原子力科学技術委員会 核不拡散・核セキュリティ作業部会(第17回) 議事要旨

1.日時

令和2年10月26日(月曜日) 13時30分~15時30分

2.場所

新型コロナウィルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

   1.核不拡散・核セキュリティ作業部会の設置について
   2.核不拡散・核セキュリティ関連業務の中間評価
   3.核不拡散・核セキュリティ分野の人材確保
   4.その他

4.議事要旨

(鈴木補佐)定刻になりましたので、ただいまより第17回核不拡散・核セキュリティ作業部会を開催いたします。私、事務局の鈴木と申します。どうぞよろしくお願いします。
今回の作業部会は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点からオンラインにて開催しており、これに関連した確認事項などもありますので、議事に入る前まで事務局にて進めさせていただきます。
まず、オンライン開催に際しての留意事項を御説明いたします。
委員の皆さまにおかれましては、現在、遠隔会議システムWebex上で、映像および音声が送受信できる状態となっております。今後、御発言される場合は、その挙手ボタンを押していただくと、挙手マークが表示されますので、順番に事務局より指名いたします。もう一度ボタンを押すと、挙手マークが消えますので、御発言いただいた後は挙手ボタンを押して、手を下ろしていただきたくよろしくお願いいたします。
では次に、会議中にビデオ映像および音声が途切れている場合ですが、その時間御退席されているものと見なします。遠隔会議システム接続の不具合等が生じた場合は、随時事務局宛てにお電話にてお知らせ願います。
次に、傍聴される方におきましては、ビデオ映像および音声をオフとしていただきたく、よろしくお願いします。議事進行の妨げとなる行為を確認した場合は、遠隔会議システムから御退席いただきますので予め御了承ください。
なお議事録につきましては、事務局にて会議を録音し、後日文字起こしをいたしますので 事務局以外の会議の録画および録音はお控えください。
以上が本日の進行に当たっての留意事項となります。

では次に、当作業部会の位置付けについて御説明させていただきます。
平成31年2月より、当作業部会の上位の委員会に当たります科学技術・学術審議会において、第9期から第10期へと期が変わりました。また昨年の6月21日に開催されました原子力科学技術委員会で、作業部会の見直し、大くくり化が行われましたが、当作業部会については、従前の推移のまま引き続き設置されることとなりました。
第10期におきましても、当作業部会の親委員会に当たります原子力科学技術委員会の主査から指名を受け、上坂委員に主査を務めていただくことになりましたので、よろしくお願いいたします。
続きまして、第10期、本作業部会の委員として御就任いただきました皆さまを御紹介させていただきます。
東京大学大学院工学系研究科教授 上坂充委員
フリージャーナリスト 五十嵐道子委員
同志社大学大学院ビジネス研究科教授 井上福子委員
一般社団法人日本電機工業会原子力部長 小澤隆委員
一般社団法人日本原子力産業協会人材育成部長 喜多智彦委員
セコム株式会社元顧問 小松崎常夫委員
東京大学大学院工学系研究科准教授 出町和之委員
電気事業連合会原子力部長 中熊哲弘委員
京都大学複合原子力科学研究所教授 中島健委員
一般社団法人日本原子力学会理事 布目礼子委員

なお、同志社大学大学院ビジネス研究科教授の井上福子委員、電気事業連合会部長、中熊哲弘委員、一般社団法人日本電機工業会原子力部長の小澤隆委員の3名は、今期から新たにお願いする方々になります。これまでお世話になりました電気事業連合会原子力部長 渥美法雄委員、一般社団法人日本電機工業会原子力部長 多田伸雄委員におかれましては、御異動に伴い、御退任となりましたのでお知らせいたします。

さて、本日の議題ですが、お手元の議事次第に書かれているとおり、
1.核不拡散・核セキュリティ作業部会の設置について
2.核不拡散・核セキュリティ関連業務の中間評価
3.核不拡散・核セキュリティ分野の人材確保
4.その他 となっております。

最後に事務局より、本日の出欠と配付資料の確認をいたします。
本日は全員に御出席いただいておりますので、定足数である過半数を満たしております。
続いて本日の配付資料ですが、今回は委員の皆さまおよび傍聴の登録をされた方宛てに、事前にメールにて配付資料をお送りさせていただいております。会議中、遠隔会議システム上では、資料を表示いたしませんので、各自のお手元にて御確認ください。
では次に、配付資料を確認いたします。
資料1-1 第10期科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 原子力科学技術委員会 核不拡散・核セキュリティ作業部会委員名簿
資料1-2 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 原子力科学技術委員会 核不拡散・核セキュリティ作業部会の概要
資料1-3 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 原子力科学技術委員会運営規則
資料1-4 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 原子力科学技術委員会における作業部会について
資料2-1 ISCNの設立の背景と現況について
資料2-2 令和2年度研究評価計画 中間評価の流れについて
参考資料 今後の核不拡散・核セキュリティ研究開発の進め方について(中間とりまとめ)

資料の欠落等がありましたら、事務局までお知らせください。
また議事の途中でもお気付きの点がございましたら、お申し付けください。
事務局からは以上でございます。ここからの進行は、上坂主査にお願いしたいと思いますが本日上坂主査は、別用務が入り出張先からの御参加となっております。通信環境などの観点から、本会議の進行は出町委員に委任いただいております。
それでは上坂主査、出町委員、よろしくお願いいたします。

(出町委員)出町でございます。上坂先生は本日通信状況がよろしくないということで、僭越ながら代理で進行させていただきたいと存じます。よろしいでしょうか。
本日は御多忙にもかかわらず御出席いただきまして、誠にありがとうございます。本日は第10期最初の作業部会となりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本日の議題に入らせていただきます。
まず議題1の核不拡散・核セキュリティ作業部会の設置についてでございます。事務局より説明をお願い申し上げます。
(萩原企画官)事務局の萩原です。では、御説明申し上げます。
先程鈴木補佐がした内容と被りますので、簡潔に御説明させていただきます。
まず、資料の1-1ですが、こちらは委員名簿になってございます。これは先ほど読み上げをさせていただいたとおりです。
それから資料の1-2、こちらが作業部会の概要ということで、当作業部会については、核不拡散・核セキュリティ体制強化に必要な研究課題や人材育成の方法等の課題を御議論いただくことを目的に、設置をしております。
資料の1-3が、われわれの親委員会である原子力科学技術委員会の運営規則でして、当作業部会にても、この規則が適用されることになっております。こちらは令和2年5月12日一部改正をしておりますが、本改正は新型コロナ感染症の感染拡大を防ぐため、情報通信機器を使った遠隔会議が開けるようルールを新たに加えたもので、基本的には前期までの規則と大きく変わるところはございません。
それから資料の1-4でございます。こちらも、先ほど御説明がありましたが、原子力科学技術委員会の中で作業部会の大くくり化というのが行われ、その結果、今3つの作業部会が置かれているという状況です。
われわれの核不拡散・核セキュリティ作業部会については従前のままとなりましたが、その他数多くあった部会については、研究開発・基盤・人材作業部会とバックエンド作業部会の2つに再整理、大くくり化をされているということでございます。
事務局からは以上です。

(出町委員)ただ今の御説明につきまして、御質問、御意見等ございましたら、お願い申し上げます。よろしいでしょうか。挙手はないようですね。
では、次の議題に移らせていただきます。議題2の核不拡散・核セキュリティ関連業務の中間評価についてでございます。
本日は平成27年にも行いました核不拡散・核セキュリティ関連業務の中間評価の御説明を行いたいと思っています。核不拡散・核セキュリティ総合支援センターから、取り組み内容について御紹介いただいた後に、事務局から令和2年度研究評価計画中間評価の流れについて御説明、委員の先生方より御質問、御意見を伺いたいと思います。
委員の先生方からいただいた御意見等は、今後、事務局で作成する中間評価に反映し、当作業部会としての評価案を取りまとめたいと思います。
まずは、資料2-1に基づき、核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)から、ISCNの設立の背景と状況についての取り組み内容について、御説明をお願いいたします。

(直井センター長)ISCNセンター長をしております直井でございます。資料2-1を用いて説明をさせていただきます。
まず1ページ目、ISCNの設置の背景です。本センターは2010年4月にワシントンDCで開催されました第1回核セキュリティ・サミットのわが国のコミットメントから、アジア諸国をはじめとする各国の核セキュリティ強化に貢献するためのセンターを原子力機構に設置し、人材育成支援および正確で厳格な核物質の検知、鑑識技術を確立することで国際社会に貢献することを目的に、2010年の12月に設立されております。ちょうど今年2020年の12月に創立10周年を迎えます。今年はそれを記念して、国際フォーラムを12月9日にオンラインで開催する予定にしてございます。
次のページで、人材育成支援事業の目的、それから概要について説明させていただきます。
核不拡散・核セキュリティの国際的な共通枠組み、およびIAEAのガイドライン等を考慮しつつ、日本が原子力平和利用を進める中で培ってきました経験、地域や各国の特徴を生かした人材育成に取り組むと。それから、対象国の管理・監督者およびトレーナー育成に重点を置いたトレーニングを実施して、本分野での能力向上を図るとともに、アジア地域における技術的な能力維持・向上の仕組みを構築する目標でやっております。
また、支援対象国のさまざまなニーズに対し、地域に共通する重要項目に優先順位を付けまして、効率的に実施するとともに、個別ニーズにも応えるために、当該国を訪問して現地で開催するトレーニングも行ったりしております。このような取り組みを通じて、トレーニングに参加した参加者が、対象国の核不拡散・核セキュリティ分野における体制整備強化に重要な役割を果たしてもらうこと、また、アジア地域における関係者の人的ネットワークを構築することによって、この地域の核不拡散・核セキュリティ強化に貢献するということを目標に活動してございます。
これまでの成果の概要ですが、国内外に183のトレーニングコースを提供いたしまして、99カ国、6国際機関から約4,600名がトレーニングに参加しております。また参加者の中から選別し、数年後に追跡調査を行って、トレーニングの効果を確認してございます。
令和2年度の活動状況としては、コロナの影響により、国際的な対面トレーニングは延期となっておりますけれども、オンライントレーニングの開発を進め、10月以降、オンラインでのトレーニング提供を行っているところでございます。また、国内向けのトレーニングにつきましては、感染防止対策を徹底の上、対面式で実施してございます。

次のページに、核セキュリティ分野での人材育成についてまとめております。トピックスとしましては、アジア地域、国内向けコースとして、核物質防護システムの設計および評価手法とか、RIセキュリティ、それから侵入検知システムの性能評価試験、核セキュリティ文化醸成、それから国内の政府機関向けの核物質防護、これは初級から上級までを実施。またこれに加えまして、IAEAが提供しています核セキュリティ関連のトレーニングコースを年2回程度、ホストし提供しております。
また、二国間コースとして、ニーズに基づいて核物質防護の基礎トレーニング、応用トレーニングといったものを提供してございます。令和2年度は、先ほども申し上げたとおり、コロナの影響によりマルチの対面式トレーニングはできておりませんが、オンラインのトレーニングに切り替えまして、提供をやってございます。特に核物質防護、それから原子力施設のトレーニングとして先週今週と2週間にわたりまして、オンラインで提供しているところでございます。
また、国内向け核物質防護トレーニングコースにつきましては、一部対面式で既に実施済、また規制庁、警察は今後実施するというような予定にしております。
また、核セキュリティ文化の醸成セミナーですとかWINSとのワークショップ、またDOEと年に1回、ワシントンで開催しておりました人材育成に係るワークショップにつきましては、いずれもオンラインで開催するというような予定にしてございます。

次のページが、保障措置分野の人材育成支援と、COE連携等でございます。
保障措置につきましては、国際コースとして、計量管理制度コース、また計量管理に使う非破壊分析のコース、少量議定書のコースを提供しています。これに加え、IAEAの査察官向けのトレーニングコースとしまして、再処理施設の保障措置、それから使用済み燃料の検認装置でありますDCVDという装置のトレーニング、統合保障措置のトレーニングを査察官向けに提供しております。また、派遣コースといたしまして、二国間協力で追加議定書申告に関するワークショップなど活動してございます。
令和2年の状況ですが、国際コースにつきましては、11月にオンラインで開催をする予定にしてございます。また、追加議定書申告に関するワークショップもオンラインで開催する予定でございます。それからIAEA査察官向けコース、非破壊分析に関するSSACフォローアップトレーニングコースは、これは対面式でないと効果が出ないことから、今後の状況で実施判断していきたいと考えてございます。
それから、左下に書いてあるアジア地域におけるCOE連携ですが、アジア地域は中国・韓国にもISCNと同様のトレーニングセンターがございまして、2012年ぐらいから連携、情報を共有して、IAEAを含めてトレーニングコースが重複しないように調整する会合を年に1回集まり開催しております。今年は10月中旬に3日間かけて、オンラインで行いましたが、特にコロナ禍にある今トレーニングがどのような状況で進んでいるか情報共有をするなど、成熟した協力関係が構築できていると考えてございます。
右下には、ASEAN+3エネルギー関係会議への参加を書いております。今年は既に3つのセミナーやフォーラム、シニア会合が開催されまして、オンラインで参加をしてございます。さらに、NPT再検討会議の関連ウェビナーとしまして、21世紀のIAEA保障措置という国際会議にパネリストとして参加をして貢献をしてございます。
また、IAEAのニュークリア・セキュリティ・サポートセンター・ネットワーク(NSSC)、これは各国の人材育成センターのネットワークですが、この関連会議にワーキンググループへの副議長をISCNから選出するとともに、ウェブ会議には4回参加をしてございます。

次のページ以降で、今度は技術開発の説明をさせていただきます。6ページでございます。
まず、核共鳴蛍光による核物質の非破壊検知測定技術開発でございます。目的・概要ですが、輸送コンテナの中、遮蔽(しゃへい)容器に隠匿されました核物質の検知は難しく、核セキュリティ上の課題となっております。われわれは、この隠匿された核物質を、核共鳴蛍光反応で検知するという技術開発に取り組んでおり、兵庫県立大学のニュースバル放射光施設で、準単色のガンマ線を作り出しまして、そのガンマ線をプローブにして、核共鳴蛍光反応を起こして検知するという実証試験を行っております。
またこの実証試験と併せ、シミュレーションコードの拡張改良を行っており、Duke大学のガンマ線源施設で、ベンチマーク試験を行いながら、シミュレーションコードの改良を進めておりました。本技術開発は、平成27年度から令和元年度で実施し終了いたしております。これまでの成果の概要でございますけれども、今年の1月にニュースバルでワークショップを開催しまして、国内外の専門家に集まっていただき遮蔽物に隠蔽(いんぺい)されました模擬核燃料を、この核共鳴蛍光反応で検知する実証試験を行いました。
専門家の皆さまからは、核セキュリティおよび核不拡散分野における独創的な非破壊測定技術として注目に値するとのコメント、また目標と課題を達成したのみならず、核データや基礎科学、その理解に重要なアプローチを提供したとの高い評価をいただきました。
また、欧州原子核研究機構が中心となって開発しておりますモンテカルロシミュレーションコード、Geant-4というコードに、開発した光弾性散乱コードが採用されております。この技術は将来的には原子炉の使用済み燃料の核物質量、溶融燃料、さらには先進的原子炉の使用済み燃料の核物質測定に使えるのではないかと可能性が示されております。

次のページ、アクティブ中性子非破壊測定技術開発でございます。目的・概要ですが、低線量率から高線量率の環境下での核物質の非破壊測定技術の開発を目指しており、中性子源を用いた4つのアクティブ中性子非破壊測定技術の基礎技術開発を実施しております。
まず、その4つの技術として、ダイアウェイ時間差分析(DDA)法、即発ガンマ線分析(PGA)法、中性子共鳴透過分析(NRTA)法、それから遅発ガンマ線分析(DGA)法という4つの方法を使ってございます。
このページ下の左側に統合試験装置と書いてございますけれども、この装置では、高強度の小型D-T中性子発生管を導入しまして、DDA、PGA、NRTA、この3つの測定を同時に行える統合基礎試験装置を開発し、これを用いた実証研究を実施しております。また、下の図面の右側ですが、カリホルニム252という密封線源を中性子源として使い、実装に容易になります小型のDGA装置の開発を実施してございます。この開発では、平成27年から29年度が低線量試料を用いた基礎技術開発を、また、平成30年度から来年度までに高線量試料の測定技術の開発を行うという予定でございます。
これまでの成果でございますけれども、DDAにおきましては、非常に高い中性子線を発生する試料の中でも、少量のプルトニウムを測定できることを確認しております。また、遅発ガンマ線分析法におきましては、カリホルニム252を中性子源とした小型装置の開発を行いまして、既存の再処理施設への適用の可能性を確認してございます。現在の活動状況としては、来年度に実施いたします総合試験に向け、各要素技術の試験を行っているところでございます。

それでは、次のページ核鑑識技術開発でございます。目的・概要ですが、核物質等の不法取引や核テロ行為の際に押収、または採取されることが想定されます核物質の起源等を特定する分析技術の確立を目指し技術開発をしてございます。基本的な技術開発は平成23年から25年に完了しており、現在、高度化技術開発、AIを使った解析技術開発とか、それから核テロ事象発生後の核鑑識技術開発というものを進めてございます。
これまでの成果でございますけれども、基本的な分析技術を確立しました他、ウランの年代測定法を改良しまして、分析時間を従来法より大幅に短縮する分析技術を開発、核鑑識分析の迅速化を実現してございます。昨年度は、警視庁からの依頼を受け押収核物質の分析に協力をいたしました。また、警察のニーズに基づき初動対応のハイブリッド型の検出器開発とか、国際共同試料分析へ参加をして、国際貢献をしてございます。
令和2年度の活動状況としては、こういった高度化技術開発、さらには使用済み燃料の重要シグネチャに関する研究に着手、またオートラジオグラフィーの核鑑識分析への応用について検討を進めているところでございます。

続きまして9ページ、核セキュリティ事象に係わります魅力度評価に関する研究でございます。目的・概要ですが、核セキュリティ事象に対する核物質の脆弱性評価法を向上させて、核セキュリティ措置の最適化へ反映するということを目的に研究開発をしております。この研究開発は、日米核セキュリティ作業部会の下で、核燃料サイクル施設への核起爆装置や、放射性物質の飛散装置、RDDの製造を目的とした盗取、原子力施設のサボタージュに対しまして、包括的な核物質、放射性物質の魅力度評価手法を日米共同で開発するということを行っております。
本研究開発は平成30年度から開始。これまでの成果としては、DOEとの技術会合を2回実施、さらに魅力度評価指標の分析、サボタージュ評価指標の検討、魅力度を削減する概念や技術の検討をスタートさせ、今年の2月にIAEAが行いました核セキュリティ国際会議で、日米で成果発表してございます。
現在の活動状況ですが、コロナ禍で対面式の会議はできませんが、月1回オンライン会議を開催して研究開発を進めております。また、爆発によります物質の変性等を確認する実験を予定しており、その成果を魅力度評価研究に反映させる計画です。

それから最後のページ、10ページ目でございます。これは今回の中間評価の対象外ですが、令和2年度から開始した放射線イメージングを用いた広域かつ迅速な核放射性物質検知技術開発でございます。これは、大規模イベント等の核セキュリティ強化を目的に、広域で核物質や放射性物質を検知する技術開発の試みでございます。原子力機構 福島研究開発部門のCLADSで、福島地域の汚染の度合いを比較的広域にモニタリングする技術開発をやっており、これを応用しまして、核物質の検知または放射性物質の検知をする試みをスタートさせたところでございます。
私のほうからは以上でございます。どうもありがとうございました。

(出町委員)大変ありがとうございます。ただ今の御説明につきまして、御質問、御意見がございましたら、どうぞお願いいたします。委員の先生方、いかがでございましょうか。
中島先生、お願いいたします。
(中島委員)京大の中島です。御説明どうもありがとうございました。
コロナウイルスの対応の中でいろいろと大変だったかと思います。現在、国際トレーニングがオンライン提供の準備中とのことですが、トレーニングにて機微情報を扱う場合、オンラインでの脆弱性などが気になりますが、対応はどこまでされるのかという質問と、あと、国内は対策徹底の上、対面で実施しているとのお話しですが、実績としては、昨年度と同等レベルの人数か、あるいはやはりコロナ対策等で人数制限などあるか、この2点を教えていただけますでしょうか。
(直井センター長)御質問ありがとうございます。まず、機微情報ですが、核物質防護に係わるトレーニングコースには、機微情報は入ってございません。そのため、トレーニングコースは支障なくできております。それから国内向けのコースは、密にならない措置としまして、人数を半分から3分の1ぐらいに落としておりますので、人数は若干少なくなっているという状況です。
(中島委員)ありがとうございました。了解しました。
(出町委員)続きまして、小松崎委員よりお願いいたします。
(小松崎委員)丁寧な御説明をありがとうございました、直井さん。
お伺いしたいのが2~3点あるのですが、まず第1点、コロナによって、いろいろ影響を受けたことについてのお話がありましたが、視点を変えて、コロナによってわれわれの国だとか諸外国において、やらなくてはいけないが、やっていなかったことも明確になってしまったと考えています。
具体的なことを申し上げると、PCR検査は必要だと定性的に語ることはできたとしても、それを必要数やるためには、どういうようなスキルの人が、どれぐらいの人数、またそのデリバリーに何が必要かと実際にPCR検査に関わる行為を行うために必要な体制や陣容ということが、残念ながらはっきりしていなかったという問題があったと思います。従って今回、この核不拡散・核セキュリティでも、このケースを参考に考えておいたほうがよかったけれども抜けていた事案がないか、今見ることも大事じゃないかなと考えております。
具体的なことを申し上げますと、直井さんが御説明になったテクノロジー、対策が、どんなインシデントを想定し、またそれが発生した時、どれぐらいのボリュームで対応が必要だという、数値的な目標ということも必要じゃないかと思います。
まとめて言うと、何か起こったときに、基幹となる学術的技術は先ほど説明された幾つかの技術ですが、それを実際に運用するときに必要な、全体としての体制やそのオペレーションを行うための陣営が、今まであまりフォーカスされていなかったならば、実効ならしめるための体制、技術を生かすためのフィジカルな部分も含めた流れ、体制とも言えますが、そこまで拡張して考えると、より今までやってこられたことの実効性が上がるように思います。
(直井センター長)小松崎さん、ありがとうございます。なかなか非常に難しい御質問と思いますが、われわれは特に、核鑑識ですとか、それから広域のモニタリングなどに関しましては、警察関連の警備当局との非常に緊密な連携が重要ですので、連携を警察として使える技術開発につなげていきたいと考えております。
特に広域のモニタリングですとか、核鑑識につきましては、初動対応のときに例えばゲルマニウム半導体検出器は非常に高価故持っていけないとのニーズがあり、もっと安価で、簡単に分かるものをとのコメントを受け、今、複数の安価な検出器、プラス機械学習装置をAIのようなものと組み合わせて、各種の判定もできるような現場持ち込み型の検出器を警察庁と一緒に開発することを進めております。
(出町委員)ありがとうございます。小松崎さん、よろしいでしょうか。
(小松崎委員)ありがとうございました。今、私たちの仕事で一番御縁のある警察の名前も出ましたが、さっき申し上げた点がそこでして、現場で実際に操作やプロテクションの実作業をやる方たちが必ずしも原子力や核に詳しくないと。そうすると、この装置は一体何ができるだとか、これは一体どういう効果があるかは、必ずしも理解できていない場合もあり得ると思うのです。
そのため、警察と共同歩調を取るという非常に重要な点などにおいては、例えば科警研の先生方とか、非常に科学的にも詳しい方、それから、実際に最後に動く警察官の方、あるいは他の省庁担当の方もいますので、サイエンティフィックなポイントだけではなく、中核としたチェーン、流れのつながりとして、何が大事かということを、開示できる範囲で開示して、各担当の方がやっていらっしゃることが何の意味を持っていて、どのような効果がある行為かなどをより明確にしたらいいのではないかが、私の根底の問題意識でございます。
あともう一点、長くなりますが、先ほど遮蔽物の中のものを感知するという話が出ました。警備の観点から言えば、遮蔽物そのものが運び出されるというのが異常行動であると考え、遮蔽容器が今まさに持ち運ばれようとしている、移動していることを検出するのも、予防措置として現場では非常に有効な手段かと思いますので、技術開発と、必要なフィジカル部分の連鎖まで拡張して考えたほうがよいと思います。
(出町委員)ありがとうございます。
(直井センター長)補足ですが、輸送物に隠匿された核物質については、現在、港では、基本的にはパッシブで核物質から出てくるガンマ線と中性子線、それを1次サーベイとしてポータルモニターで検知をしております。そこで検知されたら、次の2次サーベイに入っていきますが、1次サーベイで、遮蔽物からガンマ線なり中性子線をシャットアウトされますと、2次サーベイに行かずに、スルーしてしまうという問題がありますので、まず1次サーベイ中に検知ができるような技術を導入できないかと開発を進めているところです。
(小松崎委員)遮蔽物から放射線が出ている検知を、第1次アクションとしてやるということがそもそも難しい、設備的にも難しいと。こだわりがあり申し訳ないのですが、それは私の感覚で言うと、2番、3番目ぐらいの話になろうかと思っております。
何か不自然な金属の箱があると、それは当然重量も重いものになります。そうすると、その中に放射性物質がないとしても、場合によっては放射性物質を運べるような重い箱がある、それが移動しているというフィジカルなことを検知することによって、スクリーニングすることができるのではないかと。検知したとき、しかるべき検査装置が置かれているところに搬入して、直井さんがおっしゃった検査になると思うのですが、それを発見することがトリガーで、そこから以降がアクションとなると、発見できる確率だとか、発見するために一体どれだけの設備と人員が必要かというところが、私たち実務をやっている人間からすると、非常に薄くなるのでないかと恐れを感じた発言でございます。
(出町委員)ありがとうございます。横からすみません。小松崎さんがおっしゃったように、その動作や、重い物を持ったときの動作、あと物体認識を私共もAIを使ってやっておりますが、ハード的にも導入するのはあまり難しくありません。もし使えるのであれば、第1スクリーニングとできれば多重防護的な効果があるかと思っております。
今の件につきまして、コメントよろしいでしょうか。
(小松崎委員)だいぶ長い時間を使いました。ありがとうございました。
(出町委員)ありがとうございます。続きまして、五十嵐委員よりお願いいたします。
(五十嵐委員)丁寧な御説明ありがとうございました。コロナ禍の大変な中でも、教育であるとか研究が進んでいることが素晴らしいと思いました。
今の小松崎委員の御発言とも関連しますが、コロナ影響のある中、一般的に想像できるような大変さはもちろんあったと思いますが、特にこの分野において、想定外の状況となった点、特に問題だった気付きがあったならば、教えていただきたいというのが1点目です。
また、逆にこの状況下オンライン開発など進められ、オンラインでできること、例えば対面より良かったとか、いい面も見つかった点があるのではないかと。他、コロナ後、新しい今後の中で、更に進めていこうとしていることがあれば、教えていただきたいと思います。
日本は幸いこの状況でも研究などできていますが、各国を見るとなかなかどうかと思います。この状況下でも、核セキュリティは放っておけない問題だと思いますが、各国の状況は今どうか、国際ワークショップなどもオンラインで行っていると御報告もありましたが、取り組みにおいて分かる範囲で教えていただければと思います。
(直井センター長)直井から回答させていただきます。
今回、気付きの点としては、今までほとんどトレーニングは対面しか実施しておりませんでしたが、かなりの部分がオンライン、eラーニングで、特にオンラインは双方向の情報やりとりをしながら実施できることが今回よく分かりました。
またウェビナーなどに替わったことで、今まで参加できなかった人も容易に参加できるようになったと感じております。トレーニングコースの場合は、インタラクティブにグループディスカッションなど行いますので、人数はやはり絞る必要がありますが、ウェビナー、ワークショップの形ですと、一例ですが100人同時参加もできますので、その面では、今まで参加できなかった人たちが、ウェビナーでワークショップなりをするということで、多く参加できるようになったところは、非常に良いと感じております。
それから、先ほど申し上げました韓国と中国との情報交換の中、コロナ禍で行っていることの情報共有を9月のワークショップで行いましたが、中国はオンラインで、例えば核物質防護のトレーニングフィールドを使ったバーチャルツアーをかなりして、トレーニングに活用していました。実はそれは、ISCNでも同じような動きをしており、苦労しつつも似た方向に日本も韓国も中国も動いていることがよく分かりました。
(出町委員)よろしかったでしょうか。続きまして、小澤委員よろしくお願いします。
(小澤委員)小澤でございます。初めての参加です。よろしくお願いいたします。
質問といいますか、コメントですが、人材確保にしても、技術開発にしても、継続して行っていくことが重要かと思います。その中で、資料2-1 3ページ目の成果概要の中に、参加者の中から選別して数年後に追跡調査を行い、トレーニング効果の確認をしているという、このテーマに特徴的なコメントがあり、これは良いと思いました。
これは、教育を受けた人がその分野で活躍している、技術力がアップしている、資格が上がったなどがあれば、効果はあると考えられるし、もし足りない部分が分かれば、業務にフィードバックしていくことが重要かと思います。同じように技術開発も、脅威の方が世の中で変わると、開発もその対策として変わっていかなければいけないと思いますので、今後行っていただきたいと思います。
特徴的なお話が今まであれば、差し支えない範囲で御披露いただけますでしょうか。よろしくお願いします。
(直井センター長)研修生、トレーニングに参加した人の追跡調査は、基本的にはメールで、今の仕事・業務質問から、トレーニングでの知識や経験がどのように生きているか質問をして、メールで返信してもらうのがベースになります。それプラス、われわれは二国間協力で、先方の対象国に出向いてトレーニングをする機会がありますので、その機会に現地にいる研修に参加した人達、更にその上司にも集まっていただき、上司とトレーニングを受けた本人に、トレーニングの効果といいますか、今どのように仕事の中で生きているかインタビューで収集する活動をしてございます。
また、技術開発のニーズはまさに非常に重要な点ですので、とにかくアンテナを張って、どういう技術が必要とされているかを、絶えずウォッチしながら技術開発に反映していくことを進めております。
(小澤委員)どうもありがとうございました。
(出町委員)続きまして、中熊委員よろしくお願いいたします。
(中熊委員)電気事業連合会の中熊でございます。私も本日初めて参加させていただきます。
1点質問ですけれども、日中韓3センターでかなり密接な連携をし、カリキュラムもかぶらないようにされているとのことで、直接的には比較できないかもしれませんが、パフォーマンスの観点で、その日中韓でどの程度差があるか、あるいは同等であるなど、評価はされておりますでしょうか。
例えば参加者数や、先ほど御説明のあった追跡調査による効果の度合い、あるいはトレーニングコースの数や、R&Dの実務への展開度、活用度などで3者の比較はされていますでしょうか。
(直井センター長)私のISCNのセンター長としての感触になりますが、例えば核物質防護のトレーニングフィールドを、韓国も中国、われわれも持っていますが、そのフィールドをいかに使いこなしているかという部分では、ISCNがトップではないかと考えています。
トレーニングフィールドの性格が各国若干違っており、韓国の場合は、韓国内にあるセキュリティ会社が開発した、一例ですがサムスン電子のような会社が、新しい侵入検知センサーをトレーニングフィールドに設置して、まずそれが使えるかどうかを試験します。試験が終わるとそのまま機器を置いていき、それをトレーニングで使うとの方法をしています。
中国も似たような制度を持っていますが、中国の場合は、原子力発電所が使う侵入検知センサーを、これは使ってもいい、これは使ったら駄目だと判定をしています。その意味で若干、日中韓センターの性格が違っております。
また、中国も韓国もかなり国内トレーニングを重視しており、例えば中国の場合は、7割方は国内向けのトレーニング、われわれISCNは6割方が国際コースと、若干違いが出ております。
パフォーマンスについて、客観的に見た評価結果ではありませんが、個人的な私の印象としてお話させていただきました。
(出町委員)よろしいでしょうか。
(中熊委員)今、おっしゃられたことはよく理解できましたが、費やされているリソースとそれに対する効果、のような観点での比較というのは非常に重要なことと思いますので、もし何か機会があれば、そういう試みをしていただければと思います。よろしくお願いいたします。
(直井センター長)ありがとうございます。
(出町委員)続きまして、井上先生、お願いいたします。
(井上委員)同志社大学に来る前は、IAEAにおり人事も見ましたので、今日はいろいろとIAEAの名前が出てきまして嬉しく思います。今日はいろいろな御説明をどうもありがとうございます。
私は、IAEAでも人事におりましたから、育成というところに非常に興味がございます。育成に効果を求めるとしたら、必要な人々に、必要なタイミングで、必要なトレーニングを届けるということが基本になるかと思いますが、日本、海外からどのようにして参加者が選ばれ、どういうタイミングで提供、どんなコンテンツを御提供されているのか。ニーズに基づいたものだとは思いますが、教えていただけないでしょうか。
(直井センター長)国内向けのコースと、それから国際向けのコースがありますが、国際向けの場合には、われわれが主催するトレーニングの場合、経験年数、今就いている仕事、それから、これからどういう仕事に就こうとしているかというような、応募者の動機を書いた書類を基に判定をいたします。またIAEAの場合は、IAEAで決め研修生を選びます。
国際コースと国内コースの違いは、国内向けの場合には、基本的に集まってくる専門性が非常によく揃っておりやりやすいのですが、国際コースの場合は、結構ばらつきがあります。規制機関から来る人もいれば、研究所、または外務省から来る人もおり、バックグラウンドがかなり違う中で合わせるということが非常に難しく、基本的にオーバーオールなトレーニングを提供する形にならざるを得ない状況です。
ただ保障措置に関しましては、どちらかというと揃った人たちが来る傾向にあります。
(井上委員)いろいろと御苦労があるということで、よく分かりました。
(出町委員)ありがとうございます。その他よろしかったでしょうか。中島先生、お願いいたします。
(中島委員)すみません。2回目の登場で申し訳ないです。
質問より、コメントに近いですが、ここで開発された技術、特に非破壊で核共鳴蛍光とか、ニュートロンを利用したものとかありますけれども、核共鳴蛍光は、他の技術への適用と溶融燃料の分析等への可能性を示したという記載があり、この先も興味があります。
できれば同じ組織内ですから、アクティブ中性子やもしかしたら核鑑識についてもCLADSと協力して、福島の廃炉に貢献できるような情報提供を積極的にするのはどうでしょうか。セキュリティで開発された技術であっても、廃炉にも役立てられるのであれば、やはり廃炉はオールジャパンで対応すべき仕事ですので、当然機微なことは無理にしても技術的なところは問題ないと思うので、ぜひとも積極的に行っていただきたい。そういう意味では、今年度開始の放射線イメージングを用いた広域かつ迅速な核・放射性物質検知技術開発のところは、もう最初からCLADSと連携があり非常にいいことと思うので、他の技術もそういった体制を積極的に進めていただければいいというコメントでございます。
(直井センター長)コメントありがとうございます。そのように進めていきたいと思っております。

(出町委員)直井センター長、たくさんの質問、コメントに丁寧に御回答いただきまして、大変ありがとうございます。
続きまして、次の議題に従って進行させていただきます。
資料2-2 令和2年度研究評価計画中間評価の流れについてに基づき、事務局のほうから説明をお願いいたします。

(萩原企画官)文部科学省が実施しております研究開発活動については、規則に従って、事前評価、中間評価、事後評価をそれぞれ実施することになっております。
現在ISCNで取り組んでいただいている研究開発とか人材育成は、運営費交付金でやっているのではなく、文科省から別途補助金を出している事業ですので、この評価のスキームに則って評価を行います。
こちらの中間評価については5年ごとに評価、前回は平成27年に評価を実施しておりますので、今回は平成27年から令和元年までの5年分について評価をいただくことになります。
評価の視点とか、評価の方法は後ろに別紙で付けておりますが、こちらは研究計画・評価分科会の原子力科学技術委員会のほうで統一的なフォーマットがございまして、本日いただい御意見を基に、事務局で案を作成、11月中に開催予定の原子力科学技術委員会に提示をして、そこでさらに検討、取りまとめとなります。原子力科学技術委員会には、他にも評価される課題がありますので、それとの並びなどを見ながら調整、原子力科学技術委員会としての評価を取りまとめまして、年が明けて2月の見込みと言われていますが、科学技術・学術審議会の研究計画・評価分科会で評価を決定することになっております。
先ほどからの御議論で幾つか今後の方向性とか、御意見、コメントを頂いておりますので、事務局でピックアップして、中間評価の案に反映をさせていただきたいと思いますけれども、さらにその他、御意見があればお願いをしたいと思います。
(出町委員)ありがとうございます。ただいまの御説明につきまして、御質問等、また御意見があればお願いいたします。
(中島委員)中間評価は今日の議論を基にということですが、前回中間評価が27年度に実施されておりますので、できればそのときの資料や、その評価に対しての今期対応など、今日の資料2-1に反映されているとは思いますが、前回の中間評価以降の流れがもし分かるようなものがあれば、参考として示していただけるとありがたいです。
(出町委員)ありがとうございます。いかがでしょうか。
(萩原企画官)現在、資料が用意できておりませんので、別途資料を整え、ISCNとも協力した上で御提示できるようにしたいと思います。
(出町委員)ありがとうございます。中島先生、後日届くということで。
(中島委員)はい、了解しました。
(出町委員)小松崎委員、お願いいたします。
(小松崎委員)よろしくお願いします。事務局の皆さん、御苦労さまです。
セキュリティ業務を行ってきた経験から、少し気になる点を申し上げたいのですが、今回、直井センター長がお話になったことや、書いてあることを見ると、非常に一つ一つのファンクションは、極めて高度で重要なものがあることが期待できます。その反面、やはり最終的にはオペレーションサービスとして国の安全を守る、国民の安全を守ること、フィジカルなアクションとしてどうしたら円滑に進むかまで、実は考えておかなければいけないと思います。
パンデミックやウイルスは、私たちは警備する上の安全を確保する重要課題として、だいぶ前から特定分野においてかなり具体的に考えてきましたが、多くの方々は、このパンデミックについて具体的なイメージは恐らくお持ちでなかったと思います。そうなると、初動の遅れや、同意・理解を得るアクションが非常に困難になることに繋がると。
それは強いて言うならば、土台が固まっていないことになり、必要な人材の確保の問題にも繋がりかねない。そういう点からすると、事務局にぜひお願いしたいのが、フィジカル、それからサイバーなことと原子力、こういったものが全て連携して実際に日常のオペレーションになることが、人々の安全に繋がっていくことは、間違いのないことだと思いますので、そういう視点で、少し、接触する他の要素との接点とか、ジョイントを出しておいていただいたほうがいい気がします。質問というより意見でございました。
(出町委員)ありがとうございます。事務局さん、いかがでしょうか。
(萩原企画官)ありがとうございます。前期、中間とりまとめを作成した際に、小松崎先生に入っていただいたのでご承知だと思いますが、そのときニーズの調査をさせていただいておりまして、警察、原子力規制庁など、実施省庁の中に、どういった技術ニーズがあるかは、われわれも踏まえて、ISCNの中で技術課題に落とし込んでいるところであります。
一方で、開発した技術が本当に現場で使えるものかどうかという視点は、まさにこれからのお話ですので、ぜひその視点を入れ、社会実装していくには、さらにどういう点が要るのか、あるいはその社会実装をしていく直前まで、本当にISCNがやるべきか、その他の規制庁なりが実際に試作品を使ってやっていくべきか、その辺りも考えながら、評価をさせていただきたいと思います。
(出町委員)ありがとうございます。小松崎さん、以上でよろしかったですか。
(小松崎委員)安心できるお話を伺ったと思います。ありがとうございました。
(出町委員)続きまして、喜多委員、お願いいたします。
(喜多委員)事業の評価をするとき、定性的な達成度が多くあるのは当然ですが、定量的な達成目標がないと、PDCAを回し、どの程度達成できたのかを評価できないという問題があります。できれば目標としている数値があり、どこまでできたか、できた理由、できなかった理由などの情報とともに、評価基準を定量的にお示しいただけたほうが、より適切に評価できるのではないかと思います。難しいことはよく分かっております。
(出町委員)事務局、いかがでしょうか。定量的な評価は。
(萩原企画官)なかなか難しいところはありますが、ISCNと相談した上で、きちんと定めて、それに達しているのか、達していないのかということで見ていきたいと思います。
具体的には、技術開発のほうは、その定量的な評価というのがなかなか難しいところがありますが、人材育成については、どういうレベルの人をどれぐらいの人数で育てる、あるいはどれぐらいの国と一緒にトレーニングコースをやるとか、そういった形では定量的な評価が可能な部分がありますので、できる限り、明確に判断できる基準を入れて評価をしていきたいと思います。
(喜多委員)よろしくお願いいたします。
(出町委員)その他御質問、コメント等よろしいでしょうか。
では本日頂きました御意見等を踏まえて、事務局さんのほうで評価書案の作成をお願いしたいと存じます。なお、本評価案は、11月に開催予定の原子力科学技術委員会の審議を経まして、来年2月開催予定の研究計画・評価分科会において審議され、決定される予定でございます。

(出町委員)続きまして、議題の3に移らせていただきます。核不拡散・核セキュリティ分野の人材確保の議題でございます。事務局のほうから御説明をお願いいたします。

(萩原企画官)お手元に、参考資料で配らせていただいている中間とりまとめ案の8ページにて、核セキュリティとか核不拡散と言ったときの人材育成は、どういう方向でやるべきかをまとめております。大方針としては、皆さんうなずかれる部分が多いものをまとめたものですが、先ほどからも御議論があったとおり、具体的に人を育てていくときに、どういったことが必要かは、もう少し掘り下げて考えなければいけないだろうと、この議題を用意させていただいております。
具体的に申し上げれば、先ほど井上委員と直井センター長との間で少しお話がありましたが、例えば核セキュリティのトレーニングコースをやるときに色んなバックグラウンドの人がいるお話もあったように、実際にその核セキュリティの知識というのは、技術者の方にも必要ですし、そのマネジメントを行う事務系の方にも必要な部分があります。
それはなぜかというと、条約があり、各国の法規制があり、そのルールの中で何をしなくてはいけないかという知識や、実際にやらなくてはいけない計量管理、防護の実施などの技術的な知識の側面があり、技術的バックグラウンドの方も、事務的なバックグラウンドの方も、両方の方が学ぶべきものが存在しているからではないかと思っております。実際に漠然と人材育成と言うのは簡単ですが、どういうバックグラウンドの人に、どういう技術や知識を身に付けていただくのかは、もう少し精緻に考えないと、なかなか効率的な人材育成はできないのではないかというのが一つの視点です。
それから、その人材育成と言ったときに、その仕上がりから、どういう方を育てるべきかという議論がございます。例えばトッププレーヤーとして世界を引っ張るような、一流の方を育てるということであれば、野球とかサッカーのようにピラミッド構造を張って、裾野を広くする。そうすれば非常に優秀な方が出てきますので、その人をエリート教育していくことが考えられますが、このやり方をすると、裾野の方で、その分野で生きていかない方、その分野で食べていけない方がどうしても出ますので、核セキュリティの分野では食べていけなくなったときに、他にどんなつぶしの利き方があるかも考えていかざると得ないということがあります。
一方で、実務を担う方は、一定の技術を一定の習熟度で身に付けていただくことが必要ですので、座学と実地研修を受けていただいて、十分にその知識と技術が認められた方に、運転免許証のような形で、認可していくというのも一つの人材育成の在り方です。
今までの御議論ですと、この辺りが混ざっている部分がありましたので、この際、もう少し具体的に、それぞれ委員の先生方の御専門分野に沿って考えていった場合、御自分の分野ではむしろこういう人材が必要だけれども足りない点、あるいは大学の先生方におかれては、学生さんの興味の所在や、就職を考えるとなかなか分野に進むのは難しい声がある等、御意見を頂ければと思っています。
本日いただいた御意見については、事務局のほうでISCNと相談して、今後のISCNの人材育成事業等々に活用をできればと考えております。

(出町委員)ありがとうございます。議題3への質問または御意見等ありますでしょうか。
(井上委員)先ほどの御説明を聞いて、なるほどと思いました。
やはり、全部漠然とした議論すると精度が低くなるかと思います。日本の国と考えたときに、この核セキュリティの人材をどれだけの人数、どんな人物像をつくっていくかというお話、そしてまた、海外で活躍できる方をどのように輩出していくか、そういう話だと思いますが、技術はどんどん進化していきますので、技術の開発と、それから人材育成は、恐らく一緒に議論していかなければいけないと思っております。個々の先生方が、各事情ばらばらに議論するよりは、全体として何か議論ができるようなことがあればいいかと思います。
また、大学もすごく大きな役割を果たすと思っておりますけれども、今の学生さんは基本的には、将来の職業を選ぶときは、安定やつぶしが利くというような世界でないとなかなか魅力を感じてくれません。もちろん自己成長や、社会貢献といった意味では本分野は素晴らしいかなと思いますが、そういう魅力をこの分野につくっていくのが、一つ重要な視点かと思っております。意味・魅力があって、人が来て、そこから育成、そしてその中からいろんな部門で活躍する方が出てくるかと思います。
専門性の高い人材は、育成するのに時間がかかり、簡単に育成できません。広く、長い目で考えながらでないと、難しいと思ったりもしています。コメントみたいですが以上です。
(出町委員)ありがとうございます。井上先生がおっしゃったとおり、結局、いい学生さんが育っても、受ける世界のキャパがないと、そもそもなかなか来てくれないと。最近の学生さんはシビアですので、そういう観点では、政府のほうに期待する役割が大きいと思うのですがも、事務局さん、いかがでございますか。
(萩原企画官)核不拡散、核セキュリティ人材といった場合に、これから人材の需要が増えるかと言われると、正直なかなか厳しいだろうと思っておりますが、原子力施設等で、実務に携わる人数は上限があり、その他どこに人材の需要があるかというと、日本分析センター、核管理センター、あるいはJAEA、それから行政庁の中かと思います。海上保安庁や警察、原子力規制庁などに、核セキュリティが分かる人がいるといいということです。
これまでは、化学や物理などのバックグラウンドがある方が、OJTでその道の技術や知識というのを身に付けて、業務を行う上で人材が育ってきたと思います。一方で、そのOJTだけで今後もやっていけるかと言うと、国際社会、例えばIAEAの査察官を出していく、国際議論の中で核セキュリティの分野を引っ張れる方が出てくるかというと、それはやはりなかなか難しいところがあるのですが、文部科学省として、他の分野での議論をそのまま持ってくるとすれば、学部生の間に核セキュリティを専門とする方をつくるのは難しく、大学院に入ってから、視野に入れていただくのかと思います。
そうした場合には、学部生で、物理とか化学とか核セキュリティに繋がる分野を学ばれている方に、核不拡散や核セキュリティなどの分野がまずあること、その中にはどういう職業に繋がるものがあるか十分に認識していただくのがまず初めで、その上で、大学院でその分野に近い知識をしっかり身に付けていただくことが必要と思います。
一方で、まさに井上先生がそうですが、例えばIAEAや、OECDの中にある原子力エネルギー庁NEAなどは、事務系の方がかなり活躍されています。これは、原子力に関する法規制、原子力損害賠償などといった国際法の世界の専門家が必要になるためで、実は核セキュリティの観点でも、法的な知識、社会学の知識、行政学の知識が必要になるため、文系の学生さんに対しても、核不拡散・核セキュリティの分野で活躍できる可能性があると、どこかのタイミングでうまく示していければ、そういった方も導入できるのではないかと考えています。
そのためにも、現在行っていますがISCNが大学とネットワークをまずつくる。その中で、各大学さんは個別に広い専門分野を全部カバーできないので、ISCNがネットワークのハブとして主にオンライン授業とかを活用し、大学が連合して、必要な知識を必要な学生さんに届けるようなシステムをつくれたらと取り組みしているところです。
(出町委員)井上先生、いかがでしょうか。
(井上委員)核セキュリティ分野で活躍されている日本人の方は現在もおられまして、私がIAEA在籍時におられた方ですが、皆さん色んなところを回りキャリアをつくっているように思います。文科省や民間などから大学やJAEA、OECD/NEAなどそういったところを回りながら、キャリアをつくっていっておられる方が多いと。
そのため、ここに入ったらもうこれしかないというのでなく、色んなところを動きながら、道を確立できるという姿を知らせることが、もしかしたら魅力を感じていただける一つの方法なのかなとも思います。
(出町委員)ありがとうございます。また、私見ですけれども、そもそも日本だと具体的な育成や、具体的なキャリアパスというのがまだ見えておらず、資質の高い人が、非常に頑張って、自分で築き上げていらっしゃるという感じがします。そういう意味で、なかなか他分野に比べても、人材が来ない可能性がありますので、何らかの形でパスは見せることができればと、個人的に思います。
喜多委員から手が挙がっております。お願いいたします。
(喜多委員)宣伝半分になるのですが、核物質管理、核不拡散と核セキュリティには、専門の学会、日本核物質管理学会があります。そこで学生チャプター、学生部会をつくろうという動きもあるようで、将来そういった分野に興味を持って進みたいと考えている学生さんは、学生の時代から核物質管理学会のようなコミュニティーに入っていただきたい。JAEA、ISCN、日本原燃など、様々な組織が核不拡散と核セキュリティに関する研究を年次大会などで発表しておりますので、参加していただければ後々この分野に入ってきてもらえる可能性が高まるのではないかと考えているところです。
(出町委員)そうですね。今、喜多さんがおっしゃった核セキュリティ学会ですが、私も理事をやらせていただいております。来月、年次大会ですが、そのうち東工大さんと東大さんしか学生が発表していないという状況でございまして、学会のほうが少し体たらくで申し訳ないのですが、これからまた拡大して、日本全体で参加できるようにしたいと思っています。
それでは、布目委員お願いいたします。
(布目委員)私が今携わっております分野が、地層処分、高レベル放射性廃棄物の地層処分ですけれども、この廃棄物処分分野と似ていると思うのは、核セキュリティ分野も色々な分野の方々がいて成り立っていることです。地層処分は、やはり本当に幅広い分野の方々が協力して一つのものをつくっていく分野でございます。
例えば、私の今おります組織ではその人材育成をやっており、分野間連携をどのように行っていくかが非常に重要になっています。特に、分野が多ければ多いほど、どういう人を育てていくかをしっかり考えていかなければいけない。
核セキュリティ分野についても、その連携する場というのがあれば、自分がどれに向いている、もしかしたら近い分野で自分は向いているかもしれないと、幅広く学ぶことができると。例えばそういう研修の場を一つの分野に限るのでなくて、幅広いところでの分野連携をするカリキュラムや、プログラムなどを少し検討したり、試したりしてみるといいのではないのかと思っております。
(出町委員)ありがとうございます。
(井上委員)私も大賛成で、やはりこういう分野は色んな知識が複雑に絡み合っており、ここのエリアとこのエリアは、全く関係ないように見えたけれども、実はコアの知識で通ずるものがあるとか、この分野の知識を持ったら、この分野とこの分野にも効くというような、一案ですが学生向けなどのマップみたいなものがあれば。もしかしたら私が事務系ゆえの発想かもしれませんが、何かマップなどあれば、自分が持っている知識から、どんな世界が開けてくるかが分かるかなと思いました。専門外でケースに関してはあまり理解した上で発言しているわけではないので、申し訳ございません。
(出町委員)事務局さん、そういうマップのようなものは、現存でありますでしょうか。
(萩原企画官)これまでは必ずしも整理ができておらず、従来的な考え方だと、どうしても理系のバックグラウンド、特に原子力の周りをやられていた方、工学部の中でも機械、システム工学とか、あるいはもっと具体的には炉物理、資源工学とかそういった方が、原子力に携わるうちに、計量管理を施設内で行う必要があり、まず保障措置を始めて、そこから核防護や、核セキュリティに進まれていく例が多かったのではないかと思います。
一方で、JAEAや、電力会社さんの中には、計量管理の書類をIAEAの保障措置を受ける際の書類を書く仕事から、そのルールを理解して、書類を書く専門家が育っていく、多分その2系統が、これまであったかと想像しています。
ただ、今までの御発言にもありましたが、例えば現在、ISCNで取り組んでいる魅力度の評価のような話をするときに、やはり技術的なバックグラウンドだけでなく、社会学的な考察や、心理学的な考察はどうしても必要なので、そういった分離融合的な考え方がこれから必要だろうと考えています。
具体的にどこまで広げられるのかはなかなか難しいので、一朝一夕には整理できませんが、上坂先生からも事前にお話を伺ったときに御発言いただいておりますが、やはり社会学と原子力技術の融合みたいなのがこれから必要ではないかと。それは必ずしもパブリックアクセプタンスだけではなく、布目先生からお話のあった廃棄物マネジメントも、核セキュリティも、もう少し人文社会科学的な視点を入れていくことが、これから重要だと考えています。
恐らく、ISCNがこれから大学とネットワークをつくっていく上でも、国際文化論や、国際法学などの部分はどうしても取捨できない、統合すべきことだと思います。やはり日本の中でハブはISCNになりますので、ISCNネットワークづくりというのにこれから期待していきたいとわれわれは考えておりますし、そこが恐らくISCNの次の目標になっていくのではないかと考えております。
(出町委員)ありがとうございます。布目先生のおっしゃった御意見と、今、事務局からもございました、社会学との連携も含めて、さまざまな分野の融合が核不拡散・核セキュリティだと私も思います。例えば原子力発電所のセキュリティを考えた場合に、セキュリティ、PPなどは安全システムを理解していないと絶対つくれない。そういう観点からこの分野は幅広いです。可能であれば幅広いマップ的なものを、これから構築できればなおいいと思います。
上坂先生、お願いいたします。
(上坂委員)本日ネット環境が悪く、本来は進行のところ御迷惑をかけてすみません。
先ほど直井さんが少しお話しされたバーチャル訓練ですが、あれは素晴らしいと思っており、現在、東大とJAEAでディスカッションをしておりまして、セキュリティ訓練のバーチャル版、eラーニング版、それからバーチャルサイトツアーを開発したいと考えています。原子力専攻専門職大学院で、ですが、できればこの11月の講義で、まずは概要を御説明いただいて、うまくいけば来年の11月には、バーチャル訓練をできないかと議論をしているところです。
そして、私はこのコンテンツをもっと原子力防災避難訓練などに適用できないか、広げられないかなと考えています。もしそういうことが可能になると、言い方が良いか分かりませんが、スマホで若い方が避難訓練できるものになると、安心、身近に感じることがあると思うのです。
それから、そういうソフトウエアの開発となると若い方が得意ですので、この分野に入ってくるのではないかと考えております。やるとしたらやはり東海村が一番良いかと。東大が東海村の原子力対策課にその話をしたところ、今は避難訓練のコロナ対策変更をしているため1月から議論したいと御返事をいただきました。
(出町委員)ありがとうございます。先ほどの直井センター長からの資料説明に関連した上坂先生の補足だと思いますが、バーチャル研究室、バーチャル教育施設を使っての東大 東海キャンパスについても、もしよければ中間評価に入れていただければと思います。上坂先生、よろしいでしょうか。
(上坂委員)結構です。どうもありがとうございました。
(出町委員)ありがとうございます。その他はいかがでございましょうか。
(小松崎委員)この教育のことは、本部会で随分前に重要な課題として議論を何度かしており、私も非常に重要なテーマだと思っています。今日、皆さんがおっしゃったことは間違いなく重要だとは分かるのですが、人を集める、優秀な人材を集めるという点からいくと、大学から考えるというのは遅過ぎるかと思います。さっき出町先生もおっしゃったように、学会が寂しい状態であるのは、そもそも興味を持っている人が少ないということかと。平たく言うと、憧れの分野になっているかというのは、すごく大事じゃないかと思います。
そういう意味でいくと、核不拡散・核セキュリティが、具体的にはどういうことを行い、一体誰がどう評価してくれるかというシナリオは、多分充分に描けてないと思うのです。例えば大手企業に、核不拡散・核セキュリティ要員を出してくれと言ったときに、具体的にイメージできる方は多分大変少ないのではないかと思うのです。
ところが、先ほど井上先生も仰いましたが、大げさに言うと世の中の全てのことというのは繋がっていると。従って、何かのときに色んなところが寄り集まって力を合わせて、防災なり人命救助というのを行っていくというのが現実に必要なことですが、今はそのときに賛同を得にくいし、協力も得にくい状態かなと思うのですね。
そのため、核不拡散・核セキュリティが、どれだけ人間にとって大事で、具体的にどういうことが重要だということをもっと描いて、中核となる高度な技術だけではなくて、それがサービスの繋がりとして、みんなにどうベネフィットをもたらすのか、いかに人に評価されることか、ビジョンや、イメージなどをもっと発信して行く必要があると考えています。大学生と専門分野の学生を、どことどこを繋げようかというのは、そういう目的からすれば遅きに失すると。お子さんが大きくなったとき、核セキュリティの専門家になりたいとなったら最高ですね。
(出町委員)ありがとうございます。中島先生お願いいたします。
(中島委員)あまり関連していないかもしれませんが、核不拡散・核セキュリティの専門家を大学とかで育てることは、色んな技術の分野に跨っていること、それから社会学的、あるいは法規制なども必要であるというところでなかなか難しいと先ほどから話が出ておりますが、うちでも原子炉を持っておりまして、セキュリティ等の対応とかは、現場としては行っていますが、あくまでも教職員だけで動いている話で、学生には逆に、情報としては出せない話になります。教育として、その点どう行えばいいのか難しいかと思います。
ただ、私は工学系の大学として、この分野で役に立つような、基礎的な技術力を十分に身に付けた人材を出すのが、少なくとも工学系大学や大学院なりの役割かと思っており、先ほども直井さんからお話しいただいた非破壊測定や計測技術について、うちでも研究室では、非破壊分析的なこと、あるいはそれに結び付く基礎的な核データの評価なども行っており、そういう意味で、貢献できるかと思います。
ですから、それぞれ得意分野を大学なり研究室なりが持ち、先ほどマップという話もありましたが、どこをどうすればこういう結果や人材になるかというところが、私自身も十分理解し切れないところがありますので、そのようなものがあれば、目標に向けて、今どこが抜けている、ここが足りない、例えばここは就職してからOJTで良いとか、そういった戦略が立てられるかと思います。
(出町委員)ありがとうございます。小松崎さんがおっしゃった、まずその職業イメージですが、変な言い方ですが、例えばドラマの主役どころが、すごく職業的に人気が出ることはございますし、核セキュリティの専門家はこういうことをやると、分かりやすい形で発信する戦略的の手もあるかと思います。
中島先生がおっしゃったとおり、大学だけでは不可能ですので、役割分担として大学でできることは大学で、その先の部分は例えばOJTなど、設計がうまくできるとより良い人材が集まるのかと思います。
(小松崎委員)すごく古い話をしますと、警備業は当初認知されておらず人が集まりにくかったようですが、ところが、「ザ・ガードマン」というテレビが大ヒットして、一気に社会的認知が広がりました。あの中のガードマンは格好良過ぎて、現実にはもっと地味な仕事ですけれども、あの番組が、今の警備業界に与えた影響は大きいと思うのです。核セキュリティは非常に重要なテーマが分かりにくいことですので、一般の方が共感や、価値を感じていただくためには、意外と思われる手法やメディアを使うことなども、検討の一つに入れておいたほうがいいのかなと。イメージ戦略というとレベルが低い表現になりますが、やはり格好いいな、と思えるのはインパクトのある効果だと思います。
(出町委員)ありがとうございます。可能な範囲で、先生の言うイメージ戦略的なところ、原子力産業協会さん、いかがでしょうか。
(喜多委員)非常に難しい問題で、うまくいっているかどうかは、何とも言えません。今、核セキュリティにかかわらず、原子力産業界の人材確保というところで、一つの大きな障害になっているのが、現在、原子力の将来像が描けないという問題です。学生さんに、原子力の将来はこうなるから、どんどん入ってきてくださいと具体的な話ができないところに問題がありまして、そこを何とかできないか、人材確保の面から考えているところです。
今、私から言えるのは、それぐらいのことかと思いますが、原子力の将来展望が結局、学生にとっての原子力のイメージに繋がるかなと思います。
(出町委員)おっしゃるとおりです。原子力全体に跨るイメージですね。ここは色んな御意見があり、まだまだ一つの解答はないとは思うのですが。
(小松崎委員)全く原子力技術そのものとはとは関係ないところで仕事をしてきた立場で言うならば、意外な分野、例えば天文学の先生方との御縁がとても有効なものでした。というのは、天文学で使うセンサーなどは、高度なセキュリティでは割と近い存在なのです。何がどう人々に受け入れられるかとか、何を伝えたらいいイメージができるのかは、失礼な言い方になるかもしれませんが、原子力の専門家の先生がお考えになってもなかなかアイデアが出にくく、むしろ企業サイドなどそういうところがもっと関与することが重要じゃないかなと思います。
原子力の将来は明るくないというのが多分、今世間の皆さんが感じていることで、これを明るくしたいですね。色々な意味で日本の将来にとって欠かせない重要な分野と皆さんが明確に認知されるならば、関係する仕事職に対して子どもたちが、大事だ、自分もそこで力を発揮したいと思えるようなことというのは、できなくはない。
今、コロナでだいぶ医療関係者がお疲れになり、このままだと看護師さんが大量に離職するのではないかなど社会問題化しておりますが、一方で、昔医療を行った経験から言うと、過酷であることが嫌なのでなく、自分の行っていることが社会に評価されないことが嫌だと言っていた看護師の方がおりました。その経験から、お金などではなく、周りからの感謝や、評価されることをどれだけ伝えていくかは、回り道ではなく、正論、正攻法として非常に効果的なことだと僕は感じております。
(出町委員)ありがとうございます。最近の学生さんの態勢として、安定とかだけではなくて、やりがいを見る学生さんは少なからずいらっしゃると思いますので、掘り起こすことが大事ですね。
さっきから暗い話ばかりですので少し明るい話ですが、SMRがアメリカで承認を通りましたが、将来、日本にも来るかもと期待はしております。そうなるとセキュリティの人材は増えてくるかと思いますので、そういう観点から宣伝することも可能かなと思っております。
その他に、御意見いかがでございましょうか。
では、以上で本日用意させていただきました議題は全て終わったと思います。その他、全体を通しまして御意見、または連絡事項等は委員の先生方からありますでしょうか。
最後に事務局さんのほうからの連絡事項等をお願いいたします。

(鈴木補佐)事務局です。本日は貴重な御議論を頂きまして、誠にありがとうございました。本日の作業部会の議事要旨案につきましては、出来次第メールにて確認をさせていただきたいと思っております。
次回の当作業部会の開催につきましては、目下検討中ではございますが、可能であれば、年度内に開催できればと考えております。御多忙のところ大変恐れ入りますが、委員の皆さまにおかれましては、何とぞ御理解、御協力のほどをよろしくお願いいたします。
(出町委員)大変ありがとうございます。それでは、以上をもちまして第17回の核不拡散・核セキュリティ作業部会を終了いたします。御出席いただきまして、大変ありがとうございました。

お問合せ先

研究開発局研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付

(研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付)