原子力科学技術委員会 原子力人材育成作業部会(第3回) 議事録

1.日時

平成27年10月20日 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 旧文部省庁舎2階 第2会議室

3.議題

  1. 近畿大学における原子力人材育成の取組について
  2. 京都大学における原子力人材育成の取組について
  3. 当面議論すべき「原子力人材」の範囲について
  4. その他

4.出席者

委員

山口主査、上坂主査代理、五十嵐委員、木藤委員、来馬委員、沢井委員、中島委員、長谷川委員、浜崎委員、森口委員、和佐委員

文部科学省

板倉研究開発局審議官、岡村原子力課長、髙谷研究開発戦略官(新型炉・原子力人材育成担当)、上田原子力課課長補佐

オブザーバー

中富経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部原子力政策課課長補佐、伊藤近畿大学原子力研究所所長

5.議事録

(山口主査) それでは、定刻になりましたので、第3回原子力人材育成作業部会を開催したいと思います。本日の議題は議事次第のとおり、教育研究機関からのヒアリングとして「近畿大学における原子力人材育成の取組について」、「京都大学における原子力人材育成の取組について」を御紹介いただきます。それから「当面議論すべき「原子力人材」の範囲について」、「その他」となっています。最初に、事務局から出欠と配付資料の確認をお願いします。
(上田課長補佐) 本日は可児委員と宮浦委員から御欠席の連絡を頂いています。出席の委員については、13名中11名の委員が御出席ということで、定足数である過半数を満たしています。
 続きまして、資料確認をさせていただきます。まず資料1として、「近畿大学における原子力人材育成」、それから資料2として「京都大学原子炉実験所の研究炉(KUR, KUCA)について」、資料3として「当面議論すべき「原子力人材」の範囲について」、参考資料1として本作業部会の委員名簿、参考資料2として本作業部会での議論を踏まえた主な論点、参考資料3として本作業部会の今後の進め方、参考資料4として「平成27年度 原子力科学技術委員会における研究評価計画について」、参考資料5として「国際原子力人材育成イニシアティブ 事業概要」でございます。資料の不備等がございましたら、事務局までお申しつけください。
(山口主査) ありがとうございました。それでは、議題に入らせていただきます。
 原子力人材育成作業部会につきましては、これまで2回開催されたところであります。これまでの議論を踏まえた論点やスケジュールについては、参考資料2と3として事務局にてまとめていただいています。この中の論点2「大学や研究機関における研究教育施設や人材育成の環境について」につきましては、大学や研究機関におけるこれまでの取り組みや課題点等の実態を聴取し、今後の施策につなげていく必要があるかと思います。
 つきましては、原子力人材育成でこれまで大きな役割を担っていただいています近畿大学及び京都大学に本日の議題1として、取り組みを聴取させていただきたいと思います。それでは初めに、近畿大学原子力研究所の伊藤所長より、御説明をお願いします。
(伊藤原子力研究所長) 近畿大学原子力研究所の伊藤でございます。早速、資料に沿って説明させていただきます。まず2ページに、原子力研究所のUTR-KINKIについて、写真とともに概要を載せています。直径が約4メートル、高さが2メートルの原子炉でございます。右の写真では、真四角の炉心を載せています。この原子炉は、私ども近畿大学の初代総長である世耕弘一が、1961年に導入したものであります。導入以前は、既にJRR1とJRR2が運転されていましたので、日本でいえば3番目、民間及び大学でいえば最初に導入されました。 UTR-KINKIは、アメリカ製の教育研究用原子炉であり、購入当時は0.1ワットの低出力でありましたが、現在は1ワットの出力で運転することができ、安全性が高く、運転・管理しやすい特徴を有しています。次のページに原子炉の細かい概要を載せています。目的は原子力に関する教育・研究のためであり、型式は軽水減速黒鉛反射非均質型熱中性子炉でございます。初臨界が昭和36年11月11日であり、当時は0.1ワットの出力でありましたが現在は1ワットの出力を有しています。出力が非常に小さいので、中性子束という中性子の量も非常に小さく、毎秒平方センチメートル当たり約1.2かける10の7乗が最大であります。板状の高濃縮燃料を使用し、4本のカドミウム制御棒を上下させることによって原子炉を制御しています。炉の出力が非常に小さいので短時間で出力が上がり、1日当たり約6~8時間の運転を週5日ないしは6日の体制で行っています。以下は省略させていただきます。次のページも施設の特徴を記載しています。熱出力が1ワットとであるため熱発生がほとんどないとともに、ウラン燃料の消費はごく微量です。我々はこれまで54年間にもわたりこの原子炉を運転してきましたが、これまでのウラン燃料の消費は1ミリグラムにも満たないところであります。なので、燃料については寿命を気にせずに運転ができるという特徴があります。出力が非常に小さく運転中の放射線は微量なので、運転中でも原子炉周辺でいろいろな作業ができるという特徴を有しています。また、約15分の短時間で1ワットへのフルパワーが達成可能であるとともに、原子炉の構造がシンプルであり、どのような運転パターンでも事故の想定に至らないため、運転・実学教育に非常に適した原子炉であるといえます。原子炉は、燃料体がある真ん中で2分割になっており、この中心がドライ領域になっています。また減速材が水だけですので、非常にエネルギーの高い中性子を得ることができるとともに、大型試料が照射可能なので、例えばマウスへの照射といった生物実験の利用にも適しています。このような大学の原子炉は、現在は近畿大学と京都大学にしかありません。私どもが調べたところでは、東アジアに7つほどの大学原子炉がありますが、近畿大学の原子炉は最古の原子炉であります。次のページには原子炉の歴史を載せています。1961年に近畿大学に設置した原子炉は、1959年の東京博覧会でアメリカ合衆国が教育用原子炉として出展し、18日間、東京の晴海埠頭で実際に運転していたものでございます。当時はアメリカ大使館から晴海まで乗用車にて燃料を運び、展示が終わるとまた乗用車にてアメリカ大使館に燃料を戻したということを聞いています。その間に昭和天皇も御覧になるとともに、近畿大学初代総長の世耕弘一も見たわけであります。世耕弘一がこの原子炉を見た瞬間に、これからはエネルギーの時代であるためにこの原子炉を購入して学生教育に役立てたいと思ったわけであります。ただこの原子炉は、東京博覧会後はエジプトのカイロで展示される予定になっていました。それも何とか食い止めようということで、当時、世耕弘一は大臣でしたので、当時の原子力委員会の三木武夫先生と相談した結果、購入を即決したと伺っています。これで購入が決まり、原子力研究所を立ち上げた後に、1961年に初臨界になりました。また、理工学部に原子炉工学科を設立して学生への教育をしっかりと進めてきたわけであります。また1974年には、0.1ワットでは出力が少し小さいということで、1ワットにパワーアップしたところであります。1981年当時は、立教大学や武蔵工業大学、近畿大学の私学と東大と京大の5つの大学にあったものの、日本は原子炉が少なかったため、共同利用施設を目指し、文部科学省の全国大学共同利用施設に認可していただきました。1987年からは、学校現場での放射線や原子力についてしっかりと次世代の子供たちに教育してほしいという希望から、全国の小・中・高校の教員を対象にとした原子炉実験・研修会を開始ししました。この頃は、委託事業として日本原子力産業協会と関西原子力懇談会にお願いし、全国から人を集めました。これは現在も実施しています。平成14年当時は国内大学の原子力関連学科が改組等でなくなっていくという潮流の中、我々の大学でも学科の再編により原子炉工学科が電気電子工学科エネルギー工学コースへ変わりました。そして2011年には臨界50周年を迎えたわけであります。その後2013年には新規制基準が適用され、2014年10月20日に、新規制基準に伴う原子炉設置変更許可申請書を提出しました。現在はその新規制基準審査のため、施設は停止しています。
 次のページには、原子炉を利用した人材育成の概要・実績を載せています。学内の利用としては、原子炉運転実習及び卒論・修論ということで、近畿大学電気電子学科学生を対象に、様々な実験を実施してきました。原子炉に直接触れて卒業したという学生は、昭和36年から現在まで延べ3,000人の実績があります。学外実績としては、平成25年度に採択された文部科学省の国際原子力人材育成イニシアティブ事業があります。採択当初は、名古屋大学や九州大学、京都大学、韓国の慶煕大学の5大学の学生が、近畿大学及び慶煕大学でそれぞれ1回ずつ運転実習を行うとともに、福島へ行ってモニタリング等の様々な実習を行うことを想定していました。次に原子炉運転・実験実習であります。これは昭和48年から開始された実習であり、阪大や名大、九大、神大、徳島大、摂南大、東海大、福井大、福井工大の9大学の学部生が、1泊2日で実習を行うものであります。これまでの参加実績は、約3,400名に上っています。
さらに、原子炉を持たない大学教員や院生の研究として、近畿大学原子炉等利用共同研究を昭和56年から行っており、約580件もの採択件数があります。その他の人材育成として、原子炉運転・実験研修会がございますが、これは先ほど申しましたとおり全国の小・中・高校の教員を対象に原子炉の実験・研修会を実施しています。加えてスーパーサイエンスハイスクールの高校生を対象に、原子炉運転や放射線実験も実施しており、これまで約397回、延べ6,530人の実績があります。その他にも、若狭湾エネルギー研究センター委託事業の国際原子力セミナーや、東海大学と国際原子力開発が行う国際原子炉実験研修会の実施として、近畿大学の原子炉が活用されてきました。
 次のページは、原子炉運転実習・実習の紹介です。近畿大学を含む9大学の学部学生を対象としており、最初に近畿大学原子炉の概要説明や保安教育を行います。そして実習として、原子炉運転実習や制御棒校正実験、臨界近接実験、中性子ラジオグラフィ、放射化法による中性子束分布測定、環境放射線の測定、その他の中から各大学の選択を受け、時間が許す限り原子炉を使用していただくことを行っています。次のページは、小・中・高校や高等専門学校の教員を対象とした原子炉運転・実験研修会の紹介であります。これは、放射線の研修と原子力の研修の2つに大きく分けて実施しています。初めての方もいらっしゃいますので、講義と実習という2つのパターンで行っています。講義は保安教育や放射線の基礎、原子炉の基礎、放射線の利用の話、放射線の健康への影響という講義を行っています。そして実習は、原子炉運転と実習や中性子ラジオグラフィ、環境放射線の測定、実践教育教材の製作と実習を実施してます。そして、講義と実習の終了後に、福島の再生・復興への現状と課題について、講義・討議を実施しています。
 次のページは、研修会・見学時の近畿大学の基本的な考えであります。学部学生が対象の原子炉実習では、聞いて・見て・触れて・運転・実験して・体得するというところを主眼に置いて実施しています。そして、小・中・高等学校の教員が対象の原子炉実験研修会では、聞いて・見て・触れて・運転・実験して・子供たちに教えていただくということを主眼に置いて実施しています。そして見学会は、聞いて・見て(時間があれば触れて・運転する)・子供たちに考えてもらうところを主眼に置き、科学実験教室のイベントでは子供たちに夢を持っていただく、原子力展等のイベントでは、視野を広めていただくということを主眼に置きながら、我々は実施しているところであります。
 10ページを御覧ください。新規制基準の施行に伴い、昨年の2月6日から停止して1年半が経過しています。その間の人材育成の取組については後ほど触れることとして、ここではこれまでの新規制基準の対応状況について御説明させていただきます。まず平成25年12月18日に新規制基準が施行されました。そして、定検を迎えた2月6日より、運転を停止した状態でございます。その後、平成26年10月20日に原子炉設置変更許可申請書を提出しました。すぐ翌日から1回目のヒアリングを開始し、5月29日に公開ヒアリングを行いました。週1回のペースでヒアリングを実施しており、9月末時点でヒアリング23回、今日時点では25回、行政相談は10回実施しています。今後の予定ですが、ヒアリングが一通り終わった段階で、第一次補正申請を行い、そしてヒアリングを実施した後に第二次補正申請を行う予定でございます。その他に設計及び工事方法認可申請や保安規定変更申請、使用前検査、定期検査の後に合格証が発行され、運転が開始できる予定になっています。これらの時期については、いつになるかということは申し上げることができませんが、来年度中には何とか運転再開を目指し、今頑張っているところでございます。
 このように現在、新規制基準対応のために停止している状況でございますが、次に現在行っている原子力人材育成の取組について、御説明させていただきたいと思います。1つ目は、学内学生実習はどうしているのかということでございますけれども、もちろん原子炉を運転できませんので、原子炉施設の見学や放射線工学を中心にした実習と研究を実施しているところであります。学外の学生については、原子炉を見ることしかできませんので、受入れを中止しています。2つ目は、学外共同研究であります。これは、教員や大学院生を対象としたものですけが、原子炉運転を伴わない研究を採択・実施しているところであります。例えば中性子源を使った研究等で使用していただいています。3つ目は、小・中・高校教員を対象とした原子炉研修会ですが、原子炉を運転できませんので原子炉施設の見学や放射線の実習を実施しています。4つ目は、平成25年度に採択されました国際原子力人材育成イニシアティブの事業であります。採択当初は韓国から近畿大学に来ていただき、原子炉運転実習を実施しました。しかしながら原子炉停止に伴い平成26年からは、近畿大学や名古屋大学、九州大学、京都大学の学生を慶煕大学へ行り、原子炉運転実習を実施しているところであります。本年度は2回実施しました。そして今週末は、韓国の学生が日本に来られ、九州大学や名古屋大学、近畿大学、京都大学の学生と一緒に福島で実習を行う予定でございます。
 次のページは人材育成に関する課題と問題点ということで、書かさせていただきました。現在、九州大学等の遠方学生と一緒に実習を行っていますが、旅費といった経済的負担が、大きくなっています。できれば何らかの形で援助・補助をしていただければ、非常に有り難いなと思っています。実は5年ほど前に経済産業省の事業で、そのような旅費がつきました。その当時は多くの学生に来ていただき非常に賑わったのですが、その旅費の補助がなくなってからは、参加学生数が半減してしまいました。一部でも結構ですので、旅費について継続的に補助をしていただければと思っています。2番目は、実習内容の多様化ということを挙げています。各大学で開講している原子力科目の内容が違っていたり、参加学生の基礎的な知識にも差があるため、実習内容等についていろいろと工夫する必要があります。3番目は、実習日であります。現在、多くの学部学生を受け入れていますが、学部学生は授業で大変であります。このような実習を行うには、ある程度のまとまった日程が必要である一方、講義を休んでまで実習に参加することはできませんので、夏休みか連休にしか参加することができません。そういうときは、大学としてもやはり休みを頂きたいと感じているところであります。そのようなことで、まとまった実習日の確保が一つの問題点かと思います。4番目は継続的な運営です。より良い人材育成を実施するためには、募集・実習内容・実施期間・必要設備等に関して、経費も含めて安定した運用が必要です。3年で予算が切れてしまうことでなく、継続して実施していくことが必要と思います。大学としてもカリキュラムとして取り込めることができないため、学部学生が実習に参加されても、それを単位として認めることができない現状もあります。そういう安定した人材育成というものを、国の方でお願いできればなと思っているところであります。
 次のページに研究所の今後の目標を載せています。近畿大学として引き続き、原子力の安全・安心を確保し、長期にわたり研究・教育に寄与できるよう原子炉を維持・管理していきたいと思っています。また2番目としては、原子炉を活用した実学原子力教育を活性化し、研究者・技術者の人材育成に努力したいと思っています。3番目としては、原子炉研修会やイベント等の原子力理解活動を積極的に企画・実行し、原子力の啓発活動及び初等・中等エネルギー教育に積極的に協力したいと思っています。最後の4番目としては、原子力の人材育成には、教育・研究用大学炉における実学教育は不可欠である一方、私どもの施設も古くなっていますので、いずれ役割を終える近大炉の引継ぎ炉も具体的に考えていかなければならないと思っています。最後のページに研修の写真を載せています。左上は、学生が参加する原子炉運転実習を行っている際の写真で、右上は、照射した箔の中性子束を測定しているところであります。また左下は、韓国慶煕大学での原子炉運転実習の写真であり、右下は、中性子ラジオグラフィ照射実験の写真であります。以上でございます。
(山口主査) どうもありがとうございました。大変意欲的に取り組んでいらっしゃるとともに御苦労も多くあるということがよく伝わってまいりました。それでは、伊藤所長からの御説明について、御質問・意見等がありましたらお願いします。どうぞ、長谷川委員。
(長谷川委員) 大変、御苦労されて実習等を実施されていると思います。炉自体は運転しなくても施設全体のオペレーションや空調等に結構お金がかかってしますと思うのですが、年間どのくらいかかっているかと、私学としてそういう維持費にお金がかかることへの苦労が相当あると思うのですが、それについてどのように考えられているのか教えていただけないでしょうか。
(伊藤原子力研究所長) 私どもの原子炉の維持費など、原子力研究所全体にかかるお金は、人件費を入れて約3億円です。
(長谷川委員) 年間3億円ですか。
(伊藤原子力研究所長) はい、人件費込みです。そして原子炉を運転していようがいまいが、冷却する必要が全くありませんので、あとは空調代等がございます。仮に現在も運転中であったとしても、維持費はほとんど変わりませんで、原子炉の維持費だけでしたら、3,000万から6,000万ほどです。
(長谷川委員) 関西地区はどうかわからないのですが、最近は電気代がどんどん上がっているため、大型施設を保有する大学はかなり悲鳴を上げている状況です。現在でも、電気代が上がっていく状況なのでしょうか。
(伊藤原子力研究所長) 私どもの電気代は、空調と照明ぐらいなので、そこまでかかっていません。実際の細かいところは、大学全体で運用していますので、ちょっと分かりませんけれども。
(長谷川委員) ありがとうございます。あと、原子炉でいろいろと見学や実験をされるときに、ここでは従事者登録が必要なのでしょうか。
(伊藤原子力研究所長) 大学では、一時立入者という形で行っています。もちろん、学校で従事者登録を取っている方は、それを提示していただきますが、こちらで実験するときは、一時立入者という形で行っています。
(長谷川委員) 先ほど写真で見ましたが、放射箔の測定等の実験では実験着を着用していますが、これは従事者登録をされているのでしょうか。
(伊藤原子力研究所長) やっていません。
(長谷川委員) 先ほど後継機というお話がありましたが、この原子炉の寿命は何で決まるのでしょうか。
(伊藤原子力研究所長) これは非常に難しいところであります。私どもの原子炉も今年で54年経つわけであり、あと何年もつかなということを、いつも考えています。原子炉をもたそうと思えば、あと30年、40年ほどもつかと思っていますが、世の中風潮で、それほどの運転を認めてくれるかということや、老朽化した施設の更新費にお金がかかるようであれば、大学として厳しいかと思っています。どのようにして原子炉の寿命を判断するかということは、非常に難しいところでございます。少なくともあと20年はもたせたいなと、我々は期待しています。その間に是非、我々の引継ぎ炉というものを、お願いしたいなと思っています。
(長谷川委員) 高濃縮燃料の交換が不要であり、最終的に水も何も回っていないので、原子炉全体としては劣化するところがほとんどないという考えでよろしいでしょうか。
(伊藤原子力研究所長) そうですね、はい。
(長谷川委員) ありがとうございました。
(山口主査) 他には、いかがでしょうか。どうぞ、沢井委員。
(沢井委員) ただ今、劣化するところがほとんどないというお話でしたが、実は原子力機構の臨界試験装置を管理している部署に同じような話をしたところ、世の中の規制基準が厳しくなり、それに対するバックフィットが追いつかなくなったときが寿命だとの話を聞く機会がありました。その点は、大丈夫でしょうか。
(伊藤原子力研究所長) おっしゃるとおりです。私どももそのとおりです。
(山口主査) 他には、いかがでしょうか。浜崎委員。
(浜崎委員) 昭和62年から全国の小・中・高校の教員を対象に研修会を実施されていますが、この先生方はどのようにして募集されているのでしょうか。
(伊藤原子力研究所長) これは、我々の委託を受けている日本原子力産業協会の方で募集をかけていただいたり、関西原子力懇談会の方で募集をかけていただいています。もちろん我々も同じように、一緒に募集をかけています。
(山口主査) 上坂委員。
(上坂主査代理) 上坂です。最後のページの左下の韓国慶煕大学での原子炉運転実習について、これはまさに危機的ですよね。
(伊藤原子力研究所長) はい。
(上坂主査代理) 日本でありながら、国内で原子炉実習ができず、海外に行って実習を行っているということですよね。まさに危機的な状況を示した写真かなと思って拝見していました。
(山口主査) はい、ありがとうございます。
(伊藤原子力研究所長) 一点、補足させていただきたいのですが、この実習については、我々の原子炉が停止するので申請し、採択されたわけではありません。偶然にも、そのようになったわけであります。韓国の原子炉は、10ワットの出力で、我々の原子炉と同じように非常に扱いやすいく、実習に適したものございます。そういった意味で、学生は原子炉の研修を全く受けられない時期がなく、うまく繋いでくれたなと本当に感謝しています。
(上坂主査代理) もう1点、教育のみならず研究に関してですが、今、日本学術会議でも委員会を立ち上げて、原子炉を使った研究も海外にみんなが行って維持しなければいけないという議論が行われていますね。
(山口主査) それでは、木藤委員。
(木藤委員) ありがとうございます。今は先生の立場からお話しいただきましたが、実際のところ、学生はどのぐらい困っているのかについて、大学はどのようなお考えを持っているかについて聞かせていただけないでしょうか。
(伊藤原子力研究所長) これは、他の大学のことですよね。例えば九州大学の学生の場合は、旅費の負担について非常に困っているようです。本当は実習に参加したいけれども、お金がかかるということで二の足を踏む状況と思います。先ほども申しましたが、一時期、経済産業省から支援していただいた際は、たくさんの学生が来られました。ただ支援後は、それが半分以下になったかというわけでなく、3分の2ほどの規模になりました。また、近畿大学での原子炉実習について、実際に何らかの形で単位を与えたいと思ったとしても、金銭的な理由で履修者が出席できなかったら、単位を与えることはできないわけですよね。そういった意味で、多くの学生が参加できる長期的に安定なシステムをつくることができれば、大学も安定したカリキュラムとして組み入れることができ、良い効果が得られるのではないかと思っています。
(木藤委員) もう一点、研究炉が現在動かせないことについての教育上の問題を教えていただけないでしょうか。
(伊藤原子力研究所長) やはり実機に直接触れて運転するという実学が必要と思っています。それが現在、見学だけで終わっている現状について、いかがなものかと思っているところです。有意義な実習を行うために、これからも内容等について改めて検討しながら、再稼働に向けてきっちりと対応していきたいということを思っています。
(山口主査) 来馬委員。
(来馬委員) 福井工業大学も、実習等でこれまでお世話になっていますが、残念ながら現在は停止中のために実習等に参加できていない状況となっています。我々はお世話になっている立場なので、何とか再稼働してもらい、机上だけでは学べない臨界というものを、原子力を学んで社会に出ていく学生に実習を通して体験させたいなという気持ちがあります。そのような実習を経験して卒業した学生と、経験できないまま卒業した学生に、どの程度の差があるかということはわかりませんが、学生には実習が絶対必要であると思います。伊藤先生にお願いする件ではないかもしれませんが、一刻も早く何とか再稼働をしていただきたいなと思っています。
(伊藤原子力研究所長) 承知しました。
(山口主査) 森口委員。
(森口委員) 今、議論がありましたように、研究炉が実際に動いていないと、教育の面で非常に支障があると思うのですが、10ページの新規制基準への対応状況について、この新規制基準対応によって近大炉がどのような課題を抱えているかやどのような形でヒアリングが行われているかの状況について、規制当局との関係で言えないこともあるかと思いますが、可能な範囲で教えていただけないでしょうか。
(伊藤原子力研究所長) 新規制基準対応については、私どもも京都大学も難しい対応を求められています。新規制基準で我々が要求されているのは、1条から30条までであり、細かく分けますと、100幾つぐらいの項目があります。それぞれの項目に沿って御説明差し上げ、それに対して宿題を頂戴し、また御説明するということを繰り返しています。現時点で25回実施しています。大体30回ほどで、一通りの説明が終わるのではないかと思っていますが、その後、頂いた宿題についても更にヒアリングを実施する必要があるので、なかなか先が見えていないところであります。
(山口主査) 五十嵐委員。
(五十嵐委員) 御説明いろいろとありがとうございました。幾つか確認させていただきたいと思います。この原子炉は博覧会用に出されたものという導入の経緯を御説明いただきましたが、これは、オンリーワンの原子炉という理解でよろしいのでしょうか。それとも同型の原子炉はあるのでしょうか。
(伊藤原子力研究所長) この原子炉は、当時10幾製造されたと聞いています。出力は違いますが、現在もアメリカとブラジルで、同型の原子炉が稼働しています。
(五十嵐委員) それらは、やはり研究・教育用としてでしょうか。
(伊藤原子力研究所長) はい、研究・教育用です。
(五十嵐委員) わかりました。ありがとうございます。それで、先ほど森口委員へのお答えにもありました新規制基準対応の中で、一番厳しいところはどこかについて、お考えを聞かせていただけないでしょうか。
(伊藤原子力研究所長) 言いづらいところなのですが、国民の皆さん方に本当に安全であるという説明をしなければいけないのですが、我々の能力の問題でなかなか追いついていないところが申し訳ないと思っています。
(中島委員) ちょっと補足させていただきます。能力と言えば能力なのですが、要するに今まで要求されてこなかった森林火災や火山噴火というところについて、回答が求められています。我々は原子力のことは分かっていますが、それ以外のところはよくわからないという実情がありまして、電力会社等から情報を頂いたりして対応しています。また、今までも同じ火災対策等を求められていましたが、現在はそれが非常に細かくなっており、例えば原子炉建屋の中の各部屋に、可燃物がどれだけあるか、それが全部燃えたらどうなるかという評価が求められています。その評価を実施するには、それなりのノウハウやマンパワー、時間が必要でありますので、いろんな方に教えてもらいながら対応しているという意味で、伊藤先生が言われたような能力の問題ということだと思います。
(五十嵐委員) ありがとうございます。これまで、人材育成に大変貢献されてきましたが、その後、具体的にどのように役立っているかということをフォローアップ調査されたことはありますか。学生数や研究者数ということは伺いましたが、実習を受けた学生がどういうところに進学・就職しているとか、実習を受けた学校教員が、学校現場でどのように生かしたというようなことを、例えばアンケート等で調査されたことがあれば、御紹介していただけないでしょうか。
(伊藤原子力研究所長) まず学生については、特に我々はフォローアップは実施していません。学生がどこに就職したかぐらいは後でわかる程度ですが、それをきっちりとまとめたものはございません。小・中・高等学校の教員についても、聞き取りは行いますが、それをきっちりと行ったことはありません。役に立ちましたというお手紙等は頂きますが、きちんと調査は行っていません。なぜ調査ができないのかと申しますと、異動の問題があります。なかなか教員方にその後、郵便物を送ろうと思っても、異動のためになかなか届かないのですね。それもありまして、実施していません。
(五十嵐委員) ありがとうございます。あともう1点ですが、資料の最後の方に、「人材育成に関する課題と問題点」がありますが、そこの「1.遠方より参加する学生の経済的負担」については、これは国内の共同研究機関なら皆が抱える問題かと思いましたが、それは原子力に特別な問題なのかということを教えていただけないでしょうか。
(伊藤原子力研究所長) 原子力を実際に学ぶところは、京都大学と近畿大学の2つしかありません。ですので遠方の学生等は、そこまで足を運ぶ必要があります。原子力は実学が非常に大切であり、原子炉にさわって運転していただくことが原子力教育にとって非常に大切だと思います。また、実習に参加するに当たっては1週間ぐらいの期間が必要となるため、宿泊費が必要になります。ですので、学生に何らかの形で補助ができれば、学生も非常に参加しやすいと思います。学生が参加するということは、大学としてもそれをカリキュラムに入れることができるということで、更なる効果があると思います。
(五十嵐委員) どうもありがとうございます。
(山口主査) 浜崎委員。
(浜崎委員) 先ほどの来馬委員の御説明と、今の五十嵐委員の御質問と多少関係すると思いますが、私自身が昭和57年に近畿大学で、昭和58年にはこの後御説明を頂く京都大学で学生実習に参加させていただきました。当時から、原子力工学科の学生にはそのような実習に参加するチャンスがありまして、私と同じ年代・業界の方は、高い割合でこの実習の卒業生であり、ネットワーキングの機能も果たしていると思います。先ほど来馬委員から御発言がありましたとおり、原子力分野特有の遅発中性子や反射体効果という現象は、机上では学ぶものの実際に見る機会がなく、実習に参加した際に自分の目で見て、確かにそういうものが存在していることを目の当たりにできたときに、初めて原子炉物理は面白いと実感できると思います。これが机上の計算だけでの理解だと感動は余りないのですが、実際の現象を目で見ることができたときには、それなりの感動があります。私自身も、そのような経験を通して原子炉物理は面白いと思い、その道に進みました。やはり実物を使用して体験するということは、学生の将来を左右するぐらいのインパクトを与え得ると思います。
(山口主査) どうもありがとうございました。実際の原子炉があることによる意義等、いろいろなポイントについて議論していただきました。もう一件、京都大学の取組として中島委員からの御紹介がありますので、それを伺ってから、また御意見を頂きたいと思います。伊藤先生、ありがとうございました。
 それでは次に、近畿大学と同様に、研究炉を保有し、共通の悩みを抱えていらっしゃる京都大学の取り組みついて、中島先生に御説明を頂きたいと思います。よろしくお願いします。
(中島委員) それでは資料2「京都大学原子炉実験所の研究炉(KUR, KUCA)について」に沿って説明させていただきます。ただ今、近畿大学については、伊藤先生から御説明があり、質疑で大分突っ込んだ議論が出たところであり、残り時間も限られていますので、ざっと説明させていただきます。
 3ページ目を御覧ください。私どもの原子炉実験所は、1963年に設立され、設立から現在まで52年が経過しています。全国大学の共同利用研究所ということで、国内大学や研究機関を共同利用の対象としており、一部海外からも受け入れています。特徴としては、赤字で書いている、研究用原子炉(KUR)や臨界集合体実験装置(KUCA)、加速器、コバルト60ガンマ線照射設備等の原子力関係の施設・設備を使用して、研究や人材育成を行っているところでございます。4ページ目に京都大学研究用原子炉KUR(Kyoto University Research Reactor)の概要を載せています。細かい話は割愛しますが、直径2メータ、深さ8メーターのアルミでできたタンクの中に水を張り、その底の部分に炉心を組んでいます。当初は93%の高濃縮ウラン燃料を用いていましたが、5年ほど前から濃縮度20%のMTR型の燃料を使用しています。下に絵を載せています。中央部分の円の中の青色部分が炉心であり、その周りをいろいろな配管が走っていいます。このKURは1964年に初臨界を達成し、当初は1メガワットの出力でありましたが、4年後に5メガワットに設備改造しました。安全審査に絡んだ話ですが、1991年に一部低濃縮ウランを入れる際には、当時は案でしたが、原子力安全委員会が策定した水冷却研究炉安全設計指針に対応しました。また5年前に全ての燃料を低濃縮化した際は、当時の原子力安全委員会の審査指針に全て対応した形となりました。あとその同じ時期に、改訂耐震指針に基づくバックチェックというのを研究炉として唯一終了し、文部科学省と原子力安全委員会の了解を得たものであります。
 その次に、この研究炉はどのような施設かということですが、要するに中性子を発生させることのできる大きな装置だと言えます。この中性子をいろいろな実験・研究に使うことができ、代表例としては、材料に中性子を照射し、そこから出る放射線を測ることで中の組成を調べる放射化分析や、がん治療のための医療、短寿命RI、材料照射効果、中性子散乱や中性子ラジオグラフィで物質構造や生命科学的構造を調べたりするなど、汎用の研究用原子炉であります。少し宣伝になりますが、世界トップクラスのがん治療の実績を上げているホウ素中性子捕捉療法について、6ページで紹介させていただきます。がん細胞だけに特異的にたまるホウ素含有薬剤を点滴等で体内に注入後に中性子を当てると、ホウ素を含む箇所が反応し、正常細胞をほとんど傷つけずにがん細胞のみを傷つけて、がんを退治するという特徴的な療法でございまして、通称BNCTと言われています。写真は、耳下腺がんの例ですが、3回ほど照射すると、皮膚はきれいなままがん細胞だけが死んでいくというものであります。下の棒グラフは年度ごとの件数を示しており、これまで500件以上の実績をあげています。患者さんは我々の実験所に来て、1時間ほど原子炉の脇で中性子を浴び、帰っていくということを行っています。最近は原子炉だけではなく、加速器での研究開発も行われています。
 それから7ページ目に、KUCAの概要を載せています。これは、KURから10年後の1974年に稼働した、最大出力が100ワットの臨界集合体実験装置であります。臨界実験装置が原子炉と何が違うかというと、法律上の定義が異なっています。原子炉というのは、基本的には炉心は変えないんですが、臨界実験装置というのは、炉心の構造を容易に変えることができます。KUCAは、1つの建屋内に3つの炉心を組むことができる場所があり、そのうちの1つだけを選択して使用することができる特徴があります。1つは水のタンクに平板状の燃料を並べた軽水減速の炉心、残り2つが、水ではなくポリエチレンや黒鉛等を用い、その間に燃料板を並べて炉心を組む固体減速炉心です。右下に書いていますが、2009年に世界で初めて加速器駆動未臨界システム(ADS)の実験を開始しました。これは未臨界状態の原子炉に、加速器から出てきた陽子による核破砕中性子により原子炉を駆動するシステムとして世界で初めて開始しました。これは現在も、世界でKUCAだけが実施できるものであります。その詳細を、その次のページに載せています。KUCAに隣接したFFAG加速器から陽子ビームを固体減速架台の炉心に打ち込むと、打ち込んだ瞬間にぽんと出力が上がった後にすっと下がり、また次のパルスが来るとぽんと上がるという様子をグラフに示していますが、この研究は、将来的には高レベル放射性廃棄物中のマイナーアクチニドの短寿命化への利用が期待されています。次のページに、参考として共同利用研究の状況を載せています。過去5年間については、年間150から200件ほどの実績があります。平成25年度と26年度は、原子炉は停止中ですが、共同利用の公募は実施し、原子炉を使わない範囲での研究を実施しています。共同利用を通して1,000人もの方が共同利用に携わり、そのうちの3割ぐらいが学生であります。これは修士論文や博士論文研究での利用ということですが、広い意味での人材育成に貢献しているということで、参考として資料に載せました。実際に人材育成として組んでいるものが、次のページからになります。写真に「3000名到達」と書いていますが、我々の大学の一番の売りが、1975年から実施しているKUCAを用いた大学院生実験であります。下のグラフに1975年からの参加者数推移を載せています。2000年度頃からニーズが増えて、2010年には累計3,000人を超えました。先ほど浜崎委員からもありましたが、私も30年ぐらい前に実習に参加しまして、その影響もあり、この道に進んだとも言えますので、その意味では、この実習は非常に効果が大きいのではないかと思います。次のページで具体的な実験教育について説明させていただきます。炉物理実験教育というのが、我々の一番の売りであり、臨界実験装置KUCAを用いて原子炉の原理や核特性、安全性、法的規制というところを体得してもらう実験教育でございます。最初に行うことは臨界量測定で、これは学生自身が事前にどのぐらいの燃料を集め、どういう形状にしたら臨界になるかということを計算してもらい、全国から集まってきた学生とともに、こういう炉心においてはあと何枚燃料を足したら臨界になるかという理論計算を組み込んだ実験教育を行っています。実際に臨界が起こった後は、制御棒を動かしてどのぐらいの影響があるかや、中に金線を張って中性子の様子を観察すること、安全な範囲でわざとスクラムさせるような条件にしてスクラムしたときの対応や、学生に制御棒を握らせて運転させるといった幅広い実験教育を行っています。次のページにも詳細を載せていますが、毎回1週間ほどのコースで実施しています。月曜日は午後から集合して事前準備、火曜日から木曜日は実験、木曜日又は金曜日は討論会を行うとともにグループごとにテーマを出してディスカッションを行い、指導教員から非常に厳しいコメントをもらいながら勉強するという流れでございます。大まかな受入れ人数ですが、京大は学部生で20名ほど、全国大学院生は年によって変動しますが全国12大学から150名前後が参加しています。受入れ側としては大変ですが、1回1週間の実験教育を毎週連続で実施しています。この実験教育は海外にも好評で、韓国や中国、スウェーデンからの受入れ実績もあります。実は韓国の慶煕大学の学生も、京都大学に来て実験教育を受講し、ここで学んだノウハウを自国に持ち帰り、自分らの教育実験に活用されていると聞いています。その次が、原子力工学応用実験であります。これは少し範囲が狭いのですが、私どもの原子核専攻の大学院生を対象にした実験教育であります。1から7までの実験項目を設定し、内1つだけを学生に選択してもらい、1週間熊取来て実験するということを実施しています。例えば、1の原子炉反応度実験は、KURを使用して行います。KUCAは出力が低いので、燃料に直接触れながら自分で炉心を組むことができるという特徴がありますけれども、低出力の範囲でしか運転できません。KURは最大5,000キロワットまで運転できますので、短半減期の中性子吸収体であるキセノンの反応効果が見られるというKUCAではできない実験を行うことができます。また、4のアクチニド元素の抽出というのは、実際に天然ウランをKURにて中性子照射し、照射した試料を用いて核種の分配挙動を理解する実験を行っています。その他の具体的な実験内容は次のページに載せていますが、説明については省略させていただきます。それから3つ目が、原子力安全教育であります。これは福島原発の事故を踏まえて、原子力教育の中で安全を俯瞰的に見ることができる人材を育てる必要があるということで、我々のところで原子力安全基盤科学研究というプロジェクトを立ち上げました。その一環として、実験項目1から5までの原子力安全教育として、地震・津波安全教育等を含めた安全教育を行おうということで、立ち上げたものであります。1の原子炉工学実験は、KURを使用して反応度効果や原子炉の起動前点検、運転中の点検、停止点検といった安全管理の立場からどのような管理を行っているかということを学んでもらう実験であります。次のページの右下にはグラフや絵を載せていますが、4地震・津波安全教育において、KUR建屋に振動センサーを取り付け、実際の微動を計測することによって、原子力施設の地震・津波安全設計等の基礎知識を習得することを目指した安全教育であります。原子力安全教育は、社会人も含んだかたちで募集しており、実は自治体の原子力対策課職員や、電力会社の若手職員といった社会人の参加実績が多くなっており、非常に好評な安全教育プログラムとなっています。これら3つの実験教育における過去5年間の実績を、次のページに、表で載せています。炉物理実験教育の参加実績が非常に多いのですが、平成26年度は新規制基準対応で停止中のため、実績数が大きく落ち込んでいます。ただ何もしないというのもどうかということもあり、うちのスタッフが考えまして天然ウランを組み上げて、未臨界実験を実施し、実際の炉物理実験教育に近いかたちで実施している状況でございます。このようなかたちで、教育を実施しているところであります。
次に新規制基準への対応状況について説明させていただきます。先ほど伊藤先生からもお話がありましたが、新規制基準が2013年12月18日に施行されました。施行後は、KUCAのような低出力炉の場合は、定期検査に入るまではそのまま運転して良いとなっている一方、KURのような中高出力の場合は、施行日をまたいで運転する場合には、安全確認を受ける必要があります。施行時は、KURは安全対策工事を行っており、その後の再開に際して安全確認を受けました。それで運転を再開したのですが、結局はKUCAは2014年3月10日に、KURは5月26日に定期検査に入り、それ以降は停止した状態であります。その後、同年の9月30日に設置変更申請をKUR, KURともに実施し、それ以降はほぼ週1回の割合で審査やヒアリング等を行っているところであります。近畿大学もそうですが、KUCAのような低出力炉の場合は非公開でのヒアリング審査になりますが、中高出力炉のKURでは公開審査会合を受ける必要があります。具体的に何を行うのかということについては、次のページに、KURに適用される設置許可基準の条項タイトルを載せており、これらについて説明を実施しているところであります。22ページ目に、KURの状況を載せています。KURについては設置基準地震動についても対応する必要があり、ヒアリングの具体的な回数は資料に載せていませんが、概ね週1回のペースで、これまで50回ほどヒアリングを実施するとともに、月1回の審査会を公開の場で実施しています。ヒアリングや審査会合の内容については、原子力規制庁のホームページを見てもらえば、全て掲載されています。設置許可基準の基本的な要求項目は全て説明していますが、当然それに対してここはどうなっているか等の追加質問を受けており、約300の質問項目に対応しているところでございます。これまでのところでも、非常電源設備や内部溢水対策等で工事が今後必要になってきます。また、審査で難しいと感じているところは、竜巻や火災、火山等の外部事象とともに、KURでは設計基準を超えるBeyond DBA(BDBA)の事象対応について説明をする必要があり、原子力規制庁と相談しながら進めているところであります。あと地震についても別途行っていますが、おかげさまで先日、設計基準地震動が確定しました。これは非常に大きなステップであり、これが決まれば、あとはそれに従って地震関係の対応をしていくという話になります。その作業を進めた後、補正申請を提出して承認が出れば、その後は近畿大学と同じ保安規定変更や工事のための設工認、定期検査を行って最終的に合格を頂く流れでございます。現在、設工認の準備も並行して進めているところでございます。KUCAもKURと一緒に設置変更を申請し、概ね週1回の頻度でヒアリングを行っています。公開の審査会合は行われません。質問事項の回答もまだ続いていますが、ほぼ終了しつつあり、一部について今年の9月30日に補正申請を出し、残りの補正申請については現在準備中であるものの遅くないうちに出せるかなと思っています。提出後は、今度は補正申請書をベースに中身の確認が行われます。ただKUCAについても、やはり設備の工事等が必要になりますので、そこの手続や検査等で時間がかかる見込みですが、KURに比べて早く再稼働できるのではないか考えています。このような停止中の対応については24ページに載せています。停止中のため、炉を使用した共同利用研究は実施できない状況ですが、加速器やコバルト照射施設等の炉を使用しない共同利用研究は通常どおり実施しています。先ほども申しましたが、人材育成に関しては、KUCAを利用した炉物理実験教育は、未臨界体系での代替実験を行っています。これは学生から非常に好評であります。それ以外の原子力工学応用実験や原子力安全教育については、炉を使用していた部分は、過去の実験データ解析を行うとか、X線ででの計測実習を行う等の実験に振り替えて対応しています。なお、施設見学は、通常どおり実施しています。
 あと最後に、人材育成に関する課題・問題点について説明させていただきます。やはりアジアを含めた海外からの実験教育の要望が非常に増加しています。またKUCAでは、年間8~10週程度の実験教育を実施していますが、1週間に20数人受け入れると制御室はあふれ返ってしまうとともに教員やスタッフの負担が非常に大きなものとなっています。技術職員や教員は、定員削減によりなかなか補充できないという厳しい状況にて実施しているところであります。またKURは、実験教育で利用する場合は出力を上げたり下げたりする必要があり、教育のための特別な週を設ける必要があります。共同利用の運転の都合上、年に1週とか2週ぐらいでの利用が限界となっています。あと、KUCAは制御室を広めに確保している一方、KURはそうなっていないので、受入れ人数も制約があるというところが課題であります。次に問題点ですが、一般論として、規制強化やセキュリティ強化でこれまで以上に、施設の維持管理に多くの経費と人員が必要となる中、運営費や定員が減少しているという厳しい問題があります。また、競争的資金等の外部資金については、我々も文部科学省や経済産業省から受けているところであります。例えばこの競争的資金でスタッフを雇用したり装置を購入したりできるのですが、その使途についてはそこの教育だけが可能であるものの、例えば一般的な施設の維持管理に必要な経費とか実験費というのは、計上できないようになっています。例えば講義室をきれいにして、受け入れる環境を整えたりだとか、事務補助員を少し幅広に雇用することは、なかなか認めていただけないという実情があります。それから、このような競争的資金を獲得する際は、既存事業の単純延長は認められず、常にプラスアルファの新しいことを附加して実施するということが前提になっていますので、そのために本来行うべきことがおざなりになるという可能性もはらんでいると思います。あと近畿大学や我々のように、既に施設や設備を有している機関では、機器の購入費というよりは旅費をしっかりと確保したい実状がございます。KUCAの実習旅費だけでも年間600万ぐらいかかります。そういう経費を確保したいのですが、この競争的資金というのは、最初の年が10とすれば、次の年は8というように前の年度に対して2割程度の削減が求められています。そうすると単純計算で、受け入れることができる学生数というのも、例えば最初200人来てたのが、次の年は160人に減らさざるを得ないという状況になっています。そのような競争的資金というのは、使う側から見ても正直使いにくいなと感じています。最後は愚痴になってしまいましたが、このような問題点を感じています。以上でございます。
(山口主査) ありがとうございます。愚痴というか生の声ですね。それでは、中島先生から御説明いただいた内容について、何か御質問等がありましたらお願いします。どうぞ、長谷川委員。
(長谷川委員) 私どものところは、そちらのKUCAの実験に長らく参加させていただいており、かつては40人ほどの1学年全員が実習を受けていた時期もありました。そのときは旅費が出なくて結構苦しかったのですが、やはり実物に触れて学べるということが非常に大事であるという専攻全体での共通認識がありましたので、苦しい金銭事情の中でも実験に参加させていただきました。その分、座学で学んだ内容が、徹夜の計算等で厳しいと有名な京都大学での実習の場にきちんと生かされるという意味では、この実習は効果が非常に高いと思っています。現在は旅費の負担も一部あり、余裕も出てきたところですが、是非このような実習について、国全体でサポートしていただきたいと思います。また現在、シミュレーターが結構出てきており、幾つかのシミュレーターを実際に使わせていただいたきましたが、やはりシミュレーターというのは、ゲーム感覚のようで何となく緊迫感が少ないと感じています。確かにシミュレーターは、様々な事象を再現することができるのですが、やはり実際の制御盤の前に立ち、スクラム等の事象を経験するということは、学生にとって非常に良い経験になると思います。やはり今の時代だから、シミュレーターに全て交換したら良いのではないかという話が出てくるかもしれませんが、やはりそのシミュレーターだけでは学ぶことのできない研究炉での教育というのが、非常に大事だと思います。そういう意味では、今後も期待が大きいところであり、先ほど近畿大学にもお聞きしたのですが、新しく新規制基準に合格した後、核燃料の交換等もありますが、何年ぐらいまで研究炉が使用できるのかということを教えていただけないでしょうか。
(中島委員) KUCAの方は、出力最大100ワットですけれども、実際の運転は0.1ワットぐらいで行っており、燃料の減損はほとんどありませんので、近畿大学と同様に燃料の交換は不要であります。ただ、我々のところも高濃縮ウラン燃料を使用していますので、これをアメリカに返還する等の核セキュリティ上のプレッシャーが結構大きくなっています。この対応をしようと思うと、やはりお金や手間もかかると思います。下手をすると、それが原因で、止めざるを得ないという可能性もあるかと思っています。あとKURについては、使用済核燃料が出てきます。それは2026年を期限にアメリカに最終的に引き取ってもらう約束になっておりますが、その後は先がないという状況でございます。KURは今年で52年であり、あと10年で60年を過ぎますので、そこぐらいが限界ではないかと個人的な意見で考えています。
(長谷川委員) 核燃料の話に関連して、資料に量子サイクル工学の研究テーマがありましたが、これについては消滅処理というか、実際の核燃料サイクルについての研究は、行われているのでしょうか。
(中島委員) どこまでをサイクルというかはわかりませんけれども、京都大学では乾式再処理の研究については行っています。
(長谷川委員) アルファ線を放射する研究廃棄物については、どこも引き取ってくれなくて、結局施設での自己保管になるかと思います。そういったスペースの確保等の面について、どのように対処されているのでしょうか。
(中島委員) 炉の方では、少なくとも直接アルファが出てくることはありません。あとは実験の方については、すみませんが私はそこまでよく理解しておりません。
(長谷川委員) アルファ線が放射する研究廃棄物について、特殊な廃棄設備はあるのでしょうか。
(中島委員) 我々のところでは、固形廃棄物倉庫というのがあり、実は今度の設置変更でも、新しい倉庫も増設する計画ですので、恐らく容量的には、そこで十分賄えると考えています。
(長谷川委員) ありがとうございました。
(山口主査) どうもありがとうございます。では、森口委員、どうぞ。
(森口委員) やはり最大の問題点は、27ページで指摘されたところであると思います。国立大学が2004年以降に法人化され、運営費交付金を削減する代わりに競争的資金を増やしていくという大きな方針がありました。それは新たな研究課題については皆で切磋琢磨して新たな競争的資金を獲得していこうということです。しかし、特にこの研究炉については、そのような新たな研究課題に挑戦していくという面もありますが、安全問題や人材育成の部分をしっかりと確保していくことが必要ですから、これは競争資金にはなじまないなと感じました。私も現役のときには、原子力関係で競争的資金を導入した経緯がありますが、やはり今後は国全体として、人材育成等にどのような資源を配分していくかということを、5年や3年等の有期的なものでなく、定常的に支援できるシステムを新たに導入していく必要があると思うので、その辺を是非検討していただきたいと思います。
(山口主査) ありがとうございます。ほかには、いかがでしょうか。沢井委員。
(沢井委員) バックフィット等の新規制基準に対応することについては、施設の維持費以外にも様々な費用や手間がかかるため、これまでの大学の枠組みでは対応しきれなくなっており、27ページの問題点は正にその通りかと思います。原子力研究開発機構では、研究する人と施設維持する人を、一時分けるマトリックス方式を採っていました。それはそれで良い点も悪い点もありました。京都大学の三澤先生がずっとこれを御担当になり、頑張っておられるのを見ての感想ですが、これについては何か根本的にやらないと、資金等のリソースの問題で立ちゆかなくなるというのを非常に危惧するのですが、大丈夫なのですか。
(山口主査) 頂きました御指摘は、伊藤先生も含めてこの作業部会の中で感じているところかと思います。ここでは人材育成を中心に議論をしており、廃棄物や施設運営等、人材育成を継続的に行う上で関連した問題はたくさんありますので、今後いろいろな意見が出たところで、それらを繋げる作業が要るということで、承っておくということで、よろしいでしょうか。ほかには、いかがでしょうか。どうぞ、木藤委員。
(木藤委員) 炉物理実験教育についてですが、各大学が京都大学に来て、教育を受けると単位になるということなのですね。
(中島委員) そうです。あらかじめ各大学のカリキュラムに入っており、確か2単位になります。
(木藤委員) そうしますと、現在の停止中の状況ですと、その単位はどういうふうになるのでしょうか。
(中島委員) 恐らく各大学が、何か他の代替で行っていると思います。
(長谷川委員) 私どものところは、原子炉実験研修という授業で2単位とれるようにしています。京都大学での実習と、東北大の大洗のホットラボ施設での実習を設定しています。それは人数を分散させるという意味もあるのですが、このような事態になりましたので、京大炉には、人数を絞って行かせ、そして残りはもう一つの実習を受けさせるという形で履修者には実験研修が必ずできるようにしています。京都大学は、各大学の学生に単位を出すことはできません。各大学は、この内容で単位を出しますということを、学内の教務委員会等で諮って認めていますので、実習が行えないときにどうするのかということは、各大学の責任で計画することになります。
(木藤委員) ありがとうございます。
(山口主査) それでは、大体よろしいでしょうか。中島先生、どうもありがとうございました。それでは、次の議題に入らせていただきます。
 これまで第1回、第2回の作業部会で、原子力人材育成ネットワークや経済産業省からの取り組みを伺いながら原子力人材育成の様々な課題について議論してきたところでございます。その中で、原子力人材と一言で申してもその範囲や定義については幅広く、また皆さん、いろいろと違ったイメージを持っていらっしゃると思います。それで、今後の議論を円滑に進めていくために、少し論点のすり合わせを行う必要があろうかというところで、事務局から、この作業部会で議論すべき原子力人材の範囲について、資料を用意していただいていますので御意見を伺いたいと思います。では、事務局から説明をお願いします。
(上田課長補佐) それでは、資料の3について、御説明させていただきます。これまでの委員会で様々な議論を頂いている中で、この原子力の人材については、どのような範囲で今後議論すべきかという御意見も頂戴しているところでございます。作業部会の議論をこの範囲だけに絞り込むということではないのですが、一方で非常に広い範囲の中で議論していますと、議論が拡散してしまう可能性もございますので、とりあえず当面議論すべき原子力人材の範囲について、事務局にて整理させていただいたのが資料3でございます。この資料に基づいて、御説明させていただきます。
 まずは、言葉としては、「原子力人材」、「原子力」それから「人材」と2つ意味合いとして分けることができるかなと考えています。まず「原子力」の定義について御説明させていただきます。そもそも「原子力」とは何かというところですが、原子力基本法に定義がございまして、「原子力」とは、原子核変換の過程において原子核から放出されるすべての種類のエネルギーを指し、この利用については、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとするとされています。この原子力の平和利用については、非常に幅が広いということで、右側に少しちょっとこれを織り込んだ例を挙げさせていただいています。エネルギー利用、原子力からの熱の工業利用、それから放射線の利用で言えば、医療の利用や農業利用、工業利用等、様々な範囲があると思います。「原子力」の平和利用については、これらの幅広い範囲を含んでいるということになると思いますが、現在、原子力に係る政府の方針として、昨年4月にエネルギー基本計画が閣議決定されており、その中において、人材育成の重要性が示されているところでございます。ですので、当面は「エネルギー利用」に焦点を当てた議論を行った上で、その他の部分についての議論を進めていくという整理をさせていただいている図でございます。この資料の下側に、「人材」について書かせていただいております。このエネルギー利用に携わる人材とした倍も、非常に幅が広いと考えています。右側の図のところに、関連する人材の例を挙げています。まずはエネルギー利用の維持・発展のために不可欠な電力会社やプラントメーカー、大学研究機関等における技術者や研究者、それからそこに携わる作業員を育成するための取り組みに焦点を当てた議論を行った上で、その他の部分についての議論を進めていくという整理をさせていただいている図でございます。それから原子力のエネルギー利用については、技術に携わる方々のみならず、推進・規制の政策的な関与が不可欠であると思っています。このような観点から、行政機関の職員についても、作業部会の議論の対象とするべきかどうかという検討も必要ではないかと考えております。裏面に進んでいただきまして、このような人材をターゲットとしたときの人材育成の段階や主体についても議論があるかと考えています。文部科学省の作業部会の議論ということもございますので、まずは文部科学省が所掌する大学や研究機関の人材育成を中心にしながら、議論の中で初等中等教育段階での正しい知識の普及や社会人段階での教育についても今後の議論の対象としてあると考えています。まずはこれまで挙げさせていただきました部分について議論した上で、そのほかの論点につきましても、中長期的な課題として、議論を進めていくことができればと考えているところでございます。
(山口主査) それでは、御意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。それでは、森口委員。
(森口委員) 原子力の平和利用についてですが、研究炉はどこで読めるのでしょうか。それから熱の工業利用というのは、例えばガス炉等があると思います。エネルギー利用について、原子炉に係るものという意味でしたらどういう整理になっているのか教えていただけないでしょうか。
(上田課長補佐) 原子炉という部分で言えば、エネルギー利用の観点では、研究開発炉をこのエネルギー利用を活用する基礎的な研究だとか人材育成という部分で活用という部分もありますし、HTTRや放射線利用の研究炉という部分もありますので、研究炉という切り口で言えば、全て入ってくる部分ではないかと考えております。エネルギー利用というところに絞ったからといって、研究炉を全く除外するということはありません。
(森口委員) 放射線の医療利用とかRIについては入らないということは、分かる気がするのですが、ここでの記載は、原子炉に関わるものじゃないのですか。それはエネルギー利用や熱の工業利用、研究炉も含まれてくると思いますが。
(山口主査) お答えになれますか。
(上田課長補佐) はい。原子炉という切り口で言いますと、放射線の利用も入ってきてしまいます。研究炉を除外するというわけでは当然ないですし、研究炉による人材育成というのは正にエネルギー利用といった発電事業に携わる人材育成に非常に大きな役割を果たしています。そのような部分もまず議論のターゲットに入れるべきと考えていますが、育成される人材の出口の部分として、エネルギー利用というところで整理するという仕方が一つあるかなと思っています。
(山口主査) 「原子力人材」という言葉を「原子力」と「人材」に分けて書きましたよね。恐らく、今の指摘は、このような出口戦略を持ってやるために、制度やインフラの部分の議論が必要となる際に、この1枚の資料では多分読めないようになっており、多分もう一つの横串的な評価軸みたいなものが入って初めて全体が繋がるのではないかなと思います。でも御指摘のとおり、いろいろなところに同時に手をつけ出すと、議論が発散してしまうので、プライオリティーをつけてどこから狙いをつけてやるのかという意味では一つの考え方であろうとは思います。森口委員がおっしゃった研究炉というのは、人材育成の議論の上で重要なプレーヤーとして入ってくるというのは、皆さん御認識なされているかと思う一方、この資料の中で、そこの部分が見えてこないということは、先々の議論を踏まえた上で、アップグレードしていけばよろしいかと思います。ただ今、御指摘がありましたような、抜けている視点というのは、是非この場で言っていただいて、資料のアップグレードに活用させていくということでよろしいでしょうか。
(上田課長補佐) そのようにさせていただきたいと思います。
(山口主査) ほかには、いかがでしょうか。どうぞ、五十嵐委員。
(五十嵐委員) 出口としてこういう人材を育てていくためには何が必要かという議論をする上で、研究炉等は必要なものであるという流れの議論になるのかなというふうに、今伺っていて思いました。それで、その人材という中には、量や質ということが問題になってくるかと思います。こういった人材が将来どのくらい必要になるという量については、次回以降の資料で議論をしながら、育成するための手法についても議論を行っていくという理解でよろしいでしょうか。
(上田課長補佐) 御指摘いただいたとおりで、ある程度、出口の人材を絞り込まないと、どのような人材がどれくらいの規模で必要かという規模や質の議論ができないと考えています。ですので、まずは人材の範囲の絞り込みといいますか、プライオリティーをつけさせていただきまして、今後、規模や質の部分について議論を進めることができると考えているところであります。
(五十嵐委員) ありがとうございます。
(山口主査) ほかには、いかがでしょうか。はい、上坂委員。
(上坂主査代理) 原子力工学も、原子力人材育成も多岐にわたっており、そこの議論を再確認するという意味では重要かなと思いますが、これは文部科学省のプランですよね。経済産業省も人材育成を行っていますし、また最近の報道では、原子力規制庁も人材育成を行うといわれていますが、そこのすみ分けはどのようになっているのでしょうか。各事業でのテーマで機関が連携してそれぞれの取り組みを実施すると、結果的にはミクロなオールジャパンがいっぱいできてしまい、果たして大きなオールジャパンでまとまっているのかというところがあります。実は、オールジャパンと言いながら各々の取り組みを通してIAEAへ行くという現状に対して、IAEAの職員から、日本の人材育成はどうなっているのか言われることがあります。ですので、官庁のオールジャパンの政策も議論していただきたいなという思いもあります。
(山口主査) 今日もいろいろな議論をとおして、恐らく政策側の人が持っているタイムフレームやビジョンの感覚と、現場で運営している人の感覚がやっぱりずれているなということを感じた方も多々いらっしゃると思います。今、上坂委員が御指摘になったのは、ここの裏ページを見ると、結局は文部科学省での人材育成を中心に議論するということがさらっと書いてあり、果たしてこれでオールジャパンに応えられるのかという切実な問いかけだと思います。上坂委員が御指摘になった問題点というのが、やはり日本でこれまで抱えてきた原子力の人材育成の問題の本質を突いているところかと思いますので、その辺は難しい問題であるということを重々承知した上で、今の時点で考えをいただけないでしょうか。
(上田課長補佐) 御指摘は正にごもっともとでございます。そのようなスコープで議論するべきだというのは、そのとおりでございます。資料の裏側に記載した社会人段階については、色は白にしているのですが、我々もスコープとして完全除外するというわけではなく、当然ここも視野に入れて議論するべきだと思っています。そういった意味で、エネ庁にもオブザーバーとして御参加いただいており、エネ庁の方では事業者の安全確保のための人材育成について、報告書をまとめていただいていますので、そことうまく繋げるということも当然必要だとは思います。今後、全体としてどうするかという議論については、頂いた御指摘を踏まえてきちんと進めていきたいと思っておりますが、まずは我々のやるべきところでの議論という足元を固めた上で、全体として整合をきちんととっていく議論の進め方が必要かなと思っています。プライオリティーとして、自分のところの足元を固めずに他のところを議論するというわけにもいきませんので、自分のところをしっかり固めた上で、全体の整合の議論ができるような形をとっていきたいなと考えています。
(山口主査) はい、よろしくお願いいたします。ほかに御意見はございますか。長谷川委員。
(長谷川委員) 人材の範囲について、原子力発電所に携わる作業員という記載があるのですが、私どものところでは、高卒や高専卒の社会人方を対象とした大卒の資格取得等、社会人のスキルアップの取り組みも行っています。例えば外国に行ったときには、Ph.Dがあるかどうかで、扱いが全然違うということがあります。我々の教育する側としては、このようなサポートも、原子力人材育成であると思っています。ですから資料で高等教育段階と書かれていますが、社会人の再教育でも我々の大学が関与して、全体の質を上げるということができると思います。現場だけで技術を積み上げていくだけではなく、大学で更に幅広い視野で勉強してもらい、作業員や技術者、研究者の質を上げていくというような形での人材育成もあると思っています。
(山口主査) ありがとうございます。他には、いかがでしょうか。どうぞ、沢井委員。
(沢井委員) 社会人教育はスコープにないと感じられ、この分類は少しオールドファッションかなと思っています。文部科学省だから大学、社会人への教育だと文部科学省の事業ではないというのではなく、もう少し相互乗り入れがあっても良いのではと感じています。
(山口主査) はい、ありがとうございます。いかがでしょうか。はい、森口委員。
(森口委員) 突き詰めると各省の所掌範囲があるので、文部科学省で行える範囲はやはり議論を行わなければならないと思います。そういう意味では、大学に社会人が来られれば対象になるでしょうし、原子力研究開発機構が社会人に対して教育をするのであれば、それも対象になると思います。一方、例えば実際のプラント現場での人材育成というのは文部科学省としては直接的にはできませんよね。だから、そういう行政単位の切り口で整理すればいいかと思います。
(山口主査) ありがとうございます。恐らくこの資料は、関係するパーツ、パーツを漏れなく挙げ、それらの項目に対して目配りをしながら文部科学省としてどこからアプローチしてまとめていくべきかという資料ということでよろしいでしょうか。ほかには、いかがでしょうか。木藤委員、どうぞ。
(木藤委員) そうしますと、初等中等教育段階のところですが、教員養成系大学の学生というのがキーポイントと考えていますので、一つ挙げておくべきだと思います。
(山口主査) はい。今日の伊藤先生からの御説明でも、学校の先生についてお話がありましたので、挙げておくべきだと思います。ほかには、いかがでしょうか。どうぞ、五十嵐委員。
(五十嵐委員) そういう意味でいくと、文系学科・専攻が白塗りにされているのは、おかしいのではと思います。
(山口主査) 文系学科・専攻が白になっているところですよね。ほかは大体よろしいでしょうか。では、本日頂いた御意見を踏まえて、多少なりこの資料の方針なり方向で進めていくということについて御賛同いただいたと思いますので、今後も意見を踏まえて見直しつつ、次回以降、議論を進めていきたいと思います。活発に御議論いただきまして、ありがとうございました。
 それでは最後になりますが、その他の議題について事務局から御説明ください。
(上田課長補佐) 時間の都合で、手短に説明させていただきます。
 次回の関連でございますが、参考資料の4, 5の資料を配布させていただきました。こちらは何かと申しますと、本作業部会の親会に当たる原子力科学技術委員会における研究評価計画があり、本年度の事業の評価の対象として国際原子力人材育成イニシアティブの事業が対象になっています。この親会での議論の前に、次回の本作業部会で議論をさせていただければと考えています。参考資料5でこの事業の概要をつけさせていただいているところでございます。次回の作業部会までに、評価関係資料につきましては皆様方にお送りさせていただきますので、そちらをお目通しいただいた上で、次回の作業部会で議論させていただければと考えています。 なお、次回の日程につきましては、今のところ12月中旬頃の開催で調整させていただいています。詳細が決まりましたら、事務局より御連絡を差し上げます。なお次回は、先ほどの評価に加えて、日本原子力研究開発機構からも人材育成の取り組み等について、聴取させていただくことを考えています。開催案内や議事録確認につきましては、追って事務局から御連絡させていただきますので、何とぞよろしくお願いいたします。
 以上です。
(山口主査) それでは以上をもちまして、第3回原子力人材育成作業部会を終了いたします。どうもありがとうございました。

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研究開発局研究開発戦略官(新型炉・原子力人材育成担当)付

(研究開発局研究開発戦略官(新型炉・原子力人材育成担当)付)