核融合科学技術委員会 原型炉開発総合戦略タスクフォース(第27回) 議事録

1.日時

令和4年10月4日(火曜日)14時00分~15時30分

2.開催方法

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインにて開催

3.議題

(1) 核融合発電の実施時期の前倒しの検討におけるアクションプラン 「1.超伝導コイル」~「12.社会連携」について
(2) 令和5年度核融合関係概算要求について
(3) 核融合政策に関する最新情勢について

4.出席者

原型炉開発総合戦略タスクフォース

笠田竜太主査、坂本瑞樹主査代理、伊神弘恵委員、奥本素子委員、木戸修一委員、古賀麻由子委員、近藤正聡委員、坂本隆一委員、鈴木隆博委員、蓮沼俊勝委員、東島智委員、福家賢委員、藤岡慎介委員、横山須美委員、吉橋幸子委員

文部科学省

稲田剛毅研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)、髙橋佑也課長補佐、吉原誉夫核融合科学専門官、長壁正樹科学官、梶田信学術調査官

5.議事録

【笠田主査】本日は、御多忙のところ、皆様、御参加いただき、誠にありがとうございます。第27回核融合科学技術委員会原型炉開発総合戦略タスクフォース(以下、タスクフォース)を開催いたします。私は、本タスクフォースの主査を仰せつかっております東北大学の笠田と申します。今日もよろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入る前に事務局より人事異動の紹介、定足数及び配付資料の確認をお願いいたします。
【吉原専門官】研究開発戦略官付核融合科学専門官の吉原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、まず、事務方に人事異動がございましたので、紹介をさせていただきます。10月3日付で前任の村越の後任といたしまして、文部科学省研究開発戦略官付課長補佐に就任いたしました髙橋佑也です。
【髙橋課長補佐】先生方、初めまして。このたび着任しました髙橋と申します。これからどうぞよろしくお願いいたします。
【吉原専門官】続きまして、委員の御出欠でございます。現時点では、奥本委員が別用務のために、少し遅刻をされるという御連絡がありまして、15名のうち残りの14名の委員の方に出席をいただいております。過半数を超えておりますので定足数を満たしていることを御報告いたします。
 続きまして、本日の配付資料につきまして御説明申し上げます。議事次第にある配付資料の一覧に示しているとおり、資料の1から4となります。会議中はZoomの画面共有システムを使って事務局より資料を表示させていただきます。また、各委員におかれましては、御発言いただく際にはミュートを解除の上、画面の下にあります「手を挙げる」ボタンを押して御発言いただきますようにお願いいたします。
 なお、戦略官の稲田でございますけれども、別用務のため冒頭10分程度席を外させていただいた後、同席いただく予定とさせていただきますので、御承知おきをいただければと存じます。以上でございます。
【笠田主査】ありがとうございました。それでは、本タスクフォースは核融合科学技術委員会(以下、委員会)運営規則に基づき、議事を公開いたします。御発言は議事録に掲載され、ホームページ等で公開されます。御留意ください。
 早速ですけれども、議題1の「核融合発電の実施時期の前倒しの検討におけるアクションプラン(以下、AP)「1.超伝導コイル」から「12.社会連携」について」に入ります。まずは資料1に基づいて、私から説明させていただきます。10分から15分程度で説明させていただいて、その後、御質問を伺ってから個別に議論を始めたいと思いますので、御承知おきください。
 それでは、資料1に基づいて、核融合発電の実施時期の前倒しの検討について(2)として説明させていただきます。核融合発電の実施時期の前倒しによるAP項目の変更点の確認ということで、項目ごとに議論・検討を実施してきております。前回の第26回タスクフォースでは、原型炉の全体のシナリオを定める「0.炉設計」を取り扱いました。今回の第27回では、「1.超伝導コイル」から「2.ブランケット」、「3.ダイバータ」とありまして、「12.社会連携」まで取り扱いますが、新たに「サイト整備」が加わっております。それは個別のところで御説明いたします。
 なお、「13.ヘリカル方式」、「14.レーザー方式」については、核融合発電の実施時期の前倒しによる変更がないため、今回は対象としません。
 なお、次回は、それまでの議論を受け、第2回中間チェックアンドレビュー(以下、CR)及びAPの見直しを行い、加えて必要であれば、原型炉研究開発ロードマップの更新について議論を行う予定です。
 まず、これはおさらいで、前回議論しました「0.炉設計」についてですけれども、こちら、資料に示しているとおり、JT-60SAやITER用に開発された技術基盤の延長に概念を構築しております。それぞれの機器の運転を通して検証し、原型炉設計に資することになります。炉心プラズマについては、これらの想定結果に基づいた概念を構築します。原型炉のための発電プラントや遠隔保守については、産業界の技術基盤及び炉心経験を取り入れた概念を構築し、社会受容性と実用化段階における経済性の見通しを得て、炉心・炉工学技術の開発と整合をとった原型炉設計を実施します。こちらが現在進めているAPの流れになっております。
 前倒し案としまして、前回の議論にあったとおり、ポイントとしましては、移行判断までに製造設計を完了するため、炉本体設計を3年短縮するという案になっております。これはITER技術ベースに概念設計(CDA)段階で高水準まで進めることで達成するという案になっています。コスト評価、候補地選定、建設サイト評価・選定は2、3年前倒しします。これにより製造設計の開始前に完了するということになっております。安全規制法令及び安全評価についても3年前倒しいたします。これはサイト評価を続いて行う必要があるので、前倒しする必要がございます。第1期パルス運転とこの前倒し案では設定しておりますけれども、その際にデータベース更新を継続し、例えば運転しながら中性子照射データを取得するというような考え方になっております。
 ここからは本日の議論の対象になりますけれども、「1.超伝導コイル」は現行案では資料に示している青字のとおり、原型炉のために構造材の高強度化やコスト低減に通じるコイル製作技術を新規に開発し、試験設備を新規に建設し、コイル性能を確認することが重要な項目になっております。
 これを前倒しするためには、第1期から定格仕様が必要なため、全体的に前倒しが必要です。これによって、概念設計1年及び工学設計3年の短縮が必要となります。コイル試験設備建設、コイル試験(3分の1スケール)を短縮する必要がございます。製造期間の短縮が困難な場合、コイル製造設備の立ち上げ、材料の調達について、製造設計と並行して早期着手が必要になります。
 次に「2.ブランケット」の現行案です。資料に示している青字のとおり、原型炉のために複数のモジュールを一体化したセグメントの製作技術を新規に開発するという案になっております。また、強磁場環境下での性能試験(構造物負荷試験)を実施するということになっております。
 次のページが前倒し案です。ポイントとしては、ITER-TBM開発スケジュールを軸に移行判断までにブランケットの製造設計を完了するため、概念設計を1年短縮し、工学設計を2年短縮することになります。移行判断後に機能材製造プラントを建設し、これは増殖材とか増培材のことだったと思いますけれども、組立てに間に合うようにプラントの生産能力を高めて生産期間を2年短縮するということで前倒しを可能にしていく案になっております。
 続いて、「3.ダイバータ」です。こちらは原型炉のために低放射化フェライト鋼配管を使用した冷却ユニットを新規に開発し、高熱負荷試験を実施するというところがポイントとなっています。
 前倒し案について説明いたします。ITER技術基盤からのギャップの小さい銅合金系の冷却ユニットを前倒して開発する必要がございます。F82H系の冷却ユニットの開発・高熱負荷試験は、第2期、すなわち2050年以降に導入に向けたR&Dとして移行判断後に実施することになります。
 続いて、「4.加熱・電流駆動(NBI)」です。こちらについては、原型炉のためにセシウムレスの負イオン源、高効率の中性化セル、定常運転可能な排気システムの技術開発を新たに行うというようなことになっております。
 「4.加熱・電流駆動(EC)」の方ですけれども、原型炉のために高周波数ジャイロトロン、ランチャー、伝送系システムの技術開発を新たに行うとなっております。
 これらの加熱・電流駆動の前倒し案について説明いたします。まず、第1期に使用するECシステムの開発を前倒しすることになっております。そして、これをきちんと第1期に間に合わせます。NBIのビームラインの設計を行うが、セシウムレス定常RFイオン源、光中性化セル、1.5MeV加速の本格的な技術開発は、実際にNBIが必要となる第2期に向けたR&Dとして移行判断後に実施していくという案となっております。
 続いて、「5.理論・シミュレーション」です。現行案ですけれども、JT-60SAやITER用に開発される計算コード群の検証と拡張を行います。同時に、それぞれの装置での実験を通して、プラズマ周辺・ダイバータ、ディスラプションの解決に向けたモデル考案・コード開発、パルス運転、定常運転に必要な運転シナリオ構築や統合コード開発等を行い、原型炉プラズマ設計に供するという案になっておりました。
 この前倒し案について説明いたします。こちらのポイントとしましては、第1期のパルス運転に必要な運転シナリオ構築や統合コード開発等を優先していくことになります。第一壁・保護リミター熱負荷の影響評価コード開発を追加し、これらを前倒しすることになります。高ベータ定常運転に向けた統合コードの妥当性検証は、実際に必要となる第2期に向けたJT-60SAとITER実験で実施していくことになっております。
 続いて、「6.炉心プラズマ」の現行案です。これらのITER、JT-60SAから得られるパルス運転・定常運転に必要なELM・ディスラプション制御手法、非接触ダイバータプラズマ制御手法、高総合性能プラズマ制御技術等を原型炉プラズマ設計に供するということになっております。
 前倒し案について説明いたします。現行案と同様に第1期のパルス運転に必要なELM制御手法、ディスラプション制御手法、高密度・高閉じ込めプラズマ制御、粒子循環実証等をJT-60SAを使って優先して実施していくことになります。ELM・ディスラプション制御、カレントドライブの効率改善、電子主加熱プラズマの高性能化に注力いたします。高ベータ定常運転に向けた技術開発は、第2期に向けたR&Dで、こちらも実施していくことになっております。
 続いて、「7.燃料システム」です。現行案のポイントとしては、原型炉のために許認可取得に向けた大量三重水素の取扱技術開発を実施します。また、DT混合ペレット製造技術、燃料サイクルシミュレーターを開発するということになっておりました。
 こちらの前倒し案になりますと、許認可取得というのが大事なので、必要なデータ取得を優先して実施していくことになります。大量三重水素取扱施設を段階的に整備していくということになります。ダイレクトリサイクル燃料システムに必要なDT混合ペレットの技術開発は、第2期に向けたR&Dで実施するということになっております。
 続いて、「8.炉材料と規格・基準(構造)」です。こちらは原型炉のために主要機器の設計コードの整備や規格化を行っていくというのが現行案でございました。
 次に「8.炉材料と規格・基準(材料)」です。材料に関しては、原型炉の主要機器の設計コードの整備や規格化のために、新規に炉構造材料の試験を実施するという内容になっております。
 これらの前倒し案について説明いたします。ポイントとしては原子炉照射試験の約3年前倒し、こちらに重点化することになります。その一方で、核融合中性子照射による検証を後送りします。ただし、DEMO Oriented Neutron Source(DONES)の利用も検討していく必要がございます。DONESはスペインのグラナダにある実験装置のことです。規格・基準策定の完了を前倒しするため、その必要なデータ取得を機械学会での規格条文審議と並行して実施していくという内容になっています。
 続いて、「9.安全性」です。こちらの現行案は原型炉のために原型炉安全確保方針と整合する安全設計と安全規制法令を検討し、許認可に必要な安全評価コード群を整備するということになっておりました。
 こちらの前倒し案について、説明いたします。ポイントとしましては、安全規制法令については制定に向けた検討と安全評価を前倒しすることになります。安全設計については、モデル・コード開発及びV&V(検証と妥当性確認)実験を前倒しする必要がございます。
 続いて、「10.稼働率と保守」です。こちらの現行案は原型炉のために長尺大重量のブランケットセグメント(10m、100t)、この遠隔保守機器の開発、許認可を考慮した機器設計の開発を実施するということになっております。
 前倒し案について説明いたします。ポイントとしては、炉構造への影響が大きい炉内機器の遠隔保守試験は前倒しして実施し、ホットセルでの遠隔保守試験は後送りいたします。ホットセルに関する技術開発は、第2期に向けたR&Dで実施していくことになります。
 続いて、「11.計測・制御」です。現行案では、原型炉のためにITERやJT-60SAにおいて開発される機械学習・推定ツールをベースに制御技術を開発することになっております。
 こちらの前倒し案では、JT-60SAとITER実験との連携した開発計画が重要です。実績データベース構築や計測器・制御開発は、JT-60SAとITER実験に合わせて期間を延長して実施していくということになっております。
 続いて、新たに加わった「サイト整備」です。現行案では、原型炉のため、サイト選定と造成、許認可手続、電力・給排水等のインフラ整備を行うということが書かれております。
 前倒し案では、サイト関連工事(鉄塔、送電線、変電所)、外部電源導入、あるいは送電設備に必要な期間を考慮して、移行判断直後からサイト造成に着手というように具体的に書いております。それまでに許認可手続を完了するため、立地条件の検討を早急に開始し、候補地選定を前倒しする必要があると指摘しております。
 最後に、「12.社会連携」です。こちらの現行案はアウトリーチヘッドクォーターが立案した計画に基づき、各機関・組織が機動的に活動を推進するとなっております。また、このヘッドクォーターの下で、各機関・組織が連携してアウトリーチ人材育成を実施します。そして、核融合エネルギー開発のロードマップ全体について、世界のエネルギー需要やその他の環境条件なども踏まえ、立場の異なる多様な視点から評価する社会連携活動を行うことになっております。
 この前倒し案について、原型炉への移行判断に向けて、この社会連携活動は多様なステークホルダーに対して活動するものであり、発電時期の前倒しによる変更はございません。ただ、原型炉への移行判断が近づくにつれて、活動の実施主体が変わっていくことは考えられるという指摘をしております。
 ということで、「1.超伝導コイル」から「12.社会連携」について、一通り説明させていただきました。社会連携の前倒し案以降の資料は、既に用いている資料ですので省略いたします。この後、各個別の項目については議論、意見交換いたしますけれども、まずはこの説明した内容について御質問がありましたら、「手を挙げる」の機能を使ってお願いいたします。
 それでは、質問がないようですので、個別の議論を進めたいと思います。数が多いので、3つのグループに分けて順番に議論していきたいと思います。まず、「1.超伝導コイル」から「4.加熱・電流駆動システム」まで、資料でお示しした前倒し案について、御意見をお願いいたします。こちら、担当されている委員の方から、私のざっくりした説明ではなくて、ここのところは大事だとか、そういったところをもう1回指摘していただくことも大事だと思いますので、「1.超伝導コイル」から「4.加熱・電流駆動システム」までで、御意見をお願いいたします。長壁科学官、お願いいたします。
【長壁科学官】「2.ブランケット」の方なのですけれども、これはパルス運転を想定しないといけないので、実は技術的に少しハードルが上がったのかなという気がするのですが、その点どうでしょうか。
【東島委員】おっしゃるとおり、考えないといけないことが増えていると思っております。ただし、ブランケット自体に求められる技術的な要件はそれほど変わっていません。定常運転を考えた上でブランケットの設計をしていますので、パルス炉ですから中性子の照射量としては、全体にそれほど大きなものを考える必要はありません。プラズマの立ち上げの回数が増えることに伴うマイナス要因のようなことを検討するのかなと思います。ですので、長壁先生がおっしゃるとおり、確かに技術的に厳しくなったところもあるし、第1期に関しては逆に緩くなったところもあるというところで、全体を整合的に進めていくのかなと考えています。
【笠田主査】私から、よろしいでしょうか。「1.超伝導コイル」の前倒し案なのですけれども、こちらの製造設備、材料の調達は、なかなか不確実性があって、社会的な状況とかもあるので難しいとは思います。しかし、実際に産業としてこの前倒しに対応できるような製造設備の立ち上げというのは可能であるからこういう御提案をしていただいていると思います。この辺り御意見などございましたらよろしくお願いいたします。
【木戸委員】今までのAPの中では、まだ製造に関する項目は入っていませんでした。今回、初めての議論になるかと思うのですけれども、ITERの実績から踏まえると、製造設備の立ち上げまで少し短いというのが正直な点だと思います。あとは、ITERでの実績を踏まえた上で、どのくらい短くできるか、無理がない範囲ということで考えています。しかし、実績をベースにして、どこまで短くできるかというのは、例えば、コイルの製造期間を短くする分、予算が増える可能性は高くなりますが、さらに製造作業を早めるということがあります。そういった予算の裏付け等があれば、ある程度前倒しができるとメーカーは言っております。実際には2035年の移行判断の前から、この製造設計の段階からもう設備等は十分考えつつ、2035年の移行判断で移行できるということを前提にすれば、今のところはこれで何とかなるのではないかという形で考えております。ただ、この辺りは各メーカーの意見を全部取り入れて最終決着したわけではないので、まだもう少しこの後議論がいるとは思いますが、一応、今はこの期間でということで提案させていただきました。
【福家委員】今、木戸委員からもお話がありましたように、例えばトカマクのトロイダル磁場コイル(TFC)の製造については、もともと工場として保有していた既存の設備を使って、ITERやJT-60SAのコイルを造れた部分もあるかと思います。しかし、今回、コイルが大きくなっておりますので、もしかすると今までITERの製造で使ってきたもの、設備が全く使えなくて、全く新しく新製しなければならないということも考えなければいけないと思います。その製造までのリードタイムをある程度長くとるということが必要なのではないかなと思いました。
【笠田主査】どの項目も現行案において、かなりベストエフォートで考えていたものをさらに前倒しということですから、相当頑張る必要がありますが、可能なところを考えたと私は捉えております。他に御意見、御質問等ございますでしょうか。坂本瑞樹主査代理、お願いいたします。
【坂本(瑞)主査代理】加熱・電流駆動の項目についてです。NBIに関しては、これまでと同様に第2期に向けたR&Dとして移行判断を行うということで、加熱はECだけということになります。このECに関しては、ECだけに関する技術的な開発要素というよりは、数を増やしていくという形で考えればよろしいのでしょうか。
【東島委員】坂本主査代理のおっしゃるとおりで、ECを使った電流駆動をやっていく必要があると思います。磁場も上がっているということで、高磁場用の高周波数のジャイロトロンを開発し、かつ周波数が高いだけではなくて、複数の周波数が発生できるようなものを準備していくと思っています。一方、もともとはNBIによる加熱とECの加熱の両方を考えていましたので、思っていたよりはECの数としては多くのものが必要になると思っております。ですが、第1期で目指す核融合出力が、1ギガワットと目標が下がっていますので、それに必要なものとしてジャイロトロンは準備していくのかなと思っております。
【梶田学術調査官】ダイバータのところで少しお聞きしたかったんですけれども、現行案はITERとJT-60SAから相当なフィードバックがかかって設計が行われているというように読めます。前倒し案に関しては、そのプロセスというのがあまり含まれていないような形で書かれているのですが、この辺はどういう感じで、そういうフィードバックがなくても設計というか、製作できるという見込みが得られる状況なのでしょうか。
【東島委員】図の見方を御説明しておいた方がよかったような気がしております。資料のダイバータのところで、ITERとJT-60SAで開発するものから、それぞれ原型炉に矢印が引いてあります。一方、明確にITERで開発したものがどう反映されていくのかということが示されております。それで、例えば、「5.理論・シミュレーション」を御覧いただくと、もともとITERやJT-60SA向けにいろいろなものを開発しています。それぞれに分けた形で開発しているわけではなくて、例えば、コードに関してもJT-60SAやITERはある意味切り分けられないです。資料のオレンジ色の矢印の部分で、開発して次の段階に進みますというようなことは書いてありません。
 梶田先生から御指摘いただいたダイバータのところに戻ります。資料の9ページでは、JT-60SAがITERからのフィードバックは当然あるものとして、既に前倒し案には書いていないということなんです。従来、CR2に向けて何をやっていくつもりだったかというと、プラズマ対向ユニット及びカセット設計について、銅合金系のユニットにするのか、それとも最初から高中性子に耐えられるF82Hの配管を使ったものを造るのかということを判断するのが、CR2に書いてあったことです。
 それを今回、ITERで銅合金系のユニットに関して開発することができますので、発電時期の前倒しに対してはそれを先に採用します。むしろ、後半の定常運転で中性子の負荷が上がるところに対しては、やはりそういった耐中性子性の高いものを導入するということが、このダイバータの前倒し案の肝になります。欄が足りないこともあって、梶田先生が御指摘のところは、資料には示しておりませんでした。
【梶田学術調査官】分かりました。含まれているということで理解しました。
【笠田主査】欄が限られていてなかなか書き切れていない部分が、もしかしたら他にあるかもしれませんが、その辺りもお気づきになられたら、このように御指摘いただければと思います。長壁科学官、お願いいたします。
【長壁科学官】先ほどの話と関連するのですが、ちょうど前倒し案と以前の案を比較する形で書いているので、東島委員の説明するような内容でよいかと思います。最終案としては、この前倒し案が今度、本案になるので、この中にITERやJT-60SAの知見をどのように反映させるのかということを今後記入するという理解でよろしいですか。そうしないと何か、資料に示している矢印の位置がずれるので、整合性の確認が必要かなという気がいたしました。
【笠田主査】東島委員、今後はそういった形でよろしいですかね。
【東島委員】はい。よいと思います。ただ、あくまでも今回お示ししているこの図は、参考図でしかないんですね。我々は、最終的にはAPで議論するので、APの中で、従来変わっていないところは変わっていないものとして記述していくと思います。そういう意味では長壁先生の御指摘は、きっちりと最終的にAPという形で残るのかなと思います。
【笠田主査】あくまでも今回は前倒し案の検討であって、APの改訂という話はまた別の話だと思いますので、そういったところで統合されていければいいかなと思います。
 他にございますでしょうか。続きましては、「5.理論シミュレーション」から「8.炉材料と規格・基準」までになります。東島委員、お願いいたします。
【東島委員】理論シミュレーション若しくは炉心プラズマの解析をするに当たって、一番重要なのは、やはり大型計算機資源が確保されていることだと私は思っています。ですので、資料にはそれがようとして出てこないのですけれども、やはりAPを考える際に、若しくはCR1を確認してきた際に我々が指摘してきたこととしては、大型計算機が確保されていることだと思っています。ですので、現在はQST及びNIFSにあるということで、いろいろ検討すべきことがあると思いますけれども、核融合の専用機として、計算資源が確保されているということが、資料に示していないですけれども、重要だと認識しています。
【笠田主査】計算機を使ってやっていくというのが、最近、余りにも当たり前になり過ぎていて、資料の要に書かれていなかったところは私も気づきませんでした。当然、そこは継続性、発展性、シミュレーションもより高度に、実際の炉のシミュレーションとなっていけば、当然、高性能なシミュレーターが必要になってくると思います。そういったところは今後修正、留意していきたいと思います。他、ございますでしょうか。伊神委員、お願いいたします。
【伊神委員】今のお話にも関連するんですけれども、「5.理論・シミュレーション」や「6.炉心プラズマ」について、資料に加熱・電流駆動のシミュレーションというのが出てきておりません。これは資料のどこに入ることになっているのでしょうか。多分、どこかに入ってはいると思うのですけれども、資料に見えていないので説明いただけないでしょうか。
【東島委員】そこは、例えば「5.理論・シミュレーション」に関して言うと、トカマクですので、炉心プラズマ統合SMCの中に、どういった形で統合できるのか、炉心プラズマが造れるのかというところに入っているという認識です。
 一方、「6.炉心プラズマ」のところでは、これも同じなのですけれども、例えば運転シナリオを開発するときに、放電時間を長くとるところが、既にそういった電流駆動をしなければ、トカマクの場合はプラズマを維持できないことはある意味自明です。ですので、この中に入るということになります。例えば、運転シナリオの中に加熱・電流駆動として、JT-60SAやITERや国外の装置を使っていくというのがもともと資料の15ページに示しております。そういう意味では、この部分は運転シナリオ(研究開発)の1)のところに書いてあって、前倒しをするときに、統合的なシナリオを作っていくところに、伊神先生の御指摘の点は入っているという認識です。
【伊神委員】ECHだけでプラズマを点火まで持っていき、オーミックとブートストラップで電流を維持して、かつある程度密度があるところで、イオンを加熱していくというシナリオはきちんと検討しておかなければいけないと思います。資料のメインには書かれていないけれども、当然、入っているという認識でよろしいんですね。
【東島委員】はい。よいと思います。
【笠田主査】「5.理論・シミュレーション」について、前倒し案に関係するだけではなくて、もともとの見直しに関わるところかもしれません。例えば、システム統合SMCについて、要素コード開発から統合化、システム評価と何となくボトムアップのように見えてしまっています。本来、原型炉のトータルなシミュレーターとして、どのような全体像があって、それに対して要素コード開発をしていくというようなことが本筋だと思います。これらの統括も含めた全部のシミュレーションの位置づけ、その最初のシミュレーションのデザイン、トータルデザインみたいなところはどの時点で決まっているのか、APには書かれていますでしょうか。
【東島委員】2035年に移行判断をいたします。その前に実際にシミュレーションコードを作って、前もってJT-60SAで確認しておき、ITERが動き始めるとITERでも確認します。そういう意味では、おっしゃるとおり、今までのシミュレーションコード開発のやり方としては若干、それぞれの部分に分けた形で開発してきたかもしれませんが、全体を統合する統合コードを作って全体をシミュレーションするということを考えています。ですので、AP上、何年だったかというのは、私も引っくり返さないと何年とはお答えできないのですけれども、それも含めてAPには書いてあったと思います。
【笠田主査】そうですね。この前倒し案の書き方だと何となくそこが見えなかったので、今の伊神委員の御質問にも、全体像がやっぱり見えていないと何か少し不安になってしまうというのはあり、確認させていただきました。
 他にございますでしょうか。今、「5.理論・シミュレーション」及び「6.炉心プラズマ」が中心でしたけれども、「7.燃料システム」、「8.炉材料と規格・基準」についてもそれなりの前倒しになっていると思います。いかがでしょうか。東島委員、お願いいたします。
【東島委員】特に「8.炉材料と規格・基準」を見直す際、中性子を照射する照射場が、核融合を考える際に非常に重要です。それは国内を見渡したときに、これは特にQSTもそうなのですけれども、例えば、米国の炉を使わないといけないとか、若しくは、このロシア問題が発生する前にはロシアで照射をしようと思って、いろいろと段取りをしていました。しかし、それはかなわなくなってきて、核融合の材料、開発はできているんですけれども、それをどうやって確認をしていくのかというところについては、やはり別の手段を考えるべきだろうと思います。
 一方、前倒しをしようと思ったときに、全てのデータがそろっていないといけないわけではありません。これはどういうことかというと、パルス炉として運転するつもりですから、必要なデータをどこで取っていくのかという部分をよくよく考える必要があると思います。ですので、例えば資料の21ページに書いたのは、スペインで造られようとしている欧州の核融合中性子源DONESへの参加も視野に入れてこないといけないだろうなと思います。また、我々の中ではITERで取れるデータを最大限使っていくことも重要と思います。ただ、全体として前倒しをしようと思ったときに、必要なデータをどこで取っていくのか、しかし、将来の商業炉まで考えた上で国内にきっちりと中性子照射場があることが重要なのかなと思います。
 この点は、特に最近、弱くなってきていると思っていますので、強化していかないと次の中間CRは乗り越えていけないのかなと思うところです。
【笠田主査】私の専門が核融合材料ということもあり、私から我田引水な発言はしづらいですが、実際問題として材料と規制、基準の関係性というものをきちんと考えて、リスクを最小化できるように考えていく必要はあると思います。坂本隆一委員、お願いいたします。
【坂本(隆)委員】「6.炉心プラズマ」の前倒し案に関して確認があります。ELMの抑制手法開発に関しまして、現行案ですと、RMPコイルとTF変調RMPの両方があるのに対して、前倒し案では、ELM制御開発としてRMPコイルだけが出されています。これはELM制御に関して、RMPコイルに力を入れるということなのでしょうか。
【東島委員】そこは必ずしも確定しているものではないと思っています。むしろ、両方書いておくべきだったのかもしれません。重要なのはELMを制御する手法が前倒しで開発されることだと思っています。ですので、それに向けて、確かにペレットを入れることによって何とかなればいいのですけれども、従来、ここを考えている部分は、まだ絞り込んではいないと思います。
【坂本(隆)委員】分かりました。ITERでも、RMPコイルを設置することができるかどうかという議論になったかと思うのですが、将来的にRMPコイルの設置が難しいとしたら、資料のELM制御開発にRMPコイル1つだけが記載されているのが少し心配だと思いました。
【東島委員】そこはまだ議論していくべきところだと思います。
【吉橋委員】先ほど東島委員がおっしゃっていたように、「8.炉材料と規格・基準」における照射に関しては、非常に難しいところがあるのかなというのをいつも感じております。やはり規格・基準と言っているので、本当にどこでその基準・規格が満たせるのか、その基準を満たすための中性子源をどれだけ確保できるかというところがポイントになってくるのかなと思っています。私自身も中性子源関係の仕事をしていますので、その辺りは考えて、今の目標としている規格・基準に達する中性子源がどこにあるか、どこなら使えるのかということは考えていきたいなとは思っております。
【福家委員】今の吉橋委員の発言に関連するのですけれども、このDONESでの照射というのは、これは相手からもう確約されたのでしょうか。というのも、原子力の方でも日本は照射炉が今ない状態です。それで、海外にお願いするんですけれども、かなり断られることが多いです。その理由としては、まずは自国優先だということです。ですから、DONESで確約が取れていればいいのですけれども、全く取れていない状況だと、やりませんという状態にならないか心配になりました。
【東島委員】ここに関しては、我々、日本国内に核融合中性子源(A-FNS)計画というものがござます。欧州の方は、それに相当するものがDONESということになっています。現状は、彼らはDONESを作ろうということで全体として進んでいる状況です。ただし、全ての機器が建設できるような状況にあるわけではありません。といいますのは、我々QSTとしては核融合中性子源に必要な加速器を研究開発しているわけですけれども、その部分も含めて、日欧の協力で進めているわけです。日欧の協力で進めているわけですが、欧州としてはDONESを造ろうということで、彼らは強く動き始めているということです。
 一方、欧州の計画はかなり早期にDONESを作るというような計画になっています。我々が考えるパルス炉は、欧州が考えているパルス炉とは違うので、比較的中性子の照射量の少ないようなところであれば、DONESに対してデータを取らせてくださいということは可能なのではないかなと思っています。ただし、福家委員がおっしゃるように確約が取れているわけでも何でもないです。ですけれども、原子炉で取ったデータで、かつ中性子の照射量が多くなければ、ヘリウムの効果が大きくないような領域で、まずは第1期のブランケットは設計できると思っています。同時にもちろん、DONESでデータが取れているといいよねという考え方です。ですので、DONESに対して、照射の確約も取れていないので、資料の核融合炉材料と規格・基準の前倒し案における核融合中性⼦照射@DONESは、点線になっているということと御理解いただければと思います。
【笠田主査】「8.炉材料と規格・基準」は理論シミュレーションとの連関もありますし、あと、大学におけるモデリング研究、シミュレーション照射研究等の知見で、点でしかない照射データをいかに面展開して炉設計に展開したり、安全規制に展開したりすることが大事と考えております。ただ、最終的には、やはりA-FNS計画で核融合中性子のモデルや理論が正しいということを証明する必要が絶対出てくると思います。こういった前倒し案においても、A-FNS計画は先送りにはされますけれども、しっかりやっていくということが大事かと個人的には考えております。吉橋委員、お願いいたします。
【吉橋委員】資料の21ページについて確認です。F82Hの照射について、最初のこの線が2021年頃から2030年頃まででになっております。ここで先ほどの話で、DONESは照射試験の確約がないので点線ということになると、2030年頃から2040年頃までの間は、原型炉照射については何も確約ができないという状況になるのでしょうか。今、笠田主査がおっしゃったように、シミュレーション等で補完していくというような考えであるならば、少しそういったことを資料に盛り込んでおかないと、2030年頃から2040年頃までの間は何もないことになってしまうのではないでしょうか。
【東島委員】そういう意味では、資料の21ページにある前倒し案のポイントに書いてあるのですけれども、原子炉の照射試験に特化して、データをそろえていくことと思っています。従来は80dpaまでデータをそろえて進んでいき、その次は核融合中性子源によるデータ取得を行う計画でした。しかし、前倒し案ではパルス炉となっていますので、重照射のデータを増やすことよりも、むしろ、20dpaや40dpaというところまでの統計的な処理ができるようなデータが重要になります。このため、前倒し案はそのデータを原子炉の照射で取得していく計画となります。それを受けてこのF82Hの、例えば5dpaや20dpaというところのデータで設計をしていくという考え方になっています。
【笠田主査】資料の21ページにおいて、2030年頃から2040年頃までの原型炉照射の部分が、DONESしかないように見えるが、DONESでの照射試験ができない場合、空白期間をどうするのかというのが吉橋委員の御指摘だと思います。もう照射自体は、この前に完了して、DONESがあるといいねという話なのでしょうか。
【東島委員】2020年頃から2030年頃までの原子炉照射で必要なデータをそろえてきます。ですので、資料の21ページでは、原型炉の下に原子炉照射があるわけですけれども、これで必要なデータをそろえます。逆に言うと、中性子の影響が出ないところで第1期を運転していくわけですので、そのおかげで前倒しできるという考え方です。
【笠田主査】この前倒し案では、2030年代のこの10年間をA-FNS計画が完了するまで、何もしないかもしれないという可能性が見えてしまいます。
【東島委員】2035年以降は、今度はITERで実際に中性子を発生する試験を行うので、そこからのフィードバックはもちろんあります。
【吉橋委員】だとすると、資料の考え方と行うことは理解しました。そうすると、資料の前倒し案について、東島委員がおっしゃったことが見えるようにするとよいかなと思います。
【笠田主査】そうですね。断絶があるように見えてしまうと、人材育成の観点から言っても少し不安を感じてしまうところはあると思います。
【東島委員】前倒しの部分を書いているのが資料の21ページになっています。資料の20ページに照射データを含めて取っていきますよということがもともと書いてありますので、APに直すときに、そのあたりを、はっきりさせる方がいいのかなという気はします。
【笠田主査】はい。そうだと思います。今回は、全体的にも前倒しに関して、特出ししているところだと思います。ただ、ここでそういった点を御指摘していただくと、次のAPの見直しをするときに忘れずに済みますので、皆様もそういった観点から御意見いただければと思います。吉橋委員、ありがとうございました。
 あとは、私が言いたかったことも今御指摘いただいたので、「8.炉材料と規格・基準」までよろしいでしょうか。では、続きまして、「9.安全性」から「12.社会連携」まで、御意見いただければと思います。順不同で御意見ある方は挙手、お願いいたします。
 「9.安全性」の検討の前倒しというところで、コードの開発とV&V実験を前倒ししていくというのは非常に分かりやすいのです。個別の作業は理解できるのですけれども、基本的に規制の体系を考えていくヘッドクォーターのような、核融合の安全性の全体像というのは、特別チームでそれなりのアウトラインが出てきているという理解でよろしいでしょうか。
【東島委員】まだ現時点でアウトラインまでは行っていないと思います。ただし、QSTが支えるという体制であるとは思いますが、役割的にはやはり特別チームが担っていくのだろうなと思います。
 一方、資料の23ページで、例えば、NRAで安全審査が記載されております。ここはあくまでも、今の時点で2035年若しくは2045年までにやろうと思ったら、きっとこの時期になるだろうと考えております。ただし、国全体としてここの整合が取れているわけではありませんので、ここに関しては1つの案ということで御理解いただければと思います。そういう意味で、笠田先生がおっしゃる全体を見ていくというときには、当然、規制の体系を考えていく方も入る体制をこれから作っていくことが一番重要なところなのかなと思います。
【笠田主査】全く同意でして、やはり特別チームの性格という観点からも、そういった多様な規格、安全に関わる人材というのが加わっていってこそ、そういったことが早期前倒しにつながっていくかなと私も考えております。
 他にございますでしょうか。「10.稼働率と保守」について、ホットセルに関する技術開発が第2期に向けたR&Dで実施するということになっていますけれども、これは第1期でのパルス運転の際はホットセルを使わないからということでよろしいでしょうか。
【東島委員】第1期のパルス運転の際は、ホットセルに関して使わないわけではありません。もちろん第2期で主要な部分としては活躍します。若しくは第1期から第2期に移行するときに活躍するものなので、そういう意味では最初からなくてもいいのではないかなと思っています。第2期に向けたというのは、第1期から第2期に移行する際、おそらくダイバータを交換したりするわけで、そういうものはホットセルに持っていくことになると思います。炉内システム機器の設計条件を確定することがおそらく重要です。まずは炉内機器用建屋に関して建設を行い、ホットセル用建屋は本体の建屋と一体として運用されるので、後に建設するという考え方です。ですので、第2期のみで使う、第2期以降で使うのではなく、第1期から第2期に移行するところからホットセルは使うものと考えております。
【笠田主査】理解しました。他はよろしいでしょうか。新たに加わった「サイト整備」の前倒し案なのですけれども、こちら、もともとの案ではかなりざっくりしていたものが相当生々しく見える感じになっています。事前準備から候補地選定というところがかなり速やかに進んでいる印象があるのですけれども、現状は資料の29ページのように示すしかないですよね。それとも、あくまでも技術的な観点からの候補地を選定していくということで、こういう示し方をしていると理解しているのですけれども、それでよろしいでしょうか。
【東島委員】はい。ここはもともとのAPに明確に書いていないところもあるのですが、実はこれ、もう少し詳しく前倒しする案というのは資料の29ページ右側にあります。ただし、製造設計をする以上は、やはりそのサイトに依存した部分が入ってこないといけないので、手を挙げていただくということだと思うんですけれども、候補地が幾つか国内にできます。こういったタイミングが早くなるだろうということで、期間も短くはしましたけれども、候補地選定を早めているという考え方です。
 一方、これはQSTの中での議論や、電力会社と相談したときに、実はサイトを造ってから送電線を引っ張ってきたりするのに実はものすごく時間がかかることが、分かってきました。そういう意味で明確にスケジュールを書いておく必要があります。例えば、2045年をターゲットにするのであれば、笠田主査は生々しいとおっしゃったんですけれども、従来のAPでは、2035年以降のことは事実上何も書いていません。しかし、期間を考えると、実は2035年頃が重要な分岐点になる可能性があることをよくよく強調したいこともあって、サイト整備を今回付けてはどうですかという御提案をいたしました。
【笠田主査】この辺りは多分、タスクフォースというよりは委員会で検討していただくところが大きいかと私は個人的に思っております。タスクフォースでは主に技術的な観点から検討していただくということになっております。他にございますでしょうか。
 最後の「12.社会連携」の部分は非常に技術的な観点という意味でも難しいところが多々あると思いますが、いかがでしょうか。そういった意味で社会連携というのは、このサイト選定というところで、ミッションや課題の検討を始めると、その部分が明確になって、活動の主体が変わっていくことも含めて検討されていくものと思います。現状は大幅な前倒しによる変更はないですけれども、その向かっていく方向がもう少し明確になっていくのかなと個人的には思っております。東島委員、お願いいたします。
【東島委員】この社会連携に関しては、この項目ごとで考えると確かに変わらないのですけれども、実際にはいろいろと考える必要があります。そこはAPを今後、改訂する際にいろいろと書き加えていくといいのではないでしょうか。AP項目としては変わらず、やることも変わらないのですけれども、どういう対応を目指すのかというところ等、書けるところは書いていくべきかと思います。ですので、今後、APを改訂する際に、そこは書き加えてはどうかと思います。
【笠田主査】核融合炉、核融合エネルギーというものを知っていただくという、原型炉にこだわらないアウトリーチ活動というのも当然あるのですけれども、核融合発電の実施時期の前倒し、あるいは実際に本当に原型炉活動がもう目の前に迫ってくるとなると、必然的にアウトリーチ活動を通した社会連携が強調されると思います。それに応じてやるべきことも具体性の伴うことが増えてくるのは当然だと思いますので、そういった観点から記述をしていくというのが必要かなと考えています。
 他になければ、よろしいですかね。AP「1.超伝導コイル」から「12.社会連携」の前倒し案につきまして、承認いただいたものとさせていただきます。ありがとうございました。
 それでは、議題1が終わりまして、議題2の「令和5年度核融合関係概算要求について」に入ります。稲田戦略官から御説明をお願いします。
【稲田戦略官】それでは、資料2に基づいて説明させていただきます。令和5年度の核融合の関連予算の概算要求の概要について御説明いたします。核融合の予算に関しては、基本的にITER計画及びBA活動等の核融合研究開発の推進ということでございます。この令和5年度の要望額及び要求額は、合わせまして約300億円となります。核融合の予算というのは長く続く研究開発を適切に実施するために巨額の予算が積まれています。
 概算要求をしているこの予算は、今年の予算的な制約を別にしたものです。できるだけITER計画やBA活動等を加速した場合、どれだけ要求できるかという予算になっています。例えばITER計画であれば、ファーストプラズマまでの主要部品であるTFコイル等々の製造や、ファーストプラズマ後の運転期に当たって、ダイバータの製造に着手するために必要な予算というのも最大限要求しているという内容になっています。
 一方、BA活動等に関しましては、JT-60SAにおいて、最初のファーストプラズマを起こすための試験運転に向けた準備をしています。このための経費として、予算の要求額が大幅増になりました。また、原型炉の加速器において、連続運転に向けた整備やA-FNS計画等々を実施するための研究開発を加速しなければなりません。その予算や原型炉の活動、計算機シミュレーションの活動等に関して、必要な予算を要求しています。原型炉設計活動や計算機シミュレーション活動等について、前年度より要求額が小さくなっているのは、計算機等のリースの償却があったからです。
 ITER計画が遅れたとしても、日本に調達責任のある機器の製作・納入に遅れないように、あるいはITERのファーストプラズマ後の核融合運転によって、必要な情報を取得するための予算及びITERの高度化及び原型炉の実現に向けたBA活動等において、最大限加速するべく予算要求をしているという内容でございます。
【笠田主査】ただいまの御説明に対して質問などございましたら、お願いいたします。私から1点よろしいでしょうか。今まであまりなかった観点でコメントをいただいたのは、要するに我が国がITER計画の遅れの原因にならないようにしっかりとやっていくということをおっしゃっていただきました。やはり日本の信用や産業界に対する信頼、あるいは研究に対する信頼という意味で、こういった国際協力がきちんと進んでいくということに日本がしっかりとある種のリーダーシップ、あるいは責任を持ってやっていくことが重要であると認識されていると理解しました。それはそういったことで、理解でよろしいのかというところと、あともう一方、ITER計画に遅れが生じていることについては、どうやって社会に説明しているのか、素朴な疑問があります。他の極はどのように説明しているのかと時々疑問に思うところはございます。
【稲田戦略官】ITERに関してはITER理事会やBA運営委員会で国際的に説明されます。ITERの運営というのは、ITER機構で行っております。その際、こういうところを適切にしてくださいと言うことについては、先ほどおっしゃったようにしっかりと義務を果たしているということが極めて重要です。というところで、日本は、ITERが核融合発電の実現に関して極めて重要かつ柱でありますので、いかに加速するかというところについてリーダーシップをとっているというところであります。
 したがって、それに対しての必要な予算は組んでいますし、仮にITER計画が遅れるとしても最低限、他の極の足を引っ張らないというところは工夫しながら、予算を組んでいるというのが現状であります。逆に、ITER計画が遅れるようなことに関しては、その部分について、加速するための必要な予算を作っていただきたいとか、他のところについても、割り当てられた義務を果たしてほしいといったことを、強く求めてやっているというのが現実であります。
【笠田主査】他にございますでしょうか。それでは、御説明、ありがとうございました。次の議題に移りたいと思います。議題3「核融合政策に関する最新情勢について」に入ります。こちらも稲田戦略官から御説明をお願いいたします。
【稲田戦略官】それでは、資料3、4を合わせて御説明させていただきます。資料3というのは核融合戦略の策定に関してです。本年9月30日に第1回の核融合戦略の策定についての議論が行われました。これは何かというと、核融合発電というのは長らく夢の技術ということであったのですが、ITERが炉心の組立てまで達することによって、特に民間企業がいよいよ核融合発電というのは夢の技術から現にできる技術に見えているというように世の中の状況が変わっていると認識しております。その結果、何が起こっているかというと、ITERでできることを前提とした上で、次のステージ、すなわち実証炉及びそれに基づくような技術群の競争というところが始まっている状況です。
 それに関しましては、米国や英国、中国においては、おのおのの国情に合わせた加速戦略を作っております。例えば、米国の場合、資料の2ページ目の図に米国の予算の一覧を示しております。米国の政府としての予算は青い部分で示しています。これはほぼ横ばいになっているのですが、先ほど言ったような世の中の状況の変化に基づきまして、民間会社がかなり投資をしています。民間会社からの投資を増やしたことによって、一気に商業用核融合を実現するための加速が起こってきます。そのための戦略等々を作っていって戦略的に誘導している状況がございます。
 あるいは英国であれば、例えば、核融合炉に対する規制を適切に行うことによって、この英国に核融合炉を造ってほしいというような強力な誘致をしています。
 中国においては、国主導のタイプになるのですが、豊富な国力と予算に基づいて、ITERと同様の新しいものを、技術習得をした上で発電炉を、2030年代までに改造して原型炉を造っていくというようなことができている時代になっています。
 このような問題意識を踏まえまして、日本においても、岸田内閣総理大臣の施政方針演説において、核融合の論点に方向性を見い出す旨を言及しております。それに基づきまして、統合イノベーション戦略推進会議の下に核融合戦略に係る有識者会議を設置して、新たな方策を検討開始したところです。
 検討課題に対して、文部科学省、内閣府においては、研究開発だけではなく、社会実装であるとか、あるいは推進体制を極めて重視しています。本年9月に有識者会議を立ち上げた後、2022年中に中間報告を取りまとめ、年度末までに核融合の国家戦略を作るというスケジュールで検討が開始されました。
 第1回の議論のポイントについては資料の3ページ目として示されております。背景及び論点について、先ほど申し上げたような問題意識の下、核融合のところの技術開発、何をすべきなのか、産業育成として何をするべきなのか。あるいはその産業育成を推進する推進体制としてどういうことをやるべきなのか等々の問題意識が提示され、議論されました。
 その有識者会議の構成員に関しましては、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の篠原議員を座長にした上で、研究機関であるQSTや学術研究機関であるNIFSの代表、ベンチャーやベンチャービジネスの専門家、経済団体や経済同友会、電気事業連合会の方々で構成されています。これらの方々と幅広い議論を行うということを現在考えてございます。
 本件に関しまして、担当の参事官が私でありますので、ここで行われた議論等々に関しましても、次行われます12月の委員会においては、この検討会の結果について報告し、文部科学省と内閣府をうまく連携しながら検討を進めていくということを考えております。これが資料3に関する御説明になります。
 併せて、資料4について御説明いたします。ITERに関して、臨時の理事会が今年の9月14日、15日で行われました。この議題に関しては、ベルナール・ビゴ機構長が亡くなられた後、多田副機構長が暫定機構長を務めていたのですが、正規機構長について、誰を選ぶかという議論が行われました。
 欧州のITERの極において、調達の代表をしていますピエトロ・バラバスキ氏、この方は日本にとってもBA活動においての欧州側の代表者を務めている方でございます。この方が理事長として選出されました。
 バラバスキ氏は、この後、多田暫定機構長から業務の引継ぎを受けつつ、10月の中旬頃に機構長就任を予定しています。ITER機構の次の改革及び計画の遅れを取り戻すためにどうしていくのかということに着手することとなっております。併せて、日本もバラバスキ氏の体制に関しては最大限サポートする予定でございます。BA活動の担当者ということもありますので、バラバスキ氏の気心の知れた人間をITER機構にも適切に派遣して、ITER計画が適切に実施されるようサポートしていくということを考えているところであります。以上です。
【笠田主査】ありがとうございました。それでは、御質問などございましたら、よろしくお願いいたします。核融合戦略の策定ということで、新しい有識者会議が立ち上がり議論をしていくということについてです。本件は当然、稲田戦略官を通してタスクフォースでの議論も共有されていくということで理解しておけばよろしいんですよね。
【稲田戦略官】無論、事務局としても内閣府への説明ということもいたしますが、文部科学省の委員会及びタスクフォースの議論をどのように行ったのかというのは有識者の皆さんに御説明いただくということも考えてございますので、適宜御協力をお願いしたいと思っております。具体的な会議の日程調整というのは今後、御相談をさせていただくことになります。少なくとも、実証炉を造るかどうかという話や、核融合発電の実施時期を前倒すかどうかというのは、かなり重要な課題でありますので、ここについては御説明いただく機会があるかと考えています。
【笠田主査】了解いたしました。何か他にございますでしょうか。よろしいですかね。本日用意しております議事は以上ですが、この他、特に報告、審議すべき案件はございますでしょうか。
 それでは、次回のタスクフォースの日程につきまして、事務局から連絡をお願いいたします。
【吉原専門官】次回のタスクフォースは、10月28日金曜日、14時からオンラインで開催いたします。議題等につきましては、追って御連絡申し上げます。以上でございます。
【笠田主査】それでは、本日のタスクフォースは、これにて閉会いたします。御多忙の中、御出席いただき、誠にありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。
 
―― 了 ――

お問合せ先

研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付

   髙木、坂本
   電話番号:03-6734-4163

(研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付)