核融合科学技術委員会 原型炉開発総合戦略タスクフォース(第23回) 議事録

1.日時

令和3年7月13日(火曜日)15時~17時

2.開催方法

 新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインにて開催

3.議題

(1)原型炉開発総合戦略タスクフォースの議事運営について(非公開)
(2)幅広いアプローチ(BA)活動の進捗状況について
(3)カーボンニュートラル社会を目指した主要国による核融合計画に関する最新情勢
(4)原型炉設計合同特別チームの活動について
(5)原型炉研究開発体制の強化のための大学等の連携強化について
(6)その他

4.出席者

 原型炉開発総合戦略タスクフォース

 笠田竜太主査、坂本瑞樹主査代理、伊神弘恵委員、今澤良太委員、奥本素子委員、木戸修一委員、古賀麻由子委員、坂本隆一委員、中島徳嘉委員、蓮沼俊勝委員、東島智委員、福家賢委員、藤岡慎介委員、横山須美委員、吉橋幸子委員

 有識者

 坂本宜照量子科学技術研究開発機構グループリーダー
 今川信作核融合科学研究所教授

 文部科学省

 岩渕秀樹研究開発戦略官、田村泰嗣室長補佐、川窪百合子核融合科学専門官、長壁正樹科学官、近藤正聡学術調査官

5.議事録

(議題1は非公開)

【笠田主査】 それでは,事務局より,委員及び事務局出席者の紹介と配付資料に関する連絡をお願いいたします。
【川窪専門官】 では,まず第11期原型炉開発総合戦略タスクフォースの委員に御就任いただいた方々を御紹介させていただきます。
資料1に名簿がございますので,主査,主査代理に続き,記載順にお一人ずつ紹介いたしますので,お一人1分程度で御挨拶をお願いいたします。
東北大学金属材料研究所教授,笠田竜太主査,お願いいたします。
【笠田主査】 御紹介ありがとうございます。東北大金研の笠田と申します。専門は,核融合炉材料,原子力材料,そういった材料の研究となっております。また,アウトリーチ活動等に関連した科学技術コミュニケーションに関しても興味を持って携わっております。タスクフォースはしばらくお引受けしておりますけれども,今回,主査として皆様に御協力いただきながら,中間チェックアンドレビューなど,非常に重要な項目を行っていくことになりますので,一層の御支援,よろしくお願いいたします。
以上です。
【川窪専門官】 次に,筑波大学プラズマ研究センター教授,坂本瑞樹主査代理,お願いいたします。
【坂本(瑞)主査代理】 プラズマ研究センターの坂本です。最近は,ダイバータプラズマの研究や,プラズマ壁相互作用の研究を主にしております。主査代理として御指名されました。微力ではありますが,尽力して,原型炉開発に向けていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【川窪専門官】 よろしくお願いいたします。
では,次に,自然科学研究機構核融合科学研究所准教授,伊神弘恵委員,お願いいたします。
【伊神委員】 核融合科学研究所の伊神弘恵と申します。こちらの委員は2期目を務めさせていただきます。現在の専門は,電子サイクロトロン加熱,及び,最近はもう少し低い周波数のイオンサイクロトロン周波数から上の周波数にかけての波の非線形相互作用に興味を持っております。微力ながら力を尽くしたいと存じますので,よろしくお願いいたします。
以上です。
【川窪専門官】 よろしくお願いいたします。
次に,量子科学技術研究開発機構核融合エネルギー部門ITERプロジェクト部計測開発グループ主幹研究員,今澤良太委員,お願いします。
【今澤委員】 御紹介ありがとうございます。量子科学技術研究開発機構の今澤と申します。実験炉ITERに設置しますコロイダル偏光計という磁場を測る装置の研究開発に取り組んでいます。専門はプラズマ計測でして,ITERに最適な計測手法について研究開発していますが,それ以外にも機械設計ですとか,遮蔽設計,安全設計も担当しております。
タスクフォースとの関係で言いますと,前期の第10期から委員を拝命しておりまして,第1回中間チェックアンドレビューでは,炉設計と計測制御のパートを担当いたしました。今期もよろしくお願いいたします。
【川窪専門官】 よろしくお願いいたします。
次に,北海道大学高等教育推進機構オープンエデュケーションセンター科学技術コミュニケーション教育研究部門准教授,奥本素子委員,お願いいたします。
【奥本委員】 こんにちは。北大の奥本です。私は,科学技術コミュニケーションといって,最先端の科学や,技術というものが社会に実装されるときにどのようなコミュニケーションが必要かといったところを研究しています。核融合につきましては,もともと総合研究大学院にいたこともありまして,核融合研からのお付き合いということになります。また,皆様からいろいろと教えていただいて,私からもコミュニケーションの部分で何らかの御協力ができればなと思っております。よろしくお願いします。
【川窪専門官】 よろしくお願いいたします。
次に,株式会社日立製作所ライフ事業統括本部ヘルスケア事業部スマートセラピー本部核融合・加速器部長,木戸修一委員,お願いいたします。
【木戸委員】 日立製作所の木戸です。御紹介いただきありがとうございます。今回,2期目となる日立の木戸であります。学生時代は,私自身はピンチ系のプラズマ実験で,大学院博士課程まで進学しましたが,やはり物作りの立場から核融合に貢献したいということで,今,メーカーに就職させていただいております。現在は,核融合,加速器,超伝導といった国家プロジェクトで進められる大型学術研究装置の機器を設計,製作する部署をまとめておりまして,そういった関係で少しでもお役に立てればと思っております。よろしくお願いいたします。
【川窪専門官】 よろしくお願いします。
では,次に,兵庫県立大学大学院工学研究科准教授,古賀麻由子委員,お願いいたします。
【古賀委員】 県立大の古賀です。私は,大阪大学のレーザーエネルギー学研究センター,今のレーザー科学研究所で,レーザープラズマのX線画像計測に従事しておりました。現在は,兵庫県立大学で核融合炉の燃料供給システムの開発を行っています。タスクフォースは初めてですので,不慣れな面もあると思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【川窪専門官】 よろしくお願いいたします。
次に,自然科学研究機構核融合科学研究所教授,坂本隆一委員,お願いいたします。
【坂本(隆)委員】 御紹介ありがとうございます。核融合科学研究所の坂本です。私は,先の期より,引き続きタスクフォース委員を務めさせていただきます。前回は,タスクフォースではダイバータとヘリカル装置を担当していました。自分の研究としましては,固体物質とプラズマの相互作用を中心とした研究を行っています。具体的にはプラズマ中での固体水素のアブレーションなどを行っています。よろしくお願いいたします。
【川窪専門官】 よろしくお願いいたします。
次に,自然科学研究機構核融合科学研究所教授,中島徳嘉委員,お願いいたします。
【中島委員】 核融合科学研究所,六ヶ所研究センターの中島です。六ヶ所に赴任して10年以上となりました。委員としては2期目になりますでしょうか。前回のフォローアップ等では,理論・シミュレーション関係を担当させていただきました。微力ながら,お役に立てれば幸いかと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【川窪専門官】 よろしくお願いいたします。
次に,三菱重工業株式会社原子力セグメント核融合推進室PJ・企画チームリーダー,蓮沼俊勝委員,お願いいたします。
【蓮沼委員】 蓮沼でございます。私は,三菱重工業の蓮沼と申します。1997年に三菱重工に入社して以来,軽水炉のアフターサービス,運転保守に特化した業務を進めてまいりました。3年ほど前から三菱重工業で核融合の業務に従事しております。まだまだ勉強中ですので,皆様の御指導を頂きたいと思っております。よろしくお願いいたします。
【川窪専門官】 よろしくお願いいたします。
次に,量子科学技術研究開発機構核融合エネルギー部門研究企画部長,東島智委員,お願いいたします。
【東島委員】 量研核融合エネルギー部門の研究企画部長をやっております東島と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私も前期からの継続になっておりまして,私自身は,この核融合エネルギー部門の全体を見ているという立場になってございます。原研に入ってからはプラズマの研究をやって,その後,ダイバータの機器開発をやって,その後,運営のような仕事,マネジメントに従事しているというところでございます。私も皆様のお役に立てるように頑張っていきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
【川窪専門官】 よろしくお願いいたします。
次に,東芝エネルギーシステムズ株式会社パワーシステム企画部部長代理,福家賢委員,お願いいたします。
【福家委員】 ありがとうございます。東芝の福家でございます。私は,入社以来,原子力の新型炉の開発,いろんな開発をずっと担当してきました。現在は原子力学会で組織文化ですとか安全文化の醸成,こういうものを倫理委員会の副委員長として活動させていただいております。今回のこの委員会,3期目となります。引き続き,どうぞよろしくお願いいたします。
【川窪専門官】 よろしくお願いいたします。
次に,大阪大学レーザー科学研究所教授,藤岡慎介委員,お願いいたします。
【藤岡委員】 大阪大学の藤岡と申します。私は,パワーレーザーを使った核融合研究であるとか学術研究というのを進めてまいりました。このタスクフォースにあっては,このパワーレーザーを使った原型炉への貢献等々について皆様と情報共有し,議論できたらと考えております。よろしくお願いいたします。
【川窪専門官】 よろしくお願いいたします。
次に,藤田医科大学研究支援推進本部准教授,横山須美委員,お願いいたします。
【横山委員】 藤田医科大学の横山です。私の専門は,放射線防護線量評価となります。このたび委員を拝命いたしました。核融合関連といたしましては,1990年代半ば頃になりますけれども,我が国でITER建設誘致ということが検討され始めたときに,三重水素の環境挙動に関する研究に携わってまいりました。微力ではございますけれども,私の専門である環境評価,それから,放射線防護という観点から本タスクフォースに尽力できればと思っています。よろしくお願いします。
【川窪専門官】 よろしくお願いいたします。
次に,名古屋大学大学院工学系研究科准教授,吉橋幸子委員,お願いいたします。
【吉橋委員】 名古屋大学の吉橋です。私,加速器型中性子源の開発に携わっておりまして,IFMIFとかA-FNSのターゲット,あとは中性子場について評価を行っております。最近では中性子によって放射化してしまう材料の評価なども行っております。微力ですけれども,力になれるように頑張りたいと思います。よろしくお願いします。
【川窪専門官】 よろしくお願いいたします。
次に,毎回タスクフォースに御参加いただいています文部科学省の科学官,学術調査官を紹介させていただきます。
まず長壁正樹科学官,お願いいたします。
【長壁科学官】 核融合科学研究所の長壁と申します。昨年から科学官として,本タスクフォースに参加させていただいています。今期は,チェックアンドレビューという重要な局面ですね。第1回のチェックアンドレビューという重要な局面ですので,微力ながら尽力させていただきたいと思います。専門としては,磁場閉じ込め核融合プラズマの中の高エネルギー粒子の振る舞い,生成について研究しております。
以上です。
【川窪専門官】 ありがとうございます。
次に,近藤正聡学術調査官,お願いいたします。
【近藤学術調査官】 学術調査官の近藤です。東京工業大学科学技術創成研究院のゼロカーボンエネルギー研究所というところに所属しております。専門はエネルギー変換とさせていただいておりまして,核融合炉と,あと,高速炉等の研究をさせていただいています。よろしくお願いします。
【川窪専門官】 よろしくお願いいたします。
本日は,議題4及び議題5の説明者として,量子科学技術研究開発機構の坂本宜照核融合炉システム研究グループリーダーに御出席いただいております。また,議題5の説明者として,核融合科学研究所の今川信作教授に御出席いただいております。よろしくお願いいたします。
続きまして,事務局の御紹介をさせていただきます。
文部科学省研究開発局研究開発戦略官の岩渕秀樹です。
【岩渕戦略官】 岩渕です。よろしくお願いします。
【川窪専門官】 研究開発戦略官付室長補佐の田村泰嗣です。
【田村補佐】 田村です。よろしくお願いします。
【川窪専門官】 研究開発戦略官付係員の鈴木蒼です。
【鈴木係員】 鈴木でございます。よろしくお願いいたします。
【川窪専門官】 最後に,私,研究開発戦略官付核融合科学専門官の川窪百合子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
次に,本日の配付資料についてですが,議事次第の配付資料一覧のとおりです。委員の皆様及び傍聴の登録をされた方に事前にメールにて配付資料を送付させていただいております。会議中,遠隔会議システム上では資料を表示しませんので,各自お手元で御確認いただきます。よろしくお願いいたします。
以上です。
【笠田主査】 ありがとうございました。
それでは,議事に入る前に,岩渕秀樹研究開発戦略官より御挨拶をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【岩渕戦略官】 御紹介いただきました文部科学省研究開発戦略官の岩渕でございます。第11期の最初のタスクフォースでございますので,一言御挨拶を申し上げます。
まず初めに,笠田主査を始め,委員の皆様におかれましては,大変御多忙の中,タスクフォースの委員にこのたび御就任を頂きまして,誠にありがとうございます。核融合,言うまでもないことですが,豊富な燃料,固有の安全性,高い環境保全性という特徴を持つ将来のエネルギー源であります。カーボンニュートラルあるいは経済安全保障といった観点から,近年,国際的な注目が高まっているところです。
主要国においては,カーボンニュートラル社会を目指すという中で,核融合発電に向けた様々な計画が発表されております。こうした中で,このタスクフォースの役割,ますます重要となっていると思います。今後の御審議よろしくお願いします。
特に,前期のタスクフォースにおきましては,原型炉ロードマップに基づき実施される第1回の中間チェックアンドレビューに向けて,アクションプランの進捗状況フォローアップを行っていただきました。今期,この第11期のタスクフォースにおいては,核融合科学技術委員会からの付託に応えながら,第1回中間チェックアンドレビューに向けた審議を続けていただくとともに,第2回中間チェックアンドレビューやアクションプランの見直しなど,様々な課題について御議論を頂きます。
主要国において,核融合発電炉に関する新しい動きが次々と出てきているということを横目に見ながら,御審議をお願いしたいと思っております。また,我が国の原型炉開発を推進していく上では,国内の体制の強化ですね。そして,専門人材の育成,あるいは先ほど来お話のありました,より多くの国民から核融合について御理解を頂くアウトリーチの活動など,様々な幅広い課題が存在しております。こうした点についても議論を深めていただくことを期待しております。
今回のタスクフォースには,産学官の様々なバックグラウンドの皆様にお集まりいただきました。核融合原型炉あるいは核融合エネルギーの早期実現に向けて,オールジャパンでの取組を促進するべく,委員の皆様から御意見を頂きたいと思っております。活発な御議論をお願い申し上げて,私の挨拶といたします。
以上です。
【笠田主査】 戦略官,ありがとうございました。海外の動き等を踏まえて,このタスクフォースの検討,位置づけ,御説明も頂いて,大変ありがとうございます。
それでは,議事に移りたいと思います。まず議事2ですね。「幅広いアプローチ(BA)活動の進捗状況について」になります。付託事項の1点目として先ほど御説明しましたが,本年1月以降の状況を踏まえてアクションプランの進捗状況調査結果に変更がないかどうか,追加的調査をします。
まず東島委員から御説明をお願いいたします。
【東島委員】 資料2を御覧いただきながら,お聞きいただければと思います。本日は「幅広いアプローチ(BA)活動の進捗状況について」ということで,主にフェーズⅡの実施結果のうち,特に皆様に御報告したいところについて,お話をさせていただきたいと思います。
フェーズⅡは,昨年の4月から進めてきているものになります。今日は時間がありませんので,いつもの導入のところは省いておりますが,事業としては3つございます。IFERCとIFMIF/EVEDA,それと,サテライト・トカマクのJT-60SAです。今日は,BAの活動とともに,一部,ホスト貢献,若しくは実施機関活動として行っているものについても御報告したいと考えております。
まず1枚おめくりいただいて,最初がIFERC事業になります。ここでは最初に左上,核融合計算機,JFRS-1を使った研究に関して簡単に御説明いたします。
これはトカマク周辺プラズマの乱流コードの開発を,これを使って行っているわけですけれども,この中では実験での複雑な磁場配位に対して,乱流の効果を入れたような,そういう高度の拡張に成功して,非線形のシミュレーションができているというような結果を示させていただいています。
これはJT-60SAやITERに向けて,その実験解析に向けたような計算コードの解析が進展しているということを示すものであります。
次が左下になりますけれども,ITERの遠隔実験センターRECに関しての成果です。これは,国立情報学研究所及び核融合科学研究所のお力,御協力も頂きまして,まずは岐阜にありますLHDのデータを,まず欧州,それから,米国を通して,青森,こちらの方に書き込みをする,データ転送するというようなことを試みております。ここでは高速の転送処理,8Gbpsのスループットの試験に成功しておりまして,そういう意味では,ITERの全データをRECへ複製するような,そういった実施の可能性というものが提示できているかなと考えてございます。
次が右側ですけれども,これは特許が絡んでおりますので,実施機関活動として,我が国の活動として行っているものです。これはベリリウムの安定の確保に向けてですけれども,ここでは新しいベリリウムの精製技術を開発しているということになります。
特徴は,省エネでCO2が出ないというところです。従来の精製技術が左側に書いてございますが,非常に高温が必要だったというわけですね。例えば2,000度という温度が必要でした。それに対して新しい精製技術は,前処理として,アルカリ性の溶液にマイクロ波で加熱する。次に酸性の溶液にしてマイクロ波をかけるということで,この複雑な工程を非常に短くできています。ここでは化学処理とマイクロ波の処理の加熱を複合化するということで,いろんな利点があると。特にこのベリリウムは,ベリリウムの鉱石の中にはほかのレアメタルも入っておりますので,そういう意味では核融合研究からのスピンオフと考えてございます。
なお,本来ですと,ここで原型炉の設計に関して申し上げるのですが,今日は議題4で報告がございますので,そちらの方で御覧いただければと思います。
1枚おめくりいただきまして,次は,IFMIF/EVEDAの事業です。写真で示しておりますけれども,まずは5MeVの長パルスの試験用のビームライン,その先に大電力のビームダンプを取り付けるという状況になってございます。この状況で現在は試験の準備を行っておりまして,ビーム損失の最小化,それから,RFQでの長パルスの実証といった試験を開始しているところでございます。
一方,このBAの事業というのはヨーロッパと一緒にやっている事業ですけれども,やっぱりコロナの影響で,欧州から専門家が来日できない。そのときにどうしますかということで,ここはIFERCの事業でありますITERの遠隔実験センターのシステム・技術も活用して,データ転送の設備を整備いたしました。これによって実時間でデータ転送できるし,欧州からも遠隔参加できるということで,こういったことを昨年は実施したということになります。これは国際協力で進める科学技術実験に大きなインパクトを与えるということで,プレス発表等をさせていただいたところです。
次,1枚おめくりいただいて,サテライト・トカマクになります。JT-60SAに関しては,2020年3月に本体が完成しております。一方,その周辺の機器につきましては,コロナの影響もあり,若干遅れてございました。こちらについても10月末までには完了いたしております。一方,統合試験運転そのものは4月から始めておりまして,この中で特に耐電圧試験等は一括で行っておりますし,その後,実施した真空排気・リーク試験についても,非常に品質管理して,早くできたということを真ん中辺りに書かせていただいています。
その後,コイルを冷却しているわけですけれども,28個のコイルを綿密に温度管理いたしまして,超伝導状態に転移したことが確認できています。これは一番右側の端ですけれども,20アンペアの電流を流すときの抵抗値をずっとモニターしていたわけですけど,あるとき,ポンと抵抗がゼロになっているというところが確認できております。
一方,サテライト・トカマクについてもやっぱり欧州の機器への技術支援が欧州の方によってなされるべきではありますが,なかなかコロナで来日できないということで。欧州からの技術支援を受けるためのデータ共有システム等を急遽(きゅうきょ)構築いたしました。これによって,コイル通電試験等を無事にできたということです。次に、トロイダル磁場コイルの通電試験が終わった後,18個のコイルを使って電子サイクロトロン加熱装置を使ったECRプラズマが生成できております。その写真にありますけど,非常にきれいなECRプラズマが得られていて,真空容器の中の状態もいいぞということで現場は非常に盛り上がっていたわけですけども,ポロイダル磁場コイルの通電を始めたところで,その電路に不具合が発生いたしました。
これについては,通電試験中に突然電流が増加いたしまして,インターロックが作動して,電流が遮断したということです。この際に断熱真空容器内の圧力が上昇して,これによって,統合試験運転を中止せざるを得なくなりました。その後,実際に真空容器を開けて,中に入って原因を調べた結果,超伝導コイル1基の接続部が損傷しているということが分かりまして,中に入ってその後に十分調査した結果,絶縁が不十分だったと。特に計測ケーブルの表面に沿って電流が流れて,短絡が発生しているということが分かりました。これは右側の図の一番下ですけれども,計測ケーブルと黄色い部分がありますが,この間と土台の部分の間に放電が,短絡が発生しているということです。
それで,今後の予定としましては,絶縁層の改修を実施いたします。それから,今回,絶縁特性があまりよくなかったということもありますので,確認のためのパッシェン試験を導入いたします。また,F4Eや外部の専門家の意見を反映しまして,当然ですが,QSTとしては,このスケジュールにこだわることなく,再発防止を徹底していきたいと考えてございます。見込みでございますけれども,来年の2月以降に,統合試験運転を再開できるのではないかと考えてございます。
今回の件は,我々としては非常に教訓になったと思います。ですので,得られた知見については,ITERや原型炉の設計製作に反映していくということで考えてございます。
以上でございます。
【笠田主査】 ありがとうございました。ただいまの御説明に対して御質問等がございましたらお願いいたします。挙手の機能を使われてもよいですし,挙手の機能もありましたか。特になければ,直接御発言いただいても。ございませんか。
では,私から一つ質問がございますけども,最初に,1つ目のIFERC事業の件ですけども,この遠隔実験参加システムで非常に高速の転送処理に成功したと。8Gbpsのスループットというのは,なかなかすごさが分からないですけど,大体これは5Gぐらいのことが安定してできるという理解でいいでしょうか。
【東島委員】 そうですね。そういう意味では速さを何に例えるのがいいのか,私も今すぐ出てきませんが,簡単に言うと,ITERの放電データは,プラズマ放電と放電の間でと申しますか,過不足なく得られるぐらいのスピードだと聞いております。ですので,5Gで幾ら出るのか,実はよく分かっていないので,その例えで答えられないですけども,そういう感じです。
【笠田主査】 たしか5Gが10Gbpsぐらいだったと思うので,同じぐらいかなと思っています。
もう一つは,同じページのベリリウム精製技術も非常に重要な消耗資源であるベリリウムの課題解決が期待できる面白い結果だと思いますが,これは確認ですけれども,日欧ではなく,日本ということでよろしかったですよね。
【東島委員】 はい。おっしゃるとおりです。これは注目を浴びていて,いろんなところからお引き合いを頂いているところです。当然我々としては,日本が守るべき知財だというふうに思っておりますので,日本の研究開発です。
【笠田主査】 ありがとうございます。やはり核融合研究開発は国際協力というところが非常に大事で,伝統的でもありますけども,やっぱり今後,原型炉に向けてはそういう国際競争力を確保していくというのも非常に重要な視点であって,特にこれは資源が関わってくるところは大事だと思うので,是非この分野もしっかりとやっていただければなと思いました。
ほかに何かございますか。坂本主査代理,お願いいたします。
【坂本(瑞)主査代理】 3ページ目の遠隔実験ですが,やはりコロナ禍で非常に,来日ができないところで,データ転送して,うまくいったというお話ですが,これは具体的には,データ転送して,六ヶ所で見ているような画面がヨーロッパでも見えて,臨場感あるような形で実施してきたというような形でしょうか。
【東島委員】 はい。実は大半のものがヨーロッパの機器ですので,やはりヨーロッパの専門家が加わった形で試験をしないと,我々も不安ですし,彼らも不安だということです。ですので,おっしゃっていただいたように,まずは同じ画面が共有できているのは当然として,一部必要な得られたデータみたいなものも,ほぼ次のように,ある程度リアルタイムにデータを転送して,議論しながら試験ができるようになったと。
そういう意味で,先ほどの高速でデータ転送できるというのは,IFERCで得られた知見がここで生きてきたということで,従来ですと六ヶ所に来ていただいて,六ヶ所でやればいいと思っていたわけですけれども,そうでなくても進められるところは進めていこうということで,コロナにうまく対応できたのかなと思っているところです。
【坂本(瑞)主査代理】 ありがとうございます。
【吉橋委員】 よろしいでしょうか。
【笠田主査】 はい。お願いします。
【吉橋委員】 ありがとうございます。今のIFMIFのところのお話ですけれども,一つ確認として,こういった実時間でデータ転送ができるようになってというのはすばらしいことだと思いますが,実際,今,これができるようになって,プロジェクトの遅れというのは大丈夫ですかというところが気になります。IFMIFに関してはほかのプロジェクトよりも早め早めに進めるべき事項だと思いますが,この辺の遅れだとかは十分取り戻せていると考えてよろしいでしょうか。
【東島委員】 ありがとうございます。我々も事業がうまく進捗していくようにということで,いろいろと欧州側とは調整しながら進めているところではあります。現状のところでは,残念ながら,それでもやっぱり欧州の人が来ないと,実際に作業してもらえないと進まない部分もあって,そういう部分は若干,後ろに倒しながら,できるところから順番にやっているというところでございます。
ですので,そういう意味では,端的にお答えするのがなかなか難しいですが,遅れないように努力しながら進めているというふうに、まずは御理解いただければと思います。
【笠田主査】 よろしいでしょうか。吉橋委員,ありがとうございました。
【坂本(隆)委員】 よろしいでしょうか。
【笠田主査】 はい。坂本委員,お願いいたします。
【坂本(隆)委員】 サテライト・トカマク,JT-60SAの予定についてですが,来年2月頃,統合試験運転を再開の見込みとなっていますが,この後のプラズマ実験までの予定をどのように考えているか,教えていただけますか。
【東島委員】 分かりました。今から申し上げるのはQSTの予定でございまして,そういう意味では,まず再発防止とか安全ということに関しては,とにかく,今から申し上げるようなスケジュールにこだわることなく,徹底していきたいとまずは思っております。それが今回の一番の反省点だろうと思いますので。その上で,今後の予定を御説明させていただきますと,一応来年2月ぐらいから,真空の排気を開始すると思うと,プラズマは恐らく,そこから予定していたという意味では夏頃になるのかなと思ってございます。
ですので,夏頃までのプラズマができるということと,運転そのものも8月ぐらいまでを想定していますので,そういう意味では,その頃までにはというところで,まずは御理解いただけたらと思います。
【坂本(隆)委員】 ありがとうございます。そうですね。これはチェックアンドレビューにも関わってくることなので,確認させていただきました。ありがとうございます。
【笠田主査】 ありがとうございます。SAの件ですけれども,こういったことで得られた教訓というものを,きちんと原型炉設計等に反映していくというのが今後大事な一つの教訓としてあると思いますが,これは原型炉もそうですけども,タスクフォースの範疇ではないですが,ITERが今後そういう試験フェーズに入っていったときに,同じような問題が起こり得るのか。あるいは起こらないようにITERの方に反映していける,知見をきちんと反映していけるようなつながりがあるのかというところを確認したいのですが,いかがでしょうか。
【東島委員】 ありがとうございます。まず今回のJT-60SAの統合試験運転そのものにも,ITER機構から御参加いただいてというか,モニターしていただいて,情報は密にやり取りをしていると思ってございます。今回,ある意味,QSTはきっちり施工管理を行っておけば,絶縁,要するに,パッシェンテストはやらなくてもいいと考えてきたわけですけれども,そうではなくて,むしろ,今回,不具合が発生したところについてはきっちりとそういうテストを行った上で,段階を踏んで進んでいきたいと思ってございます。
この点は,ITERはもともとそのつもりでいます。ヨーロッパが主体というか,ヨーロッパが真ん中にいるということもありまして,そういう計画になってございますので,我々の知見を基に,これ以外の部分も含めて,我々からフィードバックできるところは積極的にフィードバックしていきたいと思ってございます。
【笠田主査】 ありがとうございます。やはりこういったことの一つ一つの全てが教訓,将来に向けての布石となると思いますので,私などが言うのも恐縮ですけども,めげずに是非前向きに頑張っていただきたいと思います。
【東島委員】 ありがとうございます。
【笠田主査】 ほかにございますか。よろしいですかね。
では,東島委員,ありがとうございました。
【東島委員】 ありがとうございました。
【笠田主査】 では,ただいまの審議も踏まえつつ,私としては,委員会に次の3点を報告したいと思います。
まず第1に,今回のSAの件ですね。原因究明・再発防止策は,品質管理の観点から今後の原型炉計画に教訓を与えるものであると。原型炉設計特別合同チームなどが今回の経験を生かすことを求めたいと思います。
第2に,このような品質管理上の教訓がある一方,原型炉の概念設計の方針を揺るがす課題が顕在化したとは認められません。すなわち,本年,今年1月,本タスクフォースは,アクションプラン進捗調査をまとめ,原型炉概念設計に向けて技術は成熟していると結論したが,今回のこの事案にかかわらず,その結論に特段の変更は必要ないと考えます。
第3に,JT-60SAは,本年3月に,ECRプラズマの点火に成功した一方で,今回の事案により,トカマクプラズマの点火は未達成であります。JT-60SAによる研究開始という目標の達成状況をどう評価するのかは,委員会の判断に委ねたいと思います。
このように,次回,核融合科学技術委員会に報告することについて,御意見などあればお願いいたします。いかがでしょうか。
特段なければ,委員会の報告については,以上の趣旨で,私,主査一任としていただければ幸いですけども,よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【笠田主査】 ありがとうございます。それでは,本件議題については終了いたします。
次に,議事3「カーボンニュートラル社会を目指した主要国による核融合計画に関する最新情勢」に入ります。付託事項の2点目として先ほど御説明しましたが,御存じのとおり,カーボンニュートラルに向けて,昨今,各国で様々な動きがあります。その最新情報について,岩渕戦略官から御説明をお願いいたします。
【岩渕戦略官】 資料3に基づき御説明を申し上げます。タイトルは,「カーボンニュートラル実現に向け各国で加速する核融合開発競争」です。
上の方のヘッダーに書いているとおりですが,カーボンニュートラル実現ということが一つのきっかけとなり,また,ITERの計画が進捗し,技術的な成熟度が高まっているという認識も広がりもあり,主要国において,核融合エネルギー開発に向けての独自の取組が,特に去年ぐらいから一斉に加速しているという状況があり,その状況を御説明するペーパーになっております。
先ほども少し議論ありましたが,国際競争という様相が強くなってきており,民間レベルの動きも核融合ベンチャーを通して活性化している中,一般的に言って,我が国の取組として,核融合開発を更に加速していくべきではないかと感じるところです。
政策動向の変化について,国ごとに少し御紹介いたしますが,1つ目,欧州連合,EUの動きを1点目で御紹介しております。EURO fusionが2018年にまとめたロードマップによると,22世紀,世界で1テラワット,100万キロワット1,000基分の核融合発電所が必要です。こうした長大なビジョンをEUは持っているわけですが,昨年,核融合原型炉に向けた中間評価をEUが実施しました。この結果,2050年頃に発電を行うべく核融合原型炉の建設を進めるべきという評価が出ているところです。
2点目,アメリカの例です。DOE,エネルギー省の諮問委員会において,10年国家戦略計画が今年2月に出ております。バイデン政権になってすぐのこのレポートにおいて,DOEの諮問委員会は,2040年代までに核融合パイロットプラント,FPP(Fusion Power Plant)を建設するための準備を整えるべきという構想を打ち上げています。また,アメリカのアカデミーにおいては,2035年から2040年と,更に早いタイミングで発電を目指すべきという提言も今年の2月に出たばかりです。
また,先ほども安全規制の話題が少しありましたが,核融合パイロットプラントの建設に向け,安全規制の検討が米国で進んでいて,DOEやNRC(米国、原子力規制委員会)において検討が行われ,今年中に白書を出す可能性があると言われています。
3つ目の例,英国です。英国では,ジョンソン首相自らが,去年の11月,12月と立て続けに,核融合を含む政策を発表しており,これによれば,2040年までに,商用利用可能な核融合発電炉の建設を目指すとされます。英国の動きで非常に興味深いのは,具体的に発電炉の立地地域の募集,これ去年12月に募集を開始しており,今年6月までに15地域が立地地域として応募したという,目覚ましい動きが見られます。
また,規制の話。英国においても,この商用利用可能な核融合発電炉の建設に向けて,英国政府の規制政策の会議が今後の核融合規制に関する勧告を今年の5月に公表したばかりです。こうした動き,政府レベルで急になっており,加えて,核融合ベンチャーへの投資の活性化ということで,民間レベルでも動きが速くなっています。
2つだけ例を挙げていますが,1つは,MITベースのベンチャー,Commonwealth Fusion Systems,こちらは既に累計で220億円の投資を集め,2025年には核融合実験炉の稼働を目指しています。また,カナダのGeneral Fusion,こちらも既に211億円の累計の投資を集めており,実証プラントを英国に建設するための協定を英国原子力公社と結んでいます。こうした動きが加速しており,こうした中で我が国の取組方針をどうするべきかという議論が起こっています。
基本的に取組方針として,こうした核融合発電に必要な技術,国ごとに詳細を見ると,技術は様々あるようです。委員の先生方がはるかに詳しいと思いますが,国ごとに技術の違いはあるわけですが,発電のために共通的に必要になる技術,こうしたものは必ずあるわけで,こうした共通的に必要な基幹技術を早期に獲得する必要性が高まってきたということが,政策動向,民間投資の動きからの教訓と考えます。
また,こうした取組の中で,今まで想定していなかったような革新的技術,例えば高温超伝導,に注目する動きも含まれるようです。こうしたものが直ちにリアリティーのある核融合発電炉のための技術として使えるかどうかは,技術的な論点として,委員の先生方に御審議いただきたいと思いますが,こうした革新的技術の捉え方というものが一つの鍵になっているのかなという印象を感じた次第です。
各国の動向についての御説明は以上です。
【笠田主査】 ありがとうございました。ただいまの戦略官の御説明に対して,御意見等がございましたらお願いいたします。
【藤岡委員】 すみません。大阪大学の藤岡ですけど,よろしいでしょうか。
【笠田主査】 はい。お願いいたします。
【藤岡委員】 説明ありがとうございます。せっかくの機会ですので,もしよろしければ教えていただきたいのですが,政策動向の中で,欧州,米国,英国と並んでいるわけですけども,これと例えば同類,同じレベルの国内における文言というのがあれば,是非教えていただきたいなというのが一つです。
2つ目は,ITERも,そもそも1か国では作れないという話で始まったというふうに私は理解していますが,それに対してはデモというものがそれぞれ各国でできるという判断で,こういうふうな提言が進められているのか。それとも,水面下というか,想定としては,やっぱりある程度連携してということで進んでいるのかというのを,もし御存じでしたら教えていただければと思います。
以上です。
【岩渕戦略官】 国内でこうしたものがどうなっているか。このタスクフォースの親委員会である核融合科学技術委員会の従来の文書では次のように言われています。21世紀中葉までの実用化に備えて,数十万キロワットを超える定常安定の電気出力を実現する。こうした言い方がされています。
それに基づいて,実際に原型炉の建設を行うのかどうかは,いま行っている第1回中間チェックアンドレビュー,第2回の中間チェックアンドレビュー,そして,建設判断のための最終的なチェックアンドレビュー,こうしたものを踏まえて,建設判断をしていくということが,これまでの核融合科学技術委員会で定めた方針です。
また,国際協力とDEMOとの関係です。今ここで御紹介したEU,米国,英国,あるいは紹介しませんでしたが,韓国,中国もそうですが,これらの政策文書を通読いたしますと,基本的には,核融合の発電の段階というものは,グローバルな国際協力ということではなく,それぞれの国,EUあるいは米国,英国が,それぞれに推進するというのが当然のことと意識されているようです。
国際協力を否定するということでもないようですが,こうした政策文書を見ますと,基本的にナショナルな取組としてDEMOは捉えられていると感じます。
【藤岡委員】 ありがとうございました。
【笠田主査】 ありがとうございます。ほかにございますか。
私から1点ですけれども,各国の動向を見ても,やはり原型炉を主体とする国策としての展開をきちんとしっかりやっていくと。ITERから原型炉というところをきちんとやっていくというのが柱とあって,その周辺として,やはり民間の投資が活発化しているというのは,極めて私は健全な状況だと思っております。だから,これらは欧米諸国等では,車の両輪としてやっていっている,価値を上げる上では非常に好ましいのではないかと個人的には思っている次第です。
という意味で,我が国でもそういった展開になって,我が国でもきちんとITERから原型炉へという道をしっかりとやって,かつ,そういう民間が興味を持ってくれるような広い意味でのアウトリーチはしっかりやっていかなければいけないと思った次第です。そういうつもりでおりますというコメントでございます。
ほかに何かございますか。
では,ありがとうございました。ただいまの御質問,審議も踏まえつつ,私としては,委員会の方に次の点を報告いたしたいと思います。
第1に,国際情勢を踏まえ,日本も核融合開発を加速すべきである。この意味で,各国の戦略の違いもあるが,共通的に必要な基幹技術の確保が重要という「取組方針」に異論はない。
第2に,特に,この原型炉タスクフォースの立場からは,先ほど戦略官よりありました「21世紀中葉までの実用化に備え,数十万キロワットを超える定常かつ安定した電気出力を実現」という原型炉目標に必要な基幹技術の確保に最優先で取り組むことを推奨したいと思います。
第3に,このベンチャー等で考えられているような高温超伝導などの革新的技術の捉え方についてですけれども,この原型炉タスクフォースの立場を超えるところがございますが,こうした革新的技術は,現在の原型炉計画には間に合わないとしても,中長期的課題として研究開発に取り組んでいく価値があるものと考えると報告したいと思います。
本件についても,このように3点,次回,核融合科学技術委員会に報告することについて,御意見などあればお願いします。いかがでしょうか。
特段なければ,委員会の報告については,以上の趣旨で,こちらも主査一任としていただければ幸いです。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは,次の議題に移りたいと思います。議事4「原型炉設計合同特別チームの活動について」に入ります。第1回中間チェックアンドレビューは,原型炉概念設計の開始判断を行うものであり,そのために概念設計の基本設計を完了することが達成目標の一つとして挙げられています。この基本設計については,既に2019年に発表されているものですが,改めて原型炉設計合同特別チームの量研の坂本宜照グループリーダーから本委員会への報告をお願いします。
坂本さん,よろしくお願いします。
【坂本グループリーダー】 御紹介ありがとうございます。QST,六ヶ所核融合研究所の坂本宜照です。私は現在,この原型炉設計合同特別チームのリーダーを務めさせていただいておりますので,私から御報告,御説明させていただきます。お手元の資料4に基づいて,原型炉の「概念設計の基本設計」の概要ということで説明いたします。
2ページ目です。まず概要ですけども,技術的実現性のある原型炉概念を検討するために,私たちのチームでは,3つの検討方針で進めてまいりました。
1つ目は,トロイダル磁場コイルや増殖ブランケット,ダイバータについては,ITERの技術基盤の延長に概念を構築すると。2つ目に,ITERにない技術につきましては,産業界の技術や経験,大学等の知識を概念に取り入れる。3つ目に,炉心プラズマにつきましては,ITER及びJT-60SAの想定成果に基づいて概念を構築することです。
この方針の下,核融合科学技術委員会の示した,中段にオレンジで示しておりますけども,原型炉の3つの目標に見通しを得る基本概念を構築いたしました。
基本パラメータは,左下に装置の概念図と共に示しておりますけども,中心ソレノイドを用いたプラズマ電流立ち上げのために,十分大きな中心ソレノイドを設置することから,プラズマの主半径はITERよりも大きくて,主半径8.5メートルの装置でございます。また,ダイバータの熱負荷を抑制するという観点から,核融合出力は1.5ギガワットに設定いたしております。
本概念は定常炉ですが,非接触プラズマとの整合性の観点から,炉心の運転密度を高めるために,定格のプラズマ電流でパルス運転が行える運転柔軟性というものを確保しました。これはプラズマ電流が高いと運転密度も高く取れるということ,非接触プラズマを得るためには高い密度との整合性がいいということに基づいています。また,パルス運転をするときのプラズマの要求性能は比較的穏やかなものにしまして,そうすることで,原型炉建設後,すぐに発電実証を行えるというような装置を想定いたしております。
次の3ページ目ですけども,ここからは各要素について基本概念を御説明いたします。
超伝導コイルの基本概念につきましては,国内の専門家の意見を集約しまして,設計のベースラインというものを策定いたしております。例えば右側にトロイダル磁場コイルの例を示しております。その際,ITERでの実績というものを重視しまして,超伝導線材や導体構造,巻き線方式については,基本的にITERの技術基盤に基づく設計としております。
また,ITERでは,トロイダル磁場コイルの製作精度として,プラスマイナス0.25%が要求されておりましたけども,原型炉ではこれを緩和するために,補正磁場コイルを用いる概念といたしました。これについては左下側に示しております。
更に製作を簡略化して,トロイダル磁場コイルのコストを低減することができないかというようなことで,JT-60SA等が採用しています矩形導体方式,この方法を現在のオプションとして検討に着手しているといったところです。
次,4ページ目,増殖ブランケットにつきましては,日本のITER,テストブランケットモジュールの試験と同じ固体増殖・水冷却方式の概念を採用いたしております。また,補強リブ構造による筐体の耐圧構造化によって,筐体内に冷却水,これは発電のために冷却水をたくさん回しているわけですけども,それが漏えいした場合にも筐体が壊れないように筐体を強くすると。そういった状態でも,三重水素の必要な増殖比というのを確保できるという見通しが得られております。これは中段に示しております。
また,左下の図に示すように,生産した三重水素をパージガスで回収する概念を評価検討しておりますし,右下にはブランケットがプラズマ対向面である第1壁のプラズマ熱負荷評価を行っているところです。
次に,ダイバータにつきましても,W型ダイバータ・カセット構造,タングステン・モノブロック構造,水冷却方式を採用して,ITERの技術基盤に基づく基本概念というものを構築いたしております。
特徴的なところは,中性子照射の影響を考慮しまして,高熱負荷部には,冷却性能が高い銅合金の冷却配管を使用しまして,低熱負荷部には,耐中性子照射性が高い低放射化フェライト鋼,F82Hの冷却管を採用した2系統冷却系で構成している点でございます。
また,右半分に示しておりますけれども,プラズマの放射冷却によるダイバータ熱負荷低減シナリオというものを採用しまして,スーパーコンピュータによるシミュレーションを駆使して,右下に示すようなダイバータプラズマの設計ウィンドウというものを明らかにしまして,現在の設計がこういったウィンドウ内に収まるということを確認いたしております。
次,6ページ目に,加熱・電流駆動システムにつきましてですけども,主にNBIとECRFという加熱装置でございますけども,我々の今現在検討している概念では,両者を併用するという方針で考えております。
NBIにつきましては,主に電流駆動という役割を担って,ECRFにつきましては,プラズマの着火ですとか電流分布の最適化と,そういった機能的な役割を担うということで検討を進めております。
NBIのビームエネルギーは,1.5MeV,ITERは1MeVですけども,それよりも高いビームエネルギー,ECRFの周波数は252ギガヘルツ程度を考えております。
左側には,NBI,ECRFのシステム効率の目標というのを検討して,このように定めております。また,右側に示しておりますけども,トカマク建屋内でのNBIとECRFの配置の検討を行いまして,NBIにつきましては,イオン源を保守する必要がございますので,ホットセル側に配置して,ECRFアンテナにつきましては,その対面に配置したというものでございます。
次に,炉心プラズマにつきましては,冒頭,少し申しましたけども,ITER及びJT-60SAの想定成果に基づいた概念としておりまして,内部及び周辺に輸送障壁を持つような高閉じ込めプラズマ,かつ,高自発電流割合のプラズマを採用しまして,完全非誘導電流プラズマとして定常運転を行うと。これまでに,ここのスライドに示しておりますけれども,プラズマ運転シナリオですとか,導体シェルによるMHDの安定性の評価,さらに,ペレットによる燃料供給シナリオ,高楕円度プラズマの立ち上げ運転シナリオといったことについて検討を進めてきておりまして,概念設計段階であるチェックアンドレビュー1回目の後に,より検討を深めていくという予定でおります。
次,8ページ目になりますけども,燃料システムにつきましては,三重水素のインベントリの低減というものを重要視しまして,ダイレクトリサイクル概念というのを基本概念としております。これは簡単に申しますと,ダイバータから燃料ガス等々排気します,その排気したガスから不純物を取り除いた後に,そのままペレット等で燃料を供給する方式です。この方式ですと,同位体分離装置等を経由しないために,三重水素のプラントのインベントリを下げるということが可能になります。
また,右半分に示しておりますけども,炉内のインベントリの評価を進めておりまして,今年度,委託研究で必要なデータというものを拡充する予定でおります。
次,9ページ目ですけども,安全性確保の考え方としては,ITERの日本,国内誘致に検討されていたものと同様に,公衆及び放射線業務従事者に放射線障害を及ぼすおそれがないように措置を講じることを目標としております。
例えば左下に例を示しておりますけども,炉内に高温高圧水が漏えいした場合にも,圧力抑制プール等の圧力緩衝システムによって,真空容器の圧力上昇を抑制すると,そういう措置を講じるという方針でおります。これについては,より詳細な評価を行うために,TRACEコードを用いた解析を委託研究として実施する予定でおります。
また,炉内機器であるブランケットとダイバータは,運転数年後に保守交換を行うため,放射化機器の管理についても検討を行っておりまして,その際に,残留熱と線量率というものを考慮して,放射化物の管理シナリオというものを右下の表のように構築しております。その結果,全ての放射化物は,低レベル放射性廃棄物であり,浅地中処分できる見通しというものが得られております。
次に,遠隔保守についてですけども,ブランケットとダイバータというものは,炉内から搬出して,ホットセルで保守するという方式を考えております。また,それぞれ独立に交換できるというようにしております。そのための遠隔保守機器の概念というものを具体化しまして,右上に示したとおりです。
さらに,左下に示しておりますように,保守の作業動線といったことを踏まえて,保守関連設備の配置検討も進みまして,このように建屋構造も決まってきていると。さらに,これらの検討をベースに,定期交換に要する時間というものを,産業界の経験に基づいて算出していただいた結果,原型炉運転後期には4つのセクター,全部で16セクターございますけども,4つのセクターの並行作業を行うことで,70%の稼働率に見通しを得ております。
次に,11ページ目,プラント設備についてですけども,産業界の発電プラント技術を取り込んで,技術的に実現性のあるプラント設備とするため,加圧水型原子炉の冷却水条件を発電に利用する概念としております。電気出力については,発電端出力640メガワットから所内の循環電力を一次評価して,値を引いたところ,約250メガワットの正味電端出力を得られたと。これは一次評価です。今後更に正味電力を増大させるための検討を行うという計画でおります。また,右上に示すように発電プラント全体についても検討が進みました。
これは最後になりますけども,概念設計の基本設計の完了としてまとめますと,オールジャパン体制の特別チームの活動により,核融合発電の実証を21世紀中頃へ加速させる日本独自の基本概念というものを明確化しております。また,ITERとJT-60SAの技術基盤に産業界の発電プラント技術や運転経験等を取り込んだ技術的実現性のある基本概念を検討して,核融合発電プラントの全体像を提示しました。
最後に,この原型炉概念に基づいて,さらに,高出力・小型化した商用炉というものを想定して,核融合エネルギーの導入シナリオというものを評価した例を示しております。これは横軸が2010年から2100年ということで,この図に示すように,核融合エネルギーは,パリ協定の実現に重要な役割を果たし得るということが分かります。
詳細については,別添の文書を参照いただければ幸いです。以上です。どうもありがとうございます。
【笠田主査】 坂本グループリーダー,ありがとうございました。以上の御説明に対して御質問等ございましたらお願いいたします。
【坂本(隆)委員】 よろしいでしょうか。
【笠田主査】 NIFSの坂本先生,お願いします。
【坂本(隆)委員】 燃料システムについて質問です。メイン燃料ループとサブ燃料ループがありますが,サブ燃料ループで,ヘリウムなどの不純物を除去するようなシステムになっているのでしょうか。このときのサブとメインの流量の比がどのぐらいになるかということも検討しているのでしょうか。
【坂本グループリーダー】 現在,そういった燃料のバランスを評価するコードを作成しているところでして,今,最適化を実施中ということです。
【坂本(隆)委員】 では,今は概念を作っているところですね。
【坂本グループリーダー】 そうです。今後はそういった観点で,各機器がどのぐらいの規模のものが必要になるかというのをより具体化していく予定でおります。
【坂本(隆)委員】 分かりました。ありがとうございます。懸念しているのは,ダイレクトリサイクリングがでは,恐らくヘリウムばかりではなく,酸化物や(n,p)反応に起因する軽水素によるダイリューション(燃料希釈)も厳しいと思うので,是非検討の中に軽水素も入れて検討する必要があると思いました。
【坂本グループリーダー】 御指摘の点につきましては,私たちもそのように認識しておりまして,御指摘のように,今後しっかり検討していきたいと思います。ありがとうございます。
【笠田主査】 ありがとうございました。
ほかにございますか。
【伊神委員】 よろしいでしょうか。
【笠田主査】 伊神委員,お願いします。
【伊神委員】 加熱・電流駆動システムのところで,ECRFの周波数が250ギガヘルツと伺いましたけれども,これは磁場の方が上がった仕様というところに合わせて,こちらの周波数を選定されていますか。
【坂本グループリーダー】 そうですね,主に磁場が中心,6テスラと,あとは温度が40KeV,50KeVぐらいあるので,それによるドップラーシフトが効いて,周波数が決まってきています。
【伊神委員】 6テスラだと,単純計算したら,28を掛けたら170ぐらいかなと思いますが,そこから随分上がっているのは,そのドップラーシフトの件を考慮して上げているのでしょうか。
【坂本グループリーダー】 そうですね。
【伊神委員】 はい。ここまで高い周波数となると,開発でメガワットクラスのものを作るというのがかなりチャレンジングなのかなと思いますが,そこら辺の見通しというのはもうありますか。
【坂本グループリーダー】 私の把握している範囲ですと,大分前には300ギガヘルツぐらいのジャイロトロンの開発というのも視野に進めてきていたという状況で,それについては,まだ,高出力,長パルスの運転というのはできていなかったかと思いますが,ITERのジャイロトロンからそこの中間ぐらいということで,何とか頑張っていただきたいと考えております。
【伊神委員】 はい。あと,効率についても,現在,ITER,ジャイロトロンで50%というところから,また更に70から80%というのも,これも非常にチャレンジングな感じがしますが,そこら辺が本当に大丈夫かなというのが心配なところで,これはやはりできるだけ自前で使ってしまう電力を下げたいという辺りから,ここら辺に来ていると思いますが,この70から80%で,システム効率でいったら60%ぐらいというのがどれぐらいクリティカルというか,もうちょっと使ってもいいかなとか,そこら辺はいかがですか。どれぐらいまで許されるのでしょうか。このシステム効率の今,5から67。NBIもそうですけど,具体的にどれぐらいまでだったら許されるのでしょうか。
【坂本グループリーダー】 そういう意味で,ECRFについては,ECRFにどういう役割を担わせるかという,具体的な今後の検討にもよって,定常的にずっと入射するのかしないのかによって,システム効率への要求というのは変わってくると思いますけども,ここに書いた値は,ECRFの専門家の方と相談して,多段のエネルギー回収と技術開発すると,このぐらい見通せますよといった御意見を参考に目標値としております。
NBIについては,電流駆動のメインとして考えておりますので,システム効率の違いがそのまま所内電力にかなり大きく影響していきますので,これは可能な限り高くというのがもちろんそうですが,現在,見積もっている所内電力の一次評価というのは,この中性化セルに仮定しておりますので,光中性化セルの開発は必要だろうと考えています。
【伊神委員】 では,光中性化セルで,この90から95%というのは,これまた現実的な値と認識してよろしいでしょうか。
【坂本グループリーダー】 そうですね。理論的には100%近いと伺っていますが,シミュレーション等をやると90%ぐらいできそうだという話を伺っております。
【伊神委員】 ありがとうございます。
【笠田主査】 ありがとうございます。ほかにございますか。
【福家委員】 一つ質問させていただいてよろしいでしょうか。
【笠田主査】 お願いいたします。
【福家委員】 電気出力の評価というのがございましたけれども,核融合出力と有効熱出力についてはメガワットサーマルということで,あと,発電端出力,所内電力,正味電力,この辺については,電力のメガワットはいいということでよろしいですか。
【坂本グループリーダー】 はい。おっしゃるとおりです。
【福家委員】 そうすると,ざっくり言えば,150万キロワットの核融合出力で,最終的に得られる電気出力は254メガワットでいいと,こういうことで大体,今の仕上がりはそういう原型炉になりそうだということでよろしいでしょうか。
【坂本グループリーダー】 その点につきましては,まずどのぐらいになるかという一次評価をした段階ということです。求められているのが数十万キロワットの電気出力ですので,例えばこれを倍にするためにはどこを改良する必要があるかと。もしかすると,核融合出力を上げなければいけないかもしれないですし,そのときはダイバータとのトレードオフになりますが,あるいは,最近,ダイバータの銅合金の冷却系の熱ですね。これは200度ぐらいですが,この熱を有効に使うことを考えて,300メガワット近くまで行けそうな検討が今,進んでおります。そういうのを積み上げて,熱出力を有効に使っていく,正味電力を上げていきたいと考えています。これは次に何をやる,検討を進めていくための一次評価をした値と御理解いただければ幸いですね。
【福家委員】 そうすると,そういう電気出力ですとか,プラント全体の基本的な仕様を決定するのは,この後の概念設計のフェーズまでにそれが大体出来上がるような心積もりでいらっしゃるという,そういうイメージでよろしいですかね。
【坂本グループリーダー】 はい。そのとおりです。
【福家委員】 ありがとうございました。
【川窪専門官】 横山委員が手を挙げていらっしゃいます。
【笠田主査】 横山委員,お願いいたします。
【横山委員】 ありがとうございます。横山です。私の専門的なところから言いますと,やはり安全性というところが非常に注目すべき点ですけれども,公衆への理解ということも含めて,安全性の確保というところをしっかりとやっていくというのは重要だと考えています。
それで,今,この資料を拝見しましたが,今,2つ挙がっていまして,1つは,そのダイバータターゲット部に関する損傷ということで,これは水系への影響なのかなと思っておりまして,それでもう1つは,放射化物の廃棄に関するものというふうに見ました。
例えば実際の,今,概念設計ということですので,まだ先になるのかもしれないですけれども,一般公衆ということを考えると,稼働時の大気中への放出というところですけども,そういう評価なり,そういう部分の考えというのはどの時点で入ってくるものなのでしょうか。
【坂本グループリーダー】 ありがとうございます。私も原型炉を作るときに,最後に一番最も大事になるのはこの部分だと思っております。今,御指摘の運転中の作業従事者被ばくにつきましては,現在,先ほどお示ししたように,例えばホットセルとか,ああいったものの全体構成等が見えてきましたので,今後,換気空調系統の検討を含めことや,あるいは管理区域の設定,そういったことを進めた上でしっかり示していきたいと考えているところです。
【横山委員】 ありがとうございました。
【笠田主査】 ほかにございますか。
私から少しだけ。安全性,あるいは,いろいろ比較検討していかなければいけないコストといったものが,カーボンニュートラルが重要視されている今になってくると,原型炉の概念設計の基本設計を始めた頃よりもどんどん時代は進んでいると思うので,常にバックキャストして,より社会に受け入れ可能で,かつ,魅力的な原型炉に仕上げていく必要があると思うので,是非そういった点,横山委員の御指摘も含めて,検討していっていただきたいと思いました。
もちろん技術的なところというのは,きちんと要素技術の技術成熟度を高めていくことも大事ですけども,そういった両者を常にウオッチしていただいて,また,あるいはそういったところに設計側から提言していただいて,密なコミュニケーションを引き続きよろしくお願いいたします。
【坂本グループリーダー】 はい。こちらこそよろしくお願いいたします。
【笠田主査】 ありがとうございました。ほかになければ,本件,これで終わりにしますけど。
【木戸委員】 いいですか。
【笠田主査】 もちろんです。
【木戸委員】 では,1点。超伝導コイルのところで,先ほど核融合ベンチャーでも高温超伝導のお話があって,どちらかといえば,かなり革新的技術に近いので,今回の原型炉とは別の道で開発を進めるというお話もありましたが,今のこの超伝導コイルの原型炉に向けた開発の中には,そういった概念的な検討も含めて,高温超伝導というのは一つの解としては,今,入っていないのでしょうか。
【坂本グループリーダー】 高温超伝導につきましては,我々もそういった開発の進展というのは注視しておりますけども,設計してみると,例えばトロイダル磁場コイルにつきましては,ほとんど構造材の強度で果たせる磁場等々決まってきてしまっています。ほとんどの占有体積としてはほとんどが構造材料で,導体の領域が狭いということがあって,高温超伝導材料を使えても,多分,TFコイルについてはあまりメリットがないだろうという理解でおります。
ただ,装置のサイズを大きくしている一つの理由に,CSコイルというお話をしましたけども,CSコイルのところに,そういった高温超伝導コイルを採用することができると,装置を若干小さくすることができると思っているので,そういった検討はやっております。
【木戸委員】 分かりました。
【笠田主査】 ありがとうございました。
ほかにございますか。
ありがとうございます。あと最後に1点だけ,私からコメントというか,技術的な部分の御説明の仕方は,これはタスクフォースなので,専門家もいますのでいいのですが,今後これをきちんといろんなところに説明していくときに,テクニカルタームが多過ぎて,無説明で出てくるのは如何なものか。私自身がそれは説明し切れないものもかなり含まれているので,そういったところをやっぱり今後,ヘッドクォーターの活動とうまくリンクして,広く説明を受け入れられるようなものにしていく努力を,私も含めてやっていく必要があるなと感じました。一緒に頑張りましょう。
【坂本グループリーダー】 はい。承知いたしました。
【笠田主査】 ほかにございますか。よろしいですかね。
【長壁科学官】 すみません。一ついいですか。科学官ですが。
【笠田主査】 はい。長壁さん,よろしくお願いします。
【長壁科学官】 先ほどの高温超伝導の件で少し質問ですが,原型炉としては,今の方針で問題ないと思いますが,今,結構冷媒のヘリウムの入手に苦労することがあるので,原型炉の次の核融合炉ということを視点に入れたときには,高温超伝導というのは一つ大事なのかなと思います。
【笠田主査】 ありがとうございます。やっぱり革新的なものを全て別に切り捨てているわけではなく,原型炉の主眼がきちんとしっかりしていれば,そういったものも勢いづくというところが大事だと思います。ありがとうございます。
では,よろしいですかね。それでは,ありがとうございました。坂本グループリーダー,ありがとうございます。
【坂本グループリーダー】 ありがとうございました。
【笠田主査】 続いては,議事5ですね。「原型炉研究開発体制の強化のための大学等の連携強化について」に入ります。タスクフォースの下に設置した共同研究ワーキンググループから,2020年度の共同研究の成果等について説明していただきます。量子科学技術研究開発機構の坂本宜照グループリーダー,そして,核融合科学研究所の今川信作教授,よろしくお願いいたします。
【坂本グループリーダー】 資料5に基づきまして,前半のQST共同研究の部分までは,私,坂本宜照が御説明いたします。NIFSの共同研究の部分については,NIFSの今川先生より御報告します。
それでは,2枚目の方を御覧ください。これはこれまでもお出ししておりますけども,期も変わったということで,再掲いたします。
これは共同研究の目的と運用体制の概要を示したものです。目的は上に書いてございますけども,大学等を対象とした原型炉に向けた共同研究を取りまとめる新たな体制を整備し,自主・自律を前提とする大学等の優れた取組を支援することにより,国と研究機関で一体となって原型炉研究開発に取り組むことを目的とするということで,2019年より,こういった体制が運用されております。
下側に運用体制を示しておりますけども,ここではQSTとNIFSの間の共同研究の方針を示すプロジェクトディレクター的機能というものを共同研究ワーキンググループが担っております。上側に書いているものです。
そのほかに,共同研究の公募テーマを立案し,所掌課題の進捗を把握し,アクションプランに沿って進むように助言を行うプロジェクトオフィサーを中心に運用しているということで,このプロジェクトディレクター的機能とプロジェクトオフィサーを置いているというのがこの運用体制の特徴となってございます。
また,共同研究調整サブグループというものがございますけれども,この中にはプロジェクトオフィサーも入っておりまして,ここでは主にQST側とNIFS側の共同研究の公募テーマのすみ分け,あるいは調整といったことを担うグループになっております。
次の3ページ目ですけども,共同研究ワーキンググループから共同研究の成果をまずコミュニティーに報告,共有すべきという方針を出しております。そこで,共同研究調整サブグループで,ここに示しております2つの成果報告会を昨年度,企画いたしました。
1つ目は,核融合エネルギーフォーラムの実用化戦略クラスターの協力を得まして,DEMO設計サブクラスターの会合の中で,主要な共同研究の成果について,研究代表者に報告いただいております。
2つ目は,プラズマ・核融合学会にて,シンポジウムとして,原型炉研究開発共同研究の進展というものを企画いたしております。ここではプロジェクトオフィサーから担当分野の共同研究の全体概要と主要成果について報告いただいたというものです。
次,4ページ目ですけども,これはQST共同研究の昨年度の実施概要をまとめております。2020年度は36件の共同研究を実施しております。右上側に共同研究の参加者の役職の内訳分布というものを示しておりますけども,御覧いただいているように,90名のポスドク・学生が参加しておりまして,本共同研究が人材育成にも貢献しているということが御理解いただけると思います。QST分の共同研究につきましては,中段ですけども,QST核融合炉工学研究委員会にて成果報告会を開催しまして,これには研究代表者を含め,67名が参加しまして,1日かけて,原型炉に向けた共同研究の成果を共有して議論する,とてもいい機会になりました。
また,このときに共同研究者の士気を高めるというか,若手の人材育成に寄与することを目的に,共同研究優秀賞というものを2件選定しております。ここに記載してございますとおりです。
また,2021年度のQST共同研究の公募を実施しまして,新規応募17件と継続申請29件,併せて46件を採択したというところでございます。
次の5ページから9ページ目までは,2020年度のQST共同研究,36件の成果概要を簡単にまとめておりますけども,本日は時間の関係で,ここの部分,説明を省略させていただきますので,御了解のほどお願いいたします。
飛んで,10ページと11ページには,2021年度のQST共同研究46件の一覧をアクションプランの項目ごとにまとめてございます。この部分についても,本日,時間がないので,説明は省略させていただきます。
以上がQST共同研究の部分です。
【笠田主査】 引き続き,今川先生,お願いいたします。
【今川教授】 今,坂本さんが詳細を省略されてしまいましたが,核融合の方は詳細な説明だけになってしまうので,要領よく行きたいと思います。12ページ目を御覧ください。
核融合科学研究所,NIFSの方で公募して採択されたものの一覧が12ページ目に示されています。2020年度は新規が2件,この赤字で示した2件が新規で,5件は継続ということになります。
項目としては,ブランケットに関するものが2件,ダイバータに関するものが3件,燃料システムに関するものが2件という採択結果になっております。
13ページ目が成果の概要を示しておりまして,13ページ目と14ページ目が成果の概要を示しております。時間の関係で省略させていただきます。
最後,15ページ目ですけれども,2021年度の公募につきましては,核融合科学研究所の公募用案内と,審査の仕方に少し不備があるという指摘を頂きまして,体制を見直したということで,現在,再公募を行っております。今週金曜日締切り,8月上旬に審査を行うことにしております。
公募テーマにつきましては,昨年度のタスクフォースで審議を頂いたものから変更はございません。
説明は以上となります。
【笠田主査】 坂本グループリーダーと今川先生,ありがとうございました。
続いて,原型炉研究開発共同研究については,令和4年度概算要求を目指して,新たに検討していることがあると伺っています。その点について,東島委員から簡潔にお話しいただけますでしょうか。
【東島委員】 今,QSTの坂本さんが説明されたのは,QSTと大学の間でやる共同研究になります。一方,今川先生が御説明されたのは,NIFSと大学の間で行われる共同研究ということになります。
そうしますと,我々,QSTとNIFSというのはそれぞれ特徴,強みがあるわけで,そう思うと,QSTとNIFSが一緒に,その特徴を生かしながら,組織として協力して,研究していくところもあるのではないかと考えておりまして,そういう意味では,両方を支えるものとして,まずは土台のQSTとNIFSが一緒になって,共同研究していきましょうというようなことを、現在考えております。それで,R4年の概算要求に今,出させていただいているという状況になります。もちろんどうなるか分かりませんけれども。
以上です。
【笠田主査】 東島委員,ありがとうございました。これまでの坂本グループリーダー,今川教授からの御説明も含めて,御質問等ございましたらお願いいたします。
【今澤委員】 よろしいでしょうか。QST,今澤です。
【笠田主査】 お願いします。
【今澤委員】 研究公募のテーマというのは,アクションプランのこの部分を共同研究に出そうみたいな,大きなビジョンがもともとあって,それを落とし込んだ結果がこれになっているのでしょうか。
【坂本グループリーダー】 では,坂本から回答いたします。プロジェクトオフィサーが,そのアクションプランと,あと,実際に国内で行われている研究活動を,双方を突き合わせて,アクションプランの実施に足りていない部分,あるいは強化しなければいけない部分というところの研究テーマを提案して,それを共同研究調整サブグループの中で議論した上で,公募テーマとして,公募にもかけるということをやっています。
【今澤委員】 私,去年かおととしにも質問しましたが,結局,この公募というのがプロジェクトオフィサーのつてがあるところに回ってしまっていて,例えばアクションプランのこの部分は遅れているから手を当てなければいけないけども,そこのつてがないから後回しになってしまっているとかそういったことはないのでしょうか。
【坂本グループリーダー】 アクションプランの各項目を担当するプロジェクトオフィサーがいるので,そういう意味では,カバーできているという理解です。
【今澤委員】 そうですか。私は,計測制御を担当しているので,特に気になってしまうのかもしれません。計測制御の共同研究というのが今まで,今年,データの取扱いみたいなところで2件あるようですが,ちょっとカバーが弱いのかなと気になっていまして,そういった質問をした次第です。
【坂本グループリーダー】 はい。どうもありがとうございます。今後は計測制御といったところは力を入れていきたいと思っているところですけども,今,特別チームの中で,計測制御ワーキンググループというのを立ち上げて,原型炉の計測器は何にすべきか,あるいは制御はどうあるべきかという議論を進めています。そこでの報告というか,結論を受けて,共同研究等に展開していければと考えています。
【今澤委員】 ありがとうございます。
【笠田主査】 ありがとうございます。ほかにございますか。
【藤岡委員】 すみません。藤岡ですけども,よろしいでしょうか。
【笠田主査】 はい。お願いします。
【藤岡委員】 先ほどの質問とも少しだけ関係するが,NIFSの方について公募開始が7月上旬で,締切りが今週の末ということになりますと,かなり期間としては短いように,一般的には感じます。公募ですので,やはりある程度の周知期間と準備期間を今後設定いただけた方がいいのではないかと思いました。
【今川教授】 核融合科学研究所の今川です。御指摘,ごもっともですが,公募テーマにつきましては,昨年12月に公募したものと変えておりませんので,申請に準備されていた方については,再公募というのは特に問題はないかと思います。新たに申請をされようとする方にとっては確かに2週間というのは少し厳しいかなとは思います。この後,実施期間が短くなってしまうということがありまして,申し訳ないのですが,短い期間での申請とさせていただきました。
【藤岡委員】 分かりました。
【笠田主査】 そういった事情ですのでということになりますね。
ほかにございますか。
では,御説明ありがとうございました。本件はこれで終わりにしたいと思います。
次に,議事6「その他」に入ります。核融合科学技術委員会においては,今年,第1回中間チェックアンドレビューを実施することとしていますが,その中で,第2回中間チェックアンドレビューに向けた課題を取りまとめることとしています。それらの課題は技術的な内容を多分に含むことから,次回以降のタスクフォースにおいて審議していく予定です。
本日は,その具体的な内容については言及しませんが,まずはアナウンスのみさせていただきます。よろしくお願いいたします。
ということで,本日用意しております議事は以上ですが,このほか,特に報告,審議すべき案件はございますか。
【藤岡委員】 すみません。さっき言いそびれたことがあるのですが,よろしいでしょうか。
【笠田主査】 はい。それでは,お願いします。
【藤岡委員】 資料3でベンチャーの話があったと思います。今,ベンチャーで投資されているのは少し保守本流とは違うところに投資されているという印象を私自身持っていまして,そういう意味では,そういうオルタナティブをいかにコミュニティーとして持っているかというのがある程度重要なのではないかなと感じています。
そういう意味では,この委員会で別にそこをエンドースする必要はないと思いますが,やはり核融合研究の多様性の重要さみたいな,そういうのが一つ文言として残ってもいいのかなと思っています。
【笠田主査】 藤岡委員,ありがとうございます。藤岡委員の御指摘には私も個人的には賛同するところですが,タスクフォースの所掌が原型炉というメインストリームのところですので,多分この辺りは上の委員会ですか,核融合科学技術委員会の方で御検討というか,考えていただくということが第一かなと私としては思います。
【藤岡委員】 おっしゃるとおりだと思います。
【笠田主査】 戦略官,いかがでしょうか。そういったことで。
【岩渕戦略官】 主査のおっしゃる点は全くそのとおりだと思います。
【笠田主査】 はい。では,藤岡委員,そういうことで回答とさせていただきます。
【藤岡委員】 分かりました。
【笠田主査】 ほかに何かございますか。
【福家委員】 福家ですけど,よろしいでしょうか。
【笠田主査】 お願いいたします。
【福家委員】 今年の委員会の活動計画,委員会というか,このタスクフォースの活動計画というのは,これは次回示されると考えてよろしいでしょうか。といいますのも,先ほどアクションプランの追加調査とありましたけれども,恐らくアクションプランを見直すのか,あるいは今回の,今度チェックアンドレビューをいつ頃行うのかとか,こういう全体の計画を示していただいた方が皆さん,心積もりができるかと思いますが,いかがでしょうか。
【笠田主査】 こちらは,何かお答えできますでしょうか。
【岩渕戦略官】 チェックアンドレビューの実施主体は核融合科学技術委員会です。その上で,今,項目ごとに審議しているところですが,必要に応じて,技術的な検討事項がある場合に,委員会からタスクフォースに都度,審議を付託するという形になるかと思います。
この時点ではまだどのような事項をいつ御審議いただくか,委員会において固まっていない状況ですので,固まり次第,タスクフォースの皆様にお知らせしていくことになるかと思います。
【福家委員】 承知しました。ありがとうございました。
【笠田主査】 戦略官,ありがとうございました。ほかにございますか。
よろしいですかね。少し早く終わりそうですけれども,それでは,本日の原型炉開発総合戦略タスクフォースはこれで閉会いたします。御多忙の中,御出席いただきありがとうございました。今後もよろしくお願いいたします。
以上で閉会いたします。

―― 了 ――
 

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