量子科学技術委員会(第9期~)(第12回) 議事録

1.日時

平成29年5月30日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 15階 15F1会議室

3.議題

  1. 前回の議論の確認
  2. 動向の紹介
  3. ロードマップ検討について(進捗報告)
  4. 推進方策の検討について
  5. その他

4.出席者

委員

雨宮委員、飯田委員、上田委員、大森委員、城石委員、根本委員、湯本委員

文部科学省

伊藤科学技術・学術政策局長、村上研究開発基盤課長、上田研究開発基盤課量子研究推進室長、吉川研究開発基盤課課長補佐、橋本研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐

5.議事録


【雨宮主査】  それでは、定刻になりましたので、第12回量子科学技術委員会を開催いたします。
 本日は、お忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日は7名の委員に御出席いただいています。欠席の委員は、岩井委員、岩本委員、早瀬委員、美濃島委員、平野委員です。
 今回の議題は、(1)「前回の議論の確認」、(2)「動向の紹介」、(3)「ロードマップの検討について」、(4)「推進方策の検討について」、の4つです。
 それでは、事務局より配付資料の確認、お願いいたします。
【吉川補佐】  事務局の吉川です。よろしくお願いいたします。お手元の資料をごらんください。議事次第にございますように、下に配付資料とありますが、資料1から資料4、参考資料1、2を机上配付しております。
 議題3については、資料番号は付けておりません。ロードマップ検討の状況報告の資料ですが、4つの分野について、それぞれ1枚ずつ、合計4枚の資料を委員のお手元のみに置かせていただいております。
 資料等に不備がございましたら、事務局まで御連絡ください。よろしいでしょうか。
【雨宮主査】  資料についてよろしいでしょうか。
 それでは、早速議題1に入りたいと思います。事務局より説明をお願いいたします。
【上田室長】  事務局の上田です。御説明いたします。資料1を御覧ください。前回の議論の確認ということで、フォトニック結晶について前回も御議論いただきました。また、昨年の第7回委員会でもトピックス的に取り上げて、量子科学技術特有の研究の進展や今後の可能性について示唆があり、国民・社会にとっても研究の状況がみえるように可視化することは意義があるとの観点から、前回の議論を事務局で資料1のようにまとめました。
 ちなみに、これまで本委員会としましては、参考資料2の光格子時計の現状と今後の可能性についてということでまとめているものに続き、トピックス的なまとめということになります。
 資料に沿って御説明いたします。冒頭の6行は光格子時計のときと全く変わりません。
 「1.はじめに」から参ります。フォトニック結晶とは、光の波長と同程度の間隔で、屈折率が異なる物質を並べたナノ周期構造の人工結晶であり、光が内部に閉じ込められたり、侵入できなかったりする現象が起きる。これは自然界の蝶の羽や宝石の一種が、見る方向によって光沢が変わりキラキラする構造色を持つのと同様の原理に依っている。この基本原理は古くから知られていたが、ナノ周期構造を人工的に作製することが極めて困難だったので、1990年代後半までは現実的なフォトニック結晶は存在しなかったところに、ナノテクノロジー・半導体技術によって実現し、光の閉じ込めや侵入阻止といった特異な現象を利用して、光技術デバイスとして活用する研究が近年加速度的に進展しているというまとめになっています。
 「例えば」といたしまして、フォトニック結晶を用いて光を内部に閉じ込め、大面積で共振させつつ外部に取り出すという、これまでにない原理に基づいた半導体レーザーを実現することができる。世界の製造業で汎用されるレーザー加工機の市場は1兆円を超えるが、フォトニック結晶レーザーはこれを置き換える可能性が指摘されている。更に、独特の光の制御により、応用可能性が広く、我が国の大きな強みとなり得る光技術と言えるというまとめになっています。
 「2.研究の状況」の経緯としては、2ページ目に参ります。1990年代初頭から、我が国の研究者により、積み木細工のようにナノ構造を並べる結晶作製技術が開拓されて、2000年に世界初の三次元フォトニック結晶が実現されました。さらに同年、二次元的構造を用いた展開も進み、二次元フォトニック結晶でも同様の光の制御が可能であることが見出され、基礎が築かれることとなった。
 続きまして、フォトニック結晶の特徴として、光の侵入阻止効果に留まらず、結晶内に「欠陥」的構造を入れると、その欠陥部のみに光が集まり、共振して強い発光を示す。同様に欠陥構造を繋げて結晶内にトンネルのような構造を作ると、そのトンネル部を光が伝播する「導波路」になります。
 さらに、「欠陥」の大きさを変えると、集まる光の波長を変えることができ、超小型の分光器の機能を持たせられる。「欠陥」の周辺の構造配列を調整することでは、集まった光をより鋭く共振させるナノ共振器といった機能が発揮される。「導波路」と「欠陥」を組み合わせると、光パルスを導波路で伝播させ、欠陥部で光パルスを捕獲・放出するといった光メモリや情報処理デバイスの機能が拓かれ得る。また、フォトニック結晶により光を大面積で共振させることが出来ることも、別途見出された。2000年来、こういった多彩な光の制御とその利用を開拓する研究が次々と進展することとなった。
 量子科学技術はこのように、一旦ブレークスルーが起きれば、それを起点に、想定されなかったような多様で多彩な機能や応用可能性が拓かれるポテンシャルを有すると言え、また、そのブレークスルーは、我が国の培ってきたナノテクノロジー・半導体技術や光学技術の強みに裏打ちされている点が特筆されるという記述になってございます。
 「現状と世界的な競争」についてです。フォトニック結晶は、日本をはじめ、各国30を超える研究機関により全世界的に研究が進められているが、我が国のプレゼンスは高い。様々な応用可能性が研究されているが、冒頭にありましたフォトニック結晶レーザーにつきましては、産業化の段階に入りつつあり、2014年に我が国の大学研究者との連携により民間企業で実用化・販売され始めた。
 製造業におけるレーザー加工におきましては、従来、我が国企業の炭酸ガスレーザーを用いるものが多くのシェアを占めていたが、近年、欧米勢のファイバーレーザーのシェアが上回るようになっている。このフォトニック結晶は、記載にあるような特徴によって、ビーム品質が高く、面的に発光するためレンズを用いなくても一定範囲にレーザーを照射できるとの特徴を持っており、フォトニック結晶レーザーを小型のワンチップで、10から100W級、更には合波で1kW級まで高出力化できれば、既存のレーザーを置き換えることが可能と考えられ、その実現可能性も見えてきている。
 加えて、フォトニック結晶レーザーでは、ミラー等の機械的機構を使わずに電子的にレーザーのビーム方向を変化させるという操作技術についても可能である。
 「3.今後の展開可能性」に、前回の光格子時計と同様に3点まとめております。
 1番目が「フォトニック結晶レーザーの産業展開」として、我が国初の独創的な技術であり、1兆円を超える市場とされる製造現場のレーザー加工における我が国産業競争力の強化が期待される。また、レーザー加工に限らず、眼科や歯科といった医療分野での利用や脱毛治療器といった利用、パワーレーザー等の研究での利用といった展開が考えられる。更に、電子的2次元ビーム操作が可能であることから、車載ライダーやレーザーセキュリティセンサといった市場を開拓する可能性が指摘されるといったまとめ方をしております。
 2番目が「太陽光発電の革新的な高効率化」として、現在の太陽電池では、幅広いスペクトルに対して、狭いスペクトルからしか電気エネルギーを取り出せていないという課題があり、発電効率の限界になっていますが、フォトニック結晶には熱輻射という機能があり、これを用いれば、これまでにない50%を超える高効率の太陽光発電につながる可能性が指摘されるといったまとめ方をしております。
 3番目が「光回路デバイスと量子情報処理・通信の革新」として、「欠陥」や「導波路」を使い特異な光の制御が実証されているので、これらの技術や集積化が進むことで、光メモリや光スイッチ等の超小型の光回路デバイスや情報処理デバイスが実現され、量子コンピュータや量子情報処理・通信技術の革新に貢献することが期待されるといったまとめ方をしております。
 「4.おわりに」で、フォトニック結晶では我が国の培ってきたナノテクノロジー・半導体技術等の強みが発揮され、現実的な結晶が作製されるというブレークスルーが起こり、多様で多彩な機能や応用可能性と、将来の経済・社会にインパクトを及ぼす可能性が見出されている。量子科学技術特有の研究進展と展開可能性を示す典型例と言えよう、と。ここは光格子時計と同様の文言になっています。今後の量子科学技術の推進にあたっての示唆とするとともに、フォトニック結晶の研究進展や展開の注視及び時宜に応じた推進を図ることが重要と考えられる。こちらも光格子時計と同様の結びになっています。
 この文書案は事前にもお目通しいただいたかもしれませんが、これを基に事務局で、情報量は若干取捨選択をしなくてはいけないですが、国民、あるいは関係者に取っかかりから分かってもらいやすいように1枚紙でまとめた資料を参考としてお付けしております。
 以上でございます。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。前回、このフォトニック結晶に関してのプレゼンがあって、それを基に事務局の方で資料1の案という形でまとめていただいたもの、それについての御報告を頂きましたが、今の説明内容に関して何か御意見等あれば、よろしくお願いします。
【上田室長】  前回の光格子時計は昨年まとめていただきましたが、その後の反響や影響について申しますと、研究者が所属する研究機関でもきちんと御認識が進んだということは感じております。その1つとして、研究者の概算要求については、拡充要求がなされたということが昨年の時点でありまして、こういったポテンシャルがあるものを社会、国民に見える化していただく効果はあろうかと感じているところでございます。
【雨宮主査】  どうも。いかがでしょうか、この資料1に関して。
 意見ではなく質問ですが、3ページ目で「太陽光発電の革新的な高効率化」というときに、一旦熱に変えて、発光して、マッチングのいい波長に変えるというのはクレバーな方法だと思うと同時に、一旦熱に変えるところの損失というのがどうなのかなというのが質問です。フォトニック結晶に詳しい方、何かご存じですか。熱に変えないで光は光のままで変換する方が効率が高いというのが私の理解ですが、ここの熱が、例えば熱電素子でまた電気に変えるのであればエネルギー損失しないと思いますが、そうで無い場合は、熱で拡散する分、エネルギー効率が下がるのではないかというのが私の質問です。
【上田室長】  熱に変換した上で熱輻射として伝えるということです。
【雨宮主査】  こういう形でまとめるときに、私のような疑問を持つ人もいると思うので、ちょっと補足のコメントがあった方が良いと思います。
【大森主査代理】  これまでの効率を書いとけばいいんじゃないですかね。ものすごい低いんですけど。太陽光の中で使っているフラクションの上限を書いとけばいいんじゃないですかね。
【上田室長】  現在の太陽光発電の効率ということですね。
【大森主査代理】  うん。そうすると、この50%というのがどのぐらいすごい数字かというのが分かると思うんですけど、実際すごい狭いんですよ、使っている範囲が。
【雨宮主査】  どちらにしても、変換しなくても熱に変わってしまう分があるから、熱輻射で一旦熱になったとしても、波長のマッチングがいい分だけ得しているということなんでしょうね。
【大森主査代理】  そうですね。その分、プラスマイナスでプラスになるようなロジックを分かるように数値を補足すればいいんですよ。
【上田室長】  一応、研究者から聞いていますところ、事務局で把握している限りでお伝えしますと、フォトニック結晶の一部に太陽光を吸収しやすい物体としてカーボンナノチューブなどを貼り付け、その状態で太陽光吸収物体に照射すると、太陽光が吸収され、フォトニック結晶の温度も高温まで上昇します。フォトニック結晶は高温において特定の波長しか放射しないように工夫されているので、この光を使って太陽電池で受け取ると高効率になるということですが、問題はその際の熱に一旦変えるということですね。
【雨宮主査】  出てきた光のマッチングがいいというのはよく分かります。
【上田室長】  その部分で損失があるかというところは、事務局でも確認することは可能です。
【雨宮主査】  あと、大森委員が言われたように、今まで何%だったのが何%になったという記述がするのがいいと思います。
【大森主査代理】  どこにでも出ています。本当にthinな領域しか使っていないので。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
【城石委員】  一般の方にご説明するときは、例えば小型のレーザーと言ったときに、こんなに大きいものがこんなに小さくなるよとか、素人目に見てあっと驚くような絵がある方が、ここに書いてある難しいことよりも分かりやすいのかなと思います。ここに書いてあることはすごく高級なんですね。一般の方を対象にしておられるなら、大変とは思いますが、少し分かりやすくされた工夫された方が良いのかもしれません。
【上田室長】  承知しました。
【上田委員】  光格子時計の場合は、時間標準を確保するという意味で基礎的な研究の側面が強かったと思いますが、今回の場合は、むしろ新しいタイプのレーザーのいわば産業のシーズとするという観点からのインパクトがあると思いますので、産学融合・協力関係をより強力にバックアップするような施策が伴われると、より有効になるんじゃないかと思います。
【上田室長】  私のイメージとしては、最後の方の時宜に応じた推進というところに少し加えられるのではないかと思います。
【雨宮主査】  そうですね。ほかによろしいでしょうか。
 それでは、特にほかになければ、次の議題に進みたいと思います。
【上田室長】  こちらは修正させてもらったうえで、再度確認させていただき、ホームページに掲載という運びにさせていただきます。
【雨宮主査】  では、コメントを反映して、そのような形で進めていただければと思います。よろしくお願いします。
 議題2ですが、事務局より、動向の紹介に関して、趣旨の御説明お願いいたします。
【上田室長】  資料2-1、資料2-2の2つの資料に基づいて御説明したいと思います。資料2-1、表題に「官民研究開発投資拡大プログラムについて」と書いてありますが、結論から申しますと、4ページ目。内閣府のプログラムとしてターゲット領域を作り、来年度から始まる研究開発を振興しようという3領域の2番目、「革新的フィジカル空間基盤技術」の中に光・量子が盛り込まれたということで、動向を紹介させていただきたいと思います。
 この施策の背景として、1ページ目から御説明いたします。「科学技術イノベーション官民投資拡大イニシアティブ」という大きな流れの中なんですが、冒頭にありますように、経済財政諮問会議と総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の下に「経済社会・科学技術イノベーション活性化委員会」を設置。「1.基本的考え方」として、CSTIの司令塔強化を図って、Society 5.0の実現に資する科学技術予算の量的・質的拡大を目指すなどが基本的な考え方として、3つのアクションの「(1)予算編成プロセス改革アクション」、赤枠で囲んであるところがこれの該当でございます。
 「(1)予算編成プロセス改革アクション」という中で、現在、SIP事業が平成26年度から推進されて4年目ですが、そういったものを継続・発展させるといったところで、新型推進費の導入を含めて、と書いてあります。これを実施していくときに、先ほどあった3つの領域のような官民で民間投資誘発効果の高いターゲット領域を設定して、関連施策の提案を各省庁から求めてCSTIが対象施策を選定します。これが科学技術イノベーション官民投資拡大推進費と呼ばれるものです。
 対象施策は、予算編成過程で適切な予算措置が講じられるよう、経済財政諮問会議、財務省等と連携するとあります。あるいは、このターゲット領域ごとに領域統括を指名して、SIPの優れた特徴を備えたマネジメントを適用する。ステージゲート方式を導入するといったことも書かれてございます。
 2ページ目です。左側は現行のSIPのことを書いてありますが、右側に今回の新しい「新型SIP」と括弧書きで書いてありますが、目標/特徴としまして、官民で民間投資誘発効果の高いターゲット領域を検討されてきたということです。これに対して、CSTI/産業界が選定した各省提案事業に対して内閣府で確保すると想定される推進費をアドオンしていくということです。これに基づいて各省主導の施策を民間投資誘発効果の高い分野へ誘導するということ。あるいは、この新型推進費をレバレッジとして、「SIP型マネジメント」を各省に拡大するといったことがうたわれてございます。
 3ページ目は経緯です。4月21日の総理御出席のCSTI本会議でターゲット領域が決定されました。その際に、「検討の視点」とありますように、産業界の投資が誘発されるかを第1の視点。第2の視点として、政府支出の効率化への貢献にも配慮しつつ、その他の視点とありますように、国民から見て妥当性があるか、十分な各省庁の対象施策の登録が見込まれるか、1人の領域統括が対応できる範囲か、といった視点から選ばれたということです。
 4ページ目がその3領域です。この2番目に光・量子も今後関連していくという動向が想定され得るということです。
 5ページ目に、こういったターゲット領域を全体俯瞰するような、真ん中に基盤技術系のターゲット領域の候補があって、外側に行けば行くほど、様々な出口に関連するターゲット領域の候補があり、その中で来年度に設定することが望ましいターゲット領域候補として3つ選ばれたということです。
 6ページ目は関連スケジュールです。ターゲット領域が4月に決定されて、各省へのターゲット領域の提示等がなされ、8月まで各省庁における対象施策に係る検討といったことが進められるという中で、8月の概算要求の時期に合わせて、各省庁から内閣府に対してこれを対象としたいという提案をし、その評価・選定がその後予算編成過程の中で進み、12月に対象施策について予算編成過程において適切な予算措置が講じられるよう、連携して決まっていきます。実際の配分は、年が明けて3月以降に各省庁からの申請に基づき、配分の検討がなされ、6月に順次各省庁へ予算の移し替えといった形で進むことが示されています。
 7ページ目に内閣府が示しています全体のマネジメント体制です。上部構造があり、運営委員会に3つのターゲット領域ごとに領域統括を1人ずつ置いて、委員3から5名ということです。この領域統括につきましては、昨日より内閣府で6月の中旬までの公募が開始されています。
 その右下に各省予算による研究開発に加え、推進費のアドオンによる追加の研究開発を一体的に運用ということで、このアドオンの意味は、現在提示されているのは、研究開発の加速であったり、新規研究開発の前倒しであったり、事業化への取り組みの加速であったりということが言われています。
 説明は大体以上ですが、これ以上の詳細は現時点では必ずしも決まっておらず、今後内閣府、あるいは各省庁一体となりながら検討が進めていかれるものと認識していますが、まずは第2番目の領域に光・量子が入っているということの御報告です。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。今の資料に基づいて説明していただいたことに対して何か御質問とかあれば、いかがでしょうか。第2の領域に光・量子というキーワードが入って、今説明があったように進んでいくということです。
【飯田委員】  質問ですが、ご説明頂いた新規事業はImPACTの後継事業という位置付けと思ってよろしいのでしょうか。
【上田室長】  SIPの継続・発展というものをにらみながら、新型SIPという名前で実施していくということだと思われます。
【飯田委員】  少し勘違いしていましたが、位置付けに関して承知しました。
【雨宮主査】  いろいろこれからまた変わるにしても、PRIMSという形で定着していくんでしょうか、呼び名としては。
【上田室長】  内閣府はPRISMを使用しています。民間投資を誘発するといった観点からこの3つのターゲット領域が選ばれていますが、光技術全てが直近の民間投資を誘発するわけではないと事務局でも思いまして、一方で、民間投資を誘発すべき領域でもあるという主張は、一応私ども内閣府との意見交換の中では言わせてもらい、そういった中で光・量子が盛り込まれたという経緯があります。
【雨宮主査】  御質問含めて、何か御意見ありましたら。どうぞ。
【湯本委員】  アドオンというのはどのぐらいとか、何%とか、そういう概算みたいなのはあるんですか。
【上田室長】  現時点で詳細は示されてございません。平成26年度から始まっている現行のSIPは、年額500億円ずつあり、平成30年度で一旦5年が終わります。そのようなところもにらみつつだと思いますが、同じく平成30年度からの新型SIPを、概算要求されていかれるということが想定されます。
【湯本委員】  そうすると、例えば民間からの金額も評価の対象になるようなことになるんですか。
【上田室長】  そこは現時点で詳細はまだですが、民間投資を誘発してほしいというような中で対象施策が選定・評価されていくのではと思っております。
【雨宮主査】  では、引き続き、資料2-2の方、お願いします。
【上田室長】  続きまして、文科省内の今年度からの新規施策でございます。科学技術振興機構(JST)におきまして、「未来社会創造事業(ハイリスク・ハイインパクトの研究開発の推進)」を新規30億円でスタートしつつあります。
 制度概要にありますように、新しい試みに果敢に挑戦し、非連続なイノベーションといったところ。あるいは、経済・社会的にインパクトのあるターゲットを明確に見据えた技術的にチャレンジングな目標を設定し、実用化が可能かどうかを見極められる段階(概念実証:POC)とありますが、プルーフ・オブ・コンセプト(POC)を目指した研究開発を実施ということです。
 先ほど飯田委員からImPACTと発言がありましたが、内閣府で実施しているImPACTに対して、こちらが現在各省で普及に取り組むことになっており、文科省としては、ImPACTを念頭にして、ハイリスク・ハイインパクトの研究開発ということで新たに設定したものです。
 事業の特徴にある中の2番目の大規模プロジェクト型を御覧ください。こちらについて、量子に関係するテーマが設定されていますので、御報告いたします。
 この大規模プロジェクト型は、現在の技術体系を変え、将来の基盤技術となる技術テーマを国が特定し、集中的に投資するということです。マネジメントとしては、PM方式、ステージゲート方式等々をとられるということで、右下にございますように、大規模プロジェクト型では、1年目~3年目は最大6億円/年程度、4年目~10年目は最大8億円/年程度と、これはあくまで最大ということですが、こういったところで技術テーマが選定されています。
 次のページが大まかな進め方です。技術テーマを文科省から提示して、JSTから公募がなされます。この技術テーマを特定するに当たっては、JSTとともに調査した上で技術テーマの選定に至っています。
 次の2つのページはホームページをプリントアウトしたものですが、最初に書いてあるものが探索加速型でございまして、今般御紹介した大規模プロジェクト型は、次のページに黄色でマーカーが引いてあります「技術テーマ」というところで、公募自体は今後開始されますが、技術テーマ自体はこのように3つ示されています。
 1つ目は、「粒子加速器の革新的な小型化及び高エネルギー化につながるレーザープラズマ加速技術」。2つ目は、「エネルギー損失の革新的な低減化につながる高温超電導線材接合技術」、3つ目は、「自己位置推定機器の革新的な高精度化及び小型化につながる量子慣性センサー技術」で、本委員会の御議論と近しいテーマだと思います。
 以降、添付してある資料がこの3つの技術テーマについてです。最初は、レーザープラズマ加速技術です。2.概要にありますように、粒子加速器は様々な分野で活用されており、近年、革新的に小型化できる高強度レーザー、本委員会ではパワーレーザーということもありますが、そのパワーレーザーを利用したレーザープラズマ粒子加速技術により小型化して、より身近に活用できる機会を大幅に拡大することが期待され、3.達成目標で、革新的小型化を可能にするレーザープラズマ加速技術について、実用化が可能であることを見極められる段階まで研究開発し、幅広い分野における汎用基盤技術に発展させることを目指すということです。
 こちらが、昨年から本委員会で御議論いただいた議論の骨子案、あるいは中間とりまとめも踏まえて設定されたものです。
 2番目の高温超電導線材接合技術に参りまして、これ自身は光・量子ということでは必ずしもないかもしれませんが、2.概要にありますように、冷却コストの高い液体ヘリウムを使用しているところを、液体窒素が利用できるような高温超伝導材について、接合する技術を確立していくといったところです。3.達成目標の4から6行目、「その際、接合部分のナノメートルレベルでの微細組織の状態や特性の解析といった接合の原理解明のための基礎研究」も実施しつつといったところに、本委員会の、特に量子ビームとかですね。聞くところによりますと、線材接合の際に、やっぱり電子のしみ出しが、数十ナノメートルから数ナノメートルというレベルに対して接合していくときに、エンジニアリング的に接合するという意味だけではなくて、接合の原理解明も含めて実施してほしいという期待が込められておりまして、原理解明のための基礎研究においては、量子ビームをはじめとする量子技術が用いられるのではないかと考えています。
 3番目が量子慣性センサー技術でございます。3.達成目標を御覧いただきまして、角速度センサーについて、本委員会でも発表があったとおり、原子干渉やレーザー冷却といった要素技術の向上とともにそれらを組み合わせて、機器の大きさを抑えつつ高感度を得るためのシステム化技術について、POCまで研究開発し、汎用基盤技術に発展させることを目指すというテーマ設定がなされています。
 説明は以上ですが、主に1番目と3番目ともに、本委員会での御議論があったことも踏まえて選定されたと言えるかと思いますので、御紹介させていただきます。
 以上です。
【雨宮主査】  どうもありがとうございます。それでは、御質問、御意見ありましたら、お願いいたします。
【飯田委員】  今ご説明頂いた重点公募の4つのテーマに対して30億円が等分配されるようなイメージでしょうか。
【上田室長】  30億円をまず2つの型で分類されます。その片方の大規模プロジェクト型につきまして、3つのテーマで分類されるということで、こちらも詳細は、公募開始が6月頃ではないかと思いますが、その際にJSTから発表されるということになります。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
【根本委員】  1つ教えていただいてもいいですか。量子慣性センサー技術って、かなり狭いといいますか、分野的にはかなり絞った内容になっているように思うんですけれども、特にここに絞るという背景のようなものというのはあるんでしょうか。
【上田室長】  これは資料2-2の最初の1枚紙を御覧いただいて、大規模プロジェクト型について、2行目にありますように、現在の技術体系を変えて、将来の基盤技術となるような技術テーマと記載があります。あるいは、一番冒頭に書いてありますように、ターゲットをある程度明確にした技術的にチャレンジングな目標で実施していくという制度趣旨がございまして、実はこの制度自体は、量子研究推進室が担当しているわけではなくて、この制度担当部署がまた別にあり、その担当の下で様々な議論や調査が行われた中で、有望技術といった観点から、ほかの分野も含めていろいろ検討した結果、量子慣性センサーが出てきたということで、必ずしもいわゆる量子センサーの領域を広く振興するという意味合いではなくて、あるハイリスクの技術を確立するといった制度に基づくものだということです。
【雨宮主査】  よろしいでしょうか。ほかに御質問、御意見あれば。
 それぞれのテーマにこの委員会が関係している内容が盛り込まれているということかと思います。
 特になければ、次へ進めたいと思います。どうもありがとうございました。次、議題3です。ロードマップ検討について進捗報告ということで、まず初めに事務局の方から。
【上田室長】  先月からロードマップ検討ということで、4つの検討グループが設置されまして、そちらで検討が始まっている状況です。今回、この進捗状況ということで、リエゾン、あるいは事務局より説明して、適宜フィードバックを検討グループに頂けたらと考える次第です。
 なお、検討自体は、初夏までということでお願いしておりまして、現在はまさにブレインストーミングをしているような段階ということも言えるかと思いますので、本日の発表資料は、スクリーンへの提示、及び委員のお手元に置かせてもらうことにして、出来たものをホームページなりに掲載していくということで、今日は検討段階ということで御理解いただければと思います。
 私からの説明は以上です。
【雨宮主査】  それでは、本日御説明いただく資料は、あくまでも途中経過であり、たたき台ということで、まだホームページの掲載はしないという段階であるということです。
 この4つの項目について、今、それぞれリエゾンになっていただいている委員から御説明いただくということをお願いしたいと思います。量子情報処理(主に量子シミュレーション)、量子計測・センシング、極短パルスレーザー、次世代レーザー加工の順番でそれぞれ御説明お願いしたいと思います。量子情報処理に関しては、根本委員の方から御説明お願いいたします。
【根本委員】  それでは、第1回のグループ会合の様子について御報告させていただきます。今出てきています資料、ちょっと読むのは大変だと思うんですけど、まだ内容の方は、各専門の先生方に頂いた内容をまとめた段階なので、大体のところは見ていただければよろしいかと思うんですけれども、超伝導ビット、量子ドットスピン、冷却原子・分子、イオントラップということで、物理的技術の部分については、ほぼしっかりとしたものを頂いてまとめたところです。
 ただ、やはりこういったロードマップで、経済的・社会的なインパクトから見たときにどうなのかというところは、一番分かりやすくするのがよろしいだろうということで、そこの部分をもうちょっと、議論をそこからさかのぼって考えた方がいいのではないのかという意見が全体の流れとしては主になっております。
 細かいところはいろいろあると思うんですけれども、1つ、これからやっていかなきゃならないのは、経済・社会的なインパクトというところから見てどうかということが1つと、それから、ソフトウェア的といいますか、アルゴリズムといったところの議論がまだこれからであるということ。あと、やはり融合的分野なので、用語についてもうちょっと整理をして、全体的に誤解がなく分かりやすいものに仕上げていくようにということで、次のたたき台を準備中というような、そういう状況でございます。
【雨宮主査】  根本委員から途中経過、たたき台について御説明いただきましたけれども、御質問、もしくはコメントがあれば、御発言お願いいたします。
【湯本委員】  よろしいですか。色はそれぞれ、超伝導ビット等が4つですけれども、それぞれ今は多分独立でスタートしているんでしょうけれども、これが融合していくとか、そういう流れというのは見えてくるんですか。
【根本委員】  そうですね。そのとおりで、今はばらばらに技術要素ごとに書いているんですけれども、技術要素ごとに進む度合いが違うということもあって、非常にその辺、5年でできると言っている同じようなものが、10年でまたできるというようなことになったりしていまして、ちょっと紛らわしい部分が確かにあるんですね。そういうところを整理して、もちろんおっしゃるように融合的な技術というのも出てくると思うんですけれども、そういうものも併せて、大体何年ぐらいにこのような模擬実験なり技術的な基盤が出来てくると。それを基にしてこういう科学的インパクトというものが現れるというような統合した書き方に最終的にはしていくというのが全体としての流れになると。
【湯本委員】  最終的な目標といいますか、それは同じになるんだろうけれども、この段階では、消すとか、そういうことはせずに全部書くようなという指示が。
【根本委員】  一応この段階では、出していただいた先生方に全部確認をして、ほかの分野についても全部確認をしていただいて、これを基に統合をしていくというような、そういう進め方になると思います。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
【飯田委員】  4種類の量子ビットに関して区分けされて書かれているという理解でよろしいですね。コメントとしまして、それぞれの量子ビットのメリット、デメリット的なことを何か書いておかれると分かりやすいのかなと思いました。
【根本委員】  ああ、なるほど。ちょっとそこまでの議論はこの間は出ていなかったんですけれども、Q&A的な質問に答えるというような追加的な情報も載せましょうというようなお話は出ていたように思います。そういう対応の仕方はありかなと。
【飯田委員】  例えば真ん中あたりの「非平衡量子開放系が実現される」という記述ですが、シミュレーションが実現できるという話だと思うんですけれども、ほかのビットではできないのかということを素朴に思ってしまいました。各量子ビットそれぞれの得手不得手があるのかなと思って拝見させていただきました。
【根本委員】  そうですね。それは確かにすごくあると思います。そういうものを統合したときに、やっぱり細かいところは落ちてしまうと思うので、皆さんが特に疑問に思うだろうところをQ&A的にまとめるという形がよいのではないかという意見が会合では出されています。
【城石委員】  よろしいでしょうか。例えばスピードについて、人の脳との比較とか、何ゼッタフロップスとか、一般の方が見たときに、出口として、ああすごいなと思うような数字的なものを、差し障りのない範囲でかけないものでしょうか。非常に素朴な質問で恐縮なんですけど。
【根本委員】  それは大変厳しい宿題ですね。この間、アルゴリズムとかアプリケーションの方の議論ができなかったんですね。もうちょっと情報科学的な観点から、例えばAIと比較すると、そのような、要するに人間の脳に比べてどのぐらいできたのかというような指標みたいなものになっていくんだと思うんですけれども、アルゴリズム系のところ、アプリケーション的なところは、次回の会合で整理するということになっているので、一度もう1回そこで様子を見させていただいて。
【城石委員】  楽しみにしています。よく何キュービットとか、いろいろと出てくるんですけれども、ではそれで何ができるのかというのは、なかなか人に説明できずに困っています。どこまで必要なのか、とかもありますよね。書き過ぎてはいけないとは思うんですけど、イメージとしてあると非常にありがたいなと思いました。
【根本委員】  そうですね。
【雨宮主査】  じゃあ。
【飯田委員】  私、生物系の研究もやっていますので、2035年のところで、タンパク質やDNAの複雑系における物性予測が進むというところがちょっと気になりました。もう少し手前の段階でできのではとか思ってしまいましたが、どういったレベルの物性予測のことをおっしゃられているのかお聞きしたいと思いました。例えば、ここでの記述はDNAに限定されていますけれども、核酸RNAとか、PNAと呼ばれるペプチドでできた核酸もありますので、幅広く核酸と書かれた方がいいのかなという印象を受けます。
【根本委員】  そうですね。多分そのとおりだと思うんですけれども、DNAに絞ったということではないと思うんですけれども、ただ、一般には核酸と言われるよりはDNAと言われた方が分かりやすいというように。
【飯田委員】  一般の方や非専門家向けにはこのような書き方の方がよろしいのでしょうか。
【根本委員】  部分もあると思うので、それはまた、どういった文言にした方がいいのかということについては、今後、精査していく予定になっています。
【上田室長】  飯田先生がおっしゃるもう少し先というのはどのような意味でしたでしょうか。
【飯田委員】  逆に前倒しで、もっと早く2030年以前に2020年代のどこかで、物性という観点ではある程度のことができるようになって、更にそれを組み合わせることで、生体機能の設計など、かなり進んだ研究開発が2030年代ではできるのではと感じました。
【根本委員】  そうなんです。ここの社会的なインパクトのところは、ちょっと書き方というか、どれをどこに入れるかというのがまだ議論中で、会合でも、これはここじゃなくてもうちょっと社会的インパクトの方なんじゃないか、もうちょっと手前に社会的インパクトに入るんじゃないかというような議論ももちろんあるんですね。ただ、一々全部言っていると、まだ、いろんなものが皆さん納得するような場所にはないというのが現状だと思いますので、そのあたりはもう少し議論を重ねて、これからまだ動いていくとお考えいただいてよろしいかと思います。
【飯田委員】  はい、分かりました。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。ここの取りまとめはとても難しいところだろうと思います。この委員会では量子情報処理の中には、量子コンピューティング、量子シミュレーション、量子暗号通信が入っています。その中で、今、ここでは、一般社会から見れば、量子通信、暗号、量子コンピューティング以上に理解しにくい、量子シミュレーションという言葉を選んでいます。もともと量子という言葉が分かりにくいこともあるので、もう少し一般社会からみて分かりやすい工夫があった方がいいと思います。いろいろなQ&Aを作るとかされて、用語の統一をされる等、工夫はされるんでしょうけれども。
【根本委員】  そこ、事務局から一言書いていきますか。
【上田室長】  おっしゃるとおりの御指摘はあると思います。検討を開始する際に、この5年、10年ということで見ると、これまでの本委員会の御議論を踏まえると、量子シミュレーションというのは当然スコープに入ってくるというところで、主にシミュレーションといたしました。
 一方、量子コンピューティングについては少し専門的な説明になりますが、そこから派生してまた発展していく部分もあるということで、このスコープ自体で、量子コンピューティングを排除するものではないです。国民に示していくときにどういった言い方がいいかということは確かにあると思いますので、事務局としても宿題にさせてもらえればと思います。
 あと1つ、量子通信の方は、検討を開始する前に御紹介しましたが、総務省のNICTで既にロードマップがあるので、それを本委員会の方で参照するということにするのがいいのではないかという御議論があったと記憶しています。
【上田委員】  あと、ロードマップの精神から言いましても、実現可能性を考えると、まずは、シミュレーションというのは個別のシミュレーションが可能なので、幾つかの量子シミュレーションが実現していくと予想されます。他方、量子コンピューティングになると、今度は、汎用性が要求されるので、難易度が高くなるので、順序としてもやはり最初にシミュレーションがあって、ゴールとしてコンピュテーションがあるようなイメージになるんじゃないかという気がします。
【雨宮主査】  その辺の関係も含めて、量子情報処理という中で、この委員会でカバーしている関係が、分かりやすく、なおかつ、不正確にならないというところが難しいんでしょうけど、また御検討いただければと思います。とても大変な取りまとめだと思いますので、よろしくお願いいたします。
 ほかによろしいでしょうか。
 それでは、量子計測・センシングに係るロードマップということで、リエゾンをしていただいている上田委員、お願いいたします。
【上田委員】  このワークショップでは、量子慣性センサー、スピントロニクスセンサー、量子もつれセンサー、固体量子センサー、量子メカニクス、それから、材料科学という、かなり広い観点から、量子センサー、計測の可能性について、それぞれ専門家の皆様から御議論いただきました。
 当然のことながら、それぞれ、非常に広い範囲の非常に興味深い御提案があったんですけれども、各論的なコメントとしましては、当然のことながら、それぞれの要素技術には、精度においてとか、あるいはダイナミックレンジにおいて、それぞれ得意、不得意とするセンシングの領域がございますと。したがって、それらを相補的にするような要素技術の組み合わせが重要じゃないかという重要な御指摘がありました。
 例えば、磁気センサーで考えますと、TMRとダイヤモンドNVセンターが非常に相補的であるというのが専門家の先生方の一致した御意見でした。
 他方、磁気センサーについては、多くの方が、その応用の分野として、生体分野とか、あるいは化学分析の応用が重要であるという指摘がございました。したがって、生物対象センサーというのは大きな市場になり得るのではないかというコメントがございました。
 他方、ジャイロスコープですね、量子慣性センサーにつきましては、これはGPSを補完する非常に重要な技術としてやはり必須である。つまり、GPSというのは、衛星から電波が届く領域では機能するが、届かない領域に入ったときに機能しないわけですね。そういう意味で、GPSと相補的な技術としてジャイロスコープの研究は非常に重要だということです。
 このいずれの領域においても、例えば国内の産業でいいますと、レーザー企業は各要素技術にそれぞれ大きく貢献できるのではないかという御指摘がありました。
 それで、このまとめ方なんですけれども、センシングというのはそれぞれ非常に特殊化されているので、なかなかキーワード自体も難しいわけですが、そういう意味で、一般の方とか、あるいは企業の方から見て、量子センサーとは何かと、一体何ができるのかということを理解できるような形で最終的にプレゼンテーションできることがとても大切で、そのためにもう少しいろいろ工夫する必要があるのではないかという、こういう包括的なコメントがありました。
 他方、センサーの重要性は非常に明らかなので、そのことが明確に提示できると、実際に産業界との協力が進んで、そこから重要な応用、あるいは産業の芽が出るのではないかという御指摘がありました。
 以上です。
【雨宮主査】  議論のプロセスに関しての御説明と、たたき台を総合的に見ていただいた上で、何か御質問とかコメントとかあればお願いいたします。
【飯田委員】  この上の研究・技術の進展のポツの順番と可能となる計測・センシングのポツの順番というのは対応していると思ってよろしいんでしょうか。
【上田委員】  いや、必ずしも対応していないです。大まかにそれぞれのレンジで、研究レベルのものから表の下に行くと、インパクトに行くものへの、提案がありましたトピックスを、重要なものを適当にピックアップしている段階ですので、必ずしもそれぞれのポツが対応しているとは限りません。
【飯田委員】  例えば2022年までに微量濃度分子(ゼプトモルレベル)が検出可能となるというのは、具体的にはどの技術を使うことを想定されていますでしょうか。
【上田委員】  これは、例えば冷却原子を使いまして、今、レーザー冷却の技術というのは、原子だけではなくて、微粒子を冷却して、それを捕獲することが可能になっていますので、それを使うことによって非常に微量の分子の識別ができるという基礎研究が進んでおりまして、それについてのコメントだと思います。
【飯田委員】  我々のグループでも基礎段階ではありますが、レーザー冷却と類似の原理を用いて、生体分子の一例として、DNAの二重鎖形成の光誘導加速によって、すでにゼプトモルレベルのDNAの検出が液中で実現はできていますので、そういう意味では実用化のタイムスケジュールとしては非常に妥当なのかなと感じました。
【雨宮主査】  どうぞ。
【大森主査代理】  経済・社会インパクトのところで、括弧してタイムスケールが書いてあって、「2025」とか、「5」とか、「5・10」というのは何となく分かるんですけれども、「2023」とか、「24」とか、あと右に行くと、「7年後」とか、「12年後」とか、この細かい数字はどこから来ているんでしょうか。
【上田委員】  これは恐らくそれぞれの専門委員の先生方の見方なので、それぞれやっぱりレンジを設けて提示した方がよいと思います。
【大森主査代理】  なるほど。もうちょっと丸めちゃった方がいいかもしれないですね。
【上田委員】  そうですね。おっしゃるとおりです。ただ、GPS関係でいうと、自動運転についてのロードマップが別途ありまして、それのベンチマークの年代ではないかと推測します。
【大森主査代理】  逆に言うと、それが何でそんなにこうなっているのか。非常に細かい。
【上田委員】  自動運転でいいますと、それぞれレベル1から4までございますけれども、それが何年までにできるというロードマップがございます。ただ、それを引用しているんじゃないかと思います。
【根本委員】  2017というのが中途半端だから、残りが12になっちゃったんじゃないですか。ですよね、きっと。できたときから、時期がずれれば、当然中途半端な数になるので、しょうがない。
【上田委員】  最終的には御指摘のように丸めた方がいいと思います。
【根本委員】  1つだけ教えていただきたいんですけれども、この書き方なんですけれども、5年後とか何年後というのは、どこから5年? 要するに、研究・技術の進展のところから5年後になるのか。何年にと書いてあるのは分かりやすいんですけれども、何年後というのは、どこから何年、今から何年後じゃないだろうというふうに思われるものもあるので、そこを明らかにしていただきたいです。
【上田委員】  これは恐らく、今から何年後ということを想定されたんだと思います。
【根本委員】  ただ、これ、一番最後のところの一番上の例えば「認知科学解明へのつながり」で、5~10年後になっているんですが、これ、矢印をたどっていくと、これの研究・技術の進展のところは、25年~28年に。
【上田委員】  この矢印も、もう少し前後に点線がありますので、明確に設定することは難しいと思います。
【根本委員】  今からと思ってよろしいですか。
【上田委員】  ええ、そうだと思います。
【雨宮主査】  そういうこともあるので、何年ごろというふうな形で、起点を今からというよりも、20××年ごろという形で統一された方がいいと思います。
【上田室長】  4つのグループを全体的に量子研究推進室の方で横断的にも見させてもらっておりますので、事務局からもサポートしたいと思います。
【雨宮主査】  どうぞ。
【城石委員】  これはちょっとまた違った面でのご質問です。このテーマだけの特徴なのかもしれないんですけれども、テーマで取り上げておられる生体とGPSみたいなものだったら、生体だったらこういうところにこのぐらいの磁場が出ているとか、それを何年ごろに計れますよとか、あるいは、遺伝子ならDNAでもいいんですけれども、それがこういう性質があって、それが見れるようになるんですよとか・・。これらができるというと、すごく身近で、わかり易いですよね。
【上田委員】  具体的。
【城石委員】  はい。その具体的なイメージとして、この時期にこういうことができるんだという漫画か何かが描いてあると、これはものすごく分かりやすいかなと思うんです。例えば、人間の体の絵とか、DNAとか何かが書いてあって、それがこの技術で見えるんですよとか、脳の磁場がちょこちょこっと出ているのが見えるとか、何かそういう絵があると、一般の方にすごく分かりやすくなるのではないかなと思います。
【上田委員】  それは全くおっしゃるとおりで、そういう御指摘がありました。こういう1枚ものよりも、1枚ものの絵で、4つぐらい大きな絵があって、それぞれ、大きくこういうことができるということを象徴的に出した方がずっと分かりやすいという御指摘がありました。
【城石委員】  2025年はこれができるようになるとかですね。宿題の出し方とかまとめ方にもよると思うんですけど、少なくともそれがあると良いのではないかと思いました。逆に言うと、これを基にすれば、量子全体を引っ張っていただけるぐらい分かりやすい報告にできるのでは、という気もしました。
【上田委員】  象徴的な絵ですよね。
【城石委員】  そうなんです。分かりやすいですよね。このまとめ方でない別のロードマップでも、後でイメージをくっつけていただけるといいのかな、と思いました。
【上田委員】  これは実際に御提案があったんですけど、このロードマップとは別に、そういう絵的なものを1枚用意できると、更に伝えやすいんじゃないかという御指摘はありました。
【城石委員】  実際は大変だと思います。予算を少し出していただいて、専門家の方に絵を描いてもらわないといけない場合もあるかとも思います。
【上田室長】  使える絵を使うということだと思います。
【上田委員】  確かに絵を作る価値はあると思いますね。情報量はずっとあるので。
【城石委員】  多分、このテーマは標準になると思うんですね。こうすれば、ものすごくおもしろくなるとの。
【上田委員】  おっしゃるとおり。恐らくこれ、それぞれの分野でそういう絵が1枚ずつあるとよいと思います。
【雨宮主査】  そうですね。
【上田室長】  事務局としても、各検討グループに担当1人体制をとっておりまして、各担当が頑張ってくれると思います。
【城石委員】  すいません。余計なことを申し上げたかも知れませんが。
【雨宮主査】  確かにロードマップですから、年度の時間軸が入っていること、縦の4つの項目が入っている。これを基本としながらも、それぞれの分野で一番分かりやすい見せ方のプレゼンとセットにするという、ある自由度はあっていいのかなという気がします。全部同一のフォーマットだと、なかなか絵を描きにくい分野もあるでしょうし、是非引き続き、検討して頂ければと思います。
 ほかにいかがでしょうか、計測・センシングに関して。
 それでは、次、極短パルスレーザーに係るロードマップということで、今日はリエゾンの岩井委員が御欠席ですので、事務局の方から代わりに御説明お願いいたします。
【吉川補佐】  先ほど上田室長から説明のあった担当の1人です。極短パルスレーザーを担当しています吉川です。
 5月22日に極短パルスレーザーに係るロードマップ検討グループは一度会合を開きました。全員出席していただきまして、議論いたしました。グループの中には、光源開発と化学反応、材料系の先生方がいらっしゃいますので、事前にこのロードマップのたたき台のフォーマットに素案として何人かの先生に入れていただいて、それを合成した形のものを作って議論いたしました。
 まず左上にありますけれども、種類としては2種類考えるのがいいのではないかと。極短パルスレーザーで、高強度型ですね。こちらは、強い光で物質の性質を変化させることに強みがある、強みといいますか、そちらの方に有利であろうと。あともう一つが、高繰り返し型ということで、物質中の電子状態を精密に計測するということに主に使えるんじゃないかということで、この中の色分けですけれども、黒字は両方に関係しているものであろうと。赤字は高強度型、青字は高繰り返し型ですね。ちょっとある先生からも指摘があったんですが、技術が進んでいく中で、この2つの境目がなかなか分かりにくくなることもあるだろうということで、今の時点の色付けは、現時点版ということで、今後精査は必要だと思っています。
 会合でありましたのは、これまでは、孤立系(気体)ですね。気体を中心とした研究のために極短パルスレーザーが使われていたけれども、今後はそれを、液体であるとか、生体も含め、固体、そちらの方に拡大をしていくということになっていくだろうということです。
 赤字の方ですが、光源、ここは性能ですね、光源の諸元を書いていて、赤いものについては、どんどん高強度型にしていくんですけれども、パルス幅もどんどん下げていくと。青字の方は、高繰り返し型ということで、特に繰り返しの周波数を上げていくという流れになっています。
 波長についてですが、特に材料、固体系の先生の方から、波長の拡大というのも固体の研究ですね、例えばメモリー演算を光でコントロールすることを視野に入れるということを考えると、波長の幅を広げていく必要があるんじゃないかと。これ、ちょっと範囲が広いですけれども、1つのものでそれを全部カバーするという意味ではなくて、これぐらいの領域をカバーする複数のものができればいいなということで意見がございました。
 こちらについても、なかなか用途を特定しないとパラメータを決めるのも難しいという話がありまして、経済・社会インパクト、ここをどういうものを出口に分かりやすいものが書けるかというのを今いろいろと検討しているところです。
 例えばこの中では、磁性とか超伝導材料を使った工業製品、モーター、液晶メモリーの高性能化につなげることできるんじゃないかであるとか、高効率、大容量、超高速情報交換・情報処理システムを支える基礎デバイス開発が可能になるのではないかと。そのためには、研究として、磁性とか、あと誘電相転移のダイナミックが観測可能になるであろうと。そのために必要な光源というのはこういうものだという流れで作っていこうと考えています。
 更に10年先については、さっきここら辺は固体のことが書いてありますけれども、更にプラスで生体・化学関係ですね、こちらについても進んでいくんじゃないかということで整理をしようとしているところです。
 極短パルスレーザーに関しては、留意事項の中に、「ある時点毎に系を外部研究者がどのように利用できることになるかといった利用環境についても考察する」ということで、ちょっとまだ足りない。例えば5年後には外部利用者が容易に使用できるビームラインが構築できるのではないか。それが10年後には、更に各大学等の施設に使えるものとして普及する可能性もあると。このあたりは全体的に精査は必要だとは思っておりますけれども、そういう観点でも検討を進めようと考えています。
 以上です。
【雨宮主査】  どうもありがとうございます。それでは、御質問、御意見お願いします。
【上田委員】  全てこの技術が、実際にはレーザーを作っていかないといけないと思うんですけれども、それの産業化というんですか、我が国のレーザーの産業の育成という観点でどういうふうにつながっていくかという視点とかがもしありましたら。
【吉川補佐】  それは実際にできるかどうかはたとえとして、例えばアト秒のパルスレーザーを、小型のものが作れて、それが商用化されるとか、そういうような観点という。
【上田委員】  そうですね。例えば、私の理解では、今、レーザーというのは、例えばドイツとかアメリカに企業がありまして、そこから買っているわけですね。基礎的な研究を進めると同時に、それを開発化して、それを製品化するというよい循環があります。逆にそういう産業が国内にあるということが、更にこういう目的に特化した開発を産業界と協力して進めるとかということがあると、より分野が強化されていくんじゃないかなという気がします。そういう観点からの御議論がもしありましたら、教えていただければと思います。
【吉川補佐】  前回の会合の中では、素案として情報を頂いた先生の中には、レーザー光源ですね、それが小型化されて商用化になるということはあったんですけれども、この議論の中では、ちょっとそれはまず一旦置いてしまったところがありまして、今、上田先生が言われた観点も、これから織り込んだ形で、そちらの方も深めていければと思います。
【大森主査代理】  真ん中の一番下に光・電子産業の雇用の創出と書いてありますよね。議論があったんじゃないですか。
【吉川補佐】  はい。再創出という議論はありました。つながるはずだという議論はありました。ただ、そこで、具体的に何かというところまでは詰めていないので、今言われたレーザーの光源の話もここに入るかなと。私の認識では、ここはデバイス関係のところが中心かなと思ったんですけど、レーザー光源という観点、ここに入れていただきます。
【上田委員】  やっぱりそういう産業を国内に持っていることの重要性って、大森先生とか、湯本先生とか、いろいろよくご存じなんじゃないでしょうか。
【湯本委員】  そうですね。やはり今、この極短パルスレーザーはアト秒に近い領域になると、研究室の中でとまっちゃっていますので、それはやっぱり外に出すような施策があると非常にいいなと思いますね。
 だから、今、大森先生から言われた、光・電子産業。電子産業と言われると、もう少し広い意味なのかなという気もするんですけどね。いずれにしろ、こういう観点で、少し議論をしていただければ、例えばベンチャーとかですね。欧米企業、やっぱりベンチャーからスタートしている企業が多いので、この分野では、これを1つの題材といいましょうか、それで新しい産業創出につながるようなモデルケースを作るとか、そんなこともいいんじゃないかなという気がします。
【大森主査代理】  光拠点事業というのはもともとそういうモチベーションで始められた事業だったんですよね。その成果の1つとして、さっき室長から御紹介いただいた野田先生のフォトニック結晶レーザーとか、そういったものが更に発展して産業に結び付く段階まで来ていると。そういった背景はあります。なので、更にそれを進めるというのは正しい方向性かなというふうに私も思います。
【雨宮主査】  どうぞ。
【飯田委員】  経済・社会インパクトのところで、真ん中と後半のところで、創薬技術の確立や、創薬・化学等に係る製造業の飛躍的成長ということが書かれていますが、これらの記述がどのように上の技術とつながるかが理解できなかったので、御教示いただきたいです。
【吉川補佐】  すいません、ちょっとここは、真ん中の部分に該当する記述を入れていないというところだと思います。
【上田室長】  推測ですが、1つ上にさかのぼった赤字で「化学反応(電子移動)追跡による」云々とか、その下の細胞・小器官とか、こういったところが関連技術だと思います。
 したがって、ここでいう製造業というのは、創薬・化学産業の飛躍的成長ということの記述かなと推測します。
【飯田委員】  アト秒、フェムト秒オーダーでの化学反応を追跡することで、薬品の材料になるような化学物質などの反応を追跡する、そういった観点と理解してよいでしょうか。
【上田室長】  ということです。
【大森主査代理】  もう少し専門的な観点からいくと、今、化学反応研究って、例えば5フェムト秒よりも長いところぐらいしかちゃんと見れていないんですけど、そのタイムスケールは原子核の動きなんですよね。だから今の我々の化学反応の理解というのは、原子核の動きなんですけど、実際は、光というのは電場ですから、電場を物質に掛けると、電子が軽いので、最初に動いて、その電子の配置が変わってできる電場によって、ポジティブなチャージを持った原子核が動いて、化学結合が組み換わると。
【飯田委員】  光で励起された電子が原子核をドラッグすることで化学反応を誘発するということですね。
【大森主査代理】  そう。ということではないかというふうにみんな推測しているんですが、それが見れていないんですね。5フェムト秒より短いところが見れるようになると、5フェムト秒ぐらいでもいいんですけどね、化学反応そのものを支配しているもともとの電子の動きというのが見れるようになって、よりメカニズムをよく理解できて、その理解に基づいてより高度な制御ができるようになるだろうという希望をこういう人たちは持っているんです。そういう背景があります。
【飯田委員】  分かりました。
【城石委員】  私も疑問に思っていて、今、大森先生がおっしゃってくださったようなことがここに書いてあるべきだと思うんですよね。化学反応とか、原子、電子とか、そういうところをアト秒で見たり、制御できるようになるというのが量子の価値ではないかと思うんです。図で、左と右の年代の内容はわりと感動するんですけど、真ん中の年代の内容は私の専門に近いこともあって、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、余り感動し切れませんでした。今言っていただいたような非常に短い時間軸の技術で、従来とは全く違った時間軸のことができる、思いもつかなかったことが量子のこのパルスレーザーでできる、というイメージをここに書いていただいた方がありがたいかなと。
【雨宮主査】  どうぞ。
【飯田委員】  前回フォトニック結晶の議論のときに、フォトニック結晶レーザーでフェムト秒クラスのコンパクトな超短パルスレーザー光源が実現可能かということを御質問差し上げましたが、そういう観点で、小型化に関してはロードマップに書く必要はないでしょうか。波長とパルス幅と繰り返しだけが中心的事項として書かれていますが、筐体のサイズが小さくなることで応用範囲が格段に広がると思いますのでご検討頂ければと思います。
【城石委員】 小型化とおっしゃっていたので、私もそれを探してみました。図の右の下には、科学技術インパクトとして、テーブルトップ放射線治療の基盤とか書いてありますよね。そういうことだと思っていました。
【飯田委員】  一足飛びにここまで行けるわけではなくて、やはり段階的に小型化に向けた技術的な問題を克服していかないといけないのではと思っています。
【吉川補佐】  おっしゃるとおり、真ん中ですね、ここのところには小型化に係る記述が書いておりますので、こちらのここですね、これにつながる形で、こちらにも、じゃあ、それまでにどれくらい技術としては進展するのかというところも念頭に置いて修正をしていきたいと思います。
【雨宮主査】  あと、赤が高強度型で、ブルーが高繰り返し型と。高繰り返し型については、繰り返しが書いてあるから分かるんですが、高強度型については、強度についての記述が全くないので、どういう物理量で表現するか、何か決めていただけると分かりやすいと思います。
【吉川補佐】  分かりました。ありがとうございます。
【大森主査代理】  よろしいですか。ちょっと気になったことがあるんですけど、一番左の下の青いところに、がんの予防につながるとか、あと、一番右の一番下の、今御指摘のあったテーブルトップのイオン照射治療みたいな、医療に関連する項目が幾つか出ていますけど、これって、検討会のメンバーに医学関係の方はおられましたっけ。
【上田室長】  いや、今のところいないです。
【大森主査代理】  私も気づいていなかったんですけど、専門委員的な立場でもいいので、入っていただいた方が多分安全なんじゃないですかね。
【上田室長】  外部の知見も適宜活用して進めてもらおうと思っていますが、現状はナイーブな表現も含めて全部そのまま書いてあり、最終的には、このようなことを書くにしても、きちんと事務局なり外部専門家なりに確認をとっていこうと思います。
【大森主査代理】  オーソライズされた意見を入れる必要があるような気がします。
【上田室長】  一つ一つ確認しながら書かなくてはいけないとは思っております。
【雨宮主査】  よろしいでしょうか。それでは、次に進みたいと思います。次世代レーザー加工のロードマップ検討に関して、これはリエゾンをしていただいている湯本委員からお願いいたします。
【湯本委員】  では、次世代レーザー加工のロードマップということで報告させていただきます。次世代レーザーというのは、期間というか、ターゲットする時期は割合早いということもありまして、まず我々は、右下の水色の矢印といいますか、箱に「フルデジタルレーザ加工機」という、こういうターゲットを最初設定しました。その前に、「デジタル援用レーザー加工機」という、その1つ前の、人間がある程度関わったレーザー加工機があるだろうと。という、この2つのターゲットを設定して、更にそれを実現するための必要となる技術を真ん中の2つの箱のところですね、ここに数値を書いたと。それを実現するには、じゃあ、どういう技術が必要になってくるかと。ターゲットを設定して、今必要となる技術を書き出していこうと、こういうやり方をしました。
 ここでも、加工といえども幾つかあります。例えばこの写真に書きましたように、マクロ加工、マイクロ加工、露光加工。露光加工というのは初めて聞かれる人も多いかと思いますけれども、これはEUV露光機、露光技術を指しています。ですから、10ナノとか、もっと短いゲート幅で、ゲート長で切ると、こういうものです。
 それで、2つ、フルデジタルレーザ加工機、それからデジタル援用レーザー加工機とありますけれども、イメージとすると、フルデジタルは、材料とCADデータを入れてやれば、あとは機械が自動的にやる。ある意味では車の自動運転みたいな、そういうイメージだと思ってください。それから、緑色のデジタル援用レーザー加工機は、これはある程度条件出しを人間が手伝ってあげると、こういう加工機だと。
 理想的には、材料を指定して、作りたいCADデータをポンと入れてやると、自動的にどんどん作ってもらえると。そういう最終的なターゲットをここでは設定しています。
 マクロ、マイクロ、露光という、この3つのそれぞれの加工に対して、真ん中の箱のところで、最初の段階では、それぞれ10ミクロン、100ナノ、10ナノという、こういう精度で加工が必要になるはずだということで数値を設定しました。当然ここも、材料の厚さとか、いろいろあるんですけれども、それを言い出すと大変なことになりますので、代表的な数値ということで、目標として、ここをまとめて丸めた数字を書いております。
 その次のフェーズとして、10ミクロンを1ミクロンに1桁上げる。それから、同様に、100ナノを10ナノ、10ナノを1ナノ、それぞれ1桁ずつ改善していくと。そのためには何が必要かということで、上の箱にまた書くというのを各委員に提示して、更に、ここに、じゃあ、必要になるのは何かということをどんどん洗い出して、ここに追記してもらうという方法をとっております。
 そういうことで、やり方としますと、水色、それから緑のターゲット、あるいはマイルストーンを設定して、今、何をすべきか、何があって、何が足りないのか、そこを洗おうと、来月の中旬ぐらいまでに洗い出していこうと、こういうやり方をしております。
 やり方等については以上です。
【雨宮主査】  どうもありがとうございます。それでは、何か御質問、御意見あれば。どうぞ。
【大森主査代理】  経済・社会インパクトのところで、デジタル援用レーザー加工機及びフルデジタルレーザ加工機ができるようになるということを書いているんですけど、これができると今までできなかった何ができるようになるのかということを記述されないと、御専門の皆さんはお分かりになると思うんですけれども、私みたいな素人は、多分すごいんだろうなと思うんですけれども、何ができるのか知りたいなと。
【湯本委員】  1つは、さっき、車の自動運転というイメージで一言言いましたけれども、もう少し具体的に。
【大森主査代理】  そうですね。
【湯本委員】  今、世の中の流れとすると、設計する人と作る人ってどんどん世界をまたがって、違う場所になってきているんですね。それがIoTとか、そういう時代にもなってきます。そうすると、ものづくりというのは、世界どこでもよくなってきている。何しろ作りたい人が、アメリカにいようが、日本にいようが、ヨーロッパにいようが、ポーンとCADデータを送ってやれば、材料は向こうになきゃいけないんですけど、すぐにそのまま送り返される、そういうイメージを想定していますね。
【大森主査代理】  それができるようになると、これまでできていなかったどういうことができるようになるのかというのを書いた方がいいと思うんですけど。
【湯本委員】  分かりました。時間がものすごく短くなります。コストも下がりますと、こういう話です。
【大森主査代理】  例えばどのぐらい下がるかとかね。
【湯本委員】  そうですね。はい。
【雨宮主査】  どうぞ。
【上田委員】  これ見ると、マクロで100ミクロンなんですけど、例えば1メートルレベルとか、本当にマクロですね。つまり、このレーザー加工というもののマーケットを考えたときに、どの長さサイズのところに一番大きなマーケットがあるのでしょうか。それが1つ目の質問です。
 2つ目は、必ずしもマーケットは大きくないですけど、付加価値が最も高そうなところはどこでしょうか。
【湯本委員】  それは、1つは、例えば大きいというところは、マクロに入っているんですけど、切断なんですね。切断は、例えばどっちかというと大きいというより、厚さの方が効いてくる。例えば今は2、3センチのものが10センチ、30センチになるとか、そういうスケールはあるんですけども、そういう意味では、この100ミクロンというのは、今の数センチの世界を1桁厚くしてもこのぐらいで切りたいというのはあるわけです。だから、当然、パラメータものすごくあるんですよ、この裏には。それを全部、やっぱりそこまで一々書いちゃうと大変だから、分かりやすい数値ということで111というような、そういう形にまとめています。
 多分今はマクロの市場が一番多いはずです。これからマイクロになってくるはずです。5年後には、市場とすると、露光加工という、要するにEUVの世界がぐっと伸びてくる可能性はある。これができないと、例えば今日、上田室長からもありましたけど、新型SIPで処理デバイスなんていうのがありました。あれは多分EUVで作ったCPUとか、そういう世界になってくるんですね。今、それ出来ていないんですね。そういう形で新しい世界につながっていくと。将来は、例えば加工機の中に現在のスパコンが載るぐらいのものが多分目標設定にされるんじゃないかと。
【上田委員】  やっぱりこれは、どの領域での技術を磨くべきかという、戦略的な視点がとりわけ要求される気がしますよね。本当に必要なところには集中的に投資して開拓すべきですし、ある意味、この領域は捨ててもいいとか、そういうことすらあってもいいんじゃないかという気がします。じゃあ、やっぱり小さな領域が重要になりそうですか。
【湯本委員】  小さな領域がこれからが伸びていくだろうという。
【根本委員】  短いんですけど、すいません。加工精度というのをちょっと教えていただきたいんですけど、これは精度、この正確さで切るということと、あとラフネスということはどういう?
【湯本委員】  表面の粗さですよね、切った断面の。結局それをCADのデータと実際に切ったセンターの位置、切る幅もありますから、そのずれもありますよね。それから、今度はラフネスもあるわけです。本来は、ラフネスという話は、物によって、使用目的によってみんな変わってくるんですよ。
【根本委員】  そうですね、確かに。
【湯本委員】  だから、そこまでここに反映するというのは非常に難しい。それはある意味でお客さんが決める話になっちゃう。
【根本委員】  でも、切るのもそうですけど、加工ということになってくると、そういうものは非常に重要になってくる可能性というのはあると思うんですけど。
【湯本委員】  そのラフネスを上げるためには、例えば今、熱で切っているのをやめようとか、非熱的に切ろうと。そうすると、その裏に必要となる物理が求められてくるわけです。そういうのをどんどん下に、今何をするかというところにつなげていきたいということなんです。
【雨宮主査】  はい、飯田委員。
【飯田委員】  研究・技術の進展のところで、物理的なメカニズムや光源技術があまり詳しく書かれていませんが、超短パルスや近接場光源を利用した方法なども含まれるのでしょうか。
【湯本委員】  今の我々のスタンスは、これを実現するために必要なものを全部洗い出そうということですので、場合によってはテラヘルツとか、そういうことも入ってくると思っています。
【飯田委員】  現時点ではあえて細かいことは書かずに提示をされたということですね。
【湯本委員】  逆に、ターゲットからバックキャストでやろうと。
【飯田委員】  もう1点なんですけど、可能となる技術のところで、ナノ加工ではなくマイクロ加工という表現を使われたのは、何か意図があるのでしょうか?
【湯本委員】  これは、今、多分業界用語になっていると思います。
【雨宮主査】  はい、城石委員。
【城石委員】  時間もないので恐縮なんですけど、2点宜しいでしょうか。1つは、前のロードマップとの関係性。同じレーザーのテーマで、2つを並べてみると、違いがちょっと見えにくいなと感じました。さっき御議論いただいたように、例えばパワーが重要なのか、何がこれのテーマの本質なのかというのは、ロードマップ上に記載された方がよろしいのではないかなと思いました、というのが1点です。
【湯本委員】  そうですね。
【城石委員】  もう1点は、さっき大森先生もおっしゃったんですけど、今、ものづくりで、ある会社が靴を作るのにレーザーでやるらしいんですよ。それでやると、全部きちっと切れて、焦げないし、それでこれまで合計で1億足か何か作っているらしいんですね。ものすごく効率がよくて、端材も少ないというので。やっぱりこれじゃないとできない、例えばガラスも切れるしとか、いろいろとやっておられますよね。だから、今までにない加工がこれでできるはずなんですよね。波長が短いのも大事だと思うんですけれども、一つ前のフィジックスの問題と絡むんですけれども、この技術じゃないとできないことがほかにも出てくるよ、というイメージがここにあると非常に分かりやすくならないかなと思いました。
【湯本委員】  多分靴は、3Dプリンターじゃなくて?
【城石委員】  切断するんですって。
【湯本委員】  切るんですか。
【城石委員】  そうなんです。3Dプリンターもあるんですけど、私が気になったのは、EMS(電子機器の受託製造サービス)って、電気部品だけ作っている会社かと思っていたら、今はそれだけじゃなくて、レーザーで加工して靴を作っているそうです。それでもうびっくりしちゃったんですよ。それは先生がおっしゃったように、深く切るとか、違うパラメータが必要で、そのための特徴って、パワーなのか何なのかよく分からないんですけど、非常にきれいにできるようです。EMSがそういうのをやり始めているらしいので、まさに製造革命なんですけど。これから量子でいろんなことができるだろうなと思っていて、何かそれがにじんでくるとよろしいかなと思いました。
【雨宮主査】  まだあるかと思いますが、時間も押してきたので、各検討グループにおいては、今日出た意見を参考にして頂き、ロードマップの検討を進めていただければと思います。リエゾンの先生方、よろしくお願いいたします。
 それでは、次の議題4の方に入っていきたいと思います。推進方策の検討についてということで、事務局よりまず趣旨説明をお願いいたします。
【上田室長】  2月に中間とりまとめをしていただいて、その後議論も積み重ねがあり、こういったロードマップの検討も進むということで、そろそろ次の報告といいますか、推進方策そのものの御議論に入っていただくのがよろしいかと思いまして、今日は御議論のためのたたき台を事務局で作成いたしましたので、それを説明します。それを基に様々な議論を今日頂ければと思うところです。具体的には橋本から説明します。
【橋本補佐】  私の方からたたき台の御説明をさせていただきます。先ほど上田の方から御説明させていただいたように、そろそろ推進方策の具体化の議論を頂ければと思っておりまして、事務局でたたき台を作らせていただきました。中間とりまとめの中で大事なキーワードを幾つか頂いておりましたので、そのキーワードを基に、具体的な推進方策として例えばこういう形が考えられるのではないかということを1つ案としてまとめたものがこちらのたたき台でございます。今日、この場で決めようとか、そういうものではないので、自由闊達に御議論いただければと思っております。
 たたき台についてどのようなイメージで作ったのかというのを最初に御説明します。資料4の一番上の※のところです。今、中間とりまとめは第4節まであるわけですけれども、中間とりまとめの後半、第3節と第4節は、今後、推進方策の検討に当たっての方向性として書かれている部分なので、そこの部分を差し替えて、新たな推進方策としてまとめの文章を最後にくっつけるというようなイメージで考えております。
 今回作ったたたき台は、黒字と赤字の部分がありますが、黒字の部分については、基本的には中間とりまとめのときにどこかしらに書かれている記載をとってきたもので、今回、再構成してたたき台を作るに当たり、事務局の方で加筆したところが赤字となっております。
 このたたき台、順番に説明したいと思いますが、まず最初3段落ほどは、量子科学技術とはどういうものなのかという位置付けを、中間とりまとめが書いたことをもう一度書いておりますけれども、1つは、第5期基本計画で超スマート社会の実現に向けて、新たな価値創出のコアとなる強みを有する基盤技術の1つと位置付けられているということ。
 それから、2つ目の段落のところでは、量子科学技術というものが、高度な情報処理から、材料、ものづくり、医療まで広範な応用があり、非連続に課題を解決する大きな可能性があるということや、今後、21世紀のあらゆる分野の科学技術進展と我が国の競争力強化の根源・プラットフォームとなり得るといったようなこと。
 それから、3段落目ですけれども、米欧中で産学官の研究開発投資や産業応用の模索がこの数年で拡大する中、官民投資を拡大し、他国の追随に対して、簡単にコモディティ化できない知識集約度の高い技術体系を構築することが重要であるといったような形で最初冒頭をまとめております。
 その後、量子科学技術の推進に当たって考慮すべき点ということで2つほど、中間とりまとめで頂いたキーワードをまとめております。1は、我が国独自の視点やアイデアが重要であるということ。それから、2が、突出した点と点をつなぎ、若手を含めた多様なアイデアを基に新しい領域を拓くハイブリッド型の研究推進が重要であること。こういうキーワードをここにまとめております。
 ハイブリッド型の研究推進の方につきましては、中間とりまとめのときの文章を改めて見たときに、突出した点というのは技術に関することが中心に書かれておったんですけれども、もうちょっと社会的なことと、社会と技術の関わりというのをもうちょっと意識して書いた方がいいかなと思い、我が国の社会的な状況というのを赤字で加筆しております。
 我が国が、いずれ世界の国々が直面することとなる少子高齢化や資源・エネルギー問題など、そういった課題に真っ先に取り組まざるを得ない「課題先進国」という立場にありまして、こういう課題を世界に先駆けて解決することができれば、新たな成長分野で一躍世界のトップに躍り出るチャンスがあるということで、量子科学技術は、もともと我が国が持っている技術的な意味での強みだけでなく、こういった課題先進国という立場、そういったことも含めて、突出した点と点をつないで競争力を生み出す組み合わせがほぼ無限にあって、若手を含めた多様な研究者の多様なアイデアを基に新しい領域・成長分野を拓くようなハイブリッド型の研究推進による競争力強化が強く望まれると、こういうふうにしてみてはどうかということで加筆したものです。
 その次ですけれども、「重点的に推進すべき研究開発の取り組み」というところで、ここでは、中間とりまとめの中で、「ネットワーク型研究拠点」というキーワード、それから、「トップダウン的なアプローチ」というキーワードを頂いておりましたので、そこの部分をまとめてみたものでございます。
 「ネットワーク型研究拠点を通じたSociety 5.0関連技術の横断的強化」というようなタイトルにしておりますけれども、この1の中で、アとして「トップダウン的なアプローチによる研究開発推進」、それから、次のページになりますけれども、イとして「量子科学技術を支える基盤技術の長期的視点に立った研究開発の推進」と、この2つを1のネットワーク型研究拠点というものの中に入れるような構成で文章を作成しております。
 まず1の冒頭3段落ですけれども、ここの3段落のところでは、まず、量子科学技術というものがどういうものかという位置付けを改めて書いておりまして、この推進方策全体の冒頭よりもう少し詳しく書いておりまして、超スマート社会を世界に先駆けて実現するための、新たな価値創出のコアとなる強みを有する基盤技術であり、革新的な計測技術、情報・エネルギー伝達技術、加工技術など、様々なコンポーネントの高度化によりシステムの差別化につながるものであると。
 こういうものを推進する上では、第2段落ですけれども、理論、基礎物理、材料、物性、デバイス計測、分析化学などの異なる分野、学術及び産業といった異なる技術段階での対話、融合及び流動を推進するため、ネットワーク型研究拠点を形成していくことが適切であると。こういったことを中間とりまとめで頂いておりました。
 これらを踏まえて、以下、アとイ、2つの観点を踏まえてネットワーク型研究拠点を通じた研究開発を推進していくことにより、Society 5.0関連技術を横断的に強化していくことが重要であるとしております。
 アの「トップダウン的なアプローチ研究開発推進」ですけれども、赤字で加筆しております。ここの部分では、まず、トップダウン的なアプローチが必要な領域としては、科学技術・経済・社会に与えるインパクトが相当程度期待されるとともに、中長期にわたるインパクトを見据えつつも、5から10年で国民の目に見える進展が期待される研究・技術領域を対象とすることが適切と考えられるのではないかと。
 この本委員会で、時間軸とともに研究・技術がどう進展して何が実現されるかなどを示すロードマップを作成しておりますが、ネットワーク型研究拠点においては、これらの研究・技術領域の研究開発を明確な研究開発目標等の設定及びきめ細かな進捗管理により行う、いわばフラッグシッププロジェクトを中核として推進するというふうにしてはどうかということで書いております。
 こういうフラッグシッププロジェクトというものを中核として推進しつつ、これらを支え、様々な挑戦的課題に取り組むことで持続的にサイエンスエクセレンスの創出を図る基礎研究及び基盤研究を併せて取り組むということが重要であるというふうにしております。
 アのところの最後のところでは、フラッグシッププロジェクトというものと基礎・基盤研究のインタラクションについて書いておりまして、フラッグシッププロジェクトで得られる知見が基礎研究及び基盤研究に人材育成面も含めよい刺激や影響を与えるということもありますでしょうし、逆に基礎研究及び基盤研究で得られる知見が人材育成面も含めフラッグシッププロジェクトに好影響を与えるということもあろうと考えておりまして、相乗効果が見込まれるのではないかと、このように考えているところです。
 アの最後のところに1、2、3、4と、今、ロードマップを策定作業を頂いている部分書いておりますけれども、今、私どもがイメージしているのが、ここの部分、ロードマップの作業が進んで、ロードマップが出来ましたら、それに基づいてここのあたりの記載をもうちょっと充実させるというようなイメージかなというところを考えております。
 イの方ですけれども、アのトップダウン的なアプローチのものとは別に、基盤技術というものは、長期的視点に立って研究開発を推進していくことが重要だろうということで、イを書いておりまして、例えば、中間とりまとめのときに光学・フォトニクス技術がそういうものだということを書いておったわけですけれども、改めて考えてみると、加速器・計測技術などもそういうものではないかと思ったので、赤字で追記しております。
 ここまでが1として、ネットワーク型研究拠点という形で進めるという形ではどうだろうかと考えている部分ですけれども、2のところは、ネットワーク型研究拠点に加えて、戦略的な基礎研究というものを併せて進めることが必要であろうということで、赤字で加筆しておりまして、例えばですけれども、どういう研究領域がこういう戦略的な基礎研究に適しているかというところで、具体的な例示としては、本委員会でも議論がありました量子生命科学といった分野ですとか、あと、前回の委員会でJSTのCRDSからのプロポーザルの報告がありましたけれども、トポロジカル量子といった分野も注目されておりますので、こういった研究領域が考えられるのではないかと。
 ただ、これらに限らず、量子科学技術の進展ですとか国際動向を踏まえて、適時適切に研究領域を設定して、戦略的な基礎研究を継続的に推進することが重要ではないかとしているところです。
 これ以降が、「オープンサイエンスの推進」、「人材育成」、「オープンイノベーションの推進」、「知的財産・標準化戦略」、「社会との関係深化」という項目を、これは中間とりまとめのときの文章からそのままこちらに掲載しておりますけれども、まとめておりまして、全体としては、こういった形が1つ推進方策の構成として考えられるのかなというところでたたき台として提案させていただいたというところです。
 ただ、冒頭にも申しましたように、別に今日これをこの場で決めようというものではありませんので、自由に実際に御議論いただきまして、御意見を頂ければと思います。
 例えばですけれども、ネットワーク型研究拠点というところで、私どもの想像で、フラッグシッププロジェクトというものを中核にするといいのではないかと。フラッグシッププロジェクトと基礎研究と基盤研究と併せてやることで、その間のインタラクションもあるのではないかということを書いてみたところであるんですけれども、そういう攻め方が適切なのかどうかといったところ、特にネットワーク型というところでどういうメリットがあるのかといったところをもうちょっと深掘りして記載できることがあれば、そういったような御意見を頂くということもあり得るかなと思っておりますし、あとは、ここをまとめてみて、見ていただいて、こういう観点が足りてないのではないかというところがあれば、御指摘いただければと思っております。
 以上です。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。今の事務局からの説明に関して、特に赤字のところが、これまでの中間とりまとめに新たに加わった点。3章、4章を少しマージしてこのようにまとめていくという形という説明がありましたが、そういうことをトータルに含めて、特に最後、新しくフラッグシッププロジェクトというキーワードが出てきました。この点、および、それ以外を含めて資料4に関して御意見いただければと思います。
【城石委員】  3カ所あるんですけれども。最初の1カ所は最初のページで、量子科学技術は基盤技術の1つと位置付けられていると書かれていますよね。でも、今日のお話で、何で量子が大事かというのは、先ほどの、アト秒で測れるといろんなことが分かったとか、そういう新しい知見が出てきていますよね。何で量子が急に、急にと言うとおかしいんですけど、出てきたのかというのがもうちょっと分かるように書いていただいた方が良いのでは、と思いました。位置付けられたということだけだと、知らない方が悪いんじゃないと読めてしまうのではないでしょうか。少し工夫していただけるとありがたいなと思います。
【橋本補佐】  分かりました。
【城石委員】  次はその下の箇所なんですけれども、課題先進国など、よく書いていただいていると思います。ただ最近は、国連の、持続的な発展をめざすというSDGsが話題になっています。ターゲットも2030年で、量子ともうまくマッチしているので、持続可能な社会を実現するには量子が必要であるというロジックで、もうちょっと世界の動向、SDGsと方向性を合わせたらどうかと思いました。
 最後は、先ほどのご質問のネットワークと絡むんですけれども、オープンイノベーションというのが最後から前のページに記載されています。黒字の文章で、下から2つの括弧の部分です。私の理解なんですけれども、この指止まれで、自分が持っていないものが欲しい、というのがこれまでのオープンイノベーションだったんですね、どっちかというと。今は、オープンイノベーション2.0といって、みんなでやろう、と。この指止まれじゃなくて、みんなでやろう、そうしないとできないよ、というのがある意味の反省。だから、一種のエコシステムですよね。そういうのをやろうというのが全体の流れになってきているのだと思っています。そこで、この部分もちょっと書き方を変えてはと思いました。先ほどの協創をやりたいというのがネットワーク型という意味だと理解させていただいて、そこに産官学全部集まって、みんなでイノベーションエコシステムをつくろう、という感じで書いていただいた方がいいかなと思いました。文言はこのところだけ気を付けていただいて、それと、先ほどのネットワークとの関係性を付けていただけるといいかなと思いました。
【雨宮主査】  どうもありがとうございます。今のコメントよろしいでしょうか。ほかに。じゃあ、飯田委員。
【飯田委員】  新たなフラッグシッププロジェクトというお話で興味深く聞かせて頂きましたが、これまで光拠点事業で培われてきた資産をどのように活用されるかといった点に関してお考えがありましたら、御教示ください。
【橋本補佐】  今の光拠点で扱われた資産。
【飯田委員】  はい。
【橋本補佐】  今回、推進方策の素案にも書いていますけれども、ロードマップとして4つの領域だと思いますけれども、ロードマップ作業に対して4つの領域、光拠点とも重なるところはかなりあると思うんですよね。そういう意味では、重なったところというのは引き継がれてくるところはあるのかなと思っております。
【飯田委員】  例えばネットワーク型という観点では、光拠点事業の中でもいろんなコミュニティが生まれたことも重要な資産と思います。少し手前みその例としては、光科学異分野横断萌芽研究会が挙げられますが、今もどんどん会員が増えて日本全国で240名ぐらいの人材データバンクとなっていますが、今後の事業でも活用いただけるのではと考えています。
【雨宮主査】  ほかに。どうぞ。
【根本委員】  ちょっと1つ疑問に思ったのは、全体として、中間とりまとめを基にされて作っていらっしゃるということなんですけれども、抜き出してきたところが、そのままではないような部分もあって、そうすると、何かそこに突然非常に細かい記述が。
【橋本補佐】  ああ、なるほど。そうですね、すごく細かいところで、文末の、文の一番最後の表現を少し変えたりとかというレベルの変えているところは多少あるかなと思います。
【根本委員】  いや、そういうことではなくて、もっと大きいことを言っているはずなのに、中間とりまとめではもうちょっとスペシフィックなことを言っている部分だったのではないのかなというようなところがところどころ見られるような気がして、例えばトップダウン的なアプローチと言っているのに、なぜかここだけ物性理論研究者という、非常に狭い領域のターゲットが突然出てきたりとかというふうに、ところどころそういうふうに、もともとの話とは違うところに登場しているものがあるような気がするものが出ているということが1つと、あと、これはお伺いしたいなと思ったんですけれども、海外との研究グループが協力も積極的にやっていきましょうみたいな話というのは確かに中間取りまとめでも出てきたと思うんですけれども、EUは非常にダイバーシティということが進んでいて、日本はどっちかというとブラックリスト的に女性の進出がなされていないということで、こちらとして海外と一緒にやりましょうと言っても、EUから締め出しを食らうということも考えられないではないような状況になっていると思うんですが、その辺の対策と言うのも変ですけれども、政策なり何なり、お考えなことというのは何かあるんでしょうか。
【橋本補佐】  まず1点目なんですけれども、トップダウン的なアプローチのところ、例示で御指摘いただいたんですけれども、お配りしているドッチファイルの中に中間取りまとめの文書を入れているので、それを開いていただいて、具体的にどこをとってきたか、一応回答したいと思うんですけれども、42ページ、43ページのところですね。3.「推進方策の検討にあたって考慮すべき点について」となっておりまして、今回抜き出してきた「我が国独自の視点やアイデア」というのが1つ目。2つ目にハイブリッド型研究推進。43ページの頭ですけれども、3つ目として、「領域によっては、トップダウン的なアプローチや、ネットワーク拠点型のアプローチが有効」というふうに書いておりまして、ここの部分の文章の前半の部分がトップダウン的な開発アプローチが必要となり得ると書いてあるところで、そこに「領域によっては、実験者、物性理論研究者や潜在的ユーザーと一緒になって」と、こういう表現がありまして、ここでまとめていただいたところを基にして書いている。
【根本委員】  表現的にあったということは私も記憶にあるんですけれども、カット&ペーストするときに、位置付けが変わると意味合いが変わるということもあるので、そういうところで意味合いが変わってしまっているように見える部分があると思うのでということをお伝えしているんですね。
【根本委員】  ところどころそこだけ何でこんなに細かいのかなと思う。元のものを読むと、それは途中に挿入されているから余り違和感が感じられないんですけれども。
【橋本補佐】  あれですかね、突然実験研究者とかと書いてあるということですかね。
【根本委員】  突然出てくるということです。
【橋本補佐】  分かりました。ちょっと工夫して、全体改めて。
【根本委員】  特にここがというわけじゃないんですけど、時々ちょっと不自然なところがあるかなと。
【橋本補佐】  冒頭から順番に読んだときに違和感がないような感じですね。
【根本委員】  そうですね。そういうことですね。
【橋本補佐】  気を付けたいと思います。ありがとうございます。2つ目のEUの方での話なんですけれども、事務局の方で余りどういう動向なのかということを承知していないところがあったので、後ほどまた詳しくちょっと。
【上田室長】  恐らく一般的なダイバーシティのことをおっしゃっているんですよね。研究者の世界におけるダイバーシティというのはEUでは基本的には推奨されている。日本でもやっているのですが、現状がそこに追いついていないと思います。
【根本委員】  そうですね。ただ、政策としてということですね。
【上田室長】  どう考えているかというよりも、逆にこの量子科学技術分野においては、ダイバーシティの推進をどの程度、あるいは何か政策でもって推進した方がいいのか。そういったところを、むしろ、お知恵があればということだと思います。
【根本委員】  そうですね。ただ、やっぱり国際社会の中で協力してやっていくということを考えると、そういうことができていないということが非常に不利になって、ネガティブ要因になっていくということは十分にこれから考えられるので。
【上田室長】  主には男性、女性という意味でのダイバーシティがまずあるということですよね。
【根本委員】  ええ。
【上田室長】  おっしゃるとおり。そこから手を付けていけば施策になるでしょう。もちろん文部科学省としては以前から、男女共同参画の趣旨を踏まえて、女性研究者の活躍推進プログラムといった施策を全分野対象に実施しております。
【根本委員】  分かりますけれども、やっぱり実効力として、例えば委員会が開けないとか、そういうような実効力をもってEUでは対処しているというふうに聞いています。
【上田室長】  例えば極端な例で、拠点を作るに当たっては、割合を何々とするとか、そうでなければ拠点として認めないとか。ただ、実態もあって、この分野における博士号取得者、博士号の在籍割合における女性割合、男性割合といったものとかけ離れた施策をとったとしても、それはコミュニティをゆがめることになるかと思われます。
【根本委員】  もちろんそうだと思います。
【上田室長】  ただ、御指摘のようなダイバーシティ推進については、文部科学省としても全分野において当然ながら推進されるべきだと考えておりますので、そういったことを推進方策の中にも入れ込んでいくということは当然重要かと思っています。
【雨宮主査】  上田委員。
【上田委員】  オープンイノベーションのところの産学連携なんですけれども、現時点ではこれは両方研究できる、経験できる人材の流動性とか、あるいは、現在既に存在する産業と大学との連携とかを念頭に置かれているのかもしれませんが、他方、今回のフラッグシッププロジェクトを見ますと、量子センシングにしろ、あるいは、レーザー加工とかを見ても、ここにベンチャーというキーワードを入れる余地はあるのではないかと思いました。先ほどのレーザー加工の技術も、こういうところにこういう技術があるというのを、どちらかというとボトムアップ的にいろんなアイデアがあるんだと思うんですね。バイオへの応用も含めてですね。そういうアイデアがあったときに、それを施策的にバックアップするとか、あるいは、大学との連携もバックアップするようなメカニズムは、今回のフラッグシッププロジェクトのテーマには比較的合致しやすいんじゃないかなという気がしました。
【雨宮主査】  ほかに御意見。大森委員。
【大森主査代理】  ネットワーク型研究拠点のところの記述で、アとイとあって、アはトップダウン的なフラッグシップ的なプロジェクトの記述、イがそれを支える基盤技術の長期的視点に立った云々とあって、アのところにもう既に、トップダウンだけじゃなくて、これらを支える基礎研究・基盤研究も併せて取り組むことが重要であると書いてありますよね。これはダブっていないですか。
【橋本補佐】  ここの部分は、アのところは、よりトップダウン的なアプローチでやるという、フラッグシッププロジェクトの関連性が強いものとしてやるべき基礎研究・基盤研究。それに対してイの方は、より共通的に、必ずしも1つのフラッグシッププロジェクトだけじゃなくて、複数の領域にまたがるような基盤技術もあるのかなと。
【大森主査代理】  じゃあ、アに書いてある基礎研究・基盤研究というのは、例えば、そこに例として挙げてある1、2、3、4、これのそれぞれのカテゴリーを支える基礎研究・基盤研究というイメージ?
【橋本補佐】  支えるような基礎研究・基盤研究というイメージを持っております。
【大森主査代理】  じゃあ、カテゴリーとして3つ考えているということですか。
【橋本補佐】  そうですね。
【大森主査代理】  じゃあ、ア、イ、ウにしたらどうですか。何かちょっと見えにくいんですけど、何かダブって見えるんですよね。
【橋本補佐】  なるほど。フラッグシッププロジェクトとつながりがあるように書いた方が分かりやすいかなと思ってまとめたんですけれども、分けた方が。
【大森主査代理】  アの1とか、アの2とか、ちょっと分かりにくいですね。
【根本委員】  いや、イのところがもうちょっと基盤的な感じのするものが出ていると、違いがもうちょっとはっきりするのかなという気がするんですけど。
【上田室長】  それこそ表題に共通的とか。基盤技術としかイの表題は書いていないですが、共通的基盤的技術にすると、国民にとってはより分かりやすいと思います。
【大森主査代理】  あと、今言われたみたいに、アの方に、ここで言っている基礎研究・基盤研究というのが、今はまだこれ、1、2、3、4、確定していないですけれども、確定したら、1、2、3、4を支えると明記してくれると分かりやすいかもしれない。
【上田室長】  なるほど。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
【上田室長】  その意味でちょっと補足をよろしいですか。今の2にある「戦略的な基礎研究の強化」というのは、この文章の文言にも出てくるんですが、継続的な強化なり推進だと思っております。JSTの戦略創造事業で行われるようなことについて、ここ数年は光・量子関係の領域に立っていますが、そういったことを一過性にとどめるわけではなくて、10年のスパンで見ると、複数が継続して立っていくということが大事なので、2の表題に継続的を入れるとか、そのような工夫は可能かと思います。
【大森主査代理】  それが大事だと思いますね。EUのマニフェストとか、中国で今度やろうとしているのも、大体似たようなフィロソフィーのもとで始まったことなので、アピールした方がいいでしょうね。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
【根本委員】  1つだけちょっといいですか。今、基盤技術のところが出たので、ちょっと追加なんですけれども、技術というとどうしても物的な技術ということを思い浮かべがちなんですけれども、光技術拠点の中で、ものづくりにおけるやり方として、情報科学的なものとの融合的な話とか出てきていたと思うんですね。そういった技術というのは、共通でもあるし、長期的に基盤になっていくものなのかなと思うので、そういったことの融合、それは、ものづくりは物理で、目の前に物がなければだめなんだという時代から少しずつ動いてきているということで、基盤技術というものがどういうものかということをもう少し掘っていただいた方がよろしいかなという気がいたします。
【上田室長】  現状は光周波数コムとレーザー冷却と書いてありますが、もう少し掘るということですか。
【根本委員】  そうですね。というか、気持ちは大変よく分かるんですけれども、何となくちょっと古い。考え方的にもうちょっと新しい要素というものを積極的に基盤技術として考えるということは必要だし、今までは、これの本当の基になった基盤技術というのは、理論的な技術というものももちろんあったわけなんですよね。ただ、理論的な技術というのは、単に何とか理論というような形ではもうなくなってきている部分もあるので、もうちょっと広めに基盤技術というものをお考えいただいた方がよいのではないのかなという気がします。
【橋本補佐】  あれですかね、今ある技術だけを対象にしているような印象があるということですかね。もうちょっとこれから先出てくる新しい技術でやって基盤となるようなものという意味ですか。
【根本委員】  そういうことじゃないんですね。
【大森主査代理】  タンジブルか、タンジブルじゃないかという話でしょう。
【根本委員】  うん、そうです、そうです。
【大森主査代理】  コンセプトとかまで含めて技術じゃないかと言われているんじゃないかと思うんですけれども。技術というと、何か物があって、タンジブルで。
【根本委員】  装置があって。
【大森主査代理】  うん、装置があってという印象を与えるので。
【上田室長】  例えば事例を1つ頂けると。
【根本委員】  ソフトウェア技術とか、アルゴリズム技術とか、そういうものの技術。
【上田室長】  なるほど。感じは分かりました。
【雨宮主査】  この委員会とは別な委員会ですが、基盤技術とは何かということで議論した委員会があったと思います。その中には多分今言ったことも含まれていて、基盤技術とは何かということを様々な視点から議論したと思いますので、それも参考にしていただければと思います。
【上田室長】  承知しました。
【飯田委員】  少し細かな点で、新たな技術シーズの持続的、それを支える戦略的な基礎研究の強化の量子技術と生命科学との融合により、細胞内の生体分子が有する機能を量子レベルから統合的に理解することを目指す量子生命科学との記述がありますが、理解に至るまでに計測と分析が必要と思いますし、理解した後の次の展開として制御も含めた方がよろしいのではと感じました。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
【城石委員】  すいません。時間もないので申し訳ないんですけれども、量子って会社でいうと、結構引けちゃう人が多いのが実態なんですね。その中で、こうやっていただくのは非常にありがたいと思っています。ですが、逆にそうやって量子の分野で卒業された方、博士の方とかがその分野に行って末永くよかったと思えるような施策もこの中にあってほしいなと。企業の責任もあると思うんですけれども、こうやって勧めたんだけど、行ったら出口がなかったというのはちょっとかわいそうなので。それは先ほどの継続的にやっていただく仕組みかもしれないんですけれども、私にはわかりませんが、何かそういう施策のようなものをどこかに書いていただけると、皆さん安心して進んでいただけないかなと思うんです。もし委員会で検討されたものもあるのでしたら、何かその辺についても少し書いていただけるといいかなと思いました。
【大森主査代理】  この委員会でも出ましたよね、そういう議論。企業が博士号取った人を採用できるような施策がどうやったらできるかという話、すごく重要だと思うんですけれども、例えばドイツなんかも、昔は余り採らなかったんですよね。今はすごく採っているんですね。だから、みんな、アカデミックなジョブにつかない人でも安心して博士課程に行って研究するような環境が整いつつあるんですよ。だけど、何でその変化が起こったのか、自分は余りよく知らないんですけれども、そこら辺を調べていただくと、教えていただくと、勉強になるかなと思いますね。
【城石委員】  何かそういう政策があるのかもしれないですね。
【大森主査代理】  何かやったんじゃないですかね。
【上田室長】  上田委員がおっしゃったベンチャー、あるいはアントレプレナーシップですが、文部科学省としても今JSTの様々な施策で盛り立てようとしています。私が入省したときと比べて、学生の雰囲気というのが、よりアントレプレナーシップ志向が強い学生を如実に感じるような場面が多く、ベンチャーやアントレプレナーシップというのは、学生にとって魅力に映る可能性があるかもしれないとも思います。今の感覚でいうと、この量子技術分野に来ると、技術のオポテュニティがたくさんあり、様々な機会があって、そこで成功するとベンチャーのような世界もあるというメッセージを積極的に発信するということもあるのかもしれませんし、先ほどドイツという話もありましたが、企業が採るだけではなくて、ドイツもベンチャーやアントレプレナーシップが光系で盛んな国の1つだと認識します。
【城石委員】  ドイツは何かやっているんですよ。彼らはすごく政策的なことをやる国なので、確かに勉強していただくのがいいかもしれないですね。
【大森主査代理】  そうなんですよ。前、そうでもなかったんですよね。
【上田室長】  認識しております光拠点事業の中で、人材育成ということを連綿と10年続けてこられて、何人卒業生がいたということはまとめております。あと、産業界に行ったというところ、リスト化みたいなことまではされていると思うのですが、一方で、そこに対してアントレプレナーシップを喚起するみたいな取組があったかというと、必ずしもそうではないかなという印象はあります。
【上田委員】  現場感覚でいいますと、Ph.D.を取った学生がベンチャーを作ろうという意欲はここ数年劇的に増えている気がします。放っておいてもトップ層の人は、実際に数年間企業で技術をマスターして、自分で起業しようという機運が盛り上がっています。実際に例えば東大だけでもたくさんのベンチャーが、1兆円をはるかに超える規模のベンチャーが出ています。
 恐らく最後の一撃に相当するのは、国がそれをオーソライズすることじゃないかと思います。やっぱりこういうところに書かれると、やっていいんだという安心感が生まれます。リスクじゃなくて、むしろ今はそういう方向に国も向かっているんだというような勇気付けみたいな感じですね、それがあると、日本人のメンタリティを考えると、それだけでも随分違ってくるような気がします。
【大森主査代理】  確かに。
【上田委員】  ちなみに、企業の採用トレンドも私は変わってきているような感じがします。博士採用をする企業の割合も、それから、実際に既に従来型の企業も博士を採用する割合も増えているというのが肌感覚です。恐らく産業構造の劇的な変化というのがあって、日本もそういうふうに対応せざるを得なくなっているということが背景にあるんじゃないかなという感覚ですね。施策も当然あると思いますけど。
【大森主査代理】  関連するかどうか分からないんですけれども、EUのフラッグシップあるでしょう。予想ではというか、噂なんですけど、ある程度企業もサポート対象に入れるという話がちらほら出てきていますね。今年の終わりぐらいに本体のフラッグシップの公募みたいなのがあるらしいですけど、皆さんの見立てだと、結構企業が入るんじゃないかというふうに期待している人もいるし、危惧している人もいる。だから、ひょっとしたら、そういう方法もオプションの1つとしてはあり得る、将来的なところを考えたときにはあり得るのかもしれないですね。
【城石委員】  産業構造は、確かに変わってきていると思うんですよね。本来、自分で学ばないといけないんですけれども、再教育してもらえる機会がいろんなところにあって、自分のやってきた専門も変えるとか、幅を広げるとか、そういう仕組みとセットになっていればいいのかもしれないです。ですから、何かうまい政策があるはずと私は思っています。それが何だかというのは、分からないんですけど。いずれにしても、何かそういうのもセットでやっていただけると、勇気を持って新しい道に踏み込める後押しになるかもしれないと思っています。後々もケアできるようなそういう仕組みになっていれば、ありがたいなと思います。
【飯田委員】  ベンチャーを立ち上げている学生さんというのは、量子科学関係の基礎的な研究でドクターを取って、同じ方面で、もしくは違う方面での起業化をされているのでしょうか。
【上田委員】  物理の学生でいいますと、物理は、知識を教える分野じゃなくて、頭脳を鍛える分野なんですね。そこで頭脳のトレーニングをして、量子というのは、ある意味最も難しい、とっつきにくい分野で、頭脳をトレーニングしている。彼らを見ますと、博士課程の間は自分の好きなことに打ち込むんですね。それに打ち込んだ後、それと全く関係のないところでポンと新しいことをやり遂げる学生が少なからずいます。好きなことに没頭することでトレーニングした自分の頭脳だけを頼りにしてベンチャーを立ち上げているというのが私の印象です。
【飯田委員】  企業化においては分野の違う人と対話できる能力が非常に重要だと思いますが、そういった能力は卒業してから自分自身身で身に付けているような感じでしょうか。
【上田委員】  最近の若い人は、ほとんどつながっているんですね。スマホとか、そういうのでつながっていて、いわゆるコミュニケーションとかのスキルは、一昔前の我々に比べるとはるかに上手で、むしろ空気を読み過ぎているぐらい、肌感覚で多分つながっているので、ネットワークは非常にすぐれている感じがします。
【湯本委員】  ドイツとの比較という話もありましたけど、やっぱりベンチャーも、アメリカ、ドイツ、日本で全然質的に違うんですね。今、アントレプレナーということで、大学生はかなり変わったと思っています。だけども、ベンチャーキャピタルの方が、少しかたいという気はします。学生が意欲、これやってみようと思っても、清水から飛び下りろと言うと無理だけれども、その辺の柱と言ったらまたあれですけど、もう少し低いところからというんだったらあるんだけれども、逆に大きくならないと出さないというのがあるんですね。そこの学生たちがやってみたいという意欲と、それから、実際のお金を出してもらえるギャップ、そこがものすごい大きいと思います。最初の一歩がなければ、ジャンプもないわけで、その一歩に対して今日本の社会がものすごく、何というか、警戒しているという言葉はおかしいですね。なかなかそこに踏み出せないという、そんな感じがします。ですから、お金を出す側の施策ももう少し考えていただければと思います。
【大森主査代理】  そうなんですよね。あと、やっぱりもう1個は、前も言いましたけれども、これはこの委員会で何かやってどうかなるものじゃないですけれども、1回潰すと、そのままそれで終わっちゃうというのが変わらないと、なかなか難しいところあると思いますけどね。
【上田委員】  おっしゃるとおり、ベンチャーキャピタルがものすごく重要で、現時点でまだ大きな需給ギャップがある感じがしますけど、私の直感では、今は一種のウォーターシェッドで、これからがらっと変わるような雰囲気していますね。なぜかというと、実際に若い人がベンチャーをして、かなり著しい成功を収めているひとがどんどん増えています。規模も1兆円を超えたレベルに達していて、クリティカルマスを超えている感じがしますね。そうすると、ベンチャーキャピタルのマインドも、もうちょっとでがらっと変わるような予感がします。
【湯本委員】  確かに今、例えば資本を評価したりすると、1兆円云々という話があるんですけれども、ただ、だーっと見ますと、やっぱり分野が限られているんですね、日本の場合は。
【上田委員】  そうですね。
【湯本委員】  だから、例えば量子だとか、デバイスだとか、ハード系になった瞬間に、また全然違う世界に行ってしまう。そこをもう少し、我々も責任あるんですけれども、物を実際に作らなきゃいけない、こういうところにも学生がチャレンジできるような施策が打てればいいなと。
【上田委員】  そうですね、ここは施策が重要なところですね。
【上田室長】  この関連の話をするときは、お金、技術、あと、その間にいる目利きがいるかどうか、という話に帰着するのですが、その観点からいうと、文部科学省の施策で、STARTというプログラムがあり、VCに目利き能力を発揮してもらい、JSTの研究費を配分して管理してもらう。それがうまくいけば、彼らが自らシードマネーを入れるという制度があり、十数件が事業プロモーターとして採択しているのですが、この人たちに技術的な目利き能力も付随して上げていってほしいという感覚があり、これ、すなわち生態系ですね。イノベーションエコシステムの中におけるアントレプレナー生態系をきちんと育てるという意味合いも込めて、そういうSTART事業とか、あるいは大学院、大学教育のEDGE事業も実施しておりますので、そこでおっしゃっているようにウォーターシェッドみたいな感じがあるんだろうなと思います。
【上田委員】  既にそういうプログラムがあるのでしたら、逆に、例えば大学で実際そういう目利きができるような人たちとVCをリンクするようなプログラムなんか、ものすごく有効なんじゃないでしょうか。
【上田室長】  そうですね。特に拠点でもし推進することになるのであれば、その拠点の人たちがそもそも行われていることをよく見て、VCの人たちと連携するということを拠点の活動の1つとして定義付けていくというのもあるかもしれません。
【上田委員】  人と人をつなぐということですね。
【大森主査代理】  だけど、余りそれが中心になっちゃうとよくないと思うので、そこはバランスよくやらないとだめなんじゃないですかね。
【根本委員】  結局でも、そうはいっても、学生の中で、起業する方よりも、就職する方の方が人数的には多いと思うんですよね。結局、身近な人たちを見ていると、ヨーロッパ、ドイツ系で就職先を見ると、すごく技術が高いけれども、大企業ではないような、中小企業で非常に技術が高いところに就職していっているわけですよね。日本はそこの層が薄いのかなと。結局、高い技術を持っていても、仕事の内容が、技術的なことを発揮するというよりは、ほかのことの方が多いというような、そういう文化になってしまっていて、やっぱりそういう問題を解決していかないと、大きなところでは変わっていかないという可能性は十分に考えられると思うんですね。やはり技術の高さ、全体な技術の高さというものが下がってきているということも非常に大きな問題なんじゃないのかなと思いますけどね。
【雨宮主査】  この委員会のスコープを超えた内容もありますが、非常に重要なポイントなので、今日の委員会の意見として、まとめのところで取り込めるような工夫を是非事務局で検討していただければと思います。
 本日の議題は以上ですが、今日、活発な御議論いただきましたことをお礼申し上げます。
 それでは、事務局から伝達事項等お願いいたします。
【吉川補佐】  次回の量子科学技術委員会ですけれども、開催を6月30日、午前中と予定しておりますので、また御協力をお願いいたします。
 資料についてですけれども、本日の資料について郵送を御希望の方は、封筒に入れた後、机上に置いておいてください。不要な資料とドッチファイルについては、机上に置いたままにしていただければと思います。
 以上です。
【雨宮主査】  以上をもちまして第12回の量子科学技術委員会を閉会といたします。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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