核融合科学技術委員会 原型炉開発総合戦略タスクフォース(第38回) 議事録

1.日時

令和7年2月12日(水曜日)15時30分~17時30分

2.開催方法

オンライン開催

3.議題

(1)フュージョンエネルギー・イノベーション戦略を踏まえた最近の取組
(2)原型炉実現に向けた基盤整備
(3)原型炉研究開発ロードマップの見直しに向けて
(4)その他

4.出席者

原型炉開発総合戦略タスクフォース

坂本瑞樹主査、武田秀太郎主査代理、伊神弘恵委員、大山直幸委員、奥本素子委員、木戸修一委員、古賀麻由子委員、近藤正聡委員、坂本隆一委員、鈴木隆博委員、馬場貴志委員、福家賢委員、藤岡慎介委員、横山須美委員、吉橋幸子委員

有識者

坂本宜照 量子科学技術研究開発機構核融合炉研究開発部核融合炉システム研究グループリーダー

文部科学省

清浦隆大臣官房審議官(研究開発局担当)、馬場大輔研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)、山﨑久路課長補佐、久島鉄平核融合科学専門官、安原亮科学官、梶田信学術調査官

5.議事録

【坂本(瑞)主査】  本日は、御多忙のところ、御参加いただきましてありがとうございます。定刻となりましたので、第38回原型炉開発総合戦略タスクフォースを開会いたします。
 今回はオンライン形式にて開催します。司会進行については、全体の進行は主査の私、坂本が担当いたします。
 それでは、議事に入る前に、事務局より定足数及び配付資料の確認をお願いいたします。
【久島専門官】  ありがとうございます。文部科学省核融合科学専門官の久島でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 まず、本日の委員の御出欠でございます。本日は全ての委員に御出席いただくという予定になってございます。定足数の過半数を満たす予定となっていることを御報告申し上げます。
 本日は、オンライン形式による開催となってございます。発言いただく際には、画面の下にございますリアクションボタンから「手を挙げる」ボタンを押していただいて、ミュートを解除の上、御発言いただきますよう、よろしくお願いいたします。
 最後に、本日の配付資料でございます。こちら画面投影させていただいている議事次第の一覧のとおりでございます。資料1から資料5及び参考資料となってございます。会議中はZoomの画面共有機能をこういった形で使わせていただいて、事務局より資料を表示させていただこうと考えております。
 以上でございます。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございます。
 本委員会は、核融合科学技術委員会運営規則に基づき、非公開の議題を除いて議事を公開いたします。御発言は議事録に掲載され、ホームページ等で公開されますので、御承知おきください。
 また、本日は、議題2の説明者として、量子科学技術研究開発機構(以下、QST)核融合炉システム研究開発部の坂本宜照核融合炉システム研究グループリーダーに御出席いただいております。
 それでは、本日の議事に入ります。
 まず、議題1「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略を踏まえた最近の取組」に入ります。事務局より御説明をお願いいたします。
【馬場戦略官】  事務局でございます。資料1に基づきまして、特に前回11月以降の主な取組について御報告させていただければと思います。
 本日は、前半、フュージョンエネルギーをめぐる環境の変化として諸外国の動向を中心に、また、2番目として、現在国会で審議中の政府予算案、また、既に成立しております今年度の補正予算、ITER、BAに加えて、後半の議論に関わります原型炉実現に向けた基盤整備の状況等について御報告させていただければと思います。
 まず、諸外国の動向です。これは前回も御報告している内容なので、簡単に御報告したいと思います。
 まずアメリカについては、アメリカとして初めて国家戦略を策定しております。当然、政権が替わったタイミングではありますが、つい今月発表されたDepartment of Energy、エネルギー省としてもフュージョンを重視するというような方向性が打ち出されております。イギリスも同様に、政権が替わったタイミングではありますが、フュージョンについては引き続き推進しているという形でアナウンシングされています。ドイツ、中国については既報のとおりです。ITERについては、この後、詳細御報告したいと思いますが、6月にベースライン更新の提案があって以降、原型炉タスクフォースでも俯瞰的な議論をしてきたところかと思います。また、G7についても既に御報告しているとおりですが、本日はFusion Key Elementsの内容について御報告したいと思います。
 フュージョンエネルギーをめぐる環境の変化、特に今月、先月、また12月と様々な動きがあったので、3ページ目で簡単に御紹介したいと思います。
 まず、アメリカです。世界で最も大きいと言われているCFS社、Commonwealth Fusion Systems社が商業発電所の立地をバージニア州に決めたということを発表しております。100以上の候補地の中から2年以上かけて選定し、バージニア州とも積極的に連携しています。そして、特に注目すべき点としては、地元のユーティリティー、Dominion Energy社が土地のリースといった技術的な知見を提供するということで、2030年代初頭にはグリッドにつなげるということを目指す旨発表されております。
 イギリスについては、政権が替わり、Plan for Changeという形でアナウンスされています。1月に、フュージョンエネルギーの開発の加速と経済成長を始動するため、4億1,000万ポンドの投資を発表し、施設設備や人材育成等を通じて急速な発展を支援するということをうたっています。特に新政権が重視しているポイントだと思いますが、原型炉に相当するSTEPの2040年までの建設に向け、業者の選定プロセスが進展していること、また、もともとイギリス中部の石炭発電所のあった土地にこのサイトを決定しており、新たな雇用を生み出すというところの部分を強調しているのが印象的でありました。
 一番下、中国については、安徽州にあるASIPPのEASTについて、世界新記録となると言われている1,000秒を超える閉じ込めを記録したという旨が発表されております。こちらについても、もともと以前EASTが達成した目標を大幅に上回るということで、中国の研究機関として発電に向けた大きな進展というような形でアナウンスされています。
 続いて、ITER理事会の状況です。これは前回11月の原型炉タスクフォース含めて、半年弱、先生方にも議論していただいた内容を踏まえて、日本極として理事会に臨んでまいりました。11月20日、21日に開催され、日本の首席政府代表としては増子文部科学審議官が参加しております。
 議事のポイントとしては、1番、計画の進捗状況として、機器の製造や組立て、据付け等が進展していることです。この後簡単に触れますが、7月に式典を開催したトロイダル磁場コイルの全機納入に続き、ダイバータ機器の製造や安全規制当局との建設的な意見交換が進んでいる旨、また、真空容器等の修理が進展しており、専門家パネルや過去の教訓を反映し、修理が完了したことを理事会としても歓迎しております。
 ベースラインの更新については、今回集中的に議論が行われております。今回、理事会としては、ITER機構から提案された新しいベースラインにおける全体的なアプローチを支持するということを発表しております。ただし、理事会としては、ITER機構に対して、リスクの低減やコストの最適化のための努力を継続することを要請しております。引き続き、この審議会、核融合科学技術委員会ももちろん、原型炉タスクフォースにおいても、ITER理事会での議論、またITER計画の進捗状況については随時報告していきたいというふうに思っております。
 これも既に報告済みですが、昨年7月には、当時の盛山文部科学大臣がトロイダル磁場コイル納入完了記念式典に参加しております。真ん中部分、大臣の式典での挨拶を引用しておりますが、このITER計画に日本としては当初から参画し、主要機器の開発・製作を進めてきたこと。その中でも今回、技術的困難を乗り越え、完成に導いたというのは、日本のものづくりの力が存分に発揮されたことの証左であるということをうたっています。現在、ITER計画は、ベースライン更新、こうした重要な局面にある中で、ITER計画が確実に進展していることを示すものだということを式典の場でも申し上げているところでございます。
 また、この後の議事にも関係するので、5ページ目の下の部分も改めて御紹介しますが、ITER機構職員の子弟が多く通うPACA国際学校について、こちらはフランスの公立学校ということで、無料で教育を受けられる場所でありますが、我々文部科学省としても、働いている職員の方々の御子息の教育環境を整えるためにも、こういった部分について引き続き支援をしていきたいというふうに思っているところでございます。
 続いて、G7の動きです。これも既に御報告済みですが、G7、イタリアで開催されたサミットの成果文書において、恐らく初めてフュージョンエネルギーに関する記載が盛り込まれております。フュージョンエネルギーが将来的に気候変動とエネルギー安全保障上の課題に対して永続的な解決策を提供する可能性があるということを、首脳間でも認識を一にしているところでございます。6ページ目の下の部分に記載あるとおり、G7作業部会の設立を約束する、規制に対応する一貫したアプローチに向けて取り組む、World Fusion Energy Groupの創立閣僚級会合をローマで主催するという意思決定を歓迎するという形で発表されておりまます。
 それも踏まえて11月には、これは前回御報告する直前だったかもしれませんが、文部科学省からは当時の今枝文部科学副大臣が参加し、国家戦略を踏まえた取組を紹介するとともに、国際連携強化の意思を表明しております。午後には、研究開発、官民連携、産学連携に関する3つのパネルを実施し、J-Fusionや経団連などから参加し、パネルディスカッションが行われています。その前、11月4日にはフュージョンエネルギーに関するG7作業部会の初会合が開催され、内閣府の川上審議官、核融合科学研究所(以下、NIFS)の吉田所長などが参画し、早期実現に向けてG7として優先的に取り組むべき事項について議論が交わされております。
 このWorld Fusion Energy Groupの場で初めて公表されたものとして、Fusion Key Elementsがあります。こちらについては原型炉タスクフォースでも関わる部分がございましたので、簡単に御報告したいと思います。
 8ページ目の一番上に記載のあるとおり、フュージョンエネルギーの開発に向けた共通のビジョンとして策定し、研究開発から実証、商業化に至るまでの道筋について共通理解を構築し、世界的なイニシアチブの維持・発展を支える協調体制を示すということで、関係者全てを対象につくられたものになっております。
 1番、研究・開発・実証については、科学技術のさらなる進展が必要であること、サプライチェーンを発展させるためには、研究開発の継続的な支援が不可欠であるというところをもIAEAも記載しております。産業化に当たっては、法令、規制、知的財産権の枠組みが必要、安全・セキュリティー・不拡散、また国際協働については、サプライチェーンの確立、商業化に必要な人材の育成が不可欠だというところも強調されております。また、5番目、6番目、関係者の役割、各国政府はもちろん、研究機関、アカデミアは協調して取り組む必要、また、後半のアウトリーチの議論に関わりますが、公衆の支持を確保する上で効果的に発信することの重要性というところも強調しております。
 こちらについては、QSTやNIFSの方も監修に加わっておりますし、主査代理の武田先生も監修に加わっていただいているというふうに聞いております。
 これも御報告済みですが、我々文部科学省、政府としては、ITER計画、BA活動に加えて、多国間、2国間の連携を現在強化するべく取り組んでいます。9ページ目の一番下にあるG7、IAEAの取組に加えて、既に学術的な交流があるアメリカ、韓国、中国に加えて、現在、イギリスやカナダなどとも、どのような協力ができ得るかというところの検討を重ねております。アメリカについては、新政権が誕生したタイミングでもあるので、今月2月末にはアメリカの在米大使館のほうで日米間が連携したようなイベントというものを開催することを考えておりますし、また3月頭には、イギリスの日本大使館において同様のイベントを開催し、関係者間の協働、ネットワークの強化につなげていきたいと考えているところでございます。こちらについても今後の人材育成、研究開発に関わるというふうに考えられるので、簡単に御報告させていただきます。
 続いて後半、来年度の政府予算案、今年度の補正予算についても簡単に御紹介したいと思います。
 フュージョンエネルギーの実現に向けた研究開発の推進として、主に3本柱、11ページ目の左側のITER計画、右側のBA活動、原型炉実現に向けた基盤整備で構成されています。また、関連予算としては、一番下にありますとおり、ムーンショット型研究開発制度やNIFSなどの経費を計上しております。
 ITERについては、もうこの場で何度も御報告しているので詳細は述べませんが、12ページ目の右上にあるとおり、来年度予算についても今年度予算と同様に計上しており、補正予算額としても必要な経費を現在計上しているところです。
 また、先進的核融合研究開発としてBA活動、幅広いアプローチ活動と、原型炉実現に向けた基盤整備という形で計上しております。BA活動については、既に御案内のとおり、3本柱で構成されている中、特にJT-60SAの加熱運転増強に向けた取組を加速する経費を計上しております。13ページ目の下の原型炉実現に向けた基盤整備については、今日の議論の中心となりますが、研究開発、人材育成、アウトリーチ、イノベーション拠点化等の基盤整備を加速することとしております。特に右側の試験施設・設備群、この後御報告しますが、そういったものを整備するとともに、体系的な人材育成システムを構築する、国民理解の醸成等の環境整備を一体的に推進するということで、この後、NIFSの坂本隆一委員のほうから御報告、またQSTからも研究開発の取組について、具体的内容については御報告していただくことを予定しております。
 なお、人材育成システムについては、来年度に向けて拡充を図っているところなので、簡単に全体像を御紹介したいと思います。これもこの1年、集中的に議論をさせていただきましたが、14ページ目の一番上にあるとおり、核融合科学技術委員会での過去の報告書を具現化するべく取り組んでまいりました。大学間連携による総合的な教育システムということで、昨年6月に閣議決定した文書の中でも、フュージョンエネルギーに携わる人材を戦略的に育成するため、大学間連携・国際連携による体系的な人材育成システムを構築することとしております。
 それに向けて、下半分にあるピラミッドの図ですけど、まず大学間連携・国際連携による人材育成ということで、既にある学術交流に加えて、海外の研究機関、大学研究機関に若手研究者、企業従事者、学生を積極的に派遣していきたいというふうに思っております。また、ITER機構との連携による人材育成の観点では、職員としての派遣も考えております。
 真ん中部分、ITER International Schoolについては、これも坂本委員から後ほど報告ありますが、昨年12月に名古屋で開催しました。日本、海外合わせて200名程度の方々に御参加いただき、想定以上の多くの方の応募があり、我々としても想定外の驚きで、倍率をもって切らないといけなかったというところがあります。他方、各国からも多くの方に参加いただいたのですが、我々確認したところ、例えばアメリカのような国は、毎年2,30人ぐらい、アメリカ国内でセレクションして送っているという話を伺った中、日本としても今後恒常的、継続的に、このITER International School、今年はフランス、来年はインド、その次はフランスという形で交互に行うことになるのですが、こういったスクールに人材を送り続けることが重要であろうということで、来年度以降、毎年20人程度、NIFSのほうでセレクションいただいて、それに伴う旅費などを国として補助していきたいということを考えております。
 また同様に、右側のJIFS、JT-60SA International Fusion Schoolについても、既に日本側10人、欧州側10人という形で、2回開催しております。こちらのほうは博士からポスドクレベルになりますが、来年度以降も引き続き、より充実した取組ということで、那珂研の研修に加えて、ITER等への派遣も含めたプログラムとして充実を図っていきたいと思っています。
 それに加えて、Fusion Science Schoolという形で、NIFSのほうで公募や、自主的に開催を今後していくことになると思いますが、今年開催したITER International Schoolの件も含めて拡充を今年度の実績を踏まえてしていきたいと思っています。また、学生インターンシップについても、ITERなどのインターシップにおいて、若干、滞在費だったりとか旅費だったりとか、そういったところが不足する場合というものが実態を聞くとあったところではあるので、そういった方々に対してしっかりと支えられるような取組を今後していきたいというふうに思っています。
 いずれにせよ、こういった取組について、学生の方々、研究者の方々に知っていただかないと機能しないと思っておりますので、改めてこの場で御報告させていただくとともに、ぜひ委員の先生方におかれましては、関係者、周囲の方々、学生含めてアナウンシングしていただければありがたいと思っております。
 また補正予算の関係については、機器の製作等を加速するため、またBA活動についても、JT-60SAの令和7年度、来年度の加熱運転開始に向けて整備を早期に進めるとしております。また、原型炉基盤整備の枠組みの中では、安全試験施設・設備の設計を早期に行うことなどの経費を計上しております。また、15ページ右上に金額を記載しておりますが、別途内閣府とも連携して、早期実現と産業化を目指した推進体制の構築に係る経費として100億円を計上しております。
 実証試験設備については、国際競争が激化する中、発電実証への寄与が高く、特定のユーザーの用途だけなく、アカデミア・民間企業から幅広く活用される設備を優先して整備するということを考えており、これまでNIFS、QST、また大阪大学レーザー科学研究所(以下、レーザー研)からもお話を伺っている中で、今回優先的に整備すべき設備を優先して整備しております。
 17ページの左から、NIFSに今回整備する高温プラズマ実験システム、ナノ計測基盤整備、また右側のレーザー研、慣性核融合の関係では、燃焼の効率化に必要となる供用可能な試験設備群を整備することとしております。下半分については、QSTにおいて、ブランケットやインフォマティクスの関係での設備を整備しております。この後もしお時間が許せば、それぞれ坂本委員、藤岡委員、大山委員からも補足などがあれば、よろしくお願いいたします。こういった設備について、我々できる限り幅広い方々にも最大限活用していっていただきたいというふうに思っているところであります。
 その一つの事例として、18ページ目のムーンショット型研究開発制度があります。今週金曜日に第1回の選定で行われた3名の採択者を中心にキックオフシンポジウムが行われる予定ですが、その際、私のほうからは、2回目の公募に向けた期待を述べる予定を考えております。19ページ目の下半分、第2回公募に向けて、国家戦略の改定も見据えて検討していくことになりますが、今回採択されている3件がどちらかというと横型と言われる要素技術型だったところもあるので、次回に向けては、実証に向けた技術のインテグレーションを期待したいということで、発電実証の達成や、多様な社会実装に向けた用途の実証について期待する。また、できる限り挑戦的な研究開発を採択するため、マイルストーンを設定し、一定の資金と期限を設定し、達成状況に応じて絞り込むというような形で、失敗を許容するような形での挑戦を後押ししていきたいと思います。丸3の、国研との連携は、先ほど申し上げた国立研究機関などに整備される設備というものを最大限使っていただきたいという意味合いで書かせていただいております。
 20ページ目はいつも私が示す山の絵を若干更新しているものになりますが、今回ムーンショットに限らず、申請する中で、今後多くの、これまで核融合に必ずしも携わっていなかった方々の取組というところが重要になってくるかと思います。その際、それぞれの目標を実現するに当たって、PMや研究者だけだとなかなか大変だというふうに思われるときに、シェルパ的に、国研の方々の設備や人材、知見、そういったものを最大限活用することによって、何とか目標達成に向けて、より確実にやっていきたいということで、今回整備されるような設備や国研の技術、知見を最大限活用していただきたいというところで、ムーンショットにおいてもそういったところを導入していきたいというふうに考えているところでございます。
 最後、23ページの国家戦略の加速案について、現在内閣府のほうで検討している内容を簡単に御紹介したいと思います。こちら国家戦略の3本柱に沿って、左側からフュージョンインダストリーの育成戦略ということで、産業協議会(J-Fusion)との連携や、既に報道も出ておりますが、科学的に合理的で国際協調した安全確保の基本的な考え方を学会とも連携しながら、今、策定に向けて議論を進めております。また右側、今月には、また国家戦略有識者会議が開催されますが、原型炉実現に向けた基盤整備の加速、官民の研究開発力の強化、ITER/BAを通じたコア技術の獲得、こういったものについては原型炉タスクフォースの議論も踏まえて、内閣府の有識者会議、また国家戦略の改定にもインプットしていきたいと思っております。
 一番下の戦略の推進体制についても、イノベーション拠点化や人材育成、リスクコミュニケーション、これもすべからく原型炉タスクフォースに係る内容になります。原型炉タスクフォースで議論した内容については国家戦略にしっかりとインプットしていきたいと思いますので、この後の議論の内容についても、ぜひ活発な御議論いただければありがたいと思っております。
 事務局からの説明は以上でございます。
【坂本(瑞)主査】  馬場戦略官、ありがとうございました。ただいまの御説明に対して、御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。
 では、私から1つ、質問ではないのですけど、15ページにありましたITER International Schoolの来年度というか、今年の御支援に対しては大変ありがたく思っておりまして、大学の関係者ですと、やはり学生を派遣しようと思うと、国際会議とか成果発表のところに少ない予算を投入することになりますので、なかなかITER International Schoolに派遣する予算というのはつくり出せなかったのですけど、こういう形で毎年20名程度という形で支援していただけると、次のステップに行く学生に対しても非常にエンカレッジになると思いますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
 あと、いろいろと御説明いただきましたが、ほかの委員の方々、いかがでしょうか。よろしいですか。
【馬場戦略官】  1点だけ、ITER International School、ありがとうございます。今回、来年度は20人程度というふうに我々考えていますが、実際本当にどの程度の応募なり希望が出てくるか、我々も少しつかみかねているところでありますので、そういった実態も見ながら、こういった人材育成についても拡充はしていきたいと思っていますし、学生の皆様が参加しやすいような取組というのを皆様の意見を聞きながら実施していきたいと思います。この後、詳細については坂本委員のほうから御報告があるかと思いますので、その際にもぜひ御議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。ほかに御質問がなければ次に進みたいと思います。馬場戦略官、ありがとうございました。
 そうしましたら、次に議題2「原型炉実現に向けた基盤整備」に入ります。
 原型炉実現に向けた基盤整備について、研究開発を実施しているQSTの坂本宜照グループリーダー、人材育成及びアウトリーチを実施しているNIFSの坂本隆一委員から、今年度の実施状況及び次年度に向けた実施計画案を御報告いただきます。
 それでは、坂本グループリーダーから御説明をお願いいたします。
【坂本(宣)GL】  それでは、資料2について説明させていただきます。
 2ページ目をお願いいたします。ちょうど1年前の原型炉タスクフォースの会合において、研究開発における原型炉実現に向けた基盤整備として、QSTが中心になりアクションプランの項目別に公募を実施するなど、大学や企業のさらなる参画を促すための仕組みの導入について審議されました。本日は、その際に審議された、下の表に示している令和6年度に優先的に実施すべき研究開発項目として行われた研究開発の成果概要と、令和7年度に優先的に実施すべき研究開発項目の案について御説明させていただきます。
 3ページ目をお願いいたします。まず炉設計分野においてですけども、前回の原型炉タスクフォース会合等でも報告させていただきましたITERサイズの原型炉概念と多段階開発戦略について検討を実施しております。また、左下に示しますように、原型炉電源システム構成・配置に関しまして、系統接続を念頭に、必要な電力補償設備等の検討を実施しております。さらに、小規模技術開発として、右下に示しますように、ダイバータや保護リミターのプラズマ対向ユニットの耐中性子性向上に向けて、低放射化フェライト鋼の冷却配管を採用するため、タングステンモノブロックとの接合技術開発を行っております。
 4ページ目をお願いいたします。次に、超伝導コイルの分野では、トロイダル磁場コイルの低コストオプションとして検討中の矩形導体を用いたレイヤー巻き方式における2段曲率導体による絶縁部の応力低減効果を検証するため、下に示しますように、2段曲率の模擬導体のスタックサンプルに対する圧力試験により、導体角部の形状効果を評価しているところです。また、高強度低温鋼の開発として、今年度は5種類の小溶解材を試作して、極低温での機械試験を実施しているところです。
 5ページ目をお願いいたします。また、超伝導コイルの分野において、物質・材料研究機構に委託研究として、原型炉超伝導コイル用超伝導導体の試作・試験を実施いただいております。本研究の目的は、高電磁力下で高い導体電流を確保するための高強度・高性能超伝導線材の試作及び極低温での特性試験を実施するとともに、高電磁力に耐え得る短ピッチ撚線成形試験を実施することです。そのために、革新的高強度ニオブ3スズ線材を用いて、4次撚り集合導体を試作するとともに、液体ヘリウム冷媒中で線材に曲げ応力を加えながら超伝導素線の臨界電流測定を行うプローブを開発して、現在データを取得しているところでございます。
 6ページ目をお願いいたします。ブランケット分野におきましては、ブランケットモジュールや保護リミターの構造材である低放射化フェライト鋼に負荷されるマクスウェル力を評価しまして、ディスラプション時に負荷される電磁力も考慮して、遮蔽体であるブランケットへの支持構造の検討を実施しております。また、主要な負荷条件を考慮したブランケットセグメント全体モデルを構築した構造解析を実施しているところでございます。
 7ページ目をお願いいたします。ダイバータの分野におきましては、筑波大学を中心に委託研究として、定常高密度プラズマ実験装置に関する検討を実施いただいているところです。本研究の目的は、アクションプランに記載されている定常高密度プラズマ発生装置を想定し、第2回中間チェック・アンド・レビューまでに、非接触ダイバータプラズマの生成と制御に必要な基礎物理機構等の解明と、物理モデルの高度化などを通じて、シミュレーションコードの高度化に反映するための定常高密度プラズマ実験装置に関する検討を行うことです。そのために、ダイバータシミュレーションコードを用いたパラメーター感度解析では、水素分子密度に対する体積再結合に関する感度解析を行いまして、水素分子密度増加に伴いH3プラスイオンが主となり、分子活性化再結合が主な再結合過程となること等が分かっております。また、ダイバータ級定常高密度プラズマ実験装置について、超伝導コイル配置と磁場リップル、超伝導巻き線への電磁力など、装置成立性及び計測システム等について検討を行っております。
 8ページ目をお願いいたします。加熱・電流駆動システムの分野におきましては、NIFSに委託研究として、原型炉用NBIに向けたRF負イオン源の特性評価を実施いただいております。本研究の目的は、原型炉用NBIの実現に向けて、RF負イオン源の原型炉への適用性を調べることで、特に高効率化に向けて負イオン源の低ガス圧運転領域の動作特性を調べることです。そのために、NIFSのRF負イオン源を用いてデータを取得し、重水素ガス圧で0.2パスカルまで動作可能であるということが分かりました。今後、フィラメントアーク運転とRF運転の比較を行い、低ガス圧運転とRF負イオン源の課題の切り分けを行う予定でおります。
 9ページ目をお願いいたします。燃料システムの分野では、原型炉の運転に不可欠な高濃度の三重水素水の処理システムや燃料ペレット製造に関する技術開発を実施するR&D施設が現在国内に存在していないということから、これら技術開発の推進に向けて、QST六ヶ所フュージョンエネルギー研究所に燃料システム安全試験施設を建設するため、下の図に示すような建屋の概念設計を実施しているところです。
 10ページ目をお願いいたします。核融合炉材料と規格・基準の分野におきましては、まずA-FNSの加速器、照射モジュール、試験施設等に関する工学設計について、照射試験セルについて、遮蔽性能と温度上昇抑制の両面で優位性がある新たな遮蔽構造を右下の図のように提案するとともに、照射試験セル内の三重水素インベントリを評価して、除去系への要求というものを明らかにしているところです。また、加速器設計については、液体リチウムターゲット表面からのガス放出率や加速器側へのリチウム流入量を、10分の1スケール実験体系、左下に示しておりますけども、この体系で明らかにして、高エネルギービーム輸送系の真空排気設計に反映しております。さらに、A-FNSの応用利用の一つとして、MeV級の連続ビーム中性子源の特徴を生かした高速中性子イメージング施設の概念を示しているところです。
 11ページ目をお願いいたします。次に、核融合炉構造材料の標準化活動について、低放射化フェライト鋼F82Hの標準化に向けて、国内鉄鋼メーカーとの協議の下、材料データベースやハンドブックの分析による課題抽出とラウンドロビン試験計画の検討を実施しております。また関連して、左下の図に示すような疲労データベースの拡充を行っております。また、F82Hの部材試作を通じて、適用する技術の再現性評価とデータ拡充を実施しています。特に、右下の図に示すように、プレス加工による薄肉半球殻の製作性によい見通しを得ているところでございます。
 12ページ目をお願いいたします。次に、構造規格に関する予備検討につきましては、真空容器の構造規格に関する予備検討を実施しております。具体的には、運転中の構造健全性を維持するために、材料、設計、製作検査、維持に関わる各プロセスを一つのパッケージとした構造規格とするため、これらの技術内容を明確にする真空容器の基本設計を進め、下の図に示すようなD型の真空容器構造を明確にしたところです。
 13ページ目をお願いいたします。安全性の分野におきましては、弘前大学を中心に委託研究として、三重水素拡散を想定した環境・生物の評価モデルの構築及び効率的な環境計測手法の開発を実施いただいているところです。本研究の目的は、原型炉から微妙に環境中に放出される三重水素の拡散について、日本の地理・気象条件を考慮した物理モデルを構築することです。そのために、まず大気拡散モデルコードと既存コードの間でベンチマーク試験を実施し、ほぼ矛盾のない結果を得ております。また、長期間の影響を評価するための陸水域移行コードの開発と、青森県六ヶ所村の環境水中の三重水素濃度の分布データを取得しております。さらに、ヒト正常細胞を用いた三重水素取り込み量と標識化合物の関係のデータを取得しております。
 14ページ目をお願いいたします。稼働率と保守の分野におきましては、保守保全計画の検討に資するため、下の図に示すように、トカマク本体建屋とホットセル建屋の内部の基本配置について詳細な検討を行い、地震荷重などの条件を考慮した本格的な建屋詳細設計の前提条件となる基本仕様及び建屋図面の一次案を整備したところでございます。
 15ページ目をお願いいたします。計測・制御の分野におきましては、東京大学に委託研究として、原型炉のための線積分トムソン散乱法の開発研究を実施いただいております。本研究の目的は、原型炉への適用が困難と考えられてきたトムソン散乱法に対し、新たに提案された線積分トムソン散乱法の実証実験により性能評価するとともに、原型炉に適用可能な光学系の概念設計を行うことです。そのため、まず光学系の設計・製作、大気中での試験を実施するとともに、磁場閉じ込め装置(TST-2)に光学系を設置し、入射ビーム整形による最適化を実施しております。
 16ページ目をお願いいたします。最後に、令和7年度に優先的に実施すべき研究開発項目の案を整理いたしております。QSTでは引き続き、原型炉概念設計、A-FNSの加速器・照射モジュール・照射施設等に関する工学設計、及び核融合炉構造材料の標準化活動を行う予定です。そのほか、高強度構造材料の試作・試験、超伝導導体の試作・試験、先進ブランケット概念検討及び小規模R&D、定常高密度プラズマ実験装置に関する検討、原型炉用高周波負イオン源の開発、炉心プラズマ統合コード開発、構造規格に関する予備検討及びACP評価コード開発、安全性評価コードの開発、遠隔保守機器の検討、さらに原型炉に向けた計測器の検討・開発、これらについては大学等への委託研究や産業界の外注により実施する予定でおります。
 以上です。
【坂本(瑞)主査】  坂本グループリーダー、ありがとうございました。
 引き続いて坂本委員から御説明いただきますが、先ほど冒頭、委員の皆様にお願いするのを忘れておりました。今の御説明と次の坂本委員の御説明は来年度の計画も含まれておりますので、原型炉タスクフォースの委員の皆様は、できるだけいろいろと御質問、コメントいただいて、よりよい計画ができるように議論を進めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、坂本隆一委員、よろしくお願いします。
【坂本(隆)委員】  それでは、NIFSの坂本から、原型炉実現に向けた基盤整備(人材育成)について説明させていただきます。
 先ほどの馬場戦略官からの御説明、14ページでも示されていましたが、原型炉実現に向けた人材育成の基本は、フュージョンエネルギー人材の母数を増加させること、そしてその人材のレベルアップをしていくことです。そのためには、核融合研究の専門家の育成だけにとどまらず、他分野の人材を核融合研究に巻き込んで、核融合研究の裾野を広げていくことが重要になります。このような観点から、本年度実施した人材育成活動、そして来年度以降に向けて計画している人材育成活動について説明いたします。
 2ページをお願いいたします。本事業の初年度である、本年度はITER国際スクールを開催しました。ITER国際スクールは、ITER機構とフランスのエクス・マルセイユ大学が毎年主催していますが、今年度はNIFSが開催国機関として現地実行委員を担い、完全対面で12月に名古屋で開催しました。このグラフにありますように、参加者は総勢199名で、日本からの参加者は半分強の117名、海外からもITER参加極をはじめ、21か国から82名が来日しました。また、日本からの参加者の内訳としましては、核融合アカデミアから64名、他分野のアカデミアから28名、そして企業からも25名の参加があり、これまでになく学際的に広い分野から参加いただきました。ここに示した写真からも分かるように、多くの参加者が集まり、あべ大臣からのビデオメッセージもいただいて、とても盛況なスクールでした。
 今回のITER国際スクールでは、ネットワーキング、すなわち人脈づくりということにも力を入れており、国際・異分野間の交流の時間を、スクーリングとはまた別に設けました。そして、このネットワーキングの時間帯はとても活発な議論が行われており、今後参加者間の研究交流に大きく寄与できると期待しています。
 次のITER国際スクールの開催は、フランスのエクス・マルセイユ大学で開催されます。また、ITER国際スクールから派生的に展開させ、独自にFusion Science Schoolということを本事業の中で今後実施していくことを考えています。そのため、今回の知見や経験というものをふんだんに活用していきたいと考えています。
 3ページ目をよろしくお願いします。さらに本年度は、ITER国際スクールに加えて、来年度から本格的に開始する予定のスクーリング・ネットワーキング事業を試験的に開始しました。NIFSにスクーリング・ネットワーキング専門部会を設置しまして、Fusion Science Schoolと人的交流について、全国的に実施案を公募しました。その結果をここに示してありますが、Fusion Science Schoolに関しては、3件の応募があり、これらを採択しています。現在、この3件に関して、それぞれ開催に向けた準備がなされています。また、人的交流に関しては5件の応募があり、海外派遣と国内派遣の2件を採択しています。短い公募期間でしたが想定以上の応募があり、スクーリング・ネットワーキング事業のニーズを確認できたので、来年度の公募に向けてフィードバックして、よりよい事業に発展させていきたいと考えています。
 4ページ目をお願いします。令和7年度における実施計画に関して、人材育成の全体の目標について説明したいと思います。統合イノベーション戦略2024では、世界に先駆けた2030年代の発電実証の達成について目標設定がなされています。過去には原型炉開発に向けて1,600人規模の人材が必要だとの分析がなされています。また近年、英国でも同規模の計画が打ち出されています。このようなことから、人材育成の全体目標としては、人的規模の拡張と人材のレベルアップの2方向の観点から人材育成を展開し、2030年代の発電実証に向けて核融合コミュニティーを持続的に拡大、活性化させることを掲げています。
 人的規模の拡張としては、他分野及び産業界の人材を核融合分野へ新規参入していただくことを促進し、核融合人材の母数を広げます。そして、年間100人規模、5年で500人規模の他分野や企業の人材に、スクーリングによって新規参入のきっかけとしてもらって、核融合関連人材との交流を促進したいと考えています。人材のレベルアップとしては、新規参入や核融合関連分野の人材の知識・技術における広がりの進展を目指します。上に示したスクーリングでの知識・技術の習得にとどまらず、国内外へ派遣する人的交流によって、生きた人材育成を進めたいと考えています。
 5ページ目をお願いします。以上のような目標の下、令和7年度は、スクーリング・ネットワーキング事業の拡張、発展をします。まずFusion Science Schoolに関しては、フュージョンエネルギー人材の母数の拡張とレベルアップに寄与します。次に大学間連携・国際連携によって、海外や国内研究機関、そして企業への派遣及び若手研究者の海外からの招聘などを行います。既にNIFSでは各国と多くの学術交流が走っており、それらを活用することによって、多様な派遣や招聘を実施できると考えています。また、先ほど御説明がありましたように、ITER国際スクールへの参加支援も実施していく予定です。そして最後、インターンシップに関しましては、研究者や大学院生のみならず、学部学生も対象にして、国内外の大学、研究機関、ITER機構、そして企業等、様々な派遣先への学生の派遣というものを対象にしたいと思います。このように、様々多層的な人材育成によって、さきに述べた2方向の人材育成を進めていきたいと考えています。
 6ページ目をお願いします。ここには人材育成に関わる実施事業と育成対象との対応をまとめました。縦にはFusion Science School、大学間連携・国際連携事業、そしてインターンシップという事業を示し、横は核融合分野の学生・研究者・技術者、そして他分野の学生・研究者・技術者、そして企業の研究者や技術者、このように様々な人を対象に、広く他分野や企業の関係者も巻き込んで核融合人材育成を進めていきます。
 それでは、7ページ目をお願いします。最後に、戦略官のスライドを借りて、原型炉実現に向けた基盤整備としての人材育成事業を総括します。NIFSの共同研究ネットワークや各国との協力事業の枠組みなども活用して、大学間連携による総合的な教育システムを構築します。そしてQSTとも連携して、ITERやJT-60SAなども活用して人材育成を実施し、このピラミッドの図にありますように、フュージョンエネルギー人材の母数を増加させるとともにレベルアップをする、2方向の展開で人材育成を実施していきたいと考えています。
 以上になります。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。
【坂本(隆)委員】  それでは引き続いて、アウトリーチに関する報告をしたいと思います。
 フュージョンエネルギーの実現の大きな目的は、国民の生活に直接関わる環境・エネルギー問題の解決です。したがいまして、国民によって支持されなければ、その目的は意味がないものになってしまいます。したがって、原型炉実現に向けてもう一つ重要な観点は国民からの理解と応援です。そのために、核融合の理解に向けたアウトリーチ活動に注力していきたいと考えています。
 2ページ目をお願いします。アウトリーチの対象は国民全体になりますので、人材育成に比べて、さらにその対象は広く、子供から大人までに分布しています。そしてそのために、ターゲット層ごとに異なるアプローチが必要となります。原型炉タスクフォース及びアウトリーチヘッドクオーターでは、このページの図にありますように、ターゲットを考慮して、年度ごとの目標を定めました。10年間を、対話手法の確立、そして対話の場の構築、社会的な合意形成といった3つのフェーズに分けた、段階的なアプローチを想定しています。最初のフェーズとしては、令和8年度までは対話手法の確立を目標としており、アウトリーチのためのコンテンツの整理とツールの構築というものを計画しています。
 それでは、3ページ目をお願いします。令和6年度1つ目の活動としましては、サイエンスコミュニケーション会社による活動、すなわちコミュニケーションのプロにお願いして、核融合アウトリーチの実施に当たり、社会受容性の観点でターゲットを整理し、対話のデザイン、ウェブサイトデザイン、そして実態把握調査に向けた検討を行いました。今年度は準備期間と位置づけて、来年度から本格的にアウトリーチ活動を行っていきます。
 その1つ目として、対話手法の検討としては、産業界及びプレス向けのワークショップの実施を考えています。これはジョハリの窓ワークショップというものを行う予定ですが、このワークショップを模擬的に実施し、今年度は専門家と市民の間の意識の違いを明らかにする目的で、秘密の窓と盲点の窓、この2つに関する課題を洗い出すことを行いました。
 4ページ目をお願いします。そして、ホームページによる対外発信の強化を行うため、市民ニーズの反映と市民理解の醸成を目的として、市民参加型の合意形成プラットフォームを採用したホームページを開発しています。重要な点は、単なる情報発信ではなくて、双方向のコミュニケーションができることにあります。今年度中にはこのページの開発を行って、リリースする予定です。
 5ページ目をお願いします。3つ目として、実態把握調査の実施に向けた検討です。令和7年度に実施する実態把握調査に向けて、科学技術の社会的受容性の文献を調査して、何を調査するかという項目の洗い出しを行いました。そして、対象年齢、人数、調査方法、実施の検討などを進めています。
 6ページ目をお願いします。令和6年度実施した2つ目の活動としては、アウトリーチイベントの開催があります。令和6年度は「フュージョンエネルギーのある未来社会デザイン」と題しまして、QST六ヶ所フュージョンエネルギー研究所及びNIFSの六ヶ所研究センターがある青森県の地元高校生を対象として、未来社会を考えるワークショップを開催し、未来社会デザインに仕上げる試みを予定しています。また、このイベントは映像等で記録しまして、このワークショップだけでなくて、参加者以外のアウトリーチにも活用できるようにすることを計画しています。予定としましては2月か3月の休日を候補として検討しているところです。
 7ページ目をお願いします。令和6年度の3つ目の活動としましては、大学等によるイベントの開催の支援で、そのための準備をしました。全国の核融合アウトリーチ活動を支援するために、イベント用の教材の貸出しについてウェブを通じて開始します。これらの教材、ここに示されている3つのものは、NIFSで個別に行っている地元向けのアウトリーチ活動でも活用しており、お子様を中心に、プラズマ放射線、発電などを身近に体験いただく、よい機会となっています。
 8ページ目をお願いします。そして4つ目としまして、NIFSの既存のホームページによる発信の強化です。このページは平仮名を多用して、小学生から読めるページとしていますが、核融合発電の検索におきまして平均的なクリック率が15%を超える、人気のサイトになっています。このページをポータルサイトとしまして、学校の先生方が教材として利用できるイラストつきのスライドの公開や、研究現場の臨場感を実感してもらえる、写真家が撮影した迫力のある写真作品の公開というものを準備しています。9ページにイラスト教材の例を示しています。研究者とイラストレーターの連携によって、内容をより正確に視覚化するイラストの製作を行っているところです。
 それでは、10ページ目をお願いします。こちらには、令和7年度の計画を表にまとめました。既に説明した今年度準備してきたことを実際の活動として、来年度は実施していきます。それがこの表に示したものになります。
 11ページ目をお願いします。最後に、今後のアウトリーチ活動の基本方針をまとめたいと思います。新しい技術が広く社会に普及して、多くの人々がその恩恵を受けるためには、技術の特性に関する社会の理解を高める必要があります。アカデミアの取組を格段に発展させるためには、コミュニケーション会社と契約し、ワークショップ形式の対話や、ウェブサイトを活用した情報発信、双方向の情報発信、新たなアプローチを取り入れてアウトリーチをしたいと考えています。アウトリーチの活動の効果を評価するために、3年ごとに実態把握調査を行い、エビデンスに基づいて計画の見直しを行ってアウトリーチを行っていきたいと考えています。
 以上になります。ありがとうございました。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。これから委員の皆様から御質問、御意見を伺いますが、まず、原型炉実現に向けた基盤整備事業、人材育成、アウトリーチという形で今年度から始まった事業で、実施機関として大変な御努力をいただいたQSTの皆様とNIFSの皆様にお礼を申し上げます。ありがとうございました。大変すばらしい活動ができていると思いますが、今後の計画もありますので、委員の皆様から御質問や御意見、さらによくなるアイデアなど、お願いしたいと思います。
 五月雨式に議論すると発散してしまうので、まずは最初の基盤整備事業に関連して御質問、御意見などありましたら、お願いいたします。
 坂本隆一委員、お願いします。
【坂本(隆)委員】  質問よろしいでしょうか。ここに説明していただいた包括的な研究開発の計画、ありがとうございました。この中で、発電実証の前倒し案を反映して、これまでと変更になった研究計画というものはあるかどうかということをお聞きしたいと思います。
【坂本(宣)GL】  ありがとうございます。それを入れるとしたら、0番の炉設計の部分だと思っております。そのほかの部分は、例えばNBIについても、今のITERサイズの原型炉に必要な施設ですし、あとITERにない遠隔保守技術とか、それもやはり、今JA DEMOでやっているものがITERサイズになっても基本的には同じ思想で展開するものなので、大きく変わったところというのはないです。
【坂本(隆)委員】  ありがとうございます。基本的にはやることは一緒で、前倒しが必要になるということですね。
【坂本(宣)GL】  おっしゃるとおりです。
【坂本(隆)委員】  ありがとうございます。
 それと、もう一つ確認させていただきたいのは、9ページだと思うのですが、六ヶ所で建設を予定して概念設計を行っている燃料システム安全試験施設ですか、これに関しましては水素同位体を使うということが説明であったのですが、トリチウムの取扱いも含めたことを想定しているのでしょうか。
【坂本(宣)GL】  はい。むしろそちらがメインの施設になります。
【坂本(隆)委員】  そうですか。ありがとうございます。
 以上です。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。ほかにございませんでしょうか。
 武田主査代理、お願いします。
【武田主査代理】  ありがとうございます。先ほどの坂本委員の質問に関連をしてお伺いをしたいのですけれども、現在、もし仮にITERサイズによる前倒しというものが決定された場合には、サイトの整備並びに選定というものが喫緊の課題となってくるかと存じますが、今回の案を拝見いたしますと、令和7年度にも優先すべき研究開発項目にはサイト整備を挙げられていないというような状況でございますが、今後このサイト整備並びに選定等についてはどういった枠組みで研究開発が行われる計画かということについてもお聞かせ願えませんでしょうか。
【坂本(瑞)主査】  坂本グループリーダー、お願いします。
【坂本(宣)GL】  大変ありがとうございます。ここの中には含めていないですけども、実はそれについてはこれまでも取りかかっている部分なので、ここの新たについた予算以外のところで進めて、むしろ加速して進めていく項目かなと思っております。ここに含まれていない項目もやっているということです。
【武田主査代理】  承りました。原型炉基盤予算を執行するわけではなく、それ以外の部分で、QST様のほうで推進されているということで理解いたしました。ありがとうございます。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 福家委員、お願いします。
【福家委員】  福家です。先ほど構造規格についてお話がありましたけれども、これはどこかの機関でオーソライズするという活動をされるのでしょうか。実際には何か動いているのでしょうか。
【坂本(宣)GL】  御指摘のように、特に真空容器というのは安全バウンダリーにもなるので、これの規格化を進めるとともに、あと規制側へのインプットということになると思います。これについては、規制については今、内閣府の安全確保に関するタスクフォース等々について、今後どうしていくかというような議論が進められていると認識しているところです。
 あと、BRIDGEプログラムです。核融合の標準化活動というものに今年度採択されまして、その中でも真空容器やトロイダル磁場コイル、そういったものの規格、標準化を進めていくということで、両方が今走っているところと認識しております。
【福家委員】  多分規格ですと学会か何かがオーソライズするのかなと思って今伺っていたのですけど、分かりました。
【坂本(宣)GL】  そういう意味では、機械学会のほうにも核融合に関する委員会がございますので、その中で、BRIDGEプログラムの中でも連携して進めるということになってございます。
【福家委員】  ありがとうございました。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。
 近藤委員、お願いします。
【近藤委員】  坂本さん、ありがとうございました。東京科学大学の近藤です。
 すみません、もし的外れだったら申し訳ないのですけども、今日御紹介いただいた成果、民間企業様に実施いただいた内容等々は、私が記憶している限り、これというのはいわゆる通常の共同研究とかの公募と違って、入札とか調達というような仕組みで進められたものでしたでしょうか。何かそのような記憶があって、その手続きというのは特に滞りなく、意中の内容をやってもらえるような、そういった進め方ができたのでしょうか。その辺もし情報あれば教えていただきたいのですけれども。
【坂本(宣)GL】  基本的に一般競争入札でやっております。アクションプランに沿って、必要な項目をQSTのほうで仕様書にして一般競争入札で応募いただいて、実施いただいているというところです。
【近藤委員】  ありがとうございます。ということは、いわゆる入札する内容は研究開発ということで、ある程度のリスクが含まれるものもあったのではないかなと思うのですが、その辺もQST側と入札する側とでうまく調整しながら、ここまでを入札対象というか、範囲としますというような形で進められたのでしょうか。
 開発研究の場合、やはりどうしてもうまくいかないという場合があるのかなと思いまして、その辺が入札というものと、どううまくマッチするのかなと、少し興味あって見ていたのですが、今日伺う限りはうまくいったということですので、よかったと思うのですけど、その辺りも少し、もし何か調整の仕方等、入札ではありますが、今現時点でお話しいただける内容がありましたら教えてください。
【坂本(宣)GL】  基本的には、仕様内容というのは実施可能かとか、あと予算の関係、その辺りである程度議論しながら入札にしているというところです。
【近藤委員】  分かりました。ありがとうございます。
【坂本(瑞)主査】  横山委員、お願いします。
【横山委員】  ありがとうございました。研究自体は順調に進んでいると思うのですけれども、私も今のお二方の質問に少し関連するのかなと思いますが、全体的なことについて質問です。今はもちろんQSTのほうから、例えば今回の大学、産業界への公募というのは、こういうことをやっていただきたいということで、計画に沿ったものを提案して、それが進むかどうかという進捗をしっかりと見ていただいていると思うのですけれども、それが今しっかり、先ほども少しありましたけれども、進捗どおりいっているのか、それとも何かそこに問題が出てくるのか、課題があるのかというようなことも含めて、今回の御紹介方法という形になるのかもしれないですけども、そういうのも示していただけるとありがたいかなというふうに思いました。
 以上です。
【坂本(宣)GL】  ありがとうございます。今回の委託研究もそうですし、産業界の競争入札案件においても、実際に検討した中で新たに分かった課題だとか、そういったものを整理、抽出いただいているので、そういったものを次の検討にも役立てながら前進させていくと、そういった形でやっているところです。
【横山委員】  ありがとうございます。計画がどの段階で、しっかりと進んでいるのかということが目に見えるといいなというふうに思った次第です。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございます。またそういうことも踏まえながら報告をいただくということも来年度に向けて考えていただければと思います。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。
 ありがとうございました。そうしましたら、次は人材育成に関して御質問、御意見等いただきたいと思います。
 藤岡委員、お願いします。
【藤岡委員】  御説明ありがとうございました。幾つかお聞きしたいのですけども、1つは、ITERのスクールに関しては大変多くの方が集まって、そしてセレクションがかかったという話なのですけど、このセレクションの際には、他分野からの方には少しセレクションを甘くしたとか、そういう軽重は今回つけられたのかなというのを1つお聞きしたかったのが1つです。
 2つ目は、Fusion Science Schoolの時期が、今回提案されて3つ採択されたということだったのですけど、2月、3月に偏っているので、もう少し期間をばらすような工夫をしていただいたほうが、特に2月は大学、一番忙しい時期なので、そういう意味では少しばらしていただいたほうがうれしいかなというふうに思いました。
 3つ目が対話の話なのですけど、最近いろいろ関わりもあって、退職された先生の研究室の維持というのがやはり結構難しいし、重要だなというふうに思っています。そういう意味では、対話の相手として、やはり大学の意思決定層、ここへ核融合というのは大事でどうこうというのを対話していってほしいです。もちろんいろいろな政策で国から発信されているのですけど、必ずしもそれが決定層にまで伝わっていないというのはよく感じるので、そういう意味では、やはりうまくそういう意思決定層との対話というのも重視していただきたいなというのが3つ目のコメントです。
 最後ですけど、ウェブページを今回、プロの方を入れて、分かりやすくイラストなんかも書き換えたということですが、よい入り口というのはやはりたくさんあったほうがいいと思うので、少し我田引水なのですが、核融合に関わるいろいろな研究室のウェブページの更新を少し包括的に見ていただけると、さらに優秀な方を集めやすくなるのではないかなというふうに思いました。
 以上4つとなります。お願いします。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。まず人材育成からと思っていましたけど、アウトリーチも含めても良いと思います。質問いただきました坂本隆一委員、回答お願いします。
【坂本(隆)委員】  分かりました。ITERスクールのセレクションに関しましては、実際私はセレクションに直接関わっていないので、正確なことは言えませんが、やはり核融合だけではなくて、他分野の方、企業の方を入れるということは重視してセレクションを行っています。
 そして、2月、3月に集中してしまったというのは、これは今年度だけのことになると考えています。というのも、ITERスクールが12月に行ったために、他の企画の公募開始が、ITERスクールの予算のめどがついてからになりました。そのために全部の企画が2月、3月になってしまっています。来年度以降は年度通して、実施できるように、早めに公募を行いたいと考えています。
 そして、対話の相手の大学の意思決定層ですが、今のところ想定しているのは、社会の人に影響力のあるプレス関連の人とか、子供に影響のある学校の先生とかを想定しています。ただ、大学の意思決定層というところには全く、今のところ検討にも入っていなかったので、ぜひそれに関しては検討していきます。ただ、そこはアウトリーチとはまた少し違う、もう少し直接的な問題のような気もするのですが、意見としては承って、担当者に伝えます。
 それと、よい入り口に関しましては、既にある大学等とかのページをリンクするような形でいいということですか。それとも、また別なことを想定された質問でしたか。
【藤岡委員】  各研究室の手を加えるところまでやっていただけたらうれしいなということです。
【坂本(隆)委員】  サポートしていただければということでしょうか。
【藤岡委員】  ええ。
【坂本(隆)委員】  そのページの数を考えると、なかなか厳しく、リンクはできるかもしれませんが、個別のものをたくさんするというのはなかなか難しいのではないかなと、直感的には考えます。
【藤岡委員】  全部でなくても、例えば公募型みたいなので、こういう核融合の広報を強化したいので、ウェブページの更新とか、そういうところへのサポートというのが公募の形であってもうれしいなと思います。
【坂本(隆)委員】  分かりました。ありがとうございます。そういう意味ですと、アウトリーチ活動を公募するということはやりますので、形としては一つの対象になるかもしれません。ありがとうございます。
【藤岡委員】  意思決定層に関しては、確かにアウトリーチとしては少し変なのですけど、人材育成という観点でいうと、せっかく核融合は面白そうだなと呼び込んでも、その大学に核融合の研究室がないと機会損失になってしまうので、そういう意味ではやはり意思決定層というのも、これは人材育成という、そういう観点から重要かなというふうに感じているところです。御回答いただきまして、どうもありがとうございました。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございます。人材育成とアウトリーチの御質問、答えるのは坂本隆一委員ですので、まとめてもいいかなと思います。
 木戸委員、お願いします。
【木戸委員】  御説明ありがとうございました。Fusion Science Schoolなのですけども、今年度、ITERスクールの後ということで、かなりばたばたした中で3件やられたということで、仕方なかったと思いますけれども、来年度はぜひ年間通して全体の計画を示していただいて、例えばいつ頃にこういったスクールを開催するという全体感が分かりますと、我々企業側としても、どのスクールに誰を派遣するかというのが年間で計画でき、非常に助かりますので、ぜひそういったことを御検討いただければと思います。
 以上です。
【坂本(隆)委員】  ありがとうございます。反映したいと思いますので、よろしくお願いいたします。ぜひ参加もお願いします。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございます。
 吉橋委員、お願いします。
【吉橋委員】  名古屋大学の吉橋です。たくさん御紹介いただいてありがとうございます。たくさんのスクールがあって、すごく充実しているなということを思いました。
 それで、少し私が思っているのは、今回、学部生を対象にしたような取組であるとか、予算も少しあったのかなと思うのですけど、それがすごくいいなと思っております。といいますのも、今、大学は結構、就職活動を早い時期から大学院生が始めるようになって、研究に本腰入れるようになってから、そういう核融合とか、その他でもですけれども、自分の研究楽しいな、ドクター行ってもいいかなということを考える前に就職活動をしているようなのが見受けられます。学部学生のときに、早いうちからこういった取組に参加して、大学で研究するであるとか、核融合の研究者になるというような、そういった気持ちにさせていくことのほうが、今の人材育成、大学院生や博士で、もうある程度、道を決めている学生よりも、これからという学生に少し力を入れるというのは非常にいい活動なのではないかなと私は思っております。
 あと、そうしたときにどういうツールで情報を流していくのかというのを今後考えていかないといけないと思っていて、ホームページ等々はたくさんあるのですけれども、やはりもう少しアクティブにいろんな情報を発信するようなことというのは考えられていますか、というのが御質問になります。
 以上です。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございます。坂本委員、お願いします。
【坂本(隆)委員】  そうですね、学部生も含めて多層的な取組というものを今後進めたいと思いますので、ぜひ学校、学生の方にも紹介をお願いしたいと思います。ありがとうございます。
 そして発信の仕方に関しましては、現在のところホームページ以外の発信は計画に入っていないのですが、NIFSが個別に行っている広報活動、アウトリーチに関しては、ツイッターとかフェイスブックにも対応しています。そのほか吉橋委員から、何かこういうのがいいのではないかという提案がもしあれば、教えていただきたいと思います。
【吉橋委員】  今結構、女子高生を理系にというので、いろいろな情報発信というのをあちらこちらで検討していて、どうしても高校生とかにもまだ浸透していないところはあるのですけれども、そういったSNSを使った取組ですかね、これが一番今、情報発信していくにはよいと思っているので、それで私のほうで、そういった理系女子を集めましょうという取組のところにこういった核融合のイベント等も流させてもらっていいのであれば、どんどん流していこうかなと思います。
【坂本(隆)委員】  分かりました。ありがとうございます。
【坂本(瑞)主査】  ぜひやっていただきたいと思います。事務局と相談しながらですけど、ぜひお願いします。
【吉橋委員】  そうだと思うのですけど。はい。
【坂本(隆)委員】  ありがとうございました。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございます。
 近藤委員、お願いします。
【近藤委員】  東京科学大学の近藤です。坂本さん、ありがとうございました。
 まず人材育成のほうで1点、人材を確保していく上で様々な取組されているのが分かりまして、それが有効に効いてくるものと思いますが、やはり核融合というのが、特に大学におりますと、原子力の中での核融合というような形になっておりまして、隣接分野、原子力等の分野との関係性というのは非常に重要になってくるものと思います。ですので、人材を育てていくというプロセス、そして出口も含めて、何か原子力の核分裂のほうと一緒にやれるような、そういった取組というのも強化していくと、パイの取り合いにならずに相互作用で、人材の循環というのでしょうか、そういったものが起こっていくのではないかなというふうに感じましたので、今後期待しておりますというのが1つです。
 アウトリーチのほうに関しては、このホームページ等を準備されるに当たり、今日御紹介いただいたものですけども、どういった情報が必要とされているかといった検討調査というものはされましたでしょうか。というのは、坂本先生も御存じのように、今はすごくたくさん、もう情報があふれているような状況で、そうした中で、どういったものが足りなくて、どういったものがどこにどういうふうに届くべきかという、そういった検討をされて構築されたのかなと思いました。もしなければそれでもいいのですが、その辺り、もし御紹介いただけましたらと思います。
【坂本(隆)委員】  まず一つ、原子力分野との関わりということですが、これに関しましては、原子力にとどまらず、広い分野から人を巻き込むということを考えていますので、その中の一つにもちろん原子力も入ってくると考えています。
 それと、アウトリーチ、ホームページに関しましては、私たちが行うだけですと十分な検討ができませんので、今回、サイエンスコミュニケーションのプロにお願いをして調査をしてもらって、コンテンツを考えていますので、御質問いただいた点を反映したページになることを期待しています。
【近藤委員】  ありがとうございました。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございます。近藤委員の今の御意見は、前回だったか、何回か前かの意見で、隣接分野をうまく利用するといいですよというところの流れをくんでいるのだと思います。ですので、もちろん原子力分野は入っていると思うのですけど、効率的だという意味で、うまく利用する、うまくそういう隣接分野を活用すると、そういう分野から入ってくるルートがあるというような観点で言われているのかなと思いました。ですので、全ての分野に同じように力を入れるのもあるのかと思いますけど、そういう効率のいいところをうまく見てはどうですかと、そういうコメントだったのではないかと。
 近藤委員、いかがでしょう。
【近藤委員】  すみません、坂本瑞樹先生の今の発言、補足させていただくと、決して隣接の原子力とか再生可能エネルギーの方々を利用するとか、そういった意図では決してなく、共に連携し合うことにより相乗効果を持ちながら進めていきたいというようなところで、コミュニケーションを密に取って進められると、取り合いになるようなことは少なくともなく、より長い視野で見たときに、エネルギーの分野にたくさんの人が来るようになりますから、そういった意味で、やはり骨組みとして、メインのターゲットとなるような分野とその周辺分野というのはあるのかなと思っています。やはり原子力に関しては、もう既に世界500基近い原子力発電所があり、運営されているというような歴史的な実績もございますので、そういった部分をしっかり認識した上で、核融合というものも人材に関して取り組んでいくというようなことがいいのではないかというのが私の先ほどのコメントの意図です。
 すみません。以上です。
【坂本(瑞)主査】  すみません、ありがとうございました。
【坂本(隆)委員】  ありがとうございます。
【坂本(瑞)主査】  大山委員、お願いします。
【大山委員】  私からは人材育成事業のところで質問があります。5ページ一番下のところで、ITERインターンシップへの助成があるとの説明をいただきました。このインターンシップの公募ですけども、2025年度第1弾公募の締切りが2月28日となっておりまして、今もう既に公募が始まっておりますので、NIFSからの助成があることを早めに周知したほうがいいのかなと思いました。いろいろなチャンネルで、こういった事業を始めますよということは周知されるのかなと思いますけれども、今この一番下のところにQSTのウェブサイト、リンク先が掲載されておりますけれども、こちらのウェブサイトにもどういった助成があるのかというのを掲載することも意味があるかなと思いますので、NIFSの方からこちらのITER国内機関の広報のほうに連絡取っていただいて、この助成事業の中身について掲載してもらってはいかがかと思いますので、御検討ください。
 以上でございます。
【坂本(隆)委員】  ありがとうございます。まさにこのページの準備が今ほぼできたところで、QSTの方にどうやって載せてもらえるかどうかということをまさに議論していたところなので、すぐにお願いに行くかと思います。ぜひよろしくお願いいたします。
【坂本(瑞)主査】  とても重要な情報ですので、学生の皆さんがそういう大切な情報を得られるように、よろしくお願いいたします。
【坂本(隆)委員】  はい。ありがとうございます。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございます。大山委員、よろしいですか。
【大山委員】  はい。以上です。
【坂本(瑞)主査】  大山委員のほうからもサポートを、QST側でぜひお願いいたします。
 福家委員、お願いします。
【福家委員】  コメントというわけではないですが、少し今、私、会社で就職担当をやっておりまして、最近学生さんといろいろなディスカッションをする中で、実際に商用ベースで動いているものを見せると、そこに人が集まるというのが1つあります。それから、非常に技術的に面白いもの、新規性に富んだもの、こういうものを今、作りかけているのだよというのを見せると、これもまた非常に人が集まります。
 私がやっているのは原子力の開発プラントというものですが、将来性はあるものの実際には動いていません。ここに人を集めるには、将来性をかなり語らないといけないということで、「これは将来本当に物になるのでしょうか」、「電気代は一体幾らで出すおつもりですか」という学生さんの質問にも丁寧に答える必要があります。
 やはり人を集める以上、将来みんなが安心して生活していけるよという夢を見せられるよう、アウトリーチ活動においてはそういう情報を出していく必要があるのだろうと、そのように今考えています。すみません、コメントでは全くないのですが、そういうことを感じております。
 以上です。
【坂本(隆)委員】  ありがとうございます。アウトリーチでも、より人材育成に近い側の、学生とかに対するアウトリーチになりますね。
【坂本(瑞)主査】  そうですね、私たちアカデミアではない視点・観点だと思いますので、重要な御指摘だったと思います。ありがとうございます。
【坂本(隆)委員】  ありがとうございます。
【坂本(瑞)主査】  武田主査代理、お願いします。
【武田主査代理】  ありがとうございます。人材育成、アウトリーチということで、非常に重要なお取組について御紹介いただけたものと思っておりますし、私自身、紹介いただきましたインタビューや調査等も協力させていただきましたが、今、社会からの注目がより高まる中で、特に核融合への税金投入にも注目が集まっているというふうに実感しております。
 その観点から申し上げますと、いわゆるEBPM、エビデンス・ベースド・ポリシー・メーキングに当たるような動きというものが核融合業界でも特に重要となってくると考えておりますが、その中でも人材育成ですとかアウトリーチというのは、どうしても効果の測定ですとか定量化か特に難しい領域であるというふうに承知をしております。
 そこで、今回の人材育成並びにアウトリーチの予算の執行に関しまして、具体的にどういったKPIが想定されておられまして、また、予算に関しましてどういった効果測定というものが今後想定されるのかについて、もし公表いただける内容があれば、公表いただければというふうに考えております。
【坂本(隆)委員】  人材育成に関しましては、やはり人材育成に参加してくれた方、そういうものが、まずはその効果を見るための数値になっていると思います。そういう意味ですと、4ページにあったと思いますが、どのぐらいの人がFusion Science Schoolに参加してくれたか、そういうものが一つのKPIになると考えています。そして、発表の中でも言いましたが、企業から毎年100名程度、そして5年間で500名ぐらいの参加者がいるということを期待していますし、それが目標になっています。あと具体的なそのほかのものに関しても、決めてお示ししたいと思います。
【武田主査代理】  大変ありがとうございます。参加者につきまして、人数ベースで測定されるということで承りました。どうしてもこういった行事ですと、参加人数でトラッキングを止めてしまうというようなことが起こると思いますが、ぜひそういった方々が今後どのようなキャリアの変容があって、最終的に核融合業界に残られたのかであるとか、そういったところまで含めてもし測定ができるのであれば、測定をお願いしたいというふうに考えているところでございます。
 以上です。
【坂本(隆)委員】  ありがとうございます。参加しただけではなくて、その人が核融合にどれだけ今後しっかりと残ったかということの測定をできればと思います。ありがとうございます。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございます。大変重要な御指摘で、残った方が原型炉開発で活躍していただくというのが最終目標だと思いますので、ぜひそういう視点でお願いしたいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。
 では、私から1つ。ITERスクールとか、こういうFusion Science School、始まったばかりで大変な時期を大変成功裏に進められていて、NIFSの皆さんも大変御努力されたということが非常によく分かります。引き続き令和7年度も進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 その中で1点、戦略官からもありましたけど、大学間連携というところは、今どのような形で考えていらっしゃるでしょうか。
【坂本(隆)委員】  大学間連携に関してですか?
【坂本(瑞)主査】  はい。
【坂本(隆)委員】  そういう意味ですと、現在は国内の派遣対象として、大学間も派遣先として考えています。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございます。
【坂本(隆)委員】  これまでの共同研究の枠組みなどを使って、大学間連携で支援をしていくということになります。
【坂本(瑞)主査】  なるほど。大学間連携なので、文字からすると、NIFSから大学や関係機関に派遣するというだけではなくて、大学間という意味で、そういうネットワークをいろいろうまく使いながら行う、要するにNIFS-大学ではなくて、大学-大学とか、そういうようなものを含めて、全体のネットワークの中で人材育成ができるとよいと思っています。多分この大学間連携というのは、そういう教育システムも含めてやられることを考えられているのかなと思ったのですけど、今回初年度はスクーリングで大変だったと思いますが、そういうような形で進められないですか。
【坂本(隆)委員】  ちょうど今表示されている5ページ目のところの最後、大学間連携の3つ目のポチに、国内の大学への派遣とか交流を支援するということがありますので、この枠組みを使うことによって、違う大学の学生が別の大学の研究室に行くという支援を想定しています。
【坂本(瑞)主査】  なるほど、分かりました。先ほどの藤岡委員の発言とも関連するのですけど、大学の意思決定機関との関係という意味では、やはりそういうシステムをうまく活用して大学の中のプログラムとして活用できると認知度が上がると思いますので、またそういったことも御検討いただければと思います。
【坂本(隆)委員】  ありがとうございます。
【坂本(瑞)主査】  よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 ほかに御質問等ございませんでしょうか。
 ありがとうございました。大変活発な御議論いただきまして、いろんな御意見とかコメントありました。ぜひ今回の意見を令和7年度に生かしていただければと思いますので、御苦労のあるところだと思いますが、よろしくお願いいたします。坂本グループリーダー、坂本委員、ありがとうございました。
 それでは、議題の3「原型炉研究開発ロードマップの見直しに向けて」に入りたいと思います。
 ITER計画の進捗状況や2030年代の発電実証を目指すとした閣議決定を踏まえて、今後どのような原型炉研究開発ロードマップの見直しが考えられるのか、原型炉タスクフォースにおいては、発電実証のさらなる前倒しの可能性などについて議論を行い、昨年11月の第40回核融合科学技術委員会において、私からその議論の状況を報告いたしました。今後も原型炉目標の見直しや技術的課題のさらなる検討、現実的な工程表の作成などについて審議を進めていくところではありますが、本日は、検討事項の一つである現実的な工程表のイメージについて、事務局から御説明いただいた後、大山委員から御発表いただきたいと思います。
 まずは事務局から御説明をお願いいたします。
【馬場戦略官】  事務局です。説明に入る前に、先ほどの人材育成、坂本主査おっしゃるとおり、大学間が連携してというのは、各大学と連携して、連動してという取組かと思います。NIFSの方々も大変かと思ってはいるので、むしろ大学の皆様の力も活用しながら、みんなで育てていくというような形が有機的にできるといいかなというふうに思っています。いずれにせよ、引き続きこの場でも御指導いただければありがたいと思っています。
 それでは、そもそもの経緯のところについて、時間も限られているので、私のほうからまず簡単に、事務局からそもそもの経緯を説明させていただいた後、大山委員のほうから本体の資料を説明させていただければと思います。
 まず、こちらの資料については、11月の核融合科学技術委員会で坂本主査から原型炉タスクフォースの議論の結果として報告したものを引用しております。これは繰り返しになりますが、国家戦略において原型炉を早期に建設することが早期実現に向けて肝要であるというような話、その後、原型炉に向けた方針については、過去においても研究の進展や国内外の状況の変化に応じ、適宜見直しを実施したこと。そういった中、このたびITER計画の進捗状況や、諸外国で掲げられている野心的な目標を踏まえ、以下の観点に留意しつつ、原型炉に向けた方針を見直してはどうかというような議論が、この約半年、1年、議論を重ねてきたことかと思います。社会実装につながる科学的・技術的に意義のある発電実証を可能な限り早期に実現すること。原型炉目標として掲げられている丸1、丸2、丸3や、原型炉段階への移行判断をどうするかという部分。ITER計画/BA活動の知見や新興技術を最大限活用すること。先ほど議論あった基盤整備を含めた、バックキャストに基づくロードマップを作成すると、そういった観点で議論が重ねられてきたというふうに思っております。
 そのような中、この半年においては、原型炉移行判断の見直しや、発電実証のさらなる前倒しの可能性について、現行のいわゆるJA DEMOと言われているものに加えて、プランB、C、Dというような形での議論が重ねられてきたというふうに理解しています。こちらはこの後御紹介あると思いますが、繰り返し御説明している段階型の改造をしていくというようなものになっているかと思います。
 最後ですけど、前回、坂本主査から核融合科学技術委員会に報告した内容でございますが、多段階で改造する計画案、いわゆるプランDの技術的な実現可能性が示されたところであります。一方、さらなる検討を行う必要がある技術的課題としては、今後アクションプランの見直しというところも必要になってくると思いますが、ここに羅列されているような部分についても並行して研究開発などを進めていかないといけないと思っていますし、ITERについても、得られた知見を最大限活用するということで、様々な影響を軽減できるのではないかというような御示唆があったかと思います。今後、恐らくこれは次期に向けてになると思いますが、原型炉研究開発ロードマップの見直しに向けては、ITER、JT-60SA以外の中性子源や安全性の研究、トリチウム取扱技術、ブランケット開発、人材育成、社会受容性などについて審議を行い、ロードマップの策定、国家戦略の改定の議論に結びつける予定というような形で坂本主査にも御報告いただいたところであります。
 本日は、そういった検討報告も踏まえてQSTのほうから、現在考え得る方向性などについて御説明いただくというふうに理解しているところでございます。
 事務局からの補足説明としては以上でございます。
【坂本(瑞)主査】  馬場戦略官、ありがとうございました。
 そうしましたら、次に大山委員から御説明をお願いいたします。
【大山委員】  QSTの大山でございます。資料5にありますように、ITERサイズ原型炉による発電実証の前倒しに係る検討について説明させていただきます。
 2ページ目をお願いいたします。発電実証の前倒しについては、令和4年度の原型炉タスクフォースにおいて、第1回中間チェック・アンド・レビューでの指摘を受けて、アクションプランに沿ったJT-60SA及びITERから原型炉への統合戦略を基に、核融合発電の実施時期の前倒しが検討されたところでございます。その際の検討の結果としまして、ここに示していますように、原型炉の目標を第1期と第2期に分けて設定することで、原型炉による発電実証の5年程度の前倒しが検討されたところでございます。一方、各国政府が2030年代の早期発電実証に向けた政策を打ち出しておりますが、我が国においてもフュージョンエネルギー・イノベーション戦略が策定されて以降、フュージョンエネルギーによる2030年代の発電実証に向けて様々な取組が展開されており、文部科学省からの依頼を受けて、前回の第37回原型炉タスクフォースにおいて、発電実証のさらなる前倒しの可能性の検討状況について報告したところでございます。
 3ページ目をお願いいたします。発電実証のさらなる前倒しの考え方につきましては前回の原型炉タスクフォースで説明しておりますので、詳細は割愛いたしますけれども、ITERと原型炉の間にある技術ギャップを小さくする、それが基本的な考え方でございます。そのため、装置の全体サイズを決定するトロイダル磁場コイルをITERと同じ大きさとする設計条件としつつ、段階的に原型炉の性能を向上することを許容することで、発電実証の達成時期を加速するというものでございます。それが前回の原型炉タスクフォースで、こちらのページで示した考え方のところでございます。
 4ページ目をお願いいたします。左下に示すJA DEMOの概念設計は、核融合科学技術委員会で策定された「核融合原型炉研究開発の推進に向けて」に述べられている原型炉の目標、すなわち左側のオレンジの枠で囲われている部分でございますけれども、核融合エネルギーの実用化に備え、丸1数十万キロワットを超える定常かつ安定した電気出力、丸2実用に供し得る稼働率、丸3燃料の自己充足性を満足する総合的な三重水素増殖を実現すること、これを満足しております。ITERの3倍に相当する1.5ギガワットの核融合出力を発生すべく、プラズマの主半径はITERのおよそ1.4倍の8.5メートルが必要となります。JA DEMOを建設するためには、上のほうにロードマップ(平成30年策定)と記載ございますけれども、この現行のロードマップに沿った研究開発が必要になるため、工学設計・実規模技術開発を2035年頃まで実施する必要があります。これは、このサイズのJA DEMOを建設しようと思うと、これぐらいの期間がかかるというところでございます。
 ITERと原型炉の間の技術ギャップを小さくして発電実証を加速するためには、前回の原型炉タスクフォースにおいて説明しましたように、運転開始時から丸1から丸3の目標を同時達成するということを目指すのではなく、ITERサイズのトロイダル磁場コイルを用いた原型炉において、0.2ギガワットクラスの発電実証を原型炉の第1期目標として定めることで移行判断を前倒すとともに、主要機器を段階的にアップグレードすることで段階的に性能を向上するアプローチというものを提案したところでございます。
 具体的な提案の内容を真ん中下のほうの枠の中で記載してございますけれども、第1期では、発電に特化したブランケットを装着することでITER程度のプラズマ体積を確保し、数分間の短パルス運転にて、発電端出力で0.2ギガワット程度、正味電力でゼロ程度の発電を実証するというものでございます。
 右下に装置の断面図を示しておりますけれども、水色で示すものがトロイダル磁場コイルでして、これをITERと同じサイズにするということが設計の条件としてございます。この際に、点線で示しているプラズマの体積、これを第1期では確保して、点線と水色のトロイダル磁場コイルの間に発電に特化したブランケットを装着するというものでございます。
 第2期では、燃料増殖も行うブランケットに交換するとともに、数時間の長パルス運転にて燃料増殖を実証するというものでございます。当然、ブランケットの機能が付加されますので、ブランケットの厚さが厚くなります。そのため、右の図に示しますように、点線から実線に、若干プラズマのサイズは小さくなるだろうと予測しているところでございます。
 第3期では、加熱・電流駆動装置の高効率化やプラズマ性能を向上し、定常運転にて100メガワット規模――これは正味電力としてゼロを超える100メガワット規模――の発電を実証するというものでございます。
 このような段階的な目標を設定することで、発電実証と加熱装置の高効率化に必要な技術開発を並行して実施することが可能になるということで、その結果として加速が可能ではないかというところが前回の議論でございました。
 5ページ目をお願いいたします。そのようにITERサイズにすることで、原型炉とITERの間の技術ギャップが小さくなるわけですが、それと併せてITER機器製作の知見が反映できるわけです。例えばトロイダル磁場コイル、ITERのコイル全数が完成してございますので、そういったITERの実機製作の知見を反映することによって、設計、R&D、試作などを大幅に簡略化し、建設に最短で着手、併せて建設期間の短縮も見込んだというスケジュールのイメージがこちらでございます。
 左上の水色の枠に囲われておりますように、原型炉建設の実施主体、原型炉のサイト、安全規制の考え方など、これらが決定されているということを前提といたしまして、2027年から超伝導コイル等の機器製作や建屋建設に着手、その後、ITERのダイバータ運転開始を踏まえて、2035年中頃から順次組立て作業を開始して、2039年の発電実証に備えるというスケジュールとなっております。また、第2期以降の運転に向けて必要な材料照射データにつきましては、横線の中で一番上にDONES照射と記載してございますけれども、欧州で建設が進められておりますDONESで必要なデータを取得するということを想定したイメージとなってございます。
 こちらのスケジュール、非常にチャレンジングなスケジュールとなってございますけれども、建設や組立てにはJT-60SAやITERの知見を十分に反映するとともに、我が国の産業界の力を結集することで実現は可能であると考えているところでございます。ただし、装置完成後に速やかに発電を実証するためには、ITERでの超伝導コイル冷却等の装置運転の経験ですとか、重水素-重水素プラズマの運転経験、これをしっかりと反映することが極めて重要であると考えているところでございます。
 また、このスケジュールのイメージを実現するためには、図の下のほうに記載してございますけれども、実規模技術開発に必要な基盤整備のための建屋を建設しつつ、左のほうの線で記載してあるのは建物の建設のことしか記載してございませんけれども、右側の図のほうには既存の建屋の中に整備する設備も記載してございますけれども、こういったことを並行して行うことが必要となります。各段階において必要な技術開発を実施する際には、スタートアップを含む産業界の参画を得て速やかに着手することは、原型炉研究開発だけでなく、サプライチェーン構築を含めて、フュージョンエネルギーの社会実装に向けて我が国の技術的優位性を確保することにもつながるのではないかと考えております。
 QSTからの説明は以上でございます。
【坂本(瑞)主査】  大山委員、ありがとうございました。今の御説明に対して御質問、御意見などありましたらお願いいたします。
 武田主査代理、お願いします。
【武田主査代理】  大変ありがとうございます。大山委員におかれましても丁寧な御説明、大変ありがとうございました。
 事前にまずは事務局の方に御確認を申し上げたいのですけれども、先日の核融合科学技術委員会においても本案について報告なされていたと伺っております。そもそも送電端における出力がゼロ以下である場合には発電実証として認め難いというような議論が核融合科学技術委員会のほうで出たというふうに承知しておりますので、今回の案の報告において、どういった議論もしくは委員の方々からの反応があったかということについて、事務局の方から御教示願えませんでしょうか。
【坂本(瑞)主査】  馬場戦略官、お願いいたします。
【馬場戦略官】  ありがとうございます。本件については、前回の核融合科学技術委員会11月に加えて、先週金曜日にこちらの資料なども含めて御説明をさせていただいているところであります。前回の坂本主査の説明の際にもありました、もともと挙げられている核融合科学技術委員会の丸1、丸2、丸3と言われている目標を同時に達成するということについては、必ずしもそれを求めることはないだろうと、段階的に改造していくというような形についての方向性についてはおおむね受け止められたのではないかというふうに思っております。また、第1期からネットゼロを上回るものという部分については、もともとQSTからの御提案だったというふうに思いますが、こちらについても、先ほどの7月の合同開催のときに、社会実装につながる科学的・技術的に意義のある発電実証を可能な限り早期に実現するというところを我々条件として提示している中でQSTのほうから御提案があったものについて、こちらについても異論なく受け止められたのではないかなというふうに思っています。
 ただ、やはりスケジュールについては、前回の委員会の場では石田委員から御説明がありましたが、世界に先駆けた発電実証をするとした場合には、やはりこういった形のアグレッシブなチャレンジングな形になり得ると思います。それについてはやはり丁寧に工程をしっかりと積み上げていかないといけないだろうということで、研究開発、人材育成、そういったところについての課題をしっかりと整理していくべきというような趣旨の御議論があったのではないかなというふうには思っております。
 お答えになっていますでしょうか。
【武田主査代理】  大変御丁寧にありがとうございます。それを受けまして、大山委員に2点だけ御質問差し上げたいのですけれども、まだ正式な決定がなされた段階ではないというふうに私としては理解しておりますが、いつまでに何が決定されれば、もしくはいつまでに何の予算が措置をされれば、このスケジュールに沿った2030年代の発電実証が可能となるのかというのが御質問の1点目でございます。
 もう1点といたしましては、馬場戦略官のほうからも冒頭で、ムーンショットについても早期発電に資するような計画を公募していきたいというような御発言もございましたが、ムーンショットですとかスタートアップですとか、そういった計画からは今回どういった知見を取り入れられるような見通しがあるのかという御質問でございます。工学設計の段階から何か取り入れが可能であるのか、それともいわゆる第2期以降においてそういった知見の取り込みというものが行われるのか、そういったものについてもお聞かせ願えればと考えております。
 以上です。
【坂本(瑞)主査】  大山委員、お願いします。
【大山委員】  まず、最初のほうの御質問につきましては、5ページ目の左上にも記載がございますけれども、原型炉建設の実施主体とかサイトの選定、安全規制の考え方などが決まった上で、かつ今回、原型炉の目標は、現時点での核融合科学技術委員会で決められた目標は、1つ前のページに記載しましたけど、丸1から丸2というものが今のところ、まだそれが正式な目標となっているのだというふうに認識してございますので、この目標を見直すというところがオーソライズされる、そういったことが全て終わった段階で、実際に次のステップに進めるのではないかというふうに個人的には認識しておるところでございます。
 また、2つ目の質問でございますけども、ムーンショットやスタートアップでの技術開発をこのITERサイズの原型炉にどのように取り込めるかというところでございますけれども、もちろんタイミング次第のところはあるかと思っております。前回、坂本からも御提案させていただきましたが、ITERサイズのトロイダル磁場コイルというところを設計条件としてございますけれども、ITERと全く同じ磁場強度にするかどうかというところは、オプションとして強磁場オプション、だからサイズは同じであっても導体を高性能化する見通しが技術的に得られるのであれば、ITERよりも強いトロイダル磁場を用いる装置というものを設計するオプション、これは排除していないというところで、委員の方からも、ぜひそのオプションを採用してほしいというような御意見をいただいたというふうに認識しているところでございます。なので、そういった設計を固めるまでに新しい技術が、十分見通しが得られるというものがあれば、第1期においても取り込むことは検討すべきだというふうに考えてございます。
 また、今日の私の説明でもさせていただきましたが、ブランケットについては第2期、第3期と、恐らく交換していくことになろうかと思っております。特に燃料増殖の部分につきましては第2期で必ず交換するという計画でございますので、燃料増殖の部分について新たなアイデアなどがムーンショットで出てきた場合には、そういったものを第2期のブランケットの設計に反映するということは時間的にも可能ではないかと考えております。
 以上でございます。
【武田主査代理】  大変ありがとうございました。次期に向けて重要な決定事項も整理いただいたと考えておりますし、また工学設計から第2期以降に向けて、どういったタイミングでどのような設計移行が可能かということについても丁寧に、切り分けて御説明いただけたものというふうに思っております。ありがとうございます。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。今の核融合科学技術委員会の3つの目標に関しては、もしありましたら、事務局のほうから直接回答いただけますか。今この3つのものは、委員会でまた決定するような形になるのでしょうか。タイムスケジュール的に、もう決まって、この前の委員会でほぼ、右側に書かれている丸1から丸3を同時達成しなくてもよいということが認められたというふうに考えてよろしいでしょうか。
【馬場戦略官】  ありがとうございます。事務局です。坂本主査の御認識のとおりかというふうに思っております。
【坂本(瑞)主査】  ですので、もうそこはクリアできているということで、加速の御検討をいただければというふうに思います。よろしくお願いいたします。
 ほかにいかがでしょうか。
 近藤委員、お願いします。
【近藤委員】  東京科学大学の近藤です。すみません、大山さんに1点お聞きしたくて、まだいわゆるこういうことが想定し得るということだと思うのですが、先ほど第1期から第2期、第3期が横に並んだスライドがあったと思うのですが、10年ぐらいでブランケットの交換を2度ほどするようなスケジュールになっているように見えたのですね。ただ、これはやはり、そういったことを可能にするようなイノベーションが求められているというようなメッセージとも受け取れるのですが、ある一定量の、どういう状況かは分からないのですが、放射化した材料とかを取り扱うのにリモートメンテナンスなんかをすることになるのかなと思いますし、その辺りが少しリアリスティックなものなのかどうかが気になります。
 ですから第1期で一定のマイルストーンをクリアできたときに、そこから先、10年以内にそこまで達しなければいけないという、そういう厳しい境界条件で考えなければいけないのかどうか、もしくは1期で原型炉としてのスタートを切ったというときに、それ以降は柔軟にもう少しリアリスティックなスケジュールを検討してもよいのか、その辺を少し教えていただけるといいかなと思いました。すみません。
【大山委員】  御質問に対して全てお答えできるかどうか分からないところでございますけれども、まず第1期から第2期への改造の部分をどの期間でやるかといったところに関しましては、まず第1期での運転が非常にパルス運転を繰り返すという形での運転になりますので、装置の放射化のレベルというのは、フルの定常運転の頃に比べれば、かなり限定されるものにはなるだろうとは思っております。そのためにどういったブラケットの交換の仕方をしていくのかというところについては、定常運転をやっているときの交換のやり方、遠隔保守の装置に求められる放射線量というものと、第1期から第2期の移行期に求められるものというのは技術的にもレベルが異なることにはなるのかなと思っております。
 また、私の説明資料にあるスケジュールのイメージというところにつきましては、まだ実際、これは段階的に、第1期から改造、第2期改造、第3期になりますよというようなイメージのレベルでございまして、御指摘いただいたように、では第2期に装着するブランケットをいつから開発して、製作期間にどれぐらいかかって、メンテナンス、交換にはどれくらいの期間がかかってというところまで細かく積み上げてこのイメージ図を作っているところではございません。そこについては今後いろいろな技術的なところの積み上げをしながら、1期目以降のところについては、より今後具体化していくことになろうかと考えております。
【近藤委員】  ありがとうございます。そういった意味で、2050という数字が出てきていますけれども、もし2050年までに、今、大山さんが想定されているようなことを解決したいというか、達成したいとなれば、そういった交換とかを十分に考慮したようなデザインというものが、燃料増殖ないしは発電能力というものと同等ないしは相当するぐらい重要になってくるのかなという、そのようなメッセージで、ただ一方で、やはり原型炉には商用炉につながる技術的な蓄積というものもあるかなと思っていまして、御存じのように、ブランケットはモジュール式でやるもの等々がよく考えられていると思うのですが、それ全部外して、全部つけ直すという作業が、果たして数年でフィージブルになるかどうか。目標値というようなメッセージで、2050年までには総合運転をということだと思うのですけども、その辺り、どのレベルで何をどうクリアするのかという部分と、そのために必要な妥協点というのでしょうか、そういうのを両方見ながら考えていかないと、やはり10年間で2回のブランケット交換というものが果たしてどうなのかというのは、すみません、今日の段階で議論することではないですが、やはりもう少し精緻な議論をしてからのほうがよいのかなというような気もしました。
 すみません。以上です。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。後半のところに関しては、これから原型炉タスクフォースでも密に議論していく必要があると思います。またよろしくお願いいたします。
 坂本隆一委員、お願いします。
【坂本(隆)委員】  今、主査のほうから今後議論していくことになるということを言われたのですが、少し心配しているのは、より高性能なプラズマが必要な第2期、第3期でプラズマを小さくしないといけないというような計画が、本当に目標達成に対して妥当な計画かということに対して疑問を感じました。
 それと、投資を得て野心的な計画にチャレンジするスタートアップと同じ目標、同じスケジュール感で、堅実に遂行する国のプロジェクトを計画することが妥当かどうかということに対して少し懸念を感じましたので、一応コメントとして申し上げたいと思います。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
 ありがとうございました。今の坂本隆一委員の意見も踏まえて、今後議論していく必要があると思います。やはり最終的な出口は商用炉というところになります。今は2030年代発電実証というところからバックキャストして検討したというところが今あるものですので、そこで発電実証を行って、商用炉に向けて技術を開発していく、加速化の概念でQST特別チームに御検討いただいた解だと思います。それが商用炉にすぐつながるかどうかということは、これから私たちよく議論していかなければいけなくて、足りないものがあれば、それは並行して開発すべきものとしてR&Dをしていかなければいけないのだというふうに思います。ですので、今、加速化のためにITERサイズということで、サイズはそこにしたというところですけど、中身に関しましては、より今までの開発を生かすという形で、どんどん新しいものを入れて技術を上げて、国内の産業ともリンクしていくということも非常に重要な課題になっていると思います。よって、そこだけでいいというわけではないと思いますので、やはり商用炉に向けて、何をすべきかということは原型炉タスクフォースでよく議論して、フュージョンエネルギーのある世界というものをどう実現していくのかというための技術的なところを、しっかり私たちのほうで議論できればと思います。そういう意味で、委員の皆様にはぜひよろしくお願いしたいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。
 ありがとうございます。大山委員、ありがとうございました。
 そうしましたら、これで本日の議事は終了となります。第12期の原型炉タスクフォースは、本日が最終回となります。本日の議論に限らず、御発言のある委員はいらっしゃいますでしょうか。何かあれば、今期最後ですので、言っておきたいことがあったということがあれば、御発言いただきたいと思いますが、よろしいですか。
 ありがとうございます。そうしましたら、第12期の皆様、今期はどうもありがとうございました。お礼申し上げたいと思います。また来期から、今残っている課題、坂本隆一委員も言われたような課題についてもしっかり議論して、発電実証に向けて技術的なところを検討してまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。
 御多忙の中、本日は御出席いただきましてありがとうございました。これにて閉会したいと思います。
 
―― 了 ――

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