核融合科学技術委員会 原型炉開発総合戦略タスクフォース(第30回) 議事録

1.日時

令和5年6月27日(火曜日)14時00分~16時00分

2.開催方法

オンライン開催

3.議題

(1)原型炉開発に向けたアクションプランの見直しの検討について
(2)第32回ITER理事会、第31回BA運営委員会の開催結果について
(3)核融合政策に関する最新情勢について
(4)フュージョンエネルギー・イノベーション戦略の策定を受けた概算要求の検討等について(一部非公開)

4.出席者

原型炉開発総合戦略タスクフォース

坂本瑞樹主査、武田秀太郎主査代理、伊神弘恵委員、大山直幸委員、奥本素子委員、古賀麻由子委員、近藤正聡委員、坂本隆一委員、鈴木隆博委員、馬場貴志委員、福家賢委員、藤岡慎介委員、横山須美委員、吉橋幸子委員

文部科学省

千原由幸研究開発局長、林孝浩大臣官房審議官(研究開発局担当)、稲田剛毅研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)、髙橋佑也課長補佐、吉原誉夫核融合科学専門官、長壁正樹科学官、梶田信学術調査官

5.議事録

【坂本瑞樹主査】本日は、御多忙のところ御参加いただきありがとうございます。定刻になりましたので、第30回核融合科学技術委員会原型炉開発総合戦略タスクフォース(以下、TF)を開催します。進行については、本TF主査である私、坂本が担当します。それでは、議事に入る前に、事務局より定足数及び配付資料の確認をお願いします。
 
【吉原専門官】文部科学省核融合科学専門官の吉原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まずは委員の御出欠でございますが、本日の御欠席は木戸修一委員でございます。また、奥本素子委員より30分ほど遅れて参加される旨の御連絡がございました。全15名中13名の委員に御出席をいただいております。過半数を超えておりますので、定足数を満たしていることを御報告いたします。
 続きまして、本日の配付資料でございます。議事次第の資料一覧、資料1から9、及び参考資料1から4が本日の資料となります。会議中はZoomの画面共有システムを使って、事務局より資料を表示させていただきます。また、各委員におかれましては、発言をいただく際には、ミュートを解除の上、画面の下にあります「手を挙げる」ボタンを押して御発言いただきますようお願いいたします。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。本日は、文部科学省の千原研究開発局長、林大臣官房審議官に御参加いただいておりますので、御紹介申し上げます。本TFは、核融合科学技術委員会(以下、委員会)運営規則に基づき、議事を公開します。御発言は議事録に掲載され、ホームページ等で公開されます。それでは、本日の議事に入ります。
 まず議題1「原型炉開発に向けたアクションプラン(以下、AP)の見直しの検討について」です。本件につきましては、本TFにおいて今期初めての検討になりますので、私からこれまでの経緯を御説明いたします。その後、APで本項目を担当している核融合科学研究所(以下、NIFS)の坂本隆一委員から趣旨を御説明いただき、意見交換を行います。
 それでは、これまでの経緯を御説明申し上げます。昨年度、本TFにおいて、APの改訂について御検討いただきました。その後、今年2月に開催された第11期最後の委員会でTFから検討結果を報告したところ、委員会の吉田善章委員から御意見がありました。吉田善章委員からの御指摘は、大きく2点ございました。
 1点目は、現行APにおけるヘリカル方式の項目の記載内容は、核融合科学の学際化を推進するという現行のNIFSの活動内容にそぐわないため、当面の時点修正として、改訂版においてこの項目を削除すべきではないかという内容です。
 2点目は、今後の中長期的な検討課題として、APの目標の絞り込みと包括的・複層的な学術戦略の策定を行うべきであるという内容です。このうち委員会から本TFに付託されたのは、1点目のAP改訂版からヘリカル方式の項目を削除するかどうかについてです。それでは、坂本隆一委員より、この点について御説明いただきます。よろしくお願いいたします。
 
【坂本隆一委員】まず、APの改訂版におけるヘリカル方式の取扱いについて御説明いたします。現行のAPにおけるヘリカル方式の位置づけに関しましては、2ページ目「1.APの検討について」におきまして、ヘリカル方式については、ヘリカル型定常核融合炉に向けNIFSを中心に進められている研究開発の多くの部分が、上記の原型炉に向けた共通の技術基盤を提供し得ると考え、APにも位置づけられております。このような考え方に基づき、ヘリカル型定常核融合炉に向けたAPが、13番目のAPとして掲載されています。
 一方で、2つ目の観点、ヘリカル装置における研究は、磁場閉じ込め環状プラズマという共通性から、ヘリカル方式という個別の課題ではなくて、APの主要課題における各項目において深く関与しています。ほとんどの部分が共通しているという認識があります。また、ヘリカル方式の独自性がある研究に関しましては、6番目の炉心プラズマの中に、大型ヘリカル装置(LHD)、ヘリオトロンJという小課題に記載されています。先ほど坂本主査から御説明がありましたように、委員会におきまして、原型炉に向けて課題をシャープに絞り込むことの重要性や、核融合を取り巻く現状をアップデートする必要性が指摘されたことから、上記に示したAPにおけるヘリカル方式の現状を鑑みて、下記の事項を検討したいと考えています。NIFSでは、コミュニティを挙げた議論によって核融合科学に対する考え方をアップデートしました。そして、ヘリカル型定常核融合炉の設計研究よりは、むしろヘリカル装置を活用した学術研究の成果を持って原型炉開発に寄与していく方針としています。そして、ヘリカル方式のAPは、ヘリカル型定常核融合炉に向けた開発研究、原型炉とは並行した別の研究計画を述べたものでありますので、原型炉に資する研究部分は主要課題0から12に割りつけて、ヘリカル方式の項目は項目別解説及び構成表から削除してはどうかというのが検討事項になります。その一方で、APは原型炉開発に向けてシャープに絞り込んだものなので、開発研究と並走する様々な時間スケールの学術研究も必要であることに留意する必要があることを指摘したいと思います。以上、よろしくお願いいたします。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。ただいまの説明を受けて、ヘリカル方式の項目の削除をすることについて御意見等をお願いします。福家委員、お願いいたします。
 
【福家委員】1つ確認させていただきたいのですが、これを削除することによって、これまでのAP全体の開発計画に影響はあるのでしょうか。
 
【坂本隆一委員】それはないと考えています。APにおいて、ヘリカル方式というのは、定常ヘリカル方式の核融合炉を造るための計画であって、それをすることによって副次的にトカマク方式の原型炉開発にも寄与できるものがあるという位置づけだと認識しています。私たちは、ヘリカル装置を使った研究によって、0から12番目までの項目の中で直接的に原型炉開発に寄与することを考えていますので、原型炉開発に向けた問題は生じないものと考えています。
 
【福家委員】ありがとうございました。
 
【坂本瑞樹主査】他にいかがでしょうか。近藤委員、お願いします。
 
【近藤委員】今回の件、前倒し案におけるヘリカル方式の項目について、比較的大きな改訂となるわけですけども、これは、これまでの案でヘリカル定常炉に対して実施主体として想定されてきたNIFSの研究方向の方針転換に沿うものと私は理解しました。一方で、ヘリカル方式に関わらず、様々なタイプの定常炉を対象に、国内外で産業界を含む様々な活動が活発に行われています。APの幾つかの項目にも、既に実施主体として産業界の記載がなされています。こういった状況ですので、TFの委員としても、こうした産業界の動きも注視していきたいと思います。
 
【坂本瑞樹主査】他に御意見等ありませんでしょうか。今、福家委員、近藤委員から御指摘がありましたように、やはり気になるところは、このAPが原型炉開発に向けてこれまで培ってきた項目を1つ削除してしまうという、大きな決断になりますので、様々な観点から検討していくことが必要だと思います。技術的な観点からは、福家委員から御質問がありましたように、それが原型炉開発に対してどれぐらいのインパクトがあるのかということでしたが、坂本隆一委員から御意見がありましたように、ヘリカル方式の研究自体に関しては他の項目の0番から12番に位置づけられているということで、ヘリカル方式の研究がなくなるわけではありませんので、ヘリカル方式の研究が今後の原型炉開発に貢献することが期待されるということだと思います。
 また、近藤委員から御指摘がありましたように、やはり実施主体というところで、ヘリカル型定常核融合炉に関しては、今それをAPで記載して、チェックアンドレビュー(以下、CR)という形で見ていくことには少し困難があるので、削除するという御提案だと思いますので、そこは今後のヘリカル方式が原型炉に大きく貢献できることを期待しながらという判断になるかと思います。一方、やはり1つの項目が落ちてしまうことに対するいろいろな影響ということに対しては考えていかなければいけないと思います。
 現行のAPにはヘリカル方式、レーザー方式という2つの方式が記載されております。ヘリカル方式の削除に関して、残るレーザー方式についても影響を考える必要があると思います。この点に関しては、レーザー方式の御担当の藤岡委員、何か御意見等ありましたらお願いいたします。
 
【藤岡委員】レーザー方式について言及いただきましてありがとうございます。レーザー方式の項目についてですけれども、APのレーザー方式の項目の最初のところで、「レーザーの高いエネルギー密度を活用し、原型炉開発に資する研究、及びレーザー方式と原型炉と共通する技術開発について取り組む」と書かれていまして、そういう意味では、この項目はレーザーを使って原型炉を目指す、そういう項目ではないと認識しています。今回、坂本隆一委員からヘリカル方式の削除の提案がありましたが、そこに至る経緯が、原型炉開発におけるレーザー方式の役割を否定するものではないと理解していますので、そういう意味ではレーザー方式が残ることに関しては懸念がないのではないかというのが私の見解になります。
 
【坂本瑞樹主査】この点に関しても、他の委員から何か御意見がありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。レーザー方式を現行APの中で位置づけている趣旨としては、今、藤岡委員が御説明いただいたとおりだと思いますので、改訂版においても現行APのその趣旨を引き継いでいくということであり、やはりレーザー方式は残して、今後の原型炉開発に関係する部分はしっかりと貢献していただくことを期待したいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。いろいろと御意見をいただきまして、懸案事項も出てまいりました。やはり影響が大きいということについても考慮した上で、それでも技術的な側面からこの項目を削除するということで御異論はございませんでしょうか。ありがとうございます。それでは、ヘリカル方式の削除について、反対意見なく、賛成と受け止めさせていただきます。
 それでは、このヘリカル方式を削除する場合、APではどのような形になるのかを主査私案として作成しました。この資料は、本年2月の委員会にTFから提案した核融合発電の実施時期の前倒しに関する検討を踏まえたAPの改訂版をさらに修正したものになります。まず、修正箇所の概要を説明申し上げます。修正箇所は、赤で書いたところで、2ページ目の前書きのヘリカル方式、レーザー方式についての記載内容を修正しました。26ページ目、構成表からヘリカル方式を削除しました。この削除に伴い、次の27ページ目の構成表のレーザー方式の番号を修正しました。29ページ目の項目別解説の目次からヘリカル方式を削除し、これに伴い、レーザー方式の番号を修正しました。77から78ページ目のAP項目別解説本体のヘリカル方式を削除し、この削除に伴い、79ページ目のレーザー方式の番号も修正しました。2ページ目に戻りまして、ここでは、前書きに相当するところのヘリカル方式の削除について、先ほど坂本隆一委員から御説明いただいた内容を踏まえて、理由づけを記載しました。理由のところは、ヘリカル方式の研究開発で得られた知見は重要ですので、NIFSや大学等においては、ヘリカル方式の項目以外の項目、0から12に基づいて、原型炉に資するヘリカル方式の研究開発を行うことが期待されるということです。
 レーザー方式に関しましては、今、藤岡委員に御発言いただきましたが、現行APの趣旨、そこに記載されているとおり、研究開発の重要性に鑑みて、改訂版においても現行APの方針を継続するということで、そのまま残します。そして、この項目に関しては前倒しの内容に変更がないため、特にそこは取り扱わないと、そのような文章になっております。
 このような文章でよろしいかどうかを御確認いただき、もし何かあれば御発言をお願いいたします。この原案を基に最終決定をしていく形で進めさせていただきたいと思います。ありがとうございました。それでは、本日の御意見を踏まえて、本TFでの検討結果を私から委員会に報告させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 続きまして、議題2「第32回ITER理事会、第31回BA運営委員会の開催について」に入ります。それでは、事務局から資料の御説明をお願いいたします。
 
【稲田戦略官】資料2に基づきまして、第32回のITER理事会の結果について御説明させていただきます。6月21日から22日に、フランスのカダラッシュで行われました会合でございますが、現在ITERのベースラインに関しましては、コロナ禍による混乱や、あるいは世界で初めて造るFOAKという機器、こういうものの技術的困難に基づいて、ややスケジュールに遅れが見られていることもありまして、これを見直す作業が進んでいるところです。でありますが、その前提の上で、今回建設活動の進捗に関して、機器の搬入等は順調に進んでおり、特に日本の部分は順調に進んでいることが確認されました。
 ベースラインの更新に関しまして、先ほど申し上げた影響緩和や、不具合が生じている原子炉容器、熱遮蔽板の修理戦略、あるいは将来のリスク低減などの戦略を踏まえたベースラインの更新作業が進められており、この承認を2024年に行うことが確認されました。ITER機構においては、核融合運転を最速で達成するような工程の組替え等を行い、増強ファーストプラズマの導入やプラズマに対向する第一壁の材料の変更等が提案され、今後、各極による評価、具体的に言うと、科学的な観点に関して科学技術諮問委員会(STAC)と呼ばれる諮問委員会が各極の指名する委員によって行われるのですが、その結果を踏まえて評価されることになっています。今回の理事会においては、大半がこのような技術的な議論であったため、具体的なスケジュール感や、費用は特段示されておりません。このため、STACや運営諮問委員会(MAC)等の下部委員会での結果を受けて、本年秋以降にこれらの部分を踏まえた検討が行われるものと理解しています。
 また、その他の事項として、昨年機構長が交代したことに基づきまして、新たな機構の体制が議論されておりましたが、既に決まっている2名の副機構長に加えまして、建設プロジェクトリーダー、それから首席科学官の職に対して、それぞれ欧州からの候補者が任命され、新執行部の体制がほぼ固まりました。
 それからITERに関しましては、いろいろな民間セクターの研究開発が進んでいるので、こちらのほうが先行するという部分もあり、観測もあるのですが、そうはいいましてもITERにおいて、核融合エネルギーの中で大規模にグリッドにつなぐタイプに関するITERの役割は少しも劣っていませんし、商業の核融合セクターに対して、ITERが直面している様々な問題や、グッドプラクティス、バッドプラクティスの両方を併せて提供できることが非常に有意義であると確認されたことが今回の理事会の概要でございます。
 続きまして、日本と欧州で行っている幅広いアプローチ(以下、BA)活動に関する運営委員会の結果でございます。運営委員会は本年5月に行われました。これはBA活動における国際核融合材料照射施設の工学実証・工学設計活動(IFMIF/EVEDA)事業、要するに材料の照射施設の工学設計活動です。それから国際核融合エネルギー研究センター(IFERC)事業、これは次の炉の設計に必要な要素技術やシミュレーション技術に関する研究開発でありますが、それからサテライト・トカマク(STP)、これはJT-60SAを使ったプラズマ実験の計画でありますが、これに対して進捗状況等の報告が行われました。IFMIF/EVEDA事業に関しましては、改良型のRFカプラに少し問題が生じていたのですが、新規に開発されて成功裏に試験がされたということが報告されました。それから、事業委員会が技術課題の包括的な評価を行ったのですが、それを元に事業スケジュールの改定承認を得て、事業が進捗していることが報告されました。
 IFERC事業に関しましては、順調に研究が進展しており、様々な基盤が整備されているとの報告がございました。STP計画事業に関してですが、2021年に絶縁が破れる事象が起こり、その修理を行っておりました。このたびJT-60SAは、その修理がほぼ完了し、5月30日に統合試験運転を開始したのですが、それに向けての計画がどのようなものであるかの報告があり、それが承認され、確認されております。なお、ファーストプラズマは本年秋頃を目指しておるところでございます。
 併せて、その他のところでありますけれども、人材育成に関する話、あるいはホスト貢献に関する教育支援の話、それから次回はスペインで運営委員会を行うことが確認されました。以上が議事の結果でございます。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。ただいまの御説明に対し、質問などありましたらお願いいたします。藤岡委員、お願いします。
 
【藤岡委員】増強ファーストプラズマとはどういうものを呼ぶのでしょうか。
 
【稲田戦略官】今までは、ファーストプラズマを起こす際には、必要最小限の状態で、まずは気密性等を確認して、ファーストプラズマを起こした後、直ちに加熱の増強等に入るというスケジュールでした。これに対して、スケジュールの遅延を可能な限り短く、特に実際に意味のある科学的な運転を可能な限り早くしようと思うと、一旦真空確認をして、もう一度真空容器を開けて増強するという慎重なスケジュールよりも、あるものについては組み込んだ上で、幾つかの試験をファーストプラズマと一緒に行うという概念がございます。これが増強ファーストプラズマと言われる概念であります。いずれにしろ、可能な限り早めに意味のある実験を行うためのスケジュールの引き直しが現在検討されているということでございます。
 
【藤岡委員】分かりました。ありがとうございます。
 
【坂本瑞樹主査】他にいかがでしょうか。よろしいでしょうか。私たちのAPは、このITERの進捗と非常に密接に関わっておりますので、これからも注意深く見守っていきたいと思います。また、JT-60SAのファーストプラズマが期待されていますので、秋での実現を心待ちにしたいと思います。ありがとうございました。
 続きまして、議題3「核融合政策に関する最新情勢について」に入ります。それでは、事務局から資料の御説明をお願いいたします。
 
【稲田戦略官】資料4「Agile Nations(アジャイルネーションズ)における核融合の安全規制の議論について」の進捗について御報告させていただきます。今年の4月にまとめましたフュージョンエネルギー・イノベーション戦略におきましても、安全規制の議論が、実際にDEMOやその後の商用炉を考えた時に、科学的合理的でないと、コストの面で非常に厳しいものもありますし、安全規制ですから、当然安全を完全に確保しなければいけないので、どのような安全規制があるべきかの議論をすることが重要だと指摘されています。さらに、安全規制を議論するに当たって、我が国単独ではなくて、国際的な標準を念頭に置きつつ、実際に実証炉、あるいはその次を目指している同志国間での議論に参画することが重要だとうたわれてございます。そのため、Agile Nations、これは自動走行等のこれまでなかったような法的な枠組みに対して、どのような規制的アプローチをとるのかを議論することを目的にもともと作られているものですが、この中で核融合の規制のあるべき姿はどのようなものなのかが議論されていることもあり、これに参加しているという状況でございます。
 背景は以上ですが、具体的には、4月25日に第1回のワーキングを開催して、6月にもう1回、あるいは何回か開いた上で、7月にはどういう方向を出していくのかを議論し、先ほど冒頭申し上げたような考え方を取りまとめることになろうかと思います。それを踏まえまして、11月にはAgile Nationsとしてどのように考えていくかを打ち出していく予定でございます。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。ただいまの御説明に対し、質問などございましたら、よろしくお願いします。やはり安全規制というのは、これからの原型炉設計において非常に大切なものとなりますので、こういうところで早く議論が進められることは、私たちにとっても今後の検討で非常に大切なことになると思います。坂本隆一委員、お願いします。
 
【坂本隆一委員】Agile Nationsの参加国を見ると、ITER参加国以外の国で必ずしも核融合と直接関係しない国も多いような気もします。今後、参加国が増えていくのでしょうか、それとも現行の枠組みの中で議論されることになるのでしょうか。
 
【稲田戦略官】こういう規格化等の類いは、結局、産業競争力を育成する中で極めて重要です。したがいまして、どういう戦略に基づいて、どこの国と連携・協力し、どのような議論を行うかということが重要な要素になります。今回のAgile Nationsは、そもそも実現困難な課題に対して推進していくという国が集まっておりますので、まずは挙手した国を中心に議論が進んでいくことになります。中心となるのは、もちろん日本と英国です。これは明確に次のDEMOを考えている国であって、次の段階までこの議論は遅滞なく行う必要があるからです。カナダは、英国と共同研究をする国でありますので、開発側として協議に加わっているのですが、重要なのはユーザー側の国も含まれているということです。例えば産油国であるUAEのような国は、次のエネルギーを考えた時、ユーザー側に位置づけられる国でありますし、あるいはシンガポールのように資源が乏しく、エネルギー戦略を考える時に核融合に興味を持っている国は、エネルギー資源をどう確保していくかといったユーザー側の国に位置づけられます。このようなユーザー側の国がAgile Nationsに含まれていることが大変重要なポイントでありまして、有志国が集まって議論するとはいいつつも、バランスのいい議論がされる場として利用させていただいている形でございます。
 今後、7月に意向表明書の取りまとめ、そして、それを受け、11月には勧告を取りまとめますが、これで終わりではなくて、さらに国際的な議論を進めていく中で、有志国と協力できるのか、あるいはどこの国と競争していくのかというような国際戦略が今後出てくるものと考えております。
 
【坂本隆一委員】承知しました。いわゆる核融合開発とは全く視点が違うということですね。
 
【稲田戦略官】そうですね、技術もありますけれども、これは規格化であり、安全規制、安全の確保を大前提とした上で、過剰なものを要求するのか、それとも科学的で合理的なものになるのか、その辺りの兼ね合いだと理解しております。
 
【坂本隆一委員】ありがとうございます。
 
【坂本瑞樹主査】他にいかがでしょうか。よろしければ、私も1つ質問があります。米国の立ち位置としては、英国による代理発表ということで、ここに関与している形になるのでしょうか。
 
【稲田戦略官】米国は多分に民間先行です。米国では安全規制についてどのように考えているかについては参加国にとっても重要な情報になりますので、政府間で聞き取りをした結果を今回発表いただいております。
 
【坂本瑞樹主査】分かりました。他によろしいでしょうか。ありがとうございました。
 続きまして、議題4「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略の策定を受けた概算要求の検討等について」に入ります。前回のTFでは、フュージョンテクノロジー・イノベーション拠点を除く、3つのプログラムについて検討を行いました。本日は、残りのフュージョンテクノロジー・イノベーション拠点について大山委員から御説明いただき、意見交換を行いたいと思います。それでは、大山委員から資料の御説明をお願いいたします。
 
【大山委員】量子科学技術研究開発機構(以下、QST)の大山でございます。参考資料4のフュージョンエネルギー・イノベーション戦略の10ページ目にも記載されていますように、QSTにイノベーション拠点を設立することが求められております。
 そこで本日のTFでは、現在QSTにて検討を進めておりますフュージョンテクノロジー・イノベーション拠点化構想につきまして、資料5に沿って御説明させていただきます。資料1ページ目に拠点化構想の全体像を示しております。上部の枠内に記載していますように、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略に基づき、企業や国内外の大学、研究機関等と連携して、産業化促進のためのオープンイノベーション、原型炉に向けた研究開発や人材育成を含めた原型炉開発の加速を一元的に実施できるような体制を構築することが拠点化の目的でございます。
 そのため、既存の試験施設や各研究所を支える基盤インフラを強化するとともに、ITER計画やBA活動等で培った技術の伝承、それに基づく新技術の開発や産業化、さらには人材育成を見据えた新規施設を整備することにより、那珂研究所と六ヶ所研究所をフュージョンテクノロジー・イノベーション拠点化したいと考えております。下側の図では、拠点化に向けた各研究所で整備や強化をしていきたい施設等を青字で記載してございます。
 また、企業や国内外の大学、研究機関からの相談などを一元的に受け付けるオープンイノベーション総合窓口、これを原型炉早期実現に向けた総合調整・戦略策定を担っております原型炉推進戦略室内に設置する準備を進めてございます。
 続きまして、那珂研究所におけます具体的な拠点化構想について御説明いたします。資料2ページ目、左側に記載していますように、那珂研究所ではこれまで、ITERやJT-60SAに向けた機器開発に使用してきた各種試験施設を保有しております。これらの試験施設を強化し、原型炉開発に向けた企業との共同研究や施設利用に供することを検討しております。
 超伝導機器試験施設では、原型炉用超伝導コイルを開発する上で必要になる高磁場化や大電流化を実施した上で、超伝導導体開発試験の拠点にしたいと考えております。
 プラズマ対向機器試験施設では、高い熱負荷を受けるプラズマ対向機器の開発に不可欠な高熱負荷試験装置を新規に整備し、原型炉用ダイバータ研究開発拠点にしたいと考えております。
 高周波加熱装置試験施設では、ITER用ジャイロトロンの出荷前検査を年間2本程度実施しておりますが、今後世界各国から世界最高性能を誇る日本のジャイロトロンの発注が増加した場合、出荷前検査施設の不足が供給量を制限することになりかねません。そのため、ジャイロトロン試験施設等を強化することで産業化を促進したいと考えてございます。
 中性粒子入射加熱装置試験施設では、ITER用NBI実機の試験を実施できる施設を整備中でございます。100万ボルトもの高電圧に対応できる試験設備を活用して、高電圧機器や絶縁材の開発拠点にしたいと考えてございます。
 また、資料右側に記載しておりますように、那珂研究所内に新たに100名規模の研究者、技術者を受け入れることができる共同研究棟を整備し、JT-60SAを用いたプラント全体の統合技術の産業界への技術移転を促進するとともに、欧州を中心とする外国人研究者と切磋琢磨して、JT-60SAを用いた研究をオール・ジャパン体制で進めることで、ITERを用いた研究を主導できる若手リーダーを育成するなど、人材育成の拠点にしたいと考えております。
 最後に右下でございますけれども、那珂研究所を支える基盤インフラ設備であります中央変電所でございますが、こちらは高経年化が著しいため、20年程度の運転を計画していますJT-60SAの安定稼働のための強化が必要と考えております。
 続きまして、六ヶ所研究所における具体的な拠点化構想について御説明します。資料3ページ目を御覧ください。六ヶ所研究所では、資料左上に示しますように、原型炉設計合同特別チームを強化して、産業界への技術移転を促進したいと考えております。多種多様な産業界からの人材を特別チームに受け入れるとともに、原型炉に向けたフュージョンテクノロジーを産業界と共同開発していきます。
 また、産業界の意見を反映しつつ、小型化・高度化等をはじめとするフュージョンテクノロジーの早期実現や、コストダウン等に貢献する独創的な新興技術を取り込んでいきます。原理的に安全であるフュージョンエネルギーの特徴を踏まえた安全規制、規格基準について検討するとともに、米英等との協力を推進することで産業化を促進していきます。フュージョンエネルギー実現に不可欠なトリチウム大量取扱技術、大型遠隔保守技術、ブランケットシステム等の大規模R&D項目の抽出と、必要な施設の検討を進めます。
 ITERでは、年間200から400ペタバイトもの実験データが創出される見込みとなっています。そこで、資料左下に示しておりますように、大容量データを取り扱う科学データセンターを新規に構築するとともに、産業界の技術も活用して、既存の計算機シミュレーションセンターと遠隔実験センターとを有機的に統合したフュージョンインフォマティクスセンターを構築し、産業界が有するAIやシミュレーション技術を駆使して大量の実験データを解析し、原型炉プラズマを高精度予測するとともに、産業界が有する光・デジタル技術とフュージョンテクノロジーの融合による革新的なネットワーク技術の創出につなげたいと考えております。
 また、資料右側に記載していますように、六ヶ所研究所においても既存施設を活用した企業との共同研究や企業の施設利用を促進すべく、微細構造解析装置群、ブランケット安全実証試験群、スパコン、遠隔実験設備などの供用を進め、原型炉に向けた材料開発、ブランケットシステム、大規模シミュレーション、高速データ転送技術などの開発拠点にしたいと考えております。
 加えて、右下でございますが、六ヶ所研究所で保有する様々な先端技術については、国際標準化、技術マッチング、知財活用についても戦略的に取り組み、フュージョンテクノロジーの産業化に貢献していきたいと考えております。
 QSTでは、本日御説明したような方向性にて拠点化を進めてまいりたいと考えておりますが、施設の供用につきましてはユーザーのニーズに合わせた制度設計が重要であると考えております。つきましては、企業や国内外の大学、研究機関等から御参加いただいておりますTF委員の皆様からの御意見をいただけましたら幸いでございます。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。それでは、意見交換に移ります。お示しいただいた拠点化構想案について、今、大山委員からもお話がありましたが、QSTがオープンプラットフォーム化するに当たり、利用者の観点というものが非常に重要となりますので、そのような観点からも御意見いただければと思います。武田委員、お願いします。
 
【武田主査代理】大山委員、大変前向きな拠点構想につきまして御発表いただきましてありがとうございます。大変前向きなだけではなく、大変力強い内容であると感じまして、利用者の観点という御指摘が今、坂本主査からございましたが、大いに賛成させていただく存じます。1点、御確認申し上げたいのは、今回、当然原型炉開発の加速というものが大前提としてあるというのは理解しておりますが、先ほどお示しいただいた2つの方向性としては、原型炉開発の加速と産業化の促進という2点だったと記憶をしております。ということは、こうした共同研究や施設利用の選定基準、ここはより広い産業化の文脈についても見据えていただいているということで、QST側の御認識とそごはないでしょうか。
 
【大山委員】どのような形で供用していくかでございますけれど、QSTとしては本来業務でありますITER計画とBA活動、こちらを推進することがまず大前提でございまして、それを進めることと並行しまして、その本来業務に影響を及ぼさない範囲で、このような産業化の促進や原型炉開発の加速に、既に保有しております施設設備等を有効に活用していただきたいという方向性でございます。その中で、提案があった時にどのような範囲のものを採択していくのかにつきましては、実際に我々が提供できる限られた時間の、供用できる期間に対して、どれくらいの御提案が実際あるかによって変わってくるのかと思っておりますけれども、たくさんの提案をいただいた時には、例えばAPへのより近い貢献が得られると期待されるものについて優先的に採択していくなど、そのようなことを判断していきながら採択していきたいと考えてございます。
 
【武田主査代理】大山委員、ありがとうございます。今御指摘といいますか、お話しいただいた、ITER、BAが当然優先であって、それが本業であるという点、大変よく理解いたしました。その観点から、もう1点御質問させてください。
 これは事務局になるかもしれませんが、ITER、BA補助金等で建設された施設についても今回お示しをいただいていると理解をしておりまして、こうした施設の利用については適切な措置が取られると理解してよろしいでしょうか。
 
【稲田戦略官】お見込みのとおりです。そもそも科研費もそうなのですけれども、特定目的で使った施設が、ある程度の役割を終えた、あるいは他の役割ができた場合、それを転用することは、制度趣旨等々に照らして可能なものと可能ではないものがあります。そこを適切に判断するとともに、そもそも今のITER補助金、BA補助金の2本で行っている体制自身に課題があるということもありますので、これは後ほどの議題にもありますけれども、予算の立て方の柱立てをどうしていくのかも含めて、より現実に即し、かつ核融合の実用化を考えた時にベストな体制は何であるかという観点から、必要な制度については見直しをしていく方針でおります。
 
【武田主査代理】大変ありがとうございました。最後に2点だけ、利用者の観点からコメントを申し上げて終わりたいと思いますが、今、類するようなオープンイノベーション拠点として英国原子力公社(UKAEA)のザ・フュージョンクラスターという拠点がございます。ここは現在、200社を超えるような世界中の大学、民間企業が集うような、そういった大きな拠点になっておりますが、その特徴の一つが、大変広く門戸を開いているところにございます。物理的にもUKAEAのカルハム核融合エネルギーセンターには多くの民間企業が入居しておりまして、そういった意味でも、この拠点、さらに申し上げれば、共同研究棟につきましては、ぜひ欧米に伍する意味でも開放的な、門戸を開くような、そういった施設、拠点にしていただきたいと考えております。
 もう1点でございますが、現在欧米では実際の入札前に、RFI(リクエスト・フォー・インフォメーション)という、よりインフォーマルな形で広く民間から興味や関心を募るということが慣習的に行われておりますので、もしそういった御要望がおありでしたら、どの装置にどういったニーズがあるかを把握される意味でも、こうしたRFIというような制度の御活用というものを御検討いただければと思います。
 
【大山委員】貴重な御提案、御意見ありがとうございました。参考にさせていただければと思います。
 
【坂本瑞樹主査】武田委員、ありがとうございます。近藤委員、お願いします。
 
【近藤委員】1点お聞きしたい点がございます。すばらしい拠点化の話だと思いまして、オープンプラットフォーム、六ヶ所研究所のほうもすばらしい施設がたくさんあると思います。国内の研究者、将来的には国外からもたくさんの研究者が集うような、そういった拠点になるのではないかと個人的には期待しているのですけども、私もかなりの数、六ヶ所研究所にお伺いさせていただいて、その際、多くの方が六ヶ所研究所に集うという時に課題になるのが、宿泊施設ないしは生活空間、その辺りだと思います。すばらしい施設があって、そこにたくさんの方が遠方から来たという時に、意外と宿泊できる場所や時期というものが比較的、いろいろ制限される場合があります。最近のことは存じ上げないのですけども、冬場は交通の利便性が低いということもあるのかと思いますので、今後の計画の中で、もし可能であれば、ぜひこういった拠点に来る人たちが六ヶ所研究所に頻繁に長く滞在できるような、そういった仕組みを宿泊と交通の観点からも御検討いただけるといいのではないかと思います。
 
【大山委員】御意見ありがとうございます。QSTとしてできることではなさそうな御意見ではございましたけれども、ユーザー側からそのような要望があるということは、地元自治体や青森県などとも共有させていただきながら、六ヶ所村、青森県など地元自治体も含めて、どのようにこの拠点化を支える周辺環境の整備なども検討できるかどうか、意見交換など進めていきたいと思います。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございます。藤岡委員、お願いします。
 
【藤岡委員】御説明ありがとうございました。今回いろいろな機器の共用化、若しくは高度化を進められるという話だと理解しましたが、APの前倒しと、どのように今回の機器が対応しているのかを少しお伺いしたいと思っています。そういう意味では、前倒しのために必要な機器は、今回の提案の中で全て網羅できているのか、それとも少し取りこぼしているような機器があるのか、若しくは前倒しとは関係ないけれども、施設の有効利用という意味で少し共用化の促進を図るような機器が入っているのか、その辺りについてお聞かせいただければと思います。
 
【大山委員】前倒しをする上で非常に重要になりますのが、原型炉設計合同特別チームの強化の部分になるかと思います。こちらを実施するためには、やはり予算的な措置も必要ということで、令和6年度の概算要求等で人材の拡充に必要な予算なども要求させていただいているところでございます。
 また、APとの関連という意味では、大規模R&D項目の検討を加速することによりましてAPの前倒しにも貢献できるかと思っております。トリチウム大量取扱技術、大型遠隔保守技術、ブランケットシステム等、これら原型炉に必要な技術のR&Dを実際に行おうとしますと、今までとは規模の違う、大規模なR&Dが必要となってきますので、こちらにつきましては現時点で既に予算要求できるということではございませんけれども、APを加速する上でも、具体的にどういったことをやっていくのかといった項目の抽出や必要な施設、これの具体化を加速することによって、最終的にAPの前倒しに貢献できるのではないかと考えてございます。
 
【藤岡委員】ありがとうございました。
 
【坂本瑞樹主査】伊神委員、お願いします。
 
【伊神委員】資料に記載されている「オープンプラットフォーム(施設供用含む)」についてお伺いします。もともとある研究所のインフラ設備を生かしてイノベーション拠点にされるということで、当然民間会社との共同研究が視野に入っていると思います。その時に、施設使用料、若しくはインフラを使うことに対して那珂研究所が得る見返りや、あるいはどの程度人を出すのか、その辺りの計画というのはどのようにお考えでしょうか。
 
【大山委員】最終的には個別の提案に対しての契約形態なるのではないかと思ってございますけれども、現状の制度設計では、施設を供用するために幾つか異なる契約形態が考え得るかと思ってございます。
 1つは、通常、大学の先生方と行っております、いわゆる共同研究でございます。お互いの知見を持ち寄って、施設などは無償で提供して、お互い生み出した知的財産は共有するやり方のものが共同研究でございます。メーカーともこういった無償の共同研究で施設を共用するということも可能ではないかと考えてございます。
 2つ目が、有償での施設提供です。やり方として2つございまして、1つはメーカーに対して、ある程度費用は頂戴するのですけれども、お互いに得られた知財につきましては共有する形で、例えば受託研究ですとか、そういった形で、知財はお互いに保有し合うようなものも1つ考え得るかと思ってございます。
 3つ目は、実際メーカーからすれば、生み出した知財は自分たちで確保したいので、QSTからは場所だけ提供していただきたいとか、施設だけ貸してほしいという場合には、単価的な使用料を設定しまして、こちらにつきまして単純に有償で施設を供用するといったような、約款等に基づく使用を認めるといった、これら3つの施設供用の形態があるのではないかと考えてございます。
 これをどのような形態で行うかにつきましては、例えばユーザー側からの要望に合わせて、うちとしては知財を確保したいので、そういった価格設定での使用料を定義していただきたいというような要望があれば、そのようなことを設定して供用を実施するということになろうかと思います。
 
【伊神委員】ありがとうございます。少し懸念しているのが、例えば使っている途中に何か基幹設備に不具合が起こってしまった、そういう時にどうするのかについては契約で取り決めるという感じなのでしょうか。
 
【大山委員】おっしゃるとおりでございます。全てそういった施設の供用に関しましては、基本となる契約や規則、約款などを用意してございますので、それに書いてあるとおりの形で責任分界なども行うことになろうかと思います。
 
【伊神委員】ありがとうございます。
 
【坂本瑞樹主査】長壁科学官、お願いします。
 
【長壁科学官】大変すばらしい構想かと思いました。オープンプラットフォーム施設については、やはりこれまでの設備では実現できなかったような大規模なもの、先ほどのトリチウムなどについてはそのようなことを明言されていましたけども、超伝導設備などについてもそういうことを少し目指したようなものを考えていただきたいと思います。また、JT-60SAについてはオール・ジャパン体制で実施するという、非常に力強い形になっていると思いますが、これについても大学の研究者や、私ども大学共同利用機関法人の研究者についても、大学や大学共同利用機関の立場で研究に参加させていただくということでよろしいでしょうか。
 
【大山委員】資料2ページ目の左上に記してございますけれども、ITER用の超伝導コイルを開発するために使っておりました機器でございますが、これを原型炉用にしますと、やはりITERよりもさらに導体に流す電流が大きくなりますし、より強い磁場の環境の中で超伝導コイルを稼働させるということになりますので、そういった原型炉向けに施設を強化した上で産業界等に供用できるようにと考えてございます。施設そのものはかなり老朽化もしてございますので、こういった必要な改修などを終えた上で皆様方に提供できるようにしていきたいと考えているところでございます。
 また、JT-60SAにつきましては、今現在、統合試験運転を日欧で進めているところでございますけれども、これはやはり正直なところ、何もしていかないと、ヨーロッパからたくさんの研究者が乗り込んできて、欧州側の研究者が主導的に研究成果を創出するといったようなことになりかねません。やはりJT-60SAの運転、研究開発につきましては、もちろん日欧で進めるところではありますけれども、日本は決してQSTの研究者だけが研究をするというわけではなくて、そういった将来のITER若しくは原型炉を見据えた形で、若手の研究者、場合によっては大学院生など、研究開発にも貢献できるような形で進めていきたいと考えてございます。特に学生の育成という観点からは、オンサイトラボというフレームワークも幾つかの大学等とは結ばせていただいておりますので、そういった枠組みなども活用しながら、そのような研究者の育成にも貢献できればと考えてございます。
 
【長壁科学官】どうもありがとうございます。ぜひ私どもも外部資金を取得する際の重要なプラットフォームと位置づけて利用させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 
【大山委員】ありがとうございます。
 
【坂本瑞樹主査】伊神委員、お願いします。
 
【伊神委員】資料には、「イノベーション拠点のインフラ強化」ということで、中央変電所の強化が示されています。これはJT-60SAの運転にも関わるものかと思うのですけれども、BA活動やITERの予算とは別の予算立てでこれを整備するという方向なのでしょうか。
 
【大山委員】どのような予算の枠組みでこの設備が強化できるかは、文科省などともよく御相談させていただきながらと考えてございますけれども、那珂研究所の中央変電所、ここの設備が那珂研究所全体の電気を受電しているところでございます。27万5,000ボルトの直接受電を行っているという、かなり大規模な変電設備でございますので、更新するにもかなり予算や期間がかかるものになります。短期的には非常にリスクが高いところを補修しつつ、長期的には全面更新も視野に入れてというような強化を御相談させていただいているところでございます。
 
【伊神委員】現時点ではまだ予算の枠組みは、決まっておらず、構想としてはあるということですね。
 
【大山委員】この整備が必須だと那珂研究所としては考えており、QSTの経営層にも訴えかけてございますし、文科省にも並行して御相談させていただいているところでございますが、予算として認められているものではございません。
 
【伊神委員】ありがとうございます。
 
【坂本瑞樹主査】よろしいでしょうか。多くの御意見ありがとうございました。やはりこの拠点形成に対する多くの期待が込められた御意見だったと思います。拠点化のために六ヶ所研究所、那珂研究所の機能の強化、整備拡充というものが非常に重要であるということは皆さん理解できたと思います。あと一つ、資料にありましたオープンイノベーション総合窓口を新たに設置することは、間口を広げるために大変重要だと思いますので、武田委員からもありましたように、ぜひ多くの方が参加できるような仕組み等々考えていただければと思います。
 
【大山委員】ありがとうございました。
 
【坂本瑞樹主査】それでは、本日の検討を踏まえて、事務局で概算要求を御検討いただければと思います。よろしくお願いします。
 さて、それでは、ここから2点、今後本TFで御検討いただきたい案件について、皆様の御意見をいただければと思います。まず1点目ですが、前回のTFでは、参考資料2でお示しした「原型炉研究開発の加速に向けた方策について」に基づいて検討いただきました。これを受けて、この資料の2ページ目に記載がありますAPの各課題を推進するに当たっての優先順位や考え方について、本TFで検討していきたいと思います。それでは、事務局から資料の御説明をお願いいたします。
 
【稲田戦略官】資料6について御説明させていただきます。前回のTFにおいて、各APの課題を推進するに当たって優先順位の考え方をどうするかについて問題提起いただきました。というのも、御承知のとおり、このAPは、技術的検討、問題点を洗い出すために、各アクションの実施に当たっては、適切なリソースや体制が整備された場合を前提としてどれだけ活動できるかと、このように書かれています。ですが実際、研究開発を行う段階では、投入できる予算的リソースには限りがありますので、どこを優先するのかという話や、具体的なスケジュールにどう落とし込んでいくのか、こういう具体的な、戦略ではなくて、戦術が重要になってきます。
 まさに来年度から予算を要求して戦術を立てていくに当たって、具体的にどのような課題をどのように選んでいくのかを、来年の4月に間に合うように逆算すると、いつまでに何をしなければいけないのかをまとめたものが資料に示しているスケジュール案です。端的に言うと、10月にTFの議論及び取りまとめをいただいた上で、11月に一定の考え方を委員会に報告し、課題採択、課題の公募を始めなければならないということが書いてあるのですが、このようなスケジュール感でございますので、今後具体的な議論をしていくに当たっては、このスケジュール感を念頭に置いていただきたいというのが資料6の説明でございます。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございます。ただいまのこの資料について御質問などありましたら、よろしくお願いします。今、戦略官からお話しいただきましたように、逆算していくとこのスケジュールが出てくるということになっておりますが、よろしいですか。それでは、10月にTFを開催して、検討していきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 続きまして2点目は、「核融合中性子源について」です。本件につきましても、今後TFで検討していきたいと考えております。それでは、事務局から資料7の御説明をお願いいたします。
 
【稲田戦略官】先ほどの具体的なリソースに応じてどこの研究開発に着手していくのかという話に密接に関わるのですが、原型炉建設を目指す上で、安全認可のための材料の照射を一定程度行わなければいけません。これが極めて重要な課題になります。改訂版のAPにおきましては、原型炉の設計が2段階に分かれており、運転がパルス運転から連続運転に移行することになるので、連続運転に必要な照射量は少し猶予があるものの、建設を目指す上で、材料の照射について現実的に検討することが必要な時期になっております。
 御承知のとおり、BA活動において、IFMIF/EVEDA事業でその原型の機械を造っておりますが、日本の核融合中性子源(A-FNS)に相当する欧州版の計画に関しては、既に予算措置が開始されており、建設についての議論が着々と進んでおります。スケジュールと照射を早いうちに確保するためには、ここに我が国としても参加していくことは、ある意味現実的な選択肢として考えられるものであります。現在このスケジュール感に定められているものでありますが、実際、リソースも含めて、どの段階で確保するかという議論をそろそろ開始しないと、許認可の点で遅れてしまう、あるいは必要なデータの取得が遅れてしまうことになりますので、先ほど申し上げたAPの各課題の推進をいつのタイミングにするかと併せて、照射についても議論を開始する必要があるということを示す資料でございます。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。ただいまの御説明について、御意見、御質問などありましたらお願いいたします。吉橋委員、お願いします。
 
【吉橋委員】中性子源の議論は前回のCRの時から始まっており、APの前倒し案ではA-FNSの建設を後ろ倒しにすることが示されており、これを受けて、DONESを使用するかどうか、DONESにどのように参画していくか、DONESでどのように中性子照射をしてデータを集めていくかについてこれから議論していくことになると思います。今日の御説明の中で、A-FNSの建設をどのように考えていくかについては特に説明がなかったかと思います。その辺りも我々TFで話し合っていくことかと思うのですけれども、文科省として今後、このA-FNSの建設をDONESと含めてどのような立ち位置でお考えなのかをお伺いできればと思います。
 
【稲田戦略官】これはA-FNSに限らず、全ての研究課題に言えることですが、実際に用意できる、あるいは必要な研究開発のうち、どこを重視して、どのタイミングで行うかという議論なのだと理解しております。したがって、個別の事象に対して今どう考えているかというよりも、優先順位や判断のタイミング、さらには主要な要因や課題等について検討した上で、本当に必要なら造らないと残り全てが無駄になってしまうことになりますので、その辺りをどのようにするのかの議論が必要だと考えております。これを税負担で行うことになれば、当然、国税が投入されますので、国民負担になります。その辺りの議論も含めて今後議論していくことが必要だと考えています。
 
【吉橋委員】ありがとうございます。確かに個別の開発に対して、A-FNSの建設は、少し時間がかかると思います。例えば、照射試験でDONESを使うにしろ、他の中性子源を使うにしろ、いろいろ方法があると思うのですけれども、A-FNSをどうするかについては早めに考えていかないと、建設のスケジュール感は、他の開発事項とは違うと感じています。実際DONESもこれからまた建設していくということで、中性子照射がどこでどのようにできるのかを、我々も含めて、みんな世界の動きはしっかり見ていかないと、さらに、ここを使って行いたいということになっても、使えないであるとか、マシンタイムが取れないというようなことが起きてしまうと、せっかくいろいろスケジュールを組んでいたところで遅れてしまうのは、この前倒ししていこうということに対しては逆効果になるかと思います。この中性子照射を行う場所は早い段階から、世界中の動きも含めて見ていかないといけないことかと思っております。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。CR、移行判断にも関わる重要な課題であります。他にいかがでしょうか。近藤委員、お願いします。
 
【近藤委員】事務局の方がお話しされたように、タイミング、優先順位について、A-FNS及びDONESによる高エネルギー中性子の照射試験というのは非常に重要なポイントになると、TFの委員としても感じております。
 一方で、日本が独自に進めてきました原型炉のAPについて、こういった海外との連携という部分が入ってくるということで少し、不確定要素という部分も入ってくるのかと感じています。DONESがうまく建設されて順調にいくというプランAに対して、もしもそれが順調にいかなかった場合のプランBについても、やはり少し並行して考えていく必要があるのではないかと思います。プランAを決して否定するということではないのですが、私も材料研究者ですので、中性子照射のデータは、事務局の方もお話しされたように、大変重要になるものと思いますので、その辺りを柔軟に考えていくことも大事なのかと個人的に感じました。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございます。他によろしいでしょうか。今、吉橋委員、近藤委員から御意見いただきました。A-FNSの建設と、これからの中性子照射計画に対するいろいろな考え方をお示しいただきましたが、やはりDONES計画の進展を踏まえて、核融合中性子源についても本TFで検討していくということに関しては特に異論はなく、進めていくべきだと受け止めました。そのような方針でよろしいでしょうか。もちろんA-FNSのこともしっかり考えていくということですが、本APの中で、海外の装置ではありますが、そういうものを使ってAPも今後検討していくことが、原型炉の前倒し、原型炉開発に向けて非常に重要な観点になるということで、今後、本TFで、DONES計画の進展を踏まえて考えていきたいと思います。よろしいでしょうか。それでは、これから特に吉橋委員、近藤委員には、DONES計画も含めてTFでAPを検討していただくことになりますので、よろしくお願いいたします。
 これから非公開の議題に入ります。傍聴者の方は退出いただきますようお願いいたします。
 
(非公開議事)
 
【坂本瑞樹主査】本日用意しております議事は以上ですが、この他に特に報告、審議すべき案件はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、次回のTFの日程につきまして、事務局からお願いいたします。
 
【吉原専門官】次回のTFは10月に開催する予定としております。日程調整の上、追って、開催日時、議題等につきまして御連絡申し上げますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 
【坂本瑞樹主査】それでは、本日のTFはこれで閉会といたします。御多忙の中、御出席いただきましてありがとうございました。
 
―― 了 ――

お問合せ先

研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付

   髙木、樋口
   電話番号:03-6734-4163