核融合科学技術委員会 原型炉開発総合戦略タスクフォース(第29回) 議事録

1.日時

令和5年5月30日(火曜日)14時00分~16時00分

2.開催方法

オンライン開催

3.議題

(1) 原型炉開発総合戦略タスクフォースの議事運営について(非公開)
(2) フュージョンエネルギー・イノベーション戦略の策定を受けた概算要求の検討について
(3) 第2回中間チェック・アンド・レビューについて

4.出席者

原型炉開発総合戦略タスクフォース

坂本瑞樹主査、武田秀太郎主査代理、伊神弘恵委員、大山直幸委員、奥本素子委員、木戸修一委員、古賀麻由子委員、近藤正聡委員、坂本隆一委員、鈴木隆博委員、馬場貴志委員、福家賢委員、藤岡慎介委員、横山須美委員、吉橋幸子委員

有識者

笠田竜太東北大学金属材料研究所教授

文部科学省

千原由幸研究開発局長、林孝浩大臣官房審議官(研究開発局担当)、稲田剛毅研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)、髙橋佑也課長補佐、吉原誉夫核融合科学専門官、長壁正樹科学官、梶田信学術調査官

5.議事録

(議題1 非公開)
 【坂本瑞樹主査】それでは、これより公開とし、傍聴者の方に参加していただきます。事務局より、委員及び事務局出席者の紹介と配付資料の確認をお願いします。
 
【吉原専門官】第12期原型炉開発総合戦略タスクフォース(以下、TF)委員に御就任いただいた方々を御紹介させていただきます。資料1に名簿がございますので、主査、主査代理に続き、記載順にお一人ずつ御紹介いたしますので、お一方1分以内で御挨拶をお願いいたします。まず、筑波大学プラズマ研究センター、坂本瑞樹主査、お願いいたします。
 
【坂本瑞樹主査】筑波大学プラズマ研究センターの坂本です。現在は、タンデムミラー型装置と、最近建設しました超伝導ミラー装置を使って、プラズマの閉じ込めやダイバータ熱粒子制御、プラズマと材料との相互作用に関する研究を行っております。これまでは大学共同利用機関法人自然科学研究機構核融合科学研究所(以下、NIFS)で大型ヘリカル装置(以下、LHD)の超伝導コイル開発、九州大学において超伝導トカマクを用いた長時間トカマク制御運転や、球状トカマクQUESTの建設、立ち上げ、初期実験に携わってまいりました。ヘリカル型、トカマク型、ミラー型といったプラズマ閉じ込めの3つのタイプを経験し、炉工からプラズマ閉じ込めまで幅広く研究してまいりましたので、この経験を本TFの議論に生かしてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】どうぞよろしくお願いいたします。続きまして、九州大学都市研究センター准教授、武田秀太郎主査代理、お願いいたします。
 
【武田主査代理】ありがとうございます。九州大学都市研究センターで准教授を務めております武田と申します。私、もともとの専門は電力工学、プラント工学でございましたが、現在、社会工学、社会経済学、こうした観点から核融合の研究というものも行ってございまして、こちらに着任する以前は国際原子力機関(IAEA)のほうで、社会経済並びにアウトリーチ活動の担当官をしておりました。また、4年ほど前、2019年には京都フュージョニアリング社を創業いたしまして、現在もこちらの共同創業者として関わっております。どうぞ今期のTF、よろしくお願い申し上げます。
 
【吉原専門官】よろしくお願いいたします。続きまして、NIFS准教授、伊神弘恵委員、お願いいたします。
 
【伊神委員】NIFSの伊神弘恵と申します。私は、大学時代は球状トカマクで実験をしておりましたが、学位は電磁波から静電波という波へのモード変換という物理過程に関する理論解析とシミュレーションで取りました。NIFSに就職してからは、ミリ波帯を用いた電子サイクロトロン波加熱と、その加熱の有効性などを検証するための数値計算などに携わってまいりました。最近は、イオンから発生する非熱的放射の観測なども行っておりまして、サイクロトロン波帯の波動の計測、伝搬・吸収、非線形の波動の励起というものに着目して研究を行っております。主にTFでは加熱、カレントドライブというところに注力して、お役に立てたらと思います。よろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】よろしくお願いいたします。続きまして、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(以下、QST)量子エネルギー部門研究企画部長、大山直幸委員、お願いいたします。
 
【大山委員】QSTの大山でございます。よろしくお願いいたします。私、もともと出身は、坂本瑞樹先生の筑波大学プラズマ研究センターで、タンデムミラーにおけますマイクロ波計測で学位を取得してございます。その後、旧日本原子力研究所のほうに就職いたしまして、それ以降は2008年まで、JT-60というトカマク型装置におけますプラズマの計測装置の開発ですとか、プラズマの高性能化の研究に従事してまいりました。2008年、JT-60シャットダウン後は、JT-60SA計画ですとかITER計画の推進のほうにずっと携わってまいりまして、この4月から那珂研究所、六ヶ所研究所全体を統括しております量子エネルギー部門の研究企画部に配属になった次第でございます。これから原型炉に向けて、QST全体として貢献していきたいと考えてございますので、その観点から本TFに貢献できたらと考えてございます。よろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】よろしくお願いいたします。続きまして、北海道大学大学院教育推進機構オープンエデュケーションセンター科学技術コミュニケーション教育研究部門准教授、奥本素子委員、お願いいたします。
 
【奥本委員】よろしくお願いします。私、科学技術コミュニケーションといって、科学と技術の間をつなぐコミュニケーションの在り方について研究しております。核融合ではアウトリーチを担当させていただいているのですが、そろそろアウトリーチから、社会需要を見越したサイエンスコミュニケーションにフェーズが変わっていく段階かなということを考えております。そのため、新しい形でのサイエンスコミュニケーション活動というのも本TFで提案させていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 
【吉原専門官】どうぞよろしくお願いいたします。続きまして、株式会社日立製作所ヘルスケア事業本部ヘルスケアイノベーション事業部スマートセラピー本部核融合・加速器部長、木戸修一委員、お願いいたします。
 
【木戸委員】お世話になっています。日立の木戸です。私は学生時代、ピンチ系のプラズマにおける異常現象の実験を専門にやっていまして、そちらで学位を取らせていただきました。就職を考えた際に、研究者としての道よりは、やはりものづくりの上で核融合に貢献したいということで、メーカーの道を選びまして、入社以来、核融合の実験装置のみならず、加速器や超伝導の機器といったものの設計をやっておりまして、私の中で一番関与したものは、理化学研究所の超伝導リングサイクロトロンの電磁石の設計をやらせていただいています。今は核融合、加速器、超伝導の設計をまとめる部署におりまして、そういったものづくりの知見から、このTFに貢献できればと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】どうぞよろしくお願いいたします。続きまして、兵庫県立大学大学院工学研究科准教授、古賀麻由子委員、お願いいたします。
 
【古賀委員】古賀です。よろしくお願いします。私は、大阪大学のレーザーエネルギー学研究センター、今のレーザー科学研究所で、レーザー核融合のプラズマX線画像計測に携わっておりました。10年ほど前に兵庫県立大学工学部のほうに異動しまして、現在は核融合炉に燃料を投入するためのインジェクションシステムの開発を主に行っております。また、磁場閉じ込め核融合関連としては、プラズマ画像診断のためのマイクロ波カメラの開発も行っております。TF委員は2期目になりますので、頑張らせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 
【吉原専門官】どうぞよろしくお願いいたします。続きまして、東京工業大学科学技術創成研究院ゼロカーボンエネルギー研究所准教授、近藤正聡委員、お願いいたします。
 
【近藤委員】東京工業大学科学技術創成研究院ゼロカーボンエネルギー研究所で准教授をしております近藤正聡と申します。学術調査官とその後こちらのTF委員を経て、このTF委員は2期目になります。核融合炉開発では、液体金属を用いた液体ブランケットというエネルギー変換機関に関する研究をしております。YouTuberとして、小さいながらもチャンネル運営をしながらサイエンスアウトリーチにも取り組んでおりまして、最近は、奥本委員も関連されている北海道大学のCoSTEPという集中講義で、サイエンスコミュニケーションに関する勉強もしております。TFでは、ブランケットや材料の開発に関する領域の議論に貢献できたらと思っております。よろしくお願いします。
 
【吉原専門官】どうぞよろしくお願いいたします。続きまして、NIFS教授、坂本隆一委員、お願いいたします。
 
【坂本隆一委員】こんにちは。NIFSの坂本隆一です。私はプラズマと物質の相互作用に関する研究を行っています。具体的には、核融合プラズマへの燃料供給を考え、LHDを使って固体水素の溶発とその均質化過程というものを研究したり、プラズマ対向材料のプラズマとの相互作用に関する研究を行っています。TF委員は前期も務めています。今期も一生懸命やりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】どうぞよろしくお願いいたします。続きまして、QST量子エネルギー部門先進プラズマ研究部次長、鈴木隆博委員、お願いいたします。
 
【鈴木委員】QST先進プラズマ研究部の鈴木隆博です。よろしくお願いします。私は、ピンチ系のプラズマの研究をしていまして、そこからJT-60で炉心プラズマの研究をずっと行ってきました。そこでプラズマの高性能化や定常化、計測、その辺りをやってきました。また、JT-60SAのプラズマの設計関連も行ってきております。このTFでは、プラズマ、そのシミュレーションについて貢献できればと思っております。よろしくお願いします。
 
【吉原専門官】どうぞよろしくお願いいたします。続きまして、三菱重工業株式会社原子力セグメント核融合推進室上席主任、馬場貴志委員、お願いいたします。
 
【馬場委員】三菱重工の馬場と申します。今年度、委員を拝命いたしました。よろしくお願いいたします。核融合への関与といたしましては、10年ほど前からITERの調達、製作に関することというのを担当しておりまして、超伝導コイル、ダイバータ、あと加熱システム等々の設計というのを2年ぐらい前までしていました。昨年度より全体を取りまとめる部門に異動しておりまして、そちらで原型炉についても今後、担当分野を拡大するということで、今回やらせていただくこととなっております。よろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】どうぞよろしくお願いいたします。続きまして、東芝エネルギーシステムズ株式会社パワーシステム企画部部長代理、福家賢委員、お願いいたします。
 
【福家委員】東芝エネルギーシステムズの福家でございます。私は入社以来、軽水炉以外の原子力、様々な原子力プラントの開発、そのプロジェクトに従事してきまして、その中に核融合も含まれたということでございます。このTFでは、設立以来、ずっと委員をさせていただいておりますので、今期も引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】よろしくお願いいたします。続きまして、大阪大学レーザー科学研究所教授、藤岡慎介委員、お願いいたします。
 
【藤岡委員】大阪大学の藤岡と申します。私は、特にレーザー核融合を中心とした研究をこれまでやってきました。ここ最近ですと、レーザー核融合を中心としたスタートアップ企業のEX-Fusionの最初の立ち上げの段階に関わったりしています。核融合に関しては、海外のスタートアップからも結構いろいろな問合せが来ていまして、そういう意味では、ある意味ブームであるというのは感じるところです。ただ、これが一過性のものにならないためには、シングルイシューで引っ張られるのではなくて、やはり幅広く、いろいろなポイントを押さえた上でしっかりとした計画にしないと、このまま放っておくとスポイルしてしまうというおそれがありますので、そういう意味では、この委員の活動というのは非常に重要であるというふうに認識して、取り組んでいきたいと思っています。
 
【吉原専門官】どうぞよろしくお願いいたします。続きまして、長崎大学原爆後障害医療研究所教授、横山須美委員、お願いいたします。
 
【横山委員】横山です。私は4月から長崎大学のほうに移りまして、やっていることはそれほど大きく変わらないのですけれども、放射線生物・防護学分野に所属しております。核融合関連といたしましては、学生、大学院生の頃より、三重水素の環境挙動の解明を目的とした測定・実験を行っておりまして、それとともに、核融合施設の安全性確保の観点から、環境影響を含む線量評価、公衆の線量評価ということをこれまで行ってまいりました。またその他にも、核融合と直接関係があるわけではないのですけれども、放射線リスクコミュニケーションに関する研究、それから医療従事者、原子力関連施設の従事者の線量評価に関する研究を行っております。このTFでは、安全性に関する議論に参画できればと思っております。よろしくお願いします。
 
【吉原専門官】どうぞよろしくお願いいたします。続きまして、名古屋大学核燃料管理施設教授、吉橋幸子委員、お願いいたします。
 
【吉橋委員】名古屋大学の吉橋と申します。よろしくお願いします。私はもともと大阪大学で、国際核融合材料照射施設(IFMIF)のリチウムターゲットの開発に携わっておりまして、7年前に名古屋大学に異動してからも中性子源の開発に主に携わっております。中性子源の開発だけではなくて、中性子源の計測、それから材料の中性子影響ということで、材料の放射化など、そういったところを実験とシミュレーションと両方の観点から評価するようなことを行っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。本日は、全15名中15名、全委員に御出席いただいております。
 続きまして、毎回TFに出席をいただいております文部科学省の科学官、学術調査官を御紹介させていただきます。長壁正樹科学官でございます。
 
【長壁科学官】NIFSの長壁と申します。科学官はこれで4年目になります。どうぞよろしくお願いします。研究としては、環状プラズマ中の高エネルギー粒子の閉じ込め、加熱装置としての負イオン源の開発について関与しております。また、LHDの重水素実験実施に関与していたことから、地元に対する説明の経験もございますので、そういった観点からも貢献できたらと思っております。
 
【吉原専門官】続きまして、梶田信学術調査官でございます。
 
【梶田学術調査官】御紹介ありがとうございます。東京大学の梶田と申します。プラズマ材料相互作用の研究に携わっております。学術調査官は本期で2期目になります。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】続きまして、事務局の御紹介をさせていただきます。文部科学省研究開発局研究開発戦略官の稲田剛毅でございます。
 
【稲田戦略官】戦略官の稲田です。よろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】続きまして、補佐の髙橋佑也でございます。
 
【髙橋課長補佐】よろしくお願いします。
 
【吉原専門官】専門職の高木将仁でございます。
 
【髙木専門職】よろしくお願いします。
 
【吉原専門官】係員の樋口優人です。
 
【樋口係員】よろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】最後に、私、核融合科学専門官の吉原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、本日の配付資料でございます。議事次第の配付資料の一覧を御覧ください。こちらにお示しをしております資料1から5、及び参考資料1から4が本日の配付資料でございます。会議中は、Zoomの画面共有システムを使って、事務局より資料を表示させていただきます。また、各委員におかれましては、御発言いただく際には、ミュートを解除の上、画面の下にあります「手を挙げる」ボタンを押して発言いただきますようお願いいたします。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。本日は、第12期最初のTFの開催になります。議事に先立ちまして、文部科学省の千原研究開発局長より御挨拶をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
【千原局長】ただいま御紹介にあずかりました文部科学省研究開発局長の千原でございます。第12期最初のTFの開会に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。初めに、坂本瑞樹主査をはじめとする委員の先生方におかれましては、大変御多忙の中、本TFの委員に御就任いただきまして、厚く御礼を申し上げます。核融合は、エネルギー問題と環境問題を根本的に解決することから、カーボンニュートラル実現の鍵となるエネルギー源だと考えられております。主要国におきましては、核融合エネルギー開発に関する各国独自の取組を加速化し、国際競争の時代に突入しております。我が国におきましても、4月14日に開催されました統合イノベーション戦略推進会議におきまして、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略が決定されました。このような中、第12期のTFでは、同戦略の策定を受け、文部科学省においてどのように取り組んでいくのかを検討する極めて重要な年になると考えております。具体的には、第2回中間チェック・アンド・レビュー(以下、CR2)の実施に向けた検討ですとか、原型炉研究開発ロードマップや原型炉開発に向けたアクションプラン(以下、AP)の改訂など、専門的見地から御議論をいただければと考えております。各委員の先生におかれましては、核融合エネルギーの早期実現に向けて、全てのステークホルダーが一丸となって取組を推進すべく、本年度も先生方の御協力と積極的な御参画をお願い申し上げ、簡単でございますが、御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【坂本瑞樹主査】千原局長、どうもありがとうございました。次に議題2「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略の策定を受けた概算要求の検討について」に入ります。本年4月、本戦略が決定されました。これを受けまして、まずは本戦略の概要とこれを受けた今後の検討課題について、事務局から御説明をお願いいたします。
 
【稲田戦略官】それでは、資料2-1、資料3について、御説明をさせていただければと思います。
 本戦略に関しましては、4月に統合イノベーション戦略推進会議において決定されたものです。その内容を要約したものが、資料2-1上部にある四角で囲った3点でありまして、「フュージョンエネルギーを新たな産業として捉え、構築されつつある世界のサプライチェーン競争に我が国も時機を逸せずに参入」するということ。これは何かというと、ITERの建設を例にとると非常に分かりやすいのですが、ITERのような大きな研究プロジェクトとなると、実用化されて市場ができているというよりも、建設計画自体、開発自体にかなり大きな市場ができるという状況になっております。同様に、日本の原型炉の建設は今世紀の中葉を目指しておりますし、その他の炉の建設も、原型炉の建設から10年前後に集中しておりますが、これができてから市場での競争が始まるのではなくて、試作や研究開発の段階において、様々な要素技術についてはサプライチェーンの構築も含めて激しい競争が始まるという分析の下に、この戦略は作られております。この中において、「ITER計画/BA活動、原型炉開発と続くアプローチに加え、産業化等の多面的なアプローチによりフュージョンエネルギーの実用化を加速」することが重要であるという認識に立って戦略を作っております。この具体策として、「核融合産業協議会の設立、スタートアップ等の研究開発、安全規制に関する議論、新興技術の支援強化、教育プログラム等を展開」していくことが内容になっておりますが、これを説明したものが以下の部分であります。
 「エネルギー・環境問題の解決策としてのフュージョンエネルギー」と「新たな産業としてのフュージョンエネルギー」の項目に記した内容が現状の認識です。すなわちエネルギーの安全確保についての要求の高まりの中、資料に記したような優れた特性を持った核融合に関しては、右側の項目に記しているように国、あるいは民間も含めて、かなりの有望視がされており、開発に対する競争が加速しているという状況を捉えております。
 資料2-1の中央部分に記載した内容が、これに対する我が国の戦略ですが、先ほど申し上げた主要な目標を目指して、3つの戦略を立てています。
 1つが産業の育成戦略です。まず、「見える」についてですが、核融合は、例えば、ねじの積み上げというようなものも含めた様々な技術から、ITERのような非常に大きなサイトにおいて巨大な装置を造るものです。したがいまして、ここに使われている技術や産業でどのようなものが必要なのかは、炉の設計者においても完全に把握するのは難しいものです。ましてや、これに参画しようとする企業等は、何かすごいことをやっているということは分かったとしても、どのタイミングでどのような需要が発生し、どういった技術が必要なのかがなかなか見えないことが参入の障壁になっています。その参入障壁になっていることについて、当然、原型炉の早期実現をし、早く需要を創ることも重要ですが、産業マップあるいは技術マップを作ることによって、どのような技術がどの時間軸で必要なのかを見せていくことによって産業の参入障壁が低くなると考えています。具体的に言うと、例えば核融合技術といっても、計測線のメッキ技術や、ダイバータのタングステンと異種金属とのろうづけのような中小企業が持っているような技術から、大変巨大な装置で、大きな重工産業でないとできないような精密加工の技術まで様々ありますので、このようなものがどのタイミングで必要となるのかの時間軸を明らかにした上で、どのようなものを造っていくかを示します。
 次に「繋がる」についてですが、技術者が技術マップを作ると、専門的な知識がない人には分かりにくいものになりがちでありますので、核融合産業協議会を立ち上げて、ユーザー目線で見た時にどのような情報が欲しいのかを産業に聞き取った上で、これらのマップを作っていくことを考えております。
 また、「育てる」というところも非常に重要でありまして、SBIR施策も開始されておりますが、産業ニーズと技術シーズのギャップを埋めるような施策の強化を進めます。また、ビジネスを考えた時に一番大きいリスクとなるのは安全規制です。安全規制が後から示されて採算が取れないかもしれないような産業はなかなか参入できませんので、あらかじめ安全規制や基準、標準化に係ることを国際的に議論した上で、標準化を図っていくことを行っていきます。また、これはフュージョンエネルギーという表題にも関わってくるのですが、核融合は核分裂とは全く違うものです。したがいまして、安全規制等々についても、フュージョンエネルギー、核融合に特有なものはどのようなものがあるかを議論することが必要でありますので、この辺りについての安全の基本的な考え方を策定するということを行っていきます。
 2つ目が資料2-1の右側に記した研究開発戦略です。今までのITER、BA路線のものに加えまして、核融合炉の開発を見据えた研究の加速、それを支える学術研究の推進といったものを進めた上で、新技術に取り組むことを念頭に置いた核融合のAPを作りながら作成していきます。その際、今まで研究開発の選択と集中を進めるという観点から、ある意味トカマク型の磁気閉じ込め型の核融合装置という、グリッドにつなげる比較的大型の炉をメインテーマにして、これに対する選択と集中を進めてきましたが、諸外国の民間も含めての研究開発を見ると、ゲームチェンジャーとなり得る小型化・高度化等の独創的な技術が多く出てきているところでございますので、そのようなものを含めた上で研究開発を行い、その上で取り込めるものは取り込んでいった上でAPを作っていく、このような構成にしてございます。
 3つ目が資料2-1の下部に記した推進体制でありますが、これを推進するに当たって内閣府が政府の司令塔となり、関係省庁と一丸となって、研究開発ではなくて社会実装を念頭に置いて行っていきます。さらに、研究の場として拠点を設立すること。また、先ほど申し上げたように、フュージョンエネルギーの実用化は、今世紀中葉、さらにその先になりますので、何世代にも渡る研究者及び技術者の育成が必要であります。したがいまして、このような人材育成を産学官で連携していくとともに、適切なプログラムを提供していきます。何よりも重要なのは、このような育成は長期に渡るものであって、多大な経費がかかるものでありますので、この取組に関しての国民の理解というものが重要です。したがって、これを行うために何を行う必要があるのかをしっかり考えていくというような戦略を立てております。
 それを踏まえた上で、資料3が、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会核融合科学技術委員会(以下、委員会)で検討する議題、つまり、さきほど申し上げたところで、産業ではなく、技術的なバックグラウンドや社会的合意の形成といった、専門性を基に議論しなければならないことを抽出したものがこちらです。リストアップされているのは1から3でございますので、こちらについて今回は議論いただきたいと思っております。以上、雑ぱくではありますが、フュージョンエネルギー戦略の策定を受けた検討課題であります。なお、この中で研究の場を作ることに関しましては、今回でなく次回に議論することにしておりますので、それについては次回のTFで議論させていただけるとありがたいかと思います。以上です。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。ただいまの御説明に対して御意見等がございましたらお願いいたします。武田委員、お願いします。
 
【武田主査代理】ありがとうございます。稲田戦略官、ありがとうございました。フュージョンエネルギーに関する足元の関連産業という意味合いでは、昨年実績で既に民間企業のみで700億円の売上げがあったという聞き取り調査もございますし、これが今後10年で約1兆円市場にまで成長するというふうに業界団体のほうでは推計しております。したがいまして、お示しをいただいたフュージョンエネルギー・イノベーション戦略につきましては、全面的に賛同させていただくものです。先ほどの戦略官の御説明では、新たな組織が複数言及されたというふうに理解しています。特に戦略内では、核融合産業協議会、さらにフュージョンテクノロジー・イノベーション拠点という2拠点、2機関の設立というものが宣言されており、さらに今後の検討課題には原型炉開発の主体そのものの議論というものも触れられております。したがいまして、この原型炉の研究開発におけるこうした新たな機関に期待される立ち位置について、事務局のほうから御説明いただけますと、本日後ほどの議論でございます原型炉開発スキームの議論というものが円滑に進むと考えますので、お願いをしてもよろしいでしょうか。
 
【稲田戦略官】まず第1点目の御指摘いただきました「繋がる」というところに記載してあります核融合産業協議会でございます。これは何かというと、先ほど申し上げたように、核融合はもはや学術、研究開発だけのものではございません。したがって、ユーザー目線に立った時にどのような情報が欲しいのか、あるいはどのタイミングで何を決めなければいけないのかが、研究機関あるいは国だけでは決めにくい状況になっています。したがいまして、これらを議論するために作るのが核融合産業協議会でございまして、基本的には、現在、任意団体として設置してあります核融合エネルギーフォーラムがあるのですが、そこから産業の調整部門をうまく抜き出した上で、法人格を持つこちらの団体を作ります。また、核融合エネルギーフォーラムは様々な活動をしていて、例えばBA活動や研究開発活動などという、本来国が行わなければなければいけない議論を数多く行っています。このような議論に関しては国に一旦戻して、発展的に形を作っていくことになります。
 次にフュージョンテクノロジー・イノベーション拠点でありますが、民間企業が行う際に結構問題になることは、核融合は、クリーンエネルギーとは言いつつも、例えば炉の材料としてベリリウムといった危険物質などを使います。ベリリウムは、御承知のとおりベリリウム肺を起こすものでありますので、ある意味、有害物質を取り扱う実験施設であります。もちろん放射性同位元素を取り扱うこともありますので、このような研究開発を、例えば一大学、又は特に民間企業が研究開発を行う場合はかなりの困難が伴いますので、産学連携してその研究を行う拠点を今後整備していくということをうたっているのが、こちらのフュージョンテクノロジー・イノベーション拠点です。こちらは当面の間、QSTに設置するということを考えておりますが、炉を設置する主体として考えた時に、QSTはもともと日本原子力研究開発機構(JAEA)という炉を造る組織から研究機関だけを抜き出して、研究だけをする組織として設立されています。したがって、もう一回炉を造ることを考えると、バックヤード部分というのはかなり弱いところがありますので、この辺りをもう一度考えて、どのように強化して原型炉やその後に続くものを造っていくところまで走り抜けていくのかを議論することが最後の建設主体に関するものです。残念なことか、喜ばしいことか、核融合に関する技術を持っている国内の組織はQSTしかありませんので、その意味においては原型炉を、国が主体で行う原型炉、民間企業で行うものはまた別ですが、公的機関で行うものはQSTを中心に据えて、その組織をどのように強くしていくのかという議論を今後行います。これについては、参考資料3に書いてありますが、事務局とQSTで議論を行った上で、今年度後半に、どのようなことを考えるのかという方針について、まずはお示しするということを考えてございます。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。他に何か御質問、御意見などありませんでしょうか。稲田戦略官、どうもありがとうございました。
 それでは、本日は、戦略の策定を受けまして、概算要求の検討を行います。本TFでは、資料3の1ポツに示している4つのプログラムについて検討を行います。このうち本日は、技術イノベーション拠点を除く3つのプログラムについて検討いただきたいと思います。技術イノベーション拠点については次回のTFで御検討いただく予定です。それでは、「原型炉研究開発の加速に向けた方策」、「核融合人材育成の方策」、「アウトリーチヘッドクォーター(以下、HQ)の改善」の順に説明をいただき、各説明の後に意見交換を行います。まずは、原型炉研究開発の加速に向けた方策について、事務局から御説明をお願いします。
 
【稲田戦略官】資料4-1を御覧ください。「原型炉研究開発の加速に向けた方策について」であります。原型炉研究開発の加速に向けては、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略においては、「加速するため、民間企業の更なる参画を促すための仕組みを導入するとともに原型炉の研究開発を推進する」と書かれております。これを受けて、現状どうなっているかを記したものが次のパラグラフです。皆さん御承知のとおりでありますけれども、委員会の下に設けられた本TF等で議論した結果をAPとして進めているというところです。なお、核融合の原型炉の開発というのは、今までは、ITER、それからBA(幅広いアプローチ)というところが完全に着手しているところ、その次のプロジェクトという位置づけがされていたことから、ITERの補助金あるいはBAの補助金の中の一部として研究開発がされておりました。その結果として、資料4-1の最後のページにあります、原型炉研究開発の現行スキームというのは、今のいろいろな研究課題のスキームにぶら下がる形で、例えばNIFSやQSTに関しては、原型炉設計グループの下にあります共同研究調整サブグループで調整を受けていますが、正確に言うと、NIFSやQSTから大学に下ろされる研究開発についてはここの調整を受けていますが、QSTが自ら実施する研究等については六ヶ所研究所の原型炉設計合同特別チームの下についていて、この調整を受けていないといったことや、予算のスキームについてガバナンスが散り散りであったというようなことがあります。この辺りを一旦整理した上で、そもそも原型炉に関する研究開発はここからだんだん太くなっているものでありますので、概算要求においては、ITER、BAと独立した上で、原型炉の研究に向けて予算として立てようと思います。その部分を考えたものが3ページ目でございまして、内閣府と連携しつつ、文部科学省においては委員会でAPを作り、そのAPについてTFが、研究開発は様々あるのですが、その下のガバニングボードを差配し、ガバニングボードの下にはプログラムディレクター及びアドバイザリーボード、プログラムオフィサー等々を置いて、個別の課題が全体のうちのどのような位置づけになり、どのような進捗状況であるかが、ガバニングボード及びその上に立つTFにおいて統括的に管理できるようにすることを考えています。主な変更点及び論点というところが右に記してありますが、先ほど言ったとおり、APを直接的に遂行する研究を一括管理することが1点目であります。2点目としては、そのガバナンスを強化するということです。より成果の出る仕組みへの変更ということで、研究課題や期間、研究費を何とか費目に応じてそこから実施するために調整が必要というのではなく、柔軟に設定できるような仕組みを作ります。また、研究開発あるいは人材育成は、おのおの独立して行うことはよくありません。研究開発を行い、現場で人を育てていくことは極めて重要でありますので、人材育成プログラムを一体的に推進するとともに、ここが結構重要ですが、現場を知らない指揮官、指令本部は好ましくありませんので、司令塔である内閣府においては、しっかりと現場を見た上で作戦が立てられるような体制を作っていくことを考えています。2ページ目に戻りますが、先ほどのものについては一旦整理し、ガバナンスに基づく、原型炉に向けた研究開発体系を作った上で実施していきます。その後、例えば内閣府やいろいろな研究制度が今後立ち上がるかもしれませんし、ナショナルセキュリティーに関するものが出てきましたら、それに関する研究開発が立ち上がることもあると思いますが、このようなものもこのTFの中で、誰がどのようなことを行っているのかということを全体俯瞰しながら研究開発を進めていく、このような体制を構築することを現在検討しています。これが資料4-1に対する説明であります。
 なお、ここから先、具体的にどうするかという話が当然出てきます。概算要求でありますので、概算要求に向けて今後議論を進めた上で、詳細についてまた御説明させていただきますが、今回、特に人材育成やアウトリーチに関しましては、去年来議論している内容であります。議論した内容を含めてどのようにするかというところに関しては、資料4-1について御議論いただいた後、笠田先生からプレゼンしていただきます。よろしくお願いいたします。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。特にこの改正スキーム図案につきまして御意見等がありましたらお願いいたします。福家委員、お願いします。
 
【福家委員】御説明ありがとうございました。ずっと私も、やらせていただいておりまして、今の核融合のプロジェクトにおいては、やはり原型炉設計合同特別チームの寄与というのは非常に大きいのだというふうに思っております。新しい改正スキーム図を見ますと、その原型炉設計合同特別チームの関与がどういう関与の仕方になるのか。特別チームはアドバイザリーボードだけというふうに見えますが、実際に誰が何をするのか、今までいろいろコンタクトをさせていただいた方たちがどうなるのかなと、その辺りについてもう少し御説明いただけるとありがたいのですが。
 
【稲田戦略官】なぜその原型炉設計合同特別チームを外したかというところを、反対から説明したほうが分かりやすいと思うのですが、原型炉設計合同特別チームの方は研究実施者です。したがって、全員をアドバイザリーボードに任命すると利益相反の問題が生じて、必ずしも手を挙げてお金を取らないということになってきます。ガバニングボードというのはオール・ジャパンで、巻き込んだことのいい点であり悪い点でありますので、今般、ガバニングボードから一旦外しました。ただし、福家委員の御指摘のように、技術等をよく分かっているのはやはり原型炉設計合同特別チームの方です。ですので、利益相反が生じない範囲においてガバニングボード、プログラムディレクターから、こちらのほうにお話をお伺いした上で、全体の部分についてはきっちりと御意見をいただき、決定には関与しないけれどもアドバイスをいただくということで、アドバイザリーボードに位置づけて設計をしているところでございます。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。藤岡委員、お願いします。
 
【藤岡委員】フュージョンエネルギー・イノベーション戦略のところで、民間企業の更なる参画を促すための仕組みというふうに書かれているのですけど、それに対して今回お示しいただいた改正スキーム図のところに民間企業という言葉が明確には出ていないというのがあるのですけども、これはどういうふうに考えればよろしいのでしょうか。
 
【稲田戦略官】この改正スキーム図は研究開発(R&D)に関するスキームであります。したがいまして、R&Dは、もちろん民間企業でも行われますけれども、この場合については申請する側の位置づけでありますので、ガバニングボードには入れておりません。ガバニングボードに入れないのは、先ほど申し上げたように、利益相反関連です。その上でですが、民間企業の巻き込みはR&Dだけではありません。技術マップ、産業マップを後ほど作ると申し上げましたが、それは、まず何が欲しいかということがあった上で、ではそれに基づいて技術はどうするのかという話になります。技術についても、フルオープンではなく、どの辺りをオープンにして、どこの辺りをクローズにしていくかという議論は今後行われます。その点について、また民間企業も含めて議論を進めた上で行いますが、まず第1のR&Dの部分に関してはこのような体制を作っていきたいと御理解いただけるとありがたいと思います。
 
【藤岡委員】分かりました。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございます。他に御意見、御質問等いかがでしょうか。よろしいですか。大変力強い改正スキーム図になっていると思います。また概算要求等で御説明いただくことになると思います。
 
【稲田戦略官】そうですね。付け加えますと、細かい話なので、委員の皆様には今回の説明から割愛しましたが、実は今までのガバニングボードの調査は調査費が全くありませんでした。皆様の自己負担で行っていましたが、今回は一定の事務費等を作り、何か検討したい、深掘りしたいことがありましたら、それにも対応できるように、要するに機動性と主体性と、責任を持ってガバナンスをするという体制にするつもりでありますので、この辺りも含めて今後作っていくには多くの先生方、先ほど申し上げたように、ガバニングボードの内容であり、TFの委員、あるいは合同特別チームの構成員は、メンバーが重複することが多くあります。ですので、皆様の協力を今後とも引き続き得て、いいものにしていきたいと思いますので、御協力賜れるとありがたいと思います。よろしくお願いします。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。それでは、本日の検討を踏まえて概算要求していただくことになると思います。事務局より次回の委員会に御報告いただければと思います。
 続きまして、核融合人材育成の方策について、東北大学教授、笠田竜太先生から御説明をお願いいたします。
 
【笠田教授】坂本瑞樹主査、御紹介ありがとうございます。東北大学金属材料研究所の笠田でございます。昨期までTF主査も担当させていただいておりました。本日は、昨期までの検討を踏まえているところもございますけれども、1コミュニティーの人間として、今後の核融合人材育成の方策についてということで述べさせていただきたいと思います。
 資料4-2の2ページ目を御覧ください。まず、委員会の2018年の「核融合エネルギー開発の推進に向けた人材の育成・確保」という文書が取りまとめられておりました。こちらで示された大学院教育、人材流動性、アウトリーチに関する様々な具体的な取組は、一定程度進められていますが、皆さん御承知のとおり、いまだに不十分でございます。また、当時からの核融合を取り巻く状況は劇的に変化しているという認識は皆さん共有するところかと思いますけども、そういった点を踏まえて今後の取組を検討することが必要でございます。特に2023年4月に策定されたフュージョンエネルギー・イノベーション戦略では、フュージョンエネルギー人材の育成を強化する必要を強く述べております。こちらに示すとおり、国内大学等における人材育成を強化するとともに、他分野や各国から優秀な人材を取得する取組を行うことという文言が示されております。一方で、社会的状況を見ますと、少子化により人材が不足している我が国において、フュージョンエネルギー人材の母数を増加させるために、核融合科学の学際化を進めて、幅広い頭脳循環を実現することで、他分野や海外から人材を獲得することが肝要かと存じます。複数大学からの学生や若手研究者、海外からの人材等が参加し、フュージョンエネルギーに関して俯瞰的に学習できる教育プログラムの提供に向けた検討を進める必要があると考えております。こういった観点で、「他分野や海外から人材を獲得すること」、「核融合を俯瞰的に学習できる教育プログラムを提供すること」の2つの点について検討をしていくということでございます。
 3ページ目を御覧ください。論点としまして私から御提案させていただくことですけれども、こういった視点に対しまして、まず第1に、核融合コア人材と核融合周辺技術の人材育成は分けて考えるべきではないかと考えられます。特に核融合周辺技術、具体的には核融合炉工学ですが、こちらの人材育成を支援すべきではないかと考えております。というのも、やはり核融合炉の周辺技術というのは、核融合にとっては周辺ですし、例えば原子力工学にとっては、やはり周辺であって、どうしても人材育成というのが、特にお互いから何となく見られているというところでこれまでは留まってきたというのが、私が現場で感じているところです。例えば、原子力に関しては人材育成が強く進められていますし、核融合のコア技術に関しましては、特にプラズマの閉じ込めというところに関しましては、当然学術を進める研究機関がございますから、そういったところで注力されているということで、そういった背景がございます。逆に申し上げますと、核融合炉工学というのは原子力工学を含む部分が大きいため、クロスカッティングした育成というのが可能ではないかと考えられるわけです。一方、入口としては、やはり核融合というのは今非常に興味を持っていただきやすい環境にあることは事実でございます。そういった点で、原子力技術を踏まえた上で核融合を学ぶプログラムというのを構築してはどうかと御提案申し上げます。アウトリーチの初期の段階では、核分裂と核融合を切り離すことというのは、やはり場合によっては必要になると思いますし、いろいろな誤解を生まないためにも、そういった入口というのは必要かと思いますけれども、やはり人材育成の出口戦略、あるいは社会受容性向上の観点からは、核融合で人材を育てたとしても、こういった炉工学分野に関しましては核融合だけでしか生きていけないような人材にはならないと思うのですよね。そういった点をリンクさせるということが、戦略上、このプログラムの意義を高めるためにも、あるいは社会的に受け入れられるためにも必要ではないかと考えられます。そういった点は、当然原子力だけではなくて、他分野との人材流動を起こすということで、原子力分野以外にも分野が考えられると思います。例えば医療分野は非常に大きいマスが想定されますけども、具体的にどういったところで絡められるかとか、そういったところの議論は必要かと存じます。あとは、学部や修士でこれまで核融合の研究をしていて民間企業に就職した人材が再び核融合に戻ってくることを促すために、どのような育成が必要かという観点も重要かと思います。これは私ごとですけれども、やはり以前に卒業した学生からの問合せというのは昨今非常に増えています。場合によっては、社会人ドクターで進学したいという方も問合せが増えてきておりますので、こういった状況で、では具体的にそういった方をどういうふうに教育していくのかと、そういったことも必要かと思います。核融合は面白そうという雰囲気、ストーリーを見せることと、そこから多様なキャリアパス、入口はやはり夢を見せるというのが非常に大事だとは思うのですけども、そこからの現実的なキャリアパス、核融合という分野だけに留まらないのだよという多様性を示す具体例の提示が重要でないかと考えられます。
 具体的に、核融合を俯瞰的に学習できる教育プログラムを提供することという論点に関しましては、教育プログラムのターゲットをどうするのがよいかというのを御議論いただければと存じます。基本的には、核融合を専門としない人、例えば大学で言うと学部生、あるいは高専生と、核融合を専門としている大学院生や企業人とで求められるプログラムは異なると思いますけれども、これは両方が必要なのではないかと考えます。この辺り御議論いただければと存じます。さらに言うと、各大学が得意な分野、炉工学技術に関しまして、1つの大学でできればいいのですけれども、もはや大学も多様化が進んでおり、それらをうまく持ち寄って講義や共同研究を推進することによって教育プログラムを構築してはどうかというふうに御提案申し上げます。というのも、やはりコロナ禍後では、オンラインを効果的に活用できるので、大学をまたいだ講義やカリキュラムを実施しやすいので、分野横断的な教育を行うことが可能ではないでしょうか。さらには、大学だけではなくて、国をまたいだ、そういったプログラムも可能ではないかと、特に博士課程についてはITER機構参画極との相互教育プログラムも効果的ではないかということで、個人的にそういった極の大学の先生とコミュニケーションを取っていますけど、やはりそういうのは非常にいいのではないかというような御意見は、個人的にはいただいております。あとは、教育のために研究設備を利用できる環境を作るべきではないかと、やはり核融合は最先端技術の塊ですので、座学だけで学べるものには限界がございます。幸いにも我が国には核融合工学に関わる施設がこれまでもございますし、今からも整備されていくと。ただ、大学単体で考えると、大学の施設共用というのはやはり、なかなか核融合というある種の特殊性があるものに対しては、共用というところでは限界があるところも確かです。そういったところの利用できる環境というのをきちんと支援、整備していくということは大事かと存じます。ということで、これは今申し上げましたけども、国内だけではなくて、海外での活動を視野に入れて検討することが重要です。やはりITERの建設が進んでいることもございますし、例えば原子力分野では人材育成事業で、海外の大学に行って研究をしながら、現地での学び、あるいは人材ネットワークを作っていくというような事業が、具体的に申し上げますと、近藤先生がいらっしゃる東京工業大学の研究所のほうで実施されているような、そういったプログラムが非常に成功裏に進んでいるというふうに私は個人的には見ていますので、そういったことを核融合でもやるのは効果的ではないかというふうに考えられます。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。それでは、意見交換に移ります。資料4-2の3ページ、4ページにお示しいただきました、「他分野や海外から人材を獲得すること」、「核融合を俯瞰的に学習できる教育プログラムを提供すること」の各論点案を御参考にしていただき、核融合人材育成の方策につきまして御意見などありましたらお願いいたします。武田委員、お願いします。
 
【武田主査代理】笠田先生、大変ありがとうございます。周辺技術人材の育成に注力すべきという点につきましては、全面的に同意いたします。核融合スタートアップである京都フュージョニアリング社の採用を見ておりますと、これまで80名を超える採用が行われておりますが、実に3名に2名が核融合以外の分野からの採用となっており、こうした採用された技術者の皆様個々人が、国際的な核融合研究開発プロジェクトですばらしい働きをしていらっしゃいます。笠田先生の御資料からは、早い段階で核融合に関する教育プログラムを施すということが核融合人材の輩出に不可欠であるというように読めます。しかしながら私は、その事例から、特に周辺人材と表現される原型炉人材については、採用前の核融合に特化した教育的プログラムというものは必ずしも必須ではないのではないかということを提言したいというふうに考えます。つまり、他分野からの人材獲得というのは、教育プログラム整備の問題であるというのと同じぐらい、採用側の意識の問題ではないかというふうに私は考えているわけです。先ほど笠田先生の、以前学部や修士で研究していた人間が再び戻ってくるというようなメールをよく受け取っておられるということですが、京都フュージョニアリング社でも、こうした人材が毎週のように履歴書を送ってくださっているような状況と聞いています。こうした人材ですけれども、核融合業界に戻りたくても、研究機関ではなかなか受け入れてもらえないために、この京都フュージョニアリング社の門をたたいているというふうにも考えられるのではないかと考えるわけです。したがいまして、こちらの論点で、核融合を専門としない学生若しくは核融合を専門とする社会人という二項対立で論点が整理されておられますが、原型炉建設に向けましては、核融合を専門としないような社会人についても積極的に周辺人材として採用した上で、その後に核融合に関するOJTのような育成、これを行っていくような意識ですとかプログラムの構築、こうしたものも併せて積極的に検討するべきではないかというふうに私からは意見を申し上げたいと思います。ありがとうございます。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。まずは御質問を受けたいと思います。近藤委員、お願いします。
 
【近藤委員】笠田先生、ありがとうございました。私のほうからは2点コメントさせていただきます。先生からお示しいただいた内容については、まさにそのとおりだと思いますが、まず1つ目、原子力工学に関しましては、私も20年余り、特に高速炉若しくは加速器、未臨界型炉、この辺りを研究してまいりましたが、特に核融合とこうした技術に関しまして、特殊な環境下で用いられるような材料、こういったものの開発等に関しては、連携することによって相乗効果すら得られるのではないかというふうに期待できるものだと思います。ですので、お互いに連携し合うことがお互いのためになるような、そういった技術協力ができるのではないかなというふうに期待します。もう1点は、教育ネットワークの件です。これはまさにすばらしいなと思って聞いていたのですが、大学若しくは大学院に入りますと、その大学、大学院の中のプログラムで閉じてしまうことが多いのですが、例えば笠田先生から材料のことを学び、北海道大学でサイエンスコミュニケーションを学び、若しくは名古屋大学でプラズマを学びと、こういったオール・ジャパン的なネットワークが構築されて、限られた時間ではあると思うのですが、学生が刺激を受けながら核融合に向かっていくというようなことができると本当にすばらしいのではないかなというふうに思いました。
 
【坂本瑞樹主査】坂本隆一委員、お願いします。
 
【坂本隆一委員】私も、この人材育成というのは非常に重要なことで、核融合を知ってもらうために学生の教育は必要かと思います。ただし、今、何を目的として人材育成をするかということが私には見えなかったので、質問させていただきます。これだけ核融合に入ってくる人を育成したとして、育成された人が活躍できる場所があるかどうかということをもっと考えるべきだというのが私の意見です。もしこれに関してお考えがどなたかあれば、御意見を聞きたいと思います。
 
【坂本瑞樹主査】木戸委員、お願いします。
 
【木戸委員】今回御提案いただいた案は、学生を集めて母集団を増やすという形と受け取ったのですけども、実際、学会、年会等に参加すると、それなりに学生、核融合関係、もちろんコアの人材のほうが多いのかもしれませんが、そういったところの学生が多いのですけど、お話を聞いていると、国立の研究所以外の就職先というのはあまりイメージしてなくて、結局就職先、核融合以外に離れてしまうという学生も多いという印象も受けますので、坂本先生の御意見とも少しかぶりますけども、やはり母集団を増やすと同時に、キャリアパスというのですか、国立の研究所以外、普通の民間のメーカーやスタートアップ、こういったところも学生にきちんと示せて、入口から、それこそ出口、そういった将来にわたって核融合ができるというところを示すのが大事ではないかと思いました。
 
【坂本瑞樹主査】吉橋委員、お願いします。
 
【吉橋委員】今皆様の意見をお聞きしていて、現在学生、現在の高校生や大学生に対する人材育成というところと、それからその後のところの人材育成というのを少し分けて考える必要があるのかなということをちょっと思いました。それで、私は大学に勤務しておりますので、大学側から意見を言わせていただくと、先ほど近藤先生もおっしゃっていましたけれども、現在、原子力の分野ではもう既に、各大学でオムニバスに講義を受けるということは、何年も前から人材育成ということでされていますので、そういったところを参考にしながら、こういった核融合の教育というのも構築していったらいいのではないかなということを思いました。
 
【坂本瑞樹主査】藤岡委員、お願いします。
 
【藤岡委員】私は大学で理学研究科の協力講座を担当しているのもあり、コメントさせていただくと、理学研究科の学生にとってみて今核融合が魅力的かどうかと言われると、少し微妙なところがあります。やはり理学研究科の学生の視点というのは工学科のところに難しさがあるかというところを問うので、そこに対するアピールというのは少し工学部の学生とは違うのかなと思います。なので、今回のこういう提案を実現する過程では、やはり学部とか学科とかそういうものの傾向も捉えながら、ぜひプログラムを考えていけたらいいなというふうに思いました。
 
【坂本瑞樹主査】それでは、笠田先生から御回答をお願いします。
 
【笠田教授】私が全てに意見を述べても、ここはTFできちんと議論していただくのがよろしいかと存じますけれども、まず武田主査代理からOJTに関するコメントいただきましたけど、それはもうまさしくおっしゃるとおりで、大学の中だけで閉じるのではなくて、やはり産業界を巻き込んでインターンシップのような形で、そういったところも人材育成に寄与、お互いに交流していくという形で行っていくのは大事かなというふうに私も個人的には考えております。
 続きまして、坂本隆一委員の育てた人材がどこに行くのかという根源的な問題です。これは、多分イメージされている部分が、核融合プラズマ、いわゆるコア人材のことを考えられていれば、確かにそういった面は非常によく考えてやっていくべきですし、藤岡委員の理学部の学生が見ているところが少し違うというところもあるので、サイエンスの人材は結局、学生の興味・関心に応じてやっていくしかないと思います。私も大学の人間として、そこはやはり核融合のサイエンスが非常に面白いというところを、核融合の実現とある意味かぶる部分もあれば、ある意味別の部分の文脈で説明できる努力は、これまでも我々のコミュニティーはしてきたつもりでいると思いますし、今後もしていくというところで、それは何ら他のサイエンス分野と変わらないところかと存じます。今論じているのは、炉工学、周辺技術人材で、周辺技術人材といっても結局就職先がなければどうしようもないじゃないかというのは、まさしくおっしゃるとおりではございますけれども、それは今後のフュージョンエネルギー・イノベーション戦略において必要とされるだろう人材を見越して、資料に記載しております。ただ、私の説明でございましたとおり、核融合炉工学にしか使えない人材を育てるわけではないということは、そこは明確に意図するべきところかと御提言申し上げます。今、私は第2次核融合ブームだと思っているのですけど、第1次ブームの頃、いわゆるオイルショックの影響で旧JAEAにJT-60ができたとか、私が子供の頃、華やかな時代というのは、この周辺技術人材、科研費のエネルギー特別研究(核融合)に相当いろいろな人材が集まっていました。全然核融合と関係ないような分野から集まっているのですけれども、そういったところで集まった方々は、またそれぞれの分野で活躍されて、核融合に関して非常に肯定的な意見を持ちながらも、それぞれの分野で一流の仕事をされている先生、あるいは産業界の方が多いと思います。原子力に関しましても、今、原子力のオピニオンリーダーとされるような、私より上の世代の先生方、そういった方は、実は博士論文が核融合だったりする方が結構いらっしゃいます。そういった点で、やはり原子力と核融合というのは、炉工学技術という観点においては非常に切り離せないというか、お互いに相補的に人材育成、出口に関しても交流ができるのではないかということは、これまでにそういった実績からも示されるのではないかと思います。ここは産業界から参加している福家委員にも御意見を伺いたいところですけれども、そういった観点があると考えられます。
 あとネットワークです。近藤委員からございましたとおり、人材育成ネットワークというのがやはり非常に大事で、オムニバス講義、私も原子力のほうで少し関わったりもしていますけれども、やはり今の学生は非常に興味が多様になっているので、スポット的に参加したいという人も当然出てくると思うので、その辺りはきちんと単位取得のメカニズムを作っていくことも大事だと思いますし、逆にスポット的に参加するような方にも間口を広げられるような仕組みで、広く若い方に受け入れられるようなプログラムを構築するのがよいのではないかと考えております。以上、私の意見を述べさせていただきました。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。大変幅広い御意見をいただき、そのお答えもいただきました。今の議論の中で、私たちが論点として重要視しなくてはいけないのは、ターゲットをどこに置くかということで、学生、高校生、大学、社会人、そういうところをしっかり意識しながらプログラムを組んでいくということ。あと、母数を増やすだけではなくて、出口戦略を見るということ。工学とサイエンス、ちょっと違いますが、工学という意味では、他分野に出ても、また戻ってきてくださるというか、また分野循環することが重要であるということで、そういうような論点を盛り込んで概算要求に生かしていただければと思います。あともう一つは、やはり教育ですので、空白があってはいけないというのが笠田先生の趣旨なのではないかというふうに、私なりに理解いたしました。そういう中で、やはり炉工の周辺人材が手薄であるというところで、そこを今充実するということでした。一方、コアというか、プラズマのところは大分進んでいるということではありましたが、やはりその2つのバランスを取りながら、どこにも分野の空白がないような形で周辺技術もでき、例えば核融合炉のシステムの運用という意味では、やはり少しプラズマのところも知らなくてはいけないということもあると思いますので、バランスの取れた概算要求のプログラムができれば、これからさらに若い人たちが核融合分野で活躍してくれる場ができるのだと思います。笠田先生、ありがとうございました。それでは、この検討の結果を踏まえて概算要求の検討をいただいて、事務局より次回の委員会に御報告いただければと思います。
 最後に、資料4-3「HQの改善に向けて」についても笠田先生から御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
【笠田教授】HQの改善に向けてということで、こちらも私、東北大金属材料研究所所の笠田より御説明申し上げます。私はHQの設立当初から現在までHQの委員を務めています。
 HQについて概略を述べます。まず、設立は2019年2月です。目的といたしましては、大学及び研究機関が従来個別に実施しているアウトリーチ活動を集約させ、一体となって戦略的なアウトリーチ活動を実施することとなっております。実施体制としましては、文科省、QST、NIFS、大学等、委員会、TF等の約20名からとなっております。活動内容としましては、関係者が協力して戦略的に核融合のアウトリーチ活動を行うため、HQで年に6回程度会議を行って、アウトリーチ活動の内容を検討してまいりました。
 課題といたしましては、2023年4月に策定されたフュージョンエネルギー・イノベーション戦略に基づいて、アウトリーチ活動をさらに推進していく必要がございます。同戦略においては、アウトリーチ活動について、このように記載しております。「国民の理解を深めるアウトリーチ活動を実施すること。社会的受容性を高めながらフュージョンエネルギーの実用化を進めていくため、HQの体制を強化し、フュージョンエネルギーへの国民理解を深める活動を推進する」。今後、核融合エネルギーの社会実装に向けて、国民との対話を通した国民の社会的合意を形成するための活動を行うことがHQの最大の目的となり得ます。現状ではこの目的を達成することが困難であり、改善が必要ということで、この意見になっております。
 課題といたしましては、このように4つ挙げられます。まず、「アウトリーチ活動を行うにあたり、目指すべきターゲットやターゲット層が明確になっていない。」次に、「アウトリーチ活動が、国民にどのように伝わっているのか把握できていない。」第3に、「各組織でアウトリーチ活動を行う際、活動実績がある場合には対応可能だが、活動実績がない場合には、どのような活動を行えばよいのかの知見やノウハウが備わっていない。」そして最後に、「組織体制として、委員会やTFとの連携が十分ではない。」これらが挙げられます。
 改善の方向性の提案としまして、こちらの図のように示されます。全体としては、社会的合意を形成するまでの活動内容を、ターゲット層とともに段階的に整理してはどうかということになります。こちら改めまして申し上げますと、今日の御挨拶のほうで奥本委員からもございましたけれども、アウトリーチといいますと、その言葉からは一方的な、一方通行の、核融合すばらしいよというようなイメージがあるかもしれませんけども、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略におきましては、社会実装ということが目的になるわけです。やはり昔と違って、何か上がこういうすごいのを造るよと、造っていいですか、いいよというよりは、もっとお互いの対話によって核融合に対する社会的合意を作っていくことが非常に大事だというふうにHQの議論の中では、その点は共有されています。そこで、原型炉建設までの社会的な合意形成に向けて、3段階を設定すると、まず第1に、そうはいっても、やはり我々、合意のためには対話が必要で、対話のためには対話の手法が必要であるということで、バックキャストして、こういった3つになっているのですけども、第1に「国民との対話の手法の確立」、第2に「国民との対話の場の構築」、そして第3に「国民との社会的な合意形成」というところで進めていくということになります。この中で各論として出てくる点が、まず各段階において実態把握調査の実施は必至であろうと、我々が一方的な思いを伝えていても、結局どのように受け止められているかというのを客観的に把握する必要があります。アウトリーチ活動の方向性を導くことができる専門家の活用ということで、これまでは我々核融合コミュニティーの人間が、ああでもない、こうでもない、外部の専門家の先生のお知恵もお借りしながらというところでしたけれども、より戦略的に方向性を導ける専門家を活用する必要があるのではないかと思います。委員会やTFとの連携をやはり強化して、きちんと政策というか、こういったナショナルプロジェクトとして進めていく上での方策をしっかりしていく必要があると考えます。
 さらに年度別のターゲット層というものを、きちんと年次展開を考えていくことも、やはり今後のアウトリーチを具体化していく上では重要だと考えます。まず年度について、2023年度から10年計画で区切っておりまして、先ほどの3つの段階に分けております。最初の3年間が「国民との対話の手法の確立」、次の4年間が「国民との対話の場の構築」、最後の3年間が「国民との社会的な合意形成」ということで、これらの年次展開は、APにおいて示された原型炉の立地条件の検討や原型炉の候補地選定というものと強く関連してくるところでもございます。こういった中で活動内容としましては、最初の3年間できちんと組織を整備して、実態を把握して、活動の方向性を明確にして、4年間できちんと対話の場を作っていきます。必ず実態把握をしながらフィードバックしていくことで、社会的な合意形成につなげていきます。ターゲット層に関しましては、最初の3年間は、やはり既に核融合のことを知っている人を中心に、即戦力となるような、大学生、大学院生をターゲットとしつつ、その次の世代に向けての対話の場、あるいはアウトリーチのやり方というものを作っていきます。社会人に関しましても、もちろん産業界、既に核融合に興味があるような方、こういったステークホルダーをつなげていくというふうなことは最初から全力でやっていく必要があると存じます。最終的には全ステークホルダー、ターゲット層に対して、きちんと対話の場で合意形成に向けた活動を行っていくということが想定されるわけです。

【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。原型炉建設に向けて、最終的な目標である国民との社会的な合意形成に達するまでのHQの改善の方向性、年度別のターゲット層の御提案をいただきました。これらについて意見交換をしたいと思います。御意見等ありましたらお願いいたします。近藤委員、お願いします。
 
【近藤委員】笠田先生、ありがとうございました。非常によく分かりました。私も学術調査官をしていた2020年の頃に、HQに所属させていただいた時期がございました。その頃活動しながら感じたことでもあるのですが、もしよろしければ笠田先生に、現状と今後の計画についてもう少しだけ教えていただきたくて、HQの会合では、各種様々なアウトリーチ関連の情報共有が図られたり、若しくは方針策定のようなことが積極的に行われたりしたと思うのですが、一方で、HQが主導するイベント等を実施する上で、一つ、組織としての機動性が少し欠けていた部分があったのではないかと思います。具体的に言いますと、予算的措置とか、若しくは人事的な部分というのがあったと思うのですが、それにつきまして現状と今後のことについて、可能な範囲でいいので、お考えをお聞かせ願えればと思います。
 
【坂本瑞樹主査】これに関して、笠田先生お願いします。
 
【笠田教授】資料4-3の下部2つ目と3つ目のポツが、まさにそれに対する対応としてHQより提案されている点だと思います。やはり近藤委員御指摘のとおり、予算措置とか具体的な実行可能な体制、そういったものが現状では不足しているということで、きちんとアウトリーチ、真の意味でのヘッドクォーターとしての司令塔の機能を作るためには、専門の組織、人員が必要であるということがこの2つ目の提案になっておりますし、しかもそれが勝手に、何となく楽しいアウトリーチをやっているのではなくて、きちんとミッションオリエンテッドに、すなわち国民との社会的な合意形成というところに向けて委員会やTFと連携してやっていくことが大事ではないかというふうに御提案申し上げます。
 
【坂本瑞樹主査】武田委員、お願いします。
 
【武田主査代理】私もIAEA時代にアウトリーチの関連政策も担当しておりましたが、HQにつきましては、国際的にもユニークな施策として高い評価がIAEAでもなされておりましたし、すばらしい取組というふうに考えます。また、ここでお示しいただいている実態把握調査でございますが、現在、私が研究代表者として、NIFSの共同研究の枠組みで実施しておりますが、これをHQに移行させていくということも賛成いたします。一方で、先ほどの近藤委員の御指摘にもつながりますが、示していただいた改善の方向性については、HQでの議論のみでは目的の達成が難しく、実際のサイエンスコミュニケーション活動ですとかパブリックエンゲージメントの活動に従事をする、人、予算両面でのリソースが必要となることは、私としては明らかであるというふうに申し上げたいと思います。その意味で、今後始まっていく立地候補の検討を見据えた上で概算要求に盛り込んでいくことは重要であるということを私見として申し上げたいと思います。また、もう1点、HQの会合、現在議事が非公開ということもございまして、ガバナンスには、若干の懸念を申し上げたいと思います。今回議論の論点としまして、委員会やTFとの連携強化という論点がございますが、例えば、一例でございますが、実際のアウトリーチ活動の遂行、予算執行に当たっては、先述スキームの一環として実施するですとか、若しくはHQを現在のアドバイザリーボードに類するような位置づけにするですとか、あくまで私見でございますが、そういったような議論というものも併せて必要になってくるのではないかということを意見として申し上げたいと思います。
 
【坂本瑞樹主査】坂本隆一委員、お願いします。
 
【坂本隆一委員】資料4-3の6ページ目と7ページ目を見ますと、最終的には国民との社会的な合意形成というものが挙げられているのですが、この提案は、原型炉建設に向けた合意形成に集中したミッションを持つアウトリーチに集中するのか、それとも核融合に関する全般的な理解も含めたものになるのか、ミッションや目的を教えていただきたいと思います。
 
【坂本瑞樹主査】これに関しましては、笠田先生お願いします。
 
【笠田教授】あくまでも私の私見ではございますけども、国の施策として行う部分は、恐らく原型炉建設に関するところを集約してやって、そういったところで予算措置等もあるのであれば、そこにエフォートが割かれるということは当然かと思います。ただ、実際に今後行っていく主体がエフォート管理で他のことをやることは妨げるものでもないですし、むしろそういった幅の広い核融合に関するアウトリーチという部分もしっかりやられていくほうが、より深みのある、あるいは合意形成に向けてより健全な活動というのができるのではないかと個人的には思っています。ただ、そこの仕組みづくりは、このTFあるいは委員会のほうでしっかりと考えていただくことが必要だと思いますので、非常に難しいところはあるとは思うのですけども、私は、そういったことも含めてやっていく、切り分けは大事だと考えています。
 
【坂本隆一委員】もしこれが実際に原型炉を造る立場で実施するのならば、もちろん原型炉建設に集中しても良いかと思うのですが、やはりHQとしてやるならば、広く核融合に関することも進められると良いと期待しています。
 
【坂本瑞樹主査】今御指摘のように、やはり核融合全般の理解なくして原型炉建設というのもありませんので、表裏一体なのかなというふうに思いました。横山委員、よろしくお願いします。
 
【横山委員】笠田先生がおっしゃっていただいたように、合意形成をしていく、合意形成をしなければいけないのですけれども、専門家が一方的に伝えるということだけではなく、受け手のほうが何を考えているのかというのを常にやり取りしながら、まさにこれはリスクコミュニケーションということなのだと思いますけれども、それが重要ではないかというふうに考えています。この問題というのは核融合に限らず、これまで原子力、放射線といったものに関しても、どうやって社会に受け入れてもらうのかということで議論されてきたものだと思います。ですから、今回のTFの中にも、社会経済といった観点からの専門家もいらっしゃいますので、少し今の議論の中では理工学系の専門家というような話がありましたけれども、社会経済の専門家も含めて議論を進めていくということが必要なのではないかと考えました。それから、先ほどの議論の人材育成という中にも、やはり理工学だけではなくて、社会科学、それから経済といったような人材も含めて、人材育成ということを含めておいたほうがいいのではないかというふうに考えます。
 
【坂本瑞樹主査】重要な御指摘と思います。先ほど武田委員からありましたHQのガバナンスという点に関しては、事務局のほうから何かございますでしょうか。
 
【稲田戦略官】笠田先生が御説明いただきました人材育成等含めて、何を対象にしてどのような働きかけをしていくのかというところにも関わってきますので、2つ併せてどのような体制を作るかというのは今後検討した上で、また委員会に諮っていくかと思います。その上で、今までは全然予算措置がされておらず、何もできていなかったというのが正直なところだと思います。ですので、ここについてはしっかりと予算要求をした上で、何のために活動するのかといえば、核融合の社会受容を高めるため、実用化されたものが社会に受け入れられるためなのですが、そこだけではなく、もう少し広いターゲットで行わないと、核融合は受け入れられないということになりますので、今皆様からいただいた意見を踏まえ、幅広い活動ができるというような体制について考えた上で委員会に提示させていただきたいと思います。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。それでは、笠田先生、どうもありがとうございました。大変すばらしい御検討をいただきまして、論点もすっきりまとまってきて、あとは委員の皆様からいただいた貴重な意見もありますので、事務局のほうでまとめていただいて、委員会に御報告いただくことになります。ありがとうございました。
 続いて、議題3「CR2について」に入ります。それでは、これは資料5に基づいて、私のほうから御説明させていただきます。本年4月25日の委員会において、CR2の実施方針、実施時期、方法等を検討するように付託を受けております。実施時期に関しましては、CR2を2025年から数年以内に行うこととされておりました。また、第1回中間チェック・アンド・レビュー(以下、CR1)が2022年1月に実施されている状況も踏まえて、実施時期、方法を検討する必要があります。方針につきましては、2ページ目のCR項目改訂版に書かれているところの目標が達成されたかということを見ていくことになります。この改訂版につきましては、TFにおけるCR更新の検討に関わる主な意見というものを本年2月1日の委員会に提出して、その時に主査だった笠田先生から御説明いただいたのですが、その後、それを受けて本年4月25日の委員会において改訂されたものです。
 改訂された項目は、丸3と丸4の項目でして、CR2に関係するところですと、ITERの運転開始が当初の達成目標に挙げられていましたが、重要なことは、運転開始をしたかどうかではなくて、ITERの運転開始に必要な統合化技術を取得できたかどうかという観点から、一つの文章にまとめられております。また、丸4の材料開発に関しては、発電時期の前倒しの案における第1期の低出力パルス運転による早期発電実証のための規格基準を取得するために、それに必要な照射量を統計的なデータセットとして取得して、重照射データを検証することが必要という観点からの改訂案です。このような改訂も含めて、ここに記載されている目標が達成されたかどうかをこれから詳細に評価していくことになります。
 これを踏まえまして、実施スケジュールとしては、これまでのTFの議論におきましてCR2を2027年と想定して議論を進めてきましたので、ITERのベースラインが確定していない、今議論中である状況ではありますが、現状では2027年にCR2を完了するとして、2026年度にCR2を実施して、その2年前の2024年度に中間ヒアリングを行う案となっております。実施方法に関しましては、CR1に準じて行うことになります。参考資料4として、CR1報告書がありますが、これから委員の先生方にはとてもハードな作業として、このCR2をしていただくことになりますので、よろしくお願いいたします。
 分担につきましては、この資料5の3ページ目に示されておりまして、このような形で今期から、炉設計から、最後の15番レーザー方式までというところを担当いただくことになっております。朱書きのところが第11期からの変更箇所であります。概要の説明は以上です。
 今説明した内容に関しまして御意見等がありましたらお願いいたします。分担案についてもお示ししましたとおりでよろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは、この案のとおり分担して、これからCR2に向けて尽力していきたいと思いますので、皆様、御協力よろしくお願いいたします。
 それでは、本日用意しております議事は以上ですが、この他に特に報告、審議すべき案件はございますでしょうか。よろしいでしょうか。次回のTFの日程につきまして、事務局から御連絡をお願いします。
 
【吉原専門官】次回のTFは、6月27日火曜日14時から、オンラインで開催いたします。議題等につきましては追って御連絡申し上げます。
 
【坂本瑞樹主査】ありがとうございました。それでは、本日の原型炉開発総合戦略TFはこれで閉会いたします。御多忙の中、御出席いただきましてありがとうございました。
 
―― 了 ――

お問合せ先

研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付

   髙木、樋口
   電話番号:03-6734-4163