメンバーと、あとは、実際に社内でアルゴリズムの研究開発、ここは数学の人と量子の人と2つに分かれているんですけれども、こういった3つの部隊がいます。それぞれがそれこそ重ね合わせ状態みたいな形で、アルゴリズムの人たちが実際に社会課題のほうを一緒に見ることもありますし、逆にソフトウエアを開発しているメンバーがアルゴリズムの方々と一緒に共同研究をして知見を深めるというようなことも行っております。
 次に行っていただいて。今のメンバーの分布でいうと、こういった形になっています。アルゴリズムのエンジニアもまた増えるんですけれども、海外からのメンバーも多く在籍しているというのが大きな特徴となっています。
 次に。そこの実際の専門分野のところでいうと、物理をもともと専門にしていた方が多いんですけれども、先ほどのコンパイルシステムとか、あとは、DSLというドメインスペシフィックな言語なども開発しているので、コンピュータサイエンスに非常に強い方とか、もちろん数理最適化をやっているので、そもそも数理最適化が専門だった方などもいて、非常に専門性は多岐にわたる形になっております。プラスで業務委託のメンバーとか、あとはインターンのメンバーを入れています。特にここで注目していただきたいのは、インターンで採用されたメンバーも社内だと非常に多いというところが大きな特徴になっています。
 次に行っていただいて。そのインターン、Jijの学生インターンがどういった形で取り組んでいるかを紹介します。Jijではインターンは大きく2つ枠があって、通年募集のインターンとシーズンで開催しているインターンがあって、今日は通年募集のインターンについて紹介します。
 次に行っていただいて。短期と長期というふうに分けているのは、学生の経験・レベルに合わせて多様な学生を受け入れることができるようにということが目標です。例えば量子技術、基礎的な知識は分かるんだけども、興味がまだある状態というようなメンバー、弊社のインターンは一応技術テストがあって、基礎的な知識は身につけてもらっていることが前提とはなるんですけれども、それでもまずは最初、あまり専門性、専門分野がちょっと違うとかそういった方は短期インターンからという形です。技術ブログへの投稿とかチュートリアルへの寄稿、これは論文のレビューとか、それを弊社の技術ブログ、チュートリアルに投稿してもらうことで、我々としては広報としての意味合いが強かったりとか、弊社のプロダクトのドキュメントを整理するという形でお互いにウィンウィンになるような関係での短期インターン。もう一つの長期インターンは、社内の先ほどの3つの部門のどちらかに所属してもらって、実際に業務を行ってもらうというようなインターンがあります。
 次に行っていただいて。例えばあるインターン、この学生は日本人なんですけれども、スイスにいる、スイスの大学に通っている学生で、オンラインでインターンをしてもらって、統計力学的な解析の論文をレビューで読んでもらって、その後ちょっとまた分野が少し変わったんですけれども、変わった内容で今、研究を行って、論文を執筆しているところです。
 次に行っていただいて。ほかのインターンだと、弊社のオープンソースのコア部分の開発をして、上のインターンの方はそのまま入社してもらった形で、インターンからの採用もあったりします。あとは、例えば2019年当時はあんまりテンソルネットワークベースの量子回路シミュレータはなかったと思うんですけれども、テンソルネットワークベースの量子回路シミュレータを一緒に共同で開発するというようなプロジェクトに入ってもらったインターンだったりがいます。このインターンは、長期インターンというようなレイヤーに入ります。
 次行っていただいて。Jijのほうが特にインターンを今うまく集められている大きな理由としては、オンラインをメインにすることで、東京だけではなくて、地方とか、それこそ海外からのインターンの参加者も多いので、海外からの参加も可能にできるというのが非常に大きいかなと思っています。また、社内だと、Gatherというオンラインオフィスを使ってとか、slackでインターンとのオンラインでの距離を飛ばした同期型のコミュニケーションを取っていたりとか。
 あとは、Notionを使って技術メモ・実験ノートを全て一元化して、できるだけ非同期のコミュニケーション、ドキュメントをしっかり作成するというのを強く行っています。このドキュメントを作るということで、例えば別の専門家の方が入ってきたときに、その知見をそのままNotionに書きためておいてもらって、別のインターンとかメンバーが入ってきたときに、それを参照してすぐ自分たちの技術に使うことができるようにするとか、あとは、ソフトウエアエンジニアとして入ったメンバーが、もちろんがっつり量子をやるわけじゃないんだけれども、社内の技術詳細を知りたいときは、いつでも社内の初心者向けから玄人向けまで用意されているノートにアクセスすることで技術がキャッチアップできるというような形で、できるだけドキュメントを強くしていくというのが我々の大きな強みとなっています。
 次に行っていただいて。最後になるんですけれども、こういったスタートアップをやっていて思うのは、やはりスタートアップでも活躍しているのは、特にJijだと博士人材のほうです。少なくとも全員が修士以上で、半分が博士という形で、研究開発で実際に活躍しているのは博士人材なんですけれども、そういう意味だとこの量子科学技術という分野のほうの人材育成はすごい長い目で見る必要があると思っていて、博士人材を増やしていくことが、スタートアップの企業にとってもアカデミアにとっても非常に重要なのかなと思っております。
 その中でも特に科学に立脚した技術開発を促進するために、博士人材を増やすには、恐らく博士学生を持てる研究者をやはり増やす、研究者のポジションを増やす必要があるかなと思っています。そういったアカデミアでの人材育成をより推進するためのポジションを増やすほうが、最終的に企業にとっても大きなメリットがあるのではないかと思っております。
 もう一つは、他分野、ほかの多くの組織との交流とか、人材の流入・育成ですね。量子科学技術分野は非常に多岐にわたる分野の総合格闘技というふうによく言われていると思います。なので、場所だったり、分野にとらわれずにですね。僕は本当に偶然人づてでこの分野に入れたんですけれども、実はそういった分野に興味を持っているんだけれども、なかなか機会がないとか、気づけないというような人ができるだけ減るように、オンラインでの科学コミュニケーションの場をつくる、もしくはそういった教育の機会の場をつくるという形で、場所にとらわれない形で人材が入れるような何かアクセスする場所とか、逆にアカデミアからスタートアップもしくは大きな企業への研究開発の就職なんかも、ロールモデルを増やすことでいろいろな選択肢がこの分野にはあるよということを学生にも気づいてもらうということが大事なんじゃないかなと思っております。
 次に行ってもらって。人材の話だったので、実際Jijのメンバーがどういったメンバーがいるかとか、いろいろ紹介しているところがありますので、ぜひ御覧になっていただければなと思っております。
 以上です。
【上田主査】ありがとうございました。それでは、意見交換に移ります。ただいまの御発表につきまして、御質問や御意見、今後の産業界と連携した人材育成の方策について御議論をいただければと思います。美濃島委員、お願いします。
【美濃島委員】貴重なお話ありがとうございました。藤堂先生に質問が2点ほどあります。まず一つが、このような寄附講座で人材育成されるときに、いろいろな情報が参加企業さんから、例えば先ほど業務課題を提供してもらうというようなお話もあったかと思うんですけれども、秘密情報ほどなのかどうか分からないんですが、そういった情報公開とか、人材育成の中で様々な業務に関わるような成果も出てくるのかなというふうに想像するんですが、そのような情報の外部への公開というのはどのようになっているか。あと、ゼミへの参加が参画企業さんに限られるのかというようなことも含めて、外部への情報公開がどうなっているのかというのが1点です。
 もう一つが、山城さんのお話ともちょっと関係するんですが、藤堂先生にお聞きしたいのが、こういった活動が企業さんと学生にどのような効果をもたらしているのかというところです。双方にいろいろな期待があるかと思うんですけれども、例えば学生にとっては、企業さんにも量子関連の分野に興味があるということが直接分かるので、キャリアの広がりの安心感というところから博士課程への進学が増えるのか、そういった直接的な効果とか間接的な効果もあるかと思うんですが、その点に関してお話をいただけたらと思いますので、よろしくお願いいたします。
【藤堂教授】ありがとうございます。まず最初の御質問ですけれども、基本的な考え方として、全てオープンなところでやるということを考えています。ですので、企業さんとお付き合いしようとすると、秘密とか関わってくることがあるんですけれども、そういうことはなしで、例えば社会人向けの講座とかいろいろなワークショップとか活動があるんですけれども、それは閉じたものではなくて、誰でも参加できるようなものにしますので、そこで出せないような情報は持ち込まないでくださいというふうにお願いしています。例えば今後、共同研究とかも進んでいって何かそういう成果も出てくる可能性もあるんですけれども、そのときの発表の仕方についても、基本的には特許とかではなくて、論文という形でオープンで、そういう形でお願いしているというのが基本的な考え方です。
 それから、2番目の、どのような効果が出てくるか。まだ始まったばかりですので、具体的な効果は出てきていないわけですけれども、やっぱりキャリアという意味では、先ほどインターンの話がありましたけれども、お互い顔を合わせる場が出てくることで、インターンとかにもつながっていく、それから、実際そこの企業さんでの就職にもつながっていくかなということはもちろん考えています。その点に関しては、今いろいろなイベントというか企画を立ち上げながら、その効果を見ながら少しずつ考えていきたいなと考えています。
【美濃島委員】ありがとうございました。
【上田主査】岩井委員、お願いします。
【岩井委員】東北大の岩井です。山城さんにちょっとお伺いしたいんですが、よろしいでしょうか。面白い話ありがとうございました。それでちょっとお伺いしたいんですけれども、採用で物理関係から採用されているというお話を伺ったんですけれども、分野とかはどういう内訳になっているんですか。それはやはり量子情報関係とかそういう関係から採られているとかというのはあるんですか。それとも、全くそういう、物理の中では特に分野は関係ないということなんですか。
【山城CEO】そうですね、そういう意味だと、我々のほうは特に専門、一応技術テストみたいなレイヤーがあるので、必然的に半分は量子情報がもともと専門だったみたいな形になってはいるんですけれども、最初からそこでフィルタリングをかけているという形ではないです。実際今の内部のメンバーでいうと、物性物理、強相関系の数値実験をしていたという人が多くて、1人、カオスとかの力学系だった人という形で、あとは量子情報処理に関わっていたメンバーというような形になっています。
【岩井委員】先ほど修士課程、博士課程から採ることをちょっと重視しているというようなお話を伺ったんですけれども、採る側の立場からすると、特に博士課程でどういう訓練をしていることを重視しているかということをお伺いしたいんですけれども。
【山城CEO】そういう意味だとやっぱり博士が非常に活躍しているのは、やっぱり大きく感じるのは、1つの大きなプロジェクト、それこそ博士は絶対博士論文を出していて、それをしっかり大きくやり切って、Jijのカルチャーにやり切る力というのがあるんですけれども、最後までプロジェクトを何かしらゴールを達成するというところの強さ、プロジェクトを自分で推進して、計画を立てて、それを執行していくという強さがシンプルに普遍的に強いなと思っていて、それで博士が結局活躍していて。
 逆に修士卒だったんだけれども、あるメンバー、コンサルティングに入って中途で入ったメンバーがいるんですけれども、そういった方は逆に企業のほうでそういった力をつけられてこちらで活躍しているということが多くて。そういったやり切る力が比較的普遍的に、逆に専門分野を変えても強くやれる力になっているなと感じているので、博士でそこをもちろん構築するか、別の場所で構築するかはどちらでもいいとは思っているんですけれども、やはり博士学生は比較的そういった力を持っていることが高いかなとは思っています。
【岩井委員】なるほど、ありがとうございます。それで、ちょっと微妙に関連する問題があると思うんですけれども、前半の話で岸本先生が、量子ネイティブ、量子人材を育成するための教育に関してお話しされていて、大変面白く興味を持って聞かせていただいたんですけれども、その中で、いわゆる量子工学とか量子センシングの専門でなくても、第2言語として量子を学ぶみたいなそういうお話をされていて、ちょっと興味を持ったんですけれども、企業さんの側からすると、そういうことに関してはどういうふうに捉えられているんですか。
【山城CEO】それは我々としても非常に大事だとは思っています。とはいえ、もちろん量子科学技術というのは非常に範囲が広いので、自分の分野に関連するところをうまく学習できる場があればいいんじゃないかなと我々は思っています。逆に言うと、弊社の場合は、数理最適化もしくは量子機械学習というセグメントをがっちりもう分けて、そのソフトウエア、アルゴリズムの部分だけというふうに社内でそもそもフォーカスしているので、そんなに幅広い、例えばハードウエアの本当に詳細な技術までを社内だと知る必要はないかなと思っているんですけれども、そういった形で分野を、セグメントを区切れば、外の分野の人が量子科学技術を知るというのは非常に意味のあることだと思っています。実際、弊社の数理最適化のメンバーとかが量子アルゴリズムのほうの勉強をして、例えばTSPの量子アルゴリズムの研究をやるとか、そういったコラボレーションも生まれているので、学ぶことは非常に意味のあることかなと思っています。
【岩井委員】分かりました。ありがとうございます。
【上田主査】山田委員、お願いします。
【山田委員】ありがとうございます。企業が、という話が出たので、一言言わせて下さい。企業としては歓迎です。量子に限らず、単一の技術分野だけでイノベーションを起こすことは難しくなっており、技術横断あるいはさらに社会との接点まで持ってゆくといった複合的なスキルが個人個人にも求められます。先ほどの量子ネイティブってどちらだろうと申し上げましたが、「×量子」という右側の人材が非常に大事だと思っています。元の話に戻ると、企業としては非常に大事だと思っています。
 以上です。
【上田主査】波多野委員、お願いします。
【波多野委員】波多野です。よろしいでしょうか。ありがとうございます。本日のお話は非常にたくさんの気づきがありまして、特に後半の山城さんの、量子がきっかけで博士も増やせそうだし、企業側もそれに対してプレミアムをつけそうだし、それと、ミュージアムについても、量子についてはもうオンラインじゃないと、変化も激しいし、あと、全国津々浦々、あと、世界に対しての発信ということでももう追いつかないんじゃないかと思っています。
 そういう観点で山城さんに質問したいんですけれども、海外からの参加者、研究者を一緒に雇用するわけですね。それと、あと、博士人材のプレミアムみたいなところの課題とか何かございましたら教えていただいてもよろしいですか。
【山城CEO】ありがとうございます。そうですね、課題という意味でいうと、やっぱりこの専門分野の人材自身がそもそもまだ多分少ないというところが単純に大きいかなとは思っていて、こういった量子科学技術分野を専門に研究する、もしくはそれこそ先ほど話したように、量子科学技術分野と何かしらの掛けるで、別の技術を持っているような博士人材が特に日本だとまだ少ないのかなという印象を受けています。
 海外のほうからの採用でいうと、今そこまで大きく我々のほうで何か困っているというところはそんなにないんですけれども、実際海外からの問合せとかのほうが多かったりとか、海外の学生で、自分は専門分野、例えば量子物理をやっているんだけれども、副の専門分野として機械学習も実はやっていて、そこのコラボレーションのアルゴリズムを少し考えたいとか、そういった形で複数の専門分野を持っているような学生が海外だと非常に多くて、そういった方のほうが活躍する、いいアルゴリズムの提案とかも非常に大きいかなという、特に企業の文脈ですけれども、大きいかなという印象を受けているので、国内でも人材の育成というのは非常に重要で、学生の頃から複数の科学技術分野に専門性を持つとか興味を持つというところも重要じゃないかなと思っております。
 以上です。
【波多野委員】これからの量子になったときの働き方とかが変わってくるような予感を覚えて、海外からの雇用も海外にいたままギグワークみたいなことが起きてくると、なかなか発想を変えないといけないなというふうに思いました。どうもありがとうございました。
【上田主査】よろしいでしょうか。
【大森主査代理】よろしいでしょうか。
【上田主査】どうぞ、大森委員、お願いします。
【大森主査代理】ちょっと一般論になりますけれども、企業と連携して人材育成を進めるという議題なんですけれども、これを進めるためには企業が本腰を入れて量子技術に参画してもらわないとやっぱり進まないと思います。このためには、前から言っていますけれども、要するに、企業が量子技術で解決したい社会の実問題がどこにあるのか、そのためには、量子コンピュータに必要な性能は何なのか、何量子ビット必要か、コヒーレンス時間がどれぐらい必要か、ゲートの忠実度はどのぐらい必要か等の具体的な点について、やっぱり企業と研究者の間で真剣に議論する必要があると思います。
 もう一つは、やっぱり企業が共用できるような量子ハードウエアのテストベッドのクラウドサービスを早く整備して、それを使ってもらった上で研究者と対話して、繰り返しになりますけれども、まずは企業が本腰を入れて量子技術開発に参画してもらわないと、人材育成だけ個別に掲げてもやっぱり進んでいかないと思います。
 以上です。
【上田主査】山田委員、お願いします。
【山田委員】すみません、企業側の立場から言うと、理想はさておき、大きな投資をするには、間違っていても良いので見通しが必要です。理想は企業独自で戦略を立てて見通しをつけろと言われるかもしれませんが、複雑な技術領域だったり、複雑な社会となったときに、現実にはそこまで知恵と手が回りません。ですので、企業側の勝手を言わせていただくと、量子をリードしている先生方からビジョンや展望を投げかけていただくことが、企業の投資判断の後押しもするのではないかと思います。
 以上です。
【上田主査】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。では、どうもありがとうございます。
 それでは、議題3に移ります。量子科学技術委員会における議論の取りまとめにつきまして、意見交換を行います。まず、事務局より説明をお願いします。
【山村係長】上田先生、ありがとうございます。文科省量研室の山村でございます。資料3の投影をお願いいたします。
 前回の会議で御案内したとおり、前回と今回の議論を踏まえまして、量子委員会における議論の取りまとめを作成することを予定しております。本取りまとめにつきましては、内閣府のほうで開催している量子技術イノベーション戦略の戦略見直しワーキンググループで戦略の見直しの議論を行っておりますので、その場で上田主査より御報告をいただくということにして、適切に戦略の見直しに反映していくと、そういったことを計画してございます。
 そこで、今回事務局において、前回の会議の御議論などを踏まえまして、取りまとめ案のたたき台を作成いたしましたので、この後御説明をいたします。本日、貴重な御意見交換を様々闊達に行っていただいて、この後もあるかと思いますけれども、今回の会議でいただいた御意見についても、適切にこのたたき台のほうに整理の上反映していくと、そういった予定でございます。
 それでは、2ページ目をお願いいたします。こちら、まず検討背景・問題意識というところでございます。1ポツ目、もう既に説明したとおり、量子戦略の策定を踏まえた活動が本格化する中で、アカデミア・産業界共にプレーヤーの人材が慢性的に不足しているということで、現在から将来にわたって量子分野を発展させていくためには、人材の育成・確保が急務になってきますというところです。
 2ポツ目以降は、具体的にというところで、研究者に関しましては、世界でリードをする研究者、本委員会に御出席されている皆様みたいな世界をリードする研究者は数多くいらっしゃるものの、研究者層が薄いので、裾野拡大などによって分野全体で研究者層を厚くしていく必要があるのではないかというところ。
 また、3ポツ目ですけれども、社会実装が大分先の10から20年後と予想される技術もある中で、長期的な視点での人材育成やアウトリーチが重要ではないか。
 また、最後4ポツ目、さらに、量子技術の産業化というところが最後ゴールになりますので、そこに向けては、アカデミア・産業界が連携した人材育成を促進する必要があるのではないかというところから検討をスタートしまして、今回の会議、それから、前回の会議で議論を行って、人材育成・確保に向けた推進方策の取りまとめを行うということにしてございます。
 次のページをお願いします。こちらが前回までの議論を踏まえまして、事務局のほうでアウトライン的に柱を5つ整理してみました。1つ目が、量子拠点をハブとした連携体制構築のさらなる推進、2点目が知識の共通化、専門家と非専門家をつなぐ人材の育成、3番目が量子分野への持続的な支援、4番目が幅広い層への量子技術の導入・アウトリーチ活動の推進、5番目が産業界への裾野を広げる研究・人材育成エコシステムの構築ということで整理してございます。
 次お願いします。ここから1つずつ柱について御説明します。ポイントというところが一番注目すべきというか、見ていただきたいというか、今後の推進方策に大きく関わるところでございます。ここはポイントとしましては、各拠点の量子分野に関する情報をワンストップで集約・発信するような仕組みの構築とか、あるいは国際シンポジウムとかもやっていますけれども、そういったものを契機として、より海外との交流、共同研究であったり人材交流をさらに推進していきましょうというところを掲げてございます。
 具体的なところは、ざっと御紹介しますと、前回の会議で拠点の皆様に御紹介いただいたとおり、各拠点で幅広い連携の活動が本格化しているというところを1ポツ目に書いてございます。
 2ポツ目のところは、こうした取組は引き続き継続するというのはもちろんですけれども、そこがさらに有機的に発展していくために、周辺領域の研究者であったり、学生であったり、産業界等を広く取り込むための仕組みが考えられないかというところです。
 3ポツ目ですけれども、前回の会議で御提案のあったような、これはもう拠点に限らず、今日の寄附講座もそうですし、Jijさんのインターンの情報もそうですけれども、日本の量子分野の情報みたいなものをワンストップで集めて発信していくような仕組みがあると、効果的に外に見せていくという点でも有効ですし、また、今回話があったように、場所、分野にとらわれずアクセスできるといった意味でも非常に有効かなと思っています。
 それから、4ポツ目は、拠点を国際連携の要としてと書いていますけれども、こちらは海外との共同研究とか人材交流も推進していくべきということです。特に若手のうちにネットワークを構成すると、将来の研究キャリアの中でも生きるものというところが前回の会議で確認されたところかと思います。最後は、これ、中長期的な課題ではありますけれども、人材育成に関しては、やはりフレキシブルな予算の検討が必要であるということを書かせていただいております。
 次のページをお願いします。こちらは2つ目の柱で知識の共通化、専門家と非専門家をつなぐ人材の育成ということです。ポイントは、良質な教育プログラムを幅広い人に提供する人材育成の仕組みの開発とか、専門家と非専門家といった異なる立場の人材をつなぐ人材の育成というところで書かせていただいています。
 知識の共通化というところでいえば、今、根本先生とか岸本先生に開発していただいている量子人材育成のプログラムがあるんですけれども、やはりそれをしっかりとスケールさせていくためにというところで、やっぱり教える人材も、今の先生方のリソースだけでは不十分というか、人材も不足しているという状況がございますので、それをしっかり共通化を図って、良質なプログラムを幅広い人に提供できるような、そういった教える人の育成をする仕組みも開発すべきではないかというところ。
 あるいは、専門家と非専門家をつなぐ人材の育成というところは、山田委員からお話もあったような三重円ですね。コアの人が中心にいて、外側にユーザーの人がいてというようなところで、真ん中でつなぐ人材を育成する必要があるんじゃないかというところで、技術シーズとニーズの両方を理解してつなぐ人材とか、あるいはファイナンスとかAIといったような多様な方面で量子技術が必要とされているというところをしっかり伝えていくと、今日の話でもあったようにキャリア選択にもつながるのではないかというところ。あるいは、関連分野から参画を促すという上では、その分野がどういったところで自分が量子分野に貢献できるかというのが見えるような形になっているといいんじゃないかというところが議論としてあったところです。
 次お願いします。3番目の柱です。こちらは量子分野への持続的な支援ということです。これはもう方策というよりも言わずもがなというところではございますけれども、特にポイントとしては、やっぱり若手の研究者が個人で独立した研究が可能なグラントを分野全体で継続的に確保すべきでしょうというところが挙げられると思います。
 下のほうの詳細ですけれども、そういったグラントがない時代が過去あったというお話もありましたが、やっぱり海外に人材が流出してしまうとかという、そういうおそれがあるのかなというところ。
 なので、若手研究者がしっかり魅力を感じて量子分野でやっていけるというところでいえば、やはり自分で発案したとか、自分で独立した研究が可能なグラントが求められるんじゃないかというところです。
 それから、そういったグラントを取っていけば、同世代の若手とも交流が活性化されて、人的ネットワーク・コミュニティ形成につながるといったところです。
 それから、4ポツ目ですけれども、そういったグラントが持続的にあるということは、若手研究者が最初スタートしていくときのハードルを下げるということとか、あるいは異分野から参入してくるときのハードルを下げるという効果があるとともに、海外から見ても日本のプレゼンスが向上するというところにつながるのではないかというところ。
 最後は、博士課程に進む学生が減少しているというお話もありましたが、ここは我々も学生と結構意見交換をさせていただくと、やはり皆さん修士で卒業してしまうという例が多数発生しているという中で、若手が希望を持って量子分野を選択できるようにするというところでも、そういったグラントがあるよということは、若手が進路選択をする上での1個のファクターになってくるのかなと、そういうふうに考えてございます。
 次のページお願いします。これ、4番目の柱でございます。こちらは本日大変活発な議論もいただいたところでございますが、幅広い層への量子技術の導入・アウトリーチ活動の推進というところです。前回の会議で出たポイントとしましては、若年層にアウトリーチ活動を推進していくべきではないかというところがありました。それは例えばキャリア検討前の段階でアプローチしていくと、そういったところに興味を持つきっかけづくりをして、量子分野に目を向けていただくきっかけになるのではないかというところ。
 それから、高校生とか大学生とか大学院生みたいなところを前提とするのではなくて、小中学生とか若年層を対象とした取組ですと、夢や憧れというところを喚起して、将来的に見ると非常に有効な手段ではないかというところ。
 それから、3番目ですけれども、手段としては、教育啓蒙コンテンツとか科学館等の取組みたいなものをしっかりやっていくべきというところで、特に今の子供たちはユーチューブとかそういった動画配信みたいなものを数多く見ている機会が多いということですので、そういった手段をうまく活用しながら、1番目の柱で申し上げた量子拠点のワンストップの情報発信の仕組みとの連携みたいなところも効果的ではないかということを挙げております。
 あと、本日の議論でありましたとおり、正しさと分かりやすさのトレードオフとかせめぎ合いみたいなところとか、そういったところにも留意すべきかなと思いますし、それは段階とか対象とかアウトリーチの目的、あるいは最終的にどういった人材を育てたいのかという国のビジョンもあるかと思いますけれども、そういったところにも留意していくべきではないかというふうに今日の議論を聞いていて感じたところです。
 次お願いします。これが最後の柱です。産業界の裾野を広げる研究・人材育成エコシステムの構築というところで、前回の議論までであったのが、協調領域でアカデミアと産業界が連携する仕組みを構築すればいいのではないかというところです。ここは、今日大森委員からもあったとおり、産業界が本腰を入れてやるべきだという意見、おっしゃるとおりだと思いますけれども、やっぱり今、量子分野ってなかなか、関心のある企業が多い一方で、やっぱりちょっと学びたいんですという人たちも多いというところが挙げられますので、そこは国プロではどちらかというとプロジェクト遂行型というところなので、そこは産業界のニーズとのミスマッチを解消するための仕組みが一つ必要じゃないかというところ。
 そのための手段としては、協調領域。やっぱり教育という部分は、今日の寄附講座でもあったとおり、全部オープンでやりましょうという協調領域かなと思いますので、まずはそういったところでコンソーシアム的に協力することで、企業側のまず参画を促すというところで、そうしていったところで、成果が出た場合には共同研究に進んでいくとか、それこそ本腰を入れてやっていただくみたいなところも必要ではないかというところです。なので、社会実装の開拓とか、量子ベンチャー起業を通じて、こういったコンソーシアム形式で協力することでそういった人材育成もできるようになるのではないかというところが期待されると。
 最後に書いてあるのは、その際、大企業だけじゃなくて、中小企業もしっかりポテンシャルを持ったところがありますので、そういったところからも参画できるような仕組みを検討・推進すべきというところで挙げてございます。
 次のページお願いします。こちらがまとめでございます。5本の柱のところに各ページでポイントというところを書いたものを抜粋したものでございます。
 以上が事務局からの発表になります。よろしくお願いします。
【上田主査】ありがとうございます。それでは、意見交換に移ります。ただいま説明にありました取りまとめ案につきましての御質問や御意見、前回の会議での議題に関する内容も含め、今後の量子人材の育成・確保方策について御議論をいただければと思います。
【大森主査代理】よろしいでしょうか。
【上田主査】どうぞ。
【大森主査代理】大森でございます。まず山村さんがおっしゃった取りまとめに関してなんですけれども、最初に国際連携が非常に重要なアイテムだということでした。私も米国政府とかEU政府とかとの政府間会議に出ることが多いんですが、彼らもやっぱり国際連携が非常に大事だと思っています。ただ、その際に、先方が日本に期待しているのは、やはり拠点じゃなくて、政府全体の関与なんですね。当然拠点というのは外国には全く見えていませんので、向こうはやっぱり政府が責任を持って海外連携を進めていくという熱意を見せることを欲しています。なので、やっぱり具体的に文科省とか内閣府とかが前面に立って、例えばアソシエーションベースの仕組みをつくるとか、お互いに準メンバーになって協調するとか、そういった枠組みを主導していく必要があると思います。
 あともう1点、最後の人材教育の点、山村さんのお話だと、やっぱり教育の受皿をつくって、そこで興味を持ってもらう、企業に興味を持ってもらうという話があったですけれども、繰り返しになって申し訳ないんですけれども、そもそも企業が量子技術に本腰を入れて興味を持たないと、量子人材の育成に興味を持たないので、やっぱりいきなり人材育成から企業連携を含めるというビジョンには多少無理があると思います。
 なので、やっぱり先ほど申し上げたような、企業の興味を本格的に喚起する仕組みが必要と思いますし、あと、大企業だけじゃなくて、ベンチャーが参画してくれてもいいという話がありましたけれども、今の日本の現状だと、山田技師長がおられて恐縮ですけれども、やっぱり日立、富士通、NEC等の大企業のベンダー側が本腰を入れて量子技術開発に参画してくれないことにはやっぱりこの試みは進んでいかないと思います。
 以上2点です。
【上田主査】ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。岩井委員、お願いします。
【岩井委員】ちょっと違った観点から山村さんのお話について少しお伺いしたいんですが、いわゆるこの委員会で専ら議論されている、いわゆる量子科学技術という本筋のところでの教育と、それから、企業との連携をどう進めていくのかという話はとても有意義だと思うんですけれども、裾野を広げるという意味では、ほかの分野をどう取り込んでいくのかというのが、これも進めていかなければいけないことだと思うんです。
 その辺りに関するビジョンはやっぱり少しよく見えてなくて、ほかの例えば、私は量子科学技術そのものをやっているわけではないんですけれども、物性物理学とか材料科学とか、出口が必ずしも明確ではない分野もあって、そういうところでは、分野全体として付加価値を高める一つとして、こういった量子科学技術を求めるということも十分に考えられることで、実際にもやられているわけなので、ほかにもいろいろな分野、化学や生命なんかもあると思うんですけれども、それぞれどういう分野にどういうふうにアプローチしていくのかということがもう少し具体的にあってもいいのかなと、今、山村さんの話をお伺いしていて思いました。
 それは今日一番初めに岸本先生のほうからお話があったときに、第2言語として普及させるというキーワードがあったので、そのときにもそう思ったんですが、少し具体的に戦略的に量子科学技術を、もちろん企業へのアプローチもとても大事ですけれども、いろいろな研究分野に対してどういう貢献ができるのかということももう少し考えていってもいいのかなと思ったんですけれども、いかがでしょうか。すみません、質問だか何だかよく分からないんですけれども、皆さんの御意見を伺えればと思います。
【山村係長】そしたら、文科省から若干お答えします。ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思っていて、やっぱり量子分野は総合格闘技というお話もあったとおり、非常に様々な分野が関与してこないと量子分野自体も発展してこないというのと、量子分野の量子科学技術を使うとほかの分野が発展するという、まさにそういった関係にあると思います。
 前者のほうであれば、やっぱり量子分野にどういうふうに貢献できるかという道筋というところをやっぱり見せていく。そのためにはどうしたらいいかって、すみません、答えがないんですけれども、そういったところを考えていかないといけないなと思っています。後者に関しては、もう今出来ている量子技術、こういうのがあって、より幅広いところに使えるんだよという、そういう事例みたいなものが見えてくると、皆さん参加してきやすくなるかなというところも思います。なので、まず知っていただくというところが大切になるのかなと。
 もう一つは、政策的に誘導するとしたら、ファンディングのところでうまく融合領域みたいなところを立ててやっていくみたいなところで両者の参画を促すみたいなそういった仕組みがあると、全体としてもいいように進んでいくのはないかなと思いました。
 以上です。
【上田主査】それでは次に、根本委員、お願いします。
【根本委員】根本です。2点です。1点目は、拠点との連携ということが非常に強調されているように思うんですけれども、拠点というのは、関係者の中では分野に近い方からは見えているとは思うんですが、先ほど大森委員からもあったように、海外からは見えてないですし、なかなかやはりその中で若い世代にも、若いというのは子供たちも含めて量子に関心を持ってもらうというような観点からいっても、やはり国内からもそんなに見えているものではないと。そこで、拠点を中心としてみたいな形に持っていくというのは非常に無理があるんじゃないのかなと感じました。
 それで、もう1点目は質問なんですけれども、興味を持ちましたとか、分野に参画したいですというような入り口をここそこにつくりましょうというのはよく分かるんですが、やはりインプリメンテーションを考えると、ステップアップしていくということがとても大事なんです。もうここまでできた、その次どうするのか。今日の山城さんのお話で、人づてでというお話がありましたけれども、やはり人づてがたまたまあったりとか、たまたまそういう研究室に入ることができた人というのは道が開けると思うんですけれども、そこへたどり着かないとなかなかそのステップを踏んでいくということができにくい仕組みになっていて、その辺りをどのように考えているか教えていただけますか。
【山村係長】ありがとうございます。まず拠点のほうについてはおっしゃるとおりで、すみません、拠点ばっかりというふうな、そういった書きぶりになってしまっていて大変恐縮です。
 やっぱり量子が見えていくように、まず国内に関していえば、先ほど申し上げたような情報発信みたいなところはより強化していくべきなのかなと思っていますし、そのときに、拠点の情報だけじゃなくて、根本先生だったり、そういった拠点には、国として拠点とはしていませんがというところですけれども、有力な先生が数多くいらっしゃるので、拠点が情報発信の箱みたいなものを提示して、そこにいろいろな方々が情報を載せていくようなそういう情報発信の仕組みもあるのではないかなと思っています。
 あと、ステップアップというところでいえば、今、教育プログラムの開発とか取り組んでいただいていますけれども、そういったところが確立されてくれば、最終的には、あなたはどこまでできましたねという、そういう認定みたいな制度みたいなものがあると、スキルの見える化みたいなところにもつながってくるのかなとは思いました。
 以上です。
【上田主査】ありがとうございます。では、大森委員、お願いします。
【大森主査代理】ありがとうございます。先ほど未来館の小澤さんのお話で、量子技術の展示が不発だったということを言われていて、それはそうかもしれないなーと思いながら聞いていました。一方、今我々が議論しているのは、将来の量子技術を支える人材育成であって、量子技術そのものの普及ではないですよね。そういった観点から、人材育成のためには、まず育成の対象となる人たちの興味を喚起する必要があると思います。
 私個人の経験で学生を教育した経緯から見て、人の興味を喚起する際のキーポイントはやっぱり2つあると思っています。それは歴史と謎だと思います。例えば歴史については、単に織田信長は非常に偉い人だと言ってもみんな興味を持たないですよね。彼の小さい頃からの生い立ちとか、数々の画期的な政策に結びついた経緯を聞いて初めて魅力を感じるわけですね。例えば量子でいえば、不確定性原理とか相補性原理、あるいは波動関数の確率解釈とか、そういった数々の難解な概念があるわけですけれども、こういったものをトップダウンで教えるのではなくて、例えばプランクの黒体輻射から始まって、なぜそういった難解な概念が生まれざるを得なかったかという点を歴史をたどって教えるような、例えば量子歴史学みたいなものがあってもいいのかなと思っています。
 同様に、未来館の展示でも、いきなり量子技術のデバイスを展示するのではなくて、そういった観点からの展示があったほうが、むしろ民間の啓発という意味では目的に効率的に近づけるのではないかと思います。
 もう1点の「謎」に関しては、例えば我々、宇宙に非常に興味がありますけれども、宇宙がきれいだから興味があるだけではなくて、やっぱり宇宙の始まり、あるいは宇宙の果てはどうなっているんだろうという謎があるからみんな惹かれるわけですね。だから、量子の場合は、それは例えば波と量子の二重性とか、量子と古典の境界、観測の問題、こういった謎がたくさんあります。こういったことに関して、例えば今日は委員の中に日立の山田技師長がおられて恐縮ですけれども、日立の外村彰さんの有名な電子の二重スリット実験とか、ああいったものを実験的に来館者が体験できるような展示を行う。こういったものも目的を達成するために非常に効率的な試みになるのではないかと思って、小澤さんの大変興味深いお話を聞いておりました。
 以上です。
【上田主査】山村さん、何かコメントありますでしょうか。
【山村係長】ありがとうございます。今、非常に面白い視点のお話をいただいて、特に量子歴史学みたいなところは、確かにアインシュタインが認めなかったんだとかそういうのも結構、皆さん知っているアインシュタインですら分からなかったとか、そういう興味を引くようなところがあったりとかですね。
 あと、実験のところでいえば、おっしゃるとおりで、非常に美しい実験が見られて、私も結構興奮した者の一人なんですけれども、そういったものが見えると確かにすばらしいかなと思います。そこは未来館の小澤さんと連携して進めていきたいなと思います。
【上田主査】よろしいでしょうか。では、波多野委員、お願いします。
【波多野委員】すみません、短く。ありがとうございました。今日私、一番印象的だったのは、ゲリラ的とおっしゃった藤堂先生の、拠点で活用するだけじゃなくてゲリラ的にやっていくというのは非常に重要だと思っています。
 それとちょっと対比してしまうんですけれども、今、私、現場の状況をお伝えする意味で、今、応用物理学会の会長をさせていただいているので、やっぱり量子への期待が物すごく大きいというのを感じています。それはオンラインになって、ママさんネットワークの下に中学生、小学生も入ってくるようになったんですね、応用物理学会の講演会に。シンポジウムを量子で何回か企画したんですけれども、若い人から、あと、企業の人から、シニアの人から、今、全部統計が取れますので、入ってきていて。あとは、業界ですね。今、半導体の再復興というのを国がやっていますので、装置メーカーや材料の企業が、量子は次のターゲットなんですというふうにみんな集まるわけですね。だから、1つのシンポジウムをやると300人ぐらい集まります。そのうち、小中学生もいます。
 というようなものを、やっぱり今、各学協会はどんどん人も減っていますので、量子にみんなターゲットしています。物理もそうですし、電子通信学会などもそうなので、そういうところもうまく活用して量子を広げていけばよいかなと思いました。
 以上です。
【上田主査】ありがとうございます。では、川上委員、お願いします。
【川上委員】本日はいろいろ面白いお話をありがとうございました。先ほどの、マッチングがうまくいくかどうか、興味のある方がうまく量子分野に入ってこられるかどうかという話があったんですけれども、結構、20代前半とか10代とか若い学生の方と話をしていると、もう情報収集をツイッターでほぼ全部やっているような感じなのかなと思ったりしていて、量子関係のことに関しても、誰々先生がこんなことを言っていたとか、すごいそういうのに敏感なんですね。なので、私はツイッターちゃんとやっていないので自分も含めてなんですけれども、そういったツールを活用していったら。若い方は結構簡単にダイレクトメールとかも送ったりする感じなんですね、ツイッターにいるアカウントに対して。なので、偉い大学の先生とかもツイッターをやって、そこで、こういう学生を募集しているよとか、インターンを募集しているよとか言ったら、結構気軽にコンタクトしてきてもらえるんじゃないかなと思ったので、すみません、それを言いたくて手を挙げました。ありがとうございます。
【上田主査】大変貴重な御意見ありがとうございます。小杉委員、お願いします。
【小杉委員】今日のプレゼンは、入り口のところから出口に近いところでの人材育成、出口が見えない中の人材育成ってちょっと難しいと思いますが、そういうお話を伺ったんですけれども、山村さんに説明いただいた5ページがその辺りの人材育成のまとめにはなっているかと思いますが、あんまり整理できていないような印象を持ちました。
 大学の低学年のレベルの教養部相当の教育というのは、しっかり教科書も使い、教師側も専門でなくても少し勉強して教えるというようなことをやっていたわけですけれども、そういう中で、今日の電気通信大学のような試みというのは、ゲリラ的にやっていくというよりは、日本全体としてやっていく流れをつくる必要があると思いました。そのためには、そこを体系化して、低学年の本当の教育プログラムに入れていかないと、人は育っていかないかなという気もするので、教科書とかそういうものもしっかり作らないといけないという観点があるかとは思います。
 その辺が知識の共通化という切り口でざくっと書かれているだけで、あんまり教育プログラム、ポイントのところには教育プログラムとは書かれていますけれども、入り口のところでの教育をしっかりやるというところをもうちょっと強調していただくのと、それから、専門家と非専門家をつなぐ人材育成というところがありますけれども、ここはちょっと漠然としていて、何を書かれているのか私は分かりにくい点があったので、5ページのところをもうちょっと改善していただくといいかなという印象を持ちました。
 以上です。
【上田主査】山村さん、大変重要な指摘だと思いますが、いかがでしょうか。
【山村係長】承知いたしました。ありがとうございます。知識の共通化のところも、おっしゃるとおりだと思います。すみません、事務局のほうでしっかり整理したいと思います。ありがとうございます。
【上田主査】では次に、向山委員、お願いします。
【向山委員】ありがとうございます。大阪大学の向山です。時間もあると思うので、簡単に1点だけコメントさせていただきたいんですけれども、量子分野の持続的な支援ということで、若手の方に自由な裁量で使えるグラントを継続的に確保って、これ、すごく大事だと思うんですけれども、一方で私、周辺を見ていると、お金はある程度出てきても、一人ですごく頑張っているという若手が多いというか、よく見るような気がするんですね。そういう方が孤軍奮闘というか一人で頑張ってできることも限られていると思うので、そういう若手の研究者の方に、博士の学生であったり若いポスドクとかが自然に流れるような仕組みなんかも、ここでどう議論できることか分かりませんけれども、必要かなと思います。結局は博士人材がたくさん必要だということにはなるんだと思うんですけれども、そういう仕組みも考えていけたらなと感じました。
 以上です。
【上田主査】ありがとうございます。では最後に、早瀬委員、お願いします。
【早瀬委員】慶應大学の早瀬です。ありがとうございます。入り口のところで興味を持っていただく、裾野を広げるというのも大事なんですけれども、やっぱり研究を始めたての学部生、修士の学生が量子分野に興味を持って、さらに博士課程に進学するだとか、さらに就職してその分野に進むというところが非常に重要だと思うんですけれども、やはり大学で今教えていて思うのは、その部分のハードルがすごく学生にとっては高いと。
 先日学部生にアンケートを取ったんですけれども、博士課程への進学に興味を持っている学生は3割程度しかいなくて、その中でも、特に量子分野のような基礎的な分野に進むかどうかというのは非常に学生にとったらかなりチャレンジングで、とてもじゃないけど不安のほうが大きくて、なかなかその道に進めないというのがなぜか学生の意見なんですね。
 やはり将来に対して、本当に就職できるかとか、その分野で活躍できるかという、そういう漠然とした不安というのがすごく学生の間に広まっていて、それを取り除くということが非常に重要なんじゃないかなと思います。なので、アカデミアだけじゃなくて、企業への就職という道がきちんと開けていることとか、そういったことをきちんと伝えていくということが必要かなと思います。
 企業の方にそういった学生を採るということを広げていくというところも重要だと思うんですけれども、それと同時に、学生にきちんとそういった道があるんだということを見える形にするというところも非常に重要だと思うんですね。学生が不安に思っているというのは、将来どういった道があるのかというのが全然見えないというところが漠然とした不安につながっているので、そこを見える形にするだけでもかなり改善されるのではないかなと思っています。なので、そういった活動をぜひ文科省の方とかにもしていただけたらいいのかなと思います。
 以上です。
【上田主査】ありがとうございます。どうぞ。
【山村係長】ありがとうございました。御指摘、大変おっしゃるとおりだと思います。産業界のほうが見えてこそ学生が入ってきますし、研究者の数もそれによって量が増えることで増えていくというところがあると思います。
 先日、武田俊太郎先生、あと、NTTの遠藤先生とか、あの人たちはMITの今後活躍するであろうイノベーターに認定されていたりとか、そういったところで人が見える化するというところは結構重要かなと。具体的な人が見えると、やっぱりその人を目指そうみたいな感じで若者が思うというのは確かにそのとおりだと思うので、例えばQ大賞みたいな感じでそういった人を表彰するとか、そういった取組みたいなものもあったら面白いのかなとちょっと今のお話を聞いていて思った次第です。
【早瀬委員】そうですね。先ほどツイッターの話もありましたけれども、今の人たちはユーチューブだとかそういったところから情報を得ているので、そういったところで活躍している人をどんどん広報していくとか、そういった活動が、新しい形の活動が必要なのかなと思います。ありがとうございました。
【山村係長】ありがとうございます。
【上田主査】ほかによろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
 いただいた御意見につきましては、事務局にて整理の上、取りまとめ案に反映させていただきます。今後委員の皆様にもメールベースで御相談させていただきながら、最終的には座長に御一任いただければと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、そのようにさせていただきます。ありがとうございます。
 最後に、事務局から連絡事項がありましたら、お願いいたします。
【山村係長】本日も大変活発な御議論をありがとうございました。今年度令和3年度の量子科学技術委員会は今回で終了となりますので、また来年度以降については事務局から改めて御連絡を差し上げる予定です。
 以上でございます。
【上田主査】ありがとうございます。本日は長時間にわたる御議論ありがとうございました。それでは、これで閉会と致します。

 ―― 了 ――

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