核融合科学技術委員会 原型炉開発総合戦略タスクフォース(第31回) 議事録

1.日時

令和5年10月24日(火曜日)14時00分~16時00分

2.開催方法

オンライン開催

3.議題

(1) フュージョンエネルギー・イノベーション戦略を踏まえた最近の取組について
(2) 将来の原型炉開発を見据えた研究開発の加速について

4.出席者

原型炉開発総合戦略タスクフォース

坂本瑞樹主査、武田秀太郎主査代理、伊神弘恵委員、大山直幸委員、奥本素子委員、木戸修一委員、古賀麻由子委員、近藤正聡委員、坂本隆一委員、鈴木隆博委員、馬場貴志委員、福家賢委員、横山須美委員

有識者

宇藤裕康量子科学技術研究開発機構主幹研究員

文部科学省

千原由幸研究開発局長、馬場大輔研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)、髙橋佑也課長補佐、吉原誉夫核融合科学専門官、長壁正樹科学官、梶田信学術調査官

5.議事録

【坂本瑞樹主査】本日は、御多忙のところ御参加いただきまして誠にありがとうございます。定刻になりましたので、第31回核融合科学技術委員会原型炉開発総合戦略タスクフォース(以下、TF)を開催いたします。司会進行については、本TF主査である私、坂本が担当します。それでは、議事に入る前に、事務局より定足数及び配付資料の確認をお願いします。
 
【吉原専門官】核融合科学専門官の吉原でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 まずは、本日の委員の御出欠でございます。本日の御欠席は藤岡慎介委員、吉橋幸子委員でございます。全15名中13名の委員に御出席をいただいております。過半数を超えておりますので、定足数を満たしていることを御報告いたします。
 続きまして、本日の配付資料でございますが、議事次第の配付資料一覧に示しております資料1から6及び参考資料となります。会議中は、Zoomの画面共有システムを使って事務局より資料を表示させていただきます。各委員におかれましては、御発言いただく際には、ミュートを解除の上、画面の下にあります「手を挙げる」ボタンを押して発言いただきますようお願いいたします。
 また、事務局に人事異動がございましたので、御報告申し上げます。本年9月1日付で、前任の稲田に代わりまして、馬場が研究開発戦略官に着任いたしました。
 
【馬場戦略官】皆様、お忙しいところ本TFに御参加いただきありがとうございます。先月戦略官を拝命いたしました馬場と申します。今後お世話になると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。馬場戦略官、御着任ということで、どうぞこれからよろしくお願いいたします。
 本日は、議題2「将来の原型炉開発を見据えた研究開発の加速について」において、原型炉設計合同特別チーム(以下、特別チーム)における現状の活動内容について御説明いただくため、特別チームでシステム設計グループリーダーを務めております量子科学技術研究開発機構(以下、QST)の宇藤裕康主幹研究員に御参加いただいておりますので、御承知おき願います。
 本TFは、核融合科学技術委員会(以下、委員会)運営規則に基づき、議事を公開いたします。御発言は議事録に掲載され、ホームページ等で公開されます。
 それでは、本日の議題に入ります。まずは議題1「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略を踏まえた最近の取組について」です。それでは、事務局から資料の御説明をお願いいたします。
 
【馬場戦略官】資料1に基づきまして、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略を踏まえた最近の取組として、特に前回TFが開催された6月以降の主な状況について御説明させていただきます。
 まず2ページ目、昨年4月に策定した戦略の概要でございます。こちらについては、「フュージョンエネルギーを新たな産業として捉え、構築されつつある世界のサプライチェーン競争に我が国も時機を逸せずに参入」すること。また、「ITER計画、BA活動、原型炉開発へと続くアプローチに加え、産業化等の多面的なアプローチによりフュージョンエネルギーの実用化を加速」すること。更に、「産業協議会の設立、スタートアップ等の研究開発、安全規制に関する議論、新興技術の支援強化、教育プログラム等の展開」、このようなことが掲げられております。このようなビジョンを達成するための基本的な考え方として、「フュージョンインダストリーの育成戦略」、「フュージョンテクノロジーの開発戦略」、「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略の推進体制等」に一体的に取り組むこととしております。
 本日のTFでは、前半に最新の動向として、安全規制・標準化に係る同志国間での議論への参画について、また、ゲームチェンジャーとなり得る小型化・高度化等の独創的な新興技術の支援策の強化、ITER計画、BA活動を通じたコア技術の獲得について、更に後半の議題では将来の原型炉開発を見据えた研究開発の加速について、特にこのTFとして重要な議題かと思いますので、集中的に議論いただければと考えております。
 続いて3ページ目を御覧ください。こちらは政府の方針として、フュージョンエネルギーに関する最近の総理の発言等を御紹介させていただければと思います。
 まず先月には、国連総会の際に、ニューヨークで開催された岸田総理の講演の中で、環境、AI、半導体、バイオと並んでフュージョンエネルギーの重要性が強調されているところでございます。
 また、高市内閣府科学技術担当大臣からは、内閣府の立場で以下の発言がございました。「今年4月に日本初の核融合戦略となるフュージョンエネルギー・イノベーション戦略を取りまとめることができました。フュージョンエネルギーというのは、次世代のクリーンエネルギーとして期待されており、非常に国際競争が激しくなっております。政府としては、この競争に打ち勝っていかなければいけないので、今回の概算要求では、初の国家戦略に基づいて、ITER計画の推進や原型炉開発の加速に加えて、新たな取組としてムーンショット型研究開発制度を活用」することがうたわれています。
 後半の議題でも御紹介したいと思いますが、令和6年度概算要求としては292億円、前年度比37%増ということで、関係省庁が一丸となって必要な予算額を年末に向けて、本TFの議論も踏まえながら、しっかり確保していきたいと考えているところでございます。このように、政府全体として取り組んでいくということが繰り返し述べられているところでございます。
 4ページ目を御覧ください。フュージョンエネルギー研究開発の全体像を改めて整理したものです。政府としては、御案内のとおり、ITER計画等への参画を通じて科学的・技術的実現性を確認した上で原型炉への移行を判断することとしており、科学技術・学術審議会、委員会等における議論も踏まえ、原型炉に必要な技術開発の進捗を定期的に確認しつつ研究開発を推進することとしております。
 後半の議題では、原型炉実現に向けた体制整備について、このTFにおいて集中的に議論していただきたいと思いますが、まず前半では、最近の状況として、SBIR(Small Business Innovation Research)フェーズ3基金、また、核融合の挑戦的な研究の支援の在り方に関する検討会(以下、検討会)の議論の状況などを説明させていただきます。
 なお、先ほど14時にQSTから報道発表が行われましたが、日欧共同で茨城県那珂市に建設した世界最大のトカマク型超伝導プラズマ実験装置であるJT-60SAにおいて、初めてのトカマクプラズマ生成に成功したとの報告がございました。このJT-60SAで得られた知見を、ITERや将来の原型炉に積極的に活用していきたいと考えております。
 5ページ目を御覧ください。中小企業イノベーション創出推進事業の公募選定結果です。このSBIR制度は、革新的な研究開発を行う中小企業、スタートアップ等による研究開発を促進し、その成果を国主導の下で円滑に社会実装し、我が国のイノベーション創出を促進するための制度でございます。この制度において、スタートアップ等が社会実装につなげるための大規模技術実証、フェーズ3を実施し、我が国におけるスタートアップ等の有する先端技術の社会実装の促進を図ることを目的に、この8月から核融合原型炉等に向けた核融合技術群の実証を対象に公募を実施したところでございます。10月18日に資料に記載の4社が採択されたことを報道発表しております。
 6ページ目を御覧ください。ムーンショット型研究開発制度の新しい目標案についてです。この制度を活用し、未来社会像からのバックキャストによる挑戦的な研究開発を推進するため、堀場製作所の足立社長を主査に、また自然科学研究機構核融合科学研究所(以下、NIFS)の吉田所長を主査代理として、検討会を設置し、本TFからは、武田主査代理、奥本委員にも御参画いただき、本年6月から毎月検討会を開催し、10月19日の第5回検討会において最終的な取りまとめを行ったところでございます。新しい目標案としては、「2050年までにフュージョンエネルギーの多面的な活用により、地球環境と調和し、資源制約から解き放たれた活力ある社会を実現」することを掲げております。今後、最終的には総理を議長とする総合科学技術・イノベーション会議において目標として決定される必要がありますが、文部科学省としては、このムーンショット型研究開発制度も活用し、未来像からバックキャストし、社会実装に向け小型化・高度化等の新興技術の開発を強化して参りたいと考えております。
 7ページ目は、フュージョンエネルギー規制枠組み構築に関する共同勧告についてです。このアジャイルネーションズは、規制に関する革新的な検討実施策に関する協力を促進するために設立された政府間の規制ネットワークのワーキンググループでございますが、具体的には、今回のワーキンググループではイギリス、日本、カナダをメンバーとし、オブザーバーとしてシンガポール、バーレーンも加わった形で議論を重ねて参りました。このメンバー間でフュージョンエネルギー規制に関する協調的で集合的なアプローチを策定することを目的とし、イギリスの呼びかけで設置されたものとなっております。4月25日に第1回ワーキンググループ開催以降、複数回議論を開催して参りました。また、このワーキンググループについては、私も含め各国政府の代表で構成され、必要に応じて技術専門家にも協力を仰いで検討を重ねて参りました。
 このたび、フュージョンエネルギー施設の規制枠組みをどのように構築するかの共同勧告を発表しております。原文は資料6、仮訳を資料5で配付しておりますが、今後我が国としてもフュージョンエネルギーに関する規制の枠組みを構築するに当たり、今回の共同勧告も踏まえつつ、引き続き同志国各国とも連携して取り組んでいきたいと考えております。
 最後に8ページ目を御覧ください。こちらは第5回検討会でも配付した資料となります。あくまでイメージとなりますが、ITER、BA、原型炉から発電に続く、リニアモデル的に研究開発を進めているところでございますが、やはり道の途中、様々な困難が生じた時に、代替手段がないため社会実装が遅れるということが懸念されているかと思います。
 その上で、今回ムーンショット型研究開発制度との協働を促進していきたいと原型炉開発でも思っておりますが、この原型炉発電、ベースロード電源の道をより確かなものにするため、例えば小型動力源や、水素製造、工学熱利用、オフグリッドなどバックキャスト型の研究開発を並行して実施することにより、それぞれの道が黄色でつながっておりますが、例えば技術や人材の活用など、それぞれの道を連携させることで、将来の世代にわたって、その道や人材を太く厚くしていければいいのではないかというふうに考えております。このTFで議論いただいていることは、何世代にもわたって議論を積み重ね、また技術や人材もつなげていく必要があるかと思っているところでございます。こういった形でフュージョンエネルギーに関する人材、技術を、より太く厚くしていくことができればと考えております。その意味でも、今回のJT-60SAの初プラズマで得られた知見はもちろん、これまでフュージョンエネルギーに必ずしも携わっていらっしゃらなかった方々、幅広い技術、人材も結集していくことが原型炉開発にも重要であると考えているところでございます。事務局からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
 
【坂本瑞樹主査】馬場戦略官、大変ありがとうございました。政府、文科省でこのような大変力強い施策を打ち出していただきまして大変ありがたく存じます。ただいまの御説明に関しまして質問などがございましたら、よろしくお願いいたします。福家委員、お願いします。
 
【福家委員】アジャイルネーションのワーキンググループの御説明がありましたが、各国の規制当局はこのワーキンググループに参加されているのでしょうか。
 
【馬場戦略官】こちらについては、我が国においては文部科学省が主に参加しております。その意味では、規制省庁・官庁が現実的に参加できているかということについては国によって異なっているかと思います。今回こういった形で、協調した規制の重要性について議論を重ねてきたところでありますが、今後各国にそれぞれ持ち帰った上で、当然ながら規制官庁も含めて議論していくことになるかと思っています。
 日本においては内閣府において、こういった規制に関しても、今後また有識者会議のようなものを立ち上げて議論を重ねていきたいと考えています。その過程においては、どういった規制が我が国にとって望ましいかについて、様々なステークホルダーも巻き込みながら議論を積み重ねていく必要があるかと思っています。その意味では、今回の勧告は、これまでであれば各国積み重ねてハーモナイゼーションを図るという形だったものに比べると、逆に、まずはこういった形で各国連携していろんな問題意識を共有したということに一つ意義があると思っております。
 
【福家委員】ありがとうございました。
 
【坂本瑞樹主査】他に御質問などありますでしょうか。大山委員、お願いします。
 
【大山委員】冒頭でフュージョンエネルギー・イノベーション戦略の概要について改めて御紹介いただいた中に、令和5年度の設立を目指す核融合産業協議会(以下、協議会)についての御説明が書かれていたかと思います。QSTでは、前回のTFで私の方から御説明させていただいた拠点化構想を踏まえて、オープンイノベーション総合窓口をQSTに設置してございます。その中でいくつか企業からの問い合わせなどを受けているという状況でございますけれども、そういった中で、この協議会がどのような方向になりそうなのか、知っていたら教えていただきたいというような問い合わせなども受けているところです。現状、どのような方向性で調整されているのかというところ、できる範囲で結構でございますので、共有していただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【馬場戦略官】御質問ありがとうございます。私も先月着任して以降、こちらについては戦略に今年度中の設立を目指すというふうにうたわれていることから、大きな宿題であると認識はしており、関係者間で今議論を積み重ねているところであります。具体的に関係者としては、本当に多様ではあるのですが、今回設立を目指す協議会自体は、企業等を中核に一般社団法人化を目指すということがうたわれている中で、戦略発表以降、様々な問い合わせが我々の方にも来ているところでございます。実際この協議会の設立については内閣府が中心になって動くということにはなっておりますが、私自身、内閣府も併任しているので、内閣府の立場でこの協議会の設立に向けて、関係企業、具体的に関心がある企業からの問い合わせ、また具体的にやりたいことについて確認をしつつ、最終的にどういった形が望ましいのかということについて検討を重ねているような状況です。実際、QSTを含めて問い合わせある方々の関心事項というのは、実態的には様々だと思います。我々の方に来ている情報としても様々な関心がある中で、どういったものが望ましいのかという最大公約数的なところは何とか作り上げられないかなということを検討しているところでございます。ぜひ大山委員のところも含めて、御不明な点があれば、我々事務局の方につないでいただければありがたいと思っています。また、この協議会の設立に当たっては、戦略に掲げているとおり、QSTはもちろん、大学等もアカデミアの立場で加わっていただくということを我々は想定しているところでございますので、そういったところも含めて議論させていただければと思っています。
 
【大山委員】馬場戦略官、御説明ありがとうございました。引き続き意見交換させていただきながら、実現に向けて進めていければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【坂本瑞樹主査】他にありますでしょうか。短い質問でしたらお受けしたいと思いますが、よろしいでしょうか。馬場戦略官、ありがとうございました。
 続いて、議題2「将来の原型炉開発を見据えた研究開発の加速について」に移ります。それでは、事務局から資料の御説明をお願いいたします。
 
【馬場戦略官】資料2に基づきまして、将来の原型炉開発を見据えた研究開発の加速に関して、主に令和6年度概算要求の概要を含めて御報告させていただければと思います。
 改めて、冒頭にも御紹介した戦略のうち、TFに関係する記載を御紹介させていただければと思います。まず、フュージョンテクノロジーの開発戦略として、「将来の原型炉開発を見据えた研究開発を加速すること」が政府全体で決めた戦略の中にも明記されているところは御承知おきかと思います。「将来の原型炉に向けた設計を加速するため、民間企業の更なる参画を促すための仕組みを導入するとともに、原型炉の研究開発を推進する」ことが記載されているところでございます。また、「フュージョンエネルギーに関する学術研究を引き続き推進すること」や、「スタートアップを含めた民間企業等による新技術を取り込むことを念頭に置いて原型炉開発のアクションプラン(以下、AP)を推進すること」が挙げられているところでございます。
 3ページ目には、戦略の推進体制として、「原型炉開発に向けてはQSTを中心に、アカデミアや民間企業を結集して技術開発を実施する体制、民間企業を育成する体制を構築すること」とされており、「原型炉への移行判断の後に体制を構築しては産業化に乗り遅れるため、体制構築に向けた議論を令和5年度より開始する。ただし、原型炉開発の主体のいない現状においては、まずはQSTを中心としつつ民間企業も参加する実施体制を構築するとともに、進展に応じて適切な体制とする。それにより商用炉の主体となり得る民間企業を育成する」ことがうたわれているところでございます。また、以前のTFでも報告がありましたが、「QSTにITER計画/BA活動等で培った技術の伝承・開発や産業化、人材育成を見据えたフュージョンテクノロジー・イノベーション拠点を設立すること」も挙げられているところでございます。
 4ページ目は、前TF主査で東北大学の笠田先生から御紹介があった、人材育成、アウトリーチについての記載になっております。主に3つあります。「将来のキャリアパスを明確化し、フュージョンエネルギーに携わる人材を産学官で計画的に育成すること」。「国内大学等における人材育成を強化するとともに、他分野や他国から優秀な人材を獲得する取組を行うこと」。「国民の理解を深めるアウトリーチ活動を実施すること」、こういったことも念頭に、原型炉実現に向けた基盤整備を実施する必要があると考えているところでございます。
 5ページ目は文部科学省におけるフュージョンエネルギー研究開発の推進に関する全体像となります。令和6年度概算要求の総額としては、292億円となっております。ITER計画、BA活動に加えて、新興技術の支援について取り組むというような柱立てになっており、原型炉実現に向けた基盤整備については、この要求においてはBA活動の一環として8億円が現時点では計上されているところでございます。
 6ページ目に、5月のTFでも配付された原型炉研究開発の現行スキーム図を再掲しております。本日は、この後、特別チームから現状の活動内容について御説明いただいた後、坂本主査から体制の私案を御紹介いただくというふうに伺っておりますが、改めて、我が国としてどのように原型炉開発を加速していくべきか、基盤を整備していくべきか、その望ましいあるべき推進体制や、またAPにおける優先順位などもこの後の議論でお伺いできればと考えております。
 
【坂本瑞樹主査】ただいまの御説明に対して質問などございましたらお願いいたします。馬場戦略官におっしゃっていただいたように、大切な時期にありますので、今後の優先順位、体制の在り方については後ほど議論したいと思います。それに基づく背景となりますのが今御説明いただいたようなところですが、確認が必要なことがありましたら御質問をお願いいたします。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 続いて、特別チーム宇藤裕康主幹研究員に、特別チームにおける現状の活動内容について御説明いただきます。次に、今、馬場戦略官から御説明のありました資料2の5ページにありますPD・PO体制、右下の丸4のところです。PD・PO体制の下での原型炉実現に向けた基盤整備の新規プロジェクトに関して、私から原型炉開発の在り方についての主査私案をお示しし、御説明申し上げます。その後、現状を踏まえて原型炉研究開発を実施する上での枠組みや留意事項及びAPにおける優先事項について意見交換を行います。この意見交換は非常に重要な位置づけとなりますので、皆さんぜひ活発な御議論をお願いいたします。それでは、まず宇藤主幹研究員から御説明をお願いいたします。
 
【宇藤主幹研究員】私からは、特別チームにおける活動状況と、第1回中間チェック・アンド・レビュー(以下、CR1)での課題に対する取組について報告させていただきたいと思います。
 まず、特別チームでは、CR1までに、ITERの技術基盤及び産業界の既存の発電プラント技術をベースとして、日本独自の原型炉の概念の明確化を行いました。CR1の総評といたしましては、一部に課題は残るものの、おおむね順調に推移しているとの評価を受けております。一方、第2回中間チェック・アンド・レビュー(以下、CR2)に向けては全体として加速が必要との指摘をいただいております。下のビューグラフには年次展開が書いてございますけれども、現在、次のCR2までの達成目標を書いてございますが、特に原型炉設計の炉心、炉工学技術の開発と整合を取り、高い安全性を確保し、経済性の見通しにも配慮した原型炉の概念設計の完了、これらを目指して、CR1での指摘も踏まえつつ、この期間に該当するAPの項目を中心に実施しているところでございます。3ページ以降におきましては、AP項目ごとに設計の概要及びそこでの指摘事項、それを踏まえての現在の活動状況を中心に御紹介したいと思います。
 まず、1つ目のAP項目であります超伝導コイルについてでございます。超伝導コイルにおきましては、原型炉のベースの設計といたしましては、まずITERでの実績を重視して、基本的にITERの超伝導コイルで採用されているようなものをベースとしているところを主案としているところでございます。その下に、超伝導線材ですとかそういったものは、基本的にはITERで使用されている材料、構造をベースとしているところでございます。
 ただ一方、原型炉を見ますと、非常に大型のコイルが必要ということで、コスト低減が必要というところで、CR1までにおきましても、製作の簡素化の検討をしていたところでございました。CR1におきましては、概念設計フェーズにおきましても、コスト低減概念のブラッシュアップ及びコスト評価、試作・試験によるこれらの検証、導体試験に必要なR&D計画の立案、こういったものを加速すべきという御指摘をいただいてございました。
 これらを踏まえまして、CR1以降の取組といたしましては、引き続きコスト低減に向けた概念の検討を継続しておりまして、最近の成果といたしましては、主案でありますラジアルプレート方式、ITERと同じですけれども、これを用いないコイルの代替案の検討が進んでおりまして、この概念では、非常にコイルの中でもコストが高くなる超伝導素線を大幅に低減できる見通しが得られているところでございます。
 ただ一方で、これら代替案等を踏まえてのコイル概念の確定というのを概念設計までにすべきと考えてございますけれども、その確定に向けてはコイル巻線試作とか、そういったところの検証が必須であろうと考えているところでございます。導体におきましても、まだ小規模ですけれども試作検討を通じて実施しておりまして、小規模の試作検討においては特別チーム内の専門家間で、導体の試験装置の検討あるいはR&D計画について開始しているところでございます。その中でも特に導体試作・試験というものに対しては早急な着手が必須であろうというふうに考えているところでございます。
 次はブランケットでございます。原型炉のブランケットは、基本的にはITERのTBMと同じ固体増殖・水冷却方式を採用してございます。あと原型炉におきましては、補強リブ構造等において筐体(きょうたい)の耐圧構造化というのをこれまで実施してきたところでございました。CR1では、概念設計で出されておりました円筒型ブランケット、こちらの課題の整理と設計の詳細化というのをITER-TBMのチームや、あるいは国内メーカーとの連携を継続しつつ進めるべきという指摘がございました。また、原型炉TBMの方におきましては、熱流動解析に基づく冷却方式の方針決定が必要という指摘をいただいてございます。
 これらを踏まえまして、CR1以降の取組といたしましては、円筒型ブランケット概念の簡素化ということで、従来の円筒型ブランケットを更に詳細化するということで、ここでは特に筐体(きょうたい)内部の冷却配管を取り除いたような、そういった概念の検討を実施しておりまして、そこである程度、必要最低限のものでございますけれども、設計としての見通しが得られているところでございます。また、原型炉TBMの構造解析の連成等、共同研究をベースとして実施することで、指摘がありました原型炉TBMに基づく冷却方式の方針決定に向けて取り組んでいるところでございます。今後の課題といたしましては、製作・運用コストの低減に向けた検討の継続が必要というふうに考えているところでございます。
 次は、ダイバータについてでございます。原型炉のダイバータにおきましても、基本的にはITERでの技術基盤に基づく設計を実施してございまして、ITERと同じW型のダイバータ・カセット構造で、プラズマに対する部分にはタングステン・モノブロック構造を採用してございます。また、ダイバータの設計の部分におきましては、放射冷却によるダイバータの熱負荷低減、こういったものを前提としているところでございます。
 CR1での主な指摘といたしましては、ダイバータシミュレーションコードの開発及び高精度化というところで、かつ類似シミュレーションとの比較検証というところが指摘されてございます。また、工学部分におきましては、定期的な保守のみならず、様々なイベント時を想定した補修技術の検討が必要との御指摘をいただいてございます。
 CR1以降の取組といたしましては、こちらはダイバータシミュレーションコードに関係する部分でございますけれども、中性粒子間の衝突モデルの導入というのを進めておりまして、ダイバータシミュレーションコードの更なる高度化とか、あとは、ここにはございませんけれども、類似シミュレーションとの比較というのも並行して進めているところでございます。ダイバータ機器の工学設計検討におきましては、各機器、ダイバータ・カセット等の設計の詳細化と併せまして、遠隔保守とも整合した構造設計の検討も実施してございます。また、指摘にございました補修技術に関しましては、まずは想定されるイベント、その時の負荷条件を含めて、まずはそういったものの整理を開始して、これらを踏まえて、では実際にどういう補修技術があり得るかというところの検討につなげることになってございます。
 ダイバータのところにおきましては、タングステンとF82H配管でございますが、これらの接合技術の確立や、高密度ダイバータプラズマの試験施設の概念設計等、これらが今後必要であろうというふうに考えているところでございます。
 次は、加熱・電流駆動システムについてでございます。原型炉では加熱・電流駆動システムといたしまして、中性粒子ビーム入射(以下、NBI)及び電子サイクロトロン波(以下、ECRF)の2つを併用することを考えてございます。CR1での主な指摘といたしまして、まずNBIに関しましてはメンテナンスレスセシウムフリー負イオン源開発の継続的推進、ECRFにおきましては高速周波数切替え等の工学部分に関する設計や開発というところが必要との指摘をいただいてございます。
 CR1以降の取組におきましては、まずNBIの基本仕様を固めるというところで設計検討しているところでございまして、この中で、年オーダーの定常運転での信頼性向上に向けて、指摘にもございましたけれども、セシウムレスRF負イオン源、こちらの方はNIFSと共同で検討を実施しているところでございます。また、高システム効率、こちらは原型炉としての正味電力の増加につながりますけれども、それに向けて、こちらも共同研究をベースとしてレーザー光中性化セルの検討を実施しているところでございます。
 ECRFシステムの方におきましては、共同研究をベースといたしまして、電流駆動効率の向上及び、CR1での指摘にもございましたけれども、伝送系を含む原型炉の向けのECRFの工学設計検討を実施しているところでございます。一方で、開発試験施設の概念設計の方は未だ着手できていないという状況になってございます。
 次は、理論・シミュレーションについてでございます。理論・シミュレーションにおきましては、主に炉心プラズマ運転シナリオの策定、あるいはダイバータ運転領域の評価等、様々な項目がございます。特別チームでは理論・シミュレーションワーキンググループの報告書という形で取りまとめておりまして、国内として原型炉に向けてどういった項目あるいは体制が必要かというところをまとめてきたということがございます。
 CR1におきましては、基本的に全て順調というところの指摘をいただいておりましたが、特にダイバータや炉心プラズマ統合シミュレーションモデルコードのJT-60SA、ITER実験への適用、検証及び継続的な開発が必要との指摘をいただいております。
 CR1以降では、継続して原型炉共同研究等を通じて、こちらの指摘にもありましたようなコード開発あるいはシミュレーション研究を特別チームとして支援しているところでございます。ここにいくつか共同研究での成果を示してございますけれども、こちらの部分におきましては引き続き、人的資源の増強及び計算機資源の継続的確保が必須であろうと考えているところでございます。
 次は、炉心プラズマについてでございます。原型炉の炉心プラズマにおきましては、ITER及びJT-60SAにて想定される成果に基づいた概念を構築しておりまして、特に原型炉におきましては導体シェルによるプラズマの安定化等、そういったところの検討を進めてきてございました。
 CRIにおきましても全て順調との評価をいただいておりますけれども、一方で、運転シナリオ及びELM(Edge Localized Mode)抑制等、そういったところの原型炉への適用性の検討が必要という御指摘をいただいております。
 CR1以降の取組といたしましては、先ほど御指摘にもありましたけれども、原型炉パルス運転シナリオの検討というのを進めておりまして、最近の成果といたしましては、外部電流駆動にNBI及びECRFの両方を使用することを想定したパルス運転シナリオを検討しておりまして、ここでは、まず前提としておりました2時間のパルス運転は可能であるという見通しが得られてございます。
 また、ELM抑制法におきましては、RMP(Resonant Magnetic Perturbation)等の摂動磁場による抑制方法の検討というのを実施しているところでございます。今後、実現性の見通しの向上及び炉心プラズマの最適化等の検討、これらが継続して必要と考えているところでございます。
 次は、燃料システムについてでございます。原型炉ではトリチウムのインベントリ量の低減というところを特に重視して、これらを考慮した燃料システムの概念検討を進めているところでございます。CR1におきましては、AP項目にあります燃料循環システム要素技術の開発の中のD/T混合固体ペレット入射供給技術の開発、この項目は特に加速が必要との指摘をいただいてございました。
 CR1以降は、該当するAP項目といたしまして、燃料サイクルシミュレーターに向けた燃料システムボックスモデリングの検討を進めるとともに、以下にあるようなR&D項目について実施してきているところでございます。
 ただ一方で、赤字で示しておりますけれども、トリチウム大量取扱施設、この項目には特にCR1で指摘いただいておりましたD/T混合ペレットの製造技術、そちらのところも含まれておりますが、今後のR&Dを実施していくためにはトリチウムを用いないと最終的な技術検証ができない項目が非常に多いことから、大量トリチウム取扱施設が非常に重要になるだろうと考えているところでございます。
 次は、核融合炉材料と規格・基準についてでございます。この項目におきましては、まずはブランケット構造材料にかかる負荷と材料課題、オレンジで示してございますけれども、これらに対して、特に核融合環境下での材料の健全性実証と構造設計基準案の策定というものを中心に継続して取り組んでいるところでございます。
 CR1での主な指摘といたしましては、想定される接合被覆部の照射全てをカバーしているわけではなく、この部分に関して加速が必要ということでございました。また、先進材料の利用方法の絞り込みを、先進ブランケット概念の検討等とともに加速が必要との指摘をいただいてございます。
 まず、1つ目で指摘いただきました接合被覆部に関してですけれども、こちらはF82Hと溶接部の中性子照射評価というところ、特に照射データベースの拡充というところを行っておりまして、これまでに50dpaまでの引っ張り挙動において母材並みの性能を確認しているところでございます。また、磁場下での腐食挙動の評価というところで、ACPを評価するために腐食データベースの拡充も実施してきているところでございます。また、指摘事項の2つ目に関係しますけれども、この部分につきましては、先進ブランケット概念、こちらはブランケットのところでも少し述べさせていただきましたけれども、先進ブランケット概念の検討の方と連携して、先進材料の検討も継続して進めているところでございます。この核融合炉材料の部分におきましては、特に照射場の確保及び照射効果の予測、構造設計技術開発の継続というところが今後も重要になるだろうと考えているところでございます。
 次は、安全性についてでございます。原型炉における安全の基本方針は、資料に示した安全基本方針に従って検討を進めているところでございます。
 CR1での主な指摘といたしましては、これらに加えて国産の安全評価コードの開発に向けた開発計画の検討が必要との御指摘をいただいてございます。
 CR1以降の取組ですけれども、継続してのものでございますが、安全事象の評価というところで、In-VV LOCAにおける環境影響の評価及び、こちらはAPの項目といたしましては保守の方にも関係するところでございますけれども、定期交換機器の放射化物量及び埋設処理区分の評価というところも実施してきているところでございます。
 また、CR1での指摘に関係するところですけれども、国産の安全評価コードの開発ということで、こちらの部分におきましては、日本の風土に適した環境トリチウム拡散評価コードの開発というものを近年開始しているところでございます。安全性の部分におきましては、特にAPの項目にもありますけれども、安全性ガイドラインや安全法令規制予備検討、これらの加速が今後も必要であろうと考えているところでございます。
 次は、稼働率と保守でございます。原型炉においての定期交換といたしましては、基本的に炉内機器、定期交換が必要なブランケット及びダイバータ、これらはある程度モジュールとしての集合体として炉内から搬出して、ホットセルで細かい保守交換をするという概念になってございます。CR1での主な指摘といたしましては、基本概念設計の中から摘出された技術、こちら例えば、ダイバータやバックプレートの再利用構造、ホットセル機器など、これらの詳細な検討が必要との御指摘をいただいてございます。また、炉構造と遠隔保守機器の設計統合、いわゆる整合性ですが、これらの検討において加速が必要との御指摘をいただいてございます。
 これらを踏まえまして、CR1以降の取組といたしましては、特に技術課題として挙げられていた部分の一つですけれども、配管の支持及び溶接の部分、これらの検討をしておりまして、配管の支持構造及びそれと整合する配管処理ツールの設計検討を実施しているところでございます。また、ホットセルにおけるダイバータターゲット交換の合理化、及びそれらを踏まえての炉構造及び機器の設計検討というところで、実際にホットセルでの保守交換機器を検討しつつ、それを踏まえて、先ほどダイバータのところでも述べましたけれども、ダイバータ構造自身の設計にもフィードバックして整合性を高めて設計の詳細化を行っているところでございます。遠隔保守技術に関しましては、これらの検討を踏まえて、実際に原型炉規模まで思った時に、大規模な保守技術開発設備の検討、これは未着手ですけれども、非常に重要な課題になるだろうというふうに考えているところでございます。
 次は、計測・制御についてでございます。原型炉における運転制御のイメージを書いてございますけれども、このように運転制御シミュレーターという形で、プラズマの制御ですとか、プラズマ平衡、プラズマ燃焼及びダイバータプラズマ、こういったものを実際に複数リンクさせて、かつ限られた計測機器及びアクチュエーターで制御する、そういったような概念で進めているところでございます。
 CR1での主な指摘といたしましては、基本的に全て順調との評価をいただいてございますが、原型炉で必要な計測量を整理して、強い中性子照射下で利用可能な計測機器候補をリストアップする。また、中性子照射施設の確保が指摘としていただいてございます。
 CR1以降におきましては、特別チーム内に計測制御ワーキンググループを立ち上げて、その中で原型炉に必要な計測量、また、そこで実際に採用できそうな計測機器、あるいは今後原型炉のために必要になるであろう課題の解決等について整理しているところでございます。この中で、指摘にもございましたけれども、計測器として必要な中性子の照射としての仕様を整理して、これらを踏まえて必要な中性子照射の計測器のリスト、あるいは必要な施設の確保というものを進める方向になってございます。
 最後にまとめといたしまして、ここまで報告してきました各AP項目でのCR1での主な指摘、及びそれを踏まえての以降の主な取組と課題についてまとめて示してございます。特に右側の列の下段、これはCR2に向けた課題として挙げさせていただいたものですけれども、太字で書かせていただいているものは、CR2での達成目標に直接関係するもので、特に重要であるというところをあえて太字で書かせていただいておりますが、こういった形で取り組んでいるところで、私の報告とさせていただきます。
 
【坂本瑞樹主査】特別チームがオールジャパン体制で、着実に原型炉設計をしていただいているということがよく理解できたと思います。この御説明を受けて、御質問がありましたらお願いいたします。近藤委員、お願いします。
 
【近藤委員】少し補足させていただきたい点と、1点、お聞きしたい点がございます。
 まず固体増殖ブランケットに関しましては、説明がありましたとおり、着実に進められているように思います。原型炉活動と並行してITER-TBMの試験なども、そういった機会にも恵まれて、性能評価が進められていくというふうに期待しています。
 一方で、先進ブランケットに関する記載が少し少なかったのですけども、こちらも原型炉運転後期、第2期と呼ばれているところですけども、大学の研究者が今集まって設計活動を進めていて、特に液体リチウム鉛を使用したTBMの設計が現実的かつ製作可能な範囲でまとまりつつある状況というふうに聞いています。この液体金属TBMの原型炉へ接続する方法などもQSTの方との調整が進んでいるというような状況かと思います。
 また、材料については、やはり核融合の炉材料というのは非常に重要で、特に中性子照射、この辺りがキーになるかと思います。今日はあまり報告がなかったのですが、最近ですとやはりDONESのような強力中性子源に注目と期待が集まっているというような状況かと思います。日本の研究者たちもDONESの状況をしっかりと見つつ、これまでのIFMIF/EVEDAの活動を堅持しながら、かつ日本独自のA-FNSにそういった技術を統合していくことになるかと思います。
 ですから、DONES、IFMIF/EVEDA、そしてA-FNSといった3方向を見ながら今進めてくださっているということで、私もTFとしてしっかりサポートしていきたいというふうに思っております。皆さんお分かりと思いますけども、核融合材料開発は、核融合市場、これから開かれていく部分に関しても非常に重要な位置を占めていくものと思います。その上で強力中性子源は重要なポイントですので、国際的な競争力にもつながりますから、しっかりとやっていただきたいと思います。
 最後に1点質問です。ブランケットのところで、もしお分かりになられたらで結構なんですが、CR2に向けて、リチウムの確保技術、濃縮、この辺りというのは何か進捗とか動きというのはありますでしょうか。
 
【宇藤主幹研究員】御質問のリチウムの部分ですけれども、リチウムの濃縮技術に関しましては、特にCR1以降はパイロットプラントに向けて、スタートアップの会社というような形で、実際に、より物を作るというか、そういったフェーズには動いてきているというふうに思っています。
 
【近藤委員】CR2に向けて、リチウムの確保、そして濃縮、もう1個ベリライド、この辺り、産業界の活力も生かした進め方が進められているというように理解いたしました。
 
【坂本瑞樹主査】坂本隆一委員、お願いします。
 
【坂本隆一委員】ダイバータに関して、CR1では加速が必要だという項目がたくさんあり、高密度ダイバータプラズマ試験設備に関する検討がなかったのですが、今回CR2に向けて検討が始まっているということが書いてあること、非常によいかと思います。この検討に関してどのぐらい進んでいるかということが1つ目の質問になります。
 それともう一つは、ダイバータプラズマ試験装置と併せて、排気システムの検討も2026年までに行う項目として挙がっていましたが、排気システムに関する進捗について教えていただきたいと思います。
 
【宇藤主幹研究員】まず1つ目の項目の高密度ダイバータプラズマの試験設備の検討です。まだ現状、特別チームとして、きちんとこの検討が始まっているというわけではない状況でございます。逆に、先生御指摘のように、高密度ダイバータプラズマの試験施設の概念設計が重要だという認識はもちろん持っているのですけども、ただ一方で、これに着手できていないということから、今後この概念設計が必要だと、そういう意味で書かせていただきました。ですので、資料5ページ右下の赤字のところは、今着手しているけれどもという意味ではなくて、ある意味着手できていないので、今後ここの部分の着手が必要という意味で書かせていただいたところでございました。
 
【坂本隆一委員】分かりました。放射冷却によるダイバータの熱負荷低減、シミュレーションだけでなくて、やはり実験による検証というのは必要なので、ぜひここは重要なことだと思いますので、お願いします。
 
【宇藤主幹研究員】我々もそのように考えておりますので、ぜひ検討を進めていきたいと思っています。
 2つ目の御質問の排気に関してですけれども、こちらの部分に関しては、まずはCR1までの検討、こちらは基本的には、ターボ分子ポンプでどこまで排気できるかというところの検討がなされておりまして、スタートとしては、必要な排気量、これはどちらかというとダイバータシミュレーション、あるいはダイバータ側の方の設計として設定されたものでございますけれども、その時ダイバータとして必要な排気圧を確保するためにはどのぐらいの規模のターボ分子ポンプが必要というところの検討は進んでいるところでございます。
 ただ一方で、では実際にターボ分子ポンプで設計してみますと、非常にたくさんのターボ分子ポンプが必要でしたり、揚程が必要でしたり、そういった課題も見えてきているところでございますので、現在またそれとは違う代替案、拡散ポンプ、あるいはITERと同じような、そういったポンプを使えるかというところ、まだ他の代替案の検討が十分進んでいる状況ではないんですけれども、従来検討してきたターボ分子ポンプ以外の排気システム、そちらの方の検討を今後開始しようとしているような状況でございます。
 
【坂本隆一委員】排気装置に関しては、ドイツのカールスルーエではトリチウムの観点から、水銀拡散ポンプなどを研究していますが、日本だと水銀を使うのがかなり難しいのではないかとも思っています。したがいまして、この真空ポンプというのは非常に重要であると考えていますので、よろしくお願いいたします。
 
【坂本瑞樹主査】他に御質問などいかがでしょうか。よろしいですか。宇藤主幹研究員、ありがとうございました。また意見交換の時に内容について質問が出てきたら、随時お答えをお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは続きまして、新規プロジェクトの原型炉研究開発を実施する上で枠組みや留意事項について、主査私案ということでたたき台を作成いたしました。私の方から御説明させていただいて、その後、意見交換を行いたいと思います。
 資料4でございます。3つに分かれておりまして、「目的・概要」、「事業実施方法」、「事業実施体制」についてです。
 まず1番の目的・概要についてです。背景に関しましては先ほど馬場戦略官が御説明していただいたとおりです。この事業の目的は、4つ目のポチでして、「本事業では、令和4(2022)年に実施されたCR1で提示された課題及び特別チームで取り組んできた個別の課題等について、QST及び大学等が有する専門性を活用することによって、大学等の自主・自律的な研究活動を活性化するとともに、原型炉建設時の中核となる人材を育成することを目的とする」というふうに設定いたしました。
 もう一つ、「実施に当たっては、原型炉建設を最終目的に据えつつ、その過程で実施されるCR2にも留意するなど、中長期的な視点で行うことが重要である」と書きました。これは宇藤主幹研究員に説明していただいた資料の最後に、参考資料と書いてあったのですけど、チェック・アンド・レビュー項目(以下、CR項目)というものがあります。この項目が全て満足されているかということを私たちはチェックしていくことになりますので、CR2までにそれらがクリアできるようにという観点も必要になります。そういう観点で、先ほど宇藤主幹研究員がまとめのところで太文字で書いていただいたのは、CR2でのチェック項目とダイレクトに関係しているところが書かれておりました。
 事業の概要としましては、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略に基づき、原型炉開発に向けた開発課題を解決するための研究開発を推進するということになります。
 次に2番の事業実施方法です。3つありまして、(1)のプロセスでは、「別途指名するプログラムディレクター(以下、PD)を本事業の責任者とする。TFは、研究開発テーマ案を検討する。この案に基づき、PDは当該年度の研究開発テーマを決定する。事業計画に基づき、別途指名するプログラムオフィサー(以下、PO)が事業計画を作成し、その後、公募・採択を行う。PDやPOは、事業の推進に際して特別チームなどから必要な助言を得る。TFはガバニングボートとして、事業計画の承認、事業の推進に必要な助言等を行う」と記載しました。これは今までTFで文科省からも説明していただいた内容や、今までの議論を一つにまとめてみた形になっております。
 (2)の研究開発テーマの選定及び公募・採択は、「本事業の目的に鑑み、APの項目から最重要課題を選定して、研究開発テーマとする。その際、CR1の結果、特別チームにおける研究開発の動向等を勘案して実施することに留意する」ということで、今回、宇藤主幹研究員に御説明いただいたのも、こういうところに留意するということで、私たちもしっかりそこを理解して最重要課題を選定していくことが必要になります。「採択に当たっては、QST及び大学等が有する専門性を活用するという趣旨を踏まえて実施することに留意する」と記載しております。ここに書いてある意図は、数多くある研究課題において、QSTが行うべきものというものもやはりありまして、公募になじまないようなものや、QSTがやるべきものはQSTに決め打ちでやるのですが、本事業の目的を鑑みてみると、大学等ができるものであれば、そういうものは公募にするというような自由な選定の中で実施してほしいということの意図が入っております。
 (3)の事業の評価に関しましては、ガバニングボードである本TFが各プロジェクトの中間評価と最終評価を実施するということです。
 次に、事業実施体制についてです。PD/PO等の役割について、「PDは本事業の責任者として、事業の進捗管理及びTFでの検討結果を踏まえて、当該年度の研究課題を決定する。POは、事業計画の作成、研究開発テーマの設定、公募、採択等を行う。
 なお、公募や採択の方法等、事業計画作成に当たっての必要事項は、PDの責任の下、適宜決定するものとする。PD、POは、事業の実施に当たり、必要に応じて特別チーム等の助言を得る。TFはガバニングボードとして、PDに対して事業計画の承認、事業の助言・評価等を行う」ということで、やはり特別チームは非常に重要な役割でして、TFに関しても、宇藤主幹研究員が説明してくれたように、様々な技術的な説明をしてくれますし、問い合わせてヒアリングすることもあります。PD、POも同じように、この特別チームに対して様々な情報を得ることが必要になってくるだろうということでございます。
 (2)の研究開発の推進体制につきましては、各研究開発テーマはプログラムマネジャー(以下、PM)を置いて事業を実施する。大学等から応募する場合は代表者がPMとなって、研究開発テーマを実施するためのチームを組織して応募するという案です。QSTが担当する研究開発テーマに関しても、大学、産業界などを巻き込んだチームを組織して実施するということで、大学、産業界の活性化ということも、QST決め打ちの中のテーマでもやっていただきたいという意図が入っております。炉設計の研究開発テーマは全てのテーマに関係することから、各研究開発テーマのPMは炉設計のチームとの連携に留意するということで、公募する前からではありますが、炉設計は必ず重要ですので、そのチームが全体の様々な情報を得て設計を進めていくことになりますから、そういうところがしっかり他の開発テーマの進捗状況、結果の情報をどんどん集めて炉設計に反映していってほしいということで、連携に留意するというふうに書きました。
 また、「炉設計のチームは、全日本の合意形成と情報共有を図るため、特別チームと密接に連携する」と記載しました。この特別チームは全日本体制で原型炉設計を行うということですから、今回の事業で行うところもそういう全日本体制というところで、しっかりと情報共有、合意形成を図ってほしいというふうに書いております。
 次に第29回TF配付資料からの抜粋で、こういうような提示されたイメージを基に、主査私案というたたき台を作りました。特に今回主査私案で触れていなかったのがアドバイザリーボードです。アドバイザリーボードを文科省の中に置いてしまうかどうかというのは皆さんで議論する必要があるかと思いました。特別チームから意見聴取をすると、PD、POが自由にそういうところから聴取するという自由度の方が動きやすいのではないかというようなことも思いまして、今回はアドバイザリーボードという言葉は入れておりません。以上でございます。
 それでは、意見交換に入る前に、私のただいまの説明内容について御質問があればお願いしたいと思います。ただし、意見交換を行いますので、私が説明した内容や資料に書かれていることで不明な点とか確認すべき点、意見交換の前にこれを確認しておいた方がいいということをまず先に確認します。意見交換の際に、今の説明や資料の内容について、勘違いがあるとといけませんので、そういう内容がありましたらお願いいたします。近藤委員、お願いします。
 
【近藤委員】3ページ目のPDとPOについて確認したいです。PDは研究課題を決定する、POは研究開発テーマの設定を行うと記載されています。決定と設定という部分について、多分ニュアンスが違うのだと思うのですけども、決定というのは内容を決めて、採択とかというのではなくて、PDが大枠を決め、その中からPOが詳細に、技術的な観点からテーマを決めていくというような関係性のことでしょうか。
 
【坂本瑞樹主査】今言っていただいたような内容で、PDは大枠を決めるというふうなイメージで書かれております。研究開発テーマですから、もう少し細かいところはPOが決めていくというような形です。PDは全体を見ますので、全体としてはいくつかある課題の中からこういうものを重点的にやるべきであるというような、そういう課題を決定していきます。その中で細かいテーマとしては特別チームの活動や進捗状況などを踏まえて、ここだというようなところをPOが設定していきます。公募文案の作成や、実務的なところはPOがやっていくので、PDはそこまではまず見ないけども、この方向という全体の大枠を見るというようなイメージで書かれております。
 ただし、これで決定というわけではなくて、もう少しこういうふうなものがあればいいというものがあれば、後で御意見をいただければと思います。
 
【近藤委員】4ページ目について、PDとPOの人数感なのですけど、これを見るとPDが1名で、POが2名のように見えるのですが、そうではなくてPDもPDで複数名いて、いわゆる単一の人が全てを決定することではなく、協議しながら進めるような体制になっているのかという部分について確認させてください。その大枠を決めるPDという部分がすごく重要かなと思いましたので、その辺の組織体制、もう少しだけ教えていただけますと幸いです。
 
【坂本瑞樹主査】私の理解ではPDは1名で、各研究開発、人材育成、アウトリーチも含めてPOがいるというようなイメージでおります。事務局、この理解でよろしいでしょうか。もし間違っていたら訂正お願いします。
 
【馬場戦略官】そういったことも含めて本日御議論いただければ幸いであります。我々も今回の私案を提示いただいたことありがたく思っているところでありますが、具体的に事業がまさに機能する形にしていかないといけないという中で、近藤委員御指摘のとおり、このPDについて、全知全能ではないので、1人で全てをやろうとすると実際大変なんだろうなと感じた中で、誰ができるのだろうということが頭をよぎりながら、この図を今拝見していたところであります。その辺りもぜひ機能的にするためにはどうすればいいのか、また、既にある特別チームであったりとかQSTだったりとか、人材育成であれば、はたまたNIFSだったりとか、各大学であったりとか、そういった部分について、どうやればまさに血が通ったような形になっていくのかというところについて、先生方から御知見授けていただければありがたいと思っています。
 
【坂本瑞樹主査】私案だということで、私は1名と思っていただけで、馬場戦略官から御説明いただいて、複数でもいいんだなと思いました。1名と言ったのは、ガバニングボードから見ると、1名の方がやりやすいというようなイメージもありましたが、だけどそれが実際に機能しないとか、その人に負荷がかかり過ぎて、3つPOを回し切れなければ複数でもいいというような、そういうことも私たちで議論して、意見交換の中で決めていく形で考えていければと思います。木戸委員、お願いします。
 
【木戸委員】4ページ目の図の中に入ってないかもしれないですが、特別チームの位置づけと、3ページ目の炉設計のチームと特別チームとの関係がよく分からなかったので、教えていただければと思います。
 
【坂本瑞樹主査】それも意見交換の中で、また皆さんに意見を伺いながらですけど、私案という意味での、私のこの中で考えていたものということだけで御説明させていただきたいと思います。特別チームの位置づけというのは、ここの中で難しいところがあるんだというふうには感じております。
 ただ、特別チームというのはオールジャパン体制で原型炉を設計していくという機能がありますので、それはしっかり維持して、やはり原型炉を産学官合同、オールジャパンで造っていく、そういう組織であるべきだろうと考えております。そうすると、それがこのPOの下とか、そういうところに入ってくるというのも少し難しいのかなということがありますので、一案としては、特別チームはやはりこの文科省の点線の外にあって、TFにぶら下がっていて、オールジャパン体制でやっていただくというのが良いのではないでしょうか。この事業の実施に伴い、POの下、炉設計も活動が始まることになります。しかし、特別チームのメンバー全部が炉設計のそこに入るわけではありませんので、どこかで重なる部分があるとは思いますが、それ以外の、例えば様々な情報共有の機能とかそういうものが特別チームにありますから、それはやはりしっかり取っておいて、炉設計のチームと特別チームというのが少し点線で結ばれるような、そういう形になっていくのが適切ではないかと思います。特別チームはしっかりと位置づけられるべきで、それがオールジャパン体制をしっかり堅持していただき、炉設計は課題に応じて、先鋭的にしっかり炉設計を行う人たちが集まる、その人たちはしっかりと特別チームと情報共有をするというような、そういう流れではどうかなというようなイメージで提案しております。
 
【木戸委員】ひとまず先生のお考えは分かりましたので、ありがとうございます。
 
【坂本瑞樹主査】これもまた意見交換で決めていきたいと思います。先ほどの私案では今お話ししたようなことも考えながら作成いたしましたが、皆さんと最終的な合意形成をして決めていきたいと思います。まずはたたき台がないことには意見交換をすることが難しいので、出させていただきました。他にいかがでしょうか。よろしいですか。
 ありがとうございます。それでは、これから2つの観点で意見交換をお願いしたいと思います。1つ目の観点は、原型炉研究開発を実施する上での実施体制や留意事項についてです。この主査私案というところをたたき台にして御意見をいただくということ。2つ目は、本年6月第30回のTFで今後の検討事項として提示させていただいた内容、すなわちAPの各課題を推進するに当たっての優先順位です。その考え方を2つ目の観点で意見交換したいと思います。
 それでは、まず1つ目の観点である原型炉研究開発の実施体制や留意事項について、御意見がありましたらお願いいたします。武田主査代理、お願いします。
 
【武田主査代理】意見を1点と論点を1点、それぞれ提起させていただければと考えております。
 まず意見に関しましては、今回の原型炉プログラムでございますけれども、最初の目的といたしまして、大学等の自主・自律的な研究活動の活性化をするということが書かれており、並びに大学等の専門性を活かすという観点から記述がございますけれども、現在特別チームには多くの企業の参加もございます。そういった観点から申し上げますと、企業が公募に応募するということを想定された書きぶりでもよいのではないかというのが、まずは私からの意見でございます。
 その上で論点として1点提起申し上げたいのは、公募の審査のプロセスに関してでございます。先ほど近藤委員からの御指摘に、研究課題の決定、設定等については御回答があったというふうに記憶しておりますが、特別チームを含めてでございますが、大学、民間企業を含めて多くの方々が自らのプロジェクトを推進しながら相互に関与しているというのが核融合業界の大きな特徴であると考えております。一例を挙げますと、特別チームがこの公募の設計、もしくは公募の設定、研究課題の設定ですとか、審査と、更に言えば受注できる立場を兼ねるというふうに見えてしまうのは、特別チームの皆様にとっても不利益になるというふうに考えますので、この審査のプロセスについては透明性、公平性が確保された上で、万が一にも利益相反についての疑義が生じないような、そういった御設計をするべきであるというふうに考えますし、この点については本日の論点になるべきではないかと考えております。
 
【坂本瑞樹主査】この点、後で、また皆で意見交換したいと思います。武田委員、ありがとうございました。貴重な意見だと思います。伊神委員、お願いします。
 
【伊神委員】PD数名ということですけど、これは文科省が委嘱するということになっていますが、雇用形態というか、この人は専任なのか、それともこれ自体がまたボランタリーな位置づけで、普段別の仕事をしていて、これもやるというようなことになるのでしょうか。
 
【坂本瑞樹主査】職掌ですね。
 
【伊神委員】はい。それはどのようなイメージ、もしくはここで議論して決めるというようなことなんでしょうか。例えば有期雇用で、この人はそれだけやると、もう本当にPDとして働くというようなイメージなのか、それとも兼任という形でどなたかがなるのか、その辺はどういうような今のイメージでしょうか。
 
【坂本瑞樹主査】これに関しては事務局から何か言葉をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 
【馬場戦略官】ぜひその辺りも本当に伺いたいと思っておりまして、どうすれば機能するかという時に、私自身もこれまで様々なプロジェクトを運営してきた中で、競争的資金、例えば科研費もそうですし、JSTの様々な、CRESTなどの事業を見ていく中で、このPDというのが多くは兼任という形で行われている中で、実際ボランタリーに兼任で業務をやった時に実行し得るかどうかというところについては、現実的にでき得るかというところに悩んでいる実態がございます。通常のPDであれば、先生御指摘のとおり、委嘱して、権限を与えられて兼任でというところが一般的であるものの、それでは難しいような気がしてはいるところです。また、武田主査代理から御指摘いただいたとおり、実際の、例えば応募した時の審査、PDやPOの位置づけなどプレーヤーがある意味で、審査して、されてという形で、変な意味合いで気を遣い合う、いわゆる推進力が失われてしまうというところは避けた方がいいように思います。いずれにせよ、どういう形であればこの日本の中で、大学の先生方、企業の方々含めて機能するのかということについては、今回主査からいただいた私案も含めて考えていきたいと思っています。その意味では、今の時点で正解があるわけではなく、むしろこういうふうにすればいいのではないかというような建設的な御提案をいただけると、我々が今後事業設計していく上で参考になりますし、まだ十分時間はあるというふうに思っているところでございます。
 
【坂本瑞樹主査】今のPD、POの立場というのは事業を推進する上で非常に重要な位置づけですので、これも意見交換の中で少し、他の方のお考えもお聞きしてみたいと思います。ありがとうございました。坂本隆一委員、お願いします。
 
【坂本隆一委員】私もこの図について質問があります。ここで行う公募、この事業というのはあくまでも公募事業ということになるのですか。一番初めの題目を見ると原型炉研究開発の在り方についてと書いてあるのですが、原型炉開発全体の事業と、この図で言っている事業の関係というものを明確に理解しておきたいと思います。
 PD、そしてPOがいますが、この人達は原型炉開発全体のPDなのか、それとも公募事業のPDなのかということを確認したいと思います。ここで行う公募によって採択される事業というものは、原型炉開発の中でどのくらいの割合を占めているのでしょうか。馬場戦略官から説明いただいた資料2の5ページの中では、原型炉設計活動というものは、このPO・PD体制下の実現に向けた基盤整備というのとはまた別に原型炉関連の予算があったかと思います。そのことを考えると、ここで行っているのは公募事業だけを指しているのではないかと私は理解してしまいました。原型炉開発活動という大きな部分があるのに対して、あくまでも資料の図で示された事業というのは公募で行う研究活動を指していると思ったのですが、説明の中だと原型炉開発全てを含んでいるような印象を受けました。
 
【坂本瑞樹主査】公募という言葉がうまく定義できていなかったのかもしれません。公募というのは、大学に出すところだけが公募です。QST決め打ちのところは、もう公募しないで、これはQSTというような形で決まっていくというもので、それ全部が資料2の5ページ目に記載のある4番の事業です。
 
【坂本隆一委員】資料4の4ページ目の図の一番端にQSTと書いてありますが、ここでいうところの公募の割合は、QSTが専任に行う原型炉の研究活動の割合に比べたら小さな部分を示しているのでしょうか。
 
【坂本瑞樹主査】小さくなるかどうかは、これから次に議論する、優先順位のつけ方によって決まってくると思います。
 
【坂本隆一委員】分かりました。以前の体制ではQSTとNIFSがそれぞれ共同研究を公募していて、NIFSの募集というのは大学の自主性というものが尊重されていました。現在、発電実証の前倒しを検討していることを考えますと、やはりテーマの設定というものは公募で行うよりも、もっと集中的な研究展開というものをしないと、前倒しのために設定した目標に向けた実施ができないのではないかというのが私の感じたことになります。質問としては、この図の中で公募によって採択すると書かれているところが、どのぐらい公募者の裁量があるのか。テーマを設定するところまであるのか、それとも、もうテーマは厳格に決められていて、それをどういうふうに実現するかというところに応募者の裁量があるのかというところが重要な観点かなと思いました。
 
【坂本瑞樹主査】公募の場合について、私案のPMに当たるような代表者の方がどれぐらい枠をはめられてくるのか、自由なのかと、そういうことでしょうか。
 
【坂本隆一委員】そうですね、POがどこまで決めるのかというのが重要かなと思っていて、これはあくまでも開発研究のための事業なので、やはりテーマ設定はきちんと行われる必要があるのかなというのが意見です。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございます。それも非常に重要な観点だと思います。また後で意見交換させてください。近藤委員、お願いします。
 
【近藤委員】今の坂本隆一先生のことにも少し関わるのですけれども、これは共同研究というものから大きく変わり、研究開発ということですから、開発研究ではなくて、言葉なんですけど、研究開発ということなので、今日冒頭、坂本瑞樹主査からもありましたように、CR2は、決まったスケジュールに沿って粛々と開発をしてもらうという類いのものになるとのことですので、先ほど坂本隆一委員がおっしゃったような考え方には基本的には賛同で、やはり公募制の中でどこまで自由に提案できるかというのは、少し疑問があるかなと思いました。
 あともう1点は、やはり先ほどのPDの部分です。資料の図は非常によかったのですけど、これは多分、内閣府の方と文科省で決定していったものを委員会並びにTF等々というふうになっていくのですが、縦に積むとやはりヒエラルキーがすごくはっきりしてしまうような気がするので、横にしてもいいのかなというのがまず一つ、感覚として受けました。そうすると、ガバニングボードがPDを介してPO等にアクションしていくことになると思うんですけど、少し左から右に整理していくような形で最終的に公募テーマが決まるような形になった方が、上から下というのは、ニュアンスが少し強いかなというふうな印象がありました。
 もう1点、PDは、原型炉開発という意味でいうと、やはり設計がかなり重要な部分になってくると思いますので、そうした意味で、プラズマと炉工学と材料含めて、その辺をバランスよく本当に見ることができる人、PDがいるのかどうかというのが少し疑問です。ですので主副で、誰かが取りまとめて最終的に集約するのは大事だと思うのですが、副を数名入れられて、バランスよく機動的に考えられるような体制にされてもいいのかなという気はしました。人間誰しも過ちを犯すので、5年、10年という単位でやはりスケジュールが決められていますから、そこは少し柔軟に議論できるような体制にしておいた方がいのではないかなと思います。私からは以上です。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございます。重要な御指摘です。大山委員、お願いします。
 
【大山委員】この事業、来年度から実施することになると思うのですけれども、PD、POそれぞれは、おそらく今はまだ決まってなくて、これからこの人たちも決めるというふうに理解しました。そうした時に、どういったタイムスケジュールでPDを公募して、その後POを公募して、そして事業を公募して、それが来年度中に事業が終わるのかといったところを考えた時の来年度に向けた全体のスケジュール感がもし決まっているようであれば、御提示いただければと思います。よろしくお願いします。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございます。これに関しましては事務局からスケジュール感に関して御説明願います。
 
【馬場戦略官】現時点では、まず来年度に向けて、戦略を踏まえて、こういった原型炉の基盤整備を加速していきたいということで所要額を要求しています。これからまさに政府部内において折衝を重ねて、必要な金額、また期間というところを要求していくようなタイミングになっています。現時点では、正直、できる限り長くというような期間を、できる限り早くスタートできるようにとは思っておりますが、まずやはり体制をしっかりと整備しない限りにおいては、空回りしても意味がないと思っていますし、先ほど縦を横にすればいいという話もありましたけど、やはりレイヤーをあまり重ね過ぎると非効率にもなるところもありますので、その辺りも今日いただいた御議論を踏まえて、我々としてももう少し具体的なイメージが湧くようなものを考えていければなというふうに思っているところではあります。今日の議論だけでも、先ほど坂本主査からもありましたが、やることが明確になっている部分については、もう主体も明確になっているので、やればいいだけだと思っていますし、逆にまだ取り組んでいない課題については、主体も決まっていないのであれば公募してやるというような選択肢もあるかと思います。今日いただいた御意見を踏まえながら、更に具体化していきたいと思います。
 ただ、いずれにせよ現時点では、来年度以降の予算事業として要求しているということもあるので、スタートするのはどんなに早くても来年の4月ということになっていますので、それまでにしかるべき準備を、このTFの議論も踏まえて具体化を図っていきたいと考えています。その上で、本日の時点では主査の私案を御提示いただいたというふうに理解しているところでございます。
 
【坂本瑞樹主査】皆様から貴重な御意見をいただきました。もう既にお答えいただいたり、事務局の方で取り入れていただいているところもあります。あと一つ、武田主査代理から先ほどあった、企業が参加してもいいのではないかというのは非常に重要な視点でして、私もそのように思います。透明性、プロセスが重要であるということで、私案だと企業というところが少し抜けておりましたが、皆様特に御異論なければ、武田主査代理の意見を取り入れて、そういう企業を入れるということをTFとしては進めていきたいということでいきたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。そうしたら、武田主査代理から新しい意見をいただきましたので、それを取り入れるということも考えていただきたいと思います。
 あとPD、POの立場に関しては、すぐここでは決められませんが、そういう観点も含めて、事務局の方で少し御検討いただきたいと思います。
 公募の決め方は、馬場戦略官からありましたが、坂本隆一委員が言われるようなところがありますので、これはもうCR2が近いですから、決めたテーマについて向かっていくということが最優先ですけど、一方、大学が自主的に参加できるものは、今後の人材育成、そういうところまで含めて実施体制を少し事務局に考えていただきたいと思います。
 あと、PDの主副を入れるという形に関してもまた検討が必要かと思います。ここがだんだん大きくなってくると、機動的に自由度を上げるためにここを少なくするというこれまでの議論との整合性も考慮する必要がありますので、そのバランスの在り方はいかがでしょうか。皆さん、御意見がありましたらお願いしたいと思います。近藤委員お願いします。
 
【近藤委員】坂本瑞樹主査がおっしゃった企業に入ってもらうという部分、非常に重要な議論かなと思いました。ただ、もともとは特に考えていらっしゃらなかったということで、ですから営利企業を入れるかどうかという部分に少しハードルがあったのかなと思うので、その辺少しだけでもディスカッションした方がよろしくないでしょうか。
 
【坂本瑞樹主査】もともと企業が入るのは、主査私案にもありますが、大学、産業界を巻き込んでチームを作ってほしいということですから、この事業の中に企業が入るということは確かなのですけど、企業がPMとなるかどうかということが多分武田主査代理のポイントだったのではないかと思いますが、武田主査代理、そのような考え方でよろしいですか。
 
【武田主査代理】PMというのはPOの下でプロジェクトを実際に推進するということだと理解しておりますが、おっしゃるとおりで、企業がPMとなって1つの課題を推進する立場を担われてもよいのではないかというような意見でございました。
 
【坂本瑞樹主査】私案ではそこまでは踏み込んでいなかったので、PMとして応募することができてもいいのではないかということに関して少し御意見をいただきたいと思います。長壁科学官、お願いします。
 
【長壁科学官】先ほどの企業が入るというところで少し気になったのが、民間企業に対しては、またSBIRの方もありますよね。それとのある意味切り分けみたいなのは少し考えた方がいいのではないかなと思いましたが、どうでしょうか。
 あともう一つ、POだったかPDだったか、合議制にするというところは、逆にPD、POが合議して物事を決めていく部分が出てくるのではないかという気がいたしますが、どうでしょうか。
 
【坂本瑞樹主査】PD、POで決めていくという形になります。
 
【長壁科学官】役割分担として、全体を見る人と、それとは別に部分的に見る人とするのではなく、両方を見る人が必要ではないかと考えます。
 
【坂本瑞樹主査】PD、POが相談しながら進めるわけですね。
 
【長壁科学官】そうですね。
 
【坂本瑞樹主査】そうなると思います。この原型炉研究開発の事業は、原型炉に特化したものですので、スタートアップのそういうものとそんなに絡まないのではないかと思いますが、そこは留意事項として考えておくべきと思います。横山委員、お願いいたします。
 
【横山委員】現行スキームというのが参考のところにありますけれども、そちらの方では民間企業が入っておりますので、この現行スキームを少し横目に見ながら、特別チームの在り方というのも考えた方がいいのかなと思いました。
 それから、やるべきことを進めていけばいいということだと、やるべきことが決まっていることに関しては進めていけばいいということなんですけども、やはりそこに進捗を評価するという目がないといけないので、その辺りもアドバイザリーボードが見ていくのか、それともPOの方が見ていくのかというのは考えるべきことかなと思いました。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございます。進捗をしっかり確認するということの重要性の御意見だと思います。鈴木委員、お願いします。
 
【鈴木委員】POの役割についてです。研究開発を担うPOは、かなり広い原型炉に対する知見をお持ちの方かと思います。そういう方は、例えば、PMになられることも可能かと思います。要はPOが採択に関わってしまうと、利益相反によりPMとして実際の研究開発に携わっていただけなくなる可能性もあるかと思います。例えば、資料ではPOは採択等を行うというふうになっていますが、採択は別の組織などに委ねても良いのではと思いました。POは公募の項目を提案した上で、採択自体は他の組織に委ねてしまうのも一案かと思いました。QSTでも委託研究でお金を使う時に、公平に審査する必要から、そのようなシステムを使ったこともありますので、そこは少し考えるとPOが自由に動きやすくなるのかなと思いました。
 
【坂本瑞樹主査】今の御意見は、テーマごとにどこかで組織やメンバーを入れ替えながら、科研費みたいに、そのような形でやるというようなイメージでしょうか。
 
【鈴木委員】そうですね、どういう公平な組織が審査するかだと思うのですが、要は主査の案で、POが採択等を行うという、その採択等は行わない方が良いのではないかというのが意見です。
 
【坂本瑞樹主査】分かりました。貴重な意見ありがとうございました。1つだけ説明させていただきますと、これは非常に責任の重い役割になっております。テーマを選定するということに関しても責任を負うということで、その方々が科研費のように、審査委員が公表されないで集まって、採択して、その後、何でこんなテーマが採択されたのかというようなことになった時に、その責任の所在がないというのは避けたいということで、非常に責任が重いのではありますが、POという方にやっていただくことを考えております。今までは、複数であると、その複数みんな利益相反になってしまいますので、少ない人数でやっていただくということを考えておりました。いただいた意見を踏まえて、事務局で考えていただければと思います。
 
【鈴木委員】そこまで責任を負うのであれば、POは専任が良いかもしれないと思いました。
 
【坂本瑞樹主査】近藤委員、お願いします。
 
【近藤委員】先ほど企業がPMとして主たる実施主体になれるかどうかという部分、これはやはり大事で、大学やQSTと同等の知財の管理、もしくは情報の開示、こういった部分が担保される場合のみというふうにしないと、やはり国が挙げて実施する原型炉研究開発の一部をやってくださるのはもちろんいいことですし、これからは企業が主体的になってくる部分もあると思うのですが、そういったルール作りを整備した上でやっていただくのがいいのではないでしょうか。これまでは大学もQSTもNIFSも比較的、そういった部分をあまり気にしておりませんでしたが、やはりこれから国際競争となっていった時に、企業の方は抱えているものが違っていらっしゃると思いますので、それもしっかりとやった上で、PMをやっていただくというのがいいのではないかなと思いました。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございます。御指摘は重要な観点ですので、企業がPMになる可能性については注意深く議論する必要があります。皆様、非常に貴重な御意見たくさんいただきましてありがとうございます。原型炉研究開発の枠組みにつきましては、本日皆様からいただいた意見を踏まえて、事務局で今後また枠組みの検討をしていただければ幸いと思います。よろしくお願いいたします。
 続いて2つ目の観点についての意見交換です。先ほど宇藤主幹研究員の御説明を受けまして、APの中での優先順位、すなわちどの項目に重点を置いて研究開発を進めていくべきか、委員の皆さんの御意見を伺えればと思います。
 もし先ほどの宇藤主幹研究員のところで質問等もあれば、そこも見ながら、先ほどの事業実施体制の中で公募にしたり、QSTに決め打ちしたりする中で、全部総花的にやるわけにはいきませんので、やはりめり張りをつけて優先順位をつけてやっていくという形になります。
 この点に関して、宇藤主幹研究員の方から、まとめに書いてあるところで、CR2のCR項目に関係するところと、今、特別チームが行っていて進めなければならないというようなところを出していただいております。ですから、これが一つのまずスタートポイントになって、これにまた皆さんの意見を加えて作り上げていくという形になりますので、どうぞ忌憚のない御意見をお願いいたします。武田主査代理、お願いします。
 
【武田主査代理】具体的な内容論に入る前に、1点コメントを申し上げようと思って手を挙げさせていただいたんですが、今回のAPから、新たにサイト選定という項目が入っております。これは当然研究開発項目ではございませんので、本日ではないかもしれませんが、実際に前倒しを考えた際には、今後数年以内の速やかなサイト選定が求められますし、そういった観点からも、重要なAPの項目であるということは指摘させていただきたいというふうに思います。
 
【坂本瑞樹主査】重要な御指摘と思います。他にいかがでしょうか。皆さんの意見のまとまりをPD、PO、私たちがその方向性を示すという形になっておりますので、ぜひお願いいたします。近藤委員、お願いします。
 
【近藤委員】確認ですが、資料3の15頁目の色がついている部分は何でしょうか。
 
【坂本瑞樹主査】丸5と丸6が今回の原型炉の開発研究に関係する項目だろうと思います。例えばITERによる統合化技術というのは、今のこの新規プロジェクトには関係なかったり、JT-60SAのところは別にしっかりと頑張ってやっていただくということですので、丸5の原型炉に関わる炉工学技術開発ということと原型炉設計というところに注目します。この辺り、アウトリーチ活動はもちろん事業の中に入っていますけど、今議論するのはAPの中のどの項目が一番優先順位が高いのか、早急に加速しなければいけないのかという観点からすると、この丸5と丸6という中のところを横目で見ながら、私たちは、これ全部できていますねということをチェックしていくので、この新規プロジェクトを立ち上げていただいたという、そこを起点にして、CR2の達成にしっかりたどり着きたいというところもしっかり見ましょうということです。せっかく事業を立ち上げたのだけど、この中に抜けがあって、いざCR2をしようと思ったら達成できていないということがないようにしましょうという意味で、ここを見ながらやりましょうという意味での参考資料と、もう一度思い出していただくということでお付けしております。近藤委員、お願いします。
 
【近藤委員】そういう意味では、今回の研究開発において日本が独自に実施し得る内容で推進していくことが可能なテーマというようなニュアンスと理解いたしました。一方で、やはり中性子源関連の内容、重要な部分はあるかと思うのですが、こういった部分をやはり海外との連携等も視野に入れて、今状況を見ているというような状況なので、そういった部分で色がついている部分とついていない部分とあるという、今回の原型炉研究開発はすぐにでも成果を得られるテーマを選びたいと、そういった理解でよろしいでしょうか。
 
【坂本瑞樹主査】はい。やらなければいけないことはたくさんありますが、今効果的に、すぐ手をつけてやるべきことということも重要な視点であろうというのが私案です。違う意見もいただければ、それを参考にしていきたいというふうに思います。いかがでしょうか。長壁科学官、お願いします。
 
【長壁科学官】そういう点では、超伝導コイルの線材とか導体の仕様を早く決めないと全てが始まらない気がします。やはり、コイルはどういうものを使うかというのを決めないと、それからまた設計がみんな変わっていってしまうような気がしますので、そこは結構急がないといけないのではないかと思います。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございます。他にいかがでしょうか。坂本隆一委員、お願いします。
 
【坂本隆一委員】確認ですが、優先事項は、事業をする上でどの部分に利いてくることになりますか。もちろん原型炉開発をする以上は全ての項目を達成しないとならないのがAPだと思うのですが、その中で実際原型炉開発をする上で優先事項をつけるのはどこに影響が生じるのでしょうか。公募のテーマを決めるために使うということでしょうか。
 
【坂本瑞樹主査】そうですね。体制の議論のところでもありましたが、やはりPD、POは相当な能力と労力が必要になります。そういうところに関して私たちがガバニングボードを兼務するという形なのですが、私たちも、古くからの委員は、もう長きにわたってこのAPをずっと見てきて、何が今進められて何が足りないのかということを非常に分かっているエキスパートですから、そういうところからの意見をしっかり伝えて、今の公募選定に当たっての重要な優先順位ということを私たちが御提示することが必要です。
 しかし、私たちが提示したものが全て行くわけではなくて、そこはPD、POの裁量の中で、その意見から、概算要求の予算規模もあるでしょうから、それと併せて、今最も手を打つべきものはここということを考えていただくことになります。そのために私たちの意見を今出して、こういう形があるだろうということですので、今言ったものが決まりというわけではありませんが、そういう意見をぜひ多くいただきたいというふうに思います。
 
【坂本隆一委員】そういう意味ですと、それを決めるのがPDなのかなと思います。何を優先しなければいけないかということをPDが責任を持って決めるのではないかなと思います。
 
【坂本瑞樹主査】最終的にはそうですけど、私たちはTFとガバニングボードですから、そこに対してこういう考え方があるのですよということを示すことによって、より効率的に、より最適な選択ができることを目指して皆さんの意見をお伺いしております。
 PDが決めるからいいではないかということではなくて、こういうことを考えましょうと、こういうことが非常に重要だと思っているんだと、今までTFの委員をやっていたからこういうことだというようなことがもしあれば、ぜひいただければと思います。なかなか重い課題ではあると思いますが、まずこの特別チームから出されたものに関して、少し違うのではないかとか、そういうことはないということでよろしいですか。皆さんの中で御納得いただいているという形で、一緒にやってきたというか、二人三脚で特別チームと考えてきましたから、ここは皆さん合意のあるところだということで、的確にまとめていただいたということでしょうか。
 ありがとうございます。私から御提案させていただきたいのは、参考資料のAPということで、第1期、第2期で加速するという議論をして参りました。その時のまとめの資料が参考資料の3ページです。これまでのAPと同様に、AP構成表はAPを表形式で示したもので、AP項目別云々はと書いてあります。項目別の特に留意すべき点について以下に列記するという形で、炉設計からずっと書いてあります。
 まず炉設計に関しましては、原型炉の立地要件が設計において重要であり、候補地候補選定を前倒しする必要がある、これはまさに武田主査代理が御指摘いただいたとおりで、非常に重要な課題だというふうに認識されております。ですから炉設計のチームには、先ほどの特別チームのものに加えて、この候補地選定ということをしっかりと意識してやっていただくことがいいのではないかと思います。
 続きまして、超伝導コイルに関しましては、先ほど長壁科学官からありましたように、やはり超伝導導体試験をはじめとする一連の試験の前倒しとそれに必要な試験設備が重要であると私たちは指摘しておりますので、特別チームと一緒の意見ということで、ここも非常に優先順位の高いものであろうというふうに思います。
 ブランケットに関しましては、近藤委員からも意見ございましたが、やはりITERのTBMも進んでおりますので、それと歩調を合わせるという意味では、増殖ブランケットからタービンへつながる発電システムを開発・整備することが重要であるというのは、今すぐ開発・整備を加速するというところとは違うのかもしれません。これを除くという意味ではないですけど、そういうようなところの指摘となっております。
 ダイバータに関しましては、第1期目標に対応すべく銅合金系冷却ユニットを採用するなど、前倒しにより大きく変更する一方、第2期目標に向け、低放射化フェライト鋼F82Hを用いた冷却ユニット開発を実施することが重要です。これは先ほど特別チームの資料では太字にはなっていなかったですが、中性子負荷です。前倒しの議論のところでは、まずは銅合金で進めようかと言っていましたが、最終的にはやはりダイバータの寿命等を決定する要因になりますので、タングステンとF82Hの接合技術、この辺りは非常に重要であるということを指摘して参りましたので、これは先ほどの特別チームのものに加えて、こういうところも少し重要な優先順位の高いところになろうかというふうに思います。
 加熱に関しましては、NBI加熱の定常化に関する研究開発を実施することが重要であるということですので、特別チームでは指摘されておりませんでしたが、重要な課題としてなっております。ただ、これはなかなか大がかりなものであるということと、今、ITERの建設に向けてNBIの開発が進んでいますので、この新規プロジェクトでいくよりも、そこと歩調を合わせることで、より効率的になるかなというような観点も優先順位を見る時に重要であるかというふうに思います。
 7番の燃料システムに関しては、第2期目標に対する燃料サイクルシステムの研究開発を実施することが重要であるというふうに書かれております。特別チームの方も大量トリチウム取扱施設の概念設計ということが指摘されておりますが、この辺のところも優先順位が高くなるであろうということです。
 あとは大規模保守技術の整備というところが特別チームで指摘されておりますので、前の前倒しの議論と特別チームで指摘されたところを合わせるような形で優先順位を考えて、両方重なっているような、特に導体とかF82Hとか、そのようなところの接合技術というのは優先順位が高くなろうかと思います。
 これは一つの提案ですが、この考え方に対して御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。長壁科学官、お願いします。
 
【長壁科学官】NBIに関してですけれども、現行のAPで記載されているNBIの負イオン源に関する技術については、セシウムを添加する負イオン源とセシウムを添加しない負イオン源の両方が書かれています。このうちセシウムを添加しないものは、確かに非常に良い方法なのですけど、これを実現する方法は、アイデアはあるのですが現実的なやり方になっておりません。ですので、やはり現状だと負イオン源はセシウム添加型が主、ある意味本道になっているかなと思います。つまり、負イオン源に関してAPに書いてあるものについては、今すぐやって原型炉にすぐ実装すべき内容と、今後進めていくべき内容を少し整理して考えてもいいのではないかなと思います。
 
【坂本瑞樹主査】今後の優先順位の考え方で、項目別に少しその辺を見るという御意見をいただきました。
 他にいかがでしょうか。よろしいですか。ありがとうございます。いただいた意見でまとめをしますと、宇藤主幹研究員から説明していただいた黒文字のものと、先ほど私がこの参考資料で御説明した前倒しの議論でTFが特にこういう課題と抜き出したものというところが優先順位が高いというような形で、TFとしては優先順位が高いと考えているとお伝えするという形で進めて参りたいと思います。ありがとうございました。
 そうしましたら、本日の議論を踏まえて研究課題の設定につなげていくわけですが、11月に開催される委員会に本日の検討結果について報告させていただく予定としておりますので、御承知おきください。
 本日用意をしております議題は以上ですが、この他特に報告、審議すべき案件はございますでしょうか。近藤委員、お願いします。
 
【近藤委員】先ほど武田主査代理から御意見いただきましたサイト選定という部分が、やはり非常に重要かなというふうに思っております。サイト選定に関する活動がしっかりと進んでいくということが大事なことと一方で、やはり核融合炉が社会に受け入れられていくように、アウトリーチ活動、サイエンスコミュニケーションをしっかりと進めなければいけないというのも、そういった意味でサイト選定と同じぐらい重要なものなのかなというふうに思っています。
 先ほどの研究開発の公募に関しては、チームで応募するというようなことがあって、馬場戦略官からもありましたように、公募の余地があるという部分がやはり印象的で、我々の方で優先順位を一応考えるは考えるんですが、そこに関連する部分でいい提案があったものに関しては柔軟に考えてもいいのではないかと思います。具体的言いますと、しっかりとしたチームが練られて、それがAPに沿って有効に機能し得るというものになった場合は、我々は必ずしもそれを排除するわけではないというような、そのようなメッセージは必要かなと思いました。
 
【坂本瑞樹主査】非常に貴重な御意見だと思います。そういうことで大変血の通う活動になっていくというふうに私も思います。そういう観点もPD、POの公募を受けた時の採択の仕方の中の留意事項というところに入れるべきと思います。ありがとうございます。長壁科学官、お願いします。
 
【長壁科学官】先ほどサイト選定という話題がありましたが、やはりサイト選定をする際には法整備も併せてやっていかないと、サイトの約束をする時、話をする時に、後で法律が変わってしまったら、条件が違うのではないかということになってしまいますので、サイト選定するのであれば、そこら辺も少し進める必要性があるかなと思いました。
 
【坂本瑞樹主査】今回すぐ、公募というところで、法整備もありますが、そういうことを意識して設計活動をしていくというところの留意点という形で受け止めることができるかなと思います。ありがとうございました。
 他にいかがでしょうか。よろしいですか。
 先ほど馬場戦略官から説明がありましたが、JT-60SAのプレスリリースが、今回のTFが始った時にリリースされたということで、日本の私たち核融合ファミリーとしてお祝い申し上げたいと思います。このTFからもJT-60SAでファーストプラズマに御尽力された皆様方に、その努力に感謝するとともに、お祝い申し上げるというメッセージをお送りしたいと思います。QSTから参加しているという方は、本当におめでとうございます。
 それでは、次回のTFの日程につきまして、事務局からお願いいたします。
 
【吉原専門官】次回のTFの日程でございますが、改めまして日程調整の上、開催日時、議題等を御連絡させていただきたいと考えてございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 
【坂本瑞樹主査】それでは、本日のTFはこれで閉会にいたします。御多忙の中、御出席いただきましてありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

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