核融合科学技術委員会 原型炉開発総合戦略タスクフォース(第19回) 議事録

1.日時

令和元年11月7日(木曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 原型炉に向けた技術基盤構築の進捗状況について
    ・JT-60SAにおける建設の進捗状況等に係るヒアリング
    ・LHDと関連研究における進捗状況に係るヒアリング
  2. 2.原型炉研究開発体制の強化のための大学等の連携強化について(非公開)

4.出席者

委員

岡野主査、笠田主査代理、伊神委員、今澤委員、奥本委員、木戸委員、坂本委員、中島委員、蓮沼委員、東島委員、福家委員、藤岡委員、吉橋委員

文部科学省

新井研究開発戦略官、近江室長補佐、吉澤核融合科学専門官、徳澤学術調査官

オブザーバー

量子科学技術研究開発機構核融合エネルギー部門那珂核融合研究所先進プラズマ研究部 井出俊介 部長
自然科学研究機構核融合科学研究所 長壁正樹 教授
量子科学技術研究開発機構核融合エネルギー部門六ヶ所核融合研究所 飛田健次 副所長
自然科学研究機構核融合科学研究所 今川信作 教授

5.議事録

【岡野主査】 本日は御多忙のところ、お集まりいただきありがとうございます。定刻になりましたので、事務局は定足数の確認をお願いいたします。
【吉澤専門官】 本会議の定足数は過半数の7名以上となっております。本日は委員の方13名、全員に御出席いただいておりますので、定足数を満たしております。
【岡野主査】 ありがとうございました。それでは、ただいまから第19回原型炉開発総合戦略タスクフォースを開催いたします。
本委員会は、委員会運営規則に基づき、非公開の部分を除き議事を公開いたします。御発言は議事録に掲載され、ホームページ等で公開されますので、御承知おきください。
本日は議題2の原型炉研究開発体制の強化のための大学等の連携強化について、審議の円滑な実施に影響が生じるものと認められますので、核融合科学技術委員会運営規則第4条第3号に従い非公開とさせていただきます。非公開の議事になりましたら、傍聴者の方々には御退席いただきますので御了承ください。
また、本日は、議題1の説明者としてQST那珂核融合研究所の井手先進プラズマ研究部長及び核融合科学研究所の長壁教授に、議題2の説明者として核融合科学研究所の今川教授及びQST六ヶ所核融合研究所の飛田副所長に御出席いただいております。
続きまして、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【吉澤専門官】 今回より本会議はペーパーレス会議を実施させていただきます。資料はお手元のPCで御覧ください。本日の配付資料は議事次第の配付資料のとおりでございます。途中、操作等で不明な点がございましたら、事務局までお知らせください。また、これまでの委員会で策定いただいた報告書等の関係資料をファイルにとじて机の上に置かせていただいておりますので、適宜御参照ください。
以上でございます。
【岡野主査】 ありがとうございました。それでは、議題1、原型炉に向けた技術基盤構築の進捗状況についてに入ります。
本日は、QST那珂核融合研究所及び核融合科学研究所からJT-60SAの建設状況及びLHDと関連研究の進捗状況について御発表を頂く予定でございます。
それではまず初めに、QST那珂核融合研究所、井手部長より御発表をお願いいたします。
【井手部長】 QSTの井手でございます。お手元の資料に従って御説明させていただきたいと思います。
1ページ目が現在の本体室の模様です。
2ページ目が本日の内容で、計画、組立ての現状、及び統合コミッショニングに向けた準備状況や国内外との協力についてお話しさせていただきます。
次のページ、3ページ目ですけれども、まず初めての方もおられるかもしれないということで、前提のところから少しお話しさせていただきます。
JT-60SA計画と申しますのは、幅広いアプローチ活動におけるサテライトトカマク計画とトカマク国内重点化装置計画の合同計画ということで、核融合炉の早期実現を目指したプロジェクトでございます。JT-60を超伝導装置として改修いたしまして、我が国唯一の大型トカマク装置であり、世界の核融合実験装置の中で、ITERに対して最も大きな支援を行う能力を有するとともに、ITERでは実施が難しい高圧力プラズマの定常化研究を実現できる世界で唯一の装置です。もう一つ、外国が200億円を超える大型の資金を我が国設置の装置に投資するという初の事例でもございます。
装置の計画の目的としては大きく3つございます。1つ目としては、赤丸で書いてありますITERの技術目標達成のための支援研究ということで、臨界条件クラスのプラズマを用いて高性能のプラズマ実験を行いまして、その成果をITERへ反映させるというものでございます。
もう一つは、2つ目の丸ですけれども、原型炉に向けたITERの補完研究というところで、右の図にございますように、JT-60というのは、今まで行われていた実験装置の代表ということでございますけれども、今、次のステップとしてITERというものが7極合同で開発が進められています。先ほど言いましたものはITERへの直接支援ですけれども、ITERでは次のステップの原型炉に対して行わない研究というのがございます。その最も大きなものは高圧力プラズマの定常維持というところでございまして、この原型炉へ向けITERがやらないところを補完するというのが2つ目の目標であります。書いてありますように、原型炉で必要となる高出力密度を可能とする高圧力プラズマを100秒程度維持して原型炉の運転手法を確立することでございます。
3つ目でございますけれども、ITER・原型炉に向けた人材育成ということで、これはある面、最も重要な課題であるとも捉えております。今後、ITER・原型炉開発を見据えたときに、それを主導する人材を育成することが必要です。
次のページですけれども、装置のパラメータについてです。左に絵がありますけれども、プラズマ電流は5.5メガアンペア、トロイダル磁場は最大2.25テスラです。プラズマの体積は133立方メートルで、前のJT-60に比べて1.5倍ぐらいの大きさになっています。加熱パワーは最大41メガワットで、プラズマ電流のフラットトップ時間が100秒、加熱時間も同様に100秒となってございます。加熱装置としましては、中性粒子ビーム入射装置と電子サイクロトロン波加熱装置というのがそれぞれ下の表にあるようにございまして、それぞれ足して41メガワットとなってございます。
次のページへ行きます。JT-60SAは超伝導コイルを用いた超伝導マシンでして、3種類のコイル全てが超伝導コイルとなっております。1つは、プラズマを閉じ込めるために必要な磁場を発生させるトロイダル磁場コイル。もう一つは平衡磁場コイルと申しまして、プラズマの形や位置を制御するコイル。中心ソレノイドというのは、トカマクプラズマに必要なプラズマ電流を生成したり、それを流して維持するというのに使われます。それぞれに対して、表にありますNbTiというのはニオブチタンという材料で、中心ソレノイドにはニオブスズという材料を用いてございます。これら3つの全てのコイルが超伝導コイルでございます。
次、6ページへ行きまして、先ほど申しました加熱についてもう少し説明をさせていただきます。図がごちゃごちゃしていますが、真ん中あたりに丸いドーナツのような形を上から見たような形がございます。上から装置を見たところで、真ん中にピンク色で塗ってあるようににドーナツ状のプラズマができています。これに対して中性粒子ビームが、見ていただければ分かりますように、いろいろな方向から入射されます。右上にありますが、NBを用いることによってプラズマの中に流せる電流の分布、幾つか形がありますけれども、イオン源の組合せによって、こういう形がいろいろ制御できるという例でございます。
右下にありますのはトルク入力で、中性粒子ビームというのはホースで水を流すように力をプラズマに与えることができます。いわゆるトルクというものですけれども、これもまたビームの組合せを変えることによりましていろいろなトルク入射の分布ができますという例でございます。
もう一つの、ECというのは電子サイクロトロン波ですけれども、これは主にプラズマを加熱したり、プラズマの中に電流を流したりするのですけれども、これも入射するミラーの角度を変えることによりまして、真ん中の下の図にありますようにいろいろ電流分布を変えることができるというものです。こういう特性を生かして、先ほど言いましたようなITERや、更に原型炉で必要となるプラズマの制御性などの研究を進めていくというのがJT-60SAの役割でございます。
次、7ページでございますけれども、最初に言いましたように、原型炉に向けて一番大き課題の一つが、高規格化圧力領域まで行くということでございます。下の図に書いてあるのは、維持時間と、縦軸はβNと書いてございますのは、今言った規格化圧力という目安です。JT-60というのがこれまでの装置でして、ITERとかでは、この縦軸が2.8程度のところまで狙うというところですけれども、原型炉、特に日本が目指しております定常高性能原型炉というのは、規格化圧力が3.5から5以上ぐらいの領域を狙うというところで、これを実証するというのはITERでも目指してないところなので、JT-60SAを用いてこの領域を目指そうと考えています。
左にありますのがいろいろな超伝導装置の断面でございますけれども、ピンクで描いてある一番上のものがJT-60SAで、その1個下にあるのがITERでございます。見ていただければ分かりますように、相似の形をしておりまして、大きさはITERの約半分の大きさで、ほかの装置と比べてサイズ的にも非常に近いものです。形も非常に近いというところで、ITERと相似の実験が狙えます。文章に書いてありますとおり、形状を変えられるというところで形状ファクターとか、先ほど申しました多彩な加熱電流駆動システム、安定性制御システムである制御コイルも設置しております。こういうものやダイバータによる熱・粒子制御を用いて原型炉に向けた高規格化ベータ、完全非誘導電流駆動プラズマの実現を目指すというのが目標でございます。
先ほど申しましたように、JT-60SA計画というのは幅広いアプローチ計画の中で行われております。これは欧州と日本が協力して進めている計画です。その中でどうやってJT-60SAを作っているかと申しますと、それぞれの装置を構成するパーツを日欧でそれぞれ製作を分担いたしまして、それぞれがパーツを作って調達して組み立てるというITERと同じような方式を採ってございます。
例えば図にあります一番左上のトロイダル磁場コイル、これは欧州が担当となって、欧州の中でもイタリアとフランスが分担してコイルを製作しました。ベルギーとドイツというのは、このコイルを試験する装置や、このコイルの電流リードを作るのを分担したところです。それに対して、例えばその隣にありますポロイダル磁場コイル、これは先ほど申しました平衡磁場コイルですけれども、や真空容器は日本が担当するという形で、金額的な分担がイーブンになるように、それぞれのパーツを分担いたしまして製作をし日本に集めて組立てを行なっております。
次のページにございますのが進捗状況ですけれども、今言いましたような主要コンポーネントの製作は既に完了してございます。ほとんどのものは日本の那珂研究所に部品が既に来ておりまして、組立てが進んでいるというところです。
組立ての最初というのは、一番左の上にございます平成25年3月。最初に基礎となるクライオスタットベースと言われる、土台を置きまして、それから順調に部品の組立てを進めてまいりました。ちょっと分かりにくいですけれども、上の段の真空容器完成、18体TFC云々と書いてありますのは、真空容器が全て完成して、トロイダルコイルや平衡磁場コイルを装荷しましたというところです。現在は、一番上の右にあるのは全部組み立てた状態ですけれども、これに近づくべく進んでいるという状態です。初プラズマは来年度を目途に、一番下の年表にございますように、組立ては来年に終了して、来年度から総合試験を進めていこうという予定になっております。装置の仕様等、健全に動くことを確認しました後、一旦装置を止めまして増強に入るという予定になってございます。
10ページ目から幾つかのパーツに関して進捗状況を御説明させていただきます。真空容器ですけれども、左の図で、もともとはミカンの房のような形をしたパーツをどんどん現地でつなぎ合わせていきました。最後、20度のギャップを残したところまで組み上げた状況です。右の図にございますように、内側の高さ6.3メートルということで、人と比べていただければ大きさが分かると思います。トカマク装置というのは非常に組立て精度というのが要求されまして、この真空容器に関しましては、上の表にございますように、要求精度に対して、それより上回るような達成値、水平方向で言うとプラスマイナス5ミリ、垂直方向で言うとマイナス4ミリという精度で組み上げることができております。
先ほど言いました真空容器の最後に残ったすき間から、次のページ11ページにございますのが、トロイダルコイルをつり込んでいるところです。今言いましたすき間から、右下の図が分かるかと思いますけど、トロイダルコイルを1個ずつ入れていって組み上げていきました。
次の12ページですが。すき間から順番に入れていって、最後のコイルに関しましては、真空容器の最後の20度のパーツと抱き合わせにして挿入して360度完成いたしました。このような形で真空容器とトロイダルコイルが組み上がったところでございます。下に書いてありますけれども、トロイダル磁場コイルの製作精度はプラスマイナス2ミリ、設置精度がプラスマイナス1ミリということで、装置の差し渡しが12メートルぐらいなので、それに比べていかにこの精度が高いかというのが分かっていただけるかと思います。
次、13ページは平衡磁場コイルです。これも既に本体に組み込まれているのですが、左にありますのが、それぞれ6つあるコイルの3つが並べてある状況です。これは余りに大きいので、一番小さい2つのコイルを除いて現地那珂研究所で巻き上げました。一番直径の大きいコイルが下の表の一番上のEF1で直径12メートルという大きさです。プラズマというのは磁場を一番敏感に感じるので、コイルの製作精度、設置精度というのが一番重要になるのですが、12メートルのコイルに対して、真円からのずれを8ミリに抑えましょうということで製作を開始したのですが、いろいろな工夫を重ねて製作を進めた結果、実際には0.3ミリという非常にいい精度で巻き上がっているというのが分かっていただけるかと思います。
ほかのコイルに関しましても、1ミリ程度より小さいという精度で巻き上がったという状況で、これらの精度の高いコイルの設置も既に終わっていますというのが14ページにあります。上の3つのコイルしか見えなくて、そのコイルも若干見にくくて申し訳ないんですけれども、矢印が指してあるところにあるリングが、先ほどの図にあったような幾つかの直径の違うコイルです。下の3つというのは、真空容器を載せる前に既に装置の下に置いておいて、装置が組み上がった状況で持ち上げて、今はそれぞれが所定の場所に設置してございます。これに関しても、設置精度プラスマイナス2ミリ以下の精度で設置できたというところです。コイルの精度をどれほどよくしても、設置の精度を上げないと最終的にプラズマが感じる磁場が乱れてしまいますので、これに関しても非常にいい精度で設置できてございます。
真空容器内、現状どうなっているか。先ほどは何もない状態の写真でしたが、今はそれに対して、真空容器内側のところに炭素タイルが張ってあるという進行状況でございます。真空容器内には磁場センサーとかも取り付けられています。このタイルの台座に関しましても、設置精度はプラスマイナス1ミリで設置しているというところでございます。
次が先ほど言いました中心ソレノイドというもので、プラズマ電流を立ち上げたり維持したりするものですけれども、これは世界最大のニオブスズ製の超伝導コイルでございます。巻線内の埋め込み式の接続部を世界で初めて実用化したということと、高精度での製作を実現して真円からのずれがプラスマイナス1ミリ以下という精度でできているというものでして、これは、4つのモジュールがあるのを、右下の図にあるように縦に積み重ねて一体化してトーラスの中に挿入します。
それが次の17ページに示してございますけれども、今年の5月にこのCSを本体に挿入いたしました。左の写真、左の端に人がたくさん集まっていただいているのが見えるかと思いますけれども、これはこのときにプレス公開を同時にいたしまして、NHK水戸をはじめとして13のテレビや新聞で報道していただきました。現在は、非常に狭いところに高い精度で入れないといけないというところで、設置の調整をしているところです。要求値というのはプラスマイナス2ミリ、このCSと入れる周りのすき間が2ミリというのを達成しないといけないので、それの調整を行っているというところです。
本体周りは別途、どんどん組立てを進めていまして、18ページにございますように、ちょっと分かりにくいのですが、先ほど断面図があったかと思いますが、一番外にあるクライオスタット、魔法瓶の一番外の断熱部分みたいなものですが、これが全周組み上がっていまして、上の金色のものが張ってあるのはまだ内部ですけれども、今、この部分までクライオスタットを覆うというところの作業を続けているところでございます。
組立てが先ほど言いましたように来年春頃に完成する予定ですけれども、その後は統合コミッショニングに移ります。19ページにございますように、真空排気から始めて超伝導コイルの冷却等、段階的に進めまして、プラズマ運転も含めて、最後また超伝導コイルを昇温して大気開放するという予定になってございます。
20ページにございますように、現在、統合コミッショニングに向けて検討を進めているというところです。大きな4つのくくりのグループ、真空と超伝導と電源とプラズマ運転ということに分けて、統合コミッショニングに向けてどういう段取りでやっていかないといけないかという検討の詳細化を進めています。情報共有と工程のすり合わせ、リスクの回避、低減策というところを、重点的に検討を進めているところで、真空度やコイル温度等の時間変化曲線の見積りとか、いろいろケーススタディーを進めて、工程の精度向上やリスク対策ということで進めております。あと、具体的な人員の配置も盛り込んでいるというところで、この9月に作業手順書をバージョン3という形で完成いたしたところです。今後更にリスクの回避、低減に向けて検討を進める予定でございます。
21ページは1つの検討の例でございまして、真空容器がどのように冷えるだろうというのが上の予想曲線です。こういうのを予想しておきまして、これと実際ちゃんと進んでいるかどうかというのを逐次確かめながら進めていきます。下に書いてあるのは、超伝導コイルを液体ヘリウムでどういうふうに冷やしていくかというのを、幾つかのループに対して流していくヘリウムの流量、右は流量の曲線ですけれども、こういうパターンで変えていけば、左にあるような温度変化が得られるだろうというのを予想しているというところです。
22ページにございますのが、無事コイルが冷えて電源のテストが済みましたらプラズマ運転が始まるので、プラズマ運転をどのような放電波形でやるかというのが左側の例です。その下にプラズマの断面が幾つか載っています。右側にございますのは、その運転領域をどういうところでやればいいのかという運転の限界をあらかじめいろんなシミュレーターを使って調べているという現状でございます。
これが統合コミッショニングの検討の状況ですけれども、統合コミッショニングが終わりますと、次の23ページにありますが、先ほど申しましたように日欧共同のプロジェクトなので、2021年4月より日欧共同の実験実施チームというのが立ち上がります。この図、英語で書いてある文章であれですけれども、左にありますように、Experiment Leaders、実験リーダーというのが日本、EU、それぞれ2人および1人出して、この人々を中心に実験の進行を進めていくという予定になっています。
次の24ページにありますのが、実験はどういうことをやっていくかというのを研究者で策定したのがJT-60SAリサーチプランというものでして、これはITERと原型炉に向けJT-60SAでどういうことをやるべきかというプランでございます。2018年9月にバージョン4が完成し、日欧合わせて435名という多くの研究者の力を集めて作ったものでございます。毎年、実際にお、メールとかのやりとりだけではなくて、人が顔を合わせて会合を開いていまして、左下に集合写真がありますけれども、これは今年5月に行いました8回目の会合のときの写真でございます。
あと国内外との協力についてでございまして、1つはITER機構の協力でございます。25ページ目ですけれども、まずJT-60SAプロジェクトの、プロジェクトリーダーと日欧のプロジェクトマネジャーからITER機構のビゴー機構長に、SAとITERとの協力についての提案をさせていただきました。その後、ITER機構で会合して、このような協力というのは、ITERやSAのお互いのスケジュールを勘案すると、双方のプロジェクトに大きな利益をもたらす。また、ITERでは、JT-60SAの統合コミッショニングの知見を共有したいという双方の認識に基づいて合意されまして、ITER機構からどういう協力項目が想定されるかというリストが提案されました。
幅広いアプローチの運営委員会において、知財の取扱いについて明確にした上で協力取決めを締結することを勧められまして、現在、取決めを締結する準備が進められておりまして、今月中に取決めが締結されるという予定になっております。
国内に関しましては26ページ目にありますけれども、SAはもう一方、国内重点化装置という位置付けもございますので、国内の大学との研究連携あるいは人材育成が非常に重要でございます。こういう観点から、那珂研究所に大学の研究拠点、オンサイトラボを置くことを提案いたしまして、今大学と議論をしているところです。このオンサイトラボに教員、学生が中長期に滞在していただいてSAを用いた研究をしていただく。特に学生さんたちにとっていいと思われるのが、国際協力で進められるプロジェクトなので、当然、制御室等にはヨーロッパや諸外国からの研究者がいろいろいるわけで、国際協力で進められている議論の場に若い学生さんたちが直接参加することができるというのは非常に大きなメリットではないかということで、東大をはじめ幾つかの大学と議論を始めているところです。包括協定のない大学とは個別に協定を結ぶ必要がありますので、今、第1号として東大と協定書を結ぶのを進めておりまして、これも今月中に締結する予定となってございます。
まとめですけれども、組立ては順調に進行しております。組立て後の統合コミッショニングに向けて検討を進展させております。研究に対しましては、JT-60SAのリサーチプランを策定して研究に備えております。国内外、ITER機構や国内の大学との協力に関して、議論や文書の締結を進めているところでございます。
以上です。
【岡野主査】 ありがとうございました。これだけ大きな超伝導トカマクの組立てですから、苦労も随分あったことと思います。これからまだあると思いますが、是非、来年の着火を目指してこれからも頑張っていただきたいと思います。非常に大きなイベントだと思うし、核融合の中ではみんなからも注目されるイベントだと思うので、非常に期待しています。よろしくお願いいたします。
【井手部長】 非常に励みになります。頑張ってやりたいと思います。
【岡野主査】 ただいまの御説明に関して御質問等はございますか。
【笠田主査代理】 御説明ありがとうございました。
アウトリーチヘッドクオーターが立ち上がったということで、JT-60SAから出てくるコンテンツに非常に期待しているところ大です。コンテンツというのはいろんな形があると思うのですが、いろんな写真とかムービーとかのストックがあると思うので、是非使いやすい形で整理しておいていただけると、今後、いろんなところにSAを紹介していく上で有用だと思いますので、御協力、よろしくお願いします。
【井手部長】 コメント、どうもありがとうございます。今もJT-60の我々のホームページがございますので、写真とかムービー、既に幾つかごらんいただけると思います。いろいろ見ていただいて、御要望があれば追加させていただきます。
【坂本委員】 来年のファーストプラズマに向けた建設が最終段階に来ているのがよく分かりました。実験開始に向けて、大学の教員や学生が中長期に滞在して研究を行う拠点形成を進めているということですが、そのための運営費や研究費、滞在費というものはどういう形で手当てされ、運営してゆくのかが決まっていれば教えていただきたいのですが。
【井手部長】 基本的にオンサイトラボというのは、大学の研究室がうちの場所にあるということでございますので、そこに対する運営とか大学でやられている活動に関しては大学で資金を使われるという形になるかと思います。基本的には、我々は場所を提供させていただいて、うちで行われている活動に身近に接していただけるという形になるかと、そういう形で進めていければと思っています。
【坂本委員】 分かりました。では、今までもJT-60SA共同研究という枠組みがあったと思うのですが、それを充実させる等、は検討はされていないのでしょうか。
【井手部長】 おっしゃるように、これまでJT-60、前の装置のときから国内共同研究は進めさせていただいていまして、JT-60SAの実機がちゃんと立ち上がったときにも、その形で国内の人にいろいろ提案していただいて実験を進めていこうと思います。それに関しては、提案していただいた方の旅費は負担させていただきます。
【藤岡委員】 2つ質問があります。1つは、本日のお話ですと、特に不安な要素はないのかなと思ったのですが、ファーストプラズマ、それ以後のプラズマ実験に向けて、一切の不安要素はないのかというのを1つお聞きしたかったのと、もう一つは、包括協定ということで大学の学生が実験をするということですが、大学の教員をしている立場から言いますと、就職活動とか現実的なことを考えて、大学を離れたがらないという学生も結構いまして、そういう意味ではD3Dでしたでしょうか、遠隔で中国から動かしたみたいな、ああいう試みというのは将来的に入れる予定はございますでしょうか。
【井手部長】 最初の御質問ですけれども、物を作っていく上で順調には、計画どおりには進んでいるのですが、いろいろ逐次、考えないといけないことがあるので、そういう意味ではしっかり完成にこぎ着けるまでというのは、心はなかなか落ち着かないというところはございます。来年はその後、いろいろな装置のコミッショニング等を進めていくので、それに関しても我々には経験がなく、大きな超伝導装置というのは世界的にも経験がないところでございますので、それをしっかり立ち上げていくというところでは、気を引き締めてやっているというところです。
装置が、電源とかコイルがうまくちゃんと予想どおり動けば、プラズマに関してはつけられる、維持できるとは思っていますけれども、やはりプラズマを制御する制御系も含めて、来年は総合試験なので、いろいろその間にバグが出るというのは当然考えられるので、それに関しては同じように慎重に当たっていくというところでは、全然楽観しているわけではございません。
あとは、無事、装置の健全性が確認できれば、定格電流5.5メガアンペアまで持っていくとか圧力を上げるという実験に関しては研究の一環ですので、ある面、いろいろ新発見があるということで、期待しながらやっていくというところかなと思っております。あとは、予算との関係で思っているように順調に装置のスペックを上げられるかというところを、日欧双方、欧州の予算も関連しますので、順調にいければなとは期待しているところでございます。
後半の御質問、オンサイトラボは先ほど言いましたように、大学に場所を提供させていただくので、どれぐらいの人がどれぐらいの期間、滞在されるかというのは、もちろん大学の計画で進めていただければいいと思います。遠隔に関しましては、基本的には国内の先生方、学生さんというのは、現場の制御室に来て実験参加していただくのが一番だと考えておりまして、特に装置を運転するという点に関しては、国内外問わず、どこからも行うことは考えていないです。安全のこともございますので、装置を動かすのは現場の制御室からだけです。遠隔でデータを見たりというのは、パソコンにもそういうデータを見るツールを入れれば見ていただくことはできますので、大学の研究室とかからでもデータを見るというのはしていただけますけれども、実際、実験に参加して次どうするかという議論に参加しながらやっていただくという点では、特に大学、国内の人々には現場で是非とも一緒に参加していただければと思います。
【伊神委員】 25ページのITER機構との協力のところで、知財の取扱いについて明確にした上で取決めを締結ということですけれども、具体的に知財というのはどのようなものを対象としているのかということと、あと、もしもめごととかが起こった場合には、どこの国の法律で処理するとか、その辺のこともお決めになっているのでしょうか。
【井手部長】 知財の取扱いというのは、例えば超伝導コイルを作ったときの背景知財とか、もともとITERの協定の中に背景知財をどうするかとか、ITERを作る際に出てきた知財をどこが持つかというのは決められているのですね。それに準ずるという形でBAのやつも進めていこうという形になっていまして、どこの国がというよりも、ITER協定で決められている、まず知財の背景知財の扱いとか、どこまで参加極で公開していいとか、どこまでは出さなくていいとか、そういうガイドラインがございますので、それに主に従うということで進めているというところです。
【伊神委員】 ありがとうございます。基本的にITERのルールに準じた形で運用するという理解でよろしいでしょうか。
【井手部長】 はい。
【伊神委員】 ありがとうございます。
【吉橋委員】 少し私の不勉強なところもあるので教えていただきたいんですけれども、先ほどのITER機構との協力というところで、JT-60SAがITERの補完をするということは分かっているんですけど、ITER側からの協力を受けるというところの、例えばどんな協力をITER側から受けるという提案というのが、こちらの資料からですと、ITER機構から想定される協力項目のリストということがあったかと思うんですけれども、その辺のことを教えていただけますでしょうか。
【井手部長】 まず、説明不足で申し訳ないのですが、2つ目のポツで書いてある「ITER機構から、想定される協力項目」というのは、SAがITERにどう協力できるかと想定される項目のリストです。ITERも同じように超伝導マシンでございます。2025年のファーストプラズマを控えて、今まさに組立てをしようとしているので、SAの組立ての苦労話とか課題とか、どう克服したかというのは非常に有益な情報になるというので、そういった情報をシェアしてほしいというのが協力項目のリストの中に入っています。もちろんプラズマがつき始めたらどういうふうに立ち上げていくかというのもリストの中に入っているのですが、まずはITER機構がITERをちゃんと作って動かすに当たって、それの前に進んでいるSAの計画でどういうレッスン・アンド・ラーンがありましたかというのを教えてくださいというのが1つです。
もちろん協力なので、ITERからも我々はいろいろ得られるものはあるべきだという議論がありまして、1つは、ITERはいろいろプラズマを解析したり表示したりするツールというのを作っています。統合アナリシスツール、そういうのを作っているのですけれども、そういうものの情報をもらうとか、あとは向こうで考えている統合試験の案とかの情報を教えてもらってこちらに反映するとか、そういう形で双方的に協力を進めましょうという形で議論を進めようとしているところです。
【福家委員】 アクションプランを作ったときもそうでしたが、適宜、国際協力をうまく利用していくということで、今回、EUからかなり巨額のお金を頂いたということは大変喜ばしいことだと思っております。
そこで関連して9ページのところに、2021年度以降、装置の増強というのを行うということになっておりますけれども、この辺はどんな増強を行って、またこれについてもEUからの資金を頂ける可能性というのはあるのでしょうか。
【井手部長】 まず、統合試験を迎えるに当たって、最終的な姿までの部品は全部付いてない状態でございます。1つには、試験中、どういうことが起こるか分からないので、全部付けてしまって後戻りできない状態で、どこかがトラブったということになると困るので、真空容器の中に関しては、まだ物が全部は付いてない状態で試験を始めます。それを増強のところで逐次入れていきます。
そのときに、既に幾つかのパーツに関してはEUで製作して持ち込むというのが決まっておりまして、それに関して今議論を進めているところです。例えば真空容器の中にも排気するためのポンプを作るのですが、クライオポンプという冷やして真空度を上げるものですけど、それをEUが分担するということになっています。計測器とかでもEUが製作して持ってくるというものがいろいろございます。
【岡野主査】 アウトリーチという視点でお願いがあるのですが、今しかできないこととして建設中の写真、それを一般の方にすごさを見せるという視点の写真を是非撮ってほしいなと思っています。本日拝見した写真は、我々はすごさが分かるのですが、これは現場の記録写真になっている気がします。それはそれなりに大変だと思います。下に行って上向きのアングルで撮るとか、現場からするととても面倒だと思うのですが、これは今しか撮れないし重要なものだと思うので、是非お願いしたいなと思っています。実は、今、核融合のアピールをする本を作りたいなと思っていまして、出版社の方と相談しているときに、例えば天文だったら、ぱっと手に持っている写真がありますよね。でも、核融合はどんなものがあるのですか、プラズマですかと言われたので、私は、核融合は装置がすごいのですよというのを申し上げたのですが、そのすごいなという写真が欲しいので、是非今のうちに撮ってほしいなと。これは強い要望としてお願いしたいと思います。
【井手部長】 適宜、写真は撮っているので、組立て途中のもう既に撮れない状況でして、おっしゃるように余りいいのがないのでしたら、それ以上は無理ですが、例えば18ページの写真なんかは、私は結構きれいだなと思っております。これから、大分出来上がってしまっているところはあるのですが、極力、いい写真を撮るように心掛けたいと思います。先ほど申しましたとおり、ホームページにいろいろ載っていますので、もし気に入った写真があれば、これはいいと言っていただければ。
【岡野主査】 これも下から撮りたかったりしますよね。
【井手部長】 下から撮ったやつもあります。いろんなアングルはありますが、素人が撮っているところもありますので。
【岡野主査】 そこです、私が言いたいのは。プロも採用していいのを残してほしいと思っています。お願いします。
ほかによろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは、続きまして、核融合科学研究所の長壁教授より御発表をお願いいたします。よろしくお願いします。
【長壁教授】 御紹介ありがとうございます。核融合科学研究所の長壁です。本日は、LHDと関連研究における進捗状況ということで御報告させていただきます。
まず、29ページ目をごらんください。これは私どもの装置の大型ヘリカル装置、右側の大きい写真が装置の上の方から撮った写真になります。左の下は、真空容器の中から撮った写真になっています。LHD、特徴としては2つのヘリカルコイルでプラズマを維持するための磁場を作っています。そのヘリカルコイルの部分が2匹の大蛇が絡まるような形で真空容器の中から見えますけれども、これがヘリカルコイルに当たります。
30ページをごらんください。これはCADからの図になりますけれども、LHDの鳥観図になります。真ん中の図の右下に人の大きさが書いてありますが、LHD、ここにありますようにコイル、ヘリカルコイルの大半径が大体3.9メーターです。装置の大きさは、容器の直径が13メーターぐらいになります。プラズマとしては3.4メーターから4.1メーターの大半径になりまして、ドーナツの輪切りにしたときの小半径が、だ円なんですけれども、面積から換算いたしますと、小半径としては0.6メーター程度になります。プラズマの体積は30立方メートル。磁場強度といたしましては、ほぼ3テスラ近くまで到達することは可能です。ファーストプラズマ、実験は1998年3月にファーストプラズマをつけまして、これまで順調に実験を進めております。2017年3月に、私どもとしては念願となった重水素実験を開始しております。
下の図は、各プラズマの断面、ここにありますように、左側は横に長いようなだ円がございます。右側は縦に長いようなだ円。このだ円がぐるぐると回っているような形になって、右側の上の虹色の絵になりますが、このような形のプラズマ。この虹の色は、赤が磁場の強いところ、青が磁場の弱いところを表しています。
次に移ります。LHDのアクションプランにおける記載、関連した項目に関する記載についておさらいさせていただきます。アクションプランの中に核融合科学研究所が関連する項目というのは非常に多くありますけれども、今回はそれの中のうちのLHDに強く関連した内容について抜粋させていただきました。こちらは、アクションプランの構成表からの抜粋となります。
1つ目といたしまして超伝導コイルで、この中にNIFSに期待される内容として、超伝導導体・コイル試験の試験設備の検討。また、3番目のところでダイバータの内容になりますが、プラズマ運転シナリオで、ダイバータプラズマシミュレーション開発、デタッチメントプラズマの実時間制御法の開発。4番目の項目の加熱・電流駆動システムの中で、高信頼性、高信頼性NBIの概念設計。6番目、炉心プラズマの中にLHD、ヘリトロトンという項目がございまして、トーラス系物理の理解、重水素実験、粒子制御技術の実証。13番目としてヘリカル方式、ヘリカルプラズマ、高性能プラズマの実証、ダイバータ部の熱負荷低減と粒子制御、輸送特性と高エネルギー粒子の閉じ込め特性という記載がございます。
また、32ページ目は、原型炉研究開発ロードマップについて(1次まとめ)におけるLHDに関連した記載について抜粋を記載させていただきました。
4番目の原型炉研究開発の中の炉工学と関連基盤研究の中に、第1回中間チェックアンドレビューでは、高密度ダイバータ試験設備の設置判断を行う。また、JT-60SAや大型ヘリカル装置、高密度ダイバータ試験設備によるダイバータ関連データを基に行う第2回中間チェックアンドレビューの判断という形の記載がございます。
また、6番目の大型ヘリカル研究の中、核融合科学研究所には、大型ヘリカル装置による重水素実験の実施等という形で、少し飛ばしますけれども、最後に、核融合炉に共通する技術課題を解決することによって原型炉研究開発に貢献すると期待されていると認識しています。
33ページ目は、先ほどの31ページ目の繰り返しになりますが、そのうち、これらの項目をどのような予算的な裏付けで実施しているかということを記載しています。下の方になりますけれども、6番目の炉心プラズマのLHD、ヘリトロトンとヘリカル方式のところにつきましては、大規模学術フロンティア促進事業の支援の下、実施させていただいております。これに関連いたしまして、LHDプラズマの高性能化のために必要な高性能負イオン源の研究を、4番の項目に当たる内容ですけれども、これをこの中の枠組みでやっております。
また、3番目のダイバータにつきましては、LHDの13番目の中のダイバータ部の熱負荷低減と粒子制御に関連した内容という形で実施しております。
一番上にあります超伝導コイルにつきましては、ITER-TF接続サンプルですとか、JT-60SAのセンターソレノイド等の導体及び接続部試験、またITERのクライオプラントシミュレーションなどをQSTさん、あとITER機構、東芝、三菱さんとの共同研究や委託事業として実施させていただいています。
次、34ページ目になります。超伝導コイルの項目に移らせていただきます。緑の枠組みのうちのポツは構成表から抜粋したもの。文章はアクションプランの項目別解説、そこからの文章を抜粋させていただきました。項目別解説の中に、大型超伝導導体を試験するための設備についての検討を行う。ITERの経験を踏まえ、等磁場中を常伝導が伝播するような大型導体試験設備も検討対象とするというところで、大型導体試験設備のところで、実際、導体の試験というところで、まずITER-TFコイルの接続部のサンプル試験というのを私どもの研究所が有する試験設備、大型導体試験装置として75キロアンペアの電源を用いて、2014年5月から2019年8月まで10本のITER-TF用のコイル接続部のサンプルの試験を実施しております。また2020年度には、残りの1本の試験を実施する予定です。これにつきましては、QST、その当時はJAEAさんでしたけれども、三菱、東芝との共同研究という形で実施しています。
実際にITER-TFコイルの品質管理として、実機製作前に接続部サンプルを製作いたしまして、2テスラ以上の磁場中で4ケルビンと6ケルビンにおける接続抵抗が3ナノオーム以下であるということを確認することがITERでは求められておりますので、これを実際に私どもの設備を利用して確認しております。全てが要求値を満足するということを確認しています。
また、定格68キロアンペアの大型Cable-in-conduit導体の1ナノオームレベルの接続抵抗試験法というのを確立しております。
次、35ページ目になりますけれども、JT-60SAのセンターソレノイド・EFコイル用の導体及び接続部の試験ということで、2007年度から2014年度にわたりましてQSTとNIFSで共同いたしまして、JT-60SA中心ソレノイド・平衡磁場コイル用導体及び接続部の性能評価を行っています。本試験では、4種類の導体サンプル及び7種類の接続サンプルを私どもの試験装置を用いて評価しています。これはQSTさんとの共同研究という形で実施させていただいています。左側の下にあるのは、大型導体試験装置の写真と実際運用する際に、右側の図は、このような形で試験を行いますというCAD図になります。このような大型導体試験設備の検討に向けまして、国内唯一の大型超電導体試験設備の運用実績を蓄積していくということと、大型導体の試験方法を開発しているというのが現状になります。
また、36ページに移りますが、超伝導導体そのものには関係ないんですけれども、超伝導の設備を実際運用する際には、クライオプラントの運用実績、シミュレーションというのが必要になってきます。そういう点に関しては、ITERのクライオプラントの実時間シミュレーションの手法に関してITERの業務外部委託事業として実施しています。2010年から実施し、現在に至っております。
ITERの全クライオプラントを対象とした冷却プロセスの実時間シミュレーションを実施しています。冷凍機やセンターソレノイド、トロイダルフィールドコイル等の各系統に分けたモデル化を行いまして、それらを統合して全システムのシミュレーションを可能としております。補助コールドボックスなどの設計検討への情報提供、あと15メガアンペアのベースライン運転での冷凍機の負荷とそれに対応する冷却プロセスの提案などをこれらの活動を通して行っています。これも原型炉におけるヘリウム冷却系の概念設計に向けた基礎データ、シミュレーション技術の蓄積につながると考えております。
次、37ページ目です。ダイバータにつきましては、プラズマ運転シナリオの中のダイバータシミュレーションコードの改良というところで、既存のLHD装置やトカマク実機等の磁場閉じ込め装置、及び基礎実験装置での研究成果を基にして新たな物理モデルをシミュレーションに組み入れ、実験結果を再現できるような改良をシミュレーションに加えるというところです。また、デタッチメントプラズマの実時間制御法の開発というところで、デタッチメントの実時間制御のための計測法、制御法の開発を行うというところが記載されております。
38ページに行きますけれども、ダイバータシミュレーションコードの改良という観点では、ダイバータプラズマの輸送シミュレーションコード、EMC3-EIRENEというコードがございますが、これをLHDの3次元磁場構造に最適化するということを行っています。このLHDの複雑な磁場構造を計算グリッドに反映いたしまして、多種の不純物のモデルを取り込む。原子・分子過程を含んだ形のモデルを取り込んでいます。
左の下のは、EMC3-EIRENEコードの中でのLHDの磁場構造をポンチ絵で描いたものと、それに基づいて実際のLHDの計測された電子温度をシミュレーションコード上にマッピングしたものを描いているのが真ん中の絵になります。
これを基に、実際にプラズマから発生する光、放射光、それを計測した結果とシミュレーションの結果が下の2つの図になります。左側の実験というのは、LHDの縦長のだ円のところ、それを上から観測した結果になります。これをシミュレーションで実際に再現すると右のような形になって、完全には再現するということはまだできていませんが、例えば赤い領域が一致しているとか、緑色の領域も大体一致している。ただ、どうしても分布は定性的にはよい一致を見ておりますけれども、定量的な観点から、不純物の輸送係数の見直しということを今進めている状態です。
このような知見を使いまして、実際、トカマク配位、JT-60SAへの適用ということも右下に書いてあるような形で進めさせていただいています。
次、39ページ目です。デタッチメントプラズマの実時間制御法の開発というところでは、外部から摂動磁場というのを与えまして、3次元磁場構造を積極的に生成するということでデタッチメントを安定化するという手法を私どもは見いだしております。
この摂動磁場による放射損失分布の変化というのがデタッチメントの安定化に効果的であるということ。また、類似の手法として、右下の赤の枠に書いてありますけれども、トカマクの炉設計においては、Snow-flakeダイバータというのが類似の摂動磁場を印加するという観点で類似ですけれども、もろもろの検討も私どものシミュレーションコードなどを使ってうまく貢献していきたいと考えています。
次、40ページ目に移ります。加熱・電流駆動システムのところです。この高信頼性NBIの概念設計、高信頼性能NBIの基盤技術の確立というところ、ここの個別解説の中には、メンテナンスレスに必要なセシウムフリー負イオン生成及び高周波負イオン源については、チェックアンドレビューまでに原型炉に適用可能性のある方式を絞り込み、概念設計期間中に大電流化の基盤技術を確立するということ。
また、この下の段落に移りますけれども、ITER用高周波(RF)負イオン源に向けて、欧州ではドイツ、IPPガルヒンクでRアンドDを、NBTF、これはイタリアのパドバにありますけれども、NBTFでITER実規模試験を実施する計画である。日本では、ITERの調達活動を通じて、これら高周波負イオン源の情報を収集し、メンテナンスレス高周波負イオン源の概念設計に向けてNBI用高周波負イオン源の開発を開始するというところです。
あと、省略した、その下に書いてありますけれども、負イオン源の効率化に向けても、国内の高い技術を取り入れるところが重要というところでNIFSは貢献していきたいと考えています。
また、高出力イオン源を統合し、ITER級、長パルス、高出力の負イオンビーム源の基盤技術を確立するというところで私どもは貢献していくことができると認識しています。
41ページ目になりますけれども、まず磁場閉じ込めプラズマ実験装置において、負イオン源を用いたNBIの運用実績があるのは日本だけです。そのうちJT-60U、これからSAになりますけれども、においては500keV/10MW、特に高電圧のところに力点を置いた負イオン源のNBIというのが60Uで運用されています。また私どもLHDでは、エネルギーとしては180キロエレクトロンボルトと低いですけれども、大電流した5メガワットのNBI装置を使って実際に実現しております。
ここで強調したいのは、負イオン源のNBI開発というのは、日本が世界をリードしているというところです。特に私どものNBI、これはフィラメント・アーク型になりますけれども、実機の負イオン源で世界最大の負イオンビームの電流密度340アンペア・パー・平方メートルというのを実現し、これはITER-NBIの要求性能を上回る性能となっております。
次に、42ページ目ですけれども、現在、ITER-NBIに陰ながらという形になりますけれども、貢献させていただいています。私どもの負イオン源開発の実績を基に、ドイツのIPPガルヒンクやイタリアのコンソルツィオRFX研究所との共同研究を実施しておりまして、RFX、これはNBTFが設置されている場所になります。RFX、IPPの研究所の研究者をLHD-NBIグループが受け入れまして共同研究を実施しています。毎年1か月程度のNIFS開発用負イオン源のマシンタイムを提供しております。また、今の活動を通しまして、ELISEやNBTFへの実験参加をするための足掛かりとして高周波負イオン源の情報を収集しております。
また、LHD-NBI研究者をNBTFのアドバイザリーコミッティーに派遣するという形もさせていただいております。
これにおきまして、特にIPPガルヒンクとの共同研究におきましては、水素負イオン源の計測手法の開発、アーク放電プラズマとRF放電プラズマの比較、あとビーム発散角の低減についての共同研究を進めています。NBTFのあるコンソルツィオRFX研究所につきましては、大型負イオン源の運転スキームの、彼ら、これまで負イオン源のNBIの運用実績というのはございませんので、一種、オン・ザ・ジョブ・トレーニング的な運転スキームの訓練という形をLHD-NBIやNIFSのテストスタンドを使って実施しています。また、ビーム計測器の技術検証試験、あとビーム軌道計算コードのベンチマークという観点で共同研究を進めています。
これにつきましては、様々な財源を活用いたしまして、日本学術振興会の二国間交流事業や自然科学研究機構のネットワーク型研究加速事業、また科研費の国際共同研究加速基金などを利用して実際の共同研究を実施しています。
次、43ページ目になりますけれども、ヘリカル方式というところです。項目6の炉心プラズマの中のLHD、ヘリトロトン、13番目のヘリカル方式の中のヘリカルプラズマというところで、非常に長くなりますけれども、抜粋としては、トカマク装置及びヘリカル装置での実験結果を体系的に解析というところと、LHDにおいて重水素を用いた実験を行って閉じ込め・輸送特性の質量依存性を明らかにする。閉じ込め特性の質量依存性に関する物理を体系的に解明するというところ。あと、下のヘリカルプラズマの内容では、ヘリカル方式の核融合炉を見通せる高温・高密度プラズマを用いた閉じ込め研究を行いまして、無次元量を基準として、核融合炉に外挿し得る高性能プラズマを実証する。あと、ダイバータ部につきましては、ダイバータ部への熱負荷低減シナリオ及び粒子排気シナリオを策定。輸送特性と高エネルギー粒子の閉じ込めという観点では、輸送特性に及ぼす同位体効果を明らかにする、高エネルギー粒子の閉じ込め特性を調べる、核融合炉を想定し得るα加熱特性を実証するという内容の記載がございます。
この枠にあります重水素実験の実施というところで、まず平成29年度の3月に重水素実験を開始することができました。この際に、重水素実験に先立ちまして、中性子の計測をしないといけないのですが、実は中性子のフラックスモニタの開発というのをLHDで行いました。最新のデジタル信号処理技術に基づく中性子フラックスモニタを開発いたしました。これは核分裂炉のBWRで用いられる中性子モニター、これに使用される計測回路を基といたしまして、核融合プラズマ実験に最適化した高速応答かつパルス計数率109cps以上の広ダイナミックレンジを持つ最新のデジタル信号処理ユニットを用いた計測回路というのを開発しています。
LHD重水素実験のために開発された本信号処理ユニットは、実際にJT-60SAの中性子フラックスモニタに採用されております。また、ITERの中性子フラックスモニタ、マイクロフィッションチェンバーにも採用が検討されております。このような観点で、私どもの重水素実験のために準備した中性子フラックスモニタが原型炉における炉計装への貢献というのが期待されると思います。
次、45ページ目、実際に中性子フラックスモニタそのものの絶対校正というところも私どもはやっております。中性子フラックスモニタのその場所での計数値というところから、実際にプラズマにどれだけ中性子が発生したかということを評価するためには、フラックスモニタの絶対感度校正をするということが必要です。これは、実際に中性子フラックスモニタの校正に係るワークショップというのが20年ぐらい前に行われておりまして、それに出された指針に従いまして、中性子発生率が元から分かっているカリホルニウムの中性子線源を搭載した容器内を動かすという形で校正実験を行いました。私どもは、鉄道模型台車を真空容器内で周回させて、鉄道模型台車の上に中性子線源を置きまして周回させて、中性子フラックスモニタの計数率とプラズマからの中性子発生率の間の値付けというのを行いました。左側の下にあるのは、実際、LHDがどのような形で鉄道模型台車のレールを敷設したかというところと、実際の写真を付けさせていただきました。
右側はそのときの実験結果です。私どもフラックスモニタ、3か所設置しています。トーラスの真ん中のFCナンバー1という青い点のところと左上の青い点、FCナンバー2、FCナンバー3という形になりますけれども、そのうちのFCナンバー1に対する計測結果と、あとMCNPという中性子輸送コードとの比較を真ん中に書いています。FCナンバー1のグラフにつきましては、赤い点が実験結果となっています。青い点がMCNPの計算結果で非常によく一致しています。FCナンバー3は、色がちぐはぐで申し訳ないんですけれども、赤い点がMCNPによる計算結果、緑色の点が実際の実験結果という形になります。FCナンバー3の近くに中性子線源が近くに来たときには、比較的よく再現することができております。一方、MCNPはどうも散乱の効果、私たちのモデルだけ少し過大評価しているようで、少し遠くに置いてあるときには高めの評価となっていますが、実際、トロイダル方向の周回で積分しますので、近くのところの中の影響、計数率の感度校正で消えてしまいますので、大きな影響としてはなっていません。
中性子校正実験、国内では20年ぶりに行われているものになります。QSTの篠原博士や石川博士、またITERのクラシロニコフ博士をはじめ、多数の国内外からの共同研究の参加を募りまして、核融合装置における中性子フラックスモニタの校正法の技術継承という観点で貢献しております。また、私どもLHDの研究者が中性子計測に関する専門家、ITERサイエンティストフェローとして、ITERのフラックスモニタの絶対校正手法についての助言を行っております。
次に参ります。高性能プラズマの実証というところで、軽水素の代わりに重水素を用いることでプラズマが高性能化する同位体効果を活用して、核融合燃焼プラズマを見通すことが可能な高温度プラズマを実現するというところで、私ども現在、重水素実験を進めておりまして、そこで核融合炉実現のための最低条件であるイオン温度1億2,000万度というのをヘリカル型としては世界で初めて実現しております。ヘリカル方式というのはなかなか温度が高くならないという形の誤解がありましたけれども、ヘリカル方式でも核融合炉を見通せる高温プラズマが実現できるということを示すことができたと思っています。
現在は、より燃焼プラズマに近い条件であるイオン温度と電子温度がともに1億2,000万度のプラズマを目指しています。また、このようなプラズマにおける同位体効果や高エネルギー粒子挙動の研究を可能とすることができました。
次に参ります。47ページ目、同位体効果研究につきましては、私どもLHDで、電子サイクロトロン共鳴加熱で保持されたプラズマにおいて、同じ加熱電力でプラズマを保持したところ、重水素の方が軽水素よりも電子温度が高くなったということで、同位体効果というのを確認することができました。
右側、そのときの電子温度が達成された分布で、赤い点が重水素、青い点が軽水素となっています。合わせまして、プラズマの揺らぎを計測する装置を使いまして、初期的な結果となっていますが、軽水素に比べて重水素の方が、揺らぎが少ないということを確認することができました。この観測事実というのは、私どもの研究所が開発している最新のシミュレーションコード、GyroKinetic VlasovということでGKVというコードがあるんですけれども、それと定性的な一致を見ています。
左下がグラフでちょっと分かりにくいのですが、質量の増加に伴って乱流、揺らぎです、プラズマ中の揺らぎが低減してよい閉じ込めが得られるということがGKVシミュレーションの中では予測されています。それに見合う、相当するような観測結果が得られたということです。現在は、これに向けてより詳細な解析というのを進めています。
次に、48ページ目になります。高エネルギー粒子の閉じ込めですけれども、重水実験におきましては、中性子計測を用いた高エネルギー粒子の閉じ込め研究が可能となっています。特に重水素同士の核融合反応で発生する2.5メガエレクトロンボルトの中性子と、実はDD反応の中には、中性子が発生するチャンネルとトリチウムが発生するチャンネルがございますけれども、トリチウムが更にプラズマ中の重水素と反応して14メガエレクトロンボルトの中性子を発生するというチャンネルがございます。先ほど言ったDD核融合反応のうちの中性子が発生するチャンネルとトリチウムが発生するチャンネルというのは、大体1対1の割合で発生します。また、トリチウムというのは1エレクトロンボルト、非常にエネルギーの高い粒子で、ちょうど下にあるDD核融合反応、これは実際に原型炉などで想定されている核融合反応ですけれども、その中で発生するα粒子の振る舞いを模擬するのに非常に都合がいいという粒子として1メガエレクトロンボルトのトリチウムは考えられています。
1メガエレクトロンボルトのトリチウムの発生量というのは、DD中性子の発生量とほぼ同じですので、2.5メガエレクトロンボルトの中性子から評価することができます。実際にトリチウムがエネルギー、1メガエレクトロンボルトから大体200キロエレクトロンボルトぐらいまでエネルギーを失ったところで実はDTの核融合反応が非常に大きくなりますので、DTの中性子というのは、発生してから200キロエレクトロンボルトまで生き残った割合というのを表現することができるということで、DD中性子とDT中性子の比を調べることで、その装置の中でどれぐらいα粒子が閉じ込まるか、ということを表す指標という形とすることができます。
先ほど申しましたDT中性子とDD中性子の比をトリトン燃焼比と呼んでいますけれども、この比をLHDで実際に調べましたところ、プラズマのLHDの大きな半径を内側に寄せるに従ってトリトン燃焼比が非常に向上していく。これは、もともとLHDのプラズマの流出閉じ込めの特性がドーナツの大半径を小さくするほどよくなるということが理論的に指摘されたのですが、それを実際に実証することができまして、それが0.35という値になりまして、これは実際、韓国のKSTARというトカマクで実現された値と同程度となりまして、ヘリカル型装置、閉じ込め磁場の定常保持が原理的な可能なヘリカル型装置において、同サイズのトカマク型装置と同等のトリトン燃焼比を実現できたということを示すことができました。これは今年7月のネイチャーフィジックスのリサーチハイライトに選出されました。私どもの論文発表は実はネイチャーではないのですけれども、ネイチャーフィジックスがその成果を取り上げていただきました。
以上です。どうもありがとうございます。
【岡野主査】 どうもありがとうございました。アクションプランに沿って幅広い範囲をうまくまとめていただいて大変分かりやすかったと思います。ありがとうございます。
それでは、委員の皆様から御質問等がありましたらお願いいたします。お願いします。
【今澤委員】 QSTの今澤と申します。NBIの項目について質問があるのですけれども、発表のあった世界最大の負イオンビーム電流密度を実現というのは、アクションプランとはどういう関わりになるのでしょうか。アクションプランでは高信頼性とか高効率化というのがあるかと思うのですが、それとどういうふうに関連するのでしょうか。
【長壁教授】 実際に、負イオンというのは経験的に作ることはできるのですが、どのようなメカニズムでできるかというのが分かってないです。そのような中で、実際にITERの負イオンの、まだ実現されてないと思いますけれども、それが負イオンとしてできるかできないかというのをちゃんと私どもは示すことができたということです。実際、今、NBTFはまだ動き出していませんし、RFの負イオン源でそれができるかどうかというのは、実はまだはっきりしてないところがございますけれども、負イオン源としては問題なくできますよということを示すことができたということです。
【今澤委員】 ちなみに、実績のあるフィラメント・アーク型というのは、デモ炉とかにそのまま適用するにはどういった課題があるのでしょうか。
【長壁教授】 これをそのままやるというのは、メンテナンスの観点でどうしても難しいということと、あとフィラメント・アーク型になりますと、必要なケーブルの本数が物すごく多くなりまして、実際、リモートハンドリングなど、ここにありますメンテナンスレスという観点でなかなか難しいというところ。ただ、実際、できるのかできないのかというところを示すというのはまず大事なポイントだというところで、できるというのを示したのが大きな貢献だと私は認識しています。
【今澤委員】 分かりました。ありがとうございます。
【岡野主査】 そのほかいかがでしょうか。では、木戸委員、お願いします。
【木戸委員】 日立の木戸です。御説明、どうもありがとうございました。
LHDの最大の特徴としてヘリカル型ということで、定常というキーワードがあるかとは思うのですが、定常によるプラズマ・壁相互作用とか、そういったことは余り今回御紹介されてなかったのですが、そのあたりの研究というのは、原型炉に対しての貢献というのはどうされているのでしょうか。
【長壁教授】 現在、私ども、33ページにもありますけれども、大規模学術フロンティア促進事業というところで、この中の大きなところが環状プラズマの体系的理解というところが大きなトピックとなってやっております。そういう観点で申しますと、どちらかというと、プラズマを高性能化して高性能のプラズマがどういう振る舞いを示すかというところが大きな主題となっているので、今回そちらを主題としてなっていますが、実は大規模学術フロンティア事業が2022年度までの現行の計画となっておりまして、2023年度から別の計画という形で、現在、学術会議でマスタープランの申請をさせていただきます。そちらではどちらかというと、粒子循環とかエネルギー循環、より定常にシフトした内容の計画を立てております。そういう点では、現行の中でも定常に関する研究というのは進めていきたいと思います。ただ、よりアクションプランの原型炉に向けた内容では、そちらの方がより貢献が大きいと考えています。
【東島委員】 アクションプランの中でLHDがどういうところに貢献されているかというのがよく分かり、今日は非常に有り難かったと思っています。
それで2点ほど教えていただきたいのですが、まずダイバータのところでデタッチメントをしている絵を見せていただきましたが、私の理解が追いつかないので、どういう現象が起こっているのか教えていただけないでしょうか。摂動なしの場合はつぶれていて、摂動ありはつぶれてないのかというのが、実は放電波形からは理解できなかったのです。というのは、放射損失は明らかに摂動ありの方が多くて、その場合プラズマの閉じ込めがどうなっているのかとか、シミュレーションの結果を見たときに、コアの閉じ込め領域は小さくなっているようにも見えるし、そういう意味で、何があるからデタッチメントは制御できているのかというところをまず教えていただきたいというのが1点と、2点目は、重水素の実験を実施されていていい成果を上げておられるというのがよく分かったのですが、今後、電子温度もイオン温度も1.2億度を狙おうと思ったときに、次はどういうところをやると達成できるのかというところを教えていただければと思います。
【長壁教授】 デタッチメントにつきましては、現在、私ども、まず実現できたというところで、実際、具体的に何が一番効いているかというと、申し訳ないのですが、解析を進めているというところなので、まだ確定的な内容についてはお答えできない。私の方がまだ具体的に、申し訳ないです。ただ、これについては、今後、シミュレーションと合わせて解析を進めて理解を進めていきたいと考えています。
電子温度につきましては、現在、重水素実験をする前は、ECH加熱をすることでイオン温度がすぐ悪くなってしまうという現象を見ていたのですが、今のところ、重水素にするとよくなっていると。1つは、同位体効果が効いているのかなと今考えているところですけれども、その中でもう少し電子の加熱をより強力にしていったらどうなるかというところを調べていきたいと考えているのですが、まだ電子の加熱をするための手法、そこのところがまだパワーが少し足りないかなというところで、どうにかECHの増強をして電子温度を上げていきたいということを考えています。
【岡野主査】 私から非常に細かなことですが、1点だけお願いで、46ページにイオン温度1億2,000万度達成のことが書いてあるのですが、1億2,000万達成はすばらしいと思うのですが、そこに核融合炉の実現の最低条件として1億2,000万度と書かれているのがちょっと気になってしまいます、有効数字2桁で言ったら1億2,000万ではないのではないかと思うので、約1億度と言ってきましたよね。ここでハードルを上げちゃうと余り科学的な意味のハードルではないので、書き方に気を付けていただければなと思いました。
【長壁教授】 そういう点では、実は密度とか、ほかのパラメータもあるので、そのうちの1つをちゃんと実現できたという意味合いのものでございます。
【岡野主査】 1億2,000万度がすばらしいことは分かっているのですが、全体として約1億度と言ってきたのがここでハードルが上がっているように見えたので、この資料はホームページに上がりますので、そういう意味でコメントをさせていただきました。
【長壁教授】 分かりました。
【岡野主査】 約1億度か、密度によってはそれ以下ですよね。
【長壁教授】 はい。
【岡野主査】 御発表、どうもありがとうございました。
それでは、議題2の原型炉研究開発体制の強化のための大学等の連携強化についてに入りたいと思います。本件は公表前の共同研究公募内容の審議となりますので、非公開とさせていただきたいと思います。傍聴者の方々は御退席をお願いいたします。

(以下、議事非公開)

お問合せ先

研究開発局研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付

(研究開発局研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付)