資料2-2 核融合原型炉研究開発の推進に向けて(原案)要旨


1.本報告書の背景
○「今後の核融合研究開発の推進方策について」(平成17年10月 原子力委員会核融合専門部会策定。以下、「推進方策報告書」)が策定されて10年以上が経過し、様々な状況が進捗している中、核融合科学技術委員会は、原型炉研究開発の在り方についての報告を、最新の研究開発の進捗状況とITER計画の最新のスケジュールを始めとする内外の状況を考慮した上で、新たに取りまとめることが必要であると判断した。

2.エネルギー情勢と社会的要請の変化
○東京電力福島第一原子力発電所事故以降、原子力に対する国民の信頼は揺らぎつつある。核分裂と異なる原理を持つ核融合は、固有の安全性を有するとは言え、核融合原型炉を設計するに当たり、「現在の原子力安全技術レベルに留まらない高い安全性を示し、国民の信頼を得られなければ、核融合原型炉を立地する場所は日本にない」と認識すべきである。
○再生可能エネルギーや原子力等、他の温室効果ガス排出削減技術と比べた経済合理性を重視しつつ、核融合エネルギーが経済発展と温室効果ガス排出の相関を変え得る革新技術として位置づけられるように、その研究開発を進めるべきである。

3.原型炉に向けた核融合技術の開発戦略
○現在最も開発段階の進んだトカマク方式を炉型とし、核融合エネルギーの「技術的実証・経済的実現性」を目指した第四段階への移行条件を満足させる技術課題の達成を、コミュニティ全体の共通目標とする。
○原型炉では安全性を大前提とし、炉工学技術の技術的成立性を実証するとともに、実用化時の経済性を情勢に応じた現実的なものとする研究を行う。
○研究開発の加速と課題達成を促すため、一定の多様性を持つ総合的な取組を進める。トカマク方式の着実な進展を図るとともに、相補的・代替的なヘリカル方式・レーザー方式、革新的概念の研究を並行してバランス良く行う。

4.原型炉に求められる基本概念
○核融合エネルギーの実用化に備え、数十万kW を超える定常かつ安定した電気出力、実用に供し得る稼働率、燃料の自己充足性を満足する総合的なトリチウム増殖を実現することを原型炉の目標とする。
○上記の基本概念を達成するため、炉設計時に留意すべき設計要件として、1)ALARAに基づく安全性の確保、2)受容され得る建設コスト、3)柔軟なブランケットとダイバータ設計、を満たす必要がある。
○また、原型炉の運転開発期には、1)長時間・長期間運転に向けた熱・粒子制御とディスラプション回避などのプラズマ制御、2)実用に供しうるメンテナンスシナリオと稼働率、3)ブランケットとダイバータの高性能化、を実現することが求められる。

5.技術課題解決に向けた開発の進め方
○開発計画の立案に当たっては、技術の整合性だけでなく、プラントの建設・運用費や運用シナリオなども考慮した上で、確定した技術仕様に基づいて課題を挙げ、その開発目標を設定する。開発計画は、原型炉設計に基づいた超伝導コイルなど14の項目毎に技術課題を分類し、「アクションプラン」として各課題の発展と課題間の連関を整理・分析する。
○これら技術課題を着実に解決するには、産学官のオールジャパン体制を構築して研究開発を強化する必要がある。それを実効的なものにするため、六ヶ所サイトを原型炉開発に向けた中核的ハブ拠点として発展させる。
○長期に亘る研究開発を推進するため、ITER計画・BA活動や先進的な学術研究を有機的に連携させ、原型炉研究開発に必要な人材を産学官の緊密な連携のもと育成する。他分野からの参画を促すと共に、人文社会系も含めた様々な連携を通し、複合的視点を持つ多様な人材から成る炉設計体制を構成する。
○国際協力を推進するに当たっては、我が国単独で進める課題と国際協力で進める課題を戦略的・合理的に区分する。また、国際貢献の観点から、世界の原型炉開発の中で主導的な役割を果たす。
○固有の安全技術が求められる核融合原型炉の安全設計ガイドラインと安全要求基準を、国民と環境の視点に立ち早期に策定する。その際、広い分野の国内外の専門家と協力して、総合的な核融合安全性研究を推進すべきである。
○技術基盤構築の体制を整備するに当たり、アクションプランを策定するとともに、開発の優先度やマイルストーン、国際協力項目なども含めて総合的に開発工程をまとめ上げた原型炉開発ロードマップを策定する。

6.原型炉段階への移行に向けた考え方
○原型炉への移行判断は、ITERの核融合運転(DT)が見込まれる2030年代に行う。原型炉段階に移行する際には、実用炉段階で経済性を達成できる見通しを得ておく必要がある。
○中間C&Rを見直し、2回に分けて実施する。
  (1)JT-60SAの運転が開始される2020年頃
  (2)ITERのファーストプラズマが予定される2025年から数年以内(原型炉に必須のコンポーネントの工学開発活動の開始の適否も判断)
○アクションプランの時系列展開、及び中間チェックアンドレビュー項目と時期は、コミュニティ内外での議論のもと、ITER計画の進捗状況やBA活動の成果を踏まえて随時タスクフォースが見直して行くこととする。
○核融合エネルギーを、国民に選択され得るエネルギー源とするため、アウトリーチ活動を戦略的に推進する。そのため、日本全体を統括して活動するヘッドクォーターを設立し関係機関の協力体制を立ち上げ、核融合エネルギーの社会的価値の最大化と、国民の信頼獲得を目指した連携活動を計画・推進する。 

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