原子力科学技術委員会 核不拡散・核セキュリティ作業部会(第21回) 議事要旨

1.日時

令和3年11月16日(火曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

新型コロナウィルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

   1.核不拡散・核セキュリティ分野における人材育成について
   2.その他

4.議事要旨

【船曳補佐】定刻となりましたので、ただいまより第21回核不拡散・核セキュリティ作業部会を開催いたします。
 本日は御多忙にもかかわらず、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 今回の作業部会におきましても、前回同様、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点からオンラインにて開催いたします。これに関連した確認事項等もありますので、議事に入る前に事務局にて説明させていただきます。
 まず、オンライン開催に際しての留意事項を御説明いたします。委員の皆様におかれましては、現在遠隔会議システム、Webex上で映像及び音声が送受信できる状態となっております。御発言される場合には挙手ボタンを押していただくと挙手マークが表示されますので、順番に事務局より指名いたします。もう一度ボタンを押すと挙手マークが消えますので、御発言をいただいた後は挙手ボタンを押して手を下ろしてくださいますようお願いいたします。
 会議中にビデオ音声及び音声が途切れている場合、その時間帯は御退席されているものとみなします。遠隔会議システムの接続の不具合等が生じた場合は、随時事務局宛てにお電話にてお知らせいただくようお願いいたします。
 傍聴される方におきましては、ビデオ映像及び音声をオフとしてください。議事進行の妨げとなる行為を確認した場合には、遠隔会議システムから御退席いただきます。
 議事録につきましては、事務局にて会議を録音し後日文字起こしをいたします。事務局以外の会議の録画及び録音はお控えください。
 以上が本日の進行に当たっての留意事項となります。
 続きまして本日の議題ですが、お手元の議事次第に書かれているとおり、核不拡散・核セキュリティ分野における人材育成についてとなってございます。
 それでは、最初に事務局より本日の出欠と配付資料の確認をさせていただきます。
 本日、中島先生は少し遅れての出席となりますが、委員9名全員に御出席いただいております。現在は8名の委員のご出席ですが、どちらにしても定足数であります過半数を満たしてございます。
 続いて、本日の配付資料でございますが、委員の皆様及び傍聴の登録をされた方宛てに事前にメールにて配付資料をお送りさせていただいておりますので、各自お手元にて御確認いただきますようお願いいたします。
 配付いたしました資料につきましては、資料1、人材育成ヒアリング実施方針、資料2、大学等における人材育成の取組及び卒業生の進路で、齊藤先生の発表資料でございます。続いて資料3、国際機関で活躍する人材を育成する、井上先生の発表資料でございます。そして資料4、NECのAIとセキュリティの取組について、山本先生の発表資料でございます。また、参考資料1として、第11期原子力科学技術委員会核不拡散・核セキュリティ作業部会の委員名簿をつけてございます。
 資料の欠落等がありましたら、事務局までお知らせください。また、議事の途中でもお気づきの点がありましたらお申しつけください。
 事務局からは以上でございます。ここからの進行は、出町主査にお願いしたいと思います。
【出町主査】本日は、皆さんお忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。実はお時間も限られていることから、大変僭越ながら御挨拶もそこそこに早速本日の議題に入らせていただきたいと思います。
 まず議題ですが、核不拡散・核セキュリティ分野における人材育成について、でございます。前回まで委員の皆様に議論いただきましたが、核不拡散・核セキュリティ分野における人材育成の取組の方針を検討する上で、一口に核不拡散・核セキュリティ分野と言っても様々な関わり方、活躍の場があることから、まずはその実態を把握すべく、今回と、また次回の2回にわたりまして、この核セキュリティ・核不拡散の分野でまず実際に御活躍されている方々をお招きし、その内容を御紹介いただくことを考えております。
 ヒアリングに当たりましては、前回まで委員の皆様に御確認いただいた本日の配付資料1:人材育成ヒアリングの実施をお開きいただきまして、1ポツのヒアリングポイントを中心に御説明いただきます。
<中島先生 入室>
【出町主査】中島先生いらっしゃいましたね。皆様、資料1を適宜開きながら、ヒアリングをお聞きになっていただければと思います。
 第1回目の本日は、東京工業大学 齊藤名誉教授から、先ほどありましたタイトルについて御説明いただきます。その次に、委員でもある同志社大学 井上先生に御説明いただきます。最後、3人目ですね、日本電機株式会社(NEC)第二都市インフラソリューション事業部 山本敬之シニアエキスパートからお話をいただきます。
 時間も限られていることから、各者20分の御発表で、その後10分の質疑応答の時間を設定したいと思います。要はお一人当たり30分×3人で90分、残りの時間、17時の閉会までを意見交換の時間とさせていただければと思います。
 もしも説明者皆様もお時間許すようでしたら、ぜひ意見交換にも御参加いただければと存じます。それでは早速ですが、最初の御説明の齊藤先生、御準備よろしいでしょうか。
【齊藤先生】御紹介ありがとうございます。それでは、核不拡散・核セキュリティ分野の大学等における人材育成の取組について紹介させていただきます。
 本来ならば、人材育成の課題と対応、それから取組事例を紹介させていただいて、最後にまとめと提言にしたいところでございますが、30分の持ち時間の中で全部を紹介してからまとめ・提言は難しいため、最初にまとめと提言を御紹介させていただきます。
 また、時間の節約のために、スライド順番が若干前後しますのを御了承ください。事例については、事前に委員の先生方にはお送りさせていただいていると思いますが、そちらを参考にしていただければと思います。
 最初に私のキャリアパスを紹介させていただきます。何を申し上げたいかというと、仕事は職場や社会のニーズによって変化しておりまして、私の場合は約10年単位でテーマが変わってきていると。私は大学に勤めておりますので比較的、研究、仕事のテーマは自由に選べますけれども、一般的には職場の都合でそうはいかないのが実情であります。したがって大学の教育において学生がどのような能力を身につけておくべきか、何をどのように教えるべきかが重要な課題だと思います。
 まず、最初にお示ししたこの図は、日本の総人口と人口構成であります。人口が減少し少子高齢化が待ったなしで迫っていますが、このように第1の課題は、少子高齢化、すなわち人口問題に対してどう人材育成、どう優秀な有望な学生を発掘して育成するかが大事であり、また、人材の数よりも質を向上させる、多様性を活用していくことが重要かと思います。
 第2の課題は御存じのように、大学の原子力教育資源が非常に危機状態にあるということです。他専攻と合併したりし、原子力工学科目のフルコースを教えられる大学が少なくなってきております。限られた教育資源でいかに効率よく効果的に教育をするかが大事な課題であります。
 その解決方法の一つとして、後で時間があれば詳細に御説明しますが、ここで簡単に御説明しますと、複数の大学が連合し実施するネット教育があります。12年前に提案し、文科省の支援で開始することができました。当初14大学でスタートしましたが16大学、19大学と年々増えてきております。1期が3年で、現在は第4期の最終年度であります。参加人数もかなり多く、ネット配信しておりますので、海外の人たちも参加しております。原子力関係の学科がなかったある大学では、一人の教員の情熱と努力でこの大学連合ネットに参加し教育を進めております。しかしその先生が定年退職した後は、後継の先生がおらず、最後の第4期目では19大学から18大学に減ったということであります。教育はまさに、教員の情熱だと思います。
 第3の課題は、委員の先生方はよく御存じだと思いますが、人材育成と教育は違うものであることです。人材育成の主役は国や会社、組織ですが、一方、大学の教育の主役は学生であります。国や会社は例えばデジタルの人材が不足しているから育成する必要があるとなりますが、大学の教育は違います。学生が大学に何を期待しているか。学生は自分の将来の人生設計をするために大学に来ております。したがって大学の教育でまず大切なのは動機づけと後押しです。そして、切磋琢磨する環境であります。
 ここで私の研究室の一人の卒業生のキャリアパスを紹介いたします。この学生は東工大の原子核工学専攻の博士課程を修了した学生で、留学生ですが卒業後は母国には帰らないでできればIAEAなどの国際機関で仕事をしたいと希望を持っていました。御存じのようにIAEAに就職するには何年かの社会の勤務経験が必要でありますが、そこでJAEAの特別研究生に応募をして採択され、3年後に私の東工大の研究室の助教に採用しました。大学に戻ってからIAEAの採用試験を受けたところ見事に合格をし、約8年前からIAEAの査察官として勤務しております。この学生は女性であります。
 このように大学の教育では単に研究を指導するだけではなく、学生の将来の人生設計を後押しするということが重要だと思います。そして、やる気と元気、挑戦をする、チャレンジをする勇気を持ってもらうことが大切であります。
 また、学生の国際交流で鍛える環境が非常に重要であります。日本人は比較的英語の苦手な人が多いのですが、下手な英語に自信を持つことが上達する秘訣だと私は思います。下手だからといって萎縮していると国際社会では無視されるだけです。これは私がアメリカの大学で仕事をしていたときに得た教訓であります。
 後ほど時間があれば詳細御紹介したいと思いますが、リーダー育成のためのリーディング大学院所属の学生が2年前に、IAEA国際会議での若手研究発表コンテストにて、日本人の学生として優勝しました。このリーディング大学院では、学生たちは全寮制の道場で自主的に切磋琢磨します。道場では教員も一緒に生活して、私もその道場にずっと住み続けておりました。夜の道場ゼミでは、常に英語で議論します。英語が下手だと黙っていると議論には参加できません。
 最初に私のキャリアパスのところで紹介しましたように、修士論文や博士論文の研究テーマそのまま、卒業後も続けることはほとんどありません。新しい職場では新しい仕事が待っています。したがって学生たちが卒業までに身につける能力としては、自力で能力を開発していける力、それから柔軟性と適応性が非常に重要だと思います。
 例えば、修士論文、博士論文の指導で大切なことは、課題を見つける力、課題を解決する力、論理力、論理的な思考力です。修士論文の指導では、課題を見つけるのは経験が少ないので難しいので、先生が課題をいろいろ紹介して、学生が興味を持てばその課題を実験や解析で論理的に解決する力を鍛えます。博士論文の指導では、何が課題であるかをもう自分で見つけ、それを解決する力を身につけることが重要であります。
 次に移りますが、第4の課題として、どのような人材が必要か。これも非常に重要な課題であります。実務者なのか、研究者、技術開発者、管理者、リーダーなのかによって、育成の仕方は変わってきます。
 例えば、ここでリーダーの育成について少し紹介させていただきます。先ほど少しお話ししましたように、東工大では3S分野におけるリーダーを養成する全寮制の学位、博士養成プログラムが文科省の支援で実施されています。もちろん今までの博士課程の教育は専門性を重視しておりましたが、このリーダーを育成するプログラムでは、高い専門性はもとより幅広い社会性、国際性、さらに人間性を養い、時代の流れを俯瞰しながら高い志を持って、世のため人のために世界のために貢献するリーダーを育成することを教育目標と教育理念としております。
 例えば、このリーディング大学院、リーダー養成教育院の卒業生の進路の例でございますが、非常に面白い話があります。ある学生の就活において、この学生は非常に積極的でよくできる学生でしたが、ある会社――実は政府の外郭団体ですが、「面接まで行ったけれども面接で落とされました」と報告してきました。よく聞いてみると、面接後人事担当の人から電話で「君はしゃべり過ぎる」と言われたと。全寮制の道場ゼミで自主的な議論に明け暮れていますので当然議論には慣れていますが、恐らく一つの質問に対して二つ三つ、幾つかの説明をしたのだと思います。その学生はもっと将来性のある、彼にふさわしい会社に就職をして、頑張っております。
 第5の課題は、産官学の連携の強化です。実務力の向上、キャリアアップや組織力の向上のためには、特に核セキュリティ、サイバーセキュリティの人材育成のためには、社内育成と社外教育のバランスが重要だと思います。OJTと、それから、大学、学会、JAEA、IAEAの連携。
 第6の課題は、国際連携の強化です。このスライドに示しますように、東工大はIAEAインターンシップに2000年初頭からこれまで30名以上の学生を派遣してきました。また、先ほど紹介しました大学連合ネットも各大学から選抜した学生を10名今まで派遣しております。このIAEAインターンシップを終えて、ある学生が「国際社会で頑張って生き延びていくためには博士の学位が重要であるということが分かった。私は修士修了したら就職しようと思っていたが、博士課程に進学したい」と決心して博士の学位を修得し、今は国の研究所で頑張っております。まさにインターンシップが動機づけをした例であると思います。
 これらのほとんどは3か月程度の短い就業体験、インターンシップでありますが、東工大のリーダー養成教育院では、就業体験型ではなく研究型のインターンシップを約1年かけて実施してきます。現地で論文のネタ一つ作ってくる覚悟で、彼らはこのインターンシップに参加します。
 元に戻りますが、次に重要な課題は、教員や指導員の養成ですね。特に核不拡散・核セキュリティ分野はなかなか教える先生もいない。一つの提案ですが、各国の核セキュリティ分野の教育者、指導者が集まるIAEAのInternational Nuclear Security Education Network(INSEN)と連携は、教員、指導員の養成をすることができると思います。
 最後の課題は、教育資金をどう確保するかです。海外のインターンシップなど学生を国際交流の場で鍛えるには、特別の資金がないとできません。産業界は研究への支援、共同研究など多くありますが、教育に対する支援はほとんどありません。産業界としては、海外のインターンシップなどの経験より、社内教育、OJTなどが優先かと。次回のヒアリングのときにはよく議論していただきたいと思います。
 まとめです。原子力事業者は核セキュリティ文化醸成が急務であり、実務者、研究者、技術者、管理者のキャリアアップ、能力アップには、社内のOJTだけでは十分ではないと思います。特にこの核セキュリティとかサイバーセキュリティにおいては、教育する側の人材も不足しております。したがって教師、指導者、メンターの養成、それからIAEA等も教材を開発しておりますけれど、教材も非常に重要だと思います。また、この分野のIAEA保障措置、2国間・多国間協定においては、従来の外交力にプラスして科学技術力がないと太刀打ちできないこともあります。そういった総合的な科学外交力を養うことも大事だと思います。
 さらに、今後非常に重要になってくると思われる課題があります。福島第一原子力発電所のデブリ回収です。これは、IAEAの保障措置、それから日米原子力協力協定に関連した核物質の取扱い、管理、保管の課題として、将来非常に重要になってきます。
 ここに示すのは教科書の一例です。原産協会に原子力システム研究懇話会というのがあります。ここで最近まとめた、原子力平和利用と核不拡散・核セキュリティの教材です。出町主査にも執筆をしていただいておりますが、割と人気があって残り部数が少ないので委員の先生方御希望であれば御連絡いただければと思います。
 次に時間が無いのでごく簡単にですが、原子力規制庁支援の規制人材育成のプログラムの概要を御説明したいと思います。このプログラムでは、学生のみならず核セキュリティに関する事業者、規制者、警察、海上保安庁の対応部隊等を含む、多様な規制人材を想定しております。また、学生のみならず社会人を対象として、IAEAと連携しての核セキュリティスクールも開催しております。IAEAからの講師派遣の費用はIAEAが負担してくれております。資料にありますとおり、実績としても、受講者は学生だけでなく多くの外部の受講者が参加しております。
最後に、日本核物質管理学会について紹介させていただきます。日本核物質管理学会は、米国に本部のある核物質管理学会の日本支部として1977年に設立されました。核不拡散、国際保障措置、計量管理、核セキュリティ及び核物質の輸送、廃棄物の処理、処分等の分野における専門家の集まりであります。将来代表的な核不拡散・核セキュリティ分野の重要なテーマ、課題に対して、核物質管理学会が多くの技術開発、手法、政策及び規制に関するガイドラインの作成、国際連携、国際協力及び次世代人材育成に貢献しております。
 今年度の年次大会の概要ですが、2日後に、18日、19日にウェブで2日間大会をやります。この当部会の前の主査の上坂原子力委員長にも来ていただいて、お話をしていただきます。皆さんもぜひ御参加されることをお待ちしております。
 提言に移りますが、核不拡散・核セキュリティに関する専門知識を有する人材の確保、育成は我が国の原子力政策を着実に推進するための根幹であります。中央省庁、関連する産業界、核不拡散・核セキュリティ分野の人材育成を、大学や学会等と密接に連携して戦略的に効果的に効率よく実施することが重要。また核不拡散・核セキュリティの分野における職員のスキルアップ、キャリアアップ制度の整備のみならず、職員の国内外の連携機関への派遣、留学、また実習、研修などを通じて、資格の取得機会を付与し次世代の有望な人材育成を戦略的に進めるべきであります。
 特に核テロ、核セキュリティ文化に関する認識は、我が国の社会全体を通じて非常に薄い、十分な人材を保っていないのが現状であり、その人材育成は緊急の重要な課題であります。サイバーセキュリティ分野の研究及び人材育成は、人材が非常に不足しておりまして、このサイバーセキュリティ強化のための対応は急務であります。
 したがって、早急に、核不拡散・核セキュリティ分野における人材育成基本計画を策定し、その戦略的、効果的、効率的な実施に向け、産業界、大学、学会、JAEA、IAEAとの連携活動を支援することが重要であることを提言したいと思います。
 最後に、参考としてそのような施設があることを紹介したいと思いますが、核テロを含む原子力災害の緊急対応について、3.11のときもまさにそうでありましたが、原子力事業者と自衛隊、警察、消防、海上保安庁など密接な連携が不可欠であります。原子力に関する知識や原子力災害等の実践的な訓練は、我が国では十分ではありません。警察、消防庁、海上保安庁とお話をしましたが、やはり原子力に関する知識が我々は十分ではないということをよくお話しされていました。
 米国のテキサスA&M大学では、災害訓練施設というのがあります。資料に示しますように、広い敷地の中に、列車の衝突した現場とか、あるいは地震で崩壊したビルの瓦礫とかがあって、消防隊も何チームも来ていろんな消火訓練をやっております。そこで実は、先ほど申しました東工大のチームでは、リーダー養成のための学生たちを連れていって、敷地のどこに放射性物質があるかを見つけ出して回収する訓練を行います。
 衝突した列車の中にあるのか、あるいは、崩れ落ちたコンクリートの瓦礫に中にあるか探し出し、この瓦礫の中にあることを見つけ出して、今度はどこから回収するか。中は危険ですから、瓦礫のどの部分にあるか位置を探します。そのためには放射線のレベルを測定し、そのレベルのマップを作って、回収する方法を検討し計画を立てます。
 これはその強度を測って、どうもこちらの方向にあるとか、こちらの側にあるとか、あちらだとかということを探します。それで、回収計画を議論します。測定結果を基に回収計画を立て、作戦会議を行います。
 それでいよいよ回収の開始になりますが、二人一組で、一人は懐中電灯を持って、一人は計測器を持って、2分以内で戻ってくると。何が起こるか分からないので長期には滞在させず、2分たったら戻ってきます。そして、戻ってきた後、中は迷路ではないのですがいろんな通路がありまして、自分たちが得た情報を次のチームに素早く伝達をして、それでまた次のチームが回収に行き、その先を進むという訓練を行います。
 第1期生をはじめ、最近は5期生、6期生が回収訓練をしました。三つぐらいの放射性物質を隠しておきまして、この順番に回収してこいと指示を出し、計測器を見ながら回収してくる。終わったら修了証を渡しております。
 それから、大学連合のネット教育になりますが数も増えると日程調整が非常に大変で、各大学いろんな事情があって教室が確保できないこともありますので、最近は、ビデオでアーカイブを作っておいてオンデマンドで、自分の都合のいいときに見てもらえるという教育システムを構築しております。言わばウェブ図書館ですね。
 持ち時間がもうほとんど終わりましたのでこの細かい話は、先生方には参考資料をお送りしておりますけれども、またディスカッションの時間にいろいろとお話をさせていただければと思います。取りあえずこれで主査にお返しいたします。どうもありがとうございました。
【出町主査】齊藤先生、非常に詳細な御説明をいただき誠にありがとうございます。では、10分ぐらいのお時間ですが、御質問等ございましたらぜひお願いしたいと思います。最終的にこの今回のヒアリングの内容を今年度の文科省さんの報告書にどうまとめるかということを考えておりますので、その観点からもぜひ御質問いただければと存じます。まず私から一つ目よろしいでしょうか。
【齊藤名誉教授】はい、どうぞ。
【出町主査】齊藤先生は非常にこの大学連携や東工大さんの核セキュリティを中心的に主導してこられた先生で、非常にいつも感服しております。
 そういう意味での質問になりますが、日本の核セキュリティ教育、特に東工大さんではリーディング大学院や原子力規制人材育成などの事業を行っていると思いますが、基本的な質問ですみません、この事業に対象となる学生さんは、核不拡散・核セキュリティを専ら学習または研究されている方々になりますでしょうか。
【齊藤名誉教授】一般の学生です。核不拡散あるいは核セキュリティの研究室の学生さんたちはまさにその道の研究をしているわけですけれども、例えば規制人材育成であれば原子力工学科全体、場合によっては学内でも興味のある人、と対象を広げております。
【出町主査】専門が必ずしも核不拡散・核セキュリティに特化したわけではないのですね。
【齊藤名誉教授】ええ。先ほどの規制人材育成は、講義の中身はそういうことでありますが、3Sに特化した人材育成プログラムです。3Sは特にまだ教材もいろいろ体系的にできておりませんので、この研究室の先生は教材も作りながらこういう育成を行っている。これは専攻で行っているプログラムですので、専攻の学生は参加できます。
【出町主査】先生のところの取組が、リーダーとか実際の研究者と実務者、あと管理者も含めて、一つの大きな育成体系の例になると思います。我々の今回の目的は、現在の核セキュリティ人材教育、人材育成のまず実態を把握して、実態把握がなかったからまずお伺いして、その上でさらに今後の核セキュリティ人材のあるべき姿というものを御意見いただくことになりますけども、今回その実態についてよく伺うことはできましたが、今後5年、10年後の核不拡散・核セキュリティをめぐる世界の変化を踏まえた上でいかがでしょうか。
【齊藤名誉教授】何年後にどういう人材が何人要るかというのは、これは私には今正確にお答えできません。ただ、セキュリティあるいは核テロの問題とか核不拡散の分野は、非常に重要な分野になってくることは間違いないと思います。
 どの大学でも大体原子力の安全の講義あるいは教育は行っておりますけれども、こういうセキュリティ、あるいは核不拡散の問題、保障措置の問題は、かなり最近に出てきた課題であり、これからどう教育が発展していくかということで、例えば規制人材育成、今年でこちらはもう終わりで、また次の応募・提案を規制庁にしていくと思いますが、もし、支援がなくなるとこのような特殊なお金のかかる教育は途切れてしまうことが非常に心配ですね。
 あとは、実際に仕事に就かれている人については、最後にお話ししました核物質管理学会などでいろいろと勉強する機会はあるということですね。また学会内に、学生部会もあり学生たちが積極的に活動する場も設けており、コロナ禍もありなかなか活動しにくいところですが、世界の核物質管理学会では、国内の14支部を含めて25の学生支部があります。そのような学生たちの交流の場も将来できていくと思います。まだ日本は学生支部までは昇格しておりませんが、学生部会としてその前段階の活動の場を提供しております。
【出町主査】核セキュリティの人材育成ですね。今回御紹介いただいたとおり、特に東工大さん中心ですが、既に実施例があるということがよく分かりました。
【齊藤名誉教授】また、もっと広く宣伝と言いますか広げていくため、この大学連合ネットの中で、核セキュリティに関する教材や講義を作成・配信しております。そのようなことも、今後の裾野を広げていくという意味では、恐らくよく知らない学生も沢山いると思いますので、そういう手段を利用していくことも重要かと思います。
【出町主査】ありがとうございます。私ばかり質問してしまって申し訳ありません、ぜひ御質問等ございましたらお願いいたします。小松崎先生、お願いいたします。
【小松崎委員】齊藤先生、大変すばらしい話をありがとうございました。今僕はこの分野多少しか関わりはありませんが、非常に精緻な教育をされており、現状を勉強するのに大変役に立ちましてありがとうございました。勉強させていただきました。
 少し疑問に感じた点がございまして、これだけ教育を受けている人たちがほかの分野の勉強をする時間が果たしてあるのか、連携という点で申し上げますと、最後に拝見したビデオ、測定器を持って人間が歩いていましたが、例えばドローンにあのようなセンサーを搭載して空間情報を分析する仕組みと連携させれば、どこら辺に核物質があるかAIを使って自動的に解析することは、今でもその気になればできるだろうなと。ところが、そのような新しい連携で技術を取り込み、新しい教育をつくるだけの余力、あるいは時間が、今やっていらっしゃる方々にあるのかと思ったのですが、いかがでしょうか。
【齊藤名誉教授】非常に貴重な御指摘だと思います。テキサスの大学が開発している教育訓練のプログラムですけれども、車で計測器を積んで広い敷地内を探しに行く訓練を、学生のため行っています。先生がおっしゃるように、ドローンで計測器を積んで、どこら辺にあり、だからそこら辺の回収に集合するというようなもっと効率的なやり方が将来あると思います。ただ今では、これは実働部隊を対象にした場合でありまして、学生たちは計測器を車に積んで調べることもあると理解し、計測器の勉強をメインにするプログラムにしております。
【小松崎委員】切符切りから車掌からいろんなことを経験しないと電車の運行はできないという考え方からいけば、基礎中の基礎を行うという点で先生のおっしゃるとおりだと思います。それにさらに連携として、新しい技術をどんどん取り入れた合理的な手法も同時に考えていただけると、より方法論になる気がしました。
【齊藤名誉教授】恐らく学生たちも感じていると思います。こういう訓練は受けたけれども、もっとこうしたらどうかと考えることがあると思います。それらを持ち帰り道場でディスカッションして貰っております。
それと忙し過ぎるのではないかということですが、このリーディング大学院は誠に忙しいです。全寮制で夜も週に1回は必ず集まって議論しますし、教養科目、インターンシップ、それからボランティア活動、全て必修で、アルバイトする時間もございません。そのため、この学生はきちっと面接で選抜を行い、入った場合には奨学金を出しております。
【小松崎委員】ありがとうございました。
【出町主査】続きまして五十嵐先生お願いしてよろしいでしょうか。
【五十嵐委員】齊藤先生、大変詳しいお話をありがとうございます。すばらしい教育がされており、とても勉強になりました。提言の2分2、9ページだと思いますが、この人材育成基本計画のようなものを、この作業部会でも目指しているところがあります。このページや、御説明を伺っていてもセキュリティは非常に重要だと分かるのですが、社会的には社会全体を通じて非常に認識が薄いため、まず、若い人を集めていくにはここを変えていく必要はあるのかなと伺いながら思いました。先生としてこの辺の問題点、なぜ認識が薄いのか、また、それを変えていくには何が必要とお考えかお聞かせ願えますでしょうか。
【齊藤名誉教授】興味を持たせる若い人をどうするかという対象の話と、国全体で重要性を分かってもらえるかという話があると思います。
 ここにありますように、3.11のときも自衛隊や消防庁など出動はしたけれども、なかなか原子力について、施設の中についてよく分からない、放射線についてよく分からない等があり、そういう人たちをどう興味を持って訓練させるかと、規制人材育成で外部の人たちにも参加をしてもらっています。
 このDisaster Cityに私たちのリーディング大学院の学生、規制人材育成の学生だけではなく、外部の人も恐らく参加をしていると思います。そういう学生、若い人たちにどう興味を持たせるかということと、国全体のいろんな組織体でもって、「これはやっぱり重要だな」と思っていくかで、やり方が違ってくると思います。
 そういう意味で、私たち核物質管理学会も、学生は学生として研究発表したりしますけれども、一般に向けて我々の活動をもっともっとPRをしていこうと、こういうことを我々が議論していて、将来に向けてこういう重要性があると。
 ちょっと飛ばしましたけれども、いろんな重要な課題が今後あります。保障措置の課題とかセキュリティの課題とか、あるいは国際協力の課題とか、単にその技術だけじゃなくて非常に重要なテーマというか課題があります。こういうことを理解していただかないと、例えばF1のデブリ回収で何か大変難しく放射線浴びないようするかだけではなくて、核不拡散上の観点から見れば、核物質がバラバラに散らばっていて普通に管理している物質ではなく、ただそれを寄せ集めてどこかに管理すればいいと問題でもなくて、核物質そのものが、例えばどこから昔輸入しているか、アメリカから輸入しているのであれば日米原子力協定に関連する札がついているわけです。そういうこともきちんと対応していく必要があります。
 そういうことをやっていけるのは、今のところ核物質管理学会しか私はないと思います。学生に対しては核物質管理学会だけではなくて大学も努力できる、大学連合のネットワークでもそういう講義を増やしていける。
 したがって私はもっと具体的に御提案したいのは、この大学連合、今年度で一応今の予算は終わる予定で、次年度どうするかはまた考えておりますけれども、JAEAのISCNのセンターと連携をしながら、もう少し核セキュリティ、核テロあるいはサイバーテロなどに関連したネットワーク、もっと易しい学生向きのネットワーク教育をしていくべきだと思います。これは一般の学生も「非常にやっぱりこの分野は重要だね」と動機づけをできる場だと。詳細はそこに入ってきてから、後押しをしてやるということじゃないかと思います。
【五十嵐委員】ありがとうございます。
【出町主査】ありがとうございます。まだ他にも質問があると思うので、最後にまたまとめて御質問させていただこうと思います。齊藤先生、どうもありがとうございました。続きまして、井上先生、御準備よろしいでしょうか。
【井上委員】はい。大丈夫です。
【出町主査】それでは井上先生、委員でもいらっしゃいますけども、IAEAで御活躍された御経験を持っていらっしゃいますので、御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【井上委員】先ほど、ご説明された齊藤先生齊藤先生のお名前は、IAEA時代にもよくお聞きしておりまして、今回お会いできて本当に嬉しく思います。そして、今日参加されておられるメンバーの方以外にもIAEAで御一緒にお仕事をされた方のお名前も発見しまして、どうぞよろしくお願いいたします。
 今日の私のテーマは、国際機関での勤務はこの当該分野で一つのキャリアになり得るということで、そういった国際機関で活躍する人材となるためには何が必要なのかお話をしたいと思います。
 先ほどの齊藤先生のお話は、非常に細分化された専門性のところもお話しされておられましたが、私のほうはもうちょっとざっくりとした内容になります。多くの方が国際機関というところについて御存じかどうか分かりませんので、国際機関というところの組織構造とか、いろんなグレードとかポジションのタイプなども御説明して、その上で、国際機関に人を出して、また、その人々が活躍されるにはどうするかというのが最後の提言です。
 実は最後の提言で、産官学の連携というのを私も全く齊藤先生と同じことを考えておりまして、何か共通するところがあるなと先ほど聞いて思っておりました。
 ではまず、国際機関の組織構造について、これからのお話の中で出てくると思いますので、まず御説明をしたいというふうに思いますけれども、まずDDGという方がおられて、その下に局があります。デパートメントがあってディビジョンがあってセクションという垂直構造になっております。
 この右側を見ていただきますと、六つのデパートメント―局があると。Department of Technical Cooperation、Department of Management、それからDepartment of Nuclear Energy、Department of Nuclear Safety and Security、Department of Nuclear Science and Applications、Department of Safeguardsとこの六つの局がありますが、この赤で囲った部分が、議論している核セキュリティ分野に対応しているところになります。
 ポジションがいろいろ上から下まであり、まず局。局のトップがDDG―局長で、その下に部があります。部のトップ、ディビジョンのトップが、ディレクター―部長ですね。これはグレードとしてはD1かD2でして、まずは採用されたときはほとんどの方がD1で入られ、功績によってD2に昇進されます。その下、部の下に課がある。これ普通の会社と同様と思いますが、それがセクションヘッド、課長になります。それがP5レベルと呼ばれます。
 P1からP5、D1、D2、Gというポジションはどれぐらいあるかというと、2016年時点で1,039あります。日本人はその中で大体18ぐらいということです。それ以外に、通常ポジション以外に、CFE―Cost-Free Expertというポジションがあり、これが65ぐらいあります。こちらはまた後で説明しますが、これは人を出す元の組織が費用負担をするというポジションです。
 割とIAEAとしては、CFEの方に来ていただくと非常にありがたいのですね。人を出してくださるということ、いつも人が足りていませんので。ですので、これをうまく使って、人的な貢献を兼ねつつ将来の経験を積んでいただくという、そういうのもキャリアを開く一つの足がかりとなると思います。
【出町主査】途中で申し訳ありません。井上先生、このページが事前の配付資料にはないので、後ほど追加で頂くことは可能でしょうか。
【井上委員】はい、大丈夫です。こういうのがあったほうが分かりやすいということでしたので、後でお送りしたいと思います。
 こちらが、国際機関はどういう採用があるのかというものです。まずポジションがないと人を採用できないと。ポジションベースの採用となります。退職者が居れば空きが出、その空きの出たポジションを公募するというふうになっております。あとは、公募による透明でオープンな競争であり、公募ポジションの要件に最も合致している人が採用されます。また、有期雇用であるということですね。契約期間があって、契約を更新していく方式になっております。IAEAでは、通常5年、最長7年。パーマネント契約に切り替わるのは、査察官に就いている方は多かったのですが、最近は少なくなってきていると言われています。そのため、IAEA後を見据える必要があるということですね。キャリアの一つのステップでしかないと思います。
 ポジションのタイプは、先ほど言いましたとおり、通常のポジションと、それからCFEとかIAEAが費用負担しないポジションがあります。それらに必要な学位と経験年数は、最も募集の多いポジションであるP3、P4ポジションで修士以上の学歴。P3は実は修士がなくて良いのですが、今ほぼ全ての人が修士以上を持っています。学歴に加え、プロフェショナル経験が必要ということになります。
 正規のP5以上は、組織の中でシニアポジションと呼ばれています。修士以上の学歴、プロフェッショナル経験と、管理職であれば国際的なマネジメントの経験、専門職ポジションであればその分野で卓越した専門家であること。IAEAは専門家の集団ですので、先ほど齊藤先生もおっしゃってましたが、専門家には博士は必須と大体なっています。
 正規のポジションですが、すばらしい経歴の方々間での競争が熾烈しておりまして、修士以上の学歴で10年以上のプロフェッショナル経験、それから国際的なマネジメント経験が活きます。IAEAには多くの国籍が集まり、色んな国から人々が来ますので、多国籍な国際組織のマネジメントをした経験が求められます。
 先ほど申しましたIAEAの費用負担がないCFEは、企業とか組織がIAEAの部門の責任者と交渉・折衝してつくることが可能なポジションです。ですから、日本の方も何人も参画することができるかと。
 あと、JPOですね。これはP1からP2レベルの経験の少ない若手の専門職になろうとしている人々への就業機会の提供が目的でして、本人が所属する各国が主体となり、IAEAは費用負担を行わないポジションです。
 国際機関の正規ポジション、PとかDのポジションの採用は非常に競争が厳しいです。一つのポジションに50から100ぐらいの応募がざらにあります。
 選考プロセスも非常に透明性を重視してまして、書類のスクリーニング、名前などは全部消して誰が応募しているかも全く分からない状態で行います。もちろん、どの学校出てどこで働いていてを見たら、知っている人だったら「ああ、知っている」となるかもしれませんが、匿名でのプロセスを大事にしております。その後に、コンピューターによるスクリーニングインタビューを経て、そしてインタビュー。査察官の場合は筆記試験もあり、それがなかなか難しいものになっております。
 選考基準も、ポジションごとに違っておりまして、募集要項に必要な専門知識と経験年数、スキルや能力、コンピテンシーなど、要件が明記されています。
 管理職ポジション、特にD以上のポジションについては、マネジメント力が重視されつつあります。IAEAは専門家の集団ですが、それでもやはりセクションヘッドといった管理職はアセスメントができないと難しいと。
 アセスメント力を測定するために、外部のアセスメントセンターで複数の候補者のマネジメント能力を精査し、選考資料にすることも増えてきてます。50や100人の応募者を比較して、中で最も優れた人を採用するため、最低経験年数でも7年、5年、10年や15年など色々基準がありますが、最低経験年数で採用される人は非常に少ないです。より高い学位、より長い経験年数の人が採用される傾向があるということです。
 採用されるためのポイントですが、キャリアをつくるためには日本の組織のように「あなた行ってね」という話ではなく、自分でポジションを獲得することによりキャリアを切り開かなければならず、そのため、選ばれるためには、専門領域で深い経験、知識、スキル、コンピテンシーなどが必要になります。例えばリーダーシップとかチームワークはできるかとか分析力や洞察力があるかなど、いろいろリストされている項目がありますので、それらの能力を持っているか、国際的な経験があるかどうか、持っているだけではなく採用プロセスの中で説得力を持って説明し、納得させる必要があります。
 P5以上であれば、こちらは、管理職ストリーム―管理職になる人たちとマネジャーになる人たちと、それから専門―上級何とか官という二つの道がありますが、マネジャーであれば管理経験があること、それも国際的な多国籍チームを管理した経験があること、専門家でしたら当該分野で世界的に認められていることが重要なポイントになります。
 Dレベルになりますと、理事国とか組織内の職員が納得するような相応の経歴の持ち主であること。例えば、母国の組織で高いポジションに就いていたとか、国際機関で同等のレベルにいたとか、当該分野で国際的な名声があるなどです。IAEAをキャリアの一つのステップとして考えるならば、こういったことを、キャリアをつくる中でつくり込んでいかないといけません。
 次のページでは、IAEAまで、IAEA後、どんな組織を皆さん渡り歩いてきているのかということを見てみました。大体、日本、他国関わらず、所属していた組織群を比べてみると同じような感じなんですね。IAEA前は、規制庁とか原子力政策立案に関わる省庁や会社、原子力発電所、原子力機器や燃料や原子力研究所、大学などから来て、また戻っていくことが多いですね。
 IAEAのコア分野は高い専門性が必要なので、それを持ってほかの国際機関を渡り歩く例というのはあまり見ませんでした。日本というのは割と特殊で、労働市場の流動性が高くないのでメンバーシップ型組織と言われていますけれども、組織からの出向、休職などの仕組みを使って一時的に国際機関におられて、元の組織に戻るというパターンが割と多いかなと思います。日本人職員の中でも管理職者やプロジェクトマネジメントといった職種は、これは国際機関を渡り歩いている人も多いです。
 じゃあ次に、実際にDポジションにおられる方がどんなキャリアを積んでこられたかを比較してみようと思います。二人の方を取り出しているんですけども、1名の方は多分今日来ておられる方はお分かりになるかもしれません。ただ個人情報にも関わるものですので、ネット上で御本人が書いている経歴を中心に抽出しております。
 日本人男性で、Office of Safeguards Analytical Servicesというところにおられた方です。この方は東大から博士号持っていて、20年間の業務経歴と、海外経験としてハーウェル研究所とドーンレイ原子力開発施設の派遣経験やサイバースドルフにあるIAEAのセーフガード分析責任者に任命されたという海外での経験、研究所職員を率いたご経験やプライムサイエンティストとか、あと、東京大学大学院原子力での教授経験や、いろんな委員等を歴任されている要素があると、Dポジション候補として有力に有力です。この方はどちらかというと専門性がすごく強い方で、プラスマネジメント経験があるという事例でした。
 もう一つの事例は、この方はマネジメント力が中心プラス専門性のある方です。この方はフランスの人で、フランスという国は「この人は」という人を大使館に出し、そこでIAEAの有力メンバーと会わせるようにする、それがすごく現れているご経歴と思います。最初は日本の銀行でキャリアをスタートされ、アレバグループで核燃料サイクル推進等に携わったのち、不拡散の分野に移って、セーフガード実施に関する欧州専門家ワーキンググループの議長、こういうのがマネジメント経験としてはとても強みになるのですが、あと、アレバジャパンのマーケティング・産業戦略専務取締役のご経験を経てIAEAに来ていると。どちらかというとマネジメントの観点が強い方になります。
 前提としては、IAEAなど国際機関は有期雇用の形が多いため、キャリアとして「最後の」というよりは、一つのステップとして捉える必要があるということです。今や70歳まで働かなければいけない中で、キャリアとしては40年以上あることになりますけれども、同キャリアを形成していくか、国際機関に就職するための世界的に認知されるレベルの専門性を得るのはとても難しいです。
 そして、加えて世界で通用するマネジメント力が求められる。これは日本の組織だけをまとめていたという経験ではなかなか海外では難しいところがあるのですが、私が思うには、一つの組織が各人にこのような経験を提供するのは非常に難しいかと。組織が各人40年も、いろんなお膳立てをするということはできないかと。ただ個人主導で自分のキャリアを構築していこうと思っても、それもなかなか限界があると思います。
 そこで私のアイデアといいますか、皆さん考えていただく材料として御提示したいのは、対個人では国際機関で働くことをオプションにすると雇用が不安定になるので、それを超える魅力を伝えていくと。
 組織としては、若い時期に国際経験を積んでもらうためにどんどん外に出してもらう。よくできる人であればあるほどなかなか外に出してもらえないという風潮もあるようですが、それを何とか出してもらうと。特に、国際機関へのCFE――これは出す元組織がお金を出し経験を積んでこさせるという、ポジションつくって出していくという仕組みだったと説明しましたけれど、こういった仕組みなどを通じた出向し、海外組織との連携によって、個人が国際的なチームで働く機会を積極的に提供すると。
インタビューでも「あなたは国際的なマネジメントをした経験がありますか」と、「そこで一体難しいことは何でしたか」とかよく聞かれるので、国際的なマネジメント経験を、例えばリーダーや国際的に何かまとめるのは難しいチームをまとめる役割をするのが必要です。「全然ありません」というのでは難しい。
 また組織と個人、有望な人材に対して若い時に国際機関のシニアポジションのスタッフと会う機会をつくり込むと。先程、採用は透明なプロセスと言いましたけれども、やはり人物として知っていて、かつ信頼できる人物だと採用する側が予め認知していれば、非常に採用有利ではあります。
 そのために、学会等で委員になる、何らかの仕事を一緒にすること、例えば政府代表部などに派遣して、人となりを知ってもらう機会を作る。これは最後のところは齊藤先生と少し被りますが、民間とか大学、政府機関が共同して、国際的なキャリアを積みたいという個人が安心して民間、大学、政府機関を自由に行き来できるような経験を積んでもらえる連携キャリアプラットフォームをつくればどうかと考えております。
以上です。何か御質問等々ありましたらお知らせください。ありがとうございます。
【出町主査】先生、大変詳細な御説明をありがとうございます。
 まずは委員の皆さんから御質問を受け付けたいと思いますが、いかがでしょう。
 最後から2ページ目内にある最後二つの項目が、全体的に今回この会合の目的の一つである典型的なキャリアパターンをまず探し、その各パターンの積むべきキャリアを明示すること、かつその各キャリアで身につけるべき能力と、あと、その各キャリアに採用するときのポイントとか、そういうところを押さえるのが今回の目標かと思っていまして、その点で非常に明確にIAEAや典型的な国際機関パターンのお答えをいただきました。
 小松崎さん、お願いいたします。
【小松崎委員】僕は国際機関についてはほとんど知らなかったのですが、大変私個人の勉強にはなりましてありがとうございました。
 今回の一番の大本でいくと、例えば、若い方々にこんなに魅力のある仕事があるぞ、みんなが海外のこういうポストを狙うとか目指すという方向に持っていくというための現状把握だと思うのですが、今日お話しいただいた中では、率直に申し上げます、難しそうだなと。
【井上委員】そうですね。
【小松崎委員】なれそうもないなという感じが強く伝わってきてしまったのですが、すごくいいこととか楽しいこととか、誇りに思えることとか、こういうポストに就いたときにこれだけ人間幸せな感じが感じられるというところを、先生御自身の経験踏まえて三つ四つ簡単に教えていただけますでしょうか。
【井上委員】多国籍なメンバーがチームとして一緒に働くということで、国も違えば考え方も違って難しいことがたくさんあるのですけれども、人間同士お互いに理解できるところもあって、そこで何か協力関係ができたりすると楽しいなと素直に感じますね。
 あと、私はマネジメントだったのですが、専門職の分野の方々だと、例えば査察官の方は世界を守っているとか、あるいは、非常に世界的に認知されている組織で働いている専門職であるという誇りですね。それはすごく大きく何事にも代え難いものだと思います。
 縁あってCFEの仕組みなどで来られた方、また専門職の方は「またIAEAに来たい」とかと言ってくださる方もおられますので、ちょっと難しいと映ってしまったかもしれませんが、非常にやりがいのあるお仕事ですので、チャレンジしていただければと思います。
 しかし、CFEなどで1回来ていただくと、Dポストにいきなり挑戦というよりはハードルは低いですし、IAEAの場合有期契約なので、一定期間職場を離れなければなりません。その先があれば安心してチャレンジもできると思います。多くの日本の方は、自分の雇用をすごく大事にしておられて、去ってしまうまた戻れないということで二の足を踏むという方もおられますので、そういう不安がなくなればもっとチャレンジできる方がいらっしゃるかなと思っています。
【小松崎委員】ありがとうございます。
 高校生がぜひなりたいなと思えるポイントもたくさん、例えば世界的に尊敬されるとか、いい目に遭えるとか、そういうことは大事じゃないかなと思います。お金だけじゃなくて、みんなから尊敬されるとか。地球防衛軍ですよね、前に僕は申し上げておりますけど。
【井上委員】そうですね。要するに使命感、私が世の中を守っているという気持ちですね。
【小松崎委員】やっぱり何かおいしいところというのも職業を選択するときには非常に魅力的に映るところなので、ぜひそういうところも付け加えていただけると、志望する方がもっと増えるのではないかと思いました。ありがとうございました。
【出町主査】小澤様、お願いいたします。
【小澤委員】井上先生、ありがとうございます。小松崎先生とかぶってしまう質問になってしまうのですが、私は原子力を学んだわけですけど、ある意味、核セキュリティの分野が原子力の中でも相当とんがった分野だなと感じておりまして、井上先生の最後の資料のページで「雇用の不安定を超える魅力」と書いてあるんですけど、これが結構、使命感だけで超えられるのかどうかはよく分からないところがあります。
 そこで、限られた世界で考えるというより頭をほぐすためにお聞きしたいのは、その前のページに、「キャリアづくりが必要。特に国際機関」「特にIAEA」と書いてあるのですが、このIAEAという言葉をなくして、国際機関で働くことが一つのキャリアになる事例といいますか、こういう考え方があるなどあれば、教えていただけますでしょうか。
【井上委員】国際機関を渡り歩いている人という方の事例でしょうか。
【小澤委員】そういうのがいいですね。
【井上委員】国際機関は特殊な仕組みとか独特な仕事の仕方がありますが、1回ある国際機関で勤務すると、割とそれが、別のところでは表面的には違っていても、本質的なところである考え方とかは共通しているところもあります。例えば人事とかマネジメント局とか、Technical Cooperationのような、IAEAの専門以外のところにおられる方に関して。割と国際機関で一生働く方はおられます。
 かつて査察官というポストもIAEAの中では、一旦になったら一生雇用が保障されていましたが、最近は、5年ルールというものが適用され、出なければいけないとなっています。
【小澤委員】ありがとうございます。
【出町主査】続きまして直井センター長、いかがでしょうか。
【直井センター長】井上先生、どうもありがとうございます。私もここ15年ぐらい国際機関に人を送り込むことを考えてずっとやってきておりましたので、井上先生のお話は非常によくまとまっていて、「なるほど、こういうことか」と感心した次第でございます。
 それで、一番大事なのは、本人が国際機関に行きたいという強い意思を持つということで、その上で、国際機関にふさわしい専門性なりマネジメント力をつけさせるためのキャリアパスを経験させないといけないのかなと感じています。
 最後のお話で、民間、大学、政府機関が共同してというところですが、例えば今外務省の専門調査員なんかは、一度完全に、例えばJAEAから専門調査員として応募する場合には、確実に休職じゃなくて退職をしなくてはいけません。そうすると次戻ってくるときに非常に不安になってしまうこともあるので、そういうところから整備をしていくのが必要なのかなという気はしておりますが、これはまた外務省全体の方針に関わってくるのでなかなか難しいと思いつつ、そういうことをしないと増えないかなという気はしております。
【井上委員】そうですね。あとはフランスの例などを見ると、代表部に「この人は」という人を送り込むのですよね。そういったことも機動的にできればいいなと思うのですが、やはりそういう仕組みをどこがつくるのかというと体制的なこともあり、多少ではなくて非常に難しいのかなと。
【直井センター長】ありがとうございます。
【出町主査】私も1個だけ短く。雇用が不安定というところ少し驚きまして、多分そこが提言の一つになるかと思い、どう解決するかじゃなくて課題がありますということを強く言うことは、この連絡会にとって一つの成果になると思います。ありがとうございます。
【井上委員】安定した組織ですので、組織が潰れましたとかそういう話は全くないのですが、多くの場合、有期であり何年かたてば出ていくということですね。
【出町主査】まだ御質問したいことあると思いますが時間ですので、次に移りたいと思います。井上先生ありがとうございました。
【出町主査】続きまして、NECの山本様から御説明いただきたいと思います。
【山本シニアエキスパート】改めまして、NECの山本と申します。よろしくお願いいたします。齊藤先生や井上先生のお話と少し趣が違う感じになっておりますが、御容赦いただきたいと思います。
 まず、私の自己紹介をさせていただきますと、2001年から電力会社様向けの発電所や変電所の遠方監視制御を行うシステムの業務に携わり、また、2003年ぐらいから原子力発電所向けのシステムにも携わるという経歴でございます。
 そうした中で、もともとNECというのは通信を主力とする会社でございましたけれども、遠方監視などを始めるに当たって、遠くにある現場の状態を見える化とか、制御では1ビットの誤りもないよう伝送しなくてはいけない。そういった意味で見える化するのにAIを使用したり、1ビットを確実に届けるというところからセキュリティへと、今の業務につながってきております。
 あと、もう一つこのAIとセキュリティの取組についてということで、「NECの」という頭書きが入っております。これは、当初御要望の中に「原子力発電所の」という御要望をいただいたのですが、セキュリティに関しては、情報開示がなかなかできないということで、今回はNECの取組として、参考にしていただければと思います。
 今日のアジェンダですけども、NECのAI群についての御説明と、あとAI普及の取組、これは人材育成のところを中心に記載しています。あとはサイバーセキュリティの取組、これも人材育成等について記載しております。
 NECはどんな会社かというところを簡単に紹介させていくと、120年にわたって通信関係を行ってきた会社でございます。AIにつきましても、最初郵便の宛名を自動読み取りするところから始まりまして、パターンマッチングだったのですけども、そういったところから始まってAIについても60年間ぐらい実施しています。最近は、DX、デジタルトランスフォーメーションとして、社会と暮らし、企業と産業のDXと活動をしております。
 次スライドは、AIとかIoTとかセキュリティの技術開発を説明しています。
 では、NECのAIについて少し説明させていただきます。もともとNECは、「見える化」というところに着手しており、その中でいろんな情報を取り込む、これで人間系を助けるために「分析」支援するということを目的にAIの技術を発展させてきました。今は、情報集めて分析してじゃあ次にどうすればいいかと、「対処」をするということで、「対処」を行うためのAI開発に取り組んでおります。
 NECのAIは、一つで何でもできるものではなく、このスライドにあるように代表事例27個のように分野ごとに特化しています。
 ここの左側にある見える化のところ、デジタル化とかデータ良質化、五感による識別認証というところで顔認証とか指紋認証とか虹彩認証とかがありますが、このような部分がセキュリティ面で活躍している技術でございます。
 先ほど少し御説明をさせていただきました、原子力発電所に実装いただいているインバリアント分析技術でございます。NECが島根原子力発電所様に最初に導入させていただいた製品はフライトレコーダーのような原子力発電所の詳細データを記録するというシステムでした。その記録したシステムを人間系で分析をされていましたが、もう少し機械学習で支援できないかと議論させていただいた中で、この技術はもともと、インターネットの世界で、どんな機器がその間に存在するか分からない中での異常を検知するためのシステムでございまして、少ないデータからその中で関連性を見つけ出し、その関連性がいつもと違う挙動を示したときに検知するシステムで、こういったものがもしかしたら原子力発電所に使えるかもしれないということを提案させていただいて、2010年から実証試験を始めまして、2014年に実際に採用させていただいたということです。
 あと、詳細は申し上げられないのですが、フィジカルセキュリティ面では、私たちいろんな分野に顔認証を導入していまして、実際にNECの中でも本社の入退室についてはウオークスルー入退室ゲートでこういった認証をしていましたり、あと、本社の売店でもキャッシュレスの顔認証技術を使ったりとかしています。
 あと、生体認証につきましては、顔認証と指紋認証または虹彩認証とか、複数の認証技術を組合せて行うようなサービスを行っていまして、これ今マルチモーダル認証技術と言い、NECではBio-IDiomという名称をつけてサービスを展開しているということです。
 いろんな生体認証がありますということで、その中でも顔認証が一番、NECとしてはセキュリティを担保するにはよいと考えております。これは、自然な認証であるということと、非接触であり非拘束であると。あとは、不正を抑止できるということですね。顔で認証するとそのログ、顔のログも残しますので、誰がどうそこに入ったかということのログも残ります。あとは専用装置も不要であるということです。
 そういった状況の中で、エリアセキュリティということで重要施設に入れさせていただいていたり、企業のセキュリティに適用したり、最近はセキュリティだけではなくて、企業サービスというところとか、そういったところにも入れさせていただいています。これは、NECのAIが信頼できるものでなくてはいけないということです。
 次にAIの取組で、人材育成について御説明します。
 NECのAI人材育成の歴史としては、2013年の10月からAI人材育成を開始しております。
 先ほど、原子力発電所に入れさせていただきましたインバリアント分析技術は、2010年に開発着手と御説明をさせていただきました。実はそのときに起こった事象として、AIを開発している技術者と、原子力発電所に関する知識を有する技術者、あと、そのデータを分析しているアナリスト、それぞれをいろんな多方向から人を集めてこなくてはいけないような状況になり、その人材がどこにいるのか、そういったところから始めなくてはいけない状況でありました。
 そのため、NECとして体系立ててのAIの人材育成をして、さらに、どんなAIがどんな機能を持っているかを一般の社員が知ることによって、自分たちが持っているドメイン知識を使ってAIとそのドメイン知識をつなげてお客様にサービスを提供することができるようになればと、そういったところを目指して人材教育の取組をしています。
 さらには、NECアカデミーという、一般の方々にもその技術を教育することをやっていまして、これは、1年間にわたる教育を行い、今までに100名以上の卒業生を出しております。これは、お客様側の中にもAIのことを知っていただき、ひいては導入を促進していきたいという目的もございます。
 NECアカデミー AIのスコープとしまして、ステップ1、ステップ2、ステップ3とありますが、ステップ1はAIを社会実装する人材を目指しております。ステップ2は研究人材として、大学でいろんな高度な技術を学んできた方々を採用してAI技術を磨き上げていく、これがステップ2ですね。あとステップ3は、それはAIを普通に使っていただいている方を増やしていくことを考えています。
 政府のAI戦略の中で、リテラシー教育としていろんな検討されていますが、ここにもNECから参加させていただいて、委員会で検討をさせていただいてございます。
 次が、サイバーセキュリティの取組でございます。
 ここからは、ディスプレーオンリーが多くなっております。サイバーセキュリティの具体的な取組内容とか、部門名などがあると、それらが攻撃対象になりますので、なかなか公開できず画面のみとなります。
 NECのセキュリティ対策方針として、セキュリティ・バイ・デザインという考え方があります。これは、システムの企画設計段階からセキュリティ対策を考慮して物づくりをしていこうと、まずはその「現状を把握する」ことからをしております。そして、物づくりにおいては「正しくつくる」。正しくつくり、サイバーセキュリティなどそういった脅威に対して対処することが重要ですが、その対処については、脅威は変化していきますので、「正常な状態をつづける」、継続というところが重要になります。また、脅威に対するセキュリティを準備していても、いろんな攻撃を受けますので、そういった攻撃を早期に検知して、早期に対処するということをやっています。
 NECの強みでございますが「社会を守り続けるための基盤」と「グループ全体を守り続けてきた基盤」、これらはNECそのものを守る基盤ですが、それらをフル活用してお客様のセキュリティも一貫して支援していく、そこが強みだと考えています。
 一方、セキュリティの一貫ソリューションということで、ライフサイクルマネジメントの形でメニュー体系も立ててつくっているところでございます。
 人材育成というところで、AIの人材、サイバーセキュリティの人材というところで、NEC社内でもヒアリングしたのですが、そういった専門性を高めていくとその人はいろんなところから引く手あまたなので、その人材をNECの中に確保するところが非常に課題であると。人の雇用体系を変えていかなければ人材をつなぎ止めることができないと議論がされていまして、今給与体系だとか勤務体系など見直しが今行われてございます。以上になります。
【出町主査】山本様、大変ありがとうございました。現場に即した非常に生のお声を聞かせていただいたと思っております。非常に参考になりました。
 委員の皆様、大変貴重な今御説明いただきましたけど、御質問ありましたらぜひお願いいたします。まず私から1点だけお聞きしたいのですが、先ほど御説明ありましたけども、非常にすばらしいサイバーセキュリティの人材育成プログラムをお持ちになっていると思うのですが、例えば民間のそのプログラムを産官学連携したいという希望があった場合、何がどこまで可能なのかな。ちょっと変な質問かもしれませんが。
【山本シニアエキスパート】いえ、NECもそういった産官学との連携をしたいとは常々思っていまして、お話を受けましたら、協力または参加していけると思います。
【出町主査】そういう意味ではNECさん的には産官学連携を扱うことは損ではないわけですね。
【山本シニアエキスパート】はい、もちろんです。
【出町主査】 中島先生が挙手をされています。中島先生、お願いいたします。
【中島委員】 全部フォローし切れなかったのかもしれないですが、ディスプレーオンリーのところで、3段階の教育で、最初の底辺のところでスキルを底上げするという人たちと、それから中くらいがセキュリティのSEクラスで、さらにトップの人材がいるという、だんだんと上に三角に上がっていった図があったかと思いますが、これはおおよそどのぐらいの人数なのか、あるいはこういう人たちを養成するにはどのぐらいの期間を掛けているのかもし分かれば教えていただけますでしょうか。
【山本シニアエキスパート】2万1,500名を対象にしています。実際にはNECは関係会社を含め10万人近く社員がおりますが、その中でもこういったセキュリティ教育が必要な人間として抽出し対象にしています。
 さらにそこからまた選抜して、900名ほどがワンステップ上に。あとは、サイバーセキュリティの訓練場というところに、IoTを志向するメンバー、実際に技術を向上させたいというメンバーが参加しておりまして今2,000名ぐらいが教育を受けたりしております。
 その上位からは、そう増えてはいかないですけども、それでも国際機関の有資格者としてCISSPの資格を持っているのが200名、RISSの資格を持っているのは720名おります。
 教育の期間ですけども、この底辺部分は、常に四半期に1回ぐらいeラーニングによって教育を受けるという形になっていて、常に新しい情報の受講ができる環境になっています。
【中島委員】この一番上のトップのところ、60名がこの今プログラムに入っていますけども、ここが修了するまではどのぐらいかかりますか。
【山本シニアエキスパート】一概に言えないかなと。これは多分人によると思います。
【中島委員】なるほど。バックグラウンドとか。
【山本シニアエキスパート】はい。
【出町主査】私もう1個だけ質問してよろしいですかね。
 サイバーセキュリティはこれから核セキュリティの分野でも一つの大きな重要なテーマになると思うのですが、今のところその核セキュリティの人たちの中でサイバーセキュリティ専門家は必ずしも多くないと思います。どうしてもメーカーさんに頼っている部分が多いと思うのですが、それは少し問題かと思っていまして、サイバーセキュリティを開発されているNECさんから見て、核セキュリティ側の人間がサイバーセキュリティにもっと入っていくにはどういうことが必要だと思いますか?
【山本シニアエキスパート】難しいですし、私そこまでコメントしていいのかなというような感じが…。
【出町主査】核セキュリティの人とお仕事されて、ここ困ったななことなどでも。
【山本シニアエキスパート】そこもすごく答えにくいところでございますね。もともとそういった方々と話をするのも、かなり制限をされていると思っていただければいいかと思います。どういう情報持っているかもオープンにできないということで。また、私たちは業務としてある一断面だけを見て話をしているので、全体は把握できない状況であるとは思います。情報管理が徹底されているということです。
【出町主査】個人的には、核セキュリティに携わる人間の中でもサイバーセキュリティのキャリアを積める枠というか、そのキャリアパターンも太いものにしていかなければと思っていますので、その連携について御協力いただく場合はお願いできれば。
【山本シニアエキスパート】そこは、ぜひ協力していきたいと考えております。
【出町主査】喜多委員、お願いします。
【喜多委員】先ほどの井上さんのときは、あまりにも身につまされている話であまり質問もできませんでした。今回はちょっと、自由に聞かせていただきたいと思います。
 核セキュリティも共通の問題はあるのですが、人材の流動性は恐らく情報セキュリティの分野で非常に重要だと思います。新しい知識、新しい状況がどんどん起こる中で、新しい人を入れていく必要があるということが。先ほど言っておられた、新人であっても高い能力を持つ人には高い給料を払う必要があるとも最近よく聞く話です。
 ところが、反面、不満を持って組織を離れた人間が、逆にセキュリティ上の災いをなすという恐れもあるのではないかとも思うんですが、これは核セキュリティも同じ問題があるのですけど、そういったことにどのような注意を払われておりますか。
【山本シニアエキスパート】NECの中にセキュリティが厳格に管理されているところがありますが、そこでは個人の信頼性の確認も行われていると聞きます。
 そういった厳格なところのエリアにいる人間は、あまり流動性がないと聞いています。これはどうしても仕方がないことかと考えています。結局それを異動させることによって情報が漏えいする可能性が非常に高くなる。ここは、今御指摘いただいたように課題かなとは思います。新しい技術を取り入れるためには流動性を持たなくてはいけないのですが、でも、守るためには流動性を抑える必要はあると。
 すみません、私はそこまで厳格なところにはおりませんので、何とも申し上げることはできませんが、そういった課題はあると認識しております。答えになりましたでしょうか。
【喜多委員】ありがとうございます。その個人の信頼性確認は最近原子力の世界でも求められてきているところで、全く同じ状況かなと思います。
【出町主査】キャリアパスの特徴として非常に今重要なことをおっしゃっていただいております。布目委員、お願いいたします。
【布目委員】今の喜多さんの御質問と少し似ているかと思いますが、結局いろいろな分野でセキュリティに携わるところがあって、そこが連携できない実質的な問題があると思うのですが、逆に、こういうところだったら連携できるなとか、したいなという検討はされておりますでしょうか。異分野連携というのは、今非常に重要なことかなと思っております。
【山本シニアエキスパート】そうですね。多岐に渡っておりますので、どこととはないのですが、いろいろ試行しているところだと考えています。
【出町主査】山本さん、もうしばらくお付き合いいただいてもよろしいでしょうか。
【山本シニアエキスパート】はい。
【出町主査】もう時間をちょっと超過してございますけども、もしよろしければ、最後にまとめてお三方に対して御質問ありましたらぜひこの機会に。皆様、そのほかは御質問よろしいでしょうか。
(なし)
【出町主査】もしかしたら今後また御質問が出てくるかもしれないので、今日の御発表された方々、もしかしたらまたメールとかで問合せさせていただくかもしれませんが、どうぞ御容赦いただけますでしょうか。
【齊藤名誉教授】はい、大丈夫です。
【出町主査】ありがとうございます。あと事務局さん、今日のヒアリングの内容をベースに報告書の骨子に書く内容とかをまとめると思いますが、質問とか大丈夫ですか。
【佐藤企画官】大丈夫です。骨子自体は次の次ぐらいに審査いただきたいと思います。
【出町主査】では、大幅に時間超過して申し訳ございません。本日の作業部会を以上にて終了したいと思います。最後、事務局から連絡事項をお願いいたします。
【船曳補佐】それでは事務局から、本日の作業部会の議事要旨案につきましては、でき次第メールにて確認依頼をさせていただきたいと思っております。
 次回の当作業部会の開催については、ヒアリングさせていただく御都合により1月頃の開催を見込んでございます。日程については現在、メールにて委員の皆様に照会させていただいておりますので、御回答のほどお願いいたします。本日御多忙のところ大変恐れ入りますが、委員の皆様におかれましては何とぞ御理解、御協力のほどよろしくお願いいたします。以上でございます。
【出町主査】では、以上をもちまして第21回の核不拡散・核セキュリティ作業部会を終了させていただこうと思います。大変ありがとうございました。

お問合せ先

研究開発局研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付

(研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付)