原子力科学技術委員会 核不拡散・核セキュリティ作業部会(第18回) 議事要旨

1.日時

令和3年1月29日(金曜日) 15時00分~16時30分

2.場所

新型コロナウィルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

   1.核不拡散・核セキュリティ分野における人材育成の取組
   2.その他

4.議事要旨

(鈴木補佐)定刻となりましたので、ただいまより第18回核不拡散・核セキュリティ作業部会を開催いたします。本日は御多忙にもかかわらず、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
まず、本作業部会において主査の交代がありましたので御報告いたします。
第5期から主査を務めていただきました東京大学大学院工学系研究科教授 上坂 充委員は、先般、内閣府原子力委員会委員長に就任されたことに伴い御退任となりました。上坂 前主査の御推薦も踏まえ、原子力科学技術委員会の運営規則第2条に基づき、原子力科学技術委員会主査の指名により出町委員に主査を御願いすることになりましたので、よろしくお願いいたします。
(出町主査)東京大学准教授の出町でございます。ただ今、鈴木様から御紹介いただきましたが、前任にて上坂教授の御退任に伴いまして、僭越ながら本作業部会の主査を務めさせていただくことになりました。上坂先生に比べて多くの力不足が散見されると思いますが、委員の皆さまのお知恵に基づきながら日本の核不拡散・核セキュリティの研究、人材分野に関する多くの課題、その課題への解を見いだせますように精いっぱい努めさせていただきます。何とぞよろしくお願い申し上げます。
(鈴木補佐)出町主査、改めてよろしくお願い申し上げます。
続きまして、今回の作業部会について御連絡いたします。今回の作業部会におきましても、前回同様、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点からオンラインにて開催いたします。これに関連した確認事項などもありますので、議事に入る前に事務局にて進めさせていただきます。
まずオンライン開催に際しての留意事項を御説明いたします。まず委員の皆さまにおかれましては、現在、遠隔会議システム上で映像および音声が送受信できる状態となっております。御発言される場合は挙手ボタンを押していただくと挙手マークが表示されますので、順番に事務局より指名いたします。もう一度ボタンを押すと、挙手マークが消えますので、御発言いただいた後はボタンを押して手を下ろしてください。
次に、会議中にビデオ映像および音声が途切れている場合、その時間帯は御退席されているものと見なします。遠隔会議システムの接続の不具合等が生じた場合は、随時、事務局宛にお電話にてお知らせください。
次に、傍聴される方におかれましては、ビデオ映像および音声をオフとしてください。議事進行の妨げとなる行為を確認した場合は遠隔会議システムから御退席いただきます。
最後に、議事録につきましては事務局にて会議を録音し、後日、文字起こしをいたします。事務局以外の会議の録画および録音はお控えください。以上が本日の進行に当たっての留意事項となります。
昨年10月に本作業部会を開催して、委員の皆さまには核不拡散・核セキュリティ関連分野の中間評価、核不拡散・核セキュリティ分野の人材確保等について御議論いただきました。本日は、前回の作業部会でも御議論いただきました核不拡散・核セキュリティ分野の人材確保について、さらに議論を深めるべく、委員の皆さまから御意見を頂きたいと考えております。つきましては、本日の議題はお手元の議事次第に書かれているとおり、核不拡散・核セキュリティ分野における人材育成の取り組み、その他となっております。
最後に、事務局より本日の出欠と配布資料の確認をいたします。
現在、全9名の委員のうち6名に御出席いただいておりますので、定足数である過半数を満たしております。なお欠席はセコム株式会社の小松崎様、日本原子力学会の布目様となっております。京都大学の中島先生は途中から参加される御予定であります。
続いて、本日の配布資料ですが、今回は委員の皆さまおよび傍聴の登録をされた方宛てに事前にメールにてお送りさせていただいております。会議中、遠隔会議システム上では資料は表示いたしませんので、各自のお手元にて御確認ください。
では、配布資料ですが、
資料1-1 第17回核不拡散・核セキュリティ作業部会での人材育成議論のポイント
資料1-2 核不拡散・核セキュリティ分野の専門性についてのイメージ図
資料1-3 核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)における大学連携
参考資料1 第10期核不拡散・核セキュリティ作業部会の委員名簿
参考資料2 原子力関連分野の資格について
参考資料3 核セキュリティ関連の認定制度について
となっております。資料の欠落等がありましたら事務局までお知らせください。また議事の途中でもお気付きの点等ございましたらお申し付けください。
事務局からは以上でございます。ここからの進行は出町主査にお願いしたいと思います。それでは出町主査、よろしくお願いいたします。
(出町主査)ありがとうございます。本日は、委員皆さまには御多忙にもかかわらず、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
早速ですが、本日の議題に入らせていただきたいと思います。議事次第にあります議題1の「核不拡散・核セキュリティ分野における人材育成の取り組み」でございます。本日は、前回も議論いただきました議題1の本件について議論を深め、今後の核不拡散・核セキュリティ分野における人材育成の取り組みの方針に関する検討、それの足掛かりにしたいと存じます。
まず始めに、資料に基づきまして事務局、ISCNから御説明をお願いします。その後、委員の先生方から御質問・御意見を賜った後に議論に入りたいと思います。それでは、まずは事務局から御説明をお願いいたします。
(萩原企画官)文科省の萩原です。まず資料1-1の御説明を申し上げます。
こちらは、前回の作業部会で御議論いただいた際のポイントを事務局としてまとめたものです。前回、事務局のほうから問題提議をし、それに対して委員の先生方から頂いた主要なコメントを箇条書きでまとめさせていただいております。
例えば、学生が将来の職業を選ぶときは安定性とかつぶしが利くことが重要で、その点に注意すべきではないか。その点でいえば具体的なキャリアパスというのが見えたほうがいいのでないか。学生のうちにコミュニティに入っていただくということが重要でないか。それから、地層処分とか核不拡散とか核セキュリティは幅広い分野・専門性を持った人が集合して成り立っているため、関連分野と合わせて学生を参加させていくということが一つのきっかけになるのではないか。また、核不拡散・核セキュリティに要する専門性は、他の分野でも生かせる可能性があるため、関連をマップのようなもので視覚化してはいかがか。また、学生のうちに教育・OJTで学ぶべきところが区別つかないことが多いため、学ぶべき事項が分かるようなマップ化が役に立つのではないか。最後に、核不拡散・核セキュリティ分野の重要性をもっとアピールしたほうがいよいのではないか、例えば映画やドラマのような形で核不拡散・核セキュリティに携わる方を主人公にすると、非常にアピーリングでないかといった御意見もございました。
このときの議論に基づいて、事務局で核不拡散・核セキュリティ分野の専門性はどのようなものかをイメージ図として表したのが資料1-2になります。
前回も事務局から御説明をさせていただきましたが、核不拡散・核セキュリティを考えるきに、当然、工学分野の知識や技術的な知識が必要ですが、それと同等に国際ルールや各国の国内法の法規制も知識がないと、なかなか実務が行えないことがあり、その意味では個別の専門領域の壁を越えた総合的・学際的な取り組みが必要な分野であると考えています。
そのため、入り口の専門分野はかなり間口が広くて、どこからでも実は入りやすいのではないか。また核セキュリティ・核不拡散に一度携わった後、他の分野に出ていくにも出口が多く、潜在的に高い人材の流動性はあるのではなないか。これが今うまく回っていないため、回るようにできればいいのではないかと考えています。
資料の下左側で、例えば法学とか政治学、原子力工学、社会学、心理学、電気、機械、建築、土木、物理学、化学、生物の基礎的な学問領域があり、これらが核不拡散・核セキュリティ分野で必要となる様々なこと、例えば核物質防護、核物質の輸送、それからセーフガード、計量管理、鑑識や分析、放射線の計測や環境影響評価、条約や国内法などの規制ルールの作成、また輸出管理や基地情報の管理、それから内部脅威やリスクの評価など、核不拡散・核セキュリティ分野の実務に様々な学問領域の知識が要るだろうと。
これらを習得すると、当然核不拡散・核セキュリティの関連分野、これは行政機関とか民間とか国際機関などがあります。これらにも役に立つし、そうでない非関連分野、例えば安全保障やテロ対策、安全規制や防災、輸出管理や外交。民間であれば大規模なプラントの管理、危険物質の管理、それから情報セキュリティ。国際機関であればIAEAやOECD、それ以外での国際ルール作成のための調整や、国際約束の執行事務などに役に立つのでは、とまとめさせていただいております。事務局からの説明は以上です。
(出町主査)資料1-2と資料1-1を比べますと、1-2の内容が1-1の資料の1行目と2行目のポツ2つを体現している内容かと考えます。
学生さんから見て、安定性、つぶしが利く仕事じゃないと思われている核不拡散・核セキュリティが、実は取り掛かりやすい、間口も広い、つぶしも利きやすいと1枚の資料で書いてあります。あとは、それを見えるようにどうするのが今後の作業部会のタスクなのかと考えます。続きまして、資料1-3を御説明いただいてもよろしいでしょうか。
(直井センター長)それでは資料1-3に基づきISCNにおける大学連携を、直井から御報告させていただきます。
まず「核不拡散・核セキュリティ人材育成支援分野における大学との連携」として背景から御説明いたします。背景として、持続的な核不拡散・核セキュリティの確保には次世代の専門家の育成が必須でありまして、大学にその役割の一部を担っていただくことが必要になるであろう。国内においては、核不拡散・核セキュリティを学べる専攻がほとんどなく、また大学の学部・専攻再編の流れの中で原子力を専門とする教官数、核不拡散・核セキュリティ教育ができる教官がいなくなっている一方で、RIを含む原子力利用が非常に幅広くなっている状況があります。
そこで大学連携の目的ですが、将来、世界に通用する専門家および技術・研究者になる素養を持つ学生の関心を高めることがまず大事だと。それから卒業後、RIを含む原子力利用に関わる学生に対して、必須である核不拡散・核セキュリティについて学べる機会を提供すること。それから核不拡散・核セキュリティ文化について、できるだけ早い段階でこれらが重要だと理解され、文化が醸成されること。また国内外の大学等とのネットワーク構築により、効率的・効果的な大学教育を支援することが大学連携の目的と考えております。
そして、ISCNにおける今後の可能性なども含めますと、まず人材の受け入れ先となる産業界、学会、国際機関および関係省庁等の人材ニーズとのジョブマッチング支援が考えられます。それから複数の大学を集めた講義・実習による学習効率の向上。後ほど説明いたしますが、例えば「核不拡散・核セキュリティ夏の学校」なるものを開校してはどうかなどアイデアがございます。また基本のところですが、大学における核不拡散・核セキュリティの教育支援などを通じてISCNが核不拡散・核セキュリティ分野の大学連携に関する拠点として機能することを目指したいと考えております。
それではISCNにおける大学連携の事例を3ページ目以降、説明させていただきます。
JAEA大学連携枠組みに基づいたISCN実施分として、核セキュリティの概要や施設における核物質防護の概要と、核セキュリティ文化の講義、また実習として、原科研にあるバーチャルリアリティーのシステムや核物質防護の実習フィールドなどを使い、講義と実習を1日で実施しております。
また東大へは、原子力専攻のある大学のネットワーク「大学連携型の核安全セキュリティ・グローバルプロフェッショナルコース」の中で講義と実習を提供する他、東京大学の専門職大学院の必修カリキュラムとして、学生にISCNによる講義と実習を受けていただき、学生は受講後にリポートを提出して、ISCNが評価することを行っております。
東工大では、東工大が主催します人材育成プログラムで、グローバル原子力安全・セキュリティ・エージェント教育院なるものがございます。2017年以降、原子力規制人材育成事業の一環として東工大で教育がなされており、その中の任意講義として、ISCNによる英語での講義を提供しております。
それから、ISCNの専門家による大学向けの講義がございます。2005年から東京大学の原子力国際専攻と、東大とJAEAの連携協力に関する協定書に基づき、ISCN職員が東大の客員教員として出向き核不拡散・核セキュリティの講義を行っております。現在13講義あり、うち8講義を英語で提供しております。
また、現在は行っておりませんが、過去、ICUや一橋大学にも講義を実施しておりました他、東海大学へも、ベトナムへ日本の原発を輸出する計画があった当時、ベトナムから運転員を東海大学に受け入れて育成するプログラムがあり、その留学生向けに核不拡散・核セキュリティに関する講義と施設見学等をISCNから提供しておりました。
それから次の5ページですが、2年程前からISCNとしても大学のリクルート活動を活発に行っており、ISCN業務の認知が広がったことから大学側から講義の要請が入るようになりました。昨年はコロナの影響によりオンライン授業が増え、それを逆手に多くの大学へ講義を行っております。
少し御紹介しますと東工大の環境・社会理工学院、これは政策と技術の融合研究などを進めているところですが、2020年から25名の学生に「核時代の国際政治と核不拡散」として、南アフリカ、リビア、イラク、イラン、北朝鮮の核開発と非核化といったような講義を実施いたしました。
また東海大学へ原子力工学科の3年生40人に向け特別講義、核燃料サイクル演習の中の「核不拡散」「核セキュリティ」「核軍縮」3つの講義を提供いたしました。
それから北海道大学へは、今年4月ないし5月を予定しておりますが、機械系の専攻大学院100名に向けて、原子力・エネルギーシステム特論の一講義として核不拡散・核セキュリティの概論に係る講義を提供する予定です。
その他JAEA全体として、ホームページで公開特別講座の要請を受け付けており、鹿児島大学から、アイソトープ実験施設のRI規制法が厳しくなることに伴い、背景にある核セキュリティ強化と、核セキュリティのバックグラウンドを説明してほしいと要請があり、提供いたしました。講義へは、熊本大学の研究室や九州大学の研究室からも出席希望があり、結果、九州地区の国立大学から40名と広く参加いただきました。オンラインでの実施により、大学との講義連携の幅が拡大している状況でございます。
次の6ページでは、海外と進めている協力を説明しております。まず韓国はテジョンにある大学:韓国科学技術院(KAIST)ですが、KAISTの中に不拡散研究センターがございます。核セキュリティサミット後の2015年頃より、夏の学期に全世界から学部生ヤングフェローを20人、大学院生グラジュエートフェロー20人を集めて、その40名を8つのグループに分ける。その中でそれぞれテーマを決め研究を行い、1カ月後に研究発表してもらう合宿型のプログラムを実施しております。
本プログラムの最後に、中国と日本の原子力施設をツアーで回るカリキュラムとなっており、日本は東海村に来ていただきISCNと日本原電の東海第2発電所を見学しディスカッションするプログラムで協力しています。今年度は、コロナの影響下のためオンラインで意見交換などを行いました。
またIAEAの原子力マネジメントスクールが、2012年から毎年日本で開催されておりますが、このスクールでも核不拡散・核セキュリティに関する講義をISCNが担当して提供しております。他にもテキサスA&M大学(TAMU)では、KAISTと同様のプログラムを夏の学期に提供しておりまして、原子力施設ツアーの一環としてISCNに訪問してもらいディスカッションを行っております。
またISCNでは人材育成だけでなく技術開発における大学との連携も行っており、次の7ページで説明をしております。共同研究として、大阪大学とはレーザー駆動中性子源を用いたNeutron Resonance Transmission Analysis (NRTA)のシステム開発、京都大学とはNRTAの非破壊分析のための中性子Time of Flight(TOF)の測定用検出器および測定システムの開発を行っております。また近畿大学とは核セキュリティのための検出器開発試験、東工大とは照射済燃料の核鑑識のシグネチャ核種に関する共同研究を行っております。
昨年からは、東京大学の原子力専攻・原子力国際専攻とISCNの間で、核不拡散・核セキュリティに関連した両組織の研究を促進することを目的に、双方の研究内容を紹介し合う取り組みも行っております。1時間半~2時間ほど掛け双方の研究を共有し合い、協力の可能性について議論をしております。
それから、次の8ページでは夏期実習と学生セッションの実施について説明しております。JAEA全体として、大学の夏期休暇中に各部署が学生を実習生として受け入れての研修・実習を夏期実習として行っており、ISCNも実習生を受け入れております。
先程も申し上げましたが、センターとして行ったリクルート活動をきっかけに大学での講義要請が増え、結果R2年度には非常に多くの学生が夏期実習生としてISCNを訪れました。実習テーマの拡大もありますが、大学にて行った講義を通じて興味の湧いた学生たちが応募されたことが要因と考えております。
また同ページ下で説明しておりますが、毎年12月に国際フォーラムを開催しており、今年度も12月9日に開催いたしました。今年はフォーラムの前日に、この夏期実習生をパネラーに学生セッションを企画し、若い世代から、核不拡散・核セキュリティ分野の課題や、今後日本や国際社会が向かうべき方向について議論をいただきました。
終わった後のアンケートでも非常に良好な評価が得られ、原産新聞に取り上げていただいた他、参加した学生より核物質管理分野への就職意欲や、卒論で核実習テーマを選択したいなどコメントもありスピンオフ現象も起こっております。
最後に、ISCNにおける大学連携の今後の方向性として10ページを説明いたします。
まず1ポツ、大学側のニーズに対応した教育の支援でございます。これは、先ほど新規講義依頼が増加しているとお話ししましたが、その現状を踏まえ、大学側ニーズに対応した講義や実習の継続・拡大提供、またより多くの講義機会を得るためのアウトリーチ活動になります。大学でのリクルート活動を契機に行った大学との連携・情報共有の副産物として講義要請が増加しているため、講義の機会を増やすことを目的としたアウトリーチ活動を考えております。講義の機会に、夏期実習や技術開発等の学生の関心が高い話題を提供することを目指したいと考えております。
2ポツは、次世代の専門家の育成に向けて、として、やはり学生に対して核不拡散・核セキュリティ分野への関心や興味を引く活動行わなければいけないと考えております。学生にとって魅力のあるJAEA/ISCNでの実習や出張講義の継続実施等、中身を工夫して興味を湧かしてもらうことが大事かと。また夏期実習、共同研究や特別研究生の制度等を活用し、学生がISCNの技術開発や調査や研究、業務に関わる機会を創出するのもよいと考えております。
それから核不拡散・核セキュリティの夏の学校でございます。これは、国際フォーラムにおける学生セッションの経験から、ワークショップでの学生セッションや、学生主体で参加・活動する機会を設けることを考えております。1カ月ないし1~2週間学生に参加していただきその後もフォローを行っていく。
他にも前回の作業部会で喜多委員から提案ございましたが、日本核物質管理学会に学生部会ができましたので、そちらと連携してアクティビティを行うことも一つのアイデアと考えております。
また最後に、国際的な大学連携の枠組みの創出として、現在のKAIST、TAMUなどの大学連携を継続していくとともに、ISCNと協力関係にあります海外の研究所や国際機関等への留学、インターン、ポスドクポストの支援もできるかと考えております。
IAEAを中心にInternational Nuclear Security Education Network (INSEN)という、大学のマスターコース、核セキュリティに関わるマスターコース創出を主眼にしたネットワークもございまして、日本からは東京大学と東工大から参加しており、INSENを通じた海外・国内大学の連携を促進するような活動も一つのアイデアとしてあるかと考えております。私からの説明は以上です。
(出町主査)現状、ISCNが行っている核セキュリティの人材育成の大枠の姿がよく分かったと思います。資料1-1から1-3までの御説明を続けていただきましたが、委員の皆さまから御質問等がございましたらお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。
喜多委員からお願いしてよろしいですか。
(喜多委員)直井さん、御説明をありがとうございます。まず、基本的なことをお聞きしたいのですが、ISCNを中心に毎年どれぐらいの研究者や技術者を核不拡散・核セキュリティの分野で必要とされているか、数を一つお聞きしたい。
あと、多々大学と連携しておられることは大変良い試みだと思いますが、原子力関係の大学ネットワークが幾つかあります。例えば原子力機構の人材育成センターが中心にやっておられる原子力教育大学連携ネットワーク(JNEN)、それから東工大が中心にやっておられるネットワークなど、既存のネットワークと連携されると、たくさんの大学と有機的に繋がるのではないか、というのが私の意見です。
(直井センター長)人数ですがISCNはスタッフが70人ぐらい所属しております。大体何人が必要かという点に関しては、核物質管理、保障措置や核セキュリティは、現場に核物質管理室がございまして、例えば再処理センター、プルセンター、人形峠、大洗、各所に核物質管理を行うグループがあり、それらを総合しますと、かなりの人数が核物質管理に携わっております。われわれJAEAの核物質管理の人間も高齢化、人材が育っていない状況もあるため、早急な養成に向けて対応を協議しております。最近行った検討では、年間大体6人程度の新人を補充していかないと、定年退職者等も考えた時に将来課題が生じると懸念しております。
それから、様々な大学のネットワークについて御紹介いただきありがとうございます。既存ネットワークを通ずることは非常に効率的だと考えますので、我々もアプローチをしていきたいと考えております。
(出町主査)続きまして小澤委員、よろしいでしょうか。
(小澤委員)少し確認になりますが、資料1-1のところで議論のポイントの最初に安定性とか、つぶしが利くことを重視と書いてあり、資料1-2で分野が書いてありますが、資料1-2右側にある関連分野と非関連分野の区別について疑問を持ったのが1つ目です。
それから関連して、右側の関連分野、民間のところで、原子力事業者、輸送、警備等と書いてあり、自ら核物質またはRIを持っている事業者がいかに安全に管理するかという視点で書いてあると思いますが、「悪意の検認」これを見つけ出す別の視点もあるかと、前回の議論から思っております。分け方に少し過不足があるのではと感じましたので、少し解説をお願いします。
(萩原企画官)資料1-2のイメージ図はこれで完成ではなく、あくまで本日先生方に御議論いただくに当たりイメージを持っていただくため御用意しております。十分に詰まったものではなく、例示がもう少しあるとの御指摘は、まさにそのとおりです。今後充実させ、実際に学生などに示していけるマップのような形に作れればいいなと考えております。
また関連分野と非関連分野を分けて書いたのは、前回の御議論の中でもありましたが、核不拡散・核セキュリティ分野だけの中で人が異動しようとすると、どうしても就職先が少なくなる。その周辺領域というのを示 さないと、就職口としてはかなり閉じたサークルの中で回るだけになることから、再チャレンジや他の分野の転身を考え、周辺分野、今まで自分が核不拡散・核セキュリティで培ってきた経験や知識が生かせる分野があるのであれば、それも同時に示したのがいいのではと、今回このような形でお示ししております。
(小澤委員)そうすると、もう少し柔軟に考えてもよい気がしました。私自身も輸出管理の経験を少し持っておりますが、核不拡散・核セキュリティ分野だからといって、上と下の関連分野・非関連分野の中でぐるぐるっと回るというよりは、例えば設備設計あるいはプロジェクトのメンバーとして輸出管理を経験し戻ったり、法務部門から行ったり来たりするなど、少し大きめな企業を想定して申してしまっておりますが、一つの企業体の中でも大きな異動があり得ます。
そこで、学生の時からこれを目指してという一本槍の方針というよりは、一つ核不拡散・核セキュリティ分野がある中でつぶしが利くことを考えていくと、人材確保、学生の就職以外での行き来も考えられるかと思います。
(萩原企画官)まさに御指摘のとおり、われわれも関連分野と非関連分野の行き来を想定しております。実際にメーカーなどですと、原子力関連部署とそうでない部署の行き来はよくあることで、特に発電機周りであれば、火力でも原子力でも蒸気タービンはそんなに大きく技術は変わりませんので、当然人事交流はあります。事務系でも法務部門や国際的な営業なども、当然同じようなノウハウスキルが必要で行き来する現実もありますので、この絵の両向き矢印が1本足らなかったと反省しております。
(出町主査)この資料での関連分野は、まだIAEA以外は具体的な組織名というのは書きづらいですかね。
(萩原企画官)行政機関であれば書けます。例えば基本的に環境省の中に置かれている原子力規制委員会、その事務局である原子力規制庁。資料の輸送・警備・防災については、輸送の関連であれば国土交通省、陸送であれば道路局の一部、海上の輸送であれば海上保安庁になり、警備は警察庁が見ておられて、各都道府県本部にも専門家がいらっしゃるなど。それから防災は環境省で原子力防災の担当があり、輸出管理は経済産業省、税関であれば財務省、外交であれば外務省と書き起こすことはできます。
しかし民間については、メーカーなどある程度は書けますが、全部名前を書くのも難しく分野として書いているところです。
(出町主査)将来的に若い方々が見られる際には、できるだけ具体的なイメージが入っているとよいと思います。
(萩原企画官)そうですね。一口に原子力事業者と言ってもメーカー、電力プラントを運用されている方など、多数の業種の方がいらっしゃいますので、もう少しかみ砕いた形で書けるように努力したいと思います。
(出町主査)続きまして井上委員、よろしいでしょうか。
(井上委員)先ほど皆さまおっしゃったとおりですが、あまり企業名を出すのはどうかと思う反面、民間機関というだけではなかなかイメージが湧きにくいかと思います。また、国際機関においても、日本の行政機関と共通する職制、例えば査察官などがありますので、そのようなものを書ければイメージがつきやすいのではと思いました。
もう一つ、資料はおそらくこれから現在から5年、10年の話だと思いますが、学生にとって5年、10年は目前の話になります。20年、30年後もこの図式が続くのかが懸念点となりますので、今後こういうエリアでニーズがあるなどできれば断定できる、懸念の払しょく材料があれば書き足せればというお願いですが、どうでしょうか。
通常のビジネスの世界でも5年後はどうなっているか分からないことは、今の若い人は分かっていると思いますが、ある程度先が見えることは進路選択で大事にしているところと思いましたので、お聞きできれば。
(出町主査)学生さんが見て、将来を見通せるような書き方についていかがでしょう。
(萩原企画官)なかなか10年後どうなっているかを書くのは難しく、ここ10年でも日本は原発を輸出しようとし、海外で日本メーカーが造った原子力プラントを動かすためには指導者・リーダー人材が必要だとして人材育成の取り組みもありましたが、実際はなかなかうまくいっておりません。民間のところが恐らく大きく変わるので、本部会に参加いただいている原産協会さんや電事連さんからお聞きするとか、適宜、民間の方々からヒアリングして、現在掲げている方向性、将来的に発生しそうなニーズなど今後詰めていければと思っております。
(出町主査)そうしますと、中熊委員または喜多委員から適切に御意見をいただくのもいいのかなと思いますがいかがでしょうか。
(中熊委員)電力会社の立場で申し上げると、原子力専攻の人間というのは非常に重要ですが、専門性を持って電力会社に入ってきても、本人の希望はもちろん人事には反映されますが、核物質防護の分野だけでなくて、安全分野や炉心管理分野や燃料管理分野、サイクル分野など、原子力の知識が必要なものが多くあり割り振られます。どちらかというと、入社時、核不拡散・核セキュリティを学んでこなかった学生でも、そこのセクションに配属されてからOJTで学んでいくことが重視されると私の知る限りでは感じています。
ここからは私の意見ですが、むしろこれは専門家を育てるという観点では、事業者側だとOJT対応になるのが普通だと思っています。学生の段階で講義の数を増やす、研修の数を増やす、これも一つ興味を抱かせるきっかけとしては重要ですが、一番大事なのは、やはり研究テーマなどをできるだけ数多く与えてあげて、論文発表とか卒論・修論などでこのような分野のものを学び、世に発表するという経験がその道に進む一番大きな動機になるだろうと。私も原子力専攻でして、一つの大きなトリガーになったと思います。
例えば核物質管理学会に入会している学生の数や、あるいは学生がどれだけこの分野で論文を発表しているかなどをインジケーターにして、それがどう就職先に結び付いているかを評価軸にして考えていくのも一つの手段じゃないかと考えます。
(出町主査)今、中熊委員がおっしゃったことですが、OJTと大学等での教育研究がどういうふうにお互いを補い合うかというのは結構大事なポイントかと。
(中熊委員)どちらかというと、学生時代に何をやっていたかより、入社してから学ばせることのほうが一番現場に密着でき、また核物質防護の観点のみでクローズするわけではないので、発電所運営の中で他部門とのインターフェース等も学ぶのが非常に重要になります。業務をやりながら学んでいくほうが、原子力発電所運営という観点からは重要だろうと考えます。
(出町主査)今、日本はそういう感じですね。続いて喜多さん、お願いします。
(喜多委員)私は仕事で原子力産業への人材確保を行っているところですが、おそらく求める人材が研究者か、技術者か、事務系も含めるかにより大きく変わると思います。例えばISCNの研究者の場合、やはり大学院なりで核セキュリティに関連する分野を学ばれた方を必要とするかと。核物質防護などでの技術者を必要とするのであれば、原子力以外も含む工学系、または場合によっては法学系を幅広く学んだ人材が、企業に入ってからOJTで実務を習得していくルートになると思います。
そのため私としては、まず原子力産業にもっと人が入ってきてほしいです。そうでないと、なかなか核セキュリティにも人が行かないので、原子力全体をなるべく広く学生さんに伝え、入ってきてほしいというのが本心です。
(出町主査)今、求めるべき人材として挙がっている研究者・技術者を一緒に考えずにそれぞれ分けて、就職先等目的を分けて育成方法を考えるべきと。難しいかもしれませんが、大事なことだと思います。続いて五十嵐委員からよろしいでしょうか。
(五十嵐委員)私も、資料1-2での原子力の核セキュリティの関連分野と非関連分野の分け方がよく分からなかったので、これまでの御説明、御議論で理解してきた気がします。
原子力科学技術委員会下にある別作業部会でも、原子力全体の人材育成について議論しており、どこの分野も若い人材がいないといわれています。特に、核不拡散・核セキュリティは原子力の中でも少し特殊な知識・技術が必要であり、別に考える必要があると私はイメージを持っております。
それで資料1-2に戻りますが、これは今日の会議に向けた叩き台と理解しておりますが、こういう形で分けるのではなく、本日議論で出たように研究を極める方や、広く担当される方など将来的な方向が重要だと思います。1人の方が就職後企業で勉強して、専門家になっていくなど、働き方のイメージができるようイラスト化するなど。核不拡散・核セキュリティの専門の部分は色濃く示して、より専門性を高められる部分、他にも企業の中で回って働く可能性、国際的にはこういうところがあるなど、学生が見た時にイメージし、ポンチ絵をもっと充実できればよりいいかと思いました。
先ほどの資料1-3でもあったとおり大学と連携した学生の育成が大切だと思いますが、やはり今、中熊委員から出たように、その後の企業での教育がすごく大事だと思います。企業とも連携して、ルートももっと示せればいいのではと思いました。
(出町主査)今後、資料1-2のイメージ図をいろんな要素を入れてブラッシュアップしていく必要がありそうです。学生など、実際にこれを見せる方々から意見をもらうとなどもありますね。どう見えているか反応を見て、フィードバックしていく。今、五十嵐先生がおっしゃったイラスト化などもあると思います。その他、質問等いかがでしょう。
では終了時間もありますので、次回の作業部会で行うディスカッションに向け頭出しができればと思います。次回ディスカッション方向性として御意見いかがでしょうか。
まず私から資料1-3にてISCNが様々な大学と、国際関係も含めて協力・実現しているとありましたが、現状、日本における核不拡散・核セキュリティの教育、人材育成はISCN抜きでは無理かと。ISCNを中心にと言いますか、ISCNとうまく連携して次の大きな幹を作るべきなのかと思いますが直井さん、いかがですか。
(直井センター長)非常にプレッシャーが掛かりますが、発端はなかなかこの分野に学生が集まらない、応募しないことが原点にあり、リクルート活動をきっかけに大学の先生との意見交換など繋がりが増え、講義の機会ができたと。そこから学生が、こんな世界は知らなかった、核物質管理をやりたいと就職にも繋がる学生が増えました。今われわれは、たくさんの学生にこの分野を知ってもらうことを主眼に一つ考えています。
また最近の傾向として多いのは、「私はIAEAで働きたい」「国連で働きたい」や「CTBTで働きたい」と国際機関での勤務志望を持って応募してくる学生さんが多くなってきております。その一方で、なかなか国際機関の日本人の就職率は上がらないことがあり、いかにこれを高めていくか大切だと考えます。そのキャリアパスも見えて、何年か経ったらそこに行けると見える形に持っていくのが非常に大切かと考え、ISCNと大学との連携もそういう方向でも考えていい気がしております。
特に海外大学との連携で少し御紹介しましたが、韓国KAISTやアメリカTAMUなどで行っている全世界から学生を集めた1カ月合宿。合宿中いろいろ議論をし、その中で核不拡散・核セキュリティの面白さを見いだす方がいると私は強く印象を持っておりますので、将来的にはISCNでも行いたいと思っております。
(出町主査)KAISTなどの取り組みは非常に大学生向きで、日本でもできればよいと思います。この1年2年で実現するものでしょうか。
(直井センター長)たとえばIAEAの原子力マネジメントスクールは、日本企業含めた世界中から参加者を集めて、様々な国の人たちと幅広くディスカッションをしながら原子力マネジメントを学んでいくものです。参加者の独自性に任せディスカッション、発表もしていただくので、こういった中で核不拡散・核セキュリティの人材も育成できればと考えています。
特に全世界から集めなくても、まず日本の大学の学生たちに集まってもらい核不拡散・核セキュリティ夏の学校などを行うことで繋がっていくのではと期待を持っております。
(出町主査)実は、上坂前主査が事務局長を務めていた、東大とJAEA共同の原子力マネジメントスクールがあり私が事務局長を引き継ぐのですが、こちらは学生以外の方もおられるため、そのまま利用するのは難しいと思います。おっしゃったとおり、夏の学校のような小規模のものはできなくはないと考えたりします。
井上委員、お願いいたします。
(井上先生)ISCNに限らず核不拡散・核セキュリティ関連分野と非関連分野を合わせて、どういう学部・大学院での専門性から、年間どれくらいの新入職員が必要か数字はありますでしょうか。
(直井センター長)喜多委員の方で分析をされているのではと思いますが、いかがですか。
(井上委員)国内全体を想定した時、数字によってもやるべきことが変わってくるかと。議論が脱線してしまうかもしれませんが、お聞きできれば。
(喜多委員)十分かは分かりませんが定量的にどれだけの人数が必要か、またどれだけ入っているかについては、電力会社の原子力部門、6メーカーの原子力部門は現状調べています。あとはJAEAの核燃料サイクル部門を調べております。
私が先ほど手を挙げたのは、原子力エネルギーマネジメントスクール(NEMS)、世界原子力大学(WNU)など、われわれが人材ネットワークを通じて関わっているスクールがありまして、これは昼講義のみでなく、夜の部もあります。世界から若い人たちが集まってくるところで、「今日は核不拡散ナイトだ」「核不拡散・核セキュリティについて議論する夜にしよう」などにもできるのではと考えております。今年9月~10月にNEMSのオンライン開催を計画しておりますので、そういう場も使えるかと。WNUは対面で行うことがポリシーで、次は日本で開催の予定ですが時期の見通しは経っておりません。再開された際は使っていただければ。
(出町主査)今喜多委員がおっしゃったとおり、NEMSでの夜の時間2~3日を使ってトピック的に核不拡散・核セキュリティを行う。オンラインですので、日本から参加も比較的敷居が低いかと思います。五十嵐委員お願いいたします。
(五十嵐委員)本議論は、学生の就職しやすさ・つぶしが利くというお話が最初にあり、その意味では認定制度もすごく大事だと思います。今日の参考資料に、原子力関連の資格・認定制度もあるので、核不拡散・核セキュリティ分野での資格について御説明いただけますでしょうか。他の分野では技術士の資格を取る人が減っているなど、お話を聞いたりしますが。
(萩原委員)参考資料2から御説明させていただきます。幾つかカテゴリー分けしておりますが、最初に挙げているのはいわゆる業務独占国家資格で、例えば医師でなければ医療行為が行えないなどの、資格を持っていなければできないと定められているものです。炉規法では原子炉主任と核燃料取扱主任の2つ、RI法では放射線取扱主任の1つを定めています。これは法律上、一定規模の事業を行う場合にこの主任技術者を置く規定になっておりまして、その資格認定は国家資格となっております。ペーパーテスト合格後、研修を受けて認定されるもので、知識のみでなく技術が備わっている人を認定する資格です。
2番目は技能認定国家資格、技術士があります。技術士は、この資格により新しいことができるものではなくて、一定以上の専門知識・技術を持っている方を認定する制度です。実は原子力分野での認定は無かったのですが、原子力学会より要望があり2004年から原子力・放射線部門として設定されました。持っていたから新しい仕事ができるものではなく、これまで携わっていた方々に対して「匠(たくみ)の技術を持っている」と認めるような資格でありますので、大幅に取得者が増えることはないと。また学生が技術士を取っていると就職が有利になるものでもないため、五十嵐先生のお話しになるのかなと思います。
ただ、例えばプラントの現場を退いた後に、コンサルタントなどへ転身する際には箔が付くと言いますか、知識と技術を示すのには使える資格ですので、そのような活用はされているようです。
それから3番目、これは国家資格ではなく、法律に基づいて各業界の中で行われている認定資格です。大学やJAEAもですが、核燃料物質やRI、放射性物質などの取り扱いをする方に対して必要な教育をすることが労働安全衛生法で定められておりまして、規定された特別教育を受けた人が認定される資格です。
例えば、大学の中ですとRIセンターから座学と実習を受け認定されないと、RIを使った実験ができないという仕組みで使われております。そういう意味では、現場での作業に必要最低限な知識・技術を身に付けていただくための資格となります。
最後、民間で独自に行っている資格として、原子力発電所運転責任者を挙げております。こちらは原子力安全推進協会により、原子炉運転員の監督・指揮を行うのにふさわしい人として認定する資格になります。一定以上の実務経験をお持ちの方で、知識も十分と認められれば受けられる資格ということです。
今説明しました資格は、既にお分かりのとおり核不拡散・核セキュリティに直接関係しておりません。出町主査と事務局の相談の中で、核不拡散・核セキュリティ、あるいはセーフガード(SG)で資格がつくれないかとお話があったのですが、SGは原子力規制庁 保障措置室が実施し、また核物質管理センターが手伝う体制となっていることから、他民間等でSG業務がしっかり出来ると認定をする必要性はなく国家資格にはなっていません。国ではない第三者が行うようになれば、資格があると示す必要が出てくると思いますが、国または国から指定を受けた法人が行っている現状だとなかなか生まれないかと思います。
一方、規制を受ける事業者の目線で見ると、計量管理業務など一定程度の知識・経験は当然要るので、おそらく各事業者の中で規定が存在し、OJTの形で知識や技術を学んで一人前と認められてから、業務の主担当になる形でおそらく運用されていると思います。しかし、これは事業者ごとの判断でありますので、試験ではなくそのチーム内で認められれば、の世界が多いかと。
この事業者個別の判断から、共通の業務部分を抜き出し、一定程度の技術・知識があると認めてくれる第三者団体があれば、他の事業者に転職するときにも即戦力としてアピールできる利点もありますので、誰か出てきてもおかしくありませんが、日本においては今のところそういう動きはないのが現状です。
参考資料3は、核不拡散・核セキュリティ分野における認定の現状を書いております。IAEAで開催されている核セキュリティ・トレーニングコースの修了証、アメリカとかカナダで行っているトレーニングコースの修了証など。ISCNでホストしているIAEAのトレーニングコースも当然修了証を出しており、知識・技術を身に付けたことを認定しています。
こういった修了証は、分かっている人であれば認知されますが、修了証があることで正式に新しい業務ができる法的な枠組みは、国際法の中にもIAEAが示している各種ガイドラインの中にもあるわけではありません。
それからWINSアカデミーですね。世界核セキュリティ協会が主催のWINSアカデミーは、かなり多国籍で実施されており、対象国が一番広く国際的な支持も得ています。しかし、これも知っている人が見れば、確かに必要な知識・技術を身に付けた人だと認知はされますが、修了証があるからといって何かできるものではないのが現状です。
他の分野の資格制度から考えますと、資格を導入していくにはやはり実態として、一定程度の知識・技術の必要性から民間資格とか事業者の中で認定を行い、認定がないと一人前と呼べない実績を積んで、規制当局にもその実態をまず認識していただくのかと。そして規制当局側が規制するときにそのような認定制度があったほうが、安全確保やセキュリティ確保の観点で重要との認識を持つに至れば、徐々に法律なり行政指導であるガイドラインに組み込まれていくことになるかと思います。
そのような意味で、核不拡散・核セキュリティの資格認定が本当に必要なものであれば、民間の中から御協力いただき、原子力プラントや関連事業者の間で、どういう共通的な知識レベル・技術レベルの習得度であれば認定できるかを話し合っていただき、そこにISCNなどがトレーニングや講義を提供する形で進めていくのかと思います。
ただ、どこまで規制当局側にニーズがあるかは全く分かりませんので、一度、原子力規制庁の担当の方にもよくよくお話を聞いてみて、規制を受ける側が業務独占国家資格以外に必要か、と必要性を感じているか聞いてみたほうがよいと思っています。
(出町主査)五十嵐委員、よろしかったですか。
(五十嵐委員)先ほど直井センター長からも話がありましたが、国際機関に行きたい方が持っていればメリットになるなど、資格に魅力がないと難しいかと思っています。ただやみくもに制度を作ればといい話ではないと難しいところだなと思います。
(出町主査)規制庁にて資格は何か考えられているかの調査は、敷居が低いのでしょうか。
(萩原企画官)相当高いと思います。もしかすると、抜本的な法改正を伴う可能性もありますし、制度を設けた瞬間に、事業者には相当な負担が発生してしまうことも予想できます。現在の安全基準対応のみでなく、新しく資格を持った人を雇う義務が事業者にも発生しますので。そのため、まずは事務的に、こういう議論があったけれどもどうお考えになるかと、行政庁間でお話をさせていただくほうがいいかと思います。
また、五十嵐先生のコメントに関連しますが、例えばIAEAへの就職を考えた時には、ある程度、いわゆる管理職級のポストだと、応募要件として「原子力安全関連業務や保障措置関連業務の実務経験が何年以上」と付与されているものが多く、各国は、原子力規制当局に就職して実務経験を積まれた方が国際的な活躍の場を求めてIAEAに転職されることが多いようです。
では各国、原子力規制当局にどういう人が就職するかというと、原子力規制だけをやりたいと思った方はどうも少ないようです。工学的な知識のバックグラウンドや、法律、規制法のバックグラウンドを持っておられる方が、アメリカであればNRC、日本であれば原子力規制庁なるところに就職して規制業務を従事する中で、保障措置や原子力安全基準の設定に興味を持ち、そういったところを中心にキャリア積まれる。応募資格を満たしたところで転出されていく例が多いようです。
ただ日本だとそれはなかなか厳しく、保障措置業務で経験を積まれている方はいても、実際にIAEAに転職される方はそんなに多くない。IAEA全体でも直接雇用されている日本人は2%程度と言われています。これは政府としてもかなり問題意識を持っており、今後どうやってIAEAに人を送っていくかということを考えているところです。
その議論をしていく中で、やはりIAEAに応募して採用される方は、相当スキルレベルが高い方であると分かっております。国内で一線級に活躍されている方がIAEAに移られると困ってしまうという現場の話や、そもそも日本は人材流動性が低いなどの社会的な原因もあります。特に日本の場合は、一回、行政庁から外へ出てしまうと中途採用で戻ることも難しく、このようなところからうまく変えていかなければと思っています。この辺りは関係省庁間でも議論を重ねているところです。
(出町主査)IAEAへの応募など具体的なキャリアパスを一回この場で整理しておく必要があるかと思いました。中島委員、お願いいたします。
(中島委員)途中から入り、ほとんど説明を聞いていなくてなかなか付いていけずすいません。先ほど資格等の話題で出ていた規制側のニーズですが、私自身は直接規制側とセキュリティ関係のやりとりをしたことはありませんが、安全規制での経験・感覚ですと、規制側は、あくまでも事業者側がこの業務をやるにはこういう力量・スキルが必要であると理解し、そのスキルがある、事業者は確認・管理しているとの説明が求められているのだと思います。そういう意味では、なかなか規制側に聞いてもすぐに解は得られないかと。
(出町主査)規制側に聞くのは難しいということですね。
(中島委員)あと、先ほど資格の中で国家資格として原子炉主任や核取主任者、放射線取扱主任者などありましたが、おそらく放射線取扱主任者はコンスタントに受ける人がいるかと。それはこの資格は非常に応用分野が広く、病院から事業所など、RIを持っているところは必ず要ることによります。
核燃料取扱主任者は、規制庁ホームページに毎年の受験者数が出ておりますが、ここ数年は減少傾向で、一時より大体半分ぐらい、大体100人規模だったものが今50~60人かと。
あと原子炉主任技術者は、逆に新規制基準の下で炉主任のニーズが高まり、一時期、受験者数が相当増えておりました。ただ合格率はその分下がっていて、絶対数はそんなに増えていません。状況としてはそういうことかと思います。補足情報まで。
(出町主査)ありがとうございます。あと、井上委員いかがでしょうか。
(井上委員)私はIAEAで3年前まで働いておりましたが、管理職等のレベルで来られる方は本当にスキルと経験がある方ばかりで、オープンポジションであればその方々同士の競争になります。そこに到達するには、やはりある程度本人の気持ちと、それから周りのサポートが必要かと思います。上のポストは数が多くありませんので、そのポジションを目指すキャリアを歩ませていくような周りのサポートや配慮があるといいのでは。
また、1つの国で働き続けるのは優位に働かないといいますか、若いうちから、IAEAへ出向させる、他の国で働く、そういった経験をうまく積み上げる配慮を組織なりが提供してあげるのがよいかと思っております。
これは私の非常に限られた経験の中から申し上げていることですが、採用には多くの要件がありまして、スキル、経験、そして国際的な経験などがあります。これらを構築した上での競争になりますので、若いうちからが大事かと。
(出町主査)具体的な一流キャリアの積み方は、今後の若い人にとても重要な知見だと思います。
(井上委員)IAEAでの活躍、出世をするのであれば必要なことだと思います。
(出町主査)その他にいかがでしょう。予定よりも時間が経っておりますので、よろしければ次回作業部会のテーマの方向性を御議論いただければと思います。
私が考えておりますのは、キャリアパスの更なる整理、精緻化です。先生方がおっしゃったとおり、具体性を含めながらできれば分野別でどういう人材が必要か、レベル別も含めて分野とレベルで分けるのかと。想定されるキャリアパスをまず分類し、それに組み合わせる。より具体的にイメージできるキャリアパスをつくるのが今後の作業で秘訣になるかと思いますが、どうでしょうか。
喜多委員がおっしゃった、原子力分野に人が来ない問題があると思いますが、核不拡散・核セキュリティでの魅力的なキャリアパスをつくることができれば、原子力分野へ呼び込むきっかけになり得るのかと思ったりします。
個人的な意見になりますが、原子力発電が今の学生さんへのアピールとしては弱く、何か守ることの方が、若い方には基本的には非常に魅力的だと。その意味で核不拡散・核セキュリティをきっかけに原子力に人を呼ぶことにも繋がるかと思います。
では、まとめに入りますが、まずは、今後どのようにニーズやキャリアパスを深め広げていくか、また精緻化していくかが次回の議論テーマの一つになるかと思いますが、事務局としてはいかがでしょう。
(萩原企画官)どこまで細かく分けるかで変わってくるかと思いますが、今日、中熊委員からもお話があったとおり、実務だけを行う人であれば従来どおりOJTで、現場で必要な知識と技術だけを身に付けていけばよいと。他方、分野全体を支える人材という意味では、やはりリーダー、分野を引っ張る人を育てるのであれば、かなり早い段階で専門性を持つ人を育てることが必要になると思います。
今までは、行政機関やISCNや核物質管理センターで育成され、時々IAEAやOECD/NEAのような組織と行き来し、国際感覚を兼ね備えていただきましたが、なかなか厳しいところにきていると。
行政でも、文科省と原子力規制庁に分かれてSGが規制庁につき、文科省からIAEAに行ったとしても、戻ってから担当できる業務は原子力規制庁にしかない、など政府内で調整をしなくてはいけない問題があります。それから、電事連を通じて電力会社の方が国際機関に行かれることも過去ありましたが、震災以降なかなか厳しい状況だと聞いております。
このような状況も含めて、国際機関にどう人を送っていくか。井上先生からもお話がありましたが、やはり若い時に1~2回事務局を経験せず、雰囲気を知らずにいきなり管理職を応募しても受からないのが現状です。そのため若い時に政府、あるいは民間会社からの出向という形で経験していただくことが大事ですし、または外務省で若い方を3年間、国連機関に行かせる制度もありますので、既存のものもうまく活用しながら日本として狙っていきたい国際機関にしっかり人を送っていくことが大事だと思っております。
一方で、文科省でも留学支援のプロジェクトがありますが、これを通じて若い方に二極化が起きていることが分かっております。国際的に出ていこうと思われる方はかなり早い段階、高校生などでどんどん出られますが、多くの方は内向き志向で、国際的な場でなくても国内で十分な働き口、生活、文化もあると希望しない方が増えてきてしまっております。
われわれの持つ留学・国際機関派遣制度でも、枠は十分にあるのに、応募者が少なく使い切れないといった実態も実はあり、そのような意識改革も必要になります。そのため、先ほど先生方から御意見が出たように、キャリアパスの中で国際機関を何回か経験する、国際社会に出ることがどれだけ自身のキャリアで重要な位置付けになるかなど、知っていただく機会を持つことが大事かと思っております。
出町先生からの御意見については、どこまでどう盛り込んでいけるか、どうカテゴライズしていくか議論を深める必要があると思います。
ただ、申し訳ないのですが、今期の第10期は2月の中旬で終了となりますので、次回を行うためには、改めて第11期を立ち上げる必要がございます。また委員の委嘱についても、委嘱年数の制限など要件があり、そういった観点で今のメンバーから構成が変わる可能性もございますので、その辺りはまた個別に御相談をさせていただきます。
(出町主査)できれば現委員の先生方、皆さんとこのまま議論を続けていただきたいと私からは考えます。また今後の継続も期待しつつ、次回議論の内容ですが、いきなりキャリアパス、ブラッシュアップは難しいと思いますので、本日出たキャリアパスを充実させるための御意見をまとめ、項目、考え方を盛り込む整理はできますでしょうか。
(萩原企画官)次回開催の時期によると思いますが、開催できるタイミングまでにできることはさせていただきたいと思います。
最低限必要と思っているところは、それぞれの階層別で必要な知識や技術が変わり、育て方も違うということなので、実務を担当される方、分野を引っ張る方が両極端にいるとして、あとはその間の整理はまず必要かと。それがなくては、ニーズを聞いたとしてもおそらく相手がどこを必要とされているか分からないので、一度整理したほうがいいかと思います。
また、井上委員にも御協力いただければと思いますが、IAEA等国際機関で働いておられる邦人職員のキャリアパス例を、個人名等はもちろん抜いて御紹介いただくのはいかがでしょう。私が知っている限りだと、科学技術庁に原子力と全く関係ない専攻で入り、たまたま配属された原子力の部署でSGを知ってIAEAに留学、IAEAが気に入ってそのまま転籍されたというようなケースがございます。国際機関も含めキャリアパスを築かれた事例を御紹介すると、ある程度見えてくるところもあるかと。直井センター長もお詳しいと思いますので、ぜひ御協力いただければと思います。
(直井センター長)ISCNもそういった事例はございますので、御紹介できます。
(出町主査)事例は大事ですよね。あとは必ず入れなきゃいけない実態は、キャリアパス資料のアイテムになると思います。
その他はいかがでしょう。次回は、まずキャリアパスの充実に向けた取り組みと、また喜多委員や直井センター長がおっしゃったNEMSでしょうか。
(中熊委員)1点だけよろしいでしょうか。今のキャリアパスという話も大事と思う一方で、それは、核不拡散・核セキュリティ分野で国際的にもそれなりにリーダーシップを取っていける人間をどう育成するかという、非常に数が限られた方の議論のような気がしています。この分野の人材をどう確保し、研究開発などを行っていける人材をどれだけ張り付けるかが、もともともう一つ大きな主題であったかと。今日もそういう目線で少し議論させていただいたと理解しておりますが、今後どうシフトしていくのでしょうか。次回はキャリアパスと、リーダーシップを取れる方の育成にスコープを当てると理解いたしましたが、今後の展開を少し教えていただければなと思います。
(出町主査)私の理解では、キャリアパスはリーダーシップを取れる方だけでなく、様々なレベル、分野をひっくるめてのキャリアパスの整理だと思っています。
(中熊委員)民間企業、電力会社の人間の立場で申し上げると、入社された方を、将来ここの専門家に育て上げると完全なキャリアパスを決めながら育成していくパターンはまれだと思います。研究機関や行政機関にはなじむのかもしれませんが。
(出町主査)民間企業側では現状、OJTで核不拡散・核セキュリティの教育に取り組んでいらっしゃると思いますが、こういう人が来ると向いているなという御意見や知見をいただいて反映させるということもあり得るかと思います。
(中熊委員)喜多委員の御発言の中にもありましたが、工学系の方で、原子力部門に配属され、しっかりと学んでいただいた優秀な方は当然採用を希望するわけです。配属され、そこで学んで育ってもらう。しかし長い数十年の電力会社での人生の中で、ずっと同じ部門に張り付き続けるのは極めて稀でして、いろんな分野をローテーションしながら上がり、最終的に上級になってきた時に、どこか専門性のあるところに張り付く方がいらっしゃる。このような育ち方をしていくことを考えると、一概にキャリアパスとしてなかなか表現しづらいなと受け止めました。感想です。
(出町主査)中熊委員がおっしゃられたように、様々な実態があると思います。まず実態を調べて、キャリアパスと一言で表現するのは古いかもしれませんが、われわれが共通の知見を持つことはとても大事だと思います。
以上でよろしいでしょうか。最後に事務局さんから連絡事項等をお願いします。
(鈴木補佐)本日の作業部会の議事要旨案につきましては、出来次第メールにて確認をさせていただきたいと思っております。
また今期の作業部会開催は今回が最後となる見込みでございます。委員の皆さまにおかれましては、御多忙のところ御参加いただきまして誠にありがとうございました。頂きました貴重な御意見については、今後のわれわれの政策立案等にしっかりと反映させていきたいと思っております。
(出町主査)委員の皆さま、たくさんの御意見やお考えをお聞かせいただき感謝申し上げます。それでは以上で、第18回核不拡散・核セキュリティ作業部会を終了いたします。
 

 

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