核融合科学技術委員会 原型炉開発総合戦略タスクフォース(第34回) 議事録

1.日時

令和6年6月3日(月曜日)16時00分~18時00分

2.開催方法

オンライン開催

3.議題

(1)フュージョンエネルギー・イノベーション戦略を踏まえた最近の取組
(2)フュージョンエネルギーの早期実現に向けて
(3)その他

4.出席者

原型炉開発総合戦略タスクフォース

坂本瑞樹主査、武田秀太郎主査代理、伊神弘恵委員、大山直幸委員、奥本素子委員、木戸修一委員、古賀麻由子委員、近藤正聡委員、坂本隆一委員、鈴木隆博委員、馬場貴志委員、福家賢委員、藤岡慎介委員、横山須美委員、吉橋幸子委員

文部科学省

千原由幸研究開発局長、清浦隆大臣官房審議官(研究開発局担当)、馬場大輔研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)、髙橋佑也課長補佐、日野宏江核融合科学専門官、安原亮科学官、梶田信学術調査官

5.議事録

【坂本(瑞)主査】  本日は、御多忙のところ、御参加いただき、ありがとうございます。定刻になりましたので、第34回核融合科学技術委員会原型炉開発総合戦略タスクフォースを開催いたします。
 司会進行については、本タスクフォースの主査である私、坂本が担当します。
 それでは、議事に入る前に、事務局より新たな科学官、事務方の紹介、定足数及び配付資料の確認をお願いいたします。
【日野専門官】  事務局でございます。前任の吉原の後任として本年4月に核融合科学専門官に着任いたしました日野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、まず初めに新たに御就任いただいた科学官を御紹介させていただきます。自然科学研究機構核融合科学研究所(以下、NIFS)教授の安原亮科学官でいらっしゃいます。
【安原科学官】  初めまして、NIFSの安原と申します。専門はプラズマ計測、レーザー工学となっています。よろしくお願いします。
【日野専門官】  そのほか、事務方に人事異動がございましたので、御紹介させていただきます。
 文部科学省研究開発戦略官付専門職に就任しました金子寛直でございます。
【金子専門職】  文部科学省研究開発戦略官付の金子と申します。よろしくお願いいたします。
【日野専門官】  続きまして、委員の御出欠でございます。本日は、15名全ての委員の方々にオンラインにて御出席いただいております。本会議の定足数は、運営規則の第3条に規定されておりますように、過半数でございますけれども、この定足数を満たしておりますことを御報告いたします。
 続きまして、本日の資料でございます。議事次第にお示ししておりますとおり、資料1から5及び参考資料1から3でございます。会議中はZoomの画面共有機能により事務局から資料を表示いたします。また、各委員におかれましては、御発言いただく際には画面の下にございます「手を挙げる」ボタンを押していただきまして、ミュートを解除の上、御発言いただきますようお願いいたします。
 以上でございます。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。
 なお、本日は文部科学省研究開発局の千原局長、清浦審議官も御参加しておりますので、御紹介いたします。
 また、本タスクフォースは核融合科学技術委員会運営規則に基づき、議事を公開いたします。御発言は議事録に掲載され、ホームページで公開されます。
 それでは、本日の議事に入ります。議題の1番目はフュージョンエネルギー・イノベーション戦略を踏まえた最近の取組です。
 それでは、事務局から資料の御説明をお願いいたします。
【馬場戦略官】  ありがとうございます。それでは、事務局から資料に基づいて説明したいと思います。
 それでは、国家戦略を踏まえた最近の取組について、前回、原型炉タスクフォースが開催された3月以降の取組について、主に御紹介したいと思います。2ページ目、CSTI、総合科学技術・イノベーション会議で2月に配付した資料です。こちらについては前回、お示ししているかと思いますが、今後の方針で記載されているとおり、この部分について特に本日は御説明したいと思います。ITER、JT-60SA等で培った技術や人材を最大限活用し、国際連携も活用し、原型炉に必要な基盤整備を加速する。産業協議会とも連携して安全確保の基本的な考え方を策定するなどフュージョンエネルギーの早期実現、関連産業の発展に向けた取組を加速するということが2月に決まっているところでございます。
 特にこの中で今回は3つ、国際連携、産業協議会、安全確保、この3つについて最近の動向を御紹介したいと思っております。まず1点目、国際連携です。こちらは4月に報道もされているので御存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、盛山文部科学大臣がアメリカのエネルギー省の副長官との会談においてフュージョンエネルギーの実証と商業化を加速する戦略的パートナーシップに関する共同声明を発表しております。3ページ目の概要に記載しているとおり、日米両国、本委員会に参加していただいている委員の方々は、いろいろな形で御貢献いただいているところでございますが、科学技術協力協定の下で共同研究や人材交流を長年実施するとともに、ITER計画に共に参画するなどこれまでも強固な協力関係を築いてまいりました。我が国においては、昨年策定した国家戦略に基づき、早期実現には同志国との連携をさらに強化していく必要を考えており、このたび共同声明を発表したところでございます。
 今後、この科学技術協力協定に基づいて設置された日米核融合調整委員会(CCFE)、これは御存じの方、多いかと思います。当時、福田総理時代に始まったもので、40年ぐらいの歴史があるものになっております。NIFSを中心に様々な人材交流、共同研究を行っているところでございますが、そういった場を最大限活用しながら科学的・技術的課題への対応や施設の共用・開発、規制に関する国際的な協調の促進、産業界とも連携した世界的なサプライチェーン発展の支援、人材の育成、研究者交流の拡大など戦略的な活動を推進するということがうたわれています。
 この件については、日米首脳共同声明、岸田総理、バイデン大統領の下で発表された未来のためのグローバルパートナーシップにおいても、この旨述べられており、我々としては、政府としてもCCFE、既存のそういった取組をできなかったところ、それをさらに拡充するような形で取り組んでいきたいと思っているところでございます。この点については、後ほどNIFSの坂本委員からも、今の取組、さらに今後の可能性についても後半の議題でお話しいただくことを予定しております。
 続いてG7になります。G7の気候・エネルギー・環境大臣会合、こちらについては4月末にイタリア・トリノで開催されております。こちらについて、フュージョンエネルギーについて恐らく初めて盛り込まれたかと思いますが、将来的に気候変動とエネルギー安全保障上の課題に対して、永続的な解決策を提供する可能性があるということを認識し、開発と実証に向けた国際協調を促進するということが掲げられています。また、研究開発協力を強化するG7作業部会を設立するとともに、規制に対する一貫したアプローチを推進するための情報交換を実施するということがエネルギー・環境大臣会合でもコミットメントとして掲げられています。今、事務局としては、今月行われる首脳会合においても、このフュージョンエネルギーについてのコミットメントについて何らかの記載をするべく、現在、各国との調整をしている段階でございます。
 2点目、産業協議会です。こちらについても繰り返し御説明しているとおり、5ページ目の右上にありますが、この国家戦略でつくるというところ、令和5年度の設立を目指すということがうたわれている中、ちょうど昨年度末にJ-Fusionという形で正式に設立されました。役員としては、会長、副会長、常任理事の5社、また、理事として加わっていただいている方々、計21社を設立発起人とし、3月に正式に立ち上げました。既にアメリカワシントンD.C.の大使公邸でのイベントであったり、また、5月末には設立社員総会、設立記念会を開催であったり、と既に活動しているところでございます。
 アメリカの業界団体とイベントを開催した際には、このような形でアメリカ大使館、在米の日本大使館でイベントを開催し、発起人やアメリカのエネルギー省等の政府関係者、そういった方々も集まりながら日米間のネットワーキングというものを実施しております。また、最近では在京のイギリス大使館などでも同様のイベントを開催するなど、サプライチェーンの構築、ネットワーキング、そういったところについても国としても後押しをしていきたいと考えているところでございます。
 また、5月21日には設立社員総会、設立記念会も開催しております。高市内閣府特命担当大臣、盛山文部科学大臣、それぞれから祝辞を述べておりますが、高市内閣府特命担当大臣のほうからは、このJ-Fusionというのは、実に多様な業界・業種の企業で構成されているところ、海外、例えばアメリカの場合だとスタートアップの中核としているような団体ですが、日本としては日本独自ということで、多様な業界・業種で構成されているところが強調されています。特に日本の力を総結集したオールジャパンのチームができることを願っているというような発言がございました。
 また、盛山文部科学大臣からは、フュージョンエネルギーの実現には企業の技術や人材が必要不可欠であるということや、産学官が密に連携しているのは日本の強みであり、これまで以上にITER計画等に参画いただき、原型炉に活かせる技術や人材を培っていきたいということを発言しているところでございます。まさにこの原型炉タスクフォースでも議論しているとおり、ページの後段にありますが、QSTを中心に企業や大学と協力した体制を構築し、今後、原型炉の基盤整備を加速するということ、また、J-Fusionとも連携しながら研究開発に加えて産業化に向けた取組についても同志国との国際連携を強化していきたいというような御発言をさせていただいているところでございます。
 3点目、安全確保検討タスクフォースの状況です。こちらについては内閣府の有識者会議の下に設置された安全確保検討タスクフォースになります。繰り返し述べているとおり、この10年を見据えた戦略として、フュージョンエネルギーの産業化ビジョンとして国家戦略が掲げられているところでございます。このビジョン達成に向けた民間投資の呼び水となる具体的なアクションを盛り込んだ国家戦略として策定しておりますが、8ページ目に記載してあるとおり民間企業の参画を促進するためには早期に安全規制を検討する必要があるということがうたわれているところでございます。今後、スタートアップはもちろん、原型炉研究開発に向けて必要となる安全確保の検討の基本的な考え方に向けて、今年度中に検討をまとめていきたいと考えているところでございます。
 メンバーとしては、この原型炉タスクフォースのほうからも3名、奥本委員、福家委員、横山委員にも参画いただき、この原型炉タスクフォースとも議論を連動させていきながら、最終的にはまとめていきたいと考えているところでございます。
 繰り返しになりますが、この安全確保検討の基本的な考え方については、関係学会、具体的には日本原子力学会や、プラズマ・核融合学会といった、専門家などの議論を、進捗状況、そういったところもフォローさせていただきながら連携していきたいと思っております。今年度中にはパブリックコメントを経て取りまとめていきますが、原型炉開発の促進も念頭に置いた安全確保の基本的な考え方を検討していくということは、国家戦略に記載のとおりでありますので、今後議論の状況によっては、この原型炉タスクフォースでも報告をさせていただければと考えているところです。
 事務局としては主な3点、最近の取組として御紹介させていただきました。以上でございます。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。
 ただいまの御説明に対し、御意見、質問などございましたら、お願いいたします。
 伊神委員、お願いします。
【伊神委員】  3ページ目の同志国との、ここでは米国との連携が取り上げられています。戦略的パートナーシップを今後推進していくというような御説明がありましたが、これまでにもいろいろな政府間協定があって、それに基づいて予算があり、その枠で協力というもの、例えば、共同研究なり、ワークショップの開催なりというものを進めてまいりました。けれども、近年、現実的に予算が削減されていて、いろいろワークショップの開催等のレベルでも非常に困難であり、また、人の交流というのも困難になってきているという現状がありますが、このパートナーシップが新たに締結されることで、予算的な措置というのはあるのでしょうか。
【馬場戦略官】  事務局からよろしいでしょうか。
【坂本(瑞)主査】  お願いいたします。
【馬場戦略官】  伊神委員、ありがとうございます。御指摘のとおり、例えばアメリカにおいては、CCFE、日米核融合調整委員会に基づく協力、人材育成、交流などが30年、40年にわたって核融合で行われているところでございます。ただ、おっしゃるとおり、問題意識としては、自分も同じように認識しておりまして、既存の交付金といったものにひもづかれた中で行うとした場合に、新しいことをやろうとしてもなかなか取り組みづらいというような課題があったと思っております。
 そのような中、昨年、この原型炉タスクフォースで議論したとおり、BA補助金で原型炉実現に向けた基盤整備ということで予算措置をしております。今年度においては、認められている予算の範囲内でやっていく必要があるかと思いますが、我々としては日米、また、伊神委員にも参画いただく日韓会合といったところで必要な取組があるようであれば、必要な予算をこれまでの既存の交付金とは別の形で、具体的にはBA補助金の原型炉実現に向けた基盤整備の一環の中でNIFSやQSTに支援することによって、新たな取組の活動を増やしていきたいと思っています。
 実際、少し前に開催したCCFEの取組では、学術交流など、既存の共同研究で取り組んできたところでありますが、例えば日本の研究者の方にアメリカのスタートアップを見ていただいりだとか、逆にそういったところの経験が身につくような場みたいなところにも結びつけることもできるかと思っておりますので、まずは今年度に試行的な取組を行いながら、必要な取組については来年度以降に、政府として、事務局としては、要求をしていきたいと考えているところでございます。お答えになっていますでしょうか。
【伊神委員】  どうもありがとうございます。新しい提案というものができるようにという辺りを研究者サイド、お互いによく議論して考えていけたらいいなと思います。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。
 ほかに御質問、コメントなどございますでしょうか。馬場戦略官におっしゃっていただきましたが、このような取組は人材育成にもつながっていきますので、その辺りは多分、坂本委員から後ほど御説明があると思います。ありがとうございました。
 そうしましたら、続いて議題2「フュージョンエネルギーの早期実現に向けて」に移ります。3月14日に開催された前回の原型炉タスクフォースでは、早期実現に向けた取組に関して様々な御意見をいただきました。今回は取組の具体化に向けてさらに議論を行いたいと思います。
 まずは事務局から前回の振り返りについて御説明をいただきます。その必要な取組に関して、原型炉実現に向けた基盤整備の観点から、特に施設・設備群の整備や研究開発、人材育成等について武田主査代理、大山委員、坂本委員よりプレゼンテーションを行っていただき、その後、意見交換といたします。
 それでは、馬場戦略官、よろしくお願いいたします。
【馬場戦略官】  ありがとうございます。それでは、事務局より資料2に基づきまして、前回の議論の振り返りなどさせていただければと思います。
 2ページ目について、3月に開催された前回の原型炉タスクフォースでもお示しいたしました取組の加速についてまとめた8個の項目、取組例になります。繰り返し申し上げますが、現在、世界各国が大規模投資を実施し、自国への技術・人材の囲い込みがさらに加速しています。日本の技術・人材の海外流出を防ぎ、世界のハブとなるため、我が国のフュージョンエネルギー・イノベーション拠点化を推進するなど、エコシステム構築に向けた取組を強化するべきではないかというような問題意識をまず記載しております。その中で必要な取組例として8個、挙げております。特に今日は、この中でハイライトしている4つについて議論してはどうかというのが事務局からの提案でございます。
 まず1つ目、原型炉実現に向けた基盤整備の加速、QSTの体制強化やアカデミア、民間企業の結集についてです。また、3つ目、QST、NIFS、ILE(大阪大学 レーザー科学研究所)、そういった大学等のイノベーション拠点化、原型炉開発に必要となる施設・設備群の整備・共用についてどう進めていけばいいのか、また、右側の大学間連携による人材育成、体系的な人材育成システムの構築、育成目標の設定、国民の理解を深めるアウトリーチ活動の実施など、本日はこの4つについて議論をしていきたいと思っております。
 なお、ITER等については、次回の会議でまた議論したいと思っておりますし、左下の産業協議会、安全確保、国際活動、これは議題1で事務局から報告したとおりでございますが、こちらについても継続的に議論を重ねていきたいと思っているところでございます。
 それでは、3ページ目、前回の主な指摘について簡単にまとめたものに基づいて御紹介したいと思います。まず、早期実現に向けては、国が核融合を推進していくという強いメッセージを常に出し続けていく必要があるのではないか、我が国のエネルギー政策の中でどういう位置づけにあるのか、どういうことが期待されているのか明確にしていく必要があるのではないかというような部分です。また、2つ目、早期実現への加速を本来の意味で捉え、実現時期の見直しについても検討するべきではないかといった御意見があったかと思います。
 さらに、原型炉実現に向けた基盤整備の加速の観点を申し上げます。発電実証をすることを示す観点から、今の原型炉をできるだけ前倒しすることも必要ではないか、要求目標を下げてでも小型化、コストダウン化の検討をいま一度原型炉タスクフォースも含めて議論して、より実現性の高い炉にすることも念頭に置かなければいけない時期に来ているのではないかというような御意見がありました。また、いきなりJA-DEMOではなく、DT燃焼プラズマ等の成果の実証やトリチウム系の工学技術の実証なども含めて検討ができれば、JA-DEMOに向けた課題も大きく低減するのではないかといった御意見もありました。QST、NIFS、各大学、政府も含め、原型炉開発、早く進めるという方向に向かって力を結集できる仕組みの構築が必要ではないか、また、骨太の原型炉開発が不可欠、ITERで培った技術を確保するためにも必要ではないかというような御意見があったと思っております。
 4ページ目については、まずITER/BAについて、JT-60SAのみができる原型炉に向けた研究開発をしっかり行っていくこと、実績と成果を積み上げていくということが大事といった御意見があったかと思います。また、ハイライトしている部分、本日の議論の中心の1つでありますが、イノベーション拠点化に向けては、工学設計・実規模技術開発に不可欠な大規模施設・設備の整備にできるだけ早く着手することが必要ではないかといった御意見もありました。また、これはNIFS、坂本委員からだと思いますが、核融合研究では大型の実験設備が必要、安全面の管理が必要、NIFSの設備を外に提供することで、チャレンジを引き出すことにつながるのではないかと思います。
 また、拠点化のための整備・運用等を実施する設備だけではなくて、人的な資源の強化も必要ではないかといった御意見、建設後30年がたっているような実験棟等々の大規模なリノベーション、アップデートを行うことによって研究基盤の整備を行う必要があるのではないかということ、大型の設備だけではなく、既存にある大学の基盤を活用するシステムというものを作ることが必要ではないかといった御意見もあったかと思います。
 5ページ目については産業協議会との連携については、官民パートナーシップを目的とした主体の設立を含めた検討、また、日本国内の優れた技術にしっかりと資金が注入されるような仕組みづくりが必要ではないかという御意見、また、いろいろなプレイヤーを巻き込んで10年後の開発の工程を見える化してはどうかというような御意見もあったかと思います。大学間連携による人材育成については、1つの大学だけではやはり難しいという流れの中で、大きな施設のある大学との連携を進めていくことは、これまで以上に大事になっていくだろうというような御意見がありました。さらには、オープンサイエンスを視野に入れた仕組みづくり、国際連携の強化、議題1でもありましたが、そういったものを広く推し進めるためにも、幅広い人材が必要ではないかといった御意見があったかと思います。
 最後、国民の理解を深めるアウトリーチ活動の実施については、現在、安全確保とありますが、法的な整備や社会的な基盤整備も含めて検討していく必要があるだろうと思います。アウトリーチヘッドクォーターの機能も強化していかなければならないということ、プラスの面だけでなく、リスクに関しても丁寧に説明していくべきではないかといった御意見、安全確保については、内閣府のほうで議論を進めていきますが、合理的な規制、基準が原型炉においても必要であろうということ、国際活動の戦略的推進についても、国際連携の強化というのは欠かすことができないというような御意見があったと思っております。
 本日は、この後、委員の先生方からそれぞれ取組について御紹介いただくことを予定しております。事務局からは以上になります。
【坂本(瑞)主査】  馬場戦略官、ありがとうございました。
 次に、武田主査代理から御発表いただきます。武田主査代理、お願いいたします。
【武田主査代理】  坂本主査、大変ありがとうございます。そういたしましたら、私から資料3に基づきまして、国内外の動向を踏まえた原型炉戦略の加速について御提案を申し上げたいと思っております。
 本日、私の発表は主に諸外国で行われているようなこの早期実現に向けた、いわゆる原型炉戦略に相当するような政策を俯瞰してみまして、その中で我が国、どういったものが取り込むことができるのかという立場からの発表をさせていただければと考えております。そういった観点を申し上げますと、米国、英国、中国というものは、それぞれ早期発電実証に向けた国家戦略というものを実施しております。例えば米国では、多様な民間企業に補助金をつけた上で競争を行っています。こういったところで最終的には2035年から40年に競争により決定された方式により発電早期実証を行います。要は民間主導による官民連携というものを行っておりますし、英国ではUKAEAの下、様々な試験設備というものが整備をされた上で、新法人も設立をされまして、STEPという2040年の球状トカマクによる発電実証というものを政府主導で進めているところでございます。
 中国では、より一本槍で政府計画によって2030年代のCFETRによる発電、従来型トカマクによる発電を目指しておりまして、このために既にこのCRAFTという総合技術研究施設という施設群と、さらに言えばBESTというDT燃焼プラズマの実験超伝導トカマク、これはITERが稼働するまでは世界で唯一のDT燃焼プラズマトカマクになるわけですが、こういった計画を実証しているわけでございます。一方で、我が国は、いわばこの統合試験装置に相当する部分については、ITERを用いるというビジョンを維持しておりますので、その都合もございまして、2045年または50年というものが現在の発電実証の目標年数であるということになっております。
 以上が取組でございますが、次に予算の観点から諸外国を見てまいりますと、既に米国や英国というものは、例えば米国は今年度1,500億円の予算というものを要求しておりますし、英国もまたFusion Futuresプログラムということで1,200億円規模のパッケージというものを発表しております。こういった中で下のグラフというものは、各国の予算というものを、推移というものをグラフで示しているものですが、我が国は昨年度の補正において、ムーンショット計画、目標10に相当する200億円強の予算がついておりますので、合計で400億円を超えたような予算というものに増補されておりますが、それでも米国、英国と比べると相対的に見劣る水準にあるということが、このスライドで私が申し上げたかったことでございます。
 また、こういったこの予算の低下というものが相対的な研究開発力の低下を招いているということも御指摘を申し上げたいと思います。左のグラフは核融合に関連する、フュージョンに関連する論文数の推移、右が核融合に関連する特許数の推移でございますが、それぞれ我が国は2001年には、特許数は世界1位であったものが、現在4位になっておりますし、特許数については現在中国が1位になっております。また、論文数も2001年には我が国が2位であったものが、2020年には5位になっておりまして、こちらでは米国が1位になっているということで、地盤沈下というものがここでは見て取れるわけでございます。
 こうした観点から、諸外国の政策と我が国の政策を比べた場合の我が国としての課題というものを4点まとめてございます。まず1点目は発電目標としている時期でございますが、我が国は米中から10年遅れの目標というものを掲げております。これは産業競争力並びにサプライチェーン構築の観点から、埋められないようなビハインドが生まれるという可能性が懸念されるわけでございます。また、予算の観点からも米国が1,500億円、英国が1,200億円の予算パッケージを示している中で、我が国というのは相場的に見劣りをする水準であるということが否めないかと考えております。
 また、自国独自の装置計画という観点から申し上げましても、米中は必要となるような統合試験施設というものの計画を進める一方で、我が国ではこれに類するような国内の新規の装置計画というものは進んでいない現状がございますし、民間投資に関しましても、我が国の民間投資、150億円を超えるのに対し、世界の民間投資は1兆円に上りますので、その差は歴然でございます。こういった観点から、我が国においても諸外国に類するような戦略、さらに言えば政策というものをバックキャストにおいて策定をしていくことが必要であるということが、このスライドの論点提起でございます。
 そういった観点から、昨今では社会からもどういった戦略があるべきかということの要請というものが下りてきていると私は理解をしておりますが、そこで来ているような要請をあえて1枚紙に私なりに整理をしたものがこの紙でございまして、この中では人材育成、研究開発、法整備に加えまして、早期の発電実現、2030年代の実現というものを一部から求められている、そういった期待がある、ということが現在の社会の情勢であると理解しております。この観点から、本日は提案を何点か申し上げたいと思っております。
 この2030年代の発電実証を目的とした支援を議論するということが社会の期待であると考えておりますが、これを本タスクフォースの観点から申し上げますと、先ほども何名かの委員の方々の御意見でありましたが、少なくとも原型炉計画の見直しを行うか、もしくは2030年代にこの発電を行うという発電実証の捉え方そのものを見直す必要があると考えております。2つの方向性として、もし原型炉によって、この我が国初のフュージョン発電実証というものを行う路線を維持する場合には、この計画のさらなる前倒しを達成する目標、基本設計の抜本的な見直しが2030年の実現には必要となってくると考えられますし、一方で、現行の原型炉計画の基本設計を含めた大枠を維持するということを考えた場合には、原型炉に代わる2030年代の発電というものを担い得るような装置というものが並行して推進をされる必要があると考えております。
 この2030年代の発電を実現するような原型炉というものの基本的な、抜本的な見直しというものは、あえて申し上げれば困難を伴いますし、また、ムーンショット目標10につきましても、既に科研費に類するような多用途な研究支援の方向性が示されているものですから、あえてここでは、その2030年代発電実証という社会の期待に対しては、民間の活力を活用するのはどうかという提案をしたいと思っております。この民間の活力を主眼に置いた民間の実証炉実現、これを目指しつつも、この得られた知見をもって原型炉計画を加速させるというような選択肢というものを検討してはいかがかというのが御提案でございます。
 この観点で申し上げますと、その早期発電実現の観点からは、当然でございますけれども、炉心プラズマの研究のみならず、バランス・オブ・プラント、すなわち周辺機器類の研究開発も急務でございまして、この核融合発電所全体のシステムを考えた際に、我が国がJT-60を含め国内で装置経験を有する部分というのは左側の領域でございまして、右側の領域というものは我が国、国内でいまだ装置経験を有さないような領域であるわけです。
 既に中国がこのDT燃焼統合試験炉であるBESTというものの建設に着手をし、また、米国でも中性子照射から燃料サイクルを一貫して試験をするFIRSTと仮称される新施設の議論が行われています。また、世界中のスタートアップが同等の建設を進めているというのは、いわば、申し上げれば、この実験炉から原型炉に至る、この技術ギャップの部分、特にTRLで申し上げれば、このDTプラズマの燃焼に関わる部分、ブランケットに関わる部分、さらに申し上げれば、このDTのフュージョン出力を実際に生じさせるという部分において、このギャップを埋めるための施設として、こういった統合試験施設というものが提案されています。ここに当たっては、この稼働率、Q値、また、TBR等については、目標としては設定しないことによって、現状のトカマクの設計によって、設計知見によって設計が可能、さらに申し上げれば建設が可能であるように難度の低下が図られているということが特徴でございます。
 9ページ目をお願いします。原型炉戦略の観点から申し上げますと、こういったDT燃焼を行うような統合試験施設というものは、以下のようなインパクトを有し得ると考えております。1点目が中性子試験のみならず、ブランケット、さらに言えばトリチウム燃料サイクルを含めたBOPの幅広いTRL向上、さらにこの建設に伴う関連規制並びにサイト整備など総合的に原型炉計画の加速に資するという観点です。もう一つは、この2030年代という、いわば非常に野心的な期待というものを社会から受ける中において、こういったDT燃焼試験というものの熱取り出しというものは、小規模でありましたら、発電の実験というものは技術的に可能ではございますので、現行の原型炉計画の大幅な変更を伴わないままに、この2030年代のフュージョン発電という社会からの期待に応え得るという2点でございます。
 以上がこのDT燃焼の統合試験施設というものの御提案でございまして、ここからは、いかにそれを実現するかという御提案も1つ申し上げたいと思っておりますが、一方で、こういったDT燃焼装置というのは、多額の税金、多額の研究開発費、建設費が必要となるものでございます。ここで、この投入資金の最小化、早期実現、さらに申し上げれば、現在、この民間の活力というものを最大限利用するという観点、産業基盤の育成と維持の観点からは、民間を活用してこういった装置を実現する。よりはっきりと申し上げれば、様々なこの事業者間の競争によって、このDT装置というものを実現するという可能性を提言したいと考えております。
 10ページ目をお願いします。現在、米国では、スペースXという会社がございますが、このスペースXというものは、NASAがこの10年間にわたって、2006年から約10年間にわたっておよそ20社を超えるスタートアップ・大企業の中から2段階にわたる選抜で絞り込んだ企業に対してマイルストーン方式、かつ50%以上の民間負担という条件で開発支援を行った結果として、このスペースXという会社が誕生したわけでございます。これによって、このNASAのコスト低減並びに産業育成を図ったという事例がございまして、この選抜とマイルストーン方式による支援、さらにその後継であるCRSというプログラムによって、その選抜企業に対して継続的な発注を行うことによる産業基盤の維持、こういった戦略的な取組によってNASAは、この宇宙開発というものの民間への技術移転というものを成し遂げたわけでございます。
 11ページ目をお願いします。社会から2030年代発電に向けたロードマップというものが期待をされまして、一方で、原型炉の抜本的な見直しが難しい場合には、このように先ほどのNASAの例に挙げたように、官民連携で推進し、原型炉戦略と補完させるということは、1つの可能性を示し得ると提言をしたいと考えております。したがいまして、我が国におきましての閉じ込め方式を限定せず民間に公募を行い、公的機関から技術移転を行いつつ、特に基金を設けた上でマイルストーン方式により発電実験を含む広いDT燃焼装置の2030年代の実現に向けた支援というものは検討する余地があるのではないかと考えます。なぜならば、諸外国の政策を見てみますと、既にアメリカのエネルギー省では、INFUSEプログラムといいまして、先ほど御紹介申し上げたNASAのCOTSというプログラムを核融合版にしたプログラムというものが既に実施をされているからでございます。これにより米国というものは、発電所の実現を達成するというロードマップを描いているわけでございます。
 こういうふうに考えてみますと、この私が御提案申し上げたマイルストーン型支援というものは、これまでの予算としまして、原型炉計画というものは当然、ITER計画というものがあり、ムーンショット目標において大学を主対象としたような多様な研究が支援をされ、SBIRによってスタートアップ支援がされる中で、官民連携による新たな原型炉計画の加速というような予算の効果が期待されるというふうに考えているところでございます。
 12ページ目をお願いします。これによって考えられるような新たなロードマップといいますと、一番上が現状の原型炉計画でございまして、2035年のITER燃焼試験後の建設移行判断から第1期目標、前倒し目標で言えば2045年の発電というものが従来起居されていたものでございますが、ここにDTの燃焼の装置による統合実証試験と、それによる中性子試験を含めた試験、また、基盤技術施設として超伝導施設ですとか中性子照射など様々な要素試験施設というものが加わることによって原型炉計画をITERと並行して進めることにより、発電実証時期、第1期目標というものが見直し、前倒しをすることが可能になるのではないかということを考えている次第でございます。
 13ページ目をお願いします。また、こういった原型炉加速に必要と考えられるような制度上の施策についても、ここで列記してございますが、今読み上げることはいたしませんが、法制度の観点、今申し上げたことを実施するファンディングエージェンシー、資金支援を行う団体・組織の観点、こういった観点から様々な検討が必要となってくると考えております。
 その中でも特に人材育成について申し上げたいと思います。14ページ目をお願いします。人材育成につきましては、この全国のネットワークにより実施をする大学のプログラムのみならず、職業訓練としての性質を持つ周辺人材育成について重要であるというのが私の意見、私見でございます。
 15ページ目をお願いします。英国政府は、このフュージョンの実現に必要な人材というものを今後5年で3,000名、今後10年以内に最低7,000名というふうに推計しておりまして、そのために既に体系的な育成プログラムというものが展開されております。例えば左で示しているIndustry Programというものは、8週間のフュージョン業界におけるインターンシッププログラムでございまして、今日現在で言いますと、下に示されているような会社から計25のポストが公募されて、既に実施をされている。特に選抜された学生には生活費が支給されるというプログラムでございますし、また、右のこのOxford Advanced Skillsというのは、カルハムキャンパス、UKAEAの敷地内にある広大な職業訓練施設でございまして、様々なレベルのエンジニアが職業訓練を受けている。公募による訓練生の受け入れだけでなく、民間企業からの要請に基づき、トリチウム取扱いに関する職業訓練も既にハンズオンで実施をされておりますし、こういったフュージョン関連分野におけるリスキリングというものがイギリスでは既に実施が始まっているところでございます。
 16ページ目をお願いします。また、最後に、先ほども論点がございましたが、フュージョン版シリコンバレーというふうに申し上げておりますが、こういったイノベーションの拠点化、エコシステムによる地域振興、そこに当然、関連してまいります原型炉のサイト選定、整備に関わる議論、こういったものが重要と考えておりますし、早期実現を見据えた責任ある体制として、場合によっては新法人の設立、その下での技術移転、アンカーテナンシー、アンカーテナンシーというのは政府として業界を安定させるための長期的な発注でございますが、さらに資金供与としてのファンディングエージェンシーとしての支援、こういったものが期待されるものでございます。
 17ページ目をお願いします。この観点から諸外国の例としましては、イギリス政府が既に先月、フュージョン発電所サイトのアセスメント並び整備に係る非常に詳細な検討並びに公募を発表しておりまして、こういった論点ですとか、さらにリスクの観点から詳細な検討というものが既に行われ、進んでいるというところがございます。
 以上、本日、私のほうからは諸外国、特に米英の政策から我が国がどういった政策というもので原型炉を加速し得るかという観点から、話題の提供というものをさせていただきました。以上で発表を終わります。
【坂本(瑞)主査】  武田主査代理、大変詳しい考察、ありがとうございました。後でまたまとめて議論させていただきたいと思います。
 それでは、次に大山委員から御発表いただきます。大山委員、お願いいたします。
【大山委員】  QSTの大山でございます。私からはQSTで検討しております原型炉実現に向けた基盤整備の加速(案)について御説明いたします。
 2ページ目をお願いします。委員の皆様におかれましては、既に御承知おきと思いますので詳細は割愛いたしますが、QSTでは核融合科学技術委員会で策定されたこのロードマップに沿って、同じく核融合科学技術委員会で策定された「核融合原型炉研究開発の推進に向けて」に記載されている原型炉に求められる基本概念で定められた原型炉の目標に見通しを得るため、ITER計画やBA活動の人材や技術をベースにした全日本体制での概念設計や原型炉実現に向けた基盤整備事業も活用した要素技術の開発を推進しております。
 3ページ目の図に示しますように、原型炉設計合同特別チームでは、ITERの3倍に相当する150万キロワットの核融合熱出力を用いて、約64万キロワットを発電することができ、所内電力を除いた約25万キロワットを系統への出力として提供できるというトカマク型の原型炉概念設計を実施しております。この概念設計は、さきに述べた原型炉の目標に見通しを得るものであり、令和6年度はBA補助金、原型炉に向けた基盤整備に基づく研究開発事業も活用して、概念設計に基づく要素技術の開発を推進しております。
 前回の原型炉タスクフォースで御説明した令和6年度に優先的に実施すべき研究開発項目に沿って、4ページ目の表に記載のとおりQSTにおける研究開発を進めているところでございます。炉設計関係では、原型炉概念の統合設計に向けてトカマク複合建屋内の機器・設備の検討と配置設計などを進めております。超伝導コイル関係では、製作コスト低減オプションの有力候補である矩形導体レイヤー巻概念が成立するかどうかを検証するため、ダミー導体を試作して機械試験を実施する予定でございます。燃料システム関係では、数十グラム規模のトリチウムが使用できる大量トリチウム取扱施設の建設を目指し、過去の地質調査に基づく候補地の選定と許認可に対応する建屋の概念設計に着手しております。
 核融合炉材料関係では、模擬試験装置を用いた真空実験やA-FNS試験施設の試験セル壁構造体の核熱設計などの設計作業を進めております。規格・基準関係では、低放射化フェライト鋼F82Hの標準化に向けたデータ拡充や繰り返し性評価に着手するとともに、構造規格の予備検討に必要な真空容器の構造概念設計を実施しております。稼働率と保守関係では、原型炉の保守・保全計画における課題と対策の検討に着手しております。
 5ページ目の表では、大学・産業界等への公募事業として実施する研究開発項目についてまとめております。炉設計関係では、ダイバータ冷却ユニットに関するR&D実施に向けて仕様の調整中でございます。超伝導コイル関係では、候補組成の小溶解材の試作及び極低温での機械試験と高強度超伝導線材の試作試験に向けて仕様を調整中でございます。ブランケット関係では、円筒型ブランケットの構造設計と遠隔機器と整合するリミター構造概念の実施に向けて公告手続中でございます。
 ダイバータ関係では、定常高密度プラズマ実験装置の検討、非接触プラズマデータ取得、物理モデル高度化について公募手続中でございます。加熱・電流駆動システム関係では、フィラメントアーク放電及びRF放電の負イオン源における低ガス圧放電の放電特性や負イオンビームの発散角の計測・評価について公募中でございます。安全性関係では、微量トリチウムの環境中での拡散を評価するコードの開発、合理的な計測手法の開発等について公募手続中でございます。計測・制御関係では、原型炉のための線積分トムソン散乱法の開発研究について公募中でございます。
 6ページ目をお願いします。冒頭で説明しましたように、QSTではITER計画とBA活動の成果を最大限活用して原型炉に向けた研究開発に取り組んでおります。しかし、ITER計画とBA活動で得られた知見だけで原型炉を建設できるわけではありません。この図に示しますように、ITER計画を開始する前の段階においては、概念設計活動に引き続き工学設計活動を実施し、その中で中心ソレノイドモデルコイル、ダイバータ遠隔操作、ダイバータカセット、トロイダルモデルコイル、真空容器セクタ、ブランケット遠隔操作、ブランケットモジュールの工学R&Dを実施しました。これらの経験があったからこそ、ITER計画では主要機器の調達を日本が分担できたものと考えています。そして、ITERと原型炉の間には技術的ギャップが存在していますので、原型炉工学設計・実規模技術開発フェーズにおける工学R&Dが原型炉実現に不可欠であると考えております。
 7ページ目をお願いします。そこでフュージョンエネルギー・イノベーション戦略で掲げられた産業化も考慮しつつ、ITERと原型炉の間にある技術的ギャップを早期に解消するため、工学設計・実規模技術開発フェーズにおけるR&Dを加速する必要があるとQSTでは考えております。R&Dを加速することでITER計画やBA活動で得られた日本の技術や人材を散逸せずに原型炉研究開発に継承することが可能であると考えております。
 原型炉建設に必要な技術開発と施設・設備については、原型炉開発に向けたアクションプランにまとめられておりますが、ITER計画やBA活動で培った技術と経験、国内外の施設・設備の現状も踏まえて、以下に示す施設・設備をQSTに整備すべきと考えております。トリチウム大量取扱施設、ブランケット試験施設、こちらはホット施設とコールド施設がございます。大規模遠隔保守・炉内機器保守技術開発施設、ビーム加熱・高周波加熱装置試験施設、中性子照射施設、超伝導機器試験施設、ダイバータ試験施設などでございます。
 なお、これらの施設・設備はQSTにおける研究開発に供するだけでなく、フュージョンエネルギースタートアップを含む産業界や大学・研究機関等における研究開発の加速にも大きく貢献できるものでございます。
 大規模施設・設備の具体的な整備工程につきましては、各施設・設備で異なっておりますが、概要としては、8ページの図のようになっております。各設備を設置するために新たな建屋が必要になるものにつきましては、令和7年度から各種設計作業に着手し、それが終わり次第、建屋の建設に着手します。具体的にはトリチウム大量取扱施設、ブランケット・コールド施設、大規模保守技術開発施設、高周波加熱装置試験施設、ダイバータ試験施設、炉心プラズマ研究開発拠点の一部につきましては、施設整備1期の中で建設が終わる予定となっており、この建屋の中に整備します設備の整備も並行して実施することで、早いものであれば令和11年度から技術開発に貢献できます。
 一方で、ブランケット・ホット施設、中性子照射施設、照射後試験施設、炉心プラズマ研究開発拠点につきましては、令和7年度からの3年間で実施設計までを終了し、引き続き令和10年度から建屋の建設に着手するという計画でございます。このように大規模施設・設備の整備には時間を要することから、早急に着手することが必要であると考えております。
 9ページ目では、大規模施設・設備として2例御紹介しております。上に示す1例目でございますけれども、トリチウム大量取扱施設でございます。トリチウムの研究開発はQSTでも実施してきたところではございますが、高濃度トリチウム水処理システムの実証や燃料ペレット製造技術の検証につきましては、残念ながら経験がございません。そのため、原型炉の燃料取扱システムを構築する上で様々な技術検証が不可欠となっておりますが、残念ながら国内に取扱施設はございません。また、原型炉の法整備のためにもトリチウム取扱技術を早期に蓄積することが急務であると考えており、この図のような三重の閉じ込め境界を有する施設を整備する必要がございます。
 2例目はブランケット試験施設のうちのホット施設でございます。ブランケットの増殖機能確認を加速するため、中性子照射施設でサブモジュールの照射試験を実施する計画でございます。中性子照射施設で照射されたサブモジュールの照射後試験などに不可欠な施設でございます。発電と燃料生成を行うブランケット技術は、知財保護の観点だけでなく、経済安全保障の上でも屋内の試験施設で実施する必要があると考えております。また、ブランケット技術につきましては、ITERと原型炉の間にある技術的ギャップも大きく、実規模技術開発に早期に着手すべきであると考えており、照射後試験セルや廃棄物処理が可能なホット施設を整備する必要がございます。
 10ページ目の図では、さきに御説明したQSTに整備すべきと考える施設・設備の中で、那珂フュージョン科学技術研究所に整備すべき施設・設備を示しております。詳細は割愛させていただきますが、既設の施設を最大限活用し、超伝導機器試験施設、ダイバータ試験施設、高周波加熱装置試験施設、ビーム加熱装置試験施設、炉心プラズマ研究開発拠点施設、計測装置研究開発拠点施設などの基盤整備を実施したいと考えております。
 11ページ目をお願いします。続きまして、六ヶ所フュージョンエネルギー研究所に整備すべき施設・設備でございます。既存の敷地内にある建屋においては、熱負荷試験装置と安全実証試験装置の増強、フュージョンインフォマティクスセンターの構築などを実施したいと考えております。しかし、工学設計・実規模技術開発フェーズにおきますR&Dのための新規施設を建設するスペースが、既存のエリアにはございませんので、現在の敷地の南側に同じサイズの土地を確保し、中性子照射施設、トリチウム大量取扱施設やブランケット照射後試験施設といったホット施設、大規模遠隔保守技術開発施設、炉内機器用保守技術開発施設、ブランケット・コールド試験施設などのコールド試験施設の基盤整備を実施したいと考えております。
 12ページ目をお願いします。前回の原型炉タスクフォースでも議論されましたように、各国でも独自の研究開発計画を強力に推進している状況でございます。特に中国では大規模試験施設群「CRAFT」の建設を進めるなど核融合の要素技術の獲得に向けた大規模試験を既に開始しており、国際協力を視野に入れつつも、国際競争の観点から日本の優位性を確保することが重要であると考えております。
 13ページ目をお願いします。これまでの説明をまとめさせていただきます。ITERと原型炉の間にある技術的ギャップを早期に解消するため、工学設計・実規模技術開発フェーズにおけるR&Dを加速する必要があると考えております。ロードマップやアクションプランに沿って研究開発を進めるためには、世界の状況も考慮して工学設計・実規模技術開発フェーズで必要となる試験施設・設備の整備に早急に着手することが必要と考えております。試験施設・設備の整備を加速することにより、ITER計画やBA活動で得られた日本の技術や人材を散逸する前に原型炉研究開発に継承することが可能になると考えております。
 試験施設・設備は、QSTにおける研究開発で使用するだけでなく、フュージョンテクノロジー・イノベーション拠点として産業界への供用も視野に入れており、産業界におけるイノベーション創出やトカマク以外の方式の研究開発にも貢献可能でございます。その結果として、フュージョンテクノロジーの産業化、フュージョンインダストリーの育成、原型炉の建設コスト低減につながる可能性もあると考えております。最後に、これらの基盤整備を実現するためには、アカデミアや産業界の人材を結集した全日本体制の構築とともに、QST人員の拡大を図ることも必要でございますので、御支援をいただければ幸いでございます。
 QSTからの説明は以上でございます。
【坂本(瑞)主査】  大山委員、ありがとうございました。
 それでは、次に坂本隆一委員から御発表いただきます。坂本隆一委員、お願いいたします。
【坂本(隆)委員】  NIFSの坂本です。私からはフュージョンエネルギーの早期実現に向けた核融合科学研究所の取組ということで、フュージョンサイエンスヒルズ構想について説明させていただきます。ここで示した土岐キャンパスの将来計画というものは、中核拠点の形成です。
 2ページ目をお願いします。フュージョンエネルギー・イノベーション戦略の加速を確実に実行するためには、学術研究による展開と開発研究による統合の協働体制が必要です。開発研究を加速するためには、イノベーションの拠り所となる基礎学術が必要不可欠ですし、核融合を支える広範で強靱な産業構造を構築するためには、核融合分野外の力も総動員する必要があり、学際化による頭脳循環というものが今後重要になります。展開と統合、この両輪の体制がなければ、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略の加速は成し遂げられません。そして、展開に向けて核融合科学研究所が寄与するために、イノベーションの揺籃となる研究基盤をリノベーション、アップデートして学際化、国際化のための中核となる拠点を形成することを考えています。
 そのための対応として、まず、研究と人材育成体制の整備を推進中です。次に、研究施設と装置の装備が重要になります。大学共同利用機関として培ってきた研究ネットワークや研究基盤を最大限利用して、これらを整備していく必要があります。その上で留意すべき点は、新しいステークホルダーの存在です。これまでは学術フロンティア、開発フロンティアが核融合研究のメインプレイヤーでしたが、昨今は産業界、特にスタートアップの役割が大きくなっており、このことに留意する必要があります。
 3ページ目をお願いします。まず、研究と人材育成の体制について説明させていただきます。核融合科学研究所では、ユニット体制と核融合科学学際連携センターという形で大規模な変革を推進してきました。まず、研究部を10のユニットで構成しました。そして、2023年度、昨年度から運用しています。ユニットは、研究所を構成する組織であるとともに、所外メンバーを含むユニット戦略会議によってコミュニティと一体運営されることになっています。そして、このユニット体制をサポートする研究所の運営体制として、核融合科学学際連携センター、これは開発、学術、そして産業界の3方向の学際フロンティアへ展開することを支援します。そして、プラットフォーム企画室というのは、ユニットが活動する研究施設の管理・運用をするものになります。
 4ページ目ではユニット、所外メンバーということを先ほど説明しましたが、クロスアポイントメント、ポスドク、そして客員教員、共同研究者といった所外メンバーが所属しています。そして、所内メンバーと同数程度の所外の研究者をユニット研究戦略会議メンバーとして委嘱しています。ここに10のユニットを示していますが、その周りに研究戦略会議、そして、シームレスに研究者コミュニティにつながっています。国内外の大学・研究機関から研究者がユニットの研究活動に参画しており、大学としては国内から44、海外から8、研究機関としては国内9、海外から6、そして企業からも国内2と海外から1というように、多くの研究者が参画しています。
 下に並べてある10の円グラフは、青色は所内メンバー、緑色は所外メンバーを示しています。ユニット毎に、所内と所外のメンバー比は大きく変わりますが、全体で見ると、所員が3分の1、所外のメンバーが3分の2ぐらいの割合でユニットが運営されています。
 5ページ目の図に示すように、物理現象に着目したユニットが5つ、要素技術に関するユニットが2つ、そして研究の手法や技術に関するユニットが3つあります。このようにユニットは共通した研究テーマの下に集まった学際的な共同研究チームであり、核融合科学としてのテーマを、一般化して他分野と連携した共同研究を実現する役割を果たしています。このようにすることによって、人と知識の水平移動、核融合分野の内と外をつなげることによって、核融合科学分野の拡大に寄与したいと考えています。
 6ページ目をお願いします。次はハードウエアとしての研究基盤、すなわち、実験装置や施設についてです。核融合科学研究所は、これまでプラズマ装置、スパコン、工学研究施設など共同利用施設の開発と運用に長年培ってきた実績があります。これを礎としてフュージョンエネルギー・イノベーション戦略の加速につなげるためには、世界トップレベルの中核拠点を形成する必要があります。それがフュージョンサイエンスヒルズ構想になります。土岐キャンパスは整備後30年余りが経過して老朽化、陳腐化しつつある研究基盤もありますが、それらを大規模リノベーション、アップデートすることによって国際的・学際的な人流の結節点となる中核拠点を形成します。そのために、中核拠点が備えるべき研究基盤の整備計画の具体化を現在進めているところです。そして、これらによって共同研究体制の底上げを行い、イノベーションの拠り所となる基本的な原理や技術を構築する役割を担っていきたいと考えています。
 そして、もう一つの新しい観点は、新しいステークホルダーであるスタートアップ等、産業界の挑戦を支援することです。核融合研究は、大型の実験施設や安全の管理などが必要になるのですが、そのような研究基盤をNIFSが提供することによって、スタートアップを中心とする産業界のチャレンジを引き出すことを考えています。そのための方策として、フュージョンエネルギー産学連携研究室というものを設置して、産業界の受け入れ体制を整備し、既に運用を開始しています。そして、アカデミアと産業界の連携によるイノベーションの創出に寄与することを考えています。
 7ページ目に示したのは、装置の写真とその名前だけになりますが、核融合科学研究所でこれまで開発、共同利用してきた実績のある装置を示したものになります。例えば磁場閉じ込めプラズマ装置(LHD)、スーパーコンピュータ、そして工学系の様々な装置を共同利用してきた実績がありますが、これらをさらにアップデートすることで世界トップレベルの研究を推進する中核拠点とすることを考えています。
 それでは次に、どのような整備を考えているのかを8ページ目で示したいと思います。ここに青で示したのが研究装置、オレンジ色で示したものが、人が集まる施設等になります。まず、磁場閉じ込め高温プラズマ実験に関して、コンパクトな核融合炉を実現するためには、プラズマの閉じ込め特性や突発的な不安定性を支配するミクロ集団現象のメカニズムを解明することが必要です。そして、このミクロ集団現象の理解のために、高温プラズマのミクロの状態を高精度で操作して、世界最高の分解能で計測する実験システムを新規整備したいと考えています。また、この研究は、先進計測技術研究開発と強くリンクしています。
 そして材料研究・分析センターを、フュージョン・ナノ・プラットフォームと名づけているのですが、プラズマ対向材料の使用環境を支配するプラズマ壁相互作用を素過程から理解するために必要となるナノ構造解析を高分解能、かつ高速で実施できるプラットフォームを新規で整備したいと考えています。超伝導・低温技術研究開発においては、これまで世界最大級の超伝導装置LHDを運用するために設置されてきた低温試験施設をアップデートすることによって、原型炉に向けた超伝導コイル開発に必要となる多様な実験を展開できる強磁場低温施設に更新、整備することを計画しています。
 そして、さらに超伝導コイルの冷却に使うヘリウムは戦略物質となっていますが、ヘリウム資源の制約を受けない核融合炉実現に向けて必要になる高温超伝導や液体水素実験環境を新規に整備したいと考えています。また、先進炉材料研究開発に関して、核融合の開発では中性子照射が非常に重要になってきますが、高価で時間がかかる実験になります。この中性子照射試験を補完し、核融合炉材料開発を加速するために必要となる複数の加速器を用いて、核融合炉の中性子照射環境を実験室で模擬する装置を新規に整備することを考えています。
 また、周辺プラズマ・PWI研究においては、核融合炉周辺プラズマやダイバータにおける複雑な実機環境の要素を大型の直線プラズマ装置によって模擬する装置の整備、そして核融合炉における電流駆動や加熱に必須となる中性子粒子ビームの研究開発においても、現在あるNBI Test Standをアップグレードすることによって、ITERさらには原型炉のNBI開発の礎となる要素研究を実施していきたいと考えています。また、産業界との連携については既に触れましたが、ベンチャーラボを設置して、スタートアップ等を支援したいと考えています。また、人材育成、国際協力等のためにコンベンションセンターや研究者のためのオフィス等、人が集まる施設というものも必要だと考えております。
 以上が研究基盤と環境の整備計画でした。
 9ページ目をお願いします。そして、次に人材育成について説明したいと思います。核融合エネルギーの実現には、長期にわたる総合的な研究開発が必要になります。そのためには様々な分野を巻き込んだ研究の推進が必要になってきます。そして、少し古い資料ですが、核融合科学技術委員会の資料を見ますと、原型炉開発には核融合のコアに係るところでも1,600人を超える人材が必要だということが示されています。これらの人を確保するためには、単に核融合の分野の中で人材育成するだけでは到底追いつきませんし、足りません。私たちが考える人材育成というのは、他分野、異業種人材との頭脳循環によって、核融合研究への参入を促進すること、そして、海外の研究機関との人材交流によって国際連携の強化、そして多様でグローバルな人材供給力の強化というものを行いたいと思っています。もちろん、核融合のコアになる人材を育成するために各大学の取組への支援も行っていきたいと考えています。そして、これらの3つを柱として人材育成を行うために、核融合に関するスクーリング(Fusion Science School)を実施することと考えています。これは単なる座学としてのスクールではなく、フュージョンエネルギーの研究に関わるための入り口になると考えています。そして、出口は核融合研究への人流を作ることです。このように研究のネットワーク形成のメカニズムを作って、研究開発現場における教育へ接続したいと考えています。
 9ページ目の図に示した通り、海外、他分野の研究者や技術者、そして核融合分野の技術者、研究者、そして様々な学生、また、産業界の研究者や技術者、これらの様々な学際的、国際的なステークホルダーにFusion Science Schoolで人脈づくりをしてもらうことによって、核融合分野におけるリカレント教育、OJT、共同研究というものにつなげていきたい、すなわち、このFusion Science Schoolの出口としては、QST、NIFS、大学、そしてITERや海外研究機関、そして産業界といった核融合分野における共同研究等につなげていきたい、そのために、核融合科学研究所の国際学術交流協定や共同研究ネットワークを活用して国内外の核融合関連機関におけるリカレント教育や共同研究に展開したいと考えています。
 まず、第一歩としては、2024年度はITER国際スクールを実施します。このITER国際スクールでは、国内外から200名の参加者を募り、今年の12月9日から13日までの間、名古屋で開催します。ここにURLを載せていますので、ぜひ皆さんも周りの人に伝えていただきたいです。2025年度以降は、これをひな形として、Fusion Science Schoolというものを実施します。国際的に第一線で活躍している国内外の講師を招いて、年数回開催し、国内を中心に300名程度の参加者を目指して実施したいと考えています。すなわち、5年間で核融合に関わる人材を倍増させ、1,500人を新たに核融合分野に入れたいと思っています。現在、NIFSの共同研究者ネットワークは1,600名、そしてプラズマ・核融合会には1,400名が属していますので、新たに1,500人,合計3,000人規模の人、まさに先ほど武田先生が説明された規模の人材育成を行いたいと考えています。
 10ページ目をお願いします。次はアウトリーチです。様々なステークホルダー、学会、大学、QST、産業界から構成される人材育成・アウチリーチ委員会によって、多角的な意見を取り入れた実施体制をつくろうと考えています。この人材育成・アウトリーチ委員会は、今週行われる運営会議で設置が認められてから活動を開始するので、10ページ目では、体制図だけになっているのですが、基本的な考え方としては、科学コミュニケーション会社の支援を得ることによって、複数の科学コミュニケーターによって多角的なアウトリーチを行いたいと思います。同時に、コミュニティからの公募を募ることによって、公募事業でアウトリーチイベントなども対応していきたいと考えています。
 以上がNIFSの研究基盤の説明になります。ありがとうございました。
【坂本(瑞)主査】  坂本隆一委員、ありがとうございました。
 そうしましたら、これから御説明いただいた内容について御意見、御質問、コメントなどいただきたいと思いますが、多岐にわたり、かなり多くの話題がありました。今日、最初のところで馬場戦略官から今までの議論を振り返っていただきました。今日の観点としては、原型炉実現に向けた基盤整備の加速、イノベーション拠点化、あと人材育成、アウトリーチ活動とあります。人材育成とアウトリーチ活動の議論は最後として、まず前提となる武田主査代理の提言、この辺りが取組のスタンスとなります。
 この辺りの議論で皆さんの御意見を伺って、どのような方向性、そういうのが見えてくるとイノベーション拠点化、人材育成、アウトリーチ活動の方向の議論も定まってくると思いますので、まず、前提として馬場戦略官の御発言で御質問などありましたら、最初に伺って、その後、武田委員のところに移りたいと思います。もう記憶が薄れたかもしれませんが、振り返りをしていただきました。ここのところはよろしいでしょうか。大丈夫ですね。
 そうしたら、この振り返りのところの皆さんの御意見から、今言った4つの課題について議論していくわけですが、まず前提となる早期実現、各国の動き、国内外の動きということ、非常に詳しく武田主査代理がまとめていただいて、そこからの原型炉開発の在り方というところの提言をいただきました。この辺りの皆さんの御意見、感触など御発言いただければと思います。ぜひどんどん御発言ください。
 吉橋委員、お願いします。
【吉橋委員】  名古屋大学、吉橋です。武田先生、非常に詳しい御説明、ありがとうございました。私もお示しいただいた1ページ目と7ページ目に関してなのですけれども、これが結構重要な課題だなというのは感じておりまして、この統合、いわゆるここで言っている統合試験というところ、それから7ページ目を見せていただいてもよろしいでしょうか。
 この我が国に国内でいまだ装置経験を有さない領域、この部分というのが非常に一生懸命やっている割には手薄になっているというのが非常に気になっていまして、それで、全体を通してなのですけれども、私からは、中性子源ということで、これまでいろいろ発言させていただいてきたのですけれども、特に皆さんのこの中性子源に関する、その取組の仕方というか、位置づけというのが少し違うのかなというのを感じています。今まで恐らくですけれども、IFMIFという言い方があったせいなのか分かりませんけれども、中性子源があくまでも材料試験のためのような施設というふうに位置づけられてきていると思うのですけれども、中性子源があるということでトリチウムの増殖であるとか、そういったところもいろいろな、この今、いまだ装置経験を有さない領域というところに関わるところは、ほとんどが、中性子が関わってくるところだと思っております。
 先生がさっきおっしゃったようなDT、先生のお言葉で言うと、DT燃焼試験という言葉を使われていたと思います。その後の大山委員は中性子源という言い方で出てきていますし、ほかの坂本委員のところでも中性子源というような言い方が出てきていると思うのですけれども、ここら辺も中性子を使った実験というのを、今日、御説明いただいた委員の方々がどういう形のものを想像しているのかなというところを少しお聞きしたいなと思っています。特にDT燃焼試験といったときに、いわゆる小型の炉に近いようなものを造った上での中性子試験をやるというイメージでDTの試験、DTでプラズマを建てた上での中性子源のイメージという方と、単純に加速器型中性子源であるとか、そういったところでの利用ですね。
 いきなり、例えばDT燃焼統合試験というので、こういった形のものを造るというのは、それはそれでまた1つ手前のハードルが必要なのではないかなと私は思ってしまうのですけれども、その辺り武田委員等の、少しここの統合試験に行くまでのマイルストーンという話、されていたと思うのですけれども、その辺りをお聞かせ、すみません、うまくまとまっていないかもしれないのですけれども、皆さんのこの中性子を使った試験というところのイメージをもう少し統一させたほうが、本来、原型炉を造るといったときの、そのマイルストーンであるとか、国としてどういうふうなものが必要で、何を造らなければいけないのか、何を優先しなければいけないのかというところがもう少しはっきりしてくるのかなと思ったのですが、少し御意見をいただけるとありがたいと思います。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。
 そうですね。体積中性子源としてのことを考えているのか、加速器でやるのかという御質問だと思います。武田主査代理、お願いいたします。
【武田主査代理】  ありがとうございました。吉橋委員、大変重要な御質問、ありがとうございます。中性子の位置づけ、中性子源としての位置づけというお話でございますが、私の理解を申し上げますと、この加速器をベースとした中性子源というのは、当然ながら炉内環境の再現というものが主でございまして、その意味で材料開発のためというものが主だと考えております。材料開発は当然、規格化も含めた材料開発でございますが、そういった観点から炉内環境を再現するだけのフルエンスが当然必要になるわけでございますが、まずここで私が申し上げているDT燃焼の統合試験というものは、当然ですが、原型炉の環境、炉内環境を再現できるような中性子の強度、フルエンスというものは持ち得ないわけでございます。
 ただ、一方で、先ほど7ページ目で、吉橋委員からも御指摘いただきましたとおり、中性子というものは、この様々な領域に関わってくるものでございまして、ここの部分について、たとえ炉内環境、原型炉環境の強度のハンドリングというものの再現がなくても、これについて、まずは中性子の弱強度でも取扱いを行うような実績というものをつくる、このゼロから1へのハードルというものをこの統合試験施設によって越えるということが、この次の炉内強度のような、ハードルの高いような環境の設備の開発というものにつながってくると思います。その意味で、そこの一歩目を埋めるような装置として、こういった統合試験施設というものが重要であると認識をしております。
【吉橋委員】  ありがとうございます。先ほどの図だとTBRとかは、そこでは見ずにということなのですよね。
【武田主査代理】  はい。おっしゃるとおりです。
【坂本(瑞)主査】  では、大山委員、お願いいたします。
【大山委員】  今の吉橋委員の質問にも関連するところでございますが、このDT燃焼統合試験装置ということなのですけれども、1つコメントさせていただきたいのは、8ページ目のところでDTプラズマ燃焼という形で燃焼を行うということをアピールされているのですけれども、エネルギー増大率が1程度ということは、外部加熱パワーの20%しかアルファ加熱パワーがない状態になりますので、アルファ加熱が外部パワーの2倍ある状態のITERや、それ以上の原型炉における燃焼プラズマというものとは、ここで言っている燃焼を行うというところは、質的には異なるということは、各委員の皆様は既に御認識だと思いますけれども、改めて指摘させていただきたいと思っております。
 その上で、ITERの1桁以下である数十メガワット程度の核融合出力という形になりますと、出てくる中性子の量としては、当然、その分だけ少ないという形になりますので、そういったわざわざ新しいトカマク型の、JT-60SAよりも大きい、まあ、小さいかもしれませんけれども、そこを挟むような装置を造って、体積中性子源としてどのような価値があるのかというところは、個人的には疑問に思うというところでございます。
 特にここで発電というふうに書いてあるのですけれども、実際に、例えばJET、JT-60SAと同じぐらいの3メートルの装置ですけれども、JETでのDT実験の結果として出てきているのが十数メガワットの数秒間、6秒間とか、そういったところの熱出力になるわけですけれども、そういった非常に少量の熱出力を得たときに、実際、この発電実験というものは、どのような規模の発電というものを考えていらっしゃるのかというところをお尋ねしたいのですが、よろしくお願いいたします。
【坂本(瑞)主査】  武田主査代理、お願いいたします。
【武田主査代理】  大変ありがとうございます。今、大山委員から御指摘があったのは、いわば実験施設として、中性子というものが、この施設のプロダクトだと考えた場合での御質問だと理解をしております。この場合の発電出力でございますが、これはブランケット数基分の発電出力になりますので、多くても数キロワット程度が考えられます。
 一方で、こういった試験を行うということは、中性子そのものがプロダクトではないということを御理解いただければと考えております。そもそも先ほどの図でお示ししましたとおり、我が国として、いまだ着手をしたことがない装置がこれだけの量ある中で、こういったものについて産業を含めて取り組み、統合のシステムエンジニアリングとしてこれを実現するということそのものが、本装置が持つ最大の成果でございます。
 その観点から申し上げますと、今までITERに我が国はTFコイルを、ダイバータを含め、様々な部品の納入ということによって製造技術の獲得、人材基盤の維持というものを行ってまいりましたが、これが試験施設のみですと、先ほど申し上げたような設備の、もしくは部品の製造の部分、こういった産業基盤というものは散逸をする可能性がございます。この核融合産業の特にメーカーの人材の育成という観点から申し上げますと、また維持の観点から申し上げますと、試験施設のみでなく、プラントそのものを我が国の国内でも造っていくということが産業基盤の維持から重要であると考えているわけでございます。
 以上が1点目でございまして、中性子の出力を成果というふうに捉えた装置の御提案ではないという点でございます。
 もう1点としまして、旗を立てるという観点から申し上げますと、先ほども社会の期待という言葉、私としては申し上げましたが、2030年代に発電をしなさい、することを期待する、それを検討するというふうに社会から期待が設定されている中で、では、それをどのように実現するかということを考えた際の1つの選択肢ということで私としては申し上げたつもりでございます。先ほどおっしゃっていただいたとおり、発電の規模としては実験以上の規模には当然なり得ないわけでございますが、この2030年代の発電の実現ということを我々として真剣に検討した場合に、これは1つの選択肢としてなり得るという観点からの御提案でございます。
 以上で、大山委員、よろしかったでしょうか。
【大山委員】  御回答、ありがとうございます。数キロワットの出力というようなものを実現するに当たって、少し細かくなりますけれども、実際に発電システムというもので数キロワット出力されるときに、本当の意味での核融合によって出てくる核発熱の部分によるものと、あとは定常な温度差を維持するために外部からヒーターで恐らく加熱しないと発電システムは定常に回すことができないわけですけれども、そういった外部からのヒーターに入熱というものを考えたときに、恐らく数キロワットの出力を数十メガワットの核融合出力で実現しようと思うと大部分がヒーターからの熱出力で発電することになろうかなと思いますが、そこが本来のメインではなくて、この統合技術をすることがこの計画のメインであるというふうに武田主査代理は御提案されていると認識しました。
 それに基づいて次の質問ですけれども、12ページのところでマイルストーン方式によって競争的に支援することで、2025年に計画を開始して2035年には運転が開始できるだろうという見通しを示されているというところでございますけれども、JT-60SA、QSTとFusion for Energyが実施主体となって、これまで2007年から計画を進めてきているところでございますけれども、建屋ですとか加熱装置の多くを再利用するJT-60SAにおいても設計や建設に13年を要しているというのが実態でございます。JT-60SAと異なり、トリチウムを本格的に扱う実験装置ということを民間公募でこのようにやっていくという場合に、この10年間というところで運転開始が本当に見通せるのかとかいうところが、正直なところ、そういったことができるような民間の主体があるのかどうかというところが非常に懸念するところでございますけれども、この辺り、そういった民間にはそれだけの技術力があるのかどうか、武田主査代理の見解を聞かせていただければと思います。
【坂本(瑞)主査】  武田主査代理お願いします。
【武田主査代理】  ありがとうございます。私から2点、申し上げられればと思っております。1点目は、実現のタイミングでございますが、もし我々として2030年代の発電の開始というものを企図した場合には、そもそもこういったスケジュールにならざるを得ないということが1点目でございます。その上で、これを実現し得る民間の主体があるかというような御質問でございますが、既にアメリカのCFS(Commonwealth Fusion Systems)という会社は、サイトの整理から建屋の建設から全てを含め、今おっしゃっていただいたようなタイムスパンでの実験炉の建設というものを進めております。
 我が国、国内に主体があるかということでございますが、我が国、国内でもこういった小型の装置、さらに言えばDTの燃焼というものを企図した民間企業というのは複数社ございますので、我が国の、例えばQSTさんも含めてですが、公的機関との官民連携、技術移転、さらに言えば海外のスタートアップ等の協力も含めた官民連携で進めていくことができれば、少なくともこのスタートアップ業界におけるスケジュールとは、今後、2035年に運転開始というのは整合するということをお答え申し上げたいと思います。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。
 次に坂本隆一委員、お願いします。
【坂本(隆)委員】  野心的な計画で非常に魅力的ではあるのですが、1つ私からのコメントとしては、工学統合のためにDT燃焼そのものを想定することに関してなのですが、基本的にDT核融合炉がないとトリチウム燃料をつくることができないというDT核融合炉の特性があります。トリチウムの自己充足性をターゲットにしない燃焼試験を、原型炉よりも前のステップとして実施する計画になっているのですが、トリチウム燃料の確保が課題になるのではないかと考えます。そして、トリチウムの生産ができない日本では、ITERやトリチウム生産が可能な米国、英国などの、同志国との国際協調による試験の獲得というものが現実的ではないかと思います。もしくは、DT燃焼は使わない中性子源を使って統合的な試験をできるような要素試験を行うというのがいいのではないかとは考えています。
 以上です。
【坂本(瑞)主査】  燃料の確保ということで、武田主査代理、いかがでしょうか。
【武田主査代理】  大変ありがとうございます。当然、初期装荷のトリチウムの観点、今回の場合はTBR1以下でございますので、運転のたびにトリチウムが必要になるというのは全くおっしゃるとおりでございます。また、当然ですが、カナダも含めた現在のトリチウム産出というものが大分下火になっているといいますか、産出量自体が下がっているということも御指摘のとおりでございます。今回のオペレーションにおいて一体何グラム、トリチウムが必要になるのかという設計上の問題、さらに言えば、このサプライとしてどこを用いるか。
 ITERによって大量のトリチウムが既に消費されるということが割り当てられているわけでございますから、ただ、その問題につきましては、今おっしゃっていただいたとおり、生産ということも最終的な手段としてあり得ると思っておりますし、我々としてもトリチウムの世界の流通量の試算というものを行ってございますが、実験に供するのに十分な量のトリチウムというものは、ITERの供給を差し引いても世界には存在しているという試算をしております。
 以上です。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。
 近藤委員、お願いいたします。
【近藤委員】  長くなっていますので、手短に武田先生にお聞きしたいと思います。武田先生の御説明なさった内容は、おおよそ理解できました。各国が意欲的に前倒しの計画を提案されている中で、多分、武田先生におかれては日本の産業力、産業競争力を強く意識されて、こういった提案をせざるを得ないというような、そういったところでまとめてくださっているのだと思うのですけれども、やはり日本は今ITER、そして原型炉というものを堅調に続けなければいけないという部分、そこは外せない部分だと思うのですね。一方で、武田先生がおっしゃる、ですから、この前倒しに関わる部分、しっかり進めるというような提案は、私は、個人的には好き嫌いで言いますと好きかなというような印象はございます。
 ただ、一方、後半、武田先生の御説明でもありましたし、あとは坂本隆一先生のところでもございましたけれども、やはり人材を中心に、予算はともかくとして、研究開発という観点で申し上げると、キャパ的に果たしてそれだけのキャパが国内でちゃんと得られるかどうかという部分は少しハテナが付きますので、やはり急ピッチに人材育成を固めていくという部分、併せて進めていく必要があるのではないかなと。武田先生がおっしゃった数千人単位の人材育成というものは、大学ではちょっと難しいのではないかなと思っていまして、一方で、それらの人たちは、多分、核融合に触れるというレベルのものではないかなと、すみません、邪推をいたします。学位を取るとか、そういったコア人材という意味では、十分に競争できるだけの人材を輩出できるような、そういった仕組みを用意していく必要があるのではないかなと思っております。
 私からは以上です。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。
 近藤委員の意見に対して、武田主査、何か御発言があればお願いします。よろしいですか。
【武田主査代理】  大変ありがとうございます。人材育成の部分、人材の確保の部分、キャパの部分というのは、極めて大きな問題だと私も考えておりますので、引き続きいろいろと御示唆をいただければと思っております。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。
 今のは御質問という意味で承って、武田主査代理にお答えいただきました。今あった御質問は、いろいろなところの細かい実現性とか、そういうところに着目いたしました、そういう点も非常に大事なところではありますが、今、武田主査代理の御発言の趣旨は、今、こういう国内外の情勢の中で前倒しという議論をするべきではないでしょうかということで、それをやるために1つの提案をいただいたということです。
 原型炉の目的は、今まで私たちが、原型炉タスクフォースでずっと議論してまいりまして、発電の技術的実証と経済的な実現性というものを見るために今のJA-DEMOという形で進めてアクションプランを作ってまいりました。そういう中で、今着々と進めているわけですけれども、国内外の情勢が変わって、さらに前倒すということに関しての趣旨、その趣旨に関しては皆さん御賛同いただいているということでよろしいでしょうか。その方法論とか、いろいろなことに関しては、これから詰めていかなければいけないのですけれども、そういうところを見直して世界に遅れないように、我々が先陣を切れるような、そういうような形の取組ということが重要であるということに関しては、いかがでしょうか。
 何かその辺に関しての御意見、細かいところは今いろいろまだあるだろうと思うのですけれども、今の武田主査代理の御発言の趣旨というところで、今出していただいた、こういうような情勢の中で私たちは、より野心的な取組をしなければいけない、今までよりも、より知恵を出す、原型炉タスクフォースのメンバーとして知恵を絞って、より現実的なもの、それはやはり科学的なエビデンスに基づいたものでなければいけないと思いますが、今言っていただいたようなトリチウムの問題とか、そういういろいろな課題を出しながらも解決に向かうという意思を持つかどうかということなのだろうと思いますが、そういう点に関しましては、いかがでしょうか。
 近藤委員、お願いします。
【近藤委員】  すみません、では、また手短にお話しします。実施主体の部分が、民間主導と書かれているアメリカの場合と政府主導と書かれているイギリスの場合と、また、中国政府と書かれている中国の場合とありますけれども、日本の場合は当面はQSTとなっておりますが、だから、これは政府主導という見方と理解すればいいのでしょうか。一方で、武田先生が今日、話された内容は十分民間主導になりつつあるのかなというような感じもしていて、原型炉タスクフォースは原型炉のためのもので、これまでにたくさん議論してきたわけなのですけれども、原型炉に関しては政府主導という理解なのですが、その辺り少し整理していただけるとありがたいです。
【坂本(瑞)主査】  武田主査代理、お願いいたします。
【武田主査代理】  ありがとうございます。ここで書かせていただいた内容につきましては、未定というのは、例えば以前の議論では、この原型炉のための法人の設立ですとか、そういった議論もあった中で、現在ではまだQSTということで、実施主体というものは決まっていないという意味で書いたものでございます。
 その上で原型炉ということに関して言えば、長期的には当然、廃炉ですとか、放射性廃棄物の管理につきましても、長期的に責任を担保できるような主体が必要となってまいるわけでございますので、当然、民間は実施主体ではございますが、それと同様に政府の側でもそれを推進するような機関というものは別個で必要となってくると考えております。そういった意味で、ここでは我が国では未定であるという意味でスライドを作らせていただいおりました。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございます。
 坂本隆一委員、お願いします。
【坂本(隆)委員】  前倒しに関しては、原型炉タスクフォースでも2023年度に科学技術委員会からのチャージとして、2045年度に前倒しすることを検討しました。そして、核融合科学技術委員会では、ITERのベースラインの見直しの結果を見てから対応を決めるということになっています。その答えも出ないうちに、さらに10年間の前倒しという話になるのは、少し早急な感じがするのですが、このこととの整合性はどのように考えればよろしいでしょうか。
【坂本(瑞)主査】  それは、今進められている議論は、坂本隆一委員が言われたように、私たちは2045年に前倒しするために、定常運転を2時間程度のパルス運転にし、TBRの値を下げるという境界条件を緩めた形で議論してまいりました。それでアクションプランも改訂しました。ロードマップはまだこれから核融合科学技術委員会で認めていただくという段階で、それはITERの進捗を見て今後議論されていくと思います。一方、国内外の情勢も変わっているので、別に10年前倒しをここの原型炉タスクフォースで見直すことを決めましょうという意味ではないのですけれども、そういうような検討、考え方ということも観点に入れながら議論していくということになろうかと思います。
 ですので、状況に応じていろいろな、フレキシブルに考えていくということで、また見直すべきものは見直すということで、できるだけ核融合エネルギー、フュージョンエネルギーの実現に近づける手段というような形で、この武田主査代理の意見をそのまま私たちが受けるという意味ではなくて、議論のたたき台として、こういうことを考えながらイノベーションを起こしていくということが今後のイノベーション拠点化とか、人材育成とか、アウトリーチということにもつながってくるかなと思いまして、皆様の意見をお伺いした次第です。
【坂本(隆)委員】  ありがとうございます。
【坂本(瑞)主査】  決して、今までの議論と変わって、さらに10年前倒しという議論をしていこうというわけではないです。こういう御提案がありまして、やはり難しいところはあると思うのですけれども、私たちとしても、そういうことを視野に入れながら議論して、今後、ITERの状況も見ながら、そういうことも、こういうことも観点に入れて議論していくということに対する皆さんの考え方というのをお伺いできたと思います。
 大山委員、お願いします。
【大山委員】  ありがとうございます。その前倒しの議論というものは、核融合の早期実現というものは、我々研究者一同の夢といいますか、それをやりたいという思いは一緒なのだと思うのですけれども、ただ、そのロードマップなり計画を検討する上で、他国がこういうことを言っているから我が国もそれに負けないように30年代に、というような議論をするべきではないと考えております。やはり先ほど坂本隆一委員が言われましたように、これまで原型炉タスクフォースでいろいろと議論してきている中では、何が原型炉に必要なものかというものをきちんと皆さんでコンセンサスを得た上で、それに必要なものは何かというものをアクションプランの中でいろいろと、こういったものを全部確認していく必要があるというステップを踏まえて、あのアクションプランができていると認識しているわけでございます。
 なので、それを大幅に加速するということは、当然、それに見合った議論、要するに何かを変えない限り、今のものは大きく変わるわけではないかと思いますので、そういった目標も含めて、きちんと議論をして、じゃあ、我々コミュニティとして何年代であれば実現可能な加速になるのか、既に2045年に加速が可能というところでは、定常運転からパルス運転へ切り替えるということで5年加速は可能であるという議論がされたわけですね。それをさらに加速するということは、我々が何を原型炉でスコープから外すのかといったこともきちんと議論しないと、そのターゲットの目標ありきというような議論はおかしな方向だと思いますので、前倒しについて議論をすることはいいかと思うのですけれども、それに対するアプローチは、きちんと科学的、技術的なところを押さえて議論することが重要かと思います。
 以上でございます。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。
 今、大山委員が言われたとおり、科学的なエビデンスに基づいて議論していかなければいけません。一方、5年前倒しということが既定路線で、そこしか考えないということでもないということで、フレキシブルに状況に応じて進めていく必要があります。海外がやっているからというよりも、私たちは、こういう挑戦の中で、できるだけ早く進められるというものを進めていく、そういう趣旨でやるということでよろしいかと思います。
 ほかに御意見、いかがでしょうか。よろしいですか。いろいろと御意見いただきまして、ありがとうございました。とても大切な議論ができたと思います。武田主査代理も大変ありがとうございました。こういう詳しい考察をしていただいたおかげで、大変貴重な議論ができました。前倒しということに関しても、今まで議論してきたことをベースにできることはやっていく、ただ、そこは科学的知見に基づいて私たちで議論して、できるだけ早くということで考えるということで、今後また議論していければと思います。ありがとうございました。
 この件に関しまして、よろしいでしょうか。そうしましたら、今、議論、大分皆さんの気持ちが温まってきて、核融合に対する早期実現とかというような気持ちもまた盛り上がってきたと思いますが、そういう中でイノベーション拠点、人材育成、アウトリーチとはどうあるべきものか、決して2045年までに間に合えばいいというものではなくて、そういう武田主査代理が言っていただきましたが、前倒しというところも踏まえて、どんどんできることはやっていくという観点が今やはり皆さんの中でできていると思いますので、そういう中で、イノベーション拠点についてQST、NIFSからありましたが、その点に関して御質問、コメント、御意見、まずはイノベーション拠点のところから行きたいと思います。大山委員は補足、何かありますか。
【大山委員】  先ほど吉橋委員から御質問があったことに対して、ここで言う中性子照射施設は何を想定したものですかという御質問があったかと思いますので、そこについてまず回答させていただきます。
 9ページ目のところでブランケット試験施設のホット施設の説明、この一つ目の矢印のところに書いてございますけれども、ここにあるように中性子照射施設で照射されたサブモジュール、これはブランケットの燃料増殖のサブモジュールみたいなものを想定して書いてございます。そこに当てる、そこで照射するための中性子照射施設、これは加速器をベースとした中性子の施設でございますけれども、それをここで中性子照射施設と書いているところでございます。
 ですので、11ページとかに書いてあるもの、もしくはその前の7とか8ページで書いてあります中性子照射施設というのは、材料の試験のためのA-FNSというものではなくて、原型炉に必要な要素技術の試験をするために、その要素技術開発のための中性子を照射できるような試験施設を新たに建設したいというところになりますので、補足させていただきます。
【坂本(瑞)主査】  それは体積中性子源に近いものということですか。
【大山委員】  体積中性子源といいますと、やっぱりトカマク装置というふうになるかと思うのですけれども、ここでは加速器を使って核融合中性子を発生させる装置でありますけれども、そのフルエンスですとか規模というのは、その材料開発のためのようなものではなくて、少し規模が小さいもの、規模はそれほど大きくないものを考えているということでございます。
【坂本(瑞)主査】  分かりました。ありがとうございます。
 そうしましたら、すみません、主査の不手際で少し時間を押していますが、少し時間延長させていただいて、しっかり議論させていただきたいと思います。順番が分からないので、私の見える上からで、藤岡委員、お願いいたします。
【藤岡委員】  ありがとうございました。私からのコメントとしては、QST、NIFSからの提言をお伺いいたしまして、正直申し上げますと、少し内向きな印象を受けたというのが正直な感想です。装置とか機能をそういうところに集約することのメリットは当然理解するのですけれども、それでは現在の数倍の研究者を特に異分野から集めるというのはちょっと難しいのではないかと感じています。
 核融合ではない機関に装置であるとかプロトタイプ、そういうものを作って、そこに幅広く異分野からの人を集めて、そこで育った人がQSTの中、六ヶ所、NIFSに集まるという、そういうふうな制度設計があってもよいのかなと感じました。特にNIFSに関しましては、総合型共同研究という仕組みがありますので、様々な大学であるとか機関と双方的に予算と装置が移動できる、そういうシステムを持っていますので、その辺を強化していただくことをもう少し強調いただけると、大学における人材育成とか原型炉開発に資するのではないかなと考えました。
 最後に産業界におけるイノベーション創出というのを非常に強調されていたのですけれども、これらの装置群を整備することで、国内外の核融合関連の企業であるとかスタートアップがどれぐらい使いたい装置なのか、また、それを使う、活用の見込みであるとか、また、それによって得られる収益とか、その辺についての事前調査があればお聞きしたいですし、また、彼らが使いたい時期と整備する時期というのがマッチングしているのかなというところに関しても少し教えていただければと思いました。
 以上です。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございます。
 大山委員からお願いします。
【大山委員】  藤岡委員、コメントありがとうございました。先ほどいただいたコメントの中で産業界イノベーション創出のアピールに対して、事前調査をしていますかという点につきまして、まず回答させていただきますけれども、先ほども御説明した、例えば中性子照射施設であれば、核融合の研究開発だけではなくて、医療用のRIの製造のために、そういった創薬なども含めたようなフュージョン以外のところにも興味を持たれているということは、こちらでも調査してございます。なので、こういった施設を実際運用していく中では、当然、運転費というものがかかってきますけれども、そういったものを核融合のフュージョンコミュニティだけで負担するのではなくて、もう少し幅広い産業界からの、そういった費用も使って幅広く運転していくということも考えていく必要があるかと思っております。
【坂本(瑞)主査】  坂本隆一委員お願いします。
【坂本(隆)委員】  NIFSの外の装置を使うことに関しては、NIFSの共同研究の中に、大学の装置や、JT-60SAといった所外の研究装置を使う共同研究があります。また、その共同研究システムの改善を、現在行っています。
 そして、人材育成の図のところにも書きましたが、共同研究ネットワークを使うということを明示してあります。共同研究のネットワークを使って大学の装置を人材育成にも使うということを明示していますので、藤岡先生の言われているとおりになっているかと思います。
 また、NIFSにおける産学連携に関しては、産学連携研究室というシステムを作って、そのシステムの中でヘリカルフュージョン社が、NIFSに自分達のラボを築いて実験を開始しようとしているところです。ですから、必ずしもNIFSの中で使うだけの装置をつくるのではなく、ベンチャーラボとして場所を提供すること、そして電源などの研究基盤を提供することによって、産業界の人に参画していただくということも考えています。
 以上です。
【藤岡委員】  理解が深まりました。ありがとうございました。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございます。
 横山委員、お願いいたします。
【横山委員】  ありがとうございます。私からは、人材育成にも絡んでくるかと思うのですけれども、NIFSの坂本委員に質問があります。ユニットを御紹介いただいたのですけれども、そのユニットの中に、私は安全性という専門なのですけれども、安全性のユニットというのが、名前として出てこないです。薄く少し色づけられて、はっきり見えないところに核融合安全性科学ユニットというものが示されていましたけれども、これが少し、そのとき御紹介いただいたか記憶になかったので、その安全性ということに対してあまり力を入れていないのかなと思います。NIFSが入れるつもりがないか、入れていないのかなという、私が分野ですので心配になったという点です。
 それから、安全性も含めていろいろな方のネットワークを使うという意味では、異分野ということで、もちろん産業界というのもあるのですけれども、社会科学的な視点も含めた方々を呼んでくるということも必要なのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。
【坂本(隆)委員】  御質問、ありがとうございます。核融合安全性科学ユニットに関しましては、ここで白くなっているとおり、まだ立ち上がっていません。ユニットを構築するとき、NIFSに置くべきユニットであることが認められたのですが、実施体制をつくることができなかったために、現時点では、まだ立ち上がっていません。ただし、現在、このユニットをつくることを鋭意検討しているところです。ですから、このユニットに参画いただいて、安全性に関する議論を進めていただきたいと思います。このユニットが立ち上がりましたら、これに関係する人を巻き込んだ共同研究体制を広げていきたいと考えています。よろしくお願いします。
【横山委員】  ありがとうございました。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございます。
 伊神委員、お願いします。
【伊神委員】  QSTからのプレゼンテーションもNIFSからのプレゼンテーションも「基盤整備」というキーワードが入っておりましたけれども、まずコメントでございますけれども、いろいろな産業界や、もしくは大学が使いたいと思うような設備であるためには、それを提供するために基礎的な電源であり、ここでは変電所というのもありましたけれども、というものが適切に更新されていなければ、そもそもそのベースの上に乗っかることができないと考えますので、地味なところではありますけれども、基盤整備というのは必要かと思います。特に電源は、30年もたてば、中に使っている素子が、もう交換部品がないであるとか、代替品はあるけれども、全体的なシステムマッチングをするには、また装置検討、全体のことが必要であって、そこに技術なりお金なりを要してしまうということがございますので、ニーズにきちんと応えるためにも基盤整備というのは重要と考えます。
 あと、学際的、また、教育というところでの設備投資というところも、どちらの研究所のほうにも提案がありましたけれども、ソフトウエア的なところ、箱物をつくる、コンベンションセンターを造るというのもいいのですけれども、コンベンションセンター自体は、例えば地元の自治体にもあるわけです。ただ、人が宿泊滞在して、ある程度実験的なことも含めて教育、研究を行っていくためには、安心して、ある程度心地よく逗留できるような設備というのが学生さん、特に若い方を引きつけるためには、そこの安心をきちんと与えて、ここでだったらきちんと安心して便利に研究できる、教育を受けられると思ってもらえるような設備なり、あとサポートというものが重要になってくると考えます。
 そういう意味では、箱物と同時に、箱物のほうも研究者、共同研究者、学生さんが居心地よくできる。特に六ヶ所とかもこれから重要になってくるかと思うのですけれども、NIFSもそうなのですが、割と外界から隔絶された環境にあって、買物とかもままならない、食事とかもままならないというのが現状でございますので、そこら辺は必要な投資として、やはりそこは予算の措置があるといいなと考えます。ソフトウエア的な、人についてもらうためにちゃんとお金を投資するという方向性も御検討いただきたいと思います。
 私からは以上です。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。
 近藤委員、お願いいたします。
【近藤委員】  ありがとうございます。期待を込めて大山委員にお聞きしたいのですけれども、先ほど吉橋委員からもありました中性子照射施設の件です。これまでも議論してまいりましたけれども、いわゆるA-FNSという中性子照射施設の検討をずっと続けてまいりました。それで、一方で海外ではDONES(ドネス)という中性子源の開発が進められています。今回、大山委員から新たにそれとは違う小規模な加速器を用いた、いわゆる中性子照射施設を設置するということですので、それぞれが相互補完的に機能するものだとは思うのですが、どういった役割分担なのか、当然、A-FNSもそれで置き換えるというものではないと思うのですけれども、どういった材料のどういった試験をするのかお聞きしたいです。特に核融合中性子による燃料とか、構造材料、機能材料の試験というのは非常に重要で、これは各国それぞれ困っている部分ではないかなと思うのです。うまく表現すると、いいアピールにつながるのではないかなと思っています。
 もう1点は人材育成、先ほど武田委員のときにも申し上げたのですけれども、数百人単位の人材育成を行うのはいいのですが、やはりその受け皿をどう評価するかという部分、しっかり進めないといけないと思っていまして、それだけの育った人材がどういったところに配置されていくのかという部分、これも併せて説明いただくようにしていったほうが、誤解がないのではないかなと思いました。
 私からは2点、よろしくお願いします。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。
 ほかに、いかがでしょうか。伊神委員お願いします。
【伊神委員】  申し訳ありません。先ほど申し上げそびれた基盤整備というところで、藤岡先生もおっしゃったのですが、各大学も双方向という形で密に連携してまいりましたけれども、各大学においても相互補完的にできるような研究なり実験設備というのがあるかと思います。そこに対しても大学のほうがより基盤設備というものの更新というのがなかなかままならないというのが現状でございますので、その辺りも含めてなかなか競争的資金ではカバーできないけれども、縛りとなっているような基盤整備というものもきちんとベースアップしていくような方向性というものが必要なのではないかなと考えます。
 以上です。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
【坂本(隆)委員】  よろしいですか。今の伊神委員のことに関しましては、NIFSで考えている所外の施設を整備する共同研究では、基盤整備も含まれるものになっています。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。
 それでは、大体、意見が出そろいましたが、私から、今のNIFS、QSTのイノベーション拠点化というのは、このフュージョンエネルギーの早期実現という期待を込めて、自分たちだけではなく、拠点として大学、産業界を巻き込んでやっていただきたいという期待が込められております。藤岡委員が感じられたように、内向きな決め方では決してその期待に応えると思えませんので、それは自分たちの老朽化したものを直すというだけではなくて、ぜひ武田委員が言われたその趣旨、早期実用化するのだという、そこに資するという観点もしっかりと取り込んだ計画にしていただくということと、あと伊神委員が言われましたが、基盤はとても大事で、電源、それは絶対維持していかなくてはいけないのですけれども、それをぜひこの拠点化という形で早期実用、もちろん2045年までに達成するのもいろいろな課題があるのですけれども、そこで日本、オールジャパンで動かせるような仕組みというものの知恵をぜひ絞って御提案いただければと思います。
 今、大事なものがあるということは非常によく理解できましたが、それがこの拠点化でどうやってイノベーションを起こすものになるのかということに関しては、多分、皆さん少し理解というところ、説得が今後必要になってくるのだろうと思いますので、ぜひどのようにして拠点化してイノベーションを起こすのだというところは考えていただきたいなと思います。よろしいでしょうか。何か私が誤解しているとかあれば、大山委員、坂本委員からお願いします。そういうような、意義があるということで受け止めていただければと思います。
 あと、ちょうどここに出ておりますが、人材育成に関しましては、坂本隆一委員に確認したいのですけれども、ユニット制ができるときというのは、核融合科学ということで、原型炉とは全く違う概念ででき上がったシステムになっていて、そこの延長線からこの原型炉を開発する人材というところに来た方が気持ちを持っていってくれるような仕組みというのは何かあるのでしょうか。
【坂本(隆)委員】  最初に説明したとおり、核融合の開発のためには、展開と統合が必要です、もちろん原型炉開発研究のための統合があるのですが、それと同時に学術研究機関としてNIFSは展開をすることを担うのが役割です。この2つを協働体制で進めるということがイノベーション戦略の加速につながると考えています。
【坂本(瑞)主査】  展開した後、その方たちが原型炉に戻るという、その仕組みがぜひ欲しいなと思います。
【坂本(隆)委員】  展開というのは、核融合に関わる人を広げることですから、逆に言うと、外に広がるということは、外の人が核融合に入ってくるということと同じことなので、そこで核融合開発に関わる人が増えてくるということを言っています。核融合の裾野を広げるということは、核融合に関わる人が増えて、その中で開発研究に関わる人も増えてくるということが重要かと思います。もし私たちが選択と集中のみで、ある狭い範囲の研究しかしないようになってしまったら、それこそ様々なイノベーションを起こすための余地というものはなくなってしまうと思います。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございます。坂本隆一委員の言っている意味は非常によく理解しています。そこを理解した上で、さらにもう一歩、その人たちを開発のところに持っていく仕組みも考えていただきたいという、決して否定しているわけではなくて、それは大事で、外から来るのだけれども、広げるだけではなく環流というところの仕組みを考えていただけたらいいなということです。
【坂本(隆)委員】  人材育成の図に関して、広い分野から来た人が集まることによって人脈をつくって、核融合に関係する機関、QSTやITERとかも含めて、ここに人の流れを作ることがスクールで行う重要なことです。座学をするということよりも人脈、様々な人を核融合分野に流れ込ませるということが重要なことだと考えています。
【坂本(瑞)主査】  それはとても重要です。核融合人材として5年間で1,500人増えるということですか。
【坂本(隆)委員】  年間300名ぐらいの規模で行うことによって増やしたいと考えています。
【坂本(瑞)主査】  それがこの右側の赤い矢印のほうに行くという、その仕組みをお聞きしたかったのですけれども、よろしいでしょうか。
【坂本(隆)委員】   海外機関に行くのならば、NIFSの国際学術交流協定、国内でしたら、NIFSの共同研究ネットワークなどを使って、スクールに参加した人と研究機関をつなげることが、ここにネットワーキングと書いてある人脈形成になります。
【坂本(瑞)主査】  短期間ではなく、人材として残る人という意味で1,500名残ってくれるといいなと思いました。
 あと、さっき伊神委員から言われましたが、大学への取組、いつも書いてくれていて、毎回、委員からそこの取組をお願いしますという、戦略官のまとめにもあったのですけれども、そこの具体化の案をぜひ次にお聞かせいただければと思います。ネットワーキング、これは非常にいいことなので進めていただいて、ここだけではなく、その(3)の、ここをどういう具体化してやるのか、それは核融合人材という意味で、これは今の人材は原型炉とフュージョンエネルギーを進めるということなので、そこの具体的な案もぜひそろそろ出していただければと思います。
【坂本(隆)委員】  それに関して、もちろん大学の中でも取組があると思いますので、その取組を一緒に実現していくための支援を行いたいと考えています。大学の教育の現場の先生方と一緒に考えることによって、いい教育をつくっていくということが重要ではないかと考えています。
【坂本(瑞)主査】  その仕組みを、次回、ぜひよろしくお願いいたします。
【坂本(隆)委員】  はい。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。
 ほかに何か、少し時間が過ぎてしまって申し訳ありませんでしたが、何か補足、議論すべきことがありましたらお願いします。
 横山委員、お願いします。
【横山委員】  すみません、大したことではないのですけれども、先ほど坂本主査がおっしゃられたような具体的なものって、ITERスクールというのが1つ、今、挙げられているのですけれども、例えば、これはあくまでも私が思うということなのですけれども、カナダなどは非常にトリチウムの取扱いというのは、以前からされていて経験もたくさんあるということで、そういうITERだけではなくて、いろいろな国と多分やりとりなり、交流していくということは考えていらっしゃると思います。そういった観点から、カナダのような国、カナダの場合には、私も昔、野外のトリチウム放出実験というのに参加したことがあるのですけれども、そういった観点からもなかなかカナダのほうも人がいなくなってきてはいると思うのですが、そういう人との触れ合いというか、交流というのも考えていただければなと思いました。
 以上です。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございます。
 そういう海外の核融合を人材育成できる施設というところにも人を派遣するというようなアイディアは、非常に大切だと思います。
 近藤委員、お願いいたします。
【近藤委員】  坂本先生、ありがとうございます。お金はよく分かりました。ただ、今これからその仕組みを考えていく上で、もし可能であれば、その隣接分野の原子力などは、核分裂のほうは比較的、その人材育成にこれまでも力を入れてきて、ある一定の成果を得ているものだと思うのです。どこかで水平移動というような言葉が今日出てしまったので、そうではなくて、隣接分野の原子力なり、もしくはエネルギーなりと一緒に人材育成の枠組みをつくっていきながら、そういったものが全員で大きくなっていくというような仕組みにしていったほうが、先ほども説明させていただいたのですけれども、この核融合に関わった人たちが最終的にどこに落ち着くのかということを考えてもいいのではないかなと思っております。
 原子力分野の親和性というのは、こういう炉という形になってくると非常に強くて、今、横山委員からもありましたけれども、トリチウムとか、放射性物質も含めて協力できる点はたくさんあるのではないかなと思いますので、ぜひ隣接分野を少し意識した人材育成の枠組みへとしていただけるとありがたいなと感じています。
 私からは以上です。
【坂本(隆)委員】  はい。承知しました。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございます。
 坂本隆一委員のおっしゃられた、この外から入れるって非常にいいアイディアで、ぜひ頑張っていただきたいと思います。そのサイエンススクールで300人やるということも、外から流入するということ、非常にいいアイディアだと思います。また、一方、今、横山委員が言われた、近藤委員が言われたような視点ということも重要で、先ほど私が言ったのは、そういう意見を各大学の取組3というところで具体化するような議論とか、アイディアとかというのをまたここで出していただいて、議論して、よりよい人材、あと周辺という形がバランスよく育つようなものをぜひ考えていただきたいという、そういう趣旨でございました。よろしくお願いいたします。
 あと、ほかによろしいでしょうか。時間超過してしまいまして、申し訳ありませんでした。しかし、とても皆さんから貴重な意見を賜って、今後の原型炉開発につながるものだと思います。どうもありがとうございました。事務局にお戻ししたいと思いますが、何か事務連絡等ございますでしょうか。
【日野専門官】  ありがとうございます。馬場戦略官、何かございますでしょうか。
【馬場戦略官】  特にございません。貴重な意見、ありがとうございました。我々、いろいろな声、期待が高まっている中で、どう科学的、技術的に、社会的にも意義があるところを取り組めるかというところが大事かと思います。
 本日いただいた意見、大きな方向性としては合意できたと思いますが、やはりまだまだ具体的な仕組み、仕掛け、システム、また、巻き込み方というところは、さらなる検討が必要なのだろうなと思いました。また次回以降、本日、御提案いただいた先生方ももちろん、関連の学会であったりとか、産業界であったりとか、そういったところとの議論を深めて、より具体化した案を次回お話しさせていただければと思います。ありがとうございました。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございました。
 それでは、本日の原型炉タスクフォースは、これで閉会といたします。皆様、御多忙中、御参加いただき、ありがとうございました。終了が遅くなってしまったことをおわび申し上げます。本日は、どうもありがとうございました。

 
―― 了 ――

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